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【咲SS】えり「解説は三尋木プロでお送りします」咏「わっかんねー」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:11:35.60 ID:v1ePjb5d0

■テレビ局
□2013年06月12日

えり「……ハァ」

先輩アナウンサー「どうしたの、ため息なんてついちゃって」

えり「あ、先輩」

先輩アナ「何かあった? お母さんから見合い用の写真が届いたとか?」

えり「いやいや、そういうのじゃないですから」

先輩アナ「なら三尋木プロのことかー」

えり「……ええ」


えり「……何で私は三尋木プロと組まされることが多いんでしょうか」

先輩アナ「いーじゃない三尋木プロ。ちっちゃくて可愛いしさ」

えり「見た目はそうかもしれませんけど……」

えり「喋らなかったり、的外れなことを言うわけでも無いですし」

えり「むしろ、すごく鋭い意見を言ってくれたりしますが……もう少し真面目に仕事してくれないんでしょうか」

先輩アナ「あはは。あんまり眉間に皺寄せてちゃダメよ」

先輩アナ「まあ、もっと一緒に仕事したくない人でも想像して、その人よりマシだと考えなさい」

えり「仕事したくない人、ですか」




えり「……そういえば先日、長野の応援に行った時の話なんですが――」


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【安価】上条「とある禁書目録で」鴻野江「仮面ライダー」【禁書】 @ 2025/06/09(月) 21:43:10.25 ID:qDlYab/50
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ツナ「(雲雀さん?!)」雲雀「・・・」ビショビショ @ 2025/06/07(土) 01:30:36.87 ID:AfN9Rsm0O
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【安価コンマ】障害走を極めるその5【ウマ娘】 @ 2025/06/06(金) 01:05:45.46 ID:RaUitMs20
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:12:25.17 ID:v1ePjb5d0

■インターハイ団体戦 地区予選 長野県会場 実況室
□2013年06月02日

えり「次鋒後半戦、オーラスに突入です」

靖子「…………」モグモグ

えり「いまのところトップが清澄高校、二位が龍門渕、三位が風越、四位に千曲東」

えり「清澄高校の宮永が稼いだ点を活かし、次鋒の片岡がさらに点差を広げています」

えり「このまま清澄高校の独走で終了するのでしょうか」

えり「解説の藤田プロ、どう思われますか?」

靖子「まあ、そう簡単にはいかないだろ」モグモグ

えり「……ここで風越の文堂選手がリーチ」


えり「一発ツモ。裏が乗って跳満となり、龍門渕が親被り」

えり「二位と三位が入れ替わりました」

靖子「ごちそうさん」

えり「……昼休憩の後に中堅戦を開始します」
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:13:06.39 ID:v1ePjb5d0

■長野県 インターハイ地区予選会場 運営側控え室

えり「……藤田プロ、少しよろしいですか?」

靖子「ん? どうかした?」

えり「仕事中にカツ丼食べるの、やめていただけませんか」

靖子「え? ああ……ごめん、いつもの癖で。気をつけます」

えり(この人、いつもこうなのか……噂は聞いてたけど、まさか本当だったとは)


えり「……よく、食べられますね」

靖子「まあ、そこそこには」

えり(午前中だけでカツ丼三杯も食っといて、何言ってるのこの人)

えり(いくら地区予選っていっても、度が過ぎてる……出場してる子達に申し訳なく無いのかしら)

えり(……苛ついてきた)




えり(前向きに……せめて、何かいいところが無いか探していきましょう)

えり(藤田プロの良いところ――)
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:13:47.10 ID:v1ePjb5d0

えり(藤田靖子――大学、実業団を経て佐久フェレッターズに加入したプロ雀士)

えり(中学時代から麻雀をしていたものの、目立った活躍は残していない)

えり(高校三年生にして初めてインターハイ予選を団体戦、個人戦の両方で全国行きのキップを掴む)

えり(……が、団体戦一回戦で妙香寺と当たって敗退)

えり(個人戦で妙香寺の三尋木咏と再戦するも敗北し、最後のインターハイを終えている)

えり(この人が卒業してから長野の名門、風越が地区予選六連覇という黄金時代に突入するわけだけど)

えり(……まあ、それは置いといて)

えり(スカウトから声も掛からなかったこともあり、大学へ進学することになる)

えり(偏差値的に考えると、結構良いところに行ってるのよね……知名度はともかく)




えり(大学進学後も麻雀を続け、二年生でインターカレッジデビューを果たす)

えり(インハイ時代よりも活躍はしたものの、それほど際立った成績は残していない)

えり(四年生で団体戦先鋒を務めるも、二年生、三年生時より成績を落としている)

えり(大学時代では大将を務めた三年生の頃が一番活躍しており)

えり(この頃から、彼女の特殊性が垣間見えはじめたと言われている)

えり(しかし、当時のスカウト達は四年時の成績からドラフト候補から彼女を外している)
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:14:21.59 ID:v1ePjb5d0

えり(大学卒業後は富山の実業団へ)

えり(それほど強いチームではなく、6月頃には日本リーグ優勝はほぼ絶望視されていた)

えり(完全に優勝の目が消えた頃から彼女は試験的にオーダーされはじめる)

えり(一年目ながらも成績を残し、二年目は最初からレギュラー入りも確実と言われていた)

えり(……が、監督が解任。新監督との不和が原因で冷遇され始める)


えり(2010年5月5日、富山は日本リーグ優勝候補の右京・天王寺の2チームと同卓することになる)

えり(各チーム10万点持ちでスタートした団体戦だったが、副将戦終了時に富山が持っていたのは5300点のみ)

えり(トビ終了となった場合、チームではなくトビ終了になった選手一人にトビ率が記録される)

えり(そのため、富山の監督は敗戦処理目的で藤田靖子を大将としてオーダー)

えり(仮にトビ終了は無かったとしても、トップとは15万点差)

えり(半荘二回では、良くても三位終了が関の山と言われていた場面だった)

えり(しかし、藤田靖子は半荘二回で15万点差を覆し、団体戦は富山が1位で終了している)

えり(その後、チームが大敗している状況で何度かオーダーされるが、それを全て覆し逆転)

えり(実業団での活躍がスカウトの目に止まり、翌年は即戦力を期待されプロデビューを果たす)


えり(プロ入り後もチームが負けている時にオーダーされることが多かったものの)

えり(実業団時代とは違ったのは、勝つことを望まれていたということ)

えり(プロ入りから現在に至るまで、ラスからのまくりトップ率が八割という成績を叩き出している)

えり(まくりトップ率に関する賞は無いが、このことから彼女は『まくりの女王』と呼ばれるようになった)
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:15:28.66 ID:v1ePjb5d0

えり(……三尋木プロの犠牲者でもある辺りは、親近感が沸くかも)

えり(新人王争いに加わったこともあるものの、その年は戒能良子が取得)

えり(今年でプロ三年目。未だ無冠ではあるものの、注目されている選手でもある)


えり(ただ……解説は必要最低限のことしか言わない)

えり(好意的に解釈すれば要点だけ言っているところもあるけど、生返事することも少なくない)

えり(さすがに、仕事中にカツ丼食べるのは擁護できない)

えり(プロという以前に……社会人としてどうなのかしら)

えり(この人とは全く反りが合う気がしないけど、そんな理由で仕事を放り出すことこそ社会人失格)

えり(これは仕事、この人は仕事相手と割りきりましょう……うん)
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:16:11.86 ID:v1ePjb5d0

えり「藤田プロ、少しよろしいですか?」

靖子「んー?」

えり「現在、清澄高校が1位、風越が2位、龍門渕が3位、千曲東が4位となっていますが」

えり「中堅戦以降の展開はどうなると思いますか?」

えり「中堅戦が始まる前にお聞きしておきたいのですが」

靖子「あー、まあ、順当に行けば清澄と龍門渕がトップ争いかな」

えり「風越は?」

靖子「暫定2位ではあるけど、ちょっと厳しいかな」

靖子「吉留未春、深堀純代、池田華菜と粒ぞろいではあるんだけど、清澄と龍門渕と比較すると心もとない」

靖子「池田華菜あたりは他県なら大活躍できると思うんだけど、今年も大将にオーダーされてるからなぁ」

えり「やはり、天江衣選手相手だと厳しいですか」

靖子「おそらくね……あの子には少し、同情している」

えり(同学年に全国でも屈指の打ち手がいるから、かな?)

