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京子「萌ゆる百合の花も、枯れれば醜くありけり」 -
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1 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/06(日) 20:33:14.63 ID:0s1iP1/no
今日のお茶は、また一段と濃口だな」
結衣がそう呟き苦笑すると、ちなつは「はっ」と何かに気づいたように目を見開き、そしてまた直ぐに俯いた。
「葉の分量を、間違えてしまって」
ちなつは伏し目がちにそういった。
暫しの沈黙。
結衣は、本当ならばこのまま、黙りこくっていたかった。
しかし、泥の様に沈み込んだちなつの姿を見てしまっては、そうもいかず、観念したように只一言
鉛よりも重たい唇を押しのけて、ひねり出した。
「仕方ないよ。それは」
それはちなつに対して、というよりも、自分自身に言って聞かせるような言いざまだった。
不意に口をつきそうだった本音を咀嚼し、飲み下すための、形ばかりの言葉。
SSWiki :
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荒巻@管理人★
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小テスト @ 2024/03/28(木) 19:48:27.38 ID:ptMrOEVy0
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満身創痍 @ 2024/03/28(木) 18:15:37.00 ID:YDfjckg/o
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part8 @ 2024/03/28(木) 10:54:28.17 ID:l/9ZW4Ws0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1711590867/
旅にでんちう @ 2024/03/27(水) 09:07:07.22 ID:y4bABGEzO
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1711498027/
にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:18.81 ID:AZ8P+2+I0
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にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:02.91 ID:AZ8P+2+I0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459562/
にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:25:33.60 ID:AZ8P+2+I0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459533/
にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:23:40.62 ID:AZ8P+2+I0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459420/
2 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/06(日) 20:34:05.18 ID:0s1iP1/no
気丈にもちなつは【普段通り】を貫こうと努力していた。擦り切れていた。
少なくとも、結衣の目にはそう映る。
ちなつは、いつもそうしているように、四人分、お茶を淹れようとしたのである。
平素を意識するが故に、無意識のままに。
そんな健気な彼女の姿を、いったい誰が責められようものか。
結衣はそれを深く、深く、傷口に刃物を抉り込む位痛烈に、理解していた。
歳納京子がここにいないこと。それはちなつや、あかりの所為では決してない事を、分かっていた筈だった。
3 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/06(日) 20:34:46.43 ID:0s1iP1/no
だが、結衣はほんの一瞬、ちなつに当たりそうになった。
「嫌なことを、まざまざと思い出させないでくれ」と声を荒げそうになった。
そして、そんな自分を激しく嫌悪し、嘔吐感に苛まれる。苦いお茶を一気に飲み干した。
「仕方ない」そんなものは戯言だ。
------------本当に悪いのは、紛れもなく自分だ。
結衣の内側で、己に対する最早確定的といってもいい程の疑心が、反響する。
不協和音は耳鳴りに変わる。視界が眩んで、ふと意識が深層へ潜り込む。
結衣は点滅する脳裏に、一週間前の事を思い描いていた。
4 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/06(日) 20:35:28.25 ID:0s1iP1/no
一週間前。午後7時。丁度夕飯の支度をしているところである。
京子が泊まりに来ていた。こうして一人暮らしをしている結衣の元に、ふらりと遊びにやってきては、一泊していく。
能くある、幼馴染同士。
今まで幾度となくこうしてきた。
