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魔法少女マテリアル☆まどか - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆HvWr2kWl99Dz [sage]:2012/09/29(土) 01:17:04.36 ID:wzXOjhvP0
注意事項

・このSSは、魔法少女まどか☆マギカとマテリアル・パズル(無印のみ)のクロスSSとなります。
・舞台は見滝原、マテパの方の時間軸はメモリア魔方陣開幕前となっております。(っていうかここ以外ねじ込める空白時間がない)
・ちょっとゆっくりめの更新となるかと思います。週1〜2程度できれば御の字ですかね。
・なんか甘党の高校生とか出ます。



ぼくは またこの板の前に立っている
この物語を綴るために――

この物語の向こうには――――

この物語の向こうには

この物語の向こうには……!

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木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
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いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
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【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
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こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
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【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
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アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713089503/

2 : ◆HvWr2kWl99Dz [sage saga]:2012/09/29(土) 01:18:47.66 ID:wzXOjhvP0










第1章:見滝原の魔法少女達









3 : ◆HvWr2kWl99Dz [sage saga]:2012/09/29(土) 01:22:23.78 ID:wzXOjhvP0
第一話 お菓子の魔女とあめ玉の魔法使い

「急がないと……不味いわね。行きましょう、鹿目さん」
「はい、マミさんっ!」
そこは不可思議な空間だった。
辺りを見渡せば、そこにあるのは色とりどりのお菓子の山。
けれどそれは人の食欲を刺激する類の物ではなく、むしろどこか毒々しく、禍々しさすら感じさせる色合いで。
そんな空間を、二人の少女が歩いている。
先頭には黄色い髪の少女が立ち、油断無く辺りを見渡しながら慎重に、けれど迅速に奥へ奥へと進んでいく。
そんな少女に手を引かれ、桃色の髪の少女が後に続く。

黄色い髪の少女の名は巴マミ。魔女と戦う魔法少女。
そして桃色の髪の少女の名は鹿目まどか、今はまだただの少女だけれど、魔法少女の素質をもった少女。



魔法少女。それは願いと引き換えに、魔女と戦う定めを負う事となる少女。
まどかと、その友人である美樹さやかの二人は共に魔法少女としての素質を秘めていた。
そして魔法少女の事を知るために、契約によって魔法少女を生み出す生物、キュゥべえとマミに導かれ
魔法少女の敵である魔女退治に付き合うこととなるのだった。
そして今、病院に発生した魔女の生み出した結界に囚われたさやかを救うため
二人は結界の中へと突入していた。それが、この不可思議な空間であった。
4 : ◆HvWr2kWl99Dz [sage saga]:2012/09/29(土) 01:23:54.38 ID:wzXOjhvP0
「もうそろそろ美樹さんのところに着くはずよ、急ぎましょう」
まどかの手を引き、歩き出そうとするマミ。
けれどまどかはどこかを見つめたまま、動こうとはしなかった。
「……鹿目さん?」
訝しげに問いかけたマミに、まどかは我に返ったように振り向いた。
「ご、ごめんなさい。マミさんっ」
「何かあったの、鹿目さん?」
「……もしかしたら、私の見間違いかも知れないんです。でも、今……そこに女の子がいたような気がして」
お菓子の山の向こうを指差して、まどかが不安げに言った。
その声にマミもまた息を呑む。
もしそれが魔女の結界に囚われてしまった一般人なのだとしたら、助けないわけにはいかない。
マミは立ち止まり、軽く目を伏せた。


――キュゥべえ、聞こえる?

――マミ?もう近くまで来ているのかい、こっちは今のところ大丈夫だよ。

それは所謂テレパシーというもので。
マミの声は魔女の結界の最深部にて、さやかと共に二人の到着を待つキュゥべえの元へと届けられた。

――そう、それなら今のところは一安心ね。キュゥべえ、もしかしたら他に結界に囚われてしまった人がいるかもしれないわ。そっちで何かわからないかしら?
――なんだって、それは本当かい?……確かに、マミ達とは別の反応があるね。でも、この魔力は……。



テレパシーを介したキュゥべえの言葉を告げられるより早く、二人の前に少女が現れた。
黒い長髪に細身の身体、どこか冷たいを宿したその瞳には、ありありと焦燥の色が浮かんでいた。
「……そう、貴女だったのね。暁美ほむら」
その姿を認めて、マミの表情からは緊迫の色が消えた。
代わりに浮かんできたのは、あからさまな警戒と、敵意の色だった。
5 : ◆HvWr2kWl99Dz [sage saga]:2012/09/29(土) 01:26:08.90 ID:wzXOjhvP0
暁美ほむら。彼女もまた魔法少女であった。けれど、その行動には多くの謎がある。
あたかもそれは、新たな魔法少女が生まれることを阻止しようとしているように見えた。
魔女を退治することにも非協力的で、それがマミに不信感と敵意を抱かせていた。

「言ったはずよね。二度と会いたくないって」
その不信感と敵意を隠そうともせずに、棘のある口調でマミが言う。
「今回の獲物は私が狩る。貴女たちは手を引いて」
ほむらもまた、冷たくそう言い放つ。
睨み合う二人の間には、凍て付くように冷たく、そして張り詰めた空気が漂いはじめた。
「わざわざ付け回すような真似をして、そうしてまで獲物が欲しいのかしら?
 でも今回だけは駄目よ。美樹さんとキュゥべえを迎えに行かないといけないもの」
一瞬、ほむらの表情に怪訝そうな色が浮かぶ。けれどそれもすぐに、冷たい色に塗りつぶされてしまって。
「そんなことをしていたつもりは無いわ。それに、その二人の安全は保証する」
「信用できると思って?」
酷薄な微笑を浮かべてマミは答え、ほむらはぎり、と小さく歯噛みした。


「残念だけど、貴女にこの場を任せることも、貴女と協力することもできないわ」
時間が惜しい、とばかりにマミは言葉を打ち切る。そしてほむらが動くより先んじて、その手から光を迸らせた。
それはすぐさま黄色いリボンへと変わり、ほむらの全身を拘束した。
「馬鹿っ……こんなことやってる場合じゃ!」
ほむらは必死にもがいたが、その拘束はまったく緩まる気配を見せなかった。
「大人しくしていれば、帰りにはちゃんと解放してあげる。……行きましょう、鹿目さん」
「っ……あ、はい。マミさん。……ほむらちゃん、ごめんね」
呆気に取られていたまどかもマミの声に我に返り、拘束されたほむらを申し訳なさそうに見つめて、それからマミの後を追った。

(あの時見えた女の子、本当にほむらちゃんだったのかな。もうちょっと、小さかったような……)
内心の悩みと不安を抱えつつ、それでもまどかはマミの手を取り、結界のさらに奥へと向かうのだった。
6 : ◆HvWr2kWl99Dz [sage saga]:2012/09/29(土) 01:29:16.92 ID:wzXOjhvP0
「なんだったんだろうね、今のは」
少女の声。
それは先ほどの三人のものと同じか、もしくはもっと幼いかもしれない声。
魔法少女同士の交錯の一部始終を見届けて、声の主は訝しげに呟いた。
「気がついたら変なトコに飛ばされてるし、おまけに妙なガキどもまで出てくるしさ。どーしたもんかね」
その口調は途方に暮れたようでもあり、そんな状況ですら楽しんでいるようでもあった。
「とりあえず、ちょっとちょっかい出してみるかな」
そう言うと、少女は肩にかけたバッグに手を差し入れ、小さな何かを取り出した。
包み紙に包まれたそれは所謂あめ玉という奴で。包み紙を解くと、綺麗な水色のあめ玉がころりと転げ出た。
それをひょいと口の中に放り込み、軽く噛み締めて、少女は不敵な笑みを浮かべた。
そして、今尚もがき続けるほむらの元へと歩き出すのだった。



「っ……こんなところでこんなこと、してる場合じゃないのに」
ほむらの表情は焦燥と苦悶に歪んでいた。
どれほどもがいてもマミによるリボンの戒めは解ける事は無く、この状況を打破する術を
今の彼女は何一つとして持ち合わせてはいなかった。
「巴マミが、ここまで性急に仕掛けてくるなんて……このままじゃ、まどかが」
脳裏に最悪の光景が浮かぶ。それを現実にさせるわけには行かない。
だが、焦る心と裏腹に、状況は一切の変化を許しはしない。


「随分と、面白い格好をしてるね、あんた」
それは少女の声で、唐突に投げかけられたその声にほむらは驚いたように、どうにか動く首を巡らせた。
辛うじて見えたその姿は、黒いローブを纏った小さな人影。その姿は、小柄なほむらよりもさらに小さい。
「っていうか、あんたらはこんなとこで何してるのさ。
 急にこんなわけわかんないところにつれてこられて、こちとらめちゃくちゃ困ってるんだけど?」
その少女の放つ声には、興味深げな様子とどこか刺々しい感じが入り混じっていた。
7 : ◆HvWr2kWl99Dz [sage saga]:2012/09/29(土) 01:32:21.68 ID:wzXOjhvP0
「……まさか、美樹さやか以外にも、巻き込まれた人間がいたなんて」
その事実もまた、ほむらを驚愕させた。
「ちょっとー、あたしが質問してるんだけど?ちゃんと答えて欲しいんだけどー?」
そんなほむらの様子に気分を害したのか、少女の声の刺々しさが更に増す。
状況はよいとは言えない。だが、ほむらにとってはこれは好機でもあった。

