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【安価】マギカ帝国VSキョーアニ連合 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆Ikxp7uG.BM :2013/01/27(日) 19:53:28.59 ID:YhdxjTcU0



やる夫「今日も人間性を捧げる時間だおっ!」

ない夫「そんな事してる場合か。」


.

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2 : ◆Ikxp7uG.BM :2013/01/27(日) 19:54:09.73 ID:YhdxjTcU0



ない夫「お前もそろそろ元服・・・。一人前になるころだぞ。
    そろそろ真面目に身の振り方を考えてもいいだろ。常識的に考えて・・・。」

やる夫「どーせやる夫は爵位も所領もない没落貴族だお。
    そんなこと考える暇があるなら、お前も人間性を捧げろお。」

ない夫「そんな暇はない。いいか今、時代は大きく動いてる。」

やる夫「へー、どうゆーふーに動いてるんだお。」

ない夫「・・・『マギカ帝国』と『キョーアニ連合』の一大戦争になるかもしれん。」



                 / ̄ ̄\
               /   _ノ  \
               |    ( ●)(●)
            |     (__人__)     人間性なんか捧げてる場合じゃないぞ。
                |     ` ⌒´ノ
             |         }
             ヽ        }
                ヽ      ノ
               / ̄`  ィ'⌒`ー―丶、
              /        _        ヽ
         / ̄ v―-〈     !   ヽ/⌒j   }
          ヽ、  `   i   丶  v /  /
           ヽ_/∨     `ー’∨ /
               \l          !イ
                  |          !/
         r―--┘         `ー―-、
         |      _人__       }
            !   T厂 ̄       ̄丁゙T   !
         /  ̄ ̄ ̄ \      |. |   |
       / _ノ   `ヽ.  ',.    /  |   |
 , -―──io゚(●)  (●)゚o i    ー亠―亠─- 、
 !____弋. (_人_)   ,L_________.ノ
        ` ー-=-─一 ''゙


.
3 : ◆Ikxp7uG.BM :2013/01/27(日) 19:54:38.94 ID:YhdxjTcU0



                .             , ':/           ;      ヽ
                            /:::'              ∧        :.
                              ':/:    ::'::::/    '  :/  ', :ト、       '
                            |;'::::.   ...:::!:::|:;イ :::/! /    , ! ヽ::ヽ:.  i
                            ,.、!::::::::.  ' ::/!斗‐ト/ ,::/    ‐‐トミ、V   |
                         {l`!l;:::::::::. '::/´ ,/__j/ j/     __j!  ` V: r.¬
                        ,...ミj !;::::::::.レ' ,斗==x      x==-ェ、.i:. ‖7,'
                          {{ `,,(:}}l、 ::::!"イi;;;r圷         ij;;;rハ`}:. jj/ムゞ
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                .   { ̄`::ー-..、ノ`ヽ:::::. 〉   -=「≧ - 壬=-    ヽ::ィ< _,.. ー ¬
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                .    `ー ‐‐`ヽ:::::::ヽ _ . rr/  、   lj   ,  ヘrr . _  v-;ー―'
                          y  ̄  r - ー― ヽ_r¬_ィ ー -- 、   ̄ ゞ:ト、
                       _ ノj::::::::::. .. ヽ    >::::|_!::<      /     i \ミ__
                  _,..ィフ ̄` ーィ:::::::::::: :: . |:〉  :://j lj | \   〈:|     ハ   ー 、ヽ
                 (::::.. /     /:::::::::j    |:\/ / ! i j | \ /:j   i::.  \   j:: )
                  ┌────────────────────────┐
                  │マギカ帝国初代皇帝                        │
                  │マミ大帝(マミ1世)(出典:魔法少女まどか★マギカ)     │
                  └────────────────────────┘

                        マミ大帝により建設された『マギカ帝国』は大帝の死後、
                        帝国の嗣子たるマミ2世に帝冠が移るはずであったが・・・


.
4 : ◆Ikxp7uG.BM :2013/01/27(日) 19:55:16.05 ID:YhdxjTcU0



帝国の重鎮、大老・鹿目知久侯は摂政の名のもとに国政を牛耳り、
マミ2世に禅譲を迫ると自らは大老職から退いて隠居し、



         /:l:.:.i:.:.:l:.:.:/l:./   \\\\:`:.:.、_:.:.:.:.`ゝゝソ:.:.l:.:.:.ル、
         /ノl:.:.l:.:.:l:.:lイソ-―  ヽへ:.:.、::::::::::\:ゝ-<':.l:.:.l:.:.l:.lハ
           lト:l:.:.ト:.l   _   \ ` >―-`^ ヘ:.:.l:.:l:.:.k/
           .l:>ヘ::トル ィ=―-.、      ィ=―-.、  ルl:/、::l
           .| ヘ(`┃_弋_ア_.┣━━┫ _弋_ア_ .┣''l;;/::ハl
            l :lヌ ┗━━━┛ ,......┗━━━━┛ リ:ヌ./
            .ヘ ヘ        ./           /: /
               、       ___     ./      忠臣は二君に仕えずというからね。
               丶     丶  _ノ    ィ
                  ` 、     ̄    ./        .陛下が禅譲なされる以上、僕だけが大老職に居座るのは
                   l:`:...、   ィ    l
                    |   ` '     .|          .臣下の道に悖る行為だよ
                  /イ          .ト、ヽ
              ィ: フ//             ヘ ミ`ィ.、
         .....:::'::::::::::V/ /         ./     .l V:/:::`:.....、
     ./:::::::::::::::::::::::::./ ∧ ―-- 、   ./ __ 、.| .V:::::::::::::::::::`:::.....、
    ./:::::::::::::::::::::::::::: / . /、:∧         ̄    ∧  w:::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
    ./::::::::l::::::::::::::::::::/  /:::ヘ:::::.、           ../::ノl  .l:::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヘ
   /:::::::::.:l:::::::::::::::::/  /:::::::::ヽ::::ヽ         //:::|  .l::::::::::::::::::::::::::::::::::/::::l
   .l:::::::::::::l:::::::::::::::/  /:::::::::::::::\:::\      //::::::::::l  .l:::::::::::::::::::::::::::::::/:::::::|
   .|::::::::::::::l::::::::::::/  /:::::::::::::::::::::::ヽ::::\   //:::::::::::::::::|  |:::::::::::::::::::::::::::/::::::::::|
┌──────────────────────┐
│マギカ帝国大老                        │
│鹿目知久侯爵(出典:魔法少女まどか★マギカ)  ....│※ 大老
└──────────────────────┘皇帝の廷臣、老中衆の筆頭。
                                    老中衆とは諸侯から集められた帝室の政治顧問団である。


帝位は知久侯の長子、鹿目まどかが継承した。


.
5 : ◆Ikxp7uG.BM :2013/01/27(日) 19:55:51.74 ID:YhdxjTcU0



これにより巴朝は2代で潰え、まどか皇帝が誕生し、
『鹿目朝マギカ帝国』が成立した。



                      ┌‐ .。.,__/\
                            ヽ 丶
     「\         _,...  .,.  .,_ ヽ     |  }
     |  \    _,..´ -―-v-―- `}  ..,  |  /
    ヘ、  ,.≧⇒'゙´           ヽ、 {    ヽリ /⌒ヽ
   〈  ヽ  ー=彡'´   /       \〉、  イ´ ̄〉  \
    ヽ /ヽ /     ′   /  ;.   ヾ   人 /     \
    /  _У    /    /  .゙ ;  ヾヽイ>'゙´Y   /    \
  < ̄ ̄   /  ,:  ′ /,  /  / j   i У  /  /  | ヽ⌒ヽ
   /\__/ 〃  /  ///|  / | ハ   从  /  イ    |  i
  ′// / / j  |‐''7フ  | 〃 √「¨''メ< ̄}/〃    |ヽ |
 // //〃/{ ! | | /x=、 }/   ,ヶ==ミx、 `/、 / ;     |_,ハ|
   // |/ ヘ  ∧Y r'_ソ}     r'゙_ソ バ /〈 |! /   /   j!
     / /{  ∨ ハ  ゞ‐'      ゞ‐-'   /νハ{   〃
    ノイ     / 八 """"   '   """/  /_,.イ / ヽ /
           / //>    `   ´  / /   j/  У      皇帝になれて、とっても嬉しいなっ!
.          / /    r―-≧=‐=≦ //>‐=ミ、
.        /   ,.-┴<二>―r 、/ヾ´ 〆  ',         ・・・と思ってしまうのでしたっ!!
          /   〃 /tニニヽ、} } ∨
         /    〃, {_r┐ゝゝ'ゝ' /    八
         (´     トイ |  |   //         ヽ、         ┌─────────────────────┐
        \    ヾ辷|  !   勹    ,. -‐   )      │マギカ帝国3代皇帝                   │
           仁ニユ/イゝ= }_,.。匕ヽ____,..。- ゙´         │まどか皇帝(出典:魔法少女まどか★マギカ)    │
            /    / ゞ-/― '´ヽノ――-く           └─────────────────────┘
         〜⌒7-‐'゙´{_/イゝ.._}〜7⌒ゝr〜}
         | /   / |!   ∨    /⌒


.
6 : ◆Ikxp7uG.BM :2013/01/27(日) 19:56:17.77 ID:YhdxjTcU0



諸侯は先帝の嗣子を差し置いて、まどかが皇帝に就くことに
少なからず反発したが・・・



        ,'/  /   l    {::::   ぃ::\     !   ',     '.    |          / : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :丶
.      〃  ′  ::A-‐、 ∨:   ', \:__、__ !\  i   :  '.   l         , ' : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ
.      /   i   :/ '、  ,ハ:::   '.  \:ヽ`ト、 ∨:|   ト、 ', ヽ.l        / : : : : : : : ∧ : :/l : : : : : : : : : : : : : : : : `、
       ′  l   '   \ ヽ\:: ;    \:j  l:::i   ;:::::\ 、∧      / : : : : : : : //',/ l: : :lヽ: A: : :l丶: : : : : : : ;
           l  :l   ∩ \ ヽ\{.  ∩     |::′  ハ__:::i `  ',     レイ : : : :lヽ/     ヽ :l l/ ヽ l丶l : : : : : : l
.       {    l  :|.  ∪   \{      ∪    i::′ /'´ ∨    ',      l: : : : :l   ∩       ∩     l: : : : : : : l
      '.   liヽ ::'                    }/  /'⌒ !::!    ',     l: : : : :l   ∪       ∪    リ : : : : : /
      ヽ  l!::::j                  / /}`) ノ::::!     ノ     l ト; : : l                l : : : : レ
          \ :::::ト.、       ┌─┐      //r--<::::::::i   /       l | ヽ: :',      ┌─┐       ∧: :ソ
         ) }::/:个:..、   └─┘     , イ::::::::/:::::::::::::::′′          ',l  ' ; :ト、     └─┘    <: :ノ
      -=彡' i/ /:::::::::>....、     ,   个ノ::::::::/::::::::::::::/ {                ヽl _>      ≦ /: /
         〃 /:::::::/::i:r<<`__´____ l>>'´:::::::::::::八 ヽ            /ヽ  >┌─┐<// ̄\
         i ! {:::::::/:::ノ」  ` ┐{ r――‐'´ ,':::::::::::::/:::::::\ \         , '   `ー―└─┘―― ´   ' ,
         | \ヽ:::{-II7_{ヽ   ! | |   _/  ∨:::::::/__:::::::::__::ハ   }        , '  /   /        \  \  ' ,
.      , '´\ ヽ:::|'´: : : : :`>---<´: {    ヽ:::{   ̄   `ヽ /        {   ノ  /         \   ヽ }



                    帝国最高の権力者、大老知久侯がマミ大帝の治世を支え、
                    大帝存命中もほぼ事実上の皇帝として振舞っており、
                    マミ2世にもとくに後ろ盾、後見人がないことから、

                    ほぼ無反応にこれを認め、なしくずしの有様であった。


.
7 : ◆Ikxp7uG.BM :2013/01/27(日) 19:56:54.64 ID:YhdxjTcU0



ない夫「新しいリーダーは往々にして、自分の力量を示すために親征する。
    まして皇帝は大人しく、物静かなお人柄だと聞く。
    近々、戦争になるかもしれん。」

やる夫「もっとわっかりやすい日本語で頼むお。」

ない夫「・・・つまりだ。新しいリーダーが凄いか、ショボイか、皆知りたがる。
    中には侮ったり、軽んじる連中も出てくるだろ?」

やる夫「えっと、だから自分がスゲーって言いたいから戦争する?」

ない夫「とんでもなく噛み砕けはそうだ。」

やる夫「じゃあ、やらない夫も戦いの用意をするのかおっ!?」

ない夫「・・・俺のことはいい。今はお前の問題だ。」

やる夫「えっと、やる夫にも戦争にでろっていうのかお?」

ない夫「無論だ。だが、俺の家来として戦争に出るか、
    俺がお前の家来になるか・・・、そろそろ決めておこうと思ってな。常識的に考えて・・・」

やる夫「なんでだお。」

ない夫「ここは美府伯爵領だぞ。ここの兵は俺ンちの兵だ。
    それをお前に貸すなり、一緒に指揮するなりしたら、
    お前は俺の家臣ってことになるんだぞ?それでもいいのか?」

やる夫「だからなんでそんなこと気にするんだお?
    やる夫はずっと、お前の家でお世話になってきたお。
    だったらお前の手伝いをするのが自然じゃないかお?」


.
8 : ◆Ikxp7uG.BM :2013/01/27(日) 19:57:41.20 ID:YhdxjTcU0



    __
   /   \
 /   _ノ  \
 |    ( ●)(●)         キリッ ____
. |     (__人__)           /\   / \
  |     ` ⌒´ノ          /(ー)  (ー) \
.  |         } そんなの要らん ⌒(__人__)⌒   \   俺はおまえのために人間性を捧げよう!
.  ヽ        }     \     |    |r┬-|      |
   ヽ     ノ       \  \   `ー'´     _/
   /    く. \         \  ノ          \
   |     \  \    (⌒二                |
    |    |ヽ、二⌒)、        \        |  |



ない夫「そうしたら、お家再興は難しくなるぞ。」

やる夫「オイエサイコー、やる夫の実家を、かお?」

ない夫「そうだ。もともと、俺のオヤジはお前のオヤジの家臣だった。
    おまえの家が没落したとき、お前を引き取った時から俺のオヤジも俺も悩んできた。」



ない夫「家来が主君の忘れ形見を預かる。・・・一見すれば美談だが、
    世間はそれを口実に家臣が亡き主君の所領を奪おうと企んでいる、と疑うし、
    そういうことがあると、主家再興は難しくなるからな・・・。」



ない夫「実際、マミ2世とまどか皇帝の間に起こったのが、それだ。
    表向きには家臣が主君を助け、その後、権力と領地を譲り受けたように見える。
    だが、結果として知久は娘を皇帝にする計画だった訳だしな。」

やる夫「でも、知久がスッゲー権力を帝国で持ってることぐらい、やる夫にも分かるお。
    今更、『巴大公』なんて言ってるけど、所領は小さいし、落ち目じゃないかお!」

ない夫「今のお前が、まさにそれだろ。」


.
9 : ◆Ikxp7uG.BM :2013/01/27(日) 19:58:12.27 ID:YhdxjTcU0



かつて『新即出(ニューソクデ)辺境伯領』は帝国の西端に位置した。

これはマミ大帝存命中、大老知久侯が「帝国領以西、是切り取り次第。」と闡明し ―――
すなわち、帝国領より西側は諸侯が外敵より奪った分だけ、それを認めるという外的膨張政策により、



       ___
     / 〜〜〜\
   /( ◎)―(◎)\
  /::::( ((__人__)) )::: \
  |     |r┬-|       |
  \      `ー'´     /



やる夫の父、やる蔵が一介の騎士から周辺の小国を切り平らげ、一代で建設したものであった。

ところがマミ大帝存命中、やる蔵が病死するが、息子やる夫に辺境伯領が相続されることはなく、
またそれどころか伯爵の地位の継承すら認められなかった。

大老知久侯から敵国との内通や皇帝に対する反逆、さまざまな物言いがあったためである。

さらに新即出辺境伯領はやる蔵の家臣や近隣諸侯、返還を求める諸外国に分割相続・返還され、
帝国に今更、相続を認めさせたところで所領と伯爵家復興は容易なことではならない状況にあった。

これは帝国の中枢から遠い辺境で、あまりにも大きな領地、権力を一家臣が持ってしまったことで
皇帝の地位、ひいては帝国をも危うくすると判断されたためである。

ただし内情は新即出伯は低い身分からの叩き上げで、引き立ててくれた皇帝への忠誠心が強かったため、
その後、知久侯が帝位を簒奪する時には、敵になると警戒されたからだとも、

逆に知久侯が何度か彼の活躍を妬み、危険視する中央の諸侯から守って来たため、
新即出伯と知久侯、二巨頭が手を結べば帝国で強大な勢力になるが、その分、敵を増やすと考えた知久侯が
あえて新即出伯の所領を安堵させなかったのだ、とも言われている。

しかし高難を畏れ、一族郎党からも見捨てられ、哀れ天下の遺児となったやる夫を引き取ったのは
やる蔵の重臣、美府やらない蔵伯爵であり、やる夫は『乞食若殿』と呼ばれ、美府伯爵家で育てられた。


.
10 : ◆Ikxp7uG.BM :2013/01/27(日) 20:00:04.89 ID:YhdxjTcU0



やる夫「じゃあ、まどか皇帝はやる夫からすれば家を潰した仇じゃないかおッ!」

ない夫「いまごろ知ったのかよ。」

やる夫「そんな皇帝のために、やる夫は戦争になんか出たくないおっ!
    父さんがやる夫のために作ってくれた家だって取り戻したいおっ!!」



                      γ ⌒⌒ヽ
        / / ̄ ̄\\     ( ( ヽ ) ノ
       //_ノ  ヽヽ \\     ノ 从 ゝ
       (●●)(●●) ヽヽ   ____     (⌒)
        l |( (__人__)) u }}| l  /\  / ) し   / |  ミ
        l |  ` ⌒´     ノノ /(○ )::(○ )⌒\/ | ミ
      || |       } }/:::::::(_人_):::::::   i'   |
          ヽ        }} |     )ww)    |   |
         ヽヽ    ノノ \    `ー"      ノ
         /  (( (⌒) ))   〉  .    .     \
         |     \ `ー--"
         |     |ヽ、二⌒)、



やる夫「敵は皇帝だおッ!!!」

ない夫「分かった。分かった。時に落ち着け。」

やる夫「な゛んでだおっ!?」

ない夫「確かに辺境伯領没収は物言いだった。大義はこっちにある。
    声をかければ旧家臣の連中もお前に着くことだってある。
    皇帝も所領のいくらかは返してくれるか、それに見合うだけの賠償金を払ってくれるかもしれん。」


.
11 : ◆Ikxp7uG.BM :2013/01/27(日) 20:00:57.44 ID:YhdxjTcU0



ない夫「だが、現実的に考えれば皇帝は強気に出る。」

やる夫「なんで!?」

ない夫「言ったろ?新しいリーダーは舐められないようにしなきゃならん。
    十中九、皇帝は即位はじめての反乱に対し、武力で制圧してくる。
    そうしなきゃ、他の諸侯の領土問題にも飛び火しかねん。」

やる夫「はあ!?
    はじめから止めるなら、なんでそんな馬鹿なこと言うんだおッ!!」

ない夫「だから言ってるだろ、『マギカ帝国』と『キョーアニ連合』の戦争が始まるかもしれんと・・・。」



                        γ ⌒⌒ヽ
   / ̄ ̄\           ( ( ヽ ) ノ
  /_ノ ヽ_  \     (⌒) 三  ノ 从 ゝ
 ( ●)( ●)   ヽ  三/ | ニ  ____     (⌒)
. | (__人__) u  }   |  |   /\   / ) し / |   ミ
  | ` ⌒´    ノ   !   、 /(○ )::(○ )⌒\/ | ミ
.  |         }    \./:::::::(_人_)::::::::  i'   |
.  ヽ        }      |     )ww)     |  |
   ヽ     ノ   ヘ   \_   `ー"      ノ
   /    く 、_/っ/     \ .    .   \
   |     \--一''           \
    |    |ヽ、二⌒)、           \


.
12 : ◆Ikxp7uG.BM :2013/01/27(日) 20:02:13.08 ID:YhdxjTcU0



『キョーアニ連合』は『SOS王国』、『けいおん共和国』、『氷菓連邦』、『極東厨二病魔術秘密昼寝合衆国の夏』、
『日常共和国』の5ヵ国からなる連合で、



                                     --==彡:.:/i:(_)i:i(フi:i:i:i:i:ー==┬‐-- 、_:.:.:.:.:. : :.:.i:.:.:.: : :{
                                         [/i:r‐くi:i:i:i(フi:i:i:i:r==ー┬ 、___)、:.:. : :.:.|: :.:.: :..{
                                 .         /i:/   ヾi:i:(_ノ:i:i:iト .、...|..{/リ \: : :.:| :.:.:.: .:{
                                         /i:/   /i:i:i:i:i:i:i:i:r=y、\.l斗ャセi「`j : /l|ゝ.:.:.:八
                                         |i:i:i≧=彡i:i:i:i:i:i/ト、: : \__) 乂rソ /: / |  }小
                                         |:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:/{:..:.| 八ト、:{ ´ ̄ ,厶イ  j!/
                                        ノ:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:〈八}\〉  、 `      r=彳
                                        \i;i;i;i;i;i;i;i;i:イ ...,,,____ __,,..ィ  _r=====ュ
             ..::::::::::::::::::::::::::::::l|::::::::::::::::|:::|::::::::::::::.     -==ニニ}__________∧ニニニニニl ― ´  |ニVニニニ}
.           .::::::::|:::::::::|:::::::::||::l|::::::::::::::::|:::|::::::|::::::::::.   ′ニニ二}――'´ __∨ニニ二| _,.. ´|ニニニニニ{    _________
.           .::::::::::|:::::::::|:::::::::||::l|::::::::::::::::|:::|::::::|::::::::|:::. /ニニニニニ/l}_,,/  ∨=ニニ|    r=彡ニニニニ/≧=ニ二二二`ヽ
.           .::::::::::::|:::::::::l::|::::::|Ll|::::::::::::::::|::」::::::|::::::::|:::::/ニニニニニ/ニ}__ _____,,,... ∨ニγヾ:、 }ニニニニニ/ニニニニニニニ二二∧
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         l::::::|:::::::|:::::::::|_|,ィ示      示ミ、|::::::::|:::::::ニニニ/ニニ二}ー―‐ァ'"  ∨ニ/{____∧ニニ=/ニニニニニニニニニ二{ニニ|
          |::::::|:::::::|:::::::::|/ んハ     んハ } :::::::|:::::::ニニニ/ニニ=/ }____/    / ’il/ l::::/ ∨=/=ニニニニニニ二}ニニ{ニニ|
          |::::::l::: /|:::::::::| 乂り       乂り |::::::::|:::::::::二/ニニ=/  }    ,.  '′ /’,  ∨   Vニニニニニニニニニニ‘,=/ニニ}
          |::::::|::::{_|:::::::::|         ,       |::::::::|::::::::::ニニニニ/\  }二ア´    /_,ノ゙:, ′   〈ニニニニニニニニニニニニ{ニ=.∧
          |::::::|:::::::|:::::::::|             |::::::::|::::::::::二二/  ‘,}ー― ‐ ´    ハ{ O′ ∨ニニニニニニニニニニ‘,ニ∧
          |::::::|:::::::|:::::::::|\    `   ´   /:|::::::::|::::::::::|   . ´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ,.  / }       \=ニニニニニニニニニ‘,ニ∧
          |::::::|:::::::|:::::::::|::::::丶      /:::::::|::::::::|::::::::::| /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./----- ミ:.:.:.:`:..、       \=ニニニニニニニニ‘,ニ∧
          |::::::|:::::::|:::::::::|::::::::|  >─< |::::::::::|::::::::|:::::::::/:.:_:_:./:.:.:.:. /      ` 、:.:.:.\
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          |::::::l_,.|:::::::::| :/_,. -─-   /: : : | :::: /:.:.:V__..イ:.:.:.:.:.:.X 爪l}:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\ }:.:.:∧
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13 : ◆Ikxp7uG.BM :2013/01/27(日) 20:02:41.88 ID:YhdxjTcU0
.        / Y: ||/ :|::| :l     / : : : : : /| ト':.:.:.:.:|:.:.:.:.:.|:.:.:.イ ≠=ミヽ \:.:.、:.:./:.:.:.:.:.: ! /}:.:.:.
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.             |l  \ l/: :|  ./ : : : :///.:|..|:.:.:'⌒ ヽ:.:.:|:.:.:.:l' 乂ツ      仍心V:.:.:.:.:.:.| | |:.l:.:|
.       |     \  \、|  /: : :./// / .|:.:.ヽ   Y|:.:.:.:|         、 乂ツ }:.:.:.:.:.:.:| | |:ハ:.|
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.       /  / ̄ \〉   ̄〔 ̄ ̄〕¨´ r/⌒\   |.:.:.:.:.   l:l ---ミ  {   /    ':.:.:.:.:.レ:.:.:.:.:.:.| リ
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.     / __./   --、_ノ   ./   :|l    \{ /   |_ / /}/     /⌒ヽ ==≦: :ヾ:l:.:.:.: /:.:.:/|:.:. ′
    // /{   ─r'   /  . . :⌒ヽ. :´: : : : `. .| |./: : ′       ∧ /ヽ: : :/:.: イ〕iト.!:./
   /  .∧\  ト┘} /,.. :´ : : : : : /: : : : : : : : : : `: .: :∧       .ィ´ }: :ヽ   \": : : i:i: |ハ"
.   {   \\\ノ/|. , :' : : : : : : : : / : : : : : : : : : : : : : :: .:∧     '  /} : : \ ̄ ヽ : : i:i: |  \
   \' Y Yヽ   /: : : : :/ : : : :/} : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ\      /:i: : : : :V⌒ |: : i:i: |    /\
     '   !  l ',   ': : : : :/、: : : / {: : : : : : : : :\ : : : : : : : : :.  、  .イ: :j:ヽ: : : |   :|: : i:i: l f/   ヽ
    _」   |  {  i ,′: .:∨: : ヽ/ |: : : : : :|: : : : ヽ : : : : : :ハ≧==≦: : ∧: :\ |   :|: : i:i:ハ"      /、
.  ' {   |  j  { ,′ : : iト、: : /\ !:.!: : : : :.|ヽ、: : : : : : : : i: : : . : : : : :/  \: :∧ │: :!/ :}   ./  \
  |  l   l     V: /: : {`ヽY   `i::ト、: : : :.|イ \ : : : : : : |: : : ! ̄ ̄ /     ヾ: ∧ .j: :./  .从 イ     }
  l  {  '^  `  V. : :八: : :| ァ=ミヽl \: : | ァ=ミヽ: : /: : l: : 八
  { '′      {`ヽ、:_{ : :ヽ:.〃ん。ハ    \| ん。ハヾV: : .|:| : : ト、
  〉         ゝr  }: : : : i{ い::::j     い::::リ ハ. :八: : : ! \
  !   ´ ̄ / ノヽ. |: : : : |  ゞ゚-'   ,    ゞ-'′ jノ: ハ: : ',
  |      /     j : : : :ヽ '''        '''   {: : : : :}: : ハ \\ || /  __    /
  ',            厶ィ=、: :\    ,.ニ、       八 : : :ノ: : : :!\\   |  ,,...:'"::.::.::.::.::.三ニ-/  な  ヒ
   ',          .イ:::::}ヘ::::\: :)   {⌒}    .イ: j ): : : : : : j       ,..'::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.:l   .ろ  ッ
   \     --  j::::::|::::\::::\ト .  ゝノ   .イ::从: : : : :.ハ:.:/ _     /.::.::.::.::/.::,:イ::.i.::.::.::.::.l   う   ト
    {::{ヽ       /:::::::|::::::::::::::::::|ヽ `  ー  {´:::ノイ |ハ: : : :| l/ _.   /.::.::.:、:/l/ l::l ヽ.::.::.:l   と   ラ
    ヽヽハ     /.:::::::::::::::::}::::::::::!::::',\   /ハ:::ノ j: : : :ノiノ   _   ヽ.::.::./ヽ   、ヽ∠ 、::.!   し  .|
     Vハ乂   /.::::::::::::::::::ノ:::::::::::l::::::', >ーく/ }:`ヽ}.:/ ′   .      \l /liヾ   7lj ヽヾ!   て   に
     Vハ フ´.:::::::::::::::/::::::::::::::l::::::::',{ 〃ハ/:::i::::::\      /        lヽ ' ,  ヽ   '  !   い
                                     // || |   '     u __」  る
                                     /  || ヽ...  マ二ユ  ,,.ィ ̄ヽ ! !
                                               >r―_''"⊥-i  \
14 : ◆Ikxp7uG.BM :2013/01/27(日) 20:03:08.24 ID:YhdxjTcU0
                                             _,,.∠z、!/ヽ._,,..ノ}ー-...、 ̄ ̄ ̄
                                         ,,..-‐'' //      __//    〉、



対マギカ帝国の同盟関係を結んでいるマギカ大陸の西側に広がるキョーアニ大陸の諸勢力の集まりである。

※ ここでいう大陸とは「ユーラシア大陸」、「アメリカ大陸」のように海洋で独立した陸地ではなく、
「ヨーロッパ大陸」や「中国大陸」のような亜大陸、文明・政治で区切った地域の名称。



しかし絶対君主制のもと、王政を敷く『SOS王国』、

修正資本主義を取る『けいおん共和国』、

連邦政府よりも州ごとの独立性が非常に強い『氷菓連邦』、

ふたりの執政官が立つ多頭制の『極東厨二病魔術秘密昼寝合衆国の夏』、

帝国との緩衝地域にあるために、帝国に通じている有力者もいるという『日常共和国』・・・

総人口3億人。総兵力は三百万有余、騎士は10万名と言われているが、
いざ戦争となると指揮系統がメチャメチャだったり、戦争と直接関係のない国は戦いに消極的であったりと
足並みは揃わず、帝国にじりじりと侵食されていく有様である。

※ 銃火器の発達する以前、騎兵は歩兵10人分の働きをするものとし、
維持や調達に膨大な出仕がかかることもあり、軍事力のパラメーターを示す目安となっていた。


.
15 : ◆Ikxp7uG.BM :2013/01/27(日) 20:04:11.52 ID:YhdxjTcU0



ない夫「歴史上、早い段階で都市国家から領域国家に脱皮したキョーアニ大陸の国々は、
    マミ大帝が統一するまで小さな都市国家が割拠していたマギカ帝国と違い、
    組織力の強大さにおいて圧倒的で、マギカ大陸の小国とは比べ物にならなかった。」

やる夫「そーなのかお?」

ない夫「しかしマミ大帝によってマギカ大陸の国家が統一されると、長い歴史の間、
    小さな戦争が絶えず続いてきた帝国の軍制度や戦術、兵の練度のほうが優れている。
    しかも一つの国家として統一されているのは大きい。相手は所詮は寄せ集めの烏合の衆に過ぎん。」

やる夫「ああ、昔は向こうの方が凄かったけど、今はてんで弱いって話かお。」

ない夫「つまり、それはいつか逆になることもある。」

やる夫「な゛、な゛んだって!?」

ない夫「キョーアニ連合の国ひとつだけでも帝国のように軍の制度を刷新し、
    帝国の戦術やシステムを研究して、兵を十分に訓練さえすれば、
    帝国は国力の差でかなわん。常識的に考えて・・・。」

やる夫「じゃあ、やばいんじゃないかお!?」

ない夫「だから、いいんじゃないか?」

やる夫「!?」

ない夫「考えてみろ。お前は帝国に恩はない。
    今から中央に談判しても所領を取り戻すのは一苦労だ。
    だから、連合に寝返るという選択肢もある。
    その後で連合の軍指揮官としてこの地で新即出公国を建設するなり、将軍として出世することも可能だ。」

やる夫「そ、そんな・・・、簡単には行かないんじゃないかお!?」

ない夫「簡単じゃない。だがどっちも難しさでいえば同じぐらいだ。」


.
16 : ◆Ikxp7uG.BM :2013/01/27(日) 20:04:46.95 ID:YhdxjTcU0





   / ̄ ̄\
 /   _ノ  \
 |    ( ●)(●)                ____
. |   ⌒(__人__)            /      \
  |     ` ⌒´ノ           /─    ─  \
.  |        }  \      / (●) (●)    \     >>20
.  ヽ         }     \     |   (__人__)       |
   ヽ      ノ       \   \   ` ⌒´     _/     @ 連合に寝返る。
   /    く. \      \  ノ           \
   |     \  \    (⌒二                |     .A 帝国での立身を考える。
    |    |ヽ、二⌒)、      \          |  |




.
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/27(日) 20:07:23.39 ID:03Eyc6+m0
もはやらき☆すたは過去の遺物か

kskst
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/27(日) 20:14:50.76 ID:Luje3UoAO
ksk
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/27(日) 20:15:40.50 ID:Luje3UoAO
ksk
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/27(日) 20:15:45.32 ID:LT2n12xYo
21 : ◆Ikxp7uG.BM :2013/01/27(日) 20:18:08.98 ID:YhdxjTcU0



