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漫(洋榎先輩の唐揚げにレモン掛けとこ)プシャァァァッ - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/22(日) 17:22:50.31 ID:a9bUlmQb0
このスレは洋榎「次鋒戦と副将戦が無くなるんやて」≠フ続きになります。


【閲覧注意】
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【前スレ】
洋榎「次鋒戦と副将戦が無くなるんやて」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1369647348/


【関連スレ】
咲「次鋒戦と副将戦、無くなっちゃうんですか?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1365240742/
玄「次鋒戦と副将戦が無くなりますのだ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1366523589/


【前スレのあらすじ】
突然、校舎の屋上に呼び出された、姫松高校麻雀部のレギュラー5人。
そこで監督代行である郁乃に、2人がレギュラー落ちすると唐突に告げられた。

詳しい事情も説明されぬまま、成り行きで話が進んで行く中、
やがて彼女達はレギュラー落ち=死≠ニいう驚愕の事実を知らされる。
更にその死≠ニは、残酷な処刑≠ノよって齎されるモノであると……。

洋榎の妹である絹恵と、その友人である漫がレギュラー落ちし、
皆の目の前で拷問の様な仕打ちを受けながらその命を落とした。

妹の無残な最後を間近で見せられ、心が壊れた洋榎だったが、
とある人物の協力によって、絹恵の処刑手前にタイムリープする。

洋榎は絹恵に課せられた死の運命を回避すべく奔走し、
何とか絹恵を死神の魔の手から救い出す事に成功した。

だがそれは、凄惨な死≠別の誰かに肩代わりさせる事でもあり、
本来助かる運命にあった由子が、絹恵の代わりに処刑される事となった。

そして今、由子の処刑が始まろうとしている……。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1387700570
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part6 @ 2024/03/16(土) 18:36:44.10 ID:H9jwDXet0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1710581803/

昔、スリに間違えられた @ 2024/03/16(土) 17:01:20.79 ID:TU1bmFpu0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1710576080/

さくらみこ「インターネッツのディストピアで」星街すいせい「ウィキペディアね」 @ 2024/03/16(土) 15:57:39.74 ID:7uCG76pMo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1710572259/

今日は月が……❤ @ 2024/03/14(木) 18:25:34.96 ID:FFqOb4Jf0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1710408334/

どうも、僕は「げじまゆ」をヤリ捨てた好色一代男うーきちと言います!114514!! @ 2024/03/14(木) 01:23:38.34 ID:ElVKCO5V0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1710347017/

アサギ・とがめ・新生活! @ 2024/03/13(水) 21:44:42.36 ID:wQLQUVs10
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1710333881/

そろそろ春だねー! @ 2024/03/12(火) 21:53:17.79 ID:BH6nSGCdo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1710247997/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part5 @ 2024/03/12(火) 16:37:46.33 ID:kMZQc8+v0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1710229065/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/22(日) 17:24:19.91 ID:c0edZ4OBO
立て乙
スレタイェ…
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/22(日) 17:46:42.58 ID:oH1lt2CTo
どうしてこうなった>スレタイ
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/22(日) 18:05:16.81 ID:a9bUlmQbo
==============================
STEP-1(抜歯・切り落とし)
上前歯 下前歯 右手指2本 左手指2本 右足指2本 左足指2本
==============================


モニター画面のステップ1部分に書かれている文字が光りだす。
けれども、左手指2本≠フ文字だけは何故か暗くなっていた。


洋榎「まだ何もしてへんのに、左手指2本≠フ部分、暗くなっとるけど?」

黒服「真瀬様は指切り勝負にて、既に左手の指2本を失っています」

黒服「ですから、左手の指はこれ以上切らなくても結構ですよ」

洋榎「……なるほどな。了解した。」


洋榎「それともう1つ……この青いチューブの薬に関する事なんやけど……」

洋榎「これも、うちが好き勝手自由≠ノ使って問題は無いか?」


黒服「……? 構いません、どうぞお好きな様にお使いください……」


黒服に確認を取り、洋榎は青の薬を持って絹恵達の方へと歩いて行く。
座っている漫と絹恵の前で自らもしゃがみ込み、チューブの蓋を外した。


由子「ちょ、ちょっと洋榎……何してるの……?」

洋榎「絹、手首の傷口こっちに出し。今薬塗ったる……」

漫  「はっ……!?」

絹恵「えっ……? で、でもそれ……」

洋榎「ええから、はよ見せぇや!」


洋榎は絹恵の左腕を無理矢理に引っ張る。


洋榎「最初は痛いかもしれへんけど、塗り終わるまで我慢しぃや……」

由子「ちょっと! 何してんのよ!? それ私の薬でしょ!?」

絹恵「んぐっ……! ん゛ん゛ん゛ッ ッ ッ ……!」


由子の言葉を無視し、洋榎は絹恵の手首の断面に薬を塗り込む。
次に絹恵の上服を少し脱がし、左肩の刺し傷部分にも薬を塗った。


郁乃「なんや洋榎ちゃんの奴、貴重な痛み止めの薬を絹恵ちゃんに使いよったで!」

郁乃「なんっちゅう鬼畜! それ完全に使い方間違っとるやろ! ハハハハハッ!」


恭子「自分でも足りないゆうてたのに……何でそないな事を……!」

由子「あぁ……そんな……」


絹恵の手当てを終えた後、洋榎は更にその薬を漫の顔の痣に塗ろうとする。


漫  「う、うちは平気ですから……」

洋榎「黙れ漫。うちのやり方に口出しするなゆうたろ。」

漫  「……っ」


洋榎は強引に漫の顔にクリームを塗り始めた。


由子「うぅ……私の……薬……」
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/22(日) 18:24:59.16 ID:FkW5CcpHo
想像以上だったわ
主将こえええ
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/22(日) 18:35:54.11 ID:a9bUlmQbo
洋榎「……どや? もう痛くないやろ?」

絹恵「う、うん……」

漫  「はい……」

由子「私の……私の……」


絹恵と漫は申し訳無さそうな顔で由子の様子を横目で窺う。
由子は虚脱した目をしてブツブツと小声で何かを呟いていた。


洋榎「ちと使い過ぎてもうたか……?」


適量が分からず、かなり多めに塗った所為か、
チューブの中身は既に半分程が無くなっている。


黒服「そうですね……。それほど塗らずとも、十分な効果は得られた筈です」

洋榎「……なら塗ってる時にそう言ってくれや」

黒服「申し訳ございません……。予想外の行動に驚いてしまいまして……」

洋榎(驚く……か……。機械の癖にそういう感情はあるんやな……)


洋榎「なぁ黒服……。1つお願いがあるんやけど……」

黒服「お願い……ですか……?」

洋榎「この処刑のステップ1……飛ばさせて貰えんやろか……?」

黒服「……その理由をお聞かせ願えますか?」

洋榎「今、由子は身体の自由を奪われとるけど……」

洋榎「その状態でも、指や口は動かす事が出来る……」

洋榎「歯を抜く時に口を閉じられたり、右手の指を切る時に手を閉じられたり……」

洋榎「そういった抵抗をされたら、手間が掛かって難儀やないか……」

洋榎「うちの右手……今こんなやしな……」


洋榎は表面が黒く炭化した右手の平を黒服に見せた。


黒服「…………」


黒服は洋榎の左手に握られている青いチューブを凝視している。


郁乃「ふんふむ、なるほどなるほど、まぁええんとちゃうか?」

郁乃「さっきの指切りと大差無い部分やしな。ステップ1なんぞ、所詮は余興よ」

郁乃「時間節約にもなるし、それ位は許してやっても構へんやろ。なっ、黒服?」

黒服「……そうですね。では、洋榎様のその提案を受け入れましょう……」


ステップ1部分の文字が暗くなり、ステップ2部分の文字が明るくなった。


==============================
STEP-2(切り落とし・削ぎ落とし)
鼻 右耳 左耳 上唇 下唇 右頬 左頬
==============================


洋榎「感謝するで黒服、それに代行……」

郁乃「ええってええって。その代わり、最高の解体ショー≠見せてくれな?」

洋榎「あぁ……勿論そのつもりや……」ゴゴゴゴゴッ......
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2013/12/22(日) 18:52:30.76 ID:3axG5eM90
スレ立て乙。今回も期待してます。
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/22(日) 19:23:30.72 ID:+seKplEVo
立て乙です
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2013/12/22(日) 22:43:01.48 ID:ZLtwYzFB0

大いに期待
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/22(日) 22:52:19.30 ID:hWfPLiGa0
すれ立て乙なん
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/23(月) 23:29:05.67 ID:OtYZmBR7o
郁乃は上機嫌で自分の口周りに付いた血を舌で舐め取っている。
洋榎は荷台に近付いて行き、使用する解体道具の吟味を始めた。


洋榎「…………」


並べてある道具の1つ1つを手に取り、様々な角度から念入りに確認する洋榎。
悩んだ末、洋榎が最終的に選んだのは、刃渡り15cm程ある諸刃の短剣だった。


洋榎「……これがええかな。」

郁乃(ダガーナイフか……。まずは鼻と耳を切り落とすつもりやな……)


洋榎は僅かに残った右手の握力でその短剣を握り、
不可視の鎖によって囚われた由子の目の前に立つ。

そこで洋榎は青いチューブのクリームを短剣の両刃に塗り始めた。


黒服「…………?」

恭子「短剣に薬を……? なぜ……?」

漫  「洋榎先輩……なに考えて……」

郁乃「ハハハッ! 洋榎ちゃん何しとんねん! それ塗る場所ちゃうやろ!」

由子「やめて……それ以上……薬を無駄遣いしないで……!」

洋榎「…………」


だが洋榎は無言で薬を全て搾り出し、空になった青のチューブを投げ捨てた。


由子「痛み止めが……全部……無くなって……」


郁乃「イヒヒヒヒッ……! ゾクゾクするわぁ……!」

郁乃(洋榎ちゃんは真瀬ちゃんに痛み止めの恩恵を与えんつもりの様やな……)

郁乃(理由はどうあれ絹恵ちゃんを生贄にせんと動いた訳やし、怨むんは当然か)

郁乃(それでも短剣に薬を塗り込んだんは、最後の慈悲っちゅう奴か?)

郁乃(鼻や耳を切り落とす際、あの刃に塗られた薬が傷口にも付くやろし……)


由子「どうして……どうしてそないに酷い事するのよぉ……」


由子は全身を震わせ、涙を流しながら洋榎に言った。


由子「私が……絹恵ちゃんを最下位にしようとしたから……?」

由子「その所為で……絹恵ちゃんが痛い思いしたから……?」

由子「それで私に仕返ししようゆうの……? ねぇ、そうなんでしょ……!?」


洋榎「…………」


由子「だって……私やて怖かったんやもん……」

由子「最下位になったら……殺されるかもしれへんて……」

由子「そう思ったら……怖くて怖くて堪らなかったんやもん……!」

由子「ごめんなさい……ごめんなさい洋榎……お願いよ……もう許して……っ!」


洋榎「…………」

洋榎「……そんなん関係無いわ。」
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/25(水) 02:53:56.47 ID:FBpqMPH5o
洋榎「由子……お前は1つ大きな勘違いをしとる……」

由子「勘……違い……?」

洋榎「なぁ……お前にとって、あの青いチューブはなんや……?」

由子「何って……痛みを抑え苦しみを減らす為の薬でしょ……?」

洋榎「そう思うんが普通やな。けど、その考え自体が根本的に間違っとるんや……」

由子「……?」


洋榎「そもそも、青のクリームは絶対的に量が足りん……」

洋榎「どないに節約したとしても、ステップ4か5辺りまでが関の山……」

洋榎「そしてそれこそが、この処刑に於ける最大の味噌≠ネんや……」


由子「それ……どういう意味なの……?」

郁乃「んん……? 洋榎ちゃんの奴、なに言ってん?」

黒服「…………」


洋榎「強力な痛み止めの効果を持つ、青のチューブに入ったクリーム……」

洋榎「一見して救いの糸に見えるその薬にも、隠された裏の意図がある……」

洋榎「この薬が徐々に減っていく様を見せられ、お前はさぞ恐怖する事やろう……」

洋榎「もしも、青いチューブのクリームが全部無くなってもうたら……」

洋榎「その後はどれ程の苦痛を味わう事になるんやろう、とな……」


洋榎「刹那的な希望を演出する事で、絶望との落差≠広げ……」

洋榎「それは薬が失われる事への恐怖心を何倍にも増大させる効果を狙っとる」

洋榎「序盤中盤のステップに於いて受けた薬の恩恵が大きければ大きい程……」

洋榎「それに比例して、薬が使い果たされる事に対する恐怖もまた大きくなる」

洋榎「あの薬は生贄を希望から一転、絶望の奈落へ叩き落とす為に用意された罠や」


洋榎「黒服が何故ステップ1を飛ばす許可を出したか分かるか……?」

洋榎「お前を憐れみ同情したからか? 代行にそうするよう促されたからか?」

洋榎「どれも違う。その方がお前がより苦しむと、黒服自身がそう判断したからや」


洋榎「お前の心をより青いチューブの薬に依存≠ウせる為には……」

洋榎「その痛み止めの効能を、最大限にまで体感させる必要があった……」

洋榎「ところが、想定外の使用法で処刑前から大量に薬を消耗してもうたから……」

洋榎「比較的苦痛の少ない序盤で薬が尽きる可能性すら出てきてしもた……」

洋榎「うちがお前の傷口に塗る薬の量も、黒服は予測困難やった筈や……」

洋榎「せやから安全策≠ニして、最初の一番楽な部分をカットしたっちゅう訳や」


由子「序盤は苦痛が少ないですって……? そんなん嘘よ!」

由子「ステップ2の時点で、もう最高クラスの拷問でしょ!?」


洋榎「うちらから見ればそうかもしれへん……」

洋榎「けどな、黒服にはそれが分からんかったんや……」


由子「…………?」
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/25(水) 03:03:52.63 ID:FBpqMPH5o
洋榎「黒服の奴は、この処刑凌≠フ趣旨を機械的≠ノ理解してるに過ぎん」

洋榎「嬲り殺し=Bステップが進めば進む程、その責め苦は激しさを増す……」

洋榎「即ち、より致命的でより苦痛を伴う部位の解体は後半に行われる、と……」


洋榎「実際にそれが正しいか否かは、黒服にとってどうでも良い℃魔ネんや」

洋榎「どの部位の解体がどれ程の苦痛か、その順位を検証する意味が奴には無い」

洋榎「何故なら黒服は、ただマニュアル通りに処刑を執行するだけやからや」

洋榎「故に、黒服の中にある序盤は楽で終盤はキツイという図式が変わる事は無い」

洋榎「だからこそ、序盤で痛み止めが無くなる事を恐れうちの提案を受け入れた」


黒服「…………」

郁乃「そうなん?」

黒服「……肯定します。」

黒服「洋榎様の仰られる通り……」

黒服「ステップが進むに連れ解体の苦痛は増すと、私はそう解釈しております」

黒服「ステップ2と以降のステップで受ける痛みの比較などは行っておりません」


黒服「洋榎様の提案を受け入れた理由も、まさしくその通りであります」

黒服「彼女の想定外な行動によって生まれた計画のズレ≠修正する為……」

黒服「ステップ1を飛ばし、序盤に於ける痛み止めの消費を抑え様としたのです」


洋榎「だが結局の所、痛み止めが不足する事実は変わらない……」

洋榎「かくして中盤、青の薬が無くなったその時、お前は必ず絶望に追い込まれる」

洋榎「恐怖心が最高潮に達するここからが、本当の処刑≠フ始まりなんや……」


由子「本当の……処刑……?」


洋榎「せや……」


洋榎「青の薬が無くなった場合、黒服が赤の薬を使って止血するゆうたろ?」

洋榎「それはつまり、お前を失血死≠ウせるつもりは無いゆう事なんや……」


洋榎「人間の手足を根元から切断すれば、相当量の出血が起こる……」

洋榎「例えこの止血剤を以ってしても、素人にどうにか出来るとは到底思えん」

洋榎「そこで、出血が激しい後半はプロ≠ェその処置を担当すると……」

洋榎「逆に終盤まで青の薬が残っとったら、それはそれでまた困る訳や」


恭子(薬の量1つに、これほど深い意味があったやなんて……)


洋榎「最後の最後まで命を奪わず、最高の恐怖と共に痛みと苦しみを与え続ける」

洋榎「この処刑を考えた奴は、ホンマ性根の腐ったクソ野郎やで……」
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/25(水) 23:02:38.98 ID:FBpqMPH5o
郁乃(洋榎ちゃんのゆうてる事はそれなりに的を射とる……)

郁乃(せやけどその話、色々と矛盾しとらんか……?)


由子「で、でも……!」

由子「序盤に青の薬が無くなったら、それはそれで絶望的じゃない!」

由子「痛み止めが無い状態で残り沢山の部位を切り刻まれるんやから……!」

由子「私は物理的な痛みが少なくて済むのなら何でも構わないわ!」

由子「私は……精神的苦痛より肉体的苦痛を受ける方が嫌やもの……!」


郁乃(真瀬ちゃんのゆう通りや。肉体的痛みに勝る苦痛なんぞこの世に無いわ)

郁乃(洋榎ちゃんは自分が処刑の苦しみを軽減させた風な事をゆうとるけど……)

郁乃(どう考えても、貴重な存在である青の薬を無駄にするんは有り得んやろ……)

郁乃(しかも痛み止めを罠と言い切っておいて、何故ダガーにそれを塗った……?)

郁乃(違和感が警鐘を鳴らす……。何か仕掛けよるつもりか? 愛宕洋榎……ッ!)


黒服「…………」


郁乃(黒服達に動きは無い……。私の思い過ごしやろか……?)

郁乃(奴らは処刑を定められた手順通り忠実に完遂させる義務を負っている……)

郁乃(洋榎ちゃんが何らかの手段で処刑を妨害せんと企てているのであれば……)

郁乃(黒服達は全力を以って計画遂行の障害となる存在の排除に掛かる筈や……)

郁乃(洋榎ちゃんを泳がせとるっちゅう事は、その兆候が見られんゆう事やし……)

郁乃(あの子はこのまま素直に真瀬ちゃんの処刑執行を開始……する……?)


洋榎「そうか……そうかもしれんな……」

洋榎「肉体的苦痛を最小限に抑えられるなら、それに越した事は無い……」


それまで冷静な口調でただ淡々と語っていた洋榎の声が突然揺らぐ。
悲嘆の表情を浮かべ、その優しい眼差しからは涙が溢れ出していた。


洋榎「大丈夫や由子……。うちがお前のその願いを叶えてやる……」

洋榎「うちが責任を持って……今、お前に安らかな死を与える……っ!」


郁乃「っ!? あかん黒服! 洋榎ちゃんを止めろ!!」

黒服(馬鹿な!? 今までバイタルに不自然な変化は全く認められなかったのに!)

黒服(我々に気付かれぬよう感情を制御し、密かに期を窺っていたと言うのか!?)

黒服(ハッ……! 愛宕洋榎がステップ1を飛ばすと提案して来た本当の狙い……)

黒服(殺傷能力が高いあれを手にしても疑念を抱かれずに済むと考えたからでは?)

黒服(鼻や耳を切り落とす場合、その道具の選択は最適解とも言える。つまり……)


郁乃「何ボケッとしてるんや! はよ洋榎ちゃんを取り押さえんか!」

黒服(今は思考に耽っている場合ではない! 彼女の行動を止めなければ……!)


だが、その一瞬の隙は洋榎が目的を果たすのに十分な時間を与えた。
洋榎は自身の胸の辺りに短剣を構え、由子の心臓目掛けて突進した。


黒服(速い……間に合わない……っ!)
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/25(水) 23:27:17.28 ID:FBpqMPH5o
グサッ……


由子「 う゛っ …… ! 」


恭子「っ!?」

漫  「なっ!」

絹恵「あっ!」

郁乃「なん……やと……?」


洋榎「すまん……由子……」

由子「んぐっ……」


胸に刃を深々と突き刺した後、洋榎はグッとそれを大きく動かした。
それによって気管が損傷を受けたのか、由子の口から一筋の血が流れ出す。
悲鳴を上げる間も無く、彼女は眠る様に静かにゆっくりと瞳を閉じた。

次の瞬間、洋榎は黒服によって地面に組み伏せられた。
うつ伏せ状態にさせられ、後ろ手に両手を掴まれている。


郁乃 「くそ、抜かったわ! 黒服、真瀬ちゃんの容態は!?」

黒服2「心拍停止、脈拍ゼロ。呼吸音無し。睫毛反射・対光反射共に消失」

黒服3「真瀬様の死亡を確認しました。傷口の形状から見て、恐らく即死でしょう」

黒服 (心臓を一突きか……。やられた……完全に……)


郁乃「おのれ洋榎ぇぇぇぇっっっっ!!!」

郁乃「これがお前の言う最高のショーか! ふざけるんも大概にせぇやゴラァッ!」


ご機嫌だった郁乃の様子が急変し、怒気に満ちた形相で洋榎を睨み付ける。
そんな郁乃をまるで嘲笑うかの様に、洋榎は口元に薄っすらと笑みを浮べた。


郁乃「黒服っ! これは私らに対する明らかな反逆行為やろ!」

郁乃「こいつの所為で真瀬由子は死んだ! 処刑による苦しみを受けずにや!」

郁乃「許されざる暴挙! よって、愛宕洋榎に厳しい制裁を加える事を所望する!」


黒服「これは明確なルール違反です。よって、赤阪様の要求を承認致します」

黒服「洋榎様、貴女には肉体的苦痛を以って、その罪を償って頂きますよ……?」

郁乃「泣いて謝っても絶対に赦さへんからな! 覚悟せぇよ洋榎ッ!」


洋榎「罪やと? 笑かすなボケがっ! お前らの様な腐れ外道に言えた台詞か!」

洋榎「仮にそれがうちにあるとすれば、それはお前らやなく由子に対する罪……」

洋榎「贖罪を求める権利があるんは、うちがこの手で殺めたあいつだけや!」

洋榎「お前らの様なゴミクズ風情に謝罪する気なんぞ更々無いわ!」

洋榎「拷問でも何でもすればええ。けど、暴力でうちの心を支配できると思うな!」


郁乃(ぎぎぎっ……! こいつ、私が一番嫌いなタイプの性格しとるわ……)

郁乃(真っ直ぐで純粋でへこたれん、芯の通った勇者気質≠ネ奴……!)

郁乃(ここで痛め付けても、真瀬に対する詫びやゆうてその償い気取りそうやし……)

郁乃(だが図に乗んなや……。私やて、お前の弱点くらい把握してるんやで……?)

郁乃「なぁ黒服、この罪の償いは絹恵ちゃんにして貰おうや……」ニタァ......
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/12/26(木) 02:48:20.90 ID:0PWnR49w0
愛宕ネキカッコイイ
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/26(木) 04:57:50.90 ID:/724n//Jo
流石ネキ、格が違うわ テノヒラクルー
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/28(土) 01:10:01.40 ID:Gr3AJ8JMo
洋榎「っ!?」

絹恵「っ!!」ビクッ


立方体の金属棒と由子の身体に嵌められた黒い輪の輝きが失われてゆく。
見えない鎖から解き放たれ、由子の亡骸はドサッと地面に崩れ落ちた。
衝撃で瞼が僅かに開き、光を失ったその瞳は偶然にも絹恵に向けられた。


恭子「絹恵ちゃんに……何する気や……!?」

郁乃「何するって、そらもう痛い痛い悶絶必死のお仕置きをやなぁ……」

漫  「な、なんで絹ちゃんを……っ!」

郁乃「だってぇ〜……洋榎ちゃん直接シバいても、こいつ絶対反省しないやろ?」

郁乃「せやからな、洋榎ちゃんの一番大切にしとるもんをグチャグチャに壊して……」

郁乃「その罪の重さを、己の愚行が如何に悲惨な結果を招いたか思い知らせたるんや」


郁乃は由子の処刑に使用される筈だった道具達をあれこれと弄りながら呟く。


郁乃「まず手始めに舌を切り、次にその綺麗で可愛らしい目玉を刳り貫く……」

郁乃「真瀬ちゃんに出来んかった人間解体を絹恵ちゃんの身体で再現するんや……」


洋榎「くっ……!」

恭子「絹恵ちゃんで……人間解体を……再現……?」カタカタカタ......


郁乃「心配はいらん、殺すまではせんよ。まだ死んでもろたら困るからな」

郁乃「ただちょこっとばかし絹恵ちゃんの肉体で遊ばせて貰うだけやて……」


郁乃「この私のやり方に文句はあるか? 黒服……」ギロッ

黒服「……いえ。絹恵様が命を落とす様な事が無ければ、特に問題はございません」

洋榎「っ!!」


郁乃「クククッ……。馬鹿な姉の不始末を、妹がその身を犠牲にして償う……」

郁乃「これぞまさに美しき姉妹愛≠竄ネいか! せやろ? 洋榎ッ!」

郁乃「さぁさぁ黒服共、絹恵ちゃんを私の前まで連れて来い!」

黒服2「御意。」

黒服3「御意。」


郁乃の命を受け、絹恵の方へ歩き出す黒服達。
次の瞬間、洋榎が漫に向かって大声で叫んだ。


洋榎「漫っ……! うちを生贄にすると宣言しろ! 今すぐに!」


恭子「っ!?」

絹恵「っ!!」

漫  「えっ!?」

洋榎「お前には2人目の生贄を誰にするか決める決定権がある!」

洋榎「その権限を以って、うちを生贄に指名するんや! 早く……ッ!」


漫  「そ、そないな事……急に言われても……」

漫  (うちが……洋榎先輩を……生贄に……指名する……?)ドクン......
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/28(土) 01:58:55.54 ID:Gr3AJ8JMo
黒服に押さえ付けられながらも、漫に2人目の生贄選択を急き立てる洋榎。
どうして彼女がそれ程までに事を急ぐのか、その詳しい理由は分からない。
けれど、それがこの切迫した状況を打破する為に必要なのだと漫は即座に理解した。

が、その必要性を認識した所で、即行動に移せるほど漫の心は強くなかった。
例えその選択が正解≠ナあると分かっていても、割り切る事の出来ぬ弱さ。


上重様の選択次第で絹恵様の命を救う事も可能となります


漫  (うちが2人目の……最後の生贄を選ぶから……)

漫  (他の誰かを犠牲にする事で、絹ちゃんの命は確実に救えると……)

漫  (せやけど、その為に絹ちゃんの一番大事な人を殺すやなんて……っ!)


漫  (これまで洋榎先輩のゆうてた事は正しかった……。恐らく今回もそう……)

漫  (2人目の生贄さえ選べば、きっと絹ちゃんは酷い事されずに済む……)

漫  (でも……そうやったとしても……うちには無理や……)


漫  「……できません」

漫  「洋榎先輩を生贄に選ぶやなんて……うちには出来ません……!」

洋榎「うちはお前を散々痛め付けたんやぞ!? その痛みをもう忘れたんか!」

漫  「それでも……! うちは洋榎先輩の本当の優しさを知ってますから……!」


洋榎「ならお前は誰を殺す!? 誰を生贄に選ぶ気なんやッ!」

漫  「っ!?」

漫  (だ、誰を殺すって……そんな……っ!)


洋榎「親友である絹か!? それとも、お前を一番可愛がっとった恭子か!?」


漫は洋榎の発言を聞き、怯えた様子で必死に首を横に振った。


洋榎「皆が助かる未来なんて存在せんのや! うちが自らそれをお前に示したろ!」

洋榎「お前は選ぶしかない! うちら3人の中から1人、処刑台に送る生贄を!」

洋榎「だがお前は決められんやろッ! せやから、うちを生贄にしろゆうんや!」

洋榎「この命を由子の元に捧げるんは、あいつを殺した事へのケジメであり義務!」

漫  「け、けど……」

洋榎「ここで選択を引き延ばしても、痛みを負う者が無駄に増えるだけなんや!」

洋榎「優しさの意味を履き違えるな! 今お前が決断せんと誰も守れんのやぞ!」

洋榎「絹を代行の魔の手から救えるんはお前だけ……お前しかいないんや……!」

洋榎「頼む漫……! 絹を守るって……うちの最後の願いを叶えてくれ……っ!」

漫  「…………っ!」ドクン......


甘い綺麗事抜かしただけで、誰かを救った気になるんやないで

如何に非情な選択肢であろうと、それしか無いなら迷わず選べ

うちの今の姿を見て、お前はその事をもっと深く理解しろ


その時、漫は全てを理解した。
あの時自分に向けられた洋榎の言葉は、今この瞬間の為のモノであったのだと。


漫  (うちは……今こそ……洋榎先輩の想いに応えな……っ!)
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/29(日) 03:23:42.36 ID:r+qUQxhlo
恭子…
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/29(日) 12:15:29.62 ID:JdnWyChg0
ヒロエの処刑きつくなりそう…
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/29(日) 15:19:14.56 ID:bbykNPnpo
由子からしてみれば結果的にはこの処刑が一番楽に[ピーーー]たわけか
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/12/29(日) 20:06:03.85 ID:7WB2HD9f0
誰かこれの元ネタ教えて〜
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/29(日) 20:31:35.73 ID:wC948bdzo
元ネタなんかあんの?
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/12/29(日) 21:03:51.38 ID:7WB2HD9f0
オリジナルってすげぇな
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/29(日) 21:04:23.02 ID:7WB2HD9f0
下げ忘れ
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/29(日) 22:05:16.92 ID:dMVE5Yg5o
咲-saki-
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/29(日) 22:37:07.07 ID:XYlCpEBao
漫  (ここで決断を渋っても、いずれ必ずもう1人の犠牲者を選ぶ事になる……)

漫  (そして絹ちゃんを助けるには、今この時に生贄を決める他無いとしたら……)

漫  (選択の余地は無い……! 綺麗事では誰も救えんのや……っ!)


絹恵「っ!?」


固く決意した顔で絹恵の方を見る漫。
絹恵はその表情から漫の考えを悟った。


絹恵「やめて漫ちゃん! お姉ちゃんを選ばないで! お願い!」

絹恵「そんなら私が……私がお姉ちゃんの代わりに生贄になるから……!」

絹恵「あっ!」


黒服が座っていた絹恵の髪の毛を引っ張り、彼女を郁乃の元へ連れて行こうとする。
掴み方が悪かったのか、絹恵が抵抗したからか、長く綺麗な髪は音を立て千切れた。
漫は黒服を止めようとするも、胸倉を掴まれ勢い良く投げ飛ばされてしまった。


漫  「ぐぁっ……! んぐぐっ……絹ちゃん……っ!」

洋榎「何しとるんや漫! 間に合わなくなってもええんか!?」

漫  「くっ……!」


恭子(このままやと洋榎が2人目の生贄として殺される……)

恭子(洋榎が死ぬ……? 嫌や……そんなん……絶対に嫌や……!)


漫  「洋榎先輩……ごめんなさい……うちは貴女を……」

恭子「待って漫ちゃん! うちを生贄にしてや!」

漫  「っ!? 末原先輩……!?」

洋榎「恭子っ!? お前なにゆうてんのや!? 何でお前が……っ!」


恭子「凡人のうちなんかとは違って、洋榎には世界へ羽撃ける天賦の才がある!」

恭子「天より授かりし類い稀なる才能を、こんな所で無駄に絶やすなど許されん!」

恭子「洋榎には輝ける未来が待っとる! せやから、生き残るべきは洋榎なんや!」


絹恵「駄目っ! 恭子ちゃんはお姉ちゃんと一緒に未来を生きて……っ!」

恭子「違うっ! 洋榎と共に生きるべきは絹恵ちゃんや! せやからうちを……!」


黒服に引き摺られながらも、姉を救おうと必死に訴える絹恵。
黙っていれば生き残れただろうに、自ら生贄を名乗り出た恭子。
自身を犠牲にしてでも洋榎を助けたいという強い想いが、漫の決断を鈍らせる。


漫  (うぅっ……洋榎先輩を指名するつもりやったのに……)

漫  (そないなこと言われたら……うちはどないすれば……)


恭子と絹恵の言葉が漫の心を揺さ振り、答えなど存在せぬ迷いの思考へと誘う。


洋榎「お前ら勝手な事を抜かすな! 漫っ! 2人の戯れ言に耳を貸すんやない!」

洋榎「考えるな! 考えたらあかん! 思考の泥沼に嵌まって抜け出せなくなる!」

洋榎「心を無にして、うちを生贄に指名すると決めた最初の判断に従え! 漫ッ!」


郁乃(…………)
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/12/30(月) 01:39:16.12 ID:2zYlJASco
郁乃(なんやこれ……)

郁乃(ここは相手を蹴落とさんとばかりに命乞い競争する場面やろが……)

郁乃(せやのに、どいつもこいつも悲劇のヒロイン気取りやないか……)

郁乃(くっさい三文芝居なんぞしよって……鼻がひん曲がりそうやわ……)

郁乃(真瀬ちゃんがあっさり死んだ事で処刑に対する恐怖心が薄まったか?)

郁乃(生贄を巡り仲間同士で口汚く罵り合いすんのも醍醐味の1つやったのに……)

郁乃(まぁええわ。その分、この制裁≠ナたっぷり楽しませて貰うからな……)


凶器が並んでいる荷台から錐を手に取り、獲物となる絹恵を待ち受ける郁乃。
もう少しで黒服が郁乃の前に辿り着くというその時、漫が生贄の名を宣言した。


漫  「洋榎先輩を……うちは洋榎先輩を2人目の生贄に指名します……!」

絹恵「っ!?」

恭子「っ!!」


絹恵「考え直して漫ちゃんっ! 私が……私が……っ!」

恭子「お願いやから取り消して漫ちゃん! 洋榎を死なせんでや!!」

漫  「何を言われようと、うちは考えを改める気はありません。ごめんなさい……」


声を震わせ、拳を握り締め、涙を流しながら俯く漫。


漫  (例え末原先輩に怨まれようとも……)

漫  (例え絹ちゃんに憎まれようとも……)

漫  (洋榎先輩の意見を尊重し、その意思を受け継ぐと心に誓ったんや……)

漫  (軽蔑されてもええ……。うちは一生この罪を背負って生きて行く……!)


洋榎(罪悪感という足枷を断ち切らなければ、この選択は不可能やった……)

洋榎(良心の呵責を乗り越えて……よく頑張ったな漫……それでええんや……)


漫がそう宣言した次の瞬間、郁乃のポケットから2匹の金の蛇が頭を出した。
それは細い光の筋となって、螺旋を描きながら絹恵と恭子の元へ突き進んで行く。


郁乃「うぉっ!?」

絹恵「んぐっ……!」ジュン......シュウゥゥゥッ......

恭子「んあっ……!」ジュン......シュウゥゥゥッ......


漫の時と同じ様に、金色の蛇達は恭子と絹恵の右手にそれぞれ絡まり収まった。
同時に、絹恵を引っ張っていた黒服の動きが郁乃から少し離れた場所で停止する。


郁乃「……ん? どうした? 何でそこで止まる?」

絹恵 「……?」


黒服2と黒服3は郁乃の問いにも答えず、絹恵を解放し彼女の傍から離れた。
何故そうなったのか理解できず、絹恵は呆然とした様子で地面に座っている。


郁乃「おい、私は絹恵ちゃんを私の目の前≠ワで連れて来いゆうてるんやぞ?」

黒服「申し訳ありません赤阪様、絹恵様に制裁を加える事は不可能となりました」


郁乃「…………はっ?」
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/30(月) 16:54:39.69 ID:wRXQQwamo
お、いくのんに……
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/30(月) 19:39:23.11 ID:NuzT+LmEo
いくのん制裁強行しようとして生存権剥奪フラグキタコレ
32 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/01(水) 21:14:02.13 ID:/2AkuD0a0
いくのんVS黒服か?
33 :>>1 [saga sage]:2014/01/01(水) 23:31:46.92 ID:mjWxTGrQo
あけましておめでとうございます。
更新が遅れ気味ですいません……。

加速するつもりが中々物語の書き溜めが進まず、
結局、以前並の更新速度になってしまいました。

超亀スレですが、今年もどうぞ宜しくお願い致します。
34 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/01(水) 23:59:19.87 ID:2EeqYY/ko
あけましておめでとうございます
35 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/02(木) 01:02:28.57 ID:bablHVyp0
応援してる
36 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/03(金) 01:15:27.80 ID:qUQ6FbaBo
黒服「先程行われた上重様の宣言により、洋榎様が2人目の生贄に確定致しました」

黒服「その事によって、末原様と絹恵様の生存もまた同時に約束されたのです……」


郁乃「んなこたぁ、お前に言われんでも分かっとる! だからなんやねん!」


黒服「生き残りが確定した者に対しては、如何なる苦痛も与えてはならない=v

黒服「よって絹恵様に対し直接的な方法≠ナ苦痛を与える行為は認められません」


郁乃「はぁっ!? これは正当性が認められた、洋榎に対する制裁の一環やろ!」


洋榎を指差しながら、郁乃は怒り狂った様子で吠え立てる。


郁乃「処刑のルールを破った洋榎に全ての非があるんは瞭然たる事実やないか!」

郁乃「生き残りが決まったゆうて、その罪を不問に付すやと!? ざけんなやッ!」

郁乃「例え神がそれを認めようとも、私はそんなん絶対に許しはせんでッ!」


黒服「それは違います赤阪様。今回の件で洋榎様の罪が消えた訳ではございません」

郁乃「同義やろ! 絹恵ちゃん嬲らな洋榎の奴に十分な苦痛を与える事は出来ん!」

黒服「処刑による肉体的苦痛は、万人に平等な痛みと苦しみを齎します」

黒服「それは洋榎様とて例外ではないと思いますが……?」

郁乃「ぐぐぐっ……!」


郁乃(ちっ、こいつ全く分かっとらん……。これやから感情を持たん機械は……)

郁乃(生意気な洋榎の心を圧し折り屈服させるには、妹を甚振るしか無いんや……)

郁乃(けどこのままやと、奴の思惑通りに逃げ切られてまうやないか! くそっ!)


洋榎「ふふっ……」


取り乱す郁乃の姿を見て、洋榎の口から笑みが零れる。


洋榎「勝負あったな代行……。お前の完全なる敗北や……」

郁乃「なにぃっ!?」

洋榎「唯一うちの弱点である絹に手ぇ出す事が出来へんのやからな……」

洋榎「これでお前に頭を下げ泣いて赦しを乞う理由も無くなった……」

洋榎「残念やったなぁ。そうゆう惨めに屈従した姿が何より見たかったんやろ?」

洋榎「まぁそれはさておき、新世界で絹の事よろしく頼むな、代行……」ニヤッ

郁乃「っっっっっっっ!」ビキビキビキッ

郁乃(こいつぅぅぅ……調子に乗りおってぇぇぇぇッッッ……!)


郁乃「ぐぎぎぎっ……舐めた口利きよるやないか洋榎ぇ……」

郁乃「この私が……お前の妹に対して何も出来んやとォ……?」

郁乃「だったら今、その幻想をぶち殺してお前に絶望の闇を味わわせたるわッ!」


郁乃は錐を握り締め、口元に不気味な笑みを浮かべながら絹恵を見た。


郁乃「ほんなら絹恵ちゃん、一緒に遊ぼうか。ゆうても楽しむんは私だけやけど……」

郁乃「これから痛くて辛い思いするんは、全て君のお姉ちゃんの所為やからな……?」
37 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/03(金) 01:38:19.78 ID:qUQ6FbaBo
郁乃が絹恵に近付こうとしたその時、3人の黒服達が彼女の前に立ちはだかった。
残り一人の黒服が絹恵を立たせ、郁乃から距離を取る様に漫の元へと連れて行く。


黒服3「…………」

黒服4「…………」

黒服5「…………」


郁乃 「なんや貴様ら……邪魔立てする気か……?」

黒服5「生き残り確定者をあらゆる脅威から保護する事は我々の最優先事項です」

黒服5「貴女が絹恵様に危害を加えるおつもりなら……」

黒服5「我々にはそれを止める義務があります……」

郁乃 「この私を止めるやと……? 笑わせんなや雑魚がッ!」


突然、郁乃の持っていた錐が熱せられたかの様に赤くなる。
次の瞬間、黒服5の額にその切っ先を向けて突きを繰り出す。
その一撃は特殊合金で出来た黒服の骨格をいとも簡単に貫いた。


黒服5「グギギッ……ンゴゴッ……ガガガッ……」


黒服5は青い火花を散らしながら激しく全身を痙攣させている。
中枢部を破壊された所為か、やがてその動きも完全に止まり、
郁乃が錐を抜き取ると同時に、黒服5はその場に倒れ込んだ。


洋榎(なんやと……!? こうも容易く黒服が倒されるとは……!)

恭子(代行が黒服を殺し≠ス……?)

絹恵(何……仲間割れ……!?)

漫  (黒服は硬い金属で出来てるんやなかったんか……!?)

黒服「…………」


郁乃 「お前らもジャンク≠ノなりたないんやったら、さっさとそこ退きや!」

黒服3「…………」

黒服3「赤阪様の力≠ェ如何ほどか、我々も十分に存じております……」

黒服3「幾ら束になった所で、我々如きが貴女に敵う筈もございません……」


郁乃 「クククッ……。お前はさっきの木偶と違って随分物分かりええやないか」


黒服3「ですが、ここはどうか怒りをお治めになり、引いては頂けませんか?」

黒服3「でなければ、貴女はこの世界から抜け出せなくなっていまいます……」


郁乃 「……なに? それはどうゆう意味や……?」


黒服3「この世界を切り離す際、あの方々は隔絶の呪い≠掛けました……」

黒服3「流転の護符≠持たざる者が新世界へ行けぬのはその影響からです」

黒服3「そしてその流転の護符≠ノは、もう1つの呪法が仕掛けられています」


神側に属する者が規則を破った場合、護符の所有権は永遠に失われる


郁乃「なんやそれ!? まるで私の行動を制限する為だけの文言やないかッ!」

郁乃(女狐共が……。私が好き勝手せん様に保険≠掛けたな……ッ!)
38 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/03(金) 16:29:00.60 ID:7HrnxmPK0
このスレいかれてるな
39 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/03(金) 16:35:14.18 ID:YdOyNLfAo
いきのんざまああああwwwwww
40 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/03(金) 16:36:03.23 ID:YdOyNLfAo
× いきのん
〇 いくのん
41 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/03(金) 21:05:54.20 ID:n0RtUJBco
洋榎がババアと同じぐらいの力を持っていれば助かるのかね
42 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/05(日) 21:20:59.50 ID:IyrcvQ5zo
黒服3「お気を悪くされたなら申し訳ございません……」

黒服3「しかし規則を定める側がそれを破っては、彼女達に示しがつきません」

黒服3「よって我々の方にも、この様に厳しい罰則を設ける必要があると……」

黒服3「決して赤阪様の振る舞いを抑制する事が目的で作られた訳では無く……」


郁乃(ポンコツが……白々しい嘘を並べよってからに……)

郁乃(明らかに私を狙い撃ちしておいて、そないな言い草が通用するか!)

郁乃(この護符の事やて面白なる演出≠艪、から快く承諾してやったんやぞ!)

郁乃(それやのに……私を騙しおって……っ!)プルプルプル......


怒りに震える郁乃は、荒ぶる野獣の如く哮りながら握っていた錐を投げ捨て、
駄々を捏ね暴れる子供の様に、天秤や処刑道具の乗った荷台を蹴り飛ばした。


郁乃「ふぅーっ、ふぅーっ、ふぅぅぅー……」


郁乃「……黒服、お前さっき洋榎の罪が消えた訳や無いゆうたな?」

黒服「イエス」

郁乃「せやったら、こいつの処刑法を自ら選ぶ権利≠剥奪しろ」

黒服「処刑法の選択権を……ですか……?」

郁乃「せや……」


郁乃は深呼吸し息を整え興奮を抑えながら続けて言う。


郁乃「それぞれの処刑に於いて死ぬまでの苛酷さにはピンからキリまであるやろ?」

郁乃「これで洋榎の奴が運良く楽に死ねる処刑法引き当てたら納得出来んやないか」


黒服「なるほど。そう言う事ですか……」


郁乃「洋榎の処刑法については、この私が指定する。何や文句はあるか?」

黒服「……いえ。赤阪様がそれを望まれるなら、我々に異存はございません」

郁乃「ならば数ある処刑の中で最も辛く苦しい物をここに用意しろ! 今すぐに!」

黒服「承知いたしました……」


処刑の準備をする為か、黒服の1人が黒い箱の中へと消えて行った。
残り3人の黒服達は、洋榎が逃げられぬよう彼女の周りを囲んでいる。


恭子(最悪の処刑法を……洋榎に……?)

漫  (あれやと先輩は逃げられんし、うちらが助けに入る事も出来へん……)

絹恵(お姉ちゃん……)


郁乃は洋榎の正面に立ち、蔑む様な視線で見下ろしながら言った。


郁乃「今、私がお前に直接手ぇ出さんのは、処刑の興を削がぬ為や」

郁乃「だがお前には必ず絶望と地獄の苦しみを味わって貰うからな」

郁乃「お前の所為で無念の死を遂げた真瀬ちゃんの為にも……」

郁乃「簡単に死んでくれるなよ……?」


洋榎「……っ」
43 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/08(水) 03:48:28.92 ID:lRanf9Rzo
黒服「お待たせしました……」


数分と経たぬ内に、黒服は手にアタッシュケースを持って戻って来た。
その鞄の中に洋榎を処刑する為の道具が入っているのだろうが、
由子の時に用意された物と比べると、その量は余りにも少な過ぎる。


恭子(どういう事や……? 処刑道具はホンマにそれだけなんか……!?)

漫  (代行は一番苦しい処刑にしろゆうてた筈やけど……)

絹恵(あの鞄の中には一体何が入って……?)


郁乃「なんやちっこい鞄やなぁ……。その中に処刑道具が?」

黒服「イエス」

郁乃「私は贄となる者に最大の苦しみを与えられる処刑を求めてるんやぞ?」

郁乃「そんなんでホンマに大丈夫かいな……」


訝しんでいる郁乃を気にする様子も無く、黒服は淡々と処刑の準備を開始する。
アタッシュケースを開くと、そこには手錠と複数のベルトやバネ≠ェ入っていた。

まず鞄から手錠を取り出し、洋榎をその場に立たせ後ろ手にそれを掛ける。

続いてベルトとバネを洋榎の身体に取り付け始めた。
その2つは互いに連結させられる構造になっており、
様々な部位をベルトで縛り、それをバネで繋いでゆく。

バネの力は非常に弱く、伸び切った状態で洋榎の身体に取り付けられていた。
ベルトには小さな機器が付いており、青いランプがチカチカと点滅している。


郁乃「ぷぷっ、なんやそれ! 全身大リーグボール養成ギプス¥態やないか!」


バネを付けられた洋榎の姿を見て郁乃は笑い声を上げた。
機嫌を直したのか、先程までの陰鬱感は消え去っている。

後ろ手に手錠を嵌められたまま、洋榎はその場で正座する事を強制させられた。
俯き加減に歯を食い縛っているその姿は、罪人が裁きを待つ様を彷彿とさせる。

最後に黒服は洋榎の胸部と両太腿を縛っているベルトを2本のバネで繋いだ。


郁乃「イヒヒッ……ええなぁこれ……凄くええでぇ〜……」

郁乃「まさに処刑直前の罪人(つみびと)≠チて感じやね」

郁乃「なぁ、洋榎ちゃん……。君、今どんな気持ちぃ〜?」

洋榎「…………」キッ


洋榎は顔を上げ、思い切り郁乃を睨み付けた。
何をされようと、お前になど決して屈しない。
そんな決意を秘めた凛々しく猛々しい面構え。


郁乃「あぁ……その顔……その表情……涙に歪ませたいなぁ……」

郁乃「恐怖に怯え泣き喚きながら命を懇願する洋榎ちゃんの姿……」

郁乃「想像するだけで……もう堪らんわぁ……」


洋榎「……っ!」ゾクッ......


