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オッレルス「あの日、俺は最も安価な選択をした」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/01(月) 20:21:23.16 ID:1kuKqtDAO


前スレ

オッレルス「今日こそ、告白する」フィアンマ「…安価?」+オッレルス「もはや君を愛人にする他無いようだ」フィアンマ「安価で、それを受け入れられるのか?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1348646296/


・ホモスレ

・ヤンデレのオッレルスさんが焦がれるヤンデレなフィアンマさんと同じく運命に翻弄されるお話

・時間軸不明。原作より前の捏造世界

・当スレのフィアンマさんは盲目"でした"

・基本は日常進行

・キャラ崩壊注意





※注意※
安価次第で展開が多種多少に変化します(ガチホモから百合まで)
メインCPは『オレフィア』なスレです。
エログロ展開の可能性があります。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1349090483
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ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713522243/

旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
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木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1713351945/

いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713279251/

【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713277692/

こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713183168/

【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713091115/

アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713089503/

2 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/01(月) 20:23:42.40 ID:1VFRpQdS0

―あらすじ―

八歳の容姿端麗な貴族子息は習い事から逃げて教会に逃げ込み、赤い髪をした美しい天使の様な六歳の少年に恋をした。
その少年は目が見えず、周囲があまり構わなかった事もあって、優しい貴族子息に懐いていった。
少年は天使の様な彼に、その髪の美しさから『燃える赤』という名前をつけてあげた。
そして、最初自分の正体がバレたくないと思ったが故に、『決闘の神』と名乗った。
毎日毎日、子息は熱心に少年へ会いにいってはプレゼントを送り、食事を共にし、絆を深めていった。

やがて十年が経ち、子息は定められた通りに婚約者と結婚をする。
お互いに望んだ結婚ではなかった為、子息は少年に変わらず会いに行った。
楽しい思い出を積み重ねていき、幸福な日々がいつまでも続く筈だった。

しかし、とある日に結婚していた事がバレてしまい、幸せな日々は終わりを迎える。
敬虔な十字教徒である彼は、同性愛など神に背くと子息の告白を断り、完全に突っぱねた。
追い詰められた青年は少年を押し倒し、泣いて嫌がられて尚、強姦する。
勿論もう会いに行ける筈もなく、合わせる顔は無くなったと項垂れて、子息は街を出て行った。
最後に受け取った贈り物を元に、少年は長年焦がれていた視力を手にする。

だけれど、世界は思っていたよりも醜くて、つまらなくて、寂しいものだった。
結果的に視力以外一切合切をなくした『燃える赤』は絶望するままに、生きる目的を捜す。




絶望の大海に沈んで視えたものは、救いを捨てた自分の為の、世界の救済だけ、だった。
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/10/01(月) 20:24:19.95 ID:XbjeqNTAO
+
4 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/01(月) 20:24:24.58 ID:1VFRpQdS0

『魔術』というものを、学んで。
オッレルスがかつて俺様にくれたものは、通信霊装だったのだと知った。
今も恐らく、オッレルスは魔術師なのではないだろうか。
勉強をして、潜んでいた才能を生かす内、気付けば地位が上がっていた。
それはもはや教皇すら凌駕する、事実上ローマ正教のトップ。
俺様にしか務まらない、『右方』の位置。
皮肉にも、オッレルスが俺様につけてくれた名前と、地位名は同じものだった。
右方の燃える赤。右方の、フィアンマ。

フィアンマ「……、…」

最高の地位まで上り詰めると、かえってやる事は無かった。
目指すは世界の救済のみ。
特別な力を持つ俺様には、その権利がある。

フィアンマ「…」

世界を救うにあたって、戦争を起こさせる事になるだろう。
とんでもない事をしでかせば、もしかしたらオッレルスが止めにきてくれるかもしれない。

コーヒーを啜り、チョコレートを噛んで、思考を変える。
救われなかった俺様の代わりに、この世界を救うのだ。

木苺の甘酸っぱいチョコレートと、苦々しいコーヒー。
昔の様に、幸せな気持ちなんて運んできてはくれない。
俺様の前には、ただ絶望と虚無だけが広がっている。
あの時のオッレルスの歳は、もう超えてしまった。
生まれてきて二○年経過したが、誕生日を誰かに祝って欲しいと思った事は無い。
ただ、たった一つわがままが叶うなら、オッレルスが欲しかった。
俺様に世界を知らせ、優しさをもたらし、最後には泣いて好きだと言ってくれた、最愛の彼に。
謝りたかった。俺様も同じ気持ちを持っていたくせに、知らないフリをして、拒絶した事を。
あんなに優しかったオッレルスが乱暴な行為に出たという事は、俺様が追い詰めてしまったという事に他ならない。

『愛してる、…愛してた、フィアンマ』

フィアンマ「……、…」

左手首を伝った血液が、コーヒーに落ち溶けて混ざる。
先程切った傷がじくじくと痛む。傷が開いた様だ。

フィアンマ「…」




夕食は何を食べる(料理or食材名)>>+2
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/01(月) 20:41:28.57 ID:HYKPrpSAO
ksk
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/10/01(月) 21:27:17.46 ID:4EZjXN7yo
どんだけスレ立ててんだよ気色悪い
7 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/01(月) 21:53:03.32 ID:1VFRpQdS0
>>6様 現行は二つです》




食欲はいまいち湧かなかった。
チョコレートを食べたのだから、このまま寝てしまっても恐らく問題は無い。
昔の事を思い出すと、いつも吐き気がこみ上げる。
苦いコーヒーの味がいつまでも舌の上から消えず、ストレスが溜まった。
ひとまず食事の事は置いておいて、手当をし直そう、と思考を切り替える。
開いた腕の傷はまるで心の傷を表現しているかのようで、思わずかきむしりたくなった。
自分はどうしてあの日、オッレルスを拒否したのか。受け入れなかったのか。
思えば思う程あの日の後悔と絶望感が心を満たし、全て投げ出してしまいたくなる。
世界を救う事が出来れば、きっと自分も救われる。そう信じて、今は歩まなければならない。

フィアンマ「…、…」

神様とやらは、自分に何もくれやしない。
祈っても縋っても頼っても泣いても嘆いても苦しんでも尚、何も与えてくれない。
あるのはただ、幸運だけ。




どうしてイタリアに戻って来てしまったのか、自分でもわからない。
自殺したい気分でイギリスを彷徨っていたところ、声をかけてくれた優しい女性は、シルビアというらしい。
何だかんだで友人付き合いが続き、今生活に必要な事をサポートしてくれているが、どうにも生きる気力が湧かない。
あの日からもう三年も経ったのに、未だに彼の事を諦められなかった。
途中教会に寄ってしまったが、彼の姿を目撃する事は無く。

オッレルス「……」

シルビア「…落ち込んでても先は見えてこない」

オッレルス「…わかってる」

ぐす、と鼻を啜り、情けない気分でいっぱいで、そう素っ気なく相槌を打った。
シルビアは呆れた様な顔をして、俺の体に毛布をかける。

オッレルス「…俺は、どうしたらいいんだ」

宛もなく、呟く。
彼の手を引いていた頃、俺はここまで情けない人間だっただろうか。
精神的な支えが無くなって生きるというのは辛い。




シルビアはどうする?>>+1
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/01(月) 22:25:46.27 ID:9xkOR91SO
そんなに辛いなら、私が代わりになろうか?
9 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/02(火) 19:36:53.20 ID:EfNbTZmp0

シルビア「…その、あんたが未だに想ってる子の代わり。…そんなに辛いなら、私が代わりになろうか?」

オッレルス「代わり…?」

シルビア「一時的なものだけどね。とりあえず、あんたが元気になるまで」

オッレルス「……、」

シルビアは、オッレルスの話をよく聞いていた。理想も。
未だにどうしても忘れられない好きな人が居て。
その子にただ一言謝りたいのだという事や、それが事情が事情故出来ないでいるから絶望していること。
本当はその子と暮らしたい。笑い合って穏やかに過ごしていたい。
夢の話。理想の話。

シルビアはオッレルスを放っておけない優しくて危うい男だと思っているだけで、恋情を抱いている訳ではなかったが。
優しい思いやりからの提案に、オッレルスは顔をあげる。
そうしてぐしぐしと目元を擦り、しばし思考を重ねた後、こくりと頷いた。
その顔には絶望はなく、純粋な希望が宿っていた。
代わりにする・されるという聞こえは悪いが、その根幹の本質は親友になったという現在事実である。
自分を抱きしめながら、元気を出して尚めそめそと泣き止まないオッレルスの背中を摩り、シルビアはため息を吐き出すのだった。






ベッドの中、毛布に潜り込んで、目を閉じる。
慣れ親しんだ暗闇に、フィアンマは長く長く息を吐きだした。
雨が降り出したのか、しとしとと耳に馴染む音が聞こえる。

『君を、愛してる』
『…愛しているよ、フィアンマ。たとえこれが許されない恋でも、拒否されても、好きでいる』
『愛してる、…愛してた、フィアンマ』

毛布を握り締め、空腹からかストレスからか、こみ上げる胃の痛みに耐える。
今は視力の宿っているその金の瞳には、純粋な絶望が広がっていた。
かり、と指の爪で、シーツを引っ掻く。

