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一夏「祈るがいい」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/12(土) 00:35:49.31 ID:F856af2G0
それは柔らかく、しかし重い砂だった。一歩歩くごとに足へとまとわりつき、その足はじわじわと沈み込んでいく。そのままじっとしていると、体ごとどこまでも沈んでいくように感じられる。沈んでしまう前に後ろの足を砂から引きずり上げ、前へと踏み出す。
その足もじきに砂にめり込んでいき、また次の足を踏み出す。ただその果てしない繰り返しだった。舌にはざらざらとした砂の感触がする。だが、それを吐き出す唾液すらもう残っていない 。後頭部には鈍い痛みが続いていて、体には刺すような痛みが続き、意識を麻痺させていく。いや、もしかしたら元より朦朧としていた意識を、その痛みがどうにか覚醒させていたのかもしれない 。

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ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
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旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
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木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
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いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
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【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
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こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
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【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
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アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713089503/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/12(土) 00:38:02.02 ID:F856af2G0
此処はこの世の果て。この世界の何処でもないここでは、砂漠以外のものはほとんど視界に入らない。そこでは、大洋の中の船のように自分が移動している感覚が消えていく。自分は本当に進んでいるのか、それとも同じ場所で繰り返し足踏みしているのか。しかし、時折、砂以外のものが視界に入る事がある。それは、真っ赤に染まった砂漠迷彩を施された軍服らしきものと、それに包まれた、少し前までは人間だったものの塊だった。砂に埋れつつある人間たちの骸は、敵か、味方か、それすらあったのかも分からなくなっていた。どちらがどちらなのか区別がつかない。等しくこの大自然に埋葬されていくかのようだ。
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/12(土) 00:39:22.06 ID:F856af2G0
さっきからずっと、耳鳴りのような遠い砂嵐の音が聞こえている。彼は時折、どうして自分がここを歩いているのか思い出せない事があった。それでも、体は何処かへと向かい、規則的な繰り返しを止めようとしない。それは、何か強い力が彼を引っ立てているかのようだった。
自分は何処へと向かっているのか、それは彼にも分からない。
彼、織斑一夏は、この果てしなく続く砂漠をたった一人で、もう何時間も歩き続けていた。さっきから聞こえていた砂嵐の音が、徐々に、何かもっと別の、高いトーンの音に変わっていくように感じる。それとも、やはりただの耳鳴りか、幻聴だったのかもしれない 。だがそれは、何か人の声、女性の声ようにすら感じられるようになってきた。
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/12(土) 00:40:32.46 ID:F856af2G0
一夏はふと、その声に呼ばれたかのように、ゆっくりと振り向く。そして、そこには信じられないような風景が広がっていた。数え切れないほどの、光り輝くチョウが空を埋め尽くし、絡み合うように舞っている。もちろん、この砂漠にチョウなどいるはずがない。だが不思議な事に、一夏はこれを幻覚だとは感じなかった。むしろ、今まで歩いてきたこの砂漠よりも、このチョウの方がずっと現実のように感じられ、それを見ている自分の意識も、ずっと覚醒しているようだった。そして、何か懐かしいような、安らぐような、奇妙な感覚に囚われた。
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sagsaga]:2013/10/12(土) 00:41:35.74 ID:Xu+K5Qhn0
一夏改編の人?
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/12(土) 00:44:06.43 ID:F856af2G0
このチョウたちは、自分を迎えに来たのだ。さっきの声は、自分を呼んでいたのだ 。そんな風に感じられた。もはや、自分がここにいる理由は全く思い出せなかった。このチョウたちは、自分を何処へ連れてゆくんだろう。天国なのか、地獄なのか、あるいはもっと別の世界か。

「一夏ーッ!!」

彼の名を呼ぶ声がして、目の前にISを纏った女が現れ、辺りを強烈な光が照らした。だが、一夏はそれを眩しいと感じる事もなく、現れた女にも何の反応もみせず、ただ其処で立ち尽くしていた。
眼前にいたチョウたちは、消えてなくなっていた。今まで自分が見ていたものは、一体何だったのだろう。チョウが消えてしまったのなら、此処にいる自分は何なのか。それは、一切が曖昧で夢を見ているかのように、夢から醒めたかのように、ほんの僅かだがとても長過ぎるような時間

全ては狂い、狂ってしまっていた。
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/12(土) 00:46:04.16 ID:F856af2G0




Dear Mr.Fantasy



8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/12(土) 00:51:15.62 ID:F856af2G0
山田「あ、あのぉ……織斑くん………?」

山田「順番が『い』のところなので……自己紹介を………」

一夏「…………………………………」スクッ

一夏「織斑一夏だ」

山田「え……あ、以上ですか……?」

一夏「…………………………………」スッ

山田「以上みたいですね………アハハハ」

一夏「…………………………………」


ヒソヒソ


「男子よ、男子」
「クールで格好いいじゃない」
「物静かね」
「背高ーい」


一夏「…………………………………」

「勉強熱心なのはいいことだが、自己紹介ぐらいはまともに出来んのか?」

一夏「…………………………………」スウッ

一夏「千冬か」

千冬「ここでは織斑先生だ、馬鹿者」

一夏「…………………………………」

千冬「先が危ぶまれるな、まったく……」
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/12(土) 00:57:05.33 ID:F856af2G0
山田「織斑先生、もう会議は終わられたんですか?」

千冬「ああ、山田先生」カッカッカッ


カツン


千冬「諸君、私が担任の織斑千冬だ。貴様等ヒヨッコ共を一年で使い物にするのが仕事だ」


キャーッ


「千冬様、本物の千冬様よー!」
「私、お姉様に憧れてこの学園に来たんですー!」
「お姉様の為なら死ねますー!」
「千冬お姉様ぁー!」


千冬「お姉様か、にしても毎年よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ」

山田「あはは……不思議ですね」

千冬「私のクラスだけに集中させてるのか?このやかましい小娘共を」


「お姉様ー!もっと叱って、罵ってー!」
「でも、時には優しくしてー!」
「そして、つけあがらないように躾してー!」
「是非お願いしますッ!!」
「大好きです!」


千冬「織斑、問題ないな?」

一夏「ああ」


「ほへぇーやっぱ兄弟なんだー」
「なんかよそよそしいけどねー」
「それじゃあ、世界で唯一男でISを動かせるってのも……」
「関係あるみたいだねー」
「でも、感じが全然違うくない?」
「んーどうだろ、わっかんない」
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/12(土) 01:00:39.42 ID:F856af2G0
「あの人よ、世界で唯一男でISを使える男性って」
「なんで起動させたんだっけ?」
「そりゃあ入学式の時でしょうが」
「ニュースなってたっけ?」
「あれ?そんなになってなかったね」
「見たけどほとんど黙ってたね……」
「やっぱり入学してきたんだー」
「アンタ、話しかけなさいよ」
「いっ、いや、でも………」
「何かこう、話しかけにくいってゆうかその…………」
「別次元………だよね」
「ただ身長が高いだけでしょー?」
「千冬様の弟だって」
「え?それ本当?」


一夏「…………………………………」カツンカツンカツン
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/12(土) 01:04:46.54 ID:F856af2G0

「待て、一夏!」


一夏「…………………………」


「一夏………だよな?」


一夏「…………………………」スウッ


「久しぶり……だな。私だ、箒だ」


一夏「…………………………」

箒「い……ち……か?」

一夏「…………………………」

箒「な、何とか……言ってくれ。黙ってないで………」

一夏「…………………………………」スウッ

箒「お、おい!」

一夏「…………………………………」カツンカツンカツン

箒「一夏!」


カツン…カツン…カツン……


箒「一夏………」

12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/12(土) 01:07:42.89 ID:F856af2G0

1

箒は、一夏の背中を追いかける事が出来なかった。向こうへと歩いていく一夏が、自分の知っている人物ではなのか、そう疑問に思えてならなかったからだ。まさかあれが、一夏なわけがない、以前の彼女ならそう思えたかもしれなかった。だが、そう思えないぐらいに彼女と一夏の離れた時間は長過ぎた。
けれど、一つだけ確かな事があった。彼の眼には、何もなかった。それは今まで見たこともないような眼で、そこからはいかなる感情も読み取る事が出来なかった。それは、あったはずの自分の居場所など、とっくに消え失せてしまったようだった。それを彼女が悟るのには、時間が必要だった。
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/12(土) 01:10:59.22 ID:F856af2G0

2

山田「では、ここまでで質問のある人はいますかー?」

シーン


山田「うーん、織斑くん、何か分からない事はありますか?」

一夏「…………………………………」

山田「なさそうですね………もし、質問があったら聞いて下さいね、何せ私は先生ですから」

一夏「…………………………………」

千冬「山田先生、張り切っているところ申し訳ないが、コイツには質問するような事がない」

山田「そ、そうなんですか………」

千冬「授業はサクサク進めてもらって結構だ」

山田「はい………分かりました」

山田「何か分からない事がある人はいますかー?」

山田「えーっと、いないのなら授業を続けます」

山田「では、テキストの12ページを開いて下さい」

一夏「…………………………………」ペラッ



セシリア(何者ですの……あの人)

箒(一夏……どうしたんだ……)
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/12(土) 01:16:22.90 ID:F856af2G0


「少し、よろしくて?」


一夏「…………………………………」

セシリア「まあ、何ですの?まともにお返事も出来ませんの?私に話しかけられるだけでも光栄なのに」

セシリア「レディーにはそれ相応の態度でお答えするのが紳士ではなくて?」

一夏「…………………………………」

セシリア「挨拶が遅れましたわ。私、イギリス代表候補生のセシリア・オルコットですわ」

セシリア「もちろん知っていますわよね?知らないなんて言わせませんわ、何てったって私は入試首席でしたもの」

一夏「…………………………………」

セシリア「って聞いてますの?!」バンッ

一夏「…………………………………」

セシリア「アナタ………自覚が足りなくってよ」ビシッ

セシリア「私のような選ばれた人間とクラスを同じくするだけでも奇跡!幸運なのよ!」

セシリア「その現実をもう少し理解して頂ける?」

一夏「現実、か」

セシリア「何です?何かおかしなところでもありまして?」

セシリア「織斑先生はああ言ってましたが、アナタは何も知らないようですわね」

セシリア「この様子だとアナタは私の予想から大きく外れていますわねで」

セシリア「んーまぁでも、私は優秀ですから、アナタのような人間にも優しくしてあげますわよ」

セシリア「分からない事があれば………そうですわね、頭を垂れ、私に泣いて頼めば教えて差し上げてもよくってよ?」

セシリア「どうでしょう?悪くない条件だとは思いません?」
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/10/12(土) 01:18:43.76 ID:dRJ1KWXAO
前にあったビバップの奴かな
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/12(土) 01:19:58.73 ID:F856af2G0
セシリア「何故なら、私は入試で唯一教官を倒した、エリート中のエリートですから」

一夏「お前には分かるのか」

セシリア「あら?私は頭を垂れて泣いてーー」

一夏「これが夢なのか、現実なのか」

セシリア「えっ?」


キーンコーンカーンコーン


セシリア「とっとにかく!話の続きはまた改めて、よろしいですわね!」

一夏「…………………………………」


「セシリアさん、早速探りにいったよー」
「何か最後どしたの」
「織斑くんがなんか言ったみたいだけど」
「全然聞こえなかったわよ」
「気になるー」
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/12(土) 01:39:39.16 ID:F856af2G0

4


バタン


一夏「…………………………………」カツンカツンカツン

一夏「…………………………………」スッ

一夏「…………………………………」


キュッ


「誰かいるのか?」


一夏「…………………………………」


「同室になった者か、これから一年、よろしく頼む」


ガチャ


「こんな格好ですまない、シャワーを使っていた。私の名前は篠ノ之箒……だ」


一夏「…………………………………」

箒「い……ち………か?」

一夏「…………………………………」スウッ

箒「みっ……見るな!なぜお前がここにいる?!」

一夏「俺の部屋はここだ」

箒「と、とにかくだ!私は着替えるから向こうを向いていろ!」

一夏「…………………………………」スウッ







箒「……よ、よし、もういいぞ」

一夏「…………………………………」

箒「何故……….私と一緒の部屋になったんだ?」

一夏「…………………………………」

箒「………お前から……希望したのか?」

一夏「政府からの一時的な処置として、IS学園での寮生活を命じられただけだ」

箒「そ、そう……なのか………」

一夏「…………………………………」

箒「………窓側は………私が狙っていたんだぞ?」

一夏「…………………………………」

箒「………お前がそこがいいのなら、譲るよ………」

一夏「…………………………………」

箒(外を見ているのか……?)
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/12(土) 01:44:31.10 ID:F856af2G0
一夏は、ゆっくりとベットから立ち上がった。箒は何事かとそちらを見たが、一夏はそのまま窓の方へと歩いていった 。そして窓辺で足を止め、窓外に視線をやった。外に広がるのはほとんどが海だ。だが一夏が本当に海を見ているのか、それは箒には分からない。もしかすると、もっと遠くの、果てを見ているんじゃないのか、そんな風にも思えた。
箒には分からなかった。今の一夏に、過去に何があったのか、どうしてこうなってしまったのか。自分は何か、何かとても大切なことを自分は忘れている、そんな気がした。そして自分は悲しいのか、虚しいのか、それとも混乱しているのか、そんなことも分からないような気持ちになっていた。言い様のない喪失感に、じわじわと心を蝕まれていく。それは彼女の中で、ゆっくりと凍りついていったものが、残っていたわずかな灯で溶かされ始めたからだった。
そして、何処かを見つめている一夏の背中を見て思った。そのわけを考えても分かりはしない、今はそう割り切るしかなかった。
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/12(土) 01:59:45.19 ID:F856af2G0
それからしばらくして、箒はいつの間にか眠った。
一夏はまだ、窓辺に立っている。その視線は、ただただ虚空を彷徨っていた。まるで何かを探しているように。

「ーーーーまで、私を……忘れ……ないで………覚えていて……くれ……」

箒の声に、一夏は振り向いた。そして窓辺を離れ、箒の眠るベッドへと歩みを進めた。箒は、頬に涙を伝わせながら、ひどくうなされていた。その小さな慟哭は、まるで彼女自身が今まで押し殺してきた本心ののようだった。それを、一夏という一つのきっかけが呼び起こしてしまった。

「ーーーーして、いつか……これを……」

その言葉の先は、なかった。もしかすると、その先はないのかもしれない。これはただの寝言なのかもしれない
一夏は、うなされている箒の涙をそっと拭った。そして、じっと箒を見つめていた。
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/10/12(土) 02:13:23.77 ID:F856af2G0

5


一夏「…………………………………」カチャカチャ

箒「…………」 モグモグ

一夏「…………………………………」

箒「…………」モグモグ

一夏「…………………………………」

箒「…………」モグモグ

一夏「…………………………………」

一夏「どうして、ここにいる」

箒「知らん、誰の隣で食べようが私の勝手だ」

一夏「…………………………………」

箒「それ以上の理由はない」

一夏「…………………………………」スクッ

箒「もう食べ終わったのか」

一夏「…………………………………」カツンカツンカツン

箒「また後でな」


「あー食べ終えちゃったー」
「迷ってた私の負けね」
「大丈夫、まだ焦る段階じゃないわ」
「遅れたー」
「次があるって、次々」
「ねぇねぇーみんなで食べよーよー」

箒(何なのだ………この、この寝覚めの悪さは……一体…………)
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/12(土) 02:38:53.95 ID:F856af2G0

6

千冬「えーこれより、再来週のクラス対抗戦に出るクラス代表を決めるとする」

千冬「クラス代表とはそのままだ。対抗戦だけでなく、生徒会の会議や委員会への出席などなど…………まあ、クラス長と考えてもらっていい」

千冬「自薦他薦は問わない。誰かいないか?」


「はい、織斑くんを推薦します」
「私もそれがいいと思います」
「私も同じです」
「右に同じく」
「私もです」
「あっしもです」


一夏「…………………………………」ペラッ

千冬「では候補者は織斑一夏、他にはいないのか?いないのなら無投票当選で決定事項とする。ちなみに一度決まるとーーーーー」


バンッ


セシリア「お待ちを、織斑先生。それでは納得いきません!そのような選出は認められません!」

セシリア「男がクラス代表だなんていい恥曝しですわ!」

セシリア「私にそのような屈辱を一年間味わえと仰るのですか!?」

千冬「…………はあ?」

セシリア「実力からして、私がクラス代表になるのは必然。それを物珍しいとう理由でそこの木偶の坊にされては困ります!私はこのような島国までISの技術の修練に来ているのであって、つまらない人形劇をするつもりは毛頭ありません!」

セシリア「実力を見れば、トップである私がクラス代表をすべきです!」

セシリア「大体!文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけない事自体が私にとっては耐え難い苦痛で………!」

千冬「ハッ、面白い奴だ。ろくに見もしないでよくもそんな大口が叩けるものだ」

山田「織斑先生、口調が………」

千冬「おっと……うっかりした」

一夏「お前がやれ」

セシリア「は?」

一夏「………………………………」

セシリア「何です!?情けでもかけたつもりですの?!」

一夏「…………………………………」

セシリア「くうぅ……どこまで私を侮辱する気ですの………!」ギリギリ

セシリア「よろしいですわ!決闘でどちらかハッキリとさせましょう!」
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/12(土) 02:50:53.65 ID:F856af2G0
セシリア「ワザと負けたりしたら、私の小間使いーーーーいえ、奴隷にしますわよ!」

一夏「…………………………………」

セシリア「どうました、怖じ気づきましたの?もしそうなら、ハンデをつけて差し上げてもよくってよ?」

一夏「必要ない」

セシリア「ずいぶんと大きく出ましたわね?そこまで自信がおありでしたら私がハンデを付けてもよろしくてよ?」

一夏「…………………………………」

セシリア「どうやら男が女より強いだなんてお思いのようでして?フフフッ、日本の男子は意地汚いようですわね」


「織斑くんやめときなって」
「絶対無理だって」
「悪いことはいわないから、ハンデぐらいはつけてもらいなよー」
「勝てるわけないよ、相手は代表候補制だよ?」
「コーラ飲んだらゲップが出ちゃうぐらい分かりきってるって」
「冗談もたいがいにしといたほうがいいよー」


箒(自信、なのか?余裕といえば余裕なのだろうが………)

千冬「ハン、話はまとまったな?それでは、勝負は次の月曜、第三アリーナで行う」

千冬「織斑とオルコットは各自でコンディションを整えるなりしておくように」
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/12(土) 03:02:17.35 ID:F856af2G0







IT HAS STARTED ALL……
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/12(土) 03:20:23.39 ID:F856af2G0
千冬「わけの分からぬままに始まったこのSS、終わりは一体全体どこなのか?」

千冬「これを読まれた誰もがお思いでしょう」

千冬「しかし、分かっていることはただ一つ、これはただのありふれたくだらないお話」

千冬「そこで誰が何を思い、どう生きるのかはその誰か次第」

千冬「全ては流れ、全ては繋がっている」

千冬「どこかの誰かがこう言った」

千冬「次回」




Next Session
Breathe Into Me Again




クラリッサ「お前……もうちょっと上手いことやれよ」

千冬「お前の出番はまだだ。引っ込んでろ」

クラリッサ「みんな、是非見てくれよな」

千冬「おい、無視するな」

クラリッサ「次は私が出るぞー」

千冬「シッ!」

クラリッサ「いだだだだ!馬鹿やめろ!アイアンクローはやめろ!!」
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/12(土) 03:28:58.67 ID:F856af2G0
二ヶ月ぶりです。ネット環境の回復、及び話をいじくり回して遅くなりましたすいません。
新しく立てたのは書き直しがしたかったからです。前の書き方はかなりめんどくさかったので、とりあえずいらない部分を削ぎ押したり、書き方で無駄にレスをとっていたのを減らしたり、文の感じが違ったりだとかで量が一気に前の半分ぐらいになりましたで。それとすでに失敗しました。
登場人物の性格がものすごく変わってます。なかには誰だこの女?ってなるキャラもいるかもしれません。捏造設定とかもできます。
なるべくサクサク進めます。
死人が出るかは………そこそこ出るかも
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/10/12(土) 08:13:18.34 ID:TfWlnTCd0

完結させてくれよ
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/10/12(土) 08:18:35.21 ID:nATEsBAko

期待してます
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2013/10/12(土) 08:55:30.13 ID:XxU9hMxx0
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2013/10/20(日) 15:17:52.45 ID:jnuFuJyB0
終わっちまうのか…?
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2013/10/28(月) 04:15:29.22 ID:/lYmNYK30
楽しみにしてたがこないっぽいなこれは…まってるぞ
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/28(月) 21:09:25.52 ID:9c78MiE40




Session#1
Breathe Into Me Again



32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/28(月) 21:13:12.07 ID:9c78MiE40

7

「ついに時が来たようだ。今こそ全ての続きを始めるべき時、あの時から始まり、あの時より止まったままの戦いの続きを。いずれ受けねばならない贖罪を。勝利に終わり、罪を償う為に、如何なる終わりへと」

「その戦いとやらに、彼が参戦することは可能かな?」

「愚問だが………できることならそれは避けてもらいたい」

「それを決めるのは私でなく、彼女でなく、貴方でもなく、彼自身の意思だよ」

「そうだな、彼もこの戦いによって生みだされてしまった因果の一つ…………君のように戦いの舞台へと躍り出る権利は持っている」

「果たして彼は舞台へと上がるだろうか?私は否だと思うね。彼は臆することなどなく、威風堂々とその舞台へと上がるだろう。そうさ必ず、必ずやその一歩を自ら踏み出すとも、彼ならばそうするだろうとも」

「私や貴方、彼女や彼等、奴等も同じく舞台の上で終わりを待っている。そして、彼はまだそこへ上がっていないだけ。だが、それと同時に奴等には、自分の犯した罪が一体どれだけのものなのか、それを奴等の身に余る鉄槌と共に思い知らせてやるとしよう」

「やはり君は彼等と一緒の方が合っているな」

「それは貴方もだろう?そして、私も彼等も、貴方も、彼女も、奴等も。その誰もが大罪人であり、つくづく度し難く、あまりに愚かで卑小な存在」

「そうだ。私達は汚れた大罪人だ。汚れてしまったからこそ、汚れた手を使い続けてまで、汚れたもの同士で哀れに奪い合いこうして勝ち続けねばならない。どんな理由があろうとも、決して敗者になることは許されはしない。ただその中で、罪を償う方法を探す為にさらなる罪を犯して生き続けるしかないのだよ」
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/28(月) 21:15:27.63 ID:9c78MiE40
「ハハハハッ、この世の神様というやつは、どうしようもなく狂ってしまっているようだな、ハハハッ!」

「貴方も、そうは思わないか?」

「あなたたちは、あなたたち以外に神を持たない。しかし、あなたたちは神のように強くはない」

「なるほどな、それは貴方の考えか?」

「いいや、そんな大層なものじゃない。人間は弱いからこそ、それを隠し、自分を導いてくれるような絶対的なものが必要なんだ。君をここまで導いたものが彼だったように………必然でなければならない救いが」

「そう………だな」

「けれど、それはまるでつかいものにならなくなった神の代わりを探し回っているようなものだ。国家や思想、イデオロギーも法も、正義に悪、主義と主張、個人の価値観に至るまで。人間の生みだすもの全ては結局のところは、神のような全知全能の模倣にしか過ぎないのだ」

「ふざけるな!貴方や彼女、彼等や私、彼の感情、心、決意、覚悟、思い。その全てを神の模造の出来損ないとは言わせない。ましてやこの世界に神などいない。いや、狂った神でもまともな神であろうとなかろうと、存在していていても何も救えず、何も出来ぬ役立たずの神なら尚更いらない」

「それは残念だ。神は確かに存在している」

「どうしてだ?どうして、そう言いきれる?」

「遠い昔、人間と神々は助け合っていた。だが聖書とコーランは神をひとりぼっちへと追いやった。神格化されて、崇められ、崇拝され、誰も神に近づかなくなってしまったのだ。だから神は、気が狂ってしまったのさ、まるで人間のように、だ。たったひとりぼっちで、完全な存在にならねばならなくなったからだ」

「そして、今では誰も神の言うことに耳を貸そうともしなくなった」

「そうだ。だがそれでも、人は何かを信じて生きるべきだ」

「何も信じない、そう言ってしまわねばならないこともあるのだろう。けれど神は、気が狂いながらも私達を愛しているんだと私は思う。例え悲劇的な運命を幾度となく用意していようともな」
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/28(月) 21:27:42.12 ID:9c78MiE40
「ハハハッ、まったくちゃんちゃらおかしいよ、生きるというのは」

「ならば自分の生きたいように生きるのが最も正しい生き方だ、どの文献にもそう書いてある」

「聖書にも、かな?」

「ああ、そうさ。所詮紙と文字の並びに神を信じることを強制できる力などない、聖書に描かれた神を信じるかどうかは聖書を読んだ者次第。つまり選ぶのは全て自分というわけだ」

「なるほどなるほど、だが私は既に私の信じるところに身を置いている」

「それがいい。それがとても素晴らしく、美しい生き様だ」

「美しい、か………」

「何もなく、何もしようともせず、ただただ生きているだけは真っ平御免だろ?」

「それは生きているとは言わない。それは、死にながらに生き永らえてるだけのの死人だ。かつての私がそうだったように」

「死んでいるように生きたくはない、ということか」

「定められた運命とやらに沿って生きるだけでは何の感慨もない。そんなことならいっそのこと私の望んだ明日の為に、精一杯生きてみるとするよ」

「君は、つくづく似ているな」

「私が?フフッ、そんなことはないよ」

「久しぶりに笑ったな」

「そうかな?私はこれでも表情は豊かな方でね、彼のおかげさ」

「………すまない。私はーーーー」

「貴方をいくら責めようが、例え殺したとしても、何も変わりはしない」

「そう、死ぬべきなのは奴等だ。罰などという生温いもので済ますものか。奴等は、それだけのことをしたのだからな」

「光は、その自らが生みだした影によって消える。幾千の影達とともに、だ」

「………光を消してしまえば、いずれ影は消える。それは存在しなくなるということなんだ」

「そんなことはとうの昔に分かりきったことだ」

「私は、何処までいこうと度し難いんだ」
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/28(月) 21:35:04.28 ID:9c78MiE40


8

山田「ISには、意識に似たようなものがあり、互いに対話のようなものをします」

山田「つまりは、一緒に過ごした時間で分かり合うというか………」

山田「ええっとですね………操縦時間に比例して、ISも操縦者の特性を理解しようとします」

山田「それによって相互的に理解し、より性能を引き出せることになる訳です。ISは道具ではなく、あくまでパートナーとして認識してください」


「先生ーそれって彼氏彼女のような感じですかー?」


山田「それは、その……どうでしょう…………私の場合はもう………駄目です。恥ずかしいです」モジモジ


「先生赤くなってるー」
「先生可愛いー」
「彼氏欲しいよね」
「男子校行ったら?」
「え、なんか冷たい」
「知らん」
「あんた、そんなキャラだっけ?」
「みんな楽しそうだねー」


キャッキャキャッキャワイワイガヤガヤ


箒(………これはアレか)

箒(いわゆる女子校特有の雰囲気か………馬鹿馬鹿しいというか何というか…………)チラッ

一夏「…………………………………」

箒(こんな中であいつは参考書を読んでいるのか)

箒(いや、待て。読んでいるのか?ただ眺めているだけにも見えない事もないが………)

箒(まるで、読む事に意味はないみたいに)

箒(…………私の深読みだな。授業に集中しよう)

箒(武士たる者、文武両道でなくてはな)カリカリカリカリ
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/28(月) 21:51:42.16 ID:9c78MiE40
千冬「んっんん、やかまーーーー」


キーンコーンカーンコーン


千冬「しいぞ」

山田「あれ?授業終わっちゃいましたね……アハハ」

千冬「そうですね」

千冬「………そうだ織斑、お前のISだが準備に時間がかかる」

一夏「…………………………………」

千冬「学校に予備はない。少し待ってもらう代わりに、お前に専用機を用意するそうだ」


ザワッ


「専用機!?しっ、しかも、一年生のこの時期に!?」
「つまるところは政府から支援が出てるってことだよね……」
「そりゃあ、有名人の織斑くんだものね」
「でも純粋にスゴいよ!入学早々に専用機持てるなんて!」
「いいなぁ、専用機。私も欲しいなー」
「いまなんの話ー?」


ザワザワザワザワ


千冬「理由は分かるな」

一夏「ISのコアは完全なブラックボックス、作る技術は未だ解明されていない。よって、篠ノ之博士以外では製造が不可能。現存するISは467機、篠ノ之博士とは接触が不可能、これ以上ISは存在していない。コアの取引はアラスカ条約により絶対禁止」

千冬「なら分かるな。本来は国家あるいは企業の人間にしか与えられないIS専用機、だがな」

千冬「お前の場合は特殊も特殊、今まで類を見ないケースだ。さしずめ貴重なサンプルのデータ収集の為の専用機が政府から用意される事になった、という訳だ」

一夏「…………………………………」

千冬「気に食わんか?」

一夏「問題ない」
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/28(月) 22:02:41.50 ID:9c78MiE40


「あの………先生」


千冬「何だ、言ってみろ」


「篠ノ之さんって………もしかして篠ノ之博士の関係者か何かなんでしょうか………?」


箒「…………」

千冬「篠ノ之」

箒「構いません。言ってください」

千冬「………篠ノ之箒は篠ノ之束の実の妹だ」


エエエエエェェェェェエエエエーーー!?