どす黒い悪意に満ち溢れている郁乃の微笑み。
まさに悪≠ニいう言葉を体現しているかの様だ。


郁乃「準備も終わったようやし、さっさと始めようや黒服!」

黒服「それではこれより、洋榎様に対し処刑掃≠開始致します……」
44 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/08(水) 23:46:31.37 ID:TQ5XNDUv0
まさに、善野ならぬ悪乃
45 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/11(土) 03:50:04.26 ID:sdAPT2fko
郁乃「ふぅ〜ん……掃ねぇ……掃……そう……」

郁乃「むぅ……分からんなぁ……。この掃≠チちゅう名の由来は何なん?」

黒服「それは……」


掃除屋(スカベンジャー)の娘


漫  (スカベンジャー? 何やそれ……)

恭子(Scavenger……ごみを漁る者……ごみ漁りの娘……?)


黒服「中世ヨーロッパ魔女狩りの時代に於いて、魔女を拷問死させる処刑法……」

黒服「それを参考に我々が独自のアレンジを加えた物がこの掃≠ナございます」

郁乃「ほぅ……。魔女狩りで使用された処刑法とな……?」


黒服は自らの胸ポケットからリモコンの様な物を取り出しスイッチを入れた。
すると洋榎の身体を縛るベルトに付けられた機器が一斉に赤く点滅し始める。


洋榎「っ!?」


次の瞬間、ベルト同士を繋いでいるバネが収縮を始めた。
それにより、洋榎の全身が畳まれる様に小さく縮こまってゆく。


洋榎「んぐぐぐぐッ……!」


洋榎は懸命に収縮するバネに抗おうとするも、人間の力ではどうする事も出来ない。
胸部と太腿を結ぶバネが縮み、正座状態のまま上半身がゆっくりと前へ倒れてゆく。

やがて洋榎は胸が太腿に完全に密着するほど前傾した姿勢になってしまった。
その深々と土下座をするかの様な姿は、まるで主人に赦しを乞う奴隷の様だ。
特に血が出る訳でも無く、傍から見るとそれは大した事の無い様にも見える。
しかし、人より身体の柔らかい洋榎でさえ、その体勢は耐え難いものだった。

呻き声を上げ、息苦しそうに呼吸しながら表情を歪める洋榎。
後ろ手に拘束された両腕は上方へ引っ張られているかの如く上を向いている。


洋榎「ふぐっ……んんっ……んぐぐ……ッ!」


洋榎の顔は見る見るうちに紅潮し、全身からは脂汗が噴き出している。
郁乃は洋榎が苦しんでいるその様を楽しそうに笑みを浮かべ眺めていた。


ゴキッ……


洋榎「ぐっ……あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ ッ ッ ……!」


鈍い嫌な音がした。洋榎の肩関節が外れた様だ。
余りの激痛に耐え切れず、遂に悲鳴を漏らす洋榎。


郁乃「ええでええで〜! もっと洋榎ちゃんを鳴かせろ!」


郁乃のリクエストに答え、黒服は脱臼した肩を鷲掴みにする。
捻ったり握力を強めたりして、嬲る様に洋榎の負傷部を弄ぶ。
その度に洋榎は叫び声を上げ、痛みに涙を流し顔を歪めた。


郁乃「苦痛に満ちたこの甘美なる悲鳴……脳の奥まで心地良く響くわぁ〜!」


恭子(なんやこれ……なんやこれ……!)カタカタカタ......


絹恵「お、お姉ちゃんっ!」
46 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/13(月) 03:33:43.83 ID:SjU3OG/wo
漫  「っ!? あかんて絹ちゃんっ!」


洋榎の元へ駆け出そうとする絹恵にしがみ付き必死に押さえる漫。
絹恵が出て行った所で、状況が好転するとは考えられないからだ。
逆に今より事態が悪い方向へ進むのではないかと漫は恐れた。

黒服は生き残り確定者を直接的な方法≠ナ傷付ける事は出来ない。
だからと言って、自分達に逆らう者を放って置く筈も無いだろう。
反抗した場合、何らかの制裁措置を受ける可能性も捨て切れない。


漫  (洋榎先輩は何があろうと絹ちゃんが傷付く事は望まない……)

漫  (まして自分の為に危険を冒す事などあってはならんと……)

漫  (せやからうちは、洋榎先輩を見殺しにしてでも絹ちゃんを止める……!)


絹恵「放して! 放して漫ちゃんッ!」


絹恵は漫を振り払い、向き直って拳を高く振り上げ叫ぶ。


絹恵「こうなったんは全部漫ちゃんの所為や!」

絹恵「漫ちゃんがっ! 漫ちゃんがお姉ちゃんを生贄にするゆうから……っ!」


漫  「…………」


今にも殴り掛かってきそうな絹恵に対し、漫は静かにそっと瞳を閉じる。
それは絹恵の行為を真正面から全て受け止めるという意思の表れだった。

絹恵の愛する姉を生贄に選んだのは、他の誰でもなく、この私なのだ。
彼女には復讐する権利があるし、自分にはそれを受け入れる義務があると。

私を殴る事で少しでも彼女の気が晴れるのなら、思う存分やって欲しい。
そうされる事で自分自身の罪悪感もまた薄れるだろうと漫は考えていた。


絹恵「…………っ」


だが、絹恵はその拳を漫に打ち下ろす事は出来なかった。
何故なら、この怒りは無力で何も出来ない自分に対してのモノであり、
それを漫に八つ当たりしているだけだと、絹恵本人も自覚していたからだ。

洋榎の暴行によって出来た酷い青痣、腫れ上がった漫の顔。
傷付く事をも恐れず、自分を必死に守ろうとしてくれた親友。
そんな彼女を、どうして殴る事が出来ようか。

絹恵の大きな瞳から止め処無く溢れる涙。
振り上げた拳を下ろし、声を上げ泣き崩れた。

圧倒的力を以って強要される洋榎の死、抗えぬ運命……。
けれど、それを素直に受け入れる事など出来る筈がない。

だとすれば、残された道、今の2人が取るべき行動は最早1つしか無い。
誰に教わった訳でもなく、無意識のうちに彼女達はその答えを知っていた。

絹恵と漫は抱き締め合い、互いを支える様にしてその場に小さく蹲った。
目を瞑って聴覚を切り離し、隔絶された自分だけの世界に引き篭もる。
自己防衛本能、心が壊れてしまう前に、この辛い現実から逃避を図る2人。

極限状態だからこそ、その自己催眠は強烈に作用した。
思考を完全に放棄し、精神を無≠フ状態へと移行させる。
全ての感覚を閉ざした彼女達に、もう洋榎の悲鳴は届かない。

きっと洋榎もそれを望んでいたに違いない。
己の死に際など誰にも見られたくないだろう。

しかし恭子だけは、瞳を濡らしながらも洋榎の処刑から目を背けずにいた。
それは一番の親友である洋榎を救う事が出来なかった非力な自分への罰。
洋榎の処刑を直視しなければ、その罪から逃げた事になると恭子は思った。


恭子(どんなに惨い光景であろうとも、うちは絶対に洋榎から目を離さん……!)
47 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/15(水) 00:06:02.75 ID:xOeQek2So
それから10分程度が経過しただろうか。
洋榎は苦しい体勢を強いられ呻き藻掻いていたが、
数分前から静かになり、今では身動き一つしない。


郁乃「ところで、この後はどうするん?」

黒服「この後……ですか?」

郁乃「さっきから洋榎ちゃん全然動かんし飽きて来たんやけど……」

郁乃「そろそろ次のステップに進んでもええんちゃうか?」

郁乃「本家のスカなんちゃらでは、次はどないな風にしてるん?」

黒服「掃除屋の娘≠ナは、今の洋榎様の状態が処刑の最終ステップですよ」


郁乃「…………」

郁乃「…………はァ?」


黒服「この様に身体を小さく丸めた状態で固定される事により……」

黒服「血流は阻害され、筋肉に疲労物質が溜まり、全身に痛みを感じます」

黒服「やがて細胞は壊死し、また、血液が内臓に溜まり血圧が上昇して……」


郁乃「そんな薀蓄、誰も訊いとらんわド阿呆ッ!」

郁乃「私はなぁ、もっと派手でおもろい処刑を期待してたんやぞ!」

郁乃「こないに時間ばかり食って詰まらん処刑は中止や中止! 他のにせえや!」


黒服「ですが赤阪様、一度始めた処刑を中断する訳には……」

郁乃「なんや処刑法を途中で変えたらあかん決まりでもあるんか?」

黒服「いいえ、その様な規則はございませんが……」

郁乃「せやったら、今から別の処刑法に変更しても構へんな?」

黒服「…………」


黒服(用意されている全ての処刑は生贄を必ず殺せる様に計算し作られている……)

黒服(故に同一人物に対し2つ以上の処刑を執行する事など考慮する筈も無く……)

黒服(さて……どうしたものか……)


郁乃「そや! 洋榎ちゃんには3つの処刑≠堪能して貰おう!」

黒服「3つ……ですか……?」

恭子「3回も!? なんでそんな……っ!」


郁乃「何でってぇ〜……、洋榎ちゃんは真瀬ちゃんの処刑を台無しにしたやろ?」

郁乃「せやから今のは真瀬ちゃんの分や。んで、次は規則を破った罪の罰則分……」

郁乃「最後に生贄として選ばれた己の分でその儚い人生の幕を閉じると……」

郁乃「どや? これなら一応筋は通ってるやろ?」


黒服「…………」

黒服「……そうですね。その主張の正当性を認めます」

恭子「なっ……!」

黒服「赤阪様には絹恵様の件で譲歩して頂いてますから……」

黒服「かなり無茶のある提案ですが、今回は我々が譲りましょう……」
48 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/16(木) 02:58:53.85 ID:yDCH+69Uo
黒服がリモコンを操作すると機器のランプが緑色に光り、
洋榎を拘束するベルトはスルスルと自然に解けていった。
手錠以外は全て外れ、洋榎の体がゆっくりと横に倒れる。


郁乃「あらら〜……。洋榎ちゃんの奴、完全に気ぃ失っとるやないか……」

郁乃「危ない危ない。さっきの処刑続けとったら、意識無いまま死なせてたで!」


黒服は失神している洋榎を起こそうと彼女の頬を何度も叩く。


洋榎「んんっ……んぁ……」


洋榎が目を覚ました後、黒服は外れてしまった彼女の肩関節を元通りに戻した。
それは慈悲などでは無く、新たな処刑の苦痛を一から味わわせる為に行われたのだ。


郁乃「今のは真瀬ちゃんが受ける筈やった苦しみの分やで〜?」

郁乃「あの凌≠ノ比べれば、今の掃≠ネんぞ温過ぎるけどな……」

郁乃「せやけど私は優しいからなぁ、寛容な精神を以ってそれで赦したるわ」


郁乃「さて、次は処刑の規則を破った懲罰分や。私の期待を裏切った罪は重いで?」

郁乃「今度のは私が選ぶ。飛び切りキツイのをお前にプレゼントしたるからな……」


黒服がそれを了承したのか、モニターに数多くの漢字が一斉に表示された。
郁乃は洋榎から離れ、人差し指を唇に当てながら画面をじっと見詰めている。


黒服「赤阪様、貴女が処刑法を選択するにあたって1つ問題点がございます……」

郁乃「……問題?」

黒服「掃≠フ様に中断する事が可能な処刑も多々ありますが……」

黒服「一度始まると途中では止められぬモノも中にはございます……」

黒服「また、生贄である洋榎様が即死してしまう様な処刑法もあり……」

郁乃「なるほどな……そうゆう事か……」

郁乃「2つ目で死んでもうたら、3つ目が出来へんもんなぁ……」

郁乃「せやったら即死系の奴と中断不可な奴、こん中から抜いてくれる?」


黒服が頷くと同時に、画面から半分以上の文字が溶ける様に消えてゆく。
漢字が示唆するモノを推測しつつ、郁乃は数ある中から1つを選び出した。


郁乃「この輪≠チちゅうのにするわ」


郁乃は洋榎に近付くとしゃがみ込み、倒れている彼女の髪を掴んで顔を上げさせる。


郁乃「なぁ洋榎ちゃん、この輪(りん)≠チて、どないな拷問やと思う?」

洋榎「…………」

郁乃「私の予想やけど、これは輪姦≠ウれながら嬲り殺されるんとちゃうかな?」

恭子「りんかん……? りんかんって何やの……?」

郁乃「えぇ〜!? 末原ちゃん高校生にもなって輪姦も知らんの〜?」

郁乃「輪姦っちゅうのはな〜、複数の男達に強姦≠ウれる事やで〜」

恭子「ご、強姦……?」カタカタカタ......

郁乃「洋榎ちゃん処女やろ? 死ぬ前に女になれるで、良かったなぁ〜」ニマァ......

洋榎「…………っ」ブルッ......
49 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/16(木) 09:09:14.90 ID:A+Mp9dMu0
リンカーン
50 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/16(木) 12:10:11.64 ID:HXtWZxrZo
リンカーン
51 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/16(木) 14:20:34.30 ID:PPFmx+md0
リンカーンカイホー
52 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/17(金) 03:04:35.19 ID:UZI+nSVmo
黒服達が処刑輪≠フ準備に動き出す中、
郁乃は洋榎の心を弄ぶかの様に不安を煽る。


郁乃「姫松の前に生贄選びした高校、阿知賀女子ゆうたかなぁ〜?」

郁乃「そこの生贄の2人、めっちゃ可愛らしい女の子やったんやけど……」

郁乃「見るも悍ましく醜い大男に無理矢理犯された後、殴り殺されたんやで……」

郁乃「分かる? 衣服を剥ぎ取られ、不衛生なアレ≠ここにブチ込まれたんや」


そう言って郁乃は拘束されている洋榎のスカートの中をまさぐり、
下着の横から手を入れ、洋榎の秘部を刺激しながら指を挿入した。
体の防衛本能が働き溢れ出した愛液が、郁乃の侵攻を加速させる。


洋榎「ん……んんっ……ぁっ……!」

郁乃「あらら〜、もうこんなに濡らしおって……。もしかして期待しとるん?」

洋榎「…………っ」ギリッ


反抗的な視線を郁乃に向けるも、洋榎の身体は恐怖で小刻みに震えていた。
見ず知らずの男達に裸を晒し陵辱を受けるという、女性には耐え難い仕打ち。

乳房を揉み拉かれ、全身を舌で舐め回され、初めての唇さえも奪われるのだろう。
恋を知る年頃の少女にとって、それは如何なる拷問よりも恐ろしい事に違いない。


郁乃「洋榎ちゃん震えてるん? そないに怯えんでも、まだ殺されはせんから……」

郁乃「ただ君の中に醜悪な男達の精液≠ェ注ぎ込まれるだけやて……」ニマァ......


恭子(洋榎が男に乱暴されるやなんて……そんなん嫌や……!)ガクガクガク......


郁乃「下半身が燃える様に熱うなるで〜。言うなれば、それは生命の炎≠竄ネ」

郁乃「死を迎える前に、君は命の躍動をその肉体を以って感じる事が出来るんや!」


郁乃は洋榎の秘部から抜いた指を口に咥えネットリとしゃぶる。
指に付着した洋榎の蜜を舌で舐め取り、郁乃は恍惚の表情を浮べた。


そんな中、3人の黒服達が巨大な何かを郁乃達の前に運んで来た。
形は商店街の福引きなどに用いられる、回転式の抽選器に酷似している。
横の部分は透明なプラスチックで出来ており、内部は丸見えになっていた。


郁乃「なんぞこれ……。福引所なんかで見るガラガラ≠竄ネいか……」

郁乃「っちゅうても、サイズは桁違いやけど……。中身も空っぽやし……」


郁乃の言う通り、抽選器の箱の中には何も入っていない。
が、一箇所だけ枷≠フ様な物が設置されている部分があった。
更によく見ると、その枷の近くの手前横壁には透明な扉が付いている。


郁乃(その扉から洋榎を中に連れ込み、奴の両手両足を枷に繋いで固定する?)

郁乃(外側にハンドルが付いとるな……。人を入れた状態で箱を回すんやろか?)


奥側の横壁、抽選器中央からクランク状に折れ曲がって伸びているハンドル。
普通の人が立った状態で回せる高さの位置まで持って来る為の工夫の様だ。
この位置ならば、小柄な女子高生でも難無くそのハンドルを回す事が出来る。


郁乃「そん中に洋榎ちゃん突っ込んで回転させるんか?」

黒服「イエス。その解釈で宜しいかと……」


郁乃(想像してたんとちゃうなぁ……。けど、おもろそうな予感がするで……!)
53 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/17(金) 17:58:36.77 ID:PKJW47+co
孫悟空の頭の輪的なの想像してたけどぜんぜん違うっぽいな
54 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/17(金) 20:27:53.93 ID:UZI+nSVmo
郁乃の予想通り、黒服は横壁の扉から洋榎を箱の中に入れ、
彼女の手足をその枷に繋いで身動きが取れぬ様に固定した。


郁乃「そのガラガラ、手動で回すん?」

黒服「いえ、リモコンのボタン1つで箱の回転は自動的に行われますよ」

郁乃「んじゃ、そこに付いとるハンドルっぽいのは一体何やの?」

黒服「あれは補助的に箱の回転を加速させる為の装置でございます」

郁乃「……?」


黒服「さて、全ての準備は完了致しました……」

黒服「これより、処刑輪≠ノついての説明をさせて頂きます」

黒服「まず始めに、皆様これをご覧ください……」


黒服がリモコンを操作すると、箱の不透明な面に無数の穴が開き、
その中から、長さ数センチ程ある金属製の突起≠ェ姿を現した。
先端は針の様に鋭く尖っており、突き刺さればかなり痛そうだ。

洋榎の身体が固定されている場所を除き、一定の間隔で点在する不気味な突起。
その存在を皆に確認させると、黒服は回転式抽選器に似たその箱を回し始めた。


黒服「現在、洋榎様の身体は完全に固定された状態にあり……」

黒服「出現した無数の突起にぶつかって傷付く事も無いでしょう……」


箱の回転速度は徐々に増してゆき、振動と轟音が辺りに響く。
次の瞬間、洋榎の身体を固定していた両手両足の枷が外れた。


恭子「あっ! 枷が外れてもうた! このままやと針の上に落ちて……っ!!」

黒服「心配には及びませんよ。今は♂盗S力が重力を上回っていますからね」

黒服「この速度で箱が回転し続けていれば、枷が無くとも洋榎様は落下しません」

郁乃「せやけど、落としてくんやろ……? 回転速度……」ニヤァ......


郁乃の言葉に黒服は無言で頷く。


恭子「そ、そんな……。そないな事したら、洋榎は落下して体に針が……!」

郁乃「クックックッ……。そうゆう趣向の処刑法なんやろ、これは……」


黒服「本来ならば、息絶えるまで箱の中の針地獄に苦しむ処刑なのですが……」

黒服「今回は死なない程度に抑える為、突起のサイズを修正させて頂きました」

黒服「最後に、処刑法輪≠ノよる拷問は、これより5分間とさせて頂きます」


5:00


モニター画面に残り時間らしき物が表示される。


黒服「その間、箱の回転速度はゆっくりと低下していきますが……」

黒服「あのハンドルを高速で回せば、今の回転速度を維持する事も可能です」

黒服「上手く行けば、洋榎様は一度も針の上に落下せずに済むでしょう……」

恭子「っ!!」

黒服「尤も、5分間あれを手動で回し続けるには、相当の体力が必要ですがね」

黒服「では、洋榎様に対する2つ目の拷問、輪≠開始させて頂きます……」
55 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/19(日) 03:23:55.59 ID:a7pqvIUjo
4:59 ピッ...


黒服が処刑開始の宣言をし終わらぬ内に、
恭子は立ち上がり、ハンドルに向かって駆け出していた。


恭子(洋榎の痛みを、苦しみを、うちの力で軽減させる事が出来るなら……っ!)


恭子は黒服の言葉を疑う事も無く、そのハンドルを両手で掴み全力で回し始めた。
先の事など一切考えていない。とにかく今℃ゥ分に出来る事を精一杯するのだと。


恭子(想像していたより軽い……。これなら幾らでも回せる……っ!)


輪≠ゥら洋榎を守れると確信し、恭子の口元に笑みが零れた。
額に汗を滲ませながら、小さな体で只管ハンドルを回し続ける。


郁乃「イヒヒッ……末原ちゃんは健気やなぁ……」

郁乃(これは良い絵≠ェ期待出来そうやでぇ……)ニタァ......


郁乃「それはそうと黒服、この処刑法も魔女狩りと関係あったりするん?」

黒服「イエス。この輪≠熈掃≠ニ同時期に考案された魔女嬲りの拷問の1つです」


アラゴンの死の車輪


郁乃「ククッ、キチガイ共に殺された亡者達の怨念が現世に蘇ったか……」

郁乃「今宵、生贄の魂を以って、その怒りに満ちた嘆きの怨嗟を鎮めようぞ!」


4:00


恭子(箱の回転速度は落ちとらんな……。うちがハンドル回しとるからやろか?)

恭子(後残り4分……。何としてでも、この速度を維持し続けてみせる……っ!)


そう固く決意する恭子だったが、既に異変は起き始めていた。
それは潜伏するが如く密かに、だが着実に彼女を蝕んでいる。
症状が出る頃には、病魔は既に取り返しの付かない所まで進行していた。


3:34


恭子(くっ……! なんや……? 急にハンドルが重なってきた気がする……)

恭子(疲れからそう感じるんやろか……? まだ2分と経っとらんのに……)

恭子(1秒が長い……。自分体力無さ過ぎやで! 気合や……根性出せ……っ!)


しかし、それは決して疲労の所為などではなかった。
処刑開始から2分を越え、恭子は漸くその事実に気付く。


恭子(違う……! 肉体的な疲れの所為なんかやない……!)

恭子(このハンドル、時間が経つ毎に重くなっとるんや……っ!)グググッ......


ハンドルの回転数が減った影響か、箱の回転速度も目に見えて落ち始めている。


2:21


恭子(あかん……! もっと……もっと速く回さな……っ!)グググググッ......

恭子(このままやと……洋榎が……洋榎が落ちる……っ!)
56 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/19(日) 04:27:54.15 ID:jwOpOBp10
3:34 なんでや!
57 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/20(月) 03:33:13.76 ID:lsbHOVgWo
焦り恭子は懸命にハンドルを回すが、箱の回転速度の低下を食い止める事は出来ず。
それまで固着していた洋榎の体が、僅かではあるが回転毎に動いている様にも見える。

そして3分が経過しようとしたその時、遂に恐れていた事態が現実のモノとなった。


洋榎『……っ!』フワッ

恭子「あっ……!」


ドサッ……


洋榎『うぐっ……!』

恭子「あっ……あぁ……あぁぁ……」カタカタカタカタ......


一度その様な状態に陥ってしまうと、そこから抜け出す事は非常に難しい。
洋榎の身体は回転する箱の頂点付近に来ると宙を舞い、棘の上に投げ出された。
恭子は泣きながらハンドルを回すも、繰り返される落下はどうにも止まらない。


ドサッ……

洋榎『あぐぁっ……!』

ドサッ……

洋榎『んぐっ……!』

ドサッ……

洋榎『ふぐぅ……っ!』

ドサッ……

洋榎『っぐ……!』


恭子「あぁぁぁ……うちが速くハンドル回せんかったから洋榎が……」

恭子「あ あ あ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ あ゛あ゛あ゛あ゛っ っ っ っ っ !!! 」


箱は密閉されている為、外まで洋榎の声は届かないが、
口の動きや表情から痛みに叫びを上げている事が分かる。

何度も棘の上を転がされ、破けてズタボロになる制服。
洋榎は激しく出血し、箱の内部が血で紅く染まってゆく。


郁乃「あぁ末原ちゃん……君めっちゃ素敵な顔するなぁ……」


陶酔し蕩けた面持ちで郁乃は呟いた。


郁乃「イヒヒッ、絹恵ちゃんの方はどうやろ…………って……んっ?」

郁乃「おい……何洋榎ちゃんのお仕置きから目ぇ逸らしてん? こっち向きや!」


絹恵と漫が洋榎の拷問の様子を見ていない事に気付き、郁乃は声を荒げた。
2人は郁乃の言葉に反応も示さず、黙ったまま地面に座って抱き合っている。


郁乃 「この私を無視するとは、ええ度胸しとるやないか……」

郁乃 「黒服、絹恵ちゃんにも拷問の様子を見せてやりたいんやけど構わへんな?」

黒服 「絹恵様に対して直接何かをする訳では無いので、特に問題は無いですよ」

郁乃 「よっしゃ! あの子の目ぇ抉じ開けたるで〜! お前らも手伝えや!」

黒服2「御意。」

黒服3「御意。」
58 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/20(月) 05:21:08.59 ID:H+vYWaI3o
目をこじ開けるって直接介入してるじゃん!
59 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/20(月) 05:29:51.55 ID:rUHzIbwyo
生き残りが確定してる人には精神的苦痛もダメなんじゃなかったか
60 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/20(月) 13:07:24.05 ID:4eJqJnQXO
スレタイの洋榎先輩の唐翌揚げって…!
61 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sagesaga]:2014/01/20(月) 16:24:12.05 ID:H+vYWaI3o
ちゃんと唐揚げになってるぞ?
62 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/20(月) 16:56:54.00 ID:lsbHOVgWo
郁乃と黒服達は抱き合い蹲っている絹恵と漫の元へ歩いてゆく。


郁乃「おらおらっ、いつまで女同士で抱き合ってるつもりや! お前らレズか!」


黒服達は固く抱き締め合う2人をその場に立たせ強引に引き剥がす。


漫  「あっ……!」

絹恵「んんっ……!」


郁乃は絹恵の背後に回り込み、彼女の両脇の間に後ろから腕を通し肩を挟み込む。
上半身の自由を奪い、絹恵の体を拷問されている洋榎の方へ無理矢理向けさせる。


漫  「絹ちゃんを放せこの悪魔ッ!」


郁乃に飛び掛かろうとする漫、だが黒服達が素早く反応し押さえ込まれる。
黒服は手錠と紐をポケットから取り出し、手際良くそれで漫を拘束した。
後ろ手に手錠を嵌められ、両足首を紐で縛られた漫は身動きが取れない。


黒服「申し訳ありませんが、貴女には暫くその姿で大人しくして頂きます」

漫  「くっ……! んぐぐ……っ! くそったれぇ……っ!」


郁乃「さぁさぁ絹恵ちゃん、もうすぐお別れする事になるんやから……」

郁乃「その瞳に大好きなお姉ちゃんの姿、しっかり焼き付けとこうな?」

絹恵「んん〜っ!」


絹恵は目蓋を固く閉じ首を横に振る。


郁乃「って、あかん! この体勢やと絹恵ちゃんの目ぇ開けられんやないか!」

郁乃「ちょっと黒服〜! 絹恵ちゃんのお目々、開かせて〜や〜!」

漫  「待てやッ! うちらに苦痛を与える事は許されんのとちゃうんか!?」


黒服「禁じられているのは、あくまで直接的≠ノ苦痛を与える行為であり……」

黒服「我々が絹恵様自身を痛め付けたり、辱めたりする事は無論出来ません」

黒服「ですが今、絹恵様に対してその様な振る舞いは一切行われておりませんから」

黒服「姉が拷問される様子を見せられれば、精神的苦痛を受けるでしょうが……」

黒服「それは結果的にそうなってしまったと言うだけで、仕方の無い事でしょう」

黒服「我々は絹恵様を苦しめる為に洋榎様を拷問している訳ではありませんからね」


漫  「そんなん詭弁やろ!」


これ以上会話をしても無駄と判断したのか、
黒服は叫ぶ漫を後目に絹恵に近付いてゆく。
そして黒服は絹恵の首筋に人差し指を当てた。


黒服「人間の筋肉の動きは、全て電気信号によって制御されています」

黒服「即ち、意図的にその信号を書き換える事が出来るのであれば……」

黒服「自らの思う様に人の身体を操る事もまた可能なのです……」


黒服の指から迸る蒼い電流、絹恵は身体をビクッとさせ、上を向き目を見開いた。


絹恵「 う゛っ …… ! 」
63 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/20(月) 17:22:49.85 ID:H+vYWaI3o
電気信号の書き換えとかぱねぇな
64 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/20(月) 21:03:34.16 ID:+h0QFQp/o
進展のない話だな
65 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/20(月) 23:07:37.71 ID:lsbHOVgWo
黒服は微弱な電流を絹恵の首筋の神経組織に流したまま、
もう片方の手で彼女の頭を掴み、洋榎の方へ顔を向けさせる。

血液が飛散し透明なプラスチックの壁はかなり汚れているものの、
箱の中で洋榎が宙を舞っている姿はしっかりと確認する事が出来た。


絹恵「あぁ……お姉ちゃん……お姉ちゃんの血が……」カタカタカタ......

絹恵「いやぁぁぁぁァァァっっっっっッッッ!!!」


顔を背ける事も自らの意思で瞳を閉じる事も出来ず、
凄惨な光景をまざまざと見せ付けられ絹恵は絶叫した。


恭子(絹恵ちゃん……っ! ……ハッ!)


0:00


気が付くと約束の5分は既に経過し、タイマーは0≠示していた。


恭子「5分経っとる! 終いやで! 止めて! はよ箱の回転を止めてや!」

郁乃「まぁまぁ、そないに焦らんでもええやん。死ぬ訳やないしぃ〜?」

郁乃「絹恵ちゃんも始めの方は見てへん様やし、もうちょい続けようや」

恭子「ふっ、ふざけんな! 最初に約束したんとちゃうやないか!」


黒服「…………」

黒服「私が定めた5分≠ニ言う数字に、特に深い意味などございません……」

黒服「ただ延々と続ける訳には行きませんので、適当に設定させて頂きました」

黒服「ですから赤阪様がそれを望むのであれば、延長しても差し支えありません」


郁乃「ハハハッ! 文字通り針の筵≠ナ洋榎にはまだまだ踊って貰うからな!」

恭子「なんやそれ……汚いやないか……この嘘吐き……っ!」ポロポロ......

郁乃「元はと言えばルールを破った洋榎が悪いんや! 自業自得の自己責任やで〜」


箱の中の洋榎はグッタリし、為されるがまま重力に弄ばれている。
僅か数分の引き延ばしであったが、恭子達には悠久の時に感じられた。


シュウゥゥゥゥッッッーーー…………


回転が止まった後、洋榎は黒服によって箱の中から引き摺り出された。
ボロボロになった血塗れの服、体中には生々しく刺し傷が残っている。


絹恵「うぅぅぅぅぅ…………」ポロポロ


絹恵は力無くその場に膝を突き泣き崩れた。


恭子「洋榎っ……!」


恭子は動かぬ洋榎に駆け寄り、血だらけになった彼女の身体を抱き抱えた。


洋榎「…………」

恭子「うぅ……洋榎……ごめん……ごめんな洋榎……」

恭子「お前をこんなにしてもうたウチを……どうか赦してや……」

洋榎「きょう……こ……」
66 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/23(木) 02:26:58.95 ID:UefhUeqSo
恭子「洋榎っ!」

洋榎「恭子……離れてや……お前の服が……汚れてまうやろ……」

恭子「アホっ……! そんなんどうでもええわ……!」


恭子の瞳から溢れる大粒の涙が洋榎の顔に次々と零れ落ちる。
洋榎は左手で恭子の頬に触れた後、その涙を指でそっと拭った。


洋榎「泣くな恭子……涙なんぞ流したらあかんて……」

洋榎「お前には新しい世界が……希望の未来が待ってるんや……」

洋榎「せやから……うちはお前に笑顔で旅立って欲しい……」


恭子「無茶ゆうな……。こないな状況で笑える訳ないやろ……」

恭子「それに……洋榎のおらん世界なんぞ、うちはいらん……!」

恭子「うちもここに残る。命果てるその時が訪れるまで、ずっとお前の傍に……」


ペチッ……


左手で弱々しく恭子の頬を叩く洋榎。


洋榎「恭子……お前が共に歩むべきは絹と漫なんや……。うちとちゃう……」

洋榎「お前が2人の傍に居ってくれるなら安心や……。もう心残りは無い……」

洋榎「うちの代わりに……絹を……漫を……よろしく頼むで……」

洋榎「これはうちからの最後のお願いや……。聞いてくれるな……?」

恭子「最後の願いやて……!? そんな言い方……卑怯やろ……っ!」


郁乃「さぁ〜て、ほんじゃフィナーレを飾るに相応しい処刑をやな……」


恭子「代行……っ! あんたもう十分楽しんだやろ……!」

恭子「これ以上、洋榎に酷い事せんでもええやないか……っ!」

恭子「せめて最後くらいは……痛みや苦しみの少ない方法で……」

郁乃「それは無理な相談やで。尻窄まりな幕引きなんぞ、私は絶対認めんからな!」

郁乃「最も残酷で死よりも苛酷な拷問を洋榎の奴にお見舞いしてやる!」

郁乃「あ〜、でも最終的にはそれで死ぬんやけどな! アハハハハッ!」

郁乃「今度こそ私の心を踊らせ満たす究極の処刑を用意してくれや、黒服!」


黒服「…………」


だが黒服は頷きもせず、その場から動こうともしない。


郁乃「…………? お〜い黒服〜? どないしたん?」

郁乃「ちゃっちゃとこの見世物に終焉を齎す3つ目の処刑の準備を始め〜や!」

黒服「生憎ですが赤阪様、貴女が求める究極の処刑≠ヘ最早実行不可能です」

郁乃「あぁん!? お前この期に及んで何寝ぼけた事抜かしてるん!?」


黒服「洋榎様の異議申し立てにより始まった一連の事象……」

黒服「それらの対応に、我々は限りある貴重な時間を費やし過ぎました」

黒服「……タイムオーバーですよ。」
67 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/23(木) 02:36:56.40 ID:1KNm0GeB0
食人鬼たち空気読んで待っててくれたわけじゃなかったのか
68 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/25(土) 02:23:01.58 ID:asQUxHilo
恭子「タイムオーバー……?」

黒服「あちらをご覧ください……」


そう言って黒服は校舎に繋がる扉の方をスッと指差した。
見ると鉄製の扉は変形し、留め金がガタガタと激しく音を立てている。
押し寄せる大量の屍鬼達を前に、その頑丈な扉も既に限界となっていた。


郁乃「くっ……! 奴らか……っ!」

黒服「あの扉は屍鬼達の侵攻を堰き止めていた、言わば最後の防壁……」

黒服「ですが現在の状態を見る限り、そう長くは持たないでしょう……」

黒服「数分と経たぬうちに扉は破壊され、奴らが雪崩れ込んで来る事は確実です」

黒服「そうなれば、処刑どころの話ではありませんよ?」

郁乃「クソッ……! これから本番っちゅう時に……!」

郁乃「薄汚い亡者共に窮地を救われるとは、つくづく運の良い奴め……」

黒服「救われた……運が良い……果たして本当にそうでしょうか……?」

郁乃「なに……?」


黒服「唯一の退路は屍鬼達に埋め尽くされ、逃げる場も無い屋上……」

黒服「流転の護符を持たぬ洋榎様は、この世界から脱出する事も出来ず……」

黒服「だとすれば、彼女はここで奴らの生き餌≠ニなる他無いのですよ?」


郁乃「っ!!」

恭子「人を……生き餌……やと……?」

漫  「あの化け物共の……餌……!?」ゾクッ

絹恵「嘘や……嘘や嘘や嘘や嘘やうそやうそやうそや……」ガクガクガク......


黒服「確かに洋榎様は絶命を齎す3つ目の処刑を免れました」

黒服「しかし、その代償として彼女は生きたまま屍鬼達に喰われるのです」

黒服「それを幸運≠ニ呼ぶ事が出来るでしょうか……?」


郁乃「ふむ……。言われてみれば……」

郁乃(屍鬼共に生きながら喰われるんは、下手な拷問よりさぞ辛いやろなぁ……)

郁乃「イヒッ……イヒヒッ……イヒヒヒヒッ……!」

郁乃「よしっ! ほなそれで行こかっ!」


精錬された純粋なまでの悪意と狂気が、郁乃の瞳を純真な少女の様に輝かせる。


黒服「では、我々はこの辺で失礼させて頂きます……」

黒服「あとの事は当初の計画通り、赤阪様に一任して宜しいですね?」

郁乃「了解了解、私が責任持って3人を新世界へ連れてくから心配せんでええよ〜」

黒服「それでは、生き残った皆様の事を宜しくお願い致します……」

郁乃「任せときぃ! こう見えて私は約束を必ず守る女やさかいな!」

黒服(機嫌は直った様ですね。これなら後は彼女に任せて問題無いでしょう……)


黒服達は皆に別れの一礼をした後、連なり黒い箱の中へと戻ってゆく。
黒服達全員がその中に入ると、箱は音も立てず静かに宙へと浮き上がって、
斜めに高速回転しながら徐々に小さくなり、空間に溶け込む様にして消えた。
69 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/25(土) 04:50:11.79 ID:42E08vDFo
黒服も屍鬼には勝てないんだっけか
あれは処刑人さんの方だっけ
70 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/25(土) 10:53:55.59 ID:Ci5Gft8iO
屍鬼自体は落ちてきた車椅子に潰されて死ぬぐらいだからいくのんがその気になれば一掃できるんでない?
71 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/25(土) 14:31:25.82 ID:mT/nSoQY0
無数に居るみたいだしさすがにあの数に囲まれればどうしようもないだろ
72 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/27(月) 01:33:17.05 ID:2mtiykaso
郁乃「さぁて……。奴らが扉をぶち破る前に私達もこの世界からおさらばしよか!」

郁乃「けど洋榎ちゃんは居残りやで。まぁお友達≠煖ツ山居るし寂しくないやろ」


恭子(洋榎だけをこないな世界に置き去りにするやなんて、鬼畜にも劣る所業……!)

恭子「亡者共に恐れを抱き尻尾巻いて逃げ出すとは、代行もとんだ臆病者やな……」

郁乃「ぬっ?」

恭子「うちは行かんで。洋榎1人を残してこの場を去るつもりは無いからな!」


恭子はハッキリとした口調でそう言い切り、立ち上がって洋榎を引っ張り起こす。


恭子「立て、立つんや洋榎! よう聞け、直ここは化け物共で溢れ返る!」

恭子「走れるか? 走れるな? 何としてでも、奴らから逃げ切るんや!」

洋榎「逃げるって何処へ……? この狭い屋上に逃げ場なんて無いやろ……」

洋榎「うちの事は気にするな……。お前も代行達と共に新しい世界へ……」

恭子「お断りやっ! お前が何と言おうと、うちは考えを改める気は無い!」


何とか洋榎をその場に立たせると、恭子は向き直って郁乃と正面から対峙した。


郁乃「……ゆうとくけど、別に屍鬼如き小者に恐れを為してる訳ちゃうで?」

郁乃「私から見ればあんなゴミ共、ちっぽけな蟻と同じく取るに足らん存在や」

郁乃「せやけど奴ら半端無く数おんねん。それこそ世界の人口より多いんやぞ?」

郁乃「何千年もの長きにわたり、人の死を介して増殖し続けて来たんやからな……」

郁乃「奴らは際限無く幾らでも湧いてきよる。あんなん相手にしてたら切り無いわ」


郁乃「それともう1つ、君がこの世界に留まる事は不可能やで?」

郁乃「君は君の意思と関係無く、強制的に新世界へと引き寄せられる」

郁乃「まっ、一々言葉で伝えるより、実際に体験してもろた方が早いか……」


大きく息を吸い込んだ後、徐に空を仰ぎ右手を上げる郁乃。


郁乃「神が創りし新たなる世界へと続く道をいざ開かん……」

郁乃「ゲェェェェトォォォォ! オォォォォーーープゥゥゥーーンッッッ!!!!」


郁乃が右手を天空に翳し叫び声を上げると、遥か上空に厚い光の雲が広がり始めた。


恭子「あれが……道……? あの光の先に……新世界があると……!?」

郁乃「そうやで。君達を待つ新しい世界は光の雲の向こう側にあるんや」

漫  「け、けど……どうやってあんな高い所まで……」


次の瞬間、恭子、漫、絹恵、郁乃の4人の身体が重力から解き放たれ、
ふわふわと宙に浮き上がり、光の雲に吸い寄せられる様に上昇を始めた。


恭子「な、なんやこれ!? うちの体が……羽根の様に軽くなって……!」フワフワ

郁乃「流転の護符に選ばれし者は、その加護によって自然と光の元へ導かれる」

恭子(光の扉は遠く空の上……。翼が無ければ決して辿り着けぬ場所……)

郁乃「ここでお別れやな、洋榎ちゃん。短い間やったけど、それなりに楽しかったわ」

郁乃「最後に君が無残に喰われる様を、私達は上から見物させて貰うで〜。イヒヒッ」
73 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/28(火) 00:56:33.48 ID:OWKaNaU4o
漫  (マズイで……ホンマに洋榎先輩にだけ浮力が働いとらん……!)フワフワ

絹恵(このままやと、お姉ちゃんだけ屋上に取り残される……!)フワフワ

恭子「洋榎っ! うちの手を掴め!」

漫  「っ!?」

絹恵「っ!!」


恭子は空中でクルリと体勢を変え、洋榎に向かって手を差し伸べた。


恭子「新世界へ繋がる扉が天にあるゆうなら……」

恭子「うちがお前の翼となって、あの空まで連れてったる!」

恭子「一緒に行こう洋榎! 光のその先へ……!」

洋榎「…………」

漫  「何ぼやっとしてはるんですか洋榎先輩っ!」

絹恵「お姉ちゃん! はよ恭子ちゃんに掴まってや!」


だが洋榎は差し出された恭子の手を掴む事も無く、
ただ穏やかな表情で微笑みながら恭子を見詰めている。


恭子「何してるんや洋榎ッ! これ以上離されたら……」

洋榎「ええんや恭子……。うちは最初からここに残る決めてたんや……」

恭子「それは由子に対する贖罪のつもりか!? 自らの命を以って償うと!?」

洋榎「そんな大層なもんちゃうて。ただ、あいつ1人を残しては行けんのや……」


洋榎は由子の遺体に目を向けて小さく呟いた。


洋榎(由子の魂はまだ肉体に残留しとる……)

洋榎(それだけ生≠ヨの未練が強かったんやな……)

洋榎「由子……お前に淋しい思いはさせへんから……」


恭子「アホ抜かせ! 由子はとっくに死んでるんやぞ!?」

恭子「死者に感情は無い! 故に悲しも淋しさも感じない!」

恭子「それは生きてる者が勝手にそう思い込んどるだけや!」

恭子「そんなん優しさちゃうで! ただの独り善がりやないか!」

洋榎「せやな……。お前のゆう通りかもしれん……」

恭子「納得したなら、さっさとうちの手ぇ掴まんかいっ!」

洋榎「それは出来ん……。うちにお前の手を取る資格は無い……」

恭子「死んだ由子の事よりも、生きとるうちらの方を見てや!」

恭子「お前が死んで誰が得する? お前の死を悦ぶんは代行の屑だけやぞ!?」

恭子「うちも絹恵ちゃんも漫ちゃんも、お前の死なんぞ望んでないねん!」


恭子「罪悪感と共に生きるんは、死ぬより辛く苦しいかもしれん……」

恭子「それでも……! うちらは洋榎に生きていて欲しいんや……ッ!」

洋榎「すまんな恭子……」

恭子「謝るなっ! うちはそんな言葉が聞きたいんやない!」

恭子「頼む……! 頼むから……この手を掴んでくれ……洋榎……ッ!」
74 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/28(火) 01:00:59.41 ID:OWKaNaU4o
訂正>>73

誤 恭子「死者に感情は無い! 故に悲しも淋しさも感じない!」

正 恭子「死者に感情は無い! 故に悲しみも淋しさも感じない!」
75 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/31(金) 01:02:31.48 ID:S5TaFMVNo
涙を零しながら叫ぶ恭子、しかし洋榎はその場を動かず。
既に恭子の体は洋榎の手の届かぬ高さまで上昇していた。


漫  (あんだけ離れてもうたら……跳んでも末原先輩には届かん……!)

絹恵「お姉ちゃんっ! お姉ちゃんッッッ! おねえちゃぁぁぁぁぁぁん!」


恭子「そんな……洋榎……なんで……何でお前は死を選ぶ……!?」

恭子「その選択の先に何があるゆうんや!? なんも無いやろっ!」


洋榎「……もう疲れたんよ」


声を荒げ激しく問い詰める恭子に対し、洋榎は小さくそう呟いた。
皆の気持ちを疲れた≠フ一言で無にした洋榎に憤りを隠せない恭子。
しかし、それ以上に悲しみと孤独≠フ感情を恭子は心に抱いていた。

届かなかった想い、洋榎にとって自分はその程度の存在だったのか。
生き残ったにも拘らず見捨てられた≠ニいう思いが恭子を支配する。


恭子(洋榎の心の中にあるうちの存在がもっと大きなモノであったなら……)

恭子(あいつはうちの言葉を聞き入れ、この手を掴んでくれたんやろか……?)


どうすれば洋榎を救う事が出来たのかと、額に皺を寄せ唇を噛み締め苦悩する恭子。


郁乃(クククッ……)

郁乃(潔し愛宕洋榎……。醜く生に縋り付く様な真似はせんか……)

郁乃(だが仮に末原ちゃんにしがみ付き空を昇った所で、そんなん無意味やで?)

郁乃(護符が持つ神気*ウくして、あの光の扉を潜り抜ける事は出来んのや!)


恭子「ハッ……!」


次の瞬間、蝶番が弾け飛び校舎に続く扉は大きな音を立て地面に倒れた。
そこから飛び出して来たハイエナ£Bは、獲物を求めて周囲を見渡す。


郁乃「来たか……地獄より迷い出でし穢らわしき不浄の者達よ!」


郁乃の声に反応し、宙に浮かぶ彼女へ一斉に視線を向ける屍鬼達。


郁乃「憐れなお前達の為に、今日は極上のディナーを用意してやったでぇ〜!」

郁乃「見てみぃ……活きの良い生≠フ女子高生や……。美味そうやろォ〜?」


厭らしく微笑みながら洋榎の方を指差す郁乃。
その手の動きに釣られ、屍鬼達の視線が洋榎に向かう。


屍鬼「オォ……ォォォッッッ……」


低い唸り声を発しながら、無機質な黒い瞳で洋榎を凝視する屍鬼達。
開かれた真っ赤な口からは粘着性のある涎がダラダラと滴り落ちている。


郁乃「こないな上玉、地獄ではそうそう御目に掛かれまい……」

郁乃「その麗しく瑞々しい若さ溢るる肉体を存分に味わうがええ!」


屍鬼「オオォォォオオオォォォオオォォォォッッッッッ!!!」


郁乃「骨の一つ、血の一滴無くなるまで、その身を喰らい尽くせ!」
76 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/31(金) 10:15:27.91 ID:xDVY07tsO
やっぱこのssは面白いなあ

更新楽しみにしてます
77 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/02/01(土) 05:02:28.81 ID:Mhd+EiZSo
大勢の屍鬼達が雄叫びを上げながら洋榎に向かって弾丸の様に走り出す。
我先にその柔らかい肉に喰らい付きたいという強烈な衝動、飽く無き食欲。
人と同じく新鮮な食物を好むのか、死した由子の方には見向きもしない。


漫  「逃げてや洋榎先輩! 奴ら先輩の事を狙ってます!」

絹恵「お姉ちゃん! 走って! そこに居ったらあかん!」

恭子「諦めるな! お前なら不可能を可能に変える事やて出来る筈や! せやろ!?」


幾ら3人が声を張り上げても、その言葉は洋榎の耳に届かなかった。
洋榎は目を瞑って俯き、全身脱力した様子で茫然と立ち尽くしている。
そんな洋榎に屍鬼達は飛び掛かり、露出している腕や太腿に噛み付いた。


洋榎「ぐっ……!」


屍鬼達の猛烈な勢いに押され、仰向けに倒れる洋榎。
1匹の屍鬼が彼女の上に跨り、服を引き千切り始めた。

スポーツブラまで剥ぎ取られ、露になった洋榎の薄い桜色の乳首。
何処の部分の肉が一番柔らかく美味なのか奴らは知っているのだ。
慎ましいが形の良い綺麗な乳房に亡者の鋭い牙が深く突き刺さる。


恭子「洋榎ッ! 洋榎ぇぇぇぇぇぇっっっッッッッ!!!」


屍鬼は大きく首を左右に振り、洋榎の可愛らしい乳房を強引に噛み千切る。
苦痛に顔を歪める洋榎に対し、屍鬼は両指を彼女の両目の穴に突き入れた。


洋榎「 く゛あ゛あ゛っ …… ! 」


屍鬼はグリグリと洋榎の目の中を荒々しく掻き混ぜる。
洋榎はその激痛に絶叫し、全身を激しく痙攣させていた。

両眼球を指で抉り出し、それをゆっくりと口に運ぶ屍鬼。
苦痛に身体を仰け反らせる洋榎、断末魔が辺りに響き渡る。

暫くの間、洋榎の肉体はビクンビクンと波打っていたが、
やがてそれも治まり、洋榎は口を開けたまま動かなくなった。

死肉に大挙して群がる肉食昆虫の様に、洋榎の身体を覆い埋め尽くす屍鬼達。
洋榎の姿を上空から確認する事は出来ず、見えるのは流れ出る大量の血液だけ。
恭子は言葉を失い、ただ歯をガチガチと鳴らしてその様をじっと眺めていた。


漫  (あぁぁっ……あいつら……洋榎先輩を……喰らいよった……)ガタガタガタ......


