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男「なにはともあれ」 -
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1 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/10/13(土) 00:48:13.20 ID:cKfsXzpPo
〜〜男宅〜〜
「男!男!起きろー!」
「男さん、朝ですよー」
男の部屋に二つの声が響く。
どちらも女性の声であった。
一人は活発そうな、幼さを残した面立ちを、もう一人は大人しそうな、綺麗な面立ちをしていた。
「男―!!」
「朝ですよー!!」
段々と二人の声は大きさを増していく。
その声の向けられた先にあるベッドから男が顔を出す。
「うるさいなぁ、今何時だと思って……7時か……」
途中NTR描写アリ
ただし終わりはハッピーエンド
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1350056892
1.5 :
荒巻@管理人★
(お知らせ)
[
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]: ID:???
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寝こさん若返る @ 2024/05/11(土) 00:00:20.70 ID:FqiNtMfxo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1715353220/
第五十九回.知ったことのない回26日17時 @ 2024/05/10(金) 09:18:01.97 ID:r6QKpuBn0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1715300281/
ポケモンSS 安価とコンマで目指せポケモンマスター part13 @ 2024/05/09(木) 23:08:00.49 ID:0uP1dlMh0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1715263679/
今際の際際で踊りましょう @ 2024/05/09(木) 22:47:24.61 ID:wmUrmXhL0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1715262444/
誰かの体温と同じになりたかったんです @ 2024/05/09(木) 21:39:23.50 ID:3e68qZdU0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1715258363/
A Day in the Life of Mika 1 @ 2024/05/09(木) 00:00:13.38 ID:/ef1g8CWO
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1715180413/
真神煉獄刹 @ 2024/05/08(水) 10:15:05.75 ID:3H4k6c/jo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1715130904/
愛が一層メロウ @ 2024/05/08(水) 03:54:20.22 ID:g+5icL7To
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1715108060/
2 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/10/13(土) 00:48:41.22 ID:cKfsXzpPo
「ほら早く着替えて着替えて!許嫁ちゃんが朝ご飯作ってくれたのよ!」
「男さんも起きたみたいなので私はご飯出して来ますね幼馴染さん」
のそのそと動く男とは対照的に、幼馴染と許嫁はテキパキと素早く動いていた。
「んー……あれ?何で許嫁がウチ来て朝ご飯作ってんの?」
男は寝起きでまだ目が醒めきっていないためか、力のない声で聞く。
「何でって……アンタ昨日母親から聞いてないの?」
呆れながら幼馴染が答える。
「あー……そう言えば何か言って気も……うん……」
「『気も』って…今日は朝早くから仕事行かなくちゃいけないから許嫁ちゃん呼んだのよ」
「そっかー、なるほどー……お前料理ダメだからなぁー、お前じゃなくて許嫁が隣の家に住んでたらなぁ」
「うるさい服置いとくからさっさと着替えて降りてきなさいよ」
着替え終えた男がゆったりとリビングへ向かう。
そこではすでに幼馴染と許嫁が朝食を取っていた。
そこへ混ざりテレビのニュースを見たり他愛もない話をしながら朝食を終えると、三人で食事の後片付けを手早く終わらせ家を出た。
3 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/10/13(土) 00:49:10.65 ID:cKfsXzpPo
〜〜教室〜〜
三人が教室へ着くと各々が自分の席へと向かう。
男が机の上に鞄を置くと、前の席で寝ていると思っていた友が反応した。
「おっ、今日は早いなおはよう」
「ああ、今日は許嫁まで俺を起こしに来てな、幼馴染一人ならぎりぎりまで寝てられるんだけど……」
「……聞かなきゃよかったわ死ぬまでしっぽりやってろカスが」
友はそういうとまた先程と同じように机に突っ伏して寝始めた。
言われない雑言を浴びせられた男は仕返しに友の鞄の中を漁り、見つけた筆箱の中に入っていたシャープペンシル全てから芯を抜いて芯ケースに入れ
また何事も無かったように鞄の中へ戻した。
4 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/10/13(土) 00:50:01.06 ID:cKfsXzpPo
──昼休み──
「飯だああああ!」
授業が終わる5分前まで寝ていたとは思えない元気さで友が叫ぶ。
後ろにいた男はびっくりして友に叫ぶ。
「うるせえ!ってかお前何毎度毎度寝てるのになんで授業終わる直前で起きられるの?」
「んー、わからん!何か分からないけどハッと起きるんだよなぁ……たまに起きずにずっと寝てる事あるけどな!」
「うんみんな寝たふりした構ってちゃん何じゃないかと疑って体育の時みんな放置して行ったら、普通に遅刻してきたな」
