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愛「あたしという存在……」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2012/09/25(火) 13:31:48.72 ID:YjUKYj4K0


――コンコン。


石川
「入ってちょうだい」



「失礼します。この度プロデューサーになりましたPです」


石川
「待っていたわ。正直まなみを解雇してから首が回らなかったのよ」



「えっと……。とにかく頑張らせていただきます!!」


石川
「採用してから言うのもなんだけど、使えなかったから辞めさせるから」



「肝に銘じておきます」


石川
「それで? だれを担当するか決めたの?」


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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
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渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714052788/

二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714049241/

佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
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笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2012/09/25(火) 13:32:30.98 ID:YjUKYj4K0



「はい! 愛さんでお願いします!」


石川
「そう。できたら二人まとめて面倒を見てもらいたいけど、それは酷というものかしら?」



「そうですね。私もできるなら女性をプロデュースしたいです」


石川
「あら? 私、涼が男だなんて言ったかしら?」



「上手く隠しているようですが、腰周りの骨格を見れば分かりますよ」


石川
「困ったわ。せっかく女装になれてもらったのに」



「成長期になれば声も低くなり、身体も大きくなります。もしこのままの方針で“女性”として売り出す
のでしたら、たとえブレイクしたとしても活動期間は限られてくるでしょう」
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2012/09/25(火) 13:33:35.28 ID:YjUKYj4K0



石川
「確かに説得力があるわね。しょうがない。このことは涼と話し合って解決することにするわ」



「失礼な返答をお許し下さい」


石川
「ふふっ。良いのよ。どうやらあなたは“当たり”みたいだもの」



「期待に答えられるように頑張ります」


石川
「それじゃあ、さっそくだけど玲子のところで仕事を教えてもらいなさい」



「はい! 失礼しました!」


――
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2012/09/25(火) 13:34:44.57 ID:YjUKYj4K0



(あ〜、怖かった。なんとか初日で解雇通知を出されるのだけは回避したな)



(貰ったのが全体写真で助かった。アレがなければインパクトすら与えられなかっただろうし)



(そういう意味では運が良かったのかも?)



(それにしても写真に名前張るだけとか適当すぎるぜ、あの社長)



「というか玲子さんってダレだ? 社長以外にダレもいないぞ、この事務所」



「出て行った手前、戻るのもなぁ……」



「仕方がない。書置きだけしてあいさつ回りに行くか。アイドル連れてないけど」



「愛さんが今学校だから、四時前に帰ってくれば大丈夫か?」



――
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2012/09/25(火) 13:35:48.49 ID:YjUKYj4K0


石川
「あ、そういえば玲子は今いないじゃない」


石川
「失敗した……。これじゃ、威厳もあったものじゃないわ」


石川
「玲子が来るまで私が指導しないと。まさか帰ってないでしょうね。最近の若者はなにかんがえてる
のか分からないって言うし」


石川
「いない……。まさか本当に帰った!?」


石川
「あら、なにかしらこの紙?」


――あいさつ周りに行ってきます。帰るのは四時頃になると思います。


石川
「  」ワナワナ
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2012/09/25(火) 13:36:46.58 ID:YjUKYj4K0


石川
「あいさつ周りなんて一人で出来るワケないじゃない!」


石川
「そんなことも分からないくらいバカなの!?」


石川 
「それとも仕事なめてるのかしらあのプロデューサーは!」


石川
「勝手に出て行ったからには責任なんて持たないわよ!」


石川
「少しでも苦情がきたら即刻クビにしてやる!」


――
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2012/09/25(火) 13:38:08.36 ID:YjUKYj4K0



「ただいま帰りました」



「だれですか?」



「さぁ? 僕も初めて会うし」



「あ、始めまして。今日から愛さんのプロデューサーになったPです。よろしくお願いします」



「え〜〜ッ!! あたしにプロデューサーですか!?」



「はい。これからよろしくお願いしますね」


石川
(普通に帰ってきた)


石川
(苦情もないし、もしかして? いや、あいさつ周りはウソで本当はサボっていた可能性も……)



「始めまして玲子さん。さっそくですが仕事を教えて下さい!」


絵理
「いや……。わたし、絵理なんですけど……」
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2012/09/25(火) 13:39:15.16 ID:YjUKYj4K0



「ははっ」


玲子
「玲子は私よ。張り切るのも良いけど、人の顔くらいは覚えたらどうかしら?」



「すいません。今覚えました」


絵理
「わたしってそんなに老けて見えるのかな……」ズーン



「大丈夫だよ! たぶんあのプロデューサーさんが特殊なだけだって!」


絵理
「制服着てるのに……」


玲子
「それで? あなたの仕事はアイドルのテンションを落とすのことなのかしら?」



「私なりの冗談です。スベリましたけど」


絵理
「冗談にしては性質が悪いんですけど……」



「ごめんなさい」


絵理
「というか本当に冗談だったんですか? 本気の目だったんですけど」
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2012/09/25(火) 13:40:09.99 ID:YjUKYj4K0



「イタズラは全力で行うように心がけていますから」


絵理
「うわ……」



「露骨に嫌な顔しないで下さい」


絵理
「そんなに顔に出てましたか?」



「それはもう思いっきり」


玲子
「初対面の人に変なことされたらそうなるわよ。分かりなさい」



「はい。少し無神経でした」


玲子
「分かればよろしい。それじゃあ仕事を教えるけど、基本的に放任主義だから分からないところは自分で聞きに来なさい」



「分かりました」


玲子
「まず初めに――」


――
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2012/09/25(火) 13:41:18.77 ID:YjUKYj4K0


玲子
「こんなものかしらね」



「意外とやることは多いんですね」


玲子
「そうなのよ。主に事務の作業が」



「これだけの量をいつも一人で……」


玲子
「やってるのは社長だけどね。私はプロデュース専門」



「そうなんですか?」


玲子
「えぇ。で、今日からあなたが社長の仕事も請け負うことになるわ」



「プロデューサーと事務、それとマネージャーを兼用するということですね」


玲子
「飲み込みが早くて助かるわ」


玲子
「仕事の方はこれでお終いだから、後の時間は自分の担当アイドルとコミュニケーションを取ること
にしたらどうかしら?」



「なるほど。そうさせて頂きます」


玲子
「あんまり変なこと言って話をややっこしくしないでよ」



「分かってますよ」


玲子
「なら良いわ。行っておいで」



「はい」


――
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2012/09/25(火) 13:43:57.89 ID:YjUKYj4K0
少し出かけてきます。
夕方頃に戻ると思います。
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2012/09/25(火) 16:41:03.08 ID:YjUKYj4K0



「愛さん」



「なんですか?」



「元気が良いですね。先ほども申し上げましたが、愛さんのプロデューサーになったPです」



「これから一緒に頑張っていきましょう」



「はい! こちらこそよろしくお願いします!」



「さっそくですが、愛さんのことを教えて下さい」



「あたしのことですか?」



「なにせプロフィール帳すら貰ってなかったので」



「でも、なにを話したら良いのか分かりません」



「なんでも良いですよ。好きなことですとか、自分の夢ですとか、そういったもので構いません」



「あります! お祭りが大好きです!」
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2012/09/25(火) 16:42:26.98 ID:YjUKYj4K0



「良いですね。御輿を担がれたりはするのですか?」



「やってみたいですけど、背が……」



「あぁ、なるほど。確かに担ぐには不利ですね」



「あぅ……」



「ん〜、お祭りの時はなにをされてるのですか?」



「金魚すくいです! 去年なんか水槽に魚がいなくなるまでやっていました!」



「おお! それはすごい。私なんて一匹も取ったことがありませんよ」



「簡単ですよ! 今度教えてあげます!」



「えぇ。ぜひお願いします。他にはなにかありませんか?」
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2012/09/25(火) 16:43:25.97 ID:YjUKYj4K0



「他ですか? う〜ん」



「できれば理想像を教えて下さい」



「理想像ですか?」



「はい。自分の中でハッキリとしたイメージがあるのでしたら、どのような仕事をするべきか自ずと分
かってくるので」



「……笑いませんか?」



「笑いませんよ。あなたの夢を叶えるのが私の仕事でもあります」



「……プロデューサーさんを信用して初めて言います」




「あたし、いつか――」



「いつかママを超えるアイドルになりたいんです!」




「大きな野望ですね。お母さんもアイドルを?」



「はい! あたしの自慢のママです!」



「尊敬する母を超える自分になりたい。立派な理想があるじゃないですか」



「えへへ。面と向かって言われると照れます」
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2012/09/25(火) 16:44:25.39 ID:YjUKYj4K0



「ちなみにお母さんのランクは分かりますか?」



「Sランクでした!」



「でした? ということは今は引退されてるんですか?」



「はい! 今はお家でテレビ見てます!」



「そ、そうですか。ですが、お母さんの影響力は大きかったのでしょうね」



「そうなんですよ! みなさん、あたしのことを二世タレントとしてしか見てくれなくて……」



「それが、……悔しいです」



「仕方がありませんよ。大物のサラブレッドとなれば、誰だって期待してしまうものです」



「サラブレッドなんかじゃありません! あたしは一人のアイドルなんです!」



「あなたはそうでも、他は違います。母親が大物なら子供もスゴイ力を秘めているハズだ」



「そんな間違った認識と期待を皆さんが持っているのが現状でしょう」
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2012/09/25(火) 16:47:04.17 ID:YjUKYj4K0



「それって、……あたしがどんなに頑張ってもママは超えられないってことですか?」



「これからも七光りアイドルって言われ続けられるんですか? そんなのイヤです!!!」



「それだけ壁は高いということです。それでも理想を掲げ続けますか?」



「はい! 壁なんて壊しちゃいます!」



「強い人ですね、愛さんは」



「えへへ。それじゃあ、次はプロデューサーさんの番です!」



「私ですか?」



「はい! あたしもプロデューサーさんのこと、なにも知りません!」



「困りましたね。立場が逆転してしまったようです」



「なんでも良いですよ! 好きなことですとか、自分の夢ですとか、そういったもので構いません!」



「私のマネをしないで下さい。恥ずかしいです」



「えへへ」
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2012/09/25(火) 16:49:49.36 ID:YjUKYj4K0



「まぁ、自分には趣味といえるものが何一つないので、好きなことは特にないです」



「え〜! なにもないんですか?」



「あるとしたら食事くらいでしょう。それ以外は思いつきません」



「プロデューサーさん、寂しすぎますよ……」



「同情されるようなことを言ったつもりはないのですが……」



「えっと、それじゃあプロデューサーさんの夢を教えて下さい!」



「夢。……ですか」



「はい! 夢も希望も持たないで生きてる人なんていません!」



「だから、プロデューサーさんの夢を教えて下さい!」



「夢……」



「そうですね。私の夢も愛さんと似たようなものです」



「えー!! プロデューサーさんのお母さんもアイドルだったんですか!?」
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2012/09/25(火) 16:50:29.29 ID:YjUKYj4K0



「違います。私の母は普通の専業主婦です」



「それじゃあ、お父さんの方がアイドルだったんですか?」



「少し近いですね。父はプロデューサーでした」



「そうなんですか。……あ、もしかして!」



「そうです。私の相手は父です」



「あたしたち、なんだか似ていますね!」



「確かに似た夢を持っていますが、愛さんとは決定的に違う部分があります」



「そうなんですか?」



「はい。私の場合、“超える”ではなく、“認めさせたい”ですから」



「へー! プロデューサーさんのお父さん、凄い方だったんですか?」



「気さくな人で、私にプロデュース技術を授けてくれたのも父です」



「当時は敏腕プロデューサーだったと私は自負しています」



「少し興味あります! どんな方を担当していたんですか?」



「ははっ。興味を持って頂いて光栄です」



「愛さんのお母さんと同じく、Sランクアイドルですよ。残念ながら引退されましたが」



「そんなに有名な方だったんですか?」



「えぇ。 “日高 舞” 。ご存知ないですか?」
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2012/09/25(火) 16:51:26.19 ID:YjUKYj4K0




「えーーーーーーーーーーーッ!!!!!」




「お、驚きすぎです。皆さんがビックリしてるじゃないですか」クラクラ



「驚きますよ!!!」



「ママのプロデューサーさんがプロデューサーさんのお父さんなんですよ!!!」



「愛さんのお母さんが……?」



「はい! 日高舞はあたしのママです!!」







「………へぇ」







「プロデューサーさん?」



「すいません。少し取り乱しました」



「信じてはいませんでしたが、偶然というものはあるのですね」



「はい! とっても驚きました!」
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2012/09/25(火) 16:52:14.69 ID:YjUKYj4K0



「そうみたいですね。おっと、そろそろ時間です」



「ホントだ。みんな帰り支度してる!」



「帰りますか」



「明日から営業やあいさつ回りなど、大変だとは思いますがお互いに頑張りましょう」



「はい! よろしくお願いします!」



「それでは周りも暗くなってきたのでご自宅の前まで送りますよ」



「プロデューサーさんに悪いので遠慮します!」



「私のことは気にしないで下さい。これも仕事です」



「そうですか? それじゃあお言葉に甘えます!」



「えぇ。すぐに下まで車を持ってきます」


――
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/25(火) 21:37:49.46 ID:0+sP8VNIO
期待待ち
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [[sage]]:2012/09/25(火) 21:42:22.29 ID:YjUKYj4K0



「ただいまー!!」



「おかえりなさい。今日も元気ね〜」



「ママ! ママ!」



「そんなに慌ててどうしたの?」



「大変なんだよー! 今日来た――」



「ご飯つくってるから後じゃダメ?」



「今聞いて!」



「困ったわね。話を聞いてあげたいけど、聞いていたらシチューが焦げちゃうわ」



「待ってる!」



「ふふっ。良い子ね。少し待っててちょうだい。すぐに出来るから」



「はーい♪」


――
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/09/25(火) 21:43:55.14 ID:YjUKYj4K0



「お待たせ。それで、話ってなにかしら?」



「それじゃ発表するよー! あたしにプロデューサーが出来ましたー!」



「おー! 愛が喜びそうなネタね。でも、それだけならなんであんなに慌ててたの?」



「聞いたらママも驚くよ!」



「ふふっ。それは楽しみね」



「なんと! ママのプロデューサーの息子さんがあたしのプロデューサーさんなんだよ!」



「えっと……、ちょっと待って。ってことは……」



「――マジ?」



「ホントの話だよー! あたしもビックリしたもん! 驚いた!?」



「今年一番のビッグニュースね。正直かなり驚いたわ」



「でしょー! 偶然ってあるんだね!」



「まさか息子までプロデューサーをやってるとは思わなかったわ……」



「しかも愛の担当……。映画にでもできそうな話ね」
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/09/25(火) 21:46:07.50 ID:YjUKYj4K0



「ねーねー! ママとプロデューサーさんのお父さんってどんな感じだったの?」



「そうね〜。とりあえず仲は良かったわよ?」



「そうなの? あたしママに振り回されてると思ってた!」



「ぐっ……。た、確かにそんなこともあったけど、ずっと私を支えてくれた大切な人よ」



「おー! もしかしてママ、その人のこと好きだったりして!」



「えぇ、大好きだったわ」



「もしトップアイドルを目指していなければ、あの人に結婚を迫ったかもしれないくらい」



「そんなに好きだったなのに、なんでその人と結婚しなかったの?」



「だってもう結婚してたんだもの。お子さんもいたみたいだし」



「へー! 昔のプロデューサーさんかぁ。どんな感じだったんだろ?」



「愛〜? もしかしてプロデューサーに恋してるの?」



「違うよー!」



「な〜んだ。つまんないの」



「なんで残念そうなの!? あたしアイドルだよ!」



「自分のプロデューサーに恋するはずないでしょ! スキャンダルになっちゃうよ!」



「それくらい別に良いじゃない。たかがゴシップ記事でしょ? 私は気にしないわ」



「あたしは気にするよ!」



「そんなことばかり考えてると疲れちゃうわよ? もっと気楽に構えなさい」



「逆にママは大雑把すぎるよ!」


――
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/09/25(火) 21:47:55.20 ID:YjUKYj4K0



「おはようございまーす!」



「おはようございます」


絵理
「おはよう、愛ちゃん」



「おはよう、愛ちゃん!」



「あれ? 涼さん、……なんだろう? いつもと違う?」



「ふふっ、愛ちゃん鋭いね。どこが変かな?」



「どこが変かは分かりませんけど、なんでか違和感を感じます!」



「分かる?」



「う〜ん……」



「え〜。気付いてよ」
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/09/25(火) 21:48:37.60 ID:YjUKYj4K0



「うっ。ごめんなさい!」



「あ、別に怒ってるワケじゃないからね!」



「よかったー! でも涼さん、どこが変わったんですか?」



「答えは、服装とメガネでした!」



「あ、確かに! でも“そんな地味な格好は止めなさい”って社長に怒られてましたよね!?」



「大丈夫だよ。社長と話し合ったから」



(社長と話し合うことってなんでしょう?)



(それに、いつもの涼さんならダレよりも早く衣装に着替えてたのに……。コレって……)



「涼さんアイドル辞めちゃうんですか!?」



「え?」



「そんなのイヤです! あたしたち、一緒にガンバってきた仲間じゃないですか!」



「愛ちゃん! 落ち着いて!」

27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/09/25(火) 21:49:39.52 ID:YjUKYj4K0


「イヤです! 涼さんの考えが変わるまで黙りません!」



「違うから! 僕もアイドル辞めるつもりはないよ?」



「えっ!? ほ、本当ですか!? やったー!!」



「僕も驚いたよ。なんで僕が辞めると思ったの?」



「だって社長と話し合った結果だって!」



「それは社長が僕を男性アイドルとして売り出すって話しをしてたからだよ」



「……? 涼さんは女の子ですよ?」



「僕は男の子だよ。今まで隠しててゴメンね?」



「アハハ、冗談が上手いですよ涼さん! こんな可愛い男の子がいるはずないじゃないですか!」



「ホントだよ。これ、僕の学生証」



「えーーーーーー!!! 本当に男の子じゃないですか!!」


絵理
「やっぱり驚くわよね。わたしだって驚いたもん」


28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/09/25(火) 21:50:24.03 ID:YjUKYj4K0

「もしかして絵理さんも!?」


絵理
「わたしは女の子だよ」



「ちなみに私も男性です」


石川
「聞いてないから言わなくて良いわよ」



「やっぱり信じられないです!」



「スタジオのトイレに入る時、いつも迷ってるのも!」



「メンズファッションの雑誌を読んでるのも!」



「可愛いって言われてビミョーな顔をしてるのも!」



「極端にボディタッチを避けるのも!」



「パットの量が多いのも!」



「ダンス終わりに胸の形が変わっていたことがあったのも!」



「全部男の子だったからですか!?」


石川
「むしろなぜ気が付かなかったのかしら?」
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/09/25(火) 21:51:06.76 ID:gOKagbKXo
愛ちゃんかわいい!
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/09/25(火) 21:51:14.03 ID:YjUKYj4K0



「同感です」



「意外とバレバレだったんですね」



「それでは愛さんの誤解が解けたところで営業に行ってきます」


石川
「気をつけて行ってらっしゃい」



「お気遣いありがとうございます。愛さんもレッスンに行きますよ?」



「あたしはまだ納得してないです!」



「それは帰ってからでお願いします。それよりも自分の仕事が先です」



「むー!」


――
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/09/25(火) 21:54:13.20 ID:kTN4FNYao
やべえ、愛ちゃん馬鹿可愛い
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/09/25(火) 21:57:46.59 ID:YjUKYj4K0
みなさん、コメントありがとうございます。
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/09/25(火) 22:03:15.18 ID:YjUKYj4K0
申し訳ないのですが、勝手ながら続きは明日にしようと思います。
おやすみなさい。
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/09/26(水) 13:47:49.04 ID:Hvg03ZBV0



「お願いします! どうか愛さんにチャンスを下さい!」


ディレクター
「そうは言ってもね、コッチとしいてはやっぱり人気のある方を使いたいんだよね」



「愛さんにも人を惹きつける力があります! なのでッ! どうかお願いします!」


ディレクター
「惹きつけるって言ったって日高舞の娘さんでしょ?」


ディレクター
「話題性はあるけど、それだけじゃ使いたくない。君との話は終わりだ」



「ま、待って下さい!」



(……ッ。やっぱりコネクションも知名度もない人間にはどこも取り合ってもらえない……)


(地道に売り込むしかないな)


――
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/09/26(水) 13:52:28.72 ID:Hvg03ZBV0



「お願いします。愛さんを使って下さい!」


別のディレクター
「……彼女のオーディションは一度わたしも見たが、あれじゃあなぁ……」



「まだ経験が浅いだけです! どうか勉強させて下さりませんか?」


ディレクター
「そう言われても……。もう少し実力を付けてから出直してくれないか?」



「磨けばだれよりも輝くんです! どうかお願いします!」


ディレクター
「また今度にしてくれ」



「あ……」


――
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/09/26(水) 13:53:22.36 ID:Hvg03ZBV0



「始めまして。私、876プロダクションでプロデューサーを務めているPと申します」


取締役
「これはどうもご丁寧にどうも。私がこの番組の責任者です」


取締役
「もしかして、先ほど会社の方に電話された方かな?」


「はい。お忙しいところ、申し訳ありません」


取締役
「いえ、お気になさらず。それで、私になにか用でも?」



「そちらの番組に私の担当するアイドルを出演させて下さい」


取締役
「見たところ誰もいないが?」



「今はレッスン中なので私だけです」


取締役
「そのようだね。できれば直接見たかったが、仕方がない」



「差し支えがなければ私が担当するアイドルの宣材とプロフィールです。どうぞ」


取締役
「ご丁寧にどうも」



「いかがでしょうか?」


取締役
「母親と一緒なら考えるが、娘さんだけでは……」



「彼女には母親と違った魅力があります。どうか使ってみるだけでも!」
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/09/26(水) 13:54:09.97 ID:Hvg03ZBV0


取締役
「そう言われても君ねぇ……」



「ムリは承知です! ですが勉強させて下さい! 愛さんにとって貴重な経験になります!」


取締役
「いい加減、聞き分けてくれ。コチラも忙しい」



「お願いします! 彼女にチャンスを下さい!!」


取締役
「土下座なんてされても困る。もう帰ってくれないか?」



「彼女のためにも、あなたの番組で勉強させて下さい!」


取締役
「見苦しいよ。顔を上げなさい」



「お願いします。彼女にチャンスを下さい!!!」


取締役
「……はぁ。分かった。分かったから顔を上げてくれ」



「そ、それじゃ!!」


取締役
「あぁ、来週から私たちの番組に日高愛さんを組み込もう」



「ホントですか! ありがとうございます!」


取締役
「ただし、チャンスは一度だけだ。そこで数字が取れなければ切り捨てる」


取締役
「それで構わないだろ?」



「はい! ありがとうございます!」


取締役
「分かったら帰ってくれないか? おかげで注目の的だ」



「ありがとうございました!!」


――
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/09/26(水) 13:55:06.91 ID:Hvg03ZBV0



「ただいま戻りました」


石川
「お帰り。初めての営業はどうだったかしら?」



「思い知りました。仕事一つ取るだけで一苦労です」


石川
「あら? 初めての収穫にしては浮かない顔ね」



「これからも使って頂くか分からないので」


石川
「普通の人は入ってすぐに仕事なんて取れないわよ」


石川
「さて、新人プロデューサーが取ってきた仕事はどんなものかしら?」



「トーク番組ですよ。こちらが企画者の名刺になります」


石川
「この名刺……、ホンモノよね?」



「はい。取り合ってくれるまで大変でしたよ」
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/09/26(水) 13:55:46.56 ID:Hvg03ZBV0


石川
「大手企業の代表取締役じゃない。どんな手を使ったのかしら?」



「なにもしてません。ひたすら正攻法です」


石川
「正攻法ねぇ……。新人が一日で取り付けられる仕事じゃないと思うけど?」



「……正確には一日ではありません」


石川
「どういうこと?」



「この事務所に採用が決まった日からアポイントメントを取り続けていたので」


石川
「なるほど。既に行動してたのね」



「はい。他にも何件か声をかけていたのですが、取り合ってくれませんでした」


石川
「まともじゃないわ。あなた」



「まともである必要があるのですか?」


石川
「別に。ちゃんと仕事してるなら構わないわ」


石川
「それじゃあ、この仕事は私が受理しておくから、あなたは愛のレッスンに顔を出しなさい」



「はい。失礼しました」


石川
「よく頑張るわね。行ってらっしゃい」


――
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/26(水) 16:18:06.63 ID:Hvg03ZBV0



「あ! プロデューサーさん!」



「お疲れさまです。レッスンは終わりましたか?」



「ちょうど終わったところです!」



「そうですか。少しタイミングが悪かったようですね」



「差し入れを持ってきましたが、食べますか?」



「食べます! お腹ペコペコですよー!」



「ではお好きなものを取って下さい。私は余ってのを貰います」



「ありがとうございます! どれにしようかなー♪ 梅干は除外ー♪」ガサゴソ



「食べながらで構いませんので私の話を聞いて下さい」



「ふぁい。ひょっと待ってくだはい。ンッグ、なんですか?」モグモグ
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/26(水) 16:18:49.83 ID:Hvg03ZBV0



「愛さんに仕事の依頼が来ました」



「えーー! ホントですかッ!?」



「汚いです。粒が飛びました」



「あ、ごめんなさい」



「話を戻しますが、かなりの大手企業がクライアントです」



「現段階では一度だけの出演ですが、気に入って頂けたら一気に知名度が上がるでしょう」



「愛さん、受けて頂けないでしょうか?」



「断る理由がありません! やりますよ!!」



「ありがとうございます。予定では来週になりますので、それまでに必要なことを覚えましょう」



「ところでプロデューサーさん、どんなお仕事なんですか?」



「あ、すいません。失念していました」



「愛さんが出演するのはトーク番組になります」



「多くの芸能人が来るので、飲み込まれないように気を付けて下さいね?」



「はい! 頑張ります!」



「それでは自宅の方まで送りますよ。今日はゆっくりと休んで下さい」



「プロデューサーさん! ありがとうございます!」



「どういたしまして」


――
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/26(水) 16:48:54.79 ID:VaZd1gmPo
なんでこんな見にくい書き方してんの?
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/26(水) 17:29:58.94 ID:Hvg03ZBV0
セリフの位置を統一したかったんです
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/26(水) 17:46:56.79 ID:aTGF3E1x0
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/26(水) 17:57:53.66 ID:NXaXaN8jo
別に見にくくはないだろ
名前の位置があれだが、そこまで気になる程ではない
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鳥取県) [sage]:2012/09/26(水) 18:35:31.64 ID:Nn4GfLOTo
なんかあっさりと涼の夢が叶っとる
夢子とのフラグも立たなさそうだ
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/27(木) 16:32:45.00 ID:3haSNMkd0



「おはよーございます!」



「おはようございます、愛さん」



「今日のお仕事、大丈夫そうですか?」



「はい! いっぱい練習してきました! カンペキですよ!」



「さすがですね。それでは今日の収録、絶対に成功させましょう」



「大げさですが、愛さんのターニングポイントになるかもしれない舞台です」



「飲まれないように頑張って下さい」



「プロデューサーさんが始めて取ってきたお仕事なんです! 気合入れて行きますよー!」



「ははっ。頼もしいですね」



「ですが、後の方にも仕事があるので余力は残しておいて下さいね」



「はい!」



「それでは行きましょう。まだ時間はありますが、早めに行動して損はないですから」



「皆さん、お先に失礼します!」


――
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/27(木) 16:33:35.65 ID:3haSNMkd0



「着きましたね」



「わわわッ! もう皆さん集まってますよ! どうしよう!」



「落ち着いて下さい。まだ開始までかなり余裕があります」



「それに、彼らは出演者ではありません」



「そ、そうなんですか!?」



「はい。まずは呼吸を整えて落ち着くことから始めましょう」



「分かりました!」スーハースーハー



「落ち着きましたか?」



「はい! ありがとうございます!」



「それではディレクターの方々に挨拶を済ませないといけませんので、すみませんが愛さんは先に楽屋入りして下さい」



「はい! 行ってきます!」


――わわわ! イタッ!



「……ハァ。ホントに大丈夫かよ」



「まぁ良いや。俺も行くか」


――
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/27(木) 16:34:22.97 ID:3haSNMkd0



「今日はお呼び頂いてありがとうございます」


取締役
「いえいえ、こちらこそ愛さんの実力を試させて頂きますね」ニヤッ



「きっと気に入って頂けると思います!」



「ディレクターさんも今日はよろしくお願いします!」


ディレクター
「えぇ、お互いに良い番組をつくりましょう」



「はい! それでは失礼します!」


――
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/27(木) 16:35:15.67 ID:3haSNMkd0



「プロデューサーさん! 楽屋回り終わりましたー!」



「皆さんとは打ち解けましたか?」



「はい! 皆さんとても優しくて、いっぱいお話できましたー!」



「それは良かったですね」



「ところで、どうして私のところに? もう時間はあまりないですよ?」



「あ、そうでした! すっかり忘れてました!」



「プロデューサーさん!」



「はい。なんですか?」



「あたし、今日の収録を頑張って成功させます!」



「だから、もし成功できたらご褒美をください!」



「ご褒美ですか?」



「はい!」



「それは構いませんが、あまりムチャな要求は呑めませんよ?」



「たぶん大丈夫だと思います。それじゃあ失礼します!」


――タッタッタ〜。



「あ、愛さん!? ……。行っちまった……」



「ッチ。せめてなにが欲しいのか教えてから行けよ。気になるだろうが」



「……また後で聞くか」


――
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/27(木) 16:35:59.26 ID:3haSNMkd0


タレント
「やっぱり、愛ちゃんのお母さんってスゴイ方だったんですね」


芸人
「あんな規格外な母親がいんのに、よくアイドル目指そうと思たな〜」


女優
「それより〜、舞さんって〜、今なにしてんの〜?」


司会者
「あ、それはボクも気になりますね!」


芸人
「気をつけた方が良いで愛ちゃん。コイツ熟女好きだから」


司会者
「ちょっと〜!」



「え、えっと……」


――
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/27(木) 16:36:39.99 ID:3haSNMkd0



(ッチ。なんだよ、コレ……)



結果から言えば、成功なのだろう。
放送されたこの番組の視聴率は右肩上がりに昇り、過去最高を叩き出した。

だけど、自分ではコレを成功と認めたくはなかった。




(振られる話は全て“日高 舞”のことばかり)



(いや、話だけじゃない。スタジオにいる全員が過去の母親と比べてやがる)



(言葉の暴力どころじゃねぇ。集団リンチだ)



(気丈に振舞ってはいるが、やっぱり落ち込んでるな……)

53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/27(木) 16:37:13.41 ID:3haSNMkd0


(クソッ! あの野郎、最初っから娘をメッセンジャー代わりにするつもりだったのか!)



