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蜀漢三国演義 -
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1 :
◆SOkleJ9WDA
:2012/12/19(水) 13:24:14.30 ID:9NYrIv6IO
※このSSは基本的には三国志演義をベースに書き進めていきます
※このSSは作者の独断と偏見を参考に製作されます
※演義に基づかず死亡する筈の武将が生存していたり、改変が加えられたり、女体化していたりするので「男と男の熱い戦いが好きなんだ!」「おかしな改変はいらない!」という方はお引き取り下さい
※時折アレンジでなく本気で演義の設定を忘れて書いてしまう事もあると思うのでご指摘いただけると嬉しいです
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1355891054
1.5 :
荒巻@管理人★
(お知らせ)
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今際の際際で踊りましょう @ 2024/05/09(木) 22:47:24.61 ID:wmUrmXhL0
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誰かの体温と同じになりたかったんです @ 2024/05/09(木) 21:39:23.50 ID:3e68qZdU0
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A Day in the Life of Mika 1 @ 2024/05/09(木) 00:00:13.38 ID:/ef1g8CWO
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真神煉獄刹 @ 2024/05/08(水) 10:15:05.75 ID:3H4k6c/jo
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愛が一層メロウ @ 2024/05/08(水) 03:54:20.22 ID:g+5icL7To
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1715108060/
2 :
◆SOkleJ9WDA
[sage]:2012/12/19(水) 13:26:31.47 ID:9NYrIv6IO
降り注ぐ炎、それは即ち大敗を意味していた。
江州より長く伸びる兵站線、自軍の命綱とも呼べるそれは敵軍の火計により焼き切られようとしていたのだ。
夜空が紅く照らされ煙が立ち込める。輝く星々は瞬く間に姿を消していた。
3 :
◆SOkleJ9WDA
[sage]:2012/12/19(水) 13:27:19.56 ID:9NYrIv6IO
「俺の怒りが招いた結果、か」
続々と飛び込んでくる伝令、そのほとんどが味方部隊の敗走、拠点の陥落を伝えた。
「殿、じきに此処にも敵兵が来ます。私が退路を開くので急いで退却しましょう!」
「ああ…」
失意に呑まれそうになるもなんとか愛馬に跨ると、残り少ない兵士と共に撤退を開始した。
4 :
◆SOkleJ9WDA
[sage]:2012/12/19(水) 13:33:39.79 ID:9NYrIv6IO
敵兵から逃れるべく山中に逃げ込んだが、沢山の追手がこの小さな集団を捕らえようと追いすがる。
それも当然だ。この小さな集団こそが自軍の本隊なのだから。
迫り来る敵兵を薙ぎ払いながら白帝城へ進んでいく。気がつけば味方はさらに数を減らし、生き残っている者たちの顔には明らかに疲労が浮かび上がっている。
ようやく険しい山道を抜けいよいよ白帝へとたどり着こうとしたその時、辺りにけたたましく銅鑼の音が鳴り響いた。
それと同時に周囲に潜んでいたであろう敵兵が続々と自分たちを包囲していく。
5 :
◆SOkleJ9WDA
[sage]:2012/12/19(水) 13:34:33.39 ID:9NYrIv6IO