「いやー、あの時はびっくりしたよ。だって起きたら教室誰もいなくて電気も消えてるんだぜ?ああいうのって理由もなく寂しくなるよ」
談笑をしながら弁当を食べていた男と友だが
男は弁当を先に食べ終わるとすくっと立ち上がった。
「ん?どうした?トイレ?」
「いや、今日委員会だからさ」
「あぁそうなのか、真面目にやれよー」
「お前に言われたくねえ」
5 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/10/13(土) 00:50:29.15 ID:cKfsXzpPo
〜〜廊下〜〜
視聴覚室から人がぞろぞろと出てくる。
その中から男がのびをしながら出て来た。
「あーーーー……ふぅ……疲れた」
そんな男に、後ろから真面目そうな女性が声をかける。
「疲れたって、君はただずっとあくびしてただけでしょ」
「いやいや、そうは言いますけどね先輩、こう見えて頭の中ではいろいろ考えているんですよ」
「じゃあさっきの委員会で問題になった内容は?」
「……いやー、疲れた疲れた」
とぼける男の姿にため息をつく先輩。
その姿を見て少し慌てる男。
「あ、ああー、喉乾いたから自販機行こっと……」
「いいわね、丁度私も喉乾いてたところなの」
「おぉぅ……」
6 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/10/13(土) 00:50:55.64 ID:cKfsXzpPo
〜〜自販機前〜〜
自動販売機の前でたった今買った飲み物を飲みながら男と先輩が会話をしていた。
「へぇー、先輩って弟さんいるんですか」
「そうそう、これがバカで生意気なやつでねー、根は真っ直ぐで顔はいいんだけど……」
「顔が良いって事は彼女もいるんですか?」
「いるいる、もう取っ替え引っ替え、1週間毎に違う娘連れて来るのよ」
「1週間毎とはまた凄いですね……仲はいいんですか?」
「うんいい方だよ、今でもたまに姉弟で出掛けたりするし」
「へぇ、俺一人っ子だからそういうの凄い羨ましいですよ」
「でも友達曰く、『高校生にもなってそれは仲良すぎ!』らしいけどね」
7 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/10/13(土) 00:51:59.55 ID:cKfsXzpPo
「でも仲がいいのは悪い事じゃないと俺は思いますよ」
が、急に先輩の声のトーンが変わった。
「そう言えば君ってさぁ」
その変化に男は気づき、キョトンとする。
「?はい……」
「二股してるって噂があるんだけど本当なの?」
「はぁっ!!!!???……あ、いや、すいません……何ですかそれ?」
突然の二股疑惑に困惑する男。
だが、思い当たる節もあった。
「いやね、君が女の子二人侍らかしてるって噂を聞いてね」
「あぁ、いや確かに仲良くしてる女の子が二人いますけどね……侍らかしてるってわけじゃあ……」
「その二人って?」
「一人は俺の”幼馴染”で、もう一人は俺の…あー、”許嫁”です」
「へぇっ!!!???」
今後は逆に女が、突然の許嫁という言葉に困惑した。
8 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/10/13(土) 00:52:28.13 ID:cKfsXzpPo
「い、許嫁!?そんなのってまだあるの!?」
「俺の家はともかく、その”許嫁”の家はまぁまぁな家なんですよ。ウチの親父とは昔馴染みだったらしくて
それと許嫁と言っても高校卒業まで一緒に過ごしてその時に好き合ってたらっていうものですけどね
それに本当ならその約束をした俺の父親はもういないから無効なんですけど……」
「あ……ごめん…………」
突いてはいけないところを突っついてしまった、という顔で謝る先輩。
だが対する男は同時た様子もなく続ける。
「いや、いいですよ……で、無効な筈だけど相手側の家族は乗り気でうちの方も別に問題があるわけでもないから……という感じです」
「へぇ〜…………」
しばらく二人の間に沈黙が続いた。
男は会話が無くなって気まずそうに、先輩は何かを考えるように黙っていた。
この沈黙に耐え切れなくなったのか男は口を開く。
9 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/10/13(土) 00:52:57.20 ID:cKfsXzpPo
「あっ、じゃあ俺もそろそろ教室に帰りますね」
「待って」
しかしそれを先輩が止める。
「一つだけ聞かせて?」
「?なんですか?」
少し間を開けて、先輩が聞く。
「その二人のどっちかの事を……好きなの?」
「……はい」
その言葉を聞き、背中に回していた先輩の手に力が入る。
それは男からは見えず、見えても気付かなかったであろうほどの動きであった。
「…………そうなんだ」
10 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/10/13(土) 00:53:26.33 ID:cKfsXzpPo
「ただ、まだ『どっちの方が』好きなのかは、分からないです。二人共俺の事を好いてくれているのは分かってるんです。
俺の気持ちはあの二人を傷つけ続けている事は分かっているんです」
「……君が二人を好きだという事はその二人は知っているの?」
「はい……二人はそれでもいいって言ってくれました……でも──」
男は手が震えるほどに力を込め、言葉が進んでいくうちに語気も強くなる。
そんな男の言葉を先輩が遮る。
「気持ちは理屈じゃないからね、割り切れないのも当たり前だよ、ね?ごめんね、変な事聞いちゃって」
「……いえ、こっちこそ先輩に愚痴ったみたいですいません」
そう言って二人は自分たちの教室へ戻っていく。
11 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/10/13(土) 00:54:05.20 ID:cKfsXzpPo
〜〜教室〜〜
「なぁ友」
「んー?」
「昼休みさぁ、教室に他のクラスのやつが来てたみたいだけどあれ誰?」
「あぁ、多分それ俺と同じ部活の奴だわ」
「お前の友達かよ……」
途中から声を小さくして友にだけ聞こえる声で喋る男。
「友達って言うか知り合い程度だけどな、あいつも俺に会いに来たんじゃなくて、許嫁さんのいるグループに用があって来たみたいだったし
何?お前あいつに何かされたの?」
「いやぁされたって言うかさぁ、丁度俺が教室は居るのと入れ違いになったんだけど、肩がぶつかっちゃってさぁ、謝ったら舌打ちされた」
「あーあいつならそうだろうなぁ、何せあいつは部活でもちょっと嫌われてるし」
友は少し眉を潜めて笑う。