視聴者からしたら、日高舞が引退してからの生活は誰しも知りたいところ。
それを実の娘が話してくれるのだ。信憑性は高い。

つまり、俺らは……。
俺らはノーリスクで数字が取れる美味いエサだったというワケか……。



取締役
「さすが日高さんの娘です。お呼びして正解でしたよ」



「……ずいぶん強かですね。やられましたよ」


取締役
「おや、意外です。話が違うと喚かれると思ってました」



「この業界、騙される方がマヌケですから」


取締役
「よく分かってらっしゃる」


取締役
「それで、どうしますか? 私としては次回からも出演して欲しいと思っているのですが」



「……少し時間を頂けますか。このことは愛さんが決めることなので」


取締役
「そうですね。それが良いでしょう。返事は早めにお願いしますよ?」



「えぇ、分かっています」


――
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/27(木) 16:37:42.66 ID:3haSNMkd0



「プロデューサーさん。終わりました」



「えぇ、そのようですね」



「それでは次の現場へ行きましょうか。車を持ってきます」



「はい。……分かりました」


――
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/27(木) 16:38:37.03 ID:3haSNMkd0



「……ごめんなさい」



「え?」



「今日の収録、あれは私のミスです」



「その所為であなたを傷つけてしまいました」



「責任は私にあります」ギリッ



「そんなことありません。あたしの実力不足でもありますから」



「いいえ、あなたは良くやっていました」

56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/27(木) 16:39:05.18 ID:3haSNMkd0


「母親の栄光と比べられ、味方のいない空間で場の雰囲気を壊さず乗り切った」



「誰でもできることではありません」



「あなただけの強さです」



「違います。あたしは……」



「違いません。あなたは強い人です」



「知り合ってそれほど時間が経ってはいませんが、それでも私はあなたの努力を知っている」


「誰よりも自分の存在を認めてほしいことだって……私は知っています」



「そんな優しい言葉……、言わないでください」



「我慢……、できなくなります」



「我慢しなくて良いんです。あなたはまだ13歳の女の子ですよ?」



「辛かったなら、吐き出せば良い」



「ソレを受け止めるのもプロデューサーの役割です」





「ごめんなさい、プロデューサーさん。肩、……貸してください」





「えぇ。少しだけ待ってください。車を止めます」


――
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/27(木) 16:39:41.16 ID:3haSNMkd0



「お待たせしました。どうぞ」



「あり、がとう、……ございます」




――グズッ。ェッぐ。あ……、ァあああああああッ!!!!!!





「みんな! みんなあたしじゃなくてママのこと見てるんです!」



「どんなに頑張っても! いくら訴えかけても!」



「だれも聞いてくれなくて! あたしなんかいらないみたいで!」



「それが悔しくて! こんなの、分かってたハズなのに!!!」

58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/27(木) 16:40:24.38 ID:3haSNMkd0


「私も自分の不甲斐なさが悔しいです……」



「プロデューサーさん、ごめんなさい!!」



「ごめんなさい!! ごめんなさい!! ごめんなさい!!」



「……どうして謝るんです?」



「お仕事、ちゃんとやらなきゃダメなのに!」



「何度も帰りたい気持ちになって! あたし、笑えなくて!」



「こうなったのは全部プロデューサーさんの所為だって思えてきて!」



「だれも味方なんていないんだって思えてきて!」



「あたし、イヤな人間です!!」

59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/27(木) 16:41:15.04 ID:3haSNMkd0


「あたしの為に頑張ってくれたプロデューサーさんに、そんなこと考えてたんです!!!」



「あなたはなにも悪くない。悪いのは全て私です」



「あなたが私に怒りを覚えるのは正しいことなんですよ?」



「でも……! でも……!! そんなのワガママです!!!」



「そんなことしたら、プロデューサーさんまでいなくなっちゃいます!!」



「一人はイヤです!! 寂しいのはイヤです!!」



「いなくなりませんよ。ずっと、……側にいます」ナデナデ



「いつまでも、あなたの味方であり続けます」ナデナデ

60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/27(木) 16:41:43.11 ID:3haSNMkd0


「だから、あなたは一人じゃありません」ナデナデ



「私や涼さん。絵理さんや玲子さんや石川社長」ナデナデ



「それにあなたのお母さんも」ナデナデ



「みんな、あなたの味方です」ナデナデ



「一人じゃありません」ナデナデ



「プロデューサーさん……」



「もっと頼っても良いんです」



「その時は力になりますよ?」



「プ、ロ……、デューサー……、さん」



「……さん……」スースー



「泣き疲れて寝ちまいやがったか」



「さて、この後の仕事どうするかなぁ……」


――
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/27(木) 16:43:49.61 ID:3haSNMkd0
明日は来れないので、少し多めに投下しましたm(_ _)m
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/09/27(木) 17:04:08.24 ID:yUIsj5dxo
ほほう、これは中々…
続きも期待してる
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/27(木) 18:15:42.87 ID:EAVzbJnD0

中々に先が長そうだな
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/27(木) 19:04:59.82 ID:NOH2vukx0
(長編じゃ)アカンのか?
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/27(木) 23:48:02.44 ID:W76ivAFy0
アカンくない
飽きて消えられるよりも短くても完結して欲しい
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/29(土) 00:32:03.81 ID:EXia2Xvn0
ただいま戻りました。

少し更新して寝ます。
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/29(土) 00:32:48.86 ID:EXia2Xvn0



「んっ。プロ……、デューサーさん?」



「起きましたか?」



「はい。ここは……」



「車の中ですよ。覚えていませんか?」



「えっと、確かお仕事でプロデューサーさんの車の中に入って……」



「あぁ。あたし、泣き疲れて寝ちゃったんだ……」



「って、お仕事!! 今何時ですか!?」



「2時過ぎくらいですね」

68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/29(土) 00:33:22.89 ID:EXia2Xvn0


「だ、だ、だ、だ」



「だ?」



「大遅刻ですーーーーーーーーーーーッ!!!!!」



「――ッ!」ビリビリ



「なんで起こしてくれないんですかプロデューサーさん!!」



「間に合いません! 間に合いませんよーー!!」



「大丈夫ですから落ち着いて下さい」



「落ち着けません! スタジオ入りは1時からじゃないですか!!」



「今からでも謝って参加させてもらいましょうよ!」



「だから大丈夫ですって」



「愛さんが寝てる間に別の方を派遣させて頂きました」

69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/29(土) 00:34:17.05 ID:EXia2Xvn0


「え!? だ、だれなんですか!?」



「はい?」



「あたしの代わりに行ってくれた人ってだれなんですか!?」



「あぁ、そのことですか」



「石川社長に連絡したところ、涼さんが大丈夫なようなので涼さんに頼みました」



「うわーーーん!!! 涼さんごめんなさいーー!!!」



「せっかくのオフを潰してごめんなさいーーー!!!」

70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/29(土) 00:35:04.07 ID:EXia2Xvn0


(うるせぇ……)



「ところで愛さん、これから食事でもどうですか?」



「しょ、食事ですか!? でも、あたし涼さんに謝らないと……」



「彼は終わり次第そのまま帰宅するようなので、また後日に謝罪して下さい」



「それよりも、あれからなにも食べていないみたいなのでお腹が空いてるのでは?」



「あうっ! 思い出したらお腹が空きました」キュルル〜



「可愛い音ですね」クスクス



「聞かないでください〜〜〜!!」


――
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/29(土) 00:35:51.21 ID:EXia2Xvn0



「そういえば、なにをお願いされるつもりだったのですか?」



「――ンッグ。なんのことですか?」モグモグ



「ご褒美の件です」



「わざわざ私のところに来るくらいなのですから、なにか重要なことだと思いまして」



「あ、はい! あたしのこと呼び捨てにしてください!」



「は?」

72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/29(土) 00:36:53.08 ID:EXia2Xvn0


「いつも丁寧な言葉使いでよそよそしいなーって思ってたんです!」



「はぁ、そうですか」



「だから番組を成功させたご褒美にお願いするつもりでしたけど、それも叶いませんでした」



「まぁ、そんなことでしたら別に良いですよ?」



「え!? だってあたしできてなかったんですよ!?」



「私もアレが成功だったとは思いたくはありませんが、企業側は満足していたようです」



「利益だけを考えるならば成功と言えるのではないでしょうか?」



「そんなの納得できません!」



「しなくて良いです。あくまで企業側から見た感想ですから」



「ただ、愛さんは本当に頑張ってくれたので、結果がどうなろうともお願いは聞くつもりでした」

73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/29(土) 00:37:31.59 ID:EXia2Xvn0


「そのお願いが“呼び捨てにすること”だったなんて思いもしませんでしたけど。……はぁ」



「プロデューサーさん、なんでため息ついてるんですか?」



「いえ、まさかこんなに欲のない人がいるのかと思いまして」



「なんかバカにしてます?」



「どうでしょう?」



「少なくとも愛さんが大物なのかアホなのか分からないことは理解しています」



「やっぱりバカにしてるじゃないですかー!」



「気にしないで下さい。それでは普段の話し方にしましょう」



「もう良いです!」



「そう拗ねるなよ。これでも褒めてるんだから」



「嬉しくありません。それがいつものプロデューサーさんなんですか?」



「知らね。特に気にしたこともないし」

74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/29(土) 00:38:06.38 ID:EXia2Xvn0


「なんだか不良みたいです」



「ほ〜。なら明日からリーゼントのカツラ被って事務所に行ってみるか」



「そんな時代錯誤な不良はいませんよ。プロデューサーさん、いくつですか?」



「なかなか言うね。今年で21歳になる社会人ですがなにか?」



「そうなんですか!? てっきり高校生くらいだと思ってました!」



「そんなに童顔なワケがないだろ〜?」グニュー



「あうーー!! フロヂューサーさん別人みたいですーー!!」



「よそよそしかったんだろ? たっぷりカマってやるよ」



「こんな変態さんだなんて知らなかったですーーーー!!」



「うわ〜、傷ついた〜。傷ついたからもう片方も引っ張る〜」グニュー



「やへてくらはい!」



「おー、すげぇや。お前の肌、モチみたいに伸びるな」

75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/29(土) 00:38:54.79 ID:EXia2Xvn0


「はじゅかひいでふーー! やへてくらはい!」



「あははは!」


――
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/29(土) 18:13:12.39 ID:EXia2Xvn0



「あー、おもしろかった」



「ひどいです! 辱めを受けました!」



「人聞きの悪いこと言うなよ。そっちが普段通りにして良いって言ったんだろ?」



「言ってませんよ! あたしは呼び捨てにしてくださいって言っただけです!」



「いや、考えてもみろよ」



「丁寧語でおまえのこと呼び捨てにしたらオカマみたいじゃね?」



「ちょっとやってみてください」



「そろそろ行きますよ、愛」



「なんか気持ち悪いです!」

77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/29(土) 18:14:29.48 ID:EXia2Xvn0


「だから言ったじゃん」



「でもさっきのはやりすぎです!」



「それはコミュニケーションということだから気にするな」



「気にしますよ! 注目されちゃったじゃないですか!」



「アイドルなんだから当然だろ?」



「そ、そうですか? えへへ」テレテレ



(俺が言うのもなんだが、……それで良いのか? ちょっと心配になってきたぞ)



「次からは優しくしてください!」



「はいはい」


――
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/29(土) 18:16:56.61 ID:EXia2Xvn0



「さて、仲良く遊ぶのもほどほどにするか」



「あたしは遊ばれた方なんですけど……」



「ここからは堅苦しい話だ」



「は、はい!」



「あの番組、これからも出演してほしいって言われたんだが……、どうする?」



「また、……ですか?」



「嫌なら断っても構わない。その時は一からやり直すだけだ」

79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/29(土) 18:17:33.03 ID:EXia2Xvn0


「いえ、やります! やらせてください!」



「良いのか? 辛い目に会ったばかりだぞ?」



「大丈夫です! あたしが有名になればみなさんの意識も変わってきますよ!」



「それに、やられた分をお返ししてません!」



「意外と好戦的なんだな」



「嘘つきは痛い目を見ないと分からないってママが言ってました!」



(次からはやりすぎないようにしよう)



「それじゃ、この話は受ける方向で良いんだな?」



「はい! 今度は負けません!」



「……やっぱり強いヤツだな、お前。普通ならシッポ巻いて逃げてると思うぜ?」



「あたし、シッポなんてないですよ?」



「……喩えだから」


――
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/29(土) 20:40:26.60 ID:DErcDbZI0
愛ちゃんはかわいいなあ!
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/29(土) 21:33:23.58 ID:EXia2Xvn0


あの番組をキッカケに吹っ切れた愛は様々なジャンルにチャレンジして成功を収め、知名度もランクも順調に上がりながらトップアイドルの道を突き進んでいる。


しかし、本人はその評価に喜ばしく思っていない。


日高舞の二世タレントという汚名が定着している所為なのか、Bランクになった辺りから先へなかなか進まない現状に、薄々ながら限界を感じている。


一人のタレントとして認めさせえるにはインパクトが必要なのだが、そのイメージを壊すアイディアが浮かばないまま時間だけが過ぎていった。





「……疲れた」



(玲子さんも仕事とか手伝ってくれよ。さっさと帰りやがって)



「Bランクでこの仕事量……」



「親父は、いつもこれ以上のことをしてた……のか?」ドサッ



(な、んだ? 身体が――)ギュルルル



(そういえば、ここ最近ろくに食べてなかったっけ)

82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/29(土) 21:39:33.87 ID:EXia2Xvn0


(マジで腹が減りすぎて動けないなんてことあるんだな)



(ちくしょう。周りの視線がうざったい)



(見世物じゃねぇっつーの)


――き、君! 大丈夫かい!?



(あ? なんだ、この爺さん?)


――まずは警察を呼ぶべきか。いや、先に救急車を呼んだ方が……。



(あ〜、説明する気力もねぇ)ギュルルル


――ん? もしかしてお腹が減ってるのか?



「   」コクコク


――良かった……。これもなにかの縁だ。ごちそうしてあげるよ。



(この爺さん、お人好しすぎる……。ほかのヤツらなんて明らかに俺のこと避けてたのに)


――立てるか?



(それとも食べ終わった後に高額な金を要求するつもりなのか?)



(……どっちでも良いや。食べた後に考えよう)


――
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/29(土) 21:41:25.74 ID:EXia2Xvn0



「こ、こ……ドコ?」


――私の店だ。よっと。すぐにつくるから、その席で待っててくれ。



(シンプルな空間だ。ここ、なんの店なんだろう?)


――お待たせ。まずは一品。



「……オ、ムレツ……」


――もしかしてアレルギー持ちか?



「………」フルフル



(久しぶりに見たな、オムレツなんて)



(母さん、いつもフワフワにできなくて失敗してたっけ)パクッ



(……懐かしいな。なんだかあの時に戻ったみたいに……懐かしい味だ)ッー


――な、泣くほどお腹が空いてたのか!?



(ははっ。意味が分かんねぇ。なんで俺は泣いてるんだよ……)ポロポロ



(ホント……、分かんねぇよ……)


――……なにがあったのかは聞かない。ほかにも持ってくるからゆっくり食べてくれ。



「……うまい……ッ。うまい……ッ」


――
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/29(土) 21:42:19.64 ID:EXia2Xvn0



「すいません。助けて頂いた上にご馳走まで……。だいぶ良くなりました」



「お代、払わせて……あれ? サイフどこやったっけ?」


――気にしないで良い。私が勝手にやったことだ。



「そういうワケいはいきません」


――いらない。どうせ無くなる店だ。無料にしておくよ。



「は?」


――経営が傾いて半年後には潰れることが決まったんだ。だからお代はいらない。



「……」


――って、私は君になにを言ってるんだろうな……。



(……潰れる店。……伸び悩むアイドル。……知名度)



(俺の考えが上手くいけば、チャンスになるかもしれない。この出会い、手放すには惜しいな)

85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/29(土) 21:43:17.05 ID:EXia2Xvn0

――まぁ、最後に君のような人間に会えて私は満足だ。お代は気にしないでくれ。



「お爺さん」


――なんだ? もう帰っても良いぞ?



「ビジネスの話をしませんか?」


――いきなりなにを言いだすんだ君は。



「申し遅れました。私、876プロでプロデューサーをしておりますPです」


――そのプロデューサーがなんの話しを? まさか私をスカウトするつもりなのか?



「まさか。商談ですよ」


――商談?



「はい。私はお金を払いたいと言い、あなたはいらないと言う」



「この矛盾をお互いが納得できる形で解決したいと思いました」


――聞くだけ聞こうか。



「ありがとうございます。それでは――」


――
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/29(土) 21:45:32.45 ID:EXia2Xvn0
今日の分はココまで。おやすみなさい。
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/29(土) 21:55:56.08 ID:DErcDbZI0
あ、これ前に見たことあるな。
もしかして前に書いてた?765プロの面子で
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/29(土) 22:00:24.61 ID:EXia2Xvn0
真美「新しく来た兄ちゃんが961んだけど」 ですか?

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1342333733/


コチラでしたら過去に私が書いていました。
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/29(土) 22:38:21.24 ID:jMAGW5ZZo
>>88
前も面白かったです!

とりあえず乙
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/29(土) 23:01:17.82 ID:EXia2Xvn0
まさか見て下さった方がいるなんて思っていなかったので驚きました!

>>89さん、コメントありがとうございました!
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/30(日) 00:56:24.44 ID:a8y2yWe0o
>>87-88見て納得
あの話の前日譚にあたるのか?

とりあえず、愛ちゃんが馬鹿可愛いのは理解できた
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/30(日) 11:01:18.53 ID:Q9w2wSGQ0

愛ちゃん可愛いな!
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/30(日) 15:02:34.71 ID:5OmXfool0



「お忙しい中、ありがとうございます」


善澤
「ハハッ。別に構わないよ。それで、ダレを取材すれば良いのかな?」



「私が担当している日高 愛です」


善澤
「なるほど。どうやら頼む必要がなくなったみたいだ」



「というと?」


善澤
「前々から彼女を取材してみたいとは思っていたんだが、なぜか事務所にダレもいなくてねぇ」


善澤
「電話も繋がらないし、諦めかけていたんだ」



「確かに最近まで石川社長は涼さんと行動していましたね」



「玲子さんも絵理さんだけをプロデュースして事務所にはいませんし」



「私も仕事の関係上、事務所に帰ることがなかったので」


善澤
「景気が良いようでなによりだね」



「そう言って頂けると幸いです」

94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/30(日) 15:03:17.00 ID:5OmXfool0

善澤
「それじゃあ、彼女が来るまで待たせてもらっても良いかな?」



「はい。一時間ほどで着くと思いますので、その間くつろいで下さい」


善澤
「一時間か……。待つには少し長いかな」



「そうですね。では、それまで私と一緒に時間を潰しましょう」


善澤
「そうさせてもらうよ」



「ありがとうございます。善澤さんはチェスをやられたことはありますか?」


善澤
「チェスか……。なんでそんなものが?」



「石川社長が持ってきたんですよ」



「顔を真っ赤にして持ってきたところを見ると、コテンパンにされたみたいですね」


善澤
「なんとなく相手が分かった気がする」


「それでは始めましょうか」


善澤
「意外と強いよ?」



「ははっ。それは楽しみです」


――
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/30(日) 15:06:30.47 ID:5OmXfool0



「チェック」ヵチャ。コト


善澤
「………」コト



「………ところで善澤さん」コト


善澤
「なにかな?」ヵチャ。コト



「あなたの腕を見込んで頼みたいことがあるんですが」コト


善澤
「どうぞ」コト



「あるレストランの復興に手を貸して頂けないでしょうか?」コト


善澤
「どういうことだい?」ヵチャッ。コト

96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/30(日) 15:08:02.31 ID:5OmXfool0


「愛さんに自身を付けてあげたいんですよ」ヵチャ。コト



「彼女は自分の人気が全て母親の影響によるものだと考えています」



「なので、経営不振に陥った店を立て直すことで自身の影響力を教えようと思いました」


善澤
「……あまり良い話ではないね。チェック」コト



「それでも賭けてみる価値はあります。……チェック」コト


善澤
「……」コト



「彼女には人を癒す魅力がある。何事にも負けない心がある」コト



「そんな人間がコンプレックスで潰されるのはあまりに惜しい」



「そして、彼女が成功するにはあなたの協力が必要なんです」


善澤
「………」



「ただいま帰りましたー!!」


善澤
「チェックメイト。……なかなか面白かったよ」コト

97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/30(日) 15:08:52.69 ID:5OmXfool0


「どうかよろしくお願いします」


善澤
「考えておくよ。その代わり――」


 


善澤
「次は本気でお手合わせ願いたいね」



「……やはり気づかれてましたか」


善澤
「なんとなくだけどね」


善澤
「さて……、愛ちゃんも来たし取材を始めさせてもらおうかな」



「みなさん、なんの話をしてたんですか?」



「……大人の話?」


――
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/30(日) 22:18:57.71 ID:5OmXfool0



「〜♪」



「上機嫌だな」



「はい! あの善澤さんって方、とっても良い人でした!」



「他の記者さんと違ってお母さんのこと聞かないですし!」



「なにより、みなさんの記事を書いて頂けるのが嬉しいです!」



「そうか、それは良かった」



「ところで、この後なにもないだろ? メシ食いに行こうぜ」



「良いですけど、そういう聞き方は女の子に嫌われますよ?」



「は? なんで?」



「なんていうか、選択肢を強要させられる質問は嫌がられるみたいです」



「へー。ってことはお前も?」



「あたしは少しもやっとしただけで、そこまでは」



「そっか。次から気をつけるよ」


――
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/09/30(日) 22:23:54.46 ID:5OmXfool0
眠たいので、今日はここまでにします。

>>91さん。

その通りです! この話は前作の過去編になります。
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/01(月) 07:39:40.09 ID:4yuz+M8U0

更新早くて嬉しい
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/01(月) 13:55:09.55 ID:ZqPkcP0V0



「わー!!! いつもより零が一つ多いです! どうしたんですかプロデューサーさん?」



「いつもならファミレスなのに!」



「そこまで驚かれると複雑な気分になるんだが、まぁ良い」



「とりあえず注文しようぜ」



「待ってください! まだです!」



「決まった?」



「まだですってば!」

102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/01(月) 14:12:59.65 ID:ZqPkcP0V0

―――
――




「決まりました!」



「えらく時間がかかったな」



「どれも美味しそうで迷いました!」



「そうだなみたいだな。それじゃあ頼むぞ?」



「あ、ポチっと押すのじゃないんですね」



「あぁ。ムダに本格的だよなぁ、ここ」チリリーン



「立て肘なんてマナーが悪いですよ、プロデューサーさん」



「客もいないんだし良いだろ?」



「ダメです! ちゃんとお行儀良くしなくちゃお店に怒られます!」

103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/01(月) 14:16:19.17 ID:ZqPkcP0V0


「え〜。めんどくせ〜」



「プロデューサーさん!!」



「はいはい。分かりましたよ」



「“はい”は一回です!」



「へっ、口うるさくなりやがって。お前は俺の親かよ」



「嫌だったんなら改善してくださいよ! もう!」


ウェイター
「お決まりでしょうか?」



「あ、はい! あたしはコールソ・ディ・ペーシュでお願いします!」



「なんだその呪文?」



「魚のコースだって書いてありますよ。翻訳が乗ってて助かります!」


ウェイター
「お連れの方はいかがなさいますか?」



「フレンチトーストとオムレツだけで良いです」


ウェイター
「かしこまりました」


――
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/01(月) 14:21:15.54 ID:ZqPkcP0V0



「う〜。あたしだけコースで頼んで恥ずかしいです。おサイフ大丈夫ですか?」



「遠慮するな。俺は別に腹が減ってなかっただけだし」



「ウソです! お腹が減ってないならご飯には誘いませんよ」



「いや、ホントに腹は減ってないんだ」



「もともと別の目的でココに来ただけだからな」



「別の目的ですか?」



「あぁ、お前にも関係する話だ」



「あたしに……。なんですか?」



「その前に聞きたいんだが、今の自分の評価についてどう思ってる?」
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/01(月) 14:22:10.25 ID:ZqPkcP0V0


「いきなりなんですかプロデューサーさん?」



「大切なことなんだ。教えてくれ」



「……受け入れてはいないです。お母さんの活躍で有名になったようなものですし」



「OK。十分だ」



「それじゃ、話を戻すぞ?」



「はい」



「実はこの店、半年後には潰れる予定なんだ」



「えッ!? こんなにキレイなお店なのにですか!?」



「その割りに客はぜんぜんいないだろ?」



「料理は不味くはないんだがな……。いろいろと落ち度があるんだよ」

106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/01(月) 14:30:34.92 ID:ZqPkcP0V0


「そこでだ。自分の影響力を測る意味でココの店を利用しようと思う」



「利用するって、なにする気なんですか?」



「お前の名前を使って復興させるんだよ」



「お母さんならまだしも、あたしの名前なんか使っても意味ないと思います」



「あ゛? やる前から弱音吐くんじゃねぇよ」ギロッ



「テメェの評価に疑問を持ってるから白黒つけさせようとしてんだろ?」



「ご、ごめんなさい!」



「別に怒ってねぇよ」



「ただ、また自分と母親を比べてることにムカついただけだ」



「やっぱり怒ってます……」



「俺の感情はこの際どうでもいい。聞きたいのはお前の答えだ」



「正直に言って、メリットはない。純粋にお前がホンモノか確かめることが目的だからな」



「それともお前は母親の影に隠れるだけの負け犬なのか?」
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/01(月) 14:34:17.45 ID:ZqPkcP0V0


「違います! あたしは! あたしは日高愛です!」



「アイドルとしてのあたしはママと関係ありません!!」



「……その意気込みなら大丈夫そうだな」



「記者や番組の話はできるだけ多く持ってくるから、アピールだけ頼む」



「難しいことは全部コッチがやるから大丈夫だとは思うけど、なんかあったら相談してくれ」



「はい!」

108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/01(月) 14:34:54.87 ID:ZqPkcP0V0


「それから、ボランティアで店内コンサートをしてもらうつもりだ」



「さすがに口コミだけじゃ限界があるかもしれないからな」



「そこら辺はオーナーと打ち合わせするつもりだから、何回も足を運ぶことになると思う」



「もしかしたら俺が来れない時もあるかもしれないが、その時は自分で打ち合わせできるか?」



「大丈夫です! よーし! 頑張るぞー!」



「サンキュ。言い忘れてたけど、この話は事務所でするなよ」



「なんでですか?」



「今回の件は俺の独断だからな。バレたら社長に怒鳴られる」



「ちゃんと断っておけば良かったじゃないですか」



「……あの社長が首を縦に振るとは思えなくてな」



「あー」


――
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/01(月) 14:36:01.38 ID:ZqPkcP0V0
時間がありましたら、また夜に来ます。
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/01(月) 17:41:56.16 ID:mPxciv4p0

俺の時間を好きに使ってくれ
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/02(火) 00:28:15.15 ID:zBzDdZsj0


二ヶ月に及ぶ取材やトーク番組でこの店を宣伝し続け、それなりに取り上げてもらった。


もっと上手く話しを繋げられなかったのか? と思うくらいチグハグなアピールだったが、善澤記者やオーナーの協力もあり、その効果は少しずつではあるが店の客席を埋め尽くす程度に客足を呼んでいる。


一応アンケートを使って店の評価を調べたところ、幸いなことに高評価な意見が多く寄せられた。
この分なら料金設定とサービスの見直しだけでリピーターができるだろう。


後はインパクトだけ。
いくら口コミで宣伝していたとはいえ、やはり本人が登場する以上の話題性はないだろう。

だから最後の仕上げとして、突然のライブを実行することにした。





「どこもかしこも席が空いてねぇじゃん。前に来た時が懐かしいぜ」



「わー! みなさん、あたしたちの話を聞いて来た方たちなんでしょうか?」



「だろうな。というか宣伝してたの全部お前だし」



「あ! あの人見たことあります! いつもライブに来てくれる方ですよ!」



「よく覚えてるな」

112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/02(火) 00:29:07.18 ID:zBzDdZsj0


「あたしのファンになってくれた方たちの顔はやっぱり覚えたいなって思いまして!」



「まだよく来る方たちしか分からないんですけどね」



「十分すごいけどな」



「そ、そうですか? えへへ、なんだか照れちゃいます!」



「ところでプロデューサーさん!」



「なんだ?」



「あたしたち普通にお食事してますけど、ステージどうするんですか?」



「あぁ、それね」



「もう少し経ったら明かりが消えるから、そしたらステージに上がってもらう」



「んで、立ち居地に着いたか確認ができしだいライトアップって流れだ。分かった?」



「はい!」

113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/02(火) 00:29:49.76 ID:zBzDdZsj0


「元気は良いが、歌の方は大丈夫なのか?」



「よく知らねぇけど、大切な歌なんだろ?」



「はい! だけど、まだ不安です……」



「ったく。どうしてそんなにネガティブなのかねぇ」



「だって、もしかしたらお店の雰囲気に合わないのかもしれないですし」



「そこまで考えなくても良いと思うけどな」



「今更そんなこと言わないでくださいよー!」



「はいはい。まぁ、頑張ってこい。骨は拾ってやる」



「失敗するのが前提みたいにしないでください!」



「だってなぁ……」



「こんだけ話し込んでるのにダレ一人として気付いてるヤツがいねぇんだもん」



「言わないでくださいよ! あたしも気になってるんですから!」

114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/02(火) 00:30:32.41 ID:zBzDdZsj0

――ざゎ……ざわ……ざゎ……ざわ……。



「あ、始まった」



「うぅ……。まだ心の準備が〜」



「なに緊張してんだよ。今までもこんなんあったろ?」



「確かにいっぱいありましたけど、だからって慣れませんよ!」



「ふーん。どうせ成功するんだからビビるだけ損だと思うけどな」



「なんでプロデューサーさんはそんなに自信があるんですか!?」



「後で教えてやるよ。とりあえず早く行け。観客が騒然としてやがる」



「ちゃんと教えてくださいよー!」



「まともに帰ってこられたらな〜」



「?」


――
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/02(火) 00:32:02.55 ID:zBzDdZsj0
続きはまた明日にさせていただきます。おやすみなさい
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/02(火) 01:49:51.99 ID:a41oO62xo
愛ちゃんがかわいいな

DSはレッスンで765勢出てこなくて面倒になったから放置したまんまだけど、せめてシナリオだけやっとこうかな
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/02(火) 10:42:30.52 ID:zBzDdZsj0
>>1ですが、投下しようとしたらドラえもんが出てきました。

申請しようとしても書き込めないし、いつのまにか復活してるし……。
なんだったんでしょう?
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/02(火) 16:54:43.52 ID:5k0JJzD40
どらえもん?
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/02(火) 20:34:10.18 ID:g22QOaeo0

誰かエロい人解決してください
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/03(水) 09:34:16.23 ID:pkEUS2hZ0
おはようございます。

調べたところ、どうやら荒巻?だったそうです。
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/03(水) 09:35:10.80 ID:pkEUS2hZ0


真っ暗になった部屋でブラックライトだけを頼りに歩くのは少し怖いですけど、なんとかステージの上に立つことができました。


姿は見えないけど、みなさん戸惑ってます。
あたしもプロデューサーさんに聞いていなかったら同じようにオロオロしてたんだと思います。




(あ、プロデューサーさん!)



