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ほむら「“サヨナラ勝ち”ってどういう意味?」あすみ「知りたいの?」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/18(火) 21:12:26.32 ID:Taj/XaSa0


・例のネタキャラ「神名あすみ」が登場します。
・シリアスです。全4場。
・あすみの設定については、一般的なものからやや改変しています。
・間接的なエロ、スカトロ、反社会的描写があります。
・さやかは魔女化を免れています。詳しくは以下で。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1355832746
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諸君、狂いたまえ。 @ 2024/04/26(金) 22:00:04.52 ID:pApquyFx0
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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
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渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
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二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
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全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
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笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/18(火) 21:14:33.25 ID:Taj/XaSa0
―白昼の公園―


あすみ「そのこと説明すると、あたしが昔、親戚のオヤジにヤられまくってた話をもう一回することになるよ?」

ほむら「・・・・・・」

あすみ「ほむらお姉ちゃんたちって、この話嫌いじゃなかったっけ。前にお姉ちゃんたちと会った時にこの話したけど、さやかお姉ちゃんなんて、聞いてる最中にトイレ行って吐いてたよね」

ほむら「・・・・・・そう、それなら遠慮しとくわ。ただ、あなたが魔女狩りの最後に必ず言うから、少し気になっただけ」

あすみ「じゃ、ここから先はあたしの独り言ね。お姉ちゃんは聞いても聞かなくてもいいよ」

ほむら「・・・・・・」

あすみ「前にも話したけど、あたしは引き取られた先の親戚のオヤジにセイテキギャクタイを受けてた」

ほむら「・・・・・・」

あすみ「当然そんな奴、悪魔にしか見えなかった。でも、そのオヤジからたった一つだけ、教わったことがあった」

ほむら「何?」

あすみ「ふふふ。お姉ちゃん、“何?”って何?」

ほむら「どうかした? 何かおかしいかしら」

あすみ「あたし、さっき“独り言”って言ったよね。どうして独り言に答えるの?」

ほむら「・・・・・・」
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/18(火) 21:16:35.32 ID:Taj/XaSa0
あすみ「ま、いいや。・・・・・・オヤジはテレビで野球を観るのが好きだった。“サヨナラ勝ち”は、それで憶えた言葉」

あすみ「好きな言葉なんだ。最後にホームランか何か打って、そのまま試合が勝ちで終わっちゃう。相手は何もできない。そのまま負けるしかない。こっちは勝ったままサヨナラしちゃう。これって、完全な勝ちだよね」

あすみ「最後に相手を完全にやっつけて、その相手はもうやり返すチャンスが全然ない。生きてても死んでても関係ない。反撃できる力がまだ残ってても、もう駄目。いくら悔しくても、黙って、こっちが勝つのを見てるしかない。死ぬほど後悔しても、もうどうにもならない」

ほむら「・・・・・・」

あすみ「親戚のオヤジや、その仲間の大人たち・・・・・・あたしにさんざんひどいことしてきた大人たち。あたしの体や、あたしの裸の写真を使ってお金稼いだりして、いい思いをしてた大人たち。男だけじゃない、女もいた。あたしは何年も、そんな奴らに囲まれてた。地獄だった」

あすみ「あたしは、いつかサヨナラ勝ちしようと思った。そのオヤジから教わった“サヨナラ勝ち”。いつかその地獄を叩き潰して、大人たちにサヨナラ勝ちしようと思ったんだ」

ほむら「・・・・・・そしてキュゥべえと出会った、というわけ?」

あすみ「うん」
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/18(火) 21:18:17.59 ID:Taj/XaSa0
あすみ「あたしが契約の時にした願い、教えてあげようか」

あすみ「それは、“自分の知る周囲の人間の不幸”」

あすみ「あたしの周りにいる人間は、全員不幸になればいい。あたしが知った人間は、みんな不幸になる。どんなに偉くても、どんなにお金持ってても、どんなにケンカが強くても、必ず不幸になる。この願いから逃げられない。これが、あたしが契約の時にした願い」

あすみ「キュゥべえはちゃんと、約束を守ってくれた。あたしに関わった人間は間違いなく、あたしの願いどおりになった。あたしの願いどおりに、不幸になった。楽しいよ。こんなに楽しいことがこの世にあったのか、って感じ。どんな奴でも、あたしの願いどおりに不幸になるんだ」

あすみ「大抵は死んだ。死なない奴はみんな、生きてるうちはずっと不幸が続く、っていう目に遭った。気が狂ったり、一生治らない怪我や病気になったりして」

ほむら「・・・・・・」

あすみ「すごいこと教えてあげる。少し前に、タレントの○○や、政治家の××ってのが急に死んだじゃん。あいつら、あたしの客だったんだよ」

ほむら「客?」

あすみ「この話は言ってなかったっけ。あたしが、ロリコンオヤジたちの相手をさせられる組織にいたこと。親戚のオヤジに売っ払われて」
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/18(火) 21:19:57.06 ID:Taj/XaSa0
ほむら「・・・・・・それは聞かなかったわね」

あすみ「テレビや新聞に毎日出てくるような有名人のオヤジたちの中に、あたしみたいな子供にしか興味がないロリコンの奴がいるんだ。その組織は、そういう奴専門のところ」

あすみ「もちろん、犯罪だよね。組織の女の子は全員あたしみたいな子供で、窓のない部屋に閉じ込められて、当然学校になんか行ってなくて、裸にされて大人たちにひどいことされるんだから。でも、客は政治家やお金持ち、警察の偉いひととかばっかりだった。だから、バレることはないんだって」

あすみ「あたしをいつも指名してた奴の中で、一番のジョウキャクだって言われてたのが、その政治家の××だった。そいつはすごかったよ。1週間前に予約が入ると、その日からあたしはキウイばっかり食べさせられて・・・・・・あ、でも、これ聞いたら、いくらクールでかっこいいほむらお姉ちゃんでも、さやかお姉ちゃんみたいに吐いちゃうかもね」

ほむら「・・・・・・できれば、独り言でも聞きたくないわ」

あすみ「ふふふ。お姉ちゃん、顔色悪いよ。どこか具合が変?」

ほむら「・・・・・・いいえ。別に」

あすみ「ふふ。違う話しようか。・・・・・・ねえ。ほむらお姉ちゃん」

ほむら「何?」
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/18(火) 21:21:28.84 ID:Taj/XaSa0
あすみ「お姉ちゃんたちって、仲いいね。お姉ちゃんと、さやかお姉ちゃんと、杏子お姉ちゃん」

ほむら「仲がいいわけではないわ。性格が一致する点なんて、全くないかもしれない」

あすみ「そうなの?」

ほむら「仲がよさそうに見えるのなら、それは、言い争ったりしないで、ごく普通に会話をしてることが多いからでしょうね。だけど私たちも出会った頃は、顔を合わせればケンカばかりしていたのよ」

あすみ「どうやって、今みたいな仲よしになったの?」

ほむら「それは、自分でもうまく説明ができないわね。ほかのふたりに訊いても、同じ答えが返ってくると思う。・・・・・・ただ、私たちは立場が同じで、運命が同じ。それぞれの様々な経験の中で知り合って、そのうち、一緒に魔女狩りをするようになった」

あすみ「ふーん」

ほむら「その間にはもちろん、いろいろなことがあったわ。ひとりは、魔女になりかけた」

あすみ「えっ」

ほむら「本当よ。でも彼女は、どうにかその危機を乗り越えた。元はごく普通の女子中学生だったのに、魔女との戦い方をどんどん憶えて、今では立派な魔法少女よ。彼女は、自分の運命を受け入れることができた・・・・・・。そうね、私たちは、運命を受け入れて“覚悟”みたいなものを共有しているのよ」

あすみ「・・・・・・よくわかんない」

ほむら「そう? あなたも魔法少女じゃない。魔法少女は最後に必ず魔女になる、これをあなたが知っていたのには驚いたけど、運命というのは、例えばそういうこと。それを受け入れる、ということよ」

あすみ「そうか」
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/18(火) 21:23:22.58 ID:Taj/XaSa0
ほむら「あすみちゃん。私たちの運命については、もちろん、キュゥべえから聞いたのね?」

あすみ「うん。契約する前、いろいろ訊いたんだ」

ほむら「!!・・・・・・契約の前にあいつが説明したの!?」

あすみ「もし説明しなかったら契約しないでしょ。魔法少女になった後の自分がどうなるかっていう、そんな大事なこと」

ほむら「・・・・・・あ、ああ、そうね。あすみちゃんは、契約する前に“訊いた”のね。質問したのね。あいつが勝手に説明を始めて、それを“聞いた”のではなかったのね」

あすみ「うん」

ほむら「・・・・・・個人的なことだからあまり詳しく訊かないけど、あすみちゃん、契約したのって、自分がすごく慌ててたり、困ってたりしてた時ではなかった? そこへキュゥべえが現れて、今すぐ契約して、って言われたのではなかった?」

あすみ「うん。組織にカンキンされてる時だった。客が帰って、あたしが自分の部屋へ戻ったら、あいつがいたんだ。部屋に窓なんかないし、ドアにはいつも外から鍵が掛かってたんだけどね。最初は新しいぬいぐるみかと思った。組織から、たまに遊ぶ道具とかお菓子とか渡されるから」

