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オッレルス「今日こそ、告白する」フィアンマ「…安価?」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/26(水) 16:58:16.62 ID:Tz/a6a+AO



・ホモスレです

・ショタのオッレルスさんがショタのフィアンマさんに一目惚れして仲良くなりたいが為に頑張るお話

・時間軸不明。原作よりずっと前の捏造世界

・当スレのフィアンマさんは盲目です

・基本はほのぼの進行

・キャラ崩壊注意

>>1は(安価スレの割に)遅筆




※注意※
安価次第で展開が多種多少に変化します(ガチホモから百合まで)
メインCPは『オレフィア』なスレです。
エログロ展開の可能性がありますが、出来るだけ18禁的安価内容はご遠慮ください。


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ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
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旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
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木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1713351945/

いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
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【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
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こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
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【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
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アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
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2 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/26(水) 16:59:38.45 ID:uT0a65Uk0



没落しかけだというのに、貴族らしく体裁を保って習い事など。
無駄な事だ、と思いながら、好きでもないピアノの演奏から逃げ出した。
一時的にやって来たイタリアは、何だかのどかで良い場所だと感じられる。
勿論、物騒な部分は物騒だし、全てが全て平和だという訳ではないが。

オッレルス「…、」

逃げ出したはいいものの、追手が来なさそうな場所に行かなければならない。
となれば、教会辺りなどどうだろうか。
思うがまま気が向くまま、近くの教会の敷地へと逃げ込んだ。

そこに居たのは、一人の子供。俺と同い年か、はたまた年下か。

幼く、容姿の優れた、赤く長い髪の…少年? 少女?

ひとまず、前者だと断定する事として。

オッレルス「きみ、」

呼びかけると、その子は少し怯えた様子で俺の方へ振り向いた。
ただ、俺の目を見てはいない。どこか、宙を眺めている。

フィアンマ「…だれだ」

一歩下がり、警戒した様な声を出される。
そんなに警戒しなくても良いのに、と思いつつ、俺は口を開いた。

オッレルス「えっと、…」

名前を素直に名乗れば、貴族である事がバレるのではなかろうか。
別に何かをひけらかす訳ではないが、何となく、バレるのは嫌で。
本名の代わりに咄嗟に出てきたのは、昨夜読んだ北欧神話に登場する、名前。

オッレルス「…うる。…わたしのなまえは、おっれるすだ」

フィアンマ「おっれるす、か」

オッレルス「きみの、なまえは?」

フィアンマ「…おれさまの、…なまえは、ない」

そのうちつけてもらえるだろう、と彼はぼやく。
教会に来てまだ日が浅いのか。
それにしても、親から名前をつけてもらっていないのか。

オッレルス「じゃあ、…ふぃあんま、なんてどうかな」

赤く、燃える様な髪の色。
イタリア語では確か、炎の事をフィアンマと言った筈。

フィアンマ「…ならば。おれさまのなまえは、きょうこのしゅんかんから『ふぃあんま』だ」

俺が居ない場所に視線を向けて、彼は嬉しそうに微笑んだ。
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/09/26(水) 16:59:39.41 ID:Tz/a6a+AO
+
4 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/26(水) 17:00:10.99 ID:uT0a65Uk0

時間はあるのか、と聞けば、暇で仕方がないという。
他の子供達はサッカー等で遊ぶ方が楽しいそうで、自分はいつも一人なのだと、彼は言った。
どうせ捕まるのなら、せめて精一杯この子と話していたいと思い、俺は隣に座って言葉を返す。

オッレルス「きみは、からだがよわいのか」

フィアンマ「…よわいな。…あとは、…みえないんだ、なにも。まっくらだ」

自分の目元を撫で、目を伏せて、そうぼやく彼の背後には、言いようのない哀しみが見えた。
先天的なものなのか、後天的なものなのか、それはわからなかったけれど。

フィアンマ「だから、ぼーるはかたちしかわからない。まぜてもらっても、あちらがこまるだけだ。…わがままはいわん」

オッレルス「……、」

澄んだ金色の瞳。どこか虚ろな瞳。
こんなにも美しい目をしているのに、何も見えないのか。
この青空も、近くにある海も、夜の星空も、月も、全て。

フィアンマ「…ときに、おまえはなんさいなんだ」

オッレルス「あ、はっさいだよ」

8歳。
復唱して答えると、こくりと彼は頷いた。
そして、自分の年齢も口にする。

フィアンマ「…おれさまはろくさいだ。…おっれるすより、にさいとししただな」

オッレルス「そう、だね」

それにしては尊大な態度だ、とは思ったものの、それもまた新鮮だったので、気にしない。

フィアンマ「…おっれるすは、どんなめをしているんだ」

オッレルス「みどり」

フィアンマ「あたたかいいろか」

草木と同じ色、と理解したのか、フィアンマは軽く脚をぱたつかせる。
そして、おずおずと問いかけてきた。

フィアンマ「…おれさまのめは、どんないろをしているんだ」

オッレルス「きんいろだよ」

フィアンマ「…きん。…どんないろだ」

オッレルス「…おひさまみたいな、いろだよ」

目が見えない彼に、色の概念など解る筈もなかった。
おひさまか、と俺の言葉を繰り返し、フィアンマは曖昧な視線を空に向ける。

フィアンマ「…おっれるすは、どうしてここにきたんだ」

オッレルス「…ちょっと、いろいろあって。きょうかいにすむわけじゃないんだ」

フィアンマ「…そうか」

此処は神様の家だから、ゆっくりしていったら良い。
そう言って、フィアンマは目を閉じる。
彼の話によると、それこそ奇跡でも起こらない限り、彼の目は見える様にはならないらしい。
今の時代に『神の子』は居ないからまず治らないだろうな、と言われ、何の話かと問えば、十字教の話をされた。
どうしてだか、普段の勉強より、彼の口から紡がれる聖書の内容の方が、聞いていて楽しかった。
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/09/26(水) 17:00:12.11 ID:Tz/a6a+AO
+
6 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/26(水) 17:00:30.59 ID:uT0a65Uk0

明日も来るから、と言い残して、俺は家に戻った。
自分の家があるのなら戻った方が良い、と言われたから。
彼の言う事には、何となく反発する気が起こらなかったのだ。
嫌味と高圧的な叱り方をされたが、逆上する事は無く。
かえって彼の尊大な口調を思い出した為、気分は良かった。
早く明日にならないものだろうか。何だかふわふわとして落ち着かない。
彼はきちんとご飯を食べられただろうか。お風呂には入れるのだろうか。
思い返すだけで、やたらとドキドキとする。何か、この感覚は何かに似ている。

ああそうか、恋というものか。
確か、数年前、メイドに対して淡く抱いた様な気がする。
彼女はそのまま同じ使用人の一人と結婚して、辞めてしまったんだっけ。

早く、明日にならないかな。
何をあげたら、喜んでくれるだろう。
綺麗な物は見る事が出来ないから、視覚に関係しないものが良いのかもしれない。
だったら、オルゴールだとか、そういう耳で聴くもの?
それなら喜んで…いや、教会に居る他の子供達が妬んで壊してしまうかもしれない。

オッレルス「うぅ…」






何を持って行く?(物品or食物)>>+2
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/26(水) 17:27:42.59 ID:8Is2bxyG0
チョコレート
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/26(水) 17:29:51.23 ID:8Is2bxyG0
>>7

9 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/26(水) 17:51:30.02 ID:uT0a65Uk0

視覚が関係していないもので、形として残らないもの。
金なら幸い、子供には過ぎる程の金額を持ち合わせている。
確か教会に行く道すがら、ケーキ店があったはずだ。
確かそこでは、マドレーヌだとか、クッキーだとか、チョコレートだとか、甘いものが売っていたはず。
大人達の話では明日は涼しいらしいので、チョコレートを持って行く事にしよう、とオッレルスは決めた。
甘い物が好きかどうかわからないので、ビター気味のものと、甘いミルク気味のもの、両方が詰まっている箱を買って行く事にする。

オッレルス「…よろこんでくれたら、いいな」

彼はわからないだろうから、どんな見た目をしているか、説明してから食べてもらおう。
話によると教会では日々の食事はともかく、おやつ等の贅沢品は食べられないらしいので、喜んでくれる事だろう。
果たして今日会って、明日に贈り物をして受け取ってもらえるかはわからないけれど。

オッレルス「…た、たぶん。だいじょうぶだろう」

二人で食べきれる量というと、小さな箱だろうか。
ところで、何と言い訳して抜け出そうか。
明日は確か習い事はほとんど無かった筈、暇な時間があれば良いが。




翌日。
子供ながらにそれっぽい適当な言い訳を並べ立て、家の人間を騙したオッレルスは、外へ出てきた。
ケーキ店に入り、きょろきょろと辺りを見回した後、チョコレートの詰められた小さなギフトボックスを購入する。

ミルクチョコレート、ホワイトチョコレート、ビターチョコレート。
甘酸っぱいフランボワーズソースが入ったチョコレートと、甘いキャラメルソースが入ったチョコレート。

どうかアレルギー等を彼が患っていませんように、と祈りながら、オッレルスは再び教会へとやって来た。
フィアンマは暇だったのか、昨日と同じく教会の敷地内の少し寂れたベンチに腰掛けて空を見上げていた。

オッレルス「ふぃあんま」

フィアンマ「…ん、おっれるすか」

目が見えないという事に限らず、何処かの器官に障害がある人間は、別の器官や能力が鋭敏に発達するという。
フィアンマの場合それは聴覚と記憶力に該当する様で、声だけでオッレルスだと正しく判断した為、安堵の笑みを浮かべた。

フィアンマ「やくそくどおり、ごごさんじだな」

オッレルス「…じかんがわかるのか?」

フィアンマ「さきほどかねがさんどなった。きけばわかる」

オッレルスはフィアンマの隣へ腰掛け、上品な紙袋の中から箱を取り出した。

フィアンマ「? なにかもってきたのか?」

オッレルス「ちょこれーとをもってきたんだ」

フィアンマ「…ちょこれーと?」

今までチョコレートに限らず菓子というものを食べた事の無いフィアンマは、不思議そうに首を傾げる。
見つめているのは、オッレルスの腹部。見えていないのだから、手元に視線がいかなくて当然だ。

オッレルス「たべものだよ」

フィアンマ「…たべ、もの」

オッレルス「ふぃあんまにたべてもらいたくて」

フィアンマ「…おれさまに?」

どうして、と不思議そうな表情で、フィアンマはオッレルスを見つめる。
正確には少し違う方向なのだが、彼としてはオッレルスの顔を見ているつもりなのだろう。

フィアンマ「どんなたべものなんだ? その『ちょこれーと』というものは」

オッレルス「え、っと…うーん…>>11
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/26(水) 18:07:26.52 ID:IwsfnlISO
Ksk
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/26(水) 18:08:39.51 ID:IwsfnlISO
とても甘美で滑らかに口に溶け、マイルドな味わい。食べるととても幸福感を覚え精神的充足を得られる。珈琲と一緒に頂けばさらに幸せになるお菓子
12 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/26(水) 18:27:07.52 ID:uT0a65Uk0

オッレルス「え、っと…うーん…とてもかんびでなめらかにくちにとけ、まいるどなあじわい。たべるととてもこうふくかんをおぼえ、せいしんてきじゅうそくをえられる。こーひーといっしょにいただけばさらにしあわせになるおかし、だよ」

フィアンマ「…こーひーとはなんだ」

オッレルス「まめからいれる…そうだな、おちゃみたいなものだ。まめからでるおちゃ」

フィアンマ「…こうちゃににているのか」

オッレルス「いれかたはにているね」

幸福感を覚える、マイルドな味わい。
甘美で、そして滑らかに溶ける。
精神的な充足を得られる、幸せな食べ物。

何だかそれはとっても素敵な宝物の様に思えて、フィアンマは食べる事を思わず躊躇った。

フィアンマ「…きちょうなものなんじゃ、ないか?」

自分なんかが、と言わんばかりの語調だった。
尊大にして気弱。相反する要素だが、不憫そうな見目にはよく似合った。

オッレルス「きみにたべてほしくて、かってきたんだ。なんしゅるいかあるよ」

フィアンマ「…どれがいちばんおいしいんだ」

オッレルス「…うーん」

悩んだ後、オッレルスはチョコレートを一粒、箱から取り出す。
一番幸福な気分になれる甘く甘ったるいチョコは、ホワイトチョコに他ならない。

オッレルス「これかな」

フィアンマに手渡そうとするも、彼は緩く首を横に振った。

フィアンマ「…いちばんおいしいのなら、おまえがたべればいい。おれさまはにばんめにおいしいほうをたべる」

とてもとても謙虚な発言だった。
金持ち特有の嫌味な所は無いものの、今まで貴族として、その中でも子供として、一番良いものは優先され、不自由無く独占してきたオッレルスにはその発言の意図が一瞬読めなかった。
自分はこの子に貴族だと名乗っていない筈なのに。
そして少し経った後、思いやりから来たものだと気づく。

