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天使「おめでとうございまーす!!」男「うるせぇな」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/21(木) 14:16:33.61 ID:Jd8RYwCb0

※書き溜めなのでサクサク投稿
※投稿中でも感想おk
※SSはこれが初めて。大目に見てね
※ギャグとシリアスがサンドイッチ
※天使ちゃんはBカップ


よろしゅう

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1361423793
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暇人の集い @ 2024/04/12(金) 14:35:10.76 ID:lRf80QOL0
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:17:56.06 ID:Jd8RYwCb0



ピンポーン

男「ん?誰だよ…こんな時間に…」

?「すいませーん。いらっしゃいますかー?」

男「そりゃ俺の家だからいるだろうよ…はいはい今行きますよ…」

ガチャ

男「はい、どなたさん?」

?「あ、こんにちは天使です!!」

男「……」

天使「こちら男さんのお宅でよろしいですよね?あれ?もしかして男さんってあなた?」」

男「あの…宗教関係なら間に合ってますんで」

天使「嫌だなーそんなんじゃないですよ。あ、でも私天使だから一応関係はあるのかな…」

男「どうでもいいですけど、なんか用ですか?」
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:19:18.76 ID:Jd8RYwCb0

天使「まぁ立ち話もなんですし中に入りませんか?」

男「ちょっ…勝手に家に入るな…!!」

天使「うわー…いかにも引きこもりの部屋って感じですねー…」ズカズカ

男「おい!ちょ…待てよ!!」

天使「あ、私知ってますよ!!キムタクでしょ?昔ドラマ見てましたよロンバケ」

男「違う違う。そうじゃなくて!警察呼ぶぞ!?」

天使「あはは。冗談を。まぁ大事な話があるのでとりあえず座ってくださいな」

男「だから勝手に話を進めるんじゃねぇよ…」

天使「座ろうと思っても…これ座るところありませんねぇ…」

男「つくづく失礼な奴だな。女じゃなかったら殴ってるところだぞ」

天使「いやーん女の子扱いしてくれるんですね。以外とし・ん・し?」

男「やっぱり殴っていいか?」
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:20:25.74 ID:Jd8RYwCb0

天使「ベッドに座っていいですよね。よいしょっ…と」

男「話聞けよ」

天使「これから大事な話があります」

男「……なんだよ」

天使「聞く覚悟はありますか?」

男「……」

天使「いいですか?」

男「……早く言え」

天使「うおっほん。それでは発表します」

天使「だかだかだかだか…だだん!!」

男「それ自分でいうのな」

天使「おめでとうございまーす!!あなたは明日死ぬことになりました!!」

男「……」

5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:21:15.79 ID:Jd8RYwCb0

天使「あれ?反応薄い?」

男「さ、帰ってくれ。俺は忙しいんだ」

天使「まったまたぁ無職でニートのどこが忙しいんですか?」

男「っ…お前、俺を馬鹿にしに来たのか」

天使「ま、信じるも信じないも男さん次第ですけどね。いずれ明日には死んじゃうんだし」

男「はっそれこそ冗談だぜ。俺が?死ぬ?この部屋から一本も出てない俺が?笑えるね」

天使「原因はなんであれ、男さんは明日必ず死にます。そういう運命が決定しました」

男「誰が決めたんだよ」

天使「えー…っと神さま?」

男「はぁー…分かった分かった。俺は明日死ぬんだな。ご忠告感謝します。それではごきげんよう」

天使「あー信じてませんね!?」

男「うるさい。突然こんな変人が家に押しかけてくるこの状況自体、信じがたいものなんだよ」
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:22:12.76 ID:Jd8RYwCb0

天使「しょうがないなぁ…これじゃ仕事が進まないし…」

男「気は済んだか?終わったらさっさと帰ってくれ。俺は寝る」

天使「あ、ちょっとテレビつけてもらえませんか?」

男「聞こえなかったか?俺は寝るといったんだ」

天使「ちょうど同僚が仕事をするんですよ。たしか今日の午後だったはず」

男「仕事?宗教勧誘か」

天使「だから違うって言ってるじゃないですか!この世の人をあの世に送る仕事です」

男「とんだブラック企業だな。お前たちの仕事は」

天使「えーっと確か、有名な政治家だった気がしますよ。原因は心臓発作とかかな」

男「ははっこの世界にもデスノートがあったんだな」

天使「テレビをつけて・・・っと、あ、ちょうどやってますね」

男「御冗談を…って」





テレビ「速報です。先ほど衆議院の○○議員が死亡したとの情報がありました。原因は心臓発作による急死。詳しくは情報が届き次第…」




男「おいおい…マジかよ」
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:24:38.77 ID:Jd8RYwCb0




天使「これで信じてくれましたか?」

男 「あ…あぁ」

天使「それはよかった」ニコ

男「で、お前は今度は俺を殺しに来たのか…」

天使「私が手を下さなくても勝手に処理されますよ。私は別です」

男「ははっ…とんだ最後だなこりゃ」

天使「案外、落ち着いているんですね」

男「煙草吸っていいか?」

天使「どうぞ?」

男「……」フゥー
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:25:27.01 ID:Jd8RYwCb0

男「別に俺はいつでも死んでもいいって思ってたからな。死にたいとさえ思ってた」

天使「なんだか悲観的な人ですねぇ」

男「これだけ人生棒に振ってるんだ。死にたくもなるさ」

天使「無職でもニートでも人生に絶望していない人はたくさんいると思いますけど」

男「俺は別に人生に絶望してるわけじゃない。自分自身の不甲斐なさに落胆し続けてるだけだ」

天使「じゃあそれを治す努力をすればいいじゃないですか」

男「それができたらこんなことになってないよ」

天使「そんなもんですかねぇ」


男「お前の仕事は終わったんだろ?さっさと帰ってくれ。俺は最後の時を満喫する」

天使「私の仕事は、あなたに死刑宣告を告げに来ることじゃないんですよ」

男「ほぉじゃなんだ。死に行く哀れな男に慈悲でも与えてくださるのか天使様は」

天使「その通りです」

男「へぇその貧相な体でご奉仕でもしてくださるのかね」

天使「童貞の男さんにそんな度胸があるんですか?」

男「……うるせぇな」

9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:26:19.78 ID:Jd8RYwCb0

天使「私はあなたに最後のサービスを差し上げるためにここに来たんです」

男「サービス?」

天使「はい!男さんの願い事ひとつだけなんでも叶えてあげます!」

男「…それはまた夢のような話だ」

天使「まぁ夢なんですけどね」

男「なんだよ夢かよ」

天使「いや、男さんの見たい夢をなんでも見させてあげるってことです」

男「それが願いを叶えるってことか?」

天使「はい!私は男さんの願望を聞いて、その通り夢を見させてあげます!」

男「最後の晩の白昼夢ってことかい」

天使「夢なので願い事はなんだっていいんですよ!大富豪とか世界征服とか!」

男「ガキじゃあるまいし」

天使「男さんだって、そういうの妄想したことあるでしょう?」

男「……」
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:27:09.41 ID:Jd8RYwCb0

男「そもそも、なんで俺にそんなことする必要があるんだ?」

天使「というと?」

男「俺以外だって死ぬ運命の奴は腐るほどいるだろう。なんで俺がサービスを受けられるかって聞いてるんだ」

天使「ふふふ、よくぞ聞いてくれました。実はですね」

男「あぁ」

天使「だかだかかだか…」

男「またそれか…」



天使「男さんは77777777(略)番目の死者(仮)なのです!)ババーン



男「……」
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:27:55.01 ID:Jd8RYwCb0

天使「ありゃ、これまた反応が薄い」

男「要するにあれか。俺はただ単に運が良かっただけってことか」

天使「人生一生分の運ですね!もう死ぬのも納得です!」

天使「さぁさぁ何でも叶えてあげますよ?いってごらんなさい!」

男「俺には叶えてほしい夢なんてねぇよ」

天使「嘘だぁなんかしらはあるでしょう」

男「俺は金にあんま興味ないし、女も無理にしてほしいとは思わない」

天使「淡白なんですね。いや、寂しい人なのかな?」

男「……とにかく、夢は自分じゃどうしようもできないから夢っていうんだよ。俺はそういう現実味のないことには興味ない」

天使「えー!?それじゃ私の仕事終わらないじゃないですか!!」

男「ほっとけば明日には死んでるんだろ?それでいいじゃん」

天使「私はこの仕事にプライド持ってるんです!何としてでも夢見せますからね!」

男「だから俺には欲しいものも、なりたいものもないんだっつうの」
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:29:06.41 ID:Jd8RYwCb0

天使「むむむ…なんでもいいんですよぅ…好きな人と結婚したいとか…キスしたいとか…」

男「好きな人…ね」

天使「あ!それがいいです!男さんでも好きな人の一人や二人いるでしょう?」

男「そりゃいないこともないが…」

天使「好きな人との一晩のラブロマンス…いいじゃないですか!」

男「もう…死んでるから」

天使「え…」

男「俺が中学の時…知らない間にポックリ…ってね」

天使「知らない間って…」

男「本当に知らないんだよ。死因は事故だったらしいってことだけ。金曜日に見かけて、月曜日にはもういなくなってた」

男「あっけなさ過ぎて、いまじゃ記憶すら曖昧だけどな」

天使「会いたいと…思わないんですか?」

男「そりゃ…そうだけど…」

天使「会わせてあげられますよ?」

男「おいおい死んだ人間と会えるってのか?」

天使「夢の中に不可能はありません」



男「……今更会ったってなに言えばいいんだよ」

天使「いいじゃないですか。好きな人と会いたい。それだけで十分すぎる理由です」

男「臭いセリフをよくもまぁ堂々と言えたもんだ」

天使「乙女ですから、私」
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:29:52.18 ID:Jd8RYwCb0





男「ふー…しょうがねぇ…じゃあ乙女の天使さんとやら。さくっと過去に飛ばしてくんない?」

天使「かしこまりました♪」



14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:30:39.31 ID:Jd8RYwCb0



ミーンミーン ミーンミーン




男「ん……」

男「あ…あ…」

男「暑い!!」ガバッ


男「……ここは、俺の部屋じゃない…な」

男「って俺なんで地面で寝てるんだ?それにこの気温…夏?」

男「今は冬だったはずだぞ…どうなってやがる」
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:31:31.91 ID:Jd8RYwCb0

男「とりあえず…喉がカラカラだ。何か飲むもの…っ財布がないな」

男「はぁどうすっかな。とりあえずここがどこだか調べないと」


テクテク

男「ん?四葉公園…?俺は公園にいたのか…って四葉公園!?」

男「俺がよく子供のころに遊んでた公園じゃねぇか…あそこは取り壊されたって」

男「……過去に飛ばされたってか」

男「はぁ…嫌だねぇ俺はいつからこんなメルヘンなセリフ言うようになっちまったんだ」

男「とりあえず、あいつを探さねぇと」



テクテク

男「それにしても…熱い…久しぶりに外出たのに…こんな日差し…」

男「昔からこんな暑かったのか?大丈夫かよ温暖化…」



テクテク

男「もう駄目…限界だ…たしかここらへんに駄菓子屋があったはず…」

男「あ…あった…俺のオアシス…やっとたどり着い…た…」

天使「アイス―♪アイス―♪」ペリペリ

男「……」
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:32:24.94 ID:Jd8RYwCb0

天使「何も本当にゲンコツしなくたっていいじゃないですか!?」

男「うるせぇ俺の金で勝手にオアシスを堪能しているお前が悪い」

天使「俺の金って…たったの60円じゃないですか!?」

男「駄菓子屋の60円はたったじゃない。よく覚えとけ」

天使「うぅ…私のホームランバー…」

男「お、当たった」

天使「やった!さ、早く交換しましょう」

男「おばちゃん。もう一本バニラね」

天使「はぁ!?チョコチップが最強に決まってるじゃないですか!?」

男「うるせぇあれ歯に詰まるから嫌なんだよ」

天使「分かってないですねぇ。本当にあなたはダメ人間です」

男「アイス一本でそんな価値が決まると思うな」

天使「なにを!」

男「やんのか!?」

?「おばちゃーんメロンアイスちょうだい」

男・天使「あぁ!?」

?「ひぃ!!」
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:33:19.11 ID:Jd8RYwCb0

男「おやおや聞きましたか天使さん 」

天使「えぇ聞き捨てなりませんね」

?「なっ…なんだよ…」

男「おい坊主。その糞まずいアイスは買わないほうがいいぞ舌が腐る」

天使「あれってそのまんま薬みたいな味しますよね」

?「うっ…そんなことない!いいじゃないか好きなんだから!それにうまいよ!」

天使「あれってメロンの名前なのに全然メロンっぽくないですよね」

男「それを言えばかき氷だってメロンの味しないだろ」

天使「あれはいいんです。美味しいから」

男「はっかき氷はイチゴに決まってんだろ。こいつもメロンのせいで舌おかしくなってら」

天使「お?お?」

男「やるか?えっ?」

?「かき氷はブルーハワイでしょ」

男・天使「ああぁん!?」

?「ひぃ!!」
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:33:59.98 ID:Jd8RYwCb0

男「お前いい加減に…ってこいつ…」

天使「どうしました男さん。アホ面して」

男「一言余計だ。こいつ…もしかして俺か?」

?「えっ…おっさん何言ってんの…気味悪いよ」

天使「そういえば…どことなくこのアホ面…男さんに似ているかも」

男・?「アホ面っていうな!!」

天使「おぉ息ピッタリ!」

?「僕、忙しいからもう行くから…」

男「どうせ帰ってもゲームしかしないだろ」

?「うるさいな!ふん…」タッタッタッ



天使「行っちゃいましたね…」

男「俺、昔あんなガキだったんだな…」

天使「今とあんまり変わってないような気がしますけどね」

男「うるせぇ。俺のほうがダンディズム溢れてるだろうが」

天使「ダンディ(笑)」

男「黙ってアイスでも食べてろ」ポイッ

天使「あ…チョコチップ…えへへ」
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:35:09.60 ID:Jd8RYwCb0

男「それにしてもあれが俺だとはなぁ…」

天使「いかにもヘタレな中学生って感じでしたね」

男「まさかメロンアイスを好んでいたとは…」

天使「そこですか」

男「中学生か…そういえば俺の中学時代はそんなに輝かしいものじゃなかったな」

天使「へぇどんな学生さんだったんですか?」

男「まず、友達がいなかった」

天使「oh…」

男「そして、厨二だった」

天使「?中学二年生だから当然なんじゃないですか?」

男「まぁとにかく…格好を付けたくてクールを気取ってた」

天使「それで友達もできなかった…と」

男「……」
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:35:55.32 ID:Jd8RYwCb0

天使「それで、彼女にはいつ会いに行くんです?」

男「その前に1つ聞きたいことがある」

天使「なんです?3サイズなら乙女のひみつですよ」

男「お前、ここは夢の中なんだよな」

天使「あっ無視された…まぁそうですねぇ」

男「ということは、俺がなにか望んだらその通りになるのか?」

天使「というと?」

男「いや、金を増やせ、とか、俺をモテさせろ、とか」

天使「欲がないって言い張ってたのは何処のだれかさんでしょうね」

男「うるさい。で、どうなんだ?」

天使「結論から言うなら無理です」

男「おい、だって夢の中なんだから…」

天使「この夢を構築する際に、ちゃんと男さんの要望に応えてあげたんですよ?」

男「要望って…」

天使「男さんは『現実味のないことには興味がない』んでしたよね?」

男「…ったく俺は夢ん中でも損ばっかりしてんなぁ…」

天使「なのでこの過去の世界も、現実と98%同じに作ってあります」

男「残りの2%は」

天使「ゆーあんどみー?」

男「全く…ここでも社会から認められてないとはな」
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:37:32.12 ID:Jd8RYwCb0

