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女武「ウチの勇者、強すぎない?」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/15(土) 11:36:26.08 ID:rhHjb7yk0
以前vipで書いたものの推敲版となります。
ストーリーもいくつか変える予定ですのでよろしくお願いします。


カギンッ!! ガキンッ!!

少年「やっ、はっ!!」

老人「もうすこし腰をいれんか」バシ

少年「う、うるせぇ!!」ドテ

老人「強くなれんぞ?」

少年「俺は強くなりたいんじゃない!!」

老人「ほう。ではなぜ? なぜ、ワシと剣を交えるんじゃ?」

少年「ジジイに勝つためだよ!!」

老人「威勢が良いのぉ」

少年「バカにするな!!」

老人「しかし、勝てるかもしれん。お前なら『彼奴』に勝てるかもしれんな」

少年「こっちを見ろ!! くそジジイ!!」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1355538985
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諸君、狂いたまえ。 @ 2024/04/26(金) 22:00:04.52 ID:pApquyFx0
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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
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渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714052788/

二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
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全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
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笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/15(土) 11:38:31.57 ID:rhHjb7yk0
 10年後

勇者「…………」ブンッ

 勇者のこうげき。
 かいしんのいちげき。
 ドラゴンをやっつけた。
 
女武道家「……えっと、戦士?」

戦士「あ? なんだよ?」

女武「ウチの勇者、強すぎない?」

戦士「さぁ?」



女賢者「勇者様、お怪我は?」

勇者「ああ、ない」

女賢「で、では、空腹のほうは?」

勇者「一時間前に食べただろ」

女賢「すいません」

勇者「謝らなくていい」

女賢「あっ、はい。すみませんッ」

勇者「…………そこに転がってるドラゴンの頭を持って行くぞ」

女賢「分かりましたッ。えっと、二人ぃ!!」
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/15(土) 11:40:33.31 ID:rhHjb7yk0
戦士「呼んでる」

女武道家「これじゃあ、ただの荷物運びね」

戦士「はぁ、俺の活躍の舞台はもっと先かね」

女武「ないんじゃない?」

戦士「うそっ?」

女武「さぁ?」
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/15(土) 11:41:33.33 ID:rhHjb7yk0
城下町

ガラガラガラ……

戦士「(おい、女武道家。勇者にどこまで持っていくか訊けよ)」ガラガラ

女武「うっさいわね。自分で訊きなさいよ、意気地なし。私だって疲れてるのよ」ガラガラ

勇者「ああ」

戦士・女武「「」」ビクッ

勇者「……ドラゴンの死体は城に持っていけばいい。終わったら、好きなようにしてていいぞ。
   俺は宿にいる」

女賢「私はどうすれば。も、もし何かお申し付けとあれば……」

勇者「ああ、好きなようにしてくれ。それと、明日も休みにするから明後日に集合だから」

 スタスタ……

戦士「あれってクールっていうのか?」

女武「クールじゃなくて、見下してるって言うんじゃない?」

女賢「そんなことを嘯く余裕があるなら、さっさと持っていきなさい」

戦士・女武「「ハイハイ」」
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/15(土) 11:43:46.71 ID:rhHjb7yk0
宿屋

バン

勇者「…………」
 
勇者(なんで俺が勇者なんだよ。そんな柄じゃないだろ、俺)

勇者(この剣だってそうだ)

 勇者は伝説の剣を見た。
 伝説の剣はつよく光っていた。

【でんせつの剣】
 かの勇者が持っていたといわれる伝説の剣。
 オリハルコン製で欠けることはない。

勇者(クソッ。勇者なんて面倒くせぇ。神託かなんか知らんけど……神様も耄碌してんな)

 勇者は、壁に伝説の剣を立てかけた。

勇者「さて、寝るか……」

 勇者はベッドに寝転んだ。
 ベッドは危うい音をあげた。

ダダダダダ……バンッ!!

女賢者「勇者様!?」

勇者「ノックぐらいしろ」

女賢者「す、すみません。しかし王様が褒美をとッ!!」

勇者「(物で釣るのか。たいそうなこった)」ボソ

女賢者「何か申されましたか?」

勇者「いや、分かった。先に行っててくれ」

女賢者「は、はいッ!! 私は二人に伝えてきますッ!!」

6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/15(土) 11:47:36.18 ID:rhHjb7yk0
王城――王の間

王「おお、勇者よッ!! よくぞ舞い戻ったッ!!」

勇者(ったく、無駄に声デケェーな。声楽家かよ)

王「かの暴虐なドラゴンを討ち取ったことに感謝するッ!!
  さすれば、この大陸にも一時の平穏が訪れるだろうッ!!
  その勇壮な戦いぶりは、第4の勇者を彷彿とさせると聞くッ!!」

女賢者「しかしっ!! まだ、北西に諸悪の根源――魔王がおります!!」

王「さすれば、そなたらに魔王を討つ武具をしんぜよう。おい、兵士!!」

兵士A「ハッ!!」

 兵士Aは伝説の盾を王にさしだした。

王「勇者ッ!! そなたに、この伝説の盾をッ!!」
 
勇者「……はい、ありがとうございます」

王「さぁ、行け勇者よッ!! 数多の罠を潜りぬけ、魔王を討つためにッ!!
  過去の猛者どもの無念を晴らし、混沌に満ち充ちたこに世界を、その手で救うのだッ!!」

戦士・女賢者「「「ハイッ!!」」

勇者(盾か。攻撃当たらなきゃいいし、まぁ、戦士にやるか)


7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/15(土) 11:51:00.13 ID:rhHjb7yk0
城門前

女賢「すごいですねッ!! 勇者様ッ!!」

 女賢は、キラキラと瞳を輝かせている。あまりに嬉しそうなので、勇者は困惑した。
 伝説の剣を恩賜されたときと、まったく同じ口上であったのに、なぜそんなに喜べるのか?

勇者「ああ、二度目だけどな」

女賢者「あっ、そ、そうですね……」

勇者(落ち込むことはないだろ。ったく)

  「……おい、戦士」

戦士「あ、はいッ!! じゃなくて、おう」

勇者「この盾をやるよ。売ってもいいぞ」

戦士「え、お、おうッ!!」

勇者「じゃあな。また明後日」スタスタ



女賢者「勇者様……」

戦士「コレ、貰っちまったぞ」

女武道家「やけに高級な餞別ね。流石、勇者様。羽振りはいいわ」

戦士「売っていいのかな?」

女武道家「いいじゃない?」

女賢者「それはいけません!! かの勇者が手にした武具ですよ!?」

女武「冗談よ。売れる訳ないじゃない。こんな小物が」

戦士「小物じゃねーだろ。だって伝説の盾だぞ? どちらかと言えば大物だろ」

女武「…………たしかに大物ね、アンタ。将来、世界を救うかもね」

戦士「なんか、らしくないなぁ。女武道家」グイ

女武「触らないでよ、気持ち悪い」パチン

戦士「きもち……わるい?」ズーン
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/15(土) 11:56:32.07 ID:rhHjb7yk0
賢「わ、私、勇者さまの処へ行きます」

女武「行っても、相手にしてくれないわよ? 
   大体、私たちはお金で雇われてるんだから、そこまでしなくてもね。
   しかもそのお金は、国民の募金。それの意味、わかる? アイツは仕方なく私たちを雇ったのよ」

女賢「しかし、勇者さまは世界をお救いになる御方です。すこしでも力になれれば、私は本望ですので」

女武「勇者、勇者って、今回の勇者で7人目。あんなに人気のあった6番目の勇者も死んでしまったわ」

女賢「だからなんです? 6番目の勇者さまは、その美貌で人気があっただけです。今回は違います」

女武「歴代最強の五番目の勇者も負けてるのよ?」

女賢「何を言いたいのですか?」

女武「本当に勝てるのかって話よ。諸悪の根源、邪神の化身、魔族の長、世界を征服せんとする魔王さまにさ。
   なに?分からないの? 案外、賢者って楽な職業ね。頭の中は空っぽでも出来るなんて、バカでもなれるわ」

女賢「――――ッ」

戦士「お、おい二人ともやめろよ」

女賢「私、行きますからッ!!」タタタタ

戦士「おい、行っちゃたぞ?」

女武「どうせ、私たちは荷物引きの駄馬よ。救世主は一人なんだから私たちの出番はないわ」

戦士「冷めてるな……女武」

女武「そんなものでしょ、旅の仲間なんて。絆の力なんて所詮、個々の実力には及ばないのよ」
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/15(土) 11:57:15.87 ID:rhHjb7yk0
二日後 街道

スタスタスタ

女賢「…………」

勇者「…………」

戦士・女武「…………」

戦士「(やっべぇー、この空気ヤバすぎだろ!! ここは俺の一発ギャグで!!)」

戦士「おーい、みんなこっちを見てくれ。これから戦士のスペクタルショ……」

 シーン。スタスタ。

戦士「…………」
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/15(土) 11:59:54.32 ID:rhHjb7yk0
女賢者「あ、勇者様?」

勇者「ん?」

女賢者「……いや、なんでも」

勇者「そうか」チラッ

女賢(気の利いたことを言いたいけど。私、ダメだなぁ。やっぱり女武さん言うようにバカなのかな……)

女賢「はぁ……」

勇者「」チラッ

勇者(俺が悪いみたいじゃねぇーかよ)

勇者「じゃあ休憩にするか」

女賢者「えっ、しかし、先ほど街を出たばかりですので」

勇者「俺がしたいんだ」

女賢者「は、はいっ!!」

女武「珍しいわね」

勇者「そうだな」

女武「ホント、張り合いがないわね、アンタ」

勇者「……そうだな」

女武「…………もういいわ。ねぇ、戦士」

戦士「え、あ?」

女武「どうしたのそんなに落ち込んで?」

戦士「いや、なんでも。ただシカトって結構きついんだなぁ〜ってさ」

女武「?」

戦士「見ないでくれ。俺は……うん」

女武「頭の毒が身体に周ったのね」

戦士「頭の毒?」

女武「なんでもないわ」
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/15(土) 12:03:43.57 ID:rhHjb7yk0
休憩中 草原

女賢「ゆ、勇者様って恋人とか居たんですか?」

勇者「いない」

女賢「そ、そうですか。わ、私は居たことがありません」

勇者「そうか」

戦士「じゃあ、俺と付き合うかい、女賢?」

女賢「しません」

戦士「なっ、そんなきっぱりと」

女武「アンタら何を言ってるのよ。先ずは魔王でしょ?
   倒したあとすればいいじゃない、恋愛なんてさ。いつでもできるのに」

女賢「バカに、しないでください」

女武「なにが?」

女賢「だって、アナタはこないだ!!

女武「うん、こないだ?」

女賢「魔王は倒せないって言ったじゃないですか!!」

女武「言ってないわよ? 私は倒せるのかな? とは言ったけど。
   アレ? もしかして女賢さまがそう思ってるんじゃないの?」

女賢「そんなこと思ってなんか―――――」

勇者「―――――俺、すこし用を足してくる」サッ

女賢「ち、違うんですよ!! 私はそんなこと全然……」

女武「あらっ。墓穴を掘っちゃったのね、賢者さまは」

女賢「あなたは……」キッ

戦士「け、ケンカするなって。折角仲間になったんだろ?」

女武「ケンカなんてしてないわよ。ねぇ、賢者様?」

女賢「ッ……」
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/15(土) 12:06:53.15 ID:rhHjb7yk0
茂み

ガサガサ

勇者「魔王を倒す……か」

  (魔王に恨みなんてないしな。つーか勇者なんて半ば無理矢理やらされてるだけだし、
  まぁ、これ以上強くならないといけないんなら、『嬉しいけど』)

勇者「クソジジイを超えるか……」

 (『今』はもう超えられないがな……)

 勇者は用を足し、その茂みから出ようとする。
 と、そのとき。なにやら話し声が聞こえた。
 どうやら人間の言語ではない。木立の陰からのぞくと、

人型モンスターA「      」

人型モンスターB「      」

勇者(親子か? こんな所で珍しい)

人モンA「      」ブンブン

人モンB「      」

人モンA「      」ブンブン

人モンB「      」

人モンA「      」ボロボロ

人モンB「      」ボロボロ

勇者「…………」

 勇者をそこから立ち去る。
 延々と聞こえる魔族の泣き声を聞きながら。
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/15(土) 12:10:28.05 ID:rhHjb7yk0
―――――
―――
――


女賢「ゆ、勇者さま!!」タタタタ

勇者「ああ」

女賢「先ほどのご無礼、申し訳ありませんでした!!」ペコリ

勇者「ああ。俺も気にしてないから」

女賢「いや、でも」

女武「気にしてないんだからいいじゃない。はやく道を急ぎましょうよ
   さすがに私も女だし、野宿は嫌だからさ。魔物の子なんて孕みたくないわ」

勇者「そうだな、出発しよう」

女賢「…………」

女武「どうしたの、賢者さま? 元気がなさそうだけど」

女賢「い、いや」

女武「なら行きましょう? そうしないと、『世界は救えないわよ?』」

女賢「…………」

戦士(うわぁ……女武の女賢イジリ。……仕方ないここは俺がッ!!)

戦士「じゃあ、俺の一発ギャグを」

一行「」スタスタ

戦士「――――っていくな!!」
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/15(土) 12:22:59.83 ID:rhHjb7yk0
街道

戦士「遠いな、次の街」

女武「そうね」

勇者「」スタスタ

女賢「」スタスタ

女武「でも、まぁ、いいんじゃない? 遠足みたいでさ」

戦士「遠足? 女武って、どっかの学院に入ってたのか?」

女武「悪い? 入ってちゃ?」

戦士「いや、でもなんで女武道家に? 学者とかにならかったのか? 魔法石の研究とかさ」

女武「まぁ……気分よ、気分。あるでしょ?
   まぁ、強いていえば、空が青いから女武道家になったのよ」

戦士「そっか……」

 ガサゴソ、バッ!!

一行「「「「!?」」」」」

 ―――――茂みから突然、モンスターが現れた。

女賢「二体っ!?」

勇者(さっきの親子……)

人モンA「」サッ

 人モンAは呪文を唱え、女武に火の玉を放った。
 が、いとも簡単に避けられる。首を傾げる程度だ。

女武「当たる訳ないでしょ」

 女武は地面を蹴り、自慢の脚力で、人モンAへ肉薄する。
 しかし―――横合いから、蛇のように火炎が迸る。それは人モンBが放ったものであった。
 咄嗟に女武は屈み、火炎を回避する。掠った髪が焦げつき、黒い灰が宙に舞った。
 しかし彼女は、意とせず、突進の勢いそのままに、強靭な拳を――――

勇者「――――待て!!」

 ピタリと動きが止まる。それを好機とばかりに、人モンAは手をかざす―――それは呪文だ。

女武「ッ!?」

 飛び退くが……遅い。輝きは極に達し、炎を放射。
 うねる炎が女武を飲み込む。
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/15(土) 12:28:20.59 ID:rhHjb7yk0
 がしかし、火炎の放流は二分される。彼女が嘲笑った、女賢のバリアーにより。

女賢「何をしているのですか、アナタは!!」

 女武は飛び退き、恩人の隣りに着地する。

女武「借りが出来たわね。でも謝らないわよ?」

女賢「ご勝手に」

戦士「おい!? 女武!?」タタタタ

女武「なにっ?」

戦士「勇者の注意がなかったら、丸焦げだったぞ!?」

女武「そんなわけ――――」

女武(――――そんなわけないわ。私の方がはやく攻撃が出来た……)チラッ

勇者「…………」

女武「剣を抜かないなんて良いご身分ね、勇者さま」

勇者「あ、ああ」

戦士「なんだ。俺たちに戦わせてくれるのか?」

勇者「ああ、そうだ。実力を見たい」

戦士「じゃあ、よっしゃぁぁぁ!! 行くぜ!!」
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/15(土) 12:36:43.88 ID:tKd2boIyo
◆「saga」、文字フィルターに関して

・sagaについて
さが、と読みます……多分。
「sage」とは似ているようで全くの別物です。間違えることが多いので注意。

「saga」をメール欄に入れることによって後述の「VIP別荘専用フィルター」を解除する事が出来ます。
事故回避に繋がるのでSSを書くなら、常に入れておくことを推奨します。

フィルターはSSの雰囲気をぶち壊すのでよく分からないならとりあえず入れておきましょう。
――sagaを入れ忘れて起こった事故の例
  例1:あなた、あの子の事になると本当に必[ピーーー]ぇ ←「[ピーーー]」がフィルターにかかっている
  例2:――白いこなあああああああああああああああゆきいいいいいいいいいいいいいいいいいが舞い降りてきた ←「こなあああああああああああああああゆきいいいいいいいいいいいいいいいいい」がフィルターにかかっている

・sageとsagaの併用について
sageとsagaは併用できます。メール欄に「sage saga」(順不同)と入れましょう。
もちろん単体で使っても構いません。

以下に一部記載します。他にもあるので確認したい場合は製作者総合スレをご参照ください。

ドラ・えもん→ [たぬき]
新・一 → バーーーローー
デ・ブ → [ピザ]
死・ね → [ピーーー]
殺・す → [ピーーー]
粉・雪 → こなあああああああああああああああゆきいいいいいいいいいいいいいいいいい
ドド・ドド→ ┣¨┣¨┣¨┣¨
魔・力 → 魔翌翌翌翌翌翌翌力
翌・力 → 翌翌翌翌翌翌翌翌力
唐・揚 → 唐翌翌翌翌翌翌翌揚
高・齢 → 高翌翌翌翌翌翌翌齢
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/15(土) 12:39:58.30 ID:rhHjb7yk0

 人モンBは、走り出した戦士に、呪文を放つ。だが、再びバリアー。それにより、まったく防がれる。
 そして突進する戦士は、斧を振い上げて斬撃を放った。
 ――――が獲物はそこから飛び退く。加速した刃は地面に刺さり、戦士の身体に反動を与えた。

人モンB「」ダッ

 飛んだ人モンBは、仲間の隣りへ着地する。舌の根の乾かぬうちに詠唱を始める。
 が、眼前には迫る女武。すでに正拳突きの構えは完成している。

女武(この一撃でっ!!)

