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マルセイユ 「デビルメイクライ……?」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [saga]:2012/09/17(月) 19:01:53.50 ID:m2hPMuNk0

・デビルメイクライとストパンのクロスです。
・501ではなく、統合戦闘飛行隊「アフリカ」とのクロス。
・DMCキャラもストパン世界で暮らしてる設定。
・DMCの時系列はアニメ、4後。ストパンは「アフリカ」結成直後
・漫画デビルメイクライ3の3巻はいつ出るの?
・キャラ崩壊とか、あるかもしれません。

読んでくれる時は、以上を受け入れる寛容さを持つといいかもです。



遥かな昔から、人々は「怪異」と呼ばれる異形の存在と戦ってきた。多くの神話や伝説として語り継がれ、
人類を脅かしていた。その強大な力に何度も人類は苦しめられた。しかし、怪異の数が少ないこと、そして
魔法力を持つ勇敢な少女たちの手によって人類は幾度となくそれらを退けてきた――

そして、新たな人類の敵……悪魔が突如として押し寄せてきた。怪異と同等ないし、それ以上の力を持つ
多数の悪魔たちには少女たちの力も微々たるものだった。人類はなすすべもなく滅ぼされかけた。
1人の悪魔、スパーダと呼ばれる魔剣士の裏切るまでは。スパーダは悪魔の侵略を阻止し長きに渡り
悪魔を封じて人間を守った。彼が何を思い、仕える魔帝を裏切ったのか。それは誰にも分からない。

時代は流れ、1941年。人類は再び怪異「ネウロイ」と存亡をかけて戦っていた……

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1347876113
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旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
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木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1713351945/

いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713279251/

【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
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こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
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【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713091115/

アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
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エルヴィン「ボーナスを支給する!」 @ 2024/04/14(日) 11:41:07.59 ID:o/ZidldvO
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山口県) [sage]:2012/09/17(月) 19:04:34.06 ID:iHEZlX/zo
全裸期待
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [saga]:2012/09/17(月) 20:21:41.06 ID:m2hPMuNk0
【リベリオン合衆国/ Devil May Cry】

rrrrrrr!

ダンテ 「はい、デビルメイクライだ。」

……またスカか。フォルトゥナの一件以降、悪魔絡みの依頼はとんと来なくなっている。
しばらくの間は古いコミックとピザ、ストロベリーサンデーで自由を満喫していたのだが、
こうも続くと飽きてくる。おまけに、レディからのささやかな報酬もとうに尽きた。
ここのとこ、ツケが心配になっている。

ダンテ 「悪い。9時閉店なんでね。またどうぞ。」

勢いよく電話を切る。合言葉無しの客だ。どうせ素行調査だの類いだろう。
仕事の選り好みはこんな状況じゃよろしくないのは分かってる。だが、今は気分じゃない。
じきに宅配のピザが来る頃だ。次の言い訳はどうしようかと考えた矢先、乱暴にドアが開かれた。

エンツォ「よぉ! しけた面してんじゃないの。ダンテ。アンティークも相変わらずだ。」

モリソン 「ははっ、元気そうじゃないか。儲かってるか?」

ダンテ 「モ見れば分かるだろ。状況は控えめに言って良くはない。」

既に日が沈んで久しいというのに、何事だ。そういいかけたが、どうにか飲み込んだ。
情報屋のエンツォにモリソン。俺の友人兼、お得意様だった。
エンツォは俺が事務所を開く前から、モリソンも長い付き合いだ。
何より、割のいい、俺好みの仕事を持ち込んでくれる。邪険にするつもりは無い。

エンツォ 「まあ、ピザの空箱に酒の瓶……嫁さんでも貰ったほうが良いんじゃねえの?」

モリソン 「パティがブリタニアへ留学して、世話を焼く奴が居ないみたいだ。」

エンツォ 「そういや、あの金髪美人は? トリッシュとか言ったか。」

ダンテ 「アイツならまたどっかで魔具を探してるんだろ。いつも通り。」

ダンテ 「んで、何の用だ。こんな時間に世間話に来たわけじゃないだろう。」

悪い奴じゃあないのだが、二人とも、お節介だ。少しはマトモな仕事をしろと
色々持ちかけてくる。容貌や言動なら、壮年のモリソンの方が少しばかり
大人しそうに見えるがやり方はエンツォよりも強引だ。この間なんて俺宛のピザの
宅配を差し止めて仕事を受けさせたくらいだ。一体どんなコネを持ってるんだ?
まあ、あのガキが来なくなってここもいくらか静かになったのは正解だ。
相棒……仕事仲間のトリッシュも居ない今、寂しくないといえば嘘になるのだが。
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/17(月) 20:47:59.86 ID:r36UOFowo
期待止まらぬ
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [saga]:2012/09/17(月) 20:55:48.82 ID:m2hPMuNk0
エンツォ 「そりゃあ、俺たちだぜ。」

モリソン 「ダンテに依頼があって来たわけだ。」


だろうと思った。しかし、2人が揃って来るのは珍しい。大抵情報屋という人種は
どちらが多くの情報を持ち、どれだけ吹っ掛けるか、出し抜くかを考えるものだ。
安酒場を根城に仕事を受けた時、情報屋たちは決まって担当の曜日を決めていたものだ。


モリソン 「デカいヤマだからな。同業者同士、手を組んだりもするさ。」

エンツォ 「そうそう。エンツォのとっつぁんのよしみだからな。」

ダンテ 「話を聞こう。」


2人の言うデカいヤマ。つまりは悪魔絡みの仕事ということだ。ひとまず
紙などを置いて会話が出来るように、ピザの空箱を床に落とし……もとい
一旦待避させることにした。2人はニヤリと笑みを浮かべた。
俺が高揚したことに気付いたのだろう。俺も隠す気は微塵も無かった。


モリソン 「アフリカって場所は知ってるか?」

ダンテ 「ニュースで見た。ネウロイが来て大変らしいな。」

モリソン 「ああ。ロマーニャやブリタニアにヒスパニア。欧州の下腹だ。
過去には国々がその地を耕し、祖国の食糧を確保するための農耕地として栄えた。」

エンツォ 「適した土地じゃ無かったが、欧州の治水の技術は昔から発達してるからな。」

モリソン 「その通り。その後、色んな事情……戦争とか諸々だ。それによって土地は荒れ、
再びアフリカは砂まみれの場所に逆戻りってわけだな。」

ダンテ 「俺は歴史の授業を受けているらしいな。」

モリソン 「まあ、最後まで聞け。そこにネウロイだ。人類は互いに戦争なんて遊びをする暇はなくなった。」

エンツォ 「言ってみりゃタマを狙われたわけだからな。」

ダンテ 「タマ?」

エンツォ 「ああ。大陸のネウロイを抑えるに精一杯なのに下からも来てみろ。」

エンツォ 「これをタマ狙いと言わなくて何だ。」

ダンテ 「ああ。そうだな。とするとリベリオンは恵まれているよ。人様のタマを守る余裕があるんだ。」


ネウロイ……1939年に突如として現れたバケモノ。ネウロイは欧州を初めとして多くの人の住む地を
奪っていった。圧倒的な物量でもって国を蹂躙し、ダキア、オストマルク、カールスラントを潰した。
ガリアも風前の灯火だそうだ。足並みが揃っていないのも理由だろうがね……
飛行型のネウロイがごまんといるのに、マジノ線なんて要塞を作ったのはまあ……何だ。
しかし、リベリオンは未だに本格的な攻撃を受けていない。そのせいかいくらか国民は楽観的だ。
さすがに危ないと思ってか、最近は本格的な支援を始めたそうだが。


モリソン 「そこでだ。お前もアフリカに行ってくれないか?」
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/09/17(月) 21:01:10.16 ID:g+/o0QbW0

マルセイユがんばれー!
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [saga]:2012/09/17(月) 21:09:12.64 ID:m2hPMuNk0
ダンテ 「……近々、リベリオンがアフリカに支援を送るってあれか?」

モリソン 「それと一緒に船で行」

ダンテ 「断る。軍に入る気はない。」

エンツォ 「待てって。とっつあんの話は終わってねえぞ。」


モリソンはテーマパークに行ったはいいが、お気に入りのアトラクションに乗れず
文句を垂れた子供をあやすような困った笑みを浮かべている。あいにく、俺には
テーマパークも子供も縁は無いが。正直、少しだけイラッとする。……待てよ。
もしかするとパティの面倒を見る俺も同じ笑みを浮かべていたのだろうか。
少し悪いことをしたかもしれないな。


モリソン 「そう焦るな。人の話は最後まで聞くもんだろう?」


トーベ・ヤンソンの書く妖精トロルの父親みたいな口振りだな。


モリソン 「別に軍へってわけじゃない。ちょいと乗せて貰うだけだ。」

モリソン 「お前さんにはアフリカへ行って“アフリカ”に協力してもらいたいって依頼だよ。」

ダンテ 「アフリカで“アフリカ”に? 言葉遊びって気分じゃ無いんだが。」

エンツォ 「アフリカって部隊の名前だよ黄色の14。マルセイユの飛行隊だ。」

ダンテ 「だとしても、軍の手先ってことだろう。俺がそういうの苦手なの知ってるだろ。」

モリソン 「指揮権は独立している。部隊も結構寛容だ。女性に手を出さない限りは。」

ダンテ 「気が乗らない。ネウロイ退治はウィッチの仕事だろう。」

モリソン 「……アフリカに、悪魔が現れた。としてもか?」

ダンテ 「……悪魔?」
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [saga]:2012/09/17(月) 21:27:45.78 ID:m2hPMuNk0
悪魔……魔界から来る異形の怪物たち。幾度となく現れては世界を引っ掻き回す。
何より、俺の母さん……そして兄の敵。兄の方は複雑だが、悪魔が俺から家族を
奪った元凶なのは間違いがない。それがアフリカの混乱に乗じて……

ダンテ 「それは本当か?」

モリソン 「俺が嘘をつくのはお前さんが嘘をついたときくらいだ。」

モリソン 「ここんところ……アフリカ各地で奇怪な死に方をするって噂があってな……」

エンツォ 「あるものは黒焦げに、あるものは氷付けに……死体が生き返るなんてのもだ。」

ダンテ 「ゾンビか。面白い。元祖はアフリカだ。」

モリソン 「確かにブードゥー教はアフリカだ。」

モリソン 「だが……これで分かってくれたか?」

ダンテ 「……報酬と依頼主を教えてくれ。」

モリソン 「ジョージ・パットン将軍。アフリカのリベリオン軍きっての依頼だ。」

エンツォ 「まあ、アフリカに行ったら変な死に方をするってのにビビって士気が下がるのを恐れてだろうな。」

ダンテ 「そいつはいい。なんなら十字架と黒いローブでも着て行こうか?」

エンツォ 「エクソシストはもうちょい大人しいぜ。報酬は80万ドル。20万と往復の船が前金だとさ。」

ダンテ 「……乗った! 」

モリソン 「話が早い。これが前金と、ついでアフリカでの合流の目印の許可証」


モリソンは唇を歪めたまま、机の上に札束となにやら細々とした書類を置いた。
パラパラと紙をめくると、なにやら女の子の写真もある。恐らく、“アフリカ”の
隊員の情報だろう。さすが、気が利いている。


ダンテ 「オーケー。装備は少しばかりヘビーでもいいだろ。」

モリソン 「お前さんが思うようにすればいい。」
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [saga]:2012/09/17(月) 21:41:37.71 ID:m2hPMuNk0
思い立ったがなんとやら。俺は立ち上がり、部屋に飾ってあるショットガン、ガントレットetc
使えそうな道具をひたすらかき集めた。いつも通りのこの感覚が心地いい。高揚と血のたぎり。
悪魔への少しばかりの憎悪と恐怖。


モリソン 「ダンテ……船が出るのは、3日後だ。」

ダンテ 「……へい、先に言ってくれよ。」

モリソン 「……すまん。」


ああもう。変な空気になってしまった。気まずい。俺の早とちり原因なのだが。
どうやってこの空気を払拭すればいいだろうか……


配達 「ダンテさーん。お届けです。辛口サラミピザバジル風味のLサイズ。」

ダンテ 「良いところに来た、バイト君!」

配達 「は、はあ……サインお願いします。あと、代金は……」

ダンテ 「安心してくれ。今日はのしつけて払うさ。」


ひとまず、変な空気を払い空腹だったことを思い出させてくれたバイト君には感謝を
しなければならないだろう。ツケていたピザの代金と、紙幣を数枚握らせておく。


ダンテ 「店長にすまんって伝えてくれ。」

配達 「わ、分かりました……ま、毎度ありー」

モリソン 「あの配達君、凄い驚いてたな。まるで夏にひょうを見たような。」

エンツォ 「どんだけツケがあったんだよ、ダンテ……」

ダンテ 「細かいことはいいだろ。禿げるぜ。」

10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [saga]:2012/09/17(月) 22:08:08.31 ID:m2hPMuNk0
ダンテ 「それよりも。折角来たんだ。たまには野郎だけでの酒もいいだろう。」

ダンテ 「肴はヘビーなのがある。」


久々の仕事に俺は少し気分が良かった。熱々のピザ指差してから向い合わせのソファー(兼ベッド)と
机へ足を運び、小型冷蔵庫から冷えたビールと出来合いのサンドイッチを取り出してぐったりとよりかかる。


モリソン 「ブドワイゼルか……悪くない。」

エンツォ 「本場じゃリベリオンのバドワイザーはそれ名乗れないんだっけか?」

ダンテ 「らしいな。」

モリソン 「金が無いのに、よくいいビールがあるもんだ。」

ダンテ 「何でもいいだろ。さ、開けよう。」


返事は2つのプシュッっという心地のよい音だった。俺も思いきって開け、音を楽しむ。
誰からともなく、ビールの缶を突き付けあった。音頭が誰を取るかで少し揉めた。
結局は、俺になったらしい。なんでもこれを壮行式がわりにしようと言うらしい。


ダンテ 「それじゃ、依頼の成功を祈って……」

「「「乾杯。」」」


話題に関しては事を欠かなかった。フォルトゥナで出会った奇妙な坊やのこと。
そこで俺と坊やが神様を名乗るデカイ像をぶっ壊したこと。それや、最近の
パティ……俺が少し面倒を見ていた少女の近況。それを話している内に夜は開け、
将軍に伝えることがあると言って帰って行った。


それから2日後


ダンテ 「デカい依頼はひと波乱あるってのがジンクスだが……今回は平和だ。悪くない……」


大きな輸送船に乗り、その中の俺に割り当てられた小さな部屋のベッドでゴロリと
寝転がった。腹の底から響く機関の音を聞きながら、平和な船出も良いと思う。
部屋を荒らされ事務所が崩れたり、美女がバイクで突っ込んだり、ピザを取り上げられ、
魔剣を持ち去られることもない。いいね。平和万歳。

これから当分はこんな怠惰を謳歌出来ないだろう……まだ見ぬ悪魔を宙に思い浮かべ、
傍らに置いた白い銃をそいつへ向けた。

「さてと。Let's Rock……だ。」

カチリと引き金の引く音が響き、船の音にかきけされた。
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) :2012/09/18(火) 00:07:11.07 ID:LFuByaZW0
期待してます
坊やの話も見てみたいなー
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山口県) [sage]:2012/09/18(火) 00:16:07.04 ID:fEYzshZ5o
ダンテがアフリカ行きならネロやバージル兄貴は何処だろ?
ゲストキャラにベヨ姉とビューティフルジョーも入れたりして
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/18(火) 00:24:56.72 ID:JNgKSQ73o
期待
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2012/09/18(火) 00:51:37.91 ID:+soB2YyU0
扶桑からアマ公がですね
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/18(火) 01:10:56.13 ID:SG0i8U/G0
日本から成歩堂がですね
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/09/18(火) 01:53:54.39 ID:9567sIX2o
どこの学園都市にする気だよ
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/18(火) 02:55:44.18 ID:gP1JSOC/o
おつ!

カールスラントの方にも誰かいくんじゃん?
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [saga]:2012/09/18(火) 20:17:28.50 ID:qrH5uiof0
――
――――

船……それも軍の輸送船というものは、存外退屈なものだ。船内はPXで買ったらしい煙草を
プカプカさせている野郎ばかりだ。健康についてとやかく言う気はない。いつくたばるか
分からないんだ、数十年先のガンを気を付けるなんてアホらしい。だが、俺は生憎、
嫌煙家なんでね。食事だってSPEMとパサパサのパン、脂っこいハムステーキ。
これでもかなり贅沢な方らしいのだが、俺にはジャンクフードの方が口に合うってもんだ。
そして、しゃきしゃきした新鮮な野菜も少し恋しいところだ。
暇潰しといえば、即席シアターのプロパガンダ映画としけた金や嗜好品を賭けたポーカー。
これも数日で飽きてしまった……予習がてら、「扶桑海の閃光」は何度か繰り返し見た。
主演の子の衣装がなかなかセクシーだったのが印象的だったかな。


ダンテ「しかし、“アフリカ”ね……」


しかし、仕事をサボっている訳ではないと主張はさせてもらおう。退屈な船旅の間、
俺はモリソンとエンツォから託された部隊の資料を読んだりもしていた。仕事熱心だろ?
件の部隊“アフリカ”の創設理由は至極単純だった。飛行隊長である、アフリカの星マルセイユが
自由に飛ぶための遊撃部隊。それだけらしい。恐らく、隊長のヒガシこと加藤圭子大尉は
とてつもない苦労があったのだと想像がつく。軍隊は戦う前に巨大な官僚組織ということは
言うまでもない。マルセイユ中尉の鶴……もとい、鷲の一声でどうこうできるものではない。


ダンテ 「マルセイユのマルセイユによるマルセイユのための部隊……」

「お嬢さんがた ! そろそろ陸だ。マスかきを止めて降りる準備をしろ。」


某の言葉を借りればそういうこと……おっと。どうやら、そろそろ目的地の港へ到着らしい。
準備は整っている。ギターケースに、ホルスターに収まった銃。小さなアタッシュケースと、
とびきりの玩具が入った鞄……すぐにでも陸に足をつけたい気分だ。船は苦手だ。
さてと、そろそろ本番だ。長い語りを読んでくれてありがとな。
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [saga]:2012/09/18(火) 20:32:19.00 ID:qrH5uiof0
【リベリオン合衆国/ Devil May Cry】

「ダンテ。いないの?」


1人の女性が、体に似合わない大きなバイクを事務所の前へ止めた。
いつもならチカチカと如何わしい雰囲気を放つネオンが点灯していない。
女性は不審に思い、扉へ近付いた。あの男のことだ。もしかしたら、
電気を差し止められたのかも……ありえない話ではなかった。そっと
扉を押すと意外にも扉は開いていた。無用心にも程がある……いや、
端から見ればガラクタとゴミばかりの家に入るほど飢えた奴は居ないだろう。
これまた失礼な事を思いながら、部屋の中をぐるりと見渡す。


「ダンテ! 寝てるの……あら。」


偶然鏡の自分と目が合った。胸元辺りに変な文字が刻まれている。
それが鏡に口紅で書かれたものだと気付くのにさして時間はかからなかった。
「現地集合だ。 ダンテ」とだけ書かれた書き置き。過去に女がダンテに向けて
送ったメッセージ、そのことへのささやかな仕返しというところだろうか。


「へぇ……」

女は舌を覗かせて唇を湿らせた。絹糸のように柔らかな金髪が
小さなプラズマによって微かになびいた。
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [saga]:2012/09/18(火) 20:54:48.81 ID:qrH5uiof0
【トブルク】

暑い。とにかく暑い。退屈な船旅におさらばできると思った矢先がこれだ。
ここは北アフリカの防衛の要であるトブルク。海を隔てた地中海の肥沃な土地とは
対称的な、不毛の土地だ。それでも、防衛の要所だけあって活気は溢れている。
油の匂いと火薬の酸っぱい匂い。俺にとってもなかなか馴染みの深いものだ。


ダンテ「お迎えは、予定じゃもう少し後か。しめて2時間。」


ここから、最前線であるハルファヤ峠は140kmほど。しかし、目的の“アフリカ”の本拠地は
存外近くにある。それでも、数十kmは離れている。おまけに丘の上にあるので、徒歩では少しキツイ。
熱い砂の上では歩くだけでもカリカリに焼けたベーコンのようになってしまう。
幸いながらここは人も盛ん。空港や港もあるのでそれなりの設備は整っている。
日は傾きかけているがまだ暑い。どれ、しばらくは日陰にでも寄って涼もうじゃないか。


ダンテ 「ったく、どうせならコートの下は裸のが気分は良かった……ダメか。」


いいかけて、やはりマズイと思った。暑い砂が腹を打つのはゴメンだ。
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [saga]:2012/09/18(火) 21:11:10.87 ID:qrH5uiof0
「お待たせしました。えっと……ダンテさん、ですよね。」

夕暮れ時になると、改めて裸にコートでなくて良かったと思う。今度はすげえ寒い。
さすがアフリカ。人類がここを離れて行こうとしたわけだぜ。……いや、昔はここも
緑に溢れていたらしい。とてもじゃないが、信じられない。
目の前の若いブリテン兵がお迎えなのだろうか。リベリオンは丸投げらしい。まあ、
悪魔狩りなんて他所から見れば眉唾な仕事を請け負っているような奴に割く暇はない。
そんなところだろう。


ダンテ 「ああ。マルセイユ中隊もとい、“アフリカ”まで頼むよ。」

「僕はガードナーです。よろしくお願いします。」


ガードナーとやらは、不審そうな目を向けてくる。


ダンテ 「やっぱり、悪魔退治ってのは信じられないか?」


ガードナーはふるふると首を降った。明らかに、怯えている。
俺にではないことを祈りたいが。


ガードナー 「いえ。最近はおかしな死に方をする人が多くて……」

ダンテ 「……オーケー少年。君らが安心してネウロイと戦えるようにするのが俺の仕事なんでね。」


指で鉄砲の形を作り、おどけたように撃つ真似をしてみせる。そこでようやくガードナーは笑った。
悪魔をぶっ飛ばす理由がまた1つ出来た。他にもこうして怯える兵士もいるだろう。そうなっては
生き残れる戦いも勝てない、生還出来ない。俺が剣を振るい、銃をぶっぱなせばガードナーのように
怯えて過ごす人間も減る。士気だって戻るだろう。悪くない話だ。


ガードナー 「それと、ダンテさんは、ギターとかを弾くんですか?」

ダンテ 「まあ、少しな。R-指定のカゲキなものをね。」


あながち、嘘じゃないよな?
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [saga]:2012/09/18(火) 21:26:18.71 ID:qrH5uiof0
後部座席に乗り、ガードナーの運転で基地まで運んで貰う。楽チンだ。
所々には看板が見える。ほとんどは「世界最高の飛行中隊」だの、似たり寄ったりの
看板だ。どうやら、評判や士気、実力は折り紙つきらしい。でなければこんなものを
置きはしないだろう。


ガードナー 「マルセイユ中尉に会えるなんて、羨ましいですよ。」

ダンテ 「そうなのか? お前もラブレターでも書けばいいだろ。」

ガードナー 「そんな、畏れ多いですって! マルセイユ中尉は僕ら兵士の希望なんです。」


なるほど、ここでのウィッチはかなり神聖視されているらしかった。分からなくはない。
少女たちが空を、陸を駆け、颯爽と強大な敵を打ち倒す。まるでコミックだ。


ガードナー 「きっと、彼女が墜落したら、ハルファヤ峠……いや、アフリカ中の兵士が」

ダンテ 「分かったから、前を見てくれ、ハンドル!」

ガードナー 「わわっ!」


ガードナーは身振り手振りでマルセイユ中尉の素晴らしさを語ってくれた。
それはもう、車を建物にぶつけそうになるくらいにだ。もう少し指摘が遅れたら、
マルセイユ中尉どころではない惨事になるところだった……


ふと、血の臭いが鼻を突き刺した。臭いの主は危うく突っ込みかけた店だろう。
下へ続く階段が見える。よろしくない酒場にありがちなものだ。
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [saga]:2012/09/18(火) 21:43:28.45 ID:qrH5uiof0
ダンテ 「ガードナー。この店ってのは? 階段の下は酒場か。」

ガードナー 「ええ、まあ。あんまりいい噂は聞かないですけど……」

ガードナー 「常連以外で入った客は、帰ってこないとか。そんな類い。」

ダンテ 「ありがちだが、暴力バーにしちゃ、ハードだな。」

ガードナー 「なにか、あったんですか?」

ダンテ 「気にするな。少しここへ寄ってもいいか? お前は待ってろ。」

ガードナー 「ダンテさん!? 急にどうして」

ダンテ 「なに、ピリピリしてるお客さんがたに一杯奢るのさ。」

ガードナー 「危険だって言ったばかりじゃないですか。」

ダンテ 「10分待ってろ。それまでにゃ戻るさ。絶対、動くなよ。車からも出るな!」


ガードナーの静止を振り切って、俺は階段を駆け降りた。予想通りというべきか。
血の臭いがさらに強くなった。ドクンと、体の奥が疼いたような気がする。
間違いなく、ここはクロだ。ウォーミングアップにはちょうどいいだろう。


店主 「……上が騒がしかったが、アンタの仕業かい?」

ダンテ 「すまないな。連れが少し疲れてるんだ。」

ダンテ 「お詫びに、皆に一杯奢ろうと思ってさ。どうだ?」

客 「悪くねえ……」

客 「……ご馳走になるよ。」

ダンテ 「俺には、ストロベリーサンデーを。」


クスクスと含み笑いが漏れた。そういえば、昔もこんなことあった。


ダンテ 「ここは酒場だ。ガキの来る場所じゃない……ってか?」

店主 「ああ。酒を頼みな。」

ダンテ 「酒場にしちゃ……血の臭いが鼻を苛めてくるな?」


途端に空気がはりつめた。客も、平気なようにタバコをふかしているが、
彼らの筋肉がほんのすこし、強ばったのを感じた。まるで誰かに飛び掛かるため。
獲物を襲うネコ科動物よろしく、だ。獲物ってのは俺だろう……
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [saga]:2012/09/19(水) 22:29:39.88 ID:XUyH5eWA0
店主 「……まあ、食えよ。ストロベリーサンデーだ。」


意外にも、店主らしき男はカウンターに座った俺に気前良く、カップを置いた。
赤と白のコントラストが色鮮やかで美しいと言いたいところだが……こいつは食えない。
赤黒いソースには見慣れた、気分の悪くなるようなドロリとした粘性がある。


ダンテ 「冗談じゃねえぞ……食い物は粗末にするもんじゃねえぜ!」

店主 「そうかい!!」


その言葉が引き金になったのだろう。店主は俺に勢い良く鋭い爪を振るった。
背後で椅子の倒れた音がする。生臭い吐息も後ろに感じる。ビンゴらしい。
間違いなく、この連中はクロ。さてと、久々の運動だ。


ダンテ 「玩具を使うまでもない! ってな!」

振るわれた爪を近くの灰皿で受け止める。鼻先1cmで爪は止まった……
予想通り、三下だ。爪の刺さった灰皿を店主……もとい悪魔ごと持ち上げて
背後に叩き付ける。坊や直伝の即席バスターだ。あんな腕は無いから小道具は借りたがね。
うおう、だの変な呻き声が聞こえる。大当たり。


店主 「ぐおっ!……クソ野郎が!」


おーおー。威勢だけはなんとやらってか……元気の良いこった……そうでもないか。
起き上がった途端に飛びかかってくる。かなり鈍い。さっきので脳震盪でも起こしたか?
お陰で、そいつの鼻頭に簡単に回し蹴りを叩き込むことができた。
その勢いを活かしたままもう一回転して回し蹴り。またまた一回転……


ダンテ 「9……10……11……12……13っ!!」


しめて13発の蹴りが悪魔の頭蓋を砕いた。最後の一発は顔へのケンカ・キック。
湿った音が響いて人間の顔を保っていた眼窩から、涙よろしく血が流れた。
デビルメイクライ。悪魔も泣き出すってのは伊達じゃないってこった。
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [saga]:2012/09/20(木) 07:50:35.56 ID:u5H+4SP50
未だにストパンキャラがモブに等しいガードナー君だけなのをお許しください。


悪魔 「ウソだろ……おめぇ……ただの人間じゃねえのか!?」

ダンテ 「……どうやら、マジで雑魚らしいな。とんだモグリだ。」

ダンテ 「もしくは、とんでもない田舎者か?」


魔界では反逆者……こっちでは英雄であるスパーダの息子。それだけでもネームバリューは
あるし、ましてや敵討ちの名目でデビルハンターを生業なんて、扶桑のサムライ映画みたいな
ことをやってたら結構俺も有名になっていると思うのだが……最近仕事をしていないせいか。


悪魔 「やろう……そのニヤケた面をズタズタにしてやる!」

ダンテ 「おいおい、悪役の代名詞だなそれ。ボキャブラリーが貧相って笑われるぜ?」

悪魔 「死ねぇ!!」


彼らのおおよその実力は分かった。ハッキリと言うならば、雑魚だ。恐らく高位の悪魔と
対面したことさえない、魔界のチンピラ上がりってとこか。かといって、いくらショボくても
間違いなくコイツらは人の命を奪っている。ここらで片付けなくてはいけない。
見よう見真似で繰り出したジュウドーに悪魔は面白いように倒れてくれた。


ダンテ 「ここの床はよく滑る。そうは思わないか?」


倒れた悪魔を片足で踏みつけ、それをボードがわりに床を蹴る。こうしてはしゃぐのは久し振りだ。
近くにあった酒瓶を掴み、フリーライドの速度に乗せて別の悪魔の顔面に叩き込む。一丁あがり。
俺を乗せてくれた悪魔君はそのまま壁とキスをした。これでもうひとつ。


ダンテ 「……ウエスタン映画みたいに割れないのな。コイツ。」


瓶ってのは結構頑丈らしい。まあ、何でも良い。悪魔たちは溶けて跡形も無くなっている。


ダンテ 「しっかし、銃を使うまでもないってのはね……期待外れだ」
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [saga]:2012/09/20(木) 22:52:50.07 ID:u5H+4SP50
さてと。ノルマはどうだろうか……はしゃぎすぎたせいか、時計は壊れている。
しかしまあ、ここにもう人が来ることはない。少しずつ忘れ去られ、風化していくだろう。


ダンテ 「今度店を開くなら、もうちょいマシなストロベリーソースを用意するんだな。」


狭い店のなかに俺の声だけが響いた。外は肌寒いどころではなかった。そういえば、
アフリカというものは昼は摂氏50まで、昼は氷点下まで落ち込むことも珍しくはないらしい。
こんなとこでも、適応していくとは、体はともかく人間ってのはタフな生き物だ。


ダンテ 「待たせたな。結構喜んでくれ……おいおい。勘弁してくれっての……」

悪魔 「久々にダチと会おウとしタら、騒ぎが聞こエてな……」

ガードナー 「ダ、ダンt」

悪魔 「喋ルな。」


多分、悪魔はこんな感じのことを言っていると思う。というのも、
発音が不明瞭だし、ペチャペチャ音を立てて喋りやがる。しかし、
無関係のコイツが巻き込まれたのは正真正銘、自分の落ち度だ。
遊びすぎて外にまで気が回らなかった。1つだけ言い訳させてもらうと
ここ最近は護衛だのをしたためしがなく、1人の仕事に慣れていたとだけは
言わせてもらおう。言い訳おしまい。
まずは悪魔から人質の開放の交渉か……仲魔に出来るわけでもあるまいし。
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [saga]:2012/09/20(木) 23:07:37.77 ID:u5H+4SP50
ダンテ 「……まあ、なんだ。そいつを放してやってくれないか?」

悪魔 「断ル。」

ダンテ 「んじゃあ、こういうのは。俺が人質になるからそいつを」

悪魔 「断ル。」


っかー。映画やコミックみたいにトントン拍子に話は進まない。
想像はしてたけどな。下級悪魔の大半は物を壊すことにご執心だ。
理性的な会話ってのを全然してくれないもんだ。
遠くでプロペラの音が聞こえた。


悪魔 「デモ、お前、見たこトあル。」

悪魔 「銀髪に…赤いコート……どこかで聞いタ……」

ダンテ 「ヒントをやろうか?」

悪魔 「ウーン……」


バカで助かった。悪魔は考え込んでいるらしい。助けるチャンスかとも思ったが
そいつは難しそうだ。なにせ爪はしっかりと首の皮を狙っていて、いつでも
ぷすっと突き刺せるようになっている。間合いは10m程。流石に指を数ミリ動かすのと
競争をしてみようとは思えない……人の命もかかってるからな。
プロペラの音がさらに大きくなった……随分低空を飛んで……俺に手を振っている。
……面白い。少し彼女に任せてみようじゃあないか
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/21(金) 02:16:19.65 ID:xXeKPzqq0
報酬は80万ドルか。この時代なら現在の価値で20億円以上はあるな。一生遊んで暮らせる
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [saga]:2012/09/21(金) 07:42:28.27 ID:W0wRFjn60
悪魔 「おっ! オマエ、まさカ……」

ダンテ 「どうした? ジョン・バジロンじゃあねーぞ。」


よし、悪魔の注意はこっちへ向いている……音から察してもう少しだ。
さあ、こい頼むよ! 早くしてくれ。


悪魔 「オマエは……」

「ちょっと、うちの足に怪我させないでよね。」

悪魔 「……れ?」


一陣の突風とエンジン音が目の前を通り過ぎる。風圧でコートがめくれあがった。
風が収まるころには悪魔の抱えた若者の姿はない。いい仕事をしてくれるよ、全く。


ダンテ 「そんじゃ、思う存分に!」

悪魔 「間違いねえ……オマエ、ダンて」

ダンテ 「ジャックポット!」


姿勢を低くし滑るように悪魔へ肉薄。がら空きになった腹部を見据えながら
腰の二挺拳銃を引き抜く。月の光に「BY .45 ART WARKS」と「FOR TONY REDGRAVE」
の刻まれた文字が照らし出される。引き金を立て続けに絞る。灯りが月の光だけという
素っ気ない町並みを無数のマズルフラッシュが鮮やかに彩った。
ようやく名前を知っている悪魔に出会えた。こうでもなきゃ張り合いが無いってもんさ。


「ちょっとアナタ! いくらなんでも人間に銃を使うなんてのは流石にアレじゃないの?」


いけね、ギャラリーがいることをすっかり忘れていた。助けてくれたことは嬉しいが、
こうなるだけに少しばかり面倒だ。しかし、今しがた運転手を助けてくれたウィッチにも
知る義務がある。くすんだ癖の強い猫っ毛にゴーグル……とすると彼女は。


ダンテ 「よう、アンタが“アフリカ”の隊長さん。扶桑海の電光こと加東圭子かい?」

圭子 「ええ。うちの部下ってわけじゃないけど。仲間を助けてくれたことには感謝するわ。」
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/21(金) 14:18:09.33 ID:sPMX/GmIO
文章読みやすいしかっこいいし良スレ
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/21(金) 19:58:56.80 ID:CjUvJnMSO
鬼ぃさんは出ますか?
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) :2012/09/22(土) 01:02:21.76 ID:JiEBS+vA0
時間軸的に4の後だからバージルはとっくの昔に死んでるだろ
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/09/22(土) 02:40:10.98 ID:afsDg3TNo
また生きてたことにすれば問題ないだろ
悪魔なんだし
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [saga]:2012/09/22(土) 08:43:59.67 ID:GzOuoMdD0
圭子「ケイって呼んでくれてもいいわ。“扶桑海の電光”は止めてくれる?……ちょっと恥ずかしいし。」


そう言って圭子は照れ臭そうに笑って両手を合わせてウィンクを送る。
へえ……落ち着いた風貌の割には可愛いところもあるじゃないか。


ダンテ 「分かった、ケイ。俺はダンテ。パットンの依頼でこっちに来た。」

ケイ 「話には聞いているわ。悪魔ってのが実在するかは知らないけどね。」


ケイは少し訝しむようにこちらを見つめている。悪魔の存在に懐疑的なことは
十分に理解している。なにせ悪魔の証明なんてパラドックスで遊ぶような奴もいる。
だが、悪魔ってのは身近に潜み、少しずつ周囲を崩していくもんだ。例えば白蟻の様に。


ダンテ 「エクソシストみたいにローブでも被った方がよかったか?」

ケイ 「ええ。その赤いコートとシルバーアクセサリーは悪魔狩りってのにはね……」

ダンテ 「アクセサリーは魔除けだ。どうだ、これならそれっぽく聞こえないか?」

ケイ 「ごめん、見えないわね。」

ダンテ 「だろうな。ま、手っ取り早く悪魔ってのを見せてやるよ。さっきの死体を見てみな。」

ケイ 「……っ!?」


ケイ 「死体が……消えている?」
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/23(日) 01:37:11.50 ID:itLQldcwo
俺得スレ
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [saga]:2012/09/23(日) 03:12:59.58 ID:ZEU9Owgm0
ダンテ 「マジックは苦手だ。信じてくれたか?」

ダンテ 「悪魔は殺すと消える。人間と違って魂が体を形作っているわけだ。」

ケイ 「つまり……抜け殻となるものが無いってことかしら。」

ダンテ 「鶏が先か、卵が先かってね。」

ケイ 「それと、この不細工な固まりは?」


聞き終わらないうちにケイはライカ……つまるところのカメラを取りだして
節操なく写真を撮っている。新聞社がこんなオカルトを扱うのかね。
それとも、三流ゴシップにもコネがあるのだろうか。


ダンテ 「どっかに投稿する気か?」

ケイ 「ただの趣味よ。悪魔なんて、一般で認められるのにはきっと何十、何百年かかるのかしら?」

ダンテ 「ごもっとも。まあ、その赤いのはレッドオーブ……悪魔の血の一部だ。」

ケイ 「一部?」

ダンテ 「混じり物無しの血は蒸発しちまうからな。銃弾のジャケットとか、いろんなものが混ざった成れの果て。」

ダンテ 「顔についてはそっとしておけ。じきに可愛いと思えるさ。」


もっとも、俺は可愛いなどと思ったことは無いのだが……
37 :ダンテのポーズはガン=カタのアレ [saga]:2012/09/23(日) 21:36:49.58 ID:ZEU9Owgm0
ガードナー 「け、ケイさん……ありがとうございます。」

ケイ 「ダンテさんにも言うべきじゃないかしら?」

ダンテ 「さんってのは止めてくれ。俺もケイって呼んでるだろ。」

ケイ 「そ。じゃあ、よろしくね、ダンテ。」


俺は女運があまり良いとは言えない。いや、悪いと言い切ろう。思えば酷いことづくめだ。
初対面の相手にミサイルを撃たれたり、眉間に9mmをぶちこまれたり、バイクで事務所を
滅茶苦茶にされたり、簡単な護衛の筈がややこしい遺産のトラブルで大立ち回りをしたり
……頭が痛くなってくる。あいにく頭痛薬は持ってきていない。とにかく彼女、ケイに関しては
そういったゴタゴタは起こりそうにない。今のところ。


ケイ 「とりあえずダンテ。はい、ポーズ。」

ダンテ 「こうか?」

ケイは突拍子もなくライカを向けてきた。ひとまず、エボニーとアイボリーの
グリップを上下に向けて撃鉄同士が重なるように合わせる。十字架の完成だ。
祈ったりするよりも早く悪魔どもを蹴散らせる。素晴らしいご利益だ。
パシャッと軽い音が響き、ライカの下に隠れたケイの満足そうな表情に陰影が浮かんだ。


ケイ 「うん、上出来かしら。焼き増ししとく?」

ダンテ 「遠慮しとくよ。記念撮影にしては物騒だ。」

ケイ 「同感。ところでガードナー君。これからどうするの?」

ガードナー 「えっと、ダンテさん……じゃなくて、ダンテをケイさんの基地に。」

ケイ 「そう。私も乗せてってくれない? ストライカーもあるから、後ろにでも。」

ガードナー 「……ダンテはそれで?」

ダンテ 「アファーマティブ……肯定ってこれでいいか?」

ガードナー 「コピーとかのが、メジャーかも……取り敢えず乗ってください。二人とも。」

ケイ 「感謝するわ。ガードナー君。今度またティナの写真を送ってあげるから。」

ケイ 「やっぱりあがりで飛ぶのは辛いわ。」

ガードナーの横顔に一瞬深い笑みが浮かんだ。なるほど。人気の具合が知れるってもんだ。
にウィッチの写真ってのは士気とかに深く関係するってのはよく聞く。特に人気なのは航空歩兵だ。
華麗に空を舞い、人々を守る……ヴァルキリーだの神に愛された少女たちだの。よく言うもんだ。
ただ、忘れちゃいけないことだってある……神様とやらがいるかは知らないが。


ダンテ 「天に近いってことは最も死に近いってことだ。」

ケイ 「どうしたの?」

ダンテ 「独り言さ。」


俺は彼女たちが心置きなく空を守れるようにするのが仕事だ。
さてと、これからは少しばかりハードそうだ。


ダンテ 「着いたら起こしてくれ。長旅で少し疲れたんでな。」


To be continued
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [saga]:2012/09/23(日) 21:46:36.31 ID:ZEU9Owgm0
次回予告

ウィッチってのは兵士にとっての憧れだ。しかし、彼女らをワルキューレ……

つまるところの戦乙女。死を決め戦士をヴァルハラに導く者なんて言うのは失礼だと俺は思う。

彼女らを神に愛された少女だと言う奴もいる。とすると神様はいつか彼女たちを自分の元に

置きたいってことなのか? それも縁起が悪いって話だ。まあなんだ。俺が言いたいことは

ウィッチだろうと装甲脚を脱げばどこにでもいる女の子ってことさ。


1話 Stern von Afrika
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [saga]:2012/09/23(日) 21:52:51.95 ID:ZEU9Owgm0
てなわけでプロローグでした。ウィッチに先だって小説にしか出ないモブをでばらせてごめんなさい。
掴み所がないだけにダンテのはっちゃけとか、一人称の語りとか冒険しすぎたきらいはありますが、
それでもって方はゆっくりお付き合いください。勢いで書いちゃうタイプなので更新は遅いです。
少し詰まっていた別SSがまとめられそうなので、そっちを書き上げてからコツコツとね。


ワールドウィッチでは加東さんが好きです。
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/23(日) 22:17:34.39 ID:JIRvVABco
おつおつ!

なかなか長編になるのかな?
期待して待ってる
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/24(月) 07:36:55.58 ID:B/C8brIro
期待してる
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/09/24(月) 10:36:57.35 ID:VgKLrm39o
面白い
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/24(月) 19:50:03.00 ID:aF9bvRTYo
これは良い厨二
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [saga]:2012/09/24(月) 21:13:51.19 ID:DQf6HswR0
>>43 ありがとう。でも、ケレン味って表現のが好き。

一応出す予定のDMCキャラをば

出す
・ネロ
・キリエ
・トリッシュ
・アグニ&ルドラ(キャラ?)

出したいけどどう出すか考えつかない
・レディ
・バージル
・ムン様
・パティ

兄さんなんかは、ゲームの1がうろ覚えだから何とも。HDを買うかどうか。
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/09/24(月) 21:17:13.78 ID:1hlt3+Ue0
小説じゃバージルの亡骸利用してネロ・アンジェロ作ったらしいが・・・
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山口県) [sage]:2012/09/24(月) 21:55:07.77 ID:4E9J5rRMo
HD買って損はない
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage ]:2012/09/25(火) 01:16:53.56 ID:VQt4nUM1o
無理して全員出さなくてもいいと思う。
自分の風呂敷が畳める範囲で。
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/25(火) 02:31:01.33 ID:Go82s+4x0
そんなにキャラいらないと思う・・・ダンテだけでいいんじゃないか後他敵キャラだけで
ネロとか色々出したら色々収拾つかなくなるかもよ
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/25(火) 05:35:09.47 ID:fRMb7Fvu0
>>1
>>44 それより、スタイリッシュに決めてくれ。
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2012/09/27(木) 00:13:44.13 ID:IlYeYKEq0
最初の作品も操作は一人だったわけだし
ダンテだけで良いんじゃない?

