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勇者「あは、みつかっちゃった!」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/20(月) 20:29:51.03 ID:QqZusdSvo

とある貨物船の倉庫


船員A「貨物のチェック?」ガチャ

船員B「おう。武具や資材ならともかく、今回運ぶのは食い物だからな。毎日しっかり確認しねえと」バタン

船員A「なるほど。傷んでるのがあったら取り除けばいいのかな?」

船員B「そうそう、そいつの周りから腐ってくからな。……って、あれ?」キョロキョロ

船員A「?」

船員B「いや……なんか多くね?」

船員A「え? ……ひーふーみー」

木箱「やあ」

船員A「……本当だ。ひとつ多いね」

船員B「運び入れた時、こんなんなかったはずだけど」スタスタ

船員B「いったい何が入って……」パカッ

勇者「あ」

船員B「え」

勇者「……」

船員A・B「……」

勇者「あは、みつかっちゃった!」

船員B「水門の鍵なら間に合ってます」パタン

勇者「ちょっ!?」


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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
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渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714052788/

二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714049241/

佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/20(月) 20:30:46.92 ID:QqZusdSvo

船長室


船長「〜♪」

副船長「船長、ご機嫌ですね」

船長「ばっか、最近商売が軌道に乗りまくりの今、ご機嫌にならずしてどうするってんだ」

副船長「地道な努力がついに実を結びましたね……。喜ばしいことです」

副船長「ですがこういう時こそ慎重にならないと。あまり調子に乗ってると、思わぬトラブルに足元を掬われますよ」

船長「思わぬトラブルねえ……例えば?」

副船長「そうですね……チェックミスをして貨物をだめにするとか」

船長「二人体制取って、毎日厳重にやらせてるさ」

副船長「この前入った新入り二人は、実はライバル社のスパイだったとか」

船長「おいおい、滅多なこと言うもんじゃねえよ。あいつらは宮仕えの由緒正しき騎士サマから斡旋されてきたんだぞ」

副船長「密航とか」

船長A「密航だぁ〜? ははっ、ねーy」


ダダダダダダダダ……


船員A「船長!!」ガチャッ

船員B「みっ、みみみ密航です! 密航者を発見しましたァーっ!!」

勇者「ちょ、下ろっ、下ろして! せめて箱から出してくれえぇ!」ガタガタ

船員B「こぉらっ、暴れんな! あっ」ツルッ

船員B「右足の小指イィィーっ!!」ガツーン

勇者「背中アァァーっ!!」ドターン

船長「」

副船長「……あるある」
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/20(月) 20:32:42.30 ID:QqZusdSvo

二週間前
○○王国 謁見の間


王「よくぞ参った勇者よ。歓迎するぞ」

王「聞けば、西の国では我が国の城ほどもある魔物を一太刀で切り伏せたそうだな。
  まったく心強い。そなたならば魔王討伐も夢ではないだろう」

勇者「はっ。必ずや、平和を告げる鐘の音をお耳に入れてみせましょう。
  (どんだけおひれついてんだよ! せいぜい大人二人分くらいだっての!)」

王「うむ、期待しておるぞ。実はそなたの腕を見込んで頼みたいことが……ゴホッゴホッ!」

勇者「陛下?」

王「案ずるな、すぐに収ま……ゴホッ、ゴホゴホッ!」

大臣「へ、陛下……」オロオロ

騎士団長「陛下、後は私たちが引き受けます。どうか安静になさっていてください」

王「うむ……すまぬ……」ゼイゼイ

勇者「……」

騎士団長「勇者様。城下にも話が広がっているため、既にご存知かもしれませぬが……」

大臣「実は先日、王の娘である王女様が何者かに拐かされてしまったのです」オロオロ

勇者「(そういや、確かにそんな話を聞いたよーな聞かなかったよーな)」

騎士団長「夜も更けてきた頃、彼奴は突然現れました。
      たったひとりで衛兵たちを蹴散らし、風のごとき速さで王女様を連れ去ってしまったのです。
      動ける衛兵たちをすぐに追跡に向かわせましたが……」

勇者「足取りは掴めなかったと」

騎士団長「……お恥ずかしながら。幸いだったのは、死人が出なかったということくらいでしょうか。
       そして得られた情報は、その日の早朝、大きなずた袋を背負った男が南へ行く船に乗ったということだけ」

大臣「それが誘拐犯かもわかりません。陛下のご病状も悪化するばかりで……」オヨヨヨヨ

大臣「ああぁ王女様、いったいどこに……。今の王女様は」

騎士団長「大臣殿っ!」

大臣「ひぃっ!」ビクッ

勇者「……何か?」

大臣「い、い、いえ。勇者様のお耳に入れるようなことではございません。どうかお忘れになってくださいませ」アセアセ

勇者「……」

騎士団長「勇者様、お願いでございます。どうか彼奴めの居所を突き止め、王女様を取り戻してくださいませ!
      ……本当はこの手で犯人を斬り潰してやりたい。
      ですが、私はどうしても離れられない案件があるゆえ国を離れられませぬ。
      もちろん前金として船代などの諸費用はすべてお支払いいたします! なにとぞ、なにとぞ王女様を……!」



船長「……で、せっかくの前金を使い果たして、密航に走ったと?」

副船長「呆れて物も言えませんね」

船員B「それでも勇者かよ」

勇者「ちっ、違うんだよ! 最後まで話を聞いてくれ!」
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/20(月) 20:33:52.69 ID:QqZusdSvo

再び二週間前
城下町 


勇者「王女様は銀髪碧眼の美姫って評判だったっけな。
   助け出した暁にはぜひ婿に、なんて……よっし、そうと決まりゃあ今日発とう今すぐ発とう!
   待っててください王女様、愛しの勇者が今行きますよーっ!」

娼婦「そこのお兄さん、寄ってかなぁい? 今なら100Gぽっきりでサービスしちゃうわよ?」たゆん

勇者「行きます!」

娼婦「きゃはっ、やったあ! こっちこっちぃ」グイグイ

勇者「いいカラダしてるねえ。君が相手してくれるの?(おっぱい! おっぱい!)」デレデレ

娼婦「ざーんねん、アタシは今日は客引き担当なの」

勇者「そうなの? 残念」チェッ

娼婦「うふふ、また今度ね。さっ、着いたわよ」

勇者「お? この中? そんじゃさっそく……」

娼婦「あ、ちょっと待って! ねえお兄さん……責める方と責められる方、どちらがお好き?」クネッ

勇者「えっ、そうだなあ。いつもはガンガン責める方なんだけど……たまには責められるのもアリかな」ニヤッ

娼婦「ほんとぉ? それじゃあ、こ・れ♪」

勇者「目隠しと……手錠? お、俺、痛いのはちょっと」

娼婦「だいじょ〜ぶ、優しくするから」カチャカチャ

娼婦「…………ね?」ヒソッ

勇者「(やばい、興奮してきた……! こりゃ当たりだな!)」

娼婦「一名様ごあんな〜い!」ガチャッ

勇者「(そんじゃ、出発前に一発鋭気を養うとしますか!)」フンッ

あらくれA・B・C・D「いらっしゃいませえ〜」ニタニタ

勇者「え」

娼婦「ごゆっくり〜♪」バタン

勇者「」



勇者「そうして密航に密航を重ねて船を乗り継ぎ、ようやくここまで……」ウッウッ

船長「えーっと、密航者は樽に入れて海に投げる決まりだったな」

副船長「もったいないでしょう。そのままポイでいいんじゃないですか?」

勇者「待ってえええええ!!!!」

船員A「アレに引っかかる人がまだいたとは……」

船員B「うん? お前地元だったっけ?」

船員A「え、ああいや、家はちょっと離れてるけど、街には時々妹と遊びに行ってたのさ。
    注意を促す張り紙もされてるし、いかにも怪しいから引っかかる人はそういないって思ってたんだけどね」

副船長「……本当に勇者なんですか?」ジトー

勇者「いやいやいや、まごうことなき勇者だから! 見てよこの肩のあざ! 伝説通りでしょ!」ズイッ

船長「マジかよ……。そもそもおめえ、どうやって乗り込んだんだ?
   他は知らないが、うちは貨物運び入れの時は必ず依頼人に立ち会ってもらうようにしてんだ。
   紛れて密航なんてそうそうできねえはずだぜ」
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/20(月) 20:34:41.13 ID:QqZusdSvo

勇者「ふっふっふっ……よくぞ聞いてくれました!」キュインッ


フッ


副船長「なっ!?」

船員B「消えた!?」

船長「そこかっ!」バッ

勇者「おおっと」ヒョイ

勇者「はっはー! こちとら伊達に勇者やってねえっつの! そう簡単に捕まってたまr」ガシッ

船員A「はい捕まえた」

勇者「えっ」

船員A「だめだよ勇者さん。こういう時は黙って逃げないとさ」

船長「でかしたぞ船員A!」

船員B「ロープ持ってくる!」ダッ

勇者「ち、ちくしょう……!」

勇者「(……なーんちゃって! 所詮素人だ、すぐに振りほどいて……)」グッ

勇者「(って、抜けない!?)」

船員A「俺、家にいた頃に武道かじってたんだ。ちょっとやそっとじゃ抜けないと思うよ」ニコニコ

勇者「ど……」


勇者「どうしてこうなった……」ガクッ
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/20(月) 20:35:46.88 ID:QqZusdSvo

甲板
〜船員生活一日目〜


勇者「……」ゴシゴシ

勇者「……俺を海にほっぽりだしたら誘拐犯を追える奴がいないってことで、
   次の港まで精魂込めて働くって条件で許してもらえたが」

勇者「天下の勇者様が甲板掃除とはなあ……泣けるぜ」ゴシゴシ

船員A「よかったじゃないか。残り一週間、短い間だけどよろしく。勇者さん」ゴシゴシ

船員B「ようこそ我が××号へ。快適な船旅をお約束するぜ」ニヤニヤ

勇者「それでも貨物船協会には引き渡されるんだろ? ちくしょう、見逃してくれてもいいじゃねえか!」

船員B「残念だけど、密航は立派な犯罪だからな。まあうちの船長も鬼じゃないしさ。
    情状酌量も込みで拘束されるのはせいぜい一日程度だろ」ゴシゴシ

船員A「犯人も何か理由があって王女様を誘拐したはずだしね。
    まさか殺されることはないだろうし、少しくらい遅れても大丈夫だよ。きっと」ゴシゴシ

勇者「そうだけどよぉ〜……」ゴシゴシ

船員A「ところで、王女様の手がかりって無いに等しいんだろう? 探すあてはあるのかい?」ゴシゴシ

勇者「ん、おう。知り合いによーく当たる占い師がいるんだ。そいつに頼もうと思ってる」ゴシゴシ

船員B「占いねえ。そんなんで大丈夫なのか?」ゴシゴシ

勇者「効果は実証済みさ。王様に頼んで、王女様の私物も借りてきたしな」サッ

船員B「なんだそれ。髪飾り?」

勇者「王女様のお気に入りのお品だそうだ。こいつを占い師に預けて、ちょちょいっと見てもらえば一発よ」フフン

船員A「へえぇ、すごい人もいたもんだね。王様もその人に頼めばよかったのに」

勇者「変わり者でな、人前に姿を現したがらないんだよ。権力者とか大っ嫌いだし。
   前に一度助けてやったことがあって、それからは俺にもうメロメロさ。
   そろそろ俺に会いたくて体が疼いてる頃じゃねえかなあ」ニヤニヤ

船員B「あ、そっすか」ゴシゴシ

船員A「ははは……」ゴシゴシ

?「みなさーん!」タタタッ

勇者「!?」

?「お夕飯の時間ですよ。きりのいいところで終わらせて、降りてきてくださいね」

船員A「ああ、ありがとう」

勇者「(艶やかな黒髪にきらきらとした大きな青い瞳、陶器のようにすべすべとした白い肌。
    野暮ったい三つ編みは若干残念だが、それを差し引いても余りあるほどの美しさだ。
    なんだあの原石通り越して煌めくダイアモンドは! 俺はいつ天界に招かれたんだ!?)」ゴゴゴゴゴゴゴ
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/20(月) 20:36:40.33 ID:QqZusdSvo

勇者「おいっ、おいっ! 誰だあの子!? 名前は!? 歳は!?」ブンブンブンブン

船員B「いっ、妹だよ! 船員Aの兄妹で、この前一緒に入ってきたんだ! わかったら離してくれれれれ」ガックンガックン

勇者「妹……」パッ イッテエ!

