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女友「おんなー、何見てるの?」 女「んー? 別に」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/20(木) 00:25:12.34 ID:QrRoKKZ00

校舎の枯れ木の隙間から

覗いて見てるのは ギターを弾いてる姿

2階のベランダから女の子

きれいな花を愛でるような目をして

心の中 少年を抱きしめる



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1355930711
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秘境 @ 2025/06/10(火) 00:47:53.81 ID:BDVYljqu0
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【安価】上条「とある禁書目録で」鴻野江「仮面ライダー」【禁書】 @ 2025/06/09(月) 21:43:10.25 ID:qDlYab/50
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ツナ「(雲雀さん?!)」雲雀「・・・」ビショビショ @ 2025/06/07(土) 01:30:36.87 ID:AfN9Rsm0O
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【安価コンマ】障害走を極めるその5【ウマ娘】 @ 2025/06/06(金) 01:05:45.46 ID:RaUitMs20
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貴様たちの整備のお陰で使いやすくしてくれてありがとう @ 2025/06/04(水) 20:56:21.03 ID:QjuK6rXtO
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阿笠「わしの乳首に米粒をくっ付けたぞい」コナン「は?」灰原「は?」 @ 2025/06/04(水) 04:01:13.39 ID:ZjrmryLdO
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レッド(無口とか幽霊とか言われるけどまだ電脳世界) @ 2025/06/02(月) 21:21:00.13 ID:ix3UWcFtO
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/20(木) 00:26:52.84 ID:QrRoKKZ00

彼女はいつだって

少年の中に 自分を見てる

誰だってそう

僕らはいつだって

誰かの中に

自分を見てる
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/20(木) 00:30:13.58 ID:QrRoKKZ00

今カノ「男ってギター弾けるの?」

男「ああ。…誰から聞いた?」

今カノ「このあいだ男友君たちと飲んだでしょ?その時に言ってたの」

男「なんて?」

今カノ「え、えっと…『高校のときバンドやってたんだ』って」

4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/20(木) 00:33:04.09 ID:QrRoKKZ00

男「それだけか?」

今カノ「うん…どうかしたの?」

男「いや…別に、なんでもない。昔を思い出してさ。ずいぶん懐かしいなって」

今カノ「ふーん…あ、ね、じゃあ何か弾いてよ」

男「いいよ。ならクローゼットから出してこなくちゃな」

5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/20(木) 00:36:10.10 ID:QrRoKKZ00

高校生活
-もう昔、でもとても、とても大事な日々-


女友「おんなー、何見てるの?」

女「んー? 別に」

女友「あ、男くんでしょ」

女「うん」

女友「…好きなら、気になるなら、声かけてみたら?」


6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/20(木) 00:38:35.73 ID:QrRoKKZ00

女「好き…か…いいの、まだ」

女友「まだ?」

女「そう。まだ他人のまま、自然にすれ違いたいの」

女友「アンタ、変わってるわよね」

女「分かってるわ。でもいいの」
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/20(木) 00:49:12.27 ID:QrRoKKZ00

軽音楽部 部室

-AC/DC、ミッシェルとブランキー「ガタガタ言うな」talk is cheapのポスター-


先輩「ブルースセッションしようか」

男「いいすねー!キーはAでいいすか?」

「いいよ」 「少しスローにするわ」


ギターのターンアラウンドが教室に響く
ドラムが静かに踊りだして、ベースが空間を囲む

そうして骨組みをつくると
そこに詳しい色彩を加えるのは、ピアノとギターの仕事だ


身体の芯が無意識に震えを刻みだす
この感じ、ソロをどう弾くか、考えたら最後、いいものは出ない

ただ何も考えず、何かに任せて、スケールをなぞれば
それが1番しっくりした表現になり、自然なラブストーリーになり
自分自身のプレイになる




8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/20(木) 00:56:51.29 ID:QrRoKKZ00