出してもサポート面子とか
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/28(金) 17:16:19.30 ID:EzG0H6ws0
なんかグダグダになりそうだなこのSS
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [saga]:2012/09/28(金) 22:39:25.85 ID:LjMxDTxq0
>>51 そうならないようにする。

【Mission1 Stern von Afrika】

父親のことはよく覚えていない。覚えるには少しばかり俺は幼すぎた。
しかし、これだけは確信を持って言えることがいくつかあった。
父は偉大な人間であり、母はそんな父親すら折れてしまうような、
美しく気高い女性だったということだ。そんな二人を俺は誇りに思っている。
かつて愛用の剣が語りかけてきたことがあった。

「今は名を変え姿を隠せ。」

その時の俺は何も分からずにそいつを抱えて逃げ出した。それから何十年。
その声が時折頭を過ることがある。あれは一体誰だったのだろうか。
父親の強い心か、母の愛か。はたまた悪魔の罠だったのか。
俺は未だに答えを見つけられずにいる……


ケイ 「ダンテ、起きなさいってば! ダンテ!!」

ダンテ 「くぁ……どれくらい寝てたんだ?」

ケイ 「たっぷり1時間くらい。到着よ。」


そうか。こんな砂漠、視界も悪いところじゃおいそれとスピードは出せないからな。
妥当な時間と言うべきだろう。俺も珍しく夢を見て、いくらか眠りが浅くなってたとこだ。
目覚めはいくらか良かった。パティならぶったまげるだろう。


ダンテ 「その割には、ちょいと明かりが遠くじゃないのか?」

ケイ 「ここから先は“アフリカ”の敷地なわけ。」

ガードナー 「自分みたいなのはおいそれとは入れませんよ。」

ダンテ 「ま、目覚めのウォーキングってのも嫌いじゃないさ。」

ケイ 「それはどうも。ご苦労様、ガードナー君。約束のはちゃんと送ってあげる。」


ペコリとお辞儀をして、ガードナーは車に乗り込んでさっさと帰ってしまった。
チップでもやろうと思っていたのだが……気丈に振る舞っていたが、やはりさっき
の悪魔を思い出してしまったのだろうか。分からない話ではない。未知の物に人間は
時として異常な恐怖や畏怖を覚えるのが常だ。


ダンテ 「悪いことじゃないが……必要以上の恐怖は死を招く……受け売りだけどな。」

ケイ 「どうしたの? 早いとこボスに会いましょう。待たされるのがお嫌いなの。」

ダンテ 「あいよ。俺もその手合いはよぉく知ってるから、分かるよ。」
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/09/29(土) 10:10:59.21 ID:pVqCWry+0
>>1

読んでいる。

ダンテは、ポジティブに軽く流すのが特徴だとみているが…
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/29(土) 12:20:24.25 ID:1IMByIkv0
うわぁ・・・
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [saga]:2012/09/29(土) 14:52:41.33 ID:shkv5CxI0
アフリカというと暗黒大陸だの、文明の無い地だの、色々といわれているがそんなことはない。
場所によってはそれなりのインフラが整っているし、綺麗な水にだって多少はありつけるらしい。
昔は国同士の小競り合いなんかじゃ当たり前の話だが銃も大砲も扱っている。
もっとも、銃の代わりに奴隷を……というものだったらしいが、それは関係ない。
要はこの基地も思っていた以上に衛生的で、普通の生活を送れるということだ。


ダンテ 「水道に……牛までいるのかよ。」

ケイ 「ティナは牛乳が好きだから。苦労したのよ、持ってくるの。」

ダンテ 「だろうね。この辺じゃ珍しい。」

ケイ 「水道も無駄遣いしない限り自由に使えるわ。シャワーだって浴びれるんだから。」

ダンテ 「シャワーっても……空き缶に穴を開けてだろ?」

ケイ 「そりゃもちろん。それで、あのテントが戦隊長どのの根城。」


だと思ったさ。しかし野郎とすし詰めになって浴びる船のよりは気分が良いだろうさ。
ケイの指差したこぢんまりとしたテントには、何かを抱えた見張りの少女が立っている。
厚ぼったい唇に、縮れた黒髪と褐色の肌。見るからにアフリカの出身だろう。
見ればこの辺りは女ばかりだ。大方、ウィッチの生活区だろう。


ダンテ 「んで、こんな堂々入っていいのか?」

ケイ 「今回だけよ。基本は男の立ち入りは禁止だから。」

ケイ 「本当だったら別の所の予定だったのに、アイツがね。」

ダンテ 「なるほど……今の内に眼に焼き付けて」

ケイ 「……」

ダンテ 「冗談だ。ガキを口説く“よろしくない”性癖は持ってない。」

ケイ 「はいはい……そういうことにしておくけど」


そりゃ俺にだって可愛い子を見かけたら少しばかり話してみたいとも思うが
そう誰彼構わずにするほどってわけじゃない。ましてやここにいる少女は
ウィッチ……つまりは防衛の要だ。もし手をだそうならたちまちガードナーみたいな
手合いに囲まれてしまうだろうさ。


ケイ 「お疲れ様、マティルダ。こっちの男がダンテ。」

マティルダ 「この区域は男の無断の立ち入りは禁止だ。許可証を。」

ダンテ 「こいつでいいか? 頼むからそんな大砲を向けないでくれ。片付けが面倒になるぜ。」


マティルダが構えていた代物は驚くことに37mm砲だ。軽戦車に乗せるような
ものであって、言わずもがな人に向けるような類いじゃあない。もし当たれば
頭が吹き飛ぶどころか、粉微塵だろう。俺だってミンチは勘弁願いたい。
バラ売りされて肉屋に並ぶって最期は悪趣味だ。
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/09/29(土) 21:00:47.27 ID:DO24ytlG0
粉微塵の中から生えてくるシュールな絵面になるな
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/09/29(土) 21:03:46.03 ID:/CCVQ5eho
投下時間がバラバラだと非常に読みづらいので
次回以降、書きためしたのをまとめた上で
名前欄に #(半角文字で任意の文字)を入れてトリップ(個人識別用)を入れて欲しい
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/29(土) 21:09:07.44 ID:DRJd3sioo
酉はいらないけどある程度まとめて欲しいとは思う
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/09/29(土) 21:39:23.98 ID:HRMOEY1Ro
何気にPXZ楽しみなんだよなぁ
サクラ大戦もスペースチャンネルもダイナマイト刑事もでるしね

なぜかモリガンの声がミーナ中佐になっててビックリした
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/09/30(日) 00:15:15.15 ID:UwdtLrQto
こんな機会滅多に無いからBEYONETTA参戦は期待してんだけどな
PXZにもこのスレにも
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(富山県) [saga sage]:2012/09/30(日) 00:29:26.62 ID:iRZ0hlUo0
申し訳ない。書き溜め投下をしようとするとあれをしようこれをしようと寄り道できないので
少し厳しいかもです。大筋だけ決めて後はイキオイとノリで進むのが書きやすいのもあるので。
もうちょいまとまって話を進められるよう努力します。てなわけでもう少しお休み。
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/09/30(日) 09:10:28.30 ID:3ZVDcZZ0o
じゃあせめて鳥付けてくれ
そもそもお前が >>1かどうかわからん
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/30(日) 22:04:24.48 ID:LAgvuJss0
乙、期待の良スレ

ムンドゥスは封印したんだし出す必要ないだろう、ダンテしか対等に闘えそうにないし
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/30(日) 22:07:19.61 ID:LAgvuJss0
乙、期待の良スレ

ムンドゥスは封印したんだし出す必要ないだろう
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/01(月) 01:06:51.77 ID:9Gi/vUmu0
出すのはダンテの武器ぐらいでいいだろうよ・・・
なんで変に他のキャラ出すかなぁ
66 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/02(火) 21:45:53.64 ID:cRgFnOST0
アドバイスに従いトリップ入れてみました。一回で4〜5レスまとめていけるよう努力


ダンテ 「コイツでいいか。リベリオンからの……辞令? 何でもいいや。」

マティルダ 「少し待て。確認する……なぜこんなにあるのだ。」

ダンテ 「いや、一枚だけさ。大砲を向けられて紙を早く出せなんて急かされちゃたまらん。」

マティルダ 「……分かった。」

ケイ 「……軍属なの?」

ダンテ 「あいにく軍服なんて窮屈なのは苦手でね。便利屋だ。」

ケイ 「考えてみれば変な話ね……ただの便利屋にそんな」

ダンテ 「おっと、“ただの”じゃないぜ。」

ケイ 「さいですか。」

マティルダ 「……確認した。それとケイ。こんなものが。」

ケイ 「ん……ふゃあああああ!」


マティルダと呼ばれた少女は俺の渡した紙束を見て取りあえずは大砲を降ろしてくれた。
紙束を見た彼女は不服そうに眉をひそめたがどこに許可証を入れたか忘れたたのだから
仕方がない。ひとまずは追及を諦めたのかマティルダは黙々と雑多な書類や色んなものが
ごたまぜになった紙を漁った。ケイの言わんとすることは分からなくもない。
いるかどうかすら怪しい生き物のために一人のチンピラの自称するような仕事の男を送り込む……
そこさえ見れば安っぽいB級映画の冒頭のようだ。しかしパットンがどんな人間かは知らないが、
エンツォとモリソンからってことなら、間違いないだろうさ。考えるのは苦手なんだ。

しばらくして、一枚の紙……お目当てのそれを見つけてマティルダは紙を突っ返してきた。
ご苦労様だ。ついでに、彼女は何かの紙を持っている……ああ、そりゃあ。
俺が答える前にケイが変な声をあげて紙を奪おうと手を伸ばした。それを避けるマティルダ。


ケイ 「何で私の出てる映画のポスターを!?」

ダンテ 「ああ。船の中で映画を見たんだ。なかなか気に入ったんで土産にと思ってさ」

ケイ 「誰によ!?」

ダンテ 「マルセイユ中尉にであります。」

ケイ 「マティルダ、返しなさい!」

マティルダ 「一度断りを入れる。」

ケイ 「あああああ……もう!」

ダンテ 「可愛く撮れてるじゃないか。」

ケイ 「そういう話じゃくて!……もう、いい。行きましょ。」

マティルダ 「案内する。」

ダンテ 「どういう話だ?」


マティルダの持つ紙……縮小してあるが1937年に起きた戦闘を元にした映画の
ポスターだ。当然プロパガンダ臭が鼻につくものだったが、その映画の見所は
なんといっても実際に戦闘に参加したウィッチが登場するのだ。メインは陸軍の
第一飛行隊……つまり現役のケイがバッチリ写っている。ポスターにもだ。
しかし、そんなに青臭いころが恥ずかしいものだろうか。俺がこれくらいのころは
色々とやんちゃをしていたと思うのだが……女心は難しいもんだ。
67 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/02(火) 22:15:23.85 ID:cRgFnOST0
しかし、案内が必要なほどの広さではなかった。軽い応接室のような所を抜ける。
たったそれだけで無事にハンナ・ユスティーナ・マルセイユ中尉とご面会だ。
もっと堅苦しい挨拶が必要かと思っていたのだがそうでもないらしい。
なにせ、ここは小洒落たカフェのようになっている。奥には簡素なカウンターに
ズラリと並んだお酒たち。ボビーの穴蔵も真っ青な品揃えだ。奥のソファーには
一人の少女が柔らかな笑みを浮かべてこちらを見ている。薄い赤のかかった白髪に
長い脚、活力に満ち溢れた瞳。なるほど噂通りの美少女というわけだ。
もう10年、いや15年すればとびきりの美人になるだろう。俺が保証する。


ティナ 「ようこぞ世界の果てへ。ミスター・ダンテ。歓迎するよ。」

ダンテ 「ミスターはいらん。マルセイユ中尉。」

ティナ 「私もだ。気軽にティナとでも呼んでくれ。」

ダンテ 「オーケー。ティナ。」

ティナ 「立ち話もなんだろう。座ってくれ。」


お言葉に甘えるとしよう。近くにあった椅子に座り、背もたれに当たりカチカチと音を立てる
ホルスターと銃を外してマルセイユへ見せる。ちゃんとセーフティもかかっているし撃つ意思
がないことへの証明といったところだ。マルセイユは顎でテーブルの上を示した。そこに
置けということらしい。素直に従ってテーブルに置く。コトリと音が響いた。なるほど、
ここの家具は木箱や砂嚢で出来ているらしい。キャンバスをかけるだけでこんなに華やかとは。


ダンテ 「……世界の果て、ね。確かにそうだ。ローマ帝国の威信は砂に消え、」

ティナ 「ヨーロッパの言う文明と呼べるものが無い場所。少ない民も多くがネウロイを恐れこの地を離れた。」


芝居ぽい言い回しを吹っ掛けてみたが、意外に着いてきた。なかなかに侮れない。
しかし、彼女からは言葉通りの悲壮さは感じられない。自由を謳歌出来るだけ、
ここはちょうどいいのだろう。汚い表現だがハエと糞のようだ。
ハエは糞の匂いを我慢し、糞はハエのやかましい羽音を我慢する。
人と土地をそれで表すのはどうかとも思ったが、そんな感じだ。


ティナ 「マティルダ。今日はもう護衛はいい。ドライ・マティーニを頼む。」

マティルダ 「分かりました。モンティで?」

ティナ 「ああ。ケイにダンテも何か飲むか?」

ティナ 「じゃあ私も同じものを。」

ダンテ 「そうだな……俺もモンティとやらを。」

マティルダ 「口に合うかは分からないが、簡単なつまみもある。」

ダンテ 「そうか!」

ダンテ 「それじゃ、ストロベリーサンデー。」


三人の少女たちが一瞬固まった気がした。

ティナ 「……ん?」

ダンテ 「聞こえなかったか。」

ダンテ 「ストロベリーサンデーだ。」
68 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/02(火) 22:40:55.20 ID:cRgFnOST0
ティナ 「はっはっはっは! 」

ダンテ 「ジョークを言ったつもりは無いが?」

ティナ 「すまない、意外だと思ったのさ。ダンテのような大男が嬉々としてアイスを……ぷっ。」

ケイ 「くくっ。それはそれでファインダーに納めてみたいところだけど……」

マティルダ 「アイスは切らしている。今度ハナGに頼んでおこう。」

ダンテ 「……そうか。よろしく頼むよ。」


つい二時間ばかり前に食べ損ねてしまっているだけに少しだけ残念だった。
だが、そこまでおかしいことなのだろうか。あの鮮やかな赤と白の
コントラストは芸術と言っても差し支えは無いし、それに何本かチョコの
プレッツェルが刺さっているだけで心踊る代物になる。エンツォといい
なぜこうも反応が一様なのだろうか。本当ならば少しごねるところだが。


マティルダ 「どうぞ。モンティだ。」

ティナ 「ありがとう。」

ケイ 「それじゃ、久しぶりのお客さんに」

「「「乾杯」」」


誰からともなくグラスを掲げて小さく乾杯をする。そのまま上に掲げたグラスを傾け
注がれたマティーニを喉に流し込む。オリーブが飾られているのが気にかかったが、
これはピザじゃないから大丈夫だ。思ったよりもマティーニは強く喉を焼いた。


ダンテ 「悪くない。ジンがとびきり濃いんだな。」

ティナ 「ああ。ジンが15、ベルモットが1の比率だ。」

ダンテ 「通りで。とこで、モンティってのは? 将軍の名前じゃないのか。」

ケイ 「ええ。ブリタニアのね。彼の主義は敵と味方の戦力差が1:15にならないと攻勢に出ない。」

ダンテ 「……そんな戦力があるとは思えないがね。」

ティナ 「ああ。だからアフリカは一度も攻勢に出たことがない。」


そう言ったところで、4人して大笑いした。これがこのアフリカの伝統ジョーク
なのは分かっていたし、事実おかしい話だ。この地にいるウィッチ……戦闘の要は
ごく一部。大半が歩兵や火砲だ。それで15:1というのは全部隊をかき集めても難しい。
考えてみればアフリカは危機的な状況だ。それでも笑っていられるのは彼女らの
明るさのお陰だろう。これも立派な才能じゃないか。
69 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/03(水) 13:29:50.66 ID:bW2K6zEY0
それからは、酒が入ったせいもあってか特に内容が無い会話が続いた。マルセイユの
訓練時代の話。今では欧州のエース、エーリカ某の初陣は僚機をネウロイと間違えて
魔法力切れまで逃げ続けたこと、ちなみにマルセイユの初陣といえばこっぴどい
命令無視で営倉入りをしていたこと。取り立てて言うのはこれくらいだろうか。


ティナ 「それでダンテ。君の来た理由はアフリカで起きる不審死の調査……だったか?」

ダンテ 「ああ。それがどうかしたか。」

ティナ 「何か特技とかはあるか、気になってな。いかんせん、人手不足でな。」

ケイ 「ギターとか、弾いたりするの? 背負ってるのはケースだし。」

ダンテ 「……まあ、出来ないわけじゃないが。そうだな、小火器のメンテなら。」

ティナ 「そうか。では、暇なときにでも手伝ってもらえないか? 安心してくれ。」

ケイ 「その分の給金なら問題ないわ。多くはないけど支給出来るから。」

ダンテ「ああ。貧乏暮らしは長いもんで。仕事があるならありがたいさ。」


副収入としては願ってもない話だ。どうせこの不毛の地ではピザもサンデーも
当分はありつけないだろう。だったら手を動かして気持ちを紛らわしていたい。
二つ返事で了解といったところだ。


小柄な少女「ケイさんにマルセイユ中尉〜……あれ、後は……」

東雲色の髪の少女「……ティナのお父さん?」

ダンテ 「わお……人形みたいに可愛らしいお嬢さんなことで。」

ダンテ 「……残念だがお父さんじゃない。」

ティナ 「髪の色は少し似ているがね。」

ケイ 「不敵そうな雰囲気も。」

ティナ 「どうした、マミにライーサ。例の物が仕上がったか?」

ライーサ 「半分ってところかしら。塗料が足りなくて。」

ケイ 「ああ。それならもう少し待ってて、数日で届くから。」

ティナ 「紹介しよう。こちらがダンテ。ここらで起きてる不審死の調査に来たそうだ。」

ティナ 「ダンテの言う人形さんが稲垣真美、向こうのはライーサ・ペットゲン。」


ティナの挨拶に合わせて軽く手を挙げて挨拶をしておく。マミと呼ばれた少女ははにかみながら
お辞儀をし、ライーサという方はひらひらと手を振っている。マルセイユもそうだが、
皆うら若き少女というやつだ。……しかし、俺もそんなに老けているのだろうか。
そろそろ無精髭を剃ったほうがいいのかもしれない。さすがに少し堪えた。


ダンテ 「塗料ってのはなんだ?絵でも描くのか。」

ケイ 「部隊章の話よ。我らがマルセイユ中尉は今のがお気に召さないようで。」

ティナ 「あれは“私たちの”旗ではないからな。」

ダンテ 「確かに看板ってのは大事だ。完成が楽しみだよ。マミお嬢さん。」

マミ 「いえ、描いているのはライーサさんの方です。」

ライーサ 「マミに描かせると地獄が出来上がるから……」


そんなに下手なのか……少し見てみたい気もする。見るな、するなと
言われるほど、余計にやりたくなるのが俺の癖だしな。
70 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/03(水) 20:58:01.57 ID:bW2K6zEY0
ティナ「なかなか、賑やかになってきたな。どうだ?」

ダンテ 「悪くはない。しかし、こんな部隊で戦えるのか?」


ウィッチというか、本当に強い戦士は戦いとそうでないときの切り替えが
上手いと相場は決まっている。しかし、ここにいる少女ではとてもじゃないが
そういう奴だと思えない奴もいる……ヒヨッコであろうマミとかは特に。


ティナ 「心配ない。小型なら私一人でも片付けられる。」

ダンテ 「随分と自信がおありで。」

ティナ 「ああ。じきに見せられると思うよ。」

ダンテ 「 ?……そりゃ一体」

ティナ 「さてと、そろそろお開きにしよう。夜も遅いし寝不足は肌の敵だ。」

ケイ 「アルコールも似たり寄ったりだけど……確かにそうね。」


俺の質問はマルセイユとケイの勢いに流され、なあなあのまま片付けが
始まってしまった。こうなっては仕方ない、俺も手伝う羽目になった。
グラスを少しカウンターまで運ぶくらいだが、家事なんてのは久し振りだ。
振り返ると、マミが不思議そうにテーブルに目を向けている。正しく言うと
テーブルの上の、俺の銃たちに。


マミ 「凄いおっきい拳銃ですね、これ。」

ダンテ 「試しに握ってみるか?ほれ。」


ホルスターからエボニーとアイボリーを抜き、手渡す。安全装置はかかっているし
問題はない。しかし、流石にグリップが厚いせいかマミはエボニーだけを両手で持った。


マミ 「わわっ……重いですね。」

ダンテ 「だろ? これくらいなきゃ俺の扱いに耐えてくれない。」

マミ 「あれ? 照星は」

ダンテ 「デッドウェイトだ。」

マミ 「そんな、数グラムで……一体何を撃つんですか。」

ダンテ 「人ならざる者だ。」

マミ 「よく分からないですけど……いい銃です、コレ。」

マミ 「何だか、作った人の魂が込められているみたいで。」

ダンテ 「魂……? なるほどね。ロマンチックだ。」

マミ 「そういうんじゃないです。」

ダンテ 「分かってるよ。お嬢さんはお目が高い。」

マミ 「でも、スペルが違います。WORKがWARKに。」

ダンテ 「ははっ、魂が宿るなら、そこだろうよ。」
71 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/03(水) 22:03:57.30 ID:bW2K6zEY0
ケイ 「ダンテ。寝床はちゃんと用意してあるわ。案内は?」

ダンテ 「女の子にエスコートってのはちょっち決まらないだろ。」

ケイ 「あら、さっきティナへの案内は?」

ダンテ 「……場所だけ教えてくれ。」

ケイ 「迷うことはないわ。このテントを出てまっすぐ。看板が立てられてるわ。」

ダンテ 「そりゃどうも……そういや、トイレはどこだ?」

ティナ 「スコップはテントに置いておいたぞ。」

ダンテ 「……さすが世界の果てってことか。」

ティナ 「気に入ってくれたようで何よりだ。」

マミ 「それじゃあ、ありがとうございました、この銃。」

ダンテ 「どういたしまして。」

ライーサ 「おやすみなさい。」

ダンテ 「おやすみお嬢さんがた、いい夢を。」


テントを出ると冷たい風が酔いが回ってほのかに熱くなった頬を冷ました。
口の中がザリザリするのが気に障るが、それよりも銃がダメにならないかが
気になる。バーサンの銃なら砂だけで壊れるヤワじゃないと思うが、それでも
大事に扱うに越したことはない。長年の相棒だ、労ってやらにゃいかん。
テント自体はすぐに見つかった。少し小さいことが気になるが1人ならちょうど
の大きさなのだろう。俺が少し大柄なせいだ。看板には

『リベリオン合衆国からの客人』

と簡素な文字。どうせならもう少し華やかにしておこう。そう思い、
事務所のネオンと同じ絵をついでに書き加えてやった。これくらい
派手にしておいたほうがいいだろう。

『Devil May Cry』

仮事務所の完成、だ。
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/10/04(木) 00:14:29.09 ID:o70OgRo7o
いいね
73 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/04(木) 07:39:02.32 ID:hJ0S2fjv0
軍の朝と言うものは思いの外早い。仕事が無いときは週休6日を標榜するほどのんびりした
生活を送っているだけに、なかなか規律ある暮らしというのは辛い。これでも緩いのは承知だが。
ここに来て一日目。俺はその片鱗を味わうことになってしまった。


ティナ 「ダーンテー。朝だ、マスかきを止めて起きるといい。」

ダンテ 「ああ、気持ちのいい朝だ。太陽と共に起きる暮らし……最高だね。」

ティナ 「その割に声は不機嫌そうだが……なんだこの看板は。」

ダンテ 「デビルメイクライ事務所、アフリカ支局だ。イカすだろ?」

ティナ 「……文字の面と絵を見るだけじゃ、いかがわしい店としか思えないな。」

ダンテ 「まあ、そう言うなっての。」

ティナ 「しかし、悪魔も泣き出す……どういう意味だ?」

ダンテ 「言葉の通り。さ、俺を早いとこ飯に案内してくれ。」

ティナ 「デビルメイクライ……? やっぱり、いかがわしい意味のようにしか……」

ティナ 「おっと、すまん。案内しよう。」


自由とはいえ軍。金属製の皿に盛られた食事はやはり簡素だった。
乾いたライ麦パンにチーズ。ベーコンとかぼちゃに小さなオレンジ。
あとは酸っぱいキャベツ……ザワークラフトとかいうやつだ。
味は悪くない。軍の飯というと味は二の次だとか、こうした支給だと
大抵は飢えることになるだのと合衆国の兵士に散々言われたが、
ボリュームも結構ある。自分だけが大盛……と言うわけでもない。


ティナ 「私のお陰だ。」


そう言ってマルセイユは自信たっぷりに告げてきた。ケイの補足によると
マルセイユはなかなかの酒好きだ。そしてファンも多くいる。つまりは
そうして届く嗜好品をチマチマと食料と交換するらしい。柔らかなチーズや
野菜はそういった物々交換の結果らしい。


ダンテ 「しかし煙草も届くなんてね…未成年だろ?」

ティナ 「煙草はしないさ。自分の肺をヤニ漬けにする趣味はなくてね。」

ダンテ 「いい事を言うじゃないか。同感だね。」

ティナ 「フフーフ。褒美にかぼちゃをつかわそう。」

ライーサ 「ティナ。好き嫌いはだめだって言ったじゃない。」

ケイ 「ちゃんと見てるんだから。」

ティナ 「うぐっ……」

ダンテ 「はっはっは。アフリカの星も陸では石ころってか。」

ティナ 「黙れ子供舌。」

ダンテ 「そのままそっくり返すぜ。」

ライーサ 「どっちもどっちじゃ……?」
74 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/04(木) 22:56:03.57 ID:hJ0S2fjv0
ダンテ 「……ま、石ころってのは謝るよ。」

ティナ 「分かった。カボチャは大人しくいただくとしよう。」


数秒の睨みあいが続いたが、どちらからとも分からないうちになあなあに
終わった。落ち着いているようでマルセイユ存外俺と似た人種かもしれない。
昔の俺にもう少しだけ思慮深さとかをを加えたらこんな感じだろうか。
だとすると、この言い争いは果てしなく不毛になることは想像に難くない。


ダンテ 「それで、俺は何をすればいい。さっそく銃でもいじれば?」

ケイ 「うーん……少し質問だけど、背中の銃はどうやって使うの?」

ケイ 「昨日みたいなマケドニア撃ちかしら?」


マケドニアシューティング……確かオラーシャで大昔に流行った戦法だったろうか。
いうなれば面制圧の弾幕を二挺拳銃で行うという大胆な戦法らしいが、当然機関銃なんかが
出てきたことで使うことの無くなった、死に技というやつだ。当たらないしな。


ダンテ 「違う。そんなちゃちなのと一緒にしないでくれ。」

ティナ 「今時、二挺なんて派手さ意外は期待出来ないだろうに。」

ダンテ 「いや、お前さんたちのネウロイ相手なら十分じゃないか?」

ティナ 「弾の無駄だ。」


そうもバッサリ切り捨てるとは……二挺銃に何か面白くない
思い出でもあったりするのだろうか。規律に厳しい同僚がいたとか。


ケイ 「ティナはそうでしょうけど……それで頼みなんだけどね。」

ケイ 「マミに1つ銃の狙い方とか、教えてあげられない?」

ダンテ 「……いきなりだな。何かあるのか。同じ扶桑人同士のが」

ケイ 「仕事があるのよ……」


ケイの視線を追うようにして俺も顔をそっちへ向ける。何人もの兵士が
紙だの、色々な物を持ち寄って、一人のうだつの上がらない男がそれに
対応している。地味な風貌の割にテキパキした仕事ぶりだ。ご苦労。


ダンテ 「なるほど、隊長どのは大変なわけか。」

ティナ 「軍とは戦う前に巨大な官僚集団ってね。ご苦労、カトー・ケイコ大尉。」

ケイ 「戦闘隊長どのも少しは手伝ってくれたらね。」


ケイの顔がかなり引き吊っている。そりゃまあ体よく押し付けられたのと
変わらない経緯らしいから、笑みがそうなる理由も分からなくはない。


ダンテ 「あー……任せろ。インストラクターってのにはいかんが。」

ケイ 「助かるわ。よろしくね、ダンテ。ライーサも手伝いに回すから!」


食器を片付け、言い終わらぬ内にケイは走り去っていった。なんだか
子供にお使いを頼む母親のようだ。“お母さん仕事だから、妹の面倒を〜”
ってな感じの。だとすると俺が子供役か。ううむ、この例えはパスだ。
女運が悪くなさそう……そう思ったのは昨日だったか。
どうやら間違っているのかもしれない。
75 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/04(木) 23:27:57.26 ID:hJ0S2fjv0
マミ 「えっと……それじゃあ、よろしくお願いします。」

ダンテ 「そう恐がらないでくれ。俺もどう接すればいいか分からないもんでね。」

ダンテ 「気楽に行こうや、手探りはお互い様ってことだ。」


考えてみればマミのようなタイプの女と接する機会は殆ど無いようなものだ。
大抵は勝ち気で好奇心が強い奴、もっと酷くなると借金取りだったりツケを
俺の所に回すような人でなし……あー、ホントに人じゃない奴だそりゃ。
とにかく振り回されるようなのばかりだ。そういうのとばかり接していたせいか
自分に正直に向き合うと、この手の扱いは苦手だ。さらに相手は子供。
救いはとても素直な子だということか。


マミ 「ライーサさんはもう少し遅れて来るそうです。」

ダンテ 「……そうか。んじゃ始めよう。」

マミ 「お願いします……それで、最初は何を?」

ダンテ 「……取り敢えず、その機関銃。えーと……」

マミ 「ハチキューっていうんです。カールスラントの物をライセンス生産した。」

ダンテ 「ライセンス生産?」

マミ 「えっと、その銃を製造する権利を別の国に渡すとか。」

マミ 「お金はかかるけど、技術を学べるから、重要だそうです。」


なるほど、勉強に……って俺が学ぶなんてのは少し情けない話だ。
俺の勉強不足も原因だが、軍事の知識なんて俺のは実話の映画化
くらいが関の山ってところだ。詰め込みで少しは分かったと思ったが……


ダンテ 「なるほど。んじゃ、そのハチキューとやらで撃ってみてくれ。あの的だ。」

ダンテ 「しめて30m。そいつなら鼻先も同然だ。」

マミ 「……はい!」


今の間は何だったのだろう。
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/10/05(金) 00:43:24.70 ID:oYdQapOc0
機関銃ならダンテもパンドラ使って見本を見せることが可能だなww
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/10/05(金) 00:56:52.90 ID:GqlYdc6q0
えげつないことになってしまうwwwwww
78 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/05(金) 07:54:40.09 ID:LAllnzLL0
結果は散々だった。ウィッチというだけあってしっかりと反動を殺していたが、
的にはなかなかどうして当たらない。木製の的は隅が削れた程度で新品とはいかないまでも
しっかりと原型を保っていた。さてと、どうしたものか……


ダンテ 「どうすっかね……ケイにはどんな風に教わった?」

マミ 「えっと、弾の癖は撃って覚えなさいって。」

マミ 「狙っている暇をネウロイはくれない。って言いました。」

ダンテ 「なるほど……んじゃ、おれも少しばかりお手本を見せようかね。」


ケイの説明はまさしくジャックポットだった。スナイパーじゃあるまいし小難しいことは
俺たちの考えるところではない。狙う余裕がなければ弾がどう飛び出すかを見極めるのが
手っ取り早い。というよりはこれしかない。剣の鍛練も銃も自転車の乗り方のようなもので、
ある程度の技術へ行けば忘れることはない。問題はある程度に行くまでに時間がかかることだが。
まずはケイの指導の通り銃に慣れるところから、ってことか……

背中のエボニーとアイボリーを引き抜き、軽く構えてポーズを決めてみせる。


「Gun Slinger!」


くるりと銃を回して両腕をクロス。銃口を的へ向けてそのまま引き金を引く、引く、引く。
白いアイボリーが狙いを少しずつ修正していき、エボニーがそれをもとにして数多の弾丸を的に注ぎ込む。
ろくに照星を覗かない撃ち方でも、長年の相棒だ。どんな癖があるかは熟知している。
銃を横に倒す、腕を背中に回す、足でご機嫌のナンバーを聞いたときのようにステップを刻みながら。
色々な体勢で撃とうともそれは変わらない。


ダンテ 「どうだ。これが癖を覚えるってことさ。」

マミ 「わ、分かりました……でも。」


マミの視線は俺ではなく、撃ったばかりの的に目が向かっている。が、
人の話は相手の目を見てと習わなかったのか、と言うほど野暮ではない。


マミ 「外を切り取ってハートマークって……何か意味があるんですか?」

ダンテ 「勢いだ。」
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage ]:2012/10/05(金) 12:26:42.31 ID:oFP6G73Oo
さすがです。
80 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/05(金) 21:13:20.49 ID:LAllnzLL0
ライーサ 「ダンテ、指導の方はどう?」

ダンテ 「……考えてみれば素直な子と過ごすってのは俺の経験に無かった。」

ライーサ 「そう。それで、成果の方は?」

ダンテ 「まずは経験だな。とにかくあの細い指にタコを作るくらいに。」

ライーサ 「スパルタね。」

マミ 「でも、私だってマルセイユ中尉たちと一緒に戦えるようになりたいですから。」

ダンテ 「……」

ライーサ 「どうしたの?」

ダンテ 「いや、いい子だ。ホントに。爪のアカを煎じて飲ませたい連中がわんさかいるから。」

ライーサ 「……類はなんとやら、じゃないかしら?」

マミ 「ダンテさん。他にしっかり的に当てる方法ってありますか?」


ライーサの呟きは聞かなかったことにする。自覚が皆無ってわけじゃあ、ない。
ひとまずは向上心に溢れたマミの相手が先決だ。ろくに当たらないんじゃ、残るのは……


ダンテ 「ああ。ちょいとそいつを貸してくれ。ハチキューだっけか。」

マミ 「はい、えっと、どうぞ。使い方は……」

ダンテ 「見よう見真似で十分だ。相手が当たらないってなら……」


マミから受け取ったハチキューをおおよそ的に向けて構える。別にこれを
使わなくても機関銃らしいものはあるのだが……いかんせん強力だ。木製の的は
これでも十分に穴だらけにすることができる。構えたハチキューをそのまま体の方へと
勢いよく突き出す剣よろしくグッと引き付ける。


ライーサ 「銃の構えじゃないわよ、それ。」

ダンテ 「まあ、見てなって。」
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage ]:2012/10/05(金) 21:32:29.48 ID:sknfmrC1o
そんな使い方が思い付くのはせいぜいソウルイーターのキッドくらいだと思うw
82 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/05(金) 22:26:14.58 ID:LAllnzLL0
ダンテ「ぶっ飛べ!」


十分に引き付けた銃を突き出しながら思い切り地面を蹴り、間合いを詰める。
針の様に鋭い踏み込みで的の前へと動き、ピタリと銃口を的の下に当てる。
本来はショットガンに使うような技術なのだが、それ自体を教えたい訳じゃない。


ダンテ 「当たらないなら」

ライーサ 「当たる距離まで……ってこと?」

ダンテ 「ビンゴ!」


そのまま一気に引き金を絞り、反動に任せたままハチキューを上に振り上げる。
乾いた薬莢が日の光を受け、砂ぼこりにの中を妙に際立って輝きながら転がっていく。
せいぜい1秒程度だったと思う。それでも20、30程の銃弾が的に吸い込まれたはずだ。


ダンテ 「ガン・スティンガー……ってとこかな。ライーサのお嬢さんの言う通り。」

ダンテ 「狙えないなら確実に命中する場所へ突っ込めばいいわけだ。」

ライーサ 「結局、そこに行き着くわね……」

ダンテ 「どんなにデカイ奴だろうと、心臓をぶち抜かれたら“大体は”死ぬ。」


後ろでゴトリと木の的が壊れる音が聞こえた。抜群のタイミングでハート型に作った的が
機関銃の連射で真ん中で綺麗に割れている。変な運だけはいい。


ダンテ 「だからマミ。怖がるんじゃねえ。デカけりゃその分崩れるとこはあるんだ。」

マミ 「……一寸法師?」

ダンテ 「イッスンボーシ?」

ライーサ 「扶桑の童話でしょ?」

マミ 「はい! 小さな男の子が針の剣とお椀の船で冒険して、鬼をやっつけるんです。」

ダンテ 「……ああ、それか。最後はハンマーで大きくなってお姫様とってやつ。」

マミ 「ダンテさんの言葉を借りればビンゴ! です。」

ダンテ 「なるほど、そいつは面白い例えだ。ちびっちゃいマミにはおあつらえ。」

ライーサ 「ふふっ……確かにそうかも。」

マミ 「わ、私だってマルセイユ中尉みたいなスラッとした美人に……」

ダンテ 「ほー、ハンマーを持ったお姫様が来るのか?」

マミ 「そんなにちっちゃくないですよ! もー!」


全く、変に気を遣っていた自分がバカみたいじゃないか。彼女は
十分に自分のやりたいこと、やるべきことを見つけ出している戦士だ。
後は背中を押してやれば立派な女になるだろうな。

身長はどうだか分からないがね。
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/10/05(金) 23:50:26.67 ID:dGjQZj6Ho
ダンテさんマジ兄貴分
これはネロも鍛えられる訳だ
84 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/06(土) 13:03:49.93 ID:1dph8vaI0
ダンテ 「……俺からのレクチャーはこんなもんかね。」

ライーサ 「ご苦労様。なかなかじゃない。即席インストラクターにしては。」

ダンテ 「よければそれをケイにも報告頼むぜ。給金アップだ。」

ライーサ 「はいはい、考えておくわ。」

ダンテ 「おっし。マミもお疲れさん。ゆっくり休むといい……後始末はしとくさ。」

マミ 「え、でも……」

ダンテ 「あんま男に恥かかせるもんじゃないぜ。」

マミ 「わ、分かりました。ありがとうございます。」

ダンテ 「よし、それでいい。」

ライーサ 「ずいぶんと甘いんですね。」

ダンテ 「そうか? 未来の美人は労るってのは当然じゃないのか。」

ライーサ 「ふーん……」

ダンテ 「お前さんも見込みはありってね。」

ライーサ 「ふふっ、でも」

ダンテ 「わーってる。恋愛ってかそういう関係は禁止、だろ?」

ライーサ 「ええ。そういうことです。」


ライーサは屈託のない笑みを浮かべている。短い髪にどことなく子供というか
良いところの坊っちゃんを思わせる言動。これでマルセイユの二番機なのだから
驚きだ。彼女らの実際の空戦は見たことがないが、天才と称されるマルセイユの
後ろにしっかりと着いていける。それだけでもちょっとしたものだ。


ダンテ 「そういや、ティナの機動ってのはどんな感じなんだ? 敵が照準の前に入ってくるみたいって話だが。」

ライーサ 「そりゃ凄いですよ。普通の人じゃとても真似できない。」


少し長くなったので簡潔にまとめるとこうだ。マルセイユは旋回半径を限界まで小さくするために
ストール寸前まで失速しているそうだ。それに着いて行けずに哀れな的は彼女に尻を見せる。
後はバン! これでスコアが1つ増える。というそうだ。丁寧に手で飛行の機動まで再現してくれた。
それを上手く説明することは出来ないが、話しているライーサがアニメのヒーローを語るような
熱っぽい口調だったことは加えておく。


ダンテ 「なるほどね。是非見てみたいもんだ。」
85 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/07(日) 00:02:44.52 ID:Q7bGSbXE0
砂と火薬で熱々になった薬莢を広い集め、1つの袋にまとめておく。
また、リサイクルとして弾丸に使ったりするそうだ。資源の乏しい
アフリカらしいというべきか。手間を考えたら費用とかは弾を買う方が
いくらか安上がりのような気がしてならないが。その辺りはどうなのだろう。


ティナ 「ライーサ! すぐに準備だ。」

ライーサ 「何かあったの?」

ティナ 「ネウロイが来た。我々に救援ってことだ。」

ライーサ 「了解です。」

ティナ 「それじゃ、ちょっと行ってくる。指導、ご苦労!」

ライーサ 「少し遠いからティナの戦いは見れないけど、ちゃんと報告してあげるから。」


マルセイユの鷲の声に、途端に周囲が騒がしくなる。男連中は
ストライカーと武器の搭載された発進機を引っ張り出して砂を防ぐ為の
シートをはがし、いつでも少女たちが飛べるように準備している。
一方、女の子たちはと言うとすぐにストライカーへと駆け出している。
つまり、ここで退屈なのは俺だけということになる。なんだこの疎外感。


ダンテ 「……どうすっかな。」


次々と飛び立つストライカーを穿いた少女たち。それに遅れてカメラを携えたケイの
姿があった。多分、ケイは後方からの指揮とか、そんなところだろうか。…よし。


ダンテ 「ちょいと社会見学でもしゃれこもうか。」


悪魔がネウロイを荒らした場所を狙わないとは限らない。悪魔が混乱やパニックに
つけこむことだってそこまで珍しい話ではない。そういうことだ。俺はストライカーへと駆け出した。
86 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/07(日) 00:35:29.19 ID:Q7bGSbXE0
――
――――

ケイ 「おかしい。」


ケイは妙に重たい自分のストライカーに違和感を感じていた。あがりを迎えて
シールドの使えなくなった今のケイにとっては、いよいよ来たか。程度の気持ち
だったがそれでも少し変だ。重さを感じているのは片足だけだ。ストライカーの
飛行に偏りが生じるのという話は聞いたことがない……ケイは不思議に思い、
自分の右足に視線を向けた。


ダンテ 「よう、初乗りはいくらで?」


ニヤニヤとした笑みを浮かべた銀髪の男がストライカーにぶらさがっていた。


――
――――

ダンテ 「よう、初乗りはいくらで?」

ケイ 「……って、ええええ!?」

ダンテ 「ハハッ、こりゃすげえ。なあ、このプロペラ、触っても平気なんだな。」

ケイ 「そ、そうだけど……大気と魔法力の実体化みたいなものだし。」

ダンテ 「そのかわいらしい耳も? 」

ケイ 「使い魔だから、これは違……って、そうじゃなくて!」

ケイ 「今からどこに行くか分かってるの!?」

ダンテ 「戦場だ。俺が相手したザコじゃあない。」

ケイ 「分かってるならどうして。」

ダンテ 「人生には、刺激が必要ってもんさ。違うか?」

ダンテ 「お前もそうさ。あがりを迎えてもこうして指揮のために空を飛ぶ。」

ダンテ 「安全な……少なくともここよりは。って基地にいりゃいいのに。」

ケイ 「……全部は否定はしないわ。」

ケイ 「ティナ、聞こえる?」

ティナ 『ああ。どうした。』

ケイ 「バカが私のストライカーにしがみついて来たから、少し到着は遅れるわ。」

ティナ 『そうか……間違いなくヤツだな。』

ケイ 「ヤツよ。」

ティナ 『構わんさ。ケイが来るまでに仕留める。』


それっきり、割れた声は聞こえなくなった。交信終了といったところだろう。
するとケイは懐から双眼鏡を取り出して俺の方へ突きつけてくる。これで
戦闘の様子でも見ておけということだろう。
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/10/07(日) 07:43:07.74 ID:gSxKwEKx0
>>1

ダンテが見学だけって…

Shall we dance.に決まっている。
88 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/07(日) 19:38:37.89 ID:Q7bGSbXE0
ケイ 「ダンテ、敵の数は見える?」

ダンテ 「……さてね。14、15くらいか? モンティは攻勢に出ないことは間違いない。」

ケイ 「そう……サイズは?」

ダンテ 「無茶言うな。隼の目じゃないんだ。まあヤバそうなのは見えねえ。」

ケイ 「なら問題ないなさそうね。ところで体に異常はないの?」


言われてみれば少しだけ体が痺れているような気がする。
動けないほどというわけではないのだが、どうもピリピリして
気分は良くない。なるほど、これがウィッチのみがネウロイに
太刀打ちできる最大の理由の1つ……


ダンテ 「鍾馗……っていうのか。」

ケイ 「それは最新鋭のストライカー。」

ケイ 「概ね間違ってはないけど。この辺りで止まるわ。」

ダンテ 「ご丁寧に。しかし、随分低空だな。」

ケイ 「ネウロイの目標はあの施設よ。ロマーニャ中心の基地だけど……」


ケイが指差した方に双眼鏡ごと顔を向ける。なるほど、そこには攻撃によって荒れ放題の
施設が見えた。ボロボロの鉄条網に、ちらほらと見える炎を吹き出す対空砲。基地のずっと前には
黒くなった砂漠。多分向こうは地雷源だったのだろう。土木で戦争に勝つロマーニャらしい。


ダンテ 「人の戦術は通用しない、ね……」



俺の呟きにケイは小さく頷いて答えた。しかし基地からの抵抗がほとんど見えない。
それだけが気がかりだ。もう少し88mmとか20mmの薬莢が転がってもよさそうだが。
89 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/08(月) 09:09:34.60 ID:gml6LiuW0
ケイ 「……ダンテ?」

ダンテ 「悪い。さてと、アフリカの星の観測でもするか。」


いつまで動きのない基地を見ていても仕方がない。ひとまずは
マルセイユの空戦を見ておこう。ライーサとかに感想を聞かれても
困らないようにしておこう。遠くに見えるのはネウロイの赤いビームと
黒光りするボディ。迎え撃つマルセイユ達の青いシールドと目に優しくない
マズルフラッシュ。キラキラ光って落ちているのは薬莢だろう。