善野の時より距離が近く、しかも喰われたのは同世代の親しい先輩。
湧き上がる恐怖は漫の心から悲しみという感情を完全に掻き消していた。


絹恵「あ゛ーっ! あ゛ーっ!! あ゛ーっ!!!」


眼鏡を失い視界がぼやけている絹恵にも、
洋榎の身に起こった事はすぐに理解出来た。
姉の上に伸し掛かる亡者達を見れば、それも当然の事だろう。
絹恵は発狂したかの様に耳を劈く甲高い叫び声を上げていた。

洋榎の死によって、それまでに無い混沌≠ェ生存した部員達全員を包み込んだ。
それは信頼され、尊敬され、皆の精神的支柱であった存在が失われた証左でもある。


郁乃「これやこれ! 私が求める混沌(カオス)≠ェ今ここに体現した!」

郁乃「やはり愛宕洋榎こそが、私に至福の時を齎す最上の供犠やったんや!」

郁乃「満たされる……我が魂を狂喜に奮えさせたお前を礼賛し崇めようぞ!」

郁乃「最高の門出祝いや! これで私は心置き無く新世界へと羽ばたいて行ける!」

郁乃「アハッ! アハハッ! アハハハハッ! ア ハ ハ ハ ハ ハ ハ ハ ッ ! 」
78 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/01(土) 05:50:39.89 ID:S7zaCTtzO
この代行に陰惨な報いがありますように
79 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/02/04(火) 05:53:15.33 ID:Xt6go+93o
恭子「…………」

漫  「…………」

絹恵「…………」


恭子達の体は屋上の遥か上空を浮遊し、屍鬼達の姿も米粒程に小さくなっていた。
奴らの恐ろしい唸り声も耳には届かず、物音一つしない無音の静寂が4人を包む。

全てが夢であったかの様なフワフワとした感覚、
今の恭子達に恐怖や憂愁の念といった感情は無く、
ただ虚無感だけが彼女達の心の中に巣食っていた。


郁乃「なんや辛気臭いなぁ……。君らは生き残った己の幸運を素直に喜べんの?」

郁乃「まあな〜、確かにぃ〜? 洋榎ちゃんの死は残念やったと思うけど〜……」

郁乃「正直な話、実際あの子の身代わりとなって亡者共に喰われるんは御免やろ?」


恭子「…………」

漫  「…………」

絹恵「…………」


3人は郁乃の挑発的な言葉に微塵も反応を示さず、
皆焦点の合わぬ虚ろな目で遠くの空を眺めている。
それはまるで魂を失った抜け殻≠フ様にも見えた。


郁乃(ちっ、反応無しか……。おもろないなぁ、壊れたお人形さんは……)

郁乃「まぁまぁ君達、そんなにメゲんでもええんやで〜?」

郁乃「どうせ新世界に行けば、全部忘れてしまうんやから……」

恭子「忘れる……? 何を……?」ピクッ

郁乃「ここで起きた忌まわしい記憶は全て脳味噌から消去されてまうんやで」

郁乃「ついでに、洋榎ちゃんや真瀬ちゃんの存在も綺麗さっぱりとなぁ……」


恭子「洋榎達の存在が……うちらの頭ん中から消去されるやと……!?」

郁乃「せやで〜。歴史が改変され、死んだ2人は君らの世界との関わりを断たれる」

郁乃「存在が消えるゆうんは、即ち新世界から完全に隔絶≠ウれる事なんや……」

郁乃「まぁ君らにとってもええ話ちゃう? 責苦の呪縛から解放される訳やしなぁ」

恭子「ふざけんなや! そないなまやかし≠フ救い、うちらは求めとらん!」

郁乃「えぇ〜、ホンマに〜? そんなん思っとるんは末原ちゃんだけちゃうん?」

郁乃「末原ちゃんはこう言っとるけど、もしかして絹恵ちゃんも同じ考えなん?」

絹恵「…………」


そう問い掛ける郁乃に横目で視線を向ける絹恵。
その瞳は感情を失い汚泥の様に黒く澱み濁っている。
初めて見る絹恵の冷淡な表情に恭子は身震いした。


絹恵「……そうですね。辛い過去ならいっそ全て忘れた方が幸せやと思います」

恭子「絹恵……ちゃん……? あんた……なにゆうて……」

絹恵「何をそんなに驚いてるんです? 当然の事やないですか、末原先輩……」

絹恵「幾ら悲しみ嘆いた所で、お姉ちゃんは二度と生き返らん。そうでしょう?」

絹恵「せやったら、こんなクソみたいな記憶、とっとと忘れた方がマシですわ」

絹恵「そうや……最初から私にお姉ちゃんなんて居らなければええんや……」
80 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/02/05(水) 02:27:18.10 ID:Hku+h1wFo
恭子「絹恵ちゃんは……ホンマにそれで納得できるんか……?」

恭子「これまで洋榎と積み重ねて来た絆≠ェ無くなってもええんか!?」

絹恵「ええも何も、それを拒否できる力≠ェ私達にあると思ってるんですか?」

絹恵「自分達が如何に無力な存在であるか、私も貴女も痛感した筈やないですか」

絹恵「代行が言うなら、お姉ちゃん達の記憶が無くなるんは既に確定事項なんです」

絹恵「もう無駄な足掻きは止めて、素直にその現実≠受け入れましょうよ……」

恭子「そんな簡単に諦めてもうたら……洋榎が可哀想やろ……ッ!」

絹恵「お姉ちゃんが……可哀想……?」


それまで感情を持たぬ機械の様に淡々と語っていた絹恵の様子が一変した。
激昂し怒りの表情で恭子を睨み付ける絹恵、その凄みは洋榎を彷彿とさせる。


絹恵「勝手な思い込みでそないに的外れな事ゆうんは止めて貰えます?」

絹恵「お姉ちゃんは自分の事で私達が苦しむんを望んだりはしてません」

絹恵「それやのに、死んだお姉ちゃんをいつまでも想い悲しむ事が正しいとでも?」

恭子「そ、それは……」


絹恵「お姉ちゃんは自らの命を犠牲にしてまで私の事を助けてくれました……」

絹恵「だからこそ、私はお姉ちゃんの意思を何より大切にしたいと思ってます」

絹恵「例えどんなに辛く悲しい不幸な出来事があったとしても……」

絹恵「私はそれを乗り越え、笑顔であり続けなければならないんです」

絹恵「それがお姉ちゃんの心からの願いやと……私は知っているから……」

絹恵「でも私は笑えない。お姉ちゃんがいない世界で笑顔になれる筈が無い……」

絹恵「だから忘れるんです。お姉ちゃんとの過去も思い出も全てを断ち切って……」


恭子「絹恵ちゃんの気持ちは分かるし、ゆうてる事も理解できる……」

恭子「けどそれは逃げ≠ソゃうんか? 辛い現実から目を背けてるだけやろ!」

絹恵「なんで逃げたらあかんの!? 別にええやないですかっ!」

絹恵「抗えぬ運命と知りつつ、それに逆らい続ける事に何の意味があるんです!?」

絹恵「私は……私は末原先輩の自己満足≠ネんかに付き合う気は無いんや……!」


絹恵は涙を流し震えながら恭子に怒声を浴びせた。
その勢いに押されて恭子は反論する事が出来ない。
一呼吸置いた後、絹恵は冷笑を浮かべ恭子に言う。


絹恵「末原先輩はね、お姉ちゃんへの想いが弱いからそないな事が言えるんですよ」

恭子「っ!? うちの……洋榎を想うこの気持ちが……弱い……?」

絹恵「ええ……。もしお姉ちゃんに対する想い≠ェもっと強かったなら……」

絹恵「お姉ちゃんの存在を認知した上で、その死を受け入れるやなんて……」

絹恵「そんな事……絶対に出来る筈が無い……絶対に……ッ!」


漫  「もうええ……もうええんよ絹ちゃん……」

漫  「無理する必要なんか無い。なんもかんも忘れて楽になろう……?」


絹恵の腕を掴み自分の方へ引き寄せる漫、2人は抱き合いそっと目を閉じた。
その様子を恭子は酷く遣る瀬無い思いを抱きながら、ただじっと眺めている。
程無くして4人は光の雲の中へと吸い込まれる様にして静かに消えていった。
81 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/02/06(木) 02:58:19.18 ID:PztzPAGUo
恭子「…………」


光の雲の中を一人浮かび彷徨っている恭子。
絹恵や漫、代行の姿は何処にも見当たらない。
あの3人はもう新世界へ到達したのだろうか。


お姉ちゃんへの想いが弱いからそないな事が言えるんですよ


孤独を噛み締めながら、恭子は絹恵の放った言葉の意味を考えていた。


恭子(絹恵ちゃんは生まれてから今までずっと洋榎と同じ時を過ごしてきた……)

恭子(姉妹の絆……。他の誰より洋榎に対する想いが強いんは当然と言える……)

恭子(だからこそ、絹恵ちゃんは洋榎の死を初めから無かった事にしたいんや……)

恭子(洋榎の死を認める位なら、いっそ姉の存在自体を消し去った方が良いと……)

恭子(強過ぎる想い故に、その真実を背負い生きてゆく事が出来んかったんや……)

恭子「あの子がゆう様に……うちの想いは足りんかったんか……?」


恭子はそう呟きながら目を瞑り、体を小さく丸めて自身の心臓をギュッと掴んだ。


恭子(洋榎を想う気持ちが今よりもっともっと何倍も何十倍も強ければ……)

恭子(絹恵ちゃんみたく洋榎を自分の心から消し去る事も是としたんやろか?)


『初めまして、末原さんやっけ? うちは愛宕洋榎。洋榎って呼んでや』

『末原さんも麻雀やっとるんか! なら一緒に麻雀部見学に行かへん?』

『へぇ〜、中々やるやんけ……。ふっふっふっ、久々に燃えてきたわ〜!』

『うちと恭子が居れば無敵やな。このまま一気に全国の舞台まで駆け上がるで!』

『えっ? 恭子は姫松行くん? 千里山やなくて? ふ〜ん、そうかそうか……』

『うちも姫松受験する事にしたわ。千里山の推薦の話? あ〜、それ断ってもうた』

『やったな恭子! うちも受かったで! これでまた3年間一緒に打てるな!』

『全国へ行って今度こそ優勝する! 高校麻雀界のてっぺんに2人で立とうや!』

『恭子……お前と出会えた事に……うちはホンマに感謝しとるよ……』ニコッ


薄れゆく意識の中、洋榎との思い出が脳裏を駆け巡る。
だが、瞳を閉じているにも拘らず眼前に白い光が広がり、
洋榎の姿はそこへ溶け込む様に恭子の前から消えてゆく。


恭子(次に目を覚ました時、うちの記憶から洋榎の存在は消え失せてるんか……)

恭子(あいつを失った哀惜の念と、親友を救えなかった自分に対する嫌悪感……)

恭子(それらも全部一緒に無くなる思えば、それもまた悪くはないんかな……)


恭子「 な ん て 考 え る 訳 無 い や ろ っ ! 」


ガリッ……


恭子は目を見開き、意識を保つ為か、右手の小指を噛み千切り吐き捨てた。


恭子(ふふっ……こうすれば……まだ洋榎の事を覚えていられる……)

恭子(この痛みが……うちとあいつを繋ぐ最後の絆≠艪、なら……)

恭子「命尽き果てるまで……うちは自分の身体を喰らい続けてやる……!」
82 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/02/07(金) 02:17:43.36 ID:xI8Hhfn1o
あれから果たしてどれ位の時間が経ったのだろうか。
恭子は孤立した状態で未だ光の海を漂流し続けていた。
両手の指は全て失われ、腕は骨が剥き出しになっている。
恐らく自身の腕の肉を少しずつ噛み切っていたのだろう。

この特殊な空間では死≠ニいう概念が存在しないらしい。
血液の大半を失ったとしてもここで絶命する事はない様だ。
空腹や眠気に襲われる事もなく、喉の渇きすらも感じない。


恭子「洋榎……洋榎……洋榎……ひろえ……ひろえ……ひろえ…………」


痛みで意識を保ちながら、恭子はひたすら洋榎の名前を復唱している。
脳で記憶するのではなく、魂にその名を刻み付けようとしていたのだ。


うちらの過去や記憶を改竄する事が出来たとしても……

この魂だけは……お前達の好き勝手にさせてなるものか……

世界中の誰もが洋榎の存在を忘れ去ってしまっても……

あいつが確かに実在したという真実を……

うちだけは絶対に忘れんからな……

洋榎の名を覚えている人間がこの世にいる限り……

神とてあいつの存在を否定する事は出来んのや……


ひろえ……ひろえ……ひろえ……ヒロエ……ヒロエ……ヒロエ……ヒロ……エ……


ヒロ……エ……ヒロ……エ……ヒ……ロ……エ……ヒ……ロ……エ……ヒ……ロ……エ……


ヒ……ロ……エ……ヒ……ロ……エ……ヒ……ロ……エ……ヒ……ロ……エ……ヒ……ロ……


―――――――――
――――――
―――


恭子「……ハッ!」


ふと気が付くと、恭子は姫松高校の屋上に立っていた。
正面には額に指を当てこちらを見ている郁乃の姿がある。
その斜め後ろには拘束された絹恵に寄り添う漫が見えた。


恭子(ここは……屋上……!? なんでうちはこんな所に居るんや……?)

恭子(確かうちら4人は上空にあった光の雲に吸い寄せられて……)


反射的に上を見上げる恭子、だがあの光り輝く雲など何処にも存在せず、
今にも雨が降り出しそうなどんよりとした黒い空が広がっているだけだった。


恭子(ハッ……! 洋榎……ッ!)


急ぎ恭子が振り返ると、そこには血に塗れ憔悴し切った様子の洋榎がいた。
傷付きながらもまだ生きているその姿を見て、恭子の瞳から涙が溢れ出る。


恭子(あぁ……洋榎……ひろえ……! 洋榎が……生きてうちの目の前に居る……)

恭子(例えこれが夢であったとしても……例えどの様な姿をしていたとしても……)

恭子(もう一度お前に逢う事が出来て……うちは嬉しい……洋榎……!)


郁乃「ちょっと末原ちゃん、いきなり泣き出してどないしたん?」

恭子「…………えっ?」
83 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/07(金) 03:22:22.67 ID:ThIiT3Hg0
今度は末原が洋榎のポジションになったのかな?
84 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/02/07(金) 05:40:31.88 ID:hgvICtDh0
またかよwwwwwwwwww
85 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/07(金) 06:43:02.85 ID:cLaCRckMO
円環の理ってやつですね
86 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/07(金) 07:10:01.88 ID:N5ISu2nk0
まじかよ…
87 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/07(金) 07:39:33.32 ID:ttziGLWAO
>>1はよっぽど姫松(を拷問するの)がお気に入りと見える
流石に三週目は無いと思いたいけど
88 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/07(金) 08:19:16.12 ID:i8hho/XAo
8つの漢字の内まだ6つしか出てないし三週目やろ
残ってるの確か壁とか飲とか答えあわせ要らなそうなのだけど
89 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/02/07(金) 23:33:09.53 ID:xI8Hhfn1o
仮にこれが自分の見ている夢であり、過ぎ去りし過去の光景であるならば、
その中に登場する人物が自分に対してこんな疑問を投げ掛けてくるだろうか?
不意の出来事に恭子は驚き戸惑い、困惑した表情で郁乃の方を見た。


恭子「なんで……うちが泣いていると……?」ザワ......ザワ......

郁乃「いやいや、そんだけ地面に涙零しとったら顔見えんでも普通気付くやろ」

郁乃「威勢良く啖呵切った傍から泣き始めるし、こっちもビックリしたで……」

恭子「…………」ゴゴゴゴゴッ......


恭子は服の肩で顔の涙を拭き取り、気持ちを静めてもう一度辺りを見回した。
夢にしては余りにも明瞭過ぎる風景、頬を切る微かな風の感触、空気の匂い。
思わず右手で左腕の肉を抓る恭子、その痛みの信号が神経を通じて脳に伝わる。


恭子(これは……決して夢なんかやない……。現実や……!)

恭子(という事は……うちが現実やと思い込んでいた方こそが……夢……?)


郁乃「まぁ、そんなんはどうでもええとして……」

恭子(……っ!)

郁乃「ゆうとくけど、別に屍鬼如き小者に恐れを為してる訳ちゃうで?」

恭子(うちは知ってる……。代行が口にしたこの言葉……この話の続きを……)

郁乃「私から見ればあんなゴミ共、ちっぽけな蟻と同じく取るに足らん存在や」

恭子(やっぱり……。話の展開が夢ん中で見たんとそっくり同じや……)

郁乃「せやけど奴ら半端無く数おんねん。それこそ世界の人口より多いんやぞ?」

恭子(あれはこの先起こり得る未来を予知≠オた白昼夢……やったんか……?)

郁乃「何千年もの長きにわたり、人の死を介して増殖し続けて来たんやからな……」

恭子(いや待て……。それはただの思い込み……あるいは勘違いかもしれへん……)

郁乃「奴らは際限無く幾らでも湧いてきよる。あんなん相手にしてたら切り無いわ」

恭子(洋榎ならいざ知らず、凡人のうちが予知夢なんてもん見れる筈が無い……)

郁乃「それともう1つ、君がこの世界に留まる事は不可能やで?」

恭子(突然こないな状況に置かれて、うちの頭がイカれてもうただけちゃうんか?)

郁乃「君は君の意思と関係無く、強制的に新世界へと引き寄せられる」

恭子(けど……ここまで正確に内容が一致するやなんて、まず有り得んやろ……)

郁乃「まっ、一々言葉で伝えるより、実際に体験してもろた方が早いか……」


大きく息を吸い込んだ後、徐に空を仰ぎ右手を上げる郁乃。


恭子(もし……この後もうちが見た夢の筋書き通りに事が進むのなら……)

恭子(この次に代行の口から発せられる台詞……それは……)


恭子「神が創りし新たなる世界へと続く道をいざ開かん=v

郁乃「神が創りし新たなる世界へと続く道をいざ開かん……」


郁乃「ゲェェェェトォォォォ〜〜〜〜………………んぁ?」

郁乃「んん? あれっ……? 末原ちゃん……君、今なんて……?」


恭子(やはりそうか……。さっき見たんはうちらの未来≠ナ間違い無い……!)

恭子(ここで何も行動せぇへんかったら……あの悲劇は現実のモノとなる……!)
90 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/08(土) 01:15:02.15 ID:8nNtNIaHo
なにがおきるのか?
91 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/08(土) 13:03:41.99 ID:F4lMpnHW0
さすがにもう連チャンはないよな…?
92 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/08(土) 14:05:09.11 ID:FBLJ36leo
これってネキも前々周の記憶あるの
93 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/02/09(日) 01:31:06.44 ID:kNmdE4zAo
ガシッ

恭子は洋榎の方へと向き直り、咄嗟に彼女の左腕を掴んだ。
いきなり腕を掴まれた洋榎は、困惑した表情で恭子を見る。


恭子「……っ」

洋榎「なんやねん急に……。腕なんぞ掴みおって……」

洋榎「痛いやないか……。うちは怪我してるんやで……? 放してや……」

恭子「…………」ギュウ.......


だが恭子は無言のまま腕を離さず、真剣な眼差しで更に力を込めてゆく。


洋榎「んっ……くぅっ……! ホンマに痛いって……。お願いやから放して……」


痛がり嫌がる洋榎の事を気にせず、強い力で左腕を握り続けている恭子。
洋榎は抵抗するも、感覚の無い右手だけで恭子の手を振り払う事は出来ない。


恭子(この手を放したら……お前は一人で勝手に遠くへ行ってまうんやろ……?)

恭子(誰が放すもんか……。うちは死んでもこの手を緩めたりはせえへんで……!)


郁乃「あの〜……ちょっとぉ〜……末原ちゃん……?」


恭子は郁乃に見向きもしないで、洋榎だけをじっと見詰めている。
暫くして、洋榎は恭子から逃れる事を諦めたのか大人しくなった。


恭子「黒服のゆう通り……もうすぐ奴らがあの扉を壊しここへやって来る……」

恭子「その時……お前はどないする……? 何処へ逃げるつもりなんや……?」

洋榎「…………」


洋榎は暗い表情で斜め下を向き、恭子から視線を逸らして黙り込んでいる。


恭子「……端から逃げるつもりは無い。そうなんやな……? 洋榎……」

洋榎「…………」

恭子「そうか……。そんなら……うちもお前と一緒に死ぬわ……」ニコッ

洋榎「っ!?」


恭子「化けモンに喰われて死ぬか。ふふふっ、平凡なうちには似合わん死に様やね」

洋榎「あかん! そんなんあかんて! お前までこんな所で死ぬ必要は無いんや!」

恭子「自分は他人の意見なんぞ聞かん癖に、人には己の意見を押し付けるんか?」

洋榎「うちはそんなつもりじゃ……! ただお前に生きていて欲しいから……!」

恭子「いつどこで死ぬかはうちが自分で決める。お前に指図される筋合いは無い!」

洋榎「……っ」


恭子「せやけど……もしお前に生きようとする意思があるのなら……」

恭子「死という選択肢を捨て去り、生き残りに全力を尽くすゆうなら……!」

恭子「うちは自分自身とお前を必ず$V世界へ連れて行くと約束する……っ!」

恭子「ここで大人しく奴らの腹ん中に仲良う一緒に収まって死ぬか……」

恭子「最後の最後まで生きる事を諦めず、2人で新たなる世界を目指すか……」

恭子「うちはどちらでも構へんで……? お前が好きな方を選べや、洋榎……ッ!」
94 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/02/10(月) 01:53:35.15 ID:MFHjytnJo
洋榎「…………っ」


洋榎は戸惑い、今にも泣き出しそうな弱気の表情を恭子に見せる。
想いを伝えたいのか口を動かしてはいるが、言葉が出て来ない様だ。


洋榎「恭子……待って……話を……聞いて……!」

恭子「うちと一緒に生きるか、若しくは共に死ぬか、今ここでハッキリせぇや!」


強く回答を迫る恭子、洋榎に向かって叫んだ次の瞬間、
蝶番が弾け飛び校舎に続く扉は大きな音を立て地面に倒れた。
そこから飛び出して来たハイエナ£Bは、獲物を求めて周囲を見渡す。


郁乃「あわわわわ、えらいこっちゃ! 屍鬼共が来てもうた! あかんてこれは!」

郁乃「ちょいタンマ……! タンマやで! くっそぉ……ふんがぁぁぁぁぁっっっっ!」


郁乃が右手を天空に翳し叫声を発すると、遥か上空に厚い光の雲が広がり始めた。

声を張り上げる郁乃に気を取られていた屍鬼達だが、
最も扉に近い位置にいた漫と絹恵の姿を視認すると、
奇声を発しながら2人に向かって猛然と走り出した。


恭子「漫っ! 絹の身体を抱えて上に跳べ!」

漫  「っ!?」


次の瞬間、洋榎以外の4人の身体が重力から解放され僅かに宙へと浮き上がる。
漫は恭子の言葉に素早く反応し、縛られて動けぬ絹恵を抱き抱えた状態で跳躍した。

2m程の高さまで上昇する事が出来たが、まだそこは安全な場所ではない。
空へ逃げようとする漫と絹恵、飢えた亡者共が彼女達を捕えんと跳び上がる。


郁乃「あかん! 間に合わん! 漫ちゃん達が奴らに捕まってまう!」

漫  「くっ……! お前らなんかに……喰われてたまるか……っ!」


漫は捻る様に体勢を翻し、伸びて来た亡者達の手をギリギリで躱す。
そして跳び上がって来た屍鬼の頭を蹴り飛ばして更に上へと上昇した。
下から2人を見上げる亡者の群れ、もう奴らの魔の手は漫達に届かない。

一方、恭子は事態の深刻さに気付き額から油汗を流していた。


恭子(なんて事や……浮力が足りん……! 洋榎の身体が浮かび上がらん……!)

洋榎「恭子っ! 2人は無理や! うちから手を放せ!」

洋榎「お前だけなら光の雲の向こう側まで飛んでける! うちに構わず行けッ!」

恭子(っ!? あの光の先に新世界がある事を洋榎は知っている……!?) 


郁乃「末原ちゃん! そいつの事はもう諦めるんや!」

郁乃「仮に光の元へ連れてった所で、護符が無ければ新世界へは行けん!」

恭子「黙れっ! 例えそうであろうと、うちは洋榎から離れるつもりは無い!」


恭子は洋榎の腕を伝って近付き、彼女の胸部に両手を回してしっかりと抱き付いた。
息を吐く間も無く、漫達を諦めた亡者共がこちらへ向かって一斉に走り寄って来る。


恭子「逃げるんや洋榎! 奴らこっちに向かって来るで!」

洋榎「逃げるって……そもそも逃げ場なんて何処にも無いやろ……!」

恭子「あそこや洋榎! フェンスが取り外された場所! あそこに向かって走れ!」

恭子「こうなったら一か八かや……。2人で屋上から飛び降りよう……!」
95 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/02/10(月) 18:02:54.60 ID:MFHjytnJo
洋榎(このまま屋上に残れば、一緒に居る恭子も奴らの餌食になるんは明白……!)

洋榎(この高さから飛び降りたとしても、浮力を持つ恭子なら無事かもしれん……!)

恭子(洋榎は己の命に関する事には無頓着やけど、仲間の命に対してはそうやない)

恭子(例え僅かな可能性でも、うちが助かる見込みのある方をお前は必ず選ぶ……!)

恭子(それが……それこそが……うちの知ってる本当の洋榎や……!)

恭子(うちの命が関わっている以上、ここに留まる選択肢など洋榎の中には無い!)


恭子の予測通り、無謀とも言えるその提案をすんなりと受け入れた洋榎。
最後の力を振り絞り、洋榎はフェンスの無い場所を目指して駆け出した。
今度こそ極上の獲物を手に入れるのだと、その背中を屍鬼達が猛追する。


絹恵「逃げてぇっ! お姉ちゃんっ! すぐ後ろまで迫って来とるよっ!」

漫  「大丈夫や、洋榎先輩は速い! 奴らになんか掴まったりせぇへん!」

郁乃(何処に向かって……。ハッ! 洋榎の奴、屋上から飛び降りるつもりか!?)


恭子(満身創痍とは言え、洋榎の速さには追い付けんよ……!)

恭子(このまま逃げ切る……! 奴らの手が届かぬ所まで……!)

洋榎「っ!?」


だが突然、洋榎の走る速度が急激に低下し始めた。


恭子「どないしたんや洋榎!? 疲れたんか!? あと少しやから頑張ってくれ!」

洋榎「ちゃうねん……! 身体が軽なって……地に足が着かず上手く走れん……!」

恭子(なんやと……!? うちの体に働いとる浮力が強なってるんか……!?)


まるで水中を走っている様な感覚、みるみる内に屍鬼達との距離が縮まる。
後ろから次々に迫って来る亡者達を、恭子は脚蹴りして何とか凌いでいた。


郁乃「あぁ〜、もぉ〜! 世話の焼ける……!」スッ......


何も無かった郁乃の手から数本の白銀のナイフが現れた。
郁乃はそれらを屍鬼の頭部目掛けて勢い良く投げ付ける。

グサッ……
      グサッ……

風を切り裂き、鋭く美しい白銀の刃が亡者達の脳天に深々と突き刺さった。
呻き声を上げ倒れる屍鬼、だがその躯を踏み付け後続が次々と恭子達に迫る。
郁乃はその後もナイフを出し数え切れぬ屍鬼達に向かってそれを投げ続けた。

その間に洋榎はフェンスが外れた場所に向かって必死に走る。
走ると言うより、飛び跳ねると言った方が正しいかもしれない。


恭子「ぐっ……!」

恭子(跳ねた洋榎が落ちてゆく瞬間……急激に負荷が掛かる……)

恭子(落下する原因は洋榎の質量……。落ちる時それが全てうちに掛かって……!)

恭子(洋榎から手ぇ放したら……うちの体は一気にあの光へと持ってかれる……!)

恭子(苦しいかもしれへんけど……もっと強く抱き締めるで……!)ギュウゥゥゥ......


恭子「あと3歩……2……1……! 今やっ! 思いっ切り飛び出せ、洋榎……っ!」

洋榎「くっ…………うあぁぁぁ ぁ ぁ あ あ あ っ っ っ ! ! ! 」


洋榎は屋上の縁を蹴り、校舎から出来るだけ離れる様にして宙へ飛び出した。
96 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/02/11(火) 01:23:44.50 ID:6zNT71fqo
漫  (校舎から飛び降りるやなんて……なんちゅう無茶しよるんや……!)

絹恵(お願い恭子ちゃん……お姉ちゃんを助けて……!)


洋榎「なっ……! なんやこの数……!?」

恭子「これは……! いつの間に……っ!」


下に目を向けると、屍鬼達が校舎の周りや校庭を隙間無く埋め尽くしていた。
屋上からは完全に死角だった為、これ程の数がいると誰も気付かなかったのだ。


恭子「ぐっ……んぐぐ……っ!」


縦になった状態でずしりとした洋榎の身体を抱き抱えている恭子。
腕だけでは重さでずり落ちてしまう為、恭子は洋榎に脚を絡める。

恭子の体が落下する事に反発してだろうか、浮力は一層増している様だ。
だが2人を浮き上がらせるまでの力は無く、徐々に下へと降下してゆく。


オ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ッ ッ ッ …………


落ちて来る2人を今か今かと待ち詫びているのか、
屍鬼達は大きな唸り声を発しながら両手を挙げていた。


洋榎(この落下速度なら地面に着いた時に怪我する事なんて有り得ん。けど……)

洋榎(着地点にも奴らが溢れ返っとる……。下に降りたら2人共終わりや……!)


洋榎「恭子……ここまでや……。うちらでは、もうどうする事も出来んよ……」

洋榎「天に昇る事も許されず、地に降りて奴らに喰い殺される他無い……」

洋榎「これは由子を殺した時に確定された、うちの運命≠ネんや……」

洋榎「けどうちはその定めに逆らうつもりなんて、これっぽっちも無いねん……」

洋榎「仲間を殺しておきながら自分は生き残るやなんて都合の良い話は許されん」

洋榎「うちは生きる資格の無い人間なんや。せやから放してくれ恭子……頼む……」


恭子「…………」


洋榎「まだ間に合う……。重荷≠ウえ捨てれば、お前はこの空を昇って行ける」

洋榎「もし生き残る運命にあったお前が、うちの巻き添え≠ナ死ぬとなれば……」

洋榎「うちは仲間を2人殺した事になる。これ以上うちに罪を背負わせんでくれや」


恭子「……なるほどな。今度はそういう作戦で来たか……」

洋榎「恭子……?」

恭子「そないな泣き落としも、罪悪感を煽る口上も、うちには通用せんで?」

洋榎「っ!?」

恭子「お前に生きる資格があるかどうかなんて、そんなんうちには関係無い事や」

恭子「うちが死ぬ事で自責の念に駆られるゆうなら、勝手にそれで苦しめばええよ」

恭子「どうせうちが死ぬ時にはお前も死ぬ。死ねば全てから解放され楽になれるんや」

恭子「悲しみも苦しみも本の一瞬で終わるんやから、何の問題も無いで。せやろ?」

洋榎「くっ……この分からず屋が……っ! さっさと放せゆうとるやろ、ド阿呆っ!」

恭子「ふん、ついに本性が出たなっ! 分からず屋なんはお互い様やんけ阿呆がっ!」

恭子「そんなに1人で死にたいのなら、自慢の腕力でうちを振り払ってみいや!」
97 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/11(火) 18:08:14.35 ID:owlQ+Jamo
ここまでくると雰囲気の違う後日談も見たいな
次の学校の後でもいいから
98 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/02/12(水) 02:17:59.56 ID:xBRWFezio
洋榎「放せっ! 放せやっ! 放せこの……このぉ……っ!」

恭子「んぐぐっ……嫌や……! 絶対に……絶対に放さん……!」


空中で揉み合いながら落下して行く洋榎と恭子。
気付けば2人の瞳からは大量の涙が溢れ出ていた。


洋榎「なんで放してくれんのや恭子! うちはお前に死んで欲しくないんや……!」

恭子「嘘吐け! お前が心から生きていて欲しい思っとるんは絹恵ちゃんだけやろ!」

洋榎「……っ!」

恭子「お前は最愛の妹を救わんが為に、大切な仲間である由子を殺した……!」

恭子「もしあの時……うちと由子の立場が逆やったら……お前はどうした……?」

恭子「お前は……例えうちでも形振り構わず殺しに掛かった筈や! 違うか!?」

洋榎「…………っ」

恭子「それを今更なんや! 汚い本音隠して上辺だけで親友面すんのやめーや!」


黒い本心を見抜かれた洋榎は全身脱力し、口を開け茫然とした表情で空を仰いだ。


洋榎「……そうや。お前のゆう通りやで、恭子……」

洋榎「お前を殺すしか絹を救う方法が無かったら……」

洋榎「うちは躊躇わず……お前を殺した……」

洋榎「お前を犠牲にして……絹を救う事を選択した……」

洋榎「それが分かっていながら……何故お前はうちと一緒に死のうとする……?」

洋榎「目的の為なら悪魔に魂を売り渡し仲間すら簡単に裏切る最低の人間なんやぞ?」


恭子「…………」

恭子「それはな……お前がうちの一番大切な人≠竄ゥらやで……洋榎……」

恭子「お前が絹恵ちゃんを想う気持ちと、うちがお前を想う気持ちは同じなんや……」


恭子は涙を流しながらも穏やかな微笑みを洋榎に見せた。


恭子「確かに今回お前がした事は仲間に対する裏切り行為やったかもしれん……」

恭子「けどな……お前が本当はどんなに優しい人間か……うちは知ってんねん……」

恭子「せやから今も……そしてこれからも……この気持ちは決して揺るがん……」


恭子「例えお前の一番≠ェうちやなくても……」

恭子「うちの一番≠ヘお前やねん……洋榎……!」


洋榎「恭子……」


恭子「命ある限りお前の傍に居たい……。これはうちの最後の我が儘や……」

恭子「頼む洋榎……。うちを……うちを1人置いて遠くへ逝かんでくれ……!」


洋榎(こんなうちの為に……どれだけお前は涙を流して……)

洋榎(お前は阿呆や……。ホンマに……どうしようも無い阿呆や……っ!)


真っ直ぐで純粋な想いに心を打たれ、洋榎は恭子の体を強く抱き締めた。
屍鬼達が犇めく地獄絵図の如き地上は、すぐ目の前まで迫って来ている。
だが2人はそんな事を気にする様子も無く、互いの温もりを感じ合っていた。
99 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/02/13(木) 04:04:57.85 ID:/0Q6v96Jo
洋榎(うちやてホンマは1人で死ぬんが怖くて怖くて堪らんかった……)

洋榎(親友であるお前に罵られ軽蔑されるんやないかと内心怯えてた……)

洋榎(うちの罪を赦し全てを受け容れてくれる……そんな誰かを欲してた……)

洋榎(身勝手な話やけど……うちも救い≠求めてたんや……)

洋榎(お前が……お前の想いが……うちの心を救ってくれた……)

洋榎(もし許されるなら……そんなお前ともっと一緒の時を過ごしたかった……)


洋榎と恭子の想いが重なり、互いの心が1つとなったその時、
恭子の右手首から金色の帯が伸び、洋榎の左手首に巻き付いた。
まるで具現化した絆≠フ糸が2人の手と手を結び繋ぐかの様に。

高度が下がり洋榎達の脚に薄汚い亡者達の手が届き触れようとした次の瞬間、
竜巻の如く激しい熱風が辺りに吹き荒れ、2人の下にいた屍鬼達を吹き飛ばした。
校舎の窓ガラスが次々に割れ飛び散り、その破片が周囲の屍鬼達に突き刺さる。

流転の護符の加護を受け、洋榎の体もまた重力から解き放たれた状態となっていた。
その紅い風は強い上昇気流を発生させ、洋榎と恭子の体を一気に上へと押し上げる。


恭子「洋榎……浮いとるよ……! お前の体も……宙に浮いとるよ……っ!」

洋榎「ホンマや……。お前の手首に絡んだ金の帯がうちの手首にも繋がって……」

恭子「この地獄の様な世界にお前を縛り付けていた足枷は外された……!」

恭子「きっと神様も認めたんや……。お前が新世界へ行く事を……っ!」

2人は抱擁を解き、互いの両手と両手を重ねて指を絡ませ見詰め合った。

漫  「見えるか絹ちゃん! 洋榎先輩も浮いとる! 2人の体が上昇して……!」

絹恵「お姉ちゃん助かったんやね……。私達と新しい世界へ行けるんやね……!」


郁乃(なんやと……!? 1枚の護符で2人が……!? そんなアホな……っ!)

郁乃(そもそも新世界へ行ける麻雀部レギュラーは1校につき3人までの筈やろ!?)

郁乃(2人を生贄とし3人が救われるっちゅう話の根底が崩れとるやないか……!)

郁乃「ふざけよってからに……。こないな茶番……認められるか……ッ!」ゴゴゴゴゴッ......

郁乃「ルールは絶対……。洋榎の死は何者にも覆す事の出来ぬ最終確定事項……!」

郁乃「4人仲良く生存ルートなんて生温い結末、この局≠ノは存在せんのや……!」


洋榎の生き残りに激怒する郁乃、手には1本のナイフが握り締められている。
その鋭利な刃先には死≠フ呪詛が掛けられており、妖しく黒光りしていた。


郁乃「神の供物と為りてその身を捧げるは真瀬由子と愛宕洋榎……」

郁乃「この2人の血≠以って死の祭祀≠ヘ成就される筈やったのに!」

郁乃「神聖なる儀を冒涜せんとするこの振る舞い、万死に値するで……?」

郁乃「私が直接手を下すんは無粋やけど、こうなっては致し方あるまい……」

郁乃「己の愚行を自らの死を以って償え、愛宕洋榎……ッ!」


黒き呪いの刃を洋榎に投げ付けんとして、郁乃は大きく振り被る。
郁乃に対して背を向けている洋榎は、その動作に全く気付かない。
しかし対面にいる恭子は洋榎を狙う郁乃の姿を逸早く捉える事が出来た。


恭子(代行が……洋榎の命を狙って……!?)


郁乃「死ねぇぇぇェェェっっっッッッ!!!」


恭子「危ないっ! 洋榎……ッ!」
100 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/13(木) 08:12:55.94 ID:nPez4akD0
代行こら
101 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/13(木) 09:52:22.29 ID:RcGe5lGDo
いやでもこれルール的に代行もまずいんじゃ
102 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/13(木) 10:41:43.50 ID:qeJBTO+Do
中々熱い展開
103 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/13(木) 17:55:18.05 ID:+woF/N3B0
代行やっちまったな
104 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/13(木) 19:03:14.94 ID:OZjqonx10
とうとう来たか
105 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/02/14(金) 05:24:03.28 ID:2hSC2drTo
洋榎「っ!?」

洋榎を自分の方へグッと引き寄せ、その反動を利用して2人の位置を交換する恭子。
不意の事態に洋榎は状況を理解する事が出来ず、ただ呆然と恭子に視線を向けていた。

洋榎「恭子……? 何を……」

事情が全く飲み込めず、困惑した様子で恭子に声を掛ける洋榎。
次の瞬間、郁乃の放った漆黒の刃が恭子の背中に深く突き刺さる。


恭子「 う゛く゛っ …… ! 」


洋榎「……えっ?」

漫  「あっ……!」

絹恵「恭子ちゃんっ!」


郁乃「げぇぇぇ〜っ!? 末原ちゃんに当たってもうた! あばばばばっ……」


臓器を酷く損傷したのか、恭子は朦朧とした様子で口から血を流していた。
仕込まれた呪詛の影響を受け、恭子の肉体から急激に熱が奪われてゆく。


恭子「よかった……洋榎が……無事で……」

洋榎「お前……まさか……うちを庇って……!?」


急いで背中に刺さったナイフを抜き取り、それを地面に向かって投げ捨てる洋榎。
出血を抑える為に抜かぬ方が良かったのだが、そう考える余裕が洋榎には無かった。

恭子の背中に触れた瞬間、洋榎の左手に伝わる生暖かい感触。
思わず手の平を見ると、恭子の血液がべっとりと付いていた。
瞳を閉じ項垂れ、力の抜けた手足をだらんとさせている恭子。


洋榎「なんて事や……なんでこんな事に……あぁ……あぁぁ ぁ ぁ あ あ あ っ ! 」


傷口から止め処なく溢れ出す鮮血が、恭子の白いブラウスを紅く染め上げてゆく。
それが致命傷であると直感的に悟った洋榎は、恭子の身体を抱き締め泣き叫んだ。


洋榎「なんでお前が死ぬ運命にあったうちの身代わりになっとるんや……!」

洋榎「そんなんおかしいやろ……! そんなん……絶対に間違っとる……!」

洋榎「死ぬべきはうちなんや……。人殺しのうちが死ねば良かったんや……っ!」


恭子「洋榎……そんなに自分を責めたらあかんよ……」


薄目を開け消え入りそうなか細い声で恭子が呟く。


恭子「見たんやろ……? 未来を……」

洋榎「っ!? お前……何故それを……」

恭子(やっぱり……そうやったんか……)


恭子「お前は見た……。絹恵ちゃんが無残に殺される残酷な未来を……」

恭子「そこでお前は絶望≠知った……。妹すら救えぬ己の弱さを知った……」

恭子「他の誰かを生贄にするしか絹恵ちゃんを救う方法が無い事も知ったんや……」


恭子「誰にも相談出来ず……たった1人で全てを背負い込み……苦しんで……」

恭子「辛かったやろ……? その苦しみ……うちが全部纏めて持ってく≠ゥら……」

恭子「洋榎は洋榎らしく……皆を照らす太陽の輝きを持って新世界を生きてくれ……」
106 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/02/15(土) 01:35:53.09 ID:5DXXqmxGo
洋榎「苦しみを持ってくってなんや!? そんなもん持って何処行こうゆうんや!?」

洋榎「生きるも死ぬも2人でゆうたろ!? 勝手に1人で逝こうとすんなや阿呆っ!」

恭子「…………」


だがその時、既に恭子の視力と聴力は完全に失われ、洋榎の声は届かなかった。
ぼんやりと遠く空を眺める恭子、光を失ったその瞳には何が映っているのだろうか。

暫くして、恭子は囁く様に小さな声で自身の思いを言葉にする。
最後に洋榎へ伝えておきたい想いの全てを吐き出さんとして。


恭子「強く凛々しいお前はうちの憧れやった……」

恭子「先をゆくその背中を必死に追い掛けて……」

恭子「けどお前はうちが進む以上に速く走るから……」

恭子「いつまで経っても追い着けなくて……」

恭子「気が付けばお前の姿は遥か遠く……」

恭子「うちが辿り着けん所まで進んどったんや……」


恭子「せやけど今……奇跡に導かれ……うちはお前に追い着いた……」

恭子「お前と同じ場所に立ち……お前の瞳に映る景色を見る事が出来た……」

恭子「これでもう……思い残す事は……何も無い……」


そう言い残し、恭子は天を仰ぐ様にして静かに息を引き取った。
洋榎の温もりをその身に感じながら、安らかな眠りに就く様に。

呼吸が停止してから程無くして、恭子の肉体は重力を取り戻す。
洋榎は慌てて恭子の身体が地に落ちぬよう抱き締める力を強めた。


洋榎(ぐぐっ……なんでや……!? まだ恭子の手元には護符があるゆうに……!)


洋榎が上で恭子はその下に、2人は横になった状態で空中に浮かんでいる。
浮力の方が僅かに上回っており、少しずつではあるが光へ引き寄せられていた。


洋榎(護符がある今なら……まだ間に合うんちゃうか……!?)

洋榎(恭子の肉体をこのまま光の中へ連れて行けばあるいは……)


確証も無いただの憶測、けれどもそれに縋る思いで恭子の肉体を支え続ける洋榎。
次の瞬間、恭子の僅かに開いた口元から青白い輝きを帯びた光の粒子が湧き上がる。


洋榎(そんな……恭子の魂が……! 早過ぎやろ……っ!)

洋榎(お前はうちと共に生きる未来に何の未練も無いと……?)

洋榎(あの口元を塞げば……魂の流出を抑えられるか……!?)


しかし両手は使えず、恭子の口の隙間を手で押さえる事は出来ない。
洋榎が思考を巡らせている間にも、彼女の魂は宙へ漏れ続けている。


洋榎(今残っとる魂が全部外に抜け出てもうたら……)

洋榎(恭子の体はただの肉塊と成り果ててしまう……)

洋榎(嫌や……恭子……うちはお前を失いとうない……!)


無意識の内に洋榎は自らの口唇を以って恭子の口を塞いでいた。
燃える様に熱い洋榎の唇と氷の様に冷たい恭子の唇が重なり合う。


洋榎(お願いや神様……もっと早く……うちらをあの光まで届けて……!)
107 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/15(土) 03:29:39.81 ID:+OubxAW40
こういう類の洋榎×恭子をずっと探し求めていた
108 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/15(土) 08:08:20.41 ID:+sBGPjol0
末原ちゃん、身体冷えるの早すぎぃ!
109 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/02/16(日) 04:37:44.42 ID:Z5IqXAUJo
郁乃(あかん……どないしよう……。これは不味い事になったで……)

郁乃(洋榎やなく生き残りが確定した末原ちゃんを殺ってもうた……)

郁乃(このままやと黒服のゆう隔絶の呪い≠ニやらが発動し護符の所有権が……)


郁乃「…………」

郁乃「…………?」

郁乃(んん? あれれ、おっかしいなぁ……。護符に何の変化も見受けられん……)

郁乃(特に変わった術式の気配も感じられんし……これは一体どういう事や……?)


左手で流転の護符に触れる郁乃、そこに込められた呪力を詳しく解析する。


郁乃(…………っ! ちっ、やられた……! 黒服の奴……謀りおったな……!)

郁乃(流転の護符にそないな呪いは最初から仕掛けられておらんかったんや!)

郁乃(実力では敵わぬ私の行動を阻止すべく、こんな搦め手を使うとは……!)

郁乃(新世界への移動≠取引の材料として利用した絶妙な一手……)

郁乃(クックックックックッ……。あのポンコツ、やってくれるやないか……!)


コツン......


郁乃「あいたっ! なんやっ!?」

漫  「…………っ」

郁乃「ちょっと〜! なに人に向かって靴投げ付けてんの? 痛いやないか!」

漫  「黙れババァ! お前だけは……絶対に赦さへんで……!」ゴゴゴゴゴッ

郁乃(うっ……! な、なんやこいつの常軌を逸した殺気と迫力は……)ゾクッ......


