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【魔法少女まどか☆マギカ】神名あすみ〜6人目の少女〜part1【SS】 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/10/20(土) 20:19:17.25 ID:VNPhlMIl0
立ったらはっていきます

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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
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全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713798788/

【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
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ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
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2 : [sage]:2012/10/20(土) 20:20:30.30 ID:VNPhlMIl0
☆このSSはねらーさんたちが創作した架空のキャラクター
 「神名あすみ」が出てきます
 「誰?」という人は、検索してみてください

☆シリアス長編です
 以下目次


 〜目次〜


 プロローグ     

 第一章「魔女になりたい」
第一部〜第十一部

 第二章「ワルプルギスの夜さえ」@

 第三章「ワルプルギスの夜さえ」A

 第四章「笑顔を見せて」@

 第五章「笑顔を見せて」A

 エピローグ


☆あすみのほかにもオリジナルキャラが出てきますが、第一章だけです
 第一章は結果的にオリキャラメインみたいになってしまいましたが、
 あとの章でしっかりあすみも本領発揮します

☆今回の投稿ではプロローグと第一章のみです
 書きあがり次第、順次アップしていく予定です
3 : [sage]:2012/10/20(土) 20:23:54.65 ID:VNPhlMIl0
プロローグ     


「僕と契約して魔法少女になってよ」

 契約すると願いが一つ叶う
 その代償として
 魔法少女としての宿命を背負う
 
 魔法少女として希望を振りまき
 魔女となって絶望を撒き散らす
 それが少女たちの宿命


 明日を信じようとした少女がいた
 明日を信じられない少女がいた
 明日を信じさせようとした少女がいた


 運命に翻弄されながらも「明日」を紡ぐ 
 そんな少女たちの物語
4 : [sage]:2012/10/20(土) 20:25:53.39 ID:VNPhlMIl0
第一章「魔女になりたい」


第一部 


首都圏の某小学校に通う二人の少女――
一人は神名あすみ
もう一人は河城ゆい
二人とも12歳
幼馴染で大の仲良しだ

しかし、二人は学校で話すことはない
それはクラスが違う、ということだけが原因ではなかった

    ・
    ・
    ・

あすみの両親はあすみが幼い頃に離婚し、あすみは母子家庭で育つ
苦しい生活――そんな中、過労であすみの母は急逝
父親は新しい家庭を築いていてあすみの引き取りを拒否した
親戚中をたらい回しにされるあすみ


今、あすみは遠い親戚に引き取られている
しかし、そこで義母から虐待を受ける日々
見てみぬふりの義父
次第に表情を失っていくあすみ――
5 : [sage]:2012/10/20(土) 20:26:46.61 ID:VNPhlMIl0
いつしか学校でも誰とも話さなくなった
そんなあすみを腫れ物を触るように接する教師とクラスメートたち


「あの子と話すと根暗が移るよ」


かすみがクラスの友達から言われた言葉
それでもあすみと話そうとするゆいを止めたのは他ならぬあすみ自身だった


『ゆいちゃんを巻き込みたくない』


そう心配してのことだった
学校では話さない
その代わり二人はかすみの家でその分よくおしゃべりした


ゆいはいつもあすみに話をあわせてくれる
何でも気楽に話せる
一緒にいると楽しい


あすみにとってゆいは唯一親友と呼べる存在であり、世界とのつながりであった
もしゆいがいなかったら、あすみはこの世界を呪いながら生きていたであろう
家庭環境に恵まれず心を閉ざしかけているあすみに残された唯一の光――
そうあすみは感じていた
6 : [sage]:2012/10/20(土) 20:27:46.17 ID:VNPhlMIl0
いつものようにゆいの部屋で二人でテレビを見ている
あすみの好きなV系バンドのライブ映像が流れている
華やかに彩られたステージ上
黒のゴシックロリータファッションを纏ったボーカルが観客を煽る
負けじと返す観客
熱気がテレビを通して伝わってくる


あすみ(私もいつかああいう服を着てライブに行きたいなあ)


ふと気がつくとゆいがあすみを見ている


あすみ「どうしたの?」

ゆい「今度さあ、あのバンドのライブ見に行かない?
   私、一度ああいう格好してみたかったんだ」

あすみ「……え?」


ゆいにそんな趣味があったのだろうか?
いや、ゆいのことだ。私のことを想って言ってくれたのだろう
その気持ちがうれしい
7 : [sage]:2012/10/20(土) 20:28:35.55 ID:VNPhlMIl0
あすみ「でも私、お金もってないし……」

ゆい「大丈夫!私が誘ったんだから私が出すよ。だから今度服を見に行こうよ!」

あすみ「……うん」


いつもゆいちゃんは私のことを気遣ってくれる
私が今考えてることを見抜いて一番ほしいものをくれる
私はいつもゆいちゃんから貰ってばかりだ……
いつかゆいちゃんにお返ししなきゃ
でも……私は何ももっていない
そんな私に何が返せるだろう





             ―――――― 第一部 完
8 : [sage]:2012/10/20(土) 20:30:36.11 ID:VNPhlMIl0
第二部 


ゆいちゃんには彼氏がいる
自分のことでは自慢をしないゆいちゃんが唯一自慢するのが彼氏のことだった


あすみ「了君ってカッコいいよね。いいなあ」

ゆい「いいでしょ〜?これだけはたとえあすみちゃんでも譲れないよ」


お世辞ではなく、客観的に見てもゆいちゃんの彼氏は本当にカッコいい
性格も良く男女問わず人気がある
名前は榊了(さかきりょう)


あすみ「ゆいちゃんもいい子だし、お似合いのカップルだね」

ゆい「私はそんな大したことないよ」

あすみ「大したことあるよ!」

ゆい「そうかなあ?えへへ、ありがとう☆」


照れくさそうにはにかむゆい


ゆい「あすみちゃんも了君も私にはもったいないよ
   こんなに幸せでいいのかな」

あすみ「当然!だってゆいちゃんだもん」


ゆいちゃんが幸せなら私も幸せ
ゆいちゃんがうれしいなら私もうれしい
喜びも悲しみもゆいちゃんとなら分かち合える……そんな気がする
9 : [sage]:2012/10/20(土) 20:31:35.75 ID:VNPhlMIl0
ゆい「あすみちゃん、この前の話覚えてる?」

あすみ「え?」

ゆい「もう!覚えてないの?
   この前約束したでしょ、一緒にライブに行くって」


頬を膨らませて怒ったふりをするゆいちゃん
そうだった……すっかり忘れていた


あすみ「本当に……いいの?」

ゆい「当然でしょ!だから服買いに行こう」

あすみ「え、今日?」

ゆい「うん、もうお店調べてあるんだ
   アメシストっていうお店が有名なんだって」


ゆいは決断をすると行動が早い
ゆいに引かれるようについていくあすみ


    ・
    ・
    ・
10 : [sage]:2012/10/20(土) 20:32:39.46 ID:VNPhlMIl0
『コスチューム&ゴシックロリータドレス専門店 アメシスト』


二人が緊張しながら店内に入る
ところ狭しと服が展示されている
黒だけでなく白やピンクを基調にしたかわいらしい服もあった


あすみ「やっぱり私は黒がいいなあ」


気にいった服を試着させてもらう
初めて着るゴスロリ服……どうかな?


ゆい「うん、あすみちゃんは体の線が細いからすごくよく似合ってるよ!」


ゆいちゃんの言葉に恥ずかしさとうれしさが同時にこみ上げる


あすみ「……じゃあ、私はこれで
    次はゆいちゃんの番だよ!」

ゆい「私は自信ないから見ないで……」

あすみ「だめだよ。私も見せたんだからね」


ふふふっと少し意地悪そうに笑うあすみ
11 : [sage]:2012/10/20(土) 20:33:24.98 ID:VNPhlMIl0
ゆい「笑わないでね」

あすみ「笑わないよ」


選んだ服に着替えるゆい
白いナース服だった


ゆい「私、看護師さんになりたいんだ
   ……変じゃない?」

あすみ「ゆいちゃんの清楚で優しそうな雰囲気にぴったりだね!」

ゆいは照れ笑いしながらも気に入ったようだ
楽しいひと時を過ごす二人
この時間がずっと続くといいな


    ・
    ・
    ・
12 : [sage]:2012/10/20(土) 20:34:19.21 ID:VNPhlMIl0
買い物も終わって二人は家路についた


ゆい「楽しかったねー!
   それにしてもあすみちゃんのゴスロリはかわいかったなあ」

あすみ「ゆいちゃんだってかわいかったよ」

ゆい「ありがとう。じゃあ、次はライブだね」

あすみ「うん!」


その時、ふと何かがあすみの目にとまった
道端に落ちている見慣れないもの――
装飾された黒い宝石のようなものが自立するように立っていた


あすみ「あれ何だろうね」

ゆい「何だろう?ちょっと見てみようか」
  

二人で近づくとそれが明滅を始めた
歪んでいく空間――
13 : [sage]:2012/10/20(土) 20:35:31.96 ID:VNPhlMIl0
気がつくと二人は奇妙な空間の中に飲み込まれていた
わけがわからず震えているあすみを抱きしめるゆい


ゆい「大丈夫、すぐに元に戻るよ」


そう言うゆいも震えている


(しっかりしなきゃ)


自分に言い聞かせる


その時、背後から気配を感じ身構える二人
そこに現れたのは一人の少女だった
オレンジのワンピース
そのうえに黒いマントを羽織り頭にはとんがり帽子


あすみ「……魔女?」
 

彼女が頭に被っている帽子といい服装といい、漫画の中に出てくる魔女そのままだ
そして、よく見るとその後ろには白くてかわいらしい猫みたいな生き物がいた
14 : [sage]:2012/10/20(土) 20:37:18.60 ID:VNPhlMIl0
少女「あなたたち運がいいわね。私の後についてらっしゃい」


そう言って奥へと進んでいく少女――


現実感のない、うす暗い空間を進んでいく
少女の後ろを二人は黙ってついて行った


少女「……来た」


少女がつぶやく
いつのまにかその手には魔女が持っているような杖が握られていた
少女が杖を振りかざす


少女「結界を張ったからそこから動かないでね」


小さな炎が上がり辺りが照らされる
よく目を凝らすと辺りには人形や積み木の破片、破れたポスターなどが散乱していた


あすみ「……犬?と、あれは……人なの?」


部屋の向こう側には犬のようなものが数匹こちらを向いている
その後ろには人の形をしているが、明らかに異形な何かがいた
15 : [sage]:2012/10/20(土) 20:38:55.55 ID:VNPhlMIl0
白猫「人の形をした方が魔女で、犬のようなのがその魔女から分裂した使い魔さ」

ゆい「魔女?使い魔?」

あすみ「あっ」


少女がにじみよったところに使い魔が襲い掛かってきた
その瞬間、少女の杖が光り使い魔は一刀両断
そのまま少女は魔女に突っ込む


ガキィィン


甲高い音が響いた


少女「……くっ」

白猫「魔女も防御結界が張れるタイプみたいだね
   強い結界じゃないが、むやみに突っ込んでもはじかれるだけだよ」

少女「少しの間、二人に張った結界を解くわ
   だから二人は私の後ろにいて」

二人「はい」

白猫「どうするんだい?」

少女「力押しよ」
16 : [sage]:2012/10/20(土) 20:40:02.84 ID:VNPhlMIl0
辺りが再び暗くなった
少女が両手で杖を持ち力を込める
すると少女を中心に大気が渦を巻いた


少女「帰りなさい、あなたのいるべき場所へ」


少女が言うと同時にごうっという音と熱気が流れてきた


魔女「グォォォ」


気が付くとすでに炎の柱が魔女を包んでいた


    ・
    ・
    ・   
   
17 : [sage]:2012/10/20(土) 20:40:51.59 ID:VNPhlMIl0
やがて静かになり辺りが元の光景に戻った


白猫「魔女は燃え尽きたようだね」

少女「そうね」


そう言うと少女は床に落ちていた先程の黒い宝石のようなものを拾いあげた


白猫「もう大丈夫。魔女はこの子が倒したよ」

あすみ「魔女って何?」

少女「見てのとおり、魔女は人々に危害を加えようとする危険な存在よ
   あなたたちがこの空間に取り込まれたのもあの魔女の力によるもの」

白猫「そう、魔女は絶望を撒き散らす忌むべき存在
   そして、魔法少女はその魔女を倒し希望を振りまく存在
   君たちは魔法少女に助けられたんだよ
   この子にね」


唖然とする二人に加えて言う


白猫「そういえば紹介がまだだったね」

QB「僕の名前はキュゥべえ
   二人とも僕と契約して魔法少女になってよ!」





                              
             ―――――― 第二部 完
18 : [sage]:2012/10/20(土) 20:42:18.30 ID:VNPhlMIl0
第三部 

    
その少女は三浦しをりと言った
この近くの中学に通う三年生らしい
二人はあの後招かれてしをりの部屋に来ていた


しをり「いきなり巻き込まれてわけがわからなかったでしょう
    説明するわね」


そう言うとしをりはオレンジ色に輝く宝石を取り出した
19 : [sage]:2012/10/20(土) 20:43:11.79 ID:VNPhlMIl0
しをり「これがソウルジェム」

しをり「QBに選ばれた女の子が契約によって生み出す宝石よ
    魔翌力の源でもあり、魔法少女であることの証でもあるの」

QB「僕は君たちの願い事をそれぞれの資質に応じて叶えてあげる
   たとえそれが『奇跡』と呼ばれるようなことだって決して不可能じゃない」

しをり「でもそれと引き換えに出来上がるのがソウルジェム
    この石を手にした者は魔女と戦う宿命を課されるの」

ゆい「魔女は人々に危害を加えようとする危険な存在……なんですよね」

しをり「そう。不安や猜疑心を煽ったりして自殺や殺人事件を引き起こす
    理由のはっきりしない事件はかなりの確率で魔女の呪いが原因なの」

あすみ「どうして誰も気付かないんですか?」

QB「魔女は常に結界の奥に隠れて決して人前には姿を現さないからね」

ゆい「結界ってさっき私たちが迷い込んだ場所のことですか?」

しをり「ええ。あれに飲み込まれた人間は普通は生きては帰れないわ
    魔法少女になれば魔女と戦う力が手に入るけど、常に命懸けよ」


実は危ないところだったのだと聞かされ、二人は改めて冷や汗が出てきた
20 : [sage]:2012/10/20(土) 20:44:00.63 ID:VNPhlMIl0
しをり「だから、あなたたちも慎重に選んだほうがいい
    願いが叶うチャンスでもあるけど、それは死と隣り合わせなの」


命を懸けてまで叶えたい願い――


どうしようもない、と諦めていた日々の暮らしの中に埋没していた
流されるまま生きてきたあすみはそんなこと考えたこともなかった


あすみ「……」

ゆい「あすみちゃんは何か叶えたい願い事があるの?」

あすみ「……よくわかんないよ」

QB「もししをりがいいならしをりの戦いぶりを二人に見せてもらって決めたらどうかな?」

しをり「そうね。魔女との戦いがどういうものか、その目で確かめたうえで決めればいいわ」



    ・
    ・
    ・
21 : [sage]:2012/10/20(土) 20:44:34.27 ID:VNPhlMIl0
あすみは帰宅するとすぐに布団に潜り込んだ
今日あったことを思い出す
魔法少女のこと、魔女のこと、契約のこと……

 
今日は色々なことがあった
いや、一日でありすぎた
人生のターニングポイントがこんなに分かりやすい形でやってきたのだ
何の前触れもなく突然に


あすみ(契約すれば幸せな人生を送れるのかなぁ)


今までの不遇な人生を変えたい
しかしそれは命を懸けてまで叶えるべき願いなのか


あすみ(明日から魔法少女体験コースか……)


あすみは複雑な思いを抱えながら一夜を過ごすのだった




――――――

――――

――
22 : [sage]:2012/10/20(土) 20:45:20.39 ID:VNPhlMIl0
次の日の放課後


三人が集まったのは街の郊外だった
そこはバブル期に開発の話が持ち上がり、バブルの終焉と共に放置された廃ビルが立ち並ぶ寂れた地域
昼間でも人通りが少ない
この間も自殺者が出たところがすぐ近くにある
魔女はそういう場所を好むらしい


ソウルジェムを手にしたしをりを先頭に歩く三人


あすみ「そうやって魔女をさがすんですか?」

しをり「そう。基本的に魔女探しは足頼みよ」

 
意外と地味だな、と二人は思いつつ歩く
三十分ほど歩いたところでしをりがつぶやいた


しをり「反応ありね」

QB「この反応は使い魔のものじゃなく魔女のものだね」

しをり「二人とも、覚悟はいいかしら?」

二人「はい!」
23 : [sage]:2012/10/20(土) 20:46:06.49 ID:VNPhlMIl0
三人で廃ビルに入っていく
階段を上がったところで昨日と同じ感覚に包まれた
しをりが素早く変身する


しをり「二人とも離れないでね」


まだ見慣れぬ景色の中、慎重に歩を進める三人
奥へと進むとドアの付いた大きな部屋があった


しをり「この部屋にいるようね
    二人とも、念のため部屋に入ったら結界を張るからそこから動かないでね」

二人「わかりました」


しをりがドアに手をかける
中に入ると霧が一面に立ち込めている
これでは少し離れたらお互いの位置が確認できなくなるだろう
二人に結界を張るしをり


しをり「大丈夫、すぐ終わりにするから」

ゆい「気をつけて……」


奥の方へ向かって行くしをり
すぐに二人からは姿が見えなくなった
24 : [sage]:2012/10/20(土) 20:46:53.84 ID:VNPhlMIl0
しをり「……」


耳と目に魔翌力を集中するしをり
その目が光と人影のようなものを捉えた
その瞬間しをりの杖が光って伸びる


伸びた杖は敵を突き刺したかに見えた
しかし、しをりは全く手応えを感じなかった
その時、魔翌力を込めた左目の端っこに別の影がチラっと映った
反射的に体を捻りながら後ろに反らす
頬を何かが掠った気がした


しをり「……くっ」


頬を流れる血
しかし、今の攻撃でわかってきた
どうやら敵は複数いるようだ
使い魔の一人が光を霧にあてて大気光学現象をひき起こし幻を作り出す
私がそれに乗じて幻を攻撃すると別の使い魔がその隙に私を攻撃する、といったところだろうか

 
しをり「地味な攻撃だけど、一瞬の油断が命取りね」

しをり「結界が解けちゃうけど、やるしかないか
    ……すぐに終わらせるわ」
25 : [sage]:2012/10/20(土) 20:47:48.63 ID:VNPhlMIl0
しをりが魔翌力を込めて杖を振りかざす
しをりを中心にして部屋中に幾条もの炎の竜巻が上がる


「ウボァァァアアア゛ア゛ア゛」


使い魔のものであろうか、断末魔が聞こえた
熱で霧が晴れていく


しをり「あれが魔女ね」


部屋の最奥に隠れるようにしてそれはいた
頭だけ異様に大きく、逆に体は小さい
バランスの悪い姿をしていた


魔女が霧を噴出し始める


しをり「そうはさせない」


そう言うと同時に杖が魔女を捉えた
 

しをり「燃え尽きなさい」


再び炎が上がった
低い唸り声を上げながら燃える魔女


    ・
    ・
    ・
26 : [sage]:2012/10/20(土) 20:48:32.38 ID:VNPhlMIl0
やがて魔女の結界が消え失せ元の世界に戻った
あまりの圧倒ぶりに興奮気味にしをりの元に近づく二人


あすみ「すごかったですね!」

ゆい「ものすごくカッコよかったです!」

しをり「ありがとう」

QB「かなり強い魔法を使っていたけど大丈夫かい?」

しをり「そうね。消費魔翌力が大きいから心配だったけど……大丈夫だったみたい」

 
そう言いながらしをりは近くに転がっていた黒い石を拾い上げた


あすみ「あ、それ……」


以前似た物を二人は見ていた
前回の戦いの後もしをりはあの黒い石を拾っていた
二人が魔女の結界に閉じ込められるきっかけになったもの――
27 : [sage]:2012/10/20(土) 20:49:22.62 ID:VNPhlMIl0
しをり「これはグリーフシードといって、魔女を倒すと時々手に入るものなの」


そう言ってソウルジェムを取り出す
以前見た時より光は鈍り、濁りを宿している
ソウルジェムにグリーフシードを近づける
するとソウルジェムの汚れがグリーフシードに吸い取られていった


しをり「グリーフシードは魔翌力を使うとどんどん濁っていくの
    魔法を使うのはもちろん、日常生活を送っていく中でも少しずつ濁りがたまっていく
    だからそれをこうやって取り除いていかないといけない」


ソウルジェムが元通り光を取り戻す
それを見ながらしをりが言葉を続ける
28 : [sage]:2012/10/20(土) 20:50:26.74 ID:VNPhlMIl0
しをり「これが濁りきったらどうなるか、私は知らないけど……でも濁りきらせてはいけない
    それだけは本能的に分かるの。多分死んでしまうのでしょうね
    だから濁りきる前に魔女を倒してグリーフシードを手に入れないといけない
    だから魔法少女は魔女と戦わないといけないの」 

ゆい「魔法少女の宿命ってやつですね」

しをり「そう。あなたたちも魔法少女になればこの宿命を背負うことになる
    その覚悟が決まってからなって欲しいの」

あすみ「……はい」

QB「でもね、魔法少女になったからといって簡単に死んだりはしないよ
   体を魔翌力で強化できるし、怪我をしても回復魔法を使えばいいわけだし
   今までできなかったことができるようになることもある」
   それは魔法少女だけの特権だよ」

しをり「まあ、危険を冒すんだからいいことだってないとね」


そう言って笑顔になるしをり
 

しをり「じゃあ、今日はここまでにしましょう」


    ・
    ・
    ・
29 : [sage]:2012/10/20(土) 20:51:18.84 ID:VNPhlMIl0
帰宅中の二人


あすみ「ゆいちゃんは今日の体験コースどう思った?」

ゆい「最初はただ怖かったよ。でもしをりさんすごく強くてカッコよかった
   私もああなれたらなぁって思っちゃった」

あすみ「私もだよ!それお願いにしちゃう?」

ゆい「ふふふ、それもいいかもね」


二人で笑いあう
ひとしきり笑った後、ゆいは真面目な顔であすみに質問した


ゆい「あすみちゃんは何か願い事があるんだよね?」

あすみ「……うん」

ゆい「やっぱり家族とか学校のこと?」

あすみ「そうだね。あんまりいい環境じゃなかったかな」

ゆい「それを変えたい?」

あすみ「できれば変えたいけど……命を懸けてまでってなるとそうなのかなって」

ゆい「そうだよね」

あすみ「今の私にはゆいちゃんがいるもんね」

ゆい「あすみちゃん……」
30 : [sage]:2012/10/20(土) 20:52:28.74 ID:VNPhlMIl0
じっと見つめあう二人
しばし沈黙後今度はあすみが質問した


あすみ「ゆいちゃんは何か願い事ないの?」

ゆい「う〜ん、そうだなー」


二人がブライダルギャラリーの前に差し掛かった
ディスプレイには華やかな純白のウェディングドレスが飾られている
それを見ながらゆいが言う


ゆい「やっぱりお嫁さんになりたいかな」

あすみ「了君の?」

ゆい「そうだといいなぁ」

あすみ「QBにお願いするまでもないでしょ」


こんなゆいちゃんを見ているとつい顔がほころんでしまう


あすみ「でもやっぱり女の子の夢だよね」

ゆい「あすみちゃんもゆくゆくは着るんだよ!」


そうかなぁと思いつつ自分の花嫁姿を想像してみる
うん、悪くはないかな……
31 : [sage]:2012/10/20(土) 20:53:19.81 ID:VNPhlMIl0
あすみ「えへへ」


それを見てゆいもニヤニヤしている


ゆい「いい人いるの?」

あすみ「知ってて言ってるんだよね?」ピキッ

ゆい「ごめんね」


キャッキャウフフ……


ゆい「……でももし魔法少女になったら着る前に死んじゃうのかな」 


そうかもしれない
でもQBは「そう簡単には死なない」と言っていた
揺れる心……


それとは別に二人の目にはしをりが華麗に戦う姿が焼きついていた
「ああなれたらなぁ」という思いは憧れとなって二人の心を捉え始めていた





 
             ―――――― 第三部 完
32 : [sage]:2012/10/20(土) 20:54:37.21 ID:VNPhlMIl0
第四部 


ここ最近の魔法少女体験コースは使い魔ばかりだ


しをり「使い魔はグリーフシードを落とさないのよね」


文句を言いながらも次々と使い魔を倒していくしをり
使い魔程度では炎を使わずに杖を剣に変えて一刀両断で倒してしまうことも多い
しをりの戦いぶりは見映えがいい
無駄な動きが一切なく美しさすら感じられる
二人がそれに夢中になるのに時間はかからなかった


あすみ「ねぇQB、私たちも契約したらしをりさんみたいにカッコよくなれるのかな?」

QB「それは魔法少女としての素質と願い方によるかな
   しをりは素質は高くなかったけど、戦いに向いた願いをかけたからね」

あすみ「私たちの素質って高い方?それとも……」

QB「あすみはまあまあ高い方だよ。ゆいは高くはない……残念ながらむしろ低い方だ
   だからゆいは願い方を工夫してカバーするしかない」


明らかにがっかりしているゆい
33 : [sage]:2012/10/20(土) 20:55:16.24 ID:VNPhlMIl0
ゆい「……願い方を工夫するって?」

QB「例えば素質のある子がある人を生き返らせる願いをかけてその願いが叶ったとする
   戦いのために願いを使わなかったその少女は魔女と戦う時どうなるか?」

QB「実は魔法少女には元々魔女と戦うだけの力が備わっているんだ
   願いに応じてそれが刀になって現れたり、銃になって現れたりする
   つまり、特に願わなくても魔女に対抗するための武器はついてくるんだ」

QB「何もしなくてもついてくるのに、わざわざ願いを使って戦い向きの力を手に入れるんだから強くて当たり前さ
   あとはどんな力にするのかさえ間違わなければ大抵の魔法少女には負けないくらいには強くなれるよ」

ゆい「……つまり、私がしをりさんみたいに戦うには戦い向きの願い以外はできなくなるってことだね」

あすみ「だったら契約なんてしない方がいいんじゃない?」

ゆい「うん、私が叶えられる願いなんてたいしたことなさそうだし」


ゆいがため息をつく
34 : [sage]:2012/10/20(土) 20:56:07.15 ID:VNPhlMIl0
QB「……たしかに、ゆいの場合何か叶えたいことができたとしても叶えられない可能性がある
   例えばゆいが人を生き返らせる願いをかけたとする
   その願いは叶えられるか?」

QB「普通のやり方ではその願いは叶えられないだろうね
   でも叶える手段がないわけじゃない」

QB「あすみさえ協力してくれればね」

あすみ「私が?……それって」

ゆい「もういいよ」


ゆいがあすみの言葉をさえぎった


ゆい「私、魔法少女なるって決めたわけじゃないから……だからもういいよ」


そこで会話が途切れると、使い魔と交戦中のしをりの方へと視線を移した
35 : [sage]:2012/10/20(土) 20:56:52.43 ID:VNPhlMIl0
ヒュッ サク


 
猛スピードで兆弾する標的を苦もなく捕捉し一撃で捕えるしをり



ゆい(しをりさんも素質は高くなかったんだよね)

ゆい(なのになんで魔法少女になったのかな?)



    ・
    ・
    ・


しをり「私は魔女に憧れていたの」

二人「……え?」

しをり「魔女といっても私が倒しているあの魔女じゃないわ
    よく漫画とかファンタジー小説とかに出てくる魔法使いの方」

二人「ああ……」


二人の反応を見てふふふっと笑うしをり
36 : [sage]:2012/10/20(土) 20:57:45.75 ID:VNPhlMIl0
しをり「私は小さいころから御伽噺や空想の話が好きだった
    だからQBにこう言ったの
    『世界を御伽噺みたいにして』って

しをり「そうしたらQBに『それは無理』って言われたわ」

QB「世界の改変はさすがにね」

しをり「ええ、私程度の素質じゃね
    でも私は諦めなかった
    『ならせめて私を魔女にして』ってお願いしたの」

あすみ「ああ、だから魔女みたいな格好なんですね
    能力が炎なのもそれでなんですね」

しをり「そう。他にも氷とか電気みたいな技が使えると戦いの幅も広がるんでしょうけどね」

あすみ「その願いなら炎以外も使えそうな気がしますけど……」


言いにくいため言葉を濁してしまったが、やはり資質不足が原因だろうか

 
QB「しをりの資質でもそのくらいはできたはずだけどね」


QBがあすみの意を汲んで回答してくれたが、その答えは意外なものだった
37 : [sage]:2012/10/20(土) 20:58:31.09 ID:VNPhlMIl0
あすみ「えっ、じゃあなんで?」

しをり「わたしが炎だけでいいって願ったの
    より強い力を得るためにね」  

あすみ「どういうことですか?」

しをり「資質が少し不足しているけど叶えたい願いがある時や、より強い力を得たい時にそれを補う手段があるの」

ゆい「えっ?」


ゆいが強く反応した
38 : [sage]:2012/10/20(土) 20:59:22.30 ID:VNPhlMIl0
しをり「どうやらゆいちゃんは何かあったようね」

ゆい「実は私、QBから素質が低いって言われたんです
   だから叶えたい願いが叶わないかもしれないって」

しをり「このやり方はあくまで少し補うだけよ
    不足分が大きい時は使えないわ」

しをり「それでも話を聞く?」


魔法少女なると決めたわけではない
が、一方で強い憧れも消えてはいない


ゆい「……聞かせて下さい」

しをり「わかったわ」


そう言うとしをりはノートを取り出した


しをり「QBに願いをかける時に条件付けや期限付けをするの
    そうやって制限を設けることである程度の不足は補えるわ」

しをり「いくつか種類があるからこのノートを見て」
39 : [sage]:2012/10/20(土) 20:59:54.19 ID:VNPhlMIl0
 ――――――  しをりのノートより  ――――――
 


『条件・期限のまとめ』



              停止条件型=条件成就時に術が発動
             /
          制約型  
         /   \  
        /     解除条件型=条件成就時に術が消滅  
       /            
  ・条件付け
       \            
        \     交換条件T型=等価交換
         \   /
          交換型            
             \
              交換条件U型=制限交換




  ・期限付け→条件と併用されることも        
 

             ―1―
 ――――――――――――――――――――――――――――――


典型パターン

 停止条件:○○した時に××して
 解除条件:願いが叶うまでは○○させて
 等価交換:○○するから引き換えに××して
 制限交換:本来なら○○できるはずなのにそれをしないのと引き換えに××して


特徴・例

 停止条件:例えば「相手に自分の術のことを話した時」など
      制限としての条件をクリアーした場合のみ発動
      一番ポピュラーな方法

 解除条件:目的が達成されると能力が消滅し、二度と使えなくなる
      願いを叶えるのが非常に難しい時に使われることが多い
       
 等価交換:「すでに持っているもの」を代償にした引き換え
      上記の「○○する」というのは行動ではない(それだと停止条件に近くなる)
      「叶えたい願いがある時」向き

 制限交換:的を絞って専門化することで、より強い力を発揮できる
      「より強い力を得たい時」向き



            ―2―
 ――――――――――――――――――――――――――――――
40 : [sage]:2012/10/20(土) 21:00:49.92 ID:VNPhlMIl0
QB「しをりの炎は制限交換型だね」

しをり「私は最強の炎使いになりたかったの
    それこそ、炎以外の魔法は使えなくてもいいってくらいにね」


ただでさえ戦い向きの願いなのに、さらに条件付けまでしている
どうりで強いわけだ
 

ゆい「……QBと契約したことを後悔してないですか?」

しをり「いえ、むしろ感謝してるわ
    だって私はQBのおかげで憧れの魔女になれたんだもの」


そうだろう、と思う
戦いぶりを見ていればわかる
魔女と戦っている時のしをりさんは本当に輝いている
こっちが楽しくなるくらいだ
当人はもっと楽しいだろう
41 : [sage]:2012/10/20(土) 21:01:31.40 ID:VNPhlMIl0
しをり「ゆいちゃんは願い事が見つかったの?」

ゆい「いえ、まだ……QBに素質が低いって言われただけで……
   でも、もししをりさんみたいにカッコよくなれたらいいなとは思いますけど」

しをり「ありがとう
    私も素質が低かったから工夫したのよ」

しおり「参考になったかしら?」

ゆい「はい」

しをり「願い方を工夫すれば本来叶えられないはずの願いが叶えられるかもしれない
    それを知っているだけで違うものね」

しをり「それで、体験コースは続ける?」


ゆい(私は……憧れはするけどしをりさんみたいに戦いを楽しむのは難しいかな
   でも、もしかしたら近いうちに本当に叶えたい願いが見つかるかもしれない)


ゆい「……続けてもらっていいですか?」

しをり「構わないわ。私も楽しいし」

QB「話はうまくまとまったようだね」

QB「じゃあ、僕は行くところがあるから」

しをり「じゃあ、今日はここまでにしましょう」



――――――

――――

――
42 : [sage]:2012/10/20(土) 21:02:03.61 ID:VNPhlMIl0
(帰宅途中)


ゆい「ごめんね、気を遣わせちゃって
   『もういいよ』って大きな声だしちゃったし」
 
あすみ「気にしないで
    ゆいちゃんは大丈夫?」

ゆい「しをりさんの話を聞いて少し落ち着いたから大丈夫だよ」

あすみ「そう。それならよかった」

あすみ(そういえば、あの時QBは何て言おうとしたのかな?)


    ・
    ・
    ・
 
(同時刻)


QB「きゅぷい」


QBの視線の先には男の子がいた
夕暮れ時の風が心地よい
季節が変わろうとしている


QB(……下準備は十分できた
   そろそろ実行に移す時だね)


夕闇が男の子を、そしてあすみたちを包もうとしていた






             ―――――― 第四部 完
 
43 : [sage]:2012/10/20(土) 21:03:29.51 ID:VNPhlMIl0
第五部 


いつものように体験コース中の三人


あすみ「今日はQBいないんですね」

しをり「そうね。最近ちょくちょくいなくなるの
    他の候補の子を探してるのかしら」


その日、三人は街中を捜索していた
郊外はあらかた探索しつくしていたためだ
もう一時間は探したが、魔女の気配は一向にない


あすみ(やっぱり街中はあんまりいないのかなぁ)


そう思っている矢先、QBからテレパシーが入った
44 : [sage]:2012/10/20(土) 21:04:15.83 ID:VNPhlMIl0
QB「しをり、魔女だ!今すぐ来てほしい」


しをりが場所を確認する
さほど遠くないところだった


あすみ(街中でもでるんだ)


わりとすぐに現場に着いた
魔女が事故を引き起こした直後みたいだ
救急車や警察はまだ到着していない
大通りでタンクローリーが横転し、後続の車が玉突き事故を起こしていた
大破している車もある
かなり大きな事故だった


しをり「こっちね」


そう言いながら現場脇を走る
向かった先にQBがいた
45 : [sage]:2012/10/20(土) 21:04:45.28 ID:VNPhlMIl0
QB「しをり、またいつ魔女が次の惨事を引き起こすかわからない
   君にはすぐに魔女を倒して欲しい」

QB「二人はここに残った方がいい
   見てのとおりこの魔女の力は強力だ
   しをりについて行くのは危険すぎる」

しをり「わかったわ。二人はここに残って
    私はすぐに魔女を倒して戻ってくるわ」

二人「わかりました」


近くで待機する二人
QBもなぜか残っている


あすみ「QBはしをりさんのところに行かないの?」
 
QB「僕には僕の仕事があるからね
   二人ともちょっといいかい?」
46 : [sage]:2012/10/20(土) 21:05:18.87 ID:VNPhlMIl0
そう言うとQBは歩きだした
QBについて行く二人
事故現場の中を分け入っていく
聞こえてくる唸り声


あすみ「……っ」


思わず耳をふさぐあすみ


『魔女は絶望を撒き散らす存在』


QBの言葉が蘇ってきた
そのQBの後についていく


QBが歩みを止める
その先には……
47 : [sage]:2012/10/20(土) 21:05:52.83 ID:VNPhlMIl0
ゆい「……了君?」


血だらけで確証はない
だが、あの服はいつも了君が着ていた服
それにあのゆいとお揃いの指輪は……


一瞬よろめいたゆいをあすみが支える
 

あすみ「ゆいちゃん、しっかりして!」

QB「ゆいが落ち着くまで待とうか」


…………
48 : [sage]:2012/10/20(土) 21:06:34.03 ID:VNPhlMIl0
ゆい「……もう大丈夫」
 

顔は蒼白だが気丈に振舞うかすみ
 

ゆい「やっぱり了君なの?」

QB「間違いないよ。運が悪かったんだね」

ゆい「…………了君は助からないの?」

QB「仮に魔法少女が強力な回復魔法をかけても
   もうその少年を助けることはできないだろうね」

ゆい「……条件付けをしても私の力じゃ足りないんだね?」

QB「そうだね。ゆいの力だけでは難しいね」


QBが今度はあすみの方を向く
49 : [sage]:2012/10/20(土) 21:07:19.07 ID:VNPhlMIl0
QB「だが、あすみ」

QB「君の協力さえあればこの願いは遂げられる」

あすみ「私……が?」

ゆい「ダメ!!」


ゆいが以前より強い口調で叫んだ


ゆい「あすみちゃんはあすみちゃんの叶えたい願いを叶えないとダメだよ
   それにこの願いは私が叶えたいの……私じゃなきゃダメなの!
   これだけはあすみちゃんでも譲れないよ」


『了君のことはあすみちゃんでも譲れない』
以前からずっとゆいはそう言っていた
 

あすみ(私、やっぱりゆいちゃんの役に立てないのかな……?)
50 : [sage]:2012/10/20(土) 21:07:58.60 ID:VNPhlMIl0
QB「……やれやれ、人の話は最後まで聞いてほしいな」

 
相変わらずの無表情のままQBが切り出した


QB「あすみに協力してもらうといっても契約するのはゆいだけだよ」

二人「えっ?」

QB「要は君たち二人が同時に同じ願いをかければいい」

あすみ「本当に……それで大丈夫なの?」

QB「イレギュラーな手段だけど、前例がないわけじゃない」

QB「僕に二人で同時に願いをかけると二人のエネルギーは一旦共有状態になる
   ただし、僕が一度に契約できるのは一人だけ
   だから今回はゆいと契約を結ぶ
   エネルギーが共有状態なら、ゆいの不足分をあすみからもらうことができる
   そうすればゆいとの契約は無事成立」

QB「一方であすみとはまだ未成立の状態だ
   だからあすみは契約をキャンセルすればいい」

QB「そうすればゆいの願いは叶って、あすみは契約をしたことにはならない
   ただ、あすみのエネルギーはその分減ってしまうけどね」

QB「今できるベストな選択だと思わないかい?」

あすみ「うん、そうだね」
51 : [sage]:2012/10/20(土) 21:08:49.55 ID:VNPhlMIl0
ゆい「でも、そうするとあすみちゃんの」

あすみ「ゆいちゃん」


今度はあすみがゆいの言葉をさえぎった


あすみ「私ね、ずっと思ってたことがあるんだ」
     
あすみ「いつもゆいちゃんは私の考えてることを見抜いて一番欲しいものくれた
    私はいつも貰ってばかりだった
    いつかゆいちゃんに恩返ししなきゃって思ってたんだ」

あすみ「でも私、ゆいちゃんが欲しがるようなものを何ももってなかった
    そもそもゆいちゃんが欲しいものって何だろうって思ってた」

あすみ「でもやっと見つけた
    ゆいちゃんが欲しいもので私がもっているもの……」

あすみ「だから私はゆいちゃんのために私の力を使いたい。使って欲しい
    ゆいちゃん、私のお願いきいてくれないかな……」

ゆい「……」


遠くからサイレンの音が聞こえてきた


QB「ゆい、もう時間がない!早く決めるんだ!」

 
しばし見つめあう二人


ゆい「……ありがとう、あすみちゃん」
52 : [sage]:2012/10/20(土) 21:09:19.48 ID:VNPhlMIl0
あすみの力を借りるにしても最小限にとどめたい
しをりの説明を思い浮かべる
「叶えたい願いがある時」向きな条件付け……


QBの方を向く


ゆい「私は了君を助けたい
   でも私の力じゃ繋ぎ止められない
   それならせめて私の命を了君の命に換えたい」

ゆい「あすみちゃんも手伝ってくれる
   叶えてよ、QB!」


言い終えた瞬間、二人の体が光を放ち始める


…………
53 : [sage]:2012/10/20(土) 21:09:55.13 ID:VNPhlMIl0
しばらくして光は収束していった


QB「契約は成立した
   これでその少年の命は助かるだろう」


すぐに術を発動するゆい
白い光が了を包む


QB「これでその少年の命は繋ぎ止められた」

あすみ「よかったね、ゆいちゃん!」

ゆい「ありがとう、あすみちゃん
   私、あすみちゃんに大きな借りをつくっちゃったね
   一生かけても返せそうにないよ」

あすみ「それより早く了君のケガも治さないと」

 
そう、まだケガの治療は完了していない
引き続き回復魔法をかけ続けるゆい
54 : [sage]:2012/10/20(土) 21:10:29.97 ID:VNPhlMIl0
QB「もう時間だ、ゆい!」

ゆい「でもまだ途中で……」

QB「ゆい、君の願いは叶ったはずだ
   その少年は助かった
   ケガを完治するヒマまではないよ」

救急車が到着し、ケガ人を次々運んでいく
物陰に隠れて治療していたが、いつ見つかってもおかしくない
 
 
QB「このあたりが限界だ」

ゆい「くっ……」


現場を離れる
不安は拭いきれない
しかし、今自分ができることはもうない
55 : [sage]:2012/10/20(土) 21:10:59.32 ID:VNPhlMIl0
ゆい「了君は本当に助かったの?」

QB「それは間違いないよ
   あとは病院での治療でケガも治るはずさ」
 
ゆい(QBは間違ったことは言わない
   今はQBの言うことを信じよう)


不安を押し込めながらしをりの元へ向かう
しをりはすでに魔女を倒し終えていた


しをり「QB、こっちよ」


みんなでしをりの方に駆け寄る
56 : [sage]:2012/10/20(土) 21:11:35.07 ID:VNPhlMIl0
しをり「ゆいちゃん、その格好は……」
 
ゆい「ちょっと色々ありまして……」

しをり「とにかく私の部屋へいきましょうか」


少し時間が経って落ち着いてくると、ゆいの頭の中を色々なことが巡った
了のケガのことはもちろん心配だ
しかしそれだけではない
背負うことになった魔法少女の宿命


もう後戻りはできない
追い詰められて結んだ契約
それでも後悔だけはしたくない
57 : [sage]:2012/10/20(土) 21:12:10.20 ID:VNPhlMIl0
「これでよかったんだ」


そう信じたい
しかし、それと同時に不安が押し寄せる


「力の弱い私がやっていけるのか?」


油断すると不安が後悔に変わりそうになる
それでも自分の、魔法少女としての力を信じるしかない 


ゆい(もう私は魔法少女なんだ
   これからはしをりさんと一緒に街の人を、了君やあすみちゃんを守るんだ)

 
不安と決意の間をぐるぐる回るのだった






             ―――――― 第五部 完 
58 : [sage]:2012/10/20(土) 21:12:43.78 ID:VNPhlMIl0
第六部


しをり「そう、そんなことがあったの」

 
ゆいがしをりの部屋で先ほどあったことを話した


しをり「彼を助けられたのは本当によかったわね
    あすみちゃんにも感謝しないとね」

ゆい「全くです」
 
しをり「でも、仕方のなかったこととはいえ
    これでゆいちゃんは魔法少女の宿命を背負うことになった
    後悔はない?」


改めて聞かれ、拭いきれない不安が再びじわじわ込み上げてくる
59 : [sage]:2012/10/20(土) 21:13:19.05 ID:VNPhlMIl0
ゆい「まだよくわからないです
   あの時はそこまで考える余裕なんてなかったので……
   でも、せめて後悔しないように前向きに考えていこうかと思っています」

しをり「そう。今はそれでいいと思うわ
    戦いの基本は私が教えてあげる」

ゆい「ありがとうございます!」


ゆい(そう、くよくよなんてしてられない)

ゆい(了君とあすみちゃんを、二人のいるこの街を守ってみせる)

 
ゆい「その戦いについてなんですが……
   私の願いはしをりさんと違って戦闘向きじゃないのでどうしたらいいか……」

しをり「そうね。まずゆいちゃんの能力について知りたいわ
    変身してもらっていい?」
60 : [sage]:2012/10/20(土) 21:13:58.65 ID:VNPhlMIl0
白いソウルジェムを手にし、変身するゆい
白を基調とした可愛らしい服
ナース志望を反映してか、服もナース服に見えなくもない


しをり「基本的な武器はそのメスでいいのかしら?」

ゆい「はい」

QB「そのメスに魔翌力を込めれば、使い魔程度なら倒せると思うよ
   でも、魔女相手となると厳しいだろうね」

ゆい「」シュン

しをり「ゆいちゃんは回復魔法はできるの?
    私は回復魔法ができないからその方がありがたいわ」

QB「できるよ」

QB「回復魔法には二種類ある
   『自己回復力を増進するもの』と、それより上位の『元通りにするもの』だ」

QB「ゆいの回復魔法は前者だよ
   だからあの少年のケガを回復はできても元通りにするのは無理だ」

ゆい「……」
61 : [sage]:2012/10/20(土) 21:14:40.08 ID:VNPhlMIl0
できれば元通りにしてあげたかった
しかし、回復できるだけでもありがたい


QB「それでも魔法少女に対してなら絶大な効果をもたらすはずだよ
   なにせ魔法少女は魔翌力で自己回復する力が元からあるからね
   放っておいてもある程度のケガなら治ってしまうくらいだ」

しをり「心強いわね」

ゆい「でも攻撃が弱いって足手まといじゃないですか?」

QB「まだ攻撃が弱いと決まったわけじゃない」

しをり「そうね。願いに応じた固有魔法があるもの」
62 : [sage]:2012/10/20(土) 21:15:18.57 ID:VNPhlMIl0
QB「ゆいは自分の寿命をエネルギーに変換してそれをあの少年のために使った
   だからゆいの固有魔法は『等価変換』
   この場合エネルギーの等価変換といったところだね」

しをり「変換できるのはゆいちゃん自身のエネルギー限定なの?」

QB「いや、他の人のも変換できるよ」

しをり「へえ、便利ね
    しかも『単発式』だけじゃなくて『自律式』としても使えそうね」

QB「そうだね。だから応用範囲が広いと思うよ」 

ゆい「『単発式』とか『自律式』とかって何ですか?」
63 : [sage]:2012/10/20(土) 21:16:02.74 ID:VNPhlMIl0
QB「術の基本は発動、維持、消去の三つから成り立っている」

QB「発動後も魔翌力を込め続けて維持していかないと勝手に消えてしまうものを『単発式』
   それとは逆に、一度発動してしまえば新たに魔翌力を込め続けなくても動作し続けるものを『自律式』もしくは『持続式』と呼んでいる
   自律式の場合、発動力が飛びぬけて大きくて消去するのに発動力と同等の魔翌力が必要なんだ」

QB「エネルギーを変換するのに魔翌力をこめ続けないといけないかすみの等価変換の術は単発式といえる
   でももしエネルギーが持続的に循環するように変換できれば自律式ってことさ
   そういう変換の仕方もできるから応用範囲が広いといえる能力だよ」

ゆい「自律式は難しそうですね」

しをり「そうね。単発式の応用と言えるわね
    だから最初は単発式の方に的を絞って作戦を練っていきましょうか」
64 : [sage]:2012/10/20(土) 21:16:42.74 ID:VNPhlMIl0
術の使い方次第で魔女とわたりあえるかも知れない
そう聞いてゆいは飛び上がるほど嬉しかった
心がだいぶ軽くなった
しかもしをりとの二人三脚だ
負ける気がしない

 
ゆい(しをりさんとこの街を守る)

ゆい(……ついでにしをりさんほどじゃなくていいからカッコよくなれたらなあ)


そんなことを考える余裕まで生まれたのだった





             ―――――― 第六部 完
 
65 : [sage]:2012/10/20(土) 21:18:12.45 ID:VNPhlMIl0
第七部


後日
ゆいは了の母親と電話で話しをしていた


ゆい「はい……はい……わかりました」ピッ

しをり「お母さんは何て?」

ゆい「命に別状はないみたいです
   ただ、ケガの治療と検査があるからしばらく面会はできないっていわれました」
66 : [sage]:2012/10/20(土) 21:18:43.84 ID:VNPhlMIl0
しをり「あなたのおかげで助かったのね
    ケガだってじきに良くなるわ
    よかったわね」

ゆい「はい。最初はどうなるかと思ったけど……
   とりあえず一安心といったところです」

しをり「まだ心配かもしれないけど、今は魔女戦の特訓の方に集中しましょう
    早速今日から開始するわよ」

ゆい「はい!」


…………
67 : [sage]:2012/10/20(土) 21:19:36.09 ID:VNPhlMIl0
こうしてゆいとしをりの特訓が始まった
魔翌力操作などの基本からしをりとのコンビネーション技の確立などの応用まで叩き込まねばならない
そのため、魔法少女体験コースはしばらくお休みということになった


QB「しをりはゆいの面倒を見るのに精一杯だろうからね」


QBの言う通りしをりはゆいにつきっきりだった
実地訓練のほかにも時々しをりの部屋で勉強したりネットで調べものをしたりしている


特訓を開始してすぐ、ゆいは自分の素質が低いことを実感した
基本操作すらうまくできない
そんなゆいを見てしをりは言うのだった
68 : [sage]:2012/10/20(土) 21:20:06.25 ID:VNPhlMIl0
しをり「魔法少女の武器は魔法だけじゃない
    知識も立派な武器になるんだよ」
 

弱い魔翌力を知識で補う
そんな発想はゆいにはなかった
素質が低い自分には戦いは向いてないと思い込んでいた
その思い込みが不安を呼び、後悔しかけたこともあった
そんなゆいを励まし、支えるしをり


ゆい(しをりさんと二人だったら、やっていけるかもしれない)


そう実感するのだった



――――――

――――

――
69 : [sage]:2012/10/20(土) 21:20:49.23 ID:VNPhlMIl0
特訓はうまくいっていた
使い魔だけならゆいに任せてしまうくらいにはなっていた


しをり「ゆいちゃんもだいぶ慣れてきたみたいね
    そろそろ二人で魔女と戦ってみようか」

ゆい「はい!」


そして――


しをり「この反応は魔女のものね
    覚悟はいい?」


ゆいが緊張気味にうなずく
二人で結界に入っていく 
70 : [sage]:2012/10/20(土) 21:21:31.95 ID:VNPhlMIl0
二人ですすむ
途中で使い魔にでくわすようなこともなく奥の部屋まで来た


しをり「ここまで使い魔もでないなんて逆に不気味ね」


そう言いながら慎重にドアを開ける

バタン

二人が部屋に入るとドアが勝手に閉まった
密閉された部屋
そこにはたくさんの使い魔がいた
使い魔が水を吐く
するとすぐに水がたまりはじめた


パシャン


何かが水の中に落ちた音
音がした方を見る
71 : [sage]:2012/10/20(土) 21:22:05.78 ID:VNPhlMIl0
ゆい「あれが魔女?」


魔女はヘビのような姿をしていた
水の中を素早く動く魔女
ゆいは目で追うのがやっとだった
魔女が一瞬膨らむのが見えた


しをり「私の後ろに!」


魔女が水を猛烈な勢いで飛ばしてきた


キィィィィン


水がしをりの張った結界にあたり、耳をつんざくような音がした
結界にあたらなかった攻撃が、うしろの壁に縦に亀裂をつくっていた
72 : [sage]:2012/10/20(土) 21:22:59.03 ID:VNPhlMIl0
しをり「次に魔女が撃ってきたら……」

ゆい「わかりました」


ゆいがしをりと杖を握る
すでに水が膝の付近まで来ている
この分だとあと少ししたらまともに動けなくなるだろう


しをりは杖の先を水につけて魔女の動きを感知している
 

ゆい(早く……早く!)
73 : [sage]:2012/10/20(土) 21:23:40.81 ID:VNPhlMIl0
しをり「来る、こっち!」


しをりは杖を魔女の方へ向けると同時に杖に大量の魔翌力を込めた


大量に魔翌力を使うこの瞬間、しをりは結界を張れない
そのため一歩間違えれば二人とも命はない
しかし、ゆいはしをりを信じていた
しをりの杖にゆいも魔翌力を込める


その瞬間、魔女の攻撃が二人を襲った


バッシャーン


魔女の放った水が氷となって床にたまった水に落ちた
すぐにしをりがゆいを抱えて氷の上にジャンプ
74 : [sage]:2012/10/20(土) 21:24:16.22 ID:VNPhlMIl0
しをり「ゆいちゃん!」


しをりが杖の先を再び水中に入れて魔翌力を込める


ゆい「はい!」


ゆいもすぐに杖を掴む


バチンッ


電光一閃
一瞬あたりが真っ白になった
思わず目が眩む
少しの間は二人も動けないほどだった
75 : [sage]:2012/10/20(土) 21:24:42.68 ID:VNPhlMIl0
落ち着いてきたところであたりを見渡す