えり(藤田プロの場合は三尋木プロか。ただこっちは地区予選の時点で壁になっているけれど)
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:17:03.52 ID:v1ePjb5d0

靖子「で、清澄と龍門渕のどっちが勝つかについてだけど」

えり「はい」

靖子「少し、清澄の方が分が悪いかな」


靖子「清澄が勝つとしたら、現在の点差を維持して逃げ切る」

靖子「逃げきれずに天江衣に掴まる可能性もあるけどね」

靖子「今年の大将は宮永咲じゃなくて原村和だからね」

靖子「原村和が天江衣にどう対応するかは、ちょっと楽しみかな」

靖子「……清澄といえば、一時は二回戦敗退が見えていたそうだけど」

えり「二回戦で鶴賀学園と戦った時のことですか?」

えり「中堅戦で役満二回も上がられましたからね……団体戦とはいえ、普通なら勝負がついていたのですが」

えり「大将戦でまくり返して二回戦突破してますね」

靖子「鶴賀も決勝に来てくれた方が面白かったなー、去年の決勝と同じだし」

えり「千曲東はダメそうですか?」

靖子「下手したらトビ終了するかもね」

靖子「点数状況次第では天江衣に対する楔として機能するかもしれないけど」
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:18:05.37 ID:v1ePjb5d0

靖子「去年と比べれば一番戦力が落ちていないのが龍門渕、っていうのも勝ちそうって理由の一つ」

靖子「前年度のメンバーが三年になっただけだからね」

靖子「まぁ……龍門渕が勝ちそうってのは、私が天江衣贔屓ってこともあるけど」

えり「いえ……十分客観的かと」


えり(真面目に語ってくれれば、それほど変なこと言うわけじゃないのね)

えり(こういう話を仕事中にうまく引き出すのが私の役目なのかも)

えり(……頑張らなきゃ)




スタッフ「藤田プロ、針生さん、そろそろ準備してくださーい」

えり「はい」

靖子「はいよー」

スタッフ「あ、それと藤田プロ、新しいカツ丼です」

靖子「お! 今度はエビフライも乗ってるのか」

えり(うん……この人との仕事はこれっきりにしたいな)




えり(オブラートに包んで言えば、こんなダメ社会人のプロ雀士もいる)

えり(けど、だいたいの人はちゃんと仕事してくれるんだけど)

えり(その中で一際才能がある人といえば……やっぱりあの人かな)
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:19:04.37 ID:v1ePjb5d0

■秋季大会 西東京地区 実況室
□2012年09月16日

えり「白糸台中堅、渋谷尭深。一打目から役牌候補の対子を崩しました」

えり「彼女が一打目に捨てた牌はオーラスの配牌に戻ってくるとのことですが、この第一打はそのためでしょうか?」

健夜「そうでしょうね……戻ってくることに関しては三尋木プロが言っちゃったんですよね」

健夜「特殊な子の性質をバラしてしまうのは、正直どうかと思いますが」

健夜「彼女の場合、それが必ずしもマイナスには働かないんですよね」

えり「と、言いますと?」


健夜「オーラスに役満を警戒した他家に連荘を躊躇わせるという効果もあるんです」

健夜「連荘すればするほど、渋谷選手に牌を仕込むチャンスを与えてしまいますからね」

健夜「奈良の阿知賀女子などは、今年の準決勝時点でそのことに気づいていた節がありますが……」
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:19:40.94 ID:v1ePjb5d0

健夜「団体戦という条件下で、他家がその事に気づいていないか、気づいているかで彼女の役割は変わってきます」

健夜「気づいていないなら役満上がって点を稼ぐ」

健夜「気づいているなら連荘を躊躇わせ、中堅戦を早めに終わらせる」

健夜「後者なら大量得点してリードしていないと効果的に機能しませんけどね。完全に、というわけではありませんが」

えり「全国屈指のスコアラーだった宮永照選手は既に三年生、引退してしまいましたが」

健夜「ええ。ですが、秋季大会からは大星淡選手が先鋒にオーダーされています」

健夜「中堅までの得点力はそれほど変わっていないと思います」

健夜「夏のインハイより戦力は落ちていますが」

えり「三年生が引退した以上、それは仕方がないとは思いますが……」


健夜「今年の白糸台は過去最強と言われていましたが、際立って強かったのは二人だけです」

健夜「宮永選手が抜けた穴を埋めれるかどうかが、今後の白糸台の課題だと思います」

健夜「……ただ、来年のインターハイに間に合うかどうか」

えり「ま、まあ、それだけ宮永選手が凄かったんだと思いますが」

健夜「そうですね」

健夜「一年生の大星選手はともかく、二年生の渋谷選手と亦野選手はこれからを担うに足り――」




えり(……今日は、いつもに増して辛口の気がする)
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:20:23.74 ID:v1ePjb5d0

■秋季大会 西東京地区 運営側控え室

えり「小鍛治プロ、お茶でよろしかったですか?」

健夜「え? あ、ああいいよ、自分で注ぐから」

えり「自分のも注ぐついでなので、お気になさらず」

健夜「じゃ、じゃあお言葉に甘えて……」


えり「どうぞ」

健夜「ありがとう」

えり「……今日はいつもより辛口の気がするんですが、何かありました?」

健夜「え? そ、そうかな……いつも通りのつもりだったんだけど」

えり「そ、そうですか……」

えり(アレでいつも通り……)

健夜「……何か、針生さんに引かれてる気がする」

えり「いえ、小鍛治プロの印象に変化はありませんので安心してください」

健夜「ま、前から引かれてたんだ……」
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:21:15.69 ID:v1ePjb5d0

えり「別に引いてはいないのですが……」

えり「小鍛治プロは、麻雀だと自信に満ち溢れてるなぁ、と」

健夜「んんっ……そうかな?」

えり「はい。小鍛治プロの成績を考えれば当然の弁だと思いますし」

えり「よく組まれてる福与アナウンサーは、その辺を考えずにズケズケと色んなことを言ってますよね……」

健夜「う、うーん……まあ成績とか考えず、普通に接してくれる方が有難いけど」

健夜「こーこちゃんは、何というか……うん、ちょっとアレなところがあるよね」

えり「この間も寝てるところをネット配信されてましたね……」

健夜「そうなの!?」

えり「え、ええ……知らなかったんですか?」

健夜「……ちょっと、こーこちゃんとお話しないとね」

えり(あ……ちょっと麻雀に関わってるときの雰囲気に戻った)


えり(解説は辛口で、選手を褒めることは殆どしない)

えり(でも、それを裏付けるだけの実績と実力を持っている)

