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一方通行「俺は、オマエのことが」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :樹海 ◆S.CrCACBJE [sage saga]:2012/12/16(日) 19:05:48.57 ID:MHdYJmbko
第一印象は最悪だった。

死人のように白い肌。鮮血のように赤い双眸。おまけに、化け物のような笑い声。

終始、私を見下してきて、終いには顔を殴ってきた。

会って早々、女の子の顔を殴るなんてまったくもって信じられないわよ。

しかも全力でだなんて。

とてもじゃないけど、良識のある人間じゃないことは確かね。

おかげで、トラウマが一つ増えてしまったわ。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1355652348
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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
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渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
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二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
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全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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2 :樹海 ◆S.CrCACBJE [sage]:2012/12/16(日) 19:07:45.37 ID:MHdYJmbko
横暴で凶暴で奔放。

嵐のようにやって来て、嵐のように私のことを滅茶苦茶にした。

どうやったって許せるような相手じゃない。

なのに、どうしてか。

私はアイツを憎むことが出来なかった。

どんなに憎まれ口を叩こうが、それは本心じゃなかった。

あの赤い瞳を見ると、アイツに抱くべき敵意が霧散してしまう。
3 :樹海 ◆S.CrCACBJE [sage]:2012/12/16(日) 19:09:23.35 ID:MHdYJmbko
私は知りたい。

あの瞳の奥にあるものが何なのか。

何不自由ない力を持った超能力者が何故、暗部くんだりにいるのかを。

何がアイツを駆り立てるのかを。

理由を聞けば、ガキのため、だなんて答えが返ってくるんだろうけど。恐らく、それは半分正解で、半分間違いだ。

きっと違う何かがアイツを突き動かしてる。

確証なんてこれっぽっちもないけれど、私はそれを確信している。
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/16(日) 19:10:59.67 ID:l8AppvnC0
これだれ?
あわきんか番外個体?
5 :樹海 ◆S.CrCACBJE [sage]:2012/12/16(日) 19:14:19.41 ID:MHdYJmbko
これが私、結標淡希が暗部にいる理由。

アイツ、一方通行のそばにいる理由。
6 :樹海 ◆S.CrCACBJE [sage]:2012/12/16(日) 19:15:29.60 ID:MHdYJmbko
・更新不定期

・遅筆

・設定は適当
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/16(日) 19:18:01.56 ID:9dCpZstIO
座標通行とか俺得
8 :樹海 ◆S.CrCACBJE [sage]:2012/12/16(日) 20:44:33.91 ID:MHdYJmbko
凍てつくような寒さで目が覚める。

とても立派とは言えないこの家は隙間風が酷く、とくに冬のそれは堪ったものではなかった。

「ん…5時か…」

目覚ましは7時にセットしたはずだから、だいぶ早く起きてしまったようだ。

居候の私が言えることではないけれど、もう少しこのアパートはどうにかならないものかしら。


9 :樹海 ◆S.CrCACBJE [sage]:2012/12/16(日) 20:45:40.55 ID:MHdYJmbko
それにしても、微妙な時間だ。

眠気がないわけではないが、二度寝するにはもの足りない。

小萌はまだ寝てるみたいだし、本当にやることがないわね。

「…」

そうだわ。

日頃の感謝をこめて、小萌に朝ご飯でも作ってあげましょう。

小萌は見かけによらず不健康な生活をしてるし、ちょうど良い機会ね。

10 :樹海 ◆S.CrCACBJE [sage]:2012/12/16(日) 20:46:15.53 ID:MHdYJmbko
「…ない。」

冷蔵庫の中にはおよそ食材と呼べるものが入っておらず、あるのは酒と肴だけ。

それでいいのか、小萌よ。

前々からその愛くるしい相貌とは似つかわしくない食生活をしているとは思っていたが、まさかここまで辛気臭いとは。

これは、本格的に私が食事を作ってあげないといけないみたいね。

こんな可愛らしい幼女がお酒ばっかり飲んでいて言いはずがないもの!