船員A「妹。さっきお話した勇者さんだ。ご挨拶して」

妹「あ、はい! はじめまして、妹と申します」ペコリ

妹「なんでも不貞の輩に騙されて一文無しになってしまわれたとか……。ご心中お察し致します」

勇者「有り難うございます。しかし……」スッ

妹「はい? あの、何故手を……」

勇者「運命のいたずら、でしょうか。そのおかげで貴女という女神に出会うことができました」キラキラ

妹「はあ」

勇者「嗚呼、次の港までしかご一緒できないなんて!
   いかがでしょう。無事王女様を誘拐犯の手から助けることができたなら、今度は私と愛の航海を」

船員A「勇 者 さ ん」ガッ

勇者「!?」

船員A「早く行かないと俺たちの分がなくなってしまうよ。ここの人たちはたっくさん食べるからね」ギリギリギリギリギリギリ

勇者「いででででででででっ!!」

船員B「そ、そうだぜ勇者さんっ! 飯抜きは辛いだろ!? ほら行くぞ今すぐ行くぞ!」グイッ

勇者「んなっ!? おいこらっ、離せ!」

勇者「妹さあああああああああん!!! また後でじっくりお話しましょうねえええええ!!!!」


ダダダダダダダ……


船員A「……」

妹「……」ノシ

船員A「……妹。あの人にはなるべく近づくなよ」

妹「くすっ。大丈夫よ兄さん。私、口説き落とされたりなんかしないわ」

船員A「……」

妹「さ、行きましょう」ニコッ

船員A「……そうだね」
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/20(月) 20:37:47.19 ID:QqZusdSvo

食堂


ガヤガヤ……


船員B「勇者さん、大丈夫か? 腕に手の跡ついちゃってるぜ」モグモグ

勇者「これくらいどうってことねーよ。くそっ! あのにこやかイケメン野郎、まーたいいところで邪魔しやがって……」ブツブツ

船員B「それ悪口になってねえぞ。
    ま、これに懲りたら妹に絡むのはやめとけ。さっきの通り、あいつ怒るとこえーから」

勇者「けっ。なーにが兄だ。あの二人、全然似てねえじゃねえか。本当に兄妹なのかよ」

船員B「……」

勇者「えっ、ちょっと黙らないでこわい」

船員B「俺も詳しくは知らないけど、あいつらにも色々事情があるらしいんだよ。あんまり突っ込まないでやってくれ」

勇者「そうか……」モグモグ

勇者「……あの二人、いち貨物船の船員にしちゃぁやたら品がいいよな?」

船員B「突っ込むなっつってんだろ! ……まあいいや。後からかき回されるのも面倒だし」

船員B「船員Aと妹は、もともと貴族の生まれなんだ。だけど事業が上手くいかなくて没落寸前まで追い込まれたらしい。
    だから二人は奉公に出ることにした。だけど没落寸前だけあって、船賃すら出せない。
    そこでとある国で宮仕えをしてる長兄、騎士にうちを紹介してもらったらしい」

勇者「? なんでまた」

船員B「前にちょっくら騎士を助けてやったことがあってさ。
    それから俺らと騎士はちょっとした友達なんだ。手紙のやりとりなんかもしてるんだぜ」

船員B「ただ、うちの船長は人は運ばない。失敗した時のリスクがシャレにならないからな。
    だから船賃代わりに、目的地までうちで働かせてもらうことになったんだと」

勇者「へえ……。騎士に船賃を出してもらうわけにはいかなかったのか?」

船員B「社会勉強だとよ。それに騎士は家から勘当されてるから、そこが手助けできるラインギリギリだったらしいぜ」

勇者「勘当? 宮仕えの長兄を? 貴族ってのは何考えてんだか……」

船員B「あんまり言いたかないが、実益よりもプライドで物を考える生き物だからねえ。
    俺たち庶民には理解できないッスよ、まったく」ムシャムシャ

船員B「あ、俺がこんなこと言ってたなんて内緒にしてくれよ?
   貴族は好きじゃないけど、俺あいつらのことは好きだからさ」

勇者「はいよ」モグモグ

勇者「(なるほど、貴族の次兄……武道を嗜んでるわけだ)」
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/20(月) 20:39:02.79 ID:QqZusdSvo

船員B「なあ勇者さん、さっきの髪飾りだけどさ」

勇者「ん? これか。やらねえぞ?」

船員B「いらねえよ。それに嵌められてるの珊瑚だよな?」

勇者「知らね。宝石とかよくわかんねーし」

船員B「あ、そう……いや、珍しいなって思ってさ」

勇者「?」

船員B「こういう仕事柄、流通はなんとなくわかるんだ。
    珊瑚は庶民向けのアクセサリーによく使われるけど、あんまり王族のには使われないんだよ」

勇者「え、そうなの?」

船員B「そうだよ。王族が好むのはダイアとかエメラルドとか、それこそ希少価値が高い宝石が多いんだ。
    反面、珊瑚なんて海に潜れば手に入るから安上がりで済む。
    値段も手が届きやすいから老若問わず人気だったりするんだぜ。
    だから、王女様がそんなん身につけてる、しかもお気に入りってのが不思議でさ」

勇者「たまたま王女様の好みが安上がりだったってだけじゃねえの?」

船員B「身もフタもねえなあんた……」

妹「お隣、よろしいでしょうか」

船員B「んなっ!? い、妹!?」ビクッ

勇者「どうぞどうぞ! 椅子をお引きしますね!」ガタッ

妹「ありがとうございます」スッ

勇者「(まさかあっちから来てくれるとは! こりゃ脈ありか? 
   ま、俺の魅力にかかればどんな女も一発ってことだな)」ウヘヘ

妹「あら? 素敵な髪飾りですね」

勇者「良ければ差し上げましょう。きっとお似合いですよ」

船員B「おいこら」

妹「勇者様ったら。それ、王女様の物なのでしょう? 兄から聞きましたわ」

勇者「いやだなあ、冗談ですよ冗談! はっはっは!」

船員B「もうやだこの勇者」
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/20(月) 20:40:12.93 ID:QqZusdSvo

妹「王女様を誘拐だなんて、恐ろしいことを考える方がいるものですね。目的はいったい何なのでしょうか……」

勇者「大丈夫ですよ。誰であろうと何であろうと、王女様は必ず助け出してみせます。その暁には妹さん、あなたを迎えに」

船員B「あー、妹! 船員Aはどうしたんだ? 一緒じゃないのか?」

勇者「チッ」

妹「兄さんなら、掃除道具を片づけてから行くと言って甲板に残られました。
  手伝うと言ったのですが、ひとりで大丈夫だと断られてしまって」シュン

船員B「へえ。そのままでいいのに、律儀な奴」

勇者「(おい、なんで邪魔するんだよ! 他人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られるぞ)」ヒソヒソ

船員B「(あんたの場合下心しか感じないんだよ……。
     だいたい勇者さん、密航した身だろ? あんまり調子に乗らない方が―――)」ヒソヒソ

勇者「(! 殺気?!)」ピキーン

船員C・D・E「」ズラッ

勇者「おおっと」

船員C「よ〜お勇者サマ。ちょっとツラぁ貸してもらえるか?」

船員B「ほら、言わんこっちゃない……」

妹「……勇者様に何の御用ですか?」ガタッ

船員C「えっ!? い、いやあ、ちょっと警こk、じゃない、お喋りしたいだけだぜ」アセアセ

船員D「そ、そうそう! 短い間だけど、これから一緒に働く仲だろ? 親睦を深めたいな〜って思ってさぁ」アセアセ

船員E「べべべ別にっ、因縁つけようとかそういうんじゃ――イデッ!」

船員C「ば、ばかやろぉっ!」

妹「なあんだ、そうでしたの!」

妹「ごめんなさい。皆さん怖い顔してらっしゃるから、私ったらてっきり……」

船員C「や、やだなあ。この顔つきは生まれつきだって」ハハ……

船員D「い、いやあ……」

船員E「ははは……」

船員B「(……相変わらずわかりやすいなぁ、こいつら)」

船員C「あー、ごほん。そういうわけだから勇者サマよ、俺らとちょっくら……」

椅子「」ポツン

船員「あれっ!?」

船員B「勇者さんなら、たった今食器下げて出てったぜ」

船員C「なにいっ!? お、追いかけんぞ!」


バタバタバタバタ……


妹「うふふ。相変わらず賑やかな方々ですね」

船員B「そっすね……」

妹「……あら? 船員Cさんたち、まだ食事の途中だったみたいですね」

船員B「げ、マジだ! “あいつ”にバレたらやっべえぞ。今のうちにこっちに運んd……」ガタッ

?「さっきっから騒がしいわねぇ。何やってんの?」ヒョイ

船員B・妹「あ」
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/20(月) 20:41:30.68 ID:QqZusdSvo

廊下


勇者「♪〜」

船員C「おうこら、待ちやがれ!」

勇者「ん? あー、さっきの」

船員C「用があるっつっただろが! 逃げんじゃねえよ!」

勇者「ごめんごめん。で、何よ? 手短に頼むぜ」ケラケラ

船員E「てめえ……!」ズイッ

船員D「やめとけ、仮にも勇者だぞ」

船員C「……ああ、用件は簡単だぜ。たったの一言で済む」

船員C「妹ちゃんに近づくな」

勇者「……へえ?」

船員C「妹ちゃんはな、この貨物船に咲いた一輪の花なんだよ。あの子がいるだけで、その場がぱっと華やぐんだ」

船員D「俺たちみたいなガサツな奴らにも分け隔てなく優しくしてくれる。まるで天使みたいな子さ」

勇者「(シータが入った時のドーラ一家かよ)」

船員E「だけど妹ちゃんの近くにはだいたい船員Aがいる。少しでも下心を持って近づけば……うぅっ」ブルッ

船員C「それに、没落寸前っつっても貴族の娘だからな……。
     わかっただろ? 妹ちゃんはただの花じゃない。高嶺の花なんだよ」

船員C「だから俺たち船員一同は決めたんだ!」

船員C「言い寄ることはせず」

船員D「影からひっそりと」

船員E「見守るに留めようと!」
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/20(月) 20:42:33.24 ID:QqZusdSvo

