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眼鏡天使「死神に糸巻きを貰って店を出たら、知らない街角だった」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/11/07(木) 20:56:22.95 ID:FscExyT70


夕方 王都商人ギルド 受付 



ゾンビ娘 「おっす眼鏡天使、あんたんち泥棒に入られたんだって?」

ゾンビ娘 「しかも夜、寝てる間に」


眼鏡天使 「……ええ、まあ」


ゾンビ娘 「あんたも抜けてるよなあ」

ゾンビ娘 「金縁眼鏡なんてかけて、見た目はしっかりしてんのになあ」


眼鏡天使 「あ、あへははは……」

眼鏡天使 「はぁ…………」


ゾンビ娘 「ま、命があっただけよかったじゃないの」

ゾンビ娘 「どっかで夕飯でも食いながら話そうぜ」

ゾンビ娘 「アイテム収集先で、面白い噂を拾ったんだ」




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諸君、狂いたまえ。 @ 2024/04/26(金) 22:00:04.52 ID:pApquyFx0
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少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
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渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
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二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714049241/

佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/07(木) 21:25:00.55 ID:FscExyT70


王都 安酒場




犬尾剣士 「また鉱山で事故があったらしい」


鳥弓戦士 「このところ続くなあ」


猿賢者 「なんでも、強いゴーストが暴れてんだとか」



ワイワイ ガヤガヤ



ゾンビ娘 「しっかし、王都で泥棒ねえ」


眼鏡天使 「まったく、どうして私の家なの……」

眼鏡天使 「狙うなら貴族とかにすればいいのに」


ゾンビ娘 「……あんたも大変だね」

ゾンビ娘 「故郷で母親が倒れたと思ったら」

ゾンビ娘 「妹が悪魔から金を借りたまま逃亡」

ゾンビ娘 「また他の妹がエトセトラエトセトラ」


眼鏡天使 「あなた、何でそんなにうちの事情に詳しいのよ……」


3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/07(木) 21:44:14.08 ID:FscExyT70



ゾンビ娘 「そうそう、それであの話なんだけどさあ」


眼鏡天使 「面白い噂を拾ったって話?」


ゾンビ娘 「うん」

ゾンビ娘 「何か、すごいアイテムがあるらしくて」


眼鏡天使 「アイテムの話なら、毎日たくさん入ってきてるじゃない」

眼鏡天使 「うちは商人ギルドなんだし」


ゾンビ娘 「まあそう言わずに聞いてくれよ」

ゾンビ娘 「これがさ………て、なんだよこの芋スープ!

ゾンビ娘 「うっすぃ〜! 味がうっすぃ〜〜ッ!」

ゾンビ娘 「芋の味もしねえよ!」


眼鏡天使 「そう? 私のは普通だけど」



4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/11/07(木) 21:59:07.74 ID:FscExyT70


死神メイド 「…………」


眼鏡天使 (いつのまにか、テーブルのそばに人が立ってた……)


ゾンビ娘 「お、あんた店員さん? 制服かわったの?」

ゾンビ娘 「まあいいや、このスープさあ………」


死神メイド 「………これ」


コトッ


ゾンビ娘 「あん? 何だよこの瓶」


死神メイド 「……それを使うといいわ」


ゾンビ娘 「なんだい、調味料か何かかよ」

ゾンビ娘 「まったく、客に味付けさせるたあ……」

ゾンビ娘 「…………」


死神メイド 「…………」


ゾンビ娘 「…………おほ!」

ゾンビ娘 「うっめえ〜〜!!」

ゾンビ娘 「すげえよこれ! 腐るくらいうめえ!」


死神メイド 「……そう」


5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/07(木) 22:16:53.23 ID:FscExyT70


ゾンビ娘 「あ〜、で、何だっけ……そうそうアイテムの話」


死神メイド 「……………」


眼鏡天使 (いつまでいるのかしらこの店員)

眼鏡天使 (なんだか、私の方をじっと見てくるし気味が悪いわ……)


ゾンビ娘 「なんでも、それを持っていると」

ゾンビ娘 「夢の町へ行けるんだと」


眼鏡天使 「へえ……」


ゾンビ娘 「この世界にはない珍しいアイテムなんかがわんさかあって」

ゾンビ娘 「何でも揃うんだ。しかもアイテムは現実に持ち帰れる」

ゾンビ娘 「すげえよな」


眼鏡天使 「それは、すごいわね」


死神メイド「…………」



6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/07(木) 23:05:30.10 ID:FscExyT70



ゾンビ娘 「行ってみてえよなあ、何でも揃う町」

ゾンビ娘 「そこで大量に仕入れて売りさばけば、大金持ちも夢じゃないぜ」


眼鏡天使 「そうね……」

眼鏡天使 「でも、噂は噂」

眼鏡天使 「地道に稼ぐのが一番よ」


ゾンビ娘 「夢がねえなあ、うちの受付は」

ゾンビ娘 「何でも揃うってことは、あんたの母親を治す薬も見つかるかもしれないんだぜ」


眼鏡天使 「そんな夢を見てたって、どうなるものでも……」


死神メイド 「夢じゃない」


眼鏡天使 「?」


死神メイド 「……町は、あるわ」


ゾンビ娘 「お、話せるねアンタ」

ゾンビ娘 「一杯おごろうか?」


死神メイド 「……仕事中だから」


眼鏡天使 (……ボーッと立っているだけじゃない)





7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/07(木) 23:19:06.33 ID:FscExyT70



ゾンビ娘 「でよぉ、そのアイテムって何だと思う?」


眼鏡天使 「さあ……検討もつかないわね」


ゾンビ娘 「それが、血みたいに赤いリボンと白い……」


死神メイド「………時間」


眼鏡天使 「?」


ゾンビ娘 「お?」


死神メイド 「仕事中」

死神メイド 「そろそろ、行くわ」


眼鏡天使 「え、ええ……」


死神メイド 「…………」


眼鏡天使 「…………」


ソンビ娘 「…………」


死神メイド 「…………」


グイッ


ゾンビ娘 「おいおい何だよ、服を引っ張るなよ」


8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/07(木) 23:33:19.09 ID:FscExyT70




鬼巫女 「けっこうな人数が、犠牲になったそうです」


侍勇者 「……そうか」


鬼巫女 「事故の原因が分かるまで、鉱山は封鎖されるとか」


侍勇者 「しばらくは、鉱石系のアイテム収集が難しくなるな」






ゾンビ娘 「…………」

ゾンビ娘 「あっ、そうか」



ゾンビ娘 「アタシ死んだんだった」


9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/11/07(木) 23:49:08.90 ID:FscExyT70



ゾンビ娘 「いやいや、すっかり忘れてたわ」

ゾンビ娘 「うっかりうっかり」


死神メイド「…………」


眼鏡天使 「ちょ、ちょっとゾンビ娘? 何を言って……」


ゾンビ娘 「ちょーっと鉱山の奥の方で迷ってたら変な道を見つけてさあ」

ゾンビ娘 「進んでったら、鍵のかかった古い扉があったわけ」

ゾンビ娘 「で、ぶち破ってみたら、何か角の生えた赤い巨人? みたいのが出てきて」

ゾンビ娘 「一瞬で殺されちゃった」


眼鏡天使 「…………」


ゾンビ娘 「もう内臓とかぐっちゃぐちゃに飛び散っちゃってさあ」

ゾンビ娘 「内臓ってあれだね、よく見ると美味しそうだよね」


眼鏡天使 「…………」

眼鏡天使 「えっと……」



10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/08(金) 00:14:54.16 ID:sRzY4Wq/0



