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超古代勇機ロト - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/05(土) 17:11:39.44 ID:cFKtRG+n0
よくある勇者系SSが
もしもSFロボットものだったらっていう
ひねくれ厨二SSです

いろいろオマージュ入ってますが
寛容な目で見て頂きたく……
ゆっくりのんびりよろしくお願いします

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1357373499
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713798788/

【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
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ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713736565/

【安価】少女だらけのゾンビパニック @ 2024/04/20(土) 20:42:14.43 ID:wSnpVNpyo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713613334/

ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713522243/

旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713353246/

木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/05(土) 17:13:29.01 ID:cFKtRG+n0
*  *  *



今より約100年前に発見された、超古代文明による遺産――いわゆるオーパーツの解明によって人類の技術は飛躍的に進化した。
道は鋼鉄の馬が走り、鳥のように空を飛ぶ乗り物まで現れた。夜も昼のように明るく、遠く離れた人と一瞬でやり取りが出来る。

そんな暮らしは当然のように、人々の生活を大きく変えた。
……変えてしまった。
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/05(土) 17:16:44.12 ID:cFKtRG+n0
ユリウス暦1120。北の地にて魔王、と名乗る男が人類に対し宣戦布告を掲げる。
増えすぎた人口をどうするのか、各国の王が頭を悩ませていたときだった。

選ばれた民のみが生き、それ以外は淘汰されるべきであるという彼の思想は瞬く間に世界中に広がった。
その結果、自分は優秀であると考える多くの人間の賛同を受け、一つの大きな国が誕生した。
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/05(土) 17:18:31.45 ID:cFKtRG+n0

――サタン公国。彼らは様々な兵器を開発し、その選民思想に反抗する者たちを武力により次々と駆逐し始めた。
これに対し、反対派は連合国キングダムを立ち上げ、同様に武力による抵抗を行った。かのロト戦争の始まりである。
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/05(土) 17:19:46.16 ID:cFKtRG+n0

数で勝るキングダム軍と技術力で勝るサタン軍の戦いは一進一退の攻防を強いられた。
両者の戦いは1年が過ぎ、10年が過ぎ、そして今50年が過ぎようとしている。

6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/05(土) 17:20:42.46 ID:cFKtRG+n0

ユリウス暦1169。依然として拮抗状態を保つ戦線に小さな動きがあった。
キングダム領第7生活区域、レーベという小さな街で新たなオーパーツが発見されたのだ。

7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/05(土) 17:23:41.80 ID:cFKtRG+n0



*  *  *



「おいこら新入り! なにボーっとしてやがる!」

「は、はいっ」

「ったくこれだから最近の若い奴は……」

すみません、と頭を垂れてふと思う。
どうして自分はこんなことをしているのだろう、と。
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/05(土) 17:25:43.46 ID:cFKtRG+n0
「ほら、これがお前の鍵だ。遅刻してきた分しっかり働けよ」

「はい、すみません」

投げられた作業用ロボットの鍵を受け取り、視線を右に向ける。
人型と言うにはやや無骨な、5メートル程度の機体がそこにあった。
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/05(土) 17:28:50.84 ID:cFKtRG+n0

SROT-107ワーカー。民間用にデチューンされた、元軍事用ロボットだ。
やや型番は古いが今もなお現役で使われている辺り、デザインはともかく実用性は高い。

「しかしまぁ長年使われてるだけあって、中はちょっと汚れてるな」

「ま、動けば問題ないか」

10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/05(土) 17:33:11.47 ID:cFKtRG+n0

早速コクピット内に入るとシステムを起動させ、軽く点検をする。
計器類、センサーカメラ、操縦桿の反応などなど。慣れた手付きだ。

やはり自分は依然、ロボットの整備職でもやっていたのかもしれない。
記憶にはないが、一通り確認を終えたあと、なんとなくそんなことを思っていた。

11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/05(土) 17:34:36.58 ID:cFKtRG+n0

「こちら、えーと、4番機。点検完了しました」

『了解。それではオーパーツの発掘作業に合流してください』

「了解です」

12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/05(土) 17:36:48.10 ID:cFKtRG+n0

アンカーがしっかり固定されているのを確認して、急斜面を滑るように降りていく。
お椀のようにえぐられた地面の中心部で、他のロボットたちが作業をしているのが見えた。

「こちら4号機、コウ=シュージン。臨時派遣の作業員です。……すみません、遅刻してしまって」

13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/05(土) 17:43:47.64 ID:cFKtRG+n0

『こちら2号機だ。おう、なんだ思ってたより若ぇな』

意外そうな声を上げた男は一度作業を止めると、映像回線も使用して通信してきた。
モニターに映し出された狭いコクピット内では、火の点いていない煙草を咥えた男がへらへらと笑っている。

年齢は40代後半といったところ。ところどころ跳ねたグレーの短髪に、もみ上げと繋がっているやや伸び気味の顎髭。
なんとなく、その日暮らしで生きているのであろうことがあまり手入れのされていない身なりから見て取れた。

14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/05(土) 17:49:44.48 ID:cFKtRG+n0

『こちら1号機。発掘作業自体はもう間もなく終わる。……報告書ものだな』

次に聞こえてきたのは、くつくつという笑い声。こちらも映像回線に切り替える。
映っている男性は30代前半くらいだろうか。神経質そうなインテリ系の男である。

先ほどの男とは対照的に、長めの髪をワックスで纏めていたりパリッとした襟のシャツを着ていたりと、結構身だしなみには気を遣う人物のようだ。

15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/05(土) 17:55:11.95 ID:cFKtRG+n0

「残りの作業は?」

『あとは地味な点検作業、整備作業といったところだ。若ぇ奴がやるにはぴったりだろ?』

「……そうですか」

メインカメラに映った光景は、確かに作業が終盤であることを示していた。
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/05(土) 17:56:25.97 ID:cFKtRG+n0

地面から大きく露出したオーパーツ。それを見て、思わず感嘆の声が漏れる。

「すごいですね」

『以前一度だけこうした場面に立ち会ったことがあるがな、相変わらず鳥肌が立つぜ』

『Out Of Place ARTifactS――オーパーツか。こんなものが何千年も前に作られてるんだから驚くのも無理はないだろう』

17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/05(土) 17:59:58.62 ID:cFKtRG+n0

コウが今乗っているワーカーは、コクピット部分である胸部から見るとやたら四肢が大きく、頭部はおまけ程度の大きさしかない。

外観だってエネルギーパイプやら何やらが剥き出しになっているため、まさにロボットそのものである。

作業用機としての機能美といえば聞こえはいいが、やはりどこか無骨でアンバランスな印象を受けるのも事実だ。

18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/05(土) 18:03:03.92 ID:cFKtRG+n0


しかし、目の前の機体はどうだろう。


遥かに洗練されたデザインの“それ”は、まるで鎧を纏った騎士のようにはっきりと人型をしていた。

ここまでいくと最早、ロボットというより一種の芸術品か何かのようですらある。

数千年もの間深い地の底で眠っていたというのに、今にも起き上がり動き出しそうな、そんな美しさと不気味さが同居していた。

19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/05(土) 18:05:57.88 ID:cFKtRG+n0



――見つけた。


 
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/05(土) 18:06:50.47 ID:cFKtRG+n0

「え?」

『どうした?』

「いや、今声がしたような気がして」

『無線が変な電波でも拾ったか?』
 
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/05(土) 18:12:57.51 ID:cFKtRG+n0

「……気のせいだったかもしれないですね」

『あるいはこのオーパーツが喋ったか』

『おいおい、勘弁してくれよ。俺はこう見えてその手の話には弱いんだ』

おどけたように身を震わせてみせる髭の男に少しだけ笑う。
だが謎の声はともかくとして、頬を嫌な汗が伝っていたのは事実だった。




Act.1「メイク・ア・ディスカバリー」



 
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/05(土) 18:40:54.59 ID:cFKtRG+n0



*  *  *



午後。灰色に濁った空を切り裂くように空襲のサイレンが響き渡る。
その場にいた作業員たちに同時に緊張が走った。

『緊急警報、緊急警報。数キロ先にて3機の敵影を捉えました。護衛部隊はただちに戦闘配備についてください。これは演習ではありません』

23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/05(土) 18:46:02.11 ID:cFKtRG+n0

「サタンの連中、どうやって嗅ぎつけた!?」

「わかりません! 情報が漏えいしていたのではないかと」

「裏切り者がいるってのか!?」

一か所に集められた作業員の周りで、軍の制服に身を包んだ男たちが慌ただしく駆けていく。
あちらこちらで避難を求める怒号が飛び交っている光景は、どこか祭りのようだった。
 
