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男「ダークエルフが倒れている・・・・・・」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :以下、新鯖からお送りいたします [saga]:2013/09/16(月) 21:52:50.48 ID:+JEIQFUh0

ある夜、静寂とした森に一人の少女が迷い込みました。

少女は名はダークエルフ。(以下ダークと呼称)

彼女はとても疲弊していました。
呼吸をするのも辛そうにし、足取りも不安定です。

何日も身体を蔑ろにしていたのでしょう。
本来であれば、妖麗と輝いている銀色の髪も

今は見る影もなく、灰色に淀んでいました。

「......はぁ......はぁ......」

ダークは周囲を見渡しました。

「ここは......どこ?」

彼女は疲弊しすぎていました。
自分が今、どこにいるのかが分かりません。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1379335970
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諸君、狂いたまえ。 @ 2024/04/26(金) 22:00:04.52 ID:pApquyFx0
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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
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渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714052788/

二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714049241/

佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

2 :以下、新鯖からお送りいたします [saga]:2013/09/16(月) 22:02:21.93 ID:+JEIQFUh0

「い、いかなきゃ......」

しかし、彼女にとって、ここがどこであろうと関係ありません。

「もっと、もっと遠くに......」

彼女は一刻も早く、ある場所から離れたかったのです。

ですが、彼女の気持ちとは裏腹に
身体は遂に限界を迎えてしまいした。

彼女はその場に身を横たえ、意識を手放してしまいました。
3 :以下、新鯖からお送りいたします [saga]:2013/09/16(月) 22:20:05.27 ID:+JEIQFUh0

彼、男にとって、この森は自身の庭のような土地でした。

そんな彼は、月夜に照らされ妖艶に輝くこの森を散歩
するのがとても大好きな人間でした。

今日も綺麗だなぁ。

視界に映る森の景色に、そんなことを胸中に紡ぎながら、
森の中を歩いていました。

ふと、彼の瞳がある一点に固定されました。
その先には、地に身を横たえる人間らしき輪郭。

「あれは......人?」

彼はゆっくりと近づいていきます。

「!! エルフ!?」

そして驚愕しました。

なんとそれは人間どころかエルフだったのです。

「長い耳......褐色の肌、そして白い髪......間違いない
 だが何でこんなところに......」
4 :以下、新鯖からお送りいたします [saga]:2013/09/16(月) 22:32:09.70 ID:+JEIQFUh0


彼は困惑していました。

エルフと人間は互いに存在を理解はしていますが
そこまで交流が盛んな間柄ではありません。

だから地理的に人国に近いこの森に
エルフの民がいるのには頭を抱えるものがありました。しかし

「......そんなこと考えている場合じゃないか」

彼は、瞳を閉ざし眠る彼女に近づき

「よい......しょ」

彼女を抱えて家に帰ることにしました。

「身体が少し冷たいな......急ぐか」


5 :以下、新鯖からお送りいたします [saga]:2013/09/16(月) 22:34:04.04 ID:+JEIQFUh0
今日はこのくらいにします。
6 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/16(月) 22:43:48.57 ID:kRgXPDIho
きたい
7 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/16(月) 22:45:10.24 ID:zEd57TWko
乙です
8 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/16(月) 22:50:52.65 ID:aHU0fl500
9 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/17(火) 00:53:53.86 ID:1vdUIoUT0
でたな、投げっぱなし常連のダークエルフスレ
10 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/19(木) 19:29:13.48 ID:DaRRuTwi0

ダークが目を覚ました場所は、どこかの家のベッドでした。


ダーク「......ん、私は......」


ダークはベッドから上半身を起こします。
すると、重たい鎧を着たかのような倦怠感がダークを襲いました。


ダーク「う......」


何かがのしかかっているような重みに耐え、ダークは辺りを見渡します。

ダークの右向かいに奥に扉が位置し

中央には背もたれのついた椅子に、丸い少し大きめの机。


中央から左側にはそこそこ大きい暖炉、その向かいの壁には本棚がありました。


そしてダークのすぐ左真横にある窓からは
大きな湖が月夜に照らされながら輝いていました。
11 :以下、新鯖からお送りいたします [saga]:2013/09/19(木) 19:49:35.92 ID:DaRRuTwi0

ダークは湖を眺めて、ふと自分の今の現状を考えました。


ダーク「(私の住む里では湖の近くに家を建てている奴はいなかった
    ということは......ここは少なくとも里の外。
    そして私をこうして助けたのは......人間......か)」


ダークは窓から視線を外し、腕に巻かれている包帯を見つめました。


ダークには夢がありました。その夢を叶えるために
エルフの里を抜け出してきたのです。


しかし、ダークは夢のことを家族には告げていません。
ダークはそのまま家出をしてきたのです。


ダーク「勢いで飛び出してしまったな......」


ダークは自分の身勝手さに大きく溜め息を漏らしました。
しかしながら、表情はちょっぴり晴れやかでした。


奥の扉が開いたのは、それのちょうどすぐでした。
12 :以下、新鯖からお送りいたします [saga]:2013/09/21(土) 12:38:25.16 ID:LHaOzKhe0

男「お、起きていたか。エルフさん」


ダーク「......私を、助けてくれたのはお前か?」


男「ああ、俺が森を散歩しているときに、倒れているアンタを見つけた」


ダーク「そうか......で、ここはどこなんだ?」


男「ここか? ここは王国より少し離れている、名前もない森だよ」


ダーク「王国......人開が住んでいるところか......」


男「さてエルフさん、俺の名前は男。この森で暮らしている人間だ。
  エルフさんの名前は?」


ダーク「......ダークだ」


男「ダークさんか、よし覚えた」 
13 :以下、新鯖からお送りいたします [saga]:2013/09/21(土) 12:52:05.09 ID:LHaOzKhe0

ダーク「......あまり、驚かないんだな」


男「え、そんなことないよ。最初にダークさんを見つけ時は驚いたよ
  でも、三日もダークさんを看病してたらね。慣れた」


ダーク「三日間......私は三日も寝ていたのか?」


男「ああ、かなり衰弱してたからね。でも俺はもう数日は寝てると思ってた
  ダークさんは回復力があるね」


ダーク「.......お前は何故私を助けた?」


男「何故? 俺は目の前で倒れているエルフを見捨てるほど
  道徳が無い奴じゃないよ」


ダーク「ふ、私が聞いた人間像とは随分違う人間だなお前は......」


男「? そうか?」
14 :以下、新鯖からお送りいたします [saga]:2013/09/21(土) 13:06:49.69 ID:LHaOzKhe0

ダーク「少なくとも私の聞いた限りではな、それに人間を見るのも初めてだ」


男「え、全然驚いているように見えない......」


ダーク「ふふ、そうだな、私も驚いている」


男「......ぁ」


ダーク「ん? なんだ私の顔に何かついているか?」


男「いや......笑顔がさ。俺の知り合いにちょっと似てたから」


ダーク「ふむ......ここに住んでいるのはお前だけか?」


男「え、まぁ俺だけだよ」


ダーク「......そうか、ふん」


ダークはベッドから立ち上がる。しかし
三日間も寝ていたからか身体がよろめいた。


体制を崩したダークを、あわてて男は支える。


それからゆっくりとダークの身体は男の胸へと沈み込んだ。

ダークから漂う女性特有の心地よい香りが、男の鼻をくすぐる。
15 :以下、新鯖からお送りいたします [saga]:2013/09/21(土) 13:14:43.17 ID:LHaOzKhe0

男「いきなり立ち上がるとは思わなかったよ」


ダーク「ふぅ、すっかり身体がなまってしまった......」


男「そりゃ三日間も寝てればね」


ダーク「で、お前はいつまで私を抱いているんだ?」


男「あ!! わ、わるい!!」


男はダークの背中まで回していた両腕をすばやく解いた。


ダーク「別にお前に支えてもらわなくても、私は大丈夫だったぞ?」


男「あー。その、つい手がでてしまいました.....」
16 :以下、新鯖からお送りいたします [saga]:2013/09/21(土) 13:31:39.44 ID:LHaOzKhe0

ダーク「ふふ、はっはっはっは!! ......はぁ、お前は面白い!!」


男「へ?」


ダーク「やはり外に出て正解だったぞ。男」


男「そ、そうなんだ」


ダーク「男、私もここに住んでいいか? お前に聞きたいことが山ほどある」


男「え」


ダーク「ん? なんだその微妙な顔は、もしかして駄目なのか?
    安心しろ、なるべく迷惑はかけない。食べ物も自分で取る」


男「いや駄目じゃないよ。ただ、この家狭いからさ」


いって男は視線を周りにさまよわせる。


たしかに二人で暮らすのには、すこし狭い。


ダーク「私は別に構わん」


男「......ダークさんがそれなら俺もいいかな」


ダーク「よし、しばらくよろしくな男」


男「ああ、よろしくなダークさん」


男はダークに手を差し出す。


ダーク「なんだこれは?」


男「そっか、エルフは知らないか。これは握手。友好の証みたいなものだよ」


ダーク「ほぅ、知らなかったな。こうか?」


差し出された手にダークは自身の手を重ねる
そして男が握ってきたのでダークも握り返した。

男がダークへ柔らかに微笑みかける。

ダークも微笑み返した。
17 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/21(土) 14:55:20.43 ID:vZJQmcCfo
もう少し速度上がらんか?
面白そうではあるが
18 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/21(土) 17:26:13.24 ID:DiEUJKh2o
がんば
19 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/21(土) 18:03:46.66 ID:W7oljM9Do
乙でした
20 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/21(土) 19:19:20.03 ID:aul1Ubpa0
のんびりのんびり待つさ
21 :Φ [saga]:2013/09/21(土) 20:50:47.59 ID:omKG2onN0
もしや「何それ怖い」シリーズ?
違う?
22 :以下、新鯖からお送りいたします [saga]:2013/09/21(土) 22:08:18.00 ID:LHaOzKhe0
速度向上には努力します
>>21普通のssですよ
では投下
23 :以下、新鯖からお送りいたします [saga]:2013/09/21(土) 22:18:26.37 ID:LHaOzKhe0

きゅるるるる......


ダーク「......むぅ」


男「......」クス

ダーク「............すまん、さっそくお腹が空いた......」


男「うん、そりゃ三日間も寝てればね 
  まってて、今持ってくる」


ダーク「あ、いや待て......それは」


男「ダークさんはまだ病み上がりなんだから、今日くらい俺に任せろ。な?」


ダーク「......ん、それならお言葉に甘えよう」


男「ベッドにでも座っててくれ。そんじゃ」


ガチャ バタン


ダーク「......言ってるそばから世話になってしまった......」


24 :以下、新鯖からお送りいたします [saga]:2013/09/21(土) 22:36:04.10 ID:LHaOzKhe0

と呟き、嘆息しながらダークはベッドへと腰掛ける。
ふと窓から見える湖に意識を傾ける。


ダーク「(綺麗だな......里にも湖があったが......何か違う気がする
    ......いや、私が自分自身に、そう感じさせようとしているのか)」


硝子越しに広がる青い世界。別段、里の近くにあった湖と変わらない造形。
それでも、今のダークにはまるで、一流の職人が作りあげた工芸品
を見ているかのような面持ちだった。

ダーク「(だが、抜け出した以上、後戻りはない。それにする気もない
    しかし、ちょっと無計画だったな......)」


ダークは口から吸った酸素を鼻から外へと逃がす。


ダーク「(しかし......アイツ......名前は男だったか
    まったく、里で聴いたのとは大違いだ......いい意味で)」
25 :以下、新鯖からお送りいたします [saga]:2013/09/21(土) 22:46:56.46 ID:LHaOzKhe0

ダークの脳裏に浮かぶのは、笑顔で握手を交わした命の恩人。
そして............。


ダーク「(もしかしたら、アイツが......)」


唐突、弱々しい風が窓を叩く、ヒュルリ、ヒュルリ。
同時に、沸き立ってきそうだった感情はたちまちしぼんでいった。


ダーク「(まぁ、それを決定づける要素はアイツにはまだない。
     時間も足りてない......。まずは様子見だな)」
26 :以下、新鯖からお送りいたします [saga]:2013/09/21(土) 23:02:21.58 ID:LHaOzKhe0

ガチャバタン


男「おまたせ......お、湖見てたの?」


ダーク「ああ、綺麗だな......魚はいるのか?」


男「もちろん、小魚から大物までよりどりみどり!! 
  ダークさんは釣りに興味とかあるの?」


ダーク「まぁ、多少な。釣れたことはないが」


男「そんじゃ明日にでもするかい?」


ダーク「ふふ、面白そうだな。でその両手に抱え込んでるのが今晩の食事か?」


男「ああ、お腹すいてると思って沢山持ってきた。遠慮はいらないよ
  エルフは木の実と果物が好物だって聞いたし」


ダーク「そこまで言うなら、遠慮なくいただくよ」

27 :以下、新鯖からお送りいたします [saga]:2013/09/21(土) 23:22:07.61 ID:LHaOzKhe0

モグモグ

ダーク「うむ、美味しいな......頬が落ちそうだ」


男「へへ、気に入ってくれて何よりだ」


ダーク「......」


男「ん? どうしたよ?」


ダーク「一つ聞いていいか?」


男「お、質問? 構わないよ」


ダーク「これは全部食べても構わないのか?」


男「ああ、全部あげるよ。そのために取ってきた」


ダーク「そうか......よし、お前も食べろ」


男「俺も?」


ダーク「ああ、一緒に食べよう」


男「うーん、それなら俺はこの果物を......」


ダーク「お、それは私が好きな果物だ。里の近くにも自生していたよ」
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/09/22(日) 18:02:09.13 ID:Xgu+mgwB0

兄「そうなの? ならこれはダークさんに」


ダーク「いや、欲しいから言ったわけではない。お前が食べろ」


兄「そう? むぐ......うん、上手いな」


ダーク「............男」


男「ん?」


ダーク「......人間というのは......ふぁ」


男「クス、今日はもう眠りなよダークさん」


ダーク「ぬぁ......病み上がりだったな私は」


男「話は後からゆっくり聞くよ。今は身体を休めよう」


ダーク「うむ分かった......では失礼する」


ダークはベッドに潜る。
するとすぐに寝息を立て始めた。


男「やっぱり疲れてたか......」


男「......ダークさん......か」
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/09/22(日) 18:08:04.04 ID:B5yKQ9f+o
唐突に兄
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/09/22(日) 21:50:42.27 ID:Xgu+mgwB0
事故りました......ごめんなさい。
31 : ◆SWYGzMGb56 [saga]:2013/09/28(土) 21:16:47.46 ID:WhIllLyy0
生存報告
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/09/28(土) 21:24:46.76 ID:vOkSNAGcO
ゆっくりでいいよ
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/10/02(水) 00:15:37.57 ID:baZpB4TKo
ふむ
興味深い
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/07(月) 21:03:55.30 ID:Q0/WpAul0

窓から差し込んだ淡い陽光に、ダークは目を覚ます。
ややまどろんでいる視界は、徐々にそのクオリティを上げていく。

「朝か......」

目を覚ますとダークはベッドから起き、身体の調子を確認する。
手を握り、足を動かし、軽く頬を叩く、少しだけジャンプもする。
ジャンプをするとダークの豊かな胸の膨らみが揺れた。

所々に違和感なり痛みを感じるが

「(まぁ、これくらいなら問題ないな......)」

日常生活に支障はないと判断を下す。

ふと、ある存在がいないことに気づいた。

「男はどこに言ったんだ?」

「ふぅ、男に果物のなる木の場所を教えてもらおうと思ったのだが......」

言ってダークがため息を吐きかけたときーー
外から、空を切るような鋭い空気の振動をダークの聴覚が捉えた。
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/07(月) 21:23:45.06 ID:Q0/WpAul0

「外......男か?」

と推察をしながら、この空間で唯一外へと
つながっている扉の取っ手に手をかける。

ヒュッ

ダークの頬を早朝の冷淡な空気が抉る。
そして頬だけでなく、顔を腕を足に、鋭く切り込んでゆく。

「つ......さむい」

早朝の肌寒さに、愚痴をこぼす。
自分が思っていたより外は冷えていた。

だが東の遠方から顔を覗かせる陽光が、微かにダークの身体を暖める。

「あ............」

そして、東の方へと視線を向けるとそこには
窓から見えた、空から贅沢に円を描いたような湖と、

「............男」

その近くで、上半身に大粒の汗を流しながら
黙々と身体を動かしている男を発見した。
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/07(月) 21:40:45.97 ID:Q0/WpAul0

戦士。それは男の身のこなしと、男の四肢から
生みだされる熱い活力と、戦う者特有の雰囲気から
ダークが導きだした彼のもう一つの顔だった

「............シッ!!」

声をかけることなどできない。それほどまでに

男は表情は真剣であり

拳を突き出し、足を振りあげる。

「(............あれは、男なのか?)」

ダークは昨日の彼と、現在の彼との違いに戸惑っていた。

あんなにも笑顔の絶えない、悪く言えば優男のような男が

「......ふぅ......せい!!」

今の男は、見違えるほどに、魅力溢れる戦士の風格を漂わせている

「(............強い)」

そして男の持つうる力量をさえも。
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/07(月) 21:55:10.81 ID:Q0/WpAul0

ダークはエルフの戦士だ。

だからこそ、男が今何をしているのかを理解できる。

さらに彼の持っているであろう強さも
その鍛え抜かれた四肢から判断できる。

「(............こ、これは)」

だがダークにとって一番驚愕したのは、その鍛え抜かれた男の四肢だ。

「(これが............人間の戦士)」

エルフのしなやかな筋肉とは正反対の

太く、猛々しさを感じさせる筋肉だ。例えるならば......そう木だ。

大地に根付き、逞しい巨大を空へと惜しみなく伸ばす幹のごとく。

「なんて、なんて......力強さだ......」

そしてそれはダークの心にいいようのない感情を、芽生えさせようとしていた。
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/07(月) 21:56:08.04 ID:Q0/WpAul0
今日は終わり
これからは徐々にペース上げていきます。
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/10/07(月) 22:11:55.69 ID:VPwHEcV+O
おつ
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/10/07(月) 22:22:43.46 ID:peU09w6Oo
蜂蜜色のあれか?
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/10/08(火) 21:58:04.03 ID:vl0wbEz/0