                    ,ィ二三、:`:ヽ
               /      ヽ:.|
         _,. .-.‐.―.-. . 、. /ヽ__   !/
         ̄ ` >.:'':":": : .::!:: : : : :`:`: :∧、
         /   ..:  /:::;!::: : : :i:. : : : {_ノ:丶
         . ' / u . . . /...,'|::::. : : ト、: : : : : :、: ヽ
        / ./: .::::::/: : ;.-:、,' !::::. : :.|‐-、: : : : ,ヾ: :',
      /:, '/: :.:::::::/: : ':/l::;' !:::i:: : :| |:|ヾ:、: : lj :i; : i
     /' /: .:::::::::i: : :./ |:l |j、: : | !|. ヾ: : : i: i: :.l
        i: :,!::::::::|: : /__」L__ |:! V: | _,jL__ヾ: : :|: i: :!
        !:/.!::::::::l: :.ハ下不「 l| V:|下フネトォ: :.|: :!:j
         !′i::::::イi: ハ トイ!    ヾ トイ/ ,':i (`ヾ!|
       ,-、_!:::j |:V:::l `"´  '   ``'".'::::i:j>.、\-、
      /(ノノ)二つ::ト、 ∪ T^ア   /::::::リ::/     !
       !  ´‐'/):l: :::l:|:::丶,.、 __ ,._イ:::;!:: :j::::{     |      あっれー?
     /   _,/´ !:|: :.:|:レ'" ノ   'ソ ヾi: : :i:::::::`Tァ  ,!
     /  /     i: ;!: :.l|  「 ̄`ヽ/  /: : /〉:::::::l/   !       わ、私は〜〜〜?
   〃 /      j:/ !: :.|\ |_,,._ / ,ィ: : /゙ \::/   /
    〈〈       /  l: :.|>'"´  ̄二ニ⊃: :./    /  〃
          r'′ /    _ノ'"//: /v'  彡 "



ぞッ、ぞして最後に『らき☆すた国』である。この5ヶ国がキョーアニ連合を形成している。

『らき☆すた国』もまた王政を敷いており、『SOS王国』の涼宮王家とは縁戚に当たる。
そのためなかば属国化しているものの、宗主国との関係は冷え切っている。

これは『SOS王国』の七代国王ハルヒ7世との間に領土問題が起こっているせいだ。
ハルヒ7世は涼宮王家の当主として母方の『らき☆すた国』の王位を主張している。

またハルヒ王に限らず、歴代のSOS王はもともと縁戚にあるために『らき☆すた国』を併合しようとしていた。

しかしそうなると連合でのパワーバランスが崩れるために諸国から介入を受けている。
そのことで合併からまぬがれているものの『らき☆すた国』にしてみれば
それを理由に各国に口出しされるのは不快だった。

また帝国からは最も遠い東端にあるため、軍事力は低い。


.
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/27(日) 20:25:56.86 ID:LT2n12xYo
あのー、フルメタはどうなったんですかね?
23 : ◆Ikxp7uG.BM :2013/01/27(日) 20:26:33.31 ID:YhdxjTcU0



>>20



やる夫「よし、連合に行こう。」

ない夫「・・・ここで俺が皇帝にその事を伝えたらどうする気だ?」

やる夫「もともと乞食若殿なんて呼ばれるやる夫にやらない夫を疑うなんてできないお。」

ない夫「よし。だが、連合も帝国からの離反者を軽々に信用はしない。
    最低でも何人かの諸侯と連判で恭順の意を示そう。」

やる夫「あてはあるのかお?」

ない夫「なけりゃこんな話は持ち出さん。
    まずはだな・・・」



      ____
    /:::::::::  u\
   /ノ└ \,三_ノ\   ,∩__
 /:::::⌒( ●)三(●)\ fつuu
 |::::::::::::::::⌒(__人__)⌒ | |   |
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   ヽ           i    丿
  /(⌒)        / ̄ ̄´
 / /       /
┌──────────────────┐
│やる夫は連合に寝返る決意をした!    │
└──────────────────┘

┌─────────────┐
│やる夫の計略が+3!!   ..│
└─────────────┘


.
24 : ◆Ikxp7uG.BM :2013/01/27(日) 20:29:29.87 ID:YhdxjTcU0


>>22
そんな古い国もあったようだ。だが、あくまで昔の話である。
ゲイツ様という王があまりに横暴なので滅んだのです。

とりあえず、どっちにつくかで全然展開が違ったので、今晩はここまで。
安価が入り次第、不定期に都合の良い時にちびちび進めていくつもりですのでよろしく・・・
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/27(日) 20:32:54.05 ID:03Eyc6+m0
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/27(日) 21:01:47.24 ID:LT2n12xYo
オロローン、テッサたんが出てこないなんて・・・

続編の噂もあるのでそれにきたいかなあ

乙でした
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/01/27(日) 21:26:48.07 ID:U9gHZkTb0
おつ、ゲイツ様好きだったけどなぁ、少なくとも俺とは無関係な間は。

あと大老知久とか言われると「覚悟のススメ!!」を思い出すんだが
28 : ◆Ikxp7uG.BM :2013/01/28(月) 00:27:08.45 ID:HPWMCiMV0
>>27
完全にそれが元ネタですね。
宰相とか丞相でも良かったのですが、帝国とか諸侯とかヨーロッパっぽいのに大老!ってやりたくて・・・
29 : ◆Ikxp7uG.BM :2013/01/28(月) 00:27:35.47 ID:HPWMCiMV0

〜暫定地図〜

二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二
二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二┏━━━━┓二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二
二二二二二二二二二二二二二二二┏━━━━━┛        ┗┓二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二
二二二二二二二二二二二二┏━━┛                      ┗━┓二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二
二二二二二二二二二二二二┃        《らき☆すた国》         ┗━┓二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二
二二二二二二二二二二二二┗┓              泉国                ┃二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二
二二二二二二二二二二二二二┗━┓                          ┏━┛二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二
二二二二二二二二二二二二二二二┃                          ┗┓二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二
二二二二二二二二二二二┏━━━┻━━━━┯━━━━┓        ┃二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二
二二二二二二二二二二二┃                │        ┗━━━┯┻━━━━━┓二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二
二二二二二二二二二┏━┛                │                │            ┗━┓二二二二二二┏━┓二二二二二二二二二二二二
二二二二二二二二二┃                  ┌┘    佐々木国    ├─┐  阪中国    ┣━━━┓二二┃  ┃二二二二二二二二二二二二
二二二二二二二二二┃      キョン国    .│                ┌┘  │            ┃      ┗━━┛  ┣━━━━━━━━┓二二二
二二二二二二二二二┃                ┌┴─┐          ┌┘    └────┳━┛    入須州      │                ┗┓二二
二二二二┏━━━━┻───┐  ┌──┘    └─────┘            ┏━┛                  ┌┘                  ┗┓二
二二二┏┛                └┬┘                                  ┏┻───────────┤                      ┗┓
二二二┃      古泉国        │                                    ┃                      ┌┘        伊原州          ┃
二二二┃                  ┌┴┐      《SOS王国》                 ┗┓      折木州      ┌┘                    ┏━━┛
二二二┗━━┳──────┘  └─┐                                ┃                ┌┴──────┐    ┏━┛二二二
二二二二二二┃                    │                              ┏┻───────┬┘              └──┫二二二二二
二二二二二二┃        朝倉国      │            涼宮国            ┃                └┐                    ┗┓二二二二
二二二┏━━┻──┐              └─┐                          ┃                  │                      ┃二二二二
二二二┃          └─┐              └─┐                ┏━━┛      福部州      │      《氷菓連邦》      ┃二二二二
二二二┃              └┬────────┼────┐      ┃                        └┐      千反田州      ┃二二二二
30 : ◆Ikxp7uG.BM :2013/01/28(月) 00:28:03.18 ID:HPWMCiMV0
二二二┃              └┬────────┼────┐      ┃                        └┐      千反田州      ┃二二二二
二二┏┻┐    長門国    │                │        └──┐┣────────┐        │                ┏━┛二二二二
二二┃  │          ┌─┘    朝比奈国    │  鶴屋国      ├┫                └─┳━━┻━━━━━┓    ┣─────┐
二┏┛  └────┬┘                ┌┬┘            ┏┻┛      十文字州      ┃                ┗┳━┛          │
┏┛              ├─────────┘│              ┃                        ┃        ┏━━━━┛              └
┃        森国    │                ┌─┘            ┏┛                        ┃        ┃       シャルロッテ伯領
┗┓            ┌┘    荒川国      ┣━━┓          ┣━━━━━━━━━┓      ┃        ┗━━━━━━┓
二┗┳━━━━━┷┓      ┏━━━━┛    ┠─────┨                  ┗━━┳┛      日常共和国    ┏┛        ┏━
二二┃            ┗━━━┛              ┃ コンピ研国 . ┃                        ┗┓  ┏━━━━━━━┳┛    ┏━━┛
二二┃                                    ┗┳━━━┳┛      《厨二合衆国》    ┏━┻━┛              │  ┌─┻┓
二┏┛                                      ┃      ┗━━┓    ┏━┳━━━━┛                    ┌┘  │    ┃
二┃         けいおん共和国           ┏┛            ┗━━┛  │                        └──┘    ┗┓
二┃                      ┏━━━━━┓┏┛                        └─┐                                        ┃
二┗━━┓              ┏┛    B    ┗╋┓     ワルプルギスの夜伯領   │                                        ┃
二二二二┃              ┃    ┌────┘┃                          ┌┘                                ┏┛
二二二二┗━━━┓      ┗┳─┘          ┗━━┓                    │                暁美侯領                ┗━━━
二二二二二二二二┗━━┓  ┃                    ┣──┬──┐    ┌─┘
二二二二二二二二二二二┗┓┃      美府伯領      ┃  ┌┘    └─┬┘
二二二二二二二二二二二二┗┫                ┏┳┛A│          └┐                                          ┌─
二二二二二二二二二二二二二┗┓    ┏┓  ┏━┛│  ┌┘            │                                        ┌┘
二二二二二二二二二二二二二┏┛┏━┛┣━┛@  ├─┘              └┐                                            │
二二二二二二二二二二二二二┗━┛二二│        │      八波伯領      │                                            │
二二二二二二二二二二二二二二二二二二└───┐│                    │    ┌──────┐    ┌──┐          ┌┘
二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二└┴┐            ┌──┴──┘二二二二二二└──┘二二└─────┤
二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二└──────┘二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二└───
二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二
31 : ◆Ikxp7uG.BM :2013/01/28(月) 00:29:42.03 ID:HPWMCiMV0
二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二
二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二┌──────┐二二┌──
二二二┌─────┐二二二二二二二二二二二二二二二二二┌┘            └┐┌┘
──┐│          └─┐二二 ウロブチ海 二二二二二二二│                └┘
    └┤              └──┐二二┌───┐二二二二二│
      │                    └─┐│      └─────┴┐
━━━┻┓                    ┌┴┘    キュウベイ伯領  .│
        ┃    志筑伯領        │                ┌┐  ┌┘
        ┗━┓        ┏━━━┷━━━━━━━┳┘└─┘
            ┗━┓    ┃                      ┃
                ┗━━┛                      ┃
                                          ┏━┛
            鹿目公領                      ┃              美樹公国
                  《皇帝直轄領》            ┃
━━━━┓      ┏━━━┓              ┏┛
暁美  ┏┛    ┏┛      ┗━━━━━━┯┛              ┌────┬───┐
侯領  ┣━━━┫┏━┓  巴大公領      ├────────┘        │二二二└┐
───┘      └┨  ┗━━━━━━┳┐│                        ┌┘二二二二└──
                ┗┓  《皇帝直轄領》┃└┘          教皇領        │二二二二二二二二
    早乙女伯領    ┣━━━━━━━┻┐                        ┌┘二 シンボー海 二
                  │                └─┐                  ┌┘二二二二二二二二二
                  │    上條伯領        │                  │二二二二二二二二二二
        ┌────┴─┐                └┬────────┘二二二二二二二二二二
────┘二二二二二二└─────────┘二二二二二二二二二二二二二二二二二二二
二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二

>>30がこっち側にくっつく。
32 : ◆Ikxp7uG.BM :2013/01/28(月) 22:48:37.97 ID:HPWMCiMV0



ない夫「まずは『奥村双子男爵領』かな。常識的に考えて・・・」

やる夫「フタゴダンシャクリョウ?」



                                     /丿  /    _>      -‐ ノ/__j   !         \    \
                                     /   / _ 二       <  /'´ '⌒V |   {     ヽ  い⌒ヽ
                                 .   ,        ̄厂-=ニ∠    /      乂{\  、       ' 乂__,
                                   /-‐ ¬ |   /  斗===ミ、ヽ      /x==ミ、 \    i   ン
    ┏━━━━━┓┏┛                        〉 |  ' //l:|   n ヾ     /   /n     》、⌒ヽ  | イ
  ┏┛    B    ┗╋┓                 .    /   l/ /´ / 八   じ          じ   /, \    ;  !
  ┃    ┌────┘┃                  ー=彳   /   /   _  -‐    {)   ー _ /   .ヘ   、  |
  ┗┳─┘          ┗━━┓            |  .イ  丿イ .::/:://::.          .:/::/::/:.   ム∧  丿\{
┓  ┃                    ┣──┬        八/ノ-爻くハ        __   -―――‐-  __       ;ン  !/    `
┗┓┃      美府伯領      ┃  ┌┘              〉、‘,      代 _,y   ̄ ̄  ¬_, 介    /  ィ{
二┗┫                ┏┳┛A│                  l∧込    V\丿 , ‐v‐、    く/ノ   ' イ W
二二┗┓    ┏┓  ┏━┛│  ┌┘                ' ノ/i〉.    V/_/ ̄ ̄ ̄ ̄\__У   人 {ノ
二二┏┛┏━┛┣━┛@  ├─┘                   ´/l⌒>    乂し、       ,、ノ/  .イ {∨__
二二┗━┛二二│        │                  / 二二/l| 八{>   丶 二二二二 ´ .、个 ト、{ /  \
二二二二二二二└───┐│              __//  __ ||「 、 )ハ   >   __  <{八ハ l ∨/⌒ヽ \
二二二二二二二二二二二└┴┐           弋 ―く  / __〕||j  \ }           {   リ //    \ \
二二二二二二二二二二二二二└───     ┌──────────────┐
                                 │帝国男爵              ..│
                                 │奥村燐(出典:青の祓魔師)     .│
                                 └──────────────┘
※ 地図の@



ない夫「奥村燐、奥村雪男の双子の男爵が治めている。」

やる夫「それってひとつの男爵領を兄弟が支配してるってことかお?
    どっちかが副領主で、どっちかが正式な男爵じゃなく?」

ない夫「ああ、ひとつの男爵領をふたりで統治してる。
    常識的に考えて、訳がわからんだろ。」


.
33 : ◆Ikxp7uG.BM :2013/01/28(月) 22:49:24.46 ID:HPWMCiMV0



ない夫「奥村兄弟はやる蔵伯の家臣・藤本獅郎神父の養子でな。
    一卵性の双生児で、二人共顔だけは瓜二つだが、性格は全然違う。
    兄貴はちゃらんぽらんの乱暴者で、弟が専ら内政を取り仕切っている。」

やる夫「・・・じゃあ、弟が領主ってことなんじゃないかお?」

ない夫「まあ、めんどくさい話をすっ飛ばせばそうなる。
    しかし、そんな簡単な話なら俺はお前に、こんな話はしない。」

やる夫「ワケありかお?」

ない夫「・・・ああ。
    もともと、奥村双子男爵領は大老知久侯が藤本神父に与えようとしていた地域だ。
    教会の影響力が強く、なんとかっていう熱心な信者が連合軍との戦いで戦死したとかで、
    『佐倉教会』では奥村領のファウストとかいう町は殉教の聖地と言われてる・・・。」

やる夫「聖地巡礼の奴らが来るのかお・・・(汗」

ない夫「しかし藤本神父は清廉な人柄だった。
    大老知久の懐柔を拒んでな。だからしばらくは俺のオヤジが所領にしていた。」

やる夫「な、何ッ!!」

ない夫「落ち着け。俺が伯爵家を継ぐ時にそれとなく催促されてな。
    俺が落ちぶれちゃ、お前を守れない。だから奥村領を皇帝に差し出した。
    知久が隠居してすぐに、まどか皇帝の名前で布告が出て、今の男爵領が成立した・・・。」



ない夫「その時、男爵になった燐は弟と領土を分かち合いたい、と申し出た。」

やる夫「なんで!?」

ない夫「よほど仲がいいんだろう。
    だが男爵領をさらに分けるなんてできない。そこで共同統治者ってことで弟も男爵に就いた。
    以来、そんな訳で奥村双子男爵領って呼ばれてる。」


.
34 : ◆Ikxp7uG.BM :2013/01/28(月) 22:51:15.82 ID:HPWMCiMV0



やる夫「そんな無茶苦茶が許されるのに、やる夫は乞食若殿かおっ!」

ない夫「青エクのご都合主義は今に始まった話じゃないだろ。常識的に考えて・・・」

やる夫「アオエクノゴツゴーシュギ?」

ない夫「ああ、気にするな。昔の詩人の言葉だな。」



                                h_______
                                   ハiti!i!i!i!i!ゝi!i!i!i!iti!
                                    /ゞ≠=''⌒⌒ヾ=b孑
                                 匕イ' | 匸匸公匸{  レ′
                             v、⊥-‐¬イィ仝`ヽ冖ヽ、____,、
                           ,. f戒オ^ハ^^^^^^^^^^^^^ハ^T7′
                           jミーェァ〆仝\LL____Lレ'ィ仝、ヽ、_ャ_,
                           li 〃`!宀宀宀宀宀宀宀宀宀宀十イ
                   _,、ftー‐‐‐f_    t|ハヽt廴山_Lゝ' ,二二.`ー、__山__!.い、__,、 ゞ;'
             ,_イr'冫T宀宀宀7   rjレクゝ〜〜〜¬'´幵幵幵!`iー〜〜〜i‐/,.、ゞネ,
           〆√ ̄;ゞミ;ゞ;ミゞミ;「ム__ _厶tiヽL山___山_|!_!_!_!_!_!_!_!_!!山___山_,L ,.ゞぃソゞ;
         _ ,,. ハゞ;ミ爻ゞ;ミ父爻;ゞゞレ' _/ミY^^i^^i^^i^^i^^i^^i^^i^^i^^i^^i^^i^ゞ;ミゞ;斗ゞミゞ
        ゞ父ゞ父ゞミ;ゞ;爻爻ゞミ;ゞミ沒辷二v_____山___山___山___山___山__山,.ゞ;ゞミゞ:杉ゞミ
       ゞ;ミ爻爻ゞ;ミゞ;ミゞ;ゞ沙ゞミ;ゞ父ゞL,人^^^^冖宀t、光ネ比疋光比疋ゞ;ミゞ;t,、、,ゞ爻ゞ
    _  '癶/乏ゞミ爻ゞ泛幺〃ゞ父ミ;ゞ沙〆__,,.ゝtゞゞゞゞゞ`ヽ込戈予疋光ゞミネ片┤ゞ父ゞミ
ュ.-‐フt辷弍仏孑¬冖丁〆_へ池幺孑宀'丁 山 |,ィぇ、   |苡ゞ;ミゞミゞ;ゞミミ父;ゞ;ミゞ;ゞ爻
孑フ∠.ヽィ,_,_,_,_,. -‐宀冖Tフ´_,_,._ -‐宀冖!  _,_,_レ'´^ヽゝ.  !ゞ;ミゞ;ゞ父ゞ;ミゞ;爻ゞ;ミミゞ;ゞミ
_片7丁__ ̄ _   nn|__| 丁^_山,、-t宀冖iT丁叩| |!|{{{{!{{{!|,.、,.xゞミゞ;ゞ;ミミ;ゞ父爻ゞ;爻ゞ;ミゞ;ゞ
ゞ;7___!‐┘   _,、_,ゝ;、_-丁 ̄ nn m L..!!     _二.L‐-,ィゞ爻ミヾ;ミミゞ父ゞ;父ゞ;ミミゞ;ゞ;;ミヾミ
ミゞf‐tヵュォたゞ爻;ミゞ;父ゞミゞミネ、ィ-ヵャヤセ乏光[子hゞ;ミ爻ゞ;爻父ゞ;ミゞ;爻ゞ;ミゞ;ゞヾミ;ゞミ;
爻沙予疋ゞ爻ゞ;ミ爻ゞ;ゞミ爻ミゞ;ミミ片予;ゞ;ミゞ;疋市[子ゞミ爻ゞ;ミゞ;爻ゞ;ミ父┌────────────┐
ゞミ;,ゞミゞ;ミゞ斗ゞ戈ゞ;豕;ミゞ;爻ゞ;父ゞミミ;ゞ戈ゞミ;ゞ杉ゞ父ゞミ爻ゞ;ヾ爻ゞ;ミ .│奥村双子男爵領       .│
爻ゞミゞ父ゞ;;ミゞ父ゞ爻ゞ;;彡ゞ;ミゞ爻;;ゞ爻父ゞミゞ爻ゞゞ;;ミミ;ゞ父ヾ;ゞ父  │領主の居館「田井中城」    │
                                            └────────────┘

※ ここはもともとは『けいおん共和国』の南部の中心的都市だった。



ない夫「・・・いいか、今日は男爵に挨拶するだけだ。
    いきなり謀反の話はするなよ。常識的に考えて・・・」

やる夫「わかってるおっ!」


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35 : ◆Ikxp7uG.BM :2013/01/28(月) 22:51:57.75 ID:HPWMCiMV0



男爵領は清潔に保たれていた。噂に名高い奥村弟の善政の賜物だろう。
やらない夫も決して政治をおろそかにしている訳ではないが、見事なものである。

兵は整えられ、街頭に浮浪者があふれるようなこともない。



                                         i__i
                                     ∧∧
     _                    _i_                 | U |  i           r、   ,
    八           rッ       _{__}_           i {   } i∧           ,r'::ヽ 八
  :: 〈 | | 〉 ::     i   /^V    / ,八 \    i        {二二二二二}       ヽ{:/::::〈 | | 〉 ::
.    VV       小 {:::N    ∧__{____}__∧  _{}_  i  A, l  ̄ ̄ ̄ ̄ |         ハ!::::::|VV
    ∨       _!___! }:::::::〉  { {_} i r, i __ } (ニニ)_/^ヘ{__},| 匸} 匸} |   ゥ、     |ノ!:::::{ ∨
 ,ィ  ,/||ヽ_      ! o V::::::{ 个/\,_{ゝ_{_}__| r|,n | |___/\|  ̄ ̄ ̄ ̄ | ,ッ ,ノ::}──,ノ,‐‐‐ヽ||───
. 爻,,/ニ||ニニ] ̄  ̄  ̄`〈二二〉´---::〈!!〉::}ニニo八___| | l__ ̄__,|: {ニ}   r:, ! く:}{:::〈!!〉___く,ニニニ}||_∧_
林林匸||匸} ! !⌒!⌒!  |::日::| 目 目 ||ニソ目_|_ノ〈〉:} | | ----|‐‐‐__  {:。〉,|oノ|〈:::| ||目目!}::::::::::::|||_{__}_
林林: }_{   ! ̄i ̄i ̄i:, :|::八::|  ̄目 ̄|l::::l 目 |::::| |::::〉j゚ j}。。 | 〃⌒}}〔:|〕 {ll::::} [_]||目目ノ::::::::::::|}{ 日}{日
森森, {___}  i_ _ ' ____[ ____ ]t───≠─r=≠==一‐- _。,i_{{'   ||=ニ≠=─-ァ──t ‐- 、_[__]{ ,}{日
 ̄ ̄i ̄| ̄l´  !__! ___!   |__ j  -‐  '"´  ̄ ̄´ ̄ : : : : : : :` ̄`>‐- j _ j ‐‐| \  \木
 ̄ ̄l ̄| ̄l  j      -‐: ´  : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 、 、ヽ: : : `ヽj  | \  \
__l  l -‐  ''" : : : : : : : : :' : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ ヽ \ : :  : :\|\|\  \
: : : : : : : : : :´ ,: ´ , :´ : : : : :' : : ,: : : : : : : : : : : /_/_/: : : :  : \|\|\
: : : : : : : : : : : : : : : : : :' : : : : : : : : : : : : : : :/_/_/ : : : : : : : :\|ヽ ヽ
: : : : : : : : : : : : : :' , : : : : : ' : , : : : : : : : : /_/_/ : : : : : : : : : :\|`|
: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ': : : : : :/_/_/: : : : : : : : : : : : : \



共和国領だった時よりも内情は安定し、人々は男爵を敬愛している。
しかし、新皇帝と中央の権力闘争が再び辺境を戦火に巻き込もうとしている。

やる夫「・・・戦争を止めることはできないのかお?」

ない夫「帝国から去る人間には無用な心配だ。」


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36 : ◆Ikxp7uG.BM :2013/01/28(月) 22:52:29.81 ID:HPWMCiMV0



奥村兄「ヴぁ、初めまして新即出伯っ!」

やる夫「初めまして男爵閣下。」

ない夫「奥村・・・燐、男爵ですな?」

男爵は名前を名乗っていなかった。

奥村兄「え゛・・・ああ、すいません、美府伯爵に先に挨拶するんだったッ!
    ん、あれ・・・あ、の・・・えっと・・・そーじゃなくて・・・」

ない夫「・・・ははは。男爵はお若い。
    新即出伯と同い年ぐらいでしたな?」

奥村兄「げぇ・・・、はい。ははは・・・。」

やる夫は奥村兄弟が男爵領を受け取ったが故に天下の浮浪児となった。
奥村兄もそれは理解しているらしく、しどろもどろしている。

ない夫「・・・お気になさいますな。新即出伯は時期に復領なされるでしょう。
    あの知久侯もご隠居なされた。新皇帝、まどか陛下のご寛恕あれば、
    伯にも領国が下賜されることでしょう。」

奥村兄「え゛ー・・・、あの、その・・・。」

やる夫「はい?」

奥村兄「ヴぁ、伯゛が戦場に出られる時は、俺は一番の家来として、
    伯の戦列に加わりますっ!!」

ない夫「ははは。お気が早い。」

やらない夫は毒虫に噛まれた気分になった。青ざめて藁めいて震えている。
この男は風聞では甚六だが、じつはそれは偽りか!?

奥村男爵はやる夫と自分の謀反を察知している。
口では恭順を示しているが、すでに裏では皇帝に密告されている可能性はある。

だが真意を探ることはできない。迂闊だった!
暗愚な近隣の小領主と侮ったか!!

ない夫「それは、連合との戦争に関してですかな?」


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37 : ◆Ikxp7uG.BM :2013/01/28(月) 22:52:59.55 ID:HPWMCiMV0



奥村兄「いえ、例え皇帝でもっ!!」

やる夫「ほ、本当かお!!」

やらない夫は何がなんだかわからなくなってきた。この男は馬鹿か!?
それとも天才か!?理解不能!!

奥村兄「もともと俺たち兄弟は新即出伯の家来だったわけでしょ!?
    じゃあ、伯が皇帝相手に戦うなら俺は伯の味方に着くしかないじゃないですか!!」

ない夫「・・・男爵、貴公は、それが帝国において大逆罪に類する言質と
    知っておられますかな?」



                               __
                   r 、         /    丶
                   } }        _,ノ ヽ、,__  `
                   、」 {  _      (○)(○.)   |
                 ,-く ヽ { / .〉     (_人_)  U |
               r´ ヽ ヽ、`〈, {      |}r┬‐|     |
               i r、 ヽ 〉イリ      '、`⌒ ´   , ト、
                    }   し√' /         | 、     ,イ//`ー‐‐‐‐‐-、_
               |  _,,-イ            `ォニニ二´/ィ : : : : : : : : : : : : : >、
             ∠ヽ__,,-''7          _/ /\  / : : : : : : : : : : : :/.: : ',
             ヽ : : : : : : : |       //|イ:::::/∨ : : l : : : : : : : :| :/ : : : : :',
              | : : : : : : :ヽ      r''/ : | ./`Y / : : : 」 : : : : : : : :./ : : : :.//ヽ
              | : : : : : : : :|     ノ/.: : | i::::::|/ : :/ : : : : : : : : :/ : : :// : : :|、
              | : : : : : : : :|    /|./: : : :|/:::::/ : : : : : : : : : : : : : | / : : : : : : : :|.ヽ
              | : : : : : : : :|   __/ /.: : : : :|::::/ : : : : : : : : : : : : : : : 、 : : : : : : : : : : : : ヽ
              | : : : : : : : :ヽ/ : : :| : : : : : |:/ : : : : : : : : : : : : : : : : :.\ : : : : : : : : : : :
              | : : : : : : : : :|\ : : :| : : : : : / : : : : : : : : : : : : : : : : : : / \ : : : : : : : : : :
              | : : : : : : : : :〉〉.: : : :| : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :.〈   \=二 : : : : :



奥村兄「いやー、だって約束を破ったのは知久なんでしょ?」

やる夫「その通りだお!!」

ない夫「・・・は?・・・ははは・・・」

やらない夫は、もう何も言えない。

奥村兄「っつーか、もともと皇帝だったのはマミって人でしょ?
    悪いのは今の皇帝ですよ!?」


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38 : ◆Ikxp7uG.BM :2013/01/28(月) 22:53:54.27 ID:HPWMCiMV0



ない夫「どッ、どころで・・・、弟の雪男男爵はど、どちらに?」

奥村兄「え゛あ?・・・あー、雪男だったら書斎ですよ。
    で、やる夫。さいしゅー的には皇帝と戦うわけでー
    まずどっから攻撃すればいいと思う!?」

やる夫「うん!今すぐに皇帝直轄領に向けて進軍だおーッ!
    邪魔するものはなぎ倒せ!立ちはだかるものは踏みしだけーッ!!」



               八
            i:: ::.
                、::::;
.    /.:: ̄:.`ヽ.  r┸t
    /:/.:::::::::::::::::.ヽ..|: . |
.   {::{::O::(:{ニミtュ:} |: . |
    v::、::::::::::.`vムノ |: . |
...   ヾ:ヽ、:::::::,ィvム..|: . |
      `  ̄´  }::} |: . |
          {二二二二}
           ヾ:ー':└┐
                ` ̄ ̄



二人を応接間に残し、やらない夫は弟の男爵のもとに足早に急いだ。

応接間の反対側、奥(領主の居館でプレイべートな部屋、区画)に書斎はあった。
そこに瓜二つだが、落ち着いた若い男爵が忙しく書類の山に、しかし焦る様子はなく静かに向き合っている。

奥村弟「兄が驚かせましたか?」

ない夫「・・・知っておいでか!?」

奥村弟「ええ。兄に新即出伯に恭順を申し出るように勧めたのは僕ですから。」

ない夫「・・・何故に?」

奥村弟「・・・養父が死んで、僕らは元服を待たずホムラポリスに召喚されました。」

ホムラポリス。隣接する暁美侯領の中心的都市であり、侯爵の居館がある。
また帝国西域最大の都市であり、皇帝を迎える宮殿が建設されている。

ない夫「皇帝・・・、いや大老知久に謁見したのですね?」

奥村弟「はい。」


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39 : ◆Ikxp7uG.BM :2013/01/28(月) 22:54:29.50 ID:HPWMCiMV0



奥村弟「僕は養父同様、拝領を断るべきだと思っていました。
    ・・・所領を奪われた新即出伯や旧家臣から憎まれることは間違いないですから。」

ない夫「・・・では、どうして?」

奥村弟「兄が・・・、兄さんがこの街を分けるって言い出したからですよ。」

ない夫「・・・・・・。」

奥村弟「馬鹿な兄だと思っていましたが、底抜けにお人好しだと内心、毒づきました。
    ですが兄の申し出を断れなかった僕にも責任はあります。
    所領を分割した上で諸侯に与える。大老知久の思惑は分かっていたのに。」

ない夫「それをやる夫に返すと?」

奥村弟「ええ。もっとも兄はそこまで考えていませんでしたが、
    時期が来れば僕は伯爵に所領を返すことまで考えていましたよ。
    ・・・もっとも連合に寝返るつもりだとは思いませんでしたが。」

ない夫「・・・皇帝は、すくなくとも知久は我々、辺境諸侯を使い捨ての道具としか思っていません。
    餌を与えて連合に噛み付かせ、用が済めば捨て去る。」

奥村弟「ですが、それはあなたも同じ。
    この地域の人々は貴族というだけの一家庭の問題のために戦争に巻き込まれるんです。
    そして、僕もあなたも、兄もやる夫伯も、用が済めば捨て去る。
    迷惑なのは街の人たちだ。」

ない夫「男爵は・・・、共和国の思想に共感しておられる?」

奥村弟「まさか。連合が帝国と何も変わらないことは見れば分かります。
    ただ僕も兄も養父に拾われただけですから、
    まかり間違っても人を権力闘争の消耗品として扱うわけには行かない。」

ない夫「・・・罪深いことです。」

奥村弟「・・・しかし、全ては皇帝の今後の動向次第。
    辺境諸侯を使い捨てるなら、僕は連合に転じるだけだと考えていました。
    何もなければ、今日のことはお互いのために忘れてください。」

連合としては裏切り者は重宝する。すくなくともはじめから使い潰すつもりの皇帝よりは。
あくまで雪男は兄弟が生き残る方法としてやる夫に着くだけであった。


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40 : ◆Ikxp7uG.BM :2013/01/28(月) 22:55:05.61 ID:HPWMCiMV0



