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穏乃「モロボシ・ハルエのウルトラ麻雀隊」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:32:33.72 ID:68yT1xm00

 穏乃や憧が中三の冬。
 和との再会を目標に二人は阿知賀女子麻雀部を復活させ、全国大会を目指すことを決意する。
 そんなある日、MAC福岡支部全滅により奈良に戻ってきたかつての師・諸星晴絵と偶然の再会を果たす。
 それは奇しくも、彼女との出会いと別れの場、麻雀部の部室でのことであった。

晴絵「この集まりはなんだ?」

玄「これは……」

穏乃「阿知賀女子学院麻雀部です!」

憧「この五人で全国を目指します!」

晴絵「インハイ……。本気なのか?」

望「大真面目らしいよ?」

晴絵「インハイか……」

晴絵「私も連れていってくれないか。インターハイへ」


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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
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【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
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ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713736565/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:33:10.81 ID:68yT1xm00

 こうして晴絵が部の監督に就任することが決まり、全国という大きな目標への道筋ができた。
 そして季節は移ろい、穏乃たちが高校へと進学する春。
 六人は部室に集まり、部の始動を誓う。

晴絵「活動計画書も費用書類も揃った」

憧「顧問もいるし!」

晴絵「よし。阿知賀女子麻雀部正式活動開始だ!」

晴絵「早速だが。インハイの地区予選――個人戦はどうする」

穏乃「誰か出たい?」

一同「……………」

玄「個人戦は"みんなで゛って感じがしないし……」
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:33:45.29 ID:68yT1xm00

穏乃「和は団体戦にもエントリーしてたっぽいからね……きっと出てくる!」

晴絵「よし!ならば、このメンバーでインターハイの団体戦にエントリーする!」

晴絵「県予選は6月上旬――2か月後だ!」

穏乃「うんうん」

晴絵「普通は無理だ!!」

宥「え……」ビクッ

憧「うちの県には晩成高校がいるからね。"フツー゛はムリでしょ」

灼「………」

穏乃「晩成が地区優勝逃したのは40年で一度だけらしーから……」

玄「勝つの大変そうだね!」ドキドキ

灼「でもその"一度゛を作った選手が、今ここにいる」

晴絵「……まあ、それは普通じゃないな」
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:34:42.62 ID:68yT1xm00

憧「よく言う……。じゃあうちら全員がハルエを倒せるようになれば晩成に勝てるかもだ」

晴絵「その通りだが、こちとらこないだまで日本リーグのプレーオフで打ってたんだ。正気か?」

一同「……!」

晴絵「ふっ……しょうがないな」バッ

晴絵「まず2か月相手してやる!」

 こうして部の面々は晴絵との対局を経て成長していった。
 しかし晴絵の懸念は大きかった。
 確かに彼女たちはかつてのチームメイト並に強くなった。
 去年の晩成の試合を見て推察するに、晩成と相対してもいい勝負ができるはずだ。
 だが、それだけでは全国クラスには通用しない。
 もし今年の晩成に「魔物」と呼ばれる類の選手が入学していたら?当然勝率は落ちてしまうだろう。

晴絵(少々厳しいかもしれないが……やるしかない)

 晴絵は立ち上がる。
 この阿知賀女子学院麻雀部を全国に誇れる強さにするために――!
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:35:14.13 ID:68yT1xm00

 ある日の朝の阿知賀女子学院麻雀部部室。
 それは五月の中旬、インハイを間近に備えていた頃だった。

晴絵「注目!」パンパン

一同「」ピタッ

晴絵「よし。この一ヶ月半の練習でお前たちの雀力は格段に上がった」

穏乃「えへへ」

玄「ふふん♪」

憧「………」

晴絵「だがこのままではダメだ」

穏乃「え゛っ……」
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:35:45.41 ID:68yT1xm00

晴絵「このままだと晩成に対する勝ち目は薄い」

憧「……"このまま゛だと?」

晴絵「ああ。言いたいことはわかるな?」

灼「これから、予選に向けて特訓……」

晴絵「その通りだ。お前たちの能力に合わせた個別の特訓を始める」

宥「個別……ですか」

晴絵「ああ。まずは玄からだ。ついてこい」ガタッ

玄「は、はい」ガタッ

晴絵「皆は私が帰ってくるまでここで麻雀を打ってろ」

灼「……?」

穏乃「はーい」
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:36:30.18 ID:68yT1xm00

