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享「万能鑑定士?」 莉子「特命係?」 - SS速報VIP(SS・ノベル・やる夫等々) 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/17(金) 10:11:24.89 ID:LID6YS1sO
ー警視庁特命係ー

「2人の時でも退屈だったけど1人だと特に退屈になるんだな……」

甲斐享はデスクの上で頬杖をつきながらブツブツと独り言を言っていた

「暇か?って聞くまでもないな」

「あ、おはようございます課長」

いつもの様に特命の部屋に入ってきたのは角田六郎。
本来は組対5課の人間なのだが部屋が隣同士のこともあって
頻繁にコーヒーを飲みに来る。

「もうおはようって時間じゃないよ、ほれ」

角田が壁際の時計に指を差した。ゆっくりとそちらに目を向けると
時刻は昼の十二時をさしていた。

「あ……ボーっとしてもうこんな時間ですか……」

享が軽いあくびをしながら呟くと角田は皮肉混じりに言った

「けっいいねぇ時間が経つのも忘れるぐらい暇そうで」

その言葉に享は少しムッとしながら言った

「全然よくないっスよ……杉下さんはまだ暫くロンドンで休暇中みたいですし
  俺1人じゃヘマばっかりやらかしてなんの役にも立たないし……」


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男「ラーメン〜ラーメン〜一杯1円〜」チャラチャラ〜 @ 2014/10/26(日) 13:59:44.22 ID:zkwC8qx/0
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P「やっぱり俺には……アナタしかいない」 @ 2014/10/26(日) 13:19:13.57 ID:jSBumLv/0
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【ガルパン】みほ「合同合宿?」 @ 2014/10/26(日) 12:59:22.12 ID:p5fBxSQr0
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('A`)は変化するようです @ 2014/10/26(日) 12:36:31.15 ID:POg3o8XJ0
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宮川大輔「セルゲーム?………あかーーーーーーん!!」 @ 2014/10/26(日) 12:17:39.41 ID:/jHmEMeE0
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妹「安価でお兄ちゃんとデート!」 @ 2014/10/26(日) 11:06:38.43 ID:ordGLtSv0
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【咲-Saki-】咲「思い出したよ、私が一番お姉ちゃんと仲良しだった頃のことを」 @ 2014/10/26(日) 10:11:24.78 ID:tRXofM/E0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1414285874/

言いたいことも言えないこんな世の中じゃ @ 2014/10/26(日) 08:07:33.15 ID:2bRwgCHPO
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/17(金) 10:19:39.40 ID:LID6YS1sO
この一週間享はあらゆる事件の捜査をしていた。空き巣、放火、誘拐、
振り込め詐欺……無論特命に捜査権は無いので勝手に捜査をしていた。

ー杉下さんの分まで俺が頑張ってやる!ーそう意気込んでいた。しかし……

「ああ話には聞いてるよ。空き巣の時に捜査に夢中になり過ぎてうっかり被害者   
    の壺割っちゃったって」

「幸い安物だったんで被害者の方はそんなに怒っていなかったんですが
   周りの刑事の人達がすごく睨んできて……」

「まあ当然だわな」

「放火の時には証拠品を無くしかけるし誘拐の時は全く検討外れの
   推理を披露しちゃうし振り込めの時は……」

享が全部言い終わらない内に角田が話を割った

「なんか……あれだな今の話だけ聞いていると陣川の失敗談じゃないかと
   思っちゃうな」

享にはその言葉はイラッっとくるよりショックの方が大きかった

「やめてくださいよ……俺が陣川さんみたいな人になりつつ
   あるって言うんですか」

陣川というのは強盗犯捜査第一係の経理部に属している人である
一時期特命にいたお陰なのか杉下右京を崇拝している
そのせいか経理の人なのに勝手に事件を捜査するという
特命係みたいな事をしている

「おいおい、みたいな人っていうのは失礼じゃないか?
   一応お前より歳も階級も上なんだから」

「それはそうなんですけど……」
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/17(金) 10:27:22.18 ID:LID6YS1sO
どうにも享は陣川という男があまり好きではなかった

いい人ではあるのだが性格があまりにもおっちょこちょいなせいで
捜査能力がかなり乏しいうえによくドジを踏む
だから享は陣川に無能のレッテルを貼っていた

そんな享の心を読んだかのように角田は言った

「お前はあんまり陣川の事よく思ってないみたいだけどな、あいつ経理の
    仕事は結構優秀なんだぞ」

「へぇ……」

だったら経理の仕事だけしていればいいのでは……?

享がそう言おうと思ったらタイミング悪く特命係の電話が鳴ってきた

珍しくここの電話が鳴ったなと思いつつ享は受話器をとった「はい特命」

「私だ」

電話の相手は内村だった。予想外にも目上からの電話だったので
緊張が走る

「あ、はい甲斐です」

「すぐに刑事部長室にこい」

それだけいうと内村はすぐに電話を切った

享が困惑していると角田が哀れみの目でこちらを見てきた

「ああ……とうとうお説教を浴びさせられるハメになっちまうみたいだねぇ」

「なんの話です」

「お前さんがやらかしたヘマの数々が刑事部長に知れ渡ったって事さ」

享は一瞬寒気を感じた。自分はまだ内村の説教というものを食らった事はない
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/17(金) 10:36:35.12 ID:LID6YS1sO
「まだ説教だと決まった訳じゃ……」

享が全部言い切る前に角田が遮った

「いいや特命が刑事部長に呼ばれる理由なんて8割方説教だね」

「そんな自信満々に言われても……それにしても課長、よく電話の相手が
   刑事部長だってわかりましたね」

享が関心すると角田は自慢気にいった

「フ、勘ってやつだよ、ここに長く出入りしているとそういうのも
  わかってきちゃうんだな」

「はぁ……まあとりあえず俺呼ばれたんで課長、自分でコーヒー淹れといて
   くださいね」

そう言うと享は小走りに特命係の部屋を出て行った

「え、ちょっとカイトお前まだ淹れてなかったのか
   コーヒー淹れるのが特命係の仕事だと前に言っただろ!」

角田が慌てた声で叫んだが享は聞こえないふりをして刑事部長室に
向かっていった
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/17(金) 10:44:26.48 ID:LID6YS1sO
ー刑事部長室ー

「壺の鑑定ですか……」

享は少し低い声で呟いた

「不満か?」

内村は肘掛椅子に背を預けたまま享を睨み付けてきた。そのデスクの上には
風呂敷に包まれた壺が据えてある

慌てて享は弁解の言葉を述べた

「い、いえ!そんな事はありません
   たいへん働きがいのある仕事です」

「フン!」内村が鼻で笑った

「当然だ。窓際の特命に仕事をやってやるというんだ。
   これで不満なんぞ言ってみろ。未来永劫特命に仕事は
   ないと思え」

享はやれやれといった感じだった。角田の予想だった説教は大ハズレで
むしろその逆、珍しく仕事をくれるというから何かと思いきや壺を鑑定士
の所に持っていきその結果を聞きにいけという小学生でもできるお使いだった
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/17(金) 10:47:50.33 ID:LID6YS1sO

「もちろんです。不満なんてある訳ないじゃないですか」

享はできる限りの作り笑いをつとめて素朴な質問を内村にぶつけた

「それでその壺というのはどういった事件の…」

「教えん」

「は?」

一瞬享の頭は空っぽになった。今なんといった。教えん?いやいやいやそんな
はずはない。いくら特命が嫌われてるかといってそこまで……

「甲斐、貴様最近勝手に事件現場に現れては捜査の邪魔をしてるそう
   じゃないか」

その言葉に享は衝撃を覚えた。ばれてるよ……やっぱり角田の言った通り内村には全部筒抜けだったという訳か……それにしても邪魔をしているというのは……考えるまでもない。先ほど角田に説明した通りだ。俺はここ数日で大ポカをやらかしまくっている。内村に邪魔をしていると言われても仕方がない

享が黙っていると内村が言葉を続けた

「杉下の悪い癖でも身についたか?それとも次長の息子だからと少し
   ぐらい勝手に事件現場に赴いてもいいかなとたかをくくってたか?」
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/17(金) 10:55:30.51 ID:LID6YS1sO
次長の息子だから。以前の俺ならここでかなり切れていたかもしれないな

「いえ、親父の事は関係ありません。俺が捜査をしたかったから
   勝手に事件現場に行っただけです」

その言葉に少し意外そうな顔をした内村だがすぐにまたいつもの形相に戻った

「ほう、そうか、それなら分かるだろ。貴様にこの壺の事件の詳細などを話してみろ。勝手に捜査に首を突っ込むに決まってるからな」

享は最初からそんなつもりはなかった。確かに少し前までなら無理矢理にでも聞き出そうとしていたかもしれない。しかし俺一人で捜査をしてもなんの役にも立たないのはこの数日で十分わかっている。だから勝手に事件の捜査をするにしても右京が帰ってきてからにしよう。そう決めていたから今日は特命部屋で暇を持て余していたのだから

しかしそうは言っても内村は信用しないだろう。しょうがない自業自得だ

「わかりました…」

「やけに素直じゃないか、杉下や亀山や神戸よりかは幾らかマシとみた」
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/17(金) 11:03:12.75 ID:LID6YS1sO
右京はともかく亀山や神戸って人も内村に不服を申しあげて
いたのだろうか。だとすると俺もそのうち内村に文句を言ったりする
時がくるのかもしれないな

「まあそれはともかく…既に鑑定士側には連絡をしてあるから事情を
    説明する必要はない。ほれ、これを見ながらとっとと行ってこい!」
    
そういうと内村はA4サイズほどの紙を存外に投げ捨てた
慌てて享が拾い上げると警視庁から鑑定士の店と思われる
場所までの地図がかなり雑な感じで描かれていた。

ちゃんとした地図すら貰えないのかよと憤りを覚えながら
享は店の名前を見た

「万能鑑定士Q…?」
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/17(金) 11:08:25.39 ID:LID6YS1sO
とりあえず今日はここまでです
ss書きは初めてですので面白くない、キャラ崩壊、文章能力低いの三拍子が
揃ってしまうかもしれません
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/17(金) 11:30:28.38 ID:7UGYRUD8o
乙したー

莉子ちゃんマジTUEEEEEEE楽しみです
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/17(金) 11:41:58.99 ID:29TuBKydo


完璧超人の心理カウンセラーじゃなくて良かった…
あっちだったら右京さんと組んで全事件easyモードだろうし、こちらの方が面白そう
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/17(金) 11:53:13.29 ID:jjPVbSRH0
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/17(金) 13:18:21.32 ID:bO1Lq25H0

