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トール「毎度毎度襲われちまう……」【禁書SS】 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/08(火) 18:04:55.59 ID:eOhPMt/A0
ホモ時々ノンケ

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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
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全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
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笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
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【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
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ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/08(火) 18:05:24.07 ID:eOhPMt/A0
魔術結社『グレムリン』。
まだ表立って活動はしていないが、後にハワイ諸島の混乱を巻き起こす原因となる組織である。
メンバーは七名。

魔神オティヌス。
雷神トール。
ベルシ。
『黒小人(ドヴェルグ)』マリアン=スリンゲナイヤー。
ウートガルザロキ。
『投擲の槌(ミョルニル)』。
シギン。

どれも一線級の魔術師と呼べる者たちであり、全員北欧神話に関する魔術を扱える。
シギンに限っては魔術と言えるのか特殊だが、有用であることには間違いない。
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/08(火) 18:05:51.65 ID:eOhPMt/A0
男が三名、女が四名と少し偏っているが、メンバー同士の仲は良好だ。
さすがに恋愛関係までは発展しないものの、時々一緒に買い物するくらいである。

そして今日もまた、全員で集まって雑談をしていた。
ただし、その真意はとある人物には知らされていない。
そして、他の全員はとある目的を遂行しようとしていた。

口火を切ったのは、ウートガルザロキ。


「あー、ちょっとすまねえ。トール以外全員、席をはずしてくれねえかな?」

「は? なんで俺以外?」

「了解した」

「はやく終わらせろよー」

「くれぐれもはしゃぎ過ぎないように」


そして、部屋にはウートガルザロキと雷神トールだけが残った。
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/08(火) 18:06:17.69 ID:eOhPMt/A0
「これで邪魔者はいなくなったな」


ウートガルザロキが意味深な視線を向ける。
そのことに少々不信感を覚えながら、トールは強気にでた。


「おい、こりゃどういう風の吹き回しだ? なんか用事があるなら先に言っと――」


しかし言葉は続かない。
なぜか。

ウートガルザロキが、トールの唇に自分の唇を重ね合わせたからだ。


「――っは。お、おいなんだよ一体……。いっ、いきなり気持ち悪い真似なんかすんじゃねえよ!」


まるで訳が分からなかった。
信頼していた仲間にキスされるなど、今までされたこともなかったし聞いたこともなかった。
なにより、そんなことをして嬉しそうにニヤついている、目の前にいる男が怖かった。
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/08(火) 18:06:44.52 ID:eOhPMt/A0
後ずさりながら問いかける。


「お前、自分がやったことわかってんのか!?」


答えない。


「そもそもっ、男同士だぞ俺らは!? やる前におかしいとか思わなかったのかよ!!」


答えない。


「んなチャラい見た目して男にキスするとか、マジありえね――」


とうとう壁に背がついてしまった。
もう逃げ場などない。
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/08(火) 18:07:12.20 ID:eOhPMt/A0
そんなトールを見て、ウートガルザロキは高笑いしながら迫ってくる。
一歩一歩、まるで焦らすように。


「ひっ……く、来るな! あっち行けよ!!」


情けないとは自分でも思っているが、どうしても怯えてしまう。
反撃の方法などいくらでもあるはずなのに、なぜか思いつかなかった。
そんなトールを見てさらに満足したのか、ウートガルザロキは上機嫌で彼に話しかける。


「なあ、トール」

「なんだよ……っ」

「お前って可愛いよな」

「はぁ……? い、いいからそこどけ――!」


次の瞬間、トールの服の襟を掴み勢いよく持ち上げ、すぐさま壁に叩きつける。
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/08(火) 18:07:41.12 ID:eOhPMt/A0
息が絶え絶えになりながらも、この状況を脱出するために右腕を振り上げ――気づいた。

痛みがない。
それどころか、快感さえ覚えていた。


「はぁ……はぁ……っ!」

「人様を殴ろうとする悪い腕には――お仕置きしなきゃな!」


宙ぶらりんになっていた右腕を握り、捻りあげる。
また痛みは感じず、更に快感が襲ってきた。


「不思議だろ? 不思議だろうな。なんせ初めて使った魔術なんだから」

「なにを、したんだ、よっ」

「痛みという感覚を快感に差し替えた。ただそれだけだ」
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/08(火) 18:08:07.73 ID:eOhPMt/A0
それだけ言うと、今度は脚を握り締める。
食い込みそうなほど、強く、強く。
そうするほどトールの快感は増していき、端整な顔がゆがんでいく。


「なあ、勃起してるぜ?」

「――――!!」


耳元で囁かれ、慌てて下腹部を確認する。
言葉通り、ズボンを突き破らんばかりに勃起していた。

ウートガルザロキが力を加えていくほど、ソレはどんどん大きくなっていく。

不意に、ウートガルザロキの手が緩んだ。

これでもう終わりか――。
そう安堵した刹那。


ウートガルザロキが、トールの体を思い切り抱きしめる。
腕が折れそうなほど強く締め付けられ。

トールは、射精した。

9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/08(火) 18:08:34.15 ID:eOhPMt/A0
「は……はぁっ……あっ……」

「かっわいー。俺もすっかりビンビンになっちゃったよ」


絶頂でへたりこむトールの前で、ウートガロザロキが自分のズボンを下ろし始める。
そして見えたのは、赤黒く膨らんだ巨大なペニスだった。
他人のモノを見るのは初めてなのか、トールが体を震わせる。


「あのさ、そういう反応はやめたほうがいいぜ? 俺みたいにもっと興奮しちまう」

「いっ……もう、やめてよ……っ」

「口開けろ」

「やめてくれよっ……!」
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/08(火) 18:09:01.73 ID:eOhPMt/A0
頑として口を開けようとしないトールを見て、何か思いついたのか、自らもしゃがみトールと目線を合わせる。
そして肩に手をかけ、ゆっくりと話しかけた。


「俺さ、お前どういう体してるのか気になってたんだ」

「ふぇ……?」

「戦闘専門とか言ってからよお、結構鍛えてんだろ? だから見せろ――よっ!」


そう言うと同時に、服を掴んで左右に引っ張り、そのまま強引に引き千切った。
素肌は白く、適度に鍛えられていて、見る者の情欲をこれでもかと煽る。
それに満足したのか、ウートガルザロキの手はどんどん伸びて、小さく自己主張する薄桃色の突起物を抓んだ。
千切れそうになるくらい強く抓まれ、その行為にトールは激しく感じていた。

思わず口を開いてしまう。
それをウートガルザロキは見逃さなかった。


「ふごっ!?」


トールの口に、己のイチモツを挿入する。
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/08(火) 18:09:27.35 ID:eOhPMt/A0
「おら! 初めてのチンポだ、たんと味わえ!!」

「んー! ん、んーっ!!」


トールの頭を掴み、強引に前後に動かす。
苦しい、吐き出したい――そう頭では思っているのだが、なぜか感じてしまう。
喉の奥に突き入れられ、呼吸もままならない。
その行為に、トールは興奮していた。


「イイッ、イイぜ!!」

「――、―――!」

「そんな目で見んなよ、余計興奮しちまうだろうがッ!!」


そしてそのまま、ウートガルザロキは自らの欲望をぶちまけた。


「はぁっ……んっ……苦っ……」


吐き出すこともできたはずだが、精液をごくりと飲んでしまった。
自分の体を好き勝手に使われるということに、悦びを覚えているのかもしれない。
その考えが頭を過ぎり、なぜか納得してしまった。
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/08(火) 18:09:54.19 ID:eOhPMt/A0
「トール、お前のアナに挿入れてえんだけどよ……」

「ああ……」


ウートガルザロキの要望にあっさりと答え、自分からズボンを脱ぎ始める。
そして、また勃起していることに気がついた。
脱ぎ終わると、さっきまで自分を犯していた男に尻を突き出した。


「挿入れてくれよ……。疼きが止まんねえんだよ……」

「ああ。たっぷりと犯し尽くしてやる」


そして、自分のペニスをトールへと突き入れる。
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/08(火) 18:10:20.71 ID:eOhPMt/A0
「あああああああッ!!!」

「……っあ。締り良すぎるぜ……!!」


そのまま犯されるだけだったら、痛みに悶えて意識もままならなかっただろう。
しかし、今は痛みが快楽に差し替えられている。
それはそのまま、今まで体感したことがないほどの快感だった。


「イイッ!! イイよっ!!!」

「んだあ急にヨガりやがって! 生意気なんだよ!!!」

「んああああああっ!!!」


ウートガルザロキは自分自身を激しく動かし、快楽へと直行する。
トールは自分の腰をくねらせ、更なる快感を求める。
二人は同じ目的へと向かっていた。
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/08(火) 18:10:46.86 ID:eOhPMt/A0
「おいっ! こっち向け!」

「な――んぷ、ちゅっ、れろっ」


ディープキスを繰り返し、愛を再確認する。


「出すぞっ、このまま中にっ!」

「出してっ! 俺の体を満たしてくれっ!!」


そして、二人一緒に絶頂へと達した。
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/08(火) 18:11:20.23 ID:eOhPMt/A0
二人が性行為をしている部屋の前で、不穏な動きをしている者がいた。


「ふむ。なかなかイイではないか」

「最初から挿入してしまえばいいのに。もっとシンプルにしてしまえばいいのに」


その者たちの前には、カメラがあった。
中には、ウートガルザロキとトールがしていた行為の一部始終が録画されている。






バチカンのとある場所。
パソコンの前で、とある作業をしている男がいた。
その男がしていたのはネットショッピング。
商品名は『同僚レイプ! 野獣と化した魔術師』とある。


「ほう……。この質で、この値段であるか」

「お買い得であるな」


闇は、深い。
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/08(火) 18:12:19.64 ID:eOhPMt/A0
今日はここまで

書き上げたらまたきます

あと、>>1にもあるように、時々女ともヤります
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/08(火) 18:16:19.15 ID:MQUV2PCb0

乙 
 
とんでもないスレを発見してしまった ブクマがパンパンだぜ
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/08(火) 18:53:04.55 ID:SxVWzrIy0
アッークアさん!何買ってんすかっ!!
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/08(火) 21:13:06.33 ID:zuAcjRNTo
トールの不幸スレと重い開けばホモスレだった
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/08(火) 22:38:53.36 ID:3bZFPJmDO
>>1
ついに欲望をぶちまけたんですね
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/09(水) 12:37:22.83 ID:UY2hCIcL0
これは酷いwwwwwwwwww

いいぞ、もっとやれwwww
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/10(木) 18:06:37.60 ID:Hnx/aW0ZP
たまげたなぁ
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/11(金) 22:04:11.11 ID:SO7MdAd/0
初春「というネタを考えたんですが、次の新刊はこれでいきませんか佐天さん?」
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/13(日) 05:12:33.66 ID:v9vMDcnSO
闇は、深い。じゃねえよw
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/13(日) 17:36:35.43 ID:FA9oUCMN0
喜んでもらえたようでなによりです

二回目の更新なのにアレですが、今回はエロシーン少な目です
それでもよければどうぞ
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/13(日) 17:37:02.24 ID:FA9oUCMN0
ウートガルザロキとの一件から数日。
さすがにまた襲われることは無かったものの、時々こちらに振り向いて微笑んでくるようになり、段々ストレスが溜まるようになってきた。
性欲は解消されたが、胸にはまだしこりが残り続けている。

これではいけない。
トールには、組織の一員として与えられた仕事をキッチリこなさねばという信念がある。
いつまでも悩み続けて任務を失敗するくらいなら、組織の主たる魔神トールの操り人形として自我を[ピーーー]ほうがマシだとさえ考えていた。

だが、その魔神トールから、


「お前には修行が必要だ。日本へいってこい」


と、突然休暇を与えられた。
もちろんトールは断ろうとしたのだが、もう周りの空気的にそんなことを言える状況では無かったため、なし崩し的に承諾してしまった。

今現在、トールは日本の九州にいる。
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/13(日) 17:37:28.09 ID:FA9oUCMN0
魔術で九州へと転送されたトールだったが、周りを観察してある疑問が浮かんできた。


「……ここはどこなんだ?」


他の人に接触されることがないように、逃げ出さないようにと、場所は伏せられているが、なにもここまで不気味な場所に送らなくてもいいだろうと心の中で愚痴る。
ポツンと建てられた家の周りには枯れた木がこれでもかと並んでおり、さらにその周りを悪魔でも住んでいそうな、幹、枝、葉の全てが真っ黒に染められている木が囲んでいた。
別荘に住まわせてやると言うものだから、てっきり風情ある日本家屋にでも送ってくれるのかと思っていたが、いくらなんでもこれはあんまりだろう。

しかし野宿するというわけにもいかないので、今にも崩れそうなプレハブ小屋のドアを開けてみるが、


「うっわすげえ埃……ってなんだこりゃ!?」


中の様子はさらにとんでもなかった。
壁という壁にはおどろおどろしい護符のようなものが一面に貼り付けられ、床には魔術にでも使うのかと思うほど巨大な魔方陣が施されており、家具は必要最低限のものしか設置されておらず、またそのすべてが真っ白に塗りたくられていた。
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/13(日) 17:37:58.72 ID:FA9oUCMN0
「クソ……。なーにが『せいぜい英気を養ってくれよ』だ。さらにストレスが溜まっちまうぜ……」


帰ったら一発ぶん殴ってやる、なんて到底叶いそうにない決意を心に刻んだ。

と、ここであることに気付く。


「おいおい……水道さえねえのかよ」


食料も当然用意されているわけがない、ということは……。


「モノホンのサバイバルじゃねえかあああああ!!!」


リーダーへの殺意がまた一段と強まった。
そんな気がした。
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/13(日) 17:38:24.88 ID:FA9oUCMN0
しかし、こんなところで叫んでいてもなにも始まらない。
まずは食料を確保するために小屋から出なければ。
肉なら猪や兎に電撃でも浴びせて調達すればいいか、そんなことを考えながら、サーチ用の魔術を展開する。
が、