その日も、二人でTVゲームに興じているうちにすっかり日が暮れてしまった。成り行き任せとはよく言ったもので、ほとんど予定調和の内だった。
こうしているのは、居心地がよかった。
だが、二人で時間を共有しつつも、幾ばくかの認識のずれが、結衣と京子の間にはあった。
例えば、結衣は京子を愛している。ということである。それは幼馴染としての、家族愛によく似た情だとか、そういった類のものではない。
あくまで、それは恋なのである。
京子は結衣のことをさしずめ「親友」だとでも形容するであろう。
しかし、結衣にとってみればそれを割り切ることができない。
5 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/06(日) 20:36:01.58 ID:0s1iP1/no
女同士の恋愛というのはいわば人間関係の相転移であって、本来ならば「有り得ない」ことなのである。
裏返し、ちぐはぐであべこべな間柄。
親友から、思い人へと転換するその瞬間は、もはや何者にも観測しえない、未知なる特異点である。
それはあくる日も、そしてこの日も、結衣を悩ませた。
フラストレーションは増大し、ついにこの日、火にかけた鍋が噴き零れるように、想いは暴走した。
6 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/06(日) 20:37:04.04 ID:0s1iP1/no
結衣は京子を抱きしめた。柔らかな肌の感触。髪の匂いに、力を増す両の腕。
「痛いよ」京子は困ったような顔で言った。
結衣はそれを無視した。そして耳元で小さく「好きだ」と、ただ一言、囁くようにして叫んだ。
すると京子は、結衣の腕を振りほどき、二、三歩後ずさりをした。
その顔は赤く上気していた。
「ちょっと、散歩してくる」
その声は震えていて、蚊の鳴くようだった。結衣にとっては、まるで幼い頃の面影が、幻影となって現れたようである。
7 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/06(日) 20:37:44.62 ID:0s1iP1/no
結衣が正気を取り戻す頃には、京子は部屋を飛び出していた。
追いかけないわけにはいかない。
走った。はだしのままの、全力疾走である。不安であったからこそ、風と化した。
―――――――――――――――私は拒絶されてしまったのではないか。
そんな悪寒に似た戦慄が、結衣を走らせる。
マンションの正面玄関にたどり着くころには、既に京子の背中を目視するまでに追いついていた。
「おい、京子」
そう呼び止めようとした、まさにその瞬間である。
京子の体は轟音と共に吹き飛ばされた。
8 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/06(日) 20:38:39.09 ID:0s1iP1/no
マンションから道路へと飛び出した京子を、大型トラックが撥ねたのだ。
結衣は、その瞬間を克明に目撃してしまった。
京子の体が横っ飛びに、少なくとも5mは宙を舞って、アスファルトに激突する。
それを、網膜に焼き付くようなスローモーションで、余すところなく、見た。
それは夢だと思った。しかし、一向に回復しない息切れが、残酷にも現実を突きつけた。
9 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/06(日) 20:39:34.77 ID:0s1iP1/no
結局、大型トラックの運転手が119番通報し、救急車が京子を乗せて走り去るまでの間
結衣はただ茫然と立ち尽くしていた。
そのうちに膝から力が抜け、その場にへたり込んだ。
10 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/06(日) 20:40:18.96 ID:0s1iP1/no
「嘘だ」
救急車やパトカーがやって来た騒ぎに、マンションの住人達が野次馬の如く群がった。
その喧噪はやはり、現実のものである。
まるで早回しのシネマを見るように、結衣の思考は全く追いつかなかった。
つい先程、京子を抱きしめたその腕の感触が、夜の冷たさに麻痺していく。
指先からその痺れが伝搬し、やがては全身を支配する。
視界が暗転し、何も見えなくなる。
結衣の記憶はそこで途絶えていた。
11 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/06(日) 20:40:56.15 ID:0s1iP1/no
「結衣先輩」
ノイズの様にちらついた意識は、ちなつの声に呼び戻された。
「ああ、ごめん。少しぼーっとしてた」
結衣は乾いた笑みを浮かべて言った。その笑みに、ちなつはたじろいだ。
憔悴しきっていたのである。目の下には深いくま。掠れた声。
結衣自身、鏡など無くても分かっていた。自分が今、酷い顔をしているということは、自覚していた。
それでも、後輩であるちなつや、幼馴染であるあかりに対しては、せめて明るく振る舞おうとしていた。
それが、あまりにも痛ましかったのである。
12 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/06(日) 20:41:26.47 ID:0s1iP1/no
「ごめん。もう無理だよ」
そんな結衣の姿を見たあかりは、それだけ言い残し、部室を後にした。
―――――――見るに堪えない、ということだろう。
結衣はあかりの後ろ姿を見送りながら、自らを嘲笑した。
部室に取り残された二人を沈黙が包み込む。
空気はまとわりつく様に重たく、そして冷たい。泥々と濃厚で、苦々しいまでの漆黒。二人の間に注がれる思いは、さながら冷めたエスプレッソだった。