ダンテ 「死のダンスか。即興にしちゃなかなかのもんだ。」


その中でも取り分け綺麗に見えるのはマルセイユの動きだった。
ネウロイの不規則な動きなどものともしない超然とした落ち着き。
それとは逆に軌道は激しく、次々とネウロイを喰らっている。
マルセイユの前に敵が飛び込んでくるという話は嘘ではなかった。
わずか10数発でそれを成す様子は空を飛ぶ計算機のようだ。
回り込まれたと思えばライーサの正確な援護がそれを撃ち落とす。
多分、それをライーサは“おこぼれ”だのと言って誇らないのだろう。


ケイ 「どう、世界最強の部隊って言われる理由はわかったかしら。」

ダンテ 「ああ。こりゃすげえ。女神サマみたいに扱われるわけだ。」

ケイ 「女神というにはあの子達はじゃじゃ馬だけどね。」

ダンテ 「こんな距離から撮れるのか?」

ケイ 「雰囲気が分かればいいのよ。」

そういいつつケイはカメラを構えて撮影の機会を窺っている。
なるほど、簡単な指揮に加えてこうして写真を撮ってどこか
新聞社にでも売り付けるのだろう。副業としては割がよさそうだ。
まさに独占というやつかもしれない。ウィッチの特権ってやつかもな。


マミ 『すいません、ケイ大尉!』

ケイ 「どうしたの、マミ?」
90 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/08(月) 15:36:15.11 ID:gml6LiuW0
マミ 『ネウロイを一機逃がしてしまいました。すぐに追います!』

ケイ 「どこに逃げたの?」

マミ 『それが……ケイさんたちの方なんです!』

ケイ 「なんですって……ダンテ!」

ダンテ 「見えてる。距離を見るに、マミの腕じゃちょいと厳しそうだな。」

ケイ 「撃ったとして、こっちじゃ私たちに当たるかもしれないし……」

ケイ 「ダンテがいるから変に回避も出来ない……そういうことね。」

ダンテ 「……なるほど。隊長殿はお困りのようで。」

ケイ 「他人事じゃないのよ。振り落とさないようにする回避なんてそうできないし。」


ケイの焦りは誇張ではなさそうだ。それでも落ち着いているあたり、
流石は部隊を統率しているだけあるってことか。別に振り落とされるとか
の心配はしていないのだが、もう少しだけ黙っておこう。


ダンテ 「もうちょい……もうちょい……」

ケイ 「ティナの援護を待つしかないわね。」

ダンテ 「いや、違うね。」


そろそろ距離もいいところだろう。


ダンテ 「Let's Rock!」

ケイ 「ちょっ! ダンっ!?」


ケイの静止を無視してストライカーに掴まったまま体ごと揺らして勢いをつける。
丁度空中ブランコみたいなもんだ。ブランコにしては不安定だが、それは仕方ない。
後で謝っておこう。十分に勢いをつけたところで、思い切り跳ぶ!
91 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/08(月) 15:57:20.41 ID:gml6LiuW0
はらわたがグッと上に押し出されるような落下独特の感覚。これでケイは
自由に動けるわけだ。俺も然り。だが、ネウロイとの距離を少しだけ間違えた。
今のジャンプで飛び付くつもりだったのだがそう上手くはいかない。
人生もそんなもんだと、いつもなら気にしないところだが、今回は違う。
ネウロイの一部が赤く光っている。おまけにしっかりと俺に向けられている。


ダンテ 「こりゃヤベェな……」


久々に感じた緊張感。試しにこのまま攻撃を受けてみたくもなるが、
空中でというのは分が悪い。それでもなんてことない、直線的な攻撃だ。


ダンテ 「頼むぜ、相棒。」


エボニーとアイボリーを引き抜きネウロイに構える。そのまま集中。
魔力が腕を伝い、弾丸の一つ一つに込められていくのを感じる。
ネウロイのビームが吐き出されると同時に一気に開放する。


《普通の人間はね、マシンガンみたいな速度で引き金を引かないんだよ。》


かつてこの銃を作ったガンスミスのばあさんは苦笑混じりでよく言ったもんだ。
普通の拳銃じゃあっという間に銃身が熱で膨れる無茶にも耐えてくれる。
こうして魔力でビームを押し返す銃弾を吐き出すなんてことも。


ダンテ 「ハッハー! どうした、もう限界か!?」


ネウロイのビームは思ったよりも簡単に相殺することができた。
相手が小型ってのも理由の1つだが、それだけばあさんの銃が優れてるってことだ。
遠くでカシャリと小さなもの音が聞こえる。ケイがシャッターを押しているのか。
こんな物をどこに売り付けるってんだ。


ダンテ 「ヌルイな、お前よりはフォルトゥナのカカシのがガッツあったぜ!」
92 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/08(月) 16:23:16.76 ID:gml6LiuW0
リベリオンは持ってきていない。一応、飛ぶときの負担になると思った上だ。
そしてそれは正解だったわけだ。エボニーとアイボリーだけでもそれなりに
対抗できる。数が少なければ、だが。それさえ分かれば充分だ。


ダンテ 「Trick!」


魔力で足場を作りもう一度ジャンプ。前ほど高くは飛べないがネウロイの上に
つけたらそれで文句はない。文句があってもそれは俺のせいだからどうも言えないか。
もう一度足場を作り、それを蹴ってネウロイの真上につけるように平行に跳ぶ。


ダンテ 「Guns!……鉛の暴風雨だ!」

銃を真下のネウロイに構えて頭と腕を下に向ける。ちょうど腕を伸ばすと真下にネウロイだ。
そのまま体をコマのように回転させてとにかく引き金を引く、引く、引く。狙いをつける
必要のない距離で外すバカはそういない。数メートルだったら、マミだって簡単に当てれるさ。

銃をホルスターに戻して両腕でネウロイの上に着地。ビリッときたがブリッツに比べれば
静電気のようなもんだ。腕をバネのように曲げ、反動で一気に跳ぶ。ネウロイの装甲がめくれ
赤く輝く何かが見えた。これを壊してくださいとネオンが瞬いていやがる。


ダンテ 「ぶっ壊れろ!」


銃を使う必要もない。姿勢を整えて今度は縦回転だ。落下と回転の勢いを乗せて
足の踵を思い切り赤く光る場所に叩きつける。パリンと何かが割れる音がして、
不意に足場が消え去った。大当たりってことだろう。あれがコアってやつだったらしい。


ダンテ 「ヘルム・ブレイカーならぬ、ブーツ・ブレイカーってとこか。」


なんてこった、買ったばかりというのにブーツの踵が滅茶苦茶だ。
ああ、理由は分かってる。今の踵落とししか考えられない。



ケイ 「余裕こいてる場合じゃないでしょ!?」
93 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/08(月) 23:18:45.25 ID:gml6LiuW0
ダンテ 「……そうか?」

ケイ 「今の状況を考えなさい! 」

ダンテ 「自由落下だな。HALOってやつか?」

ケイ 「それは机上の空論! それに、パラシュートが無いしいろいろ間違って……」

ケイ 「とにかく掴まりなさい! 色々聞きたいことが!」

ダンテ 「アディオス、ベイビー!」


ピーピーとうるさいこった。俺がこのくらいで死ぬタマと思っ……
そういや、細かい話はしてなかったか。まあいいさ。ケイが急降下
して俺を捉えようとしているが、ちと厳しいだろう。人差し指と
中指の二本を重ねてこめかみをピッと擦る。どのみちここを調べに来る
筈だからすぐにバレるだろうが、面白いドッキリでもやってやろう。


基地のテントのキャンバスを突き破ってキレイに着地……と思ったが
そうも上手くはいかない。湿った砂にボロボロのブーツを取られ背中を
思い切り打ち付ける。砂だからさほど痛くはないが口の中がザリザリして気分が悪い。


ダンテ 「泣けるぜ、ままならないもん……血か。」


口の中に入った砂からは錆びた鉄の味がする。湿った……湿っている理由は
恐らく、というか間違いない。人間の血液だ。ネウロイの攻撃なのか?


ダンテ 「違うか……機械みてェなのがこんな悪趣味な殺しをするはずがねェ。」


近くに転がっていた死体を見つけ、爪先で転がす。急所を鋭利な刃物でバッサリ。
死んでからそんなにたってないってことだ。俺は警官じゃないんだがね。
凶器は見つかっていないが、テントの外を覗いても似たようなもんだろ。
あちこち、っても2、3つのテントの中から赤いものが出てきている。


ダンテ 「ったく、ヤツハカ・ヴィレッジかここ―――」


少しだけ気を緩めた途端。背後から剣で背中から刺された。力強い突きだ。
殺す気でかかってるってこった。前からも死体が動いておんおんと呻きながら
銃剣でこちらの心臓といわず、あちこちを突き刺す。ああ、くそ。またこのパターンか。



ケイ 「ダンテ! ダンテ!?」

ティナ 「あのバカが落ちたのはここか!?」

ライーサ 「うっ……いっぱい死んでる……」


上からケイたちがなにやら話をしている。落ちたテントは分かっているはずだから
もう10秒と言わずにくるだろう。ハプニングこそあれ、ドッキリは大成功ってことだ。
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage ]:2012/10/08(月) 23:26:02.37 ID:+ECMQbyDo
恒例行事w
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/10/08(月) 23:26:55.49 ID:ksndIak+o
スタイリッシュ事故紹介ktkr
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/10/08(月) 23:47:36.07 ID:ku5TU1Roo
いつものことですねー
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/10/08(月) 23:50:26.81 ID:pghhlc5T0
面白いと思っていたがこれで、心配はなくなったな>恒例行事
98 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/09(火) 00:02:21.45 ID:8H+sVoeW0
ティナ 「それで、ダンテの落ちたテントは!」

ケイ 「このテント! ダンテ!? 無事!?」

ダンテ 「……」

ケイ 「私が様子を見てくるわ。ティナとライーサは待機。」

ティナ 「直ぐに行った方がいい。」

ライーサ 「上の見張りは任せて。」

ケイ 「ありがとう!マミは装甲脚脱いで、一応ハチキューを持ってきて。」

マミ 「了解です!」


ケイ 「ダンテ、無事!?―――っ」

マミ 「どうしまし……なんで、兵隊さんが、ダンテさんを刺して……?」

ケイ 「兵隊? 頭をぱっくり割られて、色々見えて、それでも兵隊って、言える?」

ケイ 「兵隊だったもの、よ……」


ダァァァァァンテェェェェェェェ……

ダァァァァァンテェェェェェェェ……


聞くだけで正気をジワジワと削っていくような声が兵士だったものから溢れ出す。
喉を切り裂かれゴボゴボと不明瞭な何かしか言えないものもいた。ケイ達とて、
所詮は一人の少女。目の前の常軌を逸した光景に何も出来なかった。
何かの一人が、彼女らを目にして、手にした銃剣を構えたことにも、反応出来なかった。


ケイ 「………どういうことなのよ、これ………」

ダンテ 「………だ。」

マミ 「へ? ケイさん。今、ダンテさんが何かを」

ケイ 「心臓を刺されて、生きているわけが……」

ダンテ 「こっから先は……」

ケイ 「嘘でしょ……?」

ダンテ 「R指定だ。」
99 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/09(火) 00:19:48.31 ID:8H+sVoeW0
ダンテ 「ったく、お気に入りのコートを滅茶苦茶にしやがって!」


突き刺してきた兵士の死体……もとい悪魔の銃剣を思い切り引き抜き、
悪魔ごと持ち上げる。木と金属、肉で構成された即席の大きなヌンチャクを力任せに
ケイたちに向かう悪魔に叩きつける。一回、二回、三回。力加減を間違えたせいで
ベシャリと湿った音を立てて二つの肉塊がへしゃげ、返り血がケイとマミの顔、服を汚した。
あーやっちまった。R指定っても限度があるってもんだ。しかし、今の惨状を見て
悪魔どもは何かを躊躇うように力を緩めた。そこを見逃さず、刺さった銃剣を全て引き抜く。


ダンテ 「Hey……What's up?」


おら、腰を抜かすなっての。暴れたりないじゃねェの。そのまま、相手をおちょくるように
手のひらを上に向けて腰を落とす。犬はこれで敵意がないと分かるんだ。おいで、ワンちゃん!
当たり。挑発に乗った一匹が爪を構えてこちらに駆け寄って来た。


「Royal !」


腰を落として昔に見たアクション映画のようにポーズを取り、爪による緩慢な
攻撃を受け止める。上から、下から。不規則だが受けるのは容易いことだ。
こんな攻撃なら眼を瞑っても受け止められる。……ほら、出来た。
100 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/09(火) 00:42:35.69 ID:8H+sVoeW0
ダンテ 「ったく……情けないぜ。ホントの攻撃を見せてやるよ。」

ダンテ 「ウスノロ、これが攻撃ってもんだぜ!」


折れても尚何度も降り下ろされる腕にもそろそろ飽きてきた。攻撃ってのは
相手の僅かな隙に全力をぶつけるってもんだ。殴るだけならそこらのチンピラ
だって出来る。拳法の構えのまま相手の挙動を一つずつ見極める……ほどでもねえや。
変な方向に曲がった腕で殴りつけてくる悪魔の鳩尾にカウンターだ。
今までに溜めた力を解き放つように、掌を一気に突き出す。どこぞのサングラスも
ビックリな速度だ。そりゃもう勢いが良すぎで体ごと貫く位に。


ダンテ 「Too easy!」


横目でケイ達の様子を伺う。怪我は無いが、呆然とそこに立ち尽くしている。
残りは4匹ってとこだ。少しだけ不安になったが、どうということはない。



オオオオオオン……

オオオオオオン……


一匹の悪魔が声を上げた。別の悪魔も同じように声を上げた。また一匹。
また一匹。全ての悪魔が耳を塞ぎたくなるような声で咆哮している。
ああ、こりゃ咆哮じゃねェな。懐かしい響きだ。


ダンテ 「ったく、メソメソ泣くんだったら、喧嘩吹っ掛けんな。」

ダンテ 「しかし、お前らも運が悪かったってことだ。」


絶望で叫んでいても悪魔は悪魔だ。見逃すつもりはない。家族には申し訳ないが、それが
人間の抜け殻に取り付いていたとしてもだ。その証拠に悪魔は未だに爪を振り上げ襲ってくる。
効かないとわかっていてもだ。悪魔の殆どと同じ。破壊こそなんとやらだ。


ダンテ 「ま、カウンターってならこれだわな。」

ダンテ 「Rising Dragon!」


魔具があれば、もっと面白いものが出来たのだが、文句は言えない。
三匹の悪魔を巻き込み、一気に拳を振り上げて飛び上がる。
言ってしまえばアッパーだが、100数キロと一緒にジャンプするんだ。
少しはカッコよく決めるのがちょうどいいんだ。
101 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/09(火) 01:04:20.07 ID:8H+sVoeW0
ダンテ 「さてと、残りはお前だけだ。ベイビーちゃん。」

悪魔 「ダンテ……裏切り者、スパーダの血族……」

悪魔 「素手で我が隷属をこうも容易く片付けるとは……」


ようやくコイツの様子がおかしいことに気付いた。ボコボコと
血が泡になって聞き取りにくいことこの上ないが、奴は
間違いなく喋っている。それも、人語をだ。単語じゃない
まともな話が出来る奴だ。だが死体に宿ったばかりの
悪魔がこうもペラペラ話すことが出来るとは到底思えない。


ダンテ 「……遠隔ってことか。」

悪魔 「人間の血を引いているとはいえ、ここまでの力とは……」

ダンテ 「……」

悪魔 「なぜ、幾度に渡り我らの侵攻を阻む。」

悪魔 「なぜ、同胞である我ら魔界の民を傷つける。」

悪魔 「なぜ、矮小な人間に手を貸す!」

悪魔 「なぜだ! ダンテ!!」


ドドドドドドン。と軽快な音、上と後ろ、俺の銃から飛ぶ鉛が悪魔の口を
ズタズタに引き裂き、骨と筋組織をポタージュにして床と壁だったキャンバスを汚した。
ライーサとティナ、ケイとマミの放った12.7mm、俺の45口径が二発。
見渡してみると全員の顔には一様に同じ表情をしていた。困惑と不快感、俺への疑念。


ティナ 「ダンテ、コイツは魔界と言ったな。お前を同胞と。」

ダンテ 「ああ。だがね、俺は人の話を聞かないやつと尋常じゃないお喋りな奴とは」

ダンテ 「お付き合いしないようにしているんだ。」

ケイ 「帰ったら、ちゃんと話なさい。知る権利があるわ。みんなね。」

ダンテ 「ああ。下手なファンタジーよりも面白いだろうぜ。」

ティナ 「……行くぞ。RTBだ。」

ケイ 「“アフリカ” これより帰投するわ。」

「了解」
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/10/09(火) 05:19:39.07 ID:9X6YTHyt0
>>1

>>101 嫁に来るとき、説明…
103 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/09(火) 20:19:07.00 ID:8H+sVoeW0
帰り道はストライカーにぶら下がることは許されず、両腕を掴まれて
宙ぶらりんになって飛ぶことになった。なんとも間抜けな光景だ。俺が。


ダンテ 「リトルグレイを笑えねェな。」

ティナ 「リトルグレイ?」

ダンテ 「そうだな……未知の生物だ。」

ケイ 「ふーん……悪魔も私たちにとっては似たり寄ったりだけどね。」

ダンテ 「男を急かすのはいい女の特権ってか? まあいいさ。よく聞け。」

ダンテ 「魔界ってのは……そうだな、別の世界だ。コミックにあるだろ? 人間の知らない世界だ。」

ダンテ 「悪魔はその世界の住人。大抵は狂暴で戦いに飢えてる。」

ティナ 「異世界……というやつか。どうしてそれがいるのだ。」

ダンテ 「いい質問だ。ちと長くなるぜ。」

そして俺は謳うようにして、ちょっとした歌劇風に話してみる。
今回は応じてくれる奴がいないことが少しだけ寂しいがね。


昔、人間界と魔界は繋がっていた。そう断言出来るほど俺は生きちゃいないが

悪魔たちが魔界の王の元に攻め込んできたんだ。繋がっるてほうが都合がいい

かつて、魔界の王が人間界に侵攻した際、一人の悪魔が正義に目覚め、

人間のために戦った。その名はスパーダ。魔剣士スパーダは剣の力をもって

悪魔の王を魔界に封じ込め、その最期まで人間界に残り怪異と戦い

世界の平和を見守った……っても戦争や人間同士の争いは傍観してたみてェ。

ったく、親父ももう少し仲裁でもしてくれりゃいいってのに。

おっと、話が逸れた。スパーダが姿を消したのは魔界を封じてから2000年後。

しばらくするとスパーダの力、悪魔の力に魅了される奴もちらほら出てきた。

人ってのは不思議なもんだよな。未知のモノは排斥すると同時に崇拝の対象にもする。

ここまではいいな? オーケー、それじゃ続けよう。
104 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/09(火) 20:42:56.56 ID:8H+sVoeW0
魅了されたある男は魔界の侵攻の際に人間界に残された道具、物好きな悪魔が人に授けた

様々な術を用いて魔界と人間界を繋ぐための塔を作った。その目論見は見事に潰えるわけだが

一部の場所じゃ悪魔が溢れて大変だったらしい。まったく……大変だった。

それからしばらく、とある島ではスパーダの封印が解けそうになった、それも再び封印がなされ……


ティナ 「あー、んんっ。その経緯が気になるが。」

ダンテ 「そりゃ自分の目で確めてくれ。方法は考えろ。ヒントは黒い箱だ。」

ティナ 「……?」


まあなんだ。悪魔は封印された。めでたしめでたし……ってわけにも行かなかった。

スパーダを崇拝するイカれた……だって悪魔を神様って崇めるんだぜ? 最高の皮肉だ。

その宗教は“彼らにとっての”楽園を目指し……想像通り。それも阻止された。

ダンテ 「そして残るは沈黙のみ……」

ティナ 「……昔、絵本であった気がするな。本当だったのか?」

ケイ 「……話が逸れすぎじゃない。」

ティナ 「くくっ……作家が言うとやはり重いな。」

ケイ 「ちょ、ちょっと!?」

マミ 「……えっと、ダンテさんが言いたいのは。」

マミ 「何度も悪魔がちまちま出てきたせいで人間界にも悪魔が混じって暮らしてる……ってこと?」

ライーサ 「加えて封印も完全とまではいかない……ってこと?」

ダンテ 「大正解だ。お前らにはこれをあげよう。悪魔の血と魔除けだ。」


優等生が二人。いやあ、いいもんだ。折角だし、ご褒美もいい。
戦利品のレッド・オーブとボロボロのコートに吊るされた銀のアクセサリー。
おすすめはオーブだ。然るところに売れば相当の額になるし、インテリアにも
……インテリアには……どうだろうか?


マミ 「じゃあ……魔除けで」

ライーサ 「ブサイクなのよりは……魔除け、かな?」


オーブの目の辺りが濡れた気がする。悪魔の血は結晶となるのが普通だが
珍しいこともあるってもんだ。ブサイクだけど。


ケイ 「……あーっ!? ダンテ、どういうこと!? 悪魔の話を信じる信じないは別として、」

ケイ 「さっきの語りで、そのスパーダを親父って!?」

マミ 「そういえば、あの変な人も……ダンテさんをスパーダの血族って。」


気付くのが遅いんじゃねェか? まあ、さらっと入れたから処理に時間がかかったか?
105 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/09(火) 21:38:17.12 ID:8H+sVoeW0
ダンテ 「そういうこった。悪魔ってのがいるって、信じてもらえたか?」

ダンテ 「人間が心臓をぐちゃぐちゃのミンチにされて生きるってのは早々ないぜ。」

ケイ 「というよりは、あってたまるか。って話よね……ティナは?」

ティナ 「私は自分の目と耳で確めたものしか信用しない。」

ティナ 「だが、私はダンテが串刺しになった姿を上から見た。加えて」

ライーサ 「死んで当然の怪我を負った兵士が動いてダンテを裏切り者の血族と罵った。」

マミ 「受け入れるほかはないですよね……」

ダンテ 「ま、そういうこった。俺は便利屋だが、本業は……」

ダンテ 「悪魔狩りが専門だ。」

ケイ 「デビルハンター、ね……」

ダンテ 「胡散臭いだろ? だから便利屋だ。」

ティナ 「……充分に胡散臭いじゃないか。」

ケイ 「……改めて、信じましょう。悪魔って生き物が存在することを。」

ティナ 「……ところで、ケイたちの方へ来たネウロイはどうした。」

ダンテ 「俺のブーツを犠牲に勝ち得た勝利だ。」

ティナ 「まさか、キックで……?」

ケイ 「……ええ。ネリチャギして、おっこちて。」

マミ 「扶桑にも、そんな人がいたような……それはストライカーで、だったけど……」

ティナ 「そうか……まさか、事実をそのまま伝えるわけにもいくまい。」

ダンテ 「地上の攻撃で撃墜、でいいんじゃねェの?」

ケイ 「ええ。そう報告しておくわ。」

ティナ 「私の撃墜に入れるなどというバカを言わなくて良かった。」

ダンテ 「恩を売る気もないし、買う奴じゃないだろう?」

ティナ 「まあな。分かってるじゃないか。次に言いたいことは分かるか?」

ダンテ 「……酒に付き合え。悪魔の話を聞かせろ。」

ティナ 「ジャックポットだ。余の酒の相手をせい。」


全く、随分若い女王様だ。


ダンテ 「屑ホップのビールだ。とびきり苦いものがいい。」


to be continued……
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/10/09(火) 21:46:11.91 ID:v3vmqyKmo
乙ー面白くなってきました!
107 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/09(火) 22:04:45.30 ID:8H+sVoeW0
【次回予告】

屑ホップのビール。とびきり不味いことこの上ないが苦味だけは本物を

遥かに越える。たまに飲みたくなる時ってのは少しおセンチな気分になった時か。

今でも覚えてるぜ。あの.357マグナムの銃声を。あの暖かい場所を。

細かいことに拘らないのは俺の主義だが……友と酒を交わす時には

後ろを振り返ってみるのも、なかなか乙なもんだぜ。


Next. Storm Witches
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/10/09(火) 22:06:30.67 ID:hbHXS087o
Cool
109 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/09(火) 22:13:08.60 ID:8H+sVoeW0
取り敢えず今回はここまで。以下恒例のチラ裏タイム。
予告が訳分からんってかたは本屋で小説のDMCを買うといいです。
今回は恒例行事と簡単に悪魔をちらつかせる。それだけのお話でした。
アフリカの皆様は資料として使ってるのが小説とマンガ二冊ですので
キャラ崩壊も多々見られるかと思います。ダンテも自信ないです。

※ペリーヌさんのフィギアを買って劇場版の円盤を買うのが厳しい。


それでは皆さん、戦線を維持しつつ別命あるまで気長に待機
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山口県) [sage]:2012/10/09(火) 22:32:21.20 ID:pHUxRBnSo
アフ魔とスフ魔も買って、どうぞ
111 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/09(火) 22:41:39.15 ID:8H+sVoeW0
>>110 アフリカ、アンドラは持ってる。スフ魔って同人だっけ? 田舎本屋じゃ見ないの。
112 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/11(木) 00:09:31.81 ID:RWbXoj/10
お待たせしました。一応、ハルファヤ峠の戦い(アフ魔の2つ)辺りを軸にという目処が決まりました。
スフ魔はもう少し調べてみました。全5巻ですかうーん。なかなかに出費がかさむね。
ところでマンガのDMC3の三巻ってまだ出ないのかね。2005年って遠いや。これじゃ2009年もまだまだ。


【2話: Storm witches】

ダンテ 「そこで俺はネウロイにしこたま鉛の雨を浴びせたのさ。止めは」

ケイ 「ブーツを犠牲にした踵落とし……やっぱり信じられないんだけどね。」

ティナ 「そのブーツが事実って証じゃないか。腹を裂かれて平然としてるんだ。」

ライーサ 「そのくらいはあってもおかしくないってこと。マミも行けるんじゃない?」

マミ 「ああ……って、その前に撃墜されちゃいますよ。」

ダンテ 「お前さんだって凄かった。撃墜の瞬間なんか、いい写真じゃねェの?」


基地に帰ってからというもの、こうして今日の武勇伝やケイが撮影し、すぐに現像した
写真を見ながら愚ともつかない会話を肴にしてのささやかな飲酒を楽しんでいる。
今回はテントではなくどこからか引っ張り出したテーブルを外に晒してのデブリーフィングだ。
夕食を済ませ、日が沈んだここは少しばかり冷え込む。予備のコートを出して正解だったわけだ。
今日の気候は酔った頬を冷ますなんて生易しいもんじゃあない。ひょうでも降りそうだ。


ケイ 「でしょ? 我ながらなかなかの傑作よ。勲章ものかしらね。」

ダンテ 「随分安い勲章だな。」

ティナ 「カールスラントは勲章を渡すのが好きだからな。」

ティナ 「これ以上あげる勲章が無いからと新たな勲章を作るくらいだ。」

ダンテ 「クレイジーだね。俺にはよく分からんさ。」


苦さだけは一級の安ビールをあおりながらひとりごちる。士気の向上だか
なんだか知らんがそんな勲章よりはもう少しマトモな支援と休息のが嬉しいと思うぜ。
実際のところは知らないから、貰う側がどう思うか。それは知らない。
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/10/11(木) 05:31:45.06 ID:8D06woAl0
>>1

ついでにガタイの差も、さりげなく表現してくれると嬉しい。

ウイッチとダンテの差はデカイ。
114 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/11(木) 22:16:51.46 ID:RWbXoj/10
ティナ 「……さて悪魔について、もう少し掘り下げて教えてくれないか?」

ダンテ 「大体は俺の話した通りだ。本能のまま人を襲う。」

ケイ 「……例外もあるんでしょ?」

マミ 「確か、あの時の悪魔? は喋ってましたよ。」

ティナ 「悪魔にも勉強熱心な奴がいるわけだな。」

ダンテ 「熱心ってか……位ってのもあんだ。場合によっちゃ頭のいい奴もいないわけじゃねェ。」


すぐこうだ。少しでも引っ張り出せるものがあればすぐにでもそいつを引っ付かんで来る。
いっそパティくらい小さけりゃもうちょい楽に誤魔化せたものを。細かい場所に目敏いのは
カメラマンって職業柄だろうか。ティナは暇潰しに、マミとライーサは純粋な好奇心で、
それぞれケイが俺から引き出す情報をさらに掘り下げようとしてくる。面倒臭ェってもんだ。


ケイ 「それで、今回の悪魔に関して専門家のダンテはどう思ってるの?」

ダンテ 「悪魔にでも聞いてくれ。俺はエスパーじゃあない。」

ティナ 「そうだな……私が1つ推理してみよう。」

ライーサ 「ティナ、出来るの?」

ティナ 「ここは娯楽が少ない。少しは頭を悩ませるのも面白いだろう?」

ケイ 「……へぇ、どうせなら細かい経理にも眼を向けて欲しいものね。」

ティナ 「私は戦闘隊長。隊長は悩んで皆を不安に陥れてはならない。」

ケイ 「……こ の 飲 ん だ く れ」

マミ 「お、落ち着いてください!」


わなわなと手に持ったジョッキを振るわせるケイ。おいおい魔法力を開放してるじゃねェの。
あがりを迎えてもウィッチなんだから、力の加減を間違えちまったらヤバいことに……


ガチャン


ダンテ 「だろうと思った。」

ケイ 「あ……」


懸念は的中。ジョッキの持ち手は見事に割れ、注がれたビールの泡がじわじわと
机を湿らせた。量が少ないのが少し残念だろうか。どうせなら思い切り被っていた方が
服も透けて……マミはどうしてこっちを見ているのだろうか。


マミ 「……一瞬、ダンテさんの眼がやらしくなったような。」

ダンテ 「気のせいだ。俺のストライクゾーンは身長差30cm未満は対象外。」

ティナ 「お、じゃあ私はセーフみたいだな。」

ダンテ 「もう15年くらい後なら映画くらい付き合ってやる。」


やれやれ、子供の洞察力も侮れんね
115 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/11(木) 22:37:31.96 ID:RWbXoj/10
ティナ 「それじゃあ、始めようじゃないか。対悪魔会議だ。」

ケイ 「……ダンテ、付き合ってあげて。」

ダンテ 「ああ。アーサー役くらいならしてやる。」

ライーサ 「アーサー?」

マミ 「あれですよ。推理小説の相棒役だt思います。ポアロの助手にそんな名前が。」

ケイ 「へえ、随分大きなポアロだこと。」

ティナ 「そうなのか?

ケイ 「ええ。ポアロは5フィートの小男なの。」

ティナ 「博識だな。」

ケイ 「マミは文学好きだし、私は昔に怪我をしてたから、暇なときにね。」


ウィッチといえば戦闘が全て、と思っていたがそうでもないらしい。よくよく考えれば
ガリアには某・サン=テクジュペリだとかいう作家のウィッチがいたし、他にも文化的な面で
活躍したウィッチ……というか少女の名前も度々耳にした……気がする。
まだまだ若い……12、3のマミがこうして他国の人間と意志疎通できる。これも大したことだ。


ダンテ 「ああ。ワトスンじゃベターだろう?」

ティナ 「……たまにはありきたりも悪くない。違うか?」

ダンテ 「っくく、違わないさ。仰る通り」


分からなかったらしいマルセイユは少しばかり機嫌が悪い。そこまで気にくわなかったのか?
最強という肩書きである以上、何でも負けが認められない。そんなとこかもしれない。
結局のところ、コイツらだってまだまだ子供ってことかもしねェってことだ。


ダンテ 「さ、話をしてくれよミズ・ポアロ。」
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/10/12(金) 05:20:01.79 ID:gwtGBeO40
>>1

>>115 各自のキャラが出てきたのである。
117 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/12(金) 17:40:17.05 ID:qNb8srBc0
>>115 ミス。サン=テグジュペリ氏はWWいなかった。勢いで書いた結果がこれだよ。
今まで散々やらかしてるからそろそろ修正。どうでもいいけどサン=テグジュペリが名字なのね。


修正版はこちら。

ウィッチや兵卒といえば戦うことが全て、と考えていたがそうでもなさそうだ。
ガリアにはパイロットの傍ら作家となったサン=テグジュペリなんかもいるし、
他にも文化的な活躍をした人間がいたような気がする。身近でもマミなんかは
12、3そこらでこうして異国の人間とコミュニケーションを育める。
ウィッチってのは階級が高いもんだから士官教育の賜物だと思えるが、それでも
なかなか目を見張ることだと思う。俺がマミくらいの時は……やめだ。
身分を服みてェにコロコロ変えて、ロクなことをしちゃいなかった。
118 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/12(金) 23:36:38.64 ID:qNb8srBc0
ティナ 「それじゃあ、私の推理を披露しようじゃないか。」

ティナ 「んっ……さて。」

ダンテ 「なかなか本格的だな。」

ケイ 「……そう? 」

偏見というばそうだが、推理をする人間というと。さて、から初めてその場を立ち、
うろうろと聴衆の回りを動き回るのが相場ってもんだ。犯人はお前だ! とビシッと決めるのは
題材が題材なだけに難しいだろうが。


ケイ 「なんか、色々と偏見混じってない? その変な探偵観。」

ティナ 「まず、悪魔が何故襲ってきたか、だ。悪魔とは本能に忠実だと言ったな、ダンテ。」

ダンテ 「軍隊風に言えば、肯定だね。」

ティナ 「加えて、例外も少なからずあると言ったな。知能を持ち言語を解すとも。」

ダンテ 「ああ。続けてくれポアロお嬢さん。」

ティナ 「私の考えでは、今回の奇妙な攻撃を仕掛けた悪魔は後者だ。」

ティナ 「ダンテと会話があっただろう。言語を解する証拠だ。」

ケイ 「そうなるわね。」

ティナ 「ここまではウォーミングアップだ。頭の体操というべきかな?」

ティナ 「そいつが大物だと思う理由に加えるものがあるな。」

ティナ 「ダンテ、質問はいいか? 人に乗り移る悪魔というものは」

ダンテ 「いないわけじゃねェ。が、その手合いの動きってのはもっと滑らかだ。」

ダンテ 「おまけに死体になりすます悪魔がいるか。フランケンの化け物より目立つぜ。」

ティナ 「だろうな。そこで私の推理その2だ。」

ティナ 「奴は死体をゾンビの様に操っていた!」

ダンテ 「根拠はどうした。」
119 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/13(土) 00:29:30.81 ID:Bzmpj66A0
ティナ 「なに、簡単なことさ。マミ、人間は強いか?」

マミ 「え、えっと……弱い、かな。ネウロイにだってストライカーなしじゃ太刀打ちできないですし。」

ティナ 「その通り。」

ライーサ 「つまり、ティナが言いたいことは……わざわざ強い悪魔が人間なんかに取り憑くわけがない。」

ライーサ 「力を持つ悪魔だったらそんな面倒なことはしないわ。でしょ?」

ティナ 「ああ。完璧。さすが私の二番機だ。」


これに関しては俺も同意だ。悪魔の中には人間を見下す連中がごまんといる。中でも高級な
悪魔なんかは人間を見ちゃいない奴さえいる。そんなプライドの高い悪魔が“下等”なヒトに
乗り移るわけがない。面白半分にしちゃいい線いってやがる。あの悪魔がそこそこ強力かは
分からなかった。言葉遣いは教養に満ちていたが死体は素手でも戦えるレベルだ。動きも
ぎこちなく、動作も鉛のように鈍い。ここは矛盾点ってとこになるわけだ。



ダンテ 「オーケー、続けてくれ。」

ティナ 「そして3つ目……悪魔はネウロイの襲撃に合わせて行動を起こした!」

ダンテ 「おいおい、強い悪魔がこそこそとか?」

ティナ 「万全を期すってのもあるだろうし、ネウロイの襲撃に見せかけられるだろう。」

ケイ 「それって……殺しを偽装したってこと?」

ダンテ 「面白い、考えられないことじゃあねェな。」

マミ 「……でも、何の為に?」

ティナ 「何かの為に、だ。」

ケイ 「説明になってないじゃない。」

ダンテ 「なんにせよ……情報が少ないってもんさ。」

ケイ 「そうね。満足した?」

ダンテ 「なかなか有意義だった。驚きなのは悪魔をすんなり認めたことさ。」

ダンテ 「眼で見ても信じられるものじゃあない。」

ティナ 「アフリカは全ての始まりの地だ。何が起きてもおかしくはないだろう?」

ケイ 「ウィッチは慣れてるのよ。予想外のことにね……ネウロイだって6年前まで考えれなかったもの。」


なるほど、グルーさえビビった悪魔をこうも容易く受け入れた理由が分かった。
今回の悪魔について、分かることは少なかったが元々集まりはデブリーフィングだ。
謎を解き明かすのが目的じゃない。ささやかな推理は終わりを告げ、各々が寝床へと
戻っていく。ちくしょう、やっぱり寒いな。
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/10/13(土) 05:38:22.90 ID:2fmbhse20
>>1

アフリカの砂漠、

サングラスは必需品。

服や靴は使用前に蠍がいないことを確認。
121 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/15(月) 18:18:54.25 ID:hd5NId0s0
それから数日。数度小規模なネウロイの攻撃があったものの、どれもマルセイユの戦果を
伸ばしていくだけにとどまった。だけってのは、まあなんだ。ストライカーの相乗りを
断られたからだ。ケイに。なんでも魔法力を喰うことになること。あれは相乗りどころか
ジャックもいいところ。だそうだ。これには流石に引き下がるしかない。


ケイ「悪魔の関係しそうな、大きなのだったら考えてもいいけどね。」


確かに規格外とはいえ、1人のウィッチが沈めることの出来るような小型ネウロイが
悪魔のカモフラージュになるかと言えば、ノーだ。マルセイユの与太……おっと。推理
が正しいならだ。悪魔がこすっからい奴だって確証はないが、少なくともノコノコ鴨が
ネギと一緒に鍋と火種を持ち込むような間抜けじゃなさそうだ。


ダンテ 「思ったよりは、暇なもんだな。ここも」

ティナ 「戦場ではそんなものさ。待機する時間の方が長い。」

ダンテ 「そうだな……それをネタに小説でも書いたら面白そうだな。」

ティナ 「私に文才は無いぞ。」

ダンテ 「奇遇だな。俺もだ。」

ティナ 「どんな感じかだけ聞こう。」

ダンテ 「ある青年が愛国心のために立ち上がる。厳しい訓練を終えていざ戦場に。」

ダンテ 「ところが待っていたのは退屈な雑務と高慢ちきなウィッチ。」

ダンテ 「戦闘にも参加できず、やり場の無いエネルギーをくすぶらせ続ける男……」

ティナ 「ほほう……?」

ダンテ 「……次第に男はささくれだち周囲とも関係が上手くいかなくなり……」

ティナ 「それから?」

ダンテ 「終わりだ。」

ティナ 「文才というより、飽きっぽいんじゃないか?」

ダンテ 「かもしれねェ。」
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/10/15(月) 20:03:59.23 ID:fUwaFrkb0
>>121 ダンテは週休六日なので…
123 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/15(月) 20:36:52.86 ID:hd5NId0s0
ケイ 「ちょっと。あんまりちょっかいかけちゃ駄目でしょ。」

ダンテ 「保護者が来たみたいだぜ、嬢ちゃん。」

ティナ 「みたいだな……」

ケイ 「ダンテも暇ばっか言うんじゃなくて、整備を手伝う。」


バレてたか。どうも整備する銃の火薬の臭いは嫌いじゃあないんだが、煙草の臭いは苦手だ。
その中での整備を任されたもんだから、我慢できずに外の空気に当たっていたのだが。
別にサボってるわけじゃない。その証拠だってある。


ダンテ 「休憩がてらの勉強だよ。見てくれこの分厚いマニュアル。」

ダンテ 「休憩でも仕事への情熱を忘れない。扶桑男児っても通じ」

ケイ 「そんなデカイ扶桑男児がいるもんですか。」


ごもっとで。確かにここの扶桑の人間は俺の少し前に来たらしい会計の男も
整備隊(Dune Scouts……砂隊というそうだ)の男たちもどれも小柄だ。
中にはマルセイユよりも小さい奴だっている。それでも、元からいた
ブリタニアやカールスラントの自分よりも大きな兵士と張り合う。
なかなかのガッツだ。ヒノって叩き上げの奴なんかは40mmを使い物に
するために他の連中と黙々と改造をしている。それで手が足りないところを
週休6日の俺が駆り出されることになったわけだ。


ケイ 「銃の整備、冷却の機能と砂には注意しといてね。」

ダンテ 「冷却?」

ケイ 「ここは暑いから、それだけ銃身が焼けるのも早いの。」

ダンテ 「なるほど。仰せのままに。他には? まさか小言を言うだけ暇ってんじゃないだろ?」

ケイ 「ええ。40mmの改造は進んでるか気になって。」

ダンテ 「ヒノのおやっさん達がいじってる。まるでガキみたいにここをあーしようだのって」

ケイ 「そう。それで十分。マミの使う武器の様子が気になってね。」

ダンテ 「あんなデカブツをか!?」


おいおい、俺の胸ほどの背丈しかないあのちびっこが振り回す。凄い絵面だ。


ケイ 「あの子、あれよりも凄いものを持ち出したのよ。」

ダンテ 「あれより……テントの奥に眠ってるあのデカブツか。88mmか何かは知らねェけど……」

ティナ 「この前に、持っていたな。そうだったな。ダンテの来る少し前に。」

ダンテ 「……なるほど、ね。」

ケイ 「……それにぶらさがって飛ぼうなんて思わないでね。」


考えを読まれてしまった。
124 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/15(月) 21:29:13.16 ID:hd5NId0s0
ケイ 「ちょっと。あんまりちょっかいかけちゃ駄目でしょ。」

ダンテ 「保護者が来たみたいだぜ、嬢ちゃん。」

ティナ 「みたいだな……」

ケイ 「ダンテも暇ばっか言うんじゃなくて、整備を手伝う。」


バレてたか。どうも整備する銃の火薬の臭いは嫌いじゃあないんだが、煙草の臭いは苦手だ。
その中での整備を任されたもんだから、我慢できずに外の空気に当たっていたのだが。
別にサボってるわけじゃない。その証拠だってある。


ダンテ 「休憩がてらの勉強だよ。見てくれこの分厚いマニュアル。」

ダンテ 「休憩でも仕事への情熱を忘れない。扶桑男児っても通じ」

ケイ 「そんなデカイ扶桑男児がいるもんですか。」


ごもっとで。確かにここの扶桑の人間は俺の少し前に来たらしい会計の男も
整備隊(Dune Scouts……砂隊というそうだ)の男たちもどれも小柄だ。
中にはマルセイユよりも小さい奴だっている。それでも、元からいた
ブリタニアやカールスラントの自分よりも大きな兵士と張り合う。
なかなかのガッツだ。ヒノって叩き上げの奴なんかは40mmを使い物に
するために他の連中と黙々と改造をしている。それで手が足りないところを
週休6日の俺が駆り出されることになったわけだ。


ケイ 「銃の整備、冷却の機能と砂には注意しといてね。」

ダンテ 「冷却?」

ケイ 「ここは暑いから、それだけ銃身が焼けるのも早いの。」

ダンテ 「なるほど。仰せのままに。他には? まさか小言を言うだけ暇ってんじゃないだろ?」

ケイ 「ええ。40mmの改造は進んでるか気になって。」

ダンテ 「ヒノのおやっさん達がいじってる。まるでガキみたいにここをあーしようだのって」

ケイ 「そう。それで十分。マミの使う武器の様子が気になってね。」

ダンテ 「あんなデカブツをか!?」


おいおい、俺の胸ほどの背丈しかないあのちびっこが振り回す。凄い絵面だ。


ケイ 「あの子、あれよりも凄いものを持ち出したのよ。」

ダンテ 「あれより……テントの奥に眠ってるあのデカブツか。88mmか何かは知らねェけど……」

ティナ 「この前に、持っていたな。そうだったな。ダンテの来る少し前に。」

ダンテ 「……なるほど、ね。」

ケイ 「……それにぶらさがって飛ぼうなんて思わないでね。」


考えを読まれてしまった。
125 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/15(月) 21:43:18.37 ID:hd5NId0s0
ミス。


ケイに酒を飲みすぎるなと強く釘を刺されて、マルセイユは不肖不肖ながら、
自分の根城へと帰っていく。これで俺もむさい環境に逆戻りだ。
銃の分解と清掃っても、エボニー達に部品が増えた程度と思えば楽だ。
だからといって、手を抜くって選択肢はない。何度もガンスミスの手を
煩わせてきたからこそ分かる気持ちだってある。兵士たちは整備の腕を信じて
託してくるんだ。その期待には答えるのが当然だ。


「婆さんの気持ちってのも分かるぜ……」


弾薬は共通でも、機構には若干というか、かなりの違いもある。外が同じと思ったら
別物だったり、寄せ集め部隊だからこそある苦労ってのもある。こんなことを中隊っても
その人数をはるかに下回る規模の部隊でやってるのかと思うと、ぞっとする。
これだけじゃない。ストライカーの整備だってある。他にも基地の設営だってある。


ダンテ 「たまにはあくせくするのも悪くねェかもな……」


少しだけらしくないことを思った。こういうときは大抵悪いことが起きるが……
よし、今回は大丈夫そうだ。外からは重い足音が聞こえた。多分、陸戦のストライカーだ。
のしのしと足音を立てて基地の中へ……マティルダかもしれない。
ストライカーの足音が少し止まった。気配で分かる。整備で忙しい俺たちのテントの前だ。


ダンテ 「っ! ……袋?」


何かが投げ込まれる。布の袋に棒状のものが入っている。振るとカラカラ音がする。
誰のかは分からねェが……覗くだけ。覗くだけなら大丈夫だろう。うん。
紅色の刀と、翡翠色の刀……


紅色の刀 「ここはどこじゃ……」

翡翠色の刀 「そうじゃのう、兄者よ。」

翡翠色の刀 「エンツォとかいう質に袋に入れられて、誰かに持っていかれたと思えば」

紅色の刀 「磯の匂いのする場所を揺られて行き」

翡翠色の刀 「今度は暑い場所じゃ。どうしたものかのう……」


俺は何も見ていないな……俺の持ち物じゃないことは確かだ。
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/10/15(月) 22:11:53.15 ID:G1z7JM0Io
アグルドwwwwww基地内にトリッシュか誰か混ざってるだろww
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/10/15(月) 22:22:50.36 ID:HcuedmJAO
またやかましい奴らがwwww
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/10/15(月) 22:33:35.25 ID:edFTE16r0
魔具の中では一番安全に使えるのは確かだが、一番うるさいwwwwww
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/10/15(月) 23:06:14.72 ID:5z9hlN79o
早く捨てろー!間に合わなくなっても知らんぞー!