サイリュウムなんていつの間に用意したんだろう?
応援してくれるのは嬉しいけど、クルクル回して遊んでるプロデューサーさんは子供みたいです。




(よーし! ガンバるぞー!)



プロデューサーさんが応援してくれてるって分かったら、なんだか安心しました。
きっと大丈夫。
今のあたしは自信に満ち溢れてるんだから!



――明かりが点いたぞ。……えっ!? お、おい! あれってもしかして!




「みなさん、今日はこのレストランに来てくださってありがとうございます!」


――夢じゃないよな!? ホンモノの愛ちゃんだ!



「実はあたし、このお店に来たのはつい最近のことなんです」



「プロデューサーさんに誘われて、初めて入ったフレンチレストランだから緊張しちゃいましたけど、オーナーさんが作ったお料理を食べたらすぐにファンになっちゃいました!」

122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/03(水) 09:36:09.81 ID:pkEUS2hZ0


「だけど……、このお店は半年後に潰れることが決まっていて……」



「こんなに美味しいお料理を出すレストランが人知れず消えちゃうのがイヤで、プロデューサーさんやオーナーさんと協力してもっとみなさんに知ってもらおう! って思ったんです!」



「みなさん――」



「今日は来てくださって本当にありがとうございます!!」



「あたしのワガママに付き合ってくださったみなさんに、なにかお礼がしたかったけど」


――〜♬〜♫



「今のあたしにはコレしか思いつきませんでした」


――ざわ……。この曲って……。ざゎ……。なんで愛ちゃんが? ざわ……。 



「みなさんが少しでも楽しんでいただけるように、この曲を歌います」



「――ALIVE」


――
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/03(水) 14:33:00.97 ID:pkEUS2hZ0



「この地球(ほし)に標(しるべ)はないけど 素晴らしい世界がある……」


――パチ……パチ……パチパチパチパチ!!!!





「みなさん! 聞いてくださってありがとうございます!」



(よかった! みなさん楽しんでくれたみたいです!)


――日高さん! 握手してー!



「えっ!? 握手ですか? 良いですよ!」


――愛ちゃーん!! 俺も俺も!! 



「あ、はい! わかりました!」


――あの……写真、お願いします……。



「良いですよ! お連れの方はどこですか?」


――いや、違……ッ。一緒に写ってほしい……んだけど……。



「あ! 大丈夫ですよ! すみませーん! カメラお願いします!」



(はわわ! 本当にプロデューサーさんの言った通りになりました!)



(ライブが終わったのにプロデューサーさんのところに戻れないですー!)


――
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/03(水) 14:33:55.93 ID:pkEUS2hZ0



「おつかれ」



「もみくちゃにされました……」



「はははっ。熱狂的なファンがいて嬉しい限りじゃないか」



「確かにそうなんですけど、なんでこうなるって分かったんですか?」



「ん? グッズの売り上げとライブの集客数を統計した時から確信してた」



「プロデューサーさん、そんなことまでやってたんですか!?」



「というかお前なぁ……。ハァ……」



「どうしたんですか、プロデューサーさん?」



「俺が誘ったなんて言わなくて良いんだよ」



「おかげで冷や汗かいたぞ」



「でも本当のことですよ?」

125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/03(水) 14:34:28.98 ID:pkEUS2hZ0


「例えホントのことだろうと言わなくて良いこともあるんだよ」



「フレンチレストランに中学生を誘って食事していたっていう事実は、ファンからすればアイドル手を出してるんじゃないかっていう不安要素でしかない」



「ヘタしたら俺もお前も共倒れになるぞ?」



「あぅ……」



「それに写真も相手はサイン付きで喜んでたけどな、ソイツと一緒に写ったところが悪用されたらどうするんだ?」



「ご、ごめんなさい! 次から気を付けます!」



「そうしてくれ」



「……ただでさえ」ボソッ



(プロデューサーさん、……なんだか怒ってる?)



「まぁ、済んだことを気にしても仕方がないから、気持ちを入れ替えて今後の反省に生かしてくれ」



「は、はぃ……」


――
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/03(水) 21:01:07.13 ID:8mm6DD3i0
投下途中だったらすまん
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/05(金) 11:59:45.69 ID:uKxlwlwI0



「さて、メシも食ったし気分転換もできた。次はどうする?」



「事務所に帰らないんですか?」



「やることがないしな」



「どこか行きたい所とかあるか? 連れて行ってやるぜ?」



「うーん。本当に大丈夫なんでしょうか?」



「さすがに息抜きくらいは許してくれると思うぞ」



「というか仕事したくないから帰りたくない」

128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/05(金) 12:00:44.88 ID:uKxlwlwI0


「うわー! プロデューサーさん、ダメな大人です!」



「せめて休憩の多い大人と言ってくれ」



「同じですよ、それ」



「どこがだよ。ダメな大人=ろくでなし。休憩の多い大人=体力がない」



「な? 違うだろ?」



「ヘリクツですよ!」



「屁理屈じゃない。ポジティブなだけだ」



「それで、決まったのか?」



「ぇえっ!? あたしが決めるんですか!?」



「もちろん。連れまわされていた感じなら俺に非はないだろ?」



「間違いなくダメな大人でした! あたしも怒られたくありませんよー!」



「じゃあそこら辺ブラブラ適当に歩いて帰るか」



「プロデューサーさんのイメージがどんどん壊れていきます……」



「なにしてんだよ。置いてくぞ?」



「待ってくださいー! 行動が早すぎますよ!」


――
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/05(金) 12:02:05.35 ID:uKxlwlwI0



「趣くままに散歩してたハズなんだが……なんでこんなとこ入ったんだっけ?」


――ワンワン。ニャーニャー。



「趣くままだからじゃないですか? 吸い込まれるみたいに入っていきましたよ」



「不思議だ。ペットショップなんて興味もないのに」



「あ、この子カワイイ!」


――グロロロ。ナャ〜ゴ。



「ネコ、好きなのか?」



「はい! プロデューサーさんもですか?」



「……昔、一度だけネコを飼っていたんだがな」

130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/05(金) 12:03:30.66 ID:uKxlwlwI0


「はい。どうしたんですか?」


――シャーッ!



「ある日から他の家で飼われてた……」



「だから今じゃイヌ派だ」



「き、気まぐれですからね。ネコちゃんって」


――ゥニャーッ!



「というか、お前さっきから威嚇されてないか?」



「そうなんです……。さっきまで機嫌が良かったのになんでだろう?」



「あくまで仮定なんだが、お前イヌだと思われてるんじゃね?」

131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/05(金) 12:04:04.96 ID:uKxlwlwI0


「なんかイヌっぽいし」



「それってプロデューサーさんの私感じゃないですか!」



「えっ? ないない。それはない。むしろ満員一致だと思うぞ」



「そんなにあたしイヌっぽいですか?」



「元気だけど落ち込みやすいとかまさにイヌみたいだ」



「俺的には子犬っぽいけどな」



「あたし、ネコちゃんと仲良くできないのかな……」



「敵意がないことが分かれば大丈夫だろ」



「それって、どうやって伝えるんですか?」



「笑顔でいることらしい」



「笑ってる相手に危険はないと思うから懐きやすいって理由だったかな?」



「さっそく実戦してみます!」


――
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/05(金) 12:04:59.16 ID:uKxlwlwI0



「プロデューサーさんのおかげで仲良くできましたー!」


――グルグルニャー。



「ホントに懐いてるな。でもゲージから出して良いのか?」



「はい! 店員さんに頼んだら触らせてくれましたー!」



「プロデューサーさんもコッチに来ましょうよー!」



「そうだな。せっかくだから俺も触ってみるか」



「はい! みんなカワイイですよ!」

133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/05(金) 12:05:35.09 ID:uKxlwlwI0

――シャァアッ! フーッ!



「……あれ?」



「プロデューサーさんが来た途端に怒り始めました!」



「と、取りあえず笑顔だ。人見知りなのかもしれないし」ニコッ


――フシャーッ!! シャウ!! 


「もっと怒ってます!」



「――」



「あの、プロデューサーさん」



「……なんだ?」



「もしかしてプロデューサーさんのネコちゃんがいなくなったのって……」



「言わないでくれ……」



「えっと、ごめんなさい?」


――
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/05(金) 12:07:07.43 ID:uKxlwlwI0



「えらい目にあったぜ」



「まさかプロデューサーさんが動物に嫌われる人だなんて思いませんでした」



「このやり場のない悲しみをお前に当てつけてやろう」



「なんであたしなんですかー!」



「一人幸せそうにネコ抱えやがって。今度コスプレ番組に出演させてやる」



「恥ずかしいからイヤです!」



「その時は大好きなネコにするつもりだから覚悟してろよ」



「職権乱用!?」



「さて、今後の方針も決まったし帰るか」



「決まってないですよ! 勝手にコスプレアイドルにしないでください!」

135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/05(金) 12:07:55.68 ID:uKxlwlwI0


「確かに衣装代を考えると厳しいから却下しよう」



「お金があったらやるつもりだったんですか!?」



「それはいつかのお楽しみということで」



「永遠に来ないことを願うばかりです!」



「どうでしょうかね〜。あ、そうだ。これ渡しとくの忘れてた」



「アンケートですか?」



「できたら俺に渡してくれ」



「出来ましたよ?」



「はやッ!? マジでもう終わったのか?」



「はい! でも、このアンケートってなにに使うんですか?」



「う〜ん。仕事で使うかもしれないし、使わないかもしれないからな〜」



「それってアンケートの意味がないんじゃないですか?」



「かもしれない」


――
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/05(金) 12:13:21.30 ID:uKxlwlwI0



「ただいま帰りました」


石川
「お帰りなさい。愛は一緒じゃないのね」



「時間が時間なので先にご自宅まで送りました」


石川
「そう。それよりもあんた、独断でライブなんてなに考えてるの?」



「もうバレましたか。情報が早いですね」


石川
「茶化さないで」


石川
「愛が不自然に店のPRをするまでは見逃していたけど、こんな勝手な行動されたら事務所として見過ごせないわ」



「分かっています」


石川
「なら話は早いわ。しばらく減給生活でしっかり反省しなさい」



「はい。分かりました」

137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/05(金) 12:13:50.70 ID:uKxlwlwI0

石川
「素直でよろしい」


石川
「あぁ、それと……。これはあくまで個人的なことなんだけど……」



「?」


石川
「私は負けてないわ。ルールを知らなかっただけよ」



「……なるほど。そういうことでしたか」


石川
「次から相談する相手を間違えないようにすることね」

 

「肝に銘じておきます」


――
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/05(金) 12:17:07.59 ID:uKxlwlwI0
ご飯食べに行ってきます
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/05(金) 12:31:34.02 ID:2AypAzc+0
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/05(金) 18:17:24.33 ID:uKxlwlwI0



「おはよーございます!」



「はよ〜」



「あれ? プロデューサーさんだけですか?」



「あぁ、みんな出払ってるよ」



「もうすぐIA(アイドルアルティメイト)の予選があるから、その対策でもしてるんだろうな」



「へー。……って! あたしたちは参加できなかったんですか!!?」



「いや、エントリーはもう済んでるぞ?」



「あ、そうですよね! 良かったー!!」



「それなら、あたしたちも何かしましょうよ! みんなに負けちゃいます!」

141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/05(金) 18:18:10.77 ID:uKxlwlwI0


「え? やらないけど?」



「えーッ! なんでですかーッ!?」



「最近オーバーペースだったからな。ここらで休息だ」



「そんなこと言ってる場合じゃないですよ! IAですよ!?」



「俺だってお前らアイドルが、IAをどれほど重要としているのかは理解してるつもりだ」



「でも……」



「まぁ聞けって。コッチもなにもしないってワケじゃない」



「お前は総合的に評価すればAランクと同等の実力があるのは分かってる」

142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/05(金) 18:18:47.71 ID:uKxlwlwI0


「だがな、一つだけ勘違いしてるんだよ。他のヤツらと同じようにな」



「勘違いですか?」



「あぁ、勝ち残り勝負のIAじゃ致命的と言っても良い」



「教えて下さい! それってなんなんですか?」



「俺が言っても伝わるか分かんねぇし、見た方が早いと思ってな」



「というワケで、レッスンが終わったら出かける準備をしてくれ。会いに行く」



「いやいや! ちょっと待って下さい! どこに行くつもりなんですか!?」



「それにお仕事とか――」



「午前中にレッスンがあるだけだろ?」



「あ、そうでした」



「んじゃ俺は外回りに行ってくるわ。頃合を見て迎えにいくからよろしく〜」ガチャン



「あ、ちょっと! 教えて下さいよ!!」


――
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/05(金) 18:19:33.04 ID:uKxlwlwI0
今日はココまでにします。

次回からデート?編になります。
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/06(土) 16:04:03.89 ID:/45mv1rR0



「よっ。とりあえずお疲れ様。ってジャージかよ……」



「仕方が無いじゃないですか! プロデューサーさんが早く来たのが悪いんです!」



「しょうがねぇ。先に風呂でも入ってから行くか」



「お、お風呂!?」



「あ? なに赤くなってんだお前」



「あ、いえ。なんでもないです。えへへ」



「変なヤツだな。銭湯で良いか?」



「はい!」



「念の為に聞くが、着替えはあるよな?」



「ありますよ!」



「パンツとかは?」



「なに聞いてるんですか!! セクハラですよー!!」

145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/06(土) 16:08:25.05 ID:/45mv1rR0


「怒んなよ。あ、それともマジでないの?」



「ありますよ!!!」



「ならそう言えよ。危うく目的地がランジェリーショップになるところだったじゃねぇか」



「知りません! プロデューサーさんの質問が悪いんです!」



「そうか? 無かったら困るだろ?」



「だからってプロデューサーさんにそんなこと頼めるワケないじゃないですか!!!」



「あ〜、はいはい。分かったから喚くな」



「もう! プロデューサーさんにはデリカシーが無いんですか?」



「興味ねぇ」



「……プロデューサーさんに乙女心は理解できません」



「ははははっ。確かに一生かかっても分かる気がしねぇな」



「なんせ思春期のレディからのお怒りだ」



「……ばか」ボソ



「なんか言ったか?」



「なにも言ってません!!」


――
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/06(土) 16:19:44.08 ID:/45mv1rR0



「プハーッ! うめぇ」



「風呂上りの牛乳ってのも良いが、やっぱ水だよな。身体に染み渡る」



「お待たせしました!」



「おう。さっぱりしたか?」



「はい! 気持ち良かったです〜」



「ははっ。湯上りで色っぽくなってるぜ?」



「え? あの、それってどういう……」



「とりあえず一杯どうだ? 奢ってやるよ」



「あ、いただきます!」



「なに飲む? どれでも良いぞ」


愛 
「じゃあ――」



(プロデューサーさんのお水……)



「……ュ……のお水……」

147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/06(土) 16:24:40.76 ID:/45mv1rR0


「へ〜、お前も水か。なかなか通だな」



「え? あ、はい! そうなんですよ! あはは!」



「なに焦ってんだ?」



「な、なんでもないです!」



「ふーん。まぁ良いや」



「少し休憩したら行くけど、忘れ物はないよな?」



「はい!」



「そうか……ないのか……」



「?」



「お前、浴衣のまま出かける気なのか? まだ祭りには早いぞ?」



「あ!」



「というワケで着替えてきなさい」

148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/06(土) 16:37:40.52 ID:/45mv1rR0


「すいません! 行ってきます!」ダッダッダッダ



「ん? おい! なんか落としたぞ……。って一目散かよ」



「しかしコレって……なんだっけ?」



「――――」ダッダッダッダ



「名前が出てこねぇんだよな。え〜と……」



「―――」ダッダッダ



「あぁ、そうだ! ブ―――」



「なんで持ってるんですかぁあああ!!!!」



「ラァアア!!?」



「ふーっ! ふーっ!」



「……ポ、……ポーチは反則だろ」



「返してください!!」



「ほらよ。……ったく、頭蓋骨が粉砕されるかと思ったぜ」

149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/06(土) 16:48:02.37 ID:/45mv1rR0


「しっかし、お前って意外に胸デケェんだな」



「―――ッ!!」



「だからってそんな地味なもん身に付けるなよ」



「プロデューサーさんの―――」ググッ



「見えない所でも気を使うのが……ん?」



「お、おい! ポーチは止めろ! マジで痛いんだって!」



「バカ〜〜〜〜〜ッ!!!!!!!」



「――」グギャッ



(殴られる瞬間に思った。……替えの下着だったのか……と)



「エッチ! スケベ! 変態!」



「ちょっ……止め……」



「もうプロデューサーさんなんて知りませんッ!!!」


――
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/06(土) 16:58:38.44 ID:/45mv1rR0



「……」ブスゥッ



「すいませんでした!」



「……」



「あの……、悪気はなかったんです。少し取り乱しちゃって……」



「恥ずかしかったというか、なんというか……」ボソッ



「どーせ俺はエッチでスケベで変態のプロデューサーですよ」



「そろそろ機嫌を直して下さいよ!」



「別に怒っちゃいねぇーよ」



「知らなかったとはいえ、下着触られたらカッとなるのは当然だからな」



「殴られた分と合わせてお互い様だ」



「……」



「……」

151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/06(土) 17:09:44.01 ID:/45mv1rR0


「………」



「………」



(き、気まずいです。なにか話題になるもの……。あ、そうだ!)



「今から会いに行く人って、どんな方なんですか?」



「ん? あぁ、そうだな。仮に日高 舞が日本一のアイドルだとしたら……」



「そいつは“世界一のアイドル”だ」



「そんなに凄い方なんですか!?」



「まさに永遠のアイドル。生きる伝説だな」



(プロデューサーさんがそんなに褒めるなんて、どんな人なんだろ?)



(世界一のアイドルって、やっぱり金髪でスタイルも凄いんだろうなぁ……)

152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/06(土) 17:10:51.67 ID:/45mv1rR0


「早く着かねぇかな〜」



「あの……。プロデューサーさんってその人のファンなんですか?」



「あぁ! 実際に会うのは初めてだから楽しみでしょうがない!」



(なんでだろう、話は盛り上がってるのにモヤモヤする……)



「着いたぞ! はい、チケット。コレが無いと入れないから失くすなよ!」



「あれ? ……コレって」



「早く行こうぜ!」



「あ、はい!」


――
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/06(土) 17:22:23.57 ID:/45mv1rR0




『 Ladies and gentlemen ! 』


――ワーーーーーーーッ!!!





「やっぱりサーカスだったんですね!」



「他になにがあるんだ?」ボリボリ



「あんな言い方されたら誰も分かりませんよ!」



「というか、あたしにもポップコーンください!」



「そりゃ悪かったな」ヒョイ



「それで、プロデューサーさんが言ってたアイドルってドコにいるんですか?」ポリポリ



「あの司会者が消えた後にすぐ出てくる。集中しろ!」



「はい!」




『 それでは皆様! 今宵は存分に楽しんで下さいませ! 』





「おっ! いよいよ来るぞ!」



(どんな人なんだろ?)


――
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/06(土) 17:27:06.87 ID:/45mv1rR0


――テクテク。





「……ピエロ?」



「意外か?」チュー




ピエロ
「  」ペコリ





「はい。でも、なんでピエロさんが世界一のアイドルなんですか?」



「とりあえず見てろ。ピエロの動きと観客、全部な」チュー



「この意味が分かるとちょっとした感動ものだぞ」チュー

155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/06(土) 17:32:01.34 ID:/45mv1rR0


(どういう意味だろ?)




ピエロ
「  」タマノリ


ピエロ
「  」オテダマ


ピエロ
「――!」コテン





(あ、こけた。痛そ〜)




ピエロ
「  」キョロキョロ


ピエロ
「  」ボールドコ〜?


ピエロ
「  」アッタ。マッテ〜


――ふふッ。クスクス。





「あははっ!」クスクス



「……」ボリボリ


――
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/06(土) 17:43:38.10 ID:/45mv1rR0




『 それでは皆様。本日はお付き合いありがとうございました! 』


――パチパチパチパチッ!!!





「いや〜、おもしろかったな」



「はい! まだドキドキが止まらないです!」



「それで、俺の言った意味は分かったのか?」



「あ、それは……その……」



「分からなかったみたいだな」



「すいません……」



「それじゃ質問を変えるか。ピエロのショーはどうだった?」



「あ、はい! すごく楽しかったです! 玉乗りでコケちゃう所なんて思わず笑っちゃいました!」



「それにパントマイムなんて本当に壁があるみたいに見えてきて、思わずみんなと同じような顔になっちゃいましたよ!」



「なんだ、分かってるじゃねぇか」



「え?」



「“同じようなリアクションをしていた”」



「コレってさ、観客たちが一体化してた証拠だろ?」



「あっ!」

157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/06(土) 17:55:34.62 ID:/45mv1rR0


「いつの間にか魅入って気が付かなかったみたいだな」



「せっかく集中しろって言われたのに……」



「いや、分かってくれただけでも大した収穫だ」



「どうやって観客を引き付けてたのか勉強になっただろ?」



「はい! でも、あたし玉乗りとかパントマイムなんて出来ないです……」



「おいおい。ダレが曲芸を覚えろって言った?」



「え? でも……」



「俺が最初に“あえて”ピエロを世界一のアイドルって言ったのは、ダンス・歌・トークの全てを表現して観客を魅了できるところだ」



「“オーディエンスを楽しませることに関してピエロの右に出るものはいない”」



「そういう意味で“世界一のアイドル”って言ったんだよ」



「あ、なるほど!」

158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/06(土) 17:56:09.43 ID:/45mv1rR0


「別にピエロになれって言うワケじゃない」



「ただ、こういう技術もあるんだってことを知ってほしかっただけだからな」



「勉強になりました!」



「良し。じゃあ帰……らないッ!!」



「えぇ〜〜ッ!!?」



「ピエロが握手してる! せっかくだから俺たちも行くぞ!!」



「わっ! わっ! 引っ張らないでください〜!!」



「〜♪」



「熱狂的すぎます〜〜〜ッ!!」


――
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/06(土) 17:56:55.01 ID:/45mv1rR0
たぶん後でまた来ます。
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/06(土) 19:48:51.14 ID:/45mv1rR0



「結局! あたしの勘違いってなんだったんですか?」



「あれ? さっき説明しなかった?」



「ピエロの話しか聞いてませんよ!」



「そうだっけ? まぁ、良いや」



「サーカスで喩えるなら、お前らは空中ブランコや綱渡りみたいな“花形”を目指してるんだよ」



「ダメなんですか?」



「いや、そんなことはない。華やかなポジションを目指すのは当然だと思う」

161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/06(土) 19:49:32.94 ID:/45mv1rR0


「だがな、目立つだけじゃ観客は惹かれねぇ」



「身体を張った芸で観客から注目されることはできても“笑わす”ことはできない」



「……」



「むしろ俺は、ピエロのように観客と一緒になって盛り上がるエンターテイナーがアイドルとして本来の姿じゃないかって思ってるんだよ」



「勘違いって言い切ったが、実際はただの私感だ。悪いな」



「……やっぱりプロデューサーさんは凄いです」



「あたしが目指すアイドル。……教えてくれました」



「そっか」



「だが、半端にだけはなるなよ。できないことにムキになっても仕方が無いからな」



「はい! よーし! 明日から頑張るぞー!!」



「気合が入ったところで今日は帰るか」



「はーい♪」


――
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/06(土) 22:57:55.10 ID:/45mv1rR0



「ただいま〜♪」



「おかえり。えらくゴキゲンだけど、仕事で良いことあったの?」



「今日はレッスンだけで、お仕事してないよ!」



「あら? じゃあ、なんでニヤけてるの?」



「教えなーい♪ 今日は楽しかったな〜♪」



「お目当てのプロデューサーとデートでもして来たの?」



「デ、デートなんてしてないよ!!」



「お風呂に入ったり、一緒にポップコーンを食べてただけ!!」



「間違いなくデートじゃない。お風呂は混浴?」



「違います! レッスン終わりで汗かいてたから連れって行ってくれたの!」



「あんたのプロデューサー、なかなかやるわね。女心が分かってるわ」



「それはないよ」

163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/06(土) 22:59:28.86 ID:/45mv1rR0


「なんでそこだけ真顔になったのよ」



「だって……」



「だって、あたしのブ、ブラ……ジャー……」



「まさか[ 自主規制 ]してたのッ!?」



「え? お、[ 自主規制 ]ってなに?」



「だ〜か〜ら〜!」



「あんたのプロデューサーが自分の[ 自主規制 ]にブラジャーを装着させて」



「リズミカルに[ 自主規制 ]ながら[ 自主規制 ]したのかって聞いてるのよ!」



「プロデューサーさんはそんな変態じゃないよ!!!」

164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/06(土) 23:00:02.13 ID:/45mv1rR0


「分かってて言ったのよ!!」



「なら言わないでよ!!!」



「でもね、愛……。男の人と付き合うのって大変なのよ?」



「だから付き合うとかそんなんじゃないんだってば!!」



「今はまだそうかもしれないけど、これから先、なにも知らないんじゃ生きていけないわ」



「だから今日は勉強会ね」



「……イヤな予感しかしないんだけど……」



「そんなに心配しなくても大丈夫よ。ただのビデオ鑑賞だもの」



「おやすみなさいッ!!」ダッ



「あらら。逃げられちゃったわ」クスクス



「あ、ママ!」ヒョコッ



「なに?」



「あたし、負けないから!」



「ふふっ。楽しみにしてるわ」


――
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/06(土) 23:12:20.07 ID:/45mv1rR0
今日はここまでにします。

興味本位なのですが、このSSを見て下さってる方はどのくらいいらっしゃるのでしょうか?
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/10/06(土) 23:16:02.63 ID:joHwNX0co
ミテルヨー
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/10/06(土) 23:18:43.57 ID:7GJoF0xUo
\ここにいるぞ!/
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/06(土) 23:50:46.74 ID:dyp8uHwr0
俺もいるぜ!キン肉マン!
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/06(土) 23:51:10.75 ID:+YHF4VW2o
ここにも、 前作から
馴れ合いはやめといた方がいいよ
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/07(日) 00:45:12.53 ID:tZUBXcMKo
vipと違ってここは個別スレでの馴れ合いは嫌われやすい+ROM専が多いから馴れ合いは危険だよ

それより、舞さんは自分の娘に何を吹き込んだwwww
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/07(日) 00:49:03.50 ID:bEgP1f6uo
個人的に速報の方が馴れ合いが多い印象だったのだが
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/07(日) 02:06:34.36 ID:RQ5VRoOIO
前から見てるROMならここにも居るな。

速報は馴れ合い好きな閲覧者と馴れ合いヘイトの閲覧者が噛み合い始めちゃうからね。
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/07(日) 08:20:50.05 ID:bCWzqWP50
>>166-172

みなさんコメントありがとうございます。

需要があるのか分からなかったので不安でしたが、みなさんのお陰でヤル気が出ました。

また後で更新しに来ます。
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/07(日) 16:06:49.77 ID:bCWzqWP50



「ほ〜、さすがIAだな。どこも満席だ。立ち見してるヤツまでいるぞ」



「すごいお客さんの数ですね!」



「予選でこの状態だと、本選の集客数が予想できねぇな」



「これ以上いっぱい来るんですか!?」



「そりゃそうだろ。もしかしたら会場の外まで人が溢れかえってるかもしれねぇぞ?」



「へー! なんだか楽しみですね!」



「その前にココで優勝しなきゃ話にならんけどな」



「あ、そうでした!」



「そうでしたって……。もう勝った気でいたのか?」



「えへへ」



「自信があるのは良いが、気ぃ抜いてたら足元すくわれるぞ?」



「大丈夫です! なんだか今日はものすごく調子が良いんですよ!」



「そうなのか?」



「はい! この予選を勝ち抜けばママと戦えるんだって思ったらワクワクが止まらないんです!」



「あたし……、優勝してきますよ!!」



「そこまで自信があるなら勝てよ。負けましたなんて言ったら承知しねぇからな」



「はい!!!」


――
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/07(日) 16:08:08.36 ID:bCWzqWP50



