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サキュバス「私の心をあげるから、だから…!」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/20(土) 21:19:10.68 ID:XAoETEBB0

夕闇に飲まれかける中、誰かの声が微かに漏れた。

それは恐い物見たさに集まった人々かもしれないし、あるいは私の幻聴かもしれなかった。

否、私は全身全霊の力を振り絞って声を出している。

目前に私と同様に磔にされた女を、私は助け出したかった。


だが叶わぬ。

私の両手両足を上質な木造の床に縫い付けている、この脇差しや槍が阻んでいる。

立たせてくれない、傍らに落ちて私を待つ刀まで辿り着かせてくれない。



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ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
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旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
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木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
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いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
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【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
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こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
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【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
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アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/20(土) 21:34:41.00 ID:XAoETEBB0

この縫い付けられた腕さえ……片腕さえ動けば、私は彼女を救えるのに。

即座に他の腕と脚を切り落とし、彼女を囲む者達を地獄への引導を渡せるのに。

何故だ。

何故私は動けないのか。

こうしている間にも周りにいる男達は彼女を落とそうとしている。


遥か下で亡者の誘いの如く唸り声を上げている、巨大な鉄釜に。

正確には、灼熱の『湯』へ、だ。

磔にされたままの女を男達はゆっくりと運んでいる。
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/20(土) 21:50:59.48 ID:XAoETEBB0

……虚ろな瞳は私を見つめている。

涙を流し切ったせいか、微かに腫れた瞼は動いていない。

どんな女よりも、どんな人間よりも、美しい瞳の持ち主だった彼女。

いまや変わり果てた瞳の持ち主となった彼女の名は『蒼姫』、私の主であり『 この 』城の主でもある。


しかし……もうこの土地と城は彼女の物ではない。

すでに姫には家臣すらいないのだ。

4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/20(土) 22:05:19.57 ID:XAoETEBB0

ほんの千にも満たぬ姫の兵達は、幾千、万の軍勢に恐れを為して逃げ出したのだ。

僅かな家臣達は攻め来る兵から姫を逃がすため、城を駆けながら脱出法を見出だそうとした。

だが・・・

私以外の者は全員挟み撃ちにされた際の乱戦で命を落とした。


その直後、私と姫は押し寄せる兵に僅かな抵抗しか出来ず捕まった。

そして姫は一時は民衆の目前で慰み物にすらされかけたのだ。

5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/20(土) 22:38:02.46 ID:XAoETEBB0

「……!!」

当然私はそれを黙って見ている気は無い。

縫い付けられた四肢を引き千切る覚悟で息を吸い込んだ時。


姫が涙を溢れさせた瞳でポツリと、呟いたのだ。

『見せしめに犯されるより、私を釜茹でにして』と、彼女は懇願した。


それを耳にした敵の侍大将はしばらく考える仕草を見せた。

見せ、考えた後に男は姫の髪を掴んで言った。

そんなに死にたいか、死にたいのなら釜茹でにしてやろう。

醜い笑みを浮かべて、侍大将の男は兵に釜茹での準備をさせた。

6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/20(土) 22:59:57.27 ID:XAoETEBB0


今から行われようとしているのは、処刑だ。

民衆の前で何も知らないような……咲いたばかりの白百合とも言える女を、姫を……



「……ッ!!」

刹那、私の肘を貫いていた五寸釘を無視して引き上げた。


飛沫を散らす鮮血を一閃し、もう片腕に刺さった脇差しを抜き出す。

再び襲い来る激痛に吼えながら、抜き取った脇差しを振る。

もはや猶予は無い、目の前にいる男達は姫を磔にした丸太を投げ入れようとしている。


あの生き地獄と表現出来る、『風呂釜』に茹でられた湯に……彼女、を……
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/20(土) 23:12:04.70 ID:XAoETEBB0