二人は美府伯領に帰った。

ない夫「・・・確かに皇帝は辺境の諸侯を使い潰すつもりでしかない。
    最後にうまいところをかっさらう、やる蔵伯がそのいい例だ。」

やる夫「次は、どの諸侯に話を持ちかけるんだお?」

ない夫「奥村兄弟は時流を読んでいた。だが、他の諸侯が連合につく方が、
    少なくとも当面のうちはマシだと気づいているかどうか・・・。」

やる夫「その話を話して、説得すればいいじゃないかお?」

ない夫「馬鹿言え。騙されてると疑われる。」

奥村兄「ヴぇー、めんどくせー。
    皇帝の住んでるところまで真っ直ぐ攻撃すりゃいいンじゃねーの?」

ない夫「奥村男爵領、美府伯領、合わせて600も兵が出せるかだ。
    そんな数じゃ、帝都マミポリスに攻めのぼる前に暁美侯領すら・・・
    っつーか、なんでここに!?」

奥村兄「人質だよ。あそこは雪男がいりゃーいいんだし。
    それにあいつ、いいやつなんだけど説教臭いし・・・」

ない夫「・・・全く、雪男がお前を持て余すわけだろ・・・。」

やる夫「で、次はどこに話を持ちかけてみるかお!?」

奥村兄「八波(パーソク)伯領のできる夫なんかどーだ!?
    聞いたんだけど、すっげー兵隊持ってるって噂だぜ!!」

ない夫「八波伯はダメだ。やる蔵伯が亡くなってから所領を得た新即出伯旧家臣のひとりだが、
    伯はやる蔵伯が生きてた頃から仲は良くなかった。
    もとは同郷のよしみで家臣団に加わった。俊英として家臣団でも目立つ男だったらしい。」

やる夫「それがなんで?」

ない夫「・・・あくまで新即出伯を踏み台にして、自分の所領を皇帝からもらうためさ。
    だが知久はできる夫の野心や力量を知っていた。領主にはなれる器じゃないってな。」


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41 : ◆Ikxp7uG.BM :2013/01/28(月) 22:55:31.42 ID:HPWMCiMV0



ない夫「だからあくまで新即出伯の家臣団のひとりの騎士として留め置かれた。
    戦場で功をあげても平地では波乱を起こすタイプだ。」

内心、奥村兄はそのタイプだろうな、とやらない夫は毒づいた。

奥村兄「じゃー、ワルプル・・・なんとかは!?」

ない夫「・・・地図を見ろ。家格も所領の広さも俺たちとは雲泥の差だ。
    ワルプルギスの夜伯爵が連合に寝返るつもりなら、俺たちを家来として迎えるだろうな。
    今までそんな話もないところをみると、そんなつもりはないさ。」

ワルプルギスの夜伯爵は通称『舞台装置の魔女』と呼ばれた用兵巧者である。
重装の長槍騎兵を3千抱え、歩兵はその3倍は動員できると聞く。

当然、重税を敷き、反乱を企てるものには苛烈な制裁を加え続けてきた。
来る連合軍との戦争に向け、着々と用意を整え、国境に幾つも砦を築いている。

やる夫「よーするに、やる夫達より小さな領地の連中じゃないと、
    話を聞いてくれないって事かお?」

ない夫「当然だ。自慢じゃないが、俺は軍事には金を割いてない。
    マミ2世が禅譲するとは思ってなかったし、知久侯も30代だ。
    中央の有力者が若く、死んだり交代しない限り、戦争は当分ないと思ってた。」

奥村兄「じゃー、このちっこちのふたつしかねーじゃん!」

やる夫「ねーじゃん!!」

ない夫「・・・そうだな。問題は順番と、どうやって口説くかだ。」


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42 : ◆Ikxp7uG.BM :2013/01/28(月) 22:56:16.62 ID:HPWMCiMV0

二二二┏━━┻──┐              └─┐                          ┃                  │
二二二┃          └─┐              └─┐                ┏━━┛      福部州      │《氷菓連邦》
二二二┃              └┬────────┼────┐      ┃                        └┐  千反田州
二二┏┻┐    長門国    │                │        └──┐┣────────┐        │
二二┃  │          ┌─┘    朝比奈国    │  鶴屋国      ├┫                └─┳━━┻━━━━━
二┏┛  └────┬┘                ┌┬┘            ┏┻┛      十文字州      ┃
┏┛              ├─────────┘│              ┃                        ┃        ┏━━━
┃        森国    │                ┌─┘            ┏┛                        ┃        ┃
┗┓            ┌┘    荒川国      ┣━━┓          ┣━━━━━━━━━┓      ┃        ┗━━━
二┗┳━━━━━┷┓      ┏━━━━┛    ┠─────┨                  ┗━━┳┛  日常共和国
二二┃            ┗━━━┛              ┃ コンピ研国 . ┃                        ┗┓  ┏━━━━━━
二二┃                                    ┗┳━━━┳┛      《厨二合衆国》    ┏━┻━┛
二┏┛                                      ┃      ┗━━┓    ┏━┳━━━━┛
二┃         けいおん共和国           ┏┛            ┗━━┛  │
二┃                      ┏━━━━━┓┏┛                        └─┐
二┗━━┓              ┏┛    B    ┗╋┓     ワルプルギスの夜伯領   │
二二二二┃              ┃    ┌────┘┃                          ┌┘
二二二二┗━━━┓      ┗┳─┘          ┗━━┓                    │                暁美侯領
二二二二二二二二┗━━┓  ┃                    ┣──┬──┐    ┌─┘
二二二二二二二二二二二┗┓┃      美府伯領      ┃  ┌┘    └─┬┘
二二二二二二二二二二二二┗┫                ┏┳┛A│          └┐
二二二二二二二二二二二二二┗┓    ┏┓  ┏━┛│  ┌┘            │
二二二二二二二二二二二二二┏┛┏━┛┣━┛    ├─┘              └┐
二二二二二二二二二二二二二┗━┛二二│奥村領  │      八波伯領      │
二二二二二二二二二二二二二二二二二二└───┐│                    │    ┌──────┐    ┌──
二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二└┴┐            ┌──┴──┘二二二二二二└──┘二二
二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二└──────┘二二二二二二二二二二二二二二二二二二
二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二



  A、Bの領主を選んでください。
  >>45


.
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/28(月) 23:34:37.08 ID:JpZH65S90
誰でもいいのかな

ksk
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/28(月) 23:36:49.93 ID:QMmBxCzAO
ksk
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/28(月) 23:58:59.93 ID:lKEGMx+uo
2か3選べってことだよね?
なら3

違うなら安価下
46 : ◆Ikxp7uG.BM :2013/01/29(火) 00:00:55.58 ID:fR9JKZRX0
>>45
いや、特に決めてないので安価とった人がAとBの領主を決めちゃってください。
ややこしいって事なら、やめます。

てな訳で、安価下
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/29(火) 00:04:28.49 ID:OeRcNwB60
2.なのは
3.モナー
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/29(火) 00:20:17.57 ID:A2fPcuD30
[sage]
はよ
49 : ◆Ikxp7uG.BM :2013/01/29(火) 23:45:40.06 ID:fR9JKZRX0
>>47
・・・おk
しばし待たれよ
50 : ◆Ikxp7uG.BM :2013/01/29(火) 23:54:37.85 ID:fR9JKZRX0
しばしっていっても今日は無理アルよ
ちょっといつになるか分からん
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/29(火) 23:56:18.85 ID:nMfawuy10
舞ってる
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/30(水) 04:07:22.84 ID:OiHl8T/IO
すごく関係ないんだけど
ワキガ帝国に見えた…
53 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/01(金) 00:48:17.89 ID:GD/i2i7Z0



┌─────────┐
│一方その頃・・・    .│
└─────────┘
              ,_ ___ _
              |  |:::::|  |\
              |  |ニ|  |  |
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              |  |:::::|  |  |   (oXo)           /|    |              _ _
              |  |ニ|  |  |     ,||________| |[囗]|                | | \
              |  |:::::|  |  |  y仁|| : : : : : : : : : : : : : : | |    |─┬─┬─┬─┬┴┬┴─┬─┬rヘ
              |  |:::::|  |  | f| | || ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.]:|    | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| |
              |  |ニ| に二二二二二二二二二二二.| |    |二二二二二二二二二二二二二二二二コ
              |  |:::::|  |三}| | rュ tュ | l |=i=i=| l | |    |==| l |=i=i=i=i=| l |=i=i=i=| |
              |  |:::::|  |三}| |  □  | l |=i=i=| l | |    |==| l |=i=i=i=i=| l |=i=i=i=| |
              |  |ニ| に二二二二二二二二二二二.| |    |二二二二二二二二二二二二二二二二コ
              |  |:::::|  |三}| | rュ tュ | l |=i=i= ィ升爻彡癶 =| l |=i=i=i=i=| l |   ┌┐   | |
              |  |:::::|  |三}| |  □  | l |=i=i= ミ爻彡ミ爻彡ミ | l |=i=i=i=i=| l |   └┘   | |
              |  |ニ| に二二二二二二二二二 彡ミ爻彡ミ爻彡ニ二二二∠二ヽ二ヽ二ヽ二二二二コ
              ッメ从xj  || ̄| | ̄ ̄ ミ爻彡ヘ. ̄ ̄ 爻彡ミ爻彡ミ爻 | l |=i=i ||::::::::||::::::::::::::::||=i=i=| |
              ミ爻彡  ||  | |   巛爻彡ミ   ミ爻彡ミ爻彡ミ.=| l |=i=i ||::::::::||::::::::::::::::||=i=i=| |
              ーVV「 ̄下vtrvtrvtrv゙`}i:i:i{´rvtrvtrミ爻彡ミ爻彡tzvtrvtrvtrk||::::::::||::::::::::::::::||rvtrvtrvtr
               }i:iil匕L上=====ッ仁工工工工工工工工工工リ───:||::::::::||::::::::::::::::||────
               ̄ ̄∠三三三三三三ア  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                ∠三三三三三三ミア     ==     ==     ==     ==     =
              ∠三三三三三三ミア
                                                          ┌──────────┐
                                                          │けいおん共和国     .│
                                                          │首都ケイオスシティ   │
                                                          └──────────┘


.
54 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/01(金) 00:49:03.71 ID:GD/i2i7Z0



ハルヒ「ちょっと、連邦からは出兵できないなんて、どーいう意味よッ!?」

キョン「落ち着け、ハルヒ。
    ・・・で、俺も説明をぜひ聞きたいわけなんだが?」



      ´/: : : :/:/: : :/ : : : : : : : : : : : : : : : : } :|: : : : : : : :゚。: : : : :ミ=-
        ノ: : : /:/: : :/: : : : : :/: : /: .: : : : : : :′:|: : : : : : : : :゚。: : : :.i
    -=彡r : /:/ : ィ′: : : :./: : / .:.:.: : : : : / : : |:.|: |:. : : : : :.:゚。: : : }、
      /  }:..///: : : : : : ′ /:∧{:.:.: : :../: : :..:|:.|: |.:. : : : : : :.゚:. :.r==-
     -==彡.:.:.:./: : : : : : : :.:./:/ }:.:.:.:.:.:/ : : : : |小:ぃ:. : }: : : : :}: ト--
     __,ノ/.:.:.:.:{: : : : : : :.:.:./:メ、〃リ∨:.:. : : : : / j| い,:.:. }: : : :|:}:ノ
.       /}:.:/\.:. :{: : : .:.:/{/,_/_≧ュ,V.: : : :.:.:{.斗匕:}_,}:.: :}: :|: {
        }八  }ヾ:.:.:. :.:.:{   乂沙¨` }/:..:.:.:.:.:{イ沙゙ ゝ}:.:.:/:./ハ}
         ヽ  }\:.:.:.ハ  `¨¨″ノ }:ノ乂トヘ ¨¨´ /}:.:.:/{:.|
        r‐/ \___入:{        /         / 彡'
       -=ニ′∨ リヾい          {      /、         選挙が近いからだ。
  -=ニ      ∨   ‘. 、           ′     /  =-
´             ∨   ‘. \    ,..,___,.、    ィ     ニ=-
           :,    ‘.  \         ...::/  |         ニ=-
              ′   ‘.    `   ..,,__ イ::::/  {             ニ=- 、
            }      \     /  }::.′  :,           |     ヽ
 │         |      \    {  / /\ ハ     ┌─────────────┐
 │         |    /:::::\ヽ   //::::::::::::\ハ     │氷菓連邦陸軍総裁       .│
                                     │折木奉太郎(出典:氷菓)     .│
                                     └─────────────┘
※ 陸軍総裁
連邦軍官僚の最高位。



キョン「すまん。折木さん、もう一度頼む。」

折木「大統領選挙が近いからだ。」

キョン「そんな内輪な事情が通用すると思ってるのか!?」

折木「悪いが、連邦は民主共和政体だからな。
   選挙を前に出兵なんて、もし負けでもしたら政権運営に支障をきたす。」

ハルヒ「あんたたち、バカじゃないの!!」


.
55 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/01(金) 00:49:45.08 ID:GD/i2i7Z0



             - ─‐
         . ´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:`:..、
.      /:.:./:.:/ 二二二 、:.:.:.:\
.      ,:':.:.://:.:/:.:.:{!:.:.:.:.:.:.:.:.:. ヽ:.:!:.::゚,
     ///Z:.:.:.:.X/\:.:.:.:.:.:.ト:.:.:ハ| }:.:.
    ':.:V廴j:.:.:.' l:|\ \:.:斗匕:.:|ノ、:.:.!          帝国は悪!
    i:.:.:.| ! l:|:.:.:{ィf心    .ィ心Y:.l  {:.:|
    |:.:.:.l_l_(.|:.:.:|弋zリ    , 弋リ |:.|:Y:.:|         悪は倒す!!
    |:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:|     ‐v   ':.:|:.:.:|:.:|
    |:.:.:i:.:.:从:.込、  {_.ノ  .イ:.:从:.|:.:l           .それだけじゃない!?
    |:.:.:|:.:.l:.:.:ヾ:.l:.:〕ト     イ:.:.!/:.:.:.:.!:リ
    Y:ト:.:ト:.:.:.:|/: :ノ   ̄ト、:.:.:':./:.:.ノ/         殺すわよ!?
    ヾ x≦\{: : ヽー  __≧:〕iド.
     /: :`ヾiト: : : : :\´ --- |: :i:i:ト.
.     ′⌒ヽ: ヾiト : : : : ∨ ̄ ̄|: :i:i:|
    {       \:ヾiト: : : :゚,   |: :i:i:|ヽ ゚,
    ∨       \:ヾiト: :∧  .!: i:iリ Y
    }/     |   ヽ: ヾiト:ヘ m|: i:/   } 、     .┌────────────────────┐
    ′   U     \: ヾハ. !:イ   ′ \  │SOS王国七代国王                 ..│
   /     :|、      \: :Y{′ /       .│涼宮ハルヒ7世(出典:涼宮ハルヒシリーズ)    │
                            └────────────────────┘


折木「別に俺を殺しても、連邦政府は眉ひとつ動かさないと思うぜ。」

キョン「肝心の大統領は?千反田さんはどーした?」

折木「だから、選挙だ。」

ハルヒ「じゃあ、けいおんはッ!?」

田井中「うちも今は・・・」

ハルヒ「何、けいおんも選挙ッ!?」


.
56 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/01(金) 00:50:20.31 ID:GD/i2i7Z0



田井中「そりゃー、よその国には言えない事情があるっていうか・・・。
    えへへへ、あるじゃん突然に、そーゆーの!」

ハルヒ「あのね、それが今回の議題でしょ!?
    帝国の皇帝が新しくなったし、外交的にも軍事的にもリアクションが欲しいのよ!!」



                  -―――‐-
               :´:/ニニニニニニニ ヘ `丶
                  ´/: : :|: ヽ\ : : //ハ : : \
.              /:/: : : :|"´ ̄ `´  ̄`゙`|: :i: : : ヽ
            i│: : i: i         |: :i: : : iハ
            |│: : i/ \    / i: :i: : : |: |
             ' :|: : :.|.x=ミ     x=ミ∨: : : |: |
            ′|: : :〃んハ    んハ }} i: : |八
              /: 八|: i:i 弋:ソ     V:ソ i: i: : |):_:\
          厶: : : |: i:|     .     ′: :/ :\`
           / : : |: 小          /イ: : : / ̄         .ねーねー・・・
.              ̄Y: : 丶、   (:::)   ィ : :/、{
              八 : : : |>/こ\<|/: :/_           今年はうちが議長国なんだし、
         , -‐=.::.::.:∨\|/ ´,,二)人 |:/.::.::.: =‐-、
          /.::.::.::.::.::.::.::|.:/  /しヘ  \::.::|.::.::./::.:.::}         少しは気を利かせてくれたまえよ。
        {.::.::\.::.::.::rく   ノ ィ介ヘ、  ∨::.::/::.::.:: |
          |::.::.::.::.::.:: ∧ \イ|〈〈/ハ〉〉>'"´]∨::.::.::.: |
          〈.::.::.-=::∨::.::\/::| Y W/{ /::.::.∨=-::'::〉
        /::.::.::.:/::.::.::.::.:丶〉 | | | |{:ー'´::.::.::.::.:\::.::.:{       ____
         ,′::./:.::.::.::.:: o::./|  |_| |_| ∨o::.::.::.::.::.::.ヽ:ハ      |   、、, |
          i::.:〃 ::.::.::.::.:: o/::.|   八  ∨o::.::.::.::.::.::.::.::.:i.       l|  三王 |
          |::.::.::.::.::.::.::.//::.\|   O   ト、::.::.::.::.::.::.::.:}::.|       l:|  □我│
          |::.::.::.::.::.::.::.::./ :.::.::.:|  /  〉 |/{\::.::.::.::.::.::.: 〉       !:|   ,____ |
          ∨ .::.::.::.::.::./::.::.::.::.:|       |:人::.::.::.::.::.::.::./       l::|   |ニニ |
         {::.::.::.::.::/ ::.::.::.::.::|       |::.::.:\::.::.::.:/\     |::| ''T''弋^|
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`ー‐‐' ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|| ̄ ̄ ̄ ̄ `ー ' ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ|_____| ̄
┌─────────────────┐
│けいおん共和国社会主義党総書記   .│
│田井中律(出典:けいおん)          │
└─────────────────┘



田井中「それに、どうしてもっていうならSOS王国だけでやれば?」

キョン「それは連合の相互扶助の条約に反するぞ。
    第一今、けいおん共和国が連合から脱退したら
    帝国にあっという間に滅ぼされるだけだぞ。」


.
57 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/01(金) 00:51:03.92 ID:GD/i2i7Z0



田井中「負けたのはウチの国じゃないしっ!」

折木「よその国に助けてもらって、それはないだろう・・・。」

ハルヒ「そもそも、あんたの国!
    弱者救済とか、福祉だかなんだか知らないけど、
    働かない奴の面倒なんか見なきゃいいのよ!!」



               \\ || /  __    /
               \\   |  ,,...:'"::.::.::.::.::.三ニ-/
                     ,..'::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.:l
               _     /.::.::.::.::/.::,:イ::.i.::.::.::.::.l
               _.   /.::.::.:、:/l/ l::l ヽ.::.::.:l
               _   ヽ.::.::./ヽ   、ヽ∠ 、::.!
               .      \l /liヾ   7lj ヽヾ!      それは内政干渉だが、
               /        lヽ ' ,  ヽ   '  !
               // || |   '     u __」     .大丈夫か?
               /  || ヽ...  マ二ユ  ,,.ィ ̄ヽ
                         >r―_''"⊥-i  \
                       _,,.∠z、!/ヽ._,,..ノ}ー-...、 ̄ ̄ ̄ ┌─────────┐
                   ,,..-‐'' //      __//    〉、   .   │日常共和国外相    │
                                             │小木           .│
                                             └─────────┘

ハルヒ「大丈夫だ。問題ない。(`・ω・´)」

小木「出兵反対なぞ、冗談ではない。
   我が国を見捨てるというのですか?」

田井中「いやー、悪いとは思ってるけどさー。
    せっかく、議長国なんだし。うちの意見を通しちゃってもいいかなーなんつって?」

小木「重ねてお願いする。」

キョン「ああ、うちからも頼む。
    何より、新しい皇帝は若い。隙があるとすれば、今しかない。」

折木「どちらにせよ、連邦政府の意見はノーだ。
   この場の議論で、俺の立場は変えられない。」


.
58 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/01(金) 00:51:42.78 ID:GD/i2i7Z0



    ∨ニニニニニニ二/  イ  /_,ノ   /{    }  {     ゝ'.   ,
      \ニニニニニニニ{ / {  ′ フ /イ /ノ\ト、}ヽ: ト } \'.  ′
        }ニニニニニ二{ .′乂,′ {八{ ´        リ リ\〉` :, ,
       vニニニニニニ`} { ゝ  :/    \     /   v :  i ′
         ∨ニニニニニニ} ‘, |   .|    -、      ,.    {:..: |  i
        ∨ニニニニニ; : ゚,.:|: : . |__,ィ芯ヽ     ィ芯_,__{: : :.|  |
.          ∨ニニニニム : : |..: :.ー〈 ん爪      ん爪 }ー}: : :|  |
           ∨ニニニニ=ヘ ∧:..:.:{ 弋rソ     弋rソ   ′: :{  |
          ∨ニニニニ=入 \ハ  ¨     ,   ¨   jィ/イj:. ト
              ∨ニニニニニ/>‐、`             ,イ  |:j:. |ぃ               マビノギオン
           ヾ=ニニニ/ニニニ=\      〈___)     ノ   |ノ  | }i    我が国の秘蔵する『闇聖典』、
            ∨ニ/ニニニニニ/ム         ィr=、    } :  | }i
                ∨/ニニニニニ/二}、  ` ー<  /=ニ\ /: : ,: j{     .その第13項第4節12行から23行によると
              ∨=ニニ/=ニ/ ‘ ,  /   /=ニ/ ̄⌒ー― 、
               〉=ニニ}=二/j ハ }'   /=ニニ/=ニニニニニニニ∧   この年、戦争は凶事と記されているのデス!
                /ニニニ}二/ィフ:./:.:ハ /=ニニニ/ニニ/ニニニニニニニ∧
                 /ニニ「 ̄l/ /:./}:.:}:.:}/=ニニニ/ニニ/ニニニニニニニニニ}┐
             /=ニニ|ニニ{{ //..}:.:}:.:}=ニニニ/ニニ ′ニニニニニニニニニニニニ=-
┌────────────────────┐
│極東厨二病魔術昼寝合衆国の夏全権使節    │
│凸守早苗(出典:中二病でも恋がしたい)      .│
└────────────────────┘



小木「戦争は常に凶事だ。」

キョン「設定の話はいい。」

折木「設定の話だったのか?」

ハルヒ「第一、闇聖典でマビノギオンだなんて安直じゃない?」

田井中「えー、もう出兵なんかやめようよー!」


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59 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/01(金) 00:52:23.83 ID:GD/i2i7Z0



                   /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
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           ,'::::::/::::!:::/,イ::/ .!/ .|::::/ |:::::ハ:::::!::::::!::::::::::i
            !::::::l::::::レ',! ー-、    !/  !::/ !::ハ:,イ:::::::::::|
             !::::_」:::::::::! ..,,_`ヽ、_,.   ,リ  ´ _,..,_ !::::::::ハj
          !/f r.|::::::::!  弋エノ`    `'ィニ二_ /:::::::::!
               k.ヤ!:::::::!           ゞzソ,. /::::∧::|
           |∧`Y::リ           i      //|/  ヾ
              !Tヾ  u.     j       //ノ
             ヤ. ヽ.    , ‐-、,__    ,.イ:/     つーか、議長国の田井中総書記はともかく、
              r<´|.  \  弋,__,/  / |/
             !  `丶、.  \  ー   /          なんでウチも国家元首が来てんだよ・・・。
           _/     `'-、. `'ー-r<´
       , -'" `ヽ、      `ヽ、 f`, \
     , -'´    ヽ `ヽ、      >く_Lr'´`ト、          ┌─────────────────┐
   /        ヽ  \  /ヽO〉 |`r、.| `丶、      │SOS王国キョン国大守          ....│
  /           \  \/\r‐=<. !`    `ヽ,    .│キョン(出典:涼宮ハルヒシリーズ)   ....│
  /    _ -−‐     ヽ    ヾ   ! ヽ      i   └─────────────────┘
 /   /            !     `トー〈   !    /  |

忌々しいが、これが連合の実態だ。

《氷菓連邦》の連邦政府は惰弱で、政治的な決定権はほとんどない。

連邦の州は州ごとに独自の法律や制度を持っている。
もとを正せば連邦はキョーアニ大陸のSOS王国などのほかの国と戦うために小さな国がさらに集まったものだ。

いうなれば連合の中の小さな連合といってもいい。

ウチは、《SOS王国》は王室の絶対王制でこれまで独裁が進められてきたが、
財政が歴代の国王の過大な要求についてこられないところまで来ている。

おまけにとなりの《らき☆すた国》との領土継承問題。今回はそこに触れられないように、
向こうさんの国は大使を送らないなんてことになってるし、かなりやばい。

《けいおん共和国》と《日常共和国》は帝国に国土の半分以上を持って行かれちまってる。
最悪、明日にでも降伏宣言して完全に帝国領に編入されるんじゃないか?

《厨二病合衆国》に至っちゃ、同じ言語を使ってるのに、何を言ってるのか全くわからん。


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60 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/01(金) 00:53:08.93 ID:GD/i2i7Z0





                「 ̄ ̄ ̄ ̄|   | ̄ ̄ ̄ ̄|   | ̄ ̄ ̄ ̄|
       _        |     |   |        |   |        |           _
     //|   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\     |\\
    ∠//l   /                                  \     |   ヽヽ
__| l/ | |__,/                                       \_,|    | |__
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: : : : | |: : /´[王王三三三三三「 ̄ ̄ ̄ ̄l三三三三「 ̄ ̄ ̄ ̄|三三三三三王王l 、  | | : : : :
: : : : | |/    | lil|l|/ イ: : : : : :|     |: : : : : : :|     | : : :  |\|il| lil|    \| | : : : :
: : : : | |二二二|lil |i|/l | : : : : : |     |: : : : : : :|     | : : :  | l :|li|li ||二二二| | : : : :



*「総書記、例の方が・・・」

田井中「おーう、ナイスタイミング!
    とっ、通してくれ給え。(^^;」

キョン「なんだ?」

折木「お茶の時間か?」

ハルヒ「あ、私、オレンジジュース!」

            ハグェーダッガー ・ パス
凸守「私は”沸き立つ姦譎なる冥王の膿汁”がいいデス!」

キョン「・・・たぶんコーラだ。」

折木「ああ、”柑橘(かんきつ=姦譎)”なる、ってことね。」



※ ハグェーダッガー
イロコイ人の神話に登場する冥府の王。この世のあらゆる悪性、怪物を生み出した創造主でもある。
地の底に住み、罪人、兵士、後悔を残した人の死体が腐敗し、沸き立つ地獄を支配している。
地上に怪物や災いをもたらすと考えられている。双子の兄弟、善の創造神ハグェーディユと敵対する。


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61 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/01(金) 00:54:09.48 ID:GD/i2i7Z0



田井中「いっ、いやー、そーじゃなくて・・・。
     とりあえず、入ってもらっちゃって!」



.            /         ハ       ヽ   ヽ ヽ    ヽ    ',
            ′ /  / /  '.       '.  '  '     ',   ',
         i //  / /_ -‐-       i   } ! }    '   :i
.           レ’′ / /´   \    | ⌒ト.、! |   ', ! l
.         /  {   ' /    - 、 \   !\ 」  l` j  } ' ! リ
        /   '.  V x≦卞、    \ {  ンzミ j∨  ハ '.乂
            /八 {小::::::::ハ      ` ハ::::::ム '. /  /ヽゝヘ
      {   / / rト。 V^ ソj_         {r 、::;: リ j/  ∧   ',
.      '. , 〈 (| ` " ̄     ,       ` - " 〃} / ':.    }
.       ヽ{   ` ‐!、 ハ///           ///∨ //   i  /
          \   >      ` ー        -イ    ノ /     失礼いたしますわ。
          )       >‐v‐ 〜- っ_  -‐<     //
.         -=彡ソ    「ミ=/ r―<´上ミ、        ( {
.          _r'___   _rj  / '´, --、 ヽ ̄〔           \
       /     ̄{:::::{ ≧{   ⌒ヽ ヽj _ノ` x‐r-  _    ヽ
       ,′     r '": : : : '.  「ヽ ! j´: : ミ/::/     ヽ   ;
        /      '.: : : -=ヘ    し`i=-: : : : : >    ハ  /
.       ′   'ミx \: : : : : i    八: : : : : /     /  ∨
┌────────────────────┐
│マギカ帝国志筑伯爵                ..│
│志筑仁美(出典:魔法少女まどか★マギカ)  ....│
└────────────────────┘



仁美「皇帝陛下の代理として参りました。
   志筑仁美と申します。」

ハルヒ「!!」

折木「親善大使・・・、というわけじゃなさそうだな。」


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62 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/01(金) 00:54:59.86 ID:GD/i2i7Z0



小木「この場を借りて、宣戦を布告するということか。」

仁美「いいえ。わたくしが今日、一同に集う皆様に、
   伺うため参上したのは和平交渉を行うためですわ。」

小木「和平だと。」

キョン「的を得ない話だな。」

帝国と連合の歴史は、マミ大帝がマギカ大陸を統一した頃に遡る。30年ほど前である。
それまでは連合に加盟する6ヵ国は互いに激しく争っていた。

とくに激しく争ったのは、何を隠そう《氷菓連邦》と《SOS王国》である。

それが《マギカ帝国》の急速な勃興により、停戦、共闘を目的とした軍事同盟の締結に繋がり、
二強国に続く形で周辺の国々をも巻き込んで成立した。

当初、この戦争は長く続かないものと誰もが思っていた。
二強国を合わせた兵力は圧倒的であり、出来たばかりの帝国が勝つとは誰も思っていなかった。

そのため、今となっては連合にはひとつの不安があった。

仁美「無意味な争いなど、この際終わりにしましょう。
   皇帝陛下は大陸全土の恒久的な平和と繁栄をお望みですわ。
   これを拒否なさる理由が、同じ大陸に住む皆様にお在りになって?」

帝国との外交交渉である。


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63 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/01(金) 00:55:51.62 ID:GD/i2i7Z0



戦争は外交の延長線上である。

交渉の席に相手をつかせるには、武力を振るうしかない。
話し合いで解決しない相手をおとなしくさせるための、もっとも非効率なやり方である。

第2次世界大戦、日本が連合軍に降伏しなかったのは、この交渉の場にたどり着けなかったことにある。
通常、戦争は、戦場の戦闘と外交による解決を同時に探すものだ。

《キョーアニ連合》が《マギカ帝国》を、この交渉の場に立たせなかったのは、
それが即、《氷菓連邦》と《SOS王国》の再戦に繋がるためである。

純粋に国力の大きさから見て、帝国は王国、連邦よりはるかに小さい。
連邦も王国も、どちらかが帝国戦争で疲弊し、自らの影響力の拡大を望んでいる。

そのためには帝国は連合の敵であり続けてもらわなければならない。

例えるなら、スネ夫にとってジャイアンの暴力はのび太だけに振るわれることが望ましい。
ジャイアンにとってもスネ夫は自分の側に立って居続けてもらうことが好ましい。

両者の恐れていることは、手を結ぶ相手がお互いに入れ替わることなのだ。

帝国と連邦、あるいは帝国と王国、このようなはるかに巨大な敵対的勢力の出現は
連邦、王国にとって容認できない事態!