天使「なので、この世界では過去に現実で起こったことがそのまま起こるようになってます」

男「それじゃこのままいくと、彼女も…?」

天使「それを確かめるのも、あなたの願望の1つなんでしょう?」

男「助けることは…できないのか?」

天使「それは男さんの実力次第じゃないんですか?」

男「死ぬとわかったやつを助けてもいいのか?えっとタイムパラドックスとか…」

天使「ここは夢の中ですよ男さん。タイムパラドックスもなにもありません」

天使「確かに願望通りに事は運ばないと思いますが、これはあなたのための夢なんです」

男「夢…ねぇ。ここはくだらない妄想の中だったな、そういえば」

天使「はい。でも、ここは現実とさほど変わりありません。何をするも、何を変えるかも男さん次第ですよ」
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:38:16.08 ID:Jd8RYwCb0

男「この夢はいつ覚めるんだ」

天使「そうですねぇ…男さんが彼女に会って、言いたいことが言えたら終わりなんじゃないですか?」

男「作った本人なのにあやふやなんだな」

天使「言ったはずです。これは男さんの夢なんですよ?始まりも終わりも、男さんが決めるんです。願望が叶えばそこで終了です」

男「なるほどねぇ…」

天使「…あっアイス外れちゃいました…」

男「そう簡単に当たるかよ」

天使「男さんは当てたからそういうことが言えるんですよ…」

男「そうだな…俺にもなけなしの運があったんだな」

天使「男さんはそういうのに振り回されそうですね」

男「はっはっは、違ぇねぇ」

男「さ、行くか」

天使「行くってどこに?」





男「…彼女に会いに」

23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:39:56.71 ID:Jd8RYwCb0


天使「男さーん!牛乳とあんぱん買ってきました!」

男「…それ必要あるのか?」

天使「必要ですよ!!張り込みにはこれって相場が決まってます」モグモグ

男「お前ドラマの見すぎ」

天使「でも、学校の前で張り込んで立って会えるわけじゃないですよ?」

男「仕方ないだろ。彼女の家なんてわからないんだから」

天使「そもそも男さんの好きだった人ってどんな人だったんですか?」

男「……知らない」

天使「へっ?」

男「話したことないんだ。ずっと遠目から見てるだけだった」

天使「はぁ…じゃなんで好きになったんですか?外見?」

男「まぁ…それもあるが…」

天使「性格がいいとか?クラスの人気者だったとか?」

男「いや…なんかミステリアスで…よくわからないやつだった」

天使「はぁ」

男「中学生の時なんてそんなもんだろ?俺もガキだったんだ」

天使「それを今まで引きずってきた男さんも律儀ですねぇ。いやただの未練?」

男「ほっとけ…」
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:40:46.12 ID:Jd8RYwCb0

数時間後

天使「来ませんねぇ」

男「というか、人が全然いないぞ。どういうことだ」

天使「ま、今日祝日ですし、当然ですよね」

男「……」

天使「ど…どうしました男さん、そんな怖い顔して」

男「そ・れ・を・は・や・く・い・え」グリグリ

天使「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛頭グリグリしないでください゛い゛い゛い゛」

男「はぁ…というか今はいったい、いつなんだ?」

天使「えーっと…具体的には把握しかねますが、きっと彼女と男さんの関わりの深い日の付近だと思いますが…?」

男「彼女と俺の関わりが深い…?」

天使「えぇ。男さんの記憶の濃い部分を抽出しましたから、きっとそうだと思います」

男「おいおい…俺が一番印象的だった彼女の記憶って…」







男「…死んだときじゃねぇか」

25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:41:48.36 ID:Jd8RYwCb0


ダッダッダッダッ



天使「ちょっ…ちょっと!男さん!突然走り出してどこ行くんですか!?」

男「うるせぇポンコツ天使!!死んじまったら会うこともできないだろうが!!」

天使「そりゃそうですけど…!!当てはあるんですか!?」

男「ない!!!だからってここで指咥えて待つってのか!?」

天使「そんなこと言ったって…!!」

男「ふざけんなよ…せっかくの夢だってのに…」

天使「はぁはぁ…このまま走り続けたって見つかりっこないですよぉ…」

男「うるせぇ…うるせぇ…」

男「これは俺の夢なんだろう?…だったら柄にもなく格好付けたっていいだろ…」ハァハァ

天使「男さん…」
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:42:31.21 ID:Jd8RYwCb0

男「あぁ…タバコやめときゃよかった。もう駄目死にそう。休むわ」

天使「一瞬カッコいいと思ったのに!!馬鹿!!」

男「いちいちうるさいな…おっさんは…見極めが重要なんだよ」 

天使「だからってあきらめるんですか!?」

男「だから…見つけた…だろ」

天使「え…?」

男「ほら、あそこの道沿い」

天使「あ…女の子と…なんだか様子がおかしいですよ?」

男「あぁ?」

天使「なんだか…男の人と口論になってるみたいです」

男「あぁまた走らなきゃいけないのかよ…膝が笑ってるぞ」ガクガク

天使「もしかしたら…ここで彼女、事故にあったんじゃ…」

男「だったら…なおさら…走らなきゃな…」

天使「男さん喧嘩とか強いんですか?」

男「生まれてから一度も経験がない」

天使「大丈夫ですか…?」

男「へっ…いくぞ!!」

天使「……はい!!」
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:43:37.20 ID:Jd8RYwCb0



不良「おい!おめぇいい加減にしろよ!?」

?「うるさいわね!!あんたなんかと一緒にいるくらいなら死んだほうがましよ!!」

不良「あぁん!?言ってくれるじゃねぇかこの女…ちょっと顔いいからって調子のんなよ?」

?「力だけで頭カラッポのあんたに言われたくないわね」

不良「ふざけんなよ!!」ドンッ

?「きゃっ…!!」

天使「あっ!男さん!彼女が車道に!!」






男「くそがあああああああああああ!!!!!!!!!!!」

男「だああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」グイッ

?「きゃああああああ!!!」




ブオオオオン!!!!!!!!!キオツケロバーロー!!!!!
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:44:14.19 ID:Jd8RYwCb0

男「はぁ…はぁ…なんとか…間に合った…」

?「あんた…誰…?」

男「どうも…やっと会えたな…」

天使「男さん!!逃げてください!!」

不良「なんだてめぇ!!おい!!

男「おっさんにまだ走らせんのかよ…」

天使「ずべこべいってないでさっさと走る!さぁあなたも!」

?「えっ…えぇ…」

29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:45:06.20 ID:Jd8RYwCb0




?「ちょっ…ちょっと痛い!!もう離して!!」

男「はぁ…はぁ…もう大丈夫だろう…」ゼェゼェ

?「なんなのよあんた!!いったいなにが目的なの!?」

男「はぁ…はぁ…悪い…もう少し待って…」ゼヒューゼヒュー

?「なんなのよこのおっさん…」

?「なんで私なんか助けたのよ!頼んでもいないのに…」

男「っうるせぇ!!!…俺は!!!!!!!俺はな!!!!!!!」

?「な…なによ」




男「お前が!!!!!!!好きなんだよ!!!!!!!!!」




天使「男さん…やっと追いつ…い…た」

?「…はっはぁ?な何言ってんのおっさん…気持ち悪いわよ…じゃあね…」


タッタッタッ



男「はぁ…はぁ…はぁ…」

天使「お…男さん…大丈夫ですか?」
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:45:56.00 ID:Jd8RYwCb0

男「……あれだな」

天使「…えっ?」

男「大体わかってたけど…好きな人に好きじゃないって言われるのは…きついな…」

天使「…そう…ですね」クスッ

男「なんで笑ってんだよ…」

天使「だって…男さん嬉しそうだから」

男「女に振られて嬉しそうな男がどこにいるんだよ…」

天使「そうですよね…ふふっ」

男「…へっ」
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:47:18.41 ID:Jd8RYwCb0

【日曜日】



天使「落ち着きましたか?」

男「あぁ当分タバコはやめたほうがいいなこりゃ」スパー

天使「そういいつつ吸ってるじゃないですか…」

男「ありゃま。やっちまったな」

天使「煙草っておいしいんですか?」

男「知らない」

天使「知らないのに吸ってるんですか?」

男「タバコなんて意味もなく吸うのが正解なんだよ」

天使「意味のないことのせいで死期早めるってのもおかしなもんですね」

男「俺は…いち早く他意によって死にたいんだよ」

天使「他意?」

男「肺がんでも、心臓病でもいい。自殺以外の方法であっけなく死にたかったの」

天使「それがタバコなら自業自得で自殺と変わらないと思いますけどね」 

男「なんでもいいんだよ。俺は不可抗力な死を望んでただけ」

天使「よかったですね。叶ってますよ、それ」

男「はっはっは。嬉しい限りだね」

天使「それにしても…見事にフラれちゃいましたね」

男「いや…頭の中真っ白になっててよく覚えてない」

天使「夢の中でも現実逃避って…」
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:48:08.01 ID:Jd8RYwCb0

男「おかしいな…もっとクールに登場するはずだったんだが」

天使「やっぱり男さん子供の頃と変わってない気がします」

男「うるせぇな」

男「もうこの夢も終わるのかね…」

天使「え?」

男「だってそうだろ?俺の願いは彼女に会うことだったんだ。もう叶ったんだから終わってもいいだろう」

天使「そういえば…そうですね…」

男「さぁ早く俺をここから覚ましてくれ」

天使「えっと…それは…」

男「俺はもうこれで終わっても文句は言わない。早くこの妄想を終わらせてくれ」

天使「えぇっと…申し上げにくいんですが…」

男「?」

天使「私…これの終わらせ方…知らないんですよねぇ…なーんて…」

男「…おい冗談はよせ」

天使「だって!いままでの人は勝手に夢かなえて勝手に終わってくれたんですもの!!」

男「だって…俺の願いは…終わったはずだぞ」

天使「ですよねぇ…」

男「……」

天使「……うまい棒でも食べに行きます?」




天使「あっあっ…もうグリグリはやめて…やあああああああああ…」
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:49:03.41 ID:Jd8RYwCb0


天使「はいうまい棒」

男「どうしろってんだよ…」

天使「まぁそう悲観的にならなくても。寿命が延びたってことでいいじゃないですか」

男「よくねぇよ!ここは夢の中なんだろ!?いくら現実と違わなくてもここは夢の中だ!」

天使「そんなこと言ったって…」

男「…そうだ。俺がこの世界で死んだら…夢は覚めるんじゃないのか?」

天使「そうかもしれませんが…どうやって死ぬんですか?男さん他意によってなんちゃらかんちゃら…」

男「…こうなったら天使、お前が俺を殺せ」

天使「なななななな何言ってるんですか!?私天使ですよ!!エンジェル!」

男「うるせぇ!お前のせいでこうなってるんだぞ!それに得意だろ人を送り出すのは!!」

天使「私は自分の手で下したことはありません!ネロのときだって…」

男「えっあれお前だったの」

天使「ふふん♪見直しました?」
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:49:48.21 ID:Jd8RYwCb0

男「そんなことはどうでもいい…くそ…くそ…どうしろってんだよ…」

天使「こうなったら、男さんの願望を叶えるしかないみたいですね」

男「だから俺の願いは終わっただろうが…」

天使「本当ですか?彼女と付き合ってみたいとか密かに思ってませんでした?」

男「……ちょこっと」

天使「あーあ」

男「だって!その…改まって言うもんでもないだろ」

天使「で、どうするんですか」

男「どうするって…彼女と俺が付き合えれば終わるんだろうな」

天使「男さん、盛大にフラれましたよね」

男「うっ」

天使「しかも、気持ち悪いって言われてましたね」

男「うっうっ」

天使「それ以前におっさんと中学生って完全に犯罪ですよね」

男「もうやめてくれ…」
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:51:08.41 ID:Jd8RYwCb0

男「さすがに犯罪者にはなりたくないな…」

天使「男さんがそう思うなら、きっと無理でしょうね」

男「冷たい言い方だな」

天使「そのままの意味ですよ。ここは男さんの夢の中です。」

天使「現実的にしたからと言っても、男さんの願望は少なからずこの世界に影響を及ぼしているのかもしれません」

天使「現に、彼女と遭遇できたのもその影響だと思います」

男「確かに、偶然にしてはタイミングが良すぎだったな…」

天使「この世界では、本質的な願望であったり、嫌悪は少なからず影響を受けると思います」

男「じゃあ俺が犯罪者になりたくないと思っている限り…」

天使「この世界からは出られない」

男「ふざけろ…じゃあ俺が心の底から犯罪者になりたいと思えばいいのかよ」

天使「心の底からロリコンになる覚悟が必要ですね」

男「キメ顔すんな」

天使「まぁ童貞小心者の男さんにそんなこと出来っこないでしょうけどね」

男「うるせぇな!!間違っちゃいないのがむかつく…」
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:53:51.22 ID:Jd8RYwCb0

天使「さて…どうしましょうね…」

男「このまま老衰まで待つなんて御免だからな」

天使「当たり前です!私だって帰れないんですからね!」

男「っ…そうだったな。すまん」

天使「いや、いいんですよ。男さんは今まで見てきた人たちとは違うみたいですから」

男「…今までもこうやって誰かに夢を見せてきたのか?」

天使「えぇ。前言った大富豪とか世界征服とか、いるんですよ実際に」

男「ふぅん」

天使「心の底から欲望に染まってしまいたいと本当に思っている人は沢山います」

天使「私はそういう汚い部分を見てきましたし、それを叶えるのがこの仕事だと思ってました」

天使「でも、あなたは本当に心の底から、欲望に溺れたくないと思っている。すごいことだと思います」

男「…俺はうんざりしてるんだ」

天使「なににです?」

男「自分の欲望ってやつにさ。俺はこいつをとことん信頼してない。性欲にしても、食欲にしてもそうだ」

天使「それも生きていくには大切なものじゃないですか」

男「そんなことはわかってる。腹が一杯になってるのは幸せだし、性欲を満たすのは気持ちいい」

男「だけど、その理不尽なものに訳も分からず支配されてるっていうのが気に食わないんだよ」

天使「欲を満たそうとするのは人間としてあるべき姿とも思えますがね」

男「その生き方を否定してるつもりはない。だが俺はその終わりのない循環にうんざりしてるんだ」

男「終わりがない、そのために生きようとする。だけどその根底にあるものがどうもわからない。それが気に食わないんだよ」

天使「男さんは…変ですね」

男「…自分でもそう思う。たぶん俺が無職でニートだからこんなこと言えるんだろうな。守るもんがなんもねぇ奴が言える特権ってこった」

天使「でも…」

男「さぁ無駄話はおしまいだ。さっさとここから出る方法を探そうぜ」

天使「…はい」

37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:54:32.22 ID:Jd8RYwCb0

男「さて…どうすっかな」

天使「もう一度学校に行ってみます?」

男「彼女のこと知ってるやつがいるかもしれないな」

天使「まぁ学校内には入れないと思いますがね」

男「部活やってる連中にでも聞けばいいだろ」

天使「男さん部活は何をやってたんですか?」

男「おいおい。友達がいないのに部活なんてやってるわけないだろ」

天使「だから友達ができなかったんじゃ…」

男「そりゃ盲点だったわ」

天使「…なんというか楽観的なのか悲観的なのかわからない人ですね」

男「現実的なだけよ」

天使「考えてることは子供ですけどね」

男「お前はいつも一言多いんだよな…」
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:55:38.81 ID:Jd8RYwCb0