両足首を瞬時に切断し、私は膝頭で跳んだ。

侍大将含め姫の周囲には8人。

それら全員を切り捨てれば、まだ姫だけは逃がせる。

雄叫びを上げ、刃を振るい、姫の名を呼んだ。


諦めてはならない、死んではならない、生きて欲しいのだ貴女には。



短い悲鳴が空に瞬いた。

足軽の男の首を切り裂き、横にいた同じ足軽の胸を貫いた。

まだだ、姫に手は未だ届かない!
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/10/20(土) 23:22:01.19 ID:21iX08F+o
読んでるだけで痛い気がする(´Д` )
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/20(土) 23:24:00.49 ID:XAoETEBB0

生魚を尾の先から頭まで潰したような音。

足首から先を切り落とした右足を、切断面で跳躍したせいで鳴ったものだ。

かつて感じた事の無い激痛、止まりかける足。

それでも・・・


私を見て、小さく何か言いかける蒼姫に視線を走らせた。


兵達は姫を投げるために、引くように助力をつけた。

そして。


そして・・・?


10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/20(土) 23:35:47.29 ID:XAoETEBB0


喉が裂けるような絶叫をし、私は姫を追った。


天守閣の最上から一階の鉄釜まではまだ距離がある。

まだ間に合う。

間に合うに違いない、間に合う筈なのだ。

一体彼女が何をしたと言うのか? 何故に、蒼姫はこれ程の苦を受け死ななければならぬのだ。


空中で見開かれた姫の瞳は、まだ私を見ている。

私を待っている、助けを求めている……!!

脇差しを投げ捨て、両手と足首を失った両足で手すりを蹴った。


11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/20(土) 23:47:20.19 ID:XAoETEBB0


手を、手を伸ばす。

異国の花を強調した風の蒼い服に指先が触れ、そのまま姫を引き寄せた。

かの太閤が誇る側室を基準としたふくよかな顔に比べれば、姫は細かった。

そして彼女は白い肌だった、とても、とても…白百合のようにだ。


この花を、私は守れなかった。


約束した事すら、叶えられなかった。

だから私は刹那に彼女を抱き寄せてからその美しい『蒼の瞳』に語った。

昨夜、彼女が私に告げた思いと同じ言葉を・・・

12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/21(日) 00:03:01.40 ID:cDIHT5Qs0


< ザァァ……

「あ、あれー? 見つからないなぁ」

< 「『サキュバス』! 試験時間はそろそろ終了だが、まだ続ける気か?」



サキュ「うわぁ! 待って下さい先生ぇ!」

サキュ(うーん……無いなぁ)

< チャパチャパ

サキュ「……」


< コツンッ

サキュ「?」クルッ

サキュ「・・・ きゃあぁあああっ!!」


13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/21(日) 00:19:11.82 ID:cDIHT5Qs0


先生?「どうしたのだ!」ザバッ

サキュ「ひ、人が…! 人が……!」

先生?「?」スッ

先生?「っ……!」


先生?(酷い火傷だ……皮膚が溶かされたように剥がれている)

先生?「! 足首まで切り落とされている……」

サキュ「!!」ビクッ

先生?「・・・」

先生?(もはや手遅れだろうが…)ぴと
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/10/21(日) 00:24:49.87 ID:cDIHT5Qs0


< ・・・

< ………トクン…

< …トクン……ドクン


先生?「!? まだ生きている! サキュバス、運ぶぞ!! 今なら高位回復魔法で蘇生出来る!」

サキュ「生きている…? わ、分かりました!」バサァッ

サキュ(改めて見ると酷い……腕にも何か刺さってた跡がある)

サキュ(待っててね、すぐに治してあげるから……)

15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(広島県) :2012/10/21(日) 00:28:43.32 ID:xqJozCFg0
支援するお!
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/10/21(日) 01:09:58.97 ID:UbM0db3po
いいじゃん
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/10/21(日) 06:01:10.51 ID:Jdz2/A2Do
>>11
手無くなってたんじゃないの?
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/21(日) 08:31:12.33 ID:9qaMnCaIO
>>17
よく読め
肘に刺さってた五寸釘を気合で抜いて、もう片腕に刺さってた脇差を引き抜いて、その脇差で両足首を切り落としてる

