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男「戦争?」幼馴染「そう、戦争」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/22(土) 02:32:33.19 ID:xlF1d5p40
※初SS。初心者。やりたいようにやります。

※台詞形式と地の文入り乱れ。戦闘シーンとか、描写入れたい時は地の文多め。

※エロとかあるかもね。グロもあるかもね。苦手だったらごめんね。

※安価も時々するよ。書き溜め少しあるけどすぐ切れるかも。

※更新は気まぐれかも。立て逃げにならないように頑張る。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1356111153
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VIPでTW ★5 @ 2024/03/29(金) 09:54:48.69 ID:aP+hFwQR0
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満身創痍 @ 2024/03/28(木) 18:15:37.00 ID:YDfjckg/o
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part8 @ 2024/03/28(木) 10:54:28.17 ID:l/9ZW4Ws0
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旅にでんちう @ 2024/03/27(水) 09:07:07.22 ID:y4bABGEzO
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にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:18.81 ID:AZ8P+2+I0
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にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:02.91 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459562/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/12/22(土) 02:34:36.87 ID:xlF1d5p40
 澄んだ夜の河原。心地好いせせらぎが耳に入るその場所に、二人の男はいた。

 一人は青々と茂る背の低い草の敷き詰められた斜面に寝そべり、一人はその横に片膝を立てて座っている。

 話題は、先に呟いた争いのことだった。

男「んなこと言ったって、僕らには関係ないでしょ」

幼「いや、でもさー。ちょっとなー。面倒な事になってなー」

男「……なんだよ」ウーン

幼「お前も知ってると思うが、あれだ。俺達傭兵にもお達しが来てるんだわ、これが」

男「あ?僕らは中立だろ?なんでそんなもの気にする必要があんだよ……」

幼「来てるもんは来てんだよ。お前、中身読んだか?」

男「いんや、即刻破り捨ててダストシュートしたわ」

幼「だよなだよなー。ま、俺もその口なんだが」

男「だったらなんでそんな話……」
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/12/22(土) 02:35:48.74 ID:xlF1d5p40
占い師「やっほー諸君、ご機嫌よう。それは私から説明しよう」ニュッ

男「げぇっ!?」ビク

幼「出たなニート」

占「はっはっは、その反応はいつも通りなことだ。好意的と受け取っておくよ」

男「珍しいな、基本的に家から一歩も出ない事を信条にしているくせに」

占「ああ、今君達の前に居るのは私の魔法で作り出した分体だ」

占「故に、そう。私は外に出てなどいない。素晴らしかろう」キリッ

幼「はいはいそれはまたすごいこって。……んで?そのめんどくさいことの張本人がなんの用だよ」ハァ

男「幼、どういう意味だ?」

占「それを今から説明するというのだよ、男君。これはそう、運命の歌劇と言っても相違ないことだ」

占「私はその主人公として君達を舞台に上げたく思っている」

男「あん?」

占「……事の発端は、二週間ほど前の星の降る夜の事だ。あれは素晴らしい流星群だったよ」ハッハッハ

占「そして私は、その星を眺めながら趣味の占いをしていた」

幼「占い師が自分の仕事を趣味と抜かすな」

占「はっはっは、それは違うぞ」

占「元々趣味なのだ。当たると評判だから、人が勝手に来て勝手にお金を置いていくだけのこと」

男「ガチでニートじゃねぇか!……それで当たるから質が悪いよな。ホント」

幼「そのお陰で助かったことがあるから、そこだけは評価するけどさ」

占「ふふふふふ、感謝したまえ。私とて、君達を気に入っているのだ。故に、助言は惜しまないよ」
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/12/22(土) 02:37:20.00 ID:xlF1d5p40
占「……話を戻そうか」