死神メイド 「……これ」


ジャラッ


ゾンビ娘 「お、高そうで悪趣味なアクセサリ。くれんの?」


死神メイド 「死んだ記念」


ゾンビ娘 「どうせなら金が良かったなあ」


眼鏡天使 「ちょっと、それ私の家から盗まれたアクセサリじゃない」


11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/08(金) 00:21:06.83 ID:sRzY4Wq/0


死神メイド 「…………そう」


眼鏡天使 「どうして、あなたが持っているの?」

眼鏡天使 「もしかして、私の家に入った泥棒って」


死神メイド 「……泥棒じゃない」

死神メイド 「私がこっそり盗んでおいたから」

死神メイド 「他の人に盗まれる心配がなかった」

死神メイド 「とても安全」


眼鏡天使 「あなた、何を言っているの……!?」



12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/08(金) 00:39:22.61 ID:sRzY4Wq/0



ゾンビ娘 「そんじゃ、アタシ行くわ。体も透けてきたし」

ゾンビ娘 「このクラーケンの干物みたいなアクセサリ、貰っていい?」


眼鏡天使 「え、ええ。どうぞ……?」


ゾンビ娘 「あんがと」

ゾンビ娘 「じゃあ、いろいろ大変だろうけど、元気に生きろよ」


眼鏡天使 「ええ。あなたも元気、でね……?」


ゾンビ娘 「おう」



13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/08(金) 00:41:21.58 ID:sRzY4Wq/0




死神メイド 「……あっちから出て」


ゾンビ娘 「お、店の入り口から出るの?」


死神メイド 「あとは七日くらい右に進んで」


ゾンビ娘 「へいへい、死ぬのもメンドクサイのね」


スタスタスタスタ……


ギイィ……



ゾンビ娘 「あーあー、もーっと生きたかったなーあ」



バタムッ



14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/08(金) 00:49:41.82 ID:sRzY4Wq/0


死神メイド 「…………」


眼鏡天使 「…………」


死神メイド 「………これ」


コトンッ


眼鏡天使 「血みたいに赤いリボンと……白い糸巻き?」


死神メイド 「アクセサリをくれたから」

死神メイド 「お礼」


眼鏡天使 「ありがとう……」

眼鏡天使 「ありがとう?」


死神メイド 「じゃあ、私も行くわ」

死神メイド 「また今度」


眼鏡天使 「え、ええ」



15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/08(金) 01:03:19.34 ID:sRzY4Wq/0


ワイワイ ガヤガヤ


猿賢者 「……ふぅ、ただいま」

猿賢者 「て、おりょ?」

猿賢者 「犬剣士、鳥弓戦士……?」

猿賢者 「…………」

猿賢者 「どこ行っちまったんだ?」



ドッ ワハハハハ……



眼鏡天使 「…………」

眼鏡天使 「きっと疲れてるのね、私」

眼鏡天使 「……帰ろう」



16 :シャルロッ亭きゅっぷい [saga sage]:2013/11/08(金) 01:09:10.26 ID:sRzY4Wq/0
休憩。

17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/08(金) 07:34:07.79 ID:uAoh9rq2O
おつ
18 :シャルロッ亭きゅっぷい [saga]:2013/11/08(金) 08:01:51.55 ID:sRzY4Wq/0



…………



眼鏡天使 「支払いが済んでる?」



単眼娘 「はい、さきほど」

単眼娘 「ねえ先輩?」


三つ目娘 「ええ単眼」

三つ目娘 「メイド姿の綺麗なかたが払っていきましたわ」

三つ目娘 「ねえ先輩?」


二つ目娘 「ああ三つ目」

二つ目娘 「芋のスープ二杯分、確かに受け取りました」



眼鏡天使 「……そうですか」



19 :シャルロッ亭きゅっぷい [saga]:2013/11/08(金) 08:52:22.06 ID:sRzY4Wq/0



眼鏡天使 (本当に何なのかしら、今日は。変な夢でも見てる気分だわ)

眼鏡天使 (……明日も早いし、さっさと帰って寝ましょう)


ギイィ……


目娘たち 「またおいでー」



バタムッ


20 :シャルロッ亭きゅっぷい [saga]:2013/11/08(金) 23:00:20.82 ID:sRzY4Wq/0



??? 



眼鏡天使 「…………」

眼鏡天使 (酒場を出たら、全然知らない道に出た)

眼鏡天使 (くだりの階段が続いて、その先に門が見える)

眼鏡天使 (夜みたいに暗いのに、いやに物がはっきりと分かるのね……)

眼鏡天使 (……物音一つ聞こえない)


眼鏡天使 「何なの、ここ……」

眼鏡天使 「…………」

眼鏡天使 「と、とにかく、酒場に戻りましょう」



21 :シャルロッ亭きゅっぷい [saga]:2013/11/08(金) 23:08:25.95 ID:sRzY4Wq/0


王都 安酒場



単眼娘 「いらっしゃーい」


眼鏡天使 「あ、あのッ」


単眼娘 「あー、さっきのお客さん。どうしました? 息をきらして」


眼鏡天使 「ちょっと入り口の扉、変なんですけどッ」


単眼娘 「はあ……?」


眼鏡天使 「な、何か音がしないっていうかッ……全然知らないところにつながっているみたいでッ」


単眼娘 「はあ……」


22 :シャルロッ亭きゅっぷい [saga]:2013/11/08(金) 23:20:12.37 ID:sRzY4Wq/0


ギイィ


単眼娘 「わ、ちょっと外は冷えますねえ」

単眼娘 「……あ、あの吟遊詩人さん、今日も来てるんだ」

単眼娘 「うーん。どこもおかしいところはないと思いますけど……」


眼鏡天使 (…………普通の広場)

眼鏡天使 「……ご、ごめんなさい」

眼鏡天使 「ちょっと、気が動転していたみたい……」

眼鏡天使 「それじゃあ、ごちそうさまでした……」


単眼娘 「気をつけてお帰りくださいね」


23 :シャルロッ亭きゅっぷい [saga]:2013/11/08(金) 23:32:54.32 ID:sRzY4Wq/0


ギルド寮 単眼天使の部屋



バスンッ


眼鏡天使 「あふぅん……ベッドが気持ちいい……」

眼鏡天使 「今日は変なことばかりだったけど」

眼鏡天使 「明日は安らかな一日になるといいな……」

眼鏡天使 「……………………」

眼鏡天使 「………………」

眼鏡天使 「……グガー」zzZ...