「............!! ハァ!!」

張りのある声が周囲の空気を揺らす。
それは鍛錬の終了を意味していることにダークは気づく。

男は一つ深呼吸をした後、ダークへと視線を向けた。
そして口元に笑みを浮かべる。

「おはよう。眠れた?」

静かで、そして若干の疲労の色を見せる声だった。

「ああ、おかげでな......鍛錬か?」

「そう、身体は大切な財産だからね」

軽く伸びをしながら近くに置いておいたらしい手ぬぐいで
男は身体を拭く。拭きながらダークの方へと近づく。

「寒くない? 朝はまだ冷えるよ」

「そうだな、少し寒い」

男に指摘されるまで寒さのことを忘れていた。

ダークにとってはそれほどに人間の戦士という存在は大きいものだった。

「俺ので良かったら服があるよ?」

「あ、ああ......では借りさせてもらう」

じゃあ今とってくるよ。そう言って
男はダークの横を通り過ぎて家へと入る。

その時、男からしたたる汗の匂いがダークの鼻孔を駆け抜けた。

「(............ん)」

エルフの男とは違う人間の匂いに、
男の匂いに、ダークは不思議と嫌悪感はなかった。
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/10/28(月) 22:34:22.22 ID:A2CfaDdV0






「はい、少しは暖かいよ」

「......ありがとう」

男はダークに服を渡す。

「中に入ったら? 寒いよ?」

「いや、少しくらい平気だ。それに......そろそろ日も昇ってくる。
 私のことより自分も服を着たらどうだ? 男」

「ん? 俺は大丈夫。伊達に鍛えてないしね」

「そういうものなのか?」

ダークの少し意外な表情が男を見据える。

「そ、俺の師匠がね。身体を鍛えれば寒さなんぞに遅れはとらん!! 
 でこのとうりってこと」

「ふふ、随分変わっているなお前の師匠は」

「まぁね。かなりの変わり者だった。でも......俺は師匠のこと尊敬していたよ」

そう語る男の目は遠くの景色を一途に見ていた。
エルフには他人の感情の動きに敏感な生き物だった。

そしてダークは男の微かに浮かべた悲壮感を感じ取った。
だがダークはそれを口には出さなかった。

「なぁ、私にその師匠とやらについて興味が湧いた。話してはくれないか?」

「うん、構わないよ。でも朝食を食べてからにしよう。さっきのでお腹が減ってさ」

「わかった。あ、日が昇ってきたぞ」

「......朝だね」


暖かい。湖の向こう側から昇ってきた陽光が二人を照らす。

まるで彼らを祝福するように。

これからの生活に。
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/10/28(月) 22:57:13.75 ID:A2CfaDdV0

朝食を済ませると、ダークの目の前に一冊の本が置かれる。

「これは......!!」

「あれ知ってるのダークさん?」

驚愕の表情に染まるダークに男は問いかける。

すると、たちまちダークの頬が引き上がる。心なしか目も輝いていた。

「この本の名前は......今は存在しない獣人族ウルフルの旅行記、上巻」

「おお、これを知っている人がいるとは......」

「当たり前だ私はこの本を、里でずっと読んでいた」 

「好きなんだ?」

「ああ!! この本はな獣人族ウルフルが生涯をかけて、この世界を渡り歩いた
 実録だ!! たった一人でこの広い世界を歩いて回ったんだ!! 凄いだろ?」

「ああ、凄いよこの人は。俺もこの本のファンなんだ」

「そ、そうなのか!?」 

「ああ、ウルフルは強靭な肉体を持って、この世界を一人で歩いた
 でも、それをただ記録した訳じゃない。ウルフルは人を
 冒険の渦へと引き込む文才もあった。素晴らしい人だよ」

「ああ、分かってくれる人がいるとは嬉しいなぁ......読んでいいか?」

「......全然大丈夫だよ」

「!! ありがとう!!」

さっそくダークは本を開き、あっという間に本の世界へ入ってしまった。

師匠の話しは後でいいか、と男は思い、夢中に本を読むダークに
微かに微笑んで部屋を後にした。
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/10/28(月) 23:32:12.20 ID:A2CfaDdV0






ダークが本を読み終えたころには日もすっかり真上を向いていた。

「いかん......熱中してしまった......」

ダークはすぐに男の姿を探す。

部屋の窓越しに腰を下ろした男の後ろ姿を目にした。湖を眺めているようだ。




「申し訳ない。熱中しすぎた......」

謝罪をしながら、ダークも男の隣に腰を下ろす。
後ろ姿で見えなかったが、男は釣りをしていた。

「いいよ、あの本は軽い中毒性があるからね」

「たしかに続きが気になって気になって、分かっていても
 分かっているなりの楽しみ方もあって......面白いな」

「へへ、正直だねダークさんは」

「しかし、師匠の話を聞きたいと言った手前、恥ずかしい限りだ......」

「そこは問題ないよ。あの本を出した瞬間から、師匠の話しを
 しているものだったしね。」

「そうなのか?」

「そ、師匠が変わり者って言われていたことの核心でもあるんだよ。あの本は」

「............」

「師匠はね。ウルフルのように世界を旅したいと思っていた人なんだよ
 俺は自分の足で世界を歩いていきたいって......いつも言ってた」

「............」

「でもそれは無理だった」

「......どうして?」

「人間の国には決まりがあってね。その決まりとは外の世界に出てはいけない」

「そんな決まりが......」

「ああ、でもエルフにもあるでしょ?」

「......知ってたか」

45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/10/28(月) 23:33:14.71 ID:A2CfaDdV0
つづく
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/10/28(月) 23:37:41.19 ID:CHI1RmqTo
きたか
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/10/29(火) 00:03:56.81 ID:RK+jZWfXo
乙です
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/10/29(火) 05:22:04.99 ID:cKudfa8RO
おつ
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/10/29(火) 09:14:01.64 ID:RJZFJ++3o
待ってた
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/10/29(火) 22:37:23.71 ID:Ybrml5HP0

「まぁね。あの国にいた頃に......少し調べてたんだ」

「私以外のエルフにあったことはあるか?」

ダークの問いに男は額に手を当てて、昔の記憶を掘り起こそうとする。

その間、男の目の前にある釣り竿を見る。ピクリとも動かない。

本当に釣れるのか。自分自身の経験から
縁起でもない思考を展開していると、男の口が開いた。

「......一度だけあるよ......女性のエルフだった」

「そうなのか......いつ頃だ?」

「うーん。子供の頃かな? あんまり覚えてない」

「......そうか。綺麗だったか?」

「えぇ? そうだな......綺麗だったかもしれない......あ、そういえばダークさんと同じで髪が白かったかな?」

「ダークエルフは皆髪が白いからな。男の見たエルフもそうだったのだろう」

「でも里の掟を破ってこっちに来るなんて、今思うとビックリだよ」

「いや、当時はまだそんな掟は無かったんだ。その後の長の代で
 里の外へは出てはいけないという掟ができた」

「え、そうだったのか......おいおい、書物に書いているのは嘘っぱちかよ......」

「仕方ないな。エルフと人間との交流はほぼ皆無だったし、推測で書き記したのだろ」
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/10/29(火) 22:56:37.75 ID:Ybrml5HP0

「ああ〜。そうだよな。本人達から聞かないことには......
ん? まてよ、ということは俺は今凄い境遇なんじゃないか?」

「そうだな。男の目の前には麗しい美女がいる」

小説の表現で使われるような台詞を言いながら
男の顔を覗くように見るダーク。クスッと男が笑みを浮かべる。

「自分で言うのかい」

「ふぅ、ウルフルのような台詞は出てこないがな」

「本当に好きなんだね。あの本......師匠がいたら
 きっと良い友達になってたんじゃないかな」

「だが私は上巻しか見ていないからな......あと中巻と下巻があるらしが......。生きている間に読みたいよ......はぁ」

「あるよ中巻と下巻」

「なんだと!?」

「......読みたい?」

「も、ももも、もちろんだ!!!」

「分かった。後で渡すよ。でもまずは......昼食を確保しないとね」

その時、男の言葉に重なるようにダークの腹が盛大に音を立てる。
急いで腹を両手で抑えるが、もはや後の祭りだった。

「......申し訳ない......」

「本を読んで頭を使ったからじゃないかな」

男の笑い声が湖に響いた。

52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/10/29(火) 23:11:53.05 ID:Ybrml5HP0

「エルフから見た人間てどんな感じ?」

男は釣り上げた魚を頬張りながら、ダークに質問をぶつける。

「ふむ......自尊心ばかりが肥大化していった哀れな種族.....と私は先生に教えられた」

「うわ......凄い印象悪い......でもダークさんは俺をそうは見てないよね?」

「自尊心ばかり強くなっていったしょうがない奴はエルフにもいるさ......うむ、美味いな」

「へぇ〜、エルフってみんな穏やかで慎みある種族かと......」

「生意気な奴もいれば、感情的な奴もいる。一概には言えないよ」

「そう考えるとダークさんは良い人だね」

「ふふ、それを言ったら男も良い人間だ。お前に助けられて感謝しているよ
 こうして釣りのコツも教えてもらったしな」

「ダークさんは器量がいいんだよ。」

「褒めても魚はやらんぞ?」

「おおう、残念だ」


釣りの結果。

男 3匹 

ダーク 8匹

つづく
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/10/29(火) 23:15:02.36 ID:dqNfFe/ho
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/04(月) 18:54:51.33 ID:o9LTbTi00
   




「はい、ウルフルの中巻と下巻」

「お、まっていたぞ〜」

目を輝かせながら、ダークはウルフルの本を胸に抱く。

「好きなだけ読んでていいよ。俺はちょっと森の方に行ってくるから
 帰りは少し遅くなるかも」

「うむ、そうさせてもらおう。気をつけてな。男」

「ありがとう。気をつけるよ」






「さてさて......居候がいるから多めにとらないと......」

家から幾分か遠くに男はきていた。視界には生命力溢れる木々。
弱肉強食の制度を採用している者達が住まう場所。

森林

「ふぅ、たまには肉も食べたくなるな......まぁ果物も悪くないけど」
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/04(月) 19:06:51.76 ID:o9LTbTi00






もはや日も落ちて本の文字も読みがたくなる時に
ダークはウルフルの下巻を読み終え、そっと本を閉じた。


「ふぅ......素晴らしいな......やはりウルフルは素晴らしい」

「こんなにも心から感動できるなんて......」

「はぁ......」

「............少し、疲れた......」

キュルル〜

「お、お腹も空いたぞ......何か食べるものは......ないな。男もまだ戻ってないようだ」

「......そもそも男はどこへ行ったんだ? う〜ん......」

「出かける。何処に? たしか森に......なぜ? 森には何がある?
 木々、草花。動物。生き物......果物......食物......あ」


「............食料」
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/04(月) 19:20:06.65 ID:o9LTbTi00

男が食料である果物を持って帰ってくると
ダークは、申し訳ないとばかりに顔を歪ませていた。

「ダークさんどうしたの?」

「すまん......男が食料を調達している中、私は椅子に座り本を読みふけっていた!! 申し訳ない!!」

「いや、気にしなくても......」

「自分のことはすると言っておきながらこの様だ......罰があるなら受ける」

「ないない!! 罰なんてとんでもない!!」

「だが、それでは私の気がおさまらん......」

「えぇ......」

そんなズイズイと自分に詰め寄ってくるダークに困惑する。

ダークの分の食料も取る。
男としては露ほども気にしていないことだった。

「ダークさん大袈裟だよ」

「でも......それじゃあ......」

「俺が好きでやったことだからさ。な?」

「むむぅ......」
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/04(月) 19:33:14.71 ID:o9LTbTi00

尚も引き下がる気配を見せないダークに男は一つ提案をだした。

「じゃあさ、エルフの挨拶を教えてよ」

「挨拶? どうしてだ?」

「前に言ったよね。俺はダークさん達のことを知りたい」

「......たしかに言ってたな......」

「そ、謝るかわりにエルフの慣習を教えてくれ」

「まぁ......それでいいのなら......」

「よし決定。ということでさっそく......」

キュルル〜

「......」

「......」

「......男が帰ってくるまで何も食べてないんだ」

「じゃあ、夕飯食べてからだね」

そう男が笑い混じりにいうと、笑うなと言うような顔でダークは男を睨んだ

遠くの方からは、動物の遠吠えが聞こえていた。
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/04(月) 19:59:37.18 ID:o9LTbTi00

「でだ、その時ウルフルは言ってやったんだ。自由とは自律であると!!」

「ウルフルの考える自由は自らを律することだったんだね」

「そうだ。ただ欲望のままに行動するのは自由ではない。名言だろ?」

小さい机を挟んで、ダークと男は会話に花を咲かせていた。

「でもウルフルは最終的に負けるよね?」

「私も読んだ時は失望したが、今思うと仕方ないな」

「まさか自分より半分も年下の......しかも少女と結婚するとは......ロリコンだね」

「後の[ロリコン]の起源でもあるからなウルフルは......だかな男」

「ん?」

「よく読んでいくとな、この少女はとても健気で努力家な娘だった」

「きっとウルフルはそんな少女に惹かれたのだろう。それに少女の方も......
 まぁ......少女の方が積極的だったな」

「恋に年なんて関係ないを証明したね。この二人は」

「ちなみに男は何歳なんだ?」

「............歳......か」

「男?」

「............何歳だろうね。分かんないな......」

一欠片の闇を、ダークは感じ取った。
男の見せた一瞬の陰、すぐに笑みを浮かべて隠したようだが

エルフにはそれだけで分かってしまった。

男が歩んだ、決して楽な道のりではなかったであろう人生を

59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/04(月) 20:12:07.73 ID:o9LTbTi00

「そうか.......分からないなら仕方ない。なにより
 今大事なのは......私と男が、こうして出会ったことだ」

「クス、それウルフルが少女と結婚するときに言った言葉でしょ?」

「結婚を反対していた奴らを黙らせた名言だ!!」

「いよいよ俺の師匠と同じくらいになっちゃったよダークさん」

「ウルフルは偉大だ!!」

「俺も同感」

「ふふ、そうだろ?」

「うん、さてそろそろ寝ようかな......」

「あ、男」

「なに?」

「さっきの話しなんだが、ほらエルフの挨拶......」

「......あ、忘れてた......」
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/04(月) 20:36:50.73 ID:o9LTbTi00

「まったく、自分で言って忘れるとは」

「なら、そういうダークさんだってお互い様でしょ?」

「う......ぜ、前言撤回しよう」

「ごめんごめん、それじゃあ、教えてくれ」

「分かった。まぁ大したほどのものではないがな」

「そうなの?」

「私達にはな、たしか人間は握手をするのが挨拶だったな?」

「そうだよ。昨日ダークさんとしたやつ」

「エルフの挨拶はな、挨拶以外に感謝や謝罪、愛情表現にも使う」

「万能だね。でも困らない? その、ややこしいというか......」

「心配いらない。エルフは他者の感情を汲み取るのが上手いんだ」

「え、知らなかった......でも、
 人間はそうもいかないから、ちょっと厳しいかな?」

「それは大丈夫だ。問題ないぞ」

「え」

男の胸に何かがぶつかった。痛くはなかった。
優しい衝撃。次いで、脇腹を心地良く締めつける力。
暖かい、自分とは別の体温。胸板にかかる微かな吐息。

そんな艶のある白い髪と褐色の肌の存在。

男はダークに抱きしめられていた。

「だ、ダークさん? なにを......し」

「ありがとう」

「へ?」

「ごめんなさい。そして......好きだ男」

「!?」

「私と結婚してくれ」

61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/04(月) 20:37:22.90 ID:o9LTbTi00
つづく
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/04(月) 20:50:01.27 ID:/kdibDkRo
うむ
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/04(月) 21:03:01.33 ID:K33gFa0Ro
うむうむ
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/04(月) 21:27:47.99 ID:ASCY0fqMo
うむ
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/07(木) 18:13:30.12 ID:YzyAVNCjo
はよはよ
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/09(土) 14:02:57.27 ID:r0gBPhtE0

「......え? け、結婚? 俺......と?」

「他に誰かいるのか? 男、私はお前が好きになった
 だから、私をもらってくれ」

「あ、えと......唐突すぎだろ......とと、とりあえず離れてくれ」

しかし、ダークは離れるどころかより一層、男へ密着する。

そして甘ったるい声音で

「返事をくれるまで離さないぞ」

「なぁ!?」

男は女性の誘惑に対していくらか強いと自負していたが、ダークの不意打ちに
冷静という二文字を、どこか遠い彼方へ蹴り飛ばされてしまった。

「いや......その......え、えーと......」

「男......」

そんな狼狽している男にダークは微笑みを添えた表情で
真っ直ぐに男に視線を注いだ。

男はダークのアプローチに頭がどうにかなりそうだったが
徐々に蹴り飛ばされた冷静さも返ってきた。

「ダ、ダークさん......ん......ご、ごめん離れてくれ」

男は一つ深呼吸、一瞬彼女のいい匂いが鼻孔を駆け回った。
それをなんとか追い払う。そしてダークへ真剣な顔を作り、言った

「......ふぅ、分かった。離れるよ。私は男のことを困らせたいわけでもないしな」

ダークそう言って少し名残惜しいような態度をしながら
男を包んでいた両の手をほどいた。
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/09(土) 14:21:11.47 ID:r0gBPhtE0

「......実は私には婚約者がいてな」

「......え!?」

「ふふ、どうしたその顔。少しみっともないぞ?」

「......こ、婚約者がいるなら、何故俺と?」

「親の決めた婚約者だ。それに相手の婚約者も、私は好きではない
 まぁ、相手も私に好意はなかったがな」

「そ、そうなんだ......」

「それに比べ......」

そこまで言うとダークはベットに腰を下ろし、隣にあったウルフルの本を
なんとなさげにパラパラめくり始めた。

「エルフは閉鎖的な種族でな、外に出たいなんて......
 もの好きなことは言わない。でも私はそんなのは嫌だった」

男もダークの隣に腰を下ろす。ダークは話を続けた。
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/09(土) 14:34:37.10 ID:n/1LVYyDo
来たか…!
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/09(土) 22:53:54.35 ID:r0gBPhtE0

「私は外の世界を見たかったんだ。ウルフルのように、自分の足で
 自分の目で......多くの物に出会いたいと......」

「......そっか、そんなことを......」

微かな笑みを崩さず語るダーク。瞳は輝きに満ちていた。
そして本をめくるのを止め、そっと閉じる。

「しかし、そんなことは皆が許してくれなくてな。この本を手に入れるのにも随分苦労した。里を出るのだって内緒で来たからな」

「なるほど、ダークさんがボロボロで倒れていたのはそういうことか......」

「正直な、無謀なことをしたと思っている」

「まったくだよ。俺が見つけなかったらどうしてたか」 

「ふふ、知らん。私はお前に助けられた。これが事実だ」

「いやいや、笑うところじゃないよダークさん」

「すまんすまん、でも笑っても仕方ないだろ?」

「あ、ちょ......と」

冷静の二文字が蹴り飛ばされそうになる。
男の腰に手を回したダークは、多少大袈裟に深呼吸を一つ。
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/09(土) 23:14:52.56 ID:r0gBPhtE0

