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ニジュク「クロちゃ、まだねてる」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 00:08:29.17 ID:RyY8mOhSO



ニジュク「だからきょうも『だめ』」

サンジュ「そっか」

ニジュク「ねぼすけだ」

サンジュ「きっと、おそくまでおきてたんだよ」

ニジュク「わるいこだ!」

サンジュ「わるいこだね!」

ニジュク「わるいこのねぼすけ、おこさなくちゃ!」

サンジュ「おふとんとって、おこさなくちゃ!」



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旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
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木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
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いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713279251/

【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
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こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
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【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
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アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
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エルヴィン「ボーナスを支給する!」 @ 2024/04/14(日) 11:41:07.59 ID:o/ZidldvO
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 00:11:08.77 ID:RyY8mOhSO
ニジュク「でもセンが『だめ』って」

サンジュ「センはいっしょなのにね」

ニジュク「ずるっこだね」

サンジュ「ずっといっしょで、そとにでてこないもんね」

ニジュク「なかで、なんかしてるのかな」

サンジュ「でもクロちゃんはねてるよ?」

ニジュク「じゃあ、いっしょにねてる?」

サンジュ「でもおきてたよね?」
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 00:13:32.55 ID:RyY8mOhSO
ニジュク「あたしたちも、ねてみたらわかる?」

サンジュ「じゃあきょうは、ずっとねててみよう」

ニジュク「あたしここ!」

サンジュ「あたしはここ!」

ニジュク「おやすみ」

サンジュ「おやすみ」

ニジュク「……」

サンジュ「……」

チョウ「うわあ!?」

4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 00:16:09.80 ID:RyY8mOhSO
チョウ「ああびっくりした……」

ニジュク「ねてたの」

サンジュ「ねれなかったね」

チョウ「頼むから雪の中で寝るのはやめてくれない?」

ニジュク「でもふかふかだったよ?」

サンジュ「ふわふわして、ほわほわしたの」

ニジュク「あれ? サンジュのて、あかいね」

サンジュ「ニジュクもあかいね。ここ、しろいのしかないのに」

チョウ「青くなる前でよかったよ、全く」

5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 00:19:05.38 ID:RyY8mOhSO
チョウ「もう少しで旅立っちゃうところだったんだから」

ニジュク「たび?」

サンジュ「ここでねてたら、たびにでるの?」

チョウ「え? うん、まあ」

ニジュク「どこにいくの?」

サンジュ「クロちゃんも、そこにいる?」

チョウ「クロちゃん? ああ、あの旅人のこと?」

サンジュ「クロちゃん、ここでねたの」

ニジュク「クロちゃ、たびにでちゃったの?」

サンジュ「ここでねたら、クロちゃんにあえる?」

6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 00:22:13.47 ID:RyY8mOhSO
チョウ「……いや、まだここにいるよ。寝てるんでしょ?」

サンジュ「でもクロちゃん、おきないの」

ニジュク「たびにでちゃったから、『だめ』なのかな」

チョウ「大丈夫だって、まだ旅立っちゃいないよ」

ニジュク「ほんと?」

サンジュ「クロちゃん、まだいる?」

チョウ「いるいる」

ニジュク「でもクロちゃ、おきないよ?」

サンジュ「いるのに、いないの?」

チョウ「ああもう……」

7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 00:25:07.43 ID:RyY8mOhSO
チョウ「……まだここにいるけど、もしかしたらいつか旅立っちゃうのかもね……」

ニジュク「?」

サンジュ「クロちゃんおきたら、たびするよ」

ニジュク「いっしょに、たび、するの」

チョウ「そっちじゃなくてさ、うん、そうね……」

チョウ「今『クロちゃん』は、旅の準備をしてるのよ」

サンジュ「!」

ニジュク「!」

サンジュ「じゃあ、もうすぐしゅっぱつ?」

ニジュク「もうすぐあえる?」

チョウ「え」

8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 00:29:14.80 ID:RyY8mOhSO
チョウ「えっと、すごく時間のかかる準備だから、まだかなあ」

ニジュク「なんだー」

サンジュ「そっかー」

ニジュク「とおくにいくのかな」

サンジュ「とおくにいくときは、いつもよりおそいもんね」

チョウ「遠くに、か」

チョウ「行っちゃうのかもしれないけど……」

チョウ「……まだ迷ってるのかもね」

サンジュ「?」

ニジュク「クロちゃ、まいご?」
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 00:31:58.94 ID:RyY8mOhSO
チョウ「迷子というか……」