ああ、やっぱり自分はこの子が好きだ。とっても優しくて、可愛い子だ。

赤く真っ直ぐで長い、背中まで届く髪を風に靡かせ、フィアンマは首を傾げる。

フィアンマ「にばんめにおいしいのはどれなんだ」

オッレルス「…これかな」

差し出したのは、二個目のホワイトチョコレート。
同一のものだが、嘘はついていない。
優しくしなくてもいいよ、自分は後で、劣ったもので良いよ、と言われると、優しくしたくなる。
フィアンマは、手渡され、掌の上に乗ったチョコレート一粒を指の腹で撫で、その感触に興味深そうな表情を浮かべた。

フィアンマ「…たしかに、なめらかだな」

一言感想を漏らして、ぱくりと口に含む。
オッレルスも同じく口に含むと、慣れ親しんだ甘いミルクの香りと白い甘さに舌鼓を打ちながら、フィアンマの様子を窺う。

オッレルス「…おいしい?」

フィアンマ「…>>14

13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/26(水) 19:25:22.13 ID:8reHNg590
ksk
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/26(水) 19:25:48.48 ID:8reHNg590
おいしいっ!ニヘー
15 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/26(水) 19:48:45.04 ID:uT0a65Uk0

フィアンマ「…おいしいっ!」

普段(といってもオッレルスはフィアンマと付き合いが浅いのでわからないが)の尊大さは消え、子供らしい無邪気な笑みで、フィアンマは味の感想を口にした。
気に入ったのか、にへら、と柔らかな笑みを浮かべ、口の中に残ったチョコの味を何度も舌で吟味している。
唾液にチョコレートが溶け、自分の唾液が甘く変化した事が不可解で不可思議で、そして素敵だと感じたフィアンマは、幸せそうに笑む。

フィアンマ「…しあわせなおかし、か」

何かしっくりと来たのか、フィアンマはこくこくと頷く。
その吐息はホワイトチョコレート色に染められて甘い。
安物では無い為、香るミルクはとってつけた様な香料臭いそれではなく、純粋な牛乳のそれ。
こんなに美味しい物を口にした事は無い、初めてだ、とフィアンマは幸福そうにぼやいた。
甘い呟きは空に溶け、聞いているオッレルスとしても気分が良い。
普段の尊大な口調は話し方として定着しているだけで、彼は無邪気且つ気取っていないのだ。

フィアンマ「これは、どんないろをしているんだ」

オッレルス「まっしろだよ」

フィアンマ「みるくのいろか」

オッレルス「うん」

何かと関連付けて色を覚えているのか、はたまた解釈しているのか。
オッレルスはただ単に白を『白』として理解するが、フィアンマは白を『ミルクの色』『晴れた空の雲の色』として理解する。
そんな解釈方が斬新で、そして文学的で、オッレルスは素直に好感が持てた。
もう一粒食べたい、という欲が出たのか、フィアンマはおずおずともう一つもらえないだろうかと持ちかける。
そもそもこのチョコレート全てはフィアンマに食べてもらう為に持ってきたオッレルスは、嬉しそうな笑顔で勿論だと頷く。
取り落としてしまってはもったいないので、フィアンマが欲しいと強請るまま、オッレルスが一粒摘んで手渡す。

フィアンマ「…すっぱい」

フランボワーズソースの入ったチョコレートは少々酸っぱさが強かったのか、フィアンマは眉を潜めた。

フィアンマ「…でも、おいしい。…おっれるす、ありがとう」

こんなにも美味しいものを食べさせてくれて。わざわざ買ってきてくれて。

今まで自分と同じ様な家の令嬢からはその様なお礼を言われた事が無かったオッレルスは、初体験にときめきを覚えながら相槌を打つ。
オッレルスもまた、フィアンマと同じ様に、周囲と馴染めない子供だった。
貴族らしく振舞うのは、驕り偉ぶるのはいまいち好きになれなくて、だからといって街中の子供達に気軽に声はかけられなくて。
日々束縛される中、与えられる小遣いは友人など居ない為、使う機会に恵まれる事は無かった。今日までは。
自分が知っている、『――家と釣り合う』金持ちの女の子と遊ぶより、この子と話している方がよっぽど有意義で楽しい。
幼く情動的な恋愛感情と一時的な解放感に、オッレルスは幸福そうに緩く笑んだ。

オッレルス「ほかに、たべてみたいものはあるかい?」

子供には過ぎた金、要らない紙切れと思っていた札束が、ようやく日の目を見る時が来た。

フィアンマ「たべて、みたいもの」

そもそも食べ物について詳しく知らないフィアンマは、首を傾げて悩む。
毎日最低限の野菜とパンとスープを食べてさえいれば、人間はとても健康的に生きられる。
だから、これまで何かこれといって贅沢な食べ物に目を向ける事は無かった。
悩んでいる内に、午後五時を告げる鐘が鳴る。荘厳な音は、五度鳴った。

フィアンマ「…すまないな、とくにうかばなかった」

オッレルス「…あしたも、きていい?」

フィアンマ「…おっれるすがきてくれるのなら、あしたもここでまっている」

オッレルス「じゃあ、あしたはごごにじに」

フィアンマ「ん、」

手を振りあって別れを告げ、オッレルスは家へ、フィアンマは教会の中へと帰った。
チョコレートを食べきって空になった箱、ゴミは街中のゴミ箱に捨て。
家に戻ったオッレルスは早々に夕食を済ませ、またもや頭を悩ませた。
明日は何を持って行こう。また、あの柔らかな笑顔が見たい。

オッレルス「…なにが、いいかな」




何を持って行く?(物品or食物)>>+2
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/26(水) 19:53:51.33 ID:QV6i4Y/R0
ksk
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/26(水) 19:58:41.71 ID:IwsfnlISO
ロケット
18 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/26(水) 21:25:43.28 ID:eIjKPWQB0

今日は食べ物だったから、明日は食べ物じゃないものにしよう。
彼は頭が良さそうに思えるから、ちょっと面白いものが良いかもしれない。
明日は玩具店で精巧な模型のロケットを買って、もし欲しいと言ったならあげよう。
別に欲しくなさそうだったら、自分の机の肥やしにしてしまえば良いと、ただそれだけのこと。
興味深そうに首を傾げるあの愛らしい動作をまた見る事が出来るだろうか、と思いつつ、オッレルスはベッドに潜り込んで目を閉じた。

オッレルス「…おやすみなさい」

今此処に居ない、好きな人へ向けて、呟いた後。
少年は毛布にしっかりとくるまり、目を閉じた。



一方。
おやつ時の甘いチョコレートを思い返しながら、フィアンマは眠れずにいた。
健康であれば外に出て散歩してみるのも悪くはないが、視界がないので、危険は避けたい。
お祈りを捧げながら、オッレルスの容姿を想像してみる。
優しげな声と、緑の瞳。新緑の木々の様な、優しい目をしているのだろうか。
そもそも新緑の木々など見た事は無いし、きっと見る事はないのだけれど。
どれだけ優しい見目をしているのだろう、それとも見目は意外と大柄で物騒なそれなのだろうか。
どちらにせよ性質は優しいのだろうなあ、と想像して、フィアンマは首元から十字架を取り出す。
銀色をしたロザリオの表面を撫で、口元を緩ませながらお祈りをした。

フィアンマ「…おやすみなさい」

寝る前のお祈りとは別に、いつものお祈りをする。
目が見える様になりますように。
それから、今日からはもう一つお祈りを付け加える。

フィアンマ「…おっれるすが、けがしませんように」

明日も無事、ここへ来てくれますように。
そうお祈りした後、少年は眠りに就くのだった。




翌日。
今日は習い事がない為、オッレルスは何を気負う事無く外出した。
そして昨夜決めた通りロケットの模型を買うと、教会の敷地に入った。

オッレルス「ごめんね、ちょっとおくれた」

フィアンマ「おれさまはふんしんもびょうしんもわからん。よくきたな」

オッレルス「きょうはすこしおもしろいものをもってきたんだ」

フィアンマ「おもしろいもの? 『ちょこれーと』より、か?」

また食べ物だろうか、と不思議そうな顔をするフィアンマの手に、オッレルスはそっと、開封して取り出したロケットの模型を触らせる。
しばらくぺたぺたと触り、指先で形をなぞり、頭の中で形を組み立てていきながら、フィアンマは質問した。

フィアンマ「…なにか、もけいのたぐいか」

オッレルス「そうだよ。ろけっとのもけいなんだ」

フィアンマ「ろけっとか」

月にまで届いた、科学の産物。
ぺた、と触り、何を見るでもなく、宙を見つめながら、フィアンマは言葉を紡ぐ。

フィアンマ「……どちらにせよ、みることはできないが。…まぢかでつきをみたら、きれいなのだろうな」

寂しそうにぽつりと呟いて、フィアンマはため息を漏らした。
自分の力ではどうにもしてあげられない歯痒さに、オッレルスは口ごもる。

フィアンマ「…にほんのとあるさっかは、つきのうつくしさをあいのことば―――『I Love you.』のやくごにしたそうだ。…おれさまにはつかえないもんくだし、そもそもこんなめではこいなどできるわけがないとおもっているから、つかわん…つかえんが。『つきがきれいですね』、だそうだよ」

もし使う時が来たら使ったら良い、と言い、フィアンマは指先で模型を弄んだ。

オッレルス「…、>>20
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/26(水) 21:47:20.91 ID:QV6i4Y/R0
ksk
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/26(水) 22:18:15.65 ID:IwsfnlISO
首にかける方のロケットのつもりが……オウフ安価↓
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/26(水) 23:09:23.50 ID:IwsfnlISO
じゃあ、今、君に。



…でも、俺は月なんかより、君のほうが素敵だと思う。
22 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/27(木) 09:30:51.05 ID:MBsKqDVAO

オッレルス「…、じゃあ、いま、きみに。……でも、おれは…わたしは、つきなんかより、きみのほうがすてきだとおもう」

一人称に迷いながらも、遠回しな好意の告白だった。
フィアンマはきょとんとした後、くすりと笑った。

フィアンマ「…おれさまはあいのこくはくのはなしをしていたんだぞ。そのひょうかはうれしいが、…そういったことばは、かれんなおんなにいったほうがいい」

君充分可憐じゃないか、と思いつつ、何たる鈍感かとオッレルスはうなだれる。

オッレルス「ひょうかというか、いまのは…うぅ…」

フィアンマ「おっれるすはへんなやつだな」

自分が告白される筈が無いと思い込んでいるフィアンマは、オッレルスが自分を元気付けようとしてくれたのだと解釈してはにかむ。
次はわかりやすい愛の告白を用意しなければ、と思いつつ、いやしかし受け入れてもらえないのでは、という思考の海に溺れ、オッレルスは落ち込むのだった。
ロケット模型に触り飽いたのか、フィアンマは模型を返す。
オッレルスはそれを袋にしまい込み、時計を見やった。
お別れの午後五時まで、後一時間はある。

フィアンマ「おっれるす」

オッレルス「?」

フィアンマ「…おまえのかみは、どんないろなんだ」

オッレルス「きんだよ」

フィアンマ「おれさまのめと、おひさまのいろと、おなじいろか」

オッレルス「ちょっといろあいがちがうけど、そうだよ」

フィアンマ「おれさまのかみは、どんないろをしているんだ」

オッレルス「あかだよ」

フィアンマ「いちごのいろか」

オッレルス「うん」

フィアンマは自分の髪を触り、次いでオッレルスの髪をやわやわと触った。

フィアンマ「…あしたは、こられるか?」

オッレルス「くるよ。ぜったいくる」

フィアンマ「ん、そうか」

髪から手を離し、フィアンマは嬉しそうにこくんと頷く。

フィアンマ「…おっれるすは、おれさまがなんどききかえしてもいやそうにしないから、すきだ。はなしていて、たのしい」

オッレルス「…、」

いくら言葉に長けていても、両者とも子供である。
言った羞恥にフィアンマは、言われた照れくささにオッレルスは、顔を赤くして黙り込んだ。
と、午後五時を告げる鐘が鳴る。
また明日、と言い残して、オッレルスは帰宅する。
残されたフィアンマは、迎えに来てくれたシスターを頼りつつ、教会に戻るのだった。
23 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/27(木) 09:31:38.98 ID:MBsKqDVAO



『…おっれるすは、おれさまがなんどききかえしてもいやそうにしないから、すきだ。はなしていて、たのしい』

オッレルス「…すき。…すき、かぁ」

きっと、自分が彼に抱いている甘酸っぱいそれではなく、単純に好ましいという意味。
そうと頭で理解はしていても、心はついていかない。
彼に色々と聞き返されて、嫌な筈が無いのだ。
聞き返すというのはつまり、自分の話をもっと理解したいと、そう思ってくれている事の表れなのだから。
机に飾った、箱の中の模型を見やって、オッレルスは薄く笑む。
話していて楽しい、と言ってくれた。

オッレルス「…あしたは…」




明日は何を持って行く?>>+2
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/27(木) 11:01:45.76 ID:YuIdUlRz0
ksk
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/27(木) 12:14:56.32 ID:YuIdUlRz0
キャンディ
26 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/27(木) 19:36:26.60 ID:DRBrjR3L0