 ひねりを加えた拳が、人モンB―――ではなく、横の仲間に突き刺さる。
 鮮血吹き出し、枝の折れるがごとく快音が、四辺に響いた。
 ――――人モンAは吹き飛び、ザーと地面を滑る。
 仲間の軌跡を追って人モンBは振り返るが―――その一瞬のスキ、風を斬る強烈な回し蹴りが、それの首を捉えた。
 ボキリッと音が鳴る。そして、屍と化した仲間同様、蹴飛ばされる。が、まだ終わらない。
 女賢が詠唱を止めず、呪文を唱えているのだ。それも、彼女の最強の魔法。すべてを焼き尽くす炎の魔法だ。 

女賢「どいてくださいっ!!」

 ……強大な魔翌力をもって放たれた賢者の炎は、
   すでに息絶える親子の屍を、美味しそうに喰らった。


勇者「…………」

 彼は、風に吹かれるが如く揺らめく火葬の炎に、その切れ長の瞳を細めた。
 そして、抜かずに掴んだままの伝説の剣の柄から、力なく右手を離すのであった。

18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/15(土) 12:46:03.86 ID:rhHjb7yk0
商業の街 アベニュー。

スタスタスタ

女賢「……わ、私、あそこの旅籠で宿を取ってきますねっ!!」

勇者「ああ」

タタタタタ

戦士「じゃあ、俺もすこし武器屋行ってくる。伝説の盾を自慢してくるぜ!!」

勇者「ああ」

タタタタタ

女武「…………」

勇者「お前も行っていいぞ?」

女武「じゃあ、アンタはどこに行くの?」

勇者「女賢を待つ」

女武「それなら、すこし一緒に来てもらえない?」

勇者「どこに?」

女武「酒場」

勇者「なぜ?」

女武「いいじゃない、すこしぐらい」

勇者「戦士といけよ」

女武「アンタのお蔭で死にかけたのよ?」

勇者「…………」

女武「じゃあ、いきましょう?」
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/15(土) 12:50:19.27 ID:rhHjb7yk0
酒場

ガヤガヤ

女武「」ゴクゴク

勇者「」

女武「流石、商業の街。酒もうまいわね。あの湿気た城下町とは違うわ」

勇者「…………」

女武「あのとき、なんで待ったをかけたの?」

勇者「危なかったからだ」

女武「嘘をつくんだ」

勇者「嘘? 本当だ。嘘を言って何になる」

女武「……あの魔物。親子だったわね」

勇者「…………」

女武「なに? いまさら情が湧いちゃったの? 
   アナタ、その手で何匹殺して来たのよ?」

勇者「覚えてないな、そんなの」

女武「ふ〜ん。そんなに殺したんだ」

勇者「そんなことは言ってないだろっ?」

 語気を強めた勇者の声に、女武は幼い笑みを見せる。

女武「そんな顔もできるんだ」

勇者「うるさい」
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/15(土) 12:57:52.95 ID:rhHjb7yk0
女武「中々いけ好かない奴だと思ってたけど、意外に人間らしいのね」

勇者「俺をなんだと思ってるんだよ」

女武「救世主さまっ。……違うの?」

勇者「俺だって好きで勇者をやってるんじゃない。神に選ばれただけだ」

女武「自慢かしら、それって」

勇者「不本意だって話。おまけに冒険の書なんて書かされるしな」

女武「なら、私だって好きで武道家なんてやってないわ。
   実家は魔法使いの名家だしね。戦士との話を聞いてたでしょ? 学院に通ってたって。
   いわゆるお嬢様なのよ、私は。まぁ、深窓の佳人……ってわけじゃないけど」

勇者「ならなんで?」

女武「若気の至りってやつ。誰にだって色々あるんじゃない? アンタにもあるでしょ?」

勇者「……いくつかな」

女武「秘密がない人間は薄っぺらいのよ」

勇者「そうか」

女武「アンタ、それしか言わないのね。『そうか』ってさ」

勇者「しみじみ噛みしめてたんだよ。悪いか?」

女武「ええ、悪いわ。人がいるのに黄昏なんてね」
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/15(土) 13:09:30.16 ID:rhHjb7yk0
女賢「勇者さま……いないなぁ」

 女賢は街を彷徨っていた。宿を取ったあと、待ってるだろう場所に戻ると、勇者の姿が見当たらなかったのだ。
 なのでこうやって探しているが、殷賑たる街並に勇者の姿は見られない。商業の街のにぎわいが、彼女の捜索を妨げているのだ。
 人の波が多すぎて、逐一顔の確認をするのも困難であった。

  (どこ行っちゃったんだろ。うぅ……仕方ない、人に話かけよう)

町人「」テクテク

女賢「す、すいまてぇんっ!! ―――って噛んじゃったっ……」

町人「う、うん。どうしたの?」

女賢「あっ、うっ、ゆ、勇者さまを見ませんでしたか?」

町人「勇者さま? もしかして勇者さま、この街に来てるの?」

女賢「は、はい」

町人「もしかして君も勇者さまに仕えてる内の、1人っ?」

女賢「はい」

町人「そうかぁっ!! 君は勇者さまに仕えてるのか!!」

女賢「はい。あの、でも、勇者さまを知りませんか? 見当たらないので」

町人「あっ、そうだね。僕は見てないけど、おそらく酒場じゃないかな?
   傭兵とかは、だいたいそこで飲んでるからね。美味しい酒があるんだよ」

女賢「酒場?」

町人「うん。この先の酒場」

女賢「そうですかっ。ありがとうございますっ!!」ペコリ

町人「いやいや。勇者さまのお役に立てるだけで、嬉しいよ」

女賢「本当にありがとうございましたっ!!」
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/15(土) 13:13:05.76 ID:rhHjb7yk0
タタタタ

女賢「ここを右に曲がれば、すぐに酒場。でも、勇者さまお酒飲めるんだぁ……
   今度、好きなお酒買っておこう。そしたらもっと仲良くなれる筈だよねっ」

女賢(それにきっとそうなれば、他の2人とも)

 タタタ――――

酒場

女賢「勇者さ……」


勇者「」ゴクゴク

女武「飲み過ぎじゃない?」

勇者「良いんだよ」

女武「良くないわよ。賢者さまに心配されるわよ? それでなくとも心配かけてるのに」


女賢「…………」

クルン……スタスタ。

女賢(2人、仲良かったんだ。ははっ、私、全然知らなかったよ)

  (もうやることないし、宿に戻ろう……かな)

  (はぁ……私って本当に何やってるんだろう。夢だった勇者さまのパーティーに成れたのに)

女賢「(必要なのかな…私。勇者さま一人で世界を救っちゃいそうだね――――)」

 ――――ドンっ 
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/15(土) 13:21:33.64 ID:rhHjb7yk0
女賢「イタッ」ドテ

?「だ、大丈夫か―――って、女賢ちゃん?」

女賢「戦士……さん?」

戦士「うん、ほらっ」

 差し出す手に掴まり、女賢は立ち上がる。

女賢「ありがとうございます。でもなんで、ここに?」

戦士「いや、宿に戻っても誰も居なかったから、酒場に行こうと思って。そっちは?」

女賢「私は…………ま、町を見て回ってたんですよ!! 話に聞くに、商売が盛んな街ですし。
   面白いものがいっぱいあるから。あっと、それで……今、宿に戻ろうとしてですね、えっと」

戦士「そうなんだぁ。まぁ、俺は酒場で一杯盛ってくるよ」

女賢「ま、待ってください!!」

戦士「え?」

女賢「あの、酒場に行かない方が……じゃなくて、宿に一緒に戻りませんか?
   一人だと暇なので、話し相手が欲しいから」

戦士「良いけど。俺の話は面白くないよ。いや自分で言うのもなんだけどさ、女武みたいに口は上手くないし、
   エピソードも限られてるけど……」

女賢「それでもいいです。だから、酒場には行かないでください」

戦士「ん? まぁ〜なら、うん。そうしよう」

女賢「はい……では、いきましょう」

24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/15(土) 13:24:44.86 ID:rhHjb7yk0
 歩き出す2人。明るい街のガス灯が、歩く男女の姿を、ぼんやりと湿った石畳に射影する。
 しかし、涼夜の活気に色づく街並とは真逆、彼女らはおもい沈黙をまもりつづけた。

女賢「…………」

戦士(元気ないな。……勇者も罪な男だなぁ。こんなカワイイ子をさ。
   まぁ……じゃあ、すこし話をしようか)

戦士「そういえばさ」

女賢「」ビクッ

戦士(驚くことはないのに)

戦士「……女賢ちゃんはさ、なんで賢者になったの?」

女賢「え? いや、それは……勇者様に仕えたかったからです。
   本当に幼稚な動機ですけど、それだけ……です」

戦士「そっか。……俺はさ。只、強くなりたかったんだよ」

女賢「強く?」

戦士「バカだと思ってるでしょ? まぁ、実際バカだけどさ。だけど、実力があれば認められるって気がして、
   誰かを護れるって気がして、戦士になったんだよ。
   だから、必要とされてなくとも勇者一行に俺の名前があることは嬉しんだな、これが。
   とはいえまだ、まだ一回も活躍できてないけど」

女賢「そう、なんですか。でも…………勇者さまって強すぎますよね。ズルイくらいに」

戦士「そうだよな。才能だよな、アレ」

女賢「……私、本当に要りませんよね」

戦士「いや、そんなことはないと思うよ」

女賢「だって、さっきっ!! 勇者さまと一緒に女――――」

―――――ドゴーンッ!!
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/15(土) 13:29:13.07 ID:rhHjb7yk0
女賢「!?」
 
 丘の上から轟音が響く。
 見上げると、地主の豪邸から、モクモクと煙が上がっていた。
 2人は顔を見合わせ、もう一度見上げる。
 するとそこから、一羽の怪鳥の影が空へ飛び立った。嘴には人影のようなものが見える。

戦士「アレって……いくか!? 女賢ちゃん!?」

女賢「はい!!」

 街中に警鐘が鳴り響く。それにより恐怖が敷衍され、色めき立つ人々は走り出す。
 その流れと逆行して、2人は丘へ向かった。
 
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/15(土) 13:38:34.42 ID:rhHjb7yk0
地主の豪邸

女賢「こ、これは」

 豪邸は破壊されていた。
 あの飛び立った怪鳥のせいであろう。
 屋根が落ち、火の手が上がっている。
 すると玄関から、煙に巻かれた若い女性が、悄然たる様子で、よろよろとこちらに向かって歩いてくる。
 
給仕「…………」

 戦士は近寄り、彼女を抱きしめた。顔はひどく汚れていた。

戦士「大丈夫か?」

給仕「はい。……しかしお嬢様が」

戦士「お嬢様って地主の娘か?」

給仕「はい。私は命からがら逃げてきて。中では皆っ」

 突然、給仕は目を剥き、戦士の胸板に顔を押し付ける。

女賢「ッ――――」

 女賢は思わず走り出した。
 豪邸内は、煙で充満していたが、それの向きが正面玄関ではなく、奥に向かってるのを見て、
 彼女は、その流れに従って奥へ駆けて行った。
 胸の早鐘がうるさく、まるで警告するようであった。

 タタタタタ――――
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/15(土) 13:43:45.05 ID:rhHjb7yk0
豪邸 アトリウム

 彼女を出迎えたのは、死屍累々の地獄。
 生々しい臓物、飛び散った血潮、人間のものとは思えぬ顔面……それらが、
 この豪華絢爛な大広間を、惨たらしく彩っていたのだ。


女賢「ッ……」

 天井に開いた穴のため、疎ましい腥臭はしない。しかし彼女は、赤い唇と鼻とを、手で覆わずには於けなかった。
 あまりに惨い。魔族の死体は見慣れた積りだが、人間の死体はやはり……。
 遅れて駆け付けた戦士も、惨憺たる有様に眉をしかめ、ギュウと拳を握った。
 
戦士「…………」

女賢「私たちが居ながら」

戦士「無力だな……くそっ!!」

 戦士がドンッと壁を殴る。その音がアトリウムに響いたが、反応する者はなかった。
 皆、死んでいたのだ。
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/15(土) 13:46:24.95 ID:rhHjb7yk0
……………
………
……


宿屋

勇者「そうか。なら、行くか」

戦士「そうだな。くっそ、俺が居ながら。……ゼッタイ仇は打つ!!」

女武「そうね」

女賢「…………」

女賢(人が死んでいるのに、私、女武さんのことを気にしている。そんな場合じゃないのにさ……)

勇者「―――じゃあ、その怪鳥は山の頂にいるんだな?」

戦士「ああ。給仕の話によるとな!! 今から向かえば、娘は救える!!」

女武「じゃあ、行きましょう。さぁ、賢者さまも」

女賢「は、はい」

戦士「ぜってぇー倒す!!」
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/15(土) 13:47:55.09 ID:rhHjb7yk0
怪鳥の山

戦士「たけぇーな」

女武「そうね。でも空には飛べないし、行かないと」

勇者「…………」

女賢「――――ゆ、勇者さま?」

勇者「なんだ?」

女賢「……いえ、なんでも」

戦士「よっしゃぁ、いこうぜ!! ゼッタイ倒してみせるぜ!!」


30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/15(土) 13:50:05.84 ID:rhHjb7yk0

夜。怪鳥の山 山道

戦士「俺はゼッタイ、負けんぞ!!!!! かかってこい、魔物ども!!」

 ――――暗闇の中、突如現れた多くのモンスターが、勇者一行に襲いかかった。

女武「言霊って言葉を知らないの!? このバカ!!」

戦士「お、俺だって予想外だったんだよ!! でも、勇者がいるし大丈夫だろ?」

勇者「……俺は」

女武(はぁ……魔族を殺せなくなった勇者ね……。これからどうすのよ。まぁ今回は……)

女武「今回は私たちに任せるってさ。だから、三人で頑張りましょう? ほら、賢者さまも」

女賢「はい……」

戦士「やるぜ、俺ぇ!!」

 見据えるは、空飛ぶ魔族の軍勢。数多の羽ばたきが不規律な音楽を産み出し、戦いの感を強めてゆく。
 たとえば戦士は気負い立ち、その戦士を見て、なかば女武は呆れたように息を吐いた。
 片や女賢は、冷然たる勇者に下唇を噛み、その勇者は、羽音を生みだす魔族の群れを呆然と眺めているのであった。
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/15(土) 13:53:47.68 ID:rhHjb7yk0
……………
…………
………
……


茂み


戦士「やっぱり無理だった。相手が多すぎる」

女武「はぁ、今は茂みにかくれてバレてないけど、どうやって頂上まで行くのよ。
   急がないと、そのお嬢様とやらが、パクパク食われてしまうわ」

戦士「えっと、それはだなぁ……」チラチラ

女賢・勇者「…………」

戦士「わからん。俺はバカだからな」

女武「こんな時だけ調子が良いわね、ホント。どうにかして、あの魔物をね……」

勇者「――――俺が囮になろう」

戦士「は!? いや、待て。だってお前、勇者だろ!? お前を囮にするぐらいなら……俺がって言いたいけど」

勇者「俺なら全部を倒せる。だろ? 女武?」

女武「認めたくないけどね。規格外の強さを持つアンタなら『殺せる』でしょうね」

女賢「な、なら私もお伴します!!」

勇者「お前は戦士に付いていけ」

女賢「しかし!!」

勇者「勇者の命令だ」

女賢「でも!!」

 手でその声を制する勇者。女賢は瞳に訴えを浮かべたが、この状況ではこれが最善である。
 スッと立ち上がり、眺望の良い山道へ、勇者は飛び出した。
 そこには、多くの魔物の姿がある。
 伝説の剣を抜き、彼は叫びを挙げた。
 魔物どもは炯々たる眼光を、その男、その勇者たる男へ、しかと向ける。
 これで戦闘の前準備は整った。

勇者「かかってこいよ、雑魚ども。俺がまとめて相手してやる」
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/15(土) 13:56:13.66 ID:rhHjb7yk0
 魔物の蹴爪を、剣でいなす勇者。
 鼓膜を突く金属音、風を切る刃の音、闇に煌めく眼光、それらが彼に
 戦場で感ずる快を与えるが、曇る心はまったく晴れない。

勇者(くっそ。やっぱり殺せねぇ…… なんでだよ)

 襲いかかる攻撃は単純だ。数は何十とあるが、当たることは無い。
 しかし防御から攻撃へ転ずることを、彼の良心が許さないのだ。
 ――――ガキンッ。剣を横に薙ぎ、襲いかかった蹴爪を弾く。
 そうすると魔物に、一瞬のスキ。
 もちろんこれは好機であり、通常、一太刀浴びせるのだが、
 奥歯を噛み、勇者は背後へ飛び退いた。
 そして、切っ先を下げ、ふたたび構えをとる。

勇者(マジでヤバいかもな。相手が減らないとなると、体力が)

33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/15(土) 13:57:58.12 ID:rhHjb7yk0
 一方、戦士一行。

 タタタタタタ

戦士「ホント、アイツ大丈夫かな……」

女武「大丈夫よ。負ける筈ないわ。あんなに強いのよ?」

女賢「…………」

戦士「そ、そうだよな!! 今は俺たちを心配しよう!!」

女武「そうね。折角、囮になってくれたし」

女賢「――――わ、私!!」

戦士「ん?」

女賢「戻ります!!」

女武「はっ!? バカじゃないの!? アンタが欠けたら2人だけなのよ!?」

女賢「私は勇者さまに仕える身なんです!! いくらなんでもあの数を1人で相手するのは!!」

戦士「でも、今いかないと娘が食われるぞ!!」

女賢「でも私……行きます!!」
 
 女賢が走りだし、道を戻る。女武が追おうと地面を蹴るが―――――ドスンッ!!
 恐る恐る振り返るとそこには…………怪鳥。

 ――――耳を劈く鳴き声が、彼らの眼界を揺らす。
 
戦士「なんつー声だっ!!」

女武「そうじゃないでしょっ!! 2人でアレをやらないとならないんだからさ!!」

 怪鳥がギロリと目を剥き、翼を広げる。周囲に羽毛、が色鮮やかな羽毛が、舞い散った。

女武「ゼッタイ、次会ったら殴ってやる。あのクソ賢者っ!!」
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/15(土) 14:02:47.41 ID:rhHjb7yk0
 一方 勇者


勇者「はぁ、はぁ、はぁ……くっそ、やっぱり殺すしかないのか」

 まだ多くの魔物がある。否、一羽も欠けてないし、傷も負っていない。
 それに加え、次第にこちらの思惑を知ったか、体力を奪う厭らしい攻撃へ、魔物どもは総じて変えているのだ。
 本来ならば彼ならば、鎧袖一触。今頃この山を登り終え、怪鳥を討伐している処であろう。

勇者(だっせー終わり方だな、おいっ)

勇者「くっそ……」

 剣を構え、次の攻撃に備える。

 そのときだった。

 眩いばかりの光りがまたたき、まるで光背の如く、背後から幾本もの光条が伸びる。
 そして、それらは狙い違わず魔物を貫き、次の瞬間。
 ――――空に浮かぶ鳥たちが纏めて石へ変わる。そして、落下。
 砕け散るのも尻目に、彼は振り返った。

?「変わったご趣味をお持ちで。魔物を殺さずに戦うなんて」
  
勇者「誰だよ、お前」

 そこには黒いローブの男がいた。いや、女か?
 しかし、人間とは思えぬ異様な空気が『それ』の周りに漂っていた。

魔道士「アナタは名を訊いて戦うのですか? 今まで殺した者の名を訊いたのですか?
    訊きませんでしょう? ならば、なぜ私だけに訊くのですか? 理解できませんよ」

勇者「……何が言いたい」ジリ……

魔道士「いや、戦いの場で名が必要なのか……と思いましてね。主はそう教えて下さらなかったので。
    それに教わらなかったことは私、知りませんので。知りたいと思っても本は読まないので。
    もし、戦いの前に話を聞くことが真実でしたら、教えて下さりませんか? この私に?」
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/15(土) 14:10:52.81 ID:rhHjb7yk0
魔道士「他に誰に訊けと? もしや私ですか、ああ、それとも」

 魔道士の腕が上がる。
 垂れさがった袖から、枯木の枝のような細い腕が伸び、その右手の人差し指が『なにか指さした』
 そうすると、その行動が合図だったか、尖った指先を基軸に、青く複雑な魔法陣が広がった。

勇者「!?」

 勇者はうしろを見る。そこには、先へ行かせた筈の女賢。
 もしアレが放たれたら……
  
勇者「女賢っ!!」

女賢「は、はいっ!?」

魔道士「さようなら」

 賢者に向かって光線が放たれる。しかし、入神の技量を持つ勇者は、とっさに剣を振り回し、その光条を弾いた。
 当然、彼の武器は伝説の剣。それが秘たる清き力により、石の魔法を徒爾へ帰すのだが、
 しかし、散った魔法の光りが彼の指に及び、一刹那、彼の人差し指を灰色の石へ変えてしまう。

勇者(くそったれっ!! ざけんな!!)

