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少年「……」魔銃「『一緒に行く?』だってさ」半妖「うん!」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/15(土) 03:00:51.31 ID:A23S6RqDO

【奴隷の街】


パブロフ「なかなか賑やかな街だねチャボ。街行く人がみんな笑顔だ」

チャボ「……」

パブロフ「そうだね。こういう街は久しぶりだ。前の街は殆ど戦地だったしね」

彼(?)の名前は『パブロフ』喋る銃だ。
僕と旅を共にする大切な大切な友達だ。


パブロフ「チャボ、ちょっと待った!おばちゃん!その焼いてるのなーに?」

おばちゃん「これかい?これはたい焼きっていうこの街の名物さ」

パブロフ「それ一個!あと熱いお茶ね!」

おばちゃん「あいよ、旅人さん」


僕の名前は『チャボ』色んな街を旅している、まぁ旅人だ。
僕は言葉を喋れない。だから旅での会話は専らパブロフの役目だ。


パブロフ「ほらチャボ!熱い内に早く食べなって!おばちゃんが!」

チャボ「……」ジロ

パブロフ「まぁまぁ。買っちゃったものは返せないし、仕方なく消化しようよ」

チャボ「……」ハァ


時折勝手に喋り出すのは困り者だが、仕方ない。
……確かに美味しそうではあるし。

チャボ「……」パク

パブロフ「あまっ!うまっ!」


……同感。

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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
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渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
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二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
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笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/15(土) 03:34:20.27 ID:A23S6RqDO

チャボ「……」ズズー

パブロフ「ごちそうさま」

おばちゃん「お粗末様。美味かったろ?」

パブロフ「うまっ!あまっ!」

おばちゃん「あはは!そりゃあよかった」


たい焼き店のおばちゃんは豪快に笑う。街行く人にも思ったが、この街には笑顔が満ちている。


パブロフ「そうそう。この街は賑やかだよね」

おばちゃん「そりゃそうさ!この街は他の街と違って争い事なんて起きたことないんだよ」


おばちゃんは胸をはって、本当に誇らしく言った。


パブロフ「そりゃすごい!」


パブロフもそれに驚いていた。この辺はイザコザの多い街も多く、故にこの街は貴重だった。

ガシャンッ!

その時、店の奥から大きな音がした。
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/15(土) 04:33:41.93 ID:A23S6RqDO

目を向けると、そこにいたのは『妖魔』だった。


パブロフ「珍しいね。人の街に妖魔なんて」


『妖魔』とは『人間』とは別の生態を持つ種族のことだ。
人間に人種の差があるように妖魔にも種族の差はある。
ここにいる妖魔は水妖ウンディーヌ。
エラと水色の肌がチャームポイントの妖魔だ。

もっとも、妖魔は人里に近づかないから約一名を除き見るのは初めてだけど。


おばちゃん「ちょっとごめんなさいね」


そう言い、おばちゃんは笑顔のまま振り返って…

ガンッ!

思いっきりウンディーヌの顔を殴り付けた。


水妖「ぁう!?」

おばちゃん「すいませんねぇお客さん。ほら、何度失敗したらまともに働けるんだい!?」

ガンッ!

水妖「うぐっ…ず、ずいま…ゲホッ!?」

ドスッ! ガシッ!

パブロフ「わお…」


謝ってるウンディーヌを容赦なく殴る蹴る。
そして、お店の客は誰一人その光景を気にしてはいなかった。

ウンディーヌは水妖。その名が示す通り、水辺に住まう妖魔の筈だ。
だがあのウンディーヌの肌は乾燥しカサカサだ。あれでは呼吸すらまともにできないだろう。

おばちゃんは一頻りウンディーヌを殴ったあと、店の奥に引っ張りこんでまた出てきた。


おばちゃん「すいませんねぇ旅人さん」

パブロフ「いいえー。それでさっきのは?」

おばちゃん「ああ、奴隷のこと?全く嫌だよ安物は。…もっと良い奴隷を買ってこようかねぇ」

パブロフ「奴隷?買う?」

おばちゃん「ああ。この街は妖魔を奴隷として売ってるんだよ。この街の軍は遠征が得意でねぇ。ちょくちょく他の地域で仕入れてきては販売してるんだよ」

パブロフ「ふーん」

おばちゃん「なんなら旅人さんも行ってみるかい?旅での雑用係に便利だよ。ウチみたく外れを引かなきゃね」


そう言っておばちゃんはまた豪快に笑い、他の客の注文を取りに行ってしまった。
もう冷めたお茶を口に含む。


パブロフ「だってさ。言ってみる?」


まぁ、妖魔なんてなかなか見れないし。この街の文化には興味があるし。


パブロフ「りょーかい」
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/15(土) 04:36:26.26 ID:A23S6RqDO
勢いで立てたので今日はここまで
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/15(土) 11:44:02.62 ID:guDI1EC/o
面白そう。ちゃんと名前があるSSっていいよね
6 :ユルユルと投下 :2012/12/15(土) 14:48:59.87 ID:A23S6RqDO

そこはたくさんの人で賑わっていた。
恰幅の良い人間が多いが、一般人もチラホラと見受けられる。
まぁ、身形で身分まではわかるわけないんだけど。


パブロフ「お祭りみたいだね。あ、リンゴ飴!」


ホルスターからはしゃぐ声。まぁ確かに出店もたくさん出ているし、楽しくなる気分もわかる。


受付「やぁ旅人さん。この街一番の名物。人と妖魔の橋渡し!ジョブオークションにようこそ!」

パブロフ「ジョブオークション?」

受付「はい!人間と妖魔は永く交流を断ってきました。その名残か、各地では種族間のイザコザがよく起こります…」


受付のお兄さんは、やけに芝居がかった口調で説明してくれる。なかなか表現力豊かな青年だ。


受付「そんな状況を嘆いた我が領主様はこのジョブオークションを立ち上げたんです!妖魔には寝床と仕事を、我々は労働力を得る、双方にメリットのある素晴らしい産業です!」

パブロフ「おぉー」


感心したような声をあげるパブロフ。
そして受付のお兄さんは自らの演説の余韻に浸りきっていた。

そのお陰で成り立ちはわかった。あとは内容を見物しよう。


パブロフ「あいよー。ねぇお兄さん。見学したいから僕もジョブオークションに参加したいんだけど」

受付「そうですか!このジョブオークションは入場料は頂いてませんから、どうぞご自由にお入りください!」

パブロフ「本当?なんて素晴らしい産業なんだ!」

受付「そうでしょうそうでしょう!」


まずい。
受付のお兄さんのテンションがパブロフにも感染しつつあるようだ。
そうなれば僕が恥ずかしい目に合うのが容易に想像できる。

おい。そろそろ行くよパブロフ。


パブロフ「はいはい。じゃあ見学してみるよ!ありがとう面白いお兄さん!」

受付「ああ!旅人さんにも良い出会いを!」


ブンブンと腕を振るお兄さんに軽く会釈をして、会場への道を歩いていく。
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/15(土) 16:21:58.98 ID:A23S6RqDO

司会「レディス&ジェントルマン!今回も素晴らしい出会いを提供するジョブオークションへようこそいらっしゃいました!」

ワー パチパチパチパチ!!

パブロフ「すごい熱気だね」


そうだね。

確かに割れんばかりの拍手とはこういうことを言うんだろう。
座った席のそこかしこから聞こえる会話。それが拍手と相まって会場は数多の雑音に支配される。


紳士「今回はどんな珍しい妖魔を見れるかな?」

淑女「前回の竜人は凄かったわぁ。火は吹くし力持ちだし料理も上手。あの鱗の気持ち悪さもゾクゾクきちゃう」

紳士「ははは。君はホントにゲテモノが好きなんだな」

淑女「あら。貴方だって獅子妖を見たときのはしゃぎっぷりったらみっともなかったじゃない」

紳士「まぁね。ウチの魔蠍と戦わせたらどっちが勝つか…そう思うと、ね」


そんな会話が聞こえてくる。どうやらここは労働力を得る場所でもあり、見世物小屋でもあるらしい。


パブロフ「しかしすごいよね。獅子妖なんて個体数の少ないものよく捕まえたもんだ」

そうなの?

パブロフ「少ない少ない。その変わり物凄く強いんだ。そういう意味でもよく捕まえたもんだよ」

へぇ


パブロフの解説を聞きながら座して待つ。

暫くして、会場の照明が落とされた。
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/15(土) 21:03:02.17 ID:A23S6RqDO

司会「それではお待ちかね!只今からジョブオークションを開催致します!」

パチパチパチパチ!!