サンジュ「どこでまよってるのかな」

ニジュク「なににまよってるのかな」

サンジュ「みちがいっぱいあるのかな」

ニジュク「たいようのほうにも?」

サンジュ「たいようのほうにいっぱいあるの?」

ニジュク「たいようがいっぱいあるの?」

サンジュ「まっくらじゃないのにクロちゃんおきないの?」

チョウ(議題は一つなのに筋道が迷子ね……)

10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 00:36:10.80 ID:RyY8mOhSO
ニジュク「さがさないと」

サンジュ「まいごなら、さがさないと」

チョウ「ああだめだめ!」

チョウ「そんなことしてたら、あんた達の方が迷子になりそうだわ」

サンジュ「『だめ』?」

サンジュ「また『だめ』だ」

ニジュク「『だめ』だね」

チョウ「また?」

ニジュク「センが『だめ』って」

サンジュ「クロちゃんのとこ『はいっちゃだめ』だって」

11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 00:40:07.11 ID:RyY8mOhSO
チョウ「成る程、それであんた達は『迷子』になってるのね」

ニジュク「まいご?」

サンジュ「あたしたち、まいご?」

チョウ「……ねえ、たぶん、さ」

チョウ「あんたたちが迷ったら、その『クロちゃん』が見つけてくれるでしょ?」

ニジュク「うん!」

サンジュ「センがくるときもあるけどね」

チョウ「じゃあ今も『クロちゃん』は、あんた達を探しているのかもね」

12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 00:42:34.73 ID:RyY8mOhSO
チョウ「だから待ってて。きっと『クロちゃん』は、あんた達を見つけて、戻ってくるから」

ニジュク「ほんと?」

サンジュ「クロちゃん、もどってくる?」

チョウ「うん、きっと」

サンジュ「じゃあ、まってる!」

ニジュク「クロちゃがくるの、まつ!」

チョウ「うんうん、おとなしくしてなさい」

ニジュク「いつくるかなー」

サンジュ「はやくこないかなー」

チョウ「早く来るといいね」

13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 00:44:42.56 ID:RyY8mOhSO
ニジュク「そうだ!」

チョウ「え?」

ニジュク「まいごのときは、あれやらなきゃ」

サンジュ「そだね、でもいまはない」

ニジュク「とりにいこう」

サンジュ「うん!」

チョウ「え、ちょっと!」

チョウ「……あっという間に行っちゃった」

14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 00:46:51.66 ID:RyY8mOhSO
チョウ「久々に会ってみれば倒れてるし、子供はいるし……」

チョウ「あの子達、あいつらの連れ、なのよね?」

チョウ「ただでさえ変わった見てくれだったけど、並んだら一際ね、きっと」

チョウ「……一目くらい見なきゃね」

15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 00:48:54.69 ID:RyY8mOhSO
チョウ「あ、帰ってきた」

チョウ「何それ?」

サンジュ「まいごのときは、きいろなのー」

ニジュク「きいろー」

サンジュ「はい」

チョウ「? これに火を点けろって?」


< パ ァ ン

セン『!?』

 

16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 00:50:55.85 ID:RyY8mOhSO
 

 
 
サンジュ「きょうも『だめ』」

ニジュク「クロちゃ、まだおきない」

サンジュ「かえってこないね」

ニジュク「もどってこないね」

サンジュ「クロちゃんも、まいごのときにつかうもの、もってたらよかったのに」

ニジュク「そしたら、あたしたちがクロちゃ、みつけられるのにね」

サンジュ「でもセンが、クロちゃんはねてるって」

ニジュク「ねてながら、まいご?」

17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 00:52:57.08 ID:RyY8mOhSO
サンジュ「あのしろいののところでねたら、まいごになるのかな」

ニジュク「まいごのたびにでるのかな」

サンジュ「しょうがないから、さがしにいこう」

ニジュク「でも、それも『だめ』ってゆってたよ」

サンジュ「だってまだおきないんだもん」

ニジュク「あ、まって!」

ニジュク「それで、どこにいくの?」

サンジュ「……さあ?」

18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 00:52:58.20 ID:5EDrGpHAO
クロで書いてくれる人がいるとは何という俺得
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 00:55:33.38 ID:RyY8mOhSO
少年「暖かくなってきたなー」