万能鑑定士の二次ssなんて初めて見たわww
なんか新鮮
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/17(金) 18:20:19.66 ID:breTzXDw0
万能鑑定士と特命とかまじ俺得

展開に期待
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/19(日) 11:20:23.46 ID:ec5NYdo4O
警視庁から車で十五分ほど
飯田橋駅近くの商店街、雑居ビル一階のテナントにその店はあった

万能鑑定士Q。アクリルにステンレス板を嵌めこんだ
しゃれた字体の看板だった

「ここか……思ってたイメージとだいぶ違うな…」

正面はガラス張り、入り口は自動ドアという外見だけみるとカフェか美容室の
ような所だった。享は白いセダンを横付けし壺を包んだ風呂敷を持ち店内に
入った

「……という訳で買ってみたんですけど妙に安かったので
   ちょっと不安になってしまって……」
       
先客と思われる三十代前半の主婦が溜息混じりにデスクの上に置いてある
パールネックレスの購入過程を説明をしていた

それを聞いていたのは随分と若い女性、二十代前半ぐらいだろうか
猫のように大きなつぶらな瞳、少女のような可愛らしさと妙に大人びた
美人の顔が混ざりあったどこか個性に満ちた面立ちをしていた

「そうですか……では拝見させていただきます」

若い女性はそういうとルーペを取り出しネックレスを凝視した
いっそう大きく見開かれた目はまたも猫のようだった

暫く見つめていると申し訳なさそうな表情で主婦に告げた
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/19(日) 11:27:59.53 ID:ec5NYdo4O
「大変お気の毒ですがやはり偽物かと……」

「まあやっぱり……?」

「本物のパールには真珠層の成長模様があるんです。ですがこれには
  それがない。多分プラスチックか貝の核に塗料を塗っただけの物だと
   思われます」

「そうなの……でもよかったわ、早めに偽物だとわかって、ええと
   それでお代金は……」

「少し見ただけですしお金をいただくほどでは……」
 
「凜田先生、いつも無料で見て下さるのはありがたいんですが
   それでは私があまりにも忍びないです。ですから今日は是非お支払い
   させてもらいたいんです」

客の方から金を払わせてくれと頼むなんて一体今まで何回無料で見て
きたんだよと享は店の壁際に佇みながら内心ツッコミをいれていた
    
「それで……これ少ないかもしれませんがいままでのお礼です」

そういうと主婦は一枚の封筒をバックから取り出しそれをデスクの上に
差し出してきた

「よろしいんですか?気を使っていただけなくても本当にお金をいただく
   ほどの事では……」

「いいんです!そうしないと私の気が済みませんから。それでは
   凜田先生ありがとうございました」

主婦は早口でそういうとそそくさと自動ドアの外に立ち去っていった

「あ、ちょっと待って……」

慌てて女鑑定士も椅子から立ちあがり封筒を持って自動ドアに向かっていったが
もう主婦の姿は見えなくなっていた

その一部始終を見た享は壺の風呂敷をそっと床に置き
女鑑定士に近付いた
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/19(日) 11:36:35.64 ID:ec5NYdo4O
「あの……すいません」

享が話をかけても女鑑定士は困惑の表情を浮かばせながら封筒を見つめていた

そんなに金を受け取ったのが申し訳ないのだろうか……ちゃんと仕事を
したのだからもらって当然だと思うが……

「お金をもらったのがそんなに嫌?」

「え?」

女鑑定士が驚きの表情で享の顔を見た

「あ、ああ!すいませんお客様がおられるというのにわたしは……」

「いえ……別にいいんですけどね……ええと他の専門の鑑定士は……」

享がキョロキョロと周りを見渡していると女鑑定士は微笑を浮かべながら告げた

「ここはわたし一人の店ですよ」

「ええ!?だって店の名前万能鑑定士って……」

「そうです、もしかして複数の鑑定士がおられると思いましたか?」

「はい……」

そうなのだ。万能というぐらいだから多種多様の専門の鑑定士が
大集合している店だと享は考えていた。この女性も随分若いが
宝石専門の鑑定士だと思っていたのだがまさか1人で経営している
とは……

「やっぱりですかよく勘違いされる方が多いんですよね」

「貴方1人でお店をやられているという事は……まさかオールマイティで
   鑑定できるんですか?絵画とか掛け軸とかバックとかやらを全部」

「ええ一応。あ、申しおくれました。わたしこの店の店主の
   凜田莉子と言う者です」
 
そう名乗ると莉子は名刺を差し出してきた
そこには、万能鑑定士Q、凜田莉子と印刷してあった
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/19(日) 11:45:52.09 ID:ec5NYdo4O
「あ、どうも、俺は……」

「昨日電話で伺っていますよ。壺を持ってこられた甲斐享さんですよね」

「そ、そうです……」

享は少し困惑した。内村の言う通り概要は既に伝わっているみたいだが
なんで俺がその甲斐享だとわかったのだろうか。こっちはまだ刑事だと
名乗っていないのに

享が不思議に思っていると莉子もそれを察したのか説明をしだした

「ええとですね……あの車を見てわかったんですよ」

莉子が自動ドア越しに見える享が運転してきた白いセダンを指差した

「……あれで?」

「ええ、あれ覆面パトカーですよね。ルーフ中央に赤色灯が落ちないように
   備え付けてあるピンが見えますし」
   
「ああ、なる程、赤色灯落下防止ピンですか……でもよく知ってますね
   それで俺が甲斐享だと?」
      
「ええ、基本的にこの店には知り合いの刑事さんしか来られませんし壺を
   持ってくるのは今日だとわかっていたのでそうじゃないかなと……」
      
「……知り合いに刑事がいるの?」

「ええまあ」

享は一瞬、前科でもあるのかと思ったがすぐにその考えを打ち消した
彼女が犯罪を犯すような人間ではないというのはさっきの主婦とのやりとり
で十分わかっているからだ

享は内ポケットから警察手帳を取り出し苦笑を浮かばせてみせながら言った

「お見事。貴方の読み通り自分は警視庁特命係の甲斐と言います」

それを聞くと莉子は不思議そうな顔をしながら言った

「特命係……?あまり聞きなれない部署ですね」

「で、ですよね……」
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/19(日) 11:57:53.63 ID:ec5NYdo4O
どうやら壺を持ってくるのがどこの部署の人間かまでは
教えていなかったようだ

「失礼かもしれませんがどういった事をなさる部署なんでしょう?」

く……こんな事なら自己紹介は警視庁の甲斐享ですだけにすべきだったか
享は自分に憤りを感じながら特命係について一言で説明した

「簡単にいうと窓際部署です」

そう聞いた瞬間、莉子は急にすまなそうな表情を浮かべ何かを言おうとした
享はそれより早く先ほど床に置いた壺の風呂敷を指差した

「ええとこの壺……」

「あ、はい、どうぞこちらに……」

莉子が右手で促した先にある青みがかった透明なデスクにまで享は壺を
持っていき風呂敷を取り払った
胴径30cm高さ60cmほどの赤茶色気味の壺が姿を現した
   
莉子は先ほどまで持っていた封筒をデスクの棚に仕舞いながら言った

「随分と大きいんですね。食い逃げ犯が忘れていった壺と聞いていたので
   もっと小振りだと思っていましたが」

「ん?食い逃げ?」

「ええ、違うんですか?電話ではそう聞いていますが……」

その言葉に享は愕然とした。なんという事だ。まさか刑事である俺には教えないで一般人である彼女には事件の詳細が行き渡っているというのか……どんだけ嫌われるんだ特命係ってのは……

「あの……すいませんがその食い逃げ事件の内容を教えて
   もらいませんか……?」

捜査は右京が帰ってくるまでしない。その気持ちは変わっていない
ただ一般人に教えて俺に教えないというのが非常に腹立たしい気分だった
警視庁に帰ったら内村に事件の詳細を説明して驚く顔が見たい。それが享
の目論見だった。

そうとは知らない莉子は目を丸くしながら驚きの声をあげた

「はい?わたしが刑事さんに事件の説明をするんですか?」

当然のリアクションだなと思いつつ享は仕方なくもう一度特命係の説明をした

「そのですね、さっきも言いましたけど俺の部署は窓際なんで事件の
    詳細は聞かされていないんですよ。だから出来れば凜田さんに教えて
   もらいたいかな……と」   

「はあ……まあ、わかりました……」

莉子はなんとも腑に落ちない様子で事件の説明をしだした
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/19(日) 12:01:03.74 ID:ec5NYdo4O
今日はここまでです
なんだか莉子のキャラにコレジャナイ感があるかもしれません
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/19(日) 13:41:16.77 ID:aCcqm3oF0
小笠原さん出なくていいよ。
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/19(日) 13:51:05.84 ID:aMM9WKO5o
乙したー

最初の莉子ちゃんへの不信感こそQの面白みよ・・・
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/20(月) 10:31:51.77 ID:du5+xOk2O
莉子の説明を要約すると大体こういう事だった。事件が起きたのは
昨日、7月2日正午12時半頃の道玄坂近くにあるファミリーレストラン
での事だった。窓際の席に座っていた客がトイレに行くふりをして
無銭飲食を犯したのだ。慌てて店員が追いかけたが客の足はかなり
速かったらしくまんまと逃げられてしまった。おまけにその客は帽子
を被っていた為、人相もわからず男だったという事ぐらいしか情報
がなかった。



そんな中で唯一の手がかりと言えたのが食い逃げ犯が忘れていった壺だった
その壺は大きな紙袋に入っておりどれほどの価値があるものなのか
即刻鑑定してもらいたい為、万能鑑定士に依頼をしたという訳だった
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/20(月) 10:39:42.65 ID:du5+xOk2O
莉子の説明を聞き終えると享は一言呟いた

「道玄坂って事は管轄、渋谷警察署じゃん……」

莉子は大きく頷きながら言った

「やっぱりそうですよね、だからわたしなんで本庁の方が来られたのか
   不思議だったんですけど」

理由は大体わかっていた。渋谷警察署には特命係のような
窓際部署が存在しないのであろう。要はみんな忙しく鑑定士
の店にまで出向く余裕がないのだ。故に警視庁の陸の孤島にまで
その仕事が回ってきたといった所だろう

「まあ、窓際だからなんでもするんですよ。それより今の話が本当なら             
   この壺の価値はそんなに高くないんじゃないですかね」   

「何故そう思われるんです?」

「だって仮に高価な壺だとしたらそれを売ってお金にすれば食い逃げ   
   なんて事しないで済むじゃないですか。それにこの壺、まだだいぶ
   綺麗で最近作った様に見えますし」   