しをり「使い間は消し炭になったようね」


すごい威力だ
私たちも一歩間違えたらああなっていたかもと思うとぞっとする
「氷は電気を通さない」
そんなちょっとした知識を活かした作戦だった


ゆい「魔女は……あっ」


水面にぷかぷかと浮かんでいた


しをり「どうやら倒したようね」


一瞬気を抜いたその時――
76 : [sage]:2012/10/20(土) 21:25:09.92 ID:VNPhlMIl0
QB「危ない!」


その声に反応したしをりがとっさにゆいを右手で突き飛ばす
それと同時に左手で杖を伸ばす
しをりの杖が魔女を捉えて焼き尽くした


しかし、魔女の最期の攻撃はしをりを直撃
しをりの右半身は肩から腰にかけて裂けダラリとしている


魔女の結界が解ける――


ゆい「しをりさん!」

QB「早く回復魔法を!」


ゆいが回復魔法をかける


…………
77 : [sage]:2012/10/20(土) 21:26:12.73 ID:VNPhlMIl0
しをり「ありがとう。もう大丈夫よ」

ゆい「こちらこそ。助けてもらってありがとうございます」


事なきを得たしをり
しをりを助けられたのはよかった
しかしその一方でゆいには気になったことがあった
しをりの受けた傷は、普通の人間なら即死レベルの重傷だったはずだ


ゆい(……)



しをり「……ねえ」
78 : [sage]:2012/10/20(土) 21:26:44.50 ID:VNPhlMIl0
考え中にふいに声をかけられびっくりするゆい


ゆい「は、はい?」

しをり「今回は危ない目にも遭ったけど、私たちは相性がいいと思うの
    だからめげずにまた一緒に戦ってね」


にっこり笑うしをり


ゆい「……はい」


こんな私でも力になれる
それは素直にうれしかった


しかしその反面、名状しがたい新たな不安の種がゆいに宿っていた




             ―――――― 第七部 完
79 : [sage]:2012/10/20(土) 21:28:54.39 ID:VNPhlMIl0
第八部


しをりと別れ、一人で帰るゆい
その後をQBがついてきた


QB「変換能力をうまく使えていたみたいだね
   これからもやっていけそうかい?」

ゆい「うん……ねえ、QB」

QB「何だい?」

ゆい「今日、しをりさんあんな大ケガをしたのに魔法で元通りになったね」

QB「そうだね。やっぱりゆいは回復魔法の方が得意みたいだね」

ゆい「うん。でも普通の人があのケガをしたら死んじゃってたと思う
   魔法少女の体って強いんだね」

QB「魔翌力で強化しているからね」

ゆい「魔翌力で強化するとあんなケガをしても平気なの?」

QB「……」
80 : [sage]:2012/10/20(土) 21:29:32.26 ID:VNPhlMIl0
QBの動きがピタッと止まった
ゆいも立ち止まる


QB「ただの人間と同じ壊れやすい身体のままで魔女と戦ってくれなんて、とてもお願いできないよ」

ゆい「つまり私たちは『ただの人間』じゃなくなったってこと?」

QB「魔法少女との契約を取り結ぶ僕の役目はね
   君たちの魂を抜き取ってソウルジェムに変えることなのさ
   君たち魔法少女にとって元の身体なんていうのは外付けのハードウェアでしかないんだ
   君たちの本体としての魂には魔翌力をより効率よく運用できる、コンパクトで安全な姿が与えられているんだ」

QB「むしろ便利だろう?
   心臓が破れても、ありったけの血を抜かれてもその身体は魔翌力で修理すればすぐまた動くようになる
   ソウジェムさえ砕かれなければ君たちは無敵だよ」

ゆい「それってつまり、魔法少女になるとゾンビみたいになっちゃうってことだよね」
81 : [sage]:2012/10/20(土) 21:30:04.09 ID:VNPhlMIl0
QB「その方が余程戦いでは有利じゃないか」

ゆい「私たちを騙したの?」

QB「騙してはいないよ
   訊かれなかったから知らせなかった
   知らないなら知らないままで何の不都合もないからね」

ゆい「……もういいよ」


走り去るゆい


QB(……どうして人間はあんなに魂の在処にこだわるのか
   わけがわからないよ)


…………
82 : [sage]:2012/10/20(土) 21:30:33.52 ID:VNPhlMIl0
以前あすみと二人で見たブライダルギャラリーのディスプレイ
純白のウェディングドレスを見ているゆい


ゆい(私の体は……)

ゆい(こんな体で了君と結ばれるなんてでっきっこないよ
   私、もう幸せになれないのかな……)


あすみ「お待たせ、ゆいちゃん」


本当はあすみに心配はかけたくない
しかし、一人で抱えるにはそれは大きすぎた
83 : [sage]:2012/10/20(土) 21:31:03.30 ID:VNPhlMIl0
ゆい「ごめんね、急に呼び出して」

あすみ「大丈夫だよ
    それより何かあったの?」

ゆい「うん……ちょっとね」

あすみ「もし私にできることなら、ゆいちゃんの力になるよ」


はっ、とするゆい
ゆいの願いを叶えるために力を分けてくれたあすみ


ゆい(この話をすればきっとあすみちゃんは……
   これ以上あすみちゃんから力を奪っちゃダメだ)
84 : [sage]:2012/10/20(土) 21:31:57.15 ID:VNPhlMIl0
ゆい「そんな大したことじゃないよ」


笑顔をつくる


あすみ「本当に?」

ゆい「本当だよ
   今日だってしをりさんと魔女を倒したんだから
   もう一人前かなー?なんちゃって」

あすみ「……無理してない?」

ゆい「魔法少女は命がけだからね、少しは無理もするよ」

ゆい「でもね、私としをりさんは相性がいいんだって
   お互い助け合いながら戦えるんだ
   だからちょっとやそっとのことじゃ負けないよ」

ゆい「だからもう心配しないで」

あすみ「……うん、わかった」


結局あすみに心配されてしまった
が、とりあえず誤魔化せたことに一安心するゆい


その時、ゆいに電話がかかってきた


ゆい「了君のお母さんだ」


…………
85 : [sage]:2012/10/20(土) 21:32:33.93 ID:VNPhlMIl0
ゆい「……はい、それでは失礼します」ピッ

あすみ「了君どうだって?」

ゆい「了君面会できるんだって」

あすみ「ほんと!?よかったね!」

ゆい「あすみちゃんも一緒に来ない?」

あすみ「え?」

ゆい「あすみちゃんのおかげで了君は助かったんだよ!
   だから一緒に来てほしいな」

あすみ「……うん!」



――――――

――――

――
86 : [sage]:2012/10/20(土) 21:33:10.40 ID:VNPhlMIl0
(病院)


看護師A「包帯換えましょうね」


看護師が慣れた手つきで準備をする


了「はい」


自分の顔を鏡に映す
何度見ても吐き気がする

僕はあの事故で多くのものを失った
周りの人は「命があっただけマシ」と言う
「助かったのは奇跡だ」と
87 : [sage]:2012/10/20(土) 21:33:45.87 ID:VNPhlMIl0
それは他人事だから言えるんだ
これから僕はさまざまな手術を受けなければならない
火傷で失った皮膚を移植する手術
神経を再生する手術
欠損した顔面の整形手術等々

しかも一度や二度じゃない
皮膚移植だけみても、何度も何年にも亘って受け続けねばならない
そうして出来上がった僕の体は元のものとは全く別のものだろう
手や足に至っては手術しても動くようにはならない
 
この先死ぬまでずっと苦しみ続けなければならないのか……
なぜ僕はあの事故で死んでしまわなかったのだろう……


――――――

――――

――
88 : [sage]:2012/10/20(土) 21:35:00.68 ID:VNPhlMIl0
人が少なさそうな日を選んで、ゆいとあすみは了の病院へ向かった

ゆいはあの日から何度か治療のため病院に忍び込もうとしたが、結局できずにいた
管理や警備の体制が整った病院なので部屋に近づくことすらできなかった
そのため了の具合を、つまり自分のかけた魔法の結果を初めて知ることになるのだ
 

ゆい(ムダかもしれないけど……
   隙をみて回復魔法をかけてみよう)


そんなことを考えながらあすみと歩く


ゆい「あの部屋ですか」

ゆいたちは看護師に案内してもらって了の病室の前まで来た

看護師B「ちょっと待っててね」

ドアをノックする
89 : [sage]:2012/10/20(土) 21:35:26.36 ID:VNPhlMIl0
看護師B「今大丈夫かしら?」

ドアを少しだけ開けながら中の看護士に話かけた

看護師A「もう少し待っててもらっていい?
     今包帯を換えている最中なの」


少し体をずらせば中が覗けそうだ
覗くべきではないとはわかっている
しかし、早く知りたかった
了の具合を、自分のかけた魔法の結果を
ゆいは隙間から中を覗いてしまった
90 : [sage]:2012/10/20(土) 21:36:01.68 ID:VNPhlMIl0
ゆい「……あ」


ゆいと了の目が合った


了「……ゆい?」

ゆい「うっ」


思わず口をおさえ後ずさりする
気付いた看護師がドアを閉める
それと同時にゆいは廊下を走りだした


あすみ「ゆいちゃん!」


ゆいが必死に追うが相手は魔法少女
病院を出たところで見失ってしまった
91 : [sage]:2012/10/20(土) 21:36:31.26 ID:VNPhlMIl0
ゆいは夢中で来た道を走る
決して見た目だけで選んだわけではない
でも私は今の了君と上手くやっていけるだろうか
回復魔法をかけてもあれでは……
かすみは生まれて初めて「本当の自分」を見た気がした


『ゆいちゃんもいい子だし、お似合いのカップルだね』


あすみの言葉を思い出した
92 : [sage]:2012/10/20(土) 21:36:57.69 ID:VNPhlMIl0
ゆい「あすみちゃん、本当の私はいい子なんかじゃなかったよ」
 
ゆい「こんな私のためにあすみちゃんは……」


気が付くとブライダルギャラリーのディスプレイの前まで戻っていた
本当は醜い自分の心
体だって……
ウェディングドレスを見ながらつぶやく


ゆい「もうこれを着る資格は私にはない」





             ―――――― 第八部 完
93 : [sage]:2012/10/20(土) 21:37:48.10 ID:VNPhlMIl0
第九部


あの後、あすみから何度も連絡があったがでなかった
会いに来てくれたが会わなかった

そんなゆいの状況とは関係なく魔女退治は続けねばならない
幸い魔女退治の方は慣れてきた
しをりとの息も合ってきた
魔女退治をしている間は嫌なことも考えずにすむ
ゆいは進んで魔女退治をするようになった
そんなある日――
94 : [sage]:2012/10/20(土) 21:38:19.70 ID:VNPhlMIl0
いつものように魔女を倒す
が、しをりは精彩を欠いていた
最近は炎の魔法のような大技は使わない
杖を変化させる基本攻撃だけで魔女を倒すことが増えた


しをり「最近ね、ソウルジェムがすぐ濁るの」


大技を使うとすぐに濁ってしまう
しかし、基本攻撃だけではさほど強くない相手でも苦戦を強いられた

不安になるゆい
ゾンビ化だけでなく、ソウジェムにも何か隠されているのではないか
顔を見るのも嫌だったが、QBを呼んで確かめる
95 : [sage]:2012/10/20(土) 21:38:51.78 ID:VNPhlMIl0
QB「しをりのソウルジェムの限界値が減少しているんだろうね」

ゆい「限界値って?」

QB「魔翌力ゲージのMAX値のことさ」
 
QB「例えば、契約時のMAX値を100とするね
   魔翌力を使ってそのゲージが10まで落ちたとしても
   グリーフシードで回復することで100近くまで戻る」

QB「けど、100『近く』まで戻るだけで実は100に少し届いていない
   グリーフシードでゲージは回復してもMAX値は次第に下がっていく」

QB「一回ずつは大したことがなくても、これが一年、二年と
   たまっていくことで限界が早くおとずれるようになるんだ」
96 : [sage]:2012/10/20(土) 21:40:02.75 ID:VNPhlMIl0
ゆい「しをりさんのソウルジェムも限界が近いの?」

QB「しをりはベテランだからね」

QB「それとゆいと組むようになってしをりは大技を使う回数がかなり増えた
   そのせいでMAX値が急激に減ったのかもしれないね」

ゆい「……つまり、私のせいってこと?」

QB「原因の一つになっているかもしれないっていうことさ」

QB「ただ、ゆいがいなくても近い将来こうなっていたとは思うよ
   魔法少女というのは元々そういう存在なんだよ」
97 : [sage]:2012/10/20(土) 21:40:30.70 ID:VNPhlMIl0
ゆい「つまり、魔法少女になると長く生きられないかもしれないってことだよね」

QB「うん。例外はあるけど、魔法少女は短命な傾向にあるね
   それはこのMAX値の減少によるものだと言える」


もう大抵のことでは驚かないと思っていた
でも、自分がしをりの寿命を短くしたようなものだ
そして、自分自身もいずれ近いうちに……


ゆい「やっぱり大人にはなれないんだろうな」


これで諦めもつく
もうあのドレスを着ることはないだろう



――――――

――――

――
98 : [sage]:2012/10/20(土) 21:41:06.67 ID:VNPhlMIl0
二人での魔女退治
できるだけしをりに負担をかけないように
ゆいも積極的に攻撃に参加する

近いうちにしをりは限界を迎えるだろう
ゆいの変換能力はしをりあってのもの
一人で戦うには向いてない


しをり「ゆいちゃん」

ゆい「はい」

しをり「私にもしものことがあったら他の魔法少女を頼るといいわ
    あなたの能力はサポート向きだから」

 
しをりにこの前のQBとの会話は話していない
しかし、しをりは自分の限界が近いことを悟っているようだ


しをり「今度知り合いの子に頼んでみるわね」


ゆいは何も言えなかった
99 : [sage]:2012/10/20(土) 21:41:38.77 ID:VNPhlMIl0
ゆい(私と組む人は寿命が縮むかもしれない)

ゆい(私、弱い子だ……
   どうせ長く生きられないのに)

ゆい(でも少しでも長く生きていたい)

 
そんな期待を秘めて魔法少女に会いにいく
 

魔法少女「ごめんなさい、今は間に合っているの」


どこに行ってもそう言われる
彼女たちはずっと一人でやってきたのだ
今更ゆいと組んでわざわざリスクを負う必要はない


ゆい(やっぱりダメか……)

ゆい(私もそう長くはない
   それならしをりさんと一緒にっていうのも悪くないかな)


       ・
       ・
       ・
100 : [sage]:2012/10/20(土) 21:42:47.08 ID:VNPhlMIl0
結局、状況は好転しなないまま二人は魔女との戦いを続けていた
その日も、いつものように魔女の結界へと侵入
二人で慎重に進んでいく


ゆい「ん?……あれはソウルジェム?」


薄暗い奥の方で光るものがあった
魔女との戦いに敗れた魔法少女のものだろうか?
確かめようとしてゆいはかけ出した


しをり「ゆいちゃん、むやみに動いちゃダメよ!」


ゆいが近づくと、ソウルジェムが動いた気がした


ゆい「え?」
101 : [sage]:2012/10/20(土) 21:43:18.19 ID:VNPhlMIl0
ゆいがソウルジェムだと思っていたものは使い魔の体の一部だった
杖を伸ばし、使い魔を串刺しにするしをり
倒したと思った瞬間、しをりを中心に魔方陣ができあがる
使い魔が予め仕込んでおいた術が発動したのだ
眩い光がしをりを包んだ


しをり「くっ……」


光の中でしをりは確かに感じていた


しをり(見られている、というより覗かれている)


上も下も周りすべて、鏡の部屋の中にいるかのような感覚
誰もいない部屋のはずなのに確かに視線を感じる


…………
102 : [sage]:2012/10/20(土) 21:44:23.73 ID:VNPhlMIl0
ゆい「しをりさん!」


光がおさまり、ゆいがしをりに近づく


しをり「大丈夫よ、何ともないわ」

ゆい「よかった……
   でも一体何だったんですかね?」


そう言い終わる前に気付いた
目の前にもう一人しをりがいる


ゆい「しをりさん?」

しをり「いえ、あれは魔女よ」
103 : [sage]:2012/10/20(土) 21:45:03.68 ID:VNPhlMIl0
ソウルジェムがそうだと告げている
が、見た目では区別がつかない
魔女も杖を持っていた
その杖が光だした


しをり「まずい、ゆいちゃん私の後ろに!」


しをりが防御結界を展開
ゆいがしをりの結界に入った瞬間、魔女の炎の攻撃が二人を襲った
しをりと違い、加減などせずフルスロットルで攻撃してくる
魔女の攻撃は強力なため、しをりは防御結界を張り続けるのに精一杯の状況だ
104 : [sage]:2012/10/20(土) 21:45:34.64 ID:VNPhlMIl0
しをり「魔女の能力は相手の能力のコピーのようね
    もしこっちも私一人だけだったら分が悪いけど、二人だもの」

しをり「ゆいちゃん、あなたがやるのよ」

ゆい「えっ、どうやって?」

しをり「私が杖を伸ばすようなイメージであなたの魔翌力を伸ばせばいいわ
    ゆいちゃんの能力は変換だからあながち難しくないはずよ」


ゆい「魔翌力を伸ばして突き刺すイメージ……」

ゆい「やってみます」

しをり「突き刺したら、その魔翌力をそのまま炎か電気に変換すればいいわ」

ゆい「はい!」
105 : [sage]:2012/10/20(土) 21:46:13.79 ID:VNPhlMIl0
何度も見てきたしをりの術
イメージはすぐできた
魔翌力を極限まで高める


QB「ゆい、早くするんだ!!
   しをりのソウルジェムももう限界が近いよ!」


そうだった
強力な攻撃魔法を防ぐため、同じくらい強力な防御結界を張り続けているのだ


ゆい(早くしないとしをりさんが……)


ゆいは溜めた魔翌力を右手に集中させた
もう一度頭の中でイメージする
106 : [sage]:2012/10/20(土) 21:46:40.06 ID:VNPhlMIl0
ゆい「よし、いっけぇぇえええ!!」


一気に伸ばした


グサッ


右手に伝わってきた肉を貫く感覚
手応えはあった
あとは変換するだけ――

その時
107 : [sage]:2012/10/20(土) 21:47:12.30 ID:VNPhlMIl0
魔女「ゆいちゃん、どうしてこんなひどいことをするの?
   私を[ピーーー]つもりなの?」


しをりの声、しをりの姿で魔女が言う
ゆいは思わず術を解いてしまった

しかし、ゆいの攻撃を受けたことで魔女の炎の術も一旦途切れた
すぐに態勢を立て直し、攻撃を再開しようとする魔女
だが、しをりがその隙を逃がすはずがなかった

しをりが結界を解いて炎の術を展開
すると魔女は防御結界を展開
攻守が逆転した
しかし、ギリギリのところで魔女を仕留められなかった
しかもこのままではしをりの方が分が悪い
魔女の魔翌力は底が見えないが、しをりのソウルジェムの限界はすぐそこだ


ゆい(どうしたら……)
108 : [sage]:2012/10/20(土) 21:49:44.44 ID:VNPhlMIl0
ん?なんか「ピーーー」になっちゃいましたね
気にせず続けます
109 : [sage]:2012/10/20(土) 21:50:30.21 ID:VNPhlMIl0
先ほどしをりが防御結界を張っていた時、
しをりは自分の結界がゆいの攻撃をはじかず、通過できるようにしていた
しかし、魔女の防御結界は、当然ゆいの攻撃をはじくだろう
かといって、しをりの炎の攻撃を等価変換しても、魔女に攻撃は届かないだろう


ゆい(もう一度攻守交替してもらって、魔女の守りが疎かになったところを私が突くのがいい?)

ゆい(いや、魔女が同じ手をくうとは思えない)

ゆい(だとしたら……)


もう考えている時間もない
やるしかない
ゆいが再び魔翌力を溜め込む


ゆい(お願い、間に合って!)
110 : [sage]:2012/10/20(土) 21:50:58.00 ID:VNPhlMIl0
右手に魔翌力を集中させ一気に放つ
ゆいの魔翌力が魔女の方へ伸び、魔女の防御結界に触れた

その瞬間、ゆいは等価変換の術を発動
魔女の結界が電気へと変換された


バチンッ


電気が空中ではね、霧散する
その結果、魔女の結界はなくなった
それと同時にしをりの炎が魔女へと雪崩れ込む


…………
111 : [sage]:2012/10/20(土) 21:51:27.50 ID:VNPhlMIl0
決着はついた
しをりの元へかけよるゆい


ゆい「しをりさん!大丈夫ですか?」


しをりは黙って自分のソウルジェムを取り出した
あの日、オレンジ色に輝いていたソウルジェム
今はその面影はなく、真っ黒な闇をたたえている


ゆい「すぐグリーフシードを……」

QB「一歩遅かったね
   ここまできたらもう手遅れだよ」

ゆい「そんな……」


せっかく魔女を倒したのに間に合わなかった
112 : [sage]:2012/10/20(土) 21:52:18.20 ID:VNPhlMIl0
しをり「…………」


為すすべなく、自分のソウルジェムをじっと覗き込むしをり
走馬灯のように蘇る昔の記憶


幼い日の私
私は魔女に憧れていた
炎を操り敵を倒す
QBに無邪気に言った


『私は魔女になりたい!!
 最強の炎使いになるの!』


あの日以来、私は夢の中を生きてきた気がする
長いようで短い夢
それももう終わる
結局、炎に身を焦がしたのは私自身だったのだ
「憧れ」という名の炎に……


幼い日の無邪気な憧れ、空想
私はそれに人生の全てをかけてしまった
そのなれの果てがこれ

愚かだ、と人は言うだろう
でも、私は私らしく自分の人生を生きられたと思う
そして、それを知っている人がいる
こんな私のことを「輝いている」と言ってくれた
それだけで私は幸せだ


しをり(ゆいちゃん、ありがとう
    短い間だったけど楽しかったよ
    あすみちゃんと仲良くね)


ピシッ


乾いた音が夢の終わりを告げた



             ―――――― 第九部 完
113 : [sage]:2012/10/20(土) 21:52:56.09 ID:VNPhlMIl0
第十部


ピシッ


QB「どうやら限界のようだね」


しをり「うぐっ……ぐあああああっ!!」パリン


しをりのソウルジェムが砕けた
するとそれと入れ替わるように魔女が現れた
結界に取り込まれるゆい――


ゆい「えっ?魔女?どういうこと?」


思考がまとまらない


QB「ゆい、今の君の状態じゃまともに戦えない
   一旦退却しよう!」


QBの後についてとにかく結界の外まで逃げた
114 : [sage]:2012/10/20(土) 21:53:30.98 ID:VNPhlMIl0
ゆい「……QB、説明して」


詰問するようにQBに詰め寄る


QB「見てのとおりだよ
   魔法少女はソウルジェムが濁りきると魔女になる」

QB「前に言ったよね
   希望を振りまくのが魔法少女なら絶望を撒き散らすのが魔女だって」

QB「そうやって希望と絶望は差し引きゼロになる
   当然の話さ」

ゆい「そんな……じゃあ、私もいずれ魔女に?」
115 : [sage]:2012/10/20(土) 21:54:00.38 ID:VNPhlMIl0
あの忌まわしい事故の記憶が蘇る
彼の体をあんなにした魔女
人々を呪いながら不幸をばら撒く魔女
自分もそれになるのか


ゆい「絶対にイヤ!!」


「彼を助けたい」
ただそれだけ
その代償がこんなにも重いとは――
 

ゆい「私は間違っていたの?」


走り出すゆい
気付いたら病院に来ていた
116 : [sage]:2012/10/20(土) 21:54:40.29 ID:VNPhlMIl0
ゆい「私は……」


ゆい「私は間違ってなんかいない
   そうだよね、了君」

ゆい「だって了君を助けられたんだもの」


それを確認したい
一目見るだけでいい
この前は逃げてしまったが今度こそ――
117 : [sage]:2012/10/20(土) 21:55:12.36 ID:VNPhlMIl0
病室にむかう
その途中でこの前の看護師がいた


看護師A「あなたがゆいちゃん、よね
     了君の彼女の」

ゆい「そうです」

看護師A「了君のお母さんから預かっているものがあるの
     あなたが来たら渡してほしいって」

ゆい「何ですか?」

看護師A「了君が最期に残したものよ」

ゆい「……最期?」

看護師A「了君はね、この先死ぬまで苦しみ続けなければいけないのかって悩んでたの
     自分の体はもう別のものになってしまった
     ゆいちゃんにももう会えない
     何であの事故で死ななかったのかって」


看護師がゆいに了の遺書を渡す
ゆいは呆然と立ちつくしていた


…………
118 : [sage]:2012/10/20(土) 21:55:47.15 ID:VNPhlMIl0
私は間違っていた

結局私は了君を生かせなかった
それどころか逆に苦しめて死に追いやっただけ
私のためにあすみちゃんは自分の素質を減らしてしまった
私のためにしをりさんは寿命を縮めた
私に関わる人間はみんな不幸になる
そんな私が幸せになんてなれるわけがない、なっちゃいけない


『希望と絶望は差し引きゼロ』


私は不幸をばらまくだけの存在
私が幸せになればその分不幸が撒き散らされるのだ


……もういい、限界だ
すべて壊してしまえ
私の目に映るもの全てに不幸をばら撒いてやる
 

この手で!



――――――

――――

――
119 : [sage]:2012/10/20(土) 21:56:13.66 ID:VNPhlMIl0
あすみ「ゆいちゃん……」

 
あすみは最近誰ともしゃべっていない
ただゆいに会いたい
ゆいの力になりた


QB『あすみ、ちょっといいかい』


QBからテレパシーが入った


ゆい『QB、どうしたの?』

QB『ゆいが君に会いたがっている』
 
QB『それとしをりは魔女との戦いで命をおとしたよ』

ゆい『え?』

QB『とにかく、こっちに来てもらえるかな?』

 
すぐさま、ゆいたちのもとへ向かうあすみ
120 : [sage]:2012/10/20(土) 21:56:58.70 ID:VNPhlMIl0
QB「これでよかったのかい?」

ゆい「……」


QBの方を見向きもしないゆい

ただあすみを待つ



――――――

――――

――
121 : [sage]:2012/10/20(土) 21:57:49.64 ID:VNPhlMIl0
あすみ「ゆいちゃん!」

  
久しぶりに見るゆいの顔
まるで別人のようだ


ゆい「しをりさんが亡くなったの」

あすみ「うん、さっきQBから聞いたよ」

ゆい「私もいつそうなるか……
   私は弱いから」

あすみ「それなら私も魔法少女になるよ!
    前に言ったよね、ゆいちゃんの力になりたいって
    あれは嘘じゃないよ」

ゆい「私はあすみちゃんには魔法少女になってほしくないの
   だけどいつ私の『その時』が来るかわからない
   その前に私はあすみちゃんの力になる魔法をかけておきたい」

あすみ「でも、私はゆいちゃんを……」

ゆい「私は大丈夫だよ
   あすみちゃんは私に力を分けてくれたから
   そのお返しがしたいの」

あすみ「ゆいちゃん……」
122 : [sage]:2012/10/20(土) 21:58:15.46 ID:VNPhlMIl0
ゆい「この魔法はね、あすみちゃんが魔法少女にならなければ発動しない
   でも、もしもあすみちゃんが魔法少女になることがあったら
   魔翌力を強めるのを手伝ってくれる
   そんな魔法だよ」

ゆい「あすみちゃんは私に力を分けちゃったから、
   そのまま契約すると強い魔法少女になれない
   私と同じ思いをしてほしくないの」

あすみ「……うん」

ゆい「じゃあ、いくよ」


ゆいが術を発動する
光が二人を包んだ
123 : [sage]:2012/10/20(土) 21:58:51.11 ID:VNPhlMIl0
あすみ「ぐっ、……ぁぁぁぁああああ゛あ゛!」


心臓を鷲掴みされ、強く握られているような感覚
呼吸もままならない
苦痛に悶絶するあすみ


…………


ゆい「終わったよ」


苦痛のため肩で息をしているあすみ
そんなあすみを他人事のように見ているゆい
124 : [sage]:2012/10/20(土) 21:59:22.17 ID:VNPhlMIl0
ゆい「一つ言い忘れてたわ」

ゆい「たしかに、これであすみちゃんは強い魔法を使えるようになる
   けど、使う度にあなたの寿命が減っていくから気をつけてね」

あすみ「えっ、どういうこと?」

ゆい「私の能力であなたの寿命を魔法のためのエネルギーとして使えるように変換したの」
 

そう言われてもあすみにはよくわからなかった
125 : [sage]:2012/10/20(土) 21:59:52.15 ID:VNPhlMIl0
QB「つまりこういうことじゃないかな?」

 
そんなあすみの顔を見てQBが説明を始める


QB「『あすみの寿命をそのまま魔翌力として使えるようにエネルギーを等価変換させる』
   これだけなら単発式だから、ゆいがエネルギーを変換し続けないといけない」

QB「この単発式のエネルギー変換が自発的に行われ、
   持続的に循環させる自律式システムへと変換する――
   そのために、あすみの寿命を変換してできたあすみ自身の魔翌力の一部が
   その持続的循環のためのエネルギー源となるようにシステムを変換した」

QB「ゆいの固有魔法は『等価変換』だ
   だから変換前のものと変換後のものが等価であればいい」

QB「おそらく、単発式システムの価値を何かしらの手段で自律式システムと同等に高めた
   そんなところじゃないかな?」
126 : [sage]:2012/10/20(土) 22:00:24.12 ID:VNPhlMIl0
ゆい「そう。その代償がこれ」


そう言うとゆいがソウルジェムを取り出す
吸い込まれそうな漆黒に亀裂が走っている


あすみ「え、これは……」

QB「自律式の術は発動時に一番魔翌力が必要だ
   だからゆいは、自律式システムの構築に自分の残りのエネルギーを全てつぎ込まざるをえなかった
   こうなるのは必然さ
   ゆいもわかっていたんだろう?」

ゆい「うん。私は最期にどうしてもこの術をあすみちゃんにかけたかった」

ゆい「強い魔法を使えば使うほど加速度的に寿命を減らしていく
   たとえ私が死んでもあなた自身の力で働き続けてあなたの寿命を奪っていく――
   そんな呪いのループ」
127 : [sage]:2012/10/20(土) 22:00:56.78 ID:VNPhlMIl0
あすみ「呪い?なんでゆいちゃんが私に?」


ゆいはあすみに全部話した

しをりのこと
了のこと
魔法少女のこと
そして、自分の心が醜いこと……
128 : [sage]:2012/10/20(土) 22:01:24.22 ID:VNPhlMIl0
ゆい「あすみちゃん、私わかったんだよ
   奇跡ってのはタダじゃない
   希望を祈ればそれと同じ分だけ絶望が撒き散らされる
   そうやって差し引きゼロにして世の中のバランスは成り立ってるんだって」

ゆい「だからね、私は希望をもっちゃいけない
   幸せになっちゃいけないんだ」

ゆい「今の私にとってはね、あすみちゃんは唯一の親友、
   残された最後の希望なんだ」

ゆい「だから……壊すの
   あすみちゃんならわかってくれるよね?」


暗い絶望に身を染める
深い闇の中を沈潜していく

周りの見慣れた景色がやたらとまぶしく見える
もう目も開けていられない
もう私にはこの世界は遠すぎる
手を伸ばしても届かない


光が私を包み込む――


ソウルジェムが砕け散る
絶望の音がした






             ―――――― 第十部 完
129 : [sage]:2012/10/20(土) 22:02:39.36 ID:VNPhlMIl0
第十一部


ソウルジェムが砕け、グリーフシードへと変わる
なすすべなく結界に取り込まれるあすみ


『あすみちゃんは残された唯一の希望なんだ』


それはあすみにとっても同じだった


あすみ「ゆいちゃんがいなくなったら、私はどうやって生きていけばいいの?」

QB「あすみ、このままじゃ戦うことも逃げることもできない
   契約するしか生き延びる道はないよ!」

あすみ「契約?」
130 : [sage]:2012/10/20(土) 22:03:41.19 ID:VNPhlMIl0
魔法少女になれば呪いのループが発動する
それなのに?

いや、QBは悪くない
わかってる
私はゆいちゃんに裏切られた
ただそれだけだ

まだ痛む心臓をおさえる
その痛みが裏切りの証


あすみ「ゆいちゃん、何で――」

QB「あすみ!」
131 : [sage]:2012/10/20(土) 22:04:25.83 ID:VNPhlMIl0
魔女が攻撃を仕掛けてきた
先ほどと同様にあすみの体が光っている

QB「あれは……精神を攻撃しているのか
   あすみ、精神汚染される前に僕と契約を結ぶんだ!」


…………


あすみの中に流れ込んでくるゆいの記憶や意識や感情


なんでわたしばっかりこんな目にあうの?
みんな普通に幸せに暮らしているのに……
私は普通の幸せどころか生きることさえ許されないの?

死にたくない
生きていられればそれで十分幸せ
たとえそれが他人から見たら不幸な生き様でも……


どす黒い感情があすみを支配する


「一緒に世界を呪おう
 自分の居場所なんてこの世界にないんでしょ?
 自分を傷つける世界を壊したいでしょ?」


ゆいの声が聞こえた気がした


…………
132 : [sage]:2012/10/20(土) 22:04:55.22 ID:VNPhlMIl0
ドン


あすみ「……QB?」


QBが体当たりしてきたようだ
かろうじて意識が戻る
途切れそうな意識をつなぎとめるのがやっとだ


QB「早く願い事を言うんだ!」


あすみにはもはやこれが夢なのか現実なのか区別がつかない
混濁する意識の中考える
133 : [sage]:2012/10/20(土) 22:05:26.21 ID:VNPhlMIl0
あすみ「……私の願い」

あすみ「私は死にたくない
    この世界を呪いながら生きる
    それができるなら喜んで魔女になってやる」


それは生きながら魔女になること
魔女になるために私は魔法少女になる――
それが私の願い


あすみ「QB、『希望と絶望は差し引きゼロ』なんだよね」
 
あすみ「魔法少女が希望を振りまく存在だというなら
    私は魔法少女を絶望させてみせる、奪ってみせる
    だから、その分私に希望を持たせてよ
    私を生きさせてよ、QB!」


銀色の光があすみを包む

魔法少女になったあすみ
目の前の魔女とゆいの抜け殻には一顧だにせずその場を立ち去った
そのまま街に消え、時は流れる



――――――

――――

――
134 : [sage]:2012/10/20(土) 22:05:53.99 ID:VNPhlMIl0
TVのニュースが流れている
ここ最近、少女たちの失踪事件の数が急激に増えているらしい
それを見てQBがあすみに言う


QB「願いの結果とはいえ、君は実にイレギュラーな魔法少女になったね」

あすみ「そのおかげであなたも仕事が捗るでしょ」

QB「そうだね」

QB「そうそう、イレギュラーで思い出したよ
   あすみは見滝原という町を知っているかい?」

あすみ「うん、知ってるよ」

QB「そこにもイレギュラーな魔法少女が現れてね……」

あすみ「へえ、面白そうだね」


…………


運命の歯車が回りだす
少女たちは時に抗いながらもそれに身を委ねる
そしてたどり着く結末は……





             ―――――― 第十一部 完
 
135 : [sage]:2012/10/20(土) 22:07:40.29 ID:VNPhlMIl0
以上で第一章「魔女になりたい」終了です
136 : [saga]:2012/10/20(土) 22:08:56.87 ID:VNPhlMIl0
【次回予告】


舞台は見滝原へと移る
ループして戻ってきた暁美ほむら
彼女は大きな決断を下す
果たして、彼女の決断は運命を変えられるのか



次回、第二章「ワルプルギスの夜さえ@」
137 : [saga]:2012/10/20(土) 22:11:26.66 ID:VNPhlMIl0
今回の投稿は以上です
読んでくれてる人いないかも……
ですが、もしいたらありがとうございます

では、次回ということで
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/10/20(土) 22:12:31.26 ID:Ulh0hmedo
速報は始めてか?

目欄にsagaと追記するといいよ
伏せ字が外れる

読んでるよ
139 : [saga]:2012/10/20(土) 22:20:54.43 ID:VNPhlMIl0
>>138
ありがとうございます!!
実は今回初投稿、というより初のスレたてでした
全然ルールがわからなくて……


自分が一人で書き込んでるかんじだったので第2章書こうか迷いましたが
読んでくれている人が一人でもいるならがんばります!
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/10/20(土) 22:52:13.30 ID:PQOMAiQUo
読み応えあるなぁ
期待
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2012/10/20(土) 23:07:44.90 ID:1OCb5hRAO

見てる
142 : [saga]:2012/10/20(土) 23:12:36.17 ID:VNPhlMIl0
>>140
感想ありがとうございます!
そう言ってもらえるとうれしいです!!
かなり理屈っぽいので不安だったんです
できるだけ第2章加速して書きます!
それでもかなりかかりそうですが……
143 : [saga]:2012/10/20(土) 23:13:31.11 ID:VNPhlMIl0
>>141
ありがとーーー!!
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/10/21(日) 02:38:22.47 ID:XXr1AcUJo

ここは投下中の合いの手は基本的にないと思った方がいい
感想とかは投下が一段落してからって文化
だから一気に投下ってスタイルだとレス少なく感じるかも
でもROMも結構多いから頑張って
145 : [saga]:2012/10/21(日) 19:48:02.90 ID:RB2tQDlo0
>>144
おお、そうなんですか、勉強になります
がんばります!


一日放置して気がすんだので(恥ずかしいので)
八時ごろにHTML化を依頼してみようと思います
うまくできるかなあ……
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/21(日) 19:52:51.84 ID:+OcfHGiIO
まさかの俺たちの戦いはこれからだENDかよ
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/10/21(日) 19:56:10.54 ID:OYYvbWgKo
依頼なんぞ一分もなしにできるが、ここで終わったらズコーだぞ
148 : [saga]:2012/10/21(日) 19:57:47.33 ID:RB2tQDlo0
>>146
第2章書いたらまた別スレたてますね
時間かなりかかりそうなので
まだ半分も書けてないんです
期待してもらってるみたいでありがたいです!
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/10/21(日) 19:58:18.42 ID:OYYvbWgKo
二ヶ月は落ちないよここ
150 : [saga]:2012/10/21(日) 20:00:03.11 ID:RB2tQDlo0
>>147
ズコー!!
すいません……
また新しくたてて続けますのでご勘弁を
151 : [saga]:2012/10/21(日) 20:07:08.91 ID:RB2tQDlo0
>>149
えっ、そうなんですか
二ヶ月もあれば……
依頼完了しちゃいました
ごめんなさい……
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/21(日) 20:23:16.36 ID:v8+Ne7EXo
依頼取り消して来たら?
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/21(日) 21:49:18.25 ID:gOZQtP1Mo
あすみちゃんに盛大に釣られた俺得スレ
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/10/21(日) 22:47:25.78 ID:26l4mOuDO
しえん&乙です

今きて拝読しましたが、あんまりにも面白かったのでカキコです

あすみちゃんをまとめでみてから気になってたのですが、オリキャラさんたちもいい味だしてて一層楽しめました


続き、よければまた読ませてください(´∀`)ノシ
155 : [saga]:2012/10/22(月) 00:49:32.51 ID:SKH2PTce0
>>152
HTML化依頼の取り消し願いをだしてみました
どうなるかわかりませんが……

>>153
あすみちゃん好きなんですね(握手
このSSは本当はこの第1章だけのつもりで始めたんです
当初は「あすみ無双」なかんじを想定していました
いつのまにか変わってましたがW

>>154
おお、ありがたいコメ……
励まされます!!


第2章のボリュームがハンパないです……
誰か助けてw
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2012/10/22(月) 22:15:03.22 ID:WZ5DZ2MB0
あすみちゃんもっと流行れ
ということで支援
彼女は人によってキャラクターが変えられるからいいですよね

ここまで乙です
157 : [sage]:2012/10/23(火) 14:11:24.72 ID:hBpo7t510
>>156
支援ありがとうございます!
架空キャラということでこのまま忘れ去られるのは惜しいですね
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/10/24(水) 20:10:15.83 ID:Kh7Y47s+0
基本ROM専だけどすごく面白かったのでレスします

まどマギの魅力ってキャラもそうだけど今までにない黒い魔法少女システムの魅力も大きいからその設定を生かしたオリキャラも映える

このSSのオリキャラの描かれ方はすごく好きだし魔法少女してる姿もいい それだけにしをりの魔女化もせつない


続き楽しみにしてます
159 : [sage]:2012/10/26(金) 00:12:29.57 ID:paD76xNZ0
>>158
ROM専の人がコメくれるとは……ありがとうございます
自分も基本ROM専でまさか書く側にまわるとは思っていませんでした
でも今は書くのが楽しいです

最初オリキャラは話の流れ上必要だっただけだったんですけどね
書いてるうちに愛着わいてきました
次章から出てこないのが残念です
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/10/26(金) 07:54:14.40 ID:2INecv1Ko
あすみの契約の願いが安価で決まった設定と違うのは後々の伏線になるのか?
161 : [sage]:2012/10/26(金) 23:06:32.64 ID:paD76xNZ0
>>160
たしかに、安価での願いは「自分の知る周囲の人間の不幸」で当SSのそれとは違いますね
願いも違うので[ピーーー](NGです、すみません)


設定の変更があったとはいえ、安価設定からあまり解離しすぎないよう、
方向性は維持したまま「あすみらしさ」が出せるようにしたいです


「当SSでのあすみ」をお楽しみいただければと思います

最後に、読んでくれてありがとうございます!
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/11/18(日) 16:36:16.51 ID:U62udgia0
続きはまだかね?
163 : [sage]:2012/11/19(月) 21:25:23.94 ID:ZV5Yn6q40
>>162
遅くなってしまって申し訳ないです
忘れたわけではないのでご安心を!


今日でスレたてから1ヶ月……
今月中か来月頭には第2章をアップしたいです
第2章は第1章の3倍くらいのボリュームになるかも
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/11/19(月) 21:27:43.93 ID:OFoijC2bo
もうそんなに経ったのかよ
期待してる
165 : [sage]:2012/11/21(水) 23:11:46.79 ID:qXTZhr5/0
>>164
時間経つの早いです
この数ヶ月完全にこのSSメインの生活になっちゃいました
その分、期待してもらっても……やっぱどうかなあw
今言えるのは、期待してもらってる分頑張ります!ってことですね
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/11/26(月) 01:21:21.74 ID:6XXfwY7t0
SSかきはじめるのに夢中になるとほんと生活の大半がSSになるよね。
いや、かいてる時間は少ないんだけど、自分のSSについて考えてる時間が圧倒的に多くなるww
167 : [sage]:2012/11/28(水) 00:32:32.09 ID:CEnWiHc80
>>166
全くですね。寝ようと思って横になっても考えこんじゃって眠れないとかありました。

第二章、書きあがりました。
トラブルがなければ今週末にでもアップしようと思います。
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/11/28(水) 00:32:57.08 ID:ZGu4zJG8o
待ってる
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/11/28(水) 20:29:24.14 ID:kSVf1hE50
きたー
楽しみです
一章と同じでかきあがったら一挙に投下するのかな?
170 : [sage]:2012/11/29(木) 00:20:52.27 ID:1QCvF4iv0
>>168、169
楽しみに待っていてくれている人に支えられて、第二章を書き上げられました
どれだけ挫けそうになったか……
第一章アップしてから一ヶ月以上経ってるのに、こまめにチェックしてくれてる人がいるのはほんとに支えになります

第二章も一気に投下予定です。長いので様子みて二回に分けるかもしれませんが。
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/11/29(木) 00:22:47.71 ID:4Dmqpr7mo
凄い今更だけどアンカーの打ち方は半角じゃないと機能しないぜ
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/11/29(木) 00:23:16.04 ID:T1UyZ3tjo
数話ごとに少しのブランクを開けて投下すれば感想つけやすいかもしれない
173 : [sage]:2012/11/29(木) 21:58:12.36 ID:1QCvF4iv0
>>171
こうですかね?
ご指摘ありがとうございます!初心者丸出しですね……//

>>172
なるほど。それも検討してみます!
174 : [saga]:2012/12/01(土) 20:06:50.46 ID:/nqBwFnI0
では、予告どおり本日これから第二章を投下していきます

その前に……


【第二章について】


☆第二章はTV版準拠、全17部構成です

☆時間軸等はTV版と基本同じです
 が、中には「ん?」と思われるところがあるかもしれません
 SSなのでTV版と異なる設定もある、ということで了解お願いします

☆前半は「何番煎じだよ」とつっこまれそうな内容ですが、話がすすむにつれて次第に解消していきます
 そのため、最後までおつきあいいただければ、と思います

☆「数話ごとに少しのブランクを開けて投下すれば〜」というアドバイスをいただき、そうすることにしました
  一日に数部ずつ、一週間程度かけて投下していきます
175 : [saga]:2012/12/01(土) 20:10:09.15 ID:/nqBwFnI0
第二章「ワルプルギスの夜さえ@」


第一部 


「ん……」


いつもの病院で暁美ほむらは目を覚ました
日付を確認する


ほむら「今日は16日……ちょうど一ヶ月前ね」


もう何度目の「一ヶ月前」だろう
回数を数えるのもやめてしまった
私にとって大切なことは回数などではないのだ
大切なことは……あの時のあの子との約束を守ること
右手をじっと見つめる


ほむら「まどか……」
176 : [saga]:2012/12/01(土) 20:11:31.95 ID:/nqBwFnI0

――――――――――――――――――――――――――――――
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 
        (ほむらの回想)


まどか「QBに騙される前の馬鹿な私を救ってあげてくれないかな……」
 
ほむら「約束するわ。必ずあなたを救ってみせる……たとえ何度繰り返すことになっても」

 
   ________________________
――――――――――――――――――――――――――――――
177 : [saga]:2012/12/01(土) 20:12:43.04 ID:/nqBwFnI0

この後、私はまどかをこの手にかけた
その時の感触はまだこの手に残っている
じっと手を見つめながら前の周までのことを思い出す
そしてこれからどうすべきか、その手がかりを探す
178 : [saga]:2012/12/01(土) 20:14:07.90 ID:/nqBwFnI0

まどかを契約させずにワルプルギスの夜を倒す
経験上、一人で戦っても勝てそうにないことがわかってきた
やはり仲間が必要だ
問題は巴マミと美樹さやかの二人
この二人の暴走、魔女化を防ぐ必要がある
では、二人の暴走、魔女化のきっかけは何か?


巴マミ
 「ソウルジェムが魔女を産むならみんな死ぬしかないじゃない!あなたも、私も!」
 と言って暴走し、別の魔法少女のソウルジェムを打ち砕いた

美樹さやか
 肉体のゾンビ化を知り、そこから暴走が始まりほどなく魔女になった


「魔法少女の真相を知ること」
それがきっかけになる可能性が高い
そう思って私は今まで真相を隠す方向で動いてきた
179 : [saga]:2012/12/01(土) 20:15:49.49 ID:/nqBwFnI0

しかし、よくよく状況を考えてみれば、真相を知った巴マミが暴走するのはさやかが魔女化するのをいきなり目の当りにした時だった
つまり、

 1:自分を慕ってくれていた仲間の死亡
 2:その仲間が目の前で魔女化
 3:1と2が同時に起こる

1つでも衝撃的なことが「同時」かつ「目の前」で起こる――
実はそれが巴マミの暴走の決定的な要因だったのではないか?
 
もしそうなら最初にさらっと事実を伝えてはどうか?
真相が暴力的な力を持つ前にソフトランディングさせるのだ


そして、さやかにしても契約前にゾンビ化のことを話してしまってはどうか?
そのうえで彼女がもし契約を結んでしまったのならもう仕方のないことだ
それでも、真相を知ったうえでの契約ならもしかしたら暴走までいかないかもしれない
180 : [saga]:2012/12/01(土) 20:17:13.87 ID:/nqBwFnI0

しかし、あくまでこれらは推測にすぎない
もしかしたら今回も失敗し、また「一ヶ月」を繰り返すことになるかもしれない
それでもやらねばならない
前回までと同じことをしているのでは意味がないのだから


「早い段階で魔法少女の真実を伝える」
そのためには自分の能力を明かさなければならないだろう
そうでなければ、とても信じてもらえないだろうから
しかし、それには相応のリスクもある

この話をする時はQBにもいてもらう
QBは嘘をつかないから
それに巴マミの信頼も厚い
QBに話の裏づけをさせることで、少なくとも巴マミはこの話を信じてくれるはずだ
今回はあの忌々しい悪魔を私が利用してやる
181 : [saga]:2012/12/01(土) 20:18:45.84 ID:/nqBwFnI0

しかしその一方で、私の能力はQBの知るところとなるだろう
そうなればアイツは裏で工作活動をするだろう
他の街の魔法少女をけしかけてくるかもしれない

早くに真実を話すことで二人の暴走を防げると決まったわけでもないし、QBの妨害工作にあう恐れもある
しかし、上手くいけば全てが丸く収まる可能性もある

リスクと期待を天秤にかける必要は私にはない
ダメだったらもう一度繰り返すまでのこと
というより、天秤にかけて「どうしようか」と考えている余裕など私にはないのだ
182 : [saga]:2012/12/01(土) 20:19:56.22 ID:/nqBwFnI0

今回の私がやるべきこと――
それは、リスクを承知で自分の能力や魔法少女の真実を早い段階で明かすこと
そうすることで仲間の信頼を得る
そしてワルプルギスの夜の襲来に備える

それが私の出した結論だった
183 : [saga]:2012/12/01(土) 20:20:39.77 ID:/nqBwFnI0

カーテンがふわっとゆれた
桜の花びらが舞い踊り、窓近くの机を飾る
そこには紫色に輝く宝石が置かれていた
それを手にとってつぶやく

ほむら「私はあなたを必ず救いだす。
    そのためなら私は何度だって繰り返してみせる。
    たとえそれが茨の道であっても」
 






                 ――――――第一部 完
184 : [saga]:2012/12/01(土) 20:22:31.86 ID:/nqBwFnI0

第二部 


まどか「ああ!!」


叫びながらまどかは夢から覚めた


まどか「夢オチ?」


まどか(変な夢だったなあ……)


女の子が一人、戦っていた
まどかは助けようとして……

思い出そうとしても、細かい部分までは思い出せない
ボーっとしながら時計を見る


まどか「いけない、もうこんな時間!さやかちゃんたちに怒られちゃう」


急いで着替えると学校へ向かった


     ・
     ・
     ・
185 : [saga]:2012/12/01(土) 20:23:51.66 ID:/nqBwFnI0

(学校)


和子「今日はみなさんに大事なお話があります。心して聞くように」


朝のホームルーム
担任の和子がいつものようにクダを巻いている


和子「はい、それから今日はみなさんに転校生を紹介します」

和子「じゃあ、暁美さん、いらっしゃい」

さやか「うおおお、スゲー美人」

まどか「え?嘘、まさか……」


まどかの声に反応したさやかが後ろをちらっと見た


さやか(ん、まどか?)