24 :シャルロッ亭きゅっぷい [saga]:2013/11/08(金) 23:46:46.50 ID:sRzY4Wq/0



『……………』


『……………』


ゾンビ娘 『おっす、眼鏡天使!』


眼鏡天使 『あら、ゾンビ娘。生きてたの』


ゾンビ娘 『おうよ。アタシってばゾンビだもん』


25 :シャルロッ亭きゅっぷい [saga]:2013/11/08(金) 23:51:51.67 ID:sRzY4Wq/0


眼鏡天使 『そうなの。それで、何の用なの?』


ゾンビ娘 『あれ使った?』


眼鏡天使 『あれ?』


ゾンビ娘 『糸巻き』

ゾンビ娘 『仕入れて売ってウハウハの糸巻き』


眼鏡天使 『あなたが話してたやつね。そんな名前だったっけ?』


ゾンビ娘 『知らねーよ。アタシ、あんたの夢だもん』


眼鏡天使 『そうだったかしら』

眼鏡天使 『そうだったわね』



26 :シャルロッ亭きゅっぷい [saga]:2013/11/08(金) 23:57:02.16 ID:sRzY4Wq/0


ゾンビ娘 『で、使った? 糸巻き』


眼鏡天使 『そんなわけないじゃない。持ってもいないのに』


ゾンビ娘 『持ってるじゃん』


眼鏡天使 『持ってたかしら』


ゾンビ娘 『貰ったじゃん』


眼鏡天使 『貰ったわね』

27 :シャルロッ亭きゅっぷい [saga]:2013/11/09(土) 00:02:55.83 ID:CWdjjjCX0



眼鏡天使 『ねえゾンビ娘』


ゾンビ娘 『なに?』


眼鏡天使 『やっぱり、アクセサリ返してもらえない?』


ゾンビ娘 『やだ』


眼鏡天使 『いいじゃない。どうせ夢なんだもの』


ゾンビ娘 『しかたねえなあ、わかったよ』


眼鏡天使 『ありがとう』


ソンビ娘 『…………あ、悪い今ない』


眼鏡天使 『そんな』


ゾンビ娘 『まあいいじゃないの、夢だし』


眼鏡天使 『そうね』



28 :シャルロッ亭きゅっぷい [saga]:2013/11/09(土) 00:10:25.28 ID:CWdjjjCX0



ゾンビ娘 『じゃ、アタシ行くわ』


眼鏡天使 『うん』


ゾンビ娘 『糸巻き使えよ』


眼鏡天使 『いや』


ゾンビ娘 『そう言わずに使えって』


眼鏡天使 『いやよ、あれをくれたあのメイド、気味が悪かったもん』


ゾンビ娘 『使わないと、あんたの母親死んじゃうぜ?』


眼鏡天使 『え?』



29 :シャルロッ亭きゅっぷい [saga]:2013/11/09(土) 00:21:59.96 ID:CWdjjjCX0


ガンガンガンガンガンッ

ガンガンガンガンガンッ


眼鏡天使 「……ンガッ?」

眼鏡天使 「うーん、お母さん?」


バケツを叩く死神メイド 「…………」


眼鏡天使 「もぉ、その起こし方はやめてって言ってるじゃない……」

眼鏡天使 「……って」


死神メイド 「…………」


眼鏡天使 「もうこんな時間!?」

眼鏡天使 「ああああ、やだやだやだ遅刻しちゃうじゃない!!」

眼鏡天使 「めがねめがねメガネめがね……!」

眼鏡天使 「あ、かけてた」


死神メイド 「…………」


眼鏡天使 「もう朝ご飯いらない!!」

眼鏡天使 「いってきまーす!!」



バタンッ


タタタタタタタタッ



死神メイド 「…………」

死神メイド 「いってらっしゃい」


30 :シャルロッ亭きゅっぷい [saga]:2013/11/09(土) 00:31:56.38 ID:CWdjjjCX0


王都商人ギルド 受付



美形戦士 「ブリッジで俺のミルクを100リットル飲めるような雇い主を探しているのだが」


眼鏡天使 「そ、それはたぶん傭兵ギルドの管轄だと思いますが……」


美形戦士 「そうか………」

美形戦士 「すまない、邪魔をした」


眼鏡天使 「はい、アイテム関連のことでしたら、またのお越しを……」


眼鏡天使 「…………」


眼鏡天使 「ふぅ……」


31 :シャルロッ亭きゅっぷい [saga]:2013/11/09(土) 00:51:02.38 ID:CWdjjjCX0


シルフ 「こんにちは」


眼鏡天使 「はい」

眼鏡天使 (立ち上がった猫くらいの大きさの男の子……妖精?)


シルフ 「商人ギルドの眼鏡天使さまという方は、こちらにいらっしゃいますでしょうか」


眼鏡天使 「……私ですけど」


シルフ 「ああ、良かったでつ……失礼、良かったです」

シルフ 「こちら、お届け物です」


眼鏡天使 「私に?」

眼鏡天使 「…………手紙?」


32 :シャルロッ亭きゅっぷい [saga]:2013/11/09(土) 01:11:11.89 ID:CWdjjjCX0



シルフ 「この伝票にサインをお願いします」


眼鏡天使 「あ、はい……」


シルフ 「………たしかに」

シルフ 「ありがとうございました」

シルフ 「それでは、さようなら」


眼鏡天使 「はあ……お疲れさまです」


眼鏡天使 「…………」


眼鏡天使 「黒い手紙……いったいどこからかしら」


33 :シャルロッ亭きゅっぷい [saga]:2013/11/09(土) 01:15:10.33 ID:CWdjjjCX0


眼鏡天使 (ちょうど手が空くころだし、開けてみようかしら)


死神メイド 「…………」

死神メイド 「こんにちは」


眼鏡天使 「!」

眼鏡天使 「あなた……!」


死神メイド「………これ」


コトッ


眼鏡天使 「糸巻きと、リボン……」


死神メイド 「家に忘れていたわ」

死神メイド 「必要になると思って」


眼鏡天使 「ど、どうして家にあること知って……」


死神メイド 「……行くわ」

死神メイド 「またね」


眼鏡天使 「え、ちょっと」

眼鏡天使 「………行っちゃった」

34 :シャルロッ亭きゅっぷい [sage saga]:2013/11/09(土) 01:23:21.25 ID:CWdjjjCX0
朝まで休憩。
よう分からんのだけど、
休憩とか再開の書き込みとかトリップとかコテとかって、
あると煩わしいものなんでしょうか。
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/09(土) 11:09:48.32 ID:iTDFz8LpO
おつ
あってもなくてもいいと思うよ
36 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [sage]:2013/11/09(土) 21:49:38.38 ID:CWdjjjCX0
>>35
ありがとうございます
37 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2013/11/09(土) 22:04:45.68 ID:CWdjjjCX0


眼鏡天使 「……手紙、開けてみましょう」

眼鏡天使 「白い封ろうに、これは何の刻印かしら。何だか開けるのがもったいないわ」

眼鏡天使 「…………」

眼鏡天使 「あら、開かない?」


黒い手紙 『あんた、誰だい』


眼鏡天使 「!?」



38 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2013/11/09(土) 22:22:35.45 ID:CWdjjjCX0


眼鏡天使 「てて、手紙がしゃべべべべ……」


黒い手紙 『なあ答えろよ。あんた誰だい』


眼鏡天使 「め、眼鏡天使」


黒い手紙 『なら仕方ない。燃えるとしよう』


ボオッ


眼鏡天使 「! 燃え!?」

眼鏡天使 「……て、中身が出てきた」

眼鏡天使 「黒い紙に、白い文字……」


眼鏡天使 「…………」

眼鏡天使 「…………!!」


39 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2013/11/09(土) 22:31:07.73 ID:CWdjjjCX0


母 危篤 命 ノ 危機

至急 糸巻キ ト リボン ヲ 持ツテ

石ノ門 クグレ

至急 来ラレタシ

至急 黒天井ノ町 ヘ 来ラレタシ



眼鏡天使 へ

Sメイド ヨリ



40 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2013/11/09(土) 23:11:05.74 ID:CWdjjjCX0