司会「先ずはこの妖魔!風の妖精シルフェの登場だ!小さいからって侮るなかれ、この子の唄は子守唄!この子燐粉は傷を消し去る魔法の粉!一家に一匹救急箱!」


司会がシルフェのアピールを終える。
鳥籠に囚われたシルフェはちょこちょこと不安そうに飛び回っていた。


ねぇパブロフ。今のアピールって

パブロフ「大体本当だね。妖精たちの燐粉には不思議な力があるって言うし」


そんな説明を受けた折、司会の男の声が響く。


司会「んんー??その反応は…皆さん半信半疑ですねぇ!いいでしょう!それでは実演参りましょう!」


そういうや否や。両手を鎖に繋がれた妖魔の少年が連れてこられる。

そしてその少年を、司会の男は取り出した鞭で打ち据える!

バシィンッ!

妖魔少年「うぐぁ!?」


赤く腫れ上がる肌。踞る少年の肌を観客に見せつけ、次に妖精の燐粉を塗り付ける。


オォー…!


観客が息を飲む。淡い煙をあげ、少年の傷が徐々に治っていく。


司会「見てくださいこの効力!さぁさぁそれではオークションを始めましょう。先ずは10万ジュエルから!」


その声と共に観客たちが数字を叫ぶ。
それは数秒毎に桁を変え、その場の空気に熱と狂気を加えていく。
9 : ◆gO9QdRWdUw [saga sage]:2012/12/16(日) 00:45:13.87 ID:/bDwwwRw0
パブロフは口みたいのがあるのかな? チャボの感想とはまた別でたい焼き美味しい言ってたけど

支援っす
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/17(月) 16:13:57.74 ID:MJVuIDXDO

次々と職場を得る妖魔たち。

その数は決して多くはない。今のところ10にも満たないだろう。

それでも飛び交う巨額のお金。しかしそれは、彼らの運命を売り買いするにはあまりに安いように思えた。


司会「さぁ、今回のジョブオークションも遂に最後!しかし最後は世にも珍しい人材をご紹介致しましょう!」


マイク越しに声をはる。次がいよいよ最後らしい。


司会「さぁさぁご覧あれ!人間と妖魔。そのどちらの血をも引く“半妖”の登場です!」

パブロフ「半妖だって??」

そんなに珍しいの?

パブロフ「そりゃ珍しいさ!永らく人間と妖魔は交流を断ってきたからね。その混血なんてミュータントみたいなものだよ!」


パブロフの声にも若干の興奮が見受けられる。
それくらいに半妖とは珍しいのだろう。

暗くなる会場。
そこに一筋のライトが照らされる。


半妖「どうも始めまして!特技は掃除に洗濯!名前はリルフラウと言います!リリィって読んでくださいね」

司会「これは元気なお嬢さんの登場だぁ!」

パブロフ「へぇ。あれが半妖かぁ」


半妖……リルフラウは一見すると普通の女の子と変わらない。
しかし、その目は妖魔の証たる紅に染まり、お尻にはヒョロヒョロと尻尾が揺れていた。


パブロフ「でも妖魔特有の“呪紋”がないね」

呪紋とは妖魔が必ず持っている刺青のような紋様だ。その形や範囲が彼らの操る魔術の属性や強さを決める……だったはず

パブロフ「正解。よく覚えてました」

どうも

司会「それではオークションに参りましょう!始めは一意ジュエルからです!」


司会の男が見たこともないような桁を口にする。

桁に驚いているのか、はたまた半妖という存在をどう受けとるのか…それを図っているようだった。

それでも何れ場は動く。ここはそういう場所だろうし、こういう場所に入れ込む人間は……


老紳士「素晴らしい!10億ジュエル出そう!」


金にいとめもつけない、コレクターが巣食っているに決まっている。
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/17(月) 16:27:13.65 ID:MJVuIDXDO
―オークション会場・外―


興奮の収まらない会場周り。皆口々に今見た妖魔について語り合っていた。


パブロフ「いやぁすごかったね。あんな一杯妖魔を見たのは久しぶりだよ」

ねぇ、パブロフ。最後の男って…

パブロフ「ああ、横にいた男だろう?ポンと10億だってね!いやぁお金持ちは違うなぁ」

いや、そうじゃなくて……あの人の目は――

パブロフ「まぁマトモな雰囲気には見えなかったねぇ。ま、何がマトモかなんて銃の僕にはわかんないけど」

そうだよねぇ

パブロフ「気になるの?あの半妖ちゃん」

うん。けど…

パブロフ「そうそう。僕らは余所者。この街の流儀にとやかく言う筋合いなんてないさ」

ごもっとも


気にはなるけど、仕方がない。僕らとこの街の人間は全く別の人生を歩んできた。余所者の自分の価値観を押し付けるのは、間違いなんだろう。
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/17(月) 21:27:53.44 ID:ZOhw+0LDO
キノとエルメスみたいだな
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/17(月) 22:59:47.75 ID:roOrjPuSo
まんまそれだろ
まぁ所詮SSだしパクリだろうがハーレムさえあればいいよ
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/18(火) 22:37:37.35 ID:ewXtM2vm0
期待
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/19(水) 21:06:52.93 ID:Fw96FAfpo
面白いから、続けてください
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/19(水) 22:47:09.04 ID:4p6MzM7DO
パブロフのセリフって、他の人はチャボが喋ってるって認識なの?
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/19(水) 23:45:53.62 ID:dUxqE5EDO
12月忙しすぎワロタ…
師走パネェ

>>16
そうですよ。この世界の設定では銃が喋るなんて常識はないです。
あとパブロフには口はありません。ただ感覚がチャボと繋がってるのでチャボが食べたたい焼きの味はパブロフにも伝わります。
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/19(水) 23:48:59.44 ID:EBG6a33SO
お、投下できますか?
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/19(水) 23:59:59.28 ID:dUxqE5EDO

ジョブオークションから三日間。僕たちはこの街を満喫した。
パブロフの興味は専ら食べ物に向いてるらしい。


パブロフ「だって次の街に着くまでまたひもじい物を食べなきゃなんだよ!?」

―失礼な。栄養たっぷりな僕の薬膳スープを―

パブロフ「いや、あれは雑草の水煮だね。チャボは食に対する拘りが無さすぎる」

―体に良くて腹が満たされればなんでもいいよ―

パブロフ「いっつもこれだ…」


パブロフの文句を聞きながらパスタを口に運ぶ。
機嫌を取るならこの方法が一番だな。


老紳士「あの、もし」

パブロフ「ん?」


後ろを振りかえれば、そこには身形のいい老紳士が立っていた。


老紳士「不躾に声をかけて申し訳ない。もしや最近この街にやってこられた旅人では?」

パブロフ「あたりー」

老紳士「おお!もしよければこれから屋敷へ来られませんか?旅のお話を聞かせていただきたい!」

パブロフ「んー」

パブロフ「(どうする?)」ボソボソ

―でもそろそろ出発の準備をしなきゃ―

パブロフ「(だよねぇ…結構長居したし)」

老紳士「その代わりといってはなんですが、とびきりのディナーをご馳走しましょう」

パブロフ「行きましょう!」

―ハァ、やっぱりこうなったか―
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/20(木) 00:15:42.05 ID:44Cv3/DDO
【老紳士・屋敷】


この国はとても広大だ。そしてその中に大小様々な街や集落が点在する。
交流は、近隣の街を除くとほぼないに等しいだろう。なぜなら野盗や魔物が闊歩しているからだ。
妖魔は見たことはない。それでも彼らの話は聞いている。

曰く、彼らは魔術を使う。そしてその力で魔物を作り出し、人間との戦争をしていたと。
外の魔物はその名残。野盗は…まぁ人間にも色々あるだろう。

魔物は主に縄張りを持ち、街には近付かない。過去の戦争で街には魔物避けの呪術が施されているからだ。

そして逆に野盗は街の近くに現れる。理由は勿論魔物だろうな。

そんなこんなで旅はある程度、腕に覚えがないと行えない。故にその話は重宝されていた。


老紳士「いやぁ素晴らしい話だ。長生きはするものだな」

パブロフ「いやぁこの料理も絶品です。長旅はするものだね」


よってこう言う機会にも遭遇することはある。何度かして思ったが、パブロフは話が上手い。
…今度お金がなくなったらこれで小銭くらいは稼げそうだ。
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/20(木) 00:29:28.37 ID:44Cv3/DDO

パブロフ「美味しかったぁ…」

老紳士「それはよかった。では食後に私のコレクションをご覧に入れましょう」


老紳士の目が妖しく光る。あれ、この目何処かで……?