24 :ご飯食べてきます :2013/01/05(土) 18:54:45.98 ID:cFKtRG+n0

「こりゃあ俺達もマズイかもしれねぇな」

隣で聞こえた呟きに振り向くと、先ほどの髭男がいた。
肩からぶら下げたタオルで、首筋の汗を拭っている。

25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/05(土) 19:25:02.58 ID:cFKtRG+n0

「そうですね」

「なんだお前さん、そんなに焦ってないな。結構こういうの経験してんのか?」

「……さぁ、わかりません」

「わかんねぇ、ってどういう――」

26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/05(土) 19:26:02.79 ID:cFKtRG+n0


「敵が見えたぞーーっ!!」


その声に釣られて空を見ると、確かに3艦の小型航空母艦が肉眼でぼんやりと捉えられる距離まで来ていた。
ゆっくりと、しかし確実にこちらへ近づいている。

27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/05(土) 19:29:29.85 ID:cFKtRG+n0

「迎撃部隊を出せ! 早くしろ、何やってる!」

「あのオーパーツには指一本触れさせるな!」

「市民の避難はまだ終わらないのか!?」

聞こえてくる軍人たちの必死そうな声が、一段とボリュームを増す。
いくらか修羅場の経験があり、何とか平静を保っていた作業員たちも徐々に焦り始めているのが、空気の変化でわかった。

28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/05(土) 19:30:43.01 ID:cFKtRG+n0

「いよいよヤバいんじゃねぇか? これ」

髭の男が呟いたのと同時に、3艦の空母から何かが落とされる。
パラシュートを広げ地上に降下しようとするのは、正真正銘人を[ピーーー]ための兵器。

歩く戦車とも言われる軍事用ロボット――SROT(スロット)だった。

 
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/05(土) 19:43:42.81 ID:ahgDjMws0
乙です!ロボット物とか俺得過ぎる。

メール欄に「saga」と入力すれば「殺す」とか「魔力」とかも普通に表示されるようになりますよ。
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/05(土) 19:51:59.54 ID:cFKtRG+n0
教えて頂いてありがとうございます
そういえばそんなルールになってるんでしたっけね
31 :リテイク [saga]:2013/01/05(土) 19:53:30.78 ID:cFKtRG+n0

「いよいよヤバいんじゃねぇか? これ」

髭の男が呟いたのと同時に、3艦の空母から何かが落とされる。
パラシュートを広げ地上に降下しようとするのは、正真正銘人を殺すための兵器。

歩く戦車とも言われる軍事用ロボット――SROT(スロット)だった。

32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/05(土) 19:55:16.71 ID:cFKtRG+n0



*  *  *



サタン軍 航空母艦ホーンラビット 艦内


「SROT-01Xスライム計7機、降下完了しました」

「なお一機のみ対空砲被弾。火器による後方支援に回るそうです」

「敵陣営はオーパーツを中心に半径4キロ圏内に展開、やはり防衛戦を選択するようですね」

33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/05(土) 19:56:26.40 ID:cFKtRG+n0

ブリッジのオペレーターたちが口ぐちに状況を報告する。

ここまでは読み通り。さて、ここからどうなるか。

34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/05(土) 19:58:44.59 ID:cFKtRG+n0


「中佐。今回の作戦、やや人員不足ではないですか?」

声を掛けたのは軍帽を目深に被った白髪の男。

一回りほど歳の離れている男から、中佐、と呼ばれた若い男は鷹のように鋭い目を細めた。

35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/05(土) 20:02:25.91 ID:cFKtRG+n0

「能力至上主義というのは厄介でね。なまじ自分が優れていると考える人間はプライドばかり高くて困る」

「……どういう意味でしょうか?」

「出る杭は打たれるということさ。頭の固い年寄り共から見ると私のような存在は自分たちの地位を脅かすものにしか見えないのだろう。優秀過ぎるのも考え物だよ全く」

36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/05(土) 20:06:18.70 ID:cFKtRG+n0

「それは中佐ほどの人間であれば、ある程度仕方のないことかと」

「本当は買いかぶりもして欲しくなどないんだがね。グラン少佐」

そう言って苦笑する中佐に対し、グランと呼ばれた男は真剣な表情を崩さない。
生真面目な男なのだな、と思う。自分とは本質的に異なる人間なのだ、とも。

37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/05(土) 20:07:39.72 ID:cFKtRG+n0

「まぁいい。ここであの年寄り共の思惑通り作戦に失敗して失脚するのは簡単だが癪に障る。全力は尽くすつもりだ。……本当は、私も降下作戦に加わりたかったのだが――」

窮屈な襟元を乱暴に正しながら言う中佐を軽い咳払いでグランがいさめる。
与えられた役割に不平を漏らすことはあってはならない。そんな目だった。

38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/05(土) 20:11:13.82 ID:cFKtRG+n0

「――冗談だ」

口の端を吊り上げるようにして笑うと、鷹の目の男は立ち上がり言った。

「各隊員に次ぐ。今回のオーパーツ回収作戦が成功すれば、我々はより一層此度の戦争における勝利に近づくだろう!
そのためには、いかなる相手であっても油断などあってはならない! 兎を捌くために牛刀を! さぁ行け!」

演説めいた言葉に鼓舞された兵たちが、うおぉと声を上げる。
艦内の空気も興奮に包まれ、男は満足げに再び座ったのだった。

39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/05(土) 20:15:07.74 ID:cFKtRG+n0
本日の投稿はここまでにします
読んで頂いた方、コメント下さった方、どうもありがとうございました

就活の気晴らしがてら書き込むつもりなので
毎日更新、というわけにはいきませんが今後ともよろしくです
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/05(土) 20:29:37.26 ID:RwHtZpkso
KMFサイズか
ランスロット思い出した支援
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/06(日) 11:41:48.05 ID:Qsswg2+b0
巻き込まれ系は王道だな
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/06(日) 17:00:30.38 ID:+WdTgy6X0



*  *  *



「市民の避難は95%済んだようです」

「そうか。シェルター内の様子は?」

「やはり不安の色が強いようですね。誘導した者が色々立ち回っているようですが、効果は薄いと」

「そろそろ作業員の避難を開始した方がいいな。一般市民の完全な避難を待ちたがったが、この状況じゃそうも言っていられないだろう」

43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/06(日) 17:01:39.70 ID:+WdTgy6X0

聞こえてきたそんなやり取りに周囲の人間からあからさまな安堵の声が漏れる。
それはそうだ。ものの数分でここも戦火に包まれるだろうことがわかっている。

いくら危険な現場で働くことに慣れた荒くれの作業員とはいえ、事前に避難出来るならばそれに越したことはない。

44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/06(日) 17:32:22.97 ID:+WdTgy6X0

「ギリギリ間に合いそうだな。一時はここで取り残されるんじゃねぇかとヒヤヒヤしたけどよ」

自分よりも頭二つ分ほど大きな体を屈めて、髭の男が耳打ちしてくる。

「それでは作業員の皆さん、お待たせしました。地下シェルターへ誘導しますので、しっかり付いてきてください」

先導する若い軍人のあとを、年齢のバラバラな作業員たちがぞろぞろと付いて歩いていく。
背中に不安が見えるからだろうか。その姿はどことなく母親に連れられる子供たちを思わせた。

45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/06(日) 17:34:34.19 ID:+WdTgy6X0
ミスった

自分よりも頭二つ分→コウよりも頭二つ分

 
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/06(日) 17:42:49.71 ID:+WdTgy6X0


――そっちに行くの?