曲の進行、キーがDになると
ギターは10 12フレットの土を潜り掻き分け
Eric.cの手癖へ曲が吸い込まれていく

先輩のピアノは、さっきからずっと、ドットのように
すきまへ、青を塗りたくって

心臓のドラムの脈が、ほんの少し上がる

ベースは低く厚い壁を、ドローンさながら
仲間を、空間を、包み込んでいく


高校はこの感じのために行っていた
他には行く理由がなかった

あの子に会うまでは

9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/22(土) 20:11:13.78 ID:jTJCLV1P0

今でも憶えてる


その日は高校をサボってウィスキーの小瓶と
海辺を1日中歩いてみようと思っていた

身体の内側、胸の辺り、何かジェル状のものがベットリとしていて
感情が爆発しそうで、どうしたらいいのか分からず、ただただ抑え込んで。

抗えば抗うほど、そいつは力を増していて
抑え込むには、もうかなりギリギリのところまできていた


そいつを思いっきり吐き出したい

けど、その何かが分からなかったから、身体を動かし、毒を飲み治癒力を高めてから
あとは自然に委ねるために海へ行こうと思っていた
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/22(土) 20:16:40.67 ID:jTJCLV1P0

3限目と4限目のあいだ

この日は推奨服じゃなく私服だったおかげで
この時間に歩いていてもヒマな大学生くらいにしか見られない

私服の警官や指導員も声をかけてはこないだろう


nixonの黒いリュックを背負い、門を飛び越える

あとは小瓶を買って電車に乗る

近くのセブンへ向かおうと決めたとき、うしろから声がした

11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/23(日) 01:20:43.61 ID:uxHlwJQ00

女「あの…これ」

男「?」
振りかえる

男「ああ、イヤホンの」
顔を上げる

一瞬、時が止まったのが分かった

なぜ分かったのかは分からなかったけれど

止まったのは間違いなく彼女がそこにいるからだった


彼女を見る
時が止まる

…そこから先は思考が追いつかない

あとは…
何となく、しっくりくる感じ
この感じは一体なんだ?
今まで感じたことない、この感じ

何となく手放しちゃいけない気がして
手放すと、自分が壊れてしまう気がして

それすらすぐ忘れて

ただ、この時の今はずっと、彼女だけを見ていて



女「…どうかしたの?」

12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/23(日) 01:39:25.86 ID:uxHlwJQ00

思考が戻る

…美人だった

おそらく学年で1番の美人だった

カワイイタイプじゃなくて、輪郭は小さく、整った美しい顔をしている

そういう女性がブレザーの制服を着崩すことなく、ただ立ってるだけで
清楚な立ち振る舞い、清楚な踊りを想わせるから
これが最先端の日本美人なのだろうと感じていた

二重の大きな目に、瞳は色を際立たせ、光の衣装を飾り付ける

吸い込まれるように見つめていた


今までなぜ気にならなかったのか、正直今でも不思議なんだ

13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/23(日) 13:07:19.85 ID:uxHlwJQ00

男「いや…ありがとう」

彼女と一緒に行きたい

今思えばずいぶん勝手だが
意識せずに、もう腕を取っていた

女「えっ?」

キーンコーン…
チャイムが鳴る 4限が始まる

ずっと門の前にいるのは上手くない 教師に見つかると面倒だ


学校からすぐのところ

女「あ、あの…」

まだ手を掴んで、グイッと引っ張るように歩いていた
安全そうな所で止まる

手を放す
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/23(日) 13:10:48.83 ID:uxHlwJQ00

男「無理やり、すみません」

女「いえ…」

男「ここから、海まで一緒に来てほしい」

女「…え?…でも…」

横島ナルコ先生「おーい、そこで何してんだー」

女「!」

見つかったか

女「ごめんなさい、あの…わたし学校、行くね。はい、これ」

インナーイヤーのゴムパーツを受け取る
門を飛び越えたときポケットから落ちたらしい

Lサイズ…Lose…ではない
あきらめる、とか、失敗とか、そんな次元の話じゃないと感じていた

何となく、どんな形であれ、関わり合う気がしていたから
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/23(日) 13:18:10.26 ID:uxHlwJQ00