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64 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/01(金) 00:57:11.37 ID:GD/i2i7Z0



仁美「・・・・・・お答えは?」

田井中「この辺で皆、止めとかない?
     なんといっても平和が一番!」

小木「奪われたわが国の領土は、どうなるのですか?」

田井中「全部返してくれるって、ね?」

仁美「はい。」

ハルヒ「ちょ、ちょっと・・・!」

折木「まあ、待て。話はそれで終わりじゃないだろう?」

仁美「皇帝陛下は、この戦争で獲得した外地を全て放棄いたします。
   そのうえで、この大陸におけるすべての国が、ひとつの同盟を結ぶことで、
   人心を慰めることをお望みです。」

ハルヒ「・・・作戦会議!」

キョン「・・・悪い。席を外す。」

仁美「・・・・・・。」



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          }八::::: ::::|/:: : :|::レレ′━━ィ: :.ルリ ━‐}::::|人{   。O(・・・逃げ遅れた。)
            \::::〈∨{リ''|      ノ/    ノイ/
             )ト、\___             〉   |
               乂::{ 八            ′ /
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65 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/01(金) 00:57:50.92 ID:GD/i2i7Z0



ハルヒ「・・・どー思う?」

キョン「三通りの答えがある。」

ハルヒ「・・・ひとつは、いきなり和平交渉を進めなきゃいけない理由が、
    向こうに起こってるってことよね?」

キョン「・・・珍しく冴えてるな。」

ハルヒ「余計なこといってんじゃないわよっ!
    あとのふたつは?」

キョン「氷菓連邦と帝国は水面下で既に同盟、ないし共闘関係を築きつつある。
    連合が無効になったあとで、な。」

これは王国より連邦の方が距離的に近く、可能性としては強である。
何より、長年の戦争で今の連邦の国力はSOS王国よりも弱くなっているのでは、という不安があった。

絶対君主制のSOS王国やマギカ帝国であれば、民衆がどれほど不安になっても問題はない。
だが共和政体の民衆は、奴隷であり支配者でもある、といういびつな構造を孕んでいる。

ハルヒ「・・・もうひとつ。」

キョン「皇帝は噂通り、おっとりした性格だということだ。」

ハルヒ「いくら皇帝でも、実権は例の父親と老中衆が握ってるんでしょ?」

老中衆は皇帝の政治顧問団であり、大老知久はかつてその筆頭を務めた。
今回のことといい、皇帝が自分で考えたとは考えにくく、後ろに付いている大人の口出しの公算は高い。

キョン「じゃあ、この場合、帝国首脳部と言い直してもいい。
    これまではマミ大帝のワンマン体制で、かなり強引な戦略だったのが、
    大きな危険を冒して領土を広げるより、今の体制を安定させることに方針がシフトした。」

内心、キョンはできればウチの王様もこっちの方針にシフトして欲しいよな、と呟いた。


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66 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/01(金) 00:58:35.66 ID:GD/i2i7Z0



仁美「・・・けいおん、日常の両国は我々の提案に応じてもらえますわね?」

小木「魅力的な提案ですが、やはり拒否します。」

仁美「なぜでしょう。わたくしには分かりかねます。」

小木「とぼけないでいただきたいっ!
   帝国は連合の瓦解を望んでいるだけでしょう!?」

仁美「・・・田井中さんも同じ考えでしょうか?」

田井中「そりゃ、ウチとしては嬉しいんだけど。
    ここで誰かが割って出るなんてことになったら・・・」

仁美「SOSと氷菓を敵に回すようなことはできませんか。
   王国と連邦は平和よりも戦争を望む理由がお在りでしょうか?」

折木「なあ、聞くんだが。
   例えば平和になったあと、けいおんと日常が戦争を始めたら、帝国はどうする?
   帝国から見ればどちらも同盟国で、どちらの味方もできないよな?」

仁美「それは連邦が、弱い立場の小国を攻撃する、という意味で捉えても宜しいでしょうか?」

折木「帝国の判断基準に、国力の差で外交の出方が変わるというならな。」

仁美「相手によって態度が変わってはいけませんか。
   わたくし、これは常識の範囲内だと思いますが?」

折木「皇帝の常識はどうかな?」

仁美「わたくしをここに遣わされた以上、恐れ多くはばかることではございますが、
   陛下とわたくしの思いは、等しく同じものであると愚考いたします。」

折木「・・・答えにはなってないな。」

仁美「残る加盟国とともに、両国を諌めることになるでしょう。
   喧嘩両成敗ということで、いかがでしょうか。」

折木「おっと、恒久的平和ってのはどこへ行ったんだー?」


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67 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/01(金) 00:59:08.92 ID:GD/i2i7Z0



仁美「では皆様はこの提案を拒否なさると?」

折木「この場では回答しかねる、というだけのことだ。」

田井中「おっ、おーいっ!
     ことしの議長国はウチ!!」

仁美「なら、せめて停戦を。」



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   「 ___  l /}イ::::::|    }イ   /::∧イ i   /:::/            あんたが逆の立場ならどうだ。
  /     }._」' V/\{        厶イ r‐  イ:::∧
.  {   Tく. 」    ',               /     ∨  \         そんなことできるか?
      ヽ   i ヽ - 、               ヘ } 〉.イヽ
  .∧        /   \_     /        zイ /::::::i|
. r‐=イ}       イ ___,≧ァz 、     r=‐'':::::::::::::::::::|ト...、
/::::{ \ =-   {:::::::::::::::::::::::::::::i\、 「 ̄i:::::r.:y::::::::::::::/::::::::\
::::::::\ \____.ム::::::::::::::::::::::::::::|  | |  l|:::::Yリ:::::::::/::::::::::::::::`::...、
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仁美「できかねます。」

折木「それが答えだ。」


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68 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/01(金) 01:01:02.01 ID:GD/i2i7Z0



ハルヒ「ちょっと!勝手に話終わらせないでよ!!」

折木「なんだ、王国は帝国と停戦するのか。」

キョン「俺たちだけ拳を下ろすわけにはいかんだろ。
    ・・・悪いが志筑伯爵、俺たちとしては負けっぱなしで勝ちを譲るわけには行かない。」

仁美「・・・残念ですわ。」

キョン「ふん。俺も、出来ればあんたと同じ旗の下で生まれたかったよ。」

ハルヒ「え゛え゛え゛!!!」

仁美「今からでも遅くはありませんわ。」

キョン「こんな卑劣な手を使う女の即位を、俺は許さなかったからな!」

ハルヒ「キョン〜!」

仁美「・・・本当に、残念ですわね。」

田井中「そ、それじゃ、とりあえず今回の会談を終わりますっ!」



連合首脳一同「「ムントを忘れるなっ!キョーアニに栄えあれっ!!」」



                   ,. -- ...,,,_
                _,.ィ"´       ``ヽ、
           ,. -‐''"´               ヽ、
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      l   /  / /., '  .l  lヘ   ト、 ヽ、    ', ヽ\   !
      l ノ l  / /./    ト、 .! ヽ.  '.ヽヽヽ.   ',  .\ヽヽ.!
.     / .l :l   レ'     | V_l  ヽ. ',_ヽヽ \  !   ヽゝヽ
.    /    l :l   ! .     ´ ̄ヽl   ヽ. ',` ヽ.  \l    .l  \
   /    ∧ト  !            ヽ〉‐     ゙イノ  /     \
.  {     l 〉〉、 ', . ァャ===、        ァャ==ァ'` ./  /ヽ ヽ.    Y
   \   .l / ヽミi、ヘ , , , , ,          , , , , ,  / ,.イヽノ  ノ    ノ
    \  .レ  l ヘ``        、         -彡イ´   /   ./
        )   ヽ ヽ、               ノレ'´ ,.イ ,. イ
   、--‐'′    \ ≧- 、   /`ヽ    ,. ィ´/     λ(
    >-‐        ) . ヽ≪/,.ィ''"´ヘ<!‐-、/         ノ \
  /      ,.-‐ァ‐'’    }.〈   ''"´ ̄Y  /{  ,.--―_二    \
. (.       / .(     __ノ‐∧    ̄ ̄} /人 (l_l_ ̄  ∨     )
  \    /    \ (´l::::::::::∧    {Υ''"´:::::::::`) )    ∨   /
    ヽ、 /        `、!:::::::::: ∧   Y:::::::::::::::::::::レ/      ∨ (__,.ィァ
      /         ヽ::::::::::/ .〉   Y、:::::::::::::::::: l /     '.-‐''"´
.     /.  ,. -―- 、 ヽ::::/ ヽ、  ノ Υ::::::::::::::::レ′     \
    レ''´         `>Υ    ノ八l  l=> 、;;;;;;}   ,.-―-  ヽ
     ヽ             ∧   // l:l  〉〉  /  /       ノ
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         `ヽ、     `ヽ /L∧//   l:レ':/〉::〉 ',  // /
          ‘,    /  Y/ l  /l/Y´  ./     /
.           ‘,   /     l /、     /     /
              〉 /.       Y  ヽ、.  /     /
          /  l         /     `/     /
          \ ヽ       /      ./   /  ./
                \     /       / /   . /


.
69 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/01(金) 01:01:59.57 ID:GD/i2i7Z0



┌──────┐
│後日・・・  ......│
└──────┘

                            ┌─────────────────┐
                            │氷菓連邦 千反田州 首都エルシティ  ....│
                            └─────────────────┘
                  ____
                    ...:::::::::::::::::::::::::::::::::::` 、
             /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
            .:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.
           /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.
           .::::::::::::::::::::::::::::::::l::::|:::::::: |:::::::::::::::::::::::.
              ′ ::::::::::::::::::::::::|::レL::::::_|L.|::|:|::::::::::::::.
          .:::::::::::::::::::::::::: |x≦     ァ=ミト、|:::::::::::
         .::::::::::::::::::::::i 〃んiハ     んハ Y ::::::::|
         .::::::::::::::::::::::::i小弋)ソ    弋ソノ |:::::::i::|
           :::::::::::::::::i :::: i |  ::.::     .   ::.:  '|:::::::i::|
        ::::::::::::::::::| :::: i_'u      _     ム :::: i::|     ど、どうして今まで外交交渉をしてこなかった
        ::::::::i:::::::::| :::: i ::ゝ.     ´ )    イ :|:::::::i::|
          | :::: i:::::::::| :::: i:::::::i|>   _,,. イ:::::!:::|:::::::i::|     帝国が、こんな手に出てきたんでしょう!
          |::::|::i:::::::::| :::: レ─リ       トミ:::::::i:: |:::::::i::|
          |::::|::L:::::::| :::: |i:i:V       ト、i:i:\i::_|:::::::i::|     私、気になりますっ!!
        /⌒^\\| :::: |i:i:i|      │i:i:i:i:i:i:|:::::::ト、
         \ \|/i:: |i:i:i|>=……<|i:i:i:i:i:i:i:| ::リ ハ
      l      .  ヽi:: |i:i∧      |i:i:i:i:i:i/| ::|   |
      |     ∨ 八::レ ⌒\    /:i:i:i/⌒\|   |
┌─────────────┐
│氷菓連邦大統領         .│
│千反田える(出典:氷菓)    │
└─────────────┘


.
70 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/01(金) 01:06:42.33 ID:GD/i2i7Z0



折木「・・・マミ大帝は武略一辺倒だったが、新しい皇帝は
   こういう手も使って来るってことだ。」

千反田「帝国首脳部・・・、老中衆が言い出したことではないんですか?」

折木「仮に老中衆が発起人なら、これまでも機会はあった。
   確かに連邦も王国も、帝国から和平交渉が来ることは面倒だし、
   妨害工作もしてきた。」

千反田「え!?
    私、そんなの知りませんっ!!!」

折木「じゃあ、ひとつ勉強になったな。」



折木「・・・帝国は勝っている。今後も負けることはない。
   過去、連邦が帝国に勝ったのは兵力差が10倍近いとか、
   帝国軍が撤退中に襲いかかるとか、よほどの場合に限られる。
   そのよほど少ない戦勝で、国民を騙し続けてきた。」

千反田「なのに、和平交渉を持ちかけた。
    これは、やっぱり本当に平和を望んでるわけではなくて・・・」

折木「水面下で外交交渉が進んでいる、と考えるべきだが・・・
   ただのハッタリという可能性が高い。」

千反田「・・・それでも、和平を拒絶しなければ連合は、有名無実になってしまう。」

折木「そうだ。対帝国という、各国のつながりは薄れる。
   帝国も本気で、大陸の平和なんか考えているわけがない。
   ・・・だが、拒否した以上、連合国民にとって平和の敵は連合そのもの、ということになる。」

千反田「そんなっ!・・・皇帝は卑劣ですっ!!
    連合が解体されたら、今以上の混乱が起こることは目に見えているのにっ!!」

折木「和平交渉という名の、宣戦布告ということか。」

千反田「まどか皇帝のどんな人なんでしょうか・・・。
     私、気になりますっ!!」


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71 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/01(金) 01:07:45.21 ID:GD/i2i7Z0



    __
   /   \
 /   _ノ  \
 |    ( ●)(●)         キリッ ____
. |     (__人__)           /\   / \
  |     ` ⌒´ノ          /(ー)  (ー) \
.  |         }  はいはい。 / ⌒(__人__)⌒   \   俺の時代が来るっ!
.  ヽ        }     \     |    |r┬-|      |
   ヽ     ノ       \  \   `ー'´     _/
   /    く. \         \  ノ          \
   |     \  \    (⌒二                |
    |    |ヽ、二⌒)、        \        |  |



ない夫「皇帝が宣戦布告した。」

やる夫「何してるんだお、やらない夫っ!
    早くやる夫たちも連合に加盟して、帝国と戦うおっ!」

奥村兄「そーだよっ!
    なんでグダグダしてんだよッ!?」

ない夫「兵が600足らずで、何ができる。常識的に考えて・・・
    せめて隣の八波伯に対抗するためにも1200は欲しい。」

奥村兄「さっ、3倍じゃねーかっ!」

ない夫「・・・2倍だ。2倍。」

やる夫「じゃあ、さっさと徴兵だおっ!」

ない夫「うるせー。
    俺はシヴィライゼーションでいう内政派なんだよ。」

奥村兄「だーっ!
    訳わかんねーこというなっっっ!」

やる夫「徴・兵!徴・兵!!さっさと徴兵!!!」

ない夫「お前ら、少しは年上(設定:30歳)を敬え。」


.
72 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/01(金) 01:08:47.84 ID:GD/i2i7Z0



ない夫「とりあえず今後の方針だが、まずはモナー卿の荘園を訪ねよう。」



┃      森国      │                ┌─┘    鶴屋国  ┏┛氷菓連邦十文字州
┗┓            ┌┘    荒川国      ┣━━┓          ┣━━━━━━━━━┓
二┗┳━━━━━┷┓      ┏━━━━┛    ┠─────┨                  ┗
二二┃            ┗━━━┛              ┃ コンピ研国 . ┃    《厨二合衆国》
二二┃                                    ┗┳━━━┳┛
二┏┛                                      ┃      ┗━━┓    ┏━┳━━━
二┃         けいおん共和国           ┏┛            ┗━━┛  │
二┃                      ┏━━━━━┓┏┛                        └─┐
二┗━━┓              ┏┛ モナー領...┗╋┓     ワルプルギスの夜伯領   │
二二二二┃              ┃    ┌────┘┃                          ┌┘
二二二二┗━━━┓      ┗┳─┘          ┗━━┓                    │
二二二二二二二二┗━━┓  ┃                    ┣──┬──┐    ┌─┘
二二二二二二二二二二二┗┓┃      美府伯領      ┃高┌┘    └─┬┘
二二二二二二二二二二二二┗┫                ┏┳┛町│          └┐  暁美公領
二二二二二二二二二二二二二┗┓    ┏┓  ┏━┛│領┌┘            │
二二二二二二二二二二二二二┏┛┏━┛┣━┛    ├─┘              └┐
二二二二二二二二二二二二二┗━┛二二│  奥村領│      八波伯領      │
二二二二二二二二二二二二二二二二二二└───┐│                    │    ┌
二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二└┴┐            ┌──┴──┘
二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二└──────┘二二二二二二
二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二

   ∧_∧  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  ( ´∀`)< オマエモナー
  (    )  \_____
  | | |
  (__)_)      ┌───────────────┐
             │マギカ帝国騎士                │
             │モナー卿(出典:2ちゃんねる)     .│
             └───────────────┘



奥村兄「爵位は騎士なのに、ウチより広くね?」

ない夫「そりゃ、お前んちは貰った時のまんまだけど、モナー卿は領地を広げてるからな。」


.
73 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/01(金) 01:09:31.02 ID:GD/i2i7Z0



                                           ━━━━━┓┏┛
      _____    {  /                           モナー領  ┗╋┓     ワルプルギスの夜
     '´ ̄`>:`ヽ.、_|__}}_. _                             ┌────┘┃                伯領
      x≦: : : : : : : : : : : : : :`>:.、                        ─┘          ┗━━┓
    /: :,: :-:‐: : : : : : : : : : : : : : : : :\                                      ┣──┬
   イ: :/: :/:/: :/: ; : l; : : : : : : : : : : : :ヽ.  x≦≧x                  美府伯領      ┃高┌┘
  //乂 ./ /. ./. ./. メl. .l .l. l :|. .ノヘ: : : :_:Y´ ______ `ー 、__                     ┏┳┛町│
  /:イ: : :/l: :'⌒メ{: ハ 7‐|-!-lミl :|: . . . }彡《《 ̄≧=、  ̄ ̄ ̄ ̄´     ┓    ┏┓  ┏━┛│領┌┘
  .':/ !: :イ:.l: :/:/ | | { { ヽ{: |!:l :l: : : : 匕7ヽ、: : : : ハ            ┛┏━┛┣━┛    ├─┘
  |:' |:.' !:.l: イチ斧ゞ! `チ斧ミ!ノ :|リ: : :八/  l|\: 〈: :l               ━┛二二│  奥村領│      八波伯領
  {! ハ| ヘ!从 んj}     ん心}〉ノ.: : :_:_: :|l  l|   ヽ}: l           二二二二└───┐│
       乂l Vり   弋シ〃: : :ハ´l }〃\リ   |!: l
      ( l小'" `    ´ ノノ/'.__メ    Y)    乂:ヘ.      !,
      )' へ ヽ ̄ノ   '"=彡イr、    '   (   \`:、   ノリ
.           \`   _....,  ソ ).       `    ヽ、_..彡'
              ̄´/∧_/ /∧
               /∧  /´⌒ヽ
                 //  ゝ/ 〃´⌒ミ}
.             ,r∧_  / / '¨¨ `l|     ┌─────────────────────┐
              、/   〕_/ /,      l|     │マギカ帝国男爵                      │
            ./      〈/     l|    │高町なのは(出典:魔法少女リリカルなのは)   ..│
           !   _/   ‐=彡l!     └─────────────────────┘



やる夫「あれ、こっちの《高町男爵領》が先じゃないのかお?」

ない夫「ああ、モナー卿の方が話しやすいからな。」

やる夫「なんでだお?
    やらない夫は高町男爵(先代・父親)と仲が良かったじゃないかお。
    娘のなのはなんか、”やらない夫お兄ちゃん”っていって懐いてたお。」

ない夫「今は、そのなのはが男爵だ。
    ・・・まったく、いい人ばかりがいなくなる嫌な世の中だよ。」

奥村兄「へっへー、会うのがちょっと怖かったり?
    もう伯爵、お兄ちゃんって呼ぶのはキビシイもんなぁ。
    オジサンなんて言われたらショック受けちゃう?」

やる夫「やらない夫おじさ〜ん♥」

ない夫「お・ま・え・ら・・・ッ!」


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74 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/01(金) 01:10:12.57 ID:GD/i2i7Z0



ない夫「で、なんだが・・・、今回、やる夫と燐はお留守番な。」

奥村兄「え゛〜〜〜っ!?」



                       ___ノ L
                  /\ / ⌒.
   / ̄ ̄\       / (●) (●) \
 /   _ノ  \    /    (__人__)   \   なんでだおっ!!
 |    ( ●)(●)  |       |::::::|       |
. | U   (__人__)  \    l;;;;;;l    / l!| !
  |     ` ⌒´ノ  /    `ー´    \ |i
.  |        } /           ヽ !l ヽi
.  ヽ         } (   丶- 、       しE |そ  ドンッ!!
   ヽ     ノ ̄ `ー、_ノ ̄ ̄ ̄ 煤@l、E ノ <
   /    く.\               レY^V^ヽl"
   |     \ \                     \
    |    |ヽ、二⌒)                   \



ない夫「そりゃ、邪魔だし。
    燐はそそっかしいし、やる夫はまだ元服前だからな。」

やる夫「子供扱いかおっ!」

ない夫「子供じゃないか。真実。」

奥村兄「なんだよ、それ〜。」

ない夫「・・・ったく、なのはさんなんか9歳だぞ。
    ちょっとはお前らも、俺の役に立てよ。常識的に考えて・・・」


.
75 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/01(金) 01:11:31.89 ID:GD/i2i7Z0



やる夫「・・・留守番かお・・・」

奥村兄「・・・留守番かよ・・・」



                // /     |                                 l
                /'  /         |       \   、                      |
            .      /       |        |、 { \ _ 斗z |          \   {
                 /        | ∧        lr弌 ̄ >、__{_刈        |   、    ′
                ノ  ,    ‐j= f弌 、     ヘ  >≦云 ̄〕八      l 、 | \| |、 \
              /-‐  | |    |、|___入{\    ∨/ rJ:) 〃 ′,    /‐ヘl¬   |   ̄`
            .      ′l    抓l ̄r_  \  ′ --三z‐  //i   ! '/^  ′  |
                   丿   l  K  弋ソ   丶 i   / //´  |  ,| 八_,  /   ;
                / イ|   トミ ==≦丿    ヽ|//// /    |  /j/,〆 /    !、{
                    八  ト 乂///∧              j/ /__/   トl ヽ
                      \l 介     、`                  {  l    ′
                        l 八                          八 ノイ 厶_乂___
                             、       __            イ_x≦!/三三三三三《
 なあ、伯爵がいない間さぁ、        \    rvこ__,.V う      x≦三三三三三三三三三》
                              、 `¨¨二 ̄   _x ≦三三三三三三三三三三三《
 俺たちでできることってないかな?         \     ,x<三三三三三三二ニ=‐   二二二入
                                   \_∠三三三三二二ニ=‐  _ ≦三三三三三≧
                           , ≦三三三三三、 三三三二ニ=‐<三三三三三三三三三
                          /三三三三三三三\ 三三三三三三≧x、三三三三三三三
                         /三三三三三三三三三.\三三三三三三三≧ 三三三三三三



やる夫「やる夫たちで?」

奥村兄「そーだよ。役に立て、って言ってだじゃん!」

やる夫「余計なことすんなッて、怒られるだけじゃないかお。」

奥村兄「んなことねーよっ!
    そりゃ、怒られるかも知んねーけど、初めから上手くできる奴なんていねーんだし。」


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76 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/01(金) 01:12:36.14 ID:GD/i2i7Z0




          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ \
        /                 \
       /        _ __ __ノ ,l :l ヽ、ヽ
      /        fr‐t―‐ァ j  {rァ-ァ \
     / .        `≧--┴'´  '┴≦´ i
     |           /          ヽ l
     ..|.           {      ム    } |    やらない夫の留守中に、何かできないかお・・・
     |.          `======'⌒====ク l
   .  \.                     /
       \                  /
       /ヽ                イ\
      /          ``ー- -‐'"´    \
                                  \

                               >>79

                                  @ 何もしない

                                  A 少しは役に立ってみせる!


.
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/01(金) 01:17:21.56 ID:gnCT59Tuo
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/01(金) 01:31:54.85 ID:afdyXIgU0
2
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/01(金) 01:32:12.93 ID:afdyXIgU0
2
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/01(金) 01:35:11.22 ID:afdyXIgU0
不調で連投になってたから安価下で
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/01(金) 01:56:53.78 ID:1LcRiR1Y0
@
82 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/01(金) 23:54:57.02 ID:GD/i2i7Z0



やる夫「いや、これは遊びじゃないんだお。
    やらない夫が大人しくしろっていうなら、そうするべきだお。」

奥村兄「う゛ぇー・・・、じゃあ、何して時間潰してるんだよ。」

やる夫「人間性を捧げる時間だお。(`・ω・´)」

奥村兄「はあ?何それ?」

やる夫「ほら、お前もやるお!」

奥村兄「やんねーよ。(^^;」



                    ____
                   ゝ  、/  \
                 ,(●)  (● )  \
                /  (__人__)      |
                  |   |r┬|       |      なら、やる夫一人でも人間性を捧げる!
                   \_/⌒ヽ、-- .._ ,/
                   |   イ    ` ̄ヽ
                  ヤ/‐<__ ,..、   ヽ.
                   |        ゝ、   ゙.
                      ',         |ヽ, トヘイ´>
                       ',            |ヘトイ「」"´
                    ヤ        {〉、<"
                       j         トメヽ>
                   /            |
                  . イ./          |
               イ  ,.イ.            |
            . イ  . イ´ /         /  |
           ト、_ イ    /      /´l"    |
                      /      /  |    |



奥村兄「お疲れさまです。(;´д`)」


.
83 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/01(金) 23:56:08.65 ID:GD/i2i7Z0



;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ノ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..   ::::::::::::::::::::::::::::::::::);;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
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/⌒''''´: :.:.:.:.   :.:.:.`'''''´ :.:.:.:.r'⌒ー-:.':..     :.:.:.:.:.::::::::::::::::::::....         :::::::ヽ、;;;;;;:::::-‐
.  : : : :.:.:.:.   :.:.:.      :ノ.:.:.:.:.:. :.:.:.:.:.:.:..      ::::::::::::::::::::::::::::::::....        :::.:::.::.:::.:::.:::.
 . .  : : :,:,:.   :,:,:.       :..:.:.:.:.:.:.. :.:.:::::::::..      ::::::::::::::::::::::::::::::::::....           ::.::.::.:(
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: . . : : : : : :.   :.:.:.       ::::::::::::::.. :::::::::::::..       :.:.:.:.:::::::::::::::::::::::::::::....
.  : . : : : : : :.   :.:.:.         :.:.:.:.:.:..:.. :.:.:.:.:.:.::..        :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:::::::::::....
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 .   . . : : :.   :.:.:.                           : : : : : : : : : : : : : : .
  :  . : : :                                    : . : : : : : : : : .
                                             .  :  . . .

それから幾日かが経った。

燐は剣の練習や自分のやりたいことを黙々と続け、やらない夫の家臣たちと一緒に
兵隊の訓練に参加して実戦に備えた。

一方、やる夫は人間性を捧げているだけだった。

しかし何日経ったころか、やらない夫から何の連絡も入ってこないことに
伯爵家の家臣たちが不安がり始めていた。


.
84 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/01(金) 23:57:15.28 ID:GD/i2i7Z0



二階堂「若ーっ!若殿様っ!!」

やる夫「おう、盛義じゃないかお。
    相変わらず、何をそんなに驚いてるんだお?」



                         ,r';;r"            |;;;;;;;;;;;ヽ;;;;;;;;;;;
                        ,';;/             /;;;;;;;;;;;;;;;ヽ;;;;;;;;
                        l;;'            /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;',;;;;;;;
.                        ,l;L_      .,,、,--ュ、 ';;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;iソノ
                       ヾr''‐ヽ,  ,、ィ'r-‐''''''‐ヽ ';;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|
                        l rO:、;  ´ ィ○ヽ    'i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;、l
                        | `'''"/   `'''''"´     !;;;;;;;;;;;;;;;/ l |
.                        ,'  /   、        |;;;;;;;;;;;;;ノヽ'/
.                        l  ,:'   _ ヽ       .|;;;;;;;//-'ノ
                        ', ゞ,' '"'` '"       i;;;;;i, `' /
                         ', i、-----.、       `''"i`'''l
  おっ、お館様が!!           ヽ ヾ゙゙゙゙ニニ'\        ,'  ト、,
                            ヽ ヽ〈    i|          Vi゙、
                            ゙, ,ヽ===-'゙ ,'     ,   // ヽ
.                            ',.' ,  ̄ , '    ノ  /./    ヽ,
┌────────────────┐  ヽ.  ̄´   / ,、 ' /     / \
│マギカ帝国美府家家臣         .│  ノ:lゝt-,-‐''" / ,.ィ゙     /
│二階堂盛義(出典:信長の野望)     .│'´  |  ヽヽ /,、ィ     /
└────────────────┘



二階堂「モナー卿から使者が参り手紙に、謀反人・美府伯爵は自分が捕らえた、と!!」

やる夫「とっ・・・、捕らえたッ!?」


.
85 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/01(金) 23:58:14.54 ID:GD/i2i7Z0



       ____
     /ノ   ヽ、_\
   /( ○)}liil{(○)\
  /    (__人__)   \   なんでそんなことに!?
  |   ヽ |!!il|!|!l| /   |
  \    |ェェェェ|     /



二階堂「某らではまったく、事の次第はわかりかねまするが、
    我らの企てにモナー卿が相容れなかったのではッ!?」

奥村兄「ど、どーすんだよぉッ!」

やる夫「ま、待ってくれお。なんかおかしいお!」

奥村兄「な、何が・・・?」

やる夫「モナー卿がやる夫たちの謀反を咎めるなら、使者を寄越すのは
    やる夫たちじゃなく、皇帝の筈じゃないのかお?」

奥村兄「んなことはどーでもいいだろッ!
    そんなことより、これからどうするんだよぉッ!!」

二階堂「企てがばれた以上、雪男様にも使いを出し、
    兵を挙げて館にこもるより他ありません!
    時間を稼ぎ、連合側に逃げ延びる手はずを整えるのです!!」

やる夫「やらない夫を見捨てるのかおッ!?」

二階堂「お館様の悲願は新即出家のご再興。
    ここで若殿が皇帝の手にかかるなど、のぞみは致しませぬ。」


.
86 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/01(金) 23:58:58.05 ID:GD/i2i7Z0



奥村兄「盛義ッ!
    兵を集めるぞ。こうなったら、殺れるだけやってみるしかねぇッ!!」

二階堂「はッ!」

やる夫「待てお!」

奥村兄「んだよッ!?」

やる夫「・・・館に篭る、それは認めないお。」

二階堂「お館様は諦めてくだされっ!」

やる夫「いやだお!」

奥村兄「・・・・・・。」

二階堂「・・・・・・。
    若様のそのお気持ちだけで、お館様も満足でしょう。」



        ノ L____
       ⌒ \ / \
      / (○) (○)\
     /    (__人__)   \     やらない夫の気持ちはどうでもいいおッ!!
      |       |::::::|     |
     \       l;;;;;;l    /l!| !
     /     `ー'    \ |i    _             _
   /          ヽ !l ヽi   | l [l] | ̄| /l    | |
   (   丶- 、       しE |そ  | 二l  ̄/ [][]∧.|_|
    `ー、_ノ      煤@l、E ノ < |__|  | ̄/ <_/ <>
               レY^V^ヽl       ̄



やる夫「やらない夫は、やる夫にとって父さんでもあり、兄さんなんだお!
    とても見捨てて逃げることは、できないおッ!!」


.
87 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/01(金) 23:59:56.37 ID:GD/i2i7Z0



やる夫「それに、この手紙は妙じゃないかお。
    モナー卿に何か、こんな不自然な使者を送らなければならない理由があるんだお。」

二階堂「確かに捕らえたことを明かすためだけに、わざわざ手紙を寄越すとは・・・
     しかし皇帝にもすでに同じ使者が送られているかも知れませんぞ。」

奥村兄「・・・だーっ、分かんねえよ。
    雪男ならなんか思いつくかも知んねーけどよ。」

やる夫「盛義と燐は戦いの準備だけでも進めてくれお。」

奥村兄「やる夫はどーすんだ?」

やる夫「高町男爵に、このことを伝えて力を借りる。」

奥村兄「まさか、やらない夫を助けにモナー領を攻めるってのかッ!?」

やる夫「ほかに手はないおッ!
    モナー卿の館を攻め、やらない夫を助け出すんだおッ!!」


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88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/02(土) 05:24:10.56 ID:Hqerp5IP0
寝落ちかの
89 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/03(日) 02:40:08.16 ID:KHbyXFOM0



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      ´ ̄\|;{  / ,               ..             ー、  {:レ'
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        }i!;|/ ̄                       __
          |:;!il         .... ..             /ヽ _ /ヽ
     ^                               / ..:::'l ::.: .:.::\     ^    ..,,;:.,..
  ...,,..,;:..         r‐、                      '"'"''"'  ̄ "''"''"
              `"""
                   r‐,
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                       ̄| | ̄
                  | |
                 ,,;'"゛~゛';,
                ,.;: ;: " ゛:; :;、



高町領は異常に枯れ木と十字架が多く、異様な雰囲気に包まれている。

街の建物は壁や床に十字架をあしらっていて、郊外ともなれば墓地が何処までも続いていた。
また禿山や荒野ならともかく、街路にさえ枯れ木が植え込まれているのだ。

さらに民家の窓には必ずステンドグラスをはめ込んでいて、普通なら厳かな様子であろうに、
一種、不気味な様相を呈している。


.
90 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/03(日) 02:40:51.36 ID:KHbyXFOM0



やる夫が高町男爵邸についたころには、月が館の屋根にかかっていた。
月は宙空にある時よりも、地表に近い方が大きく見える。館はまるで月を背にして建っているようだ。

屋敷は例のごとく、ステンドグラスと極彩色の十字架たちで彩られており、
キュビスムめいた前衛的風景が展開されている。



      fヽ                   ,.. -‐‐-:....   /}
      |  \               /: : ≦二 ̄`/ /
      |   ヽ         ..  -‐…‐彳:.:/: : : : : : : ̄ミx'
      |  ヽ  Y    . :´: : : : : : : : : : : : : : :-:‐:‐:‐:‐:<: \
       乂   \ |   / : : : : : : : : : : : : : : : : : : : \ : : : : ヘ: : \
.         >x___|_, '  乂: : : : : : : : : : : : : : : : : : :ノ\ : : : :  ̄`゛
     .x<: : : : :冂へ ____` 二ニ=   =ニ ニ二´ __乂 : : : :ハ
   /: : : >-‐ャ√| : : : i: i: :斗/-:、八: :}-‐‐-: :_: : : :.j|: : }: : : : ト、
.   /: : :/  Y´{' ム: l: : |/: :./ |: /  )ハ: /ヽ: l ヽ: :刈: :.|: : : :.ハ: \
  /: : /    |  从:.:i: : |: j: /二}'  /  }/   )j: : :./: |: : |ヘ: : :.∧: : :,
. ‘: :∨     |  メ ヘ: l: : |: |!',ィ==ミ ≧ チ==x |: イ: :.:|: :八j: :/  }: : ハ
.': : : '       |/   \八〃二二≦_     ヾ: :|:/}:/\}:/   ,': : : :}
|: : : |           介トヽ 二二二 '      从!'  !'  !'  /: : : /
|: : : 乂              |.l.人 二二l´ ̄`l    イ: l|        /´):.:/
ヘ: : : : ,≧=‐       |:l: :个:..二 、_ ノ  .イ |: :l|       /'"
. \、: :\   __      乂:乂zzz〕__‐-‐__〔zzx八:.リ
   ヾ>--‐ ´     f ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄F]
               [》⌒ヽ´ ̄`ヽ   -‐_乂\、
                 // ___  \\f´`ー 、    \\__
           /__/´≦ `ヽ rヽy'   V   Y´__ `ヽ___
            { ̄l|二二    {     ∧-.  f--、`   Vi
           メT |二二     )     /二=- f‐-、    vi



なのは「こんにちわなのっ!」

やる夫「どうも、高町男爵・・・。」

やる夫を応接間に迎えた男爵の顔は極彩色の壁紙や古美術が放つ色光で、右頬に赤い影が差している。
今や同じ部屋の客椅子にかけるやる夫も、色とりどりの影をまとい、瞳からは紫の炎が漏れている。


.
91 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/03(日) 02:41:30.81 ID:KHbyXFOM0



やる夫「先に連絡もしないで、こんな時間にお尋ねしたのは理由がありますお。」

なのは「ふぇ?」

やる夫「実は・・・」

やる夫は真実を話した。自分とやらない夫が連合に寝返ろうと話し合っていたこと。
そして、諸侯に声をかけていたやらない夫が、モナー領で囚われたこと。

美府領と奥村領では兵を集めて戦闘用意を整え、皇帝やモナー領の軍隊を
迎え撃つなり、攻め込む支度を進めていること。

やる夫「旧来の親交を頼りに、男爵に助勢を求めてまいりましたお。
    もちろん、ここでやる夫を皇帝に差し出して貰っても構いません。
    聞かなかったことにして貰えるだけでも十分すぎるぐらいですお。」

やる夫は心底、自分の愚かさを恨んだ。
せめてやらない夫がいない間、自分も独自に動いていれば・・・!!