フィアンマ「………」

オッレルスに謝りたい。
喉が嗄れて血を吐き出してしまう程に、謝罪をして楽になりたい。
そう思いながら、深呼吸して眠りに堕ちる。




夢の内容(アバウト可)>>+1
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/02(火) 20:12:07.13 ID:/FlI+G0SO
楽しかった子供時代、青年時代が順に。

場面が変わり、向こうに今の自分が、知らない誰かと仲良く談笑しているのがみえる。

しばらくして、談笑が終わったのか、知らない誰かがこっちに歩いてくる。自分の側を通りすぎるかと思えば、立ち止まり、オッレルスの声で

「君はどうしてこの未来を拒絶したんだい?」

「望んでいたくせに」
11 :夢  ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/02(火) 20:54:31.61 ID:EfNbTZmp0

目が、見えない。安息の闇。
無いものねだりの俺様にとって、盲いたこの闇は、今、安らぎだった。

『ふぃあんま』

まだ、声変わりをする前の、オッレルスの声が聞こえた。
穏やかで少し甘みを帯びた、優しい声。

「おっれるす、」

対して、返事をした俺様の声音も幼かった。
声変わりをする、ずっとずっと前。
隣に、ぎしりという音と共に重みが現れた。
よくわからないがきっと、オッレルスが座ったのだろう。

『きょうはね、くっきーをもってきたんだ』

テープを再生するだけの音響機器の様に、俺様の唇は勝手に動いて、言葉が紡がれる。

「『くっきー』とはなんだ」
『あまくておいしいものだよ。ちょこれーととちがって、すこしかたいんだ』

謝りたいと思っていたのに、そういった自分の意思に基づいた言葉は出てこなかった。
隣でごそごそと音がした後、手を引かれ、手の平の上に何かが置かれる。
オッレルスが言った通りクッキーだろう、手を顔に近づけると、バターの香りがした。

「おいしいのか」
『うん、おいしいよ』

笑みを湛えた声が聞こえる。
形を確かめた後、それを口に含んだ。
まずは半分。バターの味と、小麦粉から出来たものらしい食感、豊かなミルクの甘み。
美味しい、と口に出せば、オッレルスは良かった、と嬉しそうな声の調子で応えた。
食べ物を咀嚼している時の音が聞こえる。オッレルスが食事をするその音が、好きだった。
謝りたい。謝らないと。焦れば焦る程、声は詰まった。
他愛もない会話の一つ一つに大きな価値がある、美しい思い出の再生。




相変わらずの暗闇のまま。
今度は、声変わりを済ませたオッレルスの声が耳に届く。
その声音はいつでも優しくて、俺様を気遣う台詞ばかりが投げかけられる。

『フィアンマ、寒くないか?』
「いや、大丈夫だ」

そっと、長い髪を撫でられる。心地良い。
ああ、これは数年前の事か。まだ、髪を切る前。幸せだった頃。
ぺたりと俺様の頬に触れて、オッレルスは小さく笑った。

『やっぱり冷えてるじゃないか』
「お前が触っていてくれたら、温まる」
『…、じゃあ、しばらく触っているよ』

ああ、俺様は何て残酷な台詞を告げたのだろう。
自分を好きでいてくれた事にも気付かず、優しさを求め。
この手が愛おしかった。声が愛おしかった。
姿は見えずとも、同じ空間に居るだけで、心から安らげた。
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/10/02(火) 20:54:33.76 ID:XMqceQXAO
+
13 :夢  ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/02(火) 20:54:50.63 ID:EfNbTZmp0


不意に、視界が明ける。
俺様は、育った教会の敷地に一人、立ち尽くしていた。
明るい青空の下、ベンチに二人の青年が並んで腰掛け、談笑している。
少し遠い場所で、しかし、よく見えた。
青年の内、片方は今の俺様の姿だった。
もう一人は、誰だかわからない。金髪で、穏やかそうな青年だ。
何を話しているのか、話の内容まではわからないものの、二人共幸せそうだった。

「……、」

しばらくの後、談笑が終わったらしい。
金髪の見知らぬ青年は、こちらへやってきた。
通り過ぎるのだろうと予測して道を開けようとした瞬間に、あの優しげな声が、言った。

「君はどうしてこの未来を拒絶したんだい?」

「望んでいたくせに」

どうして、拒絶したのか、などと。
俺様にも、わからなかった。
ただ、あの時一番良いと思った選択肢を選んだ結果、自分も周囲も不幸にしてしまった。

望んでいたくせに。
望んでいたくせに。


望んで、いたくせに。
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/10/02(火) 20:54:51.84 ID:XMqceQXAO
+
15 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/02(火) 20:55:41.41 ID:EfNbTZmp0


フィアンマ「あ、っぐ、ああああああ!!!」

幸せな所から叩き落とされた悪夢に、フィアンマは叫びながら目を覚ました。
がりがりと、せっかく閉じた腕の傷口を爪で抉り、吐き気がこみ上げるまま、チョコレートの甘い香り漂う胃液をゴミ箱に吐き出す。
カカオと、嘔吐時特有の苦味が口の中を侵食していき、酷く気分が悪い。
何度も何度も、そもそも特に物が入っていなかった胃腸をひっくり返すかの様に胃液を吐きだし、フィアンマはげほげほと咳き込んだ。
責める色合いの無い優しい声音が、かえって精神を追い詰めていく。
自分を苦しめる言葉が、愛しい人の幻想の口から、夢の中とはいえ放たれたという事実が苦しかった。
爪どころか手は血まみれになり、そんな汚れた手で、フィアンマは目元と、次いで口を拭う。
ぼろぼろと涙を流す姿は、もう限界を超えている様に、第三者には思えた。

フィアンマ「ぁ…」

次々と溢れ出す涙。どくどくと流れ出す血液。
自分で自分を追い詰めていき、フィアンマは更に絶望する。
自分が全て悪いというのか。自分が間違えたから、こんなにも苦しいのか。
神は何も救わない。自分を救ってくれはしない。視力をくれたのはオッレルスと医者だった。

フィアンマ「…置いて、いかないでくれ、」

『あの日』、教会で言うべきだった、言えなかった言葉。
今の涙声で言えたのなら、きっとオッレルスは留まってくれた。

フィアンマ「…おいて、いかないで…ひとりに、しないでくれ…」



散々めそめそとして、どうにか元気を出し。
これからも迷惑をかける、とシルビアに謝罪をした後寝室に入り。
ベッドに横たわったオッレルスは、何を考えるでもなく天井を見つめていた。
彼は自分の本当の間違いに気づく事は無い。
フィアンマが傷ついたのは、絶望したのは、オッレルスに強姦されたからではない。
オッレルスに一方的に別れを告げられ、今もこうして会わないからだ。

オッレルス「…フィアンマ」

ぽつりと呟き、オッレルスは毛布にくるまる。
昼間外に干していたからか、毛布は温かかった。
隣にフィアンマが居てくれたなら、とオッレルスは思う。
自分が傷つけたくせに。自分から離れたクセに。

ただ、謝りたいと願う。
嗚咽で呼吸困難を起こしてしまう程に、謝罪を重ねたい。
そして、楽になってしまいたい。

自分は根性なしだ、と思いつつ、オッレルスは目を閉じる。
もう、眠らなければ。



夢の内容(アバウト可)>>+1
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/02(火) 21:39:34.09 ID:/FlI+G0SO
自分がどこかの小さなこじゃれた一軒家にいる。
ソファに座っていて、隣にはシルビアがいる。お互い談笑したり冗談を言い合って、素直に笑いあう。
自分の子供時代にそっくりな子供もおり、犬と遊んでいる

そう言えばフィアンマが遊びにくるんだったな、迎えに行かなきゃ、と立つと

シルビアが「やめときなよ」

何故だ?と聞けば、絶対ロクな事にならない、もう関わらない方がいい。きっと来ない約束なんて忘れてると否定ばかり。

いい加減怒ろうとすると、

シルビア「また傷つけるの?」

子供→オッレルス自身「自分から離れたくせに」
17 :ゆめ   ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/02(火) 22:09:19.95 ID:EfNbTZmp0

「うー、わんわん!」
「ばうっ」

子供の楽しそうな声と犬の吠える声で、意識が急浮上した。
俺が今居る場所は居間で、庭で子供が遊んでいた。
俺とそっくりな子供で、犬は大型の…犬種は忘れてしまった。
此処は先月買ったばかりの一軒家で、それなりに日当たりも良い場所。
しばらくぼんやりとしていると、コーヒーの良い匂いがしてきた。
ことん、とテーブル上、俺の目の前に湯気を立てる白いコーヒーカップが置かれた。
シルビアが淹れてくれたようだ。彼女はそのまま、自分の分を手に隣に座る。

「何、考え事?」
「…ちょっと頭が寝てたみたいだ」
「ちゃんと寝ないからね」
「君が淹れるコーヒーや夜食が不味いなら諦めて寝るんだけどね」
「何よ、シルビア様のせいだって言う訳?」

そんな事無いよ、と笑って、会話をする。
何だかいつもより、気分が良かった。
今日はよく晴れていて、うららかな陽気というもの。
啜ったコーヒーは苦味も酸味も少なく、匂い通り美味しい。
そもそも侍女として修行をした彼女が出す飲食物が不味い訳もない。
ただの世間話だというのに楽しくて、自然と笑顔が出た。