「万事休すか…」
「殿の身は私の命に替えてもお守り致す!!」
正直絶望的だった。
火計は自軍の兵力だけでなく未だなお生存している者の精神さえ削ぎ落としていたのだ。
誰もが死を覚悟していた。
誰もが戦意を失いかけていた。
その時だった。
「まだ終わらぬぞ!!」
6 :
◆SOkleJ9WDA
[sage]:2012/12/19(水) 13:50:27.92 ID:9NYrIv6IO
中原よりも北にある涿県という所に母と共に一人の青年が暮らしていた。姓を劉、名を備、字は玄徳。
青年は幼い頃に父を亡くし、家は士族でありながら裕福ではなく、母と筵を織って生計を立てていた。
そんな青年の波乱が今、幕を開けようとしていた。
7 :
◆SOkleJ9WDA
[sage]:2012/12/19(水) 14:13:58.51 ID:9NYrIv6IO
母「そっちはどうだい?」
劉備「出来てるよ」
母「それじゃあ今日もよろしく頼むよ…」
劉備「任せろって。母さんはゆっくり休んでいてよ」
母「そうさせてもらおうかね」
俺は今日も母と共に作った筵を売りに町へ行く。そうしなければ食べる事さえ難しいのだ。
ーーーーーーーーーーーーー
人々が行き交い、露店の沢山並ぶ通りでいつも俺は筵を売っていた。
俺は馴染みの自分の場所に行くといつも通りに店を構える。
劉備「さあさあお立ち会い!劉ちゃん印の筵だよ!安くて丈夫で長持ち、素材もいいものを使ってるし真心込めて織り込んだ筵!買ってけ買ってけ!」
客「お!今日も威勢がいいねぇ」
劉備「そりゃあお客さんに買ってもらう為ですからね!一つどうです?」
客「丁度うちのがダメになった所だ。一つもらってくよ」
劉備「へへ、まいどあり」
8 :
◆SOkleJ9WDA
[sage]:2012/12/19(水) 14:20:47.21 ID:9NYrIv6IO
隣の露天商「玄徳よぉ、お前は商売が上手くていいよな」
劉備「たまたまだよ、たまたま」
隣の露天商「たまたまで毎回毎回客が寄ってくんのかよ」ゲラゲラ
劉備「ははは!まぁ、声かけとかが大事なんじゃないか?」
隣の露天商「そうか、んじゃ俺もやってみっか!」
劉備「頑張れよー?」
9 :
◆SOkleJ9WDA
[sage]:2012/12/19(水) 14:31:39.65 ID:9NYrIv6IO
友人A「おーい玄徳!遊びに行こうぜ!」
劉備「おう、まだ売り切ってないからな。これが終わったら遊びに行こう」
友人B「だったら手伝おうか?」
友人C「とか言ってるうちにもう残りもほとんど無いな…」
劉備「これなら早くいけそうだ。あと少しだけ待ってくれよ」
10 :
◆SOkleJ9WDA
[sage]:2012/12/19(水) 14:36:17.37 ID:9NYrIv6IO
いつも通りの日々。いつも通りに筵を売り、いつも通りに友人と遊び倒し、いつも通りに過ごしていた。
辛くない訳ではない。だが毎日が楽しかった。
これがいつまでも続くと思っていたが、実際はそうではなかった。
それは、俺自身が心の何処かで退屈していたからなのか。
ある事を境に、俺の時間は動き出した。
11 :
◆SOkleJ9WDA
[sage]:2012/12/19(水) 15:00:22.27 ID:9NYrIv6IO
劉備「…暇だな」
劉備「ふああああああ……」ノビー
劉備「ん?」
暇を持て余し町をフラフラとしていると一つの看板に目がいった。
劉備「なになに…義勇兵募集…かぁ」
それは最近各地で起こっているという一揆に対抗する為のものだろう。
漢王朝は衰退の一途を辿っていた。宦官は自分の富と名誉の為に民を省みず、賄賂が飛び交う。かつての威厳は地に落ち、人々の不満が募る。
そんな中、太平道という道教が中国全土で流行っていた。主導者である張角はどんな病でもたちどころに治してしまうという。
張角は全国に弟子を送り布教を広めていた。
そしてつい最近の事である。
張角とその弟子、信者たちが一斉に漢王朝に対して蜂起したのだ。
彼らは額に黄色の布を巻いた事から黄巾賊と呼ばれ、「蒼天已死 黃天當立 歲在甲子 天下大吉」を掲げて戦っていた。