「わかったわ。事情を説明するから、まずはこれを解いてくれないかしら」
この拘束さえ解ければ、直ぐにでも魔女を倒して脱出できる。
努めて冷静にほむらはその少女に声をかけた。けれどその少女は、一つ不満げに鼻を鳴らして。
「やだね、先に何がどうなってるのかを話しな。でなきゃ解いてやらないよ」
と、どこかおどけるような、嘲るような言葉を返すのだった。
「悠長に事情を説明している余裕はないの!ここは危険なのよ!」
魔女は魔法少女にとって倒すべき敵。けれどその魔女は、人間の命を刈り取る化け物でもあった。
そしてその眷属たる使い魔もまた、魔法少女にとっては取るに足らない相手だが
ただの人間にとっては恐るべき存在なのだ。
今はまだ魔女は目覚めてはいないのか、使い魔の動きも大人しい。だが、それはいつ牙を剥いてもおかしくない。
だというのに、まるで危機感のないその少女の言動は、さらにほむらを苛立たせた。

「危険?ここが?……確かにちょっと気味の悪い場所だけどさ、どこが危険だってのさ」
少女はそれを鼻で笑った。
けれど、そんな少女の背後に一匹の使い魔が忍び寄っていた。
少女はそれにまるで気づいていないかのように、バッグをごそごそと探り、そこから棒のついたあめ玉を取り出していた。
「いいから早く解きなさいっ!このままじゃ、貴女も危険なのよ!」
魔女も使い魔も、普通の人間には知覚する事が出来ない。それが出来るのは、魔法少女とその素質を持つものだけ。
それ故に目の前の少女は、自身に迫る危機を理解してできていないのだと、ほむらは推測していた。
この状態では、使い魔の相手すらも難しい。とにかく是が非でもこの拘束を解かなければならない。
ほむらの声にも焦燥の度合いが強まっていた。

だが、そんな必死の叫びを嘲笑うかのように使い魔はその牙を剥き、少女へと飛び掛る。
凄惨な光景を予期して、ほむらの表情が強張った。
8 : ◆HvWr2kWl99Dz [sage saga]:2012/09/29(土) 01:35:21.05 ID:wzXOjhvP0


「――だから、何が危険だってのさ?」

迫り来る見えざる脅威に。
否、脅威と言うにはあまりにも貧相なそれに、少女は不敵な笑みを浮かべて
その手に握った棒付きあめを軽く振った。
直後。少女に襲い掛かろうとしていた使い魔が、爆ぜた。

「え……っ!?」
予想外の光景に、再びほむらは驚愕する。
ほむらの知る限り、目の前の少女は魔法少女ではない。もしそうであれば、すぐにわかるはずなのだ。
だとすれば彼女は何者なのか、ほむらの思考は、たちまちのうちに疑問で埋め尽くされた。

「ったく、これじゃ埒が明かないね。まあいいや、向こうの二人に聞いてみようっと」
少女はほむらに興味を失ったかのようにふい、と視線を奥へと移し、そのまま歩き出してしまう。
「っ!待ちなさい、貴女は一体何者なの!?」
それを捨て置けるはずも無く、ほむらは少女に呼びかける。
少女は振り向き、ほむらに小さく舌を突き出して、意地悪そうに笑みを浮かべて。
「教えてやーらない♪」
とても楽しそうに一言そう言って。
「……本当に危険だってなら、さっさと帰んな。ガキの出る幕じゃないよ」
更に一言冷たく言い放ち、今度こそそのまま歩いて去っていった。

「……この時間軸で、何が起こっているというの」
少女の姿が見えなくなると、ほむらは力なく項垂れ呆然と呟いた。
その視線の先で、何かがきらりと小さく光る。
「あめ玉?」
あの少女が落としたのだろうかと、疑問を抱いたその刹那。そのあめ玉が光を放ち炸裂した。
「ぐ……っ」
強烈な閃光と衝撃が走る。けれど、熱さは感じない。
それらが過ぎ去った後には、ほむらを戒めていたリボンはボロボロになっていた。
これならば、もがけばどうにか抜け出せるだろう。

「……とやかく言っても始まらないわ。とにかく、急がないと」
状況は混迷を極めていく。
それでも彼女のやるべきことは、如何なる時においても変わりはしないのだから。
9 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga]:2012/09/29(土) 01:36:41.90 ID:wzXOjhvP0
と、こんな具合で魔法少女と魔法使いの話が開幕と相成ります。
そこそこ長くなってくれそうなので、それなりにこの話とも長い付き合いになることでしょう。
どうぞごゆるりとご覧くださいませ。

では、また次回!
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2012/09/29(土) 05:33:14.82 ID:S8LaUgeAO

マテリアルパズルのクロスって珍しいし期待してる
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県) [sage]:2012/09/29(土) 07:30:58.51 ID:8y5eACNZ0
おつおつー

わざわざ無印って言うことはゼロクロ勢は来ないか
女神の三十指は来るかな? アダさんとキュウべえ組んだらヤバすぎる気はする
12 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga]:2012/09/29(土) 18:34:10.63 ID:wzXOjhvP0
みんなが一挙放送に気を取られている、今が投下するチャンスだ!

というわけで続き行きます。
13 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga sage]:2012/09/29(土) 18:36:59.07 ID:wzXOjhvP0
魔女の結界の最奥で、それは静かに脈動していた。
それはグリーフシードと呼ばれる、魔女を生み出す漆黒の種子。
その様子を、青い髪の少女と奇妙な白い生き物が緊張した面持ちで、遠巻きに見守っている。
彼女こそが美樹さやか、そしてその傍らの生物こそが契約によって魔法少女を生み出すもの、キュゥべえ。

「マミさん……まどか、まだ来ないのかな」
魔女はまだ目覚めていない。けれどその目覚めは近い。
それが分っているからこそ、さやかの声は極度の緊張で張り詰めていた。
「近くまでは来てると思うよ、後は魔女が目覚める前に、マミが間に合ってくれるといいんだけどね」
この様子なら恐らく間に合うだろう。キュゥべえもそう考えていた。
「でも、この魔力の反応は……」
付け加えるように呟いた言葉は、何か気がかりな事があるような口調で。

「魔女でも、魔法少女とも違う……」
「ちょっと、キュゥべえ!あれ、何か動き出してる」
キュゥべえの呟きを遮ってさやかが叫ぶ。
グリーフシードは今にも何かが湧き出て来そうなほどに、禍々しく脈打っていた。
「まずいな、魔女が出てくるよ!」

グリーフシードが姿を変える。そこにあるのは、巨大なお菓子の袋のようなもの。
それは内側から食い破られるようにして裂け、そこから何かが現れた。
ともすれば、愛くるしい姿のぬいぐるみのようにも見える。
けれどそれは遂に目覚めてしまった魔女であり、恐るべき敵。



お菓子の魔女――シャルロッテ。
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/09/29(土) 18:37:29.65 ID:POfW+eTV0
無印しか見ていない自分は歓喜!
あの獣顔のあの人はでますか?チラチラ
15 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga sage]:2012/09/29(土) 18:38:30.75 ID:wzXOjhvP0
お菓子の魔女は、まるで赤子のように頼りなく周囲を見回した後
物陰に隠れて様子を伺っていたさやかとキュゥべえへと視線を向け、その唇を軽く吊り上げた。
「……さやか、願い事は決まったかい?」
マミは未だ現れず、まさに絶体絶命の危機。
キュゥべえはさやかに決断を促した。願いと引き換えに契約し、魔女と戦う定めを背負う。
魔法少女になるという決断を。
「流石に、もう迷ってなんていられないか」
魔女の姿を見つめて、震える声でさやかが言う。
その愛くるしい姿を見ても、さやかの表情には一欠けらの余裕も見られなかった。
さやかは今までに数度、マミの魔女退治をその目で見ている。
それ故に、魔女の恐ろしさを彼女は身をもって理解していた。

「あたしの願いは……」
「駄目よ、そんな簡単に決めたりしちゃあ、ねっ」
その声は、閃光と共に舞い降りた。
「マミさんっ!」「マミ、間に合ったんだねっ!」
その声は、まさしく希望そのものだった。

「ええ、どうやらギリギリ間に合ってくれたみたいね」
それまでの制服姿ではなく、魔法少女の服装に身を包んだマミは
その手のマスケット銃から矢継ぎ早に閃光を放ち、そのままさやか達の側へと降り立った。
「さやかちゃんっ!よかった、無事で……」
マミと共に降り立ったまどかは、すぐさまさやかに飛びついた。
16 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga sage]:2012/09/29(土) 18:41:49.94 ID:wzXOjhvP0
「さあ、速攻で片付けるわよ!」
自らを鼓舞するようにマミはそう叫ぶ。
そして魔法の弾丸に射抜かれ、地面に縫い付けられた魔女に向けて駆け出した。
マスケット銃の銃身を握り、まるでゴルフクラブか何かのように銃床を魔女に叩き付ける。
壁際にまで吹き飛ばされた魔女に、続けざまに魔法の弾丸を撃ち込んでいく。
だが、魔女もただ黙ってやられはしない。
使い魔達がその射線に飛び込み、自らの身をもってその弾丸を遮った。
それのみならず、更に数に任せてマミへと殺到する。