「っ!?」

耳元で囁かれるような声に、勢いよく振り返る。
女の声だ。それもまだ幼い、少女のような声。

「おい兄ちゃん、ボーっとしてんな。早くしねぇと奴らが来ちまうぞ」

47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/06(日) 17:45:10.17 ID:+WdTgy6X0


――そっちには行かない方がいいと思うな。


「誰だ?」

「は? あぁ、そういや名乗ってなかったか? ダレンってんだ。って、今はそんなことどうでもいいだろ」

48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/06(日) 17:52:29.88 ID:+WdTgy6X0

「そっちってどっちだ? 行かない方がいいってどういうことだ?」

「おいおい兄ちゃん、何ぶつぶつ言ってんだよ。置いてかれるぞ」


――それよりこっちにおいでよ。



 
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/06(日) 17:58:27.44 ID:+WdTgy6X0

「そっちとかこっちとか、何なんだ? 誰なんだよ!?」

「なんだぁ? 今頃パニックか? 仕方ねぇ兄ちゃんだぜ」

いい加減痺れを切らしたのか、ため息を吐いてこちらに駆け寄ってくる。
どうにも人のことを放っておけない性格のようだ。

そして。

「おい、いい加減にしろよ。ボーっとしてる場合じゃないんだ。わかるだ――」

50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/06(日) 18:07:31.00 ID:+WdTgy6X0

突然、ドン、と大きな音がした。
今いる場所のすぐ近く、先ほどまで若い軍人に連れられた作業員たちが歩いていた方向だ。

「…………なん、だ?」

一瞬周りの時間がゆっくりになったような感覚。遅れてやってくる、衝撃。

51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/06(日) 18:16:19.79 ID:+WdTgy6X0

爆風が勢いよくコウたちに襲い掛かってくる。
幸いだったのは付近に何もなく、ガラス等の破片が飛んでこなかったこと。

しかし、それでもさっきまで立っていた位置からいくらか吹き飛ばされるほどの強い風だった。
固い地面に倒れこみ、したたかに背中を打つ。がふっ、と肺の中の空気が外に出ていく。

視界が一瞬チカチカと光り、やがて暗転。
そのまま一体どのくらいの時間が経過したのか。数分か、数秒か。

 
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/06(日) 18:29:51.37 ID:+WdTgy6X0




「無事か? 兄ちゃん」

目を開けると、よれよれの作業服が視界を塞いでいた。
助けられたのだ、と判断してから若干の間を置いて、礼を言う。

「ありがとう、ございます」

「いや礼を言うのはこっちだ。あのまま他の奴らと行ってたら俺も……」

ダレンと名乗った男の顔がわずかに歪んだ。ぎりり、と歯が鳴る。

53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/06(日) 20:02:19.10 ID:+WdTgy6X0

「……何が、起きたんです?」

意識はしっかりしているが、いまいち状況が把握出来ていなかった。
あの爆発は一体何だったのか。襲ってきた敵は今どうなったのか。

そしてこんなときだと言うのに、何故だかあのオーパーツのことが気がかりだった。。

54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/06(日) 22:20:27.86 ID:+WdTgy6X0

「ミサイルが飛んできた。先に行ってた奴らは、その、吹き飛んだよ。……跡形もなく」

なんとなく予測はしていたが、胸にやりきれなさがやってくる。
自分を叱ったあの上司も、一緒に作業をしたもう一人の男も、きっとあの爆発で――

「あいつら、ありえねぇ。ここ一帯吹き飛ばす気か? 避難民だっているのに」

55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/06(日) 22:21:35.18 ID:+WdTgy6X0

「……俺、あのオーパーツのこと考えたんですよ。今」

「話は後だ! このままじゃ俺たちも危ねぇ。今はとにかく避難することだけ考えろ! またミサイルぶち込まれたらひとたまりもねぇぞ!」

燃え盛るシェルターの入口を茫然と眺めながら、半ば連れられるようにしてそこを後にするコウ。
そう言われて頭を冷静に切り替えることが出来てしまう自分が余計に嫌だった。最低だと思った。

56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/06(日) 22:28:43.68 ID:+WdTgy6X0


――こっちにおいでよ。


不意に、またあの声がする。
それと同時にノイズまじりの映像のようなものが脳裏をかすめる。

「……ダレンさん、この声。聞こえますか?」

57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/06(日) 22:29:49.43 ID:+WdTgy6X0

「声? 何のことだ?」

どうやら、コウ以外の人間には聞こえていないらしい。
さっきの「行くな」という声には従って正解だった。では今度は?

「そうか、発掘現場だ」

「何?」

「発掘現場ですよ!」

なぜ、と言われたら答えようがない。
ただ頭の中ではそれが正解に違いない、と冷静な声がしていた。

58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/06(日) 22:32:13.28 ID:+WdTgy6X0



*  *  *



「思ったより被害はないみたいですね」

「冷静になって考えてみると、案外ここの方が安全だったかもな。いい判断だぜ兄ちゃん」

「いえ、俺はただ――」

59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/06(日) 22:34:06.30 ID:+WdTgy6X0

声に従っただけです、とも言いづらくて口を閉ざす。
あの不思議な声は何だったのだろうか。ここまで来れば、最早幻聴では片づけられない。

「あの空母から降りてきた連中はスライムだろうな。青いボディカラーだ、すぐわかる」

そんな自分の沈黙を先ほどのショックによるものだと感じたのか、ダレンはいくらか明るい声で話しかけてきた。

60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/06(日) 22:44:36.01 ID:+WdTgy6X0

「スライム?」

「サタン軍の量産型軍事用SROTとして最も用いられてる代物だよ。低予算ながら機動力・積載火力共に兵器としては及第点。ただコストが低い分、装甲も薄いのが弱点だ。おそらく歩兵の迫撃砲でも、直撃したら一発KOだな」

「ずいぶん詳しいですね」

「これでも前は軍属だったんだ。……今じゃしがないホームレスまがいのおっさんだがな」

61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/07(月) 00:03:45.71 ID:wlxY9M4o0

砂の斜面を慎重に滑り降りていく。
周囲に敵の姿は見えないが、慎重に、岩陰に隠れるようにして移動する二人。

頻繁に聞こえる砲撃音やら爆発音に戦々恐々となりながらも、なんとかクレーターの中心部へとたどり着いた。
中心部には大型の照明スタンドやらSROT用の作業台などが設置してあり、十分に身を隠すことが出来そうだ。

62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/07(月) 00:04:49.86 ID:wlxY9M4o0

「こっちだ」

「はい」

ダレンに誘導され、横たわったオーパーツの前に再び立つ。
あちこちにミサイルを撃ち込んでいたようだったが、目的はオーパーツの破壊ではないようで、全くの無傷だった。

63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/07(月) 00:05:20.80 ID:wlxY9M4o0

「奴ら、こいつを強奪しに来たんだ」

「……このオーパーツのせいで――」

「やめろ。今そんなこと言ったって仕方ねぇだろ。悪いのは民間人巻き込むような戦いを仕掛けてきたサタン軍の奴らだ」

「そう、ですよね。すみません」

胸の辺りにちくりと刺さった棘のように、さっきの光景が蘇る。
あまりにあっさりと失われた命。いつ自分たちが、ああなるかわからない恐怖。

64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/07(月) 00:06:00.99 ID:wlxY9M4o0

「……ところでダレンさん、これからどうしましょう?」

「それをお前さんが聞くのか。……とにかく、助けを待つほかないだろ。基本的には」

「何かここに使えそうなものがあればいいんですけど――」

辺りを見回すと、散乱する作業用機材の中に通信機があった。
午前中の作業のとき、どうやら誰かが忘れていったらしい。

65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/07(月) 00:07:03.13 ID:wlxY9M4o0

「これで護衛軍に通信出来るんじゃ!?」

「どうかな。軍の無線コードは通常、暗号化されてるからよ」

「……そうですか」

「おいおい、諦めんなよ。さっきも言ったが俺は元軍人だ。いくつか知ってるコードを確かめてみる」

「お、お願いします!」

66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/07(月) 00:07:42.93 ID:wlxY9M4o0

「当たるかはわかんねぇがな。あくまで聞いたことある程度のものだ。兄ちゃんはそれより、ある程度武器になりそうなもんでも探しといてくれ」

「武器、ですか?」

「――最悪、俺たちの身は俺たちで守る必要がある。あの辺のものも使ってな」

そう言ってダレンが顎で示した方向には、少し前までコウたちが乗っていたワーカーが4機並んでいた。
確かに、鍵は自分たちで持っているから動かせなくはないが……。

67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/07(月) 00:08:27.15 ID:wlxY9M4o0

「武器さえあれば作業用のSROTとはいえ戦える。残ってる護衛軍や、こっちに向かってるだろう応援部隊と合流出来りゃ何とかなるかもしれねぇ」

どこか自分に言い聞かせるような呟きに視線を戻すと、早速ダレンは無線機と格闘し始めたようだった。
きっとダレンもわかってはいるのだ。たかだか作業用ロボットが2体がかりで挑んでも軍用兵器には勝てないと。

「そうですね。最悪、そうしますか」

それでもコウはそう呟き、ダレンに背を向ける。
邪魔にならないよう、自分は自分に出来ることを探すことにしよう。
そう思ったときであった。

68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/07(月) 00:09:22.85 ID:wlxY9M4o0


――やっと来たね。


またあの声。しかし、今度はそれだけではなかった。
いつの間に現れたのか、目の前に少女が立っていたのだ。

69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/07(月) 00:23:01.09 ID:wlxY9M4o0