―学校前―

男「それにしても…あれだな」

天使「なんです?」

男「こうやって学校を外から眺めてると、ショーウィンドウの中の宝石を見てる気分になるな」

天使「青春はお金じゃ買えませんよ」

男「眺めている限り、手に入らないって意味だ」テクテク

天使「ちょっと…男さん!勝手に入っていいんですか!?」

男「ま、なんとかなるだろ。仮にも母校だ」

天使「そんなこと言ったって…」

男「ちょっと気になる場所がある。お前はここで待っててもいいぞ」

天使「…私も行きます!」

男「エスコートは期待すんなよ」

天使「童貞にそんなこと気遣われたくありません」

男「可愛くねぇ奴」

天使「あら、女の魅力が理解できないんですね」

男「学校の中で女の魅力語る奴がいい女だとは思わん」

天使「それで?どこに行くんです?」

男「図書室」

天使「本当に勝手に入っていいんですかねぇ…」

男「たしか…ここの窓が開いていたはず…よし空いたな」

天使「はぁ…もう完全に不審者です…」
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:56:38.21 ID:Jd8RYwCb0

―図書室―


天使「ずいぶん大きな場所ですねぇ…」

男「たしかこの学校は図書館が大きくて有名だったはずだな」

天使「男さん、よく本読むんですか?」

男「いや…読まない」

天使「じゃあなんで来たんです?」

男「俺が中学生の時よく来てたから」

天使「本を読む習慣がないのに、ですか?」

男「……彼女が本好きだったんだよ」

天使「ははーん…本じゃなくて彼女を眺めに通ってたと」

男「うるせぇな…違うクラスだったから、ここぐらいしか会う場所がなかったんだよ…」

天使「なんていうか純粋…いやヘタレだったんですね」

男「ほっとけ」

天使「で?図書室に何しに来たんですか?」

男「彼女のよく読んでいた本があるんだ」

天使「どんな本です?」

男「えっと…なんだったけな…王子様がなんちゃら…」

天使「王子様?あの子意外とメルヘンなんですね」

男「お前にだけは言われたくないだろうな」

男「えっと…確かこの辺に…あった」

天使「へぇー星の御オジサマですか」

男「王子様な」

天使「大切なものは…目に見えない…か」

男「ん?なんだ知ってるのか?」

天使「まぁ読んだことはあります」

男「それはよかった。どんな話なんだ?」

天使「思い出したら話してあげますよ」
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:57:37.41 ID:Jd8RYwCb0

男「えっと…この裏か。えー…」

天使「なに調べてるんです?」

男「貸出カード。彼女の名前が載ってるかと思って」

天使「男さん、もしかしてあの子の名前忘れちゃってたんですか!?」

男「仕方なく…はないか。俺だって忘れたくはなかったさ。でも時間なんてそんなもんだろ?」

男「最初は声を忘れて、名前を忘れて、顔を忘れていく。青春の傷を癒してくれるいい機能じゃないか」

天使「でも…それって悲しいじゃないですか…」

男「あぁ俺は自分のそういう理不尽さに納得がいっていないんだ」

天使「……」

男「…井坂沙織」

天使「見つかりました?」

男「あぁ…なんでこんなこと忘れちまったんだろうな」

天使「そういうものなのでしょう?」

男「わかってるけど、いいじゃないか。俺だって寂しかったんだ」

天使「彼女に、会いたいと思います?」

男「…まぁな」

天使「どうやら、この世界はあなたに味方しているみたいですよ?」

男「ん?どういうことだ?」

41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:58:43.20 ID:Jd8RYwCb0


ガラガラ


男「しまった…誰か人が来たみたいだ」

男「おい天使どうする…ってあいつどこいった?」

?「誰?」

男「…見つかったか」

男「って…お前は…」

沙織「あ…さっきのおっさん…」

男「はぁ…この世界も都合よく出来てきたもんだ」

沙織「どういう意味?」

男「こっちの話だ気にすんな」

沙織「やっぱり変なおっさん」

男「……俺のこと怖がらないのか」

沙織「あぁさっきのこと?それとも学校に不法侵入していること?」

男「どっちかというと前者だな」

沙織「……まぁ冷静になってみれば、あの時、私のこと助けてくれたじゃない?」

男「ま、ちょっと強引すぎたけどな」

沙織「感謝はしないわ。だけどその代わり、その後の行為については聞かなかったことにしてあげる」

男「…それは嬉しい限りだな」

沙織「あなた変態?」

男「っ…違う…と思う」

沙織「じゃなんで休みの日にわざわざ学校の図書館に来ているの?」

男「あー…俺はこの学校の卒業生なんだ」

沙織「ふーん」

男「んで、懐かしくなって立ち寄ったわけ」

沙織「不法侵入してでも昔を懐かしみたいのね。大人って意味がわからないわ」

男「……おっさんにも色々あんだよ」
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 14:59:36.60 ID:Jd8RYwCb0

沙織「その手に持ってるの…」

男「ん?あぁちょっとな」

沙織「その本…好きなの?」

男「……俺の好きだった人が好きだった本だ」

沙織「過去形の過去形…よっぽど過去に執着してるのね」

男「ははは…そうかもしんないな」

沙織「変なおっさん」

男「お前はこの本が好きなのか?」

沙織「お前って呼ぶの止めて」

男「悪い…なんて呼べばいい」

沙織「沙織。呼び捨てでいいわ」

男「沙織はずいぶん大人っぽいんだな」

沙織「大人っぽいって子供ってことでしょう?」

男「…そりゃそうだ」

沙織「……その本。私好きよ」

男「どんなところが?」

沙織「最後に王子様が死んじゃうところ」

男「バットエンドじゃないか」

沙織「王子様は大切なものが待っているところへ帰るために、最後に蛇に噛まれて倒れるのよ。なんだか素敵じゃない?」

男「……死んでしまったらどうしようもないだろ?」

沙織「……そうね」
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:00:24.61 ID:Jd8RYwCb0

男「じゃあなんで沙織はこの本を読むんだ?」

沙織「腑に落ちないことが書いてあるのよ」

男「腑に落ちないこと?」

沙織「途中でキツネがいうセリフ。思い出があれば離れていても寂しくない、ってところ。おかしいでしょ」

男「思い出があれば…か」

沙織「私はいくら思い出があったって、会えなくなるのは嫌だわ。それで納得できるならその人との関係なんてその程度だったのよ」

男「そんなもんかな…」

沙織「私は、大切な人が死んでしまったら一緒に死ぬくらいのことはするわ」

男「……」

沙織「ってなんでこんな話しているのかしらね。そろそろ出て行ったら?もうじき先生がくるわよ」

男「沙織は…死にたいと思うか?」

沙織「…えぇ機会があったらいつだって死にたいわね」

男「それは…会いたい人に会えないから…か?」

沙織「……さぁ出て行って。警察を呼ぶわよ」

男「……悪かった。じゃあまたな」

男「……」

44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:01:35.81 ID:Jd8RYwCb0


―四葉公園内―


天使「あ、男さん!探しましたよぉ」

男「なんだ…お前か」

天使「なんだとは失礼ですね!せっかく気を使って2人きりにさせてあげたのに」

男「…なんだかなぁ」

天使「…元気ないですね。またフラれちゃいましたか?」

男「いや…なんだか俺の思っていた彼女とちょっと違って…な」

天使「そりゃ一度だって言葉を交わしてなかったんです。思い違いはしょうがないですよ」

男「そうじゃない。彼女は…俺とよく似ているんだ」

天使「男さんに…?」

男「俺はいつも彼女を見ていた。俺にはもってないものを彼女は持っている気がしてな。それが羨ましかったんだ」

天使「…それ恋じゃなくてただの憧れですよね」

男「そう…なのかもしれないな。でも彼女に惹かれていたのは確かだった」

男「その彼女が俺と同じことを思っていたことが…な」

天使「同族嫌悪…って感じでもないですね」

男「彼女と俺の違いは、彼女には覚悟があって、俺にはないってことだ」」

男「俺は彼女が羨ましいよ。でもその反面、間違っているとも思う」

男「ずっと俺が言いたかったことを彼女はすんなりと言った。でもまだ彼女中学生だぜ?」

天使「……」
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:03:44.62 ID:Jd8RYwCb0

男「彼女…沙織は死にたいと言っていた」

男「でもそれは俺みたいな軽いもんじゃなくて、もっと強くてはっきりした覚悟だった」

天使「私は…死を望むことに良いも悪いもないと思いますけど」

男「……そうだな。俺も彼女も、何かから必死になって逃げている。ま、俺は必死じゃなかったけどな」




男「なぁ天使。俺は彼女を助けてもよかったんだろうか…!」

男「あのまま見逃していたほうが、彼女にとってしあわせなことだったんじゃないか…?」



天使「…あなたに死を告げた私が言うことじゃないとは思いますけれど…」

天使「彼女はまだ中学生です。人生に悲観するのは、あなたのような年齢になってからでしょうね」

天使「なんにせよ、まだ10何年しか生きていない人は自ら死んではいけないと思います」





天使「だから、泣かないでください。男さんは……間違ったことをしていませんよ」


男「あぁ……」



46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:05:00.34 ID:Jd8RYwCb0

天使「落ち着きましたか?はいうまい棒」

男「……おいこれはなんだ」

天使「なにって…うまい棒ですけど」

男「なんでたこ焼き味なんて買ってくるんだ!!俺の10円返せ!」

天使「何言ってるんですか!美味しいじゃないですかたこ焼き味!」

男「俺はチーズを買ってこいと言ったはずだぞ」

天使「チーズよりたこ焼きのほうがおいしいですって」

男「お前いつか覚えてろよ…」

天使「それで?これからどうするんですか。またふりだしですけど」 

男「そうだなぁ…どうすればいいと思う?」

天使「んーそうですねぇ…男さんがしたいと思ったことすればいいんじゃないですか?」

男「俺がしたいこと?」

天使「そもそもこれ、男さんの夢ですし。やりたいことをやればいいんですよ」サクサク

男「俺がしたいこと…か」

天使「犯罪には手を染めないでくださいね。後々めんどくさそうですから」
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:05:30.01 ID:Jd8RYwCb0

男「…俺ってさ。彼女に会いたいとか思ってたけど、そんなに彼女と特別な思い出があったわけじゃないんだよな」

天使「名前を忘れていたくらいですからね」

男「…もう一回くらいやり直してもいいかな」

天使「やっちゃいます?」

男「付き合ってくれるか?」

天使「あらプロポーズですか?」

男「そういう意味じゃねぇよ。前後の会話の意味もちょっと変わってくるだろうが」

天使「やっちゃいます?」

男「2回言うな」

天使「つまり、彼女との思い出を作りたいと」

男「簡単に言えばそうなるな」

天使「本当に男さんは純情っていうかヘタレっていうか…欲がないですねぇ…」

男「うるせぇな」

天使「分かりました。お手伝いしましょう」

男「しばらくはお前が俺の相棒だな」

天使「がってん」

男「それじゃ相棒。今すぐうまい棒のチーズを買ってこい」

天使「それただのパシリじゃないですか!?」
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:06:12.31 ID:Jd8RYwCb0

天使「それで具体的にはどうするんですか?」サクサク

男「まずは、ターゲットに接近しなければならんな」サクサク

天使「だからどうやって?」

男「狩りをする場合、決まって囮となる餌が必要なんだよ」

天使「ほほぅ」

男「俺を生贄にする」

天使「生贄!?餌じゃなかったんですか!?」

男「俺自身が餌になれるほど彼女は甘くない」

天使「でも、また彼女に会いに行ったら今度こそ通報されますよ?」

男「会いに行くのは俺じゃない。『この世界の俺』だ」

天使「あのヘタレ少年ですか?」

男「ヘタレっていうな。本人の前だぞ」

天使「あの少年が協力してくれるとは思えませんがね…」

男「大丈夫だ。俺に秘策がある」

天使「秘策って?」

男「お前あの映画知ってるか?」

天使「あの映画って?」

男「あれだよ。タイムスリップして、あの、いろいろやるやつ」

天使「あぁギター弾きまくるあれですね」

男「それ方式で行くぞ」

天使「要は脅迫するってことですよね…」

男「違う。協力だ」
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:07:06.21 ID:Jd8RYwCb0


―男宅―

天使「それにしても大きな家ですね…」

男「親父が仕事人間なんだよ」ピンポーン

天使「……出ませんね」

男「すいませーんアマゾンでーす」ピンポンピンポンピンポン

天使「ちょ、そんなわかりやすい嘘…」


ガチャ


少男「はいはい。待ってました…と」

男「残念だが、妹はまだ来ないぞ」

少男「あんた…!!駄菓子屋で会った…ってなんで知ってるんだよ!!」

天使「妹?」

男「俺には妹がいたんだ。初々しいやつだったな」

小男「わー!!わー!!わー!!!なんてこと言うんだ!!僕は知らないぞ!!」

男「うるさい!中学の時にそんなものに手を出してしまうから彼女ができないんだ!!」

天使「そんなもの…?」

小男「とりあえず…外でこの話は駄目だ…中に入って!!今すぐ!!」
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:08:09.62 ID:Jd8RYwCb0

男「はいはい。ただいまーってか」

天使「お邪魔します…」

小男「っておい!なんで勝手に二階に行くんだよ!!」

男「証拠回収だ。確か押入れのこの辺に…あった」

小男「ちょ…おい!!!!!!やめろって!!!」

男「心配するな。大事な人質は丁重に扱う主義なんでな」

小男「それは、僕が一番大切なエロ…やめろ…やめてくれ…!!」

男「俺の話を信じると誓うか?」

小男「分かった…分かったからそれを返してよ…」

天使「男さん?何してるんですか?」ヒョイ

小男「わわあわわわわ隠せ!!そして返してくれ!!」

男「ほどほどにしとけよ」

天使「なんです?その本」 

男「天使にはふさわしくないものさ」

小男「うぅ…なんなんだよお前たち…」

男「いいか聞いて驚くな?」

小男「う…うん」

男「……俺は未来人だ」

小男「……え?」

天使「ちょちょっと男さん!?」

男「そしてこいつは対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースだ」

小男「……まさか」

天使「ちょっと…話が見えないんですけれど…」

男(天使、ちょっと抑揚を抑え気味に「それが私、信じて」って言ってくれ)

天使(え?なんでですか)

男(いいから…)




天使「…それが私、信じて」チラッ

男「な?」bグッ

小男「なななながもんさんや……」

天使「私にはなにがなんやら…」
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:10:03.42 ID:Jd8RYwCb0

男「…というわけだ」

小男「なるほど…僕の周りはそんなことになっていたのか…」

男「あぁ。そのためにお前の力を借りたい」

小男「わかった。この場合俺は主人公ポジションになるのか…?」ブツブツ

天使「なんだかあっけなく協力してもらえましたね」

男「いったろ?俺の厨学生時代は黒歴史なんだ」

小男「それで?世界に干渉している女の子っていうのは?」

男「あぁ井坂沙織って言うんだが…知ってるか?」

小男「!!…あぁ知ってるよ」

男「何度か接触を試みたんだがうまくいかなくてな…お前に協力してほしい」

小男「まぁできなくもないけど…」キリッ

男「目的はその女の子を楽しませることだ。そうすれば世界の崩壊は抑えられる」

小男「これマジで憂鬱じゃないか…どうすんだよ…」

天使「なんだか哀れになってきました」

男「言うな。俺だって辛いんだ」
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:10:30.52 ID:Jd8RYwCb0

男「それと、申し訳ないんだが俺たち住む場所が無くてな…」

天使「ちょっとそれも頼むんですか!?」

小男「あぁそれなら空いてる部屋使っていいよ」

天使「えっ…いいんですか…?」

男「どうせ親父は仕事で帰ってこないもんな」

小男「よく調べてあるね」

男「というわけだ。ゆっくりしようぜ天使」

小男「天使?」

男「あー…あだ名だよ。この可愛さマジ天使だろ?」

天使「えっ?えぇ…そんなことないですよぅ…///」

小男「そうかなぁ」

男「だよな?俺もどうかと思ってたところだ」

天使「おい、お前ら」




男「夏休みっていつからだ?」

小男「え?あと一週間で終わるけど」

天使「ちょうどいいですね」

男「小男。タイムリミットは夏休みが終わるまでだ」

小男「え?なんで」

男「おいおい忘れたのか?夏休みを彼女に楽しませないと…」

小男「やばい…エンドレスに8月が…」

男「そういうこった。明日から必死になって彼女をデートに誘え」

小男「わかったよ…やれやれだね…」キリッ

天使「男さん扱い方うまいですね」

男「嘘を言っちゃいけない理由がやっとわかった気がするわ…」
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:11:48.42 ID:Jd8RYwCb0

