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ほむら「きっと、それがわたしの役割だから」 -
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1 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/09(日) 02:15:16.04 ID:4jyOLCja0
見滝原の町外れにある雑木林の近く。
そこに、十字を模した木がひっそりと立てられた。
杏子「………うし、こんなもん、だな」
マミ「簡素だけれど、仕方ないわよね……」
ほむら「そう、ね……まさか、ご両親に説明するわけにもいかないし」
その木の側に、マミがお花屋さんで買ったお供え用の花を供える。
杏子は、スーパーで買って来たお供え物のお菓子を開封し、そのひとつを手に取り口へと運んでいた。
マミ「ちょっと、佐倉さん。それ、美樹さんにって買って来たのに」
杏子「ひとりで食う菓子なんて、うまくもねえだろうよ。だから、こうして一緒に食ってやってるだけだっての」
お菓子を咀嚼しながら、開封したお菓子を十字の木の近くへと置く。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1354986915
1.5 :
荒巻@管理人★
(お知らせ)
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バームくんへ @ 2025/06/11(水) 20:52:59.15 ID:9hFPsRzXO
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秘境 @ 2025/06/10(火) 00:47:53.81 ID:BDVYljqu0
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【安価】上条「とある禁書目録で」鴻野江「仮面ライダー」【禁書】 @ 2025/06/09(月) 21:43:10.25 ID:qDlYab/50
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ツナ「(雲雀さん?!)」雲雀「・・・」ビショビショ @ 2025/06/07(土) 01:30:36.87 ID:AfN9Rsm0O
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【安価コンマ】障害走を極めるその5【ウマ娘】 @ 2025/06/06(金) 01:05:45.46 ID:RaUitMs20
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阿笠「わしの乳首に米粒をくっ付けたぞい」コナン「は?」灰原「は?」 @ 2025/06/04(水) 04:01:13.39 ID:ZjrmryLdO
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レッド(無口とか幽霊とか言われるけどまだ電脳世界) @ 2025/06/02(月) 21:21:00.13 ID:ix3UWcFtO
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1748866860/
2 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/09(日) 02:16:20.74 ID:4jyOLCja0
マミ「暁美さん、ロウソクを立ててあげて」
仏屋さんで買って来たロウソク立てをひとつ置くと、マミはほむらにそう促す。
ロウソク立てにロウソクを立て、それに火をつける。
杏子「よし、これでオッケーだな」
マミ「ええ。ごめんなさいね、美樹さん。こんなことくらいしかしてあげられなくって」
ほむら「……さやか……」
三人は手を合わせ、今はもういなくなってしまった彼女を追悼する。
マミ「………それじゃ、帰りましょうか?」
杏子「……そうだな」
ほむら「それじゃね、さやか。また、来るわ」
最後に簡素なお墓を一瞥し、三人はその場を後にする。
3 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/09(日) 02:17:27.04 ID:4jyOLCja0
――――――――――
ほむらがこの世界で気が付いてから、一日が経った。
ほむらの意識と同時に円環の理へと旅立っていったさやかの為にと、三人は彼女の墓を立てたのだった。
美樹さやかが、確かにこの世界に存在していた証を残してあげよう。
それが、三人の総意だった。
マミ「暁美さんは、これから何か用事はある?」
ほむら「用事……」
マミ「何もなければ、わたしの家でお茶会をしようと思うのだけれど」
正直なところ、ほむらはまだこの世界について詳しくは知らなかった。
何がどうなって、自分は今ここに立っているのか。
それは間違いなく、一人の少女が起こした奇跡の結果だった。
4 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/09(日) 02:18:21.99 ID:4jyOLCja0
杏子「どうかしたか、ほむら?」
ほむら「いえ、何でもないわ。ごめんなさい、巴さん。ちょっとした用事があるから、お茶会は遠慮させてもらうわ」
マミ「あら、そう?まあ、無理にとは言わないけれど」
杏子「……あたしにはなんも聞かないのかよ」
マミ「だって、あなたは聞かなくっても答えは分かりきっているでしょう?」
杏子「そりゃ、まぁ……」
マミ「ふふ、もう、仕方ないわね。佐倉さんは、この後なにか用事ある?」
杏子「なんもねえ!だから茶会に行くよ!」
マミ「ほら、やっぱり」
杏子「いいだろ、別にさ。それとも、マミは一人でも茶会を開くっての?」
マミ「一人じゃないわよ。キュゥべえがいるものね」
杏子「キュゥべえかよ。……って、そういやキュゥべえの奴、さやかの墓を立てる所には来なかったな」
マミ「そう言えばそうね。何をしているのかしら?」
5 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/09(日) 02:19:14.65 ID:4jyOLCja0
ほむら「……わたしは行きたいところがあるから、ここでお別れね」
住宅街の分かれ道に差し掛かったところで、ほむらは立ち止まる。
マミ「ここで?でも、そっちの方は町外れじゃ……?」
ほむら「ええ、そうよ。ちょっと、ね。会いたい人がいるの」
杏子「会いたい人?って、もしかして魔法少女か?」
ほむら「いえ……魔法少女かどうかは、わたしにもわからないけれど」
マミ「……?」
ほむら「わたしと、深い関わりを持っている人。機会があれば、あなた達とも会うと思うわ」
マミ「……ええ、わかったわ。それじゃ佐倉さん、行きましょうか」
杏子「ん、ああ。じゃな、ほむら」
ほむら「ええ、またね」
二人と別れの挨拶を済ませ、ほむらは目的地へ向かって歩いて行く。
6 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/09(日) 02:20:21.36 ID:4jyOLCja0
マミ「美樹さんも言っていたけれど、謎の多い人ね、暁美さんは」
杏子「だなぁ。一か月前に見滝原中学に転校して来た魔法少女だろ?その時点で謎が多いっつーか、なんつーか……」
マミ「悪い子ではないみたいだけれど、ね」
杏子「……なんであたしの眼を見て言うんだよ」
マミ「あら、理由を言って欲しいのかしら?」
杏子「ぐっ……あの時の事は、あたしだって悪いと思ってるんだよ。一度謝っただろ、それで許してくれよ」
マミ「ふふっ……別に、怒ってるわけではないけどね」
杏子「とにかく、早く帰ろうぜ。なんか腹減っちまった」
マミ「さっき美樹さんにお供えするお菓子を食べてたじゃない」
杏子「あ、あれはだからっ……!」
マミ「はいはい、一人で食べるお菓子はおいしくないものね?」
杏子「はぁ……マミには今後一生勝てないと思うよ、本当に」
7 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/09(日) 02:21:55.30 ID:4jyOLCja0
――――――――――
ほむら(………着いた)
ほむらが向かった先。
いつかの世界で、敵対した魔法少女―――美国織莉子の自宅だった。
ほむら(今、彼女はどうしてるのか……どうしても気になって、来てしまった)
玄関の扉の前に立ち、呼び鈴を押すかどうかで逡巡する。
ほむら(………落ち着きなさい、暁美ほむら……)
胸に手を当て、深呼吸を繰り返す。
そして意を決し、呼び鈴を押した。
ピンポーン―――……
8 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/09(日) 02:23:08.57 ID:4jyOLCja0
体感時間にして、数時間は経ったのではないかと思える程に、ほむらは緊張していた。
あの時間軸の他にも、いくつかの時間軸で美国織莉子は姿を現した。
そして、その全てにおいてほむらは織莉子と敵対した。
ほむらにとって美国織莉子は、無視しようと思っても出来ない程に存在感が強くなってしまっていた。
いくつかの思考を巡らせていると、玄関のドアが開かれる。
その先に立ちつくしている少女。
見覚えがある―――なんてものじゃない。忌々しいまでにほむらの記憶に刻み込まれた、少女の姿、だった。
織莉子「…………」
特に驚きもせず、織莉子は来訪者の姿を眺める。
彼女は、自分の事を知っているだろうか?
