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王様「勇者が死んだ?」 賢者「はい」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/08(土) 20:08:45.09 ID:Qqa/fUnf0
王宮、謁見の間。


大臣や近衛兵たちが取り囲む中、ぼろ切れのような男が跪き、王様が向かい合っている。

皆一様に黙り込み、広間は水を打ったように静かだ。



王様「……どういう、ことだ」

賢者「申し上げた通り」

王様「……」

賢者「魔王との戦いの末、討ち果て……亡くなりました」

王様「誠か……」

賢者「……勇者の奮戦は、その名に恥じぬ勇猛果敢なものでした。凶悪な魔王を、後一歩のところまで追い詰めましたが、魔王の力、強大にして――」

大臣「そ、そのような御託はどうでもよい!」

賢者「……」

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旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
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木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
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いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
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【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
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こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
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【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
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アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/08(土) 20:10:04.04 ID:Qqa/fUnf0
王様「……よさぬか、大臣」

大臣「貴様! 貴様、勇者が死ぬということが……、それがどういう意味か分かっているのか!」

賢者「承知しております」

大臣「ぬぅ……っ」

賢者「……世界は、終わりです」

王様「……」

賢者「勇者なき今、魔王には恐れるものは何もない」

王様「……攻めて、来るのか」

賢者「堂々と人間界に攻め入り、我々を滅ぼさんとするでしょう」

大臣「この……っ、よくもぬけぬけとぉ……!」

王様「……大臣、控えておれ」
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/08(土) 20:11:06.00 ID:Qqa/fUnf0
激昂する大臣を王様が制する。だがその唇はわななき、声は震えている。


王様「賢者よ……」

賢者「はい」

王様「何か、手はないのか……」

賢者「ありません」

王様「……」

賢者「……唯一、勇者のみが、彼らに打ち勝つことのできる手段でした」

王様「……」

賢者「……そして、それは永遠に失われた」

王様「ならば我々は、座して死を待つほかないというのか……」

賢者「……」


静寂。
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/08(土) 20:11:57.64 ID:Qqa/fUnf0
王様「ふぅ……」

賢者「……」

王様「他の仲間たちは、どうした」

賢者「死にました」

王様「……」

大臣「ふん、貴様一人おめおめと逃げ延びたというわけか」

賢者「……」


賢者は答えない。

王の前に跪くその姿は、血と泥に塗れ、両の脚は砕けているのか、あらぬ方へと曲がっている。

身動ぎひとつないその姿は、何かの残骸のようでもある。
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/08(土) 20:13:17.56 ID:Qqa/fUnf0
王様「もうひとつ……、教えてくれ」

賢者「……」

王様「これから……どうなる、世界は」

賢者「……すぐに、終わりが来るわけではありません」

王様「……」

賢者「魔物たちの侵攻に合わせて、……まずは瘴気が広まります」

王様「……瘴気」

賢者「魔界の瘴気です。瘴気は、人間界の空気を腐らせます。草木は枯れ、人々は病に倒れる……」

王様「……うぅ」

賢者「瘴気に汚された土地は、人の住める場所ではなくなります」

王様「何ということだ……」
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/08(土) 20:14:19.42 ID:Qqa/fUnf0
賢者「その次に、魔獣です」

王様「……」

賢者「魔界に住む、獣たち。獰猛で、貪欲で……、奴らにとって、人間は餌です」

賢者「手当たり次第に人間を襲い、食う。……そんな魔獣で、世界は溢れかえります」


誰かが息を飲む音が響いた。


賢者「……そうして、ぼろぼろになった世界に、最後に魔族たちが来る」

賢者「魔物の、軍隊です」

賢者「人間を憎み、嫌悪し、滅ぼす意志を持った軍団……」

賢者「世界は彼らに支配され、人間は、最後の一人に至るまで根絶やしにされるでしょう」

王様「……想像したくもないな」
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/08(土) 20:15:03.48 ID:Qqa/fUnf0
賢者「……」

王様「……あと、どれくらいだ」

賢者「……」

王様「我々に、残された時間は」

賢者「……もって、半年」

大臣「そんな、たった半年!?」

賢者「……魔族たちがこの国に辿り着くまでの時間です」

王様「……」

賢者「瘴気が流れてくるのは、もっと早いでしょう」

王様「そうか……」
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/08(土) 20:16:28.52 ID:Qqa/fUnf0
王様「大臣よ」

大臣「……は」

王様「すぐに会議を開け。重臣たちを全員集めろ」

大臣「はっ」

王様「全員だぞ! ……それから、将軍!」

将軍「は!」

王様「各国に遣いの者を送れ! 情報を集めよ!」

将軍「はっ!」

王様「敵対国にも使者を送るのだ! 接触がならぬのなら、商人どもの闇ルートでも、何でも使え!」

将軍「ははっ!」
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/08(土) 20:17:20.67 ID:Qqa/fUnf0
王様は矢継ぎ早に指示を飛ばし、広間は途端に騒がしくなる。

その最中でも、相変わらず賢者は跪いたまま動かない。


王様「……賢者よ」

賢者「は」

王様「大儀であった」

賢者「……」

王様「これから、お前はどうするつもりか?」

賢者「……旅に」

王様「旅」

賢者「……勇者を見殺しに、むざむざ生き永らえた身。この国には、とてもいれません」
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/08(土) 20:18:42.20 ID:Qqa/fUnf0
王様「……確かに、民どもはお前を恨み、責めるであろう」

賢者「……」

王様「お前たちは仕損じた。そして、世界の終わりの引き金を引いたのだからな」

賢者「……ええ」

王様「私とて」

賢者「……」

王様「……本心は、お前が恨めしい」

賢者「……」

王様「……たとえ、お前に何の罪もないことが分かっていても」

賢者「……」
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/08(土) 20:19:14.93 ID:Qqa/fUnf0
王様「だが……、たとえそうだとしても、お前はこの国……いや、この世界で最も優れた大賢者」

賢者「……いえ、私は」

王様「来るべき危機に備えて、お前に去られるわけにはいかぬ」

賢者「……」

王様「残ってもらうぞ、この国に」

賢者「……」

賢者「……承知、しました……」
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga sage]:2012/09/08(土) 20:20:51.59 ID:Qqa/fUnf0
今日はここまでです
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/08(土) 20:22:11.43 ID:tfEGEDcSO
乙。中々におもれーな期待。
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/09/08(土) 21:45:57.65 ID:Vm7l6oHAO
期待
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/09/08(土) 23:52:45.57 ID:g8Ufs6FSo
超期待
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/09(日) 20:53:51.41 ID:2diUot4e0
王様「住屋はこちらで用意させてもらうが――……」

賢者「……」

王様「市中には住めまいな……」

賢者「……」

王様「民が事情を知れば、お前に石を投げるものも、あるかもしれん」

賢者「……」

王様「世界の期待を裏切った、敗北者として」

賢者「……構いません」

王様「……」

賢者「その通りですから」
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/09(日) 20:54:25.05 ID:2diUot4e0
王様「……はぁ」

賢者「……」

王様「馬鹿を申すな」

賢者「……」

王様「西に、国の管理する森林地帯がある」

賢者「……」

王様「そこにある小屋なら、人目もつくまい。粗末だが、寝起きできる設備も整っておる」

賢者「……仰せのままに」


抑揚のない声。

頭を垂れた賢者の表情は、王様からは見えない。
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/09(日) 20:56:54.71 ID:2diUot4e0
王様「……下がれ。森までは、案内に兵士をつける」

賢者「……恐れながら」

王様「何だ」

賢者「立てません」

王様「……」


王様は賢者の両脚を見遣る。

脚とは呼べない形に歪んだ脚を見る。


王様「……この国までは、どうやって」

賢者「魔術で脚を丸太に変え……歩き、ここまで」

王様「……」

賢者「……今は、魔術も切れました故……」

王様「……誰か、手を貸してやれ」

兵士「はっ」
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/09(日) 20:57:44.95 ID:2diUot4e0




城下町、市中。

市場は活気付き、商人たちの威勢のよい声が響く。

道行く人々は皆、穏やかな表情を浮かべ、笑顔を交し合っている。

豊かな国だった。


賢者「……」


馬車に運ばれながら、賢者はそれを見ていた。

……彼が守れなかったものたち。


兵士「さすがに、まだ知れ渡ってないみたいだな。勇者が死んだこと……」

賢者「……」


同乗する案内役の兵士が、賢者に声をかける。


兵士「……そう、暗い顔すんな」

賢者「……」
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/09(日) 20:58:14.18 ID:2diUot4e0
兵士「魔王討伐なんて、勇者やアンタじゃなきゃ、世界中どこ探したって務まる人間はいなかったんだ」

賢者「……」

兵士「そのアンタらが失敗したからって、責めるのはお門違いってもんだろうよ」

賢者「……」

兵士「しょうがなかった……いや、そんな風に言っちゃいけねーか。でも、アンタはよく――」

賢者「……すまない」

兵士「ん?」

賢者「今は、話を聞く気分には……」

兵士「……」

賢者「……」

兵士「……そうかい」
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/09(日) 20:58:48.75 ID:2diUot4e0
押し黙ったままの二人を乗せて、馬車は森へと辿り着く。


兵士「……着いた、ここだ」

賢者「……」

兵士「待ちな、車椅子、出すから」

賢者「ありがとう……」


兵士に支えられ、賢者は車椅子に腰を降ろす。


兵士「はぁー……、小屋っつっても、俺の家なんかより、よっぽど立派じゃねーか」

賢者「……」

兵士「……あとから、世話係のモンが来るから。入用のものはそいつに頼みな」

賢者「……世話など」

兵士「見張りだよ」

賢者「……あぁ」
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/09(日) 20:59:20.58 ID:2diUot4e0
兵士「それから、医者も――……本当に、いいのか? 病院に行かなくて」

賢者「傷を塞ぐ魔術も、心得ている」

兵士「……治す魔術は」

賢者「……」

兵士「……」

賢者「……いいんだ。大丈夫」

兵士「……医者もあとから来る。診てもらいな」

賢者「診てもらったところで、この脚は……」

兵士「心のほうだよ」

賢者「……」
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/09(日) 20:59:49.51 ID:2diUot4e0




兵士が去った後、賢者は小屋に、一人佇んでいる。

思い悩んでいる。


賢者「……」

賢者「……ぁー」

賢者「……」

賢者(死のうか)

賢者(……死のう)

賢者「……」

賢者(……いや)

賢者(……いいや)

賢者(……どうでも)

賢者(……どうせ、じき死ぬ)
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/09(日) 21:00:25.11 ID:2diUot4e0
賢者(……皆死ぬ)

賢者「……ぁー」

賢者「……」

賢者(……皆死ぬのに)

賢者(……私は、こうして生きている?)

賢者「……」

賢者(……死ぬべきでは?)

賢者「……」

賢者(仲間たちも、皆死んだ)

賢者(勇者も……)
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/09(日) 21:01:12.91 ID:2diUot4e0
賢者「……勇者」

賢者「……」

賢者(……それなのに、たった今私の心臓が、動いていること自体)

賢者(間違っているのでは?)

賢者(……なぜ、生きている?)