「あんなに沢山。いくらマミさんでもあれじゃあ……」
不安げに声を漏らすさやか。
マミはそんなさやかに軽く視線をやると、大丈夫とでも言うかのように力強い笑みを浮かべた。
マスケット銃を握った両手をそのまま左右に払う。するとそれは何本にも分裂し、マミの周囲を取り囲むように展開した。
マミはまずその一丁を手に取ると、迫る使い魔の群れの先頭に魔法の弾丸を叩き込む。
その隙を突いて迫る使い魔には銃床を叩き付け、撃ち終えた銃を放り投げると同時に次の銃へと手を伸ばし
そしてまた撃ち放つ。まるで踊るような仕草で、魔法の弾丸と銃床を叩き込み、次々にその数を減らしていった。

「すごい……マミさん」
「さっすがマミさん、いいぞ、そのままやっつけちゃえーっ!」
その動きにすっかり魅了され、圧倒されている二人。だが、歓声を上げる二人の眼前にも使い魔が迫っていた。
「うわわっ!?こっち来るなーっ!!」
マミの戦いに見惚れていた二人は、逃げるのが僅かに遅れてしまった。
その僅かな時間は間違いなく、致命的な隙だった。
マミにもまた危機は訪れる。次々に押し寄せる使い魔の群れに、遂に銃も全て撃ち切ってしまった。
武器を失ったマミに、頭上から新たな使い魔が襲い来る。
そんな危機的状況にあっても、マミは静かな笑みを絶やさなかった。それは、絶対の自信からなるもので。

「甘いわよっ!」
牙を剥き、喰らいつこうとした使い魔の側面を、高く蹴上げたマミの左足が捉えていた。
そのまま右足を軸にし身体を回転させると同時に、その勢いも乗せて使い魔を蹴り飛した。
蹴り飛ばされた使い魔は、見事にまどかとさやかに迫っていた使い魔にブチ当たり、二体まとめて吹き飛ばされて掻き消えた。
17 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga sage]:2012/09/29(土) 18:44:18.91 ID:wzXOjhvP0
「もう少しの辛抱よ、すぐに終わらせるからっ!」
二人に言葉をかけると同時に、使い魔の群れを引き寄せてマミは跳躍する。
空中で再びマスケット銃を生み出し、使い魔の群れへと向けて撃ち放つ。
使い魔を打ち砕き、地面に無数の弾痕が刻まれる。だが、その全てを撃破するには至らない。
「まずは邪魔な使い魔から。一気に片付けるわよ!」
だがその弾痕から生じた光の帯が、群れ為す使い魔を戒め、縛り、一所へと押し固める。
狙い通り、とマミは更にその笑みを深くし、着地すると同時に手にした銃を巨砲へと作り変えた。
その巨砲から、今までのそれとは比べ物にならない威力を帯びた弾丸が放たれ、押し固められた使い魔の群れを根絶した。
「さあ、後は魔女だけね」
巨砲を通常の銃へと戻し、マミは鋭く魔女を見据えた。
使い魔を悉く撃破され、その力に魔女も恐怖したのだろうか、まるで逃げるかのようにその身体が宙を漂い始めた。
だが当然、マミはそれを逃さない。

「これで終わりよっ!」
魔女を追って跳躍。そのまま魔女を跳び越し、落下の勢いを乗せて銃口を突き刺すように、激しい突きを叩き込んだ。
急速に落下する中、押し付けた銃口から二発、魔法の弾丸が魔女の身体に食い込んでいく。
そして地面に落下し、その衝撃に地は砕け、あたかも土煙のようなものが沸きあがる。
それすらもマミが手を払えば、まるで風にさらわれたかのように掻き消えていく。
魔女の身体に埋め込まれた弾丸から、再び光のリボンが生じ魔女の身体を空中に拘束する。
最早魔女に抵抗の術は無い。後はただ、とどめの一撃を叩き込むだけだった。

再びその掌中の銃が巨砲へと変わる。十分に魔力を高め、必殺を期してそれは放たれる。
18 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga sage]:2012/09/29(土) 18:48:02.75 ID:wzXOjhvP0

「ティロ・フィナーレ!」

放たれたのは必殺の弾丸。
撃ち貫くと同時に光の帯で捕縛し圧殺する、マミの最大の一撃だった。
その弾丸は確実に魔女の胴体を射抜き、更に生じた光の帯がリボンと化して、頭を残して魔女の全身を拘束した。
後はそのまま、押し潰すのみ。

「やったぁ!」「さっすがマミさんっ!」
マミの勝利を確信し、二人が歓声をあげる。
マミもまたそれに答えて二人を見つめ、自信気な笑みを浮かべた。
勝利の余韻と安堵、そして新たな魔法少女となるかも知れない仲間を、守り抜くことが出来たという喜び。
それがマミの心を埋め尽くしていた。今度こそそれは、余りに致命的過ぎる隙だった。

捕縛され、圧殺されるのを待つばかりであったはずの魔女。
だが、その口の中から何かが溢れ出た。それは奇妙に姿を変え、肥大化し、一気にマミへと迫る。
気を緩めていたマミは、それから逃れることはできなかった。
悪趣味な化け物、そう言うより他にないそれは、巨大な顎を開き、濡れた牙を覗かせた。
そしてそのまま、目を見開き硬直したマミの身体に喰らいつく。


その直前。マミの視界に、何か小さく光るものが見えた。


「マミさ……っ、うわぁぁぁっ!?」
魔女の変貌と、マミの窮地にさやかが悲鳴を上げる。
けれどそれは、突如として巻き起こった激しい爆発によって遮られた。
19 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga sage]:2012/09/29(土) 18:49:51.17 ID:wzXOjhvP0
「これは……一体?」
突如としてマミと魔女との間に発生した、激しく迸る光の炸裂。
それはこの場にいた誰にとっても予想外のものだった。
キュゥべえもまた、その表情に驚愕の色を張り付かせて言葉を放った。
「何……何なの、これ?」「そうだ、マミさんはっ!?」
迸る光が収まり、激しい光に焼かれた視界がようやく戻る。
そこにはマミの姿も魔女の姿も無い。二人が慌てて周囲を探ると、すぐにそれは見つかった。

見つかったのだが。


「……えーっと。マミ、さん?」
マミは突然の爆発に吹き飛ばされ、床へと叩きつけられていた。
それだけならまだ二人も純粋に心配できたのだろうが、その状況は到底そうすることを許さなかった。






「「犬○家!?」」
吹き飛ばされたマミはそのまま頭から地面に落ちた。
丁度そこはケーキのように柔らかな場所だったのだろう。
完全にその身体は地面に埋もれ、足先だけが突き出ていたのである。


実にスケキヨである。
20 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga sage]:2012/09/29(土) 18:53:20.70 ID:wzXOjhvP0
「何か勝手に死にそうだったし、手ぇ出させてもらったよ」
声と同時にケーキの高台の上に現れたのは、ほむらの前に現れたのと同じく、黒いローブを纏った人影だった。

(女の子の、声?)
その声は少女のそれで、その姿にまどかは見覚えがあった。
「あれは……あの時の」
ほむらと出会う直前、まどかが垣間見た人影とその姿はよく似ていた。
その人影は高台から飛び降り、まどか達の側へと降り立って。
「あんた、一体誰なの?もしかして、また新しい魔法少女の登場ってわけ?」
驚きと不安、そして多少の怯えを帯びた声で、さやかが問いかける。
「魔法少女?そんな可愛らしいもんじゃないよ。あたしは……」
ローブの少女は振り向いて、僅かにさやかに視線を向けると。


「――魔法使いって奴さ」
言葉と同時に、轟音が鳴り響いた。


吹き飛ばされ、文字通り目をぐるぐると回していた魔女が目を覚まし
瓦礫やお菓子の破片を吹き飛ばしながら起き上がる。
魔女は、新たに現れた脅威であるローブの少女を視界に捕らえると、瞳に怒りを宿し再びその牙を剥いた。

「ふん、化け物の癖に生意気だね。あんたらは離れてな、巻き添え食っても知らないよ」
少女は尚も強気に言葉を告げる。
ローブの端から覗いた口元には、不敵で余裕の笑みが浮かんでいた。
「なんだかよくわかんないけど、行こうまどか!マミさんを助けないと」
「っ、うん!」
まどかは心配そうに少女を見つめ、それでもさやかに続いて駆け出した。
21 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga sage]:2012/09/29(土) 18:57:28.67 ID:wzXOjhvP0
再び魔女が動き出す。
どんなものでも噛み砕いてしまいそうな鋭い牙を構えた顎が、少女を噛み砕かんとして迫る。

「そんなに食いたきゃ、これでも食ってろ!」
迫り来る魔女に、少女は何かを放り投げる。
魔女はそれを意にも介さず飲み込み、更に少女目掛けて突き進む。だがその直後、再び激しい爆発が生じる。
それは魔女の体内より生じたもので、内側から光に焼かれ、魔女の表情が苦悶に歪む。
だが、それでも魔女を倒すには至らない。
魔女はまるで蟲が脱皮するかのように傷ついた身体を脱ぎ捨て、一回り小さくなった姿で更に少女へと迫った。
「しぶといね、ったく」
小さく呟き、少女は矢継ぎ早に何かを放り投げる。
それは次々に爆発し、光の炸裂を生み出していく。だがそれは、魔女を捉えるには至らない。
身体が小さくなった事で機動性が増したのか、魔女は続けざまに生じる爆発を全て回避していた。