えり(私にはかなりキツく聞こえるけど、本人にとっては当たり前のことを言ってるんだろうな……)
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:21:46.00 ID:v1ePjb5d0

えり「そういえば小鍛治プロ」

健夜「ん?」

えり「最近、移籍を考えられてると聞きますが、本当なんですか?」

健夜「う……実は、まだ迷ってるだけだったんだけど」

健夜「つくばの監督やチームメイトの耳に入っちゃって、皆もそうした方がいいって勧めてくるんだよ……」

健夜「みんなして追いだそうとしなくてもいいのに……こーこちゃんも口が軽いし」

えり「きっと、小鍛治プロにもっと活躍してほしいからですよ」

健夜「うん……そうなんだろうね……みんな優しいもん」


えり「移籍して、本格的に第一線に戻ってくるとか」

健夜「んー……そうできればなぁ、と」

えり「何かキッカケがあったんですか?」

健夜「……今年のインハイかな」

健夜「あれ以来、ちょっと思うところがあって」
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:22:33.29 ID:v1ePjb5d0




えり(小鍛治プロが第一線に復帰する)

えり(現在のトッププロ達は戦々恐々としているのだろうか)

えり(それとも、喜んでいるんだろうか)


えり(……あの人は後者の気がする)
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:23:29.12 ID:v1ePjb5d0

■インターハイ個人戦 地区予選 南大阪地区 運営側控え室
□2013年06月08日

えり「……瑞原プロは凄まじいことを再確認しました」

はやり「えっ、何が」

えり「今日の解説です」

はやり「あ、あー! そ、そっちの話かぁ!」

はやり「てっきり、見た目の話かとー……」

えり「何で自分で言って、自分で落ち込むんですか」

えり「気にしているならやめればいいのに……」

はやり「だってだって、これがお仕事だもーん」

えり「……差し出がましいとは思いますが、そろそろアイドル引退されるか方向性変えられた方が」

はやり「あー! あー! 聞こえなーい!!」




えり「……話戻させていただいて、今日の解説ですが」

はやり「うん」

えり「どうやったら瑞原プロのように解説できますか?」

はやり「え? えりちゃんってアナウンサーだよね?」

えり「そうなんですが……瑞原プロは私が目指している境地に既に立っておられるようなので」

はやり「自分で言うのもなんだけど、はやりのようなアイドル路線は正直やめたほうが……」

えり「…………」

はやり「やめて! ジョークだから! そんな冷たい目で見ないで!?」
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:24:27.59 ID:v1ePjb5d0

はやり「え、えっとぉ、えりちゃんは私のような解説をしたいの?」

えり「はい。といっても、あくまでアナウンサーとして瑞原プロ並みの解説をしてみたいのですが」

はやり「例えば、はやりのどんなところを?」

はやり「み、見た目と言動以外かな!?」

えり「何で自虐に走りたがるんですが……まあ合ってますが」

はやり「フォローしてよ!」




えり「そうですね……例えば、瑞原プロは局毎の状況を理解してもらうこと意識してますよね?」

えり「それプラス、打っている人たちの打牌がどういう意図を持っているかを」

はやり「うん、そうしてるつもり」

はやり「ただ、結構トンデモな打ち方する人は完全にフォローしきれないかなあ」

えり「私も意識しているつもりなのですが……できているかどうかは、ともかく」

はやり「いや、十分できてるよ。自信持って!」

えり「ありがとうございます」
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:25:12.67 ID:v1ePjb5d0

えり「で……私がやりたい瑞原プロのすごいところの一つが、牌の残り枚数把握の早さです」

えり「ほとんど一瞬で把握されてますよね?」

はやり「んー、一瞬なんてことはないよ?」

はやり「特に注視してた種類の牌を喋りながら順番に挙げていってるだけだし」

はやり「入り目の枚数も四向聴ぐらいの時までしか数えてないから、私なんてまだまだ」

えり「何かコツとかありませんか?」

はやり「コツ……コツかぁ……何となくやってるとしか」

はやり「習慣づいてるんだと思う」

えり「習慣、ですか」


はやり「しいてコツを言うなら、麻雀をいっぱい打つとかかな? あとは牌譜検討もいいかも」

はやり「えりちゃんも学生の頃から打ってるよね?」

えり「仕事しだしてからは自分で打つことは少なくなりましたが……一応は」

はやり「まあ、意識しつつ仕事続けていけば、私ぐらいなら直ぐに追いつけるよ」

えり「瑞原プロレベルに追いつくのは不可能と思いますが、努力はするべきですよね」

はやり「頑張って! そのままプロ雀士になって牌のおねえさん二号に」

えり「はあ?」

はやり「ごめんなさい冗談です」
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:26:04.26 ID:v1ePjb5d0

はやり「あ、ごめん、電話だ」

はやり「ちょっと出てくるね?」

えり「はい」


えり(……瑞原プロとの仕事は楽だけど、自分の力の無さを痛感するなぁ)

えり(今日だって、複数ある個人戦の卓を解説しつつ横目で追って、切り替えてもノータイムで説明してくれてたし)

えり(ただ場の状況を説明してくれるだけでも十分なんだけど……)

えり(瑞原プロの場合、この選手は去年殆ど同じ状況で同じ打牌を選んだとか)

えり(いつもはもう少しゆったりと揃えていくけど、今日の相手はそれでダメだったから和了優先してるみたいとか)

えり(過去の打ち方や状況も把握してるのよね、牌譜とか見て)

えり(……試合前にペラペラっと見てるだけなのに、何で覚えられるんだろう)




はやり「うー……戻りましたー」

えり「お帰りなさい……浮かない顔ですが、何かあったんですか?」

はやり「ちょっとチームの勧誘がうまくいってなくて」
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:26:39.78 ID:v1ePjb5d0

えり「勧誘……ああ、ハートビーツ大宮のですか」

えり「そういえば、瑞原プロは選手と監督兼任してましたね」

はやり「えへ、頑張ってますよー」

えり「ちなみに誰の勧誘がうまくいってないんですか? 高校生だと今年は荒川、神代、天江あたりとか」

はやり「あ、その三人はもう当たってもらってて全員空振りそう」

はやり「白糸台の子に話をしにいってもらってたんだけど、ちょっと条件面で難航してて……」

えり「金銭的な話ですか?」

はやり「そうじゃないんだけど……あ、一応オフレコでよろしくね?」

えり「もちろん」


えり「金銭面でなければ……」

えり「ああ……瑞原プロと同じような格好しろって話ですか? それは確かにキツい」

はやり「泣いていいかな?」
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:27:14.56 ID:v1ePjb5d0

はやり「で、オーナーが『この条件は絶対によろしく!』って言ってる条件に首を縦に振ってもらえないの」

えり「そんな難しい条件なんですか?」

はやり「人によってはそうなのかも……単に、メガネやめてコンタクトレンズにしてくださいって話で」

えり「は?」

はやり「ほら、ウチのチームの母体会社がコンタクトレンズ販売してるから」

えり「……そうでしたっけ?」

はやり「そうなんだよ。ハートアップはコンタクトレンズ専門店だから」


はやり「で、白糸台のメガネちゃんがコンタクトは絶対に嫌だって頑として譲ってくれないんだー」

はやり「……コンタクトは怖いから、って」

えり「ああ……何となくわかりますが」

えり「いいじゃないですか、メガネぐらい」

はやり「私もそう思うけど……オーナーとの交渉も必要かなぁ」
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:28:02.95 ID:v1ePjb5d0