パブロフ「妖魔のコレクション?」

老紳士「おぉ、なぜお分かりに?」

パブロフ「いや、大したことじゃないですよ。三日前のお祭りで見かけただけです」

老紳士「いやはやお恥ずかしい」


そうだ。
この紳士はあの半妖を競り落とした老人だ。


老紳士「ですが私のコレクションもなかなかのものと自負しています。さぁ」

―どする?―

パブロフ「まぁ、ご飯もご馳走になったし」

老紳士「では此方です」


老紳士は飾ってある銅像の腕を下ろす。
低い地鳴り音と共に、本棚が動き隠し扉が現れた。

パブロフ「わお。こんな仕掛けホントにあるんだ」

―ベタだ―
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/20(木) 01:05:54.07 ID:44Cv3/DDO
【屋敷・地下】

パブロフ「うはぁ…」

―これはまた…―


そこはまるで地下牢のようだった。
古めかしいレンガの通路。灯る蝋燭、そして老紳士の持つランタン。
なかなか雰囲気が出てるなぁ


老紳士「これが水妖。あれは火蜥蜴…あぁその後ろにいるのは…」


老紳士はペラペラと牢の中のコレクションを説明する。それは街中で見たものから見たことないものまで多種多様だった。


パブロフ「どれもこれも目が死んでるね」

老紳士「はは、これは手厳しい。まぁ私の趣味はあくまで収集でしてね」


パブロフの言葉も軽く受け流す。まぁこの言葉がそんなに重くならない辺り、この街の妖魔の扱いがわかるようだ。


老紳士「これです。私の収集人生の中でも一番の価値を持つだろう、半妖です!」

リリィ「うぅ…ごしゅじん、さま?」


通路の奥の大きな牢屋
そこには壁に縛り付けられたあの時の半妖。
人間の血が半分入っているためか、この三日で随分と弱っているようだった。


パブロフ「はろー半妖ちゃん」

リリィ「は、はろー…?」

―前言撤回。結構平気そうだな―

老紳士「どうでしょう?まだまだ扱いは難しいですが、こんな存在を見られるとは思いませんでした」


またもら光る紳士の目。確かにいい趣味してらっしゃる。
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/20(木) 01:25:42.15 ID:44Cv3/DDO

老紳士「そして、今宵もそれに勝るとも劣らない、珍しい妖魔に出会えた…」

パチンッ

紳士が指を鳴らす。
それを合図に、槍を持った屈強な男たちが狭い通路を埋め尽くす。


パブロフ「もしかして、バレてた?」

―みたいだね―

老紳士「武具に憑依する妖魔。こんな珍しい妖魔に会えるとは、本当に運がいい!」

パブロフ「ありゃりゃ」

―確かにこの三日間喋りすぎのはしゃぎすぎだったしね―

パブロフ「うるさいな!恨むならこの街食文化にしてほしいね!」

―そんなむちゃくちゃな…―

老紳士「その使い手にも興味がある。お前たち、逃がすんじゃないぞ!」

私兵「はっ!」


威勢のいい掛け声と共に、槍を持った私兵たちは此方へと勢いよく突っ込んでくる。

パブロフ「こんな狭い通路で突撃なんて、バカじゃない?」

―こっちは助かるからいいけどね―


腰のホルスターに手を伸ばす。
パブロフを抜き放ち、撃鉄を起こして迫る肉の壁に砲身を定めて、撃つ。
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/20(木) 01:38:34.45 ID:44Cv3/DDO

暗い通路。
窓もない地下牢に空気の振動が響き渡る。

聞こえる音は轟音と悲鳴。それと…


パブロフ「ひゃっほーい!!」

私兵「ぅがっ!?」


久々のドンパチに発狂してるトリガーハッピーさんの奇声だった。

振動が響く。その数六度。
それで銃に収められた弾丸は終わりだった。


老紳士「今だ!さっさと捉えろ!」


弾かれたように走り出す男たち。だが、少し遠い。

ポーチに手を突っ込み銃弾をひっつかむと同時に銃身を振る。
その振動で弾倉はバラけ、空の薬莢を弾き、弾を込める。

銃身をもう一度振り、その反動でバラけた銃身はもとに戻り、それと同時に体を傾け眼前に迫る穂先を避けた。

再びレンガの通路は不快な音たちに支配された。
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/20(木) 01:39:19.84 ID:44Cv3/DDO
半端ですが、ここで今日は終わります

お疲れ様でした
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/20(木) 02:18:26.62 ID:mNBDpJpXo
おつ
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/20(木) 08:30:35.14 ID:/p9aERLho

戦闘の描写がわかりやすかった
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/20(木) 17:39:35.59 ID:YEgYTh+ho
乙でした
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/20(木) 19:40:31.24 ID:YNhS/JPho
続キガキニナル
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/21(金) 18:42:47.36 ID:LLeK0g+ao

期待
スレタイの意味が分からんかったが読んで理解した
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/22(土) 01:04:01.00 ID:jRaVNPBDO

迫る槍をかわし、または撃ち落とす。
口元を隠すかのように巻いていた長いマフラーがほどけた頃、紳士の私兵は皆地に臥せた。


老紳士「ば、化け物め…!」

パブロフ「まぁ、そりゃ妖魔だし?」

―僕は人間だよ―

パブロフ「まぁまぁ、些細な事だよ」


ため息を漏らし、今度はゆっくりと弾丸を装填する。
その様子に身の危険を感じたのか、老紳士は悲鳴を漏らし逃げ出した。


パブロフ「ああ!?逃げる逃げる!」

―向かってこないんなら、別にいいよ―

パブロフ「ちぇー」

リリィ「あ、あの…」

パブロフ「なにー?」

リリィ「助けて、くれたんですか?」

パブロフ「『襲ってきたから反撃しただけ』だって」

リリィ「え、と…?」

パブロフ「あぁ、自己紹介がまだだったね。僕はパブロフ。銃の妖魔だよ。そんで僕を持ってる冴えない男がチャボ。『よろしく』だって」

リリィ「ど、どうもです。パブロフさんに、チャボ…さん?」

パブロフ「ああ、彼ね。喋れないんだ。だから僕が代弁者」


大きな目をパチクリとさせ、半妖ちゃんは僕らを見る。
まぁ、そりゃそうなるか。
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/22(土) 03:02:44.11 ID:jRaVNPBDO

しかし、いつまでも壁に張り付いたまま会話をするわけにもいかないだろう。


―パブロフ―

パブロフ「はいはい。じゃあ半妖ちゃん。『ちょっとうるさいけど我慢してね』だって。うるさいってなんだよ!」


騒ぐ愛銃の抗議を無視しつつ引き金に指をかける

大きく鳴る銃声が一つ。レンガの通路に響き渡った。

リリィ「ひっ!?」


その一発で牢の錠前は破壊され、すぐに鳴らした二発で少女を縛る鎖も弾け飛ぶ。


パブロフ「お疲れー。いつまで張り付いてたかはわかんないけど、疲れたでしょ?」

リリィ「あ、ありがとうございます」

パブロフ「どういたしまして。あと『どういたしまして』だって」
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/22(土) 03:05:20.28 ID:jRaVNPBDO
今日はここまで

チャボは基本長いマフラーを口元まで巻いております。なので普段はパブロフが喋っても怪しまれないという設定。

まぁ、無表情ではありますので今回のように気付かれるときは気付かれます


ではお疲れ様でした
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/22(土) 03:28:46.84 ID:OuF8QJCDo
乙です
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/22(土) 07:53:11.75 ID:2QUqMS/0o
ああ、そういう設定か…
世界観が独特なのに設定の説明が皆無で読んでて辛かったよ。
他にもそういう基本設定あるの?
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/22(土) 11:10:30.43 ID:KQdYWiGIO
名前有で且つ地の文有なら、その辺の設定とかも描写に織り交ぜれたらヨカタネ。簡単に言える事だけど、実際やるとなると難しいヨネ
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/22(土) 14:47:25.45 ID:jRaVNPBDO
確かに説明不足でしたね。申し訳ない。

基本設定は、チャボは口元まで隠したマフラーが特徴の少年(18歳くらい)

パブロフはリボルバータイプの拳銃のような姿をした妖魔。
無機物の形をした妖魔は珍しいため、妖魔特有の刺青も一般人にはただの装飾や模様にしか見えません。


基本設定ってこんな感じですかね?
この国の歴史とかは本編で説明しますが、大まかに言うと過去、人間と妖魔の間でイザコザがあり、戦争になります。
それ以来人間と妖魔の仲は余りよくないですが、絶対に相容れないというわけでもありません。そういう意味では本編でチャボたちのいる街も関係性はよくありませんが、一応人間と妖魔が共存する珍しい街です。

初SSなので至らぬ点や改善点、質問などあればいっていただきますと有難いです
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/22(土) 22:42:53.57 ID:jRaVNPBDO