知っているとしたら、どのように思っているだろう?
逆に、自分は彼女の事を、今はどう思っている?
またしても、様々な想いがほむらの心を駆け巡る。
9 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/09(日) 02:24:40.58 ID:4jyOLCja0
ほむら「―――……こんにちは」
沈黙を破ったのは、ほむらだった。
何気ない、日常の挨拶。
ただ、それだけを口にするのが限界だった。
織莉子「ええ………こんにちは」
織莉子も、その挨拶に返事をする。
そして、また沈黙。
ほむら(………わたしは、彼女を……)
少なくとも、現時点ではほむらは織莉子と敵対する理由などどこにもなかった。
しかし記憶の奥底にある彼女の姿が、今この場で相対した彼女と重なってしまう。
そればかりは、如何ともしがたかった。
10 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/09(日) 02:26:22.18 ID:4jyOLCja0
織莉子「……お待ちしておりました」
ほむら「―――!」
痛々しい沈黙を破り、織莉子はそう言う。
待っていた。待っていた?
それは……どういう意味、だ?
更に思考を巡らせようとするほむらに、織莉子は続けて話しかける。
織莉子「さあ、中へどうぞ。話したい事、あるのでしょう?」
ほむら「………」
ほむらは、織莉子の眼を真っ直ぐに見据える。
彼女の眼には……―――敵対の意思は、感じられなかった。
ほむら「……ええ、お邪魔するわ」
今なら、彼女と腹を割って話をすることが、出来そうだ。
そう判断したほむらは、織莉子に促されるまま家の中へと入る。
11 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/09(日) 02:30:27.52 ID:4jyOLCja0
ここまで
改変後、具体的にはさやかが導かれたその翌日からの話となります
既に登場している通り、おりマギからもキャラが登場します
かずマギの方も登場する予定はありますが、詳細は伏せておきます
オリジナルキャラクターやあすみの出番は今のところは予定はありません
スローペースでの更新になるかと思われますが、よろしければお付き合いください
ではまた後日
12 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/12/09(日) 02:36:51.84 ID:6fUvoPEio
乙
文体から漂う雰囲気が結構好きかも
楽しみにしてる
13 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/12/09(日) 03:08:59.77 ID:NNIuUNyAO
乙
改変後世界のかずマギ勢を見てみたかったから期待
14 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/12/09(日) 03:37:06.16 ID:ILSabN0AO
乙、貴重な改変後
15 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/12/09(日) 03:56:22.36 ID:75/Njyr2o
>オリジナルキャラクターやあすみの出番は今のところは予定はありません
よし
16 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/12/09(日) 04:32:57.02 ID:4jG9F+kTo
まど神様の出番はありますか
17 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/12/09(日) 13:52:00.52 ID:lsSp+wi+o
乙
まどっちの出番が気になる
18 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/12/09(日) 14:06:20.48 ID:n2UcA6Z50
乙
19 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/15(土) 01:41:09.56 ID:Ccz1IRoI0
――――――――――
QB「暁美ほむら?」
ほむら「! キュゥべえ?」
織莉子の後について居間へ来ると、何故かキュゥべえがいた。
キュゥべえとほむらは、互いに不思議そうな顔を突き合わせる。
QB「キミは、美国織莉子と知り合いだったんだね。意外だったよ」
ほむら「………まあ、色々と、ね」
どう答えたものかと考えて、そう濁す事にした。
20 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/15(土) 01:42:53.67 ID:Ccz1IRoI0
織莉子「座っていて。今、紅茶を用意して来るから」
ほむら「ええ、お構いなく」
織莉子に促されるままに、ほむらは居間の椅子に腰かける。
ほむら「………」
キッチンの方でお茶の準備をしている織莉子の後ろ姿を眺めた後、視線を辺りに巡らせる。
ほむら(家に招き入れられたのは、初めてね)
まぁ、それも当然か、と心の中で思う。
今までは、こうして顔を突き合わせて戦闘にならなかった事などなかったのだから。
ほむら(……そういえば)
織莉子と常に一緒にいたと記憶している少女の姿がなかった。
彼女の名前……呉キリカだったか。
彼女は、どこにいるのだろうか?
21 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/15(土) 01:43:51.84 ID:Ccz1IRoI0
QB「さやかのお墓は、立てて来たのかい?」
ほむら「ええ。巴さんも杏子も、あなたが来なかった事を疑問に思っていたわよ?」
QB「それはすまないね。どうしても、ここに来なくちゃいけない理由があったものだから」
ほむら「ここに来なくちゃいけない理由?」
織莉子「お待たせ。軽いお茶菓子も用意したわ」
その理由を問いただそうとしたところで、織莉子がキッチンから戻って来る。
織莉子「あら?お話し中だったかしら?」
ほむら「……いえ、なんでもないわ」
キュゥべえのその理由とやらも気になるが、今は織莉子と話をするのが先決だ。
優先順位をそう頭の中で組み直し、ほむらは織莉子の方に向き直る。
22 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/15(土) 01:44:55.23 ID:Ccz1IRoI0
お盆の上に二人分のカップと紅茶入れ、砂糖が入っている容器、それと手作りと思われるクッキーが皿に盛られている。
それをテーブルに置き、織莉子はほむらの正面に座る。
織莉子「どうぞ、遠慮せずに飲んでちょうだい?」
穏やかな笑みを浮かべながら、ほむらに紅茶を勧めて来る。
ほむら「ええ、いただくわ」
砂糖を入れずに、カチャリと音を立ててカップを持ちあげる。
そしてひと口、紅茶を口に含む。
ほむら「………」
織莉子「どうかしら?一応、自信はあるつもりだけれど」
ほむら「……ええ、おいしい」
織莉子「うふふ、ありがとう。まあ、巴さんには及ばないかもしれないけれどね」
ほむら「………」
ほむらの感想を聞いた後、織莉子も砂糖を入れずに紅茶をひと口飲んだ。
織莉子「……うん、おいしい」
ゆっくりと味わうように飲み込み、静かにそう呟いた。
その表情は、どこか寂しげに見えた。
23 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/15(土) 01:46:35.39 ID:Ccz1IRoI0
ほむら「それで、その……」
ほむらの方から、今日ここに来た本題を言おうとする。
織莉子「ええ、何かしら?」
ほむら「先程、待っていたと言っていたけれど……それは、どういう意味?」
織莉子「………」
そう訪ねると、織莉子は口を噤んでしまう。
その沈黙の意味を、ほむらは理解出来なかった。
ちらりと、キュゥべえの方を一瞥する。
QB「………」
どうやらキュゥべえは、傍観を決め込むつもりのようだった。
24 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/15(土) 01:47:40.49 ID:Ccz1IRoI0
長い沈黙の後、織莉子は意を決したように口を開く。
織莉子「……私が契約したのは、今より29日と5時間程前」
ほむら「……?」
何の話かと尋ねようかとも思ったが、それを躊躇い織莉子の言葉に耳を傾ける。
織莉子「願いは、私が生きる意味を識りたい。その祈りで私は、未来予知の魔法を手に入れたの」
ほむら「それは、わたしも知っているわ」
何しろ、それが理由で織莉子はまどかを狙っていたのだから。
心の中で、そう付け足す。
織莉子「待っていたと言うのは、今日、貴女がここへ来るのを未来予知の魔法で識り得ていたから」
ほむら「それも、なんとなく察しはついていた。わたしが聞きたいのは、そういうことじゃないの」
25 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/15(土) 01:48:40.39 ID:Ccz1IRoI0
織莉子「解かっているわ。ここからが、貴女が聞きたい話」
もう一度紅茶を飲み、織莉子は目を瞑る。
そしてひとつ、ふたつ、と深呼吸を繰り返した。
深呼吸を終えると、織莉子はゆっくりと目を開ける。
織莉子「………貴女の見知っている子が、今この場にいないのは、もう気付いているわね?」
ほむら「え、えぇ……」
ほむらの見知っている子。
恐らくは、呉キリカの事を差しているのだろう。
織莉子「私は、彼女と行動を共にしていたの。契約してから、今まで、ずっと」