少年「あ、ニジュクとサンジュだ。2人で遊んでるってことは、今日もあの旅人は寝てんのかな」

少年「あれ? こっちに来るぞ」

サンジュ「ねえ、ねぼすけクロちゃん、どこにいるの?」

ニジュク「まいごのクロちゃ、どこさがせばいいの?」

少年「……ええと、何それ、なぞなぞ?」

20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 00:58:30.20 ID:RyY8mOhSO
ニジュク「クロちゃ、しろいののうえでねたの」

サンジュ「だから、どこかで、たびをしてるの」

ニジュク「そしたら、クロちゃ、おきないの」

サンジュ「きっと、まいごになったの」

ニジュク「それで、さがしにいこうとしたの」

サンジュ「でも、どこをさがせばいいか、わからないの」

ニジュク「どうしたらいい?」

サンジュ「どうすればいい?」

少年(どうしろってんだこれ)

21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 01:00:56.19 ID:RyY8mOhSO
少年「寝ながら旅をしてるってことか……? なんだそりゃ、夢の話か?」

ニジュク「ゆめ?」

サンジュ「ゆめって、たびのこと?」

少年「そりゃ、中には、旅する夢もあるだろうけど」

ニジュク「じゃあ、ゆめをさがせばいいんだね!」

サンジュ「ゆめをさがせば、クロちゃんにあえる!」

ニジュク「でも、ゆめってどこ?」

サンジュ「どこかな。どこにあるの?」

少年(あ、答え間違えたかな)

22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 01:03:22.47 ID:RyY8mOhSO
少年「いや、夢ってのは好きなように見れるもんじゃないぞ」

ニジュク「えー?」

サンジュ「なんだー」

ニジュク「じゃあ、どうしたらクロちゃにあえる?」

少年「会うもなにも、そこにいるし……」

サンジュ「だってセンが『だめ』って」

少年「ああ、そうか」

少年「……なあ、あいつ、なんの病気なんだ?」

ニジュク「びょうき?」

23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 01:05:26.81 ID:RyY8mOhSO
サンジュ「クロちゃん、びょうきなの?」

少年「違うの? だって、あれ……」

ニジュク「よくわかんない」

サンジュ「びょうきだから、クロちゃん、おきないの?」

少年「あ、いや。違うんならいいんだ、違うなら」

ニジュク「ちがうの?」

サンジュ「さあ。じゃあ、どうしてクロちゃんおきないの?」

少年「えー、そうだなあ」

少年「暖かくなってきたから? とか……なんて」

24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 01:08:29.61 ID:RyY8mOhSO
ニジュク「あったかいのかー」

サンジュ「あったかいからねちゃうのかー」

少年「暖かいと眠くなるからなあ、うん」

ニジュク「あたしたちも、ねるとき『あったかい』なるの」

サンジュ「クロちゃんとあったかくなるの」

少年「そうなんだ」

ニジュク「おはなししてもらうの」

サンジュ「でも、いつもさいしょしかわからないの」

ニジュク「あれ? なんでだろ」

サンジュ「なんでかな」

少年(おいらも少ししか理解しきれないや、この子らの話……)

25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 01:10:41.24 ID:RyY8mOhSO
サンジュ「じゃあクロちゃん、いまあったかくしてもらってるのかな」

ニジュク「だからおきないのかな」

サンジュ「でも、いっしょなのはセンだけだよ?」

ニジュク「センがクロちゃ、あったかいしてる?」

サンジュ「センがクロちゃん、ぎゅってしてる?」

少年「コウモリが!?」

ニジュク「センずるい!」

サンジュ「あたしもクロちゃん、ぎゅってしたい!」

ニジュク「ぎゅってされたい!」

サンジュ「おはなし、まだとちゅうなのに!」

少年「……」

26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 01:12:39.99 ID:RyY8mOhSO
サンジュ「やくそくしたのに」

ニジュク「おはなし、してくれないね」

少年「……それ、どんな話?」

サンジュ「! あのね、カエルのはなし!」

ニジュク「カエルがね、おうじさまなの!」

少年「王子様のカエル?」

ニジュク「まほうでカエルなの!」

サンジュ「まほうでかえたの!」

ニジュク「……」

サンジュ「……」

少年「?」

27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 01:15:27.94 ID:RyY8mOhSO
ニジュク「……つづきは、しらない」

サンジュ「クロちゃんおきなきゃ、わかんない」

少年「あー……、ごめん」

ニジュク「どんなおはなしだろうね」

サンジュ「おうじさま、どうなるのかな」

ニジュク「クロちゃ、はやくおきないかな……」

サンジュ「うん……」

少年「う……」

ニジュク「……」

サンジュ「……」

少年「……あれ?」

28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 01:18:20.19 ID:RyY8mOhSO
ニジュク「うー……」