ブロロロロ……

玄「先生、ジープなんて持ってたんですね」

晴絵「ああ」

玄「車まで使って……どこへ行くんですか?」

晴絵「………」

玄(む、無視!?)ガーン

 そして車で移動すること10分程度。
 着いた先は寂れた市営体育館だった。

玄「……?」

晴絵「入るぞ」
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:37:04.07 ID:68yT1xm00

ガチャッ

玄「あの……こんなところで何を……?」

晴絵「……玄。私はひとつ聞いておかなくてはならない」

玄「はい……?」

晴絵「お前たちが進まんとする道はまさしく茨の道だ」

晴絵「さっきも言った通り……このままでは全国はおろか、晩成相手にも厳しい」

玄「………」

晴絵「今からお前にしてもらうのは、生半可ではない特訓だ。ついてこれるか」

玄「……うちが全国へ行くためなら、私はどんな特訓でもやってみせます!」

晴絵「よし!よく言った!」
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:37:34.17 ID:68yT1xm00

パチッ

玄「……これは?」

 照明に照らされ、その器具は姿を現した。
 その金属機械はハンガー状の形をしており、軽くジャンプすれば手が届きそうな高さに吊り下げられていた。
 そしてその機械の下にはマットが敷かれていて、玄の心の中に不安を募らせた。

晴絵「スクリュースピン装置だ。起動させると……」ピッ

ギュルルルルルル

玄「!!」

晴絵「取っ手の根本に取り付けられた回転装置により、このように回転する」
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:38:04.42 ID:68yT1xm00

玄「こ、これをどうすれば」

晴絵「取っ手に掴まれ」

玄「は?」

晴絵「いいから掴まれっ!!」バンッ

玄「!」ビクッ

玄「は、はい」ピョンッ ガシッ

晴絵「いくぞ、スイッチON」

玄「ちょ、それは……」

ギュルルルルルル!!!

玄「わぁぁぁぁっ!!??」

 急に始まった装置の回転に耐えられず、玄は手を離して落下する。
 マットに落ちてうずくまる彼女を見て晴絵の心は沈んだ。
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:38:32.25 ID:68yT1xm00

晴絵(……ダメだ。ここで甘さを見せては)

晴絵「立て、玄!!」グイッ

玄「う、うぅ……」フラフラ

晴絵「もう一回やるんだ!」

玄「こ……これになんの意味があるんですか!!」

晴絵「お前、白糸台の宮永照を知らないのか?」

玄「え……?」

晴絵「奴はツモ和了する際、腕に強力な回転をかけるコークスクリューツモを得意とする」

晴絵「部屋全体の空気から作り出した旋風を腕に巻き付けることで、卓上の運気すら自分のものにすることができるんだ」
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:39:06.17 ID:68yT1xm00

玄「で、でも去年まで宮永照は大将でしたよね。私は先鋒にするって先生言ってましたし……」

晴絵「確かに言った。だが噂によると今年の白糸台は宮永照を先鋒に据えるらしい」

玄「……!」

晴絵「つまりお前と当たる可能性もあるわけだ。そして私はその可能性がかなり高いと思っている」

晴絵「だから――お前には宮永照に対抗できうる力を持ってもらわないと駄目なんだ」

晴絵「この特訓は玄にスクリュースピンツモ、即ちコークスクリューツモを相殺する力を与えるもの」

玄「で……でも!今は地区大会を目指してやるべきでしょう……?」

晴絵「馬鹿野郎っ!!」バシィッ!!

玄「!?」

晴絵「晩成に第二の宮永照がいないなど、どうして言い切れる!」

玄「そんな……!」
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:39:33.36 ID:68yT1xm00

晴絵「さぁやれ!やるんだっ!!」ドンッ

玄「……は、はい」ガシッ

ギュルルルルルル!!

玄「あぁぁぁぁぁっ!!!」

ボスッ……

晴絵「根性が足りないな。マットも片付けるか」

玄「そ、そんな!」

晴絵「手を離せば谷底、落ちたら死ぬくらいの覚悟でやってみせろ!」

玄「……っ!」

ギュルルルルルル!!

晴絵「………」
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:40:24.10 ID:68yT1xm00

玄「うわぁぁぁぁっ!!!」

ドサッ!

玄「い、痛……」

晴絵「……みんな待ってるだろうから私は先に帰っている」

玄「え……」

晴絵「次来るときまでにできるようにしておけ。いいな?」

玄「………」

晴絵「いいな!?」ドンッ

玄「は、はい……」ビクッ

晴絵「じゃあまた後でな」ツカツカ

バタンッ!