と、時計が午後三時を告げる。
ちりん、ちりん、ちりん、と三回ベルが鳴った。

「…そういえば、そろそろフィアンマが来る頃か、」

迎えに行かなければ。
思うままに立ち上がると、シルビアに制止された。

「やめときなよ」
「? 何で、」
「絶対ロクな事にならないに決まってる」
「そんな事は」
「ある。…もう関わらない方が良い。それに、約束なんて忘れてるよ、きっと。だから来ない」
「ッ、彼はそんな人じゃ」

ない、とうっかり大きな声を出しかけたところで、ふと。
視線が吸い寄せられる様に、移動する。
その先には犬を撫でる俺にそっくりな子供が居て。
遊ぶのをやめた彼は、窓越しに哀しそうな表情で言った。

『自分から離れたくせに』

言葉を喪った。
彼に合わせる顔なんて、無い筈だ。ああ、何を期待していたんだ。

「また傷つけるの?」

シルビアの静かで優しい声が、逆に心に突き刺さる。

「ちが、うんだ、」
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/10/02(火) 22:09:53.71 ID:XMqceQXAO
+
19 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/02(火) 22:10:21.80 ID:EfNbTZmp0

オッレルス「…違うんだ。…もう、彼を傷つけるつもりなんて、どこにも…ただ、謝りたいだけ、なんだ」

涙で滲んで歪んだ視界。
目を覚ましたオッレルスはぐしりと目元を手の甲で擦り、横を向いた。
もう流すつもりのなかった涙が、ぼろぼろと零れていく。
毛布を手繰り寄せて強く抱きしめる。どうしようもなく孤独だった。
ふと、枕元に視線がいく。そこには、少し埃を被った、かつてフィアンマに贈った交信術式用通信霊装。
ティッシュで埃を丁寧に拭い丸め捨て、綺麗になった霊装を、触る。
彼はきっと、破棄してしまったことだろう。あれだけのことをした自分を、嫌っているに違い無い。
それでも、何故だか希望を持ってしまった。夢の中で遠まわしに責められ、自分を責めた事で、かえって希望的観測を見出だした。
やはり、このままではいけない。
彼を探し出して、もしくは連絡を取って、見つけ出して、謝って。

それから?   それだけだ。それ以上を望むには、罪が重すぎる。

一縷の可能性に想いを懸けて、術式を、行使する。





交信は繋がったor繋がらなかった>>+1
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/10/02(火) 22:27:41.48 ID:TzWVjaBn0
繋がった
21 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/02(火) 22:59:53.80 ID:EfNbTZmp0

血液と涙、胃液。
体液諸々を片付けたフィアンマは、枕元に置いていた霊装を触っていた。
かつてオッレルスが自分に寄越した、通信用霊装。
埃が被ってしまわないよう、自分が体調の悪い日でもこれだけは手入れを欠かさなかった。
もうかかってくるはずもないのに。オッレルスと話せる筈もないのに。
それでも、これを捨てる事は出来なかった。大切な物だった。
幼い頃、これを手に夜ひそひそと話して笑ったり、朝方に『行けない』と連絡を受けて嘆いた事もあった。
幸せだった頃の思い出を象徴する代物。
不意に、交信が届いた事を示す光が灯り、フィアンマは目を瞬いた。
これに通信を仕掛ける事が出来るのは、もう一つ、片割れのグラスだけ。
オッレルスが落としたものを他の魔術師が拾いでもしたのか、そう思いつつ、応えた。

オッレルス『……、』

相手先は、無言で。
こちらも、何を言えば良いかわからず、沈黙した。

フィアンマ「………」

オッレルス『…フィアンマ?』

泣いた後の様な、掠れた声に、固まる。
三年間、焦がれ続けた声。
もう一度会って、言葉を交わして、謝りたいと思っていた、優しい声。

オッレルス『……』

フィアンマ「…オッ、レルス」





今にも泣き出してしまいそうな声音で返事をされて。
オッレルスは、乾いた唇を舌先で舐める。
いたく緊張する。けれど、謝らなければ。
この三年間、思い続けていた。謝罪をしたいと。
関係回復など望まない。だから、ほんの少し、言葉を交わしたいと。

フィアンマ『…何故、…今、』

オッレルス「……」

フィアンマ『……あの、日、までに。…お前の気持ちに気づけなくて、すまなかった。拒否をして、すまなかった。……俺様も、お前が好きだったのに、あの時は混乱していて…いや、これは言い訳だな。…お前を傷つけ、追い詰めた。本当に、………ごめん、なさい』

オッレルス「…どうして、君が謝るんだ。悪いのは、…悪いのは、俺じゃないか…」

勝手に恋をして、勝手に悩んで、勝手に告白して、勝手に街を出て、逃げて。
最低の行いをしたと思っていた。さぞ憎まれているだろうと思っていた。
それなのに、フィアンマは泣きそうな声で必死に謝罪の言葉を繰り返す。

オッレルス「……>>22
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/03(水) 01:46:27.97 ID:JjXARQI50
ごめん、ごめん……ごめん
23 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/03(水) 12:59:30.14 ID:pnvVUmCX0

オッレルス「……ごめん、ごめん……ごめん」

何か色色と台詞を思い浮かべてはみたものの、出てきたのは本心だけ。
夢に見る程、会いたいと思っていた。今話を出来ているだけで、満たされている部分もある。
謝罪を続けるフィアンマに、君が謝る必要は無いと制止して。

フィアンマ『…俺様は、…本当は、お前と一緒にいられれば、何も要らなかった。お前を失うその瞬間まで困惑のままに意地を張って遠ざけ………今は後悔しか、残っていない』

オッレルス「困惑するのも、拒絶するのも当たり前だ。それは意地じゃない。…君に拒否をされたからといってあんな行為に及んだ俺が馬鹿だったんだ」

最後なら、と悪い意味で思い切ってしまった事も一因だった。
しかし、あの日の出来事に後から理由を付け足しても、それら全ては言い訳として消える。

オッレルス「……俺は、今でも君が好きだ。…君が、正しい。いつだって君は正しかった。…間違っていたのは、俺だよ」

フィアンマ『…俺様も、お前が好きだよ。……俺様は、間違えた。お前を引き止めるべきだった。行かないでくれと、言うべきだった』

今も好きだ、と口から零れ出た告白に、受容どころか好意の返報。
引き止めて欲しかったと思った事は、無かった。
そして、オッレルスはようやく一つの事に気がつく。
彼は傷つき、落ち込んでいる。そしてその理由は、自分か彼の元から去ったからだと。
だが、こうして会話をするならともかく、どんな顔をして会いに行けばいい。
声だけだからフィアンマには自分がわかるが、顔を合わせればわからないに決まっているのだ。

オッレルス「…君は、正しい選択をしたんだ」

フィアンマは何においても正しい、とオッレルスは言う。
確かに、世の常識でいえば、同性からの告白を生産性が無い、間違っていると突き放すのは、間違っていないかもしれない。
後悔に縛られてきたこの三年を、このひと時で終わりにしなければ、とオッレルスは思う。
勿論、自分で自分の首を絞める様に苦しい。さよならのたった四文字を告げれば、自分は立ち直れなくなるだろう。
しかし、別れを告げなければならない。謝罪をし、許しを得る事が出来たなら、関係を清算しなければ。

オッレルス「フィアンマ、」

フィアンマ『おっれるすに、あいたい』

苦しそうな声で言われ、オッレルスは押し黙る。
本当に断ち切れるかはともかく、フィアンマの為にも別れを告げなければ、と思ったのに。
そんな声で言われてしまっては、さよならを言えない。

フィアンマ『…もう、何も要らないから、…オッレルスに、逢いたい』

あの日の事は忘れず、それでもオッレルスを責める事はしない。
許されている、とオッレルスは感じた。フィアンマはその敬虔さと愛故に人を赦す能力がある人間なのだ。

オッレルス「…俺は、……>>24
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/03(水) 18:21:39.55 ID:0mZ/HDMSO
本当は、謝って、「さよなら」を言うつもりだった…けじめをつける、精算するつもりだった。

なのに、何で、君はそんな優しいんだ…

そんな風に言われたら、言えないじゃないか!俺だって、今すぐ会いたい…!全部投げ捨てて、君の元に行きたい!おもいっきり抱きしめて、以前よりも、君を愛したい!