郁乃「まぁまぁ漫ちゃん、そうカリカリせんと深呼吸して少し落ち着こうや、な?」

郁乃「言い忘れてたんやけど、新世界へ行けばここでの記憶は全て無くなるんやで」

郁乃「もうすぐ君は死んだ真瀬ちゃんや末原ちゃんの存在も忘れてまうんや……」

郁乃「せやから、そんなに怒らんでや〜。私は君らと普通に仲良うしたいねん」


漫  「ほざけっ! 誰がお前の様な屑と……! 死んでもお断りやっ!」

漫  「それに忘れたんか? お前は遵守すべきルールを自ら破ったんやぞ!」

漫  「護符の所有権を失ったお前は、この世界と共に朽ち果てる運命にあるんや!」

漫  「あの穢らわしい化け物共こそお前にはお似合いや。精々仲良くするんやな!」


郁乃「……ぷっ、ぶふぅっ! イヒヒヒヒッ…… ア ハ ハ ハ ハ ッ ! 」

漫  「なにが可笑しいんや、このイカれババァ!」

郁乃「ルールを破ったら護符の所有権は失われるゆうたなぁ? あれは嘘や!」

漫  「……っ! なんやと……!?」


郁乃「あれはなぁ〜、黒服が己の使命を果たさんとして吐いた 出 任 せ や……」

郁乃「私もすっかり奴に騙されてもうたんやけどな、確認したから間違い無いわ」

郁乃「隔絶の呪い≠ネんちゅうもんは存在せんのよ。残念ながらなぁ……」ニタァ......

漫  「そんな……理不尽や……。この悪魔を裁く事は誰にも出来へんのか……?」

郁乃「当然やろォ〜? 神とてこのいくのん様≠断罪するんは不可能やでぇ!」
110 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/16(日) 05:02:52.67 ID:4tpTrMLhO
神「死刑」
111 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/16(日) 10:47:24.32 ID:FyD+WOOIo
???「死刑」
112 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/16(日) 14:42:32.62 ID:x3NZHdWso
コレはギルティですわ
113 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/17(月) 03:03:29.87 ID:Pc5qo6H9o
ギルティ!
新世界が楽しみやな
114 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/02/17(月) 05:21:50.93 ID:sRiT+u2so
神すらも嘲る様な郁乃の高らかな笑い声が空に響く。

絹恵「どうして……どうして貴女は……そないに酷い事が出来るんです……?」

絹恵「教えてください……。ホンマは殺したい程に私達の事が憎かったんですか?」

絹恵「私達に見せてくれていたあの優しい笑顔も、全部嘘やったんですか……!?」


郁乃「ん〜? 私が君らの事を憎んでるやて? ないない、寧ろその逆やで〜」

郁乃「君ら見てるとおもろいしなぁ……。私は姫松の皆が心の底から大好きや!」


絹恵「なら何故こないな事を為さるんですか!」

漫  「せやっ! そんなん理屈に合わんやろ!」

絹恵「執拗なまでに私達を苦しめようとする理由はなんです!?」

絹恵「私達の事を好きやゆうてくれる貴女が……どうして……っ!」


すると突然郁乃は目を細め、薄気味悪い笑みを浮かべた。
今までとは比べ物にならない異質な狂気が辺りを包み込む。


郁乃「……私は本心から君達の事が好きや。だからこそ……」

郁乃「君らを嬲り、甚振り、引き裂き、滅茶苦茶にしたい衝動に駆られるんや……」

郁乃「私は大好きなモノ£Bが苦しみ嘆き怒り絶望する姿をこの目で見たい……」

郁乃「理性では抑え切れぬリビドーが私の果て無き欲望を掻き立て突き動かす……!」


郁乃「大切なモノが壊されるその時、私もまた絶望し痛みに打ち拉がれる……」

郁乃「けどなぁ……その絶望≠焉A私にとっては幸福≠ニ同義やねん……」

郁乃「心の隙間を埋めるという意味では、悦びも悲しみもその本質は同じ……」

郁乃「湧き上がる強い感情こそが、私の空っぽの心を満たし潤してくれる……」

郁乃「そして我が心満ち溢れるその瞬間、私は至福の時≠ヨと到達するんやっ!」


郁乃「イヒッ……イヒヒッ……イヒヒヒヒッ! アーッハッハッハッハッハッ!」


絹恵「分かりません……。貴女のゆうてる事が……私には分かりません……!」

漫  「何とち狂った事ゆうてるんやアイツは……。完全に頭イカれとる……!」


郁乃「君らには理解し難いんかなぁ〜? 私の純粋なこの気持ち、この想いが……」

郁乃「完成させた構築物を一気に叩き壊すと気持ちええやろ? それと同じや……」

郁乃「手間が掛かっていれば掛かっている程に……愛着があればある程に……」

郁乃「それを破壊した時の高揚感、達成感もまた大きくなるもんなんやで……?」


大切なモノだからこそ壊したくなるという、矛盾を孕んだ支離滅裂な郁乃の主張。
極端に捻じ曲がった愛情、その歪んだ狂気は麻雀部レギュラー達に向けられている。


郁乃「せやけどそれは一瞬の快楽に過ぎず、すぐに空虚が私の心を再び支配する……」

郁乃「故に飽く無き欲望の連鎖は続く……。屍鬼が生者の肉を追い求める様にな……」

郁乃「あぁ……ゆうてる傍から……渇いてくる……私を満たしてや……漫ぅ〜……」


漫  「っ!!」ゾクッ......


唇を舌で舐め回し、気持ちの悪い薄目でこちらをじっと見詰めている郁乃。
蛇が獲物を狙うかの様に、その瞳の先には縛られている絹恵の姿が在った。
115 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/02(日) 18:16:20.01 ID:jSKJgiRV0
116 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/02(日) 19:18:43.29 ID:rAGhOZ62o
復活来たぜIYAHAAAAAAAAAAAAAAAAAAA

更新楽しみにしてます
117 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/04(火) 02:32:19.18 ID:3foEpQnro
漫  「うぐっ……!」

郁乃が放つ強烈な邪気に当てられ、漫は吐き気を催し右手で口元を押さえた。

漫  (この気配……ヤバイ……! 代行の奴、また何かやらかすつもりや……!)

漫  (ルールを盾にした抑止力が失われた今、奴の暴走を止める事は出来ん……!)


郁乃「漫ちゃんの殺気に満ち溢れたあの表情……めっちゃ素敵やったわぁ〜……」

郁乃「この私を恐怖させるなんて、洋榎ちゃん以外無理や思っとったんやけど……」

郁乃「新世界へ行く前に……最後にもう一度だけその顔拝ませてくれや……」ニタァ......


郁乃の指の間から闇のオーラを纏った黒い針の様な物が現れる。


郁乃「なぁ絹恵ちゃん……申し訳無いんやけど君ここで死んでくれや……」

絹恵「っ!?」

郁乃「漫ちゃんのエントロピー≠爆発させる為の贄≠ニしてな……」

漫  (なっ……! まさか……奴が絹ちゃん狙うんは全部うちのせい……!?)

漫  「くっ……!」

漫  (させへん……っ! 絹ちゃん傷付ける様な真似はうちが許さへんで……!)


漫は自身の体の後ろに絹恵を隠し、彼女に牙を剥かんとする郁乃と対峙した。


郁乃「クックックッ……。己の身を呈してまで友を庇う……か……」

郁乃「見るも暑苦しき友情……。あ〜くさいくさい、ホンマくっさいわお前」

郁乃「……せやけど、そうでなくてはこちらも御馳走に有り付けぬ……」

郁乃「溢れる想い、美しき情愛……。2人を結ぶ強い絆≠フ存在を感じる……」

郁乃「その繋がりを断ち、莫大な負≠フ精神エネルギーを発生させる事で……」

郁乃「我の翹望せし燦爛たる理想の混沌(カオス)がこの姫松に顕現する……!」


ヒュンッ......


漫  「ふぐっ……ぐぁぁっっっ!」

絹恵「漫ちゃん……ッ!」


郁乃が放った1本の細く長い針が漫の肉付きの良い太腿に突き刺さる。
焼ける様な激痛が全身を駆け巡り、漫は痛みに顔を歪め悲鳴を上げた。
瞳に涙を溜め込む漫、だが決して臆する様子は無く郁乃を睨み付ける。


郁乃「激痛を齎す呪詛針を受けてなお我が前に立ちはだかるか、上重漫……」

郁乃「ならばお前がこの痛みにどこまで耐えられるか、試してやろうぞ……」


呪詛は肉体的苦痛を高めるだけの物らしく急所を貫かれなければ死ぬ事は無い。
郁乃は時間を掛けじっくりと嬲る様に漫の手足に呪詛針を1本1本突き刺してゆく。

身体を小さく丸め痛みを堪える漫、後ろにいた絹恵の無防備な姿が晒される。
しかし郁乃は絹恵を標的にはせず、漫の方ばかりを執拗に狙い撃ちしていた。
漫を完膚無きまでに屈服させ、己の意思で絹恵の前から退く瞬間を待っているのだ。


絹恵「漫ちゃんっ! もう私なんか庇わんでええから……っ!」


泣き叫ぶ絹恵、漫は無言で手足に刺さった針を抜き投げ捨てた。
漫の肉体は痙攣を起こし、全身が激しくガタガタと震えている。
それでも漫は絹恵の前から少したりとも動こうとはしなかった。
118 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/04(火) 08:07:32.82 ID:41ZdBTAqo
アラフォーさんやっちゃって下さい
119 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/04(火) 11:47:23.05 ID:PXnctAUJo
アラフォーはよ!
120 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/04(火) 23:41:50.56 ID:m2kcuG7To
アラフォーさんは完全にいくのんにビビってたし無理じゃないっすかね
121 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/04(火) 23:55:21.53 ID:O18t9Yk/o
流石にどうにかしないと…
122 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/05(水) 03:34:00.28 ID:FqhHYdNro
漫  (この程度の痛み、大切な人を失う悲しみに比べれば全然大した事無い……!)

漫  (洋榎先輩の為やなく、うちは自分自身の為に絹ちゃんを守りたいんや……!)


漫は後ろへ向き直り、正面から絹恵を力一杯に抱き締めた。


漫  (例えこの身が果てようとも……)

漫  (絹ちゃんは……絹ちゃんだけは……っ!)


洋榎(恭子……うちを置いて一人先に逝くやなんて、そんなん許さへんからな!)

洋榎(お前はうちの傍に居るべきなんや……。居らなあかんのや……ッ!)


洋榎と漫の瞳には、それぞれ自身の目の前にいる少女の姿しか映っていなかった。
その2人の強く純粋な想いは思念≠ニなって、荒廃した隔離世界に広がってゆく。
それは屍鬼と共にこの空間に迷い込んだ1つの彷徨える紅き魂と強く共鳴した。


『……あったかい』

『伝わってくる……人が人を想う優しい気持ち……凄く……あったかいよ……』


洋榎(っ!? お前は……っ!)

漫  (なんやこの声……直接脳内に響いて……!?)


『私に残された最後の力で……貴女達を光の元まで連れて行ってあげる……』

『だから……その手で抱き締めている愛しい人を……決して放さないで……』


ゴ ォ ォ ォ オ オ オ ォ ォ ォ ォ ォ ッ ッ ッ ッ ッ ッ ・・・・・・


轟音が鳴り響き、姫松高校一帯が激しい熱風の嵐に包まれた。
屍鬼達も突然の出来事に驚いているのか周囲を見回している。

フェンスの取り外された場所付近にいた屍鬼達が吹き荒ぶ烈風に煽られ、
屋上の縁から足を踏み外して、ゴミの様にパラパラと地面へ落下してゆく。

重量ある巨大モニターも風の煽りを受け、耐え切れず画面を上にして倒れた。
その衝撃で壊れたのか、モニター画面には砂嵐♂f像が映し出されている。
洋榎を苦しめた回転式抽選器の様な箱も倒れ、多くの屍鬼達が下敷きになり潰れた。

その他屋上にあった小物類は全て、綺麗サッパリ吹き飛ばされてしまった様だ。
由子の遺体は地面に寝ていた為か、風の影響を受けず同じ場所に伏している。


絹恵「んっ……!」


余りの暴風に耐えられず、絹恵は目を閉じ漫の胸に顔を埋めた。


漫  (暖かい風がうちらの体を天へ押し上げて……!)

洋榎(上昇気流が浮上速度を加速させてくれる……!)


その刹那の時、洋榎と漫の2人は直感的に悟った。
これが愛する友の命を救う最後のチャンスであると。


漫  (誰かは知らんけど……あんたが作ったこの好機、利用させて貰うで……!)

洋榎(昇りゆく空気の流れに上手く体乗せて一気にあの空まで駆け上がる……!)

漫  (絹ちゃんを……)

洋榎(恭子を……)


洋榎・漫(絶対に救うんや……!)
123 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/05(水) 04:14:08.56 ID:ct/Zv3Goo
あったかいさんの加護
124 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/05(水) 22:52:42.77 ID:FqhHYdNro
郁乃「ちぃぃぃ……っ! 忌まわしい風がまたしても……!」

郁乃(空間の歪みから発生した次元崩壊の予兆か……? いや……違うな……)

郁乃(この風は決して自然現象なんかやない……。何か作為的な物を感じる……)

郁乃(ピリピリと肌を刺激するこの感覚……何者かの敵意が私に向けられて……)

郁乃(だとすれば……この不快な現象を引き起こしてるんは洋榎か漫……?)


郁乃「……ハッ! 洋榎と漫は……!?」


風に気を取られ目を離していたその間に、漫は郁乃より遥か上空に到達していた。
急上昇し続ける漫達を追い掛けんとするも距離は縮まらず逆に引き離されてゆく。

追い風を受け加速する漫達に対し、郁乃の浮上する速度は最初よりも落ちていた。
密度の濃い熱風が彼女の脚に絡み付き、地上へ引き摺り下ろさんとしていたのだ。
平静を欠いた郁乃はその事に気付かず、歯軋りして頭上の漫と絹恵を睨んでいる。


郁乃「っ!?」


ふと横に目を向けると、丁度その時、洋榎と恭子が郁乃の横を通り過ぎて行った。
漫と絹恵には安全圏まで逃げられ、その怒りと殺意の矛先が洋榎へと向けられる。


郁乃「せめて洋榎の奴だけでも奈落の底に突き落とさな気が済まぬッ!」


右手指の間から計4本の呪詛針を出し、洋榎の命を奪おうとした次の瞬間、
不自然な気流の変化が起こり、熱き真紅の烈風が郁乃の身に襲い掛かった。
その流れに乗って、メスやナイフ、錐や鋏が郁乃の心臓目掛けて飛んで来る。
それらは由子を処刑する為に用意された凶器達であった。


郁乃「むっ!?」


グサッ……
     グサッ……
          グササッ……

迫り来る危険な飛来物の気配を直前で察知し、郁乃はそれらを右腕で防ぎ止めた。
不意の攻撃を避け切れず右腕にダメージを負い、指の間から呪詛針が零れ落ちる。
右腕に突き刺さった刃物を抜き捨て、無表情のままゆらゆらと宙を漂っている郁乃。


郁乃「…………」ゴゴゴゴゴッ......


郁乃(洋榎、絹恵、漫、末原、真瀬、そしてこの私……。全部で6人……)

郁乃(だが今この空間には本来居る筈の無い7人目≠ェ紛れ込んでおる……!)

郁乃(瞳には映らぬ不定形の存在……行き場を失い彷徨っとる霊魂の類い……)

郁乃(空間が捩れ異世界とリンクした時に偶然ここへ迷い込んだ逸れ≠ゥ……?)

郁乃(いずれにせよ、三下の分際で生意気やな……)

郁乃(私の邪魔をしてタダで済むと思うなよ……?)


郁乃「 ス ゥ ゥ ゥ ゥ ゥ ッ ッ ッ ッ 〜 〜 〜 〜 」

郁乃「 ハ ァ ァ ァ ァ ッ ッ ッ ッ ッ 〜 〜 〜 〜 」ズモモモモッ......


大きく息を溜め込んだ後、口から濃縮された毒々しい紫の霧を大量に吐き出す郁乃。
それは気流の影響を受ける事も無く、薄まりながら周囲全体に広く拡散していく。
僅かな時間で郁乃の半径300m程度の空間が妖しい薄紫の靄に包まれてしまった。

すると均一に広がっている靄の中に、一箇所だけキラキラと光る部分が現れた。
その光のシルエットは長髪な女性の人型をしており、生き物の様に動いている。


郁乃 「 み ぃ 〜 つ け た ぁ 〜 …… 」ニタァ......
125 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/06(木) 01:25:07.69 ID:RFYtpLPU0
毒霧wwwwwwwwww
126 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/06(木) 02:30:17.09 ID:JSAwU6Yso
モルボルかなにかか
127 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/06(木) 02:35:01.52 ID:z4KMv4/qO
いくのん化物やんか…
128 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/06(木) 03:08:34.53 ID:H8mq22Aso
あったか〜いさん逃げてー
129 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/07(金) 02:55:44.97 ID:TS8j3P/Uo
慌てふためき周囲の状況を探るかの様に人型の顔部分が右に左に動いている。


郁乃「この魔力粒子は魂が持つ生命の根源であるプラナ≠ノ反応し光り輝く……」

郁乃「お前はもう私の視界から逃れる事なんぞ出来んのや……。覚悟せぇよ……?」


自分に視線が向けられている事に気付き、光の人型は郁乃に背を向け逃げ出した。


郁乃「本気で私から逃げ切れる思っとるんか……? 間抜けが……死ね……ッ!」


郁乃は右手を高く翳し、上から下へと斜めに空を斬る様な仕草をする。
そこから蒼白く光り輝く刃が放たれ、人型の無防備な背中を直撃した。


『あっ……』


郁乃の気≠ゥら作り出された刃が、光のシルエットを2つに切り裂く。
小さく声を上げた後、その人型は溶ける様にして空間に消えていった。


郁乃「魂が跡形も無く消滅してしまえば、新たに転生する事も出来まいて……」

郁乃「それなりの素質を持ちながらただ消え行くのみとは、憐れな末路やな……」


郁乃が囁く様に何かを呟くと、靄は一気に宙へ四散し消えて無くなった。
吹き荒れていた熱風も徐々に治まり、姫松の空に再び平穏な時が訪れる。

広がる透明な大空、そこに洋榎達の姿は何処にも無かった。
彼女達4人は、皆既に光の彼方へと行ってしまったのだろう。

虚空に浮かぶ郁乃は全身脱力して天を仰ぎ、独り淋しく哀愁に浸っていた。
祭り≠ェ不完全な形で終わってしまった事による虚無感もあるのだろう。


郁乃(命咲き乱れ死に散る儚さ……)

郁乃(裏切りと憎しみの連鎖……拷問的処刑による恐怖と絶望……)

郁乃(祭り最大の華≠ェ刈り取られ、この様な形で終焉の時を迎えるとはな……)

郁乃(これだけの力を手にしてもまだ思い通りに行かん事が多々あるんやねぇ……)


郁乃「ふっ……」

郁乃「あ〜やめやめ、辛気臭いんはやっぱ苦手やわ〜」

郁乃「私もこんな世界はよ忘れて心機一転頑張るで〜」ニコッ


郁乃は遥か下に見える校舎屋上に顔を向け、口元に両手でメガホンを作り叫んだ。


郁乃「バイバ〜イ真瀬ちゃ〜ん、亡者共と末永く幸せにな〜! アハハハハッ!」

由子「」


多くの屍鬼達が犇めく中、奇跡的にも由子の肉体はまだ完全な状態を保っていた。
僅かに開いていた瞳も今は完全に閉じ、安らかで綺麗な寝顔≠空に向けている。


郁乃「いくのんの新たなる輝かしい人生の幕開けや〜!」

郁乃「さぁ、流転の護符よ! 我を光の元へ導き賜え!」


自分に歯向かう者は誰もいない、後はゆっくり天へと昇るだけ。
郁乃は両手の掌を光の方に向け、満面の笑みで高らかに叫んだ。

そんな郁乃の小さな姿が、倒れた巨大モニターの画面に反射して映っていた。


モニター「 ジ ジ ジ ジ ジ ッ ・・・・・・ ………… 」
130 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/07(金) 09:43:29.95 ID:sxoc3A9A0
ん?
131 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/07(金) 11:33:24.19 ID:AmegcBRQo
いくのん終了のお知らせ?
132 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/08(土) 02:33:14.90 ID:cT7gJqnG0
終了のお知らせ何度目だよ
133 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/08(土) 04:25:33.15 ID:SELWWT7Io
異……⊃ッ......

異世界の……⊃ゥッ......

異世界の者達による殺したい人ランキング⊃ゥーーーッ......

突然モニター画面に映し出されるノイズ混じりの汚い映像。
それは異世界人達によって行われた生贄投票の結果だった。

======================================
【異世界の者達による殺したい人ランキング】
赤阪 郁乃 60P------------------------------------------------------------
真瀬 由子 40P----------------------------------------
愛宕 絹恵 37P-------------------------------------
末原 恭子 37P-------------------------------------
愛宕 洋榎 37P-------------------------------------
上重 漫   35P-----------------------------------
======================================

ID:Er2nGX8so 代行+100P

======================================
【異世界の者達による殺したい人ランキング】
赤阪 郁乃 160P--------------------------------------------------
            --------------------------------------------------
            --------------------------------------------------
            ----------ピピピピピッ......
======================================

ID:aXxzxV+So 代行1+100P 代行2+100P

======================================
【異世界の者達による殺したい人ランキング】
赤阪 郁乃 360P--------------------------------------------------
            --------------------------------------------------
            --------------------------------------------------
            --------------------------------------------------
            --------------------------------------------------
            --------------------------------------------------
            --------------------------------------------------
            ----------ピピピピピピピピピピッ......
======================================

ID:2c3fAZKjo 赤阪+10P 郁乃+20P 代行+30P⇒゚ピピッ......
ID:K0rAvcnto 赤阪+10P 郁乃+20P 代行+30P⇒゚ピピッ......
ID:gQ9lwYu00 赤阪+10P 郁乃+20P 代行+30P⇒゚ピピッ......
ID:7LvvzfN0o 赤阪+10P 郁乃+20P 代行+30P⇒゚ピピッ......
ID:TcdP3Qeio 赤阪+10P 郁乃+20P 代行+30P⇒゚ピピッ......
ID:Kr0UEvzWo 赤坂+10P 郁乃+20P 代行+30P⇒゚ピピッ......

赤阪 郁乃 720P

郁乃のポイントを表すバーが怒涛の勢いで伸びて行き、
モニター画面の半分が郁乃のPバーで埋まってしまった。

ところが、今度は一転して郁乃のPバーが縮んでゆく。
0を下回った所で画面表示がおかしくなり、
モニター画面から奇妙な機械音が鳴り響いた。

ID:EHHd8/Ky0 赤阪-334P 郁乃-9800P 代行-114514810P⇒゚ピピピピピピピピッ......


赤阪 郁乃 −114524224P


ID:om5t9Km5o 赤坂+10P 郁乃+20P 代行+30P⇒゚ピピッ......
ID:pC2E6NCvo 赤坂+10P 郁乃+20P 代行+30P⇒゚ピピッ......
ID:2rnfHT1Go 赤阪+334P 郁乃+9800P 代行+114514810P⇒゚ピピピピピピピピッ......

赤阪 郁乃 840P

その後も目紛るしい速さで大きく変化する郁乃のポイントバー。
最終的にモニター画面は全て郁乃のバーで埋め尽くされて止まった。
想定外の急激な増減を繰り返した事でシステムに深刻なトラブルが生じる。


赤阪 郁乃 ∞P


モニター「 ピ ィ ィ ィ ィ ィ ッ ッ ッ ッ ッ ー ー ー ー・・・・・・...... 」ゴゴゴゴゴッ......
134 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/08(土) 04:44:57.03 ID:EkWsZNFxo
ワロタ
135 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage saga]:2014/03/08(土) 05:26:33.57 ID:E3WWR0MEo
もしかしてと思ってはいたがマジでやりやがったかwww
136 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/08(土) 09:30:46.75 ID:DTUCI+mQo
やwりwやwがwっwたwwww
137 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/08(土) 10:48:07.80 ID:aRWhKWQzo
わろたwwwww
138 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/08(土) 12:19:06.47 ID:LWqmlJa/0
これはw
139 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/08(土) 12:28:53.34 ID:dae16G3mo
あがっているのを見て久しぶりに読んだが、なんかすごいことになってんなwwww
140 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/08(土) 12:32:36.39 ID:sgekNo/io
前スレ見たらマイナス分補填してたのオレだった・・・

危ない危ない
141 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/08(土) 13:28:16.59 ID:oHdQKa2zo
俺らの安価よ代行に届け!
姫松高校の代行に届け!!
142 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/09(日) 19:55:40.41 ID:7X8yAZaWo
雲が厚みを増して辺りは暗くなり、生暖かい湿った風が吹き始める。
密かに忍び寄る不穏な気配に、郁乃はまだ気が付いてはいなかった。
しかし、その不吉な影は確実に彼女の背後へと接近して来ている。

モニター「ピィィィィィッッッッッーーガッガッガッガッガッ・・・・・・......プツンッ」

急にモニターの画面が放送終了後に映し出されるカラーバー≠ヨと切り替わった。
同時に機械音も鳴り止み、何かが始まる前兆を示唆するかの様に沈黙を続けている。

破滅への序曲か、その静けさも突如起こった空間の揺らぎによって終わりを告げた。
ノイズが走った後モニター画面は暗転し、不気味な血文字がゆらりと浮かび上がる。

『ID:Irez2cdso 真瀬由子の代わりに代行が死ぬ』

音量設定

音量:10 ||||||||||

音量:11 ||||||||||| ピッ......

音量:15 ||||||||||||||| ピピピピッ......

音量:32 |||||||||||||||||||||||||||||||| ピピピピピピピピピピッ......

音量:106|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| ピーッ......
   ・
   ・   ピーーーーッ......
   ・           ピーーーーーッ......
   ・                    ピーーーーッ......
   ・
音量:18954 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||・・・・・・

次の瞬間、宙に向かってスピーカーが爆音を響かせた。
惨劇の場に似合わぬスローテンポな英語の曲が流れる。

There is someone walking behind you

何者かがいつも貴女のすぐ後ろを歩いている

Turn around, look at me

その者はこう言う、振り返って僕を見て

There is someone watching your foot steps

何者かが背後から貴女の足取りをじっと見詰めている

There is someone standing beside you

貴女の傍には常に何者かが離れずに付いている

Turn around, look at me ......

ねぇ……振り返って僕の方を見て……⊆゙ゴゴゴゴッ......

郁乃(んっ……? なんやこの歌は……? 何処から聞こえて……)

目を細め怪訝そうな顔をして辺りをキョロキョロと見回す郁乃。
けれども、自分の周辺から音の発生源を見つける事は出来ない。
ふと校舎に視線を向け、米粒にも満たない程の大きさのモニターに注目する。

郁乃(この歌は下から響いてきとる……。まさかあのモニターから……?)

既に郁乃は姫松の校舎屋上から1km以上も遠く離れた上空にいた。
普通これだけ距離があればモニターが発する音など聞こえる筈が無い。

その時、郁乃は自分の身に起こっている異変に漸く気が付いた。
先程から同じ高さに停滞し、光の雲との距離が縮まっていない。

郁乃(どうゆう事や……!? 私の体の上昇が止まっとるやないか……!)

郁乃(もしや……あの2人が私の新世界行きを直接妨害しにきて……!?)

郁乃(いや、そうやない……。もっと異質で邪悪な何か≠ェ私を……)ゾクッ......

背筋に走る強烈な悪寒、それを齎した原因はすぐに判明した。
分厚く黒い雲が雷光を轟かせながら髑髏の型を形成してゆく。
先程交戦した紅い魂とは桁違いに強大な力≠持つ敵の襲来。

郁乃「お前は……死神……ッ!」
143 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/09(日) 21:54:22.35 ID:/wIESI7u0
やっちゃってくださいよ 死神先輩
144 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/10(月) 01:39:30.26 ID:33sXRdZqo
処刑人、屍鬼に続いて死神登場か
145 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/10(月) 02:11:32.29 ID:UJ0Y1EWdo
死神食べて強くなるflag
146 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/10(月) 02:48:43.23 ID:eb+XBh0DO
ヒャッハー おしおきの時間ダァーッ
147 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/10(月) 08:22:48.99 ID:6UDYnP1E0
おしおきじゃないよ
いくのんの大好きな絶望をたっぷり味わってもらうだけだよ
いくのんが「もう堪忍してぇ…」と弱音を吐くまでね!
148 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/10(月) 14:02:25.80 ID:MvPwKXBmo
なんでや!いくのんはみんなのドS心を代弁してくれただけやないか!!
なんも悪い事なんてしてへん!せやろ!?



…で、いくのんの処刑はまだかね?
149 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/10(月) 21:46:43.00 ID:OMEtlEss0
安全な所から美食を堪能していた食通気取りが
実は屠殺される予定の豚だったという…


いくのん、いい声で泣いてくれよ?
150 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/11(火) 01:44:44.09 ID:oMRdScTPo
死神憑き

郁乃(なぜ私に死神が……!? 奴の狙いは愛宕姉妹やったはず……ッ!)

郁乃(絹恵ちゃんの生≠ェ確定した時に次の標的を間違えたんか……?)

郁乃(……何にせよ、かなり厄介な相手を敵に回してもうたな……)ゴクリンコ......

間も無くして黒い雲の表面に出来た髑髏型は姿を晦ますかの様に消えていった。
だが死神はまだ郁乃の近くに潜んでおり、死の気配はより濃密さを増している。

郁乃(死神≠ヘその性質から大きく2つに分類する事が出来る……)

郁乃(1つは意思を持ち能動的に命を刈り取ってゆく執行者≠ナある冥界神……)

郁乃(死すべき定めに無い者の命まで狙い確実に奪い取る非常に危険な存在……)

郁乃(もう1つは死≠ニいう概念そのものが神格化した自然神……)

郁乃(漂う死の匂いを嗅ぎ付けやってくる、自然災害的な存在……)

郁乃(実体を持たぬ奴は恐らく後者……)

郁乃(普段は自然に溶け込み害は無いが、死に触発され凶悪化すると手に負えぬ)

郁乃(魂に死の烙印を押された者にとって奴の存在は何よりも脅威となる……!)


その自然神は空気が如くあらゆる場所に存在し、死の運命にある者を黄泉へ導く。
凶悪化すると、周囲に災厄を撒き散らしながら何処までも獲物を追い掛け続ける。
結果として無差別殺戮を伴い、場合によってはそれが繰り返され被害が拡大する。
実体を持たぬ故に殺す事も出来ず、如何なる場所にも存在する為逃れる事も不可能。


郁乃(神と正面から遣り合うんは余りにもリスクが高過ぎる……)

郁乃(けど今逃げる事は出来ん。光の手前に強力な死の結界が張られとる)キュィィィン......

郁乃(何とか凌いで、この嵐が弱まるんを待つしかあるまいて……)

郁乃(隙を突き結界を破り新世界へ逃げ込めば、奴とてそれ以上の追跡は出来まい)


実の所、郁乃は自らの魔力を使い自由自在に空を飛行する事も可能であった。
けれども遊び#@きに本気を出すのも癪だと、その力を使用せずにいたのだ。
だがしかし、相手が神の眷属とあっては力の出し惜しみをしている余裕など無い。

逃げの一手に徹する事を決め込み、周囲を警戒する郁乃。
辺りに渦巻く死の嵐≠ヘ完全に彼女を包囲している。
そして今、死神から第1の矢が放たれようとしていた。

線=@禽=@奏=@空

突如モニター画面に横一列にして浮かび上がった4つの漢字。
次にそれらは縦に並び変わり、右横に英文字と謎の数値が映し出された。
左側には白い矢印が現れ、4つの漢字の間を超高速で移動している。

====================
→線:Laser Wire        AT120
→禽:Raptor's Hellfire    .AT150
→奏:Demonic Symphony  AT180
→空:Spiral Airblade     .AT220
====================

『選ばれる選択肢は既に確定している』

『しかし貴女が憎しみを糧に強く望む事で』

『運命の流れが変化し異なる結果が齎されるかもしれない』

『5人の時≠示す数値の合計がその値を下回れば』

『悪魔の力を宿した彼女とて無事では済まないだろう』

『5人の時≠フ合計値がより小さいほど』

『復讐の刃はその恐るべき破壊力を増してゆく』


誰に向けられたメッセージなのか、画面に意味不明な言葉が流れた。
151 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/11(火) 02:07:01.22 ID:fwnn6qD6o
コンマ判定?5人で120以下とかキツイ
152 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/11(火) 02:18:59.43 ID:2Sut8ans0
つまり…どういうことだ…
153 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/11(火) 02:41:30.99 ID:SjqXlyvOo
コンマで威力が変わる?
急募!低コンマ自信ニキ
154 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/11(火) 02:43:32.41 ID:+WqvoIwDO
もう無理じゃん
155 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/11(火) 02:44:28.36 ID:Ne6V9Xdao
宣言してからやるんじゃね?
もう始まってんの?
156 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/11(火) 02:51:29.78 ID:Rx35sK/70
>>155
(あかん)
157 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/11(火) 02:55:17.96 ID:Rx35sK/70
>>156>>153の安価ミス
158 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/11(火) 04:31:29.80 ID:5Do45vJko
つまり最低でも220以下って意味?
第1の矢とあるが何回攻撃できるんだ
159 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/11(火) 06:50:36.40 ID:oMRdScTPo
モニター『 ジ ジ ジ ジ ジ ッ ・・・・・・ …… 』


チュートリアル


『攻撃は計3回に渡って行われるだろう』

『何も思念が届かぬ場合は最も低威力な攻撃が発動する』


『最終確定≠ワでに望む攻撃方法を書けばそれに変更される可能性がある』


『第1の矢は線≠ナあるが……』

『異世界から干渉し禽∞奏∞空≠フいずれかに変更する事が出来る』


『最終確定$骭セ後、威力判定は行われる』


『第2第3の矢の詳細はまだ不明である……』
160 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/11(火) 07:40:55.37 ID:oMRdScTPo
『貴女自身が最も威力の低い攻撃を選択する事も可能である』

『線∞禽∞奏∞空≠フうち、最も書き込みの多い攻撃が第1の矢として発動する』


『攻撃方法を指定する書き込みが2つ以上あり……』

『同数票が発生した場合は、威力の高い攻撃が優先して行われる』


『時≠フ合計値がATを上回り、攻撃が失敗した場合でも……』

『威力判定時にぞろ目≠ェ存在する場合、その数だけラッキーヒット≠ェ発生する』

『ぞろ目の数値が低いほど、ラッキーヒットは威力を増す』

『ラッキーヒットは攻撃失敗時にのみ発生する』


『5人の時≠フ合計値がATの半分以下の場合、クリティカルヒット≠ェ発生する』
161 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/11(火) 10:00:21.93 ID:vSfLpTwSO
これってAT低いやつを選ぶメリットってあるの?
162 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/11(火) 11:59:04.34 ID:RZvqcub00
>>161
多分ラッキーヒットを出しやすいんだと思う
163 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/11(火) 12:08:14.33 ID:oMRdScTPo
『ラッキーヒットでは致命傷は与えられない』

『彼女を助けたければATが低い方が有利』
164 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/11(火) 13:16:49.53 ID:IeLrd8Udo
ならメリットはないな(断言)
165 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/11(火) 13:38:39.45 ID:oMRdScTPo
『現在、攻撃方法を指定する書き込みは0』

『4つの選択肢が出た時点で貴女はその中から1つを指定する事が出来る』

『運命に干渉する事が可能な時間は限られている……』
166 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/11(火) 13:41:28.77 ID:Lw3/uzTg0
もう始まってるのな……

【攻撃方法】

167 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/11(火) 13:45:40.45 ID:IeLrd8Udo
[攻撃方法]
168 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/11(火) 13:51:38.15 ID:P/3Pi39/o
169 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/11(火) 13:55:41.14 ID:QREHItBCo
迷う事なんてないな
攻撃方法は空
170 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/11(火) 14:08:10.06 ID:HAHro1VA0
171 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/11(火) 14:14:23.34 ID:+WqvoIwDO
【攻撃方法】 空
172 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/11(火) 14:55:10.30 ID:SvuGER+Eo
【攻撃方法】 空
173 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/11(火) 18:48:27.53 ID:oMRdScTPo
『第1の矢は空≠ノ決定しました(最終確定)』

『威力判定は都合により20:00から行います』

『20:00以降、早い順に5レスが判定の対象となります』

『同ID不可、携帯からのレスは出来る限りお控え下さい』

『可能な限り多くの人に参加して頂きたく、ご協力お願いします』



空:Spiral Airblade AT220


5レスのコンマの合計値が……

221以上 攻撃失敗(ただしコンマぞろ目でラッキーヒットが発生)

220以下 攻撃成功(平均コンマ44)

110以下 攻撃成功(平均コンマ22、クリティカルヒット)

55以下  ????(平均コンマ11)
174 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/11(火) 19:36:25.04 ID:Ne6V9Xdao
がんばれー
175 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/11(火) 19:59:17.36 ID:SAF2m98ko
生き返るのよー
176 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/11(火) 19:59:40.98 ID:nzXl17lSo
それっ
177 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/11(火) 20:00:18.08 ID:SAF2m98ko
のよー
178 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/11(火) 20:02:42.98 ID:p2jmH0rr0
はい!
179 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/11(火) 20:10:30.41 ID:IeLrd8Udo
ゾロ目は狙えん
180 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/11(火) 20:11:02.33 ID:H1GH2C85o
181 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/11(火) 20:12:21.56 ID:nzXl17lSo
ほい
182 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/11(火) 20:13:58.54 ID:IeLrd8Udo
同一IDは無効なのよね
183 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/11(火) 20:16:37.93 ID:H1GH2C85o
お前ら何回レスしてるんだ…ちゃんと読めよ
184 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/11(火) 20:18:03.02 ID:BDga7Utuo
185 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/11(火) 20:19:53.21 ID:BDga7Utuo
236+ゾロ目一回・・・であってるかな
186 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/11(火) 20:33:11.22 ID:oMRdScTPo
説明不足ですみません、同一ID不可≠ニ言うのは、
同じIDで2回以上1つの威力判定≠ノ参加する事は禁止という意味です。

威力判定の時に同じIDが存在する場合、早い方のレスのみ有効となります。
(両方不可にすると気に入らないコンマを故意に無効化出来てしまう為)

今回の場合、20:00前に投稿されたレスは全て威力判定レス≠ノ含まれません。


『有効威力判定レス』

20:00:18.08 ID:SAF2m98ko
20:02:42.98 ID:p2jmH0rr0
20:10:30.41 ID:IeLrd8Udo
20:11:02.33 ID:H1GH2C85o
20:12:21.56 ID:nzXl17lSo

8+98+41+33+56=236

ぞろ目:33(1回)


今回の威力判定の結果は以上となります。
ご協力ありがとうございました。
次の更新は早くても夜中になると思います。
187 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/11(火) 20:42:39.80 ID:SAF2m98ko
暗黙の了解かと思ってたけどそうでもないのね
188 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/12(水) 03:17:26.87 ID:VfBecdOoo
鋭い目付きで視線を左右に動かし、辺りを警戒し続けている郁乃。
特に変わった様子も無いが、場の緊張感だけは益々高まってゆく。

郁乃(さぁ、どう出る死神……)

郁乃(逃げ道を塞ぐだけでは私の命まで奪えんぞ……?)

空中で郁乃と死神が睨み合いを続ける最中、
地上ではモニター画面に変化が起きていた。

====================
 .線:Laser Wire        AT120
 .禽:Raptor's Hellfire    .AT150
 .奏:Demonic Symphony  AT180
→空:Spiral Airblade     AT220
====================

矢印が空≠ノ止まると他の文字は消え、
画面にその1字だけが大きく写し出された。

次の瞬間、モニター画面から真っ黒い煙の様なものが大量に噴き出し始める。
煙は数十メートルの高さまで一気に立ち上った後、大気に吸収され消えてゆく。

すると周辺に禍々しい気配が立ち込め、不穏な兆しが現れ始めた。
微弱な風にも拘らず、倒れたモニターがカタカタと音を立てて揺れ、
画面にはノイズが走り、スピーカーから気味の悪い雑音が鳴り響く。

そしてこの邪気≠含む澱んだ空気に惹かれ引き寄せられるかの様に、
得体の知れぬ何か≠ェ何処からとも無く姫松高校の周辺に集まって来た。

郁乃「っ!?」

郁乃(強い瘴気≠ェ姫松一帯を包み覆ってゆく……)

郁乃(死神の仕業か……? 奴は何を仕掛けて来る……!?)

普通の人間であれば吐き気や頭痛などを催しているだろう。
瘴気は更に濃くなり、郁乃の露出した部分の肌を刺激する。
それに紛れて彼ら≠ヘ宙に浮かぶ郁乃の元まで接近して来た。

郁乃「むっ……!」

突如、郁乃の周辺に無数の不自然な気流の螺旋が発生した。
それらは周囲の空気を取り込み、急激に密度を増してゆく。
圧縮された空気の渦達は肉眼で確認出来る程になっていた。

形も大きさも様々な圧縮された空気の塊≠ェ距離を置きつつ郁乃の四方を取り囲む。
その塊は形状を微妙に変化させながら、煙の様にゆらゆらと宙に浮かび彷徨っている。

郁乃「なんや……なんやこれは……」

状況を把握出来ずに困惑した様子を見せる郁乃。
その時、風の塊から獣が威嚇をする様な声が聞こえた。
同時に辻風が郁乃の頬を掠め、微かな切り傷が生じた。

グルルルルッ……
          ガルルルルッ……

郁乃(獣の鳴き声……? こいつら風に属する魔獣の類いか……?)

ふと視線を向けた先、渦巻く風の塊の中に一瞬ではあったが小さな獣の姿が映った。
その風貌は鼬と非常に酷似しているが、前足だけは違い長い鎌の様な形をしている。

光の屈折により偶然見る事が出来たのだろう。
身体は半透明であったが眼だけは赤く輝き、
その瞳は強烈な敵意と共に郁乃の姿を捉えていた。

郁乃(間違い無い……。こいつらは風の妖獣鎌鼬≠竅c…!)

郁乃(比較的身近に居る存在やけど、警戒心が強く人に姿を晒す事は滅多に無い)

郁乃(私もその姿を生で見るんは初めてや……。しかもこの数……尋常やない……)

郁乃(死神の奴め……こいつら嗾けて私を襲わせる算段か……成る程な……)

身体を少し丸め郁乃が両腕を前で交差させた次の瞬間、
彼女の背中から大きな黒い翼が衣服を突き破り現れた。
金色に瞳を輝かせ、艶かしく己の唇を舌でなぞる郁乃。

郁乃「クククッ……おもろいやんけ……。鼬共の皮剥いで毛皮にしたるッ!」
189 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/12(水) 03:20:32.53 ID:p6og2D3ao
いくのんは何者なのか…
人なのか?
190 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/12(水) 07:28:09.82 ID:BlkjtdjR0
>>189
そら、悪魔にきまってるだろ
191 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/12(水) 19:27:42.81 ID:Cv8q5QtKo
いきなりラッキーヒットか
192 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/13(木) 02:15:47.42 ID:aE9X9Boko
臨戦態勢に入る郁乃、右手の指の爪が刃物の様に鋭く伸びる。
慎重に様子を窺っているのか、獣達はその場に留まっていた。

郁乃「そっちが来んのなら、こっちから行かせて貰うでぇッ!」

大きく横薙ぎした郁乃の左手から蒼い光の刃が飛び出す。
それは1つの空気の塊を直撃し、獣の金切り声が響いた。

次の瞬間、激しい戦いの火蓋は切って落とされた。

空気の塊が三日月の様な形に変化し、郁乃を目掛けて次々と飛んで来る。
郁乃は黒い翼で全身を包み込み、高速で迫って来る複数の風の刃を防ぐ。
金属がぶつかり合う様な音が鳴り響き、風の刃は黒の翼を貫けず弾かれた。

郁乃「その程度の攻撃で私の防御壁を打ち破れると思うたかッ!」

とは言え、防御に徹していては襲い来る獣達を排除する事は出来ない。
郁乃は再び翼を広げ、気≠謔闕り出した光の刃で反撃を開始する。

激しく飛び交う刃の応酬、宙に無数の閃光が輝き、金属の接触音が辺りに響き渡る。

郁乃は高速で飛んで来る風の刃を素早い身の熟しで躱し、
時には翼で身体をガードしながら獣の襲撃に立ち向かう。

距離がある敵に対しては光の刃を飛ばして強襲し、
接近して来る敵には擦れ違い様に鋭い爪を振るう。

最初の内は数の差を物ともせず、郁乃が圧倒的優勢を誇っていた。
風の塊を次々に切り裂き破壊し、敵の数を順調に減らしてゆく郁乃。

しかし時間が経つに連れて獣達も戦闘を学習し、
以前の様に簡単に倒す事が出来なくなっていた。

速さで勝る獣達は俊敏な動きで空中を飛び回り郁乃を撹乱する。
高速で移動する彼らを遠距離攻撃で撃ち落とす事は困難だった。

郁乃「チィッ……ちょこまかと逃げ回りよってからに……ッ!」

気の刃を乱射撃ちするも全く当たらず、フラストレーションを溜め込む郁乃。

郁乃(やはり接近してくる時にカウンターで叩き込むしか無いか……)

郁乃は決して獣達よりも速く動ける訳ではない。
だが軌道を先読みする事で攻撃を当てる事は出来る。

獣達が郁乃を狙って突撃する時、その動きは必ず直線的になる。
また、加速すればする程にその軌道を途中で変える事は難しい。

刃と一体化して飛び掛かって来る獣達を1匹1匹爪で切り刻み着実に処理する郁乃。
戦闘開始から暫くして、獣はその数を大幅に減らし数え切れる程度にまでなっていた。

郁乃「頭数揃えた所で、この程度の下級妖魔ではな……」

郁乃「ゴミが幾ら束になろうとも、所詮はゴミよッ!」

昂り吼える郁乃、大気が揺れ威圧の波動が周囲に拡散した。
残った獣達は郁乃に近付いて来ず、離れた所で浮遊している。

郁乃に恐れを為し戦意を喪失したのかと思ったその時、
複数の小さな風の塊が一箇所に集まって融合し始めた。
それは更に空気を吸収して膨張し、小型の竜巻の様相を呈している。

小型と言えどそれは今まで見てきた風の塊より10倍以上も大きく、
輪(リング)状に形を変え、高速回転しながら郁乃に突撃して来た。

郁乃「獣の癖に小賢しい! 纏めて引き裂いてやるわッ!」

ギリギリの所で身体を捩じらせリングを躱す郁乃。
擦れ違う瞬間、爪で風のリングに攻撃を仕掛ける。

パキンッ

郁乃「なにっ!?」

高速回転する風のリングに触れた次の瞬間、郁乃の爪は全て折れ弾け飛んだ。
リングは郁乃の横を通り過ぎた後、ブーメランの様に折り返して再び襲い掛かる。
その迫り来るスピードはこれまで以上に速く、郁乃に思考する時間を与えない。

咄嗟に郁乃は左翼を身体の前面に出し、風のリングを受け止めた。
それでもリングの回転は一向に止まらず、赤い火花が激しく飛び散る。
193 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/13(木) 22:39:43.80 ID:aE9X9Boko
キュイィィィィィィンンンガリガリガリガリガリ……

郁乃「くぅっ……! こいつ……なんちゅうパワーや……ッ!」

空中で始まった力比べ、郁乃は何とか押し返そうとするも、
単純なパワー勝負では相手の方が強く、劣勢を強いられる。

じわりじわりと後ろへ押されてゆく郁乃。
回転する風の輪と翼の接触面が摩擦熱で赤くなる。

郁乃「鼬風情が……この郁乃様をナメんなや……ッ!」

指を折り曲げ力を込める郁乃の右手に光の粒子が集まり凝縮してゆく。

郁乃「ぐぐぐぐぐっ………………ハァッ!」

気合と共に強引に左翼を外へ広げる郁乃、風のリングは斜め方向へ弾き飛ばされた。

勢いを失い速度が落ちたその一瞬の隙を見逃さず、
郁乃は風のリングの方に向き直って右手を突き出す。

郁乃「 爆 ぜ ろ ッ ! 」

郁乃の右手に凝縮された光の粒子はエネルギーの塊となり、
弾丸の様に風のリングに向けて勢い良く撃ち放たれた。
その光のエネルギー弾は標的に見事命中し大爆発を起こす。

郁乃「よっしゃあ! ざまあみぃや! 思い知ったか!」

風のリングは完全に消滅し、辺りに静寂が訪れる。
獣達を全て排除したと思い込み喜び浮かれる郁乃。
気が緩み、周囲への注意が散漫になったその時……。

ザシュッ…… (Lucky HIT !!33=j

郁乃「あぐっ……! ぐ あ ぁ ぁ …… っ ! 」

斜め後方の死角より飛来した小さな風の刃が、郁乃の無防備な右腕を直撃する。
小さくとも凄まじい切れ味を誇るその風刃は、彼女の右手首を骨ごと切断し、
宙に螺旋を描きながら、そのまま飛び去って遠く空の彼方へと消えていった。

郁乃(ぬぐぐっ……まだ生き残りが居ったとは……不覚……っ!)