 回転に任せ、前方――魔道士が居る方へ、その視線を戻す。
 すると、こちらに突進する敵の姿が、彼の瞳にしっかりと映った。

勇者「くっそぉぉ!!」

 彼はそのまま剣を横に薙ぎ振るう。剣先は半円を描き、魔道士の身体を――――捉えたっ!! 
 しかし、『それ』は突進もやめず、耳元でこう呟いたのであった。

魔道士「アナタでも主に勝てない」

 伝説の剣はローブを切断。予想外に肉を断った感覚はなく、黒いローブを切り裂いた。
 おそらく瞬間移動的な魔法を使って、逃げたのであろう。ならばまだ生きている筈だ。
 しかし……指は呪いは解けている。石になっていた筈の指が、滞りなく動かせるのである。
 自分の手の具合を確かめていた勇者に、女賢の声がかかる。
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/15(土) 14:13:14.87 ID:rhHjb7yk0
女賢「ゆ、勇者さま!!」

勇者「女賢……」

女賢「先ほどの――――」

勇者「――――なんで来たんだ!?」

女賢「え?」

勇者「なんで来たんだ!? 2人で戦ってるんだろ、今!?
   俺の命令を無視してなんで来たんだよ!? 俺は大丈夫だって言ったろ!?」

女賢「そ、それは」

勇者「アイツら今頃どんな思いで戦ってるのか分かるのか!! アイツらが死んでたら、お前っ!!
   …………って」

 気づくと女賢は目頭からボロボロと大粒の涙が落としていた。
 そのさめざめと泣く姿を見てしまうと、勇者の気勢も一気に削がれてしまって、
 舌尖するどい言葉の代わりに溜息が漏れた。
 勇者もさすがに女の涙には勝てなかったのだ。

女賢「だ、だって…………勇者さまが、心配で、私……だから、私」

勇者(……なんで泣くかなぁ)

女賢「役に、立ってないって、思って、だから、」

勇者「あ〜もう行くぞ!!」

 勇者が彼女の手を取り、引っ張るように走る。

勇者(死んでたら後味悪いからな……死んでくれるなよ、アイツら)

37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/15(土) 14:16:13.01 ID:rhHjb7yk0
山頂

戦士「っ……イテェ」

女武「大丈夫?」

戦士「ああ、あと一発喰らったらっ、ヤバいけど……な」

女武「なら私は一発でも喰らったらアウトね。
   こんな事なら、脳みそまで、筋肉にしとけばよかった」

戦士「俺みたいに?」

女武「ええ、アンタみたいに」

怪鳥「――――ギャアアオオオッ!!!!」

 怪鳥は巨大なくちばしを槌のように叩きつける。
 バコンッ!! 地面が弾ける。
 同時に土煙が舞い、2人の視界を奪った。

戦士「どこを狙って――――」

 ―――朝靄のような土のカーテンを、勢いよく蹴破るのは、巨大な爪先。
 示し合わせたように、2人は逆方向、右と左に飛んで、一撃必殺のキックを避ける。
 ――――するとそれを読んだように怪鳥は、キックの惰性を打ち消すがごとく、両翼を撓ませ、背後へ飛んだ。
 副産物に強大な颶風が生まれ、2人は煽られる。無論、土のカーテンはすべて纏めて吹き飛び、眼界が明らかになる。

女武「こんな風、いつもなら!!」

 そう、いつもの彼女ならば、これしきの風で動きは封じられない。
 疲労のこともあるが、まだ酒が身体に残っているのだ。
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/15(土) 14:19:17.47 ID:rhHjb7yk0

怪鳥「ギャアアオオオオ!!」

 宙に浮く怪鳥は、くちばしを広げる。するとそこに、ちいさな火種が生まれ、瞬く間に焔の砲丸へ進化する。
 アレを喰らったら――――確実に死ぬ。互いに眉をしかめ、回避の策を探すが、一切合切思いつかない。
 圧倒的な危機に、戦士が雄たけびを上げた。

戦士「くそぉぉぉ!!」

 火炎が発射される。迫り来る業火に、2人は直ぐに死を想って目を瞑ったが―――衝撃はない。
 たしかに爆発音は耳を劈いたが、当の痛みが無いのだ。
 パッと目を開けると、2人を護るようにバリアが張られている。
 何事か? そう思わずにはいられない。
 ――――すると突如、パキッと表面に亀裂が走り、バリアーは一気に崩壊する。
 それを機に、守られていた清浄な空気が、土の煙に犯される。

女賢「はぁ、はぁ、はぁ」

 彼らの前には、女賢が居る。……このような危機を招いた賢者が。
 しかし彼女は、振り向きもせずその場に頽れた。

戦士「女賢ちゃん!!」
 
 咄嗟に近寄り、抱きかかえようとする戦士。だが彼に向かって、勇者の声が叫ばれる。
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/15(土) 14:27:39.82 ID:rhHjb7yk0
勇者「――――戦士!!」

戦士「勇者!? 来たのか!?」

勇者「くちばしを狙え!!」

戦士「お、おう!!」

 なかば反射的に、戦士は駆けだす。
 片や怪鳥は、火炎の疲労により、地面へドンっと着地し、ガクンッと反動に首を下げた。
 ―――――チャンスだっ!!

戦士「うぉぉぉぉ!!」

 戦士は飛び上がる。彼の望む光景は、暁に染まるまぶしい空。そして、怪鳥の黄色い嘴。
 己の斧を、彼は、『思いっ切り』振り落す。
 ドスンっ!!
 怪鳥の嘴――――否、頭部丸ごと、その地面に叩きつけられる。

怪鳥「カッ……あ……」

 グイッと反射的に首をもたげた怪鳥。であるが、足は千鳥足を踏んでいた。脳の揺らされたが故だ。
 ―――すかさず、女武は地面を蹴った。それも、精一杯の力で。

戦士「いっけっぇぇぇぇ!!!」

 女武が飛び上がり、肘を後ろへ引く。それは簡単な正拳突きの構えだ。

女武「―――――ッ!!」

 奥歯がしっかり噛み合わされ、五本の指が1つの拳を成す。

女武「くたばれ!! くそ鳥!!」


 ――――白い羽毛が繁る胸元へ、渾身の一発が、放たれた。

 ドンッ!! 極彩色の羽毛がなびき、けぶる黄塵が広がった。

怪鳥「………カッ……」

 ドスンッ!! まるで怪鳥は、糸の切れた傀儡のように、無造作に倒れた。
 それは勝利の証である。そう、彼女らは勝ったのだ。
 一瞬何かを手探るような沈黙が流れたが、それを破るように明るい声が響く。

戦士「よっしゃぁぁあぁ!! 俺たちだけでかったぁぁぁぁ!!!!」
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/15(土) 14:29:15.18 ID:rhHjb7yk0
女武「はぁ……勇者が居なければだめだったけどね。
   それに、マジで死ぬかと思ったわ。このクソ賢者のせいで」

女賢「す、すいません……私のせいで」

女武「なに? 泣いてるの?」

女賢「…………」コクン

女武「はぁ……殴ろうと思ったけどやめた。なんか……やめたわ」

女賢「いえ、殴って下さい」

女武「殴らない」

女賢「殴って下さい。私を殴って下さい」

女武「しつこい!! 殴らないっていったら殴らないっ!!」

女賢「殴って下さい!!」

女武「殴らない!!」
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/15(土) 14:30:22.35 ID:rhHjb7yk0

勇者「…………」

戦士「俺すごくね!? なぁ、すごくね、勇者ぁ!?」

勇者「そうだな」

戦士「もうすこし喜べよ!! なぁ、勇者!!」

女武「――――殺してないわよ、バ〜カ」

勇者「ん?」

女武「殺すようだったら、もう一発とどめの一撃を入れてるわ」

戦士「え? あ?」

女武「もう話せばいいじゃない。自分のこと」

勇者「……というか、攫われた娘は?」

女武「ああ、そこに居るわ」

娘「」ブルブル

勇者「そうか……」

戦士「いや、勇者になにか秘密があるのか?」

勇者「もどってから話そう」

戦士「お、おう」
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/15(土) 14:32:28.82 ID:rhHjb7yk0
地主 豪邸

娘「きゅ、給仕!!」

給仕「お嬢様!!」ダキ

給仕「あ、ありがとうございます。みなさま方!!」

戦士「いやぁ〜それほどでもないですよぉ〜。まぁ俺にかかればこのくらい? 楽勝ですけどね。
   なぁ〜みんなっ!? 楽勝だよなっ!?」

給仕「ありがとうございます。なにかお礼を差し上げたいのですが…………」

女武「いえいえ、ただの慈善事業なので要りませんよ。だから、お金を下さい」

給仕「え?」

女武「だからお金を――――」

勇者「――――いやなにもいりませんので」

女武「(ちょっと勇者!? 貰っとけるものを貰わないなんてダメよ!!)」

勇者「(金なら鱈腹もらっただろ。王様からさ)」

女武「そ、それはそうだけど。だけど、アレじゃない。お金は大切よ。食い扶持にもしないと」

勇者「はぁ……いくぞ」

戦士「待てよ。ほら、秘密とやらを教えてくれ」

勇者「秘密?」チラ

女賢「」コクン

女武「まぁ、今教えれば? それなら――――って、んっ?」
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/15(土) 14:34:21.12 ID:rhHjb7yk0

 朝焼けの空に一羽の影。最初の内、只の鳥に見えていたが、次第に大きくなり、
 その全貌が明らかになる。それはあの極彩色の、巨大な怪鳥だ。
 当然、係累を殺された娘は慄きの声を洩らし、自分の身体をしっかりと抱く。

戦士「また来たのか……」

 戦士は武器を構え、女賢は両手で杖を握った。
 怪鳥は、彼らの眼前に、ドスンッと落ちたつ。

勇者「…………」

怪鳥「…………」

戦士「ゆ、勇者?」

 ――――怪鳥は唐突に頭を垂れた。
 黙契が成り立ったのだ。これは、主への忠誠の証である。
 勇者は怪鳥の頭を頭を撫でる。
 すると、怪鳥は喉を鳴らして、喜んだ。

女武「ドMなのね、この鳥は」

 女武は、あきれたように怪鳥を振り仰ぎ、独りごちるのであった。
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/15(土) 14:36:15.67 ID:rhHjb7yk0
 今日はここまで。書き上がり次第上げたいと思います。
 明日にも投下できる見込みです。
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/15(土) 14:54:53.28 ID:rhHjb7yk0
質問ですが、女武道家を『女武』と表記するのと、そのままで表記するの、どちらが読みやすいでしょうか?
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/15(土) 15:02:24.39 ID:A4h8ITgo0
そのままでいいんでね?
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/15(土) 15:03:08.46 ID:A4h8ITgo0
間違った、女武のままって意味
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/15(土) 15:55:34.35 ID:gpe5gobwo
ああ、何故か荒れてたアレか
応援してる
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/15(土) 20:08:22.57 ID:mUzYUShyo
お、こっちに書いてんのか
前のスレでSS速報に書いて欲しいってレスしたからうれしいよ
期待してる
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/15(土) 22:06:11.01 ID:WiWTatWIO
これは期待
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/15(土) 23:43:24.91 ID:ZP3P1ygMo
ラストが俺魔物倒せねーしで終わったやつだっけ?

SS速報だしゆっくりやってくれー、おつ
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/16(日) 11:56:03.09 ID:WHeU8FsF0


        『果たして今回は愉しめそうだ』

        「愉しめる? 貴様、【これ】をなんだと思ってるだ。戯れではないのだぞ?」

        『お前に教示されずともわかっている。――――快楽だ』

        「快楽? 佯狂だな、それでは」

        「まぁまぁ、お二人方。俺たちは≪主≫に仕える身。無駄口は叩かない方がよろしいんでは?」

        「そうですよ。あまりお二人に頑張られても、進行役の私も困りますからねぇ。経世は難しいのですよ」

        『ならば、大神官の教典をのたまうのか? 呆れるなぁ。エルフの分際で』

        「戦いを欲するのなら、やればいいさ。咎めが落ちぬ程度にな」

        『殺すさ。さも、愉快に逃げる様が見れるのだろう。激甚たる破壊は、創造の端緒を開くんだ』

        「創造者への冒涜ですね、もはや。まぁ〜俺も人のこと言えませんが」

        「ははっ、神はすでに死んだのですよ。私たちの手によってね。いや、開闢のときからすでに死んでいたのでしょう」

        「……そろそろ≪主≫が来るぞ。貴様らの鶏鳴は聞き飽いた。口を慎んだらどうだ?」

        「流石、頂に立つ者は違いますね、私たちとは」
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/16(日) 11:59:28.76 ID:WHeU8FsF0
鳥の背中

戦士「じゃあ、勇者は魔物を殺せなくなったのか?」

勇者「そういうわけだ」

女賢「あのときの親子を殺して?」

勇者「そうだ」

女武「はぁ……勇者なのに魔物を殺せない。ホント困ったわね」

勇者「うるせぇ」

女武「なによ。ホントじゃない。間違ってる?」

勇者「……そうだけどな、なんかムカつくんだよ。その言いよう」

女武「まぁ、王さまには報告しない方が無難ね。下手すれば、勇者解雇ってこともありそうだしね。
   まぁ、あのオヤジ、経済に関しては辣腕らしいけど、軍事に関してはからっきしって感じだし。
   だから、言わない方がいいわ。今回の勇者強そうだし」

勇者「……勇者解雇か。……そっちの方が良いな」

戦士「ふざけんなよぉ〜。お前が居れば、魔王だって絶対倒せるぜ?」

勇者「俺より強い奴は居る筈だ」

女賢「い、いません!!」

勇者「いや居るよ。たしか5番目が、歴代最強なんだろ?」

女賢「…………そ、そうですけど。今はアナタが一番だと思います」

勇者「居るだろう、もっと」

女武「はぁ、なんでそこで肯定しないかなぁ〜。お前は」

勇者「真実だからだ」


54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/16(日) 12:01:29.25 ID:WHeU8FsF0
バサバサバサバサバサ

怪鳥「」ドスン

勇者「っと」

 皆は降り立ち、鳥に別れを告げる。
 するとそのとき、怪鳥は首をもたげて一本の立笛を勇者に与えた。
 この音を聞けば何処に居ようが、必ず駆けつけると、大きな図体でジェスチャーをする。
 勇者は懇ろに感謝を言って、王国へ入った。
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/16(日) 12:03:33.45 ID:WHeU8FsF0
城 応接間。

王「よくぞ戻った!!」

 省略

王「そなたらに、この兜を授けよう」

…………
………
……


城下町

勇者「また貰ったな。おい、戦士、やるよ」

戦士「いいのか?」

勇者「重いし動きにくいからな」

戦士「じゃあ、遠慮なく貰うぜ。強くなっても嫉妬するなよ?」

勇者「ああ」

女武「っで次はどうする?」

勇者「魔王の所以外どこへ行くんだよ」

女武「いや、大体の伝説だとちゃんと他の場所へ行ってるのよ?」

勇者「それは伝説だろ? 俺は伝説に生きてるわけじゃない」

女武「まぁ……そうだけど。」

勇者「俺はもう魔王以外は殺さない。そう決めたんだ」

女賢「……わ、私も勇者さまに従います」

女武「はぁ……じゃあ、そうしましょう?」

戦士「マジで? いきなり魔王!?」

女武「そうみたいね。私はどうかと思うけど」

56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/16(日) 12:09:03.97 ID:WHeU8FsF0
魔王城。 門前

勇者「意外と遠いな」

戦士「あと、寒い」

女武「そうね。見るからに雪国だし。まぁ、中に入れば寒くないでしょ。
   魔王も暖房をきかせてると思うわ」

女賢「…………」ゴクン

勇者「でも……これ。どうやって入るんだ?」

 睥睨するが如く築かれた巨大な門。しっかりと締められて一分の隙もない。
 おまけに、何やら結界のようなものが張られており、力ずくで開きそうにない。
 そうなると女武は得意げに、

女武「わからないの?」

勇者「あ、ああ。わからん」

女武「私、行ったよね? 順序良く辿らないといけないって」

勇者「すみません」

女武「じゃあ、どうするの、次?」

女賢「王さまが、海で化け物が出たって、言ってました」

戦士「じゃあ、いくか!! 海!!」
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/16(日) 12:12:42.43 ID:WHeU8FsF0
港町

ザァ……ザァ……

戦士「ついたなぁ〜海!!」

勇者「ああ。でも……化け物が出たらしいが、あんまり変わらないな」

女武「来たことあるの?」

勇者「いや、雰囲気が普通だって話だ。この港町がどうなのかは知らない」

女賢「ここは、魔法に長けた勇者、第二の勇者の故郷です」

戦士「そうなのかぁ〜。俺は魔法を使えないから、どれくらい凄かったのか、分からないけど」

勇者「俺もだ。俺も魔法が使えない」

女武「え? 使えないの?」

勇者「才能がないんだ。どうやら魔法の回路が無いらしくてな」

女武「なんか……はじめて勝った気がする」

戦士「じゃ、じゃあ、俺は……」ズーン

女賢「あっ、そ、その。いきましょっ? 何が起こってるのか調べないと」

勇者「ああ」
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/16(日) 12:13:03.09 ID:ujLCltPro
がんがれ
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/16(日) 12:15:07.02 ID:WHeU8FsF0
女武「ふ〜ん。でも、魔法が使えない勇者なんて珍しいわね」

勇者「そうか?」

女武「ええ。大体使えなかったけ?」

女賢「いえ、第四の勇者は使えませんでした。その代り、勇者さまと同じように剣術に長けており、
   おそらく歴代最強の『剣客』でしょう。
   しかし、やはり歴代最強は、第五の勇者。たった1人旅をしたと言われてますし、
   最強と言われる所以は、たった1人で魔物の大軍勢を滅ぼしたという逸話からです。
   それと、美しさは第六の勇者。初めての女性の勇者で、その美貌で多くの男どもを率いて行ったと聞きます。
   私たちのような四人だけのパーティーは、第三の勇者以来ですね。そういえば、第三の勇者ははじめて、
   仲間と子供をもうけた――――――」

女武「…………」

勇者「…………」

戦士「やっぱり港町だし、魚が旨いのかな?」
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/16(日) 12:16:23.46 ID:WHeU8FsF0
広場

スタスタスタ

勇者「ここら辺で訊くか?」

女武「そうね、ここら辺で―――――」

「――――まてぇ!!!!!」

戦士「ん?」クルン

女A「まてぇ!!!!」

少女A「」タタタタ

勇者「追ってるみたいだな。……止めるか?」

女武「一応、止めましょう。見逃したら何もないでしょ?」

女賢「じゃ、じゃあ私が止めます!!」ズイッ

少女A「」タタタタ
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/16(日) 12:17:07.96 ID:WHeU8FsF0
女賢「ほらっ、止まって!! お姉さん、ここを通さないよ!!」バッ

勇者「えっと、女賢者?」

女賢「はい?」

勇者「こっちに尻を突きださないでくれ。なんか……下着が見えそうだ」

女賢「えっ!? うそっ!?」バッ

戦士「あっ、女の子が……」

少女A「」タタタタ……

女A「あ〜行っちゃったぁ……」ハァ……トボトボ

女武「なにかあったんですか?」

女A「ん?」

女武「いえ、怪しいものじゃなくて。私たちは旅の一行です」

勇者(自分では言わんよな。旅の一行です、なんて)

女A「ああ。もしかして知らないのかい?」

勇者「?」
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/16(日) 12:22:55.67 ID:WHeU8FsF0
女A「封印された化け物が、贄を要求してるんだよ。それがあの子の姉でねぇ。健気に訴えに行くんだってさ。
   私は止めようと思ったんだけど、中々足が速くてねぇ……」

女賢「封印された? もしや、第二の勇者が封印したあの魔物ですかっ!?」

女A「あ〜そうだよ。なにの因果か目覚めて。今日にも贄を供えるんだってさ。
   ホント不憫だよね……」

女賢「これって……勇者さまっ!!」

勇者「ああ、チャンスだな」

女賢「そうでよね……///」カァァァ

女武「なにを恥ずかしがってるんだが……
   言っておくけど、アンタの下着、高頻度で見えてるわよ」

女賢「えっ!?」

戦士「うん。屈むと見えるよな」

女賢「うそ……」

勇者「いや、うん、ホント」
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/16(日) 12:27:54.84 ID:WHeU8FsF0
集会所

タタタタタ――――バンっ!!