和子「はい、じゃあ自己紹介いってみよう」

ほむら「暁美ほむらです。よろしくお願いします」

ほむらはクラス全体を見渡しながらあいさつし、指定された席についた
自然に振舞うため、あえてまどかを見つめたりしなかった



     ・
     ・
     ・
186 : [saga]:2012/12/01(土) 20:25:14.51 ID:/nqBwFnI0

(休み時間)


話しかけてきたクラスメートの質問に答えつつ、体調を口実に中断させる

ほむら「保健係の子は誰かしら?」

クラスメート「ほら、あそこの子だよ」

ほむら「ありがとう」

愛想良くお礼を言い、まどかの方へ向かった


ほむら「あなたが保健係の人?」

まどか「うん、鹿目まどかだよ。よろしくね!保健室行くんでしょ?案内するね」
187 : [saga]:2012/12/01(土) 20:26:35.05 ID:/nqBwFnI0

まどかの後についていく


ほむら「皆に見られている気がするわ」

まどか「転校生は珍しいし、それに暁美さんは美人さんだから。女の私でもみとれちゃうよ」ティヒヒ

ほむら「ありがとう。私のことはほむらでいいわ」

まどか「じゃあ、私もまどかって呼んでね!」

ほむら「……ねえ、まどか」

まどか「なに?ほむらちゃん」

ほむら「いきなりだけど、私と友達になってほしいの。ダメかな?」


いきなりすぎて、少し不自然かもしれない
でもこの子なら……


まどか「私もほむらちゃんとお友達になりたいなあって思ってたんだ!」


予想通りの言葉が返ってきた


ほむら「よかったわ。私まだこの街に来てから間もないから友達もいなくて……
    だから学校や街のことを色々教えてほしいの」

まどか「うん!あとで私の友達も紹介するね!」


    ・
    ・
    ・
188 : [saga]:2012/12/01(土) 20:28:14.33 ID:/nqBwFnI0

(放課後)


まどか「紹介するね。こっちがさやかちゃんでこっちが仁美ちゃん!」

さやか「私は美樹さやか。よろしくね!」

仁美「志筑仁美です。よろしくお願いしますわ」

ほむら「美樹さんに志筑さんね。よろしく」

まどか「二人はこの後時間あるのかな?」

仁美「今日はお茶のお稽古ですの。ごめんなさい」

さやか「私はCDショップに行くくらいかな」

まどか「また上条君の?」

さやか「へへへ、まあね」

ほむら「じゃあ、三人でCDショップに行きましょう。学校案内は後でもいいし」

さやか「おっ、転校生は話がわかるねー」

ほむら「ほむらでいいわ」

さやか「なら私もさやかって呼んでね」

仁美「私も仁美でいいですわ」

ほむら「ええ、そうさせてもらうわ」

仁美「申し訳ありませんが、そろそろお時間ですので私はこれで失礼しますわ。
   皆さん、ごきげんよう」

さやか「じゃあ、私たちも行きますか」
189 : [saga]:2012/12/01(土) 20:29:23.10 ID:/nqBwFnI0

ここまでは順調だ
あやしまれることなくまどかたちと仲良くなれた
いつもならこの後、QBを追いかけているところだろう
だが、今回からはそれもやめることにした
QBは相当数存在する
一匹殺したところで大した意味はない
だとしたらまどかたちと仲良くして一緒にいた方が守りやすい


まどか「ほむらちゃん、遅いよー」

ほむら「ごめんなさい、考えごとをしていて」


ほむらは二人の後をついて行く


    ・
    ・
    ・
190 : [saga]:2012/12/01(土) 20:30:19.05 ID:/nqBwFnI0

(CDショップ)


さやか「じゃあ、私はあっちにいるから」

まどか「うん、私もいつものコーナーにいるね」


ほむらはまどかの後について行く


まどか「ほむらちゃんも好きなのを適当に聞いててね」


そう言って慣れた感じで奥のコーナーへと入っていくまどか
ほむらは適度な距離を取りつつ後ろから眺めていた
191 : [saga]:2012/12/01(土) 20:31:38.44 ID:/nqBwFnI0

しばらくしてまどかの動きがピタッと止まった
あたりをキョロキョロうかがうまどか


まどか「誰?誰なの?」

ほむら(来たわね)

さやか「何してんの?」


振り返ると買い物を終えたさやかがいた
どうやらずっと見られていたようだ


ほむら「……まどかが呼ばれているみたい」

さやか「……?」

さやか「あ、まどか!」
192 : [saga]:2012/12/01(土) 20:33:05.45 ID:/nqBwFnI0

二人でまどかを追う
まどかは立ち入り禁止の区域に入っていってしまった


さやか「どうしちゃったの、まどか」

ほむら「とにかく追いましょう」


先に進んだところでまどかに追いついた


まどか「あなたなの?」

QB「そう、君に話があって来てもらったんだ、鹿目まどか」

QB「それと美樹さやかも一緒に聞いてほしい」

まどか「えっ?」


後ろを振り返るまどか
そこで私たちが追いかけて来ていたことにやっと気付いたらしい
193 : [saga]:2012/12/01(土) 20:34:01.62 ID:/nqBwFnI0

まどか「さやかちゃん、ほむらちゃん」

ほむら「インキュベーター」


間髪入れず、ほむらがQBに呼びかけた
QBがほむらの方を見る


QB「ん?君は?僕は君と契約した覚えはないんだけど……」


会話の途中で辺りの様子が急に変わった
194 : [saga]:2012/12/01(土) 20:36:05.07 ID:/nqBwFnI0

ほむら「くっ、こんな時に……」

QB「話はまた後だ!もうすぐ結界ができあがる」

さやか「さっきから契約とか結界とか、一体何言ってるの?周りの様子の変化と関係あるの?」


ほむらが変身する


さやか「えっ、ほむら、あんたそれ……」

ほむら「話は後でするわ!大丈夫、あなたたちは私が守るから」
195 : [saga]:2012/12/01(土) 20:37:12.71 ID:/nqBwFnI0

植物園のような空間ができあがっていた
至るところにあしらわれているバラ
その周辺にからまるように生えている蔦


まどか「やだ、何かいる!」


小さなヒゲをたくわえた綿菓子みたいな頭をもった何かが近づいてきた
空中には蝶の羽を生やした奇妙な生き物が飛びながらベルのような音を鳴らしている
196 : [saga]:2012/12/01(土) 20:38:09.26 ID:/nqBwFnI0

QB「あれは魔女の使い魔さ」

さやか「魔女?使い魔?」

QB「そう、彼女の、魔法少女の敵さ」


ほむらは時間を停止して、銃や爆弾で使い魔を倒していく


さやか「え、もうあんなところに……瞬間移動したの?」


はた目には瞬間移動に見えるのかもしれない


ほむら(一匹一匹は大したことないけど……
    私一人で二人を守りながらこの数を相手にするのは骨が折れそうね)


倒しても倒しても次々にわいてくる


ほむら(数が多すぎる……一時撤退するか)
197 : [saga]:2012/12/01(土) 20:39:34.56 ID:/nqBwFnI0

タンッ


ほむらのとは違う銃の音がした
音のした方を見る
黄色い巻き髪の少女
手には白いマスケット銃


QB「マミ!」

マミ「あらQB、こんなところにいたの」


そしてまどかとさやかを見て微笑むマミ


マミ「自己紹介したいところだけど、その前に……」

マミ「あの子のお手伝いしてきていいかしら?」

さやか「お願いします!」
まどか「ほむらちゃんを助けてあげてください!」
198 : [saga]:2012/12/01(土) 20:40:20.46 ID:/nqBwFnI0

マスケット銃を自在に操り次々と正確に使い魔を仕とめていくマミ
マミの加勢により一気にケリがついた


さやか「す、すごい」

まどか「あ、戻った!」


辺りが植物園のような空間から先ほどいた元の空間に戻った
199 : [saga]:2012/12/01(土) 20:41:02.51 ID:/nqBwFnI0

QB「ありがとう、マミ。助かったよ」

マミ「私は通りがかっただけよ」

さやか「マミさんっていうんですか」

マミ「ええ、私は巴マミ。あなたたちと同じ見滝原中の3年生よ」

マミ「そして、QBと契約した魔法少女」

さやか「魔法少女?」

QB「そう、僕は君たちにお願いがあるんだ」

まどか「お願いって?」

QB「僕と契約して、魔法少女になって欲しいんだ」





                 ――――――第二部 完
200 : [saga]:2012/12/01(土) 20:42:24.45 ID:/nqBwFnI0

第三部 


(マミの部屋)


マミ「QBに選ばれた以上、あなたたちにも説明は必要かと思うの」


マミが説明を始める
契約とソウルジェムのこと、魔女と魔法少女のこと、そして、魔法少女の背負う宿命について
じっと聞いているほむら


QB「二人ともすぐには決めれないだろうから、マミの魔女退治に付き合ってみたらどうかな?」

二人「えぇ?」

マミ「たしかに……魔女との戦いは命がけだけど、暁美さんも協力してくれるならそれほど危険というわけではないかもしれないわね。
   暁美さんはどう思う?」
201 : [saga]:2012/12/01(土) 20:43:18.33 ID:/nqBwFnI0

ほむら「その前に……QB、あなたが隠している魔法少女の真実、全て話してもらうわ」

マミ「え?」

QB「君は……一体何者なんだい?そもそも僕は君と契約した覚えがないんだ」

ほむら「私が何者かをあなたが知る必要はないわ。
    重要なことは、あなたがあの二人と重大な契約を結ぼうとしているのにあなたが不都合な真実を話そうとしないことよ。」

ほむら「幸い、あなたは真実を話さないだけで嘘はつかない。それだけは信じられるから」

マミ「不都合な真実って……」

ほむら「それを聞けば、マミ、あなたもショックを受けるでしょうけど、あなたも聞かなければならない。
    QB自身の口からね」
202 : [saga]:2012/12/01(土) 20:44:11.46 ID:/nqBwFnI0

QB「確かに、僕は契約の時に訊かれもしないことを言ったり嘘をついたりはしない。
   だけど、暁美ほむら、今日会ったばかりの君がどうしてそれを知っているんだい?」

ほむら「…………」

QB「君の口ぶりから察するに、昨日今日契約したわけじゃなさそうだ。
   それなのに僕は君のことを知らない。
   そして先ほどの戦い……君の能力は時間操作じゃないかな?」

ほむら「!!」
203 : [saga]:2012/12/01(土) 20:45:14.17 ID:/nqBwFnI0

QB「あの戦いで君は、一瞬で遠くまで移動しながら攻撃をしていた。
   でも、武器自体は魔力で作ったものじゃなかった。
   だから、あの移動を可能にしていた力こそ君の魔法の能力だ」

QB「そうなると考えられるのは3つ

   @瞬間移動のような『空間操作系』
   Aスピードを操る『速度操作系』
   B時間を操る『時間操作系』

   このいづれかだ」
204 : [saga]:2012/12/01(土) 20:47:04.89 ID:/nqBwFnI0

QB「そして、時間操作系の能力ならさっきまでの僕の疑問は全て解決する。
   君は時間操作能力で過去へ行くこともできるんじゃないかな?」

QB「過去の時間軸の中で僕と契約して同じ時間軸を何度もやり直す中で、君は君の言う『不都合な真実』なるものを知った。
   そう考えれば、君が既に契約済なことも僕のことをよく知っていることも整合性がとれる」

ほむら「……ばれるんじゃないかとは思っていたけど、早かったわね。当たりよ」

QB「やっぱりね。で、君が知った『不都合な真実』というのはどういうものだったんだい?」

ほむら「それは……」


チラッとマミの方を見た
こわばった表情でほむらを見つめるマミ
その表情を見て、ほむらはあの時の感覚を思い出した
205 : [saga]:2012/12/01(土) 20:48:08.93 ID:/nqBwFnI0

――――――――――――――――――――――――――――――
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 
          (ほむらの回想)


杏子「てめぇ、一体何なんだ?さやかに何しやがった」


魔女化したさやかに向かって杏子が叫ぶ
絶望を撒き散らし始める魔女


パリン


銃声が響く
砕かれた杏子のソウルジェム
砕いたのは――


ほむら「巴さん?」


黄色いリボンがほむらを拘束した
かろうじて動く顔をマミの方へ向ける


マミ「ソウルジェムが魔女を産むなら……みんな死ぬしかないじゃない!」


向けられる狂気と凶器……


   ________________________
――――――――――――――――――――――――――――――
206 : [saga]:2012/12/01(土) 20:49:31.86 ID:/nqBwFnI0

ほむらは手をギュッと握った
意を決して話し出す


ほむら「端的に話すわ。魔法少女になるとソウルジェムが本体になる。肉体はゾンビみたいなものよ。
    そして、ソウルジェムが濁りきると魔法少女は魔女になるの」

マミ「え?」


マミの表情が曇る


マミ「QB、本当なの?」

QB「ああ、訂正するほど間違ってはいないね」

マミ「じゃあ、私もいずれ魔女になるの?」

QB「ソウルジェムを砕かない限りね」


沈黙が流れる
207 : [saga]:2012/12/01(土) 20:50:37.99 ID:/nqBwFnI0

ほむら「マミ」

ほむら「QBの言葉を裏返せば『その時』が来たらソウルジェムを砕けばいい、ということよ。
    そして、今はまだ『その時』じゃない。あなたも私も今は魔法少女として人々に希望をふりまいているのよ」

マミ「…………」

ほむら「来月の16日……ワルプルギスの夜がこの街に来るわ。
    その時にワルプルギスの夜と戦えるのは魔法少女をおいて他にいないのよ」

マミ「だからそれまでは生きて協力しろ、と言うの?」

ほむら「そうね。その代わり、もし無事にワルプルギスの夜との戦いを切り抜けられたら私のソウルジェムを砕いてもらって構わないわ」

マミ「正気なの?今の私に冗談は通じないわよ。それを砕けばあなたは……」

ほむら「ええ、死ぬでしょうね」
208 : [saga]:2012/12/01(土) 20:51:43.95 ID:/nqBwFnI0

まどか「何でそこまで……」

ほむら「私の力はワルプルギスの夜を超えるとなくなってしまうものなの。
    そんな無力な魔法少女になればよくて戦死、もしくは何もせず魔女化のどちらかしかないわ」

QB「時間操作の術、とくに時間遡行は極めてレベルの高い術だと言えるからね。
   暁美ほむらの素質でその能力を手に入れるには、かなり大きな制約があっても不思議じゃない。
   戻れる時間の幅はおよそ一ヶ月くらい、といったところかな?」

ほむら「何でもお見通しってわけね」

QB「時間軸が違う、とは言っても契約したのは僕だからね」

ほむら「私はワルプルギス戦を境に一ヶ月を繰り返しているの。
    まどかを契約させずにワルプルギスを倒すためにね。
    それさえ叶えば……私はどうなってもいい」
209 : [saga]:2012/12/01(土) 20:53:11.03 ID:/nqBwFnI0

再度沈黙がしばらく続いたあと、マミが切り出した


マミ「一つ訊かせて。あなたはその真実を知ってなんで平気でいられるの?」

ほむら「私には、そんなことを気にしている余裕なんてないの。私は私の願いを叶えたい、ただそれだけ」


ほむらはまどかの方に視線を移した


ほむら「最初の時間軸で、まどかと私は親友だった。でも、まどかはワルプルギスとの戦いに敗れて死んでしまった。
    だからQBに祈ったの、『まどかとの出会いをやり直し、彼女に守られる私ではなく、彼女を守る私になりたい』って」
210 : [saga]:2012/12/01(土) 20:54:42.48 ID:/nqBwFnI0

QB「……なるほど、それで時間を遡る力を手にしたんだね」

ほむら「私はその力でこの一ヶ月を何度も繰り返した。でも何度繰り返してもワルプルギスの夜が倒せなかった」
    
ほむら「そして、あるループ……私と魔法少女になったまどかの二人で挑んだけど私たちは敗れて限界を迎えようとしていた。
    私はもうどうでもよくなっていたわ。
    だから、このまま二人で魔女化してまどかと一緒に世界を呪うのも悪くないって思った」

ほむら「その時、まどかが取っておいた最後のグリーフシードを私のソウルジェムにあててこう言ったの。
    『ほむらちゃんは過去に戻れるんだよね?QBに騙される前のバカな私を助けてあげてくれないかな?』って」

ほむら「私はまどかを必ず救うと約束して、まどかのソウルジェムを打ち砕いた」

マミ「…………」

ほむら「それ以来、私はまどかを契約させずにワルプルギスの夜を倒すことだけを考えてループを繰り返した。
    それ以外のことを考えている余裕なんてない」

ほむら「だから私の体がゾンビだろうと関係ない。
    魔女になる前に私は自分のソウルジェムを打ち砕く。
    それだけよ」
211 : [saga]:2012/12/01(土) 20:55:41.85 ID:/nqBwFnI0

マミ「……私は暁美さんのように強くない」

ほむら「そうね。そのループでは全員が魔法少女だった。
    途中までは脱落者もでず、上手くいっていたわ。
    でも途中でさやかが魔女化したの」

ほむら「そして、それを目の当たりにしたマミが佐倉杏子のソウルジェムを打ち砕いてしまった」

マミ「佐倉さんの?」

ほむら「そう、隣町の魔法少女。あなたの昔のパートナー」

マミ「……やっぱりあなたの言うことは本当なのね」

ほむら「その後、マミは私のソウルジェムを砕こうとした。その時、逆にまどかによってソウルジェムを砕かれてしまったの」

マミ「……あなたはそれを体験しておきながら私に話をしているのよね?」
212 : [saga]:2012/12/01(土) 20:56:41.79 ID:/nqBwFnI0

不穏な空気が流れ、緊張が走る


ほむら「ええ、今あなたにソウルジェムを砕かれるかもしれない。だからこれは賭け」

マミ「…………」

ほむら「マミ、つらいでしょうけど、あなたがここでこれを乗り越えないと私たちは前に進めない。
    私たちは未来を思い描くことができなくなってしまうの。
    勝手なお願いなのはわかってる……でもあなたの力が必要なの」
213 : [saga]:2012/12/01(土) 20:57:30.64 ID:/nqBwFnI0

張り詰めた空気に息もできない
一秒がとてつもなく長い
それでもまっすぐ、力強い瞳でマミを見つめるほむら


マミ「……少し時間を頂戴」


感情を押し殺しながら発する低い声
マミはつぶやくようにそれだけ言ってうなだれた
214 : [saga]:2012/12/01(土) 20:58:45.56 ID:/nqBwFnI0

ほむら「そうね。それとさやかも今の話を忘れないでほしい」

さやか「……うん、わかった」

ほむら「まどか、あなたの魔法少女としての素質は桁違いよ。それ故に史上最悪の魔女になる。
    世界を十日で滅ぼしてしまうくらいのね」

ほむら「そうでしょ、QB」

QB「そうだね」

ほむら「だから尚更あなたに契約させるわけにはいかない」

まどか「うん、私契約しないよ」

ほむら「そう、よかったわ」

ほむら「マミ……」

ほむら「私は強くなんてないわ。ただ、命をかけてでも守りたいものがある。それだけよ」



     ・
     ・
     ・
215 : [saga]:2012/12/01(土) 20:59:56.65 ID:/nqBwFnI0

(帰り道)


さやか「……マミさん、大丈夫かなあ」

ほむら「ショックだろうけど、私は大丈夫だと思うわ」

ほむら「マミはさやかと違って理性が強いから、時間をあげれば感情をコントロールすることもできるわ。
    あの場さえ乗り切れれば概ね私の賭けは成功だと思う」
216 : [saga]:2012/12/01(土) 21:01:18.64 ID:/nqBwFnI0

もしかしたらあの場でマミが暴走する、ということも考えられた
三人とも撃ち殺される、というリスクがあったのだ
しかし、そのリスクを乗り越えてこそ見えてくるものがある

考えてみれば、今までの私はリスクを避けることばかり考え乗り越えようとはしてこなかった
乗り越えてこそ結束は固まり、その分ワルプルギス戦でも有利に働くだろう
少なくとも、マミは魔法少女の真相を知ってもその場ですぐ暴走するわけではない、ということはわかった
私の予想のうちの一つは当たりだった
次につながる収穫はあったのだ

あとはさやか……
217 : [saga]:2012/12/01(土) 21:02:02.91 ID:/nqBwFnI0

ほむら「ん?」


考え事をしているほむらを不機嫌そうに見つめるさやか


さやか「……私は理性が弱い、と?」

ほむら「そうね。だからできればあなたにも契約してほしくないわ」

さやか「さやかちゃんショックだよ。でも二人のあのやりとりを聞いてたら……ねえ」

ほむら「そうでしょう。契約したことを大いに反省してほしいわ」

さやか「いや、今の私はまだ何もしてないんだけど……」

ほむら「あなたはすぐに調子にのるから反省しすぎということはないわ」
218 : [saga]:2012/12/01(土) 21:03:01.21 ID:/nqBwFnI0

さやか「ぐっ、あってるから言い返せない……まどかー、何か言ってやってよー」

まどか「ほむらちゃんはマミさんのことだけじゃなくて、さやかちゃんのことも詳しいんだね」

さやか「いや、そこじゃない……」

ほむら「あなたのことも詳しいわ」

まどか「違う時間軸の私とのこと、聞きたいな」

さやか「……まどか、聞いてる?」

ほむら「ええ、あとでゆっくりお話しましょう。今日の話でわからないこともあったでしょうし、順を追って話すわ」

ほむら「それと、二人にはできるだけ私と一緒にいてほしいの」

まどか「やっぱりマミさんのこと?」

さやか「……まどか、さん?」

ほむら「そうね、多分ないとは思うけど、魔法少女の素質のあるあなたたちをマミが襲わないとも言い切れないし」

ほむら「それと、二人が街中で魔女に遭遇する可能性もあるから」
219 : [saga]:2012/12/01(土) 21:04:09.73 ID:/nqBwFnI0

さやか「まどかー、って……ほむらが私のことも心配してくれてる?」

ほむら「……悪いの?」

さやか「ほむら」

ほむら「何よ?」

さやか「二番目でいいかな?」

ほむら「……何の話?」

さやか「一番の嫁はまどかだからさ」

ほむら「やっぱり一人で帰る?」

さやか「冗談だよ、ほむらー」



キャッキャウフフ……


ほむら(二人を守りつつ、監視する。これで契約が防げればいいけど……)

ほむら(後はマミ次第、か)


     ・
     ・
     ・
220 : [saga]:2012/12/01(土) 21:05:12.96 ID:/nqBwFnI0

(マミの部屋)


ソウルジェムを見つめているマミ


マミ「これが私の本体……これが濁りきると私は……」


『守りたいものがある、ただそれだけ』


ソウルジェムを手で転がしながらほむらのその言葉を反芻する


マミ「…………」


マミ(それを強いっていうのよ、暁美さん)


マミ「私の守りたいもの、か」
221 : [saga]:2012/12/01(土) 21:06:06.85 ID:/nqBwFnI0

マミ(街の皆を守りたい、と思ってやってきたつもりだった。けど、結局そう思いたかっただけだったってわけね)

マミ(元々私の願いは私だけのものだったから当たり前よね)


願いをかけたあの日のことを思い出す
あれ以来、どうしても埋まらなかった心の穴
それを埋めてくれる心の繋がりをどこかで求めていた
222 : [saga]:2012/12/01(土) 21:07:09.11 ID:/nqBwFnI0

『あなたがここでこれを乗り越えないと私たちは前に進めない。
 私たちは未来を思い描くことができなくなってしまうの』

『あなたの力が必要なの』


マミ(…………)


     ・
     ・
     ・


(その日の夕刻)


QB(大丈夫だとは思うけど、万が一マミが暴走したら厄介だ)

QB「……保険をかけておくか」






                 ――――――第三部 完
223 : [sage]:2012/12/01(土) 21:08:59.19 ID:/nqBwFnI0
本日の投下は以上です
おつかれさまでした
では、また近いうちに
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/01(土) 21:20:17.32 ID:6T/vXSFQo


まさかの全暴露であすみ襲来への土台を作るか
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/01(土) 21:32:08.22 ID:jnnHFKqAO
乙、まどかとさやかリアクション低くね
226 : [sage]:2012/12/01(土) 21:37:30.29 ID:/nqBwFnI0
>>224
おつかれさまです!
内容に関するコメントは差し控えさせてもらいますが、楽しみにしていてくださいね!
227 : [sage]:2012/12/01(土) 21:50:16.58 ID:/nqBwFnI0
>>225
そうですね……確かにもう少しリアクションとらせてもよかったかと思います

まどかとさやかはこの時点では自分に関わることとしての認識が低いこと、
話が現実離れしているため理解するのに精一杯、
ほむらとマミのやりとりに凍り付いてる
といったところが一応の理由です
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/01(土) 22:04:52.95 ID:0G9IwvkMo
おつー
開幕暴露パターンは珍しいな
229 : [sage]:2012/12/02(日) 10:10:14.06 ID:YxsxkFxH0
>>225さんのコメについて、私、盛大に勘違いしていたかも……
帰り道での会話も含めてのご指摘だとしたら……
帰り道のあの会話は和気藹々としすぎですよね

そう、単純ミスでございます

私としても、せめて帰り道の会話だけでも差し替えたいところですが、
投下し終えたものに後から訂正を加えることが果たして許されるのか……
判断しかねるところでございます
たとえ訂正してもしなくても、大局に影響がある箇所ではありませんが
もし、訂正してほしい、訂正してもかまわない、という声があるようでしたら、そこだけでも差し替えます
230 : [sage]:2012/12/02(日) 10:16:39.38 ID:YxsxkFxH0
>>228
おつかれさまです!
珍しいですか、知りませんでした……
むしろありきたりかと思っていました

ちょっと今、ミスのせいでかなり凹んでますが気を取り直して、
火曜日くらいに続きを投下しようかと思っています

こんなバカな1ですが……最後までお付き合いください
231 : [sage]:2012/12/04(火) 20:37:06.64 ID:yBMcFFjh0
色々考えましたが、結局差し替えはしないことにしました
とはいえ、考えるいいきっかけになったと思います
内容外の言葉でなく内容で語れるよう精進します


少ししたら予告どおり、続きを投下していきます
232 : [saga]:2012/12/04(火) 20:40:57.96 ID:yBMcFFjh0

第四部 


(次の日の昼)

この日は土曜日なので、授業は半日で終わる


まどか「ほむらちゃん……」


心配そうなまどか


ほむら「巴マミに呼び出されたから行ってくるわ」

さやか「一人で大丈夫なの?」

ほむら「ええ、あなたたちはついてきちゃダメよ」

まどか「……うん、わかった」
233 : [saga]:2012/12/04(火) 20:42:15.98 ID:yBMcFFjh0

一人、屋上へ向かうほむら


ほむら(大丈夫よね、マミ……)


屋上につくとすでに巴マミが待っていた


マミ「やっぱり、あなた一人で来たのね」

ほむら「ええ、そうよ」

マミ「……まあ当然よね」

ほむら「で、決めたの?」


表情こそいつもと変わらないほむら
しかし、筋肉はこわばり手にじっとり汗をかいている
いつ攻撃されてもおかしくない状況――
234 : [saga]:2012/12/04(火) 20:43:09.99 ID:yBMcFFjh0

マミ「昨日、暁美さんが言っていた言葉……私の力が必要っていうのは本当?」

ほむら「本当よ。私一人ではワルプルギスの夜に勝てないもの」

マミ「そう。なら私の力を貸してあげてもいいわ」

ほむら「じゃあ……」

マミ「ただし、一つ条件があるの」
235 : [saga]:2012/12/04(火) 20:44:02.86 ID:yBMcFFjh0

ほむら「……何かしら?」

マミ「もしワルプルギスの夜を倒せたら……あなたの残りの一生を鹿目さんのために捧げること」

ほむら「私は」


ほむらの言葉をマミがさえぎる


マミ「グリーフシードなら私があなたの分も稼ぐわ。だからあなたは生きて鹿目さんと幸せになるの」

マミ「それが条件」

ほむら「そんなの……条件になんてなってないじゃない」

マミ「不満かしら?」

ほむら「あなたは、マミはそれでいいの?」


一呼吸おいてマミが話しだした
236 : [saga]:2012/12/04(火) 20:44:56.14 ID:yBMcFFjh0

マミ「私はね……両親を事故で失ったあの日以来、前に進めなくなってしまったの。
   両親を助けるより自分の命を優先してしまったことが呪いのように頭から離れなかった」

マミ「私はその呪縛から逃れるように魔女と戦ってきた。『街の人を守ってるんだ』って自分に言い聞かせてきた」

マミ「でも違った。暁美さんの話だと、私は魔法少女を……街の人を守る存在をこの手で殺めてしまった」

マミ「でも、今ならまだやり直せる。私は今度こそ身近な人たちを救ってみせる。
   この手は人を殺すためにあるんじゃない、救うためにあるんだって証明してみせる……私の命をかけて」

マミ「それが叶うならどんなことだって乗り越えてみせるわ。
   たとえ体がゾンビだって構わない。
   魔女になる前に自分のソウルジェムだって砕いてみせる。
   だから……お願いだからせめてその時まであなたたちを守らせて」


そう言うとマミはほむらを抱き寄せた
237 : [saga]:2012/12/04(火) 20:45:39.49 ID:yBMcFFjh0

マミ(華奢な体……こんな体でこの子は……)


マミ「魔法少女はね、人のために戦うんだからその分幸せにならないといけないの」

マミ「だからあなたも鹿目さんと幸せにならないとダメよ」


優しくほむらに言う


ほむら「マミ……」


二人で抱き合う
込み上げた感情が雫となって目から頬へと流れる
238 : [saga]:2012/12/04(火) 20:46:41.09 ID:yBMcFFjh0

ガタン


ほむら「え……」


ほむらが音のした方を振り返る


さやか「マミさん……」

まどか「よかったね、ほむらちゃん」

ほむら「付いてくるなって言ったのに……」

マミ「ふふふ」


     ・
     ・
     ・
239 : [saga]:2012/12/04(火) 20:47:26.84 ID:yBMcFFjh0

マミ「じゃあ、パトロールに行きましょうか。昨日使い魔がいたあたりを探しましょう。本体の魔女がいるかもしれない」

ほむら「そうね」

さやか「私たちは?」

ほむら「パトロールについて来る気なの?今日は魔女と戦うかもしれないのに」

マミ「自分から誘っておいてなんだけど、二人の身の安全を考えたらやめておいた方がいいかもしれないわね」

ほむら「私とマミに万が一のことがあったら二人とも確実に死ぬわよ」

QB「僕と契約しない限りね」ヌッ
240 : [saga]:2012/12/04(火) 20:48:18.73 ID:yBMcFFjh0

マミ「QB?」

ほむら「どこから湧いてでてきたの?」カチャ

QB「僕を撃ってもムダだよ。代わりならいくらでもいるからね」

ほむら「……ちっ」


銃をおろすほむら
241 : [saga]:2012/12/04(火) 20:49:48.37 ID:yBMcFFjh0

ほむら「よく私たちの前に姿を現せたわね」

マミ「ずっと見てたの?」

QB「うん、マミのことが心配だったからね。立ち直ってくれてよかったよ」

ほむら「マミが暴走して三人を殺したらエネルギーを回収できなくなる。それを心配してたんでしょ」

QB「そうだね、それも僕の仕事だからね。それともう一つ、契約も僕の仕事だ。
   だから僕がいれば二人をつれて魔女退治に行ってもいいんじゃないかな」

QB「むしろその方が、まどかとさやかにとっても安全かもしれないよ。
   まどかとさやかが二人っきりの時に街中で魔女に出会うかもしれないんだからね」

マミ「口が上手いのね、QB。でもあなたの思い通りにはさせないわ。
   二人ともやっぱり体験コースは中止に」

ほむら「いえ、やっぱり二人とも付いてきて」


ほむらがマミの言葉をさえぎった
242 : [saga]:2012/12/04(火) 20:50:58.50 ID:yBMcFFjh0

マミ「え、何で?」

ほむら「私とマミが魔女退治をしている間に、コイツがまどかとさやかに契約を迫るかもしれない。
    それと、確かに街中で二人っきりの時に魔女に会う可能性だってある」

ほむら「だったら二人を私の手の届く範囲においておきたい」

マミ「本当にいいの?」

QB「ほむらにとってはそうするより手はないはずさ」

ほむら「全てコイツの手の平の上ってやつね」

ほむら「でも、私たちが負けなければいい」

マミ「責任重大ってわけね……いいわ、燃えてきた!」

さやか「大丈夫ですよ!二人なら負けるはずないです!マミさん一人だってあんなに強いんだから」

マミ「うふふ、ありがとう」

マミ「じゃあ、みんなで魔女退治に行きましょう」


     ・
     ・
     ・
243 : [saga]:2012/12/04(火) 20:51:38.64 ID:yBMcFFjh0

(パトロール中)


さやかはずっとマミと話している


ほむら(さやかは相変わらずマミに憧れを抱いているようね。これはあまりいい傾向じゃない)


まどか「ねえ、ほむらちゃん」

ほむら「何?」
244 : [saga]:2012/12/04(火) 20:52:23.62 ID:yBMcFFjh0

まどか「ほむらちゃんが転校してきた日の朝、私はほむらちゃんの夢を見たんだ」

ほむら「私と会う前に?」

まどか「うん、ほむらちゃんは何かと戦ってた。
    何度も何度も立ち向かっていくけど勝てなくて、ほむらちゃんは大ケガをして動けなくなったの」

ほむら(まさか……ワルプルギス?だとしたら前回のループの記憶が残っていた、ということかしら)

まどか「そしたらね、QBが現れて『契約すれば運命を変えられる』って言ったの」

ほむら「!!」
245 : [saga]:2012/12/04(火) 20:53:23.61 ID:yBMcFFjh0

まどか「ほむらちゃんを助けようとして契約しようとした時ね、ほむらちゃんが私に向かって何か叫んでたんだ」

まどか「その時は『助けて!』って叫んでるのかと思ったけど……今ならわかるよ。
    ほむらちゃんはあの時『契約しちゃダメ!』って叫んでたんだって」

まどか「だからね、私は契約しないよ」

ほむら「……私はあなたを絶対に救ってみせるわ」


思わずまどかの手を握る


まどか「ほむらちゃん……」


まどかも握り返す
笑顔が浮かんでいる
まどかの顔をじっと見つめるほむら
246 : [saga]:2012/12/04(火) 20:54:16.25 ID:yBMcFFjh0

私はこの子の笑顔に癒され、励まされてここまできた
それさえあればいつまででも時を紡ぐことができる

私がまだ魔法少女になる前は私も笑っていた
二人で笑いあえた
でも今は……あなたを救うまでは……
247 : [saga]:2012/12/04(火) 20:54:58.87 ID:yBMcFFjh0

マミ「……二人とも、こんな往来でいちゃつかないでくれる?」


前を歩いていたはずのマミとさやか
いつのまにかこっちを見ていた


まどか「いちゃつくって……」カァー

さやか「ほむらー、まどかは私の嫁だぞ!」

ほむら「まどかはもらったわ」

まどか「ほむらちゃん!」


     ・
     ・
     ・
248 : [saga]:2012/12/04(火) 20:56:11.54 ID:yBMcFFjh0

マミ「間違いない、ここよ」

さやか「あ、マミさん、あれ!」


屋上から女の人が飛び降りようとしていた
すぐさま変身するマミ
女性の体が落下を始める
マミはリボンをクッションのように展開し、女性の体を優しく受け止めた
249 : [saga]:2012/12/04(火) 20:56:54.63 ID:yBMcFFjh0

マミ「魔女の口付け……やっぱりね」

まどか「この人は?」

マミ「大丈夫、気を失っているだけ。行くわよ」


マミが率先して先へ進んでいく
大小合わせてかなりの数の使い魔を次々と撃破し、道を切り拓く
マミの攻撃から漏れ残った使い魔をほむらが確実に仕留める
息の合った攻撃
とても初めての共闘とは思えないコンビネーションだった
あっという間に奥までたどりついた
250 : [saga]:2012/12/04(火) 20:57:34.91 ID:yBMcFFjh0

マミ「あれが魔女よ」


マミが下のフロアを指差す
そこにはバラを身に纏ったアメーバのようなものがいた
「魔女」という言葉の響きとは似ても似つかないグロテスクな様相
大きさはマミの四、五倍はあるだろうか
251 : [saga]:2012/12/04(火) 20:58:17.11 ID:yBMcFFjh0

まどか「あんなのと……戦うんですか」

マミ「大丈夫、負けるもんですか」

マミ「暁美さんは二人をお願いね」

ほむら「わかったわ」


マミが颯爽と下のフロアに飛び降りる
飛び降りながら無数のマスケット銃を召喚
着地を合図に一斉に放つ
その火花で目が眩むほどだ
252 : [saga]:2012/12/04(火) 20:58:57.47 ID:yBMcFFjh0

マミ「少しやりすぎたかしら」


弾幕に視界を奪われる


マミ「あっ」


マミの足元にはすでに魔女の触手が伸びていた
足にからみつきマミの体を持ち上げる


QB「危ない、マミ!」
253 : [saga]:2012/12/04(火) 20:59:46.03 ID:yBMcFFjh0

タンッタンッタンッ


ほむらのベレッタが火を噴いた


マミ「ありがとう、暁美さん」


触手から解放されたマミがリボンから巨砲を作りあげる


マミ「あの二人には心配かけられないの」


巨砲が光を集束する
254 : [saga]:2012/12/04(火) 21:00:28.03 ID:yBMcFFjh0

マミ「ティロ・フィナーレ!!」


閃光が走る―――


さやか「かっ、勝ったの?」

まどか「す、すごい……」

QB「さすがマミだね」
255 : [saga]:2012/12/04(火) 21:01:27.09 ID:yBMcFFjh0

まどかとさやかのところへ戻ってきたマミ
その手には黒く光る宝石が握られていた


マミ「これがグリーフシード。暁美さんから話は聞いたかしら?」

さやか「はい、基本的なことは昨日……」

マミ「そう。はい、暁美さん」


そう言ってほむらにグリーフシードを渡す


ほむら「私は大丈夫よ。ほとんど戦っていないし」

マミ「さっき助けてくれたお礼ってことじゃ受け取ってもらえないかしら?」

ほむら「……ありがとう」

マミ「いやね、お礼を言うのはこっちよ。ありがとう、暁美さん」


     ・
     ・
     ・
256 : [saga]:2012/12/04(火) 21:02:17.47 ID:yBMcFFjh0

外に出て先ほどの女性に声をかけた


女性「あれ、私は?」

女性「やっ、やだ、私、何であんなことを……!」


動揺する女性に優しく声をかけるマミ


マミ「もう大丈夫ですよ」


女性をなだめ落ち着かせる
それを眺めている三人
257 : [saga]:2012/12/04(火) 21:02:47.51 ID:yBMcFFjh0

さやか「人助け、か」


目をキラキラ輝かせているさやか


さやか「素敵だなあ、マミさん」

まどか「うん、頼れるお姉さんって感じがするね」

まどか「ほむらちゃんもカッコよかったよ」

さやか「うん、ナイスアシスト!」

ほむら「そう、ありがとう」


     ・
     ・
     ・
258 : [saga]:2012/12/04(火) 21:04:14.11 ID:yBMcFFjh0

二人を家まで送り届けるほむらとマミ


マミ「明日からもよろしくね、暁美さん」

ほむら「ええ、こちらこそ」


そう言うとマミと別れた


ほむら(想定以上ね。正直ここまでうまく事が運ぶとは思わなかったわ)


ほむらは手応えを感じていた
リスクを負ったがその甲斐はあった
間違いなく、今までのループの中で最高だ
ただ、一つ気になることがあった


ほむら(さやかは魔法少女に憧れを抱きすぎだわ)

ほむら(……次の魔女戦で少し釘をさしておこうかしら)


     ・
     ・
     ・
259 : [saga]:2012/12/04(火) 21:05:05.96 ID:yBMcFFjh0

QB(……保険は適用されず、か)

QB(うまく事が運んでいる、ということだね)


少女たちは夢を見ている時間
夢見ることのない悪魔は街をかける







                 ――――――第四部 完
260 : [saga]:2012/12/04(火) 21:05:58.40 ID:yBMcFFjh0

第五部 


(後日)


さやか「はあーはあ。うん」


息を整え病室に入っていく


恭介「やあ」

さやか「はい、これ」


恭介のために買ってきたCDをわたす
261 : [saga]:2012/12/04(火) 21:06:41.94 ID:yBMcFFjh0

恭介「うわぁ、いつも本当にありがとう。さやかはレアなCDを見つける天才だね」

さやか「運がいいだけだよ」

恭介「この人の演奏は本当にすごいんだ。さやかも聴いてみる?」

さやか「いいのかな?」

恭介「本当はスピーカーで聴かせたいけど病院だしね」


恭介がイヤホンを片方差し出す

二人で音楽を聴く
恭介の顔が近い
イヤホンが繋ぐ二人の距離

差し込んだ夕日が二人を包む



     ・
     ・
     ・
262 : [saga]:2012/12/04(火) 21:07:34.87 ID:yBMcFFjh0

(病院の敷地内)


待っていた三人のもとにさやかがかけてきた


さやか「お待たせー」

まどか「どうだった?上条君」

さやか「元気だったよ。さやかちゃんのおかげですね!」

マミ「青春ねぇ。二人はどこまでいったのかしら?」

さやか「ま、まだそういう関係じゃないですから」アセアセ

マミ「そう、まだなの。残念ね」クスクス


顔を真っ赤にしてうつむくさやか


ほむら「用が済んだならパトロールに行きましょう」

マミ「もう、暁美さん。少し空気を読みなさい!」

さやか「さっ、早くパトロールに行こう!」


     ・
     ・
     ・
263 : [saga]:2012/12/04(火) 21:08:58.89 ID:yBMcFFjh0

マミ「ティロ・フィナーレ!!」

さやか「いやー、やっぱマミさんってカッコいいねぇ」

マミ「もう、見世物じゃないのよ。危ないことしてるってことは忘れないでほしいわ」

さやか「いえーす!」グッ

ほむら「……」

まどか「あ、グリーフシード落とさなかったね」

QB「今のはただの使い魔だからね。グリーフシードはもってないよ」

まどか「魔女じゃなかったんだ」

さやか「マミさんはただの使い魔でも逃さず倒すんですね。グリーフシードをおとさないのに」
264 : [saga]:2012/12/04(火) 21:09:50.61 ID:yBMcFFjh0

マミ「使い魔だって放っておけないのよ。成長すれば魔女になるから」

さやか「んー、やっぱマミさんは正義の味方!この街の平和はマミさんが守ってるんですね!憧れちゃうなー」

マミ(街の平和……)


その言葉を聞いた瞬間、記憶が蘇った
265 : [saga]:2012/12/04(火) 21:10:33.95 ID:yBMcFFjh0

マミ(私は、違う時間軸とはいえ、魔法少女を……街を守る少女をこの手で……)


マミ「……憧れるほどのものじゃないわよ、私」

さやか「え?」

マミ「無理してカッコつけてるだけで、一人ぼっちで泣いてばかりだったもの」

マミ「やっとできた仲間も私はこの手で……」

さやか「あっ……ごめんなさい、嫌なことを思いださせちゃって」

マミ「……」

まどか「でももう一人ぼっちなんかじゃないですよね」


一瞬気まずい雰囲気になったがまどかがフォローする
266 : [saga]:2012/12/04(火) 21:11:27.15 ID:yBMcFFjh0

さやか「そうですよ、マミさんは立派に立ち直ったじゃないですか!」

マミ「そうね。今なら暁美さんもいる。あなたたちもいる」

マミ「あなたたちを守るって決めたから、私はもう一人で泣いたりなんかしない。
   あなたたちのおかげで少しは強くなれた気がする。
   やっとそう思えるようになってきたの」

マミ「だから、これからもあなたたちを守らせてね」

さやか「マミさん……」


手をぎゅっと握ってマミを見つめるさやか
267 : [saga]:2012/12/04(火) 21:12:02.81 ID:yBMcFFjh0

さやか(人を守るって決意が人を強くする。私は守られてばっかり……)


ほむら「さやか」

さやか「うん、ほむらの言いたいことは何となくわかるよ」

ほむら「そう……ならいいの」

マミ「さあ、帰りましょう。二人とも送っていくわ」



――――――

――――

――
268 : [saga]:2012/12/04(火) 21:12:44.99 ID:yBMcFFjh0

(次の日、病院)


さやか「はあ……お待たせ」


昨日と違い、明らかに元気がないさやか


まどか「上条君、どうかしたの?」

さやか「なんか、今日は都合悪いみたいでさ、会えなかったんだ。わざわざ来てあげたのに失礼しちゃうよね」

マミ「そういう日もあるわよ。きっと次は会えるわ」

さやか「そうですよね……じゃあ、気を取り直してパトロールに行きますか!」


病院を出ようと歩き始める四人
269 : [saga]:2012/12/04(火) 21:13:45.85 ID:yBMcFFjh0

まどか「あそこ……何か……」

QB「グリーフシードだ!孵化しかかってるよ!」

マミ「すぐに結界ができるわ!二人とも覚悟はいい?」

二人「はい!」

結界に取り込まれる四人
マミとほむらはすでに変身している

マミ「中の魔女が出てくるまでにはまだ時間があるわ。ここはゆっくり進んでいきましょう」


結界の中を四人で慎重に進んでいく
270 : [saga]:2012/12/04(火) 21:14:31.29 ID:yBMcFFjh0

さやか「さしずめ『お菓子の魔女』ってところですかね」


周りを見渡しながらさやかが言う
壁自体がケーキなどのお菓子でできている


まどか「あ……」


使い魔だろうか
何かを探しながらこっちに近づいてきた
271 : [saga]:2012/12/04(火) 21:15:16.16 ID:yBMcFFjh0
パン


マミ「悪いけど、この二人には近づけさせないわ」

QB「マミ、グリーフシードが動き始めた!孵化が始まるよ」

マミ「オッケー、わかったわ!今日は速攻で片付けるわよ」


次々と湧いてくる使い魔
それでもほとんどマミ一人で片付けてしまった
272 : [saga]:2012/12/04(火) 21:15:57.48 ID:yBMcFFjh0

ほむら「絶好調ね、マミ」


マミ(体が軽い……こんな幸せな気持ちで戦うなんて初めて)


現れたと思った瞬間にはマミに撃たれてしまう使い魔
左右上下どこもマミのテリトリーだ
飛びながら空中で銃を放つマミ
チラっと二人の方を見る
273 : [saga]:2012/12/04(火) 21:17:09.62 ID:yBMcFFjh0

マミ(私があの子たちを守っている)

マミ(私、繋がれている)

マミ(私、必要とされてる)

マミ(もう一人ぼっちなんかじゃない……)


マミ「……もう何も怖くない!」
274 : [saga]:2012/12/04(火) 21:17:48.94 ID:yBMcFFjh0

神経が最高に研ぎ澄まされている
目で見たもの、耳で聞いた音……情報が脳に到達すると瞬時に体が動く
ほむらが全く手出しできないほどだった


さやか「すごい……強すぎるよ、マミさん!」


人を守るって、人をこんなにも強くするんだ
それを目の当たりにし、胸が高鳴る
275 : [saga]:2012/12/04(火) 21:18:29.41 ID:yBMcFFjh0

ほむら「ここは片付いたわ。行きましょう」


奥へと進んで行く
程なく最深部へと到達した


QB「気をつけて!出てくるよ!」
276 : [saga]:2012/12/04(火) 21:19:26.23 ID:yBMcFFjh0

トコトコ……


小さなピンクのぬいぐるみのようなかわいらしい魔女


マミ「せっかくのところ悪いけど、一気に決めさせてもらうわよ!」


昂ぶったマミは待ちきれない
そう言うなり魔女をマスケット銃で直接殴打し、壁の方に飛ばす
そこへ間髪入れず銃弾を打ち込む――全弾命中


さやか「やった!」


そこへとどめと言わんばかりに必殺技を決める


マミ「ティロ・フィナーレ!!」
277 : [saga]:2012/12/04(火) 21:20:08.70 ID:yBMcFFjh0

決まった――


そう思って気を抜いた瞬間、魔女の口から黒く長い体をした大蛇のようなものが出てきた
かなりの巨体
口には鋭い牙


あっという間の出来事だった
必殺技を放った直後の無防備
完全に不意を突かれたマミはただその場に立ちつくしている
278 : [saga]:2012/12/04(火) 21:20:51.97 ID:yBMcFFjh0

ドン



マミ「――え?」


突き飛ばされるマミ


マミ「暁美さん?」


グシャ



辺りに不快な音が響いた
魔女の口の中に消えたほむら


まどか「……ほむらちゃん?」

さやか「え、どうなって……?」
279 : [saga]:2012/12/04(火) 21:21:34.94 ID:yBMcFFjh0

ボン


爆発音とともにほむらが姿を現した
しかし、その左手は付け根から失われていた


マミ「暁美さん、後ろ!」


再生した魔女が再度ほむらを襲う


ガチッ


今度はほむらを捕食できず、不思議そうな顔をしている魔女
再度捕食を試みる
今度は成功――しかし、また爆発音と共にほむらは無事現れる
280 : [saga]:2012/12/04(火) 21:22:26.07 ID:yBMcFFjh0

ほむらの目には、イスの上にさりげなく座している人形がうつっていた
それを踏みつけるほむら
すると魔女の顔が歪んだ
直後、再度爆発する魔女


それ以上、魔女が再生することはなかった
281 : [saga]:2012/12/04(火) 21:23:07.13 ID:yBMcFFjh0

さやか「……やったの?」

マミ「これが暁美さんの能力……」

まどか「ほむらちゃん!!」


目の前の不可思議な光景に目を奪われていたマミ
まどかの声で我に返る
282 : [saga]:2012/12/04(火) 21:23:55.63 ID:yBMcFFjh0

マミ「すぐに治療を!」


マミが治療を始める


さやか「うっ……」


左手を失い、血を流している友達
思わず目をそむけた
283 : [saga]:2012/12/04(火) 21:24:41.77 ID:yBMcFFjh0

ほむら「大したことないわ。痛覚を遮断しているし、治療で元通りよ」


平気な顔で言ってのけるほむら


まどか「大したことないって……」

ほむら「前にも言ったでしょ、魔法少女の体はゾンビだって。それはこういうことよ」

ほむら「強靭な肉体の真相……それは死なない体じゃない、すでに死んでいる体なのよ」

マミ「だからって無茶しすぎよ!こんな……こんな戦い方しないで!」

ほむら「そうね、気をつけるわ」
284 : [saga]:2012/12/04(火) 21:25:27.52 ID:yBMcFFjh0

ほむら(これでさやかはわかってくれたかしら……)


目の前が暗くなり、クラっとした


まどか「ほむらちゃん!」

ほむら「少し魔力を使い過ぎたようね」


そう言うとほむらはその場に倒れこんで動かなくなった
青ざめるまどか


マミ「大丈夫、気を失っただけよ」


さやかはただ呆然と目の前の光景を見つめていた





                 ――――――第五部 完
285 : [saga]:2012/12/04(火) 21:26:54.28 ID:yBMcFFjh0

第六部 


(次の日、病院)


看護師A「あら、上条君のお見舞い?」

さやか「えっ、えぇ……」

看護師A「ごめんなさいね。診察の予定が繰り上がって今ちょうどリハビリ室なの」

さやか「あぁ、そうでしたか……どうも」


ガラス張りのリハビリ室の向かい側にまわる
遠くから室内の様子をうかがう


さやか「……恭介」

さやか「今日はもう帰ろう」
286 : [saga]:2012/12/04(火) 21:27:48.71 ID:yBMcFFjh0

もと来た道を引き返す
ナース室の前にさしかかった
すると先ほどの看護師と別の看護師が会話をしていた
ヒソヒソと話す二人


さやか(もしかしたら恭介のことを……?)


ものかげに隠れて聞き耳をたてる
287 : [saga]:2012/12/04(火) 21:28:40.91 ID:yBMcFFjh0

看護師B「よく来てくれるわね、あの子」

看護師A「助かるわ。難しい患者さんだしね。励ましになってくれるといいんだけど」

看護師B「事故に遭う前は天才少年だったんでしょ、ヴァイオリンの」

看護師A「歩けるようになったとしても、指の方はね……もう二度と楽器を弾くなんて無理でしょうね」

さやか(っ!!)


音をたてないように走り去るさやか


さやか(なんで恭介なのよ!私の指なんていくら動いたって何の役にも立たないのに……)
288 : [saga]:2012/12/04(火) 21:29:16.23 ID:yBMcFFjh0

病院の外では三人が待っている
呼吸を整えて落ち着かせる


さやか「……おまたせ」

まどか「また会えなかったの?」

さやか「え?」
289 : [saga]:2012/12/04(火) 21:30:07.86 ID:yBMcFFjh0

まどか「昨日より落ち込んでるみたいだし……」

さやか「うん……」

さやか「恭介の指、もう動かないんだって」

まどか「上条君って、確か……」

さやか「ヴァイオリンで有名になるのが夢だったから……きついよね、やっぱ……」

マミ「QB、私の回復魔法で治せないの?」
290 : [saga]:2012/12/04(火) 21:30:50.32 ID:yBMcFFjh0

QB「無理だね。マミの回復魔法は自己修復力の増進だからね」

まどか「どういうこと?」

QB「回復魔法には『自己修復力の増進』と、それより上位の『元通りに治す』治癒魔法の二種類あるのさ」

QB「マミのは前者だからその少年の指を元通りに治すことはできないんだ」

マミ「ごめんなさい、美樹さん。力になれなくて……」

さやか「いえ、マミさんが気にすることじゃないです」

ほむら「契約するつもり?」

さやか「!!」
291 : [saga]:2012/12/04(火) 21:31:36.08 ID:yBMcFFjh0

QB「さやかが契約すればその少年の指も元通りに治せるよ」

ほむら「忘れてないわよね。契約すればあなたの体もゾンビみたいになる。
    それがどういうことか、この前の戦いでわかったでしょ?」

マミ(!!)