そうと決まれば早速、買い出しに行かないとね。
11 :樹海 ◆S.CrCACBJE [sage]:2012/12/16(日) 20:47:04.08 ID:MHdYJmbko
「うぅ…寒い。」

さて、意気込んで家を出てみたは良いが、こんな時間に空いているスーパーなどあるはずがなかった。

おかげで家からだいぶ離れた大型のコンビニまで足を運ぶ羽目になったのだ。

まったく、寝覚めだからって思慮に欠けていたわ。

「っと、あれみたいね。」

果たしてお目当てのコンビニに到着した。

さて、ちゃっちゃと買って帰りましょうか。







12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/17(月) 00:00:05.63 ID:b7mcTfcAO
巡回スレが増えたか
13 :樹海 ◆S.CrCACBJE [saga]:2012/12/17(月) 00:23:56.21 ID:3CypaaRro
はて、困った。

よくよく考えてみたら、碌に料理なんてやったことがなかったわね。

とはいえ、だ。

今まで暗部で幾度となく死線を掻い潜ってきた私にとって料理なんて、大した敵ではないわ。

所詮は切って、焼くなり煮るなりするだけですもの。

いつもやっていることと何ら変わらないじゃない。

早速、何を作るか決めましょうか。
14 :樹海 ◆S.CrCACBJE [saga]:2012/12/17(月) 00:24:25.53 ID:3CypaaRro
「…」

そういえば小萌はフルーツ牛乳が好きって言っていたわね。

それに屋台でよくおでんも食べてるわ。

よし!

おでんをフルーツ牛乳に浸しましょう。

好物が一度に二つも食べられるんだから、きっと小萌もおいしく食べてくれるはずだわ。

我ながら素晴らしいアイデアね!
15 :樹海 ◆S.CrCACBJE [sage]:2012/12/17(月) 00:25:25.36 ID:3CypaaRro
「ありがとうごさいました」

店員の気怠げな声を背に、コンビニを出る。

ちょうど熱々のおでんも売っていたし、あとは帰ってフルーツ牛乳に浸すだけだ。

「ふふっ」

小萌の喜ぶ顔を想ったら自然と頬が綻んだ。

人に料理を作ると幸せになれるって言うけど、どうやら本当みたいね。
16 :樹海 ◆S.CrCACBJE [saga]:2012/12/17(月) 00:25:56.71 ID:3CypaaRro
「なァに、一人で笑ってやがる」

「へっ!?」

気の抜けた声が出てしまった。

でも仕方ないじゃない。

まさか、こんな朝早くにコイツと出会うなんて思わなかったんだから。





17 :樹海 ◆S.CrCACBJE [saga]:2012/12/17(月) 00:27:48.40 ID:3CypaaRro
今日はここまでです。
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/17(月) 00:33:37.01 ID:GBmpHogCo


先生逃げて
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/17(月) 00:51:26.52 ID:kAs6T9NAO
あわきんがレベル5未元物質に…
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/17(月) 06:22:45.21 ID:En0lhM6a0


おでんかわいそう…
21 :樹海 ◆S.CrCACBJE [saga]:2012/12/17(月) 20:25:33.56 ID:3CypaaRro
「よォ、こンな朝ッぱらから何してやがる?」

一応の挨拶だと言わんばかりに無機質な声で聞いてくる。

「それはこっちの科白ね。こんな朝早くからお散歩だなんて、似合ってないわよ。」

この男、一方通行は本当によく寝ている。

暗部では仕事が始まるまでずっと惰眠を貪っているし、仕事が終わってみたら今度は、一仕事終えましたと言わんばかりに彼の私物と化したソファに倒れ込む。

そんな男が早朝から散歩しているなんて到底思えなかった。
22 :樹海 ◆S.CrCACBJE [saga]:2012/12/17(月) 20:26:09.42 ID:3CypaaRro
「 朝方は冷え込むからよォ。コーヒーでも飲もうと思ってな」