少女A「お姉ちゃんっ!?」

町長「ん? また来たのか。……これは仕方ない事なんだ」

少女A「お姉ちゃんはっ!?」

町長「…………」

少女A「ねぇ? お姉ちゃんは!?」

町長「…………」

戦士「――――お姉ちゃんは、俺たちが救う!!」

少女A「!? ――――さっきのっ!?」

町長「なんだ、お前らはっ!?」

女武「ご挨拶ね。喫緊の事態に駆け付けた、勇者一行よ」

町長「勇者? 勇者なのかっ!?」

女武「懇切丁寧に最初から話してほしい?」

町長「そうか……しかし、遅い」
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/16(日) 12:31:28.55 ID:WHeU8FsF0
少女A「え?」

戦士「まさかもう!?」

町長「ああ。すでに、贄は……」

少女A「お姉ちゃんが……? ねぇ、お姉ちゃんがっ!?」

戦士「勇者!?」

勇者「ああ、急ごう」

65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/16(日) 12:38:18.26 ID:WHeU8FsF0
海の洞窟

……ザァ……ザァ……

勇者「ここか……知能の低い魔物が湧いてるな。
   封印された魔物の妖気に寄って来たか……」

少女A「勇者さまっ!! 早くしないと」

勇者「ああっ!!」

 勇者一行は、洞窟に入ってゆく……。



 ほの暗い内部には、潮騒の響きがこだましていた。
 だがその音に紛れ、魔物の息遣いが聞こえる。
 テリトリーの侵害に怒っているようである。

勇者「魔物を殺すんじゃないぞ!?」

女武「もちろんよ」

戦士「ああっ!!」

女賢「しかし。相手に知能はありませんよ?」

勇者「――――走り抜ける!!」

女武「ムチャクチャね。まぁ、いいけど」

戦士「Aちゃん!!」

 戦士は少女Aを抱きかかえる。

戦士「みんな、いくぞっ!!」

 タタタタタ……
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/16(日) 12:44:09.79 ID:WHeU8FsF0
―――――――
――――――
―――――
――――
―――
――


 無事無傷で、開けた空間に息を切らしながらたどり着いた一行。
 彼らの前には、霊廟のような小屋1つ、建っている。一見すると形を美しい保っているように感じるが、
 子細に閲すると、ながい年月よる損傷、海近くであるが故の塩害、それらが外観から認められた。

勇者「はぁ、はぁ、はぁ」

戦士「ここのようだな」

 大きな胸の波打つ戦士は、抱える少女を地面におろす。
 そうすると、少女Aは感謝も言わず、「お姉ちゃん……」と小さく呟いた。
 ここに来るまでに聞いた話によると、彼女の親類は、その姉のみだと言うのだ。
 街一番の美少女というだけで、彼女の姉を奪い去るなど……とりわけ、
 義侠に富む戦士には、激越に足るものであった。
 女武は息を整えて、

女武「……いくわよ」

女賢「はぁ、はぁ、……はいっ」

 先頭を行く戦士は、小屋の扉を、バンッと蹴り開ける。
 あまりの勢いに蝶番は外れ、片側の扉は奥へ吹き飛んだ。

戦士「来たぞ!!」

 戦士の声が小屋に響く。
 しかし反応したのは、巫女服の美しい少女であった。

Aの姉「!? あ、アナタ方は……?」

戦士「勇者一行だっ!! さっ、逃げよう!!」

Aの姉「勇者? 勇者さまなのですかっ!?」

少女A「そうだよ!! お姉ちゃん!!」

Aの姉「A!? なんでこんなところに!? 『ダゴン』さまのお怒りに触れたらっ!?」

「――――もう触れてるけど?」
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/16(日) 12:45:18.29 ID:WHeU8FsF0
 若々しい男の声が、彼らの背後から飛んでくる。
 振り返ると、開けた空間の中心に、青年が立っていた。
 まるで、戦士とは真逆の線の細い男が。

青年?「触れてるよ。だって、僕らの愛の巣が壊されたからね」

Aの姉「ダゴン……さま」

女賢「アレがダゴン?」

青年?「ああ。僕がダゴン。しかし……君も負けず劣らず美しいねぇ〜。いや、そっちの子も」

女武「私を言ってるのかしら? この優男」

 青年?―――ダゴンはクククッと喉をならした。

ダゴン「ああ。無論」

勇者「俺の仲間を口説くのはいいが、お前がダゴンなら、なぜこんなことをする?」

ダゴン「理由? 理由はないかなぁ〜。だってこっちの方が魔物らしいんじゃないの?」

戦士「なんだよ、それ」

ダゴン「魔物と人間。それの対立関係に、理由なんて必要なの? 種族が違うから争うんでしょ?」

勇者「じゃあ、俺たちと争うのか?」

ダゴン「その二人の女の子を差し出せば、許してあげよう」

女武「土下座されても嫌よ、アンタみたいな奴。私は浮気された嫌なタイプなの」

ダゴン「ふ〜ん。浮気ねぇ〜。まぁ〜いいや、じゃあ、やろうっ。やってみればわかるよ」
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/16(日) 12:46:16.75 ID:WHeU8FsF0
 卒爾、ダゴンの右腕がブクブクと膨れだす。どうやら、臨戦態勢を取れねばならぬようだ。
 勇者は剣の柄に手を按じる。だがそれ以上の行為、つまり、剣を抜くことはできなかった。
 殺さずの誓いが彼をつよく戒めているのである。
 片や真後ろの戦士は、銀色の斧を握りしめ、脅える姉妹を守るように庇い立った。
 そして隣りの女武は、いつもの冷静な瞳で、ダゴンを見据えている。
  
ダゴン「さぁ、勝負だ」 

 ダゴンの右腕が、ばか長い蛸の足へと変貌する。そして、それをまる鞭のように――――

勇者「――――しゃがめ!!」

 しゃがんだ女武と勇者。その上を、蛸の足が過ぎる。
 
ダゴン「避けたかぁ」

女武「勇者っ!? 戦える!?」

勇者「微妙っ!!」

女武「微妙って……あ〜私が前衛になる!! 女賢は援護!!」

女賢「はいっ!!」

ダゴン「女の子かぁ……」

女賢「女武さん、走って!!」

女武「わかってる!!」 

 走り出す女武。ダゴンは両の腕を蛸足に変え、縦横無尽に振るう。
 交差し、ときには、並列となり、彼女へ襲いかかった。
 地を打つ乾いた音がひびき、息つく暇を女武に与えない。

女武「ッ……」
 
 隙を狙い、好機を計るが、ダゴンの波状攻撃を潜り抜ける術がない。
 おそらく勇者ならば……

ダゴン「攻撃しないんなら、こっちから」

 平行に鞭を叩きつける。女武はうしろへ避ける。
 が、それに襲いかかるように――――水の弾丸。
 ダゴンが口から放ったものである。

女武「女賢!!」

女賢「はい!!」
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/16(日) 12:47:37.60 ID:WHeU8FsF0
 呪文が唱えられ、バリアーが女武、女賢者を被う。
 水弾は衝突。はじける。宙に舞う飛沫は、キラキラと煌めいた。
 ―――――それを切り裂くように、ダゴンの足が振り下ろされる。
 バリアーにぶつかり、パチンッとするどい音を立てる。

女武「次の攻撃で壊して!!」

女賢「はいっ!!」

 ――――振るわれた蛸足が、バリアーを砕く。
 女武は前方へ飛び出し、ダゴンへ迫る。

ダゴン「安直だねぇ」

 ダゴンの腹部がぷっくり膨らみ―――大量の墨を吐く。

女賢「しゃがんで!!」

女武「ッ――――」

 無理矢理、ブレーキをかけ、屈む。その上を冷気を纏う弾が過ぎ去る。
 そして墨とぶつかり、黒の放流を結氷させた。

ダゴン「なるほど」 

 地面で弾ける黒い氷――――その上を飛び越え、女武がダゴンへ。
 拳が敵の胸部を打ち、ダゴンはうしろへ殴り飛ばされる。骨を砕いた感覚はあった。

女武「これで一発」

 地面にころがるダゴン。胸の凹みは拳の跡だ。
 女武は手首を回し、起き上がるのを待っていると、

ダゴン「あ〜痛いなぁ〜」
 
 まるで、凹みが風船に空気を吹き込まれるように……女武は眉をしかめた。
 もしや、と思ったのである。

女武「再生?」

ダゴン「ああ、頭以外はどこでも回復するよ」

女武「ホント?」

ダゴン「ああ、可愛い子には嘘はつかないよ」

女武「ふふっ、そう。――――勇者っ!! 戦えるわよ!!」


70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/16(日) 12:48:57.83 ID:WHeU8FsF0

ダゴン「…………強すぎる」

勇者「お前が弱すぎるんだ」

 肢体が断ち斬られ、胴と頭とだけとなるダゴン。
 それを見下す勇者は、すこし退屈そうな顔をして、伝説の剣を握っていた。
 紫の血だまりの中、回復を試みるダゴンは吐き捨てるように、

ダゴン「化物め」

勇者「お互い様だろ」

ダゴン「……ならば、僕を殺すか?」

勇者「……殺さない」

ダゴン「ならば、封印?」

勇者「しない」

ダゴン「じゃあ」

勇者「人生を謳歌してくれ。他人に迷惑の掛からない程度にな」

ダゴン「看過するというのか?」

勇者「ああ。だから、もう人間を襲うな」

ダゴン「甘いなぁ〜君は。魔物が人間の言うことを聞くと思うか?」

勇者「化物の言うことは聞くんだろ?」

ダゴン「面白い。お前、面白いぞっ。わかった、考えてみるよ。
    人間を襲わないってことをさ。化物のセリフだ」

勇者「じゃあ……いくか。女武」

女武「え? ああ、というか……強すぎね、アンタ」

71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/16(日) 12:50:56.27 ID:WHeU8FsF0
港街

町長「おぉ……救ってくれたか、勇者たちよ」

勇者「まぁ〜役目ですし。それより謝ったほうがいいと思いますよ」

少女A「」ジー

町長「……そうか。2人ともすまなかったっ!!」

Aの姉「い、いえ。仕方ありませんでしたから」

町長「償いとは言わんが、……今、ウチの息子が花嫁を探していてな。
   その、良ければ……」

Aの姉「私にはもう想い人が居ますので」

町長「だ、誰だ?」

Aの姉「それは……」ニコッ

戦士「?」

女武(え? 戦士? 戦士なのっ!?)

Aの姉「秘密です」

少女A「あっ、私もいるよ!! 私は戦士!! 将来戦士と結婚する!!」

勇者一行「「「「え?」」」」




祠前

ダゴン「人間を襲うなか。それもおもし―――――」

 ―――――ドスッ

ダゴン「…………」ドタッ

?「はぁ……そんなことを言ったら、魔物として終わってしまうよ?」

?「魔物の風上にも置けませんねぇ〜。ホント」

?「でも、勇者、強かったよ。僕より強い」

?「化物ですね。……ならば、そうですね。すこし襲ってみましょうか?」

?「推し量るってことですか?」

?「『あの人』を使ってね」

?「殺してしまいますよ。それじゃあ」

?「それも一興でしょう。死んだら新たな勇者が現れるのですから」

?「ああ、魔王さまは喜びますね」


72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/16(日) 12:51:40.10 ID:WHeU8FsF0
港町 宿屋 ラウンジ

戦士「俺って、プロポーズされたよな」

女武「ええ、2人にね」

戦士「2人?」

女武「なんでもない」

戦士「? というか、勇者と女賢ちゃんは?」

女武「デートじゃない」

戦士「2人って付き合ってるのか!?」

女武「いや、やっぱりなんでもない」

Aの姉「――――あっ、戦士さんっ!?」ドタドタ

戦士「ん? どうしたの?」

Aの姉「い、妹を見ませんでしたっ!?」
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/16(日) 12:53:16.37 ID:WHeU8FsF0
港町 広場

女賢「いっぱい買ってしまいました」ンショ

勇者「まぁ、露出度の低い服を買ったんだし、仕方ないって。というか、持とうか?」

女賢「い、いえ。ほとんど自分のものですし」

勇者「いや、それでも持つって。ほらっ」

女賢「す、すみません」

勇者「ああ」

女賢「…………」トボトボ

勇者「…………」トボトボ

女賢(なにを話せばいいんだろう……)

女賢「(好きなタイプとか? ううん、それじゃあ、あざとい)」コソコソ

勇者「ん? なんだ?」

女賢「い、いえ!! なんでも!!」

勇者「そうか。なにか用があれば言ってくれよ?」

女賢「はい……」

女賢(うぅ……自分、やっぱり勇者さまのこと好きだよね。仲間同士での恋愛はご法度なのに)

勇者「」ピタッ

 ドンッ

女賢「うっ」ドテッ

勇者「女賢」

女賢「は、はい」

勇者「荷物を持ってくれ」

女賢「?」
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/16(日) 12:54:26.89 ID:WHeU8FsF0

勇者「それから、逃げろ。アイツはヤバい」

女賢「どうし……」

 勇者の肩から覗き見ると、道の先には黒い鎧の竜騎士が立っていた。
 右手に長槍を持ち、何をするでもなく、そこに『あった』
 しかし分かる。アレは強い。いや、強すぎると。

勇者「いけ」

女賢「は、はい!!」

 女賢は走り出す。勇者を残して。





竜騎「逃げした積りか?」

勇者「ああ」

竜騎「逃がす必要はなかったのになぁ。観客が減ってしまった」

勇者「観客……!? 住民がいない……」

竜騎「ああ、俺が排除した」

勇者「お前、殺したのか?」

竜騎「ああ。串刺しだ。どうだ、残虐だろう?」

勇者「…………なぜだ?」

 勇者は剣を抜く。

竜騎「魔王に仕えているからだ。それ以上の理由がいるか?」

勇者「いらない。だから、こいよ。俺の前で土下座させてやる」 


75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/16(日) 12:55:53.49 ID:WHeU8FsF0
宿屋 ラウンジ

女賢「ゆ、勇者さまが!!」

戦士「女賢ちゃん!? Aちゃんしらない!?」

女賢「Aちゃん?」

Aの姉「私の妹がどこにもっ!!」

 ドゴーンッ!!

Aの姉「!? ……A」ダッ

女賢「ま、まって!!」
 
女武「追うわよ!!」



 
大通り

 大通りには人だかりが出来ていた。
 賢者は訝ったが、その人ごみを分けて、一番前に出ると、そこでは……
 勇者と竜騎士とが戦っていた。

女武「……なによこれ」

 そう、女武が言うように、その戦いはあまりに洗練され、あたかも劇の殺陣を演じているように、
 正確かつ美しかったのだ。派手さこそはないが……剣の舞である。
 図らずも閉口する一同。戦いの行方よりも、その美しき乱舞に見入っていた。
 だが、突然、竜騎が動きを止める。まるで戦いをやめるように。
 
竜騎「人が集まってしまった……」

勇者「……殺すのか?」

竜騎「忍ぶことによって破壊の快楽は、その質を上等にするのだ。ならば、今回は、
   見逃そう」

勇者「俺が見逃すとも?」

竜騎「ああ。見逃すだろう」

 竜騎は飛び上がった。それは超人的な跳躍で、軒を連ねる民家の上に乗った。
 そして、……消える。
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/16(日) 12:56:55.60 ID:WHeU8FsF0
少女A「――――勇者さま、すごーい!!!!!」

勇者「え? ああ」

Aの姉「A!?」タタタタ

少女A「あっ、お姉ちゃん!!」

Aの姉「どこに行ってたのっ!?」

少女A「大道芸を見てたんだよ。勇者さまが戦ってるまえに、アッチの道でやってたんだ」

Aの姉「そう……なの。良かったぁ……」

女武「勇者」

勇者「おう。来たか」

女武「何だったの? アイツ?」

勇者「わからない。ただ嘘を言って、俺を戦おうとした」

女武「嘘?」

勇者「ああ。住民を殺したって言ってな。まぁ、野次馬を殺さない奴が、そんなことをするとは思わないけどな」

女武「そう。でも……アンタでも倒せないなんて」

勇者「ああ。強かった、とってもな」

女賢「…………」

女賢(嬉しそうな横顔……)

戦士「でも良かったっ!! Aちゃんが見つかって」

Aの姉「はい!! 戦士さんたちのお蔭です」

戦士「いえ、それほどでもぉ。まぁ〜このくらい楽勝ですけどね」

Aの姉「で、では、もしよければこれからも私たちを、ずっと守って……」ボソボソ

戦士「ん?」

Aの姉「いえ。もし、魔王を倒したあと、暇でしたらこの街をもう一度、訪れてください」

戦士「おう!! もちろんだぜ!!」

女武「疎いわね、この筋肉」

戦士「は?」

勇者「じゃあ、魔王を倒したら一番に寄るか」

戦士「おう!!」
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/16(日) 12:58:42.54 ID:WHeU8FsF0
――――――――――
―――――――――
――――――――
――――――
―――――
――――
―――
――



王国 王の間

王「おお、流石だ!! さて次は砂漠に化け物が出た!! 民が困っておる!!」

女賢「はい」

勇者「次は砂漠か」




 今日はここまでです。
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/16(日) 14:35:16.90 ID:QJ7qCNMDO
>>77
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/16(日) 15:23:47.92 ID:GUJ4gjqvo
おつおつ
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/16(日) 15:56:53.71 ID:yvXJ0Ta30
どうでもいいけど戦士ってそんなモテモテになるほど活躍したか?
ぶっちゃけ一番働いてない気がするんだが
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/16(日) 19:19:39.13 ID:hUg4IiADO
せっかく強いって設定なのに、魔物を倒せないってすごいフラストレーション貯まるな

まぁ面白いけど
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/16(日) 21:01:05.39 ID:GzZkkDBPo
殺さないけど、戦闘狂ってことか
これで魔王が師匠だったらかなり喜びそうだな
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/16(日) 23:54:46.52 ID:C61rlmoO0
初見

期待できそうだ

84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/17(月) 01:33:03.23 ID:qtqJ6TBDO
面白いけど、誤字脱字多すぎ
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/17(月) 01:46:56.31 ID:5CPMTipxo
女賢者が二人にに対してやけに高圧的なのはなんで?偉いの?
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/18(火) 11:10:33.18 ID:ELWxYZMIO
エリート根性じゃね?
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/18(火) 21:20:47.79 ID:EIIJd3fw0
少女AとAの姉が戦士に惚れた意味が全くわからない
戦士戦闘中なんかしてたっけ?
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/19(水) 15:04:22.91 ID:xI+X52jKo
尺の都合でカットしたが実際は獅子奮迅の活躍をしたんだよ言わせんな恥ずかしい
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/19(水) 22:55:20.57 ID:janAIC5u0
砂漠

 怪鳥を駆り数刻。件の砂漠についた一行であるが、彼らを迎えるはにぎやかな歓迎でなく、只、一面に広がる砂の風光であった。
 王の言う処の「民」が住まう町が見当たらず、漠々たる砂漠の黄色が、果てない海のように続いているのである。
 長い旅路を予感した勇者は、有り難いお天道様に目を細め、額の汗をぬぐった。


勇者「あっつ……」

怪鳥「」ヘロヘロ

戦士「寒さに強いけど、暑さには弱かったんだなぁ。鳥さん」

女武「私も弱い……おぶってぇ、勇者ぁ……」

勇者「ふざけんなっ。自分で歩け」

戦士「おぶってぇ〜勇者ぁ〜」

勇者「ふざけんなっ!! いや、マジでふざけんな!!」

戦士「俺も暑いんだよぉ」

勇者「俺も暑い」

女武「だめ、もう……帰りましょう?」

女賢「わ、私、魔法で氷を出しましょうか?」

女武「!?」

勇者「可及的すみやかに頼む」

女賢「は、はい!!」

女武「流石、賢者ね。戦士とは違う」

戦士「これは認めざるを得ない」
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/19(水) 22:57:43.14 ID:janAIC5u0
砂漠 移動中

スタスタスタ

戦士「はぁ〜極楽、極楽」

勇者「お前みたいな奴を、極楽蜻蛉って言うんだな」

女武「棚上げしないでよ、アンタだって氷を首に当ててるじゃない。ねぇ、女賢?」

勇者「一番、お前が言うな。さっきまでの方が可愛かったぞ、ったく」

女賢「……わ、私は別に気にしてないので。ただ皆さんの役に立ててうれしいですよ」

戦士「わかった。なら、俺が女賢ちゃんをおぶろう」

女武「なっ……なんで私じゃないのよ!!」

戦士「そりゃー感謝とぉ〜、まぁ、おっぱいだよ」

女武「ッ――――言ったな。お前、言ったな!? 私が一番気にしてることを言ったな!?
   だからお前はバカなんだ!! お前はバカなんだっ!!!!」

勇者「そう、バカってことに一元化するなよ。他に理由があるだろ?」

女武「なによ」

勇者「真実ってこと」

女武「死ね!!」
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/19(水) 23:00:12.34 ID:janAIC5u0
「――――お前らっ!!」

戦士「ん?」クルン

魔族の子「お前ら、勇者だろ!?」ドン

勇者「え、ああ。まぁ」

魔子「自分と戦えぇ!!」ドン

女武「え?」

魔子「だから、自分と戦えっ!!」

戦士「えっと、女の子、だよね?」

魔子「な、なんだよ。悪いかよっ、この筋肉!!」

勇者「でも、喋れるんだな」

魔子「う、うん……」

戦士「おっ、勤勉だね」

魔子「こ、このくらい普通。……べつに褒められても全然――――って行くな!!」

女賢「私たち、急いでるので」

魔子「街はアッチ!!」ビシッ

戦士「え?」

魔子「だから戦え!! 戦え戦え戦え戦えぇぇぇぇ!!!!」
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/19(水) 23:02:07.96 ID:janAIC5u0
女武「はぁ……街に着いたらやってもいいわよ」

勇者(おいっ、あんな子供と戦いなんてっ)

女武(道案内が必要だと思わない? なら利用しましょうよ)

勇者(なにを言ってるんだ?)

女武(戦士と同じタイプじゃない? あの感じ)

勇者(どういうことだ?)