マミ(まさか、暁美さんはわざと……)

さやか「忘れてないよ」
292 : [saga]:2012/12/04(火) 21:32:25.99 ID:yBMcFFjh0

左腕を失い、肩口からおびただしい血を流していたほむら
それでも平気な顔をしていた
その姿が脳内に蘇る
思い出すと寒気がする


もしあんな体になったら……私、恭介に抱きしめてなんて言えない
だってゾンビだもん
死んでるようなもんだもん
293 : [saga]:2012/12/04(火) 21:33:20.16 ID:yBMcFFjh0

ほむら「そう、忘れてないならいいの。決して今の自分から変わろうなんて思わないことね。
    でないと取り返しのつかないことのなるわ。あなたはたった一つの願いのために他の全てを諦められるの?」

さやか「わかってるよ……でもその言い方はないんじゃないかな。
    私はただ恭介の力になりたいだけなのに……」

マミ「美樹さん、あなたは彼に夢を叶えてほしいの?それとも、彼の夢を叶えた恩人になりたいの?」

さやか「それは……」

マミ「きつい言い方するようだけど大事なことよ。よく考えてみて」

さやか「はい……」

マミ「暁美さんも、ね。この話はここまでにしましょう」

ほむら「そうね」


パトロールに向かう
無言のまま歩く五人


     ・
     ・
     ・
294 : [saga]:2012/12/04(火) 21:34:06.38 ID:yBMcFFjh0

結局、その日魔女は現れなかった
二人を送り届けるマミとほむら
二人きりになった時、マミが話しかけた


マミ「暁美さん、この後時間あるかしら?」

ほむら「ええ」

マミ「それなら、うちに寄っていって」
295 : [saga]:2012/12/04(火) 21:34:47.07 ID:yBMcFFjh0

(マミの部屋)


マミ「暁美さん、昨日のことなんだけど」

ほむら「ええ、わざとよ」

マミ「……相変わらず、全てわかってるかのような口ぶりね」

ほむら「私はわざと魔女の攻撃を受けてみせた。さやかを契約させないためにね」
296 : [saga]:2012/12/04(火) 21:35:57.98 ID:yBMcFFjh0

マミ「あなたや私にそれぞれの人生や幸せがあるように、あの子にもあるのよ。
   あの子が契約すると言ったらあなたは止めるの?」

ほむら「当然よ」

マミ「私も、二人が契約するのは基本的に反対よ。特に、鹿目さんは世界を滅ぼしてしまうかもしれない。
   でも、美樹さんは違うわ」

ほむら「契約すればあの子の人生も幸せもメチャクチャになる。
    それを知っているなら止めない方が無責任じゃないかしら?」

マミ「あの子は魔法少女の真実をもう知っているのよ?
   それを承知で契約するというなら止めるべきではないわ。
   自分の人生の選択は自分で決めないと後悔するもの」

ほむら「あの子はわかってない。自分の身に実際に起こってから後悔しても遅いのよ」
297 : [saga]:2012/12/04(火) 21:37:04.81 ID:yBMcFFjh0

マミ「あなたのやり方は美樹さんを追いつめるだけよ!」

マミ「それと……こんなこと言いたくないけど、あなたは自分の願いを叶えたいから美樹さんに契約してほしくないんじゃないの?
   あの子が契約すると魔女化して、そのループは失敗する可能性が高いって」

マミ「今まで、真実を承知で美樹さんが契約をしたループがあったの?」

ほむら「なかったわ」

マミ「だったらあの子を信じてあげましょう?
   もし契約してしまったとしても、私たちでフォローしていけばいいわ。
   そうなればあの子もワルプルギス戦の戦力になってくれるしね」

ほむら「…………」

ほむら「考えておくわ」


     ・
     ・
     ・
298 : [saga]:2012/12/04(火) 21:37:45.41 ID:yBMcFFjh0

マミの部屋をあとにするほむら
歩きながら考える


今まで順調だった
順調すぎて忘れていた、ほんの少しのほつれが全てを台無しにしかねないことを
299 : [saga]:2012/12/04(火) 21:38:30.61 ID:yBMcFFjh0

『あの子にもあの子の人生が、幸せがあるのよ』


わかっている、私のしてきたことが私の勝手な押し付けだと
それでも私は……私はまどかを救いたかったのだ

まどかの笑顔を思い出す


ほむら「まどか……私の全て」
300 : [saga]:2012/12/04(火) 21:39:10.10 ID:yBMcFFjh0

帰宅するとすぐにソファに深く腰掛けた
そのまま頭を預ける


ほむら「美樹さやか……本当にもし契約しても魔女化せず戦力になってくれるのかしら?」


もしそうなら、自分の最終目標を達成するためにはむしろ契約してもらった方がいい
戦力は多いに越したことはない


ほむら「魔女化しないなら、ね」
301 : [saga]:2012/12/04(火) 21:39:52.64 ID:yBMcFFjh0

これは第二の賭け
第一の賭け――巴マミの暴走を防ぐこと
それには勝った
できればこのままさやかには契約させずに杏子を仲間に引き込んで、その三人でワルプルギス戦を迎えたい、と思っていた


ほむら「やっぱり、おとなしくしていてくれないのね、さやか」

ほむら「でも、私は必ずこの賭けにも勝ってみせる」


ほむらはそのまま目を閉じ、深い眠りへと落ちていった








                 ――――――第六部 完
302 : [saga]:2012/12/04(火) 21:40:50.76 ID:yBMcFFjh0

第七部 


(病院)


さやか「何を聴いているの?」

恭介「……『亜麻色の髪の乙女』」

さやか「ああ、ドビュッシー?素敵な曲だよね」

さやか「あ、あたしってほら、こんなだからさ、クラシックなんて聴く柄じゃないだろってみんなが思うみたいでさぁ、
    たまに名曲とか言い当てたら……」

恭介「さやかはさぁ」

さやか「なーに?」

恭介「さやかは僕をいじめているのかい?」
303 : [saga]:2012/12/04(火) 21:41:33.66 ID:yBMcFFjh0

さやか「え?」

恭介「何で今でもまだ僕に音楽なんか聴かせるんだ?嫌がらせのつもりなのか?」

さやか「だって恭介、音楽好きだから……」

恭介「もう聴きたくもないんだよ!自分で弾けもしない曲、ただ聴いてるだけなんて」

恭介「僕は……僕は……っ!ああ!!」


ガシャン


興奮した恭介がCDプレーヤーを拳で叩きつけた
割れたCDの破片が恭介の手を傷つけ鮮血が飛び散った
304 : [saga]:2012/12/04(火) 21:42:20.64 ID:yBMcFFjh0

さやか「あっ、ああ、あ!」


当たり所が悪かったらしく、血が蛇口をひねったように流れる
動揺を隠せないさやか
恭介が追い討ちをかけるように言う


恭介「動かないんだ……もう痛みさえ感じない。こんな手なんてっ」


更に自らの手を傷つけようとする恭介
それを止めようとさやかが抱きつく
305 : [saga]:2012/12/04(火) 21:42:58.85 ID:yBMcFFjh0

さやか「大丈夫だよ!きっと何とかなるよ。諦めなければきっと、いつか……」

恭介「諦めろって言われたのさ」

さやか「え?」

恭介「もう演奏は諦めろってさ、先生から直々に言われたよ。今の医学じゃ無理だって」

恭介「僕の手はもう二度と動かない。奇跡か魔法でもない限り治らない」


恭介が傷口を押さえようとするさやかを乱暴に押しのけた
306 : [saga]:2012/12/04(火) 21:43:34.41 ID:yBMcFFjh0

恭介「出ていってくれないか?」

恭介「もう顔も見たくない」


さやかは静かに病室を出ていった


     ・
     ・
     ・
307 : [saga]:2012/12/04(火) 21:44:22.39 ID:yBMcFFjh0

病院の敷地内でさやかを待っていた三人
そこにただならぬ様子でさやかが現れた
三人はすぐピンときた


ほむら(契約するというの、さやか)


仮に契約しても魔女化しないようにフォローしていけばいい
わかっている……それでも……
308 : [saga]:2012/12/04(火) 21:44:56.03 ID:yBMcFFjh0

ほむらの頭の中で蘇る記憶――


目の前で魔女化するさやか
暴走するマミ
犠牲になった杏子
横たわるまどか
そして、まどかに手をかける自分……
309 : [saga]:2012/12/04(火) 21:45:38.85 ID:yBMcFFjh0

さやか「ごめん……」


走りだそうとするさやか


ほむら「やっぱりダメ!さやか!!」


それをほむらが止めようとする
310 : [saga]:2012/12/04(火) 21:46:16.95 ID:yBMcFFjh0

マミ「暁美さん!!」


そう叫んだマミが拘束魔法を発動
ほむらをリボンで縛りあげた


ほむら「やめなさい、マミ!あなたは……あなたって人は……!」


マミはほむらを見つめたまま背後にいるさやかに言った


マミ「行きなさい、美樹さん!契約してもしなくてもどっちでもいい……でもお願い、後悔だけはしないで!」

さやか「……はい!」
311 : [saga]:2012/12/04(火) 21:46:54.85 ID:yBMcFFjh0

そのまま走り去るさやか
なすすべなくそれを見ているほむら


ほむら「ああ……ああっ」


ほむらががくりとうなだれる
マミが魔法を解除するとほむらは力なくその場にくずおれた
312 : [saga]:2012/12/04(火) 21:47:43.77 ID:yBMcFFjh0

マミ「ごめんなさい、暁美さん……」

ほむら「……わかってる、全部わかってるわ、私が間違ってるって。でも、それでも私は……」


マミが優しくほむらを抱きしめた


マミ「いいのよ、今は何も言わなくていいの」


静かにすすり泣くほむら


     ・
     ・
     ・
313 : [saga]:2012/12/04(火) 21:48:31.58 ID:yBMcFFjh0

ほむら「ごめんなさい、もう落ち着いたわ」

マミ「そう。美樹さんからはきっと後で連絡が来るから大丈夫よ。信じましょう、あの子を」

ほむら「そうね」


落ち着いてきたところでこれからどうするか考える
いつもならパトロールに向かうところだ
マミが切り出す
314 : [saga]:2012/12/04(火) 21:49:23.51 ID:yBMcFFjh0

マミ「ところで、今日の魔女退治はどうする?」

ほむら「!!」


そう言われてハッとした


ほむら「今日は魔女が出やすい日よ……ハコの魔女が」

マミ「!!」
まどか「!!」
315 : [saga]:2012/12/04(火) 21:50:10.20 ID:yBMcFFjh0

さやかの契約のことばかりに気をとらわれてすっかり忘れていた


マミ「いつ、どこに現れることが多いの?」

ほむら「私にもそこまで細かいことは特定できないわ。いつもマチマチなの」

マミ「だとしたら早く探さないと美樹さんが危ないわ!二手に分かれて探すしかないわね」

ほむら「ええ、まどかはあなたに任せるわ、マミ」

マミ「いいの?」

ほむら「ええ、私は防御結界を張れないけどあなたは張れるから」
316 : [saga]:2012/12/04(火) 21:50:51.12 ID:yBMcFFjh0

マミ「……あなたが大事にしている鹿目さんにケガをさせたりしないわ」

ほむら「お願い……それと、ハコの魔女の能力は精神攻撃よ」

マミ「わかったわ!じゃあ、お互いテレパシーで連絡を取り合って、こまめに情報交換しながらポイントを絞っていきましょう!」

ほむら「ええ、さやかが行きそうな場所、魔女が現れやすい場所に重点を置いてね」

マミ「そうね」

マミ「鹿目さん、美樹さんが行きそうな場所を教えてくれる?」

まどか「はい!」

ほむら「じゃあ、行きましょう」
317 : [saga]:2012/12/04(火) 21:51:34.96 ID:yBMcFFjh0

三人はかけ出した
一方、三人が行った後もその場にとどまっているQB……


QB「……」


     ・
     ・
     ・
318 : [saga]:2012/12/04(火) 21:52:13.56 ID:yBMcFFjh0

さやか「はあ、はあ」


きれいに整備された川沿いの道をさやかは全力でかけていた
少し開けたところにさしかかる
この辺りはこの時間帯だと人通りが少ない


さやか「はあ、少し落ち着こう……」
319 : [saga]:2012/12/04(火) 21:52:59.24 ID:yBMcFFjh0

欄干にもたれかかる

勢いで飛び出してきたもののここからどうするか何も考えていない


『契約してもしなくてもどっちでもいい……でも後悔だけはしないで!』


どちらを選んでも後悔しそうな気がする
それでもどちらかを選ばないといけない

さっきはつい興奮して「契約する」と言いかけたが勢いだけでどちらかを決めるべきではない
さやかは落ち着いてくると、そう思い直した
そして状況を頭の中で整理する
320 : [saga]:2012/12/04(火) 21:53:58.48 ID:yBMcFFjh0

最初の戦い――ほむらが苦戦していた時、マミさんが現れて颯爽と敵を倒してしまった
今思えば、すでにあの時から私はマミさんに憧れていたんだ

しかし、明かされた魔法少女の真実――肉体のゾンビ化と魔女化
私は魔女化し、マミさんは暴走――違う時間軸の話とはいえ、マミさんの心を挫くには十分だった

でもマミさんは立ち直った
街の人を守るため、あの二人を守るため

決意を新たにしたマミさんは強かった
魔法少女になれば町の人たちを助けられる
恭介のいるこの街を……
「できれば私も」
そう思った
321 : [saga]:2012/12/04(火) 21:54:51.04 ID:yBMcFFjh0

その時の私は、ゾンビ化のことも魔女化のこともどこかにとんでいたんだ
ただマミさんがまぶしくて……

そんな私をほむらが「現実」へと引き戻した
食いちぎられた腕、おびただしく流れでる血……
それでも眉一つ動かさないほむら
マミさんへの憧れはいっぺんに吹き飛んだ
322 : [saga]:2012/12/04(火) 21:55:33.19 ID:yBMcFFjh0

さやか「契約したら私もあんな体に……」


思い出しただけで息があがり動悸がする
もたれかかっていた欄干から滑り落ちるようにして座りこんだ


さやか「それだけじゃない、『その時』が来たら自分で自分のソウルジェムを砕かなといけないんだ」


自分にそれができるのか?
それだけの覚悟が本当にあるのか?
わからない……
323 : [saga]:2012/12/04(火) 21:56:15.35 ID:yBMcFFjh0

『美樹さん、あなたは彼に夢を叶えてほしいの?それとも、彼の夢を叶えた恩人になりたいの?』


腕を治しても恭介が振り向いてくれるとは限らない
私は見返りを求めているの?


さやか「わかんないよ、マミさん」

さやか「私どうしたらいいの?恭介」


気がつくと人通りが途絶えていた
顔を上げたさやかの視線の先には――
324 : [saga]:2012/12/04(火) 21:56:45.68 ID:yBMcFFjh0

QB「やあ、さやか」

さやか「QB……」

QB「決心はついたかい?」

さやか「…………」

QB「こうしている間にもあの少年は自分で自分を傷つけてしまうかもしれない。
   絶望した人間は何をするかわからないからね。下手をしたら……」

さやか「やめてよ!あなたに何がわかるの!?」
325 : [saga]:2012/12/04(火) 21:57:49.79 ID:yBMcFFjh0

QB「…………」

QB「たしかに僕には人間の気持ちはわからない。でもね、理解はできなくても推測はできるよ」

QB「さやかは好きな人を助けたいんだよね?」

QB「でもたった一つの願いを他の人のために使ってしまっていいのか悩んでいる」

さやか「当たり前でしょ!願いを叶えるかわりに私は全てを諦めないといけないんだよ」

QB「前に似たようなことがあってね」

さやか「え?」

QB「別の街でね。その少女も好きな人がいた。そしてその少女はその人のために自分の願いを使った」
326 : [saga]:2012/12/04(火) 21:58:25.61 ID:yBMcFFjh0

QB「どうなったか知りたいかい?」

さやか「…………」


返事こそないものの、どう思っているのかは顔を見ればわかった


QB「それなら見せてあげるよ、事の顛末を」


さやかの頭の中にQBの記憶が流れこんでくる
327 : [saga]:2012/12/04(火) 21:59:11.78 ID:yBMcFFjh0

――――――――――――――――――――――――――――――
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 
        (QBの映像、シーン1)

事故現場
横たわる少年
立ちつくしている顔面蒼白な少女


ゆい「私は了君を助けたい。でも私の力じゃ繋ぎ止められない。
   それならせめて私の命を了君の命に換えたい」

ゆい「叶えてよ、QB!」


その体を光が包む――


   ________________________
――――――――――――――――――――――――――――――
328 : [saga]:2012/12/04(火) 21:59:43.47 ID:yBMcFFjh0

QB「少年は助かった。でもその少女の力ではケガを元通りに治すことができなかった。
   その結果、重い障害が残ってしまった」
329 : [saga]:2012/12/04(火) 22:00:51.86 ID:yBMcFFjh0

――――――――――――――――――――――――――――――
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 
        (QBの映像、シーン2)

自分の顔を鏡に映す
何度見ても吐き気がする

僕はあの事故で多くのものを失った
周りの人は「命があっただけマシ」と言う
「助かったのは奇跡だ」と

それは他人事だから言えるんだ
これから僕はさまざまな手術を受けなければならない
火傷で失った皮膚を移植する手術
神経を再生する手術
欠損した顔面の整形手術等々

しかも一度や二度じゃない
皮膚移植だけみても、何度も何年にも亘って受け続けねばならない
そうして出来上がった僕の体は元のものとは全く別のものだろう
手や足に至っては手術しても動くようにはならない
 
この先死ぬまでずっと苦しみ続けなければならないのか……
なぜ僕はあの事故で死んでしまわなかったのだろう……


   ________________________
――――――――――――――――――――――――――――――
330 : [saga]:2012/12/04(火) 22:01:19.68 ID:yBMcFFjh0

QB「絶望した少年は自殺してしまった。誰からも好かれる未来ある少年だったのにね」
331 : [saga]:2012/12/04(火) 22:02:14.08 ID:yBMcFFjh0

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    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 
        (QBの映像、シーン3)

看護師A「あなたがゆいちゃん、よね。了君の彼女の」

ゆい「そうです」

看護師A「了君のお母さんから預かっているものがあるの。あなたが来たら渡してほしいって」

ゆい「何ですか?」

看護師A「了君が最期に残したものよ」

ゆい「……最期?」

看護師A「了君はね、この先死ぬまで苦しみ続けなければいけないのかって悩んでたの。
     自分の体はもう別のものになってしまった、ゆいちゃんにももう会えない、
     何であの事故で死ななかったのかって」


看護師がゆいに了の遺書を渡す
呆然と立ちつくすゆい……


   ________________________
――――――――――――――――――――――――――――――
332 : [saga]:2012/12/04(火) 22:03:06.23 ID:yBMcFFjh0

QB「それが引き金となって、少女も絶望して魔女化の道をたどった。世界を呪いながらね」

QB「僕にはわけがわからないよ。せっかく助けてもらった命を自ら絶ってしまうことも、他人が死んだことに絶望することも」

さやか「……あんたにはわかんないよ、永遠にね」

QB「うん、でもね、さやか、人間は重い障害が残るとそれだけで絶望しうる。それは僕にもわかるよ」

QB「特に希望に満ちた将来を思い描いていた人間がその夢を絶たれた時、人は容易に絶望しうることもね」

QB「君ならこの少女とは違う結末を迎えられるかもしれない。それなのに君は何もしようとしはしない」

QB「それで君の好きな人は本当に大丈夫なのかい?」
333 : [saga]:2012/12/04(火) 22:03:43.88 ID:yBMcFFjh0

さやか「だまれ!!」


頬を涙が伝う
さやかは自分の顔を手で覆った


ヌル


さやか「……え?」
334 : [saga]:2012/12/04(火) 22:04:19.76 ID:yBMcFFjh0

よく見るとさやかの両手と服の袖口は血でべっとりしていた


さやか「これは、恭介の?」


血を流す恭介の姿がフラッシュバックする
335 : [saga]:2012/12/04(火) 22:05:17.56 ID:yBMcFFjh0

『さやかはさぁ』

 ――――え?

『僕をいじめているのかい?』

 ――――違うよ

『嫌がらせのつもりなのか?』

 ――――違う!

『もう聴きたくもないんだよ!自分で弾けもしない曲、ただ聴いてるだけなんて』

 ――――やめてよ

『僕は……僕は……っ!ああ!!』

 ――――やめて!!

『動かないんだ……もう痛みさえ感じない。こんな手なんてっ』

 ――――自分を傷つけないで

『もう演奏は諦めろってさ、今の医学じゃ無理だって』

 ――――簡単に諦めないで


『僕の手はもう二度と動かない。奇跡か魔法でもない限り治らない』
336 : [saga]:2012/12/04(火) 22:05:53.49 ID:yBMcFFjh0

さやか「あるよ」

さやか「奇跡も魔法も、あるんだよ」







                 ――――――第七部 完
337 : [saga]:2012/12/04(火) 22:07:08.63 ID:yBMcFFjh0
今日は以上です
おつかれさまでした
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/04(火) 22:09:41.42 ID:7qaqgYCPo
おつ

ここで繋がったか
339 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/05(水) 00:49:18.97 ID:hj8vFbDAO
乙、ソウルジェム付いてる上に盾まである左腕食われたら即死じゃないの
340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/05(水) 01:25:05.82 ID:yUYJ33Aao
341 :1 [sage]:2012/12/05(水) 23:27:10.95 ID:+orFgcqs0
みなさんの乙、深謝です!

>>339 
たしかにw右腕にしないとでしたね

少しだけですが、本日も投下します
342 :1 [sage]:2012/12/05(水) 23:28:51.09 ID:+orFgcqs0

第八部 


街の中をかけるほむら


ほむら(契約しててもしてなくてもどっちでもいい)

ほむら(お願いだから無事でいて、さやか!)


その時、ソウルジェムに反応があった


ほむら「魔女反応……ハコの魔女?」


反応する方へ向かう


     ・
     ・
     ・
343 :1 [saga]:2012/12/05(水) 23:30:01.79 ID:+orFgcqs0

そのころ、マミとまどかは志筑仁美の後をついて歩いていた
仁美の首筋には魔女の口付けがあった
街のはずれの方へと向かっている


まどか「さやかちゃんとほむらちゃん、大丈夫ですかね?」

マミ「さっきから暁美さんと連絡が取れないの。もしかしたら魔女と戦っているのかもしれないわ」

まどか「え?もしかしてハコの魔女と?」

マミ「それはわからないわ。でも、こっちも目を離せないから応援にも行けない」

まどか「あっ、マミさん、あの人にも魔女の口付けが!」
344 :1 [saga]:2012/12/05(水) 23:30:41.88 ID:+orFgcqs0

だんだんと魔女に口付けをされた人が集まってきた
皆うつろな目をしながら同じ方向へと歩いている


マミ「瘴気が濃くなってきた……近いわね」

まどか「ほむらちゃん……」



     ・
     ・
     ・
345 :1 [saga]:2012/12/05(水) 23:31:22.61 ID:+orFgcqs0

ほむら「ハコの魔女じゃなかったわね」


魔女を倒し終えたほむらがつぶやいた


ほむら「一度マミと情報交換しないと……その前に」


ソウルジェムの汚れをきれいにしようとする
すると、またソウルジェムが魔女反応を示した
346 :1 [saga]:2012/12/05(水) 23:32:18.98 ID:+orFgcqs0

ほむら「この近くね。今度こそハコの魔女だといいけど」


ほむらはソウルジェムの汚れを綺麗にしながらマミと交信した


マミ『暁美さん、無事なのね。美樹さんは?』

ほむら『まだ見つけられていないわ。今、魔女を一体倒したところよ。でもまた魔女反応があったから今から倒しにいくわ』

マミ『こっちも今、魔女を追っているところよ』

ほむら『わかったわ。倒したらまた連絡する』
347 :1 [saga]:2012/12/05(水) 23:32:58.42 ID:+orFgcqs0

ほむらは嫌な予感がしていた
数え切れないほどループを繰り返してきたが、こんなにも短い間に三体も魔女が現れたことは一度もなかった


ほむら(…………)


考えているヒマはない
今はとにかく目の前の魔女を倒さないと――


     ・
     ・
     ・
348 :1 [saga]:2012/12/05(水) 23:34:01.74 ID:+orFgcqs0

マミとまどかは町工場の中にいた

かなりの数の人が集まっていた
全員首には魔女の口付けがあった


マミ「この人たちは魔女に操られているだけ……早く魔女を倒さないと」
349 :1 [saga]:2012/12/05(水) 23:34:36.51 ID:+orFgcqs0

工場の人がブツブツ何か言いながらバケツに液体を流しこみ始めた


まどか「ダメ……それはダメ!」


止めようとするまどかに仁美が一撃を加えた


まどか「あっ、え?」

仁美「邪魔をしてはいけません。あれは神聖な儀式ですのよ」
350 :1 [saga]:2012/12/05(水) 23:35:20.40 ID:+orFgcqs0

まどか「だってあれ危ないんだよ?ここにいる人たちみんな死んじゃうよ」

仁美「そう、私たちはこれからみんなで素晴らしい世界へ旅に出ますの。それがどんなに素敵なことかわかりませんか?」

仁美「生きている体なんて邪魔なだけですわ。鹿目さん、あなたにもすぐにわかりますから」

まどか「え、放して!!」

マミ「鹿目さん!」
351 :1 [saga]:2012/12/05(水) 23:36:03.20 ID:+orFgcqs0

マミが割って入る
同時にリボンでバケツを外へと放り投げた


仁美「ああ!あなたたち、何てことを……」


集まった人たちの視線がマミとまどかに集まる


マミ「鹿目さん、私の後ろに!」

まどか「はい!」


マミとまどかに迫ってくる人々
操られているとはいえ、彼らは普通の人間


マミ「最悪拘束するしかないわね。手荒なことはしたくないけど……」


ジリジリと後退する二人
その時――
352 :1 [saga]:2012/12/05(水) 23:36:47.46 ID:+orFgcqs0

マミ「!!」

マミ「鹿目さん、魔女反応よ!あの部屋!」


二人ですぐに駆け込んでドアを閉めた


ドンドン


乱暴にドアを叩く音が響く


まどか「……っ」


耳を塞ぎながらうずくまるまどか
353 :1 [saga]:2012/12/05(水) 23:37:34.66 ID:+orFgcqs0

マミ「大丈夫よ、鹿目さん、あなたは私が守るわ!」


次第にドアを叩く音が小さくなっていった


まどか「あきらめてどこかへ行ったのかな?」

マミ「いえ、魔女よ」
354 :1 [saga]:2012/12/05(水) 23:38:15.55 ID:+orFgcqs0

いつの間にか出来上がっていた魔女の空間
すでに二人は取り込まれていた


マミ「私から離れないでね」


まどかがうなずく


マミ「……来たわね」


「キャハハハキャハハハ」


たくさんの羽の生えた球体関節人形が、らせん状に弧を描きながらゆっくりとまどかたちの方へ向かってくる
その中に四角いものが見えた
355 :1 [saga]:2012/12/05(水) 23:39:04.00 ID:+orFgcqs0

まどか「パソコンのモニター?」

マミ「モニターのような箱……間違いない、あれがハコの魔女。あの人形たちは使い魔ね」


マミがマスケット銃を召喚する
356 :1 [saga]:2012/12/05(水) 23:39:49.37 ID:+orFgcqs0

マミ「この子をちゃんと守らないと暁美さんに顔向けできないのよ!」


そう言いながらマスケット銃を撃ち続ける


マミ「……当たらない?」


使い魔たちはゴムのように伸び縮みする
銃弾が当たりそうになると体がへこんで銃弾はそのまま後ろへ飛んでいった
357 :1 [saga]:2012/12/05(水) 23:40:28.98 ID:+orFgcqs0

マミ「くっ……それなら」


ハコの魔女めがけて必殺技を放とうとするマミ
それに反応するかのように使い魔たちがハコの魔女を引っ張った
限りなく薄く延びる魔女


マミ「ティロ・フィナーレ!!」


マミが放った瞬間、魔女は弾力の反動を利用しながら目にもとまらぬ速さで移動する
奇抜な動きをする魔女たちに手こずるマミ
 
358 :1 [saga]:2012/12/05(水) 23:41:13.32 ID:+orFgcqs0

「キャハハハ」


使い魔たちが笑いながら近づいてきた


まどか「マミさん!」


気付くとまどかたちのすぐ後ろに使い魔がいた
それをマミが打ち払う
その時、マミはすでに別の使い魔に触られていた
359 :1 [saga]:2012/12/05(水) 23:41:49.95 ID:+orFgcqs0

マミ「え?」


マミの体が伸び縮みする


マミ「どうなってるの?」


マミがモニターの中に引き込まれるのを、ただ見ているしかないまどか
モニターがオンになり映像が流れ始める――
360 :1 [saga]:2012/12/05(水) 23:42:51.22 ID:+orFgcqs0

――――――――――――――――――――――――――――――
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 
        (シーン1、事故の場面)

まだ幼いマミとマミの両親らしき人たちが映っている
両親はすでにこときれているようだ
そこに現れたQB
QBに手を伸ばすマミ……


        (シーン2、マミの部屋)

赤い髪の少女が映っている
ケンカだろうか
部屋を出て行く赤髪の少女……


   ________________________
――――――――――――――――――――――――――――――
361 :1 [saga]:2012/12/05(水) 23:44:03.85 ID:+orFgcqs0

マミ「これは罰なの?」

マミ「きっと私が弱虫で卑怯者だったからバチがあたっちゃったのね……」

マミ「あ、ああ!」


魔女たちが仕上げに入る
ハコの魔女を中心に円を描きながら回り始める使い魔
徐々に上昇していく――


まどか「マミさん!」


その時、まどかは青い光を見た
362 :1 [saga]:2012/12/05(水) 23:45:14.12 ID:+orFgcqs0

バチン


まどか「さやかちゃん?」


マミへの攻撃に集中していた魔女たち
さやかの攻撃はその虚をつく形となり魔女にクリティカルヒットした


マミ「……ん」

まどか「マミさん!」

さやか「どうやら間に合ったようだね」


マミの救出に成功
しかし、ハコの魔女はなおも飛び続けている
363 :1 [saga]:2012/12/05(水) 23:46:19.02 ID:+orFgcqs0

さやか「一撃じゃ仕留められないか……」

マミ「……美樹さん?」

さやか「マミさん、大丈夫ですか?」

マミ「そう、やっぱり契約してしまったのね……でもおかげで助かったわ」


攻撃目標をロストした魔女たちが再びまどかたちに襲いかかってきた
364 :1 [saga]:2012/12/05(水) 23:46:58.45 ID:+orFgcqs0

さやか「来たわね!」


さやかがサーベルを手に突っ込もうとする


マミ「美樹さん、むやみに突っ込むと取り込まれるわ!」


それを聞いたさやかは急ブレーキ、その勢いを利用しながら体を回転させる
さやかを中心にたくさんのサーベルが出現する
体を回転させながら魔女めがけて次々とサーベルを投げ込んでいく
365 :1 [saga]:2012/12/05(水) 23:47:36.34 ID:+orFgcqs0

一方のマミ


マミ「くっ……体が言うことをきかない」


魔女の精神攻撃の影響が肉体にも及んでいた
震える手でマスケット銃を撃つ
しかし、焦点があわず敵にかすりもしない
366 :1 [saga]:2012/12/05(水) 23:48:23.50 ID:+orFgcqs0

さやか「ああ、ちょこまかと!」


さやかの投げるサーベルも敵を捉えきれない


まどか「そんな……二人がかりでもダメなの?」

マミ「私と美樹さんはあの魔女たちと相性が悪いみたいね。でも暁美さんなら……」

マミ「せめてそれまでは時間を稼ぐわ」
367 :1 [saga]:2012/12/05(水) 23:49:16.87 ID:+orFgcqs0

マミは再び大量のマスケット銃を召喚した


マミ「美樹さん、援護するわ!」

マミ「手負いの魔女からいきたいとこだけど、まず使い魔から片付けないと無理よ。一体に狙いを絞って二人でいきましょう!」

さやか「わかりました!」
368 :1 [saga]:2012/12/05(水) 23:49:59.97 ID:+orFgcqs0

近くにいた使い魔に狙いを定め、さやかとマミが物量攻撃を仕掛ける


マミ「今ね、ティロ・フィナーレ!!」

マミ「きゃあ!」

さやか「ああ!」

まどか「マミさん!」


万全ではないマミ
自らの技の反動に耐え切れず、後ろに飛ばされた
マミの必殺技は壁に穴を開けただけだった

マミにかけよる二人
三人に忍びよる魔女たち――
369 :1 [saga]:2012/12/05(水) 23:50:43.95 ID:+orFgcqs0

バン


爆発音がした
三人がその音の先に視線を送る
そこには銀髪の少女が立っていた
370 :1 [saga]:2012/12/05(水) 23:51:24.96 ID:+orFgcqs0

マミ「あなたは?」


初めて見る少女にマミが問いかける
少女がそれに反応し、マミたちの方をむいた


あすみ「神名あすみ、隣町の魔法少女です」

あすみ「お手伝いします」


そう言うと、再び視線を魔女へと移した
371 :1 [saga]:2012/12/05(水) 23:52:16.80 ID:+orFgcqs0

あすみの得物――それはモーニングスターと呼ばれる代物
鎖の先についた鉄の球体に棘がたくさん生えている
あすみは、魔力を込めることでその棘を伸ばしたり飛ばしたり鉄球を爆発させたりすることができる
372 :1 [saga]:2012/12/05(水) 23:53:02.52 ID:+orFgcqs0

マミ「あなたの能力なら……美樹さん、私たちで援護しましょう!」


再び近くにいた使い魔に狙いを絞り、マミとさやかの二人が遠距離攻撃を開始した
ヒットこそしないが、敵に自由な動きをさせない
敵の動きが一定の範囲内に収まるように二人で攻撃し続ける
あすみはモーニングスターを回転させながら投げ入れるタイミングを計っている
373 :1 [saga]:2012/12/05(水) 23:54:04.39 ID:+orFgcqs0

あすみ「とお!」


マミとさやかが作り出したスペースにねじ込むように鉄球を投げ入れるあすみ


バァン


逃げ場なく爆発に巻き込まれる使い魔


マミ「いけるわ!!一体ずつ、確実に行きましょう!」

さやか「はい!」


マミ(とはいえ、私と美樹さんはいつまで持つか……)


マミとさやかは全力で攻撃し続けている
その分消耗が激しい


マミ(ただでさえ美樹さんは今日魔法少女になったばかり……)


実際、さやかはすでに肩で息をしている状態だった
これ以上は危険だ


マミ「美樹さん、私がやるわ!あなたは少し……」
374 :1 [saga]:2012/12/05(水) 23:54:42.06 ID:+orFgcqs0

ドォォォン


さやか「え?」


マミがさやかに言い終わる寸前、人工的な爆発音が響いた
消えていく魔女の結界――
375 :1 [saga]:2012/12/05(水) 23:55:16.95 ID:+orFgcqs0

シュタ


ほむら「遅くなってしまったわね」ファサ

マミ「暁美さん!」
まどか「ほむらちゃん!」


ほむらがさやかの方を見る
376 :1 [saga]:2012/12/05(水) 23:55:52.93 ID:+orFgcqs0

ほむら「……やっぱり契約したのね、さやか」

さやか「ごめん、私……」

ほむら「済んでしまったことよ。これからは私とマミでフォローしていくから大丈夫よ」

さやか「ほむら……」

ほむら「私の方こそすまなかったわ。あなたの気持ちを考えずに自分の都合を押し付けてたもの」

さやか「そんな、私こそ……」

マミ「うん、これからはみんなで仲良くね!」


マミがパンと手を叩いた
「これで手打ち」という意味なのだろう
377 :1 [saga]:2012/12/05(水) 23:56:47.86 ID:+orFgcqs0

さやか「……うん、そうですね」

ほむら「ところで、その子は?」

マミ「私たちを助けてくれたの。確か――」

あすみ「神名あすみです。隣町の神ヶ原の魔法少女です」

マミ「私は巴マミよ。さっきはありがとう」

マミ「あすみちゃんはかわいいわね。小学生?」

あすみ「小六です」

ほむら「パトロールをしていたの?」

あすみ「はい、ここは神ヶ原と見滝原の境目ですから」

さやか「もうこんな時間だけど、大丈夫なの?」

あすみ「もう帰ります」
378 :1 [saga]:2012/12/05(水) 23:57:38.77 ID:+orFgcqs0

マミ「あ、あすみちゃん、助けてもらったお礼をしたいんだけど、今度よかったらうちに遊びにこない?」

あすみ「はい、喜んで!!」

マミ「ふふ、じゃあアドレス交換しましょう」

さやか「あ、私も!私は美樹さやか!私のことは『さやねえ』とでも呼んでくれたまえ」

まどか「私は鹿目まどか。よろしくね!」

あすみ「はい!よろしくお願いします」
379 :1 [saga]:2012/12/05(水) 23:58:27.70 ID:+orFgcqs0

さやか「で、この無愛想な美人が暁美ほむらね」

あすみ「よろしくです」

ほむら「…………」

まどか「ほむらちゃん、何かあったの?」

ほむら「……いえ、考え事をしていただけよ、ごめんなさい。よろしくね、あすみちゃん」

あすみ「はい」


     ・
     ・
     ・
380 :1 [saga]:2012/12/05(水) 23:59:48.11 ID:+orFgcqs0

あすみと別れ、四人で帰路につく


さやか「初陣だからカッコよくきめたかったのになあ」

マミ「私は美樹さんに助けられたわ。ありがとう」

さやか「マミさんにそう言われると照れるなあ。でも結局、おいしいところは全部ほむらが持っていっちゃうし」

マミ「暁美さん、ごめんなさい。私、鹿目さんを必ず守るって言いながら結局あなたを頼りにしてた」

ほむら「今日の敵はマミたちと相性がよくなかったのよ。仕方ないわ」

マミ「でも前も危ないところだったし……私、なんか自信なくなってきちゃった」

さやか「大丈夫ですよ!一人でダメでもみんながいるんですから」

マミ「そうね……もう一人じゃないものね」
381 :1 [saga]:2012/12/06(木) 00:00:48.84 ID:DPybdHpu0

さやか「そうだ!今度あすみも誘ってみませんか?あの子いい子そうだし、きっと一緒にワルプルギスと戦ってくれると思うんですよ!」

マミ「そうね……暁美さんはどう思う?」

ほむら「…………」

マミ「暁美さん?」

ほむら「考えておくわ」

さやか「ほむら?」

マミ「何か気になることでもあるの?」
382 :1 [saga]:2012/12/06(木) 00:01:36.82 ID:DPybdHpu0

ほむらは思い出していた


このループのはじめ、ほむらは魔法少女の真実をすべて話す決意をした
しかし、それすれば自分の能力も明かさざるをえない
それをQBが知れば他の街の魔法少女をけしかけてくるかもしれない……


そして現れた新しい少女
さやかが契約したその日、不自然なくらい大量に現れた魔女
そして、マミたちのピンチにタイミングよく現れ助けてくれた
……そう、まるで計ったかのようなタイミングで
383 :1 [saga]:2012/12/06(木) 00:02:08.59 ID:DPybdHpu0

『QBとつながっている』


そう考えると全ての辻褄が合う
だが、確証はない
もしかしたら私の思い過ごしかもしれない
新たな戦力として歓迎すべきなのだろうか?
384 :1 [saga]:2012/12/06(木) 00:02:41.55 ID:DPybdHpu0

ほむら「……私にもまだよくわからないの」

マミ「なら明日また、私の部屋で話し合いましょう」

ほむら「そうね」

さやか「うん、マミさんのケーキを食べながらね!」


     ・
     ・
     ・
385 :1 [saga]:2012/12/06(木) 00:03:38.21 ID:DPybdHpu0

帰宅したほむら


ほむら(神名あすみ……あの子は本当に信用できるの?)


たしかに、戦力は少しでも多くほしい
さやかは新米でどこまで戦力になるか計算できない
マミは今回の戦いで自信を喪失している

それでも今まで現れたことのないイレギュラーを仲間にして大丈夫なのだろうか?
下手をすればそれが元でまた失敗するかもしれない
386 :1 [saga]:2012/12/06(木) 00:04:17.60 ID:DPybdHpu0

ほむら「また賭け……か」


しかし、博打を打つわけにはいかない
少しでも勝算の高いルートを選ぶべきだ
だとしたら……


ほむら「マミと一緒にさやかを育てる。新しい仲間には信用できる人物を引き入れる」

ほむら「新しい仲間――佐倉杏子」


     ・
     ・
     ・
387 :1 [saga]:2012/12/06(木) 00:05:09.12 ID:DPybdHpu0

(隣町、風見野)


赤髪の少女
その髪を夜の街にたなびかせている
QBが寄っていく

QB「やあ、杏子」

杏子「QB、珍しいじゃん。あんたから寄ってくるなんて」

QB「見滝原のことで話があるんだ」

杏子「へえ、話してみなよ」


     ・
     ・
     ・
388 :1 [saga]:2012/12/06(木) 00:06:03.09 ID:DPybdHpu0

話が終わると杏子はどこかへ消えていった


QB(あの様子なら杏子は見滝原に来るだろうね)


一つ、問題をクリアーしたQB
今日のことを振り返りながら別の問題のことを考える
389 :1 [saga]:2012/12/06(木) 00:06:41.55 ID:DPybdHpu0

QB(……やっぱり問題はほむらだろうね)

QB(でも、あの子なら上手く立ち回るだろう)

QB(ワルプルギス襲来は16日……折り返しにさしかかる)

QB(そろそろ動き始めるべき時期だろうね)


「その日」にむけて、事態は動きだす







                 ――――――第八部 完
390 :1 [sage]:2012/12/06(木) 00:08:01.13 ID:DPybdHpu0
今回はここまでです
また明日投下しようと思っています
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/06(木) 00:09:18.38 ID:wnqnotCdo
ほむら勘良すぎだろwwwwww

392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/06(木) 00:48:42.53 ID:0aHyR9iAO


>>391
そりゃイレギュラーを警戒するのは当然
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/06(木) 01:11:57.52 ID:lZPpUTloo

ついにあすみん来たか
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/06(木) 13:29:16.96 ID:4a8l654No
瘴気って魔獣限定じゃなかったか
395 :1 [sage]:2012/12/06(木) 21:44:03.01 ID:DPybdHpu0
>>394
それ、知らなかったです……ご指摘ありがとうございます


では、予告どおり本日も投下していきます
396 :1 [saga]:2012/12/06(木) 21:45:17.28 ID:DPybdHpu0

第九部 


(次の日の朝)


仁美「ふぁぁぁ、はしたない、ごめんあそばせ」


仁美は普通に登校してきた


さやか(昨日の今日でねぇ……)


内心驚いたが、それを表に出さず、いつも通り接する
397 :1 [saga]:2012/12/06(木) 21:46:39.33 ID:DPybdHpu0

さやか「どうしたのよ仁美、寝不足?」

仁美「ええ、昨夜は病院やら警察やらで夜遅くまで」

さやか「えー、何かあったの?」

仁美「なんだか私、夢遊病っていうか……それも同じような症状の方が大勢いて、気付いたらみんなで同じ場所に倒れていたんですの」

さやか「はは、何それ?」

仁美「お医者様は集団幻覚だとかなんとか……今日も放課後に精密検査に行かなくてはなりませんの」

さやか「大変だねえ、でも何ともないみたいだし、よかったじゃん」

仁美「全くですわ」
398 :1 [saga]:2012/12/06(木) 21:47:24.87 ID:DPybdHpu0

さやか(仁美を、この街の人たちを助けることができたんだ)


仁美と話してそう実感できた
さやかは嬉しくてしょうがなかった
顔がにやけそうになる
それをとめるのに苦労した


仁美「どうかなさいましたか?」

さやか「なんでもないよ!」


     ・
     ・
     ・
399 :1 [saga]:2012/12/06(木) 21:48:23.39 ID:DPybdHpu0

(放課後、病院)


さやか「そっか、退院はまだなんだ」

恭介「足のリハビリがまだ済んでないしね。ちゃんと歩けるようになってからでないと」

恭介「手の方も、一体どうして急に治ったのか全く理由がわからないんだってさ。だからもうしばらく精密検査がいるんだって」


そう言いながら恭介は自分の手をかざし、見つめている
穏やかな表情のさやか
400 :1 [saga]:2012/12/06(木) 21:49:01.57 ID:DPybdHpu0

さやか「恭介自身はどうなの?どこか体におかしなとこある?」

恭介「いや、なさすぎて怖いっていうか……事故に遭ったことさえ悪い夢だったみたいに思えてくる」

恭介「何で僕、こんなベッドに寝ているのかなって」

恭介「奇跡だよね、これ」


さやかに視線を移す恭介
401 :1 [saga]:2012/12/06(木) 21:49:48.11 ID:DPybdHpu0

さやか「どうしたの?」

恭介「さやかにはひどいこと言っちゃったよね。いくら気が滅入っていたとはいえ……」

さやか「変なこと思い出さなくていいの。今の恭介は大喜びして当然なんだから。そんな顔しちゃだめだよ」

恭介「うん、なんだか実感なくてさ」

さやか「まあ、無理もないよね……あ、そろそろなか?」

恭介「ん?」

さやか「恭介、ちょっと外の空気吸いに行こう」
402 :1 [saga]:2012/12/06(木) 21:50:39.55 ID:DPybdHpu0

さやかが恭介の車イスを押し病院の屋上へと連れ出した


恭介「屋上なんかに何の用?」

さやか「いいからいいから」


そこには恭介を支えてきた病院のスタッフたち
そして恭介の両親の姿があった


恭介「あっ、みんな」

さやか「本当のお祝いは退院してからなんだけど、足より先に手が治っちゃったしね」
403 :1 [saga]:2012/12/06(木) 21:51:25.49 ID:DPybdHpu0

恭介の父親が近寄ってきた
その手には大事そうに荷物が抱えられている


恭介「そ、それは」


恭介の父親が持っていたもの――
それは諦めたはずの夢
捨てたはずの希望
なくしたはずの未来
404 :1 [saga]:2012/12/06(木) 21:52:03.52 ID:DPybdHpu0

恭介父「お前からは処分してくれと言われていたが、どうしても捨てられなかった……私は」


そう言って恭介にヴァイオリンを差し出す


恭介父「さあ、試してごらん、怖がらなくていい」


それを受け取ると恭介は一呼吸おいて弾き始めた
405 :1 [saga]:2012/12/06(木) 21:52:52.05 ID:DPybdHpu0

『アヴェ・マリア』


それは神の与え給う奇跡の福音
夕日が包み込む屋上のコンサートホール
畏敬と感謝の音色が響く


さやか(私、今最高に幸せだよ)

ほむら「今はいいかもしれないけど」
406 :1 [saga]:2012/12/06(木) 21:53:38.06 ID:DPybdHpu0

ほむらの声にハッと我に返るさやか
ここはマミの部屋


さやか(そうだ、あの後四人でマミさんの部屋に来たんだった)


さっきまでの出来事の余韻に浸り、幸せを謳歌していたさやかを、ほむらが現実へと連れ戻したのだった
407 :1 [saga]:2012/12/06(木) 21:54:11.80 ID:DPybdHpu0
さやか(またか……)


さやかは思った
せっかく夢見心地のいい気分に浸っていたのに、いつもほむらは私を現実の世界へ連れ戻す……
408 :1 [saga]:2012/12/06(木) 21:55:04.27 ID:DPybdHpu0

ほむら「本当に大丈夫なのね?」

さやか「うん……」

マミ「後悔はないのね?」

さやか「…………」

さやか「正直まだわからないです。恭介の手を治すために契約するかしないか……どちらを選んでも私はきっと後悔しそうな気がしたんです」

さやか「それなら私は自分の気持ちに正直でいたい。
    やらないで後悔するよりやって後悔したい。
    その方が後悔も少なくてすむんじゃないかって思ったんです」
409 :1 [saga]:2012/12/06(木) 21:56:00.20 ID:DPybdHpu0

マミ「勢いだけで決めてない?」

さやか「そうならないように、あの後もう一度落ち着いて考えてみたんです。
    魔法少女が背負う残酷な真実――それを引き受ける覚悟が本当に私にあるのかって」

マミ「つらいものよ。上条君はあなたに振り向いてくれないかもしれない。あなたは重い代償を支払ったのにね」
410 :1 [saga]:2012/12/06(木) 21:57:41.73 ID:DPybdHpu0

さやか「マミさんも真実を知って挫けそうになってた……でもマミさんは見事に立ち直った。他の誰かを守るために」

さやか「復活したマミさんは強かった。人を守るってこんなにも人を強くするんだってその時思ったんです」

さやか「この街の人たちを守っているのに、それを私たち以外誰も知らない。それでも他の人のために戦うマミさんは眩しかった」

さやか「だから私も誰かを守りたい、そうすることで強くなりたいって思ったんです」

さやか「恭介を……恭介のいるこの街を守る。たとえそれを恭介や街の人が知らなくても構わない」

さやか「マミさんを見てそう思ったんです。
    私もマミさんみたいに強くなりたい、だから私も魔法少女になってマミさんと一緒にワルプルギスの夜と戦おうって」

さやか「私はそういう覚悟で契約したんです」
411 :1 [saga]:2012/12/06(木) 21:58:33.54 ID:DPybdHpu0

マミ「そう……そこまで考えてのことならいいの。ごめんなさい、しつこく聞いてしまって」

さやか「いいんです。私の決意をみんなに知ってもらいたかったから」

マミ「私も少しは役に立てたみたいだし嬉しいわ。これからはお友だち兼魔法少女仲間としてよろしくね」

さやか「はい!」
412 :1 [saga]:2012/12/06(木) 21:59:28.82 ID:DPybdHpu0

さやか「そうそう、その魔法少女仲間についてなんですが……」

マミ「あすみちゃんのこと?仲間になってくれるなら私は特に反対はしないわ」

さやか「ほむらはどうなの?昨日ずいぶん考えてたみたいだけど」

ほむら「私はあすみじゃなくて杏子を仲間にしたいと思っているわ」

マミ「杏子って、佐倉さんのこと?」

さやか「前にほむらが言ってた人?」

ほむら「そう、昔のマミのパートナーよ」
413 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:00:17.43 ID:DPybdHpu0

マミ「…………」

さやか「マミさん、杏子ってどんな子だったんですか?」

マミ「根はいい子よ。でも、私と考えが合わないところがあってケンカ別れみたいになってしまったの」

さやか「考えが合わない?」

マミ「あの子は使い魔を倒すことに反対してたわ。
   『使い魔も人を何人か食って成長すれば魔女になる。そうすればグリーフシードをおとすようになる』って言ってね」
414 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:01:03.63 ID:DPybdHpu0

さやか「え?何で……」

マミ「『魔法ってのは徹頭徹尾自分のためだけに使う』っていうのがあの子の信条だったの」

さやか「そんな……そんなの許せないよ」

ほむら「でもそれが魔法少女の正しい姿よ。他の街の魔法少女はみんなそうしているわ」
415 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:02:16.83 ID:DPybdHpu0

さやか「魔法少女は正義の味方じゃないの?マミさんみたいに……」

ほむら「マミみたいに使い魔まで倒す子は少数派よ」

マミ「みんな必死なのよ。そうでないと自分が生きられなくなってしまうから……彼女たちが間違っているわけではないわ」

ほむら「杏子は最初はとっつきにくいけど、話せばわかってくれる。
    きっと力になってくれるはずよ。
    マミの言うとおり、根はいい子なのよ」

さやか「だからその杏子っていう子を仲間にしたいの?
    本当に分かり合えるの?
    それならあすみを仲間にした方がいいって!」
416 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:03:06.13 ID:DPybdHpu0

ほむら「あすみは……もしかしたらQBとつながっているかもしれない」

さやか「は?」

ほむら「昨日一日でこの街に魔女が三体も現れた。
    経験上、今までそんなことは一度もなかったわ。
    そしてあすみはマミたちのピンチにタイミングよくかけつけた……不自然なくらいにね」

ほむら「でも、あすみが『QBがけしかけてきた魔法少女』だと仮定すれば辻褄があう」
417 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:03:43.78 ID:DPybdHpu0

さやか「確証はあるの?」

ほむら「……ないわ」

さやか「じゃあ、状況証拠しかないんだね」

ほむら「そうね。私の能力がQBにばれればQBは他の街の少女をけしかけてくるかもしれない、と最初から警戒していたのよ」 

さやか「そして現れた少女があすみってわけね。でもそれ全部ほむらの推測だよね?」
418 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:04:29.01 ID:DPybdHpu0

ほむら「そうね。でも私たちは危険を冒すべきではない。杏子なら信用できるわ」

さやか「あすみは信用できないの?」

ほむら「そうは言ってないわ。危険な可能性があると言ってるだけ」


ほむらがそう言うとさやかが大きくため息をついて言った
419 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:05:07.91 ID:DPybdHpu0

さやか「あのさぁ、私たちに妙なこと吹き込んでどうするの?仲間割れでもさせたいの?」

マミ「そうね……確証がないなら少し様子を見てもいいんじゃないかしら、暁美さん」


プツッ


それを聞いた瞬間、ほむらの頭の中で何かがきれた
420 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:05:58.41 ID:DPybdHpu0

――――――――――――――――――――――――――――――
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 
        (ほむらの回想)

まだほむらがメガネに三つ編みだったあるループ、魔法少女の魔女化を初めて知ったほむら


ほむら「伝えなきゃ……みんなQBに騙されてる!」


     ・
     ・
     ・
421 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:07:08.99 ID:DPybdHpu0

みんなに知ったことを伝えるほむら
しかし予想に反して反応は冷たいものだった


さやか「あのさぁ、QBがそんな嘘ついて一体何の得があるわけ?」

ほむら「それは……」

さやか「私たちに妙なこと吹き込んで仲間割れでもさせたいの?
    まさかあんたホントはあの杏子とかいう奴とグルなんじゃないの?」

ほむら「ち、違うわ!」

まどか「さやかちゃん、それこそ仲間割れだよ!」

さやか「はあ、どっちにしろ私、この子とチーム組むの反対だわ。
    まどかやマミさんは飛び道具だから平気だろうけど、いきなり目の前で爆発とかちょっと勘弁してほしいんだよね」

マミ「暁美さんには爆弾以外の武器ってないのかしら?」

ほむら「え?ちょっと考えてみます……」



   ________________________
――――――――――――――――――――――――――――――
422 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:07:48.94 ID:DPybdHpu0

ほむら「甘い甘い甘い!マミ、あなたはいつもさやかに甘すぎる!!」


怒りが込み上げてくる
今まで溜まっていた鬱憤をマミに一気にぶつけていた
423 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:08:29.61 ID:DPybdHpu0

本当ならこの怒りはさやかにぶつけるべきかもしれない
しかし、ほむらの中ではさやかが増長する原因はマミだ、という思いもあった
どのループでもマミは、自分を慕ってくれるさやかを甘やかしてきた

そのため、ほむらは内心、二人に強い不満を覚えていた
怒りをぶつける相手はどちらでもよかった
たまたま後に発言したマミに食いついたにすぎない
しかし、わかっていてもとめられない
424 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:09:14.49 ID:DPybdHpu0

マミ「わ、私はそんな……」

ほむら「今までのループでだってそうだった……
    あなたはあなたを慕ってくれる人に異常なくらい甘かった。今回のループだって……」

マミ「今までのループのことなんて知らないわよ!それにあなただって……」
425 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:09:49.26 ID:DPybdHpu0

言い合う二人は止まらない
それを見て、さやかがまどかに耳打ちした


さやか「行こっか」

まどか「え?」


さやかとまどかは静かにマミの部屋を出ていった
しかし、ヒートアップしているマミとほむらはそのことにまったく気付かない
426 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:10:41.69 ID:DPybdHpu0