眼鏡天使 「お母さんが……!?」

眼鏡天使 「い、いえ、こんなの、きっとイタズラ」

眼鏡天使 「Sメイドなんて知らないし……」

眼鏡天使 「でも、こんなイタズラする意味なんて……」



隻眼ラミア 「眼鏡天使ちゃん」


眼鏡天使 「あ、親方」


隻眼ラミア 「落ち着いて聞きなさいね。今、あなたの故郷から連絡があったんだけど……」


眼鏡天使 「故郷から……」


隻眼ラミア 「あなたのお母さん、危ない状態らしいの」


眼鏡天使 「…………!!」



41 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2013/11/09(土) 23:23:43.83 ID:CWdjjjCX0


隻眼ラミア 「仕事は代わりの子にやってもらっておくから、早く行っておやりなさい」

隻眼ラミア 「横断列車に乗れば、きっと間に合うはずよ」

隻眼ラミア 「……これ、あなたの荷物と行き返りのお金」


眼鏡天使 「あ、ありがとうございます」

眼鏡天使 「では失礼しま……」


隻眼ラミア 「ああ、待って」


眼鏡天使 「?」




隻眼ラミア 「糸巻きとリボン、忘れているわよ」

隻眼ラミア 「これ、あなたのでしょう?」


42 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2013/11/09(土) 23:27:32.21 ID:CWdjjjCX0
>>23

単眼天使の部屋

眼鏡天使の部屋
に訂正
43 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/09(土) 23:38:04.30 ID:CWdjjjCX0


???



眼鏡天使 「…………」

眼鏡天使 「またこの道」

眼鏡天使 「何なの、何なのよ」

眼鏡天使 「お母さんのとこへ行かなくちゃならないのに!」

眼鏡天使 「早く戻って……」


眼鏡天使 (……何でも揃う町)

眼鏡天使 (……必要になる)


眼鏡天使 「……………」



44 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/09(土) 23:54:48.64 ID:CWdjjjCX0


??? 黒天井の町(?)への小道 石の門前



眼鏡天使 「何をやってるの、私」

眼鏡天使 「こんなところで、糸巻きとリボンを握りしめて……」

眼鏡天使 「こんなことしている場合じゃないのに」

眼鏡天使 「……………」


眼鏡天使 (……門の向こう、真っ暗。恐ろしい)

眼鏡天使 (でも、なぜか心がひかれる)

眼鏡天使 (奥に何があるのか気になって、目が離せない)


眼鏡天使 「……………」

眼鏡天使 「……………」



45 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/10(日) 00:18:48.42 ID:fPA13TqR0


黒天井の町(?) アトリエ通り



ザワザワ ガヤガヤ


眼鏡天使 「…………」

眼鏡天使 (門をくぐったら、また変な道に出た)



エルフ錬金術講師 「やはり精霊の声を聞かずしてはどうにも……」

ドワーフ錬金術講師 「人間は不便じゃの………」



眼鏡天使 (王都の錬金術工房の通りと似ているわね)

眼鏡天使 (こちらの方が人も建物もだいぶ混沌としているけれど……)



シュルル……



眼鏡天使 「…………」

眼鏡天使 「リボンが、溶けてなくなった……」



46 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/10(日) 00:28:41.56 ID:fPA13TqR0


眼鏡天使 (夜みたいだけど、空には月も星もない)

眼鏡天使 (すごく広い町。王都よりも)

眼鏡天使 (ときどき、いびつな建物の屋根の間から小さく見えるのは……城?)

眼鏡天使 (ここは、本当にゾンビ娘が言っていた町なの……?)


眼鏡天使 「…………」


眼鏡天使 (歩いていたら、いつの間にか暗い道に入ってしまったわ)



47 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/10(日) 00:52:02.94 ID:fPA13TqR0


黒天井の町(?) 隙間小路



眼鏡天使 (変だわ。明かりが無くて黒一色の建物ばかりなのに、輪郭がはっきりしてる)

眼鏡天使 (ここを進んで大丈夫なのかしら……)


バタン


骸骨 「…………」


眼鏡天使 「きゃっ!?」

眼鏡天使 (扉が開いて、スケルトンが出てきた!?)


骸骨 「………いらんかね」


眼鏡天使 (動物の肉の入ったトレイを持ってる)

眼鏡天使 (このスケルトン、モンスターじゃないのね)



48 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/10(日) 01:03:20.20 ID:fPA13TqR0


眼鏡天使 「あの……このあたりに薬を売っているところはありませんか」


骸骨 「魔法の薬なら今来た通りに、体の薬ならあっちの通りにあるよ」


眼鏡天使 「あ、ありがとうございます」


骸骨 「どうも」


眼鏡天使 「……その、おいしそうな……お肉ですね」


骸骨 「おれの肉」


眼鏡天使 「え?」


骸骨 「これ全部、おれの肉」

骸骨 「いらんかね」

49 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/10(日) 01:20:25.67 ID:fPA13TqR0


黒天井の町? ドラム缶市場



タッタッタッタッタッ


眼鏡天使 「何なの何なの何なの何なの」



半魚人 「干物〜、人魚の干物〜」

デュラハン 「この帽子の似合う頭って無いかな」

敗残勇者 「俺の手首……俺の手首、どこに……」




眼鏡天使 「何なの、この町……!」


ドンッ


眼鏡天使 「きゃっ!?」



50 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/10(日) 01:39:17.27 ID:fPA13TqR0


裸眼天使 「あいたたた……」

裸眼天使 「す、すみませ……」

裸眼天使 (よく見えない。誰かにぶつかって転んだ拍子に、眼鏡を落としたのね……)


??? 「……眼鏡だ」


裸眼天使 「あ、ありがとうございます……」

眼鏡天使 「すみません、走るので精一杯で……」


淫魔幼女 「かまわない」


眼鏡天使 (黒い外套で口まで隠れてるから分からないけど)

眼鏡天使 (青白い肌に、赤系の目。夢魔の子供かしら)


淫魔幼女 「というか、ぶつかったのはおれじゃない」


眼鏡天使 「あ………」


幼ハーピィ 「…………」


眼鏡天使 (肩から先が黒い翼の、ハルピュイア?)



51 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/10(日) 01:51:34.30 ID:fPA13TqR0


眼鏡天使 「すみません、怪我は……」


幼ハーピィ 「………ッ!」


眼鏡天使 (怯えた顔で、夢魔の後ろに隠れてしまった)

眼鏡天使 (あれは……首輪。奴隷なのかしら)

眼鏡天使 (着ているものは高価なものみたいだけど……)


淫魔幼女 「すまない。臆病な奴なんだ」


幼ハーピィ 「…………」


眼鏡天使 「いえ……」



52 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/10(日) 01:58:11.91 ID:fPA13TqR0


淫魔幼女 「ここは初めてか」


眼鏡天使 「ええ、はい」


淫魔幼女 「そうか」

淫魔幼女 「……糸巻きはずっと手に持っている必要はない」

淫魔幼女 「雑嚢にでも入れて、近くに置いておけばいい」


眼鏡天使 「は、はい……」

眼鏡天使 「ありがとうございます」


53 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/10(日) 02:19:56.51 ID:fPA13TqR0