どうやらこの男も朝の寒さに襲われて目が覚めたらしい。

「それで、いざ飲もうと思ったらコーヒーが切れてたってわけ?」

「あァ」

とことん私と境遇が似てるわね。

まぁ、こんなやつと気が合ったところで嬉しくないけれど。

「で?オマエは?」
23 :樹海 ◆S.CrCACBJE [saga]:2012/12/17(月) 20:26:43.05 ID:3CypaaRro
「私も似たようなものよ。朝ご飯を作ろうと思ったら材料が切れていたのよ」

「…」

突然黙り込んだわね。

もしかして私が料理すら出来ない不器用な女だとでも思ってるのかしら。

まったく失礼しちゃうわね。

「何?私が料理を作るのがそんなに意外だったかしら?」

「…」

またも沈黙。

しかも今度は怪訝な視線を向けてきた。
24 :樹海 ◆S.CrCACBJE [saga]:2012/12/17(月) 20:27:49.70 ID:3CypaaRro
「俺にはオマエの持ッてる袋ン中におでンとフルーツ牛乳しか入ッてないように見えるンだが?」

ようやく口を開いたと思ったらこの男は何を言っているのだろうか。

「当然でしょ。おでんinフルーツ牛乳を作るんだから。いつもお世話になってる保護者の好物なのよ」

「…くッ、くかッ」

しばし驚いたような顔をしたと思ったら、笑い声を噛み殺すように方を震わせ始めた。

「そのおでンinフルーツ牛乳ッてのがオマエの保護者の好物なのか?」

ひとしきり落ち着くと信じられないとでも言いたげな顔で聞いてきた。
25 :樹海 ◆S.CrCACBJE [saga]:2012/12/17(月) 20:30:05.36 ID:3CypaaRro
「えぇ、そうよ。よく食べているわ」

正確にはおでんとフルーツ牛乳をね。

「美味いのか?」

「あなた食べたことないの?」

おでんを。

「そンなもン食ッたことねェな」

超能力ともなると、おでんなんて安っぽいものは食べないのかしら?

でも、こいつ安いジャンクをよく食べてるわよね。

ってことはもしかしたら口にあうかも…
26 :樹海 ◆S.CrCACBJE [saga]:2012/12/17(月) 20:30:50.92 ID:3CypaaRro
「もし余ったらあげましょうか?午後にちょうど仕事があるし」

たまには親切をしても罰は当たらないでしょ。

「ン…そうか。だが必要ねェ。俺の保護者もよく屋台に行ッてるみたいだしよォ。今日の朝食にでも作ッてやるよ」

意外ね。

こいつはどう見ても反抗期の不良息子って感じなのに、親孝行をしようだなんて。

「そう。分かったわ」

せっかくお裾分けしてあげようと思ったけど、こいつの孝行を邪魔するのも悪いし、ここは素直に頷いておいてあげましょう。
27 :樹海 ◆S.CrCACBJE [saga]:2012/12/17(月) 20:31:18.91 ID:3CypaaRro
「じゃあ。そろそろ私の保護者が起きてくる時間だし、もう帰るわね」

「そォか。意外な珍味を教えてくれてあンがとよ」

ん?

今こいつ、ありがとうって言ったかしら?

こいつが感謝を述べるなんて、珍しいこともあるものね。

「それとよォ。似合ッてンぞ、その私服。」

「え?」

こんなことを言うやつだったかしら?

今日は雪でも降りそうね。


28 :樹海 ◆S.CrCACBJE [saga]:2012/12/17(月) 20:31:57.55 ID:3CypaaRro
「露出狂のショタコン女かと思ッてたが、案外マシな私服で安心したぜ」

やっぱり、いつも通りの皮肉屋だったわ。

だいたい私は小さい子が好きなだけで、ショタコンじゃないって何度言ったら分かるのかしら!