パブロフ「さて、これで話しやすくなったかな」


鎖から解放された少女は重力に流され膝をつく。
それを見てパブロフをホルスターへ納めようとしたその時、背後の牢屋から声がかけられる。


「おい」

パブロフ「んー?」


振り向くとそこには一匹の妖魔。
金色の鬣を思わせる髪と鋭い牙、爪。しなやかな筋肉の鎧。
そんな特徴たちが、若い女性に詰め込まれているような、そんな容姿だ。


パブロフ「獅子妖だね」

―獅子妖…あれが―

パブロフ「でもまだ若いね。通りで捕まるわけだ」

獅子妖「聞こえてんだよ!妖魔の面汚しが…」

―面汚し?―

パブロフ「まぁ、妖魔は基本人間嫌いだからね。そんでもって銃は人間の武器だ。そんなのに憑依するヤツは妖魔の面汚しってわけ」

―なるほど―

パブロフ「納得しちゃったよ!?そこは親友の汚名に感情を荒げる場面でしょ?」

獅子妖「なにグダグダ言ってんだ!アタイらもさっさと牢から出しな!」


見渡すだけでここには12、3は妖魔が囚われている。その誰もがこんなところに居たくはないだろう。


パブロフ「それが人にモノを頼む態度?」

獅子妖「てめぇ…!」

パブロフ「どうしよっかなぁ…半妖ちゃんは話しづらかったからだけど、君とは話すことないしなあー」

パブロフ「大体、獅子妖って本来すごく強いんでしょ?そんな牢屋すぐ壊せるでしょ?」

獅子妖「それが出来りゃあやってるよ!この牢にゃ妖魔の力を抑える呪紋が刻んであるんだよッ!」


からかうパブロフと青筋を浮かべ牙を向く獅子妖。
これ以上パブロフとこの子を喋らせるとめんどくさそうだ。

ホルスターから再度パブロフを抜き放ち、獅子妖を捕らえる錠前に狙いをつける。


パブロフ「あ、ちょっとチャ」

ダァンッ!


一発の銃声。
それで扉を塞ぐ錠前は甲高い金属音と共に弾けとんだ。
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/22(土) 23:19:09.78 ID:jRaVNPBDO

パブロフ「あーあ」

獅子妖「ふん。そこの面汚しと違って持ち主はまだ話がわかるらしいな」


そう言いながら牢から出てきた獅子妖の女性。

通路に出てくると改めてわかる。でかい。
並んでも優に自分の背を上まるくらいだ。


獅子妖「一応礼は言う。だが覚えておけ人間。我々妖魔はこの仕打ちを忘れない」


髪と同じ金色の双眼に睨まれる。

だがそれも一瞬。それだけで獅子妖は他の牢へと向かっていった。


パブロフ「全くムチャするよ」

―なんで?―

パブロフ「若くてもあれは獅子妖だ。獅子妖の文化には妖魔主義ってのがあってね。『人間は下等。そして妖魔は人間の上にたつ種族』って持論を持つ人が多いみたいだ」

―ふぅん―

パブロフ「で、そんな危なっかしい主義を持って実際強いんだから厄介だ。襲ってきたらどうするつもりだったの?」

―襲ってきたら倒す。助けを求めたら助ける。それが僕らの主義だろう?―

パブロフ「僕は時と場合を選ぶ。でもチャボは見境がないんだよ」


他の妖魔を助ける獅子妖を見ながらパブロフと何度目かの言い合いをする。
次々と解放される妖魔たち。どうやらあの錠前は外から壊すことには対処されてないようだ。


リリィ「あ、あのー…」


そんなことを考えていたときに、後ろから声をかけられる。


リリィ「私は、どうすれば…」

パブロフ「とりあえず話を聞きたいかな。あとは好きにしていいよ」

リリィ「は、はい」グゥ


半妖ちゃんの返事と同時にその胃袋が抗議をあげる。どうやらパブロフは半妖ちゃんの話を聞きたいらしいし、話を聞く場所は決まったな。


パブロフ「『取り敢えずご飯でもどう?』だってさ。大丈夫、取って食べやしないよ」

リリィ「は、はい」
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/22(土) 23:56:16.60 ID:jRaVNPBDO

街中のレストラン。通りの人に聞いた、安い美味い多いで有名なパスタ屋だ。

僕が頼んだのはミルクとチキンを煮込んだスープに平べったいパスタを絡めたもの。名前は長いので忘れた。

半妖ちゃんの前には挽き肉と瓜をトロミをつけて塩胡椒で味付けしたもの。半妖ちゃんには味の希望がなかったのでこっちはパブロフの希望だった。


パブロフ「さて、こっちの自己紹介は済ませたよね?そっちもしてくれるとありがたいんだけど」

リリィ「あ!私としたことがすいません。私の名前はリルフラウ。リリィって読んでください」


半妖ちゃん改めてリリィはそう言いながらペコリと頭を下げた。
そして直ぐ様フォークをパスタの丘へ突き立てる。


パブロフ「オッケー、リリィちゃんね。それでリリィちゃんはホントに半妖なの?」

リリィ「ふぁい。ほうへふほ」モグモグ


なにを言ってるのかわかりゃしない。まぁ口一杯にパスタを詰め込んでいるんだから無理もないか。
…熱くないんだろうか?


パブロフ「はい、リピートアフタミー」

リリィ「む…ごくん。っぷは、すいません。確かに私は半妖って言うみたいですね」

パブロフ「そうなんだ。まぁその目の色なのに刺青ないし、嘘じゃないだろうけど」

―なんでわかるの?―モグモグ

パブロフ「ああ、それは……まぁちょうどいい機会だしチャボにも妖魔の見分け方を教えておくか」


ごほん、と偉そうに咳を払いパブロフは妖魔の特徴を語り出した。
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/23(日) 00:14:33.16 ID:BpQ4scRDO

パブロフ「いいかい?妖魔と人間。姿からして違う種族も多いけど中には人間と殆ど見分けのつかない妖魔だっているんだ」


先ほど出会った獅子妖を思い出す。あの牙と爪は人間には決して持ち得ない、猛者の武器だ。
対して目の前でモグモグと口を動かす少女。その目は妖魔の証たる紅、そして揺れる尻尾。だが先の獅子妖の目は金色だったし、人間にも色んな目の色がある。尻尾だって隠してしまえば人間との違いなんてわからないだろう。


パブロフ「そう。人間だって色んな目を持っている。それは妖魔も然りだ」

―でも前にパブロフは赤い目をしたヤツは妖魔だから気を付けろって言わなかった?―

パブロフ「赤は妖魔の瞳の中でも最もポピュラーな色だからね。でも、それはポピュラーってだけで絶対じゃない。詳しく言うと人間と妖魔では絶対に違うところがある」

―それは?―

パブロフ「人間の瞳は寒色…つまり緑や青だね。一方妖魔は暖色。赤や黄色の色を持つんだ」

―じゃあなんで前にそう言ってくれなかったの?―

パブロフ「あれは見分けさせる為に言ったんじゃなく目線を確認する訓練の一環さ。あの時のチャボは僕以外の妖魔を知らなかったし、そうホイホイ妖魔がいるものでもないからハショリました」

―なんだ…必死で赤い目探してたのに―

パブロフ「まぁまぁ」

リリィ「へー」ズルズル
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/23(日) 00:35:32.85 ID:BpQ4scRDO

パブロフ「で、話を戻すけど。瞳の色の違いはこんな感じ。それともう一個、妖魔にしか持ち得ないものがある」

―それが刺青…“呪紋”だっけ―

パブロフ「そう呪紋。妖魔は誰しも魔翌力を扱うから、その大元である呪紋がどこかにある。ほら僕にもあるだろ?」


確かにパブロフの銃身にも特徴的な模様が刻まれている。これがパブロフの呪紋らしい。


パブロフ「ちなみにグリップにぶら下がってる赤い石が僕の瞳ね」

―へぇ―

パブロフ「先にいっとくけど隠したって意味ないよ。今の僕は銃に憑依してるだけだから目は目として機能してないし」

―なんだ。つまんない―

パブロフ「で、見たところリリィちゃんに呪紋はない…よね?服のしたとかに隠してたりしてないよね?」

リリィ「ないですよ。というか妖魔と人間の違いすらはじめて聞きました」

パブロフ「ならリリィちゃんも聞いておきな。君は僕ら以上に妖魔や人間と関わるだろうし」

リリィ「はい」

パブロフ「妖魔は暖色の瞳と呪紋の二つが必ずある。それは絶対だ」

―で、その二つが揃ってないリリィは―

パブロフ「そ。暖色の瞳しかもってないリリィちゃんは半妖ってこと」

リリィ「はぁ…なるほど」

パブロフの長い講座の最中。僕らは耳だけ傾けてパスタと格闘していた為に、前のお皿にあった丘は消えかけていた。


パブロフ「あ!リリィちゃんの方もたべてみたいんだった。残り一口頂戴!」

リリィ「はい、いいですよ」

―いやしんぼめ―

パブロフ「リリィちゃんがいいって言ってるからいいの!『じゃあこっちのパスタも一口あげる』だって」

リリィ「ふふ、ありがとうございます。えぇっと、チャボさん」

パブロフ「『どういたしまして』だって。何々チャボ?照れてるの?」

―うるさい―


パブロフの目はわかったが、口は一体何処だろう。
聞こうと思い、目と同様に塞いだところで意味はないかと結論付けて、淡い期待を消し去った。
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/23(日) 00:59:26.65 ID:BpQ4scRDO