「悪くない......いや、むしろ良い......」

男にとって自分の体臭を良いと言われたのは生まれて初めてだった。
しかも言われた相手がこれほどの秀麗な美女となると、頬を赤らめてしまうのも当然だった。

そしてやはり離れない。

男は、今度は冷静さをちょっぴりとだけ保っていた。
しかし、上目でこちらを見つめる白い美人に
いつ吹き飛ばされるかも分からんので
とりあえず話題を戻した。

「でもねダークさん。話は変わるけど、いきなり結婚は無理ってもんだよ」

さすがに二日間で愛を育めると思うほど男は情熱的ではなかった。

「だが私はもう男のことが頭から離れないぞ?」

「え......なにそれ」

「男、お前のせいだな。命の恩人であり、心清らかであり、謙虚であり
努力家であり、良い匂いのするお前のせいだ」

ダークは男を褒めちぎりながら抱きしめる力を強めていく。

それは男の心を揺らしてゆく、だが男もこのまま引き下がるわけではなかった。

「ダークさん、気持ちは嬉しいよ」

「そ、そうか!! ではこんな奴だがよろしく......」

「でもごめん、それは出来ない」

「え............?」
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/09(土) 23:15:18.72 ID:r0gBPhtE0
つづく 明日へ
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/09(土) 23:16:01.95 ID:E5HYxnTAo
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/10(日) 01:11:23.62 ID:wIwSYCnGo
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/10(日) 05:23:56.01 ID:nu9jNIsuo
生殺し
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/10(日) 15:35:03.67 ID:UhWthilk0

「男......どうして......?」

「でもダークさんが嫌いなわけじゃないよ。あのねダークさん。
極端に言うけど、俺にとって結婚という言葉はダークさんが
思っている以上に重い。それこそ数えられる程の要素で軽々しく言うダークさんよりね」

「だがこの気持ちは......」

「分かってるよ。きっと俺のこと、好きで好きで堪らないんでしょ?」

「分かってるなら......いいじゃないか......」

「......ねぇダークさんは何歳?」

「え......」

「俺は二十八歳だよ」

「......は、二十歳だ......」

「嘘はいけないよダークさん。いやむしろ......ダークちゃん?」

「く......十六歳だ......」

「若いね。ダークちゃん」

「そ、そんなことはいい。だが私はお前が好きだ......好きになった......」

「分かってる。だからまずは......教えてほしい」 

「? 何をだ?」

「ダークさん......のことをね」
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/10(日) 15:48:53.14 ID:hAorP+o80
ビッチだろ
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/10(日) 16:06:01.54 ID:UhWthilk0

「私のこと?」

「そう。そして俺も教えてあげるよ。俺自身のことを
 そうしてダークさんの気持ちが変わらなかったら、そのときには......ね?」
 
「つまり、段階を踏めということか?」

「分かってるね。理解がいいよ。それにこの世の中には多くの人がいる
 せっかく若いんだから、俺より良い人が見つかるかも」

「つまり、まだ望みはあるんだな!!」

「そうだけど......ダークさんは物事にもっと頭を使うべきだよ」

「ふふ、それが聞けただけ、嬉しいかぎりだ。なら今日は
 とことん語ってやるぞ。私のことをな!!」

「じゃあ俺も、ダークさんに話してあげるよ」

「ふふ、決まりだな。男」

バッ!!

ダークの微笑を見た刹那、男の視界が闇に染まる。

「!?」

「一緒に寝よう」

ダークは男にシーツを被せていた。
そして男を横に倒し、自身も隣へ、男の肩に凭れるような形に落ち着ける。

「夜は長いぞ。男」

暗がりの中、仄かに笑う白い少女がまた、心から慕う者へと
抱擁をした。男はまた少し焦りの念を抱いたが、彼女の好意を
これ以上、無下にするのも可愛そうなのでそっと抱きしめ返してあげた。


「ふふ、じゃあ、まず私から話しをしよう」

「どんな話し?」

「そうだなまずは......」


そうして二人の長い夜が始まった。
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/10(日) 16:58:07.41 ID:pTOV5NvNo
長い夜・・・


ゴクリ
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/10(日) 20:36:24.95 ID:UhWthilk0

西の果てにそれはあった。

「族長。お話しがあります」

幾百もの齢を重ねた大樹達に守られるようにひっそりと作られた。

小さな国。

「エル男か......今は仕事中だ。悪いが後にしてくれ」

そこに住まう民を人間は語る。

エルフ<森の民>と...... 

「彼女がどこにいるのか分かりました」

「............どこだ?」

「人族の国です」

「............そうか」

「如何いたしますか?」

「如何? 好きにしろ......あいつは......お前の妻なのだからな」

「分かりました。では少しの間、暇をいただきます」

「......承知した」

ーーーーー
ーーー
ーー
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/10(日) 20:57:22.88 ID:UhWthilk0

自給自足が彼らの生き方だ。

「......蒼いな......今日は良い日だ」

エルフの民は総じて痩躯な身体つきをしている。
だが、このダークエルフは違った。

「......娘よ、お前はどこへ向かう?」

只ひたすらに武を求め鍛えあげたその筋肉は、エルフとはまた違った
一種の、異なる生物の如き異彩を放つ。

それが彼、エルフ<森の民>を束ねる男。ダークエルフだ。

「まぁ......いい。お前がどこへ向かおうと......好きにすれば良い」

風が彼を通り過ぎる。彼は蒼天を仰ぎ、一人呟く。

彼は視線を眼下へと導く。

そして彼は先祖から引き継いだ里を目にする。

いつもの風景。穏やかに舞う風。平穏に暮らす民。

平和な国。

〜この場所に私の欲しいものはない〜

皆が内を見る中、一人だけ外を見た者がいた。

外に心奪われた者がいた。

「私も......好きにやらせてもらおう......だから娘よ......テオリアよ......」

「掴みとってみろ」
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/10(日) 20:57:56.31 ID:UhWthilk0
つづく
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/10(日) 21:43:13.02 ID:g6KWBHyEo
うん
まあ
とりあえず乙
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/10(日) 22:23:23.80 ID:hlAdzbhvo


妻?娘?
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/10(日) 22:33:40.72 ID:VGPphmIpo
>>83
自分の娘を娶ろうとする鬼畜エルフの可能性が微レ存
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/15(金) 22:41:56.51 ID:oCa4VMUa0






「肉......たべたいな......」

「む? 突然どうしたんだ? 何時もの男なら果実というのに」

「いや〜果実ばかり食べてると......肉が恋しくなるんだよ......」

と、暖かな陽光降り注ぐ湖で男とダークは

他愛のない話を展開していた。

「エルフって肉食べるの?」

「うむ、私達も一応食べるぞ。滅多に食べないがな。そっちは多いのか?」

「人間は結構食べるな〜。果実より食べてる」

「そうか、食べたいなら取りに行けばいいさ」

「でもな〜............ところでさ」

「む? なんだ男?」

「そろそろいいかな? これ?」

男がそう言うや、視界が白から、端正な顔立ちをしたエルフの少女に切り替わる。

男はダークを後ろから抱きしめていた。

「まだ駄目だ」

「えぇー」

この形になってもう幾分かたつ。男は溜め息をついた。
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/15(金) 23:01:53.69 ID:oCa4VMUa0

「さすがにちょっと疲れてきたんだけど......」

「ふぅ仕方ないな。なら今度は私が......」

「あ、ちょ......」

溜め息をつく男にダークはフニュリと頬を緩め
次には男の方へ身体を向ける。

そして乗りかかるようにして男を押し倒した。

「男......」

「......はぁ、もう少しだけだぞ?」

ダークと出会って一週間過ぎた。

たった一週間の間に男はダークのことをかなり知った。

好きな食べ物や趣味、そんなささいな事から......はたまた
赤面するようなことまで。

「ふふ、男は押しに弱いな」

「からかうな」

男もダークに多くのことを語った。

「すまんすまん。優しくてつい、な」

そのせいか少し困ったことにもなっている。

「最初はもう少し慎みあるエルフだと思ってたよ」

「そう言わないでくれ。今だって自制はしてる」

気心がしれたせいか。互いの距離が限りなく縮まってしまったことが一つ。

それも、恋人のような振る舞いをするほどにだ。

87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/15(金) 23:12:15.54 ID:oCa4VMUa0

「俺からすれば、もう少し自制してほしいよまったく......」

「ふふ......男ぉ......ん」

「おいおい、自制するんだろ?」

「いいじゃないか。ほ〜ら」

ダークは男の手を取り、ポンッと自身の頭へと乗せる。

「これくらいは許せ」

「はいはい......」

男は乗せられた手でダークの髪をいじり始める。

髪をいじられるのはダークのお気に入りらしい。

「本当好きだよな。これ」

「ああ、男にされると嬉しいんだ」

暇さえあれば、おねだりされているほどだ。
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/16(土) 04:11:11.28 ID:IV6V0fSyo
パンツ脱ぎかけたのに
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/16(土) 23:24:38.85 ID:Y50GkhZT0

「その様子だと身体の調子は良いみたいだな」

「ああ、すっかり回復した。男のおかげだな」

「そっか、そりゃ良かった」

「しかし、回復したはいいが......」

「いいが?」

「腹が減って困る」

キュルル〜

「......ふぬ」

「へへ、そろそろ昼だからかな?」

「わーらーうーなー!」

「ごめんごめん。ほら腹が減ったなら探しにいかないと。そら、よけたよけた」

「......駄目だ」

「書物にはエルフは甘えん坊ですって追加しないとね?」

「な、何度でも言え......も、もう少しこのままが良いんだ」

「......ふぅ、我が儘なエルフさん......だ!!」

「ふぁ!?」
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/16(土) 23:38:07.73 ID:Y50GkhZT0

男は腹に力を入れ、ダークを抱き上げてそのまま勢いよく立ち上がった。

「......ぁ」

「よし、行こっか」

「う、うむ。これも悪くない......」

「ずっとはしないよ?」

「............」

「おいおい、そんな悲しい顔しないでよ」

「まぁいい、自分のことは自分でしなければ。下ろしてくれ」

「お、さすがだね。おいしょっと。よし出発」

「昼だけとは言わず、夜の分も取らないか?」

「うーん、そうだねそうしよっか。あ〜肉食いたい......」
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/16(土) 23:51:51.71 ID:Y50GkhZT0


ダークと男は果実をもとい、昼食を手に入れるために森の中へと入っていく。


「ここに来てからよく思うんだが......男の暮らしは随分と自由だな」


「そう? いや......まぁそうかもしれない。お、発見」


「それだ。そうやって果実を食べて、また見つけては食べて......
 遂には腹が満たされる。お、これは食べられるか?」


「そ、こうやって気ままに食べながら、森を歩くのがけっこう
気に入ってるんだ。これは毒性があるから駄目だね」


「......ふふ、果実を見つけて食べながらの散歩か......。どんな毒性があるんだ?」


「ああ、特に森の中が好きなんだよね。
 それは性的欲求を促進させる薬とかに使われるんだ......こら、食べようとしないの」


「むぅ......」

92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/17(日) 22:49:59.79 ID:74pSmqXM0

そんな感じで男とダークは森の中を歩いていた。

「ふぅ〜これくらい食えばちょうどいいな」

「私もこれくらいで止めよう。あまり食べるのは身体に悪いしな」

「俺の倍近く食べていう台詞かい?」

「そ、育ち盛りなんだ私は!!」

「まぁ、食欲があるのは良いことだよ」

「よし、では夜の分も取ろうじゃないか」

「こ、行動が早いな......少しはのんびりしたいよ......」

「......!! ならのんびりしよう!!」

「?」

「男、座れ」

男はダークに言われるがままあぐらをかいて座る。
そしてダークがその上に乗った。

「またですか......」

「熱烈に......が私の方針だ」

「積極的だね。どこかの本の女の子みたいだよ」

「なら、さしずめ男はロリコンかぁ?」

「俺はウルフルの思想に大賛成だから、そんなのは気にしてないよ」

「素直だな?」

「さぁね、健気な頑張りを無駄にはしないさ」

「良いのか? そんなこと言われたら期待してしまうぞ?」

「言ったでしょ。嫌いではないんだよダークさんのことは」
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/17(日) 23:03:43.70 ID:74pSmqXM0

言って男はダークの頬に手を添えた。
そのままゆっくりと撫でる。その柔らかな感触に男は笑みを浮かべた。

「それに......ダークさんが本気なのはよく分かったつもりだよ」

「お、男......じゃあ......」

「でも、まだ早い」

「なぁ......」

「もう少しダークさんとはこの距離でいいよ」

「むぅ、手ごわいぞ男」

「そりゃあ手ごわい方がやりがいを感じるでしょ? 
 て言ったのダークさんじゃないか」

「よ、弱音を吐いてしまう時もある......」

「そこは頑張ってほしいな」

「頑張れって......もう.......男の言葉がよく分からんぞ」

「言ったでしょ。俺にとってダークさんとそういう関係になるのには
 おも〜い意味があるんだよ。で、それにはまだ早いだけ」

94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/17(日) 23:18:56.26 ID:74pSmqXM0

男の言葉に異議のあるような視線でダークは男を見つめる。

「もう少し分かりやすい説明を求める」

そんな彼女に男は若干破顔し、ダークを優しく抱いて、頭をさする。
ダークは突然の愛撫に困惑したが、それも束の間、次第に男へと身体を預ける。

「......ん」

「テオリア......」

「あ......!! 男ぉ!!」

「分かってる。エルフが自分の真の名を言うのは
 自分にとって最愛の者にだけ......それに俺を選んでくれた......嬉しいよ」

「ん......私も嬉しい......」

「だからこそ、この時間を大事にしたいんだ。テオリアと一緒にいるこの時を」

「ああ、男がまだそうしたいなら......私は待ってるよいつまでも......」

「まぁそんなに待つこともないかもしれないけど......」

「お、男......」

「ん? なに?」

「これからはずっとその名で読んでくれないか?」

「......いいよテオリア」

「!! もう一回......」

「テオリア......」

「......ぁ おとこ......ん......」

「よしよし」



つづく。
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/18(月) 07:38:56.76 ID:dvXSULYUO
おつ
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/18(月) 09:59:55.47 ID:b1x/GDNDo
つづけ
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/24(日) 02:18:18.75 ID:zrOYNXOx0


「!!」

「......男?」

「ダークさんちょっと離れてて」

「え?」

「おしどり夫婦ごっこは終わり」

「ふ、夫婦ごっことはなんだ!! 私は本気......は!!」

「気づいた? 何かいる......大きいな......」

ダークの抱擁を解き、男は立ち上がる。
辺りは静寂としていた。

「男、恐らく......」

隣にいるダークも意識を切りかえていた。
さっきまでのあの甘い表情ではない。

「前から獣達が騒いでいると思ってたら......当たりだよ」

「だが男、どうするんだ?」

「へ、なにが?」

「私達は武器を持っていないぞ?」
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/24(日) 02:28:53.73 ID:zrOYNXOx0

「武器?」

「だって丸腰じゃないか......」

「へへ、何言ってんの」

「ぬぁ!?」

だがダークの心配をよそに、いつものように笑う男がいた。
そして安心しろと言いたげな頭への愛撫。

「安心しろ。武器はある」

「ど、どこに?」

「これ」パシン!!

それは拳と拳を叩き合わせた音だった。

「す、素手......だと!?」

バキバキバキィィ!!

ダーク「!?」

男「お!! おいでなすった!!」
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/24(日) 02:35:53.27 ID:zrOYNXOx0

グラァァァァ!!!

「ワイルドベアか......背丈はざっと5メートルか?......すると大人だな」

「..................でかい!?」

グルルルル......!!

「ほう、威嚇してるな。これは戦うしかないな」

「!? 正気か!?」

「もちろん」

「相手はワイルドベアだぞ!? いくらなんでも無謀だ!! にげーー」

ガァァァァ!!! ドン!!

「!! ダーク!!」ダッ!!

「ひゃあ!!?」

100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/24(日) 02:49:13.45 ID:zrOYNXOx0

「ふぅ〜ダークさん駄目だよ。あいつらだって無視されたらそりゃ怒る」

刹那的時間、ワイルドベアは男とダークへと飛びかかってきた。
男はすぐさまダークを抱え、近くの木に飛んだ。
下では殺意をむき出しにした獣が二人を睨んでいる

「あいつくらいなら、この木もひとたまりないな......
 ダークさんはここにいてね。あいつ片付けるから」

「男!! あいつに素手は駄目だ!! 男のエルフでさえ武器をもち
 五人で挑まねば勝てない!! そんな奴に素手なんて......」

「守る」

「え......」

「ダークを守るよ。だから信じて」

「............し、死んだら許さないからな!!」

「承った!!」タッ!!

グルルルル!!

「さて、俺を見下ろし吠える獣よ」

ガァァァァーー!!

「弱肉強食の摂理を教えてやろう!!」
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/24(日) 03:03:00.38 ID:zrOYNXOx0

ワイルドベアが腕を振りかぶると同時に男は突貫、懐へ潜る。

「ふん!!」

右足を強く踏み締める。足が地にめり込む。

「よいしょぉ!!」

だかそんなことは意に介さず、ワイルドベアの腹部へ拳を打ち込み。

ゴァァァ!?

空中へと殴り飛ばした。

「なぁ!? 飛んだ!?」←ダーク

「シッ!!」

男は即、空中へ身を放り出されたワイルドベアへ回転しながら跳躍

「うおりゃぁぁ!!!」

ワイルドベアの頭部を蹴りつけた。

回転の力と男の持つ剛力で、ワイルドベアは五秒もたたず地上へ、

そして地を揺らす轟音が響き渡る。
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/24(日) 03:13:04.66 ID:zrOYNXOx0

ガュァァァ!!?

ワイルドベアはその衝撃に悲鳴をあげた。

「さすがだな、今ので生きているのか......まぁ、痛いだろうが」

グルルルル......!! グルルルル......!!

「でも、俺は加減しないぞ......それが自然の掟だからーー」

キュァァァ!!

「!!」

ダーク「男!! 後ろ!!」

「もう一匹いたのか!?」

キュァァァーー!! ドスドスドス!!

「くっ!! あっぶないな......」

「男ー!! 大丈夫か!?」

「ああ、ちょっと引っかかれたー!!......でも......」

グルルルル!! 

キュァァァ!!

「さすがに二匹はキツい......かな?」
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/24(日) 03:20:28.49 ID:zrOYNXOx0

「お、男ーー!!」

「ふぅ......これは仕方ないな......」

キュァァァ!!