流転の護符が巻き付いたまま、郁乃の右手首は地上へと落下してゆく。

ヒューッ……
         ドサッ……

切断された郁乃の右手首は、偶然にも由子の遺体の傍に落ちた。

由子「」

護符「…………」スルスルスルッ......

命通う肉体から切り離された事で宿主を失ったと判断したのか、
護符は蛇の姿に戻り、解ける様にして郁乃の手首から離れた。
新たな所有者を探すが如く、金色の蛇は辺りをウロウロしている。

由子「」

真瀬由子の代わりに代行が死ぬ

真 瀬 由 子 の 代 わ り に

金蛇「…………」ニュルッ......

暫く地面を這いずった後、金の蛇は胸の傷口から由子の体内へと潜り込んでいった。

ドクンッ……

次の瞬間、仰向けに寝ていた由子の肉体がグインと反り返る。

由子「…………」クワッ......

由子「 う゛ぅ゛ぅ゛っ…… 」

両目を カ ッ と見開き、呻き声を上げながら大きく息を吸い込む由子。
だがその瞳は黒く澱んでおり、周囲にいる屍鬼達のそれと同じだった。

由子「 オ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ッ ッ ッ ………… 」ゴゴゴゴゴッ......
194 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/14(金) 03:40:32.70 ID:Cma6Tg2po
ホラーかよwwwwww
195 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/14(金) 13:03:33.05 ID:FlBIP8Vt0
これでもし戻れたら
ヤンデレのよーちゃんに愛されて夜も眠れない世界線……ゴクリ
196 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/15(土) 02:24:39.00 ID:AHlw4n3yo
郁乃「ぐぎぎぎぎぃぃぃっ……よくも私の腕をォォォ……ッ!」

怒りに震えながら郁乃は切り落とされた右腕の傷口に左手を当てる。
彼女の左手から仄かに温かく白い光が広がり、出血はすぐに収まった。

郁乃「ふぅぅぅぅぅっっっーーー…………」

手早く切創の応急処置を済ませた後、深呼吸して沸騰した頭を冷やす。
異常なまでの切り替えの早さ、まるで複数の人格を持つ多重人格者だ。

郁乃「あーあー……護符は手首もろとも地上へ落ちてもうたか……」

郁乃「はぁ……面倒やけど下まで回収しに行かんとならんなぁ……」

郁乃「っ!!」ゾクッ......

降下を始めようとしたその時、再度訪れる寒気。
全方位から悪意と敵意を向けられている様な感覚。

郁乃(せっかちな奴やな……。腕拾いに行く暇も無しか……)

先程の攻撃が小手調べと言わんばかりに高まる圧迫感。
深まる瘴気に息苦しさが増し郁乃の全身の毛が逆立つ。

郁乃(どうやら全力で私の魂(たま)℃謔閧ノ来よるつもりらしいな……)

郁乃(だが……それはお前にとっても危険な賭け……諸刃の剣となる……!)

自然神とは大自然の理から成り立ち、その法則に従属する性質がある。
故に幾ら強大な力を持っていても、世界のバランスを崩す事は出来ない。


自然に於ける生と死の摂理


郁乃(狭い範囲に強い死≠フ影響力を放ち、あるべきバランスを歪めれば……)

郁乃(均衡を保つべく、自然は生≠フ影響力を強め死≠フ力を相殺する……)


郁乃(この地を包む死≠フ気運は、時間と共に増大の一途を辿っておる……)

郁乃(私に対し強烈な一撃を放つべく、負のエネルギーを溜め込んどる状態……)

郁乃(けど、これだけ膨大な死≠フ力を1ヶ所に無理矢理詰め込もうとすれば……)

郁乃(いずれ空間内の許容限界に達し、生≠フ反動を受け死神は弱体化する……!)


郁乃(死神の力が弱なれば、奴が張った結界もその効力を大幅に失う筈や……)

郁乃(ダメージを最小限に抑え、護符を回収し、残る力全てを使って結界を突破する)

郁乃(ここが正念場やな……。久々に体が熱ぅなって来たわ……)

郁乃(己の命を賭した戦い……この高揚感……癖になる……ッ!)ゾクゾクッ......


郁乃「イヒッ……イヒヒヒヒッ……!」


モニター画面から空≠フ文字が消え、新たに4つの漢字が映し出された。
死神が郁乃に放つ第2の矢、その威力は第1の矢を遥かに凌駕するであろう。

由子「 う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛っ っ っ ………… 」

ゆっくりと起き上がって周囲をふらふらと彷徨い歩いている由子。
倒れたモニターの前で立ち止り、上から画面をじっと見詰めている。

虹=@星=@天=@龍

====================
→虹:Rainbow Ray     AT280
→星:Meteor Strike    .AT320
→天:Phantom Skyraider AT360
→龍:Dragon Storm    .AT400
====================

由子「…………」
197 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/15(土) 02:31:00.68 ID:1mZF1pzjo
[攻撃方法]
198 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/15(土) 03:01:18.46 ID:ccmrbunWo
[攻撃方法]
199 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/15(土) 03:19:35.59 ID:Js0i3Kxpo
200 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/15(土) 03:21:06.12 ID:OJBUsJnq0
[攻撃方法]
201 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/15(土) 03:22:17.12 ID:KmUBVbe80
[攻撃方法]
202 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/15(土) 07:14:52.05 ID:+y822Wzpo
[攻撃方法]
203 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/15(土) 07:15:59.04 ID:+y822Wzpo
sage忘れた…
204 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/15(土) 08:38:09.61 ID:lAHg6p0fo
[攻撃方法] 龍
205 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/15(土) 12:13:02.22 ID:AHlw4n3yo
虹:1
星:2
天:2
龍:2

『同数票が発生した場合は、威力の高い攻撃が優先して行われる』





『威力判定は1〜2レス物語が進んだ後で行います』

『今しばらくお待ち下さい……』 
206 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/17(月) 04:30:37.39 ID:/TTeQNXOo
由子「ハァーッ、ハァーッ、ハ ァ ァ ァ ァ゛ァ゛ァ゛ー …… 」

由子「 の゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛………… 」ペタッ......

しゃがみ込んで映し出されている龍≠フ文字に触れる由子。
他の文字が全て消え、画面にその1字だけが大きく表示された。

  龍 

ドドドドド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ッ ・・・・・・…………

突然スピーカーから発せられた、不気味な低周波音。
重低音の振動波を受け、由子は後ろに尻餅を搗いた。

郁乃「んぐっ……なんやねん……この波動は……!」ビリビリビリッ

全身に響き脳をも揺らす振動、地上より放たれた低周波は空一面に広がってゆく。
それを受けてか雲の中に蒼い稲妻が迸り、雷の轟音が不快なハーモニーを奏でる。

その時、遥か遠方より黒い点≠フ群れが突如として出現した。
こちらへ向かって来ているのか、その影は徐々に大きくなってゆく。

郁乃「今度は鳥……猛禽か? ひぃー、ふぅー、みぃー……って数え切れんわ!」

熱り立ち咆哮する猛禽?達、漸くその姿が視認出来る距離まで近付いて来た。

郁乃「なっ……!? あれは鳥なんかとちゃう! あれは……飛竜≠竅c…っ!」

それは空想小説や漫画などでよく見るドラゴン≠ニ呼ばれる生物だった。
全長10mを優に超える獰猛な怪物達は、その巨大な両翼をはためかせ、
周囲に炎≠吐き散らしながら、物凄いスピードでこちらに迫って来る。

郁乃(今この世界周辺の時空は酷く歪み、一部が異世界と繋がった状態……)

郁乃(その事を利用し、死神は奴らを刺客≠ニしてここへ招き寄せたんか!?)

ドラゴン達は郁乃を射程圏内に捉えると、一斉に口から高熱の球体を吐き出した。
燃え盛る無数の火の玉が薄暗い空を紅く照らしながら郁乃を目掛けて飛んで来る。

郁乃「あっつぅ〜! あちちちちぃ! 冗談や無くてホンマに火傷するってぇ〜!」

炎の球体から飛び散る火花が、郁乃のロングスカートの裾に燃え移る。
必死に手で叩くも炎は消えず、燃えてる部位を急いで破り捨てる郁乃。
前丈は半分以下になり、フィッシュテールスカートの様になってしまった。

郁乃「私の一張羅が……。おのれ爬虫類の分際で……!」ギリッ

郁乃は身を翻して火炎弾を華麗に躱し、蒼い光刃を放って応戦する。
光の斬撃はこちらに向かって来るドラゴン達の首や翼を切り裂いた。
数多くのドラゴン達が金切り声を上げながら地上へと落下してゆく。

郁乃(およよ? こいつら……図体の割に随分と脆いな……)

郁乃(動きも鎌鼬より数段鈍いし、これは案外楽勝なんちゃう?)ニヤッ

俊敏な動きが出来ぬその巨体に、刃を防ぎ切れぬ貧弱な装甲。
避けず耐えられずであれば、それは最早ただの的≠ナある。
力の差は歴然であり、戦いは郁乃の一方的な虐殺となっていた。

光の刃で空中を舞うドラゴン達を次々に撃ち落としてゆく郁乃。
だが敵の数も多く、中には光刃の弾幕を潜り抜けて来る者もいた。

至近距離まで近付いて来たドラゴンが、鋭利な牙と足の鉤爪で郁乃に襲い掛かる。
郁乃は小回りの利く身体を活かして素早く攻撃を回避し、即座に反撃態勢を取った。
翼を広げる郁乃、漆黒の羽根が鋭い針の弾丸となってドラゴンの頭部に突き刺さる。

郁乃「こんなんが魔界ヒエラルキーの最上位に君臨する怪物とは笑かしてくれる!」

得意になって竜を狩り続ける郁乃、空に雷鳴が響き渡り、ポツポツと雨が降り出す。
すると突然ドラゴン達が何かに怯えた様子で、郁乃との戦闘を放棄し逃走を始めた。
最初は勝ち誇り愉悦に浸っていた郁乃だが、すぐ異変に気付き周囲に警戒を向ける。

郁乃(……ッ! なんやこの異常な神気≠フ高まりは……!?)

次の瞬間、黒い雲の中から体長100m以上はあろう巨大な何か≠ェ姿を現した。
見た目は蛇の様な姿、胴部に鋭い爪を持つ手足が生え、頭には大小4本の角がある。
細長い髭を持ち、全身に青い鱗を纏い、背中には鋸の刃を思わせる鰭が付いていた。

東洋の龍≠フ風貌をしたそれは、遥か上空を8の字を描き悠々と飛行している。
その怪物の降臨を歓迎し崇敬するかの様に、雨は激しさを増し雷光が鳴り響いた。
207 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/17(月) 07:45:35.16 ID:/TTeQNXOo
『18:00時以降、早い順に5レスのコンマで威力判定は行われます』

・威力判定レスに同IDがある場合、早い時間の方のレスのみ判定に使われます
・出来るだけパソコンからのレスでお願いします(一応携帯からでも可です)


5レスのコンマの合計値が……

400以上 攻撃失敗(ただしコンマぞろ目でラッキーヒットが発生)

400以下 攻撃成功(平均コンマ80)

200以下 攻撃成功(平均コンマ40、クリティカルヒット)

100以下  ????(平均コンマ20)


・コンマの合計値が低いほど郁乃さんは大きなダメージを受けてしまいます
・ぞろ目の数だけラッキーヒットが発生します(攻撃失敗時のみ、最大5回)
・ラッキーヒットはぞろ目の数値が低いほど威力を増します
208 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/17(月) 08:22:00.65 ID:7e90jMkZ0
はいよ
209 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/17(月) 10:38:21.22 ID:9/vt4KQro
洋榎「よっしゃ部活終わりや!帰りに串カツ食いに行こうで!」

恭子「いいですね。由子はどうする?」

由子「の゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛…………」

洋榎「相変わらず由子は何喋っとるのか分からんなあww」


今回の後日談はこんな感じになるわけか
210 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/17(月) 11:23:14.32 ID:vzhv/rgS0
211 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/17(月) 13:51:56.85 ID:DMOfaKdio
相変わらず、何も説明を読んでいないアホがいるな
212 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/17(月) 14:10:56.25 ID:oCpc3nvY0
↑その高コンマ、説得力あるな
213 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/17(月) 18:03:25.98 ID:Tf6w1EXko
低コンマはおまかせあれ!
214 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/17(月) 18:14:56.19 ID:zf752R5No
低コンマはおまかせあれ!
215 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/17(月) 18:20:44.47 ID:k3Xnuu51o
低コンマはおまかせあれ!
216 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/17(月) 18:27:10.04 ID:1UW/Pxtk0
ふむふむふんむふんむ
217 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/17(月) 18:29:21.59 ID:LXlvVy/fO
どやぁ
218 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/17(月) 19:01:18.98 ID:hJZW0LCoo
ほい
219 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/17(月) 19:26:05.53 ID:/TTeQNXOo
『有効威力判定レス』

18:03:25.98 ID:Tf6w1EXko
18:14:56.19 ID:zf752R5No
18:20:44.47 ID:k3Xnuu51o
18:27:10.04 ID:1UW/Pxtk0
18:29:21.59 ID:LXlvVy/fO

98+19+47+04+59=227


今回の威力判定の結果は以上となります。
皆様ご協力ありがとうございました。

物語は今から書き始めますが、夜中までに更新できるかは不明です。
現在1レスを書き込むのに膨大な時間が掛かっている状態です。
夜中、というか明け方に更新が多いのはその為でです。

次の更新まで今しばらくお待ちください……。
220 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/17(月) 23:58:00.80 ID:71H1zPbV0
ええでええで
221 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/18(火) 00:30:47.40 ID:rIHiXgk4o
待ってる…
222 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/18(火) 04:27:18.96 ID:Nu0hKJupo
お゙づな゙の゙よ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙
223 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/19(水) 03:57:03.10 ID:yBYJA4VRo
郁乃(他の雑魚共とは比べ物にならん……。格が違い過ぎる……!)

蒼の龍が放つ神気のプレッシャーに気圧される郁乃。
全身に鳥肌が立ち、生物としての本能が警鐘を鳴らす。
敵は強い、今ここで戦うのは余りにも危険である、と。

だが、こんな危機的状況すらも郁乃にとっては娯楽であった。
恐怖という感覚が麻痺し、強者のその実力を試してみたくなる。

大きく円を描く様にして、ゆっくりと下へ降りてくる蒼の竜。
郁乃は翼を広げ、黒の羽根針を飛ばして先制攻撃を仕掛けた。

ぶわっ......

羽根針が蒼竜の胴体部に命中せんとした次の瞬間、
烈風が発生し羽根針はその風圧で弾き飛ばされた。

風はそのままの勢いで突き進み、郁乃にまで到達する。

郁乃「ぬわっ!?」ブオンッ......

斜め下へ吹き飛ばされる郁乃、後方宙返りをする様にして体勢を立て直す。

郁乃(ちっ……! この程度の小技など通用せんか……!)

郁乃は深呼吸して集中力を高め、左手に気≠溜めてゆく。
光の粒子が一点に集束し、その金色の輝きは徐々に強くなる。

高まるオーラの気配に反応したのか、蒼の龍はその長い体をうねらせ方向転換をし、
激昂するが如く口を開き吠え哮りながら、一直線に郁乃を目掛けて急降下して来た。

郁乃「自ら我が面前に無防備なその身を晒すか! 笑止! 愚かな龍めが!」

咆哮し鋭い牙を剥いて突撃して来る蒼の龍に怯む事無く、
郁乃は冷静に狙いを定め、凝縮した光の弾丸を撃ち放つ。

音を立て空を切り裂き、超高速で飛んでゆく美しい光の球体。
輝くエネルギー弾の軌道は完全に蒼龍の動きと重なっている。
それが蒼龍の開いた口に直撃する事はまず間違い無いだろう。

郁乃「常勝無敗! 我が必殺の一撃を受けてみよッ!」

蒼の龍は口を閉じて顔を少し下げ、額の角を前面に出し光の弾丸に頭から突っ込む。
光り輝く気弾は蒼龍の頭部に命中し、水風船が衝突し破裂するかの様に弾け飛んだ。

しかし蒼龍は僅かなダメージすら負った様子も無く、
再び牙を剥き出し、加速してこちらに突進して来る。

郁乃「馬鹿なっ! あの一撃を受けて無傷やと!?」

郁乃の眼前まで距離を詰め迫って来る蒼龍の鋭い牙。

郁乃「くっ……! 龍の餌なんぞになってたまるか……ッ!」

ガチンッ!

蒼き龍の噛み付き攻撃を既の所で回避する事に成功した郁乃。
掌から黒い刀身の日本刀を生み出し、龍の胴体部に斬り掛かる。

郁乃「せいやぁぁぁァァァッッッ!」

カキィィイィンッ!

しかし金剛石よりも硬い蒼龍の鱗に刃は通らず、
反動で日本刀は弾き飛ばされ郁乃の手から離れた。

郁乃(なっ、なんちゅう硬さ……! 分厚い鋼鉄をも断つ黒刀を弾きよった……!)

驚愕しながら弾かれ宙に舞う日本刀を無意識に目で追う郁乃。
1秒にも満たぬその刹那、郁乃の注意は蒼龍から逸れていた。

シュッ……

郁乃「ぐぁ……っ!」

擦れ違い様に蒼龍が身を捻り、剃刀の様に鋭利な背鰭で郁乃の腹を横に切り裂いた。
鳩尾の少し下の辺り、服に大きな切れ目が入り、そこから一筋の血の跡が覗いている。
幸い傷は浅く臓器を損傷せずに済んだが、一歩間違えれば致命傷を負っていただろう。

郁乃(こいつは手強い……。一瞬でも気ぃ抜いたら殺られる……ッ!)
224 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/19(水) 08:59:03.59 ID:KHRC9aHAo
いくのんがべシータに見えてきた
225 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/19(水) 12:38:18.38 ID:GIkYP7Beo
>>1は本当はこういうのが書きたかったんだな
楽しそうで何より
226 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/19(水) 19:22:26.27 ID:pbxLrdfI0
ほんとは書きたかったっていうより似たようなのを書いてると飽きてきて系統の違うやつ書くのが楽しくなるだけじゃね
227 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/20(木) 23:01:30.20 ID:kDjLg9zzo
稲妻が走る空、豪雨の中をUターンし、またしてもこちらに突撃して来る蒼龍。
効果的な反撃手段も思い浮かばず、郁乃はその攻撃をただ避けるしかなかった。
先程と同じく、郁乃の傍を通り過ぎる瞬間を狙って蒼龍は自らの巨体を横にする。

郁乃(また鰭攻撃か! もうその手は喰らわん!)

同じ過ちは繰り返さないと、十分に距離を取り背鰭も回避した郁乃。
ところが今度は蒼龍の鱗の一部が逆立ち、物凄い勢いで飛んで来た。

郁乃「っ!?」

反射的に自分の黒い翼を前に出しガードする郁乃。
だが龍の鱗は翼を貫通し、郁乃の肉体をも貫いた。

郁乃「ぐふぅ……っ!」

運良く重要器官からは外れたが、太腿や肩、脇腹付近に怪我を負った郁乃。
そこから更に蒼龍は黒翼で視界が塞がっている彼女に対し追撃を仕掛ける。

ブンッ……

蒼龍は体を回転させ勢いを付け、長い尻尾で上から下に打ち下ろす様に郁乃を叩く。

郁乃「ふごっ……!」

頭上から蒼龍の強烈な尻尾攻撃を受け、猛烈な速度で地上へと落下してゆく郁乃。
姫松高校の屋上に激突してコンクリートをぶち抜き、1階の付近で漸く止まった。

郁乃「げふっげふっ……。ぐぅぅっ……いだだだだっ……。おんのれぇ〜……ッ!」

瓦礫の山に半分体が埋もれてしまっている郁乃。
ぽっかりと空いた天井の穴から上空を見上げた。
蒼い龍は雷雨の中を悠然と泳いでいる。

ふと前方を見たその時、郁乃は蒼龍に切り落とされた自身の右手を発見した。

郁乃「おほっ!? あれは私の右手やないか! 探す手間省けたわぁ〜!」

郁乃「ふんしょ、ふんしょ……」

瓦礫から抜け出した郁乃は手を拾って右腕にグリグリと押し付ける。
すると右手と右腕の切断面が数秒も経たぬ内に結合し1つになった。

郁乃「あっ、間違って上下反対にくっ付けてもうた! まぁええわ♪」

無くした右手を無事に回収し、小躍りして喜ぶ郁乃。
けれども、すぐに護符が無い事に気付いて青褪める。

郁乃「げぇっ!? 私の護符が無いやないか! 何処いってもうたんや!?」

コトッ……

郁乃「んっ?」

背後で何やら物音がし後ろを振り向く郁乃。
そこには死んだ筈の真瀬由子が立っていた。

由子「…………」

郁乃「うわっ! ビックリしたぁ〜……。真瀬ちゃん生きてたん?」

由子「 う゛ぅ゛ぅ゛っ…… 」

郁乃「あ〜タンマ、ちょいタンマやで。君の言いたい事はよぉ〜く分かっとる!」

郁乃「けどな、今はそれ所じゃないねん。真瀬ちゃんの相手しとる暇は無いんや」

由子「 お゛ぉ゛ぉ゛っ…… 」

郁乃「まぁ過去の事はお互い水に流して、これからは仲良うしようや。なっ?」

そう言って郁乃が由子の肩をポンと軽く叩いた次の瞬間、
突然由子がその腕を掴み、歯を立てガブリと齧り付いた。

郁乃「 い゛っ だ ぁ ぁ ぁ ぁ っ !? 何すんじゃボゲェェェぇぇぇッ!」ドゴンッ

由子「 の゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛っ ! ! 」ビューン...バリーン...

いきなり腕を噛まれた事に郁乃は激怒し、振り払って由子の顔面を拳で殴る。
その勢いで小さな由子の体は窓ガラスを突き破り校舎外にふっ飛んで行った。
228 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/21(金) 02:00:56.27 ID:6iwSE1jho
感染しないのかな
229 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/21(金) 08:58:05.03 ID:wpHvObO60
善野監督もゾンビ復活させようぜ
230 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/23(日) 02:58:52.47 ID:BL68JDIfo
郁乃「ったく何やねんあいつは……。人の話も聞かんと噛み付きよってからに……」

郁乃「あ〜くっそ、腕にくっきり歯形付いてもうた……」

郁乃(って、そないなこと言ってる場合やない! はよ護符探さんと……)

郁乃(もしこの瓦礫の下に埋もれてるとしたら、見つけ出すんも難儀やな……)

由子「 あ゛ う゛ あ゛ う゛ あ゛ 〜 」ノヨォ......

郁乃「ん?」

校舎外から聞こえてくる由子の声に釣られ、何気無く視線を窓の方に向ける郁乃。
そこには、血で真っ赤に汚れた頭蓋骨を持って宙に浮いている由子の姿があった。

郁乃(あれ……? 真瀬ちゃん宙に浮いとる……? なんでや……?)

郁乃「ってか、なんやそのクッソ汚いしゃれこうべは……」

胸の辺りに抱えている血塗れの髑髏と一緒に、
由子は死んだ魚の様な目でこちらを見詰めている。

頭蓋骨の空洞の黒い瞳が郁乃の姿を捉えた次の瞬間、
突然その髑髏は笑う様にカチカチと歯を鳴らし始めた。

髑髏「カタカタカタカタカタッ……」

郁乃「ぎょっ!? なんやねんそれ!? 気持ちわるっ!」

胸元の笑う頭蓋骨を両手で高く掲げ、気味の悪い奇声を発する由子。
その時、髑髏に隠れていた彼女の胸の傷跡から金色の光が漏れ出す。

郁乃「んんっ!? ちょっとォッ! それ私の護符やないか! 返せ!」

ドガァァァァンッ

郁乃「!?」

郁乃が護符を取り返さんとして由子を捕まえようと足を踏み出したその時、
蒼龍が後方から壁を突き破って現れ、体を横にして郁乃の胴体に喰らい付く。

郁乃「んがっ……!」

鋭い蒼龍の牙は郁乃の柔らかい肉体に深々と突き刺さった。
郁乃は瞬時に体内の重要器官に強固な防御壁を張って耐える。

保護しているとはいえ、蒼龍に噛まれ圧迫される臓器。
口から血を吐き出し、息苦しそうに表情を歪める郁乃。

蒼龍は郁乃を口に咥えながら、姫松高校の校舎から外へ飛び出した。
そのまま低空飛行を続ける蒼龍はグラウンドを縦横無尽に飛び回り、
地上にいる大量の屍鬼達を薙ぎ倒した後、再び建物内に入ってゆく。

ドガァンッ……ドガァンッ……ドガァンッ……ドガァンッ……ドガァンッ……

郁乃「あがっ! ぐへっ! んごっ! ぐはっ! ぐふっ……!」

姫松高校の教室の壁を次々に突き破り破壊してゆく蒼龍。
その度に郁乃はコンクリート壁に頭や脚を叩き付けられた。

校舎を縦に突き抜けた後、蒼龍は暴風雨の中、天に向かって上昇を始める。

郁乃「んぎぎっ……ふんぐっ……ハァァァぁぁぁッッッっっっ……!」

掌から1本のナイフを生み出し、全力を振り絞ってその刃に己の気≠込める。
闇の空に青白く光るナイフの刃、そして郁乃はそれを蒼龍の左眼球に突き立てた。

グ オ オ オ ォ ォ ォ ォ ォ ン・・・・・・

瞳にナイフを刺された蒼龍は苦しそうに暴れて郁乃を口から放し、
呻き声を空に轟かせながら逃げる様に雨雲の中へと消えて行った。

蒼龍の気配が無くなると嵐は静まり、風も雨も瞬く間に治まってしまった。
だが郁乃には自力で飛ぶ力さえも残っておらず、校庭に落ち全身を強打する。
周りには龍に薙ぎ倒され五体バラバラになった屍鬼達の躯が散らばっていた。

雨水と屍鬼達の血で赤黒く泥濘るんだグラウンド。
その死臭漂う穢れた汚泥に塗れている郁乃の身体。

惨めな姿の郁乃に、死神は今、最後の矢を放とうとしていた。
231 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/23(日) 03:22:54.05 ID:BL68JDIfo
『エンディング選択』

流=@玉=@壊=@箱

流:Last Exile
玉:Pinball Crash
壊:World Destruction
箱:Dimension Box

『14:00時までに一番多く選ばれた漢字が死神の最後の攻撃となります』
232 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/23(日) 03:26:43.11 ID:Yeom0Cpm0
【エンディング選択】流
233 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/23(日) 03:43:55.49 ID:/ai38ux80
『エンディング選択』
234 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/23(日) 04:33:11.97 ID:OVZTTUUTo
【エンディング選択】流
235 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/23(日) 05:57:46.66 ID:J6FrBMzH0
【エンディング選択】
236 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/23(日) 08:24:30.13 ID:ipxo/FHio
【エンディング選択】流
237 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/23(日) 09:02:58.53 ID:e1Elkyupo
【エンディング選択】壊
238 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/23(日) 09:17:28.92 ID:bQElKvDw0
【エンディング選択】流
239 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/23(日) 10:07:03.96 ID:Od3DLBfso
【エンディング選択】流
240 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/23(日) 10:13:55.89 ID:KoPgaoNTo
【エンディング選択】箱
241 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/23(日) 11:56:32.48 ID:52G5tbJro
【エンディング選択】箱
242 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/23(日) 12:38:18.64 ID:4RCutc9Jo
【エンディング選択】
243 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/23(日) 13:13:25.68 ID:dzAh6V7jo
【エンディング選択】
244 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/23(日) 16:00:06.23 ID:MFu6wNA00
玉とか良さそうなのに人気ないな……
あのいくのんがピンボールの玉になって最高得点出るまでバシンバシン弾かれるんだぜ?
考えるのをやめたくても痛みでそれもできなくて延々と苦しめられるんだぜ?
245 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/26(水) 02:25:22.67 ID:Qrcl9Chmo
かつて無い屈辱、体中に走る激痛を堪え、郁乃は俯きながら四つ這いになった。
哀れな乞食の様に髪も服も泥で汚れ、雅やかだった彼女の面影は何処にも無い。

郁乃「ぐぐぐぐぐっ……んぎぎぎぎっ……赦さん……赦さんぞ死神……ッ!」

郁乃「殺す……例え神であろうとも……必ずこの手で殺したる……ッ!」

郁乃「 ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ ッ ッ ッ ッ ! ! ! ! 」

言の葉に篭められた憎悪、死神の気配が漂う天空に向かって怒号を上げる郁乃。
だが幾ら脅嚇しようとそれは何の意味も成さず、ただ虚しく辺りに響き渡るだけ。

モニター「 ジ ジ ジ ジ ジ ッ ・・・・・・ ………… 」

姫松校舎内でコンクリート瓦礫の下敷きとなっている巨大モニター。
誰に知られる事も無く、大きくひび割れた画面に映し出された映像。

流=@玉=@壊=@箱

=============
流:Last Exile
玉:Pinball Crash
壊:World Destruction
箱:Dimension Box
=============

ブゥゥゥーンッ・・・……

=============
流:Last Exile
-----------------
---------------------    スゥ......
-----------------
=============


『 流 : Last Exile 』ゴゴゴゴゴッ......


死神の魔の手が迫る中、隔離された世界の空間崩壊が静かに始まった。
遥か遠方の空に暗黒が広がり、大地は崩れ真の闇に呑み込まれてゆく。
姫松高校を円の中心にして、暗闇は取り囲む様に急速に拡大し迫って来る。

郁乃(本格的に崩壊が始まったか……。残された時間は少ない……!)

郁乃(光すら届かぬ闇の先……そこは次元の狭間へと繋がっておる……)

郁乃(一度足を踏み入れてしまったが最後、生きて帰っては来れぬ……)

自分の姿すら隠し覆ってしまう暗黒の世界。
失われる方向感覚、道標などある筈も無い。

郁乃(この隔離空間から早々に脱出せんと、私まで次元崩落に巻き込まれてまう!)

薄暗い空に浮かぶ黄金色の光、護符の在り処を見つけ出す事は容易であった。
体力を回復させた郁乃は翼を広げ、輝く雲に向かう由子を追い掛け宙を飛ぶ。

郁乃「新世界へ行くんはこの私や! お前なんぞに切符を渡してなるものか!」

郁乃「護符が私を所有者と認めぬのならば、その心臓ごと抉り出してくれる!」

左手の爪をナイフの様に鋭く伸ばし、高速で由子の後を追い距離を詰める郁乃。
左腕を伸ばし、その切っ先があと僅かで由子の体に届かんとした次の瞬間……。

グインッ……

郁乃「ぐぇっ!?」

突然発生した謎の引力によって、郁乃の体は後ろ斜め上へと引っ張られた。
それは郁乃にだけ作用している様で、由子との距離がどんどん開いてゆく。

郁乃「んぐぐぐぐぅっ……! 体が……後ろに……吸い寄せ……られて……ッ!」

体内に強力な磁石が埋め込まれたかの様に、体の中心部が後方へと引き寄せられる。
郁乃は死に物狂いに翼を羽撃かせ前へ進もうとするが、その引力には勝てなかった。l

郁乃「 ふ お ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ っ っ っ っ っ ッ ッ ッ !? 」ビューン......

⊂の字≠フ体勢で後ろ斜め上へ猛烈な勢いで飛んでゆく郁乃。
新世界へ続く光の雲から逸れ、黒い雨雲の中へと消えて行った。
246 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/26(水) 02:27:34.11 ID:Qrcl9Chmo
かつて無い屈辱、体中に走る激痛を堪え、郁乃は俯きながら四つ這いになった。
哀れな乞食の様に髪も服も泥で汚れ、雅やかだった彼女の面影は何処にも無い。

郁乃「ぐぐぐぐぐっ……んぎぎぎぎっ……赦さん……赦さんぞ死神……ッ!」

郁乃「殺す……例え神であろうとも……必ずこの手で殺したる……ッ!」

郁乃「 ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ ッ ッ ッ ッ ! ! ! ! 」

言の葉に篭められた憎悪、死神の気配が漂う天空に向かって怒号を上げる郁乃。
だが幾ら脅嚇しようとそれは何の意味も成さず、ただ虚しく辺りに響き渡るだけ。

モニター「 ジ ジ ジ ジ ジ ッ ・・・・・・ ………… 」

姫松校舎内でコンクリート瓦礫の下敷きとなっている巨大モニター。
誰に知られる事も無く、大きくひび割れた画面に映し出された映像。

流=@玉=@壊=@箱

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流:Last Exile
玉:Pinball Crash
壊:World Destruction
箱:Dimension Box
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ブゥゥゥーンッ・・・……

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流:Last Exile
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---------------------    スゥ......
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『 流 : Last Exile 』ゴゴゴゴゴッ......


死神の魔の手が迫る中、隔離された世界の空間崩壊が静かに始まった。
遥か遠方の空に暗黒が広がり、大地は崩れ真の闇に呑み込まれてゆく。
姫松高校を円の中心にして、暗闇は取り囲む様に急速に拡大し迫って来る。

郁乃(本格的に崩壊が始まったか……。残された時間は少ない……!)

郁乃(光すら届かぬ闇の先……そこは次元の狭間へと繋がっておる……)

郁乃(一度足を踏み入れてしまったが最後、生きて帰っては来れぬ……)

自分の姿すら隠し覆ってしまう暗黒の世界。
失われる方向感覚、道標などある筈も無い。

郁乃(この隔離空間から早々に脱出せんと、私まで次元崩落に巻き込まれてまう!)

薄暗い空に浮かぶ黄金色の光、護符の在り処を見つけ出す事は容易であった。
体力を回復させた郁乃は翼を広げ、輝く雲に向かう由子を追い掛け宙を飛ぶ。

郁乃「新世界へ行くんはこの私や! お前なんぞに切符を渡してなるものか!」

郁乃「護符が私を所有者と認めぬのならば、その心臓ごと抉り出してくれる!」

左手の爪をナイフの様に鋭く伸ばし、高速で由子の後を追い距離を詰める郁乃。
左腕を伸ばし、その切っ先があと僅かで由子の体に届かんとした次の瞬間……。

グインッ……

郁乃「ぐぇっ!?」

突然発生した謎の引力によって、郁乃の体は後ろ斜め上へと引っ張られた。
それは郁乃にだけ作用している様で、由子との距離がどんどん開いてゆく。

郁乃「んぐぐぐぐぅっ……! 体が……後ろに……吸い寄せ……られて……ッ!」

体内に強力な磁石が埋め込まれたかの様に、体の中心部が後方へと引き寄せられる。
郁乃は死に物狂いに翼を羽撃かせ前へ進もうとするが、その引力には勝てなかった。l

郁乃「 ふ お ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ っ っ っ っ っ ッ ッ ッ !? 」ビューン......

⊂の字≠フ体勢で後ろ斜め上へ猛烈な勢いで飛んでゆく郁乃。
新世界へ続く光の雲から逸れ、黒い雨雲の中へと消えて行った。
247 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/26(水) 11:56:16.86 ID:Qrcl9Chmo
かつて無い屈辱、体中に走る激痛を堪え、郁乃は俯きながら四つ這いになった。
哀れな乞食の様に髪も服も泥で汚れ、雅やかだった彼女の面影は何処にも無い。

郁乃「ぐぐぐぐぐっ……んぎぎぎぎっ……赦さん……赦さんぞ死神……ッ!」

郁乃「殺す……例え神であろうとも……必ずこの手で殺したる……ッ!」

郁乃「 ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ ッ ッ ッ ッ ! ! ! ! 」

言の葉に篭められた憎悪、死神の気配が漂う天空に向かって怒号を上げる郁乃。
だが幾ら脅嚇しようとそれは何の意味も成さず、ただ虚しく辺りに響き渡るだけ。

モニター「 ジ ジ ジ ジ ジ ッ ・・・・・・ ………… 」

姫松校舎内でコンクリート瓦礫の下敷きとなっている巨大モニター。
誰に知られる事も無く、大きくひび割れた画面に映し出された映像。

流=@玉=@壊=@箱

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流:Last Exile
玉:Pinball Crash
壊:World Destruction
箱:Dimension Box
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ブゥゥゥーンッ・・・……

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流:Last Exile
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---------------------    スゥ......
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=============


『 流 : Last Exile 』ゴゴゴゴゴッ......


死神の魔の手が迫る中、隔離された世界の空間崩壊が静かに始まった。
遥か遠方の空に暗黒が広がり、大地は崩れ真の闇に呑み込まれてゆく。
姫松高校を円の中心にして、暗闇は取り囲む様に急速に拡大し迫って来る。

郁乃(本格的に崩壊が始まったか……。残された時間は少ない……!)

郁乃(光すら届かぬ闇の先……そこは次元の狭間へと繋がっておる……)

郁乃(一度足を踏み入れてしまったが最後、生きて帰っては来れぬ……)

自分の姿すら隠し覆ってしまう暗黒の世界。
失われる方向感覚、道標などある筈も無い。

郁乃(この隔離空間から早々に脱出せんと、私まで次元崩落に巻き込まれてまう!)

薄暗い空に浮かぶ黄金色の光、護符の在り処を見つけ出す事は容易であった。
体力を回復させた郁乃は翼を広げ、輝く雲に向かう由子を追い掛け宙を飛ぶ。

郁乃「新世界へ行くんはこの私や! お前なんぞに切符を渡してなるものか!」

郁乃「護符が私を所有者と認めぬのならば、その心臓ごと抉り出してくれる!」

左手の爪をナイフの様に鋭く伸ばし、高速で由子の後を追い距離を詰める郁乃。
左腕を伸ばし、その切っ先があと僅かで由子の体に届かんとした次の瞬間……。

グインッ……

郁乃「ぐぇっ!?」

突然発生した謎の引力によって、郁乃の体は後ろ斜め上へと引っ張られた。
それは郁乃にだけ作用している様で、由子との距離がどんどん開いてゆく。

郁乃「んぐぐぐぐぅっ……! 体が……後ろに……吸い寄せ……られて……ッ!」

体内に強力な磁石が埋め込まれたかの様に、体の中心部が後方へと引き寄せられる。
郁乃は死に物狂いに翼を羽撃かせ前へ進もうとするが、その引力には勝てなかった。

郁乃「 ふ お ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ っ っ っ っ っ ッ ッ ッ !? 」ビューン......

⊂の字≠フ体勢で後ろ斜め上へ猛烈な勢いで飛んでゆく郁乃。
新世界へ続く光の雲から逸れて、黒い雨雲の中へと入って行った。
248 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/26(水) 12:00:12.11 ID:37L+BYoYo
エラーってなったときは大体書き込めてるから少し待って更新した方がいい
249 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/26(水) 12:02:08.87 ID:Qrcl9Chmo
げっ、同じレスが3つw
更新して書き込めてないの確認したのに(汗

3つ目最後のレスは文の終わりが少し違ってるので、
それが物語の続きという事でお願いします。
250 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/26(水) 12:04:17.45 ID:bVkiDueG0
把握 これにはいくのんも苦笑い
251 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/26(水) 12:23:33.50 ID:lTRpuJdNo
無駄に3回もビューンされたいくのん
252 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/26(水) 13:43:07.94 ID:6DKVI1AMo
了解
253 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/28(金) 07:43:51.77 ID:pQg8/JBQo
乱気流と稲妻の嵐が雲の中に突入した郁乃に襲い掛かる。

郁乃「 ふ ん ぎ ゃ ぁ ぁ ぁ ァ ァ ァ っ っ っ ッ ッ ッ ! ! ! 」ビリビリビリッ

迸る蒼い雷光に黒翼が接触してしまい、感電して悲鳴を上げる郁乃。
全身から白い煙を噴いているが、この程度の雷撃で死ぬ彼女ではない。
やがて長い雷地獄も終わり、漸く雷雲の外へと抜け出した次の瞬間……。

バリィィィィィィィィィン・・・・・・…………

まるで窓ガラスを叩き割った様な大きな音が、雲の上の澄み切った青空に響く。
衝撃は感じなかったが、よく見ると大量の半透明な破片が周囲に散乱している。
空中を浮遊する破片は徐々に透明化し、大気とすっかり同化して見えなくなった。

その正体とは、この隔離された空間と元の世界を仕切る壁≠フ砕片であった。
2つの世界を隔てていた不可視の壁を突き破り、郁乃は元の世界へ戻って来た。

郁乃「うわわっ!? ここは私達が元居た世界やないか! どうなっとるんや!?」

郁乃「まぁ何にせよ、完全崩壊する前にあの空間から抜け出せて良かったわ〜……」

郁乃「……せやねんけどぉ〜」フゥ-ッ......

郁乃「無事戻って来れたんはええとして、いつ止まんねんこれぇぇぇっ!?」ビューン......

郁乃の体は停止するどころか、速度を増して斜め方向に上昇を続けている。

郁乃(ふぐぐっ……アカン、息苦しなってきた……。このままやとマズイ……っ!)

酸素が薄くなり呼吸が出来ず、苦しみ手で喉を押さえる郁乃。
強風と気温の低下によって、身体の熱が急激に失われてゆく。

郁乃(兎にも角にも、まずは十分な酸素を確保せねば……!)

郁乃「 ハ ア ァ ァ ァ ァ ァ ー ー ー ー ー ッ ッ ッ ッ ッ ! ! ! ! 」

背筋をぴんと伸ばし、両手を広げ郁乃が咆哮すると、
彼女の全身が巨大なシャボン玉の様な物に包まれた。
それは中の温度を適切に保ち、有害な宇宙線をも遮断する。

だがそれは一時的な急場凌ぎに過ぎず、問題の根本的な解決にはなっていない。
空気の玉に包まれながら、郁乃は成層圏を突き抜け宇宙空間へと放り出された。

郁乃「んほ〜、地球めっちゃ綺麗やん! ……って感動してる場合とちゃうわ!」ビシッ

いつの間にか郁乃の体に働いていた謎の引力はさっぱりと消えて無くなっていた。
しかし慣性によって宇宙空間を進み続け、郁乃は地球からどんどん遠ざかってゆく。

空気の玉を小さく圧縮し、自分の体にピッタリと沿う様な形に変化させた郁乃。
地球へ戻ろうと必死に平泳ぎ≠キるも、空気抵抗の無い宇宙では意味が無かった。

郁乃(はわわわわ……。どないしよ……全然戻れへん……;;)ガクガクガク......

力≠使って推進力を生み出せば、ここからでも郁乃は地球へ戻る事が出来る。
だがそれをすると、自身を覆っている空気の膜≠ェどうしても破れてしまうのだ。
人という存在を超越した郁乃でも、空気の保護膜無しに宇宙空間を生きられない。

郁乃(呼吸法を変えれば、今の酸素量でも数年は持つ……)

郁乃(せやけど、そないな事してもこの状況は好転せん……)

郁乃(どうにかして進行方向を逆にせな、幾ら酸素があっても無意味……!)

藻掻きながら体勢を変え、あれこれ様々な方法を試みるも全く効果が無い。
焦燥感から軽口を叩く余裕さえも無くなり、真剣な顔で足掻き続ける郁乃。
結果として数時間を無駄に費やし、とうとう彼女は自力での方向転換を諦めた。

未知の領域、宇宙の神秘を前にして、これまでの様な力技は一切通用しない。
気が付けば月をも通り越し、眼前にあった地球も、今や遥か遠くに見えている。

郁乃「お〜い、誰か〜! 助けてや〜! 誰か〜……」

オーイ ダレカ オランノカー タスケテクレー ナンデモスルカラー オネガイヤー オーイ ォーィ ォー ……......

冷たく暗い無重力空間を、たった一人寂しく漂流している郁乃。
疲れ果て助けを求めるその悲痛な叫びが誰かに届く事は無かった。

終わり無き宇宙遊泳、最も苛酷で残酷な流刑≠ヘまだ始まったばかりだ。
溜め込んだ酸素が尽きるまで、郁乃は暗闇の中で孤独な一生を過ごすのだろう。
光無き深海の底へ引き摺り込まれる様に、彼女は宇宙の彼方へと消えて行った。
254 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/28(金) 08:19:53.55 ID:4w75DcpAO
カーズかよ!?
255 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/28(金) 08:38:44.24 ID:iFqWjP7+0
大好きな絶望に包まれて宇宙遊泳なんてロマンチック…よかったね、いくのん!
256 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/28(金) 09:07:41.97 ID:DJTzkyXO0
来てたか
257 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/28(金) 14:31:17.74 ID:KEL29hIMo
よくわからないけど考えることをやめそう
258 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/28(金) 15:43:00.80 ID:+JbSVwP10
なるほどね…ん???
259 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/28(金) 19:34:17.55 ID:f11l4lzoo
いくのんも酸素無くなると死ぬんだな
260 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/28(金) 20:05:37.63 ID:c/IPUO9fo
ん?今なんでもするって言ったよね?
261 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/28(金) 22:48:56.25 ID:5UkggBDcO
今なんでもするって言ったよね?

俺のち◯こ舐めんだよ!雌豚みてえによお!
262 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/28(金) 23:33:01.24 ID:iFJErtCl0
もっと苦しむ姿を見せろ!
263 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/29(土) 04:19:42.85 ID:7pQe4UHko
なんか可哀想だから助けてあげたらいいと思います(棒)
264 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/29(土) 16:55:19.15 ID:jU+pTPqC0
やったぜ。
265 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/30(日) 04:32:07.25 ID:9CKOh1wUo
恭子……
       恭子……

恭子『んっ……』

聞き覚えのある優しい声で名を呼ばれ目を覚ます恭子。
眩しさに目を細め、顔を覆う様に手を翳して光を遮った。

恭子『ここは……?』

何やら見覚えのある暖かい光の空間に浮かんでいる恭子。
衣服は纏っておらず、白い靄が胸部と下腹部を隠している。
背中の傷は消えており、入浴後の様に体の汚れも全く無い。

『恭子…………恭子…………恭子…………』

逆光を背負った黒い影が何度も自分の名前を口にする。
姿は見えずとも声を聞けば誰と判別する事は容易だった

恭子『洋榎……?』

洋榎『あぁ……恭子……良かった……』

漸く目が光に慣れ始め、徐々に明瞭となってゆく洋榎の姿。
彼女も恭子と同様に裸で、体の一部を靄が包み隠していた。

洋榎『お前が生きていてくれて……』

洋榎『その声で……またうちの名前を呼んでくれて……』

洋榎『嬉しい……恭子……』

柔らかく穏やかな笑顔を恭子に向ける洋榎、止め処無く溢れ零れる喜びの涙。
そんな彼女の顔を見て、恭子は胸の奥底から熱い感情が一気に込み上げて来た。
小刻みに震える身体、瞳を潤ませ、洋榎を見詰めながら消え入りそうな声で呟く。

恭子『これ……夢ちゃうねんな……?』

恭子『お前は幻影なんかやなく……ちゃんとそこに居んねんな……?』

恭子の頬を伝う一筋の涙、洋榎は頷き、ゆっくりとこちらに近付いて来る。
腕を前に伸ばす恭子、洋榎はその手を自らの両手で優しくそっと握り締めた。

伝わる生≠フ温もりから、洋榎の存在を確信する恭子。
目の前にいる最愛の人は、決して夢でも幻でもないのだと。

恭子『他の皆は……?』

洋榎『3人≠ヘ先に行ったで……。ここに居るんはうちとお前だけや……』

恭子『そうか……。お前はうちの事……待っててくれたんな……』

洋榎『当たり前やろ……。うちはもう二度とお前の傍から離れんからな……』

恭子『洋榎……』スッ......