男「…ありがとう。頼みごとしてもいいですか?」

女「なんでしょう?」

男「ナルコさんに、先生に、病院行くから早退するって伝えてもらえますか?」

女「…分かりました」

男「どうも。それじゃ」

あの人には(担任っていうのもあるが)何となく心配をかけたくなかった
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/23(日) 13:21:49.54 ID:uxHlwJQ00

テクテク
女「おはようございます」

ナルコ「おはよー。男は?」

女「病院に行くから早退しました」

ナルコ「あーそう。アイツまたサボりか」

女「…」

ナルコ「ま、そういうときもあるわねー」

女「先生は男くんのこと、買ってるんですね」

ナルコ「…」

ナルコ「と、いうより担任してると分かるのよ。そのまま放っておく方が良い時もあるって」

女「…」

ナルコ「あ、女、今日のひる職員室きて。英語係の仕事があるから」

女「はい。分かりました」

17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/23(日) 14:37:37.52 ID:uxHlwJQ00


後悔はしていない



反省はしている


もっと上手いエスコートがあったはずだ

だが考えない
こういう反省はたいてい

シャワーを浴びてるとき、歩いてるとき、そうじしているとき、歯を磨いているとき

ふと思い出し、苦い思いをする

だがいずれ、ベターが分かるもんだ だから考えない
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/23(日) 14:38:50.51 ID:uxHlwJQ00

見上げる
頭上の青空をジェット機が飛んでいく

力を抜いて

力を抜いて歩き出す

空へ、旅に出ようと思った

けっきょく海には行かず、小瓶すら買わず、そこからひたすら歩いた


各国それぞれの飛行機が離陸し、飛行し、着陸した後までの環境音を収録したアルバム

International Airport ヨーロピアン アトモスフィアーズ

iphoneから選択し、1度ゴムを落としたイヤホンを耳にねじ込んで街に潜り込む

耳はロンドン ヒースロー 視界は目の前の交差点

耳が得る情報と人と波、地に足をつけている感覚が、空と陸を行き来する

彼女にあってから、何だか心のフットワークが軽くなった気がする
ワクワクしてるこの感じ オレンジ色
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/23(日) 14:43:06.96 ID:uxHlwJQ00

あとは山崎まさよしさんがカバーした
RCサクセションのトランジスタラジオをずっと聴いていた

今となれば、内ポケットに入れるのはトランジスタラジオより
スマートフォンのラジオアプリかもしれない

ベイエリア、リバプールを飛び越えた衛星から
インターネット回線を通じて、世界中のほとんどあらゆる音楽を聴くことができる


君の知らないメロディー きいたことないヒット曲


門の前ではじめて喋った彼女に、聴かせてあげたいと思う


内ポケットにいつも oh トランジスタラジオ
彼女 教科書ひろげてる時 ホットなナンバー
空に溶けてった

Ah こんな気持 Ah
うまく言えたことがない NAI AI AI



感受性が豊かになってるのを感じる

遠くからでいい 今でも明日でもいい もう1度、彼女に会いたい

そう思いながら、ただひたすら、今を歩き続けた

20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/16(水) 14:48:46.12 ID:u+J+GsiP0


昼休み開始のチャイムが学校中に響くと、それが合図。
あとは勝手に騒がしくなっていくのだが
その速度に高校生らしさを感じている生徒―それが女だった。

どうしてあんな風に騒げるのか分からなかったが、一方で羨ましくもあった。

思い出すのは男くんのこと。断らなければ良かった。体裁を気にして、素直になれない自分が嫌になる。

「どうかした?」
浮かない顔の女を見て、女友が話しかけた。

「なんでもない。大丈夫」

女から 大丈夫、というフレーズが出たときは逆に心配になる。
それが悟られないように、そう。何かあれば言いなよー、と女友は語尾を伸ばすが
女はすでに気づいているうえに、女友の、気遣いができる強さは彼女の魅力だと感じていた。