ガァァァァ!!

「逃げるか......」ボソ タッ

「男!? ち、血が......腕から血が......!!」

「大丈夫、死にゃあしないよ、それよりも......」

「逃げるよ!!」ガシッ!! ダッ!!

「ふえ? ひゃああ!?」

キュァァァ!! ガァァァァ!!

ドスドスドスドス!!
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/24(日) 03:34:50.23 ID:zrOYNXOx0

「男!! 腕は大丈夫なのか!?」

「うん、でも二匹相手はさすがに無理」

「に、逃げるってどこに逃げるんだ!?」

「ダークさんと出会った場所」

「そ、そこに何かあるのか!?」チラ

ガァァァァ!! キュァァァ!!

「ヒッ!!」

「あるよ。凄い物がね」

「それは何だ!? 武器か?」

「うーんおしいね。さて何でしょう?」

「何でしょうって......何を呑気な......」チラ

キュァァァ!! ガァァァァ!!

「ヒィ!?」

「よしダークさんには特別だ。ヒントをあげる。お、見えてきた」

「それはウルフルの上巻に書かれている言葉
 我々に神が与えし二つの試練............」

キュァァァ!!!

「お、男!! 来るぞ!?」

「それは......」

バカァ!!

キュァァァ!?

ダーク「お、落とし穴!?」

男「そう、知恵だ!! あと思慕の念だね」

105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/24(日) 03:44:28.89 ID:zrOYNXOx0

「人が人たらしめる要素と言えば知性だ」

ザシュ!!! キュァ......!

「ッ......!!(お、落とし穴の中に木の槍が......)」

「それは非力な俺たちが、こいつらから絶滅されずに生きていく武器だ」

「ひ、非力だと?」チラ

「まぁ例外もいるけどね」  

ガァァァァァァァ!!?

「おっと、安心するのは早かった」

ダーク「そうか、もう一匹残って......な......!!?」

男「............そうか、お前ら......」

ガァァァァァァァ!!!

ダーク「泣いている......?」

男「途中から気づいてはいたけど......」

ガァァァァ!!! ポタポタ 

男「番[ツガイ]か......」
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/24(日) 03:45:03.08 ID:zrOYNXOx0
つづく
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/24(日) 03:54:41.84 ID:uGz/G1cDO
おつん
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/24(日) 11:32:01.24 ID:RbGxxKn0o
おつ
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/24(日) 16:29:09.38 ID:zrOYNXOx0

「番......夫婦か......」

「うん、多分穴に落ちたのが牝で......」

ガァァァァァァァ!!

「こいつが......雄だな......」

「お、男......?」

ふと、男の顔にいつか見た、寂しさを帯びたものをダークは認める。
しかし、それは瞬く間に消える。

「さて、そんじゃ続きといこうかい。熊さん。ダークさんは後ろにいてね」

「う、うむ。気をつけてな」

「勿論!!」ダッ!!

ガァァァァ!!

「......(男......)」

ーーーーーー
ーーーー
ーー
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/24(日) 16:45:28.39 ID:zrOYNXOx0

「............ふぅ」

「(あっけないな......凄まじい強さだ......)」

男の足下には事切れたワイルドベアの雄がいた。
圧倒的な力でワイルドベアをねじ伏せたのだ。この人族の男が。

「さて、ダークさんこいつら埋めるから手伝って」

「え、埋めるのか?」

「うん、最初は食べようかと思ったけど......やめた。二匹とも埋めることにする」

「......分かった」

「よし、じゃあその穴にいれようか。串刺しにならないようにいれないと」

そう言って男は足下のワイルドベアを担ぐ。
ワイルドベアを運ぶのはエルフの男五人がかりで行うほどの作業だ。

「............例外......だな」

「よいしょ......よし後は埋めるだけ。ダークさん」

「お、おう」

「よいしょよいしょ。ん、顔に何かついてる?」

「いや、優しいな......男は......と考えていた」

「......へへ、ありがとう」
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/24(日) 16:56:06.61 ID:zrOYNXOx0

「よーし、土葬完了。さ、帰ろうか」

「男」

「ん?」

「腕は大丈夫か?」

「今は何ともないよ。ただ......洗わないとね。俺もダークさんも」

「洗う......とは水浴びか?」

「うん、近くに滝があるからさ。一週間浴びてないからちょうどいい
 あ、服をとりにいかないとね」

「わ、私のはこれしか......」

「大丈夫。俺の服を着なよ」

「お、男の服か......分かった。じ、準備しておこう」

「? なんの?」

「な、なんでもない!! ほら戻るぞ!!」

ダークは男の背を押す。

「おっとと、はいはい分かりましたよ」
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/24(日) 17:10:32.18 ID:zrOYNXOx0

一度家に戻り、着替えの服を取る。

二人は滝へと向かった。

「はい到着」

「おお!!」

時刻はまだ太陽が少し傾いたくらいだった。

「どう? 森の民から見たここの感想が欲しいな?」

空は木々が軽く陽光を遮るように存在し、大地に
微かな日の光を落としていた。

「ああ、とても綺麗な場所だ......風も吹いている......心地いいよ」

「へへ、そりゃ嬉しいな。ここはよく使ってるからね。
 手入れしているんだ。風は滝のおかげかな?」

そして一際目立っているのが奥にある滝だ。

勢いも緩やかで、水浴びにはもってこいだ。

113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/24(日) 18:59:54.02 ID:zrOYNXOx0

「先いいよダークさん」

「ふふ、男。何を言っている。一緒に入るぞ」

「あ、いや、それは......」

「駄目か......?」

「く、その顔は反則だよダークさん......。でも駄目」

「......む、けちだな」

「けちでけっこう、ほら先行ってきなさい」

「お、覚えてろよ!!」

「はいはい」

ーーーーー
ーーー
ーー

「ふぅ......行ったな。はぁ〜疲れた......」

「............ぅ、思いのほか深かったか?」ズキ

「......獣でも番が死ねば涙を流す」

「......(大切な者を思い、慕い、愛しむ......その究極系が夫婦......)」

「支え、支えられ、互いを求める......そんな関係を......俺は......」

「(ダークさんとなら......)」

「ダークさん......」

「呼んだか?」

「うぉ!? はや!?」

「まぁな、気持ち良かったぞ。もう一度入りたいくらいだ」

「そ、そっか。いつでも使ってくれていいよ。そんじゃ俺も入ろうかな」スタスタ

「............ふふ」ニヤ
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/24(日) 19:15:14.44 ID:zrOYNXOx0



水浴びをしていると滝の音に紛れて声が聞こえた

「男.......」ギュウ

次いでやってきた、背中から伝わる柔らかく温かい感触。

「......やられた......油断してた」

「猛烈に......が私の方針だ」

「猛烈すぎやしないかな?」

「エルフはこんなものだ。一度好きになれば、とことん尽くす
 だから私の行動も当然のこと、意味は分かるだろ?」

「それは知らなかったな......」

「感情を鋭く捉えるぶん、気持ちに正直だからな
 それにただ来たわけではない」

「え?」

「男、こっちを向け」

「そ、それは......」

「いいから。お礼ができんだろ?」グイ

「ぬわ!? お、お礼?」

「そうだ。助けてくれたお礼だ」

「別に気にしなくてもいいよ?」

「まぁ、八割ほどはエゴだ。受け取れ......ん」チュ

「ムッ!?」
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/24(日) 19:22:23.99 ID:70ifIGIDO
さて、そろそろ紳士スタイルに着替えるか
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/24(日) 19:27:39.53 ID:zrOYNXOx0

「ん......」

ダークからの抱擁、そして優しさを込められた柔らかい接吻を
男は思いのほか、すんなりと受け入れた。

「ぷはぁ.............うむ、美味い」

「こ、これは......(身体が軽い......? 腕の傷が治ってる......!)」

「私の生命力を男に送った。元気になっただろ?
 ああ、心配するな。生命力といっても寿命が減るわけじゃない」

「ダークさん......」

「あと......名前で呼んでくれないと許さんぞ?」

「あ、ごめん......」

「まぁいい。男に助けられた身だ。それに私は、こんなことしかしてやれない」ギュ

「そんなことないよ。ありがとう......テオリア」

「ふふ、じゃあ......もう一回......いいか?」

「いいよ。おいでテオリア」

「ふふ、男ぉ......ん」
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/24(日) 19:52:18.04 ID:zrOYNXOx0

「ん、はぁ......男......聞いていいか?」

「いいよ。なに?」

「たまに.......男の顔が凄く寂しく見えるんだ......
 男は今までどんな人生を歩いていたんだ?」

「人生......そうだね......大変だったよ......死ぬと思った時もあったし
 命を狙われた時もある」

「どうして?」

「まぁ、生まれてきたのが間違いだったらしいし......
 それでも認めてほしくて努力したよ。こんなになるまでさ」

「そ、それだけ努力したなら......」

「でも駄目だった。信じてた人まで.......結局俺を裏切った」

「あそこは嘘ばっかりだったんだ.......」

「!!.............ハァ!!」

刹那、男の心に潜んでいた陰をダークは鮮烈に認識した。

「テオリア?」

「こ、こん......なに......そんなに......」

「テオリア......泣いてる?」

「グス......すまん......ちょっと感傷的に......」

「構わないよ。俺の心の中を見たのかな?」

「.............」コク

「そっか.......」

涙に頬濡らす彼女を男はそっと胸へ引き寄せる。
頭を撫でると、彼女の髪は滝から落ちる滴でいつもより艶やかだった。

「嫌なもの見せちゃったな.......ごめんね」

男はテオリアに謝罪する。テオリアは首を横に振りそれに答えた。
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/24(日) 20:05:53.44 ID:zrOYNXOx0

「私は嘘はつかない」

「テオリア......」

「私が男を支えたい。まだ幼いし.......男より弱い私だが.......
 懸命に生きているお前と、私は共にありたい。今も、これからも」

「...................」

「おとこ......」

「まいったな.............」ギュウ

「!! はぅ.......」

「俺には勿体無いくらいのお嫁さんだ.......」

「!! じ、じゃあ!!」

「ヴァン・ガロッゼ」

「ヴァン.......ガロッゼ......?」

「俺の本当の名前だよテオリア」

「!! ヴァン.......ヴァン!! よし覚えた!!」

「これからそう呼んでくれ。テオリア」

「ふふ、ヴァンか.......カッコいい名前だ.......ヴァン.......」

「これからよろしくな? 奥さん」

「お、奥さん!!///」

「へへ、顔赤いな」

「うるさい!! う、うむ.......よろしく頼む」









つづく
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/24(日) 20:57:21.78 ID:iRgQyUq9o


そういえばエルフの里からとあいつはどうしたんだ?
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/25(月) 06:16:37.70 ID:GNamWqwro
画面の前で F5 連打してるよ
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/26(火) 08:13:22.34 ID:nmHrJe9yo
乙でした
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/27(水) 01:11:10.69 ID:d8EknOU60





「まさか、あの二頭を倒すとは......」

先ほど男とダークのいた場所で、彼、エル男は神妙な面持ちを浮かべていた。

「(男......か。力だけなら族長に匹敵するだろうな......脅威だ......)」

「(だが......私は進む道を変えるつもりはない......)」

エル男は男がワイルドベアと戦う一部始終を見ていた。
もちろん、バレないようにと万全を期して。

「(あの二頭をけしかけてダークを連れ戻すはずだったが......)」

「(直接出向いた方が良さそうだ......)」

「(ふ、ダーク。今に見ていろ......人族よりもエルフの方が優れていることを思い知らせてやる)」

「そして............」グッ!!

「お前の顔を絶望で歪めてやろう......!!」

「フフフ............フハハハハハハ!!!」

123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/27(水) 01:12:37.30 ID:dkg19smDo
人の恋路を邪魔する奴は
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/27(水) 07:53:11.83 ID:BbvYUbHXo
子ベアーにやられて、人知れず退場
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/28(木) 00:28:50.02 ID:XwkFdyQT0
〜男の家〜


「なぁ、ヴァン」

「なに?」

「ヴァンは人間の中でどれ位強いんだ?」

「どれくらい......そうだな〜」

月に美しく照らされた湖のほとりに、ダークと男は身を横たえていた。
互いに体を密着させ、存在を確かめあうように......。

「一応、王国で開催された武術大会では優勝したから、そこそこ強いよ」

「優勝してそこそこか?」

「周りが良くても俺自身はちょっと不服だったから。しかもその態度が
 気に入らないからって上流階級の人達から睨まれるし」

「嫉妬していたんだな」

「そりゃあ、上流階級の人達はこぞって優勝を狙ってたからさ
 選りすぐりの人材を武術大会に送るわけでね」

「優勝するとどうなるんだ?」

「上流階級のメリットは優れた人材を育成しているのを
 評価されて地位が上がったりする、選手には賞金、名誉が手に入る」

「いいことだらけか?」

「そうでもないよ。賞金狙われるわ、己の名を上げようとする
 奴に勝負を挑まれたり、面倒事も多かった」

「ならヴァンはどうして出たんだ......? というのは野暮な話か......すまんな」

「テオリアは俺の心が見えるから、言わずとも分かるもんね」

「だが心配ないぞ。私がヴァンの存在を認めている」

そういってダークは男の胸元に顔を埋める。
男は胸元にすりよる彼女の背中に手を回す。

「エルフはみんな素直なのかい? それともテオリアだけ?」

男の問いにダークは恥じらいを帯びた笑みを浮かべ男を見つめる。

「違うな。ヴァンが私をこんな風にさせているんだ」

「俺が?」

「ああ、こんな気持ち初めてだ.......こんなにも胸が痛くて
 でも......なんだか嬉しくて......隣にいるだけで......満たされて......ぁ」

ふとおもむろに男はだダークを抱いて立ち上がる。

自分の、身体をなんの力みもなしに立ち上がるその力強さに
ダークは先日の男の逞しい身体を想起させ。無意識に彼に熱い視線を注いでいた。

「ヴァン?」

「ありがとうテオリア......嬉しいよ」

刹那、ダークの男への思慕の念が最高潮に達した。

「そうか......それは良かった!!」

「ああ、俺もテオリアと同じ気持ちだよ。さぁ、今日はもう寝ようか」

「な、なぁヴァン。このまま運んでくれないか?」

「大丈夫、今日はもう離さないよ」

「.....ん」
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/28(木) 10:08:47.30 ID:sMVyqEuAo
(素敵なSS過ぎて感想を書くのも躊躇ってしまうが、おもしろいよー読んでるよー)
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/28(木) 18:06:01.40 ID:aaqlKAtRo
すばらしい
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/28(木) 23:10:53.27 ID:XwkFdyQT0



そうして二人は家へと戻り、二人で身を寄せあいながらベッドへと入る。
その間も男はダークを離すことはなかった。

ダークは男と繋がれた手を頬へ持っていき、大切な物のように弄る。

「ヴァン......お願いがあるんだ......」

「お願い?」

「私もヴァンのように強くなりたい......あのワイルドベアを倒せる
 この手のように力強く......素手の戦いを教えてくれないか?」

「テオリアも戦いたいの?」

男がそう聞いてみると、途端に視線を横へと向けて、もじもじと言い始めた。

「いや、ヴァンの側にいるなら相応に強くなければ......そ、そのぉ......
 お、奥さん......としては失格だろ? そ、それに......ヴァンと同じことをしていたい」

「先に言っておくけど、やると決めたら生半可にはやらせないよ?」

「それは覚悟している。嘗めるなよ? 私だって里では戦士として生きていた
 まぁ、あのクマに一人で行くほど強くはないが.......」

「.......本気なんだね?」

「嘘はつかんと......先に述べたぞ?」

「............汗かいたらすぐにふくんだよ?」

「......!! ああ、分かった!!」

「あと俺の言うことはきちんと聞くこと。稽古中は師匠と呼ぶこと」

「うむ、師匠」

「いやいや、今はいいよ」

「ふふ、この響き、悪くはないな!!」

「じゃ、明日からさっそく始めようか。というわけで寝よう」

「ぁ......ヴァン......その.......あの///」

「............その様子だとすっかり気に入ったようだね?」

「一回くらい......いいだろ?」

「はいはい、一回だけだよ?」

「!! ヴァン!!」

するとダークは躊躇することなく、男の首へ腕を回す。
そして徐々に顔を近づけ、男の唇へ自分の唇を重ねた。

「んふ......ふむぅ......」

「......ん」

「......はい、終わり」

「ぁ......もう少し.......」

「それくらいが良いんだよテオリア」

「むぅ、そうなのか?」

「そうなの、ほらもう寝なさい。眠るまで撫でてやるから」ナデナデ

「ふぁ......こ、これならすぐ眠れそうだ」

「おやすみ。テオリア」

「ああ、おやすみ......ヴァ......ン......ん」
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/28(木) 23:31:16.80 ID:XwkFdyQT0






自分の胸の中で寝息をたて始めたエルフを見て、男は笑顔を浮かべる。

窓から差し込む淡い青色の光が優しげに二人を照らしていた。

「(しかし、あの番のワイルドベア......違和感が拭えないな......)」

「(まずワイルドベアは自分の縄張りから遠くへは足を運ばない。だがこの森に
 アイツららしき縄張りを見た記憶はない)」

「(それにあの二匹は番だ。普通なら雌は狩りをする雄の帰りを巣で待つはず......)」

「(でもあのとき間違いなく二匹で俺を仕留めようとしていた......そして何より......)」

「(アイツらワイルドベアの生息地はここより西......エルフの国の周辺だ......)」

「(常識的にアイツらがこっちへ来ることはない......)」

「(だが、それを大きく裏切り、アイツらは姿を表した)」

「(これはおそらく......誰かの手引きだろう......)」

「(狙いは俺の命か......それとも......テオリアか......)」

「スゥ......スゥ......ん」

「テオリア......(でも、もしそうだとしても俺は......)」ナデナデ

「守ってやるからな?(渡さないよ......)」

「......ふぅ......はぁ......ん、ヴァ......ン」

「.............よしよし」ナデナデ
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/30(土) 02:25:27.37 ID:5tVKnggAO
…ふぅ








うっ
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/04(水) 00:17:26.42 ID:aEAx7ZLd0