莉子は苦笑気味に言った

「最近の壺だからといって必ずしも安いって訳ではありませんよ。
   出来のいい壺だったら仮に昨日作られた壺でもそれなりの
   価値になります」

「……そんなものですか」

「ええ、そんなものです。それより早く壺を持って帰らないと
   怒られちゃうんじゃないですか?」
   
莉子にそう言われ慌てて享は腕時計を見た。時刻は午後1時を
さしていた。これ以上無駄話をしているとまずいかもしれない

「そうですね、じゃあ鑑定お願いします」
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/20(月) 10:45:38.80 ID:du5+xOk2O
莉子が壺の鑑定を終えるのを客用のソファーに座りながら待っている間
享の携帯電話から着信音が流れ出した

「あ、すいません、鑑定中に……」

享は軽く頭を下げながら謝ったが莉子は特に気にした様子もなく
壺を凝視したまま「構いませんよ」と一言、言っただけだった

そそくさと壁際に向かいディスプレイを見てみると
角田六郎と表記されていた

「もしもし、何の様ですか、課長」

莉子の邪魔をしないように小声で呟くと少し怒りの篭った声が
電話越しに聞こえてきた

「お、カイト、お前さっき俺のコーヒー淹れとけよって説教を
   無視して出ていったよな」

享は頭を抱えたくなった。わざわざそんな事で電話をしてきたのか
この人は……

「課長、そんな事でいちいち電話してこないで下さいよ」

「ん?いやいや、お前さんいくらなんでもそれだけの為に電話した
  訳じゃないよ。ちょっと聞きたい事があってさ」

少しホッとした。このままブチブチと何故コーヒーを淹れなかった
と文句を言われるのではないかと思っていたからだ。
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/20(月) 10:51:23.86 ID:du5+xOk2O
「何です?聞きたい事って」

「ああ、お前さん、今、壺の鑑定をしてもらう為に万能鑑定士Qの
   店にいるんじゃないか?」

「……課長、耳が早すぎですよ。どこからそんな情報……」

享の質問には答えず角田は一方的にまくり立てた

「お、じゃあ、今、お前の目の前に凜田莉子がいるんだな。どんな
   感じだ。生で見た感想は?やっぱり綺麗か?声はどうなんだ。高い
   のか、低いのか、それとも中間あたりか?」

「ちょ、ちょっと待って下さい、課長、そんな一気に聞かれても……
   というよりむしろこっちが聞きたいぐらいですよ。なんで課長が
   凜田莉子さんの事を知ってるんですか?」

そう聞くと角田は呆れたような声で言った

「はぁ?お前知らないのかよ。凜田莉子の事」

「……今日店に来て初めて知りましたけど」

「おいおい、マジかよ凜田莉子っていえば本庁でも結構な有名人だぜ
   一時期TVとかで美人すぎる鑑定士って呼ばれてたじゃないの」

享は賢明に記憶を探ったがやはり凜田莉子という女性は今日初めて知った
名前だった
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/20(月) 10:57:02.70 ID:du5+xOk2O
「うーん。ごめんなさい俺、あんまりTVとか見ないんで、本庁で有名人
   と言われてもやっぱり窓際だからかそういった情報が入ってこないん
   だと思います」

「はあ……そうか、じゃあしょうがない、俺が詳しく教えてやろうじゃないか」

何故か角田の声は嬉しそうだった

享は今の角田の説明でひとつだけ気になった所を質問した

「あの、なんで本庁で有名なのかだけを説明してもらえればそれで
   いいんです」

「なに、誕生日とか出身地とかはいいのか?」

「別にいいです」

「釣れない奴だな……まあいい、凜田莉子は類いまれない知識と
    ロジカル・シンキングを武器に警察ですら解決出来ない事件を
    ズバズバッと解いていってるんだよ」

「……どこのシャーロック・ホームズですか」

享は率直な感想を述べた

「いやいや、でも本当に小説の中から飛び出してきた名探偵の如く
   鮮やかに解決していってるらしいぞ」
      
「へぇ、ロジカル・シンキングって聞きなれない言葉ですけど
   どういった……」
   
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/20(月) 11:01:44.04 ID:du5+xOk2O
角田はまたしても享の質問に答えず、変わりにクイズみたいな問題を
出してきた

「そんな事より彼女、どこ出身だと思う?結構意外な所なんだぜ。
   へへ、ヒントはひらがな4文字で……」

享はふと莉子の方を見てみると既に鑑定を終えていたのか、ただ平然と椅子に
座ったまま享の電話が終わるのを待っている様子だった

「課長、その話はまた今度でお願いします」

角田の返事を聞く事なく享は一方的に電話を切った
帰ったらまた怒られるなぁと考えながら莉子のデスクに
戻った

「すいません長くなってしまって、それでどうでしたか?」

莉子は軽い微笑を浮かべながら鑑定結果を告げた
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/20(月) 11:04:24.22 ID:du5+xOk2O
短いですが今日はこれで終わりです
>>21
小笠原どうしましょうかね?
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/20(月) 11:05:59.91 ID:LRlbyBQ9o
乙したー

今回はガッツリ相棒サイドオンリーで頼んます
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/20(月) 11:32:55.56 ID:a/b53P9m0
小笠原さん達いらんね。あっちはあっちで相棒的役割だけど
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/20(月) 12:00:17.29 ID:h/xinBZAo

小笠原君を出すとしても陣川さん程度のチョイ役に留めて欲しいな
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/20(月) 14:38:31.30 ID:CFpqRF2T0
面白い

小笠原さんは正直いらないかな
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/21(火) 14:31:16.27 ID:p0Xfux1EO
「結論から言いますとなかなかの出来の壺ですよ。甲斐さんの読み通り、
   作られたのは最近だと思いますが、色も鮮やかですし形も整っていて
   ます。かなり腕の良い職人さんが造形したと思わます」

   享は自分の予想が外れて少しガッカリした

「マジですか……じゃあ仮に売ったらどれぐらいの値段に?」

「うーん。あくまでわたしの見解ですけど30万円って所ですかね」

「そ、そんなに……?壺職人って儲かるんだなぁ」

  享は関心するとさっき自分が言った推測を再び呟いた
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/21(火) 14:38:25.10 ID:eNINkf2jO
「じゃあ何で壺を売らずに無銭飲食をしたのかさっぱりわからないな。
   それにそんな高い壺を忘れて逃げるなんて案外マヌケな食い逃げ
   犯かもしれませんね」   


   享が嘲笑すると莉子は少し呆れた様な目でこちらを見てきた


「甲斐さん……おそらくですが食い逃げ犯はわざと壺を置いていった
   んだと思いますよ」


「わざと?なんでそんな事を?そもそもなんでわざと壺を置いて
   いったってわかるんですか」
   

   享の質問に莉子は即答した


「だっておかしいじゃありませんか。これから無銭飲食を
   しようとしている店にこんな大きな壺を持って入ったら
   重たすぎて逃げる時に邪魔になりますよ」
    

「……店に入った時には無銭飲食をする気はなくて途中で
    無銭飲食をしようとしたじゃないですか」

    
  享の反論も莉子はすぐに否定した


「それも変です。だとしたら無銭飲食をしようと思った時に
 『この壺も持って逃げないと』と考えますよね。何しろ30万も
    する壺ですから。その時にリスクが高過ぎると感じ普通にお金   
    を払った方が賢明だと考えるはずですよ」            


「ええと……」


享は次の反論の内容を考えながら先程角田が言っていた
ロジカル・シンキングとやらがどういう物か頭の中で理解した
ようは俺の上司と同じ思考の持ち主って訳ね
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/21(火) 14:46:19.59 ID:eNINkf2jO
「参りました……」

  反論のネタが浮かばず享は悔しい気持ちを湧き上がらせていた
  なんだか、スポーツの試合に負けた時と似たような感情が押し寄せてきた
       
「つまり食い逃げ犯はお金に困ってたから無銭飲食をしたわけではなくて
   壺を置いて帰りたくて無銭飲食をしたって言いたいんですか?」   
              
   享は頭をフル回転させ莉子の考えを推察した
      
「ええ、普通に食事をしただけなら会計の時に店員さんか周りのお客さん
   に『忘れ物ですよ』と指摘されてしまうかもしれませんから」

  莉子はそう言うと同時に何かを思い出したかのように「あ……」と呟いた  

 「すいません、もうひとつ言い忘れてました。多分、この事件を
    担当された刑事さん達は既に知っていると思うんですがこちら
    を見ていただけますか」

   そう言うと莉子は壺の右側面の隅に指をさした
 
   享は目を凝らしながら見てみるとそこにはかなり
   小さな黒字でfと書かれていた

「これってアルファベットの小文字のfですよね?」

「ええ、そう見えますね」

   もう少しよく見てみるとそれはマジックペンで書かれているみたいだった
      
「こんな変な文字が書かれてたらこの壺の値段下がるんじゃないですか?」

「そうです、さっきは30万円と言いましたがそれはこのfの文字が
   無い場合の値段です。ですから正確には、今、この壺の値段は
   20万円といった所でしょうか」
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/21(火) 14:54:47.84 ID:eNINkf2jO
「想像以上の下落だな……でも……」

  享は頭を掻き毟りながら言った

「なーんかわからない事だらけだな。高価な壺を無銭飲食までして
   置いて帰ったりその壺に変な文字が書いてあったり……」
  
  その時、莉子がおさまっているデスクに据え置いてある電話が
  けたたましく鳴った

「あ、すいません、少々失礼」

   莉子は申し訳なさそうに電話を取った

「はい、お電話ありがとうございます。こちら万能鑑定士Q……
   ああこれはどうも、また証拠品なんかを拝見すればいいんですね
   今日はどういった……え?……はい……わかりました。すぐに行きます」
        
  莉子は電話を切り表情をこわばらせながら享に言った   

「すいません、甲斐さん、急用が出来ましたので今すぐ店を閉めないと
   いけなくなってしまいました」

   享は慌てて言った

「ええと、鑑定はしてもらったんでそれは別に構いませんが今の誰からの
   電話ですか?証拠品がどうのこうのって言ってましたけど」     

「牛込警察署からです。先ほど神楽坂近くのファミレスで
   無銭飲食が発生したみたいで、しかもその食い逃げ犯は
   壺を店に忘れていったとの話です」     
    
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/21(火) 15:02:54.44 ID:eNINkf2jO
莉子の説明に享は衝撃を覚えた。昨日の今日でまた似たような食い逃げ
  が起きたというのか。いや、その事も気になるが一番気になるのは……                    
  