「あなたはもっとマシな私服を心掛けるべきね」

「あァ!?」

やばっ。

こいつの服をあれこれ言うのは禁句だったわね。

チョーカーのスイッチを押される前にとっとと退散(座標移動)するとしましょう。

「頑張りなさいよ、親孝行」

そう言い残して、私は陋屋へと帰った。
29 :樹海 ◆S.CrCACBJE [sage]:2012/12/17(月) 20:38:36.54 ID:3CypaaRro
>>24
×方を震わせ
○肩を震わせ

誤字です。すみません。
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/17(月) 21:43:29.71 ID:qc7VuUXU0
フルーツおでん牛乳絶賛拡大中かよ
wwww
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/17(月) 23:48:46.71 ID:lzL9ZizEo
一方さんは小さい「っ」はカタカナにならないぞ
32 :樹海 ◆S.CrCACBJE [sage]:2012/12/18(火) 00:00:59.83 ID:1m1fvg9qo
>>31
ご指摘ありがとうございます

以後訂正します
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/18(火) 00:42:18.89 ID:Q/1d0DWIO
おつ
34 :樹海 ◆S.CrCACBJE [saga]:2012/12/18(火) 19:21:52.40 ID:1m1fvg9qo
「結標ちゃん。先生にご飯を作ってくれようという心意気は素晴らしいのですが…。」

出された料理を前に小萌が顔を曇らせる。

「ごめんなさい…」

正直、味見をしなくともおでんをフルーツ牛乳に浸した時点で分かっていた。

柑橘系の甘みとおでんの汁が混ざり合い、何とも言えない香りを放っていたのだ。

流石にこれはまずいと思って、調味料を使って味を整え、少し冷えてしまったおでんを温めようとフライパンで熱してみた。
35 :樹海 ◆S.CrCACBJE [saga]:2012/12/18(火) 19:22:18.93 ID:1m1fvg9qo
が、どうやらその悪足掻きが事態をさらに悪化させてしまったらしい。

台所から漂う焦げ空いた匂いを小萌が察知した時には、既にフライパンの上にこの世の物とは思えない禍々しいものが出来上がっていたのだった。

「いえ!謝ることなんてないのですよ。誰にだって失敗はありますから!」

はぁ…

小萌のフォローが心に染みるわ。
36 :樹海 ◆S.CrCACBJE [saga]:2012/12/18(火) 19:22:49.14 ID:1m1fvg9qo
「落ち込まないで欲しいのです、結標ちゃん。これから先生と一緒にお料理の勉強をしていけばいいのです!」

「えぇ…」

小萌を喜ばせようと思ってやったことが裏目に出てしまうとは。

自分の料理スキルのなさを痛感したわ。

「とはいえ、先生はもう仕事に行かないといけないので、練習はまた今度ですね。」

役に立つどころか、余計に手間をかけさせることになるなんてとんだ木偶の坊ね私は。
37 :樹海 ◆S.CrCACBJE [saga]:2012/12/18(火) 19:24:02.68 ID:1m1fvg9qo
「本当にごめんなさい」

こればっかりは謝ることしか出来ないわね。

「いえ、何度も言ってますが結標ちゃんが気にすることじゃないのですよっ!それと朝ご飯はコンビニで何か買って食べてください」

…本当に優しいわね小萌は。

「分かったわ…ありがとう、小萌」

「それじゃあ先生は行ってくるのですっ!」

「えぇ、いってらっしゃい」

溌剌な声と共に小萌は職場へと去って行った。
38 :樹海 ◆S.CrCACBJE [sage]:2012/12/18(火) 19:26:06.37 ID:1m1fvg9qo
小萌にはああ言われたけれど、これは結構辛いわね。

まったく、苦虫を噛み潰した気分だわ。

「ん?」

鳴り響いた携帯の着信音によって、どんよりとした暗い思考が中断された。

こんな時、しかも早朝に電話だなんて、一体どこのどいつかしら?