ほむら「・・・・・・そんな状況で・・・・・・冷静に、メリットとデメリットを契約の前に問い質して、判断した・・・・・・?」

あすみ「何か言った?」

ほむら「いいえ、別に。・・・・・・ただ、あすみちゃんは頭がいいなあ、って思ったのよ」

あすみ「そう? 勉強だったらできないよ。ほとんど学校行ったことないんだもの」

ほむら「頭がいいことと、勉強ができることとは違うわ」
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/18(火) 21:25:38.69 ID:Taj/XaSa0
あすみ「そうなの?」

ほむら「学校、行きたいって思う?」

あすみ「ううん。それにさ、ふふふ、あたしが行ったら、迷惑になるよ」

ほむら「どうして? そんなことはないと思うわ」

あすみ「ほむらお姉ちゃん。さっき言ったけど、あたしが契約の時にした願いは“自分の知る周囲の人間の不幸”だよ?」

ほむら「・・・・・・!」

あすみ「あたしが知った人間、あたしの周りにいる人間は、みんな不幸になるんだよ? あたしが入ったクラス、全滅しちゃうよ」

ほむら「・・・・・・」

あすみ「・・・・・・ふふふ。あたし、この街へ来てから、人間と何人も知り合ってるんだよね」

ほむら「・・・・・・」

あすみ「最近、救急車やパトカーのサイレン、よく聞くと思わない?」

ほむら「・・・・・・特にそうとは思わないけど」

あすみ「葬式やる会社や病院は、あたしのお陰で儲かってるんだから、何かお礼があってもいいよね」

ほむら「・・・・・・でも」

あすみ「何?」

ほむら「でも、私は、もうあなたと何回か会ってるのに、あなたの願いがまだ届いていないようだけど。いつになったら、願いどおりになるのかしら」
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/18(火) 21:27:53.67 ID:Taj/XaSa0
あすみ「・・・・・・ワルイジョウダンっていうの? そういうの、クールなほむらお姉ちゃんでも言うことがあるんだね」

ほむら「どういう意味かしら。私は分からないから訊いてるんだけど」

あすみ「えっ」

ほむら「・・・・・・どうして驚くのかしら」

あすみ「マジだったの? その理由、わかんない?」

ほむら「分からないわ」

あすみ「ホントに? あたしが契約の時にした願い、ほむらお姉ちゃんには今、2回も教えたよね?」

ほむら「・・・・・・自分の知る周囲の人間の不幸、だったかしら」

あすみ「憶えてるじゃん。でもわかんない?」

ほむら「・・・・・・」

あすみ「ホントにわかんないんだ・・・・・・。じゃ降参? 答え、教えてほしい?」

ほむら「・・・・・・しつこいわね」

あすみ「仕方ないから教えてあげる。お姉ちゃんは、人間じゃないじゃん。簡単なことだよ」

ほむら「!・・・・・・」

あすみ「あたしが願ったのは“自分の知る周囲の人間の不幸”。あたしの願いが通じるのは、人間だけだよ」

ほむら「・・・・・・」

あすみ「ほむらお姉ちゃんが、わかんないってのがわかんない。ひょっとして、自分のこと人間だと思ってた?」
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/18(火) 21:30:06.83 ID:Taj/XaSa0
ほむら「・・・・・・キュゥべえも律儀ね。“人間”と言ったら、ちゃんと人間だけにした、ってことなのね」

あすみ「やっと分かった?」

ほむら「・・・・・・」

あすみ「あたしたちが人間じゃないって、やっと分かった?」

ほむら「・・・・・・」

あすみ「・・・・・・ふふふ。ま、いいや。ねえ。ほむらお姉ちゃん」

ほむら「何?」

あすみ「お姉ちゃんたちの話に、よく、まどかってお姉ちゃんのことが出てくるよね」

ほむら「そうだったかしら。いちいち憶えてないわ」

あすみ「そのまどかってお姉ちゃんは、人間なんでしょ。だったら、あたしと会わせない方がいいよ。不幸になるよ」

ほむら「・・・・・・」

あすみ「お姉ちゃんたちと仲よしみたいだからさ。魔女狩りの場所へうっかり連れてきちゃったりとか、気をつけた方がいいよ」

ほむら「それはあり得ないわ。少し前まではそういう場所へ居合わせてしまうこともあったけど、もう、彼女自身が行きたがらない」

あすみ「万が一ってことがあるじゃん。もし、あたしがいる所へ連れてきちゃうことがあって、そのお姉ちゃんに何かあっても、あたしのせいじゃないよ。ほむらお姉ちゃんには今日、あたしの願いのことをよく説明したんだから。ね?」
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/18(火) 21:31:50.25 ID:Taj/XaSa0
ほむら「・・・・・・ええ、分かったわ」

あすみ「ねえ。ほむらお姉ちゃん」

ほむら「今度は何?」

あすみ「ちょっとお腹空いた」

ほむら「・・・・・・」

あすみ「えへへ」

ほむら「・・・・・・奢れって言うの?」

あすみ「えへへ。駄目ー?」

ほむら「・・・・・・そうやって笑う顔は、本当に可愛いのに・・・・・・」

あすみ「なあに?」

ほむら「何でもないわ。・・・・・・そうね、私も喉が渇いた。あそこのコンビニでアイスでも買いましょうか」

あすみ「やったー!」

ほむら「余り高いのは駄目よ。私だってそんなにお金持ってないんだから」

あすみ「アイスーぅ♪アイスーぅ♪」

ほむら「こら。大きい声で歌わないの」
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/18(火) 21:51:04.99 ID:Taj/XaSa0
―夜の公園―


ほむら「佐倉杏子。どうして隠れているの? 私はあなたに話があるだけよ」

杏子「・・・・・・おっす。やっぱり気付いてたか。まあ、あんた相手にこんなことしても意味ないよな」

ほむら「美樹さやか、も。あなた、雰囲気消すのうまくなったわね」

さやか「・・・・・・さやかちゃんでーす。いろいろな魔法を練習中でーす」

ほむら「ふたりとも、夜に呼び出して悪いわね」

さやか「別に、大丈夫だよ。で、転校生、話って何?」

ほむら「その前に、まだ隠れてるのがいる」

QB「・・・・・・君から見て物陰になる場所へいたのは偶然だよ。それから、ここへ来たのは皆の動向を把握しておくのが僕の務めだからさ」

ほむら「ふん。その辺にでもいなさい。後で、お前には訊くことがある」

杏子「そんで?」

ほむら「もうひとりの魔法少女、神名あすみのことよ」

さやか「だろうと思ったわ」

ほむら「今日、あの子にこの公園で会った」

杏子「へーえ? 仲がいいじゃんか」
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/18(火) 21:53:53.57 ID:Taj/XaSa0
ほむら「・・・・・・おかしな言い方をしないで。街なかでお互いに気配へ気付いて、位置を探りあいながら移動してるうちに、ここで出くわしたのよ。今日得た情報を、ふたりに伝えておくわ」

さやか「今度はどんな話してた? 私もう、前みたいなのはパスしたいなー」

ほむら「聞いたら、そうも言っていられなくなるわよ」

――――――――――

さやか「自分の知る周囲の人間の不幸、って・・・・・・。よくそんな願い、思いつくなあ」

杏子「それはもう、願いなんかじゃない。呪いだよ、それは」

さやか「まるで、歩く兵器だよね」

ほむら「すぐには信じられなかったわ。でもこの願いのことと、あの子が今日した話とに矛盾がなかった。それに、もし作り話であれば、そんな嘘をつく理由が思い当たらない。そして今、キュゥべえが、その願いは事実だったと認めた。・・・・・・こいつが、願いの内容という大事なことを、本人がいない場所でこんなに簡単に明かすとは思わなかったけど」

QB「何か変だったかい。訊かれたから答えたんだけどね」

さやか「・・・・・・」

ほむら「一方で、神名あすみが持っている魔女狩りの能力は高い。あの子は戦力として貴重。私たちもこれは認めざるを得ない」

さやか「うん。私なんて、あすみちゃんが参戦してから、ほとんど何もしてないくらいだし」

杏子「まあ、あたしたちも少しは動くけど・・・・・・。あのガキと一緒にやるようになってから、トドメの一撃はあいつの役目になったよな」

さやか「そんで最後は例の決め台詞“サヨナラ勝ちィ!”ですよ。もうテレビのヒーローものとか水戸黄門くらいにパターン決まっちゃってますよ。今後ずっとさやかちゃんの出番は使い魔退治くらいですかあーそうですか」

ほむら「キュゥべえ。単刀直入に訊くわ」

QB「何だい」

ほむら「あの子は近い将来、魔女化する?」

QB「神名あすみが魔女になる可能性は、現在ほぼゼロに等しいよ」

ほむら「どうして?」
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/18(火) 21:56:07.77 ID:Taj/XaSa0
QB「君には説明不要だと思うけどね。理由は簡単さ。魔女化する条件を満たさないからだよ」

QB「ソウルジェムへ極端に穢れが溜め込まれることは、当面ないと考えられるね。彼女の絶望につながるような原因は今のところ存在しない。彼女は他人の不幸を願っていて、その願いは順調に叶えられている」

QB「彼女を絶望させる原因になり得るのは、他人の幸福くらいだろうね。だけど、どれほど幸福な人間でも、彼女に関係すると例外なく不幸になる。彼女の周囲には、彼女の願いどおりに不幸になる人間しかいない。だから、彼女が絶望することは現在あり得ないんだ」