だけど、自分のやった事が、君を傷つけた事が、どうしても、許せない……なぁ、俺はどうしたらいい……教えてくれ……
25 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/03(水) 19:48:14.64 ID:73cci0/K0


オッレルス「…俺は、……本当は、謝って、「さよなら」を言うつもりだった…けじめをつける、精算するつもりだった。なのに、何で、君はそんな優しいんだ…そんな風に言われたら、言えないじゃないか! 俺だって、今すぐ会いたい…! 全部投げ捨てて、君の元に行きたい! おもいっきり抱きしめて、以前よりも、君を愛したい!」

フィアンマ『オッレル、』

オッレルス「だけど、自分のやった事が、君を傷つけた事が、どうしても、許せない……なぁ、俺はどうしたらいい……教えてくれ……」

また会ったら、愛するが故に傷つけるのではないか。
知らず知らずの内に、無理を求めるのではないだろうか。
そんな自分への自信の無さに、恐怖が押し寄せる。
オッレルスにとって何よりも怖いのは、フィアンマを苦しめることだ。
その為に十年間も想いを潜め、我慢していた程に。

掠れた、優しい声での問いかけに、フィアンマは沈黙する。
自分がどんな事を言っても、オッレルスは自分を自分で許せないのではなかろうか。
そう思って。しかし、自分はそういった『自分を許せない人間』を罪から救う為に聖職者を志したのでは、と思い出した。
盲目であった頃、何をするにも彼は自分を導き、優しさをくれた。
ならば、今度は自分が彼を導く番で、優しくする番なのではないか。

フィアンマ「…確かに、お前は俺様を犯したし、常識的に考えれば、それは許されざる事だ」

オッレルス『…、』

フィアンマ「そして、俺様から逃げた事も、悪い事には入る」

オッレルス『……』

フィアンマ「…だが、お前は長い間、俺様に優しくしてくれた。恋心は確かに下心だが、それだけではないだろう。それに、俺様の目が見えるよう、手配してくれた。あの紙をくれなければ、使わなければ、俺様はあのまま一生目が見えないで生を終えていた筈なんだ。俺様に視力を与えた事は、善行だ。様々な面で優しくしてくれたことも、善行だろう。…だから、それで清算すれば良い。今までしてきた良い行いと、悪い行い、差し引いてゼロになる。……それでは、駄目なのか」

オッレルス『…君は、…変わらないな。…本当に、……本当に、優しいままだ』

フィアンマ「…変わった部分もあるさ。お前が高評価を下していた純粋さは、少なくとも喪った」


仮に、またゼロから始めて。
またマイナスになるのではないだろうか、とオッレルスは思う。
愛とは盲目なもので、自分の思いに比重を置いてしまう。
これ以上傷つけるのなら、離れた方が良い。離れたくなくても。

フィアンマ『また、逃げるのか。…俺様は、覚悟を決めたぞ』

オッレルスに傍に居て欲しいと告げ、引き止める覚悟。
だから、逃げずに自分に向き合う覚悟を決める事を要求している。
フィアンマの言葉の意味をそう正しく受け取り、オッレルスは悩む。





0〜4 フィアンマに会いに行く(魔神地位争いルート)

5〜9 会いに行かない(世界救済ルート)


>>+2のコンマ一桁で決定

2012/10/03(水) 12:59:30.1(4)←ココ
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/10/03(水) 19:53:07.88 ID:C87h6RVA0
ksk
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/03(水) 22:07:33.04 ID:0mZ/HDMSO
クソッタレェ!
28 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/04(木) 16:04:21.88 ID:lA1s86PK0
>>27の結果=4:フィアンマに会いに行く》


オッレルス「…俺も、…もう、逃げない」

あの時逃げたから、ここまで苦しんだ。フィアンマも苦しめた。
その事を思えば、もう逃げる気にはなれなかった。
自分の欲望に素直になれば、運命は自ずと自分に優しくしてくれる。
意地を張って恐怖を優先すれば、運命は過酷に当たってくる。
もう傷つけないように、間違わないように。
気をつけていれば、本当に心から罪を悔いてさえいれば、もう罪を犯す事は無い。
そして、心から悔い改めた人間に、世界はそこまで冷たくなどない。

オッレルス「…君に、会いたい。……君の許しに、甘えても、良いのか」

フィアンマ『あぁ。……勿論だ、』

好きだと言ってくれている。きっと、嘘じゃない。
顔を見られた事は無いのだから、もしかすると、うまく自分だとわかってもらえない瞬間があるかもしれない。
それでも良い、とオッレルスは思う。
けじめをつけられないのなら、そんな勇気は消滅したのなら、会いに行こう。

オッレルス「…今、何処に居るんだ」

フィアンマ『…場所は、』



とりあえず待ち合わせる場所を決め。
この早朝からでは暴漢が心配な為、昼間に待ち合わせた。

そわそわ。うろうろ。

目を覚まし、事情を聞いたシルビアは、そんな落ち着きの無いオッレルスに呆れ顔でため息をついてみせる。

シルビア「…ちょっとは落ち着きなさい」

オッレルス「いや、わかってはいるんだが…」

自分が代わりになると言ってすぐとは、と思いつつも、オッレルスに対し強い思い入れの無いシルビアは素直に喜びは感じていた。
完全に元気になったようだから、だ。
少なくとも、部屋の中を無意味にぐるぐると回る位には。

オッレルス「…何て言えば良いんだ…」

シルビア「…>>29、とか?」
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/10/04(木) 16:19:08.53 ID:0cNaCp0IO
死ねよ豚
30 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/04(木) 17:03:00.94 ID:lA1s86PK0

シルビア「…死ねよ豚、とか?」

オッレルス「とんでもない事言うな君は」

シルビア「うろうろして落ち着かない割に人の話は聞いてるのね、安心安心。それなら会っても会話通じると思う。…久しぶりとか、そんなんで良いんじゃないの?」

オッレルス「……」

それで良いのか、と思いつつ。
待ち合わせ時間が近づいてきた為、オッレルスはアパートメントから出て行った。
後に残されたシルビアは、喧嘩別れにならなければ良いが、と思いつつ、部屋の掃除を開始する。




待ち合わせ場所のベンチに座って待ったはいいものの。
果たして本当に来るのだろうか、と一抹の不安を胸に、フィアンマはぼんやりと空を見上げていた。
雲が長くたなびく青空。今日はよく晴れている。
辺りには同じ様に待ち合わせをしているらしい人間が何人も居る。

会ったら何を言おう、と考える。
久しぶり? いや、そんな簡単な挨拶では何か足りない様な。

そもそも自分はオッレルスの姿を知らない。
知っているのは平温と声位なもの。

フィアンマ「……」

辺りを見回す。
金髪の青年を視線で探した。




オッレルスは見つかったor見つからない>>+1
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/04(木) 17:11:24.77 ID:8gdUVc950
見つからない…としょげてあきらめかけたときに
見つけた
32 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/04(木) 17:21:38.61 ID:lA1s86PK0

確かに金髪の人間は何人も居たが、どれも女性だった。
他に居るのはブラウンの髪をした青年。
オッレルスは髪を染めたのか、否、そうではないだろうと断じ。
しばらくきょろきょろと辺りを見回すも、やはり見当たらなかった。
最後の最後、やっぱり自分に会いにくるつもりはなくなったのか。
そう思い、落ち込み、フィアンマが目を伏せ、諦めかけたところで。
ふと、視界に、辺りを見回して誰かを探している様子の、金髪の青年を発見した。
金の髪に、緑の瞳。
一度も目にした事は無かったが、かつての自己紹介通りなら、彼だろう。

フィアンマ「…オッレル、ス」

オッレルス「…見当たらないな…」

自分の前を素通りしかけるオッレルスの服を唐突に掴む。
転けそうになって初めて、彼はフィアンマを発見した。
向き合う。沈黙。挨拶の文句は、出てこない。

オッレルス「……、…」

フィアンマ「………」

しばらくの沈黙の時間の後、フィアンマはそっと手を離す。
反応から考えて、まず本人で間違い無いだろう。
オッレルスはフィアンマの隣に座り、口ごもって考える。
久しぶり、と明るく言うには、昔の事がちらつく。
赦してもらっても、それとこれとは別だ。
いつまでも黙っているオッレルスの様子を見、フィアンマは口を開いて、閉じて。
またしばらく考えた後、一言だけぽつりと呟いた。

フィアンマ「…………>>33
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/04(木) 17:23:03.39 ID:0cNaCp0IO
しゃぶれよ
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/04(木) 17:44:36.76 ID:Tfpk+YdSO
……会えてよかった
35 : ◆2/3UkhVg4u1D [sage saga]:2012/10/04(木) 17:55:55.27 ID:lA1s86PK0
《諸事情によりしばらくsage進行になります》


フィアンマ「…………お前から離れ、過ごした…長い、社会生活の中で。ブレ続けて生きてきたが、…ようやく、お前に会えれ…会う事が出来て、良かった」

オッレルス「…フィアンマ、」

フィアンマ「…お前にもう二度と会えないだろうと思っていた。今さっきも、来ないのではないかと。…ずっと、…お前に逢いたかった」

オッレルス「………、」

俺も逢いたかった。
言った筈なのに、声が出てこなかった。
泣きそうで、堪えて、苦しくて、でも、嬉しくて。
色色な感情が複雑に絡まり合い、一層黙るオッレルスを見て、フィアンマが小さく笑う。

フィアンマ「…ようやく、お前の見目を知れた。…思っていた通り、気弱そうだな」

オッレルス「そんなに気弱でも、ないさ」

フィアンマ「…そうだな。お前は、優しい。そして、俺様にどこまでもどこまでも、甘い」

その甘さに甘え、優しさに漬け込み、残酷な方法で拒絶してしまった、とフィアンマは悔いている。
ある意味、二人の罪はイーブンだったのかもしれない。
欲望を全て発露させる事は悪い事だが、この二人は、想い通りに動かなかったが故に、沢山のものを喪ったのだから。



フィアンマは、オッレルスの住むアパートメントにやって来た。
シルビアは少し迷った結果、オッレルスの友人だと軽い挨拶のみを残し、別室に行った。
気を遣って二人きりにしてくれたのだろう。
ありがたい様な、気まずいような。

フィアンマ「…体調は」

オッレルス「悪い時が多かった。…ストレスだな」

フィアンマ「そうか」

腕の切り傷がじりじりと痛む。
無意識にその場所の近くを右手で摩り、フィアンマは目を伏せた。
うまく、言葉が出てこない。話したい事は、いっぱいあったはずなのに。
オッレルスもまた、話題が出てこなかった。抱きしめたいと思っても、身体が言う事を聞かない。