「ふん、面倒臭いね。……丁度いいや、こいつで一気に決めるよ」
苛立たしげに鼻を鳴らし、少女は魔女を睨み付ける。
けれどその視界の端に何かを見つけて、その唇が吊り上った。

突如として少女は走り出す。
爆発の雨が止んだことで、余裕が出来た魔女も少女の後を追う。
爆発に煽られ傷ついた身体を今一度脱ぎ捨て、更に一回り小さく、そして速くなる。
恐るべき速度で魔女は迫り、その牙は今にも少女を噛み砕こうとしていた。
だがそれに先んじて一歩早く、少女はそれを掴み取った。
それは人の頭ほどもある巨大なロリポップ。
血の色のような赤と、目に痛々しい蛍光色の青の混じったそれは、とてもではないが食欲をそそられるようなものではない。
けれど、少女にはそれで十分だった。

「ぶっ……壊れなぁっ!!!」
握り締めたそれを、少女はすぐ背後にまで迫っていた魔女に叩き付けた。
巨大なロリポップが魔女の顔面にめり込み、そして一際大きな爆発が巻き起こった。
22 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga sage]:2012/09/29(土) 19:01:12.49 ID:wzXOjhvP0
「マミさん!大丈夫ですか、マミさんっ!」
「……ええ、みっともないところ、見せてしまったわね」
どうにか掘り起こされ、スケキヨ状態から抜け出したマミとまどか達の元へも、その光の余波が吹き荒れた。
「何が……きゃぁぁっ!?」
光に目を焼かれ、吹き荒れる衝撃に吹き飛ばされそうになりながら
三人は互いに身を寄せ合い、身を屈めて必死に耐えるのだった。

そしてその光の爆心地で全身を光に焼かれ、魔女がその存在を失っていく。
その光が収まると、爆心地には魔女の姿は一片たりとも存在せず。そこにはただ、無傷の少女の姿だけがあった。
纏っていたローブは、衝撃に煽られ吹き飛ばされていて。
その下には、得意げな表情で笑みを浮かべる、小さな黒髪の少女の姿があった。

「――キミは、一体何者なんだい?」
その戦いの一部始終を見届けて、キュゥべえは少女に問いかけた。
それは彼女が、キュゥべえによって生み出された魔法少女ではないということを、言外に示しているようなもので。
その声に、少女は振り向いた。そして。



「あたしはアクア。大魔導士アクア、よろしくね」
核たる魔女を失い急速に崩壊していく結界の中で、少女――アクアは名乗った。
あたかもそれは、世界に自らの存在を知らしめるかのように。


魔法少女マテリアル☆まどか 第1話
     『お菓子の魔女とアメ玉の魔法使い』
           ―終―
23 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga sage]:2012/09/29(土) 19:02:55.51 ID:wzXOjhvP0
【次回予告】
魔法少女と魔法使いは出会った。出会ってしまった。
ありえるはずのない出会いは、小さな歪みを生み出した。
生まれた歪みは、少女達の運命さえも揺るがしていく。

けれどこれはまだ、その序章に過ぎないのだ。


「別の世界からやってきた、ってこと……なのかな?」
「こんなの、普通じゃ考えられないわ」

出会ってしまった少女、アクアは自らを魔法使いと名乗った。
「結構面白いね、こっちの世界も」
「家に……来るしかない、わよね。やっぱり」

それぞれの目的のため、同じく魔法の名を冠した少女達は結託する。
「あんたらにはあたしに協力してもらう。嫌とは言わせないよ」
「貴女となら、獲物の取り合いになる心配はなさそうね」


「アクア?しっかりして、アクアっ!!」
「まさか、この反応は……」


「キャーっ!イヤーっ!!」
「ちょっと待って、ごめっ、う、うわーっ!?」

次回、魔法少女マテリアル☆まどか 第2話
       『魔法少女ともう一人の魔法使い』
24 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga]:2012/09/29(土) 19:11:20.98 ID:wzXOjhvP0
という訳で、これにて一話は終了です。
全くもって導入回。ここからが一応本番といった感じでしょうか。

>>10
私の知る限り、過去にここでやってたのが一本ありましたね。
向こうはアダさんが大いにアダさんしてやがりました。

>>11
流石にあの人らを出すとなると、えらい勢いで話を改造する羽目になりますからね。
でも正直出せるもんならミト様は出したかった。
今のところはTAPだけの登場です。果たして三十指は、そしてアダさんはやってくるのでしょうかね。

>>14
ミカゼは今頃シシメ師匠と山篭りをしてるんじゃないかと思います。
そして万象の杖と焔弧だけでは、微妙に魔女退治は辛そうですね。
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/30(日) 13:06:57.05 ID:FOIUvkKlo

コレは期待
前のクロス書いた人とは別人なのか

魔法の媒介的にお菓子の結界が有利フィールドすぎて
アクアさんの最盛期がもう終わってしまった疑念がぬぐえないww
26 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga]:2012/10/01(月) 02:29:45.04 ID:OoeWSQId0
結局今回も日参ペースになりそうだけど、気にせず今日も投下します。
27 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga sage]:2012/10/01(月) 02:31:33.16 ID:OoeWSQId0

第2話 魔法少女ともう一人の魔法使い


魔女の結界が砕けると、そこに広がっていたのは夕暮れ時を通り過ぎた暗闇で。
そしてその暗闇の中で、白い建物が明かりに照らされていた。それは病院。
この魔女は、病院をその巣として取り込もうとしていたのだ。

魔女は通常であれば結界から出る事は出来ない。
故に、不幸な人間が結界の中に迷い込みでもしない限り、魔女が直接人を害する事はまずないと言ってもいい。
だが、魔女は人を操りその心を蝕む。それは不安や猜疑心、そして絶望という形を成して人の心に去来する。
そしてその絶望に飲まれた者は、やがて遠からずその命を絶つこととなる。
故に魔女は人の天敵で、心身の弱った人間の多い病院に発生すれば、多くの犠牲を生みかねない。
だが、魔女は討たれた。それを討つべき魔法少女ではなく、突如として現れた謎の魔法使い、アクアによって。

兎にも角にも、危機はひとまず去ったのである。


「どーやら、ちょっとはまともな場所に出たみたいだね」
少女――アクアは、辺りの景色ぐるりと眺めながらそう言うと。
「……でも、やっぱりメモリアとは違うね」
と、小さな声で呟いた。
28 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga sage]:2012/10/01(月) 02:33:16.98 ID:OoeWSQId0
「ええと、それで……アクア、さん?」
なにやら物思いに耽っている様子のアクアに、マミが静かに声をかけた。
「……ああ、そうそう。そういやこっちの話もまだだったね。
 そう、あたしはアクアだよ。名乗ってやったんだから、あんたらも名乗りな」
「そうね、私は巴マミ。見ての通り……とは言えないけれど、魔法少女よ」
既にマミの服は魔法少女のそれではなく、彼女らの通う見滝原中学校の制服へと変わっていた。
結界が解ければそこはもう日常の世界。魔法少女の姿のままでは、いささか目立ってしまう。

「あ、あたし……美樹さやか。一応魔法少女……見習い、って感じかな」
「私は、鹿目まどか。えと、同じく魔法少女見習い……かな?」
未だ緊張の抜けない表情で、さやかとまどかもそう答えた。
とは言えその緊張の理由は、魔女との戦いによるそれというよりは
恐るべき破壊を生み出したアクアの存在によるところが大きかった。

「で、なにこの妙な生き物。あんたらのペット?」
「ペット扱いは心外だな、ボクはキュゥべえって言うんだ。よろしくね、アクア」
「あ、喋った。動物なのに喋るなんて、面白いねー、うりうり」
今更ではあるが、キュゥべえは見た目自体は愛くるしい生き物である。
よくできたぬいぐるみのようにも見える、その見た目がえらく気に入ったのか、アクアはキュゥべえに手を伸ばした。
撫でてみたり持ち上げてみたり、耳を軽く引っ張ってみたり、アメ玉を食らわそうとしてみたりと
その後はもうやりたい放題である。いい加減に辟易した様子のキュゥべえが
マミに助けを求めるような視線を送った。
29 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga sage]:2012/10/01(月) 02:34:56.77 ID:OoeWSQId0
「アクアさん、そのくらいにしておいて話を続けましょう。貴女に色々聞きたいのだけど……」
「待った、質問はあたしが先だよ。こちとらわからない事だらけで頭がこんがらがってるんだ。
 まずはその辺どうにかしてくれないと、答えようにも答えらんないね」
言葉を続けようとしたマミの機先を制して、アクアがずいと手のひらを突き出して言った。
「わかったわ。でも、私もこの状況に戸惑っているのは事実だから
 何でも答えられるわけじゃないけど、それでもよければ」
「そ、じゃあ色々聞かせてもらうよ」
そう言ったきり、アクアは軽く目を閉ざす。そして、とん、と軽く指でそのこめかみを突いた。
何をしているのかとマミ達が訝しげな表情を浮かべ、問いかけようとした時に
アクアは小さく一つ頷いて、目を開いて話し始めた。



「質問の数は、6つ」
その口調は、まるで誰かに言われたことをそのまま言っているような、少しばかりの違和感を感じる口調だった。
30 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga sage]:2012/10/01(月) 02:37:05.78 ID:OoeWSQId0
                                 「あの化け物は何だい?」