サンジュ「んんー……」

少年「もしかして、眠い?」

ニジュク「んむー……?」

サンジュ「んー……」

少年「……だめだこりゃ」

サンジュ「あー、また『だめ』……」

ニジュク「『だめ』だ……」

少年「はいはい。わかったから、ここで寝るなよ」

サンジュ「ん……っ」

ニジュク「う……っ」

少年「ん?」

29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 01:20:30.84 ID:RyY8mOhSO
少年「ほら、とりあえずおいらの家で寝なよ、すぐそこだし」

ニジュク「そとでねたら、たびする……」

サンジュ「そとでねたら、クロちゃんにあえる……」

少年「だめだよ、風邪ひいたらどうすんだ。ちゃんと布団で、暖かくしな」

ニジュク「しろいのなくなっても『だめ』……?」

少年「だめ」

少年「……2人が病気になると、『クロちゃん』が心配して、もっと寝込むかもしれないだろ。だから、な」

サンジュ「ん……」

30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 01:23:18.67 ID:RyY8mOhSO
少年「そういうわけだから、2人は今うちにいるよ」

セン『そうか。悪いな、わざわざ』

少年「……お連れさん、早くよくなるといいな」

セン『まあ、そのうちな』

少年「そのうちか。……会いたがってたよ、『クロちゃん』に」

セン『運が良ければ、夢の中で会えるさ』

セン『夢の中じゃ、話の続きは聞こえないだろうがな』

31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 01:27:20.01 ID:RyY8mOhSO
少年「2人は後で送るよ。じゃあ」

セン『おう』

セン『――魔法でカエルにされた王子様、か』

セン『そういや、魔法で100年眠っちまったお姫様の話、なんてのもあったな。どっちも魔法を解く方法は似たようなもんだったが』

セン『……100年か』

セン『コウモリの寿命ってのは、どれくらい持つんだかな』

32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 01:29:07.04 ID:RyY8mOhSO
ねむくなった
おきたらかく
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 07:28:05.27 ID:4opE8CIM0
続き期待
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 07:54:24.94 ID:RyY8mOhSO
起きた
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 07:56:57.70 ID:RyY8mOhSO
 

 
 
ニジュク「まだ『だめ』?」

サンジュ「うん、『だめ』」

ニジュク「クロちゃ、はやくおきないかなあ」

サンジュ「つまんないね」

ニジュク「つぎのたび、いつだろ」

サンジュ「またいっしょに、たびしたいね」

ニジュク「どんなところがあるかな」

サンジュ「どんなところにいけるかな」

36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 08:00:26.18 ID:RyY8mOhSO
サンジュ「たのしいところがいいな」

ニジュク「たのしいところー」

サンジュ「あそんだりー」

ニジュク「たんけんしたりー」

サンジュ「はしったりー」

ニジュク「そらもとんで」

サンジュ「あと、おかし!」

ニジュク「おなかすくもんね!」
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 08:04:08.90 ID:RyY8mOhSO
サンジュ「きれいなところも、いきたい」

ニジュク「きれいなところー」

サンジュ「はながさいてー」

ニジュク「うみがあってー」

サンジュ「きがあってー」

ニジュク「そらがあってー」

サンジュ「いろんないろのものがあるの!」

ニジュク「いろいろないろ!」

38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 08:07:54.75 ID:RyY8mOhSO
サンジュ「いろがあると、たのしいね」

ニジュク「ここも、たくさんあるよ」

サンジュ「そらがあおー」

ニジュク「きがみどりー」

サンジュ「きがみどりなのは『あおい』んだって」

ニジュク「みどりが、あお? あおが、みどり?」

サンジュ「……きがあお?」

ニジュク「そらがみどり?」

39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 08:12:30.19 ID:RyY8mOhSO
サンジュ「たくさんいろがある」

ニジュク「うん、いっぱい」

サンジュ「……クロちゃんがねちゃったときは、なかったね」

ニジュク「しろと、くろと、はいいろばっかりだった」

サンジュ「クロちゃん、そこにいて、たのしいかな」

ニジュク「ずっと、しろと、くろと、はいいろのなかにいるのかな」

サンジュ「ここのほうが、たくさんいろがあるのに」

ニジュク「たくさんいろがあって、たのしいのに」

40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 08:17:19.44 ID:RyY8mOhSO
ニジュク「クロちゃにさわって、くろくなったこと、あった」