―さっきの話って世間皆知ってるの?―

パブロフ「いや、人間と妖魔の違いを知ってるのは少ないと思うよ。人間にはね」

―じゃ妖魔は?―

パブロフ「殆ど知ってるよ。まぁそれは過去の因縁があるからなんだけど…聞きたい?」

―いや、別に…―

リリィ「聞きたいです!」

パブロフ「よしきた!じゃあこの国の成り立ちについて諸君に紐解いてあげようか!」


銃口に詰め物でも……いや、期待は捨てたんだ。無駄な抵抗はよそう。

長丁場を予想して、話し出すパブロフを一旦止めてパフェを二つ頼んでもらう。

……どうやらパフェもこの店では巨大化するようだ。


パブロフ「うわぁ」キラキラ

リリィ「宝石みたいですねぇ」キラキラ


輝いてる二人をよそに、柄の長いスプーンをとって、クリームと果物の山を掘り進める。


パブロフ「つめたっ!あまっ!」

―それたい焼きの時と同じリアクション―

リリィ「つめたっ!あまっ!あ、頭痛いです!」ガツガツ

―君もか…―

44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/23(日) 01:20:23.17 ID:BpQ4scRDO

パブロフ「じゃあ始めようか。実はこの国、昔は人間と妖魔が共存してたんだよ。まぁ何世紀か前の話だけど」

リリィ「そうだったんですか」

パブロフ「うん。その時は人間の王と妖魔の王が居て、何かを決めるときには二人の話し合いで決めていたらしい。けど、ある日一つの事件が起こった」

リリィ「事件?」

パブロフ「人間の王の子供を妖魔の王の子供がケンカの弾みで殺めてしまったんだ。それで人間の王は怒り狂い、妖魔の王の子を殺そうとした。でも妖魔の王に取っては大事な跡取り。それに子供のケンカの末に起こった悲しい事故と人間の王を諫めた」

―けど、それでは話は終わらなかった、と―

パブロフ「そういうこと。人間の王は妖魔全体を危険な種族とし、根絶やしにしようと考えた。そしてそれに黙って応じる妖魔の王じゃない。妖魔の王は人間は脆弱にして感情に流される不完全な存在とし、武力をもって制圧し管理しようと考えた。相容れない思想の先にあるのは、いつだって戦争さ」

リリィ「…っ」

パブロフ「数で劣る妖魔は魔物を召喚し人間を討つ。それを知った人間もかつて妖魔から伝わった魔術を応用し、魔物を押さえる呪術を創る。そして、長い戦いの末、勝ったのは人間側だったんだ」
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/23(日) 01:44:00.47 ID:BpQ4scRDO

熱いお茶を口に含む。
氷菓に冷やされた口内はその温度差に痛さに似た感覚を伝えてきた。

なくなったパフェは3分の1。次に待ち受けるのはザクザクとしたフレーク層だ。

一方リリィのパフェはもうフレークを突き破り、最後のムースを攻略中。
熱さも冷たさも彼女の腕を止めるには力不足のようだった。


パブロフ「ま、殆ど痛み分けみたいな形らしいけどね。だから妖魔は根絶やしを避け、それでも国の中心からは退かざるを得なくなる。人間の方も妖魔には痛い目に合わされたんだから『妖魔は危険』って考えが定着して迫害を続ける。街には相変わらず魔物避けの呪術が働き、魔物は野生化して独自の生態系を形成する。こうして今の状況の出来上がり」


リリィ「そんなことが…」

パブロフ「で、リリィちゃんはこれからどうするの?」

リリィ「え…」

パブロフ「聞いての通り他の街は大体妖魔には否定的だ。半妖ったって例外じゃないだろうね。まぁ妖魔の見分け方を正しく知ってる人間は少ないから隠せなくもないと思うけど」

―なんで人間は見分け方を知らない人が多いの?―

パブロフ「数が多いからだよ。伝言ゲームだって人数が多いと正しく伝えるのは大変だろ?」

―なるほど―

パブロフ「そんでもって妖魔はその逆。数は元々少ないし、過去の戦争では一応敗者だからね。勝者とは必死さが違うよ」

―そんなもんかね―

パブロフ「そんなもんだよ」

リリィ「私は……」

パブロフ「この街で働くって言うのも一手だね。ここでは妖魔だからって殺される危険も少ないだろうし……多分」


危険が少ない辺りで向かいの路地で髪を捕まれ引きずられる妖魔を見かける。
まぁ、危険はそれなりにありそうだ。


パブロフ「そうだ。故郷に帰ってみれば?そうすれば…」

リリィ「故郷は、もうないんです。両親も…」

パブロフ「ありゃりゃ」


それを最後に会話が止まる。
その10分後、僕はやっとパフェの底に到着することが出来た。
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/23(日) 01:44:51.65 ID:BpQ4scRDO
今日はここまで

お疲れさまでした
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/23(日) 02:56:26.47 ID:6FB/dGefo
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/23(日) 11:00:43.60 ID:ujmi5QSPo
乙でした
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/23(日) 23:18:32.71 ID:BpQ4scRDO
需要あるか分かりませんが種族設定

【人間】
この国で最も多い種族。魔術は扱えないが、高い技術力を有する。
主な武装は剣や槍など原始的なものから銃、ドリルなど機械的なものまで様々。
また、一部の者には呪術と呼ばれる技法で護符の様な呪具の作成も可能。
基本能力はどの妖魔より弱いが、種族による偏りも無いため多種多様な個体が存在する。
主義主張も様々。全体的に妖魔に否定的だが、中には妖魔をお伽噺の住人と信じるものもいる。


【水妖】
ウンディーヌと呼ばれる妖魔。主に水辺や水中などに集落を作る。
使う魔術系統は水術、補助魔術などが多い。また、槍などの簡単な武器を扱うものもいる。
二股の、人間の足と尾びれの中間の様な足が特徴的。また脇腹の辺りにエラがある。基本的には水中、陸上共に活動出来るが肌に水分がなくなると頭痛や呼吸不全などの変調をきたす者もいる。
全体的に平和主義者が多くいるのも特徴のひとつ。
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/23(日) 23:41:29.54 ID:BpQ4scRDO

【宿屋・チャボの客室】


目覚めるともうすぐ朝日が顔を出すところだった。
ソファからもぞもぞと抜け出し、備え付けのコンロに火をつける。
用意するコップは二つ。用意しながらベッドに目を向ける。

そこにはリリィがスヤスヤと寝ていた。そして腕に抱かれるパブロフも。


パブロフ「やぁおはよう」

―おはよう―

パブロフ「ちゃんと理性を保ったようだね。感心感心」


いつもの軽口。適当に流して顔を洗いに洗面室へ歩き出す。

歯を磨き、寝癖を直して戻ると、沸いたお湯でお茶を淹れるリリィがそこにいた。
タワシみたいな頭をして。


リリィ「あ、おはようございますチャボさん!」

パブロフ「『おはよう』だって」


二の腕位まである黒い髪。それがうねり、暴れ、もう元の髪型は記憶から飛んでってしまったようだ。


リリィ「?。どうしました?」

パブロフ「リリィちゃんのイメチェンに心穏やかじゃないのさ」

リリィ「ああ、朝はいつもこうなっちゃうんです」


くるくると指先で髪を回す。まぁ、僕も寝癖はつくけど……そんなバネみたいな動きはしない。


―半妖だから?―

パブロフ「関係ないね」

―だろうね―

リリィ「?」
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/24(月) 00:01:29.82 ID:G5UijsaDO

お茶を飲み干し、トテトテと洗面室へ向かうリリィ。
彼女とは昨日から一緒に過ごしている。出立まではまだ少しあるし、何よりあんな捨てられた子犬みたいな顔をされてはお手上げだった。