「あ……?」


魔術が発動しない。
正確に言えば、魔翌力を練ると片っ端から吸い取られていく。
これでは魔術もクソもあったもんじゃない。


「なるほどなるほど……。修行っつうのは精神統一でもしてろってことなのか」


あまりの不便さに頭を掻く。
日本ではポピュラーらしい滝行でもしてくるかと思いつくが、滝なんてどこにあるのか、そもそもあるのかと考えて肩を落とし、小屋へと戻る。
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/13(日) 17:38:51.69 ID:FA9oUCMN0
なにもする気が起きないので窓から外を眺めるが、なにかがおかしいと感じた。
まるで誰かから見られているような――。
そして気付く。


「アイツらか……」


黒に染まった林のなかに、数人の男が潜んでいる。
しかも、素人が使うような身の隠し方ではない。
本物の、魔術師同士の戦闘でさえ効果を発揮するような隠れ身だ。

加えてここでは魔術が使えない。
見つからないように意識を逸らす魔術などゴマンとあるが、そんなものを使わずともここまで出来るということは、相当な使い手だろう。

だがトールは戦闘の達人だ。
魔術を使わない隠れ身など、たやすく見抜ける。
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/13(日) 17:39:18.43 ID:FA9oUCMN0
「おい、出てこいよ。どうせやるんなら正々堂々戦おうぜ」


窓から外に飛び出して、周りに呼びかける。
すると、それにあわせるように一人の男が出てきた。


「戦うだと? とんでもない、そんな気はまったく無いのよな」

「はあ? なら帰――いやちょっと待て。ならなんで俺のことを見張っていた?」

「……」


男は答えない。
どう口を割らせようかとトールが近づいていくが、二人の距離が一定に達したとき、男の口が歪んだ。
なにかある――そう気付いたものの、時すでに遅し。
四方八方から麻酔を塗った矢が発射され、トールの体に突き刺さった。
わけもわからぬまま、トールは眠りにつく。
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/13(日) 17:39:46.62 ID:FA9oUCMN0
二時間後。
体の震えとともに、トールは目覚めた。
麻酔が効いているのか体があまり言うことを聞かないが、首を動かして自分がどうなっているか確認する。


「あ……? なんでまた全裸になってんだよ……」


そう。
服を剥かれ、自らの体が曝されていた。
と、ここで、


「起きたようだぞ」

「始めるか」
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/13(日) 17:40:12.97 ID:FA9oUCMN0
横から声が聞こえる。
見ると、さっき小屋の周りにいた男たちが、これまた全裸でとり囲んでいた。
目を凝らすと、なんと全員が勃起していた。


「なっ……気持ち悪りいんだよテメ――」


言葉は続かない。
トールの口に男のモノが突っ込まれたからだ。
思うように呼吸が出来ず、不快感が体を覆う。

なるほど、ここまで麻酔が効いてるのはこのためか――。
イヤな納得の仕方だとは思うが、それも仕方無い。

そのまま頭を動かされていたが、別の男に手を掴まれ、そのまま男のを奉仕させられた。
それに乗じて、また別の男がもう片方の腕を使い始める。
今のトールはまさに、『操り人形』だった。
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/13(日) 17:40:39.17 ID:FA9oUCMN0
(なんでこんな汚ねえモンを触らなければ……)


そう思っていても、この状況が改善されるわけではない。
しばらく抵抗することを放棄していたが、自分にイラマチオをしていた男が不意に、


「お、俺もうダメっす……」


なんてことを言い出し、やっと止めてくれるのかと思ったが、それも束の間だった。


「建宮さん、挿入ていいですか!?」

「おう。牛深、やってやれ」


一瞬、わけがわからなかった。
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/13(日) 17:41:05.19 ID:FA9oUCMN0
「――ぷはっ。や、やめろよっ……。手でも口でもなんでも使っていいからさ、そこだけはやめてくれよ……っ」


必死にお願いするが、男たちは気にも留めない。
無慈悲に、トールは貫かれた。


「っあああああああ――!!」


言葉にもできないくらい痛い。
麻酔なんてあってないようなものだった。
だからこそ、ウートガルザロキのときはあんなにも快感があったのか。
様々な思いが頭のなかを駆け巡る。


「ははっ、痛がっちゃって」

「野母崎、こんなときに軽口を叩くんじゃない」


痛みに悶える自分など見えていないのか、男たちの行動はさらにエスカレートする。
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/13(日) 17:41:31.94 ID:FA9oUCMN0
椅子に座らされ、体のありとあらゆるところを使われた。
腋に挟む、髪の毛を縛りつけそのまま擦る、兜合せをする者までいた。
耳の臭いを嗅いでそれをオカズにする者や、犯されている自分を見て自慰をするのもいた。

肛門からは精液が溢れ出て、体は白一色に染まっている。
ツンと鼻につく臭いが、そこらじゅうに漂っていた。


「はあっ……ああっ……」


麻酔は解けたものの、疲れ果てて動くことすらままならない。
服を着ることすら面倒くさくなり、裸のまま横たわっていた。
しばらくそうしていると、不意にドアが開かれる。
入ってきたのは、利発そうな10代の少年だった。
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/13(日) 17:42:00.03 ID:FA9oUCMN0
「あ、あの……」

「……なんだ?」


気だるげに返事をする。
どうせさっきの男たちの仲間だと思っていたから。
そしてそれは事実だった。


「ごめんなさい、建宮さんのあとを着いていったら偶然見ちゃって……。助けてあげられなくてごめんなさい……」

「! ……いいんだよ」

「タオルを持ってきました。どうぞ使ってください」

「ああ、そこに置いといてくれ……」


場所を指示し、タオルを置かせる。
なんだ、まともなヤツもいるんじゃないか。
そのことに少しだけ安堵するが、どこか様子がおかしい。
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/13(日) 17:42:25.24 ID:FA9oUCMN0
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」

「お、おい……どうしたんだよ……」


さっきからずっと謝り続けている。
まるで何かにとり憑かれたように。
慌てて声をかけるが、止まることは無かった。


「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」


やがて気付く。
その少年は。
勃起していた。
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/13(日) 17:42:52.69 ID:FA9oUCMN0
「オティヌスさんよ、なんでトールをあんなところに行かせたんだ?」

「気になるかね? すべてを騙す巨人の王」

「当たり前だろ? アンタがメンバーに休暇を取らせるなんて、異例中の異例じゃねえか」

「……まあいいだろう。長くなるが、よぅく聞けよ?」

「ああ」

「トールを送った場所は、日本の九州。そのなかの長崎県というところだ」

「そこでは独特に変化したキリスト教が根付いていてね、信仰していた人々は禁教とされていたそれを、隠れ逃げ延びながら今日まで伝えてきた」

「迫害され、ときには戦うことさえあった彼らは、様々なものを組み合わせた魔術を構築し、それを使って村の人の手助けをすることもあったそうだ」

「そして、ここからが肝だ」

「彼らは、長い間封印され避けられてきた『呪われた地』を浄化する方法を、ついに編み出したそうだ」
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/13(日) 17:43:20.05 ID:FA9oUCMN0
「その方法を要約すると、その地に溜まっていた穢れを『男性の精液』に置き換え、それを一気に吐き出すことで穢れを祓う、ということらしい」

「へえ。案外簡単だと思うが、なんで長い間それが実現できなかったんだ?」

「それはね、範囲が広すぎて全部一気にやるとなると人員が足りなくなるということもあったし、最大の要因は『一定以上の人間がその地に入ると、まもなく全員が死亡する』という言い伝えがあったかららしい」

「んだそりゃ。くっだらねえ」

「だと思うだろう? 信じられないかもしれないが、それは事実だったらしい」

「しかも、穢れを一点に集めて少人数で行おうとしても、集中させることがなかなか安定しないらしく、時には暴発して死者がでることもあった」

「だが、安定してしまえばあとは簡単だ。それが今成功したらしい」

「ほお。で、トールをそこに送った理由は?」

「精液を出すとなると、そこに誰かオカズになる者がいたほうが都合がいいだろう? 男でも女でも関係ないだろうし、ただ眺めているのもつまらなかったから送っただけだ」

「ははっ。ひっでえ理由だぜ」
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/13(日) 17:43:47.57 ID:FA9oUCMN0
「ふふっ。それと、その様子を撮影してもらうことにもなっている。参加した男どもにモザイクを入れておけば、いい金儲けになるだろう」

「ん、でもちょっと待てよ。そいつらは曲がりなりにも人助けをすることもあったわけだろ? そんなヤツらが外部の人を使うことを良しとしたのか?」

「普通なら断っていただろうな。だが私が理由をつけておいた。『送る人間は呪いがかかっているので、一緒に穢れを祓ってやってください。でも抵抗するかもしれないので、麻酔を使って、言うことには耳を貸さないでください』とな」

「ふーん。でもよお、抵抗するかもってか確実に抵抗するだろ。もうそいつら殺されてんじゃねえの?」

「それはないな。さっき『穢れを一点に集める』といったが、彼らの話では周りの魔翌力や龍脈とかそういった力も一点に集めてしまうらしい。つまり、穢れが集まっている場所以外では魔術は使えないということだ」

「なるほどな。挑発とかなんとかして外にでてきたところを麻酔で眠らせてしまえば、ハイ調理完了てことか」

「ああ。起きたあとも抵抗しないように強力なモノを使ってくれと言っておいたし、もう心配ないだろう」

「くくっ。可哀相なトールくんだぜ」

「お、撮影したビデオが届いたぞ。一緒に見てみるか」
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/13(日) 17:44:45.62 ID:FA9oUCMN0
今日はここまで

精液に塗れたトールくんの画像とかあったら欲しいです
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/14(月) 01:31:07.38 ID:QFYvJkivo
ひでえ……ひでえよ……こんなひどい話があっていいのかよ……



―――
もっとやればいいと思った。

超乙
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/14(月) 09:53:48.35 ID:Aqpxgg9s0

こんなのあんまりだよ…こんなのってないよ…
オティヌスたんがナチュラルに外道で萌えます   >>1
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/16(水) 10:33:39.22 ID:GTq44us+0
>>1
ビデオ買いたいわ
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/16(水) 19:28:41.46 ID:cAQRHo1G0
私は虫系とか脳姦死姦系以外なら基本なんでもいけます

今日はノンケ待望のノーマルです
どうぞ
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/16(水) 19:29:07.16 ID:cAQRHo1G0
第三犯


「なあ……」

「……」

「こっちを向いてはくれんのか」


酷い目にあった。
いや、酷いなんてものじゃない。
まさに鬼畜である。

常識的に考えて、レイプをさせるためだけに何も知らない部下を送るだろうか。
しかもビデオに撮らせるなど、まともな人間がやることではない。
魔術師になった時点でまともではないのかもしれないが、どちらにせよ非常に負担がかかったことは事実だ。

それなのに上司は謝罪の一言もなし。
トールが拗ねるのも当たり前だろう。
しかしその様子を見て、当の上司は非常に喜んでいるらしかった。
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/16(水) 19:29:34.69 ID:cAQRHo1G0
「……トール――」

「触るなッ!!」


パシッと手が払われる。
実力が上の相手に向かってするのは失礼のはずだが、オティヌスはなぜか悶えている。


「あっ……んん……」

「気持ち悪いんだよ! 俺はもう帰るぜ」

「まあ待て」


いきなり正気に戻り、トールに待ったをかける。


「仕事だ」
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/16(水) 19:30:00.71 ID:cAQRHo1G0
ローマ正教の本拠地、バチカン。
トールは現在、そこにある聖ピエトロ大聖堂にいる。
謁見ということであれば、いつもはローマ正教のトップであるローマ教皇ことマタイ=リースの仕事なのだが、今日は違っていた。

『神の右席』。
ローマ教皇の影の相談役として、十字教社会のピラミッド内に存在しない、実質的にローマ正教のトップである組織だ。
そんな彼らが今日、トールと会うために闇の底から這い出てきた。


「あのさぁ」


最初に言葉を発したのは、神の右席の前方を司る存在『前方のヴェント』。


「なーんでこんな生っちろいガキのために、私ら全員出てこなきゃなんないワケぇ? 面倒くさいコトは教皇サマに押し付けときゃいいじゃん」

「それには私も同意見ですねー。異教のクソ猿がほんのひと時のためだけに我々を呼び出すなど、あってはならないことです」


ヴェントの意見に、同じく左方を司る存在『左方のテッラ』が同調する。
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/16(水) 19:30:26.31 ID:cAQRHo1G0
「まあそう言うな。なにせ久しぶりの客人だからな。半ひきこもりと化している俺様でも、心が躍るというものだ」


二人を抑えて軽口を叩くのは、神の右席のリーダー、右方を司る存在である『右方のフィアンマ』。


「……おふざけが過ぎているのである。必要とあれば私の手で黙らせてやってもよいのだぞ?」


厳格な雰囲気を漂わせながら他のメンバーに注意を促すのは、後方を司る存在『後方のアックア』。


このように個性的な面子を前にして、客人であるトールは一抹の不安を感じていた。
なにせ、最初にかけられた言葉が自分に対する侮蔑である。
しかも全員実力が相当なものとなれば、反抗しようにもできないので、仕方無いといえば当然だ。
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/16(水) 19:30:53.52 ID:cAQRHo1G0
(マジありえねーってマジ!! フィアンマはニヤニヤしながらこっち見てるし、ヴェントは顔を背けながらもチラチラ様子を伺ってるみてえだし、テッラとかいうヤツはまさに汚物を見る視線だし、アックアに至ってはなぜか顔を赤らめてるんだぜ!? この状況で敵の力量をある程度見極めろとか、無理無理アンド無理いいいいい!!!)