霊帝は事態を重く見て、何進を大将軍に、黄巾賊の討伐を開始したのだった。
12 :
◆SOkleJ9WDA
[sage]:2012/12/19(水) 15:31:56.67 ID:9NYrIv6IO
劉備(俺には力も無ければ金も無い。関係ない話か…)
劉備「……」ハァ
???「おい、そこの青年よ」
劉備「ん?」
振り返るとそこには一人の少女がいた。身長は高め、凛とした顔つきでいかにも健康的な肌の色をしている。身体もほどほどに筋肉がついておりまさに運動体型だった。
少女「君も義勇兵に?」
劉備「…いや、興味はあるかもしれないけど如何せん金も無ければ振るえる様な武も無い」
少女「そんな事か、なら俺と共に戦わないか?」
劉備「一緒に?」
少女「ああ、金なら十分あるし俺の腕があれば敵だって簡単にあしらえる!」
正直迷った。義勇兵、どこか魅力的な響きだった。だが、母を残して行っていいものなのか。少女に頼るのもなんだか申し訳ない。
劉備「うーむ……」
少女「なに悩んでるんだよ。興味あるんだろ?」
劉備「あるけども…」
少女「だったら決まりだ!一緒に来て貰うぞ」ガシッ
劉備「え?ああ!?」ズルズル
少女「記念すべき仲間の誕生を祝って酒を飲もう!酒屋に行くぞー」
劉備「ちょ、まだ行くとは言ってないぞーーー!!」ズルズル
13 :
◆SOkleJ9WDA
[sage]:2012/12/19(水) 15:48:32.82 ID:9NYrIv6IO
ガッチリと手を握られて俺は逃げられなくなっていた。なるほど武についてはなんとなくわかった気がする。
少女「君、名前は?」
劉備「劉備、字は玄徳だ」
張飛「俺は張飛翼徳。これからよろしくな」
劉備「ああ…」
張飛「なんだ乗り気じゃないな」
劉備「最初からな」
張飛「一体何が気に入らないってんだよ!」
張飛は酒屋へと進む足取りを止めると俺の目を睨みつけて言った。
劉備「別に何かが気に入らない訳じゃない。俺は母と二人で暮らしていてな、母を置いていくのはどうも忍びなくて…それに俺は本当に金が無い。張飛に頼るのも申し訳ない…」
張飛「……なんだ。そんな事か」
張飛「両方とも心配する事はない。劉備を仲間に誘ったのは一目見た時に君となら上手くやれそうだと思ったからだ」
劉備「なんだそりゃ」
張飛「それに、母親なら息子の出世を願うものなんじゃないか?義勇兵として活躍出来ればそれ相応の名声や金だって手に入る」
劉備「失敗したらどうする?」
張飛「その心配もいらない。俺といれば失敗なんてありえない!」
その自信はどこから来るのか。ただ、張飛はとても頼り甲斐がある様に見えた。
14 :
◆SOkleJ9WDA
[sage]:2012/12/19(水) 15:54:52.04 ID:9NYrIv6IO
そんな彼女を見ていると俺の不安は段々心から消えていった。俺は相当単純な奴なのかもしれない。
俺は、義勇兵として戦ってみたい。
そこには俺の見たことの無い広大な世界が広がっているはずだ。
俺の心は、新しい何かを求めていた。
劉備「…わかった。なら、一緒に戦おう!」
張飛「そう来なくちゃな!」
張飛はまばゆい程の笑顔で返した。
張飛「んじゃ早く酒屋に行こう!飲んで食って騒ごうぜ!」ダッ
劉備「のわっ!?急に引っ張るなよ!」
15 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします
[sage]:2012/12/19(水) 16:21:51.96 ID:VkjwhEdG0
こ、こんな初期から始めるのか?
長くなりそうだなw
完結支援
16 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/12/19(水) 18:51:10.47 ID:RSAIc+aK0
桃園の誓いの前からかwwwwww
支援
17 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/12/21(金) 20:51:09.38 ID:96OKjMcIO
〜町の酒屋〜
昼間だというのに酒屋は人で賑わっていた。みんな思い思いに酒を飲み大いに盛り上がっていた。
張飛「おい!あるだけの酒と肉を頼む!」