チョコレートを気に入ってくれた様なので、お菓子が好きなのかもしれない。
ホワイトチョコレートを食べた時、心底嬉しそうな顔をしていたから、キャンディが良いかもしれない。
チョコレートを購入した店にキャンディーの小さな詰め合わせがあった筈だ、とオッレルスは思い返す。
明日はそれを買って行こうと決め、顔を赤くしていたフィアンマの様子を思い浮かべつつ、オッレルスは目を瞑る。
何だか今日は、とっても良い夢が見られそうだ。幸せな気分である。

オッレルス「…おやすみなさい」



翌日。
酷い雨の中、傘を差してオッレルスは外に出た。
豪雨も良いところで、夕方には雷が鳴るそうだが、そんな事はどうでも良かった。
幸い店はやっており、キャンディーが数種類詰められたそれを購入した後、真っ直ぐに教会へと向かう。
流石にこの雨の中外で待っている筈も無く、教会の扉を叩くと、上品な物腰のシスターが通してくれた。
他の子供達は今日、神父に連れられて何処かに出かけているらしく、教会に居るのはシスターが数人とフィアンマだけだった。
足音に気が付いたフィアンマは窓に顔を向けるのをやめて、振り返る。

フィアンマ「…だれだ」

オッレルス「おれだよ、ふぃあんま」

フィアンマ「…おっれるす」

シスターは何か仕事があるのか、別室に消え。
フィアンマは手で周囲の物に触り、転ばない様慎重に歩いて、オッレルスに近寄る。

フィアンマ「そとでまつつもりだったのだが、さすがにな」

オッレルス「むしろ、なかでまっていてくれてよかった」

近寄ってきたフィアンマが転ばない様気をつけつつ座らせ、オッレルスはその隣に座り。
今日はベンチでなく教会内の長椅子だが、いつも通りの様子だ。

オッレルス「きょうはきゃんでぃーをもってきたんだ」

フィアンマ「…きゃんでぃー」

フィアンマの中ではキャンディーというものは薬草と砂糖を煮詰めて作った、風邪の時に食べる不味い物。
やや嫌そうな顔をするフィアンマに、フルーツキャンディーは苦手なのかとオッレルスが問いかけた為、表情が変わった。

フィアンマ「おいしいのか」

オッレルス「たぶん、おいしいよ」

イチオシは苺だった様な、と思いつつ一粒取り出し、オッレルスはその飴粒をフィアンマに手渡した。
恐る恐る口に含み、フィアンマは何か考える素振りを見せた後、目を瞬かせた。

フィアンマ「…にがくない。おいしい」

オッレルス「よかった」

柔らかく笑み、しばらく飴を食べつつ、話をする。
フィアンマは雨の音が好きなのか、時折窓の方へ顔を向けた。
しかし雷は苦手なのか、一度は平静を装って耐えられたものの、二度目は耐え難く、涙目でオッレルスに抱きついた。
目が見えない反動で耳が良いので、雷の音を他人より強く感じ取ってしまうのかもしれない。
ドキドキとしながら固まるオッレルスの胸元に顔を埋め、フィアンマは意識を雷から逸らそうとする。
無慈悲に轟音を立てる雷は落ちた場所が近いらしく地鳴りすら起こしていて、普段雷に怯えないオッレルスでさえ恐ろしいと感じる。

オッレルス「…ふぃあんま?」

フィアンマ「かみなりは、…きらいだ。おとが、おおきいから、…こわい、」






オッレルスはどうする?>>+2
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/27(木) 21:40:57.10 ID:gE/GxZ1SO
大丈夫、俺がそばにいるかるぅああああ!抱き寄せて頭なでなでして膝にのっけてぎゅー
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/27(木) 23:21:28.08 ID:KNSB9bFV0
>>27
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/09/27(木) 23:47:59.16 ID:MBsKqDVAO
+
30 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/27(木) 23:51:35.75 ID:+cLB/cA80
《記述し忘れましたが、良識の範囲内で、連投や連続取得はご自由にどうぞ》



だが、今この場所では自分以上にフィアンマが怯えているのである。
となれば、彼を好いている自分が支えるのは当然の事だろう。
そう判断したオッレルスは、自分は恐怖を感じていないという態度で、フィアンマの身体をぎゅっと抱き寄せる。

オッレルス「…だいじょうぶ。おれがそばにいるから、」

フィアンマ「…ぅ、」

じわじわと染み出す涙を手の甲、服袖で拭って、フィアンマは項垂れる。
女の子の様に叫びこそしないが、本当は大声で泣きたい程怖がっているのだ。
フィアンマよりも身長の高いオッレルスは少し迷った後、向かい合う形でフィアンマを自分の膝上に乗せ、再度抱きしめ直す。
光が怖いのであれば窓から遠ざけるだけで済むのだが、音に関してはどうにもしてあげられない。

オッレルス「…いっしょにいたら、こわくないよ」

フィアンマ「……、」

雷がまた近くで鳴り響き、無言のままに強く抱きついたまま、フィアンマはこくこくと頷く。
雨はともかく早く雷が治まります様に、と祈りながら、オッレルスはフィアンマのさらさらとした髪を撫でる。
たとえ知識が豊富でも、何だかんだで彼はオッレルスより二歳も年下の、6歳の子供だ。
怖いものは怖いし、逃げたい時は逃げたい。

しばらくの後、雷は治まり、今度は雨の勢いが増した。
軽いパニックを起こしてつい抱きついてしまった事に申し訳なさを感じたのか、フィアンマはゆっくりと離れ、辺りを触って確かめながら、オッレルスの隣に座り直した。
彼が落ち着いてくれて良かったような、いやしかしもう少しくっついていたかったな、と相反する感情から発露する残念さに何ともいえない表情を浮かべているオッレルスへ、フィアンマはため息混じりに謝罪をする。

フィアンマ「…すまなかった」

オッレルス「かまわないよ」

フィアンマ「…、……めいわく、だろう?」

自分にしがみつかれて嫌だったのでは、と落ち込む。
むしろ君に抱きつかれて嫌な人間はほとんど居ないんじゃないか、とは思いつつもその言葉をそのまま口に出す事はせず。

オッレルス「めいわくなんておもったことないし、おもわない。…ちょっとさむかったから、ちょうどいいくらいだ」

フィアンマは優しい性格だから、気を遣わせたくなくて。
そんな理由で用意した甘い言い訳を信じたのか、彼は緩く笑んで頷いた。
たとえオッレルスが嘘をついていますという顔をしていても、彼には見えはしないのだ。だから、バレない。





午後五時を告げる鐘が鳴り。
雷に打たれはしないかと不安がるフィアンマを宥めたオッレルスは、家に帰った。
びしょ濡れになってしまったが、そんなに気分は悪く無い。

オッレルス「…いいにおいだったな」

お菓子の様な、とまではいかないけれど、存外甘い匂いがした。
それが石鹸の匂いなのか体臭なのかはさっぱり不明だけれど。
まるで女の子みたいだ、と思いつつ、いやしかし彼は女の子の可能性もあるのだ、と思い直す。
今度性別を聞いてみよう、と決意して、目を閉じた。




明日は何を持って行く?>>+2
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/27(木) 23:56:45.05 ID:gE/GxZ1SO
花と花瓶と盲目の人も書ける魔術手紙せっと、じぶんちの住所書いたメモ
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/28(金) 00:45:44.04 ID:WrZyj5vSO
いつでも話せる交信術式が施された霊装
33 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/28(金) 01:06:45.28 ID:dCeHnF+T0

翌朝、家の誰よりも早く目を覚ましたオッレルスは、黙々と作業をしていた。
家の書庫にあった少し特殊な本―――所謂魔道書の写本を眺めつつ、手順に沿って通信・交信術式を作っているのだ。
24時間いつでも、自分が生きている限り、そしてこの道具…霊装が壊れてしまうまでは、いつでも連絡が取れるものを。
とはいっても換えは利かないし、自分が無くしてしまっても無効になってしまうものだ。
お互いがそれを手にしている間だけ、身に着けている間だけ、話す事が出来る。
オッレルスには魔術の才があり(そもそも才能が無くても大体の魔術は使えるように出来ているが)、簡易的なそれはさっさと作り上げる事が出来た。
基本をあまり学んでいないにも関わらず、既存の術式やその記述から自分なりの方法を編み出す辺り、本当に才覚があるのだろう。
ただ、それに関しては自覚が無い。特に学ぼうとも思っていない。
ただ、非現実的な力を頼って、フィアンマといつでも話せれば、オッレルスはそれだけで良いのだ。
これを渡して会話を出来るようになれば、昨日の様な酷い嵐の時、会いに行かずとも話が出来る。
勿論基本的には会いに行くつもりではあるが、昨日よりも酷い嵐が来た時、きっと会いには行けない。物理的に。

オッレルス「できた、」

額の汗を服袖で拭い、オッレルスはふぅと一息ついた。
頭が痛むのは魔術を作業中に学んだが故だろうか、それとも手作業に集中して疲れたからだろうか。
仮に前者だとしても、オッレルスはフィアンマの為に寿命が縮む事を、魔術知識という毒に脳が犯される事を許容するだろう。
好ましい友人の居ない彼にとって、フィアンマは光であり、希望であり、恋心を抱く大切な存在なのだ。
もし彼が女の子だったら…そう考えてはみても、結局自分の家柄的に考えて結婚は出来ないだろうな、とオッレルスは項垂れる。
それでも、貴族社会の中では男色も許容範囲。せめて愛人という位置になら、とは思う。
この歳の子供にしては随分と飛躍した考えだが、彼はただフィアンマと一緒に楽しく過ごしていたいだけである。




触って解る様に点字で用途を名前の如く綴ったソレを引っさげ、フィアンマの元へ向かう。
この霊装は製作者たるオッレルスの魔力を用いて使用する為、時々魔力を込めなければならない。
会う時に籠めれば問題無いだろう、と適切な自己判断を下して、オッレルスは教会の敷地に入った。
ベンチは幸い壊れておらず、フィアンマは退屈そうに腰掛けている。

フィアンマ「ん?」

オッレルス「きょうははやくこれた」

フィアンマ「そうだな」

もはや習慣化しているオッレルスの来訪に、フィアンマは嬉しそうにはにかんでみせる。
オッレルスはときめきながら、彼の隣へと腰掛けた。
そして簡素な紙袋から、霊装の片方を取り出す。
ちょうど、糸電話の片割れの様に、形としては一見グラスに近い。
どういう物か、どう使うか、言葉を選んでなるべくわかりやすいよう説明をされ、フィアンマはこくんと頷く。
そして使い方を復唱すると、グラスの様な霊装を何度も触った。使う時に触れてすぐ解る様、覚えているようだ。

フィアンマ「…どうして、つくってきてくれたんだ?」

オッレルス「?」

フィアンマ「これ、」

つい、と霊装を見せて、フィアンマは首を傾げる。
純粋で虚ろで透き通った瞳に、オッレルスはもごもごと答えた。

オッレルス「……、…>>35
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/28(金) 01:13:18.97 ID:WrZyj5vSO
俺はいつだって君のそばにいたい。でも、色んな事情があって、それはできないから。俺がいない時、君が寂しくないように、君が一秒だって孤独感を感じないように。

……というか、俺が君と話したいから
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sagg]:2012/09/28(金) 02:41:21.39 ID:liAREvU+0
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/28(金) 02:42:45.08 ID:liAREvU+0
あげてしまった
すいません
37 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/28(金) 07:40:51.74 ID:IF0TDrxAO

オッレルス「……、…おれはいつだってきみのそばにいたい。でも、いろんなじじょうがあって、それはできないから。わたしがいないとき、きみがさみしくないように、きみがいちびょうだってこどくかんをかんじないように。……というか、おれがきみとはなしたいから」

ダメかな、とはにかみ混じりの声は明るく、その表情が滲み出ているそれで。
可愛らしさを感じ取ったフィアンマは、ほのぼのとしながら首を横に振る。

フィアンマ「…だめじゃない。…ありがとう。らいうのひでも、これならはなしができるな」

壊さないように気をつけなければ、と決意し、フィアンマは霊装をやわやわと触る。
と、一人、昨日オッレルスを出迎えたのとは違う、細身ながらも優しそうなシスターが教会から出て来た。
そしてフィアンマに近寄ってくると、小さい紙袋を手渡す。

シスター「捜したわ。はい、お誕生日おめでとう。みんなからよ。明日は私居ないから、先にお祝い」

フィアンマ「…ありがとうございます、しすたー・―――」

オッレルス「…、」

会話から読み取るに、明日、フィアンマは誕生日なのだろう。
7歳になるので、オッレルスが誕生日を迎えるその日まで、一歳差になる。
一般的、否、裕福であるオッレルスにとって自分の誕生日というのはとても素敵な一日だ。
沢山のプレゼントを貰い、おめでとうと言われ、好きなものを好きなだけ食べられる。
フィアンマは違うのだろうと予測し、オッレルスはうんうんと考える。
金はある。体力と時間に余裕があれば、彼を支えて出掛けられるだろうか、と。

邪魔してごめんなさい、と立ち去ろうとするシスターを呼び止めて、オッレルスは明日、フィアンマと出掛けても良いかどうか聞いた。
シスターは少し悩んだ後、フィアンマが怪我をしないなら、と答える。
そして、柔らかく微笑んでくれた後、教会に戻っていった。