少女はまだ幼く、コウの胸辺りまでの背しかない。
明らかにこの場には不釣り合いな黒のドレスを着ている。

そして何より最も目につくのは、その不自然なほどに白い髪である。
全ての色素を失くしたような白髪は、黒のドレスと相まって一層不気味に見えた。


「待ってたよ」

70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/07(月) 00:25:53.89 ID:wlxY9M4o0

先ほどから聞こえていた、あの謎の声の主はどうやらこの少女で間違いないようだ。
幼い少年の声とも取れる独特な声質。そういえば、顔もどことなく中性的なつくりをしている。

「お前、何だ? 人間か?」

「さぁ? わかんない」

「真面目に答える気はないってことか」

71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/07(月) 00:26:59.88 ID:wlxY9M4o0

「わかんないものはわかんないよ。でもそれって、あなたも一緒でしょ?」

「俺のことを知ってるのか?」

「まぁ知ってると言えば知ってるよ。でも、知らないと言えば知らない」

「どういう意味だ?」

「言葉通りの意味だよ、コウ君」

72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/07(月) 00:28:25.91 ID:wlxY9M4o0

一向に話が噛み合わない。質問をしても返ってくるのは意味深な答えばかり。
そうしてコウが次に自分が言うべき言葉を探していると、近くの方で再び爆発が起きた。

「おい! こっちが押されてるらしいぞ!」

「無線機、繋がったんですか!?」

「馬鹿野郎! 今の爆発は敵の攻撃が近づいて来てる証拠だ! 考えろ!」

73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/07(月) 00:30:18.98 ID:wlxY9M4o0

いよいよダレンの声にも焦りの色が見えた。確かにこのままじゃマズイかもしれない。
いっそ目の前の少女に生き残る術を尋ねてみようか。そう思って向き直る。

ところが、そこに少女の姿はなかった。
辺りを見回しても隠れるような場所はない。まるで幽霊か何かのように消えてしまったのだ。



――生き残りたいんだ?



再び、耳元で声がする。
やけに艶めかしく、それでいて拙い喋り方。

74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/07(月) 00:30:59.88 ID:wlxY9M4o0


――ひとつだけ、方法があるよ。


「……教えてくれよ」


――それに乗るの。


振り返ると、そこにはオーパーツ。


――乗って。


 
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/07(月) 00:33:00.63 ID:wlxY9M4o0

ごくり、と唾を飲み込んで機体に手を触れる。
ひんやりとした感触が掌を伝わり、腕を伝わり、心臓に達する。

全身の血が冷えていくような感覚だ。
まるで自分の意思とは関係なく体が動いているようでもある。
正体すらわからない少女の言葉が、魔法のように頭の中を支配していく。

乗らなきゃ。これに。

76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/07(月) 00:37:45.78 ID:wlxY9M4o0

「駄目だ! やっぱり繋がんねぇ!」

ダレンの声を背中で聞きながら、コウはオーパーツの装甲に手をかける。
胸部まですんなりよじ上ると、勝手にコクピットハッチが開いた。
招かれているのだ。そう直感した。当たり前のように。

「っておい兄ちゃん、何してんだ……!?」

「これ、動かしてみます」

「はぁ!? 馬鹿言うな! 千年以上も前の機械だぞ!? 動かせるわけがない!」

77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/07(月) 00:38:56.20 ID:wlxY9M4o0

「でもSROTがROTをモデルに開発されている以上、操作方法が共通している可能性も――」

「そういう話じゃない、そもそも起動しねぇって言ってるんだ!!」

ダレンの苛立つような声は左耳から右耳へするりと抜けていく。
どくんどくんという自分の鼓動の音に掻き消されていく。

「あぁ、なんだ。やっぱり」

コクピット内部を見て確信した。きっと動かし方はわかるはずだ。
なぜなら、自分が“なぜか”動かせるSROTのコクピット内部ととても似ているから。

78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/07(月) 00:39:26.97 ID:wlxY9M4o0



――ふふっ。待ってたよ、ずっと。



 
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/07(月) 00:40:05.43 ID:wlxY9M4o0

シートに座り、二本の操縦桿をぐっと握る。
起動キーを差したわけでもなく、たったそれだけの動作でモニターに光が灯った。

「嘘、だろ……動きやがった……」

ダレン、のそんな呟きが聞き取れるかどうかのところで、コクピットのハッチが閉まる。

80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/07(月) 00:41:28.38 ID:wlxY9M4o0


――動かし方はわかるよね?


「多分な。なんでだ?」


少女の声は答えない。なんとなく、そんな気もしていた。

システムが起動する。計器類、センサーカメラ、操縦桿の反応。ばっちりだ。
掘削用の杭打機がモニターの隅に映っているのを、ついでに確認した。
確か名をパイルドライバー、あるいはパイルバンカーという。

「あれなら武器になるか?」

81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/07(月) 00:52:48.83 ID:wlxY9M4o0

ゆっくりとペダルを踏み、操縦桿を傾ける。
するとそれに連動して機体が徐々に起き上がっていくのがわかる。

あちこちに積もっていた砂がさらさらと滑り落ちて、露わになる白亜と紫紺の装甲。
そして数千年ぶりの稼働に歓喜の声を上げるように軋む、漆黒の関節可動部。

「これが、ROT(ロト)。これが、オーパーツ……」

82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/07(月) 00:53:45.45 ID:wlxY9M4o0

Robot of
Over
Technology

超古代技術兵器。そのままではあるが、まさしくピッタリだ。
だって、どうして数千年前の技術力でこんなものが造れるのだろう。

83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/07(月) 00:54:19.84 ID:wlxY9M4o0


Loading…

…Complete


「システム、オールグリーン」

果たして、二本の脚で大地をしっかりと踏みしめるようにその機体は立ち上がった。
メインモニターにこの機体のものであろう識別コードが表示される。
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/07(月) 01:06:28.30 ID:wlxY9M4o0



B.R.A.V.E.R.



 
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/07(月) 01:08:37.92 ID:wlxY9M4o0



*  *  *



ユリウス暦1169。停滞していた世界が静かに動き出す。
この地に蘇った勇者がもたらすのは、平和か。それとも新たな戦乱か。



次回 Act.2「アウト・オブ・プレイス・アーティファクツ」



 
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/07(月) 01:10:46.78 ID:wlxY9M4o0
読んでくれている方、コメント下さった方、どうもありがとうございます
1月6日分をここで終わりにしますね いつの間にか日付変わってたし……

なんとかロボット乗れました 動くのは次回です
冗長な感じで恐縮ですが今後ともよろしくお願いします
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/07(月) 03:57:55.32 ID:VKcBf72Xo

やっぱ古代兵器が動き出すのはワクワクするな
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/07(月) 12:23:16.18 ID:80xkt/05o
なにこれ面白い
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/07(月) 12:30:23.88 ID:+bzyPMZDO
ちっとも古代に見えないけどなww

パイルバンカー=ひのきのぼうかwwうめぇww

このSSの長さは、映画くらいを想定しとけば良いのかな?
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/01/07(月) 15:14:33.43 ID:wlxY9M4o0
おはようございます
ふと見たらコメント増えてて嬉しいです
ありがとうございます 5時頃また来ますね

>>89 すいません もう少し長いと思います
一応6話単位で区切れるように書いてるので
起承転結と見て24話――アニメ2クール分くらいでしょうか
終わりは決まってるので中だるみしないよう頑張ります
(ひのきのぼう気付かれるとは思わなかった)
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/01/07(月) 18:12:38.33 ID:wlxY9M4o0



*  *  *



「はっ! 虫けら共が! いくら集まったって所詮ミジンコはミジンコなんだよ!」

脚部に取り付けられたホイールムーバ―が砂煙を巻き上げながら、あっという間に敵戦車との間合いを詰めていく。
戦車よりも優れた火力、機動力。陸戦においてSROTこそ最強の兵器であるという呼び声も素直に頷ける。

92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/07(月) 18:14:24.74 ID:wlxY9M4o0

「消えなぁぁっ!!」

耐熱強化シールドを構えながらのバズーカ砲撃は、迎撃の遅れた戦車の装甲をいとも容易くぶち抜いた。
爆散する戦車。そして、それを一瞥したフランツは次の目標に向け、ペダルを強く踏み込んだ。

93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/07(月) 19:36:16.61 ID:wlxY9M4o0

現在、戦況は圧倒的にサタン軍が優勢である。
あちらこちらに大破した敵部隊の戦車が散乱している。

それに対し、こちらの被害状況は降下作戦時における被弾一機と地上戦による戦闘不能一機という被害のみ。
被弾した連中に対しては、たかだか虫けら相手に情けないと思いつつも、手柄の配分が増えることは歓迎だった。