勇者「……えーっと、つまり」

勇者「勇者のくせして美人局に引っ掛かって」

勇者「身ぐるみ剥がされた挙げ句」

勇者「密航に走るような男はあの子にはふさわしくない、と」

勇者「そう言いたいわけだな?」

船員D「よーくわかってるじゃねえか」ウンウン

船員C「俺たちはな、妹ちゃんに幸せになってもらいたいんだ。あんたみたいな不誠実な男にはあの子は任せられねえよ」

勇者「……けっ、付き合ってらんねえな」

船員E「……んだと?」

勇者「高嶺の花? ふさわしくない? 知らねえよそんなもん。全部てめえらが勝手に決めたことじゃねえか」

勇者「てめえらに何と言われようと、船員Aに邪魔されようと、俺は妹さんを諦めるつもりなんて毛頭ない。
   あんな上玉めったにいねえんだ。絶対俺の女にしてみせる」

船員E「てんめえっ……!」

船員D「どうやら体に言い聞かせてやらねえとわからねえみてえだなぁ……!」パキッポキッ

勇者「はっ、来るなら来やがれ。俺は勇者だ! 名誉も! 信頼も! 金も女も! 
   欲しいモンは全部戦って手に入れてきた! あいつもこれまでと同じように手に入れてやんよ!」

船員C「上等だ……。俺たちの妹ちゃんをてめえなんかに渡してたまるかああああああああ!!!」



?「あ ん た た ち … …」


13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/20(月) 20:43:47.93 ID:QqZusdSvo

勇者「!?」

?「こんなとこで何やってんの……?」

勇者「(な、何だこの威圧感は……)」ゾワッ

船員C「わりぃが、今から男と男の勝負なんだ。邪魔しねえでくれるか」

?「へえ……。それって」

?「あたしたちの手料理ほっぽいてまでやるべきことなのかしら?」ゴゴゴゴゴゴゴ

船員C・D・E「!!!」

?「海の上では食料は超貴重。それはわかってるわよね?」

?「船の上の仕事は体力勝負。それもわかってるわよね?」

?「ご飯残して食料を無駄にされると困るのは誰?
  勤務中に空腹でぶっ倒れられると困るのは誰?」

船員E「ひいぃ……」ガクブル

船員C「そ、それは……その……」カタカタカタカタ

船員D「お……同じ船で働いてるみんなです……」ダラダラダラ

?「わかってんなら残すなあああああああああ!!!!」ドカアアアアアアアアアン

船員C・D・E「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」




?「ふう」

船員C・D・E「」ピクピク

勇者「……ア、アノ……」

?「ん? あんたはちゃんと食べてくれたからいいわよ」

勇者「イエ、アナタサマハイッタイナニモノデゴザイマスカ……?」

?「ああ!」

?「初めて喋るっけ? あたし、娘。ここの船長の一人娘よ。食堂を担当してるわ。
  ひとかけらでも残したらこいつらみたいになるから、そこんとこよろしくね」ニコッ

勇者「!」

勇者「(さっきは殺意の波動のせいでよくわからなかったが……)」

勇者「(爛々と輝く赤い瞳、すらりと伸びる手足、褐色の肌。
    短く刈り上げられた金髪とアップにした前髪はまるで獅子のよう。
    妹が永遠の輝きを持つダイアモンドなら、娘は燃え上がるがごとき赤いルビーだ!)」

娘「こいつら、どうせ妹のことで絡んできたんでしょ。ほんっと馬鹿よね。
  誰と付き合うかなんて本人たちが決めることじゃない」

勇者「ふっ、まったくだよな。愛の前に第三者が入り込むことなんてできやしないのに」キリッ

娘「あんたが言うか。このすけこまし勇者」

勇者「すけっ……!?」
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/20(月) 20:44:28.58 ID:QqZusdSvo

娘「噂で聞いたことあってね。助けた村や町の女の子たぶらかして、各地に現地妻作りまくってるらしいじゃない」

勇者「……ヒトチガイジャナイカナー」

娘「目ぇ泳いでるわよ」

勇者「やー、ほら、英雄色を好むってゆーし?」

娘「限度ってもんがあるでしょーが! まったくもう……」

勇者「あ、もしかしてヤキモチ? いやー、モテる男はつらいね///」ヘラッ

娘「…………」

勇者「…………」

娘「…………」

勇者「…………スンマセン」

娘「……はあ。まあいいわ。言っとくけどね。あたしはあんたになびく気はこれっぽっちもないし、
  妹だってそんなに安い女じゃないわよ。本気で落としたいなら覚悟することね」フフン

勇者「妹に近づくな、とは言わないんだな」

娘「さっきも言ったでしょ。誰と付き合うかなんて本人たちが決めること。周りが口出すことじゃないのよ。
  万が一にもありえないけど、もしも天地がひっくり返るレベルの奇跡が起きて
  妹があんたを本気で好きになっちゃったら、もうそれはしかたないわ。あたしは祝福するわよ」

勇者「(……ほう)」

勇者「……あいつら、妹さんのこと『貨物船に咲いた一輪の花』なんて言ってたけど……」

娘「ああ、あんな可愛い子初めてだから舞い上がってんのよ。海にいる時間の方が長いから、どうしてもね」

勇者「ここにも一輪咲いてるのにな。綺麗な向日葵」ニコッ

娘「」
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/20(月) 20:45:34.40 ID:QqZusdSvo


船員たちの部屋


勇者「」ボロッ

船員A「……このボロ雑巾は?」

船員B「さっき娘が放り込んでった。大方口説こうとして返り討ちにあったんだろ」

船員A「妹だけじゃなく、娘にまで手を出したのか……まったく」

船員B「勇者さん、あいつはやめといた方がいいぞぉ。
    こんなとこで育ったもんだから、ガサツだし気は強いしすぐ手が出るしで可愛いとこナシだ。
    おまけに父親の船長は親ばかと来た。口説いてるとこ見つかったら、今度こそ海に放り込まれるぜ?」

勇者「」

船員A「……聞こえてないんじゃないかな」

船員B「あー……。まあ腐っても勇者なんだし、一晩休めば元気になるだろ。俺も寝るわ。おやすみー」

船員A「ああ、おやすみ」




その後も


勇者「おはようございます妹さん。どうですか、今夜二人きりで星でも」

妹「あら勇者様、おはようございます。お気持ちは嬉しいのですが、
  私、明日は朝食の仕込み当番ですので、いつもよりも早く休まなければいけませんの」

勇者「そうなんですか……。それじゃあ明日は」

船員A「勇者さん、ちょっと」ニコニコ

勇者「」


二日にわたり


勇者「娘ー! ランデブーしようぜー!」

娘「死ね」

勇者「俺そこまで嫌われるようなことしたっけ!?」


勇者の報われない猛アタックは続いた。
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/20(月) 20:46:49.94 ID:QqZusdSvo

翌朝
〜船員生活四日目〜


勇者「…………」ズーン

船員B「うおっ、びっくりした! 起きてたのかよ!」

船員A「おはよう勇者さん。今朝はずいぶん早いね」

勇者「……お、おう。まあな」

船員B「? どうしたんだよ。あまりにも手応えが無いから凹んでるのか?」

勇者「いや、平気平気。なんでもねえよ。先行っててくれ」

船員A「そうかい? 遅れないようにね」

船員B「また後でなー」

勇者「おー」


パタン


勇者「…………」

勇者「(…………ない)」

勇者「(ない、ない、ない! なあああああああああああい!!)」

勇者「(髪 飾 り が な い !)」

勇者「(なくした? まさか! そんなわきゃねえ! しっかりカバンん中に入れといたっつの!)」

勇者「(これはただのカバンじゃねえ。何があっても破れないし中身がこぼれない強力な結界つきだ。
    俺が手を突っ込むか結界を破られない限り、カバンの中身が出ることは絶対に無い!
    誰かが結界を破った? いやいやいや、それこそありえねえよ。
    この結界は俺とさる王国の宮廷魔術師が二人がかりで張ったんだぞ!?)」

勇者「(……とにかく、確かなのはひとつ。結界を破って、髪飾りを盗んだ犯人が船内にいるってことだ)」

勇者「(結界を破るにはある程度の魔力と解呪魔法の心得が必要だ。
    だけど、そんな力量あるんなら貨物船勤めなんかでくすぶってるわけがねえし……。
    ああもう面倒くせえ! いっそ全員に精神操作魔法をかけちまえば手っ取り早いんじゃね?)」

勇者「(って、落ち着け俺! さすがに非人道すぎて笑えねえよ。
    とはいえ今回は王の信用と王女の命がかかってる。最後の手段として取っておくか)」


勇者「(とりあえず、現時点で一番怪しいのは――――)」
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/20(月) 20:47:47.76 ID:QqZusdSvo

船員A「魔法?」ゴシゴシ

勇者「ああ。貴族なら嗜みとして教わってただろ?」ゴシゴシ

船員A「“元”がつきそうだけどね。確かに魔法なら俺も妹も少しは使えるけど、それがどうかしたかい?」ゴシゴシ

勇者「いやあ、お前って一応勇者である俺を捕まえたし、結構強そうじゃん?
   それなら魔法はどの程度使えるのかなーってふと思ってさ」ゴシゴシ

船員A「やめてくれよ、本気でやったら勇者さんに敵うわけないじゃないか。
    魔法だって子どもの頃に初級を少し習って、それきりさ。兄妹揃って才能がなかったんだ」ゴシゴシ