こんな土壇場で、いきなり『乞食若殿』が訪ねてきて、誰が首を振るだろう。
たとえ9歳の女の子でも、受け入れる道理がない。

なのは「わかったの。
    やらない夫お兄ちゃんが危ないなら、私もお手伝いします。」

やる夫「い゛、いいのかおッッ!?」

なのは「難しいことは分からないけど、
    私のできる限り、協力させてください。」

男爵はすくっと立ち上がると、放蕩者のやる夫とは違い家臣団を呼びつけると
勇ましい若武者っぷりを見せつけた。


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92 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/03(日) 02:42:08.31 ID:KHbyXFOM0



      \∧_ヘ     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ,,、,、,,, / \〇ノゝ∩ < モナー領攻め、いくぞゴルァ!!       ,,、,、,,,
    /三√ ゚Д゚) /   \____________  ,,、,、,,,
     /三/| ゚U゚|\      ,,、,、,,,                       ,,、,、,,,
 ,,、,、,,, U (:::::::::::)  ,,、,、,,,         \オーーーーーーーッ!!/
      //三/|三|\     ∧_∧∧_∧ ∧_∧∧_∧∧_∧∧_∧
      ∪  ∪       (    )    (     )   (    )    )
 ,,、,、,,,       ,,、,、,,,  ∧_∧∧_∧∧_∧ ∧_∧∧_∧∧_∧∧_∧
      ,,、,、,,,       (    )    (    )    (    )    (    )



やる夫「ちょ・・・ッ、もう戦う用意ができたのかおっ!?」

なのは「グズグズしてる場合じゃないのっ!
    動ける人たちは、皆連れて行くから、残りは道中で合流するのっ!!」

明るすぎる月の下、夜の道を高町勢は進む。
道中、小さな集落の前を通るたび、甲冑をまとった武者たちが隊列に加わった。

*「御屋形様ぁーっ!」
*「姫様ぁーっ!」
*「若い連中は皆、掻き集めてまいりましたぞーッ!」

なのは「皆、ありがとなのーっ!」

馬上でなのはが家来たちに応じる。月を背に小さな影が動くたび、
いくらかの野太い男たちの雄叫びが上がる。

             ナイトゴーント
全員が吸血鬼か、  夜鬼  か?
松明すらなく、目印となるものもないのに足音と互いの背中だけを頼りに乱れることなく列は長くなっていく。

やる夫「す、すごいお・・・!」

なのは「そうなの?
    ウチでは、これは普通なの!」


.
93 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/03(日) 02:42:36.34 ID:KHbyXFOM0



丸一日が経った。
馬上で眠りこけたやる夫の体を、高町男爵の家来たちが預かり休み無く進んでいく。

やる夫が目を覚ますころには、戦列は倍以上に長くなり、見渡す限り軍旗がはためいて、
これがやる夫の初めて見る軍勢の姿だった。

やる夫「あれは大砲かお!?」

なのは「敵が館に立て篭もってるなら、必要になると思って!」

やる夫「や、やらない夫が捕まってるんだお!?」

なのは「そうやって及び腰になる方が、相手の思う壺なの!!」

それはそうだろう。しかし人質とはそういうもので、人質を取られている側としては、
無茶な攻撃を控えたくなるのは真実、人情というもので責められる道理はないハズである。

やる夫「ここは穏便に・・・」

なのは「そうやって失敗したら、私は後悔すると思うの。
    だから私は手を抜いたりしない。」

やる夫「でも、今回だけ・・・」

なのは「今回だけ手を抜いて失敗したら、余計に悔しいじゃない!」

やる夫「しっ、失敗するッて決めつけなくても・・・」

なのは「文句言わない!
    そういうの、私はいやなの!!」

そもそも人に頼む立場でどうこう口出しすることも道理にかなわない。
説得など不可能であった。


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94 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/03(日) 02:43:37.33 ID:KHbyXFOM0



奥村弟「兄さんっ!!」

奥村兄「おー!雪男っ!!」

美府伯領の、北西に立つ出城で奥村勢と美府勢は合流した。
モナー領の動きはわからないままだったが、雪男は細心の注意を払って行動してくれた。

奥村弟「八波伯やワルプルギスの夜伯は連合との会戦の用意で、
     どちらも『タテガミ平原』に進軍しているようです。」



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┃ コンピ研国 . ┃                        ┗┓  ┏━━━━━━━┳┛
┗┳━━━┳┛      《厨二合衆国》    ┏━┻━┛   ★         │  ┌
  ┃      ┗━━┓    ┏━┳━━━━┛                    ┌┘  │
┏┛            ┗━━┛  │         凸             └──┘
┛                        └─┐      ホムラポリス.
┓     ワルプルギスの夜伯領   │
┃                          ┌┘
┗━━┓                    │                暁美侯領
      ┣──┬──┐    ┌─┘
      ┃高┌┘    └─┬┘
  ┏┳┛町│          └┐
━┛│領┌┘            │
    ├─┘              └┐
    │      八波伯領      │
─┐│                    │    ┌──────┐    ┌──┐
二└┴┐            ┌──┴──┘二二二二二二└──┘二二└───
二二二└──────┘二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二
二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二

★・・・『タテガミ平原』
日常共和国と暁美侯領の間ぐらいにある平原。



二階堂「やはり、今回の先鞭は日常に当てられるようですなっ!」

奥村弟「けいおんは西方諸侯に任せるのが皇帝の戦略のようです。
     もっともこれではその戦略は崩れてしまいますね。」


.
95 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/03(日) 02:44:24.90 ID:KHbyXFOM0



奥村弟「しかし、皇帝直属の軍勢、美樹公、暁美侯の軍勢が集まり、
     その数は5万近くになっているとか・・・」

総兵力300万有余と言われる連合軍側からすれば対した数ではない。
それでも帝国は出せて20万前後と言われており、美樹公、暁美侯は帝国の両輪と呼ばれている。

ともに皇帝同様、マミ大帝の武将ではなく、その子供の世代に当たる。
しかし実戦経験のないまどか皇帝と違い、侯爵と公爵はいくらか実戦を重ねてきている。

戦歴で言えば美樹公がやや乏しいのだが、公爵という家格の違い、領土の広さから
動員できる兵力は暁美侯よりはるかに多く、帝国最大の騎馬軍団を擁する。

また大きな海軍力を持つ唯一の諸侯でもある。



二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二
───┐二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二┌──────┐二二┌──
      │二二二┌─────┐二二二二二二二二二二二二二二二二二┌┘            └┐┌┘
      └──┐│          └─┐二二 ウロブチ海 二二二二二二二│                └┘
シャルロッテ . └┤              └──┐二二┌───┐二二二二二│
       伯領   │                    └─┐│      └─────┴┐  凸
    ┏━━━━┻┓                    ┌┴┘    キュウベイ伯領  .│ キタ=ムラ
━━┛          ┃    志筑伯領        │                ┌┐  ┌┘
┓              ┗━┓        ┏━━━┷━━━━━━━┳┘└─┘
┃                  ┗━┓    ┃                      ┃
┗┓.   マミポリス 凸     ┗━━┛                      ┃
  ┃                                              ┏━┛
  ┃                鹿目公領                      ┃              美樹公国
┏┛                      《皇帝直轄領》            ┃
┗━━━━━━━┓      ┏━━━┓              ┏┛
暁美          ┏┛    ┏┛      ┗━━━━━━┯┛              ┌────┬───┐
    侯領      ┣━━━┫┏━┓  巴大公領      ├────────┘        │二二二└┐
    ┌────┘      └┨  ┗━━━━━━┳┐│  教皇領                ┌┘二二二二└──
  ┌┘                  ┗┓ 《皇帝直轄領》 ┃└┘        /   厂          : : : . .二二二二二
  │        早乙女伯領    ┣━━━━━━━┻┐         /    |.   |         :.\二二二二
  │                      │                └─┐     . :    /  |:   |: . l: : . \    ヽ : . 二二二
┌┘                      │    上條伯領        │   / . : : : /l :/ |: : . |: : :.|ヽ: : : .ヽ   |≫l .二二二
┤              ┌────┴─┐                └┬ .: :.l : : :/ |/  |ヽ: :|\:」/\:: :.l   |≫|..二二二
└───────┘二二二二二二└─────────┘ : : | : :/` |≧ー' ∨ ` ヽハ仆;\|:  |  |..二二二
二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二 |: :l: :///;ハ       |l しリ  |:.  :|  ||二二二
                                         |: :l: :.|  l:しリ        `¨´ //|::  :l :八
                                        ノ:八: :ト//`¨   ´__       |:: . / :/
                                        /', : 〉ヽ、      ' ⌒ヽ   /|:: //           ヘ
                                         ∨ヽ: :> .    ー─'  . イ ///           ⌒l \\
  ┌─────────────────────┐        \: : /: :>ー┬  ´_|_/           | (\ | │
  │マギカ帝国公爵                      │         ∨∨/厂Y厂 ̄ ̄ ̄L./⌒ヽ       (\ ヽ \/
  │美樹さやか(出典:魔法少女まどか★マギカ)    │       / ̄ ̄ 7_乂___/      \    (\\\〉 l
  └─────────────────────┘.....   /.    /         \       ー─ヽ  へ \〉  /
                                        /    /           |       //〈     /|
                                       〈    人ュュュュ、 ,ャュュュュ人      / /| \ / /ノ


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96 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/03(日) 02:45:02.80 ID:KHbyXFOM0



          ┗━━┳┛      日常共和国    ┏┛        ┏━━━━┻┓
                ┗┓  ┏━━━━━━━┳┛    ┏━━┛          ┃
《厨二合衆国》  ┏━┻━┛              │  ┌─┻┓              ┗
┏━┳━━━━┛                    ┌┘  │    ┃
┛  │         凸             └──┘    ┗┓.   鹿目公領
    └─┐      ホムラポリス.                    ┃   《皇帝直轄領》
        │                                  ┃
      ┌┘                                ┏┛
      │                暁美侯領                ┗━━━━━━━┓
  ┌─┘                                          ┏┛
┬┘                                              ┣━
└┐                                          ┌── l:::|::::::::::::::::::::::::::::::::::、::::::::::::}::::::|:l|::::::::::::::::::::::::::ト.
  │                                        ┌┘    |:::|:::::::::::::|::::::::ハ:::::::N:::::::::::ハ:斗七::アヽ:|l:::::::::|:l
  └┐                                │      |:::|:::::::::::::|_l::斗チ::升 ヽ::::/  ∨-‐∨  Y:::::::::|:|
    │                                │      |:::|:::::::::::::|∧/ |/-l- 、∨    rf爪笊刈l:::::::::|:l
    │    ┌──────┐    ┌──┐          ┌┘     ∨:::::::::::::l rf芥笊圷       弋廴ソ ||:::::::::リ
──┴──┘二二二二二二└──┘二二└─────早乙女伯領 ‘,:::::::::::::ト、  V廴ツ       ///ヽ|l:::::::::|
二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二└───── 、:::::::::|ヒヘ ///ヽ    '        ノ|:::::::::|
二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二.... l::::::::|`ー'、        , -   ....:::::::|:::::::::|
                                                 |::::::::|:::::::::>- __      イ__:::::::::|:::::::::|
    ┌─────────────────────┐          l::::::::|::::::::::::::::::::rf_」_  ̄ _}ノノ}::::::l:::::::∧
    │マギカ帝国侯爵                      │         ∧::::‘,::::::::::::::::::::〉 ̄ ̄`Y´ ̄ ̄ (__::/::::::∧:ヽ、
    │暁美ほむら(出典:魔法少女まどか★マギカ)     │         /::∧::::<工工二 -- 、_人_ -─‐-/::::::/ー─- 、
    └─────────────────────┘         /::/ }:::::::〔::.::.::.::.::.::.::.::.::.{::.::.::.}:-:、:::.::/::::::/.::.:〕  ハ



暁美侯もやる夫同様、「帝国以西、切り取り次第」で拡大した新興の家である。
またやる夫から見て遠い従姉妹に当たる。

新即出辺境伯領問題の際に、その半分を継承したのもそのためである。

多くの西方諸侯が取り潰されるか、所領安堵の約定を裏切られたにもかかわらず、
その度に家蔵を増やし、今の大領に成長した。


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97 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/03(日) 02:45:48.03 ID:KHbyXFOM0



二階堂「それにしても若様はどこじゃ!
     まさかモナーの刺客の手にかかってしまったのではあるまいなっ!?」

奥村弟「その可能性より、男爵との交渉で失敗したのでは?」

奥村兄「縁起でもないこと言うなっ!」

奥村弟「でも、兄さん・・・。」

*「二階堂様っ!
  若様がーッ!」

一同がしびれを切らす頃、やる夫と高町男爵勢、200が合流し、
やる夫勢は美府400、奥村200と合わせて800有余となった。

内訳は美府勢がパイク歩兵200、ボウガン兵150、騎兵50余、
奥村勢が全て歩兵、高町勢は騎兵50余と大砲を扱う歩兵で構成され、大砲は7門。

なのは「あれ、奥村さんちの双子の男爵なの!」

奥村弟「助勢感謝致します。」

奥村兄「ホント、ちっちぇー!」

その直後、燐は雪男につままれたまま姿を消した。

ときは一刻を争う。一同はあいさつも、作戦も定まらないうちに足早にモナー領に進軍した。
奇しくも、タテガミ平原で合流した皇帝軍も、連合軍との開戦に向けて動き出していた。


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98 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/03(日) 23:25:13.63 ID:KHbyXFOM0



モナー側も美府伯領で兵力が集結しつつあることは、察知していた。
やる夫たちがモナー領に侵入したとき、国境の砦、中継となる出城、根城、全てことごとく空になっていた。

やる夫「・・・皆、撤収したあとってことかお・・・」

なのは「ますます意味がわからないの。」

奥村兄「ああ。
     もっとガチガチに守り固めてると思ったんだけどなぁ・・・」

奥村弟「この様子じゃ、この2、3日のうちに居なくなった訳じゃありませんね。」

なのは「どうするの?
    ひょっとすると、何かの間違いだったのかも知れないよ?」

やる夫「いや、これで確信が持てたお。」

奥村弟「確信?」

やる夫「モナー卿は、やらない夫を皇帝の密偵だと思い込んでこんな行動に出たんだお。」

奥村兄「皇帝の密偵?」

やる夫「モナー領がこの短い間に領土を広げたのは、
    ひょっとしたらけいおん共和国と繋がっていたのかもしれないお。」

奥村兄「・・・はあ?」

奥村弟「つまり、モナーにしてみれば
     連合との関係や、寝返り、それに類するワードにはかなり神経質になっていた?」

やる夫「やらない夫にしてみれば、モナーに皇帝・帝国への不満がないか
    それとなく調べるつもりでも、モナーはそれを疑われてると思い込んだって訳だお。」

なのは「確かに内通してる本人にしてみれば、
    他人に訊かれる、ちょっとのことでも過敏になっちゃうかも知れないね。」

奥村兄「はぁー・・・、それで伯爵を内偵だと思い込んじゃったから捕まえた。」

奥村弟「だから美府家に使者を送り、出方を見ていた。」


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99 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/03(日) 23:25:43.78 ID:KHbyXFOM0



やる夫「国境の砦に兵がいないのも、皇帝の命令で追討軍が攻め込んでくると
    思い込んで本拠城に集結させてるからだとすれば納得できるお。」

奥村弟「しかし、モナー卿がけいおんと繋がっている、
    その手の噂は耳にしたことがありませんし、そんな素振りも・・・」

やる夫「繋がっているといっても共和国政府、共和国軍と内通していたのか、
    政治家、軍の指揮官と個人的なコネクションを結んでいたのか、第3者を挟んでいるとか、
    どこまでつながっていたかまでは分からないじゃないかお。」

奥村弟「なるほど、帝国を離反するまではいかないにしても、
    敵と戦っている素振りをするとか、情報のやり取りをするといった
    繋がり方の程度が弱く、小さいものなら動向はつかめなかった可能性はある。」

奥村兄「おー?(´ε`;)」

なのは「えーとなの?(;´Д`)」

やる夫「しかも内通する者同士の間に別の勢力、誰かが割り込んでいれば
    モナー卿、卿と戦っていた共和国軍自身さえ、お互いの動きが敵に漏れている、有利に働いている、
    そういう可能性を知らなかった場合もあるお。」

奥村弟「しかし、そういう事であれば誤解を解くことで解決することもできますよね?」

やる夫「ああ、モナーにやらない夫が皇帝の密偵じゃないことを立証できればな。
    でも、それができるのは皇帝まどかだけだお。」

奥村弟「・・・確かに疑ってかかっているモナー卿に、
     僕らが何をいっても効果はないでしょうね。」

奥村兄「なー、無理なんだろ?
     だったら、ウジウジ考えても仕方ねーじゃん!!」

なのは「そ、そうだよっ!
    それより、一刻も早くモナーさんの館に攻撃しちゃえばいいの!!」

奥村弟「・・・に、兄さん。高町卿まで・・・。」


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100 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/03(日) 23:26:06.33 ID:KHbyXFOM0



一方、モナーの館では300の兵が立てこもりの用意を始めていた。

モナー「なっ、何!?」

*「すでに高町男爵、奥村双子男爵の軍が美府伯の手勢と合流!
  このモナー領に進軍していますっ!」

モナー「位置は・・・、今、どこにいるモナっ!?」

*「お館様、国境の砦からはことごとく兵を退いております。
  ゆえに敵が今、どこまで進んでいるかは・・・」

モナー「ええいっ!
    こんなことなら、やらない夫を生かしておくべきだったモナッ!」

*「・・・今更ながら、本当に皇帝の密偵だったのでしょうか?」

モナー「やらない夫は新即出の『乞食若殿』を幽閉しているモナ。
    それによって知久に所領の安堵を許されているというのはもっぱらの噂モナッ!
    やつは皇帝、いやさ鹿目の手先モナ!!」

*「しかし、このような時期に・・・」

モナー「連合との戦争が始まった今だからこそだモナ!
    今までのモナーの戦いぶりに、知久はモナーの内通を感づいたに違いないモナ!!」

*「倍以上の敵とどう戦うか・・・」

*「いや!
  時期に平沢殿の援軍が来るとの事。」

*「おお、それならば美府勢など恐るるに足らん!
  奴らは内地の戦を知らぬ弱兵。しかも総大将たるやらない夫はこの世におらん!」

*「いやいや、高町男爵は武辺者と聞きますぞ。
  その兵も日々、鍛錬を欠かさず精強という話です。」

モナー「その高町も死んだモナ。今の当主は9歳の小娘!
    訳のわからん奥村の双子の男爵や、『乞食若殿』なんて素人モナ。
    戦は大将の力量で決まるもの。勝てるぞ、この戦ッ!!」

家臣一同「おおー!」


.
101 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/03(日) 23:26:39.86 ID:KHbyXFOM0



モナー領を進むこと2日。
やる夫勢はモナー卿の居館にたどり着き、着陣を始めた。

やる夫「・・・まず、やらない夫の安否が心配だお・・・。」

二階堂「はは!
     早速、使者を遣わし、まずは交渉を始める用意が・・・!」

なのは「手ぬるいの!」

やる夫「!」

二階堂「!?」

なのは「相手が人質を盾に時間を稼ぐ以上、これは援軍を待っている証拠なの!!」

やる夫「いや、なんでそう言い切るんだお?(;´Д`)」

奥村弟「籠城する以上、援軍を待っているのが戦の常法です。」

なのは「だから敵に時間を与える前に全力で叩き潰すのっ!」

奥村兄「おうっ!やっちまおうぜっ!!」

やる夫「アイエエエ!
    や、やらない夫がどうなってもいいのかおっ!?」

なのは「それが人質を取る連中の常套句なのっ!
    人質を返すつもりなら、犯人は逃げ出してるハズなの。
    逃げずに盾にしている内は返す気は最初からないものなのっ!!」

やる夫「で、でも・・・」

なのは「大砲を撃てッ!」

高町勢は躊躇せず、モナーの居館に向けて大砲を打ち込んだ!


.
102 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/05(火) 00:08:49.09 ID:wSq6TqCy0



戦いは呆気なかった。

敵を甘く見たモナー勢はたちまち散り散りになってしまった。
兵は戦いの必要を認めず、武将たちも援軍を過度に信用していた。

兵たちは主君の敵との内通を知っている。それを皇帝に咎められた以上、
楽観的に物事を考えるものは少ない。ここで戦うだけバカバカしいではないか。

何より肝心の頼みのけいおん軍は一向に姿を見せず、のらりくらりと進んでいた。
向こうにしてみれば利用価値のなくなった敵を助ける理由も思いつかなかったのである。

一方、やる夫勢はやらない夫を害されたという怒りで勢いが盛んであった。
何より数が違いすぎて、ほとんど戦闘にならなかったのである。



                  ______
    _                |   炎上中  |
   `))               | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄        ジ
       ( )            ∧              ジ ャ
      ( )         <⌒>     (⌒ ⌒)    ャ |
 ウーウー.( .人         /⌒\  \( ,,  ⌒)// | ン
    人/  ヽ  ______]皿皿[-∧( ⌒ ,,  ,, )  ン
   ( ( )( )  ).三三三∧_/\_|,,|「|,,,! (  ,,   )   !!!
  __| ̄田 ̄田 / ̄ ̄Π . ∩  |'|「|'''|「(    )
 /__,|==/\=ハ, ̄ ̄|「|ガシャーン |「| | *   +
/_| ロ ロ 「 ̄ ̄ ̄ | | 田 |「|  田 田 |「|[[ *
|ll.|ロ ロ,/| l⌒l.l⌒l.| |    |「|        |「|ミミミミミミ ++*:
   λワー  ∧     λワー   λワー
  λワー   | |  λワー    λワー



やる夫「今だ、敵を押し潰せおっ!!」

二階堂「おおっ!」

やる夫「燐ッ!逃げる敵を追え。
    態勢を立て直し、戻ってくることもあるかも知れないおッ!!」

奥村兄「分かった!」


.
103 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/05(火) 00:09:26.88 ID:wSq6TqCy0



奥村弟「・・・勝ちましたね。」

やる夫「やらない夫が勝たせてくれたんだお。」

奥村弟「・・・そうですね。」

ふたりは馬上から味方の最後の攻撃を見守った。
なのはも燐もよく戦っている。ふたりはやらない夫が帰ってくると信じている。

だが、この場にいるふたりは勝ちを喜べずにいる。

『謀反人・美府伯爵を捕らえた。』

モナー側が送ってきた書簡は、皇帝にはもっと詳しくそれらしい言葉が並んでいたに違いない。
雪男の差配で国境は固められている。時期にモナーの送り出した使者を捕らえることもできる。

つまり、モナーは内通の濡れ衣をやらない夫に着せるつもりでいたのだろう。
それらしいニセの証拠をでっち上げ、自分とけいおんの繋がりをやらない夫に結びつけるのだ。

その上で謀反人として捕らえ、例えばけいおん側の密偵と密会しているところを捕らえたとか、
自分にも内通を迫ったとか、それらしい理由を付ければ良い。

しかし、やらない夫は隙を見て逃げ出そうとした。
改めて捕らえようと追手を出したが、誤って死なせてしまった。

口封じである。

やる夫「・・・戦いっていうのは、つらいな。」

奥村弟「・・・・・・。」


.
104 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/05(火) 00:10:22.53 ID:wSq6TqCy0



3時間もすると完全にモナー勢は投降した。

当主であるモナーと一族郎党も逃げる間もなく捕らえられた。
燐と盛義がモナーにやらない夫の所在を迫ったが、案の定、モナーは言葉に詰まるのであった。

奥村兄「おいっ!てめえ、なんとか言えよっ!!」

奥村弟「・・・兄さん、伯爵は・・・、もう・・・。」

なのは「い、いや・・・、そんなのひどいよ。
    やらない夫お兄ちゃんを殺すなんて・・・っ!!」

モナー「・・・・・・。」

奥村弟「モナー卿、美府伯爵は皇帝の密偵ではありません。
     貴方の一方的な疑心暗鬼だっただけです。」

モナー「そ、そんな・・・。
    じゃあ、モナーは何のために、なんで、こんなことで・・・!」

奥村弟「ご自分の責任をとってもらいましょう。
     潔く受け入れなさい。貴方は取り返しのない過ちを犯したんですよ。」

モナー「い、いやだモナ・・・。し、死にたくないモナーッ!!」

やる夫「・・・・・・。」

二階堂「若・・・、いえお館様。
     ご裁断を。」



          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ \
        /                 \
       /        _ __ __ノ ,l :l ヽ、ヽ
      /        fr‐t―‐ァ j  {rァ-ァ \
     /.          `≧--┴'´  '┴≦´  、
     |           /          ヽ l
     ..|.           {      ム    } |
     |.          `======'⌒====ク l        >>110
   .  \.                     /
       \                  /         @ モナーを処断する。
       /ヽ                イ\
      /          ``ー- -‐'"´    \         A モナーを放免する。
                                  \


.
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/05(火) 00:13:32.04 ID:icN/aTdio
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/05(火) 00:14:53.91 ID:XQKmognJ0
ksk
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/05(火) 00:53:25.06 ID:FzT5RMEa0
放免する理由はない…か?
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/05(火) 01:48:45.10 ID:YokzLX5IO
普通に1がいいなー
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/05(火) 02:38:25.82 ID:XQKmognJ0
圧倒的1
110 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/06(水) 00:38:51.30 ID:UL3gm/xg0
・・・とりあえず一旦取り下げまして・・・
111 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/06(水) 00:39:23.31 ID:UL3gm/xg0
・・・とりあえず一旦取り下げまして後で取り直しませう
112 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/06(水) 00:39:54.74 ID:UL3gm/xg0



皇帝軍は3つの部隊に分かれて進軍を始めた。
美樹公軍4万8千、暁美侯軍1万、そして皇帝直属軍8千である。

美樹公の陣容は騎兵3万、歩兵1万、大砲28門砲兵8千名からなる。
この騎兵は美樹公国の9割を占める騎馬民族『ミキ族』からなり、帝国騎兵は全てこのミキ族で構成される。

ミキ人は猪突をもって知られ、法外に疲れを知らず屈強で、戦えば無鉄砲で恐れられている。
ただし、おおよそ皆、短躯で騎乗しても馬に負担を与えず、機械体操選手のように俊敏である。

暁美侯の陣容は全て歩兵である。これは暁美侯爵家がキョーアニ大陸に新興した家であるためだ。
その編成と装備も5段に別れ、最後尾は長槍の重装歩兵だが前にいく程、装備は軽装になっていく。

前段から中段列、彼らの多くは他の帝国諸侯に見られない装備をしている。
それは古代ギリシアでいう『ペルタスタイ』のような小さな円形の盾と投擲武器だ。

ペルタスタイはファランクスを構成する全身を覆い隠す円盾『ホプロン』を装備した重装歩兵『ホプリタイ』に対し、
小径の円盾『ペルタ』を持って戦場を動き回り、投槍、投石で戦う軽装な遊撃兵を呼ぶ。

この軽装歩兵はアレクサンドロス大王の騎兵部隊に追従し、騎兵の死角に回り込もうとする敵を押さえ込んだり、
動きの鈍いファランクスと騎兵の間に敵が入り込む隙を与えないよう働いた。

これは単に安価で大量動員できる以外の利点はなく、途轍もなく練度は低い。
しかし実際に戦えば柔軟性と機動力で騎兵を翻弄し、ただの重装歩兵のみの連合軍主力をよく叩いた。

最後に皇帝まどかの直接指揮する軍は皇帝を総大将とし、老中衆が100名単位で重装騎兵5千を率い、
それに長弓兵3千が追従する。

皇帝軍は全て鎌倉武士のような長弓を装備している。歩兵だけでなく、騎兵もである。

彼らは中世、ビザンツ帝国の『カタフラクト』のマギカ帝国版というべきもので、
しかも剣以外は全て、長槍、長弓の大型兵装を携えた超重装騎兵だった。

加えてビザンツ帝国のカタフラクトと異なり、通常兵力ではなく貴族の子弟で編成された生え抜き部隊で、
さながら移動する宮廷というべき威容を放っている。

さらにマミ帝の末期に一部、馬上銃と胸甲で火力と正面衝力を増した胸甲騎兵を動員していたが、
大老知久の命令により、調達不能の銃に代わって装備はクロスボウに改められてしまった。

当然、練度は帝国軍最強を誇り、維持には莫大な費用を要したが、マミ大帝の草案により編成された。
まさに中二病と冗談と悪ふざけをコンクリートミキサーにかけてぶちまけたような代物!!


.
113 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/06(水) 00:41:28.61 ID:UL3gm/xg0
>>110 >>111 Oh…



皇帝直属超重装騎兵部隊『ティロ・キュイラシェ(最後の騎兵)』は連合軍通常兵力20倍、
連合騎兵の2倍の攻撃力を誇るとマミ大帝は豪語し、
連邦陸軍総裁折木をして「それは綺語だが、嘘ではない。」と冷笑をもって認められた。

だがそれだけではない。

続く鹿目公領、伝来の長弓兵は幼少の頃から訓練を重ねた熟練兵であり、鹿目の家名は
『アメノマカコユミ』に由来するとマミ大帝に賞賛された。

アメノマカコユミは『天之麻迦古弓』と書き、アメノハハヤこと、『天之波波矢』と対をなす。
これは古事記では『マカコユミ』だが、日本書紀では『マカコヤ』とも伝えられている神の弓矢である。

その持ち主こそ宇宙創成以来、高天原に君臨する天の最高権力神、タカミムスビにほかならない。
その名の意は「矢をよく弾き、鹿を射る」である。

これには帝国の実質的な最高権力者、大老知久侯を暗喩していると諸侯は合点したという!

さらに長弓も長い年月を重ねて改良を加えられた複合弓で、大陸全土に広く普及している弓とは異なる。

大陸での多くの弓は丸木弓という一本の木から削り出されただけの単弓である。
しかし鹿目公領の長弓は、家ごとに異なる獣や魚から作られた膠と大型獣の腱や骨を使っていて、
製造法も門外不出となっており、ひとつとして同じ素材、製法の長弓はない。

代ごとに訓練を重ねた長弓兵と帝国の潤沢な資金力で集められた騎兵部隊。
これを最悪と言わずになんという!