「すっ、すごい!このクラスに有名人の身内が二人もいる!」
「でも篠ノ之博士って今世界中の企業や技術者達が探してる人だよ!?」
「どこにいるとかわからないのー?」
「篠ノ之博士ってどんな人!?やっぱり天才!?」
「どんなお姉さんだったの?」
「篠ノ之さん、今度ISの操縦教えて!」


箒「ま、待ってくれ、出来れば一人ずつ頼む」


「はい!篠ノ之博士はどんな人でしたんですか?!」


箒「………根っからの科学者だった。子どもみたいに真っ直ぐで純粋な」

千冬「…………」


「どこにいるとか分からないのー?」


箒「それは私にもさっぱりなんだ」


「篠ノ之さんって博士仕込みとかでISの操縦上手い?」


箒「いや、たわいもない程度だ」
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/28(月) 22:11:16.07 ID:9c78MiE40


9

千冬「本当に言って良かったのか?」

箒「はい、気にしても……どうしようもありませんから」

千冬「ほう………ずいぶんと変わったな、箒」

箒「そうですね、昔と比べて胸が大きくなりましたし身長も伸びましたね」

千冬「はぁ、可愛げのない奴だ。ま、あいつが喜びそうだな」

箒「………」

千冬「今度会った時はせいぜい揉まれんよう気をつけることだ」

千冬「やられる前に殺れ、それだけだ」

千冬「ではな」








箒(…………姉さん、か。今何処で何をやっているんだろう)

箒(いや、今の私には姉さんの事を気にしていられる程の余裕はない)

箒(…………私自身の事もある)

箒(それに、一夏の事だってあるんだ)

箒(一つ一つが大き過ぎる)

箒(その重さで私が潰れてしまいそうになる)

箒(………………そんな中なのに)

箒(あいつのあの眼が、私の頭の中から離れない)

箒(まるで何もないようなあの眼が…………)

箒(理由も、何があったのかも私は知りたい)

箒(潰れている場合じゃない)
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/28(月) 22:16:36.27 ID:9c78MiE40


10

箒(………あいつは何故ああも必死なんだ?)


カツカツカツカツッ


セシリア「良かったですわね、政府から専用機を用意してもらえて」ビシッ

セシリア「私が専用機、あなたが訓練機じゃあ勝負は見えていますし、全くもってフェアではなく、何の面白みもありませんかものね」

セシリア「フフン……まあ専用機もらったところで、私の勝ちは揺るぎないものですけど」

一夏「…………………………………」

セシリア「どうなさいます?勝ち目のない勝負はしないのが得策かと思いますわよ?」

セシリア「何故なら私は、限られた467機のISの中のさらに限られた専用機を持つ、全人類六十億の中でもエリート中のエリートなのですから」

セシリア「残念ながらあなたはーー」

一夏「…………………………………」スクッ

セシリア「ッ」ビクッ

一夏「…………………………………」カツンカツンカツン

セシリア「ちょっ………ちょっと!話はまだ終わってませんのよ!逃げる気ですの?!」


カツン…カツン…カツン……



セシリア「お待ちなさい!」


カツン……カツン…………


セシリア「クッ…………屈辱ですわッ!」バンッ


ポン


「ドンマイ、セシリアさん」
「分かるよーソレ。気になるからって素直になれないのって分かるよー思春期真っ盛りだねー」
「青いねぇ、まさに青き春だねぇ」
「諦めないで!」
「めげずに一緒に頑張ろっ」
「チャンスはまだあるって、ねっ!」


セシリア「ちっ、違いますの!そうゆう事ではありませんの!」

箒(必死で食ってかかってるが、あまりの結果に三周回って同情すら覚えるよ)

40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/28(月) 22:21:10.68 ID:9c78MiE40
普通に見れば一夏は極度に無口な男に見えるのだろう。そうではないと気付くような人間は極めて少ないと言ってもいい。ただ者ではないという事なら一夏の様子から誰でも分かるようだ。
現に今も、一夏に接触したセシリアは自分は全く相手にされなかったのだと、彼はただの礼儀知らずで寡黙な男、彼から少し感じた違和感も自分の気の所為だったのだと、自分の思い違い程度にしか思っていない。

ーーーー本当にそうなのか?ーーーー

そう疑問に思ったのは箒だった。さっきの接触でセシリアは無視されたのではなく、一夏にとってどうでもいい存在だっただけ。それどころか、自分も含めた他の人間にも、それが当てはまるように思えた。あまりに荒唐無稽な話なのだが箒には何故か確信があった。『女の勘』とでも言うべきものが。
ここで箒は、今が昼休みだったこととと自分はまだ昼食がまだだったことを思い出した。頭を切り替えて机の上のノートや教科書を引き出しの中へと放り込み、立ち上がってそそくさと教室を後にした。途中セシリアがさっきの事で女子達からあれやこれやとあらぬことを言われて、その訂正に非常に難儀してたようだったが気にせず通り過ぎた。箒はそんな事を気にするよりも、何かサッパリしたものを食べながら考え事がしたかった。
廊下に出て一夏の行方を追おうとは思ったものの、腹の虫の声には勝てず。そのまま食堂まで一直線に歩いていった。
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/28(月) 22:29:39.55 ID:9c78MiE40


10


ピリリッ ピッ


千冬「よおクラリッサ、収穫があったのか?」

クラリッサ『日本の少女マンガはやはりいい………』

千冬「そうか」

クラリッサ『待て待て待て、切るな。切るなよ』

千冬「文句なら腹の虫に言ってくれ」

クラリッサ『その腹の虫も黙るような事が分かったんだ。知っておいて損はないぞ』

千冬「黙るかどうかは知らんが教えてくれ」

クラリッサ『そうこなくてはな』

千冬「で、何がわかったんだ?」

クラリッサ『お前の、弟に関する事だ』

千冬「…………聞こうか」

クラリッサ『あの事件の元凶と呼ぶべき奴がいた。そいつの名前はメンデロ・アル・ヘディア。年齢人種不詳で出身不明、さらには性別までも何もかもが不明だ。まるで元から存在しなかったみたいにな』

クラリッサ『そもそもこいつはあんな所で一体何を目的とした実験をしていたのか、どのくらいの期間何をしたのかも不明』

クラリッサ『現在、潜伏場所、生死確認、その実験内容に至るまで全て調査中だ』

クラリッサ『恐らくこいつはあの時、私達が実験施設に辿り着くよりもさらに先に、実験施設を完全に粉砕し、全ての研究データ及びバックアップなど、自分の痕跡にまで至る一切を消去したんだと思われる』

クラリッサ『何故そんなことをしたのかはーーーー』

千冬「不明、か。調査中調査中と健康診断の方がよっぽど早いな」

クラリッサ『そう言わんでくれ………我々シュヴァルツェ・ハーゼの力を持ってしても、今のところ藁の一本も何も掴めやしないんだよ』

千冬「なかなかどうして………お前達が調べて調査中、不明ばっかりとはなんて奴だ。まったく……」

クラリッサ『ああ、そうだな。全くもってお手上げだよ』
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/28(月) 22:39:42.06 ID:9c78MiE40
千冬「じゃあ何でお前は、そんな奴がいたと分かったんだ?」

クラリッサ『………残っていたんだよ、あの場所に』

千冬「あそこにか?…………馬鹿な」

クラリッサ『何もかもが破壊され、燃えし尽くされていたあの場所を、お前は地獄だと言ったな』

千冬「あの光景を目の当たりにして、そうとしか言いようがなかっただろ」

クラリッサ『そうだったな、全くその通りだった。その地獄の後に見つけたんだ。奇跡的に焼け残った一枚の紙をな』

千冬「まるでパンドラの箱だな」

クラリッサ『そんな御大層なものじゃない。その紙は半分程燃えてしまっていた。だが焼け残った部分には、メンデロの名前ともう一つ、恐らく本人の直筆でこう書かれていたんだ』

クラリッサ『リセットしたい事がある。今までの事はみんななかったことにして、掌から滑り落ちてしまったものをもう一度、この手に握りしめたい…………とな』

千冬「…………」

クラリッサ『奴は何か取り返しのつかないことをやってしまったんだろう。それを無かったことにしたいが為に、何かにすがるように、あそこまで暴れ廻ったんだろうな』

千冬「私には………分かりたくもない。分からなくていいことだ」

クラリッサ『奇遇だな、私もそうだ』

千冬「お前とはつくづく気が合うな」

クラリッサ『ハッハッハッ、嬉しいな』

千冬「それはいいが、さっきの話をまとめると」


二人「『ほとんど分かってない』」


千冬「って、ことだな?」

クラリッサ『ああ、分かったのは名前と関係者だったってことだけだ。すまない』

千冬「いや、それでも知るだけの価値は十二分にある」

クラリッサ『腐っても鯛、ってやつだな』

千冬「じゃあ今度は新鮮なやつを頼むもうか」

クラリッサ『ハン、釣り休暇がとれたらな』
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/28(月) 22:51:53.03 ID:9c78MiE40
クラリッサ『それと、ISってのは本当にスゴいな』

千冬「急にどうした?」

クラリッサ『最近の出来事なんだがな。一夏がこっちで使ってた訓練機がこの前まで動かなかったんだよ』

千冬「故障でもしたか」

クラリッサ『それがいざ調べようって時にはもう直っていてな、結局何が何だか分からず終いさ』

千冬「へえ、珍しい事もあるものだ」

クラリッサ『勝手に直ったから良かったものの………あのままだと懲罰ものだったんだぞ』

千冬「早いめに日本に帰って正解だったな」

クラリッサ『いーや、こっちに無理矢理呼び戻されるぞ、何てたってお国のIS壊したんだからな』

千冬「原因不明のISの故障か………誰かさんが聞いたら喜ぶな」

クラリッサ『話を聞け、それに何の話だ?』

千冬「こっちの話だよ」

クラリッサ『うむ、原因は何だったんだろうか………』

千冬「そんなに乱暴に扱ってなかったと思うがな」

クラリッサ『何はともあれ、上からお叱りを受けなくて良かったよ』

千冬「それは良かったな」

クラリッサ『お偉さんは本っ当話が長いんだ、眠くなる。それにやっと書き上げた新しいISの手続きと壊れたISの報告書も全部パアになってしまったよ』

千冬「職場の愚痴ならまた今度飲みに行った時にしてくれ、こっちは腹が減ってるんだ」

クラリッサ『そうだったそうだった。時差を忘れてたよ』

千冬「そっちはまだ四時だろ?」

クラリッサ『ああ、スゴく眠い』

千冬「寝てたのか」

クラリッサ『徹夜で調べた部下からの連絡で起きたんだ。それを聞いて、一刻も早くお前の耳にいれておいた方がいいと思ってな』

千冬「………すまない。その部下にも例を言っといてくれ」

クラリッサ『どういたしまして。それよりも………また今度こっちでコスプレでもどうだ?』

千冬「お前達が選ぶのは露出が高いから断る」

千冬「それよりも、前の時一夏にやったスーツは一体何なんだ」

クラリッサ『いやぁ、一夏に似合う衣装探してたら小さい通りのいい感じのところで見つけてな、ハッハッハッ』

千冬「あれギャングだったよな?ギャングって……せめてヤクザじゃないか?」

クラリッサ『この前行ったらそこなくなってたよ、アッハッハッハッ』

千冬「お前はほんと人の話を聞かん奴だな」
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/28(月) 22:54:51.12 ID:9c78MiE40
千冬「…………………」

クラリッサ『…………………』

千冬「なあ」

クラリッサ『何だ』

千冬「私にいい考えがある。クラリッサ大尉殿」

クラリッサ『聞こうか』

千冬「これはお互いの為になる」

クラリッサ『ほう………それは?』

千冬「まずは電話を切って、各々寝るなり食うなりする」

クラリッサ『なるほど、ならそうしようか』

千冬「腹が減ったんだよ」

クラリッサ『私ももう一眠りさせてもらうよ』

千冬「じゃあな」

クラリッサ『おう』


ピッ


千冬(メンデロ・アル・ヘディア……一体何者だ………)


グゥー


千冬(こっちでも調べてみるか、まずは腹ごしらえだ)

千冬(腹が減っては戦は出来ぬからな)



カツッカツッカツッカツッ

45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/28(月) 23:00:02.30 ID:9c78MiE40


12


カチャカチャカチン


箒(…………駄目だ。サッパリ分からん)

箒(まるで雲を掴むような話だ。私が知らない六年間の内に何があったのかなんて)

箒(そういえば千冬さん、第二回モンド・グロッソ大会で突然消えたそうだな)


カツン………カツン…


箒(そこに何かありそうだな)

箒(思い切って直接聞いてみるか?いや、答えてくれないだろうな。良くて上手く言いくるめられて、帰らされるのがオチだ)

箒(最悪の場合は…………あの鉄拳だけは貰いたくない。絶対に痛いからな)


カツン


箒「!」ビクッ

一夏「…………………………………」

箒「何だお前か………驚かすな、幽霊かと思ったぞ」

一夏「お前に、頼みがある」

一夏「簡単な事だ。それでお前は手に入れる」


「ねえねえ、君って噂の人?」


一夏「…………………………………」


「聞かなくても分かるよね、男子って君だけだしそのナリ見れば一発だよね」

「代表候補生と勝負するんでしょ?おーい?」


一夏「…………………………………」


ヒョコッ


「そこで、素人の君が代表候補生のコにも負けないように、私がISについて色々と教えてあげようと思うんだけど………」

「って聞いてる?」


一夏「…………………………………」スウッ


「それで、ISについてどこまで………知って……………」


一夏「…………………………………」


「え、あ……その、やっぱり……何でも、ない…………です」


サササッ


箒(何も言ってないのに、多分三年生の人が黙って逃げ出した)

箒(初めの勢いは何だったんだ。名も知らぬ三年生の先輩、こいつの威圧感のようなものにでも当てられたのか?)

箒(セシリアはこれに気付かなくて、ある意味幸せなのかもな)
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/28(月) 23:05:44.29 ID:9c78MiE40
一夏「ーーーーお前は、どうする」

箒「…………聞くよ、その頼みとやら」

一夏「俺は剣道場にいる」スッ

箒「おい、何をするかをーーー」


カツンカツンカツン


箒「待て!」


カツン……カツン…………


箒「行ってしまった……」

箒(私に頼み?私に何をさせる気なんだ。一夏)

箒(さっきはかすかにだったが、名前を呼んでくれた)

箒(どうして私の名前を呼んだんだ?)
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/28(月) 23:12:31.64 ID:9c78MiE40


13


箒(まさか、本当に剣道場にいるとはな)

箒(私が剣道部なのをどうやって調べたんだ?)

箒(思い出した……………訳ではなさそうだな。そもそもこいつならその辺の生徒に聞けばすぐ答えてもらえるか)

箒(それに……)チラッ


ヒソヒソヒソ


「あの二人ってどうゆう関係?」
「幼馴染みだってさ」
「幼馴染みねぇ、レアものだね」
「でも確か幼馴染みってだいたいむーーーー」
「はいはい、いらん事言うお口はこれかなー?」
「あれがうわさの織斑くんね」
「しかも千冬様の弟よ」


箒(剣道部貸し切り状態じゃないか………やることが滅茶苦茶だ)

一夏「…………………………………」

箒「おい、一夏」

一夏「…………………………………」

箒「防具は着けないのか?」

一夏「始めるぞ」

箒「あ、ああ、そうしよう」スクッ

一夏「…………………………………」

箒「行くぞ、手加減はなしだ」

一夏「それでいい」
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/28(月) 23:21:38.17 ID:9c78MiE40




箒「でやぁっ!」ブンッ

一夏「………………………………」スッ

箒「はっ!」ブンッ

一夏「………………………………」スッ

箒「面っ!」ブンッ

一夏「………………………………」


ガッ


箒「くっ……!」ググググッ

一夏「………………………………」 バッ

箒「しまっーー」

一夏「………………………………」ヒュッ


ピタッ


箒「ッ……」


カランカタカタカタタン


一夏「…………………………………」スッ

箒「…………一本取るまでが剣道だぞ」

一夏「…………………………………」

箒「剣道で竹刀を避ける奴なんてお前だけだぞ、おまけに弾き上げるのもな」ヒョイ

箒「これで私の連戦連敗か、昔よりもさらに強くなったな」

一夏「…………………………………」

箒「さあ、もう一回やろうか」

一夏「いや、今日はここまでだ」カツンカツンカツン

箒「え、あ……そうか………」ゴソゴソ スポッ

一夏「何かあれば、こちらから連絡する」シュッ

箒「おっと」パシッ

一夏「……………………………………」

箒「竹刀を投げるな、馬鹿者」

一夏「……………………………………」カツンカツンカツン

箒「またな」


カツン……カツン…………


箒「気分屋だな………まったく、こっちの気も知らないで………」
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/28(月) 23:22:32.11 ID:9c78MiE40


「青春の余韻中失礼するよ」
「篠ノ之ちゃん、剣速速すぎ」
「私勝てるかな………」
「主将?」
「織斑くんも織斑くんで篠ノ之さんと互角だったけどねぇ………」
「まさか防具なしの片手で熟練者の篠ノ之さんに勝っちゃうんだもんねぇ……」


箒「いえ、自分なんかまだまだです。あいつは即戦力に成りえますよ」


「そうだね、いっそのことスカウトしちゃう?」
「いやいやいや、入ってくれないでしょ」
「是非ともウチに欲しい」
「主将?」


箒「ハハハハハ………頑張ってくださいね」
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/28(月) 23:26:55.28 ID:9c78MiE40


14


ワイワイガヤガヤ


一夏「…………………………………」カチャカチャ

箒「やっと見つけた。一緒に食おう、一夏」ガタッ

一夏「…………………………………」

箒「いただきます」

一夏「…………………………………」

箒「おっ、この鮭おいしい」

一夏「…………………………………」

箒「…………聞いてもいいか?」

一夏「…………………………………」

箒「このままで勝てるのか、セシリアに」

一夏「ああ」

箒「竹刀の打ち合いだけで勝てる程、代表候補生は甘い相手ではないと思うがな」

一夏「お前は、全力で打つだけでいい」

箒「それだけか?」

一夏「充分だ」

箒「それ以外の協力も、私は惜しまんぞ」


「やっほーおりむー隣いいー?」


一夏「…………………………………」

箒「!?」

箒(おりむー!?)


「かなりんも一緒でいいかな??」

「おーい、こっちこっち」


一夏「…………………………………」

箒(………どう出るんだ?一夏)


「ねえねえ、ほーちゃんもさーみんなで一緒に夕飯しようよ?」


箒「ほーちゃん!?わっ、私か!?」


「そうだよー篠ノ野箒だから、ほーちゃん♪」


箒「え……ああ、私はいいぞ」


「やったー♪早く早くー」


箒(何故か親近感を覚える……姉さんと気が合いそうだな)
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/28(月) 23:41:22.37 ID:9c78MiE40


「「失礼しまーす」 」


一夏「…………………………………」


「自己紹介するねーおりむー。私は布仏本音、本音でいいよーそれでね、こっちは友達のかおりんとしずねんだよー」
「アダ名は何でかかなりん、名前は相川清香、よろしくね」
「私はしずねん、鷹月静寐、以後よろしく」


本音「よろしくねー」

一夏「………………………………」

箒「私は篠ノ之箒だ。よろしく頼む」

本音「おーそういやほーちゃんってこの前の剣道の大会で優勝してたねーおめでとー」

箒「ありがとう、よく知ってたな」

本音「えへへ、すごいでしょー…………むっ」

箒「む?」

鷹月相川「「む?」 」

本音「むー」ジィー

相川「どうしたの?本音」

本音「むむむっ」ジィー

一夏「………………………………」

鷹月「織斑くんが何?」

本音「………………」ジィッ

箒「顔に何か付いてるのか?」

本音「違うのだよー」ジィー

三人「「「???」」」
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/28(月) 23:47:06.70 ID:9c78MiE40
一夏「…………………………………」スクッ

本音「おおー」

箒「相変わらず食うのが速いな、もう少しゆっくり食べても罰は当たらんと思うぞ?」

一夏「…………………………………」カツンカツンカツン

箒「じゃあな」

本音「おりむーバイバーイ」フリフリ

相川「さようならー」

鷹月「さいならー」


カツン……カツン…………


箒「………えっと……その………すまない。あいつはなかなかの気分屋でな、せっかく一緒に食べようと言ってくれたのにすぐ食べ終えてしまって…………でもな、あいつは悪い奴じゃーーーー」

本音「うん、おりむーは悪い人じゃないと思う」

箒「えっ?」

本音「とってもいい人だと思う」

鷹月「本音、それは勘?それとも思い付き?」

本音「どっちでもないよ。ただ、そう思っただけ」

相川「フフフッ……なら、織斑くんはとってもいい人ね」

本音「でもね、何だろ。おりむーって不思議、よくわかんない」

鷹月「そりゃあ、黙ってちゃあ誰も何も分かーーーー」

相川「それは余計」

鷹月「へいへい」

箒「確かに、不思議な奴だよ……………本当に」
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/28(月) 23:53:43.00 ID:9c78MiE40
相川「意外だね、織斑くんって気分屋だったんだね」

本音「意外なのだー」

箒「あいつってどう思われてるんだ……?」

鷹月「見た通りのクールな二枚目男子」

箒「そうなのか………」

相川「違うの?」

箒「間違ってないとは思うんだが……」

本音「そういえばほーちゃんとおりむーって仲いいねー何でー?」

箒「あいつと私は幼馴染みでな、ここに来て六年ぶりに再会したんだ」

本音「へー幼馴染みかーいいなぁー」

箒「一応な」

鷹月「一応?」

本音「?」

箒「記憶喪失らしく、昔の事はほとんど覚えてないみたいなんだ」

本音「そうなんだ」

相川「箒さんの事も?」

箒「そうらしい………現に、私の事は何一つ覚えてなかったんだ………」


ポンッ


本音「元気出して、ほーちゃん」ナデナデ

箒「ありがとう……」

相川「でもでも、記憶なんてふとした拍子で戻るって聞いたよ」

箒「そうだといいんだが……」

相川「記憶ってのは木みたいなもので、記憶喪失になると枝の揺れが止まった状態になるんだって。だから周りが、記憶の枝を揺さぶれば、他の枝も一緒に揺れ始めて記憶が戻るかもしれないんだってさ」

鷹月「本音、噛み砕いて教えて」

本音「うーむ………よく分かんニャイ!」

箒「…………………」

相川「そんなに難しく考えなくても、箒さんが一緒にいてればそのうち戻ると思うよ」

箒「そんなものなのか?」

鷹月「人間ってのは頭で忘れても、心がちゃんと覚えているもんだってさ」

本音「わー人間って不っ思議ーかなりんしずねんよく知ってるねー」

相川「全部お医者さんの受け売りだけどね」

鷹月「こっちは昔何かの漫画で呼んだやつ」
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/28(月) 23:58:46.78 ID:9c78MiE40
箒「諦めなければ…………何とかなるか」

本音「ファイトーおー!」

鷹月「その調子その調子」

箒「…………本当になんとかなる気がしてきた」

本音「おおー」

相川「やっぱり愛って素晴らしいものね」

鷹月「プラシーボ効果でしょ」

本音「愛だよ!愛!」

箒「愛!?いっ、いや、そうゆうのじゃないんだ………これはだな…………私とあいつの仲だからなんだ。決してそうゆうのではないんだ…………」

本音「その嘘本当ー?」

箒「え、えーっと…………本当だ」

鷹月「へーそうなんだ」ニヤニヤ

箒「何でにやついてるんだ」

鷹月「別にー何でもないよ」

相川「タチが悪いったらありゃしない」

箒「怪しいな」

本音「ここで問題だよーしずねんは今、何を考えているでしょーか。正解者には豪華プレゼントが待ってるよー早い者勝ちなのだよー」

箒「…………最近、ダイエットがうまくいってないとか」

鷹月「ぐはっ!」

本音「あれー?図星みたいだねー」

箒「豪華プレゼントは?」

本音「うーんとね、決めてなかった!」

箒「そんな自信満々に言うか………」ガクッ

本音「えへへー」
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/29(火) 00:00:31.44 ID:vSPwT0kD0


15

その日の夜。箒は布団に入り、一夏は昨日と同じように窓辺にいた。
部屋の照明を全て消したこの部屋は、月明かりだけが差し込み薄暗い。深夜十二時、ここIS学園の消灯時間も過ぎた今は聞こえてくる音や、それらしきものは全くといってもいい程ない。その中で一夏は何処かを、箒は窓辺に立つ一夏の背中をじっと見つめていた。沈黙、それだけが二人だけの空間に延々と続く。

『お前に、頼みがある』

ふと、箒の頭に昼食中に現れた一夏が言った、抑揚のない調子で言われたその言葉が蘇った。そのまま聞けば、ただの依頼にしか聞こえない。実際あの時も、単純に依頼だと思った。だが、今はそうでない。依頼というよりは一種の強制、抗う事が自分には許されていない命令。あるいは、自分を試す為の問い掛けのようにも感じられた。

『簡単な事だ。それでお前は手に入れる』

私は一体何を手に入れるんだろう。お前が記憶を失った理由か、何故そうなった訳か、自分の中の弱さを断つ力か。箒は、一夏の背中を見つめながらそう思った。
それを声に出して聞くことは出来なかった。それを聞いて答えてもらえる保証などない、かと言って答えないとは限らない。そんなことは分かり切ってはいたのだが、どうしてもそれが聞けなかった。そんなもどかしさに布団のシーツを握りしめて、そっと目を伏せた。
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/29(火) 00:01:46.18 ID:vSPwT0kD0
箒からすれば、一夏が何を考えているのか全く見当もつかない。むしろ逆に自分の心の中や考えなどは、すでに一夏に全て見透かされていたような気がした。もしかして一夏は人の心の中を見透かして、少なからず自分にとって何かしらの価値がある人物に対して接触をしているのかもしれない、そうも思えていた。
そして箒は、一人ベッドの上で言いようのない虚脱感と喪失感を感じた。それは、自分の考えに問いに見えないことや、唯一希望のような存在だった幼馴染みが変わり果てた姿、今自分が置かれている状況、行方知れずとなってしまった姉、そんなこの世の無情さなどが原因ではなかった。
再会した時一夏が自分を見た、その眼。その全く無感情で別人を見るような表情が。まるでその眼の奥には何もなく、すでに死んでいるような虚ろな瞳が、ずっと頭から離れなかった。それは頭の片隅にずっとこびりついて、取り除こうとしてもずっと離れなかった。
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/29(火) 00:02:46.79 ID:vSPwT0kD0
それを取り除こうとしていると、段々と、少しずつ、哀しいような、当惑に似た感情を箒は感じた。自分でも何故こんな気持ちになっているのか分からない。けどそれが、自分の胸いっぱいに広がって、不安になってしまう。

「なあ、聞いてもいいか……?」

その不安を掻き消す為に一夏に話しかける。その声はいつものようなハキハキとした声ではなく、全くの別物だった。普段の自分からすれば、情けないと思う程に弱々しいものだった。どれだけ気丈に振舞おうと、彼女もやはりまだ少女なのだ。