  「ええと、もしかして凜田さん、これからその事件現場に向かうんですか?」     
    
  莉子は首を軽く横に振った

「違いますよ。その壺の鑑定をしてくれって頼まれたんです。ですから今から
   行くのは牛込署ですよ」   
 
 享は苦笑を浮かばせてみせた

「また同じ依頼ですね。でもさっき事件が発生したばかりなんですよね?
   なんだかやけに依頼が早い気がするな」

「牛込署はうちの店の管轄内ですからたまに用途不明の証拠品なんかを
   拝見させてもらってるんですよ。しかも無銭飲食という事は担当は知
   能犯係のはずですよね?」
  
   享は深く頷いた  

 「そうですね一応、詐欺罪という形になるので」

  莉子は微笑を浮かばせながら呟いた   

「わたしを呼んだが誰かおおよそ検討がつきました。ええと、そういう訳なんで
   これからわたしは牛込署に行きます。甲斐さん、わざわざ壺を持ってきて頂い
   てありがとうございました」

   莉子がそう言って外出用のカバンらしき物を持ち出し店を出て行こうと
   したので享も仕方なく壺を持って店を出た
    
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/21(火) 15:08:23.45 ID:eNINkf2jO
莉子は軽く頭を下げ、駆け足で走り出しそうとした。その時  
  
 「あの、もしよかったら牛込署まで送って行きましょうか?」  

  享は自分でも何故こんな事を言ったのかわからなかった
  莉子はきょとんとした目で享を見つめてきた

「え、いいんですか?でも甲斐さん、早く帰らないと……」

  享は腕時計を見た。時刻は午後1時半をさしていた。警視庁を出てから
  かれこれ1時間半は経過している。これから牛込署に向かったらますます
  帰る時間が遅れるだろう。そうなると内村に怒鳴られるのは火を見るより
  明らかだった。しかし享は内村の説教に恐怖を感じなかった。彼女の手助けを    
  してやりたい。不思議と湧き上がったその気持ちが享の恐怖を打ち消していた

「ん、まあ少しくらい大丈夫ですよ。どうせ帰ってもする事ないんで」     

 「そうですか……それじゃあ、その……お願いします」

  今度は深く頭を下げた莉子に対して享もつられて頭を下げた
  なんだか急によそよそしい感じになってしまい2人とも苦笑をしながら
  セダンの車に乗り込んでいった。  
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/21(火) 15:13:11.27 ID:eNINkf2jO
今日はここまでです
享の知能指数がかなり低くなっちゃってます

>>30
申し訳ありません……次の話で牛込署に行くので鑑定士側のあの人が出てきちゃいます
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/21(火) 17:05:22.39 ID:1dHVsfgnO
乙です。
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/21(火) 17:13:33.37 ID:1Ob9G4aE0
乙。

相棒しか知らないけど、米沢さんとの絡みも見てみたい
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/21(火) 18:42:53.79 ID:L9Rs0WgSO
莉子とカイトが一緒にいるとこ見たら小笠原さんは心配になるだろうな

カイト君イケメンだから
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/21(火) 22:38:34.50 ID:cRoKJ+Kgo
>>40
まぁ希望ですしね・・・
>>1の書きたいものを読ませて頂きます
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/22(水) 10:30:46.34 ID:7zBoK+VTO
牛込署を目指して車を走らせている間、車内にはエンジン音だけが
鳴り響いていた

莉子は後部座席に座りバックから取り出した文庫本を黙々と読んでいる

享は何か話を振った方がいいかなと考え、一つの質問をした

「あの……ちょっといいですか?」

 「はい、何でしょうか?」

「個人的興味なんですけどお店の名前、万能鑑定士QのQってどんな意味
   なんですか?」

享がそう聞くと莉子のバツのわるそうな顔がサイドミラー越しに見えた

「さあ……わたしが名付けたわけじゃないので……」

莉子はそれだけいうとまた黙り込んで読書の続きをはじめた

なんとなく地雷を踏んだ感じがしたので享もそれ以上追求するのをやめた

結局会話はそれだけで終わり車内は再びエンジン音
だけに包まれた
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/22(水) 10:39:59.41 ID:7zBoK+VTO
牛込署が近付いてくると莉子は本をバックに仕舞いながら言った

「甲斐さん、もうこの辺でいいですよ。ここからは歩きで大丈夫です。
   送って下さってありがとうございました」  

 しかし享は車を停車させる事なく告げた

「いえ、俺も牛込署に行こうと思っています」

 莉子は少し驚きの声を上げた

「どうしてですか?何か用事でも……」

享はトランクに入れてある壺を示しながら言った

「あの壺が、さっき起きた食い逃げ事件の壺と何か関係があるのは
   明らかですからね。持っていって2つの壺を見比べてみれば何か
   手がかりでもつかめるんじゃないか……と思いまして」

享は完全にこの事件に対して強い興味を持っていた。
ここ一週間程我慢してきた捜査意欲が爆発していたのだ。
右京が帰るまで何もしないと決めていたがもう限界だった
それに難事件をいくつも解いていったという凜田莉子がどういった
推理をするのかも見てみたくなったというのもある

そんな享の気持ちを知るよしもなく莉子は言った

「ええと、でもわざわざ今、甲斐さんが持って行かなくても
   そのうち警察側も気付く事でしょうし……」

「こういうのはちょっとでも早い方がいいでしょう」
   
「それは……そうかもしれませんが本当に大丈夫なんですか?時間が……」
   
 「大丈夫、大丈夫この壺を持って行けって俺に命令した人の説教は
    そんなに怖くないんですよ」

 享はさも内村の説教を何度もあびてるかのように話した

「それならいいですけど……でも出来るだけ早く帰りましょうね」

「ええ、じゃあちょっと急ぎましょうか」

享がそう言ったのとフロントガラスに牛込警察署が見えてきたのはほぼ
同時だった
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/22(水) 10:48:24.60 ID:7zBoK+VTO
享は車のスピードを少し上げながら牛込署の駐車場に入っていった

トランクから壺を取り出し莉子と歩幅を合わせながら
自動ドアをくぐり抜ける

莉子はすぐさまロビー脇の階段を登りはじめたので
慌てて享も後を追う

三階に着くと莉子は廊下の突き当たりの扉を開けた
そこは刑事部屋だったらしく大勢の私服警官がデスクに
おさまっていた

その中の1人がこちらに向かって走ってきた

「ああ、凜田先生お待ちしてました。すいませんね、本来ならこちらから
   出向いていくべきなんでしょうが……ん?そちらの方は?」

年齢は30代ぐらい、髪型は七三に分けており、やけに目から覇気が感じられ
ない刑事が享を怪訝そうな表情で見つめてきた

莉子が紹介しようとする前に享は壺を床に置き警察手帳を取り出した

「警視庁特命係の甲斐といいます」

そう聞くと刑事は意外そうな顔を浮かばせながら言った

「刑事でしたか。それも本庁の……ん?特命係?」

「……はい」

「特命係って……人材の墓場って言われているあの特命係?」

享は頭を抱えた。特命係の知名度が予想以上に高かったからだ

莉子は不思議そうな顔をしながら聞いた

「人材の墓場?」

「ええ、何でもその部署にはすごく偏屈な上司がいるらしくて
   その人に付いていけなくなってしまい部下が次々とやめていっている
   とか……あ、でも最近は、割りと長くもってる人もチラホラいると聞いたな」  

享は軽い溜息をつきながら呟いた

「その長くもってる人の1人です……」

「フム、そうでしたか。ああ、自己紹介が遅れました。わたしは
   牛込署知能犯捜査係の葉山といいます。以後お見知りおきを」

葉山も手帳を取り出しながら自分の部署名を名乗った
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/22(水) 10:53:47.29 ID:7zBoK+VTO
享は莉子に小さく耳打ちをした

「この人がさっき言ってたよく店に来る刑事さん?」

莉子も耳打ちを返してきた

「そう。わからない事があったらすぐに店に来るの」

「じゃあ……解決とかしたら謝礼金とか出るの?」

「出ませんよ。このご時世不況ですからね」

「ボランティアって事か。色々大変ですね」
   
「そんな立派な事でもありませんよ。ただわたしは人助けが
   したいだけですから」

たいした人格者だ。享は心からそう思った。さっきの店での主婦の時も
お金を受け取りたがらなかったし本当に純粋な心の持ち主なのであろう
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/22(水) 10:58:42.44 ID:7zBoK+VTO
莉子と享がひそひそと会話をしていると葉山が割って入ってきた

「いつまでゴニョゴニョと話をされてるんですか」

莉子は葉山の方を向きすまなそうに言った

「ああ、すいません葉山さん、壺の鑑定をするんですよね?
   どこに……」

葉山はまた怪訝そうな顔を浮かべながら言った

「ちょっと待ってください。それよりもまず伺いたい事が山ほどあるんですよ。
    何で凜田先生と特命係の……甲斐さんでしたっけ?が一緒にいるんですか
   そして貴方が持ってきたこの風呂敷に入った壺は一体なんなんですか?」       

「それは俺が説明します」

享は葉山の前に立ち、昨日も似たような食い逃げ事件が起きた事や
享が壺を店に持ってきた事などについて簡潔に説明した

一通り説明を聞き終えると葉山は深い溜息をついた

「事情は大体わかりました。すぐに渋谷警察署に確認を取らせます
   ええと2件目の事件の壺はあっちの鑑識室にありますのでついてきてください
      
葉山はそう言って歩を進ませたので享と莉子もそれにならい歩を進ませていった
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/22(水) 10:59:31.39 ID:7zBoK+VTO
かなり短いですが今日はこれで終わりです
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/22(水) 11:01:20.96 ID:eaQLczjdo
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/22(水) 11:54:29.59 ID:VwXP6FINo

なんという俺得スレ
映画も期待してる
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/22(水) 18:25:02.99 ID:cp6A2r5WO
興味深いですねぇ
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/05/22(水) 19:22:13.57 ID:wABhOep70


期待が高まるな
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/24(金) 14:32:26.56 ID:ahb+b+gIO
鑑識室に行くまでの間、莉子と享は葉山から2件目の無銭飲食事件に
ついての説明を聞いた

要約するとほとんど昨日の事件と同じ内容だった

ドリンクバーから近い席に座っていた帽子にサングラスの客が携帯をかける振りをして逃走。
店員も追いかけたが捕まえられず席には青い壺だけが残されていた。
そしてその壺にはマジックペンで小文字のvと書かれており唯一昨日の事件と違うのはその壺の中には
一枚のコピー用紙が入っていたという事だった

56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/24(金) 14:35:57.75 ID:ahb+b+gIO
鑑識室に入るとデスクの一つに壺の入った大きな袋が置かれていた