そう。
今回トールに任命された仕事は、『神の右席の実力チェック』。
将来相手にするときのためだとかなんとか言っていたが、まさかすんなり会うことができるとは思っていなかった。
それだけにいつもより緊張するし、不安になる。

しかし、このまま時が過ぎてしまえば、次にいつ機会があるのかもわからない。
勇気を振り絞って、まず誰から調べるか考える。


(とりあえずフィアンマは論外だ。こんな怪物どものリーダーってことは、実力もそれ相応にあるだろう。最初に相手するのはキツイ。アックアもなんだかヤバそうだ。筋肉がまず俺の二倍はあるだろうし、なんかアイツを見るたびに悪寒がする。やめとこう。テッラは四天王で言えば『あやつは我らの中でも最弱よ……』のポジションっぽい感じだ。残る四天王のなかでは真っ先に殺されそうだが、実力はNo.3くらいだろ。それと、あのエリマキを前にしては笑いが堪えきれずに殺されちまうかもしれねえ。となると……)

「前方のヴェント……だったっけか。ちょっとお話しようぜ?」

「……あぁ?」
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/16(水) 19:31:19.56 ID:cAQRHo1G0
ヴェントを選んだわけは、三つある。
一つは、使える魔術の情報を事前に掴んでいたこと。
風の噂程度だが、一人を相手にするよりも多人数向きの魔術を使うらしい。
二つは、警戒さえ解けば一番話しやすい人物だろうということ。
最後の三つ目は、性別が女なので、もしものときに他の面子よりは対処しやすいだろうということ。


「とりあえず、個室で話したいんだけどよ。いいとこあるか?」

「……私の部屋でいい」


自室に案内する、ということにちょっと違和感を覚えたが、一応頷いておく。
すると、フィアンマがなぜか高笑いして話しかけてきた。


「はっはっは。トールとやら、気をつけろよ? なにせお前は――」

「黙って。ハンマーで殴るわよ」


フィアンマの言葉をヴェントが遮る。
なにか事情があるらしいが、詳しいことはわからなかった。
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/16(水) 19:31:47.49 ID:cAQRHo1G0
ヴェントの自室
女性の部屋では珍しく、簡素ですっきりしている。
無駄なものを好まない性分なのかもしれない。


「あのさ、一つ聞いていいか?」

「なにカナ?」

「アンタ何歳――」

「[ピーーー]わよ」

「ごめん、嘘嘘。そのピアスって痛くねえの?」

「……別に。一応、コレは術式のために仕方なくやってるだけだから。誰が好き好んで顔にピアス何個も着けるのよ」


ぶすっとした表情で答える。
あんまり触れてほしくない話題だったか、と心の中で舌打ちした。
54 :saga入れときゃ良かった [sage saga]:2013/01/16(水) 19:32:33.59 ID:cAQRHo1G0
「ふーん。俺も着けてみようかな」

「やめといたほうがいいよ。自分で穴開けようとしたら大事故になるかもしれないし、病院で金払ってやるもんでもないし」

「ほぉう」

「なによ?」

「案外優しいもんだね。何を言っても噛み付かれるかと思ってたけど」

「……っ。うっさい!!」


意外な一面を発見して、ちょっと微笑ましく見えてきた。
なにせ自分がいる組織は変人ばかりが集まっている。
一番まともだと思われるベルシも、研究ばかりで他のことにはあまり目を向けない。
そんなこともあって、トールは少し安心していた。

油断していた。
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/16(水) 19:33:04.52 ID:cAQRHo1G0
「逆に聞くケド、アンタ一体いくつ? 成人してるようには見えないケド」

「んー? 十七くらい」

「くらいって何よ」

「別に答える義理はねえだろ。そっちも教えてくんなかったし」

「女性に年齢聞くなんて最低もいいトコでしょ。ガキが粋がるもんじゃないわよ?」

「おいおい今俺をガキっつったか? 一応言っておくけど、俺は『全能』だぜ? その意味くらいわかるだろ?」

「ハァン、そう? 全能、全能ねぇ……」


空気がすこし変わった。
感覚的にだが、ほんの少しだけピリピリしている。
そしてそれは、決定的なモノに変わった。


「トールくん、だっけ? 例えばさ、今ココで――」

「アンタをブチ殺すって言ったら、どうする?」
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/16(水) 19:33:30.56 ID:cAQRHo1G0
「っああ!? もう一回言ってみろ――!?」


ヴェントの言葉に触発され、トールも怒気を含んで言い返そうとするが、途中で止まる。
息が。
呼吸ができない。

なんらかの魔術で気道でも塞いだか――そう考えて、すぐさま対抗用の魔術を組み上げようとするが、


「させるワケないじゃーん! アンタ馬鹿なの?」


ヴェントが片っ端から別の魔術で打ち消していく。
そのうち、段々意識も薄れてきて、魔力を練る余裕すら無くなった。
気絶しそうになるトールに、最後に聞こえた言葉は――。


「オッヤスミナサーイ♪ 精々いい夢見なさいっての」


本当に楽しそうな、ヴェントの声だった。
本当に、心の底から……。
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/16(水) 19:33:57.92 ID:cAQRHo1G0
数時間後、ベッドの上でトールの意識が回復した。
頭が少しズキズキする。
顔を顰めながら目を開くと――。


「あー、起きたんだ」


真正面に、ヴェントの顔があった。
ピアスを外し、化粧を落として、素のままだ。
そのヴェントが、じーっと自分を見つめている。


「な、なんだよ……」

「べっつにー」


こうも見つめられていると、さすがに恥ずかしい。
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/16(水) 19:34:24.63 ID:cAQRHo1G0
それと、


(……案外、美人なんだな)


そのままなら意外と可愛いじゃないか、と意識を失うまでとは逆の感想を抱いた。

ヴェントの顔に見惚れ、しばし見つめ合っていると、ヴェントが話しかけてきた。


「アンタって本当に――」

「ん?」

「本当に可愛い……」

「……は?」


その内容は、意外すぎることだった。


「ちょ、なんでまたっ、そんなこと……」
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/16(水) 19:34:51.20 ID:cAQRHo1G0
これまでトールは二回ほど犯されてきたが、なんだか今日もそんな気がする。


「ってうわぁあああ!!! 俺もお前も裸じゃねえか!! なんで事ある事にこうなっちまうんだよォおおおおお!!!」

「ねえ、こっちを向いて」


顔を強引に動かされ、再度見つめあう形になった。
なんとかこの状況を脱出しようと、頭のなかで様々な考えが浮かぶが、その作業は中断される。
なぜか。


「本当に、本当っに……っ」


突然、ヴェントの瞳から涙が零れ落ちたからだ。
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/16(水) 19:35:17.47 ID:cAQRHo1G0
「お、おい!? どうしたんだよいきなり……」

「ごめん、ごめん……。だけど、ほんの少しの間だけ……」


ゆっくりとトールにもたれ掛かり、互いに抱き合う形になった。
そして、こんなことをした理由を語り始める。


「私の弟は、随分前に事故で死んだ。活発で、生意気で、でもとても優しい子だった」

「……それって」

「あのまま成長してたら、アンタぐらいの歳になってたはず、なのに……」

「……」

「だから、お願い。今日一日でいいから、私の好きにさせて……」


ヴェントの言葉を受けて、しばし思いつめる。
そして、決めた。
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/16(水) 19:35:43.55 ID:cAQRHo1G0
「顔上げてくれ」

「……うん」


ヴェントを起こさせ、向かい合う。
その瞳は濡れていて、随分色っぽく見えた。


「俺は兄弟なんていないから、お前の気持ちがどういうものかは知らない」

「だけど、俺がやることでお前――あなたが救われるなら、なんだってしてやる」

「だから泣かないでくれ。……お姉ちゃん」


トールの決断はそれだった。
自分が相手をしてやる、なんて憐みのようだが、それが望みなら実現させてあげたかった。
それで、目の前の人が笑ってくれるなら。
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/16(水) 19:36:10.26 ID:cAQRHo1G0
「……ありがとう、トール」

「お礼なんていらないからさ、お姉ちゃん」


トールが、ヴェントの胸に手を伸ばす。
一般的なサイズのそれは形も良く、揉むには十分だった。
そして、徐々に手を動かす。


「んっ、あっ、ああっ……」

「気持ちいいか、お姉ちゃん」

「イイから続けて、あっ、あんっ!」


乳首をつまみ、さらに刺激を与える。
快感に悶える姿は、トールをとても興奮させた。
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/16(水) 19:36:37.24 ID:cAQRHo1G0
開いているもう一方の手は、ヴェントの股間のほうへと伸びた。


「こっちも……いいか?」

「うんっ、おねが、いっ」


許可を得て、優しく局部に触る。
そこはほんのりと濡れており、毛もあまり無かった。

まずはクリトリスをいじり、そのあとに蜜の滴る肉壷へと指を入れる。


「ふっ、んんっ、うあっ……」

(……可愛い)
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/16(水) 19:37:04.39 ID:cAQRHo1G0
そのまま行為は数分続き、疲れたのかヴェントがトールの体に倒れこむ。


「はっ、はあっ、ぅん……」

「……大丈夫?」

「うん、大丈夫。それより、アンタの方もさ、そろそろキツイでしょ?」


ヴェントの言葉通り、そろそろ限界だった。
トールの肉棒はこれでもかというくらい大きくなり、今にも爆発しそうになっている。
その様子を見て、ヴェントは静かにトールのモノを咥えようとする。


「! あ、あの、お姉ちゃんにそんなことさせちゃ――」

「いいから。黙ってやられてなさい」


そして、自分の口へと入れた。
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/16(水) 19:37:30.23 ID:cAQRHo1G0
「っ、ああ! 気持ちいいよ、お姉ちゃん!」

「―――っ、――――」


これまで、誰かのを咥えることはあっても自分がされることはなかったトール。
未知の快感に、体を震わせる。
時折己を見上げるヴェントを見て、さらに興奮した。


「―――っぷは。はあっ、はあっ……」


フェラチオを終え、肩を上下させる。
だが、性行為そのものが終わったわけではない。
まだまだこれから、夜は今からが本番だ。
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/16(水) 19:37:58.12 ID:cAQRHo1G0
「あの、お姉ちゃん。そろそろ……」

「うん、わかってる。――挿入て」


ヴェントを寝かせ、割れ目にペニスをあてがう。
そして、ゆっくりと押していった。


「……っく。キツイ……」

「私はっ、大丈夫、だからっ、思いっきりやっていいよっ」


先端が入り、そして――。


「これ……でっ!」

「――ああっ!!」


ヴェントの穴が、トールのモノを飲み込んだ。
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/16(水) 19:38:24.90 ID:cAQRHo1G0
「うっ、いたっ、ああっ……」


処女を貫かれ、痛みに必死に耐えるヴェント。
その苦しみを和らげようと、トールが唇を重ねる。


「んっ、あむっ、んんっ……」

「んっ、あり、がとっ。もう、動かして、いいよっ」

「……わかった」


ヴェントの言葉を受けて、トールがゆっくりと腰を動かす。
最初は本当にゆっくりだったが、徐々にそのスピードは速くなっていった。
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/16(水) 19:38:50.07 ID:cAQRHo1G0
「なにこれっ、気持ちいっ……」

「はっ、ぅんっ、ああんっ!」


ヴェントに覆いかぶさり、獣のように腰を振っている。
やがてそれだけでは足りなくなり、再度唇を重ね合わせた。


「んっ、お姉ちゃんっ!」

「あっ、もっと、してっ」


脚を絡め、手を握り合い、唇を貪り喰らう。
二人はもう、互いのことしか目に入っていなかった。
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/16(水) 19:39:15.65 ID:cAQRHo1G0
そして、トールに限界が訪れる。


「っ、もうっ、射精そうだっ」

「あんっ、イイっ、あっ」


ペニスを外へ出そうとするが、ヴェントが腰に脚をまわして、抜こうにも抜けなかった。


「ちょっ、このままだとっ、中でっ」

「だしてっ、なかにっ」


「だめだっ、抜い――ああっ!!」

「あぁんっ!!」

70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/16(水) 19:39:43.43 ID:cAQRHo1G0
「……中に、射精しちまった……」

「はっ、大丈夫、安全日、だからっ」

「そういう問題じゃないと思うんだけどな……」


トールが苦笑する。
実際、苦笑などではすまないのだが、今はそんなことなど考えられるはずもなかった。
しばらくすると、ヴェントがお腹に手を当てて、こう言った。


「もし出来てたとしたら、育てる。私が責任を持って」

「おま――お姉ちゃんが?」

「アンタにも付き合わせる。襲った側が言うのもなんだけどさ」

「……ま、別にいいけど」


二人はそのまま、眠りについた。
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/16(水) 19:40:11.32 ID:cAQRHo1G0
翌日、二人揃って部屋を出る。
すこし動きがぎこちないが、二人は和やかな雰囲気だった。

その後ろに、不審な影がこれまた二つ。


「やあ。昨日はどうだった? お話するのに丸一日使うとは、随分珍しいこともあるもんだ」

「私は別に構わないのである」


神の右席のメンバー、フィアンマとアックアだ。
フィアンマの方は相変わらずニヤニヤと、アックアは何かを悟ったような顔をして、トールに近寄っていく。


「ヴェントにこれだけ時間使うということは、当然俺様にもそのくらいは当然だろうな?」

「案ずるな。私も一緒に相手してやるのである」
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/16(水) 19:40:37.76 ID:cAQRHo1G0
まるで何もかも知っている、という風に話す二人を、トールは慄きながら頷こうとするが、