サンジュ「あったね」

ニジュク「クロちゃに、いろ、あげれなかった」

サンジュ「しろいの、あげられなかったね」

ニジュク「だから、しろいとこで、しろいのもらってるのかな」

サンジュ「でも、くろいのもあったよ」

ニジュク「あのくろは、クロちゃのくろ?」

サンジュ「あのしろは、クロちゃんのくろをもらってるの?」

41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 08:20:58.65 ID:RyY8mOhSO
ニジュク「じゃあ、クロちゃがおきたら、クロちゃのくろ、しろくなる?」

サンジュ「あたしたちみたく、しろになる?」

ニジュク「そしたら、いろんないろをもらえるね」

サンジュ「はなとか、つちとか、きとか、たくさん!」

ニジュク「たくさんいろがあるから、どんないろもなれるね」

サンジュ「どんないろがにあうかなー」

ニジュク「きの、あお!」

サンジュ「そらの、みどり!」

42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 08:25:08.85 ID:RyY8mOhSO
夫人「なんだか楽しそうな話してるね」

ニジュク「いろがたくさんー」

サンジュ「きがあおいのー」

ニジュク「そらがみどりなのー」

夫人「? そうかい、そりゃよかったね」

サンジュ「ほかにはどんないろがあるかな」

ニジュク「どんないろがある?」

夫人「色ねえ」

夫人「例えば太陽なんかは、『木が青い』みたいに、場所によって、赤だったり、橙だったり、黄色だったり、白だったりするんだよ」

43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 08:29:05.23 ID:RyY8mOhSO
ニジュク「たいよう?」

サンジュ「たいよう、いろんないろ?」

夫人「いろんな見え方があるのさ」

夫人「じゃあ、こうやって、手をかざして、太陽を見てごらん」

ニジュク「んー」

サンジュ「ちかちかー」

夫人「光が散らばって、いろんな色に見えるだろ?」

ニジュク「わあ」

44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 08:33:43.20 ID:RyY8mOhSO
サンジュ「たいよう、いっぱいいろ!」

夫人「太陽はね、見方次第で、いろんな姿になるんだ」

夫人「白いときもあれば、色のあるとき。明るいこともあるし、眩むこともある。暖かいし、厳しかったり」

サンジュ「たいよう、すごいね」

ニジュク「あったかいし、いっしょがたのしい」

サンジュ「クロちゃんみたい」

45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 08:36:46.93 ID:RyY8mOhSO
夫人「あんた達の連れのこと? どんな人なんだい」

サンジュ「えっとね」

サンジュ「いっしょにたびしてるの!」

ニジュク「たのしいよ!」

サンジュ「おこるときびしい!」

ニジュク「ぎゅってするとあったかい!」

サンジュ「くろいけど、しろくなるの!」

ニジュク「ひるはみえるけど、よるはわからないの!」

夫人「あはは、なぞなぞみたいだねえ」

46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 08:40:33.75 ID:RyY8mOhSO
サンジュ「だからね、クロちゃんといっしょにたびするの」

ニジュク「いっしょがたのしいの」

サンジュ「はやくおきないかな」

ニジュク「ね」

夫人「……」

夫人「『道に迷った時は太陽について行け』って、わかる?」

サンジュ「まえにセンがゆってた」

ニジュク「ゆってたね」

夫人「『クロちゃん』があんた達の太陽なら、『クロちゃん』の太陽はあんた達かもね」

47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 08:44:38.34 ID:RyY8mOhSO
ニジュク「あたしたち、たいよう?」

夫人「あんた達が、一緒にいて楽しいなら、きっと向こうもそうさ」

夫人「……変わるけど変わらない、家族は、太陽なんだよ」

夫人「だからあんた達が太陽なら、『クロちゃん』はきっとあんた達がわかるよ」

ニジュク「ほんと?」

ニジュク「あたしたち、たいよう?」

サンジュ「あたしたちが、たいよう!」

夫人「そうそう、その笑顔」

48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 08:47:11.26 ID:RyY8mOhSO
 
 
サンジュ「センー」

ニジュク「センー」

セン『あ? もう戻って来たか。駄目だっつったろ』

サンジュ「これはだれだ」

ニジュク「このひとだれだ」

セン『なんだ、なぞなぞ?』

サンジュ「たいよう!」

ニジュク「だれだ!」

セン『は?』

サンジュ「こたえは、クロちゃん!」

ニジュク「こたえは、あたしたち!」

セン『は?』
 

49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 10:13:44.14 ID:RyY8mOhSO
 

 
 