―翌日― 【月曜日】

男「それで?彼女とどうやって会うんだ?」

小男「えっと…確かあの子図書委員だったから…たぶん学校にいると思うよ」

天使「夏休みなのに、ですか?」

小男「うちの学校、無駄に図書館が広いから夏休みの間、解放してあるんだ」

天使「その割には誰もいませんでしたけどね」

小男「え?もう行ったの?」

男「ん…まぁな」

小男「たぶん井坂さん本が好きだから、あそこにいると思うよ」

男「それで昨日も…」

小男「でもどうやって誘うんだよ。僕…そんなことしたことないよ」

男「大丈夫だ。俺が司令官だ。お前は俺の計画したプランに沿って行動すればいい」

小男「おぉ…」

天使「なんで顔の前で手を組んでるんです? 」

男「さて、計画に移ろう…」

小男「はい!」

天使「なんだかんだ言って一番楽しんでるの男さんですよね」

男・小男「え?」

天使「あーややこしい」


小男「じゃいってくる」

男「健闘を祈る」

小男「了解!!」

ガチャ バタン




男「……」

天使「……」

天使「……男指令?」

男「やめてくれ」
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:13:06.21 ID:Jd8RYwCb0

天使「それにしても、いいんですか?巻き込んでしまって」

男「…あいつは俺のせいで惨めな青春を送ったからな」

天使「あいつって自分じゃないですか」

男「だから俺だけ楽しむのはフェアじゃないと思ってな」

天使「やさいしいんですね」

男「馬鹿言え。寝床と口実が欲しかっただけだ」

天使「ふふっ…そうですか」

男「誘えるといいんだけどな」

天使「不安ですか?」

男「そりゃ俺だもの」

天使「そうですね」

男「そこは否定してくれよ…」

天使「どーだか。あ、私シャワー浴びていいですか?」

男「廊下の奥。右側だ」

天使「どうも…あの」

男「ん?トイレならその左側だぞ」

天使「…覗かないでくださいね」

男「はっ…俺は紳士だぞ?そんなことするわけないじゃないか」

天使「安心しました。では」トコトコ



男「……」

男「……」



シャー フンフン♪




男「おっとトイレに行きたくなってきたな…」

男「あれ?トイレはどっちだったか…久しぶりだから忘れてしまったなー」

男「右か?左か?どっちだろうー」

男「うむたぶん右だろう。あぁ早くしないとー」

ガラガラ

天使「ちょ!!!!!なに入ってきてるんですか!?」

男「あーしまったー間違えた―」

天使「なにそのわざとらしい棒読み!?ちょ出てってください!!」

男「おいおい髪乾かすならパンツくらい履けよ」

天使「おま、凝視すんな!!!いい加減にしろ!!!!」
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:14:06.58 ID:Jd8RYwCb0

―その頃学校―


小男「さて、学校についた訳だけど…」

小男「どうしたもんかな…」

小男「そもそも、話したことのない女の子をどう誘えっていうんだよ…」

小男「そうだ…あいつがくれたメモがあったな…」

小男「どれどれ…」ペラッ


女を落とす重要テクニック

一、初めの一言はダンディに
二、ひたすらクールに彼女の話を聞こう
三、相手が怯んだ隙に連打
四、負けそうになったら土下座


小男「……」クシャクシャポイッ
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:14:56.59 ID:Jd8RYwCb0

沙織「…あら珍しい。夏休みにここに人が来るなんて思ってもなかったわ」

小男「!!」

沙織「まぁ昨日ひとりいたけれど…あなた一人?」

小男(初めの一言はダンディに…)

小男「あぁそうだと思うよ…」フッ

沙織「あ…そう。入り口に突っ立てると邪魔なんだけど?」

小男「あっごめん」

沙織「……」スタスタ

小男(いまの…ダンディだったか?)

小男「はぁ…アホみたい…よし…自分で頑張ってみるか…」
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:15:48.83 ID:Jd8RYwCb0

小男「あ…あの…」

沙織「…何か用?」

小男「となり座ってもいいかな…?」

沙織「ほかに空いている席ならいくらでもあると思うけれど」

小男「そ、そうだよね。ごめん」

沙織「……」

小男「えーっと…その本好きなの?」

沙織「……くす」

小男「ごめん!変なこと聞いたかな…?」

沙織「いや、昨日もそんなこと聞かれたから」

小男「あ、そうなんだ…」

沙織「なんでそんなこと聞くの?」

小男「えっと…君いつもその本読んでいるから…」

沙織「沙織」

小男「え?」

沙織「私の名前。あなたは?」

小男「あ、小男」

沙織「呼び捨てでいいわ。よろしくね小男君」

小男「あ、よろしくね…沙織…さん」

沙織「どうしたの?苦い顔して」

小男「えっと…沙織…さんは突然こんなやつに話しかけられて迷惑じゃなかったかなって…」

沙織「ずいぶん自分を卑下するのね」

小男「だって沙織…さん大人っぽいから」

沙織「…あなたもそんなこと言うの?」

小男「あなたも?」

沙織「なんでもないわ」

小男「はぁ…」

沙織「私は子供よ。ただ子供であることに徹せなくなっただけ」

小男「難しくて…僕にはよくわからないよ…」

沙織「ならいいわ」

58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:16:26.09 ID:Jd8RYwCb0

小男「……」

沙織「……」

沙織「……あなた、私の…弟に似てるわね」

小男「へぇ沙織…さん弟がいたんだね」

沙織「もう、さん付けでいいわ…無理しなくても」

小男「そういってくれると助かるよ…」

沙織「その自信なさげなところとか、ナヨナヨしいところとか本当に似ているわ」

小男「はは…ひどいな」

沙織「……そうね。ずいぶんひどい姉だわ…」

小男「…沙織さん?」

沙織「昨日のあいつといい、あなたといい、なんでこんなことペラペラしゃべっちゃうのかしら」

小男「しゃべったらいけないことだったの?」

沙織「いいえ…でもあまり人に話したことがなかったから」

小男「こんな初対面の奴に話してよかったの?」

沙織「どうでしょうね。不思議な力が働いているみたい」

小男「ははは…そうかもしれないね」
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:17:36.61 ID:Jd8RYwCb0

小男「……」

沙織「……」

小男「あのさ…笑わないで聞いてもらえるかな」

沙織「なに?」

小男「いまさ、僕の家に変な奴が来てるんだ」

沙織「変な奴?」

小男「うん。父さんにそっくりでさ、最初びっくりしたんだけど…」

小男「なんか知らないけど面白い奴でさ」

沙織「見知らぬ人を家に上げるなんて感心しないわね」

小男「だよね…でもなんか不思議と落ち着くっていうか…嫌な気がしなくて」

小男「笑わないで聞いてほしいんだけど…そいつ自分のこと未来人だっていうんだよ?」

沙織「未来人?なにそれ」クスクス

小男「本当だよ!真顔で言うんだ…」

沙織「それが本当ならものすごい出来事ね」

小男「だろう!?で、そいつが言うには…えーっと…」

沙織「なに?」

小男「君を…遊びに誘えって言うんだ」

沙織「なんで私を?」

小男「さぁ知らない。でもそうしなきゃ世界が終わっちゃうんだってさ」

沙織「世界の終り…ね」

小男「ほんとバカみたいな話だよね…ごめんね変なこと話しちゃって」

沙織「いいわよ」

小男「えっ?」

沙織「私たちでその未来人の正体を明かしてやりましょうよ」

小男「信じてくれる…の?」

沙織「あら、嘘だったの?」

小男「本当だよ!今も家にいるんだ!」

沙織「じゃあ行きましょうか」

小男「えっ?」

沙織「あなたの家」

小男「え?え?え?」

沙織「いけなかった?」

小男「そんなことないよ!!!!!」

沙織「じゃ行きましょうか」

小男「うん…」



小男(どどどどどどうなってるんだ…?なんで僕こんなこと簡単に言えるようになってるんだ…)

沙織(不思議ね…なんだか行かなくてはいけない気持ちになったわ…)
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:18:42.21 ID:Jd8RYwCb0

―男宅―

小男「ついたよ」

沙織「あなたの家…大きいのね…」

小男「!!っそう…だね…」

沙織「?なんで顔を赤らめる必要があるのかしら?」

小男「いや!なんでもないよ…」

沙織「これだけ家が大きいと、玄関も大きいわね…」

小男「沙織さん!早く中に入ろう!」

沙織「えぇわかったわ?」


ガチャ




沙織「……」



バタン

小男「あれ?どうしたの中に入っていいんだよ」

沙織「見間違いじゃなければ、昨日の変態が女の人に虐げられている姿があったわ」

小男「なにいってるの?」

ガチャ




天使「もう!!!男さんの!!馬鹿!!!」

男「ちょ!!!待てって!!ごめん!!!俺が悪かったから!!弓を持ち出すな!!」



小男「ねぇ…なにしてるの?」

男「おぉ帰ってきたか。助けてくれ俺はこのままじゃ死ぬ」

天使「乙女の花園を拝んでおいてその言いぐさはなんですか!!!!!!」

小男「花園って…何したのさ」

男「なーに。トイレと脱衣所を間違えてしまってな」

天使「天誅!!」ドカッ

男「げぼらっ!!!」

沙織「…私は出直したほうがいいかしら?」

小男「あー…ごめんね。すぐ片づけるから待ってて」

天使「うぅもうお嫁にいけません…」

男「」ピクピク
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:19:36.60 ID:Jd8RYwCb0

天使「はいジュース」

沙織「ありがとう」

小男「それ僕ん家の冷蔵庫にあった…まぁいいか」

男「おいファンタはグレープだろう。なんでオレンジなんだ」

天使「文句言うなら飲まないでください」

男「天使の俺に対する風当たりが強くなったなぁ…」

沙織「天使?」

小男「あだ名なんだってさ」

沙織「へぇー…素敵ね」

天使「えへー…///」

沙織「というか、なぜ昨日の不審者が小男君の家にいるのかしら?」

男「まぁそう怖い顔しないで。ファンタ飲むかい」

沙織「……あなた未来から来たんですってね」

男「」ブハッ

天使「ぎゃあ!汚いです!」

男「…おいガキンチョ…しゃべったな」

小男「だってしょうがないだろ!それになんだよあのメモ!全然役に立たないじゃないか!」

男「なにおう!俺の人生論から導き出した極秘のテクニックを愚弄するのか!?」

天使「童貞のナンパテクニックなんてゴミ屑以外の何物でもありませんよね」

男・小男「「どどどどど童貞ちゃうわ!」」
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/21(木) 15:19:56.17 ID:DaKB+1Jp0
C
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:20:15.80 ID:Jd8RYwCb0
沙織「…それで?あなた本当に未来からきたの?」

男「あー…まぁそうなるかな」

沙織「で?そっちのお姉さんは?」

男「対有機性…」

小男「えっと!宇宙人だよね!」

天使「え!?私宇宙人だったんですか!?」

沙織「本人が一番驚いているようだけど」

男「そういうお前は、全然驚かないんだな」

沙織「名前で呼んでって言ったはずだけど」

男「……こりゃ失礼」

沙織「……普通ならこんな世迷言いってる変態の言うことなんて信用しないわ…」

天使「まぁそうでしょうね」

沙織「…でもなんでか知らないけれど、信じてしまえるのよ」

小男「あ、それ僕も同じ。全然根拠もないけどこの人たちの言ってること本当だって思うもん」

男(おい天使…これってやっぱり)

天使(この世界が男さんにとって都合のいいように改変されてますね)

男(まったくなにが現実味ある世界だよ…)

天使(男さんが心の底から親しくなりたいって思ってるんでしょ。中学生の女の子と)

男(俺はロリコンじゃねぇからな)

天使(どーだか…)
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:21:01.40 ID:Jd8RYwCb0

沙織「なにをコソコソ話してるのかしら…?」

男「いや、なんでもない」

天使「沙織ちゃんは可愛いなーって」

沙織「世事は…嫌いだわ」

男「あら、赤くなっちゃって」

沙織「お姉さん、このおっさん殴ってください」

男「おい。やめろ、やめっ」ガスッ

小男「それで?沙織さん連れてきたけど、これからどうするの?」

男「いてて…そうだな…うーん…」

天使(どう説明するんですか?)

男「あー実は俺たちは一週間後に地球を離れることになった」

天使(あっけからんと嘘を着いたー!!)

沙織「なんでこんな嘘くさい話、信じられてしまうのかしら…」ブツブツ

天使(でも信じてるー!!)

65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:22:06.02 ID:Jd8RYwCb0

男「それでだ、残り少ない時間の中でこの世界の思い出を作りたいと思っている」

小男「あれ?さっき聞いた話と違うような」

男「あれは嘘だ」

小男「ひどい!信じた結果がこれかよ!」

沙織「思い出…?なにをすればいいのかしら」

男「えっと…そこまでは何も考えてなかったな…」

沙織「無責任な未来人ね」

男「おい天使。お前どこか行きたいところあるか?」

天使「えっ急に私に振りますか…えーっと夏だし…海…とか?」

男「ハイ決まり。海いこう」 

小男「決断早っ!!」

男「ガキンチョは何処に行きたい」

小男「ガキンチョ言うのやめて欲しいなぁ…キャンプとかすれば楽しいんじゃない?」

男「はい。山行くのね。決定」

小男「もう少し考えて決断したほうがいいんじゃない!?」

男「沙織は何処に行きたい?」

沙織「そうねぇ…宇宙人さんがいるから月にでも行ってみたいかしら」

男「なにいってんだ。もう少し現実を見ろ。却下」

沙織「……」

小男「もう少しオブラートに包んでよ!」

天使「それフォローになってないよ…」

沙織「…私帰ってもいいかしら」

小男「ごめん!沙織さん僕が悪かったから!そんな寂しそうな顔しないで!」

沙織「私は別に!残念がってなんかいないわ!」

天使「残念だったんですね」

男「以外と乙女な部分もあるじゃないか」

沙織「お姉さん。そのおっさんの髪の毛引き抜いてもらえるかしら」

男「ちょ髪はマジ駄目だって…すでに後退始まってるから…いやあああああああ」


66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:23:09.80 ID:Jd8RYwCb0

天使「一週間ですし、これくらいの予定で丁度いいんじゃないですか?」

男「あぁ…俺の毛根がまた死んでしまった…」

小男「そういえば、夏休みの最後にお祭りがあるよ」

天使「お祭り!!いいですねぇ!浴衣着ていきましょうよ!ね!」

沙織「えっ…えぇ…」

男「じゃあ今週で回るのは海と山と夏祭りか。イベント目白押しだな」

天使「お金大丈夫ですかね…」

男「…まぁ何とかなるだろ」

小男「当てがあるの?」

男「あー…ガキンチョ…親父の部屋の2番目の引き出し。エロ本の間を調べてこい」

小男「ちょ、エロ本って…」

沙織「……」

天使「……」

男「なんでまぁ…ここにいる女性陣は初心な乙女ばっかりだな」

天使「あんたの」

沙織「デリカシーがないだけよ!」

男「お二人さんはすでに仲良くなっているようで安心したわ…」
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:23:55.40 ID:Jd8RYwCb0

