このスレッドはSS速報VIPの過去ログ倉庫に格納されています。もう書き込みできません。。
もし、このスレッドをネット上以外の媒体で転載や引用をされる場合は管理人までご一報ください。
またネット上での引用掲載、またはまとめサイトなどでの紹介をされる際はこのページへのリンクを必ず掲載してください。

国王「魔物倒すためにソ連軍呼ぶわ」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/06(水) 15:15:26.40 ID:Hz1q8MCJo
創作においてソ連軍が活躍するものといったらブラックラグーンぐらいしかないし
トータルイクリプスのソ連軍は扱いが酷すぎるし
だからそういう話を書きたかったのですが、近代戦×ファンタジーはどう頑張っても『ゲート』のパクりにしかならないので
どうか温かい目で見てくだされば幸いであります

・戦闘シーンを地の文無しで書き上げる技能がないので地の文がバンバン出てきます
・稚拙な知識
・頭の悪い文章
・話の特性上到る所で頻出する個人名
・長い前置き
以上に耐えられる革命的なお方はよろしくお願いします。
サビエツキーサユース万歳!

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1362550526
【 このスレッドはHTML化(過去ログ化)されています 】

ごめんなさい、このSS速報VIP板のスレッドは1000に到達したか、若しくは著しい過疎のため、お役を果たし過去ログ倉庫へご隠居されました。
このスレッドを閲覧することはできますが書き込むことはできませんです。
もし、探しているスレッドがパートスレッドの場合は次スレが建ってるかもしれないですよ。

佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/

トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713798788/

【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713788018/

ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713736565/

2 :>>1 [sage]:2013/03/06(水) 15:16:22.86 ID:Hz1q8MCJo
ここではない何処かの世界。
この世界では古来より、魔物勢力と人間勢力が抗争を繰り広げてきた。
互いに魔法を扱い、そして刀剣や弓で戦いを繰り広げ・・・
何度も休戦をし、そしてまた何度も会戦を繰り返すのだった。

「敵だ!」

「鐘を鳴らせ!」

辺境の地にある小さな人間の公国、これも魔物との戦争の中で作られたものだ
傭兵を雇い、魔法使いを育成するのは小規模な村では行えないからだ。

「城門が突破されました!」

「狼煙を上げろ!」

しかし立派な城壁を有し、そして何度も魔物を撃退してきたこの公国の命も風前の灯だった。

「兵士達、よく戦ってくれた・・・。しかしわが城は包囲され、最早脱出は不可能だろう」

「女子供、そして老人は事前に逃がしております。我々に思い残すことなどありませぬ」

「すまない、兵士達・・・」

この日、魔物の総攻撃によって一つの公国が滅亡した。
3 :>>1 [sage]:2013/03/06(水) 15:17:13.82 ID:Hz1q8MCJo
所変わって隣国の王宮。

「報告します、マルクス公国が滅亡!辺境伯閣下は討ち死にされました!」

「なんという事だ・・・またしても・・・」

「国王陛下、われわれは危機に瀕しております」

「そんなことは分かりきっておる。今はこの状況をどうやって乗り越えるかだ」

「国王陛下、敵はこれまでに無いほど強力になっております。魔法も我々のものと比べてはるかに強力で・・・」

「国王陛下・・・この戦いに勝つには、一大決戦で敵の軍勢を叩くほかにはありませぬ」

「・・・だが、数ヶ月前に兵士達の任を解いたばかりだぞ。そして今は収穫期なのだぞ」

「陛下、事態は一刻を争います」

「・・・よろしい。決断しよう。徴募の準備、そして傭兵の手配を!」

「祈祷の儀式も執り行うのだ!」
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/06(水) 15:17:39.56 ID:Hz1q8MCJo
1941年、ソ連、モスクワ
数ヶ月前に第三帝国の侵攻を受けたこの国の命も同様に、風前の灯であった。

筆髭の書記長は髭を指で撫でまわしながら部屋中を忙しなく歩き回っている。
彼に報告をしている頭をそり上げた軍人・・・レニングラード軍管区司令官の言葉は厳しい。

                       ニェーメツ
「報告いたします、タワーリシチ。6月にドイツ軍が侵攻してからと言うものの、我々は後退を続けており・・・」

「そんなことは分かりきっている!今は我々がどうやってこの状況を乗り越えるかだ。」

「同志書記長閣下、前線にいた部隊は殆どやられましたし、奴らはスターリングラードとレニングラードを包囲しました」

「同志・・・率直に申し上げますと、ここにも迫って来ております」

筆髭の書記長は机の上のサモワールから紅茶をコップに注ぎこみ、そして一気に飲み干した。

「満州やシベリアからの兵士はどうした?」

ヤポーニェッツ、つまり日本は満州に侵攻しないであろうことは、潜入させたスパイからの情報で把握している
そこでその満州に駐屯させていた兵士をこちらに移動させればと考えたのだ。