賢者「……」

賢者「……勇者よ、私は――……」


カラン カラン


賢者「……」

賢者「……?」
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/09(日) 21:01:54.56 ID:2diUot4e0
玄関の呼び鈴が彼を現実に引き戻す。

賢者は車椅子を漕ぎ、玄関へ向かった。


賢者「……はぁ」


カランカラン


賢者「……今開ける」


ガチャ

キィ


少女「……あっ」

賢者「……」

少女「……」

賢者「……誰?」

少女「はじめまして! 賢者様!」
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/09(日) 21:02:22.02 ID:2diUot4e0
今日はここまでです
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/09/09(日) 21:49:05.43 ID:O20F8tyAO
>>24とか見てると悲しい
やることやりきった虚無感が半端ない
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/09/09(日) 22:18:54.64 ID:VwV2fw0Fo

こういうの好き
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/12(水) 00:57:23.55 ID:05g9PQ5D0
賢者「……」

少女「私、少女っていいます! 賢者様のお世話のために来ました!」

賢者「あー……」

少女「えへへ、よろしくお願いしますね」


まだあどけない少女は、何が嬉しいのか、満面の笑みを賢者に投げかける。


賢者「……あ、あぁ、えっと……そうか、君が」

少女「はい!」

賢者「見張り役か」

少女「はい……って、違いますよぉ! ひどい!」

賢者「……」

少女「身の! まわりの! お世話です! こう見えて、家事は一通りできるんですから」
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/12(水) 00:57:59.33 ID:05g9PQ5D0
眉をしかめて抗議したかと思えば、再び笑顔に戻り、自慢げに胸を張る少女。


賢者「……そうか」


真っ直ぐな感情。

屈託のない微笑み。

突然現れたこの少女の無邪気さは、賢者には好ましく思えたが、同時に彼を苦しめる。


賢者「……分かった」


この少女の笑顔も、すぐに失われ、費えてしまうのだと感じている。

自分のせいだと。


賢者「私のことは、放っておいてくれれば、それでいいから……」

少女「え」

賢者「……好きにやってくれ」

少女「……はい!」


笑顔。
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/12(水) 00:59:08.15 ID:05g9PQ5D0
賢者「……」キィ

少女「……」


賢者は少女に背を向け、車椅子を漕ぐ。


賢者「……」

少女「おじゃましまーす」

賢者「……」キィ キィ

少女「……」スタスタ

賢者「……」キィ

少女「……」スタスタ

賢者「……」

少女「……」

賢者「……」

少女「……?」
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/12(水) 00:59:48.33 ID:05g9PQ5D0
賢者「……なんでついてくるの」

少女「好きにやってくれって言ったじゃないですか」

賢者「放っておいてくれとも、言ったぞ」

少女「身のまわりのお世話ですもん」

賢者「……」

少女「お傍にいるのは当然ですよぅ」

賢者「……お傍にいる以外の世話にしてくれ……」

少女「えぇー、ないですよ、そんなのー……」

賢者「いや、たとえば…………掃除とか」

少女「……あっ、掃除! なるほど!」

賢者「……」

少女「確かに! この家汚い!」

賢者「……正直だな、君」
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/12(水) 01:01:05.22 ID:05g9PQ5D0
少女が去り、賢者は一人書斎と思しき部屋へ入る。

棚に並ぶ書物を手に取る気にもなれず、ただぼんやりと、車椅子に身を任せている。


賢者「……」

賢者「……」

賢者(……少女、か)

賢者(まだ子供じゃないか)

賢者(あんな子供が、見張りとは……)

賢者(……国も、人手が足りないのか)

賢者「……」

賢者「……いや」

賢者(……『それ相応の扱い』というやつか)
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/12(水) 01:03:08.78 ID:05g9PQ5D0
賢者「……」

賢者「……」

賢者(……それにしても)

賢者(……あの少女……)

賢者(……似ている)

賢者(あれは――……)


キャアアアアアアアア!!!!


賢者「……っ!」


つんざくような悲鳴が、賢者の沈思を破る。

考えるより先に、賢者は部屋を飛び出していた。
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/12(水) 01:04:25.86 ID:05g9PQ5D0
悲鳴の元を追って、賢者は台所に飛び込む。


賢者「どうした!」

少女「け、賢者様ぁ!」ガシッ


へたり込んでいた少女は、賢者の姿を認めると、飛びつくようにひしと抱きつく。


少女「ひ……へ、へっ――……」

賢者「おい、少女……っ」

少女「へびーっ!」

賢者「へ」


少女が指差す先を、賢者も見遣る。

蛇がいた。


賢者「へび」


小さな蛇がいた。
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/12(水) 01:05:17.95 ID:05g9PQ5D0
賢者「……ヘビだな」

少女「へび、へび……」

賢者「……まだ子供だ」

少女「賢者様ぁ、た、助け……」

賢者「……森の中だ。ヘビもトカゲも入り込む」

少女「いーやー! 賢者様っ、そ、外に! 外にやってくださいー!」

賢者「……」

少女「……」

賢者「……食えるぞ」

少女「うわあぁぁん! バカバカぁ! 賢者様のバカ…………こっちきたぁぁー!」ガシッ

賢者「おい……っ、そんなしがみつくな! 動けない!」
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/12(水) 01:05:56.86 ID:05g9PQ5D0
少女「ギャー! こーなーいーでー!」ギュウ

賢者「こらっ、あぶな……っ、馬鹿、こっちに体重かけるな! 倒れ――……」

少女「ひゃ」


ガタタン!!


バランスを崩した賢者は、車椅子ごと横倒しになる。

少女にのしかかられたまま、避けることもできず、床に背中を強かに打ちつけた。


賢者「がっ……」

少女「きゃ――……」

賢者「……いった……」

少女「ご、ごめんなさいぃ」

賢者「……」

少女「……」
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/12(水) 01:06:46.98 ID:05g9PQ5D0
床に仰向けに倒れこんだ賢者。

その上に伏せるように乗った少女。


賢者「……」

少女「……」


目が合う。


賢者「……少女」

少女「……」


少女が鼻先を、賢者の首元に寄せる。

……音に驚いたのか、蛇はどこかへと逃げている。


賢者「……君は」

少女「ね、賢者様」

賢者「……ん」

少女「……お風呂、ちゃんと入ってます?」
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/12(水) 01:07:31.25 ID:05g9PQ5D0
賢者「……」

賢者「……」


小屋には風呂も備え付けてあったが、湯を沸かすのに十分な薪がなかった。

鍋で沸かした湯をたらいに汲み、布を濡らして身体を拭く。


賢者「……」

賢者「……」


血と泥はすぐに流れても、こびりついた垢はなかなか落ちない。

賢者は自分の身体を強く擦る。


賢者(……ついさっきまで、死ぬことばかり考えていたのに)

賢者(……今は、ひと回りも歳の違う少女に、体臭を指摘されて)

賢者(…………少し、傷ついている)

賢者(滑稽じゃないか)


自分を責めるように、強く、擦る。
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/12(水) 01:08:05.59 ID:05g9PQ5D0
台所へ戻ると、少女は鼻歌交じりに野菜を刻んでいた。

今度は夕食作りをはじめたらしい。


少女「綺麗になりましたか?」

賢者「……あぁ」

少女「お湯は、お外に――」

賢者「……捨ててきた」

少女「ふふっ、ありがとうございますー」

賢者「……」

少女「……〜♪」

賢者「……」

賢者(……さっきまで、泣きべそで)

賢者(きいきい喚いていたのに)

賢者(……もう笑ってる)
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/12(水) 01:08:50.13 ID:05g9PQ5D0
賢者「……」

少女「……〜♪」

賢者「……いい気なもんだな」

少女「どうかしました?」

賢者「……君は、知らないんだ。だから笑っていられる」

少女「……」

賢者「聞けよ、教えてやる。いいか、勇者は――……」

少女「亡くなったんですよね」

賢者「……」

少女「……知ってます、私」

賢者「……」

少女「……」

賢者「……」

少女「……スープ、時間かかりそうで」

賢者「……」

少女「……お夕飯、ちょっと遅くなりますね」

賢者「……あぁ」
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/12(水) 01:09:19.54 ID:05g9PQ5D0
今日はここまでです
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/12(水) 02:28:57.18 ID:KC2T2k8DO
榎木「お疲れ。」
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/09/12(水) 03:42:58.11 ID:tkpae41AO

賢者はもう魔法使えないのか
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/13(木) 13:44:14.09 ID:3MMk/gxIO
     ...| ̄ ̄ | < 続きはまだかね?
   /:::|  ___|       ∧∧    ∧∧
  /::::_|___|_    ( 。_。).  ( 。_。)
  ||:::::::( ・∀・)     /<▽>  /<▽>
  ||::/ <ヽ∞/>\   |::::::;;;;::/  |::::::;;;;::/
  ||::|   <ヽ/>.- |  |:と),__」   |:と),__」
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\  \__(久)__/_\::::::|    |:::::::|
.||.i\        、__ノフ \|    |:::::::|
.||ヽ .i\ _ __ ____ __ _.\   |::::::|
.|| ゙ヽ i    ハ i ハ i ハ i ハ |  し'_つ
.||   ゙|i〜^~^〜^~^〜^~^〜
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/14(金) 00:36:23.13 ID:iQRtHBog0




いつの間にか日はとっぷりと暮れ、食卓にランプの灯が点される。


少女「えへへ……、ごめんなさい。本当に遅くなっちゃった」

賢者「……」

少女「久しぶりに張り切りすぎちゃいました。さ、食べましょう」

賢者「……」

少女「いただきまーす」

賢者「……」

少女「……賢者様?」

賢者「……あ、あぁ、いや……」

少女「……あんまり、食欲ないです?」

賢者「いや……、食べるよ。もらおう」

少女「良かった! 食べないと、元気になれませんからねっ」
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/14(金) 00:37:22.95 ID:iQRtHBog0
賢者「……」

少女「いっぱい食べてくださいねー」

賢者「誰かと……」

少女「はい?」

賢者「……誰かと、こうやって食卓を、囲んで」

少女「……」

賢者「まともな食事をすることなんて、もうないと思ってた」

少女「……」

賢者「妙な気分だよ……」

少女「でも、一人で食べるより、きっと美味しいですよ?」

賢者「……そうかもな」

少女「さあ賢者様、召し上がれ」

賢者「……あぁ」
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/14(金) 00:38:46.64 ID:iQRtHBog0
賢者「……いただきます」

少女「……〜♪」モグモグ

賢者「……」

少女「……」

賢者「……」モグ

少女「……」

賢者「……ゴホッ」

少女「……?」モグ

賢者「ごほっ、ごほ! んぐ……!」

少女「わっ」

賢者「か、からっ! 辛い! 辛……!」

少女「そ、そんなに辛い?」

賢者「み――……げほっ、みず……っ」

少女「はい、お水どうぞ」

賢者「〜〜っ!!」ゴクゴク
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/14(金) 00:39:45.02 ID:iQRtHBog0
少女「お野菜を、色々なスパイスで煮込んだスープなんです」

賢者「……」ゴクゴク

少女「私の家の家庭料理なんですけど……、ちょっと、辛くしすぎましたか?」

賢者「……ごほ」

少女「でもでも! 慣れるとすごく美味しいんですよ!」

賢者「この……ケホッ、この料理……知ってる……」

少女「そうなんですか? さすが賢者様、何でも知ってますね!」

賢者「いや……、勇者が」

少女「……」

賢者「思い出した。勇者が、よく作って。野営のときに」

少女「……」

賢者「……味も……というか、辛味も、そっくりだ」
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/14(金) 00:41:58.28 ID:iQRtHBog0
賢者「……少女」

少女「……」

賢者「……最初に見たときから、気になっていたんだ」

少女「……」

賢者「……お前は、勇者によく似ている」

少女「……えぇ」

賢者「お前は」

少女「勇者は、……私の、兄です……」

賢者「……そうか」
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/14(金) 00:42:30.99 ID:iQRtHBog0
少女「あまり似てないって、周りからは、よく言われてたんですけどね。歳も離れてて――」