ダークが目を覚ますと、視界が真っ暗だった。

「スゥ......ふぁ......(ん.......ヴァンの匂いだ......)」

ダークは男に抱擁されているのに気づいたのは早かった。
そして頭に乗せられてうる手の存在にも。

「(ふふ、ヴァン......ヴァン)」

もそもそとダークは男に擦りよる。

純粋な愛情表現だった。

「ヴァン.......ヴァ〜ン......まだ寝てるな」

ふと、ダークの視線は男の唇へと定まる。

「初めてだった」

瞳に映る唇を指で軽く撫でる。

「そして心地よかった」

頭に昨日の事を想起させる。

「かっこ良かった」

男の身体を脳裏に思い描く。

「(その足に逞しさを感じ、大きい背中に身を預けて、この腕に抱かれ
 声に安らぎ、瞳を愛しく見つめ、そして心に救われて......)」

ゆっくり、ゆっくりと顔を男に寄せる。
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/12/04(水) 10:01:06.00 ID:yajKOUNdO
うむ
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/04(水) 14:46:56.74 ID:OFWYbhp+O
ワイルドベアの夫婦可哀想……
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/04(水) 20:04:44.82 ID:aEAx7ZLd0

身をのりだし、男の上に乗っかる。

身体が勝手に動いた。まるでそれがベストだと言いたげに。

「はぁ......はぁ......」

自然と自分がしている行為に、実りある双丘の奥が早鐘を打つ。

「ん......ちゅ」

一瞬、騒がしい早鐘の音が消え失せる。

頭が真っ白に染まり、身体の内側から温かなものが溢れているような

そしてそれが全身を支配していく錯覚を感じる。

「ふむぅ......ふぅ......ぶぁん、もっと......」

唇をあわせることだけでは足りない。
もっと欲しい。ヴァンが欲しいと、身体が叫ぶ。

「でも......これくらいがいいのか?」

しかし、昨夜の彼の言葉がダークを止めた。

「だ、だが......」

自分の股の下では、規則正しいリズムを刻む男の腹がある。

無防備な寝顔だ。昨夜の、規格外な戦いを展開した時とは対象の穏やかな寝顔。

「そうだな、これでいい。うん、これくらいが......ふふ」

「さて、ヴァンが起きる前に朝食でも作ろう。なんたって私は嫁なのだから」

そう言い男の頬を撫でた後、ダークはベッドから退き、家を出た。

135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/04(水) 20:18:51.93 ID:aEAx7ZLd0





「テオリア......これって」

「私自慢の山菜料理だ。森に里で自生していた山菜があったから作ったんだ」

「おぉ〜まさかエルフの手料理を食べられるなんて......ではいただきます」

「......」パク

「......どうだ?」

「お、美味しい......」

「......ぇ」

「美味しいよテオリア」

「ヴ、ヴァン?」

「うん、味付けも絶妙で文句無しだな」

「ヴァン!」

「ん? なに?」

「何故......泣いているんだ?」

「.......え」ポタポタ
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/04(水) 20:39:43.22 ID:aEAx7ZLd0

「......ヴァン?」

「へへ、ごめんね。ちょっと昔のこと思いだしてた」

「昔......」

「うん、今のこの光景がさ。懐かしいなって」

「......なぁ、ヴァン」

「ん?」

「私はある程度ならヴァンの心を読める。だがそれは完璧じゃない
 見えないものもある」

「うん......」

「でも私はもっとヴァンが知りたい。今はいいが、いつか話してくれ
 そうしてくれると、私は嬉しい」

「テオリア......」

「私はヴァンの妻だからな。受け止めてみせるぞ?」

「へへ、じゃあちゃんと整理したら。その時話すよ」

「ああ、待ってるぞ」 

「ありがとうテオリア。大好きだよ」ナデナデ

「む......そうか、もっと褒めてもいいぞ」

「でも、俺のへそは濡らさないでね」

「!!......いや、あれは.......///」

「世の男としては嬉しいよ。でも寝てる俺をせめて起こしてからね」

「き、気をつける」

「よし、おりこうさんだ。さ、今日から修業だ。テオリアもしっかり食べなよ」ナデナデ

「う、うむ......」
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/04(水) 20:40:49.54 ID:aEAx7ZLd0
つづく。後々、そういう所も書くから気をつけてください
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/12/04(水) 21:05:14.29 ID:bSoc5no90
構わん
もっとやれ
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/04(水) 23:57:08.02 ID:4cwZeIu+o
乙でした
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/05(木) 10:01:13.50 ID:glEF3PQmo
そういうところとは濡れ場でしょうか?NTRでしょうか?
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/06(金) 22:06:40.39 ID:W+yiCX2F0





「さぁ、天気良し、空気も良し。絶好の修業日和だ」

「ああ、太陽の光が心地いいな。師匠」

「お、ちゃんと覚えてたね関心するよ」

「やる気は十分にあるぞ」

「それは良いね。じゃあ始めるよ。とまずは修業内容を説明するね」

「よしこい」

「では簡単に説明しよう。テオリアの修業は三つ」

「ふむ」

「まずは身体を鍛える。そして精神と技能を磨く。以上」

「簡潔だな」

「聞くより身体で覚えるのが良い。俺の持論だ」

「ふふ、ヴァンらしいな。ではどれからするんだ?」

「そうだね、まずは......精神からかな」
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/06(金) 22:28:13.88 ID:W+yiCX2F0

「精神か......なにをするんだ?」

「まぁ取りあえず座って」

そう腰を下ろす男に促され、ダークも腰を下ろす。
互いに向き合うように座った。

「いいかいテオリア。これからする精神修業はとってもシンプルだ
 たった一つ。たった一つクリア出来ればそく精神修業は終了。とってもラクチン」

「それは.......なんなんだ?」

「それはねテオリア......」

おもむろに、男は立ち上がり、近くの大木へと進む。

「自分の身体を......」

そして大木へ手を添える。

「とことん......信じることだ!!」グッ!!

「!! は!?」←テオリア

メキャ!!! ドズーーン!!

テオリアは絶句した。

「さぁ、テオリア」

ヴァンが木に添えた手で木をぶん殴り、粉砕したことに......

「ステップ1、木を打ち倒せ、己を信じて。をやるぞ?」

「は、はは......出来るかな?」

はやくもテオリアは苦笑いを浮かべた。
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/07(土) 23:59:35.14 ID:XJ2fuCyho
(精神も身体も技も鍛えられるじゃないですかー)
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/08(日) 15:46:27.79 ID:ixjR1h2d0

「そもそもだテオリア。なんで俺があの巨大な熊を運べたと思う?」

「それはヴァンの力が強いから......だろ?」

「はい残念不正解。そして師匠と呼ぶ」

言うやダークの頭を乱暴に撫でる男。

「む、精神どころか全てを鍛えられているんじゃないかこれは......?」

「大丈夫、テオリアにも出来るよ」

「いや......これは.....」

「さっきも言ったけど、大事なのは自分を信じること」

「信じてここまでいくか?」

「ほらそれが駄目。疑っちゃいけない。出来ると信じるんだ。自分は強い」

「ヴァ.......師匠には悪いがこれは少々荷が重い」

「大丈夫だって、テオリアなら出来る」ギュッ

「うぁ......ヴ、ヴァン?」

「テオリアは可愛いな〜」

「へ?」 

「綺麗なのに可愛さもあって、とっても食いしん坊かつ料理も出来る
 良い匂いもして、抱きしめると気持ちよくて、照れながら笑うところが
 とっても魅力的な俺の可い愛らしい嫁のテオリアが出来ないはずがないさ」
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/08(日) 19:54:56.26 ID:ixjR1h2d0

男の吐いた台詞はなんて安っぽいのだろう。

第三者からみれば思わず鼻で笑ってしまうほどの内容だ。

「う、あう......///」←テオリア

だがそこは男、ダークの性質を理解していた。

「(ほ......本気で言っている。ヴァンは私なら出来ると、本気で思っている!!)」

「テオリア」

「は、はい......」

「テオリアなら......分かるだろ?」

そう言って男はダークの手をとり、自身の胸へと置いた。

何が分かるのかは口にしなかった。否、しなくてもダークには分かっていた。

「ほ、本気なんだな......///」

「もちろん。さぁやってみよう」

「......うん!!」
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/08(日) 20:15:02.25 ID:ixjR1h2d0




〜昼〜

「ふふ、ヴァ〜ン」スリスリ

「こらこら擦り寄られたら食事ができないでしょ」

「よいではないか〜よいではないか〜」

「俺がよくないよー」

「ふっふ〜ん。ヴァンも良い匂いがするぞ〜」クンクン

「(......ちょっと予想外だったな)」モグモグ

「ヴァン......///」ギュッ

「.......まぁ、いいけどさ」チラ

「......」←粉々になった大木

「頑張ったもんな」ナデナデ

「ふふ、凄く嬉しかったからな。私にもちゃんと出来たぞ!!」
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/08(日) 20:31:45.52 ID:ixjR1h2d0

「どうだテオリア。信じるだけでこんなに強くなれるんだ」

「信じる......か。私はちょっと違うかもしれない」

「ん?」

「[背中を預けられる者がいればその者は限りない安息を得る]」

「それ、ウルフルの台詞だね?」

「ああ、ウルフルが少女と夫婦になった直後に言った言葉だ」

「凄いな、そこまで覚えてるんだ」

「私の一番好きな本だからな」

「で、台詞の意味は?」

「ふふ、分かってるって顔をしてるぞ?」

「テオリアのその、柔らかくて可愛い声で言ってほしいな。ダメ?」

「いや、ヴァンがそう望んでるなら全然構わない」
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/08(日) 20:53:32.52 ID:ixjR1h2d0

「とは言ったが......改めて言うほどのことでもないから少し照れる///」

「へへ、照れてるテオリア可愛いよ」

男はそっと、ダーク優しく拘束する。

するとムニュリと柔らかい膨らみが当たる。

それはほんのりした幸福感を男に与えた。

「ほら言って」

「こ、これは余計に恥ずかしいぞ......」

「......テオリア」

「ぬぅ......///」

「ほら」

「じ、自分を自分で信じるより......ヴァンが私を信じてくれたのが
 とても嬉しかった。そうしたら何でも出来るような気がしたんだ///」モジモジ

「......」

「ヴァン?」

「......うん」ギュッ

「ぬぁ!? ぶ、ぶぁーん!?」もそもそ

「俺も、嬉しいよ......すごくね」
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/08(日) 20:56:14.29 ID:ixjR1h2d0
つづく>>140ネタバレーになるから秘密でし。
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/08(日) 23:06:57.94 ID:8HDDLgnwO
あまーーーーーい
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2013/12/08(日) 23:27:01.01 ID:ixjR1h2d0
うぁぁ......誤字多い......ごめんなさい。脳内で補完してください。
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/09(月) 02:35:06.63 ID:PQ8WbbNp0

「ヴァ、ヴァン......苦しい......」

「おおっとごめんよ。ちょっと嬉しくて......」

「ギュッとしてくれるのは別に良いんだが......加減してくれないと......
 ヴァンの力が強くてな......」

「でもなぁ、あれくらいがちょうど良いんだよ」

「むぅ?」

「テオリアのそこの感触がね」ぷに

「ひゃ......む、胸......?」

「うん、凄く気持ち良かった」

「......まぁ、たまになら苦しいやつでも構わんぞ」

「お、ありがとうテオリア」

「嫌では......ないからな......」

「へへ、さてこの後は技の訓練だ」

「技かぁ......今ならなんでもやれそうな気がするぞ」

「その意気だよテオリア」
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/09(月) 21:29:49.24 ID:PQ8WbbNp0






「脱力?」

「そ、要するに瞬発力を鍛えるよ〜」

「言葉から察するに力を抜けばいいんだな?」

「へへ、口で言うのは簡単。でもやるとなると大変だよ?」

「承知の上だ」

「じゃあ、さっそく......はい力抜いて〜」

「スゥ......ハァ......」

「いいかいテオリア、想像してごらん。君は液体だ
 身体が溶けていく。手も足も顔も頭も全てがトロトロに溶けていく」

「......液体に......」

「そうだよ。さぁその調子だ」

ーーーーー
ーーー
ーー

「......ク!! ああ......」

「おっと力んだね。ね? 結構大変でしょ?」

「ああ、はぁ......はぁ......脱力するのがこんなに難しいとは」ポタポタ

「見たところ疲労も溜まっているようだし。今日はこれで修行終わり!!」

「ふぅ......ありがとうございました!!」

「汗は拭くようにね?」

「うむ、滝へ行ってくる。男も来るか?」

「俺は遠慮するよ。ちょっとやることがあるからさ」

「? そうか、では遅くならない内に戻ってくるよ」

「うん、行ってらっしゃい」
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/12(木) 22:02:58.41 ID:vcpzHpFU0

「さてと......行ったか......」

ダークの姿が見えなくなると同時に男の雰囲気が変貌する。

それは戦いの臨戦態勢へと形相を変える。

「おい、隠れていてもバレバレだぜ?」

「!! まさか気づいていたとは......これでもエルフの中では隠密が得意なのだが......」

「近い内に来るとは思ったけど......案外早かったな......」

二人の雄が対峙する。

「......人間にしては腕が立つようだな?」

「その口ぶりからすると、ワイルドベアをけしかけたのはお前か......」

「ああ、そうだ」

「狙いはダークか?」

「テオリア......だろ? ヴァン・ガロッゼ?」

「ッ!!......お前......!!」

「最初はダークを連れ戻しに来たが......変更だ」

「人間なんぞに思慕の情を抱く者など......私に相応しくない。処理する」

「!! そうか......お前テオリアの婚約者か......」

「まずはお前からだ......覚悟しろ、人間!!」

エル男は高々に吠え、男へと突撃する。
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/12(木) 22:13:10.03 ID:vcpzHpFU0

だが、その刹那

「!! ガハ!?」

エル男の目の前に男が現れる。

「あまい......」

「な......に......!?」

エル男は動けなかった。
エル男の腹部を男の腕が貫通したからだ。

「テオリアの方が......倍は強いよ.....」

「み、見えな......かった......。やはりお前は......危うい......処理......しなければ......」

「急所を突かれたその身体で、やれるもんならな。」

男は吐き捨てるように言い、エル男を貫いた腕を無造作に引き抜いた。

156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/12(木) 22:20:05.82 ID:vcpzHpFU0

しかし、今度は男が虚を突かれた。

突然エル男の身体から煙が噴出する。

そして煙が止むと、男は絶句した。

「な!?」

「おや? 何を驚いている?」

「ど、どういうことだ!?」

男の目の前には先ほどまで重傷のエルフの男がいた。

だが今目の前にいるのは

「ははははは!! 人の歪んだ顔はいつ見てもたのしいなぁ!?」

ワイルドベアの子供だった。

157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/15(日) 18:31:51.35 ID:fOFClu3r0

腹部から血を流し、人が作りだすような歪んだ笑みを浮かべる。

「聞いたことがある。自身の自我を動物へとつけ、操る奇術が
 エルフにはあると。だが言葉も介するとはな」

「随分と理解が早い、人間というのが勿体無いくらいだ」

「[お前]はどこにいる?」  

「言わなくても......分かるだろ?」

「!! テオリア!!」

「おおっと行かせはしない」

ガサガサ!! ガサ!!

グルルルル!!

「ッ!! お前ぇ!!」

「ワイルドベアだ。ざっと十体はいる。この熊達は珍しく
 家族というものを大事にする奴らだ。最近は下の夫婦が死んでとても怒っている」

「くっ......その子供は......あいつらの.......!!」

「さぁ、引き金を引いたのは君だ。いくら君でもこの数は? 
 まぁ頑張ってく.....れ......」

そして子ベアーが己の血だまりに、事切れたように倒れた。

グラアァァァァ!!

キュイィィィィィ!!

ワイルドベア達が怒りの雄叫びを上げる。

子ベアーの死が引き金となって

「この......野郎......!! エルフゥ!!!」
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/15(日) 18:39:55.31 ID:fMDGchkDo
人知れず退場じゃなかったのか
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/15(日) 19:03:59.74 ID:fOFClu3r0






滝につくやダークは戦慄した。

「やぁ、久しぶりだね。ダーク」

「!! エル男!!」

一番会いたくない奴がいたからだ

「オイオイ、そんな張り詰めた顔するなよ? ほら頬の筋肉を上げるんだ
 こんなふうに!!」

エル男の顔が嗜虐的思考をしているような顔へと変わる。

「.......私は帰らんぞ」

「どうしてだい?」

「あそこは私には窮屈だからな」

「いいかいダーク。女というのはそんな生産性のないことはしなくていい」

「お前こそ私に構わずに他の女とでも婚約すればいいじゃないか」

「次期族長の座を何故捨てなければいけない? まぁそれがお前の価値だよ」

「私はお前のような女を道具としか思っていない奴はお断りだ」

「なに言ってるんだ。ダーク、お前に拒否権なんてない」
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/15(日) 19:16:29.83 ID:fOFClu3r0

「......帰れ」

「そういえば驚いたことがあるな」

「なに?」

「あの人間、随分と気に入っていたな? 名前は......ヴァン」

「......お前!! ヴァンに何を......!!」

「えぇ? したらどうにかするのかい?」

「殺す!!!」

「おお、そんなに感情を高ぶらされるている。よっぽど惚れているんだねぇ?」

「こぉんの!!!」

瞬間、ダークはエル男へと殴りかかる。

「おっとそれを食らうわけにはいかない」

しかし、ダークの直情的な攻撃はエル男を捉えることはできず
逆にダークは足をかけられバランスを崩す。

「な.......」

「相変わらず綺麗な髪だ」

言いながらエル男はダークの後頭部を乱暴に掴む。

そしてダークの顔面を地面へと叩きつけた。

161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/15(日) 19:51:19.26 ID:GDqNHu54o
エル男存在ごと消してしまえ
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/17(火) 22:36:16.94 ID:YHbXpz4p0

「がっ!!」

「ダーク、お前は昔からやんちゃな奴だったな」

「ぐぅ!! はな......せぇ......!!」

「後先を考えず、振り返らず、感情のままに、直情的に、
 お前はどうしてそう落ち着きがない?」グッ!! メキメキ

「う!! あ......あぁ......!!」

「今回もそうだ。外に出たい? 旅に出たい? 広い世界を見る? 
 はぁ......だから私は反対したんだ。あんな本を読ませるのは......」

「このぉ!! うぅ......!!」

「オイオイ、大人しくしろ。でないと......折るよ?」

「うぐぅ......離......せ」

「ふん」パキッ

ダークの左腕から鳴ってはいけない音がなる。

「!!......うぁぁぁぁぁ!?」

「うるさいなぁ」

エル男は悲鳴を上げる彼女の腹部を蹴りつける。

「う......ごほっ、げほ、はぁ......うぁぁ......」

「家出しなければこんなことにはならなかったろうに」

エル男はダークを見下ろし、蔑む声で言った。
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/17(火) 22:54:11.66 ID:YHbXpz4p0