いや、いい奴らなんだけどね
130 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/15(月) 23:36:59.30 ID:hd5NId0s0
ヒノ 「…ダンテさん。どうしました?」


振り向くことなくヒノが声をかけてくる。口調こそ丁寧なものの、
声には明らかに不審さと静かにしてくれとでも言いたげな色が
混じっている。多分、丁寧なのはブリタニア語に慣れてないせいだ。


ダンテ 「いいや、何でもな」

翡翠色の刀 「ダンテ! 兄者。」

紅色の刀 「ダンテとな! 懐かしい名前じゃのう。」

翡翠色の刀 「我らをあやつ以上に使いこなす者はおるまいて……」

紅色の刀 「しかし、酷い奴だったのう。折角力を貸したと言うのに。」

翡翠色の刀 「終わるとすぐに我らを売り払いおって……酷い奴じゃのう。」

ダンテ 「ああ。古い知り合いでな。少し席を外すよ。」

ヒノ 「……?」


アグニとルドラ……炎と風を操る魔具であり。過去に打ち倒した悪魔でもある。
非常に強力であり、使い勝手も悪くない……むしろ、癖の強いものが多い魔具では
珍しいほどに取り回しの良いもんだ。俺には執着心がない。金もない。そこで
大抵は使い終えたら質に売っている。ダチに借金のカタにされてるって方が正しいか。
アグニとルドラを手に入れた時は確かに貧乏だったが、魔具を売るほど飢えた訳でも
なかった。では、どうして売り払ったのか。簡単だ。何十年か前に遡ろう。


『使ってやる……1つだけ条件がある。』

『……喋るな。』


こう言ったにも関わらずにコイツらはペラペラと話を続ける。
黙っていたのは仕事が一段落するまでだった。それからはうるさいこと
この上ない。何かジョークでも言うならジュークボックスみたいで
面白いが、コイツらの会話は中身がない。というより不毛だ。
そのくせ、仕事があれば連れていけとせがむ。
あんまりだったので、ワンちゃんたちと仲良く売り払ったわけだ。


ダンテ 「……お前らか。よりにもよって。」

アグニ 「その声はダンテ。久しいのう。」

ルドラ 「久しいのう。」

アグニ 「ようやく我々の力を再び手にする時が来たか。」

ルドラ 「我々の力と主の力。三つの心が1つになれば」

アグニ・ルドラ 「100万パワーも夢ではない。」

ダンテ 「別の使い手が見つかって幸せになってると思ったよ。くそっ。」
131 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/15(月) 23:54:41.08 ID:hd5NId0s0
ダンテ 「簡潔に聞こう。誰がお前たちを連れてきた。」


周囲に聞かれないように小声で話す。マルセイユならまだしも
一般の兵士の理解に及ぶ範疇のものではない。刀が喋るなんざ
普通は考えられねェからだ。ちくしょう。どうしてこんな気を遣う羽目に
なっちまうんだ。ちくしょう。


アグニ 「誰がとは、誰のことじゃ?」

ルドラ 「連れてきた、であるな。兄者よ。」

アグニ 「ああ。連れてきたと言った。」

ルドラ 「ならば、我らをここへ送った者じゃないかのう。」

アグニ 「我らを質から出して、暑い地へ連れた者ということか。」

ルドラ 「恐らくは。」

ダンテ 「ディスカッションは終わったか。それで誰が?」

アグニ 「分からぬ。」


だから嫌なんだ。コイツらの会話は長い割には要領が捉えてない。
おまけに長話がなんのオチもつかなかったりするのはいいほうで、
大方は聞く、返すだけの盛り上がりもクソもないもんだ。
今だってそうさ。


ダンテ 「やらかす相手は想像がつくがな……」


ぐるりと辺りを見回す。セクシーにお尻を振って歩く陸戦ウィッチ。
多分、犯人はアレだ。あの野郎……やっぱりメモなんて残すんじゃなかった!


ダンテ 「トリッシュ!!」

アグルド 「うぉう。」


悠々と歩き続ける陸戦ウィッチの背中を追う。距離は30mもない。おまけに向こうは歩き。
こちらはダッシュ。すぐに追い付くはずだった。20……10……5! アグニとルドラが
変な呻き声をあげたが、それは無視してもいいだろう。


マティルダ 「ダンテ。ここから先は女性専用の場所だ。」

ダンテ 「くっ……待ってくれ。その女と話がしたい。」

マティルダ 「彼女はブリタニア軍から派遣された増員のウィッチだ。」

陸戦ウィッチ 「ふふっ……“初めまして”……ミスター・ダンテ。私はヴィーチェとお呼びください。」


このアマ……初めましてでなんでさらっと俺の名前が出てくるんだ。
それだけを言うと“ヴィーチェ”お嬢さんは奥へと進んで行った。
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/10/16(火) 10:50:21.30 ID:d89MTIvQo
ああ、これで悪魔たちの狙いがある程度判明するのかww
陸戦ウィッチって事はキャタピラレッグなんだよなww
133 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/17(水) 00:52:47.29 ID:fi0IhULt0
マミ 「……」

アグニ 「なんじゃ、この小娘は。」

ルドラ 「けったいじゃのう。」

アグニ 「けったいじゃ。この小娘からは魔法力が感じとれるぞ。」

マミ 「あ、あの……」

ルドラ 「兄者。ひょっとすると彼女はうぃっちとやらではないか?」

アグニ 「うぃっちとな? 過去に我々を封じた巫女もうぃっちとかいう……」

マミ 「どうして……剣が話を」

ダンテ 「Silence!!」


ヴィーチェ(というかトリッシュ)に気を取られたせいでコイツらを忘れていた。
先程のケイと同じようにこれから命を預ける銃を見に来たのだろう。多分。
そして、そこには放り捨てたアレ。100mを5秒フラットとはいかないが
俺としてもなかなかの走りだったと思う。その勢いで思い切り蹴り、
仮の事務所へとシュート。綺麗なアーチを描いて室内に放り込む。


マミ 「ダンテさん……今のアレって」

ダンテ 「関わりにならないほうがいい。面倒だぞ。」

マミ 「そ、そうですか……」

ダンテ 「魔法力があれば、アレを使いこなせないわけでもなさそうだが。押し付けるのは悪い。」

マミ 「剣と魔法力に関係が……?」

ダンテ 「少しだけ、な。さあ、俺も仕事に戻る。」


見られた以上は誤魔化しの余地はない。かといって説明も面倒だ。
ここは曖昧な言葉で場を濁しておくことにしよう。マミもマミで
混乱している。今は説明のしようがなさそうだ。
134 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/17(水) 01:13:27.96 ID:fi0IhULt0
ダンテ 「そういえば、補充の陸戦ウィッチのこと、何か知ってるか?」

マミ 「ええと、ダンテさんには伝えてませんでしたね。」

ダンテ 「ああ。ト……ヴィーチェとか言ったな。どの出身だ。」

マミ「確か……ロマーニャ軍のウィッチだとか。美人ですよね。あの綺麗な金髪とか。」

ダンテ 「そうか……良かったな」


キラキラと変装したトリッシュへの憧れに目を輝かせるマミに俺は事実を伝えることが
出来なかった。お嬢さん。あの女は俺の腹を剣で突き刺したんです。お嬢さん。
あいつは俺のツケで値の張るブティックで買い物を楽しむんです。とても言えない。
変装といっても、フォルトゥナでのような手間のかかるものではない。少しだけ
少女らしくなるように体つきと顔立ちを弄っただけのように思う。どうやって
ロマーニャ軍に入って、ここまで来る手はずを整え、おまけにストライカーを
扱うのか。気になることは山のごとくあるのだが。それは本人の領分だ。


マミ 「これでも、アフリカじゃ先輩ですから、ピシッとしなくちゃダメですね!」

ダンテ 「的に当ててからいうこったな。身長も伸ばしてな。」

マミ 「酷いですよ、もー!」


だいたいこんな感じのやり取りで締めて、マミも戻っていった。アグニとルドラは
まあ、今度にでも説明しよう。退屈しているようならここに置くのも一つの……
おい、そういえば、アグニがテメンニグルを封じた値もウィッチだったと言った。
レディはその巫女の血を継いでいて……ってことはもしかすると。


ダンテ 「少し見てみたかったな。残念だ。」


あの頃の殺伐としていたレディに獣の耳。考えるだけで面白いってのに。
ああ、残念だ。全く。
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/10/17(水) 09:35:32.07 ID:wnXSrgK1o
>レディのウィッチ姿
丁度合間だから見れなかったんだなww
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage ]:2012/10/17(水) 09:38:41.79 ID:zG8hcMWoo
やっぱアグニ&ルドラは面白いな。
137 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/17(水) 21:38:35.12 ID:fi0IhULt0
夜になると、案の定というかなんというか。新入りの歓迎会が開かれた。
ここの人間はどうらやなにかにつけて騒ぎたいようだ。娯楽が少ないこと、
マルセイユがいることが理由の大きなウェイトを閉めてるってのは想像に
難くない。俺もこんな空気は嫌いじゃない。ジントニックをちびちびとやりながら
……おい、なんだか今日はやけに人が多くないか。中にはカールスラントの大物、
ロンメル将軍までもがテーブルについている。来たのはロマーニャから(って設定)だろ?


ダンテ 「ケイ。今日は何の日だ。イースターにしちゃ早すぎる。」

ケイ 「部隊のマークが完成したのよ。お披露目ってこと。」

ダンテ 「ああ。それか。部隊の顔ってのはある意味拠り所だからな。」

ケイ 「まあね。なかなか良い出来だってライーサが言ってたわ。」

ダンテ 「あの僕ちゃんが描いたのか。こりゃ期待ってとこだ。」

ティナ 「いくぞ……とりゃ!」


間抜けな掛け声で部隊章を覆う幕をひっぺがす。そこで多くの兵士からの
どよめきと拍手が聞こえた。隣のケイも満足そうな顔だ。マルセイユも同じ。
なるほど、混成部隊らしいなかなか凝ったデザインだ。盾を模した形の中に
バックには金色の文字で書かれたアフリカの文字。そして扶桑の日月旗と星。
中央にはマルセイユの使い魔でもある大鷲。なるほど。この部隊らしい。


ティナ 「ほー。良いじゃないか。」

ケイ 「ライーサが描いたの。」

ティナ 「やっぱりか。」

ケイ 「知ってたの?」

ティナ 「長い付き合いだからな。」

ダンテ 「よかったじゃねェの。合格だとさ。」

ライーサ 「あ、ありがとうございます。」


マルセイユからのオーケーを貰って、ライーサの緊張していた顔が弛緩する。
どれだけ一番機にぞっこんなんだか。中学生か……あー、歳はそれくらいか。
んじゃ仕方ないってのもあるが……何でマミはそんなに興奮してるんだか。


マミ 「ライーサさん、凄く凄いです!」


その台詞はもう3、4年速いと思うぞ。ほら見ろ。あんまり詰め寄る
せいでライーサが若干といわずかなり引いてる。


ケイ 「ほらほら、あんまり興奮しない。」

マミ 「でも、あんなに素敵なマーク、私には絶対に無理だから!」


あまりに褒めちぎって詰め寄るもんだから、ライーサが逃げ出した。
マミは眼を輝かせながら追い掛ける。俺たちはそれを肴に楽しむ。
ちょっとした余興には充分すぎる出し物だ。
138 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/17(水) 21:57:45.66 ID:fi0IhULt0
ヴィーチェ 「どう? ミスター。楽しんでいる?」

ダンテ 「ミスターは止めろ、トリッシュ。」

トリッシュ 「あらそう。久しぶりね、ダンテ。」

ダンテ 「ああ。事務所の書き置きを見たのか。」

トリッシュ 「ええ。結構大変だったのよ? ロマーニャに寄って、身分を偽装して……」

ダンテ 「苦労話はいい。2つ聞きたいことがある。」

トリッシュ 「どうぞ?」


変装し、幼い外見とはいえ、その妖艶な仕草は変わっていない。年頃のガキなら
そのギャップに胸がときめくだろうが。マミとかも、こうしたものに憧れたのか?


ダンテ 「何でアイツらを持ってきた。」

トリッシュ 「ああ。女の子ばかりで女運の悪いアナタが寂しくないようにと」

ダンテ 「……心遣い、涙が出るほど嬉しいぜ、クソッ。」

トリッシュ 「どういたしまして。」


楽しんでやがる、この女。うるさいからと売り払ったアイツらをわざわざ買ってここまで送ってくる。
そんな手間も厭わず気の赴くままに。以前俺をコヨーテに例えたが、その例えは彼女に使うべきだと
俺は主張したいね。……確か、売り払ったよな。アグニとルドラ。


ダンテ 「どうやって買い取った。」

トリッシュ 「エンツォに頼んだら気前よく売ってくれたわ。」

ダンテ 「……もちろん支払いは」

トリッシュ 「アナタよ。仕事が終わればまとまったお金が貰えるでしょう?」


泣けるぜ。全く。
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/10/18(木) 05:35:13.33 ID:AX23n9L+0
Saifu must die…
140 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/18(木) 06:58:28.93 ID:KMZMnlgt0
ダンテ 「2つ目だ。ってか、こっちが本題だな。」

ダンテ 「何の用でこっちに来た。俺にお友達を送るだけが仕事じゃないだろうて。」

トリッシュ 「アナタの言葉を借りたら……ジャックポットね。」

トリッシュ 「冷やかしに来たってわけじゃないわ。悪魔の話。」

ダンテ 「それが聞きたかった。面白い話か?」

トリッシュ 「少くとも、居眠りは出来ないと思うわね。」

ダンテ 「続けてくれ。」

トリッシュ 「アフリカで起きる怪死事件の調査、だったわね、来た理由。」

トリッシュ 「アフリカにも、地獄門があるらしいのよ。」

ダンテ 「 ! 」


地獄門。魔剣教団という小さな都市で信仰される宗教団体。彼らは理想の世界を築くという
触れ込みの裏で悪魔を召喚していた。自分たちで世界を壊し、思うように修正する。言わば
とんでもない規模のマッチポンプっていう気の遠くなる話だった。その悪魔の召喚に関して
使用されたのが地獄門だ。


トリッシュ 「安心して。オリジナルよりはずっと規模は小さいの。せいぜい模倣のと変わらないわ。」

ダンテ 「そうか。朗報だ。目標が分かるってのはいいもんだ。場所は?」

トリッシュ 「見つけた悪魔にちょっと質問しただけだから、そこまでは。」

ダンテ 「なあいい、悪魔っても鉛と安いジャケットの弾で死ぬ。ここには有望なウィッチ。」

ダンテ 「なんら問題はなさそ……ネウロイか。」

トリッシュ 「正解。ここと、ハルファヤを守ることで精一杯。おまけに大きな反攻作戦のようい。」

ダンテ 「流石に悪魔とネウロイのダブルは胃もたれするだろうな。」

141 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/19(金) 07:35:51.38 ID:+O4iD4Cx0
ダンテ 「地獄門か……人工かどうかは、分かったか?」

トリッシュ 「さあ……実物を見れば分かるんじゃない?」

ダンテ 「この広いアフリカを探し回れって? ネウロイだっている。」

トリッシュ 「目星ってほどじゃないけど、ダンテはもう、悪魔を見たの?」

ダンテ 「町で見た雑魚と。本人じゃねェが、死体を遠隔操作するいけすかない奴だけだな。」

トリッシュ 「だったら、割と近くだったりして。」

ダンテ 「その雑魚が門から来たとしたら、のこのこ歩ける範囲も決まってくるってか。」

トリッシュ 「ええ。少くとも、この北アフリカのどこかじゃない?」

ダンテ 「多少は絞れたな。頼むぜ、陸戦のストライカー持ってるんだから。」

トリッシュ 「ええと……」

ダンテ 「どうした。」

トリッシュ 「魔力で形だけ作ったハリボテなの、アレ。」

ダンテ 「……ハリボテ?」

トリッシュ 「使い魔と契約出来るはずもないでしょ。私も使い魔みたいなもんだし。」


陸戦ウィッチの機動を活かして地獄門のありかを探ってもらおうという試みはあえなく
ご破算となった。考えてみれば当然か。トリッシュも元は悪魔の王に創られた存在らしい。
年齢だって少くとも20は越えてるはずだった。悪魔の年齢を人間に換算したらどうとかは
考えないことにする。俺も半分は他人事じゃないしな。


ダンテ 「そうか。まあいいさ。やることが振り出しに戻っただけだ。」

142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/10/19(金) 10:43:15.55 ID:7vZezWHio
魔具として強引に扱えそうな気もするが、あっという間に焼きつきそうだなww
143 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/19(金) 18:43:19.75 ID:+O4iD4Cx0
ティナ 「ダンテー! 何を話してるんだ? なんだかアダルトな雰囲気だったが。」

ダンテ 「世間話さ。砂漠に来たばかり同士、環境の変化は大変だなって。」

ティナ 「じきに慣れる。さあ、ヴィーチェも来て何か話をしてみせてくれ。」

トリッシュ 「……ええと、というのは?」

ティナ 「今夜はヴィーチェがシェヘラザードだ。ここは娯楽が少ないからな。」

ダンテ 「随分と柄の悪い歓迎会だな。」

トリッシュ 「そうね……」

ティナ 「さあ、早くせいシェヘラザード。でなければ切ってしまうぞー。」


アラビアンナイトをネタにして急かすとは、なかなか面白い。
なるほど、マルセイユがここのシャーリアール王ってところか。
唯一違うとすれば、オチはまた明日で納得する奴じゃないってとこか。
手で首をスパッと切るような、子供っぽい仕草でトリッシュを急かす。
一瞬だけ、トリッシュが俺を見てきた。それを無視する。
たまには誰かに引っ掻き回される気分を味わってみろ。そんな
ちょっとしたアグニとルドラへのささやかな報復だ。


トリッシュ 「マルセイユ中尉はどんなお話がお好みですか?」

ティナ 「そうだな、胸のすくような冒険談なんかだ。」

トリッシュ 「人づてに聞いた話でも?」

ティナ 「構わんさ。面白ければな。」

トリッシュ 「では……ある風変わりな男の話をしましょう。」


へえ、アイツが風変わりなんて言うとは、なかなか面白そうじゃないか。
どんな男なのか、ちょいとでいいから顔を見てみたいもんだ。


トリッシュ 「ある男は小さな事務所を構えた男でした。金回りは悪いほうです。」

トリッシュ 「しかし、おかしなことに彼は気にくわない仕事は札束をいくら積まれても断ります。」

トリッシュ 「ところが、不思議なことに亡霊だの怪物だのといった仕事は無償でも引き受けるのです。」

ティナ 「なかなか本格的じゃないか。」

ダンテ 「おい、待て!」

ケイ 「どうしたの? 急に慌てて。」

ダンテ 「……いや、何でも。」

トリッシュ 「今夜は彼の受けた奇妙な依頼の一つをお話しましょう。」


後で覚えていろ。
144 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/20(土) 00:45:34.26 ID:1qZ4CqYJ0
トリッシュの語りはなかなか面白いものだった。その語りの主人公が
自分だと分からなかったら、俺ももっと楽しめただろう。劇作家にでも
なるつもりだろうか。なかなか魅力的な転職口だと思う。


トリッシュ 「そうして彼は仕事を終え、再び惰性のままの生活を送りました。」

トリッシュ 「事務所の看板を、少しだけ変えて……」


恭しく一礼。話を聞いていたマルセイユ、ケイ、ロンメル将軍。
誰もがトリッシュへ拍手を送った。一瞬だけ、トリッシュが俺の方を
見たような気がする。それも、僅かに唇の端を歪ませて、だ。
ひょっとすると俺は剣と銃以外で彼女には勝てないのかもしれない。


ロンメル将軍 「面白い。作家でもなったらいい。ロマーニャでダメなら出版社を紹介しよう。」

トリッシュ 「ふふっ、ありがとうございます。魅力的な転職口です。」

ティナ 「続きはないのか? 一つってことは、他にもあるだろう?」

ダンテ 「ああ。結構あるだろうな。」

ケイ 「なんでダンテが答えるのよ。」

トリッシュ 「ダンテさんの言う通りよ。でも、別のお話はまた今度に。」


かいつまんでだったが、マレット島の一件を丸ごと話しておいてよく言う。
シェヘラザードの割には随分とせっかちなこった。まあ、王様が満足したのなら
問題なさそうだ。結構な長い話だったこともあって、空は既に暗い。
トリッシュがよそよそしく、ダンテさんというのは少しだけモヤモヤとするが
それを感じるのは俺だけだ。ここが最前線だということを忘れるほど穏やかな
時間が過ぎていった。
145 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/21(日) 00:09:10.11 ID:SAlsCEvi0
日が傾くと、厳しい寒さが訪れる。今晩は特別冷え込んでいるようだ。
俺よりもこの環境に馴れているはずの兵士達までがしきりに寒さを訴え、
熱いコーヒーや度数の強いアルコールを求めるようになった。
しかし、寒さ程度でマルセイユが折れるはずもない。主任会計のカネコ某が
持ち込んだらしい本を持ち出して何やら騒いでいる。


ティナ 「マミ、あの本を訳せ。」

ケイ 「やーめーてー! マミもそんな急な命令、受けれるわけが」

マミ 「大丈夫です! ここに来る前、何度も読み返してましたから。」

ダンテ 「本って何だ? 」

ティナ 「ああ。ケイが昔書いた本らしくてな。」

マミ 「宮藤式ストライカーの実戦、その効果を記した貴重な資料なんです。」

ティナ 「我々がこうして戦えるようになったいきさつは気になるからな。」

ケイ 「……本音は?」

ティナ 「ケイの書いた本だろ? 面白そうだ。」

ダンテ 「それはそれは。俺も気になるぜ。扶桑海事変じゃトップエースなんだろ?」

ケイ 「ああ〜もぉ〜……」

ライーサ 「ティナがこうなったら、将軍はおろか、フリードリヒ皇帝が言っても聞きませんよ。」

ダンテ 「それで、かの将軍は新たな千夜一夜物語に胸を踊らせている。」

ロンメル 「いらん子に続いて生まれた部隊の隊長の若かりし頃だ。私も気になるよ。」


上官をダシにしたネタはどこでも盛り上がる話題だ。ケイも分かっているだろうから、
強くは言わないのだろう。顔を机に埋めているのだから、相当恥ずかしいのだろうが。
146 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/21(日) 01:05:12.92 ID:SAlsCEvi0
マミが本を渡され、いよいよというとき、ちらちらと空から白いものが
降ってきた。鼻先に落ちると少しだけ冷たい。雪だった。


ダンテ 「ケイ、アフリカにも雪ってのが降るのか?」

ケイ 「……まず無いわね。この先にあるのは温暖な地中海よ。」

ダンテ 「顔を上げろよ。くぐもって聞き取りにくいんだ。」

ケイ 「あー……あら、本当だ。雪ね。」

ダンテ 「珍しいってのは分かった。降らないわけじゃないんだな?」

ケイ 「……でも、この季節よ。まずあり得ないけどね。」

ダンテ 「それだけ聞ければ十分だ。」

ケイ 「ダンテ? どこに行くのよ。」

ダンテ 「トイレだ。少し酒を飲みすぎてな。」


ついでに、仮事務所に寄っておく。スコップがわりと言っちゃ何だが、
相棒を持っていっても損はしないだろう。こいつは久々に……


アグニ 「ダンテよ。我々を連れて行くがよい。」

ルドラ 「ダンテよ。この雪は僅かではあるが魔力の香がする。」

アグニ 「そうじゃ。気象を操るとはなかなかの大物と見た。」

ルドラ 「このままでは吹雪さえ起きて」

アグルド 「この地は凍土になるじゃろう。」

ダンテ 「分かってるよ。お前らも連れてくさ。手数は多い方がいい。」


置いていったら後が恐いからな。
147 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/21(日) 01:41:33.50 ID:SAlsCEvi0
基地の敷地を出てしばらくの間、暗い砂漠を走り続ける。
何もない風景だから、帰るときに迷わないか不安になってくる。
どうせならパンくずでも千切って走れば良かったかもしれない。
そこまで考えれる余裕があるなら迷っても大丈夫そうだ。
時折見える戦車の残骸が目印になりそうだ。パンくずの変わり
にしては趣に欠けるとこなんだが


ダンテ 「お菓子の家なんて可愛らしいもんがあるとは思えねェしな。」


30分ほど走り続けただろう。休みがてら落ちていたカールスラント軍の帽子を被ってみる。
鏡がないのは残念だが、かぶり心地はなかなか悪くない。落ちていたライフルも拾う。
右掲げ。構え。バン。見よう見まねだが、なかなか様になっているんじゃないか。
帽子とライフルを持ったまま再び走ると、近くに死体が見えた。カールスラントの制服。
多分、俺の被った帽子とライフルの持ち主だろうか。ドッグタグくらいは持ち帰ってやろうと
死体に手を伸ばした矢先、その腐敗しかけた死体に透明な柱が突き刺さった。
冷気が指先へ伝わる。氷の柱を飛ばして来たのだろう。


ダンテ 「やっぱりお前か……」


顔を上げると視線の先に悪魔が立っていた。鬼を思わせる2本の氷の角。
爬虫類をよりトゲトゲにしたような見た目だ。腕にあたる部分は大きな
氷柱が盾よろしくそそりたっている。“フロスト ”それがこの悪魔に
名付けられた名前だった。まんまだが、これ以上に相応しい名前も無いと思うね。


ダンテ 「ったく、死人くらい静かに眠らせたらどうだ?」

アグニ 「今の悪魔は、ダンテを狙ったんじゃろうて。」

ダンテ 「行くぜ……相棒。」


アグニ達は無視して、リベリオンを構える。そう言えば、こいつを
使うのはアフリカに来てから初めてだったような気がする。
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/10/21(日) 03:07:07.81 ID:I2BYBKUS0
追いついた、ストパンはあんまり知らないけど楽しみ
149 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/21(日) 17:09:49.44 ID:SAlsCEvi0
ダンテ「―――ッ!」


先に動いたのはフロストだった。氷の殻に身を包み、間合いを一気に詰めてくる。
殻が割れて勢いよく氷の爪で俺を切り裂きにかかる。その爪を転がって避ける。
起き上がった矢先、フロストの突き出した腕から無数の氷柱が高速で飛ぶ。
とっさに大剣、リベリオンを体の前で回転させて氷を弾く。無理な体勢で受けたせいか、
受け止めきれない氷が頬を掠める。遠慮のない急所狙い、動作の隙を突いた攻撃。
そこそこ上等な悪魔だけあって、その動きには演舞のような優雅さがある。
一歩間違えれば並みの人間じゃくたばるような、死の舞いだ。


ダンテ 「へえ……なかなか、やるじゃねえの。」


フロストは逃げるようにして再び殻を纏って離れる。試しにエボニーを撃ち込むが
殻は破れそうにない。氷の欠片が飛び散るだけだった。殻が割れ、フロストが再び姿を
見せる。こちらの出方をうかがっているのか、俺を中心に円を描くように、慎重にだ。


ダンテ 「来いよ、もうちょい気合い入れたら、ぶっ殺せるかもしれねェぞ?」


面白くねェ。大サービスだ。両手を広げて無防備な姿を晒す。
挑発に激昂したのか、絶好の好機と見たのか、悪魔が吼えた。
150 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/21(日) 17:27:40.45 ID:SAlsCEvi0
フロストは再度同じような高速移動を繰り出す。さっきよりも速い。
俺の真上で殻の割れる音がした。ヒヤリとした冷気が伝わってくる。
爪の振り下ろされる、風を切る甲高い音が聞こえた。リベリオンの
切っ先を立てて一気に上に掲げる。


カンと金属音が響くと同時に腕に訪れる衝撃。フロストの爪をリベリオンの切っ先が
受け止めた。フロストが数度勢いよく爪を押し込んでくるが、剣が沈まない。沈ませられない。
その事実に気付き、フロストが剣から身を引く前に俺は行動を起こす。


ダンテ 「ま、こんなもんか!」


掲げた剣を手首を効かせて回転させる。今度は防御じゃない。攻撃のためだ。
剣の上に乗っていたフロストが回転に巻き込まれ、シュレッダーに放り込まれたように
氷の鎧が、皮膚がズタズタになっていく。手首だけで剣を操るだけあって、致命傷とまではいかない。


ダンテ 「俺もお前を参考にさせてもらおうか。」


回転を止めてフロストを剣の腹で思い切り上に弾き飛ばす。
落下の勢いを乗せた上からの攻撃。当然威力はダンチだろう。
151 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/21(日) 22:22:32.35 ID:SAlsCEvi0
ダンテ 「よっと。」

跳ね上げたフロストを追って、剣を振り上げたところで思い切りジャンプ。
すぐさまエボニーとアイボリーに持ち変えて先ほど与えた傷を狙って銃撃を加える。
再びリベリオンに持ち替える。浅い二度の切り払いから地面にフロストを叩き付ける。


ダンテ 「Be gone!」


シメはフロスト自信のした攻撃を返してやろう。落下の勢いに任せ
思い切り、リベリオンをバウンドしたフロストの胴へ振り下ろす。
確かな手応えと共にフロストは粉々に砕け、後には不細工な顔をした
悪魔の血の固まりやその他が散らばっていた。


アグニ 「腕を上げたな、ダンテよ。」

ルドラ 「全くじゃ。」

アグニ 「しかし、我々が手を貸せばもっと楽じゃろうて。」

ルドラ 「兄者の言う通りじゃ。」

ダンテ 「十何年この稼業やってりゃな。初めての奴でもない。」


確かに、昔の自分ならもう少し手こずってたかもしれない。もしくは
調子に乗って大怪我の1つでもしていたか。とにかく、リベリオンだけじゃ
少し手に余ったかもしれねェ。


ダンテ 「……そうだな。お前らがちゃんと黙ってるなら、使ってやらないこともない。」


悪魔の体液が結晶化した石……グリーンオーブを弄びながら呟く。
視線の先には先ほど倒したフロストが何匹もいた。確かに、上等とはいえ
一体だけで行動するほどの戦闘力かと問われれば、多少疑問符がつく。
そうだな、あのフロスト達を倒す間も黙っているなら、使ってやらないこともない。


ダンテ 「身体が冷えてるからな。ウォーミングアップにいいかもな。」


グリーンオーブは消え、頬の擦り傷も同時に跡形もなく消えていた。
このくらいだったら、まとめて面倒を見てやれそうだ。早いとこ始末しようじゃないか。
そろそろ、吹雪いてきてもおかしくないころだ。
152 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/22(月) 07:59:38.76 ID:xo60Hp0q0
フロストの群れを蹴散らして程なく、空を舞う何かが見えた。女の
丸っこいフォルムだが、ウィッチではない。赤く光るウィッチなんて
俺は見たことがない。目をこらして女性の様な何かを見つめる。
裸の女だった、妖精ってやつか。行きの降る砂漠に妖精。ちぐはぐだ。


ダンテ 「……出て来いよ。カエルちゃん!」


以前にも、こんな赤く光る女を見た。結局、それはただの悪魔の
触角みたいなもんで、ほいほい近付く奴を食うための餌だった。
前ならば一人でそこそこ気楽だったのだが、今回は釣られてやる
ほどの時間も余裕も無い。エボニーとアイボリーを構え、女に撃つ。
倒れた片割れを踏みつけ、追い討ちをかけるように連射。


ほら来た。巨大なカエルを思わせるブヨブヨした悪魔が大きな口を開けて
こちらへ向かってくる。ジャンプをして回避。


悪魔 「殺し損なったワ、クソッタレ。どこじゃ、こンのボケ。」

ダンテ 「久し振りだなカエル野郎……ダゴンつったか? デカくなったな。」

悪魔 「いつの間にアタシの上に登ったンさね。クソ野郎。気付いとったンは分かったが……」

ダンテ 「お前ら、臭いかンな。唾は飛ばすし。」

悪魔 「クソがっ!」


怒鳴る度に唾のようなドロドロしたものを飛ばすのは勘弁してもらいたかった。
上に乗っていて正解だった。またコートを駄目にするところだ。ダゴンに似た
悪魔は俺の物真似に大層ご立腹らしい。


悪魔 「……ダゴンったな。クソ野郎、アタシの旦那を知っとンのか。」

ダンテ 「ああ。ぶった切った。……お前の旦那?」

悪魔 「ほお……あンのカスが言ったのはマジらしいな……」

ダンテ 「一人で勝手に納得するなよ。そんなタイプは嫌われるぜ?」

悪魔 「ほざけ!!」
153 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/23(火) 22:02:26.64 ID:IrbiGzB20
ダンテ 「そのカスってのは何だ。お友達は大事にしたほうがいいぜ。」

悪魔 「ダチなわけがあるかボケ。アタシゃ旦那をぶっ殺した奴に復讐出来れば十分じゃ。」

ダンテ 「なるほど。お互いにやり合う理由が出来たわけだ。ダンスの手解きはいるか?」

悪魔 「ペラペラと喋りおって…このヒュドラが顔ごと砕いてやるわ!」


なるほど。ダゴンの女房がヒュドラか。俺を振り落とすために思い切り体を振るわせる。
巻き込まれるまえに退避。空中に足場を作り再度ジャンプして間合いをとる。
落下しながらエボニーとアイボリーを連射。フロストほど固くはないが、サイズがデカイ。
対悪魔用っても拳銃じゃ魔力を込めたとしても致命傷を与えることは難しそうだ。


ヒュドラ 「チマチマ攻撃しやがって、ボケが!」

ダンテ 「パンドラを持ってくるんだったぜ、クソッ。」


ヒュドラが跳躍、サイズに任せた押し潰しの落下点から逃れる。
666の変形が可能なパンドラならば更に強力な武装を使うことも出来る。
っても無い物ねだりをする余裕まではさすがに無い。こんな足場で大物を
相手にする機会ってのはなかなか経験出来ない。スッ転ばないようにも
少し気を割かなきゃいけねェってのはなかなか面倒くさいもんだ。
154 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/23(火) 22:23:49.26 ID:IrbiGzB20
ヒュドラ 「死ねッ!」

ダンテ 「っとと。」


長い間、膠着状態が続いた。ダメージは与えられているが、致命傷までには
至っていない。ぶよぶよした皮膚はそれだけで肉の壁になって剣や銃弾を阻む。
足場に慣れていないせいで踏ん張った力押しに移行することも難しそうだ。
不可能ってわけじゃねェんだが、足場に慣れるにはもう少しかかる。
踏み込みからの突き、突き、突き。フェンシングの様な構えで連続攻撃を繰り出しても
さして堪えたようには見えない。吹雪が悪化するまえに早いところ始末したいところだ。


ヒュドラ 「ガツンとかかってこんかい!」

ダンテ 「お前もチマチマ逃げてるじゃねェの。」

ダンテ 「ダンスの相手はもうしたくないとこだ。」

ヒュドラ 「余裕ぶっこいてええのか、クソ野郎が!」


手間取っているには別の理由もある。ヒュドラとやらが攻撃を繰り出しては
吹雪で目眩ましを仕掛け、奇襲を狙ってくる。正直面倒臭さに拍車をかけている。
他にも氷の礫を飛ばしてきたり、狡い悪魔らしい、嫌らしい戦いかただ。
ちょうど避けた先に氷の礫が落ちてきた。脚に掠る。思いの外、ザックリと
やられている。威力は大したことはないが、足元が凍り身動きが取れない。


ダンテ 「なかなか、粋じゃないのか。」

ヒュドラ 「黙って喰われてろ!」


本当ならば簡単に凍らされた脚を自由に出来ただろうが、砂の上で踏ん張るのは
なかなかキツイ。顔を上げると、ヒュドラのベトベトした口が目の前に広がっている。
勘弁してくれ―――――


ダンテ 「またコートをダメにすんのはゴメンだ。」

155 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/24(水) 22:27:18.04 ID:DoCQ0ZY10
「射撃のコツは簡単至極……」

「照準いっぱいに近付いて、引き金を絞る!」


くぐもった音と、何かが爆発する音がほぼ重なって聞こえた。
ヒュドラの体が大きく姿勢を崩し、俺の鼻先で崩れ落ちる。
ベットリとした粘液がヒュドラの口からこぼれた。どのみち、
このコートも使えそうにない。


マミ 「やりました、命中です!」

ティナ 「トイレの割には重装備だな。それに随分遠い。シャイなのか?」

ダンテ 「お前らか……どうして分かった。」

ケイ 「ダンテの話を聞かされて、おまけにこの雪よ?」

ティナ 「吹雪なんて到底考えられないことだからな。血相変えてダンテはどこかに行くし。」

ダンテ 「ま、カエルちゃんの丸呑みから助けてくれたわけだ。ありがとよ。」

ヒュドラ 「この……クソアマどもが……お前らもぶっ殺すぞ!」

ライーサ 「……カエルが喋った。随分頑丈なのね。背中の氷が盾なのかしら。」

ダンテ 「いい眼の付け所だ。」


40mmの直撃を受けても、ヒュドラは生きている。とはいえ
氷に覆われていない皮膚は爆風と破片でズタズタだ。そりゃあ拳銃よりは
ずっと威力もあるだろう。あの背中の氷さえなんとかすればいいわけだ。
そうすれば40mmも本来の威力を発揮できるわけだからな。


ヒュドラ 「ズタズタに引き裂くぞ!」

ケイ 「散開!」


ヒュドラが体を振るわせ氷の礫をティナ達へ飛ばす。
回避しつつもティナは反撃の機会を窺い散発的な銃撃。
ライーサとケイも援護射撃を加える。マミはマミで避けながら
再び必殺の40mmをぶちこむ為に距離を図る。一撃離脱だ。
多国籍の、それも寄せ集めの部隊とは思えない連続した攻撃。


ダンテ 「俺らも負けるわけには、いかんね。」

アグニ 「おうよ。」

ルドラ 「我々の力を」

アグルド 「見せてくれよう。」


今回だけは喋ることを許してやろう。でないと締まらない。
156 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/24(水) 23:48:59.78 ID:DoCQ0ZY10
ダンテ 「まずはコイツだ。」


リベリオンを再び構え、剣を引く。たとえ十分なダメージが与えられないとしても、
それはあくまで相手のサイズや皮膚の分厚さだ。しかし、どんな悪魔だろうが必ず
弱点は存在する。ちょうど俺は以前マミが言った一寸法師だ。もしくはパチンコで
ゴリアテを倒したダビデかもしれない。どう鍛えても、太っても防ぎようのない部員。
ヒュドラの眼を目掛けて剣を投げる。ソードピアスと呼ぶ技だ。


ダンテ 「オマケにスピードアップだ!」


続けてアイボリーを数度撃つ。今度は連射よりも精度が必要になってくる。
―――なにせ、今ぶん投げたリベリオンの柄の尻に当てるんだからな。


ヒュドラ 「ぐぅっ!? 小賢しい真似しおってクソッ! クソッ!」


命中した。リベリオンは狂いなく相手の目玉に刺さり、続けて襲う弾丸が剣を
より深くへと突き立てていく。少なくとも相手の狙いを狂わせられるって寸法だ。
ベオウルフの様に匂いで〜などとは考えにくい。相手の体臭がキツイからな。
再びヒュドラが氷の礫を放った。さっきよりも狙いが甘い。作戦は成功だ。


ティナ 「驚いた。剣ってそういう使い方か?」

ダンテ 「さあな。続けて行くぜ。お前らも戦いやすくしなきゃいけねェ。」


氷の礫の隙間を縫ってヒュドラへと走る。リベリオンは目玉を抉る最中だから、
アグニとルドラを握構える。ずっと昔のものとは思えないほどにしっくりと来ている。
コイツらも戦いや刺激に飢えていたのかもしれない。十分に満足させてやろう。
157 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/25(木) 01:08:27.69 ID:OQhEwv7c0
ダンテ 「第二幕だ!」


走るスピードを緩めずにアグニとルドラを振り回す。落ちてくる礫を弾き、
炎で溶かしながらヒュドラへと迫る。氷の溶ける時の白い蒸気が視界を邪魔するが、
的がデカイから外すことはまずない。クロスした刀を一気に開いて切り裂き、
ヒュドラのぶよぶよした腹が炎でただれ、鎌鼬のような剣風でズタズタになる。


ダンテ 「Lirt off!」

ヒュドラ 「うおっ!?」


休むことなく追い討ち。剣を連結させ、薙刀のように構えた剣を思い切り上に
振り上げる。その軌跡を追って炎と強い風が渦を起こす。炎はそれだけに留まらず、
ヒュドラの皮膚や氷の鎧を溶かし、風はその巨体を舞い上がらせた。


ダンテ 「今だ! ぶちかませ!」

ケイ 「言われなくたって!」

言うよりも早くティナ、ケイ、ライーサが氷を剥がされた背中に13mmの魔法弾を叩き込む。
マミも遠くから接近。ダイブアンドズームの基本だ。これが締めになりそうだ。


ダンテ 「さてと、一寸法師なら。俺も奴に食われなきゃな!」

ティナ 「おい、一体何を!」


マルセイユの静止を振り切り、ジャンプ。だらしなく口を開けたヒュドラの上へ。
一度だけぶよぶよした皮膚の上で軽く跳ねてからアグニとルドラを構えて口へ
飛び込む。
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/10/25(木) 14:21:57.63 ID:FBzMqg7Do
弱点なんだよな、口ん中
159 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/26(金) 07:47:36.60 ID:BEAy3gUJ0
ダンテ 「さあ、こうなりゃヤケだ。中からも外からもやってやろうぜ!」

マミ 「りょ、了解です!」

ケイ 「いいのかしら……貫通とかしたらやばいんじゃ。」

ティナ 「心臓に剣を突き立てられて元気なのに、銃弾一発で死ぬタマか?」

アグニ 「灰は灰に!」

ルドラ 「塵は塵に!」


ヒュドラの口腔へ飛び込み、ベトベトした体液を気にすることなく、
アグニとルドラを演舞よろしく振り回す。攻撃を加える度に溢れる血と体液は
気持ち悪いこと限りないが、どのみち服は汚れ放題だったのだから諦めるしかない。
しっかりとした報酬が貰えることを祈るばかりだ。時々激しく揺すぶられる。
多分、マミの40mmが命中したのだろう。これだけの巨体なら、外すこともない。


ダンテ 「ご苦労、アグニ、ルドラ!」


アグニとルドラをくるりと回して背中に納め、手を上にかざす。
分厚い肉を突き破ってリベリオンが姿を見せ、手の中へ納まる。


ダンテ 「締めは任せてやるよ!」


思い切りぶよぶよした舌を蹴って上に飛び上がる。同時に剣を振り上げ、
肉を切り裂きながら外に飛び出す。その風穴にマルセイユが突撃。


ティナ 「今、剣が喋ってなかったか!?」


驚きながらもマルセイユの動きに乱れはない。流石はアフリカの星。
俺がぶち開けた風穴にMG34を構え、弾層に残るありったけの弾を
吐き出す。体液と血で汚れないようにシールドを張ったのは流石と言うべきか。
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/26(金) 10:00:24.72 ID:hIj+K3BIO
ダンテでも服汚れることあるんだな
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/10/26(金) 15:08:55.53 ID:Ab0Krixxo
ネタの為ならコートが燃えてもOKだからな
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2012/10/26(金) 19:45:20.99 ID:e0scUgKpo
ネタのために燃えてるベリアルの尾っぽに座ってたよな確か
163 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/26(金) 22:26:46.83 ID:BEAy3gUJ0
マルセイユの13mm魔法弾、それとマミの40mmの直撃を受けボロボロになった
ヒュドラが崩れ落ちる。常に吐き出される悪態は口から溢れる血で聞き取れなくなっている。