賢者「似てるよ。……すごく」

少女「え、えへへ、そんなじろじろ見られると……」

賢者「……憎いか」

少女「……え?」

賢者「憎いだろうな、私のことが」

少女「……賢者様?」

賢者「殺したいか、私を」

少女「……っ」
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/14(金) 00:43:00.58 ID:iQRtHBog0
賢者「……当然だ。私はお前の兄を……、見殺しにした……」

少女「……」

賢者「見捨てたんだ。そして、ただ一人、のうのうと生きている……」

少女「……だからって、殺したいなんて! そんなわけ――……」

賢者「……勇者の血縁者が、勇者の元お仲間のところに、世話役としてくる」

少女「……」

賢者「これは、偶然か?」

少女「それは……」

賢者「……」

少女「……私が、お願いしました。私を賢者様のお世話役にと、偉い人に……」

賢者「……」

少女「でも、それは!」

賢者「……いいんだ。憎まれても、仕方ない。私は……」
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/14(金) 00:44:15.35 ID:iQRtHBog0
少女「……」

賢者「お前になら、勇者の妹になら、殺されてもいい……、いや……」

少女「……」

賢者「私は……、お前に殺されるべきなんだろう……」

少女「……」

賢者「この命で償い、死ねるのなら、私も本望――……」

少女「……賢者様の」

賢者「……」

少女「バカっ!」

賢者「……え」

少女「バカバカバカ! 信じらんない! 何言って……っもう! バカぁ!!」

賢者「お、おい……」
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/14(金) 00:45:17.48 ID:iQRtHBog0
少女「兄さんは……、冒険の道中で、私にたくさん手紙を送ってくれて……!」

賢者「……」

少女「賢者様のことも、いっぱい、書いてありました」

賢者「それは……、パーティーだったし……」

少女「親友だと」

賢者「……」

少女「これほど心を許せる友に出会えて、幸せだと」

賢者「……」

少女「どの手紙にも、賢者様のことを、嬉しそうに書いていました」

賢者「勇者……」
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/14(金) 00:45:46.22 ID:iQRtHBog0
少女「私、兄さんが死んだって聞いて、すごくショックだったけど……」

賢者「……」

少女「賢者様が生きていてくれて」

賢者「……」

少女「兄さんが、とても大切に思っている人が、生きていてくれて、嬉しかった」

賢者「……」

少女「兄さんが生きていても、きっと賢者様が死ななかったことを、喜んだと思う……」

賢者「……」

少女「……兄さんは、もう賢者様には会えないけど……」

賢者「……」

少女「私が、代わりに……、兄さんの大切な人に、会わなくちゃって……」
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/14(金) 00:46:19.15 ID:iQRtHBog0
賢者「……」

少女「いえ、私も……、私自身も、賢者様に会いたかったから」

賢者「少女……」

少女「兄さんの親友って、どんな人なんだろうって、ずっと思っていたから……」

賢者「……」

少女「それで、ここまで来て……」

賢者「……」

少女「なのに……、殺……っ、うぅ……そんな……そんな」

賢者「……」

少女「悲しいこと、言わないで」

賢者「……」

少女「……」

賢者「……」

少女「……」

賢者「……悪かった」

少女「……」
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/14(金) 00:46:48.40 ID:iQRtHBog0
賢者「……」

少女「……スープ」

賢者「……」

少女「早く食べないと、冷めちゃいますね」

賢者「あぁ」

少女「……」モグモグ

賢者「……少女」

少女「……」モグモグ

賢者「私も、……私にとっても、勇者は親友だ。最高の」

少女「……」

賢者「今でも。この瞬間も」

少女「……はい」

賢者「……」モグモグ

少女「……」

賢者「げほっ」
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/14(金) 00:47:48.57 ID:iQRtHBog0





賢者『ぅぐ……っ』

戦士『ぁ……ぐぅ……!』

僧侶『こ……こんな……』

勇者『……』

戦士『辛ぁぁぁ!!』

賢者『……げほっ! 何……勇者、何だこれっ、ごほっ!』

勇者『へへへ、うまいだろー。俺の家の自慢の料理だー』

賢者『バカ……っ、こんな……水!』

戦士『水みずみずみずー!』
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/14(金) 00:48:31.39 ID:iQRtHBog0
勇者『スパイスたっぷり入れて、じっくり煮込むんだ。辛さに慣れると、すげー美味いんだぜ』

賢者『正気か……』

戦士『無理だろ、これ……』

僧侶『ん、でも確かに。美味しい。私好きかもー』モグモグ

戦士『うぉ……すげえな、お前』

勇者『さっすが! 僧侶ちゃんは分かってるねぇ』

賢者『……しかし、スパイスなんてどこで採ったんだ?』

勇者『……あ、……えーと』

賢者『……』

僧侶『……』
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/14(金) 00:49:39.49 ID:iQRtHBog0
勇者『……いや、その……えへへ』

賢者『……』

戦士『ああぁ! おい、なんだこの食料袋! スパイスばっかりじゃねーか!』

僧侶『ぎゃー! お財布がスッカラカンにー!? 新しい鎧のお金までー!』

賢者『……勇者?』

勇者『あ……あはは……、前に行った国に、たくさん売ってて……、つい〜……』

賢者『ゆ、う、しゃぁー!』グイグイ

勇者『ぐえぇ! 賢者やめてー! 暴力反対ー!』
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/14(金) 00:50:20.10 ID:iQRtHBog0




勇者『がはっ……!』

賢者『え……?』

勇者『……あ、ぁ……が……ぁ』ガクン

賢者『勇者……? 勇者!?』

僧侶『駄目! 賢者君!』

戦士『魔王には勝てねぇ! ここは退くしか……っ!』

賢者『だけど! だけど勇者が!』

僧侶『無理だよ! 勇者はもう……!』

戦士『早く! 魔王が、魔王がきやがった!』

賢者『勇者!』

僧侶『逃げなきゃ! 賢者君早く!』

賢者『ゆ――……』

勇者『……賢、者……』

賢者『勇者! 勇者ぁ!』

勇者『……逃げ…………て…………』
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/14(金) 00:50:57.94 ID:iQRtHBog0




賢者「ああぁぁぁ!!」


悲鳴とともに、賢者は跳ね起きた。

寝室の、ベッドの上。

全身に汗をかき、肩で息をする。


賢者「……はぁ、はぁ……」

賢者「……」

賢者「……はぁ」

賢者「……」

賢者(……夢?)

賢者「……」

賢者(……そうか、あの後すぐ、寝入ってしまって……)
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/14(金) 00:51:49.23 ID:iQRtHBog0
今日はここまでです
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/09/14(金) 01:47:32.95 ID:ELHyKiAho
乙でした
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/09/14(金) 04:05:41.06 ID:8Sf0JFbyo

カレー美味いよね
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/14(金) 05:39:47.22 ID:/03/sAPDO
昔は香辛料って宝石並みに高いんじゃなかったかw
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/14(金) 08:15:12.09 ID:Iy595KtE0
期待
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/09/14(金) 17:00:29.83 ID:Rq8Szofio
>>67
それはヨーロッパでの話
栽培出来る所ではそんなに高くはならんだろ
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/09/14(金) 21:19:35.73 ID:64SkEVQAO
本場仕込みのカレーは色んな種類のスパイスを入れたりはしないらしいね
なんでもかんでも入れると、辛さが相殺れるとか
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/09/14(金) 23:38:54.53 ID:q/XDDdrko
ピザみたいな味になる
ただし、刺激はあるので後で舌が…
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/14(金) 23:42:57.17 ID:FaPFzNMIO
カレーはスパイスの数を減らして巧く調合できればすげーうまい
沢山混ぜるのは邪道
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2012/09/15(土) 00:18:30.70 ID:7Ai26V0po
段々カレースレになってるけだなんの陰謀だ
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/15(土) 09:10:45.95 ID:ucly8lODO
賢者「これは本物のカレーじゃない」

少女「なんだと!貴様ワシを愚弄する気か!」

王様「く、口を慎め賢者!」

賢者「三日後に此処に来て下さい少女さんに俺が本物のカレーをご馳走しますよ」
とかなんとかか?
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/15(土) 18:05:12.74 ID:PcSKAmILo
連載終わる前に世界が終わるわw
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/16(日) 01:08:46.86 ID:slOqQVTB0
賢者「…………はぁ」

賢者(……疲れている)

賢者(……目覚めたばかりだってのに、何時間も走ったみたいだ)

賢者(いや……)

賢者(昨日まで休みなしで、歩いて、戦って……)

賢者(今になって、疲れが出てるのか……)

賢者「……今、何時だ……?」


ガチャリ


少女「ただいまかえりましたー」


玄関から、扉の開く音と、少女の声。


賢者(……出かけていたのか)

少女「賢者様ー? まだ寝てますかー?」


少女の声が、賢者のいる寝室に近付いてくる。

そして足音は……二人分。
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/16(日) 01:09:44.66 ID:slOqQVTB0
ガチャ


少女「……賢者様? あ、よかった、起きてたんですね!」

賢者「たった今。……どこか、行っていたのか」

少女「はい、ちょっと街まで。遅くなっちゃってすみません……」

賢者「遅く……?」

少女「もう夕方ですよぉ」


賢者は窓の外に目を遣る。

遥か先の地平の際に、赤い太陽が見える。


賢者「……朝日?」

少女「夕日ですよ!」

賢者「ぁー……」


太陽を見送り、少女に視線を移す。

少し、呆れた表情を浮かべている。


賢者「……それで」
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/16(日) 01:10:55.67 ID:slOqQVTB0
さらに視線を移す。

少女の同行者、もうひとつの足音の主に。


賢者「……」

修道女「……」ニコニコ


修道服に身を包んだ若い女。

賢者と少女のやり取りを、微笑みながら、黙って眺めていた。


少女「あっ、ごめんなさい! えっと……お医者さんを呼んだんです!」

賢者「医者?」

修道女「修道女といいます」

少女「修道女さん、こちら、賢者様です!」

賢者「どうも……」

修道女「よく存じていますわ。高名な賢者様にお会いできて、光栄です」

賢者「医者……?」
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/16(日) 01:11:53.07 ID:slOqQVTB0
早速診察をしたいという修道女の申し出に、賢者は応じ、ズボンを脱ぐ。


少女「わ、わっ」

賢者「……下着も、脱いだほうがいいのか?」

少女「うえぇぇぇ!?」

修道女「腿より上、股関節の方まで、怪我しているようでしたら……」

賢者「いや、膝上の……、この辺りまでだ」

修道女「でしたら、そのままで結構です」

少女「ほっ……」

賢者「……そこで何してるんだ、お前は……」

少女「い、いいじゃないですか! 心配だから見てるんですっ」

賢者「……いいのか?」

修道女「私は、構いませんよ」

少女「ほらね! ほらほら! いいですよね!?」

賢者「……分かったから、大人しくしてろ」
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/16(日) 01:13:37.52 ID:slOqQVTB0
修道女が、賢者の萎えた脚に触れる。


修道女「痛みます?」

賢者「いや……、……なぁ、君」

修道女「はい」

賢者「その……あまり医者には、見えないんだが。どう見てもシスターだ」

修道女「えぇ。普段は、教会におりまして、そっちが本職です」

賢者「だよな……」

修道女「でも、医療の心得も、もちろんありますので」


そういって、修道女は微笑む。

少しふっくらとした愛らしい笑顔。

どこか、人を安心させるような雰囲気を持っている。


修道女「貧しくて、医者にかかれない方のために、無料で治療を行っているんです」

少女「へぇー、すごーい!」

賢者「……医者は副業か」
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/16(日) 01:16:26.71 ID:slOqQVTB0
修道女「副業といいますか、神に仕えるものとしての務めですね」

賢者「そういうもんか……」

修道女「ただ……、専門は、薬学の方でして……」

賢者「え」

修道女「外科の方は、あまり……。ですから正直、どこまで賢者様のお力になれるか……」

賢者「……」

修道女「い、一生懸命やらせてもらいますから!」


……賢者は少し、考える。

なぜ、医者ではなく、修道女が来るのかを。

それも、外科には門外漢の。


賢者「……」


決まっている。

断られたのだ。

勇者が死んだ事実も、その経緯も、恐らく国中に、広まっているのだろう。

そして正規の医者は、みな言ったのだ。勇者を見捨てた賢者など、診るつもりはない、と。
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/16(日) 01:18:40.43 ID:slOqQVTB0
少女「薬学ってことは……お薬ですか?」

修道女「えぇ。薬の調合法や、効能なんかを、大学で――……」

少女「勉強してるんですか?」

修道女「いえ、教えてます」

少女「えぇぇ!?」

賢者「……」


少女は、たくさんの医者に、掛け合ったのだろう。

夕暮れになり、日が落ちはじめるまで。

様々なところを回り、ことごとく断られ。

他に、頼るべきものがなくなるまで探し、教会に行き着いたのだろう。


少女「じゃ、じゃあ、学者もやってるんですか!?」

修道女「えぇ、まぁ……一応」

少女「すごいすごーい!」

賢者「……」



何のために?