勇者「へえ。じゃあ召喚魔法や解呪魔法とかは?」ゴシゴシ

船員A「とんでもない! あんな高レベルな魔法、俺なんかに使えると思うかい?」

勇者「だよなぁ」ゴシゴシ

船員A「納得されるとそれはそれで腹が立つなあ……。まあいいけどさ」ゴシゴシ

勇者「(……ま、もし犯人なら馬鹿正直に使えるなんて言うわけないか)」

副船長 ガチャッ

勇者「(あれ、副船長? 甲板に来ることもあるのか)」

副船長 スタスタスタ

勇者「(船縁に近づいて……)」

副船長 スッ

勇者「(手に持ってるビンを……)」

副船長 ポイッ

勇者「(投げたー!?)」ガビーン

船員A「そうだ、怪我したなら言ってくれよ。回復魔法くらいなら使えるからさ」

勇者「あ、マジで? 実はモップの柄がささくれててさ、さっきうっかり刺しちゃったんだよねー。
   じゃ、さっそく妹さんにお願いしてくるわ!」シュタッ

船員A「勇者さん」グイッ

勇者「ぐえっ! おい、襟を引っ張るな襟を」

船員A「残念だけど、妹は回復魔法は使えないよ」ニコニコ

勇者「ウソつけ。回復魔法は基本中の基本だっつの。習わないわけがないだろーが」ケッ

船員A「使えないよ」ニコニコ

勇者「いやだから」

船員A「使えないよ」グググググググググ

勇者「絞まってる絞まってる! わがっだ、わがっだがら! 自分で、治すが、ら、離しt……、…………」

船員B「おーい、水汲んできたぞー。ついでに追加の洗剤―――」

勇者「」ブクブクブク

船員B「持ってくるまでもなかったー!?」ガビーン

副船長「ちょっ、何やってるんですかあなたたちー!?」ビクーン
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/20(月) 20:49:12.29 ID:QqZusdSvo

医務室


勇者「あ〜、ひどい目に遭った……」ゲホゲホ

副船長「驚いた。本当に不死身なんですね」

勇者「神様のご加護でね。魔王殺すまでは死ねないんだわ」

副船長「……」

勇者「今、“なーんだ、それならあの時海に放り込んでおけばよかった”とか思っただろ」

副船長「まさか! たとえ不死身でも、日々の戦いは決して楽なものではないでしょう。ご心中お察しいたします」ニッコリ

勇者「どうも。ところで、副船長さんって船医も兼ねてたんだな」

副船長「貨物業を立ち上げた時はどうしても人不足でしたからね。
     安定した頃に専門の方を雇う予定だったのですが、いつの間にか定着してしまいまして」ヨイショ

勇者「へ〜。二足のワラジとか大変だろうに」

副船長「勇者様ほどでは。まあ私自身この仕事は嫌いじゃないですし、それほど苦ではありませんよ」カリカリ

勇者「……」

勇者「……あ、そうだ。甲板で何やってたんだ? ビンか何かを海に投げてたみたいだけど」

副船長「ああ、あれですか。貨物船協会への定期連絡ですよ」カリカリ

副船長「誰からどんな依頼を受けたのか、今どこに向かっているのか、依頼の進捗状況はどうなっているか、などをしたため、
     それぞれ船長と副船長がサインをした紙を特殊なビンに入れます」カリカリ

副船長「そのビンの底には魔法陣が書かれてまして、海水に触れると協会本部に送られる仕組みになってるんです」カリカリ

勇者「っへー! 便利なもんがあるんだな!」

副船長「でしょう? これを利用して、陸の友人に手紙を出すこともできるんですよ。
     距離にもよりますが、だいたい一日二日あれば届いてしまいます」カリカリ

副船長「……さあ、そろそろ動けるでしょう。持ち場に戻られてはいかがです」カリカリ
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/20(月) 20:50:16.50 ID:QqZusdSvo

勇者「……いやあそれがさ。まだきついみたいなんだよね」

副船長「はいぃ?」

勇者「本調子に戻るまで、ちょっとでいいから雑談に付き合ってくれないかな」

副船長「……ふう。構いませんよ」コトリ

勇者「サンキュー」ニカッ

勇者「俺ってさ、基本一人旅なんだよね。たまに誰かと行動を共にすることはあるけど、
   目的は果たしたからーとか故郷に帰るからーとか、それぞれの理由で結局別れちまう」

副船長「ふむ。その寂しさゆえに女遊びに走るわけですね。なるほどなるほど」

勇者「最後まで聞いて!?」

副船長「おっと、これは失礼しました。続きをどうぞ」

勇者「ごほん。だからさ、“勇者様! どこまでもついて行きます!”っていう感じの人材が欲しいわけよ。
   いくら俺が不死身で最強でも限界があるし」

副船長「(チンピラに身ぐるみはがされたのに最強を自負するとはこれいかに)」

副船長「……つまり一人旅は寂しいと」

勇者「うるせえなあ。そうです寂しいんですー。
   一緒に旅してくれる仲間、あわよくば可愛い女の子が欲しいんですー」

勇者「ってわけでさあ、この船にいい人材いない? できれば魔法使える奴」

副船長「私にヘッドハンティングの相談をされましても……」

副船長「無理ですよ。うちに勇者様についていける者がいるとは思えませんし、
     魔法を使える者もあの兄妹以外おりません。それに、使えると言っても初級程度のようですから」メガネクイッ

勇者「(……ウソ、じゃないみたいだな)」

副船長「さあさあ、雑談はおしまいです。出てった出てった!」グイグイ

勇者「わっ、ちょっ、押すなって!」

副船長「早く仕事に戻ってください。バレたら叱られるのは私なんですからね」ガチャ ポイッ


バタン!


勇者「追い出されてしまった」
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/20(月) 20:51:07.87 ID:QqZusdSvo

勇者「うーん、怒らせちまったかな。質問がちょっとばかし悪かったか……、ん?」トコトコ

娘「げ」

勇者「娘! 娘じゃないか! こんなところで会うなんて奇遇だなぁ。
   いやもしかすると、運命の赤い糸が俺たちを引き寄せてくれたのかm」

娘「」スタスタ

勇者「素通り!?」ガーン

娘「っるさいわねえ馬鹿勇者。今急いでんのよ。話しかけないで」

勇者「そんなご無体な……」

勇者「(―――ん? 血の臭い?)」クンクン

勇者「娘」スッ

娘「だから話しかけな―――きゃっ!?」

勇者「やっぱり。指、ケガしてるじゃないか」

娘「あ、ああ、包丁洗ってる時にスパッとね。医務室行かないとなんだから離してくれる?」グッ

勇者「あーあー、いいからじっとしてて。……ほら」ポワアァ

娘「あ……!」

娘「……すごい。さっき切ったのが嘘みたいに治ってる」

勇者「女の子の肌に跡が残ったら大変だからな。あ、傷口周りに付いてる血はちゃんと洗えよ」

娘「わかってるわよ。…………ありがと。優しいのね」

勇者「仮にも勇者ですから」フフン

娘「この前殴っちゃったこと、謝るわ。根っからの不良勇者ってわけじゃないみたいね」

勇者「ふっ、気にしてないさ。代わりと言っちゃあ何だが、次の港に着いたら俺t」

娘「じゃ、あたし仕事に戻るから。あんたもサボんじゃないわよー」スタスタスタ

勇者「まって未来のマイワイイイイイイイイイイイイイフ!!!!」
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/20(月) 20:51:44.64 ID:QqZusdSvo

娘「……ふふ」

妹「娘さん、ご機嫌ですね。何かあったのですか?」カチャカチャ

娘「べっつにー。あ、ってか敬語とさん付け!」フキフキ

妹「あっ!」カチャッ

娘「もう、癖なのはわかるけどさ。気安くしていいってば。あたしたち同い年なんだから」フキフキ

妹「は、……うん!」ニコッ

娘「ふふっ、そうそう」

娘「(いい子だなぁ。ずっとここにいてくれたらいいのに……なんて、無理な話よね)」

船員F(おばちゃん)「娘ー! 悪いんだけど、甲板の男ども呼んできてくれるかい?」

娘「はいはーい! 今行くわ!」
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/20(月) 20:53:07.95 ID:QqZusdSvo
今日はここまで
読んでくれた人いたら嬉しい
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/20(月) 20:56:09.75 ID:+EPdpirq0
乙カレー
期待して舞ってるよ
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/20(月) 21:43:23.61 ID:f6wiL4CDO
勇者♂かよ…がっかり
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/21(火) 00:46:02.77 ID:sT3PONxIO
>勇者「まって未来のマイワイイイイイイイイイイイイイフ!!!!」
うわ、寒い
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/08/21(火) 12:27:27.45 ID:sMGbVTxAO
>>25
はっけよいのこった^^
コピペネタにマジレスとか寒いなぁ
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/21(火) 22:02:41.41 ID:PrKSe2WEo
>>23
ありがとう!

>>24
逆に考えるんだ
この勇者はボーイッシュなガチ百合女勇者だ
と考えるんだ


投下します
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/08/21(火) 22:03:51.45 ID:PrKSe2WEo

甲板


オーイ、バケツトッテクレー

アイヨー

ウワー、マモノダ! マモノガデタゾー!

勇者「(……さて)」スラッ

勇者「(この船で俺以外に魔法を使えるのは船員Aと妹さんのみ。しかも初級しか使えないって話だ)」シュパパパパパ

勇者「(そうなると、髪飾りを盗めた人間は船内にはいないってことになる)」チャキン

オオー、バラバラ ダ……

サッスガユウシャサン!

コレ ドウスル? チョウリバ ニ ハコンドク?

マモノッテ クエンノカ……?

勇者「(だけど現に髪飾りはなくなってる。
   もっかいよく探してみたけど、俺が寝泊まりしてる部屋じゃ見つからなかった……)」

勇者「(魔法の才能がないなんてウソなんだろうなぁ。盗む理由だってひとつしか思いつかねえ。
   いっそ荷物漁るか? いやいやそれは人道的にちょっと……)」

勇者「だあぁもおおおお、どうすりゃいいんだよおおおおおおお」ガシガシガシ

船員B「きゅ、急にどうしたんだよ勇者さん。黒歴史でも発掘したのか?」

勇者「俺は今、人生の袋小路に迷い込んでいる……」

船員B「……ああごめん。現在着々と黒歴史を積み上げてるの間違いだったか」

勇者「……なあ、実力を隠してる奴を引っ張り出すにはどうすればいいと思う?」

船員E「えぇ〜? 何だよいきなり。次のボスの攻略法か何かか?」

勇者「まあそんなところ。しかも時間制限付きだ」

船員E「へえー、そりゃ大変だぁ」

勇者「早く何とかしないと今まで築き上げてきた信頼が……未来が……あああ……orz」

船員B「(あれ? 結構深刻な感じ?)」

船員C「……うーん……。実力を発揮せざるを得ない状況に追い込む? とかどうよ?」

勇者「! 使わざるを得ない状況?」バッ
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/21(火) 22:04:47.50 ID:PrKSe2WEo

船員C「おう。そうしないと自分が死ぬ、もしくは大切なもんを失うとかさ。そういう状況を作んだよ。
    そうすりゃ実力を隠してる場合じゃなくなるだろ?」

船員D「おぉー、確かに!」

勇者「……なるほど」

勇者「そうか、そうだよ、そうだよな! なんで今まで思いつかなかったんだ!」

勇者「ありがとう船員C! お前は俺の恩人だ!」ガシィッ

船員C「お、おお、そーかぁ? よくわかんねえけど、世界を救う手伝いができたなら嬉しいぜえ!」ガシィッ

勇者「そうとも! お前のおかげで世界は救われる!」

勇者「ってなわけでちょっくら行ってくる!」ダダダダダッ

娘「きゃっ! っととと……勇者?」

船員E「何か次のボスの攻略法思いついたんだってよー」

娘「はあ?」

船員B「王女様をさらったとかいう誘拐犯のことだろ、多分。
    熱心なのはいいことだけど、こっちの仕事もしてほしいよなぁ」ハァ

船員A「ははは、確かに。……でも、ここにもずいぶん馴染んだみたいじゃないか」

船員D「ま、なんだかんだでいい奴だしな。口はわりぃけど」

船員E「うんうん。魔物も今みたいにあっという間にやっつけてくれるし」

船員C「妹ちゃんや娘にしつこく言い寄ってはいるけど、全っ然相手にされてねえしな。
    勇者さんはむしろ俺らの仲間だったわけだ!」ガッハッハッ!