淫魔幼女 「ああ。ではな……」


眼鏡天使 「あ、あのうッ」


淫魔幼女 「……?」


眼鏡天使 「すみません。薬を売っている店を探しているのですが、どこか知らないでしょうか」


淫魔幼女 「天使が使うのか」


眼鏡天使 「はい。その、病気の母が危篤で……」


淫魔幼女 「病で死にかけた天使を元に戻すのは難しい。せめてそばに居てやることだ」


眼鏡天使 「でも、ここなら何でも揃うと聞いてきたの」

眼鏡天使 「できることなら、母を助けたい」

眼鏡天使 「お母さん、父に逃げられて、兄や妹たちも迷惑をかけてばかり」

眼鏡天使 「家族の中で誰よりも痩せてるのに、誰よりも働いてたの」

眼鏡天使 「このまま死なせるなんて、悲しすぎる」


淫魔幼女 「…………」


54 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/10(日) 02:30:36.23 ID:fPA13TqR0



淫魔幼女 「…………」

淫魔幼女 「割と強い薬を扱っている店をいくつか知っている」

淫魔幼女 「おれは案内できないが、商品が迷惑をかけたお詫びだ」

淫魔幼女 「紹介状と地図を渡すので、行ってみるといい」



淫魔幼女 「はたして行けるものならば」



55 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2013/11/10(日) 02:33:36.11 ID:fPA13TqR0
朝まで休憩
56 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/10(日) 10:47:51.89 ID:fPA13TqR0


黒天井の町? 薬屋前



……………


老魔女の声 「ありがとうございました……」


眼鏡天使 「……………」

眼鏡天使 「4軒目も駄目だった。これで、あの夢魔が紹介してくれた店はあと3軒……」

眼鏡天使 「気のせいかしら。1軒ごとに、少しずつ町の中心へ向かっているような気がするわ」

眼鏡天使 「…………ここに来て、どのくらい経ったの?」



死神メイド 「…………」

死神メイド 「40分くらい」

死神メイド 「あなたの故郷の時間で」


眼鏡天使 「!?」

眼鏡天使 「あなた……!」



57 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/10(日) 12:05:01.15 ID:fPA13TqR0



死神メイド 「来たのね」

死神メイド 「思ったとおり」

死神メイド 「うれしいわ」

死神メイド 「いらっしゃい」


眼鏡天使 「あなた……あなたいったい何なの!」


死神メイド 「……?」


眼鏡天使 「どうして私の前に現れるの!!」

眼鏡天使 「あなたが私をこの町へ呼んだの!?」

眼鏡天使 「だったらなぜ、こんなわけの分からない町で私を一人にしたの!?」

眼鏡天使 「なにが何でも揃う町よ、トイレの場所ひとつ分からないじゃない!」


死神メイド 「…………」


58 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/10(日) 12:16:07.06 ID:fPA13TqR0


死神メイド 「どうしたの」

死神メイド 「そんなに大きな声を出して」

死神メイド 「迷子の赤ちゃんが母親を見つけたみたい」


眼鏡天使 「……! この……ッ!!」


死神メイド 「しごと」


眼鏡天使 「?」


死神メイド 「卵とお芋が、きれていたの」

死神メイド 「だから、買い出し」

死神メイド 「あっちは、仕事」


眼鏡天使 「い、いきなり何を言って……!」


死神メイド 「しごとが私の」

死神メイド 「二番目に大事なことだから」

死神メイド 「でも」

死神メイド 「あなたを助けてあげる」


眼鏡天使 「!?」


死神メイド 「その地図を見せて」



59 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/10(日) 12:39:33.33 ID:fPA13TqR0


眼鏡天使 「…………」


死神メイド 「早く」

死神メイド 「お母さんを助けるんでしょ」


眼鏡天使 「どうして母のこと……」

眼鏡天使 「……分かったわよ」


死神メイド 「ありがとう」

死神メイド 「…………」

死神メイド 「…………」


眼鏡天使 (本当に何なの、この人。表情が何1つ変わらない)

眼鏡天使 (冷たい人形みたい……)


死神メイド 「わかったわ」

死神メイド 「きっと、この店なら手に入る」

死神メイド 「あなたのお母さんの薬」


眼鏡天使 (ここから1番遠い店……)


死神メイド 「案内してあげる」

死神メイド 「近道を知っているの」



60 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/10(日) 12:48:55.50 ID:fPA13TqR0


黒天井の町? 忘れられた下水道



コツッ コツッ コツッ



眼鏡天使 「うぅッ、何なのよこのにおい。肺が腐りそう」

眼鏡天使 「空気が重くて、淀んでる。まとわりついてくる」


死神メイド 「何千年も前に使われなくなった下水道」

死神メイド 「水はどこにも流れない」

死神メイド 「死んだ下水道」

死神メイド 「私しか知らない場所」

死神メイド 「考え事をしたいとき、よくここに来るの」


眼鏡天使 「そ、そう……」


死神メイド 「そろそろ出るわ。あのはしごを上って」


61 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/10(日) 13:42:49.51 ID:fPA13TqR0



黒天井の町? 闘技場への道 屋根の上の道



ガタッ ガタンタッ ガタガタ



死神メイド 「ここ、他のところの屋根より高いでしょう」

死神メイド 「夜、ここから町の光を眺めると、心が落ち着くの」


眼鏡天使 「ま、待って……足場が不安定で……」


死神メイド 「翼があるのに、不便ね」


眼鏡天使 「私の一族、昔は飛べていたみたいだけど、今はもう……」


死神メイド 「そう」

死神メイド 「そろそろ下りるわ」

死神メイド 「この煙突に入って」


眼鏡天使 「だから、待ってよ……」



62 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/10(日) 14:19:49.14 ID:fPA13TqR0


黒天井の町 橋だらけの河



眼鏡天使 「建物をつなぐたくさんの渡り廊下の下に、大きな河……」


死神メイド 「こちら側と、あちら側を分けているの」

死神メイド 「河はどこか遠くの海へ繋がっているそうよ」

死神メイド 「この町で海なんて見たことないけど」

死神メイド 「何だか、ロマンチックね」


眼鏡天使 「そ、そう」


死神メイド 「もうすぐ着くわ」

死神メイド 「行きましょう」


63 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/10(日) 14:38:38.00 ID:fPA13TqR0



黒天井の町? 上層行きの坂道



コツッ コツッ コッ……


眼鏡天使 「……あ、あら?」


死神メイド 「どうしたの」


眼鏡天使 「す、進めなくなったの」


死神メイド 「すぐそこよ、お店」

死神メイド 「あの、ちょっと潰れた赤い円屋根」


眼鏡天使 「わ、分かったわ……」

眼鏡天使 「………んっ」

眼鏡天使 「うぐぐ……ふぅッ……んぐ!」


死神メイド 「…………」


眼鏡天使 「……だめ、足は動くのに全然進めない!」

眼鏡天使 「何なの、どうして!?」


64 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/10(日) 14:50:18.88 ID:fPA13TqR0


死神メイド 「糸巻き」


眼鏡天使 「え!?」


死神メイド 「糸、残ってる?」


眼鏡天使 「えっと……」


ガサゴソ


眼鏡天使 「あ、あった……え、全然残ってない。来たときは白い糸が巻いてあったのに」

眼鏡天使 「いつの間に!?」


死神メイド 「そこが、あなたの限界」


眼鏡天使 「?」


死神メイド 「糸がなくなったら、もう先には進めない」

死神メイド 「ここはそういう町」


眼鏡天使 「そんな……」


死神メイド 「…………」

死神メイド 「それでも動きたいのなら」

死神メイド 「糸巻き棒を折るしかない」



65 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/10(日) 14:58:32.93 ID:fPA13TqR0