13 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/06(日) 20:41:54.60 ID:0s1iP1/no
「昨日、京子の病院に行ってきた」
「……」
ちなつは返事をしなかった。
結衣はそれでもなお、咎人が己の罪を告白するように、陰鬱な調子で言葉を紡いだ。
14 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/06(日) 20:42:27.55 ID:0s1iP1/no
京子の容体についてである。
目立った外傷は、ない。
しかし、頭部をアスファルトに強打した事による外傷性のくも膜下出血。その血が前頭葉を圧迫している。
依然として意識不明の昏睡状態。
幸い小脳が機能していることにより、かろうじて生き永らえている。
ほとんど「見本」と言っていいくらいの、植物人間の典型だった。
15 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/06(日) 20:43:03.18 ID:0s1iP1/no
結衣がうわ言の様に喋り続けるのを、ちなつはただ黙って聞いていた。
やがてそれらを総括する様に結論を告げる。
「医者によれば、意識が戻ることは万に一つもないらしい」
ちなつは絶句した。単なる沈黙との違いは、絶望しているか否かである。
16 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/06(日) 20:44:10.19 ID:0s1iP1/no
「京子は、ずっと眠ったままなんだってさ。笑っちゃうよね。だって、身体には傷一つないんだから」
結衣は笑った。涙を零しながら。
精神が乖離していた。冗談じみた現実に対する、拒絶反応である。
泣いてよいのやら、笑ってよいのやら、結衣にはそれが、わからなくなり始めていた。
今まさに、一人の少女が狂わんとしているのだ。
ぼろぼろと土塊が崩れるのと同じで、結衣の心が表層から順に剥がれ落ちていく。
砕け散って、奈落の底へと堕ちてゆく。
17 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/06(日) 20:44:40.41 ID:0s1iP1/no
そんな中、ちなつが結衣を抱きとめた。崩壊する砂の城をせめて守る様に、強く、優しく。
結衣は驚愕した。
ちなつも、限界である筈だった。
それにもかかわらず、この精神が瓦解してしまわぬよう、こうして抱き締めてくれる、その強さに驚愕したのである。
同時にそれが眩しくもあった。
他人の為にこうも優しくなれるちなつという存在が、自分の矮小さや醜さを照らし出すようだった。
18 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/06(日) 20:45:09.80 ID:0s1iP1/no
ちなつは何も語らなかった。
しかし、その両腕から伝わるのはこれ以上無いほどの愛である。
その慈しみが明らかであればそうであるほどに、結衣の弱さは曝かれるのだ。
ただ今は、まるで許しを乞う羊のように、その優しさに浸っていたかった。
労りと偽りはよく似ている。
安寧というモルヒネも、痛みを和らげるのには必要である。
結衣はちなつの抱擁に応えようと、手を延ばした。
19 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/06(日) 20:45:48.35 ID:0s1iP1/no
その時、よぎった。
一週間前のあの出来事である。
鮮明に蘇るのは、腕の感触。
京子のか細い身体。そして、こみ上げる痺れ。
ーーーーそうだ。あの時。
結衣は限りなく正しく、果てしなく残酷な真実を手に取ろうとした。
ーーー京子は私のせいで。
20 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/06(日) 20:46:32.35 ID:0s1iP1/no
ちなつの抱擁を受け入れることなど、不可能であった。
結衣は腕を振り払って
「ごめん。今はそういう気分じゃないんだ」
と一言だけ呟き、部室を出た。
障子の向こうから啜り泣く声が聞こえて、結衣は一刻も早くこの場を立ち去りたいと思った。
21 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/06(日) 20:47:01.74 ID:0s1iP1/no
赤座あかりは走っていた。
22 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/06(日) 20:47:28.65 ID:0s1iP1/no
どこに向かうでもなく、ただひたすら、何かから逃げるように。
しかしその何かは、まるで真夜中の月のように、決して遠ざかりはしない。
悲しみに食い破られた胸の穿孔は、常にその少女と共にある。
それは影にも等しかった。
走り去る背中すら、後悔と侘しさの化身のようだった。
23 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/06(日) 20:48:21.07 ID:0s1iP1/no
一歩踏み出す度に積み上がるのは、己の弱さを許してしまった敗者の傷跡である。
背中には、目に見えない無数の切創が痛ましくも刻まれていた。
自分は何故逃げているのか。
その理由さえも、遠ざけてしまいたかった。
24 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/06(日) 20:48:56.29 ID:0s1iP1/no
己の無力さが鮮明に浮かび上がる。
見るに堪えなかった。