彼のために。
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/16(日) 01:19:07.20 ID:slOqQVTB0
賢者(どうして――……)

少女「ね、賢者様!」

賢者「……え、あ?」

少女「シスターで、お医者さんで、学者さんなんですよ! すごいですよね、修道女さん!」

賢者「あ……あぁ、そうだな……。すごいよ」

修道女「うふふ、賢者様のすごさに比べたら、私なんて全然」

少女「そうなんですか?」

修道女「えぇ。なにせ、『世界で最も優れた大賢者』ですからね」

少女「はぁー……」

修道女「『魔術の歴史を百年は進めた人物』とさえ言われていますから」

少女「そ、そうだったんですか……」

賢者「与太だよ」

修道女「ご謙遜ですね」
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/16(日) 01:19:41.60 ID:slOqQVTB0
少女「へぇぇ、全然知りませんでした……」

賢者「だが、そんな評価が何になる……。結局私は……」

少女「あっ! また暗い顔! 駄目ですよ! めっ!」

賢者「めっ、ってお前……」

修道女「うふふ、仲がよろしいんですね」

賢者「何でそうなる……」

修道女「さて……。では、失礼して……」


修道女が、賢者の脚に両手を置く。

真剣な目つき。


修道女「『傷を癒す魔術』」

賢者「……」


修道女の両の手が淡く光り、その光が賢者の脚を撫でていく。

その額には珠のような汗が浮かぶ。

……どれくらい、そうしていただろうか。

修道女「……ふぅ」

賢者「……終わりか」

修道女「はい」
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/16(日) 01:20:45.19 ID:slOqQVTB0
賢者「……確かに、痛みが退いた。軽くなった感じもするし……」

修道女「何よりです。でも……」

賢者「ん」

修道女「ごめんなさい、私の力では、完全には……」

賢者「……いや。分かってる。いいんだ」

少女「どういうことです?」

賢者「もう使い物にならないってことだ、この脚は」

少女「え……? えぇっ!?」

修道女「私の力不足で……」

賢者「……これが治せるなら、死人だって蘇生できるだろうさ。自分の体のことは、自分が一番よく分かる」

少女「け、賢者様……それじゃ、もしかして……、もう歩けないんですか?」
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/16(日) 01:21:28.85 ID:slOqQVTB0
賢者「……立てない」

少女「そんな……」


少女は顔を伏せ、唇を噛む。

目は潤んでいる。


賢者(だから、どうして……)

賢者(お前がそんな、泣きそうな顔を……)

少女「そんな、賢者様……、何も悪いことしてないのに……」ポロポロ

賢者(どうしてお前が、そんなに泣くんだ)

少女「う、うぅ……」

賢者「……おい、泣くな。修道女が困ってる」

少女「ふぐ、ぅぅ……」

修道女「あ、いえ、私は」

賢者「すまないな……、来てくれて、感謝している」

修道女「いえ、神の僕として、当然の行為です」
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/16(日) 01:24:01.56 ID:slOqQVTB0
賢者「……けど、君は……、嫌じゃなかったのか」

修道女「え?」

賢者「その……、世界が滅ぶ、その原因になった男を診るなんて」

修道女「神は、貴方をお守り下さったのです」

賢者「……」

修道女「だから、生きることができた。貴方に神の祝福があるならば――……」

賢者「……」

修道女「私も、その神のご意志に従うまでですから」

賢者「そういうものか」

修道女「はい。それに……」

賢者「ん」

修道女「滅びませんよ」

賢者「え」

修道女「世界は、滅びません」
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/16(日) 01:24:53.36 ID:slOqQVTB0
賢者「いや、だが……、勇者が逝き、魔王も攻めてくる……」

修道女「えぇ。ですがそれは、神の与えた試練なのです」

賢者「……神」

修道女「神は絶対に、かの敵に勝利します。その約束の日まで、決して信仰を絶やさぬよう、神は人間を試されるのです」

賢者「……」

修道女「私たちが信仰を持ち続け、試練に打ち勝てば、神は私たちに奇跡を遣わしてくださいます」

賢者「……」

修道女「奇跡は起きます。必ず」


修道女の穏やかな微笑。

だが、その瞳は力強く、燃えるように輝く。
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/16(日) 01:27:03.78 ID:slOqQVTB0
今日はここまでです

お読みいただいている方、ありがとうございます

コメント下さる方、ありがとうございます。すごく嬉しいです

カレーは美味しいですね
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/16(日) 03:20:26.67 ID:YzPE0GmDO
日本のカレーは世界一、ってインド人が力説するくらいだしな。

>>1
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/09/16(日) 09:10:33.34 ID:6e3cmseco
まあ、あれは和食だしな
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/09/16(日) 20:10:46.80 ID:bmXn9Zt/o


サバ缶をカレーパウダーに付けて食べてみたがすげー美味かった
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/09/16(日) 21:21:44.37 ID:tlKcFFngo
>>92
和風総本家乙
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/17(月) 23:08:36.32 ID:O83XdHAI0




修道女が去った後も、少女の表情は晴れない。

少女「……」

賢者「……」

少女「……」

賢者「……いつまで、暗い顔してるんだ」

少女「だって……」

賢者「……」

少女「……」

賢者「……今更、立てるようになっても、どの道世界は……」

少女「……また、そんな言い方する……。賢者様のバカ……」

賢者「落ち込むか怒るか、どっちかにしろよ」

少女「……うぅ」
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/17(月) 23:09:32.27 ID:O83XdHAI0
賢者「……はぁ」

少女「……」


賢者(……この子は)

賢者(医者に診てもらえれば、私の脚は、きっと治ると)

賢者(思っていたのだろうか)

賢者(それを信じて、方々を回って……)

賢者(なんとか修道女を、連れてきて……)

賢者(けれど……)


賢者「……」

少女「……」

賢者「……少女」
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/17(月) 23:10:02.03 ID:O83XdHAI0
少女「……」

賢者「確かに私は、立てない……」

少女「……」

賢者「でもな」


賢者はベッドを降り、車椅子に乗る。


少女「……」

賢者「飛べる」

少女「……へ?」


車椅子の車輪が、ゆっくりと床から離れる。

賢者を乗せた車椅子は、音もなく浮遊し始めた。


少女「……飛んだ」
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/17(月) 23:10:59.11 ID:O83XdHAI0
賢者「……」


車椅子は徐々に高く浮き上がっていく。

そして賢者の顔が、少女の顔と同じ高さになったところで、動きを止めた。


少女「……わぁ」

賢者「『魔法の車椅子』だ」


少女の顔は、真っ直ぐに賢者を見ている。

悲しげに伏せられていた瞳は、今や驚きで見開かれていた。

……もう、少女は俯いていない。


賢者「どうだ、少女」

少女「……」ポカーン

賢者「私は立てないが、飛べるぞ」


丸一日近い休息が、尽きかけていた賢者の魔力を回復させ、『物を空中に浮遊させる魔術』の行使を可能にしていた。
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/17(月) 23:11:53.36 ID:O83XdHAI0
賢者「お前は立てるが、飛べるか?」

少女「と、飛べるわけないじゃないですか!」

賢者「ふん……、飛べないのか。可哀想に」

少女「いやいや! 普通は飛べませんから!」

賢者「……そうだな、普通は飛べない」

少女「そうですよ!」

賢者「まぁ、私ほどの賢者ともなると、これくらいは朝飯前だけど」フフン

少女「……何いばってるんですかぁ」

賢者「脚が使えなくても、宙に浮くことだってできる。他にも、お前たちにできないことが、色々できる」

少女「……」

賢者「どうってことないんだ、脚が使えないことくらい」

少女「……」

賢者「大したことじゃない。お前みたいな子供に、心配されるほどのことじゃないんだよ」

少女「……賢者様」
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/17(月) 23:12:30.27 ID:O83XdHAI0
賢者「分かったな」

少女「……はい」

賢者「……、……ふぅ……」


魔術を解かれた車椅子は、何事もなかったかのように床に降下していく。


賢者「……」

少女「……」

賢者「……」

少女「……賢者様、汗だく」

賢者「意外と疲れるんだよ、さっきのやつ」

少女「ふふっ、『私ほどの賢者ともなるとー』なんて、威張ってたくせに」

賢者「難しいんだぞ、これ。山を真っ二つにする方が、よほど楽だ」

少女「あはは! 大げさだなぁ、賢者様!」
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/17(月) 23:13:18.82 ID:O83XdHAI0
少女の顔に、明るい笑みが戻る。


賢者「……なぁ」

少女「はい?」

賢者「お前、神を信じるか?」

少女「神……ですか?」

賢者「あぁ」

少女「うーん……」

賢者「さっきの、あの修道女……、彼女は神を信じていた」

少女「ええ」

賢者「神を、奇跡を疑わず、救いを信じているからこそ、絶望しないでいられるんだろう」

少女「……」

賢者「笑っていられるんだ」

少女「……」
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/17(月) 23:14:05.07 ID:O83XdHAI0
賢者「少女、お前は……」

少女「私?」

賢者「どうして、笑っていられるんだ」

少女「……」

賢者「死ぬんだぞ? もうじき、死んでしまうんだ。それも、ただ死ぬわけじゃない。終わるんだ、世界が。皆死ぬんだ。それなのに――」

少女「そ、そんな怖いこと言わないでくださいよぅ、賢者様」


賢者の言葉に、少女は少し、身を強張らせる。


少女「私だって、そりゃ、怖いですよ……」

賢者「……」

少女「でも、怖がってるだけじゃ、駄目だって……」

賢者「……」

少女「私、まだ子供だし、バカだから……、よく分かってないのかもしれないけど」


笑顔。


少女「兄さんが、守ってくれた世界だから」


笑顔。
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/17(月) 23:15:31.03 ID:O83XdHAI0
賢者「勇者が……」