         「魔法少女ってのは何なのさ?」





「あんたの他にも、魔法少女ってのはいるのかい?」





                「あんたらが使ってる魔法ってのは、一体何なんだい?」





                              「ここは一体どこだ?」






     「アクロア大陸、メモリア王国、マテリアル・パズル、大魔王デュデュマ。この中に聞き覚えのある言葉はあるかい?」
31 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga sage]:2012/10/01(月) 02:38:48.36 ID:OoeWSQId0
その全てを言い終えて、アクアは一つ大きな吐息を漏らした。
対するマミは、どこか困惑した表情を浮かべたままアクアの問いに答えた。
「ほとんどの質問には答えられると思うわ。でも、多分かなり時間がかかると思う。
 だから、一度場所を変えないかしら。私の家なら人目にもつかないと思うわ」
「……なるほどね、おおっぴらには出来ない話ってわけだ。いいよ、案内してよ」
アクアもそれに頷いた。

マミは、どうも話についていけない風のまどかとさやかの二人の方を向き。
「彼女の話は私が聞いておくから、今日はもう帰ったほうがいいわ。
 随分と遅くなってしまったし、明日にでもまた来てくれたら、その時にわかった事は説明するから」
そう言われ、二人は不安げにマミとアクアの顔を交互に見つめて。
「……わかりました、マミさん。でも明日の朝一番で行きますから、ちゃんと事情、教えてくださいね」
「私も、明日必ず行きますから。……それじゃあマミさん、アクアちゃん。また……明日」
それでも意を決したようにそう言うと、二人は互いに寄り添いあったまま、ゆっくりと家路を辿り始めるのだった。
魔女との戦いに巻き込まれた疲れが、今になってどっと押し寄せてきたのだろうか。
その歩みは、どうにも頼りないものだった。

「二人はボクが送っていくよ。マミ、後でボクにも話を聞かせてほしいな」
「ええ、しっかり頼むわよ、キュゥべえ」
そしてそんな二人の後を、キュゥべえが追いかけていた。
32 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga sage]:2012/10/01(月) 02:41:35.24 ID:OoeWSQId0
「あんたも送って行ってやったほうがいいんじゃないの?」
どうにも頼りない二人の様子を見て、アクアはマミにそう言った。
けれどマミは何も言葉を返すことはなく、そのままその場に蹲ってしまった。

「――っ、ァ。はぁ……ッ、く、う、うぅ……」
「ちょっと、おい。あんた……しっかりしなよ、ほら」
漏れ出したのは嗚咽。
蹲り、食いしばった歯の隙間から、消しきれない声が漏れていた。ガチガチと歯の根の震える音と共に。
その姿にアクアは事実を悟る。
魔法少女と呼ばれるそれは、魔法の力を持つそれは、例えその力がどれほど強力であろうとも
精神まで人間離れしてしまったわけではないという事を。
事実、恐怖に震えて必死に嗚咽を噛み殺しているマミの姿は見た目相応……
というにはいささか幼い気もするが、ただの少女としては当然の姿にしか見えなかったのだから。

だからこそ、アクアはそんなマミに手を伸ばした。
膝を抱えるその手を掴み、無理やりにでも立ち上がらせた。
「ごめんなさい……でも、今頃になって、足が震えてきちゃって……笑っちゃうわよね」
手を引かれて立ち上がるも、その足はガクガクと震えていて。
自嘲気味にそう言うマミの姿は、先ほどまでの魔法少女の姿から見ればあまりにも頼りなく見えた。

「ったく、泣き言言ってんじゃないよ。これでも食ってな」
嗚咽交じりの息を漏らしたマミの口に、ひょいと何かが放り込まれた。
舌先に甘みを感じたのも一瞬。マミはそれをそのままごくりと飲み込んでしまった。
33 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga sage]:2012/10/01(月) 02:43:42.35 ID:OoeWSQId0
「んぐ……けほ、ちょっと、一体何を飲ませたの!?」
「ん?アメ玉」
「えっ」
その言葉に、元々青白かったマミの表情が更に白く、いっそ蒼白といえるほどに変わる。
一瞬の交錯であるとは言え、マミもまたアクアの戦う姿を目撃していた。
彼女が武器に使っていたものが何であるかを見てしまっていた。
それ故に、ある程度の予測は立てていた。
お菓子を武器にする魔法少女……ならぬ魔法使い。
それはそれで可愛らしくていいものだが、故にこの状況は実に不味い。

「ちょっと、そんな……冗談じゃっ」
足の震えも忘れて立ち上がり、一気にアクアに詰め寄るマミに。
「さっさと立って案内しな。でないと、内側から爆破しちゃうよー」
にんまりと、実に愉快といった感じの笑みを浮かべてアクアは言い放った。
マミはといえば、驚愕が呆然とした表情に変わり、それがすぐさま引き攣って。
「……わかったわよ、さっさと行きましょう」
諦めたように吐息を漏らして、足早に歩き始めるのだった。
けれどその足は、もう震えてはいなかった。



(まったく、お菓子の魔法使いなんて可愛いものかと思ったら、とんでもない子だったわ)
内心に嘆息と、大きな不安を抱えていたとしても。
34 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga sage]:2012/10/01(月) 02:44:53.82 ID:OoeWSQId0

彼女――暁美ほむらは、その一部始終を病院の屋上から眺めていた。

「今回は、巴マミが生き残った。でも、あの状態の巴マミが、一人であの魔女を倒せるとは思えない。
 だとしたら魔女を倒したのは……」
マミの拘束魔法より逃れ、ようやく結界最深部へと到着したほむらがその時見たものは
激しい光の炸裂の中に消えていく魔女の姿。そしてその光の中心に立つ、一人の少女の姿。
「新たな魔法少女だとでも言うの?今までにこんな事は無かった……一体、何者なのかしら」
呟きながらも思考は巡る。けれど、今のほむらはそれに対する答えを見つけられずにいた。

「考えていても仕方ないわ。何にしてもこれで、巴マミは生き残った。
 けれど、彼女と協力関係を結ぶのは難しい。……だとすれば、やはりアレを倒すためには彼女の力が要る」
何事かを話しながら、ゆっくりと遠ざかっていくマミとアクアの姿を見つめて。


「巴マミ。今しばらく、見滝原は貴女に任せるわ。そして、まどかも」
言葉と同時に、ほむらの姿は虚空に消えるのだった。
35 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga]:2012/10/01(月) 02:51:57.18 ID:OoeWSQId0
今更ながらに追加事項ですが、この話はかなりバトルが多めになりそうな感じです。
というか、いろんなバトルを書いてみたいというのもこの話を始めた動機だったりもしますので。
多分オリジナルな魔女とかも出てくるんじゃないでしょうかね。

>>25
あちらの方は普通に一読者として読んでいました。
あれから時は流れ、ゼロクロも清杉も終わってなんだか寂しくなってきたので、思わず筆を取ってみることにしました。

アクアはアクアで戦績自体はいいんですよ、っていうかジル舞響の大物以外はほぼ勝ち星。
マーボードーフ?なんですかそれは?
夜馬まで撃退してるんですから。ただちょっと決め技がまったく決め技になってないというだけで。

個人的にはアクアの最盛期はガシャロ戦かな、とも思ってますが。
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/10/01(月) 05:40:49.13 ID:xiFSjvtlo
少女マテリアルのクロスと思った私は心が汚れている
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/01(月) 06:05:43.24 ID:W8J6gZMTo

原作ではまあ…序盤から出てきた最強の攻撃魔法さんは
後発の強敵のかませになっていたからしゃあないね
このSSではBBJさんが活躍できますよーに
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/01(月) 06:51:10.26 ID:JFEZpvxDO
会話会話が繋がってるから読みにくいから改稿をちゃんと上手く利用して読みやすくしてほしい
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/01(月) 15:41:30.71 ID:3CykAxJj0
マテリアルパズルを読んで、>>1は知っているか知らないけどRAVEと相性がいいんじゃないかと思った
謎の生物やいきなりのギャグ展開のノリや少年漫画らしいさとか。ジール・ボーイ対レッドが見たい

とりあえずこのスレに期待!
40 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga]:2012/10/03(水) 13:31:26.31 ID:KNNecZwLo
平日昼から投下をしてもいい、それが自由というものだ。
では、投下行きます。
41 : ◆HvWr2kWl99Dz [sagesaga]:2012/10/03(水) 13:35:25.28 ID:KNNecZwLo
かくして、魔法少女と魔法使いは連れ立って帰路を辿る。
だが、アクアにとってここはまるで見知らぬ地である。当然大人しくいていられるわけもなかった。

「ねえねえ、マミ。ありゃ何だい!?」
遠くに見えるビル街を見て、可愛らしい装いのファンシーショップを見て
なんだかんだとアクアはマミに尋ねるのである。
当然、いちいち足止めを喰らっては帰宅が捗るはずもなく
気づけばあたりはすっかり暗くなってしまっていた。

「はぁ……一体どこまで付き合わせるつもりなのかしら。
 アクアさん、あんまりゆっくりしていると、帰って話す時間も――」
今度は野良猫(ねこではない)を見つけて、物珍しそうに追い掛け回しているアクアに
もううんざりといった様子でマミは声をかけた。否、かけようとしたのだが。