目の前の現実に対して、抗う術を持たない自分という存在を、直視できなかったのだ。
世界は嗚咽に包まれた。否、構築されていた。
25 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/06(日) 20:49:22.72 ID:0s1iP1/no
息が切れるまでとばしたところで、どこまで行っても闇が広がる。
苦しんでいるのは、他でもない自分自身なのだから。
心臓が悲鳴を上げて、身体の内側から突き上げるような痛みにあかりは咳き込み、その場に立ち止まった。
脈拍は臨界点だった。ぜいぜいと息を吸う度に、がちがちと奥歯が音を鳴らす。視界が眩む、歪む。
26 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/06(日) 20:49:49.00 ID:0s1iP1/no
朦朧とする意識の中であかりは、いっそのこと消えてしまいたい。と思っていた。
彼女は生まれて初めて、己の存在を否定する。
自分に何ができただろうか。結衣を慰める事。励ます事。ただ何も言わず寄り添う事。その全てが叶わない。
あかりは誰よりも大人だった。故に、それ理解してしまうのだ。
27 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/06(日) 20:50:35.54 ID:0s1iP1/no
自分には、誰かを救う事などできない。芥子粒のように小さく、地を這う蟻のように弱く、機械仕掛けのように冷血だから。
あかりは全てを失いかけてもなお、涙さえ流せなかった。
それは何故か。自問自答はループする。
28 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/06(日) 20:51:01.97 ID:0s1iP1/no
京子を嫌っていたから? 気に食わない人間が消えて、清々したから? ……愚問である。
結衣を嫌っていたから? 同情するまでもないと思ったから? ……否。
ならば、そう。
結衣の事を、愛していたから?
あかりの答えは、正だった。
29 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/06(日) 20:51:27.52 ID:0s1iP1/no
それはほんの一瞬である。
結衣から京子の事故について聞かされたその時、あかりの中でぽつりと、言葉が浮かんで消えていった。
それは記憶の彼方へ消えることなく、心の奥底に沈んでいった。
30 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/06(日) 20:51:53.50 ID:0s1iP1/no
これからはあかりのこと、ちゃんと見てくれるのかな。
それは思考というにはあまりに微弱な、ノイズである。
淡く薄いのと同時に、危うくもあるその期待。
あかりは己の内にある冷徹さをこの瞬間垣間見て、悪寒を覚えた。
親友が交通事故にあった。それにもかかわらず自分は、今何を思ってしまったのだろうか。
そんなはずはない。そう言い聞かせようとも、そうする度に反響する言葉。
31 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/07(月) 04:32:59.03 ID:j/IlpRVDO
続きを
32 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/07(月) 23:44:59.83 ID:zYCIZ694o
重いの来てるな
続きプリーズ
33 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/08(火) 21:54:53.28 ID:2g/svH5/0
いいぞもっとやれ
もっとだ
遠慮はいらんぜ
34 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/08(火) 22:42:43.91 ID:IHJqdmsNo
少女、赤座あかりはあてもなく走った。
安寧の場所など何処にも無かったが、又それを理解しながらも
逃げる。
日は暮れ始めていた。
影法師が嘲笑う。耳鳴りは踏切のサイレンのように、何度も繰り返す。
まるで、鎖に繋がれた囚人が、それでもなお塀の外に思いを馳せるような
決して叶わぬ祈りに似た、逃走だった。
35 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/08(火) 22:50:25.69 ID:IHJqdmsNo
今思えば、心の何処かで諦めていました。
私が結衣先輩を見るのと同じ目で、結衣先輩は京子先輩を見ていたから。
先輩の瞳の中に、私はいない。
そんなこと、ずっと前から分かっていた。
心の何処か、というのはきっと、ぐちゃぐちゃに押し込んだクローゼットのことで
見たくないモノは全部、そこに溜まっていた。
私は能く「大好きです」だなんて言ってみせるけれど
きっとそれは、すっかり先輩のことを諦めてしまった自分を、認めたくなかったからなんだと思う。
今だからこそ、思う。
36 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/08(火) 22:53:55.68 ID:2g/svH5/0
きたきたー
みんな不幸になるのかなわくわく
37 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/08(火) 22:54:29.85 ID:IHJqdmsNo
何故私は、先輩を抱きしめたのだろうか。
本当のところ、わからない。
京子先輩がいなくなって、チャンスだと思ったから?