劉備「ハァ!?そんなに頼んでどうするんだよ!?」
張飛「どうするって…飲むに決まってるだろ」
劉備「確かに酒は好きだけどそんなには…」
張飛「大丈夫だ!残ったら俺が飲む」
劉備「そ、そうか」
果たしてこの身体に樽一杯の酒が入るのかどうか。考えるとげんなりしそうだった。
しばらくして。俺と張飛の座る席は大量の樽と肉で埋め尽くされた。
劉備「……」
明らかに浮いている。周囲の視線がみんなこちらに集まっていた。
劉備(そりゃあそうだよな…)
18 :
◆SOkleJ9WDA
[sage]:2012/12/21(金) 20:59:42.50 ID:96OKjMcIO
張飛「よっしゃ!早速乾杯だ!」
張飛は酒樽から二つの盃に柄杓で酒を並々と注ぐと一つを俺に差し出した。俺はそれを溢れないように受け取ると、張飛の盃にそれをぶつける。
「「乾杯!!」」
ぐいっと酒を胃の中へ流し込む。その瞬間喉がカッと熱くなった。
張飛「くぅー!やっぱり酒は美味いな!」
劉備「中々飲みやすいな」
張飛「そうだろそうだろ。俺もここにはよく来るからな」
劉備「もしかして、来る度に店の中が空っぽになってたりしないだろうな」
張飛「なんで分かったんだ?」
劉備「……」
19 :
◆SOkleJ9WDA
[sage]:2012/12/21(金) 21:08:57.33 ID:96OKjMcIO
しかしもの凄い食事っぷりだった。張飛はまるで空腹の狼が獲物を食い漁るが如く肉を口に運び、湯水を浴びるが如く酒を飲んだ。
一方の俺も空腹ではあったので負けじと飲み食いしようとしたのだがとても張飛には追いつかなかった。
劉備「あれだけあった肉と酒がここまで減るとは…」
張飛「はっはっは!俺はまだまだイケるぜ!」ガツガツ
劉備「あれだけ頼んだのもなるほど、納得した」
劉備「しかしこれ物凄い代金になるんじゃ…」
張飛「そんな事心配しなくてもいい!俺の財産はこんなものじゃ欠片も減らないぞ」
劉備「え!?」
張飛「ほらほら、まだまだあるんだからどんどん食え食え!」
劉備「お、おう…」
劉備(もしかして張飛って相当な金持ちなのか…?)
20 :
◆SOkleJ9WDA
[sage]:2012/12/21(金) 22:03:43.95 ID:96OKjMcIO
一体何者なのかと思案していると一人の女性がこちらにやって来た。
???「随分楽しそうだな、相席してもいいだろうか?」
それはとても美しい女性だった。身長は張飛よりも更に高いだろう。目を引くのは腰まで伸びる髪、今まで見たどの女性の髪よりも美しく洗練されていた。そして大人の気品を漂わせるグラマラスな身体。
張飛「おお!どうぞどうぞ!」
???「それじゃ…」
女性は席に腰を下ろす。
張飛「ささ、飲んでくれ飲んでくれ」
???「いや、私の分は自分で頼むから気にしないでくれ」
張飛「いやいや、相席したのもなにかの縁だと思って奢らせてくれ」
張飛は柄杓が底に付く程酒の減った樽から新しい盃に酒を注ぐと女性に手渡す。
???「そこまで言うのならご馳走になるとしよう」
21 :
◆SOkleJ9WDA
[sage]:2012/12/21(金) 22:41:55.51 ID:96OKjMcIO
程なくして俺たちは昔からの友人の様に話しに華を咲かせた。
???「そうなんだ。私は弱い民草を踏みにじる輩に限界が来て…」
劉備「斬ったのか?」
???「あぁ、おかげで逃げる羽目になってここまで来たんだ」
張飛「いや素晴らしい!これこそ正に義侠の鏡だ!」
劉備「うん、誇れる事だと思うぞ」
張飛「うんうん…おい!もう酒はないのか!」
店主「もうねえよ!」
劉備「まさか本当に店が空になるなんて…」
女性の食べっぷりももの凄いものだった。張飛に負けず劣らず、むしろ張飛よりも平らげていたのではないだろうか
張飛「まぁ、腹も一杯になったしそろそろ出るか」
劉備「そうだな…あ」
張飛「どうした?」
劉備「まだ俺たち自己紹介もしてないんじゃないか?」
???「おお、そういえば」
関羽「それでは私から。私は関羽雲長、河東郡の出身だ」
劉備「俺は劉備玄徳、ここの出身だよ」
張飛「俺は張飛翼徳、同じくだ」
関羽「うん。ではまた何処かで、また酒でも飲もう」
22 :