手は切り落としてない
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/10/21(日) 18:43:02.69 ID:cDIHT5Qs0


・・・チチッ・・チチッ…


< 「……何とか完治したが、再生した足が気になるな」

< 「元通りじゃないんですか?」

< 「殆ど元通りだろうが、やはりまだ馴染んでないだろう……まだな」

< 「ところで先生……さっきの『あれ』ってもしかして?」

< 「まだ他言は控えておけ、『彼』か『彼女』か分かるまではな」

< 「…はい、分かりました」

< 「失礼しました」ガチャッ


20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/21(日) 18:52:25.13 ID:cDIHT5Qs0


・・・

< 「そろそろ起きて良いぞ、何を警戒してるかは知らないが」

「……」

< 「おい、起きろ」スッ

バサッ


男「!」ビクッ

先生?「おはよう、まずは確認だ」

男「……?」

先生?「だんまりか、まあ気にしない」

先生?「君は……付いてるモノから察するにそうだな、男か?」ツンツン

男「!?」ビクッ

先生?「……感度は良好…やはり男か」

21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/21(日) 18:57:05.41 ID:cDIHT5Qs0


先生?「まぁ珍しくもない、人間の中には稀に私達を見たくて侵入する輩もいる」

先生?「だ・が」ジロッ

男「……」

先生?「君はあの川で何をしていたのだ? 何故あんな場所で瀕死に?」

男「……」じっ

先生?「……」

男「……、」パクパク

先生?「ん?」


男「!」

22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/21(日) 19:03:40.03 ID:cDIHT5Qs0


男「??、……!」パクパク

先生?「……」

先生?「まさか……声が出せないのか」

男「っ…! …っ」パクパク

先生?(いやそれだけではないな、唇の動きを追っても何を言っているのか分からない)

先生?(とりあえず辛そうだな、もう話さなくていい)スッ

男「……」コクン


先生?「言葉が話せないのか」

男「……?」

先生?「なら、何故だ?」

男「……?」

23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/21(日) 19:11:34.05 ID:cDIHT5Qs0


< コンコンッ

先生?「!」

先生?「誰だ」

< 「妾だ、教官」

先生→教官「な……! 副校長殿!?」


< ガチャッ


巫女?「うむ、ご苦労だな」スタスタ

教官「如何されました?」

巫女?「その者が例の『雄』か」

24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/21(日) 19:19:26.14 ID:cDIHT5Qs0


男「……」じっ

巫女?「……む」


教官「ど、どこでそれをお聞きに?」

巫女?「ん? 別にあのサキュバスという娘から聞き出した訳ではないぞ」

教官「では…」

巫女?「妾は読心魔法を常に発動させておるだけよ、気にするな」


巫女?「さてさて、問題の男はと言えば」チラッ

男「……」

巫女?「心は読めぬわ先程から見つめられ続けるわ、妾とてさすがに不気味に感じるな」

25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/21(日) 19:27:32.30 ID:cDIHT5Qs0


教官「彼が見つかったエリアの周囲は私とサキュバス以外にはいませんでしたが」

教官「……何者かが彼の両足首を切り落とした上で火傷を負わせたのは間違いありません」

巫女?「となると、心的障害かもしれぬな」

教官「もしくは火傷の後遺症かもしれません」

巫女?「うむ」


< かたんっ

巫女?「ん」

男「……」カキカキ

教官「……何か書いているのか」

26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/21(日) 19:34:39.83 ID:cDIHT5Qs0


男「……」ガサッ

教官「??」

教官「なんだ、これは……文字にも見えるが…」

男「……?」

教官「むぅ……?」



巫女?『驚いたな…そなた、異世界から来た人間なのか』


男「!!」

教官「は、は……?」

27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/21(日) 19:38:58.32 ID:cDIHT5Qs0