これで悪戯電話だったら、ただじゃおかないわよ!
39 :樹海 ◆S.CrCACBJE [saga]:2012/12/18(火) 19:26:59.41 ID:1m1fvg9qo
「一方通行…?」

ディスプレイに表示された名前を見た瞬間、嫌な予感がした。

…そういえば。

さっきこいつに、この未元物質を勧めてしまったわね…

まずい。

自尊心の高いあいつのことだ。

親孝行しようと思って作った料理が、とんだ下手物で恥をかいた、なんてことになってたらブチコロシ確定だわっ!
40 :樹海 ◆S.CrCACBJE [sage]:2012/12/18(火) 19:27:25.20 ID:1m1fvg9qo
どうしましょう。

絶っ対に出たくないわ!

でも、もし居留守を使ったところで今日の午後には仕事があるじゃない…

そうだっ!今日は重い日だって土御門に言って欠勤するとか…ってそれは先週使ったばっかりね。

くそぅ、こんなことになるんだったら無闇矢鱈に仮病なんて使うんじゃなかったわ。

って!そうこうしているうちに電話が切れちゃったじゃないっ!
41 :樹海 ◆S.CrCACBJE [saga]:2012/12/18(火) 19:28:23.51 ID:1m1fvg9qo
これはもう言い逃れ出来ないわね…

いっそ開き直って、味音痴でも演じてみようかしら。

いや、そんなことしたら学園都市中のゲテモノ料理を無理矢理食べさせられるに決まってるわ!

「っ!」

また掛かってきた。

仕方ない…

意を決して出るしかなさそうね。

「もしもし…」
42 :樹海 ◆S.CrCACBJE [saga]:2012/12/18(火) 19:29:20.21 ID:1m1fvg9qo
「よォ。オマエに教えてもらった料理のことなンだが…」

やっぱり、そのことかっ!

「ごめんなさいっ!悪気があったわけじゃなかったのよ!だから本当に…」

「あァ?何言ってやがる?」

解せないとでもいうように、一方通行はわたしの謝罪を遮った。

「あの料理は最っ高に美味かったぜ」

「え?」
43 :樹海 ◆S.CrCACBJE [sage]:2012/12/18(火) 19:30:32.77 ID:1m1fvg9qo
「何驚いてやがる?オマエが勧めた料理じゃねェか」

「え、えぇ」

あれ?

もしかして助かった?

こいつの家族はみんな味音痴とかかしら?

「だからよォ…

お礼に今日の昼飯は俺が最っ高に美味いもン食わせてやるよっ!」

怒気を孕んだ声で一方通行がまくし立てた。

「っ!」

やっぱり、怒ってるじゃない!
44 :樹海 ◆S.CrCACBJE [saga]:2012/12/18(火) 19:31:13.93 ID:1m1fvg9qo
「い、いえ…そんなお礼だなんて。私はただ…」

「遠慮するこたァねェぜ結標ェ。施しを受けたら100倍にして返せってシスターが言ってたからよォっ!」

「ひっ!」

電話口からも、彼が怒り心頭である様が伝わってくる。

しかしながら、蛇に睨まれた蛙のごとく、反論することなど到底出来なかった。

「じゃあ、そういうことだからよォ。楽しみにしとけェ…くっ、くかきけこかかきくけききこくけきこきかかかーーーっっ!」

悪魔のような狂った笑い声とともに、電話は切られた。



こうして、私にとって最悪な一日が幕を開けたのだった。

45 :樹海 ◆S.CrCACBJE [sage]:2012/12/29(土) 16:52:02.30 ID:LrkC0MSWo
すみません

今年いっぱいは忙しいので、次の更新は年明けになりそうです。
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/04(金) 04:05:11.53 ID:y0NbKTVIO
おつ
47 :樹海 ◆S.CrCACBJE :2013/01/13(日) 21:56:20.49 ID:EixymdmHo
「もう5分も過ぎちゃったじゃない…!」