タタタ

小男「…これ父さんのヘソクリ…だよね」

男「おぉ見つかったか…これだけあれば大丈夫だろ」

小男「なんだか複雑な気分だよ…父さん…ロリ趣味だなんて…」

男「あー…俺が戻ったらちゃんと返しておくよ」

天使「帰れれば、の話ですけどね」

小男「?…ならいいけど」

男「さて、んじゃさっそく海から行くか」

天使「準備とかしたいですし、明後日にしませんか?」

男「準備って?」

天使「水着とか…日焼け止めとか…サンオイルとか…」

男「んなもんスクール水着とサラダ油で十分だろう」

小男「さすがにサラダ油は違うと思うよ」

天使「大人の女性にスクール水着なんて言語道断です!」

小男「おとな…?」

天使「男さんはいつになっても失礼な奴ですね」

男「いや、俺!?俺が悪いの!?」

天使「沙織ちゃんだって新しい水着欲しいですよねー」

沙織「えっ?まぁ…」

天使「そういうことで、明日はみんなでショッピングです!」

男「やけに張り切ってんなあいつ」

小男「女の人はみんな買い物好きって聞いたことあるよ」

男「そんなもんかねぇ…」

68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:24:48.28 ID:Jd8RYwCb0

【火曜日】大型デパート前

天使「ほえー…大っきぃですねぇ」

沙織「ここはいつ来ても大きいわね」

小男「あの人たち、ああいう言い方するの止めさせたほうがいいと思うよ…」

男「中学生のお前には刺激が大きすぎるかもな」

沙織「?小男君どうして前かがみになってるの?お腹でも痛い?」

小男「あ…そうだね。ちょっと辛いかな」

男「早く沈めないと。おろし金で擦り下ろされる想像するんだ」ボソッ

小男「うん。もう大丈夫みたい。いこうか」

男「昔から、想像力だけはたくましかったんだな」

天使「あー中も広いです―!」

男「あんまりはしゃぐな」

天使「最初は水着売り場に行きましょう!」

小男「僕たちも水着買うの?」

男「ここまで来たら買うしかないだろう」
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:25:44.81 ID:Jd8RYwCb0

水着売り場

男「なんだか種類が多すぎて訳が分からなくなるな」

小男「水着なんてどれも同じだとおもうけどなぁ」

男「というか、女の水着って面積的には下着と同じだよな」

小男「確かにそういわれてみればそうだね…」

男「しかも、ビキニとかになると、もしかしたら下着よりも布面積は少ないかもしれない」

小男「…ゴクリ」

男「しかし、女性はそれを恥ずかしげもなく俺たちに見せてくる。おかしいと思わないか?」

小男「ブラジャーとかパンツは見られると恥ずかしいのにね…」

男「そうだ。だから水着とは実質上、下着なのだ」

小男「だけど!下着には恥じらいがあるよ!それがないのとあるのでは全く違うよ!」

男「…俺の言いたいこと伝わったようだな」

小男「はっ…おっさんそれを僕に気付かせるために…」

男「そうだ。お前が必死になって集めているエロ本には羞恥心がない。大事なのは乙女の恥じらいだ」

小男「くそっ…僕はなんて勘違いをしていたんだ…」

男「お前の趣味が悪いというわけではない。しかし、その使用目的によってターゲットとなるものは変えなければならないということだ…」

小男「し…師匠!!!!」

天使「あんたらを死傷状態にしてあげてもいいんですよ?」

沙織「だめよお姉さん。関わってしまっては。腐臭が移るわ…行きましょう」




男「……」

小男「……」
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:26:20.39 ID:Jd8RYwCb0



天使「まったく…あの人たちは」

沙織「男ってみんなあんな感じなのかしら」

天使「あの人たちだけだと思うから、沙織ちゃんはちゃんといい人を見つけてね」

沙織「いい出会いに期待するわ」

天使「うー!!!可愛い水着がいっぱいだ!!」

沙織「私はあまりこういうフロアにこないから…驚いたわね」

天使「これも可愛い!あ!あっちのもいいねー。沙織ちゃんこれなんてどう?」

沙織「えっえぇ…似合うと思うわ」

天使「そうだよねぇ!私もそう思うわ!さ、早速試着してみようか」

沙織「えっ?それはあなたが着るのではないの?」

天使「やだなぁ沙織ちゃんに決まってるでしょ。ささ、早く行こうねー…」

沙織「ちょっとまって…ちょ」ズルズル

71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:27:18.38 ID:Jd8RYwCb0

1時間後

男「ったく…水着一着買うのにどれだけ時間かかるんだよ」

小男「僕たちは5分くらいで終わったのにね」

男「なぜか買うとき店員さんの目つきが鋭かったな」

小男「きっとさっきの会話聞かれてたんだね…」

男「全く…男のロマンを理解しない女ばっかりだな」

天使「女心を理解しようとしない男よりましだと思いますけどね」

男「うるせぇな…やっと終わったか」

小男「あれ?沙織さん…ちょっとグッタリしてるけど…」

沙織「えぇ…なんというか刺激的な買い物だったわ」

天使「はぁーやっぱりお買い物はいいですねぇ…」

沙織「今度はもう少しスローペースでお願いしたいわ…」

男「ま、まぁお疲れ様だ」

天使「次どうします?」

男「んー沙織も少し疲れているみたいだし、ちょっと早いけど飯にするか」

小男「やった!実はお腹減ってたんだよね!」

沙織「私はとりあえず座れるなら何でもいいわ」

天使「それじゃファミレスでも入りましょうか」

男「安いしそれでいいか?」

小男「いいよ!」

男「んじゃはいりますかー」
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:28:30.80 ID:Jd8RYwCb0

カランカラン

‐ファミレス内‐


男「最近のファミレスはこんなにメニューがあるのか…」

天使「どーれーにーしーようかなー」

小男「僕、チーズハンバーグセットね」

沙織「私はクラブサンドでお願い」

男「お前ら決めるの早いな…どうすっかな…」

沙織「優柔不断な男は嫌われるわよ」

男「おっさんになってくると、胃が受けつけなくなるものが増えるんだよ…」

男「おっ和善があるじゃん。サバ味噌和善にしとこう」

小男「天使さん決まった?」

天使「」ブツブツブツブツ

男「と、とりあえず呼ぶか」


ピンポーン

店員「お伺いします」

男「えーっとチーズハンバーグセットとクラブサンド、あとサバ味噌和善ね」

男「おいお前はどうするんだ?」

天使「きつねうどん」

男(意外とカロリーとか気にするタイプなのか…?)

天使「と」

男「と?」

天使「カツドンピザカルボナーララザニアマーボウカレー」

男「すいません。とりあえずキツネうどんだけお願いします」

店員「か、かしこまりました」

天使「ちょちょっと男さん!!」

男「うるさい。ちっとは遠慮しろ」

天使「そんな殺生な…」

男「あーわかったよ…デザート、頼んでいいから」

天使「本当ですか!?」

男「一つだけだぞ」


天使「えっと、えっと…このジャンボタワーパフェ!」

男(1100円…マジかよ…)

沙織「私、ティラミス」

小男「オレンジシャーベット」

男「お前らも頼むのかよ!?」
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:29:30.39 ID:Jd8RYwCb0

男「てか、お前大食いキャラだったんだな」

天使「えへへー///」

男「褒めてねぇよ」

沙織「どうやったらそのプロポーションを維持できるのかしらね」

天使「私、太らないタイプなんですよね」

男「おかげで、育つところも育ってな…痛ぇ!!!足踏むな!!」


小男「僕は食べるとすぐ太っちゃうよ」

男「心配するな。いずれ胃が小さくなって食うことが辛くなる」

小男「師匠と一緒にしないでよね」

男「残念ながら一緒なんだよな」

天使「師匠ってあだ名もう定着したんですね…」


沙織「まぁ、いつもカロリーを気にしなければいけないのは本当に億劫よね」

男「男からしたら、ちょっとくらい肉感があったほうがいいともいうけどな」

小男「肉感って…」

天使「でも太ってる女の人は嫌っていうんでしょう?」

男「うん」

天使「ほんと自分勝手っていうか…女だけが損してる気がします…」

沙織「そもそも、太っているという基準が曖昧なのよね。何キロ以上が太っているとかあればいいのに」

男「なんだっけ、なんとか指数とかあるじゃないか」

沙織「あれだって当てにならないわ。自分では普通だと思っていたのに、太り気味とか出るし」

男「出たことあるんだな」

沙織「……」

男「いだだ!足をかかとで踏むな!!」
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:30:42.60 ID:Jd8RYwCb0

‐料理到着‐

店員「以上でよろしいでしょうか」

男「あ、あとデザート。食後に持ってきてくれるかな」

店員「かしこまりました」

天使「さてーさっそくいただきましょう!」




「「「「いただきます」」」」



天使「あー…私もハンバーグにしておけばよかったかな…」

小男「一口あげるよ」

天使「本当ですか!!ありがとうございます!!」

沙織「やさしいのね」

小男「そ、そんなことないよ…沙織さんも欲しいならあげるけど」

沙織「じゃあ一口いただこうかしら」

天使「あー…男さんのサバ味噌もおいしそうですね…」

男「そうだろう、そうだろう。俺はやらんがな」

天使「ケチ!アホ!甲斐性なし!」

男「うるせぇな!黙って食え!」

沙織「冷たいのね」

男「俺が冷たいんじゃなくて、お前らがこいつに甘いんだよ」

小男「いいじゃん一口くらい」

男「しょうがねぇな…はい漬物」ポイッ

天使「わぁ…カブの漬物ですぅ…」キラキラ

小男「それでいいんだ…」
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:31:27.19 ID:Jd8RYwCb0


男「どうでもいいけど、お前なんだよその食い方」

小男「えっ何か変かな」

男「野菜から先に全部食べて…肉が冷めちまうだろう」

小男「いいじゃん。僕は好きなものは最後に食べるんだもん」

男「はぁー…わかってねぇな…」

小男「な…なにか問題あるの?」

男「うまいもんは早いうちに食べて、嫌いなものは食べない。これで解決」

小男「残さないで食べないと駄目だよ!」

男「だから俺は嫌いなものは絶対に頼まない」

沙織「なんだか自己中心的ね」

男「せっかく作ってくれたんだから、好きな奴に食べてもらったほうが幸せだろ?」

小男「天使さんは好きなものは先に食べそうだよね」

天使「うん!」

男「そのまんまだな」

天使「私に好き嫌いなものなんてないから!」

小男「……」

男「……」

沙織「見習いたいものだわ」
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:32:15.54 ID:Jd8RYwCb0

男「沙織は何が嫌いなんだ?」

沙織「そうね…牛乳かしら」

男「おいおい、そんなんじゃいつまでたっても育たないぞ?」

沙織「お姉さん。おっさんのサバ味噌にタバスコかけてもいいわよ」

男「おい!やめろって!!背のことだよ!!あぁ!!!馬鹿!!!赤い!!!」

小男「僕は牛乳好きだけどな」

沙織「アイスなら食べられるのだけどね」

天使「うーん。どっちも美味しいんだけどなぁ…」

男「はぁはぁ…まぁわからんでもないな」

小男「なんかあるの?」

男「俺はたこ焼きは好きだが、タコの刺身は好きじゃない」

小男「あ、それ分かる」

男「スルメは好きだが、イカの刺身は好きじゃない」

小男「それも分かる!」

沙織「それはただ単に刺身が苦手なだけじゃないかしら」

小男「同じ食材でも、加工すればどうにかなるってことだね」

男「女が化粧する理由の1つだな」

沙織「あなたはもっと女性への配慮を知ったほうがいいわ」
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:32:48.40 ID:Jd8RYwCb0
食後‐

男「さて、腹ごしらえは済んだし残りの買い物も終わらせちまうか」

小男「何買うの?」

男「俺たちはキャンプ用品。女たちは化粧品でも見てればいいだろう」

天使「そうですね!別行動で、2時間後にここで待ち合わせましょう!」

沙織「えっ2時間」

男「沙織。頑張ってくれ」

小男「辛かったら逃げてもいいからね」

天使「何言ってるんですか?さ、行きましょう!」

沙織「2時間…2時間…」ズルズル

男「ご愁傷様だな」

小男「はやく買い物終わらせようよ」

男「あいよ」


78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:34:03.01 ID:Jd8RYwCb0

―2時間後―


男「思ったより買うもの少なかったな」

小男「家にあるものばっかりだったね」

男「そういえば…昔はよくキャンプに行ったんだったな…」

小男「そういえば、そうだったね…ってよく知ってるね」



男「……」

小男「……」

男「なぁ、小男」

小男「なに?」

男「……今までごめんな」

小男「なんで謝るのさ?」

男「俺のせいで、ずっとつまんない人生送っちまったから…」

小男「?僕は今とっても楽しいけど?」

男「!」

小男「…だって誰かと買い物とか、遊ぶ計画とか、ずっとアニメの中でしかありえないって思ってたから、今でもちょっと信じられないけどさ…」

男「……」

小男「師匠だって楽しむためにこんなことしてるんでしょ?」

男「…そうだな」

小男「?変な師匠」

小男「あ、帰ってきたよ!おーい」

天使「いやー楽しかったですね!!」

沙織「そ…そうね…」

小男「さ、沙織さん…なんだか肌がテカテカしてるね…」

沙織「化粧品を何十種類も使わされたらそうなるわよ…」

天使「お肌は乙女の命ですよ?いいものが手に入ってよかったです!」

天使「…あれ?どうしたんです男さん。泣きそうな顔して」



男「いや…別に…自分に向かって…いままでごめんって呟いたら…思わずほろっと泣きそうになっただけ」

天使「男さん…」

男「あーおっさんになると涙腺が緩くなって困るわ」

小男「ねぇもう帰ろうよー」

沙織「そろそろ日も暮れるわよ」



天使「…帰りましょうか」

男「…そうだな」
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:35:14.37 ID:Jd8RYwCb0

【水曜日】

天使「う・み・だー!!!!!!」

小男「うみだー!!」

沙織「ちょっと騒がないでよ…恥ずかしい」

男「海だーー!!!!!!!!!!!!!!!!」

沙織「あなたが一番うるさいわよ!!!」

男「おいおい。せっかくの海なんだぞ?子供らしくもう少しはしゃげよ」

沙織「そ、そりゃ私だって楽しいけれど…」

男「その気持ちを叫んでみるんだよ。ほら」

沙織「う…うみだぁー!」

男「ぶふー」

沙織「もうなんなのよ!!!」

天使「いやー晴れてよかったですねぇ」
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:36:00.20 ID:Jd8RYwCb0

小男「僕、海に来たのなんて久しぶりだよ」

男「俺はもう記憶すらないな」

沙織「パラソルここでいいかしら」

男「おう。先に着替えてこいよ」

天使「さ、沙織ちゃん行こう!可愛い水着が私たちを待ってるよ!?」

沙織「ね…ねぇ本当にあれ着るの?」

天使「せっかく買ったんだから当たり前じゃない!さ、行こうねー」

沙織「うぅ…」

男「おいジュニア」

小男「ジュニア!?」

男「あいつらの水着どんなのだと思う?」

小男「うーん…やっぱり性格からして沙織さんがワンピースじゃない?」

男「とすると、天使がビキニか」

小男「僕はどっちでもいいけどね」

男「まぁ似合ってるかどうかが問題だよな」

小男「とか言って、ビキニを期待してるんでしょ?」

男「そりゃ面積はないほどいいだろうが」

小男「それはそうだけど…」




天使「おまたせー」



男・小男(きたか…)
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:36:55.17 ID:Jd8RYwCb0

天使「ほら、沙織ちゃん隠れてないで!」

沙織「うぅ…」

男(天使がワンピース…)