フィアンマ「あした、どこかにいくのか」

オッレルス「……うーん」




明日の誕生日祝デートプラン(アバウト可)>>+2
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/28(金) 12:00:04.25 ID:LP3fUN/AO
ksk
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/28(金) 13:39:20.37 ID:LP3fUN/AO
手を繋ぎながら街を探索
40 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/29(土) 08:07:57.10 ID:fXJWSW280

オッレルス「さんぽにいこう」

フィアンマ「さんぽ?」

オッレルス「うん」

遠くへ行くと、疲れさせてしまう。
なら、ひとまずこの近辺、街中を歩いて散歩をしようとオッレルスは考えた。
何処か入りたいと思った店があるのなら付き合って、街の中の様々なものを説明してあげるのだ。

フィアンマ「…もし、けんかになっても、いっしょにいてくれるか?」

一人では帰る事が出来ないから、とフィアンマは言う。
そもそも喧嘩をしない、或いはしても直ぐ様自分が折れる自信があるオッレルスは、勿論だと頷いた。

フィアンマ「きょうかいのしきちからは、でたことがないんだ」

誰かと出かければ、サポートをお願いすることになる。迷惑をかける。
だから、これまで外に出ようと思った事は無かったのだが、オッレルスと一緒であれば安心出来ると言う。
そんな発言が、オッレルスにとっては良い意味で責任感を刺激し、また、信頼されているということを伝えてくれた。

オッレルス「…うん、ちゃんとささえるよ。てをつないであるこう。…ところで、なにをもらったんだ?」

フィアンマ「ん、」

先程シスターから受け取った紙袋を開封し、手探りでフィアンマは中身を取り出す。
生暖かったので何かと思っていたのだが、どうやら二人分程度の甘いミルクの香りがするパンだったようだ。
他に、バターをほとんど使っていないと思われるクッキーもあり。
『みんなから』ということは、教会に居る、フィアンマ以外の子供やシスターが作ったものなのかもしれない。

フィアンマ「…ぱんとくっきーか」

触って確かめ、その感触から正体を当てると、彼はやや嬉しそうにぼやいた。
娯楽の少ない状況下では、食事というものが大きな意味を持つ。
ただ、独り占めしたいという性格でないからか、半分に割ってその半分をオッレルスへ差し出した。
見知らぬ人間からもらった食べ物を口にするな、と親からは言われているが、フィアンマからなら問題無いだろう。
ほとんど卵やバター、砂糖といった、パン・クッキーを美味しくするも贅沢な食材は使われていないそれは口当たりが悪かったものの、生クリームとバターを贅沢に用いたケーキより美味しく感じられた。
物珍しさという補正もあるし、愛情という隠し味のお陰かもしれない。

フィアンマ「あした、」

もぐもぐ、と口を動かし、よく噛んでパンを呑み込みつつ、フィアンマは柔らかく笑んだ。

フィアンマ「たのしみにしている」

オッレルス「うん」

つられて笑み、素朴というにしても粗末過ぎる小麦の塊をかじって、オッレルスは頷いた。



翌日。
行動しやすいようにか、フィアンマの髪は横で緩く結ばれていた。
髪を結わえると、益々中性的に思える。
声変わりなどもしていないので、女の子だと言われれば納得出来るレベルだ。
段差がある場所は早めに言って欲しいと告げ、ほとんど腕を抱きしめる形で、フィアンマはオッレルスの手を握る。
オッレルスもその不安を推し量り、しっかりと手を握り返してゆっくりと歩き始めた。

フィアンマ「きょうははれか」

オッレルス「すこしくもってはいるけど、あめがふりそうなてんきじゃないな」

人気が少な過ぎれば治安的に危ないし、多すぎれば人にぶつかって危ない。
適宜道を選びつつ、主に景色についてとりとめもない話をした。
こんな話の内容で果たして楽しいと思ってくれているのだろうかと不安に思うオッレルスだが、フィアンマとしては物珍しさがあれば何でも良かった。
大人はともかく同年代でここまで自分に優しくして、構ってくれる人は居なかった為、オッレルスにいたく懐いているというのもある。
少し方向性は違うものの、フィアンマもまた、オッレルスが好きなのだ。

フィアンマ「…このあいだは『ちょこれーと』だったが。なにか、このあたりにめずらしいたべものはないのか?」

事前にオッレルスが奢ると宣言したため(勿論最初フィアンマは別に良いと渋ったが)、ややそわそわとしつつ、質問が飛び出る。
さて何があるだろうか、とオッレルスは辺りを見回す。この辺りはよく売店の車が停っている。





何を奢る?(食べ物)>>+2
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/29(土) 13:04:28.96 ID:0hLTOHzAO
ホットドッグ
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/29(土) 13:47:15.38 ID:gQ+zeOVz0
アイス
43 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/29(土) 14:11:18.58 ID:ZKWIApht0

オッレルス「あいすくりーむならあるが」

フィアンマ「じぇらーとににたものか」

オッレルス「ほとんどおなじ、かな」

ちなみにジェラートは一般的なアイスクリームと比べて空気含有量が35%未満と少なく、密度が濃く味にコクがある。
また、乳脂肪分は4〜8%で一般的なアイスクリームの約半分であり比較的低カロリーな食べ物である。
もっとも、フィアンマはどちらもほとんど食べた経験が無いのだが。
少し迷ったオッレルスは、手を離さずして売店の車に近寄り、アイスクリームを購入した。
好き嫌いに触れてしまうと申し訳ないので、一般的且つ人を選ばないミルク味である。
近くには噴水とそれなりに綺麗なベンチがあり、二人並んで腰掛けた。
大体の大きさをオッレルスの説明によって把握したのか、慎重に食べ進めていく。
スプーンで食べさせてあげた方が良いのではないかと考えたオッレルスだったが、何でもかんでもやってもらってはいつまでたっても成長しない、というフィアンマの自分に厳しい意見によって先程却下されたので、自分も溶けないよう食べつつ、見守る。
存外バランス感覚は良いのか落とす事は無く、顔とアイスの距離感も自分の中で組立済みなのか、それなりのスピードで食べている。
最初こそアイスの冷たさに慎重だったが、溶ける食べ物だと知ってきびきび食べているようだ。正直、オッレルスより食べるのが早い。

フィアンマ「あまい」

オッレルス「うん」

フィアンマ「あと、みるくのあじがする」

ミルク味だから当たり前なのだが、現物を見れないフィアンマにとっては味と香りが全て。
香料で苺の匂いを偽られてしまえば、本当にそのアイスがミルク味なのかどうかはわからないのだ。
美味しい、と笑みを零しながら食べていけば、あっという間に食べ終わってしまうもので。
ワッフルコーンにはまっていた紙を丸めて捨て、オッレルスはこの後どうしようか悩んだ。
まだ帰るには早いけれど、あまり遠くへは行かない方が賢明だろう。

フィアンマ「おっれるす」

オッレルス「うん?」

フィアンマ「つかれていないか。たよりきりだが」

些細でも段差がある度、オッレルスはフィアンマに忠告している。
また、周囲の風景についても適宜説明していた。
普通の子供なら、そのしつこさと歩く疲労、気疲れに愚痴を零してもおかしくない。
それが、たとえば周囲の大人にサポートしてあげてなどと言われて、やる、自分の意思でなければ、の話だが。

オッレルス「>>44
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/29(土) 14:25:06.43 ID:gQ+zeOVz0
ksk
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/29(土) 16:35:19.59 ID:0hLTOHzAO
疲れてなんかいないよ。君の為なら、何でもできるさ
46 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/29(土) 17:04:35.84 ID:ZKWIApht0

オッレルス「つかれてなんかいないよ。きみのためなら、なんでもできるさ」

自分の意思で、やりたいと決めた事だから、疲労なんてほとんど無かった。
歩いた為に多少の疲れはあるものの、それは身体的疲労に過ぎず。
また、こうして迷惑でないかと問いかけてくる程の優しさに癒される為、精神的疲労や苦痛は無い。
オッレルスの発言に安堵し、疑う事無く、フィアンマははにかんだ。

フィアンマ「…あり、がとう」

オッレルス「わたしもたのしいから、いいんだ」

むしろ、他の子供と遊ぶ方が、オッレルスにとってはかえって気疲れする。
流石にそれは愚痴になってしまう為に言葉には出さず、オッレルスはぐっと呑み込んで立ち上がった。
好きな人の前では、なるべく格好良くありたいのだ。
手を差し出され、再びフィアンマが握って立ち上がるのを待ってから歩き出す。
目が見えない為におっかなびっくり進むフィアンマに、オッレルスはゆっくりとした歩調で合わせた。
このままどこか遠くへ行けたら良いのに、とオッレルスは思う。
習い事だとか、貴族らしさだとか、嫌な人付き合いだとか、全て放り出して、今こうして手を繋いでいる幸せの象徴<カレ>だけを連れて、どこか、誰も知らない遠くへ。
そんな事が到底出来る訳もないから、こうして諦める他無いのだけれど。



苺味のワッフルを頬張り、フィアンマは涼しい風に目を細めた。

フィアンマ「…ここちいいかぜだ」

オッレルス「そうだね」

フィアンマ「おっれるすのたんじょうびは、いつなんだ」

オッレルス「らいげつの―――」

自分をこんなにもお祝いしてくれたのだから、何かお祝いしたい、とフィアンマはぼやく。
けれど、お金は無いから、今日の様な一日は過ごせない。こういった食べ物は贈れない。
『私の花嫁になってください』と言いかけて、やめた。
大人になるまでに、誰か、知らない女が嫁いできて、自分は大人になるのだ。
子供ながらに、そうなる事は予想できていた。だから、オッレルスは夢を見ない。

フィアンマ「…そのたんじょうびまでに、なにか、おれさまができることをかんがえてくれ」

オッレルス「うん、ありがとう」

出来る範囲で何でもする、と言ってくれた。
その事自体は嬉しかったが、うっかり浮かべた夢想に、オッレルスは苦々しい表情を浮かべる。
ますます、家から抜け出したくなった。






午後五時にフィアンマを教会に送り届けてから別れ、オッレルスは帰宅した。
いつもの様に部屋に逃げ込もうとしたのだが、うっかりと捕まる。

父親「待ちなさい。話がある」

オッレルス「…なんですか、とうさん」

嫌な雰囲気だった。体裁ばかりを気にする父親を、オッレルスは嫌っていた。勿論、それに同調しないにしても、気弱で何も言えない母親も。

父親「婚約者の話だ」

オッレルス「…わたしはまだはっさいですよ」

家にお金が無い事は知っている。名前しかない。
だからきっと、金持ちの令嬢を連れて来るのだろう。この歳で婚約者が出来たところで、何ら嬉しくなかった。
相手方のお嬢さんだってきっと嬉しくはないだろうに、金と名誉の為に結婚させられるのだ。

父親「早い内にしておいた方が良いと思ったのだ。それに近頃、習い事をサボって何処に行っているんだ」

オッレルス「……、」

父親「その様な事では、この家を継いでもらう器として見合わなく思えてくる。お前は頭の良い子なのだから、現在の状況位わかっているだろう。今すぐという話ではないが、明日は外出禁止だ。婚約者のお嬢さんに会ってもらう。良いな」

オッレルス「…」

父親「…返事は」

オッレルス「…>>47
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/09/29(土) 17:41:00.47 ID:lPwsBWjAO
>>46
×今すぐという話
○今すぐ結婚、入籍という話

安価は下で
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/09/29(土) 17:43:43.91 ID:dWktjQ530
嫌だ
49 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/29(土) 17:58:33.78 ID:ZKWIApht0
《オッレルスくんの婚約者さんをモブ娘にするかシルビアちゃんにするか悩んでいます》



オッレルス「…いやだ」

オッレルスはここに来て初めて、明らかに逆らった。
少し前なら、面倒でイヤイヤながらも流されるまま、その婚約者と仲良くなろうとしただろう。
家の為に。親の為に。別に、大切なものなんて、自分を含めてどこにもなかったから。
でも、今は違う。フィアンマが話していて楽しいと言ってくれた自分という存在に対して自信も持てたし、何より、そんな好き好んで婚約した訳でもない女の子と会話などしたくない。
そんな相手に時間を費やすくらいなら、一秒でも長くフィアンマの声を聞いていた方がずっとずっと有意義で、優しい時間に決まっている。
説教をしようとした父親から逃げ、オッレルスは自室に閉じこもる。
何もわかっていない。金、金、金。下らない。
確かにフィアンマを楽しませる為に今日使ったのも、自分が今着ている服に費やされたのも、普段の食費も親の金ではある。
だけれど、そんな、金の為に好きでもない、恐らくお高く止まった女の相手などしたくなかった。

オッレルス「…こんないえ、なくなればいいのに」

そうしたら、教会でフィアンマと一緒に暮らせるかもしれない。
そんな事を考えて、しかしそれはとても物騒で嫌な考えだと自省する。
いくら嫌だと言っても、家長たる父親がああ言った以上、明日、自分は逃げられないだろう。
一応、通信用霊装はある。だが、その婚約者の少女を前にして使う事は出来ない。
ひとまず明日、朝、今日は行けないと伝えよう。外に出て、身体を冷やさせてはいけない。



翌日。
朝、運良くお互い交信術式用霊装を手にしていた為、連絡を取る事は出来た。
行けない、と伝えた時のフィアンマは落胆していたものの、用事があるのなら仕方がないなと優しく応えた。