ほむら「・・・・・・やはり、そうなのね」

杏子「あんた、単刀直入とか言ってたのに、そんなタルい質問するほど暇なのか?」

ほむら「あなたは・・・・・・私の意図が分かっているのね」

杏子「当然。あたしたちの本来の仕事を考えれば、分かり過ぎるくらいさ」

さやか「要するに、あの子を魔女にして、それを私たちが退治しなくちゃ、ってことね」

杏子「そのとおり。だから、質問するんだったら“あのガキはいつ魔女になりますか”なんていう悠長なものじゃなくて、“あのガキを今すぐ、確実に魔女へ変えちまう方法は何ですか”っていう方が正しいのさ」

ほむら「私は魔法少女同士の戦いを望まない。私たちの敵は、魔女だけよ」

杏子「あのガキと関わる人間がどんどん不幸になるんだったら、そんなのもう、魔女と同じだろ。最初から気にくわない奴だと思ってたけど、半端ない迷惑レベルだ」

さやか「いくら魔女退治が上手くても、自分自身が魔女と同じことしてるんじゃ、おかしいよね」

杏子「あたしにだって分かるぞ、最悪のシナリオが。あのガキがいる限り、世の中の人間がどんどん不幸になる。最後には死に絶える。生き残るのはガキの願いが効かない魔法少女と、魔女くらいだ。・・・・・・おい、キュゥべえ、違うか?」
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/18(火) 21:58:53.44 ID:Taj/XaSa0
QB「理論上はそうだけど、実現する可能性はほぼ皆無だよ。そこへ至るまでに存在する条件は無数だ」

さやか「でも、この街とか、そういう狭い範囲でなら、起こってもおかしくないでしょ?」

QB「地球全体という規模に比べると、より小さい集団は彼女の影響を受けやすいね。神名あすみと性的交渉をもった著名人が、何人か急死したのがいい例だよ。××という政治家が死亡した時には、この国への影響が顕著だったね」

さやか「何それ・・・・・・。政治家? 急死? 性的交渉? また変な話が始まった・・・・・・」

杏子「・・・・・・変態とかロリコンだって陰で言われてた、××って大臣が死んだニュースのことか? あたしは新聞もテレビも見ないけど、あの時は毎日そのニュースばっかりだったみたいだな」

ほむら「その話なら今日、あの子本人から聞いたわ。後で図書館へ行って調べたけど、大スキャンダルだったようね」

杏子「性的交渉って・・・・・・あのガキが・・・・・・あいつ、そんなことやってたのか」

さやか「思い出した。ワイドショーで観たことある。その××ってひとが死んだのには、小さい女の子ばっかり集めた、秘密のいやらしい犯罪組織が裏で関係してるかもって。でも、その犯罪組織を警察や新聞社が調べようとすると、みんなその政治家と同じように死んじゃうって。超気持ち悪い話だった。・・・・・・あすみちゃんが、その女の子たちの中にいたってこと・・・・・・?」

杏子「あんたが好物の話だな。またゲロ吐きそうか?」

さやか「ふん。もう慣れたよ」

ほむら「あの子が言っていたけど、政治家やお金持ち、警察まで絡んだ秘密の組織があったそうね。政治家が死んだのは、いうまでもなく、相手があの子だったからだと思う。警察やマスコミのひとが次々と死んだのは、事件の真相を調べていくうちに、あの子の存在へ辿り着いてしまったからでしょうね」

さやか「取調べとか、取材とかで、実際に会っちゃった・・・・・・?」

ほむら「ええ。あの子は、そのひとたちを知ってしまった。そして願いが、実現されてしまったんだと思う」
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/18(火) 22:01:25.18 ID:Taj/XaSa0
さやか「いつの間にかこの事件のニュースやらなくなったけど、うやむやになっちゃったのかな。みんな気味悪くなって、調べるのやめちゃって。この事件を調べてるひとがどんどん死ぬ、次は自分か、って」

杏子「へっ。他人が不幸になろうが何だろうが知ったことじゃないけど、楽しくない話だな。あたしの身の周りの連中には、普通に、当たり前の生活をしててもらわないと。そいつらのオコボレを頂戴して生きてるあたしみたいな奴にとっては、周りがゴタゴタしてたら、いろいろと都合が悪いんだ」

さやか「どうすればいいんだろ・・・・・・これ以上変なことが起こらないようにするには・・・・・・」

杏子「今までの話で、もう結論は出てるじゃん」

ほむら「ワルプルギスの夜を倒すには、あの子の力は間違いなく必要。少なくともそれまでは共闘していようと考えていたけれど、関係の破綻は、意外と早くやってきたわね」

さやか「・・・・・・やっぱり、あの子と戦わなくちゃ、駄目なんだね」

杏子「それができるのは、あのガキと同じ魔法少女のあたしたちだけだ。やったろうじゃん」

さやか「あんたさあ・・・・・・」

杏子「何だよ」

さやか「あんた簡単に言うけどさあ、あの子、今まで退治してきたわけわかんない魔女とは違うんだよ? 可愛い小学生の女の子の姿してて、言葉だって通じるんだよ? あんたできるの? あの子をさあ、あの姿のままこ、ころ・・・・・・」

杏子「・・・・・・フッ。どうしたよ。続き言ってみろよ」

さやか「くっ・・・・・・」

杏子「言えないんだったら、あたしが言ってやるよ。こ、ろ、す、ん、だ、よ、あのガキを。美少女小学生の姿のまま、魔女みたいに、八つ裂きにして殺すんだよ。あたしたちが、退治するんだよ。あいつは人間を何人も殺してきた。あたしたちが、同じ目に遭わせてやるんだよ。さっさと魔女になってくれないんだから、ほかに選択肢はないよなあ?」

さやか「・・・・・・」

杏子「魔法少女同士で殺しあうんだよ。この街に、血の雨を降らせるんだよ。やったろうじゃんかよ」
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/18(火) 22:04:41.19 ID:Taj/XaSa0
ほむら「佐倉杏子」

杏子「何だよ」

ほむら「やけを起こさないで」

杏子「・・・・・・言い過ぎたよ。でも、あたしはもう根性決めてるよ。ハッキリ言って、あいつは強い。あいつとやるヤバさは、今までのどの魔女戦も比べものにならないよ。あたしたち3人がかりでやっても、勝てる保証はどこにもない。だけどあのガキは、ボコって心を入れ替えさせるとか、そのくらいで済む存在じゃない。だから、跡形もなく消えてもらわなくちゃ駄目なんだ、悪いけどな」

さやか「確かに、人間じゃどうにもならないものね・・・・・・。不幸の原因が、あの子だと分かったとしても」

ほむら「皆、あの子に関わった時点で死ぬか、再起不能にさせられる。誰も手出しできない。魔法少女としても、能力は傑出してる。可愛らしい外見で、相手の戦意を萎えさせるというオマケ付き。最強ね、神名あすみは」

さやか「・・・・・・」

ほむら「キュゥべえ」

QB「何だい」

ほむら「魔法少女でありながら、既に魔女。こういうものを生み出すことは、お前たちの目的の一つだったのかしら」

QB「その言い方は人間の言語にある修辞というものの一種かい。だとしたら、僕には理解できないよ」

ほむら「・・・・・・最悪・・・・・・!」

QB「何か言ったかい」

ほむら「・・・・・・最悪、最強・・・・・・何てものを生み出したのよ、インキュベーター!」

QB「何を言っているのか分からないよ」

ほむら「ひとに災厄を振りまいて、しかも無敵! 最悪の存在じゃない! 神名あすみは!」
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/18(火) 22:08:08.87 ID:Taj/XaSa0
QB「暁美ほむら、君が今、怒りという感情にあることが理解できないよ。僕は何も特別なことをしたつもりはないんだけどね。通常の契約だったよ。魔法少女の有資格者に交渉して、同意が得られた。だから契約した。僕は少女の願いを叶え、その子は魔法少女になった」

QB「神名あすみと、例えば暁美ほむら、君とではどこが違うんだい。彼女は少しも、特殊な存在ではないよ」

QB「君は今、こう考えている確率が極めて高い。それは、“自分と彼女とでは願いの本質が違う。自分が願ったのは幸福で、彼女の願いは不幸”っていうことだ。だけど、もし君がそう考えているなら、僕はその間違いを指摘できるよ」

QB「神名あすみの願いは、特別なものじゃなかった。もちろん、願いの内容は魔法少女によって千差万別さ。だけど彼女の願いも、ほかの全てと本質は同じだったよ。少女たちの願いは全て、“自分がこうだったらいいな”というものなんだ。幸福を願うか、不幸を願うかという違いは、本質的なものじゃない。僕は今、“願いの内容は魔法少女によって千差万別”と言ったけど、幸福か不幸かの違いは、むしろそっちの話題になるだろうね」

ほむら「・・・・・・何を、言いたいのよ」

QB「魔法少女たちの願いでは、主語はあくまでも“自分”で、目的はあくまでも“利益”なのさ」

QB「もちろん、自分以外のことに関して願う少女もいるよ。でも突き詰めれば、それもやはり自分に関する願いなんだ。自分以外のことについて願うけれど、それが実現された時、最終的には自分がどうなるか。それを無視した願いを、僕は見たことがないね」