「そのな……たいした事ではないんだ。嫌なら答えてくれなくてもいいんだ。ただ、少し………聞きたくなったんだ」

一夏はこちらをゆっくりと振り向いた。窓辺に差し込む月明かりが逆光となって一夏の表情はよく見えなかったが、次の言葉を待っているように見えた。

「どうして私を選んだんだ?私でなくてもよかったんじゃないか、特訓するなら他にもいたと思うんだ。千冬さんとか………それとも、私が篠ノ野束の妹………だからか?」

外では月に薄い雲がかかり、部屋に差し込む光が弱くなった。それにより一夏の表情がうっすら読み取れた。月明かりの中の一夏は、全く表情を変えないまま答えた。

「知らないな。それは、俺の勝手だろ?」

一夏はその瞬間、決定的な何かが違っていた。頬をわずかに歪ませそう言った一夏はまた、窓外へ視線をやった。
箒は、一夏と再会してから初めて会話を交わせたような気がした。
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/29(火) 00:05:16.46 ID:vSPwT0kD0

「なら、私のこと……本当に覚えていないのか……?」

一夏からの返事はなかった。

「私が剣道で………始めの内は勝てていたのに、いつの間にかお前に勝てなくなっていたことは?」

「男女だとか言っていた奴に腹を立てて殴り倒して、私を守ってくれた事は?」

「髪型だって……ほら、昔のまんま…………なんだ………」

箒がどれだけ自分の覚えている限りを聞こうと、一夏は何も答えてはくれなかった。それと同時に、思い出を言葉にする度に、彼女の胸の内の喪失感がひしひしと増していた。それが、ただただ胸を締め付けた。


「失くしてしまったのか、俺には分からないんだ」


「俺は、別世界の住人だ」

一夏は、冷血に言葉を口にした。
箒にはその背中が、何処か寂しそうに見えてならなかった。そして、その姿に何故か強烈なデジャヴを彼女は覚えていた。どうして自分が、それを感じている理由は分からなかった。だが、それは他の誰かで見たのではなく、昔見た一夏と全く同じ人物なのだと、彼女は感じていた。けれど、現実感といえるものはほとんどなかった。
自分は寄り添っていたい、彼の記憶を戻す為の力になりたい、彼と一緒にいたい、彼を見てそう思った。それは彼女自身が、一夏という存在に何処か惹かれているようだった。
彼女も、喪失者なのだ。
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/29(火) 00:08:18.68 ID:vSPwT0kD0


16

箒「今日は逃がさんぞ、一夏」

一夏「…………………………………」カチャカチャ

箒「さあ、一緒に食べるぞ」

本音「食べるぞー」

相川「いいかな?」

鷹月「あーねむっ」

一夏「…………………………………」

箒「無言って事はいいって事だな」

一夏「…………………………………」

鷹月「そうは問屋がおろしちゃくれない、ってね」

本音「大人しくお縄を頂戴しろー」
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/29(火) 00:11:48.66 ID:vSPwT0kD0


17


箒「行くぞ一夏、特訓するぞ」グイッ

一夏「ああ」

箒「ほら早くしろ」

一夏「………………………………」

箒「今日はやる気がないのか?」

一夏「今日は勝てるのか」

箒「ふん、やってやるさ」
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/29(火) 00:15:08.48 ID:vSPwT0kD0


18

本音「やーおりむー」トテトテトテ

箒「いつもそのパジャーーーー」

本音「とうっ」ピョン


ガシッ


箒「!?」

相川「ちょっと本音!?」

鷹月「何やってんだァァァーッ!?」

本音「わー高い高ーい」ブラーン

一夏「………………………………」

箒「…………いいのか?一夏」

一夏「………………………………」

箒「…………」

箒(どっ、どうすればいいんだ………これ…………何で普通に歩いてるんだ…………頼むから何かリアクションとかとってくれ…………)

本音「ほーちゃんほーちゃん、私を呼ぶときは本音でいいよー」ブラーンブラーン

相川「とりあえず降りて!ほら早く!」グイッ

鷹月「早くしないとブン投げなれるって」

本音「やーだー」グググッ

一夏「………………………………」

箒「おいッ待て!一夏の首が締まってるぞ!」
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/29(火) 00:18:14.21 ID:vSPwT0kD0


19

セシリア「調子はどうでして?私にーーーー」


スクッ


一夏「………………………………」カツンカツンカツン

セシリア「お待ちなさい!人の話はーーーー」


スッ カツン……カツン…………


セシリア「…………またしても!してやられましたわ!」バンッ

箒(いつもタイミングが悪いな)


「めげないね、セシリアも」
「鋼のハートってね」
「それを言うなら鋼の女の子でしょ?」
「あの姿勢は見習わなくっちゃねぇ」


箒(お約束だな、試合の日まで待てばいいものを………)

箒「…………しまった」ガタッ

箒(追いかけねば!)ダッ
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/29(火) 00:19:37.40 ID:vSPwT0kD0


20

箒「はあッ!」ブンッ

一夏「…………………………………」スッ

箒「でやあ!」ブンッ

一夏「…………………………………」ヂッ

箒「だあッ!」ブンッ

一夏「…………………………………」ヒュッ


バシンッ


箒「なっ!?」グラァッ

一夏「…………………………………」スッ


ピタッ


箒「ッ…………一本………だな」

一夏「…………………………………」
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/29(火) 00:22:05.15 ID:vSPwT0kD0


21

箒(始めて四日でようやく掠った)

箒(まだ当たらない。もう少しなんだ……)

「ーーーーの」

箒(いや、掠ったという事はもう少しで当たる、というところまで来ているという事だ)

箒(そう見れば私はしっかりと成果は挙げているな)

「ーーーーノ之」

箒(そうだ。このままいけば一太刀浴びせるのも…………んん?)

箒(…………本来の目的が変わってないか?そもそもあいつの特訓のはずがーーーー)

千冬「篠ノ之」

箒「はっ、はい!」

千冬「さっき読んだところの続きを読んでみろ」

箒「え………聞いてません…………でした」


スパァンッ


箒「うぐっ」

千冬「授業中は集中しろ」

箒「………………はい」
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/29(火) 00:23:44.86 ID:vSPwT0kD0

一夏「…………………………………」


シュッ


一夏「…………………………………」スッ


スカッ


千冬「ふむ、一応は聞いてるな」

山田「あの……織斑先生?進めてもいいですか……?」

千冬「すみません山田先生、続きを」

箒(……痛い………)ジーン
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/29(火) 00:27:59.10 ID:vSPwT0kD0


22


「聞いた?あの話」
「何の話?」
「織斑くんの話」
「どんなの?」
「昼休みと放課後の時は居場所が分からないんだって」
「へー………そういえばそうね」
「見つけたらラッキーよ」
「見つけ出す気満々ね」
「そりゃあこの学園唯一の男子ですからねぇ」
「神懸かり的って聞いたけど?」
「そうそこ、そこなのよ問題は」
「ここ数日剣道部で目撃されてるよ」
「マジでか」
「何故に剣道?」
「愛を育んでるんだって」
「打ち愛ってこと?」
「それだ」

箒(………違う…………)
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/29(火) 00:29:20.85 ID:vSPwT0kD0


23

箒「私に出来る事は、これでなくなった」

箒「これでいいのか?」

一夏「充分だ」

箒「その口振りは必ず勝てるものだな」

一夏「…………………………………」

箒「私の協力、無駄にはしないでくれよ?」

一夏「ああ、まかせろ」

箒「ふふっ………お休み」
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/29(火) 00:31:08.80 ID:vSPwT0kD0


24

試合当日、戦いの幕は今にも上がらんとしている。日本政府が用意した織斑一夏専用のISもすでに到着している。それなのに試合が一向に始まらない理由は、至ってシンプルなものだった。
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/29(火) 00:34:47.46 ID:vSPwT0kD0
千冬「遅い」

千冬「あまりに遅すぎる。開始五分前だぞ」

山田「どうしたんでしょう織斑くん、何かあったんでしょうか…………」

千冬「それはない。私が保証しましょう」

山田「ええ……じゃあ何で………?」

千冬「案外その辺をほっつき歩いとるのでしょうね」

山田「時間にルーズなんですねぇ……」

千冬「残念ながら、そうゆうのではないな」

山田「?」

千冬「何というか………あえて言うならば………………」

千冬「恐ろしく気まぐれなんだ、私の愚弟は」

千冬「そうだろ?篠ノ之箒」

箒「確かにそうですね。織斑先生」

千冬「織斑は見つけれたか?」

箒「無理でした」

千冬「そうだろうな、あいつはかくれんぼが得意だからな」

千冬「…………それにしても、相手を放っておいて自分はせっせと正装しているとはな、相も変わらずご苦労な奴だ」

山田「正装………ですか」

千冬「多分そうだろうと思いましてな」

箒「いいですか……」

千冬「何だ」

箒「あいつっていつ寝て、いつ起きてるんですか?」

箒「私が寝るときはいつも起きていて、それなのに私より早く起きているんですよ」

千冬「さあな、だいぶ前は眠りこけていたのに、今は私もよく知らん。」

山田「少しの睡眠時間でいいなんて羨ましいです」

千冬「睡眠はしっかりとれよ、山田くん」ポン

山田「え、あ……はい!」
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/29(火) 00:38:20.79 ID:vSPwT0kD0
千冬「授業中のうたた寝は程々にしましょう」

山田「すっ、すみませーん………」

箒(千冬さん、今ものすごく悪い顔してるな、後すごい大人気ない。本当に教師かどうか怪しい)

千冬「どうした篠ノ之、何か言いたい事があるのか?」

箒「いっ……いえ、ありません」

千冬「そう遠慮するな、ハッキリと言ってみろ」ズイッ

箒「本当にありません。(本当はあるんですけど言えません)」

千冬「ふむ、そうか」

山田「織斑くん、もしかして迷子でしょうか……」

千冬「あの見た目でそれはないだろ……」

山田「ですよねぇ………」

箒(……………いかん、想像してしまった。思いのほかシュールな光景だ)


バシュッ


一夏「…………………………………」カツンカツンカツン

千冬「やっと来たか………遅いぞ、織斑」

箒「今までどこーーー」

山田「時間ギーーー」

山田&箒「「えええぇぇっ!?」」

千冬「どうした」

山田「スーツですか!?」

箒「制服は!?」

一夏「…………………………………」

千冬「まあ、私はこうなるとは思ってたが……ここまでとはな」
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/29(火) 00:41:25.06 ID:vSPwT0kD0
千冬「一夏、もういけ……おっと、これは聞かなくてもいいな」

一夏「…………………………………」

千冬「アリーナの使用時間は限られている。専用機の方は………戦ってる間に何とかものにしろ」

一夏「了解」

千冬「相手は本場英国のお嬢様だ。エスコートはあくまでも、お淑やかにな」

一夏「ああ」

山田(スーツ姿の二人………素敵です…………)ウットリ

箒(スーツが決まりすぎてて、あそこだけ特務組織みたいだ)

千冬「さて、山田先生、ISを」

山田「へ……あ、はい」
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/29(火) 00:43:24.73 ID:vSPwT0kD0
千冬の指示に従い、真耶がコンソールを操作し、Aピットの搬入口が鈍い音を立てロックが外れる。斜めに噛み合わせになっていた防御壁が、それを動かす重い駆動音を鳴らしながら、ゆっくりとその向こうに待つものを迎え入れた。
それは黒、ただ黒だった。他の一切を拒絶しているかのような漆黒のISが、その装甲を解放して、扱うべき者を待っていた。

「これが………?」

千冬は、意表を突かれて言った。世界で唯一男の操縦者に与えられるのなら、もっと特殊なISをイメージしていた。それと、このISは自分が聞いていたものとは全く別のものだったからだ。

「みたい……です………」

それにおずおずと答えた真耶、それは彼女もほとんど同じだったからだ。
四人の目の前にある黒いISは、ただのISだ。どこの国のISとも言えない事はない、ごく普通の、あまりに標準的な形態をしている。目立った部分といえば、背面の腰部に装着されている、恐らくコンテナか何かの類いの物だ。だがそれ以外には何の特徴もない、普遍的なただのISだ。それゆえに三人は、何か不自然さのようなものを感じた。
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/29(火) 00:44:41.10 ID:vSPwT0kD0
真っ黒のそれ。無機質なそれは、誰かを待っているというよりも選んでいるように見えた。今この間は、まるでこの機体が自分を扱うに相応しいとする誰かを選んでいる間のようだった。
一夏は、それに呼ばれたかのようにゆっくりと歩み寄り、その漆黒の装甲に手を触れた。
そして、見つけた。選ぶべき誰かを


初めてISに触れた時とは、まったく違う感覚がした。
割れ響く歌声ような音が頭の中に響いた。
それはまるで、あなたを待っていた、と言っているかのようだった。
そう、このISは選んだのだ。
織斑一夏という存在を。
それは、ただこのISが彼に使われる為に生まれてきたからだ。

74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/29(火) 00:46:29.96 ID:vSPwT0kD0
一夏はそうするのが当たり前のように、しごく自然にこの黒いISに乗り込んだ。
一夏の体に合わせて装甲が閉じて、空気の抜ける音が連続的に響く。皮膜装甲(スキンバリアー)が全身に展開し、推進機(スラスター)が作動し始め、ハイパーセンサーが彼に合わせて瞬時に最適化していく。そして、包み込むように装甲が装着されていった。それはまるで、元から自分の身体の一部だったかのように、溶け込むようにISが彼に同化していく。だがそれは、一夏と何かを繋ぎとめる重要な鎖、絶対に逃がさまいとする鎖を着けられたようだった。


だが、理解出来た。
これは自分に合ったもので、このISはこうなる為のもの。
自分に合うものなのだと分かった。

75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/29(火) 00:48:08.26 ID:vSPwT0kD0
全ての感覚が、視界を中心にクリアになっていき、全身に行き渡る。この機体に関する情報が頭の中と、目の前に表示される。性能、特性、現在の装備、センサー精度、レーダーレベル、アーマー残量、出力限界……etc。その情報の数々を全てが把握出来る。


SYSTEM IGNITION START

SO SING IT LOUD YOU HOLD THE KEY

BUT YOU UNSUNG


そして、このISの名前が表示された。

「ヴィンセント」

一夏は、静かに名前を呟いた。

「ヴィンセント……それがこの機体の名前か」

千冬は、疑問に満ちた声で言った。彼女には、さっきの言葉は見えていなかった。

「ああ」

訝しむ千冬とは真逆に、一夏はあっさりと答えた。

『戦闘待機状態のISを感知、登録操縦者セシリア・オルコット』

『ISネーム ブルーティアーズ、戦闘タイプ 中距離射撃型、特殊装備有り』

ハイパーセンサーが機体射出ゲートの先で、二十分以上もアリーナ・ステージで待ちぼうけを堪能しているセシリアの情報を映像とともに鮮明に映し出した。

「ハイパーセンサーは問題ないな」

千冬は横からモニターを覗き込みながら言った。

「気分は悪くないか?」

「ああ」

「そうか」

ほっと安心したように息を吐き出しながら、千冬は真耶のいるコンソールへと向かった。
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/29(火) 00:49:29.96 ID:vSPwT0kD0

「何か分かりましたか」

千冬が真耶の隣に立ち、低い声で聞いた。

「わずかながら……ですが」

真耶は、少しずれた眼鏡を直して、モニターに表示された念入りに調べられたデータを凝視した。彼女は、千冬から念の為調べるようにと、一夏が動き出してから指示を受けていた。

「機体内部に通信機及び発信機反応、バイオケミカル反応、爆発物反応などはありません」

「そうか、他は」

「………不明です」

「何だと?」

このヴィンセントはイレギュラーな機体だった。コアや製造並びに改修に関する一切の情報開示はなく、機体詳細や所持武器すら不明となっている。国家から与えられた普通のISならこんな事はまずあり得るはずはない、あってはならない。

「ロックが掛かってますね」

「解除をお願いします」

「合点承知です」

真耶が両指をコンソールに滑らせ、ヴィンセントに掛かった初歩的なロックから次々解除していく。
その間にもヴィンセントは膨大な情報量を処理していた。一夏に合わせて機体の最適化処理(フィッティング)を行っているのだ。今黙ってモニターを眺めている一秒間の間にも、ヴィンセントは表面装甲を変化・成形させている。ソフトウェアとハードウェアの両方の書き換えを一斉に行っているために、扱っている数値はそう簡単には見ることは出来ない桁を示していた。
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/29(火) 00:50:46.23 ID:vSPwT0kD0
一夏はフィッティングの進行状況を示す数々の情報の中、自分の視界の右端にメールのようなものが表示されているのを見つけた。

「何故こんなものが?」

「設計者からのメッセージか何かでしょうか?」

「見てみないことには分かりませんね」

ヴィンセントの機体詳細は今、真耶の頑張りがあって千冬も見ているモニターに表示されている。性能、特性、センサー精度、出力限界などのスペックはその辺のISを裏回る数値を叩き出す中、一つだけ異様なプログラム、ヴィンセントからでしか操作出来ないプログラムを発見した。

「一夏、出してみろ」

言われた通りに一夏は、そのメッセージの内容を確認する為に表示した。


いいものに選ばれたな、ハンプティー・ダンプティー
このISはお前にピッタリの代物だ。
こいつであれば、お前はそこから動き出せる。
そこに居ては、見えるものも見えやしない。
その一歩を踏み出せ。
躊躇していては、お前は永遠に征くことが出来ない。
お前が、いるべき世界に。


その設計者と思われる人物からのメッセージは、真耶の予想とは大きく違っていた。
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/29(火) 00:51:55.37 ID:vSPwT0kD0
千冬と真耶は言葉を失った。意味が分からなかった。ハンプティー・ダンプティー、その場所、見えるもの、永遠に征くことが出来ない、お前がいるべき世界。まるで、一夏の全てを知っているようなメッセージ。これが何故ヴィンセントに入っていて、何故一夏に宛てられたメッセージなのか、誰もその意図の見当がつかなかった。
千冬は困惑した。ヴィンセントをこのまま一夏に使わせていいのか、それとも試合を中断してこの機体を徹底的に調べ上げるべきなのか悩んだ。一通り爆発物反応などは調べられたので、そこかしらの危険性が低い事は重々承知だ。
気がかりなのは、メッセージの送り主の考え。この機体を製造した者が送ったメッセージにしてはおかしく意味有りで、異常なまでの一夏への関心の高さがある。それとも、三年前知っているであろう第三者が、一夏へのファーストコンタクトとしているのか。もしそうならば、今更ISを差し向けてまで一夏に何をするつもりなのか。
考えがまとまらずに苦虫を噛み潰したような形相の千冬に、真耶が恐る恐る話しかける。

「織斑先生………どうします?」

しばしの沈黙が訪れる。
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/29(火) 00:54:31.72 ID:vSPwT0kD0

「俺は行く」

一夏はそう言って千冬の方を見た。
再びの沈黙。それはごくわすかな、ほんの数秒だけの時間だった。その中で、千冬は言葉ではなく、合図ようなもので自分の意思を一夏へと伝えていた。

「はぁ……分かったよ」

だが、自分の考えの杞憂さに落胆し溜め息を吐き、依然として譲らない一夏の答えに納得したように言った。千冬は、コンソールを操作してピット・ゲートを開けた。
ヴィンセントがふわりと浮かび上がり、カタパルトレールに脚部を掛けた。

「一夏」

箒の声に一夏は、ゆっくりと振り向いた。

「勝てよ」

「ああ」

返事の後、一夏はゲートの方を向いた。そこから少し重心を落とし、射出体勢をとった。

「さっさと終わらせてこい」

千冬がそう言った直後カタパルトレールが火花を散らし、ヴィンセントが射出された。
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/29(火) 00:57:12.97 ID:vSPwT0kD0







TO BE CONTINUED……
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/29(火) 01:06:57.00 ID:vSPwT0kD0
セシリア「いよいよですわ。いよいよ戦いの幕があがりますわ」

セシリア「フフフッ、たかがISが使える程度の男に私が負けるはずがありませんわ」

セシリア「此度も私とブルースティアーズが指揮を取り、その最後に相手は地に落ちる。ただそれだけですわ」

セシリア「いつもそうでしたから」

セシリア「次回」


Next Session
ワルツ・フォー・スケアクロウ


セシリア「さあ、踊りなさい!私と、ブルーティアーズの奏でる協奏曲で!」



クラリッサ「おいおいロボものの次回予告みたいになってるぞ」

千冬「始めての次回予告で緊張してるんだろ」
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/29(火) 01:17:30.98 ID:vSPwT0kD0
ようやく話が始まりました。ここからガンガン進めたいです。
話を改変している間に見た皆さんからの暖かいレスに涙が出そうでした。
気がついたら話しの規模と設定がとんでもない事になってます。生かしきれない気がしてきました。アントニオ、カルロス、ジョビンとかマイルズとかロコとかビバップのゲストキャラ達を何気無い日常シーンにいっぱい出そうと思います。
それと、IS二期おめでとうございます。インフィニット・ストラトスのラスボスは………個人的に束さんなんじゃあないかと思ってます。
この話では違いますので御安心を
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/10/29(火) 01:38:02.06 ID:x+pBgkfAO


束はラスボスと思われてもしゃあないかと

ISを有名にする為だけに軍にハッキングするはミサイルを日本全土に発射するは
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2013/10/29(火) 20:11:46.31 ID:I43siRA/0
一気に進んだような大して進んでいないような
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/29(火) 22:27:39.05 ID:vSPwT0kD0




Happy Halloween Trick or Treat
いいものくれなきゃ、イタズラするぞ。
私は誰も気づかないほど小さくて、目に見えないほど偉大なもの。
骨の髄までそれで出来てる。



86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/10/30(水) 17:26:08.76 ID:rLSUpc9+o
SS見せてくれなきゃイタズラするぞ
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2013/11/05(火) 09:36:11.95 ID:qqidmjb10
わたしまつわ
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/11/10(日) 22:50:06.20 ID:GkrSYZZD0




Session#2
ワルツ・フォー・スケアクロウ



89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/11/10(日) 22:55:36.01 ID:GkrSYZZD0
カタパルトから勢いよく射出されたヴィンセントが舞い上がる。空高く上がった漆黒の機体が、最高点に達して自由落下を始める。そのまま重力に逆らうことなどなく落下していき、加速する。そして、地表に激突するほんの少し手前で体をひらりと反転させ、スラスターを吹かして見事に着地した。

「なかなかの登場の仕方ですわ、やはりあなたはマリオネットのようですわね」

一夏は、視線をゆっくりと地面から空へと移した。その先のセシリアは、アリーナの地表より上で滞空しながら大袈裟な拍手をして言った。

「あら、ISスーツをなくしでもして姉上にスーツを貸してもらいましたの?」

一夏は無言のまま立ち上がった。
セシリアは、口元に手を当てて笑うような素ぶりを見せた。
彼女はまだ武器を手に持っていない。それは、この先武器を展開する時間はいくらでもあるという一種の余裕の表れである。

セシリアの専用機、イギリス第三世代兵装実装試作機ブルーティアーズ
それは深い蒼をしていて、そこに白と黒を織り交ぜた機体。背に従えた四枚の特徴的なフィン・アーマーが羽のように背に展開している。その姿は、まるで王国騎士のような気高さを感じさせる。

「にしても、淑女(レディー)をこんなにも待たせるなんて余程の礼儀知らずですわね」

セシリアは腰に左手を当てて、右手を相手の方へ突き出す。これは彼女のお決まりのポーズであり、自らの威厳や尊厳をわざとらしく見せつけているようだった。
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/11/10(日) 22:59:26.65 ID:GkrSYZZD0

「さて、お手並み拝見といこう」

イスに深々と座り込んだ千冬は、右手にはさっき淹れた熱々のコーヒーを持って、足を交差させて頬杖をついた。その姿は、まさに高みの見物と言える。
彼女の視線の先、モニターを眺めるその表情に、不安の色らしきものは一切伺えない。むしろ逆に、分かりやすい程に余裕が伺える。

「織斑先生、本当によかったんですか?」

千冬の予想外の態度に、真耶は何かしらの不安を覚えた。それに加えて、まだヴィンセントを隅々まで調べきれていなかったこともあった。
御世辞にも今の千冬の態度は、イギリスを代表する専用機を持っている候補生と、ISに関してほぼ素人であるはずの弟が、突如送られてきた謎の機体を使って一戦交えるのを見守るものとは到底言えないものだった。

「ああ、なるようになるさ」

「理由は何ですか」

真耶が次の言葉を発するよりも速く、箒が真剣な顔で、千冬に質問を投げかけた。

「………理由は二つ、勝負に関する事ならお前なら分かるはず、ともう一つヴィンセントの方は………」

真耶は、何が箒なら分かるのかが気になったが黙っていた。
千冬は、頬杖をついていた左手を顎に当て、上を見上げてしばらく考え込んだ。そして、思いついたように箒の方を振り向き言った。

「野生の勘……だろうな」

「「野生の勘?」」

千冬の突拍子もない答えに二人は、思わず、全く同時に、オウム返しに聞き返した。勘とだけなら分からなくもないが、野生の勘とあえて言った意味が分からなかった。

「織斑先生の、ですか?」

真耶は、いまいち分からず首を傾げながら聞いた。

「あいつの、感覚はかなり鋭敏でしてね。そう……まるで手負いの獣のように」

千冬は、遠くを見つめているように言った。

「手負いの、獣……」

「そんな荒唐無稽な……」

箒は訝しみ、真耶はヴィンセントに対する不安が増していた。

「と言っても………私にもよく分かってないのが本音ですが」

千冬は、少し溜め息を吐きながら、開きなおったように言った。
その言葉には、裏も表もなかった。彼女は、そうとしか言いようがなかった。

「これはいわゆる女の第六感ですよ」

「それって……」

「そうだ。これも勘だ」

何か言おうにもその気も起きない程、あっさりと千冬は言った。
本当は、彼女は一夏を信じてみたかったのだ。あの日から変わってしまった、自分の弟を。
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/11/10(日) 23:02:00.59 ID:GkrSYZZD0

「でも、逃げずに来た事だけは褒めて差し上げますわ」

セシリアは鼻を鳴らし、踏ん反り返る。

「最後のチャンスを上げますわ。もちろん、降参するチャンスを、ですわ」

「まあ、このままいけば私が一方的な勝利を得るのは自明の理。ですから、このオーディエンス達の前で惨めな姿を晒すよりも」

「今、ここで。私に対する数々の非礼を謝罪する、というのなら。全部水に流してあげてもよくってよ?」

それは、目の前の相手に話し掛けている、というりよりも、ただ一方的に喋っているだけだった。当然、相手からの応答はなかった。
一夏の視線は、セシリアの方を向いてはいたが、もはや見ていないのと変わりはなかった。彼は、ここにそんな事を聞きに来たのではない。

「どうやら答えるつもりはない、というつもりで……よろしいですわ」

セシリアは左手を肩の高さまで上げ、真横に腕を突き出した。そこから一瞬爆発的に光った左手には、二メートルを超える長大な狙撃銃、六七口径特殊レーザーライフル スターライトmkIIIが現れた。

「ならば、その体に存分に御教えして差し上げますわ。女の強さ、というものを」

展開されたスターライトmkIIIにはすでにマガジンが接続されていて、セーフティーも解除されている。一秒と掛からずに展開し、射撃可能まで完了していた。
セシリアはその長い砲身をゆっくりと一夏へと突き出し、目を笑みに細める。

『敵IS操縦者の左目が射撃モードに移行』

ハイパーセンサーが捉えた情報が一夏の目の前に表示される。
アリーナ・ステージの直径は二百メートル。発射から到達までの予測時間は1秒とかからない。

「覚悟はよろしくて?」

『敵ISが射撃体勢に移行 トリガー確認 初弾エネルギー装填』

スターライトmkの銃口が光を発した。発射されたレーザーが蒼白い閃光となって、一瞬の内に一夏の顔のすぐ側を通り過ぎた。それが後ろに着弾して、地面がくぼみ、砂ぼこりが上がる。それは、威嚇であると同時に、自分の敵意と戦意を誇示するための行動だった。
ただ、それだけだった。

「あら、外してしまいましたわ」

セシリアはスコープを覗くのを止め、ニッコリと笑った。
状況は、彼女の方が完全に有利だった。セシリアは銃を手に持っていて、いつでも撃てるように構えている。それに対して一夏は銃を握ってもおらず、何もしようとしないまま両手は自然に降ろしたままである。
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/11/10(日) 23:04:28.83 ID:GkrSYZZD0
一夏は、全く何の反応も見せていなかった。先程、自分の真横をレーザーが通り過ぎた時も微動だにせず、表情を変えず、眉の一つでさえ動かさなかった。それは、今自分が銃を突き付けられている事など、まるで実感がないようだった。
それがセシリアには、こちらのする事が全て見通されていたように思えた。
侮られている、ようやく代表候補生にまで登り詰めた自分が。その事が腹立たしく、軽く舌打ちをした。そして、今度は狙いを相手へと向け、しっかりと銃口を構え、スコープを覗き込み、ゆっくりとトリガーに指を掛けた。