オッレルス「きっと、あしたはいくから」

フィアンマ『…ん』




午後。
自宅に招いた、オッレルスの婚約者となる少女は存外嫌な性格はしていなかった。
お高く止まっている、というよりはただ単に言葉遣いが上品なだけで。
どちらかといえば感覚はオッレルスのそれに近く、政略結婚に辟易していたようだ。
故に自然と話は合い、意外にも彼女との会話は苦痛でなかった。

少女「そういえば、すきなひとはいるの?」

オッレルス「…、…」

嘘をつくべきか。悩む。

オッレルス「…>>50
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/29(土) 18:10:18.69 ID:0hLTOHzAO
……いる

あと個人的にはモブ娘が良いです
51 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/29(土) 18:26:53.28 ID:lPwsBWjAO

オッレルス「………いる 」

少女「…そう。…わたくしも、いるわ。けっこんできるほど、みぶんはちかくないけど」

オッレルス「…」

少女「たぶん、いやだといっても、わたくしもあなたも、けっこんさせられる。…だから、おたがいにめかけをつくることにしましょう」

結婚するからといって自分を愛せとは、少女は言わなかった。
むしろ、お互い、お互いが好きな人を愛人とし、そちらを愛すれば良いと言う。
ただ、戸籍を共にするだけ。
仮面夫婦も良いところだったが、オッレルスは名案だと頷いた。
どちらにせよ、恐らく同性、異性だったにしても身分差のあるハンディキャップ持ちのフィアンマとオッレルスは結婚出来ない。
結婚など所詮紙切れ一枚世間体用、気にしなければ良い。

少女「でも、ゆうじんとしてはなかよくしたいわ」

にこ、と笑んで、少女は言う。
何となく、性格は合いそうだった。




翌日。
オッレルスは夕方近くになってようやく家から抜け出し、フィアンマへ会いに行った。
フィアンマは退屈を持て余し、点字の本を読んでいる。

オッレルス「ふぃあんま」

フィアンマ「おっれるす」

来たのか、とフィアンマは愛らしく笑う。
うん、と頷いて、オッレルスは彼の隣に座った。

オッレルス「…てんじ?」

フィアンマ「あぁ」

栞を挟み、ぱたんと本を閉じて、フィアンマは頷く。

フィアンマ「おとといはたのしかった。ありがとう」

オッレルス「どういたしまして」

フィアンマ「なにか、きまったか?」

誕生日にして欲しい事。 準備が必要な事なら今からしなければならない、という事での問い掛け。 少し悩んで、オッレルスは言葉を紡ぐ。

オッレルス「…>>52
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/29(土) 23:17:54.25 ID:OiM/Gnpn0
一日一緒に居てほしい
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/09/29(土) 23:33:12.90 ID:lPwsBWjAO
+
54 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/29(土) 23:33:16.25 ID:u8pWoEzU0

オッレルス「…いちにちいっしょにいてほしい」

フィアンマ「…いちにち?」

いつもの事じゃないか、とフィアンマは首を傾げる。
だが、昨日の父親の態度からして、最悪此処に来ている事がバレて引き離される危険性を感じているオッレルスにとって、この約束は希望を作り出せるものだ。

オッレルス「とくべつなことなんか、なにもいらないんだ。…ほしくないんだ。だから、ふぃあんまに、いっしょにいてほしい。だれともようじをいれないで、おれとだけ、いっしょにいてほしい。でかけなくていい。ものをくれなくていい。おめでとうといってくれるだけで、いいから」

フィアンマ「…そうか」

自分にしてくれた事より、遥かに程度が劣る。
ほんの少し不服そうながらも、フィアンマはこくんと頷いて約束した。
オッレルスの誕生日の日、何の用事もいれず、ただ一緒に居ると。
その約束があれば、たとえ何があっても、オッレルスは自暴自棄にならないで済みそうだった。

オッレルス「ありがとう」

フィアンマ「…ほんとうに、それでいいのか?」

オッレルス「それ"で"いいんじゃない。それ"が"いいんだ」

フィアンマと一緒に話している時間は、何よりもの安息で。
この教会の敷地は、オッレルスにとって一種楽園の様なもの。
偶然迷い込んだ、幸せな場所。彼にとって、フィアンマはある種天使の様なものかもしれない。
自分の様に、嫌な事を知らない。嫌なものを見ていない。純粋で無垢で、優しく愛しい人。

取り留めの無い話をする。途切れつつも、言葉を交わす。
オッレルスはふと、興味の向くまま、フィアンマの髪に触った。

オッレルス「…ねがいごとでも、かけてるのか?」

フィアンマ「いや、とくには」

願掛けで伸ばしているのかと思いきや、そうではないらしい。
自分としては好きなので、このまま伸ばして欲しい、とオッレルスは思う。

フィアンマ「なにか…そうだな。しょうらい、しつれんでもしたら、きるよ」

オッレルス「…そっか」

恋が出来ない自分には関係の無い事だが、とぼやくフィアンマに、オッレルスは目を伏せる。
いつか、自分を、自分が彼に抱いているのと同じ感情の色合いで、好きになってくれるだろうか。



家に帰り、ベッドで、毛布を頭から被って沈黙する。
考える事は、フィアンマの事だけ。

オッレルス「…」

彼は真面目な十字教徒だ。
愛人という言葉には、不快感を覚えるだろう。
将来、自分が結婚したと風の噂で聞いて、離れていったりしないだろうか。
考えれば考える程不安で。身元がバレないか、不安で。

オッレルス「…」

首を横に振って、楽しい事を考える。




明日は何を持って行く?>>+1
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/30(日) 08:54:31.79 ID:fHStozxR0
ドーナッツ
56 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/30(日) 09:49:22.72 ID:TQHnBtEAO

明日は食べ物を持って行こう。
甘い物の方が、きっと喜んでもらえる。
何が良いだろうか、と考え、オッレルスは今までフィアンマが食べて喜んでいたものから統計結果を叩き出す。
シンプルで美味しいドーナツを買って行こうと決め、目を閉じる。
彼が喜んでくれるのなら、一生懸命、何でも耐えられる気がした。


翌日。
チョコレートコーティング、砂糖を軽くかけたもの、苺チョコレートコーティング、カスタード入り、とドーナツ四種類を用意して、オッレルスは教会に向かった。
敷地に入ったところで、透き通った甘い歌声が聞こえる。
オッレルスにはよくわからないが、その歌詞の文句や、どことなく静粛・神聖な雰囲気から、聖歌である事を読み取った。歌声は優しく響き、思わず聞き惚れる。
歌っていたのは予想通りというべきか、フィアンマだった。

フィアンマ「…、」

足音からオッレルスの存在に気付き、ハッとしながらフィアンマは歌うのをやめる。
口ごもるフィアンマを可愛らしく思いながらいつも通り隣に腰掛け、オッレルスは微笑んだ。

オッレルス「じょうずだったよ」

フィアンマ「う…、」

顔を赤くして、フィアンマは益々口ごもる。
オッレルスはそんな様子を眺め、心を和ませた。

オッレルス「きょうはどーなつをもってきたんだ」

フィアンマ「…どーなっつ? どんなたべものなんだ」

オッレルス「うーん…>>57
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/30(日) 13:29:11.62 ID:fHStozxR0
甘いパンみたいなもの
58 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/30(日) 14:49:52.75 ID:8JJbebNE0

オッレルス「うーん…あまいパンみたいなもの」

フィアンマ「かしのいっしゅか」

オッレルス「うん」

ドーナツは恐らく、お菓子に分類される食べ物だろう。
少し手がべたつくかもしれない、と一応忠告は口にしつつ、オッレルスはカスタード入りドーナツを手渡した。
表面に砂糖もまぶしてあるそれはとても甘く、美味しいものだった。
おいしい、と素直に感想を漏らしつつ笑むフィアンマを見つめ、オッレルスはのんびりとした相槌を打つ。
そして自分も少しドーナツを食べ、残り半分はフィアンマに与える。
自分は望めばいくらでも、いつでも食べる事が出来るが、彼にはそれが出来ないから。
それに、自分が食べるよりも、彼が食べて嬉しそうな顔をしているのを見つめる方が、よほど気分が良かった。

それから、また、とりとめもない話をする。
お互いが嫌だと感じている事は口に出さず、楽しい事だけを話す。
勉強になるような事だけを話す。
こんな時間が、明日も、明後日も、明々後日も、その先も続いていけばいいな、とフィアンマは思う。
暖かい日々を重ねる事で、何か嫌な事があっても、この記憶だけで生きていけそうだった。
何も望まない、強いて言えば目が見えるようにはなって欲しいけれど、それすら要らないから。
こうした平穏で素敵な日々が続いたら良いと、ただただ、単純に思う。

フィアンマ「…まいにちいろいろなものをくれるが、かねはもんだいないのか」

日々教会が貧窮しているからこそ、気になる。
七歳の子供が心配する事ではないし、そもそもオッレルスは金に困らないので、大丈夫だとのんびり答える。
まだ仕事をして稼ぐような歳でもないのにどうしてだろう、とは思いつつも、フィアンマは敢えて深入りはしなかった。
仮にオッレルスが自分に隠し事をしているのなら、それは知られたくないから隠しているのだろう、と思ったから。
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/09/30(日) 14:49:58.16 ID:TQHnBtEAO
+
60 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/30(日) 14:50:18.22 ID:8JJbebNE0

翌日も、その翌日も、その次の月も。
オッレルスは熱心にフィアンマへ会いに行った。
信頼関係を築けてきているという安心感と、霊装で連絡が取れるという保証から、オッレルスは習い事をサボってまでは会いに行かなくなった。
きちんと終わらせてから、会いに行く。周りに文句を言われたくなかったのだ。
それに、あまりサボったりしていると最悪外出禁止を喰らう恐れもある。なるべく安全圏でフィアンマに会いに行きたかった。
そこに愛があれば、五分の為に一時間かけて会いに行く事さえ、苦とはならない。
今はまだ告白の台詞が思いつかないでいるが、今日こそは今日こそは、とオッレルスは毎日思う。

オッレルス「…きょうこそ、」

思えど、好意の意味が伝わらないであろう文句しか出てこない。
また、フィアンマに対して理解を深めていく内、十字教で同性愛は歓迎されない事や、自分達は危惧していた通り同性同士であることも知った。
となれば、ますます告白出来なくなってくる。

そうしている内に、春が来て、夏が来て、秋が過ぎ、冬を迎え。
一年を経ても、二年を経ても、想いを伝える事など、出来る筈もなかった。
思春期を迎えれば、益々言葉は出なくなっていく。伝えられなくなっていく。
婚約者の少女とはそれなりに良き友人として付き合っているので、近々式を挙げるかもしれないし、籍を入れるだけかもしれない。
どちらにせよ、フィアンマにその事がバレさえしなければ、オッレルスは何ら変わらない生活を送れる筈なのだ。

何年経ってもフィアンマの目が見えるようになる事は無かったが、それでも構わなかった。
妻が出来ようと何だろうとオッレルスはフィアンマに対してしか好意を抱いていない訳だし、支えるのも辛くはないのだから。




オッレルス「今日こそ、告白する」
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/09/30(日) 14:50:19.11 ID:TQHnBtEAO
+
62 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/30(日) 14:50:40.78 ID:8JJbebNE0

本人を目の前にして、告白すべく考えてきた台詞は、白いペンキをぶちまけられでもしたかの様に、消えていった。
もう五年近い付き合いだというのに、相変わらずフィアンマは純粋なままだ。
このまま一生純粋な人間でいくのではないだろうか、と思える程に。

オッレルス「フィアンマ」

フィアンマ「…オッレルス」

約五年の間に、おやつだけでなく、食事も共有する様になった。
とはいえそれはもっぱら昼食の事で、やはり陽が落ちてくれば別れる。
12歳ともなればそろそろ男性的特徴が顕著になってきてもおかしくはないが、フィアンマは中性的な見目のまま。
その原因は恐らく、伸ばし続けている長い髪だろう。
女性用の修道服を身に纏えば、シスター見習いだと言われても違和感が無い。
自分の肩に持たれてうたた寝をするフィアンマの髪を撫で、オッレルスは目を伏せた。
彼は純粋なままでいるのに、自分は穢れていくばかりだ。
一目惚れした頃の可愛らしい恋情より、今は性欲を交えた恋心が先立っている。
勿論それをぶつけたり、告白する様な真似はしないが、こうして話しているだけで時折劣情を煽られる事に罪悪感を覚えた。

オッレルス「…君が、好きなんだ」

もしかしたら聞こえているかもしれない。
そうは思ったものの、つい口から溢れ出る本心。
告白したい、する、しよう、でも出来ない、してはならない。
葛藤に板挟みにされながら、オッレルスは口を閉ざす。
我慢しなければならない、とは思う。この優しい日々をいつまでも続けたいのなら。
献身的で優しい友人の皮を被っていなければ、彼を悩ませ、苦しませる存在になってしまう。

オッレルス「…もっと早く、離れれば良かったのか」

離れるチャンスも、断ち切る機会も、いくらだってあった筈なのに。
ズルズルと続けてしまった。会いに来てしまった。
純粋な初恋の優しい思い出で、さよならをするべきだったのだ。