洋榎『んっ……』

息が触れ合う程の至近距離で互いに見詰め合う洋榎と恭子。
自然と口唇が重なり合い、この想いが永遠に続く事を誓う。
例え神であろうと、2人の絆を引き裂く事は出来ないだろう。

洋榎『さぁ……新しい世界へ踏み出すで……恭子……』

洋榎の言葉に小さく頷き、涙を手で拭い去り微笑みを見せる恭子。

恭子『お前と一緒なら……うちは何処にでも行ける……』

恭子『不安も……恐怖も……そんなもんあらへんよ……』

洋榎と恭子は固く手を結び、最高の笑顔と共に白い光の先へと消えて行った。
この先どんな困難が待ち受けていようとも、彼女達なら乗り越えられるだろう。

如何なる苦しみや悲しみでさえも、もう恐れる必要は無い。

それは……いつも隣に君が居てくれるから……。



266 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/30(日) 05:08:44.67 ID:1lPPd7Jmo
ファッ!?
267 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/30(日) 08:30:27.32 ID:iBdbkCKm0
新世界に行けたのかなぁ……
268 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/30(日) 09:46:06.02 ID:j6JtY9wL0
犠牲になった次峰なんていなかったのよー
269 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/30(日) 09:57:45.34 ID:kvVzuiUsO
死ぬのはいくのんだけで十分なのよー(泣)
270 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/30(日) 10:00:45.14 ID:6uWqIhji0
後日談はよ
271 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/30(日) 10:45:22.86 ID:5cG41+ZWo
のよーが可哀想だわ…
272 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/30(日) 19:28:07.91 ID:rScz7djho
レモンどうしたんだろ・・・
273 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/30(日) 19:35:42.78 ID:2syUvQ5Qo
エピローグ期待
274 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/30(日) 23:59:43.14 ID:ByseipOq0
次の学校にも期待したい
275 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/31(月) 01:38:02.48 ID:QvUoeAMv0
そっか、エピローグにしてももう終わりなんか
姫松大好きだからなんか寂しなるな
276 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/31(月) 01:39:33.50 ID:QvUoeAMv0
そっか、エピローグにしてももう終わりなんか
姫松大好きだからなんか寂しなるな
277 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/31(月) 01:40:31.29 ID:QvUoeAMv0
そっか、エピローグにしてももう終わりなんか
姫松大好きだからなんか寂しなるな
278 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/31(月) 01:41:30.86 ID:QvUoeAMv0
そっか、エピローグにしてももう終わりなんか
姫松大好きだからなんか寂しなるな
279 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/31(月) 01:44:40.83 ID:QvUoeAMv0
なんか多重してた、申し訳ないです
280 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/31(月) 11:08:09.30 ID:3QUcKjPlo
どんだけ姫松好きなんだよ
281 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/04/02(水) 00:34:41.74 ID:ld5JOsBho
のよーは救われたのよー?
282 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/04/03(木) 04:00:43.34 ID:EO+Nhgba0
だが善野監督は救われなかった
283 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/04/03(木) 11:07:44.51 ID:ccFvehvio
仕方ないね…
284 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/04/03(木) 17:55:56.87 ID:6zm8b86Zo
そもそも善野監督が出てた事を忘れてたわ

結局のよーはいくのんの代わりに救われたんですかね?
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/06(日) 16:04:25.86 ID:zB0h99Dco
レジェンドは実は生きてたが善野監督はキビシイか
のよーはワンチャンありそうだけど
286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/06(日) 21:18:50.03 ID:CtKqEOZro
精神病んでそう(こなみかん
287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/09(水) 10:59:23.73 ID:F+N8SFnn0
次は白糸台かなあ。次作期待
288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/04/12(土) 23:59:00.71 ID:rUl2Ap300
次どこだろ
289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/13(日) 09:23:11.81 ID:v11aKYPj0
>>1も大変だろうから、また勢いで書こうと思ったらでいいでー。最終的に、まとめとして今まで出てきた学校全部が出てくる編とかあったらおもしろそう
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/28(月) 01:59:02.17 ID:AhosF52Do
エピローグ書く予定なかったから苦戦してるのかね
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/28(月) 06:34:26.83 ID:nyYlDttG0
そもそもエピローグをかいてもらえるのだろうか
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/04/29(火) 23:23:16.47 ID:vsovS6RDo
爽やかな風が吹く5月初旬……。


「ねぇねぇ、知ってる?」

「ん? なに?」

「今日な、うちのクラスに転入生が来るんやて!」

「ええっ!? それホンマかいな?」

「たまたま職員室で先生達が話しとんの聞いてな〜」

「へぇ〜。男の子? 女の子?」

「うーん、そこまでは分からんなぁ……」

「どんな子やろ? 楽しみやね〜」
293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/04/29(火) 23:33:04.36 ID:vsovS6RDo
姫松高校 校門前


漫(ここが今日からうちが通う事になる姫松高校かぁ……)ドキドキ

漫(クラスの子達どんなやろ……?)ドキドキドキ

漫(新しい友達……すぐに出来るといいな……)ドッキンドッキン


漫(くぅ〜、緊張してきてもうた……! 平常心、平常心っと……)スーハースーハーフゥゥゥゥゥッ


漫(最初の印象が大事やからな……。失敗せんよう気を付けんと……)⊃手鏡

漫(着崩れ無し! 前髪セット良し! 歯汚れ無し!)ポンポン サッサッサッ イーッ!


漫「よっしゃ! ほな気合入れて行くで〜ッ!」イザ ヒメマツニ ノリコメー!
294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/29(火) 23:48:44.54 ID:k1ZdCaxE0
おおおお来たのか
295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/30(水) 00:00:01.78 ID:6KAnpveNo
なんかキタ━(゚∀゚)━!
296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/04/30(水) 00:00:27.11 ID:Ctw5b20lo
姫松高校 2年A組


キリーツ! レーイ!
オハヨウ ゴザイマ-ス!


担任「は〜い、おはよ〜さん」


チャクセーキ!


担任「え〜、突然ですが、皆さんにお知らせがあります」

担任「今日からこのクラスに新しいお友達が増える事になりました」


エー ナニナニー? テンニュウセイ?
サッキ コウモンマエデ チガウ セイフクノ オンナノコ ミタデー!
ナンヤト!? オンナヤテ? カワエエ? ナァ ソノコ カワエエ?


担任「上重さ〜ん、入ってや〜」


ドア「ガラガラガラッ」


漫  「 し、 失 礼 し ま す ! 」カチンコチン


担任「上重さん、みんなに自己紹介したってや〜」


漫  「は、はい!」ビビクンッ


漫  「父の仕事の都合で京都から引っ越して来ました、上重漫です!」カッチンコッチン

漫  「私は……えーっ……私は……えーっと……」


漫  (あっ、あれ……!? あかん……、頭真っ白になってもうた……!)サーッ

漫  (昨日あんなに何度も自己紹介スピーチの練習したのに……!)アワワワワッ......

漫  (なに言えばええんやっけ……? えっと……えっと……)グルングルン


漫  「えと…………宜しくお願いします……っ!」ペッコリン ユッサユッサ......


オォー カワエー
コチラコソ ヨロシクナー
パイオツ デケー
ナカナカノ ナカナカダネ


漫  (うぅ……初っ端からやってもうた……。死にたい……)ナミダメ


担任「宜しく上重さん。貴女の席はー……」


?  「先生、私の隣の席が空いてますよ」


担任「それじゃあ、上重さんの席はあそこで」

漫  「はい……」トボトボ......


漫は俯き加減に指定された席へと歩いていった。
297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/04/30(水) 00:51:55.72 ID:Ctw5b20lo
ガタッ……ストンッ


漫  (はぁ……最悪やん……)ションボリ

漫  (自己紹介で笑い取ってクラスの皆と仲良うなる作戦が台無しや……)グスンッ


?  「どないしたん? 調子悪いん?」

漫  「あっ、なんでもないです! 大丈夫です、すみません……」

漫  (うちのアホ! こんな余所余所しい喋り方やと尚更壁≠ェ出来て……)チラッ

漫  (うゎゎっ! めっちゃ綺麗な子や……! モデルさんみたい!)ドキンッ

漫  (しかも……全身からごっつええ匂いが漂っとる……)スンスン クンカクンカ


?  「ん? 私の顔に何か付いてる?」

漫  「い、いえ……。えっと……」

?  「私は愛宕絹恵。よろしくね、上重さん」ニコッ

漫  「よ、宜しくお願いします、愛宕さん……」

絹恵「ふふっ、そんな緊張せんでもええのに……」


絹恵「ねぇ、上重さん……」

漫  「は、はひっ!」

絹恵「もし嫌やなかったら、上重さんの事漫ちゃん≠チて呼んでもええ?」

漫  「っ!? あ、はい! 自分は全然構わないです!」

絹恵「それと私の事も愛宕さん≠竄ネく絹恵≠チて呼んで欲しいな」ニコッ

漫  「っ!!」

漫  「き、絹恵……ちゃん……」

絹恵「ふふっ、これで私と漫ちゃんはもう友達やね」ニコリ

漫  (友達……っ! 今うちの事友達≠艪、てくれた……!)パァァァァッ......

漫  「う、うん!」ニコッ


漫  (こんなに早く名前で呼び合える友達が出来るやなんて……)

漫  (嬉しいなぁ……!)ポワワワーン


絹恵「分からない事があったら、遠慮せんで何でも私に訊いてな」ニコッ

絹恵「それと放課後、良かったら漫ちゃんに学校案内してあげる」

漫  「うん、ありがとう絹恵ちゃん!」


漫  (絹恵ちゃん……美人やし優しくてめっちゃええ子やなぁ……)

漫  (初対面の筈やのに、不思議と親しみや懐かしさを強く感じるし……)

漫  (以前から彼女を深く知ってる様な感覚……前世で親友やったんちゃうかな?)

漫  (って、こないな事ゆうとったら変な子扱いされてまうわ……)クスッ


絹恵「?」


漫  (見知らぬ土地での新しい生活、期待より不安が大きかったけど……)

漫  (この子と一緒なら、この先何があっても乗り越えて行けそうや……)

漫  (残り2年間の高校生活、素敵な事が起こりそうな予感がする……!)
298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/30(水) 01:57:52.37 ID:euM0qLaIo
乙ー
299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/30(水) 05:21:56.65 ID:mI17a9u9o
よっしゃ!エピローグ来た!!
300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/30(水) 17:33:04.18 ID:yK6LLYV+0
まだのよーちゃんが出てない…油断してはいけない(戒め
301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/05/02(金) 02:03:03.71 ID:13Vj4nuBo
そして放課後……。


ウエシゲサン マタアシタネー
バイバイ ウエシゲサン
ウン マタアシタナー


絹恵「漫ちゃんお疲れ様、転校初日の感想はどう?」ヒョコッ

漫  「姫松は前の高校より偏差値高いし、授業も進んどって大変やったわ……」

漫  「今日はいっぱい迷惑掛けてもうてごめんな、絹恵ちゃん……」

絹恵「ううん、そんなん気にせんといて〜」

漫  (授業中、絹恵ちゃんはうちの事を気遣って色々と助けてくれた……)

漫  (美人で優しくて、その上頭もええやなんて、完璧過ぎるで絹恵ちゃんは……)


絹恵「こっちの生活に慣れるまで大変やと思うけど、頑張ってや漫ちゃん!」

漫  「うん! クラスの皆も優しいし、学食も美味しいし、うち頑張るわ!」グッb


絹恵「……ところで漫ちゃん、部活はどないするつもりなん?」

漫  「うち麻雀部に入ろう思っとるよ。姫松の麻雀部は全国的に有名やしね」


漫  (麻雀強豪校姫松……南大阪最強と言われる全国大会の常連校……)

漫  (けど近年は思う様に戦績が振るわず、全国で初戦敗退を繰り返してきた……)

漫  (名門の没落ゆうて地方局で派手に叩かれてたんはうちも見た記憶がある……)

漫  (ところが去年監督が変わって以降、短期間で再び姫松はその輝きを取り戻す)

漫  (古豪復活……今年の春季大会で姫松は遂にベスト4まで上り詰めた……)

漫  (その最大の立役者である知将$ヤ阪郁乃監督……)

漫  (噂では謎の多い人やて聞いたけど……一体どんな人なんやろ……?)


漫  「前の高校でも麻雀部やったし、自分の実力が何処まで通用するか楽しみやわ」

絹恵「ふぅ〜ん、そっかぁ……。なら、部活でも私達一緒やね♪」

漫  「えっ……!? 絹恵ちゃんも麻雀部に入ってん!?」

絹恵「うん、私も麻雀部やで。それに私のお姉ちゃんも居るよ」

漫  「ホンマに!? 凄い偶然やなぁ!」


漫  (まさか絹恵ちゃんも麻雀やっとるやなんて……っ!)

漫  (最初に出来た隣の席の友達が姫松高校の麻雀部員……)

漫  (なんちゅう奇跡の巡り合わせや……! これはもう運命やで……!)パァァァァァッ


絹恵「ふふっ、なんか漫ちゃん凄く嬉しそうやねぇ」

漫  「うん! 絹恵ちゃんと麻雀出来るやなんて、夢にも思わんかったから……」

絹恵「うふふ、私も漫ちゃんと麻雀するの楽しみやわぁ」


絹恵「それじゃあ、次は麻雀部の部室に案内するね」

漫  「うんっ! はよ行こ、絹恵ちゃん!」

漫  (名門姫松の麻雀部……。きっと設備も凄いんやろなぁ〜!)


絹恵「ふふふっ、もう漫ちゃんは……。焦らんでも部室は何処にも逃げはせんて」
302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/05/02(金) 02:37:24.13 ID:13Vj4nuBo
漫  「そういえば、絹恵ちゃんってお姉ちゃんと一緒の高校やったんやな」

絹恵「うん。私がお姉ちゃんを追い掛ける形でこの姫松高校に入学したから……」

漫  「そうなんや。けど絹恵ちゃんなら、もっと上の高校でも入れたんちゃうの?」

絹恵「……うん、一応附天≠ノも合格してたんやけど……」

漫  (ふてん……? うち京都出身やし、略称やと全然分からへんな……)

絹恵「附天蹴って姫松行くゆうたら、お母さんと大喧嘩になって大変やったわ……」

漫  「そっかぁ……。まぁ姫松も進学校やし? 愛宕家は姉妹揃って頭ええんやね」

絹恵「ううん、お姉ちゃん学校の勉強は苦手な方だよ? 姫松には麻雀推薦で……」

漫  「ふぁっ!? 絹恵ちゃんのお姉ちゃんて、名門姫松の麻雀特待生なん!?」

絹恵「うん。麻雀してる時のお姉ちゃん、めっちゃ格好ええんやで……///」ポワーン

漫  「……ハッ! もしや絹恵ちゃんて……あの愛宕プロの……?」

絹恵「せやで。ゆうても私のお母さん、プロ引退してから随分経つけど……」

漫  (うち……初日から凄い子と友達になってもうた……!)ドキドキ


漫  (姫松の麻雀特待生かぁ……。将来はやっぱりプロやろか?)スタスタ......

漫  (今の内にサイン貰っとこうかな? 絶対上位に来るやろうし……)スタスタ......

漫  (なんてったって、完璧超人である絹恵ちゃんのお姉ちゃんやからな)スタスタ......


漫  「って、ここ昇降口!?」

絹恵「うん、麻雀部の部室は別校舎やから〜♪」

漫  (麻雀の名門校やし、専用棟かなんかあったりするんかな!?)ワクワク

絹恵「♪〜」


漫  「……」ドキドキドキ......

絹恵「……」スタスタスタ......

漫  「……」ドキドキドキ......

絹恵「……」スタスタスタ......


漫  (あれ……? 段々人気が無くなって寂しくなってきたな……)

漫  「な、なぁ絹恵ちゃん、ホンマにこっちに麻雀部の部室あるん……?」

絹恵「うん。……ほら、見えてきた。あそこだよ漫ちゃん!」

漫  「……えっ?」


絹恵が指差した方に目を向けると、そこには古びた汚い校舎があった。
次の瞬間、不自然な生暖かい風が吹き、漫は体を小さくビクッとさせる。


旧校舎「オオオオオォォォォォォッッッッッ…………・・・・・・」ゴゴゴゴゴッ......


漫  (ちょっ……なんやあのボロボロの建物はっ! 姫松高校の旧校舎……!?)

絹恵「もう少しで着くからね」ニコッ

漫  「う、うん……」


漫  (電気も点いて無い様やし、こんな所に麻雀部の部室なんてある訳ない……)

漫  (けど絹恵ちゃんがうちをここに連れて来たのには何か理由があるはず……)

漫  (とりあえず、ここは大人しく絹恵ちゃんに付いて行ってみよう……)ゴクリンコ......
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/02(金) 02:40:38.89 ID:JArw8Xev0
おおお
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/02(金) 03:21:37.43 ID:+Kq+u8TRo
建物がしれっと叫んどる
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/02(金) 10:00:17.60 ID:Tqzkas38o
乙ー
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/02(金) 19:47:01.87 ID:IQBGLbZYo
代行生きてるってことはつまり……
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/03(土) 03:35:03.58 ID:K3kNVxL00
これはすばらくない予感が…
308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/04(日) 23:00:55.30 ID:c8m90YFto
ほのぼのエピローグを期待してたら恐ろしい展開になってきたでござるの巻
309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/05/05(月) 03:46:29.78 ID:cfHidhdzo
漫  (さて、旧校舎の入り口前に着いた訳やけど……)

漫  (よく見るとガラスが全部黒く塗り潰されとる……)

漫  (誰が一体何の為に、こないな真似しよったんや……?)

漫  (それにこの建物……めっちゃ嫌な感じがする……)ゾクッ......


絹恵「はい漫ちゃん、これ持って。」スッ......

漫  「これって……懐中電灯……?」

絹恵「中は暗いから、足元に気をつけてね?」ニコッ


ギギギィィィィッッッ…………・・・・・・


そう言って、絹恵は入り口の扉を開け手招きをする。
誘われるがままに、漫は旧校舎の中へと入ってゆく。
漫が校舎に入ると、絹恵は静かに扉を閉め鍵を掛けた。


漫  (外観と違って中は綺麗やな……。掃除もきちんとされとるみたいや……)

漫  (蛍光灯が……全部外されとる……。校舎としては使用されてない……?)

漫  (それになんやろ……薬品っぽい変な臭いがする……)スンスン......

漫  (せやけど……それより一番気になるんは……)


漫  (床や壁……更には天井にまでビッシリと書かれた気味悪い西洋文字……)

漫  (まるで何かの呪文≠ンたいや……。こんなん、素人の落書きちゃう……)ゾワッ......


人気も無く静かで暗い不気味な校舎に2人の足音だけが響く。


漫  「……なぁ絹恵ちゃん、そろそろ理由を教えてくれへん?」

絹恵「……理由?」

漫  「こんな所に麻雀部の部室があるとは到底思えへんし……」

漫  「うちをここに連れて来た本当の訳を教えてや、絹恵ちゃん……!」


絹恵「…………」

絹恵「……あるよ」


漫  「えっ……?」

絹恵「あるよ、部室。ほら……」


絹恵がライトで斜め上を照らし、その光の先にあるプレートを指差す。


麻 雀 魔 術 研 究 会


絹恵「ね?」

漫  「…………」

絹恵「?」ニコッ

漫  「……あ、はい。」

絹恵「♪」ニコニコ


漫  (これはツッコミ待ちなんやろか……?)キヌエチャン エガオ カワエエ......

漫  (もしかして、うち試されとる……!?)ドウ ハンノウ スレバ エエネン......
310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/05/05(月) 04:29:33.23 ID:FUIGBclR0
一体何が行われているんだ...
311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/05(月) 04:39:29.43 ID:uC87cGH+o
絹ちゃん恐い
312 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/05(月) 08:31:30.92 ID:v0yWU/y/o
確かに…
313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/05(月) 09:10:40.68 ID:HzGxSf/ho
ギャグなのかホラーなのか判断に困る
314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/05/07(水) 03:40:31.31 ID:TlXVx0Mxo
教室の引き戸扉には、鼻輪をした醜い悪魔の顔が取り付けられている。
絹恵はその不気味なノッカーをコンコンコンと、小さく3度ほど鳴らした。


カチャリ……


暫く待っていると、内側から開錠され教室の戸がゆっくりと開く。
その中から現れたのは、蝋燭を持った長髪の小柄な美少女だった。
木目の細かい彼女の美しい肌は、雪の様に白く透き通っている。


恭子「麻雀魔術研究会≠ヨようこそ、上重漫さん……」

※この末原さんは髪を下ろしています。


恭子「うちらは貴女を歓迎します。中へ入って、どうぞ……」スッ......

漫  「あっ、はい……。失礼しま………………ん?」

漫  (……あれ? なんでうちの名前を知って……)

漫  (事前に絹恵ちゃんからうちの事を聞いてたんやろか……?)


漫が教室の中に入ると、絹恵は戸を閉め速やかに施錠した。
この教室にも蛍光灯は無く、窓は全面板張りにされている。
密閉された室内は数本の蝋燭によって仄暗く照らされていた。

壁には奇妙な絵画や写真、中世の西洋武具や謎の呪符などが所狭しと飾ってあり、
棚には変わった形の壷や工芸品、様々な悪魔≠模した人形などが置いてあった。
教室の端にはガラス戸棚があり、中に液体や固形物が入った瓶が大量に並べてある。


絹恵「お姉ちゃん、この子が入部希望者の上重漫ちゃんやで」

漫  「(ちょっ、ちょいタンマ! 絹恵ちゃん……)」コソコソッ......

漫  「(うちが入部したいんは普通の*ヰ摯狽ネんやけど……)」

絹恵「(みんな良い人やし大丈夫やから。そないに心配せんといてや漫ちゃん)」

漫  「(ふむふむ、それなら安心……って、うちの話ちゃんと聞いてー!)」


洋榎「…………」ジトッ......

洋榎「……愛宕洋榎や。よろしゅう」


洋榎は部屋の中央に置かれた雀卓の椅子に座っており、
台に片肘を突いたまま無愛想な態度で漫に挨拶をした。


漫  「よ、よろしくお願いします……」

漫  (うぅっ……帰るタイミング完全に逃してしもた……)


漫  (……それにしても、この人が絹恵ちゃんのお姉ちゃんやなんて……)

漫  (攻撃的で野性≠感じさせる目付き、そしてこの威圧的な物腰……)

漫  (温厚で淑やかな絹恵ちゃんとは、まるで正反対のタイプや……)


恭子「そないに威嚇すんなや洋榎。漫ちゃん怖がっとるやないか!」ポコン

洋榎「あいたっ! いきなりなにすんねん恭子!」フガーッ!


怒り騒ぎ立てる洋榎を軽くスルーし、恭子は漫の方へ向き直って会釈した。


恭子「うちは末原恭子、3年生や。よろしゅうな、上重さん」ニコッ

漫  「こ、こちらこそ、よろしくお願いします……!」ペッコリン

漫  (この人うちより小さい……。なんや可愛らしい先輩やなぁ……)
315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/07(水) 05:01:49.81 ID:FCmaoVnn0
妙に変わった世界になってしもたんか
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/05/07(水) 22:01:57.47 ID:iQxFms8Q0
さて、のよーといくのんはどうなってるか…
のよーはゾンビかな?いくのんは隕石の標本かな?
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/05/08(木) 07:24:36.51 ID:yNEyIDmt0
バイブルブラックを思い出す
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/05/08(木) 20:42:32.79 ID:Ea0fSq55o
漫  「ところで末原先輩、1つ質問してもええですか?」

恭子「構へんよ。うちの知ってる事なら何でも答えるで」

漫  「訊きたい事は山ほどあるんですけど、とりあえず……」チラッ

漫  「教室の隅の床に描かれた円≠フ中で怪し気な呪文唱えてるんは……」ユビサシ


由子「エコエコアザラク エコエコザメラク エコエコケルノノス エコエコアラディーアアアァァァァッッッッ……」ブツブツブツ......

※由子さんも髪を下ろしており、あの奇妙奇天烈な髪型はしておりません。


その少女は深々と魔女の帽子を被り、制服の上から黒いマントを羽織っている。
彼女は蝋燭に囲まれた魔法陣の中で聞いた事の無い言語を繰り返し呟いていた。


漫  「ある意味、この空間には一番お似合いの人物ですけど……」

恭子「あぁ、せやな……。彼女は真瀬由子。3年生でこの部の部長や」

漫  「はぁ……。あの人が……部長……」

恭子「少々不気味かもしれんけど、無害やから気にせんといて」

由子「ちょっと! 不気味って何よッ!」クワッ

漫  (ひょわっ、この人も超美人さんや! しかも色白の末原先輩より肌白い!)

漫  (薄暗い中でも分かる、細くて綺麗な金髪……。ハーフか何かやろか……?)


恭子「新入部員の上重漫ちゃん。由子も優しくしたってや」

漫  「よ、よろしくお願いします(まだ入部決めた訳やないけど……)」ペッコリン

由子「ふぅ〜ん……」ジーッ

漫  (なんか薄目で睨まれとるし! 初対面やのになんで〜!?)

漫  「あのー……」

由子「……ふん。」プィッ

漫  (あっ、そっぽ向かれてもうた……)ショボーン

恭子「こらっ、由子ッ! ったくもう……」ヤレヤレヤナ......

漫  (うちの何がアカンかったんやろ……)ドンヨリ......

恭子「まぁまぁ、そう気ぃ落とさんといてや。ああ見えて悪い奴ちゃうから……」

漫  「はい……」


恭子「他にも訊きたい事あるんやろ? 遠慮せずゆうてみぃな」

漫  「それじゃあ……この麻雀魔術研究会の魔術≠チて何なんです……?」


恭子「元々は麻雀研究会≠ニ黒魔術研究会≠艪、て、全くの別物やったんや」

恭子「けど姫松高校で部活動に昇格するには、部員が最低3人&K要でな……」

恭子「それで麻雀研究会と黒魔術研究会は人数確保の為に合併したっちゅうワケや」

恭子「部活動に格上げされれば色々と優遇されるし、そこは利害の一致って事でな」


漫  「末原先輩と愛宕先輩は元麻雀研究会≠フメンバーですよね?」

恭子「せやで。麻雀研究会はな、うちと洋榎の2人で立ち上げたんや」

漫  (となると、この麻雀魔術研究会が出来たんは絹恵ちゃんが入学する前か……)


恭子「麻雀魔術研究会≠艪、ても、基本的にうちらは魔術に関してノータッチや」

恭子「あくまでうちらは麻雀研究会≠竄ゥらな。そこら辺は誤解せんといてな?」
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/08(木) 21:03:09.46 ID:sd4iEZ8WO
なんだこれぇΣ(゚д゚lll)
320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/08(木) 21:05:06.85 ID:WeEl490Io
本当に…
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/08(木) 21:14:17.69 ID:4qZOV9T80
麻雀推薦とは一体…
322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/08(木) 21:14:58.48 ID:VAdZQ72Qo
のよー生きてたか
けど一番ヤバいっぽいな
323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/08(木) 23:49:08.81 ID:6/WqJUyxo
"名門"の麻雀部はどこいったし
324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/05/09(金) 01:02:18.35 ID:trZvCKAOo
漫  (麻雀の研究してるゆうんは、紛れも無い事実やろな……)

漫  (本校舎から離れた旧校舎にある、怪しく奇妙な部室……)

漫  (その中にある、余りにも場違いな麻雀用品がその証……)チラッ


ASIMO-MJ型1「ヤァ!」

ASIMO-MJ型2「ウーッス」

ASIMO-MJ型3「コンニチワチワ」


漫  (壁際に並んどるんは、ホンダの麻雀用ASIMO……。間違い無く本物や……)

漫  (リースやとしても、1機100万は下らん超高級品。それが3体も……!)

漫  (そしてこの雀卓……。これは龍門渕工業が最近発売した最新モデル……)

漫  (これだけ見れば、潤沢な資金を持つ名門私立校並の設備やないか……!)

漫  (冗談なんかやなく、ホンマにここが歴とした姫松の麻雀部って事も……!?)


漫  (いやいやいや、そないな事は絶対に有り得へん……!)

漫  (ここは末原先輩達が創設した部やゆうてたからな……)

漫  (姫松高校麻雀部の歴史は長い……。本元の麻雀部は別にあるはず……)

漫  (いや待て。そもそも、この2人は何で新たに麻雀部を設立したんや……?)

漫  (姫松は麻雀強豪校やし、わざわざこないな事する必要があるとは思えん……)


漫  「末原先輩と愛宕先輩は、何で既存≠フ麻雀部に入部しなかったんです?」

恭子「……一応うちらは正規≠フ麻雀部に所属してた時期もあるんやけどな……」

恭子「何やかんやあって、うちと洋榎は入部から3ヶ月足らずで退部したんや……」

絹恵「…………」

漫  「それってどういう……」

洋榎「……とうの昔の話や。今更語る程の事でも無いわ。」


漫が2人の退部した経緯を詳しく訊こうとした次の瞬間、
それまで沈黙を続けていた洋榎が突然口を開き話を遮った。


漫  (愛宕先輩は退部の理由は語りたくない、か……)

漫  (なるほどな……。大分状況が読めてきたで……)


漫  (麻雀推薦で姫松に来た愛宕先輩が正規の麻雀部に入らん筈が無い……)

漫  (つまり、愛宕先輩が本物≠フ麻雀部に入部してたんは1年の時……)

漫  (麻雀の実力を買われ、自信を持って乗り込んだ関西屈指の麻雀部……)

漫  (そこで愛宕先輩は名門と呼ばれる高校の麻雀に叩きのめされたんや……!)


漫  (十で神童、十五で才子、二十過ぎればただの人……)

漫  (中学時代に活躍したからゆうて、それが高校でも通用するとは限らへん……)

漫  (入学から3ヶ月と言えば、丁度レギュラー及び1軍2軍が確定する時期……)

漫  (麻雀推薦で入学した故、それなりの成績を残さな風当たりも強くなる……)

漫  (愛宕先輩は名門の高き壁に阻まれ2軍落ちし、麻雀部に居辛くなった……)

漫  (それでも……この人は大好きな麻雀を辞める事が出来んかったんや……)

漫  (せやから、こないな自分中心の似非麻雀部≠作ったに違いない……!)
325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/09(金) 16:32:00.06 ID:jGoj+qYBo
あんなロールに出来るほどの長髪を下ろしてエコエコアザラク言ってたら
貞子チックで元以上に奇妙奇天烈だと思うのですがそれは
326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/05/13(火) 11:47:55.71 ID:6taagg9y0
黒魔術で対戦校に呪いをかけるとか…
まさにオカルト麻雀!
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/05/14(水) 02:04:34.41 ID:zJZ12Di5o
恭子「早速やけど、入部祝いに1局打ってみよか」

漫  「…………」

恭子「……上重さん?」

漫  「すんません、末原先輩……。うち……この部には入りません……!」


恭子「えっ……?」

洋榎「…………」

絹恵(漫ちゃん……)

由子「エロイム エッサイム フルガティウィ エト アッペラウィ……」ブツブツブツ......


漫  (うちは麻雀が大好きやから、転校先にこの姫松を選んだんや……)

漫  (全国上位の麻雀部……。そこで己を鍛え、更なる上を目指す為に……)

漫  (例え今の自分の力が及ばず、打ちのめされる事になったとしても……)

漫  (勝負に負けて逃げ出す様な真似だけは、絶対にしたないんや……!)グッ......


漫  「……なぁ絹恵ちゃん、絹恵ちゃんは麻雀好き?」

絹恵「えっ? う、うん。お姉ちゃんと打つの楽しいし……」

漫  「お姉ちゃんの事は関係無しでや。麻雀それ自体は好きなんか?」


絹恵「…………」

絹恵(麻雀自体が好き、か……。今まで深く考えた事は無かったけど……)


絹恵は顔を上げ、目を瞑り暫く考え込んだ後、漫を真っ直ぐ見据え元気に答えた。


絹恵「うん、もちろん大好きやで!」ニコッ

絹恵「私が麻雀を始めた切っ掛けはお姉ちゃんやけど……」

絹恵「今ではその楽しさや面白さ、奥深さを十分に理解してるつもりや」


漫  「そっか……。せやったら、うちと一緒に本物≠フ麻雀部に入ろう!」グイッ


そう言って漫は絹恵の腕を掴み、力強く自分の方へ引き寄せた。


絹恵「ちょ、ちょっと漫ちゃん、いきなりどうしたん!?」

漫  「うちは伝統ある麻雀部≠フ方に入部する! 絹恵ちゃんも来て!」グイグイ

絹恵「えっ……えぇっ!?」


洋榎「……おいデコ助、ちょっと待ちぃや。」

漫  「あ゛っ?」ピクッ

洋榎「お前が入部するか否かは、うちらが口出す事やない。好きにしたらええ」

洋榎「せやけど、絹も連れてくっちゅうんは一体どういう了見や? あぁん?」

漫  「……こないな胡散臭い所に、絹恵ちゃん1人を残して行けませんので。」


恭子(胡散臭い……か……。せやなぁ……否定はせんけども……)

恭子「上重さん、さっきもゆうたけど、うちらやて真面目に麻雀してるんやで?」

恭子「卓は最高級の物やし、人数調整用に最新のAIを搭載したASIMOも用意しとる」

恭子「麻雀を打つ上で不自由はさせへんよ? まぁ部屋は少し暗いけどな……」
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/14(水) 02:58:15.14 ID:aFpafrnGo
乙ー
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/14(水) 03:05:00.38 ID:1J88Gkrno
否定しないってことは自覚あるのか
330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/14(水) 09:18:24.88 ID:b5ZDReM10
愛宕ネキが挫折したなんて一言も語られてないんだよなあ
331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/14(水) 12:55:43.88 ID:/NrWhWzfo
由子がマイペースすぎるww
332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/05/15(木) 17:55:59.66 ID:Emwh9+FU0
麻雀用ASIMOとか新しいな
333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/05/23(金) 03:41:32.59 ID:mYAxBSdho
漫  「……確かに、設備面に関しては素直に凄いと思いますよ……」

漫  「けど、ASIMOは所詮機械……。生身の人間と打つんとはちゃいます」

漫  「それに指導者……ここには監督やコーチは居らんのですか……?」


恭子「…………」

洋榎「…………」


漫  「麻雀はギャンブル要素が強い競技……。故に運任せな所もあります……」

漫  「と言っても、河から相手の手配を読んだり、牌効率を計算する頭も必要……」

漫  「頭脳明晰な絹恵ちゃんなら、そこら辺は難無く熟せるやろうし……」

漫  「適切な環境で技術を磨けば、今より強くなれるんとちゃいますか……?」


漫  (絹恵ちゃんなら、きっと麻雀の世界でも高みを目指せる筈や……)

漫  (こないな所で遊び≠ノ耽っとったら、その才能が埋もれてまう……)

漫  (せやから……うちと一緒に上を目指そう……絹恵ちゃん……っ!)


恭子「……なるほど。全ては絹恵ちゃんの為を思っての事なんやね……?」

漫  「はい……」コクリ

洋榎「…………」

絹恵(漫ちゃん……)


恭子「そうか……。ふふっ……ありがとな、上重さん……」

漫  「えっ……?」

恭子「絹恵ちゃんはな、うちにとっても妹≠ンたいなもんやから……」

恭子「出逢って間も無いのに、そこまで思っていてくれて嬉しいわ……」


漫  (優しい微笑み……。この人も絹恵ちゃんの事を大切に思ってるんや……)


恭子「けどな上重さん、絹恵ちゃんはこの部を辞める事は無いと思うで……?」

恭子「なんてったって、この子は洋榎を追い掛けて姫松に来たくらいやしね……」


漫  (そやろな……。姉思いの彼女が愛宕先輩を見捨てる様な真似する訳無い……)

漫  (なら愛宕先輩や末原先輩、ついでに真瀬先輩も含めて全員で転部すれば……)


恭子「それは無理やねん。うちと洋榎にはあの部に戻れん理由があるからな……」


漫の考えを察し、恭子はその可能性を完全に否定した。


恭子「せやから、絹恵ちゃんの転部の件についてはキッパリ諦めてくれんか?」

漫  「……出来ません。それが絹恵ちゃんの意思だとしても……うちは……っ!」


恭子「…………」

恭子「出来ない……か……。絹恵ちゃん本人が望んでる事やのに……」

恭子「……分かった。それでも彼女をここから連れ出したいゆうなら……」

恭子「絶対に譲る事の出来ん想いが上重さんの中にあるゆうのなら……」


恭子「麻雀で決着……付けようか……?」ニコッ
334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/05/28(水) 03:06:50.78 ID:G6vcnsQlo
漫  「麻雀で……ですか……?」

恭子「せや。姫松の麻雀部に興味あるゆう事は、麻雀の腕に自信あるんやろ?」

恭子「うちの洋榎に勝てたら、何処へでも好きに絹恵ちゃん連れてってもええで」

漫  「なっ!?」

絹恵「ちょ、ちょっと恭子ちゃんっ!?」

恭子「その代わり、上重さんが負けたら潔くうちに入部して貰う」

恭子「どや? 今後の高校生活をも左右するこの大勝負、受けて立つか?」

漫  「……っ」


恭子「洋榎もそれでええやろ?」

洋榎「あぁ。麻雀で決めるゆうなら何でも構へんよ」

漫  (あっさり受け入れよった……。なんやねんその余裕は……っ!)

絹恵「お姉ちゃんまで人を賞品扱いして……」

恭子「ふふっ、そうゆう事で一つよろしくな、絹恵ちゃん♪」ニコッ

絹恵「もう……しゃあないなぁ……」

恭子「……さて、後は上重さん次第なんやけど、どないする?」

漫  「うっ……」


漫  (ど、どないしよう……。ここは勝負を受けるべきやろか……?)

漫  (うちかて、1年の時から府内上位校でエース張ってきたんや……)

漫  (相手が姫松の元麻雀特待生やとしても、それなりに勝てる自信はある……)

漫  (せやけど、麻雀に100%は無い……。1回勝負なら敗北も十分有り得る……)

漫  (万一ここで負けてしもたら、うちが姫松を選んだ意味も失われる事に……)


洋榎「……ふっ、臆病風に吹かれたか。どうやら恭子の見込み違いだった様やな」

漫  「……っ!」

洋榎「威勢良く啖呵切った癖に、己の得意分野で戦う覚悟も無いとは情けない奴よ」


漫  「…………」

漫  「そうですね……。負けるんが怖くて、うちは勝負する事を躊躇してますよ」

漫  「けどそれは当然でしょう!? うちやて大切なモノを賭けるんですから!」

漫  「まして、運の要素が非常に大きい麻雀での勝負となれば尚更……」

漫  「半荘ならプロがアマチュアに大負けする事やて珍しくない競技ですし……」

漫  「1回きりの対局では、打ち手の優劣なんか付けられませんからね……」


洋榎「…………」

洋榎「まさか勝負の前から負けた時の言い訳を考えていたとはなぁ……」

洋榎「ふんっ、呆れて物も言えんわ。ホンマに失望したで、上重漫……」

漫  「な、何ですかそれ!? うちは事実≠ゆうてるだけやないですか!」

洋榎「ほぅ……。せやったらお前は、インターハイでも同じ台詞をゆうんか?」

漫  「……それ、どうゆう意味ですか?」

洋榎「たった一度の敗北で全てが終わってしまう、苛酷な試合の連続……」

洋榎「全霊を懸け戦ったその結果を、運≠フ一言で片付ける気かゆうとるんや」
335 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/28(水) 11:48:38.74 ID:TAi/2R+2o
乙です
336 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/06/01(日) 02:10:39.66 ID:bSVKhD7jo
漫  「べ、別にそこまではゆうてないですやん……」


漫  (何でこの人は一々棘のある言い方でうちに突っ掛かって来るんや……?)

漫  (うちやて大会では実力の高い方が順当に勝ち上がって来る思っとる……)

漫  (けど全国上位校が下位に理不尽な負け方した事やて現実にあるやないか!)

漫  (全力を以って戦えば強い方が必ず勝つやて? そんなん詭弁やろ……!)


洋榎「…………」

漫  「…………」


絹恵(お姉ちゃん言葉きついで……)ハラハラ

恭子(なんや空気重いなぁ……)ヤレヤレ.....

由子「ドドスコ・ドドスコ……」ガンガンガン


絹恵「と、ところで恭子ちゃん、仮に勝負するとして面子はどないするの?」

恭子「ん? あぁ、そやね……。今ASIMOは3台ともバッテリー切れやったな」

恭子「磁場が乱れるゆうて、由子が校舎の電気全部止めてしもたからなぁ……」

恭子「うちは後ろから上重さんと洋榎の打ち筋をリアルタイムで観察したいし……」

恭子「むぅ……。なぁ由子、悪いんやけどうちの代わりに卓に入ってくれへん?」


由子「(゚Д゚)ハァ? 冗談は止めてちょうだい!」ブットバスワヨ?

由子「何で私がそんな下らない戯れ事に付き合わなきゃいけないのよ」

由子「それに私が麻雀嫌いな事、恭子も知っているでしょう?」


恭子「う〜ん、やっぱりうちがやるしかないか……」

洋榎「悩む必要は無いで恭子。どうせそこの腰抜けはこの勝負を受けんやろ」

洋榎「まぁ結果は最初から分かっとるし、無駄な時間を過ごさずに済んだわ」

漫  「…………」イラッ


漫  「……随分と自信があるようですけど、うちの事少し舐めてませんか……?」

漫  「こう見えてもうち、そこそこ名のある高校でレギュラーやったんですけど。」


洋榎「名のある高校、ねぇ……。あれか? 井の中の蛙なんとやら……」

洋榎「強者のオーラも見えんし、お前程度≠フ奴なら100%勝てるわ」

漫  「…………」ムカムカ プチンッ


漫  「……さいですか、よう分かりました。」

漫  「受けてやりますよ……この勝負……ッ!」

漫  「絹恵ちゃんのお姉ちゃんゆうから我慢してましたけど……」

漫  「本気で貴女を……麻雀で叩き潰したくなりました……!」ゴッ


洋榎「っ!!」ゾクッ

由子「っ!?」ゾワッ


絹恵「?」

恭子「……?」
337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/01(日) 17:46:10.11 ID:0YmICLMC0
これは凡人末原ですわ
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/01(日) 17:54:40.68 ID:PVrVST/Io
のよーさんが反応してる?
339 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/06/02(月) 02:04:15.64 ID:Ax1UTkwQo
恭子(室内の緊迫感が異常に高まって洋榎の表情から余裕が消えた……)

恭子(洋榎の奴……上重さんから警戒すべき何か≠感じ取ったな……)


洋榎「漸くやる気になったか三下……」

漫  「ええ……。久々にキレてしまいましたわ……」コキッコキッ

漫  「そこまで言われて引き下がれる程、うちは人間出来てませんので。」

洋榎「……ふっ、上等ッ!」ニヤッ


恭子(怒りの感情が上重さんの緊張を緩和させた……。洋榎の狙いはコレか?)

恭子「意気込むんはええけど、頭に血ぃ上らせたらあかんよ? 冷静にな……」


漫  「ご心配は無用ですよ、末原先輩。卓に座れば落ち着きますから。」


恭子「そか……。ならええねん……」


恭子(卓に着けば雑念を払拭し、いつも通りに打てるゆう事か……)

恭子(精神コントロールは心理的駆け引きの多い麻雀で勝つ為の基本……)

恭子(口でゆうんは簡単やけど、実際それを身に付けるんは相当難しい……)

恭子(だからこそ分かる。この子が今までどれだけ練習を積んで来たかが……)

恭子(決してハッタリなんかやない。その言葉は経験に裏打ちされたモノや!)


洋榎「さぁ、早速始めよか。お前はうちの対面に座れ」チョイチョイッ

漫  「……では、失礼します。」スッ......


席に着くなり、漫は胸を前に突き出し、深呼吸しながら両手を組んで背伸びをした。
洋榎は額に指を当て、瞬きをする事も無く鋭い眼光で漫の動きをじっと見詰めている。


漫  「んんんっ……! ふぅ〜〜〜〜っ、よしっ!」グッ


恭子(プロは如何なる場所でもいつも通りの実力を発揮する為……)

恭子(対局前にルーチン化した動作をこなし、精神を鎮めると言う……)

恭子(着席から極自然な流れやったな……。あれが上重さん流のやり方か……)

恭子(見た感じ筋肉から余計な力が抜けとる……。理想のリラックス状態……)

恭子(短時間でここまで完璧に頭を切り替えられるとは、恐るべき集中力……!)


洋榎「今から行われる勝負、それをインターハイの決勝と思え……」

洋榎「うちは麻雀を打つ時、常にそのつもりで対局に臨んどる……」

洋榎「絶対にここで負ける事は許されんと、心に刻み込んでな……」

洋榎「お前もそのつもりで掛かって来い、上重漫……ッ!」


漫  (言われずとも、これは互いのプライドを賭けた負けられん闘い……!)

漫  (うちはこれまで真摯な態度で練習に取り組み、誰より努力してきた……)

漫  (その積み重ねがあるからこそ、自分の強さ≠信じる事が出来るんや)

漫  (己の可能性を自ら否定し、途中で部を逃げ出した貴女とは違う……!)

漫  (そんな根性の無い人間に……うちが負ける訳無い……絶対に……っ!)


漫  「望む所ですよ……先輩……ッ!」ゴゴゴゴゴッ
340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/02(月) 08:49:33.89 ID:9G7A2kyUo
乙ー
341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/19(木) 04:45:07.30 ID:RiSR6hm5O
そろそろ来んやろか
342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/06/21(土) 00:42:57.03 ID:gWIJzXzto
恭子「それじゃあ、残りの空いてる2席はうちと絹恵ちゃんで……」

由子「 ち ょ っ と 待 ち な さ い よ 」


絹恵が席に着き恭子も卓に座ろうとしたその時、
突然由子が立ち上がって振り向き様に言った。


由子「私もその卓に入らせて貰うわ」シャフ度

恭子「えっ……? なんやいきなり……」

由子「気が変わったのよ。なぁに? 文句あるの?」オッ?オッ?

恭子「い、いや、そんなんちゃうけど……。ホンマにええんか……?」


恭子の質問に答える前に由子は空いている最後の席に座ってしまった。


恭子「そんじゃ面子は洋榎、由子、絹恵ちゃん、上重さんちゅう事で……」

漫  「…………」

漫  「失礼ですけど、始める前に1つ質問して良いですか? 真瀬先輩……」

由子「ええ、構わなくてよ。何かしら?」ファサッ

漫  「先輩さっき麻雀嫌いゆうてましたけど……打てるんですか?」

由子「打てるかですって? ホンマに失礼な子ね。私やてルール位は知ってるわよ」

漫  「そうですか……。ならええです、失礼しました」ペッコリン


由子「そんな事より、上重さんは恭子に手牌を見せてしまって良いのかしら?」

恭子「んんっ? なんや問題でもあるんか?」

由子「恭子と洋榎は仲間やし、手牌をバラされる可能性やて考えられるじゃない?」

恭子「あぁ、せやな……。うちと上重さんは立場的に今は敵同士やからねぇ……」

恭子「となれば上重さんの手牌覗くんはフェアやないし、止めといた方がええな」

漫  「うちは別に見られても気にしませんよ?」

漫  「正直みなさんの事を少し変わった人達や思っとりますけど……」

漫  「真剣勝負でズルする様な汚い卑怯者やとは思っていませんので」

由子「……そう。まぁ本人がそれで良いのなら、私もこれ以上口を挟まないわ」


洋榎「ふっ……。その剛勇さ、素直に褒めてやろう上重漫……」

洋榎「勿論うちらかてそないな小細工するつもりは毛頭無いから安心せぇや」

洋榎「勝負っちゅうんは、己の魂≠懸けた神聖なるモノやからな……」

洋榎「それを穢す様な真似する奴は、誰であろうと絶対に許さへん……ッ!」


漫  (揺るがぬ信念を持った真っ直ぐな瞳……)

漫  (この人の勝負に懸ける情熱は本物や……)

漫  (それだけ強い想いを持ちながら、なぜ貴女はこないな所で燻って……!)