女武(見てればわかるわ)

女武「あ〜あ。街に着いたらなぁ〜。いくらでも戦っていいけど」

魔子「じゃ、じゃあ、街についたら戦ってくれるのかっ!?」

女武「ええ、もちろん」

魔子「じゃあ、いこう!! 街にいこう!! 自分、道案内してあげるね!!」

女賢「かわいい……」

魔子「出発シンコぉー!!!!!」

93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/19(水) 23:04:30.09 ID:janAIC5u0
石の街 門前

魔子「さぁ、ついたぞ!! 自分と勝負だ!!」

女武「4対1でやるの?」

魔子「うん!! 自分、やるぞっ!!」

女武「……じゃあ、今日の夜、勝負しましょうよ。今はみんな万全じゃないし。
   真剣勝負したいでしょ? やっぱり卑怯よね、弱ったところを狙うなんて」

魔子「そうか……わかった。 じゃあ真剣勝負だぞ!?」

女武「もちろんよ。じゃあ、夜に会いましょう」

魔子「自分、待ってるぞ!! 勇者を待ってるからな!!」

勇者「おう。夜な」

魔子「うん。じゃあ、自分、一回家に帰るね!!」

女賢「気を付けてね。ちゃんとお姉ちゃん待ってるから」

魔子「うん。約束だぞ!?」

女賢「ええ」

魔子「じゃあ〜ねぇ〜」

 タタタタタ
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/19(水) 23:07:49.91 ID:janAIC5u0
石の街

戦士「ついたぁ〜」

勇者「やっとついたな。とっとと宿を取って休もう」

女賢「私、とってきますね」

女武「うんっ、お願い。ここで待ってるわ」

町人B「――――も、もしかして勇者さま……でしょうか?」

女賢「え? あっ、はい。勇者さまは……」

町人B「ゆ、勇者さまが来た……勇者さまが来て下さったぞぉ!!!」

「来てくれたの!?」 「本当か!?」 ザワザワ

勇者「すっげー騒ぎだな」

女武「アナタが崇められてるのよ。脈々と続いてきた勇者信仰の対象としてね。
   おまけに、実害を除いてくれるとなれば、こうなるでしょ?」

勇者「俺は神様かよ。まぁ、うれし――――」

町人B「勇者さま!!」

勇者「おう……ってアレ?」
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/19(水) 23:12:41.90 ID:janAIC5u0
 しかし彼らは総じて勇者でなく、もう一人の男――戦士の方へ群がった。
 理由のわからぬ勇者は、呆然として固まり、目を点にして渦中の人物を眺めた。
 旗幟の色、戦士一色の中、ガタイの良い当人も狼狽し、殺到する町民たちに訳を訊こうとするが、
 止め処ない質問の嵐に辟易し、人違いの訳を訊けないでいた。

町人B「この街を救う為に来て下さったのですね!?」

戦士「も、勿論だぜ」

町人B「さ、さすが……勇者さまだぁぁぁあぁ!!!!! 第五の勇者に劣らぬ強さと聞いております!!」

女武(伝説の防具は全部、戦士が着けてるんだっけ……まぁ、岡目だと戦士が勇者よね。
   おまけに戦士の事だから)

戦士「俺に任せろ!!」

 ウオォォォォォ!!

女武(ノリノリで乗るわよね……そりゃあ)



勇者「…………」

女賢「わ、私は勇者さまを勇者さまって思いますから」

勇者「ありがとう……」
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/19(水) 23:18:31.97 ID:janAIC5u0
石の街 町長の家

 町長の家に招かれた戦士一行は、豪華絢爛な晩餐の席についている。
 無論、上座に招かれるのは、勇者と目される戦士。
 他、取り巻きたちは、調子の良い戦士に軽侮の念を抱きつつも、振る舞われた豪勢な食事に舌鼓を打った。
 久方ぶりの旨い料理に、女武も女賢も互いに頬をゆるめ、バクバクと体裁もなく料理を喰らう。
 一方、真の勇者は、旺盛な食欲の2人組を戒めることはせず、しげしげと彼女らの顔を見た。
 いつもは小食で済ます女賢がこう沢山食うと、ギャップというか、そんなものを感じてしまい、どうにも
 可愛く見えてしまうのだ。そうなると気になってくるのは容貌である。
 「高貴」の二文字に誂えて作られた風な彼女がどんな食い方をしようが、稟性の高きものは損なわれず、
 その蒸気する両頬、白いなおやかな指先、唐紅の唇―――それら彼女に属するもの全てが、
 一種、絵画的な肉感を宿していた。
 彼女はやはり美しいのだ。又、それを誇らない彼女の心も、非常に澄み切ったものである。


町長「まさか、勇者さまが来て下さるとは」

戦士「いえいえ、これも勇者の役目なので」

町長「さすが勇者さまだっ。さぁ〜酒を、さぁ〜酒を!!」

戦士「うむっ、苦しゅうない」

町長「寝床も誂えております、さて、宴会を始めましょう!!」

戦士「おう!!」

勇者「…………」
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/19(水) 23:21:38.37 ID:janAIC5u0
ガヤガヤ……ガヤガヤ……

夜 石の街 門前

勇者「マジでうるせぇ……あそこに居たら鼓膜が劈かれるっつーの」

勇者「まぁ……魔子はどこにいるんだろう……」

魔子「――――き、来たかぁ!! 勇者!!」

勇者「あっ、おう」

魔子「尋常に勝負だ!!」

勇者「えっと、明日にしてくれないか?」

魔子「逃げるのか!? とにかく勝負だ!!」

勇者「はぁ……じゃあ、わかった。一応『勝負』な?」

魔子「お――――」

 技の妙。刹那、魔子の首筋に、月光映える白刃が当てられる。
 ……風の対流が前髪をゆらし、彼女の闘志を斬り苛む。
 遅れて魔子は、なかに押されたように尻餅をついた。
 
勇者「はいっ、これで俺の勝ち」カチャ

魔子「…………」ジー

勇者「なんだよ。負けたんだから、もういけ」
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/19(水) 23:26:14.58 ID:janAIC5u0
魔子「……お、お前は。お前は勇者なのか?」

勇者「……今は戦士が勇者」

魔子「え?」

勇者「いや、なんでもない。つーか、知らなかったのか? 俺が勇者だって」

魔子「知ってたさ!! だ、だけど、勇者は自分たちの敵なんだろ!?
   ならなんで痛い事しないんだ!? だってずっと殺して来たじゃないかっ!?」

勇者「ああ。でも、俺は殺さないから」

魔子「なんで?」

勇者「なんだ、そんなに死にたいのか? それなら殺しても良いがな」

魔子「ち、違う!!」

勇者「じゃあ、なんだよ」

魔子「だって敵じゃんか……」

勇者「敵だから殺すのかよ。俺はそこまで薄情じゃない。そもそも、数時間前に話してた奴を殺せないよ」

魔子「でも……悪い奴って聞いたから、自分、みんなを守るためにここまで来たのにさぁ……」

勇者「あ〜めんどくさい。もう、いいんだよ」ゴシゴシ

魔子「頭を撫でるなぁ」
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/19(水) 23:46:55.69 ID:janAIC5u0
町長の家 庭

戦士「あ〜飲んだぁ〜。こうやって夜風に当たるのはやっぱり気持ち良いぜ、どこに行っても」

少年α「勇者さまっ!!」

戦士「おっ、なんだ?」

少年α「勇者さまって強いんだろっ!?」

戦士「ああ、もちろん!! 歴代の勇者にも負けないぜっ!!」

少年α「じゃあ、オレ!! 勇者さまに勝てるぐらい強くなるぜ!!」

戦士「おう!! ガンバレ!!」

少年α「うん!! ゼッテェー強くなるからなっ!!」

少年αの親「ほら、勇者さまも疲れてるんだから」グイ

少年α「ひ、引っ張るなよ!! ゆ、勇者さま!! オレ、ゼッタイ強くなるから!!」

戦士「おう。じゃあなぁ〜」

少年α「うん!! だから、ゼッタイ勇者さまも魔王を倒せよ〜!!」

戦士「ああっ!!」
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/19(水) 23:53:03.69 ID:janAIC5u0
女武「勇者さまっ? なかなか今日は調子が良いですね」

戦士「おっ、女武」

女武「ういっす。ホント、本物よりアンタの方がよっぽど勇者らしいわね。
   それに、本物じゃ、アンタみたいに愛想良くないし、それに、先代の六代目より人気ないしねぇ」

戦士「というか、女武、顔真っ赤だな。茹蛸みたいだぞ?」

女武「私も飲み過ぎたのよ。ホント、兄貴の言うとおりね。『悋気も酒気も程ほど』だってさ」

戦士「兄貴? 兄妹いるのか?」

女武「上にねぇ。ムカつく奴だけど、なまじ才能があったわ」

戦士「そうか。……俺は」

女武「俺は?」

戦士「妹みたいなやつが居たなぁ……」

女武「みたいな?」

女賢「――――あっ、ここに居たんですね。2人とも」

女武「ええ。突然だけど、女賢って兄弟いる?」

女賢「え? あ、いませんよ」

女武「ふ〜ん。それっぽいわね、アンタ」
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/19(水) 23:54:50.01 ID:janAIC5u0
次の日 町長の家。

町長「この街の先に、巨大なゴーレムが建造されております。
   ここ十数年、魔物どもが襲ってこないと思っていたら、あんなものを作っていたのです。
   もしあれが完成したら、この街、いや、この砂漠に住まうものたちは終わりです」

戦士「じゃあ、俺たちがそれを壊せばいいだな?」

町長「はい……しかし、あの巨大なゴーレムを壊すことは……」

女賢「……ともかく行ってみないことには」

戦士「そうだな!!」

勇者「張り切り過ぎじゃないか?」

戦士「この街では、俺が勇者だからな」

女武「くれぐれも死なないようにね」

戦士「ああ!!」


102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/19(水) 23:56:56.48 ID:janAIC5u0
石の街 門前

町人「では、この先をまっすぐ行くとゴーレムが見えてきますので」

勇者「そっか。まぁ〜やるか」

町人「どうかご武運を」

戦士「任せろぉ!!」

女武「落ち着きなさいよ、この筋肉」

女賢「――――あっ……」

女武「ん? どうしたの?」

女賢「あそこの馬小屋の陰に昨日の……」


魔子「」ジー


女賢「かわいい……」

女武「うん。かわいい。捕まえてペットにしましょう」

勇者「バカ言ってないで、ほらっ、いくぞ」

戦士「俺たちが世界を救うぜぇ」
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/19(水) 23:58:18.72 ID:janAIC5u0
ゴーレムの丘

 そこから北へ行くこと暫く、件のゴーレムとやらの全貌が見えてきた。
 奥で稜線を描く山より高く、握り拳1つで、民家程の大きさがある。
 頭部の完成がまだであるが、胴体だけですでに、目測、王が住まう城より大きかった。
 この超弩級の魔物を見た者ならば、押しなべて物の巨細を比べるような些末な行為に恥じ入り、
 あの街に踵を返したであろう。
 

一行「…………」

 凝然とする彼らの背後から、自慢げな声を上がる。

魔子「どうだ!! 骨王さまが作ったんだぞ!!」

勇者「骨王?」

魔子「うん!! 自分たちの王さまだ!! すんごく強いんだからね!!」

 ならば、その骨王とやらに直談判する外ないようだ。

勇者「ふ〜ん。どこにいるんだ?」

魔子「ゴーレムの中!!」

勇者「じゃあ、隠し通路みたいなのあるのか?」

魔子「あるけど、教えるわけないじゃん!!」

勇者(さすがにそこまでバカじゃないか)

女武「でも、その骨王なら私たちを倒せるかもね」

魔子「!?」

女武「だけど、会えないんなら戦えない。私たち困ったわぁ〜」

魔子「――――ついてこい!! 巨大ゴーレムへの隠し通路をおしえてやるぞ!!」

戦士「おう!! 頼むぜ!!」

女賢「どっちも素直ですね」

女武「多分、それはバカって言うんじゃないかしら?」


104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/20(木) 00:00:09.43 ID:gL5hbXEK0
隠し通路

スタスタ

女武「涼しいわね」

魔子「だって骨王さまが涼しくしたんだもん!!」

戦士「そっかぁ〜、骨王さまは凄いんだなぁ〜」

魔子「うん!! 魔法もできて、料理もつくれるんだぞ!! それで、いろんなことを知ってるし、
   人間の言葉を教えてくれたのも、骨王さまなんだ!!」

勇者「お前ら、黙って歩け。気づかれるぞ」

女賢「そ、そうですよ、みなさん」

女武「アラアラ、2人が並んで歩くと、まるで仲の良い夫婦ね」

女賢「そんなっ……」カァァァ

魔子「結婚してんの!?」

勇者「してない。みんな未婚だ」 

戦士「ああ。だって俺のハーレムだもん」

勇者「俺は入ってないよな?」

魔子「? 男と男って結婚できんの?」

女武「違うわよ。男同士では……」コソコソ

魔子「え!?」

勇者「子供に何を教えてるんだよ」

女武「いいじゃない。少しぐらい」

魔子「禁断の恋……」

勇者「おい」
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/20(木) 00:02:04.76 ID:gL5hbXEK0
 隠し通路から出口へ。
 燦と降り注ぐ日光が待ち構えていると思いきや、彼らを迎えたのは、砂の海に垂れる大きな影。
 それこそ、ゴーレムのものである。あまり広くを被っているので、城楼の影と僻目しても仕方ない位だ。
 勇者一行は、その威容なるゴーレムの背に振り仰いだ。

勇者「でけぇ〜な」

戦士「同じく」

魔子「ふふ〜ん、すごいだろぉ〜」

女武「こんなのが動き出したら、手におえないわね」

魔子「でしょ? やっぱり骨王さまはすごいんだよっ」

女賢「でも……止めないと」

魔子「止める? なんで?」

勇者「だって、動き出したら困るだろ?」

魔子「う〜ん、たしかに」

106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/20(木) 00:04:04.86 ID:gL5hbXEK0
勇者「そういえば魔子ってさ、人を殺したことあるか?」

魔子「……ないよ。だ、だからってバカにしないでよね!! 自分、強いんだぞ!!」

勇者「そっか。お前はだれも殺すな」

魔子「なんで?」

女武「……そんなの、わからないわよ。散々殺した奴が言うんだもの」

魔子「…………じゃあ、違う種族を殺すのは、悪い事なのか? 
   自分の周りじゃ、人間を殺さないからわからないから」

勇者「わからん。だけど……俺は殺せないんだよ。悪いとか良いとか、そんな無しにして、
   俺は殺せない。魔物の親子を見た時から、ずっとな」

魔子「親子……」

勇者「どうした?」

魔子「な、なんでもないよっ!! というか、骨王さま呼んでくるから、ここで待ってて」

 タタタタタタ……

女武「さっきの反応……、あの子の親、殺されたのかしらね?」

戦士「……慰めようがないなぁ、それじゃあ」

女賢「全部、同じ種族だったら良かったですね……」

勇者「ああ。それなら平和だったのにな。勇者なんて必要ないのにな」
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/20(木) 00:05:22.59 ID:gL5hbXEK0
巨大ゴーレム内部

魔子(骨王さま、どこかなぁ? いつもの所にいるかなぁ?)

魔子(でもあの勇者、変わってる。殺さないなんて……実は良い奴かも)

魔子(ち、違う!! そんな訳ないじゃん!! 勇者は悪い奴なんだよ!!)

魔子(だ、だけど、今回の勇者はちょっと良い勇者なんだよね。うん、骨王さまもそう言うと思うっ!!)

魔子(――――ここを曲がれば……)

タタタタタ

魔子「骨王さ……」

 ――――魔子は咄嗟に、近くの物陰に隠れる。

魔子(誰? 黒い布かぶってるけど……)
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/20(木) 00:09:23.38 ID:gL5hbXEK0
魔道士「さて、最終段階ですねぇ。神は細部に宿るが故に、くれぐれも手抜かりはないように、お願いしますよ?」

骨王「……これが、我らの悲願なのですか?」

魔道士「ええ。人間どもの首魁を叩くのです、かの堅城を抜くのですよ。
    さすれば、我ら魔族の黎明も近きに迫ることでしょう」

骨王「…………また戦を?」

魔道士「怖気づきましたか、骨王とあろう者が。かの聖女、豪傑、英雄、武人どもを血祭りに上げたことを、
    失念されたのですか? 魔王軍元大将のアナタが? てっきり、矍鑠たる老将とばかり考えていましたが、
    その栄光はくすんで仕舞ったようですね。盲目とは怖いものですよ」

骨王「ははっ、ワシもすでに耄碌しましてなぁ。あのとき、魔王さまからどのようなお言葉を賜ったか、
   忘れてしまいました」

魔道士「そうですか。さて、それよりも…………」

骨王「おい、魔子や」

魔子「」ビクッ
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/20(木) 00:12:11.59 ID:gL5hbXEK0
骨王「こっちに来なさい」

魔子「うん……」トボトボ

魔道士「ん? どうやら……間の子ようですねぇ。人間と魔族の」

魔子「じ、自分は魔族だ!!」

骨王「魔子。そういきり立つではない。仕方なかろう?」

魔子「うぅ……ご、ごめん」シュン

魔道士「さて、なぜアナタはここに?」

魔子「あ……ゆ、勇者が骨王さまに会いたいって!!」

魔道士「もう来てしまいましたか……だがしかし、ではなぜアナタはここに?」

魔子「だって、勇者が」

魔道士「魔族たる者、その命を惜しんではなりません。命を賭して戦うのです。
    魔王さまもそう望んでおられますよ。脅されて伝言を伝えるぐらいならば、死を望むのが魔族。
    そうでなければなりません」

骨王「まぁまぁ、未来のある子だ。そう苛めないでほしい。今死なれたら魔王さまが、さぞ悲しむだろう」

魔道士「甘いですねぇ。まぁ、間の子は希少価値は高いですし、研究のし甲斐がありますからね。
    さて、私もそろそろ、時間切れのようです。あとは頼みますよ? 
    骨王さま? 魔王さまを失望させないでもらいたい」

骨王「ええ」

魔子「?」
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/20(木) 00:16:21.86 ID:gL5hbXEK0
 黒ローブは風船のように膨らみ、破裂する。
 カラフルな紙吹雪が舞って、陰気なゴーレム内部を華やかにした。
 吃驚する魔子を尻目に、骨王は口を開く。

骨王「……それで魔子。あの時、勇者が来るとの速報を聞いて、向かって行ったのか?」

魔子「う、うん」

骨王「それで会ったのだな?」

魔子「うん……」

骨王「はぁ。人間と会うのは危ないと言っただろう? なかんずく勇者ではそうだぞ?
   もし殺されでもしたら、村のみんなが悲しむではないか」

魔子「で、でも、結構良い勇者なんだぞ。魔族を殺さないんだってっ!!」

骨王「……本当か?」

魔子「自分を殺さなかったし、それになんか……うん」

骨王「……っで、その勇者がワシに何の用じゃ?」

魔子「えっとね、勇者は……ってアレ? なにか言ってたっけ? アレ?」

骨王「……ならば」
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/20(木) 00:18:44.46 ID:gL5hbXEK0
ゴーレム 背後

女武「重大なことに気づいてしまったわ」

戦士「どうした? だって連れてきてくれるんだろ、魔子が?」

女武「いや、だって、骨王に私たちの居ることが伝わったら、普通、他の魔物を寄越さない?
   トップがお出迎えなんてするかしら?」

女賢「……アレ? なんで私たち、ふつうに待ってるんだろう……」

勇者「女武……多分、うん。お前の意見、正解だな」

女武「……逃げる?」

勇者「魔子には悪いが、そうし――――」


オークA「――――見つけたぞっ!! 勇者どもだ!!」


勇者「やべぇ!! 逃げろっ!!」

 タタタタタッ
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/20(木) 00:20:06.39 ID:gL5hbXEK0
隠し通路

戦士「はぁ、はぁ、はぁ。くっそ、隠し通路にまで魔物が居るぞ」チラ

ユウシャー デテコーイ オマエタチハホウイサレテルゾー

女賢「はぁ、はぁ……」

女武「どう、する?」

勇者「……仕方ない。戦うか」

戦士「あ〜キツイなぁ……」

女武「最初の威勢はどこに行ったのよ」

女賢「――――あっ、みなさんっ!!」

勇者「どうした?」

女賢「あそこに、魔子ちゃんが」


魔子「勇者ぁ〜筋肉ぅ〜禁断の恋ぃ〜おっぱいぃ〜。どこに行ったんだぁ〜?」


女武「……酷いわね、名称。しかも、なんで私が禁断の恋なのよ」
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/20(木) 00:25:02.19 ID:gL5hbXEK0
戦士「でも、なんか様子が違うみたいだな」