教官「ふ、副校長……これは一体?」

巫女?「『ニホンゴ』だ、異世界にある言語の1つだぞ?」

教官「異世界!?」

< ガサッ

巫女?「紙に書いたのは、『ここはどこだ』……だ」

教官「……」チラッ


男「……!」パクパク

巫女?『よいよい、筆談でなら大丈夫だろう』

男「!」

巫女?(これは面白い)

28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/10/21(日) 19:46:36.15 ID:cDIHT5Qs0


< 数分後 >


< ガチャッ

教官「やれやれ、凄い事になってきたな」

サキュ「あ、先生!」

教官「サキュバス? まだいたのか」

< ざわざわ・・・

教官「……一応聞くが何の騒ぎだ」


サキュ「うっかり話したら学園中に広まっちゃって♪」

教官「やはりお前じゃないか」ギリギリッ

29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/10/22(月) 00:12:05.28 ID:Yh5HxbRuo
男だったのね
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/22(月) 18:06:16.54 ID:8GIW6eIY0
sage進行なんだな

確かに最初に「私」って言ってたから女かと思った
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/01(木) 22:02:21.64 ID:MsrAbTa60

巫女?『……ふむ、信じ難い話だがそなたが本当の事を言っているのは間違いない』

男「……」

巫女?『そもそも【ニホンゴ】を理解している時点で、向こう側から来たんだろう』

男「?」コクン

巫女?『気にするな、まだそなたに話す事でもない』

巫女?『後でそなたに待機していて貰う部屋を教える、それまではこの浮き世とも呼べる世界を満喫するといい』

男「…」コクン


巫女?『あと、そなたの文字は妾にしか分からないが…』

巫女?『【そなたが】周りの言葉が分かるようにする魔法がある、それをかけてやろう』

< キィンッ

男「……?」

巫女?「うむ、妾の言葉が分かるか」

男「!」コクコク

巫女?「では成功であるな」

32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/02(金) 12:55:01.89 ID:nV+Nu+pN0
きたか
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/03(土) 07:22:38.35 ID:oCMfD9oA0


< ガチャッ


巫女?「では、しばらくは何かあれば妾が話しを聞こう」

男「…」コクン


< 「出てきた!」

< 「あれが男なの? あんまり私達と変わらないのね」

< 「でも、身長高いねぇ…」

< 「魔法は使えるのかしら」


男「?……?…」

巫女?「やれやれ、物珍しいからといってこんなに集まるとは……」

男「?」スッ

巫女?「うむうむ、そなたが物珍しいのだ」
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/03(土) 07:37:27.57 ID:oCMfD9oA0

巫女?「こらこら、お前達……これから授業の者は速やかに向かうのだぞ」

淫魔「今日は抜き打ち試験だったのでもうありませーん!」

巫女?「だったら各寮に戻らぬか馬鹿者!」

< 「ひぃっ、すいませんでした…」タッタッタ


男「……」

巫女?「さて、妾は少し生徒達を追い返しているからそなたは適当に散歩していると良い」

男「…」コクン

35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/03(土) 08:20:42.81 ID:oCMfD9oA0


< スタスタ・・・


男「……」スタスタ

男「?」ガチャッ


男は古く、錆びた扉を開けた。

どうやらその扉は巨大な建物の裏手にある、中庭に通じていたらしく、外の太陽光が男に指した。


男「……」スタスタ

< バタンッ!


男「…」スタスタ

36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/11/04(日) 01:02:10.41 ID:Pa70RofIo
乙?
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [ saga]:2012/11/04(日) 22:44:24.50 ID:Rhoe0arZ0


< ザァァァ・・


男「……」ザッ

男「…っ」


『こんにちは、あなたはだぁれ?』


男「……」スタスタ

男「……!」バッ

< タッタッタ…!!


38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/04(日) 23:05:08.09 ID:Rhoe0arZ0


< タッタッタ…!!