ほむら「………」
織莉子「私の未来予知の魔法……それで私は、いくつもの未来を視たわ」
ほむら「……いくつもの未来?」
織莉子「ええ。そして、今までの私がしてきた事も……ね」
ほむら「!」
その言葉が、何を差しているのか。
それは多分、ほむらにしかわからないことだった。
26 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/15(土) 01:49:43.94 ID:Ccz1IRoI0
織莉子「……同時に、貴女の今までの頑張りも」
ほむら「わたしの……」
織莉子「私が言うべきことでは無いかもしれないけれど……この言葉を言うべき人は、もうこの世界にはいないものね。だから、言わせてもらうわ」
そこでひとつ区切り、胸元に手を当てて。
織莉子「今まで、お疲れ様」
ひと息に、ほむらの眼を真っ直ぐに見据えて、織莉子はねぎらいの言葉をほむらに掛ける。
ほむら「……っ……」
織莉子「貴女の長い旅の終着点。それが、ここ」
ほむら「……………あなたは、今まで、その……キリカと一緒に、何を?」
織莉子「……その質問に答える前に、今彼女がどこにいるのかを答えなければならないわね」
ほむら「………」
27 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/15(土) 01:51:22.92 ID:Ccz1IRoI0
織莉子「彼女……呉キリカは……逝ったわ」
ほむら「っ!」
織莉子「円環の理に、導かれて……ね」
ほむら「……キリカが……」
意外な返答だった。
まさか、あの呉キリカが?
織莉子「キュゥべえは、キリカと別れた私の事を気遣って、来てくれたのよ」
QB「ほむら、キミ達は複数人で行動していたけれど、織莉子とキリカは二人だけだった。それで、心配になってここへ来たんだよ」
ほむら「そう、だったの……」
織莉子「……キリカが導かれたのは、今より22時間前。彼女の最期は、私が看取ったわ」
ほむら「………そう」
織莉子「正直なところ……すごく寂しい。でも、これがあの子の運命だったんだ、って、私はそう思う事にした」
28 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/15(土) 01:53:06.74 ID:Ccz1IRoI0
ほむら「……あなたの未来予知で、キリカの消滅は視れなかったの?」
織莉子「勿論、視ることは出来たわ。でも、回避するつもりはなかった」
ほむら「何故?前は、未来予知で視えた未来をっ……!」
織莉子「落ち着いて」
ほむら「だってっ……!」
織莉子「いいから。ね?」
困ったように言い聞かせて来る織莉子の表情を見て、ほむらはそれ以上は何も言えなくなってしまう。
織莉子「私だって、そうしたかった。でも、その選択肢を選べなかった」
ほむら「どういう……意味?」
織莉子「言ったでしょう?今までの私がしてきた事を視たって」
ほむら「……」
29 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/15(土) 01:54:52.22 ID:Ccz1IRoI0
織莉子「今までの私は、必死に運命に抗っていた。それが私が生きる意味だと、そう思ったから」
ほむら「……じゃあ、今のあなたが生きる意味は?未来予知の魔法を得て、それで貴女は何をしようって言うの?」
織莉子「………運命には、抗わない。訪れる未来を、ありのまま迎えさせる。それが、私が生きる意味」
ほむら「………」
織莉子「だから、貴女達に会うことも私はしなかった。貴女達から私の方に接触して来る場合は、拒むつもりはなかったけれど。私の方から貴女達に接触するつもりは、無かったの」
ほむら「それで、あなたは……いいの?」
織莉子「これが、私が選んだ道よ。いいも悪いも無いの」
織莉子の顔を、ほむらはジッと見つめる。
織莉子「………」
意志は、硬いようだった。
30 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/15(土) 01:55:48.23 ID:Ccz1IRoI0
織莉子「救世を成す為とはいえ、一般人や魔法少女を大勢この手に掛けて来た。その罪を償う為に……と言うわけではないけれど」
ほむら「……織莉子……」
織莉子「………漸く、名前を呼んでくれたわね」
ほむら「!」
織莉子に指摘され、ほむらはハッとする。
織莉子「今までの貴女が、私に対して怒りの感情を抱いていたのは知ってるわ。そして、それは当然だとも思う。私がしてきた事を鑑みれば……ね」
ほむら「……わたしは……」
織莉子「今、この場にいる貴女は、私の事をどう思っているかしら?」
ほむら「………」
家の中に入る前にした自問が、今度は織莉子から突き付けられる。
その答えは、まだ出せていなかった。
31 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/15(土) 01:56:45.40 ID:Ccz1IRoI0
ほむら(わたしは、織莉子の事を……どう思っている?)
敵?―――いや、今は敵じゃない。
イレギュラー?―――いや、そうなら今わたしは彼女とこうして顔を合わせてなんていない。
自身の祈りを否定する存在?―――いや、少なくとも今眼の前にいる彼女には否定されていない。
色々な言葉を並べても、パッと来るものはなかった。
ほむら(………あぁ、そうか)
今、ほむらの織莉子への想いを形容する言葉で、一番しっくりくるものがあった。
ほむら「―――似た者同士」
織莉子「……」
32 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/15(土) 01:57:36.82 ID:Ccz1IRoI0
ほむら「そうね、これが一番近いかも」
織莉子「……ほむらさん……」
ほむら「ふふ……ほら、ね」
織莉子「え……?」
ほむら「あなたも、ようやくわたしの名前を呼んでくれたわね」
織莉子「っ……」
心穏やかに、ほむらはそっと織莉子に左手を差しだす。
ほむら「こうして、ここであなたと話すことが出来る日が来るなんて、思ってなかったわ。あなたさえよければ、これからもよろしくしたいのだけれど」
織莉子「……許して、くれるの?」
ほむら「許すも何もないわ。あなたは、あなたなりに得た答えを頼りに行動していたのでしょう?なら、胸を張りなさい、織莉子」
織莉子「………っ」
33 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/15(土) 01:59:24.41 ID:Ccz1IRoI0
涙ぐんだ眼をハンカチで拭いながら、織莉子は差し出されたほむらの左手を握り返す。
織莉子「こちらこそっ……よろしく、ほむらさん!」
ほむら「さん、だなんて他人行儀ね。呼び捨てで構わないわよ。そもそも、あなたの方が年上なのだし」
織莉子「……そ、それじゃ、ええと……これから、よろしくね……っ……〜〜……ほ、ほむら……」
何度も躊躇いながら。
途切れ途切れに
語尾は小さかったが、それでも。
ほむらの事を、呼び捨てで呼んでいた。
ほむら「ええ……よろしく、織莉子」
いつの間にか、キュゥべえはその姿を消していた。
織莉子が一人ではなくなったから。
キュゥべえが織莉子を気に掛ける必要がなくなったから、だろう。
34 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/15(土) 02:04:48.36 ID:Ccz1IRoI0
本日の投下は以上
織莉子が歩む改変後の道、それを支えるほむら
本SSではそこを描こうと思っています
今の内に言っておくと、まどか☆マギカ、おりこ☆マギカ、かずみ☆マギカのキャラのウチ、既に導かれたキャラはこれ以上はいません
あの子は?→導かれた って流れは非常にモヤモヤするものがあるだろうから……ね
ではまた後日
35 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/12/15(土) 02:13:06.02 ID:eHbCxoTHo
乙
36 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/12/15(土) 02:18:03.45 ID:7FQngt97o
乙
おりほむ和解&未亡人コンビとは珍しいな
期待して待ってる
37 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/12/15(土) 02:35:38.92 ID:Gh0+yAgdo
そりゃかずマギで導かれた奴そのままにしたら一巻表紙組とみらいとカンナしか残らないからな
乙
38 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/12/15(土) 07:14:18.29 ID:jzvEHb2Io
乙
39 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/12/15(土) 08:54:03.06 ID:Vdr+89oAO
乙
40 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/24(月) 01:05:12.78 ID:6mG2+3Zc0
――――――――――
翌日、時刻は夕方。
マミ<暁美さん、佐倉さん!聞こえる!?>
ほむら<ええ、巴さん!今どこにいるの!?>
マミ<工業団地の方!瘴気が濃いわ、魔獣が現れるわよ!>
杏子<待ってろ、マミ!今行くからな!>
マミ<ええ!こちらはひと足先に魔獣と戦っているからね!>
その言葉を最後に、マミからの通信が途切れる。
ほむら(工業団地の方!急がないと!)