少女「あっ、もちろん賢者様もですよ!」

賢者「俺が……」

少女「兄さんや賢者様たちが必死で戦ってくれてたから、私も今こうして、いられるんだと思いますし」

賢者「……」

少女「もしかしたら、もう駄目なのかも……、しれないけど……」

賢者「……」

少女「それでも、最後の一瞬まで、兄さんたちが守ってくれた世界なんです!」

賢者「少女……」

少女「それなのに、私ばっかり、泣いたり落ち込んだりしてちゃ、兄さんに笑われちゃいますもん」

賢者「……」

少女「――なんて、言ってますけど、すぐ泣いちゃうんですけどね、私……、えへへ」

賢者「……あぁ、そうだな、泣き虫だ」

少女「ひどい!」

賢者「泣き虫。怒りんぼ」

少女「なんですかー! 賢者様のバカぁー!」
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/17(月) 23:18:40.13 ID:O83XdHAI0




少女の表情はころころと変わった。

笑い、泣き、怒り……、そして、いつの間にか、また笑っている。

毎日の、些細な出来事が、少女にとってはまるで一大事のようで……

暇さえあれば、その表情を目で追っている自分に、賢者は気付く。


ある日、少女は夕食の卵を焦がしてしまう。

少女はしょ気た表情を見せる。

賢者が味を褒める。

少女は笑う。


ある日、少女は魔術を教えてほしいと、賢者にせがむ。

少女は期待に満ちた笑顔を見せる。

賢者が意地悪を言う。

少女は怒る。


こう言ったら、少女はどんな表情を見せるだろうか。ああ言ったら――……

少女の感情に触れることを、楽しんでいる自分に、賢者は気付く。


……穏やかに、日々が流れる。
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/17(月) 23:19:08.97 ID:O83XdHAI0
ある日、少女は退屈を賢者に訴える。


少女「賢者様ー……」

賢者「……ん?」

少女「何読んでるんですか?」

賢者「……魔術の本」

少女「ふーん……」

賢者「……」

少女「面白い?」

賢者「……そこそこ」

少女「……」

賢者「……」

少女「……」

賢者「……」

少女「賢者様ー」

賢者「ん?」

少女「暇!」

賢者「……子供か、お前は」

少女「子供だもん!」
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/17(月) 23:20:02.68 ID:O83XdHAI0
少女「ずっとお部屋で本読んでるだけじゃ、カビが生えちゃいますよぉ!」

賢者「……はぁ、分かったよ」

少女「……!」

賢者「散歩でも、行くか……。天気もいいし」

少女「行きましょう! 行きましょう!」

賢者「この森も、行ったことのない場所が、結構あるしな」

少女「探検ですね!?」

賢者「散歩だ」

少女「私、お弁当作ってきます!」

賢者「散歩だって……。ピクニックじゃないんだぞ……」

少女「……〜♪」


少女は満面の笑みを見せる。

賢者はその顔を見つめる。
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/17(月) 23:20:43.29 ID:O83XdHAI0
今日はここまでです
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/17(月) 23:37:04.71 ID:hC2b1Bno0
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/09/18(火) 00:24:08.80 ID:JcdD71iTo
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/18(火) 00:28:05.94 ID:H7ygb6rDO
乙!
試練ばかり与える神様なんて糞喰らえだよな!
話をカレーに戻そうぜ!
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/09/18(火) 00:56:14.61 ID:gLHwNJr1o
>>93
お前も見たのか?
カレーパウダー侮れんぞ


111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/09/18(火) 21:39:48.12 ID:2WrHszoAO
森はイヤな予感しかしない……

が、カレー持ってけばたちまちキャンプに早変わり!
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/19(水) 00:24:37.01 ID:i4h0M0OX0




秋の森の小路を、二人は行く。


少女「涼しいですねー」

賢者「あぁ……」

少女「日があんまり、射さないからでしょうか」

賢者「……寒くないか?」

少女「えへへ、大丈夫ですよ」


少女が車椅子を押す。

小路にわだちを残しながら、二人は森の中を行く。


少女「……ね、賢者様」

賢者「ん?」

少女「冒険のお話、また聞かせて?」

賢者「またか……」

少女「いいでしょ」

賢者「……、そうだな……」
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/19(水) 00:26:08.82 ID:i4h0M0OX0
時折、少女は賢者に、冒険の話をせがむ。

賢者の語る勇者は、少女の知らない、兄の姿だった。

それは少女にとって、少し気恥ずかしく、けれど誇らしく、……何よりとても楽しい冒険譚だった。


賢者「……西にずっと行った大陸にな、酒造りで有名な町があって。そこに変わった魔物が出てな――……」

少女「あっ、その話、もう前に聞きましたよ」

賢者「……そうだったか」

少女「お酒の造り方勉強して、魔界に帰っちゃったんですよね」

賢者「これは、もう話してたか。そうだな……、じゃあ今日は、どんな話がいいか……」


話の種は尽きない。

賢者にとっても、勇者との冒険の道程は、苦しくも楽しい日々だった。

そして、それを語ることを、彼は楽しんでいる。
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/19(水) 00:27:13.10 ID:i4h0M0OX0
恐ろしい魔物たちの話。

風変わりな国の話。

馬鹿馬鹿しい事件、悲劇的な死。

そして、勇者の活躍。

次から次へと、思い出が溢れてくる。

少女はどの話も、真剣に耳を傾ける。






賢者「……――それで、勇者は我慢できなくなってな」

少女「ぎゃ」

賢者「四日目の晩に、とうとう夜の街に繰り出して」

少女「ぎゃー!」

賢者「『そういう』女を捕まえてな、一緒に宿に……」

少女「やーだー! そんな兄さん知らないー!」

賢者「……ところが、だ」

少女「……」
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/19(水) 00:28:27.06 ID:i4h0M0OX0
賢者「宿のランプの下で、その女性を見てみると……」

少女「……」ゴクリ

賢者「……顎にはくっきりと、青々とした髭の剃り跡が――……」

少女「いやぁー!」

賢者「勇者、慌てて逃げてきてな、私の部屋に飛び込んで、賢者ー助けてーって」

少女「やーめーてー!! やだやだ、これ以上兄さんのイメージ壊さないでー!」

賢者「ははは……」


語りながら、賢者は少女の反応を楽しんでいる。

わざと意地の悪い話をして、少女がどんな顔をするのかを見ている。

自分でも子供じみていると思いながら、少女を困らせる。


賢者「……それ以来、勇者は夜遊びを控えるようになった、と」

少女「うぅ……、兄さんのバカ……、賢者様のバカ……」

賢者「はは、男は大抵、そんなもんだ」
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) :2012/09/19(水) 00:32:28.78 ID:i4h0M0OX0
勇者の死は、賢者を苦しめていた。

勇者について語るとき、賢者の心には、必ず、その死と絶望がよぎる。


賢者「……」


けれど、それだけではない。

語られる思い出は、どれも懐かしく、輝かしい。

今は、それを感じられる。


賢者「……」

賢者(あぁ……)


ふと、賢者は気付く。自分は少女に癒されているのだと。


賢者(そうだ、こいつといると……、私は……)

賢者(思い出す……)

賢者(勇者……)

少女「……賢者様」

賢者「ん?」
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/19(水) 00:32:56.32 ID:i4h0M0OX0
少女「『男は大抵、そんなもん』ってことは」

賢者「……」

少女「……賢者様も、やっぱり? その、兄さんと一緒に、夜、街で……」

賢者「……」

少女「……」

賢者「……あ、少女、ちょっと向こうの茂みまで、押してくれ」

少女「あぁっ、賢者様、誤魔化した!」

賢者「い、いいから。ほら、あっち。あそこだ」

少女「なんで誤魔化すんですかぁ! やっぱりやましいことが――……」

賢者「誤魔化してない、誤魔化してない。ほら、押してくれ、頼む」

少女「うぅ……、男の人はみんなフケツです……」


賢者の指し示した茂みには、青い、小さな実が鈴なりに実っている。

賢者はそのひとつを慎重に摘み、まじまじと眺める。
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/19(水) 00:33:46.83 ID:i4h0M0OX0
賢者「やっぱりだ……、すごいな……こんな場所に生えているなんて……」

少女「賢者様、なんです? この実。食べられます?」

賢者「食べちゃ駄目だぞ」

少女「……?」

賢者「この実を加工すると、魔物避けの薬になるんだ」

少女「へぇ……」

賢者「魔獣や、程度の低い魔物なんかは、その薬を撒いておけば、寄り付かなくなる」

少女「珍しいものなんですか?」

賢者「ああ、貴重品だ」

少女「すごーい……」

賢者「……少し、持って帰ろうか」

少女「えっ! で、でも……いいのかなぁ?」

賢者「いいさ。どうせ放っておいても、取りに来るやつなんていない」
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/19(水) 00:34:18.63 ID:i4h0M0OX0
賢者(それに……)

賢者(すぐに、必要になる機会も……)

賢者「……一袋くらい、集めていこう」

少女「はい!」


賢者に促され、少女も青い実を摘む。


少女「……んー」


指で押すと、ぶにゅぶにゅと、粘っこい弾力で押し返してくる。


少女「なんか、ぷにぷにする……」

賢者「……」

少女「変なのぉー」

賢者「あ、そうだ。少女、気をつけてな。その実、潰すと――……」

少女「え――……」


ブチュ

少し、力を込めただけで、少女の手の中で実が潰れる。
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/19(水) 00:35:42.94 ID:i4h0M0OX0
賢者「……!」

少女「ひゃっ!」


実はほとんどが水分だったらしく、潰れた実は、弾けて汁を飛ばす。

青黒い汁は勢いよく散り、少女の手のひらを汚し、顔にまでかかる。


賢者「おい、馬鹿……! 生のままのこの実は……」

少女「え……? あ……何、これ……」

賢者「う……っ」

少女「……っくさぁぁぁぁ!」

賢者「くっ、実は、ど、独特の……臭いで……ぅぷ」

少女「くさいくさい! くーさーいー! けんじゃさまあぁー!」

賢者「うっわ! ば、馬鹿! こっち来る――……くさい!」
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/19(水) 00:37:07.56 ID:i4h0M0OX0
少女「たーひーけてー」

賢者「分かった、分かったから、お前、ちょっと離れろ!」


涙目になりながら、賢者にすがり付こうとする少女。

臭いに顔をしかめながら、車椅子を自分で漕ぎ、賢者はそれから逃げる。


少女「は、鼻が……ふぐ、ぐぅぅ! 賢者さばぁぁ!」

賢者「待て! 待てって! とりあえずそこに――……って、うわっ!」

少女「あ」


ガシャン!!