「ちょーっとお二人サン? あんまコイツを苛めてやらないでくれるカナ?」


ヴェントが割り込み、ストップをかけた。
それに対しフィアンマは、嘲るように口を開いた。


「リーダーに逆らうつもりか? まったく、ヴェントも偉くなったもんだな」

「安心しろ、お前が思っているようなことはやらんよ」

「まあ、隣の男は知らんがな」


ふははははは、とまるで大魔王のような笑い声をあとにし、フィアンマとアックアは先へ行った。
その様子を、残った二人は困惑した表情で見送った。
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/16(水) 19:41:07.67 ID:cAQRHo1G0
遡ること数時間前。
そろそろ寝るかと部屋に戻ろうとしたフィアンマは、あるものを発見した。
ヴェントの部屋の前で、ビデオカメラを手に佇むアックアの姿だ。


「おい、なにをしている」

「……フィアンマか。貴様には関係のないことだ」

「ちょっとくらい教えてもらったっていいだろう。リーダーなんだから、聞く権利はあるはずだ」

「……まったく」


渋々といった感じで、アックアは話し出す。
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/16(水) 19:41:35.29 ID:cAQRHo1G0
「私は、ある依頼を受けていた」

「依頼?」

「ああ。ホモビデオの作成である」

「……」

「私がよく利用しているインターネットのサイトがあるのだが、そこの管理人によって頼まれたものだ」

「お前……一体なにをしているんだ」

「聞け。本当は私が部屋に連れ込み、そして襲って、その様子を撮影するはずだったのだが、ヴェントに先を越されてしまった」

「ふん、それで中止になったと。しかし、なぜビデオカメラなんだ?」

「私も困り果てて、管理人に連絡したのだが、その人の意向によりヴェントとの絡みを撮るということになったのである」

「なるほど。まあ面白そうだし、俺様も付き合ってやるか」
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/16(水) 19:42:05.62 ID:cAQRHo1G0
「この男は……」

「いいだろう。どうせ減るものでもあるまい」

「テッラは?」

「ローマ教皇と夜食中だ」

「毎日パンとワインを飲むなど、暇な二人である」

「他人の性交を撮影するお前も大概だろう?」




「静かですねー。もぐもぐ」

「私を毎日付き合わせるでない。一応ローマ教皇なのだから、健康管理は大事なのだ。ごくごく」
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/16(水) 19:43:39.81 ID:cAQRHo1G0
今日はここまで
お姉ちゃん呼びは私の趣味です
ガチホモ兄貴の皆、今日はノンケでごめんな
次はまたホモです


そういえばはいむらさんのサイト更新されてましたね
トールくんが可愛くてよかったです
垣根もかっこよかったです
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/16(水) 19:45:48.39 ID:dHIOgoVSO
乙。お姉ちゃん呼びはいいね
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/16(水) 19:48:22.50 ID:cnUbkQd/0

ヴェントお姉ちゃん可愛い
トールはもっと可愛い
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/17(木) 08:57:04.04 ID:Nfr3hxVAO
乙乙
アックアさんまじパネェっす

メル欄にsagaって入れると[ピーーー]が回避できるよ
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/17(木) 08:59:19.19 ID:Nfr3hxVAO
ってごめん、入れてたね
ガチホモ期待
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/18(金) 23:17:21.27 ID:X1MwWp/u0
とんでもないスレを開いてしまった……

とりあえず、某有名ホモビでよくある一転攻勢をオナシャス!
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/20(日) 13:40:06.81 ID:BHdorQmd0

ヴェントール可愛い
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/21(月) 19:46:47.84 ID:3DLzywr10
泣き叫ぶトールくんにチンコ突き立ててる画像ください!

>>81
トールくんは受け、そもそもノンケだからその可能性はないんだよなあ……
今の時点では(意味深)

四回目の投下でなんですが、最終章突入です
異様に長くなっておりますが、それでもよければどうぞ
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/21(月) 19:47:13.62 ID:3DLzywr10
魔術結社グレムリンは、いつもと変わらない。
いや、『戻った』という方が正しいか。
リーダーと団員との間にできた亀裂が、いくぶんか収まったのだ。
それは、亀裂の原因となった張本人が、一番実感していた。


「その、なんだ、この間からずいぶんと調子がいいじゃないか」

「ああ? 気にすんなって」


バチカンに送る前は『触るな』と言われるまで嫌われていたが、今ではこのように返答をしてくれている。
もともと気性が荒いほうではないため、直接的な暴力を使われることはなかったが、それでもオティヌスは拒絶されるということに慣れているわけではない。
心の平穏が取り戻せたのなら、それが一番だ。

それは自分自身のためでもあるし、トールのためでもある。
いつまでもイライラした状態では、待機するにしても戦うにしても、不具合が起こってしまうかもしれない。
なので、このまま機嫌がいい状態が続いたほうがいいというのは、リーダーであるオティヌスもよくわかっていた。

わかっていたのだが、そうもいかなくなってしまった。
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/21(月) 19:47:39.82 ID:3DLzywr10
「私としても心苦しいのだが、仕事ができた」

「仕事? 俺にか?」


単なる仕事なら問題ない。
時にはただの買い物を『仕事』と称して駆り出すこともあった。
だが、これは違う。
魔術師としての血腥い仕事。


「お前には学園都市の実地調査をしてもらいたい。現在の科学技術はどのようなものになっているのか、攻略の際に足がかりとなるようなものはあるのか、そして――具体的な戦力はどのくらいになっているのか」

「戦闘行為も含まれるってわけか」


トールはグレムリンの戦闘専門。
『戦争代理人』とまで言われる彼だが、この世の科学の総本山たる学園都市相手では、どのくらいまでやれるのか自分でもよくわかっていない。
また、冷徹を気取ろうとしても性根は優しいため、情に訴えられて見逃そうとした瞬間に殺されるかもしれないし、度を越した拷問や精神に影響を及ぼすような拷問にかけられた場合、洗いざらい喋ってしまうかもしれない。
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/21(月) 19:48:06.67 ID:3DLzywr10
戦闘員としての心構えはしっかりできているつもりだが、彼の本質は十代の少年だ。
救える人間がいれば救うが、絶対に必要な仕事ならその人間を殺すことだってやむなしだとは思っている。
しかし、そのことに心を痛めて、また精神が不安定になってしまうことは十分に考えられる。

少し前の彼なら、その程度のことなら割り切ってしまえただろう。
だが今は違う。
男にレイプされたことで、精神が弱くなっている。
弱さはそのまま、敗北に繋がる。

だから、危険な仕事はあまりさせたくなかった。


「大丈夫だよ。無理やり俺を襲わせたお前が、なんでそんなこと心配すんだ? つうか俺は強いぜ? 超能力者っつってもたかが知れてるし、問題ねえさ」

「自信はそのまま慢心に繋がる。過去に何人も言った言葉だ」

「ハッ。俺に言わせて貰えば、そいつらは力が強いだけの臆病者さ。臆病だから、相手が自分より弱いとわかると油断するんだ」


私がお前をその臆病者にさせてしまったんだ。
オティヌスはそういうことを言おうとしたのだが、彼は認めたくないようだった。
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/21(月) 19:48:34.33 ID:3DLzywr10
「俺は一応『雷神』だし、最悪機械をコントロールなり破壊なりしてしまえばどうにかなるだろ。文明の利器に対するジョーカーとなりえるんだぜ、俺の力は」

「……ま、お前なら心配ないか」

「そうだよ。何回も言ってるだろ? んじゃ、パパッと終わらせてくるぜ!」


その明るい声は、必死に自分を勇気付ける声にも思えた。
少なくとも、オティヌスにはそう聞こえた。
ただ、それだけ。

それは当たっていた。
また同じ目に会うんじゃないかと思って、ビクビクしていた。
それでも、引けなかった。
これを乗り越えることが、トラウマとの決別だと思ったから。

グレムリン所属の魔術師『雷神トール』は学園都市へと発った。
自分の心の内を変えようとして。
そう簡単に変わるはずがないのに。
もしかすると、さらに深まってしまうだけかもしれないのに。
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/21(月) 19:49:00.92 ID:3DLzywr10
学園都市の警備はザルだ。
それは、この街にきた全ての魔術師が思うことだろう。
警備の人間を撹乱させてしまえばいいし、ある程度の力を持っているなら壁を飛び越えたっていい。

ただし、それは侵入するときのみだ。
宇宙空間から常時衛星で見張られているし、極小の監視機が学園都市中を漂っているなんて噂もある。
とにかく、侵入するのは簡単でも、そのあとどういう行動をするかで、学園都市から邪魔が入ってくるかもしれないのだ。

そのため、普通の魔術師なら大っぴらな行動は控えるし、できるだけ敵を作りたくないというのは当然の節理だ。
しかし、今回トールに託された任務は『調査』。
そのなかには戦力の確認も含まれるため、いやでも戦わなければならない。
戦わなければならないのだが、


「つっても最優先でやらなきゃならないってわけでもねえし、少しの間はのんびり観光でもしますかね」


当の本人はそんな楽観的な考えを抱いていた。
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/21(月) 19:49:27.75 ID:3DLzywr10
しかし、現実はそう甘くはいかない。


「よう。わざわざ壁を乗り越えてきた侵入者ってのは、お前か?」

「……なーんでこうなっちまうんだろうな」


まだあまり時間は経ってないというのに、もう相手が到着してしまった。
しかも、一人で。
現れたその人物は、少し長めの茶髪に180cmはあるだろう長身。
ジャケットとシャツのボタンはすべて外され、さながら新人ホストのようだった。


「んーとさ、率直に聞くけど、お前『魔術師』か?」

「おいおい、こんな科学塗れの街で魔術を信じている人間がいたとはなあ。驚いたぜ」

「チッ。正解ってことかよ」


目の前の男は今、『魔術師』と言った。
その単語を知っているということは、その単語の持つ意味も知っているということであろう。
90 :そういや暴力的描写があるので注意です [sage]:2013/01/21(月) 19:50:00.16 ID:3DLzywr10
「で、喧嘩でもすんのか? 見たところ武器は持ってないみたいだけど、もしかしてここの名物の『超能力者』さん?」

「おお。とびきり上級のな」

「……へぇ」


興味が沸いてきた。
もともと弱いものイジメを好まないトールだが、相手が強いとなれば話は別だ。
彼の性質として、強い敵を倒すことで『経験値』を得ることができ、さらに強くなることができる。
だがあまりにも大きくなりすぎてしまった力は、戦う相手を極端に選ぶことになってしまった。
また、自分の信念として周りに被害を拡大させないということがある。
そのせいもあって、『自分と同程度、またはそれ以上の力を持ち、かつ周りの被害を気にしないで戦うことができる相手・条件』をクリアする状況はなかなか現れず、自分の力に伸び悩んでいた。

もし、それが今実現できるなら。
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/21(月) 19:50:36.72 ID:3DLzywr10
「あのさ、アンタがどれくらいの実力なのか、証明できる?」

「学園都市第二位って言えばわかりやすいか?」

「ほっほう……」


学園都市第二位、ということは、この超能力者の街でのNo.2。
戦うにはまあ妥当な相手ではあろうか。
あとは、戦場。


「戦いたくはあるんだけどよ、俺は他のヤツらに被害を撒き散らしたくねえんだよな。誰にも邪魔されない場所があるんなら、相手してやってもいいぜ?」

「……少し歩くが、いいところがある。ついて来い」

「マジかよ。どうせありえねえって考え直したとこだったのに」


そう言いながら、トールは男のあとをついていった。
時刻は夜、午後八時半。
彼らがいる場所は、学園都市の第一七学区。
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/21(月) 19:51:02.53 ID:3DLzywr10
数十分ほど歩いてついた場所は、電車やコンテナが散乱する、操車場と呼ばれる場所だった。
元々はたくさんの電車を整備したり、終電を走り終えた電車を止めておく場所だ。

第一七学区は極端に人が少ない学区ではあるが、人が住む場所となるとまったく無くなり、完全下校時刻などとっくに過ぎている今は明かりもほとんどない。
あるのは、闇夜を照らす月明かりのみ。


「うん、いいね。こういうのは俺好みだ」

「気に入ってもらえたようでなにより。とりあえず俺の名前を言っておくぜ。垣根帝督だ」

「こういうのは返さないといけねえよな。グレムリン所属、雷神トール」

「神……か。ちょっと大仰すぎじゃねえ?」

「うっせ。薬品まみれの超能力者に言われたくないんだが?」

「はっはっは。――[ピーーー]」

「来いッ!」
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/21(月) 19:51:30.32 ID:3DLzywr10
言うなり垣根が動いた。
と言っても特別なことをしたわけではない。
ただ能力を展開して風を起こしただけだ。

しかしそれは、立派な凶器になる。

遠目で見るとわからないだろうが、風のなかにいくつもの真空波が発生している。
その数は数十などではすまない。
数百だ。

圧倒的な数量で迫り来るそれは、トールの体を切り裂いて何百ものの傷をつける――はずだった。
攻撃は、何らかの余波によってかき消される。


「『投擲の槌(ミョルニル)』の接続は終わり、供給が継続されている。精々頑張ってくれよ?」

「……、」


何かが伸びていた。
彼の指から。
両手の親指、人差し指、中指、薬指、小指。
すべてから、閃光が噴出している。
94 :まーたsaga忘れた [sage saga]:2013/01/21(月) 19:52:06.14 ID:3DLzywr10
「科学的に言えば溶断ブレードってとこか。どう? 驚いて言葉もでない?」