勇者「ああ。……もしかしたら、本当に」

女賢「賭けてみますか?」

勇者「そうだな……魔物を信じてみよう」

女武「じゃあ――――魔子っ!!」

魔子「あっ、禁断の恋!! それにおっぱいっ!!」タタタタ

女賢「……あ、うん」

魔子「ここに居たんだ。――――みんな、見つかったぞぉ!!」

女武「!?」

 ダダダダダダダ

オークA「ここに居たか」

「これが勇者かぁ〜」 「ああ、これが勇者なのか」

勇者「囲まれたな」

 周りを囲む魔族の壁。剣の柄に勇者は手を按じた。

「――――そう無闇に戦おうとするんでないぞ、勇者よ」

勇者「誰だ」
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/20(木) 00:27:24.99 ID:gL5hbXEK0
 そのしゃがれた声は、魔物の壁の向こう側、音源の見えない所から、飛んできた。
 あまり明確でなかったために、言葉の意味は定かでなかったが、
 その、年月と共に嗄れた声色には謹厳たるものが感じられた。
 すると、魔物たちは言いたい言葉を口に留め、しゃがれた声の持ち主のために、花道のごとき一本の道を作った。
 そして、奥からその該人物が現れる。

骨王「ワシだ」

 それは、人骨の剥製のような奴だった。

骨王「用があるんだろう? 勇者よ」

勇者「え? ああ」
 
骨王「ならば逃げるでない。なにも取って食おうなど思っておらぬ」

女武「じゃあ、苗床にでもするの?」

骨王「お主、変わった性癖をしてるのぉ」

女武「なっ、違う!! ただ可能性を示しただけで!! そんな、種馬なんてっ」

骨王「そう慌てるな。ワシも犬畜生ではないし、道義はわきまえている積もりだ。
   まぁ、お主が望むのならば、考えてやってもいいがな。……たしか、ゴブリン族のぉ」

女武「だから違う!!」

骨王「わかっておる。して、お主ら、すこし招かれてみようとは思わぬか?」

戦士「ん? どこに?」

骨王「我らが村に、だ」
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/20(木) 00:28:39.72 ID:gL5hbXEK0
魔族の村 広場

ゾロゾロゾロゾロ

魔子「ここが、自分たちの村だぞっ」

女武「そうなの」

女賢「す、すごですねぇ……勇者さま?」

勇者「そ、そうだよな」

勇者(やばい。村の様子は普通だけど、とにかく褒めないと……周りを魔族に申し訳ない。
   というか、女武、どんだけ肝が据わってるんだよ。すこしは褒めろよ、バカ)

戦士「ふ〜ん。普通だなぁ〜」

勇者・女賢「「…………」」


オークの子供「――――あっ、人間だぁ!!」タタタタ

ゴブリンの子供「ホントだ!! あっ、魔子もいるじゃん!!」タタタタ

オ子「この人間、なに?」
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/20(木) 00:29:45.17 ID:gL5hbXEK0
魔子「えっとねぇ〜勇者っ!!」

ゴ子「勇者ぁ!? こんな弱そうな奴らがっ!?」

女武「心外ね。十分強いわよっ」

オ子「一番小っちゃい奴が喋った!!」

魔子「小っちゃい奴じゃないよ。禁断の恋だよ」

オーク「ほらほら、お前ら。今回は客人なんだ。そう茶化すんじゃない」

ゴ子「は〜い。でも、勇者って悪い奴じゃないの?」

魔子「ちょっと良い勇者だから、骨王さまとお話しするんだ!!」

オ子「そうなんだぁ〜。というか、魔子!! 秘密基地作ったんだけど、来ない!?」

魔子「ホントか!? 自分、行く!! あっ……でも」

骨王「行っていいぞ」

魔子「う、うん!! じゃあ、行ってくる!!」タタタタタ
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/20(木) 00:33:02.16 ID:gL5hbXEK0
戦士「普通の子供なんだなぁ……」ジーン 

骨王「……お主らは知っているか? 魔族と人間との子供がどうなるか」

勇者「いや、魔物と交わること自体が、姦淫罪だから子供なんて」

骨王「……殺されるんじゃよ。魔族側でも、お主ら――人間側でも。当然、交婚も許されておらぬ」

女武「その話をするってことは、魔子……」

骨王「ああ。混血じゃ。親も死んでしまった。
   無論、村の者は混血だと知ってるが、言わんようにしておる。
   ……お主らも同じように、黙っててくれるかな?」

勇者(じゃあ俺は、見た目が違うだけで魔族だと決めつけてたのか……)

女賢「……混血」

女武「どうしたの?」

女賢「え? あ、なんでもないです」

骨王「まぁ、感傷に浸るより、一献傾けようではないか」

118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/20(木) 00:34:37.35 ID:gL5hbXEK0
魔族の村 酒場 

女武「酒場なんてあるんだぁ――――って、いけない。これじゃあ、見下してるみたいじゃない」

骨王「はは、よいよい。まぁ、みな座れ」

オーク「では、酒を」

骨王「ああ。ワシは飲めないんじゃがな」

女賢「……しかし、ここに居る皆さんは、人間の言語を使えるのですね」

骨王「共に生きていたからの……人間と」

女武「共棲してたって言うの?」

骨王「ああ。あの子……子供たりが生まれるまではな」

戦士「だから、みんな人間を嫌ってないのか」

骨王「……子供たち以外は知っているのだよ。人間も魔族も変わらんことを。
   あの村で共に過ごしていたら、気づくのだ」
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/20(木) 00:37:11.36 ID:gL5hbXEK0
女賢「そんな村があったのですね、人間と魔族が住まう、そんな村が……」

勇者「でも、『までは』ってことは……」

骨王「言うに如くべきではないの、ワシの口からは」

勇者(じゃあ、魔子の親はそのときに……)

戦士「悪い。俺たち、人間が悪かった」

骨王「それは…………同じようなもの。魔族も人間も、一方を傷つけ、略奪を図る。
   それが自然のことわりだ。生を受けた者は須らく抗えないのだよ」

勇者「…………」

骨王「知っておる。それを承知の上で、お主らが抗っていることも。しかし、勇者よ、お主は勇者の器ではないのだ。
   そもそも勇者に成れる者など居ない。一方を立てれれば、一方が苛むこと、それは必然じゃ」

女賢「しかし……」

骨王「あのゴーレムか? アレは動かんぞ」

戦士「え?」
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/20(木) 00:38:46.22 ID:gL5hbXEK0
骨王「欠陥だらけじゃよ。動けば2日も持たんだろう」

女武「じゃあなんで作ったの?」

骨王「曠古の大業と言いたい処だが……只のワシの趣味じゃ」

戦士「趣味!? アレが!?」

骨王「ロマンじゃよ、ロマン」

女武「ずいぶんなロマンね。ホント、はた迷惑」

骨王「良いではないか、巨大ゴーレム」

勇者「た、たしかに……超巨大ゴーレム、カッコいい」

骨王「わかるか? さすが、勇者ではないか。
   ワシも巧を誇るわけではないが、中々どうして良い出来だと思うんじゃが」

 その日、勇者一行は、皓皓たる月影の下、種族分け隔てない賑やかな宴に愉しんだのであった。
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/20(木) 00:39:27.21 ID:gL5hbXEK0
魔族の村 広場

ガヤガヤ……

勇者「どこの宴会でも変わらないんだな。……俺は苦手だ」

魔子「おっす、勇者っ!?」

勇者「おっ、魔子か」

魔子「んだよ、その反応ぉ〜。せぇぇっかく自分が話しかけてるのにさぁ」

勇者「はいはい」

魔子「あのさ。……人間ってさ、なんで弱いの? すぐに死ぬしぃ」

勇者「それはぁ〜わからん」

魔子「でもさ、勇者は強いよね? なんで? 人間じゃなかったりして」

勇者「どっちでも変わらんだろ。今更」

魔子「でも、勇者が人間だったら不公平じゃん」

勇者「なにを言ってるんだよ」
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/20(木) 00:41:48.98 ID:gL5hbXEK0
魔子「どうしてそんなに強いの、人間の癖に?」

勇者「……勝とうと思ったからかな、クソジジイに」

魔子「クソジジイ?」

勇者「俺の育て親。……ってわけじゃねぇーけど、それに近いかな」

魔子「どゆこと?」

勇者「……聞きたいか、昔話? あんまり楽しい話じゃないけど」

魔子「聞きたいッ!!」

勇者「そうか」

魔子「っで、親ってなに?」

勇者「簡潔に言うと、俺の村が魔族に襲われて両親が死んで、
   それで、身寄りのない俺を、クソジジイが保護したって訳だよ」

魔子「……そうなんだ」

勇者「だから言ったんだ。面白くないって」

魔子「でも、」
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/20(木) 00:43:56.44 ID:gL5hbXEK0
勇者「なんだよ。その顔。俺はべつに魔族なんかを恨んでないぞ。
   だって、村の生き残りが報復しにいって、襲った魔族を皆殺したからな。
   まぁ、俺は実際の現場を見てもないし、クソジジイから聞いただけなんだが。
   ……だから、魔族に恨みはない。いや、恨む相手も死んだから恨めないんだよ。
   あと、俺、親の顔も知らないからさ」

魔子「おかしいぞ、それ。だって親が殺されたんだよ? 恨まないの、魔族を?
   自分……捨て子だからわからないけど、親って大切でしょ?」

勇者(捨て子って教えられてるのか……)

魔子「ねぇ、勇者? なんで恨まないの?」

勇者「恨んだことないから、な。良くわからない。……いや、自分を恨んだな。『あの時』は……」

魔子「?」

勇者「まぁ、俺が強くなったのは、目標があったからだ。目標が大切なんだよ、いつでもさ」

魔子「じゃあ、自分の目標は勇者だね!! ゼッタイ、倒してみせるぞ!!」

勇者「老衰まで待つとかじゃねぇーよな?」

魔子「ロウスイ?」

勇者「なんでもない。まぁ、女の子なんだから自分の好きな男に守ってもらえ」

魔子「男なんかに負けないぞ、自分!!」

勇者「そんなんだと、婚期逃すぞ?」

魔子「コンキ?」

勇者「一生おぼこ宣言なんてやめてくれよ? 憐憫の情が沸き起こるからな」
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/20(木) 00:46:10.15 ID:gL5hbXEK0
明くる日 魔族の村 門前

魔子「じゃ〜あ〜なぁ〜。また来いよぉ〜」ブンブン

戦士「ああっ、またなぁ!!」ブンブン

女武「はやく行くわよ。王さまに連絡しなくちゃ」

女賢「そうですね」

勇者「じゃあ、まず石の街に戻るか」

女武「ここじゃ怪鳥、呼べないの?」

勇者「あっ、そっか。あんまり暑くないし、いけるかもな」

戦士「じゃあ、帰ろうぜ!!」

勇者「……でもなんつーか、酒を飲んだだけだよな」

女賢「ホント、全然勇者らしくないですね。旅行しにきたみたい」

女武「魔王のところもこんな感じで歓迎してくれなかしらね」

勇者「ああ。それがいいな」
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/20(木) 00:47:37.92 ID:gL5hbXEK0
王国 宿

勇者「戻ってきたぁ……」

女賢「……今日は休んで、明日行きます? ゴーレムは動かないと伝えに」

勇者「まぁ、そうするか……急ぐことではないし」

女武「私、買い物したいんだけど」

勇者「ああ じゃあ遅くなるなよ」

女武「それで……一緒にきて欲しいんだけど」

戦士「よっしゃ、俺が行ってやるぜ!!」

女武「アンタじゃないわよ、女賢に来てほしいの」

女賢「私……ですか?」

女武「ええ。女同士のショッピングよ」
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/20(木) 00:48:42.63 ID:gL5hbXEK0
王国 通り

女賢「どこへ行くんですか?」

女武「もう着くから」

女賢「?」

女武「……ほら、あそこ」

女賢「ん? ……武器屋? 武器屋に行くんですか? なら、私じゃなくて戦士さんのほうが……」

女武「グダグダ言ってないで……ほら、いくわよ」グイッ

女賢「え? おっ」

――――カランコロン

127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/20(木) 00:52:44.27 ID:gL5hbXEK0
武器屋

店主「いらっしゃい」

女賢「あっ、はい」ペコリ

女武「一々頭下げなくていいの。ともかく、はやく剣を選びましょう」

女賢「剣ということは、勇者さまの武器を買うんですか?」

女武「ええ。もう一本あれば便利でしょ? 多分喜ぶだろうし」

女賢「たしかにそれは良いですね。うん、おそらく戦士さんだったら、お金を出したくないって言いそうだし。
   あっ、これは戦士さんに言わないでくださいね。その、陰口になっちゃうんで……」

女武「ん? 何言ってるの? 戦士が出すとか出さないとかの問題じゃなくて、私は出さないわよ?
   というか、アンタが全部出すのよ」

女賢「え?」

女武「アンタが『勇者のため』に買って、アンタが『勇者へ』プレゼントすんの」

女賢「えっ、そ、そんな。折角、女武さんも選ぶんですから」

女武「はぁ……ほらっ、私ってそんな柄じゃないでしょ? 私がそんなことしたら、勇者が無駄に勘繰るわ。
   それに女賢からのプレゼントの方が喜ぶと思うのよ、大体の男はね」

女賢「そ、そんな……」

女武「ともかく、はやく選びましょう?」

女賢「は、はい。……しかし、何を選べばいいのか、私には皆目見当がつきません」

女武「同じく。私、武道家だし……分からないわね、刀剣。あっ、あそこに女の子居るし、訊いてみない?
   どうやら、恰好を見るに、王国騎士団の一員らしいし、詳しいでしょう」

女賢「そう、ですね」
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/20(木) 00:56:34.97 ID:gL5hbXEK0
 スタスタスタスタ

女武「ちょっと良い?」

少女「」ビクッ

女武「えっと、騎士団員でしょ?」

少女「そうですが、なにか?」

女賢「その、プレゼントとして武器を買いたく。でも私たち、なにが良いのかわからないので、
   すこしお聞きしたいなぁ〜っと」

少女「プレゼントですか? ……それはあまり感心できませんね。
   まず武器を扱う者にとって、武器と言うものは自分の分身――――」

女武「――――違う、違う。プレゼントじゃないわよ。私たちは、どれが良い剣なのか知りたいだけよ」

少女「そうなのですか。すみません、すこし私が先走ってしまったようで」

女武「気にしてないわ。それで、どれがおススメなの?」

少女「ならば……この剣などはどうでしょう」

女武「これ? なんか片刃だけど……なにが良いの?」

少女「風の魔法が付加されていますし、魔法の発動に魔法の才は関係ありません。剣術の技量に属しますから。
   しかし、あまり使い過ぎれば、内部の魔法石が摩耗しますので、その内、風の魔法は使えませんね。
   値は張るようですが、一顧の価値はあるようです」

女武「ふ〜ん。アイツにぴったりじゃない、それ」
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/20(木) 00:58:31.82 ID:gL5hbXEK0
少女「ぴったり? やはりプレゼン――――」

「――――女騎士。いつまで武器を見ているのだ」

少女「あっ、申し訳ありません、騎士団長」

騎士団長「……分からば良い。そろそろ王が戻られるころだ」

少女「はい。……では、私は行きますので、機会があればもう一度」

女賢「はい。お気をつけて」

 スタスタスタ

女武「行っちゃったわね」

女賢「でも……この剣、勇者さまにピッタリですね。聞いた甲斐がありましたよっ」

女武「そうね。じゃあ、買いましょうか?」

女賢「はい!! 私、買ってきます!!」

130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/20(木) 01:01:48.96 ID:gL5hbXEK0

次の日の昼 宿

勇者「いくかぁ〜。そろそろ」

戦士「次はなにをくれると思う?」

勇者「籠手じゃないか?」

戦士「そっかぁ……」

 スタスタスタ

女武「――――勇者、待って!!」

勇者「ん?」

女武「ちょっと、女賢が」

勇者「え?」

女武「(ほらっ、はやく渡しなさいよ)」

女賢「(えっ、は、恥ずかしいですよ。やっぱり2人で買ったことにしませんかっ?)」

女武「(アンタが金を出したんじゃない。そしたら私の心持が悪いわ)」

女賢「(うぅ……だって恥ずかしいですぅ)」

勇者「ありがとう」

女賢「え?」

勇者「その剣、俺にくれるんだろ?」

女賢「は、はいっ!!」

戦士「……俺には?」

女賢「あっ――――」

女武「――――あるわよ。ほらっ、スルメ」

戦士「それ、俺が買ったやつじゃねぇーかよ!!」

女武「アラ? そうだったかしら?」

戦士「うう……なんで俺だけ……」

女武「だって、籠手を貰うんでしょ? なら、お相子じゃない」

戦士「あっ、そっか。そうだよなぁ〜ははっ、気づかなかったぜ」

勇者「まぁ、そろそろ――――」

タタタタタタ

兵士「――――勇者さま!!」

女賢「ん? なにか?」

兵士「石の街から緊急の一報ですっ!! 現在、巨大ゴーレムが…………
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/20(木) 01:02:52.20 ID:gL5hbXEK0
今日はここまで。……意外と投下するだけでも時間を食うんですね。
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/20(木) 01:12:40.49 ID:40vIRdjDO
乙乙
戦士……
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/20(木) 01:14:51.39 ID:E5Ne8Qkro
おつ
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/20(木) 01:35:39.69 ID:BS0Avncbo

次回戦士はスルメで闘うのか
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/20(木) 05:38:51.57 ID:HS60wzjdo


とりあえず誤字脱字が目立つので書き込む前に校正した方が良いと思う
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/20(木) 18:10:38.39 ID:L4nHcnDIO
乙ぱい

おもしろけりゃ俺はかまわんよ
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/20(木) 19:09:04.52 ID:4NMUsGRno
おつー
誤字脱字はない方がいいけど、別にあっても面白いからいいかなー
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/21(金) 18:01:13.94 ID:pryHHlxN0
石の街

魔子「みんな逃げて!!」

町人B「こっちにくるな!! 魔物が!!」

魔子「でも、骨王さまが逃げてって言ったんだよ!!」

町人C「うるさい!!」ブンッ

――――バンッ!!