休日の雑踏の中を私は息を切らして走っていた。

一方通行からどんな報復を受けるのかということに恐懼し逡巡している間に待ち合わせの時間をすぎてしまった。

本来レベル4の空間移動能力を保有する者ならば自身の転送も可能なのだが、過去のトラウマにより私にはそれが出来ないのだ。

暗部に身を置き、学校生活のような社会活動から離れていたため、時間に縛られることとは暫らくの間無縁だ。

そのせいか少々時間にルーズになっていたのも、遅刻の一因かもしれない。
48 :樹海 ◆S.CrCACBJE :2013/01/13(日) 21:57:12.57 ID:EixymdmHo
こんなことになるならトラウマを克服しようと努力すべきだっわね。

仕方ない…裏路地を通って近道しましょう。

学園都市は計画的な開発により、他所よりも遥かに区画整備された街だ。

しかし表があれば裏もある。

一歩大通りから外れてしまえば、裏路地が蜘蛛の巣のように張り巡らされている。

日の当たらない裏路地では無法者の集団であるスキルアウトが闊歩し、治安低下に貢献している。
49 :樹海 ◆S.CrCACBJE :2013/01/13(日) 21:57:44.00 ID:EixymdmHo
そのためまっとうな人間は裏路地にはほとんど立ち入らない。

故に休日の雑多な人混みを避け近道することが出来るというわけだ。

不法な武装をしているスキルアウトとはいえレベル4の私の敵ではない。

そう判断し、裏路地へと足を踏み入れる。

ビル群に囲まれた裏路地は日中とは思えないほど薄暗く汚れていた。

加えて壁にはスキルアウトの抗争によるものだろうか、血が大量に付着している。

平凡な女学生なら滅入ってしまいそうな光景だが私は気にも止めず走り続ける。
50 :樹海 ◆S.CrCACBJE :2013/01/13(日) 21:58:22.96 ID:EixymdmHo
そのためまっとうな人間は裏路地にはほとんど立ち入らない。

故に休日の雑多な人混みを避け近道することが出来るというわけだ。

不法な武装をしているスキルアウトとはいえレベル4の私の敵ではない。

そう判断し、裏路地へと足を踏み入れる。

ビル群に囲まれた裏路地は日中とは思えないほど薄暗く汚れていた。

加えて壁にはスキルアウトの抗争によるものだろうか、血が大量に付着している。

平凡な女学生なら滅入ってしまいそうな光景だが私は気にも止めず走り続ける。
51 :樹海 ◆S.CrCACBJE :2013/01/13(日) 21:59:17.13 ID:EixymdmHo
慣れっていうのは怖いわね。

あまりにも血と暗闇に慣れ過ぎてしまった。

初めて暴力に晒されてからはそのトラウマにより低周波振動医療装置による補助がなければ碌に能力も使えなかったが、今となっては自身が暴力を晒す側になった。

無論、望んでそんなことをしている訳ではない。

しかしこの街の闇は深い。

一度道を踏み外したら、二度と明るみへと戻ることは出来ない。
52 :樹海 ◆S.CrCACBJE :2013/01/13(日) 21:59:58.46 ID:EixymdmHo
自分の能力に疑問を感じた時か、『残骸』の回収を目論んだ時か、あるいは…あの男に出会った時か。

いずれにせよ、闇にその身を攫われた瞬間からもう二度と普通の生活に戻ることなど出来ないのだ。

「次の小路を左に行けば、待ち合わせの通りに抜けられるはずね…」

思考に耽っている間に目的地へと至るろうとしていた。

珍しくスキルアウトに遭遇することもなかった。

ツいてるのかしらね?
53 :樹海 ◆S.CrCACBJE :2013/01/13(日) 22:00:52.94 ID:EixymdmHo
まぁ…この後、怒れる第一位と会うことを考えればツいえるなんてあり得ないわね。

っ!?

あれ?道を間違えたかしら?

本来、大通りに通じている筈の場所には壁が立ち塞がっていた。

ああっ!もう!

こっちは早く待ち合わせ場所に着かないといけないのに!

どこで道を間違えたのかしら。

「こんなところでどうしたんだ?道にでも迷ったのかな、お嬢さん?」
54 :樹海 ◆S.CrCACBJE :2013/01/13(日) 22:01:18.74 ID:EixymdmHo
っ!?