「おはようございます!」


石川
「おはよ。相変わらず元気ね」



「あれ? 今日は社長、涼さんに付き添わなくて良いんですか?」


石川
「いつも一緒ってワケにもいかないでしょ?」


石川
「少しずつ自立できるようになるべく一人で仕事させてるのよ」



「なんだか寂しいです……」


石川
「いや、むしろ“ もう変な企画に出なくて良いんですよね!? ”なんて言いながら嬉しそうに出かけていったわ」


石川
「せっかく色々と仕事を回してやったのに……」



「――特殊な方を除いて、一般的な男性は女装企画なんか出たくないと思いますよ?」ガチャ



「あ、プロデューサーさん! おはようございます!」

176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/07(日) 16:09:24.79 ID:bCWzqWP50


「おはようございます。愛さん」


石川
「やっと来た。ずいぶん遅い出社ね」



「むしろ誰より早く来ていたのですが……」


石川
「細かい男は好きじゃないわ」



「言い訳するな。ってことですか……」



「ところで石川社長はなぜ事務所に?」


石川
「……どうやらまだ反省が足りないみたいね」ニコ〜



「お忙しい中、お呼びして申し訳ありません」



「だから、その怖い笑顔を止めて頂けないでしょうか?」


石川
「あまり年上をからかわないことね」フンッ

177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/07(日) 16:10:19.04 ID:bCWzqWP50


「でも、プロデューサーさん。もうお昼ですよ? 今までどこにいたんですか?」



「えぇ。朝早くに連絡が来まして、企業さんと打ち合わせしていました」



「おつかれ様です! どんなお仕事なんですか?」



「愛さん主演のノンフィクションドラマですよ。企画を通すのに苦労しました」



「しゅ、主演ですか!!? それにノンフィクション!!?」



「はい。Bランクに至るまでの出来事をドラマにしたものです」



「出演者は愛さんに渡したアンケートを参考にさせてもらいました」



「あっ! あのアンケートってそういう意味だったんですか!?」


石川
「アンケートってなんのこと?」



「この前、“あなたの大切な人を教えて下さい”って書かれたアンケートを貰ったんです!」



「たくさん書いて良いみたいなので、いっぱい書いちゃいました!」


石川
「あぁ、なるほど。そういうことね」

178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/07(日) 16:11:20.74 ID:bCWzqWP50


「はい。幸い、二人を除いて愛さんが書かれた人物全員に許可を頂きました」


石川
「その二人ってダレなのかしら?」



「私と日高 舞さんですよ」



「私は出る気はなかったので良かったのですが、舞さんの方は……」



「やっぱりダメだったんですか?」



「忘れてました」


石川
「――」ズルッ



「忘れないでくださいよー!」



「すいません」



「なので今日から少しの間だけ石川社長に愛さんを任せて、私は舞さんの出演交渉や提供先の企業へあいさつなど、山詰めになった仕事を片付けようと思います」



「撮影スタジオまでは相手側が手配してくれるので心配しないでください」

179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/07(日) 16:12:24.84 ID:bCWzqWP50

石川
「ねぇ。あなた達っていつもこんな感じなの?」



「と言いますと?」


石川
「いつも愛は当日になって仕事内容を教えてもらっていたのかってことよ」



「いえ。普段は愛さん用のスケジュール帳を渡してあります」



「一応ホワイトボードにも書いていますが、ゴチャゴチャしていて分かり辛いので」



「金魚がいっぱいでカワイイですよ!」


石川
「なら私にもなにか渡しなさいよ」


石川
「いきなり夜中に“愛さんを頼みます”だけ言って電話を切って、失踪する気なんじゃないのかって心配したのに損したわ」



「優しい上司を持って幸せです」


石川
「その前に謝罪しなさい!」



「すいません」



「あ、それと愛さんに言い忘れてたのですが」



「なんですか?」



「Aランク昇格おめでとうございます」ニコッ



「……え?」

180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/07(日) 16:12:57.53 ID:bCWzqWP50

石川
「さすが愛ね。スゴイじゃない」



「それでは行ってきます」キィイ


石川
「行ってらっしゃい。出演の話は期待しないでおくわ」



「ははっ。まぁ、頑張ってみます」パタン



「……え?」


石川
「それじゃ私たちも支度しましょう。って、どうしたの愛?」





「ぇええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!」




石川
「――」グァングァン



「あたし! いつの間にランクが上がったんですか!!!?」


石川
「い、今さっき、Pが言って、たじゃない……」



「だってオーディションの日からプロデューサーさん、なにも言わなかったじゃないですか!!」



「受かってたならもっと早く教えてくださいよーーー!!」



「プロデューサーのバカーーーー!!!」


石川
「お、落ち着いて愛! それ以上は私の、鼓膜が、も、持たない……から!」フラフラ


――
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/07(日) 16:16:36.83 ID:bCWzqWP50
やっと書き溜めの半分くらいまで終わりました。

次から少しシリアスになります。
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/08(月) 17:29:23.50 ID:j46R5b4R0



「ここか……」


何の変哲も無い普通の家。
こんなところに芸能界を震撼させた大物が住んでるのかと誰だって思う。
俺も最初はそう思った。



「……」


出会いは偶然。
たまたま受けたプロダクションに日高愛がいた。

ただ、それだけだった。


十数年も経って……。

あれから大人になった俺は、プロデューサーらしく“アイドルと一丸になってトップを目指す”なんて目標を掲げていたのに。

183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/08(月) 17:30:05.19 ID:j46R5b4R0

あいつが日高の娘だと知って……思い出した。




――さっさと――やがれ!!! 


――テメェら全員――してやるッ!!




……いつかの




――私の所はムリよ……。悪いけど養えないわ……。


――じゃぁ、どうしろって言うんだ! このまま見捨るつもりなのか!?


――そんなこと言ってないじゃない!!




……まだ壊れていなかった




――聞いた? あそこの家、――だって。


――まだ幼いのに……同情するわ。




……懐かしい




――テメェの親父、――だってな!


――ほら言えよ。――の子供で“ごめんなさい”って言えよ!




……記憶を。

184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/08(月) 17:31:12.42 ID:j46R5b4R0



フラッシュバックする記憶に血液が沸騰するような感覚になったが、どうにか抑えることができた。
きっと交じることはないだろうと考えて諦めてはいたが、一度だって忘れたことはない。





「今度は俺が――」




――
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/08(月) 17:31:58.95 ID:j46R5b4R0


――ピンポーン。



「はーい。どなたー?」



「はじめまして。ご連絡させて頂いた876プロダクションの者です」



「あ〜、はいはい。そういえば今日だったわね。ちょっと待ってて」



「どうぞ〜」ガチャ



「失礼します」



「いらっしゃい。どうぞあがって」



「お茶でも飲みながらゆっくりしましょう」



「ありがとうございます」


――
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/08(月) 17:33:17.66 ID:j46R5b4R0



「改めまして愛さんのプロデューサーをしているPと申します」



「今日はお忙しい――」



「あ〜、もう! 堅ッ苦しい!」



「敬語なんて使わなくて良いから、もっとフランクに話しなさい!」



「すいません。善処します」



「ん。素直でよろしい」



「それにしても、……やっぱり似てるわね」



「どなたにですか?」



「あなたのお父さん」



「さっきなんてドア開けた瞬間、プロデューサーが来たのかと思ったわ」



「――ッ」ギリッ



「まぁ、プロデューサーなら私に敬語なんて使わないけどね」



「……そうですか」

187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/08(月) 17:34:14.94 ID:j46R5b4R0


「知ってる? 私に真正面から意見をぶつけてきた人って今も先もあの人だけなのよ?」



「最後の方なんて私が負けることに事務所の連中はダレも驚かなくなったもの」



「懐かしいな〜」



「ねぇ。あの人って今なにやってるの? どこのプロダクションにも所属してないみたいだけど」



「亡くなりました。……もう何年も前の話です」



「えっ?」



「当時、学校に通っていた私には詳しいことは分かりませんけど」



「……寄り添うように母と眠っていました」



「ごめんなさい。辛いこと聞いちゃったわね」

188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/08(月) 17:41:05.57 ID:j46R5b4R0



















「……それだけか?」











189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/08(月) 17:42:17.01 ID:j46R5b4R0


「――えっ?」



「ハァ……。いよいよ耳まで遠くなったのか?」



「親父たちを追い詰めた本人が“ごめんなさい”の一言だけかよって言ってんだよ」



「私が……プロデューサー達を追い詰めた……?」



「記憶にすらないか。まぁ、あんたはそういうヤツだよな」



「あなたがなんで私を目の仇にしているのかは分からないけど、私がなにしたっていうのよ!」



「そこまで白を切るつもりなら、テメェの目で確かめろ」


――
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/08(月) 17:43:42.94 ID:j46R5b4R0


――バサッ。



「……ファイル?」



「あんたのスキャンダルを俺が独自で集めたものだ」



「その最後のページに親父が隠し通そうとした遺産がある」



「……ッ!」






――“日高舞の衝撃プライベート!! やはり相手は担当プロデューサー!!”







「……常にあんたの周りで熱愛騒動がまとわりついていたが、どれも信憑性に欠けるゴシップでしかなかった。だが、コレは違う」



「未成年のSランクアイドルが子持ちプロデューサーと不倫関係」



「こんな美味しいネタにマスコミ連中が食いつかないワケがない」



「……」

191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/08(月) 17:46:42.40 ID:j46R5b4R0


「よく撮れてるよな。ホテル街でキスショット。……これだけ鮮明に撮られちゃアイドルとして活動するのはもう終わりだ」



「だから親父は圧力をかけて押さえ込もうとしたんだろうが、インターネットに流失してしまったこの記事だけはどうしようもなかったんだろうな」



「で、ダメ押しの妊娠騒動に突然の引退……」



「このことについてテメェは記者会見でも煙に巻くような発言だけ残して、マスコミ共を煽るだけ煽って逃げやがった」



「こんなもん知ったファンがなにするか分かるよな?」



「汚名を受けた親父を母さんが庇い、毎日のように記者や知らねぇヤツらから待ち伏せの日々」



「家がぶっ壊されるなんて日常茶飯事だったよ」



「……これでもまだ関係ねぇとかいうのか? あ゛ッ?」



「……」

192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/08(月) 17:47:33.87 ID:j46R5b4R0


「知らないなんて言わせねぇぞ。この写真はどう見ても親父とあんたのツーショットだ」



「戯言くらいは聞いてやるから黙ってねぇでなんか言ったらどうなんだよ!!!」



「……ない……わ……」



「あ、そう。Sランクが聞いて呆れるぜ」



「それで? クソ親父なんてどうでも良いが、母さんまで壊した責任はどうするつもりなんだ?」



「……ッ」



「とれるワケがないよな。あんたからしたら軽い火遊びみたんなもんだったんだろ?」



「違うッ! 私は本気で――」



「本気で? 本気で寝取ろうとしてたのか?」



「アイドルよりも女を取ったのか。流石だな」



「――ッ」

193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/08(月) 17:48:52.06 ID:j46R5b4R0









「“三流アイドルが笑わせんな”」



「――なッ!」



「責任は持てない。欲しいものは欲しい。まるでガキじゃねぇか」



「そのクセ、プライドだけは一級品ときたもんだ」



「こんな母親を目標にしてる娘に同情するね」



「愛をバカにしないで!」



「バカにしてんのはテメェだろ!」



「まともな親なら応援こそすれジャマはしねぇ」



「さしずめ復活したのだって娘の知名度に乗っかろうとしたんだろ」



「違うッ! 私は愛のライバルに――」

194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/08(月) 17:49:59.75 ID:j46R5b4R0


「“思い上がるな”」



「13年前の化石が現役アイドルとライバルだと? 勝負になるワケがないだろ」



「実際、アンタを支持するヤツらは当時の日高 舞を知ってるジジイたちと娘のファンから流れ込んだヤツらだけだ」



「どう足掻いても勝ち目なんてねぇよ」



「それに、どんなに実力を持っていようが、あいつがアイドルとして脚光を浴びてなきゃここまで騒がれることもなかった」



「俺には自分の栄光にしがみ付く為に娘を利用したとしか思えないがな」



「違う……ッ」



「落ち込んむのは勝手だがな、コッチはそれよりムカついてんだよ!」



「テメェが母親としても人間としても話しになんねぇのが分かった以上、不本意だが娘の方で話をつけるしかないからな!」

195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/08(月) 17:51:33.96 ID:j46R5b4R0





「愛は関係ないじゃない!!!」





「確かに“あいつ”は関係ない」



「だけどな、恨んでる相手が幸せな家庭を築いていたら、ぶっ壊したくなるのは当然だろ?」



「まぁ、心配すんな。テメェより娘の方が賢いから、きっと良い選択をしてくれるだろうよ」



「止めて! 愛にはなにもしないで!」



「それがイヤならあんたが負うんだな」



「……なにをすれば良いのよ」

196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/08(月) 17:52:18.29 ID:j46R5b4R0


「そうだな……。安易にAVでも出て、娘に蔑まれるってのも良いが……」



「しばらく俺の操り人形にでもなってもらうか」



「……人形?」



「そうだ。これからは俺の命令通りに動いてもらう。どんな要求にもな」



「イヤがれば、……テメェの大好きな愛ちゃんが汚されるぜ?」



「そんなこと私がさせない!!」



「へぇ。どうやって守るんだ? アイドルを辞めさせるのか?」



「だとしたらヒデェ母親だよ。愛娘の夢までも潰して守ろうとしてるんだからな」



「愛は、……きっと分かってくれるわ」



「かもな。だが、そうなったら全ての真実を叩きつけてやるよ」



「そん時の顔が見物だ。もしかしたら“家族が増えた”って喜ぶかもな」



「……ッ」



「どっちにしろ、テメェは詰んでるんだよ」



「拒否権なんて、……ないみたいね」


――
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/08(月) 17:55:05.07 ID:j46R5b4R0



「まず手始めに、同意書にでもサインしてもらうか。これから先、ジャマされたら面倒だからな」



「ついでに、娘が主演するドラマに出演してもらう」



「腐ってもあんたは元Sランクアイドルだ。まぁ、撒きエサくらいに期待してるぜ?」



「――この私が、……エサですって?」ジロッ



「なに睨んでるんだよ。まだ自分の立場が分かってねぇのか?」



「……分かってるわよ」



「テメェらなんて俺の機嫌次第でどうにでもなるってことを忘れんなよ」



「精々ムカつかせないように励むんだな」



「くっ……」



「話は終わりだ」






「 “それでは舞さん。また来週お会いしましょう” 」




――
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/08(月) 17:56:22.91 ID:j46R5b4R0
今日はここまでにします。
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/10/08(月) 18:05:06.21 ID:xOLgOovSo
今更だけど、このSSで潰れかけてるレストランが前のSSで真美と行ってた高級レストランなんだろうな

200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/08(月) 23:46:01.47 ID:bxV+DENZ0

髪が白くなったみたいなのも伏線かな
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/09(火) 02:27:03.99 ID:IJCydK7ro
馬鹿可愛い愛ちゃんとプロデューサーが仲良く頑張ってトップアイドル目指すだけかと思ったのに
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/09(火) 18:50:25.46 ID:+ZJfCtez0


石川
「待ちに待った主演ドラマだけど、緊張はしてない?」



「はい! ぜんぜん大丈夫です! むしろ絶好調ですよ!」


――「あっ! 愛ちゃん!」


石川
「あら、765プロの……」



「春香さん!! お久しぶりです!」


春香
「ホントに久しぶりだね。運動会の時以来じゃない?」



「はい! だからお会いできてとっても嬉しいです!」


春香
「えへへ。そんなに喜んでもらうと、なんだか恥ずかしいかな」


春香
「あ、そうそう。愛ちゃん、予選通過おめでとう!」



「ありがとうございます!」


春香
「帰ってから見たけど、凄かったよ! 観客を独り占めだったもん!」


春香
「でも私たちも負けないよ!」



「あ、じゃあ春香さんも!」


春香
「ぶいっ♪」ニコッ

203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/09(火) 18:51:08.94 ID:+ZJfCtez0


「わ〜! おめでとうございます!」


春香
「お互いに頑張ろうね」



「はい!」


春香
「……でも愛ちゃん。実は私、それよりも驚いてることがあるんだよ?」



「なにがですか?」


春香
「ふふっ」


春香
「だっていつの間にか愛ちゃん、立派なアイドルになってるんだもん」


春香
「あの時に泣いていた女の子からは想像できないな〜って」



「あわわ! 思い出すだけで恥ずかしいから止めてくださぃ〜!」

204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/09(火) 18:51:46.71 ID:+ZJfCtez0

春香
「ん〜。もしかしたら撮影の時はもっと恥ずかしくなるかもよ?」



「えっ? それってどういう意味ですか?」


春香
「だって今日の収録って私と愛ちゃんが始めて会った時のことを再現するみたいだから」



「え〜ッ!? 聞いてないですよー!」


春香
「ふふっ。むしろクランク・インで私が来た意味を考えるべきだったのかもね」



「そんの分かりませんよー! 春香さんのイジワル〜!」


春香
「あはは。よく考えたら私も同じことされて気づくか分かんないや」


春香
「ゴメンね、愛ちゃん」



「気にしてないから大丈夫ですよ!」


春香
「それじゃ愛ちゃん! 今日は頑張ろうね!」



「はい! 一緒に頑張りましょう!!」


――
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/09(火) 18:52:30.17 ID:+ZJfCtez0


――「カーット! 今日はここら辺で止めようか」



『おつかれさまでした〜!』



石川
「おつかれさま。初めて先輩と共演したわりにはリラックスしてて良い感じだったわよ」



「えへへ。ありがとうございます!」


石川
「来週から私たちも参加するけど、身内だけだからって手を抜かないでよね?」



「そんなことしませんよー!」


石川
「言ってみただけよ。愛がそんなことするはずもないもの」



「そうですよ!」


石川
「あ、そうそう。身内といえば愛のお母さん、参加するみたいよ」



「えーー!! ママ、あたしのドラマに来るんですか?」


石川
「そんなに驚くようなことなの?」



「だって“ライバルになるからには敵同士だー!”なんて言ってたから断ると思ってました!」

206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/09(火) 18:53:04.03 ID:+ZJfCtez0

石川
「そうね〜」


石川
「私は子供がいないから分からないけど、やっぱり娘の成長を近くで感じてみたかったとかそんな感じなんじゃない?」



「ママはそんな普通の理由で来るような人じゃないと思うんですけど……」



「それに、一度決めたら最後まで貫き通すのがいつものママなのに、なんだか気になります」


石川
「そんなに気になるんだったら、帰った時に聞いてみたらどう?」


石川
「出演させる気にさせたのもアイツだから、たぶん教えてくれるでしょう」



「そうしてみます!」


――
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/09(火) 20:39:52.22 ID:+ZJfCtez0



「え? 舞さんをどうやって出演させる気にさせた。ですか?」



「はい! プロデューサーさん、どんな魔法を使ったんですか?」



「特になにもしてないのですが、どうしてそんなことをお聞きに?」



「なんだか気になるんです!」



「ママが自分の言ったことを曲げるなんて今までなかったから、なにがあったのかな〜って」



「そうですか。ですが本当になにもしてないんですよ」


石川
「なんでも良いから話なさい。収録終わりからずっとこうなのよ」

208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/09(火) 20:40:24.51 ID:+ZJfCtez0


「そうですね……」



「強いて言うなら世間話を織り交ぜながら愛さんのお話をさせて頂いたくらいです」



「あたしの話?」



「はい。といっても近況報告だけですが」



「きんきょうほうこく?」



「愛さんのご様子のことです。例えば最近でしたら潰れかけたお店を立て直したことですかね」



「でも、あれはプロデューサーさんの活躍じゃ……」



「何度も言いましたが、私がしたことはセッティングだけです」



「結果的に成功させたのは愛さんですから、それは愛さんの業績ですよ?」



「そうですよね?」



「あ、はい」



「それでは経理の方で石川社長と話しがあるので私は失礼します」



「はい……。お仕事のジャマしてすみませんでした」



(なんだかプロデューサーさん、よそよそしくなった……?)


――
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/09(火) 20:40:55.95 ID:+ZJfCtez0



「ただいま〜!」



「おかえりなさい。聞いたわよ、あんた主演ドラマやってるんだって?」



「うん! ママも出るんでしょ!?」



「話が速いわね〜。そうなのよ。ちょっと押し負けちゃった」



「……あ、そうだママ! キッチン使っても良い?」



「あら? 今日は愛がご飯をつくってくれるの?」



「違うよー!」



「いつも助けてもらってるから、お礼にプロデューサーさんにお弁当をつくってあげるんだ〜♪」



「ふふっ。愛は優しいのね」



「手伝っちゃダメだよ!」



「手伝わないわよ。でも、分からないことがあったら聞きに来なさい」



「それぐらいは良いでしょ?」



「うん! ありがとママ♪」タッタッタ


――
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/09(火) 20:41:25.92 ID:+ZJfCtez0



(私もまだまだね。……あの様子じゃ、なにか感づかれたみたいだもの)



(でも良かった……)



(あのプロデューサー、ホントに愛にはなにもしていないみたい……)



(それだけが、……せめてもの救いなのかしら)


――
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/09(火) 20:42:45.23 ID:+ZJfCtez0
今日はここまでにします。
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/10(水) 15:56:14.73 ID:v18ZCOxF0



(き、緊張して早く来すぎちゃいました! プロデューサーさん、いるかな?)キィイ



「……」カタ、カタ、カタ



(あ、いた! というかプロデューサーさん、いつもこんな時間から来てるのかな?)



(と、とりあえず、せっかくお弁当つくったんだから渡さなきゃ!)



「おはようございますプロデューサーさん!」



「おはよ。ずいぶん早いな」



「あぅ……。あ、あの! プロデューサーさん!」



「?」



「こ、これお昼にどうぞ!」



「……弁当?」



「プロデューサーさん、食べることくらいしか楽しみがないって言ってたので……」



「あぁ、自己紹介の時のこと覚えてたのか」



「はい! 一生懸命つくりました!」

213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/10(水) 15:57:04.96 ID:v18ZCOxF0


「サンキュー。ありがたく頂くよ」



(やった! 渡せました!)



「お弁当箱は洗わなくて良いです! あたしがやります!」



「そっか、なんか悪いな。それより、まだ時間あるから少し寝てるか?」



「ごめんなさい! まだ緊張してて寝れそうにないです!」



「なんで緊張してるんだ?」



「……だってプロデューサーさん、最近なんだか変ですし、喜んでくれるのかなって考えたら不安になっちゃって」



「正直、今も不安です……」



「そうか? 別にいつも通りだと思うけど」



「まぁ、俺なんかに緊張する必要はないんだけどな」



「そんなこと言われても緊張しちゃうんですよー!」



「……しょうがないな。……ほらよ」



「いきなり手を上げてどうしたんですか?」



「騙されたと思って俺の手と重ねてみろよ」

214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/10(水) 15:57:54.16 ID:v18ZCOxF0


「……暖かいです」



「気休めだが、なんだか落ち着くだろ?」



「はい。それに、なんだか懐かしい感じです……」



「まだガキの頃、よく泣いてた俺に母さんがやってたんだよ。こうすれば落ち着くってな」



「プロデューサーさん、昔は泣き虫さんだったんですか?」



「……まぁ、いろいろあったんだよ」



「プロデューサーさん……」



「だいぶ落ち着いたみたいだな。寝られそうか?」



「はい。……たぶん……」ウツロウツロ



「時間になったら起こしてやるから、それまで休んでろ」



「はい。……ごめんなさい……」スー、スー



「理由もなく謝んな。ってもう寝てんのかよ」



「よく人前で寝られるな。……ったく、仮眠室まで運んでやるか」


――
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/10(水) 16:17:33.45 ID:v18ZCOxF0



「愛さん、起きて下さい。今日は朝からレッスンですよ」ユサユサ



「ん……。もう少し……」



「ダメです。起きて下さい」



「うみゅ……」



「……起きませんね」


石川
「生ぬるいのよ。ちょっと変わりなさい。私が起こすわ」



石川
「―――」ゴニョゴニョ



「うぇえええ!!!?」



「あ、起きた」



「愛さん、おはようございます。お目覚めはいかがですか?」



「……」ウトウト



「プロデューサーさぁん……」ギュゥッ



「――え?」



「わっ。愛ちゃん大胆……」



「……」ギュッ

216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/10(水) 16:18:16.09 ID:v18ZCOxF0


「社長。愛さんになんて囁いていたのですか?」


石川
「さっさと起きなきゃプロデューサーのクビが吹っ飛ぶって言っただけよ」



「起こす為とはいえ、私の職を賭けないで頂きたいのですが……」


石川
「起きたんだから良いじゃない」



「ん〜。……えっ? あっ、プロデューサーさんッ!?」



「はい、おはようございます。目は覚めましたか?」



「違うんです! 違うんですよプロデューサーさん!」



「なにが違うのか知りませんが、そろそろ時間ですよ?」



「ホントだ! もうこんな時間……」



「分かったりましたら離れて下さい。それとも、このままレッスン場まで行きますか?」



「あっ、いや、あの……。行ってきます!!!」



「走ると危ないですよー」








石川
「あんた、……デリカシーって知ってる?」



「興味ありませんね」


――
217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/10(水) 16:20:57.87 ID:v18ZCOxF0


コーチ
「身体の動きを意識して次のステップいくわよ」


コーチ
「クイック・クイック。もっと全身で表現しなさい! はい、そこでターン!」



(〜ッ! あたし、寝ぼけてたからってなんで抱きついてたの!?)



(思い出すだけでも恥ずかしいよ〜ッ!)


コーチ
「ちょっと調子が悪いわね。どうしちゃったの愛さん? いつものキレが無いわよ」



「あ、すいません! 考え事してました!」


コーチ
「驚いたわ。考えながら動けるなんて意外に器用なのね」


コーチ
「まぁ良いわ。そろそろお昼だし、午後には気持ちを入れ替えてちょうだいね」



「はい!」


コーチ
「午後もこの調子なら、後ろの観客にお説教してもらうわよ?」



「観客? ……プ、プロデューサーさんッ!?」

218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/10(水) 16:22:19.90 ID:v18ZCOxF0


「ん? あぁ、終わりましたか? ふぁ〜あ」ゴキッ、ゴキッ


コーチ
「まだお昼休みです。せっかく来たんですから、ちゃんと見てないとダメじゃないですか」



「最初はそのつもりだったのですが……、これなら寝てた方がマシだったので」



「――え?」



「やる気のないダンスなんて見る価値もないって言ったんですよ」



「どんな事情があるのかは知りませんが、こんなお遊戯を続けるのでしたら帰って下さい」



「レッスンして下さる先生や練習生にも失礼ですし、なにより時間とお金のムダですからね」



「ごめんなさい……」



「謝るだけなら誰でもできます」



「もし愛さんが信用を取り戻したいのでしたら、……どうすれば良いのか分かりますよね?」



「――! コーチ! もう一度だけお願いします!」


コーチ
「それで私たちが納得しなければホントに帰ってもらうわよ。それでも良い?」



「覚悟はできてます!」


コーチ
「……それじゃ最初っからいくわよ。ミュージック、スタート!」


――
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/10(水) 16:23:12.19 ID:v18ZCOxF0



「お疲れ様です」


コーチ
「ありがと。愛さん、私はちょっと席を外すけど午後もこの調子でお願いね」



「コチラの勝手なワガママを聞いて下さってありがとうございました」



「ありが……とう、ござ……いま、……した」ハーッ、ハーッ


コーチ
「プロデューサーのお説教が効き過ぎちゃったみたいかな?」



「大丈夫でしょうか?」


コーチ
「しっかりアイシングして、息を吐き切るように呼吸させればちゃんと回復すると思います」



「なるほど。勉強になりました」


コーチ
「ふふっ。それにしても驚きましたよ」


コーチ
「このコンビネーションは時間をかけて馴染ませるつもりだったのですが、まさか数時間で完成させるとは思いませんでした」



「褒めるなら本人を前にしたらどうですか?」


コーチ
「酸欠状態でそれどころではないハズですよ。もしかしたら頭がボーっとして私たちの会話も聞こえてないかもしれませんからね」

220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/10(水) 16:23:57.33 ID:v18ZCOxF0

コーチ
「それに、あなたが褒めた方が彼女は喜びますよ」



「残念ながら褒める気はありません。彼女がプロのアイドルであり続けるなら、同等に扱うのが筋だと思っていますので」


コーチ
「厳しいプロデューサーですね」



「そうかもしれません」



「……話し込んでしまいましたね。お時間を取らせてしまってすいません」


コーチ
「構いませんよ。生徒の成長を近くで見られる喜びに比べたら些細なものです」


コーチ
「それでは失礼します」ガチャ



「はい。午後もよろしくお願いします」


――
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/10(水) 16:24:53.61 ID:v18ZCOxF0



「ふぅー、ふぅー」



「落ち着いたか?」



「はい……。なんとか……」



「まぁ、ふっかけた俺が言うのもなんだが、ペース配分を考えないと身体が持たないぞ?」



「あんなこと言われたら、そんなこと考えてる余裕なんてないですよ」



「だろうな」



「他人事ですか?」



「他人事だ。ところでメシは食えるのか?」



「あ、はい。大丈夫だと思います」

222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/10(水) 16:25:29.50 ID:v18ZCOxF0


「なら、食いながら休憩するか。ちょうどお前から貰った弁当もあるし」



「持ち歩いてたんですか?」



「いつもそうしてるぞ? 相手によっては食べる時間さえ無くなるけどな」



「へー。プロデューサーって大変なお仕事なんですね」



「他人事か?」



「他人事です」



「……」



「……」


『……ふふっ』



「ヤベッ。なんか知らんが笑っちまった」



「あたしもですよ! でも、なんだか笑ったら元気が出てきました!」



「一緒にお弁当を食べましょうー♪」


――
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/10(水) 16:26:59.62 ID:v18ZCOxF0



「ところでプロデューサーさん、なんでココにいるんですか?」



「思いのほか仕事が早く片付いたから、ついでに様子を見に来たんだよ」モグモグ



「うぅ……。せっかく見に来てくれたのに……」



「どーせ今朝の出来事でも考えてたんだろ?」モグモグ



「な、なんで分かったんですか!?」



「おもしろい百面相だったぞ」モグモグ



「あたしのばか……」



「まっ、やっちまったものは仕方が無い」



「ウジウジ考えずに気持ちを入れ替えて次に繋げれば良いんだよ」

224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/10(水) 16:28:39.11 ID:v18ZCOxF0


「――あ、あの……。その時は……」



「その時は、また……頼っても良いですか?」



「聞く必要もねぇよ。いつでも来な」



「……ありがとうございます。プロデューサーさん」



「さてと、湿っぽい話は終わりだ。メシの続きにしようぜ」



「はい!」


――ガリッ。



「ん? なんだコレ?」



「……タマゴの殻?」



「すいません……。取り除くの忘れてたみたいです……」

225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/10(水) 16:29:40.36 ID:v18ZCOxF0


「ふ〜ん」ガリッ。ゴリッ



「あ、あの! ムリして食べなくても……」



「せっかく作ってくれたんだから全部食べる」



「でも、お腹を壊しちゃいますよ!」



「ニワトリだって食べてるんだから大丈夫だろ」ゴリッ。ゴリッ



「プロデューサーさんは人間じゃないですかー!!」



「ふぅ。ごちそうさまでした」



「ホントに全部食べちゃった……」



「なかなか美味かったぞ」



「……あ、ありがとうございます」


――
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/10(水) 16:31:08.95 ID:v18ZCOxF0



「腹も膨れたし、ボチボチ行くか」



「もう行っちゃうんですか?」



「ゆっくりするのは性に合わないからな。適当に仕事でも探してくる」スクッ



「あ……」



「なに残念そうな顔してるんだよ。もしかして俺のことが好きなのか?」



「違います!! そんなワケないじゃないですか!!!」



「だよな。いや〜、良かった。それを聞いて安心したよ」



「え?」

227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/10(水) 16:32:10.86 ID:v18ZCOxF0


「時々なんか熱い視線を感じるな〜って思ってたからカマかけたけど、ホント外れて良かった」



「ど、どういうことですか!?」



「俺さ……、プロデューサーを恋愛対象として見てるヤツ嫌いなんだよ」



「もしお前がそうだったらコンビ解消する気だったけど、どうやら違ったみたいだ」



「疑ってごめんな」ナデナデ



「そうですよー! 心外です!」ズキッ



(胸が……痛い……?)