占「その時に私は知ったのだ。嗚呼、これぞ私の求めてきたことだと。君達が舞台で煌びやかに輝く星になる時が来たのだと」

男「気色悪いな、言い回しが相変わらず」

占「辛辣なことだ。しかし、だからこそゾクゾクする。胸をすくよ。この時を永遠に感じたいぞ、男君」

男「やめろ、気持ち悪い」

幼「カッハッハッ、好かれてんなぁ」

占「無論、幼馴染君。君も同じだよ」

幼「やめろ、鳥肌立ったわ」ゾワッ

占「そう言いながら、私の相手をしてくれる二人だ。ツンデレというやつかな?ん?」

男/幼「ぶっ殺すぞてめぇっ!!」クワッ

占「愛情表現と受け取ろう。愛しいな、嗚呼。……故に君達には此度の戦争へ赴いて欲しいのだ」
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/12/22(土) 02:37:50.69 ID:xlF1d5p40
男「何でだよ。つか、どういうことかもったいぶらずに言えよ」

占「この戦争で、君達の未来が左右される。そして、もしかすると私の未来もだ」

男「は?」

占「謂わば、溝に巣食う鼠の如き生活を送るか、それとも英雄として華々しい将来を勝ち得るか。そういう分岐点に、君達は立たされているのだよ」

占「私の見た未来とは、その二つだ。細かいことは分からぬが、男君、幼馴染み君。君達には是非、栄光を掴んで欲しいのだ」

男「ちょちょちょ、ちょい待て!いきなり過ぎだろお前、なあ!?」

幼「だから言ったろ?面倒な事になったって」

男「いや、でもよ。さすがにねーよ!んでもって、運命の分岐点だぁ?」

占「当たるも八卦、当たらぬも八卦だ。信じるならばそれで良し。信じぬならば、それもまた良し」

幼「百発百中の占い師様がなに言ってんだよ」

男「だから質が悪いんだよ!あー、くそっ!」

占「いやいや、私とて一人の人間だ。外すときは外す」

男「ほ、本当かよ」

占「かもしれない。今まで外したことはないけれどね」フフッ

幼「喧嘩売ってんのか!?」

男「待て幼!ここでキレるな!ペースにはめられるぞ!」

占「まあ、兎に角だ。私も溝鼠のような生活を君達に味わって欲しくはないのだよ」

男「だから、戦争に行けって?僕らは自由奔放な傭兵だぞ?」

占「役者が必要なのさ。これから起こる物語の主役が。それを君達に演じて貰いたいのだ」

幼「それだったら、ミスキャストも良いところだろ。俺たちゃただの凡人だぜ」

占「いいや、違う。そもそも、君達に輝く星は特異なものだよ。故に、気に入っている所もある」

占「今はまだ小さな、ほんの小さな星だが、これから輝きを増すだろう。強く、より強く。世界を照らす陽の光のように」

男「過大評価しすぎだっつの。僕らにそんな特別なことあったか?」

幼「この前運良くめっちゃうめぇキノコ見つけたな」

男「その前は鍛冶屋の千人様目の御客様ってか?」

幼「んなの、単に偶然だろ。特別でもねえ、ありふれたもんだ」

男「違いねぇな」ハハッ
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/12/22(土) 02:38:40.50 ID:xlF1d5p40
占(ふふ、今はまだと言ったがね。良いだろう。どちらにせよ、運命の賽は振られるのだ)

占「信じられないなら結構。私のそれは所謂指針だ。心の奥底にでも留めてくれたまえ」

男「そうするさ。今までだってそうしてたんだから」

幼「最終的にはそれで助けられることもあるしな。……気に食わねぇけど」ケッ

男「ま、何だかんだで僕らはあんたの言うことは信用してるからね」

占「喜ばしい限りだよ。私を信用してくれる人間など、殆どいないからね。まあ、こんな体で外界に出ているからだろうが」

幼「俺ぁ未だに半信半疑だがな。男はすぐ人を信用するなっての」

男「知るか。それにこれは正当評価だっての。占い師の占いはよく当たる。それに、胡散臭いけどいい奴だと思うし」

幼「こいつがいい人だぁあ!?んなわけねぇよっ!」

占「そこは幼馴染み君に同意するよ。私はそのような人間ではない」

占「……まあ、素直に嬉しいがね。男君、ありがとう」

男「今更だろ。何だかんだで付き合い長いしな」

占「ふふふ、そういう所も私は気に入っているよ」

占「……そろそろ時間かな。では、諸君。また何処かで会おう」ドロリ

男「溶けた!?」ビクッ

幼「相変わらず気持ちの悪い奴だな……」
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/12/22(土) 02:39:46.15 ID:xlF1d5p40