船員D「ちげえねえ!」ワハハハハハ!

娘「(……確かに、勇者やってるだけあって悪い奴じゃあないのよね。
  一応あたしたち人間のために世界背負ってくれてるわけだし、意外と優しいし、ルックスだって悪くn……)」

船員A「ところで娘、何か用事があってこっちに来たんじゃ?」

娘「えっ? え、ええ」

娘「みんな、もう昼食の時間よ。食堂に降りてきてちょうだい」

ヤッター!

メシダ メシー!

娘「……」

娘「……何考えてんのよ、もぉ」
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/21(火) 22:06:02.96 ID:PrKSe2WEo

二日後
〜船員生活六日目〜

船長「んで、どうだ? 勇者様のご様子は」

副船長「意外と頑張ってくれてますよ。
     勇者だけあってタフですし、魔物退治も非常に助かっています。
     船員たちともすっかり馴染んでるみたいですね」

副船長「(娘に言い寄ってることは黙っておこう……)」

船員「そうかそうか、そりゃよかった!
   最初は無給でこき使ってやろうと思ってたが、餞別に給料渡してやってもいいかもなあ」

船長「っとまあ、冗談はともかく」

副船長「あ、冗談だったんですか」

船長「あったりめえだろ。てめえの船に密航されたってのに金払うほど、俺ぁお人好しじゃねえよ」

副船長「(船長ならやりかねない気がしますけど)」

船長「あ、でも送別会くらいならいいかもなあ。どうせならパーッとやろうぜ、パーッと!」

副船長「密航者に送別会を開く人もなかなかいないと思いますが……」


ギシッ、ギシギシギシギシ……


船長「! なんだぁ!?」

副船長「ふ、船が……軋んで……!?」

船長「魔物か!」ガタッ

船長「おい、槍を取ってくれ! 久々に出る!」

副船長「は、はい!」カチャッ

船長「っしゃ!」パシッ


グラァ


船長「っとと……。こりゃ結構まずそうだな」

船長「行ってくる!」ダッ

副船長「お気をつけて!」


タッタッタッタッタッタッ…

31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/21(火) 22:07:25.27 ID:PrKSe2WEo

船長室を出て、甲板に出る扉を目指してひた走る。
その間にも船は軋み、時折ぐらりと揺れた。
更に水を大きく打つ音、悲鳴とも歓声ともつかない様々な声が船長の焦燥を更に煽る。
……間もなく、木製の壁の隙間から光差し込む扉が見えた。
ほとんど殴るような勢いで開けて外へと飛び込み、そうして見えたのは。


娘「だあああああああっ!!」


うにょろうにょろと何本も長い触手をくねらせる馬鹿でかいイカの魔物。
そして、そいつの顔面に果敢にも飛び込み、見事な回し蹴りを叩き込む我が娘の姿だった。


娘「っく……ちょっと何よぉ、これでもだめなワケ?」

船長「娘!!」


猫を思わせるしなやかな動きで着地してみせた娘のもとへと駆け寄る。
と、船長の姿に気づいた船員たちもこちらへ駆け寄ってきた。


娘「船長!」

妹「船長さん!」

船員一同「船長〜!!」

船長「おう、大丈夫か? 全員無事か?」

船員A「はい。無傷とはいきませんが、とりあえずは。あ、でも……」


甲板にいながら魔物の襲撃を防げなかったことを気に病んでいるのだろうか、
船員Aはそこで目を泳がせ口をつぐんでしまった。
肩を軽く叩き、言外に気にするなと伝えてやる。とにかくみんな無事で何よりだ。


船員A「いえ、そうじゃないんです。実は勇者さんが……」

船長「……ん?」
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/21(火) 22:08:42.16 ID:PrKSe2WEo

数十分前


勇者「っはー、ついに明日でこの船とおさらばかぁ」

船員C「お、寂しいのか?」ニヤリ

勇者「そうだなぁ。これで妹や娘とお別れかと思うと泣けてくるぜ」

船員A「ははは、少しは俺たちのことも惜しんでくれよ」

船員D「目が笑ってねーよお前……」ブルッ

勇者「あ、いいこと考えた。送別会開いてくれよ送別会! 食料にはまだ余裕あんだろ?」

船員B「なーに言ってんだ。密航者に送別会開く船がどこにいるってんだよ」

娘「いや、うちのお父さんならやりかねないわ」

船員E「うわっ、びっくりしたあ! いつからそこに!?」

娘「たった今。ご飯できたから呼びにk……」

妹「娘ちゃん!」ガチャッ

船員A「妹?」

勇者「!」ギラッ

娘「あら何? どうしたのよ?」

妹「うん……。あのね、さっき船が揺れたでしょう? その時にお鍋がひっくり返っちゃって。
  追加で作り直さなきゃいけないから、すぐに戻ってきてほしいって」

娘「え、やだっ、ほんと? わかった、すぐ戻るわ!」

妹「皆さん、ごめんなさい。もう少しだけお待ち頂けますか?」

勇者「もちろん! 妹さんたちに作って頂けるだけでも幸せなのに、文句を言うわけないじゃないですか」キラキラ

勇者「嗚呼、明日で貴女とお別れだなんて! 考えるだけで胸が張り裂けそうです……」キラキラ

娘「まーた始まった」ハァ

勇者「なんだよ娘、ヤキモチか? ふっ、素直じゃないんだかrいででででででっ!?」

船員A「」ニコニコニコニコ

勇者「てっめえ……!」バッ

勇者「何度も何度も俺と妹さんの逢瀬を邪魔してくれやがって! 今日こそ決着をつけさせてもらうぜ!」

船員A「何度もって言うほど邪魔した覚えはないけどなあ。
   ……でも、そろそろ俺も堪忍袋の緒が限界だ。もう妹にちょっかい出さないでほしいんだよね」

勇者「よーし、それなら勝負しようじゃねえか。
   万が一お前が勝ったら妹さんには二度と手を出さないって約束してやんよ。
   ただし! 俺が勝ったら妹さんはもらっていくぜ? ま、十中八九そうなるだろうけどな」

娘「はあ!? ちょっ、も、もらっていくって……!」

船員A「わかった。俺も男だ、約束するよ。
   真剣を使うわけにはいかないから、デッキブラシでやることになるけど」スッ

勇者「上等だ。そんじゃ行くぜえっ!」
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/21(火) 22:09:30.08 ID:PrKSe2WEo

娘「ばっ、馬鹿っ! 船内での私闘は厳禁よ! 忘れたの!?」

船員C「娘、これは私闘じゃねえ」

船員D「男と男の真剣勝負だ」

娘「何言ってんのよ! ねえ妹、あんただってこんなの―――」

妹「兄さーん、頑張ってー」

娘「ちょっとぉ!?」

イケー ヤッチマエー!

ボディ ダ、ボディ ヲ ネラエ!

船員A「はあっ!」ガキーン

勇者「とりゃあ!」ガキーン

船員A「いや、デッキブラシでこんな音はしないだろう」

勇者「こまけえこたぁいいんだよ。余計なこと考えてると足下掬われるぜ!」


ゴゴゴゴゴゴゴゴ…


勇者「っと、なんだあ?」

船員A「今日はやけに揺れる、ねっ!」ブンッ

勇者「おおっと!」サッ

船員B「ゆ、勇者さん! 後ろ後ろー!」

勇者「……へ?」



船員B「……で、その時ちょうど現れた魔物にぶっ飛ばされて」

船長「勇者殿は海にまっさかさま、と。……おめえらなぁ」ハアァ

船員A「すみません、妹のことになるとつい……。罰はいくらでも受けますから」

船長「まったくだ、このシスコンめ。勇者殿がちょいと心配だが……」

船長(まあ仮にも勇者だ、自分で何とかすっだろ。それよか問題なのは……)
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/21(火) 22:10:17.32 ID:PrKSe2WEo

船長は辺りを窺った。魔物は一匹。手下などは呼んでいないようだ。
蠢く触手は船尾、船縁、帆布などに絡み付き、じわじわと締め上げている。
このままでは船が折られ、沈むのは時間の問題だろう。
そう、生き残りたいのならば、一刻も早くあの魔物を倒さなければならない。
だというのに、船員たちは武器を構えたまま動こうとしない。
……いや、動けないのか?


船長(まあいいか。今はとにかくこの触手どもをどうにかしねえと!)

槍を構え、船に絡み付いている触手に飛び掛かる。

妹「! だめです!!」

船長「おらあぁっ!!!」


妹が船長を制止するとほぼ同時に、槍は力強く触手を突き刺した。そのまま素早く振り上げ、切り払う。
あっさりと切り離された触手は紫色の体液を迸らせながら、派手に水音を立てて海面に叩きつけられ、ゆっくりと沈んでいった。


船長「なんでえ、脆いじゃねえか。
   おうおめえら! ぼおっとしてねえで―――」

娘「危ないっ!!」


背中に強い衝撃が走る。
そのまま船長の体は吹っ飛ばされ、木製の床へと叩きつけられた。
ずきずきと重い痛みに奥歯を噛みながら頭を上げると、先ほど切り落としたはずの触手が元気そうにその身をくねらせていた。
……まさか、再生した? こんな短時間で?