アグニ 「雑魚め……我らにかかれば他愛もないわ。」

ルドラ 「止めが刺せないのは残念ではあるがな。」

ダンテ 「酷い汚れだ、くそっ。」

ティナ 「元気そうだな。あれだけ暴れておいて。」

ダンテ 「お前らもだ。よくこんな吹雪で来れたもんだ。あがり間近のケイもだ。」

ケイ 「嵐の中を飛ぶよりは気持ちがいいものよ。」

ダンテ 「そうか。それはアレか。扶桑海事変の時か。映画見てなきゃさっぱりだった。」

ライーサ 「ええ。その話をマミが読もうとした矢先にダンテが行ってしまったの。」

マミ 「時間があれば、また読みますよ? 今回は色々あってちゃんと出来ませんでしたけど。」

ダンテ 「よろしく頼む。」

アグニ 「我らも興味があるぞ。うぃっちとやらが如何に勝利を勝ち得たか。」

ルドラ 「興味があるな。」


勝利の余韻に浸る時間が止まった。全員の視線が俺の背中へと向く。
ペラペラと喋りやがったせいだ。ケイはカメラを構える。新聞なんかに
載せれるような代物ではないが、記者という職業柄だろうか。


マミ 「やっぱり、その刀ってあのダンテさんがテントに蹴っ飛ばした……」

ティナ 「喋っているな。刀なのに。」

ダンテ 「これも魔具ってやつだ。元は悪魔だが。」

ティナ 「炎や風を出す剣がほいほいあってたまるか。その、魔具はみんな喋るのか?」

ダンテ 「物によりけり。だな。」

ライーサ 「ダンテも意地が悪いわね。こんな面白いものを隠してたなんて。」


隠してたわけじゃない。面倒くさかったからだ。色々と。
164 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/27(土) 00:08:34.60 ID:eWvPYrHP0
アグニ 「弟よ、我はそんなに面白いのか?」

ルドラ 「さあ。分からんな。我々は長い間あの男以外と話をしておらん。」

アグニ 「そういえば、他に話した人間といえば、あの時の女子くらいじゃのう。」

ルドラ 「考えれば、そうじゃった。」

ダンテ 「オーディエンスが増えたな、ケイ。それとも、インタビューでもするか?」

ケイ 「取材には根気が必要そうね……またの機会に。」

ティナ 「だが、なかなか面白いな。」

ダンテ 「気になるなら、やるよ。先に基地に持って帰って話でも聞いてやれ。」

ティナ 「……危害とかは、大丈夫か? 持った瞬間に燃やされるとかは。」

ダンテ 「下手な扱いをしなけりゃな。平気だ。そうだろ?」

アグニ 「主の友人に、そう危害は加えんわい。」

ケイ 「それはいいとして……ダンテは?」


答える変わりに、ドロドロの服を見せた。これを抱えて飛んでくれるなら、
俺は喜んで乗せて貰うつもりだ。ケイはひきつった笑みを浮かべた。
想像はついていたので、手で向こうへ追いやるジェスチャーをする。
鞘に納めたアグニとルドラをマルセイユに放る。刀だけあって結構な重量が
あるはずだが、難なく受け取る。二刀流なんかは俺を除けば多くの場合、
単なる見栄にしかならないのだが、ウィッチの身体能力強化の賜物だろう。
ひょっとしたら使いこなせてしまうかもしれない。彼らが使われるかはさておいてだ。


ケイ 「帰還するわよ。ダンテ、シャワーの用意はしておくから。」

ダンテ 「気が利くな。分かったよ。」


飛んでいく彼女らを見送る。
……ようやく静かになった。
165 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/27(土) 00:39:50.20 ID:eWvPYrHP0
ダンテ 「さてと。」


まずは気休め程度だが、汚れを落としておかねばいけないだろう。
なにもしないでベトベトで帰っては流石に悪い。俺だって長く仕事をすれば
最低限の礼儀くらいは身につけるもんだ。雪の積もった地面に仰向けに倒れる
そのままひんやりとした感触を楽しみながらゴロンと転がる。そのまま
足や手を開いたり閉じたりを何度か繰り返して、体液を擦り付ける。


ダンテ 「……なかなか、悪くねェ。」


しばらく雪の上でバタバタとしてから、起き上がってその跡を見る。
その跡がどことなくローブをまとった妖精や天使に見えないこともない。
少なくとも、フォルトゥナのアレよりは多少神秘さがあるような気がする。
砂漠に雪の妖精。なかなか乙じゃないか。


トリッシュ 「スノウ・フェアリーの次は、何をしているのかしら?」

ダンテ 「遅かったな……スノウ・フェアリー?」

トリッシュ 「あなたがしていたそれ。」

ダンテ 「この、手を広げたりするやつか。」

トリッシュ 「ええ。北欧とか、雪国じゃ有名な“子供の遊び”よ。」

ダンテ 「…………」

トリッシュ 「ふふっ……それはそうと、悪魔は倒したみたいね。結構大物だったんじゃない?」

ダンテ 「ああ。地獄門があるってのは納得した。あんな奴がのうのう人に紛れて暮らしてるわけはねェ。」

トリッシュ 「あの子たちも、なかなか出来るわね。流石、スパーダが封印に使えると眼をつけただけあるわ。」

ダンテ 「使うってのはあんまりじゃねェか?」

トリッシュ 「そうね。彼女たちも、意志があるもの。」

ダンテ 「あの嬢ちゃん達を見てると、何で親父が手を貸したのかが分かるな。」

トリッシュ 「あら、まだ分からなかったの?」

ダンテ 「改めて気付かされたってことさ。お前だってロクでもない奴の筆頭を見ただろ?」

トリッシュ 「ええ……そろそろ帰りましょう?」

ダンテ 「そうだな。朝も近付いてるみたいだからな。」


ヒュドラの亡骸は既に溶けてなくなってしまった。
降り積もった雪も、日が高くなるころには全て溶けているだろう。
いつも通りの灼熱がこの陸に陽炎を作り、空には黒い金属が飛ぶ。
166 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/27(土) 00:54:00.13 ID:eWvPYrHP0
トリッシュ 「ダンテ、知ってるかしら?」

トリッシュ 「ブリタニアも、デビルハンターを雇ったみたい。」

ダンテ 「関係ないだろ。俺は俺の仕事をするだけさ。」

トリッシュ 「店の名前を聞いても?」

ダンテ 「勿体振るな。」

トリッシュ 「……Devil May Cry」

ダンテ 「……へェ。」





陸戦ウィッチ「マイルズ少佐。我々は前線から少し離れすぎではありませんか?」

マイルズ 「いい質問ね。我らが上司、モンティおじさまはね。」

マイルズ 「私たちをクリケットのウィケットキーパーにするつもりなのよ。」

陸戦ウィッチ 「……えっと。」

青年 「フットボールなら、ゴールキーパーだ。最後の盾ってことさ。」

マイルズ 「その通りよ。それで、君はこれから?」

青年 「あんたらと居ても、目当ては達成出来そうにない。そうだな……近くの基地は?」

マイルズ 「ハルファヤ峠。読みでは、ネウロイの襲撃に遭う確率が高いってもっぱらの噂。」

青年 「そうか。じゃあな。お互い仕事が上手くいくといい。」

マイルズ 「神のご加護があらんことを……なんてね。」

青年 「神様がいれば、ネウロイなんて生まれないさ。」


陸戦ウィッチ 「可愛い顔して、生意気な子ですね。」

マイルズ 「右腕に怪我をしてるみたいだけど……大丈夫なのかしら。」


To be continued
167 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/27(土) 01:10:27.47 ID:eWvPYrHP0
【次回予告】

良い上官ってのは、部下の被害を減らして新兵を分別のあるレベルに育てられる奴だ。

ハルファヤ峠のバッハって男は教師だったらしい。そいつは上司にはちょうどいい話さ。

俺にも部下じゃあないが、後輩みたいなもんがいる。俺がそいつに何かしてやれたかと

聞かれちゃ口を閉ざすしかないが、それは俺が誰かの上に立つことも従うことも

出来ないタイプだからかもしれない。


Next Mission. 666
168 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/27(土) 01:19:14.66 ID:eWvPYrHP0
3週間かけて50も無い短さ。申し訳ないです。ストライクウィッチーズ劇場版、DMC HD、
スフ魔と色々散財した結果です。ダンテで一人称とか、難しいです。アグルドのgdgdとかも。
見苦しいかもしれませんが、もう少しだけお付き合い下さい。ちなみに、DMCキャラの登場は
例の彼が最後だと思います。


ヒュドラの見た目は大きなダゴンって感じでした。ラヴクラフトでお馴染みのネタから。
ダゴン、バエルはDMC4の良さと悪さをどちらも兼ね備えた嫌らしい悪魔だった気が。


それでは戦線を維持しつつ、別命あるまで待機。
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山口県) [sage]:2012/10/27(土) 01:21:02.70 ID:9ubRxCiTo

ついにネロ君きたー
やりにくいようなら三人称にしてみればいいのでは?
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/10/27(土) 11:25:03.55 ID:ak98b9L+0
ぼうやか…
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage ]:2012/10/27(土) 15:54:01.30 ID:PnAYXhSfo
雪の上でウワッホーとかはしゃぎながら転がるダンテ想像して吹いた。
172 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/28(日) 23:48:41.70 ID:m2eS3bM20
>>169 今更ですが、その通りです。ダンテの描写は三人称でやってみます。

>>171 スノーシューとかやると、休憩の時に雪に倒れてバタバタやると童心に帰れて結構楽しいもんです。


そういや、アニメもMission表記だったなと思い出した上で少し修正。
トリッシュの偽名は元ネタの名前をいじっただけの即席でした。
これからまた、ゆっくりと投下していきます。


Mission3. 666



トリッシュ 「まるで嵐ですね。」

ケイ 「嵐?」


ネウロイの破片が降り注ぐなか、戦闘の様子を眺めていた
トリッシュの小さな呟きを、ダンテとケイが聞いた。


ダンテ 「……ああ、ここの戦い方か?」

トリッシュ 「ええ。そうです。」

ダンテ 「ックク……“そうです。”か。」


何が“そうです。”だ。マルセイユのネウロイ撃墜の様子を見ながら呟いた
トリッシュの言葉にダンテは内心笑いを押さえるのに必死だった。


ダンテ 「学校出たばっかで喋りが硬いって設定はマズッたな……」

ケイ 「設定?」

ダンテ 「何でもねェよ。さ、理由をお聞かせ願おうか? ヴィーチェお嬢さん。」

トリッシュ 「戦い方です。マルセイユ中尉を中心にまあ……癖が強い面子というか。」

ケイ 「失礼な話……でもないわね、事実だし。」

ダンテ 「一機でアフリカの空を守るようなマルセイユ、僕ちゃんのライーサ。」

ダンテ 「怪力のマミに往生際の悪いお前さんだ。」

ケイ 「往生際の悪いって……」

ダンテ 「これでも褒めてるんだぜ? 諦めないってのはそれだけで才能さ。」

トリッシュ 「言い方っての、あるんじゃないかしら……」
173 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/29(月) 00:08:40.38 ID:PaeVBOPo0
ダンテ 「まあそりゃ悪かったけどな……」

トリッシュ 「そのメンバーが成り行きで集まりネウロイから守っているんです。」

トリッシュ 「結成理由から何までバラバラで。それこそ、嵐みたいで唐突じゃないですか。」

ダンテ 「ストーム、ね。」

ティナ 「ストームウィッチーズ……」

ケイ 「マルセイユ、いつの間に!?」

ティナ 「帰投の指示が無かったもんだから、気になって来たらこんなもんだ。」

トリッシュ 「ええと、ごめんなさい。無駄話をしちゃって……」

ティナ 「いいや、気にするな。なかなかいいセンスをしている。」

ティナ 「悪くないぞ。ストームウィッチーズ。」


マルセイユは満更でもなさそうに頷いている。砂漠に吹き荒れる嵐
を思わせる唐突さや力強さ。確かにマルセイユ達に相応しい気がする。


ティナ 「それじゃ、帰投するぞ。」

ケイ 「そうね。ダンテ達も、マミとライーサに回収してもらって。」

ダンテ 「了解。」

ダンテ 「ヴィー……いや、トリッシュ。あの例え、皮肉も入ってたろ?」


ケイやマルセイユが去ったのちに尋ねたトリッシュは答えなかった。
変わりにウィンクをして親指と人差し指で小さな隙間を作る。


ダンテ 「嵐の目ってのはその嵐が強ければ強いほど、大きくなるもんだからな。」

トリッシュ 「少数精鋭の辛いところかしら。」

ダンテ 「随分砕けた口調だ。さっきまでのはどうした?」

トリッシュ 「なかなか、疲れるのよ。」

ダンテ 「だろうな。」
174 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/29(月) 00:57:20.74 ID:PaeVBOPo0
今更だけど劇場版のラスト、一期のもっさんの「宮藤が皆の前で飛ぶ〜」って台詞のアンサーになってるのね。少しグッと来た。



それから少しして、トリッシュとダンテはライーサ、マミにぶら下がって
帰投する。小さな体ながら戦闘をこなし40mmの大砲を背負い、大型拳銃を2挺持った
大男であるダンテを持って帰るだけの力を残していることにダンテは少しだけ驚いた。


ダンテ 「大したもんだな。疲れたりとかしねェのか?」

マミ 「流石に少しは堪えますけど……うちは昔から力自慢みたいで。」

ダンテ 「なるほどね……血ってことか。」

マミ 「はい。400年くらい前もウィッチとして主を守っていたそうですよ。」

ダンテ 「ってェとオダってショーグンの天下の少し前か……」

マミ 「詳しいんですね。」

ダンテ 「扶桑のコミックも悪くないからな。あの犬の奴とか。」

ダンテ 「それはいいがな。小さな体でも戦えるのはご先祖のお陰ってことか。」

マミ 「ええ。誇りに思います。誰かのために戦えるって、凄いことじゃないですか。」

ダンテ 「誇り、か……いいもんだ。お前もその誰かを守れる血が流れてるわけだ。」


ダンテも偉大な父親がいる。どんな父親だったかを鮮明に記憶するには
その時の彼は幼すぎたが、それでも授かった技術、その魂を受け継いでいる。
ウィッチの能力が遺伝するかは知らないが、マミもその心を受け継いだからこそ
空を飛んでいるのだと、ダンテは思いたかった。


ライーサ 「お取り込み中、少しいいかしら?」

ダンテ 「どうした?」

ライーサ 「ティナから通信よ。ダンテにお客さんだってさ。」

ダンテ 「客? 借金取りか、仲介屋か……」

ライーサ 「ダンテって、友達少ない?」

トリッシュ 「あんな性格ですから多分……」


相棒をやっておいて好き放題言ってくれる。
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/10/29(月) 01:08:02.33 ID:Zf/keIhAO
のらくろ読むダンテって想像出来んな
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/29(月) 01:23:30.44 ID:MqmiBQya0
ネロ坊やはネウロイを右腕で神へのバスターみたいに叩き落したりできるんだろうか
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/10/29(月) 22:07:16.49 ID:aqCMtbg20
のらくろの事か
てっきりカプコンつながりで大神かと
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山口県) [sage]:2012/10/29(月) 22:59:45.46 ID:U5FDzBlbo
スレチかもしれんが大神おもろいのかな?そろそろHDが出るから買おうかどうか迷っているのだけれども
179 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/10/30(火) 07:41:23.50 ID:PGU6uajp0
>>175 ガッツリじゃなくて、広く浅くで知ってる感じだと考えたら想像できるかもです。


無事に着陸して仮事務所、ダンテの寝床へと向かう。看板を眺める壮年の男がいた。
よれよれのリベリオン陸軍の軍服に、精悍な顔立ち。なんとなくダンテには見当がついた。


ダンテ 「ええと、アンタが俺のお客さんか?」

壮年の男 「いかにも。儂は」

ダンテ 「パットン将軍。アフリカでのリベリオン陸軍司令であり……」

パットン 「ここら一体の不審死の調査を依頼した依頼主でもある。」

ダンテ 「それで、ハンニバル将軍の生まれ変わり。ってか?」

パットン 「分かっているじゃないか。ミスター・ダンテ。」

ダンテ 「ダンテでいい。将軍サン。」

パットン 「儂も将軍はいい。好きなよう読んでくれ。」

ダンテ 「それじゃあ、パットンの親父さん。話ってのは? 茶は無いが俺の仮事務所へどうぞ。」

パットン 「すまんね。上がらせてもらおう。なに、クライアントが顔を見せないのは失礼だろう。」


ジョージ・パットン。アフリカでのリベリオン陸軍の指揮を任された将軍。
英雄願望が強く、輪廻転生の類いを信じているせいか少し子供っぽいその男を
ダンテはテントの中へ迎え入れた。考えれば実際依頼人と会うのは初めてだった。
来年辺りから始まるらしい本格的な進行作戦など、彼もなかなか忙しそうだ。
こうして足を運んでくれただけ、いい方だ。最も、悪魔柄みでなければ引き受けたかは
怪しいのだが。
180 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/11/01(木) 07:08:13.47 ID:RTLYBhm90
昨日がお圭さんの誕生日だったことが悔やまれる。


パットン 「葉巻をいいかね。」

ダンテ 「火種は持ってないぞ。」

パットン 「問題ない。自前だ。君もどうかね? なかなか上等だ」

ダンテ 「いや、煙草や葉巻は少し苦手なもんでね。」

パットン 「珍しい男だな。カールスラントかぶれか? 向こうでは禁煙を薦めているそうだが。」

ダンテ 「いいや。別に規律が大好きってわけじゃない。」

パットン 「だろうな。でなければそんな伊達な格好はせんさ。」

ダンテ 「それで、話ってのは何だ。」

パットン 「改めて礼を言いたい。この仕事を引き受けてくれたことへのな。」

パットン 「その筋の専門家が来たと話すだけでも士気の回復には充分だ。」

ダンテ 「専門家、ね……何の専門家だか。」

パットン 「一応、聞いておるさ。」

パットン 「悪魔……だろう? 儂も自分の眼で見たことはないがね。」

ダンテ 「よく信じれるな。」

パットン 「ネウロイもそう変わらんよ。たまたま名が知られているだけだ。」

パットン 「訳の分からない鉄の塊が人間に襲いかかりました。」

ダンテ 「それだけなら確かに眉唾ものだな。」
181 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/11/01(木) 16:35:47.79 ID:RTLYBhm90
ダンテ 「いくつか質問がある。いいか。」

パットン 「大丈夫だ。」

ダンテ 「いつ悪魔って存在を知ったんだ?」

パットン 「不審死だの死者が甦るだの話を聞いて部下に呟いたのさ。」

パットン 「まるで悪魔の仕業みたいだな。と。そしたら彼は大真面目に言ったわけだ。」

ダンテ 「“それなら詳しい人間がいます。”ってか?」

パットン 「概ね正解だ。そこでミスター・モリソンの紹介を受けた。」

ダンテ 「だとしても腑に落ちない。憲兵とかもいるだろうに。」

パットン 「この事件の犯人は悪魔の仕業だ。信じてもらえるわけがないだろう。」

ダンテ 「正直に話さないなら手はあるだろう。」

パットン 「戦争のあるべき姿の方が楽だ。金で雇うことだな。」

パットン 「昔、スペインの艦隊を破ったイギリスの話は有名だろう。」


あっけらかんと言ってくれる。確かに戦争の理由が愛国心だの精神的な
ものになったのはそう昔でもない。パットンの言った海戦でも戦った多くは
武装しただけの商船だったそうだ。金やその他で雇われた類だ。


ダンテ 「多少金を積んででも、外の人間にやらせる方がいいと。」

パットン 「そう怒らんでくれ。知識の無い兵よりも専門家の方がいい。」

パットン 「大きな作戦の前に無駄な死者は出したくないのだよ。」

ダンテ 「いいや、嫌いじゃないぜ。そういう明け透けなの。」


少なくとも、遊びに連れて行けだの、借金をグチグチ言われるよりはだが。
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/11/01(木) 19:50:24.27 ID:g5GyhxLB0
>>181
スペインじゃなくてヒスパニア。
183 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/11/02(金) 22:03:13.49 ID:CpRwWdd50
>>182 なんて初歩的なミスを。指摘ドーモ。


ダンテ 「金を貰った以上は報酬に見合った仕事はするさ。安心してくれ。」

パットン 「ああ。任せた。ところで、他にも質問はあるかね?」

ダンテ 「なに、単純さ。ここまで来た手段だ。最近ネウロイの動きも規模こそ小さいが頻繁だからな。」

ダンテ 「まるで戦力を測ってるみたいだ。」

パットン 「……やはり、君に任せたのは正解だったよ。当然、男1人で旅をするには危険だ。」

ダンテ 「護衛でもいるのか。」

パットン 「ああ。儂のハートに火を着ける天使達だ。」

陸戦ウィッチ 「パットンの親父―! 凄いよここ、剣が喋ってる!」

アグニ 「この娘っこは騒がしいのう。」

ルドラ 「そうじゃのう。」

パットン 「……」

ダンテ 「そばかすを作った天使か、悪くない。空っぽの鎧よりずっといい。」


狭いテントにどっかりと上がってくる少女。ウィッチの護衛とは豪華らしい。
以前マルセイユが持って行ったアグニとルドラを抱えて上がり込んできた。
喋る刀には驚いたせいか、くわえていた葉巻を落とし服に焦げを作った。
リベリオンのファム・ヴィタールらしい、子供っぽいやかましさなのだが
少なくとも、無言で槍や剣を振るう“天使”よりは可愛らしい。


陸戦ウィッチ 「空っぽの鎧?」

ダンテ 「気にするな。パットンの親父? お嬢さんが護衛ってことか。」

パトリシア 「肯定。私はパトリシア。“パットンガールズ”の最先任。」

マリリン 「ウチがマリリンで」

アビゲイル 「私がアビゲイル。おっちゃんがダンテでしょ? 探偵さんの。」

ダンテ 「ああ。おっちゃんがダンテだ。……もうちょいマシな教えかたは無かったのか。」

パットン 「話がややこしくなるからな。探偵のが分かりやすいだろう。」

ダンテ 「いつものコートを出してなくて助かったぜ。」


あんな派手なコートを着て探偵なんてうそぶいていれば、この能天気な
彼女らも怪しむだろう。いや、アグニを玩具みたいに扱うのだから、
いつもの格好でも気付かなかっただろうか。どちらにせよ、ダンテは
試してみようとは思わなかった。
184 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/11/03(土) 00:32:28.88 ID:98XsjdRy0
パットン 「しかし、変わった剣だ。どんな仕組みだ。」

ダンテ 「話せば長くなる。あんまり遊ぶんじゃないぞ。切れ味は本物だ。」

パトリシア 「そなの?」

ダンテ 「ああ。燃えるほどにな。」

パトリシア 「燃える? 変なの……」


カンカンとアグニとルドラの柄をカチカチと叩きながら、パトリシアは
それを近くに立て掛けた。パットンもパットンで帰り仕度を始めている。


ダンテ 「親父さんも、もう帰るのか?」

パットン 「彼女らを待たせるわけにゃいかんからな。」

パットン 「それに、君の言ったネウロイの推測、あながち間違いでもないしな。」

ダンテ 「そんなにヤバいのか?」

パットン 「ハルファヤが最前線だ。ネウロイにとってはここも目と鼻の先だよ。」

ダンテ 「ぞっとしない話だ。犯人探しにネウロイにもビビってなきゃいけないわけだ。」

マリリン 「全然そんな風に見えないんだけど……」

パットン 「心配は無い。リベリオンが本腰を入れたんだからな。」

ダンテ 「そりゃどうも。俺も調査に専念出来そうだ。」

パットン 「ネズミ(モンティ)の雇った小僧に出し抜かれないでくれよ。」

ダンテ 「やっぱり、もう知ってたのか。それについては平気さ。」

ダンテ 「坊やに負けるほど俺はおっちゃんじゃねェからな。」
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/03(土) 00:35:05.52 ID:1U/a43Ge0
>スペインじゃなくてヒスパニア。

それ言ったらもう一つ、
>>181
イギリスではなくてブリタニア、も言ってあげればよかったのに。
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/11/03(土) 09:53:17.60 ID:X3DyOsD/0
>>185
それレスした後に気づいたんだけど連レスになるからって
してなかったんだ。確かにそっも言ってあげるべきだった。スマン
187 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/11/05(月) 07:48:18.11 ID:OsqXVkAS0
>>186 自分はあんまり気にしないのでミスがあったらどんどん教えて欲しいです。
本当は自分がしっかりしなきゃですけど。


嫌な予感は当たるものだとダンテはつくづく思った。パットンと別れて間もなく、
再び基地が騒がしくなってきた。昼寝でも、と考えていた矢先だけに少し癪だった。


ダンテ 「ネウロイの襲撃か? それにしては空は静かじゃねェの。」

ティナ 「敵は陸だそうだ。すぐ先のハルファヤで襲撃だ。」

ダンテ 「最前線ってわけか。潰されれば俺らもただじゃ済まないっと。」

ティナ 「話が早い。そこのMGを取ってくれ。」

ダンテ 「そらよ。しかし、そんな武器だけで陸のネウロイを潰せるのか?」

ティナ 「そうだな。マミはともかく私達の武器では少し頼りないが……援軍がいる。」

ライーサ 「ブリタニアの陸戦ウィッチが増援に向かうそうよ。」

ダンテ 「いつだ?」

ライーサ 「大体……一時間かしら。」

ダンテ 「おいおい、ウィッチの居ない基地なんざ30分がいいとこだ。」

ケイ 「ほーら、グズグズしない! そのための私達なの。さあ、準備準備!」

ダンテ 「なるほど、アンタらなら10分と経たずに着けるからな。」

ティナ 「報告があって10分。私達も間に合うかどうかだがな。」

ダンテ 「……なあ、俺も乗せて行ってくれないか。」
188 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/11/05(月) 23:56:45.94 ID:OsqXVkAS0
ケイ 「やっぱり、悪魔のことかしら?」

ダンテ 「ああ。どうも匂うってもんだ。」

ティナ 「また混乱に乗じて死体を乗っとるのか?」

ダンテ 「分かれば苦労はしないさ。でもよ、悪魔ってのは人の恐怖とか、混乱につけこむのさ。」

ダンテ 「それこそ、一方的になぶられる様なものは大好物さ。」

ティナ 「……1つ賭けをしようじゃないか。コインで表が出たらダンテ、君を乗せよう。」

ダンテ 「いいぜ、乗った。」

ティナ 「それっ……」


マルセイユの放ったコインが放物線を描き、日に焼けて少し赤くなった手の甲に納まる。
コインは表を示していた。ダンテは僅かに怪訝そうな顔を浮かべたが、それだけだった。


ティナ 「1分待とう。すぐに準備を!」

ダンテ 「あいよ……じゃなくて、Jaだっけか?」

ケイ 「モタモタしないの。」

ダンテ 「悪い悪い。」


ケイ 「ねえ、さっきのコインだけど。」

ティナ 「何のことだ?」

ケイ 「ジョークグッズでしょ。両方同じ柄の。」

ティナ 「まあな。アイツも気付いたと思うが。見せたいものがあるからな。」

ケイ 「見せたいもの?」

ティナ 「言うのは野暮さ。」
189 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/11/06(火) 00:25:53.91 ID:TENPxLrE0
【一時間前/ ハルファヤ峠】


ネロ 「……熱い。」


汗をたっぷり含んで重くなった衣服が鬱陶しい。体力には自信があるが、
流石に何十キロの強行軍は少しばかり身に堪えている。マイルズとかって奴め。
何が20マイルだ。そりゃ直線にしてだろう。愚痴が半ダースばかり増えたが、
水筒から水を一口だけ含んで一緒に飲み込んだ。


ネロ 「イヌっころの火の玉が可愛く思える。」

ブリタニア兵 「そこの坊主、何の用だ。 それと、イヌが火?」

ネロ 「忘れてくれ。ああ、後の話をな。Devil May Cryだ。仕事だよ。」

ブリタニア兵 「……ええと。お前みたいなガキがか?」

ネロ 「まあな。どこも人手不足なんだ。通してくれよ。」

ブリタニア兵 「仕事ってのはなんだ?」

ネロ 「この辺で起きてるって怪死事件の調査だ。モンティ将軍からの依頼でね。」

ブリタニア兵 「探偵にしちゃ目立つ格好だが……おまけに怪我だ。」


ブリタニア兵の疑問も最もだ。オレの格好と言えば、長いコートに
包帯を巻いた右腕、背中に担いだバイクのハンドルが柄になったような剣。
極めつけは白い髪。こう言っちゃなんだが、どこでも浮く。


ネロ 「色々事情があるんだ。貰うカネに見あった働きはするさ。」

ブリタニア兵 「それなりに期待するよ。俺もぐっすり眠りたいからさ。」

ネロ 「ネウロイがいちゃ、殺人の犯人が見つかっても安心出来ないだろ。」

ブリタニア兵 「違いない。バッハ少佐なら向こうだ。話はそっちで。」

ネロ 「分かった、ありがとう。」
190 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/11/06(火) 00:45:53.73 ID:TENPxLrE0
件のバッハ少佐に会うことは簡単だった。というのも、そこそこ広い基地とはいえ
大半は備え付けの砲がある程度で開けていたし、少佐が外に出ていたことも幸いだ。
ずんぐりしたコートは何となく、彫りが深いが穏やかな顔もあって大きな熊の様だ。


ネロ 「バッハ少佐。でしたっけ。えっと、ここの指揮官の。」

バッハ 「ああ。見かけない顔だが……君は?」

ネロ 「ええと、オレはネロだ。モントゴメリー将軍から……」

バッハ 「ああ。君がそうなのか。ファミリーネームなどはあるのかね?」

ネロ 「いや。孤児なもんでね。親の顔も知らない。黒い布に包まれて捨てられたからネロ。」

バッハ 「猫かイヌみたいな名付け方だ。」

ネロ 「そう言わないでくれ。いや、ください。嫌いじゃないんだよ。」

バッハ 「ははっ。それはすまない。そう固くなる必要は無いさ。」

ネロ 「いきなり立ち入った話で驚いただけだ。」

バッハ 「職業柄でね。つい詳しく知りたくなるのだよ」

ネロ 「職業?」

バッハ 「元は私は教師さ。君くらいの生徒を相手にしてるものだからつい。」

ネロ 「ってことは……予備士官っていうんだっけか。」

バッハ 「まあね。テストを作るよりは大変だよ。」


オレの慣れない丁寧(これでも努力している)言葉にも穏やかに
バッハ少佐は質問を返してくれた。回りを見回すと、兵士はどことなく
若い兵士が多い。なるほど、偶然だろうが、指揮官が教師なのも頷ける。
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/11/09(金) 01:02:22.07 ID:8kWaI8YNo
ネロ来たか!
192 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/11/10(土) 00:40:13.49 ID:pxsmCkP10
バッハ 「話は変わるがね、君はどう思う。彼らをだ。」

ネロ 「急だな。オレみたいなガキにか?」

バッハ 「背中の剣は飾りじゃあ……ないだろう?」

ネロ 「伊達で持てるもんじゃなくてな。」

ネロ 「練度なんかは分からないさ。でも、ここの奴等は恐れを知らない。」

バッハ 「するとどうなる?」

ネロ 「敵を知らないってのは、危なっかしいこと限りないってもんか。」

バッハ 「私も同じ思いだよ。彼らを分別のある兵士へ叩き上げる……」

バッハ 「なかなか、骨の折れる仕事だ。」

ネロ 「テストを作るよりも……か?」

バッハ 「違いない。」


オレの皮肉っぽい言葉にも目の前の将校は眉をひそめることもなく、
穏やかな笑いを返す。なんとなく、あしらわれているような気がした。
孤児院のシェスタも似たような振る舞いをしていた。それを見るたびに
自分が子供だと知らされるようで、少しだけ居心地が悪い。


ネロ 「……」

バッハ 「どうかしたかね?」

ネロ 「いいや。何でもない。」


右腕がちくりと痛んだ気がした。その痛みに倣って右腕がぼんやりと光る。
慌ててそれをコートのポケットに突っ込むもんだから、バッハ少佐が不思議そうに
こちらを見た。街の連中には少しずつ受け入れられたが、さすがに公衆の前で
晒すもんじゃない。だから、今まで通りに包帯で隠しているのだが。
それが疼くということは……


「おい、なんか見えないか? 少佐!」

バッハ 「……敵襲!」

ネロ 「あの光ってるのが……ネウロイ、ってことか?」

ネロ 「悪魔ってわけじゃないのにな……」
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/10(土) 00:49:26.06 ID:1OisFIkm0
相変わらず便利だなデビルブリンガー
194 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/11/10(土) 01:04:09.49 ID:pxsmCkP10
バッハ 「警報!! 総員配置につけ! シンプソン君、8.8cmの用意をさせろ。」

シンプソン 「了解。いいか! このハルファヤを失えば我々は北アフリカを握られるも同然だ!」

シンプソン 「お前らが守るんだ! 8.8cm砲、射撃用意……」

シンプソン 「撃てェ!」


耳をつんざくような轟音と共に対空用の、腕ほどありそうな弾丸が飛んでいく。
遠くからじわりじわり近づくネウロイに突き刺さり、クモの様な足が吹き飛んだ。
埋められた地雷が動きを止め、それを8.8cmが砕いていく。だだっ広い土地だから
こそ、男がネウロイに立ち向かえるということか。


シンプソン 「いいぞ! 訓練通りにこなせ!」

「俺のイチモツを喰らえっての!」

「お前のチャチなのよりもアハトアハトはキツイってもんだ!」

「これならイケる!」

ネロ 「……数が多すぎる。」

「司令部、砂漠3に新たにネウロイが7! 繰り返す、砂漠3にネウロ――」


ボッと何かが破裂するような音が聞こえた。続いて爆音。近くの8.8cm砲が
ネウロイのビームで射手ごと吹き飛ばしたらしい。肉の塊と持っていた双眼鏡が
オレの足元に転がった。即死だったと思う。気分が悪くなるような光景だ。


「地雷源を突破された!」

「予備陣地へ後退しろ!」


195 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/11/10(土) 01:33:29.29 ID:pxsmCkP10
「そこの坊主! モタモタするな! 死にたいのか!?」

ネロ 「そういうわけじゃない。」


死体をまさぐるとちょうど固いものが見つかった。金属の
プレート、ドッグタグとかいう奴だ。それを死体から取って
ポケットに捩じ込んでから、怒鳴ってきた兵士を追って走る。
特に意味はない。だが、なんとなく、自分はこの兵士の最期を
覚えていようと思った。身寄りが無いジョッシュのように
初めから居ないことにされる。そんな悲しい事が起きるとは
思えないし、ただの自己満足なのも理解している。


ネロ 「人が死ぬのは慣れてないもんで。」

「……そうか。」


あながち嘘でもない。悪魔に憑かれた人間なら数えきれないが、
生身の人間が死ぬのを見たのは覚えられるくらいの人数だ。
それも、知った人間は本当に少しだけだ。


「フライングゴブレット!」

「坊主! 死ぬ気で走れ!」


すぐ後ろで砂柱が何本も生まれた。フライングゴブレットの攻撃だろう。
オレを怒鳴った兵士が後ろ走りをしてサブシンガンをネウロイに撃つ。
オレがそいつを抜かしたあたりで、男がサブマシンガンを取り落とした。
血が服と砂を汚した。立て続けに飛ぶ細かなビームが再び男を狙う。


ネロ 「こうなりゃ人の目を気にする場合じゃねェよな……」


包帯を外し、男の前に立って右腕を構える。鱗や爬虫類の皮膚を思わせる
硬い殻で覆われた腕。デビルブリンガーとオレは呼んでいる。その腕から
一本の刀が姿を見せた。それを体の前で高速回転させ、ビームを弾く。


ネロ「とことんやってやる。オレも仕事があるからな。」


刀が消え、デビルブリンガーが青白く光る。その光が大きな腕を形作り、
フライングゴブレットと呼ばれたネウロイを引き寄せ、無造作に掴む。


ネロ 「Let's Rock!」
196 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/11/10(土) 02:10:56.09 ID:pxsmCkP10
フライングゴブレットが大きな腕の拘束から逃れようともがく。
それをオレは拘束し続ける。暴れながらビームをばらまくそれを
別のフライングゴブレットへ向ける。細かなビームがネウロイを
貫き、次々とフライングゴブレットを撃ち落とした。


ネロ 「Blast !」


掴んでいたネウロイをそのまま投げつける。飛んでいたネウロイに命中し、
投げた方が衝撃で粉々に砕けた。戦いかたは悪魔の要領とそう変わらない。
ふわふわ浮いているのがネックだが、デビルブリンガーを使えばそれも
さして問題にはならない。


ネロ 「ブルーローズはどうだ!」


続けてバランスを崩したネウロイに追い討ちをかける。バラが彫られた
リボルバーを抜いて二度立て続けに撃ち込む。一度に放たれた二発の銃弾は
フライングゴブレットの細い足を砕き、二度目は胴体に当たってカンカンと
トタンを殴ったような音が聞こえた。


ネロ 「分厚いな。“普通”の拳銃じゃ無理だ……」


再び飛ぶネウロイのビームを転がって避けながら呟く。外殻を砕き、
僅かにずれて貫通力の高い弾丸を撃ち込むといった、工夫を凝らしても
数発のただのハンドガンでは敵わないらしい。オレは右腕に力を込める。
イメージは簡単だ。右腕の力を集中し、銃弾に注ぎ込む。馬鹿げているが、
デビルブリンガーそのものが馬鹿げているのだから、気にしてられない。
左手に構えるリボルバーに右腕を添えて引き金を絞る。二発の銃弾が
突き刺さったのを見て、改めて銃口をネウロイへ向ける。ネウロイも
オレに再び狙いを定めた。


ネロ 「Bang!」


唇を尖らせ、銃声の口真似と同時に銃を撃つ真似をしてみせる。
言い終えた瞬間に炎を上げてフライングゴブレットが爆散した。


ネロ 「数だけは多いぜ、クソッ。」


あれだけの数を潰したにもかかわらず、ネウロイまだまだ飛んで、地を
這って進んでいることが少しだけだが残念に思った。
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/10(土) 14:32:28.77 ID:dhu6QMToo
寝落ちかな。たのしみにしてる。乙。
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2012/11/10(土) 15:51:03.06 ID:DfkxXOmAO
ブルーローズは大口径な上にコンマ数秒の差で弾二発発射して先の弾が面破壊して後の貫通力の高い弾で撃ち抜くという人へ向けて使ったら酷いことになるであろう銃だからネウロイにも通用するか…
後リボルバーなのがいい
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2012/11/10(土) 17:51:01.11 ID:a/6VDp7j0
そういやブルーローズのモデルってなんだろう?
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/11/10(土) 19:56:14.13 ID:EWc0i98T0
明確に設定されとらんからなんとも言えんが
形的に44とかM29とかじゃね?
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage saga]:2012/11/10(土) 20:11:06.71 ID:qJIg8S3g0
あれどう改造してるんだろうな
無理やり二発撃てるようにしてるらしいけど
202 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/11/10(土) 23:56:16.18 ID:pxsmCkP10
ブルーローズ。存在するはずのない色のバラの名の通りのゲテモノ銃。
僅かなラグの間に二発の銃弾を放つ、オレだけの対悪魔用の武器だ。
一発目が悪魔の固い殻を壊すための弾。二つ目は貫通力に優れた弾だ。
殻を傷物にし、間髪入れずにその部位を貫く。大抵の敵ならばそれで
事足りるのだが、ネウロイの固さとリボルバー故のリロードの手間は
多数のそれを相手にするには手間がかかる。


ネロ 「オートマチックの改造が出来れば楽なんだがな……」

ネロ 「チマチマ狙うのも面倒だ。」

「おい、坊主! 何をするつもりだ。」

ネロ 「少し前で暴れるだけだ。バックアップ! 」


言うまでもなく、誰もがネウロイを迎え撃つために大小多くの火器を
ブッ放している。前から迫るネウロイ、後ろから飛ぶ9mmから8.8cm。
バックアップどころか自殺にだって見えるかもしれない。それも、
青酸カリをたらふく飲んでから灯油を被って体に火を付け、塔の上から
飛び降りるくらい確実な方法だ。当然、自殺するつもりは無い。


ネロ 「一応……砂漠でも焼け付くことは無いって話だが。」

ネロ 「なるべく早く終わらせないとな。」


背中にかけた剣を抜いて柔らかな砂の上に突き立てる。バイクのハンドルを思わせる
剣の柄を思い切り捻った。エンジンの唸る音がして、剣がぼんやりと光った。
203 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/11/11(日) 00:29:56.10 ID:bhu4H1eq0
例に漏れず、オレの剣、レッドクイーンにも特別な改造が施されている。
イクシードと呼ばれる推進材を噴射させる装置が装備されている。柄を
捻り、クラッチを握ることで噴射させ、剣の振るうスピードを加速する
という、なんとも面白い機能だ。本来ならば推進材は僅かしか出ない。
殆どの場合はそれで事足りるし、何より推進材の勢いに振り回されては
マトモに戦えないからだ。


ネロ 「もうちょいだ……まだまだ……」


何度も柄を捻り、推進材を剣に行き渡らせる。一体のフライングゴブレットが
不用意にオレの上に飛んできたときを見て、一気にクラッチを握りながら振り上げる。


ネロ 「Die!」


推進材が炎を吹き出しながら振り上げる剣の速度を加速させる。剣に引っ張られるように
して、オレも勢いに乗って跳躍する。肉厚な刃がバターを切るようにネウロイを倒した確かな
手応えがあった。イクシードの恩恵がなくては一撃とはいかなかっただろう。
オレの知る中ではこんな固いものを一太刀で切れる奴をオレは二人しか知らない。
加えて、一人は悲しい話だが、既に居ない。


ネロ 「うおっ!?」


コートを背後から飛ぶ銃弾が掠めたが、イクシードの残った炎が弾を柔らかくし、
貫くことなく焦げ目を作るに終わった。それに、心臓を突き刺されても死ねない
のだから、久々の仕事。少しだけ派手にやってみたいという我ながら子供っぽい
思いもある。


ネロ「後で知られたら、怒られそうだ。」


続けて再びクラッチを握り、推進材を吹き出して別のネウロイに振るう。
遠くに飛ぶネウロイはデビルブリンガーで掴み、引き寄せ、叩きつける。


「イカれてる……」

ネロ「Crazy?……huh……」


遠くで聞こえた呟きが何とも不思議だった。戦争そのものがイカれてる。
オレなんかじゃ敵わない程にだ。現に、ネウロイの数はまだまだ多い。
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/11/11(日) 00:49:50.72 ID:Y3B711ACo
ちょっと硬いファウストみたいな扱いかww
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/11(日) 01:47:52.72 ID:SEVWI4A90
スナッチで敵がいる限りは跳躍とかできるもんな、ネロ
攻撃もチャージショットやイクシードで威力重視だから陸上ネウロイだったらなんとかなるか
後ネロと同い年の魔女調べてみたら501だとエーリカ、シャーリーでアフリカだと真美でギャップに吹いた
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/11(日) 02:12:41.23 ID:+Zvze6Z1o
楽しみにしてるぜ。乙。
207 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/11/12(月) 00:57:12.58 ID:wojCGXOi0
バッハ 「シンプソン君、状況はどうかね?」

シンプソン 「控え目に言うと、良くはありませんな。」

バッハ 「ブリタニアらしい表現だ……なぜ、この一角は保っているのかね?」

シンプソン 「私も分からんのです。男の剣が炎を吹いただの、腕が伸びただの。」

バッハ 「男? 剣?……そうか。それは置いておこう。」

バッハ 「この場合は、どうするかね。」

シンプソン 「明日のために、一時撤退でしょう。予備陣地も怪しい。」

バッハ 「我々に……明日があれば、な……」

シンプソン 「同感です。」


バッハ少佐は薄い笑みを浮かべる。銃口を突き付けられたときの様な、
どうしようもないときに浮かべる諦めに近い表情だった。この峠が
陥落すれば、本拠地に等しい都市であるトブルクがネウロイの手に
渡ることになる。スエズ運河を取り返すどころか、アフリカ全土が
ネウロイの手に渡ることになる。それは、欧州全土が渡ることだった。