眼鏡天使 「これを折ればいいの?」


死神メイド 「そう」


眼鏡天使 「それだけで、あの店に行けるの?」


死神メイド 「そう」

死神メイド 「でも、もしかしたら」

死神メイド 「あの店にも薬は無いかもしれない」


眼鏡天使 「そんな、いまさら!」


死神メイド 「きっとあると思う」

死神メイド 「でも、もしかしたら無いかもしれない」


眼鏡天使 「あなたはどこまでッ……!」

眼鏡天使 「…………」

眼鏡天使 「……ッ」



ボキンッ



66 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/10(日) 15:03:20.03 ID:fPA13TqR0




タッタッタッタッタッタッ……



死神メイド 「…………」


折れた糸巻き棒


死神メイド 「…………」

死神メイド 「いってらっしゃい」


67 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/10(日) 15:20:48.41 ID:fPA13TqR0


黒天井の町? 薬屋



竜仙女 「……あるわよ、天使用の薬」


眼鏡天使 「ほ、本当に!?」


竜仙女 「うんうん。あなたの言う病状なら、死の淵にいたってちゃんと治せるわ」


眼鏡天使 「ああ……!」

眼鏡天使 「ください、今すぐくださいその薬!」


竜仙女 「はいはい。すぐに持ってくるから、ちょっと待ってて」


眼鏡天使 (……これで、お母さんの病気が治る)

眼鏡天使 (…………)

眼鏡天使 (……私のお金、ここで使えるのかしら)



68 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/10(日) 15:36:44.31 ID:fPA13TqR0



竜仙女 「はいこちら、天使の病気が治っちゃう薬」


眼鏡天使 「あ、あの」


竜仙女 「んー? なあに」


眼鏡天使 「このお金、使えますか?」


竜仙女 「どれどれ……」

竜仙女 「おー、なかなか珍しいお金を持ってるわねえ」


眼鏡天使 「あの、大丈夫でしょうか……」


竜仙女 「うんうん、使えるよ」

竜仙女 「こんだけ頂くけど、いいかな?」


眼鏡天使 (たったこれだけ!? 行き帰りの列車代に手をつけなくて済むなんて……)

眼鏡天使 「は、はい! 売ってください!」


竜仙女 「はいよー」


69 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/14(木) 08:04:01.47 ID:r9qV2pMn0


眼鏡天使 (これでお母さんの病気を治すことが出来る)

眼鏡天使 (ここは本当に何でも揃う町だったのね。変なものもあったけど、誰かにとっては必要なものだったのかしら)


竜仙人 「一回に一粒、噛まずに水か何かで飲んでね。天使のかかる病気なら一瞬で治るから」


眼鏡天使 (早く帰って、飲ませてあげ……)


竜仙女 「まあ実は悪魔の病気とかも治せちゃうんだけど、名前に天使がつくると売れ行き3割増なわけだわよ」

竜仙女 「うしししし」


眼鏡天使 「あの……」


竜仙女 「うん?」


眼鏡天使 「この町から帰るときって、どうすればいいんでしょうか」


70 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/14(木) 08:14:40.09 ID:r9qV2pMn0


竜仙女 「ああ、きみは初めてなのねこの町」

竜仙女 「来た場所を憶えてないなら、糸巻きの糸を巻くように歩いていけば帰れるよ」

竜仙女 「でも」



竜仙女 「糸巻きが無かったら絶対に帰れないから、注意してね」


71 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/14(木) 08:28:45.94 ID:r9qV2pMn0


黒天井の町? 上層行きの坂道



タッタッタッタッ



眼鏡天使 「………! あなた!」


折れた糸巻き棒を持った死神メイド 「おかえりなさい」


眼鏡天使 「返して! 私の糸巻き棒に何してるの!」


死神メイド 「誰かにとられないように、持っていただけよ」

死神メイド 「はい、どうぞ」


眼鏡天使 「ありがとう! 紛らわしいのよあなた!」

眼鏡天使 「でもとにかく、これであとは糸を巻いて帰れば……」

眼鏡天使 「あ、あら、糸が無い……?」



72 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/14(木) 09:51:57.74 ID:r9qV2pMn0


死神メイド 「薬、手に入ったのね」

死神メイド 「よかった」


眼鏡天使 「そんなことより糸はどこ。あなた何かしたの!?」


死神メイド 「したのはあなた」


眼鏡天使 「何を!」


死神メイド 「糸巻き棒を折って捨てた」


眼鏡天使 「……!!」


73 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/14(木) 11:32:05.78 ID:r9qV2pMn0


死神メイド 「糸巻きの糸は持ち主の命を吸って、持ち主のいる場所とこの町を結ぶ」

死神メイド 「糸は持ち主の命。糸巻きは持ち主の命のすべて」

死神メイド 「あなたは糸巻きを手離した」

死神メイド 「あなたは命を手離した」


74 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/14(木) 11:37:04.88 ID:r9qV2pMn0


死神メイド 「持ち主の手から離れたときから、糸は溶けて町との同化を始める」

死神メイド 「なぜなら剥き出しの命は、たよりないものだから」

死神メイド 「けれど命なくしては、ゴーストでさえ生きていけない」

死神メイド 「あなたの命はこの町と同化した」

死神メイド 「この町が死なない限り、あなたは生きることができるけれど」

死神メイド 「もう、この町から出られない」



75 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/14(木) 15:23:30.47 ID:r9qV2pMn0


眼鏡天使 「そんな……」

眼鏡天使 「そんな話、嘘よ……そんな話!!」


死神メイド 「あなたがそう思っても」

死神メイド 「本当のことよ」


眼鏡天使 「そんな馬鹿げた話、信じられるわけないでしょう!!」

眼鏡天使 「帰して! 帰る方法を教えて!」

眼鏡天使 「教えなさい!!」


死神メイド 「…………」

死神メイド 「無理ね」

死神メイド 「私にはそうすることができないから」


眼鏡天使 「……っ!! いいわ、自分で見つける!」



タッタッタッタッタッ



死神メイド 「…………」

死神メイド 「よく走る人」

死神メイド 「いってらっしゃい」


76 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/14(木) 15:37:04.32 ID:r9qV2pMn0


眼鏡天使 (何が、帰れない、よ。入り口だけで出口がない町なんて、そんなのあるわけないじゃない)

眼鏡天使 (せっかく薬まで手に入れたのに、ここまできて諦められるもんですか)

眼鏡天使 (絶対、絶対帰るんだから……!!)