「そう、でしたら………これはどうです!」

その言葉が終わるのとほぼ同時に、セシリアはライフルのトリガーを引いた。
銃口からレーザーが発射され、目標へ目掛けて一秒と掛からず駆け抜ける。そのレーザーを、一夏は少し屈んだただけの、最小限の動きでそれをかわした。その時彼は、かわした動作の間に右手をセシリアへと突き出し、右手に武器を呼び出した。
現れたのは四十五口径IS用ハンドガン。セーフティーはすでに外れている。そして間髪いれずに、次々にその銃を発砲した。それは、ほとんど一瞬の出来事だった。スコープを覗き込んだセシリアが、自分の攻撃をよけられた事を認識出来るよりも速かった。
ブルーティアーズに弾丸が次々に叩き込まれる。着弾により、ブルーティアーズのシールドエネルギーが少しずつ削られる。弾丸を食らったセシリアは、すぐさまに回避行動をとった。いくら一発一発の威力が低いとはいえ、素直に食らい続けてやる程彼女はお人好しではない。
それに対し一夏は、攻撃の手を休めず、撃ちまくる。セシリアは、その弾丸を踊るように、紙一重で次々とかわしていく。
長大なライフルを構える隙もない銃撃が続く。その中で、彼女は待っていた。この状況を一転させ、自らが優勢に踊り出るチャンスを。

「行きなさい、ブルーティアーズ!」

それを待っていたセシリアが、右腕を振り下ろした。その命令とともに、背中に装備されていた四枚のフィンアーマーが稼働し始めた。
彼女の機体、イギリス製殊装備搭載型実戦投入第一号の名前の由来となった自立機動兵器『ブルーティアーズ』が分離し、それぞれが目標の四方へと動き出す。そのタイミングは、一夏が発砲していた銃が、弾切れを起こしたのとほぼ同時だった。
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/11/10(日) 23:07:40.87 ID:GkrSYZZD0
形勢は逆転した。命令を受けた四機のビットたちが、多角的な直線機動を描いて一夏の四方を取り囲む。 この時一夏は、まだマガジンを交換し終えていなかった。

「協奏曲(コンチェルト)!」

セシリアの指示により、各ビットに組み込まれた小型端末が作動した。これにより連射性能を高め、それに伴うレーザー出力の調整が行われ、敵を囲むフォーメーション機動がより正確に使えるよう補助機能になった。
一夏のリロード動作やマガジンの呼び出しは、決して遅いものではなかった。むしろ速いと言ってもいい程のものだった。だがそれよりも、ブルーティアーズが展開するのが速かったのは、銃を使っている限り必ず訪れるリロード。そのほんのわすがなタイムラグを、セシリアが完璧なタイミングで狙ったからだった。
やはり代表候補生の名は伊達ではなく、かなりの場数は踏んできてはいるのが分かる。
一夏がリロードを終え、銃を構えた瞬間、目の前にはすでに射撃可能な状態にあるブルーティアーズがあった。そして、ビットの先端が光を発した。銃口から放たれた三つの光が、一夏の肩を撃ち抜き、成形途中だった右肩の装甲を歪ませる。その直後、着弾により発生した衝撃に、わずかにに体全体が後ろへと持っていかれる。そこから体勢を整える隙もなく、今度は背中にレーザーが着弾した。そして、セシリアが思い描いたフォーメーション通りに、一夏の四方を取り囲んだビット達がその位置を次々に変えながら。まるで、一夏を踊らせるようにレーザーをヴィンセントへと撃ち込んでいく。

「もらいましたわ!」

一夏は体をビット達に弄ばれ、体制を整えられていなかった。そして、着弾により大きく後ろへ持っていかれそうになり、大きな隙が生まれた。それを見逃さなかったセシリアは、ライフルの銃口を一夏へと向けてトリガーを引いた。
かわしようのないレーザーが、一夏の頭部に着弾した。そこに装甲はない、絶対防御が自動で作動し、操縦者を守るべくシールドエネルギーを大幅に消費する。そして一夏は、衝撃により後ろへと大きく吹き飛ばされそのまま地面に倒れた。
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/11/10(日) 23:11:11.95 ID:GkrSYZZD0
セシリアは、倒れた一夏の状態を確認するために高度を落とした。そして、ライフルを構えながら、少しずつ、一夏の様子を注視ながら接近する。今倒れている一夏の右手に銃はない、さっきの攻撃の衝撃で右手を離れていた。それでも、警戒は怠らない。もしもの時の為に、ビットをいつでも撃てるように展開している。そうまでしても、相手が戦闘不能に陥ったか否かを確認しなければならない。先ほどの一瞬で、この男が只者でない事が分かったからだ。
張り詰めた緊張感の中、セシリアはトリガーに指を掛け直し、小さく深呼吸をした。そして、一夏の眼前に銃口を突き付けた。
一夏の反応はない。前髪が目にかかっていて覚醒しているのか、気絶しているかどうか分からない。次はハイパーセンサーを使い様子を伺う。そして、知覚された普段なら分からないようなかすかな呼吸音を感知。そこにブレはなくただの呼吸をしているだけ。その事から、一夏が不意打ちを狙って倒れているのではなく、本当に倒れている事が分かった。

「協奏曲だけで閉幕(フィナーレ)とは……意外とあっけないものでしたわね」

セシリアは、倒れたまま全く動かない一夏を見つめながら言った。それには落胆のようなものが含まれていた。そして、構えたライフルを拡張領域(バスロット)へとしまい、名残り惜しそうにBピットへと進んでいった。


ゴトン、と何か重い塊が落ちた音がした。


それはセシリアがBピットへと戻る途中、一夏の周りに展開させていたビットを戻した時だった。彼女は、その音源を確認するべく後ろを見た。
そこには一夏がいた。前に見た時との違いといえば、さっきの攻撃が何の事は無かったかのように、そこに立っている、という事だろう。
その光景に、セシリアの口から自然と笑みがこぼれる。もちろんそれは、一夏が立ち上がった事に対する驚愕ではなく、立ち上がってくれた事を喜ぶ、歓喜に近いものだった。

「そうですわよね、あのようなラストでは締まりがありませんものね」

セシリアは、笑いを抑えられなかった。
自分を散々侮辱しておいて、たったあれだけで終わらせようなどと、彼女は考えていない。こうして立ち上がったからこそ、彼女は目の前の敵に自分の強さを思い知らせてやらねばならない。
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/11/10(日) 23:13:12.67 ID:GkrSYZZD0

「何よりちっとも面白くありませんわ。あの程度では」

セシリアは、もう一度ライフルを左手に呼び出した。

「用意は………聞くまでもありませんわね」

一夏は、悠然とした佇まいで歩き始めた。

「なら、始めましょう」

セシリアが右腕を横にかざし、背に従えていた四機のビットが機体を離れ、一斉に銃身を一夏へ向いた。

「さあ、踊りなさい。私、セシリア・オルコットと、ブルーティアーズの奏でる円舞曲(ワルツ)で!」

右腕を一夏へと突き出す。その命令にビットが最大出力に切り替わり、最速稼働を始めた。


その時だった、一夏の後方に落ちていた物が突然火を噴いた。それは一瞬光ったかと思った直後、何かに引火したように炎上、爆発した。
地響きのような振動がアリーナを震わせ、爆風はビットを押し返した。黒く重い煙が上昇していき、アリーナの遮断シールドの天井の高さまで達していく。
セシリアは爆風に押されてバランスを崩したが、どうにか体勢を戻していた。だが再び一夏のいた方向を見た時、彼の姿はすでに爆煙の中だった。あの距離にいて、あの爆発に巻き込まれたのだから無事なはずはない、と誰もが思った。だが彼女はそう思っていられなかった。
こうゆう事態を誰が想定出来ただろう、誰もが思いもしなかった事態が今、目の前で起きている。何が起きたのかをほとんど認識できず、セシリアはただただ困惑した。

96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/11/10(日) 23:14:18.32 ID:GkrSYZZD0

「一夏!!」

モニターを見つめていた箒が思わず叫んだ。先程一夏が動かなくなった時はまだ、平静を保っていられた彼女だが、今回は違う。ISによる攻撃ではなく、ヴィンセントに装備されていた物による爆発、それも見て分かる程の大爆発が起きたからだ。

「織斑、先生……」

真耶はあまりの非常事態に身を竦ませていた。
もしかしてこの爆発は自分が招いたのかもしれない、自分がもっとヴィンセントをしっかり調べていればこんな事にはならなかった、そう思えたからだ。そして真耶は指示を求めるというよりも、懺悔するように恐る恐る千冬の方を向いた。
千冬は、モニターを見ていた。その表情は誰もが知っている。
あのブリュンヒルデと恐れられたあの織斑千冬が、戦いの時に見せる敵を狙う眼に近いものだった。もはや彼女に真耶の言葉は聞こえていなかった。
彼女は弟の無事を祈る事などしない。そんな事よりも、彼女には一つの確信が自分の中にあったからだ。
馬鹿を言え、私の弟は無事だ。今に何事もなかったかのように現れるはずだ、千冬にはそう感じられた。その理由は、自分には全く分からなかったが、その確信は正しいものだった。
千冬の様子を見た箒は、再びモニターを注視する。一夏の無事を、もう一度この目で確認する為に。
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/11/10(日) 23:17:04.96 ID:GkrSYZZD0
爆発の熱気と渦巻く黒煙の向こうに、それらしき人影があった。それは、先程とは全く違った姿で、そこに悠然と立っていた。


それは、黒かった。
既存のISとは全く異なった細身の機体。
その薄くなった装甲を補うように周りに展開、というよりもオーバーコートを羽織ったかのような追加装甲。
右手に持った長銃身で、カスタマイズされているであろう長大な拳銃。
その全てが黒だった。


アリーナを覆った黒煙がゆっくりと晴れていく。黒煙から姿を現した一夏は、セシリアの方をゆっくりと見上げた。彼女は、その男から眼が離せなかった。
一夏とセシリアの距離はかなり開いている。普通に見れば、一夏がただセシリアの方を見ているだけ。だが、それがセシリアにはこちらを見ているのではなく、見られている今も、自分の中を全て見透かされているように思えた。
セシリアは、そのまま眼をそらす事も出来ず、まるで魅入られたように、じっと一夏を見つめていた。
Aピットでその光景を見ている千冬、真耶、箒の三人もモニターに映った一夏の姿を見つめていた。


その、長く伸びた黒髪に全身黒づくめの姿の男は、なにか通常の人間とは別の存在感を持っているように思えた。四人は、その男には風貌とは裏腹な、何か神聖なものを見る時のような感覚を覚えた。

98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/11/10(日) 23:19:53.50 ID:GkrSYZZD0

「オズの魔法使いの………カカシを知っているか」

一夏は、全く表情を変えないまま言葉を口にした。

「カカシは………脳を欲しがった。藁で出来た頭の中に、それさえあれば、自分は上手く踊れる………そう、人間のようになりたかったからだ」

一夏は、わずかに空を見上げた。

「そして、自分が脳を貰えるよう祈りを捧げていた………」

セシリアには、何を言っているのか分からなかった。だが次の瞬間、彼女には一夏が、ほんのわずかに笑んだようにも見えた。

「祈るがいい」

言葉が終わってからの一瞬、そのほんのわずか一瞬の間に一夏は、右手の銃をセシリアへと構えて、トリガーを引いていた。容赦無い銃撃が、次々にブルーティアーズを撃ち抜く。セシリアはそれをよける事が出来ずに、展開された装甲を削られていく事しか出来なかった。
肩の装甲が弾け飛び、絶対防御によりシールドエネルギーが減少していき、ブルーティアーズからのダメージ報告とアラートが絶え間なく鳴り響き、左手に持ったライフルが破壊された。
セシリアは、その銃撃の中で回避行動をとろうとしたが、回避先まで読まれているかのような銃撃に回避行動にすらなりはしなかった。
威力も弾速も狙いも、その何もかもが先程の攻撃とは違っている。そして、装填されていた弾丸の一発が、セシリアの頭部へと命中した。そして、一夏の持った銃が、同時にその残弾の底をついた。
絶対防御によるバリアのおかげで、何とか流血するには至らなかった。だが、被弾の衝撃で少し意識が朦朧とする。

「クッ……ブルー……ティアーズ!」

気絶などしていられない、このままでは一方的に撃たれるだけになってしまう。セシリアは、薄れそうになる意識を無理矢理覚醒させる。そして、再び訪れた好機を逃さまいと反撃を試みた。だが、それは少し遅かった。
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/11/10(日) 23:22:28.44 ID:GkrSYZZD0
命令を受けたビット四機が、さっきとは全く別の多角的直線機動で目標へと動き出す。だが、それはすぐに終わった。瞬く間に一機、二機、とセシリアを離れたビットが、激しい一瞬の銃撃戦を繰り広げ、なす術なく破壊されていく。そして、ようやく側面にたどり着いた四機目のビットが一夏を撃った。だがそれは、回避動作により向けられた追加装甲によって逸らされ、同時にビットへ接近した一夏が握り潰した。

「ブルーティアーズが……!」

一夏は、バラバラになったビットを捨てた。それは、セシリアが意識を覚醒させようとした事が災いした。それにより生まれた隙が、唯一の好機であるリロードの一瞬を逃す結果となり、一夏の攻撃を許したのだ。
セシリアは、破壊されたビットが堕ちてゆくのをただ見ていた。そして、目の前の男を倒す方法を見出す為に、新たな作戦に打って出る。

「インターセプター!」

手の中で光を発する粒子が、セシリアの言葉により徐々に集束され、光が武器として構成された。
呼び出したのは近接戦用のショートブレード、インターセプター。それは、主に射撃戦を主体とするセシリアが、滅多に呼び出して使う事のない武器。
ライフルに続き四機のブルーティアーズまでも破壊されたセシリアは、近接戦闘をしなければならなかった。
ブレードの切っ先を一夏へと向け、スラスターによる急加速で、一気に突貫する。それに対し一夏は、冷静にセシリアへ発砲する。二十メートル以上開いた間合いを一気に詰める程の急加速。そして、無理矢理機動を変えて行う回避のGに、ギリギリを掠める弾丸に耐えながら、セシリアは一夏の懐へ潜り込んだ。セシリアは、勢いを殺さぬまま突きを放つ。それを一夏は、真横へと飛び退きかわした。そして、セシリアへ零距離で銃を突き付けトリガーに指を掛ける。

「まだ……まだあッ!」

セシリアは、スラスターを吹かしに強引な方向転換で、もう一度突きを繰り出した。それによる身体への負担は大きい。だがその分、一夏の意表を突くには十分過ぎた。セシリアの肩を弾丸が掠めて通り過ぎ、ブレードの切っ先が一夏の胴体を捉えた。斬撃によるダメージで、一夏のシールドバリアーが絶対防御を使い、エネルギーが大幅に消費される。そこからセシリアは、二撃、三撃とブレードを振り、一気に畳み掛ける。
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/11/10(日) 23:25:53.01 ID:GkrSYZZD0
今のセシリアは、何かが違う、どうかしてしまったようだ、と自分でもそれがはっきりと分かった。自分の勝利を確信している中で戦い続けてきた彼女の、その一挙一動が、純粋に、目の前の相手を倒す事を目的としている。
不思議と胸が、強く高鳴っていた。それは、彼女が長い間忘れていた感覚だった。
もはや相手が男であろうが、女であろうが関係ない。自分はただ、この勝負に勝利(かち)たい。
それだけを、心から願う。


セシリアは、右、左、突きと斬撃を繰り出していく。一夏は、それをいなし、かわしていく。そして、突き出されたブレードを腕ごと掴んで後ろへと投げ、同時に背中へ蹴りを叩き込んだ。セシリアは、そのまま小石のように吹き飛ばされた。

「もらい……ましたわッ……!」

その勢いを利用して、大きく吹き飛ばされたセシリアが、宙を舞いながら笑う。そして、彼女の腰部から広がるスカート状のアーマー。その突起の二つが外れて動いた。一夏は、距離をとろうとする。だがそれは、間に合わなかった。
外れて動いたのは残された二つのビット、さっき堕とされたレーザー射撃を行うビットではなく、レーザー兵装ばかりのブルーティアーズに唯一搭載された実弾兵装、弾道型(ミサイル)だった。
発射されたミサイルが着弾して、赤を超えた白い爆発と光に一夏は包まれた。そして、さっきの爆発までとはいかない程の黒煙が上がる。

「お生憎様……ブルーティアーズは六機ありましてよ」

セシリアは、その光景を見ながら、ゆっくりと立ち上がり言った。その表情は、どこか嬉しそうだった。
これが彼女の狙い、この時の為に温存しておいた隠し弾。彼女は、半ばヤケクソに突貫しただけではなかった。唯一残されたこの射撃武器を無駄にはできない。だからこそ、確実に相手に命中させる為に、相手の懐へと潜り込み、相手の隙を誘い、必ず命中する零距離で使う必要があった。
我ながら大胆かつ繊細な作戦。それにより、まわし蹴りをもらった事はとても痛かったが、これで勝利にまた一歩近づいた、とほくそ笑んだ。だが、決闘はまだ終わってはいない。勝利を確信するにはまだ速く、決着を告げるブザーがアリーナに鳴り響いていない以上、最後まで油断してはいけない。それは彼女が痛すぎる程、この決闘で思い知らされた。
セシリアは、二機のビットに弾頭を再装填し、インターセプターを握り直した。そして、立ち込める黒煙へと切っ先を向けて構える。
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/11/10(日) 23:28:14.97 ID:GkrSYZZD0
黒煙から、何かの塊がセシリアへと飛んできた。それを反射的にブレードで弾いて確認した時、それが一夏の持っていた拳銃のマガジンだとようやく分かった。その瞬間、黒煙から現れた一夏がセシリアへと銃を構えていた。
二人の発砲は同時だった。弾丸がセシリアのブレードを破壊し、ミサイルの下をギリギリで潜り抜けた一夏は眼前のミサイルビットの銃口に拳を喰らわせて破壊した。そして、こちらを向いた腰部のビットを蹴り飛ばし、セシリアの眼前に少なくとも五十口径はあるであろう銃口が突き付けられた。
その時、決着を告げるブザーがアリーナに鳴り響いた。

『制限時間終了、シールドエネルギー残量により』


『勝者、セシリア・オルコット』


「……へ?」

セシリアの口から、思いもしない声が漏れ出した。そして、そのままぽかんと口を開けたままで「なぜ?」といった表情をしていた。
アリーナアナウンスの言った通り、シールドエネルギー残量はセシリアの方が一夏より多く残っていた。それにより勝敗が決した訳だが、あまりに呆気のない決着を、セシリアが理解するのには少し時間が必要だった。それは、始めて実感のなかった勝利だった。
一夏は、おもむろに方向を変え、Aピットに向かって歩き始めた。歩いている途中に銃をバスロットへと仕舞い、落ちていたもう一つの銃も拾って仕舞った。そして、そのまま何事もなかったかのように、Aピットへと進んでいった。
セシリアは、それをただ呆然と見ていた。
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/11/10(日) 23:31:59.67 ID:GkrSYZZD0
一夏のが、千冬や真耶、箒の待つAピットへと戻ってきた。
展開されていたヴィンセントが、一瞬光った。そして、その光が一夏の掌の中に集まって小さくなり、ドックタグとなって姿を変えた。その小さくなったISを、一夏は見つめていた。

「まったく、色々とヒヤヒヤさせる。一応はまともな試合になっただけでも良かったが……あの時の二の舞だけはやめろよ」

イスから立ち上がった千冬が、溜め息を吐きながら言った。

「あの爆発でかなりシールドエネルギーを消費していたな。今回は、何とか機体に助けられたようだな」

掌のドックタグを取り上げて、まじまじと眺める。

「悪いが、こいつはしばらく預からせてもらう」

一夏の方を振り向いた千冬は、さっきまでとは打って変わり、真剣な顔付きをしていた。そして、その言葉は極めて冷静としていた。

「安心しろ……しばらくと言っても二日三日程度だ」

「好きにしろ」

そう言った一夏は、Aピットの出口へと歩いていった。
Aピットから出ていく一夏を、三人は無言で見送った。

「さて山田先生、少し手伝って貰えますか?」

「あ……はい」

「まあ、正確に言えば少し、ではなくかなり、ですが」

「いえ、全然……大丈夫です。はい」

惚けていたような真耶が、いつも以上にせわしなくゼスチャーをとる。せわしないはずなのだが、何故か妙に大人しくも見える。

「……明日になるかもしれませんね」

そんな真耶を尻目に、千冬はボソリと呟いた。

「千冬さん」

箒が、閉じていた口を開いた。

「ん?何だ?」

箒の表情は堅い。
彼女は、さっきの試合を見ていた時から眼つきを変えていた。そう、一夏が爆炎の中から現れた時からずっと。戦いが再開され、終わるまでの攻防も全てを眈々と見ていた。

「一夏の事を……教えてください」

その表情を見た千冬が、顔つきを変えた。

「本当に……聞きたいのか」

「はい」

その眼に、迷いはなかった。

「身長185cm、体重76kg、年は16の少しばかり表情や人との交流に乏しいのが玉にキズな…………私の、大切な弟だ」

103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/11/10(日) 23:33:47.63 ID:GkrSYZZD0


25

「はぁ……」

セシリアは、自室に備え付けられたバスルームでシャワーを浴びながら、小さな吐息をこぼした。
今日の試合の結果に納得がいかない。全武装を破壊され、無力化された自分に、あの後勝ち目があったとは思えない。だがあの時、自分はまだ諦めていなかった。
それは意地のようなものだった。いつだって勝利への確信と、向上への欲求を抱き続けていたセシリアにとってそれは、今までなかったもの。


あの時の、胸の高鳴りが、今でも収まらない。
こんな事は本当に久しぶりだった。まるで、自分が幼い頃に戻ったかのように。
無邪気に庭を駆け巡っていたあの頃に。
ふと、自分の過去を思い出した。


セシリアには両親がいた。彼女の父親は、イギリスの名門貴族、オルコット家に婿養子という立場で婿入りした人物だった。その事が大きな引け目になっていたのだろか彼は、何かにつけて自分を卑しめて諂い、頼りなくおどおどとしていじけていて、嫁である母親に対していつも薄笑いを浮かべていた。それは何処か怯えているようだった。
そんな情けない醜態を晒す父親を見たセシリアは、幼いながら心の奥底に怒りを覚えずにはいられなかった。そして、ISが発表されれば父親の態度はますます弱くなった。
母親は、それを鬱陶しがった。もはや夫と話すのすら拒絶していた。彼女は男尊女卑の時代だった頃から、実家の名を守る為、実家の更なる発展の為にいくつもの会社を経営し、数々の成功を収めて力を尽くしていた。常に厳しく、時に優しいその姿に、セシリアは強い憧れを抱いていた。
そんな両親も、もうこの世にはいない。三年前に起きた越境鉄道の横転事故、死傷者は百人をゆうに超える大規模な事故だった。一度は遺産を狙う関係者による暗殺、陰謀説が囁かれたが現実はそれを否定した。
あまりにあっさりと、両親は悉くこの世にいない人間となってしまった。あの日、いつも別々に過ごしていた両親が、どうしてその日に限って一緒に過ごしていたのか、それは未だに分からない。
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/10(日) 23:35:10.24 ID:CN2ELeogo
黒井ヴィンセントって訳ですね
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/11/10(日) 23:36:37.21 ID:GkrSYZZD0
そこから、彼女の戦いが始まった。周りの大人達は狡猾にも、両親を亡くした哀しみに付け入るように、彼女の手元に残された莫大な遺産を狙った。哀れみをもって口先だけの言葉を並べ、擦り寄るように諂い、浅ましく卑怯な手を使ってきた。
彼女には、両親の死を嘆き、哀しむ暇などなかった。ただ、母の遺した遺産を、母が守ってきたオルコット家の名を守らねばならなかった。その為にあらゆる勉強をして、どんな事にも屈せずに戦ってきた。幾度となく人を欺き、時には血を見る事になった。
無情にも、一息つく間もない程に時間は過ぎていった。そして彼女は、自分の特殊な才能に気付いた。勉強の一環として受けたIS適性テストでA+が出た。その才能に着目した政府が、優秀な人材を自分達の国に捕まえておこうと様々な好条件を出してきた。政府からの援助があれば、まとわり付く金の亡者共から母の遺産を守れる、そう考えた彼女はそれを承諾した。そうして、第三世代装備ブルーティアーズの第一次運用試験者に選抜され、稼働データと戦闘経験値を得る為に日本にやってきた。
オズの魔法使いのカカシ。脳がないから自分で上手く踊れない。だから風に吹かれながら、揺られながらも必死に、単調な踊りを踊る。そして、上手く踊れるように脳が欲しいと嘆く。そんな愚かに見えるカカシが、まさに自分そのものだった。
今思えば、自分はオルコット家という広大な土地を守りながら、常に周りの大人達という風に哀れにも踊らされていただけで、自ら踊ろうとした事などなかったのではないかと思う。誰も彼もが自分を、セシリア・オルコットとして見ていた。それはオルコット家の後継ぎであるセシリアであって、ただのセシリアである彼女自身ではなかった。だが、あの男は違った。
あの男ーーーー織斑一夏は、あの時自分をセシリアとして見ていたように思えた。
セシリアは、今日の試合で、ほとんど会話らしい会話を交わした事のない彼、織斑一夏がどうゆう人物なのか、その核心部分に触れてしまっていたと言える。
人は誰しもが、強さにひかれる。例えそれがいい意味でも、悪い意味でも。
彼女はまだ分かっていないが、彼女は織斑一夏が持っている強さに惹かれていた。それは今日の試合が証明した実力ではなく、彼の奥底に静かに眠っているもの。


彼女自身が感じとったもの。


不思議だった。何故、自分はこんな気持ちになっているのだろうと自分自身に問い掛ける。

「はぁ………」

熱めのシャワーを止め、長く伸びた金色の髪を掻き上げて、小さな吐息をこぼす。そっと撫で下ろした胸の高鳴りは、まだ収ってはいない。

「織斑、一夏……」
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/11/10(日) 23:38:53.75 ID:GkrSYZZD0


26

IS学園の地下五十メートル。そこは通常の手続きで入る事は出来ない。それどころか、レベル4以上のIDを持った一部の人間しかその存在を知る事はなかった。ここがIS操縦者育成機関である事が建前である以上、この隠された空間の存在は隠蔽されている。
その空間の中で真耶は、コンソールを動かす指を休めず、かれこれ三時間はモニターを見つめていた。なぜなら、横に展開されて鎮座しているヴィンセントに掛けられているプロテクトがあまりにも固すぎるからだ。
作業を始めた頃はああでもないこうでもないと独り言を言いながら地道にプロテクトを解除していた。だが、今はいつもの慌ただしい雰囲気もなく、表情もなく声も出さず、ただ黙々と作業に打ち込んでいる。機械的に動かしていた指を一旦止め、静かに背もたれに体を預けた。
薄暗いこの部屋は、照明はあってないようなもので、ほとんどモニターの明かりしかなかった。そんな環境での作業は、目の疲労をかなり促進させていた。
今やトレードマークとなった伊達眼鏡を外して、天井を見上げた。手元に置いていた冷めたコーヒーを無理矢理喉へと流し込み、ため息を吐いた。ちょくちょく休憩は挟んでいたのだが、猫の手も借りたいと懇願するぐらいに作業は難航していた。
解析の進行状況は、ほとんど何も分かってないに等しかった。例えるなら、ようやくすがるべき藁が見えた程度だった。
真耶はふと、ヴィンセントの方へ眼をやった。


こうして見れば、ただの黒いISだった。だが、あの時は違った。
黒煙の中から現れたこの黒いIS、それを纏った彼、織斑一夏が何処かこの世から逸脱している存在であるように思えた。
そして、それ等の存在に対して畏怖の念を抱いた。知らなくて良かったはずの何か恐ろしいもの。それを自分は、あの時体感してしまっていたように思えた。


『山田先生』

さっきまで見ていたモニターにウィンドウが開く。ドアのカメラから送られてきた映像には、端末を片手に持った千冬が映っていた。
真耶は、慌てて眼鏡を掛け直し、モニターに映った千冬を再度確認した。