葉山はその袋を指差しながら言った

「あれが例の忘れていった……ああこの壺も結構デカいから凜田先生の
   読み通りならわざと置いていった物かもしれませんね」

そう言うと葉山はデスクに置いてある
証拠品袋から紙を取り出した

「そしてこれが壺の中に入ってたコピー用紙なんですけどね、なんか変な単語が並べられてるだけなんですよ
   もし犯人がわざと壺を置いていったんだとしたら何か意味でもあるんじゃないかと思いますけど」   

莉子と享はその用紙を覗き込んだ。そこには横書きでこんな文字が印刷されていた
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/24(金) 14:37:07.64 ID:ahb+b+gIO
アレルギー

グミ

ザイル

メルヘン

ゲレンデ

カテゴリ
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/24(金) 14:48:34.60 ID:ahb+b+gIO
「……なんすか、これ?」

享はわけがわからず葉山に聞いた

「だから知りませんよ。犯人からのなんらかのメッセージかもしれませんし
   単に警察を惑わさせたいだけかもしれない」   

葉山は莉子の方に顔を向けながら聞いた

「で?どうですか?凜田先生、何かわかります?」

葉山が期待の目を浮かばせながら莉子をみつめてきたのを見て
享は思わず笑ってしまった

「本当に凜田さん頼みなんですね」

葉山はムッとした表情をして享に言った

「わたしだって出来れば凜田先生抜きで事件を解決したいですよ。でもね、彼女の類いまれない推理力は
正直言って我々警察より遥かに上なんですよ。ですからくだらないプライドにこだわって事件が迷宮入り
するくらいならいっそ、そんなものを捨てて彼女に全てを任せた方が賢明だと思いわたしは凜田先生に頼んでいるんです」   
   「……なるほど」

今の葉山の台詞は開き直りではなく莉子を信頼しているからこその
台詞だろう。享はそう思った

同じく今の言葉を聞いた莉子は意外そうな感じで呟いた

「葉山さんがそんなにわたしを高く評価されているとは思いませんでした……」
     
「そ、それよりどうなんですか?この文字を見てなにか
   わかりましたか?」

葉山は慌て気味に先を促し
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/24(金) 14:49:53.97 ID:ahb+b+gIO
「……なんすか、これ?」

享はわけがわからず葉山に聞いた

「だから知りませんよ。犯人からのなんらかのメッセージかもしれませんし
   単に警察を惑わさせたいだけかもしれない」   

葉山は莉子の方に顔を向けながら聞いた

「で?どうですか?凜田先生、何かわかります?」

葉山が期待の目を浮かばせながら莉子をみつめてきたのを見て
享は思わず笑ってしまった

「本当に凜田さん頼みなんですね」

葉山はムッとした表情をして享に言った

「わたしだって出来れば凜田先生抜きで事件を解決したいですよ。
   でもね、彼女の類いまれない推理力は正直言って、我々警察より
   遥かに上なんですよ。ですからくだらないプライドにこだわって事件が
   迷宮入りするくらいならいっそ、そんなものを捨てて彼女に全てを任せた
   方が賢明だと思いわたしは凜田先生に頼んでいるんです」   
   
「……なるほど」

今の葉山の台詞は開き直りではなく莉子を信頼しているからこその
台詞だろう。享はそう思った

同じく今の言葉を聞いた莉子は意外そうな感じで呟いた

「葉山さんがそんなにわたしを高く評価されているとは思いませんでした……」
     
「そ、それよりどうなんですか?この文字を見てなにか
   わかりましたか?」

葉山は慌て気味に先を促した
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/24(金) 14:59:25.46 ID:ahb+b+gIO
「ええと、はい。これから後4日間連続で壺を置いて帰る無銭飲食事件が発生
   するという事がわかりました」

あまりにもサラッと言ったので享は一瞬莉子が何を言ったか聞き逃しそう
になった。

「4日連続……?な、なんでそんな事がわかるんですか」

葉山がうわずった声で聞くと莉子はコピー用紙を2人に見せた

「こちらの6つの単語には全てある共通点が……」

莉子がそこまで言った所で享の携帯が鳴り出した

なんとなく嫌な予感を感じつつディスプレイを見てみると今、一番話をしたく
ない人の名前が記されていた

嫌々、享は電話に出た

「はい、甲斐です」

「どこをほつき歩いておる!」

内村の怒鳴り声が電話越しに響きわたった

「す、すいません、ちょっと道が混んでいまして……」

「言い訳はいい。後30分以内になんとしても戻れ。さもないと……」

「さもないと……?」

「……どうなるか楽しみにしておくんだな」

内村はそう言って一方的に電話を切った

参ったなぁ。享はそう思いながら頭をかいていると莉子が不安そうに聞いてきた

「甲斐さん。今の電話って……」

「あ、はい。上司から早く戻れって電話です」

「さっき葉山さんが言ってた偏屈な上司の方からですか?」

「いえ、そっちの人は今、ロンドンで休暇中です」

葉山は無表情のまま言った

「ロンドンですか。向こうは雨が多いみたいですし、わたしはあまり
   行きたくありませんな」
   
享は聞いた

「葉山さん、雨嫌いですか?」

「ええ、嫌いです。特に一日中雨が降ってる日なんて憂鬱な気分に
    なりますね。海外に行ってまでそんな気持ちは味わいたくないです」

莉子は葉山に目をやりながら言った

「確かにロンドンは雨が多いですけど、丸一日雨が降ってる日なんて稀ですよ
   ロンドンの雨は所謂にわか雨が多くて一日の中で晴れたり降ったりを
   くり返してる事がほとんどです」    

「だとしたら、ますます嫌ですよ……そういうのはハッキリして
   ほしいタチなんで」
  
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/24(金) 15:10:21.80 ID:ahb+b+gIO
葉山が苦笑気味に言った後、莉子はすぐに慌てた様子で言った

「って、こんな話をしてる場合じゃないですよ。甲斐さん、早く帰らないと。
   わざわざ電話をかけてきたって事は相当怒ってらっしゃたんじゃなないですか?」
       
「いや、さっきも言ったけど俺の上司の説教はそんなに怖くない……」

「怖い、怖くないの問題じゃありません。甲斐さんの名誉の問題です」
   
「名誉……窓際にそんなものはありませんよ。それにまだ2つの壺を
   見比べてませんし……」

享が最後まで言い終わらない内に莉子は少し大きな声で怒鳴った

「そんな事はいつでもできるじゃないすか!さっき葉山さんが渋谷署
   に連絡を入れましたし、またすぐに2つの壺は揃います!ですから
   早く警視庁に戻ってください!じゃないとわたし……」   
   
  享は莉子がここまで感情をあらわにする姿をはじめて見た為
  思わずビクついてしまった

 彼女もこんなデカい声を出すんだな
 そんな当たり前の事を思いながら享は考えた

 これ以上無理にここに居ても莉子は俺の心配をして
 鑑定に集中できないかもしれない。そんな事になったら
 俺が足手まといになるだけだ。それなら一旦引き返した方が莉子の為だろう

「……わかりました。でも壺を帰したらまたすぐにここに来ますからね
   俺もこの事件、最後まで付き合わせてもらいます」

 享の言葉に今度は葉山が困惑した
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/24(金) 15:14:40.63 ID:ahb+b+gIO
「ちょ、ちょっと待ってください。貴方、本庁の方でしょ。
   しかも知能犯係でもありませんし……全く関係ないのになんで
   首を突っ込もうとしてるんですか」   

「関係ない事件に首を突っ込むのが特命係の仕事……だからかな?」

 享が即答すると葉山は深いため息をつきながら呟いた

「答えになってません……」

「やっぱりダメ……ですかね?」

「……正直言って今、うちの署はかなり人手不足なんで協力してもらえる
   ならありがたいです。でも今日はダメです。係長と相談しないといけません
   し時間がかかります。その相談で係長の許可が下りたなら明日から来ても構い
   ませんよ」
    
「本当ですか!ありがとうございます」

 享が感謝の言葉を述べると莉子はせわしない様子で言ってきた

「甲斐さん、その、時間が……」       

「あ、そうですよね、じゃあ俺、戻ります。凜田さん、貴方はこの事件に
  関しては……」  

莉子は大きくうなずきながら言った

「ええ、協力させてもらいます。甲斐さん、もし許可が下りたなら
   その時はよろしくお願いしますね」

莉子が笑みを浮かべながら言ったので享も

「ええ、こちらこそ」

と笑みを返しながら牛込署を後にした

63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/24(金) 15:15:52.45 ID:ahb+b+gIO
今日はここまでです
なんだかどんどん投下量が少なくなってきてます。すいません
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/24(金) 15:33:02.97 ID:BJMEYzxCo
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/24(金) 19:32:11.56 ID:BXrpCPAa0
乙。

自分のペースでいいから頑張ってくれー
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/25(土) 04:21:45.69 ID:uEJ/ng9b0
右京さん出て来なそうだな。

莉子とのコンビを見たかった......いや、なんかコンビにはならなそうな二人だな
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/26(日) 10:55:42.83 ID:JbZjUKjZO
標準速度ギリギリのスピードで車を走らせながら警視庁に戻った享は
散々内村に怒鳴なられた後、自分でもわかるくらいやつれた表情をしたたま特命部屋へ帰ると角田が仁王立ちをしながら待ち構えていた

「カイト!お前、俺の電話、勝手に切りやがって……」

「課長、勘弁して下さい……今、刑事部長に戻るのが遅いって絞られてきた
   所なんですから……」

「そうなの?そういや、やけに時間がかかってたな。万能鑑定士の店は
   ここからそんなに遠くないだろ?しかも店主の凜田莉子はかなり速く
   鑑定結果を出せるって噂なんだが」     

「まあ色々ありまして……」

享は今までの経緯を手短に説明した

説明を聞いている中で角田の顔は何故か機嫌良くなっていった

「……っというわけで俺、明日牛込署に行くかもしれないんで……」

「よし、俺も連れていけ」

「は?」

「その牛込署には凜田莉子も来るんだろ?いやぁー、実はさ、俺ずっと行きたかったんだよね。万能鑑定士Qに。
でもさ、ほら、なんていうか1人だと恥ずかしいんだよね。ああいうお店。
だから中々行けなかったんだけど警察署なら大丈夫だ」   
   
「課長、何か鑑定してもらいものでもあるんですか?」

享がそう聞くと角田はスーツの内ポケットから黒革のサイフを取り出した
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/26(日) 11:03:25.05 ID:JbZjUKjZO
「ああ、俺が使ってるこのサイフを鑑定してもらいたくてな」