「嫌われてるって、やっぱあの性格で?」
「いや、性格もあるけどあいつ女癖強くて部活に顔出さない事が多いんだよ……」
ここまで友が喋ったところで教師に私語を注意され、二人は焦ってガタガタと音を鳴らしながら姿勢を正す。
12 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/10/13(土) 00:54:33.41 ID:cKfsXzpPo
〜〜帰り道〜〜
男と幼馴染、許嫁は何時ものように三人で談笑をしながら歩く。
途中の十字路で許嫁と分かれる。
「では男さんも幼馴染さんもここで……」
「おーう」
「じゃあねー、また月曜日ー」
そして自宅前で幼馴染と分かれた。
「じゃあまた明明後日―」
「おーう」
13 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/10/13(土) 00:55:00.30 ID:cKfsXzpPo
〜〜男宅〜〜
「ただいまー」
「はいおかえりー」
予想外の声に男はびっくりして家の中に目を向ける。
玄関を開けて入ったときは気付かなかったがリビングの電気が点いていた。
「あれ母さんもう帰ってきてるの?」
「そりゃ早く仕事やらされたからね、その分早く上がらせてもらえたわよ」
「それもそっか」
それだけ言うと男はとっとと部屋に行き鞄や制服を放り出してベッドへ一直線に向かう。
そしてそのまましばらく何をするでもなくベッドの上に横たわったまま動かない。
それから20分程経つと携帯が鳴る。しかし、メールであったためか男は取らなかった。
その5分後、また携帯が鳴った。これもメールであった。
だが今度は不承不承と言った感じで携帯を取り、先ほどのメールも一緒に確認する。
1通目のメールは幼馴染からであった。
内容は、土曜日か日曜日に二人でどこか行こうという物。
2通目のメールは許嫁からであった。
内容は、文章に多少の違いはあれど、幼馴染と一緒の物。
男は携帯を置き少し考えこむように頭に手を当て、動かなくなった。
だが、しばらくするとまた携帯を取り先程のメールに返事を送った。
14 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/10/13(土) 00:55:27.08 ID:cKfsXzpPo
──土曜日──
男は街の中を幼馴染と歩いていた。
「男とこうして二人で出かけるのって久々だね〜」
「そうだっけ?」
「そうだよー、何時も許嫁ちゃんと友がいるじゃん」
「んー、そう言われるとそうだったかな」
会話をしながら歩き続け、映画館へと二人は入る。
二人は事前に何を見るのかを決めていたのか、すぐに列へ並びチケットを買い中へと入っていった。
「それにしても幼馴染ってこういうのも見るんだなぁ」
「普段はあんまり見ないけどねー、たまに見たくなるのよ」
「ふーん、そんなもんかねぇ」
15 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/10/13(土) 00:55:53.06 ID:cKfsXzpPo
男と幼馴染は売店で飲み物等を買いチケットに書かれた番号の書かれたドアの中へ入る。
すでに映画は始まっていたようで中は暗かった。
他の人達の邪魔にならないように二人は背を低くして自分たちの席へ向かった。
二人が席へ座ると丁度予告が終わり本編が始まった。
映画の内容はラブストーリー物で幼馴染は食い入るように映画を見ていたが、男は時折あくびをしながら見ていた。
周りも映画の内容が内容なせいか、カップルだらけであったが、ほとんどのカップルはこの二人と似たような状況だった。
しかし物語が佳境へ入ってくると、何時の間にか男も少し身を乗り出して見ていた。
周りのカップル達も寄り添う様に映画を見ている。
その時、肘掛けに置いていた男の手の上に、幼馴染の手が重なった。
男は驚いたような顔をして幼馴染の方へ顔を向ける。
だが幼馴染は顔を伏せ、男からはどのような表情をしているのか見れなかった。
二人はしらばくの間、映画の方を見ずに、固まっていたが、その内に男がスッと手を抜いた。
男は周りに聞こえないように小声で喋り出す。
「ゴメン、本当は今すぐにでも幼馴染の手を握りたいけど、でも、今それをするのは映画や場の雰囲気に流されたみたいで……
………………ゴメン」
そう言ってその後二人の手が重なることはなかった。
映画が終わると、幼馴染は何も言わずに男を置いて出て行った。
男も追いかけようと急いで立ち上がったが、すでに他の客たちも通路へ出てきていて出たくても出れなかった。
人ごみを掻き分けながら何とかドアから出るが、すでに幼馴染の姿はどこにも無かった。
男は携帯を取り出し幼馴染へ電話を掛けるが幼馴染は一向に出なかった。
16 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/10/13(土) 00:56:20.92 ID:cKfsXzpPo
そこで男は電話を諦め、映画館の中を探そうと歩き出すと後ろから声を掛けられる。
「おう男、お前も映画見に来てたのか」
「……友か、もう映画は見終わったよ、ちょっと忙しいから、悪い」
そう言って男は早足でとっとと離れてしまった。
その姿を見た友は疑問に思いながらも、また一緒に来ている友達と話をしていた。
「それにしてもあいつトイレ遅えなぁどんだけ長いんだよ」
17 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/10/13(土) 00:56:51.41 ID:cKfsXzpPo
〜〜男宅〜〜
男「……ただいま」
男は沈んだ面持ちで帰宅した。
母親はいなかった。
男は一直線に自分の部屋へ向かい、服を着替える事もせず、ベッドへ落ちた。
あの後、映画館の中を虱潰しに探したが幼馴染は見つからなかった。
電話も何度も掛けたが結果は同じで、その内日も暮れ始め、諦めて帰って来たのだ。
帰り道では男はずっと悔やんでいた。
だが、どうすれば良かったのかも浮かばず、悩み悔やみ続けていた。
結局どうすることも出来ず、男はその日を終えた。
18 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/10/13(土) 00:57:21.82 ID:cKfsXzpPo
──日曜日──
男は街の中を許嫁と歩いていたが、男は暗い様子であった。
許嫁が心配してくれるが、男は生返事ばかりで、心ここにあらずと言った風であった。
「男さん、お腹が空きましたね、ちょっとあのお店に寄りましょう?」
「……あぁ」
そう言ってファーストフード店へと二人は入って行く。