94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/08(火) 20:13:07.45 ID:G7V7kOGI0

「楽勝だな、こりゃ」

『スライム02、聞こえているぞ。油断は禁物だ。先ほどの中佐の言葉を忘れたか』

「あーはいはい、わかってますよ」

せっかくの気分に水を差されたような気がして、返事も適当に通信を切り上げる。
脳裏に浮かぶ、あの鷹の目をした男の自信に満ちた態度に対してイライラが抑えられなかった。

95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/08(火) 20:20:41.24 ID:G7V7kOGI0

「何が鷹の目だよ。俺と歳一つしか違わねぇくせに」

見てろ、必ずこの戦いで手柄を手に入れてやる。すぐにそこまで追いついてやる。
だって俺は、ここにいる奴らとは違う。優秀な人間なのだから。

操縦桿がグローブと擦れ、ギュッと音がした。
そのときである。

96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/08(火) 20:22:52.78 ID:G7V7kOGI0

『こちらスライム05。レーダーに妙な反応がある。ポイントD7だ。スライム02、映像を転送しろ』


「こちらスライム02。ポイントD7ってオーパーツのある場所だろ? 大方、生き残りが作業用SROTでも使って逃げようって魂胆だろ。俺がぶっ潰してやるよ」
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/08(火) 20:31:00.01 ID:G7V7kOGI0

『おい、勝手な行動は慎め――』

プツン、と通信を乱暴に切ると、進行方向を変える。
クレーターのように大きなくぼみがモニターに映っていた。

「新しい獲物だぜ」



Act.2「アウト・オブ・プレイス・アーティファクツ」



98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/08(火) 20:58:49.50 ID:m7kF/fQy0
1stガンダムの最初の犠牲者ジーンと同じ末路を迎える未来しか見えないw
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/08(火) 21:06:30.59 ID:G7V7kOGI0

こんばんは ちょっとだけ妄想垂れ流しますね

せっかくアニメっぽい構成で書いているので
自分の思うOP曲を勝手に選曲しました
SSに音楽とかいらねーよと思う方はスルーしてください

エメラルディ/sleep warp

http://youtu.be/SyP7VzbUvJc
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/08(火) 21:11:01.48 ID:G7V7kOGI0



*  *  *



「接近してくる……!?」

レーダーに映る複数の機影の内、一機が単独でこちらに向かってくるのが確認出来た。

「でも、ここで戦うわけにはいかない!」

101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/08(火) 22:02:49.09 ID:G7V7kOGI0

モニターに映る、まだ目の前の光景が信じられないといったような表情でこちらを見つめるダレン。
もしも敵SROTとこの場所で戦えば、彼を巻き込んでしまうことは明白だった。

レーダーに目を移す。
敵味方の識別コードは登録していないが、おそらく現在起動状態にある機影のほとんどがSROT――つまり敵機であると示していた。

 
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/08(火) 22:25:56.73 ID:G7V7kOGI0

「護衛軍はほぼ壊滅か……。こんな、俺一人で何が出来るって言うんだ……?」

やるしかないと決めて乗り込んだはいいが、冷静になっていくにつれ不安は増していく。
それでも敵は待ってくれない。息をゆっくり吐き、ペダルをゆっくり踏み込んだ。

103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/08(火) 22:46:43.70 ID:G7V7kOGI0


―――


「ありえねぇ」

目の前の光景に自然とフランツの口は開く。

104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/08(火) 23:12:28.18 ID:G7V7kOGI0

「あれって目標のオーパーツ、だよな?」

作業用ロボットが動いているだけ、そう思って指定のポイントに来てみれば、数千年前の機械が動いているのだ。彼の驚きはごく自然なものだった。
まずは報告をしなければ、と通信回線を開こうとして、ふと考える。邪念がよぎる、と言い換えてもいいかもしれない。


「でも、もしあいつを俺一人で生け捕りにしたら……?」

 
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/08(火) 23:36:13.00 ID:G7V7kOGI0

むくむくと湧き上がる手柄への期待。チャンス、なのか。
と、そこでオーパーツに動きがあった。こうなると四の五の言ってはいられない。

「っ! 動いた!? ちっ!」

「こちらスライム02、こちらスライム02! ポイントD7にてオーパーツの稼働を確認!」

『こちらスライム01。どういうことだ?』

「だから、動いてるんだよ! オーパーツが! このままだと逃げられる、俺が先行して足止めするから至急応援を回してくれ! 生け捕りにする!」
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/08(火) 23:44:26.78 ID:G7V7kOGI0

『待て。勝手な行動は控えろ、まずは映像を転送するんだ』

「……わかった。回線はアクティブにしたまま、目標を追跡する。それでいいか? メインカメラの映像は常に各機と空母へ転送されるように設定した」

『む、そ、そうだな』

「全機、聞こえるか? 副隊長としての命令だ。至急ポイントD7に向かえ。繰り返す、至急ポイントD7に向かえ」

107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/08(火) 23:51:12.61 ID:G7V7kOGI0

『おい、どういうつもりだ。この作戦の隊長は俺だぞ』

「悪いね。明日からは俺の方が上だ。成果が欲しけりゃ、お前も早く来て俺の援護をすることだな」

『待て! おい、おい!』

「あのヤロー、逃がすかよ!!」

バズーカを構え直し、勢いよくペダルを踏み込む。
唸りを上げるホイールムーバ―。加速と同時に後方へ砂が舞い上がった。

108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/08(火) 23:55:29.96 ID:G7V7kOGI0
 
今日はここまでにしますね
読んでくれている方、コメント下さった方
どうもありがとうございます
何気ないコメントもすごく励みになってます

ガンダムは噛ませ犬キャラすら愛されるとこがすごいよね!
 
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/09(水) 04:55:04.60 ID:u6YSuJ6uo

このジーンさん(仮)は副隊長だったのか。圧倒的なかませ臭で新兵その1とかだと勝手に思ってたわww
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/09(水) 11:29:25.13 ID:j0qIJ4aJ0

イメージOPは、ロボットものにしては大人しい曲だね
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/11(金) 07:38:01.11 ID:jZ9SOdgz0

おはようございます
すみません ちょっと更新が滞りました
今から続き書きます
 
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/11(金) 07:40:02.41 ID:jZ9SOdgz0


―――


「っ! 来た!」

敵は重火器を所持しているはず。
もしここを取り囲まれ一斉砲火を浴びるようなことになればひとたまりもない。
そう判断し、コウはとにかくクレーターの外へと移動を試みる。

113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/11(金) 07:48:11.86 ID:jZ9SOdgz0

ワーカーでは、上に突き刺したアンカーがなければ、これだけの急斜面を下りることも上ることも出来なかった。
しかしこのブレイバーは違う。機体重量が格段に軽く、それでいて数倍の出力があるため、単独でも十分脱出が可能だったのだ。

「すごい、あっという間に上りきったぞ」

114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/11(金) 07:57:35.05 ID:iQIbb61C0
ヤバイ、俺得すぎる
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/11(金) 07:59:04.17 ID:jZ9SOdgz0

「っ!?」

すぐ近くで爆発が起きる。砲撃だ。
進行方向を変えて、次の攻撃に備える。

「くそ、こっちもバズーカみたいな武器があれば……」

116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/11(金) 08:22:29.58 ID:jZ9SOdgz0

右手には無理矢理固定した杭打機、左手には盾代わりの作業台。
これから戦うにはあまりに心許ない武器であった。

しかも、パイルバンカーは火薬による射出式。
一度使ってしまえば再び火薬を補充しないと使えないため、実質一回しか使用できないという制限付きなのだ。

「考えても仕方ない、か。まずはあの砲撃を喰らわないように気をつけないと」

117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/11(金) 09:22:00.35 ID:jZ9SOdgz0


―――


「速いな……。バズーカじゃ捉えきれない」

「接近してマシンガン? いやそれよりバズーカで牽制しながら、連携で挟み撃ちか? ……よし、それで行こう」

「――こちらスライム02、目標はポイントD8へ移動中。最短で誰が着く?」

『こちらスライム04。約3分で到着予定だ』

『こちらスライム05。2分で行ける』

118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/11(金) 09:54:11.89 ID:jZ9SOdgz0

「了解した。なら二人は俺と反対側から目標に回り込め。挟み撃ちにする」

『了解』

『了解』

「たとえオーパーツだろうと相手は一機だ。逃がさねぇよ」


―――


119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/11(金) 11:05:51.27 ID:pwfWzP/ao
リアルサイズのナイトガンダムに脳内変換されて困る
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/11(金) 12:08:33.00 ID:kMRzwMnf0
バンカー一発だけとか……
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/11(金) 20:08:56.51 ID:rM76UyKU0
スコタコのアームパンチやベルゼルガのパイルバンカーはどこに炸薬積んでるか考えると夜も眠れないw

アルトアイゼンのみたいにリロードする機構があるってんなら話は別なんだが…
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/11(金) 21:03:06.90 ID:jZ9SOdgz0

たくさんコメントありがとうございました!
なんかこう色々がんばろう、って思いました!