「・・・彼らが何人生き残っているとお思いですか?」

「トゥーバは!モンゴルはどうした!?」

「彼らのほとんどはロシア語も話せません、そして士気も低い。どれだけ持つでしょうかな」

「兵士など銃で脅してかき集めてくればよいのだ、なぜやらないのか!」

「同志書記長閣下、各地から志願兵や義勇兵が来てくれています。しかし皆数週間で死んだ!これがどういう事かお解りですか!?」

「我々の国は危機的状況に陥っているのですぞ、同志!」

「その話はもううんざりだ!少し一人にしてくれ」

「・・・失礼します」バタン
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/06(水) 15:20:54.55 ID:Hz1q8MCJo
「だが実際元帥の言う通りだ。私は・・・わが国は・・・どうすればいい?」

書記長は悩んだ。この国の実権を握ってから数十年がたち、政敵はすべて粛清するか罷免してきた。
ファシストであるニェーメツとも不可侵条約を結び、そして東ヨーロッパを分け合った
まさか侵攻してくるとは思わなかった。国境に貼り付けられている敵の大軍も単なる牽制のためだと思っていた。

『あれれ、天下の書記長サマが悩んでるねぇ』

状況にそぐわない底抜けに明るい声が聞こえた。むしろ人を小バカにしているような印象すらある。

「・・・誰だ」

『忘れちゃったの?酷いなあ。ボクだよ。革命のときに手を貸してあげたじゃないか』

書記長が背後を振り向くとそこには羽を生やした美少女がいた。
透き通るような白い肌に長い金髪、この少女が兵士なら間違いなく長い金髪を切るようにと上官に叱られていたはずだ。
大きな青い目と長いまつげ、そして形のいい小さな口、100人が見たら90人ぐらいは天使を思い浮かべるかもしれない
宗教が禁止されたソビエト連邦でそんな事を言ったら再教育の対象になったかもしれないが

「貴様との契約は済んだはずだぞ。邪魔をするようなら衛兵を呼ぶ」

『やだなあ、そんなにピリピリしないでよ』

『実は今日、キミに良いハナシを持ってきたんだ!』

『このハナシに乗ってくれたらニェーメツを撃退する手助けをしてあげるよ?』

『東プロシアも、チェコスロバキアの工業地帯も全部キミのものだ』

「与太話に付き合っている暇はないのだがな」

『仕方ないなあ、これから数分後にニェーメツの攻撃が始まるから、そこでボクの力を見せてあげるよ』
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/06(水) 15:21:46.55 ID:Hz1q8MCJo
「同志書記長閣下!失礼します!」バタン

ノックも忘れ息を切らして駆け込んだ元帥が報告する。
楽しそうな顔で笑っている美少女の姿は見えていないらしい。

「・・・どうした」

「ニェーメツの総攻撃が始まりました!」

「閣下・・・正直に申し上げますと、絶望的な状況です・・・。」

「下に車を用意させております。お逃げください。」

目を閉じて静かに聴いていた書記長は、ゆっくりと口を開いて言った。

「・・・車は。」

「は。」

「・・・車は、ヴォルガか」

「・・・と、言いますと?」

怪訝な顔をする元帥に向かってこう続けた。

「ヴォルガでなければ乗らんぞ。そして生産工場はウラルマルーシュに限る」

「こんな時に何を仰いますか!衛兵、書記長閣下をお連れしろ!」

「はっ!さあ閣下、こちらへ・・・」グイッ

バタバタバタ…

「失礼します!参謀本部より連絡、ニェーメツの撃退に成功したとのことであります!」

「バカな・・・あれだけの大軍をどうやって・・・」

「一つだけ分かることは・・・我々はまだクレムリンに居られるということだな」

「・・・下がれ。」

「・・・失礼しました」バタン
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/03/06(水) 15:22:17.16 ID:Hz1q8MCJo
部下達を下がらせ、銀製の煙草入れからレニングラード産のベルモルカナルを取り出し、そして一服する。
しばらくしてからニコニコ顔の美少女が口を開いた。

『ボクの力、理解してくれた?』

「・・・ああ。」

『キミの国が無神論を掲げたときは困ったよ〜。まさか教会まで壊すなんて予想外だったからね』

「宗教など堕落しているからだ」

ねぎぼうずのような特徴的な形の尖塔、ロシア正教の象徴ともいえるそれ派革命後に殆ど壊された。
クレムリンの聖ワーシリー寺院は残っているが、宗教の禁止された今、教会としては使用されていない。

『それで?さっきの戦いはボクの力で勝てたんだけど?』

「・・・。」
                     ハーゲンクロイツ           スターリナ
『にゃはは、面白いね。ニェーメツはHakenkreuz、キミの国はзвёздамиだもんねぇ。両方とも宗教に・・・』