魔子「ッ…………」

町人B「次、口を開いたら殺すぞ!!」

魔子「でもッ!!」

町人C「おいっ!! だれか槍ッ!!」

「これを使え!!」

町人C「サンキュー。さて、殺す前に一回、犯しとくか?」

町人B「ああ。結構、かわいいし」

魔子「だから逃げって!!」

 ガシッ

町人B「まぁ、あの小屋で話を聞いてやるよ」

魔子「痛いっ!! 話して」ブンブン

町人C「ヤリガイがあるなぁ」

魔子「やめてよ!!」
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/21(金) 18:02:20.06 ID:pryHHlxN0
小屋

魔子「キャッ!!」

町人C「かわいい声出すねぇ……」

町人B「そそられる」

魔子「なんだよ、お前たち!! こんな所で何をする――――」

町人B「先ずは服を脱ごうぜッ!!」

 ――――ビリビリ

魔子「な、何を……」

町人C「決まってるだろ? 子作りだよ」ガチャガチャ

魔子「子作り? 魔族と人間じゃそんなの!!」

町人B「できるだよ、これがな!! 知らないのか!? 便器には持って来いだぞ!?」ガチャガチャ

魔子「便器ってなに……」

町人C「おまえら方が締りが良いんだよねぇ。こないだ捕まえたメスも良かったよな?」

町人B「ああっ。結局妊娠したから、棄てたけどな。混血が見つかれば俺も死刑だし」

魔子「やめて……やめて……」ブンブン

町人B「やめるわけないだろ、いまさら」

140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/21(金) 18:10:29.60 ID:+wqtb1w2o
脱字祭り
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/21(金) 18:13:32.99 ID:pryHHlxN0

……………
…………
………
……


 怪鳥の背で勇者も、他の三人も無言だった。

勇者「…………」

 ……裏切られたのだ。偽りの甘言で自分らをだまして『欠陥品』を動かし、
 刹那の平和に安堵する石の街を襲ったのである。
 まるで……ぽっかり胸をくじられた気持だった。
 しかも自分にはそれを治す手立てもない。淡々と止め処なく流れる紅い血を眺めるだけだ。
 女賢は膝を抱いていた、女武は遠くを眺めていた、戦士は斧の手入れをしていた。
 誰もが取り立てて特別なことをやっていた訳でないが、押しなべて皆の瞳は、
 北西の山の上でわだかまる黒雲のように曇っていた。
 悟性明らかな女武の澄んだ瞳にも、曖昧な翳が差しているように思えたのだ。
 だがその本当の意味は、勇者の目に映るもの全てがくすんでおり、又、油然と厭世的な感慨が湧いて来たからである。
 ――――その一方、勇者の心では多くの問答がなされた。「なにかの間違えでは?」と願ったりした。
 しかし現実は冷徹であり、鮮明であった。
 石の街から狼煙が上がっていたのである。助け求めるものでなく『勝利の証』が。
 怪鳥を門の前におろし、4人は背中から飛び降りた。
 活気に溢れていた石の街は、数多くの天災を一緒くたに見舞ったように、完膚無きまでに破壊されてあった。
 だが、それよりも……何よりも

戦士「なんだよ……これ」

 煩い蝿を殺すように簡単に鏖殺された人々は、ほとんど人の形を保っていなかった。
 たとえば一つは、圧殺されて本の栞のようにペチャンコになり、
 片や、民家の柱に突き刺さる女の屍は、腐食性のカラスに肉を食われていた。
 しかしそれだけではない。砂まみれの腸、分たれた胴、主の肉体を貫いた骨、死に方にも数多の通りがあり、
 この世界のすべての死に方がここにあるように思えた。
 無論、それは――――勇者は振り仰いだ。
 この、屹立する頭部のない巨大な人影によって為されたものである。
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/21(金) 18:22:15.65 ID:pryHHlxN0
勇者「……くそ。なんだよ、これっ」

女賢「こんなの酷い……」 

女武「…………」

「――――勇者、逃げろっ!!」

 声の方へ視線を向けようとした勇者だが、ゴーレムの影が突然動く。
 彼はもう一度空を仰いだ。
 そこには、動き出すゴーレム。

勇者「逃げるぞっ!!」

魔子「こっちに来てっ!!」

 反抗心なく魔子のうしろに付いて行く四人。
 そして、無傷の民家に逃げ込んだ時、『あの村の魔族への反抗心』が唐突に沸き起こった。
 勇者は、なかば壁にぶつけるように強く、魔子の右肩を押した。
 華奢な彼女は尻餅をつき、その衝撃でうしろの壁に頭を打った。
 だが勇者の責め立てる強い語気に、頭を押えて痛むことはできない。

勇者「お前、ふざけんなよ」

魔子「…………」

 魔子は顔を上げる。果てのない怒りが心身に充溢し、勇者の顔はまるで鬼のようであった。
 その様に、他の三人は唖然としていた。
 それは仕様がなかった。『あの勇者』がここまで怒る姿など見たことがなかったし、想像も出来なかったからだ。
 しかし、この唖然が怪我の功名でもあった。もし勇者が憤怒しなければ、おそらく代わりに、戦士、いや、他の2人が、
 魔族の少女に怒りをぶつけていたであろう。だが一驚を招いたことにより、義憤に燃えたつ三人の心が、一瞬冷め、
 ドロリと溶けた赤い鉄が冷えて本来の硬さを取り戻すように、心の強さを取り戻す。
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/21(金) 18:25:35.13 ID:pryHHlxN0
勇者「ふざけんな、俺たちを」

魔子「ちがう……ちがう。今度は自分を…信じてよ」

 魔子はフルフルと首を振って、さめざめと清らかな涙を落とし始める。
 しかし勇者の激昂は収まらない。そんな尋常でない彼を見て咄嗟に、女武は声を荒げた。

女武「やめなさいよっ!!」

勇者「お前……なんて言った? やめろって言ったのか?」

女武「だって……魔子、泣いてるじゃない」

勇者「だからって許せっていうのか? そんなことできねぇーよ!!」

戦士「じゃあ、殺すのかっ!? お前は!?」

勇者「…………ッ」

 拳で柱を叩く勇者。屋根からパラパラと埃が落ちてくる。
 女賢は自分の涙を拭いた後、押し殺した嗚咽を上げる魔子を抱きしめた。
 健気な魔族の少女を見て、勇者は怒りを覚えた。それは――――自分に対してであった。
 
勇者「これじゃあ、なにも変わってねぇーよ。くそっ!!」

戦士「勇者。お前は変わったぞ。十分」

勇者「変わってねぇーよ!! 俺は結局、戦闘狂なんだよ!! 
   自分の強さに過信して、だから魔族を殺さなくても世界を平和にできるなんて考えて!!」

女武「過信? アンタは最強よ。私が認める。なら、世界を平和――――」

勇者「――――俺より上は居るんだよっ。なら、俺が勇者である理由なんてないだろ?」

女武「なんでそんなこと言うの? なんで、嘘をつくのよ」

勇者「嘘じゃない」

女武「じゃあ……殺すの? 魔子を」

勇者「……そんなこと、できねぇーよ。くっそ」

女賢「…………」
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/21(金) 18:31:43.06 ID:pryHHlxN0
魔子「――――違う。骨王さまはやってない……」

戦士「ん?」

 女賢が離れると、魔子は訥々と語り始めた。
 それは、勇者が村を発った次の日のことだ。
 突然、黒いローブが村を訪ねて来たらしい。
 そのローブは骨王に用があったらしく、2人でゴーレムに向かった。
 そして、骨王が帰ってきたとき、厳かな声でこう言ったのだ。

骨王「もう一度、奴がやって来たとき、石の街に行って危険を知らせて欲しい」

 すると同じ日の晩、その骨王のセリフが現実となったのだという。
 要するに、もう一度、ローブが訪ねて来たのだ。次は三人の仲間を引き連れて。

―――――――
――――――
―――――
――――
―――
――

女武「じゃあ、その黒ローブがあのゴーレムを?」

魔子「」コクン

女賢「ローブって……勇者さまっ?」

勇者「らしいな……アイツが」
 
戦士「知ってるのか?」

勇者「いや、確信してない。ただ、思い当る節がある」

女武「会ったことがあるの?」

勇者「後で話す。今はあのゴーレムをどうにかしないと」

戦士「ああ……許さねぇ。ゼッタイ」

勇者「女賢、悪いな」

女賢「なにがですか?」

勇者「いや、この剣。使わせてもらうぞ」

女武「でもどうやって倒すのよ、アレ。いくらなんでも外からじゃ―――――」

勇者「――――もう壊すしかないだろ。……それに魔子」

魔子「」ビクッ

勇者「悪かった」

魔子「う、うん」

 勇者が魔子に触れようとすると子犬のように身を震わせて、彼の愛撫を怖がった。
 それは咎めである。激情に駆られ怒号を上げた勇者への辛辣な咎めである。
 彼は何もできず腕を引いた。

女武「じゃあ、行きましょう」

勇者「あ、ああ。二つに分かれるぞ」



145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/21(金) 18:33:03.58 ID:pryHHlxN0

タタタタ

石の街 大通り ゴーレムから向かって北方向 距離 100m

女武「二手に分かれるって、三人と一人……」

戦士「大丈夫か? アイツ一人で」

女賢「ええ。勇者さまが言ったんですから」

女武「どの口がそんなことを言うのかしら」

戦士「そうだよな。あの時、居なかったし」

女賢「すみません」ペコリ

戦士「でも今回は勇者抜きで勝てるかもな」

女武「ええ、三人寄れば文殊の知恵ってね。あっ、でも一人はダメか」

戦士「おいっ!!」

女武「ふふっ。やっぱりこの調子よね、私たち」

女賢「あっ、ここです」

 ぴたっ

女賢「やりましょうっ」

女武「ええ。囮役をね」
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/21(金) 18:37:38.57 ID:pryHHlxN0

石の街 ゴーレムから向かって西方向。距離 100m

 炎が空へ向かって放たれる。戦闘開始の合図であり、ゴーレムに自分の居場所を感知させる餌である。
 魔子曰く、あのゴーレムは動くものに攻撃を行うのだが、その検索範囲はおよそ100m。
 それ以上の距離ではどれほど動いても攻撃対象と見做されないらしい。

魔子「ゆ、勇者?」

勇者「どうした?」

魔子「行かなくて良いの?」

勇者「作戦だよ。それに少し待ってくれ、この剣の使い方をみないと」

魔子「使い方?」

勇者「ああ。魔法を使える剣らしい」

魔子「……どうやって使うの?」

勇者「それを調べてるんだよ。……こうか?」ブン

 シーン。

勇者「なんだよ、これ」

魔子「……それって、もう一回、抜けるんじゃん?」

勇者「え?」

魔子「貸して」

勇者「おう」

魔子「留め金みたいなの外して…………ん〜〜〜〜〜〜」

 すぽっ。刀身から柄が外れる。
 いや、刀身の中からさらに『刀身』が現れたのだ。
 それは、反り返って片刃の、波紋が走る『刀』と呼ばれるものである。

勇者「これで……風の魔法を使えるのか」

魔子「多分っ」

勇者「ありがとうなっ、魔子」

魔子「ううん。……でも、がんばって」

勇者「ああ」
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/21(金) 18:39:32.46 ID:pryHHlxN0
大通り ゴーレムまでの距離 10m

ズドンッ!! ゴーレムの足踏みに地面が揺らぐ。

戦士「くっそぉぉぉぉぉ!!!!!」タタタタタ

女武「デカすぎるわよ、こんなのっ!!」

女賢「来ます!! しゃがんでッ!!」

 地に伏せる三人。
 次の瞬間、ゴーレムの指先が頭上を過ぎる。
 ボゥッと空気の塊が押し退けられ、黄色い砂埃が舞いあがった。

戦士「勇者ぁぁあぁぁぁ!!!!!! 早いこいっ!!」

女武「ったく、アイツ、調子乗りやがってっ!!」サッ

女賢「でも女武さんが最強って言ったから」

女武「うるさいっ!! というか、逃げるわよっ!!」

148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/21(金) 18:43:34.56 ID:pryHHlxN0
無傷の民家の上 距離 30m

勇者「……届くよな」

 彼は暴れるゴーレムを眺めて、それから視線を刀へ落とした。
 刀の刃は青い。まるでブルーサファイアのように澄んで、裏側まで透けて見えた。
 
勇者(この剣の魔法は使い手の技量次第。……なら、)

 勇者は居合の構えを取った。だが鞘は無い、そのため、左手を重力に従わせつつ、
 骨ばった五本の指で硬い拳を作っていた。 

勇者(……もしこの刀が俺を最強だと認めてくれるのならば、俺は倒せるはずだ)
 
勇者「…………」

 呼気を吐き、集中を高める。心を一糸のように細く、無駄な厚みを削ぎ落す。
 無心だ。勝敗、生死、喜怒、天地、彼我、全ての境界を曖昧にし、左手から力を抜く。
 そして――――断つ。

勇者「―――――ッ」

 剣先が大きな半円――あたかもを砂の粒子を分つが如くに鋭く、又、繊細な一閃を描いた。
 


 それと同時―――――ゴーレムの右太ももが弾けた。

149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/21(金) 18:45:49.52 ID:pryHHlxN0

距離 10m 

女武「やっ……た?」

 おそらく勇者の一撃が、その右足を砕いたのだろう。
 しかし予想外のことが起こった。そのゴーレムがこちらに向かって…………

戦士「逃げるぞ!!」

女賢「はい!!」

女武「ふざけんなぁ!!」

 三人は全速力。一番足の遅い女賢は幸い最初で飛び出しためにビリではない。
 殿は女武である。彼女は、すでに影の覆われない場所に退避した二人へ向かって、必死に駆ける。
 そうして影が濃くなり――――まだその中にいる女武は、最後の望みとばかりに目をつむって前へ飛んだ。
 ドンッ
 身体に痛みが走る。それは圧殺されずに済んだことの証明である。
 彼女は腕立て伏せのように上体を持ち上げ、目を開ける。
 そこで気づいた。自分の居場所がまだ暗いことに。

女武「……倒れてない」クルン

 ゴーレムが地面に両手をついて衝突を避けていたのだ。

戦士「女武っ!!」
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/21(金) 18:47:04.61 ID:pryHHlxN0
 塔のような一臂が振り上げられる。まるでそれは太陽を掴むがごとくであった。
 今度こそ、死ぬのか……私。
 そう覚悟し、潔く目蓋を伏せた。
 が――――ズドンッ!! 『近く』で轟音。

女武「?」

 見てみると、高く振り上げた腕が肩から落ちているではないか。
 咄嗟に女武は、骨王の言葉――『欠陥品』という評価を思い出した。
 おそらくこの街を蹂躙した時点で、だいぶ負担が掛っていたのであろう。
 それに加え、勇者の人間の技とは思えぬ一撃。
 ……崩壊は免れない。
 崩壊する右腕に引きずられるように巨大ゴーレムは、横倒しになった。
 そして大量の砂塵が、まるで荒れ狂う海の怒涛のように荒々しくゴーレムの八方へ広がった。




151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/21(金) 18:49:22.48 ID:pryHHlxN0
勇者「お前ら、大丈夫か?」

女武「え? ああ……」

 女武は砂だらけであった。
 が、一切払おうとせず、放心に近い状態になっていた。

女賢「ゆ、勇者さま」

戦士「はぁ……やっぱお前、凄いわ」

勇者「いや、お前らのお蔭だよ」

女賢「しかし……まさか本当に、外から倒してしまうなど……思ってもみませんでした」

勇者「まぁ、内側は空洞だからな」

女賢「?」

勇者「中に入れるって、魔子が言ってただろ? だから倒せるって思ったんだよ」

女賢「そう……なんですか。凄いです、やはり」

勇者「いや、この剣のお蔭だよ」

 勇者は右手の剣、ではなく、刃のない柄を揺らした。

女賢「刀身は、どうしたのですか?」

勇者「ああ。なんか砂になった。この魔法って一回きりなんだな」

女賢「砂に?」

勇者「ああ。青い刀身だったんだけど……なんか砂に」

女賢「おそらく刀身は、魔法石では? 魔法石は青いんですよ?」

勇者「え? マジで?」

女賢「はい。魔力を失った魔法石は砂へと変わります。たとえば、魔法石を使った飛行船は砂の雨を降らしますし」

勇者「そうか……」

女賢(おそらく一回きりだったのは、勇者さまの技量が異常だったからだと思います)

勇者「でも、魔法石をむき出しにして使うしかないんだな」

女賢「いや、そんな筈はありません。……多分、勇者さまに魔法の才がないからでは? 常人以下に」

勇者「……そうか」

戦士「落ち込むな、勇者っ。倒したんだからいいじゃん。ともかく、ゴーレムの中に入ろうぜっ!!」

勇者「そうだな……ローブの奴がいるかもしれん」
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/21(金) 18:52:10.07 ID:pryHHlxN0
ゴーレム内部。 機関部近く

勇者「狭いな」

女武「そうね」

戦士「でもこのゴーレムってどうやって動いてるんだ? こんなデカいもの」

女賢「やはり魔力でしょうか? 飛行船と同じように」

勇者「……でもそんなエネルギーが近くにあると思えないが」

女武「魔法石を使ったのよ。その剣と同じように」

勇者「そもそも魔法石って何なんだ?」

女武「魔力の塊ね。伝達効率は良いとは言えないけど、事前に設定されていた魔法を任意で発動できるのよ。
   過去に、この大陸でも多く採掘されていたけど、今はほんの一握り。
   エルフの国、火山の街でしか手に入らないわ。だからその剣は高いんじゃないかしら?」

女賢「魔法学の常識ですね。しかし、これほどの機構を動かすための魔力となれば、
   どれほどの魔法石が必要でしょうか……おまけに莫大の金額がかかると思いますが?」

女武「エルフの国、今、魔王の統治下でしょ? なら簡単じゃない?」

戦士「でもなぁ……エルフの国から一日二日で、いっぱいの魔法石を運べるか?」

女武「じゃあ、生き物を使ったんじゃない?」

勇者「どういうことだ?」

女武「初代大神官が直接禁忌の魔法と決めて、今や失われた魔法だけど、
   魔族、人間、エルフ、問わず、生き物ならば全部、魔法石に変えられる魔法があるのよ。
   個人差があるけど人間1人を、大体5キロの魔法石に……勇者っ!?」

勇者「ああっ、いくぞ!!」
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/21(金) 18:57:11.61 ID:pryHHlxN0
 タタタタタ―――――機関部。
 機関部についた一行は、意想外ではない――つまり予感した凶悪な事実に目を見張った。
 そこには、青く美しい魔法石の山。
 おそらく、これ見た者、たとえば、武器屋を商う者ならば「金の山」と両手を上げて喜んだろうし、
 魔法研究に努める者ならば、「格好の研究材料だ」と息巻いて興奮したろう。
 しかし勇者たちは、前者とも後者とも違う、単純すぎる反応を示した。
 無言だ。緘するだけの、非常に明確な自己防衛であった。

勇者「…………」

「――――勇者……」

 魔子の声だ。

魔子「勇しゃ――――」

勇者「――――来るなっ!! 殺すぞ!!」

魔子「え?」

勇者「だから消えろ!!」

 躊躇した雰囲気が感じられたが、すぐに駆けてゆく足音が聞けた。
 逃げて行ったのである。
 
勇者「…………」

 おそらく魔子がこの魔法石の山を見ても、只々綺麗な石としか見做さないであろう。
 もしかしたら宝石だと思って、無邪気に欲しがるかもしれない。
 だが、勇者、いや、他の三人も同様にして、魔子にこの石を見せることをためらった。
 それ以上に冀われても決して出来ぬことだった。
 理由は、魔子を慮ってではない。己のためである。
 もし彼女は笑顔で魔法石を手にすれば、虚勢を張ってどうにか挫けずにいる心が、一気に瓦解し、
 この先、戦う為の意志がまったく潰えてしまうであろう。
 そして、その事を回避するための姑息な手立てとして、魔法石の製法……それに加え、
 残酷極まる材料について魔子に吐露してしまうに違いない。
 
戦士「俺、追うから」

 戦士はそう言って、機関室を出て行った。
 彼は、この現状を目の当たりにして逃げたわけではない。
 この中の誰よりも強いがために、魔法石の前から駆け出すことが出来たのである。
 勇者は拳を握った。だが不思議なことに……力が入らなかった。

154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/21(金) 18:58:13.89 ID:pryHHlxN0
 石の街


戦士「……どこ行った、魔子」

戦士(勇者の野郎、すこしは言葉を選べっつーの。お前が殺すぞって言ったら洒落にならねぇーだろ)

戦士「おい〜魔子っ」

 ……う……うぅ……

戦士(魔子の泣き声……)

 その小さな声の方へ行くと、魔子がしゃがみ込んで泣いていた。

戦士「魔子」

魔子「」ビクッ

戦士「……俺から謝るよ。アイツ、無神経だから……悪い」

魔子「違うっ……自分、違う……そうじゃない」ボロボロ

戦士「魔子?」

魔子「みんな、死んじゃったって……思ったら……自分……」ボロボロ

戦士「そっか」

 戦士は魔子に近寄り、彼女の頭に―――――

「――――触れるなっ!!」
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/21(金) 19:03:50.93 ID:pryHHlxN0

戦士「?」クルン

少年α「ソイツに触れるな!! 勇者さまでもオレが許さない!!」

 あのときの少年が棒を構えて、戦士を威嚇していた。
 勇者に立ち向かうという前代未聞の行為に少年の身体はちいさく震えている。
 しかし、その黒目がちな瞳には勇気が鏤められていた。
 それは、一縷の望みを信じる勇ましい表情だ。

戦士「お前……」

 戦士と魔子との間に、少年αが割って入る。
 
少年α「オレがゼッテェー守るんだ!!」

魔子「……あのときの」

少年α「勇者さまは魔族だから殺すのか!? 魔族だからって苛めるのか!?
    良い魔族だっているんだよ!! だからオレっ!! 勇者さまにも負けない!!」

戦士(なんか懐かしいな……俺もこんな感じだったのか。じゃあ、すこしからかってみるか……)

戦士「…………ダメだな、殺す」

少年α「ふざけんな!! コイツはオレたちのために、逃げろって言ったんだぞっ?
    なのにアイツらはそれを聞かずに、襲おうとしたんだよ。だからオレ……許せなかった。
    だから、コイツを助けたんだ!! だから、だから、オレが守るんだ!!」