>>110 イメージOPはそのうち、文章浮かばなくなったらあの曲について何か書こうと思ってます

>>119 ナイトガンダムと武者ガンダムの違いがわかんなくて思わずググっちゃいました
二頭身のロボットも好きなんですが、今回は人間らしいプロポーションでどうぞ

>>120 >>121 炸薬式バンカーはロマンですよね 男とか女とか関係なく
深く追求しないこともまた愛ですよ! 愛! このSSもそういう目で見てください!笑

なんだか結構ロボ好きの方多いみたいで嬉しいです
SSにもロボット物の需要ってあったんですねー
長々とすいません 今からまた投下します 
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/11(金) 21:09:28.89 ID:jZ9SOdgz0

「こっちに向かう反応が増えた!? このままじゃ挟み撃ちにされる!」

レーダーに新たに表示される二つの三角形。増援というわけか。

バズーカによる砲撃の雨をくぐり抜けながら、すぐさま進行方向を変えて思いきりアクセルを踏み込んだ。
左右のホイールムーバ―を異なる方向へ回転させ、その場で超信地旋回。勢い余って一回転してしまう。

124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/11(金) 21:22:31.06 ID:jZ9SOdgz0

「くぅっ!」

かなり強引な曲がり方であったために、大きくG負荷が掛かる。
それでも機体バランスを失って転倒するような事態は避けられた。

125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/11(金) 22:02:43.86 ID:jZ9SOdgz0

機体の各部に搭載された姿勢制御装置――いわゆるスラスターがオートで機体バランスを保っているのである。
そしてこのとき、ふと脳裏にこの状況を打開出来るかもしれない作戦が思い浮かんだ。

「待てよ、この機動力があれば……!」

再び方向転換。一際大きな砂煙が巻き上がる。やれるかもしれない。
右へ左へ、何度もカットを行うかなり無茶な操縦も、ブレイバーならば出来る。

126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/11(金) 22:59:03.58 ID:jZ9SOdgz0

『見えたぞ! 本当だ、オーパーツが動いている!?』

『あれを生け捕りにするのか……! 確かにこれは出世のチャンスだな!』

『こちらスライム02! 今から三角形の陣を構える! 奴を逃がすなよ!』

バズーカからマシンガンへと持ち替えた3機のスライムが、ブレイバーを中心に一気に近づいてくる。
コウはその内の一機に狙いをつけた。肩部に05と書かれたスライムである。

127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/11(金) 23:11:27.29 ID:jZ9SOdgz0

ペダルを勢いよく踏み込むと、グンと上がるスピード。
ブレイバーは急ごしらえのシールドを構えて、敵に真っ直ぐ突っ込む。

「うおぉおっ!」

『何!? 突っ込んできた!?』

128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/11(金) 23:23:40.55 ID:jZ9SOdgz0

『逃がすな! 撃っていい! 足を狙え!』

『くっ! すごい機動力だ! 照準が……!』

闇雲に放たれるマシンガンをくぐり抜けて、あっという間に距離を詰める。
体勢を低く取り、急激なブレーキをかけながら敵の目の前で左へカット。巻き上がる大量の砂。

129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/11(金) 23:58:36.46 ID:jZ9SOdgz0

『マズい! 視界が――』

敵の死角へ潜り込んだブレイバーは、そのまま相手の懐目がけて、右手へ装備したパイルバンカーを突き立てる。
ギリギリのところで強化シールドを間に挟まれるが、そんなものは関係ない。硬い岩盤ですら砕く機械だ。

コウは迷わずにトリガーを引いた。

130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/12(土) 00:06:10.98 ID:csoHTUeB0

「行けぇぇぇっ!!」

ガン、という炸裂音と共に巨大な杭が撃ち込まれる。
マシンガンの弾すら通さないはずの強化シールドごと機体を貫通し、そして――

131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/12(土) 00:06:43.93 ID:csoHTUeB0

『うわぁあぁぁああ!!!』

爆散。漏れ出た燃料に引火し、大規模な爆発が起こった。
寸前に離脱したブレイバーの手には、さっきまで敵の持っていたライフルが握られていた。

132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/12(土) 00:11:59.88 ID:csoHTUeB0

とりあえずここで一旦終了しますね
読んでくれている方、コメントくださった方
本当にありがとうございます

パイルバンカー使用出来たので、今日は満足です
おやすみなさい
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/12(土) 12:55:44.98 ID:csoHTUeB0

『くそっ! よくも!! このフランツ様を舐めるなよ!』

『スライム05、大破! 至急、応援を! このままじゃ――』

一度きりしか使えなかった土木用重機と違い、今手にしているものは正真正銘の武器である。
この機会を逃す手はない。コウは再び目標を見定め、02と書かれたスライムに接近していく。

134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/12(土) 12:59:04.39 ID:7J82C0Hx0
スライム は たおれた!
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/12(土) 22:18:19.85 ID:csoHTUeB0

『来い! アンティーク野郎!!』

『や、やらせるか!』

「邪魔だぁっ!!」

割り込むようにマシンガンを乱射してきた04に目標を変え、一気にスピードを上げる。
軍事用に開発されたはずのスライムですら、ブレイバーの速度には敵わない。

ましてやこの運動性能の高さである。

136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/12(土) 22:54:27.77 ID:csoHTUeB0

『うわぁ! く、来るなぁ!!』

敵のマシンガンが弾切れをおこした一瞬の隙を突き、シールドを構える左腕に、超信地旋回からの回し蹴りを喰らわす。
金属と金属が激しくぶつかり合う衝撃。一瞬機体バランスが崩れかけるも、すぐさまオートスラスターが作動する。

137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/12(土) 23:41:21.80 ID:csoHTUeB0

「やらなきゃ、やられるから!!」

『や、やめ、助け――』

シールドを失い無防備になった相手目がけ、至近距離からマシンガンを乱射。
頭部から胸部にかけての装甲にいくつもの穴が開き、04号機も爆散した。

138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/12(土) 23:45:34.21 ID:csoHTUeB0

『馬鹿な……こんなことが……』

残る敵は一機。マシンガンの弾数も心許ない、すぐにでも戦闘不能にする必要がある。
そう思って、コウが無我夢中のまま02号機へと向かおうとしたときだ。

『くそっ! くそぉぉおっ!!』

『こちらスライム02! 謎のオーパーツにスライム2機がやられた。……敵戦闘データを持ち帰るために、本機は……撤退する』

139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/12(土) 23:49:22.75 ID:csoHTUeB0

敵のSROTが方向を変え、撤退していくのが見えた。
そのまま、小高い砂丘の向こうに青色の機体が消えていくのを見送るように、ブレイバーは立ち尽くしていた。

「やった……のか?」

ピンと張りつめていた緊張の糸が不意に切れる。
まるで今まで呼吸を忘れていたかのような息苦しさを感じ、肩で息をするコウ。

140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/12(土) 23:54:40.96 ID:csoHTUeB0

あちこちから黒煙が上がり、一層暗さを増してきた灰色の空から、ぽつりぽつりと雨が降ってきた。
コクピット内にいるはずのコウの手にも、滴が落ちてくる。慌てて頬を拭うとそれは自分の涙だった。

「はは、生きてる。生きてるのか……俺」


――おつかれさま。


少女のそんな声を最後に、コウの意識は深い闇の底へと沈んでいくのであった。

141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/13(日) 00:09:31.51 ID:+UVLo3YR0

今日はここで終わりますね
大体、1週間で1話書けるようになりたい
ゆっくりのんびりお付き合い頂けると嬉しいです
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/13(日) 00:28:54.53 ID:CuaMzoOco

・・・ん? 待てよスライムって事は・・・まさか合体するのか!?
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/13(日) 07:57:34.76 ID:0J1xwckE0
指揮官用の赤いスライムベスとか、相手の装甲をジワジワ溶かす強酸性の毒を装備したバブルスライムとかバリエーション豊富な名機ってところだろうね。>スライム
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/13(日) 11:02:34.93 ID:PHzagxzw0
各地に埋もれる専用パーツの回収とかロマンやね
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/13(日) 16:01:52.03 ID:+UVLo3YR0