地面から露出した木の根に躓き、賢者の車椅子は横倒しになる。

賢者も車椅子から投げ出される。

青い実の鈴なりに生った、茂みの上に。


少女「わっ」

賢者「ぐぁ」


実をいくつも押し潰しながら、賢者は倒れる。
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/19(水) 00:37:35.00 ID:i4h0M0OX0




秋の森の小路を、二人は行く。


少女「……」

賢者「……」

少女「……」

賢者「……」

少女「……」


少女が車椅子を押す。

小路にわだちを残しながら、二人は家路に着く。


少女「……」

賢者「……」

少女「……帰ったら」

賢者「……」

少女「お風呂、沸かしますね」

賢者「……あぁ」

少女「……」

賢者「……そうだな」

少女「……」

賢者「それがいい」
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/19(水) 00:38:11.84 ID:i4h0M0OX0
今日はここまでです
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/09/19(水) 00:42:25.72 ID:8PvvogjAo
ええ話や…

125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/19(水) 00:50:03.97 ID:PCkgmBBDO
切ないのぅ……

ww
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/19(水) 00:52:03.70 ID:ls2v4t2Bo
臭い仲になったかw
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/19(水) 03:11:04.62 ID:Mzu/CO/IO
おもしろい
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/21(金) 22:55:00.34 ID:cxiFKqAA0




深夜。


賢者「……」

賢者「……ぅ」

賢者「うぅ……」

賢者「……」

賢者「……っ」

賢者「うあぁぁぁぁっ!!」


寝室の、ベッドの上。

賢者は度々、悪夢にうなされる。

恐ろしく、悲しく、絶望に塗り潰された夢。


賢者「……はぁ、はぁ」

賢者「……――げほっ、はぁ……」


……勇者の思い出を語った日は、決まって同じ夢を見る。
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/21(金) 22:56:41.75 ID:cxiFKqAA0
賢者「ぁー……」

賢者「くそ……」


乱暴に額の汗を拭う。


賢者(ただの夢だ……)

賢者(落ち着け……)

賢者「……はぁ」


……寝室のドアが、細く開いた。


少女「……――賢者様?」


少女が、室内を覗き込む。


賢者「少女」

少女「今の……」

賢者「……何でもない。大丈夫」
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/21(金) 22:57:20.83 ID:cxiFKqAA0
少女「……」

賢者「大丈夫だ……」

少女「でも……」

賢者「何でもないんだ、夢を……」

少女「夢?」

賢者「……ああ、いや」


賢者は、少し言いよどむ。

夢とはいえ、無残な記憶を少女に話す気にはなれない。


賢者「変な夢を、見ただけだよ。心配ない」

少女「……でも、賢者様……」

賢者「……」

少女「……分かりましたっ」


少女はベッドの傍に椅子を置き、腰を降ろす。


賢者「少女……?」

少女「賢者様がぐっすり眠れるまで、私がお傍についてます!」
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/21(金) 22:58:42.10 ID:cxiFKqAA0
賢者「おいおい」

少女「うなされたら、手を握ってあげますからね」

賢者「よ、よせよ。子供じゃあるまいし」

少女「ふふっ、怖い夢で眠れなくなるなんて、小っちゃい子供と同じですもん」

賢者「……」

少女「私が怖い夢を見て、泣いてたときも、兄さんがそうしてくれましたから……」


暗がりの中で、少女は微笑む。

子供扱いされる気恥ずかしさからか、賢者は仰向けになって、少女から目を逸らす。


賢者「……勝手にしろ」

少女「はーい」

賢者「……」

少女「……」
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/21(金) 22:59:37.26 ID:cxiFKqAA0
賢者「……」

少女「……」


秋の夜は更に深まる。

月が明るい。


賢者「……」

少女「……」

賢者「……」

少女「……賢者様」

賢者「……ん」

少女「……髪、また伸びましたね」

賢者「あぁ……、切ってないからな」

少女「女の人みたい」

賢者「……自分でも、見栄えが悪いとは思うよ」

少女「……そうですか?」

賢者「……あぁ」
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/21(金) 23:00:05.04 ID:cxiFKqAA0
少女「……賢者様」

賢者「……ん」

少女「明日、髪切りましょうか?」

賢者「……お前が?」

少女「はい」

賢者「……できるのか?」

少女「これでも、兄さんの散髪は、昔は私がやってたんですよ」

賢者「……そうか」

少女「……」

賢者「……なら、頼もうか」

少女「頼まれました!」

賢者「……はは」
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/21(金) 23:01:29.56 ID:cxiFKqAA0
他愛のない会話。

秋の夜更けの静けさの中で、自然としのび声になる。

……まるで、恋人同士の囁き合いのように。


賢者「……」

少女「……」

賢者「……なぁ」

少女「……」

賢者「少女?」


賢者は少女に目を遣る。

じっと、少女は賢者を見ている。

真っ直ぐに見つめている。


少女「あっ……」

賢者「あ……」


目が合う。


少女「えへへ……、な、なんですか?」
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/21(金) 23:02:21.88 ID:cxiFKqAA0
照れくさそうに、少女は笑う。

少し困ったような、しかし、どこか嬉しそうな微笑。

暗がりの中、賢者はその表情を見つめる。


賢者「……」

少女「……」

賢者「……いや」


普段の快活な笑みとは違う、含みのある顔。

……普段の少女より、大人びているように、賢者の目には映る。


賢者「何でもない」

少女「ふふ、変な賢者様ー」

賢者「あぁ……」


時々、少女はそうした表情を見せることがあった。

その度に、賢者を少なからず動揺を覚える。
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/21(金) 23:03:05.87 ID:cxiFKqAA0
賢者は目を閉じる。

少女の表情から、賢者は少女の確かな好意を感じていた。


賢者「……」


賢者と名乗る前、自分に想いを打ち明けてきた女性の顔。

あるいは、勇者を見つめるかつての仲間の眼差し。

そして、彼自身の苦い思い出……。

それらの記憶に、少女の表情を重ねている。


賢者「……」

賢者(……自惚れだろうか?)

賢者(……そうかもしれない)

賢者(分からない)

賢者(けれど……)

賢者「……」


賢者は考える。

自分に何ができるのかと。
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/21(金) 23:04:07.94 ID:cxiFKqAA0
少女の好意に、どうやって応えるべきなのか。

自分のために笑い、泣いてくれる少女。

何をしてやれるのか。

賢者は自身に問う。


賢者(……いや、少女に対してだけじゃない)

賢者(私は……、俺は……、生きて、何ができるのか)

賢者(少女は、勇者が守ってくれた世界だと、言っていた……)

賢者(だから、笑って生きていると……)


賢者「……」

賢者「……はぁ」


賢者(……それは、俺も一緒だ)

賢者(……俺もまた、勇者に、生かされたのだろう)

賢者(ならば、どうすればいい……)

賢者(俺にできることは……)


賢者「……」

少女「……」

賢者「……少女」

少女「……」

賢者「……少女?」

少女「……ムニャ」

賢者「おい」
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/21(金) 23:04:42.54 ID:cxiFKqAA0
賢者「おい、少女……」

少女「……ムニャー」

賢者「おい、むにゃーじゃない、起きろ。風邪引くぞ」

少女「……ハッ、お、起きてますよぉ」

賢者「寝てただろ。ほら、もう大丈夫だから、部屋に戻れ」

少女「寝てないですってばぁ……」

賢者「……」

少女「……」

賢者「……」

少女「……」ウト

賢者「……おい」

少女「……」ウトウト

賢者「おい、おいってば」

少女「ハッ」

賢者「戻れって」

少女「ダメです! 賢者様がちゃんと寝付くまで――……」
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/21(金) 23:05:33.17 ID:cxiFKqAA0
賢者「私は、もう大丈夫だから」

少女「嘘です、またうなされて、キャーッ! って大声上げるんです!」

賢者「キャーなんて言ってないだろ」

少女「言ってましたよ」

賢者「嘘つけ! 俺はそんな声出さないぞ」

少女「出してましたー! とにかく、ちゃんと賢者様が眠るまで、私、ここにいますから」

賢者「はぁ……」

少女「……」

賢者「……」

少女「……」ウト

賢者「……おい!」

少女「ハッ」

賢者「……もう分かったから。こっち来て、せめてベッドで寝ろ」

少女「え……」

賢者「風邪引かれたら、困る」

少女「わ、分かり、ましたぁー……」
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/21(金) 23:06:45.56 ID:cxiFKqAA0
少女は賢者のベッドに潜り込む。

少女の体は小さく、二人は無理なく並んで横になる。


賢者「……」

少女「……」

賢者「……」

少女「……賢者様」

賢者「……ん」

少女「……たまに、自分のこと『俺』って言うんですね」

賢者「あー……、いや……」

少女「……」

賢者「直らないんだよ、中々」

少女「ふふふっ」

賢者「笑うなよ」

少女「ふふ……ごめんなさい……」
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/21(金) 23:07:14.41 ID:cxiFKqAA0
賢者「……」

少女「……でも、そっちの方が、賢者様っぽいって――……、ふぁ……」

賢者「……もう寝ろ」

少女「はぁい」


すぐに、少女は穏やかな寝息を立てる。

少女の体温を、すぐそこに感じる。

賢者も、ゆっくりと眠りに落ちていく。

……夢は、もう見ない。
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/21(金) 23:08:42.44 ID:cxiFKqAA0




……穏やかに、日々が流れる。

表面上は。


賢者「……」


賢者は、日々の些細な変化に気付く。

……森の木々が、早くも枯れ、葉を落としている。

確かに秋は深まったが、それにしても、葉が落ちるには早すぎる。

あるいは、この森は、毎年そうなのだろうか?


賢者「……」


……鳥たちの声が、日増しに大きくなっていく。

数を増やしているのだろうか。

どこから来ている?

……鳥たちが、瘴気を逃れ、この森へ?
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/21(金) 23:09:44.45 ID:cxiFKqAA0
賢者には分からない。

取るに足らないことのようにも見える。

けれど、そうした変化を、彼はいくつも感じる。

いくつも、いくつも。

積み重なっていく。


賢者「……」

賢者「……」

賢者(…………大丈夫)

賢者(『まだ』大丈夫だ)

賢者(……いつかは、来る)

賢者(……だけど、今じゃない)

賢者(それまでは……)


キィ


少女「ただいまー」

賢者「……あぁ、おかえり」
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/21(金) 23:10:48.43 ID:cxiFKqAA0
賢者「……ずいぶん、買い込んだみたいだな」

少女「えへへ、今日は久しぶりに、市場が開かれていたんですよ」

賢者「そうか……」

少女「それで、ついつい色々買っちゃいまして……」


少女は上機嫌そうに語る。


少女「ほら! このスパイス、切らしてたんですけど、ちょうど手に入りました!」

賢者「あのスープは勘弁してくれ……」

少女「えぇー! 今夜はスープにしようと思ってたのに……」

賢者「……街の、様子は?」

少女「んー……、あまり変わってないと思いますけど……」

賢者「……」

少女「あ、兄さんの像に、花を供える人が少なくなったかもしれません……」

賢者「……」

少女「あとは、他の国の人だと思うんですけど、見かけない格好の人たちが増えて……」

賢者「そうか……」
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/21(金) 23:11:37.56 ID:cxiFKqAA0
賢者(……難民、だろうか?)