サンジュ「『だめ』?」

ニジュク「うん」

サンジュ「……」

ニジュク「……」

サンジュ「なにする?」

ニジュク「なにしよう」

サンジュ「……」

ニジュク「……」

50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 10:16:24.66 ID:RyY8mOhSO
サンジュ「そらがみどりだね」

ニジュク「でも、きはあおじゃなくなったね」

サンジュ「あっちは、あかい」

ニジュク「こっちは、きいろ」

サンジュ「こうよう、なんだって」

ニジュク「きれいだね」

サンジュ「もっとちかくでみよう」

ニジュク「うん」

51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 10:20:37.33 ID:RyY8mOhSO
サンジュ「いっぱいおちてるね」

ニジュク「ね」

サンジュ「きはあかだけど、おちてるのはちゃいろいね」

ニジュク「きいろも、ちゃいろ」

サンジュ「なんか、みんなちゃいろだ」

ニジュク「ちゃいろい、ばっかり」

サンジュ「あれもちゃいろ」

馬「ヒヒーン」

52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 10:23:24.09 ID:RyY8mOhSO
馬「ブルル」

サンジュ「おうまさんも、こうよう?」

ニジュク「まえは、あかとか、きいろだったの?」

サンジュ「みたことないね」

ニジュク「どんなだろ」

サンジュ「……」

ニジュク「……」



馬「」

爺「!?」

53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 10:27:21.34 ID:RyY8mOhSO
爺「う、馬の毛が真っ赤に……」

馬「」

ニジュク「おうまさん、こうようー」

サンジュ「あかいろにもどしたのー」

爺「おちびさん達の仕業か……新しい遊びかい? だがこりゃ、すぐに戻しちゃくれねえか」

サンジュ「もどしたよ?」

ニジュク「あかにもどしたよ?」

爺「何言ってっか知らんが、この馬は最初から茶色だ」

サンジュ「そうだっけ」

ニジュク「?」

54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 10:31:56.46 ID:RyY8mOhSO
爺「赤毛の馬もまあいるが、こんな趣味の悪い色はしちゃいねえよ……」

ニジュク「あかいの、ちがうの?」

サンジュ「きいろだった?」

爺「茶色だ茶色」

サンジュ「じゃあ、みどり?」

爺「そもそも馬は木と違……」

ニジュク「あお?」

爺「……」

55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 12:06:59.08 ID:RyY8mOhSO
爺「紅葉はああいう木にしか起こらねえよ」

ニジュク「へー」

爺「それに紅葉ってのは、木の葉の色が変わって、木から落ちることを言うのさ。茶色になったら仕舞いだ」

サンジュ「じゃあ、あの、おちてるちゃいろは?」

爺「ありゃ枯葉だ、もう乾いちまってる。元には戻らんよ」

56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 12:14:02.17 ID:RyY8mOhSO
サンジュ「……もどらないの?」

爺「そりゃそうさ、落ちたらもうくっつかないからな」

ニジュク「くっつかないと、もどらないの?」

爺「くっつかないから戻らないのさ」

ニジュク「くっつかないと、もどらない?」

サンジュ「いっしょじゃないと『だめ』?」

爺「木ってのは、そういうもんだ」

57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 12:17:37.46 ID:RyY8mOhSO
ニジュク「じゃあ、なんでこうようするの?」

サンジュ「いっしょじゃないと『だめ』なのに、いっしょじゃなくするの?」

爺「難しい事は知らんよ」

爺「あの木は去年も、今年も、来年も、紅葉して枯れていくのさ」

爺「あれは、そういう木だからな」

58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 12:22:06.55 ID:RyY8mOhSO
サンジュ「クロちゃんは、かれないよね?」

ニジュク「こうようは、くろくならないよね?」

爺「黒い紅葉は聞いたことねえな」

ニジュク「じゃあ、クロちゃといっしょじゃなくなったり、しない?」

サンジュ「クロちゃん、かれない?」

爺「どうだかな」

爺「生きてりゃ、いつかは枯れちまう」

59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 12:25:50.15 ID:RyY8mOhSO
爺「でもまあ、おちびさん達は木じゃねえだろう?」

ニジュク「うん」

爺「人と木は違う、枯れたくれえじゃ落ちたりはしないよ」

サンジュ「ほんと?」

ニジュク「クロちゃ、かれても、いっしょ?」

爺「たぶんな。そんな歳でもねえだろうし」

サンジュ「とし?」

爺「紅葉は秋のもんだ。秋ってのは、こういう老いぼれのことだからな」

ニジュク「?」

60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 12:29:27.27 ID:RyY8mOhSO
爺「それにな、木の葉ってのは、落ちたら終わりってわけじゃない」