「はぁ......はぁ......ヴァン......」

「......おやぁ、仮にもエルフの戦士であろうダークが、野郎の名を呼ぶとは
 少し見ない間に随分と惚れ込んだようだ」

そう発するエル男は楽しそうな表情を浮かべ、ダークの前にしゃがむ。

「羨ましいよ。こんなに綺麗な女を落とすなんて」

「ぐぁ.......」

髪を掴み、引っ張り、持ち上げる。

「真の名前を明かしたのなら、もうしたのだろ?」

「はぁ.......はぁ......はぁ」  

「!! へぇ、まさかまだしてないとは......」

「!! み、みるなぁ!!」

「何だ、あの男に惚れてはいるがまだまだ餓鬼ということか。なら.......」

品のない笑みで顔を歪ませ、ダークを見つめるエル男

ダークの脳裏にエル男が、己にしようとしている淫行のビジョンが浮かび上がった。

「い、いや......」

164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/18(水) 09:45:57.56 ID:IjtrYsvoo
男はまだか!男はまだなのか!!!
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/18(水) 13:25:46.06 ID:FY0fP7j7O
エル男じゃなくてエロ男に改名しやがれ!
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/18(水) 13:46:49.71 ID:r8AFxJs+O
関係ないけどSAO思い出した
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2013/12/19(木) 23:13:33.89 ID:v5iyIJyN0

ダークの悲痛な顔にエル男は心地よさげな表情を浮かべ

「ああ!! その顔だよ、その悲哀な顔を見たかった!!」

ダークの頬を優しげに撫でた。だがそれとは裏腹に
エル男の表情は狂気的な色に染まっている。

「うぅ.......やめろぉ......やめろぉ......!」

「ああ、綺麗だ。容姿だけ見れば実に良い娘なのに
 感心の中身がなぁ.......人間に愛しさを覚えるとは......」

「ヴァン......ヴァン......」

「あの男がそんなに好きなのか、だが安心しろすぐに会えるさ」

「な...に......?」

「君の愛しい人間はワイルドベアと戦っている。十頭のね」

「!! おまえぇ......おまえぇ!!」

「先日の彼の戦いは見事だったよ。一対一なら負けてたね」

「あ......あぁ.............」

「でも彼と言えども十頭も相手にはねぇ? 今頃は......死んでる?」

「!!」

ダークの瞳から涙が零れる。

「残念だよ。彼も君なんかと関わらなきゃ、こんなことにはならなかったさ」

「......う、嘘だ」

「君なら分かるだろ?」

「.......違う......違う!!」

「違くない。ダークのせいで彼は死んだんだ」

「!!」
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2013/12/19(木) 23:34:33.96 ID:v5iyIJyN0

「わ、私のせい.......?」

「そうさ、君が里を飛び出したから。森に迷い彼に出会ってさえいなければ
 彼は、平穏に今まで通り過ごしていた。君のせいさ」

「いや.......いやぁ.......」

「いやぁ滑稽だね。自分の最愛の人が自分のせいで死ぬなんて......」

「うぁ......ひっぐ......あぁ......」

「寄り添った存在を、あんなにも自分に親しげに触っれてくれた
 存在を......男を殺したのは君だ」

「ヴァン......!! ヴァン......!」

エル男の言葉に、ダークの中の支えが崩れた。

涙を流し、みっともなく、声をあげて、ダークは泣くはじめた

その絶望した表情にエル男は満足気な顔をさせる。

「恨むなら自分を呪えし、だがその悲しみもすぐに忘れさせてーー」





「なに泣かせてんだよ」





刹那、エル男の、ダークを疲んでいる方の腕に激痛がはしる。

「ッ!?」

「え......?」

「おい、エル男だっけか? お前に一つ言っておく」

エル男の腕を男が全力で握る。

「ひ......!!」

「俺の嫁にぃ......手ぇだすなぁ!!」

エル男の顔面を男の拳がめり込んだ
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/20(金) 01:41:57.45 ID:/fkvlIs1o
ヒャッハーやっちまちなー
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/20(金) 02:00:48.10 ID:iQ4Klyi50
ヴァンさんぱねぇっす
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/20(金) 07:23:54.83 ID:z3feo/vno
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/20(金) 09:29:55.72 ID:r8aDCBvGo
ヴァ━━━━(゚∀゚)━━━━ン
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/20(金) 20:32:16.32 ID:Zs9MMkezo
俺「ヴァン!!」
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/20(金) 22:25:58.63 ID:5A/Pwg9h0

「!!?」

そして弾けるようにエル男は吹き飛び、後ろの木に激突。
背中を強打し肺から空気が出る。

「.......がっは.......なん、だと?」

エル男は驚愕した。まさかワイルドベアを十頭を退けるなんて

見ると身体中に傷を負い、満身創痍な形ではあるがエル男にとっては

誤算だった。

だがそれよりも誤算だったのが......

「!! な、なんだあれは......?」

エル男の視線は男の右腕、自身が殴られた方の腕へと集まる。

「う、腕が......黄金?」

男の右腕は金色の毛に覆われていた。

鋭利な爪も生やす、獣のような腕

それは野生的な雰囲気を醸し出していた。

175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/20(金) 22:46:08.28 ID:5A/Pwg9h0

ダークは困惑していた。

「ヴァ.......ン?」

今自分の目の前にいるのは男で間違いない。

だがダークのしっている彼ではなかった。

「金毛.......」

ダークの知っている男には、腕に金色の毛なんて生えていなかった。

あの自分を優しく抱いてくれた腕はあんなにも凶暴な、獣のような様はしていなかった。

さらにその腕が.......

「ウ、ウルフル?」

あの本の主人公と同じ色の毛なのだと。

ダークは男の変化に戸惑った。が

「テオリア......」

「ぁ......」

そんな疑問はすぐさま崩れた。

「遅れてごめん」ギュ

「うぐ......ひっぐ.......ヴァン゛」ギュウ

この心地よさは

「すぐに終わらせるから」

「うん......うん……!」 

この愛しい匂いは

己が誰よりも知っている存在だったから。
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/21(土) 22:11:06.71 ID:ltQ4HhKw0

ダークを抱きしめた男はエル男の方へと視線を向ける。

男の瞳には、いや、男を取り巻いている雰囲気にすら殺意が滲み出ていた。

「へぇ、変わった腕だぁ」

「よくもそんな軽口が叩けるなぁ、エル男」

「そんなことはない。内心とても驚いているよ。君が十頭もの熊を
 倒すとは......その腕と何か関係があるのかな?」

「そんなことはいい。お前は今ここで、倒す!!」

男は戦闘体勢をとる。男の眼孔がエル男を見据える。

獣が己の獲物を狙うような鋭い眼で。

「あらら、随分と必死だ......でもなぁ」

だがエル男は至って普通に、変化のない日常を送っているような面持ちを呈する。

そしておもむろに立ち上がった。

「ああ、鼻が折れてるな......服も土まみれだよ」

「......お前......!!」

さすがに、エル男の態度が気に入らなくなる男。

「どうしたこないのか? ヴァン・ガロッゼ」

「く.......」
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/21(土) 22:25:16.15 ID:ltQ4HhKw0

「どうやらあの熊達は案外無駄ではなかったようだ」

「くっ......うぅ......!!」

「ヴァン!? 大丈夫か!?」

男は右腕に激痛が走り、それを押さえつけるように押さえてうずくまる。

「テオ......リア......ウグッ......アア!!」

「どうやらやせ我慢しているのは君のようだ」

「エル男!! お前、ヴァンに何をした!?」

「心外だなぁ? 私はただワイルドベアを仕向けただけだよ」

「気になるならその隠し事をしている旦那さんにでも聞けばいい」

「なに? ヴァン......」

「はぁ......う!! エル男ぉ!!」

「さて私はここで引き上げるよ。とても面白い物も見れたしね?」

「まて!! エル男!! お前逃げられると思っているのか? 俺からぁ......!!」

「............ああ、もちろんさ!!」ニヤ

178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/21(土) 23:01:24.32 ID:ltQ4HhKw0

「たしかに私は君に強烈な拳をもらってかなり重傷
 君の攻撃をあと一発でももらえば、アウトだ。だがここで問題
 私は本物でしょうか?」

「!!」

「想像してごらん。もし君が私を追いかけて倒し、それが偽物だったら
 本物が君の大切なお嫁さんの側にいたら?」

「このやろ......!!」

「それ以外にも不確定要素が多々ある。少なくとも私なら
 行かずに嫁を守るが?」

テオリア「チッ......どの口が言うか.......だが、その通りだ.......」

「.......」

「ここは互いに退くのが良いと思うよ。でも.......」

「<印>があるなら話は別だけどね?」

テオリア「ッ.......!!」

ヴァン「印?」

「<印>も出現しないのに夫婦? ダークそんな冗談よしてくれよ
 そんな関係は......ごっこだよ?」

「......テオリア」

「............」

「まぁ私にとっては嬉しいことさ。ではまた縁の重なる時にでも......」

そうしてエル男は姿をくらました。

そこには頭を垂れたダークと、男だけがいた。

滝が音を轟かせ流れていた。様々な事柄を掻き消したいと言わんばかりに。
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/21(土) 23:42:49.99 ID:5gYQcYiQo
≡ ∧_∧  ∧_∧  ウワッ
≡(#`Д´)⊃ ;;;)Д`)
≡/つ  /  ⊂ ⊂/


エル男ォォォォォォォォォォォオ
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/22(日) 20:38:53.48 ID:6kC7Xkby0

「.......ヴァン、大丈夫か?」

「ああ、痛みも引いてきた。ありがとうな、それよりテオリアは?」

「あ、ああ......これくらいなら、一週間もすれば治るさ」

「そうか......」

「ああ、だが少し疲れた......」ギュッ

「......奇遇だね。俺もだよ」ギュッ

「......ヴァン」

「ん?」

「......本当に死んでしまったと思った」

「死なないよ」

「不安で堪らなかったんだ.......」

「ごめんね.......心配させて」

「嫌だ......ヴァンと離れたくない......」

「俺だって同じさ、テオリアを離したくない。本当無事で良かった」

「はぁ.......!! ん.......」ギュッ
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/22(日) 20:58:55.60 ID:6kC7Xkby0

二人はしばらくの間、お互いの無事を確かめあった。

強く抱きしめ、体温を、肌触りを、とにかく思いつくかぎり確かめあう。

「......な、なぁヴァン.......その腕......」

「......やっぱり気になる?」

「そ、それは......」

「怖い?」

「......!! (そうか、ヴァンは......)」

「まぁ怖いよね......まって今引っ込めるよ」

「怖くない」

「......!! え?」

「とってもカッコいい。毛もサラサラで気持ちいいよ」スリスリ

「テオリア......」

「言ったろ? 私は話したい時に話せと、好きにしていいと」

「その時には、私がお前を受け止める。

「.....持ったいない.......」

「へ?」

「俺には持ったいないよ......嬉しくて......涙がでてるよ」

男はより一層ダークを抱きしめる。

「ヴァン......ん」ギュッ

「テオリア......ありがとう」

「......ああ」

続く

182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/22(日) 21:13:46.66 ID:6kC7Xkby0
やっと4分の1終わりました。
これから毎日投下していきます。
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/22(日) 21:46:19.99 ID:yJbK3lLJo
期待(((o(*゚▽゚*)o)))
はやくエル男倒してイチャラブ見たいな
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/23(月) 07:28:16.24 ID:p5GNC9Zy0






「へぇ......これは驚いた......」

エル男が里へと帰還している時だった。

会うはずのない存在と出会う。

「まさか族長のアナタが里から出てくるなんてね」

「口が戻っているぞ、エル男」

「おっと、これは失礼いたしました......それで如何されましたか?」

「先日複数のワイルドベアが消えたが......
 ついさっきそいつらとすれ違った」

「............え?」

「エル男、お前の狙う人間は......一筋縄ではいかんぞ」

「なるほどたしかに.......しかし、それくらい壁が高い方がやる気が出ますよ」

「......娘はどうだった?」

「ダークは......<印>こそ出現してはいませんが......あの人間にかなり
 惚れ込んでいましたよ。心なしか髪も綺麗に......」

「そうか」ザッザッ

「どちらへ?」

「野暮用があってな。留守は任せた」

「......象知いたしました」
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/23(月) 07:52:24.80 ID:p5GNC9Zy0






男はダークの骨折した腕を応急処置し、家へと帰る。

するとダークは首を傾げた。

「ワイルドベアと戦ったと聞いたが.......一匹もいないぞ?」

「倒していないからさ」

「え? ならどうやって......」

「威嚇しただけさ、思いっきりね。正直、それで疲れてる」

「威嚇って.......うーん、ヴァンはやはり例外的な人間だな」

「それを言ったらエル男もじゃないか?」

「あいつは.......そうだなある意味での例外だ」

「王国にも獣を操る術士はいたけど、あそこまで強くないよ」

「エル男は<心>の力がずば抜けて高いからな。だからワイルドベアも手なづける」

「テオリア、心の力ってなに?」

「む? 人間の方にはない概念か......」

「たぶん人間でいう魔力かな?」

「ああ、それだ。まぁ、それは明日にでも.......今日はもう寝たい」

「ああ、出来れば今日教えてほしいな!! テオリア」

「うぅ、いくらヴァンの頼みでも......そんなに知りたいのか?」

「もの凄く。エル男さえ来なければすぐ聞いてた」

「そうか、ならまぁ.......仕方ない教えてやろう。立ち話もなんだ、家でな?」

そして二人は自宅へと帰っていった。
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/23(月) 08:07:22.72 ID:p5GNC9Zy0

自宅に入るや、ダークはベッドに倒れこむ。

「ふぁ......」

そして小さく欠伸を漏らした。

男は、本当に眠そうだと思いながら、ベッドに座り、ダークの頭を撫でる。

「ん.......」

うつ伏せなのでダークの表情は見えないが、どことなく嬉しそうな吐息が聞こえる。

「テオリア、手短でいいよ」

言うと、ダークは仰向けになり、言葉を紡ぐ。

男を眠たい瞳で見つめて

「ん......そうだな、寝てしまいそうだから......心の力はな
 何かを成し遂げたいと思う気持ちだ。そしてそれを増幅させて、技へと昇華させる」

「じゃあ、昨日滝でテオリアがしてくれたのも?」

「あれは初歩的な技だがな」

「俺でも出来る?」

「え?」

ふとダークの胸の奥がキュッと締め付けられる。

「俺もテオリアにお礼がしたい.......」

「ヴァン......///」

187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/23(月) 08:31:23.84 ID:p5GNC9Zy0

「たぶんヴァンもできると思う。ただその前に心力の存在を知らないといけない」

「存在?」

「ああ、今回は私がヴァンへと心力を流す」

言い終わると、ダークは起き上がり、男を見つめる。

軽く微笑し、ちょっと照れくさそうに。

「身体で覚えるのがヴァンの持論だろ?」

ズイッと顔を近づける。

「......いくぞ。ん」

「!!」

ダークに口づけされるや、そこから身体の中を駆け抜ける存在を認識。

男はすぐさま、これが心力だと気づいた。

瞬間、男の身体から金色のオーラが出てくる。

「ん.......ぷはっ......凄い生命力だなヴァン。それに金色なんて初めて見たぞ?」

「ああ、自分でも何だか力が湧いているのが分かるよ」

結果に満足気な男。するとダークの腰へ手を回し、グッと引き寄せる。

「ぁ.......ヴァン」

「これでやっと、お礼ができるよ」

男の言葉にダークの胸が大きく波打つ。

そしてこれから始まるであろう男のする行為に

自然と頬が紅くなる。

「まっ、待て。今ヴァンにそんなことされたら......」

「いいじゃないか。テオリアばかりズルいだろ?」

男はダークを抱えあげ、自身の膝の上へと座らせる。

「ヴァ、ヴァンの心力でやられたら......」

「テオリア......」

「ん!!.......や、優しくしてくれないと駄目だぞ......?」

「うん、大丈夫」
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/23(月) 08:47:54.42 ID:p5GNC9Zy0

「テオリア」

「ヴァン......ん.......ふむぅ///」

ダークと唇を重ねる。

直後、ダークの中に男の生命力が唇から身体へと流れこむ。

「ん/// まっ.......まってぇ.......ヴァ.......ン」

ダークにとってこれほどの生命力は初めてだった。

そしてなにより、男から唇を重ねてくれたことに男への思慕が最高値に。

「ぷはぁ.......ヴァン、ヴァン/// もっと欲しいよ.......」

「いいよ。ん.......」

「ん......ちゅ」

ダークは男の生命力を心から堪能する。

「う.......ちゅ、んちゅ......」

ダークが舌を絡め、男も絡めていくと、より一層の幸福感がダークを支配する。

互いに抱き締めあい身体を密着させながら。


それから幾分、口づけを満喫した二人。

お互い身体が疲弊しきっていたのでそのまま眠りへと落ちていった。

そのまま翌日まで眠り続け、起きたらダークの骨折が治っていたのは

また別の話し。
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/23(月) 22:36:30.03 ID:p5GNC9Zy0

(よお、魂を分かし友よ)

誰かの声を男は聞いた。よく知っている奴の声だった。

視界は闇に染まっている。

瞼を閉じているのに気づく。

瞼を開いた。

金色の、名も知れない花びらが舞っていた。

綺麗だった。

風が流れていることに気づく。

不思議な場所だ。視界一面の花々。流れる花びら。

どこまでも続く蒼天の空。そして......