許嫁が注文をして、番号の札を貰い男と一緒に階段を上がって空いてる席を探す。
席に座ると少し間をおいた後、許嫁が口を開いた。
「昨日、幼馴染さんとどうなったんですか……?」
19 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/10/13(土) 00:57:49.17 ID:cKfsXzpPo
いきなり核心を突かれた男はガタンと椅子を揺らす。
「……な、何で知ってるの?」
「昨日と今日の約束、実は幼馴染さんと話して決めた事なんです」
「……どういう事?」
「深い理由は無いです、ただ、男さんの気持ちを知りたかっただけで……」
「知りたかったって……俺の気持ちは許嫁達も知ってるだろ?」
「はい、それに今はまだそれで良いとも言いました。でも、日が経つに連れて私も幼馴染さんも苦しくなってきたんです」
許嫁の言葉に、男はどんどん暗くなっていく。
男は自分でも分かっていた言葉だったが、それでも実際に本人の口から言われるのは辛かった。
そしてその言葉で、昨日の、幼馴染がどれだけの気持ちでああしたのかを知り、自分のやった事の愚かさに更に落ち込んだ。
「昨日、幼馴染さんと何があったのか分からないですけど、今の男さんを見ると、何となく察しは付きます」
許嫁が言い終わると、沈黙が続いた。
やがて店員が注文した物を持って来て、食べ始めるが、どちらも喋ることはなかった。
食べ終わり店を出ると、許嫁は今日はこれで、と言って帰って行く。
男はそれを呼び止めようとするが、声が出なかった。
20 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/10/13(土) 00:58:18.46 ID:cKfsXzpPo
〜〜帰り道〜〜
男が一人、家へ向かって歩いていると、バッタリと見知った人と出くわす。
「男君?」
「……先輩……と……?」
「あぁ、これが前に言った私の弟だよ」
「こんちわー」
「あっ、ども」
「ところで、どうしたの暗い顔して?」
「いや、何でも無いです……」
先輩に心配された男だが、男はそれを拒む。
しかし、先輩はそれでも男を心配した。
「何でもない様には見えないよ?聞ける話なら聞いてあげよっか?」
「……すいません」
「……そっか、でもあんまり悩みこんじゃダメだよ?それじゃ、行こ」
そう言って先輩は弟と一緒に離れて行った。
男はその後ろ姿を見つめるが、すぐにまた自分の家へ向かって歩き出した。
21 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/10/13(土) 00:58:46.61 ID:cKfsXzpPo
〜〜帰り道〜〜
「今の人?」
「うん」
「今ならガンガン攻めちゃえば落とせたんじゃないの?」
「あんたじゃあるまいし、私はそういう弱みにつけ込むのは嫌いなの」
「弱みに付け込むだなんて人聞きの悪い、俺は優しく癒してあげてるだけですよ」
「はいはい」
22 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/10/13(土) 00:59:14.88 ID:cKfsXzpPo
──月曜日──
男の部屋から目覚ましの音が響く。
ベッドがもそもそと動き、中から目覚まし時計へ向けて手が伸び出て来る。
「うるさいなぁ…何時だよ…8時!?」
男は飛び起きて急いで服を着替えて作り置かれていた朝ご飯を急いで食べ終え皿をシンクに置くとすぐに家を出た。
23 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/10/13(土) 00:59:42.89 ID:cKfsXzpPo
〜〜教室〜〜
チャイムが鳴るのと同時に男が教室へ入って来た。
走ってきたのか男は汗だくで肩で息をして、とぼとぼとした足取りで男は席へ向かう。
「おはようギリギリだな」
「ハァ……ハァ……寝坊……しちゃって、な……」
「今日は幼馴染や許嫁ちゃんは起こしに来てくれなかったの?」
「……ハァ……ハァ………まぁ、な」
「ふーん、珍しいこともあるもんだな」
「……フゥー、まぁそういう日もあるさ…………」
24 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/10/13(土) 01:00:42.61 ID:cKfsXzpPo
──昼休み──
「よーし飯だ飯飯飯―」
「はいおはようほんとタイミングいいなお前」
「それだけが取り柄だからな」
「そんなのが取り柄かよ……」
昼休みに入ると同時にあちこちの教室が活気立つ。
だがそんな中幼馴染は男に気付かれぬように教室を出て行った。
そして翌日の昼休みに、同じように許嫁が教室を出て行った。
そのまま金曜日も終えた。
あれ以来幼馴染や許嫁が男の家に来なくなり、学校で話すことも少なくなった。
学校では平気なフリをしているが、家に帰るといつも先週の事を思い出し、後悔していた。
そうして、土曜日を迎えた。
日が登り切っても一向に目覚める気配のない男へ、向けて、携帯が鳴る。
男はその音に起きて携帯を見る。
発信者は友であった。
「はい……もしもし……」
『こんな時間まで寝てたなお前……それはともかく、ちょっと聞きたい事がある』
「んー……?」
『お前……幼馴染や許嫁ちゃんとはもう別れたの……?」
25 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/10/13(土) 01:01:16.07 ID:cKfsXzpPo
あまりの言葉に一気に目が覚める男。
その突拍子もない質問に大声で答える。
「はぁ!?んなわけないだろ!」
『……っ……そっか……あぁー……分かった、ちょっとメール送るからあとはそっちで判断してくれ』
「は!?何だよ!おい!」
一方的に友が電話を切る。
突然の友の言葉に呆気にとられているうちに、友からメールが送られてきた。
そのメールには画像が添付されていて、男はそれを開く。
26 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/10/13(土) 01:01:51.26 ID:cKfsXzpPo
「……っだよ……これ……」
そこに写っていたのは以前教室の前でぶつかった奴と幼馴染が腕を組んで歩いている姿だった。
呆然とそれを見つめていた男だが、ハッとして友に電話を掛けようとした時、また友からメールが届いた。
【俺の友達で、こいつと許嫁が仲良さそうに歩いている姿を見た奴がいるんだけど、一応それも伝えておく】
と書かれていた。