漫  「もしうちが勝ったら、愛宕先輩も姫松高校麻雀部に戻ってきてください」

恭子「漫ちゃん、流石にそれはちょっと……」

洋榎「……ええやろ。敗者は勝者に潔く従うのみ。全てお前のゆう通りにしたるわ」

恭子「正気か洋榎っ!? お前は……っ!」

洋榎「端から負けるつもりは無い。故に負けられぬ理由が増えようと関係無いッ!」
343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/21(土) 11:08:05.89 ID:BcMc0b3Ro
乙ー
344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage ]:2014/06/21(土) 14:11:18.13 ID:hAADlGNho
のよーの雀力はいかに
345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/06/21(土) 16:44:38.11 ID:gWIJzXzto
蝋燭の赤い光に照らされながら卓を囲む4人。


洋榎「詳しいルール説明を始めるで……」

洋榎「基本的には、全国高校生麻雀大会女子の団体戦公式ルールに準拠する」

漫  (団体戦……?)

恭子「要するに持ち点10万の半荘2回っちゅう事やね」

漫  「……持ち点10万にした理由はなんです?」

洋榎「2万5千程度やと、ラッキーパンチ1発で箱になるやもしれんしな」

漫  (自分さっき『勝負は運やない』みたいな事ゆうてましたやん……)

洋榎「例えばうちが人和で終わらせてもうたら、お前やて納得できんやろ?」

漫  「それはまぁ……そうですね……。確率的にまず有り得ないでしょうけど。」


由子「確率的には有り得ない≠ナすって……? 随分と楽観的なのね……」

由子「知ってる? 全国には確率をも凌駕する恐るべき打ち手達がいるそうよ?」

由子「全国大会で見られる神懸かり的闘牌、数学的には有り得ない奇跡の連続……」

由子「彼女達は魔物∞牌に愛された子≠ネんて呼ばれているらしいけれど……」

由子「その豪運の正体≠ヘ一体何なのかしらねぇ……? うふふふふっ……」


漫  「確かにそうゆう話はうちも聞いた事ありますけど……」

漫  「愛宕先輩がその牌に愛された人間≠ニでも言いはるつもりですか?」


由子「さぁね、それはどうかしら? ただ……」

由子「洋榎もある意味 神 に 魅 入 ら れ た 人 間 なのよ……?」

漫  (この人が……神に……?)

洋榎「…………」ゴゴゴゴゴッ......


漫  「とりあえず持ち点10万の件は了解しました。特に問題は無いです」

漫  「それにしても神に魅入られている≠ナすか。これまた大きく出ましたね」

漫  「もし仮にそれがハッタリ≠ナなく、本気でゆうてるんでしたら……」

漫  「うちにも見せてくださいよ……。奇跡を呼ぶ神の闘牌とやらを……!」


恭子「……洋榎、ルール説明の続きを……」

洋榎「上重漫、お前に1つ有利な条件をくれてやる……」

漫  「……?」

洋榎「うちがどんな和了りをしても絹と由子はうちに点棒を支払わなくて良い=v

漫  「……はっ!?」

洋榎「これはあくまでうち≠ニお前≠フタイマン勝負やからな……」

洋榎「お前以外の奴から点棒を掠め取って勝つ様なセコイ真似はせぇへん」

洋榎「逆に絹と由子が和了る場合は、通常通りうちは2人に点棒を支払う」

洋榎「ここはうちのホームやし、絹も由子もこちら側≠フ人間やからな」

洋榎「イカサマせんとはいえ、これ位のハンデ持たせるんは至極当然やろ」


漫  「ハンデなんて不要ですよ。うちも同じ条件で構いません」

漫  「それとも負けた時の言い訳が必要ですか? 先輩……」
346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/06/21(土) 18:47:50.75 ID:gWIJzXzto
洋榎「ゆうやないか……。その言葉、後悔すんなや?」

漫  「ええ……。それでも勝つんはうちですから……ッ!」


洋榎「最終確認するで。うちもお前も、絹と由子から点棒を取る事は一切できへん」

洋榎「ツモ和了りしたとしても、点数移動が行われるんはうちとお前の間だけや」

洋榎「リーチ棒も同様、2人の点棒をうちらが得る事は如何なる場合も不可能とする」


洋榎「ただし、ここで1つ注意点がある」

洋榎「うちらが絹や由子からロン和了りする事℃ゥ体が禁止されとる訳やない」

漫  「んっ? 2人から点棒は取れませんよね? それで和了る事に何の意味が?」


洋榎「……分からんか?」

洋榎「絹と由子から点棒を奪う事はできん……」

洋榎「けど利用≠キるんは可能っちゅう事や」


絹恵「っ!」

由子「……」


漫  (なるほど、親流し≠ヘ出来るんやな……)

漫  「そうゆう事ですか……分かりました……」


恭子「せやったら、絹恵ちゃんと由子の点数はいらんのとちゃう?」

洋榎「リーチ棒使わずにリーチ出来る事にすれば、それでもええな」

漫  「うちは何でも構いませんよ」

恭子「ほな、絹恵ちゃんと由子をミソっかす$ン定にするわ」ピッ


洋榎「最後に、絹や由子が和了った場合、うちらは普通に点棒を失う」

洋榎「これでルール説明は終わりや。何か質問はあるか?」

漫  「いえ、特に……」

洋榎「なら始めよか。賽を振れ、上重漫……ッ!」


東 漫   100000 親
南 絹恵   ∞
西 洋榎 100000
北 由子   ∞


漫  (うちが親か……)


顔を少し上に向け、目を瞑り大きくゆっくりと息を吸い込む漫。


漫  (肌に触れる空気の感触と室内の匂い……感覚が研ぎ澄まされて……)スゥーッ......

漫  (うん、この感じ……今日は絶好調≠竅B最初から飛ばして行くでッ!)ゴッ


カシャッ……


雀卓の上に綺麗な牌の山がセットされた。
蝋燭の炎で牌は仄かに赤く染まっている。
異様な雰囲気の中、漫が再び賽を振り、4人がそれぞれ手牌を増やしてゆく。


洋榎「準備は全て整った……。ゲームスタートや……!」
347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/22(日) 10:15:08.50 ID:uxKki1GRO
漫ちゃんが修羅場を超えてイケメンになってるな
348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage ]:2014/06/22(日) 11:28:02.01 ID:4+kYGsh1o
漫ちゃん主人公してるな
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/06/23(月) 00:25:19.54 ID:kLfZDZaRo
漫  (見せて貰います……貴女の実力を……ッ!)


意気込み漫が目の前にある牌を立てようとした次の瞬間……。


パラパラパラパラパラ……


漫  「っ!?」

漫  (絹恵ちゃんと真瀬先輩が……自らの手牌をオープンに……!?)


絹恵「……」

由子「〜♪」


漫  「真瀬先輩……これは一体、何のつもりです……?」

由子「あら? 私は当然の事をしたつもりだけど?」シレッ

漫  (当然の事……?)

漫  「絹恵ちゃん、どうゆう事か説明してーな!」


絹恵「………」

絹恵「漫ちゃんと違って、お姉ちゃんは私達の打ち筋や癖をよう知っとる」

絹恵「お姉ちゃんはさっき、私達を利用する事が出来る≠艪、たやろ?」

絹恵「だとすれば、私達と打った経験の無い漫ちゃんが不利になるんは必然……!」

絹恵「こうして私達の手牌を包み隠さず公開する事で……」

絹恵「漫ちゃんも私や由子先輩の思考を読み取り易くなるし……」

絹恵「お姉ちゃんが得た不当なアドバンテージ≠ヘ失われる筈や……!」


漫  「それで自分の手牌を……」


由子「不本意ながら、私も過去に洋榎と卓を共にした事があるのよ。それに……」

由子「これで私達は洋榎が有利になる様な不自然な打ち筋≠ェ出来なくなるわ」


漫  (そうか! 手牌の公開には不正防止の効果もあるんや……!)

漫  (もしや……愛宕先輩はこうなる事を最初から計算して……?)


洋榎「……」ニヤッ


由子「全く……。洋榎のやり方は一々回りくどくてイライラするのよ」

由子「私も絹恵ちゃんも、あんたに手を貸すつもりなんて無いんだからね!」


絹恵「……本音を言えば、私はこの勝負お姉ちゃんに勝って欲しい……」

絹恵「私はこの場所で、このメンバーで、漫ちゃんと一緒に麻雀したいんや……」

絹恵「せやけど、それを理由にお姉ちゃんに肩入れする様な真似せぇへんから……!」


漫  「うん、分かってる……」


恭子「どちらが勝っても、恨みっこ無しやで?」

漫  「はいっ!」カッ


漫は何かを決心した様な顔付きで、手元にある14の牌を立てた。
350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/23(月) 01:19:24.04 ID:yVDm6B1Lo
頑張れ…
351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/24(火) 14:53:39.77 ID:HETrciLsO
そして…天和!
352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/06/25(水) 18:47:43.55 ID:s7SVTqMko
>>1は麻雀できません。点数計算もできません。


漫  「…………」カチャカチャカチャッ

洋榎「…………」カチャカチャカチャッ

絹恵「…………」カチャカチャカチャッ

由子「ふ〜んふ〜んふふふ〜ん♪」カチャカチャカチャッ


漫  (よし、出だしからええ感じや。これはイケるでッ!)パチッ

恭子(ふむ……。上重さんは高めが狙える好配牌やな……)


絹恵「…………」パチッ

洋榎「…………」パチッ

由子「ん〜……これかしら……?」パチッ

 ・
 ・
 ・

漫  (来た……!)

漫  「リーチ!」パチッ


恭子(無駄ヅモ無しの5順目で倍満をテンパイ……)

恭子(これは和了り牌をも引き込む勢いか……?)


漫  「ツモ! 12000オール……やなくて12000です!」パタパタパタッ......


恭子(なんちゅう爆ヅキ……! 一発と裏ドラ乗せて三倍満にしよった……!)


漫  (よっしゃ、理想の形で先制できた! ここから一気に突き放したる!)

漫  「まだまだおかわり≠ウせて頂きます! 1本場やッ!」


東1局 1本場 親 漫

漫   112000
洋榎  .88000


カシャッ……


漫  (けど思った以上に打点低いな。直撃狙いの方がええんやろか……?)

漫  (いや、初見の相手に自分の得意なスタイル変えて打つんは逆に危険や……)

漫  (火力は大分落ちてまうけど、ここはツモ和了り重ねて押し切る……!)パチッ


恭子(またしても……上重さん、メッチャ良さ気な手牌やな……)

恭子(むっ……? 良形待ちの早和了り崩して高めを狙いに行ったか……)

恭子(キー牌は必ず引けると言わんばかりの、自信に満ちた強気の打牌……)

恭子(洋榎への直撃を捨て、ツモ和了りでゴリ押しするつもりやね……)

恭子(今の様子やと、洋榎相手でもそれを実現させてまうかもしれん……)

恭子(これは調子に乗らせたら大変な事になりそうやで、洋榎……ッ!)

恭子(上重さんを包む強大な運気の流れを断ち切る事が出来るか……!?)


洋榎「…………」
353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/06/26(木) 22:42:28.30 ID:k18w7Um/o
恭子(その後、上重さんが倍満をツモ和了りし、東1局は2本場へ……)

恭子(放銃を回避したとは言え、満貫直撃相当のダメージはキツイな……)

恭子(まさか2回のツモ和了りで20000の点棒を失う事になろうとは……!)


絹恵(こうもあっさりお姉ちゃんが漫ちゃんの連続高打点和了を許すやなんて……)

由子(クククッ……。洋榎からイニシアチブを奪うなんて中々やるじゃない……!)


東1局 2本場 親 漫

漫   120100
洋榎  .79900


漫  (これで場の流れは完全にうちのモノやな……)タンッ

漫  (あと5000点削れば、愛宕先輩は2万5千点以上を失った事になる)

漫  (これが個人戦やったら、箱割れ寸前の状況……破滅の一歩手前……!)

漫  (あれだけ偉そうに豪語しておきながら、この体たらく……)

漫  (今この人に伸し掛かっとる精神的プレッシャーは尋常や無いはず……)チラッ


洋榎「…………」 <●> <●> ジーッ


漫  (ふぁっ!?)ビクッ

漫  (なんやこの人……気味悪い位うちの事を凝視しとる……!)

漫  (今度は不気味な視線で威圧してうちの動揺を誘う魂胆か……!?)

漫  (くっ……落ち着け……愛宕先輩のペースに振り回されるな……!)スゥーッ...ハァァァー...

漫  (相手が何しようと関係無い。うちは信念に従って己の麻雀を貫くのみ!)パチッ


恭子(何もしなければ、この局も上重さんが和了りそうやけど……)

恭子(洋榎がこのまま彼女を自由にさせとく筈が無い……! せやろ……!?)


絹恵(お姉ちゃんは……ってあかんあかん、自分の麻雀に集中せんと……!)パチッ

洋榎「…………」パチッ

由子「それポンなのよー!」

恭子(動いた……!)


漫  (真瀬先輩が鳴いた……? 余り良手とは思えへんけど……)パチッ

恭子(鳴きでずらしても有効牌を引くか……)

絹恵「…………」パチッ

洋榎「…………」パチッ

由子「その中<|ン!」


漫  (また鳴いた……。いや、これは愛宕先輩がわざと鳴かせた!?)

漫  (飜牌のみやけどテンパイ……真瀬先輩使ってうちを止める気か……?)

漫  (せやけどな……うちだってこれでテンパイや……!)カチャッ

漫  「リーチ!」タンッ


恭子(ずらされながらも、テンパイまではすんなりと辿り着いたな……)

恭子(その類い稀なる幸運で3度目の奇跡を起こすか……? 上重漫……!)
354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/26(木) 23:01:12.66 ID:Q1CvvgKMo
乙ー
355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage ]:2014/06/26(木) 23:07:15.49 ID:kXUHmmz+o
のよーさんが動いた
356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/27(金) 05:10:31.41 ID:qoLjeBx3O
麻雀できない(できないとは言っていない)
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/06/30(月) 04:21:59.02 ID:qI+q4ZaOo
漫  (これやない……。一発ならずか……)パチッ

絹恵「…………」パチッ

洋榎「…………」パチッ

由子「あら、あらあら? 来ちゃったかしら〜? ツモなのよー♪」パタパタパタッ......

漫  (ちぃっ……! 飜牌のみの安手に、うちの跳確が流されてしもた……!)


恭子(流石に3連続は無いか………………んっ? ちょっと待て……これ……)

恭子(由子の鳴きが無かったら、上重さん普通に和了っとったんちゃうか……!?)

恭子(彼女は由子の鳴きの有無に拘らず、聴牌までは有効牌を引き続けられた……)

恭子(けど来る牌が変わった事で待ちが変化し、それが最終的に足枷となって……!)


東2局 親 絹恵

漫   118400
洋榎  .79400


漫  (親は流されてもうたけど、うちが圧倒的に有利な状況は変わらない……)

漫  (余計な事は考えるな。和了りのイメージを想像する事だけに集中しろ!)ゴッ


恭子(その後、上重さんと絹恵ちゃんが1回ずつツモ和了りして東場は終わった)

恭子(意外やったのは、洋榎の親がノーテンであっさりと流れてしもた事……)

恭子(貴重な親番を無駄にして……。洋榎……お前は今、何を考えておる……?)


洋榎は卓に肘を突き、額に指を当てて漫の事をただじっと眺めていた。


南1局 親 漫

漫   121900
洋榎  .71900


漫  (東場を終えて、うちにも絹恵ちゃんや真瀬先輩の打ち筋が見えてきた……)

漫  (まず絹恵ちゃん……)パチッ


絹恵「んー……」パチッ


漫  (また綺麗に手ぇ作っとる。牌効率を重視したセオリー通りの打ち方や……)

漫  「リーチ!」タンッ


絹恵「…………」パチッ


漫  (そんでうちが先制リーチを掛けると、今度は律義に守りに入る……)

漫  (絹恵ちゃんから和了るメリットなんて、うちには全く無いんやけど……)

漫  (今回の特殊ルールに関係無く、自分は普段通りに打つって事やろな……)


洋榎「ノーテン」

絹恵「テンパイ」

由子「ノーテン」

漫  「テンパイ」


漫  (逃げつつもキッチリと仕上げてくる辺りは流石やね……絹恵ちゃん……!)
358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/07/02(水) 22:10:33.87 ID:djFQ0i5Ko
南1局 1本場 親 漫 リーチ棒×1

漫   122400
洋榎  .70400


漫  (次に真瀬先輩……)


由子「んー……これ!」パチッ


漫  (この人は……残念やけど正真正銘のド素人≠竄ネ……)パチッ

漫  (手の殆んどが断ヤオか混一狙い。初心者によくあるパターン……)

漫  (そんでもって……)


洋榎「…………」パチッ

由子「チー!」


漫  (鳴ける牌はとにかく鳴く。これも初心者に見られる典型的な特徴や……)

漫  (牌効率も打点も一切考慮しとらん。さっきは役無しで鳴いとったし……)


漫  (そして何故か愛宕先輩は真瀬先輩が鳴ける牌を捨てる事が多い……)

漫  (うちの順番を飛ばせる訳やなし、手がはよならんもんまで鳴かせとる……)

漫  (ただ単に自分の不要牌がたまたま真瀬先輩の鳴き牌やっただけなんか……?)

 ・
 ・
 ・

由子「やったわ〜♪ またまたツモなのよー!」キャッキャッ

漫  (この人ホンマに麻雀嫌いなんかなぁ……)


恭子(また由子が上重さんの親を流した……。これは洋榎が仕組んだ事か……?)

恭子(けど洋榎が由子の早和了りをアシストしたゆうには不可解な点がある……)

恭子(先程のチー……待ちの選択肢を狭める明らかな悪手やろ……)

恭子(由子は役なんぞ気にする事無く、鳴ける牌が出れば必ず鳴く……)

恭子(それは洋榎も分かっとる筈やのに……何故それを鳴かせた……?)

恭子(上重さんの手が途中でもたついたから、結果的には凌げたが……)


南2局 親 絹恵

漫   121300
洋榎  .69800


漫  (そういえば、まだ1度も愛宕先輩の手牌を見とらんな……)

漫  (これまで和了り無し、ノーテン2回の完全な焼き鳥状態……)

漫  (真瀬先輩利用してうちの親を流したとしても、それってどうなんや?)

漫  (麻雀特待生≠チちゅう言葉の響きから実力を過大評価し過すぎた?)

漫  (あるいは、敢えてノーテンを装い、己の手の内を隠しとるんやろか……)

漫  (いずれにせよ、うちにそないな姑息な手段は通用せぇへんで……ッ!)


漫  (どないな策を弄しようとも、うちの爆発力≠ナ全てを吹き飛ばす!)カッ!


洋榎「…………」ゴゴゴゴゴッ......
359 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/02(水) 22:31:46.46 ID:IHEamaVZo
乙ー
360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/04(金) 00:50:45.80 ID:iGwCIVgfO
絶対>>1麻雀しってるわ
361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage ]:2014/07/04(金) 19:17:49.50 ID:J8zn2ejBo
このスレでまともな麻雀描写が見れるとは思わなかった
362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/07/06(日) 03:31:14.79 ID:ZZaZ2PNco
しかし、漫は高めの手を聴牌するものの、和了る事は出来ず。
3回連続で流局し、南場の和了りは由子の1度のみとなった。


前半戦終了

漫   124800
洋榎  .66300


漫  (勝利へ導く風は、確実にうちの背中を後押ししとる……)

漫  (配牌からツモに至るまで……全然悪なかったのに……)

漫  (南場の3局……なんで和了る事が出来なかった……?)


微かな違和感が不安≠ニなって漫の心に暗い影を作り出す。


漫  (って、ここで弱気になったらあかん。迷いや不安は幸運を遠ざける……)

漫  (まだ勢いを失った訳やなし、次の局で和了ればええだけやないか……!)


恭子「これで前半戦終了やけど、上重さん疲れたかな……? 少し休憩する?」

漫  「いえ、大丈夫ですよ。寧ろツキが落ちん内に後半戦はよやりたいですね」

恭子「そか。それじゃ皆も休憩は無しっちゅう事でええな?」


洋榎、絹恵、由子の3人は何も言わず、ただ恭子の言葉にコクリと頷いた。


恭子「後半戦……始めるで……!」


東1局 親 漫

漫   124800
洋榎  .66300


カシャッ……


漫  (前半戦に引き続き、後半戦も配牌は概ね良好……)カシャッ

漫  (ツモ運も陰り無し……。そう、ここまでは今までと同じ……)パチッ


洋榎「……」パチッ

由子「チーよ!」パチッ


漫  (ツモ順ずらされようとも、今のうちは高確率で有効牌を引ける……)パチッ

漫  (淀み無くこの手は順調に進んどる筈なんや……。それやのに……)パチッ

 ・
 ・
 ・

由子「やったわ〜! 聴牌なのよ〜♪」

漫  (くっ……またか……!)

漫  (今度こそ先に聴牌できる思ったんやけど……)スッ......

漫  (あと1歩の所で間に合わんかったか……)カチャッ


ドラ:7萬  ※漫の5筒は2枚とも赤 現在ドラ5

┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
│一│一│二│三│六│七│七│七│四│五│五│六│六│ │四│
│萬│萬│萬│萬│萬│萬│萬│萬│筒│筒│筒│筒│筒│ │筒│
└─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘
363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/07/07(月) 02:06:37.28 ID:OElYBwSKo
漫  (1萬か6萬捨てればリーチ……。せやけど……)チラッ 


由子の手牌

┌─┬─┬─┬─┐┌─┬─┬─┐┌─┬─┬─┐┌─┬─┬─┐
│一│一│六│六││三│四│五││中│中│中││二│二│二│
│萬│萬│萬│萬││索│索│索││牌│牌│牌││筒│筒│筒│
└─┴─┴─┴─┘└─┴─┴─┘└─┴─┴─┘└─┴─┴─┘


漫  (よりにもよって、萬子の16シャボ待ち……。この偶然、なんやねんもう……)

漫  (さっきから真瀬先輩の所為で不要牌が切れへん気がする……最悪や……)

漫  (まぁでも、手牌が見えとるお蔭で振り込まずに済んだと感謝すべきか……)オヤヤシナ


由子「うふふふふっ、次でツモっちゃうかしら〜? 来るわよ〜来るわよ〜」ギギギギギッ


漫  (そないに力んでも、もう山ん中に先輩の和了り牌はありませんて……)

漫  (ふぅ……。うちも今更後戻り出来んし、ここは覚悟決めて行くか……)パチッ

漫  (その待ちを変えん限り、真瀬先輩かて絶対に和了れへんのや……)

漫  (絹恵ちゃんも引き悪いみたいやし、これは逆にチャンスかもしれへん!)

 ・
 ・
 ・

恭子(間違い無い……。由子の鳴きが上重さんの手作りを遅らせとる……!)

恭子(ツモ順が狂っても彼女は有効牌を引くが、手の完成までに遅延が生じ……)

恭子(その結果、由子に聴牌速度で敗北した。今回も、前回も、前々回も……!)

恭子(その上、由子の待ちは毎回嫌らしい程に上重さんの急所に刺さって……)

恭子(たった1順差の聴牌遅れが、彼女にとっては致命傷となっている……!)


絹恵「…………」パチッ


漫  (あれ……? 絹恵ちゃん、そっち捨てるんか……?)

漫  (難しい所やけど、そこは3萬切りの方がええんちゃうかなぁ……)

 ・
 ・
 ・

┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐  ┌─┐
│一│一│三│六│七│七│七│四│四│五│五│六│六│  │七│
│萬│萬│萬│萬│萬│萬│萬│筒│筒│筒│筒│筒│筒│  │萬│
└─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘  └─┘


漫  (うしっ、やっぱりお前はうちの元に来たか。待ってた甲斐があったわ!)

漫  (5萬は愛宕先輩の河に2枚、8萬は絹恵ちゃんの手牌ん中に1枚……)

漫  (和了り牌が1枚でも山にあれば、残り4順で必ずうちはそれをツモる!)

漫  (ここで和了らずして、お前はいつ和了るんや? なぁ、上重漫……ッ!)


漫  「 リ ー チ ! 」 ⊃ 3萬 パチンッ 


「  ロ  ン  」 パタパタパタッ......


漫  「っ!?」


洋榎「平和ドラ1。2000です……」ゴゴゴゴゴッ......
364 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/07(月) 08:45:24.36 ID:JF9wpdhVo
乙です
365 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/07/07(月) 17:05:52.22 ID:+QpspaxE0
殺伐としたSSがどうしてこうなったwwwwww
366 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/07/09(水) 02:36:57.36 ID:pd8CfysBo
┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
│四│五│一│二│三│四│四│六│七│七│八│八│九│ │三│
│萬│萬│索│索│索│索│索│索│索│索│索│索│索│ │萬│
└─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘


漫  (……はっ? なんやそれ……)

漫  (清一色かて狙えたやろうに、何故こないなゴミ手を……!?)

漫  (それに萬子絡めるなら、4萬も5萬も切る必要無かったやろ……!)

漫  (不自然過ぎる捨て牌とこの待ち……。なんや嫌な予感がする……)ゾワッ......


恭子(上重さんに染めとると勘違いさせた上で萬子を吐き出させたんか……)

恭子(そないな事せずとも、彼女は危険牌かて構わず切ってきそうやけど……)

恭子(あれだけ思い通りにツモれるなら、うちかて防御捨てて突き進むわ……)


絹恵「…………」


恭子(絹恵ちゃんは洋榎の仕掛けた罠に気付いとった様やね……)

恭子(洋榎に対してもお前の和了り牌は切らん≠ニ宣言した形やな)

恭子(絹恵ちゃんの防御センスは全国上位クラスにも引けを取らん……)

恭子(2人とも、この子から出和了りして場を流すんは難しいやろな……)


恭子(それにしても洋榎の奴、相変わらず不可解な打ち方をしよる……)

恭子(あの2度のポン……一見して浮き牌を捨てただけに見えるが……)

恭子(初期手牌から、洋榎は1枚、由子は2枚の2筒を持っとった……)

恭子(ただ鳴かせるだけなら、洋榎は初順から2筒を捨てればええ……)

恭子(ところが洋榎は何故か順搭子を崩してまで2筒を抱え続けた……)

恭子(まるで鳴かせるタイミングを慎重に推し測っているかの様に……)

恭子(中≠烽サうや……。由子はいつでも鳴ける状態にあったが……)

恭子(洋榎はそれをツモ切りせず、暫くの間手牌にキープしとった……)


恭子(うちは敢えて言おう……。これは偶然≠竄ネく必然≠ナあったと……)

恭子(洋榎はツモ配牌を自分に都合の良い様に調整≠オているのだと……!)

恭子(それは人智を超えた、うちの様な凡人には到底理解の及ばぬ神の領域……)

恭子(長年洋榎の闘牌を間近で見続けてきたからこそ、そうであると断言できる!)


恭子(たかだが2千程度の屑手……。せやけど直撃ならば満貫ツモ並の威力……)

恭子(点数で見れば小さなこの一撃、強固な城壁を崩す突破口と為り得るや!?)


洋榎は何事も無かったかの様に、涼しい顔をして牌を雀卓の中に落としている。
それとは対照的に、漫は張り詰めた表情をし、額からは一筋の汗が流れていた。


恭子(恐らく彼女は初めて相対したのだ。己の和了りを妨げる未知の脅威に……)

恭子(その強運は牌に愛された者の証≠ゥ、あるいは偶発的確率の偏りか……)

恭子(ここからやで上重さん……。あんたの真価≠ェ問われるんはな……!)


東2局 親 絹恵

漫   121800
洋榎  .69300
367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/09(水) 05:04:53.06 ID:yzTuTMkUO
麻雀描写がガチなんですがそれは
368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/09(水) 17:15:40.07 ID:2OdfYexsO
前スレから読んできた
これは良いSS
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/10(木) 04:16:34.41 ID:2QQA8Z0eo
麻雀知らないとかないでしょ

打てないだけとかじゃないのか…?
370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/30(水) 21:01:20.23 ID:PbuezS8OO
そろそろ来ないかな
371 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/31(木) 02:01:25.14 ID:LBGELSTlo
忘れかけてた
はよ
372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/08/08(金) 23:51:24.21 ID:Zb0drT7ro
だがこの後も漫は和了る事が出来ず、逆に洋榎は2回も漫から直撃を取った。

それらはいずれも1飜のごみ手≠ナあったのだが、
3連続和了という事実は漫に点数以上の衝撃を与えた。


東3局 1本場 親 洋榎

漫   118000
洋榎  .73100


絹恵「…………」

絹恵(お姉ちゃんは鳴き利用して由子先輩の手を誘導しとる……)

絹恵(それは由子先輩自身を和了らせるんが目的やなくて……)

絹恵(漫ちゃんの足止め……時間稼ぎする事が狙いやったんや……!)

絹恵(それと同時に、水面下で漫ちゃんから直撃取る準備をして……)

絹恵(捨て牌に縛りを掛けさせる事で、狙い撃ちもしやすくなると……)


絹恵(私達の手牌をオープンにした方が漫ちゃんの為になる思ったんやけど……)

絹恵(もしかしたら、余計お姉ちゃん有利にさせてもうたのかもしれへん……!)


漫  (くっ……! 安手とはいえ、3回も連続で振り込んでまうやなんて……)

漫  (まるでうちの手牌を全て見透かしとるかの様な厭らしいこの待ち……)

漫  (なんでここまで正確にうちの和了りを妨害する事ができるんや……?)


絹恵「…………」

由子「…………」


横目でチラッと左右に座っている絹恵と由子に視線を向ける漫。


漫  (絹恵ちゃんと真瀬先輩の手牌は全員に公開されとる……)

漫  (見える牌≠ェ通常よりも26枚ほど多くなる計算や……)

漫  (その分だけ、うちの手牌も読み易くなるゆう事なんか……?)


漫  (いや、それだけちゃうな……。きっと他にも何かある筈や……)

漫  (自身の読み≠フ確実性を高める為の、決定的な何か≠ェ……)


洋榎「…………」チラッ


漫  (んっ? 今、一瞬この人の視線が絹恵ちゃんの手牌に…………ハッ!)

漫  (そうか、そうゆう事やったんか……。なるほど、謎は全て解けた……!)


絹恵「…………」ゴゴゴゴゴッ......


漫  (失点のリスクが無いにも拘らず、防御重視の麻雀を打つ絹恵ちゃん……)

漫  (愛宕先輩はそんな絹恵ちゃんを利用して答え合わせ≠オとったんや!)

漫  (彼女の手牌と照らし合わせる事で読み≠フ確実性は間違い無く高まる!)


漫  (そういえば絹恵ちゃん、愛宕先輩からも毎回上手く逃げ切っとるな……)

漫  (っちゅう事はや……。絹恵ちゃんの打ち筋を注意深く見ていれば……)

漫  (うちも愛宕先輩からのウザったい黙聴直撃を回避できるんちゃうか……?)
373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/08/09(土) 00:25:16.04 ID:XEx3e2wFo
きてた
374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/08/09(土) 03:16:48.37 ID:U37MwJIso
おお
375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/08/09(土) 15:07:38.67 ID:Eg2x+/QWo
乙ー
376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2014/08/13(水) 02:16:54.35 ID:mZItcx5Uo
漫  「……」パチッ ジーッ

絹恵「……」パチッ

洋榎「……」チラッ パチッ

由子「……」パチッ


漫  (今まで気付かんかったけど、注意して見てみるとやっぱりそうや……) 

漫  (視線の先……愛宕先輩は絹恵ちゃんの河だけ異常に気にしとる……)

漫  (今局も絹恵ちゃんはうちの待ち……危険牌を察知しとる様やけど……)

漫  (効率的やないこの微妙な打ち回しは……愛宕先輩を考慮して……?)

漫  (捨て牌見る限り、愛宕先輩はまだ張っとらん気がするんやけどな……)

漫  (せやけど……絹恵ちゃんかて先輩の打ち筋は熟知しとる筈やし……)

漫  (ここは慎重を期して、絹恵ちゃんに合わせて様子見してみよか……)タンッ


洋榎(…………)


漫  「ノーテン」

絹恵「ノーテン」

由子「ノーテン」

洋榎「……テンパイ」


漫  (そんな……! 愛宕先輩、あの段階で既に満貫をテンパってたやと……?)

漫  (うちの手から溢れそうな所の牌をピンポイントに狙い撃ちした形で……!)

漫  (この打牌もうちから和了り牌吐き出させんと計算された罠やったんや……)

漫  (絹恵ちゃんからヒント貰わんかったら、うちは確実に振り込んどった……)


恭子(ほぅ……。ここに来て上重さんに手の内バラすか……)

恭子(それは親に居据わり続ける為の窮策か、あるいは……)


漫  (愛宕先輩、自分の手牌オープンする瞬間、少し躊躇った様に見えたな……)

漫  (勝負は後半戦東3局、手の内晒しても親は逃したくないっちゅう事か……?)

漫  (けど……それは失敗やったな……。今のでうちはハッキリと確信したわ……)

漫  (もうあんたはうちから直撃を取る事は出来へん……。絶対にな……ッ!)ニヤリ


東3局 2本場 親 洋榎

漫   117000
洋榎  .74100


漫  (これまでの打ち筋を見る限り、先輩の狙いはうちからの出和了りのみ……)

漫  (しかも牌効率さえ無視する程の執着っ振り……。そこが先輩の弱点や……)

漫  (うちが愛宕先輩に放銃しなければ……この勝負に最早負けは無い……ッ!)


絹恵「……」パチッ

洋榎「……」パチッ

由子「……」パチッ


漫  (愛宕先輩からの直撃を躱しつつ、隙あらば今度はうちが和了る……!)タンッ
377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/08/13(水) 10:31:47.89 ID:XsEkT3hNO
このスレ開いた時の感想→うわスレタイに騙された!でも折角だからちょっと読もう
読んでる時→なんやこれ面白いな!
今の感想→どうしてこうなった
378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/08/13(水) 12:28:10.18 ID:2gboucvcO
怪しげな部室で賭け麻雀やってるのが平和に見えるという
379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/08/13(水) 12:47:44.39 ID:27VynkSnO
てか、このスレの初期を忘れかけてた
380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/08/31(日) 20:13:12.60 ID:1JnQYyf4O
チラッチラッ
381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/05(金) 00:37:33.02 ID:cl6Faf5Wo
まだかぁ!
382 :>>1 [sage]:2014/09/13(土) 17:10:15.22 ID:Ux6iVI1Zo
ちょいタンマ・・・
すまぬ・・・すまぬ・・・
383 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/09/13(土) 18:42:22.49 ID:p8cBX6dBo
生存報告乙
384 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/15(月) 01:04:57.69 ID:TBeRbS/vo
待ってる
385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/15(月) 01:14:14.16 ID:rt3ZoXwnO
ずっとまってる
386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/26(金) 00:23:07.96 ID:0VOIzlo50
待ち続ける
387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/26(金) 02:02:08.48 ID:1y4YvOWSo
だって待つのは得意だから…
388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/26(金) 17:43:20.60 ID:Yhg+7V7FO
2レスもついてたからきたと思ったじゃない
トキメキを返して!
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/10/01(水) 15:21:24.93 ID:7Ldqd94jO
そろそろ…ちら
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [age]:2014/10/02(木) 11:19:44.13 ID:/7kpgWs70
まだ?
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/10/04(土) 01:31:08.31 ID:WzHI+FC9O
お待ちしております。
392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/10/13(月) 00:44:49.99 ID:w/ZgHLYvo
393 :>>1 [sage]:2014/10/13(月) 22:17:41.91 ID:Jq+88JzNo
すみません、更新できないままかなりの時間が経ってしまいました。

物語は前スレの時点で既に脳内では完成しています。
なので早く書き終えたいという気持ちはあるのですが、
文章を作成しようとして頭を動かすと、
気分が悪くなってしまい、手付かずの状態です。
なので、現在完結が難しい状況になっております。

最悪スレを落とす可能性もありますので、
申し訳ありませんがご了承の程よろしくお願いします。
更新を待って頂いてる方には本当に申し訳ないです。
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/10/13(月) 22:31:16.44 ID:EFcQY67yo
了解
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/10/13(月) 22:36:43.78 ID:zYJFH92oO
ふぇぇ…
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/10/14(火) 00:22:18.25 ID:MOLcEo2ao
なんかお大事に
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/11/14(金) 02:32:50.38 ID:XZB6Us5ho
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/11/15(土) 19:10:47.31 ID:cJc4bxLoO
それでも待ってます
399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/11/23(日) 18:54:12.42 ID:6X2EjVdM0
わいもや
400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/03(水) 20:44:27.17 ID:XcinYb5TO
ちらちら
401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/12(金) 21:28:29.88 ID:bMZ4UdmSo
明日まで、か
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/12/13(土) 23:54:47.50 ID:irtBCtIGo
洋榎「……」パチッ

由子「……」パチッ

漫  「……」スッ......


漫  (張ったで……! 倍満確定の良手を……!)チラッ

漫  (絹恵ちゃんの捨て牌は安牌……。故にこれは……通る……ッ!)カチャッ

漫  「リーチ!」タンッ


洋榎「ふふっ……。出してまうんかぁ……その牌を……」ニタァ......

漫  「っ!?」


洋榎「……それ、ロンやわ」パラパラパラッ......

漫  (なっ……山越し……っ!?)

絹恵「ッ!!」

由子(あらら……)

恭子「…………」


洋榎「混老、対々、三暗刻、飜牌……」ゴゴゴゴゴッ......


漫  (ぐっ……!)

恭子(親の跳満直撃……18600……ッ!)

漫  (2度目のリーチ潰し……。しかも絹恵ちゃんの捨て牌で……やと……!?)

洋榎「何をそないに驚いてるんや? うちの危険牌切ったんはお前やろ……」

漫  (確かに……洋榎先輩の河から見れば、この牌が安全とは言い難い……)

漫  (せやけど、これはちゃう……これは安牌……安牌の筈なんや……ッ!)ギリッ


由子「あ〜ぁ、まんまと洋榎の策謀≠ノ嵌まっちゃったわねぇ……」ヤレヤレナノヨー

漫  「策……謀……?」

由子「……貴女、絹恵ちゃんが捨てた牌は安牌やと勝手に思い込んでたでしょう?」

漫  「っ!!」

由子「けどそれは絹恵ちゃんが洋榎の和了り牌、罠を確実に看破出来る事が大前提……」

由子「でもねぇ、絹恵ちゃんの裏をかいて直撃を獲る事なんて洋榎なら朝飯前なのよ?」


漫  (仮に洋榎先輩が絹恵ちゃんから容易に出和了り出来るんやとしたら……)

漫  (絹恵ちゃんの捨て牌が安全っちゅうんは、ただの幻想……まやかし……)

漫  (まさか……それすらも利用して、うちの手牌から当たり牌を……!?)

漫  (…………ハッ!)


由子「漸く気が付いたようねぇ……。洋榎の狡猾な心理誘導≠ノ……」クスッ

由子「あからさまな視線移動……その先にあるんは絹恵ちゃんの手牌……」

由子「それは自身と絹恵ちゃんの打ち筋の相関性≠印象付ける為の罠……」

由子「洋榎が注視してたんは絹恵ちゃんの場やない……。真の狙いは別にある……」

由子「洋榎が見てたんはねぇ……上重さんの視線≠フ方なのよ……?」ゴゴゴゴゴッ......


漫  「うちの……視線……!?」ザワッ......
403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/14(日) 00:57:31.58 ID:Uhs3ISHoo
乙ー
404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/14(日) 02:46:49.11 ID:wrnB4W/0o
おー
405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/14(日) 22:10:42.18 ID:JpO7rZFgo
乙ー、頑張れ
406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/12/16(火) 02:14:11.22 ID:PGkRHVZ3o
由子「勝負前半で私達の雀力と打ち筋を大まかに把握した貴女は……」

由子「実力が高く防御センスのある絹恵ちゃんの場をより重要視していた」

由子「故に貴女は他家の内、南場の方を見る回数と時間が一番多かったわ」


漫  (うちも無意識の内に絹恵ちゃんの場ばかりに注意を向けてたんか……!?)


由子「それに気付いた洋榎は、絹恵ちゃんを利用して貴女を嵌めようと画策した」

由子「偽りの安牌を仕立て、自身の和了り牌を貴女から吐き出させようとね……」

由子「その為に洋榎は絹恵ちゃんの読み≠フ正確性を演出する必要があったのよ」


漫  (実際、うちの手牌に対する絹恵ちゃんの読みはかなり正確やった……)

漫  (洋榎先輩は彼女の場を頻繁に見る事で、間接的にそれを強調したんや……)

漫  (わざと自分の仕草を、視線の動きを、うちに気付かせる様にして……!)

漫  (あのテンパイ……思わせ振りな態度で手牌を公開した時もそう……)

漫  (洋榎先輩は自身の手を晒す最も効果的な瞬間を狙っとったんや……!)


絹恵(フェイクを頻繁に織り交ぜてくるお姉ちゃんと駆け引き勝負するんは無謀……)

絹恵(思考に僅かでも迷いが生じたら最後、その後はお姉ちゃんの独壇場となる……)

絹恵(余りに深読みし過ぎるんは禁物……。まぁ、その匙加減が難しいんやけど……)

絹恵(河を意識しつつも深入りはせず、自分の意思の元で打っていた筈やのに……)

絹恵(それすらも計算内、お姉ちゃんの手の平の上で踊らされてただけなんか……?)


絹恵(……あかん、答えの無い思考の迷宮に意識を囚われる……ッ!)

絹恵(あの人の考えはあの人にしか分からへん。考えても無駄な事は考えるな!)スゥーッ


恭子(絹恵ちゃんは慣れとるしな、既の所で冷静さを取り戻し踏み止まれたか……)

恭子(洋榎と同じ土俵には決して上がらん事、それが敗北を防ぐ何よりの鉄則……)


洋榎「由子お前……、勝負の最中に人の手の内ぃ勝手にバラすなや……」

由子「ふんっ! 私はねぇ、アンタのそういうセコイ麻雀が気に食わないのよ!」

洋榎「セコイやて……? なに寝言抜かしてるんや……。アホも休み休み言え!」


洋榎「……由子、そして上重漫……。お前らに麻雀とは何か≠教えたる……」

洋榎「例えば視線、口調、語気、発汗、眉の動き、細かい癖や立ち振る舞い……」

洋榎「それら一つ一つに、その人間の性格≠竍性質≠ェ如実に表れとるんやで」

洋榎「麻雀は心理戦……。要するに、相手の本質≠見抜くゲームなんや……!」


漫  (本質を……見抜く……ゲーム……!?)


洋榎「相手を深く理解する事で初めてその思考、原則≠読み解く事が出来る……」

洋榎「牌効率や自摸運だけで麻雀を語る輩なんぞ二流以下……所詮は凡夫や……」

洋榎「敵は牌を持つ人間……。なら注視せなあかんのは卓上やなく人間の方……ッ!」


洋榎「麻雀という競技の戦場がこのちっぽけな卓の上だけやと勘違いすんな……」

洋榎「対戦相手が視界に入る距離にあるなら、卓外であれそこは既に戦場……!」

洋榎「互いの姿を視認したその瞬間から、うちらの闘いは始まっとるんやで、漫ッ!」
407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/16(火) 04:08:18.46 ID:8o1MDJtWO
この主将は死線を越えてますわ…(確信)
408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/16(火) 09:32:55.24 ID:XZDn6F6No
確かに…
409 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/16(火) 12:38:05.35 ID:DT5Z1oLwo
確実に殺しにきてんな…
410 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/12/17(水) 01:32:17.80 ID:hqlZCYqDo
漫  (洋榎先輩がゆうてる事も……分からん訳やない……)

漫  (せやけど……それが盤面より重要やなんて、少し盛り過ぎちゃうんか……?)

漫  (経験と知識、そこから導かれる感、そして運。これこそが麻雀の基本、原点!)

漫  (まして面識の無い初対局の相手となれば尚更の事……)

漫  (最後に頼れるんは己の総合力≠ナあって、他人は関係無い……!)


洋榎「うちの言葉が信じられん様やなぁ……」

漫  「…………」

洋榎「なら証明したるわ……。今……この場でな……」

洋榎「うちは……既にお前の全てを見切っとる……!」

漫  「っ!?」


漫  (そんなんハッタリや……。たかが数局でそこまで分かる筈無い……!)ギリッ

洋榎「うちの台詞が出任せかどうか……それはすぐに分かる事や……」

洋榎「……せやろ?」

漫  「…………っ」キッ


洋榎「残りの局……お前は一度も和了る事が出来ずに……」

洋榎「うちの当たり牌をひたすら吐き出し続けるんや……」

洋榎「いや、今のは語弊があるな……。言い直すわ……」

洋榎「お前はこの局で……今持っとる全ての点棒を失う……!」


洋榎 「この勝負に 東 4 局 は 来 な い …… ッ!」ゴッ


漫  (んぐっ……!!)ビリビリビリビリッ


洋榎「さて……続きを始めよか……。東3局……3本場……ッ!」バンッ


東3局 3本場 親 洋榎

漫   98400
洋榎  92700


由子(東4局は来ない、か……。大きく出たわねぇ……洋榎……!)

絹恵(残りはほぼ10万点……。それをこの局のみで削り切るゆうんか……!?)

恭子(あの目は完全に本気や……。洋榎はここで勝負を終わらせる気なんや……ッ!)


漫  (気圧されるな……。動揺は思考を鈍らせこの人に付け入る隙を与えるだけ!)

漫  (立ち止まりはしない……。うちはうちが信ずる道を突き進む……ッ!)タンッ


洋榎「ロン! 10500!」

漫  「そ……そんな……っ!」


恭子(由子と絹恵ちゃんが手牌を公開したんは逆効果やったな……)

恭子(洋榎には更なる情報分析の材料を与えるべきやなかった……)

恭子(2人の善意がここまで致命的な結果を招く事になるやなんて……!)


洋榎「ゆうたやろ……? お前の全て≠見切ったとな……」ゴゴゴゴゴッ......
411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/12/18(木) 02:58:39.91 ID:Hfg79J9Yo
東3局 4本場 親 洋榎

漫   ....87900
洋榎  103200


恭子(流局を除けば5連続放銃か……。その内後ろの2回は1万超えの大失点……)

恭子(挑発的な発言も相俟って上重さんが受けた精神的ダメージは計り知れん……)


漫  (大量リードからの連続失点……。逆転すらも、あっさり許してもうた……!)スッ......

洋榎「……どないしたんや? 牌をツモる動作に覇気があらへんやないか……」

洋榎「トップ奪われて戦意喪失か? なんならここで負けを認めてもええんやで?」

漫  (また人を煽って心を揺さ振る作戦か……。とにかく無視や無視……!)スチャッ

洋榎「それ……ハズレか。有効牌は引けんかった様やなぁ……? 残、念、さん!」

漫  「…………っ」イラッ


漫  「あの、そうやって人のツモに探り入れるの止めて貰えません?」

洋榎「探りも何も、うちは確信≠持って無駄ヅモやゆうとるだけやし」

漫  「…………確信?」

洋榎「お前は有効牌を引くと僅かに目を細めてから荒々しくそれを手牌の上に重ねる」

漫  (………………はっ!?)