サキュ「・・・」ひょこっ

サキュ(つ、つい尾けて来ちゃったけど)スタスタ

サキュ(なんでここに来たんだろ、走って行っちゃったし……どこに行くのかな)

サキュ(奥は人間には危険何だけどなぁ)スタスタ


サキュ(……でも、人間の男の人は女より強いんだよね)

サキュ「様子見くらいなら……いいかな」スタスタ


39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/05(月) 03:21:46.27 ID:GhJDjDGr0


< タッタッタ……

男「……っ」ハアハア


男「……」キョロキョロ

予想外に広大だった中庭を抜けた先にあったのは。

鮮やかな緑の草原で突き立つ木々・・・。


男「……?」

男「…」スタスタ

男「……」

40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/05(月) 03:30:11.66 ID:GhJDjDGr0

不自然。

通常では有り得ない木の生え方に、男は再びその光景を見つめた。


男「……」

< ザァァァ・・

男「………っ」

男「………」パクパク


男「……」フラフラ


41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/05(月) 10:13:00.54 ID:GhJDjDGr0


< ガサッ

男「!?」ビクッ


< スタスタ……


サキュ「あの、そっち危ないです……」

男「……?」スッ

サキュ「うん、そっちの方向」

男「……」じっ

サキュ「あ…私はサキュバスって言います! 追いかけるつもりはなかったんですけど……」


男「…」フラフラ

サキュ「?」
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/05(月) 10:21:03.28 ID:GhJDjDGr0


男「……」

サキュ「……えーと」


サキュ(な、何だろうこの状況)


男「……」ジワッ

男「っ……」ポロポロ

サキュ「え!? や、やだ…どうしたの? なんで泣くんですか…!?」

男「…っ……っ」ポロポロ


43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/05(月) 10:48:54.40 ID:GhJDjDGr0


…… とても、とても。

遠い場所に自分が来てしまったと、男は知った。

夢だとすら思った。

ほんの数刻前に起きた悲劇は夢で、この美しく妖艶な美女しかいない世界もまた夢の続きだと。

見慣れた芝生を見て、微かに吹いた風に当たって、歩いていけばいつか夢から覚める筈だ。


そう思い考えていた。


だが、『声をかけられて夢から覚めるように驚いた』時。

男はこの世界が、自身の生きる現実であると悟った。

44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/05(月) 11:13:11.35 ID:GhJDjDGr0
サキュ「ぁ、ぇと…」オロオロ

男「……」ポロポロ


男の涙を見て、とても困った顔をしている少女。

その少女の瞳が蒼だった事に気がついた男は、密かに感じていた。

夢ならば、きっとこの少女が……私の最愛の主君なのかもしれない。

この美しい夢を見る前に見た惨劇の夢を、掻き消してくれる役目なのかもしれない、と。



だからこそ男は・・・耐えられなかった。

もしかしたらやはりこれは現実で、『蒼姫』はあの瞬間に自分と共に死んだのではないか?

その答えに至ってしまう事が、限りなく耐えられなかった。


男「 ――――ッッ!! 」バッ


45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/05(月) 11:20:22.32 ID:GhJDjDGr0

サキュ「!?」

< タッタッタ…!!


サキュ「だ、駄目! そっちは人間じゃ……!!」



男「・・・!!」タッタッタ



―――― フッ

男「……っ!?」ヒュッ



46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/05(月) 12:22:02.50 ID:GhJDjDGr0



< 「……??」

< 「…!! ……っ」

< 「?、…」


< ガチャッ

< バタンッ



< スタスタ

< 「やれやれ、中々面倒な奴ではないかそなた」

巫女?「おはよう、男」

男「……」コクン

47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/05(月) 12:48:11.91 ID:GhJDjDGr0