「これって……トリーバーチですか?」

「お、よくわかったな」

  「悦子のサイフもトリーバーチなんで見慣れてるんですよ。ってか
     課長、こんな高級なサイフ使ってたんですか?」

角田は自慢気に告げた

「まあな、これ使ってると結構良い事とかあるんだぜ」

「良い事?」

「ああ、例えばどっか買い物に行くとするだろ。その会計の時にこのトリーバーチを出せば
店員に『この人お金持ちかも』って思わせる事が出来る」

享は呆れ気味に言った

「見栄じゃないですか」

「そうだよ。お前の彼女も見栄で使ってるんじゃないの?」

「悦子は別に……いやどうだろ?ああ見えて結構自慢したがりだからな……」

享が考え込んでしまい角田は突っかかった

「って、そんな話はいいんだよ。このサイフを凜田莉子に鑑定してほしいんだよ」

「偽物の疑いでもあるんですか?」

「いや、疑ってるのはうちの嫁1人だ。『なんだか安っぽいコピー商品に見えるわ』だなんて言うんだよ。
それで俺も頭きっちゃってさ、もう大ゲンカよ」

「どっちが正しいか確かめる為ってわけですか。でももし偽物だったら
   課長、どうするんですか?」

「いや、絶対本物のトリーバーチだ。俺の眼に狂いはない」

角田は自信満々といった感じだった

69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/26(日) 11:12:36.96 ID:JbZjUKjZO
「はあ……。じゃあ、葉山さんに1人行く人増えますって報告しないと……あ!」
    
享は今になって葉山との連絡手段がない事に気付いた。それはつまり……
      
「まずったな……電話番号交換しておけばよかった……捜査の許可が
   下りたかどうか、確認の取りようがないじゃないか」
    
角田は、今の享の独り言を聞くと眉をひそめながら尋ねた

「何?番号交換してないの?葉山って刑事にも凜田莉子にもか?」

「はい……。うーん。しょうがないから明日直接聞きに行きますよ
   許可が下りてたならそのまま捜査に参加させてもらいますしダメ
   だったらすぐに帰ります」

「おいおい、ダメだった場合でも俺のトリーバーチを鑑定させてもらうんだからすぐに帰っちゃいかんでしょ」

「何で課長のサイフの鑑定結果を待たなきゃいけないんですか……」

享がうんざりとした気持ちで呟くと野太い声と共に特命部屋に入ってきた人物がいた

「中々興味深いお話をされていますな」

「よ、米沢さん、聞いてたんですか今の話?」

「はい」

「どの辺りから?」

「甲斐さんが角田課長に無銭飲食の事件の説明をしている辺りからでしょうか」

「ほとんど全部ですね……。米沢さんも凜田さんの事を知っているんですか?」

70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/26(日) 11:18:19.30 ID:JbZjUKjZO
「ええ、もちろんですよ。TV出演された番組は全て
   DVDにダビングしております」

米沢が得意気に言うと角田は素早く反応した

「マジで!?ちょっと俺にも見せてもらっていいか」

「構いませんよ。まだハードディスクには番組は残っていますし課長にも
    DVDをお渡しいたします」

「おお!ありがたい!」

享は今の角田の異常な喜びようを見て、ある一つの疑惑が浮かんだ

「……課長、サイフの鑑定なんて実は建て前で本音は単に凜田さんに
会いたいだけじゃないんですか?」

享が疑惑をぶつけると角田は目を泳がせながら言った

「い、いやその気持ちも正直あるんだけどあくまで本命は鑑定の方だよ」
   
「本当ですか?まあでもこれくらいの鑑定なら凜田さんも
   そんなに手間取らないと思うんで大丈夫だとは思いますけど……」
  
「あの……まことに恐縮なんですが……」

米沢が話に入ってきた

「なんですか」

「たいへんご迷惑になるとは思われるんですが……わたしもその牛込署に
連れて行ってもらいませんかね?」

「は、はい?米沢さんもですか?まさか米沢さんも鑑定してもらいたいものでも
   あるんですか?」

「いえ、わたしはそういったものは全く持ち合わせておりません」
   
「じゃあなんで……。まさか米沢さんまで凜田さんに会いたいだなんて
言い出さないでくださいよ」
   
「……すいません、そのまさかです」

米沢が頭を下げながら告白した

享はそれを聞いた瞬間、勘弁してくれよ2人とも……と心の中でポツリと呟いていた
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/26(日) 11:21:23.36 ID:JbZjUKjZO

結局、その後色々話あった結果、明日の午前中に角田と米沢を車に乗せて
牛込署に向かい早々に凜田莉子と対面してとっとと2人の要件をすませて
しまおうという風に決まった。仮に捜査の許可が下りてなくても鑑定のひとつや
ふたつぐらいならすぐ済むから牛込署側も文句は言ってこないはず……といった若干不安な要素を残しつつ3人の密談は終了した
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/26(日) 11:27:50.84 ID:JbZjUKjZO
ー花の里ー

「それは、それは色々大変な一日でしたね」

この店の女将、月本幸子がニコニコしながら言った

「そうなんですよ。しかも明日は2人のおかげでより大変になりそうですし」

カウンター席に座っている享がお茶漬けを口にしながら愚痴っていた

「フフ、でもその凜田莉子さんってTVで何回か
   拝見しただけなんですけどかなりの美人さんでしたし
  それなら2人が会いたいって気持ちも分かる気がするなぁ」

「月本さんも凜田さんに会いたいですか?」

「わたしは別に鑑定してほしいものもないからなぁ……。あ、もしかしてわたしも
一緒に連れて行ってくれるんですか?」

幸子がイタズラっぽく笑った

「いやいや、これ以上メンバーが増えたら本当に収拾がつかなくなっちゃいますって」

「冗談ですよ。まあでも会いたいと言えば会いたいかもしれませんね。
   有名人さんですし」

享はやれやれとした口調で言った

「月本さんも結構なミーハーですね」

「そうですかね?自分ではあまり自覚はありませんけど……」

「うーん。俺が全然、そういった方面に興味ないだけかも……」

幸子は大きくうなずいた

「そっちの方ですね。甲斐さんもしかして子供の時好きなアイドルとか
いなかったタイプの人じゃないですか?」

「うーん。アイドルも何もウチは親父がTV嫌いでして、バラエティ番組とか
   全く見てなかったってのが正確な理由ですかね」

「まあ、そうなんですか?」

「ええ、TVもリビングに一台しかありませんでしたし親父が帰ってくると速攻で電源を消していました。
で、どうしても見たい番組があったら録画して親父が居ない間に見るというのが甲斐家のしきたりでしたね」

「それじゃあ、そういった情報が入ってこないのも仕方ありませんね」   

「はい、当時はそんなにネットも復旧してませんでしたし……」

享はそう言いながら顔を下に向け、腕時計を見ると午後11時を過ぎていた

「ああ、そろそろ帰らないと。月本さん。会計お願いします」

「はーい。あ、そうだ、甲斐さん、よかったら今度、凜田さんをこの店に誘って    
    みてくださいね」

享は大きくため息をつきながら呟いた

「やっぱり月本さんも結構会いたいんじゃないですか……」
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/26(日) 11:30:03.88 ID:JbZjUKjZO
今日はここまでです。
ものすごく強引に課長と米沢さんを同行させてみました
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/26(日) 11:35:12.80 ID:qLmT5Dgio
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/26(日) 12:11:26.20 ID:NAG98WUP0


こうして考えてみると、相棒に登場する人達って相当キャラが濃いよな。流石人気ドラマだわ
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/27(月) 20:19:30.10 ID:67dy+FGD0
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/28(火) 18:30:01.26 ID:riSMntfPO
乙。

右京さんは出てこないでおk?
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/06/13(木) 09:21:34.77 ID:TZiFuPFPO
ー警視庁の駐車場ー

翌日の7月4日、予定通り警察車両のセダンに角田と米沢を後部座席に乗せて、享は小さなため息を漏らしながら運転席に乗り込んだ

「いやはや、楽しみですなー。ついにあの凜田莉子さんと面会できるだなんて」
    
牛込署に向かうまでの道中、米沢が嬉々とした声を弾ませた

「本当に凜田さんのファンなんですね米沢さん」

享はステアリングを切りながら言った

「ええ、恥ずかしながらわたくし昨日の夜興奮して中々眠れませんでした」

米沢の告白に角田は声に出して笑った

「修学旅行前日の学生みたいだな」

「そうですね。米沢さんって案外、子供っぽいって言われません?」

米沢はその質問に少し唸りながら答えた

「どうでしょうなぁ。鉄道などが好きなのは自分でものように
   思えますが人様からはあんまり……。どちらかというとオタクとかマニア
   とか呼ばれる方が多い気がします」

それを聞いた瞬間、角田と享は同時に呟いた

「ああ、なるほど……」
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/06/13(木) 09:33:11.82 ID:TZiFuPFPO
そんな風に談笑を交えながらの運転だったので
実際は牛込署に着くまで15分程かかったのだが体感時間的には
10分もないように思えた

昨日と同じ駐車場に同じセダンの車を停めた享は、昨日の莉子が
辿った道を思い出しながら刑事部屋を目指した
無論、米沢と角田も享の後をついていく。

三階に着くと廊下の片隅に2人の人物がたたずんでいた
享はすぐにそれが莉子と葉山だと認識できた

小走りで駆け寄ると両名ともこちらに気付いたようで
軽く会釈をしてきた

「昨日振りですね甲斐さん。連絡を取りたかったんですが
   本庁に電話をしたらもう帰社されたと言われまして」

葉山の言葉を受け享は言った

「わざわざすいません、番号交換しておけばよかったですね」

隣にいた莉子が詫びを入れてきた

「わたしが甲斐さんに早く戻れって言ってしまったせいです。
   それで連絡先をする時間もなくなってしまって……」

「気にしないでください。
  単に俺がマヌケだっただけですから」   

「まあそれよりも……後ろにいる御二人はどういった方々で?」

葉山にそう指摘されずっと突っ立ていた角田と米沢はそそくさと前に出てきた

「どうも。警視庁の角田と言うもんだ。ちょっと凜田先生に鑑定してもらいもの があってこいつと一緒に同行させてもらった」

「同じく米沢と言います。凜田莉子さんに一目会いたくてついてきて
  しまいました」

簡単に要件を告げると葉山は急に顔をしかめた

「凜田先生に用があるなら店に行ってくださいよ。わざわざこんな所まで……」

「どういったものをお持ちになられたんですか?」

葉山の小言を遮り莉子が興味深そうに角田に尋ねた

「これだ」

角田はふところからサイフを取り出し莉子に手渡した
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/06/13(木) 09:44:40.28 ID:TZiFuPFPO
「トリーバーチですね。どちらで購入を?」