無線兵 「少佐! ウィッチ隊からの通信です!」

バッハ 「ハルファヤ峠、バッハだ。」

『諦めちゃダメです!』


まだ若い、少女の力強い声が受話器を持ったバッハの、近くの兵たちの耳を打った。
208 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/11/12(月) 01:11:15.74 ID:wojCGXOi0
『こちらブリタニア陸軍ウィッチ。マイルズです!』

マイルズ 『ブロークンアロー受信しました!』

マイルズ 『全線ひっちゃかめっちゃかなんですけど、なんとかします。』

マイルズ 『いえ、なんとかしてみせます!』

マイルズ 『だから……あと一時間だけ、一時間持ちこたえてください!』


一方的な通話の内に無線は切れた。会話の中でも他の少女の怒号や、
砲撃の轟音が背後から流れていた。彼女が戦闘中に隙を見て伝えた
ということは、その場の全員が理解していた。彼女が言った一時間を
守るために、より激しい攻撃を潜り抜けることも。


バッハ 「お安いご用だ……お嬢さん。」

バッハ 「この心踊る状況を、教えてくれないかね。」

シンプソン 「我々が全滅するまで30分、騎兵隊の到着が1時間。」

バッハ 「何か問題があるかね?」

シンプソン 「……いえ! 最後の1兵士まで戦い抜き、彼女らを迎える。」

シンプソン 「それが、男の花道というものでしょう!」

バッハ 「……我々も外で指揮をしよう。着いて来てくれ。」

シンプソン 「コピー。 」


腰の拳銃の薬室に銃弾が送り込まれたことを確かめ、教師たちは
教え子を助けに薄暗い指揮所を飛び出した。彼らの顔は依然として
笑みを浮かべていたが、それは既に諦めによるものではなかった。
僅かな勝機を見つけ、手繰り寄せようとする、生きるためのそれだった。
209 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/11/12(月) 01:45:35.49 ID:wojCGXOi0
多くのネウロイを潰しても、次には巨大なクモ型のネウロイが
待ち受けていた。体力には自信があるのだが、こうも悪い足ばや
クソ暑い気候だと、さすがに剣を、銃をふるって暴れるのも疲れてくる。
汗や砂ぼこりで顔が酷く汚れたのが分かる。汗がブーツにたまって動く都度
ぺチャリと水っぽい音を立てるのが酷く不快だ。


ネロ 「最後のローダーか……チッ。」


ブルーローズの弾丸だって無尽蔵じゃない。レッドクイーンのイクシードも
超過駆動のせいだろうか。それとも推進材が切れたか、その両方か。
クラッチを握っても生まれる炎は目に見えて弱くなっている。どれだけ剣を
振るったか想像もつかない。少なくとも30分は戦い続けた気がする。


ネロ 「いい加減……尻見せて帰れっての!」


レッドクイーンは計画的に使わなければならない。拳を握り締め、近くの残骸を
足場にしてネウロイの真上に飛ぶ。体がネウロイの放つ磁場で痺れているが、
動けないわけじゃない。痺れを無視してイメージ。巨大な腕。それもネウロイを
ぶん殴って地面に叩き付けられるような、とびきりのヤツだ。オレの意志に沿って
右腕の放つ光が大きくなり、大きな手がオレの動きに合わせてグーパーを繰り返す。


ネロ 「Don't get so cocky!」

ネロ 「scum!」


そのまま力強く腕を突き出す。真上から叩き潰すようにしてぶん殴る。着地。
ネウロイも流石に耐えきれなかったのか、細い脚が歪み、軋んで折れた。
地面に倒れこみ、衝撃で砂が辺りにぶちまけられ、小さなクレーターが生まれる。
それでも、少しずつではあるが折れた脚が新たに生まれてくる。


ネロ 「クソっ! 」


マルセイユ 「よくやった、少年!」


声が聞こえた。辺りを見回しても何も居なかった。キョロキョロと
していると、不意に上から銃声とエンジン音が聞こえた。しかし、それでも
エンジンの音は少し前から聞こえていてもいいはずなのだが。
パンッと先程オレが殴ったネウロイが弾けて消えた。信じられない話だが、
今の数連射であのデカブツを潰したのだ。


マルセイユ 「大きい奴はコアを狙うんだ。」

ネロ 「コアだって!? さっき飛んでた小さいのは別に……」

マルセイユ 「君の力が小型を相手にするには十分すぎるからだ。」

マルセイユ 「私の知り合いでもそうはいかないぞ?」

ネロ 「知り合いだって!?」


エンジン音や他の銃声、ネウロイの攻撃の音。それに負けないためには
声も自然に怒鳴り声になってしまう。見たところ、自分と大して変わらない
女の子にこう粗っぽい態度を取ってしまうのは少しだけ悪い気もする。
オレの問いに、マルセイユは答えなかった。変わりに、足にぶらさがった
何かを指差した。赤いコートの、嫌らしい笑みを浮かべた何か。


ダンテ 「熱くなると周りが見えなくなる。若者の特権だな。大事にしろ?」


ブルーローズの弾に余裕があれば、1、2発ぶちこみたいなと一瞬だけ思った。
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/11/12(月) 14:05:01.19 ID:H9KARJe/o
弾が尽きようと剣が折れようとネロの本領はその右腕に物をいわせたプロレス技だ
ザンギエフ直伝のファイナルアトミックバスターや、
キン肉マンソルジャー直伝のナパームストレッチ・ネロスペシャル(技名は勝手に考えた)を見舞ってやれ
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/13(火) 00:16:39.52 ID:YqrET2+M0
今は青い薔薇が作り出されたが……
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/13(火) 02:24:53.06 ID:NvqgW4DQo
こまけぇことは(ry

楽しみにしてる。乙。
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/14(水) 11:54:44.79 ID:MTNaaIQIO
>>211
人口的に作り出されても自然界には存在しないだろ?
214 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/11/14(水) 21:47:13.96 ID:hiQXHMfh0
青い薔薇が生まれたのは結構最近だった気ががが。ストパンは1942年ってことで。
あと、○ちゃんの表記が間違ってたね。


ネロ 「久し振りだな、ダンテ……相変わらずだ。」

ダンテ 「ああ、お前もな。再開のハグでも?」

ネロ 「そんな場合か? 周りは見えてるよな。」

ダンテ 「挨拶のバリエーションだ。カッカするな。」

ティナ 「何だ? ダンテの知り合いだったのか。」

ダンテ 「まあな。」

ティナ 「……髪の色が似ているな。」

ティナ 「まさか、隠し子とかか?」


ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべたマルセイユにダンテは肩を竦めてから
ぐるりと辺りを見渡した。ネロの言う通り、再開の挨拶や紹介に時間をかける余裕は
無さそうだった。クモ型ネウロイはジワジワと砲台を踏み潰しながら近付いている。


ダンテ 「笑えない冗談だな。」

ケイ 《ハンナ、基地の様子は!?》

ティナ 「壊滅寸前といったところだ。ブリタニアのウィッチは?」

ケイ 《まだ少しかかるそうよ。あちこちネウロイの攻勢があるらしいの。》

ティナ 「分かった。それで、指示はなにかあるか?」

ケイ 《マミを中心に大型を叩くわ。ティナは飛んでるのを落とし次第大型への時間稼ぎ。》

ティナ 「時間稼ぎ? いいや、撃墜も目じゃなさそうだ。」

ケイ 《?》

ティナ 「優秀な遊撃隊がいる。」
215 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/11/14(水) 22:06:49.01 ID:hiQXHMfh0
ネロ 「遊撃隊?」


ネロの呟きにダンテは自分とネロを交互に指差した。途端にネロは
眉をしかめる。誰かから指図されることが、元来好きではなかった。
それを見てダンテは苦笑する。性格は違えど、同じ人種だった。
やろうとしていたことをやれと言われ、気勢を削がれたことは少なくない。


ダンテ 「そうカッカすんな。お前さんだって“騎士”だ。」

ダンテ 「騎士は誰かを守るもんだ、違うか?」

ネロ 「“元”だ。もう騎士じゃない……」

ネロ 「ただの気紛れな便利屋だ。」


そう吐き捨ててネロは走り去った。逃げるためではなく、ネウロイに
立ち向かうために黒い金属へとその腕と剣を構えて。斜に構えていても、
ネロの本質は真っ直ぐで優しい、どこにでもいる少年だった。無論、
本人だけでなく、傍に居るあの少女も今のネロを作る因子だっただろう。
そうダンテは思い、ぶら下げていたスーツケースを担いだ。


ダンテ 「素直になりゃ、もう少し可愛げがあるんだがな。」


そうひとりごちて、ネロとは別方向のネウロイを叩くために、
ダンテも走り出した。ぼろぼろの基地の様子を横目に、今度は死体が
動くことはなさそうだと思った。いくらか気分は楽だった。


ティナ 「よし、行くぞ。ダンテ、そこの男!」

ティナ 「……あれ?」


マルセイユが振り返ると、目の前にふわふわと浮かぶフライングゴブレット
だけがビームを放とうと赤い光をまとっていた。それを1連射で撃墜し、彼女は
別の目標を探すために空を舞った。結局三人共、共同戦線に向いていなかった。
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/11/14(水) 23:09:19.49 ID:NWhqxr5Qo
わろたwwww
217 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/11/15(木) 01:02:45.57 ID:rkd7bR7P0
ダンテ 「さてと。デカイな……カエルちゃんが可愛いくらいだ。」


ダンテはぼんやりと、大儀そうに伸びをした。目の前に大型のクモ型ネウロイがいても、
態度は悪魔を目にしたそれとほとんど変わらない。普段通りの不敵な表情だった。


ダンテ 「まずは小手調べといくか。数と時間を考えれば遊べないからな。」

ダンテ 「いくぜ……パンドラ。」


ダンテがもう少し積極的な態度を取れば、一帯のネウロイを倒せる自信もあった。
しかし、それはそれなりの時間と周囲を壊す危険を含んだものであって、後ろに前線基地を
設けた場所で戦うことは想定していない。それでも、自分が担当するのは結構な数だ。
ゴツゴツしたスーツケース……これもアグニやルドラと同様の魔具の一つ。パンドラを
持ってきておいて正解だったとダンテは思った。これなら大きな流れ弾や巻き添えを
起こさずに敵を殲滅出来る……使い方を間違えなければ。とダンテは心のなかで加えた。


ダンテ 「まずはオーソドックスに行こうか!」


ネウロイが大きなビームを放つ。それをバックジャンプで避ける。同時にパンドラに
魔力を流し込む。666の兵器へ姿を変える変幻自在の武器。それが魔具の力だった。
変形したのは数十年前に使われていたようなガトリング銃。砲身が唸りながら回転し、
ネウロイへ弾丸となった魔力を叩き込む。10秒にに500を越える速度で吐き出される銃には
焼け付きも、弾切れも存在しない。ダンテの気が変わるまでその銃弾の嵐が止むことはない。
しかし、それでもネウロイとて的ではない。無数の太いビームがダンテを襲う。


ダンテ 「お次はこいつだ。」

ダンテ 「お前らは元気がよすぎる。おいたが過ぎるぜ……」


ガトリングは攻撃速度は申し分ないが、いかんせん威力と取り回しに欠ける。
転がって、銃身で受けて、ジャンプしてやまびこよろしく帰ってくる攻撃の雨を
くぐり抜けながら、ガトリング銃がグニャリと歪んで姿を変えた。

218 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/11/15(木) 01:25:28.77 ID:rkd7bR7P0
ダンテ 「お座りだ!」


次にパンドラが表した武器は刃の着いた丸いブーメランだった。
玩具にしか見えないそれも、元は狩りの道具であり、立派な武器だ。
特にダンテの力ならば十二分にその力を発揮する。それを思い切り放る。
それはダンテの思う通りの軌跡を描き、ネウロイの脚……脆いと相場が
決まっている関節を熱したバターナイフで切るように切断した。


ダンテ 「もうちょい右か……?」


くいっとダンテが指で円を描く。ブーメランも魔具の一つであり、飛んで戻るだけという
味気の無いことしない。ダンテの意思や指示にしたがってブーメランはその軌跡を歪める。
先ほど一本の脚を切断されたネウロイの周囲をブーメランがくいっと円を描いて、その
残りの脚も全て切断していった。ダンテの攻撃は終わらない。指揮者よろしく大袈裟な
動きで腕を回し、ブーメランを誘導しながらクモ型ネウロイの脚を両断してまわる。
ダンテの手にブーメランが戻ったとき、あちこちで支えを失ったネウロイが次々と
突っ伏し、派手な砂煙を上げていた。ダンテの手の届く範囲で立っているネウロイはいない。


ダンテ 「これで狙いやすいってもんだ。」


ブーメランが姿を変える。今度は地面に置く大砲だった。それにしては
いくらか大仰だったが、ダンテにとっては思い出深い悪魔を模していた。
ベオウルフ、かつて未熟だったダンテを苦しめ、その後兄に両断され、魔具として
ダンテに重たいパンチを撃ち込んで苦しめた、美しいと言えないが様々な
曰のある悪魔だった。その悪魔にはもう一つ特徴があった。


ダンテ 「お返しだ。ビームをくらう気分はどうだ。」


その砲台が輝き、太いレーザーを放った。ベオウルフの発する光。
それが回復を待つネウロイの土手っ腹にぶちあたり、何匹かに
風通しの良さそうな隙間を提供した。
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage saga]:2012/11/15(木) 01:27:16.15 ID:xpdwlKBq0
やっぱつえーな
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/15(木) 01:45:32.00 ID:Q2EFvFZ60
パンドラはダンテの魔具の中で一番火力あるよな
その次位がアルテミスかな?
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/15(木) 12:27:12.65 ID:1JQYX5RIO
チート武器のイフリートとゴロネード
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/16(金) 03:03:44.51 ID:arUb4rW2o
さあて楽しみだ。こっからどうなるのかwwktkで待つ。乙。
223 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/11/18(日) 00:56:21.79 ID:/9UNswYJ0
ダンテ 「やっぱり……少しばかり固いな。」


やはり、コアが破壊されなければネウロイは倒れないようだった。かといって、
コアがどこにあるのか。皆目見当がつかない。次第にダンテは面倒になってきた。


マミ 「お待たせです、ダンテさん! 援護を……」

ダンテ 「必要ねェ。じきに終わるさ。」

マミ 「で、でも。ネウロイが……」

ダンテ 「オレの後ろにいろ。ついでにシールドも張ってくれ。」

マミ 「……?」


ネウロイに40mmを浴びせていたマミをダンテは彼の後ろへ行くよう指示した。
ダンテがロクなことをしないと分かっているのか、マミは大人しく従う。
後ろでぶん、とくぐもった音が聞こえた。シールドの張る音だとダンテは気付き、
大砲が歪んで再びスーツケースへと姿を変えた。最初の姿に。


ダンテ 「パンドラの箱は何を呼ぶ?」

マミ 「えっと……災厄とか、病気?」

ダンテ 「ビンゴ!」


ダンテはスーツケースを無造作に砂の上に置いた。そのまま足で小突き、
スーツケースをネウロイに向けて開く。眩い閃光がネウロイへと走る。
ダンテも思わず腕で顔を覆うような、強烈な光だった。


ダンテ 「最後に残るのは……」

マミ 「希望ですけど……」

ダンテ 「悪魔にゃ似合わない言葉だな。この箱の隅は何も無い。」


数秒ほどしてから、足でスーツケースを思い切り閉じる。
光が収まった後にはネウロイの姿は無い。満足そうにダンテは
スーツケースを肩に担いだ。ネロの方が少し心配だったが、
多分大丈夫だろうと思い直し、壊れた8.8cmにもたれかかった。
流石に、扱いが難しい。
224 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/11/18(日) 01:22:53.59 ID:/9UNswYJ0
ネロ 「クソッ……」


正直なところ、オレは攻めあぐねていた。ネウロイにはブルーローズも
イクシードの無いレッドクイーンも効果が薄い。かといって右腕で殴り続けるのも
面倒だ。その間に狙い撃たれたら、どうしようもない。心臓を刺されて生きていても、
まだ人間の常識が全く無いわけではない。有り体に言えば、少しだけ怖い。


ネロ 「……88mm、か。」


近くに8.8cm砲の残骸が見えた。それを腕でどかし、下に埋もれた箱をこじ開ける。
案の定、そこには大きな砲弾詰まっていた。少なくとも、拳銃よりは威力がある。
オレは無造作にそれを掴んで放り投げる。右手を握り締め、タイミングを見計らう。


ネロ 「die!」


落ちてきた砲弾の尻を思い切り殴る。その衝撃で砲弾が勢い良く飛ぶ。衝撃と
音で身体中が震えたが、飛んでいった弾はネウロイの脚を吹き飛ばした。


ネロ 「……悪くない。」


落ちた薬莢がブーツごと足の甲を潰したのはともかく、使わない手は無い。
軍の物を勝手に使うのは気が進まないが、そう遠慮して死ぬよりはずっといい。
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/19(月) 16:49:09.45 ID:Sq7TKTFDO
閻魔刀復活以降は魔翌力をそのままレッドクイーンの
推進力に使ってると思ってた
226 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/11/20(火) 07:45:10.58 ID:GQlU22o+0
繰り返して砲弾を飛ばす。耳がガンガンしてきた、鼻も火薬でヒリヒリする。
それでも、ほぼ一定のリズムで砲弾を飛ばせば多少だが落ち着いてくる。限度こそ
あるが、一定の間隔で鳴る音は人の心を鎮めてくれる。そして、落ち着けば
周囲の声だって聞こえてくる。聞きたくなかった物までだ。


「何だ、アイツ……」

「変な腕だ。見たか?」

「光ってた。ホントに人間なのか? あっちの赤いコートの奴といい……」


オレの仕事は昔から濡れ仕事であり、大抵は人の見る場所で行うような
ものじゃない。白昼堂々、悪魔に憑かれたとはいえ人間を切るなんてことは
しないし、ましてやこんな奇妙な腕になっては尚更人目につかないようにいた。
結局、腕は周囲にバレたのだが、理解者がいたこともあって、オレへの忌避の目は
故郷では強くはなかった。身内の団結は強い閉鎖的な社会なのも幸いした。


ネロ 「ここじゃあ、後ろ楯も無いからな……」


思えば全くの見知らぬ人間に見せることは初めてだった。
そして今、こうして言葉を聞くと――流石に堪える。


ネロ 「こんなもんだ!」


砲弾がネウロイの装甲を抉ったのを見て、オレはもう一発の砲弾を掴み、
悪魔の腕を伸ばす。ネウロイのコアを掴み、そいつの側に跳ぶ。
目の前に見える黒光りする装甲。その穴に見える悪趣味な宝石に近い光沢を放つ
コア。思い切り、大きな砲弾を叩きつける。今の威勢ネウロイに向けられたか、
それとも自分への強がりだったのかは、分からなかった。
227 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/11/20(火) 08:07:14.29 ID:GQlU22o+0
「クソっ! 援護してくれ。こいつで目に物見せてやる!」


次の標的を見定めている内に、オレは遠くからそんな声を聞いた。
一人の兵士が手榴弾を片手に塹壕から身を乗り出している。その
視線を追う。別のクモ型のネウロイだった。特攻……カールスラントなら
シュトゥルムとでも呼ぶのかもしれない。そんなところだろう。


ネロ 「バカ野郎! 止せ!」


今のネウロイのように、腕を伸ばせばそいつの側に簡単に近寄り、
無茶を止められるのだが。出来なかった。少し集中するだけのことが
少し躊躇いで、出来なかった。理由は簡単に分かった。自分のことは
自分が分かっている。怖いのだ。こうして力を振るい、それを面と向かって
否定されることが。あの時の少女のように、恐がられることが嫌なのだ。


ネロ 「チクショウ!」


今度の悪態は自分に向けたものだった。柔らかな砂を蹴って全力で走る。
そうして兵士に集中すれば、今の自分への嫌悪が和らぐ気がして走った。
脚力には自信があったが、いかんせん距離が遠すぎる。間に合わない。
そう心のどこかで小さな、タチの悪い諦めが短い時間で発酵していく。
ちょうどその時、彼が狙うネウロイが砲撃を受け、砕けた。一撃でコアを
撃ち抜いたらしい。


「ウィッチ運が良かったみたいね……」

ネロ 「!?」

「ウィッチか!?」

マイルズ 「ブリタニア陸軍、第4戦車旅団C中隊……マイルズ少佐。」

マイルズ 「以下12両、お待たせしました!」
228 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/11/22(木) 00:52:33.71 ID:jRlDQ0LL0
ネロ 「アンタは……!」

マイルズ 「お久しぶり、でもないかしら。災な……んね。」


ブリタニアのウィッチの視線がオレの右腕に注がれたことに気付き、
裾を引き伸ばして手遅れとは分かっているもののそれを隠す。


ネロ 「……何だよ。」

マイルズ 「何でもないわ。後で色々と話を聞きたいけれど。」

マイルズ 「少なくとも、君がここを守って戦ってるのは確かだから。」

ネロ 「それで?」

マイルズ 「それだけよ。全車、横隊を組んで! 進め!」


オレの問いに答えず、陸戦ウィッチの部隊は再びじりじりと歩みを進める。
ほとんどのクモ型のネウロイはその攻撃で押し返され、その数を減らしていく。
マイルズ……少佐はオレの腕を見ても何も言わなかった。むしろ、些細なことだと
ばかりに追及をはたと止めた。状況が状況だということもあるが、そのことが
ほんの少しなのだが、やっぱり嬉しい。


ダンテ 「思春期特有の悩みか? 坊や。」

ネロ 「茶化すな。その様子じゃ暴れたみたいだがな。」

ダンテ 「気になっただけさ。さっきまでバカスカその腕で遊んでんだ。」

ダンテ 「それで変な眼で見られるのが嫌だってのは、今さらじゃねェの。」

ネロ 「分かってる。分かってる……」

ダンテ 「後で考えればいいだろう。考えすぎなんだよ、お前。」

ネロ 「考えすぎ?」

229 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/11/22(木) 01:10:43.57 ID:jRlDQ0LL0
ダンテ 「ああ。今のお前は、な。嫌われるのがどうだこうだ。バカバカしいぜ。」

ダンテ 「便利屋ってのは嫌われてなんぼだ。人様のプライベートだって嫌でも覗くことだってある。」

ネロ 「……」

ダンテ 「その点、フォルトゥナの時は良かったもんさ。」

ネロ 「当然だ。」


あの時は一人だったし、ダンテと戦う理由のウェイトを占めていたのは
キリエ……オレの幼なじみ。任務だのは関係無い。あの時はそれがオレを
突き動かしていた。今とは状況も何もかもが違う。


ダンテ 「少なくとも、マルセイユのお嬢さんとさっきの……さっきの子だ。」

ダンテ 「それはお前をどうとは思ってねェさ。」

ネロ 「そうだな……分かった、行ってくる。」

ダンテ 「ああ、ちょっと待て。坊やに魔法の言葉をプレゼントだ。」

ネロ 「なんだよ。」


やけっぱちもいいところだが、こうなったら存分に暴れてやろうと思った矢先に
こうも引き留められては流石にいくらかムッとする。相変わらずにやついた笑みを
ダンテが浮かべているだけに、その思いは尚更だった。


ダンテ 「お前の魂は、なんて叫んでる?」

ネロ 「……もっと力を。アイツらに負けないくらいだ。」

ダンテ 「そこまで一緒かよ……」


何が一緒かは分からない。だが、ダンテは手を叩いて
笑った。なんだか、バカバカしい気持ちになったせいか
オレの体はさっきよりも軽かった。伸ばした裾を曲げ走る。
230 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/11/22(木) 01:29:53.27 ID:jRlDQ0LL0
ティナ 《ヤバいな……クモよりも大きいのが来たぞ!》

マイルズ 「大型の陸戦ネウロイ……?」

ウィッチ 「残弾が心配になりますね……」

ティナ 《マミ、潰せるか?》

マミ 《っ! 弾幕が酷くて狙いが……うわわっ!?》

「扶桑のウィッチが一時離脱します!」


ダンテがネロの走る先を眺めると、今まで相手にしたクモ型よりも
大きなネウロイの姿があった。ハリボテでもないらしく、濃密な弾幕に
マミはおろか、マルセイユまで手こずっているようだった。対空用の
13mmで必死に反撃をしても、石を放った程度の威力しか効果が無い。
飛行に力を使わないで済むことが陸戦ネウロイの強みだろう。装甲を
最大限まで抱え、鈍重ながら多少の攻撃をものともせずに蹂躙する。


ダンテ 「それよりも、だ……どうも臭うな。もうちと待つか。」


そう呟いて、ダンテは砲塔の先端に立ち、キョロキョロと
子供のように落ち着きなくあたりを見渡した。
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/24(土) 01:08:17.73 ID:HdMzc0jxo
あいにーどもあぱわーですね、分かります
232 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/11/25(日) 00:55:35.39 ID:OnssGE/O0
DMC3のHD、兄貴が来るたびにフリーズするね。なんだ、兄貴が次元を切ったからか。


ウィッチ 「残弾少!」

マイルズ 「もう少しだけ粘って!」

ウィッチ 「やってますよぉ!」


歩くたびに、ネウロイが派手な砂柱を上げている。多少の装甲なんかは
ものともしない陸戦ウィッチの攻撃も、表面を削るだけに終わっている。
ネウロイの移動はまだ止まっていない。


ネロ 「見た目通りの性能ってわけだな……」

マイルズ 「君! 何をしてるの!?」

ネロ 「サービスだ! 後で報酬に色をつけるよう計らってくれ!」

マイルズ 「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」


ドカドカと砲撃の音が響くもんだから、お互い会話さえ怒鳴りあう
しかない。耳がおかしくなりそうだ。オレもなけなしのブルーローズを、
マイルズも戦車砲を撃っているから尚更だ。


ネロ 「コアの場所は!?」

マイルズ 「そんな簡単に見つかったら苦労しないわ!」

ネロ 「だよな!」


分かりきった会話を続けながら、足止めのために撃ち続ける。
コアの場所さえ分かれば、こちらのものなのに、そうでなければ
完全にジリ貧だ。フロストが、あの天使どもが可愛く思えてくる――



バッハ 「撃てェ!」


遠くから飛来した砲弾が、ネウロイの装甲を削った。オレの知る限りでは
兵器なんかはほとんど使いものにならないように見えたのだが……
ボロボロの8.8cm砲に数人の男が見えた。彼らは驚くことに、
砲身直接覗いている。直接照準だとかいうのだろうか。
その中で一人男はしきりに俺達を指差している……


ネロ 「メチャクチャだ……」

マイルズ 「そっくりそのまま返すわ! それよりもネウロイ見て!」


ネロ 「コアか!?」
233 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/11/25(日) 01:39:41.36 ID:OnssGE/O0
ネロ 「今だ!」

マイルズ 「っ! 弾が無いわ、誰か、コアを狙って!」


その声に答えた声は、殆どが悲鳴のように叫ぶ単語だけだった。
「弾切れ」「ネガティブ」との手合いだ。向こうのバッハ少佐に
任せればとも思ったが、装填には時間がかかる。照準だって
直接狙うのだから更にかかるだろう。


ネロ 「やってやる……こうなったら、とことんな!」


レッドクイーンの柄を握り、なけなしの推進材を噴射させる。
修理が不安だが、手段は選んでいられない。剣を後ろに回す。
推進材が燃え上がり炎を勢いよく吹き出す。その勢いでオレ自身を
加速させて走る。その勢いを生かして跳躍。まだまだ高さ足りない。


ネロ 「クソが!」


レッドクイーンを体の前に回しネウロイに突き立てる。剣を足場にして
もう一度ジャンプ。ネウロイの装甲を蹴って再度ジャンプ。コアの位置に
少し届かなかったが、それでも右腕の射程内だった。右腕を突き出し、
装甲を突き破ってコアを掴む。後はダメ押しだ。


ネロ 「おおおおおお!!」


ミシリとコアが軋む。ネウロイの巨体が持ち上がり、長い足が空しく空を切る。


バッハ 「………」

ダンテ 「……ッハッハ。」


ネロ 「Die!!」


そのまま空中で何度も振り回し、地面叩きつける。巨体が砂を滑り、
途中で弾けて白銀の雪になった。金属の危険なものだが、人類の敵と
呼ばれる割には、綺麗すぎるような気がしなくもなかった。


マイルズ 「……」

ネロ 「報酬、考えといてくれよ。」

マイルズ 「え、ええ。」

マルセイユ 「また、とんでもない奴が来たもんだ。」
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage saga]:2012/11/25(日) 01:47:32.66 ID:uv+gwRHP0
4の最後のドデカパンチの時の手なら投げれそうだもんな
235 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/11/25(日) 02:23:18.93 ID:OnssGE/O0
今の大物が母艦というか、旗艦だったのだろう。それが消えたのを
境に、他のネウロイも少しずつ踵を返していく。それを追うだけの余力は
オレも、ここにいるウィッチ達も、ここの兵士にも残っていない。
ダンテはどうだろうか……多分、いや。アイツは例外にしていい。

マイルズ 「ひとまず、落ち着けそうね。感謝するわ。援軍を。」

ティナ 「モンティに恩を売るのも悪くないからな。」

マイルズ 「ネロ君もご苦労様。お陰で助かったわ。」

ネロ 「成り行きだ。」


久々に聞いた感謝の言葉に、少しだけ気恥ずかしい思いを燻らせながら、
オレは妙な違和感を感じていた。右腕の疼きが収まらない。ネウロイにでも
反応していたものだと思ったのだが、そうでもないらしい。


ネロ 「……臭うな。」

マイルズ 「ええと、わた」

ネロ 「違う! そんなフェチズムは持ってない。」

ティナ 「そこまで赤くならなくてもいいだろう。シャイボーイ。」

ネロ 「オレはネロだ。」

ティナ 「それは失敬。シャイなネロ君。」

ネロ 「……」


なんとなく、この女性からはダンテに近い物を感じる。
超然とした振る舞いやどんな状況でも崩さない態度。
違いといえば協調性だろう。それくらいか。


ケイ 《気を付けて。一匹だけネウロイ……?》

ティナ 「うん? はっきり言ってくれ。」

ケイ 《分からない。クモ型のがいるわ。ネウロイかは分からないけど。》

ティナ 「ネウロイかは分からない……?」

236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/25(日) 09:03:54.12 ID:Qb3VdhQKo
待ってるんだぜ。乙。
237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/11/25(日) 09:58:40.49 ID:LtzS9YGoo
すごーく熱い奴が来る予感
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage saga]:2012/11/25(日) 11:14:08.08 ID:uv+gwRHP0
あいつ死んでるし別固体かな
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/11/25(日) 12:38:06.58 ID:/oOweQ8Mo
懐かしいヤツだな
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/11/25(日) 15:35:46.32 ID:IRwc/5Ojo
初代DMCのDMDで一体何人があいつ相手に詰んだことか
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/11/25(日) 19:18:11.02 ID:aoOp6gmAO
俺は黒犬2匹で諦めたよ…(;ω;)
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/11/29(木) 00:26:03.66 ID:fZucbRToo
黒犬…?
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/29(木) 00:40:29.75 ID:JYosVJXgo
シャドウのことかね。あれはネコだったような
244 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/11/29(木) 17:23:01.29 ID:AyS1qShG0
ネロ 「そういうワケか……」

ティナ 「まさか……?」

ネロ 「ああ。仕事の時間だ。」

マイルズ 「仕事?」

ネロ 「悪魔のお付き合いさ。」

マイルズ「ちょっと、待ちなさい!」


少なくとも、待っている余裕は無い。砂の盛り上がった場所に登り、
辺りを見渡す。歯切れの悪い報告通り、金属の塊には見えなかった。
見かけこそクモだが、その体は岩のようにゴツゴツとしている。
確かに遠目にはネウロイに見えないこともないが、あれほど整っていない。
体の隙間に見える赤い粘性のあるものはマグマか何かだろう。だったら
体の表面の無骨さも想像がつく。あれは鎧のようなものだろう。


ネロ 「面倒な相手だな……」

悪魔 「強い闘気を感じて来たが……」

悪魔 「フン、人間の小僧か。それも、ずっと弱い。」

ネロ 「そりゃ悪かったよ。ボランティアで汗を流してたもんでね。」

ネロ 「だけど……お前をぶちのめすくらいには元気かもな?」

悪魔 「ほざけ!……しかし、貴様の姿……銀の髪に剣、銃……そうか。」

ネロ 「勝手に納得するなよ。何が言いたいんだ」

悪魔 「よもや、貴様が裏切り者の息子、ダンテとは思いもせんだ!」

ネロ 「……ん? おい、お前、脳ミソまで筋肉が詰まってるのか? 第一」

悪魔 「この程度の存在に倒されるとは……兄も随分……」

ネロ 「だから、勝手に話を進めるなっての!」



そろそろ話をするのもうんざりだ。一気に踏み込んでクモの
頭を両足で蹴りつける。案の定、手応えは無いがそれでいい。
とにかく話を切り上げたかった。苦手なタイプだ。


悪魔 「……とはいえ血族の無念は晴らさねばな 踏み潰してくれる!」

ファントム 「我が名はファントム! 裏切り者の血など……根絶やしにしてくれる!」


悪魔が吼えた瞬間に、岩の鎧の隙間からマグマが噴き出した。
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/11/29(木) 22:43:11.65 ID:BJGi/JR+o
シャドウはトラウマもの
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/29(木) 23:32:01.90 ID:Ykgl/tmSO
ネロって初代ダンテと比べたら実力的にどうなんだろうな
力は圧倒だろうけど技術や経験で劣ってる感じかな
247 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/11/30(金) 00:32:12.01 ID:x5bosGVe0
>>246 初代のがネロよりも年食ってるしそんな感じで書いとります。ダンテは魔帝倒しちゃったし。


ファントム――そう名乗ったクモの体が宙を飛んだ。体のデカイ奴は必ず
同じ手を使う。巨体を生かした押し潰しだ。オレだって多少なり経験は積んでる。
地面の影を、飛んでいるファントムの姿を見てその押し潰し範囲から逃げる。


ネロ 「クモならお家でも作ってな!」


そして、着地の時には必ず隙が生まれる。そこを狙ってやるのが定石だ。
ファントム巨体が砂の中に沈み混むのを見て思い切り剣を振って構える。
そのまま柔らかい砂を蹴って、流れるように勢いに任せてレッドクイーンを
横殴りに叩きつける。あまりの固さに思わず仰け反ってしまった。


ネロ 「硬いな、クソっ!」

ファントム 「デーモンキラーとは名ばかりか、ダンテよ!」

ネロ 「違うってんだろ! うおっ!?」


態勢を立て直す暇もなく、ファントムの大きな脚……というよりは
まるでサソリの鋏のようなそれが飛ぶ。それを最小限のステップと
身の捻りで避け、バックジャンプで再び間合いをとる。
イクシードを捻ってみたが、何も言わない。勢いを乗せたレッドクイーンの
剣撃が利かないだったら、あれを使う他には無い。右腕がぼんやりと光る。


ネロ 「……」

ファントム 「どうした、怖じ気づいたか!」

ネロ 「集中してたんだよ。第二ラウンドだ、かかって来い!」
248 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/11/30(金) 00:53:42.41 ID:x5bosGVe0
ファントム 「どうした、一人前は軽口だけか?」

ネロ 「……いいね。試してみるか?」

ファントム 「……これを食らうがいい!」


ファントムが再び吼え、その口がモゴモゴとマグマを吐き出している。
その口が不意に燃え上がるように光った。来る、と身構えた瞬間に
巨大な火の玉が吐き出された。狙いは分かっている。オレしかいない。


ネロ 「……まだだ。もうちょい。」

ネロ 「今っ!」


吐き出された火の玉の気配を感じ、右腕に握られた一振りの日本刀。
閻魔刀と呼ばれる刀を火の玉に合わせて振り下ろす。居合いってほど
綺麗でもない、ただの力に任せただけの振りでも十分だった。
熱々のバターナイフを入れたとき見たいに火の玉が綺麗に縦に割れる。
レッドクイーンなら打ち返せたかもしないが、流石の切れ味だった。


ファントム 「その剣は……!」

ネロ 「オレの力だ、文句でもあるか!?」


ファントムもこれには驚いたらしく、悪魔としては珍しく
理知的ながらも驚愕の声を漏らす。こうなればペースに乗ったも同然だ。


ネロ 「このままシメにでもしようか!」


「…よ…て」

そのままオレはジャンプ。そのまま、岩の鎧がない軟らかそうな背中へ
閻魔刀を突き立てるために、バランスを整え、刀を下に向ける。
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/11/30(金) 00:54:49.17 ID:AWz8+LAQ0
デビルハンターじゃね?
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2012/11/30(金) 06:06:13.76 ID:F84N89Fdo
デーモンキラーはDmCのダンテだと思う
251 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/12/01(土) 00:14:13.20 ID:Qn1hpCCA0
>>250-251 さほど大した理由じゃ無いですが、一応の考えはあるので後の言い訳タイムに。


ダンテ「……こっちにも来てるのか。全く、熱心なこった。」


ちょうどネロのいる辺りに感じる大きな魔力。それにダンテは
当然気付いていた。そっちは任せても大丈夫だと思い、自身は
見学でもと考えていたが、どうもそうはいかなくなった。
基地の近くにも、微かな魔力の匂いがする。多分、悪魔だけでは
ここに留まることさえ出来ないほどの弱いものだ。


ダンテ 「陽動、か?」


ダンテは以前に遭った悪魔を思い出していた。それが元凶だと考えれば
なんとなくだが辻褄が会う。大きな悪魔が騒ぎを起こしてこちら注意を引き、
その隙に疲弊した兵士を襲って戦力を増やして逃げる。そんな所だろう。


ダンテ 「だったら坊やは、計算外ってことか。」


勿論、それが正解だという確信は無いし、単に偶然が重なっただけ
というオチだって考えられる。それでも、悪魔を狩ることは仕事の
1つだった。背中のリベリオンを担ぐように構え、砲台を蹴って
僅かな匂いを頼りにその弱い魔力を探し始めた。
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/01(土) 14:41:44.93 ID:u3JUef+DO
シドか。あいつもコソコソやってたなぁ。
253 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/12/02(日) 01:47:32.16 ID:A+vGq0VX0
ダンテが目星をつけた場所は野戦炊飯の行われる、およそ戦闘とは
関係の薄い場所だった。そう言えば、扶桑では水回りには悪霊が
出るとか、そんな迷信があるとい話を思い出していた。
あながち間違いじゃないようだった。迷信というのも、バカには出来ない。


ダンテ 「……この辺か。っとすると……」

ダンテ 「……ピザ、最近食べてないな。」


久しくジャンクフードを食べていないことに気付いてダンテは
少しだけ口が寂しいような気がした。糧食や野戦炊飯の食事も
悪くはないが、それでもあの油っこいチーズやクリームが恋しくなる。
パティにでも言わせてみれば喜ばしいことなのだろうか。
そんなくだらないことを考えていても、後ろで蠢く何かの存在には気付いた。


ダンテ 「ちょうど、刺激が欲しいところだった。」


ダンテはこうして、ふと相手の攻撃を受けてみたくなる時がある。
マゾヒズムというわけでもないが、刺激の一つもなければダンテの
実力では下級悪魔だと退屈なルーチンワークにさえなってしまう。
後ろでその何かが刃物――包丁やその辺りの刃物を振るう風を切る音が聞こえた。
また安い刃物か、そう思ったが、それが振り下ろされることは無かった。
太い拳がその何かを殴っていた。


「無事かい、兄ちゃん。」

ダンテ 「……まあな。アンタは?」

コック「俺かい? ただのロマーニャのコックさ。野戦炊飯部隊の。」

コック 「それより、なんだいアレは。」

ダンテ 「ああ。カカシちゃんさ……おいたが過ぎる、な。」

コック 「穀物袋が刃物を持って、か?」

ダンテ 「悪い夢くらいに思いな。」


思っていた刺激とは違ったが、これはこれで面白かった。
不意打ちとはいえ人間が悪魔に怯むことなく飛び掛かるなんて
そうそう無いことだった。思わずダンテは吹き出し、持っていた
魔具を展開した。タールの様な液体を思わせるものがダンテの身を包む。
254 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/12/02(日) 01:59:39.62 ID:A+vGq0VX0
衝撃鋼ギルガメス。それが魔具の名前だった。使用者に強靭な
生命力と攻撃力をもたらす、魔具と呼ぶかも分からない。
金属生命体だった。それがじわじわとダンテの四肢を包む。

コック 「……」

ダンテ 「だから言っただろ? 悪い夢だって。」

コック 「ああ。そう思うことにしておくよ。でなきゃやってられないさ。」

ダンテ 「だろうね。」


そうしたどうでもいいやり取りをする内に、麻袋を被った悪魔が
起き上がり、ダンテの方を向いて耳障りな声を上げた。


ダンテ 「ったく、飯食う場所で騒ぐもんじゃないぜ?」

コック 「あれ、喋るのか?」

ダンテ 「いいや。雰囲気作り。でなきゃやってられないさ。」

コック 「どうしてだ?」

ダンテ 「味気ないからな。」

255 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/12/02(日) 02:24:00.36 ID:A+vGq0VX0
悪魔……スケアクロウとでも呼ぼうとダンテは思った。
確か、フォルトゥナではズタ袋を被った悪魔をそう、
呼んでいたはずだった。そいつが金属を擦るような、
気味の悪い音を立てて飛びかかる。


ダンテ 「芸が無いな、向こうのがピエロみたいで見応えがあった。」

ダンテ 「リーチを考えろよ!」


飛び掛かり、包丁を突き出す悪魔にダンテは逆に一歩近付き、
その足を伸ばし、振り上げた。伸びきると同時に小麦粉の入った袋を蹴ったような
感触が足を伝い、それがスケアクロウへめり込んだ。相手の勢いと
ダンテの踏み込み。そしてギルガメスで強化された人間離れした強靭な肉体。
それだけでも十分な威力を持つケンカキックが小さな爆発があったような
破壊力を生み出し、スケアクロウを大きく上に吹き飛ばした。


ダンテ 「あんまり暴れるのも悪いからな、決めるか。」

ダンテ 「catch this!」


吹き飛んだスケアクロウに合わせてダンテも跳躍する。
その途中で拳をアッパーカットの様に勢いよく振り上げ、
スケアクロウの柔らかな腹へと拳を叩きつける。


ダンテ 「Rising Dragon!」


それだけでは終わらなかった。ギルガメスのガントレットに
ついている穴。それからダンテの声に呼応するようにして、
大きな杭が飛び出してスケアクロウを貫き、真っ二つに裂いた。
パイルバンカーという土木機械、それを武器にしたものだ。
どうしようもないほど原始的だが、それ故に純粋な威力があった。


コック 「マーベルのヒーローみたいだ……」
256 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/12/02(日) 02:41:47.86 ID:A+vGq0VX0
ダンテ 「ははっ、もう何十年かしたら共演するのか?」

コック 「さあね……あったあった。」

ダンテ 「ああ、カカシちゃんの使ってた包丁か。」

コック 「ああ。安物だが、初めて給料で買ったもんで。」

ダンテ 「……一つだけ質問がある、いいか?」

コック 「何でも聞いてくれ、」

ダンテ 「なんであのカカシちゃんをぶん殴れたか気になってな。」

コック 「ああ、簡単だよ包丁さ。」

ダンテ 「包丁?」

コック 「料理人の命を人殺しに使わせるわけにゃいかん。」


あっけらかんとコックは答え、愉快そうに笑って見せた。
イタリア兵の士気は低いと聞いていたダンテは少し意外だった。


コック 「女の子と仲間と自分のプライドが関われば、俺らは最強さ。ほら、」


コックが指差した先を追う。一門だけ残っていた8.8cm。それにエプロンをつけた
大男が大きな砲弾をかかえて運んでいる。別の者は怪我人を連れて避難。それぞれが
自分のやるべきことを分かり、動いていた。そんな彼らをダンテはいとおしいと思った。
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/02(日) 14:26:07.25 ID:NZr01Cq6o
楽しみにしてるんだぜ。がんばってな。乙。
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/04(火) 01:59:20.78 ID:g08OAS5b0
このコックさん、ライバック…な分けないか
259 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/12/04(火) 22:30:12.74 ID:azpky0fe0
ネロ 「……なんだって!?」

ティナ 「避けろ!」

ネロ 「マジかよ……」


思えば、初めて腹を刺された時も相手を侮ってかかっていた気がする。
あのときは伏兵だったが、今回は敵の隠し種といったところか。


ファントム 「空中で、それも刀を振りかぶっていれば身動きもとれまい!」

ネロ 「サソリなのかクモなのか、はっきッ!」


ファントムの背中に畳むようにしてあった、サソリを思わせる尾っぽ。
それが弾丸のような速度でオレに迫る。苦し紛れに呟いた悪態も中途半端に
終わり、オレの胸は再び貫かれることになった。