えり「プロ雀士にプロ雀士チームの監督に、対局の解説……瑞原プロは色々できますよね」

はやり「アイドルもやってます☆」

えり「そうですねーすごいすごい」

はやり「だんだんとえりちゃんに蔑まれるのが快感になってきたよ……!」

えり「やめてください」


えり「……解説も実況も、瑞原プロ一人で出来ますよね」

えり「私がいなくても」

はやり「それは無理かな」

はやり「会話って一人じゃできないでしょ?」

はやり「実況と解説も会話と同じで、キャッチボールしてこそ分かりやすいと思う」


はやり「例えば、私が適当に場の状況を説明する」

はやり「それを聞いたえりちゃんが総括として『つまりAが正解なんですね』と要点だけまとめてくれる」

はやり「説明的には私の説明だけでも一応はオッケーだけど……」

はやり「さっき言ったように、二重に説明した方が理解してもらう必要があると思うなー」

はやり「もちろん私がどっちもやっちゃう方法もあるけど」

はやり「私の説明で一区切り、えりちゃんの説明で一区切りして、区切りごとに考えてもらう方が理解しやすんじゃないかな」
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:28:47.72 ID:v1ePjb5d0

はやり「あとは……健夜ちゃんと福与ちゃんなんか二人だからこそ光るペアだと思うよ」

えり「小鍛治プロと、福与アナウンサーが?」

はやり「うん。健夜ちゃんは麻雀に関してなら一人でもズバーッと説明とかできちゃうけどね」

はやり「ただものすごい辛口」

はやり「そこを福与ちゃんが茶化して毒気を抜いてるんだよね」

えり「……なるほど」

えり(私と組んだ時の小鍛治プロがいつもより辛口に感じたのは、福与アナじゃなかったってこともあるのかな)

はやり「まあ、どっちも天然でやってそうだけどね」

えり「そうですね……」






えり(二人いてこそ、なのかもしれないけど)

えり(私は、瑞原プロぐらい仕事が出来るようになりたい)

えり(……見た目と言動は置いといて)
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:29:45.56 ID:v1ePjb5d0

■テレビ局
□2013年04月10日

えり「大沼プロ、収録お疲れ様でした」

秋一郎「あー……お疲れ」

秋一郎「一時間収録してただけで疲れた……もう歳だな」

えり「まだまだお元気そうに見えますが……背筋とか同年代の方と比べるとすっと伸びてますし」

秋一郎「その辺は耄碌爺が見栄張ってるだけだよ」


秋一郎「以前、孫の活躍見るついでに、と軽い気持ちで団体戦の解説やった時は死ぬかと思った」

えり「ああ……あれは半日仕事ですからね」

秋一郎「幸い、副将でトビ終了が出て何とかなったが……」

秋一郎「麻雀も含めて、そろそろ引退を考えないといけないらしい」

えり「そうですか……私も含め、大沼プロには根強いファンの方がいらっしゃいますから、皆さん悲しむとは思いますが」

秋一郎「有難いことだ。……まあ、書く方に集中したいという事情もあるが」
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:30:37.78 ID:v1ePjb5d0

??「あ、あのぅ……大沼プロ、サインいただけませんか?」

秋一郎「ああ……」

??「ありがとうございます! 中表紙にお願いできますか?」

秋一郎「私の本か……ありがとう、読んでくれてるんだな」

??「大ファンです! この主人公が流し満貫で逆転したとこなんて特に」


えり「……瑞原プロ?」

はやり「ぎくぅ! ひ、ヒトチガイデスヨー」

えり「やっぱり瑞原プロじゃないですか」

はやり「私は通りすがりのファンデスヨー」

えり「何言ってるんですか。いつもの格好じゃないから気づきませんでしたよ」

秋一郎「は……? 瑞原……?」


秋一郎「瑞原はもっとこう、アレな格好してたと思うが」

えり「今日は結構シックな装いですよね」

はやり「あ、あれはテレビ向けといいますか……これは普段着です、ハイ」

えり「いつも普段着かと」

はやり「違うよ。全然違うよ」
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:31:23.58 ID:v1ePjb5d0

秋一郎「……そういえば、関東で仕事してたら瑞原をよく見た気がする」

えり「追っかけてるんですか」

はやり「だってだって……忙しいから九州の方まで行く時間無いし、チャンスが限られてるから」

秋一郎「この間、ジュンク堂でやったサイン会にも来てなかったか」

はやり「頑張って時間作って行きました!」

えり「アイドル(28)が追っかけ……」

はやり「い、いいじゃないですか」

秋一郎「そろそろ歳相応の落ち着きを」

はやり「わー! わー! 聞こえなーい!!」


はやり「サイン、ありがとうございましたー!」

えり「あ、逃げた」

秋一郎「この後の打ち合わせ……どうせなら瑞原の意見も聞きたかったが」

えり「あ、じゃあ暇そうなら呼び戻します。番号知ってるので」
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:32:01.97 ID:v1ePjb5d0

■テレビ局 会議室

はやり「あのぅ……私は何で呼び戻されたんでしょうか」

えり「そんな構えなくても」

秋一郎「単に知恵を借りようとしてるだけだ。よろしく頼む」

はやり「はぁ……?」


えり「明日の収録に使う話なんですが、瑞原プロは『のどっち』って知ってますか?」

はやり「あ、知ってる知ってる。ネット最強雀士って言われてる子だよね」

えり「そうです。ネット最強雀士の正体に迫る、って内容の企画なんですが」

はやり「でも、明日の収録なら内容は殆ど決まってるよね?」

えり「瑞原プロが何か目新しいことを言っていただければそれを組み込むことも可能です」

えり「……いまのところ、簡単なプロファイリングだけで正体掴めず終わる内容なので」

はやり「どんなプロファイリングになったの?」
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:32:50.93 ID:v1ePjb5d0

えり「主に午後八時から十二時にかけて対局していることが多く、特に平日はその傾向が強まりました」

えり「過去のネットの書き込みとか洗ってみても、チャットルームに出てくることが非常に少ないので参考にならず」

えり「書き込みがあったものも、全てなりすましの可能性が高いみたいですね」

はやり「となると、ログインしている時間帯しか情報が無いんだ」

えり「あとは打ち筋とかですね……」

はやり「確か我が道を行くって感じのデジタル打ちだよね」

秋一郎「昔所属していたチームの若手がプロの意地を見せてやる息巻いて、どうも返り討ちにあったらしい」

秋一郎「いまでもそのことでブログが炎上していると聞くが」

はやり「大沼プロってパソコンとかやるんですか……!」

秋一郎「便利だからな……」




秋一郎「執筆にも使ってるし、資料集めも楽になるから使うようにしている」

秋一郎「最近はプロでもネット対局が結構導入されてるからな……シニアリーグはまだだが」

はやり「あれホント便利ですよねー。忙しいから本当に助かってます☆」

はやり「自宅はさすがに無理ですけど、近場で対局消化できますからお財布にも優しい」

えり「テレビの人間的には絡みづらくて困りますけど……あと、味気ない」

秋一郎「味気ない、というのは確かに」

はやり「まあ大事な対局とかはさすがにフツーに打って、どうでもいい予選とかをネットで済ませるぐらいかな」
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:33:44.86 ID:v1ePjb5d0