フィアンマ「…オッレル、ス?」

オッレルス「、…ん?」

フィアンマ「…具合が、悪いのか?」

オッレルス「…いや、大丈夫だよ」

手探りでオッレルスの額にぺたりと触れ、フィアンマは首を傾げる。
変わらない優しさと愛おしさに色色とぶちまけたい気分になりつつも、オッレルスは首を横に振って誤魔化した。
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/09/30(日) 14:50:41.79 ID:TQHnBtEAO
+
64 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/30(日) 14:50:59.65 ID:8JJbebNE0


《スレの趣旨が変わったので、スレタイと注意事項の変更を明記しておきます。
変わらずお楽しみいただければ幸いです。
本来であれば一度落として新しくスレ立てすべきなのかもしれませんが、勿体ないので続けます。》


スレタイ

オッレルス「もはや君を愛人にする他無いようだ」フィアンマ「安価で、それを受け入れられるのか?」




・ホモスレ

・青年のオッレルスさんが少年のフィアンマさんに一目惚れして愛されたいが為に頑張るお話

・時間軸不明。原作よりずっと前の捏造世界

・当スレのフィアンマさんは盲目です

・基本はほのぼの進行

・キャラ崩壊注意





※注意※
安価次第で展開が多種多少に変化します(ガチホモから百合まで)
メインCPは『オレフィア』なスレです。
エログロ展開の可能性があります。





《本編再開します》
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/09/30(日) 14:51:00.70 ID:TQHnBtEAO
+
66 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/30(日) 14:51:18.02 ID:8JJbebNE0

二人が初めて出会った日から、ちょうど十年が経過した。
オッレルスは十八歳、フィアンマは十六歳。
そして、今日この日、オッレルスは妻帯者となった。
とはいえ、生活にほとんど変化は無い。まだ家を継いだ訳でもない。
フィアンマはしばらく迷った結果、まだ教会は出ず、主に老いてきた神父様やシスターの手伝いをしている。
毎日お祈りはすれど、まだ目は見えるようにはならない。そう簡単に、奇跡など起こらない。
もう十何年と見えなければその状態の方がかえって普通で、誰も目に関しては言わなかったし、触れなかった。
結婚した事について、フィアンマはまだ知らない。言うつもりもない。
サポートは未だ必要だが、オッレルスによって出かける事に慣れたフィアンマは、手を引かれるままに歩いた。

オッレルス(彼の目が見えないから、こうして手を繋いでいても、おかしくない。…最低だな、俺は)

フィアンマ「…今日はよく晴れているな」

オッレルス「そうだね。涼しくて良い。…十年前と同じだ」

フィアンマ「そうだな…俺様に、初めて名前が付いた日だ」

お前がつけてくれた、と言葉を付け加え、フィアンマは表情を和らげる。
未だに偽名を名乗っているが、その事に関し、オッレルスは罪悪感は無い。
むしろ、こちらの方が本名であったら良かったのにと思う程だ。

オッレルス「何処か、行きたい場所は?」

フィアンマ「…>>67に、行きたい」
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/30(日) 17:55:26.02 ID:fwFprpuSO
演奏会
68 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/30(日) 20:13:57.55 ID:Gm/Du8I00

フィアンマ「…演奏会に、行きたい」

オッレルス「演奏会、か」

街中の掲示板には、今夜、クラシックコンサートがある事を示す紙が貼られていた。
フィアンマはそれを見られないにせよ、風の噂で聞いたのだろう。ダメだろうか、と首を傾げる。

フィアンマ「一度、行ってみたかったんだ」

それならばもっと早く言ってくれれば良い席が取れたのに、とは思いつつも、オッレルスは何も言わない。
彼は寡黙なタイプではないが、余計な事は一切言わない主義だ。

オッレルス「当日券、残っていたら良いな」

断る理由は何処にもなく、段差気をつけてと告げながら、オッレルスは歩いた。

時刻は十七時。
会場が開いたばかりの時間。
運さえ良ければ、まともな席を取れる事だろう。

幸運な事に端席ではなく、中央辺りの席を取れて。
第一部はクラシックコンサートで、第二部は舞台の様だ。
道理でチケット代が高い筈だ、と納得しつつ、オッレルスは問われるまま、フィアンマに演目一覧<プログラム>を囁いて教える。
第一・第二通して、テーマは悲劇とやや重いが、感動する内容だろう。
幼い頃、教養を身につける一環として見させられた時と違い、愛しい人を隣に置いての鑑賞の為、オッレルスも素直に楽しめそうだった。
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/09/30(日) 20:14:03.64 ID:TQHnBtEAO
+
70 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/30(日) 20:14:22.77 ID:Gm/Du8I00

優美なクラシック音楽と、素敵な舞台に感化され。
その悲劇と哀憫に感傷的な気分になりつつ、オッレルスとフィアンマはホテルに居た。
別に何もやましい事はしていない。ただ、会話するにあたって、外よりも中の方が良いと思っただけであり。
念願の夢の一つが叶い、フィアンマはどこか夢見がちな表情で穏やかに笑んだ。

フィアンマ「一般的なそれとは少々意味合いが違うが、楽しかった」

オッレルス「楽しめたようで何よりだ」

ワインを舌先で転がし、オッレルスはそう言葉を返した。
少しアルコールを摂取しなければ、よからぬ事をしてしまいそうだったから。
このまま酔っ払って眠れば、眠りは浅いものの、昏倒出来る。
漂う酒臭さに顔を歪める事無く、フィアンマは問いかけた。

フィアンマ「ワインか」

オッレルス「そうだよ」

フィアンマ「そういえば、もうオッレルスは飲酒を許される年齢だったか」

なるほど、と呟き、フィアンマは冷たい窓に触れる。
ぺた、ときっちり沿わせた掌から、ガラスの冷たさが伝わった。

オッレルス「…今日は泊まっていったら良い」

フィアンマ「あぁ」

二本目のボトルを開け、オッレルスはワインを煽る。
まだまだ、酔わない。
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/09/30(日) 20:14:23.85 ID:TQHnBtEAO
+
72 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/30(日) 20:14:41.99 ID:Gm/Du8I00

どうにか、演奏会の夜は告白せずに済んだ。
どんな顔をすれば、愛人になって欲しいなどと言えるのか。
ましてや、彼は将来聖職者だぞ、とオッレルスは自分に言い聞かせる。
罪深い恋をするのは自分一人でいい。そもそも好きになってもらえるはずもない。
フィアンマを教会まで送り、自分は帰宅してすぐ、何度も身体を洗ってシャワーを浴びた。
ワインが嫌いになってしまいそうな夜だった。必死で色色な感情を抑え込んでいた。

オッレルス「…フィアンマ」





思えば、長く髪を伸ばしたものだ。
オッレルスが褒めてくれたから、伸ばしたのかもしれない。
ただ、どれだけ美しいと言われたにしても、俺様にはわからない事だが。

フィアンマ「……」

最近、オッレルスは俺様と会う度、何かを我慢しているように思える。
これはあくまで勘に過ぎず、別に問いただしたりなどはしないが。
何か悩み事でもあるのだろうか、と思う。
十年前にもらったグラスは、今でも時折使っている。
どの様な仕組みなのかさっぱりわからないが、きっと何か特殊な作りをしているのだろう。
俺様に世界を教えてくれたのは、楽しさを教えてくれたのは、オッレルスだけだ。
笑う顔を、一度でも良いから見てみたい。声だけでは足りない。
強欲だという事は重々承知だというのに、こらえきれない部分がある。
俺様には友人が居ないから、オッレルスが一層特別な存在に感じるのかもしれない。
オッレルス以外の友人を作るつもりもそもそも無いが。迷惑をかけるしな。

フィアンマ「……、」

目が見えるようになったら、まず、何よりも先にオッレルスの顔を見て、覚えたい。
それから、いつも俺様を導いてくれる優しい手を見つめて、覚えたい。

こんな事を考えている内には、きっと目が見えるようになんてならないのだろうけれど。
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/09/30(日) 20:14:43.00 ID:TQHnBtEAO
+
74 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/30(日) 20:15:11.87 ID:Gm/Du8I00

酷い大雨の中、それでもめげずに、オッレルスは外出した。
雨は酷いものの、雷は鳴っておらず。
それでももし雷雨に変化する事があれば、フィアンマを傍で抱きしめてあげたかったから。
教会に入ると、フィアンマは同年代と思われるシスター見習いと楽しそうに会話していた。
事実はどうであれ、オッレルスの目にはそう映った。
特に容姿が際立って素晴らしい少女ではなかったが、目の見えないフィアンマには関係の無い事。
もしフィアンマがこの少女を好きになってしまったらどうしよう、とオッレルスは焦って立ち尽くした。
そして黙って数十秒後、そもそもフィアンマが誰を好きになろうと自分には関係の無い事だ、と思い返す。
それと同時に、自分が妻帯者で同性であるにも関わらずフィアンマを好きになり、こんな醜く嫉妬しているという状態へ自己嫌悪を催した。
少女はしばらく談笑した後、用事があるのか、オッレルスの横を通り、出て行った。

オッレルス「……」

コツ、と硬い革靴の音が、まるで耳を伝って自分の心を荒らしているかの様で。
不快感をどうにか堪えつつ、オッレルスはフィアンマに近づいた。
ざあざあと降り続く雨の音に耳を傾けていたフィアンマは、オッレルスの方を見やる。

フィアンマ「…誰だ」

オッレルス「俺だよ、フィアンマ」

フィアンマ「オッレルスか」

なるべく穏やかな声で話しかけたつもりだったが、嫉妬心に基づいた苛立ちが、そこに滲んでいた。
この雨の中をわざわざ来てくれてありがとう、と素直な感謝の気持ちを口にした後、フィアンマは心配そうな声で問う。

フィアンマ「…何か、嫌な事でもあったのか。不機嫌な様に思えるが」

オッレルス「……、…>>75
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/30(日) 20:18:14.40 ID:fwFprpuSO
いや、なんでもないよ…それより、今のは?見ない顔だが
76 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/30(日) 20:46:14.10 ID:Gm/Du8I00

オッレルス「……、…いや、なんでもないよ…それより、今のは? 見ない顔だが」

フィアンマ「あぁ、最近この教会に来たんだ。そんなに親しくはないが、頭は悪く無い。割と良い性格をしているよ」

良い性格、という評価に皮肉な響きは無く、むしろ好意的だった。
ぎり、と歯ぎしりし、バレない様ゆっくりと深呼吸して物理的に自分の苛立ちを宥め、オッレルスは言葉を返した。

オッレルス「移動してきたのか」

フィアンマ「そうだな。前は別の教会に居たそうだ」

自分によく話しかけてくる、とフィアンマは億劫そうにぼやく。
つくづく自分の嫉妬をさり気なく煽る、と思いながらも、オッレルスは何も言わず、隣へと腰掛けた。
フィアンマは雨の音に集中して耳を傾ける事をやめ、オッレルスに軽くもたれかかる。
こうしてくっついていると、体温が馴染んできて、その感覚が好きなのだ、とかつてフィアンマは言った。
雷が鳴れば、それを口実に抱きしめる事だって出来たのに、と思いながら、オッレルスは窓を見つめる。
依然として、雨は降り続けていた。

フィアンマ「…身体が冷えているな。何か飲むか」

オッレルス「特には要らないよ。…君が触れていて冷たいなら、話は別だが」

フィアンマ「俺様は、このままでいい」

違うところから、徐々に同一と化す感覚。
視覚を使わない分、フィアンマは何もかもを感覚的に覚えた。

フィアンマ「…それにしても、止まないな」

オッレルス「今日は夜も降り続けるそうだ」

フィアンマ「…幼い頃を、思い出すな。雷が鳴るとすぐ、俺様はお前に甘えてばかりいた」

オッレルス「今、だって。…そうしてくれて構わないさ」

フィアンマ「…もうそろそろ、俺様もお前も、子供ではいられない」

恋人は居ないのか、とフィアンマは問いかけた。
どう答えるか迷って、オッレルスは沈黙する。

フィアンマ「…オッレルス?」

オッレルス「…恋人は、居ないな。必要性も感じない」

妻は居るけれど、確かに恋人は居ない。嘘ではない。
屁理屈だった。嘘でも恋人が居るなどと言えば、フィアンマが自分から離れていきそうだったから。
オッレルスが何かを隠していそうだとは思いつつも、フィアンマは問い詰めない。
彼が隠すということは、よほど重い事情なのだから。
そう、信じて。優しさの、元に。
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/09/30(日) 20:46:20.78 ID:TQHnBtEAO
+
78 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/30(日) 20:46:37.14 ID:Gm/Du8I00

焦げた砂糖の味がする苦いキャラメルを噛み、オッレルスは自室で空白に考える。
何もかも思考を放棄すれば、多少楽になりそうだった。

けれど。

教会から帰る時、フィアンマに言われた、冗談染みている甘い言葉が頭から離れない。

『俺様が、女だったなら。お前に恋をしていたかもしれないな』

オッレルス「……、」

オッレルスは今にも泣きそうだった。
子供の様に大声で泣き出して、物を放り投げて、窓を叩き割りたかった。
この十年で培われた我慢と大人らしさが、感情の爆発を阻止する。