娘「お父さん、大丈夫っ!?」

船長「あ、ああ。痛えがそれほど重傷じゃねえ。それよか、こいつはいったい……」
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/21(火) 22:11:21.52 ID:PrKSe2WEo

?「おーほっほっほっ! 残念だったわねぇ!」

船員C「だっ、誰だ!? どこにいやがる!?」

船員E「あそこだぁ!」


船員Eがクリームパンのような太い指を突き出し、クラーケンの頭上を指さす。
いったいどこから現れたのか、いつからそこにいたのか。
薄緑色のローブに身を包んだ何者かが得意げな笑みを浮かべていた。
フードを深く被っているため顔はよく見えない。
けれど、ローブから浮かび上がる体型やフードから伸びるウェーブのかかったロングヘアー、
そして何より高く透き通ったその声から、彼の者が若い女性だということは容易に推察できた。


術士「私の可愛いクラーケンちゃんは、そんな攻撃じゃあびくともしなくってよぉ」

船員C「お、女ぁ?」

船長「なんだぁ……てめえは……?」

術士「うふふ。あなたがこちらの船の船長様ねぇ?」

術士「はじめましてぇ、船長様。私、この近辺で貨物船狩りをさせて頂いております。どうぞお見知りおきを」

船長「……!?」

船員B「貨物船狩りだぁ!?」

船員D「なんだそりゃ! このへんでそんなのがいるなんて聞いたことねえぞ!」

術士「だって今日が初仕事だものぉ。あなた方は記念すべき被害者第一号というわけ」

術士「私の可愛い可愛いクラーケンちゃんはねぇ、そんじょそこらの魔物なんて話にならない再生能力を持ってるの。
   そうねぇ……あるいは魔法なら、ほんのちょーっとは効くかもしれないわぁ。
   でもあなた方のような野蛮人が魔法なんて使える? 使えないわよねぇ?
   お・気・の・毒・様♪ おーほっほっほっほっほっほっ!」

妹「兄さん……」

船員A「……大丈夫。お前は下がってるんだ」

船員A「やあ、ご高説ありがとう。でも」ダッ

術士「っ!?」

船員A「いくら恐ろしく強い魔物でも、使役者を潰してしまえばそれまでじゃないかな!」


強大な魔物を前にして、臆することなく船員Aは走り出す。
もちろんクラーケンも黙って見ているわけがなく、己を、そして主を守ろうと触手を振るうが
船員Aは冷静にそれらを捌き、逆に足場として利用してやりながら確実に術士に近づいていく。
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/21(火) 22:12:08.98 ID:PrKSe2WEo

しかし、あと一歩というところで――――


術士「……うふふ。お馬鹿さぁん」スッ


ドオオォォンッ!!


船員A「ぐっ……!!」ドシャァ

妹「兄さんっ!!」

船員D「なんだ今の……雷!?」

術士「なかなかやるようだけれど、少々おつむが足りなかったようねぇ。
   私が召喚術しか使えないような能のない女だと思って?」クスクス

船員A「く、っそ……!」

術士「……ね〜え、船長様。ひとつ取引をいたしませんこと?」

船長「……?」

術士「私の目的はあくまであなた方が運んでいる貨物。さすがに命までは取ろうとまで思ってないわ。
   すべての貨物をこちらに引き渡してくれれば見逃してあげてもよくってよぉ」

船長「!!」

娘「ふっ……」

娘「ふざけたこと言ってんじゃないわよっ!!」

術士「!?」

娘「船長は……お父さんはねえっ!
  地味で小さくて、見返りもあんまりない仕事をコツコツコツコツやってきて、
  たまに理不尽なことがあってもぐっと堪えて、そうやって信用を勝ち取ってきたのよ!?
  最近、ようやく仕事が軌道に乗ってきてこれからだって時に!
  どうしてあんたみたいな奴にそれをめちゃくちゃにされないといけないのよ!!」

船長「……娘……」

術士「……っ」

船員B「(なんだ? 様子が……)」

船長「……そういうわけだ。悪ぃが、はいそうですかと渡すわけにはいかねえな」

術士「そ、そおぉ。ならしかたないわねぇ……」
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/21(火) 22:13:21.24 ID:PrKSe2WEo

勇者「何だよもう、誰も助けに来てくれないとか勇者さん悲しいんですけど……。
    魔王倒してやらないぞー……って、うおぉっ!? なんだこのでっけえイカは!?」ビクゥッ

船員B「勇者さん!」

娘「無事だったのね!」ホッ

勇者「びしょ濡れになっちまったけどな。……なるほど、これじゃぁだーれも助けに来てくれねえわけだ」

術士「勇者、ですって? へえぇ、あなたが……」ジロジロ

勇者「おうよ、俺が勇者だ。で? お前はいったい何なんだよ?」

船員C「貨物船狩りだってよ! あの魔物でこの船を沈めようとしてやがるんだ!
    しかも足を切っても切っても再生しやがってきりがねえ」

船員D「おまけにあのアマ自身も結構強えんだよ。船員Aがやられちまった!」

勇者「おいおいマジかよ……。よっし、ここは俺の魔法で一発ドカンと」バッ

術士「…………」ジー

術士「……ああ、あの子がいいかしら。クラーケンちゃん!」


シュルルッ


妹「きゃあぁっ!?」

船員A「妹っ!!」

船員C「ああっ、大変だ! 妹ちゃんが奴の触手に絡め取られた!!」

術士「うふふ……」ツツツ……

妹「やっ、やめてください……」

術士「やめてください、ですって。かーわい〜い♪
   ちょっといたずらしちゃおうかしらぁ。ね? クラーケンちゃん」


シュルッ、ゴソゴソ……


妹「いや……服の中、触らないで……! ふぁっ」ピクッ

勇者「ほう」

船員C・E・D「」ゴクリ

術士「あらあら、恥ずかしがっちゃって。ねえ、ご存じ?
  クラーケンちゃんって、触手の形を変化させることができるのよぉ」

術士「例えばこんな風に」スッ
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/21(火) 22:14:22.58 ID:PrKSe2WEo


グニャァ


船員D「ゲェーッ!! あ、ありゃぁもしかして!」

勇者「ちっ、ちんk」ガスッ

娘「それ以上言ったらぶん殴るわよ!!!」

勇者「もう殴ってるだろぉ〜……」

妹「い、いやあ……!」

術士「うふふふふふ……」

船員A「」ブルブルブルブル

船員A「こ、のおおおおおおぉっ!!! それ以上汚いモノを近づけるなあああああああああああっ!!!!」ダッ

術士「あん、もう。無粋なんだからぁ」


ピシャアアアッ!!


船員A「ぐあああああああっ!!」

妹「兄さっ……ひぁっ!」

術士「大丈夫よ、弱いサンダーをかけただけだから」

術士「……ねえ、船長様。可愛い船員ちゃんをこのまま放っておくつもり? わかるわよねぇ?」

船長「くっ……!!」

娘「ねえ勇者、どうにかならないの!? あんた魔法使えるんでしょ!?」

勇者「つったって、今魔法なんか撃ったら……」

妹「み、皆さん……大丈夫、ですっ……私は、大丈夫ですか、ら……」

娘「何言ってるのよ! 大丈夫なわけないじゃない!!」

船員C「そ、そうだぜ妹ちゃん!」マエカガミ

船員D「待ってろ、今助けに……」マエカガミ

妹「ありがとう……。でも、本当に大丈夫ですから」

娘「えっ?」

妹「そこのお方。今までよくも好きにやってくださいましたね」

術士「あらぁ強がり? あんまり口答えすると、もっとひどいことしちゃうわよぉ?」ニヤリ

妹「いいえ」







妹「さすがの私も我慢の限界です」ニッコリ
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/21(火) 22:15:00.44 ID:PrKSe2WEo


バリバリバリバリバリバリバリッ!!


術士「ぎやあああああああああああああああっっ!!?」

船長「こりゃあ……!」

娘「ま、魔法……!? それもかなり強い……」

勇者「……!!」

船員D「あっ、おい見ろ! 妹ちゃんを捕まえてる触手が緩んで……!」

妹「きゃっ」スルッ

勇者「! やっべえ!」ダッ

勇者「(くそっ、濡れた服が重くてうまく走れねえ……! 間に合えぇぇ!!)」




ドサッ


40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/21(火) 22:16:01.29 ID:PrKSe2WEo

船員A「大丈夫か?」

妹「あ……」

妹「ごめんなさい、私……」

船員A「いや、俺の方こそ守ってやれなくて……。無事でよかった」ニコッ

妹「兄さん……」ウルウル

勇者 orz

娘「ご愁傷様」ポン
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/21(火) 22:17:27.16 ID:PrKSe2WEo

術士「」プスプスプス……

術士「……な、な、何よコレぇ! こんな強い魔法使いがいるなんて聞いてないわよぉう!?」

術士「覚えてらっしゃああああああい!!」スタコラサッサ




船長「……行ったか」フゥー

船員B「何とか被害ゼロで済みましたね……」

船長「ああ、妹には感謝しねえと。しかし、初級魔法しか使えねえって聞いてたんだが……。
    ……いや、そんなこたぁ今はどうでもいいな」

船員E「妹ちゃあああああああん!!」

船員C「平気か!? どこもケガしてねえか!?」

妹「はい。皆さん、ご心配おかけしました」ペコリ

娘「どうなっちゃうかと思ったわよ〜。あんたって強かったのね!」

船員D「そうそう! あの時の妹ちゃん、かっこよかったぜえ!」


ワイワイガヤガヤ

ヨカッタヨカッター


勇者「……船員A」ヒソ

勇者「今夜、妹さんと一緒に甲板に来てくれるか?」

船員A「……」

船員A「……わかった」コクリ
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/21(火) 22:18:14.05 ID:PrKSe2WEo


甲板


勇者「よお、来てくれたんだな」

妹「こんばんは、勇者様」

妹「私、夜の甲板に来るのは初めてです。……綺麗……」

勇者「貴女ほどじゃありませんよ。ま、できれば二人っきりで星を眺めたかったですけどね」チラッ

船員A「……それで、話っていうのは?」

勇者「おう、単刀直入に言うぜ。妹さん、アンタは」


勇者「……いえ、あなたは。数週間前に誘拐された、○○王国の王女様ですね?」

船員A「おいおい勇者さん、何を言ってるんだよ。
   俺たちは単なる没落貴族さ。妹が王女様だなんて! あんまり恐れ多いこと言うものじゃないよ」

勇者「この期に及んで言い逃れするつもりかよ。
   ……俺が持っていた王女様の髪飾りが数日前に何者かによって盗難に遭いました。
   王女様。あれはあなたが盗んだのですね?」

妹「……」
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/21(火) 22:23:39.82 ID:PrKSe2WEo

妹「は」

船員A「違う! 盗んだのは私だ!」

勇者「えっ」

船員A「勇者殿、貴殿の言う通りだ。もう言い逃れはやめにしよう」

船員A「そう、この方は妹などではない。○○王国の長女にして第一位王位継承者、王女様であらせられる」

船員A「そして私も船員Aなどではない。王女様に召し使える直近の護衛、騎士だ」

勇者「……騎士? 騎士って……」


船員B(船員Aと妹は、もともと貴族の生まれなんだ。だけど事業が上手くいかなくて没落寸前まで追い込まれたらしい。
    だから二人は奉公に出ることにした。だけど没落寸前だけあって、船賃すら出せない。
    そこでとある国で宮仕えをしてる長兄、騎士にうちを紹介してもらったらしい)


勇者(とある国って、○○王国のことだったのか……)

勇者「なるほどな。事情は知らないが、王女様を連れ去ったのはアンタだったわけか。
   あらかじめ騎士名義で居もしない兄妹を雇ってくれるよう船長に頼み、王女様を連れて船に乗せる。しっかり変装まで施して。
   海に出れば足はつきにくくなるからな。国外に出ちまえばこっちのもんだ」

勇者「だけど同時期に城から出たらアンタも怪しまれるだろ?
   後、ここの奴らとは顔見知りだって聞いた。そのへんはどうしたんだよ」

騎士「そのあたりは抜かりない。王女様を宿に預けた後、“今回のことは護衛である自分の失態だ。
   責任を取って辞職し、王女様を探しに行く”と言って辞表を提出してきた。
   私は城では糞真面目で通ってきた。誰もこんな大胆な行動に出るとは思わないだろうよ」