「ん?ネットオークションだよ」

角田の発言に享は急に不安な気持ちになった

「正規店で買ったんじゃないんですか?」

「誰がそんな事言ったよ、直営店とかだと相場の値段で3万ぐらいするんだが
   オークションだとちょっとキズがついてたりするけど1万で買えるんだぜ」
   
米沢が莉子の持ってるサイフを見やりながら言った

「あ、本当ですね。表面に爪で引っかいたような傷跡があります」

享も納得してうなずいた

「そう言われれば悦子が持っているものよりも光沢が弱い気がしますね
   課長、要はこのサイフ中古って事ですか」
    
角田は少し身を縮こまらせながら言った

「い、いいじゃないの、中古でも何でもトリーバーチはトリーバーチだよ」
    
「まあそれはそうですけど……凜田さん、どうですか?真贋の判定は……」

享が目を向けると莉子はもうサイフから視線を落としていた

ああ、これはダメな方だな……。享は莉子のすまなそうな横顔を見ただけ
でそれがわかった

やがて莉子が口を開いた

「大変残念ですが偽物です……」

その鑑定結果を聞いた瞬間、角田の顔は呆然としていた  

「に、にせ……ものだって?」

「課長、気を確かに。凜田さん。どうして偽物だと?」

「ええと、まず質感が滑らかではありません
   本物とは違う革を使っているんでしょう。それと少し科学製品の匂い
   がします」
  
「だ、そうですよ。奥さんの言ってた通りコピー商品って事ですね」

角田はあからさまに落胆のいろを浮かべた

「『やっぱりそうだと思ったわ』ってどや顔してくるんだろうな……はあ……」

角田のため息をよそに葉山がイライラした様子で聞いてきた
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/06/13(木) 09:52:35.99 ID:TZiFuPFPO
「で?もう要件はお終いですか。甲斐さん、係長の許可はおりてますから
   これから、昨日、凜田さんがわたしに説明してくださった例のコピー用紙
   の件を……」

「すいません……できれば凜田さんにサインをいただきたいんですが」

米沢がウキウキ顔で色紙を取り出してきた

「え、サインですか?すいません、わたし芸能人とかじゃないのでサインと言れましても……」

莉子が対応に困っているのを見て享は小声で耳打ちした

「適当にそれっぽいの書いておけばいいと思いますよ」

享の助言に莉子は小さくうなずき米沢から色紙とペンをもらい
かなり崩した文字で『凜田莉子』と書いた
  
「こんな感じでよろしかったでしょうか?」    
   
「おお、ありがとうございます。あの……握手なんかもお願いできますでしょうか?」   

「それぐらいでしたら」

莉子はそう言うとスッと手を差し伸べた
米沢はかなり興奮した状態でその手を握った

「ああ、すごく柔らかいですなぁ。凜田莉子さんの手は……」

「米沢さん、今のセリフ、なんか危ない人が言ってるように聞こえますよ」

享の言葉にも米沢の耳には届いていないようで
莉子の手を両手で強く握りしめてきた

「い、痛いです……」

莉子が苦しそうな表情で訴えた

「あ……これは失礼、つい舞い上がってしまいました」

米沢が手を離すと続けざまに角田が莉子の前に立った

「俺も慰めの意味を込めて握手してもらいたいんだけど……いいかな?」

「大丈夫ですよ、こんなので良ければいくらでもしてください」

今度は莉子と角田が握手をする

角田はえらく満足した様子で享に話かけた

「カイト、お前も手を握ってもらえ、この子の指、すごく細くてビックリするぞ」

「課長、今のはセクハラ発言じゃないかと」

「何でだよ、米沢の方がよっぽどセクハラぽかったぞ!」

「ええ!わたしのどこにそういった所があったって言うんですか」

どうやら先ほどの言葉は無意識に出たものらしく
米沢本人は覚えていない様だった
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/06/13(木) 10:12:47.34 ID:TZiFuPFPO
「お前な……まあいいや、とりあえず用事は済んだし俺たちは
    そろそろおいとまさせてもらいますか」

その言葉に葉山は安堵の表情を見せた

「やっとですか。しかし特命係とは本当に暇な所らしいですね」

「あ、いや……特命係の人間は俺と例の偏屈上司だけで
   この人達の担当は鑑識と組対5課なんですよ」
   
享がおずおずと告げると莉子は興味深そうに聞いてきた

「昨日から気になっていたんですけどその偏屈な上司さんって
   具体的にどういった方なんですか?」

どういったって言われてもなぁ……
享はなんと返答していいかわからず口をつぐんだ

角田と米沢も似たような気持ちだったらしく腕を組みながら
思案顔を浮かべてしまっている

長い沈黙が続くと角田が弱々しく言った

「なんというか……変人?」

「まあ簡単に説明するならそうですかね。偏屈で変人。後、凜田さん
   になんとなく似てるかな」

享は軽い口調で言うと莉子は目を大きく見開いてこちらを見てきた

「え?その……わたしってそんなに変な人でしょうか?」

その言葉に葉山が間髪入れずに答えた

「自覚なかったんですか?世界中探したって
   貴方みたいな慧眼の持ち主の鑑定士は存在しないと思ってましたが」
    
「そう。うちの上司もその慧眼力が凄いんですよ」
       
米沢が享の説明に大きく頷いた

「全くもってそうですね。私が杉下警部を敬愛している理由の1つが
   それですから」

角田が唖然とした様子で言った

「米沢……よりによって警部殿かよ。もっと他に敬愛すべき
   人物が居るだろう」

「え、どちらにそのような方が?」

米沢の質問に角田は自分を指差しながら答えた

「俺だよ。俺」

「……失礼ながら角田課長のどこを敬愛すればよいのか
   皆目検討もつきませんなぁ」

「いやいや、こう見えて俺は結構優秀だと自分でも自負してる
   んだよ。例えば……」

「その話は今ここでしないといけませんかね」
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/06/13(木) 10:19:10.64 ID:TZiFuPFPO
葉山が苛立ちをあらわにした様子で語気を強めた

そろそろ本気で切れそうな雰囲気を察したのか
角田は早口でまくしたてた

「よ、用も済んだしそろそろ帰ろうか」

「そうですなこれ以上はお邪魔みたいでしすし……」

「じゃあカイト、昨日話してたヘマを返上するためにも頑張れよ
   それから凜田先生もお身体に気をつけてー!」
   
そう言うと角田は早足で廊下を駆け出し階段を降りていった

米沢も軽く頭を下げすぐに角田の後を追いかけて行った   

瞬く沈黙が続いた後、葉山が独り言のように呟いた

「なんなんですかあの人達は……」

「ほんとすいません。いつもはあんなんじゃないんですけど
    2人共美女に弱いものでして……」

葉山が心底疲れた顔をしているのにたいし
莉子の表情は笑みを浮かべていた

「でも面白い刑事さん達ですね。
   見ていてなんだか微笑ましく感じました
   本当に3人の仲が良さそうだったので」

「まあ、管轄違いって言ってもほぼ毎日会ってますから」

享が肩をすくめながら言うと葉山は大きな咳払いをして告げた

「で、やっと説明が出来ますね。ええとさっきも言った通り
   係長の許可は下りてますから安心してください。
   そしてちょっと時間がないので今までに分かってる
    情報を簡潔に述べますよ」

ようやく本題に移った。享は大きくうなずいてみせて
葉山の話にじっくりと耳を傾けた
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/06/13(木) 10:21:58.35 ID:TZiFuPFPO
今日はここまでです
長い間放置してたうえに本筋のストーリーが
殆ど進展していないです
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/13(木) 10:56:48.60 ID:gv0SSVkmo
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/14(金) 05:02:09.97 ID:feQbg6fvo
続ききてた!
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/06/21(金) 11:05:10.36 ID:SRHjK2b0O
「まず青い壺の鑑定結果ですが凜田先生の見立だと、60万程の価値が
   あるそうです。そして渋谷署と連絡を取り合ってわかった事なんですが
   1件目の事件も2件目の事件も防犯カメラが設置されてないファミレスで無銭
   飲食をしているんですよ」
    
「って事は……前もって犯人はある程度下調べをしているって事ですか?」

「それはまだなんとも。2回だけだとたまたま運が良かっただけという
   可能性もありますし」

「それもそうか……」

「そして1番肝心のこの紙のことですが……」

葉山はそう言いながらくだんのコピー用紙を取り出した

あたり前の事だが昨日と同じくアレルギー、グミ、ザイル、メルヘン、ゲレンデ、カテゴリと記されている

享は予め用意してきた手袋をはめその用紙を受け取った

「昨日申しあげた通り6つの単語には全て共通点があるんですが
   甲斐さん。なんだか解かりますか?」

莉子に尋ねられ享は少し黙りこくってから返答した

「……全部カタカナって事ぐらいですかね」

享はそれ以外に答えらしい答えを見つけられなかった
昨晩寝る前に熟考した結果がこれである
自分でも情けないと思うがしょうがない
これが今の俺の実力だ
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/06/21(金) 11:10:21.17 ID:SRHjK2b0O
といっても莉子の隣にいる葉山が口元を緩ませて笑いを必死で堪えそうな顔
を見ていると、『何も分かりません』と答えた方が利口だったのではないかと後悔の念が押し寄せてくる

しかし莉子の方は表情に変化はなく首を横に振りながら告げた

「それも共通点と言えば共通点ですが    
   少し単純過ぎです。正解は全部ドイツ語が語源だという事です」

「ドイツ?」

享はコピー用紙の単語に目をやったが1つとして
それがドイツ語だという事を知らなかった

享は1番以外に感じた語源を聞いた

「グミってそうなの?」

 「ええ、ドイツ語でゴムを意味するGumiiからきている言語です」
  
「へえ……。でもだからってなんで4日続けて事件が起き
   るって事になるんですか」

享の脳裏には昨日の莉子のセリフが鮮明に記憶されている

ーーこれから後4日間連続で壺を置いて帰る無銭飲食事件が発生
        するという事がわかりましたーー

もしこの言葉が本当のことだとしたら
今日もどこかの店で食い逃げがおきることになる
いやヘタをすればもうおきてしまっているかもしれない
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/06/21(金) 11:16:53.56 ID:SRHjK2b0O
莉子は少し渋い顔をしながら言った