玄「…こんなの、あんまりだよ……」ウルウル
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:41:49.36 ID:68yT1xm00

―部室―

ガチャッ

晴絵「ただいま」

灼「ハルちゃん、おかえり……」

憧「玄は?」

晴絵「まだ特訓の最中だ。次は宥、ついてこい」

宥「は、はい」ガタッ

憧「あーん、サンマになっちゃった」

穏乃「さっきまで宥さんがトップだったからちょうどよかったね」

宥「あはは……」

晴絵「……行くぞ」
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:42:18.06 ID:68yT1xm00

 同じくジープで移動すること、約30分。
 着いた先は山の麓だった。

宥「や、山……?」

晴絵「登るぞ。すぐそこだ」

宥「は、はい」

ドドドドドド

宥(何の音……?それになんか寒い……)

晴絵「ここだ」

宥「!!」

 そこは激流が雪崩れ落ちる滝だった。
 そう、登山中に聞こえた轟音はこの落水の音だったのだ。
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:42:44.00 ID:68yT1xm00

宥「こ……ここで何を……?」

晴絵「服を脱げ」

宥「え?」

晴絵「いいから脱げっ!!」バンッ

宥「」ビクッ

宥「は……はい……」ヌギヌギ

宥(寒い……)ガクガク

晴絵「よし。今からこの滝の流れを斬れ」

宥「は?」
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:43:19.41 ID:68yT1xm00

晴絵「手本を見せてやる」バシャバシャ

晴絵「せやぁっ!!」シュバァァッ!!

宥「!!」

 晴絵の手刀が煌めき、滝の流れが刹那途絶える。
 宥は見た。確かに滝の左端から右端まで流れに切れ目ができたのを。

晴絵「これができるようにしろ」

宥「む……無理ですよ……!」

晴絵「………」

 珍しいことだと晴絵は思う。
 お人好しかつノーといえない性格の宥がこんなにもハッキリ拒絶を示すなど初めてのことだ。
 だがこちらももう後へは引けないのだ――
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:44:31.36 ID:68yT1xm00

晴絵「……やれ」

宥「こ、これに……この特訓に何の意味が……?!」

晴絵「分からないのか?これは"流れ゛を見切る特訓だ」

宥「……?」

晴絵「分からないなら体で覚えろ。また見に来る、それまでにできるようにしておけ」クルッ

宥「ええ……?」
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:45:00.97 ID:68yT1xm00

―部室―

ガチャッ

憧「おかえりハルエー」

晴絵「次は憧だ。ついてこい」

穏乃「……私たちはどうしてればいいですか?」

晴絵「牌譜を見るかでもしているんだ。じゃあ行くぞ」

憧「おうー」

 同じくジープで移動すること10分程度。
 ひとけの無い荒野に二人は来ていた。

憧「ここで何するの……?」

ガチャッ

憧(……え、何あれ)
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:45:32.76 ID:68yT1xm00

晴絵「よし。行くぞ」カチャッ

憧「え、行くって」

晴絵「はっ!」ヒュンッ

バキィッ!

憧「あがっ……!」

 晴絵が取り出したのは金属製ブーメラン。
 それを思いっきり憧に投げつけたのである。

憧「な、何するの!」

晴絵「つべこべ言うなぁっ!!」ヒュンッ ヒュンッ

憧「っ!?」バキィッ

 憧は顔の前で両腕を交差させてガードする。
 だがそんなもので防げるのは所詮顔だけ。
 お腹や頭、腕には容赦なくブーメランは襲いかかる。
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:46:17.10 ID:68yT1xm00

憧「くぅ……っ!!」バキッ バキッ

晴絵「憧!」

憧「……?」

晴絵「女は外へ出て戦わねばならん!何の為だ!」

憧「はぁ……?」

晴絵「その後ろで……男の子が優しく花を摘んでいられるようにしてやる為じゃないのか!」

晴絵「女まで男の子と一緒になって家の中でママゴトばかりしていたら……一体どうなるっ!!」

憧「どういう意味よ!」

晴絵「お前に今必要なのは、雀力の強化ではない!」ヒュンッ ヒュンッ

憧「くっ!」バキィッ バキィッ

晴絵「判断力!一瞬の内に副露・打牌・和了の正確な判断をせねばならん!」
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/21(月) 14:46:30.48 ID:UMjINw/Ro
レオか
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:46:50.79 ID:68yT1xm00