秋一郎「シニアリーグにも導入してほしいんだが……この歳になると、移動だけでもツラい」

はやり「私も肩とか痛くて……」

えり「瑞原プロ、歳」


秋一郎「ただ、今後ネット対局が推進されていけばプロ麻雀界は様変わりしていくだろうな」

えり「? そうですか?」

秋一郎「自力の無いオカルト雀士が振るいにかけられる、という意味で」

秋一郎「能力頼りのやつがネット対局を導入した予選でアッサリ負けたり……」

秋一郎「……すまん、針生アナはオカルト否定派か?」

えり「いえ、別にそんなことは……。意外といますよね、不思議な打ち方する人」


はやり「ネット対局はオカルト頼りの子にとって鬼門ですよね」

秋一郎「そうだな……」

秋一郎「ネット麻雀自体は昔からあったのに、最近までプロで使われてなかったのはオカルト関係の事情もあるんだろう」

秋一郎「針生アナが言ってた、味気ないというのも理由の一つだろうが」

秋一郎「……今後、オカルト雀士は淘汰される」

秋一郎「もしくは、オカルト頼りのヤツが自力をつけてプロ麻雀界の質が上がるか、だろう」

秋一郎「後者であってほしいが」

はやり「そうですね……」
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:34:38.60 ID:v1ePjb5d0

秋一郎「あ、悪い……話を戻そう、のどっちの話に」

えり「あ、はい。……さっきのログインしている時間についてですが、中々絞り込むのが難しいんですよね」

えり「平日の昼間は殆どいなくて学生のようにも見えますが、社会人だって昼間は働いてますし」

秋一郎「あと特徴を挙げるとすれば、アバターだが……中身は瑞原と疑ったこともある。趣味的に考えて」

はやり「私は違いますよー。ネット麻雀とかやる時間がないです……仕事ばかりで」

えり「まあ明日の収録だと、のどっちの正体は学生では無いだろうかってことで話括る予定です」

はやり「学生……うーん」


はやり「長野の原村和ちゃんとかどうかな? 結構それっぽい打ち方だと思うけど」

えり「はらむらのどか……」

秋一郎「のどか……のど……のどっちだな」

えり「え、いや……まさか、こんなあっさり判明?」

はやり「まあ本人に、あなたはのどっちですか〜? って聞いても正直に答えてくれないだろうけどね」

えり「あー……まあ、そうですが」

えり「ただ、正体が学生ってことを自信持って言えそうです」

はやり「ネット最強かあ……今度、機会があったら聞いてみようかな」
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:35:20.64 ID:v1ePjb5d0

秋一郎「機会があれば、打ってみたい」

えり「パソコン使えるのでしたら、いっそのことネット麻雀されてみては?」

秋一郎「実はもうやってる」

はやり「え! ほんとですか!?」

秋一郎「少し前に登録した。まだ段位が二段だから対局する機会が無いが」

はやり「へー……ちなみに、なんて名前で登録されてるんですか?」

秋一郎「ぬまっち」

はやり・えり「「…………」」


秋一郎「沼者と迷ったんだが、結局はのどっちにあやかってみた」

えり「その、どうだ……って顔やめてくださいよ……」

秋一郎「ダメか?」

はやり「いえ……とっても、かわいいネーミングだと思います」

秋一郎「おかしいな……孫には『イカしてる……』って褒められたんだが」

えり(イカれてる、と聞き間違えたのでは)
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:36:01.02 ID:v1ePjb5d0

えり「勝てそうですか? のどっち」

秋一郎「半荘数回ならともかく、長期的に見れば負けるだろうな」

秋一郎「私も、所詮はオカルト頼りの雀士に過ぎん」

えり「え、そうなんですか?」

はやり「んんっ、結構有名な話だけど、えりちゃん世代だと知らないかなぁ」

えり「すみません、浅学で……」

えり(瑞原プロと年齢そこまで違わな……違うことにしておこう)


はやり「危険な牌や状況を嗅ぎ分ける、ですよね☆」

はやり「危険であれば火薬の匂いを感じる、という」

秋一郎「自分でも頭おかしいとは思うが、どうしてもそう感じてしまっていたからな……」

秋一郎「この歳になっても未だ仕組みがわからん」

秋一郎「……まあ、昔と比べれば機能していないに等しいオカルトだが」

えり「それは、何故ですか?」

秋一郎「そうだな……なんと説明すればいいものか」
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:36:45.67 ID:v1ePjb5d0

秋一郎「……針生アナ。ちょっと目を瞑るから、適当なタイミングで瑞原をボールペンで突き刺そうとしてくれ」

はやり「ええっ……」

えり「わかりました」

はやり「何の躊躇いもなく!?」

秋一郎「じゃあ、瞑るぞ……」

秋一郎「…………」

秋一郎「…………」

秋一郎「…………」

秋一郎「……いまだ」


秋一郎「いま、瑞原にボールペン突き刺そうとしてるだろう」

えり「すごいですね……見てないのに、どうしてわかったんですか?」

秋一郎「さっきも瑞原が言ったが……これがつまり、私のオカルトだ」

秋一郎「危険な状況が近くにあれば、見ていようが見ていまいが察知する」

秋一郎「匂いがするんだ……火薬の匂いが」

えり「なるほど……って、普通に機能してませんか?」
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:38:09.06 ID:v1ePjb5d0

秋一郎「機能しなくなっている、というのは正しくなかったな」

秋一郎「正確には、何でも反応するようになって麻雀に応用できなくなってしまった、だ」


秋一郎「さっき、瑞原にボールペンを向けてもらっただろう?」

秋一郎「昔なら、それを察知できなかった」

秋一郎「昔は自分に対する危険しか察知できなくてな……」

秋一郎「だからこそ、他家の危険牌を掴んだらわかったり、自分の点がツモで削られそうなら鳴いてズラしたりできた」

秋一郎「いまでは周りのやつにとって危険な状況も察知してしまって、いま自分が掴んだ牌が危険牌とかわからなくなった」

秋一郎「匂いすぎて、わからないんだ。……せいぜい、誰か聴牌したと察知できるぐらいか」

秋一郎「こうなって以来、成績は下がっていき、いまでは何とかシニアリーグで打たせてもらってる爺になってしまった」

えり「何か、キッカケがあったんですか?」

秋一郎「昔と変わってしまったキッカケか……」


秋一郎「確証があるわけじゃないが、多分あれだ」

秋一郎「所帯を持って、暫くしてだったか」

秋一郎「……それまでなら振り込まない状況で、簡単に振り込んでしまってな」

秋一郎「子供が出来て、学校に行かせて……嫁に送り出して」

秋一郎「若い頃は独善的に生きていたのに、年々しがらみが増えていって気を使うものが増えて」

秋一郎「危険に領域が広がってしまったんだと思う……弱くなってしまったんだ」
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:38:42.72 ID:v1ePjb5d0

はやり「後悔、されてるんですか?」

秋一郎「してる……というか、していた」

秋一郎「結婚していなければ、いまでも第一線で打っていられたんじゃないかとよく考えてた」

秋一郎「ただ……妻が死んだ時に後追いしたくなるほど悲しくなってな」

秋一郎「辛くて悲しかったから、ああ……後悔はしていても、現状に満足していたんだな、と自覚することができた」

秋一郎「……孫も可愛いしな」

はやり「……そうですか」




秋一郎「あ、悪い……瑞原の前で結婚の話は禁句だったな」

はやり「いい話が台無しですよ!?」

えり「瑞原プロ、結婚が全てじゃないですよ」

はやり「だ、だよねっ」

秋一郎「親御さんは、孫の顔が見たいだろうな」

はやり「うわあああああああああああん!」


えり「あ、瑞原プロ……また逃げちゃいましたよ」

秋一郎「いびり過ぎた……まあ、今度誰か紹介してやろう」

えり「それより、直筆の原稿にサインとかしてあげた方が喜びますよ……多分」
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:39:22.91 ID:v1ePjb5d0