小男(沙織さんが…ビキニ…)ゴクリ

男「なかなか…ほほぅ…」

天使「男さんはそんなにじろじろ見ないでください。気持ち悪いです」

小男「さ、沙織さん…似合ってるよ…」

沙織「そうかしら…ちょっと派手じゃない?」

天使「だいじょーぶ!ちゃんと可愛いよ!ねぇ男さん」

男「あー…そうだな」

天使「なんだか微妙な反応ですね…」

男「えーっと…まぁ本当に似合ってるんじゃないか?」

沙織「あ…ありがと」

男「……」

沙織「……」


男「あー…おっさん、ちょっと休んでるわ。日差しが強すぎる」

小男「だらしないなぁ」

天使「じゃ、私たちは遊びましょうか!」

沙織「私も少し休んでから行くわ」

小男「そう大丈夫?」

沙織「平気よ。一足先に楽しんできて頂戴」

天使「それじゃ!小男君!海まで競争です!」ダダダッ

小男「あ、待ってよ天使さん!!」ダダダッ

82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:38:15.98 ID:Jd8RYwCb0


男「……」フゥー

沙織「…隣座ってもいいかしら」

男「ご自由に?」

沙織「……海まで来てタバコなんて吸うのね」

男「んー…ちょっと昔のこと考えてて…な」

沙織「昔のこと?」

男「俺が好きだった女のこと」

沙織「あなたにも好きな人がいたのね」

男「あっはっは、おっさんにも恋する自由くらいあるさ」

沙織「で、その恋は成就したの?」

男「いや…片思いのまま…相手が遠くに行っちまった…」

沙織「ふーん…」

男「……」

沙織「……会いたいとは思わないの?」

男「そりゃ、ずっと思ってたさ。だけど、俺にはそれを決心するだけの材料がなかったのさ」

沙織「材料って…?」

男「…前、図書室で沙織に言われたことさ。」

男「俺がどれだけ合いたいと思っても、その相手との思い出が全然ないんだよ。だから、俺はそいつに会いに行く決心がいつまでもできない」

沙織「……」

男「だから、あの時、俺はすごく恥ずかしかったんだ…中学生に教えられるとは思ってもなかったからな」

83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:39:12.19 ID:Jd8RYwCb0

沙織「キツネのセリフのこと?」

男「『思い出があれば離れていても寂しくない』…か。」


男「なぁ…楽しかった思い出を思い出して悲しくなるのと、なにも思い出がないことを悲しむことでは、どっちが辛いんだろうな」

沙織「私は…帰ってこない思い出に浸ることのほうが悲しいわ」

男「…そうかもしれないな」

沙織「なにも聞かないのね」

男「沙織が自分から話してくれるのを待つさ」

沙織「興味がないの?」

男「嫌われたくないだけだ」

沙織「大人なのに臆病なのね」

男「そうだな、情けない話だ」

沙織「私、もう行くわ」

男「あぁ楽しんで来い」

沙織「おっさんも、早くしないと思い出作れないわよ?」

男「あら、おっさんも仲間に入れてくれるのか」

沙織「あなたが企画したんでしょう…まったく…」

ザッザッザッ




男「思い出…ねぇ」
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:40:00.74 ID:Jd8RYwCb0

―数分後―

天使「あ、やっと男さん来ましたね!って…その水着…」

男「いいだろう。俺も頑張ってみた」

沙織「なによそのきわどい水着は…」

男「女性がビキニを用意してくると思って、ほれ俺もビキニ」パッツン

天使「嫌!嫌!なんですかそれ!もう完全にあれのライン出てるじゃないですか!」

男「ライン?ボディラインか?」

小男「師匠、意外と筋肉質だね」

男「家でずっとキャンプしてたからな」

小男「家なのに?」

天使「嫌です!変態です!もうなんなんですかその水着…」

男「大丈夫だって。ずれることはないから」

天使「ずれたら処刑です!」

沙織「はぁ…この人と一緒に来たのが間違いだったわ…」

男「さぁ遊ぶぞー」

天使「ぎゃああああ!!!!こっち来ないでください!!!!」

男「あはははは、まてまてー」




小男「なんだろう…海辺で追いかけっこしてるのに…」

沙織「片方は笑ってて、片方は泣きながら全力疾走してるわね…」

85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:40:36.49 ID:Jd8RYwCb0

天使「はぁはぁ…」

男「はぁはぁ…」

小男「もういいから遊ぼうよー」

沙織「まったく大人なのに馬鹿ばっかりやってるわね」

天使「そうですね…こんなおっさんに構ってる場合じゃありません…」

男「おい…浮き輪貸してくれ…しばらく休むわ…」

小男「情けないなぁ」
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:41:44.30 ID:Jd8RYwCb0

プカプカ


男「あー…青い空…平和だねぇ…これで本当の世界だったら最高なんだけどなぁ…」

「……」ダーダン

男「…はぁ…極楽だねぇ…」

「……」ダーダンダーダン

男「ん?幻聴か…?サメのテーマが流れているような…」

「……」ダーダンダーダンダーダン

男「どんどん近づいてくる…?」

天使「天誅―!!」バシャーン!!!

男「うわっぷ!!!!」

天使「はっはっは、見たか男さん!さっきのお返しですよ!」

男「」ブクブク

天使「って…あれ?男さん…浮いてこない…」



男「」

天使「うわあわわわわわ。大丈夫ですか!?溺れてます!!」

小男「どうしたの?」

沙織「なにかあった?」

天使「おおおおおお男さんが溺れてしまって!」

小男「師匠、大丈夫!?」ザバーン

男「」

沙織「人工呼吸とかしたほうがいいんじゃないかしら…」

小男「そ、そうだね…でも誰が?」

天使「沙織ちゃんやります…?」

沙織「い、いやよ…こんなおっさん…」

87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:42:54.18 ID:Jd8RYwCb0

小男「じゃあ、じゃんけんで決めよう!」

天使「あ、いいですねぇ!私強いんですよー!!」

沙織「じゃんけんに強いも弱いもないと思うのだけど」

天使「ちっちっち。甘いですね沙織ちゃん。じゃんけんには心理戦法が聞くんですよ?」

沙織「心理戦法?」

天使「断言します!私はパーを出します!!」ババーン

小男「え!?それ言っちゃっていいの!?」

沙織「やるわね…それが嘘かもしれないし、本当かもしれないってことね…」

天使「ふっふっふ。鋭いですね沙織ちゃん。さぁ覚悟です」

沙織「じゃあ私はチョキをだすわ」

天使「な、なんですと…」

小男「うぅ…みんなどれが本当なんだ…もういい!僕はグーを出す!」

沙織「…くっ」

天使「ふっまだ勝負は終わってないみたいだね」

沙織「それはどうかしら?」

小男「それじゃいくよ?」


「「「じゃんけん!!」」」

「「「ぽん!」」」


天使「パー」

沙織「チョキ」

小男「グー」


天使「あいこ…?」

沙織「しまったわね…これじゃ戦法が意味ないわ…」

小男「どうすればいいんだ…」

男「はぁはぁ…おい。お前らふざけんなよ」

天使「あら、男さん。混ざりますか?じゃんけん大会」

男「お前ら!!長々となにじゃんけん楽しんでるんだよ!俺が死ぬところだっただろうが!!せっかくのキスイベントが台無しじゃねぇか!!」

天使「だって男さん。ずっと起きてたじゃないですか」

男「うぐっ」

沙織「どさくさに紛れてそんなことしようとしてたのね。この変態」

男「へうっ」

小男「同じ男として正気を疑うね」

男「うるせぇ!!お前だって俺と同じこと考えてそうなくせに!」

小男「僕はそんな卑怯なことしないよ!!どちらかというと人工呼吸するほうだ!!」

ギャーギャー



沙織「似た者同士ね」

天使「全くです」
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:44:02.57 ID:Jd8RYwCb0


―数時間後―

男「さて、そろそろ日も暮れてきたな…」

天使「まだ帰らないんです?」

男「海編最後のイベント、これだ」ゴソゴソ

小男「あ!花火だ!」

天使「え!?ロケット花火あります!?」

沙織「今週末に花火大会に行くのに、ここでやらなくてもいいじゃない」

男「わかってねぇなぁ。こういう小さい花火も楽しいんだよ」

天使「さっそくやりましょう!」

男「バケツはここに置いとくぞ。ろうそくはそっちにあるから各自で火ぃつけろ」

天使・男「了解!」


沙織「わたし、こういう花火初めてだわ…」

男「へぇ珍しいな」

男「線香花火なら危なくないだろ。ほら、ここを持つんだ」

沙織「ここ?」

男「あぁ。火をつけるぞ?結構火花飛ぶが、動かしちゃいけないからな」

沙織「わかったわ」

シュボッ

チリチリ

パチパチパチパチ

沙織「綺麗……」

男「俺は大きい花火よりも、こっちのほうが好きなんだけどな」

沙織「なんだか魔法みたい…」

男「乙女なこというじゃない」

沙織「からかわないで」

男「ははは、すまん」
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:45:13.24 ID:Jd8RYwCb0

沙織「……」パチパチ

男「……」パチパチ

沙織「…私ね、女の子は危ないからって花火を持たせて貰えなかったの」

男「ずいぶん厳しい親御さんだったんだな」

沙織「とても厳しい人だったわ…小さなころからずっとね」

沙織「おかげで皆から大人っぽいって言われるようになったけれど」

男「親のしつけ…か」

沙織「それでも、親は弟には優しくてね。よく嫉妬したものよ」

男「弟がいたのか?」

沙織「体が弱くて、情けなくて、小男君みたいな弟だったわ」

男「…だった?」

沙織「1年前、みんな事故でいなくなっちゃった」

男「そう…だったのか」

沙織「……まったく、おかしなものね。会って数日しか経ってないのに、こんなこと話してしまうなんて」

男「数日じゃないさ」

沙織「…えっ?」

男「何年も…何十年も、かな」

沙織「…あなた…一体」

男「……俺は」




バババアババババババババ

沙織「きゃっ」ポトッ

男「うわっ!!!!あぶねぇ!!!おい天使!!ロケット花火飛ばすな!!」

天使「大丈夫です!男さんだけに当たるように狙い撃ちしましたから!!」

男「ふざけんな!説教してやるからそこで待ってろ!!」ダダダッ

天使さん「ははん♪おっさんの足に追いつかれるような私じゃありあませんよ!!」ダダダッ



沙織「線香花火…落ちてしまったわね」

小男「全く…あの人たちは僕たちより子供なんだから…」

沙織「……」

小男「沙織さん?どうかしたの?」

沙織「あの人…どこかで…いや…そんなはず…」

小男「沙織…さん?」

沙織「いや、なんでもないわ」

小男「?」



男「待ちやがれ!このポンコツ天使!」ダダダッ

天使「ここまできてくださーい」ダダダッ

90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:46:35.99 ID:Jd8RYwCb0


【木曜日】


男「いでででで…体中が痛ぇ…」

天使「おっさんは大変ですねぇ」

男「馬鹿野郎…二日後に来ないだけまだマシなんだよ…」

天使「そんなもんですか…ねっ!っと」

男「ひゃう!ちべたい!!」

天使「家じゅうの湿布使っちゃいましたけど大丈夫でしたか?」

小男「まぁ平気でしょ。父さんしか使わないし」

男「こりゃ山に行くのは明日だな…」

天使「一日で筋肉痛が治るんですか?」

男「お前、仮にも天使だろ?キュアなんちゃらで治してくれよ」

天使「キュア☆バンテリン」ヌリヌリ

男「おぉ…なんだかスースーする…これが魔法…」

天使「キュア☆アンメルツヨコヨコ」ヌリヌリ

男「あぁ!!さらにスースーする!魔法ってあるんだね!」

沙織「……何をやっているの?」

男「おぉ沙織来たか。いま俺は宇宙人による魔法治療を受けているところだ」

天使「キュア☆キンカン」ヌリヌリ

男「…おい。それはちょっと違うんじゃないのか」

天使「私の魔法を信じてくださいよ」
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:48:20.00 ID:Jd8RYwCb0

沙織「…大丈夫なの?」

男「あーしんどい。誰かマッサージしてくれなかなー」

小男「僕がしてあげようか?」

男「あー誰かマッサージしてくれたら治りそうだなー」

小男「あれ?僕は無視?」

沙織「……私がしてあげましょうか?」

男「おっ沙織、気が利くじゃないか。頼むよ」

小男「……」

天使「…男さん。本当にロリコンじゃないんですよね」

男「心配するな。俺は胸がCカップ以上じゃないと欲情しないんだ」

沙織「……」ギリギリ

男「あだだあだだだだだだ!!!!ちょ!!!沙織さん!!!!痛いですよ!?」

天使「あら。じゃあ私になら欲情するんですね♪」ルンッ

男「お前がC?…とぼC、の間違いだろ?」

天使「……」グッグッグッ

男「いだっだだあだだだ!!!!!ちょ天使さん!?足で踏むのはマッサージじゃないって!!!!」

小男(意外と師匠、朴念仁なのか…?)
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:49:18.30 ID:Jd8RYwCb0


【金曜日】

男「完全☆復活」シャキーン

天使「男さーん。荷物まだ残ってますかー?」

男「ふふふ…俺はまだ駄目なおっさんじゃない…」

天使「人の話を聞いてください。駄目おっさん」

男「なんだよ!もう少し褒めてくれよ!頑張って筋肉痛治したんだぞ!?」

天使「バンテリンのおかげじゃないですか」

男「あれは侮れないな」

小男「天使さーん。荷物全部積んだよー!! 」

天使「はぁ…こっちの男さんも小男君みたく素直になってくれたら可愛いのに…」

男「うるせぇな。生意気なおっさんで悪かったな」

天使「まったくもう…」

沙織「おはよう。結構、荷物多いのね」

男「おう。来たか。ちゃんと泊まりの準備してきたか?」

沙織「一泊だけでしょう?そんなに必要ないわ」

男「リュックに詰められたんだな。それに比べて…」

天使「い、いいじゃないですか!乙女の付属品は多いんです!」

男「なんでキャリーバックが必要なんだよ…」
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:50:18.59 ID:Jd8RYwCb0

沙織「それで?今日は何処に行くのかしら?」

男「町のはずれにあるキャンプ場だ。川も森も近くて比較的いいところだな」

小男「あ、僕よくそこでキャンプしてたよ」

男「あぁ昨日、親父の書斎から地図が出てきてな」

天使「それで?車は誰が運転するんです?」

男「俺」

天使「…大丈夫なんですか?」

男「免許取ってから一回も車乗ってないけど、たぶん大丈夫」

沙織「その自信はどこから来るのかしら」

男「大丈夫だって。64のエキサイトバイクとか今でもよくやるし」

小男「それ絶対に事故起こすでしょ!?」

天使「レンタカーなんですから、間違っても車壊さないでくださいよ…」

男「ほら、さっさと乗った乗った」

小男「うぅ…大丈夫かな…」


ブロロンブロロロロン

天使「な、なんで無駄にエンジン蒸かしてるんですか…」


〜♪〜♪

男「おい、シートベルトは着けておけよ」

小男「こ、このBGMは!やばい…」

男「いくぜ!」

ノロノロノロ

小男「遅っ!!30キロも出してない!!」

男「うるせぇ!俺はいまこの車と同化してるんだ!しゃべりかけるな!」

沙織「なにこの茶番」

94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:50:54.43 ID:Jd8RYwCb0

―キャンプ場―

男「ふぅ…熱いバトルだったぜ…」

天使「安全運転で快適でしたね」

小男「おかげでだいぶ時間かかったけどね」

男「おし、さっさと場所取っちまうか」

沙織「……」キョロキョロ

男「ん?どうした」

沙織「いや…こういうの初めてで…何をしたらいいか…」

男「ぷっ…そんな不安そうな顔しなくても」

沙織「う、うるさいわね」

男「心配すんな。俺だってキャンプなんてほとんど経験ない」

沙織「そ、そうなの?」

天使「私だって初めてですよ?」

小男「僕はずっと見てるだけだったからなぁ」

男「みんな同じだ。協力すればなんとかなるさ」

沙織「……うん」

男「…出会ったころと比べて、ずいぶん子供っぽくなったじゃん」

沙織「馬鹿にしてるの!?」

男「素直になって可愛くなったって意味だ。さ、荷物運ぶの手伝え」

沙織「……//」カァ

天使(沙織ちゃんなんだか可愛いです)

小男(本当だね…)

沙織「あなたも早く手伝って!」

小男「は、はい!」

天使「なんだかいい感じですねぇ…」

95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:51:50.48 ID:Jd8RYwCb0


数分後

男「やっとテントの貼り付けが終わったな」

男「んー…夕飯までもう少し時間があるな…」

小男「何して過ごすの?」

天使「ふふふ。遊ぶ道具は沢山ありますよ!!」

男「…フリスビーに釣り道具、虫網に水鉄砲…より取り見取りだな…」

天使「このためのキャリーバックです!」

男「んじゃ俺は釣りでもして時間つぶすかな」

天使「夕飯釣ってくださいね!」

男「そんな簡単にできるわけないだろ…」

小男「僕は…虫取りでもしようか」

沙織「小男君できるの?」

小男「うーん…小学生の時はよくやってたけど…どうかな」

天使「沙織ちゃんは虫とか大丈夫なんですか?」

沙織「そうね。まぁ平気かしら」

小男「じゃ…じゃあ僕と一緒に虫取り行こうよ!」

沙織「えっ…でも…」チラッ

男「おっさんは食べられないもの取っても嬉しくない」

天使「私、虫嫌いだからふたりで頑張ってきてください!」

沙織「…しょうがないわね。ちゃんと男君がリードするのよ ?」

小男「う…うん!任せてよ!」

男「虫よけ忘れんなよ」

天使「はい♪キュア☆キンカン、刺されたら使って?」

沙織「あ、ありがとう…」(キュア?)