まどか「まずいよ、さやかちゃん」

さやか「へーきへーき、たまにはほむら抜きで帰りたかったんだよね」

さやか「そうそう、まどかと二人ってのもいいんだけど、あすみも呼んでいいかな?」

まどか「え?う、うん」


ほむらのことを思ってか、まどかは遠慮がちに返事をした
それにはお構いなしにさやかはあすみに連絡を入れた


さやか「……うん、じゃあそこで待ってる」ピッ

さやか「じゃあ、行こっか、まどか」

まどか「うん……」



     ・
     ・
     ・
427 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:11:26.32 ID:DPybdHpu0

(マミの部屋)


ほむら「いつもあの子たちを巻き込んで契約させて……」

ほむら「マミ、最低ね、あなたって」

マミ「あなただって結局鹿目さんだけが大事で他のことはどうだっていいんでしょう!?」

ほむら「ええ、そうよ。言ったでしょう、初めに『他のことはどうでもいい』って」

マミ「最低なのはあなたじゃない!」

マミ「今回の美樹さんのことだって私はただ……」
428 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:12:00.46 ID:DPybdHpu0

マミがさやかがいた方に顔を向けた


マミ「……え?」

ほむら「……まどか?」

マミ「美樹さんも……いないわね」


ようやくさやかとまどかがいなくなったことに気付いた
429 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:12:44.36 ID:DPybdHpu0

ほむら「さやか、どこなの?」


当然のようにテレパシーも携帯も拒否されている


ほむら「統計上、今日魔女が出る確率は低いけど……」


それ以上に心配なことがあった
今の心理状態でさやかが杏子と出会えば、二人の性格上衝突は避けられないだろう
そうなるようにQBが手引きしているかもしれない
430 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:13:24.37 ID:DPybdHpu0

そして、あすみ――
もしあすみがQBとつながっているなら、さやかが杏子と衝突する以上に危険かもしれない


ほむら「私が目を離したばっかりに……」

マミ「ごめんなさい……私のせいだわ」

ほむら「いえ、私も悪かったわ。すんだことをぶり返してしまって……ごめんなさい」

マミ「とにかく、今は手分けして二人を探さないと」

ほむら「そうね」



     ・
     ・
     ・
431 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:14:24.26 ID:DPybdHpu0

そのころ、さやかとまどかは川沿いの土手の芝生の上に寝転んでいた


さやか「んー、この開放感、久々気分いいわー」


そう言いながらのびをするさやか
まどかがそんなさやかに心配そうに問いかけた
432 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:21:24.92 ID:DPybdHpu0

まどか「さやかちゃんはさ、さっきはみんなに大丈夫って言ってたけど……」

まどか「怖くないの?魔法少女になったこと」

さやか「まどかだから正直に言うけどさ、怖いよ」

まどか「え?」
433 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:22:20.86 ID:DPybdHpu0

さやか「魔法少女の真実はさ、残酷で本当に怖いと思う。それを知ってたら契約なんてできないよ、普通はね」

まどか「でも、勢いで契約したんじゃないんだよね?」

さやか「うん、今日みんなの前で言ったことはもちろん本当だよ」

さやか「でもそれだけじゃ足りなかった。勢いっていうのも必要だったんだ、最後の一押しにね」

まどか「最後の一押しって?」

さやか「QBにさ、このままだと恭介が危ないんじゃないかって言われてさ、絶望して自殺するかもしれないって」

まどか「!!」
434 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:23:07.56 ID:DPybdHpu0

さやか「それを言ったらほむらは『QBの口車に乗せられた』って言うかもしれない。
    でも私は本気で恭介のことが心配だった。
    だって恭介が悩んで苦しんでる姿を見てきたんだもん」

さやか「恭介にもしものことがあったらそれこそ悔やんでも悔やみきれない。
    私はどうしても恭介を助けたかった。
    この気持ちだけは譲りたくなかった」

さやか「もしこの気持ちを捻じ曲げて恭介を助けなかったら、もう私は私の道をまっすぐ歩けない、絶対一生後悔する」

さやか「その気持ちの方が恐怖より上だったんだと思う。
    だから怖くないわけじゃないよ。
    でもきっと乗り越えていける、そんな気がしたんだ」

さやか「自分の気持ちを大事にできた。
    契約したおかげで私は恭介を助けられた。
    仁美もこの街の人たちも……大切な人たちを守れたんだもん」
435 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:23:50.55 ID:DPybdHpu0

そう言うとさやかはソウルジェムを取り出した


さやか「だからこれは私の誇りなんだ」


手の平に乗せた青い宝石を大事そうに握りしめる
436 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:24:57.64 ID:DPybdHpu0

さやか「だから、何つーかな、ちょっと自分を褒めちゃいたい気分っつーかね。
    これで私もマミさんみたいに少しは強くなれるかなって」

さやか「ま、舞い上がっちゃってますね、私!
    これからの見滝原市の平和はこの魔法少女さやかちゃんがガンガン守りまくっちゃいますからねー!」

あすみ「頼もしいですね!」


上から声がした
437 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:25:53.12 ID:DPybdHpu0

さやか「お、あすみ、早かったね!」

あすみ「さやねえから声をかけられるかなって思ってたから早めにパトロールきりあげてきました!」


さやかとまどかが立ち上がり、あすみの方へかけよった
438 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:26:36.48 ID:DPybdHpu0

さやか「これから私たちもパトロールに行こうと思ってたところなんだけど、もしあすみがよかったら一緒に来ない?」

あすみ「いいですよ!そのために早くあげたんだし」

さやか「よーし、じゃあ今日は三人でパトロールだ!」


パトロ−ルに向かう三人


     ・
     ・
     ・
439 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:27:18.58 ID:DPybdHpu0

杏子「ふぅん、あれがこの街の新しい魔法少女ねぇ」


見滝原市にそびえるタワー
その展望デッキの双眼鏡を使い三人の様子を観察している杏子


杏子「隣にいるのは?」

QB「ピンクの髪の子が昨日話した鹿目まどかだよ。銀の子は神名あすみ、隣街の魔法少女さ」
440 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:27:55.11 ID:DPybdHpu0

杏子「何で隣街の魔法少女がいるのさ?」

QB「昨夜の魔女との戦いで共闘してね。特にさやかと気があったみたいだね」

杏子「ふーん」
441 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:28:38.01 ID:DPybdHpu0

QB「で、本当にさやかと事を構える気かい?」

杏子「だってチョロそうじゃん。瞬殺っしょ、あんなヤツ」

杏子「それとも何、文句あるっての?アンタ」

QB「全て君の思い通りにいくとは限らないよ。この街には極めつけのイレギュラーがいるからね」

杏子「昨日QBが言ってたほむらってヤツのことか?時間遡行してるっていう」
442 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:29:15.39 ID:DPybdHpu0

QB「ほむらは時間を止めることもできる。気をつけた方がいいよ」

杏子「確かに厄介そうなヤツだな……でも今はヒヨッコと小娘だけだし、ほむらが来る前にカタをつければいいっしょ?」


早速杏子は動きだした
443 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:30:04.89 ID:DPybdHpu0

杏子「あんなヒヨッコと組んでたら早死にするぜ、マミ」


ボソッと杏子がつぶやいた
それをQBは聞き逃さなかった


QB(…………)


いつもの無表情で杏子についていくのだった





                 ――――――第九部 完
444 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:31:43.46 ID:DPybdHpu0

第十部 


見滝原市のパトロールを開始した三人
歩きながらさやかがあすみに尋ねた


さやか「あすみはさあ、使い魔も倒す派?」

あすみ「え?当然じゃないですか?使い魔だって人を襲うんですよ?」

さやか「うんうん、やっぱりあすみはわかってるね!」

さやか「よかったら私たちの仲間にならない?」
445 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:32:26.11 ID:DPybdHpu0

あすみ「いいですよ!私も一人は寂しかったので是非お願いしたいです」

さやか「いやね、使い魔を倒そうとしない魔法少女がいるんだけどね、うちのほむらがそいつを仲間に引き入れようとしてるのよ」

さやか「やっぱり仲間にするなら考え方が同じ人じゃないとね!」

さやか「あ、それと、今後はタメ口でいいよ」

あすみ「じゃあ、遠慮なく」
446 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:33:49.83 ID:DPybdHpu0

ふふっと笑う二人
しかし、さやかはすぐに真剣な顔つきになった


さやか「ところで、あすみはワルプルギスの夜って知ってる?」

あすみ「聞いたことあるよ、超大型の魔女だって」

さやか「うん、近いうちに見滝原に来るんだってほむらが言ってた」

あすみ「え、もしかして戦うの?」
447 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:34:46.15 ID:DPybdHpu0

さやか「私はこの街を守りたい……だから戦うよ」

あすみ「なら私も一緒に戦うよ!」

さやか「無理しなくていいんだよ?仲間になるっていっても一緒にワルプルギスと戦ってってことじゃない」

あすみ「私はね、魔法少女は街の人たちを守るべき存在だって思ってるんだ。
    私たちのこの力はそのためのものだって。
    だから私もさやねえたちと一緒にこの街を守りたい」

さやか「ホントに?死ぬかもしれないんだよ?」

あすみ「魔法少女をやってればいつ死んでもおかしくないよ。私はその覚悟でやってるから……大丈夫だよ」

さやか「あすみ……」
448 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:35:19.61 ID:DPybdHpu0

その時、さやかのソウルジェムがわずかに点滅を始めた


さやか「魔女、かな?」


反応を辿っていく


さやか「ここだ」
449 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:35:49.38 ID:DPybdHpu0

細い路地裏
反応はその先からだった
三人で入っていく
するとあすみが結界を確認した
450 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:36:29.77 ID:DPybdHpu0

あすみ「この結界は魔女じゃなくて使い魔のものだね」

さやか「悪いけどさ、ここは私一人でやらせてもらえないかな?
    私まだ魔法少女になりたてだから慣れてなくてさ、経験積んでおきたいんだよね」

あすみ「うん、わかった。でも使い魔といっても油断は禁物だよ」

さやか「分かってる」
451 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:37:53.71 ID:DPybdHpu0

さやかが変身し、身構える
その視線は使い魔を捉えていた
子供がクレヨンで書いたような落書き――
舌を出しながら不規則な軌道で飛び回っている
452 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:38:25.92 ID:DPybdHpu0

あすみ「逃げるよ」

さやか「任せて!」


さやかがサーベルを大量に召喚
回転しながら使い魔に向かって投げ続ける
しかし、不規則に動き回る使い魔をなかなか捉えきれない
453 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:38:58.53 ID:DPybdHpu0

あすみ「落ち着いて、よく見て!」

さやか「うん、慣れてきたよ」


さやかの投げるサーベルが次第に使い魔を追い詰めていく


さやか「あと少し――」
454 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:39:34.78 ID:DPybdHpu0

そして、ついにサーベルが使い魔を捉え、当たったと思った瞬間――


ガキン



金属音が響いた
当たったと思ったサーベルがはじかれ、道端にカランと転がった
逃げていく使い魔
455 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:40:12.36 ID:DPybdHpu0

あすみ「逃げちゃう!」

杏子「ちょっとちょっと、何やってんのさアンタたち」


赤い髪の少女
さやかのサーベルをはじき落としたのは彼女、佐倉杏子だった
杏子が言葉を続ける
456 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:40:45.98 ID:DPybdHpu0

杏子「見てわかんないの?ありゃ魔女じゃなくて使い魔だよ。グリーフシードを持ってるわけないじゃん」

さやか「……あんたが『杏子』?」

杏子「知ってるなら話が早いね。ほむらってヤツから聞いたのか?」

さやか「あとマミさんからもね。あんたは使い魔を倒さないタイプだって」
457 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:41:26.96 ID:DPybdHpu0

杏子「だったら知ってるんだろ?4〜5人食って魔女になるまで待てっての。そうすりゃちゃんとグリーフシードも孕むんだからさ」

杏子「卵産む前の鶏シメてどうすんのさ」

さやか「ホントにそういう考えなんだね……使い魔に襲われてる人たちをあんたは見殺しにするって言うんだね?」
458 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:42:19.12 ID:DPybdHpu0

杏子「アンタさぁ、何か大元から勘違いしてんじゃない?食物連鎖って知ってる?」

杏子「弱い人間を魔女や使い魔が食う、その魔女や使い魔をアタシたちが食う」

杏子「これが当たり前のルールでしょ。そういう強さの順番なんだから」
459 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:42:50.67 ID:DPybdHpu0

さやかはずっとプルプル震えている
それを見ていたまどかはそっと抜け出してほむらたちに連絡を入れた


まどか(お願い、ほむらちゃん、すぐに来て!)
460 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:43:27.04 ID:DPybdHpu0

杏子がさやかの近くに寄ってくる
耳元でささやくように言う


杏子「まさかとは思うけど、やれ人助けだの正義だの、
   その手のおチャラケた冗談かますためにアイツと契約したわけじゃないよね?アンタ」
461 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:43:58.46 ID:DPybdHpu0

ペロリと口の周りを舌なめずりしながら杏子が指差した先には「アイツ」――QBがいつの間にかいた
茶化すような態度でさやかを挑発する杏子
その顔には不敵な笑みが浮かんでいた
462 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:44:32.86 ID:DPybdHpu0

さやか「だったら何だって言うの?」


静かに、低い声で怒りをあらわにするさやか


杏子「遊び半分で首突っ込まれるのってさ、ホントムカつくんだわ」


さやか「……あんたなんかに何がわかるの?」

さやか「マミさんとケンカ別れしたのもどうせマミさんに愛想つかれたからでしょ」
463 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:45:05.47 ID:DPybdHpu0

さやかがマミの話を切り出した瞬間、杏子の笑みが消えた


杏子「言って聞かせてわからねえ……どうやら新米の甘ちゃんには教育が必要なようだね」


お互い臨戦態勢に入る


あすみ「さやねえ!」

さやか「あすみは手を出さないで……これは私の戦いだから」
464 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:46:10.94 ID:DPybdHpu0

先に仕掛けたのはさやか


キン


さやか「ぁぁぁああああ!!」


サーベルを握る両腕に魔力を込めるさやか
それを槍の柄で軽く受け止める杏子
片手で涼しい顔をしながらさやかの攻撃をいなしている
465 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:46:39.26 ID:DPybdHpu0

次の瞬間、杏子は突然槍をクルっと回転させた
前のめりになるさやかに杏子が一撃をかます


ズザァァァ


後ろに吹き飛ばされたさやか
実力差は歴然としていた
さやかは立ち上がれない
466 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:47:16.53 ID:DPybdHpu0

杏子「ふん、トーシロが……ちっとは頭冷やせっての」


倒れているさやかを見下ろしながら吐き捨てるように言った


杏子「あんた、男の腕を治すために契約したんだって?」


杏子「魔法ってのは徹頭徹尾自分のために使うもんなんだよ」
467 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:47:49.17 ID:DPybdHpu0

そこまで言うと今度はあすみの方を向いた


杏子「あすみっていったけ?あんたも自分の街に帰りな。痛い目見る前にね」

あすみ「私は……私はさやねえたちとこの街を守る……そう約束したから」


そう言うとあすみも構えた
468 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:48:20.42 ID:DPybdHpu0

杏子「そうかい……それなら仕方ないね」


あすみがモーニングスターを回し始める
その時、しぼるような声が聞こえてきた
469 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:48:54.09 ID:DPybdHpu0

さやか「あすみ……やめて、あんたは逃げて」


そう言うとさやかはサーベルを杖替わりに立ち上がった
何とか構えるもその足元はおぼつかない
それでも杏子には驚きだった
470 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:49:33.54 ID:DPybdHpu0

杏子「おっかしいなあ、全治3か月ってくらいにはかましてやったはずなんだけど」

QB「彼女は癒しの祈りを契約にして魔法少女になったからね。ダメージの回復力は人一倍さ」

さやか「私は……マミさんたちと一緒にこの街を守る。あんたなんかに負けるわけにはいかない!」
471 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:50:40.10 ID:DPybdHpu0

杏子「うぜえ」


チッと舌打ちしながら吐き捨てる


杏子「チョーうぜえな。使い魔を倒すだけじゃ飽き足りなくてみんなでこの街を救うってか?」

杏子「仲良しごっこのつもりかい?
   いいか、『一つの街に魔法少女は一人』
   これはもう決まりなの!
   暗黙のルールなんだよ!!」
472 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:51:11.97 ID:DPybdHpu0

さやか「マミさんに見捨てられたあんたらしい言い訳だね。そうやって孤独に逃げて弱い自分を守ってきたんでしょ?」


杏子の動きが止まった
カッと目を見開く
虹彩の大きさは変わらず、白目の部分が増大する――いわゆる「三白眼」
473 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:51:48.75 ID:DPybdHpu0

杏子「言ってもわからねえ……」

杏子「殴ってもわからねえ……」

杏子「後は……潰しちゃうしかないよねッ!?」
474 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:52:22.13 ID:DPybdHpu0

圧倒的な威圧感……それに押しつぶされないようにさやかが叫ぶ


さやか「負けない……負けるもんかぁ!!」


ガキン
475 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:53:05.90 ID:DPybdHpu0

全力で突っ込んだ二人
サーベルと槍の穂先がぶつかり合い火花を散らした
それを皮切りに死闘が展開される


多節棍の槍を器用に使いこなす杏子
槍が、ヘビのように動きを変幻自在に変えながらさやかに襲い掛かる
先程までと違い、多少のケガを覚悟しているさやか
皮膚を裂かれながらも杏子の攻撃をすんでのところではじき返しくらいつく
476 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:53:51.31 ID:DPybdHpu0

まどか「どうして?魔女じゃないのに……どうして魔法少女同士で戦わなきゃならないの?」

あすみ「どうしようもないよ、お互い譲る気なんてまるでないし」

まどか「あすみちゃん、お願い……さやかちゃんを助けてあげて」

あすみ「私とさやねえじゃあの杏子って人に勝てないかもしれないけど……でも、何とかしてさやねえだけでも助けたい」
477 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:54:19.15 ID:DPybdHpu0

そう言うとあすみも死闘の渦中へと身を投じていった
それでもベテランの杏子の優位は変わらない
二人を軽くあしらう
それを見てQBがまどかに近寄ってきた
478 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:55:07.80 ID:DPybdHpu0
まどか「QB……」

QB「止めたいのかい?どうしても止めたいなら方法がないわけじゃないよ」

まどか「私が契約すればいいの?でも私は……」


ほむらの顔が浮かぶ
逡巡するまどか
その時、大きな声が響いた
479 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:55:40.56 ID:DPybdHpu0

杏子「終わりだよ!」


倒れている二人にとどめをさそうと迫る杏子


まどか「私は……!!」
480 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:56:12.55 ID:DPybdHpu0

ほむら「それには及ばないわ」


次の瞬間、とどめをさしにいったはずの杏子の攻撃が地面をえぐっていた


杏子「なっ!?」

さやか「え?」
481 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:56:41.35 ID:DPybdHpu0

いつの間にか別の場所へ移動していたさやか
何が起こったのかわからずきょとんとしている
一方の杏子はほむらの姿を確認すると思わず吼えた
482 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:57:49.71 ID:DPybdHpu0

杏子「何しやがったテメェ!」


杏子が言葉を言い終わる前に、今度は杏子の真後ろに突然姿を現したほむら


杏子「……なっ」


目の前にいた相手が忽然と姿を消す――それはベテランの杏子でさえ初めての経験だった
驚きを隠せない
同時に戦慄が走った


杏子(これが噂のイレギュラー……)
483 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:58:40.03 ID:DPybdHpu0

さやか「ほむら、邪魔しないで!」


そう叫んださやかの首筋に手刀が浴びせられる
意識を失ったさやかの体を支えるほむら


まどか「さやかちゃん?」

マミ「大丈夫、気絶しているだけよ」

まどか「え、マミさん!」


マミも現場に到着
形成は一気に逆転した
484 :1 [saga]:2012/12/06(木) 22:59:40.01 ID:DPybdHpu0

まどかの言葉に反応し、一瞬マミの方に視線を移した杏子
しかし、すぐに視線をほむらの方に向け直す

時間停止――話には聞いていたが、聞くのと見るのでは大違いだ
ほむらの術は全てが刹那の出来事
次の瞬間にどうなるか全く見当がつかない

そんなほむらが仲間であるはずのさやかに手刀を浴びせた……
485 :1 [saga]:2012/12/06(木) 23:00:10.62 ID:DPybdHpu0

杏子「何なんだ、アンタ?一体誰の味方なんだ?」

ほむら「私は冷静な人の味方で無駄な争いをする馬鹿の敵」

ほむら「あなたはどっちなの、杏子?」

杏子「…………」
486 :1 [saga]:2012/12/06(木) 23:01:00.26 ID:DPybdHpu0

杏子「あんたの手札も考えもまるで見えないとあっちゃね、今日のところは降りさせてもらうよ」


構えていた槍をおさめる杏子


ほむら「賢明ね」
487 :1 [saga]:2012/12/06(木) 23:01:54.89 ID:DPybdHpu0

マミに一瞥をくれながら杏子は退散した
その後ろ姿を見送るマミ


マミ「佐倉さん、どうしてこんなことを……」


怪訝そうにつぶやくマミ
後ろから震え声が聞こえ振り返った
488 :1 [saga]:2012/12/06(木) 23:02:38.18 ID:DPybdHpu0

ほむら「まどか……どこまであなたは愚かなの」


わなわなと震えているほむら


まどか「ごめんなさい……でも、私……」

マミ「暁美さん!鹿目さんを責めてはダメよ!」

ほむら「…………」
489 :1 [saga]:2012/12/06(木) 23:03:18.83 ID:DPybdHpu0

耐えるようにぎゅっと手を力強く握るほむら
その脇を通り過ぎ、さやかとあすみを介抱に向かうマミ


さやか「私は自分で治せるから大丈夫です……あすみをお願いします」

マミ「わかったわ」


倒れているあすみを抱き起こす
490 :1 [saga]:2012/12/06(木) 23:03:51.74 ID:DPybdHpu0

マミ「あすみちゃん……美樹さんのためにこんなになって……」


マミは回復魔法をかけながらほむらの方を向いた


マミ「これでもあなたはあすみちゃんを信用できないと言うの?暁美さん」

ほむら「…………」
491 :1 [saga]:2012/12/06(木) 23:04:31.87 ID:DPybdHpu0

何でこう思い通りにいかないのか――目を閉じ顔を上げるほむら


ほむら(それでも……それでも杏子は仲間にしてみせる)


増えたはずの仲間……それでもほむらは一人、孤独な戦いを続けるのだった


     ・
     ・
     ・
492 :1 [saga]:2012/12/06(木) 23:05:04.72 ID:DPybdHpu0

自分のねぐらに戻ってきた杏子
ホテルの一室を無断で拝借している
ポケットから赤いソウルジェムを取り出すと、ベットに横になった


杏子「マミ……」
493 :1 [saga]:2012/12/06(木) 23:05:50.64 ID:DPybdHpu0

――――――――――――――――――――――――――――――
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 
           (杏子の回想)



アタシが、まだマミの元で修行していた頃、その当時は二人で魔女を倒し、グリーフシードを分け合っていた
アタシは修行がすすむにつれて強くなっていた
二人でこのままやっていけると思っていた
494 :1 [saga]:2012/12/06(木) 23:06:32.29 ID:DPybdHpu0

マミはバランス型
一方のアタシは攻撃型
すぐにアタシの基本攻撃はマミのそれを凌駕するようになった
マミのような必殺技がなくても十分魔女とやりありあえた
495 :1 [saga]:2012/12/06(木) 23:07:04.09 ID:DPybdHpu0

しかし、その分消費魔力も大きい
当然、グリーフシードの減りも早い
ただでさえ二人で分け合っているのだ、ストックなどできようはずがなかった
これは魔法少女にとっては危機的状況といえる
ずっとそんな状態が続いていた
アタシの悩みは強くなればなるほど比例して大きくなっていった
496 :1 [saga]:2012/12/06(木) 23:07:39.64 ID:DPybdHpu0

杏子(このままいけば共倒れだ……)


しかし、アタシはそれをマミに伝えようとはしなかった
コンビを解消したくはなかった
アタシはマミに依存していたのだ
しかし、現実がそれを許してくれなかった
497 :1 [saga]:2012/12/06(木) 23:08:35.16 ID:DPybdHpu0

杏子(グリーフシード不足が限界を迎える前に――)


マミ「どうして出て行こうとするの?」

杏子「魔法ってのは徹頭徹尾自分のためだけに使うもんだ。アンタとは考えが合わなかったのさ」

マミ「待って、佐倉さん!少しくらい考えが違ったって――」

杏子「今まで世話になったな、マミ」


別れを告げた
すがりつくマミを振り払ってアタシは出ていった


   ________________________
――――――――――――――――――――――――――――――
498 :1 [saga]:2012/12/06(木) 23:09:06.47 ID:DPybdHpu0

マミにはそれ以上の説明はしなかった
マミは優しすぎるから本当のことを聞けば無理をしてしまうだろう
アタシは悪者でいい
499 :1 [saga]:2012/12/06(木) 23:09:53.15 ID:DPybdHpu0

杏子「マミ、アタシは今でもアンタを……」


『本当はそうやって孤独に逃げて、弱い自分を守ってきたんでしょ?』


杏子「……ちっ」


さやかの言葉に舌打ちすると、ムクリと起き上がり夜風にあたった


杏子「…………」


結局、そのまま眠れぬ夜を過ごすのだった








                 ――――――第十部 完
500 :1 [saga]:2012/12/06(木) 23:19:48.36 ID:DPybdHpu0
ちょうど500ということで、本日の投下は以上です

読んでくれている方、乙してくれた方ありがとうございます

また明日投下予定です
501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/06(木) 23:20:43.90 ID:wnqnotCdo


このさやかはあすみが余計なことしなくてもオクタりそう
502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/06(木) 23:27:04.13 ID:xYsOa/HTo

一家心中とかの経緯はなかった世界か
503 :1 [sage]:2012/12/07(金) 22:23:31.02 ID:PQNxi7J60
連日投下してやっとここまできました
読むのも大変かと思いますが、よろしくお付き合いください

では、続きを
504 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:24:22.85 ID:PQNxi7J60

第十一部 


(翌日、マミの部屋)


さやか「……これだけ言ってもまだわからないの?ほむらは」

ほむら「ええ、私は杏子を仲間にするつもりよ」

さやか「アイツは私を殺そうとしてた……あの眼は本気だった」

さやか「それにアイツはあすみを……私を助けようとしたあすみまで傷つけた。絶対に許せないよ」
505 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:24:57.56 ID:PQNxi7J60

ほむら「杏子は杏子の考えがあって動いているのよ。本気でさやかを殺そうとしたとは思えないわ」

さやか「アイツの考えって『使い魔は倒さない』『一つの街に魔法少女は一人』『魔法は自分のために』だよ」

さやか「どれもロクなのないじゃん。アイツはロクな人間じゃないんだよ。
    『グリーフシードを分け合おう』とか『仲間のために』とか『この街を守る』とか……そういう考えないんだよ」

さやか「マミさんもそう思いますよね?」
506 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:25:37.85 ID:PQNxi7J60

マミ「…………」

 
『一つの街に魔法少女は一人』


この言葉がマミの中でひっかかっていた
507 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:26:17.18 ID:PQNxi7J60

――――――――――――――――――――――――――――――
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 
           (マミの回想)

私の元で修行していた佐倉さん
佐倉さんの上達は早かった


マミ「悪いわね、楽させてもらっちゃって」


マミは杏子が頼もしかった
二人でこのままやっていけると思っていた
しかし、佐倉さんは強くなるにつれて表情が曇っていった……
508 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:26:57.04 ID:PQNxi7J60

マミ「何かあったの?」

杏子「別に……」


そして、ある日突然告げられた別れ
私を振り払って佐倉さんは出ていった


   ________________________
――――――――――――――――――――――――――――――
509 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:27:44.15 ID:PQNxi7J60

「佐倉さんに見捨てられた」

マミはずっとそう思っていた


『一つの街に魔法少女は一人』


そう、一つの街に魔法少女が複数いればグリーフシードが足りなくなる
魔法少女が強ければ強いほどそうなのだ
杏子とコンビを組んでいた時、直面した問題だった
しかし、マミはそれを見て見ぬふりをした
マミは杏子と別れたくなかったのだ
マミは杏子に依存していたから……
510 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:28:17.79 ID:PQNxi7J60

マミ(佐倉さんは私のことを見捨てたんじゃなかった。むしろ私のことを想うからこそ……)


不器用な彼女らしい選択――
511 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:28:50.14 ID:PQNxi7J60

マミを想うからこそさやかたちを排除しようとしたのだ
さやかたちが強くなれば、いずれグリーフシードが足りなくなるのは目に見えている
512 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:29:31.93 ID:PQNxi7J60

さやか「マミさん?」

マミ「……昨日、佐倉さんがしてしまったことは許されることではないわ。
   どんな理由があっても大けがを負わせるなんて……」

マミ「でも、私には佐倉さんの考えが間違っているとは言えない。
   彼女の言っていることは魔法少女としては正しい、ということはわかるもの」

さやか「え?」
513 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:30:09.46 ID:PQNxi7J60

思ってもいなかった答えが返ってきたことに驚きを隠せないさやか
納得できない、という表情をマミに向ける


マミ「あの子は不器用なだけで根は優しい子よ。私も佐倉さんがあなたを本気で殺そうとしたとは思えないの。それだけはわかって、美樹さん」

さやか「……わかんないです。マミさんもあいつを仲間にしたいんですか?」
514 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:30:56.56 ID:PQNxi7J60

マミ「佐倉さんのことについてはもう少し時間をかけて話し合って決めましょう。今はみんな冷静じゃないもの」

マミ「でも、あすみちゃんは仲間になってもらってもいいんじゃないかしら?暁美さん」

ほむら「私が反対したら仲間にしないの?」

マミ「あすみちゃんは体を張って美樹さんを助けようとした。美樹さんとの約束を果たすために……
   なかなかできることじゃないわ。それでもまだ信用できないの?」
515 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:31:31.06 ID:PQNxi7J60

ほむら「私はただ私の考えに従っているだけよ」

さやか「わかった」

マミ「美樹さん!」

さやか「私とほむらの考えが合わないことはよくわかったよ」

さやか「マミさん、私、これからは自分の思ったようにやります」

マミ「美樹さん、落ち着いて!」


そう言うとさやかはマミの部屋を走ってでていった
516 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:31:57.67 ID:PQNxi7J60

まどか「さやかちゃん!」


まどかが追う
マミとほむらはただ見ているしかなかった


     ・
     ・
     ・
517 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:32:31.32 ID:PQNxi7J60

(風見野、ホテルの一室)


横になっている杏子のところにQBが寄ってきた


QB「やっぱりほむらは手ごわかったね」

杏子「ああ、正直まともにやったら勝てる気がしないね」

QB「じゃあ、諦めるのかい?」

杏子「まさか!今度は作戦をきちんと立てていくさ」
518 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:33:06.52 ID:PQNxi7J60

杏子「とはいえ、あいつの能力は厄介すぎるな。QB、あいつの弱点を何か知らないか?」

QB「知らないというわけでもないよ。確証はないけど」

杏子「本当か?」


上半身を起こしてQBの方を向いた
519 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:34:02.69 ID:PQNxi7J60

QB「あくまで推測だし、仮にあってたとしても役に立つかわからないよ」

杏子「それでもいい、何か手がかりになればいいんだ。教えてくれ」

QB「それなら……多分、ほむらは縛られている間は時間停止の能力が使えないんじゃないかな」

杏子「実際に見たのか?」

QB「うん、以前さやかを止めようとしたほむらをマミがリボンで縛った時があったんだ。
   その時、ほむらは何もできなかった。もし縛られても時間停止ができたなら、あの時ほむらはさやかを止められていただろうからね」

杏子「ってことは、直接手でやらなくても発動した能力でふん縛っちまえばヤツは時間停止できないってわけだ」

杏子「試してみる価値は……あるな」


舌なめずりする杏子
520 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:34:35.57 ID:PQNxi7J60

QB「他の子たちはどうするつもりだい?」

杏子「あとはどうってことないさ。ヒヨッコと小さいのは取るに足りないし、マミの能力や戦い方はよく知ってるからね」


杏子はそう言うとホテルの窓から出ていった


――――――

――――

――
521 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:35:14.88 ID:PQNxi7J60

(次の日、見滝原)


さやか「ダメだ、時間が経ちすぎてる。昨夜の使い魔を追う手がかりは無さそうだね」

あすみ「うん」

まどか「…………」


あれ以来さやかはほむらとマミとは別行動をとるようになった
522 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:36:00.79 ID:PQNxi7J60

あすみ「さやねえ、暁美さんと巴さんはいいの?」

さやか「今ケンカ中でさ……少し距離をおいてるんだ」

あすみ「もしかして私のせい?」

さやか「あすみは気にしなくていいよ。私もほむらも意地張っちゃってるだけだよ」

さやか「でもさ、自分の信念に関する大事なことだからお互いそう簡単には曲げられないわけ」
523 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:36:39.24 ID:PQNxi7J60

さやか「佐倉杏子……あいつにはこの街のことで手を出してほしくない」

さやか「私はあすみとこの街を守りたいんだ」

あすみ「私でいいなら……」

さやか「あすみがいいの!よろしくね!」


まどか(……みんなで仲良く、は無理なのかな?)


どこですれ違ってしまったのだろう……


まどか(ほむらちゃんたち、今どうしてるのかな)



     ・
     ・
     ・
524 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:37:55.68 ID:PQNxi7J60

(ゲームセンター)


ダンスゲームに興じる杏子
背後からほむらが近づく


杏子「今日は一人か」

ほむら「マミは来ないわ。あなたと二人で話したかったの」


杏子はプレイしながら話す
525 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:38:46.46 ID:PQNxi7J60

杏子「で、何の用だい?」

ほむら「杏子、あなたに仲間になってほしい」

杏子「何でだ?」

ほむら「二週間後、見滝原にワルプルギスの夜が来る」

杏子「ふぅん、確かに手ごわいな。それで協力してくれってお願いしにきたってとこかい」
526 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:39:19.87 ID:PQNxi7J60

ほむら「ええ、そうよ」

杏子「そっちにはマミがいるじゃないか。ヒヨッコだって育てりゃいい。何でアタシに頼むんだい?
   それにあのヒヨッコとアタシはソリが合わないんだよ。知ってんだろ?」

ほむら「戦力は多いほうがいい。マミは今自信を失いかけているし、さやかはあてにならない。
    あの子は魔法少女に向いてない」

杏子「仲間から外すのかい?」
527 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:39:52.93 ID:PQNxi7J60

ほむら「考えを改めさせるわ。さやかのことはなるべく穏便にすませたい。貴方は手出ししないで」

杏子「考えを改めさせる、か……難しいだろうがそれが協力のための最低ラインの条件だな。
   でもそれだけじゃ足りない」

ほむら「何かしら?」


プレイが終わる
フルコンボ表示を確認すると杏子はほむらの方をむいた
528 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:40:21.35 ID:PQNxi7J60

杏子「あんたの弱点を教えてくれ」

ほむら「……何を言ってるの?」

杏子「こっちは命がけで共闘しようってんだ。仲間になるならそのぐらい教えてくれてもいいだろ?」

杏子「それとも言いにくいかい?それならアタシが当ててあげようか?」
529 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:40:50.11 ID:PQNxi7J60

杏子の口元が歪む
筐体から下りてほむらの方へ向かってきた


杏子「アンタの時間停止の能力ってさ」


ポンッとほむらの肩に手を置く杏子
耳元でぼそっとささやく
530 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:41:15.83 ID:PQNxi7J60

杏子「縛られると発動できないんだろ?」


ほむらの表情がこわばる
その表情を見ただけで杏子は満足した
531 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:41:57.29 ID:PQNxi7J60

杏子「不器用だな、アンタ」


きびすをかえし、ほむらに背を向けた


杏子「魔法少女にはさ、こういう力も必要なんだよ。勉強になったろ?」
532 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:42:28.37 ID:PQNxi7J60

そう言って出て行く杏子
いつの間にかその後をQBが付いて来ていた


杏子「よう、QB」

QB「わかったかい?」

杏子「ああ、QBの予想通りだったよ」
533 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:42:59.42 ID:PQNxi7J60

QB「で、また見滝原に行くのかい?」

杏子「当然だろ。もうほむらは怖くない」

杏子「あのヒヨッコ、ぶっ潰してやるよ」

QB「ほむらはそれで納得いくのかい?」

杏子「アタシはアタシのやりたいようにやる」

杏子「それを邪魔するヤツはぶっ潰す」

杏子「それだけさ」


不敵な笑みを浮かべながら杏子は喧騒の街へと消えていった



                 ――――――第十一部 完
534 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:43:49.01 ID:PQNxi7J60

第十二部 


恭介の病室の前、さやかがノックをしたが返事がない


さやか「恭介、入るよ」


ドアを開ける
しかし、そこは無人の部屋


さやか「え、恭介?」

看護師「あら?」
535 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:44:20.63 ID:PQNxi7J60

後ろを通りかかった看護師が声をかけてきた


看護師「上条さんなら昨日退院したわよ」

看護師「リハビリの経過も順調だったから、予定が前倒しになって」

さやか「そうなんですか……」
536 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:44:49.72 ID:PQNxi7J60

さやかは外へ出た
そこで待っていたまどかとあすみに声をかける


さやか「お待たせ……」
537 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:46:12.04 ID:PQNxi7J60

低いトーン
何かあったのだ、とまどかはすぐわかった


まどか「どうしたの?」
538 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:46:49.27 ID:PQNxi7J60

さやか「恭介、昨日退院したんだってさ。私、一言も聞いてないよ」

まどか「そうなんだ……きっと嬉しすぎて言うのを忘れてただけだよ」

さやか「うん、そうだよね」

あすみ「さやねえは上条さんの自宅の場所は知ってるの?」
539 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:47:36.44 ID:PQNxi7J60

さやか「うん、知ってるよ?」

あすみ「ならパトロールのついでに行ってみない?」

さやか「……そうだね、行くだけ行ってみようかな」


     ・
     ・
     ・
540 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:48:13.01 ID:PQNxi7J60

(マミの部屋)


マミ「ねえ、暁美さん、今でも佐倉さんを仲間にしたいと思ってる?」

ほむら「ええ、思っているわ」

マミ「そう……あすみちゃんは?」

ほむら「…………」
541 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:48:50.79 ID:PQNxi7J60

ほむらはこのループは失敗かも、と思い始めていた

初めこそ上手くいっていた
マミは自分の問題を乗り越えてくれた
しかし、そのために過剰にこのループに期待し過ぎたのかもしれない

さやかが契約し、そこから少しずつ狂い始めた
あすみが現れさやかとの仲がこじれた
そして、杏子とのことで更に関係は悪化の一途をたどっている

このまま自分が折れずにいるのがいいのか
それとも折れてあすみを受け入れるか……
542 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:49:16.60 ID:PQNxi7J60

今回のループで初めて現れた魔法少女―――神名あすみ


私はあすみを疑っている
「自分の能力を知ったQBが呼び寄せた少女かもしれない」と思っている
しかし、推測の域を出ないのも確かだった
543 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:49:56.46 ID:PQNxi7J60

あすみが白だったら最後までいかないとわからない
しかし、白が確定するのを待ってたら遅すぎる
あすみが黒だったら事件が起こった時わかる
しかし、起こってからでは遅すぎる

普通なら難しい選択だろう
しかし、私には「次のループに行く」という手段がある
今回は白黒を見届けて次のループに行けばいい
あすみを受け入れなければ、あすみが白だったのか黒だったのかはっきりしない
だから今回は受け入れる
それが今の私にできるベストな選択―――
544 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:50:26.85 ID:PQNxi7J60

たとえ繰り返すことになっても次につながるヒントを探りたい


ほむら(私は何度でも繰り返す……)

ほむら(私たちの幸せな未来はまだお預けかもね、まどか)
545 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:51:02.58 ID:PQNxi7J60

マミ「暁美さん?」

ほむら「私は……あすみを受け入れるわ」


マミを見据えながら言うのだった



     ・
     ・
     ・
546 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:51:47.87 ID:PQNxi7J60

その頃、さやかたちは恭介の自宅の前まで来ていた
響いてくるヴァイオリンの音
さやかは思い出していた、屋上の『アヴェ・マリア』を
あの時、二人は確かに繋がっていた

でも今は距離を感じる
目の前の厚い門構え
その脇のインターホン
それを押せばまた繋がれるのだろうか……
547 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:52:39.71 ID:PQNxi7J60

さやか「…………」

あすみ「どうしたの?」

さやか「やっぱりいいや」

まどか「え、でも」

杏子「会いもしないで帰るのかい?今日一日追いかけまわしてたくせに」

さやか「え?」
548 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:53:32.71 ID:PQNxi7J60

いつの間にかまどかの後ろに杏子が立っていた


さやか「お前は……」

杏子「この家の坊やだよね?アンタが治したってのは」

さやか「だったら何よ?」
549 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:54:08.46 ID:PQNxi7J60

杏子「まったく、たった一度の奇跡をくだらねえことに使い潰しやがって」

さやか「お前なんかに何がわかる!」

杏子「この前も言っただろ、魔法ってのはね、徹頭徹尾自分だけの望みを叶えるもんなんだってさ」

杏子「他人のために使ったところでロクなことにならないのさ」

杏子「巴マミはそんなことも教えてくれなかったのかい?」
550 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:54:34.72 ID:PQNxi7J60

そう言うと、つかつかとさやかの方に向かってきた
さやかの目の前――手を伸ばせば届く距離
腰をかがめ、下からさやかの顔を覗きこむ
551 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:55:04.76 ID:PQNxi7J60

杏子「惚れた男をモノにするならもっと冴えた手があるじゃない」

杏子「せっかく手に入れた魔法でさあ」

さやか「聞きたくない!」


耳を塞ぐさやか
構わず続ける杏子
552 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:55:34.98 ID:PQNxi7J60

杏子「今すぐ乗り込んでいって、坊やの手も足も二度と使えないぐらいに潰してやりな」

杏子「そうすれば今度こそ坊やはアンタのもんだ……身も心も全部ね」

杏子「気が引けるってんならアタシが代わりに引き受けてもいいんだよ?同じ魔法少女のよしみだ、お安い御用さ」


下卑た薄笑いを浮かべる
553 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:56:01.52 ID:PQNxi7J60

さやか「絶対に……」

さやか「お前だけは絶対に許さない……今度こそ必ず……!」


ギリッと唇を噛みしめるさやか
それを見て、へっと笑う杏子


杏子「場所、変えようか?ここじゃ人目につきそうだ」



     ・
     ・
     ・
554 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:56:31.97 ID:PQNxi7J60

(マミの部屋)


マミ「あとは美樹さんが佐倉さんを許してくれるかどうかね」

ほむら「話せばわかってくれるわ、きっとね」

マミ「ええ、でも今の状況じゃ聞く耳を持ってくれないでしょうね」
555 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:57:04.57 ID:PQNxi7J60

さやかはマミとのテレパシーの交信すら拒否していた


マミ「今、どうしているのかしら……」


その時、あすみからテレパシーが入った
556 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:57:32.28 ID:PQNxi7J60

マミ「え、あすみちゃん?今どこなの?」


あすみから話を聞きながらほむらに目配せする


マミ「……歩道橋の上ね、すぐ向かうわ」

マミ「暁美さん!」

ほむら「ええ、急ぐわよ」


     ・
     ・
     ・
557 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:57:59.87 ID:PQNxi7J60

さやかたちは恭介宅近くの歩道橋の上に来ていた
歩道橋とはいえ、十分なスペースもあり、人通りも少ない


杏子「ここなら遠慮はいらないね。いっちょ派手にいこうじゃない」
558 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:58:32.44 ID:PQNxi7J60

あすみ「待って、さやねえ!」

さやか「あすみ、邪魔しないで!そもそもあすみは関係ないんだから」

杏子「二対一でもいいんだよ?もっともどうなるかはこの前証明済だけどね」

さやか「今度は……絶対に負けない!!」


さやかがソウルジェムを取り出し変身しようとする
その時――
559 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:59:14.30 ID:PQNxi7J60

ほむら「話が違うわ、杏子」


時間停止を駆使したほむらがマミと駆けつけた


ほむら「美樹さやかには手を出すな、と言ったはずよ」

杏子「あんたのやり方じゃ手温すぎるんだよ。どの道向こうはやる気だぜ」

ほむら「さやか、ソウルジェムをしまいなさい」
560 :1 [saga]:2012/12/07(金) 22:59:43.80 ID:PQNxi7J60

パァァ


さやか「あんたの指示は受けないよ、ほむら」

ほむら「さやか!」


変身するさやかに一瞬気をとられたほむら
杏子はその隙を見逃さなかった
多節棍の槍――その節の数を増やし、鎖部分を長く調整、一瞬でほむらを縛りあげた
561 :1 [saga]:2012/12/07(金) 23:00:18.99 ID:PQNxi7J60

ほむら「……くっ」

杏子「やっぱり魔法で縛っても時間停止できないんだな」

杏子「いいザマだぜ」


杏子が笑いながらほむらに近づく
そこにさやかとあすみが襲い掛かった
562 :1 [saga]:2012/12/07(金) 23:00:48.84 ID:PQNxi7J60

杏子「うぜぇ!!」


片手はほむらを縛るのに使っている
もう片方の手で槍を使い、あっさり二人をはねのけた
563 :1 [saga]:2012/12/07(金) 23:01:24.54 ID:PQNxi7J60

マミ「やっぱり……強いわね、佐倉さん」

杏子「あれからずっと一人でやってきたからね……いやでも強くなるさ」


杏子がほむらのすぐ脇に来た
槍の穂先をほむらの喉元に突きつける
564 :1 [saga]:2012/12/07(金) 23:02:38.86 ID:PQNxi7J60

さやか「こんなことして……あんた一体何がやりたいの?」


杏子「言ったろ、『一つの街に魔法少女は一人』って」

杏子「この街はマミのもんだ!お前らの入り込む余地なんてはじめっからなかったんだよ!」
565 :1 [saga]:2012/12/07(金) 23:03:09.95 ID:PQNxi7J60

杏子の目がカッと見開く


杏子「そこの銀色!
   わかったらお前も出ていきな!
   しゃしゃり出てくるんじゃないよ!」

杏子「ワルプルギスは私とマミの二人で十分さ!」
566 :1 [saga]:2012/12/07(金) 23:03:41.84 ID:PQNxi7J60

マミは杏子をじっと見ていた
三白眼――それが杏子の本気を出した時の目だということをマミは知っていた


マミ(佐倉さん、本気なのね)

マミ(私が何とか抑えないと……あの二人では太刀打ちできないわ)
567 :1 [saga]:2012/12/07(金) 23:04:09.11 ID:PQNxi7J60

マミがリボンの拘束魔法を発動しようとする


杏子「させるか!」


杏子がリボンを切り裂く
そこに再びさやかが突っ込んだ
568 :1 [saga]:2012/12/07(金) 23:04:43.29 ID:PQNxi7J60

さやか「やぁぁああっ!!」

杏子「おぅら!!」


はじき飛ばされるさやか
その衝撃でさやかのソウルジェムもはじき飛ばされた
橋の上から落ちていく青い宝石――それは一滴の涙のように零れ落ち、暗闇へと消えていった









                 ――――――第十二部 完
569 :1 [sage]:2012/12/07(金) 23:19:44.00 ID:PQNxi7J60
今日はここまでです

また明日投下予定です

一週間で全部投下は無理でしたが、あと何回かで完了です
570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/08(土) 02:08:38.10 ID:cVoAbCfLo
571 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/08(土) 07:08:45.30 ID:ZJf8xH5Vo
(・ω・`)乙  これは乙じゃなくてポニーテールなんだからね!
572 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/08(土) 08:51:27.84 ID:QJLzQGSAO
安定のさやか
573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/08(土) 09:35:58.57 ID:1oy4oew6o
さやかちゃんマジ愚か
574 : [sage]:2012/12/08(土) 21:26:58.73 ID:+U5CyHGD0
毎度のことながら、乙感謝です!