オッレルス「…先程から、左手で摩っている場所は?」

フィアンマ「……」

自分で切ったなどと胸を張って言える筈もなく、フィアンマは沈黙する。
何となく察し、問い詰めるかどうか、オッレルスは迷った。

オッレルス「…>>36
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/04(木) 17:58:52.19 ID:0cNaCp0IO
あれ?安価ミスってますよ
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/04(木) 18:04:15.45 ID:0cNaCp0IO
>>36安価下にするなら
「しゃぶってください」
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/04(木) 18:12:52.01 ID:Tfpk+YdSO
…どこかで引っかけたかもしれないな、よかったら見せてくれないか?
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/04(木) 18:40:50.58 ID:BhoBPj630
またクソIOがわいてきたか
40 : ◆2/3UkhVg4u1D [sage saga]:2012/10/04(木) 19:50:20.64 ID:eCRhLmYB0

《内容にそぐわず、その安価を捌けそうにない時、安価下で書いてもよろしいでしょうか…? ちょっと限界で》
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/04(木) 19:55:32.18 ID:EOh+sGNP0
普通安価下にするべきです
文句言う奴がいるならそいつはただの荒らし
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/04(木) 20:31:55.94 ID:0cNaCp0IO
捌けないのは技量不足だから仕方ないです
けど内容にそぐわないってのはおかしいですよね。気に入らない安価を無視するなら安価スレの意味が無いじゃないですか

荒らし認定したがるのも無理はないかと思いますが、今一度考えてみてください
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/04(木) 20:34:36.55 ID:+s4KvSsJ0
>>1
今でもいいから
注意書きを増やすべきです
内容にそぐわず、その安価を捌けそうにない時、安価下にすると追加するべき
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/04(木) 20:36:56.41 ID:0cNaCp0IO
料理の内容だとか会話の一部分を安価とったところで意味無いよね
安価スレの良いところ台無し
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/04(木) 20:42:33.97 ID:a5ylsJ+o0
>>44

だったら別の安価スレ行けよ
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/04(木) 20:56:47.40 ID:0cNaCp0IO
スレが荒れるんで過激な書き込みは辞めてもらえます?
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/04(木) 21:02:33.02 ID:kfvaxD8D0
>>46

てめーが止めたら止めるわボケ
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/04(木) 21:05:17.15 ID:0cNaCp0IO
一緒に荒らそっか(^-^)/
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/04(木) 21:05:51.80 ID:kfvaxD8D0
>>48

荒らしって認めたな
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/04(木) 21:09:54.16 ID:0cNaCp0IO
お、おう
51 : ◆2/3UkhVg4u1D [sage saga]:2012/10/04(木) 22:34:38.30 ID:eCRhLmYB0
《これ以降、適度に安価下を選択して進めていきます》


オッレルス「……どこかで引っかけたかもしれないな、よかったら見せてくれないか?」

決して責める事の無い語調に、フィアンマはおずおずと手腕を差し出す。
オッレルスは彼の手を握り、その袖を捲くっていった。
包帯越しに血液の滲む傷口は痛々しく、見ているだけで痛い。
まるでオッレルスと離れていた間の深く昏い絶望が切り裂いたかの様だった。
事実、絶望に耐え切れず、嘔吐しても堪えきれず、苦悶の末にフィアンマ自身が傷を付けたのだから、間違ってはいない。
切り口から見ても事故でなく故意、そして方向から見て他人からされたそれでないとわかり、オッレルスはしばし沈黙した。
自分のせいだ、という自責の念がこみ上げる。
自分の手に引かれるまま歩いていた彼の心が、そんなに強い訳もなかったのだ。

オッレルス「……」

フィアンマ「…嫌いに、なったか」

オッレルス「…絶対にならないさ、それは」

傷口付近を、先程フィアンマが自分でそうしていた様に優しく摩り。
ここ最近泣いてばかりだったのでもう泣くつもりはなかったが、気を抜けば泣いて謝ってしまいそうだった。
痛がっているような表情を浮かべているオッレルスを見つめ、自分の傷にも視線をやり、フィアンマは口の中の唾液を呑み込んだ後、問いかける。

フィアンマ「…ならば。…怒って、いるのか」

オッレルス「……>>53
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/05(金) 00:18:25.72 ID:a1QjxBa10
ksk
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/05(金) 00:21:59.59 ID:4NkNIKNSO
…いや、なんでも、ないよ。ああ、大した事じゃない。
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/05(金) 00:24:25.03 ID:ZiryRJjIO
ちょっとマジでキモいID:4NkNIKNSO
55 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/05(金) 23:41:34.45 ID:tHLJxWSj0

オッレルス「………いや、なんでも、ないよ。ああ、大した事じゃない」

緩く首を横に振り、オッレルスはフィアンマの髪を撫でた。
自分が嘘をつき続けていたから、短く切られた、髪。
自分が傷つけたあの日を、いつまでも思い出す。だが、それでいい。
オッレルスはフィアンマの傷口付近をさすり、彼の身体を抱きしめた。
相も変わらず細い身体。自分が離れてから、更に細くなってしまったような気がする。

オッレルス「…食事はちゃんと、採れていたのか?」

フィアンマ「…あまり、採れていなかった」

食べてもストレスで嘔吐してしまっていたので、身にはならなかった。
ごめんと言うのは自己満足だ、と思うオッレルスは沈黙して、フィアンマの頭や背中を優しく幾度も撫でる。

オッレルス「…もう、二度と君を離さない」

自分を縛り付けていたものは、もう捨てたから、無い。
家も、家柄も、妻も、何もかも。

フィアンマ「…、…ん」

ぎゅう、と強めに抱きしめ返し、フィアンマはこくりと頷いた。
ようやく、焦がれているものを得る事が出来た。




フィアンマ「お前は魔術師になったのか」

オッレルス「…まぁ、うん。…君も?」

フィアンマ「…役職持ちだ。…お前に会った今、辞めてしまっても構わんのだが」

やめるかどうか、と悩んだ様子。
自分の発言次第で決めるのだろう、と思いながら、オッレルスは言葉を紡ぐ。

オッレルス「…>>57
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/06(土) 00:02:59.93 ID:epy2i01SO
君の好きにしたらいいさ。急いで答えを出さなくてもいいんだ。そういう事も、これからは二人で考えれる。
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/06(土) 06:24:02.31 ID:7A2dxWuf0
>>56

58 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/06(土) 13:15:51.98 ID:pqSeIOnM0


オッレルス「…君の好きにしたらいいさ。急いで答えを出さなくてもいいんだ。そういう事も、これからは二人で考えられる」

フィアンマ「…そうだな。俺様自身で考え、決着をつける」

敢えて口を出す真似はしない。
もしかしたらその役職を捨てる事で危険に晒されるかもしれないのだから。
逆に、その役職を得ている状態だからこその危険も充分有り得るが。
それなら自分が守ればいい、と結論付けて、オッレルスはこの数年間焦がれた通りにフィアンマの髪や頬を指先で愛でた。
くすぐったそうに身じろいで、フィアンマはじっとオッレルスの瞳や髪を見つめる。
そして自分に触れるその手に視線を移し、改めてしっかりと見つめ続けた。
14年間、目にして覚えたいと願ってきた手を。髪を。瞳を。それから、優しげな顔立ちを。

フィアンマ「…大体予想通りといったところか」

オッレルス「? 何の話だ?」

フィアンマ「顔の話だ。…性格がよく表れている」

先程同じ様な事を言ったな、とは思いつつも、ぼやく。
憑き物がすっきりと落ちた気分だった。
戦争が起きようと何だろうと関係無いと思っていたが、目の前の男が傷つくと思うと、出来なくなる。
『Flamma056(戦火の後に全てを統べ救う)』という魔法名は捨ててしまっても良いかもしれない。
少なくとも、その単語に篭められた意味は変更しなければならないだろう。

フィアンマ「…一緒に住んでも良いか。それとも、ある程度離れていた方が良いか?」

住居を共にするか、適度な距離を取って付き合いを続けるか。
どちらでも精神的な距離はもう揺らぐ事はないだろう。

オッレルス「>>59
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/06(土) 13:17:33.85 ID:RhFB4heF0
ksk
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/06(土) 13:18:39.04 ID:RhFB4heF0
あ、ミスった。
「一緒に住もう」で
61 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/06(土) 13:43:59.67 ID:pqSeIOnM0

オッレルス「一緒に住もう」

フィアンマ「あの女は良いのか」

オッレルス「彼女は友人だ」

フィアンマ「…」

オッレルス「…君と、離れて。…死にそうな顔をしていたんだろうな、親切にしてくれた女性なんだ。感謝はしているけど、君への好意とは種類が違う」

フィアンマ「……そうか」

自分のせいでオッレルスが何かを切り捨ててしまう事が怖いのか、フィアンマは困った顔をする。
心配には及ばないとオッレルスは首を横に振り、苦く笑った。
彼女に代わりになってくれと応えたばかりなのに、と思うと、少々申し訳ない。
だが、自分の好意を優先順位の二位以下に置く事を、オッレルスはやめたのだ。
もはやこれ以降誰に遠慮することもしない、自分を縛り付けるものがあるのなら振り払ってでも、と思う程に、激情はある。