晴絵「これはそれを鍛える特訓なんだ!!」ヒュンッ ヒュンッ

憧「っ……!!」バキィッ バキッ

晴絵「私は部室へ戻る。家近くの山で誰かに手伝ってもらって特訓しろ」

憧「………」

晴絵「いいな!?」ドンッ

憧「は……はい……」

晴絵「よし。また後でな」ブロロロロロ

憧「……くそっ!くそっ!!」

 憧は腹立たしかった。
 だがそれは晴絵に対してではない。
 『今の私なら晩成なんて目じゃない』と自惚れていた自分に怒りを覚えたのだ。

憧「……よーし、やってやろーじゃん!!」
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:47:17.17 ID:68yT1xm00

―部室―

ガチャッ

穏乃「おかえりなさい!」

灼「次は私……?」

晴絵「ああ。だけど灼の特訓はここでやる。シズは先に表のジープに乗れ」

穏乃「はーい!」タタッ

灼「何するの……?」

晴絵「……これだ」バッ

灼「……は?」
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:47:44.42 ID:68yT1xm00

ゴウン……ゴウン……

 それは鎌のアームが三つくっついている奇怪な機械だった。
 鎌は不規則なリズムに降り下ろされてはいたが、それはただひとつの地点を狙っている。
 晴絵はその装置を雀卓の隣に置き、鎌が席のひとつに降り下ろされるようにした。

晴絵「さあ灼。ここに座れ」

灼「え……ええ!?」

晴絵「いいから座れっ!!」バンッ

灼「!」ビクッ

灼「は……はい……」ビクビク

灼「」ストン

ゴウッ!
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:48:22.88 ID:68yT1xm00

灼「!うわぁっ……!!」バッ ゴロゴロゴロッ

 座った途端に刃は灼目指して襲いかかってくる。
 一地点に止まることなどできる訳もなく、彼女は座ろうとして転がり、座ろうとして逃げを繰り返した。

灼「はっ……はっ……」

晴絵「よし。そのままこの特訓を続けろ」クルッ

灼「ま……待ってハルちゃん……!」

灼「この特訓に、一体何の意味があるの……!」

晴絵「灼。お前の能力は乱戦でこそ力を発揮するものだ」

晴絵「テンパイ合戦になった時、一人だけ抜け出してツモ和了できるようにせねばならん」

晴絵「この三つの刃を他家の攻撃と思え。いいな!?」

灼「は……はい……!」
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:48:57.39 ID:68yT1xm00

 そしてジープに穏乃を乗せ、二人は移動する。
 晴絵は覚悟していた。穏乃への特訓は五人の中で最も過酷なものになると。

 そして着いた先は寂れた荒野。
 憧と来た場所だが、彼女の姿は既になかった。

晴絵「着いたぞ。降りろ」

穏乃「はーい」バタンッ

晴絵「そこに立ってろ」ギュィイン

穏乃(え?)

ブロロロロ……

穏乃(え?え??)
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:49:31.73 ID:68yT1xm00

ブロロロロロロ!!!

穏乃「うわぁぁっ!!??」バッ

 すんでのところで穏乃は回避する。
 なんと晴絵はジープを穏乃に突っ込ませたのだ。

穏乃「も、諸星さん!!何するんですかっ!!」

晴絵「逃げるなぁぁぁ!!!」ブロロロロロ

穏乃「!?」

 ジープの機動力を活かして直ぐ様Uターンし、即行で穏乃へ再突撃する晴絵。
 猛スピードで向かってくる車に対して、穏乃は一心不乱に逃げた。
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:50:44.36 ID:68yT1xm00

穏乃「うわぁぁぁあ!!!!」ダダダッ

晴絵「シズ!!逃げるな!!向かってこい!!!」ブロロロロ

穏乃「やめてください……!やめてくださぁぁぁい!!!」ダダダッ

晴絵「シズッッッ!!!」ブロロロロロ

穏乃「うわぁっ!?」バタッ

 石に躓き、勢い余って転倒してしまう穏乃。
 そんなこともお構いなしにジープは無慈悲にも彼女へ突撃する。

穏乃「やめろ!!やめろぉぉぉぉお!!!」

キキーッ!!