「ねー彼女、ちょーっといいかな?」
横合いからかけられた声が、それを遮ったのだった。
声の主は、金髪に右耳だけのピアスをつけ
サングラス越しで目元は伺えないが、それなりに整った容姿の男だった。
そんなマミよりも頭一つ半ほど高い背丈の男が、いきなり眼前に躍り出てきたのである。
流石のマミも驚いて、思わず一歩後ずさりながら。
「……なんですか?今急いでいるので、ごめんなさい」
こういう手合いは、さっさと話を打ち切って逃げるに限る。マミは言葉少なにその場を立ち去ろうとしたのだが。
「あー、ちょっと待って待って。そりゃいきなりこんな事言われたら怪しがるのはわかるけどさ
 まずは名刺だけでも見て頂戴よ、ね?」
けれど男も中々にしつこく、横をすり抜けようとしたマミの前に更に立ちふさがって、懐から慌しく名刺を取り出した。
そしてその浮ついた容姿とは裏腹に、どこか人好きのするような笑みを浮かべるのだった。
42 : ◆HvWr2kWl99Dz [sagesaga]:2012/10/03(水) 13:37:20.93 ID:KNNecZwLo
「鴻上……プロダクション?」
「そ、要するにタレントをプロデュースしてる事務所、ってわけ」
その名刺には、確かに鴻上プロダクションという社名に加えて、なにやら男の名前らしいものが書かれていた。
けれど今のマミには、それ以上の情報はただの文字の羅列としてしか認識できていなかった。
呆然と目を見開いて、名刺と男の顔を交互に眺めるマミの様子に何がしかの手ごたえを得たのか
男は更に言葉を続けた。

「沢宮エリナちゃんって知ってる?」
沢宮エリナ。彼女はここ最近ブレイク中の高校生タレントである。
魔法少女の戦いに勤しむマミも、その名前くらいは知っていた。
曖昧に頷いたマミの様子に、更に男は笑みを深めて。
「あの子もうちのプロダクションの子でさ、こーやってスカウトされた子なわけよ。
 あ、そしてこれは俺の直感。君も絶対エリナちゃんみたいなアイドルになれるっ!」
指輪のはまった指先を突きつけ、自信たっぷりに男は告げた。
男の審美眼もあながち間違っているとも言えない。
マミのスタイルは女子中学生のそれというにはあまりにも大人びている。
それでいて、無駄に背ばかり高いということもない。
そして間違いなく、磨かずとも光る何かをその身の内に秘めている。
とは言えそれは、芸能の才などではなく戦う力だったのだが。

「そういうわけだからさ、俺の事務所と契約して、アイドルになってみない?」
困惑しきっているマミに、どこかキュゥべえのそれを思わせるような口調で男は告げた。
マミは思わず胸元を手で押さえ、どうにか返す言葉を捜しているようだった。
魔女と戦う運命を背負い、戦い続けた長い日々。
そんな日々に突然差し込んだ、光の差す場所への誘い。それを嬉しく思う気持ちも、確かにあった。
けれどそれを受けられるはずも無い、魔法少女という存在の重さを、マミは良く知っていた。

それでも、どうしても迷ってしまう。
43 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga]:2012/10/03(水) 13:38:09.88 ID:KNNecZwLo
「なーにやってんのさ、マミ。そろそろ行くよ」
そんな迷いを、アクアの声は容赦なく打ち砕くのだった。



「ん、あの子は友達か何か?うーん、あの子も顔立ちは悪くないけど、ちょっと目つきがきつすぎるかなー……」

物理的に。



「いきなり何を抜かす、失礼な」
不機嫌そうに顔を歪めたアクアが男に向けてアメ玉を放り投げると、それは小さく炸裂した。
「ぶぇーーっ!?」
相手はただの一般人である。当然耐えることもよける事もできず、炸裂に飲まれて吹き飛ばされた。
奇声をあげながら吹き飛んだ男は、そのまま壁に激突しぐったりと動かなくなってしまった。
44 : ◆HvWr2kWl99Dz [sagesaga]:2012/10/03(水) 13:39:52.39 ID:KNNecZwLo
「ちょ、ちょっとアクアさ……アクアっ!一般人相手に魔法を使うなんて……っ!」
いくらなんでも、マミにとってそれは見過ごせない。
魔法の力は魔女を倒すために使うものであって、一般人相手に振りかざすものではない。
どんな理由や事情があるにせよ、許されてはならない事だった。

「別に死んじゃいないよ。ちょっと邪魔だから吹っ飛ばしただけさ」
悪びれもせずにそう言うアクアに、マミは咄嗟に手を伸ばした。
服の襟元をぎゅっと握って、そのままアクアを睨み付けて。
「もう絶対にこんな事はしないで。それが出来ないなら、貴女は魔女と同じよ。私が貴女に話すことは何も無いわ」
これだけは譲れないと言わんばかりに、マミの語勢は強かった。
アクアもまたマミの視線を真正面から受け止めて、僅かにその目を細め、好戦的な色を浮かべていた。
睨み合う両者、その間には一触即発の、緊迫した空気が流れていた。

「……ま、いきなり右も左もわかんないような場所で、ドンパチやらかすのも不味いか。
 わかったよ、普通の奴には魔法は使わない。それでいいんでしょ?」
やがて、アクアは根負けしたかのように軽く鼻を鳴らしてそう言うと、マミの手を振り払った。
「……信じるわよ、その言葉」
一抹の不安は感じつつも、それでもマミはアクアの言葉に頷くのだった。

「それじゃあ私はこの人の治療をしていくから、アクアは少し待ってて頂戴」
いかなる心情の変化があったのか、いつの間にやらマミはアクアを呼び捨てにしていた。
マミはそう言い残し、壁にもたれてばっちり気絶している男の元へと向かった。



「……今更、選べないわよね。そんな道」
どこか、寂しげな呟きを残して。
45 : ◆HvWr2kWl99Dz [sagesaga]:2012/10/03(水) 13:40:25.04 ID:KNNecZwLo
――今のは君が悪かったと思うよ、アクア。
「……わかってるよ、とりあえず今は大人しくしとく」
アクアは電柱に背を預け、軽く目を伏せそう呟いた。
身の内から湧き上がる、その声に応えるようにして。




「――ティトォ」
その呟きは、誰の耳にも届く事は無く。
46 : ◆HvWr2kWl99Dz [sagesaga]:2012/10/03(水) 13:41:41.25 ID:KNNecZwLo
「やっと着いたわね」
その後の道中は比較的穏やかに、といってもどうにも緊迫した空気のままで帰路は進み
ようやく二人はマミの家へとたどり着く事ができた。

「ふぃー、歩き通しで疲れちゃったよ。勝手に邪魔させてもらうよー」
マミが鍵を開け、扉を開くや否や、アクアはその中へと飛び込んだ。
「はぁ、本当に落ち着かない子ね。ちょっと待って頂戴。お茶とケーキくらいは用意するから」
奥から帰ってきた、子供そのものの元気な返事。それに苦笑しながら、マミはアクアの後を追うのだった。

(こうしてみるとまるで子供ね、でも……)
内心の疑念は拭えない。けれどそれは、きっとこれから解明されるのだろう。

「んー、お茶もケーキも美味しいじゃん。これ、マミが作ってるの?」
ケーキを一つ、二つと平らげて、紅茶で喉を潤して。満足げにアクアが言う。
「ええ、お口に合ってくれたようで何よりよ。……さあ、そろそろ本題に入りましょうか。それと、これ」
向かい合って座るマミが、黄色の刺繍の入ったハンカチをアクアに手渡しながら言う。

「ここ、クリームついてるわよ」
苦笑交じりに言いながら、マミは自分の頬を指で指した。
「ああ、こんなもんこうしちまえば、ほら」
アクアはそれをけらけらと笑って、親指でそのクリームを拭ってそのまま舐め取ってしまった。

「もう、子供じゃないんだから……まあいいわ、今度こそ本題に入りましょう」
食器を片して、今度こそマミはアクアに呼びかけた。
47 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga]:2012/10/03(水) 13:43:10.13 ID:KNNecZwLo
「ん、じゃあそうしようか。……まずは、あたしの質問に今度こそ答えてもらうよ」

「答えられるところといえば、これくらいね」
先のアクアの質問を思い出しながら、マミは静かに口を開いた。
人の世に災いと絶望をもたらす存在であり、結界に潜み、今尚多くの人の命を脅かしている存在である、魔女。
そしてその魔女と戦うために、キュゥべえと契約する事で生まれる存在。救いと希望をもたらす魔法少女。

「なーんか、胡散臭い話だね。希望や願いをちらつかせて、人を戦わせるだなんてさ」
アクアはなぜか不機嫌そうな表情で、鼻を鳴らしてそう言った。
「確かにそう見えるかも知れないけど、その願いで救われた人もいるのよ。
 その結果、魔女と戦う定めを背負う事になったとしても」

「あんたもそのクチ、ってわけ?」
その言葉にマミは一瞬言葉に詰まる。それでもすぐに言葉を次いで。
「……否定はしないわ。話を続けましょう」

「そう言うわけだから、魔法少女は一人や二人じゃないの。
 今この時も、世界中で魔女が人々に害を為している。それと戦うために、世界中に魔法少女が存在しているの。
 ……なんて、これはキュゥべえの受け売りなのだけどね」
「なるほどね、くぁ……ふ。こっちも随分物騒なわけだ」
さほど興味はない、といった様子でアクアは欠伸をかみ殺しながら答えた。
けれど、続く言葉にその目の色を変えた。