それを見た男は急いで幼馴染に電話を掛ける、が
いくらコールしても幼馴染が電話にでることは無かった。
男は諦め、今度は許嫁に電話を掛ける。
すると許嫁はすぐに出た。
「もしもし!」
『……もしもし』
友から送られてきたメールの内容を許嫁に聞く。
許嫁は何も言わなかった。
それでも許嫁を問い詰めようと語気を荒げると、許嫁はごめんなさい、とだけ言って電話を切った。
その後すぐに友に電話を掛けてさっきの写真を何時撮ったのかを聞く。
写真はつい先程撮った物だと友が答えると、男は場所を聞いて近くであると分かり、すぐにそこへ向かった。
27 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/10/13(土) 01:02:17.92 ID:cKfsXzpPo
しかし当然、その場所にはすでに二人はいなかった。
一旦落ち着こうと近くのベンチへ座り込む男。
そこへ偶然、先輩とその弟が通りかかる。
「おー、男君!」
「あ、先輩、こんにちは」
「どもっす」
「こんにちは」
「こんなところで一人で何してるの?」
「いやぁ、ちょっと……」
「言えない事?」
「言えない……というか、言いづらい事です……」
「そ……」
男は見るからに人を心配させるような空気を背負い、先輩はそれでも聞きたいという空気を出していたが
お互い何も言わずに会話が終わった時だった。
28 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/10/13(土) 01:02:49.87 ID:cKfsXzpPo
「姉さん、男さんの話ならどんなことでも喜んで聞くから、下手な気使わなくって大丈夫っすよ」
「ちょっ…とお前ぇ!」
先輩は顔を真っ赤にして弟の肩を叩く。
その様子を見て男は笑う。
「はは…………でも、弟さんの話はともかく、話した方が楽になれるかもしれませんね」
「あ、ほら姉さん、男さんが話してくれるってさ」
「こいつ……ごめんね男君、無理矢理話させたみたいで」
「いえ、いいんです」
男は何があったのかを説明した。
そしてどうしてそうなってしまったのかを男なりの推測も述べた。
29 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/10/13(土) 01:03:20.48 ID:cKfsXzpPo
ひとしきり話し終えると、今度は先輩と弟がバツの悪そうな顔をしていた。
「……そんな事が……」
「まぁ結局、俺の優柔不断さが招いた事なんですけどね……ハハ、ハ……」
そこから男は声は出さなかったが、泣きだして先輩がそれを宥め、弟は居心地悪そうにしていた。
「すいません、こんなところで泣いちゃって……」
「大丈夫よ、別に気にしなくていいわ」
「ところで…………男さんがさっき見せてくれた二人って、あの二人じゃないっすか?」
弟の言葉に男と先輩は勢い良く振り向く。
その視線の先には、幼馴染ともう一人の男が歩いていた。
そしてその足の向かう先は…
30 :
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[sage]:2012/10/13(土) 01:03:47.21 ID:cKfsXzpPo
「あ……っちゃー…………あっちの方って……」
弟が何かに気づいたように小声で言う
それに気づいた先輩が何の事かを尋ねると、男に聞こえないように先輩に耳打ちをする。
「いやね……あっちの信号渡って行くと確かホテル街の方だよ……いつも使ってる俺が言うんだから間違い無い……」
「…………うそ……」
先輩がふと隣を見ると、既にそこに男はいなかった。
焦って幼馴染達の方を見るとそちらへ向かって走って行く男が見えた。
しかし男は信号に捕まり、二人を見失った。
後ろから追いついた先輩と弟が男を説得して、男の家へ連れていく。
31 :
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[sage]:2012/10/13(土) 01:04:18.03 ID:cKfsXzpPo
〜〜男宅〜〜
男は家に着くと張り詰めていた気持ちが切れたのか、そのまま倒れてしまった。
それにびっくりした先輩と弟は男の家へ上がって男を介抱した。
「なぁ姉さん」
「何?」
「何かノリで上がっちゃったけどさぁ、いいのかなコレ」
「いいんじゃない?放っておくわけにも行かない状況だったし」
「それもそっか」
男は今はベッドで寝ている。
倒れた拍子に頭をぶつけたらしくすこし血が出ていたが、今はもう止まっていた。
32 :
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[sage]:2012/10/13(土) 01:04:50.35 ID:cKfsXzpPo
「それじゃあやるべき事はやったしそろそろ行きましょ」
「え?姉さん家探ししないの?」
「するわけ無いでしょ!ほらとっとと行くわよ」
「ふーん……あ、ちょっと先外で待っててやる事まだあったから」
「やる事あるなら私も手伝うけど?」
「いいのいいの、手伝ってもらうほどのことでも無いから」
そう言って弟は部屋から先輩を追い出す。
先輩が男の家の前で待っていると、言葉通りすぐに弟が出てきた。
「ごめんごめん、じゃあ行こっか」
「あんた何してたの?」
「そいつぁは言えねえなあ」
33 :
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[sage]:2012/10/13(土) 01:05:54.27 ID:cKfsXzpPo
──夜──
「んっ…ぅぅ…」
真っ暗な部屋の中、男が起きる。
何時の間にかベッドで横になっていた事を不思議に思い電気をつけて辺りを見渡しながら記憶を手繰る。
その時、男の目に留まったものがあった。
何故か携帯にメモが貼られていた。
メモには下の部分に先輩の名前があり、何かあったらここに電話やメールをしてくださいと言うメッセージと電話番号とメールアドレスが書かれていた。
男は玄関から記憶が無い事や気づいたらベッドにいた事、先輩のメモが残されていた事から、自分が気を失っていた事に気付く。
「先輩……優しいな」
男はまた涙を流した。
34 :
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[sage]:2012/10/13(土) 01:06:24.90 ID:cKfsXzpPo
──日曜日──
翌日、落ち着いた男は友と連絡をして今の状況を伝えた。
友はそれを聞き憤慨していた。