「どうぞ」

ドアが開き、千冬が入室してきた。

「解析は進んでいますか?」

「22パーセントぐらいは……進みましたかも」

「三時間以上かけて22パーセントですか……面倒なものを……」

千冬は端末を机に置き、眉間に手を当てぼやいた。
彼女は、解析の方は真耶に任せる事にして、自分は試合の映像を何度も見ていた。別に解析が面倒だった訳ではない。それとは別に、もう一つ特殊な意図が存在していたからだった。

「ダメです、もう全っ然ダメです。お手上げですよ、お手上げ」

そう言って、真耶は言葉通りの両手を挙げるジェスチャーをした。
解除していく度に、奥へ奥へと進んでいくほどにプロテクトはより複雑さを増していく。それを解除するパスワードを割り出すのは至難を極めていた。
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/11/10(日) 23:41:53.99 ID:GkrSYZZD0

「現時点で分かった事はありますか?」

「はい、まずは………」

コンソールを素早く操作し、三時間の間に得た情報をモニターに表示する

「ヴィンセントは防御特化型でバランスのとれた性能、しかも他の機体より性能は上です。現にブルーティアーズよりも、総合した性能は上です」

「防御特化万能型か………丁度いい」

ヴィンセントを見つめながら千冬は言った。

「その装甲はシールドバリア展開が可能、けれどバリアを展開しなくても盾のように使う事が可能で同時にスラスターも兼ねています。そして、装甲自体もかなり頑強にできています」

「勝負の決め手はこいつ、機体の防御力の大半はこれ、というわけですね」

「ええ、そうです」

昨日の試合、のこり少ないシールドエネルギーであるにも関わらず、ブルーティアーズからのミサイルをまともに受けたはずのヴィンセントが、試合時間終了まで稼働できた理由はこれだった。ミサイルが着弾する直前、体を捻り装甲を盾にしてミサイルを受けた。それにより、ミサイル着弾によるダメージはなく、発生した爆煙に紛れ込んだのだ。

「武器の方は……」

真耶は、千冬の視線から顔を逸らした。千冬は、催促するように真耶を見つめる。

「一丁目は一種の骨董品みたいな物ですね、こんな銃作ってる所はもうありません。二丁目は………ハンドガンに近い見た目の銃と考えた方がいいです。使用している弾丸のサイズからして……理屈では銃にはまだまだ余分なスペースがありますし、特にグリップ以外は仕掛けだらけのようですよ。デザイン面でのパーツ分割や彫刻とは違った本体の見た目、銃身の上と下にある隙間もなかなか興味深いですねーヘタに分解出来ないのでどうしようもないのが惜しいところですが……あ、もしかするとまだ見ぬ特殊な発射機構をしているのかもしれませんね。いやぁ……それにしても……素敵な銃ですよね……」

真耶話はヒートアップしていき、目は大きく輝いた。千冬はその勢いに押されてただ立っているだけだった。質問しなかったのは、その勢いからして、データで出なかった事を真耶がほとんど言ってくれたような気がしたからだ。

「じゃあナイフの方は……」

そして、このままだと長くなりそうなので話題を変える。
真耶は我に返り、恥ずかしがりながらもとにかく落ち着いた。

「はい、いたって普通のナイフですね」

「そうですか……バスロットは一体どうゆう事でしょうか?」

モニターに表示されているヴィンセントのバスロットはほぼ全て埋まっていた。だが、その理由が分からない。10を超えるバスロットの中で、解析できた二つとほんの少しの空いたのを除いて、他の全てはUNKNOWNーーーープロテクト未解除による解析不可能、または開発者が意図的に開示が不可能な状態にしてあるかの二つが考えられる。

「銃とナイフが武装である事しか分かりません。そこは……プロテクトが一番複雑で解除できませんでした」

「それは……どうしようもありませんね」

思わずため息をこぼし、言い終わったと同時に、千冬の表情が少し強張り、僅かな沈黙が生まれた。
二人の懸念は全く同じ部分を着目していた。

「まさかとは思うが……自爆機能とかはーーーー」

「大丈夫です!織斑くんに危害が及ぶようなものはありませんでした!」

真耶は、恐る恐る話す千冬の言葉が終わるよりも速く、力強く断言した。その理由は、今日の試合の二の舞、同じ轍を踏んでたまるものかと機体機能の解析だけは重点的に行っていた。あの背筋が凍るような事態は、そう何度も味わいたいものではなかった。
それを聞いた千冬は、安堵の表情を見せた。
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/11/10(日) 23:45:43.34 ID:GkrSYZZD0

「すいません、山田先生。こんな夜遅くまで付き合わせて」

千冬は深く頭を下げた。

「いえ、こうなるとは薄々分かってましたから。なんなら、まだまだ頑張っちゃいますよ……全然解除出来てませんし」

真耶は慌ただしく両手を振って、一人で落ち込んだ。

「だから……頭を挙げてください」

「つくづく申し訳ありません」

千冬の頭が、挙がった。

「協力できたかどうか怪しいぐらいの成果でしたけど……」

「いや、それでも十分過ぎるぐらいです。本当に、頭が下がる」

言葉の通り千冬の頭が下がる。

「ああもう!やめてください!頭を挙げてくださいよぉ……」

「はい、分かりました。何はともあれお疲れ様でした」

十五時間以上起きて活動している人間の動きとは思えない程、カッチリとした動きで頭が挙がった。
真耶は、大きなあくびをした。先ほどまで騒いでいたのが嘘のように睡魔が襲ってきた。彼女の活動時間も千冬とそう変わらない。
この後すぐに眠ったとしても、睡眠時間は六時間とない。それは、どちらかと言えばロングスリーパーである真耶にとってかなり辛い事だった。

「織斑先生は……どうします?」

「私は……もう少し粘るとします」

「そうですかぁ、それじゃあ………お先に、失礼……しまーす」

しどろもどろな言葉を発した真耶は、ややおぼつかない足取りで部屋のドアへと歩いていった。

「一つ、聞いてもいいですか」

その足取りが、ドアの手前で静止した。真耶がはっきりとした口調で話し、千冬の方へゆっくりと振り向いた。
それに対する千冬の応答は沈黙、それは聞いてもいい、という意味を含んでいる沈黙だった。

「昨日の試合、どうして制限時間を設定したんですか」

真耶の眼が、眼鏡越しでも分かるほど鋭く千冬を捉えた。

「ただの気まぐれですよ。ほんの少し、魔が差してしまっただけのね」

その言葉からは、彼女自身の本心が全く読み取れなかった。それが偽か、真かを見抜く事は、そうやすやすと出来る事ではなかった。

「さすが、姉弟だから……似てるんですねぇ……」

だがその言葉は、真耶の眠気に勝るものではなかった。

「では、また……明日に……」

「お疲れ様でした」

入り口のドアが開き、千冬は睡魔に襲われている真耶を見送った。
あの試合、一夏が銃をセシリアへ突き付けた瞬間、ブザーが鳴ったのは千冬が有り余っている制限時間をギリギリまで縮めたからだ。もちろん、箒と真耶、観客達はリアルタイムモニターに釘付けになっていたのでその程度の操作に何の事はなかった。そうしなければ真っ昼間、満員御礼の第三アリーナで良くて流血沙汰、最悪の場合女子高生一人分の肉塊を生産し、国際問題のおまけがついて一緒に片付けしなければならなかったからだ。そんな最悪の事態を想像して、流石の千冬も肝を冷やした。
千冬は、この部屋の警備システムを落とした。これで今からする事を録音、及び録画される心配はなくなった。

「さて、いささかとっちめてやるとするか」

一人小さく呟き、人の悪い笑みを浮かべながら携帯を操作した。
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/11/10(日) 23:46:57.70 ID:GkrSYZZD0
その部屋は、普通で平凡、全くもって地味な部屋や必要最低限の物しか置かれていない部屋に比べると飛び抜けて奇妙奇天烈だった。
部屋一体を埋め尽くす機械の備品、鉄くずなど、恐らく発明品と思われるガラクタ、明らかに場違いな薬莢や分解されかけの武器やそのパーツ、金属の塊などがあって足の置き場が見つからない。そして、その中に混じって大量の機器に繋がれているケーブル達が所狭しと蹂躙し、巨大な要塞を形成していた。その難攻不落の巨大要塞向こう側には、分割された大量のモニターがあり、その前に置かれている机には一人の女性が俯いていた。
長く伸びた雲気のような色の髪は、普段の手入れを怠ったのかボサボサになっている。そして、空の色をそのままに染めたような鮮やかな青のワンピースにはエプロンと背中には大きなリボンが、頭に着けているカチューシャは何故か白ウサギのような耳がついている。
奇妙奇天烈な部屋の主は、部屋の状態以上におかしな格好をしていた。そのおかしな人物の名は、ISの生みの親『篠ノ之 束』そして、この部屋は彼女の秘密ラボである。

「いかないで…………」

ゆっくりと、何かを追うように手を伸ばした。

「待って!」

束は目覚めた。落ち着いて辺りを確認して、胸を撫で下ろす。そして、机に出来たヨダレの水たまりを見て複雑な顔をした。ハンカチを取り出して口を吹き、足元を掻き分け見つけた布らしきもので机を拭いた。
そう、彼女はついさっきまで眠っていたのだ。かの相対性理論で有名なアインシュタインはその脳を働かせるには十時間以上の睡眠を要したと言われている。だが、彼女自身はそれに習ったわけではない。ただ眠っていただけだった。
寝起きの顔は、まだ眠っていたいように見えず、どこか名残惜しい別れをしたようにも見えた。

Don't wanna be the one to your cherry, girl〜♪

「おっ!」

そんな奇妙奇天烈な部屋に、デジタル・ロックなアグレッシブビートが響く。
束は嬉しそうに、物で溢れかえる机を漁る。その間に色々な物が机から落ちていくが、特に気にする様子はなかった。
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/11/10(日) 23:53:33.76 ID:GkrSYZZD0

「どっせーい!よっしゃっ、あったー!」

机の上を一掃して探していた携帯をようやく発見し、電話に出た。

「おっはーちーちゃん。いい夢見れたた?」

『私はまだ眠れていない』

「ありり?」

束はあくびをしながらモニターに映る時間を見た。

「なーんだ。まだまだ夜中じゃんかーこりゃうっかり八兵衛」

『眠っていたのか?珍しいな、天才は思考から解放されないんじゃなかったのか?』

千冬は、笑いながら言った。

「天才でも、考えられなきゃただの人間だよ。それで、どったのちーちゃん?ワッツハッペン?」

『目覚め頭のお前に申し訳ないんだが………』

ほんのわずかな沈黙

『少し、話がある』

端末の向こうの千冬の声からは、気迫が感じられた。

『あれは一体どうゆう事だ』

それは、質問というよりは尋問している人間のそれに近かった。

「どれのこと?」

『ヴィンセーーーー』

「あーッ!!」

束が叫んだ。千冬は携帯から耳を遠ざけた。

『……何だ』

千冬は、ゆっくりと携帯を耳に近づけた。

「ご、ごめん。ちーちゃん………」

ご機嫌で話していた束は、急にしおらしくなった。

『ど、どうした、何故謝るんだ?』

態度が一変した束に、千冬は少し戸惑う。

『もしかして、あの爆発の事か?エネルギーを大幅に消費しただけで済んだがーーーー』

「あんまり怒らないでね………」

『怒る?まあ、説明しだいだが弁解を聞こうか』


「あのね、改造してた白式がね…………まだ完成してないんだ…………」


千冬は、言葉を失った。

「いっくんさ、今打鉄使ってるでしょ?」

『え?ああ……いや、違う!打鉄じゃないもっと別のを……だ、な……』

あまりに想定外の事態に動揺を隠しきれない。凝り固まった思考を掻き乱され、次にどうゆう言葉を発すればいいのかすら分からなくなる。

「それでさぁ、さっきの話なんだけど……ヴィン……ヴィンなんたらがどうしたの?」

千冬からの応答がなかった。

「んん?おーい、ちぃーちゃん。ねぇねぇ………ちーちゃんってばぁ」
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/11/10(日) 23:55:29.27 ID:GkrSYZZD0
訳が分からなかった。どうにかなってしまいそうだった。確信が大きく狂ってしまった。
頭脳停止
諸々の判断不能


束は、嘘をついてるようではなかった。彼女がそんな事をすれば、千冬にはすぐにそれな分かってしまうほどの仲だからだ。
千冬は、束の言葉を聞くまでずっと思っていた。


こんな事をするのはこいつしかいない、それ以外に考えられない。
名前が違っていたのも、コアナンバーが隠されていたのも、バスロットが開示不可能なのも、あのコンテナも、今までにない機体も、あのメッセージも。
その全ての理由が、今自分が話している親友の戯れや酔狂だったならば、道理でそう成るはずだ、と納得もいっていた。そう考えると、あまりにも辻褄が合致してしまっていたからだ。だが、そうではなかったのだ。
あのヴィンセントは、誰とも知れぬ輩が、自分の肉親に向けて作った全く知らないISで、わざわざ初試合の時に渡されたものだったのだ。
全く辻褄が噛み合わないし、全くもって分からない。


『どうゆう事なんだ………何が一体どうなってしまっているんだ?!』

通信相手の束を完全に忘れ、果てしない思考の中で一人、もがき苦しむ。

「うにゃ?どしたの?とりあえず落ち着いて、ほら深呼吸して」

『あ、ああ……分かった』

束によって思考の中から引き戻された千冬は、大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐き出した。

「落ち着いたー?」

『すまない、取り乱した』

その声はいつも通りの千冬のものだった。

「でさでさ、お話ってなになにぃ?」

『面白い事が起きた』

「……本当?」

『かなりお前好みの事だ』

「私好みの?」

『それも三つもな』

「三つも!」

束の目が、子どもようにキラキラと輝き出す。
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/11/10(日) 23:59:14.99 ID:GkrSYZZD0

『一つは謎のIS、ヴィンセントだ』

「ほう……」

『こいつがなかなか食えない代物でな……ハイスペックに加えて謎の武装、中身の方はプロテクトで満杯なんだ』

「ほうほうほうほーう、それはそれは面白いね」

その言葉を聞いて、束がニヤリと笑う。

『駄目で元々で解除を試みようと思うが………如何せんその手の知識には乏しくてな』

「またまたぁ、そんなご謙遜を」

『作った奴はお前に並ぶ馬鹿か天才かのどっちかだ』

千冬は、キッパリと言いきった。

「ちーちゃん酷い、上げといて落とすなんて……私、悲しい」

束は目元に手を当て、ご丁寧に泣き真似までする。

『そして、二つ目』

そんな束を無視して続ける。悪ふざけに付き合っていたら伝える事も伝えきれないと散々思い知らされている。

『意外と言うべきか、アレを出来た奴がいる』

「アレ、をねぇ……ますます面白いね」

『この先を考えるとお気の毒様だがな。そして、三つ目は……箒が一夏に相当御熱だ』

三つ目が特に伝えきれなくても問題ないのは言うまでもない。

「やったねちーちゃん!いっくんが弟になる!」

空いている片手で渾身のガッツポーズを決める。思わず携帯を持っている方の手にも力が入る。
完全に色々な過程を飛躍しているのは言うまでもない。そんなとんでもない事を言っているのは、箒の実の姉である。

「ちーちゃんの事はなんて呼べばいいかなぁ?束さん的には……お姉ちゃん?いや、それとも…………ウフフ」

あまりの嬉しさに笑みが止まらない。部屋で一人、ニヤニヤしている変な人になっている。

『これ以上、私の下に手のかかる奴はいらん』

そんな束の未来予想図も、千冬に悉く粉砕される。

「ぐぬぬぬ………束ちゃんは諦めないよ、いっくんに『束姉ー』って言いながら私の胸に飛び込んできてもらうまではね!」

『お前、そんなキャラだったか?』

千冬は、残念ながらそれは今現在は不可能だ。と心の中で思いつつも、意外なリアクションに驚きを隠せない。
長い付き合いでこうゆう事は多々あった。

「あと、箒ちゃんが『千冬姉』って恥ずかしそうに言ってるところを見たい」

束の鼻息が荒くなる。

『お前なぁ……』

見え透いてしまえたような言葉に一周回って呆れ返ってしまう。
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/11/11(月) 00:10:07.36 ID:IfmMIhFE0

『とにかくだ。まずはお前の未来の兄弟だの、子どもは何人だの、男か女がいいだの、叔母さんだの云々よりも何よりも、ヴィンセントだ』

本来の目的を忘れ、親友との話に花を咲かせていたのを無理矢理本題に戻す。
束は、だだ漏れの千冬の本音に笑いを抑える。

『こいつをどうにかしなくてはどうしようもない』

「はいはいなるほどねーつまるところは束さんが出血大サービスすればいいんだね?やっちゃうよ?突撃、IS学園!だねっ♪」

『んー………そうだな、話が分かって助かるよ』

言わずとも自分の言いたい事が分かってくれる。それは、人間関係においてかなりハイレベルな事である。
千冬はこうゆう時に、親友の存在のありがたみを心底噛みしめる。だが、それに続く束の言葉

「気が向いたらね」

を聞いて、親友の存在のありがたみを、とにかく全力で噛み潰し、ついでに感情も噛み潰す。束に悪気はないので千冬は怒れない。

『………とにかく、頼むぞ』

「アイアイサー!」

『ハンプティ・ダンプティを知ってるか?』

「どしたのちーちゃん?これまた藪からスネェェクに」

『知っているか』

束は、軽い冗談で茶化したつもりだったが、千冬からドスの聞いた声が帰ってきた。

「えーっと、不思議の国のアリスの続編、鏡の国のアリスに出てくるキャラだね」

『………そうか』

「で?それがどうかしたの?」

『いや、ただの興味本位だ、深い意味はない。それでは、またな』

「うん、バッバァーイ♪」

千冬との電話が切れる。久しく千冬と色々話せたのだから文句など言わない。むしろ色々な事があり過ぎて舞い上がっているほどだ。

「フフッ、箒ちゃんったらいけませんねぇ……ちーちゃんにや私に黙っていっくんとあんなことやこんな事を……いけませんねぇ、グフフフッ」

もはや完全に、部屋で一人ニヤニヤしながら妄想している変な人になってしまっている。

「それにしてもそれにしても………ヴィンセント、なかなか面白いねー束さん的にはもう興味心身だねー」

束は、口元をわずかに歪ませてゆっくりと笑んだ。
携帯から子守り唄のように緩やかな、心安らぐサックスの曲が流れた。

「うーん、これは近々隕石でも降ってくるのかな。そんな前触れの気がするねぇ」

束は、電話に出た。

「珍しいねー電話してくるなんて、どったのー?何か御用急用おっ楽しみー?」

『いいえ、近況でも聞こうかと思ったのよ』

携帯から聞こえてきたのは女の声。

「あー今のところ完成度は22%ぐらいかな、所詮は基礎理論出来たぐらいだしね。あと一週間もあれば50%以上出来るけーどねー。他はもうちっと待っててね、いい感じになりそうだからさ」

『そう……なら、待ち侘びてるとするわ』

「でさでさ、名前の方はさ、ブロウクンファントムか………ソウルゲインでどうかな?」
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/11/11(月) 00:12:42.06 ID:IfmMIhFE0
束との電話を終えた千冬は、ふとヴィンセントに手を伸ばした。特に理由があったわけではない。ただ、そうしようと思った事を実行しただけだった。
伸ばした手が、ヴィンセントに触れたその時、それは起こった。


悪魔を信じるか?
あらゆるものが存在する中で、人は何故それ以上のものを空想するか分かるかね?
人は何故空を恋しがり、宇宙を飛びたがるのか。それは、昔は空を飛んでいたからだ。
空想出来るものは存在出来るものなのだ。
例えそれが、眼に見えなくてもな。

115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/11/11(月) 00:15:10.67 ID:IfmMIhFE0


26

まだ少し肌寒い春の夜空、春から冬へと季節が変わったとはいえ、冬の面影がまだまだ残っている。
深夜二時過ぎ、誰も彼もが寝静まった真夜中、辺りは静寂に包まれていた。見上げれば空を埋め尽くす星、月だけは見えていない。暗闇が広がる夜空の下、離れた街の灯りだけが辺りを照らす。その薄明かりの中に、一つの人影。
男は、ただそこに立って視線の先に広がる海と空の境界を見ていた。このIS学園で最も空に近い建物の屋上で、冷たい夜風にそよぐIS学園の旗を背にして。そして、おもむろに着ていたスーツの内ポケットから何かを取り出し、星々が広がる夜空へとかざした。
それは、淡い青をしたビー球のような物。
男は、それを祈るような眼で見つめている。まるで、そこから何かを見出そうとするかのように。


彼の視界にある、ビー球のような物越しに映る夜空。
その漆黒の夜空を今、一つの流星が過ぎていった。

116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/11/11(月) 00:21:59.22 ID:IfmMIhFE0




TO BE CONTINUED……
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/11/11(月) 00:40:11.69 ID:IfmMIhFE0

?「やっと来たわね、ついにあたしの出番!」

?「いやーやっぱりね、ここは幼馴染のあたしがビシッと、ブァーっと一発かましてやんないと締まりがないもんね!」

千冬「まったく……物騒な世の中だ。不況不況で子どもがキレるか大人がキレるか、はたまた政府の偉いさんがキレるか」

?「あれ?おーい、千冬さん?」

クラリッサ「おい、新聞なんか読んどる場合か?こっちはなんか色々とごった返しになってるぞ、こんなの読んでもさっぱりだぞ」

?「もしもーし……」

千冬「これ見てみろ、金持ちのパーティー会場が丸々吹っ飛んだんだとさ」

クラリッサ「物騒な話だ。まったく何でそんな事するのかした奴の気がしれないな」

?「え、ちょっと……」

千冬「丁度いい、お前のところの事件の奴もこいつに吹っ飛ばしてもらえ」

千冬「次回」


Next Session
チャイナ・ブルース


クラリッサ「はぁ……私がキレそうだ」

?「聞けってのよ!もおぉぉぉっ!!」

千冬&クラリッサ「「あ、子どもがキレた」」
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/11/11(月) 00:53:08.17 ID:IfmMIhFE0
ようやく更新できました。待ってる、とか嬉しい事言われて無駄に張り切ったらこんな感じに文字だらけになりました。多分誤字はないと思いますが……ごちゃごちゃしてて読みにくくてすいません。
話がなかなか進みません。ちょっとだけ謎を謎で塗り固める感じになってますし、今回はセシリアメインの話にしたつもりです。ビットに小型端末が〜とかコンチェルトとかワルツでビットが〜とか思いついた捏造設定出てきましたけど、あまり気にせず読んでください。
戦闘シーンは……めちゃくちゃ激しく、かっこいい感じの脳内補完の方をお願いします。
全体的にキャラの精神年齢がかなり上がっている気がします。

119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2013/11/11(月) 20:16:28.59 ID:Pj07OIYj0
来てたのね


ただナンバリングが時軸かわかりませんが26が2箇所にありますよ
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 00:18:58.52 ID:Ok4hVmS10




Session#3
チャイナ・ブルース



121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2013/12/07(土) 00:24:06.69 ID:Ok4hVmS10


28

ワイワイガヤガヤヤイノヤイノ


真耶「ではでは、一年一組のクラス代表は織斑一夏くんに決定です!はい拍手!」パチパチパチ

一夏「…………………………」

箒「?」パチパチ



パチパチパチパチパチパチ



真耶「ストーップ」シュビッ



ピタッ シーン



真耶「いやー、一繋がりでなんだか縁起が良いですね。大安吉日♪」

箒「先生、質問です」

真耶「どうぞ、篠ノ野さん」

箒「一夏は試合に負けたのに何故クラス代表なのですか?」

真耶「それはですねーーーー」


ガタンッ


セシリア「私が辞退したからですわ!」バーン

一夏「…………………………」

千冬「…………」

箒「???」キョトン

セシリア「いまいちピンとこない、という顔をしていますわね」

箒「………勝負はお前の勝ちだったな」

セシリア「ええ、私は勝負に勝ち。戦いに負けましたわ」

セシリア「けれど、そのような結果で満足するほど、私は惰弱ではありませんくてよ」

セシリア「勝ったからいい?勝てばいい?結果が全て?そのような戯れ言、まとめて犬にでも食わせてやりますわ」

セシリア「だからこそ、私セシリア・オルコットはあの勝負を自らの負けと認め。そして、彼こそがーーーー織斑一夏こそが、一年一組のクラス代表に相応しいと思い自ら辞退しました」

セシリア「ただそれだけですわ」
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2013/12/07(土) 00:30:35.11 ID:Ok4hVmS10


キャアァァァーッ


「セシリアかっこいー!」
「流石、本場のお嬢様はものが違うわね」
「やだ………惚れそう」
「私女だけど抱かれたい」
「代表候補生は伊達じゃないッ……!」
「さすがのせっしー!」


ワチワイガヤガヤセッシーセッシー


セシリア「まあ、私なら当然ですわね」フンス

セシリア「って、せっしーって何ですの!?」

箒(根はいい奴なのか?)