ファントム 「やはり、この程度か。宛が外れたわ」

ティナ 「コイツ……」

ファントム 「石ころでも投げているのか?」


マルセイユがネロへ手を伸ばし、先日メーカーから送られた、
見事な装飾のコルトを連射しながら突っ込む。当然、拳銃弾で
効果を出せるほど柔な悪魔はほとんどいない。反撃の火球を
シールドで受け、避ける。それしか出来なかった。
260 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/12/04(火) 22:50:01.32 ID:azpky0fe0
ネロ 「がッ……ハ……」

ごぽりと血の塊を口から吐き出した。まだ心臓は動いている。
微かに、あの時、天使と呼ばれたがらんどうの鎧に刺された
時と同じように。それでも、違う点はたくさんあった。


ネロ 「まだ、負けたわけじゃない……」

ネロ 「右腕は……まだ動くもんな。」


ファントムはオレが生きていることに気付いていない。首を取ったように
オレを尻尾で掲げている。強力な悪魔ではあるが、オレを少しばかり
見くびっていた。閻魔刀はまだ握っている。これを悟られてはいけなかった。


ネロ 「動くなよ……じっとしてろ。」

ティナ 「……っ、おい。大丈夫か!?」

ファントム 「貴様、まだ息が……」

ネロ 「ままならねェな!」


そっと閻魔刀を振りかぶったところを先ほどのウィッチ。
桜色の髪が綺麗な少女がオレに気付き、声を上げた。そこで
ファントムもオレに気付き、その顔を上に向ける。
ダンテと面識があるなら、ブッ刺されても平然とする人間を
見たはずだ。人間ではなく、悪魔と人間のハーフらしいが。
それでもこんな状況は早々無い。というよりも何人も
致死の攻撃を受けて生きている人間がいてたまるかという
事だろうか。だったらそれは仕方ない。


ネロ 「そのお面ごとだ!」


振りかぶった閻魔刀を、そのまま下へ、正確にはファントムの顔に
思い切り投げつけた。円を描いて飛ぶそれはファントムの石の鎧を
砕き、ドロリとしたマグマの体、頭を叩き割った――――


ファントム 「小細工を!」


浅すぎた、激昂したファントムが尻尾を力任せに振り回し、
オレを砂へ叩きつけた。抜けたことで傷口から鮮血が吹き出す。
それと疲労。様々な事が重なりあい、オレの体力は限界を
迎えた。ここで、オレは気を失った。
261 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/12/04(火) 23:10:17.59 ID:azpky0fe0
遠くで、男達がクモと、ネロと名乗った青年の戦いを眺めていた。
炎を噴き出す怪物と、扶桑刀を古い、青く光る腕を持つ悪魔の様な人間。
即興の、巻き込まれた者を不条理に殺すような、死の舞踊を前に、
多くの兵士は見守る他になかった。


「まるで、悪魔だな……」

「ああ、信じられねェ……」


ポツリと小さな声が聞こえた。それは波紋のように周囲へ広がる。
やがて、その波紋が全体に及ぶかと思われたとき。


シンプソン 「静粛に!」

バッハ 「8.8cmの弾はあるか!」

「少佐、何をするんです?」

バッハ 「彼を助けるんだ。相手は実体がある。だったら死ぬ。」

「ネウロイとはわけが違いますよ! あれは炎なんて吐かないですし、それに」

マイルズ 「あっちの子はネウロイを倒すために戦ったじゃないの。」

バッハ 「……お嬢さん、いや。」

バッハ 「戦友の言う通りだ。一兵たりとも、見捨てないのが我々だ。」

シンプソン 「誰かを助けるとき、理由を考えて動くように生き物は出来てませんからな。」

シンプソン 「群れの為に毒針を刺して死ぬ蜂のように。」

バッハ 「ブリタニア的だな。迷っている時間は無いぞ生徒達。折角防衛した基地を、その功労者を見捨てるかね!?」


遠くで、大きくジャンプした少年が尻尾で串刺しにされた。
それでも、少年は手にした刀を投げつけ、分厚い殻を壊した。
それを見た、何人かの兵士が銃を手に取った。
262 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/12/04(火) 23:36:32.34 ID:azpky0fe0
コック「お待ちどお! オーダーの8.8mmはこれで!?」

バッハ 「野戦炊飯班か。手伝ってくれるのか?」


コック帽やエプロンを被った逞しい男たちは快活な笑みを浮かべる。
そして指で倒れた少年を抱え、巨大なクモを牽制して駆け回るウィッチ達を示す。

コック 「ロマーニャ人は女の子の前じゃ世界最強すよ。フニャチン野郎はいません。」


その言葉に、ほとんどの兵士がライフルを、手榴弾を、拳銃を手に取った。


ダンテ 「懐かしいもんを見たぜ。あの火だるまちゃん。」

ダンテ 「その大砲を使うなら、坊やのブッ壊した頭を狙いな!」

バッハ 「分かった!」


バッハも、誰も、ダンテに注意を払っていなかった。
それでも、勝ちに繋がる何かが欲しかったから、その
声に従って動いた。


バッハ 「こちらに注意を引き付けろ!」


それに呼応して数十の銃口から曳光弾、徹甲弾が飛び出した。
その間にバッハは砲を覗きながら、照準を合わせる。
蚊に刺された程度には攻撃を感じたらしいクモはゆっくりと
振り向き、口許に赤い炎を渦巻かせてこちらを向いた。


バッハ「まだだ……」


渦が少しずつ丸くなっていく。
巨大な弾丸が装填された。


ファントム 「人間どもめ……」

バッハ 「てェ!!」

渦が完全な球になり、飛ぶ寸前に、8.8cmが轟音と共に飛んだ。
火球と砲弾の、激しいエネルギー同士のぶつかり合い。
それがファントムの口で起こった。


その衝撃は、クモの口の中を暴れまわり、爆発を起こした。
ファントムは何が起こったかを知ることなく、消滅した。

バッハ 「……あのクモは消えた。我々の勝ちだ。」


ティナ 「確認した……ダンテ、RTBだ。」

ダンテ 「ああ。また会おうぜ、坊や。」


勝利に沸き立つ中を航空ウィッチはそっとその場を後にした。
ダンテも、陸戦ウィッチに担がれているネロを一瞥して、
ジャンプしてマルセイユの手に掴まり、その場を後にした。
263 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/12/04(火) 23:56:08.28 ID:azpky0fe0
どれだけオレが気を失っていたかは分からないが、起きたときは
誰かに肩を抱えるように運ばれていた。誰かではない、ウィッチに、だ。
そっと左手を自分の胸に置く。案の定、傷はふさがっていた。


ネロ 「これも同じかよ。クソッ……」

マイルズ 「同じ?」

ネロ 「何でもない。下ろしてくれ。歩けるから。」

マイルズ 「無理しないの。」

ネロ 「無理じゃないさ。疲れてるけど。」

マイルズ 「ごめんなさい。私たちが遅れたせいで……」

ネロ 「オレに言うことじゃない。」


それきり、会話は途切れた。少し突っぱねた物言いなったが、
謝ろうとしたときには、すでにバッハ少佐や兵士達の待つ陣地だった。


マイルズ 「陸戦ウィッチ隊、気を付け! 」

マイルズ 「遠参の段平……お許しください!」


さらにオレは申し訳なくなった。本人達の気にしていることを
ピンポイントで突いたのかもしれない。見ればウィッチの誰もがボロボロだった。
オレなんか目じゃないくらいに。野暮だがそれを制しようと口を開きかけた
矢先、バッハ少佐は敬礼を返した。よくは分からないが、上官や儀礼でする類いのだろう。


バッハ 「よく来てくれた、戦友達よ。」


その声は震えていた。目には涙が滲んでいた。その言葉を期に、周囲の兵士も
思い思いに歓声を上げてウィッチ達を取り囲んだ。オレはこのまま去るのが無難だろう。


バッハ 「待ってくれ、ネロ君。君も、その1人だ。」
264 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/12/05(水) 00:08:01.75 ID:rGQUhge/0
ネロ 「何だって?」

バッハ 「言葉の通りだ。何であれ、君が我々を助けてくれたことに変わりはない。」

バッハ 「恩人を無下に扱うのは、罰当たりだろう?」


そう言ってバッハ少佐はオレの右手を掴んだ。砂漠の環境のせいか、ゴツゴツした
大きな、それでも柔らかな握手だった。それを、オレの右手に。鱗の様な何かが
覆う、握手なんて縁も何もない手に。それが何よりも驚きだった。


バッハ 「驚いた。ちゃんと人肌の暖かさだ。てっきり冷たいものかと思っていたが。」

バッハ 「少々、ではないがとっちらかっているが、お茶でも飲んで休んでくれ。ウィッチの諸君も。」


そう言って、バッハはオレに背を向け、ウィッチを口説く兵士を小突きながら歩いていった。
呆然とその様子を眺めていたが、ウィッチのマイルズも同じようにオレに近づいてきた。


マイルズ 「行きましょう、ネロ君。話をするって約束でしょう?」


彼女はそう言って、オレを引っ張って歩く。兵士の冷やかしをBGMにしながら、
彼女も同じようにオレの右手を掴んでいるのが分かった。


ネロ 「……ああ。」


オレは悪魔じゃないと改めて分かった。ダンテの姿が無いことに、感謝した。
暖かいものが頬を伝ってるとこはダンテにだけは見られたくはない。


To be continued
265 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/12/05(水) 00:13:53.02 ID:rGQUhge/0
次回予告


戦う理由は人それぞれだ。俺が知るだけでもたくさんだ。

家族のため、金のため、力のため

どんな悪人でも、何かしら理由ってもんがある。

そして、強い奴に共通するのはどいつも自分で決めたってことだ。

Next Mission Little Tiger
266 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/12/05(水) 00:22:12.97 ID:rGQUhge/0
久々の多め更新。本当に謝るのは自分です。遅参の段平、お許し下さい。
誤植も多いしね。遅参の段平、遠参のって書いちゃったし。
恒例の言い訳タイム。タイトルはダンテの武器、パンドラと暴君ネロを
示す意味らしい、666でした。wikiだし間違ってるかもですけど。
ダンテは三人称、ネロは一人称がやりやすかったので、今後も森橋先生方式で。

突っ込みのあったデーモンキラーですが、ファントムを出そうとするに当たって

ネロをダンテと勘違いさせよう→じゃあ、お上りさんだ。→いっそ全部ちぐはぐに

こんな適当なノリで進んでます。DmCのカクカクが不安です。


今度はウィッチをしっかり活躍させたいなあ。次回も戦線を維持しつつ
別命あるまで待機です。あと半分くらいの予定です。
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/05(水) 21:07:53.51 ID:e+2IZH7Ao
これはよいネロ
乙素晴らしかった
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/06(木) 00:23:18.59 ID:5xo7VPcAO
結婚しちゃったよ…
269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/06(木) 08:42:53.72 ID:bItL4415o
もう半分か…早いな
270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/09(日) 00:00:00.80 ID:DXculzcko
楽しみに待つ。乙。
271 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/12/09(日) 00:38:44.98 ID:7nnEO1fU0
Mission4 Little Tiger


ダンテ 「全く……折角いい別れを演出したのに、」

ネロ 「仕方がないだろ、オレの得物の修理もあるし、ずっと居座るのだって悪い。」

ダンテ 「坊やは、妙なとこは律儀なのな。しかし面白い剣だな、エンジンのついた剣だっけか。」

薄暗いテントの中、ダンテとネロは銃を整備して時間を潰していた。
先日の大規模な攻勢の後、ネウロイの大きな襲撃は無い。その戦闘で壊れた
武器の修理のためにネロは峠の前線から離れた航空基地へ訪れていた。
ネロは修理のことは後で十分だと考えていたが、基地の司令であるバッハ少佐達の
薦めでは断れなかった。それが自分に休むようにという厚意と分かっていたので
大人しく従った。それだけの、単純な話だった。
机に置かれた、肉厚な剣に手を伸ばしたダンテ、その手をネロが右手でつねる。
割りと本気だったらしく、ダンテは慌ててその手を退け、何度か払った。


ネロ 「まだ修理が終わっていない。」

ダンテ 「終わったら触らせてもらえるのか?」

ネロ 「いいや。」

ダンテ 「だと思った。」


分かりきったことだった。どんなに斜に構えていようとネロも騎士だ。
自分の剣を持つということは誇りでもあるし、それをさして重要でもない時に
むやみやたらと触らせるということを嫌うだろうと推し量ることは容易だった。


ダンテ 「しかし、そんな簡単に直せるもんなのか?」

ネロ 「部品の調達が有利なんだとさ。難しいのは同じさ。」

ダンテ 「やっぱり、名前ってのはデカイわけだ。」

ネロ 「ああ。エースパイロット様々、かな。」
272 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/12/09(日) 01:25:33.60 ID:7nnEO1fU0
うだうだと非生産的な会話で手が止まるダンテと対照的に、ネロの
手に持つグラインダーは止まることなく銃に意匠を刻んでいく。
それを握る手は暑さと緊張でじっとりと汗が滲んでいる。
鉄のマスクや飛び散る火花がさらにその暑さを増している。

ダンテ 「器用なもんだな。何がどうしてこうなったんだ?」

ネロ 「ああ。オレの銃を見てな。是非とも部隊のマークをって。」

ダンテ 「引き受けたのか。」

ネロ 「しばらくは暇らしいから。っても、このデカブツで最後だ。」

ダンテ 「士気を上げるに越したことはないからな。」

ネロ 「ああ。」

ダンテ 「……」

ネロ 「どうした?」

ダンテ 「騎士団入らなきゃ、芸術家にでもなってたかもな。」

ネロ 「さあね。ガキの頃から木剣を握ってたから。想像出来ない。」

ダンテ 「そんなもんか。おい、彫りすぎじゃねェの?」

ネロ 「っと! 誰のせいだと思って……ったく。」


ダンテのちょっかいに文句を言いつつも、ネロの手つきは危なげない。
強度に問題が出ない程度に、しっかりと鷹をイメージした部隊章を刻む。
既に仕上げに入っているのか、手の動きは小刻みに動いていく。
273 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/12/09(日) 01:46:06.01 ID:7nnEO1fU0
ネロ 「……こんなもんか。」

ダンテ 「手慣れたもんだな。」

ネロ 「ウィッチの数だけ彫れば、嫌でも慣れるさ。」

ダンテ 「いいや、慣れるってのも坊やの才能さ。」

ネロ 「坊やは止めてくれ。」

ダンテ 「ハハッ、握手されてベソかかないようになったら、な。」

ネロ 「っ!」


マスク越しでも分かるネロの狼狽ぶりにダンテは思わず吹き出した。
彫っている途中に言わなくて良かった。もしもそうだったら、きっと
盛大に穴を開けていたかもしれない。ネロはマスクを外して机に置き、
どっかりと椅子に座り直した。物に当たらないのは、それが備品だったから
だろう。わしわしと頭をかき、背もたれによりかかった。


ダンテ 「そう怒るなっての。」

ネロ 「怒ってない。」

ダンテ 「面倒な女か、分かった、坊やは止めてやる。お嬢さんって呼ぶ。」

ネロ 「……一発でいい。殴っていいか。」

ダンテ 「いいね、運動不足は良くない。」


こうした軽い挑発に簡単に乗る辺りは昔の自分と変わらないとダンテは思った。
少し暴れれば落ち着くだろうというダンテの考えは意外な客によって砕かれた。


マミ 「あの……さっきから騒いでますけど、何かあったんですか?」

ネロ 「……」

ダンテ 「……」

ネロ 「何でもない。ダンテ、何かあったか?」

ダンテ 「いつも通りさ。」


下らないことでも、どういうわけか気があった。
274 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/12/09(日) 02:02:09.41 ID:7nnEO1fU0
>>272 間違えた、鷹じゃなくて、鷲でやんした。


ネロ 「それで? マミ……だっけか。」

マミ 「はい、えっと。私の銃……どうなったかなって。」

ネロ 「ちょうど終わったところさ。ほら。」

マミ 「……わぁ、凄いです!」


ネロの差し出したバカでかい銃。その銃身に刻まれた鷲の模様。
それをマミはうっとりと眺めた。なんとなく、ダンテその姿に
見覚えがあった。ライーサが部隊章を作ったときも同じ表情を
浮かべていた気がする。


マミ 「凄く、凄いです!」

ネロ 「落ち着け。3年くらい早いって。なんかよく分からんが。」

マミ 「でも、私、こんなこと出来ないから! 凄いです!」

ネロ 「落、ち、着、け。」

マミ 「あう。」


犬か何かのようにネロの周りをぐるぐる回るマミを、ネロは
その柔らかな頬を軽くつねってなだめる。まるでつまみ食いに来た
子供をあしらうような扱いだ。忘れがちだが、そういえばマミも
マルセイユも、ネロよりもずっと若い。ネロは孤児院で暮らしていたという。
きっと、彼女らと似た世代の子供の面倒も見ていたのだろう。


ダンテ 「でなきゃ、精神年齢が近いか。」

ネロ 「何か言ったか?」

ダンテ 「いいや。独り言さ。」

マミ 「い、いひゃいれす……」
275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/09(日) 09:58:15.58 ID:FlABfU2so
実際鷹も鷲も専門家が判断しても大した違いは無いらしいからなぁ
276 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/12/10(月) 23:23:54.46 ID:itB+2lai0
マミ 「ありがとうございます。」

ネロ 「暇潰しだ。バイト代もあるんだから、気にするな。」

マミ 「はい! それじゃ、また射撃の練習をしてきます。」

ネロ 「そうか。気を付けてな。」


トコトコと走り去るマミをネロは軽く手を振って見送った。
いくら魔法で筋力を強化しているとはいえ、身の丈近くある
砲身をスクールバッグ様に担いで行く様子はネロにとって珍しい
らしく、口を開いたまま、その後ろ姿を見送っていた。


ダンテ 「まあ、良かったじゃねェの。」

ネロ 「……腕の、ことか? 確かに誰も、そうだな。」

ネロ 「逆に、どんなことが出来るのか見せろだの……大道芸じゃないってのに。」

ダンテ 「ここは娯楽が少ないからな。かくいう俺も退屈さ。」

ダンテ 「ピザもストロベリーサンデーも、マーベルコミックも無い。」

ネロ 「自堕落な生活らしいな。ここで矯正すればいいんじゃないか。」

ダンテ 「ハッハッハ、話を戻すが、俺って下地もあるけどな。みんないいヤツだ。」

ネロ 「悪いヤツってのは早々いない。」

ネロ 「変わりに人間ってのは違うことを怖がるんだ。」

ダンテ 「……なるほど、ね。俺も昔は色々言われたもんだ。」

ネロ 「へえ、意外だな。髪のこととかか?」

ダンテ 「色々さ。」

277 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/12/10(月) 23:37:53.66 ID:itB+2lai0
ダンテ 「さてと、仕事も終わったし。退屈だな。」

ネロ 「早速だな。娯楽が無いんだろう?」

ダンテ 「無ければ作ればいい。」

ネロ 「ロールプレイングか? そんなのがめじゃないことをやってるけど。」

ダンテ 「さっき、坊やが提案しただろう?」

ネロ 「木の板に銃でも撃つか?」

ダンテ 「惜しい。曰く、」

ダンテ 「健全な魂は、健全な肉体に宿る。」

ネロ 「それじゃあ不自由なヤツの魂はダメみたいだな。」

ダンテ 「例外の無いルールは」

ダンテ、ネロ 「存在しない。」


意味もなく格言を皮肉ったり、くだらないことで嘘や冗談を吐くのが
ダンテという男だということを、フォルトゥナの一件や数日でネロも
分かってきていた。ダンテもそれを承知で、話続ける。ダンテなりに、
この親戚(と思われる)少年の扱いに腐心しているようだった。


ネロ 「おっさん臭いな。」

ダンテ 「それで、どうする?稽古くらいはつけてやれるぜ?」

ネロ 「言ってろ。」


苦笑したネロは立て掛けてあった木剣をダンテに放る。あちこちが
削れていたり、凹んでいたりと不恰好ではあるが、しっかりと手入れは
されていた。リベリオンやレッドクイーンに比べると軽いことこの上無いが、
ダンテもネロも、初心に帰ることはなかなか悪くないと思っていた。
何せ、彼らも幼いころは師匠にいやというほどの痣を貰っていた。
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/11(火) 10:18:15.45 ID:OaA1mrwAO
マルセイユと加東ちゃんってどっちが胸大きいの?
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/11(火) 16:08:54.87 ID:JCiv1XBno
マルさんじゃね
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/11(火) 19:15:55.28 ID:PwqMevw/0
ネロは義理の兄、ダンテはパパーダにか
二人共行っちまってるってのがなんとも……
281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/11(火) 19:42:32.44 ID:HCi4xw3So
マルセイユはまだ14だww
加東の方がまだ大きいんじゃね?

パパーダが本当に死んでるかは不明
居なくなったのは死期を悟ったからだろうけど
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/11(火) 19:56:00.25 ID:ScV/doOV0
ネロの師匠はクレドなのかな?
283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/11(火) 20:00:10.48 ID:HCi4xw3So
>>282
森橋ビンゴの小説だと担当の教官はいただろうけど、クレドと打ち合ってた方が長かったんじゃないかな
284 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/12/11(火) 22:45:57.23 ID:c2qpJucG0
さて、木剣を扱うのは久し振りだ。稽古の相手もいないし、
事務所を開いて間もなく悪魔退治に追われていたからだ。
ダンテも手にした木剣の扱いを思い出すようにして、剣を
クルクルと回してみせたり色んな構えをしては、悪くないとでも
言いたげに頷き、悦に入っている。つまりはいつも通りだ。


ダンテ 「そういや、剣だけの戦いってのは始めてか?」

ネロ 「お互い、銃を使ってたしな。」

ダンテ 「右腕も、だな。」

ネロ 「ああ。それで、ルールは?」

ダンテ 「簡単だ。一本相手に当てる。」

ネロ 「浅い当たりは続行か。」

ダンテ 「コートにかすって参りました? そりゃシラケる。」


つくづく人の神経を逆撫でするような物言いだ。これでよくも
便利屋稼業が勤まるものだ……かくいうオレも、人付き合いは得意では
ないが、流石にここまで対面する相手への態度は悪くないはずだ。


ネロ 「それもそうだ。始めるか。」

ダンテ 「あのエンジン付の剣と右腕のハンデだ。Come on!」


安っぽい挑発に乗るほど今回は焦っていない。木剣を構え、
ダンテを中心に円を描くようにして様子を伺う。いった通り、
ダンテから仕掛ける気はないらしい。木剣の刃を下に、柄を
捻りながらブルブル唇を震わせ、エンジン音を真似ている。
そのがら空きの胴目掛けて流れるように踏み込んで、
一気に振り抜く―――


ダンテ 「っとと。一撃で仕留める気だったか?」

ネロ 「ああ。でなきゃ勝てそうに無いもんで。」

ダンテ 「坊やはせっかちだな。時間はたっぷりあるんだ。」

ネロ 「お前には、な!」


オレの振り抜いた剣は空を切った。剣を払った瞬間にダンテは
転がって刃の下を潜り抜けていた。その時、剣を放り、起き上がった
先に剣が落ちるようタイミングを合わせ、剣を掴んだ。つくづく
動きに遊びが多い男だと思った。
285 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/12/13(木) 00:14:52.75 ID:nw6DiYOF0
力だけならば、それなりにあるという自負があったし、
ダンテ相手でもこればかりは引けを取らないと思っていた。
それでも、当たらなければ全くの無意味だった。まるで
底無し沼のなかに足を踏み入れたように、手応えが無い。
何度も打ち合い、いつしか鍔迫り合いのようになっていた。


ダンテ 「どうした、気合い入ってるのは分かるが、それだけか?」

ネロ 「チッ……ペラペラと、余裕そうだな。」

ダンテ 「そうでも無い。黒い金属よりは刺激的だ!」

ネロ 「同感だ!」


ダンテが脇腹を狙ってローキックを仕掛けてくる。以前にオレが
狙った攻撃だ。やっぱり、余裕があるじゃないか。バックステップで
それをかわすとダンテは必殺の突きを放ってくる。それも転がって避ける。


ダンテ 「驚いた。これはぶっ倒す気だったんだが?」

ネロ 「そうなのか?」

ダンテ 「さあ。」


何合もの打ち合いの中で、何度かこうした会話が繰り返される。
その会話を切り出すのは必ずダンテだ。ペースは完全にダンテに
握られてしまっている。どうにかこの戦況をひっくり返さなければならない。
がぜん楽しくなってきた。カードと同じだ。逆境の時が一番引きが良くなる。
286 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/12/13(木) 00:33:53.61 ID:nw6DiYOF0
ネロ 「さて……ショウ・ダウンとしよう。」

ダンテ 「坊やから話しかけるとはな。」

ネロ 「オレから話さない、なんて言ったか?」

ダンテ 「さっきのキックのお返しか、それ。」


言い終える前にオレは足を振り上げる。陳腐ながら、砂
での目眩ましというやつだ。騎士にあるまじき戦い方だが、
ダンテ相手に真正面から打ち合っては勝つ見込みが薄い。


ダンテ 「うっ……お!」

ネロ 「これでどうだ!」


顔を覆った時を見てそのまま間合いを詰め、木剣を数度振るう。
時折剣の柄を使い、殴りつける。どれも弾かれたが、ダンテは
どういうわけか、驚いたような表情を浮かべている。


ネロ 「scum!」

ダンテ 「……ハハッ!」


そこから、回転をしながら二度の降り下ろし。そして
下からの切り上げジャンプ。オレの師の得意とする技だった。
そのまま、木剣を落下の勢いで叩きつける。これも軽く上体を
逸らしてダンテは容易く避けてみせた。これをオレは狙っていた。


ネロ 「これで、どうだ!」

ダンテ 「ハッハッハ……これは驚いた。」


着地してもまだオレの攻撃を続ける。木剣を突き出し、
思い切り踏み込んでダンテの得意とする突きを繰り出す。
不意討ちではあるが、それなりに形になっていたと思う。
突き出された木剣をダンテの首にピタリと寄せる。
真剣だったら2mmも剣を引けば血が吹き出すような、
相手には敗北を植え付けるためのそれだった。



ネロ 「ジャックポット……ってとこか?」
287 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/12/13(木) 00:43:50.73 ID:nw6DiYOF0
ダンテ 「不意討ち……ってわけでもねぇな。作戦だ。」

ネロ 「らしくないことを言うな。雨でも降るかな。」

ダンテ 「そりゃいい。久々に冷たい水だ。」

ネロ 「ま、勝負はオレの勝ち……だな。」

ダンテ 「おいおい、ルールを忘れたか?」

ネロ 「どういう意味だ?」

ダンテ 「一本でも相手に強い打ちを決めたら、だろ?」

ネロ 「じゃあ、このまま剣を引けば」

ダンテ 「甘いね、坊や。」


次の瞬間、ダンテは信じられないことをした。
首に寄せられた剣に体重を預け、それを支店に
宙へ舞った。実剣ならば少しでも間違えれば
首と胴が分離してしまうような、危険なことだ。
それよりも助走さえなく自殺行為にも等しいことを
するやつなんか、見たことがない。


ネロ 「なっ!」

ダンテ 「お休み。」


剣を上に上げたがもう遅かった。ダンテの降り下ろしは綺麗に
オレの後頭部――どうやっても鍛えようの無い部位を叩いていた。
一瞬視界が真っ赤になった。加減をしたんだろうが、危ないところだ。
その衝撃でオレはたたらを踏んで、柔らかな砂に顔を埋めた。
288 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/12/13(木) 01:03:32.09 ID:nw6DiYOF0
少しだけ夢を見ていた。据えた臭いの酒場で二人の男が剣を握って争っている。
赤い、派手なコートの男が勝ち誇ったように、顔中に包帯を巻いた男の首筋に
無骨な大剣を突きつけていた。2mmも動かせばあっという間に包帯が赤く染まる。
そんな状況でも包帯の男は余裕を崩さなかった。そして、その男は首を剣に預け、
そこを支点にクルリとジャンプしてみせる。包帯の男も、赤いコートの男も、
ニヤリと笑みを浮かべた。そして再び銀の軌跡が赤い光を放ちながら飛ぶ。

オレは包帯の男から、コートの男への怒りと、優しげな何かを感じ取った気がする。
名前を捨て、下らない酒と嗜好のために日銭を稼ぐ男に。家族を殺されたことから
男は逃げたのだと。そして同時に、忘れたものを思い出させてやる。そんな兄の
ようなお節介を。


包帯の隙間から覗く、くすんだ銀の髪が見えた。

男の剣……閻魔刀とは比べられないが、なかなかの業物の扶桑刀。

そこに刻まれた名前が見えた。

GILVER

確かにそう刻まれていた。
289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/13(木) 02:59:13.36 ID:INT/LT+Eo
面白いぜ。乙。
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/13(木) 03:14:30.70 ID:yxkmU5J9o
大津中ナkおもしろかったぜ
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/13(木) 03:14:57.40 ID:yxkmU5J9o
誤字りまくったぜ
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/14(金) 22:32:01.08 ID:ho72Y2JDo
Vergil?
293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/15(土) 16:02:22.48 ID:/ypkjn4/0
>>292
Yes!
詳しくは1の小説版を
294 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/12/16(日) 23:12:21.51 ID:IWLpT/jd0
ネロ 「っ……てェ! 本気でぶっ叩くことは無いだろ?」

ダンテ 「坊やの兜割りからの突きだってマジだったろ。おあいこだ。」

ネロ 「そりゃ……そうだな。」

ダンテ 「俺の勝ちってことで……異存は?」

ネロ 「無い。真剣だったら首が飛んでるとか、ルールの拡大解釈とか、言わない。」

ダンテ 「……やっぱり文句があんじゃねェか。でも、そいつは俺が」

ネロ 「昔にされた技、だろ? だから不満はあるけどオレの敗けだ。」


ダンテの脳裏にチラチラと過去の記憶が早回しのように流れる。
ボロボロの酒場の机を、壁をお構い無く壊して暴れた時のことだ。
忘れたくても、忘れようのない。兄と完全に袂を分かつ出来事だった。


ダンテ 「……その話にゃ続きがあるぜ、結局、勝負は俺の勝ちだったんだ。」

ネロ 「なんでだ?」

ダンテ 「そりゃ、その後に」

パットン 「賭けは儂らの勝ち、だな。」

ケイ 「それじゃ、逃げないでね?」

ティナ 「……」


ダンテの会話を遮る様に、声が聞こえた。しわがれた声と
落ち着いたケイの声。普段の悠然とした振る舞いからは想像
出来ない、鉛でも飲み込んだような重たいマルセイユの声。


ネロ 「……賭けでもしてたか?」

パットン 「君がモンティの子飼いか。若いな。」

ネロ 「仕事だからな、そんなとこだ。質問に答えてくれ。」

パットン 「ガハハ、そう怒るな。このお嬢様を食事にお誘いするためさ。」

ダンテ 「食事? 結構なことだ。どうして嫌がるんだ。」

ケイ 「面子の問題かしらね。来るのは三人の将軍なの。他にはマイルズ少佐とか。」
295 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/12/16(日) 23:37:33.03 ID:IWLpT/jd0
それでダンテは十分に理解した。マルセイユが渋ったのも分かる。
彼女は自由に空を飛ぶためにウィッチになった。わざわざ地上で、
お偉方とうだうだ話をしていたいわけがない。


ネロ 「でも、空の専門家がいた方が戦い方とかを考えられるんじゃないのか?」

パットン 「……それ以前の問題だ。」

ティナ 「ジーさん達と食事なんて楽しく、ないじゃん。」

ティナ 「囲んで話すのはスエズの奪還と誰が指揮を執るか! 三人で話せばいいじゃん。」

ケイ 「こんな調子だから……」

ダンテ 「指揮、だって?」

パットン 「そうだ。これまでの危機は現場のウィッチのアドリブで乗りきった。」

ダンテ 「それじゃ、上官の面目は無いわな。」

ネロ 「怠惰と言われてもおかしく無い。」

ケイ 「ずけずけと言うわね……」

パットン 「折り目正しくサーをつけられるよりマシだ。そこで対策として考えたのだ。」

ケイ 「エア・ランドバトルユニット。陸空共同戦線ってとこかしら。」

パットン 「指揮を一本化して連携の遅れを最小限に止める。そんなところだ。」

ダンテ 「それは面白くない。」

ティナ 「そう思うだろう? 」

ネロ 「賭けはオレ達の勝敗か。それで、オレに賭けたアンタは……」

ティナ 「勝ったと思ったんだがな。」


自身の稽古を賭けの題材にするということは面白いわけでなかったが、
娯楽の少ないこんな状況ではどんなことにも理由つけて面白おかしく
しなければやっていけないことをダンテもネロも理解していた。


ネロ 「そりゃ悪かった次はもうちょい頑張るさ。」

ダンテ 「上等だ。二本目でもやるか?」

ケイ 「まあ、もう少し時間はあるから、準備なさい。」

ティナ 「分かった。賭けは賭けだ。」

パットン 「君ら……特に、そっちの君に話があるんだ。待ちたまえ。」

ネロ 「……オレ? で、ありますか。」
296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/12/23(日) 04:01:16.89 ID:GQWE7RKqo
まだかー?人類は滅んでないぞー
297 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/12/25(火) 17:07:38.86 ID:grK8ztNT0
久しく更新遅れ。また時間見てチマチマ埋めてきます。


パットン 「ああ。君の剣についてだ。あのエンジンが厄介らしくてね。」

パットン 「ここのヒノ、彼もお手上げ、だそうだ。」

ネロ 「だと思う。考案者も死んだし、パーツも特注ばかりですから。」

パットン 「まあ話を聞いてくれ。君もダンテと同じだ。結論から言わないと焦れるタイプだな。」


ダンテと同じ。というフレーズに、ネロは少しだけ表情を曇らせた。
それ以上に至らなかったのはまがりなりにも組織を理解し、相応の
分別を持っていたからだった。ダンテは、彼と同じ年齢のころ、
同じように振る舞えたかを考えた。多分、そうではなかっただろう。


パットン 「君のいた教団……魔なんたらに知り合いがいた、という技師を見つけたのさ。」

ネロ 「教団と軍が仲良し? そんな話、聞いたことがない……」

パットン 「無理もない。その剣の技術が開発されて間もなくだからな。」

パットン 「ともかく、来てくれ。外に天使達を待たせている。」

ダンテ 「あのお嬢さん方かね。」

ネロ 「それで、今から会いに行こうってわけか。」

パットン 「ああ。儂ももう何人かお誘いをかける相手がいるからな。」

ダンテ 「それじゃ、行って来い。俺は稽古の疲れでも癒すさ。」

パットン 「ダンテ、君もだ。」

ダンテ 「……仕事の方か?」

パットン 「そのための10年は遊べる報酬だ。数ヶ月の無茶には見合うだろう。」

トリッシュ 「どうせ、タダでも受けてたでしょうに。」


少し離れた場所にいる少女……変装したトリッシュ。が話を聞いていたのか、
ダンテの方へ視線をやり、唇を動かしてそう告げた。ダンテは過去に何度も
タダ同然の報酬で悪魔を狩っていた。逆にどれだけ金を積まれても首を縦に
振らなかったということも少なくはない。この依頼だって、気に入った仕事が
たまたま高額だった。それだけのことだった。


ダンテ 「違いない。」


パットンはそれを自身の言葉への答えと解釈した。


パットン 「さあ、急いでくれ。パーティーの日時が決まれば連絡しよう。」


マルセイユの表情は、その日の出撃があるまでむくれたままだった。
298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/12/25(火) 22:38:07.07 ID:hfRUUBNEo
299 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/12/28(金) 01:09:46.73 ID:HbgWnJTh0
砂を巻き上げながら進む車で、ダンテはだらしなく足を伸ばし、
良いとは言えない座り心地のシートに身を沈めていた。そういえば、
前に届けた看板はどうなっているのか。少しだけ気になった。


ダンテ 「なあ、あの看板だが……」

ネロ 「使わせてもらってるさ。いい名前だ、devil may cryって」

ダンテ 「そりゃどうも。んで? お嬢ちゃんとは上手くいってるのか?」

ネロ 「街の復興が終わってない。当分はキリエはそれで頭が一杯だ。」

ダンテ 「そんな調子で、お前はこんなとこにいていいのか?」

ネロ 「コレを良く思わないのだっているオレがウロウロするより、はかどるさ。」


大義そうに、隠すことを止めたらしい、鱗状の右腕を振ってネロは答えた。
そう割りきったようなそれが強がりではないかと、ダンテは心配になった。


ダンテ 「ままならないね。」

ネロ 「なに、悪いことばかりじゃない。ここに来たのだって自分の意思さ。」

ネロ 「久しぶりだったもんな。ほとんど初対面の相手と握手なんて。」

ダンテ 「ベソかくまで嬉しかったみたいだからな。」

ネロ 「それに、報酬も悪くない。街の手助けにもなる」

ダンテ 「そんなもんか?」

ネロ 「どんなとこでも、オレの故郷だからな。」

ネロ 「……スパーダがオレの街に居たとして、なんで魔界と通じる扉を残したか。分かるか?」

ダンテ 「教えてくれ。俺は分からん。」

ネロ 「悪魔だから、生まれた場所だから。それを簡単に閉ざすなんてのは出来なかったんだよ。」

ダンテ 「……やっぱり、分かんねェな。」


帰る場所、といってもせいぜい事務所がいいところのダンテには、故郷とか、
生まれた場所への執着という感情は今一つ理解できなかった。その感情を素直に
感じ、理解できるネロを少しだけ羨ましいなと思った。
300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/28(金) 16:07:38.63 ID:qZIf2ODAO
マルセイユってホントいい女だよなぁ…一晩いくらかなら相手してくれるやろ
301 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/12/28(金) 23:14:46.73 ID:HbgWnJTh0
パットン 「さて僕ちゃんたち、お喋りは終わり。到着だ。」

ダンテ 「結構かかったな。何だってこんなトコ。」

パットン 「カールスラントの技術主任と、彼らの最高傑作がある。」

ダンテ 「それが、パーティーにお誘いをかける奴らってわけだな。」

ネロ 「オレの剣も直してくれる、ってわけだ……アレは何だ?」

ダンテ 「……男のロマンだな。」


頬を付いて殺風景な砂の上にポツリと見えるテント、テント。そして
巨大な砲身の乗ったマシーン。足と呼べる部位でも男の背丈よりも
あるそれに、ネロは僅かに身を乗り出して見いった。ダンテも
思わずコミックから飛び出したようなデザインに僅かに心を躍らせた。


パットン 「男のロマン……残念だったな、あれもストライカーだ。陸戦のな。」

ネロ 「あれが? 陸戦ユニットってのは、もっとこう……」


「スゴいですよ、マイルズ少佐ぁ。うちらのマチルダよりも頑丈そうです。」

マイルズ 「そうね。こんなのばかりなら勧誘もはかどるんだけど……」

「泥臭いですからね、いっそ“扶桑海の閃光”みたいな映画にでもなれば……」


ネロ 「そう、あんな感じだ。こぢんまりしてるもんだろう。」

パットン 「驚いたかね。あれがカールスラントの最新鋭、重陸戦ユニットだ。その名も」

ダンテ 「その名も?」

黒髪の女性「ティーガー。いい名前でしょう?」


パットンが声高にその名を告げようとしたところを、20代であろう女性が
遮った。暑いこともあって、シャツの胸元を大きくはだけさせていて、ネロは
目線を一度だけ彼女に向け、すぐに逸らした。ダンテはダンテで軽く口笛を吹いてみせた。
女性らしい体つきとは裏腹に、化粧気の無い顔には大きな傷跡が残っている。
それが野生というか、豹や猫科の獣を思わせるしなやかな美を際立たせるようだった。


パットン 「ああ、彼女が件の一人、ポルシェ少佐だ。」

ポルシェ 「お久し振りです、パットン中将。フレデリカ・ポルシェよ。」
302 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/12/28(金) 23:36:34.38 ID:HbgWnJTh0
パットン 「ああ。こちらがダンテ、こっちの若いのがネロ。どっちも一人で陸戦ウィッチ並の戦力さ。」

ポルシェ 「よろしく、ダンテにネロ。マイルズ少佐から話は窺ってるわ。」

ダンテ 「どんな風に?」

マイルズ 「ネウロイを殴ったとか、剣で叩き切ったとか……本当かしら?」

ネロ 「お好きなように捉えてくれ。」

パットン 「しかし、良いものだ。これぞ“戦車”というべきだ。」

ポルシェ 「光栄ですわ。」

ネロ 「何だってこんなにおっさんが入れ込むんだ?」

マイルズ 「結構な額を援助してる、みたいよ。」

ネロ 「マイルズ……少佐。アンタもコレを見に?」

マイルズ 「ええ。別に少佐はいらないわ。」

パットン 「これが一個大隊あればネウロイのケツを蹴っ飛ばせるんだがな。」

ダンテ 「さすがリベリオン人。規模がメチャクチャだ。」

ネロ 「マイルズ、鏡があったらこいつに見せてやれ。」

マイルズ 「えっと……まずは自分も見たらいいんじゃないかしら。」

ネロ 「……」


ネロは数秒だけ、その言葉の意味を考え、心外だと言わんばかりに
眉をひそめた。砲弾を投げ、ネウロイを殴る人間がメチャクチャじゃないと
どうして言えるのか、マイルズは不思議で堪らなかった。


パットン 「折角だ、魔導エンジンの動くところも見たいのだが……」

ポルシェ 「もちろん。シャーロット! 聞こえたでしょ、魔導エンジンを始動して!」


パットンの言葉に応じてポルシェがティーガーに乗った少女に呼び掛ける。
重たい無線機を背負い、炎天下に晒されたせいでシャーロットと呼ばれた少女の
顎から汗が雫になって装甲を濡らす。まだこの暑さに慣れていないのだと
ダンテもネロも察した。
303 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/12/28(金) 23:53:28.51 ID:HbgWnJTh0
汗だくになって濡れた服をパタパタさせ、どうにか風を取り込もうとする
少女は、ポルシェの言葉に数秒の間を置いて、絞り出すような声で呟いた。

シャーロット 「………ダルぃ……」

ポルシェ 「んなっ!? シャーロット!!」

パットン 「?」

ダンテ 「……動かないのか?」

ネロ 「……聞こえたろ。」

ダンテ 「…………まあな。オヤジさん達は聞こえてないようだが。」


ポルシェがどう叱ろうか悩んでいるうちに、ティーガーに登って
シャーロットに日傘を差してやる髭面の男がいた。男は困ったような
笑みを浮かべ、申し訳ないとばかりに帽子を外した。


男 「閣下、何分砂漠での熱対策の検証で、エンジンは調整中であります。」

パットン 「そうか、それは悪いことをした、シュミット大尉。」

男 「いえ、此方も不手際で……それで、彼の持ってる奴が修理の必要な剣で?」

パットン 「肯定だ。儂に免じて見てやってくれんか。二人は好きに使ってくれ。」

男 「了解です。閣下。」

ダンテ 「おい、パーティーのお誘いだとかは」

パットン 「延期だ。戦力の一角を握るティーガーが動けなければ難しいからな。」

パットン 「数日ほどすれば迎えを送る。ゆっくりしていけ。」


言いたいことだけを言って、パットンはジープに戻り、車を走らせていった。
体のいい雑用とか、そんな扱いだったのかと、ダンテは肩を竦めた。
マイルズ達、ブリタニアのウィッチも少しずつ引き上げていった。


ダンテ 「やれやれ、リベリオンの押しの強さは時に面倒だ。」

ネロ 「強引さも指揮官に必要なんだろうな。」


ダンテは「これだからリベリオン人は」と声高に、
ネロは「これだからリベリオン人は」と控えめに言った。
戦闘ではどちらも強引この上ない戦いをしていることは
触れようとしなかった。
304 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/12/29(土) 00:27:43.63 ID:jcbciR9f0
ネロ 「それで、この剣はどうすりゃいいんだ。」

シュミット 「ああ、俺に貸してくれ。2、3の内に新品同然にするさ。」

ネロ 「ネロだ、よろしく頼む。俺の相棒なんだ。」

シュミット 「猫みたいな可愛らしい名前だな……いや、失礼。」

ネロ 「いや、大丈夫だ。結構気に入っていてね。よろしく頼むよ。」

シュミット 「分かった。」

ネロ 「……しかし、どうしてイクシードのことを知ってるんだ。」

シュミット 「技術畑ってのは、結構狭いもんだからな。推進剤を使った加速。」

シュミット 「面白い発想だから、色々と情報をかき集めたり、話を聞いたりしたんだよ。」


このシュミットという男も、技術屋なのだなと思った。一つを聞くと
数倍のものを教えてくる。典型的なギークだ。それでも、俺の知る類いと
違って、嫌みったらしい優越感を感じなかったことにネロは好感を持った。
恐らく、彼は軍人上がりで技術屋に転向したのかもしれないと思った。


ポルシェ 「シュミット大尉! 話があるわ、来てちょうだい!」

シュミット 「おっと、女王様がお怒りだ。それじゃ。シャーロットも休んでなさい。」

シャーロット 「……ン。」

ネロ 「……おい、大丈夫か。」


ヨロヨロとティーガーから降りる少女をネロはとっさに支えた。
その小柄さに、ネロは僅かに顔をしかめた。自分よりも若い、
こんな少女が戦わなければならない状況を心の底から憎悪した。