「ありがとう」
女は嬉しくて笑顔になる。
「ね、お昼、屋上行かない?天気いいし」
「あ、ごめん。英語係の仕事で職員室に行かなきゃいけないの」
そっか。女友は残念がったが、女王様によろしく、と冗談を言って教室を出て行った。

21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/02/01(金) 23:55:57.00 ID:y0677RqO0

女は職員室入口の前に立ち、廊下との境目を見つめている。
香るのはコーヒーと書籍、それにどことなく大人のニオイ。
それが嫌じゃないのはタバコの臭いがしないうえに、どことなく空気が落ちついているからだった。
女は気付く。
職員室は教室と全く違う世界だということと、今ここが大人と子供との境目なんだという閃き。
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/02/02(土) 00:34:55.62 ID:BsVNJ3Ib0

肩がたたかれる。女は振り向いた。
頬が人差し指でムニっと凹む。
可愛いじゃん、と指の主はふざけて微笑んでいる。

「またひっかかっちゃった」と女の残念がる顔を見ていた
加害者の男友は、クラスのもう1人の英語係で女とは小学校が一緒だった。
中学は家の距離のことがあり別々だったが、入学式に男友を見つけて女は少しホッとしていた。

当時、そのほかに顔見知りが誰もいなかった入学式のあと
女は帰宅してすぐにベッドへ倒れこんだ。
初日にこんなに緊張して、帰ったらすぐに眠くなるのも
学校生活においての恒例行事なのかもしれないと感じながら
女は横に丸まり、足を抱えながら深い眠りにつく。
このほんの少し前のことが、今はとても昔のように感じられた。
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/02/16(土) 01:24:40.09 ID:AYbR9MWa0

男友「ナルコさん、いた?」

女「まだ、みたい」

男友「早いとこ終わらせようぜ。メシまだなんだわ」

女「そうなんだ」


ここで昼の校内放送が流れる。
放送委員の諸連絡の後、歌い出したのは宇多田ヒカルだった。

Stay Goldのピアノの旋律が、昼間に似つかない夜を想わせながら校内に響きわたる。


男友は宇多田ヒカルの1stアルバムしか聴けない。
2nd以降の世界へ入ると、自分が犠牲者のような気持ちになると気付く。

犠牲者を例えるならカマキリのオスであり、男は聴いていると自分が苛立つのが分かった。
イライラは、誰かへの犠牲愛の心理的通過儀礼が彼女からは色濃く感じられるため、その苦しみから逃れようとする拒否反応だった。


中学からの親友である男も、彼女のファンであり-コンビニで年齢を偽り、買ったトリスを瓶ごと2人で回し飲んで-その話をした。

男も理解していて
「今度は嫌なりに、聴いてみたら?」と男友に提案してみた。が、その気になれない。
「そりゃ酷すぎる。だいたい、あんなに好きだったのによ」と荒々しくボトルに口をやり、夜空を見る。


メスの用が済んだあと食べられてしまうカマキリのオスを想うと
男友はメスに激しい怒りを感じた。
理不尽だろ、そんなの。
なんでそうなんだ?
勘弁してくれ。
ありえないんだよ。
俺は嫌だ。

捨てるのは、俺からだ。


そんな風に繰り返し、繰り返し感じ「誰かの為に何ができるのか?」とは考えず、また怒りが恐怖や不安からきているものだと分からず、ただ嫌だという気持ちを貫き通したい自分自身に気付いたとき
あんなに好きだった歌姫だったのに
初めて女性に触れるなら彼女がいい、と唯一神に祈るほど好きだった宇多田ヒカルのCDを
男友は、あっという間に全て売り払う。
そして、その金でAVを買ってすぐに捨てたのだった。