一夏「…………………………」


ガヤガヤワイワイガヤガヤ


「織斑くんめっちゃくちゃ強いし世界で一人の男の操縦者なんだし持ち上げとくってのが最善の策ってもんよねー」
「うーん、その通りだね」
「私たちは貴重な経験を積める、さらには他のクラスの子に情報が売れる、なんとまあ一度で二度おいしいとはこのことよ」
「これを使わないわけにはいかないね」
「本人も一味も二味も違うけどね」
「というか初心者だよね?なぜに織斑くんってあそこまで強いの?」
「うーん……ミステリアース」


千冬「お喋りは済んだか?」


ピタッ シーン


千冬「クラス代表は織斑一夏、異論はないな」


「「「「「ハーイ!!」」」」」


セシリア(あうぅ、背中が……)

一夏「…………………………」
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 00:34:22.57 ID:Ok4hVmS10


29

千冬「ようやくヴィンセントの解析が終わった。後で取りに来い」

一夏「…………」

千冬「お前の言った通り、こちらで好きにさせてもらった。安心しろ、わけの分からん細工などは一切していない」

千冬「爆発の方は……不良品の混合とか派手な演出だとか裏組織の陰謀、とでも言っておけ。そこはまかせる」

千冬「それと………あの試合、私が時間を縮めなければお前はオルコットを殺す気でいたな?」

一夏「…………」

千冬「大阿呆馬鹿者、殺しは絶対に許さん……ISを使うなら尚更だ」

千冬「今は状況が変わっているので、三つ言っておくぞ一夏」

一夏「…………」

千冬「一つ、人命を尊重しろ。殺しは絶対にするな」

千冬「二つ、目的達成よりもその方法を優先しろ。ただでさえ危険なお前の攻撃に耐えられるような奴はそうそういない。先生方ならまだしも生徒には特に気をつけろ、オルコットの時ように極力近接戦は控えろ……やるならやるで加減しろ」

千冬「三つ、力の使い方を誤るな………その力は自らの為だけにあるのではない。覚えておけ、人を守ってこそ自分を守れる……己の事ばかり考える奴は、己すら滅ぼす奴だ」

一夏「了解」

千冬「分かっているとは思うが……向こうで許された事でもここでは許されない場合もある」

一夏「…………」

千冬「………次の授業は移動教室だろ?早くいけ」
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 00:37:09.51 ID:Ok4hVmS10

「やはり解せんな」

一夏が視界から消えたと同時に、千冬は苦々しく言った。そして自分も早々と振り向き、次の授業の用意ために職員室へと歩き出した。
千冬がヴィンセントに触れた時に現れたメッセージ、その言葉の持つ意味は分からなかった。だが、あのメッセージは、千冬がヴィンセントに触れれば表示されるようになっていた。
何故そんな細工が施されていたのか、それを施した意図も千冬には分からない。それに加えてメッセージの差出人が、メンデロだった。
解せなかった。何故今頃になって一夏に干渉してくるのか。そして何故ヴィンセントを一夏に渡し、一夏や自分に向けてメッセージを送ってきたのか。それ等から弾き出される思惑、どんな手段を用いてこれらを実現したのかは分からない。だがあのメッセージだけは、千冬の中で引っかかっていた。それによく似た言葉を聞いた事があったが、それを言った奴がメンデロだと言う保証は全くない。
千冬は、歯痒さと苛立たしさに舌打ちをした。
あの後、情報を一通り確認した。そして、二日も使い解析を進めた。全てのプロテクトを外すまでには至らなかったが、それなりの結果は得られていた。
真耶が言った通り、確かにヴィンセントは一夏に危害を及ぼす機体ではなかった。むしろ、逆に一夏を守る為に渡された機体なのではないのかと、作業を進めていく内に千冬にはそう思えてならなかった。
操縦者を保護する追加装甲の防御力、対人よりも対物への破壊力を増した銃の攻撃力、通常のISとは異なったパワードスーツではなく、本来の形であるムーバブルスーツに近い形にしたことによる操縦性の向上、本体の装甲を薄くした事により通常のISには不可能な動きを可能にした機能性、コアシステムの強化など。ヴィンセント性能の高さは、その仮説を裏付けるには十二分だった。


もしそうならば、もしヴィンセントが一夏を襲い来る何者達から守る為に送られてきたものならば、彼女は戦わねばならない、立ち向かわねばならない。
未だ見ぬ、メンデロが危惧した存在と。
一度収めた刀を再び手に取り、立ち上がらねばならない。


そんな、戦いへと導かれる我が身の天命。その片鱗を微かに感じとった千冬は、何とはなしに哀しみに暮れた。
出来る事ならば、これからは何事もなく終わって欲しいと、この世界でたった二人だけの家族ままでありたいと切なく願う。
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 00:58:07.07 ID:Ok4hVmS10


30

「おおっ、あれが織斑くんのISスーツ……」
「あのスーツは何だったの?」
「本人に聞いてみれば?」
「今さらだけどかなり異様な光景だよね」
「グッヘッヘッ………思った通りいい体してやがんぜ」
「あの大腿筋…………あれだけでご飯三杯はいけるわ」
「私はあの鍛え抜かれた上腕二頭筋かなぁ………たまんない」
「はいはい静かにしましょうねー授業の時間ですよー」


千冬「ではこれより、ISの最も基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、オルコット、前にきて飛んでみせろ」

一夏「……………………」ザッザッザッ

セシリア「はい」トットットッ


ドッ ブワァッ


セシリア「きゃっ………え?一夏さん?」

千冬「何をしている、早く織斑の後を追え」

セシリア「は、はい!」カッ


キイィーン


真耶「なかなかやりますね、織斑くん」

千冬「そうでしょうか?」

真耶「いやはや、とても初心者には見えませんね」

千冬「そうでしょうね」

真耶「織斑先生が特別に教えたとかですか?それともドーーーー」

千冬「山田先生」

真耶「はい?」

千冬「………」チョイチョイ

真耶「何でしょう?」

千冬「詳しく話してもいいが………もしもの事があればドイツの科学のなんたるかを教えられる羽目になるぞ?」

真耶「やったぁ!…………本当ですか?」

千冬「嘘です」

真耶「そんなぁ………」

千冬「それにしても、やはりスペックは高いな………ヴィンセント」

真耶「そうですね、やっぱりあの銃を隅々までーーーー」

千冬「もう結構です」
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 01:08:57.30 ID:Ok4hVmS10


キイィーン


一夏「……………………」

セシリア「お、お待ちになってください!」

一夏「……………………」

セシリア「ふぅ………やっと追いつけましたわ」

セシリア「もう少しゆっくり飛んでみてもいいのではありません?」

一夏「……………………」

セシリア「…………」

セシリア「あの………そのーーーー」

千冬『二人並んだな?なら、デモンストレーションで自由に飛んでみろ。なるべく見栄えのいいのをな』

一夏「……………………」

セシリア「………分かりました」

セシリア「一夏さん………その、あの………」

一夏「……………………」

セシリア「私は………私は、あなたに合わせますわ」

一夏「……………………」

セシリア「………」

一夏「着いてこい」

セシリア「はいっ!」
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 01:12:30.60 ID:Ok4hVmS10


遅咲きの桜達が花びらを散らきった四月の下旬。
黒と蒼のISが、晴れ渡る空で舞う。
黒のISはヒラヒラと、まるで蝶のように空で舞う。
蒼のISはそれを追い、鳥のように空で舞う。


生徒達は、みな空を見上げていた。それは、二人が織り成すワルツの美しさに見とれていたからだ。
それぞれの口からは、その美しさを褒め称える言葉や自分もあのようになりたいと思う願望の言葉が飛び交っていた。

「セシリアも大変だな………」

箒は、眩しい日差しを手で遮りながら言った。

「織斑くんにセシリアさん、なかなかいい腕してますねぇ………」

真耶は、二人を見つめて怪しく笑う。それは、単純に一人のIS乗りとして二人を見ていたからだった。
そして、それ等を見つめる千冬の顔は、何処かやるせなさそうだった。
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 01:16:46.76 ID:Ok4hVmS10
セシリア「お上手ですのね、ISの扱いが」

セシリア「これなら、私が負けたのも仕方なかったようですわね」

一夏「……………………」

セシリア「………」

セシリア「あなたは………私よりも強い」

セシリア「身も、そして心も」

一夏「そう思うか」

セシリア「え、ええ………そう思います」

一夏「……………………」

セシリア「根拠なんてどこにもありませんの、あなたの事を深く知っている訳でもないのに何故か………そんな気がしますの」

一夏「……………………」

セシリア「不思議、ですわ」

一夏「そうか」

セシリア「ふふっ………そうですわ」



千冬「………」

真耶「どうかしました?」

千冬「オルコットが一夏に何か話していますね」

真耶「ほんとですね。聞きます?」

千冬「いや、それは野暮ってものです。もう見本もいいでしょう。あれは初心者にはレベルが高い」

真耶「忘れてましたけど、そうですよね……」


箒(私も、あの様に飛べるようにならねばな………)

129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 01:27:06.49 ID:Ok4hVmS10
セシリア「もし、よろしければですが………」

一夏「……………………」

セシリア「今日から放課後にーーーー」

千冬『織斑、オルコット、見本はもういい。いささかやり過ぎだ』

セシリア「は、はい!」

千冬『織斑から順に急降下と完全停止をギリギリでやってみろ』

セシリア「了解です」

一夏「……………………」フッ……

セシリア「一夏さん!?」

一夏「……………………」ドッッ

セシリア「え………なんという急降下をしますの………びっくりしましたわ」ヒュンッ


千冬「………」ニヤッ

真耶(野暮とかいいながら………この人は………)

130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 01:36:31.18 ID:Ok4hVmS10


31


バシュンッ


箒「やったぞ一夏、打鉄の使用許可がようやくとれたんだ」コツコツコツ

一夏「……………………」

箒「これで本格的に特訓できるな」


……ォン……


一夏「……………………」スウッ

箒「どうした?」

一夏「いや、何でもない」

箒「?」

一夏「行くぞ」スクッ

箒「ああ」
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 01:46:18.68 ID:Ok4hVmS10


セシリア「遅いですわよ!」

箒「何故お前がアリーナにいる?」

セシリア「あら、いけなくて?」

箒「何の用だ?またコテンパンにされにでもきたのか?」

セシリア「いえいえ、私はクラス代表である一夏さんがもっともっと成果を得られるように、それと私の技能向上のために特訓しにきたのですわ」

箒「生憎だが、一夏との特訓は私が頼まれている」

セシリア「ISランクCの方よりもAで代表候補生である私の方が良いのでは?篠ノ之さん?」

箒「ふん………そんな数字あてにはならん」

セシリア「そういえば………あなたは一夏さんの何ですの?」

箒「昔馴染みの幼馴染だ」

セシリア「幼馴染って………それだけでして?」

箒「確かにそれだけだが…………少なくともお前よりは近接戦闘の心得はあるぞ」

セシリア「なっ………私だって、少しは心得ていますのよ?」

箒「そうか、一夏そろそろ始めーーーー」
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 02:01:51.78 ID:Ok4hVmS10


シャカシッ


一夏「……………………」ジャキッ

箒「ようか………」

セシリア「………」

一夏「交代でこい。相手になる」

箒「ふむ………どうやらやる気らしいぞ、セシリア」

セシリア「お待ちを、その前に………せねばならない事がありますわ」

一夏「……………………」

箒「………!」

セシリア「あなたに対する非礼の数々…………申し訳ありませんでした」ペコッ

一夏「……………………」

セシリア「男だから、というだけの理由で自分の方が優れていると勝手に思い上がり。それでいて、あなたの事を侮辱して………」

セシリア「本当に、申し訳ありませんでした」

一夏「……………………」

セシリア「今さら………でしたか…………」スクッ

箒「いいや、今さらではない」ポンッ

箒「そうやって自分の間違いを認めて正す事、これはそう誰にでも簡単に出来る事ではないと思う」

箒「お前は、それを勇気を出してやった」

箒「だからこそ、素直に謝って、それで終わりだ。何の後腐れもなくな」

セシリア「でも………一夏さんは…………」

一夏「ISを出せ」

セシリア「え………?」

一夏「始めるぞ」ザッザッザッ

セシリア「一夏さん………」

箒「言っただろ?この話しはこれで終わりだと」

セシリア「そう………ですね」

箒「さあ、やろうか」

一夏「早くしろ」

セシリア「はい!」
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 02:04:11.79 ID:Ok4hVmS10


32

日が沈みかけている夕方。IS学園正面ゲート前、やや大きいボストンバックを持ち、そこから見える学園へ向かって仁王立ちする小柄な少女がいた。その表情は、引き締められ屹然としているようにも見えた。
暖かい四月の風が、少女の左右に高く結ばれた艶やかな黒髪をなびかせている。

「今は………ちゃんとここにいるわよね………」

誰かへ問い掛ける言葉には、期待と不安が入り混じっていた。

「いいや、いなくちゃ困る。あの馬鹿面ブン殴れなくなっちゃうから………!」

目の前に握った拳が震える。

「何も言わずにいなくなった………あの馬鹿一夏のね」

拳をほどくのと同時に、少女は歩き出した。
この学園に転入する理由となった少年に会いにいく為に、待ち望んだ再会を果たす為に黙々と歩き続けていった。
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 02:07:47.74 ID:Ok4hVmS10

「はぁ………何よこの無駄にだだっ広い学園は、受付も職員室もありすぎでしょうがまったく………」

広い学園の敷地内で、少女は適当に辺りを見渡しながら歩く。もちろん、転入手続きやその他の手続きも全て終わらせたからこうして歩いていた。威勢よくIS学園内を探し回っていたが、その途中で適当に捕まえた学生に受付の場所を聞いたが聞き方が悪かったのか答える方が悪かったのか、目的地とは別の場所を数回教えられたのでこうしてぼやいている。職員室への道のりも同様だった。
時刻はすでに七時を超えていて、辺りはすっかり暗くなっていた。そんな中を夕食までの暇つぶし目的で探険していたが、そろそろ回るところもなくなってきていた。なので、女子寮に向かうついでにこれから自分が使うであろうIS訓練施設でも見てから向かおうと歩いていた。
少女のいる場所から訓練施設へは少々距離がある。その途中で閃いた名案を実行しようと思ったが、最悪の場合は外交問題に発展しかねなかったのでしなかった。だが、それと同時に自分に向けて懇願する政府高官の顔を思い出して、一人ほくそ笑んでいた。
少女には嫌いなものが三つあった。回りくどい事、微妙な扱いの物事、気に入らない事。当然、大した事もない理由でふんぞり変える奴など言語道断だった。
性格は、考えている暇があるなら先に動き出す、考えるのは二の次だった。彼女の国の言葉に万機に背く事なかれ、といった言葉がある。だが、そんな事など知った事ではないのが彼女だった。だから、今も地図を見て考えながら歩くよりも、地図も見ずに勘で歩き出しているのが彼女だった。
そんな彼女の心の中には一人の少年がいた。その少年は、男も女も、生まれ違いなども関係なく自分を受け入れてくれた。呆れるほど真っ直ぐだった。そんな彼の事を彼女はとても好いていた。
少女は、少しばかり思い出に浸っている内に目的地に到着してしまっていた。

「いい訓練になりましたわ」

「………やはり専用機持ちは違う」

少女の視線の先、訓練施設から出てきた金髪の女と黒髪の女、そして二人に挟まれている長身の男。

「一般生徒ならともかく、射撃特化型には刀一本では少し厳しいな………」

「私は近接戦闘が少々手厳しいですわ」

「けど有利なのはお前だろ?相手を寄せ付けなければいい」

「簡単におっしゃりますけど、刀二本で戦うようなものでしてよ?それにレーザー兵器は撃ち過ぎるとエネルギー切れがあって大変ですの」

「私の流派は二刀流だ」

「そうゆう事ではありませんの」

金髪の女と黒髪の女が会話を交わす中、間にいる長身の男は、それ等を意に介していないように、少し不気味さを感じるぐらいに平静としていた。
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 02:10:13.23 ID:Ok4hVmS10

「一夏さんはどこかでISの訓練をなさっていましたの?」

セシリアは、前から疑問に思っていた事を口にした。箒も、この事はある程度疑問に思っていた。
二人の視線が一点に集まる。だが、一夏からの応答は無言だった。まるで、元から聞かれていなかったかのように歩き続けている。

「お気に……障りましたか?」

「そういえば!今日は夕食のあとにイベントがあるんだったな?」

箒は話題を逸らす事で、助け舟をセシリアへと出した。

「………そうでしたわ!」

セシリアは、何かを思いついたかのように俯いた顔を素早く上げた。

「一組のクラス代表である一夏さんの為のイベントですのよ」

一夏の左腕に自分の腕を絡ませて、年端に相応な笑顔を見せた。それを見た箒も、かなり恥ずかしかったが負けじと右腕にしがみついた。それはしがみつくというよりは、タックルに近いものだった。それにより少し一夏が左へ揺さぶられる。
不器用なタックルを食らった一夏は、特に嫌がる様子もなく、二人を見てまた静かに歩いていた。

「よし………いざ食堂へ…………!」

箒の顔は、かなり紅潮していた。
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 02:15:21.26 ID:Ok4hVmS10

「い……ちか………?」

さっきのやりとりを影から見ていた少女は、自分の目と耳を疑った。もちろん、どこの誰かも知らぬ二人の女にエスコートされていた事ではなく、クラス代表である事でもなかった。
違ったのだ。自分の見たものの根本的な何かが、自分が知っていたはずの存在と。
少女は、ただそこに立ち尽くした。そして、その間に様々な考えが頭の中を巡る。
あの男は同姓同名の人違い、きっと訓練で疲れきっていただけ、突然消えたあの日から何かあった、もしかしてあれは幻か何かだったのではないか、と色々な考えが彼女の頭を駆け巡る。もし、さっき見た男がそうならば、クラス代表ならば自分にとっては都合がいい。本物か、それとも偽物かを確かめられる方法がある。
少女は、ゆっくりと振り向き徐々に走り出した。今、自分がすべき最善策をとるために一直線に本校舎へと駆けていった。
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 02:34:15.66 ID:Ok4hVmS10


33

「と、いうことで!」
「織斑くんクラス代表おめでとーう!!」


「「「「「「おめでとう!!」」」」」」


パパパパンッ


一夏「……………………」


「よっしゃあぁっ!今夜は宴、無礼講じゃい!カンパーイ!!!」


「「「「「「カンパーイ!!」」」」」」


カチャーン


セシリア「私達も」

箒「そうしようか」

本音「かんぱーい!」

相川「ほら静寐も」

鷹月「ほーい」


カチャーン


「いやーめでたいねぇ」
「丁度騒ぐ口実が出来たよね」
「ほんとほんと」
「はりきりすぎて準備に時間かかっちゃったけど」
「お、これうまい」
「うーん………食うべくか、食わぬべくか…………ハムレットも言っているしね…………」
「横からごめんなすって、っとね」
「なーに騒いでんだかね………」
「うへっ………めちゃ甘いこれ………」


相川「みんなここぞとばかりにはしゃいじってるね」

鷹月「こうゆうのは盛り上げるにこした事はないからね」

本音「ケーキがいっぱいだー!」

相川「なんで本音はちゃっかり織斑くんの真横に座ってるんだろうね」

鷹月「並ぶと大人と子どもの図に見えるわー遠近感狂いそう」

本音「?」モッキュモッキュ

一夏「……………………」クイッ
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 02:54:33.84 ID:Ok4hVmS10
セシリア「一夏さん、こちらのケーキはいかがですか?」スッ

箒「頂こう」パクッ

セシリア「ああ!箒さん!」

箒「すまない、おいしそうだったからつい………代わりに私のをやる」スッ

セシリア「代わりになりませんが、頂きますわ」パクッ


「はいはーい、ちょっくらお邪魔しますよー新聞部の取材ですからー通してーごめんねーどうもー」


箒「取材?」

セシリア「あら?」

一夏「……………………」


「初めまして、私は新聞部副部長の黛薫子。今日は今最もホットな大物ルーキー、織斑一夏くんに取材にきましたー!あ、これ私の名刺、どうぞどうぞ」


一夏「……………………」

黛「あー別にいらない?OKOK、そんな物より取材させてくれるならそれでいいんだけどね」

黛「ではでは、ビシッとお答えくださいな織斑くん。クラス代表になった感想を素直にどうぞ!」

一夏「……………………」

黛「?」

黛「………!」ピコーン

黛「え、何だって?」ズズイッ

黛「………なになに、あまりの嬉しさに歓喜極まって言葉も出ないって?うんうん、そうだよねぇ、何てったってクラス代表になったんだからね」

箒「無理矢理だな」

セシリア「どう見てもさっき思いついた、って顔しましたものね」

黛「知らないようなら言うけどお二人さん。ジャーナリズムってのはプロパガンダもデマゴーグだろうがあるものなんでねー何でもかんでもが本当の本当って思うのはお門違いってもんさ」

箒「聞こえてましたか」

黛「うん、地獄耳でしょ。デビルイヤー!なーんちって」

黛「そんじゃ、これから対戦する事になる他クラスの代表さん方に何かキッツーイの一言よろしく」

一夏「ゲームの相手なら、倒すだけだ」

黛「お!渋い事言うねーさすがはクラス代表になっちゃうだけはあるね、肝が据わってる据わってる」
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 03:18:32.58 ID:Ok4hVmS10
黛「で、こっからは割と個人的に聞きたい事なんで記事には書かないつもりだけど」

黛「織斑くん、試合を見た限りでは初心者って腕ではないよね?明らかISの操縦に慣れてたし使いこなせてたよね?」

一夏「……………………」

黛「はい頂きましたっ、ノーコメント!御期待通り答えてくれるね」

黛「そんじゃあさ、何でISスーツ着てなかったの?まさかISスーツ洗濯しちゃってて織斑先生のスーツ借りた、ってわけじゃないよね?」

一夏「……………………」

黛「これもノー………コメント、ですかぁ…………」

黛「えーっと………レーザー食らって派手めに吹っ飛んだけど大丈夫だった?どっかやられてない?特にオツムとか」チョイチョイ

セシリア「………」ソーッ

箒「お前………心配が必要な威力の銃で頭を狙ったのか」

セシリア「い、いえ、そこまで強くなかったとは思いますけど………」

黛「最後に一つ………あの爆発は何だったの?」

箒「!」

セシリア「!」バッ

一夏「あれは、不良品が装備されていたーーーーか」

箒「………」ジィー

セシリア「………」ジィー


ゴクッ……


一夏「裏組織の陰謀だ」

箒「………」ドテッ

セシリア「………」カチャーン

本音「………」パタッ

相川「………」ズルッ

鷹月「………」ガクッ

黛「………」ドテーン


ドタドタドタドターン


黛「アハハ………まさかそんな大真面目な顔して冗談かましてくるとは………よっこいしょ、恐れ入るよクラス代表さん」

黛「んーここは使わせてもらうよ。いじくってネタになるし、ここだけだから安心してね」

一夏「……………………」

黛「さて、そこでえらく庶民的なずっこけやったセシリアちゃん。取材の方、よろしくて?」

セシリア「え、ええ………はい、もちろんですとも」

黛「有り余る記事の部分を大英帝国代表候補生のセシリアちゃんのお話で埋めさせてもらうからね、長々とお話くだされな」

箒(三言しか喋ってないからな………ずいぶん有り余っているんだろうな)

セシリア「そう、ですわね…………あの決闘は………私にとって、とても感慨深く、決闘の中で私自身全力を尽くして一夏さんと戦いました」
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 03:24:39.31 ID:Ok4hVmS10
黛「詳しく聞きたいねぇ……」

セシリア「今となってはこう思いますの

セシリア「あの決闘は………始まる前から既に雌雄は決していたのではないのでしょうか、と」

黛「それは何故?」

セシリア「私自身慢心し切っていましたし、それよりも………戦いに臨む在り方が、一夏さんと私ではものが違いましたから」

黛「あーなるほど。セシリアちゃんとは真逆に織斑くんの方はガンッガンッ銃撃ってたね、どこの誰だろうと容赦しないって感じだったし」

セシリア「普段はとても大人しい方なのにあの時は……サムライスピリット、と言うのでしょうか、あの敵を倒そうとする心意気は」

黛「似た様なもんでしょ、しかもやたらと狙って撃ってなかった?下手すれば死んでたかもね?」

セシリア「流石にそこまでではないとは思いますけど……」

セシリア「恐らく、あの時お互いに考えていたのは相手を倒す事だけだったと思います」

黛「へーセシリアちゃんも?」

セシリア「はい。ビットを撃ち落とされ、ライフルもなく残されたのは使い慣れないブレードと心もとないミサイルだけ」

セシリア「そこまで追い詰められて負けたくない、自分は勝ちたい、とあの時私は心底思いましたから」

黛「へぇ、そりゃすごい。だからあんな鬼気迫る勢いで近接戦を挑んでたわけだ」

セシリア「お恥ずかしながら………その通りです」

黛「まったく憎い男だね、織斑くんもさ」

黛「こんな可愛いお嬢様を自分に夢中にさせた挙句の果てには蹴り飛ばすなんてさ」

セシリア「夢中だなんてそんな……」

黛「ま、おかげでミサイルもろに食らってたけどね、ハハハッ!」
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 03:26:55.68 ID:Ok4hVmS10
箒「………」

本音「どうしたの?」

箒「いや、クラス代表決める時の威張りようは何だったんだろうな、と思ってな」

相川「一皮向けた感じだよね、淑女としてのお淑やかさってのが溢れ出てるような感じ」

鷹月「大方織斑くんに撃たれ過ぎて取れるところの角取れちゃって真ん丸になったんじゃないの」

本音「せっしー最近お菓子くれるんだよーすっごくおいしいんだよー」

相川「えっ、もしかして………あれセシリアがくれたやつだったの?!」

本音「そうなのだよー」

鷹月「なに、どゆことよ?」

相川「いやさ、この前食べてるやつが妙にいい匂いするから見てみたら王室御用達みたいな高級品のやつだったのよ」

箒「王室御用達って、私達にとって高嶺の花のような食べ物じゃないか?」

相川「それをただ食いしてたのね」

鷹月「なんと!…………本音、今度セシリアにお菓子もらったら私にも頂戴」

本音「うん、いいよー!」

鷹月「っしゃあ!」

相川「太るぞー」

鷹月「いやいや、王室御用達なんだからもうその辺とか色々計算されてるから大丈夫大丈夫」

箒「まだそれを言ってたのか」

本音「ほーちゃんも欲しい?」

箒「うーん………その時は、みんなで一緒に食べようと思う」

本音「おお、それは名案!」
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2013/12/07(土) 03:37:11.98 ID:Ok4hVmS10
黛「いやぁ、これはいい記事が書けそうだよ。ありがとね」

セシリア「いえいえ」

黛「手化さ、織斑くんの事、誉めすぎじゃない?」 

セシリア「えっ、いや、その………これはですね、私を倒した人としてーーーー」

黛「はい割愛ーざーんねーん」

セシリア「ちょっと!」

黛「まあまあそうカッカしない。これはこれで記事のネタになるからさ」

黛「とりあえずセシリアちゃんはー野獣のような織斑くんに心奪われた!って事で」

セシリア「なっ、なななにを、何を仰りますの!?」

黛「まさに美女と野獣、なーんて行ったりしてね、ニャハハハッ!」

セシリア「そうゆう事でしたか………」

黛「んっんー?なーにがそうゆう事、なのかなー?そこんとこ興味湧いちゃうなー」

黛「まあいいや、とりあえず二人並んでもらえる?一面飾るやつ撮りたいからさ」

セシリア「分かりました」

一夏「……………………」

セシリア「写真は後でいただけます?」ヒソヒソ

黛「あたぼうよ」ヒソヒソ

セシリア「お願いしますわ」ヒソヒソ
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 03:39:08.20 ID:Ok4hVmS10

誤字がひどいので一旦寝ます
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/07(土) 03:56:45.23 ID:4Z3MGcuDO
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 11:09:11.10 ID:Ok4hVmS10
セシリア「で、では………」スッ

一夏「……………………」ギュッ

黛「おおーいいねー絵になるねー」

セシリア「と、ととと、当然、ですわっ!」ギュウゥ

一夏「……………………」

黛「織斑くんが早くしろって目で訴えてくるから撮るよー」

黛「3!2!」

箒「………」コソッ

黛「1!」


ダダダダダッ ババッ


黛「0!」パシャッ

箒「………おお?」

セシリア「一瞬で周りに…………あなた達!」


「まあまあ、そう怒りなさんな」
「こうゆうのはクラス記念なんだから皆で撮っとかないとね」
「そうそう、皆でじゃないと記念じゃないじゃん」


セシリア「………本当に思ってますの?」

箒「いつの間に?」

相川「まぁ………ついでにね」

鷹月「そうそう、ついでついで」

本音「えっへん」


「いけませんねぇ、抜け駆けなんていけませんねぇ」
「まっ、しょうゆーことー」
「黛さーん、後で全員分もらえますかー?」

黛「いいよー今ならまけとくよ、そいじゃあ私はお暇させてもらうよーじゃあねー」スタコラサッサー

箒「騒がしい記者だったな」

一夏「……………………」スッ

セシリア「あ………」

箒「どうした?」

セシリア「いえ、何でもありませんわ」ストッ
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 11:21:09.98 ID:Ok4hVmS10


ワイワイガヤガヤ


一夏「……………………」

箒「………」モグモグモグ

本音「おりむー」トテトテ ポスッ

箒「!」

セシリア「!?」

本音「ねえねえーケーキ食べないのー?」ズイッ

一夏「……………………」

本音「おいしいのにー」モッキュモッキュ


相川「なんというかその………微笑ましいね」

鷹月「微笑ましい?」

相川「織斑くんの膝の上でケーキ食べてるから」

鷹月「お兄さん感覚なんじゃないの?本音にとっては」

相川「そうだよねぇ………当の本人に邪な感情が一切ないのが見習うべきところなのかな」

鷹月「見習う?痛恨事のまちがいじゃない?」

相川「うーん、そうかもねぇ………」チラッ

鷹月「どうだかねぇ………」チラッ


本音「♪♪♪」パッタパッタ

一夏「……………………」


相川「………どうでもいいや」

鷹月「おかわりに行ってくる」
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 11:33:20.02 ID:Ok4hVmS10
箒「………」モグモグモグ

本音「ほーちゃんはい、飲み物」

箒「すまない」

セシリア「あ」
 
箒「ん?」ゴクゴク 

セシリア「………それ、一夏さんが飲んでらしたコップです………」

箒「………そ、そうか………」オロオロ

本音「ごめんね、おりむー飲み物なくなっちゃった」

一夏「……………………」スッ

本音「おおー!」ブラーン

セシリア「一夏さん、本音さんにも悪気がーーーー」

一夏「……………………」ストッ

箒「ひゃうっ!」ビクッ

本音「わーい、ほーちゃんの膝の上ー♪」スリスリ

箒「ちょっ、そこは………や、やめっ………くすぐったい………」

本音「えへへー」モミモミ

箒「んっ………何をっ………」

セシリア「こら、人の胸を勝手に揉むなんていけません」

本音「えーならせっしーのを………」

セシリア「駄目です」ニコッ

本音「はーい」

一夏「何か入れてくる」

本音「コーラ!」モッキュモッキュ

箒「私は茶を頼む」

セシリア「紅茶をお願いしますわ」


相川「本音食べ過ぎじゃない?五個は越えてない?」

鷹月「寝るときの着ぐるみに痩せる機能でも付いてんじゃないの」
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 11:47:51.72 ID:Ok4hVmS10
千冬(………やはり半強制的に人と接触させるのはいささかだが、成果は上がっているようだな…………)

千冬(大きいのは幼馴染である箒との接触か?いや、オルコットとの試合も何か関係がありそうだが………あの言葉もか………?)