■都内 料理屋
□2013年06月24日

えり「えー、皆様収録お疲れ様でした」

えり「そう長々と話すことも無いので早速乾杯しましょう。乾杯ー」

洋榎「カンパーイ!」

セーラ「うめー! この一杯のために生きとるんやなぁ」

照「普通の麦茶……」

良子「あ、そっか……針生さんと私以外、全員未成年だったね」

えり「捕まってプロをクビになった例もあるし、未成年の飲酒は厳禁で」

久「ええ、もちろん……絶対飲みませんよ、ええ」

美穂子「あはは……飲むわけないですよ、ええ」

豊音「なんか二人共、ちょーあやしいよ」
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:40:03.39 ID:v1ePjb5d0

えり「しかし、本当に私が参加してよかったの? 若手プロだけでやった方がノビノビできるような」

良子「針生さんがないと私が寂しいんですよ。年齢的に」

豊音「人がいっぱいの方が楽しいし、大歓迎ですよっ」

セーラ「ついさっきまで同じ番組に出てたんですから、ええやないですかー」

美穂子「新人プロ雀士特集の司会、お疲れ様でした」

えり「いえいえ……じゃあ、お言葉に甘えて」




照「あの……針生さん、先日はご迷惑おかけしました」

えり「え、ああ……もう終わったことだし、そんなに気にしないで」

洋榎「ん? 宮永、何かやったんか?」

照「うん……機材壊した」

えり「コードに引っかかってね……うっかり放置してたスタッフの責任でもあるんだけど」

照「……解説も全然出来てなかった」

えり「プロ入り一年目の子に解説任せる上の人もどうかしてるから、気にしないで」

えり「あと、解説に関してだと後半は問題無かったと思う」
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:40:35.01 ID:v1ePjb5d0

えり「宮永プロとは今後も一緒に仕事させてもらえれば嬉しいな」

照「ありがとうございます……でも、三尋木プロが怒るかもしれないので」

豊音「三尋木プロは針生さんと組むこと多いからねー」


えり「三尋木プロは……うーん」

えり「チームの後輩二人がいる前で言うのは少しはばかれるけど、仕事しづらいところがあるから」

豊音「あはは……返す言葉が無いです」

照「擁護できない……」
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:41:38.89 ID:v1ePjb5d0

洋榎「せや、針生さん」

洋榎「今日の収録だと針生さんの意見は無かったですけど、針生さんは今年の新人王誰と思います?」

えり「正直に言っていいなら……宮永プロかな」

洋榎「あー……やっぱ皆そう言うかー」


えり「この中だと開幕からレギュラー張ってるのは宮永プロだけだから」

えり「それでいて成績も残してるし、その辺を考慮するとどうしてもね」

豊音「宮永プロはちょースゴイですよ!」

照「う……竹井プロと福路プロも、この間のコンビ打ち大会すごかった」モジモジ

セーラ「あーあれか、一位通過したヤツがいるチームが勝ちってルールの」

洋榎「あんまりにも福路が竹井に差し込むから、通し疑われてて笑ったわ」

久「美穂子が的確に牌捨ててくれるからねー」

えり「あの大会の成績があったから、一年目レギュラー化も見えてきたそうだけど」

美穂子「まだ試験的に……ですけどね」

美穂子「せっかく試していただいているので、結果を残したいです」
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:42:21.04 ID:v1ePjb5d0

久「姉帯さんもちょくちょく出てるわよね」

豊音「うん。ワンポイントって感じだけど、結構楽しいよー」

良子「ウチに来てくれれば即レギュラーにしてたのに……いまから移籍してくれても」

えり「いやいや……プロ入り半年程度で移籍って」

セーラ「えーなー、公式戦出とらんのは大阪組だけか」

洋榎「ウチもセーラは先輩らと練習に次ぐ練習や」

洋榎「打てる分ええけど、そろそろ公式戦出たいわ」


えり「その公式戦が二日後に迫ってると思うけど、江口さんと愛宕さんは出ないの?」

セーラ「あ、交流戦の若手部門ですか? モチ出ますよー」

良子「新人王の最有力候補は宮永さんだけど、交流戦の結果次第ではまだわからないね」

久「皆で宮永さんを狙い撃ちすればいいんですね」

洋榎「なおかつ一人浮きせんとな。もらえるのは一人だけやし」

セーラ「同じようなこと考えてるのは結構おりそうやな」
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:43:06.67 ID:v1ePjb5d0

照「……戒能プロは一年目の交流戦をトップで終わって、新人王に選ばれたんですよね」

良子「一応そうだね」

照「じゃあ、戒能プロに負けないように頑張ります」

洋榎「えらい強気やなー。同期は眼中に無しかい」

セーラ「高校での雪辱果たさんといけんし、オレも頑張らんとな」

照「今回は姉帯さんもライバル」

豊音「あ、そっか。個人戦みたいなものだもんね」


えり「ルーキーオブザイヤーはシーズン通しての成績を考慮して選ばれますけど」

えり「交流戦の新人部門が一番重要って言われてますからね……」

良子「まあ必ずしもトップとらなくても、それ以外で成績上げてれば貰えますけどね」

良子「ただ公式戦だから色々な査定に関係してくるし、頑張るに越したことはないかな」

良子「成績を残せば残すほど将来安泰だよー」

洋榎「将来かー。そういえば針生アナと戒能プロは結婚とかはモゴッ!?」

セーラ「あ、あー! ビール注ぎましょうか!?」

えり「そんな誤魔化さなくてもいいのに」

良子「あー、愛宕ちゃんの顔色がヒドいことに。口塞ぐのやめたげてー」

美穂子「愛宕さん、チャレンジャー過ぎますよ……」
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:44:14.24 ID:v1ePjb5d0

良子「結婚かー。予定は特に無いですけど、針生さんは?」

えり「私もそういう話は。……おそらく、将来的にもしないと思いますが」

久「アナウンサーさんなら結構良い人と出会いもあるんじゃ?」

えり「どうだろ? 結婚願望自体無いので、あまりその辺は意識して見てないなぁ」

えり「自分で言うのもなんですけど、仕事人間だから」

えり「仕事が楽しくて楽しくてたまらない……ってわけじゃないんだけど」

えり「いまの自分に満足しているので。……色んな人に結婚しないのか言われたりしますけどね」

良子「なるほど。まあアラフォーとかになれば、皆遠慮して何も言わなくなりますよ」

えり「その頃はもうアナウンサーやめて裏方回ってるかな」

えり「まあ、どっちにしろ親は言ってきそうですが……」


照「……戒能プロは?」

良子「そうですね……」

良子「結婚したい、とは思ってますよー」
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:44:50.91 ID:v1ePjb5d0

豊音「こういう人がいい、とか理想像があるんですかー?」

良子「あるある。望みだけは高いよ」

良子「掃除洗濯は何でも出来る人で、ご飯は美味しくて」

良子「私より背が低くて、抱き心地が良くて」

良子「年下の女の子がいいなー」

洋榎「へー……って女の子かい!?」

良子「可愛い子を養いたい系だからね」

良子「照れながら『ご飯にします? お風呂にします? それとも……』とか言ってくれると堪らない」

照「戒能プロ、顔が」

良子「おっとニヤケ顔に」
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:45:57.63 ID:v1ePjb5d0