◆SOkleJ9WDA
[sage]:2012/12/21(金) 22:55:38.13 ID:96OKjMcIO
張飛「…!そうだ!ちょっと待ってくれ」
関羽「ん?」
張飛「俺たちはこれから義勇兵として戦おうと思っている。もし良かったら一緒に来ないか?」
劉備「そうだな。仲間は多い方がいい」
関羽「おお、それは丁度いい。私も義勇兵になろうと思っていたんだ」
張飛「では三人で共に戦おう!」
劉備「おう!」
関羽「ああ!」
これが俺たちの出逢い。俺たち三人の出発点だったのだ。
23 :
◆SOkleJ9WDA
[sage]:2012/12/29(土) 22:31:35.93 ID:i8njS1pIO
ーーーーーーーーーーーーー
見渡す限りの畑。その中に一際目立つ豪邸が聳え立っていた。
劉備「……」
関羽「……」
張飛「……どうした?」
劉備「いや…随分な豪邸だな、と」
俺たちはあの後張飛の家に向かう事になりここまで来たのだった。
24 :
◆SOkleJ9WDA
[sage]:2012/12/29(土) 22:32:30.22 ID:i8njS1pIO
張飛「この辺りは全部俺の土地なんだ。屋敷の裏には桃園もあって…ああ、今頃満開だな!」
劉備「なんという…」
関羽「凄まじいな」
まさかここまでとは夢にも思っていなかった。一体張飛とは何者なのだろうか…
呆気にとられる俺と関羽を尻目に張飛は重そうな鉄の門を開くと俺たちを中に招き入れた。
25 :
◆SOkleJ9WDA
[sage]:2012/12/29(土) 22:33:20.65 ID:i8njS1pIO
使用人「お帰りなさいませご主人様」
広く整えられた庭を抜け、これまた大きな扉を開くと使用人が出迎えた。
張飛「おう」
使用人「ご主人様、先ほど客人がお見えになりまして…」
張飛「客人?どうしたんだ?」
使用人「お待ちになられて…「おお、張飛殿」
???「ご無沙汰しております」
26 :
◆SOkleJ9WDA
[sage]:2012/12/29(土) 22:34:14.27 ID:i8njS1pIO
現れたのは二人の男。一人は髭を生やし、顔に沢山の皺のある中年風、もう一人は若々しく笑顔を振りまいている青年だ。そして二人共行商人の様な服を着ている。
張飛「張世平殿に蘇双殿か!」
劉備「張世平に蘇双…」
関羽「もしかしてあの豪商の」
張世平「いかにも」
張世平と蘇双はこの辺りでも名の通った豪商だった。主に馬などを扱って各地を渡り歩いているとか。
27 :
◆SOkleJ9WDA
[sage]:2012/12/29(土) 22:35:31.37 ID:i8njS1pIO
張飛「それで二人共今日はどのような用事で?」
張世平「いや、つい先ほど涿に来ましてね。張飛殿が義勇兵になるとお聞きしたもので…」
張飛「何故それを?」
蘇双「酒屋で大声で宣言したらしいじゃないですか」
劉備「宣言した訳じゃないと思うんだけどな…」
張飛の声がやたらと大きかったので宣言していたように聞こえたのだろう。
28 :
◆SOkleJ9WDA
[sage]:2012/12/29(土) 22:36:41.67 ID:i8njS1pIO
張世平「それにそこの御二方」
劉備「ん?」
関羽「なんだ」
蘇双「御二方には張飛殿と同じ強き力を感じる」
張世平「特に殿方、貴方はきっと将来大物になる」
劉備「お、俺が?」
蘇双「世平殿の人物眼は確かですよ。それに私も貴方がなにか特別な力を持っているように見える」
張飛「やはりな!俺の目も間違っていなかった」
劉備「そんな…俺は大したものじゃない」
29 :
◆SOkleJ9WDA
[sage]:2012/12/29(土) 22:37:27.92 ID:i8njS1pIO
張世平「御二方の名前をお伺いしても?」
劉備「劉備…」
関羽「関羽だ」
張世平「劉備…!?もしや先代は靖王劉勝ですか?」
張飛「なに…!?」
関羽「……」
全員の視線が俺に集まる。固唾を飲む…とまではいかないまでも緊張感が走った。
劉備「…確かに。先代は中山靖王劉勝に当たります」
張世平「やはり…!!」
30 :
◆SOkleJ9WDA
[sage]:2012/12/29(土) 22:38:05.60 ID:i8njS1pIO