「お喋りはそこまでだ。それで私は何をすればいい。どうせタダではないのだろう」

『実はボク、今新しい世界を運営してるんだ』

「運営?」

『ここの神様みたいには上手く出来ないけどね。まあおもちゃで町の模型を作ってるようなもんだよ』

「相変わらず貴様にとって人命は玩具でしかないのか。クズめ」

『キミもだろ?それでね、その世界に魔族と人間を誕生させたんだけど・・・ここのところの詳しい説明して欲しい?』

「さっさと続きを話せ!」

『にゃはは。でね、その魔族をあまりにも強力に作ったせいでね・・・人間が魔族の奴隷になっちゃったの!』

「それが不満なら貴様が介入して作り直せばいい話だろう」

『うーん、ボクもそう考えてたんだけど、それじゃ面白くないだろ?だからちょっとキミに手伝って欲しくてね。』

「軍を送ればいいのか?」

『察しがいいね!でもキミの国も今取り込み中みたいだし、それにキミが指揮を執っていたら面白くないし・・・』

『そうだ、キミが死んだ数年後にしようかな!』

「・・・いいだろう。しかし、私の後継者が貴様との約束を守るとは限らんぞ」

『それは困るなあ・・・それじゃ、キミがその後継者君に言い残しておけばいいんだよ』

『ボクとの契約を破棄したらこの国はオシマイだってね。』

「・・・分かった。」
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/03/06(水) 15:23:55.40 ID:Hz1q8MCJo
結果的にソビエト連邦はドイツの撃退に成功した。
それがあの美少女の力によるものなのか、そうでないかは分からない。
ともかくソビエト連邦国民は血の代償を払い、そして国土は蹂躙された
だが引き換えに東欧には多数のソ連傀儡政権が発足した。

「ニェーメツは撃退され、あの老害は死んだ、そして次の書記長はその座を降りた。」

ひとりごこちでクレムリンの執務室から赤の広場を見下ろしていた書記長が呟く。
その書記長は筆髭ではなく、老人でもなかった。
筆髭の書記長は既に病死、次の書記長もすぐに辞職し現在この国の実権はウクライナ出身の彼が握っていた。

『おるてぃん・ぷりやーた!』

「誰だ!」

『ふーん。あの筆髭オヤジは死んだのね・・・それで、キミが新しい書記長さん?』

「衛兵、こいつをつまみ出せ」

『無駄だよ。眠らせたからね!』

「ふざけるな・・・何をしている!衛兵!」ガチャリ

「zzz・・・」

廊下に立っていた衛兵も、そして秘書までもが眠りこけていた。
筆髭の書記長の時代ならいざ知らず、粛清はされないにしても更迭を免れない失態だ
しかし親衛旅団の精鋭が揃いも揃って居眠りするだろうか?

「このウスノロども、さっさと起きんか!」ユサユサ

『だ〜から無駄だってば』

『それじゃあキミが前同志書記長サマから教えられた合言葉を言ってあげようか?』

『Ле・・・』

「・・・分かった。合言葉の件を知っているという事は・・・嘘ではないようだな。」

「君との契約とやら、確かに実行された。我々も代償を払うとしよう」

『すぱしーば!それじゃ、1年後までに、えーっとこの地図の・・・ここに兵員を集めてね!』

壁に掛かっていた地図上の点・・・確かにそこであれば兵士の移動にも申し分なく、そして民間人に見られる事もないだろう
たとえ街中を指定されたとしても、市民全員をKGB職員にすり替えるのはこの国なら造作もないことだ

『ああそうそう、キミたちの世界の武器を使うのはご法度だからね!あくまで送るのは人間だけ!』

『素っ裸じゃカワイソウだから服も許可してあげる!でも防弾服はダメだよ!にゃはは!』

「待て、事前偵察も物資も無いならば兵士を死に追いやるような物だ」

『だいじょうぶ!キミの国の兵士なら上手くやるよ!』

『兵士は畑で取れるんでしょ?』

「貴様・・・」

『あれれ〜?ウクライナで党員を大量に粛清したのは誰だったかな?やってくれないならボク、この国崩壊させちゃうよ?』

「・・・分かった。」

『よろしい!忘れないで、きっかり一年後だからね!一年過ぎたらそこに門が出現すると思うからそこに入ってね!』

「クソッ・・・さっさと行きやがれ、畜生め」

『口が悪いね、ま、それも当たり前か!だずびだーにゃたわーりしち!にゃはは!』
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/03/06(水) 15:24:55.28 ID:Hz1q8MCJo
数ヵ月後
ソビエト軍参謀本部情報総局。

「大将閣下、失礼します」

軍服を着こなした若い兵士が、局長室の扉を叩いた。
襟に付けられた階級章から彼が大尉だと伺える

「ソビエト軍参謀本部情報総局にようこそ。」

大将、つまりここの局長は、東ドイツ製らしき真新しい椅子に座って机の上の書類を読んでいた。
机の上では微かに火が着いたままの煙草が灰皿の上に積み重なっており、それらが出す煙が部屋の中を覆いつくしている