※ 最高権力神と最強神。
高天原を支配するのはアマテラスだが、実質的な実権は高天原が宇宙に誕生して以来、
そこに住み、支配していたタカミムスビなのだ。後に支配権をアマテラスに譲っているが、
その後も権力を持ち続けていることが平安時代の絵画でアマテラスより上座に座る姿を以て示されている。
アマテラスは高天原のみならず宇宙でもっとも霊力の強い神だが、地上で生まれているため、
天界で生まれたタカミムスビより劣るためと言われている。


.
114 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/06(水) 00:42:10.86 ID:UL3gm/xg0



対する連合軍は装備や編成の上で語るべき一切を持たない。

まずなし崩しの形で氷菓連邦は福部、伊原の両陸軍大将にそれぞれ5万、あわせて10万。
騎兵はなく、全てが歩兵だが、砲兵1万の陸戦用の大砲78門という重装備である。

氷菓連邦は王国、帝国と違い、志願制度の職業軍人や傭兵が主体であり、
装備も国産で統制され編成は小隊編成のひとつ手前の近世初期の方陣や隊列ごとのシステムを導入している。

システムだけをあげれば連邦軍はもっとも革新的だが、まだまだ未発達のもので、
兵そのものの練度も低く、まだまだ指揮官の力量に頼らなければならないレベルから上がってきてはいない。

SOS王国は国王ハルヒが皇帝に張り合って出陣を迫ったが、

長門「・・・・・・。」

キョン「バカは止せ」

谷口「やめとけ」

国木田「やめといたほうがいいよ」

阪中「あ、危ないと思うのね・・・。」

朝倉「ここは私たちに任せてもらえないかしら?」

コンピ研「まあまあ、ここは出方を見るということで・・・。」

朝比奈「ふえ・・・ふええ・・・。」

古泉「あはっ♥
   どうでしょう、涼宮さん。ここは僕らに任せて後詰・・・、ということで納得して頂けませんか?」

と諸侯の猛反発を受けて断念せざるを得なかった。

それでも後発は譲らず、阪中、谷口にそれぞれ2万を与え、自らも10万の兵を用意すると
先遣として長門、古泉、朝比奈を派兵し、残りは残留、あるいは後の増援として国内に残した。


.
115 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/06(水) 00:44:09.38 ID:UL3gm/xg0
>>118

@ モナーを処刑

A モナーを放免
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/06(水) 00:52:01.51 ID:Rzg5YSMw0
ksk
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/06(水) 01:10:56.80 ID:sKQIIlmno
1
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/06(水) 02:51:08.48 ID:kRDB/T4IO
1だよねー
119 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/07(木) 00:31:48.79 ID:nGB4bupB0



さて、舞台は翻って帝国西方。

モナーと一族を処刑したやる夫勢は足早に美府伯領に逆戻りを始めた。
その間、けいおん共和国の援軍はモナーの居館が落ちたことを知って、国境の砦を占拠、進軍を停止した。



                  ―――――――― 、
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.           |:. :   ¨二ニ=ミ _ノ  廴_ 幺=ニ二¨      |
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.           |   i{    ( ・ )  川 li|il 从  ( ・ )    }i  |
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            :.        /            \        : /
           ヽ     /               ヽ  : : : /
         /\.   {               : : } : : : /\
        /        ヽ      人: : : : ノ: : : : : :.:.:.:.:.\
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┌───────────────┐
│やる夫はモナーを処刑した!   ....│
└───────────────┘

┌─────────────┐
│やる夫の統率が+3!!   ..│
└─────────────┘



奥村弟「放っておきますか?」

やる夫「今は・・・、それでいいお。」


.
120 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/07(木) 00:32:41.43 ID:nGB4bupB0



目的を果たせず帰路についた一同の足取りは重い。

奥村兄「なのはちゃん・・・。」

なのは「うう・・・。
     だ・・・、大丈夫なの・・・。」

特にやる夫に次いで、やらない夫と付き合いの長いなのはは重症だった。
美府領までの道中、ほとんど食事にも手をつけられず、馬上から落ちる場面もあった。

美府伯爵邸に戻ったやる夫は着た着のまま居間に腰を下ろし、雪男、盛義が続いた。

無言の主君に雪男が口を開く。

奥村弟「これを機に、正式に帝国から離れましょう。
     すぐにでも異変に気づいた中央から使者が来るでしょうから。」

やる夫「・・・うん。」

奥村弟「立つ鳥跡を濁さずともいいます。あくまで堂々と。」

やる夫「・・・ああ・・・。」

二階堂「・・・。」

奥村弟「・・・。」

雪男と盛義は顔を見合わせ嘆息した。これでは今後の方針すら定められない。

もちろん、この場は二人でなんとかすればいい。しかしそれでは何故やらない夫は死んだのか。
やらない夫はあくまでやる夫に辺境伯家当主になって欲しかったのだ。

方針を周囲が決め、やる夫をお飾りにしてしまうのは、やらない夫の志を無にする。
なんとかしなければ・・・。


.
121 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/07(木) 00:34:05.70 ID:nGB4bupB0



奥村弟「やる夫、今後の方針ですが・・・」

やる夫「分かってるお。
    連合と連絡をつけないと・・・。」

奥村弟「それなんですが、僕が使者として向かう、ということでいいでしょうか?」

やる夫「盛義や燐には軍備を任せたいし、それでいいお。」

奥村弟「・・・それでは困るんです。」

やる夫「?」

奥村弟「モナー領をそのままにはしておけません。
     このまま辺境伯領として組み込むなら、僕は内政面の整備を進めなければ・・・」

やる夫「・・・ああ、そうか!」

モナー亡き後、旧モナー領は無政府状態であるはずだ。
一応、雪男の差配で奥村男爵家の家人や兵士が残っているが、けいおん軍は我が物顔である。

奥村弟「もともと共和国の領土ですからね。連中としては領有権を主張したいようですが・・・」

やる夫「いまはヤブヘビで帝国軍が出てくるのを怖がってるってことかお。
    いっそ放棄してもいいんじゃないかお?」

奥村弟「それも考えましたが、今後、連合に加盟した場合、どうなります?」

もとを正せばこの辺り、旧新即出辺境伯領は全てけいおん共和国領だった。
ただでさえ身内の争いごとにことかかない連合である。禍根になることも考えられた。

やる夫「一部を返すなら全部返せと・・・、そうなる可能性もあるかお。」

奥村弟「そうでなくとも、一部でも返す、という言い訳にはできます。」

やる夫「頭が痛いな・・・。」



         _____
      ,..-''"´           `''-,,
    ./                \
   ./                      ヽ
  /  ___     ____   ',
  ,'   ____        ____    ',
  l   l ●   l       .l ●   l    l      >>125
  l   ヽ、_ ノ      ヽ、_ ノ     .l
  ',                        ,'         @ モナー領を併合する。
  ',       (__人__)      /
   ヽ、     └――┘       /         A モナー領を放棄。
    ._`''-..,,_    ̄ ̄    _,,..-''"_
,..-''"´                    `"''-..、


.
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/07(木) 00:38:01.63 ID:pa5w5/Ro0
ksk
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/07(木) 00:53:21.41 ID:gv9qS1Cxo
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/07(木) 06:20:32.87 ID:D4nY+x1e0
1
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/07(木) 10:08:04.15 ID:ljUEPzLIO
1
126 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/09(土) 00:30:48.89 ID:k0K7z34n0



奥村弟「それは今、モナー領に進駐している共和国軍と事を構えることになりますが?」

やる夫「連合は一枚岩ではないお。」

奥村弟「それはつまり、強国の後押しを得てけいおん共和国の領土を
     我々が併合する、と?」

二階堂「そっ、それはあまりに強引ではありませぬか・・・!?」

奥村弟「・・・・・・。」

雪男はとくに反論しなかった。

やる夫「連合にとっても、加盟国が均一の強さというのがネックなんだお。
     リーダーシップを発揮できる強力な一強国、それが必要なんだお。」

奥村弟「・・・では、《氷菓連邦》がいいでしょう。」

やる夫「なぜだお?
     国際的な影響力を考えれば、《SOS王国》が妥当だお?」

奥村弟「強すぎます。
     寄らば大樹の陰。我々が完全に飲み込まれかねません。」

SOS王国こと、『(S)涼宮王家による、(O)大いな、(S)世界を支配する、王国』は
キョーアニ大陸で最大版図を誇り、兵力は一国で100万に及ぶと言われ、人口は1億2千万を数える。

年間歳入、80億両(テール)、これは帝国の1.5倍。経済力、工業力、軍事力、いずれも群を抜いている。
何より、雪男の脳裏に浮かぶのは涼宮王家の独裁王政による強大な指導力であった。

帝国と違い、王国の領国は『太守』と呼ばれる一種の知事によって封じられている。
彼らは皆、中央の貴族、士族階級であり、王に任命され、領国に赴任している。

太守職は一代当人限りで、親族への継承権は認められず、
帝国と違い一族による所領の相続を認められていない太守はあくまで王の代理人である。

そのため太守職をめぐって上流階級が競い、争うことはあるが、王に反旗を翻すことは少なかった。
太守任命特権は涼宮王家を安泰にし、王権を伸張せしめ、他勢力は互いに争って疲弊するという図式を生み出した。

しかも太守になろうと誰もが競い争うことで、優秀な官僚体制を維持し、それが王国の繁栄につながった。



※ 両(テール)
SOS王国のみで通用する銀貨。帝国はディナリウス、連邦はディナール。
それぞれ銀の含有量が異なるが、事実上、連邦のディナールが大陸全土で使われている。


.
127 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/09(土) 00:31:16.17 ID:k0K7z34n0



だが、惣領の甚六という言葉がある。跡取りは身分が安泰なのでボンクラになるということだ。

歴代国王は国庫を圧迫し、無限の権力を持て余した。

過剰な動物愛護を唱えた『イヌ国王』。子作りばかりに励んだ『オットセイ国王』。
歴代国王の異名だけで動物園が開業できそうな勢いの王国だったが七代にして転機が訪れた。

六代国王ハルヒコ4世が夭逝し、4世の母から見て30歳年下の妹で、外縁にあたるハルヒが七代国王に即位した。
中継ぎとしてハルヒコ2世に代わって3年在位した姉、女王ハルヒ6世に続くため、彼女を俗に『ハルヒ7世』と呼ぶ。



                   -───-
              . ´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.、:.:.`:..、
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            ,:':.:.:.:':.://:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\.ハ:.:.:.ト:.:ヽ
              厶才:.:.:.:.':.:.:.:{:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ:.:.Yヾ.:.
           く / /:.:.:.:.l:.:.:.:ハ:.:.:.:.:.:i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:{\.ハ
            /:yヘ.':.:.:.:.‐!‐:/ :l:.:.:.:.: |:.:.:.:.:.厶斗:.:|:.:.∨:.:.:゚,
           ,:./ /l|:.:.l:.:.ハ:l \ト:.:.:.:、lヽ/:l ヽ l.:.:|:.:.: ! ヽ:.l
        i/ イ |:.:.l:.:.| x==ミ ヽ:.:.:V ヾ ==ミ:.:.リ:.:.: !ヽ ゚,
         W:l  |:.:.:ヽl{芹ハオ   \l イハ仇}/:.:.:.:.ト :.Y
        l:.:.:.\l:.:.:.:.:{ 込zソ     込zソ イ:.:.:.:.:.| 〉:.:.|
        |:.:l:.:.:.:|:.:.:.:∧      '  _,   /:.:.:.:.:.:|':.:.:.l|
        |:.:l:.:.:.:l :.:.:.:.込、  マ´ ̄ ノ  .イ:.:.:.:.:.:.从:.:.l|
        |八: 从:.:.:.:.:.:.:.:〕ト    ̄  .イ:.:.l:.:.:.:.:./:.:.:.:/l|
        |  ヽ:.:l:\:.:.:.:.{:.:.:ノ  ー‐  {:.:!:.:イ:.:.:.:/:.:.:.:/ .リ __
            __\ -\:.匕      乂:.:.:.:.:イ__厂∨Υ r─ \__
        〃´  |:i:i:i:i| \       /イ〕厂ヽ       |ニニ  廴
        ノゝ. _  |:i:i:i:i| ー─ 、   ─_厂 ×x \.   ‐|──   //
        /     〕iト:i:i:i| __ __ _「 // --\ >   レ \′.//
     ./     }              〉  \   /   (\r 、 //



女王は代に数えないことが通例であったが、ハルヒ7世に関しては彼女が未婚であり、
男子たる後継者がいないため、共同統治者ではなく単独の国家元首として認められたためである。

ただし、これは彼女が結婚し、夫を共同統治者とみなした場合、
歴史の教科書は書き直される予定であるが、予定は未定である。


.
128 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/09(土) 00:36:08.41 ID:k0K7z34n0



そして、王国の屋台骨と呼ばれるのが今回の出兵にも参加した長門である。
出自の長門氏は神別氏族であり、王国でも最古の家系にあたる。

軍略と政治に長け、「退くも長門、進むも長門」と一目置かれる存在である。



           , . /: ィ彡:=:-: : : : : : : : : : : `: ..
        ,.. :´: : : : : : ヾミ: -: : : : : : : : : : : : : : :ヽ、
       ,.': : : : : : : : : : : : : : : : : 、: : : : : : : : : : : ヽ\
        ,.: : : /: : : : : : : : :/: : : : : ヽ: : : : : : : : \ :\\
        ,: : /: : : : : : : :〃: : : : : : : : : : : : :ヽ:\ : : \ハ
      ,: : : ;: : : : : : : : /: : : : : : : : : : : : :ト、: : : :.',: : : : ヾ}
       i: : : : : : :/ : : :/: : : : : : : /|: : : :: :ハハ:: i: : : : : : : y
       |: : : : : :;': : : : i: : : : : : :./.ノ: :,ィ: : iム_从!: : : : : : : i
     八: : : : i: : : : :.|: : : : :.∠/: :/ j: :./ ,__ハ: : :i: : : : !
        ∨: :_j: : : : :.|: : :ィ/_//_ // ,ィf笊ミ}: :/: : : :.,’
       Y 小rイ: : !: /イf示笊ミ./   r'f::j ,':/: : : i: :
        ハ{ 从::i: :.:W ヾ{イf::j:リ     `'''´イ: : : :ノ:/
         }ト、._∧: :トミ、 ゞー''´      ヽ   i: :イ:.:/
           }:.ハ: :ヾ:.、       _ _   イ: : :/イ
             /^}レ:ヘ: : ヽ 、.         /i:ノ!:.:/
         ,.:.:.:.:.i{  \: ',  >   _./、  j;/
        /:.:.:.:.:.:..ヽ   \   /:.:.:.:|::||:::.       ┌──────────────────┐
.     ∠.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..∧     イハ:.:.:.|::||:::::i       │SOS王国長門国太守              .│
.    /:::::::\:.:.:.:.:.:.:.:.:.∧     ノ i : :|::||:::::|        │長門有希(出典:涼宮ハルヒシリーズ)   .│
  /⌒ヽ\::::\:.:.:.:.:.:.:.:∧ __ ,.'  }!:.:.|::||:::/      └──────────────────┘



怒髪すれば諸侯、顔色を喪うとも言われるが、生来、寡黙であり感情を発露させたことはない。

戦場では『長門式方陣』と呼ばれる歩兵を複数の断裂に組み合わせた陣形を考案し、
帝国や連邦の”騎兵信仰”、騎兵一騎は歩兵の10倍の兵力に値するという信仰を破砕した。

これは王国全軍に組み込まれ、中層階級、農民出身の兵士を大量に動員することで
訓練された騎兵を破る、というのが王国軍の基本戦術になった。


.
129 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/09(土) 00:36:57.47 ID:k0K7z34n0



奥村弟「優秀な家臣団に、強力な指導力。
     僕は連邦に着くのが得策だと思います。
     連邦は王国に対抗して力をつけたい。僕らに協力的になってくれるでしょう。」

やる夫「なるほど、すでに力のある王国はけいおんと敵対してまで、
     今更こんな小領を欲しがったりはしない、かお。」

奥村弟「はい。
     あくまでここは帝国の辺境。大陸全体の主戦場から見ても、
     さほど重要な地域でありませんから・・・。」

二階堂「やはり、けいおんに返すべきですぞ、お館様。
     人の道に外れておりまする。」

やる夫「戦争を商売にしている人間に道なんか関係ないお。」

盛義は絶句した。
真実であるが、武士に対し、それは禁句である。

殺生は悪だ。理由など関係ない。確かに強者=悪の図式は真実だ。
それは悪=強者ではない以上、ただ悪人というより、強い悪であるほうがマシというものだ。

欲をかいて何が悪い。飢えて死ぬのが正しいならいっそ生まれた時に死ねば良い。
だから人も殺すし、悪行も重ねる。そしてもっと悪を重ねるために力も知恵もつける。

だから主君は家臣を褒める。「よく殺した。」と褒める必要がある。「次はもっと殺せ」と命令する。
そうでなければ兵は血に酔って、悪に手を染めることはできぬ!

二階堂「お館様、ご無礼ながら、それは主君たるものの心構えにあるまじき言葉!」

やる夫「なんだとお!?」

二階堂「お館様は、兵には死ね、殺せ、とお命じになる立場。
     家来の前で殺すな、死ぬななどとは努努おっしゃいますな。」

やる夫「うぐ・・・、でも・・・!」

二階堂「>>135


.
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/09(土) 01:22:35.30 ID:lHeRdL7IO
毎回少し遠いよ…
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sag]:2013/02/09(土) 01:35:45.82 ID:WZVw22PA0
ksk
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/09(土) 02:42:12.47 ID:lHeRdL7IO
ksk
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/09(土) 02:42:40.40 ID:lHeRdL7IO
ksk
134 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/10(日) 23:26:44.24 ID:BfPxmMPr0
>>130 それは失礼
135 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/14(木) 00:13:35.12 ID:dzFb/1Ic0





       ∧_∧
      (´・ω・` )
     O^ソ⌒とヽ
     (_(_ノ、_ソ
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/14(木) 00:28:15.73 ID:BJjVVsZIO
長ゼリフの中で自由安価はちょっと難易度高かったかもねw
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/14(木) 00:49:29.31 ID:kWpbREan0
面白いとは思うんだが…うん
色々ややっこしくてどう安価取ればいいのかわからないってのはある、さっくりとやらない夫死んじゃったし
138 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/17(日) 22:14:39.36 ID:h5XpDKQv0
>>136
それは、分かった。うん。
ただ方向がアレなんで、もっと気楽にやっていいかなっと
ここでいきなり二階堂が「俺は女だっ!」「キルミーベイベーは死んだンだッ!」とかいうぐらい
>>137
バイオレンス感が足りないと思って・・・(汗
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/18(月) 03:03:53.90 ID:W5J0heIIO
そんな適当でいいんなら幾らでもとるぜw
140 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/21(木) 00:28:26.06 ID:EsC8vpzH0



                      ,r';;r"            |;;;;;;;;;;;ヽ;;;;;;;;;;;
                     ,';;/             /;;;;;;;;;;;;;;;ヽ;;;;;;;;
                     l;;'            /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;',;;;;;;;
                    . ,l;L_      .,,、,--ュ、 ';;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;iソノ
                    ヾr''‐ヽ,  ,、ィ'r-‐''''''‐ヽ ';;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|
                     l rO:、;  ´ ィ○ヽ    'i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;、l
                     | `'''"/   `'''''"´     !;;;;;;;;;;;;;;;/ l |
                    . ,'  /   、        |;;;;;;;;;;;;;ノヽ'/
                    . l  ,:'   _ ヽ       .|;;;;;;;//-'ノ
                     ', ゞ,' '"'` '"       i;;;;;i, `' /
                      ', i、-----.、       `''"i`'''l
先ずは大殿様のご葬儀を        .ヽ ヾ゙゙゙゙ニニ'\        ,'  ト、,
                       ヽ ヽ〈    i|          Vi゙、
執り行うほうが先でしょうっ!      ゙, ,ヽ===-'゙ ,'     ,   // ヽ
                    .    ',.' ,  ̄ , '    ノ  /./    ヽ,
                    .     ヽ.  ̄´   / ,、 ' /     / \
                         ノ:lゝt-,-‐''" / ,.ィ゙     /
                    ,、 - '''´  |  ヽヽ /,、ィ     /

激しく打ち据えられたような気持ちにやる夫はなった。
親兄弟のように慕っていたやらない夫のことをすっかりと忘れていた。

というより真実、やらない夫の死を考えたくなかったということであろう。

やる夫「・・・確かに忘れていたお。」

二階堂「しばらく腰を落ち着けなさいませ。
     雪男殿も気が逸り過ぎておりますぞ。」

奥村弟「分かりました。
     二階堂さんの言うことが正しい。」

二階堂「大殿様の死はまつりごとの触りにもなりましょう。
     領内の名士を集め、お館様がご当主として、辺境伯家の再興をなされることも、
     内外に示すためにも。」

やらない夫は享年30歳。実子はなく、やる夫が新領主になることに反発する者もいないだろうが、
全てをここにいる者たちだけで決めてしまうのも障りになる。

二階堂「奥村領からも主なった方々をお呼びくだされ。
     今回の出兵のことで、おおよそのことは伝わっておるはずですが。」

奥村弟「そうですね。
     では、僕は奥村領に戻ります。兄は・・・、兵の訓練を続けてもらうということで。」

やる夫「うん。」


.
141 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/21(木) 00:28:52.32 ID:EsC8vpzH0



    | {二二}{二二| {二二}{二ニ ,'| ! .二} |二}{二二}{二二} |   |
    | {二二}{二二| {二二}に.  ,' j | ニ二} |二}{二二}{二二} |   |
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    | {二二}{二二| {二二 ixヘ' ニ |__| ニ二} |二}{二二}{二二} |   |
    | {二二}{二二| {二二 \:::辷z.!i_ ニ} |二}{二二}{二二} |   |
    | {二二}{二二| {二二}{ ヘ.::::::::::( ゚< ニ} |二}{二二}{二二} |   |
    | {二二}{二二| {二二}{  くx=┬< .ニ} |二}{二二}{二二} |   |
    | {二二}{二二| {二二}{二二 八  二} |二}{二二}{二二} |   |
    | {二二}{二二| {二二}{二二.〈上〉 .二} |二}{二二}{二二} |   |
    | {二二}{二二| {二二}{二二 r=' 二二} |二}{二二}{二二} |   |
    ,廴_____,|______`爪 __,|__________|__|_
 >'´     ___ r、 (二) __,トニニニオ___
'´      / /二.Y´  `Y 二 乂___,乂.二二∨\
     ,/  /:.:.rz介=─=介z:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∨ \
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  | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



やる夫「・・・そうだ、飯。」

奥に入ったやる夫は食事をまともに摂っていないことだけは覚えていた。
しかし、台所に女たちはいない。連日のことで人は出払っている。

やる夫「適当にアボカドでもかじってるかお。」

青くうれ過ぎたアボカドが台所に転がっている。
刃物はやる夫には使えない。適当に皮を手でむしる。

やる夫「むしゃむしゃむしゃ・・・」

薬味もつけず、そのまま口に運ぶ。手が緑色になった。

やる夫「・・・むちゃむちゃ・・・」

美府家の家人たちは忙しいであろう。しかし蕩児のやる夫は手伝うこともできないのだ。
やらない夫がいなければ何もできない。何かをしようとさえしなかった。

やる夫「ううう・・・っ!」


.
142 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/21(木) 00:29:19.70 ID:EsC8vpzH0



奥村兄「う゛わっ!
     何やってんだよやる夫っ!?」

やる夫「うぇ?
     ・・・ああ、燐かお。お前も食うかお?」

そういって隣に落ちていたバナナを拾って燐に差し出す。
燐は迷惑そうにがなった。

奥村兄「んなもん食ってんじゃねーよ。
     俺が何かまともなモン用意するから、あんたはその辺で座ってなって。」

そういってアボカドを口に放り込んだままの肉団子を台所から排除すると
燐は手馴れた様子で料理の準備を始めた。

余談だが近年、生活力の高い男子の主人公が増えたものである。
女に好かれたいのか、媚びられたいのか、お前らはどっちだ。

さて、大陸は広大で様々な気候、地形を持つ。帝国西方、大陸の南西〜南部一帯は熱帯に位置し、
暁美侯領の中心を貫く『ソウスケ河』の流域には『カシム大森林』と呼ばれる熱帯雨林が広がっている。
                          フルメタルパニック
ゆえに南西部で取れる作物はすべて『鋼乱たる失史時代』でいう赤道直下の果物となっている。

しかし大陸に住む住民の殆どが失史時代の日本人のため、日本風の米が作られていたり、
ほとんど我々と変わらない食生活を送っている。

やる夫「藤本獅郎神父のお葬式って・・・、どうしてたお?」

奥村兄「獅郎の葬式ぃ?
     別に、普通だけど。」

やる夫「・・・そうかお。」

奥村兄「やる夫はまだ小さいから、ちょっと分からねーかもな。」

※ やる夫11歳(元服前)。

やる夫「むう、燐とそんなに変わらねーおッ!」

奥村兄「全然違うって。」


.
143 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/21(木) 00:34:29.67 ID:EsC8vpzH0



やる夫はしばらくぶりに燐と一緒に過ごしていたことに気がついた。
やらない夫と奥村領から戻って以来、燐は兵たちと居た。

今後の方針や相談事をする相手は、かつてはやらない夫であり、今は雪男だ。
やる夫はすっかり雪男を信頼しているし、頼りきっている。

時々、むっとすることを言うが悪い奴ではない。
その間、燐のことはすっかり忘れていた。

だが燐はやる夫と違って何もしていなかった訳ではない。
いや、きっとこれまでもそうだったに違いない。

奥村双子男爵領も雪男がひとりで切り盛りしていた。領民や家臣団もそう思っているだろう。
だが真実、燐はできることをしっかりと頑張ってこなしていたのではないか?

やる夫「すまないお。
     ・・・なんだか、お前をのけ者にしてるかも知れないお。」

奥村兄「良ーッて良ーッて。
     俺、雪男みてぇに上手くなんか言えねぇし。
     そういうの苦手だから。」

やる夫「・・・やらない夫。」

やらない夫はどうだったんだろうか。
一向にやる気を見せず、人間性を捧げるとか意味不明なことをいっている自分を、
飽きもせずに盛り立てようとしてくれていた。

やる夫は何も知らない。知らないところで頑張っている相手のことは考えずに来た。
というより、何もしていないものとさえ考えていた。

やる夫「なんか手伝うおっ!
     やる夫にも仕事を捧げるおっ!!」

奥村兄「いや、いいって。」

やる夫「やらせろおっ!」



         ____
       /⌒  ⌒\
      /( ●)  (●)\
    / ::::⌒(__人__)⌒:::: \    やらせろおっ!
    |     |r┬-|     |            ↖
    \      `ー'´     /              性的な意味にしか聞こえない
      >         <
     ( |        / )
      `|       /'
         |  (u)  /
       ヽ  ヽ/
        >__ノ;:::......


.
144 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/21(木) 00:35:48.59 ID:EsC8vpzH0



千反田「皇帝が負けた?」



             /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
            .:::::::::::::::::::::::::::::::::::/::::::::::::::::::::::::::::i::::::ハ
           / 二ニ=---:::::::::::::′::::::}::::::::::::::::::{=ニ...'.
            /::::::::::::::::::::::::::::::::::::i ::::::::::::::::::::}::::::::::{::::::::::::.
          ′ : :::::::::::::::::|::::::::::::| :::::/:::::/::/|:::::::::j{::::|:i::::::
          ′ :::::::::::::/::::::|::::::::::::|::::/:::::厶イ L::::::ハト|:i:::i:|
            i::/::::::::::::/::::,.-|::::::::::::l::/ レ‐¬    γ |:i:::i:|
            l/ :::::::: //::/{ |::::::::::::| r=云示    庁 |:i:::|:|
            / ::::::::::///∧ |::::::::::::|  弋:ツ     り ,:::i:::|:|
        /:::::::::::://////ー|::::::::::::|    ,,    、'' {:::i:::|:|
         /イ::::/: ////////|::::::i:::::|          ':::j::ハ!
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        ′│{::::::::l////r=ミ|::::::i:::::|  `  ..,,,___//::::::::::/ ′
      |  |::ハ::::::| -=ニハjノ|:::::jt::::|   /≧=-://}:::i::l::/ /
      |  -=ニニニ二二∧ l:::i| |!::|   /` }ニニニニ|:::i::}ニ=-
     , <ニニニニニニニニニニ∧:::i| |!::l     }ニニニニ|:::i/ニニ} ヽ
      /   ヾニニニニニニ二二∧j| |i:ノ   -‐/ニニニ/::/ニニ/   }



タテガミ平原で戦闘が始まって半月後、帝国軍が敗走したという情報が連邦にもたらされた。
しかし帝国軍の圧倒的強さは連合にとって敵ながら神話地味たところがあり、疑いの声が叫ばれた。

事実、勝てる要素は連合に見当たらず、なぜ勝ったのか釈然としなかったほどである。
また大統領、千反田えるは新皇帝、3代まどかに過度の好意的な期待があった。

外交的新手に始まった、新体制をドラスティックに舵取りする専制君主に
重農主義をとり、ハト派の共和制指導者が憧憬するのはややいびつな構図とも思えるのだが
穏健派の千反田としては和平の望みは、敵の指導者まどかだけなのだ。

千反田「て、帝国軍の損害は!?」

折木「味方の心配を先にしてくれ。」


.
145 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/21(木) 00:36:42.93 ID:EsC8vpzH0



さて、2週間前、両陣営の戦闘はタテガミ平原で始まった。



┓          ┣━━━━━━━━━┓      ┃        ┗━━━━━━┓
┠─────┨                  ┗━━┳┛      日常共和国    ┏┛
┃ コンピ研国 . ┃                        ┗┓  ┏━━━━━━━┳┛
┗┳━━━┳┛      《厨二合衆国》    ┏━┻━┛   ★         │  ┌
  ┃      ┗━━┓    ┏━┳━━━━┛                    ┌┘  │
┏┛            ┗━━┛  │         凸             └──┘
┛                        └─┐      ホムラポリス.
┓     ワルプルギスの夜伯領   │
┃                          ┌┘
┗━━┓                    │                暁美侯領
      ┣──┬──┐    ┌─┘
      ┃高┌┘    └─┬┘
  ┏┳┛町│          └┐
━┛│領┌┘            │
    ├─┘              └┐
    │      八波伯領      │
─┐│                    │    ┌──────┐    ┌──┐
二└┴┐            ┌──┴──┘二二二二二二└──┘二二└───
二二二└──────┘二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二
二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二

★・・・『タテガミ平原』
日常共和国と暁美侯領の間ぐらいにある平原。


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146 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/21(木) 00:37:16.60 ID:EsC8vpzH0



タテガミ平原。この《日常共和国》、《マギカ帝国》の国境地域には『ガウルン砦』、『東雲砦』があり、
その東北に、タテガミ平原の主邑『トキサダメ』がある。

トキサダメは都市城壁で囲まれ、環濠と河川で寸断された中洲と山脈を挟んだ地形に建つ要衝である。


                               『日常山脈』
『タテガミ平原』                       ∨i:∧         ∧      {i:i:i:}
                           }i:i:i:{       ∧      }i:i:i}
                           Yi:i:i:}     ∧   凸 『トキサダメ』
                              寸i:i:\    ∧        {i:i:{
                              寸i:i:\    ∧     }i:i:}
                               寸:『東雲砦』 凸    {i:i:{
                                 寸i:i:\         }i:i:i:} 『トキサダメ河』
                                   `弋+、   -≦i:少’
                                   ゚ゞミ.=-彡i:ソ        ▲
                        『ガウルン砦』 凸   ,+':i:iW        ▲
                                   .彡i:i:少’        ▲ 《帝国軍》
                       ▲            .+’i:i≧-'’
                《帝国軍》 ▲      ,+':i:iW'´ ̄´
                         ▲     ./i:i:i:i:7



トキサダメは軍司、この地域を守る駐屯部隊が兵営する主要な地方都市であり、
「トキサダメはこの世の美しさの半分」と呼ばれるキョーアニ大陸中央で屈指の商業都市である。

この会戦も、このトキサダメ攻略を目的として行われており、マミ大帝時代から
帝国軍は何度か攻め上っては、野戦でこそ大勝しても都市の攻略そのものには失敗してきた。

それは大軍を思う存分に活かせる丘陵地帯であるということ、
そしてその要衝を抑えるガウルン砦、東雲砦が連合によって守られているためである。

地理的要素、敵地であることの補給の不備や情報の不正確さ、何より大帝の武力一辺倒な戦略と
足並みは揃わないものの連合の圧倒的兵力差が帝国の敗因だった。


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147 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/21(木) 00:37:47.96 ID:EsC8vpzH0



            /: : : :∠: : : : : : : : : : : : : : :V:{
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           从:ハ, ==ミ    z===ミ |: :/ 、{ `
           ゝ:} ///     ///   ,ノ:/  }`
             :,    '        r__/
              、   、  ,,   イ:.:{
                 \    ̄    //⌒!
            /ー― ヽ.,_ .   ´ , ′  { ̄}
      / ̄`¨¨¨/...‘,    }    /{     { イ/⌒¨¨¨ ヽ
.      /     ,. イ >}  / }   _/ !   :,::/       ‘.     .┌───────────────┐
     /  {. //::/ /  |     }−   }    、 / ̄   ‘.   │氷菓連邦陸軍大将第4軍司令  .....│
.     ′   /::::::::/ \  |   / ̄ ̄ ¨  ‐- ..,\        ‘.   .│福部里志(出典:氷菓)        │
   「{   }../::::::::/   ハ. |ー―{            ヽ          └───────────────┘
  ノ   {/::::::::/   /  }|: : : / ̄ ¨ 丶       ノ ̄ `ヽ }



まず氷菓連邦、福部陸軍大将の第4軍、伊原大将の第3軍、両軍あわせて10万がガウルン砦に布陣した。

この時、トキサダメ河の西岸には美樹公軍4万8千に、ワルプルギスの夜伯爵の2万、
八波伯爵の2千3百が加わって7万と飛んで3百になっていた。

美樹公は難攻不落の要塞にも容赦なく突進し、激しい攻撃を仕掛けた。
騎兵主体と思われがちな美樹公軍だったが、今回は砲兵8千大砲28門からなる攻城戦仕様である。

しかもワルプルギスの夜伯軍も大量に農民兵を動員して周囲の私掠を命じ、
要塞を取り囲んで、完全に孤立させた。

援軍に駆けつけた古泉、朝比奈、長門軍も、この事態に急ぎ南下を早めた。



※ 陸軍大将(おかいくさのかみ)
連邦の公職。定員2名。
軍の階級「大将(ジェネラル)」ではなく大統領府閣僚、連邦陸軍省の「長官(かみ)」である。
連邦評議会議員から選び出され、職掌を掌握する。実戦の補佐には「中将(おおきすけ)」をあてる。
彼らはローマ軍の参謀将校(トリブヌス)にあたる職業軍人である。ただ専門的な光彩が強い公職であるため、
議員自身も職業軍人出身者、従軍経験者から選ばれる。また将校も大将の執事たちがほとんどである。

※ 氷菓連邦陸軍第4軍
南西の福部州、十文字州の州軍を統括する鎮台。
古式ゆかしい連邦軍の中核をなす信頼の厚い軍団。騎兵力の過半を有する。
近年はSOS王国の重装歩兵による長門式方陣、帝国の超重装騎兵によって大敗。
組織全体の刷新が提唱され、陸軍総裁折木の指導により近代化が進められている。