QB「そして、願いによって、自分が嫌なことをしようというケースは一つもなかったよ。全員の願いが、究極的には自分が何らかの得をするような内容だった。自分が徹底的に嫌い、避けて、目を背ける経験をしたいという願い、自分の不利益になるような願いは皆無だったんだ」

QB「君と神名あすみは、魔法少女として誕生した経緯についても、契約時の願い関する本質についても、全然変わらないんだ。もっとも、これは全ての魔法少女にいえることだけどね」

ほむら「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/18(火) 22:10:28.05 ID:Taj/XaSa0
杏子「・・・・・・何か、ヤバいな」

さやか「・・・・・・うん。転校生がここまで怒ってるの、初めて見た」

杏子「怒りのオーラが目に見えるようだぜ。おいキュゥべえ! お前はもう消えろ! 今すぐにだ!」

QB「真実や事実以外を話してないんだけどね。わけが分からないよ」

さやか「落ち着いて転校生!」

ほむら「・・・・・・」

さやか「もうキュゥべえはいないし、穢れが溜まるよ!」

ほむら「・・・・・・」

さやか「お願いだから! 落ち着いて・・・・・・」

ほむら「・・・・・・痛い」

さやか「え?」

ほむら「・・・・・・美樹さやか。そんなに抱き締められると、痛い・・・・・・」

さやか「あ・・・・・・ご、ごめん」

杏子「・・・・・・」
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/18(火) 22:12:38.44 ID:Taj/XaSa0
ほむら「・・・・・・悪かったわ・・・・・・私、少しの間、自分を見失ってたみたい」

杏子「いいってことよ。ま、コレ、食うかい?」

ほむら「・・・・・・まどかが危ない」

さやか「まどかが?」

ほむら「神名あすみは、まどかに興味を示してる。今日会った時、そのお姉ちゃんとあたしを会わせない方がいい、そのひとも不幸になるから、と口では言ってた。でも、興味津々なのは明らかだった。・・・・・・今のあの子は、魔女狩りで連戦連勝、願いも決して妨げられることがない。自信に満ち溢れている」

杏子「自他共に認める最強、最悪の魔法少女、か」

ほむら「でもインキュベーターは、まどか以上の存在はいないと言っている。まどかこそが最強。そして神名あすみは、インキュベーターからまどかの才能のことを聞かされたんだと思う。自分よりはるかに強い魔法少女、その素質を持った人間がいると知ってしまった」

さやか「あの子は、まどかに勝とうとしてる、ってこと?」

ほむら「でも、まどかはまだ魔法少女ではない。だけどあの子は、そのまどかを無視できない」

杏子「魔法少女へなる前に、会って、潰しておこうってわけか」

ほむら「そのとおり。絶対に、あの子とまどかを会わせては駄目」

杏子「どんなことになるのか、想像もつかないしな」
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/18(火) 22:14:55.06 ID:Taj/XaSa0
ほむら「・・・・・・それ」

杏子「へ?」

ほむら「頂くわ。美味しそう」

杏子「あ、ああ。いくらでも食えよ」

ほむら「あら」

さやか「どした?」

ほむら「変わった味」

杏子「そうかな」

ほむら「あなたが食べている物といえば、甘いか塩辛いか、どちらかだと思ってたから」

杏子「あたしもたまにはこういう、動物質っての? そういうのを食いたくなるんだよ」

ほむら「これお菓子なの?」

杏子「ちょっと違うのかな。酒のツマミって物なのかな」

ほむら「袋が全然お菓子の物っぽくないものね。徳利とお猪口の絵が描いてあったりして」

杏子「何かさ、魅かれる雰囲気だったんだよ。だから手に入れてみたんだけど」

さやか「ハイそこ! お菓子の話題はそれまで!」

ほむら「これお菓子じゃないみたいよ」

杏子「何でいきなりあんたが仕切ってるんだよ」

さやか「いいから! 今やるべきことはそれじゃないでしょ? 作戦会議よ作戦会議! どうしてお菓子の話で和んでるのよ!」

杏子「うーん、今日はもう疲れたよ。新しい情報が脳ミソに詰まっていっぱいいっぱい。明日でいいじゃん」

ほむら「同感。・・・・・・これ、美味しいわね。噛み応えっていうの? ちゃんと物を噛んでる感じがする。顎をしっかり動かすのって気持ちいいのね。ケーキみたいなフニャフニャの物じゃ味わえない感覚ね」

杏子「栄養もありそうだろ?」

ほむら「んー、噛んで出た汁が、体にいきわたってる感じがするわー」

さやか「あーもう!」
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/18(火) 22:17:07.22 ID:Taj/XaSa0
ほむら ――美樹さやか、ちょっとだけ声を小さくして。あと少しで気配の正体が分かりそう。

さやか「え?」

杏子 ――喋るのをやめるな。そのままあたしたちに話し続けてろ。

ほむら ――砂場の脇にある木・・・・・・。

さやか ――あっ。ホントだ。分からなくてゴメン。

杏子 ――いいから何か喋れ。

さやか「私にもお菓子寄越せー!」

ほむら ――相手に感付かれた。

杏子 ――やっぱ、奴か?

ほむら ――そのようね。

さやか ――あすみちゃんだ・・・・・・。マズくない? 私たちの話、どの辺りから聞かれてたんだろ。

ほむら ――分からない。全部と考えた方がよさそう。

杏子 ――奴が出てくるぞ。

あすみ「お姉ちゃんたち、もう夜だよ? お家帰らなくていいの?」

ほむら「あなたこそ、帰らなくていいの?」

あすみ「あたしには、帰る家なんてないもの。杏子お姉ちゃんと一緒」

杏子「ああ? 大きなお世話だ」
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/18(火) 22:19:26.52 ID:Taj/XaSa0
あすみ「みんなで何してたの? さっきまでキュゥべえもいたみたいだったけど」

杏子「知ってて訊いてんだろ?」

さやか「・・・・・・あすみちゃん、どうして変身しようとしてるのかな? ここはマンションが近くにたくさんあって気付かれちゃうから、やめた方がいいよ」

あすみ「そうね。その必要ないかもね」

さやか「・・・・・・」

杏子「・・・・・・おい。さやか」

さやか「・・・・・・」

杏子「そう言うあんたが、どうしてソウルジェム出してんのさ」

さやか「・・・・・・」

杏子「あっバカやめろ!」

さやか「離して。変身しなきゃ」

ほむら(何? 美樹さやかに何が・・・・・・)

さやか「離して。剣、出さなきゃ」

杏子「どうしちまったんだよオイ!?」

さやか「離して。あんたたちを、ひとりずつ、殺してあげる」

杏子「やめろっつってんだよ!」

ほむら(・・・・・・精神攻撃? 神名あすみに精神を操られてる?)

さやか「一緒に、マミさんのとこ、行こ?」

杏子「大人しくしろこのバカ!」

ほむら(・・・・・・変身しないまま攻撃してるんだわ、あの子・・・・・・)
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/18(火) 22:20:57.57 ID:Taj/XaSa0
ほむら「佐倉杏子」

杏子「お、おう」

ほむら「神名あすみの力は想像以上。ここは、一旦退くわよ」

杏子「それしかないな」

ほむら「美樹さやかを確保したまま動ける? 私があの子を牽制する」

杏子「何とかなる。暴れんなコラ!・・・・・・ったくでけー図体しやがって、手間の掛かる女だ」

あすみ「やっぱ変身しないとうまくいかないかあ。一番トロい奴を狙ったんだけど」

杏子「・・・・・・何だとこのガキ」

ほむら「振り向かないで! ふたりで早くこの場を離れて!」

杏子「う。わ、分かった」

あすみ「お姉ちゃんたち、あたしとやる気なの?」

ほむら「あなたの聞いたとおりだと思うけど」

あすみ「後悔するよ? あ、でも、どうせ死ぬんだから後悔も何もないか」

ほむら「やってみなければ、分からないわ」

あすみ「次は、今くらいじゃ済まないよ? 全員にいくよ?」

ほむら「・・・・・・」
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/18(火) 22:24:14.68 ID:Taj/XaSa0
あすみ「そうして、お姉ちゃんたち同士で、殺しあってもらうんだ。あたしは見てるだけ。うん、我ながら名案」

ほむら「・・・・・・あなたの思いどおりにはさせない」

あすみ「ねえ、そのまどかってお姉ちゃんに会わせてよ。強いんでしょ。最強の魔法少女になれるひとなんでしょ」

ほむら「会わせるわけないじゃない。それに、あなた昼間、自分と会わせない方がいいって言ってたでしょ」

あすみ「気になるんだよね、あたしより強くなるかもしれない人間がいること。せっかく魔法少女がたくさんいる街へ来たのに、雑魚ばっかだしさあ」

ほむら「くっ・・・・・・」

あすみ「こんなこと言われて悔しい? ホントのことじゃん。年上のくせに、どいつもこいつもあたしに敵わないじゃん。ホントのこと言われて悔しい?」

ほむら「・・・・・・あなたが、自分の願いについて私へ話した理由が分かったわ」

あすみ「お姉ちゃんたちが雑魚だって分かっちゃったからねえ。雑魚相手に、知られても知られなくてもいいような話を、わざわざ隠す必要ないよね。あとはその、まどかってお姉ちゃんだけ、気になるのは」

まどか「私、鹿目まどか。まどかって呼んで」

ほむら「え?」

ほむら(まどか?)