オッレルス「…俺は、」

女じゃないけど、君が好きだ。
言えば良かったのか。否、言わなくて良かったのだ。
言えば、きっと困らせた。不快に思われたかもしれない。

オッレルス「…愛しているんだ」

どんな傑作の演劇の、その悲劇的な主人公より、余程。
この思いは、深くて重たい。
心から、奥底から、根幹から、オッレルスはフィアンマを愛していた。

愛しているから、嫉妬までしてしまった。
愛しているから、告白が出来ない。
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/09/30(日) 20:46:46.27 ID:TQHnBtEAO
+
80 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/30(日) 20:47:05.46 ID:Gm/Du8I00

今日は、オッレルスが来ない。
連絡もつかない。どうしてだか、わからない。
きっと忙しいだけで。はたまた、体調を崩しているのかもしれない。
思えば思う程、焦がれた。お前と話している時だけ、生きている実感が強く持てる。

フィアンマ「……オッレルス」

今日も、雨が降っている。
昨日よりは勢いが弱まったものの、長く長く振り続けている。
昨日は、ずっと不機嫌だったような、何か考えている様子だったように思う。
その表情を見たなら、どれだけ感情を読み取れる事だろうか。

フィアンマ「……オッレルス、」

会いたい。
どうして、来てくれないのか。
来れないなら来れないで、いつも連絡をくれていたのに、どうして。

フィアンマ「……、」

気を紛らわそう。
何か、昨日のあの見習いに手伝ってもらって、料理をするのも悪くはない。
今日はともかく明日は来るだろうから、渡そう。

フィアンマ「………」




何を作る?(お菓子名)>>+1
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/30(日) 20:57:55.55 ID:fwFprpuSO
いつだかの思い出のチョコ複数
82 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/30(日) 21:16:08.39 ID:Gm/Du8I00

思い返すのは、昔のこと。
初めてチョコレートを食べた日の事。

ミルクチョコレート、ホワイトチョコレート、ビターチョコレート。
甘酸っぱいフランボワーズソースが入ったチョコレートと、甘いキャラメルソースが入ったチョコレート。

どれもとても美味しかった事を覚えている。あれは恐らく、洋菓子店で買った物だろう。
最近はどこか悩みがあるように思える、疲れていそうだから、精神的充足を与えたい。
テンパリングだとか、そういった事は少し勉強してある。舌触りの良いものを作ろう。
まずは買い出しに行かなければと思い立ち、見習いを呼び寄せた。
何故かはよくわからないが、上機嫌の為、味見は全てさせてやる事にする。


一粒ずつ全て味見をしたが、悪く無い。
というよりも、初めて作ったにしてはだいぶ上出来な方だろう。
流石に既製品のそれ程良質なものは作れなかったが、なるべくそれに近づけられた筈だ。
これで少しでも気が晴れてくれたら、それで良い。オッレルスには元気でいて欲しい。
もちろん強制をするつもりはないが、それでも。
たとえ一生見られないとしても、笑顔の方が、オッレルスには似合うと思う、から。
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/09/30(日) 21:16:15.06 ID:TQHnBtEAO
+
84 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/30(日) 21:16:49.91 ID:Gm/Du8I00

翌日、風邪が完治したオッレルスは精神的にも落ち着きを取り戻し、教会へと訪れた。
昨日来られなかった上に連絡出来なかった事を詫びたが、フィアンマはそれに関しては別にいいと首を横に振る。
そして、チョコレートの詰まった小さな箱をオッレルスに差し出す。

オッレルス「これは?」

フィアンマ「昨日作った。チョコレートは好きだろう?」

オッレルス「…火傷とか、していないか?」

フィアンマ「一人で作った訳ではないからな」

嬉しいやらその優しさに泣きたいやらで複雑な感情になりつつも、オッレルスはベンチへ腰掛ける。
今日は風が涼しく気持ちの良い晴天だ。
舌の上で甘くとろけるホワイトチョコレートは、既製品に味は劣れど、とてもとても美味しかった。
所謂愛情が隠し味というやつだろうか、決して歯を立てる事無く、オッレルスは舐めて呑み込む。
かつてフィアンマに食べさせたそれを真似てか、幾つか砂糖菓子があしらわれている。
銀色をしたそれは甘ったるく、喉に絡まった。咳き込まず、唾液で流す。

オッレルス「…美味しい。ありがとう」

フィアンマ「そうか」

もう大丈夫なのかだとか、そういった事は聞かない。
慰めてくれと、そういう態度を取られない限り、フィアンマは余計な事を言わない。
そこまで慮ったり、相手を大事に大切に思い愛おしく待つ想いは恋だと、フィアンマは知らない。

フィアンマ「…お前は、どんな女が好きなんだ」

世間話の最中。
不意に、フィアンマが問いかける。
オッレルスは少し黙って、乾いた唇を唾液で潤し、言葉を紡いだ。

オッレルス「…>>85
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/30(日) 21:24:14.01 ID:fwFprpuSO
…そうだな、優しくて、気配りうまくて、聡明、俺を愛して続けてくれる娘がいいかな?可愛くてスタイルがいいならなおいい。

…そういえば君にもあてはまるかな?女という点以外は。

なぁ、別に、愛の対象や好みなんかに性別なんか関係ない…そう思わないか?
86 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/30(日) 21:37:32.35 ID:Gm/Du8I00

オッレルス「……そうだな、優しくて、気配りうまくて、聡明、俺を愛し続けてくれる娘がいいかな? 可愛くてスタイルがいいならなおいい」

フィアンマ「標準的な理想だな」

理想が高い訳でも、低い訳でもない。
そう断じて、フィアンマは笑みつつ相槌を打った。
彼にとって、この会話は単なる世間話に過ぎない。
冷や汗をかきつつ、それを押さえ込む為にチョコレート最後の一粒を口に含みつつ、オッレルスは言葉を返した。

オッレルス「…そういえば君にもあてはまるかな? 女という点以外は」

フィアンマ「俺様は気配りなど出来んし、無学だ。聡明とは言えん」

オッレルス「そんな事は無いよ。いつも気配りしてくれてる…それに、良い学校に行っていても、教養の無い人間も居る。逆もまた然り、だ」

首を横に振り、フィアンマは自分の髪を結わえ直す。
理由は不明だが、恐らく胸元に髪がかかって不快なのだろう。
長いサイドの髪でフィアンマの表情が見えなくなり、残念さと安堵の混ざった思いで、オッレルスは問いかける。

オッレルス「なぁ、別に、愛の対象や好みなんかに性別なんか関係ない…そう、思わないか?」

詰まってしまわないように。
余計な事を勘ぐられてしまわないように。
素っ気なく、かといって冷たい声にならないよう、諭す様な問いかけ。
もしこの言葉に好意的な返事があったなら、オッレルスはもう少しだけ、前向きに告白を検討出来そうだった。
しかし、現実は彼が思っているように、口の中のチョコレートのようには、甘くない。

フィアンマ「好みの性格、容姿に関しては、そうだが。愛の対象は別だよ。男は女を愛し、女は男を愛する。当たり前の事だろう」

同性愛なんて、何も生み出さない事に興味はない。
オブラートに包む事なくそうきっぱりと言い切ってしまうのは、オッレルスが自分をそういう意味で好きでないからだろうという思いがあるからだろう。
また、オッレルスが同性に対して恋愛感情を抱いているとも思っていない。

フィアンマ「…オッレルスの意見がそれなら、それで良いとは思うが。…俺様は十字教徒だしな」

オッレルス「……そうだね」

ましてや、フィアンマの所属はローマ正教。
ソドムの男など、その価値観で歓迎される訳も無かった。
一昨日の発言は、冗談、只のifのお話だった訳で。

傷つく、というよりは、残酷な事実の再確認を行われた気分だった。

オッレルス「…君は、どうなんだ」

フィアンマ「ん?」

オッレルス「好きな女性のタイプは無いのか。…まだ正式な聖職者ではないんだろう。これから恋をするかもしれないじゃないか」

フィアンマ「…>>87
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/30(日) 21:46:36.57 ID:fHStozxR0
誠実な人がいい
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/30(日) 21:48:53.49 ID:fwFprpuSO
宗教上、恋をした所で最後まで出来んだろう?

タイプは…特にはないが、まぁ強いて言うなら、盲目でも面倒くさがらない、子供を産める、病気にかかってない、総合的に優秀な人間であれば…まぁ早い話DNAを残す上で問題なければ、まぁ。
89 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/30(日) 22:10:37.15 ID:Gm/Du8I00

フィアンマ「…誠実な人がいい」

オッレルス「…誠実、か」

フィアンマ「…俺様は、表情を見て本心を見抜く事が出来ない。声からしか、わからない。だから、嘘をつかれても、気づけないかもしれない。…だから、嘘をつかない、誠実な人間が

好きだ。男女問わず、恋愛に限らず」

オッレルス「…そう、か」

その基準で言えば、自分は彼の好みと真逆なところに存在している。
妻が居る事も隠しているし、自分の本当の名前も、出身の家も隠していて。
自分はそのタイプとは程遠いな、と内心苦笑いしていると、フィアンマは小さく笑った。

フィアンマ「オッレルスだな、基準が」

オッレルス「…、」

どうやら自分は、フィアンマの中で誠実な男らしい。
そう確認して、それは嘘だと、幻想だと砕く事も出来ず。
照れ隠し程度の弱い否定の言葉を口にするのみで、それ以上は言えなかった。

オッレルス「…君は、純粋だな」

フィアンマ「唐突にどうした」

オッレルス「いや、ただ、思っただけだよ。純粋だな、って」

フィアンマ「…貶しでも褒めでも無いな、その言葉は」

オッレルス「思ったままだからな。…それにしても、今日はよく晴れてる」

からっとした気持ちのいい快晴なのに。気分が悪い。
その太陽が眩しくて、目を閉じたく、なった。
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/09/30(日) 22:10:38.26 ID:TQHnBtEAO
+
91 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/30(日) 22:11:49.81 ID:Gm/Du8I00

父親はうるさかったが、オッレルスは後継ぎとなる子供を作るつもりはなかった。
こんな家潰れてしまえと思っているのもあるが、妻との間に愛は無いからだ。
友情はあれど、それは決して愛情には転化しないし、愛のある相手以外とセックスはしたくない。
よほど自暴自棄になれば多少妻を抱きしめて寄りかかる事はあっても、オッレルスはそれ以上踏み込まなかった。
別に、必要性を感じないから。子供なんか居なくて良い。まだ早い。
そんな事に時間をかける位なら、今はフィアンマと話すか、魔術について学んでいたい。
憂鬱なこの思いを消して癒してもらおうと、いつも通り教会に足を踏み入れたオッレルスは、思わず目を瞬かせる。
フィアンマの髪が、腰を過ぎる程の美しい赤い髪が、肩程までのセミロングに、つまり、短く切られていた。
幼い彼が言った言葉を、思い出す。

『なにか…そうだな。しょうらい、しつれんでもしたら、きるよ』

失恋を、したのか。
近づき、オッレルスは声をかける。失恋したのか、と。
対して、フィアンマは視力の無い悲しげな瞳を、オッレルスに見せた。

フィアンマ「失恋など、していないさ。転機だと思ったから、切った。ただそれだけの事に過ぎん。……ずっと、言わなかったな」

オッレルス「…何の、話かな」

フィアンマ「…妻が居ると、言わなかったじゃないか。…俺様は、お前の友人だと思っていた。…どうして、言ってくれなかったんだ?」

どうしてこんなにも胸が痛むのか、フィアンマにはわからなかった。
苦しい。どうして、オッレルスが誰かを愛していると知って、どうしてこんなにも辛い。
対して、オッレルスは全身から血の気が引いていく感覚に襲われていた。
ああ、バレてしまった。隠していた事が、とうとう。
否定したところで、この声の震えから、バレてしまう。それならばいっそ、認めよう。
どうして知ったのかと問えば、あのシスター見習いが善意で教えてくれたらしい。
女としては、世間話のつもりだったのだろう。そのことを、フィアンマも知っているだろうと思ったのか、はたまた。

フィアンマ「…オッレルス」

窘める様に、低い声が、偽りの名前を呼ぶ。

オッレルス「>>92
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/30(日) 22:32:17.98 ID:H7K2IO/J0
古い、…古い話だ
93 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/09/30(日) 22:48:00.88 ID:Gm/Du8I00

オッレルス「古い、…古い話だ」

十年前、無理やり婚約者を決められた。
彼女には彼女で好きな人が居る。
だから、彼女を愛してなんかいない。
彼女もまた、自分を愛してなどいない。
十年前に自分が妻を持つ事は確約されていたが、嬉しさなどどこにもなかった。

全て話し、意図的に黙っていた訳ではないというアピールをしてみせた。
しかし、その語調から、震えた声から、本心は見え透いてしまっている。
フィアンマに離れて欲しくないから、黙っていたのだ。
気付いて欲しくないから、黙っていたのだ。

フィアンマは、言葉に出してオッレルスを責める様な真似はしなかった。
ただ、軽蔑の眼差しでオッレルスを見つめるだけ。
自分にも他人にも厳しく、そして優しく生真面目な彼は、オッレルスの状態を良く思えなかった。