※ 氷菓連邦陸軍第3軍
東北の伊原州に駐屯する軍集団。伊原州が海に面し、地理的に折木州、千反田州に囲まれ、
かつての外敵、SOS王国とも戦う機会も少ないため、弱兵とされていた。
海洋貿易による国力伸張に伴い、やはり陸軍総裁折木の指導で増員と近代化が進められた。


.
148 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/21(木) 00:38:18.21 ID:EsC8vpzH0



     l:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ、:.:.:.:.:.`ヽ:.:.:\:.!ヾ!:.:.、:ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\
    ∧:.:、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.\、:.:.:.:.:.\:.、ヽ:.:.:ヽ:.',ヾ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:._ヽ. _
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      ヽ:!   ノ           !:.:.:.:!  l:!ヽ:.:.:!、:.:!、:.:i:.:.:.ヽ
        \   ` .┐, フ     !:.:.:!   !   \ \ヾヾ:.:.!`ヽ       では、長門さんはここで単独行動に出ると?
                  t _     !:.:!    . . <  ∧ `ヽ _
                   ヽ  .ィ∧ . . ´/    _ .>._        ”退くも進むも長門”と呼ばれる貴方の意見です。
                  ´ i:.i/ : /   才´    `ヽ
                    /l iヽ/   /    匕´  ヽ      .無論、止めはしませんが・・・
               _..イ ζo:ハ   /   /        \
             ,  ‐ ´< 〃:j: ,  ヽ ̄   /               ヽ
               l   イ / : /    '  才              i
              __l ,  i  ': :/  / /                    l
            / /   l  ': / /  l /               ,'





                             、     ヽ.
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          /イ {::::,:::::::::l.   う`´ソ         ハ::J::} ),i::.:./':.ハ:/
           / !:::/!!::::::/    `¨¨          う_У /:j/':/ ノ
.            {'  |::::/ヽ.__          ′   ` ,:':/:/:/
              !:;′ヽ::\.      '"'     /:.:.:/ |'      皇帝直属軍の編成は明らかに野戦を想定している。
              ':{   ノ丶丶、          ,'::/{
                `    _ヽ} `  、  , </'′           皇帝まどかの思惑は要塞への援軍を野戦で叩き、
             , 、、--':. :.`丶、   {こヽ、
              ,ィ;';';'`ヽ\\:. :. :. :ヽ-'´ ̄\ヽ ー 、_          .主邑「トキサダメ」を暁美軍で直撃することにある。
          /;';';';';';';';';'\ヽヽ:.__ヽ===、`}:. :. :.} }丶
            i';';';';';';'{';';';';';'ヽУ||: : : : :. ̄ ̄ ̄ : : ¬} }:.|;ハ      .ガウルン攻略にあたっている美樹軍は陽動。
            |;';';';';';';ヽ;';';';';';'|| .||: : : : : : : : : : : : : : :.:|リ:/;';';i


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149 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/21(木) 00:38:45.45 ID:EsC8vpzH0



古泉「確かに皇帝の思惑はそうでしょう。
   しかし、ガウルン砦が陥落すれば平原の南に橋頭堡を与えます。
   第一、涼宮さん、連合の指令はガウルン方面への援軍です。」

長門「私の8千が抜けたところで大局には影響はないと判断する。」

古泉「それはそうでしょうが・・・」

ガウルン砦の連邦10万の兵士はどうする。
攻囲する帝国軍の略奪や補給線への打撃に、いずれ守備兵のストレスは限界に達する。

援軍は迫っている。それだけが彼らの頼りだが、この分では援軍がどこまで来ているか、
砦の福部、伊原の両大将にはわかっていない。

さて、シンガポール要塞の陥落は大英帝国の栄光を破壊した、と豪語される。
大英帝国、その東南アジア支配はシドニー要塞とシンガポール要塞の駐留する兵力が支えていた。

大日本帝国はこれを果敢に叩いた。そして日本軍の猛攻にシンガポール要塞は陥落する。

しかし英米連合軍が降伏したとき、日本の第25軍も弾薬が底をつき、攻撃中止が取沙汰されていた。
おまけに英国本土からの援軍はインド洋にまで到着していたのである。

極端な例であるが、あと少し耐えれば勝てるという守備側があと少しも攻められない敵に
鼻の先で根負けしてしまった好例といえる。

重ねて言えば、帝国軍の強さは連合にとって神話的な畏怖すら思わせるところがあった。
古泉も神経質になっている。

しかし―――

*「トキサダメ河の東岸に新たな帝国軍が布陣!
  おそらくは暁美侯の軍団と思われますっ!!」

古泉「!」

朝比奈「ふえええっ!?」

長門「・・・やはりこちらが狙い。私はここで東進し、東雲砦に入る。
   許可を。」


.
150 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/21(木) 00:40:10.41 ID:EsC8vpzH0



朝比奈「で、でもぉ・・・それだと私と古泉くんだけで
     こ、皇帝さんが自分で指揮する軍団と戦わないといけなくなるんですよね?」

長門「・・・古泉一樹、貴方なら皇帝を抑えられる。」

古泉「ですが、貴方の読みが外れた場合、8千で東雲砦を守れますか?
   しかも相手は皇帝と暁美侯の両軍を合わせた1万8千。」

長門「問題ない。」

両者の間に張り詰めた空気が走る。

古泉「どちらにせよ、東雲方面の援軍は必要でしょう。
   その場合、帝国も抑え役を貴方に振る。僕と朝比奈さんは暁美侯か皇帝の一方を相手にするだけで済む。
   そういう意味でしょうか?」

長門「そういうことになる。」

古泉「わかりました。」

長門「・・・・・・ひとつ。」

古泉「はい。」

長門「・・・暁美侯の軽装歩兵が相手になれば長門式方陣は不利。
   だからこそ、皇帝がタテガミ平原で貴方たちと戦う必要がある。」

古泉「超重装騎兵ですか。
   長門式方陣では・・・、確か過去に3度撃退していましたね?
   貴方が、ですが。」

長門「・・・マミ大帝と皇帝まどかの戦い方は違うハズ。
   そして彼女は必勝を期してこの会戦に臨んでいる。」

古泉「油断するなと?」

長門「違う。
   ・・・覚悟が必要。可能な限り損害を抑えて負けることを考えて欲しい。
   十中十、勝機はない。」


.
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/21(木) 00:54:10.52 ID:HcTWtaCIO
おつ?
152 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/23(土) 03:14:15.47 ID:YXZRQwi60



その頃、件のガウルン砦では。

福部「いやー、こうして一歩も動かないっていうのも
    やってみると辛いもんだねえ。」



             / : : : : : : : : : : : : /: :|: : : : : : \
            .: : : : : : : : : :/: : : : ://1!: : : : ',: : : :.
           /: : : : : : : : : /: : /://   リ∨: | : ', : : :.:.
             /: : : : : :/ : : /: : /ノ|:{     \{\}: : : ::ト、
.           /: : : : : : {_: : :{: イ/  j/ \      ヽ: : : : :.
       ,.  イ: : r― ン/ー}: :/ヘ≫==ミ.、\_,   ι 彳: : : :.
    /: : : : : : : / / / /:.{   んハ ‘:     `ー''}: : : ハ}
    ´/: : : : :..::/ │ |  |:.:∧  弋:ツ_,     斥_从j: / {
    /.::::::::::: .::::〈{  | │ }: : :∧""        り_, ` /{_{
.   レ八::::: ::::::::::\      ヽ: ハ:} u       :::,,  ,,∧ \
      ∨::{:::/}:::\     \リ            イ:::} }  }
      乂{リ ∨、:::丶      \ u   / ̄}     ノノ´   {
       __________  )、:::\        / : : : /  /     /      ふくちゃんは他人事みたいに言わないでっ!
     /ニニニ\ニニニ==-:}     } ゝ __, ′/    /
    /  ―  \\ニニニ/      j>... __, ィ´     /
.   /       ヽ \\ニ.′      / -=ニ{      {ニ}¨ヽ
   ′       \ ∨ /      / {  \ニヽ      ∨   \
  |             \/      ∧    ∨∧     ,    ‘.
  |           /      /ニ∧´  ̄`ヽ:ハ      ′.|   |
  |          . ′      /ニニ∧     }∧     ,|   |
  |                 /\ニニ∧   }=∧     ′ │
  |       /         .′\ヽ二∧  ,:二∧   ┌───────────────┐
  |       /         / \..\\=}  /ニイ∧  .│氷菓連邦陸軍大将第3軍司令     │
                                 .│伊原摩耶花(出典:氷菓)      ..│
                                 .└───────────────┘



福部「データベースは結論が出せないからね。」

伊原「昨日からそればっかりじゃないっ!」

福部「どっちにしても援軍が来るまで手出ししないほうがいいよ。
   大昔の篭城戦では軽く200日ぐらいは立て篭ったって言うし、
   こんなの序の口だよ。」

伊原「えー、そんなにじっとしてるのーッ!?」


.
153 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/23(土) 03:14:41.39 ID:YXZRQwi60



福部「勿論、バカ正直に敵も包囲してるだけじゃないだろうしね。
   こうしてる間にも、水の手は抑えられてるし、周辺の村は焼かれるし、
   坑道を掘って地下から来るかもしれない・・・」

伊原「えーっ!」

福部「内通者が出るということも十分にあるんだ。
   ほとんどの篭城戦は、これで決着してるしね。」

伊原「ちょっと・・・、怖がらせないでよっ!!」

福部「何も怖がらなくてもいいよ。
   連合を裏切って、僕らが帝国にこの砦を明け渡してしまいさえすれば
   こんな厄介事は今すぐにも終わらせることはできるんだから!」

伊原「それ、本気じゃないわよね?」

福部「僕の口から言わせるのかい?」

伊原「・・・答えは出せないのよね。」



        /: : : :.://///////////////
       /: : :..:./{///////// イ/>イ/
      /イ : : : : : ://////}/:::://:::::/イ::
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      │: : : ::|l// :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
      小、: : :|V:::--===ミト、__::::::::::::::::::、__
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.       }′} :.!::::::::::::::''¨¨¨ヽ::::::::::::::::::::::::/
       {   ∨ハ::::::::,,,,________::::::::::::::::::::::::::_
         、  V人 -=.,弋炒 ,:::::::::::::::::::::::::::.
        \ ー::、     -=::::::::::::::::::::::::::::::::
           ーハ          -=..:::::::::::::::::
             |:ヘ            }:::::::::::::
             リ  ,         レ┐::::
            ,,ヽ、    ____}_::::   ・・・・・・。
           /........Ei:、   ` ー‐ァ:::´:::::
          i{ ...............W:::::\     }:::::/
          |=\ヽ.........}:::::::::::`::---:::´::::::
          |ニニ\>┤:::::::::::::::::::::::::::::::::


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154 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/23(土) 03:15:09.85 ID:YXZRQwi60



..     /   /    /  /  /|  !     ヽ    ∨  Vハ ∧
      /    |   ′ /!  ′   |     |  ハ   |   | Vハ
.      ′      | | /|/  |: |     |   {   ! |   |/》 i
        |   ハ  l|l\l.′ |l |     |\ 斗z―||   |/i  |
     | |     ′| || |\__八丶i 、  レヘ |ハ l、|   |/》 |
     | | | | l W ,x乞ミ     ヽ\ | rテ乞x、V||   |/l  |
     | | | 人 | |/fう..ハ       ヽ! fう..ハ 刈|   !V , |
     ′|  |  介{  !.;...;..j           |..;...;..i   !  「 V 八
.     } |     |  弋zヅ         乂zツ   !   |/八.′ \
     ノイ | | ||  , , , , , 、   ′   , , , , , 、 |   |イ ,
     八 | | l八          .へ         ,.| | レ! /
      `l  |  l 价       〈_ _〉       イ j l | j/      全く誘いに乗らないじゃないっ!
         l    { '  {> ...         .. r介  イ 八{/
        , |  い , 八_≧=‐---‐=≦_ノ/' }/ }/  !        なんで砦から出てこないのよっ!!
       人 l、 ト ∨乂{Fミー―┬r─‐=彳   /
          ヽ| \{     ]    ̄||| ̄  [



一方、帝国軍もしびれを切らしていた。
もともとそれほど自重のきかない美樹公爵さやかである。無理があった。

それというのも皇帝の戦略としては美樹公には、ガウルン砦に援軍をおびき出すだけで十分だからである。
長門の看破したとおり、数に劣る帝国軍の基本戦略は野戦で連合の大軍を破ることである。

*「しかし勅命です。」

*「殿下、ご自重を。」

*「水の手は切りました。
  後は援軍と兵糧の運び入れを断ち、間者を送り込んで様子を探り、
  時期をみて攻撃を始めれば・・・」

さやか「うっさいわね!
    当て役だってことぐらい、私にもわかるってのッ!!」

*「それが勅命です。」

*「殿下、ご辛抱を。」

*「恐れ憚ることながら、援軍を皇帝陛下が必ず撃退できるとは限りませぬ。
  なればこそ、今は包囲を守ることが肝要。この際、砦よりもこちらを重視なさいませ。」


.
155 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/23(土) 03:16:24.03 ID:YXZRQwi60



その時、本陣に漆黒の大鎧の姿のままの偉丈夫が現れた。
西方諸侯のひとり、今回の兵役では美樹公軍の翼軍として働く、ワルプルギスの夜伯爵である。

*「おお、ワルプルギスの夜伯爵。」

*「どうされましたか。」

*「伯、何か?」

WNLG「・・・・・・。」

※ Walpurgis Nacht LandGraf
ワルプルギス・ナハト・ランドグラフ(ワルプルギスの夜伯爵)

さやか「どうしたの、伯爵?」

WNLG「・・・ひゃっ・・・」

*「・・・?」

*「・・・!」

*「・・・!?」

WNLG「ひゃっひゃっひゃっひゃっ!
    あーっはっははっはっはっはっは!
    ひーひひひひひひひひ!!
    きゃーきゃきゃきゃっ!!」



さやか「・・・もうやだ、こんな役目。」

*「ですが、勅命です。」

*「殿下、もう暫く!」

*「WNLGは帝国屈指の猛将として高名な武人。
  殿下、ここは飽くまで、ご自重を。」


.
156 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/24(日) 00:41:39.86 ID:9tkWZwRu0



ガウルン砦で消極的な戦闘が継続している間に、皇帝まどかと暁美侯ほむらの両軍は
トキサダメ河を東岸から渡河し、東雲砦を攻囲する用意を整えた。

しかし皇帝直属軍はすぐに援軍として美樹公軍に合流するべく、南下を開始した。
SOS王国の、古泉、朝比奈の率いる解囲軍がガウルン砦に救援に向かっているという情報を得たためである。

もちろん、これは擬態であって、古泉、朝比奈両軍を野戦で撃退することが戦略的な目標だった。

一方で東雲攻囲に残された暁美侯軍は、これもあっさりと長門軍の入城を許した。

二通りの理由として、本気で落城させるつもりがなかったこともあったが、それ以上に
長門軍の進軍速度が異常な速さであって、野戦に持ち込むことができなかったためである。

位置すら正確に掴ませず、恐るべき速度で砦への入城を果たした長門だったが、
兵力は8千、砦の守備兵を含めても暁美侯軍とまともに戦えない状態だったため、こちらも何もせず静観した。

しかし小競り合いは起こっている。

まず暁美侯は夜襲を警戒し、わざわざ危険を冒して渡河したトキサダメ河を戻り、対岸に布陣した。
だが長門はこれを罠と感じ取って、戦法上、常とされる追撃戦を断念している。

理由はこの地域での戦勝が、まったく戦局に影響しないことを理解しているからである。
個人の武勇を誇るより、あくまで大局を見据えて戦略を組み立てていた。

暁美侯軍の軽装歩兵は身軽で、王国軍の重装歩兵より格段に軽功かつ大胆な攻撃を得意とする。
渡河中でも逆襲を受ければただでは済まない。まして数の上でも劣っている長門軍はことさら損害を抑えなければならない。

理由は皇帝軍が引き返すことを長門が想定しているためだ。

皇帝まどかが思考が硬直した人間なら、最初の目的に固執するだろう。また情報が伝わらない場合、
さらに古泉、朝比奈両軍との戦闘が早まる、もしくは両軍に捕捉され、引き返せなくなることも十分にある。

しかし長門はこの可能性もあえて計算していた。逆に暁美侯は全く考えていない。
これはほむらが思考の硬直した人物であるためと、ひとりで戦うことが好きなタイプだったためである。

まして彼女の皇帝に対する忠誠心は異常な高みに達しており、信仰とも偏愛とも呼べる領域であった。
ほとんど狂人の思考である。

皇帝が抑え役を振った時点で、彼女の思考は砦に立て篭る長門軍との一対一。
それで停止しているのである。


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157 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/24(日) 00:42:07.63 ID:9tkWZwRu0



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    ノ | ! │   | /_// //  / ,' ∧ / |  / j   l│
     ノ l ァ|   |尢/‐=乞t/ / /∠ニ「厂! / ,/  / リ
     イ 八{´l  !レ<f{矛:下 'ヽ _〃イ孑代勹 イ } /
.        Vハ  |{  r';;_zj  f} ⌒{! r';;zリ /}, '//
        ヽ ',  | ` ー―‐‐ '  、 `ー-- チ' /
         `ヘ lヽ       _      厶 ./
             ', {.代ト、          , イ | /     ・・・・・・。
           \_'i| > 、 _ , イ/ V l./
            / ヽj       {`ヽ   ′
.        _ /  「´        ヽ} \
    _, -‐ ´     l‐--‐、 _ -‐ |   ` ー- 、
. r<\\        ヽ '´ ̄ ___ `ヽl|     / /ヽ
 y⌒ヽ \\      V  ̄ _ `ヽl|     / / ∧
./    ヽ. \\     ∨ ̄  `ヽ |     / / /  l
{      ヽ \\    ヽ     /    / / /  │



次に暁美侯は1千の兵を対岸に渡した。今度は上流から長門軍が手の出せない距離で、
十分に警戒して渡河しており、長門もこれを完全に見逃している。

しかし渡河したこの小集団は東雲砦周辺の村を焼き払い、攻囲戦の常となる守備兵の挑発にかかった。
ここまではガウルン砦と同じだが、暁美侯は美樹公と違って容赦のない人物である。

砦の前で捕虜を残虐に処刑し、死体をカタパルトで城内に放り込み、考えられる手を尽くして
守備側が砦から飛び出してくるのを誘った。

皇帝まどかのためであれば、どんな不徳も悪行も彼女にとっては神への献身に等しい。
あらゆる行為は諒解され、全能を傾けて目的の遂行に傾注していった。

さらに1千、再び1千と兵を渡河させ、本陣を手薄にしてでも対岸の東雲砦の周囲を脅かした。
この時点で守備兵はすでに恐慌状態だった。

それでも長門有希は平然と籠城を続けた。


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158 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/24(日) 00:43:15.10 ID:9tkWZwRu0



そして、暁美侯は最後の手に打って出る。

これは暁美侯が得意としない分野だが、交渉による開城を迫ったのだ。
それ自体は攻城戦では常となる戦術のひとつなのだが、ほむらは極端にこれを不得手としていたためだ。



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       |:..:..:..:..:..:..:.. |^≧=ト|:..:..:..:..:l:..:..:..:..:.ト、       _`  |:...:...:...:...:|    日常共和国の有力者は連合の方針に
        j:..:..:..:..:..,':..:..}    |:..:..:..:..:l:..:..:..:..:.| ./>   ィ    }:...:...:...:...:|
     /:..:..:..:..:./..:.._ノ    |:..:..:..:..:l:..:..:..:..:.|/^\:..:..:l.:..{   |:...:...:...:...:|    とっくに愛想を尽かし始めている。
      /:..:..:..:..>'7^ 丶、. 八:..:..:..:.l:..:..:..:..:.|^Y^r7:. i:..:|   |:...:...:...:...:|
.    /:..:.>'`丶: :\   \ }:..:..:..:.!:..:..:..:..:|j }//:..:..l:..:|   |:...:...:...:...:|    ましてよそ者の勝手に、不満もあるはず。
  /´¨ ̄      \: :\丶.  |:..:..:..:.!:..:..:..:..:|i | ∧:..:..l:八 .   |:...:...:...:...:|



ほむらの読みは殆ど正解に近かった。
砦に逃げ込んでいる住民は、周辺の村が襲われ、残した家や畑が私掠にあっている。

*「王国軍は戦場が他国であるから、真面目に戦おうとしないのか!」

*「鉄面皮め!」

*「早く出て戦えーっ!」

長門を糾弾する声は高くなる一方で、砦内ではとっくに住民と王国軍が戦闘状態であった。
おまけに長門も弁明や釈明をしなかったのでフラストレーションは昂まるままである。


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159 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/24(日) 00:48:46.85 ID:9tkWZwRu0



しかし熱湯に氷塊を叩き込むような暴挙で長門は暴徒を制圧する。

長門「住民を場外に放逐する。」

*「はあ!?」

長門「兵糧の消費を抑える。」

*「しかし、閣下っ!」

*「・・・分かりました。」

そして住民たちは包囲する暁美侯軍と東雲砦の間に放り出された。
彼らは両方に慈悲を乞うたが、長門もほむらも取り合わず、連日の戦闘に巻き込まれ、死んだ。

”進むも退くも長門”。
見殺しにしろと言われれば、兵は逆らうことは不可能である。

長門は日常共和国政府にこれを詰問されれば、住民が兵を死傷させたと弁明している。
また加えて帝国軍に内通している証拠も探し出し、自己の判断を弁護した。

まさに暁美侯ほむらの最大の読み違いは、長門有希に話し合いが通じないという点を看破できなかったことにある。
キョンをして「長門にして、もっともな事であるよ。」と言わしめたほどであった。

むしろ、ショックを受けたのは暁美侯である。
彼女個人の倫理観はマッドマックスのヒューマンガス並だが、彼女の主君がこの悲劇を嘆かない訳がない。

ほむら「長門有希は・・・、住民を本当に見殺しにしたというのっ!?」

*「は、はい。
  砦内に戻ろうとする住民を寄せ付けないばかりか、攻撃を・・・。」

*「敵も限度というものを知らん!」

ほむら「・・・まどかがこれを知ったら、私、どうすれば・・・。
    こんなことになってしまうなんて。」

暁美侯軍は、この事件のあと、積極的な攻撃も挑発行為も慎むようになり、
長門は期を見て、反撃に転じる隙を伺うとともに、国王ハルヒに援軍を要請した。

孤立している暁美侯軍はたったの1万。国王自らが率いる10万の大軍が到着すれば
一気に渡河し、強襲をかけて殲滅するのだ。


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160 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/24(日) 03:02:37.46 ID:9tkWZwRu0



ガウルン砦、東雲砦での戦闘が出口の見えないデッドエンドに差し掛かる頃、
古泉、朝比奈両軍はガウルン砦の解囲を目的に南下を進めていた。

対して、皇帝まどかの率いる8千の皇帝直属軍は、神速とも言える進軍速度でこれを追撃していた。

超重装騎兵『ティロ・キュイラシェ』は装備、野営の荷駄を運ぶ従者や軍馬を数多く抱えている。
これらの調達には莫大な費用がかかっており、非戦闘員を含めれば軍勢は2万余に及ぶ。

驚異的な進軍速度を支えるのは『補助軍』と呼ばれる部隊が持つ兵站能力にある。
これはマミ大帝時代にはないシステムだが、鹿目侯軍がもともと持っていたシステムを加えたものである。

長弓兵に始まり、鹿目侯領はもともと騎兵や大砲などの費用のかさむ兵種を調達できなかった。
代わりに下層階級、平民を中核とした部隊が幾つも作られていたのだ。

長年に及ぶ工夫、創意こそ皇帝まどかが受け継いできた武器であり、
美樹公軍のような大騎馬軍団も、巴大公のような大量のマスケット銃を調達する資金力でもない。



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      '.   liヽ ::'. 廴ノ          乂 ソ,  }/  /'⌒ !::!    ',
      ヽ  l!::::j\V /  ,       `¨´  / /}`) ノ::::!     ノ
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         i ! {:::::::/:::ノ」  ` ┐{ r――‐'´ ,':::::::::::::/:::::::\ \
         | \ヽ:::{-II7_{ヽ   ! | |   _/  ∨:::::::/__:::::::::__::ハ   }
.      , '´\ ヽ:::|'´: : : : :`>---<´: {    ヽ:::{   ̄   `ヽ /



志筑伯仁美は、それ以下である。彼女には累代に及ぶ家臣団、資金力、培われた軍事技術もない。
帝国諸侯で唯一、”武”の分野において淘汰されている彼女が功名を得る道は”治”の分野にしかなかった。


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161 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/24(日) 03:03:05.76 ID:9tkWZwRu0



皇帝と重臣たちがタテガミ平原での戦闘に入っている頃、彼女は帝都マミポリスにあった。

問題が起きていた。巴大公マミ2世は自分に声がかかっていないことに憤慨した。
帝国貴族の序列で言えば筆頭にある。しかし領土の大半を奪われ、力を削がれ、形式上の存在に過ぎない。

せめて武功を得られなかれば、帝国内での復権は望めない。

マミ「仁美さん、私の出番はいつなのかしら?」

仁美「出番もなにも、皇帝陛下は大公殿下に、ご出陣の命令など致しておりません。
   帝国内の、留守役として帝都を堅持し、大役を果たすことだけお考え下さいますよう。」



               .             , ':/           ;      ヽ
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                             ':/:    ::'::::/    '  :/  ', :ト、       '
                           |;'::::.   ...:::!:::|:;イ :::/! /    , ! ヽ::ヽ:.  i
                           ,.、!::::::::.  ' ::/ . !  !/ ,:::/      !  、V   |
                        {l`!l;:::::::::. '::/ ̄丁/ト-j/   -一Τ ̄ V: r.¬
                       ,...ミj !;::::::::.レ'ェェ===x      x===ェェi:. ‖7,'
                         {{ `,,(:}}l、 ::::!"イi;;;r圷         ij;;;rハ`}:. jj/ムゞ
.                      r-`-"jj‖{\ト、 __-亠         ┴-__, ,'/}〈  }}
こんなの、キュウベぇ伯にでも   j::::::::::::`ヽ:入_,ミヽ ,,,,      ,      ,,,, /'_;ノ∧_‖ _
                      {;_:_:`ヽ::..\ 人.      ___        人::ム斗≦  }
任せれば十分なのよ!        `ー-`ヽ ::::::..   >    ´−`   _ < <´::  _ ィ=='
.                  { ̄`::ー-..、ノ`ヽ:::::. 〉   -=「≧ - 壬=-    ヽ::ィ< _,.. ー ¬
                   j;_三_::ミ::::::::ヽ_:j::/    _}`::: ̄ Y  ̄ ´{_     ー{:::    {
.                   `ー ‐‐`ヽ:::::::ヽ _ . rr/  、   lj   ,  ヘrr . _  v-;ー―'
┌────────────────────────┐¬_ィ ー -- 、   ̄ ゞ:ト、
│マギカ帝国巴大公                          │_!::<      /     i \ミ__
│巴マミ(マミ2世)(出典:魔法少女まどか★マギカ)       │j | \   〈:|     ハ   ー 、ヽ
└────────────────────────┘ j | \ /:j   i::.  \   j:: )



仁美「キュウべえ伯には、海軍力を以て氷菓連邦の海運能力を叩けと。
   わたくしも『若年寄り衆』とともに、内政の監視を仰せつかっております。
   どうしてもというのであれば、陛下に伏奏奉るより、他にありませんわ。」

マミ「!!」



※ 若年取り衆
帝国全体の国政を司る老中衆に対し、帝都、皇帝直轄領の内政を司る内政顧問団。


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162 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/24(日) 03:03:34.58 ID:9tkWZwRu0



マミ「そんなこと分かってるのよ。それが何?
   たかだが方伯ごときが、皇帝の代理人のように・・・!」

※ 方伯
地方を治める領主。

仁美「それは殿下がわたくしにそのようなことを仰るので、単にそれに答えているだけですわ。
    外征に参加したいのであれば陛下に尋ねるより他に方策がありまして?
    第一、そのようなことをどうしてわたくしに訪ねられるのですか?」

マミ「他の諸侯が武功を挙げるのがそんなに不満?
   ・・・いじめられっ子の発想ね!」

仁美「わ、わたくしは・・・っ!」

マミ「いいわ。
   時期に思い知ることね!」

マミ2世は辛辣な台詞を残して部屋をあとにした。
仁美はこのような経験は一度や二度ではない。

もともと志筑家は巴家がマギカ大陸を統一し、至尊の地位に就く前は大領を有する大勢力だった。
しかし歴代当主が文治の性格を示す段に、武力は衰え、外皮は薄くなり国防力は衰えた。

それすら美樹、鹿目両家との親交によって補っていたのである。
だが三家が巴家の下風に立つと、武功によって両家は繁栄し、志筑家だけが立身の場を失った。

深窓の令嬢。受け継がれた教養や品の良さだけでは武略に傾倒する帝国での出世など有り得ない。
それでも式典や儀礼、さまざまな政治、法律、行政の知識で帝国での生き残りを志筑家は果たした。

なにより美樹、鹿目両家も古くからの盟友を見捨てることはなかった。
むしろ帝国が後進的な国家から洗練された国家に脱皮するには静謐な志筑家の家風こそ貴重としたためである。

『カラスは全て黒い』。これを覆すにはただ一羽、白いカラスを要する。
志筑伯家は武断を重んじる帝国にあって、唯一の文治の性格を持つ貴族だった。

これを過去形にしたのが、まさに鹿目知久である。帝国大老にして事実上の皇帝と呼ばれ、
切り取り次第で無秩序に膨張する帝国を一気に改革し、新皇帝を擁したトリックスター!