まどか「私もほむらちゃんって呼んでいいかな?」

ほむら(どうして声が? ここにまどかがいるはずは・・・・・・)
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/18(火) 22:27:20.80 ID:Taj/XaSa0
まどか「ほむらちゃんもカッコよくなっちゃえばいいんだよ」
まどか「もう大丈夫だよ、ほむらちゃん」
まどか「クラスのみんなには、内緒だよ?」

ほむら(おかしい。何なのこれは。どうしてまどかの声がするの?)

まどか「ほむらちゃん。私ね、あなたと友達になれて嬉しかった」
まどか「魔法少女になって、本当によかったって、そう思うんだ」
まどか「ほむらちゃん。やっと名前で呼んでくれたね。嬉しいな」
まどか「私なんかでも、本当に何かできるの? こんな結末を変えられるの?」

ほむら(私の頭・・・・・・頭の中に直接、聞こえてくる・・・・・・)

ほむら「神名あすみ・・・・・・何を・・・・・・したの、私に・・・・・・」

ほむら(しまった・・・・・・精神攻撃・・・・・・これが・・・・・・)

まどか「私、鹿目まどか。まどかって呼んで」「クラスのみんなには、内緒だよ?」「魔法少女になって、本当によかったって、そう思うんだ」「私なんかでも、本当に何かできるの? こんな結末を変えられるの?」「私もほむらちゃんって呼んでいいかな?」「もう大丈夫だよ、ほむらちゃん」「ほむらちゃんもカッコよくなっちゃえばいいんだよ」「ほむらちゃん。私ね、あなたと友達になれて嬉しかった」「ほむらちゃん。やっと名前で呼んでくれたね。嬉しいな」

まどか「ほむらちゃん」
まどか「ほむらちゃん」
まどか「ほむらちゃん」

ほむら(これは・・・・・・私の記憶・・・・・・記憶の中のまどか・・・・・・)

ほむら「うっ・・・・・・く・・・・・・や・・・・・・やめ・・・・・・」

あすみ「・・・・・・そういうことかあ」

ほむら「うう・・・・・・ぐはっ。はあっ。はあっ。はあっ」

あすみ「これがまどかっていうひとね。やっといろいろ分かったわ」

ほむら「はあっ。はあっ」
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/18(火) 22:30:09.80 ID:Taj/XaSa0
あすみ「ほむらお姉ちゃん。今までずっと、あんたが何したいのか、イマイチわかんなかったんだよね」

ほむら「はあっ。はあっ」

あすみ「時間を止めたり戻したりできるのが、あんたの魔法みたいね。でも魔法少女は魔女退治しなくちゃならないんだから、どんなにすごい魔法使えても、魔女をやっつける武器持ってなきゃアホじゃん。で、使ってるのが、どっかからパクってきた爆弾とか鉄砲。何このオバサン?ってずっと思ってたんだ」

ほむら「はあ。はあ」

あすみ「キュゥべえと契約したのは、時間をいじって、そのまどかってひとに何回も会うためだけだったんだね。もう頭の中は隅から隅まで、そればっかだったんだね。だから、武器を出す魔法が使えるようにならなくて、人間の武器ばっか使ってるんだね」

ほむら「はあ。はあ」

あすみ「ほむらお姉ちゃん。あんたさあ」

ほむら「はあ。はあ」

あすみ「レズだったんだね」

ほむら「・・・・・・」

あすみ「まさか、違うなんて言わないよね? 女なのに、ひとりの女をこんなに追っかけまわしてるんだからさ。このまどかってひととレズ関係になるのが駄目になるたびに、時間を戻してるわけ? フラれるたびに、出会いをやり直してるわけ? このひとが魔法少女みたいになってる場合があるのはよくわかんないけど」

ほむら「・・・・・・」
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/18(火) 22:32:51.46 ID:Taj/XaSa0
あすみ「あたし、レズって大っっ嫌いなんだよね。あたしたちって女でしょ? どうして相手が女なの? もうキモくてキモくて」

あすみ「昔、あたしをオモチャにした奴らの中に、女もいたんだ。よくテレビに出てるヒョーロンカだとかいうババアだった。組織のおっさんに、今後大切なお客さんになるから頑張って、って言われた。でもあたし、無理だった。何にもしなかった。レズを相手にするんだったら、ガイコツみたいなジジイとか、やたらディープキスしようとするハゲデブオヤジでも、そっちの方が100万倍マシ」

あすみ「もちろん後で、組織のおっさんに死ぬほど殴られたよ。メシも3日くらい抜きだった。それでレズが、もっと駄目になった」

ほむら「・・・・・・」

あすみ「大体あんたたち、どうして群れてるの? こんなふうに夜の公園へ集まったりして。24時間キャッキャウフフやってんの? 今日言ってた、ワタシタチハ、カクゴミタイナモノヲキョウユウシテイルって、こんなふうに女ばっかでイチャイチャすることなの? キモくて仕方ないんだけど。カッコつけたこと言っちゃってさ、バカみたい」

ほむら「・・・・・・」

あすみ「あたしの願い、あんたには何度も話したよね。“自分の知る周囲の人間の不幸”。でも、魔法少女になってから、ちょっと変わったな」

ほむら「・・・・・・」

あすみ「“あたしに関わった全ての存在の不幸”。願いの効き目以外に、自分でこれ、やろうと思うんだ」

ほむら「・・・・・・魔女や魔法少女も、あなたの獲物になる、ってことね」

あすみ「当たり。じゃあね。今度会った時は、あんたたち、自分が死ぬ時だと思ってた方がいいよ」

ほむら「・・・・・・待ちなさい! あなたは」

あすみ「話しかけんなよレズババア。レズが伝染る」

ほむら「!・・・・・・」

あすみ「バイバイ」
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/12/18(火) 22:39:14.86 ID:Taj/XaSa0


今回はここまでです。
続きは明日以降、投下します。
もし読んでくださった方がいたら、お礼を申し上げます。
ありがとうございました。

30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/19(水) 01:27:35.87 ID:PzPUW1HAO
乙です。前スレありますか?
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/19(水) 04:35:57.60 ID:slKQJCxCo
あすみちゃん生きたまま解剖したい
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/19(水) 06:01:46.96 ID:6jPo3TRto
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/12/19(水) 20:24:00.69 ID:1dC4Z2gL0


みなさん、レスありがとうございます。

>>30
ありません。このスレだけで完結します。
唐突な始まり方という印象を与えたのなら、それは自分の能力欠如が原因です。
なお、終わり方も唐突です。

それでは、後半を投下します。

34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/19(水) 20:27:52.89 ID:1dC4Z2gL0
―翌日の学校、昼休み―


さやか「でさ、最後にしっかり画面の端へスタッフが映っちゃってるの」

まどか「えー何それー」

ほむら「・・・・・・」

さやか「つーわけでトイレ」

まどか「あ、行ってらっしゃい」

さやか「・・・・・・お。転校生もトイレ行くとこ? 奇遇だねえ」

ほむら「時間、もらえるかしら」

さやか「うん。そうだと思って、話切り上げてきたよ」

ほむら「場所は、と・・・・・・」

さやか「屋上へ通じる階段は?」

ほむら「了解。・・・・・・じゃ、昨夜、別れた後のことを聞かせて」

さやか「いやー面目なかった、私としたことが。まず、その時の記憶は曖昧。マミさんが頭の中に出てきて何か言ったのは憶えてる。それから、自分が何やったかは憶えてない。気が付いたら家の近くにあるバス停のベンチに座ってて、杏子が隣にいた」

ほむら「今日ちゃんと登校できたということは、体に異常はないのね?」

さやか「うん大丈夫。頭も問題無しよ」

ほむら「精神攻撃では、致命傷を負わなければ後遺症みたいなものはない、ということか」
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/19(水) 20:30:09.09 ID:1dC4Z2gL0
さやか「杏子から聞いたんだけど、私、変身してあんたたちと戦おうとしたんだって? 記憶がないとはいえゴメンねー」

ほむら「それは気にしないで」

さやか「転校生は何かあった?」

ほむら「私も攻撃を受けた」

さやか「ええ!? あんたもやられたの?」

ほむら「なるべくあの子の方向を見ないで、顔も背けていたんだけど・・・・・・。どうやら、こっちがいくらあの子のことを気にしないようにしても、向こうのターゲットにされたら駄目のようね」

さやか「相手を見ないなんて、危ないことするなあ。急に動かれたらどうすんの。あの子、早いよ?」

ほむら「昨夜はお互いに変身しなかったから、物理攻撃はないと考えたのよ。あなたを精神攻撃した時に“変身しないとうまくいかないな”と喋っていた。だから、変身しないで使える魔力は限定的だと思った」

さやか「で、どんなことされた?」

ほむら「あなた、巴マミが頭の中へ出てきたって言ったわね。こっちも、記憶を掘り返された。いえ、頭の中を覗かれたと言った方がいいかもしれない」

さやか「頭の中を覗く、って・・・・・・気味悪いことするなあ」

ほむら「あの子は、魔女狩りの時に使う精神攻撃とは具体的にどんなことをするのか、私たちにはっきり言っていない。でも今回のことで、古いトラウマなどを呼び起こすのが方法の一つだと分かったわ」