                        浸透工作
「貴官は・・・ええと、モスクワ軍管区の・・・СпН部隊所属か。」

「まあかけたまえ、同志大尉」

煙の匂いにしかめ面をしそうになりながらも、若い兵士は軍人特有の我慢強さでそれを押し殺して無表情のまま椅子に座った。

                    独立自動化特別旅団
「しかし、どうしてKGBを捨てたんだ?ОМСДОН の何が不満だったんだ」

「大将閣下、私はファシストからこの国を防衛するために・・・」

「ああ、わかったわかった同志。君の任務を説明するとだな、ある場所に行って貰いたいんだ。」

「ある場所、とは?」

「もったいぶった言い方をして悪かった。具体的にはこの地図の・・・ここだ。」
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/03/06(水) 15:25:22.80 ID:Hz1q8MCJo
数日後、大尉は数十名の部下と一緒にその場所へ居た。
窓のない貨物列車に乗せられて数日間、そこから目隠しをされながら何台かの装甲車に分譲し、揺られること数時間。
そろそろ時間の感覚も位置の感覚も分からなくなった頃にたどり着いたのがここだ。

「右向け、前!休め!」

装甲車から降りた兵士達を整列させてから、司令官らしき初老の軍人に向き合う。

「115号中隊、着任しました」

「ご苦労。今日を持って君たちの中隊名をヴォルガ部隊とする」

「了解しました、同志閣下」

「任務については後で司令官室で話そう。大尉は1時間後に司令官室まで来てくれ」

「それまでは・・・」

「貴方が大尉ですか?私は案内を担当させていただきます、コンスタンティン・アンドロホフ伍長であります!」

「コースチャとお呼びください、同志大尉殿!」

確かにそこには案内が必要なほど巨大な陣地があった。

「数ヶ月前に参謀本部から命令が通達されまして、ここに陣地を構築したわけであります」

そして続けた。

「何でも巨大な門とやらが出現するらしく・・・」

どうして伍長になれたのか疑うくらいお喋りなコースチャは色々なことを説明してくれた。

「ここが兵舎、ここが炊事場・・・そしてあそこが酒補・・・」

「随分と設備が整っているな。まるで軍事基地だ」

「どうやらわが国はここに門の向こう側へ行くための拠点を作るそうですよ」

「門か・・・小説の様な話だな」

「実は数日前からうっすら門のようなものが出現し始めているのでありまして・・・恐らくはそれの事ではないかと」
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/06(水) 15:26:03.05 ID:Hz1q8MCJo
案内された大きなホールの中にそれはあった。
確かに門としか形容できないような門だ。
装飾は古代か中世か・・・少なくとも現代のものではない。

「あれはどういう仕組みになっているんだ?」

「もちろん中央の方から技術者や科学者達を呼び寄せまして、調査を行ったのですが」

「触ると実体はあり、そして無害であることは分かりました。しかし日に日に色が鮮明になっていくという事ぐらいで・・・」

「破壊することは出来ない、と?」

「イリューシン、チャルコフ、キーロフ、色々なところの技師が何とかやってみようと試みましたが・・・」

「なるほど、破壊できなかったわけか」

「あまりにも強力なものは中央から止められましたがね。どうやら完全に壊してしまってはいけない物なようで」

「さて、そろそろ時間だな。大体この施設のことは分かった、ありがとう」

「それと兵士達の案内もよろしく頼む。アンドロホフ伍長、気をつけ!」

「はっ!」

「右向け・・・解散!」

「通常業務に戻ります、同志!」
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/06(水) 15:26:41.42 ID:Hz1q8MCJo
「失礼します、同志大佐」