「ははっ。謝るから許してくれよ」ナデナデ



「もう! むしろプロデューサーさんはお兄ちゃんって感じなんですから!」



「……あ゛?」ピタッ



「プロデューサーさん?」



「あ……、あぁ、悪い。そろそろ行くわ」



「そろそろ本選も近いんだし、練習ガンバレよ?」



「分かってますよー!」


――
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/10(水) 16:34:50.99 ID:v18ZCOxF0
今日はここで終わりにします。
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/11(木) 07:23:37.46 ID:yg9tP6yK0
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/11(木) 09:35:25.19 ID:vz4W1t1IO
乙乙

不穏な空気が……!
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/11(木) 13:49:19.80 ID:9YhKJB9Q0



「ただいま」



「おかえりなさい。ご飯もう少しで出来るわよ?」



「……いらない」



「愛?」



「おやすみ、ママ」



「あ、ちょっと!」


――ガチャっ。

232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/11(木) 13:49:46.33 ID:9YhKJB9Q0


(疲れたな〜……)ポフッ



(あの時、なんで胸が痛くなったんだろ?)


――『プロデューサーを恋愛対象として見てるヤツ嫌いなんだよ』



(また、だ……)



(プロデューサーさん言ってること、当然のことなのに……)ズキッ



(なんで……こんなに……痛くて……悲しくて……苦しいんだろ……)ズキッ



(……分かんない。……分かんないよ……)


――
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/11(木) 13:50:27.07 ID:9YhKJB9Q0



「……? なんで……」



「あぁ、そっか……。あたし、いつの間にか寝ちゃったのか……」


――グ〜。



「お腹空いたなぁ……」


――ガチャッ。



(ご飯、まだあるかな?)テクテク



(あれ? まだ電気が点いてる……?)



「――zZZ」

234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/11(木) 13:50:57.46 ID:9YhKJB9Q0


「……ママ」



(もしかして、ずっと待ってたのかな? だとしたら、悪いことしちゃったな……)



「……あ……い?」



「起こしちゃった!?」



「ふぁ……。今起きたのよ」ゴシゴシ



「あ、ご飯? つくり直すからちょっと待ってて」



「いいよ! 自分でやるからママは寝てなよ!」



「なにも食べてなくて私もお腹空いてるのよ」



「いいから座って待ってなさい」



「あ、うん。分かった……」


――
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/11(木) 13:51:47.70 ID:9YhKJB9Q0



「……」モグモグ



「……」モグモグ



「……辛かったら、……相談しても良いのよ」



「え?」



「あんたがそうやって部屋に篭る時は、いつも決まってなにかに悩んでる時だけ」



「今回も、……なにかあったんでしょ?」



「話してみなさい。一人で抱えてるよりも、ずっと楽になるわ」



「……あたし、最近おかしいの」



「プロデューサーを恋愛対象に見てる人は嫌いだって言われて……」



「そんな風に見てないのに……」



「……ずっと胸が痛くて、……苦しくて、……自分のことがよく分からないくなっちゃった」



「……そう」

236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/11(木) 13:52:31.43 ID:9YhKJB9Q0


「えへへ、やっぱり変だよね?」



「ぜんぜん変なことじゃないわ」



「まだ自覚してないみたいだけど、それって恋してるってことじゃないの?」



「……アイドルがプロデューサーに恋するワケないもん……」



「そんなの誰が決めたの?」



「あんたの好きになった人が、偶然プロデューサーだった」



「ただ、それだけのことじゃない」



「……それでも、プロデューサーさんに迷惑はかけたくないよ」



「あ、そう」






「じゃあ、私が貰うわ」








「ぇ?」

237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/11(木) 13:53:19.69 ID:9YhKJB9Q0


「だって、いらないんでしょ? なら、私が貰うって言ってるのよ」



「……ダ」



「実はあのプロデューサー、ちょっと好みなのよね。そのまま旦那にしちゃおうかしら?」



「ダメーーーーーーーッ!!!!!」



「なんで? 別に私が誰を好きになっても愛には関係ないでしょ?」



「そ、そうだけど! やっぱりダメーーーッ!!!」



「なによそれ。矛盾してるわ」



「うぅ……、分かってるよ……。でもプロデューサーさんだけはダメなの〜ッ!!」



「じゃあ、愛にとってあのプロデューサーはなんなの?」



「分かんないよ!」



「……いつも応援してくれて、……あたしのこと、ちゃんと見てくれて……」



「……頼りになる人って感じだったのに……」



「いつの間にか……あたし……」グスッ



「好きになってた?」



「うん。……うん!」コクッ

238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/11(木) 13:53:54.97 ID:9YhKJB9Q0


「やっと素直になったわね」



「愛にとってプロデューサーがどんな人なのか……。それは自分自身でよく分かってるじゃない」



「気持ちを隠しても、辛いだけなんだから」



「ママ……」



「たくさん障害があるかもしれない。でもね、私は愛を応援するわ」



「だから泣き止みなさい。かわいい顔が台無しよ?」



「……ありがと、……ママ」



「ふふっ、お礼なんていらないわ」



「だって、女が恋をするのに理由はいらないもの」


――
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/11(木) 13:54:58.75 ID:9YhKJB9Q0
また後で投下します。
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/11(木) 18:07:08.61 ID:9YhKJB9Q0



「予想通り、満員御礼だな」



「カメラの数も今までと比べ物にならないくらい多いですよ!」



「半分くらい日高 舞が目当てみたいだがな」



「それだけママの人気って凄いんですね」



「いや、違うな。ただ話題性があるから注目してるだけだと思う」



「どういうことですか?」



「お前と日高 舞がぶつかれば親子対決になるから、マスコミとしては理想的なシナリオだ」



「そうはならなかったとしても、日高 舞の優勝・敗退はどっちにしても影響力があるからな」



「ヘタしたら優勝者より日高 舞のことで持ちきりになるじゃね?」



「それってママが有利すぎじゃないですか! 不公平です!」



「そうとも言えないぞ?」

241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/11(木) 18:07:36.35 ID:9YhKJB9Q0


「さっきも言ったが、順当に行けば決勝で日高 舞と対決することになる」



「そこで勝てば観客もマスコミもお前の実力を認めざるを得ないだろ?」



「確かに!」



「夢だった母親越えも実現するし、話題もトロフィーも全部お前のものだ」



「!!」



「まぁ、勝てなかったら逆に負け犬の称号を付けられるけどな」



「も〜〜ッ!! なんでそんなこというんですかー!!」



「なんで怒ってるんだ?」



「やる気をなくすようなこと言ったからですよ!!」



「ホントのことじゃん」



「ホントのことでも言わなくて良いこともあるんですよ!」



「自分で言ってたじゃないですか!!」



「お〜、よく覚えてたな。えらい、えらい」ナデナデ



「えへへ」



「とりあえず初戦は961プロだから、挨拶しに行こうな〜」テクテク



「はい!」






「……あれ?」


――
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/11(木) 18:08:44.07 ID:9YhKJB9Q0


――コンコン。


黒井
「入れ」



「失礼します」



「失礼します!」


黒井
「フン。二世プロデューサーに二世アイドル……。偽者のオンパレードだな」



「ははっ、いきなりキツイお言葉ですね」


黒井
「それで、この楽屋になんの用だ?」



「初戦の相手が961プロさんだったので、挨拶させて頂こうかと思いまして伺いました」



「よろしくお願いします!」


黒井
「ほぅ。弱小プロダクションにしては律儀だな」



「小さなプロダクションだからこそ、礼儀を大切にしてるんですよ」


黒井
「他の事務所にも見習わせたいくらい殊勝な心がけだ」



「お褒めに預かり光栄です」



「それでは挨拶が済みましたので、そろそろ失礼させて頂きます。お互いに頑張りましょう」スッ

243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/11(木) 18:09:47.48 ID:9YhKJB9Q0

黒井
「この手はなんだ?」



「握手ですよ。やはり最後は握手で締めたいので」


黒井
「悪いが、弱者と交わす気はない」



「そうですか……。それは楽しみです」


黒井
「なに?」



「だって、このステージが終わったら黒井社長の方から握手して下さるんでしょう?」


黒井
「ほぅ……。ザコにくせに吠えるではないか」


黒井
「勝てる見込みがあるとでも?」



「勝敗を決めるのは観客たちですよ? 私たちの自信なんて関係ありません」


黒井
「フン。同じ意味に聞こえるが?」



「どうでしょう? 手の内を曝す勝負師を見たことが無いので」


黒井
「なるほど……。フフッ……、フハハハハハハッ!!」


黒井
「気に入ったぞ、小僧。ハッタリとはいえ、おもしろい!」

244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/11(木) 18:10:36.72 ID:9YhKJB9Q0

黒井
「我がジュピターが貴様たちに王者の風格を見せ付けてやろう!」



「勘違いをしないで下さい。王を決めるのは、いつだって民ですよ」



黒井
「フハハハハッ!!」



翔太
「クロちゃん楽しそうだね」


冬馬
「くぅ〜〜ッ! これが大人のやり取りか! 熱いぜッ!」



「プロデューサーさん、怖いです……」オロオロ


北斗
「大丈夫かい、お嬢さん?」


――
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/11(木) 18:11:46.82 ID:9YhKJB9Q0



「やっちまった……」



「後悔するなら止めとけば良かったじゃないですか!」



「いや〜、あの見下した顔がムカついて」



「いや〜。じゃないですよ!」



「ま、なんとかなるだろ」



「なんでそんなに楽観的なんですか!」



「勝てると思ってるから」



「え?」



「逆に聞くが、挨拶に行った時にビビったり緊張したか?」



「してませんけど、関係ないじゃないですか!」



「アホ。かなり重要なポイントだ」



「緊張したりビビってるヤツは自分を下に見て負けるイメージを持ってるんだよ」

246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/11(木) 18:12:45.56 ID:9YhKJB9Q0


「お前は特にそういう素振りがなかったから、たぶん相手を同等に扱ってるんだろ?」



「そうですけど……」



「なら大丈夫だな。勝てる」



「だから、なんでそんなに言い切れるんですか!」



「それだけ評価してるってことだよ」



「あ……ぅ」



「なんだ照れてるのか? カワイイ〜」



「からかわないでくださいよーーッ!!」



「顔がトマトみたいに赤くなってるぞ?」クスクス



「プロデューサーさん!!!」



「逃げろ〜」クスクス


――
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/11(木) 18:14:40.90 ID:9YhKJB9Q0
今日はここまでにします。

248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/12(金) 07:16:25.38 ID:W2XhCGC10

更新のペースが早くて嬉しいです
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/12(金) 18:00:15.36 ID:pMK4YE4V0


『今、君の裁きで……』


――ワーーーーーーーーッ!!!! キャ〜〜〜〜〜ッ!!!




黒井
「クックック。これがジュピターの実力だ」



「確かに素晴らしいグループです」



「冬馬さんがナイト、翔太さんはルーク、北斗さんは、……ビショップかな?」



「それに黒井社長というキングもいる。弱いワケがない」


黒井
「ほぅ……。貴様、チェスも嗜むのか。ますます気に入った」



「どうも」

250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/12(金) 18:01:07.24 ID:pMK4YE4V0

黒井
「だが、貴様の持ち駒はポーンとキングのみ。潔く負けを認めたらどうだ?」



「愛さんはクイーンですよ? それに、キングは他にいます」



(クイーンを守るために自分を売った、バカな王様だけどな)


黒井
「……ならば貴様はなんだ?」



「私ですか? そうですね……。あえて挙げるとするならプレイヤーですかね」


黒井
「プレイヤー?」



「えぇ。勝つも負けるも私次第。だからプレイヤーが妥当でしょう」


黒井
「面白い表現をするな。だが、この戦況を覆せるとでも?」



「これくらいで勝った気になってもらっては困ります」


黒井
「なんだと?」



「笑うのは、……愛さんのステージが終わってからにして下さい」

251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/12(金) 18:01:56.00 ID:pMK4YE4V0

黒井
「あんな小娘になにができる。この歓声が聞こえないのか?」


――キャ〜〜〜〜〜ッ!!!



「聞こえてますよ。うるさいくらいにね」



「ですが、勝負というのは最後まで分からないもの」



「それを彼女が証明してくれますよ」


黒井
「フン。どう足掻いたところで結果は決まってる」


――ワーーーッ!!



「始まりましたね」


黒井
「……」


――
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/12(金) 18:03:29.88 ID:pMK4YE4V0



「まるぐるる」



「もくもくも」



「あっとゆうまに」



「はなまるです」


――ワ〜〜〜ッ!!




黒井
「小娘のファンはそこそこ盛り上がっているな」



「……」



(そうだ、それで良い。まずは自分のファンを盛り上げろ)



(後は……、どこまで“魅せるか”だな)






「あっとゆうまに」



「はなまるです♪」


――ワ〜〜〜〜ッ!!!

253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/12(金) 18:04:10.00 ID:pMK4YE4V0




黒井
(……? やけに曲の終わりが早い)


――〜♫〜♬〜♪


黒井
(曲調が変わった? ――まさかッ!?)


黒井
「メドレー……だと……!?」

254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/12(金) 18:04:38.77 ID:pMK4YE4V0






「GO MY WAY!! GO 前へ!!」



「頑張ってゆきましょう」







「驚きました?」


黒井
「当たり前だ!! 貴様、ふざけているのか!?」



「至って真面目ですよ」


黒井
「どこが真面目だ! この大舞台でのメドレーなどデメリットでしかないではないか!」



「そうとも言えないですよ?」


黒井
「なに?」

255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/12(金) 18:05:36.96 ID:pMK4YE4V0


「確かにメドレーはデメリットが大きいです」



「雰囲気を壊す・盛り上がりにくいなど、リスクを考えると良い選択とは言えないですからね」



「ですが、逆に言えば雰囲気を変える一つの手法と言えるのではないでしょうか?」


黒井
「回りくどい説明をごくろうだな」


黒井
「結局、我がジュピターに負けを認めてるのと同じではないか」



「……あくまで今のは一般論。私の狙いは別にあります」


黒井
「フン。見苦しい負け惜しみだな」



「ふふっ。そろそろサビに入りますね」


――
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/12(金) 18:06:43.01 ID:pMK4YE4V0


――〜♬〜♪〜♫



「みんなも一緒に歌おーーッ!!!」


――ゥオオオオオオオオ!!!!!





「GO MY WAY!!」


――『GO MY WAY!!』



「GO MY 上へ!!」


――『GO MY 上へ!!』



「ほら一人一人が」


――『ほら一人一人が』



「この世界中でOne & Only でもNot Lonely」


――『この世界中でOne & Only でもNot Lonely』

257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/12(金) 18:07:25.92 ID:pMK4YE4V0




「どちらが勝者か、……決まりましたね」グッ


黒井
「どういうことだコレは!!? 貴様、一体なにをした!?」



「気が付かれなかったようですが、“はなまる”の時点でほとんどの観客を取り込んでいました」



「愛さんの煽りもあって、最後の“GO MY WAY”で爆発たんですよ」


黒井
「……ック」ギリッ






「全ての輝き」


――『全ての輝き』



「この指に止まれ〜♪」


――『この指に止まれ〜』






「みんなありがとーーーッ!!!」


――ワ〜〜〜〜〜ッ!!!!!! フォーー!! ヒューヒュー!!

258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/12(金) 18:08:22.43 ID:pMK4YE4V0




黒井
「小僧……、今回は負けを認めてやろう」



「……」


黒井
「手を貸せ!」



「いきなりなんですか?」


黒井
「握手だ握手! 貴様が言ったんだろ!」



「……律儀ですね」スッ


黒井
「フンッ! 私は負けてなどいない!! 忌々しい765プロに阻まれたのだ!」ギュウッ


黒井
「自惚れるな!」ギュゥウウ



「えぇ、分かってますよ」ニコッ



(イテェエエ!!! オッサンが全力で握ってんじゃねぇよ!!!)


――
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/12(金) 18:09:42.93 ID:pMK4YE4V0



「やりましたよプロデューサーさん!!」



「あぁ、見てたぞ。初戦突破おめでとう」



「もっと喜んでくださいよー!」



「まだ先があるからな。喜ぶのは優勝した時だけだ」



「むー! プロデューサーさんの冷徹人間!」ブーブー



「へっ、なんとでも言え」



「せっかく勝ったんですから、ご褒美くらいくださいよ!」



「良いぞ?」



「えっ!? ホントですか!?」



「おう。なんか欲しいのでもあるのか?」



「えっと……、その……、撫でて欲しいなって……」

260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/12(金) 18:10:14.13 ID:pMK4YE4V0


「尻を?」



「頭ですよ!!! お尻を撫でて欲しいなんて言ったら変態じゃないですか!!!」



「うむ。良いツッコミだ」



「もう!! からかうのは止めてください!!」



「やだ。お前をからかうのは俺の趣味になってるからな」



「そんな趣味は捨ててくださいよ!」



「そんな興奮するな。疲れるぞ?」ナデナデ



「ふぁ……」ポー



(これくらいは、……良いよね?)



「……」ナデナデ




(次は765プロか……)



(実力が拮抗してる者同士、どうなるか予想もつかない)



(メドレーで二曲も使ったからな……。さて、どうするか……)




「プロデューサーさん?」



「あぁ、悪い。ボーっとしてた」



「……そろそろ帰ろうか」



「はい♪」


――
261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/12(金) 18:11:22.45 ID:pMK4YE4V0



「……」



「そんな深刻そうな顔してどうしたんですか?」



「なぁ……、ちょっと聞いてくれ」



「あ、はい」



「次の765プロ戦で使う曲が、……“HELLO!!”以外ないんだ」



「……? あたしの歌、まだありますよ?」



「それはカバー曲だろ。相手が765プロじゃ使えない」



「えっ!? どうしてですか!?」



「本家にカバー曲で挑むのは逆効果だからだ」



「使えば……、負けを認めたことになる」

262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/12(金) 18:12:00.45 ID:pMK4YE4V0


「あ……」



「しかも、俺の持ってるカードは出し尽くてなにも思いつかない」



「次の試合……、不利な状況で戦うことになることだけは覚悟してくれ」



「分かりました!」



「なにもできなくて悪いな」



「そんなことないです!」



「プロデューサーさんは、あたしの為にいっぱい頑張ってくれました!」



「今度はあたしの番です!」



「……ありがとう」



「はい♪ だから頑張ったプロデューサーさんは休んでてください」

263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/12(金) 18:12:26.97 ID:pMK4YE4V0


「大丈夫なのか?」



「心配しなくても勝ってきますよ!」



「それとも信用できませんか?」



「その言い方は卑怯だろ」



「えへへ」



「こうなったら一蓮托生だ。お前に全てを託す」



「だから勝ってこい。勝って俺の所に戻って来い」



「はい!!!」


――
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/12(金) 18:14:40.99 ID:pMK4YE4V0
また明日にします。
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 13:37:22.83 ID:Ld/zp9jB0


――コンッ。コンッ。


赤羽根
「どうぞ〜!」



「失礼します」



「失礼します!」




春香
「おはよー、愛ちゃん!」



「おはようございます! 春香さん!」


やよい
「うっうー! 愛ちゃん、お久しぶりです!」


雪歩
「ヒッ!? お、男の人〜〜ッ!!」


――ワイワイ。ワイワイ。

266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 13:38:02.97 ID:Ld/zp9jB0


「……お騒がせしてすいません」


赤羽根
「ははっ、気にしないで下さい。えっと……」



「申し遅れました。876プロダクションでプロデューサーを務めているPです」


赤羽根
「ご丁寧にありがとうございます」


赤羽根
「私は彼女たちをプロデュースしている赤羽根と申します」




やよい
「うぅ……。なんだか違和感が……」


雪歩
「そういえばプロデューサーの敬語って始めて聞いたかも?」


春香
「なんだろ……、プロデューサーさんじゃないみたい……」





「……なかなか評判ですね」


赤羽根
「ははっ……」

267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 13:38:44.55 ID:Ld/zp9jB0


「……差し支えなければ、いつも通りで良いですよ?」


赤羽根
「そうさせてもらうよ」


赤羽根
「それじゃ、仕切りなおして……」コホン


赤羽根
「同じプロデューサー同士、今日は悔いのない勝負にしよう!」



「えぇ、楽しみにしています」


春香
「私たちも頑張ろうね!」



「はい! 負けませんよー!」



「それでは失礼します。愛さん、行きますよ?」



「お邪魔しましたー!」


――
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 13:39:15.08 ID:Ld/zp9jB0



「さて、やることがなくなったな」



「ご苦労さまでした!」



「ホントに付き添わなくて良いのか?」



「はい! もう一人でも大丈夫ですよ!」



「ホントかよ……」



「あ、もしかして心配だったりします?」



「あぁ、頼りなさ過ぎて逆に心配だ」



「失礼ですよ!」



(……俺が付き添ったところで、なにもすることがないか)

269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 13:40:14.57 ID:Ld/zp9jB0


「じゃあ、行くわ。観客席のどっかで見てるけど、探したりするなよ?」



「分かってますよ!」



「ちゃんと勝ってきますから、その時はまたご褒美をください!」



「最近やけに甘えてくるな」



「良いじゃないですか!」



「まぁ、モチベーションが上がるんなら、なんでも良いけど」



「それじゃあ、プロデューサーさん! また後で!」



「おう。勝てたらなんでも言うこと聞いてやるよ」



「その言葉、忘れないでくださいよ?」



「忘れねぇよ。さっさと楽屋に戻れ」



「はーい♪」


――
270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 13:40:49.03 ID:Ld/zp9jB0



「ふぅ」



(あの時はなにも言わなかったが、……少し緊張してたな)



(ステージが始まる前までに治っていれば良いが……)



――「隣に失礼してもよろしいかい?」



「どうぞ」


――「ありがとう」



「お久しぶりですね、善澤さん。今日はプライベートですか?」


善澤
「いや、仕事半分かな」



「ご苦労様です。お連れの方は、……高木社長ですか?」

271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 13:41:21.46 ID:Ld/zp9jB0

高木
「おや? どこかで会ったかな?」



「いえ、お会いしたことはありません」



「ですが、噂は聞いていますよ」


高木
「ほう。どんな噂だい?」



「あなたにスカウトされた者は必ず大成するようです」


高木
「ハッハッハ。言い過ぎじゃないのかい?」



「いえ、実際にあなたがスカウトされた方々は成功している者ばかりです」



「それだけ才能を見抜ける力があるということが広まっているのではないでしょうか」


高木
「なんだか恥ずかしいな……」


善澤
「年甲斐もなく照れてるな」クスクス

272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 13:42:09.17 ID:Ld/zp9jB0

高木
「善澤君……、あまり私をからかわないでくれよ」



「仲が良いのですね」


善澤
「まぁね」


善澤
「ところで、あのレストランの方はどうなったんだい?」



「その節はありがとうございました。おかげ様で順調に回復してますよ」


善澤
「それは良かった。今度また取材に行って良いかい?」



「えぇ、喜んでお受けします」



――『みんなー! いっくよー!』



高木
「ぉお! 始まったよ善澤君!」


――
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 13:43:38.79 ID:Ld/zp9jB0
夜にまた来ます。

書き溜めの方が完結しましたので、これからは更新する量を増やしていきたいと思います。
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/10/13(土) 13:44:30.01 ID:upvqdEfJo
ほう、それは楽しみだな
一旦、乙
275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 17:56:03.01 ID:Ld/zp9jB0


『ALREADY!! WE'RE ALL LADY!!』


『始めたい。行(ゆ)けばなれる。もっと――』


『全体みんなONLY 1』


――ヮワワァアアアーーーーーーーッ!!!!!



(歓声がすごい。……まるで地響きのようだ)


高木
「ォオオオオオオ!!!」



(というか隣がうるさい)

276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 17:56:38.40 ID:Ld/zp9jB0


――ワーーーッ!!




(始まったか……)



『……』



(なんだ? 様子がおかしい)


(まさかアイツ、緊張して歌えないのかッ!?)


高木
「……?」



(まずい! このままじゃ演奏が始まっちまう!!)



(とにかく落ち着かせないと!)



(だが、どうやって!?)


高木
「君、大丈夫かい?」



(あ〜、ちくしょう! 冷静に考えろ!)



(まず伝える手段がねぇ! どうする!? どうする!? どうする!? どうする!?)


高木
「顔色が優れないようなら医務の方へ案内するが……」



(あっ!!)

277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 17:57:28.50 ID:Ld/zp9jB0


「――それだ」


高木
「分かった。案内しよう。キツイようなら肩を貸すよ?」



「高木社長! そのサイリウム貸して下さい!」


高木
「え? 肩じゃないの?」



「早く渡せッ!!」


高木
「わ、分かった。分かったから怒鳴らないでくれ。怖いんだが……」スッ



「良しッ! 全色ある!」



「危ないから下がってて下さい!」


高木
「な、なにをする気だね!?」



「一か八かのギャンブルなんて性に合わないが、贅沢も言ってられないな……」


――
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 17:58:40.64 ID:Ld/zp9jB0



(か、か、か)



(歌詞が思い出せないですーーーーーーッ!!!?)



(さっきまで大丈夫だったのになんで!?)



(どうしよう!? どうしよう!? どうしよう!? どうしよう!? どうしよう!!?)


――ヒュルルルルル。



(……?)


――ヒュルルルルル。ヒュルルルルル。




(……サイリウムの、……お手玉?)



(暗くて顔は分からないけど、たぶんこんなことするのプロデューサーさんしかいない……)



(……応援してるって意味なのかな?)


――ヒュルルルル……。



「クスッ♪」



(もう! なにやってるんですかプロデューサーさん!)



(でも――)


――〜♫〜♪〜♬



『今、目指してく私だけのストーリー』


『BRAND NEW TOUCH 始めよう SAY “HELLO!!”』



(ありがとうございます!)


――
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 17:59:56.98 ID:Ld/zp9jB0



(ふぅ。なんとか落ち着いたみたいだな……)パシッ



(ったく。あのじゃじゃ馬アイドルめ。なにが一人で大丈夫だよ)


高木
「わ、私のサイリウムを放り投げてなにがしたかったんだね?」



「あぁ、すいません。ご迷惑をおかけしました」



「あの……、コレお返し――」


警備員
「コラーッ! なにやってるんだーッ!!」



「ヤベッ!」ダッ


高木
「あ〜! 私のサイリウム〜!」



「後で必ず返しますッ!」ピュー


――
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 18:01:11.02 ID:Ld/zp9jB0



「プロデューサーさん!!」



「よう。遅かったな」



「当たり前ですよ! どこ行ってたんですか!」



「ちょっとリアル鬼ごっこをしてた」



「サイリウムなんて投げるからですよー!」



「緊張して歌えなかったお前が言うな」



「ぁぅ……。それは自分でも反省してますよ」



「でもプロデューサーさんがいなくなったら意味ないじゃないですかー!」



「まぁ、勝ったんだから良いじゃねぇか」

281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 18:01:38.36 ID:Ld/zp9jB0


「あれ? あたし結果報告してませんよ?」



「顔に出てる」



「そんなに分かりやすいのかなぁ……」



「恵比寿みたいなニヤケ面だぞ?」



「えびす?」



「鯛を抱えてる中年のオッサンだ」



「あたしは女ですよ!!」



「そうだな。訂正しよう」



「お○め納豆のパッケージみたいな顔だった」



「バカにしてるんですかー!?」



「むしろ個性的だと褒めたつもりなんだが?」クスクス



「そんな個性いりませんよーーー!!」


――
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 18:02:28.53 ID:Ld/zp9jB0



「ご褒美ください!」



「突然どうした?」



「言ったじゃないですかー! 勝ったらなんでもしてくれるって!」



「あぁ、そんなこと言ったな」



「だからご褒美ください!」



「よしよし」ナデナデ



「むー!」ポー

283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 18:03:45.61 ID:Ld/zp9jB0


「ありゃ? 違ったのか?」



「違いますよー!」



「じゃあ、なにすれば良いんだよ」



「……ごはん」



「は?」



「ごはん食べに行きましょうって言ってるんです!」



「腹減ってるのか?」



「もうそれで良いですよ……」



「……? まぁ、良いや。行き先は俺が決めて良いか?」



「構いませんよ」



「サンキュー」

284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 18:04:31.41 ID:Ld/zp9jB0


「まずは765プロに行かなきゃな……」



「なんでですか?」



「……コレ」スッ



「あっ! お手玉に使ってたのですね!」



「……盗ったんですか?」



「盗るか! ちょっと返しそこねただけだ!」



「知っててからかったんです!」



「……良い性格してやがる」


――
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 18:05:11.21 ID:Ld/zp9jB0



「お久しぶりですね、オーナー」


――おっ! 愛ちゃん久しぶり。



「お久しぶりです!」


――ん? なにか言ったか?