『あの野郎、女癖悪いと思ってたけど人のにまで手ぇ出しやがったのか!しかもよりによって俺の友達に!」
友は耳が痛くなるほどの大声で叫んだ。
そしてその後すぐに声を落として喋る。
『悪い男、今からそいつとちょっと話してくる!』
男は俺も行く、と言おうとしたが、その前に電話を切られた。
35 :
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[sage]:2012/10/13(土) 01:07:04.44 ID:cKfsXzpPo
──月曜日──
「よう友、おはよう」
「おう、おはよう、ちょっと話があるから……」
そう言って友は男を教室の外へ連れ出した。
そこで友は男に昨日何を聞いたのかを教えた。
その内容は、そいつは幼馴染や許嫁と男の事情を知った上で手を出した事
何でそんな事をしたのか理由なんて無い、と言っていた事
許嫁は教室に行ったらたまたま見つけた、幼馴染は映画館で泣いてる所を見つけたという事。
それらを友が悪態をつきながら話した。
「ありがとう、友、でももういいよ」
「いいって……お前……」
「元はと言えば俺が原因なんだしさ、あの二人がそれでいいなら……」
「で、でもお前……あの二人の事…………いや、悪い」
「いいよ、だから…そういう事だから…たださぁ」
「?」
「ソイツはちょっと……絶対に許せないから……協力してくれない?」
「おう!何でもしてやるよ!」
36 :
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[sage]:2012/10/13(土) 01:07:31.00 ID:cKfsXzpPo
──放課後──
男は電話を掛けていた。
しばらくコール音が響いた後、声が聞こえた。
『はい、もしもし?』
「先輩、どうも、男です」
『え!?ええ?!な、なんで男君が!?』
突然の男からの電話に驚きを隠せない先輩。
その様子に疑問を感じた男は言う。
「何でって……先輩がメモを置いて行ってくれたんじゃないんですか?」
「メモ何てそんな……あ、あぁ、そう、そうだったわね、ええそうよ」
先輩は一瞬何のことだか分からなかったが、すぐに犯人を突き止めた。
帰ったら褒めてやろうか怒ってやろうか考えているところを男に遮られる。
「で、話があるんですけど、いいですか?」
「いいわよいいわよ何でも言っちゃって!」
「ありがとうございます、その……先輩の弟さんに協力してもらいたいことがあって……」
「オッケオッケ!いくらでも協力させちゃう!」
37 :
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[sage]:2012/10/13(土) 01:07:56.96 ID:cKfsXzpPo
──数日後──
許嫁が、ある男と街を歩いていた。
許嫁はソイツと手をつなぎ頬を若干紅潮させているが
男は対照的に照れるどころか少しも恥ずかしいとも緊張するとも思っていないような顔であった。
その姿を後ろからジッと見つめる男がいた。
「ああ、見つけたよ居た居た、その弟さんに連絡してあげて、場所は──」
38 :
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[sage]:2012/10/13(土) 01:08:29.95 ID:cKfsXzpPo
──数分後──
許嫁達の前から、チャラそうな雰囲気のカップルが歩いてくる。
許嫁は今も頬を紅潮させ緊張したままで気付かず、隣を歩くソイツもそれに気付かなかった。
ぶつかる直前になって、初めてそのカップルの存在に気づいた。
「痛って……ちょっとちょっとー」
「あっ、す、すみません!」
「すみませんじゃなくてさー、痛ってーわー」
チャラそうな男が過剰なアピールをしてくるその姿は、許嫁の隣にいるソイツの神経を逆撫でした。
「はぁ?なんだよお前のほうからぶつかって来たんだろうがよ!」
「ちょっと何この人キレてんのチョーウケるんですけど」
「っ……この……!」
そこへ許嫁が仲裁に入る
39 :
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[sage]:2012/10/13(土) 01:09:01.73 ID:cKfsXzpPo
「ごめんなさい!私が前見てなかったから……!だからもう……」
「いやー、もうその事はいいんだけどコイツチョーウザくね?もうこれボコるわ」
「上等だ!オラ来いや!」
そこへ友がたまたま通りかかった風を装って現れた。
「よう!……って何か凄い険悪な雰囲気だな……」
「友さん!お願いしますあの二人を止めてください!」
許嫁は友が男と許嫁達の関係を知っているという事を忘れて、見る人が見れば浮気としか思えないこの状況で友に助けを求めた。
「ああ、大丈夫大丈夫あいつ喧嘩強いから、多分」
それよりも、と危ないから一旦この場から離れようと友に言われ
許嫁はでも…と戸惑っていたが友に説得されて一緒にその場を見えないところまで離れた。
40 :
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[sage]:2012/10/13(土) 01:09:46.62 ID:cKfsXzpPo
「オラどうしたんだよビビってんのか!?」
「何叫んでのこの人チョーウケる」
「分かった分かったまぁまぁ落ち着けって、もうすぐ来るから」
「あぁ?わけわかんねえ事言ってんなよクソ」
「それにしてもお前本当にキレやすいな、予想以上だわ」
チャラい男が言い終わるのと同時に、男がその場に現れた。
「悪い遅れた、許嫁は?」
「ああ、あの娘なら友さんがどっかに連れて行きましたよ」
「そっか」
この二人のやり取りに、ソイツは何が何だか分からないと言った顔で見ていた。
「は?誰だよお前?ってか、あれ?お前って……」
「気付くの遅えよ、お前に許嫁と幼馴染を取られた人だよ」
その言葉を聞いてハッとした顔になりさっきまで激昂していたのが一転、男を挑発するような態度になった。
41 :
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[sage]:2012/10/13(土) 01:10:15.28 ID:cKfsXzpPo
「ってことはあれか?彼女取られた仕返し?暗え奴だな気持ちわりい」
「……うん、もういいよ」
男はそう言うとその直後、ソイツに殴りかかった。
42 :
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[sage]:2012/10/13(土) 01:10:42.58 ID:cKfsXzpPo
