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佐久間まゆ「群青日和」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/10/20(日) 17:41:51.07 ID:Us2M/ReZo
 このSSは以前たてた同名のスレッドと同じ内容を加筆修正したものです。

 また、「佐久間まゆ『星屑サンセット』」の続編にあたります。

 読んでいない方はPとままゆがしっとりといちゃついてるということだけわかってくれればOKです。

 では、投下させていただきます。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1382258510
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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/

トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713798788/

【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713788018/

ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713736565/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/10/20(日) 17:45:03.45 ID:Us2M/ReZo
 事務所の窓から私は外を見つめる。

 ざあざあと盆をひっくり返したように雨が降り続ける。

 あの人は今日もきっとアイドル候補探しや営業のために駆け回っているのだろう。

 ちくりと胸が痛む。

 その情熱を普段の私に一片でも分けてくれたら良いのに、と。

 互いに気持ちを伝えたとはいえ私は彼の担当アイドルで、彼は私のプロデューサー。

 スキャンダルを起こせばたちまち私も彼も芸能界の闇に葬られてしまう。

 だからこそ私は行動を起こせない。
 
 どこに目や耳が隠れているのかわからないのだから。

3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/10/20(日) 17:47:21.02 ID:Us2M/ReZo
 凛ちゃんも幸子ちゃんも今日はお休み。

 事務所にいるのはちひろさんと私だけ。

 私は手近なソファに座ってテレビを見つめる。

 アイドル総選挙の結果が、大々的に放送されていた。

 中間発表では5位だったのに、最終的には惜しくも6位、CDの発売圏外になってしまった私は、穏やかに笑みを浮かべることしかできない。

 悔しいのは山々だが、これで終わりではない。

 きっと次は見返して見せる。

 そんな意気込みを一人誓っている最中にちひろさんが私に声をかけた。

「まゆちゃん、駅までプロデューサーさんを迎えに行ってくれないかしら? あの人ったら傘を忘れたみたいなの」

「わかりました。では、行ってきます」
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/10/20(日) 17:51:04.99 ID:Us2M/ReZo
 以前とは違う晴れやかな笑みで、私はちひろさんに言葉を投げる。

 ちひろさんも笑みを浮かべながら、私を送り出してくれる。

 私は2つの傘を持って、私は事務所から雨の降る町に足を踏み出した。

 雨は激しく、傘の隙間から雨粒が吹き込む。頭に振りかかった雫が、私の体温を奪う。

 冷たい、冷たすぎる雨。

 まるで誰かの悲しみが降り注いでいるよう。

 そんなことを考えて、たまらず私は笑みを浮かべる。

 そんなこと、あるわけない。

 「高い無料の論理」と同じくらい意味のわからない考えに、たまらず私は自嘲気味に笑みを浮かべた。

5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/10/20(日) 17:55:35.67 ID:Us2M/ReZo
 駅の屋根の下には彼がいた。

 どこか落ち着かないそわそわとした表情の彼が。

 彼が私のプロデューサー。

 彼が私の、運命の人。

 彼も私に気付いたのか、ぱぁっと明るい笑みを浮かべるとまるで子供のようにぶんぶんと大きく腕を振る。

 私も穏やかに笑みを浮かべ大股に彼の元へと歩く。

 距離は縮む。

「お待たせしました、プロデューサーさん」

「ごめんな、アイドルにこんなことさせるべきじゃないとは思ったんだけど」

 その言葉に、私は首を横に振った。

6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/10/20(日) 17:59:58.70 ID:Us2M/ReZo

「最近プロデューサーさんが私をかまってくれないから、その罰です」

 いたずらっぽく私が言うと、彼は驚いたように目を見開いて、そして笑みを浮かべた。

「最近忙しくてさ。近々休みが取れると思うから、その時はまた二人でどこかに行こう」

「ふふ、ありがとうございます」

 私は演技をしている。
 
 恋人の感情を封じ込めてただのアイドルとしての演技をしている。

 それは二人の秘密。
 
 二人だけの秘密。

 どちらとも無く手をつないで歩き出すと温もりが私の胸を満たす。

 それはまるでショッピングモールの暖房と冬の外気の混ざった温度のよう。

7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/10/20(日) 18:11:40.18 ID:Us2M/ReZo