さて、では今日も投下していきます
575 : [saga]:2012/12/08(土) 21:28:10.84 ID:+U5CyHGD0

第十三部 



あすみが橋の上から身をのりだす


あすみ「あ、トラックの荷台の上に!」


さやかの本体を載せてトラックが走り去っていく


さやか「え?」
576 : [saga]:2012/12/08(土) 21:28:49.72 ID:+U5CyHGD0

さやかの目から急に生気が失われた
そのままその場に倒れこんだところをあすみが支えた


あすみ「さやねえ!」

まどか「さやかちゃん!」
577 : [saga]:2012/12/08(土) 21:29:31.71 ID:+U5CyHGD0

マミも駆け寄る


マミ「美樹さん?呼吸が……脈もない?」

QB「今のはマズいよ、杏子」


QBが姿を現した
578 : [saga]:2012/12/08(土) 21:30:05.17 ID:+U5CyHGD0

杏子「どういうことだ、オイ」


QBにガンをとばす


まどか「さやかちゃん、……ね、起きて」

まどか「嫌だよ、こんなの……さやかちゃん」
579 : [saga]:2012/12/08(土) 21:30:41.79 ID:+U5CyHGD0

QB「君たち魔法少女が身体をコントロールできるのはせいぜい100m圏内が限界だからね」

杏子「100m?何のことだ?」

ほむら「まさか……」


QBがほむらの方を向いた
580 : [saga]:2012/12/08(土) 21:31:19.66 ID:+U5CyHGD0

QB「ほむらも言っていたじゃないか、魔法少女の本体はソウルジェムだって」

QB「普段は当然肌身離さず持ち歩いてるんだから、こういう事故は滅多にあることじゃないんだけど」

QB「その様子だと、ほむらも100mの距離制限までは知らなかったみたいだね」
581 : [saga]:2012/12/08(土) 21:31:55.40 ID:+U5CyHGD0

杏子もさやかのもとへ駆け寄り自身で確かめる


杏子「コイツ、死んでるじゃねえかよ」


ここに至って事の重大さを理解した杏子
582 : [saga]:2012/12/08(土) 21:32:25.60 ID:+U5CyHGD0

ほむら「杏子、放しなさい!」


ほむらを拘束していた魔法が解除される
解放されたほむらは時間停止を駆使しながらトラックを追いかけた
583 : [saga]:2012/12/08(土) 21:32:58.65 ID:+U5CyHGD0

まどか「QB、助けてよ……さやかちゃんを死なせないで!」

QB「はあ……」


感情のないはずのQBがめんどくさそうに溜息をついた
584 : [saga]:2012/12/08(土) 21:33:34.82 ID:+U5CyHGD0

QB「まどか、そっちはさやかじゃなくて、ただの抜け殻なんだって」

まどか「え?」

QB「さやかはさっき、杏子がはじき飛ばしちゃったじゃないか」

杏子「な……何だと?」
585 : [saga]:2012/12/08(土) 21:34:18.08 ID:+U5CyHGD0

マミ「これも暁美さんの言ってた『ゾンビ化』なの?QB」

QB「そうだよ。君たちの本体はソウルジェムで肉体はゾンビみたいなものさ。100mの距離制限はそこから派生したルールと言えるね」

杏子「じゃあ、アタシがアイツを……?」

QB「うん、杏子がさやかを殺した」

QB「杏子はさやかを潰すつもりだったんだろう?狙ったとおりになったじゃないか」
586 : [saga]:2012/12/08(土) 21:34:51.57 ID:+U5CyHGD0

マミ「え?」

杏子「アタシは……そんなつもりじゃ」


バチン


杏子の頬をマミが叩いた
587 : [saga]:2012/12/08(土) 21:35:19.15 ID:+U5CyHGD0

マミ「佐倉さん……あなたは……あなたって人は……っ!」

杏子「ち、違うアタシは」

マミ「何が違うっていうの!!」


再度、平手打ち
588 : [saga]:2012/12/08(土) 21:35:49.95 ID:+U5CyHGD0

杏子「…………」

マミ「たしかに、私たちも100mの距離制限のことまでは知らなかったわ。だからこれは事故よ」

マミ「でも、あなたは超えてはいけない一線を越えてしまった」

マミ「『潰すつもりだったけど殺すつもりはなかった』
   そう言いたいんでしょうけど、潰そうという気持ちがこの事態を招いたのよ」
589 : [saga]:2012/12/08(土) 21:36:34.83 ID:+U5CyHGD0

何も言い返せない杏子
ただだまっている


まどか「ねえ」


まどかが杏子に話しかける
杏子の肩がビクッとした
590 : [saga]:2012/12/08(土) 21:37:05.84 ID:+U5CyHGD0

まどか「返してよ」

杏子「え?」

まどか「さやかちゃんを返してよ」

杏子「…………」
591 : [saga]:2012/12/08(土) 21:37:38.39 ID:+U5CyHGD0

言い終わるとまどかはさやかの抜け殻に突っ伏して嗚咽を漏らした
杏子はただそれを眺めていることしかできない
何もできない
無為に流れていく時間……
592 : [saga]:2012/12/08(土) 21:38:28.37 ID:+U5CyHGD0

耐えかねた杏子が立ち去ろうとする


マミ「逃げるの?」

杏子「……アタシにできることはない」

マミ「私と一緒にワルプルギスと戦うんじゃなかったの?」

杏子「こんなことをしたアタシとチームが組めるのか?マミは」

マミ「意外と弱いのね、佐倉さん。そんな程度の覚悟で首を突っ込んできたの?」
593 : [saga]:2012/12/08(土) 21:39:07.08 ID:+U5CyHGD0

黙り込む杏子
その時、ほむらが戻ってきた
その手に青いソウルジェムを携えて――
594 : [saga]:2012/12/08(土) 21:39:38.63 ID:+U5CyHGD0

ほむらはそれを持ち主の手にそっと置いた
さやかの目に生気が戻る


さやか「え、何?何なの?」
595 : [saga]:2012/12/08(土) 21:40:11.11 ID:+U5CyHGD0

目をパチパチしながら周りを見渡すさやか


まどか「さやかちゃん!!」

あすみ「さやねえ!」

さやか「……まどか?それに、あすみも……私は……?」
596 : [saga]:2012/12/08(土) 21:40:39.71 ID:+U5CyHGD0

あすみに支えられながらいつまでもキョトンとしているさやか
まどかが抱きつく
それを見ていたマミが杏子に言う
597 : [saga]:2012/12/08(土) 21:41:14.03 ID:+U5CyHGD0

マミ「よかったわね、人殺しにならなくて。暁美さんに感謝しなさい」

杏子「…………」

マミ「私たちはね、ワルプルギスの夜に立ち向かうために結束したの」

マミ「でも『一人で倒せないから』って無理やり結束したんじゃない、
   私たちはみんな他の人の幸せを願って結束したの」
598 : [saga]:2012/12/08(土) 21:42:01.74 ID:+U5CyHGD0

マミ「美樹さんは好きな人がいるこの街を守るため、暁美さんは鹿目さんを守るため、
   私は暁美さんと鹿目さんを、そしてこの街の人たちを今度こそ守るため……
   それぞれの覚悟を背負ってこの戦いに臨もうとしている」

マミ「他人のために魔法を使うことを佐倉さんは『甘ちゃん』だって言うかもしれない。
   でも美樹さんも暁美さんも私も魔法少女の真相を知って、それを乗り越えてきたのよ。
   そのうえで他の人のために結束して戦おうとしている」

マミ「あなたはそれでも『甘ちゃん』だって言うの?
   あなたに私たち以上の覚悟が本当にあったの?佐倉さん」
599 : [saga]:2012/12/08(土) 21:42:37.41 ID:+U5CyHGD0

うなだれる杏子


ほむら「マミ、もうそのへんにして頂戴」

マミ「そうね……ごめんなさい、言い過ぎたわ」

ほむら「杏子も私たちのこと、少しはわかったでしょう?」
600 : [saga]:2012/12/08(土) 21:43:08.29 ID:+U5CyHGD0

杏子「ああ」

ほむら「私は今でも杏子を信用してるわ。無理にとは言わないけど、ワルプルギス戦に協力してほしいの。
    考えておいて」

杏子「わかった」
601 : [saga]:2012/12/08(土) 21:43:42.04 ID:+U5CyHGD0

きびすを返し、去ろうとする杏子
背中越しに言う


杏子「……ありがとな、ほむら」

杏子「それと、すまなかったよ」


それだけ言い残し、杏子は去っていった








                 ――――――第十三部 完
602 : [saga]:2012/12/08(土) 21:45:08.20 ID:+U5CyHGD0
第十四部 



(その夜、さやかの部屋)


部屋に戻ってきたさやか
机の上にそっと青いソウルジェムを置いた
帰り際に聞いたソウルジェムの新しい秘密――
603 : [saga]:2012/12/08(土) 21:45:39.11 ID:+U5CyHGD0

さやか「ねえQB、いるんでしょう?」


窓からQBが入ってきた


QB「何か用かい?さやか」
604 : [saga]:2012/12/08(土) 21:46:14.97 ID:+U5CyHGD0

さやか「100mの距離制限の話、本当なんだね?」

QB「うん、君は覚えてないだろうけど、しばらく君は抜け殻状態になっていたんだよ。ほむらに感謝しないとね」


ほむら……そうだ、かつてソウルジェムの秘密を明かしたのもほむらだった
記憶を掘り起こす――

あの日、魔法少女の真実が明かされた日、ほむらは最初こう言っていた
605 : [saga]:2012/12/08(土) 21:47:03.21 ID:+U5CyHGD0

――――――――――――――――――――――――――――――
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 
       (ほむらの転校初日、マミの部屋1)


ほむら「重要なことは、あなたがあの二人と重大な契約を結ぼうとしているのにあなたが不都合な真実を話そうとしないことよ」

ほむら「QB、あなたが隠している魔法少女の真実、全て話してもらうわ」

ほむら「それを聞けばマミ、あなたもショックを受けるでしょうけど、あなたも聞かなければならない。
    QB自身の口からね」

   ________________________
――――――――――――――――――――――――――――――
606 : [saga]:2012/12/08(土) 21:47:32.05 ID:+U5CyHGD0

本当なら、QB自身の口から不都合な真実を全て話さなければならなかったはず
しかし、実際は――
607 : [saga]:2012/12/08(土) 21:48:33.07 ID:+U5CyHGD0

――――――――――――――――――――――――――――――
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

      (ほむらの転校初日、マミの部屋2)

QB「やっぱりね。で、君が知った『不都合な真実』というのはどういうものだったんだい?」

   ________________________
――――――――――――――――――――――――――――――
608 : [saga]:2012/12/08(土) 21:49:26.14 ID:+U5CyHGD0

あの時、QBはほむらの正体や能力を明らかにすることでほむらの動揺を誘うと同時に『これ』を狙っていたんだ

つまり、不都合な真実についてQBが自身の口から説明するとなると全て語らねばならない
それを動揺したほむらに上手くふることで、ほむらの口から説明させる
そうなれば不都合な真実が、一部はばれても全てはばれないかもしれない
609 : [saga]:2012/12/08(土) 21:50:02.44 ID:+U5CyHGD0

人の心理につけこんだQBの巧みな会話術――

実際、不都合な真実はほむらの口から語られた
距離制限のことは知らなかったほむら
それが今回、このような形で発露した


掘り起こされた記憶が次々と繋がっていく――
610 : [saga]:2012/12/08(土) 21:50:32.58 ID:+U5CyHGD0

さやか「…………」

QB「どうしたんだい?さやか」

さやか「話してよ、全部」

QB「何を?」

さやか「あなたが隠している魔法少女についての不都合な真実を」

さやか「全部……隠さずにね」
611 : [saga]:2012/12/08(土) 21:51:03.87 ID:+U5CyHGD0

さやかの体がユラリと揺れた
QBを見つめるその眼は鋭く冷たい

その視線から逃れるように、机の上に移動するQB
ソウルジェムの横にちょこん、と座った
612 : [saga]:2012/12/08(土) 21:51:36.12 ID:+U5CyHGD0

QB「本当に知りたいのかい?」

さやか「……何度も言わせないで」


QBがふうっ、と溜息をついた
613 : [saga]:2012/12/08(土) 21:52:04.96 ID:+U5CyHGD0

QB「魔法少女はね、長生きできない傾向にある」

QB「これを僕は『短命化』と呼んでいる」


QBがソウルジェムに手をのせながら説明を続ける
614 : [saga]:2012/12/08(土) 21:52:39.93 ID:+U5CyHGD0

QB「魔力ゲージのMAX値――それは充電式の電池みたいなものなんだよ。
   グリーフシードをあてればゲージは回復するけど、使い続けるとMAX値自体が下がっていく」

QB「気づかないくらい次第に少しずつ積もっていく……その結果、ソウルジェムの限界が早く訪れるようになる」

QB「それが『短命化』の正体さ」
615 : [saga]:2012/12/08(土) 21:53:11.36 ID:+U5CyHGD0

QBがソウルジェムから手を離した


QB「君には叶えたい願いがあった」

QB「それは間違いなく実現した。奇跡の代償のもとにね」


そう言うと、QBはさやかの脇を通り窓から出ていこうとした
窓際で振り返るQB
616 : [saga]:2012/12/08(土) 21:53:48.44 ID:+U5CyHGD0

QB「そうそう、このことを他の子たちに言うかはさやかの判断に任せるよ」

QB「あすみ以外は全員知らないよ。あのほむらでさえもね」

QB「大事なことなんだろう?さやかの口から伝えたらいい」


そう言うと窓から去っていった
617 : [saga]:2012/12/08(土) 21:54:27.97 ID:+U5CyHGD0

奇跡の代償――
遠くない将来訪れるであろう死の感覚がさやかを包む
それは真綿で首を絞められるような緩慢な死
618 : [saga]:2012/12/08(土) 21:55:08.00 ID:+U5CyHGD0

さやか「恭介……」


願いさえ叶えば……たとえ恭介と付き合えなくても、恭介のヴァイオリンをもう一度聴ける
私はそれだけで幸せだった

思い描いていた未来
ささやかな少女の幸せ
それはもう遠い世界……
619 : [saga]:2012/12/08(土) 21:55:46.71 ID:+U5CyHGD0

さやか「私は……私は……」


『魔法ってのはね、徹頭徹尾自分のためだけに使うもんなんだよ』

『他人のために使ったところでロクなことにならないのさ』


杏子の声が頭の中に響く
620 : [saga]:2012/12/08(土) 21:56:31.03 ID:+U5CyHGD0

さやか「遅い、もう遅いんだよ……」


立っていられない
ひざから崩れおちた
涙さえでない
さやかはただ、その場にいつまでもうずくまっていた



――――――

――――

――
621 : [saga]:2012/12/08(土) 21:57:25.75 ID:+U5CyHGD0

(次の日、学校)


屋上で話し合うマミとほむらとまどか


マミ「そう、今日は美樹さんはお休みなのね」

マミ「無理もないわ、あんなことがあった後だもの」

ほむら「マミは杏子が仲間になると言ったらどうするつもりなの?」
622 : [saga]:2012/12/08(土) 21:58:03.58 ID:+U5CyHGD0

マミ「私は……今でも佐倉さんのことは大切なお友達だと思ってる。
   仲間になってくれるなら心強いけど……美樹さんはどう思うかしら?」

ほむら「昨日のことでさやかも杏子の本当の気持ちを知った。杏子も反省したわ。
    だから話し合う余地はあると思うの」

マミ「そう、だといいけど……」
623 : [saga]:2012/12/08(土) 21:58:51.56 ID:+U5CyHGD0

ほむら「それにしてもQB、やっぱりまだ魔法少女の真実を全て話してなかったのね」

マミ「QBが話してくれていれば昨日みたいにはならなかったかもしれないわね」

まどか「QBはどうしてこんな酷いことをするの?」

ほむら「あいつは酷いとさえ思ってない。人間の価値観が通用しない生き物だから」

ほむら「何もかも奇跡の正等な対価だ、と言い張るだけよ」

まどか「そんなの全然釣り合ってないよ」
624 : [saga]:2012/12/08(土) 21:59:31.41 ID:+U5CyHGD0

ほむら「上条君のケガを治す……それも奇跡であることに違いはないわ。不可能を可能にしたんだから」

ほむら「奇跡はね、本当なら人の命でさえ贖えるものじゃないのよ。それを売って歩いてるのがあいつ」

ほむら「魔法少女になるということは、悪魔と契約を結ぶということよ。そのことを忘れないで」

まどか「うん……」


     ・
     ・
     ・
625 : [saga]:2012/12/08(土) 22:00:11.39 ID:+U5CyHGD0

(その頃、さやかの部屋)


カーテンを閉め切ってずっとベットに横になっているさやか
虚ろに天井を見つめている


『魔法少女はね、長生きできない傾向にある』


さやかの頭の中で何度も繰り返されるQBの言葉
626 : [saga]:2012/12/08(土) 22:00:39.98 ID:+U5CyHGD0

『大事なことなんだろう?さやかの口から伝えたらいい』


さやか「そんなこと、他の人に言えるわけない」


一人抱え込むさやか
627 : [saga]:2012/12/08(土) 22:01:09.26 ID:+U5CyHGD0

さやか「いや、一人いる……短命化を知っている子が――」


あすみだけはこのことを知っている
こんな重いものを背負っても魔法少女として街を守り、さやかを庇ってくれた
628 : [saga]:2012/12/08(土) 22:03:22.92 ID:+U5CyHGD0

さやか「あすみはどうして――」

杏子『話がある、ちょっと面を貸してくれ』


突然聞こえてきた杏子からのテレパシー
さやかがカーテンを開ける
上には今にも降り出しそうな雲
下に杏子がいた
629 : [saga]:2012/12/08(土) 22:03:51.87 ID:+U5CyHGD0

さやか『今じゃなきゃダメなの?』

杏子『頼む、少しだけでいいんだ』


着替えて杏子のところへ向かうさやか
630 : [saga]:2012/12/08(土) 22:04:17.92 ID:+U5CyHGD0

杏子「ついてきてくれ」


そう言うと杏子は黙って歩きだした
さやかも黙ってついていく
631 : [saga]:2012/12/08(土) 22:04:56.67 ID:+U5CyHGD0

着いた先は、かつて教会だった場所
庭先には赤いアネモネがひっそりと咲いていた
壁があちこち破れている建物
黒ずんだ十字架
埃まみれの彫像
教会としては久しく使われていないことがすぐわかった
632 : [saga]:2012/12/08(土) 22:05:50.03 ID:+U5CyHGD0

さやか「こんなところまで連れてきて、何の用なの?」

杏子「……悪かったよ、アタシが間違ってた」

さやか「昨日のこと?」

杏子「それだけじゃない、アタシはあんたたちの覚悟を知らなかった。そのうえ、あんたたち程の覚悟もないのに思い込みであんたを潰そうとした」

杏子「その結果、昨日のことが起こった。謝って済む問題じゃないのはわかってる。それでも謝らせてくれ、頼む」
633 : [saga]:2012/12/08(土) 22:06:40.41 ID:+U5CyHGD0

さやか「全部、マミさんのためだったんでしょ?わかってるよ」

杏子「ああ、でもだからといって許されることじゃない」

さやか「ほむらがさ、『杏子には杏子の考えがある』んだって言ってたけど、やっとわかったよ。それと根はいい子だってね」
634 : [saga]:2012/12/08(土) 22:07:11.88 ID:+U5CyHGD0

さやか「すれ違っちゃったけど、杏子、あんたの考えは間違いじゃない。今ならわかるよ」

さやか「……ちょっと気付くのが遅かったけどね」

さやか「だからさ、もういい……もう、いいんだよ」
635 : [saga]:2012/12/08(土) 22:07:41.50 ID:+U5CyHGD0

そう言うとさやかは少しだけ笑った
しかし、杏子にはそれが泣いているように見えた
636 : [saga]:2012/12/08(土) 22:08:23.53 ID:+U5CyHGD0

杏子「……さやか?」

さやか「ごめん、もう行くね」

杏子「あ、おい!」


今の杏子には走り去るさやかを追うことができなかった


杏子「さやか……」


降り始めた冷たい雨が、孤高に咲く赤い花をいつまでも濡らしていた







                 ――――――第十四部 完
637 : [sage]:2012/12/08(土) 22:11:04.91 ID:+U5CyHGD0
今日は以上です
また明日も投下予定です
638 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/08(土) 22:11:25.76 ID:VdtJYk6po
(゚д゚ )乙 これは乙じゃなくてポニーテールなんたらかんたら
639 : [sage]:2012/12/09(日) 20:47:44.55 ID:z2QNrFKi0
ポニテ乙きゃわわっすな

では、本日も投下していきます
640 : [saga]:2012/12/09(日) 20:49:16.29 ID:z2QNrFKi0

第十五部 


あすみ「お待たせ、さやねえ」


あの後、さやかはあすみに連絡を入れた
そして、パトロールを名目にして呼び出したのだった


さやか「ごめんね、あすみだってパトロールがあったのに呼び出しちゃって」

あすみ「大丈夫だよ。じゃあ、行こうか」
641 : [saga]:2012/12/09(日) 20:50:01.83 ID:z2QNrFKi0

二人で歩き出す
ソウルジェムの輝きを手がかりに反応を探る
青く輝くさやかのソウルジェム――これに手を置きながらあの悪魔はこう言っていた


QB「魔法少女はね、長生きできない傾向にある。これを僕は『短命化』と呼んでいる」

QB「君には叶えたい望みがあった。それは間違いなく実現したじゃないか。奇跡の代償のもとにね」
642 : [saga]:2012/12/09(日) 20:50:28.66 ID:z2QNrFKi0

さやか(…………)ギリッ


思わずソウルジェムを握る手に力が入る
643 : [saga]:2012/12/09(日) 20:51:07.84 ID:z2QNrFKi0

あすみ「さやねえ?」

さやか「あすみはさ、知ってるんだよね、魔法少女の真実を」

さやか「QBが魔法少女の短命化について話した時言ってたんだ、『あすみ以外は知らないよ』って」
644 : [saga]:2012/12/09(日) 20:51:38.58 ID:z2QNrFKi0

あすみ「うん、それだけじゃない、他にも知ってるよ」

さやか「もしかして全部知ってるの?」

あすみ「ゾンビ化と魔女化、それに短命化だよね。さやねえも全部知ってるんだね」

さやか「うん……あすみはそれを全部知ったうえで契約したの?」

あすみ「そうだよ。契約しないと生きられない状況に追い込まれて……仕方なくね」
645 : [saga]:2012/12/09(日) 20:52:07.24 ID:z2QNrFKi0

無意識のうちにあすみは心臓をおさえていた


あすみ(……ゆいちゃん)
646 : [saga]:2012/12/09(日) 20:52:48.67 ID:z2QNrFKi0

――――――――――――――――――――――――――――――
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 
          (あすみの回想)


あすみ「ゆいちゃん……」

ゆい「この魔法はね、あすみちゃんが魔法少女にならなければ発動しない、
   でも、もしもあすみちゃんが魔法少女になることがあったら魔力を強めるのを手伝ってくれる、そんな魔法だよ」

ゆい「じゃあ、いくよ」

あすみ「ぐっ、……ぁぁぁぁああああ゛あ゛!」


     ・
     ・
     ・
647 : [saga]:2012/12/09(日) 20:53:48.20 ID:z2QNrFKi0

ゆい「終わったよ」

ゆい「これであすみちゃんは強い魔法を使えるようになるけど、使う度にあなたの寿命が減っていくから気をつけてね」

あすみ「えっ、どういうこと?」

ゆい「私の能力であなたの寿命を魔法のためのエネルギーとして使えるように変換したの」

ゆい「強い魔法を使えば使うほど加速度的に寿命を減らしていく、
   たとえ私が死んでもあなた自身の力で働き続けてあなたの寿命を奪っていく――そんな呪いのループ」

あすみ「呪い?なんでゆいちゃんが私に?」
648 : [saga]:2012/12/09(日) 20:54:33.87 ID:z2QNrFKi0

明かされる真相、そして――


ゆい「あすみちゃん、私、わかったんだよ。
   奇跡ってのはタダじゃない、希望を祈ればそれと同じ分だけ絶望が撒き散らされる、
   そうやって差し引きゼロにして世の中のバランスは成り立ってるんだって」

ゆい「だからね、私は希望をもっちゃいけない、幸せになっちゃいけないんだ」

ゆい「今の私にとってはね、あすみちゃんは唯一の親友、残された最後の希望なんだ」

ゆい「だから……壊すの。あすみちゃんならわかってくれるよね?」


あすみの方に向かって手を伸ばしたゆい
ソウルジェムが砕け散り、その手はあすみに届くことはなかった


   ________________________
――――――――――――――――――――――――――――――
649 : [saga]:2012/12/09(日) 20:55:03.63 ID:z2QNrFKi0

心臓の痛みに耐えかねて、あすみはその場にうずくまった


さやか「あすみ?」


さやかが心配そうに覗き込む
650 : [saga]:2012/12/09(日) 20:55:42.32 ID:z2QNrFKi0

あすみ「……私が契約したのはね、大切な人から裏切られたからなんだ」

さやか「え?」

あすみ「辛くて苦しくて……全てを呪ったよ。全てを滅茶苦茶にしたいって思ったこともあるよ。
    今でも思い出すと息ができなくなる……それこそソウルジェムが真っ黒になっちゃうんじゃないかって程にね」

あすみ「それでも私は、人との関係を断ち切れなかった……生き続けるのにね、どうしても必要だったんだ、人とのつながりが」
651 : [saga]:2012/12/09(日) 20:56:48.44 ID:z2QNrFKi0

さやか「その人と、何があったの?」

あすみ「……今はまだ言えない。いつか言える時がきたら真っ先にさやねえに聞いて欲しいな……いいかな?」

さやか「わかったよ……約束する」


さやかがあすみの手をギュッと握った
652 : [saga]:2012/12/09(日) 20:57:29.97 ID:z2QNrFKi0

さやか「でも、あすみは怖くないの?魔女化したり長生きできなかったりするんだよ?そんな重いものを背負わされて平気なの?」

あすみ「私は人とつながれてるから……だから大丈夫だよ」

あすみ「さやねえともつながっていたいよ。もしさやねえの抱えてる荷物が重すぎるなら私が支えてあげる……だから一緒にいよう」

さやか「あすみ……」
653 : [saga]:2012/12/09(日) 20:58:07.63 ID:z2QNrFKi0

私たちは重すぎるものを背負ってしまった
一人では抱えきれないほどに
だからこそ支えあうんだ

つらい時、人は一人になりたがる
でも、違う
つらい時こそ、他の人とつながっていないといけないんだ
654 : [saga]:2012/12/09(日) 20:58:43.79 ID:z2QNrFKi0

さやか「うん、一緒にいよう……ずっとね」


あすみを抱きしめるさやか


さやか「そのためにも、まずはワルプルギスを倒さないとだね」

あすみ「そうだね」
655 : [saga]:2012/12/09(日) 20:59:12.47 ID:z2QNrFKi0

さやか(この子の覚悟は本物だった……)


さやかは、あすみとワルプルギスの話をした時のことを思い出した
656 : [saga]:2012/12/09(日) 20:59:46.30 ID:z2QNrFKi0

――――――――――――――――――――――――――――――
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 
          (さやかの回想)


あすみ「私はね、魔法少女は街の人たちを守るべき存在だって思ってるんだ。私たちのこの力はそのためのものだって。
    だから私もさやねえたちと一緒にこの街を守りたい」

さやか「ホントに?死ぬかもしれないんだよ?」

あすみ「魔法少女をやってればいつ死んでもおかしくないよ。私はその覚悟でやってるから……大丈夫だよ」


   ________________________
――――――――――――――――――――――――――――――
657 : [saga]:2012/12/09(日) 21:00:36.38 ID:z2QNrFKi0

さやかはあの時、実は少し心配していた
あすみがあまりにもあっさり了承してくれたので、本当に覚悟があるのかどうかわからなかったのだ
658 : [saga]:2012/12/09(日) 21:01:06.76 ID:z2QNrFKi0

さやか(この子の覚悟は私たち以上だった……だって真実を全部知ってたんだもん)

さやか(こんな重いものを背負って……)


抱きしめた小さなあすみの体は温かかった
濡れたあすみの頬をさやかはそっと拭ってあげた
659 : [saga]:2012/12/09(日) 21:01:35.90 ID:z2QNrFKi0

さやか「パトロールに行かなきゃね」

あすみ「うん」


     ・
     ・
     ・
660 : [saga]:2012/12/09(日) 21:02:18.09 ID:z2QNrFKi0

(その夜、まどかの部屋)


まどか「さやかちゃん、今どうしてるんだろう……」

QB「まどか、入っていいかい?」


窓の外から声がした
窓を開け、QBを招き入れる
ベッドの上の棚に置かれたたくさんのぬいぐるみ
QBはその間に腰を落ち着けた
661 : [saga]:2012/12/09(日) 21:02:55.06 ID:z2QNrFKi0

QB「君も僕のことを恨んでいるのかな?」

まどか「あなたを恨んだらさやかちゃんたちを元に戻してくれるの?」

QB「無理だ、それは僕の力の及ぶところではない」


まどかが一つ、溜息をついた
662 : [saga]:2012/12/09(日) 21:03:43.54 ID:z2QNrFKi0

まどか「ねえ、いつかほむらちゃんが言ってたこと……私の素質は桁違いだっていう話、あれは本当なの?」

QB「本当だよ。君は途方もない魔法少女になれるよ。この世界で最強のね」

QB「君が秘めている潜在能力は、理論的にはありえない規模のものだ。君が力を開放すれば、奇跡を起こすどころか宇宙の法則を捻じ曲げることだって可能だろう」

QB「まどか、君が望むなら君は万能の神にだってなれるかもしれないよ」
663 : [saga]:2012/12/09(日) 21:04:17.06 ID:z2QNrFKi0

まどか「私があなたと契約したらさやかちゃんたちの体を元に戻せる?」

QB「その程度、造作もないね」

QB「その願いは君にとって魂を差し出すに足るものかい?」
664 : [saga]:2012/12/09(日) 21:04:49.14 ID:z2QNrFKi0

まどか「……私が契約して魔女になったら世界を滅ぼしちゃうんでしょ?」

QB「そうだね、十日もあれば滅ぼしてしまうだろうね」

まどか「それを知ってて契約すると思うの?騙してまで契約しようとして……何でQBはそんな酷いことをするの?」

QB「勘違いしないでほしいんだが、僕らは何も人類に対して悪意をもっているわけじゃない。全てはこの宇宙の寿命を延ばすためなんだ」

QB「まどか、君はエントロピーっていう言葉を知ってるかい?」
665 : [saga]:2012/12/09(日) 21:05:20.98 ID:z2QNrFKi0

宇宙のエネルギー問題、インキュベーターと人類が、共に歩んできた歴史……それらを、時に映像を交えながら説明していくQB
まどかには少し難しい話だった

「QBがエネルギー問題を解決するために少女たちを消耗品のように利用してきた」
それが、まどかが抱いたQBの話への印象だった
666 : [saga]:2012/12/09(日) 21:05:53.02 ID:z2QNrFKi0

QB「僕たちはあくまで君たちの合意を前提に契約しているんだよ? それだけでも充分に良心的なはずなんだが」

まどか「みんな騙されてただけじゃないっ!!」

QB「騙すという行為自体、僕たちには理解できない」

QB「認識の相違から生じた判断ミスを後悔する時、何故か人間は、他者を憎悪するんだよね」
667 : [saga]:2012/12/09(日) 21:06:30.46 ID:z2QNrFKi0

まどか「あなたの言ってること、ついていけない。全然納得できない」


『アイツは酷いとさえ思っていない。人間の価値観が通用しない生き物だから』

『何もかも奇跡の正等な対価だ、と言い張るだけよ』


――ほむらの言葉を思い出す
668 : [saga]:2012/12/09(日) 21:07:13.43 ID:z2QNrFKi0

まどか「……やっぱりあなた、私たちの敵なんだね」

QB「これでも弁解に来たつもりだったんだよ? 君たちの犠牲が、どれだけ素晴らしい物をもたらすか、理解して貰いたかったんだが、どうやら無理みたいだね」

まどか「当たり前でしょ?」

QB「まどか、君が気にしているのは魔女化だろう?今の君ならワルプルギスを余裕で倒せるだろう。だから、その後すぐにソウルジェムが限界を迎えることもない」

QB「本当の限界がきて魔女化する前にソウルジェムを砕けば問題ないじゃないか」
669 : [saga]:2012/12/09(日) 21:07:51.62 ID:z2QNrFKi0

まどか「そうしたらあなたはエネルギーを回収できなくなるんだよ?それなのに何で?」


まどかがQBの言葉に疑いを向ける
QBが自分に不利なことを自分から言うはずがないのだ


QB「そうだね、そうなったら僕の仕事は失敗したことになるね。
   でもね、君に契約してもらわないと何も始まらないんだよ」
670 : [saga]:2012/12/09(日) 21:08:17.50 ID:z2QNrFKi0

それは、裏を返せば「契約さえさせれば勝算はある」とQBがふんでいることを意味する
そして、まどかはそれを「ソウルジェムを自ら砕くことは難しい」と解釈した
671 : [saga]:2012/12/09(日) 21:08:49.56 ID:z2QNrFKi0

――――――――――――――――――――――――――――――
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 
        (まどかの回想)


ほむら「あるループ……私と魔法少女になったまどかの二人で挑んだけど、私たちは敗れて限界を迎えようとしていた。
    私はもうどうでもよくなっていたわ。
    だから、このまま二人で魔女化してまどかと一緒に世界を呪うのも悪くないって思った」

ほむら「その時、まどかが取っておいた最後のグリーフシードを私のソウルジェムにあててこう言ったの、
    『ほむらちゃんは過去に戻れるんだよね?QBに騙される前のバカな私を助けてあげてくれないかな?』」

ほむら「私はまどかを必ず救うと約束してまどかのソウルジェムを打ち砕いた」


   ________________________
――――――――――――――――――――――――――――――
672 : [saga]:2012/12/09(日) 21:09:24.57 ID:z2QNrFKi0

もしかしたら、自分で砕くだけの余力がすでになかっただけかもしれない
では、もし余力があったとして、本当に自分で砕けるだろうか?


まどか(…………)
673 : [saga]:2012/12/09(日) 21:10:05.08 ID:z2QNrFKi0

まどかの様子をじっと見ているQB


QB(素質の高さと心の強さは比例しない。今まで、何人も自分のソウルジェムを砕こうとした魔法少女を見てきたよ。
   でも、実行できたのはほんの一握りだ)

QB(まどかは素質の高さ以外は普通の少女だ。君に本当にそれができるのかい?)
674 : [saga]:2012/12/09(日) 21:10:33.76 ID:z2QNrFKi0

枕に顔を突っ伏し、動かなくなったまどか
それを見て満足したのか、QBは音もなく立ち去った

一人取り残されたまどか
さまざまな想いが頭の中をぐるぐるとまわる
675 : [saga]:2012/12/09(日) 21:11:06.10 ID:z2QNrFKi0

歩道橋の上から落ちていく青いソウルジェム
突然、生気を失ったさやかの目
だらんと動かなくなった体……

たまたまトラックの荷台の上に載ったからよかった
しかし、「そのまま路上に落ちていたら」「その上をトラックが通りすぎていたら」
……震えがとまらない
ましてや「自分で砕く」なんて……
676 : [saga]:2012/12/09(日) 21:12:34.41 ID:z2QNrFKi0

まどか「……やっぱりできないよ、契約」

まどか「でもそうするとさやかちゃんは……」


ベッドのうえで座りながら壁にもたれかかった


まどか「さやかちゃん……」


まどかは弱い自分を呪うのだった








                 ――――――第十五部 完
677 : [saga]:2012/12/09(日) 21:13:27.13 ID:z2QNrFKi0

第十六部 


(次の日、朝)


さやかが登校してくるのを待っているほむらたち
昨日は結局さやかは学校に姿を現さなかった
678 : [saga]:2012/12/09(日) 21:14:00.15 ID:z2QNrFKi0

ほむら(今日は来るかしら?)


まどか『ほむらちゃん』


仁美がいるので、念のためテレパシーでまどかはほむらと会話をする
679 : [saga]:2012/12/09(日) 21:14:31.04 ID:z2QNrFKi0

まどか『今日、さやかちゃんが来たら伝えたいことがあるんだ』

ほむら『そう、ちょうど私もさやかと話をしたいと思っていたの。放課後、時間を空けてもらえないか頼んでみるわ』

まどか『じゃあ、私も放課後に話をするね』
680 : [saga]:2012/12/09(日) 21:15:21.42 ID:z2QNrFKi0

しばらく待っているとさやかがやって来た
昨日あすみと話して気が楽になったさやか
表情はいつも通りだ
胸をなでおろすほむら
681 : [saga]:2012/12/09(日) 21:15:47.25 ID:z2QNrFKi0

ほむら「おはよう、今日は大丈夫なの?」

さやか「うん、心配させちゃってごめんね」

仁美「昨日はどうかしたんですの?」

さやか「ちょっとばかり風邪っぽくてね。もう大丈夫」
682 : [saga]:2012/12/09(日) 21:16:18.09 ID:z2QNrFKi0

まどかはずっとうつむいている


さやか「まどか?」

まどか「え?」

さやか「遅刻しちゃうよ、行こっか」

まどか「うん……」
683 : [saga]:2012/12/09(日) 21:17:02.96 ID:z2QNrFKi0

歩き出す四人
ほむらがさやかにテレパシーを送る


ほむら『さやか、私はあすみを仲間として受け入れることにしたわ』

さやか『うん』

ほむら『あすみにもワルプルギス戦に参加してほしい。今度私からも正式にお願いしてみるわ』

さやか『わかった』
684 : [saga]:2012/12/09(日) 21:17:53.46 ID:z2QNrFKi0

ほむら『それと、杏子のことで話がしたいの。今日の放課後、時間はある?』

さやか『今のところ、空いてるよ』

ほむら『そう、じゃあ空けておいて』

ほむら『近いうちに、ワルプルギス戦のための作戦会議も開かないといけない……
    今はつらいと思うけど、みんながついているわ。
    一緒にワルプルギス戦を乗り越えましょう』

さやか『そうだね。ワルプルギスの夜さえ乗り越えれば……』

ほむら『それを乗り越えて、みんなで明るい未来を迎えましょう。あなたも、私もね』

さやか『……うん』
685 : [saga]:2012/12/09(日) 21:18:24.35 ID:z2QNrFKi0

さやか(明るい未来、か)


仁美「あら……上条君、退院なさったんですの?」

さやか「え?」


仁美の視線を追うさやか
その先には杖をつきながら登校する恭介の姿――



     ・
     ・
     ・
686 : [saga]:2012/12/09(日) 21:19:02.89 ID:z2QNrFKi0

(学校)


みんなに囲まれている恭介


中沢「上条、もうケガはいいのかよ?」

上条「ああ、家にこもってたんじゃリハビリにならないからね。来週までに松葉杖なしで歩くのが目標なんだ」


その光景を少し離れたところから眺めているさやかたち
687 : [saga]:2012/12/09(日) 21:19:33.27 ID:z2QNrFKi0

ほむら「よかったわね、上条君」

さやか「うん」

ほむら「さやかもいってきたら?まだ声をかけてないんでしょう?」

さやか「……私はいいよ」


そう言ってさやかは教室を出ていった
それを見ていた仁美も教室を出ていくのだった



     ・
     ・
     ・
688 : [saga]:2012/12/09(日) 21:20:09.87 ID:z2QNrFKi0

(放課後)

さやかは仁美に呼び出された


仁美『大事な相談事があります、さやかさんにも関わることです』


稽古の時間を削っての相談事
しかも自分にも関わることと聞いてさやかには断れなかった
ほむらには一言、「遅れる」と言っておいた
689 : [saga]:2012/12/09(日) 21:20:45.65 ID:z2QNrFKi0

さやか「それで、話って何?」

仁美「恋の相談ですわ」

さやか「え?」


意外な相談事だった
普段はそんなことはおくびにも出さない仁美
690 : [saga]:2012/12/09(日) 21:21:37.04 ID:z2QNrFKi0

仁美「私、前からさやかさんたちに秘密にしてきたことがあるんです」


若干の間
さやかは自分の心臓の音が早くなっているのを感じた
691 : [saga]:2012/12/09(日) 21:22:03.81 ID:z2QNrFKi0

仁美「ずっと前から……私……上条恭介君のこと、お慕いしてましたの」

さやか「そ、そうなんだ」


動揺を隠せないさやか
692 : [saga]:2012/12/09(日) 21:22:35.71 ID:z2QNrFKi0

さやか「あはは……まさか仁美がねえ……あ、なーんだ、恭介の奴、隅に置けないなあ」

仁美「さやかさんは、上条君とは幼馴染でしたわね」

さやか「あーまあ、その。腐れ縁って言うか何て言うか」

仁美「本当にそれだけ?」
693 : [saga]:2012/12/09(日) 21:23:01.63 ID:z2QNrFKi0

まっすぐさやかを見つめている仁美
さやかのすべてを見透かすような瞳
694 : [saga]:2012/12/09(日) 21:23:39.21 ID:z2QNrFKi0

仁美「私、決めたんですの。もう自分に嘘はつかないって」

仁美「あなたはどうですか?さやかさん。あなた自身の本当の気持ちと向き合えますか?」

さやか「私は……」


それ以上、言葉を紡げないさやか
695 : [saga]:2012/12/09(日) 21:24:11.54 ID:z2QNrFKi0

さやか(私の本当の気持ち……)


そんなの、言えるはずない
だって、私はもう……恭介と長くいることはできない
恭介を幸せにできない、悲しませてしまう……
私に自分の気持ちを伝える資格はない
696 : [saga]:2012/12/09(日) 21:24:39.34 ID:z2QNrFKi0

仁美「あなたは私の大切なお友達ですわ。だから、抜け駆けも横取りするようなこともしたくないんですの」

仁美「上条君のことを見つめていた時間は、私よりさやかさんの方が上ですわ。だから、あなたには私の先を越す権利があるべきです」

さやか「仁美……」
697 : [saga]:2012/12/09(日) 21:25:14.12 ID:z2QNrFKi0

仁美「私、明日の放課後に上条君に告白します」

仁美 「丸一日だけお待ちしますわ。さやかさんは後悔なさらないよう決めてください。上条君に気持ちを伝えるべきかどうか」


そう言うと仁美は立ち上がり一礼した
去っていく仁美をさやかは呆然と見ていた


     ・
     ・
     ・
698 : [saga]:2012/12/09(日) 21:25:48.11 ID:z2QNrFKi0

ほむら「遅いわね、さやか」


ほむら、まどか、マミの三人でさやかを待っていた


マミ「鹿目さんも美樹さんに何か伝えたいことがあるのよね?」

まどか「はい、私、契約しないって決めたのでそれをさやかちゃんに伝えようと思って……」

マミ「それは美樹さんもわかってると思うけど?」
699 : [saga]:2012/12/09(日) 21:26:20.55 ID:z2QNrFKi0

まどか「そうなんですけど……違うというか……」

ほむら「あ、さやか、遅かったわね」


姿を現したさやか
今朝と様子が違うのがすぐわかった
700 : [saga]:2012/12/09(日) 21:26:46.86 ID:z2QNrFKi0

まどか「さやかちゃん……」

さやか「ごめん、やっぱり私には無理だったみたい」

まどか「え?」


そう言うとさやかはかけ出した
701 : [saga]:2012/12/09(日) 21:27:22.79 ID:z2QNrFKi0

まどか「さやかちゃん!」

ほむら「マミ、私は杏子と合流してあの子を追うわ!まどかをお願い!」

マミ「わかったわ!」


ほむらが追う
追いかけながら思い出していた――
702 : [saga]:2012/12/09(日) 21:28:03.81 ID:z2QNrFKi0

思い詰めた顔をしたさやか
以前にも何度かその顔を見てきた
その度に私はさやかに干渉し、説得しようとした
しかし、ことごとく反発を招いただけだった
703 : [saga]:2012/12/09(日) 21:28:30.53 ID:z2QNrFKi0

今回のループでも、さやかが契約しようとした時、私はそれを止めようとした
もしマミが私を拘束しなかったら、私はさやかを説得しようとしてまた反発を招いていただろう
ああいう顔をしているさやかに必要なのは言葉ではなく時間なのだ
704 : [saga]:2012/12/09(日) 21:28:59.48 ID:z2QNrFKi0

ほむら「私はさやかのことを全然知らなかったのね」


今更ながら気付く


ほむら「遅い……いつも遅すぎなのよ、私は」
705 : [saga]:2012/12/09(日) 21:29:36.61 ID:z2QNrFKi0

『不器用だな、アンタ』


いつかの杏子のセリフを思い出した


ほむら「そう、そうかもしれない……」
706 : [saga]:2012/12/09(日) 21:30:10.70 ID:z2QNrFKi0

ほむらは杏子にテレパシーを送った


ほむら『今、出てこられる?』

杏子『ああ、何かあったのか?』

ほむら『ええ、さやかが……』


     ・
     ・
     ・
707 : [saga]:2012/12/09(日) 21:30:42.30 ID:z2QNrFKi0

さやかとあすみが二人で歩いている
さやかのソウルジェムが反応を示す


あすみ「この感じは使い魔だね。倒すよね?」

さやか「うん……」
708 : [saga]:2012/12/09(日) 21:31:12.13 ID:z2QNrFKi0

二人で回転するマネキンに向かっていく
その様子を遠くから見ている杏子とほむら
背の高いビルの屋上
欄干の外のでっぱったへりに腰掛けている杏子
ほむらは内側から欄干に手をかけながら立っている
風に髪をなびかせている二人――
709 : [saga]:2012/12/09(日) 21:31:38.84 ID:z2QNrFKi0

ほむら(やっぱりあすみと一緒なのね、さやか)


言葉より時間が必要と判断したほむらはさやかを遠くから見守る、という選択をした
杏子もそれに同意したのだった
710 : [saga]:2012/12/09(日) 21:32:15.63 ID:z2QNrFKi0

ほむら「いいの?使い魔と戦っているのに何も言わなくて」

杏子「ああ、思い出したんだ、初めの気持ちってやつを」

杏子「グリーフシードならアタシが稼ぐ」
711 : [saga]:2012/12/09(日) 21:32:54.92 ID:z2QNrFKi0

そう言うと杏子はほむらの方を向いた
力強い、凛とした目、固く結んだ口……
その顔には静かな決意があらわれていた
712 : [saga]:2012/12/09(日) 21:33:39.89 ID:z2QNrFKi0

杏子「ほむらには礼を言わなきゃな」

ほむら「何のこと?」

杏子「ほむらはこんなアタシのことを信じて仲間に誘ってくれた……
   それに庇ってくれたらしいじゃん、さやかに『杏子には杏子の考えがある』って言って」

杏子「だから……ありがとな」
713 : [saga]:2012/12/09(日) 21:34:10.52 ID:z2QNrFKi0

ほむら「たいしたことじゃないわ」

杏子「でも救われたよ……感謝してる」


杏子が穏やかな顔になった
714 : [saga]:2012/12/09(日) 21:35:06.68 ID:z2QNrFKi0

杏子「それとさ、アタシからお願いしたいんだ。アタシを仲間にしてくれって」

ほむら「私からもお願いしたいわ……さやか次第だけどね」

杏子「ああ、昨日さやかに謝ったんだよ。親父の教会につれていってさ」

ほむら「教会?何でそんなところに?」
715 : [saga]:2012/12/09(日) 21:36:17.13 ID:z2QNrFKi0

杏子「正確には親父の教会だったところ、なんだけどさ、アタシにとっては思い出の場所なんだよ。
   家族で過ごした、アタシが契約した場所」

杏子「もっとも一家崩壊してからは一度も行ってなかった。嫌な思い出しかなかったからね」
716 : [saga]:2012/12/09(日) 21:36:55.53 ID:z2QNrFKi0

ほむら「それとさやかのことに何の関係が?」

杏子「ちょっとばかり長い話になる」

杏子「食うかい?」


杏子はチョコ菓子を差し出した


ほむら「ええ、いただくわ」


ほむらがそれを受け取ると杏子は話し出した
717 : [saga]:2012/12/09(日) 21:38:56.50 ID:z2QNrFKi0

杏子「アタシの親父は正直で真面目な人だった。『バカ』がつくくらいにね。
   どうしたら迷える人々を救えるのか、毎日そればかり考えてたよ」

杏子「それが高じて教義にはないこまで信者に説教するようになった。
   親父の言ってることは間違ってはいなかった。でも、いくら親父が正しいことを言っても、誰も親父の話を聞こうとしなかった」

杏子「だからQBに頼んだんだよ。みんなが親父の話を、真面目に聞いてくれますように、って」
718 : [saga]:2012/12/09(日) 21:39:54.87 ID:z2QNrFKi0

杏子「翌朝には親父の教会は押しかける人でごった返していた。これで親父も報われるって思った」

杏子「でもさ、いくら親父の説法が正しくったって、それで魔女が退治できるわけじゃない。
   だからそこはアタシの出番だって、バカみたいに意気込んでいたよ 。アタシと親父で、表と裏からこの世界を救うんだって」
719 : [saga]:2012/12/09(日) 21:41:20.64 ID:z2QNrFKi0

杏子「……でもね、ある時カラクリが親父にバレた。
   親父はブチ切れたよ。娘のアタシを、人の心を惑わす魔女だって罵った」

杏子「親父は次第に壊れていった」

杏子「最後は家族を道連れに無理心中さ。アタシ一人を、置き去りにしてね」
720 : [saga]:2012/12/09(日) 21:42:23.37 ID:z2QNrFKi0

杏子「アタシの祈りが、家族を壊しちまったんだ。他人の都合を考えず、勝手な願いごとをして破滅を導いた」

杏子「その時心に誓ったんだよ。もう二度と他人のために魔法を使ったりしない、この力は、全て自分のためだけに使い切るって」
721 : [saga]:2012/12/09(日) 21:43:23.53 ID:z2QNrFKi0

杏子「奇跡ってのはタダじゃないんだ、 希望を祈れば、それと同じ分だけの絶望が撒き散らされる、そうやって差し引きをゼロにして、世の中のバランスは成り立ってるんだ」

杏子「そうわかった気になってやさぐれていた。その日その日を面白おかしく生きられればいい、そんな刹那的な生き方をしていた」

杏子「そんな時、マミと出会ったのさ」
722 : [saga]:2012/12/09(日) 21:44:32.83 ID:z2QNrFKi0

杏子「マミはそんなアタシを優しく包んでくれた。その時思ったんだ、まだやり直せるかもしれないって」

杏子「マミとの生活は居心地が良かったよ。でもさ、アタシが強くなっていくにしたがってグリーフシード不足が深刻化していった」

杏子「このままじゃ二人とも共倒れだってのはわかってた。アタシのせいでマミが死ぬのは許せなかった。また破滅の道をたどるのは嫌だった」
723 : [saga]:2012/12/09(日) 21:47:00.55 ID:z2QNrFKi0

杏子「だからアタシは出て行った。魔法少女は一人で生きて一人で死んでいく、そういう宿命なんだって思った」

杏子「いや……本当は孤独に逃げただけなのかもしれない。弱い自分を守るために」

杏子「結局、問題から逃げて何一つ乗り越えられてなんていなかったのさ。そんなアタシにやり直せるはずなんてなかったんだよ」
724 : [saga]:2012/12/09(日) 21:47:27.75 ID:z2QNrFKi0

一呼吸おく杏子
物憂げな顔を見つめるほむら
725 : [saga]:2012/12/09(日) 21:48:39.97 ID:z2QNrFKi0

ほむら「私たちにつっかかってきたのも……」

杏子「ああ、魔法少女同士でつるむとロクなことにならないと思っていたからね。
   結局、破滅の道を選ぶか、別れるか、どっちかしかないってさ」

杏子「アンタもさやかも、アタシと同じ間違いから始まった。他人のために祈りを捧げちまった。
   そしてアンタたちは今も祈り続けている。アタシと違ってね」
726 : [saga]:2012/12/09(日) 21:50:16.82 ID:z2QNrFKi0

杏子「このままいけば、アンタたちもいつか昔の私のような破滅を迎える、それにマミを巻き込みたくないって思ったんだ」

杏子「けどさ、それはアタシの勝手な願いごとだったんだ。当のマミ自身がそんなこと望んじゃいなかった」

杏子「アタシはまた間違えた。半端な覚悟でアンタたちを潰そうとした。同じ過ちを繰る返すところだった」
727 : [saga]:2012/12/09(日) 21:51:31.34 ID:z2QNrFKi0

杏子はほむらから視線をはずし、さやかのいる方向へ顔を向けた


杏子「さやかは危なっかしいヤツだ。もしかしたら破滅への道をたどるかもしれない」

杏子「でもさ、アイツをみてたら思い出したんだ、最初の気持ちってやつを。
   他人のために祈りを捧げてこの世界を裏から救うんだって意気込んでたあの時の気持ちを、さ」

杏子「その時の気持ちを確かめようと思ってさやかを教会に連れて行ったんだ」
728 : [saga]:2012/12/09(日) 21:52:20.71 ID:z2QNrFKi0

杏子「もしかしたら、この道は間違いかもしれない……でも人間って間違えるもんだろ?」

杏子「だからさ、あいつはあいつの道をただ走ればいい。間違ったらアタシが正してやる。道がないならアタシが切り拓いてやる。
   アイツが『間違えた』って気付いた時にアタシはアイツのそばにいてやりたい。そう決めたんだ」
729 : [saga]:2012/12/09(日) 21:52:47.74 ID:z2QNrFKi0

ほむら「……そう」


穏やかにほむらは言った


ほむら(この子なりの贖罪のつもりなのね)


ほむらもまた、さやかのいる方角へ視線を向けた
730 : [saga]:2012/12/09(日) 21:53:17.22 ID:z2QNrFKi0

ほむら「それで、さやかには許してもらえたの?」

杏子「どうかな?一言謝っただけになっちまったしな」

ほむら「……やっぱり不器用ね、あなた」


あきれた顔で言うほむら
へへへっと笑う杏子
731 : [saga]:2012/12/09(日) 21:54:02.34 ID:z2QNrFKi0

杏子「アンタに言われたくないぜ、ほむら」

ほむら「そうね……そうかもしれないわね」

杏子「おっ」


気付いた杏子が立ち上がった
732 : [saga]:2012/12/09(日) 21:54:47.34 ID:z2QNrFKi0

杏子「終わったみたいだな……うちらも解散するか」

ほむら「そうね」


その後も、二人はしばらくの間、戦い終わったさやかを遠くから黙って見つめていた







                 ――――――第十六部 完
733 : [sage]:2012/12/09(日) 21:56:44.97 ID:z2QNrFKi0
本日は以上です

次の投下で最後になります
734 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/10(月) 07:13:49.67 ID:jKOUhPpNo
735 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/10(月) 18:43:41.94 ID:aBCZjdyBo
736 : [sage]:2012/12/10(月) 21:04:05.56 ID:61TGvSq/0
では、本日も淡々と投下していきます
737 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/10(月) 21:05:05.92 ID:yQHs8Ajvo
最終回か
738 : [saga]:2012/12/10(月) 21:05:08.69 ID:61TGvSq/0

第十七部 


降り出した雨
パトロールを終え、あすみと別れたさやか
一人濡れながら歩いている

自宅マンションの前まで来た
人影が二つ――マミとまどかだった
まどかがさやかに近づいてきた
739 : [saga]:2012/12/10(月) 21:05:49.04 ID:61TGvSq/0

さやか「こんな遅くまで、二人して待っていたの?」

まどか「……うん」

マミ「美樹さん、つらい時はみんなに頼っていいのよ」

マミ「あすみちゃんだけじゃない、みんなが美樹さんを心配してるわ」

さやか「はい……すみません、心配させちゃって」

さやか「まどか、ごめんね……それと、ありがと」
740 : [saga]:2012/12/10(月) 21:06:20.88 ID:61TGvSq/0

まどかは下を向いてそれに応えようとしない
何か言いたげな様子だった


さやか「……まどか?」


呼びかけられ、意を決したようにさやかを見るまどか
741 : [saga]:2012/12/10(月) 21:07:08.28 ID:61TGvSq/0

まどか「さやかちゃん、あのね……私、決めたんだ、契約はしないって」

さやか「知ってるよ」

まどか「本当はね……さやかちゃんの体を元に戻してあげたかったんだ」

さやか「え?」

まどか「でも、契約して魔女になったら世界を滅ぼしちゃうから……」
742 : [saga]:2012/12/10(月) 21:08:04.65 ID:61TGvSq/0

まどか「最初、ほむらちゃんに言われた時はピンと来なかったの。あまりに現実離れした話だったから」

まどか「だからさやかちゃんとあすみちゃんが杏子ちゃんと戦った時、私、契約しそうになってた」

まどか「でも、みんなが傷ついて苦しんで悩んでる姿を見て実感したんだ」

まどか「ああ、これは現実なんだって」

まどか「QBには魔女化する前にソウルジェムを砕けばいいって言われたけど……
    私、弱い子なの……だから自分でソウルジェムを砕く自信がないの。
    私が契約したら本当に世界を滅ぼしちゃうかもしれない」
743 : [saga]:2012/12/10(月) 21:08:43.14 ID:61TGvSq/0

まどか「だから、契約できない」

まどか「だからさやかちゃんの体を元に戻してあげられない」

まどか「ごめんね……さやかちゃんがそのことで苦しんでる姿を目の当たりにしてるのに……
    私、何もできない、さやかちゃんの力になってあげられない」


まどかの目に涙がうっすらと浮かぶ
744 : [saga]:2012/12/10(月) 21:09:15.11 ID:61TGvSq/0

まどか「みんなが他の人のために契約して戦って苦しんでる……私は契約すれば何でもできるくせに、一人だけ契約しない」

まどか「私……私はみんなとつながる資格がない」

まどか「本当はさやかちゃんに『私が支えてあげる』って言いたいのに言えない」

まどか「ごめんね、弱い子でごめん……」
745 : [saga]:2012/12/10(月) 21:09:46.00 ID:61TGvSq/0

まどかが肩を震わせている
さやかは何も言わずにその脇を通りすぎた


マミ「……美樹さん?」

さやか「疲れてるから……ごめんなさい」


さやかは振り返ることなく、その場を後にした
まどかの号泣――それを降りしきる雨がかき消した


     ・
     ・
     ・
746 : [saga]:2012/12/10(月) 21:10:36.66 ID:61TGvSq/0

一人、エレベーターに乗るさやか
壁に寄りかかる


さやか「私はまどかに期待していたの?」

さやか「そんなはずは……」


いや、心のどこかでは期待していたのかもしれない
747 : [saga]:2012/12/10(月) 21:11:07.00 ID:61TGvSq/0

『魔法少女は条理を覆す存在……だとしたら、もしかしたら、まどかなら……』


自分の中に潜んでいた気持ちに気付く
気付きたくなかった、自分の本当の醜い気持ち……
748 : [saga]:2012/12/10(月) 21:11:35.96 ID:61TGvSq/0