「来たか。それでは任務の説明に入ろう。何か飲むかね?」

「結構です、同志」

「社交辞令ではないのだがな・・・まあいいさ、従兵、紅茶を!」

従兵に紅茶を持ってこさせ、そして衛兵共々下がらせてから大佐は口を開いた。

「大尉、門を見たかね?」

「はい、先ほど」

「書記長同志によるとあれは1ヶ月後に完全なものとなるらしい・・・だがそれがどこに繋がっているのかはよく分からんのだ」

「そこで君たちを派遣したいのだが・・・どうやら被服や勲章以外のものは持ち込んではいけないそうだ」

「武器もですか?」

「そうだ。銃剣、手榴弾・・・搭乗兵器のみならず携行兵器もだ!」

「我々の所属を秘匿する必要があると?」

「それならば制服と武器を変えるだけで良いだろう。そしてこれは・・・参謀本部の指示なんだ」

「軍人たるもの、与えられた命令には忠実に・・・」

「君の忠誠心は疑いようがないがね、なんと食料を持ち込むのもダメらしい」

「それは・・・」

「そういう事だ。門の向こう側から帰ってこれるか分からん、そして向こうは全く未知の世界」

「断っても構わんよ、上への口利きは私がしよう」

「・・・拝命させていただきます、同志大佐。」

「いいのか?君たちの部下の生命も掛かっているんだぞ」

「何度か私の部隊の兵士達と話をしました・・・どうやら彼らは懲罰で私の指揮下に入れられたようです」

「この任務を断ったら彼らの行くあては・・・コルイマの鉱山かヤーゴダですかね」

「・・・いいだろう、同志大尉。」

「ヴォルガ中隊、1ヵ月後に偵察任務を命ずる」

「拝命いたします、同志大佐閣下!」カッ

「解散!」
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/06(水) 15:29:26.35 ID:Hz1q8MCJo
大尉が出て行った後、大佐はぬるくなった紅茶をすすり、そして椅子に深く座り込んだ。

「あの大尉もまだ若いだろうに・・・どうして死に急ぐような真似を」

しかしそれを命令したのが自分であることを思い起こし、気を紛らわせるために煙草に火をつけた。


1ヵ月後
出陣の前に小さなパーティを行った後、ヴォルガ中隊は拠点の中庭に集合した。
兵舎にはソビエト連邦の赤旗がたなびき、スピーカーから流れる国歌と一緒に兵士が声をはり上げる
見送る側の兵士達の何人かはその歌詞を間違えた・・・前々書記長の死後に歌詞が変わったからだ。

「諸君らはソビエト社会主義共和国連邦の・・・」

基地指令である大佐は壇上で声を張り上げ、定期文にのっとり激励の辞を送った。

一通りの事が済み、ヴォルガ中隊の兵士達は大尉の指示を待つ。

「中隊・・・かしらー、右!」

「前にー、進め!」

兵士達は全員ギムナチョルスカと呼ばれる戦闘服を着込み、雑嚢には防寒服と礼服が入っている。
しかしそれ以外は何もなく、弾薬ポーチも空、マップケースに入っているべきである地図も無かった。
ソ連人たちの命の水であるウォッカですら置いていくように厳命されていた

(健闘を祈る、大尉)

見送る大佐は心の中で祈るのみだった。
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/03/06(水) 15:30:10.67 ID:Hz1q8MCJo
結果的にヴォルガ中隊はすぐ帰還した。

悲壮な心持で送り出した大佐はいささか拍子抜けしたが、それでも大変喜んだ。

すぐさまヴォルガ中隊は基地の会議室に呼ばれ、軍人達と学者達の前で報告する事になった。
その報告は即日文書にまとめられ、参謀本部に送られる


「・・・"向こう側"の風土は我々の世界と大して変わりません。大気や土が毒になるような事はありませんでした」

「ヴォルガ中隊は万が一を考えて遠出は避けたようですが・・・近くに一つ集落を発見したとのことです」

「居住していた生物はまったく人間と同じ外見、そして驚くべき事に言語が通じた模様」

「文化は・・・中世ぐらいが妥当でしょうか?家は茅葺き屋根か木造、裕福そうな家は石造りとの報告です」

「ありがとう。言葉が通じるのは僥倖だな・・・ひとまず差し当たった脅威はなさそうだ」

長官はそう言うと横に座っていた書記長の方を向き直る。

「書記長閣下、報告は以上だそうです。いかが致しましょうか?」

書記長はしばらく思考し、そして言った。

「そうだな・・・次はヴォルガ中隊に向こう側の権力者と接触する任務を与えよう」

「まずは調査チームを送るべきでは?」

「いや、機材を持ち込めなくてはあまり意味がない・・・それならば向こう側の権力者と接触するのが先だろう」

「しかし・・・」

「諸君、正直に告白するが・・・これは前々書記長が予想していたことらしい」

その名前を聞いて参謀本部の殆どのメンバーが震え上がった。

「そ、そうですか・・・それではそのように通達します・・・」

「今回の会議はこれまでだ」

書記長のその声で、しばらくして会議室に残るのは書記長とその従兵だけとなった。

「ああ、君も下がっていいぞ。暫く考え事がしたいんだ。」
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/06(水) 15:31:10.03 ID:Hz1q8MCJo
書記長は従卒が退出したのを見届けてから煙草に火をつけた。
不味いな。書記長はそう思った。まるで今のわが国の状況ではないか・・・
数年前極東での資本主義者と共産主義者の戦いは引き分けで終わった。

しかしこの国は今度は共産主義者であるはずの中国共産党と仲違いした。
国内では未だに大祖国戦争の影響から立ち直れない国土、前々書記長を批判した事によるとまどい、そして食糧不足!
書記長の煙草の量はされに増えた。あれこれ考えをめぐらせているせいでゆっくりと別荘、ダーチャにも行けない!