*  *  *



サタン軍 航空母艦ホーンラビット 艦内

「あのオーパーツは一体何なのだ……?」

絶えず02号機から転送されてくる映像を見ていたクルー全員が思っていただろうことを、グランが口にした。
ブリッジは先ほどまでの興奮した空気が嘘のように、今では水を打ったような静けさに包まれている。

146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/13(日) 16:12:40.59 ID:+UVLo3YR0

「あの性能、いやそれ以前に数千年前のオーパーツが稼働していることがおかしい……」

「映像は5分。たった5分の間に二機のスライムが落とされた。しかも戦闘時間はその内の2分弱。これがわずか一機の手によって行われたというのか……」

その場にいた誰もが声を失っていた。
それほどまでに、衝撃的な映像であった。

147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/13(日) 16:19:50.28 ID:+UVLo3YR0
>>142 その発想はなかったですねぇ笑
>>143 ベスはそんな感じです。あの、バブルの武器設定頂いていいですか!?
>>144 期待に添えられるよう頑張ります

読んでくれている方、コメントくださった方、ありがとうございます
また少しずつ投下していきますね
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/13(日) 16:28:41.25 ID:+UVLo3YR0

「……ふっ、っくっくっく」

しかしそんな中で、肩を震わせる者が一人だけいた。

「どうされましたか? ファルコ中佐」

瞳には、何が可笑しいのだ、という非難の色が見える。
ファルコはその瞳に、鷹の目と恐れられる鋭い眼差しを返した。

 
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/13(日) 16:46:18.62 ID:+UVLo3YR0

「いや、ゲームはこうでなくては面白くないと思ってね」

「……お言葉ですが、我々が行っているのは戦争です。ゲームではありません」

「あぁ、そんなことはわかっている。何も命を軽んじているわけではないさ。ただ私には、戦争などその程度のものでしかないということだよ」

150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/13(日) 17:18:03.27 ID:+UVLo3YR0

「…………私はあなたを尊敬しています。ですが、その考えには同意しかねます」

重たい沈黙のあと、短くそう答えたグランはブリッジを後にする。
どこへ、とファルコが尋ねると、彼は小さく首を振って扉の向こうへ消えていった。

『こちらスライム02! 本部、応答せよ!』

151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/13(日) 18:00:17.95 ID:+UVLo3YR0

と、そこへ通信が入る。確か声の主はフランツ=ベス、だったか。
ファルコはオペレーターを一人どかし、直接の通話に応じた。

「何だ?」

『っ! その声、ファルコ……中佐でありますか』

「用件を言え」

152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/13(日) 18:12:35.52 ID:+UVLo3YR0

『補給をお願いします。それと、残存する部隊の指揮権を――』

「それは許可出来ない」

『……私が、負けたからでしょうか? 逃げたからでしょうか?』

「そうではない。天候だ。このままだと嵐が来る可能性が高い。そうなると補給はおろか君たち地上部隊の撤退すら困難になる」

153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/13(日) 18:32:20.15 ID:+UVLo3YR0

『撤退? オーパーツの回収はどうするのですか? いや、この際破壊でも――』

「駄目だ。これ以上の犠牲は払えない。今回の作戦は失敗だ。残念だがね」

『…………このままでは、終われません』

「その心意気は買おう。安心しろ、君たち地上部隊には一切の責任を問わないことを約束する。今回の作戦において責任を取るのは、私一人だ」

154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/13(日) 18:38:00.79 ID:+UVLo3YR0

『どうしてですか……!? 私は、目標を前に、逃亡しました……! データの回収という建前にすがり、みっともなく、逃げ出しました! 私にも責任が――』

「ときに戦場では、敵に背中を見せる勇気も必要だ。……貴殿はくだらないよりプライドよりも、敵のデータを――明日に繋がる道を選んだ。そのことをもっと誇っていい」

ファルコは迷いのない、自信に満ちた声でそう言い切る。
そして、今度は回線を全ての機体に向け開き直した。

 
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/13(日) 18:40:25.60 ID:+UVLo3YR0

「全軍、聞こえるか。これより我々は地上部隊を回収し、このエリアから速やかに離脱する。繰り返す、これより我々は――」

ファルコの言葉はどんよりと暗い灰色の空の下で、ただ淡々と続いた。
そしてコクピットの中でただ一人、フランツは静かに涙を流したのだった。



*  *  *



156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/13(日) 20:18:49.93 ID:+UVLo3YR0


「おう、ようやくお目覚めか」

コウが目を開けると、そこには薄い笑みを浮かべたダレンがいた。
ぼんやりとそこらを漂っていた意識が徐々に戻ってくる。

「ったく、心配かけさせやがって」

157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/13(日) 23:41:17.79 ID:+UVLo3YR0

「ダレンさん?」

「何だ?」

「……よかった、生きてて」

「俺がそう簡単に死ぬか、って言いたいところだけどな。お前さんのおかげだよ」

「ここは?」

158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/14(月) 09:01:22.28 ID:A4LGbyzX0

「連合軍の輸送艦の中だ」

簡易ベッドから起き上がり、室内を見回してみる。白い照明、白い壁、白い床。
数十種類の薬が入ったガラス棚を見ても、どうやら医務室か何かのようだ。

「俺はどうしてここに?」

「覚えてないのか?」

159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/14(月) 18:54:10.60 ID:A4LGbyzX0

「いや、サタン軍の奴らと戦ったことは覚えてます。……ブレイバーに乗って」

「へぇ。あのオーパーツ、名前があったのか」

「そうだ! ブレイバーはどうなりました!?」

「落ち着け、ちゃんと説明してやる」

160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/14(月) 21:44:41.62 ID:A4LGbyzX0

苦笑いと共に肩に手を置かれ、起き上がろうとしたのを押し戻された。
反対にダレンはよっと椅子から立ち上がり、思いきり伸びをする。パキパキ、と骨の鳴る音がした。

「まずお前さんの気がかりになってる、そのブレイバーとやらは軍に押収されたよ」

「押収……?」

161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/14(月) 21:49:28.12 ID:A4LGbyzX0

「お前さんが敵のスライムを二機墜とした後、しばらくして連合軍の本部隊が応援に来た。連中もびっくりしてたよ。数千年前の機械が動いた挙句に敵まで撃退しちまうんだからな」

「それで?」

「おっかなびっくり、オーパーツをこの輸送艦に収容した。そしたら突然ハッチが開いたんだそうだ。その中で消耗したお前を発見し、保護って流れらしいな」

「ハッチが開いた……」

162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/14(月) 21:51:27.20 ID:A4LGbyzX0

「あぁ。中のお前が意識朦朧としながら開けたんじゃないか、って話を聞いてるんだが違うのか?」

「覚えてない……夢中だったから」

「まぁいいさ。お前のおかげで俺も、地下シェルターに避難してた連中も助かった。遅くなったが礼を言わせてもらうよ。ありがとうな」

面と向かって言われると、若干照れてしまう。
コウはポリポリと鼻の頭を掻きながら、ダレンの頭を上げさせた。

163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/14(月) 21:55:38.00 ID:A4LGbyzX0

「俺の方こそ、ありがとうございます。俺が起きるまでここにいてくれたんですよね?」

「ま、まぁな。軍の輸送艦にお前さんの乗ったオーパーツが収容されるのを見て、慌てて乗り込んだんだ。軍がお前さんをどう扱うのか、少し心配だったからよ」

コウはダレンの心配に対して、素直に感謝した。
ここに来るまで自分には何もないと思っていたが、もしかしたら貴重な友人を得たのかもしれない。

164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/14(月) 21:56:49.28 ID:A4LGbyzX0

思わず笑みが零れる。

「なんだよ、何が可笑しい」

「いや、見た目は少し怖いですけど、結構優しいですよね。ダレンさんって」

「……ほっとけ!」

二人してクスクスと笑いあっていると、部屋のドアが開いた。

165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/14(月) 21:57:55.70 ID:A4LGbyzX0

「お目覚めになったのですね」

現れたのは白衣を着た20代前半の女性。
ほっそりとした美人で、穏やかな笑みが印象的である。

「おっと、さっきのねーちゃんか。見ての通りだ。俺は席を外そうか?」

「いえ、そのままで構いませんよ。コウ様、お体の具合はいかがですか?」

166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/14(月) 22:13:19.88 ID:A4LGbyzX0

「え、俺ですか?」

「はい。……あ、申し遅れました。ユリスといいます。軍医です」

ぺこりとお辞儀をすると、耳にかけられていた絹のような黒髪がさらさら頬にかかる。
それを再び耳にかけ直す姿はどこか蠱惑的ですらあり、思わず緊張してしまう。

「はぁ、どうも」

167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/14(月) 22:17:40.72 ID:A4LGbyzX0

「おいおい、何見惚れてんだ」

「え、あ、いや、別に! ……す、すいません」

肩を震わせるようにして笑っているダレン。
そちらを思いっきり睨みつけてやると、今度はぷっと噴き出した。

「えーと、体調は別に、その、大丈夫です。元気です」

168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/14(月) 22:44:36.75 ID:A4LGbyzX0

「こ、子供か!!」

「うるさいな!」

ダレンが、遂には腹を抱えるようにして大笑いし始める
よくわからない恥ずかしさもあって、つい大声で怒鳴ってしまった。

「ふふ、お二人は仲がよろしいんですね」

169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/14(月) 22:50:31.02 ID:A4LGbyzX0

そんなやり取りを見ていたユリスは、眩しいものでも見るように目を細めて言った。


「親子揃って作業員のお仕事をなさってるくらいですし」


ぴた、と笑いが止まる。
今、彼女は何と言った?