良子「三尋木プロとか結構良いんですが……針生さんから盗ったら怒られそう」

えり「何で私……。何で私は三尋木プロとセットにされるんだろう」

美穂子「よく一緒に仕事されてるからじゃないですか?」

久「仲も良さそうに見えますし」

えり「そんなに仲いいつもりは無いけど……」


セーラ「てか、三尋木プロで炊事洗濯できるんですか?」

洋榎「イメージわかんなぁ……」

良子「意外に何でも出来るよ、三尋木プロは」

照「私もご飯分けてもらったことが……三尋木プロのご飯は美味しい」

豊音「よく自分でお弁当作ってくるよねー。おかず交換したりするよー」

えり「え、自分で作ってたんだ」

えり「てっきり家でシェフとかそういう人に作ってもらってるのかと」

良子「三尋木プロ、いまは一人暮らしですよ。いいとこのお嬢さんなんですけどねー」


良子「何度か同期と遊びに行ったことがありますけど、プライベートはキッチリされてるみたいで」

えり「その調子で仕事の方も何とかしてほしい……」

良子「年上って問題と、にくたらしいほど麻雀が強くなければ本当にいいんですけどね……」

店員「失礼します。牛肉のたたきのカルパッチョとブルスケッタをお持ちしました」

良子「あ、来た来た。とりあえず食べましょう、飲みましょう」
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:47:01.44 ID:v1ePjb5d0













■駅 ホーム

良子「うぇ……」

美穂子「お水どうぞ」

良子「ありがと……」


美穂子「大丈夫ですか……?」

良子「なんとか……」

久「本当に針生アナだけで大丈夫ですか?」

えり「うん。戒能プロと帰る方向同じだし。途中まで送っていくだけだから」

えり「幸い、意識はあるから大丈夫でしょう」

良子「御無礼ですー……」
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:47:30.72 ID:v1ePjb5d0

えり「あ、二人の電車はあれじゃない?」

久「あ、あれですね」

美穂子「すみません……では、お先に失礼します」

良子「ぐっばーい……」













えり「……今日はえらく悪酔いしてませんか?」

良子「ノーウェイ……そんなことないです」

えり「嘘ばっかり……結婚のことだって、嘘ついて」

良子「んー、まあ、正直に話すと盛り下げてしまいそうですから」


良子「……親が離婚してるから、結婚に対して良いイメージが無いとか」
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:48:07.07 ID:v1ePjb5d0

良子「仮に家庭持って幸せになったら、いも――に申し訳が無いですから」

えり「私は、戒能プロがお酒の席でウッカリこぼした話しか知らないけど」

えり「……貴方がそこまでする必要は、無いと思うけど」

良子「…………」




良子「……すぅ」

えり「寝るな!」ベシッ

良子「痛いっ!?」

良子「お、おぅ……人がせっかく気持ちよくスリーピングだったのに」

えり「駅に放置して帰っていいならどうぞ」

良子「起きます」
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:48:42.84 ID:v1ePjb5d0


良子「結婚って……本当に幸せなことなんでしょうか」

えり「まあ……人生の墓場とか言われたりはするけど」

えり「不幸せな人もいるし、幸せな人もいるんじゃないかな」


えり「ただ、まあ……殆どの人は最初は幸せだから結婚するんでしょう」

えり「その後の生活が幸せになるかどうかは、本人たちや周りの環境次第なんだろうけど」

良子「ウチの場合は……なんでダメになったのかな」

良子「めんどくさいですね……」

49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:49:09.05 ID:v1ePjb5d0




健夜「そうだよ……結婚なんて面倒なだけだよ」

健夜「結婚なんてえええええええ!」

えり「なんか来た……」




えり「こ、小鍛治プロ……? 確か今日はお見合いとかなんとか」

健夜「うわああああああああん!」

えり「うるさっ。駅のホームで泣き叫ばないでくださいよ!」

健夜「だってだってぇ……」グスッ

えり「そして酒くさい……どんだけ飲んだんですか!?」

良子「ふふ……寝顔もかわいい……」

えり「だから寝ない!」ベシッ
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:49:55.55 ID:v1ePjb5d0

■テレビ局
□2013年06月25日

えり「……ハァ」

先輩アナウンサー「どうしたの、ため息なんてついちゃって」

えり「あ、先輩」

先輩アナ「何かあった? ……って、前にも似たような会話したような」


先輩アナ「今日は顔色も結構悪いわね。収録とか大丈夫?」

えり「すみません……今日は書類仕事だけなので」

えり「明日は万全の状態に戻してきます」


えり「……実は、酔っ払った小鍛治プロとグロッキーな戒能プロの世話してたら夜遅くなってしまって」

先輩アナ「あらら、ご愁傷様」

先輩アナ「まあ、それ弱みにネタを絞れるだけ絞ってあげなさい。小鍛治プロなんて可哀想なぐらい絞れるわよ」

えり「うわ……そこまで図太くなるのはまだ私には無理ですね」

先輩アナ「あと2、3年ぐらいしたら出来るようになるわよ」
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:50:52.12 ID:v1ePjb5d0

先輩アナ「そういや、明日は三尋木プロと仕事だね」

えり「そうなんですよ……ほんと、何で三尋木プロと組まされ続けるんでしょう」

先輩アナ「他のプロとも組んでるじゃない」

えり「そうなんですが……他の人に比べて組むことが多いような」

先輩アナ「んー……実は私が三尋木プロとえりちゃん組ませるように口出ししてるのよ」

えり「は?」


先輩アナ「実況のアナウンサーと解説のプロって丁度良い組み合わせがあると思うのよね」

先輩アナ「えりちゃんと三尋木プロがそれよ」

えり「……どこがですか?」

先輩アナ「自覚無いかぁ……まあ、私が勝手にそう思ってるだけかもしれないけど」

先輩アナ「えりちゃんは超真面目。昔と比べてもミスはかなり減ったし、仕事熱心」

先輩アナ「ただちょっと、固いんだよね」

えり「…………」
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:52:22.21 ID:v1ePjb5d0

先輩アナ「三尋木プロは意外と研究熱心。データに基いて話してくれるし、要所要所を抑えてくれる」

先輩アナ「ただちょっと不真面目なところもあって、ずっと喋り続けるほどの豆さは無いんだよね」

先輩アナ「えりちゃんが堅実に場を繋ぎ、三尋木プロがズバッと急所を突く」

先輩アナ「私の言い分があっさり通るあたり、皆も良いペアだと考えてるんだと思うけど」

えり「……一応、褒められてるんですよね、私」

先輩アナ「褒めてる褒めてる」


先輩アナ「一人で実況も解説も完璧にこなす人もいるけど、面白みは無いんだよね」

先輩アナ「個人的な見解含まれるけど、実況と解説って二人ぐらいで掛け合いしつつやるのが一番いいと思うのよ」

えり「必要、でしょうか? 面白み」

先輩アナ「ニュースとかならともかくね。私達がやってるのはエンターテイメントでもあるから」

先輩アナ「面白みが一番、正確性が二番……だと私は勝手に思ってるわけよ」

先輩アナ「元から結構デキる子達が、お互いに高めあってんの見守るのが大好きなのよ。もはや趣味ね」

えり「……という、半ば先輩の趣味の所為で私は犠牲になってるんですね」

先輩アナ「しまった……やぶ蛇だったか」
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:52:59.27 ID:v1ePjb5d0