「そして、これが魔法少女の証であるソウルジェム。魔法少女の願いによって生み出される、魔法少女に魔法の力を与えてくれるものよ」
マミが手にはめていた指輪が小さく輝くと、その後には綺麗な装飾を施された卵のような、宝石がその手の内に生じていた。
48 : ◆HvWr2kWl99Dz [sagesaga]:2012/10/03(水) 13:44:29.59 ID:KNNecZwLo
「それがあれば、何も知らない小娘でも魔法が使える。そーゆーことかい」
アクアは一瞬目を見開いて、ソウルジェムを睨み付けた。
「誰でもって訳じゃないわ、あくまで素質のある少女だけ。
 でも確かに、逆に言えば素質さえあれば誰でも、キュゥべえと契約して魔法少女になることが出来る」
「……なるほど、ますます気に食わないね」
相変わらず顔を顰めたまま、アクアはソウルジェムから視線を反らした。
それを見届けて、マミも再びソウルジェムを指輪へと戻して。

「それで、あとの二つの質問だけど……これについては、こう答えたほうがよさそうね」
今までのやり取りで、既に何かの確信を得ていたのだろうか。マミは静かに言葉を続けた。
「ここは地球という星の、日本という国。その中にある、見滝原という街よ。
 多分、聞き覚えのある名前じゃないんじゃないかしら?」
「んなこったろうと思った。確かに、全然知らない名前だね」
アクアも一つ頷いて、二人は同時に言葉を放った。

「ってーことは」「と、言う事は」



「あたしは、別の世界からここに来ちまった……ってこと、なのかね?」
「貴女は、別の世界からやってきた、ということ……なのかしら?」

それぞれにとって、衝撃的な事実を。
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/03(水) 13:50:57.66 ID:sBbxWRtr0
グリンは登場しないのかな?一応、マミさんと同い年
50 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga]:2012/10/03(水) 13:51:40.97 ID:KNNecZwLo
もう少し説明回は続きそうです。
仕方ないよね、土塚さんだってスロースターターなんだもの!


>>36
そんな間違いをしたあなたを極楽連鞭片手にアダさんがお待ちしております。
大丈夫、ちゃんと魂までキレイキレイしてもらえますよ。うっかりするとその存在まで。

>>37
活躍してないわけじゃあないんですけどね、逸れにしたってジャベリンズで倒した敵が一人もいないってのは
主人公の必殺技的にいかがなものなんでしょーか、本当に。
大丈夫、きっと活躍してくれますとも。

>>38
多少読みやすくできるように、今回から専ブラを導入してみました。
少しでも読み易くなっててくれるといいのですが、どうでしょう。

>>39
RAVEというと、あのマガジンのワンピ(ry
それはさておき、あまりよく知ってる作品ではないのが残念ですが、ノリが似てるというのなら、その内見てみることにしましょうかね。
51 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga]:2012/10/03(水) 13:54:02.38 ID:KNNecZwLo
>>49
実際問題アクアも肉体年齢的には一つか二つしか違わないんですよね。
でも、えらく小さいイメージがある彼女です。
グリン王子はどうなるでしょうね、能力的にはほむらの上位互換ですが、使い方で言えば一歩劣る感じもしますが。
その辺りはこの先の展開に期待していただければ、と。
52 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga]:2012/10/04(木) 16:12:27.39 ID:cUJNQNbA0
ついげきの投下でさらにスレは加速……するといいなあ。
では、行きますか。
53 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga]:2012/10/04(木) 16:17:50.28 ID:cUJNQNbAo
「おかしーですねぇ」
一人の男が、不審げに声を漏らした。
そこは不可思議な空間。とは言え魔女の結界ほどに理不尽な空間というわけでもなく。
殺風景で真っ白な空間が、どこまで続いているような場所。
その只中に立てられている柱も地面に突き立てられているわけでなく、中空に浮いたまま固定されていて。
男はその柱の上に座って、頬杖をつきながらなにやら手元の機械を操作している。

「奴等の反応が消えやがりました。今更奴等がメモリアを離れるとは思えねーんですけどねぇ?」
長い銀髪を揺らし、その青白い顔を怪訝そうに顰めた。大きく開けたその額には、不可思議な模様が刻まれていて。
「仕方ありませんねぇ。直接聞いてみましょうか」
諦めたように吐息を一つ吐き出して、男は再び手元の機械を操りだした。それをまるで携帯電話かのように耳元にあて、そして。


「聞こえてやがりますか、コルクマリーさん?」
――ああ、聞こえてるよ。大体用件もわかってる。
「そりゃ何よりですが、いちおー伝えておきます。奴等の反応が消えました。メモリアの方に何か動きはありやがりますか?」
――メモリアも同じだよ。突然彼らが姿を消したらしくて、城内は大騒ぎだ。
機械越しに、コルクマリーと呼んだ相手と言葉を交わして、男は首を傾げた。

「もしかすると、メモリアにとっても予想外の何かが起こりやがったのかも知れませんねぇ。
 何が起こるかわかんねーですし、貴方は引き続きメモリアの監視を続けていてください」
――いいのかい?彼らがいないなら、今は仕掛ける絶好のチャンスだと思うけど。
「ええ、メモリア魔方陣はどーしても開幕してもらわなけりゃなりませんからねぇ」
――そうだったね。わかったよ、また連絡する。
「頼みましたよ、それじゃあまた」
会話が打ち切られ、その手の機械を下ろした男の背後には、別の人影が浮かんでいた。
54 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga]:2012/10/04(木) 16:18:58.95 ID:cUJNQNbAo
「……アダラパタ」
それは小柄な人影で、ローブを着込み、仮面をつけている。故にその姿形、顔立ちさえもうかがい知る事はできない。
ただその声が、歳若い少年のそれであることだけはわかった。

「おや、貴方から話かけてくるなんて珍しーこともあるもんですねぇ、クゥさん」
背を向くこともなく、アダラパタと呼ばれた男は答えた。
「ああ、そうそう。貴方達にも知らせておこーと思ってたんですよ。奴等が……」
「わかってる、彼等が消えたんだろう」
クゥと呼ばれた少年の声は、歳不相応なほどに落ち着いていて、どこか底冷えのするような声だった。

「おや、もう気づいてましたか。そーなんですよねぇ、奴等はメモリアから消えてしまいやがりました。
 一体何があったんでしょうねぇ?」
「メモリアから、じゃない」
感情を一切見せないその声に、アダラパタは訝しげに振り向いた。

「この星から、彼等の反応が消えたんだ」
「なん……だと?」
そして、その目を見開き驚愕した。
55 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga]:2012/10/04(木) 16:20:10.16 ID:cUJNQNbAo
「それで大体納得がいったよ、道理で何もかも見たことが無いものばかりなわけだ」
異世界に来てしまったのだという事実。その衝撃から立ち直り、ようやくアクアは小さく頷いた。

「私達の知らない魔法、そして、まったく知らない大陸や国の名前。これはもう定番ってものじゃない!」
「……そういうもんかね?」
合点が行き過ぎて、なにやら興奮している様子のマミに、アクアは冷ややかな視線を向けて。
「そう言うものよ、おかげでアクアの正体も大体わかったわ。
 アクアは世界を脅かす大魔王デュデュマと戦う正義……っていうのはちょっとアレだけど、そういう魔法使い。
 どうかしら、結構いい線行ってると思うんだけど?」
一体何が琴線に触れたのか、マミは爛々と目を輝かせてアクアに詰め寄った。



「……それじゃ0章じゃん」
マテリアル・パズル第0章。ゼロクロイツ全9巻、現在好評発売中である。絶版はまだ無いはずである。多分。



メタい話はさておいて、アクアは呆れたように息を吐き出して。
「大外れだよ。大魔王デュデュマってのはね……おとぎ話さ。
 あたしらの世界じゃ誰だって知ってるおとぎ話。それを知ってりゃ、少しは話が通じるかと思ってね」
「そうだったの……ちょっと残念ね」
あからさまに落胆し、それでもマミはさらにアクアに問いかけた。
「さあ、これでそっちの質問には答えたわよ。今度は私の質問に答えて頂戴」
「あー、ケーキだけじゃなんかやっぱ腹は膨れないよねー、何かお腹空いちゃったよ。何か無いの、マミ?」
そんな言葉に耳も貸さずに、アクアはひょいとソファーに飛び乗り、クッションに顔を押し付けたまま横になった。
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/04(木) 16:20:20.71 ID:wk6Lx9xI0
彼らって、と言うことは主要メンバーは全員飛ばされた?
パン娘やジルやあの幽霊使いもか?
個人的には、別作品のキャラでもあるあの剣士を……
57 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga]:2012/10/04(木) 16:21:44.75 ID:cUJNQNbAo
「ちょっと、アクア!」
「腹が膨れたら話すよー」
咎めるマミの声にも、ひらひらとその手を軽く振るだけで。
「わかった、わかったわよ!すぐに用意するから、食事を済ませたらしっかり話してもらうわよ」
ぎりぎりと歯噛みするものの、力押しで事情を聞ける相手でもなくて。
疲れたような表情で、マミはキッチンへと向かうのだった。

マミの姿がキッチンに消えたのを確認して、アクアはクッションから顔を上げた。
その顔は朱に染まっていて、額には汗が浮いていた。
いっそそれは病的で、アクアは苦しげに息を吐き出して。
「……丁度いい、や。説明するの、苦手なんだよ。後、頼むね……ティトォ」
何かしらを呟いて、その身体がクッションに突っ伏した。