千冬(………記憶をなくした状況に近い状況に遭遇出来れば記憶も戻ると思うが………一夏がどんな事にどんなショックを受けたのか分からない)

千冬(………時間は………後どれくらい待ってくれるのだろうか………)

真耶「何してるんですか?織斑さ………織斑先生」

千冬「………寮長の仕事です」

真耶「そんな壁からすごい形相で織斑くん『だけを』見てる人が寮長の仕事しているとは思えませんね」ニコニコ

千冬「何を笑っているんです」

真耶「いやぁ、いいものですねー美しき家族愛ーーーーうわっ!」ガシッ

千冬「………」グググッ

真耶「ま、待って!冗談、冗談ですってば、無言で喉元狙わないで………!!」グググッ

千冬「違いますよ、ちょっと虫がいましたもので」グググッ

真耶「嘘ですよね?!今絶対喉に手を突き刺そうとしましたよね!!ねぇっ!!」グググッ

千冬「やかましい、ささっといかせてやるから大人しくしろ」ググググッ

真耶「それ『逝かせる』の方ですよね?!私死ぬんですかっ………こんな事でっ………嘘ですよね!?」ググググググッ

千冬(にしても、あの調子だと小娘共を侍らしかねん。ありえんとは思うがな………) 

真耶「織斑先生、顔が怖いです!とっても!!!」グググググググググッ
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 11:58:08.46 ID:Ok4hVmS10
一夏「……………………」コトッ

箒「すまない」

セシリア「ありがとうございます」

本音「ありがとー」

一夏「……………………」スウッ

箒「待て」ガシッ

セシリア「お待ちを」ハシッ

二人「逃がさん」しませんわ

一夏「……………………」

箒「パーティーはまだ終わっていない。ましてやお前の為のパーティーの途中で帰るなど言語道断だ」

セシリア「そうですわ、せっかく一夏さんの為に開かれたパーティーなのに最後まで楽しまねば損ですわ」

一夏「……………………」スッ

箒「やったな」

セシリア「ええ♪」

一夏「……………………」


「一発芸いきまーす!!」
「あのネタはもうええねん!!」
「お?喧嘩か?」
「いいぞーやれやれー!」
「いや、せめて腕相撲とかにしといたら?はしたないよ?」
「それだ!」
「キャットファイト………ポロリもあるよっ!!」
「ファイッ!!」
「腕相撲でポロリ………?」
「一体全体どんな腕相撲なんでしょうね」

150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 12:05:49.85 ID:Ok4hVmS10
千冬「………なるほどな」ガッシィ

真耶「ギブッ………ギブッ………決まってます!頭が割れますから!!」バシバシバシッ

千冬「私は、からかわれるのが嫌いだ」

真耶「分かりましたから早くぅぅぅっ!!」ジタバタ

千冬「………」

真耶「ちょっとおぉぉぉ!!?」ジタバタジタバタ

千冬「………」パッ

真耶「痛たぁ………もう、考え事しながらヘッドロックしないでくださいよ………クッ」コキッ

千冬「そんな事もあったな………懐かしい」

真耶「語り口が年寄りっぽいですよー」

千冬「はぁ………まだまだ若いんですが」

真耶「で、どんな事があったんですか?」

千冬「若気の至り、というやつです」

真耶「へー織斑先生にもそんな時代があったんですね」

千冬「もう十年も前の話だな………」
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 12:12:20.07 ID:Ok4hVmS10


34

セシリア「一夏さんはただ敵を狙うだけでなく、もっと動き回って機体性能を生かすべきですわ」

一夏「……………………」

セシリア「いくら機体が防御に長けているとはいえそれにも限界があります」

セシリア「そしてお持ちの武器も、いくらカスタムハンドガンとはいえ戦いにおいて決定的な武装というわけではありません」

セシリア「だからこそ、機動力を生かした持久戦を挑み。ハンドガンもただ撃つだけでなくより確実に、正確に弾丸を相手へ命中させる事が重要ですわ」

セシリア「一夏さんの操縦センス自体はとても良いと思われます。なのでーーーー」

一夏「……………………」

箒「…………」

本音「………zzzZZZ」

相川「うわぁ………」

鷹月「横から聞いてるだけで眠い………」

相川「本音、ショートホームルーム近いから寝ちゃだめだってば」

鷹月「起きろーほら」

本音「んん………やだぁ……」


「箒さん、何してるの?」


箒「セシリアが一夏に手解きしているのを聞いている」


「すごいよね。こうゆうところを見ると本当に代表候補生はすごいんだって改めて思うよね」


箒「こうゆうところじゃないところを見るとどうなんだ?」


「そりゃあ………絵に描いたお嬢様としか言いようが………あとせっしー」


セシリア「せっしーとはどうゆう意味でして?」


「わわっ、聞いてたの?」


セシリア「ちゃーんと聞こえてましたのよ」


「どうもすみません」

152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 12:16:00.13 ID:Ok4hVmS10
箒「私は親しみやすくていいと思うぞ。せっしー」

セシリア「箒さんまで………」

箒「それに結構呼びやすいしな、セシリア」

セシリア「もうどっちでもよろしいですわ」

相川「んでさ、ほーちゃんにせっしーさー近づいてきたよ、クラス対抗戦」

箒「問題ない」

セシリア「異論はありませんわ」

鷹月「当の本人に至っては焦りも何もないけどね」

一夏「……………………」

箒「男は黙って堂々と構えているものだと、私の父さんは言っていた」

セシリア「箒さんのお父様はたくましい方でしたのね」

箒「普段は怖かったが、常に家族の為を思ってくれていたよ」

セシリア「………」

箒「………私の身の上話ではなくてだな、クラス対抗戦だ」

鷹月「全然負ける気がしないね」

相川「自分が出場するみたいな言い方してるけど………まあ、織斑くんが負けるとは思えないけど」

箒「裏組織の陰謀がなければの話だがな」

本音「………zzzZZZ………んん?」

セシリア「くっ………まだそれをフフッ言い、ますの……フフフッ」

相川「アッハッハッ!そうゆうのはもうお腹いっぱいだからね!」

鷹月「ISに関する陰謀論なんて耳にタコができるぐらい聞いてるよ」

相川「秘密裏に作られているIS技術の応用兵器とかね」

鷹月「あーあの出来っこないって真っ向から否定食らってたやつね」

箒「私は何かおかしな事を言ったか?」

セシリア「おかしくはありませんが面白い事ですわね」

箒「そうか、なら別にいいか」

本音「おりむー頑張ってねー」

セシリア「是非とも勝って頂かねば私が譲った意味がありませんわ」

箒「勝てよ、一夏」

一夏「ああ、まかせろ」

本音「まかせた!」

セシリア「一夏さんの相手は災難ですわね……」

相川「どしたの?」

セシリア「いえ、背中が少し……」

鷹月「ああーそういや蹴られてたね、って本音起きたの」

本音「おはようなのだよー」
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 12:30:53.87 ID:Ok4hVmS10


ガラッ ガッ ゴロゴロズッサアァッ


「ニュースだよ!大ニュースも大ニュース」スタッ


箒「そんなに急がなくても………」

セシリア「大ニュースとは何ですの?」


「二組に中国の代表候補生が転校してきたんだってさ!」


箒「この時期にか?」

セシリア「あら、私の存在を今更危ぶんでの事かしら」

鷹月「どの口が言ってんだか………」

相川「しーっ」

鷹月「はいはい」

箒「だが、それほど騒ぐ事でもないだろ。一組に来たならまだしも」

本音「まだしもーしもしもー」


「ま、一応耳に入れといてそんはないんじゃないかな」


箒「それに………一夏の相手なら、倒されるだけだ」

本音「おりむーに賭けてる人多いからねー負けないでねー」

相川「大暴落はごめんだよね」

鷹月「え、何、あんた達賭けてんの?」

本音「違うのだよー私的に賭けてるのだよ」

鷹月「左様ですか」


「そうだよ!織斑くんが勝つとクラスが幸せだよ!」
「織斑くん頑張って!」
「代表候補生だろうが何のその、だもんねっ!」
「というか別に転入ってだけでクラス代表になった訳じゃない」
「そういやそうだね」
「なら相手さんは打鉄なわけやから、ご愁傷様やな」
「専用機持ちはせっしーと織斑くんと四組の人だけだからね、余裕綽々♪」
「これまた分のいい事………こりゃこっちが勝ったも同然だね」

154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 13:01:01.32 ID:Ok4hVmS10



「その情報、遅すぎるよ。それならまだ夕刊の方が早くない?」


一夏「……………………」

箒「?」

セシリア「どちら様でしょうか」

「あたしは中国代表候補生、凰鈴音。あんた達が勝てるって言ってた二組のクラス代表。しかも、専用機持ちで」

鈴「悪いけど、そう安易に勝てると思っちゃあこまるよ」

箒「なるほどな、宣戦布告というわけか、凰鈴音」

鈴「当たり、後少し個人的な用があってね」

鈴「久しぶりね、一夏」

一夏「……………………」

箒「………」

鈴「知り合いも何も……ねえ?一夏」

一夏「……………………」スクッ

鈴「あんた………しばらく見ない間にめちゃくちゃデカくなってんじゃない」

一夏「……………………」カツンカツンカツン

鈴「あたしや弾をすっぽかして何処で何して………た………のよ………」

一夏「……………………」

鈴「な、何よ。な、何か言い………なさいよ、だ、黙ってないでさ………」

一夏「……………………」スウッ カツンカツンカツン


スッ


箒「!………おい、凰鈴音」

鈴音「………何よ」

箒「追い打ちをかけるようで悪いが、後ろを見た方がいいぞ?」

セシリア「後ろ………ですわ」

本音「後ろ後ろー!」

鈴「フン、そんな子供騙しのトリックにこのあたしが引っかかるとでも思ってーーーー」
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 13:08:10.99 ID:Ok4hVmS10


ッパァーンッ


鈴「ッ!!?いったああぁぁぁぁ!!」

箒「だから、そうだと言ったのに」

セシリア「主席簿の音ではありませんわ………」

鈴「うぅっ………なっ、何すんのよ!!」

千冬「お前は相変わらず思慮の足らん奴だな。凰鈴音、お前は子ども以下か?」

鈴「ち、千冬さん………」

千冬「学校では織斑先生だ。そこをどけ、出入りの邪魔だ。そして教室に戻れ、ショートホームルームはとっくに始まっている」

鈴「は、はいぃ!」ササッ

鈴「一夏………後で覚えときなさいよ!」ダッ


タッタッタッタッ


千冬「クラシックな捨て台詞だな」
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 13:19:08.28 ID:Ok4hVmS10
箒「一体何だったんだ?」

相川「凰鈴音さんね、本音サイズだったね」

鷹月「あれが代表候補生ねぇ………しかも二組のクラス代表」

本音「りんりん大丈夫かなー?」

箒「パンダか?」

相川「勇気の鐘がリリンリーン?」

鷹月「それはアンパンマン」

セシリア「お知り合いですか?」

一夏「分からない」

本音「その嘘ほんとー?」

一夏「どうだろうな」

「えーうそー絶対知り合いだって」
「名前呼びに身長話してたし確定でしょ」
「てか織斑先生にめちゃくちゃビビってたよね」
「それはしゃあない」
「だよね」
「にしても、何でまた中国の代表候補生の人とお知り合いで?」
「うーん………ミステリアース」
「日に日に謎が深まっていくね、織斑くん」


本音「はっ!」ピキーン


ッパパパパァーンッ


千冬「お喋りはそこまでだヒヨッコ共。ここからはショートホームルームの時間だ」


女子「「「「「「「「………はーい………」」」」」」」」


本音「ふぃー危なかった………」ホッ

箒「ううぅっ………」

セシリア「今度は頭………」

相川「いててて………」

鷹月「………おのれ本音」
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 13:21:21.01 ID:Ok4hVmS10


35

四限目のIS講義の授業を聞こうともせず、鈴は黙って机に俯せていた。言ってしまえば、代表候補生にまで登りつめた彼女にとって、もはやISのいろはなど嫌と言う程覚えている。だからまともに授業など受けなくても、実際のところ全く問題はなかった。
決してサボっているわけではない。鈴は、先程目の当たりにした存在の悍ましさに静かに震えていた。
鈴は、自分の目の前に立った一夏が自分の知り得る一夏とは全く違う存在であると感じていた。
眼を見た瞬間寒気がした。その真っ暗で、そこにあったものが亡くなってしまったような、冷たく虚しい眼。それに見入られた時、身が竦んだ。
だが本当に怯えているのは、一夏の中にいたはずの自分だったのか、今こうしている自分なのか、彼女には分からなかった。
治まらぬ体の震えを、必死で抑えこもうと両腕を掴んだ。
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 13:28:06.34 ID:Ok4hVmS10


36

鈴「一夏………どこ………?」キョロキョロ

鈴「あーもう!ラーメン伸びちゃうでしょうが!」

箒「一人で何を騒いでるんだ?」

鈴「一夏の隣にいた………あんたこそ何してんのよ」

箒「何と言われてもな………困ったな、茶のおかわりに来たとしか言いようがない」

鈴「あっそ、あたしは人探しに忙しいの」

箒「一夏なら食べ終わったぞ」

鈴「人が探してんのにあいつはぁー!!」

箒「落ち着け、代わりとはいかんが私達とどうだ?」

鈴「別にいいよ、あんたに色々聞きたい事とかあるし」

箒「気が合うな、私もだ」

鈴「何か変な因縁感じるわね、あんたとは」

箒「私もそんな気がするよ」
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 13:46:06.76 ID:Ok4hVmS10
箒「戻ったぞ」ストッ

セシリア「おかえりなさい。あら、そちらの方は今朝の………」

鈴「中国代表候補生、凰鈴音よ。よろしく」ストッ

セシリア「私はイギリス代表候補生、セシリア・オルコット。以後お見知りおきを」

鈴「あんた………日本語上手いわね」

セシリア「代表候補生は伊達ではありませんくてよ?」

鈴「へーイギリスの代表候補生ってあんただったんだ。全然知らなかったけど」

セシリア「私も中国の代表候補生があなただったとは微塵も知りませんでしたわ」

鈴「えっ、怒ってんの?」

セシリア「いえ、怒ってませんわ」

鈴「見た目と性格真逆ね。あんた、結構な負けず嫌いってやつね」

セシリア「そんな事ありませんわ、淑女は潔いものですのよ」

箒「………」ジトー

箒「そのついでだが、私は篠ノ之箒だ」

鈴「篠ノ之………ああーあんただったの」

箒「知ってるのか?」

鈴「一夏が言ってた女武者の篠ノ之博士の妹」

箒「女武者………」

鈴「にしても結構な面子が揃ってんじゃない。なーんか悪巧みでもしてんの?」

箒「悪巧み、か………」チラッ

セシリア「さあ?どうでしょう」

鈴「で、あたしに話って何よ?」

箒「お前と一夏との関係について聞こうと思ってな」

セシリア「ストレートすぎません?」

鈴「関係って………ただのダチ公か、幼馴染としか言いようがないわね」

箒「は?」

セシリア「あら?」

鈴「いや、だからさ、ただのダチ公様だってば」

箒「そこじゃない、その後だ」

鈴「幼馴染んとこ?」

セシリア「幼馴染が………二人?」

鈴「は?」

箒「なるほどなるほど………因縁を感じたわけはこれか」

鈴「ああーそうゆう事ね、はいはい」

セシリア「???」キョトン
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 13:48:22.89 ID:Ok4hVmS10
セシリア「ちょっと私訳が分かりませんわ。このような状況は初めてなものですので」

鈴「あんたはいつ一夏と会ったのよ」

箒「………小学一年生ぐらいだったな………」

鈴「あたしは小学四年生だわ」

箒「丁度入れ替わったようだな」

鈴「あんた転校したの?」

箒「有名人の妹というのは難儀なものでな」

鈴「そうなんだ………」

セシリア「えーっと、こうゆう場合はどちらが幼馴染ですの?」

箒「うーん、そうだな………こうしようか」

箒「お前が幼馴染二号、私が幼馴染一号、という事ならいいだろう。よろしくな二号」

鈴「仮面ライダーじゃないんだからさ……もうちょっと……ねぇ?」

セシリア「?」

鈴「嘘でしょ」

箒「珍しいな」

セシリア「お恥ずかしながら、私もとても難儀していたものでして」

箒「お嬢様も大変なんだな」

セシリア「そちらこそ」

鈴「どうやらあたしのいきさつが一番ショボいみたいね。ま、どうでもいいけど」

鈴「いっただっきまーす」

箒「私達も食べなおすか」

セシリア「ええ、まずはそうしましょう」
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 13:52:34.55 ID:Ok4hVmS10
箒「ごちそうさま」

鈴「ごちそうさまでしたっと」

鈴「でさ、今朝のあいつ………一夏であってる………?」

箒「ああ、残念ながらその通りだ」

鈴「そう………なのかぁ………」

箒「全くの別人みたいだがな」

セシリア(別人?昔はどんな方でしたのでしょう……?ここは黙っているのが利口ですわね)

鈴「あんたはなんか知ってんの?」

箒「いや、ないに等しい………だがな」

箒「亡くしてしまった、と一夏は言っていた。おそらくだが、過去に何か大きな事があった事を意味する、と私は思うのだが」

鈴「………三年前、三年前にあいついきなりいなくなったのよ」

箒「三年前…….…丁度第二回モンド・グロッソ辺りだな」

セシリア「織斑千冬、大会開始直後に突然の失踪、当時はこればかりが新聞の一面を飾ってましたわね」

箒「………やはり千冬さんが鍵を握っているのか………?」

鈴「やるじゃない、セシリア」

セシリア「私はほとんど蚊帳の外の人間ですから、これぐらいはせねばなりませんわ」

鈴「あんた結構いい奴ね」

セシリア「そうですわ、私はパーフェクトですから」

箒「千冬さんか………良くてはぐらかされ、悪くてアイアンクロー、だな」

鈴「………そうよね」

セシリア「二人とも!弱気になってどうしますの!」

鈴「あんた……千冬さんに聞ける?」

箒「無理だ」

セシリア「………無理ですわね」

鈴「やっぱね………あたし千冬さんはちょっと苦手なのよ」
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 13:55:31.85 ID:Ok4hVmS10
鈴「考えられるにしても………記憶喪失ならどうしようもないわね」

箒「時間に委ねるしかないないのか………?」

セシリア「………あまりに思い出せない時間が長過ぎると記憶が戻る可能性が薄れてくる、という話を聞いた事がありますわ」

箒「千冬さんも記憶を戻そうとしただろうが戻らなかったようだしな………」

セシリア「そこまで強いショックをお受けたのでしょう」

箒「何があったんだ………」

セシリア「…………」

鈴「…………」

箒「…………」

鈴「はぁ………分かっていたつもりでも、他人は他人、所詮自分とは違う人間って事かしらね………」

鈴「例え親友だろうが幼馴染だろうが………家族でさえ………事情とか何考えてるのかすらも分からないんだからさ………嫌になっちゃうわね」

箒「本当………分からないな」

セシリア「………そう、ですわね………」

鈴「これが夢だったらいいのにね、全部悪夢でしたーってオチならまだ悪い冗談の範囲内なのにね」

鈴「って、やめやめ!なにおセンチな空気になってんのよ」

箒「すまない」

セシリア「申し訳ありません」

箒「そもそも、お前が発端ではないのか?」

鈴「あたし知ーらない」
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 13:58:03.65 ID:Ok4hVmS10
鈴「一夏もだけどあんたらも相当訳ありの連中みたいね。詮索はしないけど」

箒「お前もな」

鈴「まぁ………そうだけど」

箒「安心しろ、私達も詮索する気はない。嫌がる奴の腹を掻っ捌いて無理矢理中を見ようなどとは思わん」

セシリア「それでも、一夏さんの事は色々詮索してますけど」

箒「それは………そうだが」

セシリア「けれど、後々明らかになっていくでしょうから何の問題もありませんわ」

箒「そうだな。記憶はきっと戻る」

鈴「そうね、なるようにしかならないからね」

箒「なかなか気が合うな」

鈴「意外と相性いいんじゃない?」

箒「そうだな」

鈴「フフッ、よろしくね、箒」

箒「ああ、よろしく頼む、鈴」

セシリア「私をお忘れになってません?」

鈴「よろしく、セシリア」

セシリア「よろしくお願いしますわ、鈴さん」

箒「さて、千冬さんに聞きにいく奴を決めるか」

鈴「えっ?」

セシリア「へ?」

箒「冗談だ」

セシリア「もう!」

鈴「洒落になんないわよ、あの千冬さんなんだから」

箒「もしかして、お前の時はまだ穏やかな方だと言えるかもな」

鈴「え………?」

セシリア「織斑先生って昔はどんな方でしたの?」

箒「触れれば切れる刀そのものだった。初めて会った時は怖くて喋れんかった」

鈴「うわぁ………」

セシリア「抜き身の刀………」

鈴「想像できて怖いわね」
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 14:03:14.67 ID:Ok4hVmS10
千冬「ヘクシッ!……へクシュッ………ヘッ……クチッ!」

クラリッサ『風邪か?』

千冬「いや………すまん、教えてくれ」

クラリッサ『施設内の死体に外的要因がない奴からは、何も検出されず死んだ理由は全くの不明。外的要因のあった奴はあちこちがバラバラ、まるで強い力で引きちぎられたように。または銃創や首をへし折るなどなど、戦闘が行われていた痕跡が多数あり』

クラリッサ『と、今回はこんなところだな』

千冬「一夏の近くに死んでいた奴らは?」

クラリッサ『戦闘で死んだんだろうな、恐らく大蜂起を起こしたんだろ。それ以上は、資料もないしデータもない。メンデロが破壊でもしたんじゃないか?』

千冬「そのようだな」

クラリッサ『しかし、あの時パッと見ただけだか………恐らく人種、国籍はバラバラ、服装からして人体実験でもされていたようだったな。実際、一夏には体には強化手術が施されていたしな………ここまでを踏まえると無差別誘拐の一端にしては話がデカすぎるが………ここから先は時間が必要だな』

千冬「………資料だけでは限界か」

クラリッサ『限界だな。おそらくお偉いさん方もあちこち突かれると色々とヤバイんだろ。ボロの出るもとを綺麗さっぱり消してあるからな………おかげでこっちは全くの進歩なし、だ』

千冬「…………」

クラリッサ『そう怒るな、今も昔も十年前のようによっぽどのことでもない限り、組織なんてものは変わらない。とにかくこっちはてんてこ舞いなんだ。一夏の一件の前に最近色々と手の込んだ事件があるんだよ』

千冬「襲撃事件か?」

クラリッサ『ああ、十年前よりも世界中で確実に増えた。狙いは昔と同じく軍の兵器や施設、IS開発や新技術の研究開発所などのケースが多い。そして、お前がいた二年前辺りからはそれらに関係のない施設の場合もあったりもするがな………ややこしい事に統計では死傷者もそこそこ出ているが個別では出たり出なかったりで、損害の方だけは洒落にならんときたものでな。お前のところも気をつけろよ、ジャンク屋みたいな真似してると狙われるぞ』

千冬「ハッ、あんなガラクタ誰が使うんだ?」

クラリッサ『ガラクタとは言いつつもちゃんと保管してるんだからおっかない。そもそもIS学園自体が一種の要塞みたいなものなのに余計に要塞に近づくんだよ。なんだ?いつか国でも獲る気か?』

千冬「さあな、譲ってもらっただけだ」

クラリッサ『で、話を戻してだな。どの国のプロファイルにも若干の相違点やあやふやにされている箇所がちらほら目立っている………それこそ、まともに捜査した事件が少ないようにな』

千冬「国家間で共有されるようなプロファイルが、か?」

クラリッサ『そうだ。お前は何かデカイ事件に首を突っ込んでいるようだぞ』

クラリッサ『無関心でいるな、さもなくば明日にも歌を取り上げられる、って言葉があるくらいだ。私はおおいに構わんがな………調べ物を自分でやってくれれば尚更いいんだがな』

千冬「…………」

クラリッサ『さらには兵士だけを狙ってくるケースもある。狙われる兵士の共通点は………ラウラと同じ存在。それらを目標に次々と、ピンポイントで狙われ続けた』

クラリッサ『中には失敗したのか………それとも、わざと殺さなかったのか………一対一で出会って殺されなかった兵士もいる。これはもちろん表には公表されていない』

千冬「だろうな。公表すれば世論や人権団体やらが黙ってはいまい」

クラリッサ『だがな、それでもだ。私はそいつを許さない………まるで彼等やラウラの存在が、間違いだったと自分勝手に結論付け、否定する行為をなッ………!!』

千冬「そうだな………生まれはどうであれ、彼等もこの世に生きるものの一つ。彼等だって生きている、そこから先でどう生きるかは彼等次第で、彼等の持つ生きる意思を踏みにじる事は絶対に許されることではない………ラウラの方は大丈夫か?」

クラリッサ『………ああ、返り討ちにすると意気込んでいるよ。さらに、この私を筆頭にしたシュヴァルツア・ハーゼが総力を尽くして守るとして問題はない』

千冬「何とも頼もしい話だ………あのドイツ最強と言われるクラリッサが率いる部隊が守ってくれるのだからな、つくづくラウラはいい部隊に入ったな……」

クラリッサ『そしてUNFにICPO、BND、CIA、KGB、SIS、DCRIとかとかとか、もう何でもござれの暗殺事件だ!やられたところはまだまだあるぞ全部読み上げてやろうかァァァッ?!』

千冬「い、いや…………遠慮する」
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 14:07:38.87 ID:Ok4hVmS10
千冬「暗殺対象はーーーー」


バシュンッ


『お姉様ぁー!』


クラリッサ『何だァ!?何の用だ軍曹?!』

千冬「うおっ……!」


『護衛任務の件ですけどーーーー』


クラリッサ『いつも通り元気に帰って来れるよう頑張れよ!!それだけだ!!』


「分かりましたぁーっ!!」


バシュンッ


クラリッサ『で?何だって?』

千冬「おお……それで、だな……」キ

千冬「暗殺対象の人物は何とか出来なかったのか?」

クラリッサ『無茶を言わんでくれ、上空からレーザーで狙撃されたからには生身のSP達やたかだか防弾車ごときではどうにもな………』

千冬「犯人はISを使っているのか………」

クラリッサ『衛星をかわす完璧なステルス性能、高高度から狙撃が可能な高出力荷電粒子砲………この二つを兼ね備えた恐ろしい機体だ。我々が出撃しようとも難なく暗殺され、影も形も現さぬまま夜の闇に消えていく』

千冬「捕捉できないのは難しいな………」

クラリッサ『ま、私達の護衛目標は襲われなかったんだがな』

千冬「お前な………」

クラリッサ『奇跡的、とでも言うべきか標的にされていない………毎度毎度何もなかった、で任務は終わりだ』

千冬「護衛対象が関係しているんじゃないのか?それに、お前達の実力もある。軍のIS部隊が護衛しているところに現れる程馬鹿ではないだろ?」

クラリッサ『いや、他の国ではIS部隊の護衛中に暗殺された事もある………酷い話では防御用の盾ごと目標を撃ち抜かれたそうだ。それに、そいつの暗殺目標に特に目立った部分や共通点はない。実際所属機関はほとんど一致しない、しいて言うなら………ゴシップ記者が食いっぱぐれないような話だけだ』

千冬「ますます分からんな」

クラリッサ『IS評議会も各国もフル稼働で対策を練っているが………如何せん、みんなで仲良くグループセラピーをする時間が増えたぐらいだ。時間と税金の泥棒だよ、馬鹿者共が………無駄に等しい』

千冬「国の代表が揃いも揃って何をやっている……」

クラリッサ『とりあえず、私達は運が良かったんだろうよ。狙われた奴は不運に見舞われた、それだけだ』
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 14:13:09.01 ID:Ok4hVmS10
クラリッサ『そんな事より聞いてくれ』