「いえ、なにも……」



――とりあえず立ち話もなんだし――



「あ! ステージで歌った時の写真だ!」



「いつの間に……」

286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 18:05:37.93 ID:Ld/zp9jB0

――念のためプロのカメラマンを雇ったのは正解だった。



「あたしってこんな表情してたんだ」


――ちなみに、その時のプロデューサーの顔がコレ。



「なんでそんなのがあるんですか!?」


――どうぞ。



「貰って良いんですか!? ありがとうございます!」



「ちょっ――」


――ライターあるよ?



「燃やしませんよ!」


――ハッハッハ。冗談だよ。



「もう勝手にやってくれ……」



「プロデューサーさんが拗ねちゃいました!」


――豆腐メンタルめ。仕方がない。個室に案内しよう。



「プロデューサーさん、行きますよ?」


「……ハァ」ズーン


――
287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 18:06:24.89 ID:Ld/zp9jB0



「おいし〜っ!」



「オーバーだろ」



「ホントに美味しいんですよ! 食べてみますか?」



「いらね」



「むー! じゃあ、少しだけ交換してみましょうよ!」



「コッチのも食べたいのか?」



「はい♪」



「なら同じの頼め」



「そんなに食べられないですよー!」

288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 18:07:02.35 ID:Ld/zp9jB0


「……ハァ」



「ほらよ。勝手に取ってくれ」ヒョイ



「あーん♪」



「……なんの冗談だ?」コトッ



「なんでもしてくれるって言ったじゃないですか!」



「だから今日一日たっぷりプロデューサーに甘えます!」



「意味が分からない」



「そもそもお前の要求は“ご飯に行くこと”じゃないのか?」



「それは提案しただけですよ!」



「なら紛らわしい言い方をするなよ」



「ご褒美ください。って言った後だから勘違いしたぞ」

289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 18:07:57.46 ID:Ld/zp9jB0


「あたしはなにも要求してないですよーだ!」



「なら俺も従わなくて良いな」ヒョイ



「ぁあ! さっきしました! 甘えさせて欲しいって言いました!」アタフタ



「知るか。そういうことがしたいんなら彼氏でもつくれ」



「お兄ちゃんに甘えるのは妹の権利です!」



「俺は一人っ子だ!」


――
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 18:13:31.30 ID:Ld/zp9jB0

ご飯食べてたらまた来ます。

291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/13(土) 19:13:40.91 ID:kpjkXqMY0

完結とはかなり期待して待ってる
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 20:29:59.25 ID:Ld/zp9jB0



「いよいよ最後の舞台だな」



「はい!」



「調子はどうだ?」



「絶好調です!」



「緊張」



「してません!」



「負けるイメージ」



「ないです!」



「セクハラ」



「いらないです!」



「ご褒美」



「いらないです! ……あっ……」

293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 20:30:37.14 ID:Ld/zp9jB0


「へー、いらないのか?」クスクス



「いります! いりますよ! 当たり前じゃないですかー!」



「どうしよっかな〜」



「遊ばないでくださいよー!」



「まぁ、コンディションは良いみたいだな」



「そろそろ対戦相手の顔でも拝みにでも行こうか」



「はい!」


――
294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 20:32:10.38 ID:Ld/zp9jB0


――コンッ。コンッ。


まなみ
「ど、どうぞ!」



「失礼します」



「失礼し……まなみさん!!」


まなみ
「あ、愛ちゃん。久しぶりだね」



「私もいるわよ?」



「知ってるよー! でも今は、まなみさんの方が大事なの!」



「ぐぬぬ」

295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 20:32:38.91 ID:Ld/zp9jB0


「あなたが“まなみさん”ですか?」


まなみ
「あ、はい!」



「私が始めて876プロダクションに出勤した時、石川社長が嘆いてましたよ」



「“まなみを辞めさせなきゃ良かった〜”って」


まなみ
「あははっ。絶対そんなこと言ってませんよ」



「おや?」


まなみ
「社長は誰かに弱みを見せるような人じゃないです。それに――」



「それに?」


まなみ
「モノマネが似てませんでした」ニコッ



「ははっ。これは一本取られました」クスクス


まなみ
「ふふふっ」



「ところで、あんた達なにしに来たの?」



「あぁ、忘れてました。愛さん?」



「ママ! 今日は負けないよ!」



「なるほど、宣戦布告に来たのね」



「分かったわ。その勝負、受けて立とうじゃない!!」



「挨拶に来ただけなのですが……」


まなみ
「わたし達だけ取り残されちゃいましたね……」


――
296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 20:33:36.65 ID:Ld/zp9jB0



「挨拶も終わったが、伝えることはもう無いのか?」



「ありません!」



「そっか。なら、もう俺がやれることはない」



「ここから先は、お前だけの戦いだ。全力でぶつかってこい」



「はい!」



「終わったら祝勝会だ。そん時は思いっきり騒げ」

297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 20:34:06.51 ID:Ld/zp9jB0


「まだ勝ったワケじゃないのに気が早いですよ!」



「前向きな気持ちが大事なんだよ」



「現に俺は事務所の冷蔵庫を酎ハイで一杯にしてやった」



「なにやってるんですか!?」



「ビールかけがやりたかったんだが、ビール美味しくないから酎ハイで良いかなって」



「良くないですよ! 事務所が水浸しになっちゃうじゃないですか!」



「それに、あたし未成年ですよ!?」



「抜かりは無い。ノンアルコールのシャンパンも完備してある」



「そこじゃないですよーーー!!!」


――
298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 20:36:28.70 ID:Ld/zp9jB0
22時くらいからまた更新します。

ごめんなさい。
299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/10/13(土) 22:06:09.04 ID:nsw4X3Xto
あやまらないでいいのよ
300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 22:49:47.99 ID:Ld/zp9jB0



(なんだか今日はステージが広く見えるな〜)



(それに……、みんなの顔も良く見えてる)



(プロデューサーさん、探せば見つけられそうかも?)


〜♬♪〜♫〜♬


――ざわ……。えッ!? まさか!!? ざゎ……。



(やっぱり、みんな驚いてる)クスクス



(でも……、ここからはも〜っと驚いてもらうんだから!)



(プロデューサーさん、見ていてください!)



(“世界一のアイドル”に成ってみますね!)


――
301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 22:50:21.43 ID:Ld/zp9jB0



『Trust youreself どんな時も命あることを忘れないで』



『Find your way 自分の進む道は必ずどこかにあるの』


〜♫♪〜♬



「……まさか」



「まさか、あいつに“魅せられる”とはな……」





『あなたはこの地球(ほし)が選んだ大切な子供だから……』





(……異常な雰囲気だ。たかが13のガキに会場が支配されてる)



(あいつが動けば、全員の視線が動く)



(あいつが笑えば、全員が同じような表情になってる)



(まさに独壇場だな。段々あいつ専用のステージになってきた)





『hope your brightness 大丈夫。全ては光へ続いてる』



『Keep your dreams どんな想いも信じていればいつか届く』



『見守っててね。素敵な私が飛び立つまで』


〜♪♫〜♬





『この地球(ほし)に標(しるべ)はないけど、素晴らしい世界がある……』



――ワァアアアアォオオオオッ!!!!!! パチパチパチパチパチパチパチッ!!!!!!


――
302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 22:51:14.60 ID:Ld/zp9jB0



「今度はママの番だよ!」



「えぇ、蹴散らしてあげるわ!」


〜♬〜♫


――ぉお! コッチも同じ曲をぶつけてきたぞ!! 舞さんガンバレーーーーッ!!!



『ひとつの命が生まれてゆく』



『二人は両手を握りしめて喜びあって幸せかみしめ』



『母なる大地に感謝する』


―――
――


303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 22:51:42.75 ID:Ld/zp9jB0


『この地球(ほし)に標(しるべ)はないけど 素晴らしい世界がある』


――お〜〜ッ!! パチパチパチパチパチパチパチッ!!!!




「みんな、ありがと〜〜ッ♪」テクテク





(結果は一目瞭然……)



(まさか、ここまで差をつけるとはな……)





「ふふっ♪」クスクス





(……? 笑った?)





「……」テクテク





(いや、見間違いか……)





「〜♪」テクテク


――
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 22:52:27.00 ID:Ld/zp9jB0


司会者
「それでは、結果発表をしたいと思います」


司会者
「激戦を勝ち抜いた優勝者は――」


――ダンッ。


司会者
「日高 愛だーーー!!!!」


――ワァアアアァアアア!!!!! パチパチパチパチッ!!!!! おめでとーーーッ!!! 



「……」パチパチ

305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 22:53:02.54 ID:Ld/zp9jB0



「おめでとう、愛」



「ありがと、ママ!」


司会者
「会場を盛り上げてくれた二人の盛大な拍手をッ!!」


――パチパチパチパチパチパチ!!!!!!



「私はもう行くわ」



「敗者がいつまでも舞台に上がってちゃダメだもの」


――
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 22:53:44.22 ID:Ld/zp9jB0



「IA優勝おめでとう!」



「ありがとうございます!!」



「プロデューサーさんのお陰で優勝できました!」



「俺はなにもしてないだろ?」



「そんなことないです!」



「あたし、プロデューサーさんがいたから優勝できたんですよ!」



「だから、このトロフィーはプロデューサーさんが貰ってくだ――」ヨロッ



「あ、おい!」

307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 22:54:27.18 ID:Ld/zp9jB0


「あわわっ!?」


――ポフッ。



「イタタタッ……。鼻打っちゃいました〜」



「……大丈夫か?」



「あ、すいませんプロデューサーさん! すぐ退きます!」アタフタ



「いや、気にするな。疲れが足にきて動きが悪いんだろ?」



「ぁぅ……。実は……」



「そのまま休んでろ。俺が運ぶ」



「え? ――きゃっ!?」



「軽いな。もっと食べた方が良いぞ?」ダキッ



(お姫さま抱っこ〜〜〜〜ッ!?)


――
308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 22:55:16.53 ID:Ld/zp9jB0



「あの……、プロデューサーさん……」


――なんだなんだ? 愛ちゃんケガしたのかな?



「どうかしたのか?」テクテク



「……恥ずかしいです。……みんな見てるから降ろしてください……」



「歩けるのか?」



「それは……」



「なら我慢しろ。どうしてもって言うなら台車を持ってくるぞ?」



「ぅぅ……。今のままで良いです……」



「あっそ」

309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 22:56:29.23 ID:Ld/zp9jB0


(やっぱり恥ずかしいよ〜〜〜〜ッ!!!)



「なぁ、なんかお前の身体、かなり熱くなってないか?」ググッ



「え、あの……」



(プロデューサーさんの顔が近いです〜〜〜〜〜ッ!!!)



「ケガしてるなら正直に言ってくれよ?」



「い、いえ……。大丈夫れすぅ……」ギュウッ



(あ〜、もう! 自分でも分かるくらい顔が赤くなってるよーー!!!)

310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 22:57:13.44 ID:Ld/zp9jB0


「どう見ても大丈夫じゃないんだが……。ホントに大丈夫なのか?」



「あ、ひゃい!」



「ホントれすよ、ぷろりゅーさーしゃん」タラ〜



「鼻血!?」



「え? ……あっ……」



「おい!! ホントに大丈夫なのか!!?」



「あ、いえ……。コレは――」



(……よく考えたら、興奮して鼻血が出たなんて言えない……)



「ッチ!」ダッ



「ぁぅ……。どこ行くんですか……?」



「病院だよッ!!」


――
311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 22:58:02.24 ID:Ld/zp9jB0


医者
「あ〜、ただの鼻血ですね」



「は? それだけですか?」


医者
「えぇ。なにか急激に興奮するようなことですとか、ありませんでしたか?」



「あ〜、さっきのステージかな?」


医者
「それかもしれませんね。血圧も落ち着いてきましたので帰宅されても良いですよ」



「ご迷惑をおかけしました」


医者
「良いんですよ。それではお大事に」



――ガラララッ。ピシャン。

312 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 22:58:31.20 ID:Ld/zp9jB0



「……」ジト〜



「……ごめんなさい」シュン



「ハァ……」


――コツンッ。



「ァウッ!?」



「心配したんだぞ?」



「ぅぅ……。すみませんプロデューサーさん……」



「別に謝んなくて良いよ」



「見抜けなかった俺も悪いし、お前もこんなこと言いたくなかったんだろ?」



「はい……」



「なら、良い。お互い、このことは水に流そう」



「だけどな、ホントに具合が悪かったらちゃんと言うんだぞ?」



「分かりました……」シュン


――
313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 23:00:36.28 ID:Ld/zp9jB0



「ただいま帰りましたー」



「ただいまです!」


石川
「二人ともお帰りなさい」


絵理
「愛ちゃん!」



「IA優勝!」



『おめでとーーっ!!』



――パァン! パァン!



「わーーっ! みなさん、ありがとうございます!!」



「それじゃ、そろそろ始めようか」


絵理
「愛ちゃんが好きなの全部あるよ」



「あ、ホントだ! やった〜!」


――ワイワイ、ガヤガヤ。

314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 23:01:15.52 ID:Ld/zp9jB0


「あれ? シャンパンだけ?」


石川
「あぁ、それなら全部765プロにあげたわ」



「ぇえ!? せっかく買ってきたのに……」


石川
「それよりP。プレゼントがあるんだけど、受け取ってくれない?」



「有給ですか?」


石川
「もっと良いものよ。だから近くに来なさい。渡しにくいでしょ?」



「あ、はい。分かりました」


石川
「良い子ね♪」

315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 23:02:11.69 ID:Ld/zp9jB0


「それで、プレゼントってなんですか?」


石川
「それは――」



――ゴンッ!!!




「〜〜〜〜〜〜〜ィッ!!?」




石川
「私の鉄拳よ!」



「な、なにするんですか!」


石川
「それはコッチのセリフよ!」


石川
「お酒で冷蔵庫の中を一杯にするなんてなに考えてるの!!」



「今日くらいはハメを外しても……」


石川
「限度ってものがあるでしょうがーー!!」



「す、すいません」

316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 23:03:04.76 ID:Ld/zp9jB0

石川
「私がどんな気持ちでお酒を渡したか分かる!?」


石川
「高木社長から同情された私の心境が分かるの!?」



「そんなに嫌なら、捨てたら良かったじゃないですか……」


石川
「口答えしないでちょうだい!!」


――ガミガミガミガミ。



「クフッ」プルプル


絵理
「ふふふっ」クスクス



「あははっ!」


『あはははははははははっ!!!』


――
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 23:04:12.18 ID:Ld/zp9jB0



絵理
「そろそろ良い時間だね。帰ろっか」



「うん。駅まで送ってくよ」



「おつかれさまでした!」


絵理
「あれ? 愛ちゃんは帰らないの?」



「いつもプロデューサーさんが送ってくれるんです!」


絵理
「今日は諦めた方が良いんじゃない? ほら……」




石川
「親しき仲にも礼儀あり! 外面が良くてもプライベートがダメなら全てダメ!」


石川
「実力はあるんだから、ちゃんとしなさい!」



「……zZZ」スゥスゥ


石川
「後、ほかにも――」


――クドクド。クドクド。





「まだ怒られてますね……」


絵理
「わたし達と一緒に帰る?」



「う〜ん……。やっぱりプロデューサーさんと一緒に帰ります!」


絵理
「そっか……。それじゃあ、気をつけて帰ってね」



「はい。ありがとうございました!」


『お疲れさまでした〜!』


――
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 23:04:50.74 ID:Ld/zp9jB0


石川
「私だって鬼じゃないのよ?」


石川
「今月のボーナスだって考えてるし、有給だって使わせてあげたい」



「……」チラッ


石川
「だけど、プロデューサーはあなたしかいないの。分かってちょうだい……」



「そろそろ愛さん送らないといけないんで帰りますね」


石川
「あら、もうそんな時間なの? だいぶ話し込んでたみたいね」チラッ


石川
「良いわ。戸締りは私がやるから送ってあげなさい」



「ありがとうございます」



「あ、終わりましたか?」


石川
「えぇ、二人とも帰って良いわよ」



「おつかれさまでしたー!」



「お疲れさまでした」


――
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 23:06:08.59 ID:Ld/zp9jB0



「あ〜、首イテェ……」ポキポキ



「大丈夫ですか?」



「あぁ。危うく寝そうになるくらい長かった……」



「バッチリ寝てましたよね?」



「あ、バレてた?」



「怒られてるんですから、ちゃんと聞かないとダメじゃないですか〜!」



「お前も説教かよ……」



「あたしも社長も、プロデューサーさんがしっかりしてたらなにも言いませんよ!」



「分かった。分かった」



「これからは反面教師としてちゃんと生きてくから安心しろ」



「まったく分かってないじゃないですかーー!!」


――
320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/13(土) 23:07:26.87 ID:Ld/zp9jB0
今日はここまでにします。

質問ですが、明日、一日かけて完結させるのと、二日に分けて完結させるのと、どちらが良いですか?
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/10/13(土) 23:10:31.84 ID:nsw4X3Xto
一日の方がいいかな
322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/13(土) 23:29:55.38 ID:vUe2rmFNo
密度が濃くなる方で
323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/14(日) 00:00:38.95 ID:4aVNKJSu0

お任せで
324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/14(日) 00:22:14.21 ID:QtlMkZlUo
早く読みたいから1日と言いたいけど、そうすると楽しみが一つ減るからどっちでも
お任せする
325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/10/14(日) 00:23:57.50 ID:AMWcKtzRo
どちらが良いかと聞いてるのに、選択せずに書き手に任せるというのはどうなのだろうか
1日でお願いする
326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 07:04:48.96 ID:3Yps3qsI0



「おはよーございます!」



「おはよう。今日は最終日だぞ?」



「ドラマですか?」



「あぁ。放送枠を限界まで押さえるらしいから、撮影時間は長引くかもな」



「最後だからって気ぃ抜くなよ?」

327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 07:05:36.07 ID:3Yps3qsI0


「大丈夫ですよ! そんなヘマはしません!」



「……ピーピー泣いてた頃と比べると、ずいぶん大きくなったな」



「あたしだって成長するんですよ!」



「確かに、見違えるくらいに成長したよ。お前は……」



「えへへ。そうですか?」



「あぁ。立派な巨乳アイドルだ」



「はい?」



「ん?」



「あれ? 今さっきまで、あたしの“人間性”を褒めてませんでしたか?」



「……? 俺はお前の“バスト”を褒めてたんだが?」



「あぁ……、なるほど……」



「変なヤツだな」



「紛らわしいんですよ!!! 勘違いしたじゃないですかーー!!!」



「知るかよ」


――
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 07:06:27.50 ID:3Yps3qsI0


――「映像確認、終わりました。日高さん、クランクアップです」



「ありがとうございましたー! みなさん、おつかれさまです!」


――『お疲れ様です』



「やっと終わったか。かなり時間が掛かったな」



「こんな時間まで撮影したの始めてですよ〜」



「それだけ期待されてるってことだ」



「そう考えると、なんだか嬉しいですね!」



「そうだな。俺も同じだ」



「プロデューサーさんも?」

329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 07:07:41.01 ID:3Yps3qsI0


「まぁ、嬉しいというより自分の企画が評価されて鼻が高い感じかな?」



「あたしのお陰ですね!」



「ハハッ。確かにお前の実力があってこその評価だ」



「ありがとな、愛」



「……ぁぅ。冗談だったのに恥ずかしいです」



「というかプロデューサーさん! さっきなんてッ!!?」



「え? お前のお陰だって――」



「その後ですよ!」



「……ありがとな、愛?」

330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 07:08:29.61 ID:3Yps3qsI0


「やった! 聞き間違いじゃないんだ!」



「なんで喜んでるんだ?」



「だって、初めてプロデューサーさんが名前で呼んでくれたんですよ!」



「そうだっけ!」



「そうですよ! あたしがお願いしても今まで“お前”だったじゃないですか!」



「呼んでくれないのかな〜? って、ちょっと諦めてたんですよ!」



「あ〜、そうかもな」



「これからはちゃんと名前で呼んでくださいね?」



「気が向いたらそうする」



「え〜。呼んでくださいよー!!」


――
331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 07:09:45.29 ID:3Yps3qsI0



「さて、もうこんな時間か……」



「日付が変わっちゃいましたね」



「時間も遅いし、メシ食って帰るか」



「わ〜い! ゴチになります!」



「……お前、俺より稼いでるだろ」



「おこづかい制なんだから仕方がないじゃないですか!」



「……ハァ。まぁ、良いや。なんかリクエストあるか?」



「そうですね〜。久しぶりにお魚が食べたいです!」



「魚かぁ……。そういえば、ちょうど良い店があったな」



「さっそく行きましょう!」


――
332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 07:11:12.18 ID:3Yps3qsI0


ウェイター
「いらっしゃいませ〜」



「二名です。予約してないんですけど、大丈夫ですか?」


ウェイター
「構いませんよ〜。二名様ご来店で〜す」



「こ、個性的な店員さんですね!」



「面白いだろ? けど、部屋の方はもっと面白いけどな」



「期待しちゃいますよ?」



「むしろ裏切ったことがあったか?」



「良い意味でならたくさんありますね!」


ウェイター
「着きました〜。それではごゆっくり〜」ガラッ


――
333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 07:12:16.64 ID:3Yps3qsI0



「キレイ……」



「驚いた?」



「驚きますよ! だってこの部屋、まるで水族館じゃないですか!」



「アクアリウム・レストランだから間違ってはいないな」



「……」ポー



「もう自分の世界ですか」



「……」ジー

334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 07:12:54.33 ID:3Yps3qsI0


「とりあえず、なにが食べたいか決めようぜ?」



「……」ジー



「おーい。聞いてるのかー?」



「……」ジー



「……聞こえてんだろ愛ー?」



「はい、なんですか?」



「……無言で訴えかけるのは止めろ」



「なんのことですか♪」



「今さらとぼけんな」ポフッ



「ぁうっ!」


――
335 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 07:13:46.05 ID:3Yps3qsI0



「美味しかった〜!」



「喜んでもらえてなによりだ」



「また来ましょうね!」



「俺としては酒が飲めるヤツと来たいんだが……」



「じゃあ、あたしが大人になった時にまた来ましょうよ!」



「何年後だよ……」

336 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 07:14:25.16 ID:3Yps3qsI0


「その時は二人でお酒を飲みながらゆっくり過ごしましょう!」



「お前と酒を飲むとか……、想像できねぇな」



「その頃には飲めるようになってますよ! ……たぶん」



「自分でも想像できてねぇじゃん」



「ぁぅ……」



「落ち込むなよ。酒なんて飲めなくてもマイナスにはならないぜ?」



「でも……、プロデューサーさんとお酒、交わしたいです……」



「まっ、七年後のお楽しみだな」



「あっ……、それって!」



「そろそろ帰るぞ。お子様はもう寝てる時間だ」



「はーい♪」


――
337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 08:12:47.23 ID:3Yps3qsI0



「おはようございます!」


石川
「おはよう、愛」ニコニコ



「社長! おはようございます! それより、なにか良いことあったんですか?」


石川
「あら? 分かる?」ニコニコ



「分かりますよ! すっごい笑顔ですもん!」


石川
「実は昨日、こんな手紙が来てたのよ」ピラッ



「なんですか、それ?」


石川
「実はこの手紙――」
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 08:13:49.95 ID:3Yps3qsI0








石川
「日本アカデミーからの招待状なのよ!!」







339 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 08:14:21.23 ID:3Yps3qsI0


「へ〜。そうなんですか」


石川
「……リアクション薄くない?」


石川
「もう少し驚いてもらわないと、興奮してた私がバカみたいなんだけど……」



「そんなこと言われても、その“あかでみー”ってなんですか?」


石川
「そう言われると説明が難しいわね……」


石川
「後はあなたに任せるわ」ポンッ



「えッ!? 丸投げですか!?」


石川
「そうよ。私じゃムリ」



「ハァ……。分かりました」

340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 08:14:55.08 ID:3Yps3qsI0


「とりあえず、愛さん。おめでとうございます」



「あ、はい! ありがとうございます?」



「実はあの手紙、もう一つのIAへの出場が決まった通知だったんです」



「ぇええ!!? IAって他にもあるんですか!?」



「まぁ、今回は映画やドラマ限定のIAだと思って下さい」



「分かりました!」



「ちなみに、名前を呼ばれるだけなので変な期待しないで下さいよ?」



「分かってますよー! あたしが出演した作品が選ばれたら勝ちってことですよね?」



「……そんな感じです」


――
341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 09:11:46.98 ID:3Yps3qsI0



「それにしても、なんでノミネートされたんでしょうね」


石川
「細かいことは良いのよ! これで愛が最優秀主演女優賞なんて受賞したら……」


石川
「ハッ! 今のうちに私のドレスも仕立てなきゃ!」



「落ち着いてください!」



「社長が参加する意味が分からないし、まだエントリーされただけです」



「それに私は受賞できるとは思いません」


石川
「どういうことよ!?」



「再現ドラマですよ? とてもじゃないですけどムリかと……」


石川
「あんたバカね〜」フフンッ



「なにがです?」イラッ


石川
「愛は自分を“演じてる”のよ? 絶対に受賞できるわ!」



「……ありえねー」


――
342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 09:14:01.36 ID:3Yps3qsI0


司会者
『それでは発表したいと思います』


司会者
『最優秀主演女優賞(ドラマ部門)、受賞者は――』




司会者
『日高愛さんです!!』


――ォオオオオ!! パチパチパチパチパチパチパチパチッ!!!



「……マジかよ」



「やりましたよプロデューサーさん!! あたしの優勝です!!」



「おめでとー」パチパチ



「もっとやる気だしてくださいよ!」



「お前がナンバーワンだ!」キリッ



「ありがとうございます!」



「それじゃ、行ってらっしゃい」



「はい! 行ってきます!」


――
343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 09:18:25.27 ID:3Yps3qsI0



――『受賞、おめでとうございます』



『ありがとうございます!』


――『最年少で受賞されたお気持ちはいかがですか?』



『まだ実感はないですけど、受賞できたのは皆さんのお陰だと思います!』



『周りの人に助けてもらって、応援してくれて、今のあたしがいるんです!』



『だから、この場をお借りして皆さんに伝えさせてください!』



『あたしを支えてくれて、ありがとうございます!!』


――パチ!!パチ!!パチ!!パチ!!パチ!!パチ!!パチ!!パチ!!


――愛ちゃんおめでとーーッ!!! これからも応援してくよーーッ!!!


――
344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 09:21:42.36 ID:3Yps3qsI0



「ただいま戻りましたー!」



「ただいま戻りました」



『愛ちゃんおかえり〜!』




「ただいま! 涼さん! 絵理さん!」


――ワイワイ。ガヤガヤ。



「……」


石川
「なにか言うことがあるんじゃない? ん〜?」ニヤッ



「……クッ」


石川
「ん〜?」ドヤヤッ



「す、既に受賞を予測できたなんで、さすが社長ですね」



「いや〜、社長に口出しをした自分が恥ずかしいです」


石川
「他に言うことはないのかな?」ズイッ



「……文句を言ってすみませんでした」


石川
「そうそう。それで良いのよP」


石川
「間違えたら、ちゃんと謝らなきゃね♪」



「……納得いかねー」ボソッ


石川
「なんか言った?」ギラッ



「いえ、なにも?」シレッ


――
345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 09:26:00.13 ID:3Yps3qsI0


絵理
「あ、もうこんな時間だね。愛ちゃんはどうする?」



「一緒に帰る?」



「えっと……」チラッ



「あ、今日はご一緒できません。社長とお話したいことがあるので」



「決まりだね」


絵理
「愛ちゃんって明日、お休みだよね? わたしの家に泊まりに来る?」



「良いんですか!?」


絵理
「うん」



「わ〜い! 久しぶりにみんなで遊べます! ママに連絡しなきゃ!」

346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 09:26:50.29 ID:3Yps3qsI0


「僕は行かないよ?」



「ぇええッ!? なんでですかー!?」



「いや、一応男の子だから……」


石川
「あら? 良いじゃない。プライベートまで集まれることってなかなか無いわよ?」



「そうですか? じゃあ僕も行こうかな」


石川
「でも涼……、もしも愛たちを汚すようなことしたら――」


――ボキャッ!!