きっとそれもあっただろう。そして、それを今更、汚いだなんて思わない。
私は往々にして、自分が思っているよりもずっと醜い。
そういう女の子だから。
38 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/08(火) 23:00:30.75 ID:IHJqdmsNo
正直、私は京子先輩を恨んでいる。
まるで、結衣先輩の心を、奪い取ってしまったようじゃないか。
もっとも、京子先輩が悪いわけじゃない。もっといえば、こうなったのは誰の所為でもない。
でも、結衣先輩を壊したのは、他でもない歳納京子だ。
39 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/08(火) 23:04:27.79 ID:IHJqdmsNo
京子先輩を恨むのはお門違いだけれども、それ故にこの思いは、やり場を失って渦巻いている。
勝手な話だよ。まったく。
こういう時、私や、結衣先輩を助けてくれるのは、いつだって京子先輩だっていうのに
いざとなれば、こんな簡単に、嫌いになってしまえる。
私は、あいかわらずひどい奴だなあ。
40 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/08(火) 23:08:57.15 ID:IHJqdmsNo
私がいままで、結衣先輩と京子先輩を見てきて、結果分かったことが一つある。
それは、結衣先輩には京子先輩がいないとダメだという事。
京子先輩がいない今、結衣先輩は壊れかけている。
私は、もうとっくに諦めてしまったけれども、結衣先輩のことが好きだ。
ならば、どうするべきか。
答えは簡単だった。
こんなとき、京子先輩はどうするだろうか。それを考えればいい。
京子先輩の模倣。代替。
私自身が、京子先輩になってしまえばいい。
41 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/09(水) 06:57:26.44 ID:JpM2kMino
続き来てたー乙
42 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/10(木) 23:49:25.94 ID:uDLQktNBo
私が結衣先輩の支えになる。
そう決めた。
京子先輩がそうだったように。
結衣先輩は、強く見えて本当は、寂しがり屋だろうから
こんなときこそ誰かが、近くにいて抱きしめてあげないといけないんだ。
と私は思った。
現実はそう、うまくはいかない。
43 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/10(木) 23:56:13.38 ID:uDLQktNBo
嗚呼、肝心なことを見落としていた。
分かっているつもりだったけれど、よくよく考えてみればこんなにも愚かだなあ。
私みたいな子には、愛される権利なんてない。それは常々思うことだけれども
まさか、誰かを愛する権利すらなかったとは、完全に盲点だった。
そりゃそうだよね。
結衣先輩からすればそれは、押し付けがましい同情でしかないんだから。
なんともまあ、独善的な偽善者だなあ。
笑っちゃうくらいに。
44 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/11(金) 00:02:32.19 ID:DSSXaBrlo
でも、あれ?
なんで泣いてんだろ。私。
わかんないや。
結衣先輩に拒絶されたから?
ピエロみたいな自分が可哀想に思えたから?
いや、この際どっちだっていい。この涙が止まってくれないことには、変わりがない。
京子先輩、助けてよ。
45 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/01/15(火) 20:37:39.55 ID:opbZGrar0
もっとだー
もっと不幸をー
不幸でなくても続きをー
46 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/01/29(火) 00:21:11.63 ID:S1ig3lOg0
早く続きをー
47 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/01/29(火) 00:21:48.12 ID:S1ig3lOg0
早く続きをー
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