白いカラスが白い大鷹にその座を奪われて以来、志筑仁美、気高き孤高を守る一羽の瑞獣も、
せいぜい物珍しい場違いな珍獣という扱いである。


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163 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/02/24(日) 03:04:41.69 ID:9tkWZwRu0



ゆえに、全く彼女もまどかに嫉妬、憎悪がないわけでもない。
だが愛憎に近い感情が彼女にはある。一種の反駁とも言える。

例を挙げるなら、クラスの暴れん坊の不良と妙に距離を縮める優等生の女子生徒という感か。
憎いゆえに相手を理解したくなる。意識が想像を育み、それが愛欲に変わるのだ。

『私はこんなに貴方を思っている。だから貴方も私を強く意識して欲しい。』

複雑な、ねじれの位置の関係にある両者の絆は、水平の関係より強くなっていた。
ある意味で暁美侯ほむら以上に志筑伯仁美はまどかを思っている。

彼女が皇帝の無事を祈るのは愛憎と、自分の地位は皇帝の後ろ盾あってのものという損得勘定の豪華二本立て。



                    ___
              ,.-‐ ¨`´    ``ヽ、
                /             ヽ
           , '   /    /         ヽ
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.           / /  ./      '.    ',  ',  ヽ  ヽ
         / /  ./      ./ '. '.  '.  ',  ヽ  ',
        ノノ   .l   l  /    ', ',  ',. ',   '.  l
       /     l   l /  ''"´ ヽ ト、  ト、_!   !  l
.       , '     __!   . l /   ,_   ヽ! \ lY  l  ,'
     /    l /‐',   l',ィテうリ゙'     ァミ、_ ! λ ,'
     ヽ、 .   l ヽ、ヽ  ヽ辻り       斥リ゙/! / l/
        〉、   ヽ `ヽヽ. ヽ, , ,        ゞ=' レY ヽ
       ノ  }   ) r‐〉 ヽ、!      、 ' ' 'ノ    }
  ヽ≠'′ /⌒ヽ、__|ミヽ、ヽ、   ‐ ‐  ,. <  _/
    /    /       ヾ、,.へ)``i>-ァ<‐ 、 ,.ィ"´     ああ、まどかさん。
.   {   ./      r‐//´) rェ、_}:} __ Y
   ヽ/ __  、!:::{  '´,.):レ-‐ Y´:::} ‘,       どうか、ご無事で・・・。
.    〈  ´   \ い:!  ´ ノ){/⌒ ';::::}  ヽ、
    ヽ' _      /ア   l:/ し'´ /::::k / /
     〉 ´ \ ./  \ ノ∧ `´./y'´ Y  /
    ,'    入.      Y∨∧  ノ \ノ_ l
    ,' _>'<ヾ、    /}./ .{ヽ、_ノ   ヽ  l
    ! / ´   <ヾ、__ノ// .‘,  ト、  〃>、!
.   l        レv/Y´   ヽ、_.!. ヽイ>′!
.   l       ,.ィ"           レY〉     ./
.   ヽ、_,.ィ"            / \   /


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164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/24(日) 03:24:54.25 ID:kl7wi0yIO
165 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/03/03(日) 03:38:52.01 ID:cNuONnwF0



その対陣に、ひとりの女を憎悪し、ひとりの女を愛している男があった。
タテガミ平原を進軍する古泉国太守、古泉一樹である。



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SOS王国に果敢にして恐れられた無頼の好漢たちを率いる奸雄がいた。
盗賊や荒くれ者の頭領だった古泉一樹が官職を得て、王室に忠を誓ったのはハルヒのためである。

今でこそ、穏やかな紳士めいた男だが、本性は世紀末リーダー伝たけし!の和田町にある。

古泉「てめえらーっ!
    俺に断りもなく女を試しやがって、殺すぞッ!!」

*「オラオラ、お頭の目を盗んで何してやがるてめえらっ!!」

*「ひーっ!」

*「ひいいっ!」

*「あ、アイエエエ!!」


.
166 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/03/03(日) 03:39:19.60 ID:cNuONnwF0



『オノディー党』と呼ばれたこの豪傑たちは涼宮王家の悪政に反発する男たちの集まりだった。
真面目に働いても涼宮王家の浪費によって生活は悪化する一途に絶望し、世を恨み、人を憎んだ。

古泉「はっ!
    カスが何をほざいてるんだぁ?
    留守も守れねえてめえも、しっかりとケジメを着けやがれェッ!!」

*「アイエエエ!!」

古泉「ふー、また殺しちまった。
    ちっ!こう景気が悪いんじゃ、商売あがったりだぜ。
    どいつも酒も女もやらねえ、博打も麻薬も流行らねえんじゃよぉ!」

*「政治が悪いんだよ。悪政だよ。」

*「お頭、ハルヒコ王が死んで、女王が即位するそうですぜっ!」

古泉「ああ?
    あのオットセイ、ようやくくたばりやがったかー!」

*「へい。
  シモと体が立派な以外に取り柄のねえバカ殿でしたが、あっさり死にやがったなー!」

*「暗殺だよ。刺客の仕業だよ。」

*「ああ、あれだけ下半身のだらしねえヒヒオヤジだからなぁ。
  殺そうと思えば、そのへんの小娘にも殺れるぜっ!」

古泉「・・・今度は、女か。
    女王はこの国の歴史にひとりとしていない。
    息子や夫によって政治的な業績を奪われ、歴史から抹消される中継ぎでしかねぇからな。」

*「へー、中継ぎ!
  なんじゃ、そりゃ?」

*「野球だよ。ベースボールだよぉ!」

*「さすが、お頭は学がありやすねえ!」


.
167 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/03/03(日) 03:40:01.46 ID:cNuONnwF0



       : :.     . :  .:     . : : i: : : :イミ:.: :.:∨: :\
     : : i    /. : : . :   . : : :イ:.: :. :.| ハ: : :.i:.:ヽ` \
   :  : : :|:   / : : : //  .:. :.:/ |: : :. :.l   i: : :|: : ハ
:.i :. :. :.:.:i:l : /:. :. :./ '   .: :/  |: : :. :.| / ハ: .;.:.i/: :.
:ハ : . : . : :.|ハ: /:. :. :.イ: i .: ≠―  十: :ハ|尓: :l/ : ト、: i
: :i : : : : : :.! ヘ: : :./: :l: :l: : /  x≧、 |: /  }ヒソ: 小: :| ハ:!
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 | : :i: ハ: |ゝi: :/: : : : :ノイ   `  {' ! /  丶:.:| | ′
 | : ハ: :人..|:∧: : : : : :.|               イ:| }'
 | /  i : : : {'、 ヽ: : : : :.|            ∧: :|       ふっ!
.丿'  |: i: : i: i Τヘ: :. :.|     __  ィ/ ヽ:!
.     ノイ : イ:.ハl ∧: : !       −/   }       女こますだけで国が盗れるとはなぁ。
.     }:/ノイ` }'   ヽ:乂> .     ' ___
     / : ∧  >       / ̄:.、 :. :. :. :. :. :. 、    俺も商売の風呂敷を広げるとするか!
   イ:.: :.: :.:∧     >   ハ∧:. :.\:. :. :. :. :. :\
 /:∧:. :. :. :. : . 、         fヾ/ヽ:. : : : \:. :. :. :. :. :ヽ
. : : : :.∧:. :. :. :. :. :\     |.:´::::::トヽ:. :.: :.:ヽ:. :. :. :. :.:ヘ



古泉は悪漢たちを率い、各地で功績を挙げた。義賊を騙り、官軍に取り入ったのである。
たちまち頭の切れる美丈夫の将軍の噂は都にも届き、国王ハルヒ7世から召喚状が届いた。

古泉「古泉国の一樹。・・・古泉一樹でございます。」

山賊とは思えない美々しい青年に、宮廷の重臣たちも目を奪われている。
古泉は、まさに今日この日のために生まれ変わっていた。

優雅な振る舞い、典雅な発音の都言葉、豪華な綺羅、何より瞳が違っている。
人はいう。目でわかると。ギラギラした奸雄は消え失せ、律儀な商家の一人息子という嘘の経歴に則した好青年である。

古泉「生まれは倭錦の商人ですが、実家の蔵を増やすより、人の生活に役に立てればと。
    発起して有志たちを集め、各地の山賊や悪人たちを捕らえ、王室の恩顧に報いる道を探しておりました。」

*「ほほほ。
  まさに臣民の鏡よ。」

*「陛下、この男の学識は深く、その徳は高く、我々もぜひ、太守職をお与えになり、
  将軍の列に加えるべきと存じまする。」

ハルヒ「へー、おもしろいじゃない!
     採用決定っ!!」


.
168 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/03/03(日) 22:19:52.56 ID:cNuONnwF0



御簾の反対側でハルヒは重臣たちに古泉を取り立てるよう命じた。
この勅命を受け、古泉はほくそ笑んで歩みを進める。

禁裏の千畳間は呆れるほどに広く、国王ハルヒの顔どころか彼女に従う太守たちの顔も見えない。
ハルヒの坐す、御簾の降りている上段の傍らには太守たちが立っている。その列に加わるのだ。

もっとも上段から遠い位置の左右に森、新川、次いで鶴屋、朝倉、またここで柱を挟んで右側に佐々木がひとり。
この時、左側に立っているべき人物がいないので古泉はここに加わろうとした。



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                         /: :/Viイ : l: : :斗芋ミ        V)::::リ: : : :lr' } : : : :ヽ
                           /: :/ : : 八人:从 V)::::}        ゞ=゙|: : : :ル'′:}: :} 人
 くっくっく・・・                ': : ; : : : : : :{ : トゝ ゞ=′  、      リ: :/ : : : ノ:厶ィ^)
                      {: : ハ: : {: : : {: :{ :\     _ ノ ー=彡:/ : :ノ彡'′
 そこは空席じゃないんでね。     八: {人: (\: :ゝ、: : 个ト .      ィー=彡/
                        `ヽ `` ヽ( \: 从ゝ人≧ァ=     |人(
 君の立つ位置じゃないんだよ。                 \  _/<{_  _ ノ \
                               , -‐‐-  _r‐/∧  /`Y^ヽ  /l`ヽ、
                          /{:::::::::::::::::::/.:::::| V∧ ̄ ̄入,//|::::::::}\_
                              /.::{::::::::::::::::/.:::::::::::|  〈 》==《 // |::::::::}::::::::`丶、
┌─────────────────┐
│SOS王国佐々木国太守          .│
│佐々木(出典:涼宮ハルヒシリーズ)   .│
└─────────────────┘



古泉「これは、失礼を。」

佐々木「別にいいよ。」


.
169 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/03/03(日) 22:20:19.90 ID:cNuONnwF0



さらに古泉は歩みを進める。
その先に立つ三人を、古泉は知っている。

まず右前に先王の御落胤、朝比奈みくるである。血統の上ではハルヒ7世の姪に当たる。



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                   , -‐:ク´: : : :`: : : 、
              /;.'´: : : : : :ヽ: : : : : : \
            /:/: : : : : |:ヽ: : :ヽ: :.ヽ: : : .ヽ
             /:/: : : : : /ヽ:ヽ: : :ヽ: : ヽ: : :.ハ
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            |:.:i: : :i: :,x<   丶丶、≧: :i: : iリ
             |: :!: :.:|: :.ィf示ミ     f示xi |: : }
             |: :!:i:r、ヾ:i弋ソ   弋ジ从ノ/
             |: :!,!:ゝ:ヽi      `  .ハ: |/
             |:/: : /: : :丶   ´` , イ: : :.!
            / : :i: : : :|__|. `  .升: :|: : :∧
             /: : : !: : :.:|::〈     |_:ヽ,!: :∧∧
.           /: :>:{ : : ∧:.ヽ,x<>i::ヽ: :∧∧
         /: :,へ:.:.\: :∧:.:ヽ<⌒:!:.:..ヽ ∧∧
          /: : :!  丶:.ヾ'´: : :∧  |:.:.:.:.:/レ}: :.}
.        /: : : :!    ヽ丶,:.:.:.:.∧ff;}:.:.:.:/.i i:.:/
.         /: : : :.ハ     ヽ. \:.:.:} {:.:./ .i i/
        {: : : : : ハ    , -.∧.   V:| |:./  .}__|_
       V{: : : : :.}ィ'´:.:.:.:.:.:.:.}   〉ニ〈   /:.:.:.:}       ┌────────────────────┐
.        \: : :{:.:.:.:.:.:.:., -;_} ,少iハi込 /‐-,_ノ       │SOS王国朝比奈国太守                   │
            \:.ゝ七"   V  .iii__ii_ ./  |      │朝比奈みくる(出典:涼宮ハルヒシリーズ)   ....│
           \:_∧   .Vニ{;;iii__iii__i   |      └────────────────────┘
            /:.:.∧   V:.:.iiii:.:.iii .i   .|



特に能力もないが、国王ハルヒが特別に取り立ててきたという。
確かに大きな功績もないが軍務、政治のどちらにも大きな失敗がなく、この序列に反感を持つものは少ない。

それでも御落胤であること、何より、その人柄は王国首脳部の潤滑剤となって、国政をスムーズに機能させている。
国王の人選の妙ともいわれている。


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170 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/03/03(日) 22:20:46.03 ID:cNuONnwF0



次に当然、左前にキョン。
主に外交の分野で大きな業績を上げており、交渉や経済・通商に長けている。

逆に軍事には全く明るくないため、古泉にとって出世を妨げるライバルになりにくいといえた。
むしろ戦争は外交の延長にある。今後、立身を計るなら、彼は友とするべきだろう。



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        l:.ハ:',:.:.ヽ! -――-    -――- }イ:.:.:l:.:ハ!
        !' Y: :',`          i         i:.:.:ハ,' !
          { ミ,:.:',       .:|       ,':.:/ .}     (絵に書いたようなイケメンだな・・・)
           、ヽ,:.',        :!       ,':./ , ′ 。O
           \ゝ',             ,':/メ
             ヾ:.、   ー ――    イイ/
              ヾ:i 、      ̄    イ:/ .'
                 :l ヽ      / l:'
              ,-┤  `ー−'   ├-、
              / ゝ、           才  ヽ
             _,-'´i    `ヽ     ,-‐'    iヽ、_
        _,..-'´   .l   /`ーヽ   / -‐ヘ   l   `ー、_
  _,...-‐'"´       l   ハ O |   | 〃 ハ   l      `ー-、_



古泉「・・・あはっ♥」

キョン「・・・どうも・・・。」

朝比奈「よ、よろしくおねがいしますぅ!」


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171 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/03/04(月) 23:43:30.34 ID:0CVzGPT/0



          ,, r一-- 、 ,,
        /´         ``ヽ、
      /'               \
     ,;'                  ヽ
.    ノ ,  i      /    ,,   / |ヽ ゙ヽ
    イ i  |   i ,'`メ //  /i  .ト ヽ ヽ
    レ| {   i   |//'´ `メ / / /|  } ト 1
     ',イ   i   r+テ=ミメイ   //'"|´/ / ハ|
      `、ヽ r'メ,  {。;;;;'ソ `   ' ,rz;,y'ノi〃イ .'
       `ハヾ ヘ   i'ー''-    /。シ゚ク /'"
         レ',`'';  i     , `'' / /
          ' i∧ト i,   -   ,イ{ ./
.          ,y}`ヽ |ゝ, _, r '´ リ |/
         ,ノ.:.:.ヽ `', {;;ヽ、.   |i
       ,;<、.:.:.:.:.:.:.`v'" ^,ヽミ、,
.      /,ニヾ`ヽ.:.:.:.:.:.`彡=ヾ}:||i、
..     //  ` `\\.:.:.:.ヘ  i|:||i丶
     ,' f     ヽ \\:.:.:i  i|.||i ',
    イ i      /' \ヽ.:i_,,_|:ii .{     _ ,,r'''i ┐
.    ,' ヘ      、   ハヾ',|ソ,'/i ヽ ノ,ゝ;;=、ミヾ、 i;;|
    '' ̄',      ',   i ヾ`,〃 》 ,イ、  ̄`ヽミヽヽ,i;;|
       ',  \  ',  :i _,,∨,,,_∠、 ヽ   r- ' ヾ、;;;|
       ',    ヽ、', ,ゝr'     ヽ :} 」´,n`ヽメ'ト、>



最後に、最も奥の左側に長門有希が立っている。王国の習慣上、左側に立つ者が右側に立つ者より偉い。
王国最大の功臣、長門はもっとも高い地位にあることを意味している。

そこで古泉は立ち止まる。

ハルヒ「どうしたのっ!こっちへ来るのよ!!」

古泉「はっ、陛下。」

このとき、うっすらと透けた御簾の向こう側に、古泉は初めてハルヒを見たのである。
古泉は女を知らないわけではない。だが、これまで見た女が、女ではなかったのではないかとさえ得心していた。

影を縫われたように立ち止まり、視線が固定される。


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172 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/03/04(月) 23:44:04.30 ID:0CVzGPT/0



             ___
          ィi〔:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.....
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Y^ヽイ   Vハ: : : :∨   |: : : ィiハ--<     ヽ
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                   ヽ        /



即位より4年。初代国王に似て、横暴かつ暴虐無人。自由奔放な暴君として知られるハルヒ7世。
しかし人選の妙とでも言うのか、選んだ官僚、将軍たちは必ず結果を出した。

人を育てる名人。人を使うのがうまい女と誰もが言う。
無論、本人の力量も平凡ではないにしろ、名君からはシリウスほども離れている。

だが古泉にとって重要なのは、土手っ腹に命中した61センチ魚雷めいた衝撃!
恋に落ちたのね。


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173 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/03/04(月) 23:44:44.38 ID:0CVzGPT/0



太守職を預かった古泉はこれまで以上に功績を挙げた。
ハルヒの見込んだ通り、長門に次ぐ功臣として王国の重要な将になっていくのである。



              ___
         ,. --- '´   `ヽ、
.        , '             \
       /.,   ,.  '⌒ェ⌒ヽ 、  ヽ
       // / / .,イ ./ `l | l   、 !
.      | l. | ∧/ ∨  .l ∧ |  ト |
.      | ヽ |ナ''l!二.    ̄`゙|  / |/
        ∨ { く.__j     「 `ソ!イ/′
        ヽ.-ヘ     、  ̄/‐ァ′
          \ ヽ、  っ .//
         ヽノ`  __ イ、l´        古泉君は、本当にすごいのね。
.       _. - ´ |    ヽ \
.    ,.ィヘヽ     ',.   ___ |  `7 、_     戦争でも政治でも、ソツなくこなすのね。
    / ヘ ヽヽ    仁 -‐- |   // / ヽ
     |ヘ ヽヽ.   r  ̄ |   // /   |
     | ヽヽヽ.  !    ! // / l  |
┌──────────────────┐
│SOS王国阪中国太守              .│
│阪中佳実(出典:涼宮ハルヒシリーズ)   .│
└──────────────────┘



古泉「いやいや。僕なんかでは・・・。」

キョン「そうだな。まだ長門には及ばないからな。」

阪中「きょ、キョン君・・・。(^_^;)」

古泉「あはっ☠
    正直なところを突いてきますね、キョン君。」


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174 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/03/08(金) 23:59:12.68 ID:o1f9qFqS0



新川「まあ、ほどほどに。
    ・・・長門さんのご活躍は、人の技とは思えんところがありますから。」

森「そうですね。」

朝倉「本当に人間じゃなかったり?」

谷口「言っとけ。」

キョン「あははは。だが、そのほうが説得力があるな。」

古泉「長門さんが聞いたら、ショックを受けるでしょうね。」

キョン「そうか?
    まあ、冗談の通じない相手ではあるな。」

古泉「・・・まあ、そうですが。」

朝比奈「・・・ふ、ふええ・・・。」

古泉が言わんとしているところを一同は解している。

すなわち、長門有希はキョンに密かに、ただしキョンが法外に鈍感なだけで、ほぼ周知の事実として、
恋しているということか。

だが、ここで各員が苦々しく思っているのは国王ハルヒとキョンの関係である。
両人とも無自覚だが、明らかに愛情が芽生えている。

町娘の恋であれば誰も悩んだりはしない。だが、王国最大の功臣と国王を両天秤にかけたキョンの動向に
他の将軍たちが敏感になるのも仕方のないことではあるまいか?

事実、ハルヒは長門に最近、重要な公務を与える頻度が多くなった。
その分、皆の前に姿を見せることは少なくなり、忙殺される日々を過ごしているようである。

長門も長門で、絶対権力者を恋敵とすることに臆する様子もない。
愛は最後に勝つ。静かに、しかし確かに長門有希は涼宮ハルヒに反駁している。

どんな難題も愛のために耐えている。
だが、見えないハルヒの数え切れない腕が、足が長門を圧死させようと伸ばされる。

なんの希望も反撃の手段もなく、長門はただ潰されていくだけだった。
もう体が壊れるのが先か、心が砕けるか。最期の時以外に救済は有り得ないと誰しもが覚悟した。


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175 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/03/08(金) 23:59:39.26 ID:o1f9qFqS0



だが、将軍たちを冷酷な決意にさせているのはハルヒのためばかりではない。
いまや地獄の番犬と化した古泉一樹のせいである。

古泉の国王ハルヒへの恋慕は薄れてはいない。だが、キョンという壁を乗り越えることができないでいる。

ハルヒが、本人も理解していないだけでキョンと強く結ばれている事実もあった。
だが、それ以上に古泉はキョンという男が好きであった。

女としてハルヒを、男としてキョンを古泉は愛している。どちらも傷つけることができないのだ。
しかし、愛する女を奪われる憎しみが、その思いに応えない男への苛立ちもある。

だが、その矛先を全て長門有希に転じることで、かつての古泉一樹の凶暴性は抑制されている。

さて、長門の苦難は喜悦となっていよいよ古泉を満たし、歯車の崩れる音が進む度合いを早めるごとに
銀河の最奥、いやはての彼方のアザトースが沸き立つように憎悪は溶けていくのである。

あとはキョンとハルヒが結ばれることだけを望んでいる。ふたりが重なり合うとき、
彼の中のシェオルにとばりが落ちる。だが知っているか?地獄は落ちる以外に助かる方法がないことを。



     l:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ、:.:.:.:.:.`ヽ:.:.:\:.!ヾ!:.:.、:ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\
    ∧:.:、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.\、:.:.:.:.:.\:.、ヽ:.:.:ヽ:.',ヾ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:._ヽ. _
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  ノ'   :.:.:l  ヽ _:/         !:.:!':.:l  !:i:.:.:.:.l:.:.:.i:.:.:.:.:.:.:!
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                   ヽ  .ィ∧ . . ´/    _ .>._
                  ´ i:.i/ : /   才´    `ヽ
                    /l iヽ/   /    匕´  ヽ
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             ,  ‐ ´< 〃:j: ,  ヽ ̄   /               ヽ
               l   イ / : /    '  才              i
              __l ,  i  ': :/  / /                    l
            / /   l  ': / /  l /               ,'


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176 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/03/09(土) 00:00:51.23 ID:Uj7V2EqT0



そして戦闘から半月後、ガウルン砦に至る街道筋で古泉、朝比奈両軍は皇帝軍に捕捉された。
ガウルン砦の出城のひとつ『ユイラン砦』を占拠した皇帝軍は『フェイホン高地』を挟んで王国軍と対峙する。

古泉は朝比奈と共に軍議に臨む。

古泉「敵は、フェイホンの丘に布陣するでしょう。
    長弓兵を主体とする鹿目侯の軍勢であれば、俄然有利ですから。」

朝比奈「て、敵の主力は超重装騎兵ですよねー・・・。
     か、勝てますか?」

古泉「そうですね。
    一騎で歩兵20人に相当する戦闘力だと言われていますが、
    長門式方陣の柔軟な動きは、騎兵の正面衝力を押さえ込み、逆撃を与えて倒すことができる。」


                             ↑               ↑
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                              ■



長門式方陣は図のような垂直三角形の重装歩兵の密集隊形である。

いわゆる古代ギリシアのファランクスの変形というべきもので、装備の面でも改良されているが、
最大の特徴である、この垂直三角形の陣形に関して詳らかにしていきたい。


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177 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/03/09(土) 00:01:17.35 ID:Uj7V2EqT0



長門式方陣はこの垂直三角形ひとつを一個戦隊とし、これらを隙間なく組み立てていく。
互いの間に正対する垂直三角形ができる以外、ただの重装歩兵の密集隊形である。



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ファランクスの密集隊形は要するにお互いの盾で隣同士の味方を防御しつつ、
縦の段列の後ろの歩兵の槍の穂先を前に突き出すというものである。

この長槍は当然、長くなれば長くなるほど扱いが難しくなり訓練と習熟度を要する。
だが、長くなればなるほど密集隊形の前列に並ぶ槍の穂先は多くなるという訳だ。



     / ̄〈    / ̄〈   / ̄〈   / ̄〈
     l/",ニヽ   l/",ニヽ  l/",ニヽ   l/",ニヽ
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     ノ'i'i'i'i'iヽ_ノ ノi'i'i'iヽ_ノ ノi'i'i'iヽ_ノノ'ii'i'iヽ_ノ
     (/´"ヽ)    (/´"ヽ)   (/´"ヽ)  (/´"ヽ)



縦の段列が七段ならば一列ごとに七本の槍が同時に敵を突き刺す。
また前の兵士が殺された場合、次々と後ろの兵士が前に進んで常に陣形を保っていく。

まさに下士官が少なく、兵士の数が単純に戦闘の勝敗を決していた時代の軍事システムである。
だが、中世のヨーロッパは政治の混迷が続く暗黒時代であり、軍事技術の改革はなかった。

アレクサンドロス大王のマケドニア式ファランクス(厳密に多くのギリシアの密集隊形と違う)が
銃や大砲のないヨーロッパにタイムスリップすれば十分に欧州制覇ができただろう。


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178 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/03/09(土) 00:01:44.59 ID:Uj7V2EqT0



さて、話を戻して長門式方陣は縦の段列が徐々に少なくなっている。
これはつまり、密集隊形としての攻撃能力が著しく低下するとともに、隊列の維持も困難になる。



                ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
                ■■■■■    ■■■■■    ■■■■■    ■■■■■
                ■■■        ■■■        ■■■        ■■■
                ■            ■            ■            ■



                                      密集隊形の密度を強化
                                     ↙
                ■            ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■↖
                ■■■            ■■■■■■■■■■    ■■■■■■■■ 後列と合流することで
                ■■■■■            ■■■■■■        ■■■■■■■■ 通常の密集隊形に
                ■■■■■■■            ■■            ■■■■■■■■
                        ↗
         敵の前進に合わせ後退



しかし、この方陣の目的は歩兵の動きをより柔軟にするところにある。
密集隊形は寿司詰状態であり、強烈な猛攻を受けると、中心部分は歩兵同士での圧殺が起こる。

長門式方陣は敵の騎兵や重装歩兵の攻撃に応じ、陣形を変形させることで全方位に対応する。
また圧殺現象を防ぎ、縦横無尽に歩兵が動き回るスペースを陣形の中に用意することで有機的な運動を可能とした。



                ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
                ■■■■■    ■■■■■    ■■■■■    ■■■■■
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                ■            ■            ■            ■
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                    ■■■■■    ■■■■■    ■■■■■    ■■■■■
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                            ■            ■            ■            ■



さらに正対する陣形を後ろに配することで従来の重装歩兵と同じ数で、よりダイナミックな運動も可能となっている。
騎兵の武器が速度と衝力なら、歩兵はどんな攻撃をも包み込む柔軟性だ。それを発揮させる陣形であった。


※ 歴史上、こんな陣形はないので多分、そんな事はない。


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179 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/03/09(土) 00:02:11.47 ID:Uj7V2EqT0



              _________朝比奈軍2万
              |ニ=-_           |
              |二二二ニ=-_     |  _________古泉軍3万
              |二二二二二二ニ=- |  |ニ=-_           |
                ̄ ̄ ̄|二二| ̄ ̄ ̄ .   |二二二ニ=-_     |
                    ̄ ̄          .|二二二二二二ニ=- |
                                 ̄ ̄ ̄|二二| ̄ ̄ ̄
                                     ̄ ̄










                                    《フェイホン高地》
                                           __
                                    ___|    |___
                                   |                |
                                   |                |
                                   |                |
                                    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄鹿目侯長弓兵
                           __                3千
                       ___|    |___
                      |                |
                      |                |
                      |                |
                       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄超重装騎兵
                                     .5千



   翌日、距離2kmの間隔を開け、両軍は布陣した。
   丘の上に陣取った皇帝軍は完全に戦場を見渡し、全ての戦況を把握できる。

   通信機のない時代、高地が有利とされてきたのは単純に攻撃に優位であるだけでなく、そのためでもあった。

   それでも兵力差は5万対8千。
   正常位で考えれば、日が沈む頃には皇帝まどかは生涯初めてで、最後の経験をすることになるはずだった。


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180 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/03/09(土) 00:03:22.87 ID:Uj7V2EqT0



早朝にもかかわらず、使者が王国軍を訪ねた。

*「皇帝陛下は重ねて和平交渉を望んでおられる。
  返答はいかに。」

古泉「これはどうもご丁寧に。
    ですが今更、そんなセリフが出てくるとは。人を馬鹿にしてるんでしょうか?」

*「・・・ならば存分に戦うが良い。」

使者はなかば当然の対応という感じで馬上に戻ると自陣に引き返していく。

古泉が額に突き刺さるような激痛を覚えて顔を上げると皇帝の、純白の軍旗の下に、小さな、
本当に小さな人影が古泉を睥睨している。皇帝まどかだ。



              ト、 /\
              l.:.:У.:.:.:.Y   .....--...、__     へ /}
                  斗j.:.:.:.:.:}:.レ'"      " ̄`ヽ、//.:.:.:.j
              /   {.:.:.:./             \.:.:.:〈__
          -=彡/ 廴.:/                \ノ  ゙ヽ
             /  /:./   |  イ /\   ト、     ヾミ=-  \
          / / /.:.:,;,{    ! /''}7‐- ヽ  l ヽ   l  Y.:\ ヾ`ヽ
          /// {∠{ l   i/ 斗r=   ヽj 二圷、  ト、トl:/  ト}
            { /!   f'^l  l〃{lじli     ,斧ヾ、ト、j/   ヾ!
             j/ l ∧ 弋 !  ! 弋;タ       {Jリ j} i }       }
                リ ゙, /`∨ l       、  `"  j ! ト、  ト、 j
                ∨  V ト...   ー ‐    ,ノ ∧ } ヽ j ソ
                     ヽ|  }:::...,,, __....-‐''"リ j/ V  }/
                     fミに三三Klll7
                   -‐ァア、。 ,.-‐ 7^ァ''⌒ヽ
                   / 〃/ノ    j /    ハ
               ,..イ  /  {シ   __..j/     }
              /   r≠〜、r-彡-‐tr7     V
              V   ノ7⌒ヽレ'"   l):ヽ/      ゙、
              `弋_) !   ノ!    j): : { _,,..xzzミ、_〉
              /7'')l  .:::P{..:::::.... l) : : )''"⌒〈^\
                 マ〜、).l   l l    l): : <_,.〜、_斗彡
              `7^'''{ }   P!    l ): ´T''"^`1'"´
                 /  ) !   ! l    l): : : l   j
                /   )j    ! j     !) : : j   l


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181 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/03/09(土) 00:04:12.29 ID:Uj7V2EqT0


午前8時ごろ。戦闘は始まった。

王国軍が長弓の射程700m余に入った途端、巨大な獣、あるいは魚の、木、鉄、様々な素材で作られた長弓が緊張する。
その中に皇帝の姿はあった。皇帝の長弓はひときわ長大で、まどか自身の身の丈を優に超えている。

それはどんな素材で作られているのか弓には薄く優しい色調の桃色のバラが咲いているのだ。なんの魔法だ!
右手には2本の矢が握られ、そのウチの1本が番えられると皇帝は一息で長弓を引き絞る。どんな膂力か!

そして次の瞬間、毎分3千×6本の、巨大な獣、魚、石、鉄の矢が王国軍の頭上に舞い降りた。

全くそれらは蛮刀が振り下ろされるに等しい。毎分ごとに1万8千の苦痛を訴える怒号が鳴り響く。
古泉、朝比奈両軍は進んでは引き返し、態勢を整えては再びフェイホンの丘を目指す。

だが、どれほど攻撃を繰り返しても一向に皇帝軍に近づく気配は見えない。これはダナイデスの苦役の再現か!

しかし真実として王国軍は徐々に丘に近づきつつあった。

古泉「うろたえるなー!
    敵は軽装の弓兵に過ぎません!!」

朝比奈「皆さーん!
     もう少しだけ、辛抱してくださーいっ!!」

古泉「近接を許しさえすれば、後は我々の密集隊形が敵を破砕するでしょう!
    臆することなく、獅子のように進みなさいッ!!」

しかし、両将軍の脳裏には騎兵のことがチラついている。
帝国軍の伝家の宝刀、大騎兵軍団はどこから襲ってくる!?

古泉「敵の騎兵の位置はどこです!」

*「長弓兵の後ろに!
  動く気配はありませんが、ここで側面を脅かされれば・・・!!」

古泉「恐るには及びませんよ。
    前進を続けてください。この地獄から這い出る方法は進む他にないんですから!」

*「地獄だよ!無間地獄だよぉ!!」

*「うるせー!お頭に着いていって、間違いはねえんだっ!」


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182 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/03/09(土) 00:05:04.28 ID:Uj7V2EqT0



戦闘開始から2時間あまり、古泉軍は丘に差し掛かった。

その瞬間、長弓兵たちは右手に持っている2本の矢のうち、1本は番えて放ち、
残った1本を持って、さながら自分たちも重装歩兵であるかのように方陣に向かって突進していった。

後背の味方の援護を受けているとは言え、長弓兵たちはそれが当然であるかのように振舞った。
前列の弓兵が撃っては次が、その次が重装歩兵に躍りかかる!

弓兵たちは槍衾をくぐり抜け、鏃を重装歩兵の喉を狙ってナイフのように突き立てていく。
あるいは長弓を鉄鞭のように振り回し、槍を払い、敵の重装歩兵を叩き殺していくのだ。

最前列で戦いに参加する古泉の眼前に、人知を超えた黒い巨馬が姿を見せる!

「エイミー!」

誰かが喚く!次の瞬間、馬上には影はひとつ。そう、まどか皇帝!!
皇帝も他の弓兵たちと共に、あの不思議な長弓で重装歩兵たちをなぎ払っては射殺していく。

しかし、そんなものは獅子が犬に吠えかけられているに等しい!
完全武装の重装歩兵を前に、軽装の弓兵、しかもたったの3千では5万の密集隊形はこゆるぎもしない!

むしろ、長射程からの矢の雨が止み、息を吹き返していく重装歩兵たちは機械的に段列を組み直し、
徐々に圧力と密度を高めていき、最終的には9本の矛先が最前列に居並んだ。

もはや接近することなど不可能!しかも最後尾の横隊の槍は前の重装歩兵の頭上で旋回している。
これは矢を払い落とすために行われる運動で、頭上からの攻撃にさえ剣山のような槍先が防備を堅める!!

古泉「今です!押しつぶしてください!!」

それでも皇帝軍は執拗に攻撃を続ける。だが、もはや悪あがきでしかない。
何度かの突進を受けて皇帝軍は隊列を乱し、逃げるように丘の上へよじ登っていく。

古泉はすでに長門の言葉も忘れ、勝機を掴んだとひとりごちた。

朝比奈「き、騎兵さんはどこですか〜?
     古泉くん、騎兵は、まだ動かないんですか〜?」

しかし、朝比奈の言葉で我に返った。
あぶない、あぶない。まだ富士の六号目にたどり着いただけではないか。

だが、戦局はすでに大きく動き始めていた!!


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183 : ◆Ikxp7uG.BM [saga]:2013/03/09(土) 00:05:31.80 ID:Uj7V2EqT0



              _________朝比奈軍2万
              |ニ=-_           |
              |二二二ニ=-_     |  _________古泉軍3万
              |二二二二二二ニ=- |  |ニ=-_           |
                ̄ ̄ ̄|二二| ̄ ̄ ̄ .   |二二二ニ=-_     |
                    ̄ ̄          .|二二二二二二ニ=- |
                                 ̄ ̄ ̄|二二| ̄ ̄ ̄
                                     ̄ ̄


                                    《フェイホン高地》
                                           __
                                    ___|    |___
                                   |                |
                                   |                |
                                   |                |
                                    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄鹿目侯長弓兵
                                               3千
                      _________
                      |                |
                      |                |
                      |                |
                        ̄ ̄ ̄|    | ̄ ̄ ̄
                                ̄ ̄
                             |
                             |
                             |
                             |
                             ↓      .超重装騎兵
                      _________5千
                      |                |
                      |                |
                      |                |
                        ̄ ̄ ̄|    | ̄ ̄ ̄
                                ̄ ̄



距離が縮まり、王国軍が丘の帝国の防御陣地に攻撃を始めた頃、騎兵にも動きがあった。
正対して王国軍と反対の、ユイラン砦に向かう街道を南下し、戦場からの離脱を計っていた。

敗走の用意か!?


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