アパートの外に出て、工業団地の方へ足を向けようとしたところで、ふと思いとどまる。
ほむら(……そういえば、織莉子はどうするつもりなのかしら?彼女も、魔獣の気配は察知しているはずよね?)
視線を、織莉子の自宅がある方へ向ける。
ほむら(……―――っと、そんな事よりも、魔獣をなんとかしないと!)
織莉子の事を心の端で気に掛けつつも、ほむらは工業団地の方へ駆け足で向かっていく。
41 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/24(月) 01:06:12.42 ID:6mG2+3Zc0
〜〜〜
虚ろな足取りで彷徨う魔獣の群れを、黒い一矢と赤い閃光と黄色い魔弾が蹴散らしていく。
マミ「暁美さん、佐倉さん!ここはわたしに任せて、建物の上にいる魔獣を片付けてきてくれるかしら!?」
帽子を片手に持ち、その中から複数のマスケット銃を取り出すマミ。
現れたマスケット銃は宙に浮いたまま、その照準を襲いかかる魔獣に合わせると魔弾を撃ち放つ。
杏子「マミ一人で大丈夫か!?」
槍を多節棍状に展開し、マミの魔弾を受けてバランスを崩している魔獣の頭を切り裂いていく。
マミ「あなたに心配される程、わたしは弱いつもりはないわ!それに、機動力で言えば暁美さんと佐倉さんの方が高いでしょう!」
魔弾の雨をかわしながら接近して来た魔獣に回し蹴りをお見舞いし、再度帽子の中から出て来たマスケット銃の魔弾で魔獣の体を撃ち抜いた。
42 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/24(月) 01:07:01.14 ID:6mG2+3Zc0
杏子「ちっ、わかったよ!行くぞ、ほむら!」
多節棍を手前に引き、槍の形状に戻すと、くるりと回転しながら近くの魔獣を3体まとめて切り裂く。
地を蹴り、建物の壁を蹴り、杏子は跳躍して行く。
ほむら「ええ、わかったわ!油断しないでね、巴マミ!」
手に持った矢を三本同時に射ると、ほむらも地を蹴り跳躍する。
ほむらの背には、小さな光の翼が出現していた。
その翼がほむらの跳躍に応じてはためき、ほむらの体を空高く運んでいく。
マミ「全く、羨ましいわね!接近戦武器の佐倉さんや美樹さんはともかく、わたしと同じ射撃武器のはずの暁美さんのあの機動力は!」
スカートの裾を持ちあげ、中から更に大量のマスケット銃を召喚する。
マミ「機動力では負けていても、火力では負けないわよ!さあ、来なさい魔獣!」
地面に突き立てられたマスケット銃の全てを宙に浮かせながら、マミは不敵な笑顔を浮かべる。
43 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/12/24(月) 01:07:37.34 ID:B2Io0PlHo
うーんこの
44 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/24(月) 01:08:28.83 ID:6mG2+3Zc0
〜〜〜
杏子「ほむら、援護は頼むよ!」
言うが早いか、杏子は宙で半回転すると魔法陣を展開し、それを足場にして屋上で鎮座していた魔獣の群れへ突っ込んでいく。
円環の理へと導かれたさやかが愛用していた魔法を、杏子なりに解析したものだった。
ほむら「ええ、任せてちょうだい!」
屋上へ向かう時は小さかった光の翼は、今は両手を広げた状態よりも幾許か大きいのではないかと言う程のサイズとなっていた。
翼をはためかせながら、ほむらは空中から杏子の援護をする。
杏子「おら、くたばれ魔獣!」
体を軸にして、右手を大きく振り抜いて魔獣を切り裂く。
そのまま左手で槍の刃の近くを握り、柄で今度は魔獣の体を殴打する。
杏子の攻撃で姿勢を崩した魔獣の頭を、ほむらが放つ黒い矢が次々と射抜いて行く。
ほむら「ふっ!」
杏子がどんどん前へ突っ込んでいくのに対して、ほむらはゆっくりと前進しながら杏子が攻撃し損ねた魔獣を精確に射抜く。
一撃では倒れない魔獣だが、杏子の攻撃とほむらの攻撃が絶え間なく襲い来るために、きっちりと一体一体の息の根を止めていた。
45 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/24(月) 01:10:26.04 ID:6mG2+3Zc0
杏子「こいつで終いだな!」
タン、と小気味のいい音を立てて宙で半回転しながら、左手から右手に持ち直した槍を最後の一体へ投擲する。
槍は魔獣の胴体のど真ん中を射抜き、そのまま地面に磔にする。
コクシ イッセン
ほむら「黒矢・一閃!」
身動きの取れない魔獣の頭に狙いをつけたほむらが、通常よりも魔力を強く込めた矢を放つ。
黒い軌跡を残しながら真っ直ぐに魔獣目掛けて飛んで行き、魔獣の体に刺さると同時に黒いオーラが噴き出す。
その攻撃により、黒いオーラに侵蝕されながら最後の一体も力尽きた。
杏子「うっし、討伐完了!ってな」
地面に突き立っていた槍を拾い上げ、柄でトントンと肩を叩きながら杏子は得意げに言う。
ほむら「巴さんの方はまだ戦ってるかもしれないわよ?行きましょう、杏子!」
屋上に着地すると同時に、光の翼は消え去る。
地を蹴り、ほむらは屋上から飛び降りる。
杏子「あっ、おい待てよほむら!グリーフシード回収!って、行っちまった……ったく、しゃあねえな、っと!」
屋上に散らばったグリーフシードを回収し、杏子もほむらの後を追って屋上から飛び降りる。
46 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/24(月) 01:12:21.56 ID:6mG2+3Zc0
〜〜〜
杏子「よ……っと」
壁を何回か蹴りながら地上に降り立つ杏子。
右手の中には、屋上で倒した魔獣が落としたグリーフシードが握られていた。
マミ「お疲れ様、佐倉さん」
杏子「なんだ、こっちも片付いた後かよ」
やれやれと言う風に左手に握った槍をブンと降ると、魔法少女の変身を解く。
杏子「そんな事より、ホラ、グリーフシード。ほむらが回収しないから、あたし一人で回収して来たんだぞ?」
右手を開き、手の上に乗っているグリーフシードを見せる。
ほむら「あぁ、ごめんなさい。巴さんの方が気になって、そこにまで気が回らなかったわ」
マミ「こっちのグリーフシードと合わせて、三人で山分けね」
マミが手に入れたグリーフシードと杏子、ほむらが手に入れたグリーフシードを、三人で分ける。
47 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/24(月) 01:13:24.87 ID:6mG2+3Zc0
杏子「さーてと、魔獣退治も終わったし、帰るかぁ」
マミ「そうね。お疲れ様、二人とも」
ほむら「ええ、お疲れ」
簡素な挨拶だけを残して、ほむらは我先にと歩き出す。
マミ「あ、暁美さん!……行っちゃった」
48 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/24(月) 01:14:04.41 ID:6mG2+3Zc0
杏子「なんだろーな、あいつ?昨日もなんか用事があるっつってたけど」
マミ「さあ……また、昨日会いに行った人の所へ行ったのかしら?」
杏子「かもな。………しかし、気になるな?」
マミ「え?まぁ、確かに秘密にされると気にはなってしまうけれど……」
杏子「うし、んじゃあいつの後、付けてみるか!」
マミ「いや、いくらなんでもそれはダメよ、佐倉さん。暁美さんのプライバシーに関わる事かもしれないし」
杏子「何だよ、マミは相変わらずクソ真面目だなぁ」
マミ「女の子がクソ、なんて言葉を使っちゃいけません」
杏子「ハイハイ、わかりましたよーっと」
マミ「ハイは一回!」
杏子「ハーイ」
マミ「延ばさないの!」
49 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/24(月) 01:14:51.16 ID:6mG2+3Zc0
――――――――――
ほむら(織莉子……!)