「親子?」

「あー……っと」

170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/14(月) 23:45:54.08 ID:A4LGbyzX0

「わたし、幼い頃に父親を亡くしているので、お二人が羨ましいです」

「え? あぁ、そう、ですか?」

「いやー……参ったね」


一度、咳払いをしてコウはダレンに耳打ちをする。

 
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/14(月) 23:46:35.06 ID:A4LGbyzX0

(どういうことですか?)

(どうして俺がこの部屋に入れたと思う?)

(……そんな嘘、すぐにバレますよ)

(そのときはそのときだ)

172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/14(月) 23:47:05.92 ID:A4LGbyzX0

「どうかされました?」

不思議そうな顔をして尋ねるユリス。
どうもこの人、ずいぶんとおっとりした人物らしい。

「いえいえ、別に何も」

「そうそう、何もないよな」

室内に妙な空気が訪れた。

173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/14(月) 23:47:42.67 ID:A4LGbyzX0

コウが睨むような視線を向けると、ダレンは明後日の方向を向いている。
そして、ユリスは相変わらず何もわかっていないような顔でニコニコ笑っている。

「えっと――」

と、そこにまたしても来客があった。
その場にいた全員の視線がドアの方に向く。
 
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/14(月) 23:48:23.41 ID:A4LGbyzX0


「君がコウ=シュージン君かね」


ライオンのたてがみのような髪型をした、老紳士が口を開く。
老いてはいたが、威厳のある凛とした声だった。

「は、はい。私がコウ=シュージンです」

どことなく背筋を正されるような、そんな気がする。
自然と丁寧な話し言葉がコウの口からは出てきた。

175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/14(月) 23:49:57.22 ID:A4LGbyzX0

「そんなに畏まらないでいい。私は君に礼を言いにきたのだ」

「礼、ですか? 俺に? あ、いや私に?」

「そうだ。あのオーパーツを守ってくれたこと、大変感謝する」

「いえ、そんな。あのときはただ夢中で、えっと――」

「はは、あれだけの活躍をしておいて謙遜か。気に入ったよ」

176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/14(月) 23:51:20.83 ID:A4LGbyzX0

そう言って、老紳士は片手を差し出してくる。
恐る恐るコウも手を伸ばすと、少し痛いくらいの強さで握り返された。


「私はガトル・ド・ローレシア大佐。キングダム連合軍第七艦隊艦長だ」


70を迎えようかという年齢を、ほとんど感じさせない自信に満ちた若い瞳。
きっちりとした襟元に目をやるとそこには彼の髪色と同じ黄金の勲章が輝いていた。

 
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/14(月) 23:52:58.03 ID:A4LGbyzX0



*  *  *



「現在、例のオーパーツを積んだ輸送船、並びにその護衛任務に当たる第七艦隊は、進路をアリアハンへと向けています」

『そうか。……第七艦隊というと“黄金の獅子”率いる部隊だったか』

「はい」

178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/14(月) 23:53:30.75 ID:A4LGbyzX0

『厄介な相手だな』

「ご安心を」

『大した自信だな。奪えるのか? あのオーパーツを』

「はい。既に策は立ててあります」

『ふ、頼もしいことだ。……そういえば“鷹の目”のことだが』

「彼の処遇はどうなりますか?」

179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/14(月) 23:54:22.33 ID:A4LGbyzX0

『一階級降格だ。彼には少佐として、実行部隊を率いるよう命じたよ』

「こんなことを言うのも何ですが、そちらの方が彼にとっても良かったでしょう」

『つくづく変わった男だな、奴は。乾いているような、そうではないような』

「ですが、腕は確かです」

『そのようだ。……まぁいい。例の件、良い報告を期待している』




「はい、魔王様」

180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/14(月) 23:54:55.45 ID:A4LGbyzX0



*  *  *



一つの戦いの終わり。しかしそれは新たな戦いの始まりでもあった。
目の前に大きな世界のうねりが待っていることを青年はまだ知らない。
運命という大河に流される中で、彼は何と出会うのか。何を思うのか。



次回 Act.3「ウェイト・フォー・オラクル」



 
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/15(火) 00:02:59.88 ID:jZ1KKCTH0

本日はここまでにしますね
なんとか週一話で更新出来ました
読んでくれている方、コメントくださった方ありがとうございます

一応、こちら勝手に選んだイメージEDです
OP同様、妄想に付き合ってくださる寛容な方だけ聴いてみてください

RAKUEN/GRAPEVINE

http://youtu.be/R7zGobf3wdw

 
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/15(火) 02:01:33.70 ID:oO0ygFpg0
>>1乙!最近はロボットもののアニメが少なかったからありがてぇ!
ところで機体はKMFサイズだけどスーパー系かリアル系か気になるのだが・・・
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/15(火) 02:21:43.05 ID:whaaT6Kdo
面白い
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/15(火) 02:25:57.34 ID:KTzGA1BYo
乙!
ロボ物はSSだと特に少ないから嬉しい
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/15(火) 11:03:58.42 ID:MHMS7sGDO

とりあえず、僧侶と、王様……か?
ダレンさんは戦士だろうか
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/15(火) 13:02:49.20 ID:Kclyssy/0
はかぶさとか出てくんのかね?
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/19(土) 11:00:00.89 ID:IVjKFZsr0
おはようございます
サーバーダウンしてましたね
今からまた少しずつ投下します
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/19(土) 11:03:39.10 ID:IVjKFZsr0
一応リアル系のつもりで書いてますが
特にイラストとかもないので自由なイメージでどうぞ

はかぶさはバグなのであんまり考えてないです

読んでくれている方、コメントくださる方ありがとうございます
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/19(土) 11:04:07.97 ID:IVjKFZsr0



*  *  *



「なかなか見事なものですな」

地下格納庫に収容された新型の水陸両用機動戦艦を眺めて、恰幅のいい男が言う。
丸々と肥え太った体を派手な洋服に包んだその男からは、どぎつい香水の匂いがした。

190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/19(土) 12:24:30.76 ID:IVjKFZsr0

「これがあの“黄金の獅子”の手に渡るわけですか」

彼の名前はボレイ=ルビス。
大企業ルビス・インダストリエの3代目社長にして、現名誉会長でもある。

191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/20(日) 13:02:16.63 ID:HDULzSAE0
>>142
キングスライムは、エース用にカスタムされた専用機とかどうよ?
8機でチームを組むエース部隊か、将軍もしくは王族の親衛隊とか。
合体こそしなくとも、8機がまるで1つの生き物のように息の合った連携で攻めてくるとか。
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/23(水) 01:56:25.20 ID:8BQ3BJeIO
キングは戦艦かMAだろ
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/01/23(水) 23:04:19.60 ID:gYJ7FIh+0
こんばんは
スレ立てしておいて申し訳ないのですが
就活が想像以上に忙しくなかなか続きが書けていません

誠に勝手ながら最長1週間ほど更新停止します
読んでくれている方、本当にすみません
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/24(木) 00:01:41.75 ID:kWf9V+UAO
待ってるから頑張って就職してこい
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/24(木) 06:09:29.09 ID:XGTPHLjIo
二ヶ月まで放って置いても大丈夫だから安心して就活に専念しろ
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/23(土) 23:21:11.14 ID:Chwj97+Io
保守
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/22(金) 11:25:57.18 ID:lAkHugUd0
すみません
一度HTML化します
5月以降に書き始めるかもしれません
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/23(土) 22:35:51.34 ID:WByPJim8o
その時は、最初から頼むぞ
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