「雷神ってだけはあるんじゃねえの? 俺には効かねえけど」

「……それはそれでショックだね」


そんなことを言いながら、ゆっくりと垣根に近づいていく。
その間にも溶断ブレードは伸び続け、今では二十メートルまで伸びた。
灼熱の凶器は、軽く腕を振るだけで何もかもを薙ぎ倒すだろう。

それに対し垣根はどうするか。
答えは簡単。

飛んだ。

垣根の背から巨大な羽が出現し、一気に高度を上げていく。
その距離、溶断ブレードが届かない三十メートル。
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 19:52:32.82 ID:3DLzywr10
「……はァァァああああああ――。アンタ、一体何? 天使みたいなカッコしやがって。しかも飛ぶだと? 超能力者のクセに随分メルヘンなもんだ」

「よく言われる。見た目だけじゃないってことも教えてやるか?」

「なにすんの? 五枚集めたらプレゼントでも渡してくれんの?」

「……せめて金にしろ」


一回。
垣根は四枚あるその翼を一気に振り払った。
すると、翼から何かが発射される。

それは白く、今までみたこともないものだった。

いくつも発射されたうちの一つをトールが掴み取り、材質を確認する。


「……なんだこりゃ? 骨とかそんなんでもないようだし……」

「珍しいだろ? 世界で俺だけの『モノ』だ」
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 19:52:59.26 ID:3DLzywr10
ひとしきり触ってみたあと、砕こうとして力を入れる。
が、少しヒビが入っただけで、なにも変わらなかった。


「かってえええ! マジでなにこれ!?」

「だからさっき『世界で俺だけ』っつったろ? てかお前も物凄い馬鹿力だな。特別固く作ったわけでもねえが、まさかヒビが入るとは」

「あん? 別に俺が力持ちってわけでもない。この帯のお陰だよ。北欧神話を知らねえの?」

「……メギンギョルズ。トールが投擲の槌を持ち上げるためにつかった、力を倍増させるベルトか」

「なーんだ。知ってるんじゃん」


垣根が言った通り、トールが身に着けているベルトは装着者の力を倍増させる。
それにより、トールは聖人並のパワーを得ることができた。
だがそれは力のみ。
強度は普通の人間のままだ。
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 19:53:30.60 ID:3DLzywr10
「いいことを教えてもらった。こりゃお前が本気出したら、俺は敵わないかもしれねえな。お 前 が 神 話 の ト ー ル を 再 現 で き る と い う な ら 」

「安心しろよ。単なる小手調べで『全能』になるわけねえじゃん。あくまで俺は、『雷神』だぜ?」

「……小手調べ、小手調べねえ。この学園都市第二位垣根帝督を相手に、小手調べとか言いやがるか」

「ああ。もしかして、怒った?」

「ムカついたぜ」


垣根の様子が変わった。
纏う空気が一変し、彼を中心になにか波動のようなものが見える。

それがなんだ、と言わんばかりにトールは腕を動かす。
その動きにあわせて溶断ブレードが電車を切断し、垣根に迫る。
だが、


「……ああ?」
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 19:53:58.29 ID:3DLzywr10
なにかが、違う。
これはまるで、あのときのような。
九州の、あの場所の――。


「んなっ……!? おい『投擲の槌』!! ミョォォォルニィィィィィル!!!!」


指先から伸びる溶断ブレードが、次第に弱まっていくのがわかる。
魔力が。
彼の生命線が。

気付いたときにはもう遅い。
トールの意識はブラックアウトし、あとには垣根一人が残った。
いや、それも違う。
もう一つ、人ではないものがいる。


「……これでいいのか、エイワス?」

「上出来だよ、垣根帝督」
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 19:54:25.99 ID:3DLzywr10
「最初に聞いたときは信じられなかったが、お前のいう『魔術』を本当に封じることができるとはな」

「私は史上最悪の魔術師に知識を授けたものだよ。それに君の『未元物質(ダークマター)』をあわせれば、この程度のことは造作もない」

「魔術師もコイツと会うまでは信じちゃいなかったが、今の喧嘩で魔術封じは実戦可能ということが証明された。礼を言うぜ」

「なにを。性に合わないことはするものじゃない」

「……だが、まだわからないことがある」

「なんだ?」

「お前は俺の未元物質の中から突然現れ、俺にこの技術を教えてくれた。お前の目的はなんだ? なにがしたいんだ?」

「簡単なことさ」


「ただの、戯れだよ」

100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 19:54:52.52 ID:3DLzywr10
暗い暗い研究室。
そのなかの研究対象を閉じ込めておくための、窓すらないコンクリートの部屋。
およそ人が生活すべき場所ではないところで、トールは意識を覚醒させた。


「ああー……。動けねえんだけど、これ」


今の彼は、裸で四肢を鎖に繋がれている状態だ。
ご丁寧にも、服は部屋の片隅にキチンと畳まれて置かれている。
と、ここで何者かの声がした。


『おっはようございまぁぁぁす! 調子はどうですかぁ魔術師クン?』

「……誰だ?」

『初めましてぇ。君を観察っつーか世話することになりました、木原数多でぇぇぇっす!!!』


うるさいヤツだ、と顔を顰める。
今まで様々な人間と会ってきたが、ここまで人を不快にさせる声は久々だ。
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 19:55:18.65 ID:3DLzywr10
そんなトールを気にせず、木原数多と名乗った男は話を進める。


『学園都市にノコノコやってきて、あっさりと捕まった間抜けに話があんだけどさぁ。あ、君のことね? で、敵に捕まった捕虜はなにするかわかってるよな?』

「自分の持ってる情報を吐け、とか言うんだろ? 悪いがごめんだね」

『わぁーってるわこのボケ。さっき俺言ったよな? お前を観察、世話するってよ。ひとまず安全は確保されたから、安心してもいいぜ? 喋りたくなったら勝手に話せ。あまりにもウザかったら殺すがな』


言動は軽いが、妙な説得力を持っている。
恐らく、この男ならあっさりと自分を殺すだろうな、とトールは思った。


『でさぁ、ぶっちゃけお前鎖に繋がれて動けねえから、今すぐそっちに行ってストレス解消したいんだけどよ。そんなんじゃ面白くねえから、鎖解いてやるわ』

「は?」


その瞬間、手足に繋がれた鎖のロックが外れ、自由に動けるようになった。
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 19:55:45.58 ID:3DLzywr10
敵はなにをしたいのだろうか。
そんなことを思いながら、急いで服を着始める。
裸のままというのはさすがに恥ずかしいし、ベルトをつければ怪力を得ることができる。
今すぐコンクリートをぶち破って、コイツを殺しにいってやろう――そう考えていたが、


『あ、ベルトのことは聞いてっから無駄だぜ?』

「……。全部俺の服に似せて作ったニセモノかよ」


悪趣味としか言いようが無い。
脱力し、倒れこむ。


『ま、アレだ。本来ならすぐにでも射殺されて、脳から直接情報を引き出されていたところを、この木原数多サマの温情で保護してやったんだから、感謝しろよアホンダラ』


そして、声は聞こえなくなった。
おそらく通信を切ったのだろう。
これからどうするかトールは考え――。
そして寝ることに決めた。
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 19:56:12.80 ID:3DLzywr10
数時間後。
外では日が昇っているとき、不意にスピーカーから声がした。


『あーあー。起きろ寝ぼすけ。朝ですよぉう』


声の主は木原数多。
もう少し寝かせろ、と頭を掻きつつトールは瞼を開ける。


『自殺は考えないようにしろよ? そういう兆候が見られたら睡眠ガス噴射してやるから』

「はいはい。ふぁあ……」

『ムカつく』


すると、いきなりガスが噴射された。
わけもわからないまま、トールはまた眠りにつく。
いくらなんでもこの扱いはあんまりじゃないだろうか。
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 19:56:38.45 ID:3DLzywr10
それからさらに数時間後。
またしても木原数多によって強制的に起こされた。


「意味がわからないのだが……」

『うるせえ。寝ることしかできねえのか』

「何もないし……」

『ま、それもそうだな。お前の目の前にはコンクリートと監視カメラとマイクとスピーカーしかねえもんな。あ、ホコリもあったか。腹が減ったらそれ食えば? ぎゃははははは!!!』


ウザい。
果てしなくウザい。
声を聞いているだけで無気力になりそうだ、とトールは思った。

だが、腹が減っていることに間違いはない。
なにせ、学園都市に潜入してから相当時間が経っている。
当たり前だろう。
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 19:57:07.57 ID:3DLzywr10
「腹減ったなあ……」

『丁度いいじゃん。ホコリ食えよ』

「食えるか!!」

『冗談だ。つうかさ、お前お得意の魔術とやらを使って、脱出しようとは思わねえのか? いつ行動を起こすか、楽しみに待ってたんだけど』


意地の悪い質問をしてくる。
潜入したときのことを考えれば、結果はわかるというのに。


「どうせあれだろ? 垣根……だったっけ、そいつが魔術を封じてたんだから、今ここでやろうとしてもできねえだろ。あいつは変なモノを作る超能力みてえだし、それがここにも置かれてるってのは猿でもわかる」

『せ・い・か・いでーす! アホとか言って悪かったな、カスに格上げしてやる』


全然嬉しくない。
この男は人を馬鹿にすることしか考えていないのだろうか。
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 19:57:35.17 ID:3DLzywr10
『ま、あれだ。この俺が直々に飯を持っていってやるから、楽しみに待ってろ』


と、思えば妙なことを言い出す。
食事を持ってきてくれるのはありがたいが、実にきな臭い。

しかし、これはチャンスだ。
木原数多は、『直々に飯を持っていってやる』と発言した。
それはつまり、このコンクリートの部屋のどこかに扉があるということだろう。
扉でなくとも、投げ込むための穴はあるはずだ。
換気するための小さな排気口などではなく、少なくとも拳ほどのサイズは入るだろう穴が。

そうなれば攻略の活路が見えてくる。
最初は厳しいだろう。
が、続けていくうちに相手はボロを出すかもしれない。
どうせ暴れない、抵抗しない――その瞬間を見抜き、なんとかしてこの部屋の秘密を奪うことができたら、逃げ出せるかもしれない。

しかも、もし開くのが扉だったとしたら、さらにチャンスは広がる。
今、開いた瞬間に攻撃を加えてもいいし、行動の選択も広がる。
相手もそのことはわかっているだろうが、そんなことは関係ない。
光が、見えてきた。
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 19:58:01.93 ID:3DLzywr10
二、三分後、壁の一部分が変化をみせた。
まっすぐに線が入り、だんだん横に開いていく。

まず最初に見えたのは、いかにも性格の悪そうな男だった。
金髪に染めた髪に、大きなタトゥー。
申し訳程度の白衣は、そこそこ馴染んでいた。

そうか、こいつが木原数多――そう確信し、突撃していく。
武器は持っていない。
構えてもいない。
まさに絶好のチャンス。

まず頭突きをかましてやろう、そしてそれを行動に移すが、


「あでっ!」


顔が何かに激突し、あえなく失敗に終わった。
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 19:58:30.35 ID:3DLzywr10
「ぎゃははははは!!! バーッカじゃねえの!? 腹いてええええええ!!!」


よく見ると、コンクリートの先にはガラスがあった。
多分強化ガラスだろう。
自分はそれに顔をぶつけたらしい。


「てかさー、なんで頭突き!? 普通殴るとかだろ!? やっべコイツ大物だわ!!! マジでウケるー」


ガラス扉が開き、木原数多が中に入ってくる。
部屋には入らないものの、奥には複数の銃口がこちらを向いていた。


「さっさと立ち上がれや、ボケナス」


襟を掴み、顔をあげさせる。
ペッと唾を吐いてやると、木原数多は楽しそうに笑い、


「フン!」


と頭突きをこちらに返した。
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 19:58:57.77 ID:3DLzywr10
思わず仰け反ろうとするが、木原数多の手がそれを許さない。

もう片方の手を開き、握っていた何かをトールの口に含ませる。
そして間髪入れず水を流し込んだ。


「がはっ、おえっ、うぅ……」


たまらずトールは吐き出す。
その様子を木原数多は冷ややかに見つめ――。


「おら、なに溢してんだよ。キチンと飲め」

「うくっ!?」


トールが吐き出したものを拾い、また口の中に押し込んだ。
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 19:59:23.97 ID:3DLzywr10
今度は飲み干し、キッと木原数多を睨みつける。


「お前……なにを飲ませた?」

「なにって食事だよ。サプリメントですよぉ」


そういえば、口の中の感触ではカプセルや錠剤だったような気がする。
だがそれを『食事』というにはあまりにも……。


「もう一回言うけどよ、お前は本来殺されてたんだ。この木原数多サマに拾われて生きながらえてるんだぜ? そのこと忘れんじゃねえぞ」


そう言い残して、木原数多はこの部屋を去った。
また、一人になった。
こんな状態がいつまで続くのだろうか……、そう考えるも、無駄だと気付いてやめた。
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 19:59:49.64 ID:3DLzywr10
それから数時間後、トールはある一つの問題に直面していた。


「……トイレ、いきてえ」


人間である以上、排泄は避けられないことである。
が、当然この部屋にトイレなどない。
漏らすわけにもいかないので、必死に声を出す。


「おい木原数多! 聞いてるだろ!! トイレ行かせろ!!」

『あーハイハイ。今からそっち行きますんでぇ〜、お待ちくださぁ〜い』

「なるべく早くしてくれ!」


相変わらずやる気のない声。
食事の件もあるのであまり期待はしていないが、とりあえずは一安心。
そのまま待ち続ける。
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 20:00:16.74 ID:3DLzywr10
それから五分。
木原数多はまだ来ない。
小便なのでまだ我慢できるが、それにも限度がある。