関羽「まさか皇族の血縁者とは」
劉備「や、やめてくれ!劉勝の末裔なぞ沢山いるし俺はただの落ちぶれた士族の人間だ」
張飛「いや、例え子孫が沢山いると言えど高貴な血を引いているのは確か。それを何故謙遜する?」
劉備「今や漢王朝は衰退し帝や王を崇拝する人間なんて少ないだろう。それに黄巾の乱も起きて世は乱世に入ろうとしている。誰も劉勝の名を出したって…」
そうだ。時代は変わっている。例え高貴な名を持っていても力がなければ全く意味など持たないのだ。
蘇双「なれば」
31 :
◆SOkleJ9WDA
[sage]:2012/12/29(土) 22:39:01.53 ID:i8njS1pIO
張世平「貴方が王朝を立て直せばいい」
劉備「!!?」
劉備「な、そんな事…!」
張世平「出来ますよ。靖王の血とその潜在能力と、謙虚な心を持ち合わせた劉備殿なら」
なんて事を言う人なのだろう。俺なんかにそんな事出来るはずが無い。だが…
32 :
◆SOkleJ9WDA
[sage]:2012/12/29(土) 22:40:52.29 ID:i8njS1pIO
張飛「……面白い。実に面白い!!」
関羽「はっはっは!確かに、なら私たちで漢王朝を立て直してみせようじゃないか!」
張飛「もちろんかつてのようなではなく、新しいものをな」
この世の中にはうんざりしていた。つまらない世の中から抜け出して新しいものをみたかった。
だがこの大陸全ては今や滅びかけている王朝が支配している。どこへ行ってもきっと同じなのだろう。
33 :
◆SOkleJ9WDA
[sage]:2012/12/29(土) 22:41:33.03 ID:i8njS1pIO
ならば…新しいものを作ればいい!
それに…
劉備「関羽、張飛。三人ならなんとか出来るかも」
張飛「へへっ」
関羽「勿論だ!」
この三人なら、なんでも出来る気がした。
34 :
◆SOkleJ9WDA
[sage]:2012/12/29(土) 22:42:13.65 ID:i8njS1pIO
張世平「その為に私たちも力を貸しに来たのです」
蘇双「私たちの資産から資金を提供しましょう。馬十頭にありったけの金銀を乗せてあります」
劉備「しかし…そんなに受け取っても返せるか…」
張世平「返す必要などありません。貴方がたが名声を持つようになれば、それを助けたという名声が私たちにも付きます」
蘇双「私たちは名のある豪商、絶対に美味い話にしか投資はしませんよ」
張飛「張世平殿に蘇双殿、恩に着ます」
関羽「感謝致す」
劉備「……ありがとうございます」
35 :
◆SOkleJ9WDA
[sage]:2012/12/29(土) 22:42:43.93 ID:i8njS1pIO
張世平「それでは私たちは行きます」
張飛「では見送りを」
蘇双「結構。その時間を使っていち早く名を上げてもらわなければ」
そう言って張世平と蘇双は去っていった。
36 :
◆SOkleJ9WDA
[sage]:2012/12/29(土) 23:00:30.93 ID:i8njS1pIO
ーーーーーーーーーーーーー
劉備「見事だな…!!」
関羽「素晴らしい…」
張飛「そうだろそうだろ!」
俺たちは張飛の桃園に来ていた。沢山の桃の木が花を咲かせ、花びらがヒラヒラと舞っていた。
一番大きな桃の木の下に酒と肉を並べ、話にも桃に負けないくらいの話を咲かせる。
劉備「俺たちは、やるぞ!」
俺は立ち上がると腰に差していた二対の剣を引き抜き掲げた。
関羽「ああ、やろうじゃないか!」
関羽は脇においてあった龍の飾りのついた青龍偃月刀を同じように掲げる。
張飛「俺たちなら出来る!!」
同じく張飛も木に立てかけてあった身の丈の倍はありそうな蛇矛をドンと地面に立てた。
これらは張世平と蘇双に貰った資金で作った。
37 :
◆SOkleJ9WDA
[sage]:2012/12/29(土) 23:08:39.15 ID:i8njS1pIO
俺たちはこの桃の木の下で義兄妹の契りを交わそうとしていた。
俺たち三人でこの大陸を変えてみせよう。
俺たち三人で一緒に戦おう。
俺たち三人ならなんでも出来る。
契りを交わそうと言い出したのは張飛だったのだが誰も異論を唱える事は無かった。