石川
「女にするわよ?」



「  」


石川
「返事は?」



「は、はい!」


石川
「それじゃ、行ってらっしゃい♪」




――
347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 10:00:20.51 ID:3Yps3qsI0


『おつかれさまでした!』


――ガチャンッ。


石川
「ふぅ。やっと帰ったわね」



「社長が脅すから、みんな固まってましたよ?」


石川
「ハメを外し過ぎないように注意しただけよ」



「もう少し優しく注意して下さい」



「ボールペンを生々しい折り方するから場が凍ってました……」


石川
「あれくらい普通よ。それで、話ってなに?」



「あぁ、そうでした。突然ですみませんが――」






「 プロデューサー辞めても良いですか? 」





石川
「――は?」


――
348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 10:16:47.45 ID:3Yps3qsI0



「おはようございます!」



「おはよう。ってか、今日は休みだろ?」



「絵理さんの家に泊まってるんじゃないのか?」



「泊まってましたよ! 今日はみんなでお出かけです!」



「なら、なんでココに来たんだ?」



「ジャジャーン! 頑張ってるプロデューサーさんにコレを渡しに来ましたー!」



「……クッキー?」ヒョイッ



「はい! あたし達の手作りですよ!」



「なるほど。つまり毒見だな?」



「失礼ですね! そんなこと言うならあげません!」ヒョイッ

349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 10:17:34.01 ID:3Yps3qsI0


「悪かったよ。反省したから返してくれ」



「頑張って作ったんですから、ちゃんと味わってくださいよ?」



「了解」



「それじゃ、あたし行きますね! そろそろ待ち合わせの時間です!」



「クッキー、ありがとな。そういえば愛」



「なんですか?」



「映画のオファーが来てる。あのドラマの続編だって」サクサク



「えっ!? ホントですか!?」



「マジな話だ」

350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 10:20:16.10 ID:3Yps3qsI0


「しかも、今回は予算に余裕があるから、かなり大規模な撮影になるだろうな」



「やったー! また、みなさんと共演できるんですね!」



「さぁ? まだ詳しいことは聞かされてないから、なんとも言えない」



「できますよ! あたしのドキュメンタリーなら、絶対にIAに触れますもん!」



「だと良いな」



「まぁ、打ち合わせは来週だから、そん時にいろいろ聞いてみろよ」



「はい! 楽しみだな〜♪」



「ところで待ち合わせは大丈夫なのか?」



「え? ぁあ!! もうこんな時間じゃないですか!!」



「送ってやろうか?」



「……お願いします」


――
351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 10:25:47.62 ID:3Yps3qsI0


――〜♫♪〜♬



「もしもし?」


――『人形が喋るな』



「……ずいぶん一方的なご主人様ね」



「最近のオモチャは喋るったり動いたりするって知らなかった?」


――『くだらない会話をする気はない。最後の仕事だ』



「……ホントに最後なの?」


――『最後だ。それとも続けて欲しいのか?』



「冗談じゃないわ。さっさと用件を言いなさい」

352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 10:26:26.07 ID:3Yps3qsI0

――『来週、指定した場所まで来い』



「来週? 収録があるからムリよ。他の日にできないの?」


――『お前のスケジュールに興味はない』



「器の小さい男は嫌われるわよ?」


――『話はそれだけだ。――」



「……安い挑発には乗らないみたいね」


――ツー、ツー、ツー。



「……最後、……か……」



「もう少しアイドルでいたかったなぁ……」


――
353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 10:37:09.00 ID:3Yps3qsI0



「ただいま帰りましたー!」


石川
「おかえり。その手に持ってるのなに?」



「映画のプロモーションビデオです! ディレクターさんから頂きましたー!」


石川
「へー、もう出来たのね」


絵理
「せっかくだし、一緒に見ようよ」



「はい♪ 準備してきます!」



「あ、僕がやるよ」



「ありがとうございます涼さん!」


石川
「買い換えたばかりだから壊さないでよ?」



「壊しませんよ!」


――「ただいま戻りました」



「あ、プロデューサーさん! お帰りなさい!」

354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 10:39:31.04 ID:3Yps3qsI0


「プロデューサーさんも一緒に見ませんか?」



「なにか借りたんですか?」


石川
「映画のプロモーションビデオよ。ディレクターから貰ったんですって」



「へー、もうできてたんですか?」


石川
「みたいね」



「あ、始まりました!」


――
355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 10:44:01.32 ID:3Yps3qsI0


――『舞台は次のステージへ』



『あたし、負けないから!』


――『待ち受ける――』



『……』ニィッ


――『最強のライバル!』






――『そして明かされる、もう一人の物語』






――『劇場版、 Episode of Ai 近日公開』


――
356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 10:52:26.18 ID:3Yps3qsI0



「なんだかワクワクする内容だったね」



「はい! でも、もう一人の物語って誰のことでしょう?」



「あ、それ私です」



「え!? プロデューサーさんなんですか!?」


石川
「アンタ出るつもりはないんじゃなかったの?」



「そのつもりでしたけど……」



「この事務所、一人の仕事量が増えすぎて私だけじゃ限界なんです」



「だから、これを機に働いてくれそうな方にアピールできたらと思いまして……」


石川
「そんなにキツイ状態だったの?」



「今まで家に帰ったことがないです」

357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 10:54:33.00 ID:3Yps3qsI0

石川
「知らなかった……。よく倒れなかったわね」



「一応、ホームページの方にも募集をかけてるんですけど効果がなくて……」


石川
「ごめんなさい」



「え? なんで社長が謝ってるんですか?」


石川
「……アンタ一人で十分だと思って全部……」



「まさか……」


石川
「必要ないって断ってたわ……」



「溜まってた有給……、全部使わせて頂きます」


石川
「次から採用するからそれだけは止めて!」


――
358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 11:03:44.09 ID:3Yps3qsI0



「〜♪」



今日は映画の公開日です!
しかもプロデューサーさんの計らいで、涼さんたちのお休みが一緒になりました!

なので今日はみんなで映画を見に行くんです!




「でも変だよね」



「なにがですか?」



「だって試写会も開かないで一般公開してるんだよ」



「愛ちゃんも映画の内容が分からないって変じゃない?」

359 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 11:06:30.93 ID:3Yps3qsI0


そうなんです!
この映画、あたしも初めて見るんですよ!

自分の映画が真っ先に見れないってなんだか複雑な気持ちですけど、プロデューサーさんの考えがあってのことだと思います!



絵理
「映画に予算を注ぎ込みすぎちゃったのかな?」



「さぁ? あの人、なに考えてるか分からない所があるし……」



「別に良いじゃないですか! 今日は楽しみましょうよ♪」



「そうだね」


絵理
「どんな内容だろうね〜」



「〜♪」


――
360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 11:07:33.88 ID:3Yps3qsI0
ちょっと休憩します。
361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 14:00:21.30 ID:3Yps3qsI0


――ビィイイイイ!



「始まりましたー!」


「愛ちゃん! 声が大きいよ!」


「あわわわッ」アセアセ


――え!? 愛ちゃん来てるの!? 涼ちんも絵理ちゃんもいるぞ!


絵理
「バレちゃったね……」



「愛ちゃん……」



「うぅぅ……。ごめんなさい……」


――
362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 14:01:05.98 ID:3Yps3qsI0


『予選突破おめでとう!!』




(IA予選の時だっけ? 懐かしいな〜。)



『待ちに待った主演ドラマだけど、緊張はしてない?』


『はい! ぜんぜん大丈夫です! むしろ絶好調ですよ!』




(あれ? この会話ってドラマの時の……)


(あの時カメラまわってたんだ……)



――ピンポーン。


『はーい。どなたー?』


『はじめまして。ご連絡させて頂いた876プロダクションの者です』




(あっ、プロデューサーさんとママだ!)



(この時って確かプロデューサーさん、ママをあたしのドラマに出てもらうために交渉しに行ってたんだっけ?)



(どうやってママを説得させたんだろ?)


――
363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 14:01:50.46 ID:3Yps3qsI0


『戯言くらいは聞いてやるから黙ってねぇでなんか言ったらどうなんだよ!!!』



「どういう……こと……なの?」



そこに映っていたのは、いつも優しかったプロデューサーさんじゃなくて、感情に身を任せてママを責め続ける、あたしの知らないプロデューサーさんでした。



『違うッ! 私は本気で――』


『本気で? 本気で寝取ろうとしてたのか?』



あたしもお芝居してたから分かるんです……。
その人が本心で言ってるのかどうか……。



『テメェが母親としても人間としても話しになんねぇのが分かった以上、不本意だが娘の方で話をつけるしかないからな!』



『愛は関係ないじゃない!!!』



だから、このプロデューサーさんは本当にあたし達のことが嫌いで、ずっとママを恨みながら生きてきたんだって分かっちゃいました……。



『しばらく俺の操り人形にでもなってもらうか』


『……人形?』


『そうだ。これからは俺の命令通りに動いてもらう。どんな要求にもな』



そっか……、ママが隠してたことって、このことだったんだね……。


――
364 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 14:02:43.57 ID:3Yps3qsI0


『もう……止めて……。愛は……、あなたを慕ってるのよ……』


『今朝だって……、あなたの為に一生懸命にお弁当を作ってたのに……』


『確かに貰ったよ。ムカつくから捨てたけどな』






どんなに耳を閉じても。






『なんでそんなことができるのよ!!!』






どんなに目を閉じても。






『愛は――』






聞きたくもない、見たくもない真実があたしに伝わってくるんです。






『あなたの妹なのよ!!!』







「……ぇ?」




――
365 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 14:03:28.71 ID:3Yps3qsI0


『アンタが勝手につくった子供が妹? 認めるワケねぇだろ』


『なんで……。なんで……』


『なんで? それはコッチのセリフだよ』


『……ぇ?』


『最近アンタの娘から熱い視線が向かってくるから、気になってカマかけてみたら案の定だ。
娘もアンタ同じだったよ』


『ぁ……』


『なぁ……、教えてくれよ。なんでテメェらは俺たちに発情するんだ?』


『それは……』


『それは? まさか恋なんだから仕方が無いなんて言わないよな?』


『――ッ』


『図星か……。まぁ、良い。そんなことより仕事の話だ』


『……仕事?』


『あぁ。このまま順当に勝ち抜けば決勝でアンタとぶつかる。だから、その時は――』






『“ワザと負けろ”』

366 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 14:04:12.84 ID:3Yps3qsI0






「――ッ」ダッ



もう嫌でした。
見るのも、聞くのも、限界だったんです。



絵理
「愛ちゃん!?」


「待って愛ちゃん!」



(イヤだ!! 信じたくない!! こんなのプロデューサーさんじゃない!!!)



気持ちが悪くて、何度も吐きそうになりました。
それでも、込み上げてくるものを必死で押さえ込んでガムシャラに走りました。


事務所に帰れば……。

事務所に帰れば、また“お帰り”って出迎えてくれるハズだから。


――
367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 14:05:08.76 ID:3Yps3qsI0


石川
「あのクソガキッ!!!」ガンッ


石川
「なにがアピールよ! 私を騙したのね!!!」


石川
「チクショウ……。こんなの愛が見てたら……」


――バァンッ!!



「プロデューサーさん!!!」


石川
「愛……。まさか……」



「プロデューサーさん! どこですか!?」


石川
「愛……、落ち着いて聞きなさい……」



「どこですか!!」

368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 14:05:44.42 ID:3Yps3qsI0

石川
「愛!!!」



「あ……」


石川
「怒鳴ったりしてごめんなさい。でも、落ち着いて聞いて」


石川
「あいつは……、いないの。もう辞めたわ」



「う……、ウソです。……そんなこと……、ないもん」


石川
「違わないわ。……あいつは、……あなたを捨てたのよ」



「違う! プロデューサーさんはそんなこと言わない!!」



「いつもあたしの側にいてくれるって言ったもん!!」


――パンッ!!!



「ぁ……」

369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 14:06:37.78 ID:3Yps3qsI0

石川
「いい加減に気づきなさい!! あいつは私たちを裏切ったの!!」



「ちが、……う、もん」


石川
「違わない!! あなたを捨てたのよ!!」



「グスッ……。ちが、う……もん。……ぇぐ……。捨てて……、ないもん」


石川
「違わない! 違わないのよ……」ギュウゥウ



「うぅ……。ぁああああああああああああ!!!!!!」



「ぶろでゅーさーさん!! ぶろでゅーさーさん!! ぶろでゅーざーざん!!!」


石川
(クッ……。ここまで依存してるなんて……)


――
370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 14:07:26.49 ID:3Yps3qsI0



「ぇぐ……。ひぐっ……」ポロポロ


石川
「……落ち着いた?」



「……ぐすっ……」コクッ


石川
「辛かったわね……。今日は帰ってゆっくり休みなさい……」



「いや……、です……。帰りたく……、ないです……」



「今は……、ママに会いたくありません」


石川
「そう……。なら、私の家に来る?」



「……え?」


石川
「あなたも気持ちを整理する時間が必要でしょ? だから、それまでは私の家でじっくり考えて答えを見つけなさい」


石川
「その代わり、落ち着いたら自分の家に戻るのよ?」



「あ……。ありがとうございます社長……」


――
371 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 14:07:56.29 ID:3Yps3qsI0


――ガチャッ


石川
「入って良いわよ?」



「おジャマします……」


「そんなに畏まらなくても良いのよ。自分の家だと思ってくつろぎなさい」



「はい……」


石川
「なにか飲む? ……と言いたいところだけど、まずはお風呂ね」


石川
「走ってきたから汗かいてるでしょ?」



「あ……」


石川
「着替えは見繕っておくから、先にシャワーでも浴びてきなさい」



「……はい」


――
372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 14:08:31.07 ID:3Yps3qsI0


――シャァーーーー。



(社長……、あたしに気を使ってくれたんだろうなぁ……)



(いきなり飛び出して、泣き喚いて、……みんなに迷惑かけて……)



(悪い子だな……、あたしって……)



――愛はあなたの妹なのよ!!!




「――ッ!」



(なんで……、なんでなの?)



(なんで黙ってたの……、ママ……?)



――アンタが勝手につくった子供が妹? 認めるワケねぇだろ。




「ぁあ……、ぅう……」ポロポロ



――ありがとな、愛。




(どっちが本当のプロデューサーさんなの?)



(あたしは……、誰を信じれば良いの……? 分からない……。分からないよ……)



――シャァーーーー。




「――――」


――
373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 14:09:13.07 ID:3Yps3qsI0


石川
「愛? 着替えココに置い――」



――……ひっぐ……ぇぐ……。



石川
「……」


石川
(辛いわよね……。失ったものが大きすぎるもの……)


石川
(どんなにアイドルとして振舞っても、中身は13歳の女の子……)


石川
(傷付かないワケがないわ……)


石川
(思いっきり泣きなさい。今は“誰も聞いてない”から……)


石川
(でも――)


石川
「私はあなたの味方だから……」


――
374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 14:09:48.54 ID:3Yps3qsI0



「お風呂ありがとうございました」


石川
「別にお礼なんていいのよ。それより、なにか飲む?」



「あ、はい。いただきます」


石川
「なにが良い? それなりに揃ってるわよ」



「じゃあ、……お水ください」


石川
「水? ジュースじゃなくて?」



「はい。お水が良いんです」


石川
「そう。じゃあ、少し待ってて」



「ありがとうございます」


――
375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 14:10:34.09 ID:3Yps3qsI0


石川
「ねぇ、愛。……親御さんに私の家で泊まるってことを連絡しても良い?」



「あ、はい……」


石川
「少し話すだけだから、そんなに暗い顔しなくても大丈夫よ」


――ピッピッピ……。トゥルルルル。


石川
「もしもし、876プロダクションの石川です。お忙しいところ申し訳ございません」


石川
「愛さんなんですが、今日のことでショックが大きかったみたいで……」


石川
「えぇ……。ですので、しばらく私の家に泊まって、落ち着いたらそちらに戻るそうです」


石川
「……はい。本人も了承してるので大丈夫だと思います」


石川
「……はい。……はい。それでは失礼します」



「ママ、……なんて言ってたんですか?」


石川
「家に帰って来る時は事前に連絡して欲しいそうよ」



「……それだけ?」


石川
「えぇ。私が聞いたのはそれだけだったわ」



「そうですか……」


――
376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 14:13:07.41 ID:3Yps3qsI0


石川
「……ホントに帰るの? もう少しゆっくりしてからでも構わないのよ?」



「社長に迷惑はかけられません!」


石川
「私は迷惑なんて思ってないわよ」



「あたしがそう感じちゃうんですよ! それに――」



「あたしならもう大丈夫です!!」


石川
「なら良いけど……」



「そんな心配そうな顔をしないでくださいよ!」


石川
「分かったわ。でも、嫌なことがあったら私のことなんて気にしないで、いつでも泊まりに来なさい」



「はい♪ ありがとうございます!」



「それでは社長! 短い間だけどお世話になりました! また事務所で会いましょうね!」


石川
「えぇ、待ってるわ」



「お世話になりました!」


――
377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 14:13:33.77 ID:3Yps3qsI0



「ただいま」



「お帰りまさい、愛! もう帰ってこないんじゃないかって心配したわ!」ギュゥウ



「痛い! 痛いよママ!」



「あ……」



「も〜。家出した訳でもないのに心配しすぎだよ」



「ごめんなさい。でも、良かった……。帰ってきてくれて……」



「ママ……」



「正直……、怖かったの……。愛に嫌われたんじゃないかって思ってたから……」



「大丈夫だよ、ママ。あたしの帰るお家は、ココしかないんだから」


――
378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 14:14:10.71 ID:3Yps3qsI0



「お腹が空いてるんじゃない? すぐに支度するわ!」



「あたしも手伝うよ」



「私だけで大丈夫よ。それに、愛も疲れてるみたいだし……」



「あたし疲れてないよ?」



「でも顔色が良くないわ」



「そうかなぁ?」



「そうよ。ムリはしなくて良いから、少し休んでなさい」



「はーい」



「良い子ね♪」


――
379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 14:15:05.81 ID:3Yps3qsI0


――ガチャッ。



「愛〜? できたわよ?」



「……」



「もしかして、寝られなかったの?」



「……うん」



「そう……。じゃあご飯を食べた後に一緒に寝ましょう」



「それならきっと安眠よ。我ながら良いアイディアだわ」



「……」



「そうと決まれば早くご飯にしましょう?」



「……はーい」


――
380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 14:15:45.80 ID:3Yps3qsI0



「……」モグモグ



「……美味しい?」



「……うん」モグモグ



「そう……。なら、良いけど……」



「……」モグモグ



「……」



「……」モグモグ



「ねぇ、愛……。食べたくなかったら、食べなくても良いのよ?」



「……なんで?」



「なんで? って……。だって愛、ちっとも美味しそうに食べてないじゃない」

381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 14:16:24.54 ID:3Yps3qsI0


「……」



「美味しくないんでしょ?」



「……ごめんなさい」



「いいのよ」



「……ママのご飯、いつも美味しかったよ」



「でも……、なんだか今日は美味しく感じないんだ……」



「……あれだけのことがあったんだもの、仕方がないわ」



「だけど、一つだけ教えてちょうだい。さっきまで、なにを考えながら食べてたの?」



「……」



「……ママと……、プロデューサーさんのこと……」



「そうよね……。やっぱり……気になるわよね……」


――
382 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 14:16:55.40 ID:3Yps3qsI0



「……ママ。……あの話って本当なの?」



「あの話?」



「あたしが……、プロデューサーさんの妹だってこと……」



「……本当のことよ。……あのプロデューサーと愛は……、兄妹だわ……」



「そっか……。やっぱり本当だったんだね……」



「……今まで黙っていてごめんなさい」



「もう気にしてないよ」



「……でも……、ママはこのこと知ってたんだよね?」



「……えぇ。ずっと言えなかったの……」



「そうなんだ……。なら――」



「“なんであたしのこと応援したの?”」


――
383 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 14:17:25.51 ID:3Yps3qsI0



「……愛?」



「変だよね? 好きになった人が“お兄ちゃん”なのに応援するってオカシイよね?」



「そ、それは……」



「それにママ……、プロデューサーさんを旦那さんにするって言ってたよね?」



「なんで? ホントに結婚したかったの? “あたしのお兄ちゃん”なのに?」

384 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 14:18:12.36 ID:3Yps3qsI0


「あ、愛! 少し落ち着きなさい!」ガシッ



「触らないでよッ!!!!」バシッ



「愛……」



「なんなのママ!!? あたしを応援するって言ったのはウソだったの!!?」



「私はウソなんてついてないわ!」



「なら、なんでプロデューサーさんと一緒になってあたしを苛めるのよ!!」



「あたしがジャマだったの!?」



「そんなことないわ! 私は――」



「ウソつかないでよ!!!」



「――愛のことが……」




「あたしのことが嫌いなんでしょう!?」

385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 14:18:58.74 ID:3Yps3qsI0


「違うの愛! お願いだから私の話を聞いて!」



「正直に言ってよッ!! あたしなんて――」



「止めて……。それ以上は言わないで……」









「産まれてこなければ良かったんでしょ!!!!」







386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 14:19:37.18 ID:3Yps3qsI0


「て……なさい」



「……ぁっ」



「出て行きなさい!」




「――ッ」



「そんなに私が嫌いなら、もう帰ってこなくて良い!! 出て行ってッ!!」



「ママなんて大ッ嫌い!!!!!」


――バンッ!!!



「なんで……」



「なんで分かってくれないの……、愛……」


――
387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 14:20:12.12 ID:3Yps3qsI0
残りは五時以降にします
388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 17:35:52.46 ID:3Yps3qsI0



「久しぶりですね……」



「もうココには来ないって決めていましたが、……最後に会いに来ました」



「コレ……、あなたが好きだった花です」



「いらないって言うかもしれないけれど、受け取って下さい」



「……」



「……ごめんなさい。……あなたを悲しませてしまいました」



「あなたは私を愛して下さった大切な人なのに……」



「私は……、あなたを裏切りました……」



「それでも……、一つだけ伝えさせて下さい」










「……終わらせてきたよ。……母さん」


――
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 17:37:34.67 ID:3Yps3qsI0



「……」


――やはりココにいたのか……。



「……珍しい所で会いますね、オーナー。いや――」



「――祖父ちゃん」


祖父
「……いつから気づいていたんだ?」



「怪しいと思ったのは最初からかな」



「経営者なのにお金を受け取らなかったこと、半年後に潰れるなんてウソをついたこと……」


祖父
「そこまで調べていたのか……」



「コッチも色々と手を回してたからね。分かりやすいヒントは一杯あったよ」

390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 17:38:12.08 ID:3Yps3qsI0


「だけど……、一つだけ気になることがあるんだ」


祖父
「なんだ?」



「俺が気づくまで教えてくれなかったっていうことは、できれば関わりを持ちたくなかったっていうことでしょ?」



「……あの時なんで俺を助けたの?」


祖父
「自分勝手な理由だよ。……お前への罪滅ぼしをさせて欲しかったんだ」



「罪滅ぼしって……。そもそも何かされた覚えなんて無いんだけど?」


祖父
「そうだ。なにもしなかったんだ……。私は……」



「どういうこと?」


――
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 17:39:26.43 ID:3Yps3qsI0


祖父
「13年前、親を亡くしたお前を誰が引き取るか話し合いが行われてい時のことだ……」


祖父
「本来なら祖父である私が引き取るべきだったのだが、当時はまだ店の経営が危うくて子供を養う余裕すらもなかった」



祖父
「仕方なく面倒を見てくれる代わりの者を探していたが、みんなお前の遺産だけが目的で、誰一人として子供を育てようという気がないヤツ等ばかり……」



祖父
「こんな人間の下で暮らすのならと、お前の気持ちも考えずに自分勝手な考えで施設へ預けてしまったんだ」



祖父
「その所為でお前には辛い思いをさせてしまった」



「そっか……」

392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 17:40:50.05 ID:3Yps3qsI0

祖父
「謝って済む問題じゃないが……、本当にすまない……」



「子供の頃に……、一度だけ祖父ちゃんに会っただけだけど……」



「……ずいぶん老けたね。……面影が無くなるくらいに……」


祖父
「……お互い様だな。……お前の髪……どうした?」



「あぁ、コレね。……キレイでしょ? いろいろ悩んでる内に色が抜け落ちたみたい」


祖父
「……そうか……」



「そんな暗い顔しないで。祖父ちゃんには感謝してるんだから」


祖父
「お前にそんなこと言われる資格……、私にはない……」



「関係ないよ。俺が勝手に感謝してるんだもん」

393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 17:42:00.55 ID:3Yps3qsI0


「それに……、いつも母さんの誕生日に花を添えてくれてたでしょ?」


祖父
「……」



「“ありがとね、祖父ちゃん”」


祖父
「……っ」



「爺ちゃん?」


祖父
「気にするな。……年をとると、……涙脆くなってしまうんだ」



「……爺ちゃん」


祖父
「……子供を残して……先に逝くなんて……母親失格だ。……バカ者……」


祖父
「この……親不孝者め……。……なぜ……死んでしまったんだ……」



「……」


――
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 17:43:56.85 ID:3Yps3qsI0


祖父
「これから……、どうするつもりなんだ?」


祖父
「あれだけのことをして、逃げられる場所があるのか?」



「逃げるつもりなんてないよ。……どうなろうとも……」


祖父
「なんでそんなに落ち着いていられるんだ! ほとんどの人間を敵に回したんだぞ!?」


祖父
「ヘタしたら殺されるかもしれないというのに……ッ!」



「……そうかもね」


祖父
「お前……、まさか……!」



「そろそろ行くよ」



「一緒にいたら祖父ちゃんも危ない目に会っちゃうから、早く帰ってね?」


祖父
「……待て!」 



「もしどこかで俺と会っても他人のフリだよ?」


祖父
「……待ってくれ!」



「“バイバイ”」


――
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 17:45:52.95 ID:3Yps3qsI0


――ピンポーン。



「はーい。どなたですかー?」


――ガチャッ。



「……」



「愛ちゃん?どうしたの?」



「……家出してきました。……泊めてください……」



「えっ?」



「お願いします……。涼さんだけが頼りなんです……」



「えっと……」



「やっぱり迷惑ですよね……。ごめんなさい……」



「ぁあ! 大丈夫! たぶん大丈夫だから!」



「ホントですか?」パァッ



「ぅ、うん! でも、その代わりちょっとだけ待ってて!」



「ありがとうございます!」


――バタンッ。 ガタガタッ! バタバタッ!



「お待たせ!」



「お邪魔します」


――
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 17:48:07.72 ID:3Yps3qsI0



「お茶しかないけど、ごめんね」



「い、いえ。コッチこそいきなり押しかけてすみません」



「それにしても、家出したってどういうことなの?」



「………ママと喧嘩したんです」



「愛ちゃんのプロデューサーのことについて?」



「はい……」



「そっか」



「……迷惑じゃないですか?」



「迷惑だったら家に入れてないよ」



「ありがとうございます、涼さん」

397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 17:50:18.56 ID:3Yps3qsI0


「あ、なにか食べる? お腹が空いてるなら作ってくるよ?」



「大丈夫です。ご飯は食べてきました」



「ご飯を食べてから家出するなんて珍しいね」クスッ



「あはは! そうかもしれません」クスクス



「ふふっ。やっと笑った」



「え?」



「さっきまで暗い顔してたから心配してたんだよ?」



「あ、ごめんなさい!」



「謝らなくても良いよ。でも、やっと愛ちゃんらしくなったね」



「そうですか?」



「うん。いつもの愛ちゃんだ」


――
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 17:52:54.08 ID:3Yps3qsI0



「それじゃ、愛ちゃん。おやすみなさい」



「涼さんどこへ行くんですか?」



「僕は違うところで寝るよ」



「あ、……あの!」



「?」



「一緒に寝てください!」



「えっ!? さすがにそれはマズイんじゃ……」



「お願いです! 一人だと寂しいんです!」



「え、えっと……」アセアセ



「ダメですか?」ウルウル


――
399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 17:54:20.01 ID:3Yps3qsI0



(押しに弱いなぁ。僕って……)



「……すぅ……すぅ……」



(でもまぁ、愛ちゃんも寝たし、そろそろ抜け出しても――)



「……ッン……」ギュッ


――ムニュッ。



(あ、愛ちゃんッ!?)ドキッ



(も、もしかして僕のこと、抱き枕かなにかと勘違いしてる!?)ドキドキ

400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 17:55:41.83 ID:3Yps3qsI0

――……すぅ……すぅ……。



(と、吐息がすごい近く――ッ!?)ドキドキ



「……ぁ……」



(お願いだから囁かないでッ! 僕も男の子なんだからーーッ!)



「……ッン……」ゴロン



(……ッ)ドキッ



「……」スゥスゥ

401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 17:57:55.89 ID:3Yps3qsI0


(愛ちゃんの唇、すごく柔らかそう……)ドクンッ



「……」スゥスゥ



(……吸い込まれそう……)ドクンッ。ドクンッ



「……」スゥスゥ



(あと……すこし……)ドクンッ。ドクンッ。ドクンッ



「……」スゥスゥ



(―――って、僕は一体なにを考えてるんだよ!!)ドキドキ



「……」グスッ



「……愛ちゃん?」



「……ぷ……ろでゅ……さん……」グスッ



(そうだよね。一番辛いのは愛ちゃんなのに……。それなのに僕は……)


――ガンッ!!!



「ッン……。……?」



「――」



「……。おやすみなさい……」モゾモゾ



「――」


――
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 18:00:38.61 ID:3Yps3qsI0



「おはよございます!」



「お……、はよう……」



「どうしたんですか涼さん!? もしかしてあたしの寝相が悪かったんですか!?」



「気にしないで。……自業自得だから……」



「だ、大丈夫なんですか?」



「うん。とりあえず眠気覚ましにお風呂に入ってくるよ」



「あっ! 泊めてもらったお礼にお背中流します!」



「いいよ! 大丈夫! これ以上されたら水の泡になっちゃうから気持ちだけで十分!」



「その時は流せば良いじゃないですか!」



「水にッ!?」



「……? 当たり前ですよ?」

403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 18:01:45.29 ID:3Yps3qsI0


「と、とにかく! 愛ちゃんはお客さんなんだから気を使わなくて良いよ!」



「そういう訳にもいかないです!」



「涼さんに迷惑かけたんだから、あたしもなにかお手伝いしたいです!」



(ぎゃぉおおん!!! そうだった! 愛ちゃんって意外に頑固だったんだ!)