二週間後

男「結局、僕らは悠々自適に傭兵暮らし」

幼「蒐集は蹴り、特にお咎めもなく」

男「この田舎村で動物狩ったり」

幼「依頼で野盗をぶっ殺したり」

男「普段と変わらない生活を続けているわけだけれど」

幼「どうも、落ち着かねえ。そわそわするし、喉に小骨でも刺さってる気分だ。胸くそ悪い」

男「僕も同じ気分だよ、幼。身が入らないっていうか、なんというか」

男「……原因はわかってるんだけどさ」フゥ

幼「野郎のせいだよ間違いなく。ぶっ殺してぇ……」ブツブツ

男「それは少し言い過ぎじゃないかな」

幼「いいや、あの糞ニートがわけわかんねぇこと言うから、こんなんなってんだよ!」クワッ

幼「信じたくねえけど不吉なんだよ。胸のこう、奥辺りがざわつくっつうか、もやもやしていけねえ」

男「何だかんだで、やっぱ気にしてんのな」

幼「『当たるからこそ、胸糞悪い』んだよ」

男「……まあ、そういう気持ち、わからんでもないけどさ」タハハ
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/12/22(土) 02:41:27.73 ID:xlF1d5p40
幼「気持ち悪いんだよ、引っ掻き回すだけ引っ掻き回して、今の今まで何も起きちゃいねえ」

幼「嵐の前の静けさだったら、より気に食わねぇ。結局奴の言ってた通りじゃねえか」イライラ

幼「うぜえ、ああうぜえっ!あの薄ら笑いが頭の中に響いて止まねえっ!」ガァァアッ

男(相変わらず苛ついてると饒舌な奴だなぁ。わかりやすいからいいけど)

男(……しかし、まあ、これが幼の言う通り『嵐の前の静けさ』なら困る)

男(準備はしておくべきなのだろうか?何かある前に、何か出来ることを)

男(……つっても、その何かがわからないのだから、どうしようもないか)

男(占い師はあれから一度も顔を見せていない。進んで会いに行くのも、今は気が引ける)

男(幼風に言うなら、『まるで教えを乞いに行くようなもの』だから)

男(それは僕としても気に入らない。占い師も望まないだろう)

男(付き合いは長いが、僕らの距離感は絶妙に存在している)

男(関係の距離感。それは決して壊してはいけない。僕はそう思っている)

男(頼ってはいけない。それに身を委ねてはいけない。たまに向こうから会いに来て、話す。それだけで良いのだ)

男(――結局)

男「毒されてるのかもな、僕も」フッ

幼「あ?なんにだよ」

男「なんでもないよ」

男(だからこそ僕は、何かアクションを起こすべきなんだろうな)
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/12/22(土) 02:42:14.08 ID:xlF1d5p40


 山中に蹄鉄が土を叩く音が響く。疾風の如く駆けるのは、一匹の白馬だった。

 一定のリズムでパカラッ、パカラッ、と四脚を動かす其れは雄々しく嘶き走る。

 その手綱を握るのは、兵でもなく将でもなく、泥と土に汚れ所々破け、解れているドレス調の軽装鎧を纏う少女だった。

 手入れをしていないせいか髪はボサつき跳ね放題で、整っている筈の顔も薄く全体が汚れ、目元の隈が酷く目立っていた。

 不眠不休で森の中を走っているのだから、それも仕方がない。

「不覚だ……。まさかこれほどとは」

 少女はそう呟くと、人を惹き付けるような光を持つその瞳で前を見る。

 後ろは振り向かない。否、見るつもりがない。

 後ろを向けば否応なしに現実が見えてしまう。知っているからこそ、彼女は見ないのだ。

 その後ろを走る臣は何処にもいない。かつて、自分が率いた存在は何処にもいない。

 散り散りに、バラバラに、この森の中へと逃げ込んだ。

 ある者は囮となって。ある者は合流することを約束して。

 少女は今この時、独りだ。誰もいない。誰もいない。

 しかし、走り続けなければならない。少女にはその責務がある。

(犠牲を無駄にしてしまう訳にはいかない。ならば、せめて、生き残らなければ)