さやか「魔女のトラウマって言ったって、魔女に、魔女になる前の記憶なんてあるの? 完全に別の物になっちゃってるから、みんなにひどいことできるんじゃないの?」
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/19(水) 20:31:37.17 ID:1dC4Z2gL0
ほむら「それは知らないわ。いずれにせよ、私たち魔法少女に対しては、記憶に関する攻撃が有効だと分かった。私たちも、あの子もね」

さやか「うん。それにしてもさ」

ほむら「何?」

さやか「ああいう相手の場合、私や杏子の戦い方には限界があるって、改めて思い知らされたわ」

ほむら「・・・・・・」

さやか「遠くからの精神攻撃を防ぎながら、接近して斬り込む。・・・・・・これしか方法がないと思うんだけど、今んとこ、実現できるか全然分からないよね」

ほむら「正直言うとあの子に関しては、攻撃面でも防御面でも、弱点などの決定的に役立つ情報がない。だから、作戦を立てられない。魔女狩りを一緒にやっていた時、もっとよく観察しておくべきだったわ。完全に決裂した今は、もう調べることができない」

さやか「お? 後悔するような発言とは転校生らしくない」

ほむら「あなたが私にどんなイメージを持っているのか知らないけど」

さやか「思ったんだけど、あすみちゃんって、ひとによって出してもいい情報をすごく選んでるんじゃない? 生い立ちとか昔ひどい目に遭ったこととかはペラペラ喋るけど、一緒に魔女退治するようになっても、自分の魔法について全然言わない。それって多分、言う必要がないし、言ったら自分に不利になるって思ったからじゃないかな。実際、こうしてあの子と私たちは戦うことになっちゃったんだし」

ほむら「そうだと思う。良くいえばすごく頭がいいし、悪くいえば狡猾。聞かされた話が全て事実だとすれば、あの子は私たちよりはるかに多くの大人、しかも、いわゆる裏の社会にいる大人に囲まれて育ってきたことになるものね」
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/19(水) 20:33:17.87 ID:1dC4Z2gL0
さやか「出たとこ勝負なんて魔女退治で慣れてるけど、あの子相手ではキツいわ。転校生、何か名案ない?」

ほむら「考えてみるわ・・・・・・。あなたも、今までの魔女狩りであの子がした行動を、よく思い出しておいて。後で知識を共有しましょう」

さやか「分かった」

ほむら「教室へ戻るわよ」

さやか「転校生」

ほむら「何?」

さやか「まだ昼休み終わるまで時間あるから、今度は私から、いい?」

ほむら「構わないわ」

さやか「まどかのことなんだけど」

ほむら「どうかしたの?」

さやか「昨夜、あすみちゃんと会わせないようにする、ってことになったよね」

ほむら「ええ」

さやか「でも、限界があるよ? 登校下校や学校にいる時は、私や転校生が付いてるからいいけど、自分の家にいる時間まではどうにもならないし」

ほむら「・・・・・・そうね」

さやか「とりあえず昨夜は杏子が、帰る途中でまどかの家の近くを通るから、様子を見ていくって言ってたけど」

ほむら「助かるわ」

さやか「私たちにだって、私たちの生活があるんだしさ。四六時中、護衛みたいなことはできないよ」
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/19(水) 20:35:30.28 ID:1dC4Z2gL0
ほむら「私も昨晩、帰ってからそれを考えたわ。神名あすみの行動は、まったく計算できない。どこに住んでいるのか分からないし、魔女狩りで私たちと一緒にいる時間以外は、どこで何をやっているのかも不明」

さやか「確かなのは、学校に行ってないことくらいか。こういうことについても、何もこっちへ教えてない。徹底してるわ」

ほむら「まどかの家を知っているかどうかも分からない。もし、まだ知らなくて、あの子が知ろうとした場合、それができるのかも分からない」

さやか「あすみちゃんについての情報をキュゥべえから聞き出す、っていう手もあるけど。さっきの、弱点のことも含めてさ。あいつ、訊かれなければ自分に都合のいいことしか言わないけど、訊かれたことには絶対答えるよね」

ほむら「確かに、あいつには感情がないから、嘘をつかないし、曖昧なことも言わない。機械と同じね。でも、私たちがどんな質問をしたのか、どんなことを知りたがっているのか、あの子へ伝わってしまうおそれがある」

さやか「そうか・・・・・・」

ほむら「残念だけど、それはできないわ」

さやか「ねえ転校生。私たち、あすみちゃんが現れてから、今までのペースがちょっと狂っちゃってるよね。主導権を、あの子に握られてる感じ。でもこうなったら、受身になってばかりいられないんじゃない?」

ほむら「それは、そのとおりね。まどかを敵から守るためには、その敵を叩くことが必要」

さやか「攻撃は最大の防御、ね」

ほむら「しかも、可能な限り早い方がいいわ」

さやか「決着をつける時が、もうやってきたってわけか」

ほむら「だけど、できるだけ策を練る必要がある」

さやか「また、集まって相談しようか」

ほむら「そうしましょう。今夜・・・・・・時間と場所は私に決めさせて。後で連絡するわ」

さやか「うん。杏子には?」

ほむら「自分で伝える」
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/19(水) 20:37:15.15 ID:1dC4Z2gL0
さやか「頼りっ放しで悪いね」

ほむら「大した手間ではないわ。もう昼休みが終わる。戻りましょう。次の数学は、時間きっかりに来る先生よ」

さやか「・・・・・・あ!」

ほむら「どうしたの?」

さやか「転校生、もう一つだけ! 手短に! 大事なこと!」

ほむら「構わないわ」

さやか「昨夜、あんなことがあったでしょ」

ほむら「ええ」

さやか「・・・・・・数学、宿題やってないの。助けて」

ほむら「・・・・・・」

さやか「お願いっっ」

ほむら「・・・・・・多分、帰宅したのは私の方が遅かったと思うんだけど」

さやか「あ。今“構わないわ”って、言ったくせに」

ほむら「それは、話をするのが構わないという意味で・・・・・・。はぁ、分かったわ。教室へ戻ったら急いで答えを写すのよ」

さやか「おお! さっすがあ! 話がわかるう! 成績優秀! 容姿端麗!」

ほむら「いいから。早く行くわよ」

さやか「ますます、頼りっ放しで悪いね。へへへ」

ほむら「宿題の分は、後でアイスでも奢ってもらおうかしら」

さやか「・・・・・・そうきたか。オーケー、太っ腹のさやかちゃんにまっかせなさーい」
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/19(水) 20:47:09.72 ID:1dC4Z2gL0
―夜、郊外の総合運動公園―


さやか「こんなに広い場所があるなんて知らなかったな」

杏子「自分の街なんだから、どこに何があるかくらい分かっとけよ」

ほむら「ここはサッカー場四つ分くらいの広さがある。周りの建物は、使われなくなったり、夜は無人になったりする工場ばかりらしいわ」

杏子「決行予定は、明日の夜か」

ほむら「ええ。調べたら今日と同じく、明日もこのグラウンドが使われる予定はない」

さやか「今、キュゥべえ、周りにいないよね?」

ほむら「大丈夫なようね。これからする話は、絶対に聞かれるわけにはいかない」

さやか「ここは真っ平だから、あいつが隠れる場所がなくていいね。いたらすぐ分かる」

ほむら「こんな地形と、照明の点いてないことが、戦闘へはどう影響するかしらね」

さやか「まさか、管理人さんのとこへ“ガチンコのケンカしますから、ナイターの照明お願いします”って言えないしね」

ほむら「遠くにある、高速道路の灯りだけが頼りだけど」

杏子「目で見えない分は、魔法で何とかなるさ。こっちにも相手にも、条件は同じだよ」

ほむら「いつもの魔女狩りと違うのは、結界内での戦いではないこと。大きな音を立てれば、どうしても周囲へ聞こえてしまう」

さやか「警察とかが来ちゃうかもしれないね」

ほむら「それを人質にとられたりしたら、厄介なことになるわ。ひとが来る前に決着をつける必要がある」

杏子「あんたが使う銃や爆弾は音が出るけど、どうするんだ?」

ほむら「やむを得ないわね。これでも、なるべく人家から離れた場所を選んだのよ」
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/19(水) 20:49:09.65 ID:1dC4Z2gL0
さやか「あの子をどうやってここまで連れてくるの?」

ほむら「まどかに会わせる、と嘘をつく」

杏子「うまくおびき出せるかな」

ほむら「分からない。敵は頭がいいものね。でも、そんな偽情報くらいしか、食いついてくれるような餌がない」

杏子「あんたひとりであのガキと接触するのか? 手伝えることがあったら言ってくれよ」

ほむら「今のところは、私だけでやる積もり。それより、あなたたちには、使う爆薬は結界内での量を上回る予定だと言っておくわ」

さやか「それって・・・・・・」

ほむら「ええ。このグラウンドは、当分使い物にならないでしょうね。地面付近で炸裂すれば大穴が開くし、破片や薬品類が残る。爆風で周りの建物にも影響が出る。でも、騒音が発生することを考えると、一発で敵を確実に仕留めなければならない。必要なことよ」

杏子「・・・・・・3人がかりであいつの動きを封じて、あたしかさやかが串刺しにする。できればこの時点で、あの世へ行ってもらう。体を固定し、あんたが爆弾を取り付ける。そうして、治癒や再生が不可能なくらい木っ端微塵にする。・・・・・・こんなところか、作戦は」