駆け足で向かった先は、昨日と同じ場所だった。
見滝原の外れに建っている、美国織莉子の自宅。
ほむら<―――織莉子。聞こえる?>
肩を上下に揺らしながら、ほむらは家の中にいるであろう人物に話しかける。
織莉子<―――ええ、聞こえているわ、ほむら>
程なくして、織莉子の返答が聞こえて来る。
ほむら<……言いたいことは色々あるけれど、とりあえず家にあがらせてもらって構わないかしら?>
織莉子<もちろん構わないわよ>
織莉子の了承を受けて、ほむらは家へ上がる。
50 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/24(月) 01:15:58.52 ID:6mG2+3Zc0
居間へ来ると、そこにはソファに腰かけている織莉子がいた。
テーブルの上にはポット、二人分のカップ、砂糖入れの容器、それとお茶受けが置かれていた。
織莉子「こんにちは、ほむら。さあ、座って?」
ほむら「……えぇ」
織莉子の正面のソファに腰掛け、姿勢を正す。
ほむら「―――それで、織莉子」
織莉子「はい、ほむらの紅茶」
ポットから紅茶を注ぎ、それをほむらに差し出す。
織莉子「貴女が来るのがわかっていたから、先回りで用意していたの。遠慮しないで、飲んで?」
51 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/24(月) 01:17:30.91 ID:6mG2+3Zc0
ほむら「………話を先延ばしにしても、意味はないわよ」
織莉子「………っ」
ほむらのひと言を受けて、織莉子は押し黙る。
織莉子「……わかってるわ。あなたが言いたい事は……」
紅茶をひと口飲み、俯きながら織莉子は言う。
織莉子「でも、言ったでしょう?これが、私が選んだ道だから……」
ほむら「ソウルジェムを、出しなさい。もう、限界が近いのではないの?」
織莉子「……」
無言で、織莉子は自身のソウルジェムをテーブルに置く。
純白のはずの織莉子のソウルジェムは、かなりの穢れを溜めこんで灰色となっていた。
ほむら「全く……世話の焼ける人ね」
懐から、先程の魔獣との戦いで手に入れた複数のグリーフシードを取り出す。
それをテーブルに置かれた織莉子のソウルジェムを囲うようにして置く。
周囲に置かれたグリーフシードは、織莉子のソウルジェムの穢れを吸い取って行く。
52 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/24(月) 01:18:29.82 ID:6mG2+3Zc0
ほむら「……わたしが、グリーフシードを渡さなければ……あなたはどうするつもりだったの?」
織莉子「言わなくても、貴女は理解しているのでは―――」
ほむら「いいから、答えてっ」
織莉子の言葉を遮り、語尾を少しだけ荒げる。
織莉子「………私も、逝こうと思っていた」
ほむら「どうしてっ?あなたは、死にたいわけではないでしょうっ?」
織莉子「それは、そうだけれど……」
ほむら「今日の魔獣だって、あなたはソウルジェムの反応でわかっていたはずよね?それだけじゃない、あなたには未来予知の魔法だってっ……!」
53 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/24(月) 01:19:24.88 ID:6mG2+3Zc0
織莉子「『訪れる未来を、ありのまま迎えさせる』」
ほむら「っ!」
織莉子「そう言ったはずよ?私は」
ほむら「っ……その、訪れる未来に、あなたは含まれていないの?」
織莉子「少なくとも、私が垣間見た未来には私が魔獣と戦う光景は無かったわね」
ほむら「あなたはっ……あなたが導かれる事を、他のみんなは望むと思うの?」
織莉子「……望む望まない以前に、私にそのような感情を抱いてくれる人はもういないから」
手に持ったままだったカップをテーブルの上に置き、織莉子は眼を伏せる。
織莉子「私の一番の理解者……キリカは、既に逝ってしまったし」
ほむら「そ、それは……あなたのご両親はっ?」
織莉子「私のお母様は、私が物心つく前に先立ってしまった。お父様は……お父様と私の気持ちは、もう繋がっていないと思うから」
ほむら「じゃ、じゃあ、じゃあ……っ!」
織莉子「解ったでしょう?私には、心配を寄せてくれる相手は……」
54 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/24(月) 01:21:21.31 ID:6mG2+3Zc0
ほむら「わたしの気持ちは、どうなるの!?」
織莉子「っ!」
ほむら「二度とあなたと理解しあえる日なんて、来ると思っていなかったわたしが、この世界でようやくあなたと分かり合えたのよ!?」
織莉子「……っ……」
織莉子の途切れた言葉は、続くことはなかった。
ほむら「わたしは、わたしは、今、わたしの事を一番理解してくれているのは、あなたなのよ?