 思いはそれ、唯一つ。

 馬が嘶く。振り切れと。少女が歯噛みする。堪えろと。

 やがて、森の切れ目が現れる。

 少女はそれに向かって馬の腹を蹴り、加速させる。

 そして、彼女がそこを抜けると。

「そんな、馬鹿なっ……!!」

 かつて見知った誰かの頭を矛先に吊し上げ、平原に規則正しく並んだ戦列が姿を現したのだった。
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/12/22(土) 02:43:04.05 ID:xlF1d5p40


 青年は、ひた走っていた。

 胸の奥でざわめく不吉で奇妙な感覚を抱きながら、その二人は走っていた。

 男は風を切るように姿勢を低く屈めて、羽織っている古臭さのあるクリーム色の外套をはためかせる。

 髪は短すぎず、長すぎず。腰には二本の直刀。漆塗りされた鞘が黒く光っている。

 男は枝を跳ぶようにしてその上を移動していた。

 最小限の動きで枝をバネに、跳び移りながら視野を拡げつつ先の様子を見る。

 女の様な顔立ちだが、その眼光は鋭く、喉には男の象徴である突起がある。

 髪は長く、馬の尾の様に結んでいた。背中には約二メートル程ある無骨な太刀とそれを納めている鞘がベルトで固定されていた。

 二人は、備蓄の為に近隣の森へと入り獣を狩っている最中だった。

 だが、どうも森の様子がおかしい。苛立っている。ざわついている。警戒している。普段とは違う。

 おかしいと、その疑問を持ちながら二人が奥へと進むと見つけたのは足跡だった。

 地面に刻まれていたのは凹のあるU字の刻印。それが何のモノによるものかを、二人は直ぐに思いつく。

 馬だ。野生のではない。この森に馬は生息していない。大きさを見るにこの馬は豪馬だ。

 故に二人は狩りを中断してこの足跡を追っていた。

 胸騒ぎがするのだ。何かあるのではと、第六感が二人に告げている。
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/12/22(土) 02:44:01.67 ID:xlF1d5p40
「メンドくせえ。ああ、面倒だ。なんでこんなんがここにいんだよ」

 吐き捨てる様に言ったのは幼馴染である。秀麗な眉を顰ませ、彼は前方を警戒する。

 ここは東国の国境沿い近くの田舎村。山に囲まれ、殆ど誰も訪れる事のない場所。

 誰も訪れる事がないのは、少し離れた平原に一つ、補給地点として栄える町があるからである。

 故に田舎で、誰からも忘れられている。だから二人はこの地に訪れていたわけだが。

「言ってても埒があかないっしょ。とりあえず、確認しないとさ」

 男が先の呟きに言葉を紡ぐ。

「確認?ああ、確認は必要だな。それで『何かあるのかもしれねえし』」

 苛立っているのか荒く、そして含みのある口調で幼馴染が答える。

 そも、この二人の胸騒ぎはとある人物による占いのせいである。

 その占いが、巷で百発百中と評判で、長いこと付き合いのある人物のモノだから、このイベントらしい出来事が二人の心を掻き乱す。

 ――溝に巣食う鼠の如き生活を送るか、それとも英雄として華々しい将来を勝ち得るか。
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/12/22(土) 02:45:27.75 ID:xlF1d5p40
「今の今まで何も無かった。だから外れただなんて、あの野郎に限ってありえねえ」