オッレルスがすっかり自信を取り戻し、元気になったのなら自分が残らなければならない理由は無いから、とシルビアはイギリスに戻っていった。
彼女は『下女即ちメイド』、それなりに忙しいのだろう。
その忙しい中を割いてオッレルスを支えてくれたのだから、とフィアンマは密かに感謝している。
彼女が何か困った事があったのなら助けようと決め、フィアンマは現在、眠るオッレルスを見つめていた。
自分が傷ついたのと同じ位、彼もボロボロになっていた。これから癒していくにしても、穴は大きい。

フィアンマ「…だが、…もう間違う事は無いだろう。これ以上傷つくことはない」

もし傷つけるとしたら、それはお互いが死ぬ時位なもの。
地獄堕ちても取り落とすものか、とフィアンマはオッレルスの手を強めに握った。



気付けば一ヶ月余りが経過していた。
楽しい日々というのは早く過ぎ去ってしまうもので。
『右方のフィアンマ』として時折ローマ正教の為に働きながらも、フィアンマはもっぱらオッレルスと時間を過ごす事に集中していた。
そして今、フィアンマは眠り続けるオッレルスの介助…否、介護を頑張っていた。
一昨日からオッレルスがまったく目を覚まさない原因は、『原典』を何冊も閲覧したからだ。
フィアンマは止めたのだが、オッレルスは力を欲しがった。理由はフィアンマを守る為でもあり、自分を守る為でもあるだろう。
その結果、彼の脳は疲弊し、一時的に昏睡状態へと陥った。

フィアンマ「……」

けれど、彼の身体が傍にある以上、フィアンマは孤独を感じる事は無かった。
恋慕、好意を自覚している今となっては、彼が他の人間を見られないので、むしろ機嫌が良い位だった。
長い年月をかけた執着と依存は、恋愛感情にも歪を生み出す。

フィアンマ「…オッレルス」

鼻歌を歌いながら、フィアンマはオッレルスの髪に触れる。
昨日一生懸命彼の身体を運んで洗ったので、さらさらで触り心地が良い。

フィアンマ「…今度は、俺様が守り導く番だからな…」

さらさらと撫で、フィアンマは酷薄に笑む。
歪んだ幸福感に満たされるその部屋は、二人だけの空間だった。

フィアンマ「………」





フィアンマは何をする?>>+2
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/06(土) 16:09:49.01 ID:epy2i01SO
モフモフ
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/06(土) 23:32:05.82 ID:epy2i01SO
ねっとりキスして→モフモフ→ベッドに潜り込む
64 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/07(日) 00:05:56.32 ID:PvlSPC4r0

邪魔するものはどこにもない。何も無い。
もしあったとしても、それは撤去するだけなのだが。
フィアンマはそっとオッレルスの頬に手を伸ばし、優しく幾度も撫でる。
そして顔を近づけると、宛ら眠り姫の目覚めを告げる王子の如く口づけた。
ただし、結婚式において誓うそれに似た軽いものではなく、濃厚なものだ。
力の入っていない身体、唇は舌で押せば存外簡単に開く。
絡ませた舌は、歯磨きがしばらく出来ていなかったが為に、心地の良いオッレルス自身の唾液の味がした。
高い鼻同士がぶつかってしまい、邪魔だな、と思いながら、フィアンマは顔の角度を変えて口付けを続行する。
ぴちゃ、と水音が部屋に谺して、敏感な聴覚を刺激した。
顔を少しだけ赤くし、ドキドキとしながら、フィアンマは口付けをし直す。
舌をねじ込んでやや乱暴に口内を荒らしてみたり、優しく甘い口付けをしてみたり。
反応のほとんど無い人形の様な彼相手でも、フィアンマは充分に充実した感情で満たされていた。

フィアンマ「…オッレルス、」

口の中が自分の唾液でなく、彼の唾液で染まった頃に、キスをやめる。
そして細い指先で、爪で傷つけない様にしながら、零れた唾液を拭ってやる。
オッレルスの眠りは妨げられることなく、荒い呼吸はやがて静かなそれに戻った。

オッレルスを抱きしめ、数度抱きしめ直し、その心音に溺れる。
目を閉じれば昔のままの視界、オッレルスという人物がより強く感じられた。
彼からの贈り物で彼を認識することが一番幸せだとは思っても、やはり自分が元々持ち合わせていた感覚の方が鋭敏だ。
抱きしめたまま柔らかな金髪に鼻を埋め、甘いシャンプーの匂いを嗅ぐ。
眠くなりそうな、日だまりの様な温かさに揺蕩い、フィアンマはオッレルスの手を握った。
指を絡ませ幾度も握り、頬や首筋へ絶え間なく軽い口付けを落とす。
視覚的に満足する必要も無ければ、オッレルスに痛みを与えたい訳でもないフィアンマは、敢えて痕をつけるような事はしない。

しばらく彼に触れて充分に満足したフィアンマは、ベッドの中、オッレルスの隣に潜り込む。
この温もりを守る為なら、何人殺してしまったって構わない。

フィアンマ「…」

オッレルス「…すー」

フィアンマは目を瞑り、真っ暗な視界で、触覚を頼ってオッレルスに甘える。
子供の頃は二歳離れていただけでとても大きな存在に感じていたのだが、こうして大人になってみればさして変わりはないのだと解る。
想像との相違点も類似点も、全てが愛おしかった。

フィアンマ「…まぁ、そろそろ起きて欲しいのだが」

世話が辛いのではない。
優しい声が聞けない事が、少し、辛い。
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/10/07(日) 00:05:57.31 ID:HRZUR9yAO
+
66 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/07(日) 00:06:12.70 ID:PvlSPC4r0


一週間程意識を失っていたオッレルスは、ようやく目を覚ました。
ぼんやりとした視界、見上げた天井は木の色合い。
フィアンマにはだいぶ迷惑をかけてしまった、と思いつつ、オッレルスはのろのろと起き上がる。
168時間眠り続けていたのだ、筋力はだいぶ低下してしまっていた。
どうにか壁に手をつきながら立ち上がってみたはいいものの、フィアンマが見当たらない。
何処に行ってしまったのだろうか、と思いながら、オッレルスは壁に寄りかかる。
ふらふらとして、具合が悪かった。若干吐き気がするのは、もしかすると極度に空腹だからかもしれない。

オッレルス「……」

家の中をふらふらと歩いてみたが、探索すれど、フィアンマは見当たらない。
家に居ないということは、何処に居るということなのか。
困惑のままに、オッレルスは一度ソファーに座って長くゆっくりと息を吐きだした。





オッレルスはどうする?>>+1
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/07(日) 00:25:22.26 ID:ykf+UwWSO
風呂入って、身なり整えて何か食べる物ないか捜索
68 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/07(日) 00:45:56.28 ID:PvlSPC4r0

恐らく買い物か、『右方のフィアンマ』としての仕事に出ているのだろう。
そう考え、オッレルスはひとまず気力を振り絞って風呂に入る。
不思議と不潔感は少なく感じられた。フィアンマが世話をしていてくれたのか、とオッレルスは思う。
髪を乾かすにも多大な疲労がどっと押し寄せてくるのを感じながら、だるさに負けずに身なりを整える。
とはいっても念入りに整えなければならない程汚くもないようだったが。

オッレルス「……」

怠い、と心中で愚痴っぽくぼやき、冷蔵庫を開ける。
作り置きと思われるいくつかの料理を発見したので、皿によそって温めた後、口にした。
胃が受け付けるかどうか不安ではあったが、リゾットなど柔らかいものだった為、どうにか吐き気は催さなかったようだ。
基礎体力を作らなければ、と憂鬱に思いながら、オッレルスはソファーに座る。
先程と違って、疲れはやや癒えた気がする。少なくとも、食事をした事で気力は回復した。

一時間程経過して、フィアンマが帰宅した。
疲れているのか、眠そうに目元を指で擦った後、オッレルスの姿を捉えて嬉しそうに笑んだ。

フィアンマ「起きたか」

オッレルス「おはよう。食事は君が?」

フィアンマ「ああ」

返事をして、フィアンマはオッレルスの隣に座る。
精神的な疲れを、首を横に振る事で振り払い、ゆっくりと深呼吸した。

フィアンマ「…具合はどうだ」

オッレルス「>>69
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/07(日) 01:17:56.06 ID:ykf+UwWSO
すこぶるいい…とは言えないが、それなりにいい気分だよ

君がもう少し近づいてくれたらもうちょっと元気になれそうだが
70 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/07(日) 01:57:26.75 ID:PvlSPC4r0

オッレルス「すこぶるいい…とは言えないが、それなりにいい気分だよ」

入浴は非常に疲れを催したが、それも食事を摂取したことで安らぎ。
精神的な安定を意味するフィアンマが帰宅したことで、心からの安堵も得られた。

オッレルス「君がもう少し近づいてくれたらもうちょっと元気になれそうだが」

フィアンマ「…外は地味に暑かったのだが」

遠まわしに、汗臭いのでは、という主張に対し、オッレルスは首を横に振った。
そもそも、本当に好きな人の汗の臭いを嫌悪する人間はほとんど居ない。
居るとしたら潔癖のケがあるか、本当に愛していないかのどちらかだろう。
オッレルスに誘われるまま、フィアンマはその僅かに離れていた距離を詰めて肩に頭をもたれる。
指先で髪を弄ばれ、そのこそばゆさに目を閉じた。
もうあの頃のように長くはないが、ショートにした訳ではないので、手触りとしては似たようなもの。
安堵というのは、力が抜けるということ。そして気が抜ければ疲労が意識を押し上げ、眠気を催す。
うつらうつらとするフィアンマの髪を撫で、オッレルスも目を閉じる。
くっついていると人肌はその体温をなじませようとする。眠る人にくっついていると眠くなるものなのだ。
穢されることのない平穏の中、満たされる感覚に、このまま死んでしまえたらいいのに、と思う。