それは、わたしはあなたの事なんてまだこれっぽっちも知れていないけれど……でも、それだって!これから少しずつ、知って行けると思ったのよ!?」
織莉子「……」
ほむら「なのに、逝くつもりだったなんて、そんな寂しいこと言わないでよっ……!」
何を言ったらいいのかわからなくなってしまったほむらは、ついに俯いてしまう。
55 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/24(月) 01:22:40.59 ID:6mG2+3Zc0
織莉子「………ほむら」
ほむら「っ……」
織莉子「ありがとう……まさか、貴女の口からそんな言葉を聞く事が出来るなんて、思っていなかった」
テーブルに荒々しく置かれたほむらの手に、織莉子は優しく自分の手を重ねる。
織莉子「でも、やっぱり私は考えを改めるつもりはないの。未来予知で視える未来は、本来の未来の形だって、そう思うから」
56 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/24(月) 01:24:05.66 ID:6mG2+3Zc0
ほむら「………―――なら」
織莉子「?」
ほむら「あなたの未来予知で視える未来に干渉しない程度の行動を起こすことは、してもいいのよね?」
織莉子「え、えぇ……?まあ、理屈で言えばそうなるけれど……」
ほむら「わかったわ」
自身の手の上に添えられた織莉子の手を握り、ほむらは立ち上がる。
それに引っ張られるようにして、織莉子も立ち上がった。
ほむら「なら、あなたの未来は、わたしが変える」
織莉子「………え?」
57 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2012/12/24(月) 01:27:47.00 ID:6mG2+3Zc0
本日の投下、以上
さりげない描写として、織莉子が用意するお茶会には必ず砂糖入れがあります
彼女がお茶会をする相手は、それがなくては参加する事が出来ないから
そして、織莉子がお茶を飲む時はいつもキリカと一緒である、ということをアピールさせています
SS内で触れることはないだろうから、捕捉として説明しておきます
ではまた後日
58 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/12/24(月) 01:49:19.55 ID:ka8DWKnHo
おつ!
59 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/12/24(月) 13:16:31.67 ID:dHK4TokTo
乙
60 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/12/24(月) 20:09:53.77 ID:G4aHZPCyo
乙
61 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/12/26(水) 14:06:16.28 ID:5ZyJV5Eso
乙乙!
62 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/12/29(土) 13:36:34.30 ID:hgVANikDO
ほむ!
63 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2013/01/04(金) 02:17:53.98 ID:BUgBFM1G0
――――――――――
日が落ちかけた見滝原の街の中。
ほむらは、織莉子の手を引いて歩いていた。
織莉子「ちょ、ちょっと?ほむらっ?」
ほむら「黙って着いて来るっ!」
織莉子「い、いや、どこに行くつもりなの!?」
ほむら「見滝原大橋の下よ!そこなら人目に付くことも少ないでしょう?」
織莉子「え、えっ?い、一体何をするつもり!?」
ほむら「現地に着いたら教えてあげるわ!いいから着いてきなさい!」
織莉子の問いに答えながらも、足を止めることはせず。
ほむらは街の中を歩いて行く。
織莉子は手を引かれながら、何度かバランスを崩しながらもほむらの後に着いて行くしかなかったのだった。
64 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2013/01/04(金) 02:18:45.24 ID:BUgBFM1G0
〜〜〜
ほむら「さあ、着いたわよ」
大橋の下へ来た所で、ほむらは掴んでいた織莉子の手を離した。
織莉子「え、えぇっ……?」
ようやく足を止めることが出来た織莉子は、戸惑いながらほむらから気持ち後ずさる。
織莉子「そ、それで、一体何を……?」
ほむら「まずは、魔法少女姿に変身しなさい」
織莉子「……」
ほむらに言われるまま、織莉子は魔法少女姿に変身する。
ほむらの記憶にある魔法少女織莉子と、寸分違わぬ姿。
違うところがあるとすれば、戸惑いに満ちた表情のみと言ったところだろうか。
65 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2013/01/04(金) 02:19:28.38 ID:BUgBFM1G0
ほむら「戦闘経験は?一度くらいはあるでしょう?」
織莉子「え、あ、えーっと……それは、そのぉ……」
言葉を濁しながら、織莉子はほむらから視線を逸らし明後日の方向へ向ける。
ほむら「………今ここにいるあなたに、戦闘経験がないことはわかったわ。なら、あなたの魔法で視た未来の中はどうなの?」
織莉子「と、言うと……?」
ほむら「今まで自分がしてきた事も、視たんでしょう?」
織莉子「それは、そうだけれど……?」
ほむら「その視た光景で、あなたが戦っていた場面はなかったの?」
織莉子「未来予知と言う魔法は、万能じゃないのよ。そんな、都合良く視たい場面が視れるとは限らない」
ほむら「……」
織莉子「……」
66 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2013/01/04(金) 02:20:12.47 ID:BUgBFM1G0
ほむら「つまり、戦闘に関してはド素人、ということで構わないわね」
織莉子「ええ、そうなるわね」
開き直ったのか、織莉子は胸を張ってそう答える。
ほむら「あのね……魔法少女でありながら戦闘経験がないって、どういうことかわかっているの?」
織莉子「理解はしているつもりよ?」
ほむら「嘘おっしゃい!ホントにシャレになってないわよ!?」
織莉子「ご、ごめんなさい……」
ほむら「はぁ……もういいわ。そこを言及してもどうにもならないでしょうし」
織莉子「じゃあ、もう帰っても……」
言いながら歩きだそうとした織莉子の腕を、ほむらはガシリと掴む。
67 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2013/01/04(金) 02:20:59.84 ID:BUgBFM1G0
織莉子「………あ、あの……?」
ほむら「ただで帰れると思っているの?」
織莉子「だ、だって、話はもう終わったんじゃあ……?」
ほむら「あなたには、戦闘経験を積んでもらうわ」
織莉子「な、何故?その行動にどのような意味が……」
ほむら「いざ魔獣と戦う未来が視えた時、あなたはどうするつもりなの?」
織莉子「そ、それは、訪れる未来のままに……」
ほむら「魔獣にやられて死ぬつもり?言っておくけれどね、円環の理に導かれるのとただ死ぬのとじゃあ、全く意味合いが異なるのよ?」
織莉子「えっ?」
68 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2013/01/04(金) 02:21:37.83 ID:BUgBFM1G0
ほむら「だってそうでしょう?導かれるということはつまり、魔法少女としての役割を終えるということよ?」
織莉子「それは、その……確かに、そうとも言えない事もない、ような……?」
ほむら「それに対して、魔獣にやられて死ぬのはどういうことかわかる?」
織莉子「えー……と……?」
ほむら「……わからない?」
織莉子「ご、ごめんなさい」
そこまで会話を交わしたところで、ほむらは深いため息をつく。
ほむら「まさか、ここまで魔法少女の常識に疎いとは思わなかったわ……」
呆れたような半眼を織莉子に向けながら、ほむらは頭を抱える。
69 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2013/01/04(金) 02:22:21.95 ID:BUgBFM1G0
織莉子「だ、だって、未来予知で……」
ほむら「言い訳は聞きたくないわ。さあ、今から特訓よ」
織莉子「え、え?」
ほむら「今からわたしが何発か弓を放つから、あなたの操る水晶で防いで見せなさい」
弓を構え、照準を織莉子に合わせる。
織莉子「え、え、え?」
ほむら「はい、いち、に!」
直撃させるコースは避け、左右ギリギリを通過させる軌道で弓を放つ。
織莉子「き、きゃっ!?」