「あいつ……なんでこんなにゆっくりなんだよ……」


食事のときよりも大分遅れている。
どうなっているんだ、と疑問を感じ始めたとき、やっとコンクリートの扉が開いた。


「はい、どーも。トイレいきたいんだっけ」

「あ、ああ。抵抗しないからさ、トイレに案内してくれよ。なんなら銃を頭につけたまま移動してもいい。だから、な?」

「あぁ、そう」


トールの訴えを、木原数多は半笑いで聞いている。
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 20:00:42.99 ID:3DLzywr10
木原数多はまだ動かない。
というか、ガラス扉がまだ開いていない。


「な、なんだよ? まさかダメなのか!?」

「いんや? ところでさ、大か小どっち?」


こんな状況に質問かよ、若干イライラしながらも一応答える。


「……小デス」

「は? 聞こえませーん」

「小便だっ! いいから開けてくれ!」

「人にモノを頼むときはさ、それなりの態度ってもんがあるだろ? 『おしっこしたいです。木原数多様連れて行ってください』って、言ったらここを開けてやる」


どうやらまだここを開ける気はないらしい。
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 20:01:09.05 ID:3DLzywr10
「も、漏れそうなんだよ! あとでなんでもするからさ、だからここはっ!」

「あ、そっか。トイレ行きたくなかったのか。ごめんな勘違いしちまって」

「違……っ、んんっ。おしっこしたいです。木原数多様連れて行ってください……」


言った。
言ってやった。
これで、やっとトイレにいける。
そう思っていたが、


「くくっ……。コイツ本当に言いやがったぜ」

「お、おい! 言っただろ!? なんで開けてくれないんだよ!!」


木原数多はまだ動かない。
ニヤニヤとこちらを見るばかり。
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 20:01:35.65 ID:3DLzywr10
「だから漏れそうなんだって! 早くしてくれよっ!」


訴え続けるが、返答はない。
限界が近づき、そしてトールは――。

ジョロロロ、と音をたてながら小便を漏らした。


「……、」


無言でへたり込む。
そんなトールを見て、木原数多たちは爆笑に渦に包まれた。


「ひゃははは!! こいつ本当に漏らしやがったぜ!! なっさけねええええんだけどォおおおおお!!!」

「うっ、ひぐっ、ああっ……」

「今度は泣き出しやがった! ほんっとガキだなこいつはよォ。ぎゃはあはははははは!!!」


情けない。
木原数多の言うとおりである。
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 20:02:01.88 ID:3DLzywr10
「股ァびしょびしょに濡らしやがって。おい、着替えとタオル持って来い」

「わかりました」


部下の一人に指示し、着替えとタオルを持ってこさせる。
それを、トールはただ泣きながら見ていただけだった。


「ボクちゃんちょーっと待ってろよ? 今着替えを持ってくっから」

「ひっ、あっ、うん……」


トールはただ、頷くことしかできなかった。
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 20:02:28.83 ID:3DLzywr10
そして、部下が戻ってきた。


「よーし、よくやった。ほれ」


ガラス扉を開き、着替えとタオルを部屋のなかに放る。
もぞもぞとトールは動き、着替えを始めようとする。
が。

木原数多たちは立ち去ろうとしない。


「どうした? さっさと着替えろ」

「……」

「もしかして、着替えも一人でできないんでちゅかー? ははははは!!」


つまり、自分たちの前で着替えろと。
そのことに気付いて、また泣きそうになった。
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 20:02:54.55 ID:3DLzywr10
だが、このままの状態では非常に汚いため、木原数多たちが見ている前で着替え始める。
濡れた感触が気持ち悪い。
なにより、とてつもなく恥ずかしい。


「泣きたかったら泣いてもいいんだぜ?」


それを木原数多は狙っているらしい。
馬鹿にするな、と顔を向けるが、


「ぱしゃ。トールくんの涙目撮っちゃいましたぁ〜。ぎゃははははは!」


何もかもが見透かされている。
そのまま無言で着替え続け、そしてようやく終わった。


「んじゃあな。またトイレに行きたくなったら呼べよ?」


当然、返答はない。
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 20:03:21.59 ID:3DLzywr10
そのあとは、至って普通だった。
いや、従順になったというほうが正しいか。
木原数多には一切逆らわず、しかしなにか情報をあげるということもしなかった。
与えられるままに食べ、木原数多の指示に従ってトイレにいった。

そのほうが負担が少ないというのもあるし、なにかする気も起きなかったため、別にどうでも良かったのだ。

しかし、それも今日で終わりだった。

始まりは、木原数多からのある一言だった。


『ちょっとそっちいくわ』


無駄というものをあまり好まない彼が、用件を言わずにこちらへ来るのは珍しい。
そのことはトールが一番よくわかっていた。
なにかあるのか――そう考えるが、特になにも思うことはなかった。
これから、今の生活が一変するというのに。
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 20:03:50.33 ID:3DLzywr10
コンクリートの扉が開き、続いてガラスも開く。
大抵はここらで声をかけるのだが……。


「うぉらっ!」


いきなり顔面を殴られた。
思わず倒れるが、木原数多の攻撃は止まらない。
トールの脇腹を蹴って、蹴って、蹴って蹴って蹴って。

そして満足したのか蹴りはやめ、髪を掴んで顔を引き上げる。


「おい、どうだ。痛いか。んん?」

「あ……うぐ……」


トールと目を合わせると、ニヤリと笑って。
いきなりトールの下腹部にパンチを打ち込む。


「ぐあ゛っ!?」

「まだまだ終わらねえからへこたれるんじゃねえぞ!!」
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 20:04:19.37 ID:3DLzywr10
そのまま馬乗りになって、トールの顔面を殴り続ける。


「あんのクソ研究者がッ! なにが『木原を越えた』だ、ムカつくんだよッ!!」

「つうかッ! そこらの底辺のクセにッ! この俺を呼び出すとかッ! 生意気だボケッ!!」

「やっ、やめ、やめてっ、がふっ……」

「うるせえっ!! お前は黙って殴られときゃいいんだよっ!!」


トールが必死に『やめて』と訴えるが、木原数多の拳は止まらない。


暴力はその後も続き、終わったのは実に十五分もあとだった。
顔には青アザがつき、なんとも痛々しい。
そのほかにも、腹や背中にいくつもの打撲痕が残っている。


「痛っ、痛いよ……」

「ふぅ――。すっきりしたぜ」
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 20:04:45.40 ID:3DLzywr10
そのことを木原数多は一切気にしていない様子だ。
そして、今日一番の出来事がこのあと起こる。


「俺はストレス解消できたからさぁ、あとはお前たちが使っていいぜ」

「うす」


木原数多の呼びかけに応じて、複数の男たちが部屋の中に入ってきた。
それも、裸で。ペニスをおっ勃てながら


「こいつら暗部暮らしでロクに性欲解消できてなくてよ、悪いがお相手頼むわ」


なんとも心が篭っていないお願いをする木原数多。
それにトールは反抗しない。
反抗できない。
だってそれは。


「いや……やだよ……やめてくれよっ!!」


彼のトラウマの象徴なんだから。
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 20:05:17.53 ID:3DLzywr10
「あれ、反抗しないんだ? まあそれはそれで見物だが」


木原数多はわかっていない。
トールの過去を。


男たちがどんどん迫っていく。
それに対し、トールは少しずつ後ずさるばかり。


「だめ……これは本当にだめなんだ……。ほかのことならなんでもするから、だから! それだけはやめてくれ……」

「言葉だけじゃそいつらは止まんないってぇ。ま、諦めろ」


いよいよ壁についた。
震えるトールの体に、性欲の塊と化した男たちの手が絡みつく。
その手はゆっくりとトールの服を脱がしていき、数分もしないうちにトールは生まれたままの姿となった。


「あっ、ああ……」

「それじゃあ、俺が最初にヤります」


いよいよ、行為が始まろうとしている。
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 20:05:45.48 ID:3DLzywr10
声をあげた以外の男たちはトールの手足を固定し、暴れないようにしている。
一方、声の主は己のペニスをこれでもかとばかりに勃起させながら、トールの菊門へとそれを近づけていく。

必死に抗おうとするが、もう遅い。
口も塞がれ、悲鳴もろくに出せない。

そして、ついに――。


「――っくう!!」

「――、―――!!」


男の男根が、トールを貫いた。
久しぶりの熱い感触を背に、痛みに悶えるトール。
それを尻目に、男はゆっくりと腰を動かそうとしていた。


「ひっ、あぐぅ……っ!」


怯えるトールの首を、別の男の舌がねっとりと這い回る。
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 20:06:12.53 ID:3DLzywr10
「木原さん、こいつのケツ、あまり抵抗ありませんでした」

「マジで? もしかして『経験済み』?」


ここでようやくその事実を知る。
かといってそれで不都合が生じるわけでもないので、そのまま行為は続く。


「でも、緩いってわけでもありませんよ。挿入れるときはってだけで、締りはそこらの男より断然イイです」

「ほーん。よかったじゃねえの。一つ楽しみが増えてさ」


気軽な会話がされているが、トールとしてはたまったもんじゃない。
男の腰を振るスピードは段々速くなり、痛みのほうも段々増していく。
そんなトールの様子に気付き、木原数多が声をかけた。


「あのよお、経験済みのクセには痛がりすぎじゃねえ?」

「気持ちイイわけっ、あるかっ……あっ」
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 20:06:40.69 ID:3DLzywr10
トールは犯されることを望んでいない。
だから、これほどまでに痛みが強いのだ。
それを見抜いた木原数多は、一つの言葉を投げかける。


「嫌がるからダメなんだよ。『気持ちイイ』『快感』と思えば平気平気。そのうち慣れる」

「かい、か、ん……?」


自己暗示しろ。
つまりはそういうことだ。

いいのか、性欲に身を任せてしまって――。
トールの頭のなかを様々な思い、葛藤が右往左往する。
それは、ある一つの答えを出した。


「んっ……あぁ……んあっ!」

「ははっ。少しもしねえうちに嬌声を出しやがったぜ」


木原数多の声に従う、と。
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 20:07:06.50 ID:3DLzywr10
トールの喘ぎにあわせて、男の腰の振りも強くなっていった。
それは、限界がはやくなることを意味する。


「出しますっ!」

「おー出せ出せ」


そして、


「うっ!!」

「んんっ!!」


トールの腸内に白い液体が注がれる。
それはすぐさま中を満たし、肉棒を抜くとドプドプと溢れ出てきた。
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 20:07:34.00 ID:3DLzywr10
まだ行為は終わらない。
男たちの性欲はまだ残っているのだから。


「次、俺いきます」

「その次は俺で」


その様子を、木原数多はニヤニヤと見つめている。
楽しそうに、ブルブル震えながら。


「お、マジで締りイイっすね」

「きゃんっ!!」


新たな欲棒がトールを突き立てた。
さきほどよりもサイズは大きく、トールはたまらずミチミチと締め付ける。
それが、男をさらに悦ばせた。
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 20:07:59.98 ID:3DLzywr10
五時間。
実に五時間もの間、トールは性欲に溺れていた。
もともと白かった肌が、さらに真っ白く染まり、それがトールをさらに満足させた。
すでに感覚は麻痺し、行為が始まる前の自分など忘れ去っている。
そんな様子のトールに、木原数多が声をかけた。


「ちょっとついてこい。シャワールームに連れていってやっから、そこで体を洗え」

「うん……んっ」


昨日まで護衛をつけていたが、もう必要ない。
トールは反抗する心を失っている。

木原数多は、それを狙っていた。


(いちいち護衛させるのはメンドくせえしな。こうなったほうが俺としても都合がいい)
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 20:08:26.19 ID:3DLzywr10
すこし歩き、後ろを振り向く。
見ると確かにトールはついてきていたが、その身になにも着けず、タオルすら持たず、木原数多のあとをついてきていた。


「……ケツから垂れてんぞ。あとで拭いとけ」

「あっ……はい……」


もう大丈夫、洗脳完了……。
シャワールームに案内し、そこに入っていくトールを見届けると、もう我慢できないと木原数多は盛大に笑い転げた。


「ひゃはははははは!! まさかあんなんなっちまうとはなァああああああ!! こりゃ傑作だぜェえええええ!!!」


一方、トールは静かに体を洗い流していた。
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 20:08:52.33 ID:3DLzywr10
ある一日。


「おい、今日は道具も使ってやる」

「あっ……んぐううう゛うう゛う゛ううう!」


またある一日


「一気に十人相手しろ」

「はい……んぷっ、れろっ、んんっ」


またさらにある一日


「すべての精液を飲み干せ。いいな?」

「はい……。んっ、ぺろっ、くちゅっ……」
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 20:09:20.25 ID:3DLzywr10
三週間ほどたったある日。
木原数多は今までずっと控えてきた、あることを実行しようとしてきた。


「おい、トール」

「はい、なんでしょうか……」

「今日は五人、ポジ種のヤツらを相手しろ」

「……?」


聞きなれない言葉に耳を潜める。
その様子を見て、木原数多は丁寧に説明をした。
丁寧に、と言っても至極簡単だったが。


「ポジ種っつうのはな、HIV陽性のヤツらのことだ。いいよな?」

「……はい!」


その言葉に、トールは今まで見せたことのない笑顔で頷いた。
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 20:09:49.94 ID:3DLzywr10
と、その時――。
コンクリートの壁がブチ破られ、もうもうと煙を上げる。


「っ。誰だコラァ!!」


煙が晴れてきたころ、秘密の小部屋を破壊されて激情した木原数多が、相手を殺さんばかりに怒声をあげる。

その問いに答えたのは――。
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/21(月) 20:12:09.05 ID:3DLzywr10
今日はここまで