不意に背後から舐め回すような不快な声が聞こえた。

全く…こんな時にスキルアウトかしら?

「運が悪かったわね。私は今すこぶる機嫌が悪いのよ。」

苛立ちを孕んだ声を背後の男に投げかける。

しかし、男は余裕綽々といった風を崩すことなくゆっくりと応答した。

「へぇ?それで俺をどうするんだ?…案内人」
55 :樹海 ◆S.CrCACBJE :2013/01/13(日) 22:01:54.68 ID:EixymdmHo
学園都市の統括理事長であるアレイスター・クロウリーの根城にしてこの街の闇の最奥。

通称『窓の無いビル』。

全ての秘密を隠すかのように外界から一切を遮断したその建物に入るためには高位の空間移動能力者の手助けが必要である。

故に、『案内人』。

そして私はその『案内人』なのだ。

『窓のないビル』同様『案内人』の詳細も秘匿されている。

それを知るのは限られた者のみであり、そして同時にそれはこの街の闇を知る者であることを意味する。
56 :樹海 ◆S.CrCACBJE :2013/01/13(日) 22:02:31.04 ID:EixymdmHo
つまり後ろに立っている男はただのスキルアウト風情などではないということだ。

そのことを察知した私は風を切るかのようにして後ろを振り返った。

「そんなに慌てるなよ、結標淡希」

その男は…

已然として挑発するような声色で余裕綽々と吐き捨てた。

「死んだんじゃなかったかしら…第二位。」

溢れ出る動揺、恐怖、疑問。その感情の波を押し潰すように冷静さを取り繕って返答する。



全く今日は本当にツいていないわね…。
57 :樹海 ◆S.CrCACBJE :2013/01/13(日) 22:05:32.10 ID:EixymdmHo
本日はこれで終わりです。
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/13(日) 22:27:28.49 ID:QvnUsADS0


ここの垣根もやっぱ白いんすか
59 :樹海 ◆S.CrCACBJE :2013/01/13(日) 23:28:31.03 ID:EixymdmHo
全体的にシリアスでいこうと…

完結までの構想はあるので、なるべく早目に書き終えようと思います
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/16(水) 13:12:13.59 ID:VDrQvyWIO
おつ
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/16(水) 13:36:19.41 ID:uxEfdwOro
あくしろよ
62 :樹海 ◆S.CrCACBJE [saga]:2013/01/20(日) 20:45:01.41 ID:SWJlnSmko
今考えると不可解な点もあった。

路地裏に入った際に、壁に付着していた血痕。

スキルアウトの抗争によるものかと思ったが、あれだけ大量の血痕が、たかだか抗争ごときで生じることはないだろう。

あれは恐らく、垣根帝督が私をここに滞りなく誘導するためにスキルアウトを排除したことによるものだろう。

垣根帝督の能力を考えれば、血痕のような痕跡を残さずに、跡形もなく始末することも出来たはずだ。
63 :樹海 ◆S.CrCACBJE [saga]:2013/01/20(日) 20:45:43.24 ID:SWJlnSmko
にも関わらず、それをしなかったということは、つまり…

「随分と舐めてくれるわね。垣根帝督」

そう結論付け、毅然とした風に言う。

「舐める?俺は学園都市に七人しかいないレベル5の第二位だ。」

まるで出来の悪い生徒に説明するかのような口調で垣根は続ける。

「たかだかレベル4風情を舐めたところで、その戦力差は覆えらないさ」

嘲笑する口振り。
64 :樹海 ◆S.CrCACBJE [saga]:2013/01/20(日) 20:46:34.49 ID:SWJlnSmko
本来ここまで莫迦にされたのならば、不愉快極まりない。

仮に相手がスキルアウトならば、片手で捻り潰して、力の差を見せ付けることもたわいない。

だが、しかし。

目の前に立っている男はレベル5だ。

悔しいが垣根の言う通り、幾ら私が必死になったところで、垣根にとってみれば蟻を踏み潰すように私を殺すことの出来る実力がある。

「何が目的かしら?」
65 :樹海 ◆S.CrCACBJE [saga]:2013/01/20(日) 20:47:12.82 ID:SWJlnSmko
ふつふつと湧き上がってくる恐怖を抑え込み、なんとか声を振り絞り出す。

「物分りが良くて助かるぜ。レベル4如きに貴重な時間を無駄にしたくないんでな」

畜生ッ!どこまでも腹の立つ態度ね!