爺「冬を越して、春には新しい葉が生える」

爺「また元気になるってこった」
ニジュク「げんきになるの?」

サンジュ「ちゃんと、おきる?」

爺「当り前だ。木も人も、なかなかしぶとく生きてるんだよ」

61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 12:33:28.59 ID:RyY8mOhSO
ニジュク「でも、おちたちゃいろは、どうなるの?」

爺「肥料に……まあ、そうだな」

爺「木にくっついてたときとは違う形だが、木の側で、木の役に立つってとこだろう」

サンジュ「いっしょじゃなくなるけど、いっしょにいられるの?」

ニジュク「すごいね」

サンジュ「よかったね」

爺「……木は凄いな。死んでも、いろんなもんを残せる」

爺「人はおちびさん達に、何ができるだろうなあ」

62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 12:36:16.13 ID:RyY8mOhSO
ニジュク「?」

爺「いや、なんでもないさ」

爺「よし、じゃあおちびさん達、枯葉を集めてくれないかい」

サンジュ「あつめる?」

爺「芋を貰ってな。焼いて食おう」

ニジュク「でも、きといっしょなのに……」

爺「煙になって旅したい奴もいるのさ」

63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 12:39:08.31 ID:RyY8mOhSO
セン『それで焼き芋貰って来たのか』

ニジュク「あまい」

サンジュ「おいしい」

ニジュク「クロちゃは、きじゃなくて、けむりなのかな」

セン『旅をして元の木を探すってか』

セン『あいつは煙ほど自由に流れられちゃいねえよ、不器用なことにな』

ニジュク「……もとの?」

サンジュ「なんかわすれてるきがする」

セン『?』
 
 
 
 
爺「」

馬「」
 

64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 12:46:11.71 ID:RyY8mOhSO
 

 
 
ニジュク「きょうは?」

セン『駄目だ』

サンジュ「まだ?」

セン『まだ、だ』

ニジュク「どして?」

サンジュ「なんで?」

セン『どうしても、なんででもだ』

ニジュク「……」

サンジュ「……」

セン『駄目だ』

65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 12:49:18.92 ID:RyY8mOhSO
ニジュク「クロちゃ、いつおきるの?」

セン『さあな』

サンジュ「クロちゃん、いつかえってくるの?」

セン『夢に飽きたらじゃねえの』

ニジュク「クロちゃ、まだしろいとこにいるの?」

セン『こいつはいつでも真っ黒だよ』

サンジュ「クロちゃん、けむりになってまよって……」

セン『しつけえ!』

66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 12:52:10.08 ID:RyY8mOhSO
ニジュク「だって」

セン『だってじゃありません』

ニジュク「つまんない」

サンジュ「まだおはなしもとちゅうだし」

セン『話なあ』

セン『お前らちゃんと聞いてたのか?』

ニジュク「きいてたもん!」

サンジュ「センよりしってるもん!」

セン『じゃあ聞かせてみろ』

ニジュク「……」

サンジュ「……」

67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 12:55:41.97 ID:RyY8mOhSO
ニジュク「……」

サンジュ「……」

セン『泣くな馬鹿』

サンジュ「ないてない!」

ニジュク「ないもん!」

セン『はいはい』

サンジュ「クロちゃんおきないから、わかんないの!」

セン『うんうん』

ニジュク「クロちゃがおきたら、はなせる!」

セン『そうだな』

68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 13:00:04.44 ID:RyY8mOhSO
セン『起きたらまず、その続きからだな』

ニジュク「……うん」

サンジュ「……クロちゃん、いつおきる?」

セン『旅がしたくなったら、起きてくるさ』

セン『それまで待ってられるか?』

ニジュク「うん」

サンジュ「あたしたち、クロちゃんとたびしたいもん」

69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 13:03:59.63 ID:RyY8mOhSO
セン『お前らがそう言うなら、あいつもそうするだろうな』

セン『だから待ってろ。そうすりゃ、そのうち戻ってくる』

サンジュ「なんで、あたしたちからあいにいくの『だめ』なの?」

セン『まあ選ぶのはあいつだからな』

セン『決まりきってるくせに、あの馬鹿はいつまでも悩んでやがるのさ』

70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 13:08:36.20 ID:RyY8mOhSO
ニジュク「まってたら、あえる?」