「会うのは......十年ぶりか?」

金毛の狼。
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/23(月) 22:58:12.66 ID:p5GNC9Zy0

「......金狼」

「随分と無理をしたな?」

「まぁ.......守るって言ったから......」

「だが、力を使いすぎればいずれ飲まれることになる。用心しろ」

「ああ、ありがとな」

「お前は生きねばならない。それがお前の使命だ」

「もちろん、生きるよ」

「彼女も大切にな。あの娘はお前を心から認める存在となろう」

「......そうだな」

「事は多くあるが、先ずは王国へ戻り、聖賢老(せいけんろう)に会え」

「ああ、分かってる」

「ふ、ではまた私は寝よう。願わくば覚めぬ眠るを......さらばだ、友よ」

「じゃあな、金狼」

「......ふ」

そして男の瞼は閉じられた。

花びらが風で舞う音が、耳を支配していた。
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/12/24(火) 15:27:16.32 ID:gebakmrfO
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/25(水) 19:18:41.37 ID:4lkxNWAF0





ダークの稽古が終わると、男はダークにこう切り出した。

「王国に行く。テオリアもな」

「え......本当か!! 本当かヴァン!?」

エル男の襲撃から早くも二週間が過ぎようとしていた。

「ちょっと野暮用が出来てね」

「そ、そうか!! なら出掛ける支度をしないとな!!」

王国に行くと聞いたダークは甘美な声をあげ、心底嬉しそうに笑う。

彼女の麗々とした銀髪も太陽の光に反射され、綺麗に輝いていた。

「ふふ、王国かぁ......どんな物があるのだろう
 待っているのだろう!!」

「テオリアは王国に初めて行くからね.......びっくりすると思うよ?」

「ああ......いつ出発するんだ?」

「明日かな? ここから歩いて三日かかる」

「けっこうかかるな......まぁ、構わない。ヴァンがいる」

そう言うとダークは男の手をそっと握る。

「ヴァン。歩いている間は手を繋いでいような?」

「えぇ? でも獣とかに襲われたりしたら」

「大丈夫だ!! ヴァンは強い!!」

「うぅ、そんな風に言われたら断れないじゃん」
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/25(水) 22:32:23.99 ID:4lkxNWAF0

ダークの柔らかな視線に当てられたからか、男は胸中くすぐったくなり
ダークの手を離さそうとしたが、逆に強く握りしめられる。

「どうしたの?」

「腕は......もう大丈夫か?」

そうダークがおずおずと口を開く。

無理もなかった。一週間前まで男は腕の激痛に苦しめられていたのだから。


激痛を抑えようとダークは治療を試みたが効果は上がらなかった。

ダークは激痛があの時に見た、獣のような腕からだとは知っている。

だが、それ以上のことは知らない。
知りたいが彼女もまた、男に明かさない秘密がある。

だが、男と同じ境遇だということが、ダークにとって
より運命的で、ロマンチシズムを刺激し
男への好意を上昇させているのは.......男が知らないところだった。

「元気になって......良かった」

「テオリアが看病してくれたからだよ。ありがとう」

「ふふ、ヴァン......」

彼女は自身の髪へ男の手を導く。

彼女が何を望んでいるか男は分かっているので
彼は彼女のリクエストに応える。

「テオリアの髪って本当に柔らかいね?」

「好きなだけ触っていいぞ。ヴァンなら......」

「じゃあ、しばらくこのままで」

言いいながら男はその銀髪へ口づけを交わす。

「ん......ヴァン///」

二人のことを、昼間の暖かな光がてらしていた。
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/26(木) 22:10:17.08 ID:6sbQkpLU0







翌日の空は雲一つない晴れ模様だった。
心なしか空を羽ばたく鳥達も嬉しそうに鳴いている。

「んんー!! 絶好の旅日和だ! な? テオリア」

「うん、この空が三日間続けばいいな......」

「そんなことを言うと天気悪くなるから、口を慎む」

ダークの唇を人差し指で塞ぐ男。

「むぅ......すまん。だが準備している物を見ると雨具がないから......」

「それは心配無用。テオリアは俺に着いてくるだけでいいよ。後は俺がする」

「よ、嫁としては手伝いは......」

「なら今度からそうしてくれ」

「むうー!!」チュル

「怒るな怒るな。て......指をしゃぶるなって」

「ヴァンの馬鹿......ふん!!」

頬を膨らまして歩きだすダーク。

男は慌てて

「オイオイ、テオリアは王国までの道分からないでしょー?」

「......!! だ、だったら......」

「えぇ?」

「捕まえてみろー!!!」

そう言ってダークは走りだす。

「なぜそうなる!? こら待てテオリア!!」

続いて男も、ダークを追いかけて行った。
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/26(木) 23:23:46.25 ID:6sbQkpLU0

「やばい......思ったより速いぞ」

男はダークを追いかける。

しかし、ダークの姿はどんどん小さくなる。
ダークの脚力は男の想像よりずっと強くなっていた。

「(俺が寝込んでいる間もちゃんと修行していたもんな......強くなってる)」

あれ以来ダークは修行に熱心に取り組んでいる。
身体を鍛え、精神を高め、技を磨く。男の妻として相応しくなるためだった。

「そんじゃ俺も少し本気にいこうかな」グッ!!

ダークの力に生半可な気持ちでは失礼だ。
そう考え、男は四肢に力を込めて一気に解放。

「テーオーリーアー?」

「!!」

男は即、ダークとの距離を詰める。

その勢いのままダークに突撃した。

「ほかく!!」

「ぬぁ!?」

二人は地面を転がる、男はダークに怪我をさせないよう庇う。

そして数メートルほど転がり静かに停止した。

「怪我してないよね?」

「は、速すぎだぞヴァン!!」

鼻が擦れあう距離、男に難なく捕まえられて拗ねるダーク。

男は自然と笑みを浮かべていた。
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/28(土) 22:49:35.57 ID:LNMh2ZhA0

「いきなり走りだすな。心配しただろ?」

「......」

ダークはムスッとした顔で男に諭す。

「わ、私はただヴァンの役に立ちたいだけだ」

「だからって走るなよ。子供じゃ......てテオリアは子供だった......」

「ヴァン......」

男はダークの無垢な瞳を見据える。
彼女の歳を再認識した。

「このぉ、甘えん坊め!!」

「にゃ......ヴァン///」

「じゃあテオリアは周りに気を配って、異変があったら俺に言う。把握した?」

「は、把握〜!! んー!!」

「ほら行くぞ。地面に転がってたらいつまでたっても王国に着かないからな」

「ふっふっふ、まかせろ索敵は得意だ!!」

「おう、期待してるよ......手は繋いでるの?」

「もちろんだ!!」

「元気だね......いや大変よろしいですね」

「さぁ行けヴァン!! いざ王国へ!!」

「はいはい」
197 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/12(日) 15:33:36.27 ID:DAMzs/lf0

〜王国〜

女騎士「国王様、失礼します」

王「何用だ女騎士」

女騎士「はい、金狼からです。封印が外れかけていると」

王「......よりによってこんな時に。ヴァンは?」

女騎士「戻ってくると、それと......」

王「なんだ?」

女騎士「エルフも一緒だそうです」

王「な、なんだと!?」

女騎士「如何いたしますか?」

王「......城下で騒ぎが起こる前に、連れてこい」

女騎士「承知致しました」

198 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/12(日) 15:41:18.18 ID:DAMzs/lf0

〜 一方 〜

「なぁヴァン」

「ん? どうかした?」

「何か向こうの方に気配を感じる」

「敵?」

「多分......魔物だと思う」

「うーん。戦うのも面倒だここは迂回して......」

「いや、ここは戦おう。私もウズウズしていたんだ」

「え、やるの? 大丈夫?」

「問題ない。ヴァンは見てろ。私が片付ける!!」

ダークは一気に走りだした。

「あ、ちょっとテオリア!!」
199 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/12(日) 15:51:42.14 ID:DAMzs/lf0

「!! なに!?」

ダークの視線の先には数体の魔物が一匹の、鳥型の魔物を襲っている光景があった

「......弱いものイジメか。魔物にもあるんだな」

ダークの拳が強く握られる。そしてダークの脳裏を
里にいたころに体験した嫌な思い出が駆け巡った

そんなダークに魔物は気づき、その内の一匹が牙をむく

「シッ!!」

だがダークの振るった拳が魔物を打ち砕いた。

「弱いものイジメは......許さん!!」

ダークの殺気を込めた眼光に残りの魔物達は怯んだ。
しかし、それも一瞬。魔物達がダークへと襲いかかる。

「望むところだ!!」

ダークの拳に力が入る。魔物を打ち倒さんと。
200 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/12(日) 16:04:46.57 ID:DAMzs/lf0





「......ふぅ、楽勝だ」

深呼吸をするダークの周りには事切れた魔物達

「おぉ、テオリア強くなったね」

「少しはましになっただろ?」

ダークは視線を鳥型の魔物へと移す

「見たことのない形だな」

「それはカラスと言う動物だよ」

「え、魔物じゃないのか?」

「そ、でも凄いなコイツ。魔物複数に教われたってのに......」

「そうか、お前は強いね。魔物相手に戦うなんて」

「(カラスは調教次第で中型の魔物と渡りあえるほど強くなると聞いたことがある
  見たところ相当な訓練を積んでいるな)」

「なぁヴァン、コイツ連れて行っていいか?」

「え、まぁいいけど......どうして?」

「いやな......ちょっとした同情心からかな......」

「私達エルフは魔法を使える種族なのは知っているだろ?」

「まぁ、知っているよ」

「私はな魔法が使えない」

「え......」
201 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/12(日) 16:17:00.14 ID:DAMzs/lf0

「正確に言うと、魔力が全て身体能力の方へ傾いているんだ」

「なるほど、どうりで回復力が......力が強いのか」

「いや力はヴァンのおかげだ。私はエルフの中では
 落ちこぼれだった。そのせいか周りからも苛められてな......」

「こんな里はもう嫌だといつも思っていたんだ。だから、外の世界に
 行きたかった。私のことを受け入れてくれる人を、世界を探すために」

「テオリア......」

「でももう見つかった。ヴァンのおかげでな
 ありがとう。私がこうして胸をはって歩けるのもヴァンのおかげだ」

「......そっか、良かったよ」

男はおもむろにダークの頭を撫でた
ダークが笑みを浮かべる。こんな表情が出来るのも男のおかげだった

「テオリアそいつも連れていこう」

「!! 良かったなお前!!」

「カァーカァー!!」

「さて、仲間も増えたし王国まで一気にいこうか!!」

「ああ!!」

「カァー!!」
202 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/12(日) 22:30:52.00 ID:DAMzs/lf0





「ほら美味しい木の実だぞ〜東(あずま)」

「カァー!!」

「すっかり懐いたね。名前までつけちゃってさ」

「ふふ、なんだかな〜コイツには私と似たような雰囲気がする」

「カァーカァー!!」

「それにしても、初日で半分も進むとは......」

「これなら明日にはつくな」

「そうだね。ということでテオリアには正体を明かさないように
 フード付きのコートを持ってきた」

「やっぱりばれるとマズいか?」

「ごめんね。でも王様に会えば大丈夫だよ。何とかしてくれる」

「なんとヴァンは王と知り合いか!?」

「まぁ、そんなとこ。さ、明日も早いから寝ような」

「そうだな、では失礼」

ダークは男の方へ身を寄せる
男はそれをしっかりと抱き寄せた。

二人の視界には幾千もの星が舞い散っていた。

「綺麗だな。ヴァン」

「そうだね......」
203 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/13(月) 02:10:37.58 ID:rxq/EXso0






〜王国編〜

「あ、見えてきたよテオリア」

「おお!! 大きな壁が......」

「この城壁の中に町が広がっているんだ」

「はやく!! はやく行こう!!」

「ああ、フードとれないようにね」

「はぁ......楽しみだな〜。一体どんな町があるのだろう!!」

「き、聞いてる?」
204 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/13(月) 02:17:50.98 ID:rxq/EXso0

門番「おい止まれ!! 何者だーー」

「俺だよ門番さん。久し振り」

「ああ!? ヴァン!! ヴァンじゃないか!!」

「どう? 変わりない?」

「ああ、元気に今日も仕事頑張ってるぜ。で、そちらは?」

「俺の嫁さんだよ」

「こ、こんにちは......」

「ほぉ!! こいつは驚いた。ヴァンが嫁を連れて帰ってくるとは」

「まぁ、用が済んだらすぐに帰るよ」

「なんだ、またこっちで暮らすわけじゃないのか......」

「あ、そうだ。伝書鳩で王に俺が帰ってきたと伝えてくれないか?」

「おう、お安いご用だ!!」
205 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/13(月) 02:27:02.96 ID:rxq/EXso0

「うし、この伝書をつけてと......」

ポッポー

「これが伝書鳩か......首が忙しい奴だなヴァン」

「面白いこと言うなヴァンの奥さんは、鳩見るの初めてかい?」

「ああ、随分と森の中で暮らしていたからな世知に疎いんだ」

「そうか、でもこの国は大概の物は手に入る。楽しんでな」

「ありがとう」

「よし、出来た!! ほれ行け」

ポッポー バサバサ!!

「で、すぐ向かうのかい?」

「いや、ちょっと鍛冶屋のじっちゃんに会ってくる」

「そうか、じっちゃんお前が帰ってきたからきっと喜ぶぜ」

「へへ、そうだといいな。そんじゃ」

「おう、またな〜!!」
206 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/13(月) 02:36:22.95 ID:rxq/EXso0

「中々気の良い奴だろ?」

「そうだな......雰囲気も悪くない。裏表のない人だな」

「そうなんだよな。アイツ昔からあんな奴なんだ門番にしては優しいし」

「でも、友達なんだろ?」

「まぁね、さぁ、ちょっと挨拶しに行こう」

「さっき鍛冶屋とか言っていたな?」

「ああ、この門から東の場所だ......それじゃあテオリア」

「ん?」

「目を瞑って」

「こうか?」

「そ。では行きましょうか!!」

二人の前にそびえる巨大な門が、音をたてて開く
瞬間、多くの人々の活気ある声がダークの耳を掠めていった。

「!!! お......おお......おおお!!!」

「ようこそテオリア」

「こ、ここが......王国」

「うん。そして......俺の生まれた故郷だ!!」
207 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/13(月) 02:36:55.66 ID:rxq/EXso0
つづく
208 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/13(月) 02:44:17.25 ID:51SwK79oo

なんかこっちまでワクワクしてきた
209 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/13(月) 04:43:16.00 ID:5ulgKeuzo
久々の更新じゃないか!

乙乙
210 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/13(月) 12:56:08.09 ID:rxq/EXso0

「に、人間が......たくさんいる!!」

「ほら、はぐれたら大変だよ。手は離さないように」

「あ、うん......///」

「カァー!!」

「ふふ、お前も興奮してるな」

「鳥でもわかるのかな、そういうの?」

「あ、ヴァン!! あの真ん中にある大きな建物はなんだ!?」

「あれはこの国の中心に位置する鐘の塔、時刻を知らせる鐘があるんだ
 俺はよく待ち合わせとかに使ってたかな。あと迷子になった人の道しるべにもなる」

「お、おお!! 私の里にもあれくらいの木々があったぞ!!」

「え!? あれくらいの木々が? 鐘の塔は全長七十メートルだから......
 凄いな、それが沢山か。行ってみたい......」


「ああ、きっと驚くぞ〜。で、鍛冶屋はどこだ?」

「ああ、見ればすぐ分かるよ。看板が大きな槌の形をしてるから」

「あ!! あれか!?」

ダークの指がさし示す方には、巨大な槌の形をしている看板があった
看板には大きな文字で鍛冶屋と綺麗な字で書いている
211 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/13(月) 13:05:20.13 ID:rxq/EXso0

「綺麗な字だな。ヴァンの祖父は勤勉な人間と見たい!!」

「いや、あれはじっちゃんじゃないよ。助手の人だな」

「ふむ、そうか。参考程度に聞きたいのだがヴァンの祖父はどんな人なんだ?」

「そうだね。まぁ基本無口だよ。あとは......」


「しかし、鍛冶屋か!! 里にも武器を作ってくれるエルフがいたが
 人間の作る武器は一体どんな物か!! ヴァンいくぞ〜」

「あ、テオリア!! 話を聞けー!!」

「カァー!!」バサバサ

「お前もか!! いかんテオリアにじっちゃんは強烈すぎる!!」

212 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/14(火) 22:26:36.00 ID:DBZdOAnJ0

「(ふふ、人間の国に来て待てなどと、殺生だ。この時をどれほど待ったか......)」

鍛冶屋に急ぎ足で進むダークの足取りに合わせるように
ダークの胸中もまた高揚する気分を加速させる。

「(今までは本で読むしかなかった。空想するだけだったんだ)」

正直、今のダークは涙を零すほどに自身の現状に深い喜びを抱いていた

それほどまでに待ち望んだ、渇望した、己の夢

外の世界

ダークの夢が花開くまさにその瞬間だった。

「うわ!?」

ダークが鍛冶屋の扉を開けようとしたまさにその時

爆発音を轟かせ
鍛冶屋の扉が吹き飛んだ。
213 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/14(火) 22:30:12.93 ID:DBZdOAnJ0
前に毎日更新すると言ったのに、その矢先風邪を引きました。
申し訳ない。これからは毎日1レスでも投下していきます。
214 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/14(火) 22:40:25.14 ID:fFTZEAK00
無茶しない位で頑張れ
215 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/14(火) 23:01:24.87 ID:A+US+3/T0
体調悪い時は無理したらいけんよ
216 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/15(水) 01:38:16.83 ID:3D9AT8rco
乙、と言う言葉で風邪が撃退出来ればなぁ
217 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/15(水) 22:00:18.94 ID:loZtqORD0

「テオリア!?」

「ぬあー!?」

「カァー!?」

「え......ちょ、東、ぬわ!?」

扉と一緒に吹き飛ぶダークと男の顔へ突撃するカラス

「な、何だ......人間の鍛冶屋は扉が吹き飛ぶのか......防犯用か?」

「いや、何でも前向きに捉えれば良いという訳じゃ......あ!?」

男は顔についたカラスを剥がし、テオリアの方を見て絶句

「テオリア!! フード!!」

今の衝撃でフードが取れてしまった
男があわててフードを被せる

ダークは「ふにゅ」と声を上げフードを深く被りなおした。

「だ、大丈夫か? 誰にも見られていないよな?」

「多分ね、この辺りの民家の人々は土木系の仕事をしているから
 で、今の時間は西の方で公園を整備してるから誰もいないはず」

「公園?」

「そ、王国の人々の憩いの場所。多くの花々が咲いている綺麗な場所だよ」

「おお!! そこにも是非行きたいな!!」

「後々ね、それより今は......あの鍛冶屋の工房でふんぞり返っている老人に挨拶しないと」
218 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/15(水) 22:18:11.23 ID:loZtqORD0

男は溜め息をつきながら、吹き飛んだ扉を持ち鍛冶屋へと足を進める
ダークとカラスも男の後をついていく

「よう、じっちゃん久しぶり。手厚い歓迎ありがとう」

「!! あ......!!」

「ほう、前よりは......言える口になったなぁ」

「(この人が......!!)」

「.....見知った奴の匂いがすると思ったらやっぱり、おめぇだったかヴァンよ」

鍛冶屋の中に入ると、椅子でふんぞり返って座る老人が目の前にいた

「(これが......ヴァンの祖父......でもなんだろう......)」

ダークは男の祖父を見るや、ふと胸の中がざわついた

「この様子だと元気そうだね」

「昔ほどじゃねぇさ」

そのざわめきの正体は分からないが
不思議にもそれほど不快ではなく

「(この人が......どことなく懐かしい......)」

むしろ、心地良いものであった
219 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/15(水) 22:21:47.78 ID:loZtqORD0
心配してくれてありがとうございます。
無理しない程度に頑張っていきます。
ではまた明日。
220 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/15(水) 22:35:07.42 ID:++5MMpS9O
おつ
221 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/16(木) 12:15:51.44 ID:HIxGzfgJ0
東、だと?
ひょっとして以前、猫の東さんの話書いたのもあなたか?
222 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/16(木) 22:25:10.67 ID:UjwvL4RY0
223 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/16(木) 22:29:54.90 ID:RVGyjpRY0