「さやかちゃんの体を元に戻してあげられないの」


気付いたそばから打ち砕かれた期待
さやかの不幸が確定した瞬間だった
749 : [saga]:2012/12/10(月) 21:12:18.25 ID:61TGvSq/0

部屋に戻ったさやか
ドアを静かに閉める
静寂が孤独を運んでくる――
750 : [saga]:2012/12/10(月) 21:13:08.27 ID:61TGvSq/0

さやかは、孤独に逃げた
せっかくまどかが、マミさんが、みんなが寄ってきてくれたのに……


あすみ「さやねえともつながっていたいな。もし、さやねえの抱えている荷物が重すぎるなら私が支えてあげる。
    ……だから一緒にいよう」


つらい時、人は一人になりたがる
でも本当はつらい時こそ他の人とつながっていないといけない――
751 : [saga]:2012/12/10(月) 21:13:40.15 ID:61TGvSq/0

あすみと話してそう思った
気が楽になった
でも乗り越えたわけではなかった
わかったつもりになっただけだった
同じ境遇の仲間がいて安心しただけだったんだ
752 : [saga]:2012/12/10(月) 21:14:16.44 ID:61TGvSq/0

さやか「やっぱすぐには無理だよね……つらいものはつらいんだよ」


いつか自分が杏子に言ったセリフを思い出す


『そうやって孤独に逃げて、弱い自分を守ってきたんでしょ』


さやか「弱いのは私だったよ、杏子」
753 : [saga]:2012/12/10(月) 21:14:53.47 ID:61TGvSq/0

椅子に座り、もたれかかった
顔を手で覆い、目をつぶった


『明日、仁美は恭介に告白するだろうか?』
『本当に私の体はもう死んでるの?』
『もう、私は長く生きられないの?』


次々と疑問が沸いてくる
その重さに耐えきれず、さやかはそっと目を開いた
視界に、指先に刻まれた契約の証がうつった
754 : [saga]:2012/12/10(月) 21:15:23.62 ID:61TGvSq/0

さやか「本当に、私は契約したの?」


信じたくない
本当に私は……私の体は……
755 : [saga]:2012/12/10(月) 21:15:57.14 ID:61TGvSq/0

さやかは体を起こすと机の引き出しからカッターナイフを取り出した
指先につきたて、証を削る
痛くはなかった
魔力で回復し、消えたか確かめる
756 : [saga]:2012/12/10(月) 21:16:31.74 ID:61TGvSq/0

さやか「……消えない」


グサッ


ナイフをグリグリと左手首にめり込ませる
机の上のソウルジェムが赤く染まる
傷を魔法で治す
そして、まためり込ませる
また治す
757 : [saga]:2012/12/10(月) 21:16:58.75 ID:61TGvSq/0

さやか「……消えない……消えない」


繰り返す
何度も何度も
孤独をまぎらわせるように
命を確かめるように

やがて何も考えられなくなるまで、一晩中繰り返すのだった



――――――

――――

――
758 : [saga]:2012/12/10(月) 21:17:40.35 ID:61TGvSq/0

(次の日、学校)



さやかの席は空席だった


まどか(さやかちゃん……)


さやかの机をじっと見ているまどかに仁美が声をかけてきた
759 : [saga]:2012/12/10(月) 21:18:24.52 ID:61TGvSq/0

仁美「今日はさやかさん、お休みですのね……まどかさんは何かご存知ですか?」


首を横に振るまどか


仁美「そうですか……」

仁美「でも私は、卑怯だと言われても、今日やると決めていましたので」
760 : [saga]:2012/12/10(月) 21:19:00.23 ID:61TGvSq/0

そう言うと仁美は恭介の方へ向かっていった
恭介と一緒に帰る約束を取り付ける仁美
まどかには何もできなかった


     ・
     ・
     ・
761 : [saga]:2012/12/10(月) 21:19:44.08 ID:61TGvSq/0

放課後、マミとほむらの三人で帰るまどか


まどか「私があんなこと言ったのがいけなかったのかな?」

マミ「鹿目さん、あまり自分を追いつめてはダメよ。あなたの決意は誰にも責められるものではないわ」

まどか「私は、みんなと……さやかちゃんとつながっている資格がない。
    それなのに仲間顔して戦いから帰ってきたさやかちゃんを迎えるなんてできなかったんです」

まどか「さやかちゃんは私を許してくれなかった。私、どうしたら……」
762 : [saga]:2012/12/10(月) 21:20:32.27 ID:61TGvSq/0

マミ「大丈夫よ。鹿目さんの想いはきっと届くわ」

ほむら「まどか、あなたは優しすぎる。あなたのせいなんかじゃないわ。さやかが自分で乗り越えないといけない問題なのよ。
    私たちはただ見守るしかない」

マミ「これからどうなるかわからないけど、どんなことがあっても私たちは美樹さんを見捨てたりしない。
   あの子の居場所は私たちが確保するわ。いつでも戻ってこられるようにね」

マミ「それも大切なことなのよ」

まどか「……はい」
763 : [saga]:2012/12/10(月) 21:21:03.54 ID:61TGvSq/0

ほむら「今日も、もしかしたらさやかはパトロールにでかけるかもしれない。私たちはさやかが無茶をしないように遠くから見張るわ」

まどか「私も連れていって」

ほむら「そうね」

マミ「じゃあ、佐倉さんもいれて、今日は四人で見張りね」



     ・
     ・
     ・
764 : [saga]:2012/12/10(月) 21:21:51.94 ID:61TGvSq/0

同じ頃、約束どおり、仁美は恭介と帰っていた
松葉杖の恭介を気遣い、助ける仁美


恭介「ありがとう、志筑さん。でもさあ、志筑さんって帰る方角はこっちなんだっけ?今まで見かけたことないような……」

仁美「ええ、本当は全然逆方向ですわ」

恭介「え、じゃあ今日はどうして?」

仁美「上条君にお話したいことがありますの」
765 : [saga]:2012/12/10(月) 21:22:22.44 ID:61TGvSq/0

ベンチに腰を下ろす二人
二人が談笑を始めた
その様子をさやかは木陰に隠れながらずっと見ていた
766 : [saga]:2012/12/10(月) 21:22:50.65 ID:61TGvSq/0

やがて二人が歩き出す
恭介の家の方に向かって
それを見届けると、さやかはあすみに連絡を入れた
今のさやかにとっては全てを知る唯一の相手であり、理解者であった
767 : [saga]:2012/12/10(月) 21:23:27.79 ID:61TGvSq/0

あすみ「今日もパトロール?」

さやか「うん、いいかな?なんか、じっとしてらんなくてさ」

あすみ「うん、すぐ行くよ」


やり場のない怒り、鬱憤――それをぶつけられる相手を求めてさやかはパトロールに出かけた
768 : [saga]:2012/12/10(月) 21:23:56.82 ID:61TGvSq/0

あすみと合流するとさやかはすぐにその相手を見つけた
考えるより先に飛び込んでいく
769 : [saga]:2012/12/10(月) 21:24:31.67 ID:61TGvSq/0

飛び込んだ先――そこは白と黒の世界
切り立った崖の上に赤い太陽の塔のようなものがあった
それに向かって祈りを捧げている魔女
その背中目がけてさやかが斬りかかっていく
魔女の背中から樹木が生え、さやかの行く手を阻む
770 : [saga]:2012/12/10(月) 21:25:07.16 ID:61TGvSq/0

あすみ「さやねえ!」

さやか「邪魔しないで!!一人でやれるから!」


さらに突っ込もうとするさやか
そのさやか目掛けて、たくさんの枝が触手のように伸びてきた
勢いにのって突っ込んできたさやかの腹をえぐる
さやかは、それをサーベルで切り取ると腹からズボッと抜き出した
痛みの消し方は、昨日覚えた
771 : [saga]:2012/12/10(月) 21:25:39.27 ID:61TGvSq/0

さやか「やり方さえ分かっちゃえば簡単なもんだね」


笑い声をたてながらさやかは突っ込んでいく
魔女の攻撃も勢いを増す
何度も弾き飛ばされては腹を、手を、足をえぐられるさやか
じきに動けなくなった
そこにあすみが駆け寄る
772 : [saga]:2012/12/10(月) 21:26:19.97 ID:61TGvSq/0

あすみ「待ってて、今……」


あすみが十字架をかざす
すると二人を光が包んだ


さやか「うっ……」
773 : [saga]:2012/12/10(月) 21:26:56.61 ID:61TGvSq/0

杏子「チッ」


遠くから見守っている杏子が舌打ちした


杏子「あのバカ、手こずりやがって」

マミ「危ないんじゃない?」

杏子「今、あすみが回復魔法をかけてるが、時間がかかりすぎだな」

ほむら「行くの?」

杏子「ああ、見てらんねーよ」
774 : [saga]:2012/12/10(月) 21:27:34.04 ID:61TGvSq/0

そう言うと杏子は手すりを飛び越えていった
マミもそれに続く


ほむら「私たちも行きましょう」


まどかの手をとって、ほむらも向かう
775 : [saga]:2012/12/10(月) 21:28:31.87 ID:61TGvSq/0

あすみの張った結界が、魔女の攻撃を防いでいる
そこに到着した杏子たち


杏子に向かってくる触手
槍を回転させ、さばく
マミが援護する
できた隙間を縫うようにして移動する
776 : [saga]:2012/12/10(月) 21:29:03.51 ID:61TGvSq/0
右側で爆発――少し遅れてきたほむらだった
魔女の意識がほむらへ向く
杏子は空中を蹴って左へ回り込む
空中で体を捻りながら投擲態勢に入る
777 : [saga]:2012/12/10(月) 21:29:37.79 ID:61TGvSq/0

マミ「ティロ・フィナーレ!!」


空いた真ん中にマミが打ち込んだ


杏子「トドメだぁ!」
778 : [saga]:2012/12/10(月) 21:30:05.62 ID:61TGvSq/0

間髪入れず、杏子が槍を投げ込んだ
魔女の頭部を槍が貫くと同時に再度、爆発が起こった
炎上する魔女
消えていく結界――
779 : [saga]:2012/12/10(月) 21:30:35.88 ID:61TGvSq/0

転がっていたグリーフシードを拾う杏子
すぐにさやかのもとへ駆け寄る


杏子「無茶しやがって……」


そう言いながら、さやかのグリーフシードを浄化する
780 : [saga]:2012/12/10(月) 21:31:11.27 ID:61TGvSq/0

さやか「杏子……助けてくれたの?」


目を覚ましたさやか
ぼんやりした眼差しで杏子を見ている
杏子が優しい眼差しを返す
ふと、まわりを見渡すさやか
781 : [saga]:2012/12/10(月) 21:31:58.08 ID:61TGvSq/0

さやか「みんな……私……」

まどか「さやかちゃん!!」


まどかがさやかに抱きつく
782 : [saga]:2012/12/10(月) 21:32:29.67 ID:61TGvSq/0

さやか「まどか……」

さやか「……何でみんなそんな優しいかなあ?」

マミ「美樹さん、あなたはみんなの大切なお友達よ。そして、かけがえのない仲間なの」

さやか「でも、私にそんな価値なんて……」
783 : [saga]:2012/12/10(月) 21:33:18.59 ID:61TGvSq/0

杏子「さやか、私はアンタに救われたんだ」

さやか「え?」

杏子「アンタを見て、私は大切なものを思い出せた。そして、今はそれが私の支えになってる。それがあれば、私はもう一度人生をやり直せる」

杏子「さやかのおかげで、私は前に進めるようになった……刹那的な生き方をしてきた私に、明日の価値を教えてくれた」

杏子「さやかがつらい思いをしてるなら、今度は私がアンタを支えてやる。だから一緒に信じよう、明るい明日ってやつを」

さやか「……うん」
784 : [saga]:2012/12/10(月) 21:33:48.94 ID:61TGvSq/0

上手く声にならない
それでも返事をしようとして、起き上がろうするさやかを杏子が支えた
785 : [saga]:2012/12/10(月) 21:34:20.87 ID:61TGvSq/0

ほむら「あすみ」

あすみ「え?」

ほむら「あなたがいなかったらさやかはどうなっていたかわからない……助かったわ、ありがとう」


返事をするかわりにあすみはにっこりと笑った
786 : [saga]:2012/12/10(月) 21:34:50.70 ID:61TGvSq/0

ほむら「あすみ、私はあなたを仲間として迎え入れたい」

ほむら「今更かもしれないけど……6人目の仲間になってほしいの。一緒にワルプルギスの夜と戦ってくれる?」

マミ「私からもお願いするわ」

あすみを見ながら頷く杏子――
787 : [saga]:2012/12/10(月) 21:35:43.58 ID:61TGvSq/0

みんなをひとしきり見渡すと、あすみも小さく頷いた
新しい仲間を加え、結束する少女たち


ほむら「ワルプルギス戦まであと3日――」

あすみ「もうすぐだね」


皆、頷く
788 : [saga]:2012/12/10(月) 21:36:30.54 ID:61TGvSq/0

ほむら「必ず掴んでみせるわ……この手で、明日を」


少女たちは明日を夢見る
ささやかな幸せを願いながら
それぞれの祈りを捧げる
789 : [saga]:2012/12/10(月) 21:37:04.47 ID:61TGvSq/0

『ワルプルギスの夜さえ』


それさえ乗り越えれば、明日を紡いでいける――









                 ――――――第十七部 完
790 : [saga]:2012/12/10(月) 21:37:49.62 ID:61TGvSq/0
以上、第二章「ワルプルギスの夜さえ@」でした
では、次回予告です
791 : [saga]:2012/12/10(月) 21:38:28.50 ID:61TGvSq/0

【次回予告】


神名あすみ――
希望を糧に絶望を撒く呪われた少女
魔女に最も近い魔法少女

あすみが動く時
誰もが役を演じずにはいられない
誰も気付かぬうちに舞台は始まっていた



次回、第三章「ワルプルギスの夜さえA」


魔法少女狩り、開演――
792 : [sage]:2012/12/10(月) 21:56:24.10 ID:61TGvSq/0
みなさま、おつかれさまでした
第二章完走です
くどいですが、最後にもう一度言わせてください


読んでくれた方、コメントしてくれた方、ほんとうにありがとうございます


できるだけまとめて返そうと思い、途中から一つ一つにコメを返すのはやめてしまいましたが
ほんとは今でも一つ一つ返したいくらいです
みなさん、ありがとうございました!


では、第三章、楽しみにしていてください
793 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/11(火) 00:29:33.14 ID:PymUVe2AO

あすみの華麗な裏切り?に期待
794 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/11(火) 00:42:28.24 ID:9VC0nx6ao
乙!
5人とも騙しちゃうあすみんマジ陰湿
795 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/11(火) 06:59:11.91 ID:etDPleREo
796 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/11(火) 20:02:15.87 ID:v5iKU0kKo
797 : [sage]:2012/12/31(月) 14:17:39.29 ID:r2C9RrIl0
第三章、書き終わりましたので投下していきます
まずは前置きから……
798 : [sage]:2012/12/31(月) 14:19:08.90 ID:r2C9RrIl0
第三章について


☆第三章は全9部構成です
 第二章とリンクしているので、下記該当箇所と照らし合わせながら読みすすめるのがいいと思います

  第三章第一部 → 第一章の最後と重なりつつ、第二章第三部とリンク
   〃 第二部 → 第二章第四部とリンク
   〃 第三部 →  〃 第五部〜第六部とリンク   
   〃 第四部 →  〃 第七部〜第八部  〃   
   〃 第五部 →  〃 第九部とリンク   
   〃 第六部 →  〃 第九部〜第十一部とリンク   
   〃 第七部 →  〃 第十一部〜第十四部  〃   
   〃 第八部 →  〃 第十四部〜第十五部  〃   
   〃 第九部 →  〃 第十六部〜第十七部  〃   


☆二回に分けて投下する予定です。が、残りレスがギリギリの状態です
 そのため、いつもだったら合いの手大歓迎ですが、今回に限り第三章が完全に終わってからコメしてもらえるとありがたいです
799 : [saga]:2012/12/31(月) 14:21:00.20 ID:r2C9RrIl0
          第三章「ワルプルギスの夜さえA」


第一部


少女「ぁぁぁあああ!!」


パリン


あすみ「ふう、回収完了、と」

あすみ「QB」


QBがあすみのもとへ寄ってきた

あすみ「これ、約束分ね」

QB「うん、確かに」

あすみ「そう。じゃあ、行こっか」
800 : [saga]:2012/12/31(月) 14:21:42.12 ID:r2C9RrIl0

あすみはQBと街の中を歩きだした
電気店に設置されたTVからニュースが流れている


キャスター「最近、少女たちの失踪事件が相次いで起こっている件について、続報です」


それを見てQBがあすみに言う


QB「願いの結果とはいえ、君は実にイレギュラーな魔法少女になったね」

あすみ「おかげで、あなたの仕事も捗るでしょ」

QB「そうだね」
801 : [saga]:2012/12/31(月) 14:22:19.88 ID:r2C9RrIl0

――――――――――――――――――――――――――――――
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


あすみとQBは協定関係にあった

QBは魔法少女に関する情報をあすみに提供する
そのかわりあすみは回収したエネルギーの一部を見返りとしてQBに渡す

あすみが回収するエネルギー
それは、魔法少女が絶望する時に発するエネルギー
802 : [saga]:2012/12/31(月) 14:22:53.17 ID:r2C9RrIl0

『魔法少女が希望をふりまく存在だというなら、私は魔法少女を絶望させてみせる。
 だからその分、私を生きさせてよ、QB!』


呪いをかけられたあすみは、生きるために願いを使った
魔法少女を絶望させ、その時発生するエネルギーを自らの糧にして生きながらえる
そのため、あすみの固有魔法は対魔法少女に特化した特殊な能力となった
803 : [saga]:2012/12/31(月) 14:23:20.09 ID:r2C9RrIl0

あすみの能力は次の3段階に分けられる


@、相手の記憶を抜く
A、記憶を改ざんし、相手に返す
B、Aによって絶望した魔法少女からエネルギーを回収
804 : [saga]:2012/12/31(月) 14:23:59.54 ID:r2C9RrIl0

もし何の制限もなくこれができたのなら、あすみは「対魔法少女最凶」といっても過言ではないだろう
しかし、あすみはゆいに力を与えたことで、大幅に力を減らしていた
最後にゆいが「呪いの代償」として強い魔法を使えるようにしてくれなかったら、あすみはこの魔法を使えなかったはずだ
「この魔法が使えるようになっただけいい」とあすみは思っている
とはいえ、その使用には大きな制約が課された
それは……
805 : [saga]:2012/12/31(月) 14:24:32.03 ID:r2C9RrIl0

T.@〜Bを順番通りに行う
→ @、AをとばしてBをいきなり発動することはできない

U.@、Aでは自分のソウルジェムを相手のソウルジェムにかざす必要がある
→ 相手は魔法少女でなければならない

V.Aでの改ざんには限度があり、相手の身に実際に起こったことをもとにしなければならない
   → 相手に関する知識がないと術をかけられない
806 : [saga]:2012/12/31(月) 14:25:05.30 ID:r2C9RrIl0

上記のものは定式化された制約で、契約に際しQBが課してくるものだ
そして、それ以外にもあすみが下記のように「現実的な制約」として捉えているものもある
807 : [saga]:2012/12/31(月) 14:26:08.53 ID:r2C9RrIl0

・記憶の抜き取りはピンポイント、最小限が望ましい


記憶の抜き取りが多いと、抜き取られた相手は次第に周りと話が合わなくなる
それで相手にばれて作戦が失敗しそうになる、ということが何度もあった
そのため、あすみは抜き出す記憶は最小限、「相手が絶望するポイント」をピンポイントでするようにしている
相手が一人ならまだいいが、複数いる時は、特に慎重に事を運ばなくてはいけない
@、Aの術をかけるのはBをかける数日前がせいぜい、とあすみは経験上考えている

また、「相手が絶望するポイント」をピンポイントで把握するということ、それはつまり、相手のことをよく知らないといけない、ということを意味する
Vで触れたように、現実に起こったことをもとにしないといけないので、その中から相手の「絶望ポイント」を探っていく必要がある
808 : [saga]:2012/12/31(月) 14:26:40.45 ID:r2C9RrIl0

・術の発動〜完了までには一定の時間がかかる


そのため、こそこそ隠れながら術をかけるのは現実的ではない、といえる
Uでみたように、自分のソウルジェムを相手のソウルジェムにかざす必要がある
それを姿を隠しながら一定時間やるのは無理だ、とあすみは考えている

そこで、あすみは相手に取り入り信用を得たうえ、ともに行動していく中で術をかける
とりわけもっとも多いのは、戦闘中に回復魔法をかけるふりをして術の@、Aをかけてしまうパターンである
809 : [saga]:2012/12/31(月) 14:27:24.59 ID:r2C9RrIl0

上記のことを総合的に考えると、あすみがエネルギー回収のために取るべき行動モデルは下記のようになる



 QBから情報の提供をうける
     ↓
 相手を観察しつつ、取り入っていく
     ↓
 「絶望ポイント」を押さえる
     ↓
 戦闘時などに相手に@、Aをかける
 (いけるようならBまでいってしまうこともある)
     ↓
 Bをかけて、エネルギーを回収
     ↓
 QBにその一部を渡す
810 : [saga]:2012/12/31(月) 14:27:50.68 ID:r2C9RrIl0

もちろん、例外もある
相手が一人だけの場合、簡略化することもある
しかし、呪いをかけられたあすみは作戦失敗が即命取りになりかねない
そのため、あすみは慎重に行動し可能な限り簡略化はしない
811 : [saga]:2012/12/31(月) 14:28:27.14 ID:r2C9RrIl0

あすみがQBと協定関係を結んだのも、そのあたりの事情に根ざしている
あすみにとって、魔法少女の情報は生命線といえる
情報をもとに「絶望ポイント」を押さえたり、作戦立案をしていったりする
そのため、QBがおさえている魔法少女の情報が必要不可欠なのだ
812 : [saga]:2012/12/31(月) 14:29:00.63 ID:r2C9RrIl0

そのため、この協定はあすみからQBにもちかけられたのだった
QBにとっても、下記のことが期待できるため、これはありがたい申し出だった


・取り分こそ減るものの、契約から絶望までのスピードアップが期待でき、回転率があがる

・時には、自分でソウルジェムを砕いてしまう魔法少女がいて、QBからすると「エネルギー回収失敗」となってしまうことがある
 しかし、あすみが積極的に関わってくることで成功率が上がることが期待できる
813 : [saga]:2012/12/31(月) 14:29:36.24 ID:r2C9RrIl0

元々、QBは目をつけた少女を契約をせざるを得ない精神的状況に追い込むことは得意だった
しかし、そこから先はウィークポイントで、少女任せというこころがあった
その弱点を補完できるかもしれない


QB(特に、僕が今回目をつけた少女たち相手に、あすみはうってつけだね)


QBはその確信のもと、あすみのもとにやって来たのだった



   ________________________
――――――――――――――――――――――――――――――
814 : [saga]:2012/12/31(月) 14:30:09.07 ID:r2C9RrIl0

QB「そうそう、イレギュラーで思い出したよ。あすみは見滝原という街を知っているかい?」

あすみ「うん、知ってるよ」

QB「そこにもイレギュラーな魔法少女が現れてね」

あすみ「へえ、どんな子?」

QB「僕はその子と契約した覚えがないのに、その子はすでに魔法少女だった」

あすみ「どういうこと?」
815 : [saga]:2012/12/31(月) 14:30:42.22 ID:r2C9RrIl0

QB「時間遡行の能力を持った子でね、今月の16日から来月の16日までの一ヶ月を何度も繰り返しているらしい」

あすみ「なんでそんなことを?」

QB「大切な友達を守るためさ。その友達というのがね、非常に高い素質をもった子なんだ。その友達を魔女にしたくないから契約させたくない。
   でもそれだとワルプルギスの夜を倒せない。それで何度も繰り返しているんだ」

あすみ「ワルプルギスの夜か。手ごわいね。その素質の高い子がQBの次の本命?」

QB「うん。君にとってもいい話だと思うんだけど、どうかな?」

あすみ「うん、私もその話、是非一枚噛みたいね。詳しく聞かせてよ」
816 : [saga]:2012/12/31(月) 14:31:14.85 ID:r2C9RrIl0

QBは、その日見滝原であったことを話だした

マミたち4人が出会ったこと
ほむらがマミに魔法少女の真実を暴露したこと
そして、マミが精神的に追い詰められていること

QBは映像を交えながら、詳しく話していく 
但し、ある一点を除いて
817 : [saga]:2012/12/31(月) 14:32:04.39 ID:r2C9RrIl0

QB「もしマミが暴走して他の少女三人を殺してしまうようなことになると、エネルギーが回収できなくなってしまう」

QB「そこであすみ、そうならないように君に力を貸してほしいんだ」

あすみ「なるほどね。確かに私の能力なら、そのマミっていう人から記憶を抜いて暴走しないようにすることはできるよ」

あすみ「でもね、経験上、私が記憶を抜いたり戻したりするのは、エネルギー回収の日の2〜3日前が限度だよ」

あすみ「まだ情報も少なくて作戦も立案できる状況にないし、ワルプルギス戦までそうとう時間がある」

あすみ「だから、もし今その人の暴走を抑えたいなら、その人に退場してもらうことになるだろうけど、それでもいいの?」
818 : [saga]:2012/12/31(月) 14:33:04.54 ID:r2C9RrIl0

QB「やむを得ないだろうね。できればそうならないでほしいけど」

あすみ「三人分回収できなくなるよりマシだもんね。特に鹿目まどか」

QB「そうだね。このことに関しては、君が活躍しなくてすむことを祈っているよ」

あすみ「私は万が一のための保険ってわけか。まあ、いいけど」

QB「確認だけど、手伝ってくれるっていうことでいいかい?」

あすみ「当然!四人分一気に回収できるチャンスじゃん!」

あすみ「しかも一人は素質高いらしいし。絶対絶望させてみせるよ!」
819 : [saga]:2012/12/31(月) 14:33:38.98 ID:r2C9RrIl0

あすみが不敵に笑う


QB「契約成立だね。頼みにしているよ」

あすみ「まかせて!」


あすみが動き出す
舞台は静かに幕を開けた
誰も気づかぬうちに





                  ――――――第一部 完
820 : [saga]:2012/12/31(月) 14:34:57.83 ID:r2C9RrIl0
第二部 


(その日の夕刻)

あすみはマミの部屋に向かいながら考えていた


あすみ「ねえ、QB」

QB「何だい?」

あすみ「見滝原の隣町の魔法少女について知りたいんだけど」

QB「風見野の少女はマミの昔のパートナーだよ。神ヶ原の方の少女とマミは特に面識はないね」

あすみ「じゃあ、神ヶ原の方にしよう。詳しく聞かせてくれる?」


QBから少女の「絶望ポイント」を教えてもらうあすみ
821 : [saga]:2012/12/31(月) 14:35:28.90 ID:r2C9RrIl0

あすみ「近いうちに神ヶ原にも行かなきゃね」

QB「あすみ、もうすぐだからそろそろ姿を隠した方がいいよ」


あすみが変身する
帽子に手をつっこむと中から白いヴェールを取り出した
822 : [saga]:2012/12/31(月) 14:36:10.29 ID:r2C9RrIl0

『四次元ハット』――あすみはその中に武器を収納している

『花嫁のヴェール』――これをかぶることで、姿を隠すことができる


あすみはヴェールで姿を隠した
ベランダに侵入し、外からマミの様子をうかがう
黄色いソウルジェムを手の中で転がしているマミ
しばらくすると、そのまま寝入ってしまった



――――――

――――

――
823 : [saga]:2012/12/31(月) 14:36:45.15 ID:r2C9RrIl0

次の日も姿を隠しながらマミの様子をうかがう
学校の屋上でほむらと話をしているマミ


マミ「昨日、暁美さんが言っていた言葉……私の力が必要っていうのは本当?」

ほむら「本当よ。私一人ではワルプルギスの夜に勝てないもの」

マミ「そう。なら私の力を貸してあげてもいいわ」
824 : [saga]:2012/12/31(月) 14:37:14.16 ID:r2C9RrIl0

そのかわり条件をつけるマミ
しかしそれは、ほむらにとって願ってもない条件だった
いぶかしむほむらにマミが自分の気持ちを吐露する


マミ「私は魔法少女を……街の人を守る存在をこの手で殺めてしまった」

マミ「でも、今ならまだやり直せる。私は今度こそ身近な人たちを救ってみせる。
   この手は人を殺すためにあるんじゃない、救うためにあるんだって証明してみせる……私の命をかけて」

マミ「それが叶うならどんなことだって乗り越えてみせるわ。
   たとえ体がゾンビだって構わない。
   魔女になる前に自分のソウルジェムだって砕いてみせる。
   だから……お願いだからせめてその時まであなたたちを守らせて」
825 : [saga]:2012/12/31(月) 14:37:58.56 ID:r2C9RrIl0

あすみ(どうやら乗り越えたみたいだね。保険は適用されず、か)


あすみがQBにテレパシーを送る



あすみ『乗り越えたのはいいけど、このままいくと未契約の二人はパトロールについていかないっていう流れになるかもしれないね』

QB『ついていかせた方がいいかい?』

あすみ『うん、できるだけ二人を魔法少女の世界に関わらせた方が契約できる可能性があがるよ。何とかできる?QB』

QB『やってみるよ』
826 : [saga]:2012/12/31(月) 14:38:31.35 ID:r2C9RrIl0

マミたちの会話を聞きながら、出ていくタイミングをはかるQB


ほむら「パトロールについて来る気なの?今日は魔女と戦うかもしれないのに」

マミ「自分から誘っておいてなんだけど、二人の身の安全を考えたらやめておいた方がいいかもしれないわね」

ほむら「私とマミに万が一のことがあったら二人とも確実に死ぬわよ」

QB「僕と契約しない限りね」ヌッ
827 : [saga]:2012/12/31(月) 14:39:02.96 ID:r2C9RrIl0

言葉巧みに二人がパトロールについてくるように誘導するQB


QB「ほむらにとってはそうするより手はないはずさ」


結局、あすみの思惑通り、マミたちは4人でパトロールへ向かうことになった
あすみもついていく


     ・
     ・
     ・
828 : [saga]:2012/12/31(月) 14:39:30.87 ID:r2C9RrIl0

(ゲルトルート戦)


マミ「ティロ・フィナーレ!!」


マミが魔女を倒した
それを見ていたあすみ
829 : [saga]:2012/12/31(月) 14:40:05.82 ID:r2C9RrIl0

あすみ(あれが巴マミの必殺技か。バランス型で基本能力も高いけど、必殺技を放った後は隙が多いね)

あすみ(暁美ほむらの能力、時間停止を見たかったけど見られなかった)

あすみ(テコ入れして、巴マミの一人舞台にならないようにしつつ、暁美ほむらに術を使わせるか)

あすみ(神ヶ原にも行かなきゃだし、忙しいなあ)


あすみは夜の街をかける








                 ――――――第二部 完
830 : [saga]:2012/12/31(月) 14:40:59.30 ID:r2C9RrIl0
第三部 


(別の日、神ヶ原)


パリン


あすみ「完了っと」

あすみ「QB、はい」

QB「うん」

あすみ「これで今日から私がこの街の魔法少女ってことでよろしくね」
831 : [saga]:2012/12/31(月) 14:41:29.97 ID:r2C9RrIl0

『一つの街に魔法少女は一人』

このルールに基づいて一人で行動している少女ほどあすみの毒牙にかかりやすい
神ヶ原の少女もその一人だった


あすみ「さて、じゃあ、見滝原に行かないとね。QB、4人のところに案内して」


     ・
     ・
     ・
832 : [saga]:2012/12/31(月) 14:42:08.79 ID:r2C9RrIl0

マミたちは病院の敷地内でさやかの戻りを待っていた
姿を隠しながら観察するあすみ


あすみ『さやかって人は誰かのお見舞い?』

QB『そうみたいだね』


あすみがテレパシーでQBと会話をしていると、さやかが戻ってきた
マミたちとの会話から、さやかは好きな人のお見舞いに来ていることがわかった
833 : [saga]:2012/12/31(月) 14:42:38.79 ID:r2C9RrIl0

あすみ(きっとまた病院に来るね)


QB『4人がパトロールに向かうよ』


使えそうな情報を聞き逃したくないあすみ
4人の後をつけながら会話を集中して聞く
834 : [saga]:2012/12/31(月) 14:43:07.31 ID:r2C9RrIl0

さやか「マミさんはただの使い魔でも逃さず倒すんですね。グリーフシードをおとさないのに」

マミ「使い魔だって放っておけないのよ。成長すれば魔女になるから」

さやか「んー、やっぱマミさんは正義の味方!この街の平和はマミさんが守ってるんですね!憧れちゃうなー」
835 : [saga]:2012/12/31(月) 14:43:42.10 ID:r2C9RrIl0

あすみ(あの二人は使い魔も倒すタイプか)

あすみ(正義の味方に憧れるお年頃ってわけね。特にさやかはその傾向が強そうだ)


あすみが考えをめぐらす
取り入るなら特に扱いやすそうなさやかだろう
どうやって絶望させようか……


あすみ(まだ情報が足りないな)

あすみ(暁美ほむらの能力も見てみたいし、少し積極的に動くか)



――――――

――――

――
836 : [saga]:2012/12/31(月) 14:44:14.98 ID:r2C9RrIl0

(次の日、病院敷地内)

この日もさやかは恭介のお見舞いに来た


あすみ『予想通りだね』

QB『で、どうするんだい?』


あすみが帽子からグリーフシードを取り出した
それを自分のソウルジェムにあてる
グリーフシードが孵化寸前になる
それを目の前の柱に突き刺すように張り付けた
837 : [saga]:2012/12/31(月) 14:44:44.60 ID:r2C9RrIl0

QB『それは何のグリーフシードだい?』

あすみ『マミと相性の悪い魔女の卵だよ。今回はほむらが動かざるを得ないだろうね』

QB『ほむらの時間停止の術が見たいってわけかい?』

あすみ『それが第一の目的、それともう一つ』
838 : [saga]:2012/12/31(月) 14:45:18.65 ID:r2C9RrIl0

あすみ『さやかはマミに憧れを抱いている。ほむらはこのことに危機感を持っているはず。
    だとしたら、ほむらがこの機に乗じて何かしらのアクションをとるかもしれない。
    さやかを契約させないようにね』

あすみ『その時のさやかの反応を見るのが第二の目的だね。
    はたして、マミへの憧れだけでさやかは契約できるのかどうか、それを見極める』
839 : [saga]:2012/12/31(月) 14:45:53.19 ID:r2C9RrIl0

QB『ほむらのアクション……おそらく「ゾンビ化」に関することだろうね』

あすみ『うん、魔女化の現実を見せつけるために自分が魔女になるわけにはいかないしね』

QB『ほむらのアクションの結果、さやかが「やっぱり契約しない」と言いだしたら?』

あすみ『そしたらその時考えるよ。最終的に契約させればいいんだし』
840 : [saga]:2012/12/31(月) 14:46:23.30 ID:r2C9RrIl0

何かしらのアクションをとって反応を探る
その反応を見て、いけそうなところをせめていく
――これがあすみのやり方だった
841 : [saga]:2012/12/31(月) 14:46:58.04 ID:r2C9RrIl0

QB『何かあてがあるのかい?』


あすみ『さやかは人一倍正義感が強い。自分の目の前で他人が不幸になるのは許せないはずだよ。自分の不幸以上にね。』
    
あすみ『そして、そんな彼女には好きな人がいる。連日お見舞いに来るほどにね。その好きな人は今、不幸な状況にある。』

あすみ『そのあたりからせめたらいいんじゃないかな』
842 : [saga]:2012/12/31(月) 14:47:33.49 ID:r2C9RrIl0

QB『逆にさやかがほむらから聞いた「魔法少女の真実」を乗り越えて契約してしまったら?』

あすみ『まだカードは残ってるし、私の能力があれば問題ないと思うよ』

あすみ『だからね、私はむしろ一度さやかには問題を乗り越えてもらいたいと思っているんだ』
843 : [saga]:2012/12/31(月) 14:48:24.83 ID:r2C9RrIl0

QB『どうしてだい?』

あすみ『結論から言うと、連鎖反応を狙っているからだよ』


さやか一人を契約させ、絶望させるのはさほど難しくない
しかし、あすみの最終目標は未契約者の契約及び全員を絶望させ、エネルギーを回収することだ
今回の様に相手の人数が多く、「ワルプルギスを倒す」という同じ目標を全員が共有している場合、あすみは一人一人別個に対応しない
一度全員が結束し、「これならワルプルギスを倒せる」という希望を全員がもったところを絶望の淵へと叩き落とす
そのためには一人の不幸が他の不幸を招くような構造を作りあげる必要がある
さやかが一人で勝手に契約、絶望するのはあすみにとっても都合が悪い
だから一度さやかには問題を乗り越えてもらって契約してもらいたい
844 : [saga]:2012/12/31(月) 14:49:12.81 ID:r2C9RrIl0

あすみ『人間ってね、思ったより絶望しないもんだよ』

あすみ『でもね、希望をもった人間がその希望をなくすと簡単に絶望する』

あすみ『ポイントさえ押さえちゃえばチョロいもんだよ。だから私は絶望ポイントを押さえるんだ』

あすみ『私は魔法少女を絶望させる。だからQBは契約の方を頼むね』

QB『うん、あすみのおかげで僕もだいぶ動きやすいよ』

あすみ『お、来たようだね』


さやかたちがグリーフシードの存在に気付く
マミとほむらが変身すると同時に4人はシャルロッテの結界へと取り込まれた


     ・
     ・
     ・
845 : [saga]:2012/12/31(月) 14:50:02.22 ID:r2C9RrIl0

絶好調のマミ
一人で敵を薙ぎ払ってしまう


マミ「ティロ・フィナーレ!!」


魔女にマミの必殺技がさく裂
魔女は第二形態へと移行し、マミを襲った
不意をつかれたマミは立ちつくしている
そのマミを突き飛ばすほむら
時間停止の術を駆使して魔女を倒す
しかし、その右腕は付け根から失われていた
さやかに「魔法少女の現実」をつきつけるほむら
呆然と見つめるさやか
846 : [saga]:2012/12/31(月) 14:50:33.09 ID:r2C9RrIl0

あすみ『時間停止の術はすごいね。直接見られてよかったよ』

QB『さやかの方はどうだい?』

あすみ『憧れが吹き飛んだっていう表情……やっぱりマミへの憧れだけで契約させるのは無理だったようだね』

QB『じゃあ、さっき言ったとおり好きな人への気持ちを利用する作戦にするかい?』

あすみ『そうだね。少し様子を見て、それでいけそうか判断するよ』

QB『そのあたりの判断はあすみに任せるよ』
847 : [saga]:2012/12/31(月) 14:51:03.69 ID:r2C9RrIl0

あすみ『うん、タイミングも重要だからね。あの子があれこれ考えて「やっぱり契約しない」って決心する前に契約させないと』

QB『問題を乗り越えさせたうえ契約させる……難しいね』

あすみ『完全に乗り越えさせる必要はないよ。「これから頑張れば乗り越えていける」って気にさせられれば十分。むしろそっちの方がいい』

QB『その方が後で堕としやすいってことかい?』

あすみ『そゆこと♪』

QB『わかった、やってみるよ』



――――――

――――

――
848 : [saga]:2012/12/31(月) 14:51:36.51 ID:r2C9RrIl0

(次の日、病院)

この日もさやかはお見舞いに来ていた
さやかを待つ三人
あすみも隠れて様子を見ている
そこにさやかが戻ってきた

恭介の病状を知り、ショックを隠せないさやか
力になろうとするマミに対し、ほむらは「契約するつもり?」とさやかに問い詰める
ギクシャクした雰囲気の中、パトロ−ルへと向かう
それについていくあすみとQB
849 : [saga]:2012/12/31(月) 14:52:19.94 ID:r2C9RrIl0

あすみ『QB、例の作戦いけるかもね』

QB『意外と早かったね。僕の方はいつでも大丈夫だよ』

あすみ『あの様子なら、QBが一押しすれば契約してくれると思う』

QB『それなんだけど、ゆいのことを引き合いに出そうと思うんだ。いいかい?』

あすみ『ゆいちゃんを?』

QB『うん。条件が似ているところがあるからね。ちょうどいいと思って。もちろん、あすみの話は出さないよ』

あすみ『その話、詳しく聞かせて』
850 : [saga]:2012/12/31(月) 14:53:03.39 ID:r2C9RrIl0

あすみとQBが打ち合わせをする


あすみ『うん、いいんじゃないかな、それで』

QB『あすみにそう言ってもらえると安心だね』


やがてパトロールも終わり、解散となった
あすみもQBと別れ、一人考える
851 : [saga]:2012/12/31(月) 14:53:34.64 ID:r2C9RrIl0

あすみ(そろそろ姿を現さないとだね)


さやかに取り入るためには、当然さやかの前に姿を現さなければならない


あすみ(QBに聞いたところ、今までのほむらのループの中で私が現れたことはない)
852 : [saga]:2012/12/31(月) 14:54:13.04 ID:r2C9RrIl0

――――――――――――――――――――――――――――――
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 
        (あすみの回想)


あすみ「ねえ、QB」

QB「何だい?」

あすみ「ほむらが今まで経験してきたループの中に私って出てきたのかな?」

QB「出てきてないはずだよ」

あすみ「そう言ってたの?」

QB「うん。ほむらがマミとテレパシーで新しい仲間の話をしている時があってね」
853 : [saga]:2012/12/31(月) 14:54:53.37 ID:r2C9RrIl0

あすみ「さやかもまどかも契約させない、となるとマミが戦力不足を不安に思うのも当然だものね」

QB「うん。で、その話の流れの中でほむらはこう言っていたんだ。
   『仲間にするなら信用できる人物にしたい。ループに出てきていない5人以外は仲間にしたくない』ってね」

あすみ「5人というと……」

QB「ほむら、マミ、さやか、まどか、それと杏子さ」

あすみ「そんな重要な情報をほむらが漏らしちゃうとはね」

QB「テレパシーでの会話は僕に筒抜けだということをほむらは知らないんだよ」


テレパシーはQBを介するので当然、その内容はQBに筒抜けなのだ


QB「とにかく、今までのほむらのループの中であすみが現れたことはない、ということさ」


   ________________________
――――――――――――――――――――――――――――――
854 : [saga]:2012/12/31(月) 14:56:30.86 ID:r2C9RrIl0

あすみ(今回初めて現れた私はほむらから見たらイレギュラーな存在。当然警戒されるはず)

あすみ(それでも私は彼女たちの輪の中に入っていかないといけない)

あすみ(どうしたものか……)
855 : [saga]:2012/12/31(月) 14:57:00.92 ID:r2C9RrIl0

美樹さやか
 いわゆる「直情型」で、頭で考えるより気持ちに従うタイプ
 そのうえ、正義感が強く、使い魔も倒さないと気がすまない性格


あすみ(魔法少女には向いてないだろうけど、扱いやすいから取り入りやすいタイプだね)

あすみ(さやかを利用して輪の中に入っていく)
856 : [saga]:2012/12/31(月) 14:57:30.63 ID:r2C9RrIl0

それに対し、ほむらは頭で考えて行動するタイプ
魔法少女として理にかなった行動をとろうとするので、トラブルメーカーのさやかとは何かと衝突する可能性が高い
857 : [saga]:2012/12/31(月) 14:58:02.98 ID:r2C9RrIl0

あすみ(そのあたりを利用して作戦を立てていこうかな)

あすみ(マミはいい緩衝剤、といったところだね)

あすみ(三人を利用して鹿目まどかを契約へと追い込む)
858 : [saga]:2012/12/31(月) 14:58:48.90 ID:r2C9RrIl0

あすみが描く青図面
素案は決まりつつあった


あすみ(方向は決まってきた。でも、まだ材料が足りないかな)


あすみは一晩中考えをめぐらすのだった






                       ――――――第三部 完
859 : [saga]:2012/12/31(月) 15:00:06.29 ID:r2C9RrIl0
第四部 


(次の日、病院)


この日もさやかはお見舞いに来ていた
三人のもとに戻ってきたさやか
明らかに様子がおかしい
手や袖口には血がべったりついているが、本人はそれに気づいていないようだ
860 : [saga]:2012/12/31(月) 15:00:34.56 ID:r2C9RrIl0

あすみ『QB』

QB『うん、わかってるよ』
861 : [saga]:2012/12/31(月) 15:01:02.62 ID:r2C9RrIl0

さやかをとめようとするほむらをマミがリボンで拘束した
去っていくさやか


あすみ『どうやらああやって拘束されると時間停止の術を使えないみたいだね』

QB『それがほむらの術の弱点ってわけだね』
862 : [saga]:2012/12/31(月) 15:01:33.44 ID:r2C9RrIl0

しばらくしてほむらが気づく



ほむら「今日は魔女が出やすい日よ……ハコの魔女が」



ハコの魔女の能力が精神攻撃であることを告げ、二手に分かれたほむらたち
一方、その場にとどまっているQB
863 : [saga]:2012/12/31(月) 15:02:09.47 ID:r2C9RrIl0

QB「…………」

QB「行ったよ、あすみ」


あすみが姿を現す


あすみ「ちゃんとそれぞれの居場所を把握してる?」

QB「それぞれに僕の別機をつけさせているから大丈夫だよ。どこから行く?」

あすみ「そうだね、まずは……」


あすみとQBが動きだした



     ・
     ・
     ・
864 : [saga]:2012/12/31(月) 15:02:35.77 ID:r2C9RrIl0

ほむらは街の中をかけていた
公園の方へ向かっている
そこはかつてマミたち4人で使い魔を倒したところ
そこにさやかがいる保証はない
しかし、少しでもさやかと関係のある場所を探していくよりほかに手がなかった


ほむら(お願いだから無事でいて、さやか!)
865 : [saga]:2012/12/31(月) 15:03:20.52 ID:r2C9RrIl0

ほむらの近くまできたあすみ
孵化寸前のグリーフシードを適当に投げ捨てた
水に投げられた浮きのように、左右にゆっくりゆれながら自立しようとするグリーフシード
そこから異世界がもれでる

あすみはそれに巻き込まれないように移動する
姿を隠しながら民家の屋根の上を軽やかに飛んでいく


あすみ(今、マミとまどかは志筑仁美の後をつけながらゆっくり郊外へとむかっている。そっちはしばらくは大丈夫)

あすみ(だから先にほむらがさやかと接触しないように足止めしておく。これはそのための処置)
866 : [saga]:2012/12/31(月) 15:04:15.70 ID:r2C9RrIl0

あすみ「これであの子の足止めはできたと思うけど、さやかの契約に時間がかかるかもしれない」

あすみ「もう一本いっとく?念のため」

QB「あすみに任せるよ」


あすみは別のグリーフシードを取りだし、目についた電柱めがけてそれを投げた
そしてさやかの方へ向かう



     ・
     ・
     ・
867 : [saga]:2012/12/31(月) 15:05:06.84 ID:r2C9RrIl0

よく整備された川沿いの道
少し開けたところにさやかはいた
欄干の前で座り込んでいる
868 : [saga]:2012/12/31(月) 15:05:33.66 ID:r2C9RrIl0

さやか「契約したら私もあんな体に……」

さやか「それだけじゃない、『その時』が来たら自分でソウルジェムを砕かないといけないんだ」

さやか「……わかんないよ、マミさん」

さやか「私、どうしたらいいの?恭介」
869 : [saga]:2012/12/31(月) 15:06:14.42 ID:r2C9RrIl0

さやかの様子を隠れて見ているQBとあすみ


あすみ『QB、人通りが途切れたらお願い』

QB『わかった』


人通りが途絶え、さやかの前に姿を現したQB
あすみも緊張しながら様子を見守っている
ゆいのことを引き合いに出しながら、打ち合わせ通りに話をすすめていくQB
870 : [saga]:2012/12/31(月) 15:06:48.29 ID:r2C9RrIl0

QB「特に希望に満ちた将来を思い描いていた人間がその夢を絶たれた時、人は容易に絶望しうることもね」

QB「君ならこの少女とは違う結末を迎えられるかもしれない。それなのに君は何もしようとしはしない」

QB「それで君の好きな人は本当に大丈夫なのかい?」

さやか「だまれ!!」
871 : [saga]:2012/12/31(月) 15:07:39.23 ID:r2C9RrIl0

自分の顔を手で覆うさやか
その時初めて自分の手や袖口に恭介の血がべっとりついていることに気付く


さやか「これは、恭介の?」


血だらけの手をしばし見つめていたさやか
決意したようにつぶやく


さやか「あるよ」

さやか「奇跡も魔法も、あるんだよ」



     ・
     ・
     ・
872 : [saga]:2012/12/31(月) 15:08:08.88 ID:r2C9RrIl0

さやかの契約を見届けたあすみはマミたちのもとに向かった


あすみ「今、マミの方はどうなってるの?」

QB「まだ戦いは始まってないよ。このペースでいけば間に合うはずさ」

あすみ「ハコの魔女の能力は精神攻撃だって言ってたよね」

あすみ「面白いものが見られるかもね」
873 : [saga]:2012/12/31(月) 15:08:44.40 ID:r2C9RrIl0

あすみがマミたちのところへ到着
マミとまどかが人々に囲まれていた


あすみ『あれは魔女の口付け?』


姿を隠しながらQBとテレパシーで会話する


QB『うん、ここにいる人たちは全員魔女に操られているみたいだね』
874 : [saga]:2012/12/31(月) 15:09:10.61 ID:r2C9RrIl0

あすみも素早く駆け込む
ハコの魔女の結界ができあがる
苦戦するマミ
ハコの魔女がマミを取り込む
モニターに映し出されるマミの過去
875 : [saga]:2012/12/31(月) 15:09:42.53 ID:r2C9RrIl0

あすみ『あれは……契約の場面?』

QB『そうだよ。やっぱりマミは今でもひきずっているんだね』

あすみ『ああいうのはなかなか乗り越えられるもんじゃないよ。
    本人が乗り越えたつもりでもちょっとしたきっかけでフィードバックする』

あすみ『だからこそ「絶望ポイント」たりうるんだよ』

QB『マミの絶望ポイントはあれで確定というわけだね』

あすみ『うん、それが確認できただけでも十分に来た価値があるね』
876 : [saga]:2012/12/31(月) 15:10:14.44 ID:r2C9RrIl0

やがて映像は別のシーンへと切り替わった
赤い髪の少女と口論になっている


あすみ『あの子は……』

QB『佐倉杏子。昔のマミのパートナーさ』

あすみ『ああ、あれが今は風見野にいるって子か。どんな子なの?』
877 : [saga]:2012/12/31(月) 15:10:44.28 ID:r2C9RrIl0

QBが杏子のことを話す
それを聞いて何か考え込むあすみ


QB『どうしたんだい?』

あすみ『うん、その杏子っていう子なんだけど……』


その時、バチンという大きな音がした
あすみも音がした方を見る
878 : [saga]:2012/12/31(月) 15:11:14.21 ID:r2C9RrIl0

まどか「え、さやかちゃん?」


救出されたマミ
さやかと二人で魔女とたち向かう
しかし、相性が悪く、二人がかりでも苦戦を強いられている
879 : [saga]:2012/12/31(月) 15:11:48.81 ID:r2C9RrIl0

QB『ほむらもこちらに向かっているけど、このままだとマズいね』


「ここで姿を現すべきか?」
あすみはもう一度考える
出した結論は昨日考えたものと変わらなかった


あすみ『タイミングを見て出るよ』


必殺技を放つマミ
しかし、それは壁に穴を開けただけだった
三人に忍び寄る魔女たち――
880 : [saga]:2012/12/31(月) 15:12:17.64 ID:r2C9RrIl0

バン



あすみのモーニングスターが爆発した
あすみが加入し、三人で使い魔から倒していく
そこにかけつけたほむら
一気にカタがついた
881 : [saga]:2012/12/31(月) 15:12:45.35 ID:r2C9RrIl0

契約したさやかの姿を見たほむら
結局、さやかの契約についてはほむらが折れる形になった
そして――

ほむら「ところで、その子は?」

マミ「私たちを助けてくれたの。確か――」

あすみ「神名あすみです」


     ・
     ・
     ・
882 : [saga]:2012/12/31(月) 15:13:13.20 ID:r2C9RrIl0

話を終え、あすみは帰路についた
いつも通りQBが寄ってくる


QB「あの様子だと、やっぱりほむらはあすみのことを知らなかったみたいだね」

あすみ「うん、演技しているようにも見えなかった。
    ほむらにとって私は、今までのループで初めて姿を現したイレギュラーってことだね」
883 : [saga]:2012/12/31(月) 15:13:43.76 ID:r2C9RrIl0

QB「ほむらは警戒してくるかな?」

あすみ「してくるね」


あくまで落ち着きはらっているあすみ


QB「まあ、あすみのことだから僕は心配してないよ」


その様子を見てQBも大丈夫だと思ったのだろう
その話はそれできりあげた
884 : [saga]:2012/12/31(月) 15:14:29.86 ID:r2C9RrIl0

QB「そういえば、あすみ」

あすみ「何?」

QB「さっき僕に何か言おうとしていなかったっけ?」

あすみ「あ、そうだった。佐倉杏子のことなんだけど、彼女も見滝原に呼んでくれないかな?」

QB「あすみがそう言うなら……何か考えがあるんだろうしね」

あすみ「うん、お願い」

QB「早速、今から行ってみるかい?」

あすみ「そうだね」
885 : [saga]:2012/12/31(月) 15:15:03.08 ID:r2C9RrIl0

風見野に向かいながら今日のことを振り返るあすみ


あすみ(さやかとマミには好印象をもってもらえたみたいだね)

あすみ(それに対して、ほむらは私に疑いをもっている感じだった)

あすみ(でも、それも覚悟のうえ。すでに計算のうえで私は姿を現したんだよ)







                 ――――――第四部 完
886 : [saga]:2012/12/31(月) 15:17:41.56 ID:r2C9RrIl0
第五部 


(次の日、マミの部屋)

マミたち4人で話し合いが行われていた
「あすみと杏子、どちらを仲間にするか」をめぐってほむらとさやかが真っ向から対立
さらに、さやかの肩をもつマミとほむらが口論になった
その隙をみて、マミの部屋を出て行ったさやかとまどか
887 : [saga]:2012/12/31(月) 15:18:15.23 ID:r2C9RrIl0

その頃、あすみは昨日のQBとの会話を思い出していた
それは、杏子に関することだった
あすみが得た杏子の情報は多岐に渡った
杏子の性格、考え、契約時の願いといったものから、
マミとの関係、ほむらが経験してきたループでは杏子も仲間の一人だったことまで、
QBは知っていることを全てあすみに話した
その情報をもとに、あすみは作戦を再検討する
888 : [saga]:2012/12/31(月) 15:19:06.14 ID:r2C9RrIl0

あすみ(杏子を作戦の中にどう組み込んでいくか)


もう一度、一から丁寧に考えていく

あすみの最終目標は「未契約者の契約」および「全員を絶望させ、エネルギーを回収すること」だった
そのためには、一人の不幸が他の人の不幸を招く「負の連鎖反応」ともいうべき構造を作り上げる必要がある
一人一人別個に対応していくのは避け、一度全員を結束させ一つの同じ希望をもたせる
その後、絶望の淵へ叩き落すのが理想的だ
889 : [saga]:2012/12/31(月) 15:19:35.00 ID:r2C9RrIl0

では、「一度全員を結束させ、一つの同じ希望をもたせる」ためにはどうしたらいいか?