小男「じゃいってきます!」

男「おう」


タタタッ

96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:54:27.15 ID:Jd8RYwCb0


天使「…いいんですか?一緒に行かなくて」

男「…実はさっきから筋肉痛が戻ってきたみたいでな。動きたくないんだわ」

天使「…嘘つき」

男「……」

天使「男さん…寂しそうな顔してます」

男「寂しいわけじゃねぇよ…切ないが正解だな」

天使「沙織ちゃんのことですか?」

男「お前は言いにくいことをあっけもなく言うなぁ」

天使「純粋な天使ですから。私」

男「俺には濁って見えるけどな」

天使「……沙織ちゃん。楽しそうでしたね」

男「……あぁ」

天使「小男君も意外と積極的に頑張ってるじゃないですか」



男「……もし」

天使「……」

男「もし俺が、あの頃頑張って話しかけていれば、こうやって幸せそうな沙織を見れたのかなって」

天使「恋愛にもし、なんてないんですよ?」

男「またお前は臭いセリフを…」

天使「そんなのお互い様じゃないですか」

男「…とにかく、俺は俺の好きだった人が幸せそうでよかったなって思っただけ」

天使「あなたが幸せにしてあげたらいいじゃないですか」

男「俺の好きだった沙織は、もうこの世にいない」

天使「この世界の沙織ちゃんは偽物だっていうんですか?」

男「この世界で沙織を好きなのは、“この世界の俺”だよ。それを奪う気はないね」

天使「……男さん」

男「……なんだよ」




天使「この世で一番辛いのは、どっちつかずなことなんですよ」

男「……」

天使「まぁ男さんならわかってると思いますけどね」

天使「それじゃ私は河上のほうで釣ってきますね!伊勢海老!」

男「川じゃ伊勢海老は釣れねぇ!!!」




男「……この世ねぇ」

男「…俺の存在自体、どっちつかずだよな」


97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:55:15.13 ID:Jd8RYwCb0


数時間後

男「っておいおい…」

小男「……」ボロボロ

沙織「……」ドロドロ

天使「……」ビシャビシャ

男「…とりあえず、沙織と天使は仮設のシャワーに行って来い。小男は着替えろ」

小男「うん…」

沙織「まったく…なんであんなところに沼があるのよ…」ブツブツ

天使「うぅ…私の伊勢海老ぃ…」ションボリ

男「ったく…世話がかかる奴らだな…」
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:56:14.27 ID:Jd8RYwCb0


男「えー…気を取り直して。これから晩飯を作る」

天使「待ってました!!」

小男「それで?何を作るの?」

沙織「できれば簡単なものがいいわね」

男「キャンプと言えば!そうカレーだ!!!」ババーン

天使「おぉー」

小男「いいねーカレー大好き!」

沙織「私はビーフシチューのほうが好きだわ」

男「そこ!うるさい!今回は2種類のカレーを作ってもらう!」

小男「2種類?」


男「男チームと、女チームの2種類だ」

天使「えー!!私は食べる専門なんですよぉ!!」

男「黙れ歩く胃袋!最近俺のイメージが下がりっぱなしだからな。ここで挽回するべくカレー勝負だ」

沙織「料理1つであなたの変態イメージが変わるとは思えないのだけれど」

男「はっはっは…そういっていられるのも今の内だぞ?」

小男「でも、料理対決って面白そうだね!」

男「そうだろう!?それとも…?女性諸君は女性であるのに料理の1つもできないと…?」

天使「ムッ」

小男「ちょちょっと煽るのはやめなよ…」

男「いやはや…家庭料理の代表とも呼べるカレーを作れない女とは…もはや女じゃないなぁ…」

天使「いってくれるじゃない。いいわ?幾千の料理を食してきた私の舌が、すごいってこと証明してあげる」

沙織「ここまで馬鹿にされて引き下がるわけにいかないわね…この勝負受けて立つわ」

男「よし。決まりだ。制限時間は1時間な」



男(女共がちょろくて助かったな)
小男(沙織さん意外とノリいいんだなぁ…)

99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:57:25.57 ID:Jd8RYwCb0

男「さて、俺たちは下手に凝らずに基本のカレーを作ろう」

小男「大丈夫?負けたりしない?」

男「仮に。いや万が一、女たちが作るカレーが“カレーと呼べるもの”ではないときを想定して、俺たちは普通にカレーを作ろう」

小男「それ、絶対フラグになってるよね…」



男「まぁ米は後々炊くとして…小男、一応米を水に浸しておいてくれ」

小男「うん。もうやってあるよ」

男「手際がいいな。よし、まずは野菜の下ごしらえだ」

小男「皮むきだね。僕はジャガイモやるよ」

男「んじゃ俺は人参と玉ねぎを…」

=下ごしらえ終了=

男「うーし。2人だからあっという間に終わったな」

小男「肉は何を使うの?」

男「ふふふ。これだ」

小男「おぉ牛肉のブロック…大きいね」

男「まずこれを塩、コショウで焦げ目をつけて…と」ジュウウウウウ

男「おい小男。玉ねぎ切れたか?」

小男「う…うん」グシグシ

男「玉ねぎを飴色になるまで炒める…」ジュー…

小男「なんだか本格的だねぇ」

男「カレーってどっちかというと作るのが楽しいよな」

小男「僕は食べるほうが好きだけどね」

男「ま、こんなもんだろ。あとは肉と一緒に圧力鍋に入れちまうか…」

小男「カレー粉は?」

男「あぁ半分だけ入れて、あとは出来上がるちょっと前に入れる」

小男「楽しみだねー」

男「あとは放っておけば勝手にできるだろ」

小男「沙織さんたちは大丈夫かな…?」

男「ちょっとだけ見てくるか」

小男「僕も行く」

男「いや、お前には刺激が強すぎるかもしれん。俺だけで確認してみる」

小男「R指定の料理ってなにさ…」



男「……」チラッ

男「……」スタスタ

小男「ど、どうだった?」



男「…グラタン…?いやてんぷら…?いやパエリアか…?」ブツブツ

小男「なにその料理!?カレーじゃなかったの!?」
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:58:48.54 ID:Jd8RYwCb0

―1時間後―

男「さて、1時間たったわけだが」

小男「こっちは本当においしそうなカレーができたね」



天使「……」

沙織「……」

●<……



男「ま、予想通り…か」

小男「なに…この丸くて…黒い物体…?」

男「ダークマターか…いや…これは違うぞ…!!」ペロッ

天使「あっ食べちゃダメです!!」

男「こっこれは……!!!!」

沙織「遅かった…わね」




男「お…お…お……」

小男「ねぇ!大丈夫!?どうしたの!?」


















男「おはぎ……!!」

101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 15:59:44.56 ID:Jd8RYwCb0


天使「……」

沙織「……」

小男「え!?ちょっと待ってよ、カレーの具材からなんでおはぎ!?」

男「間違いない…この味は…間違いなくおはぎ!!」

男「しかも甘すぎないこの繊細な甘さ…上質の小豆…極上品だ…」

小男「えぇ…あ、ほんとだ美味しい」

男「…負けたよ。俺の負けだ。ここまで完璧な“おはぎ”を作るなんて…」

小男「お嫁さん修行とか通り越して、おばあちゃんだよね。おはぎ」

天使「ま、まぁ男さんのカレーもおいしそうですし、ここは引き分けということで…」

沙織「そ、そうね。それがいいわ。料理に勝ち負けなんてないのよ」

男「お…お前たち…ありがとう…ありがとう…」

小男「それにしても、なんでおはぎ…?」


チョンチョン


小男「え?」

おばあちゃん「さっきは材料分けてくれてありがとねぇ。これまだ残ってたから食べて」

小男「あ、はぁありがとうございます…あ、おはぎ…」

天使「わ、私たち、男さんの料理悪くないと思いますよ?」キラキラ

沙織「え、えぇ愛情があっていいと思うわ」キラキラ

男「負けた俺にこんな優しくしてくれるのか…うっ」

小男「……」


102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 16:00:49.25 ID:Jd8RYwCb0
―真夜中―テント内



天使「…zzz」

小男「……」

沙織(…虫の音がすごいわね)

沙織(いつもと同じ夜なのに…なんだかいつもより怖い気がする…)

ガバッ

沙織「ふぅ…寝れないわね…」

沙織「…おっさんがいない。外かしら…」


ガサゴソ

男「…ん?なんだまだ起きてたのか?」

沙織「…それはこっちのセリフよ。今何時なの?」

男「んー…さぁな。12時過ぎじゃないか?」

沙織「…曖昧ねぇ」ブルッ

男「夏でも夜は冷えるだろう。コーヒー飲むか?」

沙織「眠れないのにコーヒーを飲ませる気?」

男「半分中毒なんだよ」

沙織「カフェオレにしてくれるなら頂くわ」

男「…注文の多いお姫様だな…ったく」
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 16:01:54.34 ID:Jd8RYwCb0

沙織「……」

男「……」コポポポポ

男「お待たせしました。当店自慢のカフェ・俺でございます」

沙織「くだらないギャグは男を下げるわよ」

男「つれねぇな」

沙織「……おいしい」

男「……それはよかったな」


沙織「……夜になるとこんなに星が見えるのね」

男「ん?あぁ…そうだな。改まってこういう風に星を見ることなんて初めてかもしれない」

沙織「…わたしもよ」

男「そもそも、星を見る行為なんて一人でするもんじゃないだろうし」

沙織「よかったわね。ちゃんと見ることができたじゃない」

男「たしかに。でも、沙織もこんなおっさんとじゃ不満だろう」

沙織「……そんなこと、ないわ」

男「…な、なんだよ。さっきからやけに優しいな。いつもの悪態はどうした」

沙織「別に。そんないつもあなたを変態呼ばわりしているわけじゃないわ」

男「そうだったかねぇ…」

男「……」

沙織「……」
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 16:06:06.78 ID:Jd8RYwCb0

沙織「ここ数日…夢を見るの」

男「夢?」

沙織「とてもおかしな夢よ。…もう一人の私の夢なの」

男「……もう一人の…沙織」



沙織「その世界の私は死んでしまって…お葬式の最中に私は浮かんでいるの。それで、来てくれている人たちをぼんやりとみているの…」


男「……」


沙織「あまり仲良くない人なのに、変に思い出を語ったり、みんな無理して泣いているみたいで気味が悪かったわ」

沙織「親の事故のこともあって、親戚には気味が悪いと思われてるみたい」


男「……」


沙織「でもね。ひとりだけ、本当に悲しんで泣いている人がいるの」

沙織「葬式場なのに、大声で、しかもちょっとドン引きするくらいの泣き方で」クスッ


男「……」


沙織「その人は…男の子。図書館でよく見かけた男の子だったわ」

沙織「いつも、私のいる時間に来ていて本を読んでいたの」

沙織「たまにチラチラこっちをみていて、ちょっと気持ち悪かったけど…あの男の子も私の好きな本を、よく読んでいた気がしたわ」

沙織「そんな程度の思い出しかないのだけれど…彼は、私がいなくなってしまったことを、本気で悲しんでいるように見えたの」



男「…きっと、本当に…悲しかったんだ」



沙織「私ね。家族がいなくなって、ずっと死にたいって思ってた」

沙織「どうせ私がいなくなっても悲しむ人もいないし、早く大切な家族のところへ行きたいって思っていたのよ」


男「…図書館で言っていたことか」


沙織「えぇ…数日前まで、その覚悟が確かにあったわ」

沙織「……でも、夢の中の彼女…もう一人の私は、ひどく後悔しているのよ?それと同時にすごく嬉しかったの」

沙織「私のために、本気で泣いてくれる人がいたんだって、とても大切に…思ってくれる人がいたんだって…」


男「…その男の子とは、思い出がないのに…か?」


沙織「…えぇ。だから、そのこともすごく残念がっているみたいだったわ」

男「……そう……か」


沙織「ねぇ……あなた…もしかして」


男「……やめろ」



沙織「…その時の」

105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 16:07:42.16 ID:Jd8RYwCb0

男「やめろって!!!!!!!!!!!」

沙織「…どうして」


男「いまさら…いまさらそんなこと言われたって…!!」

男「俺にはどうすることもできなかったし!!なにかしてあげることもできなかったんだ!!」


沙織「…私が…いるわ」

男「お前は!!…沙織は……俺の知っている沙織は…もう死んだんだ…!!」


沙織「……ごめんなさい。私はもう、戻るわ…カフェオレありがとう…」

ザッザッザッ







男「なんで今になって……こんなに悲しくならなきゃいけないんだよ…!!」

男「なんでなんだよ…どうしていままで、俺は、何もせずに…生きてきたんだ…!!」

男「ちゃんと…彼女は俺のこと…ちゃんと見てくれていたのに…!!」

男「なんで…!!なんで俺は…!!ちゃんと向かい合わなかったんだよ…!!」
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 16:08:57.36 ID:Jd8RYwCb0
小男「おっさん」

男「!!」

小男「…ごめんね。話、全部聞いてたんだ…」

男「……なんだよ俺を笑いに来たのか」

小男「笑わないよ。だって…僕も弱虫だもん」

男「お前…気づいて…」

小男「きっと、今沙織さんがいなくなっちゃったら…僕もちゃんと受け止めらる気がしないから…」

小男「だから、僕、師匠のことわかるよ?だって、僕と全然変わってないもん」

男「……」

小男「……でも、それじゃ駄目なんだよね。僕は彼女を守れるくらい強くならないと…」

小男「また、師匠みたいな駄目な男になっちゃう!」



男「……お前」

男「……っぷ」

小男「え?」

男「…あっはっあっはっは!!!」

小男「な、なんで笑うのさ!!」

男「っはっあはは、悪い、ちょっと俺が情けなさ過ぎてな」

小男「…本当だよ。泣くのか笑うのかどっちかにしてよね」

男「あー…まったくだ。自分に説教される日が来るとはな…」

小男「まったく…不甲斐ない自分を見てるのも辛いんだからね?」

男「大丈夫だ。お前は俺と違うよ。俺よりも絶対にカッコいい」

小男「えっ?本当?師匠に勝てた!?」

男「あぁ。免許皆伝だ。男の名はお前に譲ろう」

小男「やった!!…えっと…じゃあ師匠は何になるの?」

男「ん?そうだな…」














おっさん「ただの“おっさん”かな」

男「あはは!なんだか情けないね!」

おっさん「…まったくだ」
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 16:09:49.00 ID:Jd8RYwCb0