パブロフ「そんな弱点あったんだね」

―弱点て―

パブロフ「まぁいいんじゃない?リリィちゃんも心を開いてくれてるし。いく場所もないんだから」

―でも僕らはいつまでもここにいないよ―

パブロフ「じゃあ一緒に連れてっちゃえば?旅は道連れ」

―また無責任な―

パブロフ「勝手に助けてそのあとは知らんぷりもずいぶん無責任だと思うけど?」

―ぐぬ…―

パブロフ「リリィちゃんに聞いてみたら?この街に残るか、旅をするか」

―女の子に旅は大変だよ―

パブロフ「チャボが守ってあげればいいんだよ」

―やっぱり無責任だ―
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/24(月) 00:17:33.57 ID:G5UijsaDO

リリィ「シャワーありがとうございました」


振り返るとそこには昨日と同じ、真っ直ぐな黒髪を持ったリリィがいた。


パブロフ「いやーすごい変わりようだね。ギャップ萌え?」

リリィ「もえ?」

パブロフ「萌え。萌え萌えキュン!」

リリィ「もえー!」

―わけわからん―


変なテンションではしゃぐ銃と半妖。なんだこれは……


―それはそうと、パブロフ―

パブロフ「ああ、はいはい。『リリィはこれからどうしたい?』だって」

リリィ「どう、ですか?」

パブロフ「この街にいるのか、他の街に行くか、僕らと旅するか。他の街に行くなら途中までは送っていくよ」

―パブロフ!―

リリィ「私は……人の役に立ちたいんです」

パブロフ「人の役?」

リリィ「はい。だから、この街で頑張ってみます。チャボさんたちにこれ以上迷惑はかけられません」

パブロフ「迷惑なんかじゃないけどねぇ。ね?チャボ」

―うん―

リリィ「それはお二人がいい人だからですよ。助けてくれて、ご飯もご馳走してくれて……本当にありがとうございました!」


勢いよく頭を下げるリリィ。
その様子に、何故か複雑な気分を感じる。
彼女が決めたことだ。それを僕らがどうこういうのは間違っている。
そう思っているにも関わらず。
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/24(月) 00:50:59.71 ID:G5UijsaDO

ガシャン!!


リリィが頭を上げると同時に、宿屋の外から何かの割れる音が聞こえてくる。
続いて何かをぶつける音、人の悲鳴。色々な音が日の昇り始めた街を埋め尽くす。


パブロフ「なんだなんだ?お祭り?」

リリィ「チャボさん!」


窓に近かったリリィが直ぐに外を見て声を上げる。その声に流され、僕も街の状態を理解した。


市民「うぁわ!妖魔の反乱だ!」

女性「いやぁ!!」

蛇妖「シャアッ!」

妖精「もう君たちの言いなりにはならない!」

自警団「おのれぇ!」


そこは半ば戦場のようだった。
光る魔術の炎。そして次々と集まっていく妖魔たちと逃げる住民。
自警団も武器を持ち押さえようとしているが、陣形を整える前に飛んできた水球に吹き飛ばされる。

どうやら妖魔は家々を周り妖魔を次々と集めているようだった。


パブロフ「こりゃすごいね」

リリィ「そんな…」


多少訓練をしただけでは、妖魔の身体能力と魔術の前にはなんにもなりはしないだろう。
人間が勝っているのは数だ。だがそれすらも妖魔は越えようとしている。


パブロフ「出発。早まったね」

―みたいだね―


手早く荷物を纏め、出立の準備を整える。
あの進路だと、もう幾分もいかないうちにこの宿屋に到達するだろう。

リリィはまだ街の状態にショックを受けている。

―ドアを破る音―

―家主の悲鳴と妖魔の怒声―

そこまで耳に入れたとき、僕はリリィの手を取り走り出した。
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/24(月) 01:16:50.79 ID:G5UijsaDO
今日はここまで
最後に設定投下


【蛇妖】
ナルーガと呼ばれる妖魔。蛇の様な鱗と二股に別れた舌。鼻はほとんどなく鼻の穴が切れ目のように入っている。また、首や手足が細長いのが特徴。
使う魔術系統は補助、索敵魔術が多く、その牙には毒を持つ種族。
個別に見れば様々な主義を持つが種族間の絆は細く、単独行動を好むものが多い。


【獅子妖】
リオレルと呼ばれる妖魔。鬣の様な髪としなやかで強靭な筋肉を持つ。
その身体能力は妖魔の中でも最上位に位置すると言われ、妖魔たちにも恐れられる種族。
剣や槍を持たず己の肉体を武器とすることを誇りとしている。
魔術系統は主に強化。また、咆哮とともに魔翌力をそのまま飛ばし攻撃する者も存在する。
『妖魔主義』という信仰を持つものが多く、人間や人間を毛嫌いするものが大多数を占める。
一方、礼を忘れず、恩を仇で返すものも少ない。まさに武人と言える一族である。



ではお疲れさまでした
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/24(月) 03:50:32.61 ID:xm25mVBjo

初SSとは思えないクオリティやな
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/24(月) 06:20:42.49 ID:/WBo2YMvo
おつ
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/24(月) 08:29:37.46 ID:NZgqeMPJo
乙でした
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/24(月) 12:31:13.69 ID:G5UijsaDO

リリィ「チャボさん!?」

パブロフ「『ここにいたら危ない』って」


パブロフの言葉をきき、握った手に力が籠る。
どうやら取り敢えず行動を起こすことに同意してくれたようだ。

部屋の扉を開け、廊下を走る。
ここは二階。ドタドタと慌ただしく階段を上ってくる足跡。
数は二人……けど足音と襲撃者の数が必ずしも一致するとは限らない。


蛇妖「イタゾ!ニンゲンダ」

水妖「ああ…!」

妖精「援護するよ!」


思った通り。
三体の妖魔が決して広くはない通路に現れる。
女性の蛇妖と男性の水妖、妖精。妖精は常に浮翌遊し足跡なんか出しはしない。

此方を視認するやいなや、蛇妖は体を低くして高速で距離をつめてくる。
そして屈んだ瞬間、水球と火球が共に迫る。

リリィを少し後ろに下げて、襲い来る三つの敵意を迎え撃つ。


―パブロフ、頼む―

パブロフ「りょーかい。まぁ避けたらリリィちゃんに直撃だしね」


銃身の呪紋が光を放つ。唄う様な高い魔翌力の走る音を聞きながら、迫る炎と水に弾丸を撃ち込んだ。
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/24(月) 12:59:09.56 ID:G5UijsaDO

放った弾丸が各々の目標に着弾する。
途端、魔術で編まれた球体の中心で魔翌力が爆ぜ、水球火球共々霧散した。


蛇妖「ナニ!?」

妖精「そんな!」


頭上で起きた爆発に、襲撃者の意識が逸れる。
蛇妖の顔が上がった瞬間、見えた膝へ向かい引き金を引いた。


蛇妖「ガァッ!?」


突撃の勢いそのままにバランスを崩し倒れる蛇妖。

引き金引くと同時に走り出したチャボは転倒した蛇妖を飛び越え水妖と妖精に迫っていた。


妖精「ひっ!?」

水妖「貴様ッ!」


振りきられる水妖の槍をかわし腹部に拳を突き立てる。倒れる水妖を避け、そのままパブロフのグリップで妖精の後頭部を殴打。
それだけで二人の妖魔を無力化する。


パブロフ「さ、おいで!」

リリィ「は、はい!」


三体の妖魔を飛び越えてリリィも此方へ向かってくる。その時間に補弾を済ませ再び手を差し伸べた。
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/24(月) 16:18:29.48 ID:G5UijsaDO

宿屋の外はもう殆ど戦地の様相だった。

立ち上る黒煙と火柱。人間は逃げるものと激昂するものに別れ、妖魔は日々の仕打ちを吐き出すかのような怒声を上げる。


リリィ「ひどい…」

パブロフ「あれだね。因果応報ってやつ?」

―異論は特にないよ―

パブロフ「でも巻き込まれる側に取っては迷惑だよねぇ」

―まぁ、仕方ない―


人間も妖魔も目に狂気の色を浮かべている。
こんな状況だ。人間と銃の妖魔と半妖。この組み合わせを味方と思うものはいないだろう。

その証拠に妖魔が二人、自警団らしき人間が三人こちらに向かってくるのが見えた。

―走るよ―

パブロフ「走るってー」

リリィ「はい!」
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/24(月) 22:14:42.25 ID:G5UijsaDO