穏乃「はっ……はっ……」ヘナヘナ

 ぶつかるまで後僅か数センチというところで車は止まった。
 全身の力が抜け、穏乃は地にへたり込む。
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:51:19.32 ID:68yT1xm00

晴絵「シズっ!!何だその様は!」

穏乃「へ……?」ガクガク

晴絵「……シズ。お前は団体戦の意味がわかるか?」

晴絵「5人分の試合があるから、誰かが失敗してもそれをカバーできるということだ」

晴絵「だがシズ、お前は大将。自分の点は自分で守らねばならん!お前に敗北は許されないんだ!」

晴絵「お前ができなければ……!晩成どころではない!一回戦で、阿知賀は沈没するっ!!」

穏乃「沈……没……?」

晴絵「そうだ……。その意味をよく考えておけ。一旦私はみんなの様子を見てくる」

穏乃「」へたっ

晴絵「………」
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:52:58.45 ID:68yT1xm00

―体育館―

ギュルルルルルル!!!

玄「あぁぁぁぁっ!!!」

ドサッ!

玄「げほっ、げほっ……」

『玄ちゃん……』

玄「!?」

『あはは、あははははは』

玄「お母さん……!?」

 もちろん玄に見えたそれは幻覚である。
 こんな短時間でも体にかけた負荷に精神は耐えきれず、彼女に安らぎの幻を見せてしまったのだ。
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:53:40.29 ID:68yT1xm00

ガチャッ!

玄「お母さん……!」ダダダッ

『おかーさん♪』

玄「おねーちゃ――…」

ガシッ!

玄「!?」

晴絵「……どこへ行く、玄」

玄「お母さんが……お母さんが……!」

バシィッ!!

玄「」ハッ
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:54:15.60 ID:68yT1xm00

晴絵「目が醒めたか、玄」

玄「せ、先生……」

晴絵「玄、今からお前には特訓の第二段階に入ってもらう」

玄「第二段階……?」

晴絵「お前が培ったスクリュースピンで、この岩を割ってみろ。これができれば合格だ」

玄「……てやぁっ!」ギュルルルルルル

 玄はその場で高く跳び上がり、体全体にスピンをかけた。
 強烈な回転を伴った蹴りは巨岩の上の方に命中し、そこに亀裂が走った。
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:54:44.21 ID:68yT1xm00

ドスゥゥン……

玄「……やった!やりました!」

晴絵「それは割ったのではない。欠けたに過ぎん」

玄「そんな!」

晴絵「よく見ていろ。はっ!!」

バキバキィッ!!

玄「……!?」

 瓦割りの要領で、晴絵は巨岩に手刀を仕掛ける。
 なんとそれによって岩は大きく真っ二つになってしまった。
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:55:27.34 ID:68yT1xm00

晴絵「これが割るということだ。これができるようになるまで特訓を続けろ」

晴絵「予備の岩は表に出してある」

玄「は……はい……」

晴絵(……玄)

 晴絵は伝えたかった。自分の苦悩、葛藤を。
 かつて同じ先鋒として前線に出たものの、一生残る怪我を負ってしまった自分の様を。
 勢いだけで飛び込んで痛い目に遭った自分の二の舞になってほしくはないのだと――

晴絵「玄!私はみんなのところへ行ってくる」

晴絵「次私がここに帰ってくるまでにできるようにしておけ。いいな!」

玄「は……はい……!」
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:56:08.22 ID:68yT1xm00

―滝―

ドドドドドド

宥「やぁ……っ!やぁ……っ!!」シュバッ シュバァッ

 滝に向かって手刀を繰り出し続ける宥。
 だが水は全く斬れることはなく、ただただ時間は流れていった。
 五月とはいえ滝壺は冷たい。まして寒がりの宥にとっては何十倍もの寒さに感じられた。
 かじかんだ手と感覚がなくなってゆく全身。
 攻略の糸目も掴めない特訓に彼女は途方に暮れていた。

宥「できない……。私にはできない……!」ポロポロ

ヒュンッ!!