「立ち話も何だ。上がれ、歓迎するぜ......で、そいつらはおめぇの連れか?」

「そ、ちなみにじっちゃんが吹っ飛ばした扉に当たった」

「ど、どうも......」

「な......まさか......それはすまんかったな嬢ちゃん」

「あ、いえ......大丈夫ですよ......え? どうして私が女だと......」

「あちゃー。じっちゃんにはお見通しか......」

「おい嬢ちゃん。鍛冶屋を舐めちゃいけねぇ。俺はこの仕事柄
 多くの武具を作ってきた。それを着ける奴もな。体格で分かる。そして......」

「おめぇさんが人間ではないこともな」

「な!?」

「さすがじっちゃん人を見る目は衰えず」

「はっ、だがヴァンがこんなべっぴんを
 連れてくるとはな。そっちの方がたまげたぜ」

「ああ、俺の嫁だ名前はテオリア」

「なにぃ......!? そんな仲だったか!! なら、祝いの準備をしなくちゃなぁ!」

「あ、え......え?」
224 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/16(木) 22:53:54.34 ID:RVGyjpRY0

「あ〜よっこいしょ......」

鍛冶屋は椅子から立ち上がり、後ろを振り向き叫んだ

「おいフェル!! 客が来たぞー!!」

すると鍛冶屋の声に「はーい」と遠くから返事が返ってくる
次には奥の方から駆け足でやってくる見るからに快活そうな少女が現れた

「あ〜!! ヴァンさんじゃないですか!! お久しぶりです!!」

「おう、フェルちゃん。元気だったか?」

「ふふ、親方共々とっても元気ですよ〜」

「俺は至って普通だぞフェル」

「えぇー。笑ってた方がいいですよ親方〜。に〜」

「うるせぇ、俺はやらん」

「へへ、相変わらず仲がいいね二人共」

男へと、惜しみない天使のような笑みを浮かべるフェルという少女
彼女がここへ現れると、あっというまにこの場がのどかな雰囲気へと変わった

ダークはそんな、早々に移り変わる様子に、ついていけないでいたが

「テオリア」

「ヴ、ヴァン......えっと」

「紹介するよ」

「え、あの......」

「じっちゃんとフェル......俺の大切な家族だ」

「こんにちは!! テオリアさん!!」

「テオリアか.....母ちゃんに良い名前つけてもらったな」

「......こ、こんにちは......///」

とりあえず異種族交流の最初の一歩は悪くなかった。
225 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/16(木) 23:02:05.07 ID:RVGyjpRY0
>>221 覚えていてくれた人がいましたか。ありがとうございます。
あの時はぶつ切りして申し訳ないです。
このスレが終わり次第投下を再開しようと考えていました。
ので、まずはこっちの投下を頑張ります。
226 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/17(金) 08:26:08.35 ID:bQ3ocNdM0
>>225
やはりか!
再開も楽しみにしてるが、まずはこちらを頑張ってくださいな
227 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/17(金) 22:11:20.98 ID:/8InFWiz0





「では改めて、俺の家族のフェルとじっちゃんだ」

「フェルです!! よろしくです!!」

「フェルはここの鍛冶屋唯一の助手、ちなみにあの看板もフェルが作った
 テオリアとそう変わらない歳だが鍛冶の腕は一流だぞ?」

「私の唯一の自慢です!! えっへん!!」

「まぁ......俺のことは好きに呼んでくれエルフの嬢ちゃん」

「じっちゃんは俺の育ての親だ、ちなみに俺達の家は昔じっちゃんが
 使っていた小屋だよ」

「な、そうだったのか!?」

「改築したいならサービスするぞ?」 

「ほら、テオリアも」

「あ、そうだな......コホン、エルフの里から来た。名前はテオリアだ。よろしく頼む」

「しっかし、エルフがこの国に来るなんていつぶりだ?」

「わ、私は初めて会います!!」

「それはテオリアもさ。フェル、同じ女の子どうし、仲良くしてやってくれ」

「はい、こちらこそ!! テオリアさん
 さっそく親睦を深めましょう!! 
 私お散歩好きなんで散歩に!!」

「あ、ヴァン......」

「大丈夫。フェルはそこらへんのチンピラより強いかな」

「というわけで大丈夫です!! はいいきますよ〜」

「あ、ちょ......!! ヴァ〜ン!!」

「いってらっしゃい」
228 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/18(土) 19:22:23.63 ID:RCzljO1s0

「いったな。お? お前は行かなくていいのか東?」

「カァー」

「まぁ鳥に聞かれてヤバいようなことは言わないからいいか」

「ほう、カラスじゃねぇか。別名<漆黒>」

「あれ? どうして知ってるの?」

「お前の読んでた本に書いていたのさ。俺も気になって読んだ」

「へぇ、じっちゃんが本とは。何かあったの?」

「あーまぁ、フェルがな......無口じゃつまらないとさ」

「へぇ、どうりで前より喋ると思ったらそういうこと?」

「まぁそういうことだ」

「......折れたんだね?」

「......まぁな、流石に断り続けるのも野暮ってもんだろ」

「そうか、ロリコンだなじっちゃん」

「うぐ......そ、そんな話はいい。で、ここに戻って来たんだ
 お前がただ帰ってきた......はないだろ?」
229 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/18(土) 19:36:19.94 ID:RCzljO1s0

「うん、実はちょっとだけ<力>を使った」

「なにぃ!?」

「でもなじっちゃん。これには訳がある!!」

男はエル男の一件を話した。

「はぁ、んでお前は彼女を助ける為に使ったと......」

「そう」

「で、嬢ちゃんは?」

「俺が話してくれる日まで待ってるって」

「馬鹿かお前は」

「......」

「いいかよく聞け、お前のその<力>は強大だ。お前もコントロール
 出来ないほどにだ。たしかに使った理由から文句は言えん」

「だが、そんなの隠してしまうなら。今すぐあのエルフと別れろ」

「お前のあれは、そんな生半可な間で築いた絆じゃ背負えやしない」

「......」

「お前も分かっているだろ? 俺ですら、お前のあの姿にヒビッた
 周りの奴も、 王も、女騎士も、そしてお前の......」

「分かってる」
230 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/18(土) 19:50:58.94 ID:RCzljO1s0

「分かってるからこそ、これを俺は制御しないといけない」

「熊十匹に力を使って威嚇するようじゃ、まるで駄目だ」

「テオリアを守る為にも、俺は強くならないといけない」

「その為に、じっちゃんの所へ来た」

「......何する気だ?」

「うん、鎖を切る」

「な!? なんだと!? 正気か?」

「そ、そして......今度こそ絶対にコントロールしてみせる」

「......俺は反対だ。その封印を壊すわけにはいかん」

「でも必要だ。そして......その鎖を切れる剣を作れるのはじっちゃんだけだ」

「............本気のようだな」

「ああ!!」

「だがなヴァン、そりゃ無理だ」

「え?」
231 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/18(土) 20:02:28.84 ID:RCzljO1s0

「たしかに<鎖>は俺が作った。その鎖には特別な金属を使った
 そんでそれを切るのには、同じ金属を使った剣、と......言いたいことは分かる」

「だが今、その金属が採掘できる鉱山には凶悪な魔物が住み着いている」

「凶悪な魔物? どんな奴なんだ?」

「分からん。鉱山へ行った奴らは全然戻ってこないからな」

「......殺されたか」

「なんでも突然現れたらしい。理由は分からん」

「そっか、なるほど......そういうこと」

「そうだ、だから剣は作れなーー」

「よし、なら俺がそいつ倒してくるよ」

「はぁ!?」
232 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/18(土) 20:15:17.30 ID:RCzljO1s0

「その凶悪な魔物さえ居なくなれば、剣を作ってくれるんだろ?」

「お前なぁ.....」

「それに俺は強い!!」

「何だ突然」

「誰かさんの一点の曇りもない言葉さ」

「......フェルを連れていけ。あそこの鉱山には詳しいからな」

「ありがとうじっちゃん。フェルはちゃんと守るから」

「あったりめぇだ。たくっ、次から次へと驚かせやがって......で、いつ出発するんだ?」

「とりあえず、金狼に会ってから決める」

「そうか、じゃあ王に俺の伝言を頼む」

「なに?」

「てめぇは俺とフェルの式には絶っ対!! 来るな。来たら殺す」

「......ぶっ、それは多分無理だろ」

「うるせぇ、ほれさっさと行け!!」

「あいよ〜」



「......たく、ヴァンの野郎......だが」

「以前よりは......笑うようにはなったな......」
233 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/19(日) 01:37:11.26 ID:MbWiFbcR0
じじぃと少女……だと?
234 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/19(日) 21:27:38.18 ID:rNKCscBI0
>>233 じっちゃんと言っても老人ほどではないです。
ダンディーなおじさんです。

投下
235 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/19(日) 21:47:04.87 ID:rNKCscBI0

ダークはフェルに連れられ、町の散策へと出向く

二人は今、鍛冶屋がある東を離れて、商業施設がある中央へと足を伸ばしていた。

「なぁ、フェル」

「はい、どうしましたか?」

「私はこんな格好で怪しまれないだろうか?」

ダークの姿と言えば、顔のほとんどを隠すほどのフードがついた服。

そのフードを被ったダークは他人から見れば不可解極まりない格好だ

「うぅ? うーん......実は私この町で中々に顔が利くのですよ」

「フェルが?」

「仕事柄よくお世話になるんですよ。そうだ!! 心配なら服屋にでも行きましょう!!」

「テオリアさんにピッタリな服を探しましょう!! ね!!」

「お!! 本当か? 人間の服を着るのか〜。場所はどこだ?」

「ここから北へ少し行ったところに私が贔屓にしている服屋があるんです!! 
 きっとテオリアさんにあった服が見つかりますよ〜」

「お、おお!! 急ごう、早く見てみたい!!」
236 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/03(月) 17:54:10.88 ID:MUtybvkY0
237 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/02/04(火) 00:30:27.79 ID:uxD7YiSG0
生存報告。
238 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/06(木) 01:13:40.98 ID:CZEEfjcs0
おげ
239 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/06(木) 23:44:48.31 ID:CZEEfjcs0
生きてます。
240 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/07(金) 00:23:01.48 ID:B9b0gj2M0
期待
241 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/13(木) 01:44:41.84 ID:fS5WeIpn0




〜服屋〜

「店主さ〜ん。フェルですよ〜」

「あらいらっしゃいフェルちゃん!! 今日はどうしたのかしら?」

「はい今日はーー」

「こ、これは......見たこともない衣服ばかりだ。里には
 これほどの種類はないぞ......ちょっと露出も多いな......」キョロキョロ

「ふふん、なるほどねこの子の服を選んであげればいいのね」

「はい!! では失礼して...せい!!」グイ

バサッ

「まぁ!?」

「ん? おお!? フェルー!?」

「店主さん彼女はエルフなんです」

「お、驚いたわ...ダークエルフだったなんて......」

「フェル!! なんてことをするんだ...ヴァンに招待は明かすなと言われていたのにぃ......」

「それは...勿体無いからです!!」

「ふぇ?」
242 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/13(木) 01:56:16.71 ID:fS5WeIpn0

「テオリアさんはとても綺麗な方です!! 初めて顔を合わせた時に
 そう思いました!! ね? 店主さん!!」  

「えぇ、こんなに可愛い女の子は久々よぉ〜」

「いや......私は///」

「だから私フェルはとっても良いことを考えました!!」

「良いこと?」

「ふふーん、それは......店主さん!!」

「えぇ、分かってるわん!!」グイ

「わわ!? 何をするんだ!?」

「テオリアさんにピッタリの服を選んでもらいます!!」

「安心してテオリアちゃあん!! ワタシ、コーディネートは人三倍得意なのぉ〜」

「えぇ!? ヴ、ヴァーーーン!?」

ーーーーーー
ーーーー
ーー

ヴァン「へっくし!!」

「ん!? 何だ風邪か?」スズ

「うぅ、しっしフェルもついに奥さんか...時がたつのは早い......」スズ

「ふぅ、俺も負けてられないなぁ。王宮に急ごう...」
243 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/13(木) 01:57:48.15 ID:fS5WeIpn0
長らく放置してごめんなさい。これからまた再開していきます!!
244 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/13(木) 02:39:22.53 ID:oD1dnKnuo
やったぜ待ってる
245 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/13(木) 16:45:35.40 ID:MWHgW72n0
やったぜ。
246 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/14(金) 22:03:33.53 ID:ou0yGc8j0
247 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/14(金) 22:44:35.81 ID:ss1j31nx0
ーーーーーー
ーーーー
ーー


「うわぉ!!」

「あらぁ〜!! まぁ!!」

「うぅ......こんなに乱暴に身ぐるみを剥がされるのは初めてだ......」

「テオリアさんとっても綺麗です!!」

「やっぱり私の目に狂いはなくってよ!!」

「しかし、少し恥ずかしい......露出が多いぞ...顔もまるで隠せてない」

「私の知り合いから譲ってもらった布で作ったわ。コンセプトは魅惑の踊り子よぉ!!」

「(こ、こんな姿......ヴァンには見せられない///)」ギュ

「いえいえ、それでいいんです!!」

「へ?」

「さて、テオリアさん。王宮に向かいましょう!!」

「......え、え!?」

「あら、フェルちゃん。何か企んでるわね?」

「はい、フェルは考えましたよ!!」

「テオリアさんが気兼ねなくこの国を回る方法を!!」
248 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/15(土) 22:49:23.71 ID:NzH5oraN0

「あら、さすがフェルちゃんね!!」

「一体どうするんだ? こんな姿で歩いていては......それに
 私はエルフだ目立ってしまう......」

「そこを王のご助力でなんとかしちゃいますよ!!」

「そう簡単にいくのだろうか......」

「任せてください!! 私フェルはこれでも顔がきーー」

その時、フェルの言葉を遮るように荒々しい喧騒が店の中に響き渡る。

「あら、なにかしら?」

「外が騒がしいな」

「もー!! 人がせっかく言おうとしてたのに許しません!!」

台詞を遮られ憤慨したフェルは服屋を出た。

「あ、フェル!!」

その後ろをダークは追いかける。店主とフェルに
こしらえてもらった服を着たたまま

「あらやだ、ちょっとー!! 代金は後でもいいから払ってねー!!」
249 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/15(土) 23:01:53.84 ID:NzH5oraN0






少女は涙を流していた

「ねぇ、お嬢ちゃんさぁ。この服高かったんだ。どうしてくれるの?」

「す、すみません......」

少女は病床の母親に元気が出る料理を作ろうと買い出しに来ていた

「すみませんじゃすまないよぉ? この服の生地はねぇ
 君のような一般人には到底だせない程の金が掛かっている」

買い出しを済ませ、母親に料理を振る舞い
母は自分に笑顔を向けてくれる。喜んでくれる

そうなるはずだった。

自分達より裕福な人間の服を汚すことなんて予定になかった

「ほ、本当にすみませんでした......」

「いやだから謝られても困るんだって」

250 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/15(土) 23:20:45.12 ID:NzH5oraN0

そんな台詞を目の前の男性は下品な顔で言う

「でも君は運が良い、私に仕えればこの服のお金くらいすぐ払えるさ」

「ひっ」

少女は知っていた。この目の前に男性はとてつもなく女癖が悪いと

「お、お許しを......」

「拒否権なんて君にはないよ? さぁ選びなさい
 私に仕えるか、ここで......」

男の背後にいる護衛兵がおもむろに腰にある剣を引き抜いた

少女の顔が一気に青ざめる
誰かたすけて......!! 

少女の内なる叫びだった。が誰にも聴こえない

はずだった。

「はぁ!!」

「ぐはぁ!?」

「な!? 誰だお前は!!」

「ぁ......」

それは少女の心の声に反応したかのように現れた。
それは男の護衛兵を一撃で倒した。

「その子を、離せ」

艶めかになびく銀髪、褐色の肌、そして金色と紺色で作られた踊り子のような服

「(キレイ......)」

少女は先ほどまで抱いていた恐怖を忘れ

只、眼前にいる美しい物体に心奪われていた
251 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/19(水) 22:59:16.24 ID:pAB5e5CE0
続きはよ
別のダークエルフもはよ
252 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/23(日) 19:43:38.44 ID:nyh0ISqso
ダークエルフってだけで期待できる
253 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/04/04(金) 06:27:20.59 ID:zltSmHqQo
こないかなー
254 :>>1 :2014/04/12(土) 11:29:59.68 ID:qVriC/i70
生きてます
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/28(月) 17:31:49.85 ID:mfvDwLAKo
まだかなー
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/11(日) 18:55:55.10 ID:1EzGUlL6o
こないかなー
257 :≫1 :2014/05/15(木) 05:40:03.70 ID:MApMiMxw0
生きてます!!
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/15(木) 09:22:51.80 ID:6dPtDjSw0
うん、だから続きはよ!
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/19(月) 05:47:28.05 ID:5SnWcVGRo
はよ
260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/11(水) 11:53:35.58 ID:IRtVKLq3O
mdk
261 :>>1 :2014/06/16(月) 05:06:18.16 ID:HMvqzI/oO
生きてます!!
262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/16(月) 07:55:13.41 ID:UZ9Ew4g30
生きてるのはわかったからはよ
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/10(木) 03:35:35.20 ID:1C4zuGZWo
こないなー
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/12(土) 09:28:22.71 ID:JDxPBWTcO
まだかなー
265 :>>1 :2014/07/20(日) 19:42:52.50 ID:Q37eiHZvO
リアルが忙しくて暇がないです!
でも絶対書くので いきてます!
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/20(日) 21:10:10.97 ID:/ycJDdyFO
はい
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/20(日) 21:11:15.08 ID:2o+VOgYgO
待っとるよ
268 :>>1 :2014/08/15(金) 11:33:43.69 ID:r5Zl8BQDO
生きてます!!
269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/08/15(金) 13:27:06.28 ID:EWxjB6+AO
だからはよ
270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/08/15(金) 13:52:59.67 ID:FlI1bj/KO
ダークエルフ物は九割は未完のまま落ちる

いつものことさ
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/08/23(土) 18:31:40.56 ID:qHg0LVmg0
このスレ初カキコ

>>1
はよ




はよ
272 :>>1 :2014/09/13(土) 14:44:27.95 ID:JcFlM0+bO
すいません生きてます!!
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/13(土) 17:33:53.95 ID:65I7fwjWO
はよ
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