騎士「それに、船長たちと最後に会ったのは五年も前だ。さすがに私の顔を詳細に覚えてる者はいないだろう。
   ぼんやりとは覚えていたらしく、“兄弟だけあって似てる”とは言われたがな」ニヤッ

勇者「(こいつキャラ違いすぎだろ)」

王女「騎士、ごめんなさい。私などのために……」

騎士「いいのです。私の使命はあなた様をお守りすること。その場所が城ではなくなっただけのことなのですから」

勇者「……えーっと、それで?」

騎士「ああ、失礼した。……そこへ王女様の手がかりを持つ貴殿が現れた。
   占い師の話は肝が冷えたよ。もし髪飾りを視られたら、この船に乗っている妹の正体がバレてしまう。
   そこで貴殿が寝入っている間に更に睡眠魔法をかけ、失敬させてもらった。
   結界が張られていたのには少々驚いたが、やむをえんと思って解かせてもらったよ」

勇者「ふうん。あのデタラメな威力からして、てっきり王女様かと思ってたんだが」

騎士「王女様は強い魔力を秘められているが、本当に初級魔法しかお使いになれない。
   根っからの勉強嫌いでいらっしゃって……何度言っても聞かんのだ」チラッ

王女「……えへ」

勇者「(えへってアンタ)」
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/21(火) 22:24:33.88 ID:PrKSe2WEo

勇者「あー、それで王女様。差し支えなければ、事情を聞かせて頂いてもよろしいでしょうか?」

王女「はい。あれは……一ヶ月ほど前のことだったでしょうか」

王女「ある夜、どうにも寝付けなかった私は自室を出て、散歩に出ていたのです」

勇者「(それは徘徊と言うのでは)」



一ヶ月前
○○王国 廊下


王女「(お父様のご病気が一向に良くならない……)」トコトコ

王女「(お医者様のお話では、後もって一年とか。……嫌! そんなこと考えたくない!)」ピタッ

王女「(……いいえ。いずれは考えなければならないこと。王位継承者は私しかいないのだもの)」フルフル

王女「(そのためにもより一層勉学や鍛錬に励まなければ!)」

王女「(…………嫌だなあ)」ガックリ


ボソボソ……
ヒソヒソ……


王女「(……あら? 話し声が……まだ誰か起きているのかしら)」

王女「(この部屋は……確か、大臣の?)」コソッ

大臣「……陛下のご様子はどうだ?」

兵長「順調です。このままいけば、一年以内には崩御なさるかと」

王女「(順調……!? 何を言って……)」

大臣「ふん、そうか。毎日薬に混ぜて少しずつ毒を盛ったかいがあったわ。
   後はあの邪魔臭い王女を殺してしまえば世継ぎはいなくなる。
   王族の血筋だと嘯いて適当な者に王位を継がせれば、王権は完全にこちらのものよ」ククク……

兵長「大臣様、その時はどうぞ私めも……」ゴマスリ

大臣「わかっておる。騎士団長の座であろう? 適当に不祥事をでっちあげて引きずり下ろしてやるわ」

兵長「ありがとうございます。へへへ……」
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/21(火) 22:25:26.29 ID:PrKSe2WEo


バァンッ!!


王女「……今の話は真ですか」

兵長「ひえっ、お、王女……様!」ビクゥッ

大臣「おやおや、これはこれは……このような時間に何のご用でございますか」

王女「あなた方の計画、しっかり聞かせて頂きました。大それたことを考えたものですね」

大臣「計画? はて……」

王女「あくまでしらばっくれると言うのですね……。誰か、誰かいませんか!」

衛兵A「なんだなんだ」ドヤドヤ

衛兵B「なんだなんだ」ドヤドヤ

王女「この者たちは国家転覆を謀っています。今すぐ捕らえてください!」

衛兵A・B「な、なんだってー!」

大臣「な、な、なんと恐れ多いことを……。私は決して、そ、そ、そ、そのような」オロオロ

兵長「そ、そうですよ! 国家転覆なんて、そんな、そんなことするわけないでしょう?」アセアセ

王女「今更取り繕っても無駄ですよ。人払いをしておくべきでしたね、大臣」

衛兵A「……」

衛兵B「……」

王女「どうしたのですか? 早く牢に!」

衛兵A「えっと……」

衛兵B「あの、証拠とかは……?」

王女「証拠ならば、私がこの耳で確かに聞きました。
   大臣はお父様と私を殺したのち、息のかかった人間を王家に送り込む気でいます。
   その上、兵士は私欲のために騎士団長の不祥事をでっち上げ――――」

大臣「あああ、おいたわしや王女様」オヨヨヨヨ

王女「!?」

大臣「いずれ国を継ぐ重圧から心を病まれてしまわれたのですね……。
   今夜はもうお休みください。一晩ぐっすり寝れば、きっとざわめく心も落ち着きましょうぞ」

王女「いけしゃあしゃあと!」

衛兵A「確かに、王女様がこんな時間にうろついてるっていうのも、なあ……」ヒソ

衛兵B「うーん……」

兵長「さあ、お前たち。王女様をお部屋へ送って差し上げろ」

衛兵A・B「はっ!」

衛兵B「さ、王女様」

王女「くっ……!」



王女「……翌日には、私は“国を継ぐ重圧から心を病み、乱心した”という烙印を押され、自室に軟禁されてしまいました。
   部屋は三階。扉には鍵がかかっている上に、外には衛兵たちが立っています。
   運ばれてくる食事には手をつけず、騎士に頼んでパンなどを持ってきてもらうようにしていました。
   そして、軟禁されてから五日ほど経ったある日……」
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/21(火) 22:26:34.02 ID:PrKSe2WEo


コンコン


王女「……どうぞ」


キィ


大臣「お久しぶりでございます、王女様。ご機嫌麗しゅう」ペコリ

王女「……何のご用ですか」

大臣「女中たちが心配しておりますよ。食事もまともに摂られないとか」

王女「いつ毒を盛られるかわかったものではありませんから。
   どうせ、外の衛兵たちもあなたたちの息がかかっているのでしょう?」ツーン

大臣「これは手厳しい。ご安心ください、私たちはあなた様を手にかけるつもりはございませんよ。
   こうして自ら鳥かごに入ってきてくださったのですから」

王女「!! ……まさか」

大臣「おや? 今更気づかれましたか。ええ、今お考えになっていらっしゃる通りです。
   手の届きやすいところに置いておいた方が“管理”しやすいと考える者が多かったものですから」




勇者「それって、つまり」

王女「そうです。あの夜、大臣たちはわざと密談を私に聞かせたのです。
   食事に不眠薬を混ぜて、部屋の外に出るように仕向けてっ……! きっとあの時来た衛兵たちも……」ポロポロ

勇者「……」


大臣(ああぁ王女様、いったいどこに……。今の王女様は)

騎士団長(大臣殿っ!)キリッ

大臣(ひぃっ!)ビクッ


勇者「(……なるほど。あの時、俺にも“王女は心を病んでいる”という先入観を与えるつもりだったのか。
   俺が王女様を助けた時、妙なことを吹き込まれないように)」
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/21(火) 22:27:46.25 ID:PrKSe2WEo

王女「う、ぐすっ……」ポロポロ

騎士「王女様……。ここから先は私が引き受けましょう」

王女「ごめんなさい……お願い、しますっ……」グスッ

勇者「あ、いや、大丈夫。
   その後、誘拐に扮して王女様を脱出させて、この船に潜入したんだろ。
   だけど、これからどこへ向かうつもりなんだ?」

騎士「……見逃してくれるのか」

勇者「今王女様を連れ帰ったところで何のメリットもないからな。
   それに俺、何事も合意じゃないと気が進まないんだよね。無理矢理とか萎えるじゃん?
   ……で? これからどうするんだよ?」

騎士「同盟国へ行き、助力を乞うつもりだ。あそこならきっと話も聞いてくれよう」

勇者「あ〜。それよかさ、手っ取り早く解決できる方法があるんだけど」

王女・騎士「え?」

勇者「……前にした占い師の話、覚えてるか?」ニィッ






騎士「それでは、これは勇者様にお返しする」スッ

勇者「おう! って、元は王女様の物なんだが」ゴソ

王女「くす。きっと返しに来てくださいね。愛用している品なのですから」

勇者「もちろんです。事が終わったら文をよこしますので」

王女「ええ、お待ちしております」

騎士「それでは私たちはこれで。王女様、行きましょう」

王女「先に戻っていてください。私はもう少し星を見ています。
   ……城にいた頃は、こんなに広い夜空なんてなかなか見られませんでしたから」

騎士「……わかりました。夜の潮風は冷えますゆえ、あまり長居されませんよう」

王女「ええ。ありがとう」

騎士「それでは、王女様、勇者殿。失礼いたします」ペコリ ガチャ

勇者「あ、騎士! さっきから気になってたんだけどさ」

騎士「? 何か?」クルッ

勇者「船員Aが偽名なのはわかった。だけどお前の素って、いったいどっちなわけ?」

騎士「……さあ」









騎士「勇者さんは、どっちだと思う?」ニコッ
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/21(火) 22:28:35.17 ID:PrKSe2WEo



パタン



勇者「……あの野郎」

勇者「王女様ならご存じでしょう。どっちなんですか?」

王女「ふふ、内緒です」

勇者「ちぇっ。……あ、そうだ。おひとつ伺ってもよろしいですか?」

王女「はい、何でしょう」

勇者「この髪飾り。失礼ですが、王女様がおつけになるには少々安っぽいな、と思って。珊瑚がお好きなんですか?」

勇者「(本当は船員Bの受け売りだけど)」

王女「それは……」

王女「……お耳を、拝借しても?」

勇者「? はい」スッ

王女「――――――」

勇者「……!」

王女「そ、それでは! おやすみなさいっ!///」ペコリ


タタタタタタッ

ガチャ、バタン



―――昔、誕生日に騎士から頂いた品なんです。
   あの人は覚えていないでしょうけれど、私はあの時から、ずっと――――



勇者「……けっ。何だよそれ」

勇者「さすがの勇者様も横恋慕はちょっとなあ」

勇者「あーあ、っと」バタッ

勇者「……星が綺麗だ」
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/21(火) 22:29:30.64 ID:PrKSe2WEo

数週間後


「元気でなー!」

「俺の分まで魔王ぶっ飛ばしてきてくれよ!」

「勇者さんとの生活、結構悪くなかったぜ」

「あまり無茶はしないでくださいね。女遊びもほどほどに」

「勇者様、色々とお世話になりました」

「今度会ったらまた手合わせ頼むよ。次こそ決着をつけよう」

「もう密航すんなよー。次は本当に海に放り込まれちまうかもしれねえぞ!」

「手紙、書きなさいよ。いつ届くかわかんないけど……絶対、返事書くから」



勇者「(……)」

兵士「勇者様、大変お待たせいたしました。謁見の間へどうぞ!」

勇者「はいよ」ドッコイショ

勇者「んじゃ、行こうぜ」

?「……」コクン
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/21(火) 22:30:28.80 ID:PrKSe2WEo