おっさん「……おい男」

男「ん?なに?」

おっさん「彼女のこと、ちゃんと守れるって誓えるか?」

男「…うん」

おっさん「男と男の約束だぞ」

男「うん…!!絶対…!!」

おっさん「おし、じゃあもう寝ろ」

男「…うん。おやすみ!」

タッタッタッ

おっさん「……」カチッ

おっさん「……ふぅー」チリチリ

おっさん「…さて、俺も…覚悟、決めなくちゃいけないな」

108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 16:10:37.82 ID:Jd8RYwCb0


土曜日 男宅


おっさん「……」

天使「まったく…筋肉痛、3日後に来てるじゃないですか…」

おっさん「ったく…山では大丈夫だったんだがな…いてて」

天使「家についた途端、膝から崩れ落ちるとは思いませんでしたよ」

男「車のスピードも、最後のほう自転車に抜かれてたからね」

おっさん「あー…早く魔法をかけてくれ…」

天使「キュア☆サロンパス」シュー

おっさん「あー…超回復―…」

天使「キュア☆サロメチール」ヌリヌリ

おっさん「あぁー生き返るー…」

天使「キュア☆ムヒ」ヌリヌリ

おっさん「いや、だからそれも違うって…」


男「雨降っちゃったね…」

天使「さっき沙織ちゃんから連絡が来て、今日は来ないらしいです」

おっさん「……」

男「明日の花火大会、大丈夫かな…」

おっさん「ま、大丈夫だろ」

天使「まぁ、大丈夫でしょうね」

男「のんきだなぁ…」

おっさん「……おい男」

男「ん?なに?」

おっさん「お前、明日、沙織に告白しろ」
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 16:11:51.63 ID:Jd8RYwCb0

男「こっこここおこここっここっここ!!!!!」

おっさん「鶏じゃないんだ。落ち着け」

天使「あ、唐揚げ食べたくなりました」

男「告白なんて!!まだ会って数日だよ!?絶対フラれるって!!」

おっさん「もたもたしてると、俺が奪っちまうぞ?」

男「……!!」

天使「男さん、ついにロリコンになる覚悟ができたんですね」

おっさん「うるせぇな」

男「わ、分かったよ。明日、僕、沙織さんに、こここ、こっ硬派、告白」

天使「大丈夫なんですか…?」

おっさん「これは…駄目かもしれない」

男「えぇ!?応援してよ!?」


おっさん「仕方ないな…よいしょっと…特訓でもするか」

男「特訓?」

おっさん「おい天使、お前、今から沙織な」

天使「えぇ!!そんな急に!!」

おっさん「お前はいまから、この沙織(偽)に告白するんだ」

男「偽って言ってるじゃん…」

男「ほら、天使なりきれ」

天使「えっと…あ、あら…男君…?ご、ご機嫌うるわしゅう…」

男「えっと…さ、沙織さん」

天使「ななな、なんでございますでひょうか!?」

男「ぼ、僕は!あなたのことが…!!」

天使「ひ…ひゃい!!」

おっさん「はい。ストップストップ」

男「え?どこか間違ってた?」

おっさん「駄目。全然ダメ。おまえ押しが弱すぎ。もっとガバッと!グワッと!情熱的に!」
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 16:13:31.23 ID:Jd8RYwCb0


男「…じゃあおっさんが手本見せてよ」

おっさん「仕方ねぇな…おい、天使」

天使「えっ?私、沙織ちゃんじゃ…」

おっさん「俺…いい加減…抑えられなくなっちまったんだ…」

天使「ちょ、男さん?なんで近づいてくるんですか?」

おっさん「分かってんだろ…?俺の気持ち…?」

天使「えっえええええええ…ななななんのことでしゅか…」

おっさん「お前…可愛いよな…」

天使「うっひゃあああああああ!!!!みみみみみみみ耳元で囁かないで!くだしぁ!!!!!」

おっさん「奪っても…いいかな」ボソッ

天使「ななななななな…何をでしゅかぁ…?」(涙目)


おっさん「お前の純情だ!!」ガバッ

天使「ぎゃああああああ!!!離してください!離してください!!ってどさくさに紛れてどこ触ってんですか!?きゃあああああああ!!!!」

おっさん「おいおい、触るったってそんなのどこにも見当たらねぇだろうが」モミモミ

天使「その!!!!!手を!!!!!離せ!!!!!!!!」ドグシシャ

おっさん「へぶらぼっ!!」グシャァ

男「……自分で頑張ってみるよ」

111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 16:14:37.23 ID:Jd8RYwCb0

【日曜日】


沙織「……あなたはどうしてそんなにボロボロなのかしら」

おっさん「あー…ちょっと筋肉痛が治らなくてな」

男「筋肉痛というより…打撲?」

天使「男さん。今日は出店、いくつでも買っていいんですよね」

おっさん「ほら、俺の財布だ。好きに使え」

天使「やった!!さぁ沙織ちゃん!!行きましょう!!」

沙織「ちょっと…!!まだ来たばっかりでしょ…!!」

おっさん「おーい小娘」

沙織「誰が小娘よ!!」

おっさん「男がなんか言いたそうだぞ?」

沙織「…なに?」

男「いやっ!えっと…着物…似合ってるよ」

沙織「……ありがと」

おっさん「ったく…ほんと損な役回りだな…」

天使「ささっ!たこ焼きが!わたあめが!」

おっさん「はいはい…」

112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 16:15:33.03 ID:Jd8RYwCb0


数時間後


おっさん「……」

財布「……」

おっさん「ま、残しててもしょうがないわな…」

天使「しあわへでふ…」ホクホク

沙織「このお祭りの食べ物…全部ここにあるみたいね…」

男「すごいね…これ全部食べられるのかな…」

天使「あ!かき氷忘れてました!なんてこった!」

男「はぁ…しょうがないなぁ…ちょっと行ってくるね」

おっさん「すまん…もう支援はできないみたいだ」

男「僕の財布の番か…とほほ」

天使「いってきまう!」

おっさん「ちゃんと飲み込んでから行け」

タタタッ

おっさん「さて…と…」ガタッ

沙織「どこに行くの?」

おっさん「ちょっと酒飲みすぎた。風当たってくるわ」

沙織「場所取って置かなくていいの?」

おっさん「これだけ食べ物があるんだ。勝手に座る奴もいないだろう」

沙織「私も…一緒に行っていいかしら」

おっさん「…エスコートは」

沙織「最初から期待してないわ」

おっさん「あら…そう」

テクテク
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 16:17:26.63 ID:Jd8RYwCb0

おっさん「……」

沙織「……」

おっさん「まったくなぁ…」

沙織「どうしたの?」

おっさん「タバコ…吸っていいか?」

沙織「えぇ」

おっさん「……」シュボッ



おっさん「…俺さ、家でひきこもってた時、ずっと帰りたいと思ってたんだ」


沙織「ひきこもっているのに?」クスッ


おっさん「そういう気分だったってことだ」


おっさん「……」フゥー

おっさん「でも、それが何処なのか、いつまでたっても分からないままで、毎日ぼんやり過ごしていた気がする」


沙織「……」


おっさん「でも、そういうもんって全部過去にいた場所なんだって…今更ながら思うね」


沙織「あなたがここにいるのは過去じゃないでしょう?」

おっさん「そうだ。ここは俺の世界じゃない。俺の過去でもない。お前…沙織も…ただの可愛い女の子だ」



沙織「…昨日も、彼女の夢を見たわ…」


おっさん「…なんて言っていた?」


沙織「彼の言うことを聞いてあげなさいって」


おっさん「そりゃ出欠大サービスだな」


沙織「あと、」

おっさん「あと?」


沙織「ちゃんとけじめを付けなさいって言っていたわ」

おっさん「けじめ…ね」
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 16:18:25.18 ID:Jd8RYwCb0
沙織「……」

ジュッ

おっさん「沙織」

沙織「なに?」

おっさん「今から、沙織に…彼女に伝えたいことがある」

沙織「……」

おっさん「だから、彼女の答えを…聞かせてほしいんだ」

沙織「……わかったわ」

おっさん「……沙織」

115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 16:19:24.20 ID:Jd8RYwCb0







男「俺は、お前のことが好きだ」




116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 16:24:24.63 ID:Jd8RYwCb0



沙織「……ごめんなさい」


沙織「私は、あなたが嫌いだわ」

沙織「優柔不断で、甲斐性が無くて、いつもふざけていて、だらしがなくて、いつも言い訳して、やさしくて、勇気がなくて」

沙織「私は、あんたなんか大っ嫌い」


おっさん「はは…ひどい言われよう…」








沙織「……だから」

沙織「私のことなんて忘れて、幸せに生きなさい…って」

おっさん「沙織……」







沙織「あなたは、もう前に進んでいいんだって」



沙織「もう、過去にとらわれなくても大丈夫だからって」



沙織「叶わない恋なんかに囚われてないで」



沙織「まっすぐ、生きなさいって」





沙織「だから、あんたなんか嫌いよって」

おっさん「また…フラれちまったな…」

沙織「えぇ…そうね」


おっさん「沙織…ありがとう…」

沙織「馬鹿ね。フラれてお礼を言う男が何処にいるのよ」

おっさん「そうだよな…沙織…でも、ありがとう…」

沙織「……えぇ」







おっさん「やっと…俺の願いが…叶った気がするよ」
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 16:25:54.41 ID:Jd8RYwCb0


天使「あー男さん、探しましたよ!もうすぐ花火始まっちゃいますよ!」

おっさん「わりぃわりぃ。ちょっと酔いを醒ましてきた」

男「おっさん…目赤いけど」

おっさん「酔っぱらうと目に来るんだよ。ほれ酒ブレス」ハァー

男「うわっ!酒くせぇ!」

沙織「さ、花火始まるわよ。行きましょう」



おっさん「あー…すまん。俺たち用事ができた」

男「えっ?これからが本番なのに?」

おっさん「あぁだから男。沙織をちゃんとエスコートしてやれ」

男「えっ…えぇ!!!!!」

おっさん(ちゃんと告白するんだぞ)ボソッ

男(う…うん)

天使「……そうでしたね!そろそろ行かなくちゃです!」

沙織「…いくのね」

おっさん「…あぁ」


男「大丈夫!…僕が沙織さんを…ちゃんと守るよ!」

沙織「あら、期待してもいいのかしら?」

男「えっ…う、うん!」

天使「あはは、頑張ってくださいね!」

おっさん「おい、そろそろ始まるぞ。行け」

男「うん…じゃ沙織さん行こうか」スッ

沙織「…えぇ」ギュッ

おっさん「じゃあな」

天使「さよーならー!」

男「じゃあね!」



沙織「…さよなら」

118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 16:27:07.62 ID:Jd8RYwCb0












天使「よかったんですか?最後まで見届けなくて」

おっさん「ま、ここの俺なら何とかやってくれるだろう」

天使「もう…お別れなんですね」

おっさん「あぁ…もうそろそろ、夢から覚めてもいい頃だ」

天使「…私、もう少しこの夏休みが続いて欲しかったです」

おっさん「……」

おっさん「…なぁ天使」

天使「…なんですか?」


おっさん「こんなに別れが辛くなるなら…最初から出会わなきゃよかったって思っちまう」

天使「…ふふっ」

おっさん「…何がおかしいんだよ」

天使「いや…同じこというんですよ。王子様もキツネに向かって」

おっさん「王子って…あの本のことか?」

天使「えぇ…そうです」

おっさん「それで?キツネは何て返事するんだ?」


天使「黄色く色づく麦畑を見て、王子の美しい金髪を思い出せるなら、仲良くなった事は決して無駄なこと、悪い事ではなかった」


おっさん「…そうか」

天使「彼女との出会いは、出会わなきゃよかったこと、でしたか?」
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 16:28:38.60 ID:Jd8RYwCb0

おっさん「……俺は自分の初恋なんて、どこにでもある、くだらない恋愛の1つだと思ってたんだよ」


おっさん「…だけど、彼女を好きになれたことは俺の誇りだし、それは決してくだらないものなんかじゃなかった」


おっさん「たとえ…死ぬとわかっていても、彼女と出会えたことは無駄じゃなかった。そう思うよ」


天使「臭いセリフは苦手なんじゃなかったんですか?」クスッ

おとこ「…うるせぇな。もうそろそろ終わりなんだからいいじゃねぇか」

天使「……お別れですね」



おとこ「…お前と一緒にいられて楽しかった」

天使「男さん」

男「ん?」

天使「最後に一つだけ秘密を教えてあげます」

男「なんだ?」


120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 16:29:33.40 ID:Jd8RYwCb0


天使『大切なものは、目に見えない』んですよ?」

男「……うるせぇよ」クスッ

天使「……はい」クスッ

天使「……」











ヒュー…バン!バン!


天使「あ…花火ですよ!男さん…あっ…」



天使「……」








天使「……ばいばい」

121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/02/21(木) 16:30:48.19 ID:Jd8RYwCb0













天使「……以上が、男の仕事内容になります」

神「うむ。おつかれさまじゃった」

天使「では…しつれいします」

神「ちょいちょい。待ちなさい」

天使「?なんでしょうか」

神「仕事終わりで申し訳ないのじゃが…実はもう一つ仕事が溜まっておってのぅ…」

天使「えー!!だって私,今終了したばっかりですよ…!?」

神「まぁまぁええじゃないか。頼むよ」



天使「もう…ちゃんとした人でお願いしますよ!!!!!!」
































To be Continue...?

122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/02/21(木) 16:33:55.90 ID:Jd8RYwCb0
これでこの物語はおしまいです。

天使ちゃんの次回の仕事は、ずいぶん先になりそう…?

長いけれど読んでいただきありがとうございました
感想など(いい感想のみ)頂ければ、天使ちゃんが喜んで出て来るかもしれません。

では
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/21(木) 16:36:08.68 ID:MhCdUS7oo
天使ちゃんがBなのが良かった(KONAMI感)
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/21(木) 16:37:06.61 ID:gboaij8Vo
壁な天使ちゃんも沙織ちゃんもかわいかったなあと思いました(小
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/21(木) 17:26:49.34 ID:Jd8RYwCb0
>>123 天使「薄目でみればCです」

>>124 天使「壁じゃないです!…キズパワーパッドぐらいには…」
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/21(木) 20:46:12.72 ID:z1gj1T2Jo
僕も天使ちゃんにキュア☆ウナクールして欲しい
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/21(木) 22:24:51.34 ID:6k3TPn++o
泣いた…
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/22(金) 02:32:58.07 ID:JunTvurSO
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/22(金) 04:26:22.50 ID:jw74SsSRo
結局男は…
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/22(金) 10:48:52.23 ID:THXiiE4IO
まぁ人生空っぽだった男が自分なりに完結して死んでいけたんだから、それだけでも天使ちゃんの来た意味があったというもの。
しかし、性欲には流されたくないと語っていた男が途中から……男も男だったという訳か
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/22(金) 20:58:20.11 ID:axLvmfKBo
面白かったー、乙ー
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/22(金) 21:26:01.99 ID:mV0J/cjco
出来ればこれで完結じゃなくて続きが欲しいな
超乙
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/02/23(土) 03:14:33.29 ID:ZF2d082R0
よかったよー 乙
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/23(土) 18:21:54.75 ID:Gn1iPqgEo

すごい面白かった〜
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/23(土) 18:28:50.77 ID:W3qZ31wto
天使ちゃんとの禁断の恋に発展すると思いきやちゃんと死ぬのね
面白かったからまた書いてほしい
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/24(日) 15:07:35.74 ID:s19f8zJNP
男のキャラがすげぇ良かったな
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/24(日) 16:20:42.18 ID:R8hzppzzo
全俺が泣いた…
乙です
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