ほむら「そうね。問題は、敵に近付く時、例の精神攻撃をどう防ぐか」

さやか「昨夜は記憶を掘り起こすやり方だったけど、考えてみたら、ほかの攻撃方法を使ってくる可能性もあるんだよね?」

ほむら「でも、それが何なのか分からない。取りあえず、昨夜みたいな攻撃への策を講じるしかないわ。・・・・・・ここへ来るまでに防御方法をいろいろ考えてみたけど、結局、精神攻撃はどうしても受けてしまう、という前提でのやり方しか思い浮かばなかった」
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/19(水) 20:51:15.70 ID:1dC4Z2gL0
杏子「どんなものでもいい。聞かせてくれよ」

ほむら「心の弱い部分をあらかじめ自覚しておく、という方法よ」

さやか「自分で前もって、抉り出されるかもしれないトラウマを分かっておく、ということ?」

ほむら「そう。昨夜、美樹さやかと私が受けた攻撃は、記憶を呼び起こされて、それを材料に幻覚や幻聴を与えられるというものだった。でも、それが予想の範囲内なら、ある程度は動揺を抑えられると思う」

杏子「自分のトラウマ・・・・・・」

さやか「あんたが、あの子の攻撃に一番強そうじゃん」

杏子「どうしてだよ」

さやか「今の自分とか昔のこととか、いろいろなことを割り切ってるでしょ。だから、いつかみたいに私へ話せるんだろうし」

杏子「あんたを教会へ連れてきた時のことか。・・・・・・割り切ってる、ってのは確かだな。あの時言ったけど、あたしは、自分のためだけに生きてれば、何もかも自分のせいで、誰も恨まないし後悔もない、っていう考えだからな」

ほむら「私も、あなたが3人の中で、最も精神攻撃への耐性があると思っているわ」

さやか「あの子へ接近できるのは私なんかより、断然あんただと思う。私が囮になって、あんたが斬り込むってのがベストの作戦だよ」

杏子「・・・・・・だけど、あたしがいろいろなことを割り切ってるとはいっても、そうじゃないものもたくさんあると思う。本当に嫌なこと、なかったことにしちまいたいものは、心のすごく奥にあるんだと思う。そういう、口に出すことなんてできない、心の中にあるのすら認めたくない、そんなことを、あのガキは突いてくるんだろ?」

ほむら「そうね。それが何なのか、できれば目をそらさずに知っておいてほしい」

杏子「・・・・・・分かったよ」
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/19(水) 20:53:50.58 ID:1dC4Z2gL0
ほむら「こう言ってる私も、他人のことを気にしてる場合ではないんだけど」

さやか「転校生はやっぱり、まどかのこと? 一番気掛かりなのは」

ほむら「・・・・・・そうね」

杏子「あんた、昨夜は、最後にやっと本音が出たよな」

ほむら「・・・・・・まったく、あなたには何も隠せないわね」

杏子「そりゃあ分かるさ。昨日のあんたは、いやに急いでた。あのガキに会って、願いのことを聞かされたその日のうちにもう、あたしたちを呼び出した。キュゥべえがあの場にいることを許して、あいつから情報を得ようとさえした。仕舞にはあいつが、契約であのガキの願いを叶えたことにキレてたな」

ほむら「・・・・・・」

杏子「昨日のことは全部、まどかを守るためだろ?」

ほむら「・・・・・・精神攻撃を受けた時、神名あすみに見抜かれたわ。記憶の中にあるまどかを立て続けに見せられて、あんたの頭の中はそればっかりだ、って決めつけられた。そして、女のくせに、女をこんなに追いかけまわしておかしい、レズだって言われたわ」

杏子「・・・・・・」

さやか「・・・・・・」

杏子「それだけか?」

ほむら「・・・・・・どういうこと?」

杏子「あんたがどれくらいまどかを気にしてるかなんて、そんなのは別に、ひとの勝手さ。あんたの場合、それだけじゃないだろ? あんたには、言えないことがたくさんある。あんたは相変わらず、あたしたちにすら、手の内を完全には明かしてないだろ?」

ほむら「・・・・・・」
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/19(水) 20:56:10.38 ID:1dC4Z2gL0
杏子「あんたはどうして、ワルプルギスの夜が来ることを分かってるのか。あんたはどうやって、魔法少女が結局は魔女になることを知ったのか。そもそもあんたは、どこから来た何者なのか。あんたには相変わらず、言えないことが多過ぎる」

杏子「別に、黙っててもいいさ。言う必要がないから話さない、それだけのことかもしれないしな。だけどもしそれが、あんたの心の深い部分とつながってるんだとしたら、どうだ? そういうところへ、あのガキはつけ込んでくるんだろ? あいつにつけ入る隙を与えることが、どんなことになるか。あんたが、分かってないはずがない」

杏子「今話せ、とは言わないさ。でも、もしそれが戦いに影響するんだったら、前もって何とかすべきだ。まあ、あんた自身が一番分かってるとは思うけどな」

ほむら「・・・・・・」

杏子「・・・・・・また、言い過ぎたか?」

ほむら「いいえ。あなたの言うとおりよ。ますます、あなたには何も隠せないわね。・・・・・そうね・・・・・・長い話になるわ。今回の戦いから生還したら、話す。それまで、待ってくれないかしら」

杏子「任せるよ。あたしは、戦いに影響がなければそれでいいのさ」

さやか「・・・・・・おふたりの話が終わって、私の番なわけですが」

杏子「よっ、真打ち」

さやか「やっぱりさやかちゃんですか。精神的に一番、駄目駄目っぽいのは」

杏子「その自覚があるだけいいじゃん」

さやか「あ。傷つくなあ」

ほむら「正直言ってあなたの場合は、そもそも敵への攻撃をできるかが問題ね」

さやか「・・・・・・どうしてそう思う?」
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/19(水) 20:58:40.55 ID:1dC4Z2gL0
ほむら「それは、私たち3人の中で、あの子に一番優しいのがあなただから。いえ、誰にでも優しいのが、あなただから」

さやか「・・・・・・」

ほむら「ありきたりの言い方だけど、優しさは、甘さと紙一重よ」

さやか「うん。・・・・・・私はもっと冷たく、もっと残酷にさえならなくちゃ駄目だって、自分でもそう思う」

杏子「まあ、昔より進歩してることは認めるけどな」

さやか「・・・・・・最近」

ほむら「何?」

さやか「最近ね、泣かなくなったんだ」

杏子「へえ。いいことじゃんか」

さやか「・・・・・・ていうより、涙が、出なくなったんだ」

杏子「・・・・・・」

さやか「私ね、もうすぐ生理なんだ」

ほむら「・・・・・・」

さやか「でも、今回の戦いでそれどころじゃないって分かったから、今日薬飲んで、ちょっと遅れるようにした」

さやか「ホントは、魔法少女になった後で初めての生理だから、来るかどうか分からない。先輩のあんたたちに訊けばいいんだろうけど、こんな話だから、言いにくくてさ」

さやか「私、この体になっても、ご飯を食べるし水も飲む。トイレにも行く。お風呂入らなくちゃ、垢やフケで汚くなっちゃう。多分生理もあるんだろうなって思って、薬飲んだ。人間だった時に飲んでた薬なんて、効くのか分からないけど」

さやか「何なんだろうねまったく。変な体。もう死んでるくせにさ。キュゥべえも、もうちょっと便利にしてくれたらよかったのにね。飲まず食わずでも動けるとかさ。生理なんて、なくなってほしいものナンバーワンだよ、こんなメンド臭いもの。そもそも、この体で子供なんて絶対できないよね。もし、この死んでる体が妊娠して子供産んだら、ホラーだよね」

さやか「・・・・・・前だったら、自分の体のこと考えると、自然と涙が出てきた。だけど、今は・・・・・・もう、涙も出ない。もちろん、悲しいんだよ? 前と同じように悲しい。でも、涙が、もう出ないんだよ」

ほむら「・・・・・・」

さやか「涙、涸れちゃったのかな、って思うんだ」
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/19(水) 21:01:13.88 ID:1dC4Z2gL0
杏子「・・・・・・でも」

さやか「何?」

杏子「あたしたちは、確かに人間じゃない。じゃあ、人間じゃなかったら何なのか。犬や猫と一緒じゃない。虫けらとも違う。もちろん木や草と同じなわけがない。だからといって、人形でもなければ、そこら辺の石ころとも違う」

さやか「・・・・・・」

杏子「あたしたちは、魔法少女なんだ。それ以外の何物でもない。人間じゃなかったら何なのか、答えは“魔法少女”以外にない」

杏子「さやか。前もって言っとくと、あたしたちに生理はある。あたしたちは人間じゃなくなっても、あの苦労から逃げられない。人間じゃないんだから、そんなもの、どうでもいいのにな。それなのに、どうして人間の女にある生理が、あたしたちにもあるのか。そんなもの、いらないじゃないか。確かに、そう考えることもできるだろうよ」

杏子「でも、あたしたちは魔法少女なんだ。魔法“少女”なんだ。やっぱり、女なんだ。そして魔法少女は、最後に“魔女”になる。結局、どこまでいっても女なんだ」

ほむら「・・・・・・」

さやか「・・・・・・そうね。女、なんだよね」

杏子「ああ。理不尽だけどな」

ほむら「・・・・・・魔女に性別があるのかは不明だけど、私たちが、魔法少女になる前の体をそのまま受け継いでいるのは間違いない。だから、私たちは女だ、私たちは少女だ、といえるとは思う」