そして、どこか飄々とした態度のまま垣根は告げた。


「単刀直入に言う。

一方通行を殺せ」
66 :樹海 ◆S.CrCACBJE [saga]:2013/01/20(日) 20:47:41.18 ID:SWJlnSmko
「!?」

垣根帝督は以前にも、一方通行を殺そうとした。

学園都市のメインプランに成り上がるために、第一位である一方通行を殺害しようとしたのだ。

その能力である未元物質の駆使、さらには一方通行にとって無二の存在である打ち止めを人質に取ることによって、戦いを有利に展開した。

が、結果は敗退。

未元物質を解析された垣根は為す術もなく、一方通行に屠られた。
67 :樹海 ◆S.CrCACBJE [saga]:2013/01/20(日) 20:48:32.88 ID:SWJlnSmko
それによって垣根は肉体に大きな損傷を負い、冷蔵庫のような巨大な生命維持装置に接続することにより一命を取り留めているという。

故に、今こうして復活した垣根が一方通行を再び殺めようと考えるのは自然なことだ。

だが…

「なぜ私に頼むのかしら?」

第二位の垣根が倒せなかった相手を私が倒せるわけがない。

「復讐したいなら、自分でやりなさいよ」
68 :樹海 ◆S.CrCACBJE [saga]:2013/01/20(日) 20:49:14.71 ID:SWJlnSmko
「復讐?そんな瑣末なことには興味ねぇよ」

静かに反論する垣根の表情は、路地裏の暗闇に掻き消される。

「俺の目的はあくまでもメインプランに成り上がることだ。もう同じ轍は踏まねぇ」

それに、と垣根は続ける。

「お前こそ一方通行には恨みを持っているだろ?女の顔まで殴るとは、あいつもとんだクソ野郎だな」

打ち止めを人質に取り、一般の女学生にまで怪我を負わせ男がどの口で言うのよ。
69 :樹海 ◆S.CrCACBJE [saga]:2013/01/20(日) 20:49:50.36 ID:SWJlnSmko
「レベル5級の空間移動能力を有し、グループに属しているお前なら不意を尽き、一方通行を殺すことも可能だ」

垣根の言うことは一理あるかもしれない。

確かに私は一方通行によってトラウマを植え付けられている。

加えて垣根の言うように何かの隙に一方通行に触れさえすれば、地面の中にでも空間移動させることもできる。

能力を使用するために、首の電極のスイッチを押さなくてはならない一方通行にとって、決して動くことの出来ない環境は致命傷となる。
70 :樹海 ◆S.CrCACBJE [saga]:2013/01/20(日) 20:50:33.23 ID:SWJlnSmko
だが、どうしてだろうか。

この依頼を受ける理由は十分にある筈なのに、それを拒む自分がいる。

どうして自分を嬲った男を、殺したくないと思ってしまうのか。

「…断ったら?」

無駄と知りながらも、淡い希望を託して問う。

「ここでお前を殺す」

選択の余地はないということか…。

結論を出さなくてはならない。

自分の死か、それとも一方通行を殺めるか。





「わかった。

…その依頼、引き受けるわ」


71 :樹海 ◆S.CrCACBJE [saga]:2013/01/20(日) 20:51:46.11 ID:SWJlnSmko
本日の投下はここまでです。
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/20(日) 21:34:11.20 ID:NKmIM4c4o
乙でした
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/24(木) 15:27:38.95 ID:m6TsY5RIO
おつ
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