「そうだ。まゆにプレゼントがあるんだ」

 ビジネスバッグひとつの身で彼はそんなことを言う。

 私が困惑を浮かべたまま彼の瞳を見つめると、彼は一息でプレゼントの正体を述べた。

「CDデビューが決まったよ。総選挙では惜しくも6位だったけど、まゆはこんなところで満足しないだろ?」
 
 彼の言葉を理解するのには時間がかかる。

 常に回りくどい言葉を話す彼の言葉は、どこか詩的で幻想的だ。

 そんな彼が要点だけを掻い摘んで述べるのは珍しい。

「嘘……まゆが、CDデビュー?」

「本当さ。そんな残酷な嘘なんてつかないよ」

 プロデューサーさんの言葉に私は笑みをこらえ切れなかった。

 今すぐにでも歓喜を表現したい衝動をこらえて、悪戯っぽく彼を見遣る。

「……今度のお休みには、またあの展望台へ連れて行ってください。星の綺麗な夜に、二人だけで」

 キスをしそうなほどに顔を近づけて言うと、彼は笑いながら私の髪をなでた。

8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/10/20(日) 18:14:41.52 ID:Us2M/ReZo
 数日後、山頂の展望台へと至る車の中で私達は他愛も無い会話を交わす。

 他の事務所のアイドルの話、自身のアイドル活動、そして、ライバルでありかけがえのない友人である二人のアイドルについて。

 渋谷凜と輿水幸子。

 CDデビューを成し遂げた偉大な先駆者であり、以前私が勝手に恋敵だと思い込んでいた二人である。

 話に花が咲き、やがて車は展望台の駐車場へと至る。

 相変わらず駐車場の2台の車は草に埋もれている。

 背の高い草も冬が来れば枯れ果て、埋もれた車がその姿を現すのだろうか。

 あるいはその車の周りだけ時が止まったように草が茂るのか。

 どちらであっても不思議ではないような、そんな奇妙な雰囲気がその一角から漂っていた。

 駐車場のアスファルトは隆起してひび割れ、秋の冷たい風がその亀裂をなでるように吹いている。

「ほら、毛布をかぶって。冷えないように」
 
 いつかと同じ言葉とともに私はすっぽりと毛布で包まれる。
 
 事務所の仮眠室から失敬した毛布は寒い外気をものともせずに肌を包み込んでくれる。

9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/10/20(日) 18:19:36.76 ID:sWokRpozo
まゆはさいこうじゃ〜
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/10/20(日) 18:22:29.69 ID:Us2M/ReZo
「(ハロウィンの仮装でこれをやったら、流石にしらけますよね)」

 顔も体も見えない毛布のお化けに成り果てた私は一人笑みをこぼす。

 相変わらずプロデューサーさんは堅苦しいスーツのまま。

 柔らかな芝に植えられた街灯は時折ちかちかと瞬いているが、それはヴァージンロードのように展望台へと続いている。

 その表現に、たまらず私は喉を鳴らして笑う。

 ヴァージンロード、得てして妙な例えだ。

 あの展望台で私達の思いは結ばれ今日に至る。

 それがたとえ傍から見ればどんなに些細な出来事であろうと、私にとっては大きな一歩であった。

 あれ以来私の繕っていた凶暴性はすっかりとなりを潜め、本来の『臆病な佐久間まゆ』として生活ができている。

 もっとも、あの『病んで狂った佐久間まゆ』のほうが好きだという意見も少数ではなく存在するため、私は苦労を強いられているのだが――。

 毛布が地面につかないように軽く持ち上げながら私は芝を歩む。

 満天の星空の海に街灯の薄明かりに照らされた展望台が浮かび上がり、幻想的な光景を作り出していた。

 プロデューサーの後を半歩遅れで歩みながら私は展望台を登る。

 ペンキの剥がれた錆びた展望台は以前と変わらずに私たちの体重を支え続ける。

 展望台を登りきってから、もう一度私は空を見上げる。

 星が私たちに瞬く。

 プロデューサーさんは以前のように手すりに体を預けて眼前の景色を見つめている。

 私も彼と同じように手すりに体を預け、彼と同じ景色を見つめる。

 眼前には人口の明かりと暗闇のコントラストが映え、眼下には人々の営みが煌々ときらめいている。

「きれいな景色ですね」

 独り言ともとれるような調子で私はつぶやく。

「あぁ。いつまでも見ていたくなるような景色だよ」

 互いに、言葉はいらない。

 眼前の光景とこの空気が2人を結びつけているのだから。

 時間を忘れて、私たちは景色を眺め続ける。

 二人だけの時間をいつまでも楽しむように。

 星屑を抱く夜空と町の明かりのコントラスト、群青色のその夜をいつまでも見つめながら、私はいつの間にか笑顔を浮かべていた。



――――FIN
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/10/20(日) 18:28:53.43 ID:Us2M/ReZo
投下してみたら短くて驚きました。
後日談で事務所の様子とか書いたりしたいのでHTML化は少し待っていただけるとありがたいです。

お目汚しを失礼しました。
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/10/20(日) 19:43:25.17 ID:K1QeJW2Lo
おっつおっつ!