巫女?「そなた、『禁止エリア』に落ちたそうではないか」

男「……?」

巫女?「不可視の穴から入れる空間でな、内部は薄気味悪い森になっているのだが…」

巫女?「『入口』は遥か頭上にあって、とても人間では脱出出来ぬのだ」


巫女?「……そなたはそこへ頭から落ちて瀕死だったのをサキュバスが連れて来たのだぞ」

男「………」

巫女?「事情はサキュバスからある程度は聞いた、何かそなたの事情があって逃げようとしたのだろう」

男「……」

巫女?「はっきり言おう、元の世界へは決して帰れぬ」

男「……!!」

48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/05(月) 12:58:07.29 ID:GhJDjDGr0

巫女?「そなたのいた時代がいつかは分からぬ、だが聞いた事はあるであろう」

巫女?「そなたは、いわゆる……『神隠し』に巻き込まれたのだ」

男「……っ」キョロキョロ

< ガシッ


男「……」カキカキ

『では、死すべき私が生きてこの異なる世界にいるのは神や仏の意志だと?』


巫女?「左様、そなたや妾も知らぬ超常の存在が起こす現象が元凶でありきっかけなのだ」

男「……」

男「…」カキカキ


『何故、そこまで言い切れる』


49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/05(月) 14:35:56.77 ID:GhJDjDGr0

巫女?「今は大半の力を失っているのだがな、これでも元神なのだぞ?」

男「………」じっ

巫女?「よいよい、他の娘達に話しても信じては貰えなかったしな」

巫女?「だが今の妾が本気を出しても小さな人間の町位ならば……消し炭に出来よう」

男「!」

巫女?「そんな事はしないがな、この世界は妾にとっても大切な世界なのだ」


男「……」カキカキ

『あの少女が助けたと言っていたが、どうやって?』


巫女?「面白い質問だな、不可視の空間ゆえに縄の類いは意味を成さない」

巫女?「なれば答えは1つ、『翼』で飛んだのだ」

50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/05(月) 15:02:16.21 ID:GhJDjDGr0


巫女?「そなたの時代では聞いた事もないだろう、リリスと呼ばれる魔性の存在をな」

男「……」

巫女?「この妾達がいる建物は巨大な学舎、不老不死に限りなく近い『リリス』の子供達を育て上げている」

巫女?「そなたを最初に見つけ、先程助けた少女のサキュバスも、最下級の『淫魔』クラスだ」


男「……」カキカキ

『下級、彼女に位が?』


巫女?「全員にだ、そなたにしてみれば胸糞悪い話しかもしれぬな」

巫女?「それも仕方ないのだ……いつか来る時に向けて、な」

男「……」
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/05(月) 15:30:33.87 ID:GhJDjDGr0

< コンコンッ


巫女?「……ふむ、早かったではないか」

< ガチャッ


女白服?「あぁ、少し痛い目にあったが」

巫女?「クックック、そなたを愛するが故よ」

女白服?「……その男か、異世界から来たのは」

巫女?「うむ」


男「……」

女白服?「なるほどな、悪いが席を外して貰おうか」

巫女?「男、とりあえず今夜はそなたを快く泊めてくれるらしい娘の部屋で過ごせ、良いな?」

男「?」

巫女?「扉を出れば分かる、ちゃんと礼やら何やら言うようにな」


女白服?「……」くすっ
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/05(月) 15:35:00.89 ID:GhJDjDGr0


< 「また話しの続きをしてやろうぞ、男?♪」

< 「……やれやれ」


< ガチャッ

< バタンッ


男「…!」

サキュ「あはは、こんばんは男さん」

男「…?」スッ

サキュ「はい、私のお部屋に泊まって下さい♪」


サキュ「これから当分、よろしくお願いしますね男さん!」


53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/05(月) 15:36:06.60 ID:GhJDjDGr0


第一部、終了

第二部に続く
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/05(月) 15:49:49.98 ID:kK/+4L5b0
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/11/06(火) 07:20:26.63 ID:vSspW2V0o
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/06(火) 17:09:44.63 ID:0KAgImtS0