宿屋の横、細い路地へと入っていく。
背中では爆炎が舞い、人間か妖魔の悲鳴が聞こえてきた。

鉢合わせたお互いは目標をそれぞれに変えたらしい。


―今のうちに―

リリィ「うわっ!?チャボさん!」


リリィの訴えを聞き流し、ゴミなどが散乱する路地を駆け抜ける。


パブロフ「チャボ!後方、水弾!」

―ッ!―

パブロフ「リリィちゃん伏せ!」

リリィ「へっ!?」


リリィがしゃがみ、そのすぐ後ろに二発の水球が現れる。
霧散――は無理だ。距離が近い。


―なら…!―


二つの水弾に向け、放ったのは一発の魔弾。
その軌跡は先刻ような球の中心へ向かうのではなく、二つの間を裂くように進み、爆ぜた。

水球は形を崩しながら左右に逸れ、双方の壁に激突する。


リリィ「すご…」

パブロフ「関心はあとあと!」
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/25(火) 01:01:20.14 ID:TjJ5zNtDO
すいません、半端ですが今日はここで


設定だけ投下して終わります。


【妖精】
シトゥフェと呼ばれる妖魔。
放浪主義。お調子者の多い種族。特定の住処を持たず、そこかしこにいる。
身長は人間の手の平くらいの大きさで一対の透明な羽を持つ。
身体能力は妖魔最弱と謳われるくらい弱い。例外的に人間よりも弱い。
だがその魔翌力は高く個体によって様々な魔術を使いこなす。また、固有の能力として重力軽減の魔術が働きその効力でか弱い羽で空を舞ったり自分の体重より重いものも何とか持てたりする。
魔術系統は炎術、水術などの攻撃魔術から回復、補助まで様々。しかし性格上制御はかなり雑。


【竜人】
リュロウと呼ばれる妖魔。
獅子妖リオレルなどと同じく強大な力を持つとされる妖魔の一族。
頭に角、肌の随所に鱗のある姿をしておりかなりの長命でも知られている。その反面個体数はとても少なく出会えるのは稀。
魔術系統は独特で竜術と呼ばれる術を使用する。
性格は温厚なものが多く、また人間、妖魔問わず不用意に接触したがらない。だがその独特な文化のためか、変わり者も多い。
年を取れば取るほど身体の鱗が増えるのも特徴の一つ。
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/12/25(火) 07:26:36.50 ID:EfKliKc1o
魔法力と書きたいのなら、メール欄に
saga
といれるんだよ。
禁止用語にたまに無意識に触れることがあるから、困ってたら入れてみて。
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/25(火) 10:30:26.61 ID:TjJ5zNtDO
>>63
ありがとうございます。



路地を抜けるとそこは妖魔たちの集団。その中枢だった。


リリィ「きゃっ!?」


急停止をしたため背中に勢いよくリリィがぶつかる。
妖魔たちも急に現れた人間に驚くが、すぐに戦闘の体制を取ってきた。


パブロフ「ありゃりゃ。絶体絶命ってやつだねぇ」


ジリジリと距離を詰める妖魔。後ろは今壊した瓦礫の壁。
残弾は5発。一人一発で倒してもお釣りが来る数はいるな。


―…なにか策は?―

パブロフ「土下座して謝ろう」

―そりゃ名案だ―


問題は土下座くらいじゃ許してもらえなさそうだというくらいかな。

今にも飛びかかりそうな妖魔たち。だがその時……


「待ちなッ!」


それを制す一声。威圧と有無を言わさぬ意思の籠った声だった。


獅子妖「また会ったね」

パブロフ「久しぶりー」

獅子妖「けっ」


目の前に現れたのはいつぞやの獅子妖。
彼女は妖魔たちと僕らの間に立ち、此方をあの金眼で睨み付ける。


獅子妖「あんたらも他の妖魔の救助と人間の討伐に向かいな」

蛇妖「シカシ…」


一人の蛇妖が反論を言おうとした瞬間。金眼は僕らからその蛇妖へと視線を変える。
それだけだ。他に命令も脅しもいらない。
ただ最強である妖魔の目線だけで、蛇妖はすごすごと先の命令に従った。
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/25(火) 23:44:45.65 ID:TjJ5zNtDO

パブロフ「なになに?助けてくれるの?獅子妖ちゃんやっさしー」

獅子妖「黙れ妖魔の恥。あと私の名前はオフィルナだ。種族名で呼ぶんじゃない」

パブロフ「じゃオフィだね」

オフィ「殺すぞガラクタ…!」


牙を剥き威嚇をするオフィルナ。というかこの状況でからかうのは止めてくれ…。


パブロフ「それで?何か話があるから他の妖魔を遠ざけたんでしょ?」

オフィ「……この街の領主。その首が私たちの目的だ。だが城門にやたら強い妖魔がいてそれ以上攻め込めないらしい」

パブロフ「妖魔?人間じゃなくて??」

オフィ「私も始めは驚いたがな。聞けばそいつ、リュロウだそうだ」

パブロフ「なるほど」

―リュロウ?―

パブロフ「竜人とも言うかな。こっちも凄く強いらしいけど、変わり者が多いんだ。人間につくやつだって珍しくないと思うよ」

―ふーん―

パブロフ「で?僕らにそれを倒せって?」

オフィ「はっ、冗談。そんな上等な獲物をみすみす渡せるかっての」

―??―
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/25(火) 23:45:14.55 ID:TjJ5zNtDO
すいません、今日はここまで
お疲れ様です
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/26(水) 00:43:55.07 ID:VQyOcxgMo
乙でした
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/28(金) 00:12:00.73 ID:GiG2r6WDO

朝の日差しはどこへやら。
空は重たい雲に覆われ湿気を帯びた空気は今にも水滴となってこぼれ落ちそうだった。

上を見上げる。だが視界に入るのは曇天だけではない。
この街の領主。その屋敷を囲う大きな壁だった。


パブロフ「まるでお城だね」


パブロフの感想には全くもって同感だ。
この街を支配する王。それがここにいるんだろう。

壁のてっぺんを見上げながら、腰のポーチから鉤付きのロープを取り出す。

勢いをつけ、回す回す回す。
ヒュンヒュンと風切り音を立てて鉤は回る。
ある程度勢いがついたとき、見上げる壁に向けその鉤爪を放り投げた。


―…よし。引っ掛かった―

パブロフ「ちゃんと確かめた?」


ぐっぐと力を込めてロープを引く。しかしロープはしっかりとした反応を返してくれた。


―大丈夫。さ、登ろう―

パブロフ「あいあい」


腰にロープを巻き付けて飛ぶ。
ロープは全体重をかけても頼もしいくらいの安定感を見せてくれた。

そのままゆっくりと壁を歩くように登っていった。
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/28(金) 00:34:18.77 ID:GiG2r6WDO

パブロフ「それにしても…めんどくさいことになったもんだね」

―仕方ないだろ?断ったらあの路地でオフィルナと戦うことになっちゃうし―

パブロフ「まぁ、リリィちゃんもいたからしょうがないか」


オフィルナが提示した条件は一つ。“オフィルナが門の妖魔と戦っている間に領主を捕まえること”だった。
そして、断ればあの場で[ピーーー]とも言ってたな。


パブロフ「自分で仕掛けた反乱の癖にねぇ」

―全く―

パブロフ「ま、その原因を作ったのはチャボだけどね」

―ぅぐ…―


僕の助けた獅子妖オフィルナは、同じく牢に囚われていた妖魔たちと共にこの街の人間に反乱を起こした。
始めは十数人。しかし同志は瞬く間に増えていった。まぁ、この街の人間が妖魔にしていたことを思えば当然とも思えたが。


パブロフ「オフィたちに預けてきたけど…リリィちゃん、大丈夫かなぁ」

―きっと大丈夫だよ。オフィルナは約束を違えない限りは責任持って守るって言ってたし―

パブロフ「そんな信用していいのかなぁ」

―獅子妖は礼儀正しい武人って言ったのはパブロフじゃないか―

パブロフ「それは種族としてだよ。チャボはもっと人を疑った方がいいね」

―努力するよ。それより……―

パブロフ「それより?」


暫し言葉を止め、今の状況を客観視してみた。
一人の男が壁を登りながら独り言を言っている。そんな光景。


パブロフ「??…どしたの?」

―…そろそろてっぺんだね。ここからはお喋り無しだ―


訳のわからない独り言を喋る侵入者。色んな意味で気味悪い光景だ。


パブロフ「??…変なの」
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/28(金) 01:02:25.65 ID:GiG2r6WDO

【領主の屋敷:門前】


蛇妖「グ、コイツツヨイ…!」

妖精「魔術が効かないなんて…」


此方へ敵意を向ける数人の妖魔。
その敵意に曝されて尚、門前の竜人は退屈していた。

纏うは極東の着物。そこから覗く半身は深緑の鱗に覆われていた。
白く蓄えた髭はその年輪を称え、顔には深い皺が刻まれている。
それに混じって幾つかの古傷。その一つは右目を大きく裂いていた。