ここで、ノンケENDとホモENDどちらを先にやるか、募集させてもらいます
次の日曜日までに、票が多かったほうをやります
もちろんそのあとにもう一方もやりますので、ご安心を

ROM専の方もどんどん参加してください
ご協力お願いします
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/21(月) 20:55:27.34 ID:A8TqGQjX0

垣根ルート期待しちゃったじゃないですか
ホモ→ノンケend で
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/21(月) 21:12:49.40 ID:Szq3v8k1o
ゔぇんとで
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/21(月) 22:36:10.94 ID:DvrYz0wio
乙すぎて震えるぜぇ…
垣根×トールきますよねありますよね
END両方とも書いてくれるなんて神にも程がありますよね
ホモノンケどっちも美味であります
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/22(火) 09:51:41.66 ID:sDT/DUiAO
オティヌスの姿をしたトールがヤられ、オティヌス本人の全く知らない所で
『陵辱される魔神〜調教編〜』
が流出するルートで
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/22(火) 19:00:44.64 ID:OWTyxfhY0
ホモで
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/22(火) 23:40:48.00 ID:LYj58LPn0
ホモで
男の娘はいいオカズ
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/25(金) 22:22:07.40 ID:6Xx6FJYDO
ノンケかなあ、基本ホモ成分多いし
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/26(土) 22:29:27.62 ID:zAx71pkSO
ホ モ で
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/27(日) 20:19:52.78 ID:YjbH1n760
学園都市に来た時はてっきり上条さんとの濃厚なホモが見れるのかと思っていたぜ…
あ、ホモでお願いします
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/28(月) 12:37:46.69 ID:xHtbtYMSO
ヴENDで
145 :>>1やで〜 [sage]:2013/01/28(月) 13:11:32.48 ID:+N1OutEN0
募集の結果、ホモから先にやることにします
ちと遅くなりますが、お待ちくださるとありがたいです

>>135,>>137-138を見て、なんかインスピレーションが沸いてきたようなきてないような気がしたので、そっちも書いてみますわ
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/29(火) 00:51:15.45 ID:JPN7tXcOo
鼻血出しながら待ってる(はあと)
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/02/09(土) 17:25:49.38 ID:awFrnlTX0
長らく空けてすまん
一応ホモENDのほうは完成したんで投下します〜
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/09(土) 17:26:23.91 ID:awFrnlTX0
「『猟犬部隊(ハウンドドッグ)』リーダーの木原数多だな」


その問いに答えたのは、顔全体を覆うマスクを着用する、まるで熊のような巨体の大男。
よく見てみると彼の後ろには複数の『駆動鎧(パワードスーツ)』が控えており、その力でコンクリートをぶち破ったようだ。

こうなってしまうと、もはや自分たちに勝機はない。
そのことを察した木原数多は、さっさと降伏することにした。
両手をあげながら、木原数多がいくつかの質問をする。


「こんだけの駆動鎧を使えるってことは、テメェら『ブロック』だろ? 正直、こんなことをする意味がわからねえんだけど」

「お前たちは『魔術師』と呼ばれる存在を、自分だけの所有物としていた。それは暗部のパワーバランスを崩壊させてしまう危険がある、という理由からだ。あとは……ウチの構成員のワガママだよ」


前者の理由はまあ納得できる。
が、後者の『ワガママ』とはどういうことだろうか。
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/09(土) 17:26:49.33 ID:awFrnlTX0
そのことを考えていると、奥のほうから一人の女性が駆け寄って来る。
性別がわかったのはシルエットが女性のそれだったからだが、素人とは思えない身のこなしと長身を持っており、素手での戦闘限定なら自分でも勝てるかどうかわからない。

そして女性はそのまま木原数多を通り過ぎ、トールのもとへと移動した。


「もう大丈夫。すぐに、解放されるから、安心して」

「……」


トールを安心させるためか、優しげな言葉を投げかけるが、一切反応を示さない。
そもそもまともに聞いているのかもわからないほど、彼は無反応だった。
すると女性は諦めたように首を振り、トールを抱きかかえる。


「この子は、病院で、治療させる。くれぐれも、奪い返そうなどと、考えないように」


そう言い残して女性は壁の向こうへと戻り、やがてリーダー格らしき男と駆動鎧たちも去っていた。
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/09(土) 17:27:16.38 ID:awFrnlTX0
ちょっと不幸な一般的男子高校生『上条当麻』は、今回も不幸な出来事に巻き込まれて入院していた。
日々溜まっていく入院費に彼は、食費をどのくらい切り詰めれば返せるのだろうか、などと頭を痛める。
やがて、友人にたかればなんとかなるだろうなどと安易な考えに到り、少しでもはやく退院しようと体を横にするが、あることに気付いた。


「今回は二人部屋か……」


いつも(いつもなんて言い方もおかしいが)は六人の大部屋なのだが、今日は二人部屋だった。
よっしゃあラッキー、なんて意味不明な喜びとともに、これから少しの間だけ一緒に過ごす相手と挨拶をしようと、隣のカーテンの仕切りを開ける。

その相手は、少年だった。

長い金髪に碧眼、下手をしたら女と間違ってしまいそうなほど華奢な、外国人の少年だった。
その目は急に入り込んできた上条など見ておらず、ともすれば何も見ていないのかもしれない。
外傷などは特に無いはずなのにどこか弱弱しく、不思議な少年だった。

そんな彼に変な感情を覚え、上条も少々見とれてしまっていた。
いかんいかんと頭を振り、本来の目的を思い出す。
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/09(土) 17:27:45.26 ID:awFrnlTX0
まずは第一印象を良くしなければ、とできるだけフレンドリーに挨拶してみた。


「ちゃ、ちゃおっす。俺は上条当麻って言うんだけど、アンタの名前は?」

「……」


が、反応がない。
それでもめげずに、上条は言葉を続けた。


「一緒の病室になったし、手伝ってほしいことがあったら気軽に言ってくれ。別に世間話とかでも構わないからさ」

「……」

「んじゃ、またな。仲良くしようぜ」


そこで上条は一旦終了し、そそくさとカーテンを閉めた。
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/09(土) 17:28:12.86 ID:awFrnlTX0
後で看護師に聞いたところ、金髪の少年の名は『トール』というらしい。
本名かどうかはわからず、渾名かなにかだろうとも付け加えていた。
神話の雷神というくらいだから、電撃系の能力かなにかがあるのだろう。

能力の暴走でああなってしまったのかはわからないが、もしそうだとするならば、いずれは回復するはずだ。
話しかけ続けたら心を開いてくれるかな、と考え、とりあえず頑張ってみようと上条は思った。


「トール……って名前みたいだな。アンタ、もしかして留学生? 外で目覚めた『原石』ってヤツ?」

「……」


「病院食ってやっぱりまずいね。最近は進化してるって聞くけど、自分で作れたほうがいいと思うんだよな」

「……」


「よっ。さっきクラスメイトがお見舞いにきたんだけど、大量にお菓子もらっちゃってさ。良かったら少し食べない?」

「……」
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/09(土) 17:28:40.01 ID:awFrnlTX0
そうやって話しかけながら入院生活を過ごしていき、ついに退院する日が来てしまった。
これまで返事をされたことは一度も無く、残念だと思いながら、最後の挨拶をしようといつものようにカーテンを開ける。

いつものように、勢いよく開けてしまった。


「ひっ!?」

「おっ、やっと心を開いてくれたか。しっかしなんだよ、『ひっ!?』って。上条さんは鬼じゃありませんよー」


冗談を飛ばしながら、トールに近寄ろうとする。
その時、なにかがおかしいことに気付いた。


「いっ、いやだっ……。やめて……こないでくれよぉ……」

「お、おい。どうしたんだ――」

「触らないでくれぇっ!!」
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/09(土) 17:29:05.18 ID:awFrnlTX0
手を伸ばすが拒否される。
よく見ると、彼の身体が震えていた。
いや、それだけではない。
入院着の隙間から、いくつも刻まれた傷跡が見えた。

それで上条は悟った。
この少年はいじめや虐待を受けていたのだと。
異常に自分を怖がるのは、そのせいだと。


「あー、いや。俺は大丈夫だから! なにも酷いことはしない」

「くるなよぉ……。お願いだからぁ……」

「安心しろって。俺は友達になりたいんだ」

「うあぁ……っ」


警戒を解こうとゆっくりと近づくが、彼も逃げるように後ずさり、やがてベッドから落ちてしまった。
上条はそのことに慌ててしまい、怪我はしていないかと駆け寄る。
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/09(土) 17:29:33.66 ID:awFrnlTX0
「ごっ、ごめん! 痛いところとかは――」


誤算だった。


「ひぐっ……。もう痛いのはごめんなんだよ……っ」

「あ……」


彼は部屋の隅で怯え、その目の前に上条は立っている。
これではまるで、自分が追い詰めているみたいではないか。
違うと叫びたかった。
自分の馬鹿さに絶望した。
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/09(土) 17:29:59.97 ID:awFrnlTX0
深呼吸をする。
上条は呼吸を整え、静かに言葉を紡いだ。


「大丈夫だ。アンタを傷つけるヤツはいない。安全だぜ」

「ごめんなさい……謝るから……っ」


そして再度手を伸ばし、少年の頬に触れる。
優しく、包み込むように。


「もしそんなヤツがいたらさ、これからは俺がぶっ飛ばしてやるから。怖がらなくてもいい」

「あっ……」


目が合った。
碧く、宝石のように綺麗な瞳。
しかしそれは、今にも割れそうだった。
守ってあげたいと思った。
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/09(土) 17:30:26.24 ID:awFrnlTX0
「俺が――守ってやる」

「……っ」


一瞬、なにをされたかわからなかった。
トールは上条に抱きついたのだ。
それはまるで、救いを得ることができた弱者のようで。
身体が折れそうなくらいに抱き締められる。


「怖かったよな……。辛かったよな……」

「うっ……ぐすっ……ひっ……」


背中をポンポンと叩きながら、泣きじゃくるトールに優しげに声をかける。
これで一応は解決かな、と上条はホッとした。
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/09(土) 17:30:52.26 ID:awFrnlTX0
少し時間が経ち、彼の担当医と思われる医者がやってきた。
どことなくカエルに似ているその顔は、なぜか不思議な安心感を抱かせる。
しかしそれはトールには無かったようで、上条の背に隠れるように身を縮めた。


「ふうむ……。そこの君、随分と懐かれたみたいだね?」

「あっ、はい……」

「お見舞いってわけではなさそうだし……。その格好を見ると、今日退院するのかな? すまないが、時々彼に会ってあげてくれ」


へ? と頭の上に疑問符が浮かんだ。
断るつもりはないが、医者からそれを言われるとは思わなかった。


「そこの彼――トールくんは、ある事情で肉体的にも精神的にも傷を負ってしまってね。顔のほうは完治しているが、身体のほうは思っていたより傷つけられていて、もう少し入院しないといけなくてね。君が来てくれるならトールくんも喜ぶだろう。お願いできるかな?」

「全然構わないっすよ。毎日来てもいいくらいです」

「そうかい。頼んだよ?」


そう言い残して、医者は部屋を出ていった。
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/09(土) 17:31:18.50 ID:awFrnlTX0
再び二人だけになり、上条が口を開く。


「そろそろ帰るわ」

「……」

「さっき言ったように、毎日お見舞いに来てやっからさ。仲良くしようぜ?」

「……ん」

「また明日。じゃあな」


ガチャンと扉が閉まる音がして、部屋にはトール一人のみとなった。
彼の胸のなかには、寂しいという思いと、どこか抑えきれない空虚感があった。
しかし、もう一つ――。

上手く言い表すことのできない安心感が、心を落ち着かせてくれた。
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/09(土) 17:31:45.84 ID:awFrnlTX0
それからというもの、上条は言葉通り毎日トールのお見舞いにきた。
最初のうちは今日なにがあったのか、という簡単なことを話したり、生活の愚痴などそういったものをトールに話していた。
それに対してトールは、時々頷いたりしながら静かに聴き続けていた。

日数を重ねていくと、たまに受け答えをするようになったり、自分から喋りだすこともあった。


「……上条」

「ん、どうかしたか?」

「お前は、なんでそんなに不幸なんだ?」

「……はは。上条さんにも色々事情がありましてね……」

「ふーん……」


と、いうような感じだ。
しかし、おだやかだった空気が次の一言で少し変化を見せる。
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/09(土) 17:32:12.54 ID:awFrnlTX0
「実はさ、俺の右手には『幻想殺し(イマジンブレイカー)』っていう能力が宿ってるんだけど、もしかしてそいつが運気を片っ端から消していってるんじゃねえかなーって」

「!」


不意にトールが顔を強張らせた。
なにか気に障ることを言ってしまったかと、上条が慌てる。


「ご、ごめん! 気に入らないことでも言っちまったか――」

「違う」

「へ?」

「『幻想殺し』……と言ったな?」

「ああ、そうだけど……」


あまり聞かない能力名だから驚いたのかな、と上条は思っていた。
が、それは違っていた。
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/09(土) 17:32:39.26 ID:awFrnlTX0
『幻想殺し』という単語は、とある業界では大きな意味を持つ。
誰もが皆知っているというわけではないが、トールは知っていた。


「俺は魔術師だ」

「は?」


上条はいかにも間抜けそうに、口を開けて驚く。
科学の総本山、学園都市でそんなファンタジーな言葉は聞いたことがないからだ。


「北欧神話の流れを汲む戦闘専門の魔術師。個人の実力を持って『戦争』という状況を作り出すことができる存在。それが――」

「ちょ、ちょっと待てって! お前、今自分がなにを喋っているかわかっているのか!?」


しばらく話し続けていたが、上条の言葉を受けて一旦止まる。
そして、こんなことを言い出した。


「お前は、知らないほうがいいよな」
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/09(土) 17:33:06.31 ID:awFrnlTX0
次の日も、上条は見舞いに来た。
部屋に入ってみると、ベッドの周りがカーテンで仕切られており、外側にはあのカエル顔の医者がいた。