水晶も召喚せず、回避する素振りも見せず、織莉子はその場にしゃがみ込んで頭を竦ませる。
ほむらが放った矢は思い通り、織莉子には当たらずに通り過ぎた所で地面を抉った。
70 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2013/01/04(金) 02:23:16.84 ID:BUgBFM1G0
ほむら「………」
織莉子「……あ、あれ?私、生きてる?」
自身の体に何も異常が起きない事に疑問を覚えたのか、竦ませた頭を戻してキョロキョロと周囲に視線を巡らせる。
背後に視線が移ったところで、織莉子の動作がピタリと止まった。
織莉子「………あの、ほむら」
ほむら「何かしら?」
織莉子「もしかして私、無意識のウチに貴女の攻撃をかわしたのかしら!?」
バッとほむらの方に顔を向け、織莉子は嬉しそうに声のトーンを上げる。
ほむら「えっ?」
織莉子「すごいわ、私、自分でも知らない力が眠っているのかしら!?」
ほむら「いや、あの」
織莉子「これなら、魔獣と戦っても引けを取らないんじゃない!?」
キラキラと光る織莉子の眼を見て、ほむらはもう一度ため息をつく。
71 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2013/01/04(金) 02:24:06.48 ID:BUgBFM1G0
ほむら「織莉子」
織莉子「何かしら!?」
テンションが上がっているのだろう、織莉子はうきうきとした様子でほむらに返事をする。
ほむら「よく聞きなさい。今のは、あなたがかわしたんじゃなくて、わたしが照準を逸らしていただけ。防御に失敗して傷を負いましたなんて、笑い話にもならないでしょ?」
織莉子「……え、あ……」
ほむら「それなのにあなたは……防ぐ素振りも見せずその場にうずくまるだなんて……」
織莉子「………」
先程までのテンションの高さはどこへやら、織莉子はシュンとうなだれる。
72 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2013/01/04(金) 02:25:45.88 ID:BUgBFM1G0
ほむら「あなたを死なせるわけにはいかないわ。強くなってもらう」
織莉子「そ、その……私なんかが、本当に強くなれるんでしょうか……」
ほむら「あなたの気概次第ね、それは。ただ、死なせるつもりはないわ」
織莉子「……お願い、ほむら。私を、鍛えて!私は、この世界の行方を見守りたい!それが、キリカへの手向けにもなると思う!」
ほむら「よかった、そう言ってくれて。生きる意味がないなんて言い出すんじゃないかって、実を言うとほんの少しだけ不安だったのよ」
織莉子「生きる意味を識る事を祈りにして魔法少女になったんだもの、そんな事を言うわけないわ。私は、強くなる。
それが、この世界にどれほどの影響を与えるかはわからないけれど……」
ほむら「わかったわ。なら、本格的に特訓を開始しましょう」
織莉子「ええ、ほむら!」
その日、ほむらと織莉子は朝日が差すまで特訓に時間を割いたのだった。
73 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2013/01/04(金) 02:26:42.24 ID:BUgBFM1G0
〜〜〜
翌日、朝方に一度解散した二人は、お昼過ぎに再度橋の下に集まっていた。
ほむら「特訓を再開する前に、一度確認しておきたい事がある」
織莉子「何かしら、ほむら?何でも言って」
ほむら「今、未来予知で視える光景を教えてほしいの。今後の事に備える必要もあるでしょう?」
織莉子「ええ、了解よ。ちょっと待っててね」
織莉子は眼を瞑り、自身の未来予知の魔法を使う。
今まで、幾度となく繰り返してきたことだ。
ただ眼を瞑り、魔力を胸の辺りに込めるイメージを浮かべ、映し出される光景を垣間視る。
74 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2013/01/04(金) 02:27:33.68 ID:BUgBFM1G0
織莉子「………―――恐らく、今日、日が落ちた頃。ちょうど、この辺りね。魔獣が現れるわ」
ほむら「そこに、魔法少女の姿はある?」
織莉子「……リボンとマスケット銃を操る黄色い魔法少女。変幻自在の槍と、幻影の魔法を行使する赤い魔法少女。
黒弓と光翼を駆使して周囲を殲滅する灰色の魔法少女。それと………」
ほむら「織莉子?」
織莉子「―――水晶を操り、未来を視る白い魔法少女の姿が」
ほむら「………」
やった、とほむらは心の中で小さく歓喜の声を上げる。
ほむらが起こした行動のおかげで、織莉子が視る未来よりも先を変えることが出来たのだ、と。
守るべき対象がいなくなったこの世界において、初めて達成感を得ることが出来た瞬間だった。
75 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2013/01/04(金) 02:28:15.93 ID:BUgBFM1G0
織莉子「こうして、未来予知で自身の姿を視たのは、初めてね」
ほむら「あなたは、その未来をどうしたいと思う?」
僅かに笑みを浮かべながら、ほむらは織莉子に問いかける。
織莉子「……もちろん、回避するつもりはないわ。ありのまま受け止めて、更にその先の未来へ繋げるだけよ」
ほむら「なら、無様な姿を見せるわけにはいかないわね?」
織莉子「そう、ね。魔獣との戦いで、貴女達の足を引っ張るわけにはいかないわ」
ほむら「よしっ、それでいいのよ、織莉子」
織莉子の近くへ歩み寄り、そっと手を差し出す。
76 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2013/01/04(金) 02:28:45.23 ID:BUgBFM1G0
織莉子「? この手は何?」
ほむら「何、って……握手よ。何かおかしかったかしら?」
織莉子「……こういう時は、握手じゃなくって」
織莉子は自身の頭上へ手を上げる。
織莉子「こっちの方が、しっくりくるわ」
ほむら「……あなたって、意外とお茶目な所があるのね」
言いながら、ほむらも頭上へ手を上げる。
そして二人は、ハイタッチを交わした。
手のひら同士がぶつかり、パァンと小気味のいい音が辺りに響き渡った。
織莉子「貴女と一緒にいたら、私は私自身の未来を切り開ける気がするわ。改めて、これからもよろしくね、ほむら」
ほむら「こっちこそ!よろしく、織莉子」
77 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2013/01/04(金) 02:29:41.24 ID:BUgBFM1G0
〜〜〜
マミ「はぁ……」
杏子「元気出せって、マミ」
マミ「でも、ねぇ……。はぁ……」
杏子「なんだってそんな落ち込むのさ……わかんねえ奴だな」
マミ「あなただって、あのお店のケーキのおいしさはよくわかっているでしょう?今日の三時のお茶に、あれを食べようって昨夜からずうっと考えてたのに……はぁ……」
杏子「まぁ、マミに食わしてもらってるし、わからないでもないけどよ……代わりのケーキは買ったんだし、もう立ち直れって」
マミ「そう簡単には立ち直れないわよ……はぁ……」
杏子「……ん?おい、マミ。あそこ」
杏子は歩みを止め、橋の下を指差す。
マミ「どうかしたの、佐倉さん?」
杏子「あそこにいるの、ほむらじゃねえか?」
マミ「あそこ……?」
杏子の指差す先へと視線を移す。
そこにいたのは、魔法少女姿に変身して何かに弓を射っているほむらだった。
マミ「あら、本当だわ。何をしてるのかしら……?魔獣の気配はしないし……」
杏子「ちっと行ってみるか?」
マミ「そうね。暁美さんも、お茶に誘ってみましょうか」
二人は土手を降り、ほむらの所へ歩いて行く。
78 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2013/01/04(金) 02:30:25.70 ID:BUgBFM1G0
〜〜〜
ほむら「そろそろ休憩にしましょうか」
織莉子「え、えぇっ……」
息を切らしながら、織莉子は操っていた水晶を霧散させる。
それと同時に、力尽きたようにその場に座り込んだ。
ほむら「水晶の扱いも、だいぶ上達してきたみたいね」
織莉子「あなたのっ、スパルタの、おかげ、よっ……」
僅かに嫌みを含ませながら、懐からハンカチを取り出して汗を拭う。
ほむら「人聞きが悪いわね。あなたの為を思ってやってる事なのに」
織莉子「最初の頃は確かにそれらしき思惑を感じる事が出来ていたけれど、今では防がなければ完全に私の体を貫く軌道で攻撃してきてるじゃない……」
息を整え終えたのか、言葉が流暢になる。
79 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2013/01/04(金) 02:30:59.71 ID:BUgBFM1G0
ほむら「そっちの方が緊張感があっていいでしょう?」
織莉子「防ぎ損ねた時の事を考えると背筋が凍るわよ……」
ほむら「大丈夫よ、あなたの事、信頼しているもの」