どちらが思ったのかは、記さない。



フィアンマが目を覚ますと、時間は午後六時を過ぎていた。
もうこんな時間か、とは思うものの、気力が湧かない。
起き上がって食事を作らなければならないというのに。
オッレルスにくっついたまま微睡み、フィアンマは心地良い眠気に浸る。

フィアンマ「…気力が起きない」

オッレルス「まだ無理に何かしなくても良いんじゃないか?」

フィアンマ「ん、…何か食べたいものは、無いのか」

オッレルス「…>>71
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/07(日) 02:48:58.13 ID:ykf+UwWSO
…今は特に思い付かないな。

というより、君こそ何か食べたい物はないのか?もしよければ今日は俺が作るよ
72 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/07(日) 16:04:45.43 ID:wEmHWZbE0

オッレルス「……今は特に思いつかないな」

フィアンマ「そうか」

オッレルス「というより、君こそ何か食べたい物は無いのか? もし良ければ、今日は俺が作るよ」

フィアンマ「…特に食欲は湧かん、…ただ」

オッレルス「ただ?」

フィアンマ「俺様は何だかんだでお前の手料理を食べた事が無いからな。…何か得意料理を作ってくれ」

簡単なものでいいから、と強請り、フィアンマはのろのろと身体を起こした。
まだオッレルスをキッチンに行かせるつもりはないのか、しっかりと手を握って繋ぐ。
細指の感触に心地よさと頼りなさを思いながら、オッレルスは少しばかり考え込む様子を見せた。
得意料理といっても、自分もそんなに料理が出来る方ではない。
可もなく不可もなく、とは正に自分の料理の実力のことを言うのではないだろうか、と思った。
フィアンマが甘いものが好きな事は知っているが、お菓子を作るというのも夕食には適していない気がする。
あまり時間がかかる料理だとふらついて心配をかける恐れもある。

オッレルス「じゃあ、>>74を作るよ」
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/07(日) 16:08:23.81 ID:xyfjASCk0
ラーメン二郎
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/07(日) 17:05:27.12 ID:ykf+UwWSO
ろーるきゃべつ
75 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/07(日) 20:41:02.08 ID:XYK7xVqd0

オッレルス「じゃあ、ロールキャベツを作るよ」

フィアンマ「ロールキャベツか」

嫌いじゃない、と頷いて、フィアンマは手を離した。
オッレルスを一人でキッチンに立たせるつもりは無いのだろう、隣に立って。
目が見えるようになった事で活発さが増したのだろう、オッレルスの知る彼より、とても行動的だった。
彼に視力がそもそも宿っていたのなら、最初から活発的な子供だったのだろうな、とオッレルスは思う。
ネタを作り、丁寧にキャベツで巻き込んでいきながら、フィアンマはオッレルスをちらと見遣った。
金色の瞳には邪気が無い。子供の純粋さとは違えど、そこに悪意が灯る事は無い。
コンソメスープで静かに煮込みながら、とりとめもない話をする。
ただの雑談の一言一言でも、それら全てが福音の音色に聞こえてしまう程に、互いは互いに餓えている。
一見飢えが治まったように見えても、それは表面的なものだけ。
精神医学的にこの二人を解剖すれば、恐らく共依存と呼ばれてしまうことだろう。

寝る準備を済ませ、オッレルスが振り向くと、フィアンマは既にベッドの中で寝息を立てていた。
自分と話す為に眠るのを我慢していたのかもしれない、と自惚れ混じりに予想して、オッレルスはフィアンマの肩まで毛布をかける。
長い間眠っていたから、少し身体を動かすだけでも地味に負担がかかって辛い。
完全に鈍ってしまっているな、と思いながら、適度にストレッチをする事で基礎能力を取り戻す。
少しだけそのストレッチをこなした後、オッレルスはフィアンマの隣に横たわった。
そして彼の身体を抱き寄せて、目を閉じる。意識を失っている間、寂しい思いをさせてしまっただろうかと反省しながら。


二ヶ月、経過して。
冬を迎えた家の掃除を済ませ、オッレルスは悩んでいた。
実を言うと、魔神になる為のお呼びがかかってしまっている。
そこまでの能力を手に入れたのは喜ばしいことなのだが、その儀式の為に犠牲にするものが多い。
少なくとも片目を失わなければ、その位置を得る事は出来ない。

フィアンマ「行かないのか」

オッレルス「…いや、行くよ」

途中まで、と共に行動しているフィアンマは、悩むオッレルスを急かしていた。
ここで魔神の地位につかなければ、儀式を受けなければ、かえって危険。
最悪世界中から狙われることとなる。
しかし、オッレルスとしてはそういった物々しい地位は特に欲しかった訳ではなく。
だが、得なければならないのだろう、と憂鬱な気分で、街を歩いていた。
途中、弱った様子の野良猫を見つける。
思わず、立ち止まった。
ここでこの怪我をして弱っている猫を助ければ、時間は足りなくなって、儀式は受けられない。



オッレルスはどうする?>>+1
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/07(日) 20:59:21.82 ID:Fi2iH5pv0
魔神を優先する
77 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/07(日) 21:14:58.15 ID:XYK7xVqd0

ものすごく迷った結果。
猫を助けて地位を捨てるよりも、ここで猫を見捨てて魔神という地位を得、安定を受容することに決めた。
ごめんな、と心中で数度謝罪し、オッレルスは儀式を行う場所へ移動する。
フィアンマは少しだけ猫を見、助けようか迷って―――やめた。
ほんの少しの善意が、後にとんでもない悲劇を起こす事だってあるのだ。
それならば、無気力に生きた方が良い。どうせ、責任など取れないのだから。


フィアンマと一時別れ、オッレルスは儀式の場までやって来た。
数百年に一度あるか無いかのチャンス。
他に候補は一人しかいなかった。疲れた様子の少女。
毛皮一枚で寒くないのかと他者に思わせる、地味に露出度の高い格好だったが、それを気に止める者は居ない。
そもそも、ある程度の力量を持ち合わせた魔術師はほとんど季節や寒さに若干合わない服装をしている。
それはたとえば術式に直接関係ある衣装の形であったり、色合いであったり。
暑さ寒さを感じないようにする術式を学んでいれば、衣服にこだわる必要性は微塵も無い。

オッレルス「……」

オティヌス「……」

一人であれば、そのままオーディンの座を得る儀式を。
二人以上存在する場合は、相手と戦わなくてはならない。
テスト形式だったような、と思いながら、オッレルスは静かに話を聞く。




オティヌスとやらなければならない事(例:呪文の詠唱)>>+1
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/07(日) 21:17:50.16 ID:Fi2iH5pv0
呪文の詠唱
79 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/07(日) 21:46:15.82 ID:XYK7xVqd0

内容としては、呪文を詠唱すれば良いと、ただそれだけ。
先に読み終わった方が魔神として地位を得、後に続いた方に資格は与えられない。
また、内容を略す事は認められない。早口言葉としてやれば良いというものでもない。
文章を読み上げるだけでなく、その中から術式を一つ編み出して読み終えると同時に発動させなければ認可されない。
だいぶ厳しい条件だな、と思いながら、双方共ほぼ同時に読み上げ始めた。

オッレルス『O konge af én verden regere dem. I indledningen af træet Yggdrasil, Giv en vejlede os. Denne person er almægtig. Denne person er en dyd. Bevis at hver regel afhængig af det markerede, skal du indstille din Ki」

オティヌス『Konungur einn heimi stjórna þeim. Í kynningu á tré Yggdrasils askr, gefa leiðbeina okkur. Þessi manneskja er almáttugur. Þessi manneskja er dyggð. Sannið að hver regla eftir stikaða, setja fólk þitt Ki』

どちらが先に読み終えたかというと、コンマ一秒の差でオッレルスの勝利ではあったのだが。
その後に起きる術式の内容の完成度の高さ、どのような効果かによって最終的な結果が決まる。






どちらが勝利した?>>+1
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/07(日) 21:47:06.12 ID:ykf+UwWSO
同着
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/07(日) 21:47:38.45 ID:tLDr5xv+0
オッレルス
82 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/07(日) 22:10:29.14 ID:XYK7xVqd0

展開されたのは、片や城壁並みの氷の結界。
もう片方は炎によって形作られた樹木。
その樹木からぽとりと墜ちた果実は、そのまま攻撃に転用出来る事だろう。
判断を下す魔術師の集団はしばらく審議した後、引き分けだという結果を出す。
かといってこのまま同着のまま二人共魔神になることなど出来ない。
じゃんけんなどという方法はあまりにも幼稚で、採用されることは無い。

オッレルス「……」

オティヌス「……」

こうなれば実力勝負か、とやや億劫に思いながら、両者は向かい合った。
オティヌスはともかく、オッレルスはあまりこの力を暴力として使ってこなかった。
経験の分だけ劣るかもしれないが、構わず術式を行使する。
『北欧王座』の論文を強引に使用しての術式はぐちゃぐちゃで、規則性が無い。
回避はせずに同じような力で受け止めながら、オティヌスはオッレルスを睨んだ。