女白服?「…異世界から来た男、か」

巫女?「精神的にショックが大きくてな、逃げ出そうとしてまた瀕死のザマよ」

女白服?「意外だな」

巫女?「何故?」

女白服?「あちら側の世界に比べればこの『養成学園』は天国に近いと思ってな」

巫女?「見つかった時の状態を見ればそうは思うまい」

女白服?「瀕死だったと聞いた、具体的には?」

巫女?「ボロボロだよ……両腕には何かが刺さった後、両足首は切り落とされ、全身重度の火傷」

57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/06(火) 17:25:58.62 ID:0KAgImtS0

女白服?「……随分な姿で来たな」

巫女?「うむ、教官の処置が遅れていれば生きてはいまい」

女白服?「しかし……悪い気配はしなかった」

巫女?「妾もそう思う、心が読めないのには驚いたが」

女白服?「益々ナゾだな」


巫女?「妾が分かる範囲だと……日本人、時代は明治初期から戦国時代といったところか」


女白服?「範囲が広いぞ」

巫女?「どうも癖のある文体でな、『ペン』に驚かないで使ったりするし」

女白服?「なるほどな、後は直接聞くしかないわけだ」

巫女?「……やれやれ、妾達に心を開いてくれるか心配なものだ」

58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/06(火) 17:36:05.48 ID:0KAgImtS0


サキュ「男さん!」

男「!?」ビクッ

サキュ「男さん、砂糖入れますか?」カチャカチャ

男「……」コクン

サキュ「そっちの世界にも紅茶あるんですねー!」カチャカチャ

男「…」コクン

男「……」

< スッ

サキュ「『ドリームランド』では人間もリリスもみーんな好きな飲み物なんですよぉ」

男「……」スッ

男「…」ごくごく


サキュ「・・・」


男「……」コクン

サキュ「美味しいですか」

男「……」コクンコクン

サキュ「良かった?」

59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/06(火) 17:41:40.88 ID:0KAgImtS0

サキュ「??♪」ジー

男「……」

サキュ「?♪」じっ

男「?」ポンポン

サキュ「そのベッドですか? 使って良いですよぉ」

男「……」コクン


< もぞもぞっ


サキュ(人間の男性も普通に寝るんだぁ)じっ

男「……」ネニクイ

60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/06(火) 17:50:19.28 ID:0KAgImtS0

男「……」もぞっ

サキュ(・・・)

サキュ(綺麗な顔だなぁ……人間の年齢でいうとまだ10代かな?)

サキュ(髪の毛は再生魔法の副作用で銀色になっちゃったけど、元は何色かな)

サキュ「……」


サキュ(…そう言えば……さっきはどうして泣いてたんだろう)

サキュ(やっぱり、帰りたいのかな)

サキュ(……)


61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/11/13(火) 23:57:48.81 ID:vA8BLtczo
まだか
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/29(木) 10:32:41.99 ID:4rUQmR3A0
まだか
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/05(水) 21:07:12.41 ID:tLILtvO5o
エタルな.....
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/11(火) 01:15:48.10 ID:4Y91raUxo
続きは無いのでしょうか
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/11(火) 19:00:05.93 ID:pRbQE3GQ0
続きは少々お待ちください、只今本編を進めていますので良ければそちらをどうぞ

66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/11(火) 19:58:31.83 ID:4Y91raUxo
本編って?
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/16(日) 15:00:03.09 ID:Pf+CvUSOo
本編詳しく
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/16(日) 15:08:48.54 ID:Pf+CvUSOo
ちょっとググったらわかった
あの世界と繋がってんのか

>>66
確証はないが、多分
村娘「勇者様ですよね!」勇者?「……違うが」

だと思う
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/25(火) 06:23:37.63 ID:c5dC4P/IO
へえ
70 :アセロラ [sage]:2012/12/25(火) 13:27:39.57 ID:tb10sgzP0
エロかと思ってみたら最初の描写のグロさ・・・
しかもシリアスなんだろうな・・・



ま、面白いからいいけど!
あと>>1
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/12(土) 10:31:42.18 ID:mav5XjwIO
まだか
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