王「おお、勇者よ……今か今かと待ちわびておったぞ」ゴホッゴホッ

勇者「陛下。お待たせしてしまい申し訳ございません」

王「うむ……。それで、どうであった? 王女の所在は掴めたか……?」

勇者「はい。ですが、その前にお耳に入れなければならないことが」

大臣「ゆ、勇者様。ご覧の通り、陛下はあまり体調が優れません。
   それは王女様のことを差し置いてでも伝えなければならぬことなのですか?」オロオロ

王「よい、大臣……。勇者よ、申してみよ」

勇者「はっ。……大臣」

大臣「は、はい……?」

勇者「アンタを国家転覆を企てた疑いで告発させてもらう」

大臣「へっ……!? な、なにを……」

王「ほう、これは興味深い。大臣、勇者の申していることは本当か?」

大臣「ま、ままままさかっ! か、か、考えたことすらございません!!」オロオロ

勇者「よく言う。こっちには証拠だってあるんだぜ」スッ

騎士団長「それは……水晶玉、ですかな?」

勇者「はい。きっと世にも面白いものが見れますよ」グッ


ポワアァ……

51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/21(火) 22:31:21.50 ID:PrKSe2WEo

勇者が魔力を込めると、右手に置かれた水晶玉にほのかな光が灯った。
光はやがて大きな逆三角形をかたどっていく。
そうして映し出されたのは、ある日の、ある人物の視点から見た光景。


(―――このままいけば、一年以内には崩御なさるかと)

(ふん、そうか。毎日薬に混ぜて少しずつ毒を盛ったかいがあったわ。
 後はあの邪魔臭い王女を殺してしまえば世継ぎはいなくなる。
 王族の血筋だと嘯いて適当な者に王位を継がせれば、王権は完全にこちらのものよ)

(大臣様、その時はどうぞ私めも……)

(わかっておる。騎士団長の座であろう? 適当に不祥事をでっちあげて引きずり下ろしてやるわ)



(―――ご安心ください、私たちはあなた様を手にかけるつもりはございませんよ。
 こうして自ら鳥かごに入ってきてくださったのですから)

(!! ……まさか)

(おや? 今更気づかれましたか。ええ、今お考えになっていらっしゃる通りです。
 手の届きやすいところに置いておいた方が“管理”しやすいと考える者が多かったものですから)



騎士団長「こ、これは……!」

大臣「わ……わあああああああああっ!!!!」ダダッ

勇者「おおっと」ヒョイッ

大臣「あひいっ!」ドテッ

王「大臣、これはいったい……」

大臣「デ、デ、デタラメです! でっちあげです!
   私を陥れるための罠です!! こ、こんな、このような事実、あるわけが……!!」ワナワナ

?「それが事実なのよねぇ」スッ

?「そこのお方。ちょっとお手を拝借してもよろしくて?」

騎士団長「む? うむ……」

?「…………」

?「三ヶ月前……愛用されていた羽ペンを紛失されましたわね?」

騎士団長「あ、ああ。書きやすくて重宝していた品なのだが、いつの間にか……」

?「机と壁の隙間をごらんあそばせ。きっとそこに挟まっていますわ」

騎士団長「なんと! しかし、何故そなたがそのことを……」

?「うふふ。私、占いを生業にしてますの。その方から少し前の行動を読み取るくらい、造作もないことですわぁ」

勇者「そしてこの水晶玉は、そこの術士が王女様の髪飾りから読み取った出来事を記録したもの。……つまり」

勇者「今映し出されたのは、紛うことなき真実だ!」ビシィッ!
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/21(火) 22:32:23.45 ID:PrKSe2WEo

大臣「〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!」ワナワナワナワナ

大臣「(ま、まずい……! 何とか、何とか取り繕わなければ……!)」

王「…………」

大臣「へ、陛下……これは何かの間違いです。け、決して私はこのような……」

王「……そうだな。これだけの材料では判断できぬ」

大臣「そ、そうですとも! 私は潔白の身でございます!」ホッ

王「じっくりと時間をかけて取り調べさせてもらおう。冤罪ならば、いつか必ず疑いは晴れるはずだ。そうだな? 大臣」

大臣「そ、それは……」

王「大臣と兵長を連れていけ。それから……そうだな、衛兵Aと衛兵Bもだ。関係者はすべて洗い出せ!」

騎士団長「はっ! さあ、大臣殿。ご同行頂こうか!」ガシッ

大臣「くうううっ……!」


ギイイィィィ……バタン


王「……」

勇者「……」

王「……私は、裏切り者を炙り出せと頼んだ覚えはないのだがな」ゴホッ

勇者「申し訳ございません。出過ぎた真似をいたしました」

王「いや、よい……。それで、王女はどうなったのだ?」

勇者「はい。現在は護衛の騎士殿とともに、同盟国へと身を寄せていらっしゃいます。
   一週間もすれば、こちらへお戻りになられるでしょう」
  
王「騎士……。そうか、あやつが……」

王「……大臣から王女が心を病んだと聞いた時、私はかけらも疑うことなくそれを信じてしまった。
  王女本人から事情も聞かず、耳を傾けようともせず……。あやつには悪いことをしてしまった」

王「今回は私の油断と驕りが招いたことだ。勇者、それに術士よ。世話をかけたな」ゴホゴホ

勇者「とんでもございません。王女様と騎士殿の勇気ある行動がすべてを暴いたのです。
   私どもはただ、ほんのお手伝いをしたまででございます」

王「……褒美は後日取らせよう。希望の物を考えておくといい。
  また、王女たちが無事戻った際には宴を開くつもりだ。その時には是非出席してくれ」

勇者・術士「はっ!」
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/21(火) 22:34:40.10 ID:PrKSe2WEo

城下町


勇者「はー、終わった終わったあ!」ノビー

術士「上手く行ってよかったわねぇ。もし突っ込まれてたらやばかったわよぉ。アレとかコレとか」

勇者「そのへんはいいじゃねえか。無事クソ大臣をしょっぴけたんだからよ」

術士「あなたもお人好しねぇ。目的はあくまで魔王討伐でしょぉ。
   こーんな王国のごたごたなんて、本来は関係ないことじゃなぁい」

勇者「そこはほら、俺ってば勇者だし? 困ってる人はほっとけない、みたいな?」

術士「困ってる女の子は、の間違いでしょ?」ケラケラ

勇者「バレたか」テヘペロ

術士「でも、あなたから手紙が来た時はびっくりしたわよぉ。
   “物理攻撃が効かない召喚獣を引き連れて、俺が乗ってる船を襲え”だなんて。
   しかも“場所は占いで何とか読み取れ”だし。ついにダークサイドに落ちちゃったのかと思ったわぁ」

勇者「ついにって何だついにって。失礼な奴だな」

術士「今度、騙したことちゃぁんと謝りにいきなさいよね。私もついていってあげるから」

勇者「わかってるよ。お前も結構ノリノリだったくせによく言うぜ」

術士「何よぉ、あなたが海から上がってくるまで時間稼ぎ大変だったのよぉ?
   散々煽ってみたり、向かってきた子を返り討ちにしたり、命が惜しければーって脅したり。
   女の子が貨物業の大変さを説いてきた時なんて、私何やってるんだろうって思っちゃったわぁ」

勇者「悪かったな、海草が足に絡んじまったんだよ」

術士「そ・れ・に! あんな強い魔法が使える子がいるなんて聞いてなかったわよぉ。
   おかげで自慢のウェーブヘアーがチリチリになっちゃったじゃなぁい」

勇者「だから悪かったって。俺もあれほどだとは思ってなかったんだよ」

術士「だいたい私、人前に出るの好きじゃないって知ってるでしょぉ。
   すっっっごい緊張したんだから。諸々の責任取って、ちゃぁんと埋め合わせしなさいよねぇ」グイッ

勇者「そのつもりだよ。いい女はいくら一緒にいても飽きないからな」ニカッ

術士「もぉ。それ、どうせ誰にでも言ってるんでしょぉ? 知ってるんだから」プイッ

勇者「まさか。お前だけだよ」キリッ

術士「どうだか。……でもそうねぇ、あなたがどうしてもって言うんなら、魔王城までついていってあげても――――」
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/08/21(火) 22:37:13.64 ID:PrKSe2WEo

娼婦「そこのお兄さん、寄ってかなぁい? 今なら100Gぽっきりでサービスしちゃうわよ?」たゆん

勇者「行きます!」

術士「ちょっとぉ!?」

娼婦「あ」

勇者「あ」

娼婦「やばっ」ダッ

勇者「てっめえこのアマ!! 待ちやがれええええええええええええ!!!」ダダダダダッ

娼婦「待ちませーん! お金も返しませーん!」ベー

勇者「んだとゴラァ!!?」

術士「ちょ、ちょっと何ぃ!? どうしたのよぉ!?」

勇者「この前あいつに有り金全部ぶん取られたんだよ! ここで会ったが百年目えええええええっ!!」

術士「えぇ? あっ、ちょ……私、先に宿に戻ってるからねぇー!!」


ゴルアァァァァァァ!! マチヤガレ コノクサレビッチガアアアアアアアアア!!!



術士 「…………」ポツーン



術士「んもう! さっそく置いてくってどういうことよぉ」

術士「……」

術士「……ばか」





―――その後、とある貨物船に王国名義で多額の謝礼が送られたり、
一組の男女によってついに世界に平和が訪れたりするのだが、それはまた別のお話。





終わり
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/21(火) 22:42:15.69 ID:PrKSe2WEo
ベタだし正直色々予測できたと思うけど、初SSだし書きたいものを書かせてもらった
整合性取れてなさそうだけど気にしない
タイトルはDQ2ネタだったんだけど、ちょっとわかりにくかったかもしれない

読んでくれた人ありがとう
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/08/21(火) 23:53:12.48 ID:AWJ6Dn9+0
乙。
第二部はよ
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/21(火) 23:58:59.07 ID:Jau7MKAIO
楽しかったが、またべつのお話も書いてくれないとボリューム不足だぞ
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(熊本県) [sage]:2012/08/22(水) 02:24:34.67 ID:vbRctN2so
もっと話を掘り下げてもええんやで?
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/22(水) 02:41:51.40 ID:V7RfNZ2IO
こまめんつまんね
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/22(水) 03:46:11.20 ID:V7RfNZ2IO
ごめん、な

HTML化依頼早くしろよ
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/22(水) 09:43:54.64 ID:yKw/e5JIO
     ...| ̄ ̄ | < お疲れ様でした とても面白かったです
   /:::|  ___|       ∧∧    ∧∧
  /::::_|___|_    ( 。_。).  ( 。_。)
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62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/24(金) 19:25:28.54 ID:s2/2AuNIO
>>59-60
いや、そこはお前、黙って猿とこだろ?
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2012/08/26(日) 09:34:24.17 ID:qUjKkNAKo
第二部まだー?
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