まゆのガチャはよ(ガクブル
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/10/20(日) 20:59:28.13 ID:J5OF3daho
おつー
復旧できたのか。よかった乙
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/04(月) 15:15:20.98 ID:hE/PH+Zyo
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/11/09(土) 20:38:16.59 ID:RgCg75Nso
本当にお久しぶりです。

パソコンを電車に忘れたり郵送したりで時間が空いてしまいました。

短いですが投下させていただきます。
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/09(土) 20:41:17.12 ID:RgCg75Nso
 ざあざあと雨が降り続ける。

 夏空はいつのまにかすっかりと消え失せ、秋雨が喫茶店の窓を叩く。

 今日が青く冷えてゆく。

 プロデューサーさんは今日も外回りやアイドルのスカウトで忙しいはず。

 人通りもまばらになった通りを見つめながら、私は息を吐いた。
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/09(土) 20:55:05.08 ID:RgCg75Nso

「どうしたんですかまゆさん? ため息なんて珍しいですね」

 私の隣に腰掛ける幸子ちゃんは珍しそうにそう言う。

「プロデューサーのこと?」

 正面の凜ちゃんはコーヒーを飲みながら慣れたようにそのように問う。

 私の頬が染まる。

「えぇ。あの人が今頃他のアイドルを見つけていたらどうしようって考えてたの。嫉妬なんて醜いと思うけど――」

「大丈夫だって。プロデューサーったらまゆのいないところで惚気てくるんだもん」

「公共の場での惚気は控えてほしいですね。まあ、ボクが可愛すぎるのが悪いんでしょうけど!」
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/09(土) 20:59:31.43 ID:RgCg75Nso
 凜ちゃんと幸子ちゃんの言葉に更に頬が赤く染まる。

「可愛い幸子ちゃんを存分に発揮するにはジェットコースターに乗りながらライブなんてどうかな? クライマックスで着水って感じで」

「えっそれは……」

 以前どこかで見たやりとりに、たまらず私の頬は緩む。

 温かい紅茶を一口含むと鼻腔から指先まで心地良い熱が伝う。
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/09(土) 21:12:34.20 ID:RgCg75Nso
「それにしても、まゆがCDデビューかぁ」

「まゆさんはカワイイですからね! 勿論、ボクほどではありませんが!」

 しみじみと凜ちゃんが呟き、笑みを浮かべて幸子ちゃんが言う。

「いかにも王道、って感じの曲だったよね」

「えぇ。ボクが歌いたいくらいの素晴らしい曲でした」

 幸子ちゃんは紅茶を一口口に含む。

 幸子ちゃんは自信家だが、嘘はつかない。きっと本心からの言葉なのだろう。

20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/09(土) 21:17:49.98 ID:RgCg75Nso
「そういえば、まゆさんに聞きたいことがあるんでした」

 凜ちゃんに目配せをして幸子ちゃんが私に言葉を投げた。

「時々プロデューサーさんとどこかに出かけていますが、どこに行ってるんですか?」

 無垢な瞳で幸子ちゃんが問う。凜ちゃんはにやにやと意地の悪い笑みを浮かべている。

 私はといえば、真っ赤な頬を隠しながら言葉を探していた。

「それは……その……」

 改めて考えると異常である。
 
 プロデューサーとアイドルが山奥の展望台で口づけを交わすなんて、スキャンダルも良いところだ。

 だが、私は2人には嘘をつけない。

「……プロデューサーさんと、とっておきの場所に行ってました」
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/09(土) 21:26:21.27 ID:RgCg75Nso
 言い終わってから、しまったといわんばかりに口を押える。

 この言い方ではまるで背徳の行為をしていたようではないか。

 事実凜ちゃんは噎せ返り、幸子ちゃんは顔をリンゴのように真っ赤に染めていた。

「ち、ちがうの! 山の展望台! とっても素敵な場所なんだから!」

 私は頬を真っ赤に染めてそのようにおろおろと弁解した。
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/11/09(土) 21:32:15.24 ID:RgCg75Nso
短いですがここまでです。

最近なかなか時間が取れないですが暇を見つけて更新します。
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/12(火) 23:44:37.12 ID:DT+4CtBko
おっつー
ゆっくりおいかけるよー
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