(どうしよう! このままじゃ昨日の二の舞になっちゃう! えっと……、あっと……)



「涼さん?」



「あ、そうだ! じゃあ朝ごはん作ってよ!」



「ご飯ですか?」



「うん。それだったら愛ちゃんも納得するでしょ?」



「分かりました! なにかリクエストありますか?」



「愛ちゃんの好きなように作って良いよ」



「そうですか? それじゃあ期待しててください!」



「楽しみにしてるね」


――
404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/14(日) 18:01:49.86 ID:gZZH0luDo
きたか
405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 18:02:31.74 ID:3Yps3qsI0


――『いただきまーす!!』



「……」モキュモキュ



「ど、どうですか?」



「うん。とっても美味しいよ。文句の付け所がないくらいにね」



「ホントですかー!? やったー!」



「もしかしたら僕よりも上手なんじゃない?」



「それは褒めすぎですよー!」


――
406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 18:03:51.53 ID:3Yps3qsI0



「……」



なんの当てもなく夜道を彷徨う。
一人で出歩くなんて久しぶりのような気がした。




「キレイな月だ……」



今日は満月だったのか。
赤く、血のように紅く染まった月を見上げてそう思う。



――「……Pさんですか?」



「……えぇ」



帽子を深く被っていて顔はよく分からないが、知らない人間だ。
なのに、俺のことを知っている。

……たぶん、そういうことなんだろう。

407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 18:04:26.97 ID:3Yps3qsI0



――「ありがとうございます」ニタァ




なんとなく……、そんな気はしていた……。




――ドスッ





「……ぁ」


――「ははっ……。はははっはははっ!!」



「ぁ……か……ッ」


――「やった! やってやったぞ!! 愛ちゃんを悲しませたヤツを殺してやったぞッ!!」



ははは。……笑える。

……俺みたいなクズにはお似合いのエンディングだな……。



――「ぁはははははっ!!!」



痛みもなくなって、なんだか眠くなってきた……。

もう良いや……。寝よう……。



――
408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 18:05:06.64 ID:3Yps3qsI0
ご飯食べてきます
409 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/10/14(日) 18:24:25.95 ID:BUATcmOxo
クライマックスですな
410 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/14(日) 18:54:43.34 ID:3AEwhXNA0
ペース的に今日で終わりなのかな?
とにかく乙、期待してます
411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 19:39:26.55 ID:3Yps3qsI0







薄れていく意識の中……

……その子は泣いていた。







なんで泣いているのだろう。

“どうしたの?”と聞いてみたいが、声が出ない。






涙を流しながら、悲しそうな表情で泣いている。

そんな顔をしないでくれ泣き止んでくれ。――の泣き顔は苦手なんだ。

412 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 19:40:00.77 ID:3Yps3qsI0






(なんだっけな……。アイツが好きな歌……)


――〜♫〜♪〜♬



(……あぁ。……思い出した)











「……ラ……ン……ュ……たち……は……じ……まり……は……そう……」









「ハ……ロゥ……」










泣き声は聞こえない……。

……やっと……泣き止んでくれたみたいだ……。


――
413 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 19:40:32.40 ID:3Yps3qsI0


――トュルルルルル。トュルルルルル。


石川
「お電話ありがとうございます。876プロダクションの石川です」


石川
「……えぇ……、まぁ……」


石川
「――なんですって!!? 」


石川
「はい……、すみません……。あまりに突然のことなので取り乱してしまいました……」


石川
「……えぇ……、分かりました。すぐにそちらへ向かいます」


石川
「ご連絡ありがとうございました」




石川
「……」


石川
「……愛にも……、伝えた方が良いわね……」


――
414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 19:41:03.33 ID:3Yps3qsI0


――〜♫〜♪〜♬



「もしもし?」


――『……愛?』



「社長? どうしたんですか?」


――『……落ち着いて聞きなさい。……プロデューサーの場所が……分かったわ……』



「ホントですか!? どこにいるんですか!? 教えてください社長ッ!!」


――『アイツは……、今……、双海総合病院にいるみたい……』



「双海総合病院……」


――『かなり危険な状態らしいわ……。もしかしたら――』



「教えてくれてありがとうございます!」


――『もう手遅れ――』ピッ


――
415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 19:41:34.75 ID:3Yps3qsI0



「……はぁ……はぁ……はぁ……」


石川
「愛……」



「社長!! プロデューサーさんは!!?」


石川
「愛……、少し落ち着きなさい」



「落ち着いてなんかいられないです!! プロデューサーさんは助かるんですよね!!?」


石川
「それは……」


――「うるさいわよ、愛」



「――ママ!? なんでママがいるの!?」



「石川社長から私の方にも連絡があったのよ」



「それよりも少し落ち着きなさい。騒ぐなら外で騒いでちょうだい」



「あ、うん。……ごめんなさい……」


――
416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 19:42:23.83 ID:3Yps3qsI0



「……」



「……」


石川
「……」



「……ママ、……プロデューサーさん……大丈夫だよね?」



「……さぁ?」



「――え?」



「勘違いしないで欲しいんだけど、私はアイツが助かってほしいなんて思ってないわ」


石川
「ちょ、ちょっと舞さん!?」



「黙ってなさい」



「……な……んで……」



「人の家庭をグチャグチャに壊した張本人を助けたいなんて思うワケないでしょ?」



「じゃあ……な、んで……ここにいるの?」



「死に際だから見に来たのよ。それ以外に理由はないわ」


――
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 19:43:10.24 ID:3Yps3qsI0


――「……」


石川
「先生……」



「ぇ?」



「あ、あの! プロデューサーさんは大丈夫なんですか!!? 助かるんですよね!!!?」


医師
「……それは……」



「答えてください!!!」


石川
「私からもお願いします。教えてください先生ッ!」


医師
「……とても危険な状態です」



「……」

418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 19:43:52.02 ID:3Yps3qsI0

医師
「出血が酷く、輸血も追いつかない。このままでは……」



「なら、あたしのを使ってください! いくらでもあげますから、プロデューサーさんを助けてください!」


医師
「私からは……お勧めできません」



「なんでなんですか!」


医師
「あなたは子供だ。それに身体も小さい。採血をする際に体調を崩される可能性がある」



「あたしは構いません! お願いです! あたしの血を使ってください」


医師
「……ですが……」



「今まで……、何度もプロデューサーさんに助けてもらいました!」



「それなのに、あたしだけが何もできないなんて嫌です! お願いします! あたしの血を使ってください! プロデューサーさんを助けてくださいッ!!」

419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 19:44:46.55 ID:3Yps3qsI0

医師
「……分かりました。あなたの血液型は?」



「あ……、O型です!」


医師
「できて200ccか……」



「足りますかッ!?」


医師
「……今、別室の方で血液を提供して下さった方がいるのですが、せめて後一人……」



「社長ッ!!」


石川
「……できないわ。血液型が違うの……」



「なら、ママはッ!!? 確かあたしと同じ血液型だったよね!!?」

420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 19:45:53.55 ID:3Yps3qsI0


「そうだけど、……私がやると思う?」



「くだらない意地を張らないでプロデューサーさんを助けてよ!!」



「なんで? あんなヤツ、助ける義理なんて私には無いわ」



「――ッ! プロデューサーさんを見殺しにする気なの!?」



「……」



「ねぇ……。お願い……。お願いだから……、プロデューサーさんを助けて……」



「ここには……、ママしかいないの……。もう……、ママしか頼める人がいないの……」



「だから……、ママ……お願い……」


石川
「愛……」

421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 19:46:44.05 ID:3Yps3qsI0


「ワガママなんて言わない。ずっとママに嫌われても良い。だから……お願いします……ママ……」



「――ッ」



「どうか……プロデューサーさんを助けてください……。……お願いします……」



「……た」



「ぇ?」



「だから、分かったって言ってるのよ」



「ママ!」


医師
「良いのですか?」



「えぇ。私の血でもなんでも好きに使いなさい! その代わり――」


医師
「?」



「絶対に助けなさいッ! 私はアイツに言いたいことが山程あるのよ! こんなところで死ぬなんて許さないんだからッ!」


医師
「えぇ、分かりました。必ず彼を助けると約束します」



「絶対よッ!!」


医師
「それでは急いで輸血の準備に掛かりましょう」



「はい!」


――
422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 19:48:14.44 ID:3Yps3qsI0


医師
「それでは採血をさせて頂きます。具合が悪くなったらすぐに言って下さい」



「分かりました」



――「愛ちゃん?」




「……あっ!」



「誰?」



「プロデューサーさんとお食事に行ったお店のオーナーさんだよ。……でも、なんでココに?」



――「……恩返しだよ……。いろいろ……世話になったからな……」




「そっか……。オーナーさんもプロデューサーさんに助けてもらったんだね」



――「あぁ……。あいつには……返せないくらい大きな貸しをつくってしまった……」


423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 19:49:10.97 ID:3Yps3qsI0


「……」



――「……そちらは……日高 舞さんかな?」




「あ、はい! あたしのママです!」



――「そうか……あなたが……」




「?」



――「日高さん……。あいつを……許してやってくれ……」




「許すもなにも私が撒いたタネよ。他人のあなたがどうこう言う問題じゃないわ」



「ママ!!」



――「……そうだな。私が口を挟める立場ではないことを忘れていたよ。……すまない」




「……まぁ、いつかは分からないけど……あなたのお店におジャマするわ。……その時は三人でね」



――「……ありがとう」



――
424 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 19:49:52.78 ID:3Yps3qsI0


医師
「終わりました。輸血検査にも異常はないです」



「良かった……」



「急いで行きなさい。時間がないんでしょ?」


医師
「えぇ、すぐに持って行かなくては」スクッ







「後は……アイツの無事を祈るだけね……」



「……」ギュッ


――
425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 19:51:15.34 ID:3Yps3qsI0





あれから季節は移り変わり、花びらたちが鮮やかに舞うようになった頃。

あたしの日課は、彼の部屋へ行くことになっていました。






周りでは新しい生命が芽吹いているのに、あの人は……、まだ寝ています。 



426 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 19:51:46.65 ID:3Yps3qsI0



彼の手を握って毎日たくさんお話をしているけど、聞いてるだけで笑ってくれないんです。


どんなに部屋の中で騒いでも、怒ってくれないんです。


お仕事で失敗したのに、あたしの頭を撫でて慰めてくれないんです。




……彼を驚かせようと思って、耳元で『早く起きないとアイドル辞めちゃいますよ?』って囁いても、なにも言ってくれませんでした。




新しいイジワルかな? あたしを困らせの好きでしたもんね。












……でも、プロデューサーさん。

そろそろ起きてください。



じゃないと……






……あたし、ホントに辞めちゃいますよ?












――
427 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 19:53:14.22 ID:3Yps3qsI0




「………」




霞んでいた風景が、ゆっくりと鮮明になっていく。

ここはどこだろう?

死後の世界にしては、やけに現実的だ。




――「あ、起きましたか?」




懐かしい声。

彼女の声を久しぶりに聞いたような気がした。


428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 19:53:54.36 ID:3Yps3qsI0



「……ぁ……ぃ……?」





「はい。久しぶりですね」




また泣きそうな顔をしてる。

……前から変わってないな。お前も……




「あぃ……」




いつもみたいに撫でてやるから泣き止んでくれ。

……お前の泣き顔は……苦手なんだ。





「ここに……いますよ。日高 愛は、……ここにいます」




はは……。

……泣きながら笑うなんて……器用なヤツだな。




「おかえりなさい……プロデューサーさん!」




― Fin ―




――
429 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/14(日) 20:31:08.92 ID:zc6eEMo2o
えっ
なんか中途半端だな
430 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 20:33:19.08 ID:3Yps3qsI0


ご愛読ありがとうございました。
みなさんのコメントや応援のおかげで完結させることができました。


これにて本編、愛「あたしという存在……」を終了させて頂きます。
431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/14(日) 20:38:23.07 ID:QtlMkZlUo
なんか前の時もそうだったけど、オチの不完全燃焼感が半端ない
今回は間が良かっただけに余計

とりあえず乙とだけ
432 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 20:54:31.22 ID:3Yps3qsI0
>>429さん。
>>431さん。

せっかく読んで頂いたのに力及ばずでごめんなさい。

さっきまで完結できて清々しい気分になってた自分が恥ずかしい……
433 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/10/14(日) 20:56:01.13 ID:SrQGkwFmo
あと一章分足りない気がするけど乙
434 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/10/14(日) 20:56:07.64 ID:BUATcmOxo
面白かったよ
435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/10/14(日) 20:56:36.23 ID:AMWcKtzRo
おつおつ
まあ確かに不完全燃焼感があるけど、まあこれはこれで
後日談とかないのかなぁ…(チラッチラッ
436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/14(日) 21:04:18.82 ID:3Yps3qsI0
後日談と言いますか、前作、真美「新しく来た兄ちゃんが961んだけど」の書き直し+Pの父親と日高舞について(さらに過去編)を製作しています。


正直、これ以上のエンディングが思いつかなかったんで、なぜ765プロに所属するようになったことや、書ききれなかったことを書き直しの方に詰め込むつもりです。



437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/10/14(日) 22:14:10.00 ID:IuO6jr4do
こういうドロドロ愛憎劇に日高親子を持ってくるのはセンスがいいと思う
愛やPに救いのない終わりが来るものだと覚悟してたから望外の結末だった
438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/10/14(日) 23:24:53.02 ID:AMWcKtzRo
また次のSSに期待だな
今度こそ乙
439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/14(日) 23:38:45.41 ID:teKcGLuH0

最後愛ちゃんが意外と大人な反応だったな
次も期待してます
440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/15(月) 04:42:48.49 ID:hLXa9mKIO


刺した奴はキッチリ裁かれて欲しいわー
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/10/21(日) 21:40:50.39 ID:AYZEBkFA0
>>1です。

もう一度エンディングをつくり直してみました。

これは>>1の自己満足なので、批判して下さっても構いません。

>>424から
442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/21(日) 21:41:53.42 ID:AYZEBkFA0



あたし達の血が運ばれてから、どのくらい経ったのかな?


一時間くらい? 一分くらい? 


もしかしたら、まだ一秒も経ってないのかも。


なにもせず、ただ待ち続けるのって意外と辛いんですね。


あの赤いランプが消えるのを待ってるだけなのに、こんなに時間が遅く感じるんだから。


……プロデューサーさん、早く戻って来てください。


みんな……、プロデューサーさんが帰ってくるのを待ってるんですよ?


――
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/21(日) 21:43:01.60 ID:AYZEBkFA0


石川
「……終わったみたいね……」


医師
「……」



「せ、先生ッ! プロデューサーさんはどうなったんですかッ!? 助かったんですよねッ!?」


医師
「落ち着いて下さい。容態は安定して、手術は成功と言えるでしょう」



「……良かった……」


医師
「ですが……、彼は今、致死量の出血により昏睡状態にあります。まだ安心はできません……」



「……ぇ?」


医師
「このまま……植物状態になってしまうことも覚悟しておいて下さい」



「なんでそんなこと言うんですか! さっきは助かったって言ったじゃないですかッ!」


医師
「私たちも最善を尽くしました。しかし、こればかりは彼に帰ってくる意思がない限りどうしようもありません」



「そんな……。……助かったって……思ってたのに……」

444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/21(日) 21:43:51.34 ID:AYZEBkFA0


「愛……、諦めるには早いわよ」



「ママ……」



「まだ起きないって決まった訳じゃない。あいつが帰ってくるように呼びかければ良いのよ」



「でも……どうやって……」



「それを考えるのは……愛、あなたの役目よ」



「え……?」



「私たちがいくら呼びかけても、あいつは帰ってこない。そんな予感……ううん、確信があるの」



「だから……、愛がアイツを連れ戻してきなさい」



「あたしが……?」



「えぇ。……誰でもない愛だけ……。愛にしかできないことなの」



「……でも……」

445 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/21(日) 21:44:57.18 ID:AYZEBkFA0


「自分を否定するのは止めなさい。愛がやらなきゃアイツはずっと起きないのよ?」



「そんなのイヤ!! ……だけど、あたしになにができるっていうの!? 」



「だからなに? それで諦めるの? ここまで来て、最後の最後で諦めるって言うの? そんなの愛らしくないわ」



「……あたし……らしさ?」



「いつもの愛ならこんなところで諦めたりなんかしないわ。どんなに辛いことがあっても、挫けずに突き通すのが愛のスタイルだったじゃない。弱気になってるんじゃないわよ」



「……そうだね。ママの言う通りだよ。こんなのあたしらしくない」



「そうよ。諦めの悪さだけがあなたの取り柄でしょ? ならアイツが帰ってくるって信じて最後まで足掻きなさい」



「うん! やっとあたしにできることが分かったよ! ありがとね、ママ!」



「頑張りなさい、愛。私たちにできることならなんでもやるから、その時は遠慮なく言うのよ?」



「大丈夫だよ! もう、あたし一人じゃないもん! みんなが傍にいてくれてるだけで頑張れる!」



「その意気なら大丈夫そうね。……私も……自分の過去から逃げるのは止めることにするわ」



――
446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/21(日) 21:45:50.69 ID:AYZEBkFA0


あれから季節は移り変わり、花びらたちが鮮やかに舞うようになった頃。

あたしの日課は、彼の部屋へ行くことになっていました。






周りでは新しい生命が芽吹いているのに、あの人は……、まだ寝ています。 






彼の手を握って毎日たくさんお話をしているけど、聞いてるだけで笑ってくれないんです。


どんなに部屋の中で騒いでも、怒ってくれないんです。


お仕事で失敗したのに、あたしの頭を撫でて慰めてくれないんです。




……彼を驚かせようと思って、耳元で『早く起きないとアイドル辞めちゃいますよ?』って囁いても、なにも言ってくれませんでした。

447 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/21(日) 21:46:23.25 ID:AYZEBkFA0




新しいイジワルかな? あたしを困らせの好きでしたもんね。












……でも、プロデューサーさん。

そろそろ起きてください。



じゃないと……






……あたし、ホントに辞めちゃいますよ?












――
448 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/21(日) 21:47:08.77 ID:AYZEBkFA0


『ねぇ、プロデューサーさん。教えてくださいよ……』


……。


『……あたしの側にいるって言ったじゃないですか』


……。


『……なんで……いなくなったんですか?』


……。


『それに……あたしのお弁当、捨てたって言ってましたよね?』


『ホントは一緒に食べてたのに……、なんで……あんなウソをついたんですか?』


………。


『……プロデューサーさん、黙ってないで教えてくださいよ』

449 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/21(日) 21:48:13.66 ID:AYZEBkFA0

『もしかして、あたしを巻き込みたくなかったんですか? それとも、ただの気まぐれだったんですか?』


……。


『……あたしってバカだから、一人で考えても分からないんです』


『プロデューサーさんの考えてることも、プロデューサーさんの気持ちも、プロデューサーさんのことも……ぜんぜん分からないんです』


……。


『でも……一つだけ分かったことがありました』


『最初は、ずっと隠していようって思っていました。……だけど……ムリなんです……』


『自分の気持ちに、ウソはつけません』


『あたしは――』

450 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/21(日) 21:49:54.34 ID:AYZEBkFA0









『……あたしは、プロデューサーさんが好きです! 大好きです!』


『イタズラが好きなところも! 子供っぽいところも! ちょっとエッチなところも! 全部あたしの好きなプロデューサーさんなんです!』




『ずっと傍にいたいです!』


『これからもあたしの隣を歩いて欲しいです!』


『今までできなかったことを全部プロデューサーさんと過ごしたいです!』




『また笑ってくだいさい! 怒ってください! 𠮟ってください!』


『起きてください! 起きてくださいよ! ねぇ、早く起きてよ!! 起きてまた前みたいに“愛”って呼んでくださいよ……プロデューサーさん……』




『……離れたくないです……』


『あたしはプロデューサーさんの嫌いなママの子供だけど、……それでも……プロデューサーさんの傍にいたいんです』


『……一人で抱え込まないで、あたしにも背負わせてください。……あたしには……それくらいしかできないんですから……』


――
451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/21(日) 21:50:56.02 ID:AYZEBkFA0










霞んでいた風景が、ゆっくりと鮮明になっていく。

ここはどこだろう?

死後の世界にしては、やけに現実的だ。




――「あ、起きましたか?」




懐かしい声。

彼女の声を久しぶりに聞いたような気がした。

452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/21(日) 21:51:32.21 ID:AYZEBkFA0




「……ぁ……ぃ……?」





「はい。久しぶりですね」




また泣きそうな顔をしてる。

……前から変わってないな。お前も……




「あぃ……」




いつもみたいに撫でてやるから泣き止んでくれ。

……お前の泣き顔は……苦手なんだ。





「ここに……いますよ。日高 愛は、……ここにいます」




はは……。

……泣きながら笑うなんて……器用なヤツだな。




「おかえりなさい……プロデューサーさん!」


――
453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/21(日) 21:52:10.27 ID:AYZEBkFA0


『え〜、こちら――です。現場には緊張した雰囲気は張り付いています。いよいよ日高舞の記者会見が開かれる時間になりましたが、はたして真相を語るのでしょうか?』


――バシャッ! バシャッ! バシャッ!


『無数のフラッシュに囲まれながら、今、日高舞が登場しました』


――バシャッ! バシャッ! バシャッ! バシャッ!



『皆様、この度は突然の記者会見にも関わらずお集まり頂きありがとうございます』



『本来ならば直ぐにでも皆様に伝えるべきでしたが、諸事情により今日までお伝えすることができませんでした』


――『それは、あのプロデューサーとなにか関係してるんじゃないですか?』



『……はい。その通りです』


――……ざゎ……ざわ……どよ……どょ……。



『私とあのプロデューサーは皆さんが知っての通り、複雑な関係にあります。そして、そのことを今まで隠しながら過ごしてきました』



『ですが、この安易な選択が今回の騒動になり、多くの方々にもご迷惑をお掛けしてしまいました。このことにつきまして、深くお詫びしたいと思います』


――バシャッ! バシャッ! バシャッ! バシャッ! バシャッ!


――『それでは映画の内容について全て事実だと認めるんですか!?』



『はい。あの映画で描かれていた出来事は全て事実です』


――バシャッ! バシャッ! バシャッ! バシャッ! バシャッ!


――『過去に騒動となった熱愛についても事実だと認めるんですか?』



「……はい。……間違いありません』



『私がここにいるのは……自分勝手な行動で私の子供を深く傷つけてしまった責任と、過去にケジメをつけるです』


――『どうなさるつもりですか!?』



『アイドルを辞めます』




――ピッ。

454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/21(日) 21:53:07.84 ID:AYZEBkFA0




「まさか本当に引退するとはねぇ……」



「……」



「………」



「…………暇だなぁ……」


――コン、コン。



「入ってまーす」



「もうッ! おトイレじゃないんだから、普通に返事してくださいよ!」



「気にするな。というか今日は早いな。サボりか?」



「創立記念日ですよ! 今日は学校がお休みの日なんです!」



「なら、こんな所に来ないで友達と遊べよ。今だけだぞ?」



「そんなのあたしの勝手じゃないですか!」



「あー、そうですか。すみませんでした。……ったく、なにか楽しいのやら」



「あたしが好きで来てるんですぅ!」


――
455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/21(日) 21:53:33.42 ID:AYZEBkFA0



「お散歩しましょう!」



「いきなりどうしたんだ?」



「だってプロデューサーさん、ずっと寝てたじゃないですか! リハビリも兼ねてお散歩ですよ、お散歩!」



「リハビリって……。確かに身体は鈍ってるけど、普通に動けるぞ?」



「細かいことです! ほら、あたしがお散歩したいんだから行きますよ?」グィッ



「はぁ……。だりぃ……」ズルッ



「ちゃんと起きてくださいよー!」



「……もうすぐ退院なんだから今度にしようぜ?」



「ダメです! プロデューサーさんの今度はいつになるか分からないじゃないですか!」



「そうか?」



「そうですよ! だから早く行きましょう!」



「お、おい。分かったから引っ張るなって」


――
456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/21(日) 21:54:02.18 ID:AYZEBkFA0



「プロデューサーさん、どこか行きたい場所はありますか?」



「お前……、あれだけ強引に連れ出しておいてノープランなのかよ」



「えへへ」



「笑って誤魔化すな」


――ピコッ。



「ぁうっ! ……痛いです」



「デコピンくらいで大げさなヤツだな」



「でも……、なんだか懐かしいです。ふふっ」



「なに喜んでるんだよマゾ娘」



「マゾ?」



「イジワルされて喜ぶヤツのことだよ」



「じゃあ、あたしはマゾですね! プロデューサーさんのイジワル好きですもん!」



「うゎ……」



「なに引いてるんですかー!」



「いや、だって……イジワルされて喜ぶとか変態じゃん」



「人聞きの悪いこと言わないでくださいよー! プロデューサーさんだから好きなんです!」



「ぉ、おぅ……なんだか雰囲気が変わったな、お前」


――
457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/21(日) 21:54:56.63 ID:AYZEBkFA0



「あ、そういえば寄らなきゃいけない所があったな」



「え? どこですか?」



「事務所」



「事務所?」



「社長には迷惑をかけたから、顔くらいは出しておこうと思ってな」



「……う〜ん」



「なにかあるのか?」



「あたしの事務所、この騒動で色々と忙しくなったみたいなんですよ」



「まぁ、あれだけのことをしでかしたんだから、当然だろうな」



「それに……絵理さんや涼さんはプロデューサーさんのことを良く思ってないみたいだし……あたしは行かない方が良いかなって思います」



「お気遣いどうも。でも俺は行くよ。責任も取れない大人になりたくないからな」



「……大丈夫なのかなぁ……」


――
458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/21(日) 21:55:50.18 ID:AYZEBkFA0


――ガチャッ。



「お邪魔します」



「……」


絵理
「……」



「あ、お久しぶりですね。涼さん、絵理さん」



「……」キッ


絵理
「……」ジロッ



「ははっ。嫌われたもんだなぁ。まぁ、良いや。社長は?」



「……社長室にいますよ」



「ご親切にどうも」


――
459 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/21(日) 21:56:25.70 ID:AYZEBkFA0


――コンコン。


石川
「どうぞ」



「失礼します」


石川
「あら? もう退院したの?」



「まだですよ。今日は喧しいアイドルと一緒にリハビリ中です」


石川
「ふーん。それにしても、よく来る気になったわね」



「あれだけ勝手なことをさせてもらいましたから、せめて顔くらいは出すべきだろうと思いました」


石川
「ずいぶん立派な心意気ね。……それにしても……、もっとマシな格好はできなかったの? 今度は病院から逃げ出したのかと思ったわ」



「酷い言い様ですね。ちゃんと外出許可はもらってますよ」

460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/21(日) 21:57:04.14 ID:AYZEBkFA0

石川
「まぁ、良いわ。……はい、これ」



「請求状ですか?」


石川
「鋭いわね。その通りよ」


――ペラッ



「……」


石川
「すごい額だと思わない? どう計算してもそうなるのよね」



「ある程度は覚悟してましたが、……これ程とは……」


石川
「他にも765プロのと961プロのがあるから、総額にしたらいくらになるのかしら」



「……」


石川
「まぁ、地道に働いて返しなさい」



「ムリ言わないで下さい。こんな一級戦犯を雇ってくれるところなんて無いですよ」


石川
「あぁ、それは大丈夫よ。私が雇うから」



「……は?」

461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/21(日) 21:57:36.34 ID:AYZEBkFA0

石川
「なにマヌケな顔してるのよ」



「い、いや、辞表を出した人間を雇うって聞いたことが無いですよ」


石川
「あんたの辞表ってこれのこと?」



「……なんで持ってるんですか?」


石川
「そんなの決まってるじゃない」ニコッ



「……まさか……」


石川
「こうする為よ!」


――ビリッ! ビリッ! ビリッ! ビリリッ!


石川
「ここにあんたの辞表なんてないわ。という訳で、あんたはまだ876プロダクションの社員よ」



「ちょっと強引じゃないですか?」


石川
「ここには私たちしかいないんだから別に良いじゃない。それとも、なにか不都合なことでもあるのかしら?」



「……無いですね」


石川
「そういうこと♪」

462 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/21(日) 21:58:17.71 ID:AYZEBkFA0

石川
「でも、しばらくは他の事務所に仮移籍してもらうわ。コッチはあんたの所為で色々と忙しいんだから」



「分かりましたけど、……よく受け入れてくれましたね」


石川
「そこの社長とは仲が良いの。向こうもあなたのことを気に入ってるみたいよ?」



「そうですか」


石川
「はい、これ。私の紹介状だから無くさないように」


石川
「まぁ、ほとぼりが冷めたら帰ってきなさい。それまでにあんたの居場所をつくっておくわ」



「ありがとうございます。それで、仮移籍する場所ってどこなんですか?」


石川
「――よ」


――
463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/21(日) 21:58:56.85 ID:AYZEBkFA0



「お待たせ」



「ど、どうでしたか?」



「社長の温情でなんとかプロデューサーは続けられるみたいだ」



「ホントですか!?」



「でも、ほとぼりが冷めるまで忙しいみたいだから、しばらくは他の事務所で働かせてくれるらしい」



「その事務所ってどこなんですか?」



「あぁ、それは――」







「765プロだ」






――
464 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [saga]:2012/10/21(日) 22:04:09.15 ID:AYZEBkFA0
ミスが目立ちましたが、愛「あたしという存在……」は以上になります。
465 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/21(日) 22:10:37.85 ID:1+aZHpZGo
依頼に出してないと思ったら続き書き溜めてたのか

ちょっとしっくりこないというか無理矢理な気がするけど、個人的には前のより良いと思う

乙でした
466 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/10/21(日) 22:13:10.47 ID:MnEa6W8Co
まあ本人も自己満足だって言ってるしそういうもんだろ、俺は前のだけでも満足だったけど今回ので超満足だ

乙、次のSSにも期待してる
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