そのような書記長のイライラやきな臭さと共に、"向こう側"とソビエト連邦の交流は始まった。
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/06(水) 15:32:08.12 ID:Hz1q8MCJo
今回の投稿はここで終わりです
ソビエト連邦のお家芸である大量投入&人海戦術にはまだまだかかりそう・・・
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/06(水) 16:58:03.82 ID:SVhY2HADo
期待待機
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/06(水) 21:38:10.11 ID:Hz1q8MCJo
"向こう側"の王国

この世界、少なくともこの王国・・・には一つの伝説があった
この世界における有力な神様は女神であり、その外見は長く伸びた金髪に透き通った肌、そして青い目をしているというものだ
この女神は戦闘や政治など色々なものを統括できるほど多才な女神だが、今までその姿を見た事がある者はいなかった

『やっほー!』

国内に残っていた魔術師達を集めて儀式を行っていたときに出現した"彼女"は、言い伝え通の姿をしていた
背中に生やした1対の羽を優雅に羽ばたかせながら、どことなく冷ややかな青い目で周りを見渡す。

『キミたちの国が危機に瀕してるって聞いてやって来たよ!安心して、ボクは君たちを見捨てないから!』

人を食ったような底抜けに明るい声で、呆然として固まっている魔術師達に向かってそう言った。

「女神様、お目にかかれて光栄でございます」

今まで数えるほどしか頭を下げたことのない国王が深々と頭を垂れていた
それだけではない。その場にいた貴族、神官、魔術師・・・絶対に動揺する事のないように訓練を積んでいる筈の護衛兵までも。

『ボクも嬉しいよ!』

「我が国が危機に瀕したとき女神が現れる・・・伝説は本当だったのですな」

『その通り!その女神がボクってわけ!』

満面の笑みで得意げに言い放つ。
その笑みがあまり好ましくない感情を含んでいる事に、何人かの大臣は気づいていた。
しかしそれを言い出す勇気など何処にもない。ただただ頭を垂れるのみ!

『それでね、キミたちの国を救いたいのは山々なんだけどねぇ。ボクは直接手出しできないんだ』

わざとらしく残念そうな顔を作る。

『でも安心して!変わりに救世主たちを呼んだから!えーとね、そこのキミ、そうそう、一番前のハゲの神官さん』

女神に声を掛けられるという大いなる名誉を授かった神官は侮辱された事も忘れ、感涙に咽び泣きながら頷く。

『キミが持っている本の102ページを開いて!』

ハゲ頭の神官が持っていたのはこの王国に伝わる伝承を纏めた物である。
印刷技術もないためにすべて手書きで書き写したものだ。羨みの視線を浴びながら神官はページを開き、そして女神に恭しく差し出した

『ほら、この部分にあるでしょ?"赤い星をまといし者、金槌と鎌の紋章をつける者"これがボクの呼んだ救世主さん達!』

女神がその白く細長い指でなぞりあげた紙面には、確かにそう書いてあった。

「それで、そのお方たちは今何処に?」

国王がおずおずと声を上げる

『えっとねー、マ・・・マ・・・なんだっけ、ほらあの公国』

「マインホフ公国でしょうか?」

『そうそう、それ!その何処かに居るはずだよー』

『早く見つけてあげれば喜ぶかもねー、じゃーね!ナロードニキ・・・あ、そうか女性も居るんだよね・・・ナロードナヤの諸君!』

それだけ言い残して女神はさっさと消えうせてしまった。

その後の王国の動きは早かった。国中に早馬が飛び、見つけた者には報酬を出すとの布告までされた
兵士や市民達にもその話は広がり、救世主がどんな人間たちなのかが人々のもっぱらの噂となった。
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/06(水) 22:06:17.78 ID:Hz1q8MCJo
大尉とヴォルガ中隊は歩き続けていた。
川はある。野生の果物もある。
前回報告したように、やはり"向こう側"の風土は南ヨーロッパのものに大変よく似ていた。

「ほら、この雑草・・・この樹木・・・」

先ほどから兵士の一人がもう一人とずっと議論を続けている。
何の偶然か、ヴォルガ中隊を構成していたのは殆どがインテリゲンチャだった
どこそこアカデミーだの何々記念ナントカだのといった場所の出身者も何人かいた。

「クルコフ、お前は共産党員だろう?どうしてこの部隊に来たんだ」

「大尉こそ・・・私は上官の強姦をNKVDに伝えただけですよ。シベリアに飛ばされるとは!」

「嘘こけクルコフ、キエフであのクソ野郎を背後から銃撃したのはお前だろうが」

「違いねえ!俺もお前も上官殺しだぞ、パーヴェル!」

パーヴェルとクルコフは大口を空けて豪快に笑った。そして慌てて大尉に向き直り、

「同志大尉、勿論俺たちは貴方に対して反逆しようだなんて思ってませんよ!」

と言い訳した

「まあ、今はKGBが居ないから安心だが、いつ補充要員として送られてくるかは分からんぞ、気をつけろよ」

大尉は苦笑しながらそう答えた。
ヴォルガの所属はソ連軍、KGBは内務省である。
伝統的に内務省と軍は仲が悪いと思われているが、KGBの新人将校は軍の部隊に送られて実地訓練を積む事もあって実際はその限りでもない。
ある程度は見逃すだろうが、口は閉じておく必要がある。