さやか「うん」
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/19(水) 21:02:39.68 ID:1dC4Z2gL0
ほむら「・・・・・・でも、ちょっと意外ね」

さやか「何が?」

ほむら「佐倉杏子。怒らないで聞いてほしいんだけど、あなたが、自分が女であることをすごく意識してることが、よ」

杏子「別に怒りゃしないさ。ふだんのあたしを見てれば、誰だってそう思うだろ。だけど、あたしはやっぱり、女か男かなんてどうでもいいと思ってるよ。性別がどうこう以前に、あたしはあたしだからな」

さやか「私は、考え方や、やってることは性別にかなり影響受けてて、そういうのをひっくるめたものが自分なんだ、って思う」

杏子「意外といえば、あたしにとっては昨夜のあんたの、ブチギレ具合だけどな」

ほむら「またその話? 余りいじめないで頂戴」

杏子「いや、さっきの話じゃなくてさ。あんた、キュゥべえにいろいろ理屈をこねられてキレてたろ。あれは、あたし的には分からなかった。あいつの言ってることは正しいと思ったから」

杏子「あいつは、魔法少女の願いは全部“自分が得をするため”って言ってたんだよな。あたしは、当たり前だと思ったよ。分かりきったことだと思った。それを聞いたあんたが、どうしてブチギレるのか分からなかった。あれは一体、何だったのさ」

ほむら「そのことね。・・・・・・今なら、あいつが正しいって理解できる。昨夜は、図星を突かれたのよ。それで感情的になってしまった」

ほむら「確かに私は、あいつが言ったように、神名あすみと自分の願いは違うと思ってた。でも同時に、やっぱりあいつが言ったように、どちらの願いも根の部分は同じだと、頭のどこかで分かっていた。そこを的確に突かれた」

ほむら「それに、あの神名あすみと自分が同じに扱われたことへ、ものすごい嫌悪感があった。理屈を納得できても、感情では許せなかった。それで、あんな態度になってしまった」

さやか「転校生でも、ああいうふうになることがあるんだって、びっくりしたわ」

ほむら「不様なところを見せたわね」
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/19(水) 21:04:27.02 ID:1dC4Z2gL0
さやか「やっぱり願いは、誰でも、自分のためなんだね」

杏子「あんたが魔女になりかけた時、救ったのは誰でもない、そのことに気付いたあんた自身だったよな」

さやか「他人のために願いや魔法を使う、それが間違いだとは、今でも思ってないよ。だけどそれも結局は、自分のためなんだって分かった。恭介の腕を治して、その恭介を仁美にとられたけど、全部他人のためだったら、そんなことで落ち込んだりしない。他人が幸せになれば、それでいいはずだから。でも、私は絶望の一歩手前までいっちゃった」

さやか「そんな自分が、自分で分からなかった。他人のためにいろいろしてきたのに、その他人が自分の方を見てくれないと落ち込んじゃう。それで、気付いたんだ。突き詰めれば、私は私のために、今までいろいろしてきたんだって。全部、自分のためなんだって。私はそれに気付いて、完全な絶望の一歩手前で、踏み止まった」

杏子「自分のことを真っ先に考えない奴なんているもんか。あたしはキュゥべえを死ぬほど嫌いだけど、あいつの言ってることは正しいよ」

さやか「あんたが私に教会で話してくれたこと、あの時は全然納得できなかった。だけど、今なら分かる。私は、自分のために生きるべきなんだって。もちろん、他人のために生きることが間違いだなんて思ってない。だけど、やっぱりそれは、自分のためにつながってる。それでいいんだって」

さやか「それからあんた、こう言ったよね。“自分のためだけに生きてれば、何もかも自分のせいで、誰も恨まないし、後悔もない”って。これも、今なら分かる。自分のために生きて、自分のことは、自分で責任をとるんだ、って。誰のせいにもしない。自分で決めて、自分のためにやったことなんだから、自分自身に責任とらなきゃ駄目なんだ、って」

さやか「こんな体にされちゃったことも、私が自分で決めた結果なんだ。こうなるなんて教えられなかったし、教えなかったキュゥべえを許すことは絶対にない。だけど私も、契約する前に訊くことはできたはず。それをしなかった自分、それをできなかった自分に、自分自身で責任とるべきなんだ」

ほむら「・・・・・・美樹さやか」

さやか「何?」
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/19(水) 21:07:22.61 ID:1dC4Z2gL0
ほむら「冷静に聞いてほしいんだけど・・・・・・。神名あすみは契約前に、魔法少女になるメリットとデメリットについて、キュゥべえに訊いたそうよ」

さやか「!・・・・・・」

杏子「・・・・・・」

ほむら「しかも、例の組織に監禁されている最中と言っていたわ。この話が本当なら、あの子は“自分を今すぐここから出して”などということに願いを使ってしまわず、そんな状況でもキュゥべえへ質問し、判断して、あの願いを伝えたことになる」

杏子「・・・・・・」

さやか「・・・・・・やっぱりね。それをできるひとは、やっぱりいるんだよ。できるひとは、できるんだよ。・・・・・・私はできなかった。私は、それができなかった自分に、自分自身で責任をとるべきなんだよ」

杏子「あたしも同じだな、それは」

さやか「・・・・・・それにしても、さ」

杏子「何だ?」

さやか「あの子の頭のよさは、怖いくらい。背筋が凍るっていうのかな、そういう感覚、今、生まれて初めて味わった」

ほむら「最悪、最強、悪賢い・・・・・・褒めれば切りがないわね。悪い意味で」

さやか「あんたさ」

杏子「何だよ」

さやか「さっき私、作戦のこと話したよね。あの子へ接近できるのは私より、断然あんた。だから私が囮になって、あんたが斬り込むってのがベストだって」

杏子「ああ」

さやか「それでいいよね? 転校生も、どう? このやり方で」

ほむら「異存はないわ」

杏子「・・・・・・いいのか?」

さやか「もちろん。どうして、いいかどうかなんて訊くのさ」

杏子「あんたがいいなら、それでいこう」
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/19(水) 21:09:42.37 ID:1dC4Z2gL0
さやか「何かさ・・・・・・ダークな方向に、気分が盛り上がってまいりました。決戦前夜にふさわしい感じよ」

杏子「ソウルジェムが濁るぞ」

さやか「ううん、私のは今、澄みきってる。見なくても分かる。誰と戦っても、負ける気がしないわ」

ほむら「今までで最強の敵。相手にとって不足はないわね」

杏子「上等だよ。あのガキには、サヨナラ何とかっていうムカつく台詞を、永遠に言えないようにしてやる」

さやか「あれウザいよね。私も大嫌い」

ほむら「決め台詞にしては、センスに欠けるものね」

杏子「あんたもそう思ってたか。だせえんだよな、オヤジ臭くてさ」

ほむら「全員の意見が即座に一致する数少ない点ね、これは」

杏子「だけど冗談じゃなく、あたしは奴を倒す。刺し違えてでも」

ほむら「ワルプルギスの夜と戦う前に、3人のうちひとりかふたり、欠けることになるかもしれないわね」

杏子「死ぬ覚悟なら、とっくの昔にできてるよ。つーか、あたしたちはもう死んでるじゃん」

さやか「勝っても、グリーフシードはないんだよね。純粋に魔法少女同士の、ガチ対決」

杏子「いや、違う」

さやか「何が?」

杏子「確かにグリーフシードはない。でも、相手は魔法少女じゃない。相手は、魔女だ。あたしたちの敵だ」

さやか「そうだね。相手は、魔女と同じ」

ほむら「相手は、ひとに災厄を振りまく、私たちの敵」

さやか「でも、私たちは私たちのために戦う。ひとのためでも、誰のためでもない、自分自身のために戦う」

杏子「よし。相手は魔女。決戦は明晩」

ほむら「了解。相手は魔女。決戦は明晩」

さやか「うん。相手は魔女。決戦は明晩」


51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/19(水) 21:16:29.35 ID:6jPo3TRto
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/19(水) 22:09:08.87 ID:V4AIBEaI0
乙っす
魔法少女にしてフランスの世継ぎを生んだマリー・アントワネットは確実に勝ち組
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/19(水) 23:11:27.25 ID:zalVypPjo


この3人ならではのリズムと空気感だな
マミさんがいるともう少し情にほだされてしまいかねない
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/20(木) 00:25:35.13 ID:iKgJTz1Io
英語では「"Good-Bye"BaseBall」
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/20(木) 15:08:06.40 ID:ynFCkHASo
>>54
だせえ……
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/20(木) 20:17:38.91 ID:HYhhOZmF0


みなさん、レスありがとうございます。
こんな動きのない、登場人物が会話しているばかりのSSにレスがつくとは、正直、思っていませんでした。
お付き合いくださいまして、心からお礼を申し上げます。

これからhtml化を申請してきます。
読んでくださったみなさんに、再びお礼を申し上げます。
ありがとうございました。

57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/20(木) 20:18:48.16 ID:Ahergw2oo
あ、終わりって完結のことだったのか
さやほむあんトリオの感じが良かったです
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/24(月) 04:48:34.23 ID:ilPWq+R6o

俺特スレで面白かった
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