あすみ「人が結束するのは、共有している問題を乗り越えようとしている時だよ。
    だから、まず全員に関わる問題を生じさせればいい」

あすみ「まどかを契約させずにワルプルギスを倒す、という三人の最終目標へとつながっていく、新しい問題点を、ね」

あすみ「そして、私の力を使って、『表面上』全員で乗り越えたようにみせかける」
890 : [saga]:2012/12/31(月) 15:20:13.33 ID:r2C9RrIl0

では、「全員に関わる新しい問題」として何を据えるべきか?


あすみ「まどかを契約させずにワルプルギスを倒すには、今の戦力では不安があるはず」

あすみ「だから私を新しく仲間にするかどうかで問題を起こさせる」

あすみ「性格や考えの違うさやかとほむらは何かと衝突する可能性が高いから、それを利用する」

あすみ「私がさやかに上手く取り入ることができれば、さやかは私を仲間にしようとするはず」

あすみ「でも、私を警戒しているほむらは、必ずそれに反対する。
    マミたちも否応なく巻き込まれるだろうね」
891 : [saga]:2012/12/31(月) 15:20:43.17 ID:r2C9RrIl0

QBから杏子の情報を得る前のあすみは、一晩考えた末、これを一応の「結論」としていた
ほむらがあすみに警戒心をもっているからこそとれる作戦
ほむらの心理を逆手に取った、といえよう
要はさやかと強く繋がっていればいい
892 : [saga]:2012/12/31(月) 15:21:20.69 ID:r2C9RrIl0

しかし、不安もあった
それは「ほむらとさやかが衝突した結果、さやかが折れる可能性もある」ということだった
さやかの性格を考えればその可能性は低いだろうが、ゼロでもない

もちろんあすみは、「あすみを仲間にしよう」とさやかが思いたくなるような演出をしようと考えていた
さやかたちのピンチを助ける、という形で
893 : [saga]:2012/12/31(月) 15:22:08.92 ID:r2C9RrIl0

しかし、向こうはさやかが契約すればすでに三人の魔法少女がいることになる
ワルプルギスの夜に立ち向かうかどうか微妙な戦力ではあるが、どっちに転んでもおかしくはない
せっかくあすみがさやかに取り入れたとしても、ほむらとさやかが話し合った結果、
「やっぱりあすみを仲間にするのはあきらめる」とさやかが考えるかもしれない
894 : [saga]:2012/12/31(月) 15:22:50.22 ID:r2C9RrIl0

その不安を抱えながらハコの魔女戦を観察していたあすみ
QBから杏子の話を聞いてピンときた


あすみ(私と一緒に、杏子にも問題点となってもらおう)


杏子が見滝原に来れば、ほむらは杏子を仲間にしたがるだろう
しかし、杏子とさやかの考えが合わないのも明らか
さやかは断固として反対するはず
そして「杏子を仲間にするくらいならあすみの方がいい」と考えるだろう
そうなれば「やっぱりあすみを仲間にするのはあきらめる」とさやかが考える可能性はぐっと低くなる
895 : [saga]:2012/12/31(月) 15:23:21.19 ID:r2C9RrIl0

あすみ「比較対象が現れると『どちらかから選びたい』という心理が自然と働く。
    両方諦めるという選択をするのが難しくなる」

あすみ「特に今回の様に少しでも戦力が欲しい場合はなおさら、ね」
896 : [saga]:2012/12/31(月) 15:23:53.57 ID:r2C9RrIl0

では、ほむらがさやかごとあすみをきる可能性は?


あすみ「その可能性は低いと思うよ」
897 : [saga]:2012/12/31(月) 15:24:32.68 ID:r2C9RrIl0

それはなぜか?



あすみ「まず、マミとまどかが反対すると思う。仮にマミを説得できても、さやかと仲のいいまどかを説得しきるのは難しいんじゃないかな」

あすみ「それでももしさやかがきられたら、さやかはまどかを連れまわすだろうし、まどかもなんだかんだでさやかについて行くだろうね」

あすみ「まどかを自分の手の届く範囲においておきたいほむらが、それをよしとするはずがない」

あすみ「なぜなら、このループには私という警戒すべきイレギュラーがいるのだから」
898 : [saga]:2012/12/31(月) 15:25:00.99 ID:r2C9RrIl0

では、結局どうなる可能性が一番高いのか?



あすみ「ほむらもさやかも強情だから、問題が長引くかもしれない。だけど、結局折れるのはまたほむらだろうね」

あすみ「ほむらは時間を遡れる。だからダメだったらまたループするつもりで折れるだろうね」
899 : [saga]:2012/12/31(月) 15:25:39.83 ID:r2C9RrIl0

以上のことを踏まえ、作戦の青図面をまとめると以下のようになる


杏子とあすみという対立軸をはさみ、ほむらとさやかが対峙している構図
マミはその緩衝材という位置づけ

以前考えた構図に「杏子」というコマが加えられた
それだけでも、あすみにとっては大きな意味をもっていた
杏子のおかげであすみがきられる可能性が低くなり、輪の中に入りやすくなったのだから
900 : [saga]:2012/12/31(月) 15:26:08.29 ID:r2C9RrIl0

あすみ「輪の中に入った後は、対立を煽りつつ、QBの話術と私の能力で表面的には問題を乗り越えたように見せかける」

あすみ「そうやって全員に希望をもたせた後は……」
901 : [saga]:2012/12/31(月) 15:26:37.29 ID:r2C9RrIl0

あすみが携帯に目をやる


あすみ「とりあえず、今は結果待ちだね」


昨日、杏子を見滝原に呼び寄せることには成功している
あとは私が輪の中に入れたかどうか……
902 : [saga]:2012/12/31(月) 15:27:08.49 ID:r2C9RrIl0

あすみ「今頃、みんなで話し合ってるんだろうね」


しばらくしてあすみの携帯が鳴った
かけてきた相手を確認して、あすみは笑った





              ――――――第五部 完
903 : [saga]:2012/12/31(月) 15:29:09.81 ID:r2C9RrIl0
今回の投下は以上です

みなさん、よいお年を
904 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/31(月) 17:32:40.82 ID:OQuKzDT9o
乙!
良いお年を
905 : [sage]:2013/01/01(火) 17:08:40.00 ID:ZIV7wU+C0
明けましてあめでとうございます!
年初めは集中して書けそうです

では続きを投下していきます
906 : [saga]:2013/01/01(火) 17:10:15.15 ID:ZIV7wU+C0
第六部 


予想通りのさやかからの電話
指定された場所でさやかたちと合流した
三人で見滝原のパトロールを開始する
907 : [saga]:2013/01/01(火) 17:10:58.14 ID:ZIV7wU+C0

さやか「あすみはさぁ、使い魔も倒す派?」


それに対してどう答えるべきかは知っている
あすみはシナリオ通りの答えを返していく
908 : [saga]:2013/01/01(火) 17:11:41.26 ID:ZIV7wU+C0

さやか(やっぱりさやかは扱いやすいね)


あすみはさやかに取り入ることに成功した
さやかに「やっぱりあすみを仲間にしたい」と思わせることができた


あすみ(出だしは順調だね。次は杏子がちゃんと私の対立点になってくれるかどうか、か)


さやかが使い魔と交戦中、あすみはそんなことを考えていた
そこに現れた杏子
909 : [saga]:2013/01/01(火) 17:12:21.79 ID:ZIV7wU+C0

さやかと杏子の会話は、すぐに口論に発展した
そして二人はぶつかりあう
それを見ながらあすみはQBに確認のテレパシーを飛ばす


あすみ『ほむらとマミは今、どうしてるの?』

QB『さっきまどかが二人に連絡を取ったようだ。今こっちに向かってるよ』
910 : [saga]:2013/01/01(火) 17:12:54.35 ID:ZIV7wU+C0

あすみ(ほむらとマミが来る前に、私も参戦しないとね)


覚悟を決め、あすみは戦いの渦中へと飛び込んでいく


あすみ(私だってさやかに取り入ることに命をかけてるんだ。そのためだったら喜んで痛い目も見るよ)
911 : [saga]:2013/01/01(火) 17:13:28.15 ID:ZIV7wU+C0

そこに到着したほむらとマミ
マミに介抱されるあすみ


マミ「あすみちゃん……美樹さんのためにこんなになって……」


マミ「これでもあなたはあすみちゃんを信用できないと言うの?暁美さん」
912 : [saga]:2013/01/01(火) 17:13:55.50 ID:ZIV7wU+C0

涙目のほむら
回復魔法をかけてもらいながらその様子を観察しているあすみ


QB『作戦は上手くいきそうかい?』

あすみ『順調だよ。今のところ』
913 : [saga]:2013/01/01(火) 17:14:30.87 ID:ZIV7wU+C0

QB『一つ、杏子のことでわかったことがあるんだ。役に立つ情報かわからないけど』

あすみ『何?』

QB『さっき杏子がボソッと言ってたんだ「あんなヒヨッコと組んでたら早死にするぜ、マミ」ってね。
   おそらく杏子はマミのために見滝原に来たんじゃないかな』

あすみ『マミのため……』
914 : [saga]:2013/01/01(火) 17:15:04.92 ID:ZIV7wU+C0

杏子がマミのもとを去ったのもマミのためだとしたら……
「一つの街に魔法少女は一人」という杏子の言葉とも合っている
杏子の強さは身をもって体験した
あの強さでは消費魔力も大きいはず
二人でやっていったらグリーフシード不足に陥るはずだ
915 : [saga]:2013/01/01(火) 17:15:49.72 ID:ZIV7wU+C0

マミ「あすみちゃん、大丈夫?」


回復魔法をかけ終わったマミがあすみに確かめた


あすみ「ええ、もう大丈夫です。さやねえのこともお願いします」


マミ「ええ」
916 : [saga]:2013/01/01(火) 17:16:33.05 ID:ZIV7wU+C0

さやかを介抱するマミ
それを見ながらあすみは思う


あすみ(今回の件で、作戦通り「杏子と私」という対立軸をはさみ、ほむらとさやかが対峙する図面通りの形が作れた。
    仮にマミが杏子の本当の気持ちに気付いて杏子よりへと態度を軟化させても緩衝材が動いただけ。この作戦に影響はない)


マミがさやかの治療を終えた
そしてその日は解散となった




――――――

――――

――
917 : [saga]:2013/01/01(火) 17:17:03.91 ID:ZIV7wU+C0

(次の日、マミの部屋)


「杏子とあすみ、どちらを仲間にするか」
それをめぐって、再び4人で話し合う
マミが杏子への態度を軟化させたものの、さやかとほむらは二人とも折れず、話は平行線に終わった
918 : [saga]:2013/01/01(火) 17:17:30.31 ID:ZIV7wU+C0

さやか「私とほむらの考えが合わないことはよくわかったよ」

さやか「マミさん、私、これからは自分の思ったようにやります」

マミ「美樹さん、落ち着いて!」


マミの部屋を出て行くさやかとまどか
919 : [saga]:2013/01/01(火) 17:18:13.01 ID:ZIV7wU+C0

一方、あすみはいつも通りQBと一緒にいた


QB「あすみは、ほむらとさやかどっちが折れると思う?」

あすみ「いつか、ほむらが折れると思う。さやかは……正直わかんないんだよね」


さやかの性格を考えると折れるとは考えにくい
しかし、ほむらの話によると、あるループではさやかと杏子が二人とも仲間だった時があるらしい
つまり、さやかが折れることもありうるのだ
920 : [saga]:2013/01/01(火) 17:18:44.24 ID:ZIV7wU+C0

あすみ「ありうるけど難しそうだね。今後の話の展開次第かな」

QB「あすみとしてはさやかに折れてもらいたいのかい?」

あすみ「そうだね。杏子も『負の連鎖反応』の輪に組み込みたいからね」


あすみは、杏子を対立軸の1つとすることでそれに組み込んでいくことができるかもしれない、と期待している
そうする中で「絶望ポイント」も掴めるのではないか、と
921 : [saga]:2013/01/01(火) 17:19:17.99 ID:ZIV7wU+C0

QB「杏子は精神的に強いよ」

あすみ「うん、今のところ、まだポイントを掴めてない」


絶望ポイント――それはたいてい「命やそれに類するもの」や「魔法少女の真実」が関わってくる
記憶を改ざんすることを考慮しても「マミとの決別」くらいでは絶望ポイントとして弱い、とあすみは判断した
922 : [saga]:2013/01/01(火) 17:19:54.88 ID:ZIV7wU+C0

あすみ「さやかとの線でいってみようか」

QB「どうするんだい?」

あすみ「魔法少女同士の戦いっていうのは命がけになることが多い。
    あの二人がもう一度戦ったらそのレベルにまで発展しても不思議じゃない」
923 : [saga]:2013/01/01(火) 17:20:32.20 ID:ZIV7wU+C0

「何かしらのアクションをとり、その反応を見ていけそうなところをせめていく」
あすみのいつものやり方

とはいえ、さやかに本当に死なれては困る
そうならないようにフォローはする


QB「大丈夫かな?」

あすみ「少し危険だけど、リスクを恐れていたら前に進めないからね」
924 : [saga]:2013/01/01(火) 17:21:05.34 ID:ZIV7wU+C0

あすみ「で、杏子の様子はどうなの?」

QB「今のところ、目だった動きはないよ。杏子からしたら多勢に無勢だ。
   戦う気があってもそうそう動けないっていう状況だろうね」

あすみ「あの人の強さなら、私とさやかは問題にしてないだろうね。
    マミは昔のパートナーだから能力は知ってるだろうし、そもそもマミと事を構える気はないと思う」

QB「だとしたら、杏子が一番恐れているのはほむらの時間停止の術、ということだね」

あすみ「そういうこと。そして、私たちはその弱点を知ってる」
925 : [saga]:2013/01/01(火) 17:21:32.73 ID:ZIV7wU+C0

その時、あすみの携帯が鳴った
話し終わるのを待ってQBが話かける


QB「さやかからかい?」

あすみ「うん」
926 : [saga]:2013/01/01(火) 17:22:15.21 ID:ZIV7wU+C0

QB「さやかの、あすみへの依存度は増していく一方だね」

あすみ「うん、でもまだまだだよ。私無しじゃダメっていうくらいにしてみせる」

あすみ「楽しくなってきたでしょ?」

QB「僕には人間の感情はわからないよ」

QB「とりあえず、僕は杏子とコンタクトを取ればいいんだね?」

あすみ「うん、よろしく。私もでかけなきゃ」


あすみはさやかのもとへ
QBは杏子のもとへ向かうのだった




                 ――――――第六部 完
927 : [saga]:2013/01/01(火) 17:23:09.85 ID:ZIV7wU+C0
第七部 


(後日)


QB「あすみ」


QBがあすみに話しかけてきた


あすみ「QB、例の件上手くいった?」

QB「うん、そのことで報告に来たんだ」

あすみ「食いついてきたんじゃない?杏子」

QB「うん、少し話を振ったら杏子の方から聞いてきたよ。『あいつの弱点を何か知らないか』ってね」


QBがその時のことを詳しく説明する
928 : [saga]:2013/01/01(火) 17:23:46.57 ID:ZIV7wU+C0

――――――――――――――――――――――――――――――
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


QB「あくまで推測だし、仮にあってたとしても役に立つかわからないよ」

杏子「それでもいい、何か手がかりになればいいんだ。教えてくれ」

QB「それなら……多分、ほむらは縛られている間は時間停止の能力が使えないんじゃないかな」

杏子「実際に見たのか?」

QB「うん、以前さやかを止めようとしたほむらをマミがリボンで縛った時があったんだ。
   その時、ほむらは何もできなかった。もし縛られても時間停止ができたなら、あの時ほむらはさやかを止められていただろうからね」

杏子「ってことは、直接手でやらなくても発動した能力でふん縛っちまえばヤツは時間停止できないってわけだ」

杏子「試してみる価値は……あるな」


   ________________________
――――――――――――――――――――――――――――――
929 : [saga]:2013/01/01(火) 17:24:45.45 ID:ZIV7wU+C0

あすみ「いい反応だね。で、その後どうなったの?」

QB「杏子はさやかの行動パターンを探っていたみたいだったよ」

あすみ「さやかに絡む機会を窺っているっていう状況なわけ」

QB「うん。で、昨日ほむらが杏子に接触してきた」

あすみ「やっぱり杏子を仲間にしようと?」

QB「うん、ほむらも精神的に強いね。さやかやマミから色々言われてたのに」

あすみ「ほむらは一番事情に詳しい。慎重に行動するのは当然だよ」

あすみ「まだ精神的にも時間的にも余裕のある今の段階ではね」
930 : [saga]:2013/01/01(火) 17:25:43.34 ID:ZIV7wU+C0

あすみ「で、杏子は何て返事をしたの?」

QB「交換条件を突きつけてきたよ」

QB「『あんたの弱点を教えてくれ。こっちは命がけで共闘しようってんだ。
    仲間になるならそのぐらい教えてくれてもいいだろ』ってね」

あすみ「え?」

QB「その後、『言いにくいならアタシが当ててやる』と言って、ほむらの反応を確かめたんだ」
931 : [saga]:2013/01/01(火) 17:26:17.39 ID:ZIV7wU+C0

さすがのあすみも杏子のその大胆な行動には驚きを隠せなかった


QB「ほむらは何も返事をしなかったけど、その表情を見て、杏子は『当たってる』と確信した」

QB「杏子はまた見滝原に行くつもりだよ。『もうほむらは怖くない、あのヒヨッコ、ぶっ潰してやるよ』と言っていたし」

あすみ「杏子は本気で仲間になるつもりはなさそうだね」

QB「うん。マミ以外の人を追い払おうとするだろうね」

あすみ「最悪、私が裏で動くしかないかな……」
932 : [saga]:2013/01/01(火) 17:26:57.86 ID:ZIV7wU+C0

あすみも、できれば杏子を仲間にしたい
杏子も連鎖反応の輪の中に組み込みたい
それは今でも変わらない

しかし、あすみにとってそもそも杏子の役目は「対立を煽り、あすみを輪の中に入りやすくすること」であった
その役目は十分果たしてくれた
最悪、杏子がここで脱落しても最終的な目標達成はできる
だから、もし杏子があすみの作戦を覆してしまうようなら杏子には退場してもらうしかない
933 : [saga]:2013/01/01(火) 17:27:26.42 ID:ZIV7wU+C0

あすみ「できればそうならないことを祈ってるよ」

あすみ「それもこれもこれからの展開次第だね」


次の展開――杏子とさやかの二戦目は目前に迫っていた



――――――

――――

――
934 : [saga]:2013/01/01(火) 17:28:02.66 ID:ZIV7wU+C0

(後日)

さやかはいつも通り恭介のお見舞いに向かい、恭介がすでに退院していることを知った


あすみ(今、この様子を杏子はどこからか見ているだろう)

あすみ(絡みやすいように連れ出すか)


あすみ「さやねえは上条さんの自宅の場所は知ってるの?」

さやか「うん、知ってるよ?」

あすみ「ならパトロールのついでに行ってみない?」

さやか「……そうだね、行くだけ行ってみようかな」



     ・
     ・
     ・
935 : [saga]:2013/01/01(火) 17:28:49.89 ID:ZIV7wU+C0

(その頃、マミの部屋)

マミとほむらが話している


マミ「ねえ、暁美さん、今でも佐倉さんを仲間にしたいと思ってる?」

ほむら「ええ、思っているわ」

マミ「そう……あすみちゃんは?」

ほむら「…………」

ほむら「私は……あすみを受け入れるわ」


悩んだ末、ほむらは折れた


「ループを当てにして折れる」


あすみの予想通り、結局折れたのはほむらだった


     ・
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     ・
936 : [saga]:2013/01/01(火) 17:29:43.66 ID:ZIV7wU+C0

さやかたちは恭介の自宅の前まで来ていた
そこに杏子が絡んできた
人通りの少ない場所へ移動する


あすみ(さやかに死なれては困る。マミたちに連絡を入れてっと)


マミとほむらはすぐにやって来た
そして始まったさやかと杏子の二回戦


ほむらの弱点をつきながら、戦いを優位にすすめる杏子
立ち向かっていくも弾き飛ばされるさやか
その衝撃で、さやかのソウルジェムが橋の上から落ちていった
そして明かされた「100mの距離制限」
937 : [saga]:2013/01/01(火) 17:30:14.54 ID:ZIV7wU+C0

杏子「コイツ、死んでるじゃねえかよ」

QB「うん、杏子がさやかを殺した」

QB「狙ったとおりになったじゃないか」

マミ「佐倉さん……あなたって人は……っ!」


マミの平手打ち


まどか「ねえ」

杏子「え?」

まどか「さやかちゃんを返してよ」
938 : [saga]:2013/01/01(火) 17:31:50.96 ID:ZIV7wU+C0

何もできない
杏子を襲う無力感と罪悪感
耐えかね、逃げ出そうとしたところをマミが引き止め、なじった

そこにほむらが戻ってきた
さやかが意識を取り戻す


マミ「よかったわね、人殺しにならなくて」

ほむら「マミ、もうそのへんにして頂戴」

ほむら「私は今でも杏子を信用してるわ。無理にとは言わないけど、ワルプルギス戦に協力してほしいの。考えておいて」

杏子「わかった」



     ・
     ・
     ・
939 : [saga]:2013/01/01(火) 17:33:48.36 ID:ZIV7wU+C0

あすみ(「100m」のルールは私も知らなかった。でも、そのルールのおかげで最高の結果を得られた)


あすみによって仕組まれた戦いは、あすみにも意外な展開を見せつつ、最高の結果をもたらしたのだった


あすみ(運が良かった、としか言いようがないね)

あすみ(でも、おかげで難しい問題が解決した)


今回の件は杏子の「絶望ポイント」を掴むのに十分だった
そして、本気で仲間になる気のなかった杏子の気を変えるのにも十分だったと言える


あすみ(あとはさやかの方か……)
940 : [saga]:2013/01/01(火) 17:34:20.33 ID:ZIV7wU+C0

あすみがQBとテレパシーで会話する


あすみ『そろそろ最後のカードをきろうと思うんだ』

QB『短命化のことかい?』

あすみ『うん、それをさやかにばらす』

QB『それがそのままさやかの「絶望ポイント」になるってことだね』

あすみ『うん。それと、うまくいけばさやかも折れて杏子を仲間にすることに反対しなくなるかもしれない』
941 : [saga]:2013/01/01(火) 17:34:47.02 ID:ZIV7wU+C0

QB『どうしてそう思うんだい?』

あすみ『短命化を知れば、今まで杏子と言い争っていたことなんて、小さな問題だと思うんじゃないかな』

あすみ『ある問題を抱えている人に、より大きな問題をぶつけることで小さな問題を問題でなくしてしまう』

あすみ『常に有効な手段とは言えないけど、今回はいけると思うんだ』

QB『なるほど、一理あるね』
942 : [saga]:2013/01/01(火) 17:35:18.52 ID:ZIV7wU+C0

あすみとQBが打ち合わせをする
それが終わると、QBはさやかのところへ向かった


あすみ(今回は運が良かった。でも運に頼ってはいられない)

あすみ(ワルプルギス戦は16日……そろそろ仕上げを考えるべき頃かもね)






                 ――――――第七部 完
943 : [saga]:2013/01/01(火) 17:38:10.77 ID:ZIV7wU+C0
第八部 


(次の日、学校)

屋上でマミとほむらとまどかが話し合っていた


ほむら「それにしてもQB、やっぱりまだ魔法少女の真実を全て話してなかったのね」


100mの距離制限を知ったほむらたち
しかし、短命化のことは知らない
それを知るさやかは学校を休んでいた
944 : [saga]:2013/01/01(火) 17:38:59.55 ID:ZIV7wU+C0

その頃、QBは早速あすみのもとに報告に来た
まず、昨晩のさやかとのやりとりを説明しだした


QB「さやかの方から声をかけられたよ。
   『話してよ、あなたが隠している魔法少女についての不都合な真実を全部……隠さずにね』ってね」

あすみ「100mの距離制限のことが明るみになったことで『他にも何か隠してるんじゃないか』って考えても不思議じゃない」
945 : [saga]:2013/01/01(火) 17:39:31.50 ID:ZIV7wU+C0

あすみ「で、短命化のことを話した?」

QB「うん」


その時のさやかの様子を、そしてそこからQBが読み取ったこと説明していく


QB「あすみの読み通り、短命化はさやかの絶望ポイントとして十分だよ」
946 : [saga]:2013/01/01(火) 17:40:21.90 ID:ZIV7wU+C0

QB「ただ、少し効きすぎたかもしれない」

あすみ「暴走するかもしれないってこと?」

QB「うん。ほどなく魔女化への道をつきすすむだろうね」

あすみ「そんなにもちそうにない?」

QB「うん。いつ魔女化してもおかしくない」

あすみ「となると、今暴走されるのはマズいね……」

QB「記憶を抜くかい?」
947 : [saga]:2013/01/01(火) 17:40:52.07 ID:ZIV7wU+C0

あすみの第一段階の術――記憶を抜く術
「その術をかけるのは最終段階の術をかける数日前」
そうあすみは決めていた

裏を返して言うと、これは作戦が順調にいっていることと、完遂の日が近いことを意味した
948 : [saga]:2013/01/01(火) 17:41:53.43 ID:ZIV7wU+C0

あすみ「ワルプルギス戦も近い。そろそろ仕上げにはいらないといけない」

あすみ「で、その術をかけるためにQBに用意して欲しいものがあるんだ」

QB「何だい?」
949 : [saga]:2013/01/01(火) 17:42:20.83 ID:ZIV7wU+C0

依頼内容を聞くQB
それはQBの得意とするところだった


QB「明日中に用意するよ」

あすみ「うん。お願い」



     ・
     ・
     ・
950 : [saga]:2013/01/01(火) 17:42:48.83 ID:ZIV7wU+C0

その後、あすみはさやかのマンションへと向かった


あすみ(いつ動きがあるかわからないからね)


姿を隠しながら見張っている
そこに杏子が現れ、さやかを教会へと連れだした
951 : [saga]:2013/01/01(火) 17:43:22.89 ID:ZIV7wU+C0

杏子「……悪かったよ、アタシが間違ってた」


謝る杏子にさやかが返す


さやか「すれ違っちゃったけど、杏子、あんたの考えは間違いじゃない。今ならわかるよ」

さやか「……ちょっと気付くのが遅かったけどね」

さやか「だからさ、もういい……もう、いいんだよ」
952 : [saga]:2013/01/01(火) 17:44:08.35 ID:ZIV7wU+C0

「もういい」
それが「杏子を許す」という意味と「自分なんてもうどうでもいい」という二つを意味している、とあすみはすぐに気付いた


あすみ(予想通り、さやかは折れたね。今なら杏子が仲間になることに反対しないはず)

あすみ(ただ、QBの言うとおりいつ暴走を始めてもおかしくない)

あすみ(術をかけるのはQBの小道具がそろってからだ)

あすみ(QBが小道具を用意してくれるのは明日……それまでなんとか繋ぎとめておかないと)
953 : [saga]:2013/01/01(火) 17:44:54.01 ID:ZIV7wU+C0

「この後、さやかは間違いなく私を呼び出す」
あすみはそうよんでいた
それは、さやかのあすみへの依存度が日ごとに増していることだけが根拠ではなかった


あすみ(短命化を知っている少女は私だけ。傷心のさやかは私にすがる他ない)

あすみ(呼び出されたら、さやかが暴走しないように言葉で繋ぎとめる)

あすみ(とりあえず、明日までもてばいい)
954 : [saga]:2013/01/01(火) 17:45:32.03 ID:ZIV7wU+C0

そして、案の定さやかから連絡があった
合流しパトロールへ向かいながら会話する


さやか「あすみはさ、知ってるんだよね、魔法少女の真実を」

さやか「あすみはそれを全部知ったうえで契約したの?」

あすみ「そうだよ。契約しないと生きられない状況に追い込まれて……仕方なくね」
955 : [saga]:2013/01/01(火) 17:46:01.13 ID:ZIV7wU+C0

自然とゆいのことが思い出された
魔法少女が背負う重荷
あすみもまた、さやかと同じように、いや、それ以上に重いものを背負っているのだ

それを知ったさやか
つらい時こそ人とつながっていないといけないと気付く


あすみ「もしさやねえの抱えてる荷物が重すぎるなら私が支えてあげる……だから一緒にいよう」

さやか「うん、一緒にいよう」


パトロールに向かう二人


     ・
     ・
     ・
956 : [saga]:2013/01/01(火) 17:46:56.30 ID:ZIV7wU+C0

(パトロール後)

さやかと別れ、一人考えるあすみ


あすみ(これでさやかは当面大丈夫だろう)

あすみ(でも、持ち直したとはいってもあの言葉程度で完全に乗り越えられるような問題じゃない。
    ちょっとしたきっかけが決定打になりうる。いつ暴走してもおかしくないことに変わりはない)

あすみ(少なくとも、明日QBが小道具を用意してくれるまでもってくれればいい)

あすみ(もっとも、それ以降は……)
957 : [saga]:2013/01/01(火) 17:47:25.77 ID:ZIV7wU+C0

さやかの当面の問題はクリアーしたあすみ
仕上げ前の「最後の演出」を考える


あすみ(このままでも作戦は成功する可能性は十分ある。そのくらい、これまでの流れは順調だ)


今までも、あすみは生じた問題をきちんとクリアーしてきた
ただ一つ、気になることがあった
958 : [saga]:2013/01/01(火) 17:48:13.70 ID:ZIV7wU+C0

あすみ(たしかに、さやかは折れた。杏子が仲間になることに反対はしないだろう)

あすみ(でも、できれば「さやかが積極的に杏子を仲間として認める」というくらいの強いつながりがあるのが望ましい)


あすみの狙う「負の連鎖反応」を起こすためには、お互いの連帯感や仲間意識は強ければ強いほどいい
意識が強い間柄であるほど、お互いの影響力も高くなるのだから


あすみ(杏子とさやかに仲間意識を生じさせて連帯感を強める。そのために、さやかの暴走を杏子にとめさせる)

あすみ(ただし、それは表面上だけどね)

あすみ(実際はQBの小道具と私の能力で食い止めるけど、それをあたかも杏子が食い止めた、という形にもっていく)
959 : [saga]:2013/01/01(火) 17:49:01.49 ID:ZIV7wU+C0

もし、そこまでできれば作戦成功の可能性はさらにあがるだろう
だから、結局のところさやかには暴走はしてもらいたい


あすみ(でもそれはQBの小道具がそろってからだよ)


あすみのコントロール外での暴走は困る
タイミングが重要なのだ


あすみ(ワルプルギス来襲は16日……)


そこから逆算していく


あすみ(今日にも仕込んだ方がいいね、最後の演出を)
960 : [saga]:2013/01/01(火) 17:49:31.79 ID:ZIV7wU+C0

あすみはQBを呼んだ


あすみ「もう一つ頼んでもいい?」

QB「大丈夫だよ」

あすみ「まどかのところに行ってきてくれないかな」

QB「どうしてだい?」

あすみ「さやかの暴走の決定打になってもらおうかと思って」
961 : [saga]:2013/01/01(火) 17:50:03.04 ID:ZIV7wU+C0

あすみが作戦を説明する
それは、アクションをとって反応を見る、いつものあすみのやり方
アクションの結果、もしまどかが動いてくれればさやかの暴走の決定打になる
それだけではない
これをきっかけにして、まどかの絶望ポイントを作り出す
そこまであすみは狙っている


QB(まあ、あすみならたとえまどかが動かなかったとしても、別のやり方でどうにかしてしまうんだろうけどね)

QB(とはいえ、まどかに動いてもらうのがベストだね)
962 : [saga]:2013/01/01(火) 17:50:35.11 ID:ZIV7wU+C0

しかし、この作戦に問題がないわけではない


QB「それだとまどかから契約をとる、ということについてはハードルが上がるんじゃないかな?」

あすみ「そうだね。でも、契約せざるを得ない状況にまどかを追い込む算段はすでにできている」

あすみ「QBと私が力を合わせればそんなに難しくないよ」
963 : [saga]:2013/01/01(火) 17:51:16.24 ID:ZIV7wU+C0

それはQBもわかっていることだった


QB「うん、あすみを信じるよ」


そう言うとQBはまどかのもとへと向かうのだった





             ――――――第八部 完
964 : [saga]:2013/01/01(火) 17:53:46.73 ID:ZIV7wU+C0
第九部 


(次の日)

さやかが登校してくるのを待っているほむらたち
まどかがほむらにテレパシーを送る


まどか『今日、さやかちゃんが来たら伝えたいことがあるんだ』

ほむら『そう、ちょうど私もさやかと話をしたいと思っていたの。放課後、時間を空けてもらえないか頼んでみるわ』

まどか『じゃあ、私も放課後に話をするね』


しばらく待っているとさやかがやって来た
待っていたほむらがテレパシーで話しかける


ほむら『さやか、私はあすみを仲間として受け入れることにしたわ』

さやか『うん』

ほむら『あすみにもワルプルギス戦に参加してほしい。今度私からも正式にお願いしてみるわ』

さやか『わかった』
965 : [saga]:2013/01/01(火) 17:54:19.86 ID:ZIV7wU+C0

QB(やっぱりそうなったんだね)


テレパシーはQBを介して行う
当然、その内容はQBの知るところとなる
まどかの様子をうかがうQB

時々、さやかの方を見て何か言いたげな様子ではあったがまどかは終始うつむいていた
みんなで登校し始めた時、仁美が声をあげた


仁美「あら……上条君、退院なさったんですの?」

さやか「え?」


思わぬタイミングで現れた恭介
QBはさやかたちの反応をひとしきり確認し終わると、あすみのところへ向かった



     ・
     ・
     ・
966 : [saga]:2013/01/01(火) 17:54:54.29 ID:ZIV7wU+C0

あすみ「QB、どうだった?」


QBが、昨日まどかとした会話をあすみに伝える



――――――――――――――――――――――――――――――
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


QB「まどか、君が気にしているのは魔女化だろう?今の君ならワルプルギスを余裕で倒せるだろう。
   だから、その後すぐにソウルジェムが限界を迎えることもない」

QB「本当の限界がきて魔女化する前にソウルジェムを砕けば問題ないじゃないか」

まどか「そうしたらあなたはエネルギーを回収できなくなるんだよ?それなのに何で?」

QB「そうだね、そうなったら僕の仕事は失敗したことになるね。
   でもね、君に契約してもらわないと何も始まらないんだよ」


   ________________________
――――――――――――――――――――――――――――――
967 : [saga]:2013/01/01(火) 17:55:20.60 ID:ZIV7wU+C0

QBにとって不利に働きかねない発言


しかしそれは「あすみと協力すれば契約させられる」という自信の裏返しだった


QB「狙った通り、まどかはそれを『ソウルジェムを自ら砕くことは難しい、とQBがふんでいる』と解釈したようだね」

QB「『私に本当に砕けるかな……』と独り言を言っていたよ」
968 : [saga]:2013/01/01(火) 17:56:07.40 ID:ZIV7wU+C0

先のQBのセリフ
『君が気にしているのは魔女化だろう?今の君ならワルプルギスを余裕で倒せるだろう。
 だから、その後すぐにソウルジェムが限界を迎えることもない』
『本当の限界がきて魔女化する前にソウルジェムを砕けば問題ないじゃないか』
というのは、まどかにそう解釈させるためのものでもあった
そうすることで、「あすみと協力すれば契約させられる」というQBの本心へと目が向かないように誘導したのだ
969 : [saga]:2013/01/01(火) 17:56:44.92 ID:ZIV7wU+C0

QB「まどかのあの様子だと、ソウルジェムを砕くのは無理だと判断したようだね」


だとしたら、まどかは「契約しない」と再度決心を固めただろう
QBが「今まで魔法少女をいいように利用してきた」という話をわざわざしたのも、全てはまどかに「契約しない」と決心させるため
そして、それはさやかにとって文字通り「絶望的」な決心だといえる
もしその決心をまどかがさやかに伝えたら、さやかの暴走の決定打になるだろう
970 : [saga]:2013/01/01(火) 17:57:19.85 ID:ZIV7wU+C0

あすみ(もちろん、最終的にはまどかは契約させる。
    でも、現段階でまどかが「契約しない」と決心しても最終的に契約させるための算段はついている)

あすみ(さやかを、私に都合のいいタイミングで暴走させる)

あすみ(そのためには現段階ではまどかは「契約しない」と決心してくれた方がいい)
971 : [saga]:2013/01/01(火) 17:57:57.35 ID:ZIV7wU+C0

あすみ「あとはまどかが決心をさやかに伝えてくれるかどうか、か」

QB「伝えようとはしているよ」

QB「ほむらが折れてあすみのことを受け入れる決心をしたことも確認できた」

QB「さらに、今朝、さやかの好きな人が登校してきたから、さやかも穏やかではいられないだろうね」


恭介の姿を見れば、さやかはいやでも魔法少女の真実を意識せざるを得ないだろう


あすみ「そういう中で、まどかがさやかに決心を伝えたら……」
972 : [saga]:2013/01/01(火) 17:58:24.55 ID:ZIV7wU+C0

ある程度先を予想しながらアクションをとるあすみのやり方は「大はずれ」に終わることが少ない
しかし、最終的には運任せ、というところがあった
そして今回は軒並みあすみが思った以上の結果がついてきた


あすみ「運も味方してる。このチャンス、絶対逃さないよ」

あすみ「で、例のものは用意してもらえた?」

QB「うん。いくつか候補があるから、その中からあすみに選んでもらいたい」

QB「後でいつものところに来てくれるかい?」

あすみ「了解!」


     ・
     ・
     ・
973 : [saga]:2013/01/01(火) 17:59:01.58 ID:ZIV7wU+C0

(放課後)


仁美はさやかを呼び出して、自分の気持ちを打ち明けた


仁美「ずっと前から……私……上条恭介君のこと、お慕いしてましたの」


動揺を隠せないさやか
その後、ほむらたちの前に姿を現すも「やっぱり私には無理だったみたい」という言葉だけを残して走り去っていった
そんなさやかを「遠くから見守る」という選択をしたほむらと杏子
974 : [saga]:2013/01/01(火) 17:59:34.20 ID:ZIV7wU+C0

一方、さやかはいつもの通りあすみを呼び出した
二人で使い魔を撃破
パトロールが終わり、一人で帰ってきたさやかにまどかが決心を伝えた
そして壊れていくさやか――



     ・
     ・
     ・
975 : [saga]:2013/01/01(火) 18:00:22.64 ID:ZIV7wU+C0

さやかと別れたあすみ
あたりは真っ暗なうえ、冷たい雨が降っている
その中を一人、QBとの約束の場所へと向かっていた
廃ビルへと入っていく


あすみ「QB」


真っ暗な部屋の中、QBの瞳だけが赤く光っている
あすみの呼びかけに応じ、たくさんの赤いそれがいっせいにあすみの方を向いた


QB「さっきまどかがさやかに決心を伝えたよ」


QBは、あすみからの指示で別機をまどかたちにつけていた
それからの情報をあすみに伝える
976 : [saga]:2013/01/01(火) 18:01:00.59 ID:ZIV7wU+C0

――――――――――――――――――――――――――――――
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


まどか「QBには魔女化する前にソウルジェムを砕けばいいって言われたけど……
    私、弱い子なの……だから自分でソウルジェムを砕く自信がないの。
    私が契約したら本当に世界を滅ぼしちゃうかもしれない」

まどか「だから、契約できない」

まどか「だからさやかちゃんの体を元に戻してあげられない」

まどか「ごめんね……さやかちゃんがそのことで苦しんでる姿を目の当たりにしてるのに……
    私、何もできない、さやかちゃんの力になってあげられない」

まどか「みんなが他の人のために契約して戦って苦しんでる……私は契約すれば何でもできるくせに、一人だけ契約しない」

まどか「私……私はみんなとつながる資格がない」

まどか「本当はさやかちゃんに『私が支えてあげる』って言いたいのに言えない」

まどか「ごめんね、弱い子でごめん……」

   ________________________
――――――――――――――――――――――――――――――
977 : [saga]:2013/01/01(火) 18:01:32.26 ID:ZIV7wU+C0

あすみ「じゃあ、さやかは……」

QB「君が狙ったとおりさ」

あすみ「そう」


あすみ(鹿目まどか……あなたが今、何もしなかったことを後悔する時が来る)

あすみ(それがあなたの絶望ポイントだよ)


ふふふ、とあすみは笑った
978 : [saga]:2013/01/01(火) 18:02:14.00 ID:ZIV7wU+C0

QB「じゃあ、選んでいこうか」


QBの背中が開く
すると中からグリーフシードが出てきた


あすみ「この魔女はどんなの?」


QBが説明する


あすみ「うーん、他のは?」
979 : [saga]:2013/01/01(火) 18:02:41.95 ID:ZIV7wU+C0

別のQBが別のグリーフシードを取り出し、説明する
魔女選びが続く


QB「これなんてどうかな?」

あすみ「うん、いいね」
980 : [saga]:2013/01/01(火) 18:03:33.59 ID:ZIV7wU+C0

あすみが選んだもの
それは「黒い痛み」を養分にして強くなる魔女


あすみ「『黒い痛み』を知ったあの子にふさわしい魔女の卵だよ」

QB「吸い取られた方の『黒い痛み』はその分減っていくからちょうどいいね」


孵卵器が言葉を付け加える


QB「さやか一人ではこの魔女には勝てない。そのピンチに杏子たちがかけつかる」

QB「『黒い痛み』を吸い取られたさやかの暴走はとまる。でも表面上は杏子たちのおかげで暴走がとまったように見えるだろうね」
981 : [saga]:2013/01/01(火) 18:04:05.97 ID:ZIV7wU+C0

あすみ「その結果、さやかと杏子の仲間意識も生じて全員の連帯感も強まる」

あすみ「そしてみんなで同じ希望を抱く。その後は――」

QB「短命化を知ったさやかも希望を抱けるかな?」

あすみ「そこは私の出番だよ」

あすみ「戦闘中、隙を見て記憶を抜く術をかける」

あすみ「QBには明日、この卵をパトロールのルート上にセットしておいてほしい」

QB「わかった」



     ・
     ・
     ・
982 : [saga]:2013/01/01(火) 18:04:42.97 ID:ZIV7wU+C0

あすみと別れた後、QBは考える


あすみの洞察力、推理力、計画立案・遂行能力等々……
どれをとってもずば抜けている
契約前は普通の少女だったのに
そして、肝心なところでよい結果を招く「運の良さ」
これはもはや確率論の枠で説明できる範囲を超えている
そこでQBはある仮説を立てた
983 : [saga]:2013/01/01(火) 18:05:27.75 ID:ZIV7wU+C0

「これらはゆいがあすみに与えた力によるものなのではないか」


ゆいの力――等価変換
あすみが回収したエネルギーを自らの命へ「変換」する固有魔法
それこそゆいが与えた力だとあすみは思っている
QBもそう思っていたが、それだけでは上記のことを説明できないのだ
ゆいがあすみに与えた力は本当にそれだけだったのか?
984 : [saga]:2013/01/01(火) 18:06:03.50 ID:ZIV7wU+C0

QB「今まで、重要な局面ではあすみの思った通りに事態が進展してきた。
   そして、それこそがゆいがあすみに与えた力だったのではないか」


「事態が思った通りに変わる」
それも「変換」といえる
そしてそれは周りを巻き込むことであり、大きな力が必要だ
985 : [saga]:2013/01/01(火) 18:06:44.66 ID:ZIV7wU+C0

とはいえ、何も世界を変えるわけでない
「あすみの周りに影響を及ぼす」くらいならゆいの力でもある程度できる
そして足りない部分については「周りを変える」のでなく、「あすみを変える」ことで対処したのではないか
つまり、あすみの洞察力をはじめとする能力を強化したり、固有魔法を使えるようにして、事態を思った通りに進展させるための一助にしたのではないか
周りを変えるよりあすみに変わってもらった方が使う力は少なくてすむのだから
そして、事態があすみが思った方へ向かうのも「魔法の助力あってこそ」であり、その結果、運が良いように見えるのだ、と考えれば納得がいく
986 : [saga]:2013/01/01(火) 18:07:13.39 ID:ZIV7wU+C0

QB「等価変換はやっぱり応用範囲が広い」

QB「もしゆいが自暴自棄にならなかったら、いい使い手になっていたのかもしれないね」

QB「いや、自暴自棄になったからこそ、ここまでできたのかな」

QB「今となっては確かめようがないから仮説の枠を出ないけどね」

QB「ただ、僕のこの仮説が正しいなら、あすみが仕掛けたこの戦いはただの頭脳戦、心理戦じゃないってことになるね」
987 : [saga]:2013/01/01(火) 18:07:39.73 ID:ZIV7wU+C0

「魔法を駆使して派手に立ち回る」
それが普通の魔法少女の戦いのあり方だ
それに比べると、あすみの戦いは頭脳戦、心理戦がメインで魔法はおまけのように見える
しかし、実は頭脳も心理も、はては運までも魔法による裏打ちがあったとしたら……


QB「あすみのこの戦い方もまた、魔法を駆使した一つの魔法少女の戦いのあり方といえる」

QB「暁美ほむら、君はすでに戦いが始まっていることに気付いているかい?」

QB「君たちははたして、あすみに勝てるのかな?」




――――――

――――

――
988 : [saga]:2013/01/01(火) 18:08:14.13 ID:ZIV7wU+C0

(次の日)


恭介と仁美の様子をうかがっているさやか
二人の様子を見届けた後、あすみを呼び出しパトロールへ向かった
あすみはQBと連絡を取り合う


あすみ『QB、セットできてる?』

QB『うん、杏子たちも4人でそっちを見守っている。ピンチになればすぐにかけつけるだろうね』
989 : [saga]:2013/01/01(火) 18:08:45.91 ID:ZIV7wU+C0

そして、予定通り現れた魔女
鬱憤を晴らすように一人魔女に向かっていくさやか
さやかの「黒い痛み」を吸い取る魔女
やがてさやかは動けなくなった
そこにあすみがかけよる
990 : [saga]:2013/01/01(火) 18:09:15.10 ID:ZIV7wU+C0

あすみ「待ってて、今……」

あすみ(術をかけるから)


あすみが十字架をかざす
すると二人を光が包んだ


さやか「うっ……」


二人を包む光が魔女の攻撃をはじいている
その隙にさやかの記憶を抜き取るあすみ
そこに杏子たちがかけつけた

三人がかりで魔女を倒す
その間にあすみは術をかけ終えた


あすみ(回復魔法も最低ラインはかけてある。間に合ってよかった)
991 : [saga]:2013/01/01(火) 18:09:54.51 ID:ZIV7wU+C0

まどかがさやかに抱きつく
マミがさやかに優しい言葉をかける
そして杏子は……


杏子「さやか、私はアンタに救われたんだ」

さやか「え?」

杏子「アンタを見て、私は大切なものを思い出せた。そして、今はそれが私の支えになってる。それがあれば、私はもう一度人生をやり直せる」

杏子「さやかのおかげで、私は前に進めるようになった……刹那的な生き方をしてきた私に、明日の価値を教えてくれた」

杏子「さやかがつらい思いをしてるなら、今度は私がアンタを支えてやる。だから一緒に信じよう、明るい明日ってやつを」

さやか「……うん」
992 : [saga]:2013/01/01(火) 18:10:23.79 ID:ZIV7wU+C0

生じた仲間意識
強まった連帯感


ほむら「あすみ、私はあなたを仲間として迎え入れたい」

ほむら「今更かもしれないけど……6人目の仲間になってほしいの。一緒にワルプルギスの夜と戦ってくれる?」

マミ「私からもお願いするわ」

あすみを見ながら頷く杏子――
993 : [saga]:2013/01/01(火) 18:10:52.89 ID:ZIV7wU+C0

その表情から杏子もほむらたちと同じ気持ちであることがわかった
明日を信じ、結束する少女たち


ほむら「ワルプルギス戦まであと3日――」

あすみ「もうすぐだね」
994 : [saga]:2013/01/01(火) 18:11:21.19 ID:ZIV7wU+C0

本番に向けて、舞台は整った
役者は上手く踊ってくれた
ほくそ笑むあすみ


『ワルプルギスの夜さえ』


それさえ私の前では、ただの舞台装置にすぎないんだよ――







                 ――――――第九部 完
995 : [sage]:2013/01/01(火) 18:12:29.15 ID:ZIV7wU+C0
以上、第三章「ワルプルギスの夜さえA」でした
では、次回予告です
今回は参考もつけます
996 : [sage]:2013/01/01(火) 18:13:32.65 ID:ZIV7wU+C0

【次回予告】


始まっていた舞台
役者は気付く
すでに自分の役目は終わっていることに
希望が絶望に変わる時
負の連鎖が始まった


次回、第四章「笑顔を見せて@」


絶望――それは死に至る病
997 : [saga]:2013/01/01(火) 18:22:18.63 ID:ZIV7wU+C0

参考としてタイムテーブルを作ったのですが、うまく張れませんでした
新しいスレで張ります

【お知らせ】


第四章からは新スレです
タイトルは下記のとおりです


 【魔法少女まどか☆マギカ】神名あすみ〜6人目の少女〜part2【SS】



「part2」にしただけです
以上、お知らせでした
998 : [sage]:2013/01/01(火) 18:31:04.09 ID:ZIV7wU+C0
新しくスレをたてました
そちらに移動をお願いします

【魔法少女まどか☆マギカ】神名あすみ〜6人目の少女〜part2【SS】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1357032543/l50
999 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/03(木) 09:55:36.22 ID:SmIAw7j7o
1000 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/03(木) 22:53:41.94 ID:eikBIOWeo
1000!!!!!!!
1001 :1001 :Over 1000 Thread
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       lヽ、  /  Y    ,! ヽ-‐‐/          l
.     =@>‐'´`   l   ノ   ヽ_/          ノ:
      ,ノ      ヽ =@           _,イ:
    '.o  r┐   *   ヽ、 ヽ、_     ,..-=ニ_
    =@   ノ       ノヽ、,  !..□ /     ヽ
     ヽ        .ィ'.  ,!    ハ/    、   `!、    七夕に…
      `ー-、_    く´ =@    /     ヽ  
         ,!     `!  l              ヽ、__ノ    このスレッドは1000を超えました。もう書き込みできません。
         l     `! `! !              l
          l  . =@ ,=@ヽ、 、_ ,ィ      ノ               
         l、_,!   し'   l =@  `l     =@               ://vip2ch.com/
1002 :最近建ったスレッドのご案内★ :Powered By VIP Service
幻覚アレルギー @ 2013/01/03(木) 22:47:12.78
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4vip/1357220832/

さやか「あの…」 マミ「何…?」 @ 2013/01/03(木) 22:41:18.68 ID:5hHWBLXy0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1357220478/

ようこそ!ここは戦場よ! @ 2013/01/03(木) 22:23:04.65 ID:GuvECeapo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1357219384/

唯「あず始め!」 @ 2013/01/03(木) 22:09:33.20 ID:mUcv24I2o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1357218572/

番外個体「安価であいつをミサカの玩具にしてやる」 @ 2013/01/03(木) 22:01:06.47 ID:RxXZSMKm0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1357218066/

【ストパン】ミーナ「母親って大変ね……」 @ 2013/01/03(木) 21:55:56.58 ID:dDNx3OGU0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1357217755/

ここだけ全員焼肉店(正月ボケを抜こう) 578店舗目 @ 2013/01/03(木) 21:29:57.67 ID:A+wKc5vxo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1357216197/

魔法少女まどか☆マギカSS談義スレその53 @ 2013/01/03(木) 21:28:38.01 ID:L2mQfEeDO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1357216117/



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