サンジュ「あえるら、まってる」

ニジュク「クロちゃのおはなしききたい」

サンジュ「クロちゃんとたびしたい」

ニジュク「だから、まつ」

サンジュ「きっとかえってくるよね」

ニジュク「あたしたち、クロちゃのたいようだから」

サンジュ「あたしたち、クロちゃんのきになるから」
 
 

71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 13:11:37.07 ID:RyY8mOhSO
 
 
 
クロ「随分と寝過ごしたな」

セン『まったくだ。おかげで随分と疲れた』

クロ「2人の世話は大変だったかい?」

セン『お前がいない分な。だがその分、いろんな奴に遊んで貰ったらしいぞ』

クロ「なら、寂しくはなかったかな」

セン『そうでもないさ』

セン『あいつらにとっては、お前が太陽で、木らしいからな』

クロ「?」

72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 13:15:07.05 ID:RyY8mOhSO
クロ「……もしあのとき、私が2人を連れ出さなければ」

セン『あん?』

クロ「少し考えてたんだ。どうなっていただろう、と」

セン『どうもねえよ、そのまま旅を続けるだけだ』

クロ「あの2人は、いつまでも『はかせ』を待っていただろうか」

セン『待っただろうな。それしか知らなかったんだからよ』

クロ「辛くなかった、だろうか」

セン『さあな。それも知らなかったんじゃないか』

73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 13:22:37.50 ID:RyY8mOhSO
クロ「知らなければ、か。結局、寒さについては教えないままだったね」

セン『そういや、そうだったな』

クロ「知らないというのは、楽なことなんだろうか」

セン『さあな。オレはいろいろと知ってるから、知らねえよ』

クロ「知れば、後悔すると思うかい?」

セン『後悔ってのは、ずっと先にするもんだ。今聞くな』

クロ「……今より昔のことでも?」

セン『今悩むなら、今のことだろ』

74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 13:25:07.46 ID:RyY8mOhSO
クロ「センの理屈は変わってるね」

セン『お前ほど面倒には考えねえだけだ』

クロ「……そうだね、私は余計なことを考えすぎていたのかもしれない」

セン『お前は元々そんな頭回らねえくせにな』

クロ「センが回り過ぎてるだけだよ。分割されて、頭の回路も増えたんじゃないかな」

セン『千分割の細っこい回路なんざ、すぐ壊れちまうじゃねえか』

クロ「ああ、だから変なのか」

セン『誰が壊れてるって?』

75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 13:28:58.88 ID:RyY8mOhSO
クロ「私は旅をして、たくさんのことを知ったよ」

クロ「知らなかった場所で、知らなかった人に会って、知らなかったものを見て、聞いて」

クロ「私はこの先、それを後悔したくない。……2人にも、後悔して欲しくない」

クロ「知ることを、後悔して欲しくないんだ。たとえそれがどんなことであっても」

76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 13:33:58.01 ID:RyY8mOhSO
セン『オレは元々学者気質だからな、知ることを悪いと思ったことはそうねえけどよ』

セン『もうあいつらだっていろんなことをわかってきてる、お前が寝呆けてた間にもな』

セン『それに、知って後悔するか、知らないで後悔するかは、本人の決めることだ。お前はそれまで待ってりゃいい』

セン『そしてオレの言うことに従うかどうかも自分で選べ』

クロ「そう言われると逆らいたくなるね」

77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 13:37:45.76 ID:RyY8mOhSO
セン『まあとりあえずだ、あいつらが待ったのも、旅をするのも、結局はあいつらが決めたことだ』

クロ「……うん。私は道を知らせただけだ」

セン『お前を待ってたのも、あいつらが決めたことだ』

クロ「そうだね」

セン『けどあいつらにする話は、お前が決めたことだろ』
 
 
ニジュク「あ、クロちゃ。にもつのせいり、おしまい?」

サンジュ「おしまいなら、あったかいして、おはなし!」
 
 
クロ「……うん。そうだね」
 

78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 13:38:37.91 ID:RyY8mOhSO
おわり
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/12(月) 22:08:47.24 ID:kBjQOHmS0
すてきな話をありがとう。
まさか、ここでニジュクとサンジュに会えるとは。
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/13(火) 15:20:45.12 ID:HxXe6Z6DO

棺担ぎのクロSSとは珍しい
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/13(火) 17:13:09.19 ID:KQsER/JAO

原作並にほっこりした
面白かったよありがとう
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