ネロ 「ったく……だから。」

ネロ 「これくらいは俺がしなくちゃな!」


ネロの右腕がボンヤリと光った。それと同じタイミングでダンテが銃を抜く。
真後ろで何かが表れるのが分かった。ネロは躊躇なくその何かに、銃口を向けた。
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/12/30(日) 18:32:58.45 ID:rgrS8akIO
右腕が光るって事はアイテムが有るって事だな!?
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/30(日) 23:30:09.60 ID:zJvQzRESO
いやきっとシークレットミッションが
来る
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/31(月) 20:02:07.34 ID:a7qqdKEo0
ロダンの店かもしれん…
308 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/12/31(月) 21:02:10.02 ID:yoX7sgQz0
ダンテもオレと同様に、その気配を感じ取ったらしい。オレが撃つよりも早く、
その手にした二挺の拳銃を愛撫するようにホルスターから取り出す。
マシンガンを思わせる轟音。それにワンテンポ遅れてオレのブルーローズの
銃声が加わる。6発撃ち尽くして振り返る。オレの見たことが無い悪魔だった。
ローブを思わせる黒い霧はどことなく、教団でメフィストと呼ばれていたそれに
見えるが、それだけだった。大きさはそれと比べられないし、顔は骸骨のそれだ。
シャーロットとかいうらしい少女も、その悪魔をまじまじと見ていた。
その異様な光景に、明らかに怯えていた。小動物よろしく、小さな体を震わせている。


ネロ 「ドクロの悪魔……?」

シャーロット 「……が、骸骨が……浮いてる?」

ダンテ 「そうだな。お嬢ちゃん、一つだけ質問をしよう。」

シャーロット 「……え?」

ネロ 「おい、何でこんなときに……」

突然、ダンテがオレの背中に隠れたシャーロットに語りかける。
まるで、料理の豆知識でも……コイツが料理をするとは思えないが、
とにかくちょっとした小話でもするような物言いだ。こんな状況で
ダンテは何を考えているんだ。


ダンテ 「スペアリブじゃない。あんな感じの骸骨だったら。どうだ?」

ダンテ 「おまけに、首をちょん切れそうなハサミまで持ってる。」

シャーロット 「……し、死……神?」

ダンテ 「大正解だ。あの骸骨ちゃんはそれを狙ってるのさ。」


ここでようやく、オレはダンテの意図を察した。悪魔の多くは、
人間の負の感情を糧にしている。悪魔がグロテスクな外見をする
理由は、その恐怖や嫌悪を誘うためだ。でなければ、どうして
扱い難いハサミや鎌を使う悪魔がいるだろうか。


ネロ 「シャーロット、目を瞑ってろ、もしくは、逃げろ。アンタは何も見ていない。」

シャーロット 「……へ?」


一方的にシャーロットに話しかけ、軽くその小さな肩を突き飛ばす。
よろけた彼女はペタリと座り込んでしまった。パニックを起こさないだけ
マシと言えた。テントから、先程の男が出てきてこちらへ走って来る。
これならきっと大丈夫だ。


ネロ 「ここから先は、X指定だ。ちと堪えるぜ。」


どういうわけか、ダンテが笑った。確かにオレもその歳じゃあない。
309 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/12/31(月) 21:30:47.37 ID:yoX7sgQz0
ネロ 「ただの雑魚なら……」


空になった薬莢を捨て、シリンダーに弾の入ったローダーを押し込む。
カチリという音を聞いてシリンダーを戻す。そのまま撃つ。多少の悪魔
なら簡単に吹き飛ばすことの出来る弾丸も、ドクロに傷を付けるくらいで
致命傷には至らない。それでも、悪魔を包むプレッシャーは弱くなった。
何か、骸骨を寄り代にしている悪魔だという証拠だ。油断ならない相手に変わらないが、
それでもべリアルやエキドナ。ましてやクレドには遠く及ばないはずだ。


ダンテ 「経験を積んだな、坊や!」

ネロ 「坊やじゃ……うおっ!?」


ハサミを持った悪魔が、それを勢いよく突き出す。それを上体を剃らし
避けたが、その突きの速度が考えたよりも早く、思いの外ザックリやられた。


ダンテ 「だから坊やって言ったんだ。」

ネロ 「お前がおちょくるからだ!」


自分のミスなのは分かっているが、ダンテの人を食ったような物言いに思わず
言い返してしまう。それを知ってなのかダンテは苦笑するだけで、何も言わない。
ニヤニヤと笑い、拳銃を連射してハサミの悪魔の注意を惹き付ける。
手にした剣を振ってハサミをいなし、カウンターの突きでオレの方へ吹き飛ばす。


ダンテ 「だったら、トドメは任せるさ。お前のがこの悪魔と愛称がいい。」

ネロ 「言われなくても……!」


ハサミの悪魔は既に体勢を整えている。ハサミ開き、オレを真っ二つにしようと
吹き飛ばされた勢いでこちらに迫ってくる。オレもむざむざ挟まれる気は無い。
310 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2012/12/31(月) 22:45:02.83 ID:yoX7sgQz0
ネロ 「よっと」


飛んでくるハサミを小さくジャンプして避ける。ハサミが不快な金属音
を響かせて閉じる。ブーツのカカトが切れた。気に入っていたのだが、
これは諦めるしかない。削れたブーツを履いた足を伸ばす。ハサミを
思い切り蹴ってもう一度ジャンプ。エネミーステップと呼ばれる技術だ。


ダンテ 「名誉挽回ってとこか?」

ネロ 「まだまだ!」


ジャンプをして、その悪魔の顔である骸骨の空洞と、オレの眼が合う。
ただの空洞に、先日死んだ兵士達の顔が重なった。なるほど、死を意識
させるということは本当らしい。オレは恐怖ではなく、別の感情を抱いた。


ネロ 「人の弱味に付け込みやがって……scum!」

ダンテ 「おー……懐かしいね。」

ネロ 「おおおおお!」


オレは右腕を伸ばし、その骸骨のこめかみを思い切り掴む。
ちょうどアイアンクローのような格好だ。そのまま、
足を絡ませて左手も添えて力任せに引っ張る。


ネロ 「おおおおぁ?……がっ!」


ブチリと湿った音がして、骸骨がその浮遊した体から離れた。
悪魔の持ったハサミが、身に纏っていたローブが消える。
それに身を預けていた格好のオレは数メートルの高さから落ちて、
背中からザラザラの砂の上に落ちた。痛くはないが、砂が服の中に
入り込んで気持ちが悪かった。骸骨といえば、落ちた表紙に
手放してしまった。骸骨はダンテが握っている。


ダンテ 「どうする? インテリアにでも悪くは」

ネロ 「悪趣味だ。」

ダンテ 「だろうな。」


ダンテは骸骨を放り投げ、二挺の拳銃で粉々に砕いた。
311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/01(火) 04:03:33.32 ID:Kv5VHA94o
いいね。楽しみに待つ。乙。
312 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/06(日) 13:38:47.24 ID:cdVL/hJB0
シュミット 「今の騒ぎは何だったんだ?」

ダンテ 「俺達の本業だ。そう気にするこたない。安心しな。」

シュミット 「説明になってないん……」

ネロ 「最近巷を賑わせていた、怪死事件の犯人の一人ってとこかな。」

シュミット 「フワフワ浮いて、か? 噂には聞いていたが、信じられん……」

ダンテ 「またこのパターンか。」

ネロ 「各国で連携がなってないことの弊害だな。」


思い思いに、投げやりな感想を口にする二人。ダンテもネロも、
同じような反応を何度も見ている。アフリカでも同様に。別に
それ自体は仕方ないと理解しているが、面倒だった。
専門家が、用語を多用して説明しなければならない複雑な事例を
一般にも分かりやすく、噛み砕いて教えることが難しいのと同じように。


シュミット 「まあ、なんだ。うちのシャーロットを助けてくれてありがとう。」

ダンテ 「うちの? 娘さんか何かか?」

シュミット 「っはは、そんなに老けて見えるかね。」

ダンテ 「冗談さ。それで、お嬢ちゃんは?」

シュミット 「シャーロットが大切ってのは間違いじゃないがね。奥で休んでる。」

ネロ 「無事ならそれでいい。」


ポルシェ 「ミハイル! ミハイル・シュミット技術大尉!」


シュミット 「おっと、すまない。随分とお冠だ。」



ネロ 「いいのか? 女であの階級ってことは、ウィッチ……」

ダンテ 「アガリじゃないのか? ウィッチとの恋愛沙汰は禁止らしいがな。」

ダンテ 「悪魔と人が愛し合う時代さ。あれくらい、おかしく無い。」
313 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2013/01/06(日) 13:56:07.64 ID:cdVL/hJB0
トリップ忘れ


ネロ 「さて、これからどうする?」

ダンテ 「そうだな、カウンセリングでもするか。」

ネロ 「カウンセリングだって?」

ダンテ 「気まぐれさ。若い女の子と話をする機会だ。」

ネロ 「シャーロットって子に話を聞くのか?」


ダンテはニヤリと笑うだけで何も答えなかった。意図があるのか、
何も考えていないのか、ネロには全く分からなかった。それでも、
手持ちぶさたでいるよりはマシだろうと思った。既に日は暮れ
夜が来た。意味もないウソを吐く男と話をするよりは有意義に
時間を使うことが出来そうだ。


ダンテ 「それじゃ、行こうか。」

ネロ 「でも、カウンセリングって何をするんだ? 経験なんて無いぞ」

ダンテ 「勢いだ。酒は逃避で夢は欲望の自己解決だ。」

ネロ 「滅茶苦茶だ。」


やっぱり、素振りでもしている方がよかったかもしれないとネロは思った。
314 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2013/01/11(金) 21:06:07.52 ID:M4sQHsmL0
ネロ 「それで、どうする。いきなり話しかけても驚くだけだろ。」

ダンテ 「お湯でも沸かして、火でもくべてりゃいいんじゃねえの?」

ネロ 「それもそうだ。」

ダンテ 「……」

ネロ 「……」

ダンテ 「……」

ネロ 「……」

ダンテ 「よし、カードだ。カードでどっちが準備をするか決めよう。」

ネロ 「そうだな。ルールは?」

ダンテ 「一発勝負だ。どっちがデカイ数字を引いたかだ。」

ネロ 「エースはどうだ。最強にするか?」

ダンテ 「“デカイ”数字だっての。」

言いながら、ダンテは懐にしまっていたトランプを抜き、軽くシャッフルをした。
ネロはダンテのイカサマを疑ったが、考えても仕方がなかった。ギャンブルには
とことん弱いらしいという話だし、戦い以外では全くアテにならない男がそんな
器用なことが出来るかどうか。答――恐らく不可能。そうこう考える内に、カードが
配られた。


ダンテ 「さあ、ショウ・ダウンだ。」

ネロ 「……6だ。」

ダンテ 「っはは! いい数字だこと。知ってるか? 666ってのは色んな意味がある。」

ネロ 「暴君“ネロ”のことだろ。知ってる。」


ダンテは愉快そうに笑い、なんとも言えない表情のネロを眺め、
自分の引いたカードを改めて眺め、そして硬直した。
315 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2013/01/11(金) 21:39:24.32 ID:M4sQHsmL0
ダンテ 「なあ、さっき何て言った?」

ダンテ 「エースは一番強い、だよな?」

ネロ 「バカ言うな。30秒前のことだ。エースは一番弱いだろ。」

ダンテ 「……ああ。クソッ。」


ダンテがネロにカードを見せる。スペードのエースだった。
間違いなく、ダンテはギャンブルの星に生まれてはいない。


ネロ 「狙ってやったんなら大したもんだ。」

ダンテ 「してねェよ。ったく。んじゃ言ってくる。」


大きいはずのダンテの背中が、この時ばかりはどうしようもなく
頼りないものに見えて、ネロは少しだけ虚しかった。伝説の
魔剣士がこのような性格でないことだけを、ネロは願った。







アグニ 「感じるな。」

ルドラ 「感じるとも。兄者。」

アグニ 「悪魔でありながら悪魔でない。」

ルドラ 「しかし、あの男達のような者でもない。」

アグニ 「まるで木偶の人形に魔力を注いだようだ。」

ルドラ 「木偶ではないぞ。肉の人形だ。」

アグニ 「そうだな。しかし、人形には違いは無い。」


魔剣の呟きは、誰にも聞こえなかった。テントにある、即席の
バーには誰も居ない。マルセイユも、マティルダも外にいた。


アグニ 「まさかあの男、我らを置き去りにするのではないか?」

ルドラ 「……無いとは言い切れんのが、奴の恐ろしい所よ。」

アグニ 「折角暴れられるのに、また飾りはゴメンだぞ。」

ルドラ 「ゴメンだとも。」
316 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2013/01/13(日) 01:23:30.08 ID:I8WalX0E0
×言ってくる ○行ってくる


悪戦苦闘しながら二人はどうにか準備を終え、火に当たりながら
シャーロットが起きてくるのを待った。起きてくる様子はまだ無い。


ダンテ 「ゴドーを待ちながら、ならぬシャーロットを待ちながら、か。」

ネロ 「いくつか言いたいことがある。まず、俺たちが自殺しようとするみたいなタイトルだな。」

ダンテ 「それで?」

ネロ 「それに、その話はゴドーについての話をするだけの不条理なヤツだ。」

ダンテ 「ほうほう」

ネロ 「なにより、まだその話は出ていないだろ。」

ダンテ 「俺、知り合いだから。作家と。」

ネロ 「嘘言え。」

ダンテ 「ったく、楽屋ネタは寒」

ネロ 「待て、お出ましみたいだぞ。」

シャーロット 「……えっと?」

ダンテ 「ようこそフロイライン。コーヒーでもどうだ? ここは冷えるからな。」

シャーロット 「……アナタ達も、テントで休んでいればいいのに。」

ネロ 「気まぐれさ。結構、星が見えるかなと思って。」

ダンテ 「むさ苦しいからな、丁度いい。お嬢さんも来てくれ。」


ネロが差し出した金属製のカップを受け取り、シャーロットは
黒ずんだ液体に口をつける。渋い表情を浮かべたのを見てダンテは笑った。


ダンテ 「悪い、ミルクの用意をしてなかった。坊やは大丈夫か?」

ネロ 「……大丈夫だ。」

ダンテ 「今の間は何だ。」
317 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2013/01/13(日) 01:40:22.98 ID:I8WalX0E0
シャーロット 「まるで別人みたい。」

ネロ 「別人?」

シャーロット 「えっと……」

ネロ 「ネロでいい。」

シャーロット 「ネロ、さん……あのお化けと戦ってたときと。」

ネロ 「そんなもんか?」

ダンテ 「お前さんのが悪魔っぽい、だとさ。」

ネロ 「うるさい。」

シャーロット 「えっと、そういう意味じゃなくて……」

ネロ 「知ってる。真に受けたら身が持たないぞ。」

ダンテ 「言うね。」


シャーロットは口に近付けていたカップを離した。
ダンテは昔読んだ本を思い出した。話の途中に飲み物を
口にすることは、喉にまででかかった言葉を堪える意味が
含まれているとか何とか。必ずそうという訳ではないだろうが、
今のシャーロットはそれの逆だなと思った。


シャーロット 「二人は、どうしてそんな怖いものと戦っているんですか?」

ネロ 「……」

ダンテ 「……なるほど、ね。他の人には聞いたのか?」

シャーロット 「皆は……怒るか、笑うかで、答えてくれない。」

ダンテ 「ネロ、お前が言ってやるといい。」

ネロ 「何でだ?」

ダンテ 「大人ってのはズルいんだ。」

ネロ 「……そうだな。戦う理由、だよな?」
318 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2013/01/13(日) 02:06:49.10 ID:I8WalX0E0
それだけ言って、ダンテは立ち去ってしまった。全く、自分からやろうと
言って、放り出すとは……まあ、いつもの事か。それよりもオレは先に迫った
問題がある。援護も無く、年頃の女の子と話す。悪魔のほうが何十倍楽だろうか!


ネロ 「それじゃ、逆に聞こう。シャーロットはどうしてアレに乗ってるんだ?」

シャーロット 「……ティーガーのこと?」

ネロ 「それだ。俺からすれば、それだって怖いさ。ネウロイと戦うんだから。」

シャーロット 「そんなの……分からないよ。」

ネロ 「じゃあ、どうして辞めない? 聞くのも怖いのか。」

シャーロット 「……」

ネロ 「言えないなら、俺が話をつけてやる。」

シャーロット 「待って!」


立ち上がったオレをシャーロットが引き止める。慌てていたせいで
カップが冷たい砂の上に落ちて黒い染みを作った。少し言い過ぎたかと
申し訳なく思ったが、シャーロットは戦う理由を誰かに求めている。
誰かの戦う理由を、自分のそれにしようとしている。


ネロ 「そんなんじゃ、意味が無い……」

シャーロット 「……?」

ネロ 「何でもない。今のは冗談じゃない。戦う理由なんてそれぞれだ。」

ネロ 「それを誰かから貰って、戦えるわけが無い。死ぬだけだ。」

シャーロット 「でも、私……私だって、只の女の子で……」


どうも子供の扱いというのは苦手だ。もう少しひねた小僧なら
もっとやりようはあるが、何せ目の前の女の子はどこにでもいる、
彼女の言った通りの普通の女の子だ。それも、泣き出す寸前の、だ。
何か話題は無いだろうか。戦う理由を見つけるのは彼女にしか出来ないが、
それの糸口くらいは見せてやりたい。“馬を水辺へ引くのは人間だが、飲むのは馬”
確かそんな諺があった気がする。今の状況がまさにそれだ。
人に物を教えるってのは、随分難しいもんだな。


ネロ 「少し別の話をしようか。」
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/13(日) 09:50:39.08 ID:NwK+a1QFo
本編じゃあり得ないような頭のいい会話に聞こえる
320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/13(日) 18:40:24.01 ID:mzFxE9t20
経験を積んだんだよ、きっと
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/14(月) 01:13:49.62 ID:mkXugXTZo
楽しみだ。乙。
322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/14(月) 11:53:28.32 ID:KHo8VC2Q0
すばらしい良作じゃないか。期待。
323 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2013/01/19(土) 00:27:54.07 ID:Y7lI6Rkj0
ネロ 「シャーロット、君に家族はいるか?」

シャーロット 「……いない。」

ネロ 「オレもだ。母親は娼婦かなんかだ。」

シャーロット 「……しょーふ?」

ネロ 「それはいい。後で聞いたりとかするな。まあ、他の子と違った。」

ネロ 「そんなだから、昔からオレをからかう奴もいた。そんなのもあって、オレは腐ってた。」

シャーロット 「……」

ネロ 「でも、ある時腐ってたオレを引っ張ってくれる奴がいた。厳しいけど、優しい“人”だ。」

シャーロット 「……その人が、いじめてくる子をやっつけたとか?」

ネロ 「違う。オレに剣を教えてくれたんだ。何ていうか、そんときは嬉しかったな。」

ネロ 「オレ自身も、この世界を捨てたもんじゃないって思えた。」


娼婦の子だとか、髪の色でバカにしてくる人間はたくさんいた。それをオレは
他人事のように考えていた。どうでもいいと、連中を視界に入れなければいいと。
そうして独りを気取っていたオレの世界を広げたのは確かに剣と、“彼”だった。
今まで通り悪口は続いたが、それをある程度だが受け入れるだけに足りる余裕が
生まれたのは、間違いなくそのお陰だった。


シャーロット 「……それで、どうしたの?」

ネロ 「それだけさ。後は色々あって、騎士になりました、おしまい。」
n
シャーロット 「それだけ?」

ネロ 「そんなもんだ。ある人の“それだけ”がある人の“そのお陰で”になる。」

ネロ 「価値や理由は見いだすもんじゃない。創るもんだ、ってことかな。」

シャーロット 「創る……やっぱり、難しい。」

ネロ 「悩みも創ることと同じ“人間”の特権だ。ゆっくり考えればいい。」


安いコーヒーをすすりながら、オレは少しだけ昔を思い出した。
悩みも価値を創ることも忘れた人間は、既に悪魔と変わらない。1つのことに
盲信し、その価値を押し付け考えることを忘れた哀れな老人をオレはよく知っている。
324 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2013/01/21(月) 00:18:13.24 ID:VAfbUv/Z0
ネロ達が話をしている間、ダンテは遠くからその様子を眺めていた。
暗くなったそこにはもう一人男が立っていて、心配そうにその様子を
見ている。ネロ達が何を言っているかは分からなかったが、親身に話を
聞く、末っ子の出来た子供がそれにお兄さんぶる様なネロを見て、緊張を緩めた。



ダンテ 「……俺が出なくて正解、だったな。そうだろ?」

シュミット 「やっぱり、年齢が近いからか。」

ダンテ 「坊やの方が、お嬢ちゃんと境遇も近いだろうからな。」

シュミット 「境遇?」

ダンテ 「あの子、両親に育てられたわけじゃないだろ。」

シュミット 「……ああ。魔女だった祖母と暮らしていた。」

ダンテ 「過去形か。」

シュミット 「そうだ。よく分かったな。」

ダンテ 「これでも、メインは人間相手の商売だからな。観察眼金はを踏んだくる為に必要でね。」

シュミット 「……そんなに羽振りは良さそうに見えないが?」

ダンテ 「アンタにゃ俺んちの経済は関係ない。」


子供っぽく唇を尖らせたダンテを見て苦笑しながら、シュミットは
安っぽいタバコに火を灯した。その煙を見て大袈裟に顔をしかめた
ダンテに気を払い、顔を背けて紫煙を吐き出した。


シュミット 「それで、ミスター・ダンテは何かご質問でも?」

ダンテ 「言いたいことがあるってのは分かってたか。」

シュミット 「俺も、気難しいお姫様の相手をしてるもんでね。」

ダンテ 「ああ、ポルシェ、だっけか。あんま進展は見えないが?」

シュミット 「アンタにゃ関係ないだろう。」


今度はダンテが似たようなセリフを返す番だった。ささやかな
反撃に面食らったシュミットは髭の下の口をへの字に曲げた。
冗談抜きでムスッとした顔を見てダンテはシュミットを若いなと思った。
325 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2013/01/21(月) 00:34:36.98 ID:VAfbUv/Z0
ダンテ 「そんな恋愛事情はさておきだ。本題から行こう。」

ダンテ 「自分が“戦えない”ことについてだ。」

シュミット 「……」

ダンテ 「質問を変えようか。女の子を“戦わせなきゃいけない”ことは?」

シュミット 「……クソ喰らえ、だな。」


その短い単語に、発酵した己への憎悪がこれでもかと含まれていることを
ダンテは察した。が、ダンテはその憎悪に敢えて足を踏み入れた。


ダンテ 「驚いた。カールスラント人が、クソ。」

シュミット 「実際そうだろう。戦争ってのは男の仕事だ。アンタが羨ましいよ。」

ダンテ 「止めとけ、お前さんが二挺拳銃ってのは、似合わない。」

シュミット 「茶化すな。」

ダンテ 「悪い。気持ちは。分からんでもない。でもそこまで思うもんか?」

シュミット 「思うさ。小さな女の子が胴体ほどある大砲を抱えて飛ぶ。」

シュミット 「ネウロイとロクに戦えない戦車師団のためにだ。」

ダンテ 「妬ましい、ってわけじゃなさそうだな。昔話か。」

シュミット 「ああ。頼もしかったよ。」

ダンテ 「良いことだ。」

シュミット 「でも、その女の子が怪我をして包帯だらけで帰ってきた、そして泣いたんだ。」

シュミット 「どうして戦うの、だって。それを言わせるのは誰だ? 俺たちだ。」

シュミット 「クソ以外に思い浮かばんさ。クソッタレ。」

326 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2013/01/21(月) 01:17:17.16 ID:VAfbUv/Z0
シュミットの話す“女の子”が何者か、存外近くの人間だろうな。
そう思いながらダンテはタバコの煙を吸わないように息をして
話を聞いていた。肺をヤニ漬けにする自傷行為の意味はダンテに
分からなかった。酒も同じく肝臓を痛める行為ではないか、いや。
あれは別物だ。


ダンテ 「それで? その女の子はどうなったんだ。」

シュミット 「ああ、その泣いてる女の子に、俺はこう言ったんだ。」

シュミット 「俺はお前の……」

「警報! ネウロイ!」

いいかけた言葉を、けたたましい声が遮った。シュミットはくわえていた
タバコを取り落とし、ダンテは声のする方を見て口笛を吹いた。彼らは
いつも絶妙なタイミングで奇襲をかけてくる。砂の坂を駆け上がる。遠くに
毒々しい赤色の光が見えた。何にせよ、時間はもう無い。


ダンテ 「おいおい、ここは味方の陣地の」

シュミット 「ど真ん中だ! クソッ!」

ダンテ 「坊やはどうしてる……」


ダンテはネウロイから視線を外し、ネロ達を見る。明らかに怯えきった
シャーロットを庇うように警報の声に耳を傾けている。どんな時でも
余裕の態度――とまではいかないが、ネロは大丈夫そうだ。俺が同じ年の
ころよりもしっかりしている。ダンテは思った。


ポルシェ 「何をしてるの! ミハイル! 一般兵の撤退を指揮! ティーガーの回収も!」


シュミット 「あれは……」

ダンテ 「ああ、やっぱり。あれが“女の子”、ね。」


切羽詰まった声を張り上げ指示を飛ばす女性。彼女に
シュミットは駆け寄った。呼んだだけでも、彼はすっ飛んで
行ったに違いないが、何よりも魔法力のほとんど尽きた“あがり”
の身でありながら、重たい二挺のMGを抱えていることも大きかった。
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/26(土) 22:28:35.25 ID:0rNWIZA5o
応援してますよっと
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/29(火) 23:26:28.43 ID:qDplNs8/o
おうあくしろよ
329 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2013/01/30(水) 01:00:40.66 ID:sb38sre00
DmCのマンガ、日本じゃ発売しないのかな。あと、DMC3の三巻は(ry


シュミット 「フレデリカ! 一体何を……」

ポルシェ 「こうでもしなきゃ、時間稼ぎにもならないわ。」

シュミット 「でも、お前はもう上がりで……」

ポルシェ 「誰かがやらなきゃいけない仕事なの。それがたまたま私ってだけ。」

ダンテ 「好きにさせりゃいいんじゃねェの? 」

シュミット 「部外者が何を言って……」

ポルシェ 「ミハイルはティーガーに。シャーロットもね!」


それだけを言ってポルシェは二挺のMGを振り回し、少しずつ近付く黒い
金属へ銃撃を浴びせかける。結果としてポルシェの自殺行為を手伝ったような
ダンテは、シュミットの目での侮蔑を甘んじて受け入れた。悪魔狩りの時だって
必要な時は市民を巻き込んだりもした。その時に向けられる、怒りと恐怖の
眼に似ているなと思った。しょっちゅう見るが、慣れることはない。


ダンテ 「あのお嬢さんは仕事をやってるだけだ。俺も仕事をやるさ。」

シュミット 「仕事。俺の魔女を焚き付けることか。」

ダンテ 「そうでもしなきゃ、あっちのお嬢さんは動いてくれないと思ってな。」

シュミット 「なんだって?」

ダンテ 「俺はこういうの、好きじゃないんだけどね。それじゃ。」

シュミット 「……どこへ行くんだ?」

ダンテ 「何度も言わせるな。」


遠くで電動ノコギリのような、ブーッと1続きの音が聞こえる。
ダンテは、その音のする方向へ飛び込んでいった。
330 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2013/01/30(水) 01:24:08.20 ID:sb38sre00
撃つ、撃つ、撃つ。避ける、心もとないシールドで防ぐ。転がる。
撃つ。撃つ。数秒で弾が切れる。慣れた手つきでリロード。10秒足らずの早業。
再び撃つ、撃つ、撃つ。銃身が赤く焼ける。それでも撃つ、撃つ。


ポルシェ 「通さない……通さないんだから!」

ポルシェ 「くっ!」


焼けて変形したMGの1つを捨てる。もう1つも銃身は真っ赤だった。
それも捨てて、ワルサーを引き抜いて撃つ。斬新なデザインのそれも、
ネウロイの進行を防ぐことは出来ない。それでも、撃ち続けた。
子供を守る、雌豹やその手合いのようなしなやかな美しさ。
偶然命中した9mmが一機のネウロイのコアを砕いた。それに喜ぶ間も、
シールドを張る余裕も無く、別のネウロイがビームを放った。


ポルシェ 「しまっ……!」

ダンテ 「Royal !」

ポルシェ 「なっ!?」


赤いコートを翻してダンテがその射線に飛び込む。腕を組み、イルミネーションを
見学しにきたかのような、物見遊山の雰囲気。それが赤い光に包まれる。
ポルシェもその光の熱に、衝撃に身をすくませた。それでも、高熱が彼女を焼く
ことも、衝撃で全身を砕かれることもなかった。


ダンテ 「大したガッツだ。それは認める。」

ポルシェ 「……何で? 何で、あの攻撃で……その変な格好は? いつの間に!?」

ダンテ 「質問は1つづつ。まずはこれだ。凄いだろ?」

ダンテ 「無敵の鎧さ。名前はドレッドノート。お似合いだな。」


ダンテは自身の魔力を周囲に放射することが出来る。それを
持ち前の精密さで操り、“神の”攻撃にさえ耐えうる強度を誇る。


ポルシェ 「それなら、あのネウロイを……」

ダンテ 「無理だ。すんげー疲れる。気楽に見積もって3分。」


無敵の鎧にも欠点はある。ダンテは鎧を生み出す間、膨大な量の魔力を
放出、髪の毛一本をも操る中で、それを行い戦えとは酷だった。
331 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2013/01/30(水) 01:47:14.69 ID:sb38sre00
ダンテが戦う向こう、オレはシャーロットの側でそれを見守っていた。
ティーガーに乗り込んだシャーロットは震えていて、とてもではないが
動けるような状況では無かった。何度か励ましてもみたが、徒労だった。

シャーロット 「凄い……フレデリカも、あの人も。」

ネロ 「……そうだな。」

シャーロット 「私には、やっぱりあんなこと……」

シュミット 「同じだ。」

ネロ 「同じ、だって?」

シュミット 「アイツも、シャーロットの年のとき、怖さで震える女の子だった。」

シュミット 「そんなアイツに、オレは何も言えなかった。ただ一言だけしか言えなかった。」

ネロ 「一言?」

シュミット 「お前は俺の魔女だってしか。」


シャーロットの顔がゆで上がったように赤くなる。かくいうオレも
人のことは言えないかもしれない。一度でいいから、オレもキリエに……


シュミット 「アイツが戦う理由はそれなんだ。戦えない俺の為に、アイツはどこまでも……」

シャーロット 「大尉! 大尉、あなたは、何も分かってない!」


叫んだシャーロットの声がオレを現実に引き戻した。あのシャーロットが
自分の意見を持ち、自分よりもずっと大きな男に怒っている。


シャーロット 「さっきはフレデリカ、あんなこと言ったけど、変わりなんていないし、たまたまなんか無い!」

シャーロット 「それだけで、戦ってない! 大尉は何も分かっていない!」

ネロ 「シャーロット、魂は何ていってる。」

シャーロット 「魂?」

ネロ 「ああ。もう一人の自分にだ。」

シャーロット 「……」

シャーロット 「……生きなきゃ。みんなで生きなきゃ、意味が無いじゃない!」


獣の咆哮を思わせるエンジンの駆動音。鋼鉄の巨人が、初めて生命の息吹きを
吹き込まれ、雄々しく立ち上がる。シャーロット、そして同乗するシュミットの
体がオレのずっと上にある。


シャーロット 「私、フレデリカを助けたい。シュミットは!」

シュミット 「当然だ! 俺の魔女だ、って言ったろう!」

ネロ 「酷い奴だな。」

シュミット 「否定はせんさ……88mm、装填した!」


俺の身長よりも大きな放心が動く。狙うのはポルシェたちに最も
近いネウロイに向けられる。

シャーロット 「っ、撃てェ!」


虎の咆哮を上げて、魔法徹甲はネウロイを貫き、その向こうのネウロイさえ装甲をへしゃげさせた。
332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/30(水) 10:35:32.55 ID:z9DYBDX8o
3巻は犠牲になったのだ……ネロの生誕を隠すための犠牲の犠牲にな……
333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/31(木) 03:27:31.81 ID:o74GZqXEo
楽しませてもらってる。嬉しい。乙。
334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/31(木) 03:59:39.22 ID:YSysYSC6o
乙t
335 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2013/02/02(土) 00:34:02.68 ID:4+T3+OaQ0
ネロ 「すげ……一撃で沈めやがった……」

シャーロット 「緊急で付近の部隊に伝達! ネウロイの攻撃を受けつつあり!」


シャーロットがさっきのおどおどした様子からは考えられない声を張り上げる。
自分に出来ることを、やるべきことを見つけた戦士の声だった。オレの背筋も
声に合わせて伸びるような、そんな心地がした。懸命に戦う女の子を見て、オレも
何もしないわけにはいかない。


シャーロット 「我、シャーロット軍曹! これよりフレデリカ少佐の援護に回る!」

ネロ 「シャーロット、オレに手伝えることはあるか!」

シャーロット 「お、お願い、フレデリカを助けて!」

ネロ 「任せろ。オレの専門だ。」


鱗を思わせる右腕が淡い燐光を放つ。それに合わせて光が腕の形を作る。
その腕が砲撃を恐れることなく近付くネウロイの脚を掴む。柔らかな砂を
蹴ってオレは一気に跳躍、ネウロイの側へ近付く。


ネロ 「おおおお!」


レッドクイーンが使えない今、これまで通りの戦い方は出来ない。
しかし、同じ状況は何度もあった。恐れることは無い。ネウロイの脚を蹴って
もう一度跳躍。右腕に刀が姿を表す。それを思い切り降り下ろす。
勝手は違っても、閻魔刀の切れ味はオレのムラっ気を気にも留めずに
ネウロイの脚をバカみたいに大きな胴体から切り離した
336 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2013/02/02(土) 00:48:24.36 ID:4+T3+OaQ0
ネロ 「時間稼ぎにしては上出来、かな。ポルシェに、ダンテ。大丈夫か!」

ポルシェ 「ええ、何とか……」

ダンテ 「久々に息が上がったな。ずっと受けるってのもなかなかキツイな。」

ネロ 「ロートル、じゃねェの?」

ダンテ 「言ってくれるぜ。」

ネロ 「んじゃ、逃げるぞ。」

ポルシェ 「ダメよ、まだ私は……」

ダンテ 「またさっきみたいのになるのはゴメンだぜ。」


突き放すようなダンテの口調。言い過ぎとも思ったが、
心の何処かで、もう一人の冷静なオレがダンテを肯定していた。
ポルシェがダンテに不満そうな眼を向ける。でも、さすがに
言い過ぎだ。そう口に出そうとしていたのだが……


ネロ「確かに、その通りだ。むしろ、荷物になるだろうな。」

ポルシェ 「あなたまで……」

ネロ 「……ってのが建前だ。オレは怖いの。アンタが酷い目に遭って、」

ダンテ 「あの兄さんにまだ剣の修理を頼むことが、か?」

ネロ 「その通りでございます。」

ポルシェ 「……」

ダンテ 「分かってもらえたみたいだぜ、坊や。」

ネロ 「言い方が悪かったなら、謝る。ごめん。」

ポルシェ 「……分かったわ。ティーガーの援護に回ればいいのね。」


憮然とした口調ではあるが、しっかりとした足取りでポルシェは
ティーガーの元へ駆け寄った。どうも、“荷物”なんて言葉を呼吸する
様に使えた自分が自分じゃない気がして、面白くなかった。
337 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2013/02/02(土) 01:04:12.33 ID:4+T3+OaQ0
ティーガーの側でポルシェとシュミットが話をしている。オレも
ダンテも、気にしてはいなかった。人の恋路はなんとやら、だ。


ダンテ 「どうする、坊や。なかなか楽しい状況だな。」

ネロ 「そうだな、オッサン。どっちが多く倒せるか勝負でも?」

ダンテ 「悪かない。悪かないがよ……」


ダンテはゆっくりと周囲を見回した。気が付けば、三方から囲まれている。
どこにでも見える黒光りする無機質の塊が歩みを進めている。ニキビを
押し潰すみたいな力押しだ。正直に言って、小細工なんかよりずっと面倒だ。


ダンテ 「アレならあっという間なんだがな。」

ネロ 「……ああ。でも、下手すりゃ巻き込んでしまうだろ。」

ダンテ 「チマチマ潰すか?」

ネロ 「それしかねェっての!」


お互いに顔を見合せ、左右に散って広がるネウロイにオレ達は飛び込んだ。
ダンテが得意の突きで一匹を吹き飛ばして数体を巻き込んで潰れた。オレも
右腕でネウロイの脚を掴んで振り回し、出来るだけ多くの金属を巻き添えに
してぶん投げる。シャーロットも88mmを撃ちまくり、ネウロイを寄せ付けまいとした。


ネロ 「……数が多すぎるぜ。こりゃ。」


いくらぶん投げようと、叩き切ろうと、ビール瓶並の金属を
食らっても、ネウロイの数はまだまだ減らない。
338 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2013/02/04(月) 23:37:14.10 ID:RNwIowWS0
ダンテ 「相変わらず、数だけは多いでやんの。」

ネロ 「いいよな、お前は慣れた得物を使えて! クソッタレ!」

ダンテ 「しこたまビーム食らった奴に言うセリフじゃねェよな?」


攻撃を意にも介さず迫るネウロイを蹴散らしながら、ダンテは毒づいていた。
コアという弱点があるだけ救いはあるが、それがランダムで、硬いとなれば
歴戦の戦士であろうと手を焼くことになる。無論、それでも重装ウィッチに劣らぬ
戦いぶりであることには変わりが無かったが。


シュミット 「さすがにこの数では……」

シャーロット 「あ、諦めちゃ……でも……」


怯むシャーロット達に、ダンテもネロも声をかけなかった。
それが彼らの優しさであり、突き放す冷たさでもあった。


ダンテ 「坊や、励ましはしなくていいのか?」

ネロ 「頑張ってる奴に、まだ頑張れってのは変だろう。逃げてもらってもいいくらいだよ。」

ダンテ 「だと思った。」


『お困りかね、お嬢さん!』


ティーガーの無線から、しわがれた声が響く。


シュミット 「アンタは!?」

『お嬢さんのファン1号だ! サインを貰いに行くから、もう少し待ってくれ!』

シャーロット 「……ファン?」

『ああとも。リベリオンは1兵士たりとも、見捨てはせんのだ!』
339 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/05(火) 00:16:47.63 ID:MEpDSFQoo
ケイズリポートの二巻も出てるからもうちょっと続いてほしいものだが……
340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/10(日) 19:35:13.87 ID:9Sb7VIvyo
まだかね
341 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2013/02/11(月) 19:05:40.44 ID:pMnsZjPc0
今さらであるが時系列が滅茶苦茶だったのが不安で顔出せず。もっとメンタル強くないとね。


シャーロット 「リベリオン……もしかしてさっきの」

シュミット 「そっちに気を取られるな、来るぞ!」



シャーロットが無線からの声に驚く。心当たりの男の顔を思い出そうと
思考が戦闘から離れる。そのわずかな時間が処理しきれなかったネウロイに
攻撃の時間を与えた。いくつものビームがティーガーを襲う。

シュミット 「……マズイ。シャーロット、早くシールドを!」

シャーロット 「……っ、やってるけど……」

ネロ 「あのままじゃやられるぞ!」

ダンテ 「いいや、お前には聞こえないのか? 」

ネロ 「何だって!? 勿体振るな!」

ダンテ 「短気だな。マズイ缶詰め食ってるからか? 増えてるだろうよ、エンジンの音が。」


言うが早いか、ティーガーを執拗に狙うネウロイの脚が爆発して崩れ落ちた。
砂煙を上げて沈むネウロイを立て続けの砲撃が別の脚を、胴を砕いていく。
その向こうに見える、体に不釣り合いなサイズの武器を抱えた少女たち。


マイルズ 「ブリタニア王国陸軍の戦車中隊です。お待たせしました!」

ネロ 「援軍か! でも、命令なんかは」

マイルズ 「アドリブよ。」

ネロ 「独断ってことか?」

マイルズ 「そんなところね。今回ばかりはモンティの叔父様も文句は」

ダンテ 「長くなりそうか? 早く助けてやれって。」

マイルズ 「そ、そうね。全機、円陣防御。ティーガーの援護を最優先!」

ネロ 「これで、俺たちも心置きなく暴れられそうだな。」

シュミット 「とっくに暴れておるだろう……」
342 : ◆rdeGK0b5Ew [saga]:2013/02/11(月) 21:57:08.56 ID:pMnsZjPc0
ダンテ 「っと、そういうわけにもいかんようだ。」

ネロ 「何だって?」

ダンテ 「あっちを見ろ。」

ネロ 「あっち?」

ダンテ 「ほら、あこだ。」

ネロ 「どこを指してんだ! 語彙に富んでるのは人をおちょくるときだけか!?」

ダンテ 「……ハハッ。」

ネロ 「笑い事じゃ……」

シュミット 「11の方向だ! 確かに危険だ。飛行型のネウロイも来たようだからな!」

ダンテ 「あんなに遠くちゃ、俺も坊やも火力不足だな……」



不毛な罵り合いの寸前で危険の接近を全員が察知する。
どちらも規格外の得物を持っているとはいえ、どちらも
所詮は拳銃だった。遥か遠くの上空の敵を撃つには向かない。
マイルズやシャーロットの持つ武器ならばとも思ったが、
彼女らの武器も、およそ小型の、高速で飛ぶ金属を倒すものではない。


ネロ 「ダンテ! この前使った箱はどうした!?」

ダンテ 「置いてきた」

ネロ 「置いてきただと!?」

ダンテ 「同じもんばっかだとルーチンワークだろう。」

ネロ 「ったく、お前ってやつは……やるだけやってやるさ! クソッ!」


空からの攻撃は、いかに重装甲の陸戦ウィッチだからといって長い間
耐えきれるものではない。このままではなぶり殺しだ、とネロは自棄になって
ブルーローズを構える。空を飛ぶ敵は最近も相手にした。


ネロ 「たかが、飛距離が何百か伸びただけだ……」


豆粒ほどの大きさにしか見えない飛行体に狙いを定める。引き金に僅かに力を加えた。
撃鉄が銃弾を叩くよりも早く、豆粒から光が散って砕けた。
343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/14(木) 10:47:55.92 ID:4uGZR4D9o
しっかり書いてくれ。楽しみに待つ。乙。
344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/15(金) 18:49:57.69 ID:6MQOTNE2o
345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/16(土) 13:06:25.42 ID:aLwM1YAso
乙乙
346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/21(木) 08:52:30.89 ID:WFEC6Q7SO
そういえばレディって巫女の血筋だし子の世界だとウィッチになれる可能性もあるな

年がわからんからあれだけど
347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/21(木) 11:51:20.43 ID:iTJyOVUSO
恐らくダンテより少し下程度だから、この時点だと三十路前後じゃないか
348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/21(木) 17:36:07.90 ID:WFEC6Q7SO
完璧あがりが過ぎてるなー
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/28(木) 10:31:11.39 ID:UQOPj69IO
まだー?
350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/01(金) 11:57:13.12 ID:O7ZU6D2R0
ヘイ!ヘイ! 待ってるぜィ?
351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/09(土) 00:58:54.94 ID:UGYSSmIeo
オラオラ! お待ってるぜ!
352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/12(火) 20:17:19.87 ID:87RJAQcSO
もう1は来ないのかなあ
二次創作のダンテって発情期のサルみたいな頭の悪さで書かれることが多いから
ここのダンテはかなり好みだったんだが
353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/03/16(土) 01:12:52.94 ID:qpiCY/J7o
はよ!
354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/19(火) 22:18:12.15 ID:VEsrIBHe0
待ってるよ!
355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/27(水) 22:32:56.06 ID:lyiATPi90
ここまでクオリティの高いDMCクロスは禁書以来なかなか見てないから
>>1にはすっごい期待してる、頑張ってほしい
356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/03/29(金) 00:28:08.74 ID:ZE94BH2go
>>1まだー?
飽きちゃった?
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/29(金) 09:59:00.02 ID:MTZWkDdJo
ペルソナ4クロスを完結させただけでも中々骨の折れる事だったろうに
358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/04/06(土) 21:53:25.02 ID:lOUVZuMwO
はよ
359 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/04/08(月) 23:09:50.80 ID:Up/ovDsi0
飽きちゃったのか・・・ それでも待つよ!
360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/04/11(木) 11:55:34.56 ID:Vrd/lCWYO
まだー?
361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/04/13(土) 02:25:31.59 ID:rX7IbMtmo
はよ!
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