「それはですね。ココからは、かなりわたしの想像になるんですが……
  恐らくこれは犯人からのヒントだと思われます」

「ヒント?何でそんなものを?大体何に関するヒントなんですか?」

享が矢継ぎ早に質問すると莉子は穏やかな口調で言った

「ヒントをくれた理由はまだわかりませんがヒントの内容ならわかります。
   壺に書かれてあるアルファベットに関することです」

「ああ、あの落書きですか。ええと確か赤茶色の壺が小文字のfで
   青い壺が小文字のvでしたっけ?でもそれがヒントってことは……」

莉子は一息入れて静かに告げた

「fとvはそれぞれ、ドイツ単語の頭文字だという事ですよ」

享は頭を捻って真っ先に浮かんだ疑問を口に出した

「……でもその単語がなんなのかわからないと意味ないじゃないですか」

「それは……これもわたしの想像でしかないんですが1件目のfは日本語で
    数字の5を表すfünf(フュンフ)
    2件目のvは同じく日本語で
    数字の4を表すvier(フィーア)だと睨んでいます」

フュンフ?フィーア?聞きなれない言葉を言われて享は困惑しかけたが
なんとなく莉子の言いたいことがわかってきた

「じゃあ今日の7月4日は3って事?」

「はいそうです。一昨日の7月2日のファミレスには5と刻まれた
   壺が、昨日の7月3日のファミレスには4と刻まれた壺……といった
   具合に1日ごとに数字が減っていくという法則ですから」

「で、明日の7月5日は2、明後日の7月6日は1
   最後7月7日、七夕の日に0になるって事ですか……
   確かに後4回おきる計算になりますね」   

「でもあくまでわたしの憶測ですから100%そうだとは言い切れない
    んですけどね」

莉子が苦笑いに似た笑みを浮かべる
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/06/21(金) 11:22:13.41 ID:SRHjK2b0O
享は手で顎を抑えながら考えた

確かに今の話は莉子の仮説によって成り立っている部分が大きい
しかし同時にこれといって矛盾する箇所やおかしな点も見当たらない
少なくとも紙に書かれた文字の共通点がドイツ語という所までは
間違っていないだろうからまるっきしの検討違いという訳でも
あるまい

「だけど筋は通ってますし俺は今の推察はかなり的を得てると思いますよ」

葉山が大きく頷いた

「わたしも同意見です。そもそも凜田先生、あなたの推理が外れた事
   なんてほとんどないじゃないですか」

莉子が葉山に顔を向け何かを言おうとしたその時、享の後方から
若い男性の声が耳に入ってきた

「ああ、葉山さんここにいたんですか」

ゆっくりと後ろを振りかえるとおそらく葉山の部下と思われる
刑事がこちらに走り込んできた

「なんかあったのか?」
   
葉山の深刻そうな口調に対して若い刑事の口調はやたらと能天気だった

「えーと、つい先程、壺の指紋検出を
    終えたと鑑識から報告がありました。
    それによると、2人程の指紋が付着
    していたようです」

葉山はひとつ嘆息をついた後言った

「やっとか。前科者との照合は?」

「2つとも、一致した人物はいなかったかったみたいです」

莉子も瞳に真剣な色を宿し尋ねた

「指紋を拭き取った跡なんかは?」

「それも特になかったとの報告です」

そう聞くと莉子は腕を組んで何かを思考している様子だった

やがて何かを決意したような面持ちで葉山に告げた

「葉山さん。少しお願いがあるんですが……」

「なんですか。わたしとて出来ることと出来ないことがありますが
   可能な限りなら協力しますよ」
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/06/21(金) 11:28:08.92 ID:SRHjK2b0O
莉子は口元を緩ませながら告げた

「都内に在住しておられる陶芸家の方を全て調べていただきたいんです。
   プロ、アマ、関係なく。そしてその方々全員の指紋を採取してもらい
   たいんです」

途端に葉山の表情が青ざめた

「そいつはまた……時間がかかる作業依頼ですね……。1日、2日じゃ
    終わらないかもしれないですよ」   
    
「それでも構わないです。七夕の日までに終えてくれれば」

莉子がそんな言い方をするからには壺の数字が0になる七夕の日に何かが
起きると予感しているのだろう

当然俺もそう考えている。ただのイタズラにしては手が込みすぎているし
ひょっとしてなんらかの犯行予告の可能性もある
仮にそうだとしたら事態は急を要する展開だ
なんとしても7月7日までに犯人を捕らえなければ事件は
悲惨な結末を迎えてしまうかもしれない

享は少し頭を働かせて莉子に尋ねた

「壺の指紋と陶芸家の人達の指紋を照合させるんですか?」

「はい。指紋を拭き取った跡がないということは 
    印象していた2つの指紋のうち
   どちらか一方はこの壺の制作者でしょう」
      
「壺を作る過程の中で散々指紋が付くはずですしね
   そういや1件目の壺には指紋とか付いてたんですか?」
   
享は目線を莉子から若い刑事に変えた

若い刑事は何かを思い出したかのような表情をした

「ああ、言い忘れてました。そっちの壺にも2つ指紋がありまして
   両方とも青い壺の指紋と一致してるんですよ」
  
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/06/21(金) 11:33:45.64 ID:SRHjK2b0O
「って事は……」

「ほう……凜田先生の読みが裏付けされましたね
   2つの壺は同じ人物が作ったものだということが」   
       
「読みって?」

享は莉子に目線を戻し尋ねた    
   
「わたしが昨日葉山さんに言ったんですよ
   色つかいの癖なんかが似よってるので
   同一人物が製造した壺かもしれないって」
    
「で、でも赤茶味の壺って俺が持って帰っちゃいましたよね
   見比べてもいないのにそんなことが分ったんですか?」

「はい。店で鑑定したときに隅々まで壺を見させてもらったので
   その時の記憶を辿ってなんとか」           
   
「ふーん……」

享は内心、莉子の暗記力に驚愕していた
莉子が壺を眺めていたのは精々10分程度だったはずだ

しかもその頃はまだ2件目の食い逃げ事件の報告を受ける前の話なので
意識的に壺のことを頭に叩き込もうとしていたわけでもないはずだ

にも関わらず色使いの癖などという細かい所まで覚えているのだから
驚きだ。

鑑定家と呼ばわる人達がみんなそういうものなのかそれとも彼女個人の能力
なのかは判然としないがどちらにせよ素晴らしい記憶力なのに違いはない

若い刑事が莉子に目を向けて言った

「しかし結構無理難題なことも言いますね
   いきなり押しかけて指紋を取らせてくださいと言っても
   はい。わかりましたって協力してくれるとは……」
    
「それに関してはわたしに少し提案があるんですけどいいですか?」

莉子がそう言うと葉山は何も言わず頷いた

そして莉子は葉山と若い刑事にだけ耳打ちをした
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/06/21(金) 11:42:45.86 ID:SRHjK2b0O
なぜ俺にだけ説明をしてくれないのか不思議だったが
葉山と若い刑事が真剣な表情で莉子の話を聞いているのを
見てしまうとどうにも尋ねるタイミングが見当たらず
享は黙って立ちつくしていた        

話が終わると葉山が真っ先に感想らしきものを告げた

「また随分と古典的な策ですね……」

莉子が眉を潜めた

「うーん。やっぱりちょっと簡素過ぎましたか?」

若い刑事が首を横に振った

「いやこのくらい単純明快な方が却っていいかもしれませんよ」

「案外そうかもな。一応係長に提言しておきます」

1人だけ話に付いていけず享は蚊帳の外に追いやられた気分に
苛まれた

そんな気持ちが顔に出ていたのか葉山は弁明の言葉を述べた

「あのですね。甲斐さんはもう業務内容が決まっているので
   指紋採取の話とは関係ないと言いますか……」

享は素早く尋ねた

「業務内容とは?」

「さっき凜田先生が説明したことが当たってるなら今日も似たような事件が
   発生するでしょう。ですからとりあえず都内の警察署に報告したんですよ
   壺を置いて帰る食い逃げがおきたら牛込署にまで入電するようにね」

「なぜ牛込署に……」

「ここに凜田先生がいらっしゃるからですよ。
   即刻連絡してくれればすぐに凜田先生が現場に駆けつけて壺の鑑定も
   スムーズに行われますでしょうし」

享は説明を聞きながら
そこからどう俺の仕事内容と関わってくるのか
なんとなく検討がついてしまい心の中にモヤ
みたいなものがかかってきた
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/06/21(金) 11:48:55.08 ID:SRHjK2b0O
はたして葉山は言った

「それでですね。その現場に行くまで車で運転してしまうのが今日の貴方の
   仕事です」

悪い時に限って予想というのは的中してしまうとはよく言われるが享は
今まさにその言葉を実感した

「ええと、つまり俺は凜田さんの運転手役ですか」
   
「身も蓋もない言い方だとそういうことです」

葉山は特に隠す様子もなく言った

これは……どうなんだろう。考えようによっては犯行現場に真っ先に
着くことができるので色々と話も聞くことができるだろうが……

「さてとそれじゃあ早速凜田先生のご命令通り陶芸家の人達を
   探索するとしますか」
   
「あの……じゃあ俺は……」

「今言った通りですよ。貴方は連絡が来るまで小部屋で凜田先生と待機
   していてください」

葉山が冷淡な口調で言い放った

「どうぞ、こっちです」

若い刑事が手を前にやり部屋まで案内しようとする行為を示した

「行きましょう。甲斐さん」

莉子が歩を進めた

なんだか想定していた展開とは随分違ってきている気がするが……
まあ特命部屋で暇を持て余して過ごすよりかはマシだからいいかな

享はそう気持ちを切り替えて莉子と若い刑事の後につづいた
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/06/21(金) 11:51:07.08 ID:SRHjK2b0O
今日はここまでです
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/21(金) 13:16:06.88 ID:0/jcZRk9o
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/21(金) 14:10:46.16 ID:4CKrK/JM0
映画化はすげえ楽しみにしてるんだが、

>俳優は国民的に有名なキャストで決定している

↑完全に主演
剛力フラグだろこれ…
容姿イメージ全然違う? ビブリアの惨劇を思い出せ
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/21(金) 14:30:11.78 ID:0/jcZRk9o
それに関しては大丈夫だったはず
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/22(土) 01:05:42.45 ID:fpdraD6zo


映画の件に関してはHPで(今は修正されたのか見当たらないけど)それはないみたいなことが書いてあった気がする

>>1は作中に出てくる知識は全部調べてるのだろうか…
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/07/23(火) 14:48:22.21 ID:ANw5JSk1O
すいません>>1です
誰も待っていないかもしれませんがとりあえず生存報告です

>>99
ネットでググって調べてるだけなのでもしかしたらガセがあるかもしれません……(笑)
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/07/23(火) 18:06:38.95 ID:7bGYQ1AWo
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/07/24(水) 01:26:09.96 ID:DtSXXMkOO
乙〜
気にせず好きなペースでお願いします
続き待ってます
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/19(月) 23:33:43.19 ID:pcCMxmd0o
続きまだ〜
104 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/13(金) 23:58:23.18 ID:N43nSszT0
何かあったんですかねぇ……
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