「おっ、上条くんだったかな。丁度よかった、君にも聞いてもらいたい話がある」

「はあ……」


医者が言うには、こういうことらしい。

トールの傷は完全に治すことはできなかった。
時間をかければ勿論元通りにはなるが、長期間を要するため、通院するという条件で退院することになった。
しかし、彼には住居がない。
そこで、医者が用意しようとしたが、トールは拒否した。


「非常に申し訳ないんだけどね? 君のとこに彼を居候させてもらえないかな?」

「ええ!?」
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/09(土) 17:33:32.66 ID:awFrnlTX0
「本来なら完治するまで入院させるんだが、彼はこの街の住人ではなくてね? さすがに私でも押し切ることはできなかった。まったく、未成年をこんな状態にまでするなんて、あの男にはほとほと呆れるよ」

「はあ……。俺は構いませんけど、トールはどうなんだ?」


上条がそう聞くと、カーテンの中から返答が返ってきた。


「……お前なら、いい」

「と、いうことらしいね? いやあ良かった、君がいて本当助かったよ。通院費はこっちで持つから、安心するといいね?」


急遽決まった居候人。
上条はしばらく実感がしなかったが、やがてこう呟いた。


「ああ、不幸……じゃあないな。でもあれ、食費とかどうしよう……」
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/09(土) 17:33:59.30 ID:awFrnlTX0
帰り道。
二人は上条が生活する学生寮へ向かっていた。
管理人などには医者が話をつけておいたらしい。

片手にケーキが入った小箱を持ちながら、上条が話しかける。


「下向いて歩いたら危ないぜ?」

「……」


返答はない。
が、反応はあった。

トールが、開いているほうの手を握ってきたのだ。


「エスコートしてくれってことか。まあいいけど」


上条は小さく笑って、軽く手を握り返した。
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/09(土) 17:34:27.14 ID:awFrnlTX0
そのまま歩き続けていたが、途中で昨日あったことを質問する。


「あのさ、昨日『魔術師』がどうたらこうたら言ってただろ? あれって――」

「着いたら話す」

「……そっか」


少し気まずくなってしまったが、『着いたら話す』という言葉を信じて、帰り道を急いだ。
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/09(土) 17:34:53.74 ID:awFrnlTX0
数分後、学生寮へと到着した。
片付けをしていないことを思い出したが、とりあえず気にしないことにして、トールを招き入れる。


「入ってもいいぞ。多少散らかっているが、ベッドの上にでも座ってくれ」

「……ああ」


上条もテーブルの向こう側に座り、話し合う準備はできた。
まずは、『魔術師』についてだ。


「魔術師ってのはなんだ? 小説で見かけることはあるが、お前もそういうのなのか?」

「そうだ。魔術師は通常、魔術結社に所属しているが、俺にもそういう組織がある」

「そっか。幻想殺しのことも知っているみたいだけど、なんで?」

「魔術世界で実力のあるヤツは全員知っている。むしろ学園都市にいるほうが驚いたぜ」
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/09(土) 17:35:20.14 ID:awFrnlTX0
俺ってそんなに有名人だったのか、と意味もなく得意げになる上条だったが、もしかして能力『は』知っているということなんじゃないかと気付いて肩を落とす。


「あと、これは無理に答えなくてもいいことなんだけど……」

「なんだ?」

「お前がさっき言った『魔術師』なら、なんで学園都市にいるんだ? なんで入院してたんだ?」

「……」


無言になるトール。
やっぱり教えてはくれないよな、と諦めて上条は食事を作ろうと立ち上がるが、途中でその動きは止まった。
止まらざるをえなかった。


「性欲解消の道具にされていた」

「は……?」
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/09(土) 17:35:47.58 ID:awFrnlTX0
一瞬、耳を疑った。
幻聴でも聞いたのかと思ったが、そんなはずはないと考えを振り払う。


「俺は組織の命令で学園都市の調査に来た。だが敵に負けてしまって、捕虜のような感じで暗い部屋に閉じ込められた。そこで暴力や性行為をさせられた」

「え……」


衝撃的だった。
当然だろう。
まだ高校生の上条にとって、さきほど話されたことは簡単に受け入れられることではない。
しかも『命令で調査にきた』ということは、目の前の少年は学園都市に敵対する組織に所属しているのだろう。
それは、自分にとっても敵であるということだ。


「……やっぱり、傷が治ったら『組織』に戻っちゃうのか?」

「……そんな気は失せた。助けにも来なかったしな」
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/09(土) 17:36:14.88 ID:awFrnlTX0
どうやら、魔術結社に帰るつもりはないらしい。
それでもまだ聞きたいことはたくさんある。


「さっき、暴力やせ……性、行為をさせられたって話してたけど、イヤじゃなかったのか?」

「……」

「や、やっぱ話したくはないよな。そんなこと……」

「最初は、イヤだった。いきなり殴られて、チンポ突っ込まれて、わけがわからなかった」


それはそうだろう。
未成年の身体には相当キツイはずだ。
だがトールの言葉はまだ続く。


「でもさ、受け入れちまったんだよ。理不尽な暴力に、男どもに犯されることに」

「狂っちまったんだ。殴れることに興奮して。ケツに、口にアレを突っ込まれて喘いで、精液で汚されることに満足して」
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/09(土) 17:36:41.81 ID:awFrnlTX0
「と、トール……」


上条は、これ以上言うのをやめさせようと思った。
瞳は涙で濡れ、なにかに怯えて震えている。
そんな彼の姿を見るのは耐えられなかった。

だが、次のトールの言葉で、頭が真っ白になった。


「だから、上条……。俺を犯してくれ」

「は……え?」

「上書きしてくれ。俺の体にアイツらが残らないように、頼むよ……」

「犯してくれよぉ……」


自分に犯せと要求してくる。
上条は、自分以外の誰かが目の前で傷つくことを良しとしない。
それは今でも同じだ。
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/09(土) 17:37:07.37 ID:awFrnlTX0
「なんで俺なんだ? なんでそんなことをしなきゃならないんだ……?」

「それは……」


なにかをしてあげたいのは山々だが、それは傷をほじくるだけではないか。
上条にはそうとしか思えない。
しかし、次の言葉で変わった。


「お前が、一番安心するから。お前がいいから。お前が――好きだから」

「……え?」

「最初は、なんでここまでしてくれるのかわからなかった。でも、イヤな気分じゃなかった。そのうちお前を……」

「トール……」
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/09(土) 17:37:37.71 ID:awFrnlTX0
突然の告白に戸惑う上条。
それもそのはず、これが人生で初めての、愛の告白なのだから。
そして、上条にもトールに隠していることがあった。


「あのさ……。俺もお前のこと、好き……なんだと思う」

「だっ、だったら!」

「でも、俺は不幸だから。そばにいたらお前にまで迷惑がかかるかもしれない。それでもいいのか……?」

「別にいい。お前は、俺を、救ってくれたから。隣にいるだけで幸せだ」

「トール……」


もう決まったようなものだった。
トールの顔は赤くなり、それでも自分をまっすぐ見つめている。
恐らく自分もそうなっているだろう。
上条もベッドにあがり、トールと向かい合った。
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/09(土) 17:38:03.30 ID:awFrnlTX0
トールは上条のベルトを外し、ズボンとパンツを下ろす。
そして、出てきたモノをそのまま口に頬張った。


「トー……ル……」

「ん……っ」


上条はその光景を見て、イケナイことだとわかりつつも興奮していた。
ペニスは段々と大きくなり、トールの小さな口からあふれ出すほどの大きさとなる。
その後もトールは黙々とペニスをなめ続けるが、苦しくなったのか一旦口から抜いた。


「けほっ……」

「だ、大丈夫か……?」

「大丈夫だ……。挿入てくれよ、お前のモノをよ……」


そう言うと、トールは自分のズボンとパンツを脱いで四つんばいになり、尻を上条の方へと向けた。
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/09(土) 17:38:29.65 ID:awFrnlTX0
目は今にも涙で溢れそうになり、体も震えている。
しかし、上条は止まらなかった。
止まってはいけないと思った。

トールの体を固定し、ひくひく動く菊門へと己のイチモツを近づけていく。


「い、いくぞ……」

「うん……っ」


そして、先端と先端が触れ合った。
そのままゆっくりと押し付け、ついに――。


「――ああっ!」

「ぁくっ……。キツい……」


トールのアナルが、上条のペニスを全て飲み込んだ。
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/09(土) 17:38:58.86 ID:awFrnlTX0
しばらくそのままの状態で固まっていたが、我慢できなくなり上条が腰を動かしはじめる。


「どう、だ……?」

「うん……っ。続け、てっ」

「ああっ」


ハァハァと熱い吐息を出しながら、上条は腰を振り続けた。
時間が経つにつれてそのスピードも速くなり、部屋には快感に喘ぐ嬌声も響くようになった。
健全な男子高校生の上条は、自分で慰めることはあっても他者と交わるということは無かったため、未知の刺激にただただ震えるのみだった。
だが、不意にトールのことが心配になり、声をかける。


「お前はっ、気持ちいい、かっ?」

「気持ち、いいからっ、あっ、んんっ!」
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/09(土) 17:39:24.43 ID:awFrnlTX0
トールの言葉が終わると、締め付けが一段とキツくなり、どんどん快感が増していく。
二人のボルテージは高まりつづけ、上条に限界が訪れようといていた。


「も、もう出そうだ……」

「中に、あっ、だし、てっ、んあっ」


上条のモノは腸内でさらに大きくなり、今にも射精してしまいそうだ。
そして――。


「で……るッ」

「はっ、やっ――あんっ!」


中に上条の白濁液がぶちまけられ、それにあわせてトールは体をくねらせて自らも絶頂に達した。
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/09(土) 17:39:52.79 ID:awFrnlTX0
息を荒げて肩を上下させるトールから、上条は自分のペニスを抜く。
すると、中からどろりとした白い液体がどんどん垂れてきた。


「うわっ、こんなに出したのか……」

「……上条」

「どうした?」

「当麻、って呼んでいいよな?」

「っ。……あ、ああ、いいぞ」


思わずドキリとしてしまった上条。
その様子を見てトールは少し笑い、同時に上条の顔を自分のほうへと近づける。


「あっ、あのトールさん……?」

「当麻……」

「――ありがと」


そして上条の唇と自らの唇を重ね合わせた。
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/09(土) 17:40:20.67 ID:awFrnlTX0
「――っ。トール……」

「何も言うな」


文句は言わせない、ということだろうか。
ならこちらにも考えがある、と上条はニヤリと笑う。


「いや、俺は言うぞ」

「は?」

「大好きだ」

「……。そういうのは、卑怯だ」


二人はそのまま、互いに抱き合って眠りへと落ちた。
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/02/09(土) 17:40:46.14 ID:awFrnlTX0
数日後、小萌先生による尽力のもと、トールが上条の通う高校へと編入することが決まった。
このような中途半端な時期の転校はありえないが、自分が面倒を見るといって聞かない小萌先生に押し切られ、決まってしまったようだ。
トールは大丈夫だろうかと心配したが、上条がそばにいるならいいとOKしたらしい。


「なあなあトールくぅん、カミやんとどんな関係なん? 従兄弟、幼馴染、可能性はいくらでも……はっ!! もしや運命の再会を果たした許婚――」

「こら青髪! そういうのは反応に困られるからやめろと言っているだろう!! ごめんなさい、アイツはああいう男で……」

「別にいい。気にするこたぁねえよ」

「ま、アイツは変態だからにゃー。危険視するのはわかるぜよ」

「……っ」

「あ、あれー? 無反応ってのは結構寂しい――」

「土御門! やめろと言っているのがわからんのか!!」

「ええっ!?」
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/09(土) 17:41:15.86 ID:awFrnlTX0
「男性恐怖症はあまり治っていないみたいだけど、とりあえずは仲良くなれてよかったぜ」

「と、当麻ぁ……」

「はいはい、上条さんに何の用ですかー」

「ぬっほおおおおおお!! やっぱカミやんとトールくんの関係は特別なものやったんやな! せやろ? 違うか!?」

「おーい青ピ。今度お前のエロゲー貸してほしいんだけど、妹モノはあるかにゃー」

「あ、ええよ〜。そういうジャンルなら二十本くらいは――」

「……」

「あ、あはは。トール、向こうのほうに行こうか……」

「当麻」

「はひぃ!?」

「ずっと俺のそばにいろ」

「……ああ」
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/02/09(土) 17:43:21.24 ID:awFrnlTX0
一応ホモEND終わり
通院はどうしたとか展開速すぎとかそういうのは無しだぞ☆(ゝω・)

そういやトールの変装術式で体の構造とかも変わるんですかね?
女に無くなったらアレが無くなったり
皆様の意見を聞かせてくだしぃ
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/09(土) 17:56:55.01 ID:42+5Wp6x0
女になり切れなかったら変装術式の意味はないし…てかアレついたままだったら変装ばれるし…
それに神話の時代の出来事をモチーフにしたんだから、一時的な性転換とかなら出来そう

でもSSなんだし>>1の書きたいように書いていいんじゃないかな
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/10(日) 13:54:45.33 ID:LArrKOrc0
超乙!読んでる間ずっとニヤニヤが止まらなかった…
上条さんとトールのイチャイチャ学校生活とかもっと見てみたかったな

一時的な性転換出来そうだけどついてても問題ないよね!
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