77 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/14(木) 15:57:12.26 ID:r9qV2pMn0



5日後 黒天井の町? アトリエ通り



ザワザワ ガヤガヤ



死神メイド 「…………」

死神メイド 「ここにいたのね」


眼鏡天使 「…………」


死神メイド 「隅っこで、空ろな目で膝を抱えて、居場所のない子供のよう」


眼鏡天使 「…………」


死神メイド 「だから言ったでしょ」

死神メイド 「出られないって」


眼鏡天使 「…………」


死神メイド 「薬、落ちてるわよ」

死神メイド 「靴も」


眼鏡天使 「……もう、必要ないわよ」


死神メイド 「そう」


78 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/14(木) 16:45:19.19 ID:r9qV2pMn0


眼鏡天使 「何なのよこの町。どこまで行っても終わりが見えない」

眼鏡天使 「あのお城に行けば何とかなると思ったけど、どうしてもたどり着けない」

眼鏡天使 「何なのよ、何なのよ、何なのよ………」


死神メイド 「私も全部は分からない。でも」

死神メイド 「出口は入り口」

死神メイド 「糸巻きを持ちリボンという意思を示した人にだけ開く」

死神メイド 「ここはこういう町。そういう世界」

死神メイド 「世界の法則を変えるなんて、途方も無いこと」

死神メイド 「住んでいる人は、従うしかないのよ」


79 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/14(木) 16:52:41.70 ID:r9qV2pMn0


眼鏡天使 「本当なら、私はこんなとこに来るはずなかった」

眼鏡天使 「母親の最期を看取ることも、きっとできなかった……」


死神メイド 「赤ちゃんだって生まれてくる世界も選べないのだから」

死神メイド 「そんなに気にすることじゃないわ」


眼鏡天使 「もういや、帰して、普通の暮らしに戻して………」


死神メイド 「…………」

死神メイド 「ついてきて」

死神メイド 「お母さんに会わせてあげる」


80 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/14(木) 16:59:01.37 ID:r9qV2pMn0


黒天井の町? 宿屋通りへの道



死神メイド 「もうすぐよ」


眼鏡天使 「……本当に、お母さんに会えるんでしょうね」


死神メイド 「ええ」


眼鏡天使 「ちゃんと、帰れるのね」


死神メイド 「…………」


眼鏡天使 「何とか言いなさいよ……」


死神メイド 「…………」


眼鏡天使 「…………」


81 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/14(木) 17:23:02.73 ID:r9qV2pMn0


眼鏡天使 「……あら?」


死神メイド 「…………」


眼鏡天使 「あそこの道……」



タッタッタッ



死神メイド 「…………」


眼鏡天使 「白い石道、道端に咲くハゼラン」

眼鏡天使 「この坂、ところどころ崩れて途切れている壁、風のにおい……」

眼鏡天使 「間違いない」


死神メイド 「…………」


眼鏡天使 「ここ、私の故郷の道……!」


82 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/15(金) 07:00:26.90 ID:lk0RnJWg0



眼鏡天使 「どういうこと、どうしてここに私の故郷が……」

眼鏡天使 「……あそこに見えるのは、昔倒れたガジュマルの木」


死神メイド 「…………」



ガンガンガンガン

ガンガンガンガン



眼鏡天使 「のんびりしたお昼前に響く、バケツを叩く音」

眼鏡天使 「庭のある家。庭にいるのは……」


声 『妹天使、眼鏡天使、あなた、早く帰ってきなさい。昼ご飯ができましたよ』


父天使 「わかったよ、ママ。ほら行こう」


妹天使 「うん……。ブランコ、まだまだできないね」


父天使 「いいさ、気長につくっていこう」




眼鏡天使 「……小さなころの妹と、お父さん」





83 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/15(金) 07:14:07.36 ID:lk0RnJWg0



眼鏡天使 「何よ、何なのよこれ……」


父天使 「眼鏡天使も、早くおいで」


妹天使 「お姉ちゃん、早く。あたしお腹すいたよ」



ガラッ



母天使 「もう、みんな何して……眼鏡天使、そんな遠くで突っ立ってないで早く入ってきなさい」

母天使 「今日は眼鏡天使の好きなハチミツのパンケーキなのよ」


妹天使 「あ、ずるぅいお姉ちゃんばっかり」


父天使 「ははは、昨日の晩御飯は妹天使の好きなものだったじゃないか」


眼鏡天使 「どうして……」

眼鏡天使 「どうしてここ、昔のままなのよ……」



84 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/15(金) 07:48:29.11 ID:lk0RnJWg0



眼鏡天使の家の前




……………


窓の向こうの眼鏡天使 『…………』


窓の向こうの天使一家 『…………』



アハハハハ…… 



死神メイド 「…………」

死神メイド 「町の住人になってすぐ、ときどき、こういうことがある」

死神メイド 「その人の幸せだった思い出、辛かった思い出」

死神メイド 「いろんなものが形になって、町のどこかに現れる」


窓の向こうの眼鏡天使 『…………』


死神メイド 「泣きながら嬉しそうに笑ってる」

死神メイド 「よかったわね、幸せな思い出で」

死神メイド 「気が済むまでひたるといいわ」


窓の向こうの眼鏡天使 『…………』


死神メイド 「すぐに他の人たちの思い出に埋もれて、消えてしまうから」



85 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2013/11/15(金) 09:12:25.45 ID:lk0RnJWg0


淫魔幼女のアイテムメモ



017854番

糸巻きと赤いリボン



装備しておけば特定の町へ行くことができる、2つで1組のアイテム。

製作者は分からない。

糸巻きは、ダンジョンなどからの脱出に使われているアイテムに特殊な加工を施したもの。

リボンは効果を発動すると失われてしまう。

珍しいアイテムだが数は多く、知識があればわりと簡単に手に入る。

持ち主に不幸を運ぶと言われることもある。


86 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [sage saga]:2013/11/15(金) 09:14:11.56 ID:lk0RnJWg0
眼鏡天使「死神に糸巻きを貰って店を出たら、知らない街角だった」

おわり
87 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2013/11/15(金) 09:31:18.36 ID:lk0RnJWg0



黒天井の町? 魔物用宿屋



??? 「ひゃられ〜、店員酒もっれこ〜い」


人狼 「おい天使もどきの姉ちゃん、もうやめときなよ。朝からずっと飲んでんじゃねえか」

人狼 「顔真っ赤だし、目だって渦巻いてるぜ」


眼鏡天使 「うるひぇいうるひぇい!」

眼鏡天使 「病気の親を治すどころか看取ることもできない。帰ることもれきない」

眼鏡天使 「へんちくりんな町に命とられて、一生どこにも行くことができない」

眼鏡天使 「こりが飲まずにやっれられまひゅかっれのよ」

眼鏡天使 「うぃ〜、ひっく」


88 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2013/11/15(金) 16:56:41.79 ID:lk0RnJWg0



宿オーク 「今日も相変わらずだなあ、死神メイドの連れてきた天使は」


死神メイド 「思い出にひたることが出来なくなって」

死神メイド 「かわりに酒びたりの日々」

死神メイド 「今日でもう7日目ね」


宿オーク 「うーん、こう毎日続くとなあ……」


89 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2013/11/15(金) 16:59:04.55 ID:lk0RnJWg0



遺跡探検闇騎士 「むふぅっ、大人っぽくもあどけない真面目そうな顔に反して、フェロモンムンムンわがままおねだりボディな眼鏡天使が」

遺跡探検闇騎士 「薄く清楚な服の胸元をはだけさせ、耳まで赤くして熱っぽく目をトロンとさせて……た、たまらん……!」


墓暴き地獄戦士 「いけ、もっと前かがみになれ、そのままムニッと机に押し付けろ……!」


闇騎士 「…………!」


地獄戦士「…………!」


ムニッ


闇と地獄 「っしゃ、きたあぁぁぁあああああああ!!」


闇騎士 「服からこぼれそうな、剥きかけのみずみずしい肉の果実!」

闇騎士 「ムニッと潰れた特大やわらかメロン、この闇騎士の眼にいただいたわぁぁああああ!!」


地獄戦士 「やわらかいながらなんという重量感、密度感! 潰れてあの大きさとは!」

地獄戦士 「そして乗っかっている体を押し返そうかというあのはち切れんばかりの弾力感!」

地獄戦士 「ええい、もっと近くで見るぞ! 素晴らしいワキ乳が見られるに違いない!」


野郎共 「ヌオオオオオオオ」

野郎共 「ウオオオオオオオオ」



宿オーク 「……変な噂がたって、変態的な客足が増えたのはいいのか悪いのか」


死神メイド 「いいんじゃないかしら」

死神メイド 「トイレがイカ臭くなったこと以外は」

90 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2013/11/15(金) 17:19:09.80 ID:lk0RnJWg0