賢者(この国は、魔界の入り口からはかなり遠い……)

賢者(瘴気の影響を逃れてきたのだろうか……)


少女「……あぁっ!」

賢者「……?」

少女「そうそう! 私、すごい話を聞いたんです!」

賢者「すごい話?」

少女「知らない国の人たち……、多分、北の黒山の国の、人たちだと思うんですけど」

賢者「……」

少女「その人たちが話してるのを、私、聞いちゃって!」

賢者「何だ?」

少女「勇者が……兄さんが生きてるって!」
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/21(金) 23:12:54.82 ID:cxiFKqAA0
賢者「……ゆ……」


一瞬、賢者の思考が止まる。


賢者「…………は?」

少女「見たって言う人が、いるらしいんですよ!」

賢者「…………馬鹿な。いや……、いやいや、ありえない」

少女「む、信じてないですね」

賢者「少女、それは……はは、それは単なる、噂話だろうよ」

少女「……でも、瘴気が流れてくるのが、予測より遅いのは、勇者がまだ生きていて、戦っているからだって……」

賢者「……今の時期は、魔界がちょうど冬の季節だ。……だからまだ、魔獣たちの活動が鈍いんだよ」

少女「で、でも……、見たって人が……」

賢者「いる『らしい』、っていうだけだ。誰もそんなヤツに、会ってないんだ」
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/21(金) 23:13:30.97 ID:cxiFKqAA0
少女「でも……」

賢者「それに、もし本当に、勇者が生きていたなら、その異国人だってこの国に逃げてくる必要なんてないじゃないか。なぜこの国に来る?」

少女「でも……っ」

賢者「ありえない、ははは、本当にどうかしてる……」

少女「でも! でもでも……!」

賢者「やめてくれ!」


賢者が声を荒げる。

少女は小さく悲鳴を漏らし、身をすくませる。


賢者「よせ! 勇者が生きているわけがないんだ! そんなわけがない!」

少女「……」

賢者「死んだんだ! 勇者は死んだ! 俺の目の前で! 確かに!」

少女「……!」
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/21(金) 23:14:09.08 ID:cxiFKqAA0
賢者「生きている? ありえない! いいか! 死者は生き返らない!」

少女「……っ」

賢者「それとも何か? 『リヴィングデッド』か!? 冗談じゃないぞ! あいつの死に方は……!」

少女「……っ!」

賢者「心臓が止まって終わりじゃない! あんな死に方! どうしたって――…………どう……し……」


賢者の言葉が窄む。


少女「……っぐ、ヒッ、う、ウゥ……」


泣いている。


賢者「……少女」

少女「うっ、ふぐ……ん、うぇぇぇ」

賢者「……少女、すまない」

少女「うああぁあん!」

賢者「……悪かった、俺が悪かった。聞いてくれ、違うんだ、今のは……」

少女「……っ!」


賢者が伸ばしかけた手に背を向け、少女は走り出す。

玄関の扉を勢いよく開け、小屋を飛び出していってしまう。


賢者「少女!」
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/21(金) 23:15:19.27 ID:cxiFKqAA0
_人人人人人人人人人人人_
> 今日はここまでです <
 ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/21(金) 23:27:48.24 ID:OmxxumgIO
おつ
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/09/21(金) 23:59:39.00 ID:9twcJy32o
_人人人人人人人人人人人_
>     乙      <
 ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/22(土) 03:11:27.16 ID:TPWRoPqDO
そんなにエグかったのか
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/22(土) 20:22:59.08 ID:cpjsHIxIO
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/24(月) 01:13:25.39 ID:OPy3ydUv0
少女を追い、賢者も小屋を出る。


賢者「少女……っ!」


懸命に車椅子を漕ぐ。

しかし少女の足は思いの外速く、そして立ち止まらない。

少女の背中は見る間に小さくなっていく。


賢者「待て! おい!」


ついに賢者は、少女を見失う。


賢者「どこだ……、くそっ……こっちか!?」


立ち並ぶ木々は葉を落とし、森は日差しに満ちて明るい。

だが、どこを見渡しても少女はいない。
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/24(月) 01:14:24.94 ID:OPy3ydUv0
賢者「はぁ……、はぁ……」

賢者「少女!」


賢者は闇雲に森を進む。

車椅子を走らせながら、考える。

街へ向かったのか?

……それなら、まだ良い。


賢者「くっ……、いない……」

賢者「この先に行ったのか!? これ以上奥だと……」


森は、木の実や果実が早くも朽ち、それを餌にする獣たちは飢えている。

そして、その獣を食べる、肉食獣たちも。

もし、少女が飢えた獣たちに襲われたら――……


賢者「畜生……」


その想像は、賢者の胸を締め付ける。

焦燥。

馴染みの悪夢の中のような。
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/24(月) 01:15:14.50 ID:OPy3ydUv0
賢者(どうする……)

賢者(考えろ……!)


まともに探していても、少女は見つからない。

この森は広すぎる。

賢者は車椅子を停め、考える。

……この広い森で、たった一人の少女を探し出すには……


賢者「……」

賢者「……ふぅ」


試みに、賢者は魔力を拡散させる。

微弱な魔力が、賢者を中心とした同心円状に広がる。


賢者「……」

賢者「……」


障害物に衝突した魔力は、反射し、そのまま賢者の元に戻ってくる。

……魔力を『ソナー』として使うことを、賢者は思いつく。
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/24(月) 01:16:23.58 ID:OPy3ydUv0
賢者(……これじゃ、駄目だ)

賢者(木が多すぎる。まともに探せない)


賢者は木や岩を透過するよう、魔力を変異させる。


賢者(……まだ駄目だ)

賢者(……獣もいることを考えなければ)


獣に衝突した魔力と、少女のものとを区別できるように調整する。


賢者(……まだ駄目だ)


さらに、広く。

さらに、正確に。

何度も、何度も繰り返す。

一度の発動で、魔術書の一冊にもなるであろう術を、賢者は即席で、何度も試す。

試行錯誤を繰り返す。
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/24(月) 01:17:11.27 ID:OPy3ydUv0
賢者「……」

賢者「……っ」

賢者「……!」

賢者(いた……!)


賢者は少女の気配を感知する。

……世界初の魔術が、また一つ、彼の手で作られた。

そのことを、賢者は気にも留めない。

見つけ出した、少女の場所まで、ひたすら車椅子を走らせる。


賢者「少女……!」


……そこは、森を流れる小川のほとりだった。

賢者も、知っている場所だった。

以前に、少女と訪れたことのある場所。
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/24(月) 01:18:11.41 ID:OPy3ydUv0
〜〜


少女『わぁ……』

賢者『へぇ……』

少女『綺麗な川ですね、賢者様!』

賢者『そうだな……』

少女『わっ、魚がいる!』

賢者『……食えるかな』

少女『……賢者様、意外と食い意地張ってますよね』

賢者『食料の確保は重要だぞ』

少女『まったくもう! 食い気よりも、ほら! 見てるだけで、落ち着ける景色じゃないですかぁ』

賢者『それは、まぁ、確かに』

少女『すごく、綺麗……』

賢者『……』

少女『嫌なこと、全部忘れちゃいそうな……』

賢者『……』


〜〜
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/24(月) 01:19:16.64 ID:OPy3ydUv0




賢者「……少女」


川面を見つめていた少女に声をかける。

少女は振り返らない。


賢者「……少女、帰ろう」

少女「……」

賢者「日が暮れれば、この辺りも獣がうろつきだす」

少女「……」

賢者「その前に」

少女「……」

賢者「……」


無言の背中を、賢者は見つめる。

その背中は、あまりにも小さくて、賢者は驚く。
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/24(月) 01:19:53.44 ID:OPy3ydUv0
少女「……」

賢者「……」


当然だ、と賢者は思う。

快活で、賢く、しっかり者のこの少女は、まだあどけなさの抜けない年頃の女の子なのだ。

自分を受け入れ、癒し、立ち直らせてくれた少女は。

こんなにもか弱く、小さい。


少女「……」

賢者「……」


胸が締め付けられるのを感じる。


少女「……」

賢者「……少女」

少女「……」

賢者「すまなかった」
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/24(月) 01:21:34.83 ID:OPy3ydUv0
少女「……」

賢者「お前を、傷つけるつもりは、なかったんだ」

少女「……」

賢者「……少女」

少女「……」

賢者「前に、言ったよな。この世界は、勇者が守ってくれた世界なんだ、って」

少女「……」

賢者「だから、笑って生きられる、と」

少女「……」

賢者「……正直、お前が羨ましかったよ」

少女「……」

賢者「俺も、俺が生きていることも、きっと勇者がいたからで」

少女「……」

賢者「……お前の話を聞いてさ、俺も……、ずっと考えていた。どうやって、生きるべきか。この生かされた、命で」

少女「……」

賢者「でも、答えが出なくて……」
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/24(月) 01:22:09.30 ID:OPy3ydUv0
少女「……」

賢者「けど、今……、分かった気がするよ」

少女「……」

賢者「……少女」

少女「……」

賢者「俺は、お前を守りたい」


少女が振り返る。

涙でぐしゃぐしゃになった顔。


……少女を見つけた瞬間、賢者は理解した。

いや、本当はずっと前から、分かっていたのだろう。

自分は、少女を大切だと思っている。

泣かないでほしい。

笑ってほしい。

自分を癒してくれた少女の笑顔を、守りたいと思っている。
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/24(月) 01:22:42.19 ID:OPy3ydUv0
賢者「この先、どうなっていくのか、分からない」

少女「……」

賢者「でも、お前が笑って生きるのなら、俺は、お前が笑っていられるように、守ってやりたい」

少女「……」

賢者「……そのために、生きたい」

少女「賢者様ぁ……」


一瞬、驚いた表情を浮かべた少女の顔が、再び泣き顔へと崩れる。


少女「げんじゃ……ひぐっ、賢者様ぁぁ……」

賢者「も、もう泣かないでくれ」

少女「わっ……私……っ! 怖くて……! 本当は……!」


少女は賢者の懐に飛び込んで、泣きじゃくる。

少女「に……兄さん、兄さんが……、いなくなって……! それで、私、怖くて……!」

賢者「あぁ」
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/24(月) 01:23:52.91 ID:OPy3ydUv0
少女「みんな……! 死んじゃうって……! ひぐっ、うぅ……! 死ぬの……怖……っうぅぅ」

賢者「偉いよ、お前は……。怖くても、がんばってる……」

少女「やだよぉ……っ! いやだよぉ……!」

賢者「そうだな……、死ぬのはいやだな」

少女「街も!」

賢者「……」

少女「みんな、泣いてて……! 怖っ……ぇぐ、怖い人たちが……、いっぱいいて……っ! 乱暴してて……!」

賢者「買出し、今度から、俺も付き添うよ……」

少女「えうぅぅ! 賢者様ぁー!」

賢者「……心配ない。心配ないから……」


少女は泣き止まない。

賢者は少女の髪を撫でる。

ふたりは長い時間、そうしていた。

小川は静かに流れる。
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/24(月) 01:24:40.36 ID:OPy3ydUv0




日が暮れかける。

少女の泣き声がおさまると、賢者の腹が小さく鳴る。

少女は笑う。

賢者は恥ずかしそうに顔をしかめる。


賢者「……帰ろう」

少女「はい」


暗くなった森を、二人は行く。

魔術でおこした火が、道筋を照らしている。


少女「……賢者様」

賢者「ん」

少女「死ぬのは、怖いです……」

賢者「そうだな」

少女「……」

賢者「死ぬのは怖いな……」
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/24(月) 01:25:12.58 ID:OPy3ydUv0




それからの二人の暮らしは、今までと何も変わらない。

表面上は。


少女「……〜♪」

賢者「……」

少女「どうしました、賢者様ー?」

賢者「……」ナデナデ

少女「……? え、えへへ……?」


触れ合う時間が増えた。

互いに見つめ合うようになった。

自然と、手を繋ぐようになった。


少女を愛おしく思う気持ちが、賢者の中で膨らむ。

少女もまた、賢者を信頼し、強く心を寄せていた。

……気持ちが通い合うことを、互いに感じる日々。
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/24(月) 01:26:02.91 ID:OPy3ydUv0
今日はここまでです
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/24(月) 01:31:11.73 ID:OREBHw0Jo
乙‼
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/09/24(月) 01:52:02.19 ID:D0/tT7Aro
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/24(月) 03:13:57.61 ID:lTrF/XjIO
おつ
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/09/24(月) 21:23:08.86 ID:0hqmS9Kdo
乙!
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/09/25(火) 10:14:30.06 ID:P9rd4vJVo
リア充爆発しないで
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/26(水) 00:53:09.67 ID:4slxELJ50
少女「賢者様ー、このお部屋ちょっと、掃除させてもらいますねー」