──数分後──
ソイツは息も絶え絶えな状態で座っていた。
その正面には足を激しく震わせながらも立ってソイツを見下ろす男がいた。
「男さんもういいんすか?」
「ハァ、ハァ……」
男はそれに応えず踵を返して歩き出した。
しかしその足取りは覚束無く今にも倒れそうだった。
「あぁーこれもう何も聞こえてない感じかな?ちょっと、男さんを──まで倒れないように連れて行ってあげてくれない?そこまで行けばウチの姉さんいるからさ」
「オッケー、その代わりあとで、ね?」
「おうよ」
弟の彼女が急いで男に駆け寄り軽く支えてあげながら離れていく。
その姿を見て安心した弟はソイツに視線を移す。
「ボロボロっすねー、写メ取っていいっすか?いいっすよね?」
「ハァハァ……っざけんな!」
43 :
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[sage]:2012/10/13(土) 01:11:09.85 ID:cKfsXzpPo
ソイツは腕を振るが弟にはとても届く距離ではなくただ空を切った。
その姿を尻目に弟は電話をかける。
「冗談っすよ、それより俺今から連絡しなきゃいけないからちょっと黙っててくださいよ」
「友さーん!いたいた!こっちですよー!」
『おーそっちか今行く』
弟は電話を切り友がこっちへ向かってくるのを見つめていた。
「で、結果はどうなったの?」
「んー……引き分けって感じっすかね、でも男さんが最後まで立ってたからギリ男さんの勝ちって感じで」
「なるほどー」
友は弟の話を聞きながら時折ソイツの方を見ていた。
弟がひと通り話し終えると友はソイツの前まで行き、無言でそいつの横っ面を蹴った。
するとソイツはさっきまで顔はうなだれたまま弟達を睨んでいたが、ガクンと頭を落とした。
「おおぅ……トドメっすね」
「まぁ俺も今回に関してはムカついてたし、ちょっとぐらい、な?」
その時、丁度弟の彼女が帰って来た。
44 :
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[sage]:2012/10/13(土) 01:11:45.30 ID:cKfsXzpPo
「たっだいまー!」
「おーう、姉さんに預けた?」
「バッチシ!だからさ、早く行こ?」
「おう、その前にちょっと待って」
パシャっという音が響く。
「よしじゃあ行こうか」
「うんー」
「じゃあ友さん、俺はこれで」
弟はそう言って彼女と腕を組みイチャイチャしながらその場を離れて行った。
「ぐぬぬ……」
そこへ入れ替わるように許嫁が来た。
「っ!?友さん!一体どういうことですか!?何で彼が──」
「どういうことも何も、あの後男が来てソイツを殴り倒したんだよ」
「そんな……どうして……男さん……?何で男さんが……?」
45 :
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[sage]:2012/10/13(土) 01:12:13.53 ID:cKfsXzpPo
──同時刻──
先輩は段々と力が抜けて体重をかけてくる男を必至に支えて男の家へ向かっていた。
何とか男の家の前へ着いた時、男は一気に力が抜けてしまった。
急に全体重を掛けられた先輩は突然のことに驚き何とか倒れないようにするのが精一杯であった。
「男君……?」
先輩が心配そうな声で呼びかけるが、最早言葉を出す力も、目を開ける気力も無かった。
それを見た先輩は男がまた気絶してしまったと勘違いをして、必至に揺り起こそうとする。
しかし揺すっても全く起きる気配が無く、その内先輩の声が震え出していた
そうしている間に隣の家のドアが開く音がした。
出てきたのは男の幼馴染であった。
「行ってきまーす……ってうわぁ!?」
幼馴染は二人に気付き驚いて声をあげた。
先輩はその声を聞いて幼馴染の方へ顔を向ける。
男は声を聞いて幼馴染に気付くが身体は動かなかった。
46 :
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[sage]:2012/10/13(土) 01:12:43.41 ID:cKfsXzpPo
「え?ちょ、ちょっとどうしたの男!?怪我だらけじゃない!」
幼馴染は男に駆け寄り、先輩にどうして男がこうなっているのかを尋ねた。
「男はついさっき君の今の恋人と喧嘩して来た所だよ」
幼馴染は先輩の言葉を聞いてポカンとしていたが、徐々に言われた言葉を飲み込んで行った。
「え?私の今の?恋人?喧嘩?……って、まさか……」
「多分君の気づいた通りだよ、さっき弟から送られてきた画像もあるよ、ほら」
先輩が見せた画面にはあちこち腫れてわかりづらくなっているが、確かにソイツが写っていた。
「男はね、以前から君達の関係に気づいていたんだよ」
「え?……でも……え?……どうして……」
47 :
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[sage]:2012/10/13(土) 01:13:20.48 ID:cKfsXzpPo
「どうして?どうしてだって?分からないのか?」
友は睨むような目で許嫁を見据える。
「彼は、男君は、君のことが、いや、君と許嫁さんの事が好きだからに決まってるじゃないか!」
先輩は語気を荒げる。
「あいつはお前らが浮気してると知ってもそれがお前らにとって幸せならと言ったんだ!」
友は拳を握り締めながら強く言う。
「それほど君達の事を心から考えていてくれる男を、何で裏切った!?」
先輩は涙を流しながら叫ぶ。
「私だって男の事が好きだ!だけど男が君達の話をしている時の顔を見て、私は叶わないと里って身を引こうと思ってた!」
先輩は零れ落ちる涙をそのままに思いを放つ。
「なのに!どうしてその君達が男を裏切る!?どうして!?」
ここまで言うと先輩はその場に座り込んでしまう。
幼馴染は何も言わずただ耳を塞いでうずくまり涙を流していた。
それは、遠く離れた場所にいる許嫁も同様であった。
男は身体が動かないまま、目が開かないまま、ただジッとその言葉を聞いていた。
その後、先輩は何時の間にか消えていた幼馴染を来にせず、男のポケットから鍵を取り出し鍵を開けて家の中へと消えていった。
友は泣きじゃくる許嫁を背中にその場を後にした。
48 :
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[sage]:2012/10/13(土) 01:13:53.73 ID:cKfsXzpPo
〜〜男宅〜〜
男は前と同じようにベッドに寝かされ、身体が動くようになるよりも先に本当に眠ってしまっていた。