宥「!?」パシッ

 突如飛んできたステッキを掴み取る。
 飛んできた方向を見ると、そこには晴絵が佇んでいた。

晴絵「………」

宥「先生……!?」
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:56:56.80 ID:68yT1xm00

晴絵「その顔はなんだ!その目はなんだ!その涙はなんだ!!」

宥「……!」

晴絵「お前がやらずに誰がやる!お前のその涙で……晩成が倒せるか!?阿知賀を優勝させることができるか!?」

晴絵「全国に向けてどこも必死で頑張っているのに……ひとり挫ける自分を恥ずかしいとは思わんのか!!」

宥「……先生…っ!」

晴絵「分かったな……?続けろ」

宥「……はいっ!!」

晴絵「宥!流れに目標をつけろ!」

宥「流れに目標を……?」

晴絵「そうだ。そうすれば必ず水は斬れる!」
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:57:43.60 ID:68yT1xm00

―山―

望「やっ!!やっ!!」ヒュンッ ヒュンッ

桜子「でりゃあ゛あ゛ぁっ!でりゃあ゛あ゛ぁっ!!」ヒュンッ ヒュンッ

憧「やぁっ!せやぁっ!!」バシッ バシッ

 新子神社の近くの山。
 姉の望、旧友の桜子に手伝ってもらい憧はブーメラン特訓を続けていた。
 その動きは見違えるように洗練され、飛来するそれをほぼ叩き落とせるようになっていた。

バキィッ!

憧「っ!」ガクッ

望「憧っ!!」

桜子「あ゛ごぢゃん!!」
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:58:30.15 ID:68yT1xm00

憧「続けてっ!!」

望「そんな!」

憧「いいから続けてっ!!」

望「……やっ!やっ!!」ヒュンッ ヒュンッ

桜子「だあ゛あ゛あ゛ぁぁっ!!!」ヒュンッ ヒュンッ

憧「くっ……」

晴絵(……憧は大丈夫そうだな)
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:59:08.61 ID:68yT1xm00

―部室―

ゴウン……ゴウン……

灼「はっ……はっ……!」

灼「やぁぁっ!!」ダダッ

ゴォッ!

灼「!うわぁっ!」ゴロゴロッ

灼「……はぁ。はぁ」

ガチャッ
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 14:59:37.14 ID:68yT1xm00

晴絵「どうだ。できているか」

灼「ハルちゃん……」

灼「……ハルちゃん。この特訓に一体何の意味があるの」

晴絵「聞いていなかったのか?乱戦の中で相手の攻撃をかわし――」

灼「私が言っているのはそういうことじゃなくて……」

灼「他校はみんな麻雀の特訓をしているのに、どうしてうちはこんな訳のわからない事を……」

晴絵「………」
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 15:00:13.20 ID:68yT1xm00

灼「麻雀で勝てない、それなのにこんな特訓をしている私が虚しいの……」

晴絵「……屁理屈はいい」

灼「……っ!」

晴絵「灼!体で覚え込まなければならないことを、口や頭を使って逃げ回るような奴は足手まといだ!!」

灼「!!」

晴絵「こんな機械ひとつに手こずっているようでは全国なんて夢のまた夢だ!……いいな」

灼「……はい」
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 15:00:49.17 ID:68yT1xm00

―山中―

ゴウン、ゴウン……

穏乃「やっ!はっ!!」バシッ バシィッ

 穏乃は山奥へ入り、別の特訓をしていた。
 丸太の先を尖らせたものを木の枝から吊り下ろし、振り子のようにしたものが二つ。
 それの突進をかわし、打撃を与えた後に二本目の突進をかわし……といったものだ。
 穏乃はこう考えていた。『同じ突進する物をかわすのなら、この装置の方がいい』と。
 ジープなら本当に命を落としかねない。
 これも安全とはかけ離れていたが、先の特訓よりはマシだろうという判断だった。

穏乃「はっ!はっ!」バシッ バシィッ

シュバァッ!!

穏乃「!?」
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 15:01:36.24 ID:68yT1xm00

 彼方より飛んできた一本のステッキ。
 それが丸太の吊るしてあったロープを切断した。
 支えをなくした丸太はだらんと地面に垂れ落ちる。

穏乃「も……諸星さん!?」

晴絵「………」

バシッ!バシッ!!

穏乃「!?」

 有無を言わさず唐突にステッキで殴りかかる晴絵。
 穏乃は驚いて声も出せず、されるがままになっていた。

バシッ!バシッ!バシッ!!

穏乃「や……やめてください!せんせぇっ!!」
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 15:03:46.64 ID:68yT1xm00

バシッ!!バシッ!!バシィッ!!!