年老いた竜人は、まだ機能する左目で自らに向かう敵意を見る。

―こいつらは駄目だ。
―こいつらでは足りない。

残る数は高々五、六人。周囲に倒れる妖魔の数の半分にも満たない数だ。

こんな羽虫。いくつ斬ってもこの血は沸かない。

それはもう、数度刀を振ったときに分かりきっていることだった。


眼前に迫る烈火の炎。高熱を纏うそれは竜人の振った左手にいとも容易くかき消される。


妖精「くそっ!?」

水妖「無駄よ…竜人の鱗は魔術を弾く鎧だもの」

妖精「だからって諦めるのかよ!」

水妖「だって…」


喚く羽虫。追撃に動く気にもなりはしない。

久方ぶりに街が騒いだ時の期待はもう失望に変わっている。

また、この心は揺れぬままに戦が終わるだろう。
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/28(金) 01:05:13.35 ID:GiG2r6WDO
今日はここまで

ピンポイントにsaga入れ忘れました。すいません。


ではお疲れ様でした
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/28(金) 06:31:56.73 ID:ptYkNMK0o
乙でした
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/28(金) 11:40:54.06 ID:+6W2MD0Wo
おつ
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/28(金) 22:16:44.20 ID:GiG2r6WDO

オフィ「お前らじゃ荷が重い。下がってな」

竜人「む…」


空気が変わる。
そう錯覚するほどに、苛烈な魔力と殺気を放つ一人の妖魔。

どうやらまだまだ戦は終わらないようだ。


オフィ「よぉ。なんで妖魔のアンタが門を守ってるかは聞かないよ。……ただ一個だけ聞いておく」

竜人「……なんだ?」

オフィ「アンタと私は敵か?」

竜人「そう願いたいな」


それが合図だったのだろうか。
獅子と竜は示しあわせていたかのように、同時にその距離を近付ける。

風を切る加速の中、オフィの胸に様々な感情が産み出される。

―それは歓喜。彼の竜の子と拳を交えられる喜びだ。
―それは恐怖。未熟な自分に向けられた、歴戦の刃を思わせる闘気だ。
―それは自信。自らに流れる、経験さえも凌駕する王者の血に対する信仰にも似た信頼だ。

暴れる感情を腕の呪紋に注ぎ込んだ。
感情は魔力となり、呪紋は光でそれに答える。

オフィの眼前には、それを振るう竜人の鱗と同じ深緑の刃。
そこに向かって、思い切り右手を振り抜いた。


高い金属音と刹那に光る火花。
オフィの爪が、竜の刀を弾いた為だ。
更に左手で今度は刀の持ち主を狙う。しかし竜人も返しの刃で二撃目を防ぐ。その勢いと共に後ろへ飛び、轍を作りながら間合いを広げた。
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/29(土) 00:11:36.60 ID:3dI9YXRDO

竜人「強化……いや、硬化か」

オフィ「ご名答」


オフィの魔術。
それは自らの腕や爪を鋼の如く硬化させる魔術系統だった。
硬化した爪は、凄まじい切れ味を誇る竜人の刀にすら匹敵するほどだった。


竜人「刀を弾かれたのは、久々だ」

オフィ「へっ。褒めたってなんも…褒めてんのかそれ?」

竜人「小娘。名は?」

オフィ「リオレルの戦士。オフィルナだ」

竜人「オフィルナ。覚えておこう」


会話はそれだけ。
再び互いは風となり、火花を散らして激突する。

その戦いに加勢できるものなどいない。

城のような領主の屋敷。その門はただ甲高い音の調べを聞いていた。
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/31(月) 07:36:26.11 ID:fGrIuiiR0
続きまだー?
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/12/31(月) 08:08:24.40 ID:DDf9fc6s0
サモンナイトに近い世界をキノとエルメスが旅してるって感じやね。
どっちも好きな俺には嬉しいSSかも。
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/31(月) 14:03:25.04 ID:HrVkcbOIO
  バン    はよ
バン(∩`・ω・) バン  はよ
  / ミつ/ ̄ ̄ ̄/   
  ̄ ̄\/___/
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/31(月) 19:26:45.93 ID:iYVyF06DO

【領主の屋敷】


暗い通路を静かに歩く。
流石は領主のお屋敷だ。そこかしこに美術品みたいものが飾られている。

しかし、妙は妙だ。見張りらしきものが誰もいない。
それだけ門を守る妖魔に信頼をおいているのか。そうでなければ……

そんなことを考えていたときに、一際大きく、荘厳な扉を見つける。
通路からしてここの領主は事故顕示欲が強そうだ。なら、自室への扉にこのくらいの装飾を施すかもしれないな。

重い扉を押し、開く。
中は大きな舞踏場のようだった。しかし舞踏場と明らかに違う点もある。それは至るところに乱立する巨大な柱。それはまるで人工的に作られた石の密林を思わせる光景。

その密林を眺めていたとき。視界の端で何かが飛んでくるのが見てとれた。

何が飛んできてるかなんてわからない。だが、咄嗟に足に力を込め、逃げるように跳躍する。

瞬間、轟音と共に暗い部屋は爆炎に照らされた。


男「ほう。今のを避けるか。上等上等」


布の焦げる臭いが鼻につく。しかし身体はどうやら大きな損傷などは負っていない。
声の方に目を凝らすと、そこには奇妙な姿の男がいた。
長身痩躯。長髪をかきあげながらにやつく男。
ここまでは普通。健全な印象は受けないが、それだけだ。
だが奇妙なのはその出で立ち。全身に卵のような黒い物体をぶら下げていた。

さっきの爆発から察するに手榴弾といったところだろうか。
そこまで考えたとき、再び男は卵を此方へ投擲する。
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/31(月) 20:51:52.30 ID:iYVyF06DO
今度は投擲のモーションから視界に納めている。ならばさっきの不意討ちとは訳が違った。

パブロフを抜き、そのまま中空の卵に一発。

巨大な破裂音と熱を振り撒きながら、品のない花火は部屋に咲く。


男「不意討ちじゃなきゃ撃ち落とすか。いいねぇホントに上玉じゃねぇか!」


歪んだ笑みを称えながら男は話す。
話ながら戦うのが彼の流儀らしい。


男「よぉ!俺っちの名はジャンってんだ。アンタの名前は?」

チャボ「……」

ジャン「へっ。だんまりかい?つれねぇ…なぁ!」


喋り終わりに二発の投擲。速度は鋭いが、それだけだ。
撃ち落とせない域じゃない。

轟く爆音。それと共に石の密林も大きく抉れる。


ジャン「俺っちはよぉ。ここの領主に雇われたんさ。『妖魔を狩らないか』ってな」

チャボ「……」

ジャン「そりゃあ最初は楽しかったぜ?あいつら変な術を使うしな。けどすぐ飽きた。だって殺しちゃダメなんだぜ?そりゃすぐ飽きりゃあな」


勝手に語り出す男。
パブロフを黙らせといてよかった。アイツが合いの手を入れると更に身の上話が加速しそうだ。


ジャン「でもアンタは見たところ人間だろ?なら契約外だ。言葉なんか要らねぇ!俺っちと楽しい殺し合いをしようぜぇ!!」


またも投擲される二発の手榴弾。しかし軌道は此方ではなく左右の柱。

次の瞬間爆発が起こり、石の柱は散弾のように襲いかかる。

咄嗟に横にある柱を盾とする。が、その盾すら手榴弾は攻撃の手段とする。


チャボ「……!?」

ジャン「そんな柱じゃ俺っちの攻撃はふせげねぇなぁ」


大きい破片に左腕を負傷する。背中には細かい破片も刺さっているだろう。
だが利き手はまだ生きている。これならまだ戦えそうだ。

走りながらジャンへ弾を撃つ。ジャンもそれに応戦し、移動しながらの投擲。

状況はあまり良くはない。此方の弾は柱に防がれ、相手の手榴弾はその柱すら武器とする。


パブロフ「ここまで怪我したのも久しぶりだね」

―そういえば、そうかもね―

ジャン「やぁっと喋ったな!思ったより子供っぽい声してんじゃねぇか!」

―子供っぽいってさ―

パブロフ「うるさいな!気にしてるんだよ!」
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/04(金) 06:20:15.73 ID:dRllyiJc0
続きマダー?
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/03(日) 05:23:34.83 ID:FsHInVjW0
男があまり知らない女性を「ちゃん」付けで呼ぶのは…

下心が伺える。
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