その話を聞いたとき、男にとってそれは「もう関わらないで」と何かへ伝えたがっている行為にも見えた。


男友「…」

女「…どうかしたの?」

男友「いや、なんでもない」
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/02/22(金) 22:39:49.10 ID:Dc3LqTYv0

ナルコ「おつ?いやあ?重い重い?はい、男友」ドサッ

男友「おっと、なにこれ?ワーク?」

ナルコ「新しいのが今ごろ着てさ。置く場所無いから配っちゃおうと思って」


『前頭葉ブレーキを外す、思春期問題集』

表紙には高架下にあるグラフィティアートのようなフォントで、そう描かれていた。
トップ絵は大きく、金髪のビートたけしさんが
笑顔で自身のこめかみに拳銃をブッ放している。
そして貫通した穴から
大小、様々な花が綺麗に咲き乱れていた。

全体が柑橘色で彩られた、この本がセリフを言うとすれば
『ワークも良いけど、今のうちに映画を観ないか?退屈なら大人の社会科見学はどうだ?この本だけじゃcleverとsmartの違いは分からないよ』だと、ナルコは感じ
首を傾けモノマネしようとするが、しっくりこなくて止める。
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/03/21(木) 12:22:24.14 ID:HDgt56gp0


男友「これをクラスに配ればいいの?」

ナルコ「そう、そんだけ。重いけどイケる?」

男友「大丈夫ですよ。俺、ナルコさんのためなら何でも出来ますから」

ナルコ「サンキュー。御礼に後でイイことして、あ・げ・る」

男友「よっしゃ。じゃあ期待しないで、待ってます」ペコ スタスタ

ナルコ「は〜い〜で、女は」

女「はい」

ナルコ「ちょっとこっちきて」


-英語科準備室-


ナルコ「これ、ホッチキスで留めるの手伝ってくれる?」

女「はい」


女 カチッ・・・サラサラ、スッ、トントン・・・カチッ・・・サラサラ、スッ、トントン・・・カチッ・・・

ナルコ カチッ・・・スーッ、トントン、カチッ・・・スーッ、トントン、カチッ・・・スーッ、トントン、カチッ・・・


ナルコ「今朝は残念だったねぇ」

女「・・・」

ナルコ「男、グイグイきてたのに」

女「ナルさんが止めるから」

ナルコ「そりゃあ、いちお教師だし?」

女「私の気持ち知ってるのに」

ナルコ「本当なら今ごろ、2人はどこに居っかねぇ」

女「ひどいです」

ナルコ「じょーだん。本当に聞きたいのは、身体。大丈夫だって?」

女「・・・はい。安静にしてれば、じきに治まるって」

ナルコ「そう・・・ま、なんかあれば何でもいいなよ。親戚なんだしさ」

女「うん…ありがとうございます。」


本当なら英語係の仕事はワークを配れば終わりだったが、ナルコは女が心配だった。

去年から親戚同士になり、初めて顔を見たとき、初めて会話したときから、2人はどこか息が合った。
すぐに同じ学校の先生と生徒だと判明し、お互い自分で珍しいと感じるほど
凸凹のピースがとてもうまくハマる。

真面目と不真面目、おとなしいと大胆、明と暗、愛するものと愛されるもの。

時には逆になり、

自然と楽しく笑い合い、話すことは何でもだった。

女はナルコの刺激が強すぎる話も
お腹が痛くなるほど-トびすぎていて異世界のよう-に笑った。
「ナルコらしさ」に愛しさを感じ、ナルコはその「純粋さ」を美しいと感じながら
想うのは、互いに『大切にする』という気持ち。

以来、何かあると女はナルコにメールを入れていた。
病院に寄ってから行きます、と今朝ケータイが鳴ると
ナルコは何となく気になって、女の母親に電話をし、詳しく話を聞いた。

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