宿オーク 「しかし、このままにしといていいのかい。あの子の酒代、お前の給料から引いてるけど」

宿オーク 「一番安いとはいえ、もうかなりの額になっとるよ」


死神メイド 「いいの」

死神メイド 「どうせ私、一生ここ以外で働くつもりはないから」

死神メイド 「どれだけタダ働きになっても大丈夫」


宿オーク 「そう言うならいいんだけども……」

宿オーク 「ずいぶんと肩入れするじゃないか」

宿オーク 「お前は執着すると加減を知らないところがあるから、不思議ではないけれども」


死神メイド 「当然よ」

死神メイド 「…………」

死神メイド 「私とあの人、友達だもの」




91 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2013/11/15(金) 17:32:13.46 ID:lk0RnJWg0


宿オーク 「そいつぁ……初耳だなあ」


死神メイド 「私が糸巻きとリボンを渡してこの町に誘ったら、ちゃんと来てくれたわ」

死神メイド 「私のお気に入りの場所を案内したら、ちゃんとついてきてくれたわ」

死神メイド 「そうそう、朝、起こしてあげたりもしたわ」

死神メイド 「こんなこと、友達でもなければしないでしょう」


宿オーク 「……うーん」

宿オーク 「疑いたくはないけど、何か変なことはしていないだろうね」


死神メイド 「してないわ」

死神メイド 「あの人と友達になれたらいいなと思いながら」

死神メイド 「過ごしていただけ」


宿オーク 「……うーん」



92 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2013/11/15(金) 20:44:53.00 ID:lk0RnJWg0


眼鏡天使 「スピ〜、スピ〜……うーん、ムニャムニャ……」

眼鏡天使 「ぐへへ、エクスカリバー……」



宿オーク 「ああいう子と友達になりたかったのかい」


死神メイド 「さあ」


宿オーク 「さあ、て……」


死神メイド 「ふと立ち読みした本を思い出して、友達が欲しいなと思ったら」

死神メイド 「初めにあの人が見えたの」


宿オーク 「……うーん」


93 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2013/11/15(金) 20:55:33.85 ID:lk0RnJWg0



??? 「眼鏡天使……眼鏡天使……」


眼鏡天使 「うぅん……お母さん、ごめんなさい……」


??? 「眼鏡天使、眼鏡天……すみませんバケツと叩くもの貸してもらえます?」


???B 「どうぞ」


…………


ガンガンガンガンガンッ

ガンガンガンガンガンッ



眼鏡天使 「!?」



94 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2013/11/15(金) 21:03:10.22 ID:lk0RnJWg0


母天使 「まったくあんたって子は。こんなとこでそんなだらしない格好で寝てたら、迷惑になるでしょう」


眼鏡天使 「お、お母さん!」

眼鏡天使 「あ、なんだ夢か。うふふ、久しぶりに夢を見て……」


母天使 「ほらほら、また寝るんじゃないの」



ガンガンガンガンッ



眼鏡天使 「!?」

眼鏡天使 「お母さん!?」



95 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2013/11/15(金) 21:12:03.68 ID:lk0RnJWg0


母天使 「はいはいそうよ、本物のあんたのお母さんよ」


眼鏡天使 「い、生きてる……。え、なんで? どうしてこんなところに?」


死神メイド 「…………」

死神メイド 「はい、水」


眼鏡天使 「あなた……! あなたがまた何かしたの!?」


死神メイド 「そう」

死神メイド 「あなたがこの町に来る少し前に」

死神メイド 「糸巻きとリボンを、渡したわ」




96 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2013/11/15(金) 21:46:55.98 ID:lk0RnJWg0


母天使 「ほんと、不思議なこともあるものねえ」

母天使 「ここに来て糸巻きを投げ捨てたら、みるみるうちに病気がよくなって」

母天使 「死にかけだったのが走り回れるようになれるんだもの」


死神メイド 「命が身体を離れてこの町と同化すれば、病気も同じように身体から離れて行くわ」

死神メイド 「一生ここから出られなくなるけど」


97 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2013/11/15(金) 21:59:20.75 ID:lk0RnJWg0


眼鏡天使 「な……な………じゃあ、どうして早く……」


死神メイド 「あのとき言ったじゃない」

死神メイド 「お母さんに会わせてあげるって」

死神メイド 「でも、あなたが運良く自分の思い出に出会ったから」

死神メイド 「後にすることにしたの」

死神メイド 「とても珍しいのよ」

死神メイド 「ものすごく広い町だから、自分の思い出に出会うなんて」


母天使 「その間ぼけっと待っているのもアレだから、私は町を見て回ることにしたんだけど」

母天使 「久々の健康な身体が思いのほか楽しくて、気がついたらこんなに時間がたっちゃってたのよ」

母天使 「本当に広いのねこの町。300年暮らしているって人から聞いたんだけど、誰も全容を知らないんですって」

母天使 「故郷に帰れないのは寂しいけど、私、この町が気に入っちゃった」


死神メイド 「よかったわ、眼鏡天使のお母さま」


母天使 「あらあら、そんなにかしこまらないで。あなたは私の命の恩人なんですから」


死神メイド 「わかったわ。お母さん」


母天使 「あらあらお母さんだなんて。かわいい子が増えてうれしいわ」


眼鏡天使 「…………」


98 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2013/11/15(金) 22:06:40.14 ID:lk0RnJWg0


眼鏡天使 「…………む」

眼鏡天使 「ムッキィィィィィーーーーッ!!」


野郎共 「!?」


死神メイド 「?」


母天使 「?」


99 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2013/11/15(金) 22:16:40.77 ID:lk0RnJWg0


眼鏡天使 「何なのよこれ!」

眼鏡天使 「何だってのよこの茶番は!」

眼鏡天使 「ふざけないでよ! 私は帰りたいわよ! こんなミョウチキリンな町なんてまっぴらよ!」

眼鏡天使 「私を元の生活に戻しなさいってのよぉーーーーッ!」


ジタバタジタバタ ワッショイワッショイ


母天使 「あらあらあんた、そんな格好でバカ踊りしたら」


死神メイド 「こぼれるわ」


ポロッ プルルンッ


眼鏡天使 「!」


クソ野郎共 「!!!!?」


ウオオオオオオオオオーーーッ


眼鏡天使 「………い」

眼鏡天使 「いーーーーーーやぁああーーーーー!!」



100 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2013/11/15(金) 22:19:25.17 ID:lk0RnJWg0


キャーキャー ワーワー

ウオオオオオオオーーーッ



宿オーク 「…………」

宿オーク 「……………うーん」


101 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2013/11/15(金) 22:21:32.78 ID:lk0RnJWg0


死神メイド 「天使に糸巻きをあげて何やかんやしたら、友達ができた」

おわり
102 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2013/11/15(金) 22:30:53.83 ID:lk0RnJWg0
やったー終わらせられたよー楽しかったよー。
SS速報VIPがイカくっさいトイレを掃除するメイドのSSで溢れかえる日まで、
がんばってSSをかいていこうと思いました。おわり。
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/16(土) 07:58:40.35 ID:Tbu4HMWdO
おつ
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