フィアンマ「…俺様に割く時間を、今度から奥方に宛てろ」

オッレルス「…話を、聞いていたのか。俺は彼女の事なんて、」

フィアンマ「夫婦は向き合うものだ。…妻に浮気を許すなど、正気の沙汰じゃない」

愛は、作るもの。
そんな発言が出るのは、きっとフィアンマが恋を自覚していないから。
オッレルスにとって、愛とは作るものなんかじゃなかった。
気づいたら出来上がってしまっていて、逃げ出す事の出来ない甘い檻だった。
激昂してしまわないよう気をつけ、自分が悪いのだと言い聞かせ、オッレルスは弁解する。

オッレルス「…俺は、…俺にも、好きな人が、居るんだ。お互いに、家庭なんて放っている。どちらかといえば友人だ」

フィアンマ「……、」

今度こそフィアンマは言葉を失った。
しかし、坂道を転げ落ちるボールの様に、止められるかどうか、オッレルス自身わからない。

フィアンマ「…好きな、人」

オッレルスに、好きな人が居る。
彼に妻が居るのだと知った以上にズキズキと痛む胸を手で押さえることも忘れて、フィアンマは言葉の一部を復唱する。


告白してしまうか、嘘を重ねるか。

迷って悩んで、

オッレルス「>>94
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/30(日) 23:05:56.45 ID:fwFprpuSO
……どうしようもなく好き、なんだ。フィアンマ。君の事が。初めて会った、あの時から…ずっと…
95 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/01(月) 00:15:58.49 ID:5MmfI88T0

オッレルス「……どうしようもなく好き、なんだ。フィアンマ。君の事が。初めて会った、あの時から…ずっと…」

フィアンマ「…俺、様を?」

幼い、子供の頃、次の日が待ち遠しかった。
フィアンマと話しているだけで、全てを忘れられた。
今だってその事に変わりは無い。
オッレルスはただ、フィアンマと一緒に過ごせたら、それだけで良かった。
けれど、こうして告白してしまった以上、正しく伝わってしまった以上、今の心地良い距離感ではいられない。
そこから両者踏み出すか、逃げられてしまうか、この内の二択。

フィアンマ「…どう、して」

オッレルス「…君の笑顔が好きだ。優しいところも、聡明なところも、純粋なところも、全部、全部…。この十年の間、君を想わない日は一日だって無かった。君が少女と仲良くしてい

れば、嫉妬だって覚えた。醜いだろう。醜くなってしまう程に、俺は君が好きなんだ」

フィアンマ「……、…言うな」

オッレルス「君の手を引いている時以上に幸せな事はほとんど無かった。あるとしたら、俺があげたもので君が笑ってくれた時位なものだ」

フィアンマ「やめ、ろ」

オッレルス「…俺は、さっき言ったように貴族の家の出身だ。だが、他人を見下す事が嫌いだ。馴染めず、苦しい日々で、君の存在だけが支えだった。君が笑ってくれるなら、嬉しいと

言ってくれるのなら、何でも出来る様な気がしていたんだ。今も、するよ」

オッレルスが愛の言葉を口にする度、フィアンマの胸の痛みは癒えていく。
その代わりに、ぞっとする程の悪寒が、背徳感が、全身を舐めていく。
神に背いた愛だ。許される筈が無い。そうやって恋情を抱く事自体、神罰が下るだろう。

オッレルス「俺は、」

フィアンマ「やめろと言って、」

オッレルス「君を、愛してる」

フィアンマ「…っ、」

本当に、夢に見る程。
オッレルスは、フィアンマと結ばれる日々を願った。
けれど、それが叶う瞬間は、訪れない。

再びこみ上げる胸の痛みを、響く鈍痛を我慢して、フィアンマは首を横に振った。

フィアンマ「……、…穢らわしい」

オッレルス「…、」

フィアンマ「…俺様は、お前をそういう目で見る事など出来ない。神に背く行いを見過ごす事は出来ない。ましてや、俺様に向けられているものなら、拒絶する」

オッレルスは、冷たくそう言い放ったフィアンマに歩み寄り。
魔術で方々の扉を厳重に閉じると、彼の体を押し倒した。
勿論、頭を床にぶつけてしまわないよう、後頭部を支えながら。
訳もわからず押し倒され、フィアンマは身体を強ばらせる。
想いを知られ、拒絶され。残された道は、一つだけだった。

オッレルス「…予想は、出来ていた。……心が手に入らないなら、体だけでも、とは。よく聞く、話だろう」

もう此処へ訪れる事は出来ない。フィアンマと笑い合う事もない。
全てを失ったオッレルスには、こんな事しか思い浮かばなかった。

オッレルス「…愛しているよ、フィアンマ。たとえこれが許されない恋でも、拒否されても、好きでいる」

フィアンマ「…う、そだ。…嘘だ…」

これ以上言わないでくれと耳を塞ぐ手の、その手首を掴んで床に縫い止め。
オッレルスは、今まで抑えていた分を吐き出す様に、服を乱暴に脱がして。
今まで堪えていた分が漏れ出す様に、優しく慈しむ様な口付けをした。
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/10/01(月) 00:15:59.86 ID:XbjeqNTAO
+
97 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/01(月) 00:16:14.21 ID:5MmfI88T0

神父服ではないが、黒い服に包まれていた手足は細く、白く。
抵抗は、思っていたよりも弱かった。
最も、見えていないので、どこをどう攻撃して抵抗したら良いのか、迷っているのかもしれない。
嫌だ、と嫌悪感からか恐怖感からか、そのどちらもなのか、泣いて嫌がるフィアンマの意思を聞く様子も見せず、オッレルスは性行為を続行する。
愛撫には愛情が篭っていたが、それは明らかな強姦だった。
不幸な事に、ここへは誰も助けに来ない。教会が閉ざされていれば、人は諦めて帰る。
中の助けを求める声になど、反応する筈もない。
やがて助けを求める事を諦めたフィアンマは、どうして、どうして、とぼやく様に責め問うた。
好きだよ、と囁く声も、色ではなく涙に濡れていた。自分はこんなにも好きな人に酷いことを強いているという自覚があったから。

十年間。

執念の十年だ。
途中からは恋心を抑えるのに必死で、必死で。
言葉を交わすだけで、楽しかった。
他人と一緒に出かける事がこんなにも楽しいと、思っていなかった。
唇を見ればキスをしたいと願い、手を見れば握りたいと思い。
髪を見れば触りたいと願い、腰を見れば抱きしめたいと思った。

ようやく抱けたというのに、愛の営みをしているのに、心はこんなにも重い。

「オッレル、ス、」

喘ぎ半分泣き半分に名を呼び、フィアンマは震える手をその背に沿わせる。
もう、嫌だという言葉がその唇から紡がれる事は、なかった。
理由は、わからない。
結合部が淫らな水音を立て、這い上がる様な快楽を授けた。

「愛してる、…愛してた、フィアンマ」
「あ、…っう、あ、あああ…!」

過去形に言い直したのは、きっと諦める為。
もうこれ以降、会う事など、無いのだから。
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/10/01(月) 00:16:15.14 ID:XbjeqNTAO
+
99 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/01(月) 00:16:32.29 ID:5MmfI88T0

フィアンマへの最後の贈り物としてオッレルスが選んだのは、視力だった。
正確には、目が見えるようになるという可能性。
優秀な医者への、紹介状。手紙。
医者にあらかじめ金が払ってある事も証明するそれは、小切手にも等しく。

オッレルス「…点字でも書いてはあるが、詳しくは目の見える…あの少女や、シスターにでも聞くと良い」

精液諸々で汚れたフィアンマの身体を有り合わせのもので清め、オッレルスはそう言った。
フィアンマは何も言わない。何も、応えない。

オッレルス「…使うなり、焼くなり、破るなり、売るなり。好きにしたら良い」

フィアンマ「……、…」

何も、応えられなかった。
オッレルスはやがてフィアンマに服を着せ、扉を解いて出て行った。
フィアンマは渡された紙を掴み、よろよろと立ち上がる。
愛してた、と言われた時、自分は何を思ったか。

フィアンマ「…俺様も、あいして、いたんだ」

毎日が楽しかった。
オッレルスと一緒に居る時が、この世界で一番優しい時間だと思っていた。

教会で育たなければ、多少のネックは放って、好きだと応えていただろう。
教会で育たなければ、オッレルスに知らず知らず恋心を抱く事もなかっただろう。

教会で育たなければ。
そもそも、出会わなかった。

ぐしゃぐしゃに破り捨ててやろうか、と思いつつ、紙を触る。
書いてある内容は、わかった。自分はこれを医者に渡せば、目が見えるようになるかもしれない。

今から外に出たとしても、オッレルスは見つからないだろう。
今更悔いたとしても、何もかも遅いのだ。

フィアンマ「…俺様も、愛してた。…愛してる、…どうして、…」

居なくなってから、失ってから。
今更気付いてしまったところで、それはただ、自分の首を絞めるだけ。
胸の痛みは、恋心の疼く痛みだった。どうして、気づかなかったのか。今更、気付いたのか。

ぽたぽたと目から溢れる雫を拭う。
ほとんど泣いた事なんて無かった。
だって、泣いてしまう程悲しい事があっても、オッレルスが傍にいてくれたから、泣かなくたって耐えられた。

もう、隣には誰も居ない。

自分を実際に愛しているかどうか曖昧な神を優先して、実際に愛してくれていた男を捨てたのだから、当たり前だ。
腰も尻も頭も痛かった。全身が痛い。息が苦しい。

フィアンマ「……」

この病、死に至らず。



フィアンマは、回避しようがない重い病に、絶叫した。
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/10/01(月) 00:16:33.22 ID:XbjeqNTAO
+
101 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/01(月) 00:16:50.73 ID:5MmfI88T0

全てを捨てて、街を出た。
何処に行くかは、ひとまず決めていない。
妻には事情を説明した。死亡扱いにしてくれて構わないから、離婚しても良いと。
やがて家は没落する事だろうが、そんな事はどうでも良かった。
取り返しのつかない事をした。後悔は絶えない。
空模様はあまり良くない。明日はきっと、雨が降るだろう。
そして俺は、今日の出来事を一生かけて後悔するのだ。
反省しても悔い改めようがないこの最低最悪の罪を背負ったまま生きていくんだろう。
もう、会う事なんてない。顔を合わせることはない。
だけれど、忘れてはいけないし、忘れられない。

オッレルス「…フィアンマ、」



102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/10/01(月) 00:16:52.19 ID:XbjeqNTAO
+
103 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/01(月) 00:17:54.72 ID:5MmfI88T0

手術が終わり、病室で目が覚めた。
麻酔ミスとやらで長い間眠っていたらしい、視界は完全に回復していた。
白い天井が見える。青い空が見える。白い雲が見える。
見たいと思っていたもの全て見る事が出来たが、思っていたより綺麗じゃなかった。
それに、一番見たいものは、もう見る事が出来ない。

フィアンマ「……」

オッレルス。
金の髪も、緑の髪も、見る事が出来なかった。
笑う顔も、俺様を導いてくれた優しい手も。
何一つ。最初に見たいと思っていたものを見る事は、出来なかった。

フィアンマ「…オッレルス。……」

直接告げられはしなかったが、きっともう、教会には来ないだろう。
楽しかった日々は終わりを告げた。これから先、俺様はこの『病』に冒される。
他に生き甲斐を見つけなければならないだろう。
何が良いだろうか。ぼんやりと、思う。










フィアンマの進路決定投票安価区間は>>104-106です。
選択肢は以下のみ。



1.魔術師(原作沿いルート)

2.神父(パラレルルート)





番号で投票してください。
同IDにつき一票です。(=連投無効)
よろしくお願いいたします。



>>1000行ってないのですが、設定はこのままに仕切り直したいので次スレ立ててもよろしいでしょうか…》
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/01(月) 00:21:21.76 ID:9xkOR91SO
もっとクソ短いSSもいっぱいあるしいいんじゃね?
依頼出してれば問題ねーって
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/01(月) 00:21:48.91 ID:9xkOR91SO
安価ならパラレルで
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/01(月) 00:25:37.96 ID:HYKPrpSAO
1で
次スレ立てても大丈夫だと思うよ
107 : ◆2/3UkhVg4u1D [sage]:2012/10/01(月) 00:29:20.78 ID:XbjeqNTAO

《では明日(今日?)次スレを立てて誘導します。今後ともご協力よろしくお願いいたします。


投票範囲>>+1まで。
残り一票の内容で決定します》
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/01(月) 05:31:13.12 ID:lrAby00y0
1
109 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/01(月) 07:34:04.08 ID:XbjeqNTAO

投票結果
1(魔術師):2票
2(神父):1票

よって、フィアンマの進路は魔術師(原作沿い)に決定しました。
投票にご協力いただき、本当にありがとうございました。
次スレは夜近くに立て、誘導いたしますので、今しばらくお待ちください。
このスレ自体は此処で終わりです。
お疲れ様でした》
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/01(月) 10:17:41.07 ID:9xkOR91SO
111 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/01(月) 20:23:14.96 ID:1VFRpQdS0

次スレ立てました

オッレルス「あの日、俺は最も安価な選択をした」
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