次に目が覚めた時にはベッドに上半身を預けるようにして寝ている先輩の姿と
テレビを付けてゲームをしている友の姿が目に入った。
「……?」
「よお起きたか、もう夕方だぞ」
「ん……あぁ……」
何とか起き上がれる程度には回復した身体だったが、動くと痛むのか少し動く度に苦悶の表情を浮かべていた。
男が動いたせいか、先輩も目覚めた。
「ん……」
49 :
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[sage]:2012/10/13(土) 01:14:20.19 ID:cKfsXzpPo
「先輩も起きたか……じゃあもう俺が看病する必要も無いから帰るわ」
「おう……あれ?ってかお前どうやって入ったの?」
「いや、鍵開いてたちょっとそのままお邪魔しちゃいました的な……?」
「お前……まぁいいや、今日はありがとうな」
「いいって事よ、じゃあな」
そう言って友は階段を降りて玄関へ向かう。
友のお邪魔しましたという声と共にドアが開く音が響く。
しかしドアの閉まる音が響かず、不思議に思った男は友を呼ぶが返事がない。
「私が見てくるよ」
と先輩が言って先輩も階段を降りていった。
数分後、やっとドアが閉まる音が響いたが、階段の軋む音が激しく
疑問に思う男は部屋のドアを見つめる。
ドアが開くと最初に幼馴染と許嫁が入って来て、その後ろから友と先輩が入って来る。
二人の目鼻は赤く、男と目を合わせずただ下を向いていた。
男も友も先輩も喋らず、無言がただ続いた。
50 :
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[sage]:2012/10/13(土) 01:15:22.40 ID:cKfsXzpPo
「あの……」
それを破ったのは許嫁だった。
「本当に……ごめんなさい……」
幼馴染は姿勢を正しまっすぐに男の目を見てから深々と頭を下げた。
「私も……ごめんなさい……」
それに呼応するように幼馴染も搾り出すような声で言う。
そのまま二人はただ泣きながら謝罪を繰り返していた。
友も先輩も何も言わずその姿を見つめていた。
男はその姿を見て、身体を起こすのも辛い状態で立ち上がり二人に歩み寄った。
「俺の方こそ、ごめん……俺が優柔不断だったから、二人は悪くないんだ……」
その言葉を聞いて二人は更に大きな声で泣いた。
男はそれを聞いて静かに泣いていた。
先輩は目を閉じ涙を流し何を思うのか、ただ黙っていた。
「…………」
三人が泣き止むと男は深呼吸をして言う。
51 :
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[sage]:2012/10/13(土) 01:15:49.81 ID:cKfsXzpPo
「前みたいに二人に接する事が出来るか分からない……でも、戻ってきてくれてありがとう」
52 :
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(神奈川県)
[sage]:2012/10/13(土) 01:16:18.99 ID:cKfsXzpPo
──1か月後──
「男!男!起きろー!」
「男さん、朝ですよー」
男の部屋に二つの声が響く。
どちらも女性の声であった。
一人は活発そうな、幼さを残した面立ちを、もう一人は大人しそうな、綺麗な面立ちをしていた。
「男―!!」
「朝ですよー!!」
段々と二人の声は大きさを増していく。
その声の向けられた先にあるベッドから男が顔を出す。
「うるさいなぁ、今何時だと思って……7時40分!?」
男は時計を見て飛び起きる。
53 :
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(神奈川県)
[sage]:2012/10/13(土) 01:16:57.27 ID:cKfsXzpPo
「飯!飯は!?」
「そんなの食べてる時間無いでしょ!」
「一応サンドイッチを作ってあるので通学中に……」
「おお、ありがとう!」
「それじゃあ私たちは先に外に出てるからねー」
そう言って幼馴染と許嫁は階段を降りて行く。
男は急いで着替えて二人を追って家を出る。
家の外には幼馴染と許嫁だけでなく、友と先輩、そしてその弟もいた。
「遅えぞー」
「悪い寝坊だ!」
「まぁまだ間に合うから大丈夫焦んなくても大丈夫だよ男君、ほら寝ぐせが……」
先輩が男の頭を弄ると男は少し過剰気味に後ずさる。
「わっ……ちょ、い、いきなりやめてくださいよ先輩!」
54 :
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(神奈川県)
[sage]:2012/10/13(土) 01:17:32.16 ID:cKfsXzpPo
その姿を見た弟は何かを察し友に耳打ちする。
「友さん友さん、これってまさか男さんは姉さんの事も……?」
友も気づいていたのかこれに答える。
「多分、な……懲りねえな、アイツ……」
呆れたように見つめる友と弟に気付かず
また以前のように笑う男の姿があった。
55 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/10/13(土) 01:19:36.88 ID:cKfsXzpPo
終わり
書いてる途中で何か色々可哀想になっちゃって全員ハッピーエンドって形になったと思ったら男がクズになって終わった
寝取られとかファック何で毎回泣き寝入りするんだよ報復とか復讐とか仕返しとかそこまでやってくれるなら好きなのに…
陵辱っぽいタイトルと表紙で中身は寝取られとかマジ止めてください
56 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)
[sage]:2012/10/13(土) 01:24:46.95 ID:FNJ7S3CT0
おつ
とりあえず、姉と弟と友意外クズだったね
もうこれ全然ハッピーエンドじゃないけどさ
あと処女厨が湧きそう
57 :
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[sage]:2012/11/12(月) 19:57:29.89 ID:u6uLMu9Ao
頑張った。乙。
58 :
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[sage]:2012/12/02(日) 16:51:04.77 ID:enLCCufD0
おつカレー
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