織莉子「それは嬉しいけれど、もう少し優しさを……」
杏子「おーい、ほむらーっ!」
織莉子の言葉を遮り、遠くから杏子の声が響き渡る。
ほむら「杏子?」
杏子「何やってんのさ、こんなところで……?」
マミ「あら、もう一人……」
織莉子「は、初めまして」
緊張しながらも、織莉子は二人に挨拶する。
80 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2013/01/04(金) 02:31:47.84 ID:BUgBFM1G0
杏子「……ほむら、こいつは?」
ほむら「わたしの知り合いの、魔法少女よ」
マミ「あら、そうだったの?もしかして、昨日や一昨日に会いに行くって言っていたのは……」
ほむら「ええ、この人。名前は美国織莉子よ」
織莉子「美国、織莉子です……」
戸惑いながら、自己紹介の挨拶をする。
杏子「美国織莉子、か。なんだ、前にお前が呟いてた『まどか』って奴に会いに行ってると思ってたんだけどな」
ほむら「……」
織莉子「お、お二人の名前、教えてもらってもいいかしらっ?」
ほむらの事を気遣い、織莉子は話を逸らす。
杏子「ん、ああ。あたしは佐倉杏子」
マミ「わたしは巴マミよ。よろしくね、美国さん」
織莉子「えぇ、よろしく」
81 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2013/01/04(金) 02:32:21.58 ID:BUgBFM1G0
マミ「それで、二人はこんなところで何をしていたの?」
改めて、と言った体で、マミはほむらと織莉子に問いかける。
織莉子「あー、それは、その……」
ほむら「何故答えるのを躊躇うのよ?」
織莉子「だ、だってっ……!」
マミ「?」
ほむら「織莉子の特訓をしていたのよ。彼女、契約して日が浅いらしくて」
マミ「あら、そうなの?」
織莉子「え、あ、いえ、それはその、えっと、そう、です、ハイ」
最初は否定しようと思ったのだが、それでは色々と説明が必要になると思い至り、肯定する。
82 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2013/01/04(金) 02:33:54.77 ID:BUgBFM1G0
杏子「へぇ?なら、あたし達も協力してやるよ」
織莉子「えっ?」
マミ「そうね、いい考えだわ」
織莉子「えっ?えっ?」
ほむら「それはありがたいわ。ベテランの二人に揉まれれば、織莉子の上達も早いでしょうね」
ほむらは一歩後ろに下がり、織莉子から距離を取る。
織莉子「ちょっと、ほむらっ!?」
杏子「さやかを鍛えてやった時の事を思い出すなぁ。ほれ、やるぞ織莉子!」
織莉子「い、いや、今までほむらに……」
マミ「大丈夫、何も心配しなくっていいのよ、美国さん」
織莉子「だ、だから、ええっと……」
ほむら「頑張りなさい、織莉子」
織莉子「もう疲れきって……」
杏子「まずは魔法少女姿に変身しろ、織莉子!」
織莉子「い、いやあああぁぁぁあぁ……―――」
―――――
―――
―
83 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2013/01/04(金) 02:35:05.37 ID:BUgBFM1G0
織莉子「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」
完全に日が落ち、織莉子は河原に座り込んで息を切らしていた。
マミ「美国さん、暁美さんと特訓を既にしていたのなら言ってくれればよかったのに……」
杏子「だよな。言ってくれりゃ、少しはあたしらも遠慮したってのに」
息を切らしている織莉子とは対照的に、マミと杏子はあっけらかんとしていた。
杏子とマミによる特訓の途中で魔獣が現れ、ついでにキュゥべえも現れ、なし崩し的に初めての実践を終えてからの話だった。
織莉子「わ、私は、事前に言おうと……!」
ほむら「まあまあ織莉子、そう怒らないで?結果としては上々だったでしょう?」
織莉子「ひ、他人事のように言わないでもらえるかしらっ……!」
マミ「とにかく、初めての実践お疲れ様」
杏子「さやかよりは筋よかったぜ?」
息巻く織莉子を嗜めるマミと杏子を、ほむらは一歩引いたところから眺める。
そんなほむらの近くに、キュゥべえが歩み寄っていた。
84 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2013/01/04(金) 02:35:54.50 ID:BUgBFM1G0
QB「美国織莉子が魔獣との戦いに手を貸すようになるなんて、思いもしなかったよ。キミが織莉子をけしかけたのかい?」
ほむら「人聞きが悪いわね。わたしはただ、織莉子の運命を変えようと思っただけよ」
QB「織莉子の運命を?でも、彼女は自身の魔法で視える未来を変える気はないはずじゃ?」
ほむら「だからこそ、よ。彼女が視た未来とは別の未来を変える。そうすれば、彼女も生きていけるはずよ」
QB「そうかい。まあ、僕としては嬉しい限りだけれど。一人でも多く魔獣と戦ってくれるというのはね」
ほむら「……わたしの一番の目的は果たせなくって、結局まどかが犠牲になってこの世界を築き上げたけれど……こうしてわたしがいるということは、まだわたしにはやるべき事があるはず」
QB「『まどか』?誰の事だい?」
ほむら「今はまだ、話すつもりはないわ。でも、いつかは、あなたや巴さん、杏子にも、話す日が来ると思う」
85 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2013/01/04(金) 02:36:56.21 ID:BUgBFM1G0
QB「なんだか訳ありみたいだね?」
ほむら「……ええ、まあね」
QB「それで、キミのやるべき事、というのは?」
ほむら「今はまだ、明確には見えてこない。けれど、当面のやるべきことは、織莉子と行動を共にすることだ、って思うわ」
未だにマミや杏子と話している織莉子を見ながら、ほむらは小さくひと息つく。
ほむら「この世界に来る前までは、絶対に和解出来なかったと思う彼女とこうして肩を並べられる事……感謝しなくちゃいけないわね」
QB「興味があるね。その、この世界の前にキミがいた、という世界」
ほむら「過度な好奇心は身を滅ぼすわよ、キュゥべえ?」
QB「無理に聞くつもりはないさ。いつか話してくれるとキミも言ってくれてることだしね」
ほむら「ええ……心の整理が付いた時には、必ず」
織莉子から視線を外し、空を仰ぐ。
守りたかった対象がいなくなった夜空が、昨日よりも少しだけ色づいたような気がした。
86 :
◆OMDUScS66.
[saga]:2013/01/04(金) 02:39:04.64 ID:BUgBFM1G0
本日の投下、以上
遅くなりましたが、あけましておめでとうございます
今月にはかずみ最終巻が出ますね。最終巻発売と同時に、かずみ組を登場させようと思います
今練っている構想では、かずみ最終回までのネタばれを含みますので、一応、念の為
では、また後日
87 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/04(金) 03:57:40.01 ID:k3jgpvCko
こういうタイプのかわいい織莉子は新鮮だな
ギャグやほのぼの以外だとだいたいラスボス臭やら宿命に対する狂信者臭やらしかしないし
88 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/04(金) 21:47:59.25 ID:S2EyxdNQ0
乙乙!
89 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/05(土) 04:36:52.47 ID:W8b7ytDDO
期待おつ
90 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/11(金) 00:53:12.26 ID:ss3ojWBeo
乙乙!
91 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/22(火) 09:28:18.29 ID:ozGYI7EAO
ほむら「んんwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
92 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/22(火) 20:28:21.64 ID:aQM+bMQoo
やむら「んんwwwwwwwwwwwwwwwwありえないwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
93 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/02/09(土) 08:20:25.35 ID:tQfIOWL10
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