戦士「じゃあ、俺より強くなれよ。あと十年後、俺より弱かったら……」

少年α「約束かっ!?」

戦士「ああ。男に二言はない」

少年α「オレもゼッテェー守る!! だから、お前も」クルン

魔子「……?」

少年α「オ、オレから離れるなよ?」

魔子「…………うんっ」コクン


156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/21(金) 19:06:38.24 ID:pryHHlxN0
石の街

勇者「……帰ってこないな」

女武「…………」

女武「…………あっ」


戦士「お〜い、お前らっ!!」タタタタ

魔子「」タタタタ

少年α「」タタタタ


勇者「お前ら……」

戦士「おうっ」

魔子「ゆ、勇者」ギュウ

少年α「痛いっ、握りすぎだっ」バッ

魔子「なにすんだよっ。自分を守るくせにこんなのが痛くじゃダメじゃん。男の癖に」

少年α「これから強くなるんだよ、バ〜カ」

魔子「バカはそっちじゃん!!」

少年α「うっさい、バカ!!」


勇者「…………」

女武「男の癖にか……魔子っ、色気づいたわね」

魔子「イロケ?」

女賢「……色気って言うのは女っぽくなったってことだよ。ですよね、勇者さま?」

勇者「え? ああ……そうだ」

戦士「まぁ、女武は色気ゼロだけどな」

女武「なによ、この筋肉。アンタは汗臭いのよ」

戦士「香水臭いよりマシですぅ」

女賢「汗臭いことを否定したほうが……」

 不意に勇者は、死屍横たわるこの街で不謹慎にも笑ってしまった。
 だが、悪びれる風な態度もとらない。事実、罪悪感はなかったからだ。
 只『この戦いを見た誰かが許してくれるだろう』と不確かな確信があって、
 これからもそれが自分の支えになってくれるような気がしたのだ。
 たとえば、魔族と思い込む少女が、人間の手をしっかり握って離さないように、
 彼も、その確信を失わないに違いない。とはいえ……これは確信ではないが。

157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/21(金) 19:11:07.57 ID:pryHHlxN0
?「さて、壊されてしまいましたねぇ」

?「いいじゃないですか、所詮欠陥品ですよ、欠陥品っ」

?『だが、見込みがあるな。やはり』

?「脅威ではないのか? 貴様からしても」

?『アレが脅威? ふざけたことを抜かすな』

?「しかし、強いですよ? 『あの勇者』には及ばなくともねぇ」

?「ええ、多分俺より強いですよ」

?『お前は戦うのか?』

?「ああっ、そうですね。俺は戦闘はしませんね」

?「良いご身分だな。真、貴様は陰気だな」

?「その代わり、彼にはいろいろと動いて貰っています。
  それよりも折角の魔法石をどうしましょう?」

?『祝いに与えてやれ』

?「残酷ですねぇ……あの気骨に富む勇者が、世話になった魔族の亡骸を使いますかねぇ?」

?「ふんっ。主に逆らった時点で、魔族でも人間でもないぞ」

?「では何だとお思いに?」

?「知らん。神にでも聞いてみろっ」

?「それもいいですねぇ。まぁ、そろそろ行きましょう。みなさん」

?「貴様らと伍することは解せないがな」
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/21(金) 19:18:24.93 ID:pryHHlxN0
終わりです。誤字脱字に気を付けてみたつもりです。
もし送り仮名が抜け落ちている場合は、こちらの故意的な可能性もあります。
それは、私淑する作家の文章に倣っているが故ですが、よしや読み難い場合は言って下さると改善します。
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/21(金) 19:47:18.86 ID:S1qQH4Gco


魔子は町人に犯されそうなところを少年αに救ってもらったでおk?
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/21(金) 21:09:03.67 ID:J3Qq1Czyo
>>138
>>139
のとこはなんなの?
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/22(土) 00:28:34.86 ID:C6rItBPIO
あぶねえ!あっぶねえよ!ヤられなくてよかった!

乙ぱい
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/22(土) 02:25:43.10 ID:+K89iW0ro
急に殺せなくなったところが適当すぎて近年稀に見るクソSSになってるな
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/22(土) 02:41:14.99 ID:a9/VxU4vo
>>162
それは正直俺も感じてる。もうちょいちゃんとした理由と説明はほしいな
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/22(土) 07:40:28.14 ID:ehJfeBmIO
すごく自演臭いな
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/22(土) 09:45:49.78 ID:w9qAlcHjo
これまでも誤字脱字を自分で突っ込んでたりしたしな
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/22(土) 14:29:15.78 ID:XojYRPcKo
何言われても気にせず頑張れ
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/22(土) 14:41:47.15 ID:a9/VxU4vo
自分の意見を言ったら自演ですか。ひどいインターネッツですねここは
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/22(土) 17:06:40.72 ID:zrxDbMZIO
(あ、こいつわかってねーな)
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/22(土) 20:04:52.86 ID:9/4pjLF2o
殺せなくなった理由はちゃんとした説明なくても別にいい
もちろんあった方がいいけど
俺には読むことも出来ないような難しい言い回しとか使ってるにも関わらず
指摘済みだけど誤字脱字と須らくの誤用はひどいと思った
内容は期待してるので頑張って
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/23(日) 00:47:55.79 ID:i4Ua0yWao
見苦しい奴だ
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/23(日) 01:23:34.98 ID:tlxhttzno
お前らがうるさいこらこないじゃないか
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/23(日) 09:08:30.60 ID:F8wQv8qDO
戦士が調子にのりすぎでうざったくなってきた
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/23(日) 13:41:16.07 ID:tDMoZ794o
乙、気にせず頑張って
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/28(金) 22:28:16.98 ID:vgSd+Q2ro
本当にこなくなったな
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/28(金) 22:32:13.94 ID:BqKrF9/Mo
>>176のせいだな
責任とれよ
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/28(金) 22:36:37.44 ID:mTQF6pDho
だが断る
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/29(土) 08:29:46.72 ID:l5Y7TCMIO
なるほど
勇者は>>1だったか
メンタル的な意味で
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/29(土) 11:07:32.00 ID:YNUOtiLAO
>>157で壊されたのは>>1だったのか
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/03(木) 10:36:53.49 ID:F0i4qudAO
このぐらいで逃げるなら最初から書くなよ
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/03(木) 16:12:09.15 ID:NK/2wRNvo
同感
待ってるほうの身にもなれ
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/05(土) 15:16:35.20 ID:zkKcoTyS0
鳥の背中

少年α「…………」

魔子「…………」

 俯き加減の2人。友を失った悲しさ、はじめて離郷の寂しさ、それらが、身体を蝕む大病の発覚が遅いように、
 今更ながら2人の心に重くのしかかった。しかし勇者は安易な慰めをあたえようとしない。
 かたく口を噤み、空の果てに見える青い稜線をながめていた。
  
少女αの母「どこへ向かうのでしょう?」

勇者「港町です」

α母「海……ですか」

女賢「安心してください。街の皆さんは良くしてくれますよ。恰幅の良い村長はすこし嫌な顔をするでしょうが」

α母「しかし……私たちだけ良いのでしょうか?」

女武「どういうこと?」

α母「あの街にはまだ生きる者がいます。それを置いて、私たちだけ……」

勇者「……すみません、俺が事前にゴーレムを倒さなかったから」
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/05(土) 15:19:23.32 ID:zkKcoTyS0
α母「いえ。……αから話は聞きました、勇者さまが魔族を倒せないということを。
   それに『あの子』を見れば、魔族を蔑んでいた私たち人間の方が許されぬ筈です。
   しかし……特別私たちを他の街へ送っていただくのは、申し訳がありません。亡くなった同郷の者にも」

女賢「……ゴーレムに襲われたことを思い出して、魔族を怖がる人たちがいると思います。
   そんな中で魔子ちゃんを過ごさせることはできないと思って……」

α母「そう……ですよね。あの子の親も、友人もみんな」

勇者「だからアイツの親代わりになってくれませんか? 
   こんな結果を招いた俺が言うのもおこがましいですが」

α母「王さまはお許しになるでしょうか? あの子の存在を」

勇者「そのときは俺がムリにでもねじ伏せます」

戦士「――――見えて来たぞっ!! 海だっ!!」
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/05(土) 15:21:12.93 ID:zkKcoTyS0
少年α「海?」

戦士「ああっ、ほらっ!! 奥の」

魔子「あれが海?」

戦士「ああっ。肩車してやろうか」

女武「やめなさいよっ。落としたらどうするのよ、バカ」

戦士「俺が落とすわけないだろ。ほらっ、乗れっ」

女武「――――って、やろうとしないの!!」

女賢「なんかお母さんみたいですね、女武さん」

女武「まだそんな年齢じゃないし、やめなさいよ。――――って人の話を聞け、そこの筋肉バカ!!」

α母「…………」

勇者「不謹慎ですみません。アイツ、バカなんで」

α母「いえ、やさしい人ですね」

勇者「え?」
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/05(土) 15:24:45.91 ID:zkKcoTyS0

α母「なんでもありません。……私、がんばってみます。
   あの子の母親に成れるかわかりませんが……」

女賢「なれますよ。絶対に……ですよね、女武さん?」

女武「え……ああ、なれるわよ。というか勇者に聞きなさいよ。なんで私に」

勇者「俺は母親に成れないだろ。もしかして女武って女じゃなかったりしてな」

女武「女よ、お・ん・なっ。ドラッグクイーンじゃないわよ」

勇者「でも……」チラッ

女賢「?」

勇者「胸がさ」

女武「――――戦士ぃ〜勇者が肩車してほしいって」

戦士「よっしゃ、任せろっ!!」
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/05(土) 15:25:56.36 ID:zkKcoTyS0
港町

魔子「海、でっかいね」

少年α「あったり前だろ、海なんだかさっ」

魔子「来たことあるの?」

少年α「ないけど、聞いたことあるから」

魔子「物知りなんだね」

少年α「そ、そんなことねぇーよ。こんぐらい普通だ」

戦士「おい、2人とも」

少年α「なに? 嘘勇者さま?」

戦士「まぁそれは置いといて……肩車するか?」

魔子「え? あっ、するっ!! するよっ!!」

戦士「そうかぁ……じゃあ、乗れっ!!」
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/05(土) 15:28:36.53 ID:zkKcoTyS0

女武「良いご身分ね、ホント」

女賢「いいじゃないですか、海を見て二人とも元気を取り戻してくれて。
   それに……子供って素直ですね」

女武「戦士も子供ってこと? 言い得て妙ね。頭は成長してなさそうだし」

勇者「でも、港町のみんなどう説明するか。受け入れてはくれるだろうが、やはり不安は出てきそうだし」

女武「かといって、違う土地に住まわせるわけにはいかないしね。ここしか私たち、馴染みがないしさ」

女賢「A姉さんにも応援を扇いで、町長に話をすればいいんじゃないですか?」

勇者「それが最善か。じゃあまずA姉のところに」

 キャハハハハ ウフフフフ

勇者「ん?」クルンッ
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/05(土) 15:29:43.46 ID:zkKcoTyS0
女1「やめてくださいよぉ〜ダゴンさまぁ〜」

女2「女1だけズルいぃ〜私も触って下さいよぉ〜」

ダゴン「交換、交換にね」

女2「え〜昨日は女2だったじゃないですかぁ」

ダゴン「じゃあ、今日は2人を相手しよう」

女1「ズルいぃ〜」
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/05(土) 15:32:02.10 ID:zkKcoTyS0
勇者「あれ? アイツ……ダゴンだよな?」

女賢「ええ。たしかに生かした筈ですが……」

女武「あの優男、また性懲りもなく何かやったのね。ちょっと行ってくる」タッ

勇者「え、あっ、ま――――」

 タタタタタ

女武「――――お前ら」

女1「ん? 誰、アンタ?」

女武「あ?」

女2「そんな怖い顔しないの。まだ小っちゃいんだから笑ってないと。よしよし。
   将来はお姉さんみたいに成ろうねぇ」ナデナデ

女武「おい、優男」バシッ

ダゴン「久しぶり。一段と可愛くなったね。うれしいよ、ボク」
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/05(土) 15:35:49.30 ID:zkKcoTyS0
女武「自省もせずに、また手をつけたのか?」

ダゴン「だって僕も男だし、興味はあるからね」

女武「なんでまた人間なんだ?。また脅して」

女1「―――――はっ!? 何言っちゃってるわけ!? 妬みですか!? 子供なのに可愛いねぇ〜」

女武「は? 私の方が『何言っちゃってるわけ』って言いたいんですけど。こんなナヨナヨした奴のどこがいいんだか?
   あ〜アンタの頭、圧したらへこむぐらいスッカラカンでしょ? 針で差したらパチンッって割れちゃいそうね」

女2「こいつ……言わせておけば。ど、どうせ男に抱かれたこともないんでしょ?」

女武「ふ〜ん、抱かれた回数を誇るぐらいしか出来ないの、淫売。はぁ〜かなしいわぁ〜、私、同情するわよ。
   いまごろアンタの親はせっせと働いてるのに、アンタは優男の肘掛になってるなんてねぇ〜。
   それにこのニオイ。くっさ。香水つけすぎよ。そんなにワキガが酷いの? 可哀想ね。魔法で治してあげようか?」

女2「ダ、ダゴンさま、こいつ」プルプル

ダゴン「ほらっ、泣かないで」

女武「オセロもびっくり。墨を吐いてたダゴンさまが、紳士然にかよわいワキガ女子(笑)の涙を拭くなんて」

190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/05(土) 15:38:17.30 ID:zkKcoTyS0
勇者(生き生きしてるな、女武)

女賢「やっぱり凄いですね、女武さん。憧れます」

勇者「憧れるなっ」

女賢「それにゾクゾクします。あんなに言われたら私、大泣きしちゃいますよっ。
   勇者さまもあんな風に暴言を吐くんですか?」

勇者「……なんかお前が言うと、生々しいな」

女賢「?」

勇者「なんでもない」
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/05(土) 15:41:02.10 ID:zkKcoTyS0
女武「バカとワキガ女子と優男。良いトリオじゃない。魔王を倒す旅に出かけたら? ねぇ?
   現役の私が勧めるんだから、ゼッタイ良いわよ。ワキガで魔族も近寄らないし、
   遺跡で迷ったときにその残り香で来た順路がわかるし。一挙両得、一石二鳥ね」

女1・女2「「…………」」

「――――あっ、ダゴンさ……女武さんっ!!」

女武「あっ、戦士の嫁」

A姉「よ、嫁っ!? ま、まだそんな……いや、そういうことじゃなくて、ダゴンさまを責めないでください」

女武「え? アンタも籠絡されたの? やっぱり女の子は勝てないの?」

A姉「いやダゴンさまは『村の守り神』という役職についた上で、恋愛をしているので、問題はないですよ」

女武「……ホント?」

ダゴン「うん、ホントだよ、ホント。……いまさら遅いけどね」

女1・女2「「」」

女武「ふ〜ん。信じられないけど、まぁ、信じよう」

A姉「それでなぜこの街にまた? もしや魔王を倒したのですかっ?」

女武「まぁ……色々ね」

A姉「色々?」
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/05(土) 15:44:32.27 ID:zkKcoTyS0

宿 ラウンジ

A姉「そんなことが……」

勇者「俺たちが全面的に悪いのに。おまけにこの街にも迷惑をかけて」

ダゴン「いやいや、可愛い子を連れて来てくれてボクはうれしいよ。
    それになかなか母親のほうも、ぽっちゃりしてるが、それも一興……」

女武「スケコマシ」

ダゴン「ふふっ。嫉妬はやめてくれたま――――ゴフッ」

女武「アンタは一回休み」

ダゴン「」ビクビク

勇者(墨が口から垂れてる……でもなんか喜色満面だな)

女賢「……でも、魔族に寛容になっていてくれて有り難いです。
      あの子たちもやっぱりそっちの方がいいですし」チラッ
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/05(土) 15:48:04.32 ID:zkKcoTyS0
少女A「α君はさぁ〜、私と魔子ちゃん、どっちが好き?」

少年α「お、同じぐらい」

魔子「……こないだ、自分をずっと守るって言ったじゃん」

少年α「嘘じゃないぜっ。守るけど……」

少女A「私も守ってくれる?」

少年α「もちろんだぜっ!!」

魔子「」ブン

少年α「イテッ。なにすんだよっ」

魔子「なんかムカつく」

少年α「ふんっ。そうやって叩く奴はもう守んないからな」

魔子「……ウソつき」

少年α「ん?」

魔子「このウソつき!! もう自分筋肉のところ行ってるから!!」タタタタタ

少年α「ま、まてよ!!」
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/05(土) 15:51:11.33 ID:zkKcoTyS0
女賢「外に行っちゃいましたね。素振りしてる戦士さんがいるから大丈夫だと思いますが」

勇者「でもアレだな。……さっそく三角関係できあがってるな」

女武「子供だから張り合いたいのよ、特に女同士はね」

ダゴン「……そうだね。だから君も張り合いたいからあんな事を」

勇者「やめとけ。自分で引き金を引こうとするな」

女武「あら、私はサンドバッグになってくれるから、楽しみだけど」

ダゴン「サンドバッグか……一考の価値があるような」

女賢「サンドバッグ……」

勇者「話が進まん」
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/05(土) 15:51:59.64 ID:zkKcoTyS0
女武「じゃあ、アンタら、外で買い物してくれない?」

勇者「俺と、このタコ野郎が?」

女武「女同士でしか話せないことがあるのよ」

勇者「はぁ……わかった、わかったよ」ガラッ

ダゴン「……鶏姦か、初体験だ」コソ

勇者「なんか言ったか?」

ダゴン「いや、行こう。手を繋いでね」

勇者「キモい」

 スタスタスタ
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/05(土) 15:53:35.02 ID:zkKcoTyS0
女武「……っで、訊きたいだけど、アンタってさ」

A姉「はい」

女武「なんで戦士に惚れたの? だってアイツ暑苦しいし、バカだし」

女賢「で、でも、勇者さまはカッコいいですよっ!?」

女武「だれも勇者の話なんてしてないでしょ。いきなりすぎてビビったわ。っで、どうなの?」

A姉「えっと…………筋肉です」

女武「え?」

A姉「筋肉が……素晴らしいので、その、はい……」

女武「筋肉?」

A姉「素晴らしいですよねっ? あの胸筋も腹筋も……触りたいです」

女武「筋肉フェチってことね……でも、本当にそれだけ?」

A姉「……その、恥ずかしいから後で話します。でも期待しないでくださいよ? 些細な理由なので」

女武「あ〜生き別れの妹とか? 禁断の恋とか?」

A姉「そんな大きなことじゃありません。と、ともかく次会ったときに話します」

女武「わかった。でもゼッタイよ?」

A姉「わかりました。ゼッタイです」
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/05(土) 15:56:17.79 ID:zkKcoTyS0
……1日たち

宿前

戦士「じゃあ、俺たち行くから」

A姉「はい。待っています」

少年α「オレも待ってるぜ!!」

魔子「自分も待ってるぞ!! αよりずっと待ってる!!」

少年α「オレの方が待ってる!!」

魔子「自分の方が待ってる!!」

戦士「ははっ。わかった、わかった。同じぐらい待ってるってことだな」



勇者「じゃあ、行くか」

女武「でもどこにいくの?」

勇者「折角のプレゼントを直そうと思ってな。壊れたままじゃ使えないし」

女賢「え? あっ、いいですよ。壊れたのは勇者さまのせいじゃないんですから」

勇者「女賢からもらった奴だし、直さないといけないだろ?」

女賢「あっ……うっ」カァァァァ

女武「はぁ……じゃあ次は火山の街?」

勇者「そうだな。王国へ行く前に寄ろう」

198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/05(土) 15:56:52.03 ID:zkKcoTyS0
今日はここまでです。
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/05(土) 16:22:52.91 ID:kMuXRoU40

筋肉筋肉!
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/05(土) 16:46:56.90 ID:5w+i3/hNo
おつ
おかえり!
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/06(日) 14:21:45.43 ID:SvAUY7qIO

よかった
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/09(水) 04:08:38.53 ID:3Qt3sJkno
おつ
ダゴン死んだんじゃなかったのか
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/19(土) 14:17:54.14 ID:6eevBaBmo
こない…
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/21(月) 00:25:34.97 ID:D+jqOrc/o
続きまだー?
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/30(水) 15:30:02.00 ID:hJ6k8kFCo
何故来ないのか
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/30(水) 18:45:57.52 ID:5EmP/OaYo
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207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/01(金) 13:44:16.35 ID:YgENmNCxo
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