「アクア、貴女何か食べられないものとかって……アクアっ!?」
そんなアクアの様子を、マミは見てしまった。
「ちょっと、どうしたの……アクアっ!?」
思わず駆け寄り、その額に触れる。思わず熱さを感じるほどにその身体は熱を帯びていて。

「酷い熱……一体どうしてこんな、っ。まさか!」
それを見たのは何かの映画だったろうか。地球に訪れた異星からの来訪者。
けれど彼らに待っていたのは、恐るべき死の定めだった。
地球ならばどこにでもいる風邪のウィルスであれど、彼らにとっては未知の病原体である。
それに対して一切の抵抗力を持たなかった彼らは、地球の土を踏むことなく潰えてしまったのである。
同じ事が、アクアの身にも起こっているのではないか。そう危惧したマミは、すぐさまその身を魔法少女のそれに変えた。
58 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga]:2012/10/04(木) 16:24:22.52 ID:cUJNQNbAo
「しっかりして、アクア。今治療するから……っ!」
ぎゅっとアクアの手を握り、光のリボンでその身を包み、内部を魔力で洗浄した。
そうして出来た即席の無菌室で、アクアに癒しの魔法を振りかけた。
マミは癒しに特化した魔法少女ではない、けれどその魔法は、僅かにアクアの表情を和らげる事には成功していた。

「……ぁ、っ。は……ぁっ。いいよ、マミ。そんなこと……しなくて」
額に汗を浮かべ、ぎゅっとアクアの手を握るマミ。アクアは弱弱しくその手を振り払おうとして。
「バカ言わないで、このままだと貴女、死んでしまうわよ」
「死なない、さ。っ……あたしは、不老不死…なんだから」
途切れ途切れの苦しげな声で、それでもどうにか口元を笑みの形に歪めてアクアは言った。

「こんな時まで冗談言わないで!……回復魔法もほとんど効き目が無い。どういうこと?」
どれだけ回復魔法を注ぎ込んでも、すぐさまアクアの身体は死へと向かって滑り落ちていく。
まるでその身体には、元から抵抗力や免疫の類がまるで備わっていないかのようだった。
「だから、いいんだって、マミ。……説明できる奴に、換わるだけ…だ、か……ら」
そう力なく笑って、弱弱しくマミの手を握り返していたアクアの手から、力が抜けた。弱弱しく上下していたその胸が、吐息が、止まった。

「え………嘘、よね」
震える手を口元に添えて、マミは呆然と声を放つ。離されたアクアの手は、力なくだらりと垂れ下がって。


「死ん……だ」
魔法少女は常に死と隣り合わせである。それは自分の死でもあり、他人の死でもある。
それでもそれらは全て魔女の結界の中でこそ起こるべきことで、こんな場所で起こっていいものではなかった。
59 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga]:2012/10/04(木) 16:25:24.94 ID:cUJNQNbAo
「何が、どうなってるのよ……本当に」
呆然と呟くマミのすぐ側で、それは起こった。

息絶えたはずのアクアの身体が、光を放って宙に浮く。
その手が、足が、身体中が光の中で、ばらばらに分解されていく。
同時に生じる、恐ろしい程の魔力の奔流。

「きゃっ……何、この…魔力はっ!?」
迸る魔力に弾き飛ばされ、マミは驚愕の声を上げる。
その間にも、事態は次々に進行していった。
ばらばらに砕け、小さな光の欠片と化したアクアの身体。それが再び渦を巻き、何かの形に作りかえられていく。
即席の無菌室を作り上げていた、マミのリボンを巻き込みながら。


その魔力の波動はマミの部屋のみならず、どこまでも広く伝播していく。
それを感じ取れる者はほとんどいないだろう。だが、それを感じ取れる者にとっては決して見逃すことの出来ないものだった。
60 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga]:2012/10/04(木) 16:27:03.94 ID:cUJNQNbAo
「……何なんだい、今の魔力の波動は」
「私にもわからないわ。けれどきっと只事では済みはしない。未来が大きく歪むのが視えるわ」
大気を響かせ、肌をぴりぴりと震わせるその波動に、落ち着かない様子の黒い少女。
その少女に、険しい目つきで椅子に座った白い少女が話しかけていた。



「なんだか、今日は大気が騒がしいね。やっぱり、今日はやめとくべき?」
震える魔力の声無き声が、少女の鼓膜を震わせた。
耳障りなその声に顔を顰めながら、少女は眼下に並んだ少女達を睨み付ける。
彼女達も同じように、耳鳴りを堪えるように耳元を抑えていたそれは。

「いいや、もう待てない。時間が無い。始めるよ――プレイアデス」
憎悪と狂気をその声に秘めて、彼女は眼下の少女達へと襲い掛かった。



まどかとさやかを送り終え、工事現場のタワークレーンの頂上から街を眺めていたキュゥべえにも
その魔力の波動は伝わった。
「尋常じゃない魔力だ。でも、これはやはり魔法少女のものでも魔女のものでもない。そしてこの反応は……星の」
呟く声とともに、その赤い眼が見開かれた。

「間違いない、彼女は……」
61 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga]:2012/10/04(木) 16:28:37.84 ID:cUJNQNbAo
崩れたアクアの欠片が、別の形に再構成されていく。
それは質量保存を無視するかのように膨れ上がり、再び人の形を取った。
その形が定まっていくにつれ、光と魔力の奔流は収まっていく。そして遂に、一つ大きな炸裂と共に消失した。

後に残されていたのは、マミよりも少し背の高い少年の姿。

「あ………あぁ」
その少年は軽く辺りを眺めてから、呆然と立ち尽くすマミに小さく笑みかけて。

「はじめまして、ぼくはティトォ」
そう名乗るのだった。







そこは寂れたゲームセンター。今や訪れる人もなく、古びた筐体が寂しげに佇んでいる。
その中で唯一つ、光を放つ筐体があった。
三枚の液晶を抱えた、横長の筐体に備え付けられた長椅子に座っていた少女は
握っていたレバーから手を離すと、後ろに振り向き口を開いた。

「今のとんでもない魔力の波動、あんたの仕業?」
その赤い長髪を揺らし、好戦的な笑みを浮かべて、少女――佐倉杏子は問いかけた。

「いいえ、私にもわからないわ。……本当に、色々な事が起こるものね」
その声に、一つ小さな嘆息を漏らしてから、暁美ほむらは答えるのだった。


魔法少女マテリアル☆まどか 第2話
      『魔法少女ともう一人の魔法使い』
              ―終―
62 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga]:2012/10/04(木) 16:30:23.01 ID:cUJNQNbAo
【次回予告】
アクアの死と共に現れた少年は、自らをティトォと名乗った。
彼の口から語られる、異世界の魔法使いの真実。差し迫る事情を背負った彼らは、元の世界へと戻るために動き出す。


「それが、その力が……魔法(マテリアル・パズル)」
「ぼく達には、あまり時間は残されていないんだ」


そしてそんなイレギュラーを抱えつつ、物語はあるべき姿へと進んでいく。


「一週間後、見滝原にワルプルギスの夜が来る」
「じゃあ、まずは実力を見せてもらおうじゃないの」


そして再び少女達に危機が迫ったその時。


「仁美ちゃん……どうして?」
「これが……貴方の、罪?」


もう一つの魔法が、眼を覚ます。



「――マテリアル・パズル、ホワイトホワイトフレア」


次回、魔法少女マテリアル☆まどか 第3話
                 『たい焼きとハコの魔女』
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/10/04(木) 16:31:34.32 ID:wk6Lx9xI0
あれ?原作ではシャル戦からワルまで二週間ぐらいはあったはず・・・?
64 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga]:2012/10/04(木) 16:43:35.91 ID:cUJNQNbAo
というわけで、説明回もさておいて最初の存在変換です。
ティトォにやってもらったほうが説明は捗るんだから、仕方ないね。

というか予告と全然内容が食い違っているのに書き終わってから気づきました。
ですので今後は全ての予告にこの一文を付け加えたいかと思います。

※尚、本編は予告なくその内容が変更される場合がありますが、その場合はどこぞのぶちぎれくんよりも広い心でどうかご了承ください。

>>56
注:彼等は一人で三人分です。
とりあえず第1章の間はあまりキャラを増やしたくないなぁと考えております。
動かすのに慣れてきたら、追々増えることもあるかもしれませんが。

>>63
どぼぁ。思いっきりやらかしていたようです。
このままだと精神的にも物理的にも沈んでいきそうなので、話題を変えましょう。

彼等という不確定要素の登場で、それまで決まっていたはずの物語の流れは大きくその姿を変えていきます。
まずはマミさんが生き残ったこと。そしてキュゥべえが存在変換を、ひいては彼等の秘密の一端を知ってしまった事。
なんかうっかりいろんな人らも出てきました、果たして一体どうなるのでしょうね。
65 : ◆HvWr2kWl99Dz [saga]:2012/10/06(土) 01:24:00.18 ID:5wFbnThN0
【業務連絡】
色々と考えましたところ、正直タイトルからマテパを連想できないと誰も見に来ないんじゃあという結論に達しました。
そこで一度このスレはHTML依頼を行い、タイトルを改めて再建する事といたします。
また後日にお会いしましょう。それでは。
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/10/07(日) 10:16:54.49 ID:ucSGFiGh0
乙!
マテパSSとかテンション上がってきたぜーーーーー!!!
タイトルは確かに昨日まで気付かなかったから変えた方がいいかな?
とりまティトォとQBの絡みに期待してるぜー
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