「ほら、この果物を見ろよ!こいつはフランスに自生するものに似ている」

「ボルドーの間違いじゃないか?これだからモスクワアカデミーの奴らは・・・」

「同じようなもんだろうが!」

「いいや違うね。そもそもボルドーは・・・」

大尉は早速頭が痛くなってくるのを感じていた。
学がある者はないものに比べて飲み込みが早く、訓練の成果が高い事は良く知られていた
問題も起こしづらいので歓迎される人材ではある
しかしそれだけに自分の技能に対する自負心が高いのか、口論が口論を呼んでいた

(何となく懲罰まで行く訳が分かった気がするな・・・)

要は嫌われて孤立しやすいのだ。農民の息子にチェーホフの話をしても分からないが、学者の息子にトラクターの話をしても分からないだろう

「全隊、止まれ!」

「整列!」

「かしらー、右!前向け、休め!」

「貴官たちの任務はなんだ?」

「「「「社会主義を資本主義から防衛する事であります!」」」

「よーし、それが分かるなら口は閉じておけよ」

代わりに誰かが口笛を吹き始め、それが全員に伝達する。

(銃や物資を持って完全武装すれば静かになると思うが・・・確かにこれではしょうがないな)

大尉はこの世界の水で満たされた水筒から一口水を飲み、そして服しか入っていない雑嚢を覗き込みため息をつく。
暖かな日差しの下、のどかな光景ではあった。
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/06(水) 22:50:22.40 ID:Hz1q8MCJo
マインホフ公国、アンドレアス公
"向こう側"では勇敢な公爵として知られていた。
戦上手かはともかく、兵士の扱い方と士気の上げ方が上手だったからだ
よく言えば勇猛果敢、悪く言えば猪突猛進、これは昔からの部下である兵士の練度が高かったから出来たことでもあった。
職業軍人がいるという事は食料がそこそこあり、そしてある程度豊かだという事だ
しかし残念な事にアンドレアス公には職業軍人たちを世代交代させる事を考えていなかった。

「親衛兵、公爵様をお守りしろ!」

副長の指示で老兵達が公爵の周りに集まる。

彼らが戦っているのは、例によって魔物の軍勢だった
いつもなら数人の死者を出すにしても撃退はしていた
それが、今回は。

「くそ、奴らまだ居るのか!?」

数十匹殺せば撃退できたはずの魔物はまだまだ残っている。

アンドレアス公は魔物の軍勢に押し込まれて身動きできない状態に陥っていた。

「このままじゃ殺されちまう・・・!」

プロの兵士である老兵達は良く戦って踏みとどまっているが、農民ばかりの徴募兵は既に腰が引けている
老兵達は数に勝る魔物たちによって一人一人殺されていき、それが更に徴募兵たちの士気を下げていた
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/06(水) 22:50:49.61 ID:Hz1q8MCJo
戦闘を発見したのはクルコフだった。

「同志大尉、あそこで戦闘が発生している模様!」

「警戒態勢!」

全員が丸腰なのでどうにも格好はつかないが、暴徒ぐらいは押し返せそうな陣形がたちまち出来上がった

「いかが致しましょうか、同志?」

「まずは誰が何処と戦っているのか把握しなければ・・・」

そして目を凝らした瞬間、本能的に察知した
方や人間、方や化け物・・・化け物、チョルトだ!
豚顔に猿顔、そしていかにもなモンスター!
人間だったらどちらを支援すればいいか一目で分かっただろう。

「大尉殿、武器が落ちてます!」

兵士が指差した先には人間と化け物の死体、そして刀剣や槍、盾など。
いささか出来すぎな気もしたが、大尉に迷っている暇はなかった。

「人間だ!」

「助けてくれ!」

誰かがヴォルガを見つけたのか、人間の集団から助けを請う声が上がっていたからだ。
都合の悪い事にその声のおかげで化け物たちにも見つかってしまったようだ。

                   ヴォルガ・ルォタ  ベリャー!
「こうなっては仕方がないか・・・ヴォルガ中隊、行動開始!」

「「「「урааааааааа!!」」」」

魔物も人間も、戦闘技術に関しては大したことがないらしい。
整列、密集して正面に刀剣を突き出した隊列を見ただけで浮き足立ち始めていたのに、そこに大声を上げての吶喊が加わったのだ。