 聞こえてきたソレを耳に入れつつ、幼馴染は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

 嵐の前の静けさがあった。蒐集を蹴ったその時から、この出来事は決まっていた。

「故に、だから、か。これが運命とでも言いたいのか?」

 感じる気配に苛立ちを覚えるのは、幼馴染だけではない。

 男もまたそうだ。言葉の端に出て、誰に言うでもなくごちる。

「どうするよ。このまま突っ込むかい?それとも逃げるか?」

 何が起こっているのは確実だ。だが、二人は見つかっていない。

 故に、幼馴染は尋ねる。

 男は立ち止まると、思案する様に顎に手を当てる。

 ここで、どうするか。

 彼らは軍に所属する兵ではない。中立を貫く傭兵である。これは国家によって、この世界全体で決められていることだ。

 故に、ここで下手に動くことは出来ない。この先に進めば待っているであろう『戦い』に関わる関わらないも問題である。

 関わえば勿論、どちらに付くかが問題となる。

 いや、それ以前に『依頼』があって関わるのではないのだ。報酬などありはしない。

 ここは国境近くの田舎。故に待っているのは間違いなく先に話題となった『戦争』の一端。

(占い師は戦場に赴けと言っていた。溝に住む鼠になりたくなければ、行けと)

 半月前の会話。胸の奥底にしまっていた言葉を思い出す。
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/12/22(土) 02:46:35.76 ID:xlF1d5p40
 そして、それは確実に当たる。『間違いなく』。『知っているから』。『わかりきったことだ』。

「行くしかないっしょ。じゃなきゃ僕たちは溝の鼠だ」

「カーッ!嫌だ嫌だ、結局野郎の言うとおりじゃねえか、ムカつくぜ」

「しゃーねぇだろ。あいつの占いは当たるんだよ」

 言葉を交わし、地面に降りてきた幼馴染と並んで男はやれやれと肩を竦めた。

 幼馴染は唾を吐き捨てると、首を回して鳴らす。

「ま、そうだがね。お前が決めたんなら行くぜ、兄弟」

「そうかい。んじゃ、恨みっこなしだぜ、兄弟」

 そして踏み出す。走る。並走する。森の中を疾駆する。

 やがて見えた、一筋の切れ目。その先に待つのは戦場で、殺し合いの場。

「お?」

「おお」

 踏み入れる。殺気を感じる。誰かが取り囲まれている。そして上空に。

「召喚獣、ねぇ」

 巨大な魔法陣から顕れる、帝龍の姿があった。
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/12/22(土) 02:47:31.99 ID:xlF1d5p40


「では、一つ。皆様私の歌劇をご観覧あれ」

 黒と白の空間の中で、誰かが誰かに向けて言葉を紡ぐ。

「その筋書きは在り来たりだが、役者が良い。至高と信ずる」

 其れは男のようで、女のようだった。老人のようで、若人のようだった。

 実体があるようで、影のような存在だった。

 ボロボロのローブを身一つに纏った其れは、楽しそうに、愉快に語る。

「故に、面白くなると思うよ」

 クスクスと笑いたいのを堪えて、演じるように言い放つ。

 ――役者が良ければ舞台は至高。そう言いたいわけではないが、この口上にそれは似付かわない。

 故に、言い切る。これから始まるのだ。其れが望んだ事が。舞台に上がるのだ。主役が、そうであって欲しい者達が。

「この世界は荒れる。狂う。そして、訪れるだろう、終焉が」

 上を仰ぎ見ながら、空間に渦巻く銀河を、輝き続ける星々を指でなぞる。

「必要なのだ、英雄が。必要なのだ、それに足る星が」

 語りながら占う。この先を案じる様に、彼らの、そして世界の未来を。

「私を救ってくれ、男君。私を助けてくれ、幼馴染君。この不安を君たちで拭ってくれ」

 結果を見て、其れは縋る様に二人の名を紡いだ。

 運命の歯車は噛み合い、回り始める。開演だ。幕は上がった。ならば後は演じるだけ。

「私の願い。叶えてくれることを、切に願うよ」

 瞳を閉じて、其れの姿は消えていく。
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/12/22(土) 02:48:39.10 ID:xlF1d5p40
















                            ヒロイック・テイル
                    ――さあ、此度の英雄譚を始めよう――










16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2012/12/22(土) 02:51:15.76 ID:xlF1d5p40
プロローグ終わり。最後ずれた。書き溜めも切れた。これからちょくちょく更新していきます。
あ、>>1に書き忘れたけど、ちょこちょこっと行動指定安価も出します。
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/30(日) 20:43:30.18 ID:zfLXzIjEo
前に同じようなスレタイ見たことあるけど別物?
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