賢者「ん、あぁ……頼む」

少女「失礼しまーす」

賢者「……居間にいるから、何かあったら呼んでくれ」

少女「はい――……コホッ」

賢者「……」

少女「コホッ、ゴホ……、あれ? ケホッ」


ひやりと、賢者の背中に冷たいものが這う。


賢者「少女……」

少女「すみませ……、ケホ、ケホ」

賢者「少女、ちょっと」


手を伸ばし、少女の額に触れる。


賢者「熱がある……」

少女「え」
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/26(水) 00:55:11.90 ID:4slxELJ50
賢者「……少女、ちょっと横になろう。休もうか」

少女「だ、大丈夫ですよ。平気です」

賢者「いいから、さぁ」


ざわつく気持ちを抑え、賢者は優しく、少女の手を引き、寝室へ向かう。


……この頃は、瘴気の影響ははっきりと目に見る形になっていた。

早くも冬が訪れたかのように、朽ち、禿げ上がった森の木々。

病の痕跡を残した、小動物の死がい。


懸念は不安となり、不安は恐怖を呼ぶ。


賢者「……」


魔術で水を凍らせ、氷嚢を作る。

ベッドに横になった少女の額に乗せると、少女は心地よさそうに短く息を漏らす。


賢者「……ほら、ちゃんと肩まで布団をかけないと」

少女「はぁい……」

賢者「暖かくしなくては」
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/26(水) 00:55:58.40 ID:4slxELJ50
少女「ふふっ」

賢者「……どうした」

少女「だって賢者様、すごい困った顔してて……」

賢者「……」

少女「なんだか、珍しくって――……コホッ」

賢者「喋ってないで、寝ないと」

少女「クスクス」


少女は笑みをこぼすが、少し苦しげだ。


賢者「……街に行って、修道女を呼んでくるよ」

少女「だ、大丈夫ですよぉ」

賢者「ちゃんと診てもらわないと……」

少女「でもぉ……」


心細いのだろう、少女は悲しげに眉を下げる。


少女「一緒に、ついていてほしいです」
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/26(水) 00:57:02.39 ID:4slxELJ50
ああ、そうだな。行くのはやめよう。

傍についている。

ここで看病していよう。

賢者はその言葉をぐっと飲み込む。


賢者「……すぐ戻るよ」

少女「賢者様ぁ……」


瘴気に毒されはじめているのであれば、放っておくわけにはいかない。


賢者「……ちゃんと診てもらわないと、よくならないぞ」

少女「うぅ」

賢者「ごめんな。本当に、すぐ戻るから」

少女「約束ですよぉ……」

賢者「あぁ……」


賢者は微笑み、少女の首筋の汗を、指で拭ってやる。

不満げな表情のまま、少女はくすぐったそうに肩をすぼめる。
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/26(水) 00:58:12.84 ID:4slxELJ50




枯れた森を抜けて、賢者は街へ出る。


賢者「……」


街へは、少女の買い物に付き添い、何度か足を運んでいた。

……それでも、変わり果てた街の様子には慣れない。


賢者「……」


いたるところ、目に入る浮浪者。

みな、異国の服を着ている。


あたりにはゴミや汚物が散乱し、悪臭を放つ。

以前は国営の清掃局により、街の衛生は整備されていた。

……行政機能が、麻痺しているのだろう。


警察もいない。

いたるところで、諍いが起こっている。

誰かが殴られ、血を流し、倒れこむ。


賢者「……」


その脇を、賢者は車椅子を急がせて通り抜ける。
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/26(水) 00:59:06.45 ID:4slxELJ50
開いている商店は一軒もない。

どの家も、戸を固く閉ざしている。


ゴホッ――ゴホッ――


浮浪者の老婆の咳。


アアァァァンン――


泣き声。

痩せた子供が泣いている。



悲鳴。

あちこちで、様々な国の言葉の悲鳴が聞こえる。

暗澹とした気持ちを振り払うように、賢者は車椅子を漕ぐ。


――なぁ、あれ――

――あぁ――

――チッ――

――ケンジャ――


賢者「……」
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/26(水) 00:59:59.46 ID:4slxELJ50
賢者に向けられた、冷たい視線。罵倒。

賢者は顧みない。

少女のことを、考える。

ただ急ぎ、息を切らせ、街の中央にある教会へと至る。


賢者「誰か……! 誰かいないか! ……修道女!」


教会の周りは、さらに多くの人で溢れている。

……みな、救いを求めてやってきたのだろうか。


賢者「修道女はいないか! 賢者だ! 修道女に会わせてほしい!」


声を張りながら、教会の戸を叩く。

すぐに、修道女が顔を出す。


修道女「賢者様……! どうなさったんですか?」

賢者「……突然、すまない。頼みたいことが……」

修道女「私に、ですか?」
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/26(水) 01:00:38.86 ID:4slxELJ50
賢者「少女が……身体を壊して」

修道女「まあ……」

賢者「熱があるんだ。伏せっている…………瘴気の」

修道女「……」

賢者「……もしかしたら、瘴気の、影響かもしれなくて……」

修道女「……」

賢者「……診てもらえないだろうか」

修道女「そうですか……」

賢者「……」

修道女「すぐに、馬車を呼びますね」


修道女は微笑む。

以前より、少しやつれた笑み。


賢者「……ありがとう」
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/26(水) 01:02:23.70 ID:4slxELJ50




賢者「……すまない、こんな時に、無理を言ってしまって」


森へ走る馬車の中、向かい合う賢者と修道女。

本心から、賢者は修道女に頭を下げる。


……教会に集まった人々。

彼らは、病人であり、家なき人々であり、飢えた者たちであろう。

教会は、彼らに治療を施し、食料を分け与えていると、賢者は聞いていた。

……あれだけの人数に、施しをするのは、大変な仕事だろう。

不眠不休でも追いつくようには見えない。

修道女の表情にも、疲労が色濃い。


修道女「お気になさらず。聖職にある者の、当然の務めですから」


それでも、彼女は慈愛に満ちた笑みを絶やさない。

……強い人だと、賢者は思う。
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/26(水) 01:03:40.79 ID:4slxELJ50
修道女「……でも、意外でしたね」

賢者「ん……?」

修道女「賢者様は――……、あ、いえ、本人を前に、こんなことを言っては、失礼ですが」

賢者「……」

修道女「気難しくて、あまり人に馴染まないお方だと、聞いていましたので」

賢者「……あぁ」


勇者と出会う前の自身が思い浮かぶ。

才能を振りかざす、高慢で、鼻持ちならない若き賢者――


賢者「……」

修道女「賢者様?」

賢者「……あ、いや、まぁ……、昔はな。できれば、忘れたい」

修道女「うふふ」

賢者「人は変わるものだろう」
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/26(水) 01:04:09.63 ID:4slxELJ50
修道女「そうですね……、いい変化だと思いますよ」

賢者「……」

修道女「勇者様と、出会われたこと」

賢者「……」

修道女「そしてきっと、少女さんと、出会われたことも」

賢者「……」

修道女「……賢者様に、良い影響になっているんでしょうね」

賢者「そうだな」

修道女「すべて、神の差配です」

賢者「……」


修道女の、澄んだ笑み。

賢者は何も言わない。

彼は神を信じてはいない。
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/26(水) 01:04:56.88 ID:4slxELJ50




小屋に戻る。

少女は寝ずに賢者を待っていたようだった。

賢者の顔を見て、少女は安堵の笑みを浮かべる。


修道女「んー……」


……修道女の診察は、簡単なもので終わった。


修道女「風邪ですね」

賢者「かぜ」

修道女「ええ、風邪」


賢者はため息を漏らす。

少し拍子抜けしていた。


修道女「この頃はずいぶん、涼しくなりましたからね。それで、身体を壊したのでしょう」

賢者「そうか……」

少女「……」

賢者「良かった……」
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/26(水) 01:08:42.08 ID:4slxELJ50
少女「もう、賢者様は心配しすぎなんです」

賢者「お前な……」

少女「ちょっとコンコン咳をしたら、あたふたしちゃって。大丈夫だって言ってるのに」

賢者「そんなこと言うか。ならもう、少女のことなんか、心配してやらないからな」

少女「あっ、またそんな冷たいこと言うー! 賢者様の意地悪!」

修道女「うふふ……」


二人のやり取りを、修道女は楽しげに眺める。


修道女「何だか、恋人同士みたいですね、お二人」

少女「!?」


修道女の言葉に、少女は頬を赤らめる。

恥ずかしげに、布団で顔を隠す。

賢者もつい、黙ってしまう。


修道女「あらあら」

賢者「……からかうなよ」

修道女「ふふ……申し訳ありません」
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2012/09/26(水) 01:09:44.02 ID:4slxELJ50
今日はここまでです

中々ペースがあがらず恐縮ですが、気長にお付き合いいただければと思います
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/26(水) 01:21:59.50 ID:6eMAal5IO
おつ
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/09/26(水) 01:33:33.38 ID:IEkaHBH/o
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/09/26(水) 02:28:51.59 ID:bPZxf2IAO
魔王は討ったが勇者以外全滅ってスレがあったのを思い出した
食べ物手に入らなくて魔獣の肉とか食ってだんだん皆狂っていくやつ
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/26(水) 04:01:15.17 ID:7UThnLjRo
あれは凄かったな
また読みたいとは思わないけど
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/26(水) 04:33:42.01 ID:OfbJ1aVEo
>>190
kwsk
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/26(水) 04:39:55.29 ID:r9nbZ+7Ho
あれは壮絶だったな
スレタイ忘れたけど
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage saga]:2012/09/26(水) 06:38:19.74 ID:l+Ob3JVx0
>>190
しかもあれ書籍化されてるんだよなぁ…しかも4作まとめられてるうち一番最初に掲載されてるという」・・・。
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/09/26(水) 09:19:02.98 ID:IEkaHBH/o
>>194
あれ本になってんの?
へー知らんかったわ 勇者ポイントをあげよう
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/09/26(水) 15:25:21.47 ID:QJIT1Qvso
>>194
書籍化っつーから探してみたら同人誌じゃねーかwwwwww
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/26(水) 20:21:46.23 ID:+kbeVF+3o
>>195
勇者ポイントで思い出したわ
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/09/26(水) 21:03:53.29 ID:wR9zcETGo
本編もエグいが僧侶の日記が追い打ちをかけるんだよなあれ
リアルタイムで見てたわ
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/26(水) 21:30:45.83 ID:MGOn8tAco
なにこの流れ
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/09/29(土) 18:33:13.65 ID:2DF5Cuc3o
>>187
ええい!続きはまだか!
すいません続けてくださいお願いします。
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/09/30(日) 19:54:31.29 ID:LsOZN41/o
もう来ないのか
悲しいな
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/09/30(日) 23:18:51.80 ID:EUU239RAO
大人しく待ってようぜ('-ω-)
203 : 【末吉】 [sage]:2012/10/01(月) 01:09:12.16 ID:RMKoBRcDO
HTML化依頼出したのか…、残念だ

いつか続きを書いてくれたら嬉しいのだが…
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/10/03(水) 23:11:54.94 ID:9o1THUrAO
マジで終わりなの?(´・ω...:.;::..
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/03(水) 23:55:52.68 ID:xx94p8oOo
やめるにしてもなんかひとこと言っていけや
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/10/05(金) 10:00:54.06 ID:zZVhCwHAO
王様「>>1が逃げた?」 賢者「はい」
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/10/06(土) 00:36:03.64 ID:fauxBw0Fo
瘴気にやられて人類は滅亡したんだな
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