穏乃「うわぁっ!!」ゴロゴロッ

穏乃「う、うぅ……」

晴絵「シズ。私はさっきの言葉の意味を考えろと言った。その結論がこれなのだろう」

晴絵「だがこんなものは特訓でもなんでもない!お前は一体何をやっていたんだ!!」

穏乃「でも……!!」

晴絵「この丸太か……?この丸太にお前を憎しみ突き刺す心があるか!?」

穏乃「……!!」

 穏乃の学力は良いとは言えない。
 まして言葉の裏の意味を深く推察することなどなかなかできない、直情的な少女だ。
 だがそんな彼女でもこの言葉に込められた意味は理解できた。
 今からやる特訓は、本気で私を殺さんとするものなのだと――
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 15:04:20.52 ID:68yT1xm00

ブロロロロ……

穏乃「わあぁぁぁぁっ!!!」ダダッ

晴絵「逃げるな!逃げるんじゃない!!」ブロロロロロ

 場所は移って再び荒野。
 この地にて二人は特訓を再開していた。

穏乃「やめてください!!先生っ!!」

晴絵「馬鹿野郎っ!!」ブロロロロロ

穏乃「やめて……!やめてぇっ!!」

晴絵「シズっ!!」

穏乃「……!やめろおぉぉぉぉぉっ!!!」
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 15:05:06.68 ID:68yT1xm00

ドンッ!!

穏乃「あ゛あ゛あ゛ぁぁっ!!!」ゴロゴロッ

穏乃「痛い……痛いよぉ……」

晴絵(……っ!!)

ブロロロロロロ!!!

 車に撥ねられ踞る穏乃。
 その目には涙が、その頭には絶望が流れていた。
 しかし無情にも車は彼女へと襲いかかるのだ。

穏乃「やめ……もうやめてえぇぇぇっ!!!」ダダッ

穏乃「先生ぇっ!!私が悪かったです!!もうやめてくださいぃぃっ!!」

ブロロロロロ!!!

穏乃「わぁぁっ!!」ゴロゴロッ
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 15:05:52.90 ID:68yT1xm00

穏乃「先生!先生っ!!やめて!やめてぇぇぇっ!!」

穏乃「何でもしますから!!やめてくださいっ!!」

晴絵「泣くなぁぁぁっ!!!」ブロロロロロ

穏乃「先生っ!!」

晴絵「お前は大将戦、敵わぬ相手が現れたら涙を流すのか!?泣いてそいつに勝てるとでも思っているのか!?」

穏乃「……っ!!」

晴絵「お前はみんなに背中を託される存在なんだ!!そんなことで……一体どうするっ!!!」

晴絵「さぁ来い!!向かってこい!!シズッッ!!!」ブロロロロロ

穏乃「……うおぉぉぉぁぁぁ!!!」ダダッ
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 15:06:28.19 ID:68yT1xm00

―体育館―

ギュルルルルル!!!

玄「いやぁぁっ!!!」

 何度も幾度も試行した岩割り。
 体の回転を限界にまで高め、玄は蹴りを繰り出す!

パキィィン……

玄「!」

ズゥゥン……

 割れた。晴絵が為したように、岩は真っ二つに割れ床へ崩れ落ちた!

玄「やった……!やったぁぁぁぁっ!!!」

玄「できた……できたんだ!!」
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 15:07:11.52 ID:68yT1xm00

―滝―

ドドドドドド

宥「はあっ、はあっ……」

宥(流れに目標を……でも、そもそも流れが分からない……)

ひらっ

宥(!)

 偶然にも、周囲の木々から花びらが落ちてきた。
 ひらひらと舞い降りた数枚の花びらは水に巻き込まれ、滝に流される。
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 15:09:06.27 ID:68yT1xm00

宥(――見えた!!)

 そう、花びらは水の流れを示した。
 そして同時に宥の目には流れの要点が映ったのだ。

宥「ここを斬れば……!」

シュバァッ!!

宥「……!」

 一瞬。まさに刹那のこと。
 だが彼女は水を斬った。流れを斬った。滝を一瞬でも断ち切った!

宥(できた……できたぁ……!!)
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 15:11:05.97 ID:68yT1xm00

―山―

ガキンッ ガキンッ!!

望「……!」

望「憧!」

 望と桜子が投げつけたブーメラン6丁。
 憧はそれを全て見切り、叩き落とした。

憧「次!8!!」

望「あ、ああ……!」

 8丁は初め晴絵が憧に投げつけたのと同数である。
 あの時はただ守るしかできなかった、だが――…
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 15:11:38.46 ID:68yT1xm00

望「やぁっ!!」
桜子「せい゛っ!!」

ヒュンヒュンッ!!