千冬「国際レベルの問題をそんな事、の一言で片付けるな。かなりの事態だぞ」

クラリッサ『いいから聞けよ、ラウラと隊員達との微妙な隙間が埋められないんだよ………』

千冬「分からん事もない。あいつは常に誰かと話す時、壁を一枚隔てているようだったからな」

クラリッサ『確実に近くにはきていはいるんだが………まだ遠いんだ。そういえば………一夏と話す時はそうでもなかったように見えッ………ッッッ!!』

クラリッサ『まさかッ!?ラウラに春が来ーーーー』

千冬「それはない。安心しろ」

クラリッサ『どうしてだ?あんな事をしたのにか?』

千冬「あいつは、決してそんな眼で一夏を見てはいなかった」

クラリッサ『じゃあ一体何が………?』

千冬「さあな………私は帰る前ぐらいかに話をしてそれっきりだ」

クラリッサ『話?どんなだ』

千冬「ただのくだらん話だ。何故あなたはそんなにも強いのですか?と聞かれたから答えただけだ」

クラリッサ『………何て答えたんだ?』

千冬「お前には、私が強く見えるのか?とそこから………色々とな」

クラリッサ『そうか………すまんな、そろそろ仕事に戻るよ』

千冬「ああ、そうか」

クラリッサ『最後に一つ、こんな歌がある』

クラリッサ『この燃え盛る炎に私は立ち向かう。そうしなれけば、この身は炎に灼かれて朽ち果て、私の全ては失われてしまう』

クラリッサ『私は、それへと引っ立てられる。私はそれを追い越した先に待つものを知っている。それは運命が私に死すべくなのか、それとも生きるべくなのかを糾弾するように』

千冬「……………ハッ………ハハハッ…………ハハハハハハッ!アッハッハッハッハッ!」

クラリッサ『何だ、何がおかしい』

千冬「はあ………なんて歌詞だ、それは一体どこのどいつ作った歌なんだ?」

クラリッサ『ハン、知らんな、どっかの能天気ちゃんが気分で作ったものだろうな』

千冬「ハッハッ………まったくお笑いだな」

クラリッサ『おいおい、こっちは真面目に言ってたんだぞ?』

千冬「なら、もう少し口が上手くなれよ」

クラリッサ『私の言いたい事はみーんな歌詞になってるんだ』

クラリッサ『ま、いいさ………じゃあな』


ツーツーツー


千冬「………」

千冬「炎、か………」

千冬「まさにその通りだ」
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 14:17:08.40 ID:Ok4hVmS10
クラリッサ「まっったく………揃いに揃って世話のかかる馬鹿師弟だこと………この借りは必ず返してもらうからな」


『クラリッサ大尉、今すぐ作戦室へいらしてください』


クラリッサ「一息つかせろブァァァカ者ガァァァァッッ!!!」

クラリッサ「はぁ…………もう…………何で私がこんな目にばっかり合うんだ…………日本行きたいなぁ…………銘菓ピヨコ食べたい…………」
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 14:28:05.40 ID:Ok4hVmS10

急用が出来ました。すいません、また投稿停止します。読んでくれている方申し訳ありません。
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/07(土) 14:33:09.96 ID:4Z3MGcuDO
一旦乙
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2013/12/07(土) 20:38:04.18 ID:+s2oAKei0
長々と投下乙
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/07(土) 22:18:25.01 ID:2V9keppW0
今更だけど『そうゆう』じゃなくて『そういう』じゃね?
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 22:29:25.04 ID:+Iffax4Y0


37

箒「………」カリカリカリカリ

鷹月「………」カリカリ ピタッ カリカリカリカリ

相川「………」カリカリッ……カリカリカリカリ

本音「とーまらないスピードでー♪想いが溢れーていく♪」

セシリア「………」ピッピピッ

一夏「……………………」

本音「負けたくーはないー誰よりも輝いていたい♪」

鷹月「悠長に歌ってるけど………えっ、もう終わってる!?」

本音「とっくに終わりなのだよー」

箒「………」カリカリカリカリ

本音「せっしー何してるの?」

セシリア「オルコット社からの報告を見てましたの」

本音「見せて見せてー!」

セシリア「どうぞ………分かります?」

本音「はい、せっしー」

セシリア「え………あ、はい、どうも」

箒「一夏、終わったのか?」

一夏「ああ、もう終わった」

相川「ここってなんだったっけ?」

鷹月「んんー?えーっと、現在宇宙開発は滞ってる、だよ」

相川「ありがと」カリカリカリカリ

箒「………」カリ…カリ…カリ……

本音「うむむー灰吹きから蛇が出る、っていうのはこの事なのかな………」

相川「急にどうしたの?」

本音「あのねあのねー束博士はこうなって欲しかったのかなーって思うのだよー」

箒「………」ピクッ

一夏「………」
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 23:02:42.37 ID:+Iffax4Y0
鷹月「初めっから思ってないでしょ。そもそも思ってたら兵器としての運用拒まないし、発表当初博士は兵器利用の話は一切してなかったじゃん。それどころか、他は医療系とかとかで純粋に科学者だったじゃん?」

本音「そうだよねーけどさーいつの間にか宇宙開発は頓挫しちゃったしさ………」

鷹月「おまけに兵器として発展してドンパチの道具として使われるわ、軍事情勢引っ掻き回された挙げ句、いつの間にかもっぱら競技用だしねぇ………地も涙もありゃしないね」

セシリア「………新しい技術をすぐ軍事利用したがるのは人類の悪い癖、ですわ」

鷹月「ま、悲しいけど私達はその状況に甘んずるしかないのが現実だけどね」

本音「確かにそうだけさー人の意思を踏みにじるのはどうかと思うんだよー………」

鷹月「私は許せないね」

セシリア「蛆虫以下ですわ」

本音「私も未熟者だけどエンジニアだからさ………束博士の発明はすごいと思ったから、せっかく出来たものを悪用されるのは嫌だから………束博士はどうなんだろう、って思って………」

箒「………」ポンッ

本音「わわっ………ほーちゃん?」

箒「………」ナデナデ

本音「ほーちゃん………」

箒「………ありがとう、本音」ナデナデ

本音「うん………」ギュッ

セシリア「本音さんは優しい方ですわね」ナデナデ


鷹月「はぁーあぁ………はぁ………」

相川「なにその溜め息」

鷹月「いやさぁ………本音はあんなに真剣に考えてんのにさぁ………はぁ………それを私はさぁ………無神経な事しか言えない自分に自己嫌悪中なわけよ」

相川「へー自覚あったんだ」

鷹月「私だって、好きで性悪女になってたんじゃないっての」

相川「鷹月の彼氏は苦労するね」

鷹月「言っとけ、それで赤点取れ」カリカリカリカリ


本音「ほーちゃんはさ………これでいいと思う………?」

箒「よくない。私の姉さんの事だから」ナデナデ

セシリア「箒さん………?」

箒「どうした?」

セシリア「い、いえ………何でもありません………」

箒「?」ナデナデ

セシリア(………姉妹の仲というものはそのようなものなのでしょうか?少し………よそよそしいように思えますが………)

本音「えへへー」スリスリスリスリ

一夏「篠ノ之、束………俺は………知って、いる………のか………」

箒「!」

セシリア「束博士に何か覚えがありますの?」

一夏「………分からない」

箒「………」
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 23:12:11.56 ID:+Iffax4Y0
セシリア「………今は思い出せなくとも、必ずいつか思い出せますわ。どうでしょう、少しお茶にしませんか?」ゴトッ

本音「わーい♪」

鷹月「待ってました」

箒「おお………自社製品なのか?」

セシリア「ええ、オルコット社は何でもやってますのよ」

箒「すごいな………」

セシリア「味にもこだわっておりますので存分にご堪能あれ」

箒「いただきます」

本音「いっただっきまーす!」

相川&鷹月「「いただきまーす」」


パクッ


箒「うん………おいしい」

本音「せっしーのくれるお菓子はおいしいのだよー♪」

鷹月「こんなに美味いの初めて食べたよ」

相川「家に持って帰りたい………」

箒「………ん?」

一夏「……………………」スッ ヒョイ

セシリア「どうですか?」

一夏「よく出来ているな」

セシリア「フフフッ………そうでしょう」

箒「鈴、お前もどうだ?そこにいるんだろ?」

セシリア「え?」

鈴「………」ヒョコ

鷹月「あれま、前世は猫かネズミだったのかねぇ………」

鈴「………」トコトコ ポスッ

鈴「お言葉に甘えて………」モグモグ

鈴「あ………おいしい」

セシリア「まだまだありますので遠慮なさらなくても結構ですわ」

鷹月「ッシャアッ!」

本音「♪♪♪」モッキュモッキュ
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 23:24:30.54 ID:+Iffax4Y0
相川「この前あったけど一応始めまして、私は相川清香、清香でいいよ」

鈴「そうね、あたしは凰鈴音、鈴って呼んで」

鷹月「ついでに隣の私は鷹月静寐って言うの。よろしくね、鈴ちゃん」

本音「私は布仏本音、本音でいいよーりんりんー」

鈴「勇気が出るけどやめてくんないかな………それ」

本音「じゃあファンファンだねー」

鈴「はぁ………頼むから鈴じゃ駄目?」

本音「了解なのだよーよろしくねーりーちゃん」

鈴「うーん、りーちゃんねぇ………まいっか、よろしくね、本音」

セシリア「りーちゃんとほーちゃん………幼馴染同士お揃いのアダ名ですわね」

箒「そうだな」

セシリア「箒さん………かなり食べてません?」

箒「………おいしいから」

本音「りーちゃんりーちゃん♪」スリスリスリ

鈴「ちょっ、ちょっと………くすぐったいってば」

本音「えへへー友達が増えたー♪」

鷹月「うん、普通はあんな感じなんだよね」

相川「そうだよね………本音ったらすぐ織斑くん引っ付くからね」

鷹月「私達でも並んだらデカいのに本音が並ぶと余計にね」

相川「踏みつぶされちゃうんじゃないかって、見ててちょっとヒヤッとしちゃうよね」

鷹月「それ分かるわ。ま、30cm差にあの体格もあったらそう思えても不思議じゃないか」
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/07(土) 23:50:52.10 ID:+Iffax4Y0
鈴「ねえ、一夏………」

一夏「……………………」

鈴「三年前に急にいなくなってさ………その間にあたしや弾も心配したのに………みんな忘れちゃったの?」

鈴「あれだけ馬鹿みたいに騒いだりしたりしてさ、今思えば何してんの、って思えるぐらいだったのに?」

一夏「……………………」

鈴「三年の間にあんたに一体何があったの?」

一夏「……………………」

鈴「そんなもんだったの?あたし達の仲ってのはさ」

鈴「そんなもんだった、で説明がつく程度のものだったわけ?」

一夏「……………………」

セシリア「鈴さーーーー」

箒「待て、私達が口を挟める話ではない」

セシリア「ですけど………一夏さんは記憶をなくしていらっしゃるのに…………これではあまりに一方的過ぎますわ」

箒「そうだとしても、これは………鈴と一夏の問題だ」

鷹月「そうらしいね、のいとこうか」

相川「合点承知」

本音「承知の助ー」


鈴「何とか言ってよ………そんな………そんな顔してないでさ………」

鈴「何でそんな寂しそうな顔してんの?一夏………どっかに大切な何かを忘れてきちゃったの?何にも………分からなくなっちゃったの?」

一夏「……………………」

鈴「あの約束は?あんたさ、言ったじゃない………あたしの料理の腕がもっと上達したらさ…………覚えてないの?」

一夏「黙ってないで………答えなさいよ、一夏!!」

一夏「………お前も、俺を………知っているのか………」


ダンッッ


鈴「もういい…………帰る」クルッ


スタスタスタ


鈴「ああーはいはい、そうよね、分かりましたよ。所詮あたし達はその程度でしたって………ことッ…………ッ!」ダッ


タッタッタッ


セシリア「すずさん………」

箒「約束………」

相川「忘れられるのって………辛いね」

鷹月「そうかもね、忘れられる方も辛いけど、思い出せない方も思い出せない方で辛いんじゃない?実際私は体験した事ないから分かんないけど………とにかく、気持ちの整理がつくまでそっとしといてあげるのが正解だよ」

本音「鈴ちゃん………泣きそうな顔してた………」
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/08(日) 00:05:43.49 ID:uj9ooahQ0


タッタッタッタッ


鈴「何よ………一夏の、馬鹿ッ………これじゃあたしが………あたしがッ………!」グスッ


ドンッ ガシッ


千冬「鈴か、いきなり飛び出してくると危険だ。次からは気をつけろ」

鈴「千冬さん………」

千冬「ど、どうした、何故泣いている?」

鈴「な、泣いてなんかいません。ただ………」グシグシ

千冬「ただ?」

鈴「ただ………一夏が………」

千冬「一夏が………どうした………」

鈴「何でもありませんッ………ッ!」ダッ


タッタッタッタッタッ


千冬「鈴………」

真耶「おーりむーら先生、また織斑くんを見てるんですか?」

千冬「………すまない」

真耶「………どしたんですか?」

千冬「いえ、何でもありません。それで、何か御用ですか?」

真耶「いい加減IS委員会にヴィンセントの事を何と言って報告します?早くしないと、また催促の礼状が飛んできますよ」

千冬「白式で報告しましょうか」

真耶「了解です」

千冬「次から次へと………無能の集まりが………」

真耶「………織斑さんって、昔から上層部の人とか嫌いですよね、特に軍の人とか」

千冬「私は、自分の成すべきを成そうともしない奴は誰だろうと………嫌いだ」

真耶「織斑さん、怖い顔してますよ」

千冬「………すまない、少し疲れているようだ」

真耶「なら、この後一杯どうです?」

千冬「ええ………そうですね、行きましょうか、山田先生」

真耶「その前に………さっさと報告済ませちゃいましょうよ、織斑先生」

千冬「はぁ………そうするとしましょう」
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/08(日) 00:20:42.58 ID:uj9ooahQ0


38

セシリア「ここをこうして………これでどうでしょう?」ピピッ

箒「よし、やってみる」


チュドッ チュドチュドチュドチュドンッ


『命中1』ピー


箒「………」

セシリア「こうまでして………まだ外しますの………」

箒「やはり私は射撃には向いてないか………」

セシリア「そもそも、何故急にスターライトを貸してくれ、なんて言い出しましたの?」

箒「剣術だけでなく射撃の方も、と思ったからだ」

セシリア「でもこれでは………一夏さん、何か良い案はありますか?」

一夏「…………」スッ

箒「こんな銃、持っていたのか?」

セシリア「初期装備の銃のようですけど………あまり特徴はないようですね」

一夏「セーフティーとロックは外した。使え」

箒「分かった。少し………持ちにくいな」カチャカチャ

セシリア「にしても、IS用にしては少し小さすぎではありません………?」

箒「そうだな………こうか?」

一夏「それでいい」


バンッババババンッ


『命中3』ピー


箒「どうだ!」

セシリア「んー………まぁ、さっきよりは」

箒「じゃあ、次はお前の番だ」

セシリア「ええ、一夏さんと箒さんの二人でお願いしますわ」

箒「どうするんだ?」

セシリア「近接武器で私にかかって来てください。私は射撃のみで応戦しますので」

箒「なるほどな………行こう、一夏」

一夏「ああ」
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/08(日) 00:26:38.30 ID:uj9ooahQ0


39

箒「やはりISを解除すると少しくるな………」

一夏「……………………」

箒「?」

一夏「……………………」スウッ

箒(ロッカーに何かあるのか………?)

一夏「……………………」カツンカツンカツン

箒「外で待っていてくれ、私ももうすぐだ」

一夏「……………………」


バシュンッ


カツカツカツカツ


箒「ここ………だな」

箒(ここだけわずかにドアが開いているな、今私達意外に使用していた生徒はいない)

箒(つまり、ここに何かある)


ガチャ

180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/08(日) 00:32:02.61 ID:uj9ooahQ0
鈴「………」チョコーン

箒「………」

鈴「………何よ、なんか珍しいものでもあったの?」

箒「うむ、分からんでもないぞ。狭いところというのは意外と落ち着くものだからな」

鈴「はぁ………よっと」ピョンッ

鈴「もう少し気の利いた冗談言ってよ」

鈴「別にいいけど、誰かに何かを強要する趣味なんてないし」

箒「で?何故お前はロッカーに?」

鈴「………」

箒「大方予想はつくが、詮索はしない」

箒「そろそろ夕食の時間だ。時間までには食べておけよ」カツカツカツカツ

箒「じゃあな」


バシュンッ

181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/08(日) 00:34:06.37 ID:uj9ooahQ0
鈴は、近くにあったベンチに腰掛け、ため息をついた。

「………あんたは何で………そういられるのよ」

手に持ったスポーツドリンクを放り投げ、そのまま寝転んだ。
本来ならば、疲れて帰ってくるであろう一夏にスポーツドリンクを渡して、適当に雑談でもしようかと思っていた。だが、帰ってくるのを待つ内に思い出したかのように、一夏に会うのが怖くなってきた。だから、とっさにロッカーの中に隠れて、箒に発見された。
決して自分はそんな事をしにきたのではない。けれど、そうしてしまった。
あの女、箒の心遣いが少しだけの救いだった。自分とは別の決断を下した、もう一人の幼馴染。

「情けない……結局こうじゃない………」

天井を見上げ、片腕で両目を覆った。
その声は、震えていた。
記憶喪失。その一言で、一夏の変わり様を済ませられない。まるで、自分の全く知らない何かになってしまったかのような理由を、それで済ませられそうになかった。そんな理由では納得がいかない。
鈴は、しばらく起き上がろうという気になれなかった。
目の前に用意された現実を直視するには、今しばらくの時間が必要だった。
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/08(日) 00:38:01.69 ID:uj9ooahQ0


40

試合当日の朝。その日は早くから、強い横殴りの雨でもなく、降っているのか分からないような小雨でもなく、しとしと雨が降り続いていた。その雨音の静けさに、もうひと眠りできそうだった。
鈴は、静かに息を吐き出しながら構えをとる。そこから素早く、突くように右、左と拳を二発、三発と突き出した。そして、連続で蹴りを繰り出し、掌打、回し蹴りと続けた。着地して、再びゆっくりと息を吐き出し構えて、動きの流れを確かめる。そしてもう一度自分の思うがままをそのままに、水が流れに形を変えていくように自由自在に流れるような連撃を繰り出す。そして、放った蹴りを止め、そこからゆっくりと水平に動かし、その動きがピタリと止まった。
自分の一挙一動に、前にない鈍さを感じた。自分が身体の動きについていけていない。それはおそらく自分の中に生じている迷いが動きを鈍らせている、と鈴は分かっていた。
結局あれから一夏とは、全く話せていない。箒やセシリアに手伝ってもらい、何度か話に行こうかと試みたが全てダメだった。いつもあと少し、というところで失敗してしまう。彼女自身、それは今回に限った話ではなかった。
鈴は、自分のベットに寝転がりながら、ひどい虚脱感を感じた。どうにかしようにもやるせない。起き上がろうとする気すら湧かなかった。

「ブルースというのは、どうにもならない困りごとのことを言うんだ」

どこかのブルースマンが、ブルースの定義を聞かれてこう言ったらしい。そしてそれは、今自分の中でとびっきりのブルーを組み込まれて演奏されているのだろう。例え何年何十年たってもブルースと言うものは、いつも何処かの誰かが奏でていて、いつでも途切れることがなく、いつの間にか自分が陥ってしまっている。人間にとってもはや当たり前の、感性の習慣病ようなものなのだろう。特効薬でもあれば、誰もがそのしがらみから解放されるのだろうが、そうもいかない。それをちょっと治すのにも大変な労力を必要とする難病中の難病。

「ブルースだからブルーって……笑えないっての」

鈴は、ため息を吐いた。こんなのは自分らしくない。ベットから飛び起きて、外を眺める。
外を見ればうんざりするほどの雨、曇った灰色の空、眩しく差し込む日の光などない。
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/08(日) 00:39:28.78 ID:uj9ooahQ0
いつまでもこうしてはいられない。こんな情けない姿をしていては、笑われてしまう。五年前に出会った少年に、自分の思い人、織斑一夏に。


彼は、小学校の時から明るく元気に振る舞い、誰にでも優しかった。自分をいじめてくる奴らを自分の代わりに殴り倒して怒られたり、下手な料理を作るのを手伝ってくれたり、風邪の看病だってしてくれた。そして、悪友の弾と三人で中学に入ってからは、剣道部に入部しながらも生活費の為にアルバイトをして、勉強もぬかりなくしていた。貴重な休みの日も、自分のわがままに付き合ってくれて、たまにしかつるめない弾と自分との三人組で、一緒に遊んでくれた。
彼は、そんな生活をしていては倒れてしまう、という自分たちの心配をよそに自分は千冬姉も守れるぐらい自分は強くなるんだ、と言って全く聞く耳を持たなかった。あまりに呆れるほど愚直で、決して奢らず、勇気を持って強くあり続けようとする彼に、いつしか自分は惚れていた。そして、三年前のある日に告白しようと決めて一夏を呼び出したが、土壇場で言い損ねてしまった。それを悔やんで腹をくくり次の日を迎えたが、一夏は何処にもいなかった。そこから、いくら時間が経とうと、いくら待とうと一向に彼は姿を現さなかった。
そこからは後悔ばかりの日々が続いた。なぜ、あの時自分は言えなかったのだろう、鈴は彼のような勇気が自分にも欲しかった。そして、一年の後に両親が離婚した。引き取られた母に聞いたが、理由を聞いてもかたくなに答えてはくれなかった。今まで喧嘩など全くしていなかった両親が、三人で仲良く食卓を囲っていたのに、突然疎遠になってしまうなど思ってもみなかった。父親はその日から行方知れず、どこで何をしているのかも分からなかった。
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/08(日) 00:40:40.71 ID:uj9ooahQ0
母方の実家に帰って引っ越しのごたごたが落ち着いた頃に鈴は、無性に一夏に会いたくなった。それでも、その時の情けない自分のままでは彼にあわせる顔がなかった。彼女は、次会えた時の為に強くなることを決心し、最も難しいとされるIS代表候補生を目指した。不安定な中国情勢の中で、そこへの道のりがどんなに辛くても、時に何もかも捨てて逃げだしたくなっても、彼女は決して逃げなかった。そんなことをすれば、自分は二度と後悔に囚われて立ち上がれなくなる、死ぬまで情けない自分でいなければならなくなる。それだけは、例え死んでも嫌だった。
そうだったから、その気持ちがあったからこそ、彼女は中国の代表候補生として、IS学園で思い人の彼と再会を果たした。


まるで今までの自分の行いを、全て否定されたような気分だった。本当に、どうしようもなかった。前まで一夏にあれだけ会いたかったのに、今はそうでもない。むしろ、出来ることなら会いたくないとさえ思っていた。
鈴は自分のベッドに再び倒れこみ、備え付けのテレビをつけた。

『アッミーゴ!日本全国三億人のみんな、元気かい?』

『本日も「BIG SHOT」の時間よ!』

『今日も朝からホットなニュースをじゃんっじゃんお届けしちゃうよー!』

テレビでは日本の長寿番組であり、もはや朝の定番番組、BIG SHOTが始まっていた。元気良く画面に現れたのは朝の顔である二人の司会者、カウボーイとカウガールに扮したパンチとジュディだ。
鈴は、二年ぶりかに見た番組にふと懐かしさが湧いてきた。

『まず、本日のトップニュースはっと……』

画面外から、パンチへ手配所のようなカンペが渡された。これはいつもの光景だ。

『あららー、またいいニュースと悪いニュースが同時に来ちゃったよ』

『また悪いニュースからお願いするわ』

『悪いニュースの方は、世界中の基地とIS研究所襲撃事件に盗難事件、名のある富豪家や実業家のお悔やみのニュースだ』

パンチは頭を抱えた。

『ここのところそればーっかりね』

『なになに………前者の方は怪我人が出たり出なかったり、被害の規模が大きかったり小さかったりで……』

『どうゆうことなの?』

『どうやら目的が分からない、ってことらしい』

『困った犯人さんね』

二人とも、お手上げのジェスチャーをとった。

『後者の方は新社長などを決めるのが急がしいとの事らしい』

『どうか、安らかにお眠りください』

『ご冥福をお祈りします』
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/08(日) 00:41:50.92 ID:uj9ooahQ0

『さて、お次はいいニュースだね』

『今回はどういいニュースなの?』

『あの篠ノ之博士が残した数々の技術がついに実用化に至り……義体や様々な高性能機器にナノマシン、人工筋肉やロボット工学、はては生体再生いたるまでの様々なものが出来ただってさ。いいニュースだろ?ジュディ』

『ワァオ!それはとってもいいニュースね!』

鈴はふと、箒がこのニュースを聞いたらどう思うかが気になった。だからと言って聞こうとはしない。

『いやーこれで時代がようやく彼女に追いついたって訳だ』

パンチは、一人で納得して頷く。

『もうノーベル賞も総舐めの踏み倒しね!』

『ところがどっこい、こうゆう最新技術ってのは人の役に立つけど案外悪用しやすい一面もあるからねー扱いには十分気をつけてもらわないと』

『そんな罰当たりな真似する人いるのかしら?』

『いないで欲しいかな、十年かけてやっと出来たものをそんな風に使われちゃあーーーー』

『次はお天気よーマツモトさーん?』

『ちょっ、ちょっとジュディ……俺の話がまだ途ーーーー』

『はい、おはようございます。今日の天気はおおむね雨です。関西から北上してきた雨雲が関東地方にかかり、一日中雨を降らせるでしょう』

パンチを無視して二人から、画面が天気担当のマツモトへと変わった。よくよく見ると、二年もBIG SHOTを見ていない間に結構太っていた。このマツモトの天気のあとも、様々なゲストを呼んでグダグダと、長々と話すのがこの番組だ。
鈴は、テレビを消した。なぜなら、

「言わなくても分かってんのよ」

鈴は、だんだんと自分がジレンマに囚われているのが馬鹿らしく思えてきた。変わってしまったものは、変わってしまったのだ、止められなかったことは仕方が無いこと。それは自分だって例外ではない、自分だって変わってしまったのだから。だからこそ、自分はそれを一夏に見せつけてやらねばならない。

「やってやるわよ………あの面ブン殴ってやる!」

その声に、隣のベットで寝ているティナが飛び起きた。
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/08(日) 00:44:44.74 ID:uj9ooahQ0




TO BE CONTINUED……
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/08(日) 01:08:36.65 ID:uj9ooahQ0
箒「交わる事のなかったはずの道、それらが一つに交わった時、それは始まった」

千冬「おいおい何を言っているんだ?」

鈴「立ちはだかるのは強大な敵!敵!敵!!まだ見ぬ世界の闇達が、あたし達に襲いかかる!!」

クラリッサ「どこの熱血ロボアニメだ?ジャンルは学園SFだろ?」

セシリア「けれど私達は諦めません!この、胸の勇気が消えぬ限り!!」

千冬「ああ、嘘予告だな」

クラリッサ「ああ、嘘だな。ウソウソ」

セシリア「私達の思いが!明日を開く!!」

鈴「あたし達は戦う!命ある限り!!」

箒「私達は手に入れる………夢を!明日を!希望を!この………姉さんの作ったISで!!」

千冬「元気な事だ………やはり予告は私がすべきだな」

クラリッサ「次回」


Next Seesion
It is nonentity in this world


束「これが勝利の鍵だあぁぁぁぁっ!!」

188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/08(日) 01:14:15.05 ID:uj9ooahQ0
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/08(日) 01:28:58.51 ID:uj9ooahQ0
やっと三話です。最後の予告は何故がミス………ちょくちょく変換ミスとかがありますね。間が空いて投稿してしまいましたし………少し話を詰め込み過ぎた気がしますがどうでしょうか、話が無駄に大きくなっていってるような気がします。それと、今回は鈴メインの話でした。
次は戦闘パートなのでまた地の文ばっかりに少々の捏造設定ありの話です。かなり読みにくいとは思います。
更新速度をあげれるよう頑張ります。
読んでくださる方々、ありがとうごさいます。
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/12/08(日) 01:53:46.17 ID:V1hvId1Ao
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/08(日) 02:20:36.06 ID:vLrhryATo
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/08(日) 08:35:19.34 ID:v1UWkqwVo
突っ込むべきか否か悩んだけど一応

>>176

一夏「黙ってないで………答えなさいよ、一夏!!」

これで吹き出した
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/08(日) 15:40:57.25 ID:8DzJa6Dno
>>192
そっちよりもセシリアが鈴のことを「すずさん」って呼んでる所で笑ってしまった
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/12/13(金) 15:44:16.76 ID:p0c9rDXH0
期待してるよー

完結

祈るがいい!
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2013/12/22(日) 03:19:21.75 ID:+iaKOhjd0
もう続きは無いのかな?
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/22(日) 13:11:18.98 ID:c7VC428ho
つっこみ入ってモチベーション下がったのかな
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/30(月) 01:59:01.11 ID:nEPMnpVq0
まってるよー
198 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/27(月) 04:44:25.39 ID:LdGIsS7Zo
まだかな・・・
199 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/03(月) 01:23:31.69 ID:2/C/KjUpo
まだか
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