先輩アナ「まあ、えりちゃんが嫌で嫌で堪らないなら取り下げておくよ。要望」

えり「…………」

えり「……いえ、このままで良いです」

えり「三尋木プロから学ぶことも多いですからね」

えり「勉強させていただきます」

先輩アナ「その意気だ。頑張れ頑張れ」






咏「あ、針生アナみっけー」

えり「三尋木プロ……」

咏「探したよ〜。この間は照やんが世話になったねぃ」

咏「今日はお礼にケーキを持ってきて……げえっ!」

えり「?」
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:53:29.21 ID:v1ePjb5d0

先輩アナ「何よ、げえっ! って」

先輩アナ「そんなに嫌わなくてもいいじゃない」

咏「あ、あはは……ど、どうも……ご無沙汰してます」

えり「何で三尋木プロはビクビクしてるんですか……」

咏「し、知らんし……ちょ、ちょっと盾になってて」

先輩アナ「そんだけ怯えられると対応に困るわ」


えり「先輩……三尋木プロに何かしたんですか?」

先輩アナ「いやぁ……昔、一回組んだことがあるだけよ」

咏「うぅ……」ビクビク

えり「とてもそれだけとは思えませんが」
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:54:09.77 ID:v1ePjb5d0

先輩アナ「ふむ……言っちゃっていいかな?」

咏「い、言わないでください、お願いします」

先輩アナ「よし言おう。プロデビューした頃の三尋木プロは」

咏「わー! わー! わーーー!!」

先輩アナ「うるさい。えりちゃん、ちょっと抑えつけて口塞いで」

えり「はい。……三尋木プロ、相変わらず軽いですね」

咏「もがーーーー!」






先輩アナ「昔、一回だけ三尋木プロと組んだことがあるのよ」

先輩アナ「実況と、解説って立場でね」

先輩アナ「その頃の三尋木プロはデビューしたてだったんだけど。上の人が面白がって解説の仕事回してね」

先輩アナ「まあ正直戦力として期待はしてなかった。普通はもうちょっと経験積んでからやる仕事だからね」

先輩アナ「隣に座って、話振ったときに適当に相槌打ってくれるだけで良かったんだけどね」

えり「何かやったんですか?」

先輩アナ「遅刻してきやがった」
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:54:54.40 ID:v1ePjb5d0

先輩アナ「収録始まるのに一向に現れなくてね」

先輩アナ「代役呼ぶ時間も無くて、仕方なく私一人でやることになったのよ」

先輩アナ「んで……収録開始から三十分後ぐらいだったかな? その頃になってやっときて」

先輩アナ「スタッフにも誰にも謝るわけでもなく、へらへら笑ってるだけでね」

先輩アナ「一応、実況室で座ってもらってたんだけど、対局も見ず、こっちの話も聞かない」

先輩アナ「挙句の果てには休憩時間中にバックれた」

えり「うわぁ……」

咏「うぅ……」


先輩アナ「大海原のように広い心を持つ私も、さすがにプッツンしてね」

先輩アナ「一人暮らししていた三尋木プロの自宅突き止めて、忘れ物がありましたよ〜って口実で中に入って」

先輩アナ「朝まで説教してたのよ」

先輩アナ「あ、別に暴力とか振るったりしてないわよ? 単に寝そうになったら机ぶっ叩いて起こしてただけで」

咏「あぅあぅ……」

えり「先輩……なんでクビになってないんですか」

先輩アナ「ふっふっふっ……」
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:55:37.99 ID:v1ePjb5d0

咏「いや……ほんと、あの頃は調子乗ってたので」

咏「……申し訳ありませんでした」

先輩アナ「ちょっといい加減なところはあるけど、いまは良い子だもんねー?」

咏「ハイ、イイコデス」

えり「絶対、説教以外にも何かしたでしょ……」


先輩アナ「あとはプライベートでいくらか付き合いがあったぐらいかなぁ」

先輩アナ「もう信じられないぐらい適当な一人暮らししてたから、炊事洗濯叩き込みはしたけど」

えり(あ、この人が原因か……)

咏「針生アナぁ……この人、ちょっと味付けが濃いだけでメチャクチャ怒るんだぜぇ」

先輩アナ「やっちゃったぜ」




先輩アナ「そういえば、久しく三尋木プロのご飯食べてないな」

先輩アナ「……えりちゃん、ワンホールのケーキを一人で食べたりしないよね?」

えり「えぇ、さすがに。……三尋木プロ、よろしいですか?」

咏「く、くそぅ……あまりの美味しさにほっぺた落としてしまえ」
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/07(金) 14:56:28.26 ID:v1ePjb5d0

先輩アナ「やった。じゃあ、談話室にでも行って食べましょう」

先輩アナ「今度は、えりちゃんの恥ずかしい話でもしてあげよう」

えり「ぅ……まあ、三尋木プロだけじゃ不公平ですし、仕方ないか」

咏「マジで? やったねぃ」

先輩アナ「じゃあ私の恥ずかしい話もしてあげよう」

えり「先輩の場合、ただ無茶をした話になるんですよね」

咏「流血沙汰になってても不思議じゃない」

先輩アナ「なぜわかった……まあ、昔話に花を咲かせましょう」




えり「昔話といえば……三尋木プロの高校時代の話とか聞きたいですね」

咏「おっ、気になっちゃう? 私にメロメロ?」

えり「いえ、聞いておいた方が今後仕事する上で便利かな、と」

咏「ツレナイねぇ」


咏「高校時代かぁ」

咏「……なら、私が麻雀始めることになったキッカケから話していこうかな――」

                                               〜終わり〜
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/07(金) 15:00:06.46 ID:4FzMJtku0

頑張ってるえりちゃんかわいい
60 : ◆htl2xznl8Q [sage]:2012/12/07(金) 15:00:33.27 ID:v1ePjb5d0
以上です。
特に山も谷も無い話ですが、何となくプロ達の話を書きたくなったので。
ちょっと咲総合スレで書いた小ネタとか別に立てたスレの話と繋がってますので
話がトビ気味のところもありますが、ご容赦ください。

【ご協力いただいたツールのご紹介】
・(´д`)Edit
 もうEdit無しでいきられない。
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/07(金) 16:30:16.30 ID:7XUa3ciEo
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/07(金) 17:03:16.36 ID:W9o7UPjKo
乙、こういう話増えて欲しいな
ネタ考えるの大変そうだけど
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/07(金) 18:46:10.64 ID:A9pENTjIO
こういう雰囲気も結構好きだよ
>>1
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/07(金) 20:17:37.76 ID:Jz9SmhuJo

65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/07(金) 21:15:51.98 ID:Li1JAsvj0
乙です
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/07(金) 23:45:15.56 ID:DBq4JXe/o
良かった
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/08(土) 18:34:32.72 ID:horSERdJ0
乙、こういうSSって珍しい気がする
他にも書いてたら教えちくりぃ
68 : ◆htl2xznl8Q [sage]:2012/12/08(土) 22:03:43.29 ID:b6NZZZlz0
>>67
ピッタリ同じ形式のSSは無いのですが、自分でスレ立てたやつだと以下のものを書かせていただきました。

【咲SS】「南槓に上がり目なし」
【咲SS】春「……麻雀、覚えたい」
【咲 SS】咲「プロアマ親善試合だよ、お姉ちゃん」
【咲SS】 咲「お姉ちゃんにはガッカリだよ!」
京太郎「清澄高校覗き大会!」
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/08(土) 22:41:48.48 ID:SN5DQN73o
>>25
>秋一郎「私の本か……ありがとう、読んでくれてるんだな」
>??「大ファンです! この主人公が流し満貫で逆転したとこなんて特に」

この本みたいなーって。

どっかのいつかのハギ菫スレみたいになってるけど。
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