憧「っ……!!」

憧「てやぁぁぁぁっ!!!」クルクルッ

望「……!」

 憧は跳び上がり、空中で足を使い4丁を蹴り落とす。
 そして着地後、背後から襲う残る4丁を全て回し蹴りにより叩き落とした!

憧「やった……!!」

望「憧!」

桜子「あ゛ごぢゃあ゛ぁぁん!!」

憧「うんっ!!」
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 15:12:07.58 ID:68yT1xm00

―部室―

ゴウン、ゴウン……

灼(くっ、ダメだ……)

ゴォッ!

灼「っ!!」

 逸れてしまった注意。
 一瞬が命取りとなり、刃が直ぐ側まで迫っていた。

灼「わぁっ!!」

バキィッ!!

 間一髪、蹴りを入れて刃をかち上げた。
 破壊されたそれは入口ドアの方へ飛んでいく。
 ここで不幸にも……ドアが開いてしまう。
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 15:12:37.09 ID:68yT1xm00

ガチャッ

生徒「すいません、諸星先生は……」

灼「あぶな……!!」

生徒「!!」

 ここで灼は信じられない光景を目にする。
 急に飛んできた刃をその女子生徒は両手で挟み取ったのだ。

灼「……だ、大丈夫ですか」

生徒「あ、あぶなっ!何これ!」

灼「色々あって……それよりも」
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 15:13:08.95 ID:68yT1xm00

生徒「大丈夫大丈夫。昔剣道やってた経験が活きたなぁ」

灼「剣道……?」

生徒「うん。真剣白羽取り」

灼(剣道で真剣白羽取り……?)

生徒「諸星先生はいないみたいだね。留守?」

灼「う、うん。用事があって出てて……」

生徒「そっか。月曜にするかぁ」

バタンッ
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 15:13:51.15 ID:68yT1xm00

灼(真剣白羽取り……)

灼「……!!これだ……!」

 そう、これこそが晴絵の真意。
 混戦で必要なのは『先に和了る』ことも勿論だが、まず『振り込まない』が最優先なのだ。
 三つの刃を他家の攻撃に見立てたのは、
 その攻撃を止めて且つツモ和了できるようにしろとのことだったのである。

灼「やれる、やれる……!」

ゴウン、ゴウン……

灼「やぁぁぁーー!!」
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 15:14:28.00 ID:68yT1xm00

―荒野―

ブロロロロロ!!!

穏乃「わぁぁぁぁぁっ!!!」

晴絵(シズ……!)

 走り来る、迫り来るジープに対して穏乃は立ち向かった。
 高速で距離を詰めてくるその巨大な敵に対して走り向かって行く。

穏乃「うおぉぉぉぉぉっっっ!!!」

晴絵「シズ!!跳べぇぇぇぇっ!!!」

穏乃「せやぁぁぁぁあっっっ!!!」

 穏乃は跳躍する。
 ポニーテールが空中で華麗に舞い、身体は襲いかかるジープの頭上を飛び越えた!
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 15:14:58.33 ID:68yT1xm00

キキーッ!!

晴絵「シズ!!よくやった……!!」ギュッ

穏乃「先生……」

晴絵「お前は今逃げも隠れもせず恐怖に立ち向かい、そしてそれに打ち克った!」

晴絵「お前はどんな相手が敵でも諦めない、究極の心を手に入れたんだっ……!」

穏乃「……せんせぇっ…!」ギュゥゥ

穏乃「うわぁぁぁん!!あぁぁぁん!!」

晴絵「……よしよし」
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/21(月) 15:18:09.83 ID:68yT1xm00

―部室―

 晴絵が全員の特訓終了を見届けた後、皆は部室へ集まっていた。

晴絵「みんな……こんな過酷な特訓をよくぞ耐え抜き、そしてクリアした」

晴絵「私はお前たちを誇りに思うぞ」

玄「えへへ……」

 そして、窓の外。
 西に沈む赤く熱い太陽を指差して晴絵は言う。

晴絵「あそこに沈む夕陽が私ならば、明日の朝陽はお前たちだ」


「「「「「 はいっ!! 」」」」」


 こうして絆を深めた阿知賀女子学院麻雀部の全国への躍進が始まる。
 が、それはまた別のお話で……


カン!
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/21(月) 16:04:10.63 ID:lRNudl3AO
乙……続編の予定は……?
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/21(月) 17:30:32.68 ID:v2ls8JWAO
シルバーブルーメ早よ
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/21(月) 21:22:55.59 ID:ikTCgrs/0
乙です
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