俺が一番上で関羽が次、張飛が一番下という事になった。
関羽「靖王の末裔である玄徳が兄になった方がそれらしいだろ?それに張世平殿と蘇双殿も玄徳を特に気に入ってたようだし」
張飛「それじゃあ雲長が次だな。俺より大人っぽいし綺麗だ」
関羽「おいおい、そんな事は無いぞ」
張飛「いいんだよ。俺は一番下になって二人を支えるさ!」
だそうで。
38 :
◆SOkleJ9WDA
[sage]:2012/12/29(土) 23:12:06.82 ID:i8njS1pIO
我ら三人、姓は違えども兄弟の契りを結びしからは、
心を同じくして助け合い、困っている者たちを救おう。
上は国家に報い、下は民を安んずることを誓う。
同年、同月、同日に生まれることを得ずとも、
願わくば同年、同月、同日に死せん事を
39 :
◆SOkleJ9WDA
[sage]:2012/12/29(土) 23:14:29.18 ID:i8njS1pIO
俺たちは、血は繋がらなくても心の繋がった「義兄妹」になった
序章ー旅立ちの誓いー
40 :
◆SOkleJ9WDA
[sage]:2012/12/29(土) 23:40:23.84 ID:i8njS1pIO
人物名鑑
劉備玄徳 延熹4年(161年)〜 章武3年4月24日(223年6月10日)
三国志演義の主人公で蜀漢の初代皇帝。桃園で関羽、張飛と義兄弟の契りを交わす。
公孫瓚、曹操、袁紹、孫権などの元を転々とし最終的には益州の劉障を降伏させ、そこを居に魏、呉と天下を争う。
呉に関羽を殺されて報復に江陵まで大軍を率いて攻撃(夷陵の戦い)するが陸遜の火計により大敗。その後白帝城まで退却しそこで息を引き取った。
関羽雲長 ?〜建安24年(219年)12月
劉備、張飛とは義兄弟であり、見事な顎鬚を蓄えていた事から美髯公とも呼ばれた。
劉備と共に各地を転戦し、劉備軍の要として戦った。人並み外れた武勇を持ち、とても義に厚かった。
劉備が益州に入った後は荊州に残り、最後樊城で魏、呉連合軍に敗れ処刑されるまで守り抜いた。
張飛翼徳 ?〜章武元年(221年)6月
劉備、関羽とは義兄弟であり、酒豪で孫子兵法を愛読していた。
劉備と共に各地を転戦し、その武勇を存分に振るった。
長板では数十騎と殿として長板橋に残り大喝、曹操軍数千を退けた。
劉備の呉侵攻の際、劉備本隊と合流する手筈だったが、処罰などを好み部下に疎まれていた為、裏切りに会い殺害された。
張世平 蘇双
中山の馬商人。劉備らの挙兵の際に資金提供をした。
41 :
◆SOkleJ9WDA
[sage]:2012/12/29(土) 23:43:11.64 ID:i8njS1pIO
あまりにも桃園の誓いまでが長いのでだいぶはしょりました。最早夷陵までたどり着くか…
頑張って書いていこうと思っているのでどうぞよろしくお願いします
三国志は本当に大好きなので書いていく中でみなさんの意見なども聞けたら嬉しいです
42 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/12/31(月) 14:00:58.53 ID:NwbhT14M0
次からは黄巾の乱か。曹操とか孫堅とかどの程度絡ませるのかな。
張世平とか蘇双とかを出すってことは人物もある程度はマイナーなところまで出すんだろうか。
なんにせよ乙
43 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/05(土) 21:16:37.27 ID:Cs0Lyx6jo
乙
期待して待ってるよ
44 :
◆SOkleJ9WDA
[sage]:2013/02/01(金) 23:51:41.03 ID:jjltHgsIO
すいません。劉備が南陽に向かって孫堅と合流して共闘するっていうシーンを書いていたのですが納得のいく戦闘描写が書けないので一旦HTMLします。期待しててくれた方には本当に申し訳ないと思いますが何卒ご容赦の程を……
また改めて立て直ししたいと思うのでその時はよろしくお願いします
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