オティヌス「お前は出来損ないがお似合いだ。諦めろ」

オッレルス「こちらにも、払ってきた犠牲がある」

何か見えない力同士が競り合う中、お互いに疲れが生じてくる。
別の術式を行使しても、相手も同じように行使して止めてきた。
判断を下す人間は話合い、二人の様子を眺めた後、宣言する。




どちらが勝利した?(同着・引き分け・相討ち以外)>>+1
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/07(日) 22:11:39.14 ID:ykf+UwWSO
まさかの乱入者
84 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/07(日) 22:17:00.90 ID:XYK7xVqd0

宣言しかけたところで、唐突な乱入者が割入ってきた。
魔神の地位が欲しいというよりも、その選定人に恨みがあったのか、眼前で殺戮が繰り広げられる。
オティヌスとオッレルスとは自衛しつつ一旦下がり、安全な場所まで移動した。
抵抗しても良いのだが、こうも決着がつかないとなっては拘る事さえ面倒になってくる。

オティヌス「……今年ではなく来年か」

オッレルス「恐らく、そうだろうな」

オティヌス「つくづく運が悪い」

オッレルス「そうだな」

完全に白けている思いで会話をしながら、オッレルスはため息を漏らす。
先程オティヌスと戦闘を行ったことで、ありとあらゆる気力が削がれていた。

オッレルス「……」

オティヌス「…なかなか終わらない、か」

オッレルス「逃げても良いけどね。…どうして魔神になろうと思ったんだ?」

オティヌス「何だ、唐突に」

オッレルス「どのみちお流れになってしまったんだ、お互いに強制敗退した今、世間話したって良いだろう」

オティヌス「…。…私の目的は>>85
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/07(日) 23:15:16.64 ID:ykf+UwWSO
…魔神になったら、もう何も奪われないと思った。

今まで私は色んなやつに、色んな物を奪われた。だから、もう、誰にも、何にも、神ですら私のモノを奪えない…そんな存在になりたかった
86 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/07(日) 23:28:42.49 ID:XYK7xVqd0

オティヌス「…。…私の目的は…魔神になったら、もう何も奪われないと思った。今まで私は色んなやつに、色んな物を奪われた。だから、もう、誰にも、何にも、神ですら私のモノを奪えない…そんな存在になりたかった。…もっとも、魔神は神の領域に踏み込んだだけ。正確には、違うのかもしれないが」

オッレルス「…そうか」

オティヌス「…お前は」

オッレルス「…俺は、一度失った人を、もう二度と失わないようにしたかったから。守りたかったんだ。自分の大切なものを。強ければ、強くなれば、そして認められれば、何にだって立ち向かえると思った。俺は根性無しだから、何か強制されないといけなかったのかもしれない」

オティヌス「……馬鹿げた理由だ。私には真似出来ない」

馬鹿げた、と言いながらも、オティヌスは小さく笑った。
その見目より年齢はいっているのだろうが、少女らしい可愛さを帯びた笑顔。

オッレルス「……困ったら、助けに行こう」

オティヌス「…助け?」

オッレルス「一人では勝てずに奪われても、二人なら奪われないかもしれない。魔神になれば、勝利と敗退の確率が五分五分になってしまう。…だから」

オティヌス「…お人好しだな」

嘲ったような声を出して。
ぽつりと、一言だけ。

オティヌス「………だが、感謝する」

オッレルス「…いつか、また」

オティヌス「もう二度と会いたくないものだが。……何かを奪われそうな時、利用させてもらう」

オッレルス「好きに利用したら良いさ」

拳を交わした、とはいかないまでも。
儀式の為とはいえ戦った事で、築かれた何かがあるのかもしれない。






疲れた様子で、オッレルスはその場を離れ、家近くまで戻ってきた。
フィアンマにどう説明したものか、と悩みながら彼に近づいたところで、ふと彼の手にじゃれつく生き物が見えた。

オッレルス「フィアンマ?」

フィアンマ「…俺様は放っておこうとしたのだが、着いてきた。…仕方なく治療を施してやったが、離れようとしない」

猫「にゃー」

フィアンマ「……魔神の件はどうなった」

なれたのか、なれなかったのか。
答えろという態度に、オッレルスはしばし言いよどんだ後、ごにょごにょと簡易的に説明した。

オッレルス「…、>>87
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/07(日) 23:54:18.49 ID:ykf+UwWSO
なれなかった……乱入者が出て台無しにされたんだ。まぁ、その代わりに友人を手に入れたが
88 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/08(月) 12:52:38.74 ID:C7IS9heJ0

オッレルス「…、なれなかった……乱入者が出て台無しにされたんだ。まぁ、その代わりに友人を手に入れたが」

フィアンマ「………」

オッレルス「…いや、俺も頑張ってはみたんだけどね。何というか、…その、……応援してくれたのに、ごめん」

どのような理由があろうと魔神になれなかったことは事実。
立場はない、だか力はあるという中途半端さに、これから追われることとなるだろう。

フィアンマ「…まぁ、構わんよ。『右方のフィアンマ』として守ることも出来るしな」

オッレルス「それは職権乱用じゃないか?」

フィアンマ「職権とは乱用するためにあるものだ」

オッレルス「…そんなものなのか…?」

過去より生真面目の抜けているフィアンマは特にオッレルスを責めるでもなく、猫をあやす。
そして疲れて眠り始めた猫を抱き上げ、その耳裏を掻いてやりながら、フィアンマはオッレルスを見る。

フィアンマ「…世話はする。…飼育したいのだが」

オッレルス「…それは構わないが」

フィアンマ「名前をつけてやってくれないか」

オッレルス「名前?」

すにゃすにゃと眠る白い猫を見せ、フィアンマは首を傾げた。
オッレルスはしばらく悩み、猫を見つめた。
まだ幼いらしい。よくよく見ると体格が小さいのではなく、子猫だ。

オッレルス「>>89
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/08(月) 13:06:31.48 ID:66/k9r8C0
リリス
90 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/08(月) 13:30:47.37 ID:C7IS9heJ0

オッレルス「『夜の魔女』(リリス)はどうだろう」

フィアンマ「リリスか。少々不穏な名前だが、問題無いだろう」

アダムの最初の妻であるとの伝承もあるが、その伝説は中世に誕生したもの。
なので、フィアンマはさほど罪深い名前とは思わない。
オッレルスとしては頭に浮かんだのがカナン神話における大地母神だった。
白フクロウに少々見目が似ていると一瞬思ったのが原因かもしれない。
何はともあれ呼んでも問題無い名前をつけてもらった猫は、依然心地よさそうに眠っている。

二人は長々と立ち話をしていた事に気がつき、家の中に入る。
フィアンマは猫が寝ている間に洗う事にしたのが、一旦シャワールームに消え。
三十分後、やや疲れた様子で戻ると猫の身体を拭き、ソファーに座って膝上に乗せた。
ごろごろ、と喉を鳴らす猫の顎をくすぐり、フィアンマは軽くオッレルスにもたれかかる。
人でなく猫といえど入浴させるのは疲労を伴う。

フィアンマ「…猫は好きなのか?」

オッレルス「>>91
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/08(月) 13:32:57.08 ID:YXRYwdH80
割と
92 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/10/08(月) 13:46:46.09 ID:C7IS9heJ0

オッレルス「割と好きだよ」

フィアンマ「そうか」

目を覚ました猫に眠気を移されでもしたかのように、フィアンマはうとうととし始める。
嫌われなくてよかったな、と呼びかけるフィアンマの声に、猫はにゃあと小さく鳴いた。
猫の肉球を触りながら眠り始める彼の髪を撫で、オッレルスは白猫と視線を合わせた。
瞳の色は金。ともすればフィアンマと同一。

オッレルス「……魔神にはなれなかったが、収穫は多かったな」

友人と、猫と。
これから先愛しい人を失う恐れは、持っている力で廃すれば良い。
魔神に及ぶ程の力を手に入れたのだから、あまり怯える必要は無いだろう。
ようは自分が間違えてしまったことが全ての始まりだったのだから。
もう間違わないことが、自分という人間の終着点。

フィアンマ「……すー」

オッレルス「…好きだよ」

手を引くでもない。
手を引かれる訳でもない。

これから先は手を繋いで隣り合って、一緒に進むのだから、どちらかが頑張り過ぎる必要は無い。
局所局所で運が悪ければ、選択が悪ければ、少なからず犠牲を払っていただろう。

オッレルス「リリス」

リリス「にゃー」

オッレルス「もし喧嘩することがあったら、仲を取り持ってくれ」

リリス「みー」

わかった、とばかりに尻尾を立てる猫の頭を撫で。


とりあえずこれから先どうやって幸せに暮らしていくか、なんて。
傍らで眠る可愛く愛しい人を抱き寄せ。

とりとめもない、楽しく無意味な事を考えて、青年は緩やかに穏やかに笑むのだった。









おわり
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/08(月) 14:27:56.32 ID:BHVkt4Lh0
乙!
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/08(月) 15:04:07.70 ID:/LNk5uJSO
な ん だ と 乙。
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/08(月) 16:52:58.70 ID:/niLyXPU0
乙。
毎回>>1のフィアンマさん愛がすごすぎる
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