「て・・・撤退!」

人間やソ連人と同じ言葉を話す魔物たちは隊列を乱して敗走した。

「ヴォルガ集合!深追いはするな。
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/03/06(水) 23:17:28.99 ID:KMKtvMuJ0
なんという俺得
これからどうやって戦わせるのか楽しみ
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/03/06(水) 23:19:43.19 ID:KMKtvMuJ0
なんという俺得
これからどうやって戦わせるのか楽しみ
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/03/06(水) 23:33:09.75 ID:NCWHJZeU0
いいぞ
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/07(木) 01:11:08.84 ID:l3ZxvFW80
世界最強の力、それは・・・ソ連軍だよ!
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/07(木) 09:52:59.95 ID:oWgmkIGbo
助けた人間の集団たちは盛んに感謝の声を上げ、そして頭を下げていた
みすぼらしい貧弱な装備や木に皮を張っただけの盾、正直言って強そうには見えない
後方で固まって立っている隊長の護衛兵らしき集団は流石に立派な装備をつけていたが、顔には皺が目立っていた

「かしら右ー、前向け、前!」

「敬礼!」

「「「「ура!」」」」

「休め!」

この場の主導権を誰が握っているのかが明らかになるだろう
中世レベルの軍隊であれば、このように現代のしきたりで統率された軍隊は珍しいだろう、と大尉は考えていた

「我々はソビエト連邦、ヴォルガ中隊であります。あなた方は?」

圧倒されていた"向こう側"の人間の集団の後方、数人ほどの騎乗した集団が居た
その中で一番位の高そうな、兜に羽の飾りを着けた人物が口を開いた

「マインホフ公国、アンドレアス公爵である。救援に感謝する」

言葉遣いからしてかなり位が高そうだ。そう判断した大尉は、休めの姿勢を崩さずに続けた。

「閣下、あなたがこの近辺を統治されていらっしゃるのですか?」

「いかにも。だが私は統治を任された公爵に過ぎない。真にこの土地を束ねているのは国王様だ」

(中央集権型か?)

大尉は少し考えた。国たち連合を作って統治しているなら、つまり神聖ローマ帝国のような国なら話が面倒くさくなってしまう
だが、口ぶりから察するに国王の権力が強いようだ

「閣下、我々は国王陛下に謁見させて頂きたく存じます」

「正直貴殿たちが信用に足る人物なのかは分からんが・・・その規律、ただの徴募兵やごろつきの類ではないようだな」

「お褒めに預かりまして光栄であります、閣下」

「よろしい、だが謁見させてやれるのは貴殿一人と副官一人だけだ」

「だがその前に貴殿たちをわが城に招待したいと思う。よろしいかな?」
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/07(木) 09:54:01.03 ID:oWgmkIGbo
「貴殿の言っていたその国、その・・・ソビエト連邦は何処にあるのだ?」

「遠い遠い土地であります、閣下」

「だがそのソビエト連邦の軍がこんなところで何を?」

「我々は・・・」

「推測するに偵察や斥候の類だろう。次に会いまみえるのは戦場かも知れんな、ハハハハ」

「申し訳ありません、閣下」

「よいよい、戦いは世の常だ。もっとも今は魔物の相手が精一杯で、人間同士で戦争する余裕はないがな」

「と、言いますと?」

「とぼけた事を。魔物が数ヶ月前に国境を破って侵攻してきたのだ」

「先ほど逃げ去っていったあの者たちですか?」

「いかにも。奴らの魔法も装備もこちらに勝っている・・・」

「だからこそ貴殿たちのような訓練された部隊の増援は有難いのだ。」

大尉は戦いに加わるとは一言も言っていない。
しかしアンドレアス公の頭の中では既にそうなっているらしかった

「どうなさるんで、同志大尉」

クルコフが耳打ちして来た

「どうもこうも・・・戦争がおきているという事はどちらかに介入する余地があるという事だ」

「と、考えてるわけですね、同志大尉は」

「皮肉っぽいことを言うなよ。見たところ敵味方の戦術はかなり稚拙だ、これを何とか出来れば・・・」

気持ち程度の隊列を組み、正面から後から押しをするだけ。
戦死した兵士の装備や遺体から見るに、弓矢投石などの遠隔攻撃をするぐらい知能はあるらしい
また、魔法も存在しているとの事だ

「報告の為に何人か"門"に行かせようとは思っているがな」

「そうですか。まあ我々は同志の部下でありますから何も言いませんがね」

「クルコフ、その口調を早く治していればこっちに飛ばされる事も無かったんじゃないか?」

「全くその通りであります、同志!」

城はそこから1時間程度行軍した場所にあった
これだけ近い場所で戦闘をしていたという事は追い詰められていたという事だろう

「さあ英雄たち、飲んでくれ!」

蒸留の技術が貧弱なのか酒はあまり美味くなかったが、ソビエト連邦でお目にかかれない巨大な肉や果物をたらふく食べる事が出来た

「「「「ヴォルガ中隊に入ってよかったであります、同志!!!」」」」

現金な奴らだ!大尉はそう思った
やはり酒は不味い。
33.65 KB   
VIP Service SS速報VIP 専用ブラウザ 検索 Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)