洋榎「が、逆に不要牌の場合は一瞥した後、表情を変えず静かに手牌の上に重ねとる」

洋榎「まぁその表情の変化の違いや牌を持ってくる勢いの差は微々たるもんやけどな」

洋榎「そんでもなぁ……うちには見えるんやで……? その差異がハッキリと……」


漫  「へ、へぇ……そですか……。そないな癖がね、ふぅん、ご指摘どうも。」アセッ

洋榎「自分の事は案外分からんもんやしな。他にも色々あるで……? 例えば……」

洋榎「長考する時は首をやや左に傾け、左人差し指で左眉毛の端を弄くる」

洋榎「リーチの直前に、和了り牌が何枚残っとるか他家の場を見て再度確認する」

洋榎「苛立ちや不安を感じた時、右瞼の上を右手の人差し指第2関節で軽く撫でる」

洋榎「捨て牌に未練がある時、打牌する前にその牌の頭を指で小刻みに数回擦る」

洋榎「中でも致命的なんが……いや、これは話したら長なるし今は止めとこか……」


漫  (言われて見ればそうかもしれへん……。てか致命的な癖ってなんや……!?)

漫  (くっそ……さっきの話の続きが気になって麻雀に集中出来へん……)サワッ

漫  (ハッ……! 今、うちは自分の瞼の上を指で触って……)

漫  (洋榎先輩は他に何てゆうてたっけ……? うちの癖……)ザワザワ......


恭子(余計な雑念が上重さんの麻雀に深刻な悪影響を及ぼし始めたな……)

恭子(洋榎に指摘された癖を気にする余り、己の打ち筋さえ見失っとる……!)


漫  (これまでの度重なる放銃……その原因がうちの癖にあるんやとしたら……)

漫  (何としてでも、この局内に特定し修正せなあかん……! でなければ……)トンッ


洋榎「粗雑で稚拙、注意力散漫な闘牌……。集中力が足らんなお前は……」

洋榎「ロン。11600の4本場は12800……!」ドンッ

漫  (しまった……!)
412 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/18(木) 11:55:59.37 ID:Ijev9Milo
乙ー
413 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/12/19(金) 23:16:34.39 ID:/Esmq5Sco
漫  (何でや……ッ! 何でここまで一方的にやられてまうんや……!?)ギリッ

漫  (この人の強さは認める……。うちが対局した相手の中で一番の強敵……)

漫  (けど絶好調のうちとそこまで差がある様には思えん……! それやのにっ!)


絹恵(漫ちゃんの味方するつもりは無いんやけど……でも……)

絹恵(私が和了る事でお姉ちゃんの親番を流してあげたいな……)

絹恵(そうすれば漫ちゃんもクールダウンして自分の麻雀が打てると思うし……)


絹恵(それにしても、さっきからテンパイまでは届くのに和了る事が出来へん……)

絹恵(待ちやて悪無いしおっかしいなぁ……。何でこないな時に運が悪いんや……)


由子「…………」

由子(ダメよ……まだダメ……。もっと……もっと限界まで追い詰めるのよ……)

由子(人は極限まで追い込まれる事によって、己の潜在的能力を開放させる……)

由子(上重漫に秘められたポテンシャルは、まだまだこんなモノでは無いはず……)

由子(絹恵ちゃん、可哀想やからって洋榎の邪魔をしてはダメよ……?)ズモモモモォッ......


絹恵「っ!?」ゾクッ......

絹恵(今一瞬、蝋燭の火に照らされた由子先輩の影に不気味な何かが映って……!)

絹恵(……気のせい? 緊張して揺らめいとる影を化け物と錯覚するやなんて……)


東3局 5本場 親 洋榎

漫   ....75100
洋榎  116000


洋榎「…………」ゴゴゴゴゴッ......

漫  (どないすれば……今のあの人を止める事が出来る……?)

漫  (考えろ……考えるんや……この窮地を脱する策を……!)

由子「チー!」

漫  (っ!? そうかっ!! これや……!)


漫  (真瀬先輩……貴女が欲しいんはこれ……! これやろ……!?)パチッ

由子「ポン!」

漫  (よしっ! 計画通りや!)

洋榎「…………」


漫  (鳴ける牌が出た時、必ず鳴く真瀬先輩……)

漫  (それを利用して、洋榎先輩のツモ番を飛ばす……!)

漫  (手牌が見えとるから牌を送るんも容易い……。これも追い風……!)

漫  (今まで散々鳴かせて来たんや。うちがしても文句あらへんやろ!?)パチッ

由子「ポォーン!」


漫(幸いツモ順もうちの味方や……。これなら行ける……行けるで……!)

漫(牌をツモれなければ如何し様も無い……。せやろ? 洋榎先輩……ッ!)


恭子「…………」
414 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2014/12/22(月) 08:19:09.02 ID:vJ+r7lAB0
この世界の全国のレベルめっちゃ高そう
原作の洋榎の読みもこれに近いくらいにすごいよね
415 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2014/12/22(月) 08:19:36.42 ID:vJ+r7lAB0
この世界の全国のレベルめっちゃ高そう
原作の洋榎の読みもこれに近いくらいにすごいよね
416 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2014/12/22(月) 18:47:24.71 ID:iQvTqz3qO
清澄とか阿知賀もとんでもないことになってたりしてな
417 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2014/12/24(水) 00:38:23.36 ID:Dk6irK9ho
恭子(ここまでか……)

恭子(築き上げた己のプレイスタイルまで捨て、洋榎のツモを妨害する苦肉の策……)

恭子(だが闇雲に有用牌まで切っとる。短絡的思考の浅知恵や。洋榎には通用せんな)


漫  (う゛っ……! さっき鳴かせる為に捨てた6索が裏目に……!)

漫  (この形やと和了りは相当厳しい……。手ぇ作り直さんと……!)


しかし手の立て直しは間に合わず、漫は洋榎に9200点分の点棒を奪われた。


恭子(あの6索を捨てさえしなければ、打点が低くとも和了る事は出来た……)

恭子(無茶な打牌が自滅を招き、流れを変える絶好の機会を逃してもうたんや)

恭子(うちにも上重さんの闘志、運気のオーラ≠ェ薄れてゆくんが分かる……)

恭子(これで僅かに残された逆転の芽も完全に潰えた……。勝負あったな……)


漫  (ダメや……。今のうちには……この人を止められん……)

洋榎「はぁ……。クッソ詰まらん麻雀やな……」

漫  「っ!?」

洋榎「己の打ち筋を封じ込められ、まさに万事休すの状態……」

洋榎「そこから抜け出さんと、必死に考えた策がそれか……?」

洋榎「うちを抑える為に由子を鳴かす……。それはそれで構わん……」

洋榎「 せ や け ど ! 」


洋榎は突然立ち上がり、漫の手牌を乱暴に倒した。


漫  「あっ……!」

洋榎「 な ん や ね ん ! こ の 糞 み た い な 闘 牌 は ! 」

洋榎「お前の手牌なんぞ、こないして見る前からおおよその見当は付いとった……」

洋榎「計画性の欠片も無い、その場凌ぎ、ただひたすら逃げ回るだけの打ち筋……」

洋榎「 麻 雀 ナ メ ん な や ! 」

漫  「っ!」ビクッ


洋榎「……けどまぁ、最初からお前の麻雀なんぞ、お粗末過ぎて退屈やったしな……」

漫  (うちの麻雀が……お粗末……?)

洋榎「豪運に任せ、熟考を重ねず、掴んだ牌を目の前に並べるだけの単調な作業……」

洋榎「お前がやっとるそれは麻雀≠ニは呼べん。ただの牌の絵柄合わせ≠竅c…」


漫  「……っ」


洋榎「これで御開きにしようや。もう勝敗とかどうでもええわ、お疲れさん」ガタッ

絹恵「ちょっ、ちょっと! 本気でゆうてるん!? 漫ちゃんの入部の件は……?」

洋榎「うちが欲しいんは麻雀部員≠ナあって、牌を並べるだけの様な奴はいらん」


洋榎「上重漫、お前はお前自身がゆうてた伝統ある麻雀部≠ニやらへ行け。」

洋榎「そこでお前がこれまでしてきた麻雀っぽい遊戯≠続ければええねん」


洋榎「それがお似合い、それで十分やろ……。お前にはな……」
418 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2014/12/24(水) 01:01:01.97 ID:eSNEvQdTo
乙ー
419 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2014/12/24(水) 04:03:10.37 ID:QRBlWTdcO
やだ、かっこいい…
420 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/13(火) 01:05:29.30 ID:pPCLuISOo
421 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/28(水) 19:49:37.69 ID:3ElfjrCxO
しゅ
422 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/08(日) 12:24:40.78 ID:QgjJv/k10
まだかなー頑張ってください
423 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/15(日) 22:52:47.48 ID:T+rhijsw0
頑張れ
424 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/21(土) 14:32:31.87 ID:vHtnVC/UO
がんばれ♡がんばれ♡
425 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/22(日) 18:59:33.45 ID:Zcj0JFQBo
一応24日まで
426 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/02/24(火) 00:15:05.54 ID:zDo1IRaBo
洋榎「ほな解散っちゅう事で……」

漫  「……待ってくださいよ」

洋榎「んっ?」

漫  「席に着いてください……。まだ勝負は……終わっとりません……!」

洋榎「……はぁ?」


漫  (うちの麻雀はまだまだ未熟……それはこの試合ん中で思い知らされた……)

漫  (せやけど……今まで麻雀に費やした時間や努力まで否定されたない……!)


洋榎「お前……その程度の技量でまだうちの事を倒せるとでも?」

漫  「…………」

洋榎「これ以上は時間の無駄や。それはお前自身が一番分かってるんちゃうか?」

漫  「…………」グッ......


漫  (正直今のうちにはここから逆転する方法なんて思い浮かばんけど……)

漫  (それでも……ッ! うちにだって絶対に譲れへんモンがあるんや……!)


漫  「 洋 榎 先 輩 ! 」カッ


絹恵(名前呼び……?)

洋榎「…………」


由子「うふふふふっ……。ええやないの……続けましょうよ……」

恭子(由子……?)


由子「そもそも、この勝負はお互いの同意の下で始まった筈よねぇ……」

由子「せやのに、洋榎の一方的な都合で反故にするなんて許されないんじゃない?」

由子「上重さんが勝負の継続を望む限り、洋榎はそれに応じる義務≠ェあるわ」

由子「……違うかしら? 洋榎……」


洋榎「…………」


東3局 6本場 親 洋榎

漫   ....65900
洋榎  125200


洋榎「……」パチッ

由子「……」パチッ

漫  「……」パチッ

絹恵「……」パチッ


恭子(由子の言葉で勝負は再開したが……)

恭子(特に変わった様子も無く、これまでと似通った盤面が広がるばかり……)

恭子(上重さんに至っては、配牌からして明らかに下がり調子やないか……)

恭子(これやと時間の無駄ゆう洋榎の予見は正しかったと言わざるをえんな……)


漫  「…………」
427 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/24(火) 01:32:08.54 ID:WmhO/nS2o
乙ー
428 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/24(火) 12:21:52.12 ID:CRHrpQu9O
おっつおっつ
のよーはなんか覚えてそう
429 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/02/25(水) 02:19:20.39 ID:XN3iPpqTo
漫  (配牌から悪いしツモ運にも見放されとる……)

漫  (こんなん麻雀では良くある事なんやけど……)

漫  (ツキが落ちた時……うちは今までどないしてたかな……)

漫  (しゃあないわって……早々に勝ちを諦めてた気がする……)


漫  (洋榎先輩に繰り返し放銃して……こないな連荘まで許してもうて……)

漫  (内心うちは絹恵ちゃんや真瀬先輩にこの流れを変えて欲しい思っとった)

漫  (これはうちと洋榎先輩の勝負やゆうのに……うちは甘えてたんや……!)


漫  (この人はうちが……他人の力なんぞ借りずに1人で止めなアカンのや……!)

漫  (倒す……! その為に……この局は必ずうちが自らの手で終わらせる……!)

漫  (自分だけを信じろ! ツモ和了りなら卓に誰が座っていようと同じ事……!)カッ


ゆらっ……


絹恵(あれ……? 今蝋燭の火が……少し揺らめいた……?)

恭子(上重さんの手牌が良い感じに……風向きが変わった?)


洋榎「…………」

洋榎(ここまで来ても、結局のところ最後にお前が頼るんは己の豪運か……)

洋榎(麻雀は1人でやるもんやない。言わば人と人との対話の様なモノ……)

洋榎(せやのにお前は目の前の相手を見ようともせず、独り善がりな麻雀を打つ)

洋榎(ならその身を以って教えたる……。お前の麻雀の限界≠……!)タンッ


恭子(2人の手が形になって来たが……洋榎の方が若干早い……!)

恭子(このままやと前局の二の舞やで……。どうする、上重漫……!?)


漫  (クソッ……この形やと間に合わへん……! もっと……もっと早く……!)タンッ


恭子(3面チャン狙える良形を崩してまで聴牌速度を強引に引き上げた!?)


漫  (誰よりも早く……踏み出せ……勝利へ繋がるその一歩を!)タンッ

漫  (全身全霊を懸けて……この一撃に全てを託す……ッ!)タンッ


漫  「 リ ー チ !! 」ゴゴゴゴゴッ......


その時、強風に煽られるが如く蝋燭の炎が激しく揺らいだ。


洋榎「っ!?」


恭子(洋榎のフェイクを無視しての強気な打牌……故に辿り着いたこの聴牌……!)

恭子(この勢いなら確実に裏も乗せて来る……! 三倍満もあるでこれは……!)

恭子(和了り牌は山に2枚……。上重さんが引くか、あるいは洋榎が凌ぐか!?)


絹恵「…………」スチャッ......

絹恵(あっ、私も聴牌……。リーチは……せんでもええか……)タンッ


恭子(さて、洋榎はどう出る……? ここで由子を鳴かすか否か……)
430 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/25(水) 10:13:29.65 ID:woTpL5ycO
これは復活か!盛り上がってくるなー
おつおつー
431 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/26(木) 20:18:27.66 ID:RbIwUqH/o
きてたか
432 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/02/27(金) 02:08:07.49 ID:Idt/oX4/o
洋榎「…………」スッ......

恭子(なっ!?)

絹恵(えっ!?)

由子「…………」

絹恵「ろ、ロン……。3100です……」


恭子(絹恵ちゃんのゴミ手に……わざと振り込むやなんて……っ!)

恭子(洋榎には上重さんがツモる牌を選べる権利があったんやぞ……?)

恭子(その選択肢を放棄し上重さんとの直接対決を避けるなんてありえへん!)


恭子「ちょっと失礼するで……」

恭子(まずはそこの裏ドラ……改めさせて貰う……!)スチャッ......

恭子「っ!?」


恭子(やはり乗っとったか……。裏ドラ3……恐ろしいな……)

恭子(せやけど重要なんは上重さんが和了れるかどうかや……)

恭子(彼女が和了らん事には、この牌やて何の意味も為さん……)

恭子(確かめたい……。改変される前のもう一つの未来を……!)スチャッ

      ┌─┐
      │一│
      │筒│
      └─┘

恭子(由子を鳴かせな三倍満ツモ和了りか……)


絹恵(恭子ちゃんの表情……恐らくあれは漫ちゃんの和了り牌……)

絹恵(私がお姉ちゃん止めようと安手の早和了りなんて狙わなければ……)

洋榎「…………」タラッ......

絹恵(ん……? お姉ちゃんの額から汗が……)


恭子(けど洋榎ならこの結末を別の方法で回避する事も可能やった……)

恭子(あの時……由子を利用してツモ順をずらす事やて出来たんや……)

恭子(そうすれば上重さんはこっちの牌を……)スチャッ

      ┌─┐
      │一│    ゴゴゴゴゴゴゴッ......
      │筒│
      └─┘

恭子(そんなアホな……!? 2枚しかない和了り牌が……こんな所に……!)

恭子(どちらを引かせたとしても結果は同じやったっちゅう事やないか……!)

恭子(なんちゅう豪運……! いや、これは運≠ニ呼べる範疇を逸脱しとる!)

恭子(洋榎はこれを察知して止む無くあんな行動を取ったんか……!?)

恭子(あいつの性格からして、あの振り込みはそうとしか考えられん……!)


恭子(これが牌に愛されし者%ッ士の闘い……!)

恭子(凡人には到底理解する事のできぬ異才の打ち筋……!)ゾクゾクッ......


恭子(とにもかくにも、これで洋榎の親は流れた……)

恭子(来る筈のない東4局……洋榎かて冷静で居られる訳が無い……!)
433 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/27(金) 11:06:44.14 ID:J2bWLolVo
乙ー
434 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/02(月) 02:34:42.13 ID:e2Sz6UNfo
おつ
435 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/02(月) 03:29:16.25 ID:+9yDL1MR0
よっしゃ、復活か
436 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/02(月) 14:09:12.83 ID:LYWFqX8So
川を
437 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/03/03(火) 02:04:12.14 ID:5IsMnfBho
東4局 親 由子

漫   ....65900
洋榎  122100


由子「…………」パチッ

漫  「…………」


漫  (全力を尽くしても和了れんかった……完敗やな……)

漫  (ううん、力量に明確な差がある事はとうに分かってたんや……)

漫  (ある意味運任せのツモ和了りで点棒を稼ぐうちに対して……)

漫  (この人は正確にうちの手牌を読み地力で直撃を奪った……)

漫  (ただ悔しくて……認めたくなかっただけなんや……)


漫  (これまでの流れも全ては計算の内……)

漫  (ゲームは完全に洋榎先輩のコントロール下にある……)

漫  (その支配が続く限り……何度挑戦しても結果は同じ……)

漫  (今のうちの実力では……運否天賦ではこの人に勝てん……)



漫  「…………」グググッ......

由子「?」

絹恵「漫ちゃん?」

恭子「どないしたん?」


漫は握り締めた拳を両膝に置き、瞳を閉じて俯いたまま動かない。


洋榎「何しとんねん。はよツモれや」


漫  「負けました……」


絹恵(漫ちゃん……)

由子(あらあら……)

洋榎「……なんやて?」


漫  「うちの負けです……」


恭子「ここで止めてもうて、ホンマにええんか?」

漫  「はい……」

恭子「……そうか、分かった。この勝負、勝者は洋榎や!」


恭子(胆力も尽き果て戦意喪失……。ここでの終局も止む無しか……)

恭子(上重さんの様なパッションタイプ≠フ打ち手は闘志≠アそが力の根源)

恭子(疲弊し切った今の精神状態では、洋榎を打ち負かす闘牌など出来まいよ)


恭子(だが彼女は確実に持っとる……。洋榎にも劣らぬ天賦の才を……!)


漫  「偉そうな事ゆうてすみませんでした……」

漫  「うちもう帰りますね……。お疲れ様でした、さようなら……」ガタッ
438 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/03(火) 02:36:30.10 ID:0L2KCJwRo
乙ー
439 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/03/13(金) 00:34:11.33 ID:z3ncoPKLo
絹恵「あっ……漫ちゃん待って……」

恭子「あぁ上重さん、帰るんならこれ持ってってや」ドサッ

漫  「なんですかこの袋……。中身は……USBメモリ? しかも大量に……」ジャラ

恭子「その中のデータ、夏の大会までに全部頭に叩き込んどいてな」ニコッ


漫  「……えっ?」

恭子「ん?」


漫  「だ、だって……ここは本物の麻雀部ちゃいますよね……?」

漫  「大会に出れるんは各高校から1つの部だけの筈ですし……」


恭子「大丈夫や、その点はもう向こうと話付けとるから問題あらへんよ」

恭子「今年の夏はうちらが姫松代表≠ニして大会に参加するってな……」

恭子「参加するからには当然その頂点を狙う。目指せ夏の全国大会優勝≠竄ナ!」


漫  (真顔で何とんでもない事ゆうてはるんやろこの人は……)

漫  (愛宕先輩なら全国へ行ってもそれなりに戦えるかもしれへん……)

漫  (それでも……いきなり全国大会優勝なんて無理やろそんなん……)

漫  (そもそも本気で全国優勝目指すなら正規の麻雀部に所属すべきなんや)

漫  (プロからの指導も受けられるし、練習の密度≠ェそれこそ全然ちゃう)

漫  (才能、努力、環境……その全てが揃って初めて全国への扉は開かれる)

漫  (ノリと勢いだけで勝ち上がれるんなら誰も苦労なんて……)


漫  「それに……うちなんかこの部にいらんて愛宕先輩が……」

恭子「あぁ、そんなん気にせんでええよ。洋榎が勝手にゆうてるだけやし」

由子「言っておくけれど、部長はこの私。全ての最終決定権は私にあるのよ?」

由子「そして光栄に思いなさい、上重さん……」

由子「貴女を麻雀魔術研究会≠フ新規メンバーとして受け入れてあげるわ」


漫  「せやけど……」チラッ

洋榎「…………」

恭子「洋榎の事は気にせんでええよ。とりあえず明日からよろしくな、漫ちゃん=vポンッ

漫  「はっ、はぁ……」


漫は少し具合の悪そうな顔をして俯き加減で絹恵と共に教室を出て行った。


由子「上重漫か……おもろそうな素材やねぇ……うふふふっ……」

恭子「せやな……」

由子「中々しぶとそうな子やし、あれならそう簡単に死なんとちゃう?」

洋榎「…………」


由子「これで駒は揃ったわ。後はひたすら前へと突き進むだけ……」

由子「あんたには色々と貸しがあった筈よね。ここで纏めて返して貰うわよ?」ギロッ

洋榎「……言われずとも借りは返す。お前は黙って後ろから見てるだけでええ……」

由子「そうさせて貰おうかしら。私の期待を裏切らない様に精々頑張りなさいよね」
440 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/13(金) 17:40:24.10 ID:aRi1TvSYo
乙ー
441 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/16(月) 17:11:02.26 ID:KyU/IZ8uO
あれ、この二人記憶あんじゃね
442 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2015/03/28(土) 07:49:05.73 ID:lRCLfXkY0
保守
443 :sage :2015/03/29(日) 22:33:49.32 ID:kypKPpwS0
清澄編からのファンです!期待してますので頑張ってください!
444 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/18(土) 11:08:49.69 ID:6dTUW8pdO
そろそろこないかなぁ
445 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2015/05/03(日) 11:34:39.23 ID:gohoQsD1o
5/13日まで
446 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/05/09(土) 12:49:18.99 ID:cBHXK6zA0
ギリギリまで待つ
447 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2015/05/12(火) 06:06:23.15 ID:6tfHrV62o
明日まで、か
448 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/05/13(水) 21:39:38.89 ID:HfuHxqSAo
漫  「はぁっ……」

絹恵「そないに落ち込まんでや漫ちゃん……。これから一緒に頑張ろ?」

漫  「うん……。けど……うち悔しい……」


絹恵「自分の麻雀を……否定されたから……?」

絹恵「お姉ちゃん、いつもあんなんで口悪いけど……」

絹恵「でも漫ちゃんの実力は認めてると思うよ……?」


漫  「……ちゃうねん。うちが悔しい思うてるんは……」

漫  「愛宕先輩に対して無力やった、不甲斐無い自分自身に対してや……」

漫  「未熟モンの癖に己の力を過信した挙句、対戦相手を心ん中で見下して……」

漫  「はははっ、最低やろ……? こんなうちに麻雀打つ資格あるんやろか……」

漫  「うち頭単純やし、もともと麻雀なんて向いてなかったんかもしれへんわ……」


漫  「あーっ、いっその事もう麻雀自体スパッとやめたろかなぁー!」


絹恵「……漫ちゃん、それ本気でゆうてん?」


漫  「…………」

漫  「せやかて……うち、なんとなく気付いてもうたんや……」

漫  「自分の器のちっちゃさ……。限界≠チちゅう奴に……」

漫  「もし……真瀬先輩のゆうてた通りやったとして……」

漫  「魔物と比喩される程の打ち手が全国に居るとしたら……」

漫  「例えいくら練習したとしても……うちなんかが勝てる筈無いって……」

漫  「そんなんやったら……これ以上……麻雀なんか続けたって……ッ!」


絹恵「……勝負に勝てんかったら麻雀やる意味は無いの?」

漫  「…………」

絹恵「ねぇ……漫ちゃん……」

絹恵「漫ちゃんは……麻雀好き?」

漫  「……っ!」


絹恵「私ね、最初はお姉ちゃんが麻雀打つとこ見るんが好きでな……」

絹恵「そのうち自分でもやりたなって、卓に混ざる様になったんや……」

絹恵「お姉ちゃんには今も全然勝てへんけど……それでも麻雀は楽しい」

絹恵「私は麻雀が大好きや。麻雀する資格なんて……それだけで十分やろ」ニコッ


絹恵「漫ちゃんはさ……」

絹恵「お姉ちゃんと打って……麻雀が嫌いになってもうたん?」


漫  「うちは……」

漫  「嫌いになんて……なれる訳無い……」グッ......

漫  「どんなに負けても……これ以上強くなれんでも……」

漫  「うちは……麻雀打つんが好きや……大好きや……っ!」

漫  「ふえっ……ふぇぇぇぇぇ〜〜〜〜〜〜ん」ポロポロヒックヒック......
449 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/05/13(水) 21:47:07.39 ID:RJdxAVj/o
待ってました
450 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/05/13(水) 23:14:38.23 ID:3e7hDRYNO
乙ー
451 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/10(水) 18:51:52.67 ID:veEXh+khO
1ヶ月レス無しで落ちるんだったっけ?
452 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/20(土) 18:48:44.46 ID:jI/C4M3TO
このスレに行くと楽しいよ
P『アイドルと入れ替わる人生』part11【安価】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1434553574/
453 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/05(日) 14:45:43.57 ID:pIi6dw6Xo
13日まで
454 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/07/13(月) 23:49:50.20 ID:7dyo07rio
夜 漫宅

\ カ ポ ー ン /

漫  「ふぅ……」チャポン

漫  (今日は絹恵ちゃんにみっともない姿見られてもうたな……)

漫  (うううっ……明日顔合わせるんも恥ずかしいわぁ……)


漫  「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ っ っ !!!!」バシャバシャバシャ


漫  「はぁ〜……」チャポーン

漫  (麻雀魔術研究会かぁ……。これからうちどうなってまうんやろ……)ザバッ


\オトーチャン オフロ デタデー/


自室

漫  「ええお湯でした……」カミフキフキ

漫  (そういえばあのUSB……何が入ってるんやろ……?)ガサゴソ


ノートPC「起動スルデー」ウィーン......ブオオォォォーン......ガリガリガリ......ガガガガガッ......


漫  「USBを……横穴に挿し込んでっと……」ズプリッ

ノートPC「んっ……///」ビビクン


漫  (都道府県別フォルダ……? とりあえず適当にクリック……)カチッカチッカチッ......

漫  (高校名がぎょーさん出てきよったけど……なんやこれ……?)ポチットナ

漫  (っ?! これは……各校麻雀部員の過去の大会の牌譜やないか……っ!)

漫  (しかも何やこの半端ない量は……! 傾向や対策の考察まで書かれて!)

漫  (全国の名門校から各県内下位校まで網羅しとる……信じられへん……!)


恭子『参加するからには当然その頂点を狙う。目指せ夏の全国大会優勝≠竄ナ!』


漫  (あれはハッタリなんかやない……! あの人達は……本気で全国を……)

漫  (……ハッ!)

漫  「…………」カチカチカチカチッ

漫  「……なるほどな。」

=====================
京都 伏見桃山高校
上重漫 1年
火力:★★★★★☆☆
防御:★★★☆☆☆☆
速度:★★★★☆☆☆
精神:★★★☆☆☆☆
能力:★★★★★★★
成長:★★★★★★★
備考:
3割弱の確率で超豪運を呼び寄せる
その場合全国トップクラスの火力を誇る
メンタル値は並以下で挑発にも乗り易い
逆に調子に乗らせると非常に危険である
成長性が高い。今後とも要警戒対象に指定

総合評価:A+
=====================


漫  (既にうちの事も調査済みやったって訳か……。フフフッ……)
455 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/14(火) 18:58:03.37 ID:cVhRMzcA0
おつー
気長に待ってます
456 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/14(火) 20:04:45.01 ID:9pRlwFW2O
乙ー
457 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/07/16(木) 01:53:14.95 ID:sscn2Jnno
恭子『麻雀魔術研究会≠ヨようこそ、上重漫さん……』


漫  (せやからあん時……末原先輩はうちの名前を……)カチッ

漫  (中1ん時の初の公式大会……。こんな昔の牌譜まであるやなんて……)カチッ

漫  (これは非公式対外試合のやな……。何処から拾って来たんやろ……?)カチッ


洋榎『麻雀という競技の戦場がこのちっぽけな卓の上だけやと勘違いすんな……』


漫  (愛宕先輩はうちと出会う以前から、うちの麻雀を研究しとった……)

漫  (直接会わずとも、牌譜から相手の姿、思考を読み取る事は可能……)

漫  (つまりその時点で、もうあの人とうちの勝負は始まってたんや……)

漫  (試合前の情報戦から……一方的に愛宕先輩にやられてたんやな……)


漫  「 あ は は は は はは は は っ !」


漫  「おもろいやんけ……。久々に鳥肌立ってきたわ……ッ!」ザワザワッ...

漫  「こないな巡り合わせをくれた麻雀の神様に感謝やね……」ザワザワザワ......


漫  「うちは自分の持てる力の全てを以って……」

漫  「この人達の期待に応えたい……!」

漫  「そんで一緒に……」


漫  「高校麻雀の頂点を目指す……っ!」ゴゴゴゴゴゴゴッ......



\コラァ スズゥ シズカニ セ-ヤ/



21世紀、世界の麻雀競技人口は1億人の大台を突破。
日本でも大規模な全国大会が毎年開催され、
プロに直結する成績を残すべく高校麻雀部員達が覇を競っていた。

これはその頂点を目指す少女達の軌跡……。
458 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/16(木) 20:55:43.70 ID:aadRsqt70
これで終わりですか?
459 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/07/16(木) 21:54:11.70 ID:sscn2Jnno
>>458
あとチョイです
460 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/17(金) 09:24:22.62 ID:QQxHmmHE0
>>459
期待して待ってます
461 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/07(金) 06:09:54.42 ID:IjlDh/Yao
保守
462 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/09/04(金) 23:43:49.20 ID:AQ/dTi+V0
待ってます
463 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/05(土) 09:35:48.12 ID:x19o7+FI0
保守
464 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/12(土) 23:52:43.75 ID:72Fth9oko
16日まで
465 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/09/16(水) 23:38:33.61 ID:r/ImQcP0o
PLLLL……・・・


恭子「……もしもし」ピッ

??「もしもし恭子ちゃん? うちやけど……」

恭子「何ですか? こんな夜中に……」

??「さっき新しい情報入ったんで一番に知らせよ思って……」

恭子「そうですか……。ありがとうございます」


恭子「……それで、どんな情報です?」

??「原村和……」

恭子「あぁ、全中チャンプですね。彼女が何か?」

??「あの子、東京から長野に移ったそうでぇ……」

恭子「……長野ですか。っちゅう事は風越に?」

??「チッチッチッ、それがちゃうねん。彼女の進学先は清澄高校やで〜」

恭子「清澄……清澄……? 聞いた事無いですね……」

??「それも当然やな。清澄に麻雀部は無かったからなぁ」

??「今年までは……」

??「噂によると、原村和が仲間集めて新たに立ち上げたとかなんとか……」

恭子「ふぅん……」


恭子(高校でも麻雀を続けるなら名門風越で良かったはず……)

恭子(ミドルチャンプなら麻雀推薦の話もあったろうに、なぜ清澄に……?)


恭子「それで残りのメンバーはどうなんです?」

??「それが他の2人も原村和と同じ1年生らしいで」

恭子(3人とも……1年……?)

??「長野で麻雀喫茶やっとる知り合いからの情報なんやけど……」

??「その子達な、2人ともええもん℃揩チとるらしいで……?」

恭子「っ!!」


恭子(牌に愛されし者か……。類が友を呼んだか……?)

恭子「で、その2人は何者なんです?」

??「そこまでは確認取れてないねん。もうちょい待っててや〜」

恭子「……はい」


??「ところで……」

??「上重漫ちゃん、あの子どやった?」

恭子「お蔭様で。それと……彼女もホンモノ≠ナすよ」

??「おぉ〜! ホンマかいな!?」

恭子「ええ、その件はお世話になりました」

恭子「彼女が絹恵ちゃんの隣に来るよう計らって頂いて」
466 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/17(木) 21:30:52.35 ID:5NeJ1u3YO
乙ー
467 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/24(木) 19:26:40.43 ID:qo10BsSWo
次はいつくるのかな
468 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/09/25(金) 00:39:41.29 ID:ZbK1V+t+o
??「あぁ〜、あれ結構大変やったんやで〜」

恭子「それはどうもすいませんでした」

??「まぁしゃあないわ。賭け≠ノ負けたんはうちやしな〜」

恭子「全国の打ち手達の情報収集もお疲れさまです」

??「それも約束≠竄ゥらねぇ……」

恭子「貴女の顔の広さには毎回驚かされますよ」

??「せやろ〜? 流石やろ〜^^」


??「けどこっちも恭子ちゃんの分析のお蔭でここまで来れたしなぁ〜」

恭子「いえいえ、そんな……」

??「いやいや、姫松の快進撃はあのデータファイルあってこそやって」

恭子「……そう思って頂けるなら、お役に立てて何よりですわ」


??「なぁ恭子ちゃん……」

??「私達……また一緒に麻雀できへんの……?」

恭子「…………」

??「もし私に悪い所があるんやったら全部直すから……」

??「洋榎ちゃんにも嫌われんよう努力するから……」


恭子「……これはうちらの問題なんです。貴女の所為では無く」

??「なら……っ!」

恭子「前にゆうた筈です。こういう話はもうしないと……」

??「せっ、せやけど……」

恭子「それとも……また洋榎と互いの要求を賭けて勝負しますか?」

??「うぅ……洋榎ちゃんには下手なプロやと勝てへんもん……」

恭子「貴女ならトッププロの知り合いかて居るんとちゃいます?」

??「居るけど……いくら私でもそんなん無理やて……」

恭子(……でしょうね)


恭子(インハイチャンプっちゅう肩書きでもあるんならともかく……)

恭子(トッププロが名も無き女子高生と本気の賭け勝負やなんて……)

恭子(面子も立たんし、本人のプライドが許さんやろうからな……)


恭子「けどまぁ建前上、貴女はうちらの監督ですから……」

恭子「うちらが試合に出る事で貴女の名声は更に高まる事でしょう」

??「名声なんて私は……」

恭子「存じ上げてますよ。貴女が心から欲しているモノ……」

恭子「それは……」

恭子「 至 高 の エ ン タ ー テ イ ン メ ン ト 」

恭子「ファンタジスタ達が繰り広げるドラマチックな展開……」

恭子「日常生活では決して得られへん感動と興奮の嵐……」

恭子「近々お見せ出来ると思いますんで、楽しみにしててください」

恭子「赤阪監督……」
469 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/25(金) 21:27:27.82 ID:Pb8ECU270
記憶あるのか...
次回も早くて来るといいなー
470 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/10/08(木) 00:13:39.93 ID:0Z/0opU0o
今月の木曜は5週連続でお昼の1時30分くらいから
テレビ東京でファイナルディスティネーションシリーズをやるらしいですね
先週スレを更新する時に宣伝しようと思っていたのですが間に合わなく・・・

明日(というか今日)は2が放映予定ですが
よくよく考えると関東圏の人しか見れないという事にさっき気づきました(汗
471 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/10/14(水) 19:35:39.82 ID:NOtISsfro
‐1ヶ月後‐


漫  「ツモ! 24000! よっしゃ、これで洋榎先輩捲くったで!」

洋榎「あぁ? うちから一度も直撃取れてへん奴が調子に乗んなや!」

漫  「ふふん、それでも勝ちは勝ちやないですか。カンドラ様様ですわ^^」

洋榎「くっ、アホAIが無意味にカンなんぞしよってからに……。次いくで次っ!」

漫  「えぇ〜? その前にちょっと休憩しましょうよ〜」ノビー

洋榎「んなもん後や! はよせい漫っ!」

漫  「ったく、しゃ〜ないですねぇ……」ポチッ ウィーン......


絹恵「お姉ちゃんと漫ちゃん、すっかり仲良うなりましたね」

恭子「せやね。なんだかんだゆうても気が合うみたいやしな」


洋榎「ってお前、なに対局中にたこ焼き食ってんねん!」

漫  「そんな事ゆうても、洋榎先輩が休憩させてくれへんから……」モキュモキュ

洋榎「…………」グゥゥゥゥゥ〜

洋榎「……おい漫、うちにもそれ1つ寄越しーや」

漫  「はぁ?! 嫌ですよ! 自分で購買から買うてくればええやないですか」

洋榎「ガタガタうっさいわボケぇ! これは先輩命令やで!」ガシッ

漫  「ちょっ! こうゆう時だけ先輩風吹かさんでくださいよ!」グググッ


洋榎「ガルルルルッ……」

漫  「グギギギギッ……」


\ギャーギャー/


由子(糞やかましいのよー……)イライラ


恭子「…………」ガラッ

絹恵「あれ、恭子ちゃん何処行くん?」

恭子「ちょっと風に当たってくるわ」



‐旧校舎 屋上‐


恭子「ふぅ〜……もうこんな時間か……」


肩でフェンスに寄り掛かり夕日を眺める恭子。


恭子(夕日……綺麗やなぁ……)


ガチャッ


洋榎「こんなとこに居ったんか」

恭子「洋榎……」

洋榎「……隣、邪魔するで」

恭子「ええよ」
472 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/10/16(金) 03:03:55.12 ID:H8/x0nJmo
恭子「……漫ちゃんとの勝負はもうええんか?」

洋榎「あぁ、3回連続で飛ばしてやった」

恭子「あらら……。ちょっとイジメ過ぎなんちゃう?」

洋榎「アイツはその程度でメゲたりする玉ちゃうて」

恭子「せやな……あの子は色んな意味で強い子やしね……」


恭子「うちなんかとはモノが違うわ……」


洋榎「……恭子」

洋榎「お前は自分の事弱い℃vっとるんかもしれへんけど……」

洋榎「そないな事あらへん。うちがここまで強くなれたんもお前のお蔭や」

恭子「それは洋榎自身に元々才能があったからやろ?」

洋榎「…………」


洋榎「天賦の才を持つ者やて、必ずしもその能力を開花させるとは限らん」

洋榎「環境、努力、機会……。それらが上手く噛み合わんかったなら……」

洋榎「結果を出せんまま、溢るる才能を持て余す事にもなったりする……」


フェンスに背中を預けながら、赤く染まった空を見上げて洋榎が呟く。


洋榎「うちはお前に出会って見える世界が変わった……」

洋榎「それまで全てやと信じとったモンがちっぽけに思えた……」

洋榎「うちの麻雀を進化≠ウせたんは間違い無くお前なんや……!」

洋榎「……せやからな、うちはこんな風に思っとる……」

洋榎「自分自身ではなく、他の誰かを支え導く力……」

洋榎「人を高みへと導く力=v

洋榎「それがお前の持っとる才能なんちゃうかってな……」


恭子「買い被り過ぎやろ……。うちは凡人やで?」

洋榎「うちがおべっか使う様な輩に見えるか……?」


洋榎「それでもお前が己の才能を否定するんなら……」

洋榎「うちが……その存在を証明してみせる……っ!」


高く腕を上げながら顔を宙に向け、人差し指で空を指し示す洋榎。
真っ直ぐ見据える瞳の先には、輝かしい栄光の未来が映っている。


洋榎「お前が傍に居ってくれるなら……」

洋榎「うちは何処までも高く昇って行ける……」

洋榎「お前やないと駄目なんや……」

洋榎「せやから一緒に来てくれ、恭子……」


夕日を背に優しい笑顔で手を差し出す洋榎。
恭子はその手を静かに握り小さく微笑んだ。




姫松高校編 完
473 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/16(金) 06:09:20.60 ID:gIYjM1PEo
乙!
474 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/16(金) 07:04:54.12 ID:T3d6mOFgo
乙です
475 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/16(金) 13:19:09.93 ID:TKqmJefjo
乙ー
476 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/16(金) 22:57:57.06 ID:LFyPGFii0
思わず最初から読み直してしまったわ
みんな幸せそうでよかった、お疲れ様でした
477 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/17(土) 00:41:37.34 ID:ut+9eNAbo
おつー
巨人の星読んだことないけどそんな感じの空気を感じた
478 :sage :2015/10/19(月) 09:02:30.97 ID:lJEpFtBl0
超乙

次は白糸台編が見たいな
479 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/19(月) 09:03:32.86 ID:lJEpFtBl0
すまん、sageミス・・・
480 :sage :2015/10/20(火) 22:32:34.53 ID:Uz0C0t1R0
おつー
次回作にも期待してます
481 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/21(水) 11:56:55.43 ID:AP4WIHV00
清澄編から読んでました。是非、次回作をお願いします。
482 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/10(火) 03:00:54.99 ID:jSJJ15l40
お疲れ様でした、次回作もお待ちしています。
483 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/12/16(水) 23:39:26.62 ID:F1mXCbupo
漫  (うちが姫松に来てから、はや2ヶ月が経った……)

漫  (友達も増えたし学校生活にも大分慣れてきた……)

漫  (せやけど……)

漫  (どうしても慣れん事やてある……)


- 姫松高校 校門前 -


ざわざわ……

       ざわざわ……


漫  (あ、絹恵ちゃん達きた)ウデフリフリノノノ


絹恵「おはよー漫ちゃん」

洋榎「うっす」

恭子「おはようさん」


\ う ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ っ っ っ 〜 〜 〜 /


漫  「お、おはよー……ござい……ます……」


男子A「愛宕姉妹と末原会長がご登校なさったぞぉぉぉっっっ!!!!」

野郎共「うっひゃあああぁぁぁぁぁぁっっっっっっっ!!!!」ヒャッホーイ!!

女子校生達「キャーーーーーッッッ!!!!」

俺  「美しい……」


漫  (毎朝多くの生徒達が校門前でこの人らを待ち伏せしてて……)


男子A「姫松四天王の3人が揃ってご登場だぜぇぇぇぇぇぇっっっ!!!」

俺  「四天王……だと……? なんだそれは……」ピクッ


テリーマン「姫松四天王……そういえば聞いた事がある……」

テリーマン「それは姫松高校で絶大な人気を誇る4人の美少女達の事だ……!」


女子A「洋榎さま〜! こっち向いて〜!」

女子B「キャーッ! 今、洋榎様が私を見てくださったわ〜!」

女子A「あっ、突然の強風に煽られて洋榎さまのロングスカートが!」

女子B「美しい御御足があらわに!」鼻血ブーッ!!

俺  「めっちゃ綺麗な足してんなぁ……舐め回したいぜ」レロレロレロ......


テリーマン「愛宕洋榎ちゃん……」

テリーマン「運動神経抜群、故にいくつもの運動部で助っ人として活動……」

テリーマン「その凛々しい姿から多くの女生徒の憧れの的となっている……」

テリーマン「また、気さくな性格で男子達とも仲が良く……」

テリーマン「姉御肌でクラスでも頼れるリーダー的存在……」

テリーマン「まさに姫松高校で光り輝く太陽の女神≠セ……ッ!」
484 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/17(木) 00:00:18.94 ID:imNqcEpfo
ってなんで俺くんがっ!?
485 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/12/17(木) 06:34:19.07 ID:yuYCDZHIo
男子B「末原会長ーッ! おはようございまっす!」

男子C「昨日も遅くまで生徒会のお勤め、お疲れ様ですっ!」

俺  「風に乗ってすげー良いシャンプーの香りが……」クンカクンカクンカ......


テリーマン「末原恭子ちゃん……」

テリーマン「姫松高校の生徒会長を務める美しき秀才……」

テリーマン「常に冷静沈着、与えられた仕事は丁寧かつ迅速にこなす……」

テリーマン「クールガールに見えるが情に厚く、下級生からも信頼され慕われている」

テリーマン「小柄で男子達から守ってあげたい女子<iンバー1に選ばれるが……」

テリーマン「同時に嗜虐心をそそる女子≠ナも堂々の第1位を獲得している……」

テリーマン「その笑顔、守りたい! でも壊したい……っ! SHITッッッ!!」

テリーマン「男心を右に左に弄ぶ、姫松高校の魔性の妖精≠セ……ッ!」


男子D「絹恵ちゃんおはよう〜! 今日も可愛いね〜^^」

男子E「ぉぉ〜! 絹恵ちゃんが笑顔でこっちに手を振ってくれているぞ!」

男子F「これで今日も1日生きていける……」

俺  「制服の胸元パッツンパッツンじゃねーか……」ムクムクムク......


テリーマン「愛宕絹恵たん……」

テリーマン「洋榎ちゃんの妹で生徒会副会長を務める、しっかり者で優しい女の子……」

テリーマン「末原会長の右腕として活躍、次期生徒会長の最有力候補でもある……」

テリーマン「だが忙しい中でも、姉への手作り弁当を欠かした事は一度も無い」

テリーマン「料理の腕も一流、特に姉の好物であるから揚げ≠ヘ超絶品だ!」

テリーマン「前に出る事を好まず、姉や生徒会長を影から支える淑やかさ……」

テリーマン「性格の大人しさとは真逆の爆裂スーパーグラマラスボディ……ッ!」

テリーマン「妹にしたい女子∞幼馴染になりたい女子∞姉にしたい女子=v

テリーマン「この3冠を史上初達成した逸材……それが彼女、絹恵たんだ……!」

テリーマン「まさに具現化された理想の妹(姉・幼馴染)≠ニ言えよう……ッ!」

テリーマン「ちなみに彼女は俺の推しメンだ」


\ ワーワー キャキャー ガヤガヤ ギャーギャー ビビクンビビクン /


漫  (親友と先輩が全校生徒のアイドル超人的存在やったなんて……)

漫  (嬉しいんやけど……隣に居るだけでこっちが恥ずかしい……///)カァァァァァッッ


俺  「四天王の隣にいる鰻みたいな子も結構可愛くね? 胸もでかいし」ギンギン

テリーマン「上重漫ちゃん……」

テリーマン「彼女は4月に転校してきた、絹恵たんのクラスメートであり親友だ」

テリーマン「彼女の父親はお好み焼き屋を営業していて、先月俺も行って来たぜ」

テリーマン「そこでは漫ちゃんのエプロン姿が拝めるとあって男性客に大人気だ」

テリーマン「漫研では既に漫×絹℃要が高まっていて色々と大変らしい……」




漫  (けど……それより一番驚いたんは……)
486 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/17(木) 20:36:21.56 ID:TqegVjjxo
のよー
487 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/17(木) 21:49:25.70 ID:gVSlDRWX0
待ってた!
488 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/12/18(金) 00:03:08.28 ID:2/Dl0Rp5o
S600プルマン「ブロロロロロロロロローン……」


男子A「真瀬様だ! 真瀬様が御到着なさったぞ!」

男子B「今日も超高級リムジンで颯爽と御登校だ!」

男子C「さすが日本を代表する財閥の御令嬢だぜ!」


黒服「……」スルスルスルッ......


男子A「執事の人が赤い絨毯を地面に敷き終えたぞ!」

男子B「別の黒服がリムジンのドアを開けて……来るぞっ!!」


由子「…………」スッ......


\ う ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ っ っ っ 〜 〜 〜 /


男子達「真瀬様おはようございますー!」

女子達「真瀬様……素敵すぎるわぁ……」ポワーン

俺  「あの子だけみんなと制服違くね?」


由子「皆様、御機嫌よう……」ニコッ♪


\ 真 瀬 さ ま ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ っ っ っ っ っ っ 〜 〜 〜 /


漫  「…………」


テリーマン「真瀬由子ちゃん……」

テリーマン「日本有数の巨大財閥の御令嬢……お嬢様の中のお嬢様だ……」

テリーマン「だがそれを鼻に掛ける様子は無く、他者を見下したりもしない……」

テリーマン「全身に高貴なオーラを纏いつつも、慈愛に満ち溢れている……!」

テリーマン「分け隔て無く誰にでも笑顔で接する姿はまさに博愛の天使≠セ……ッ!」


漫  (この人の素顔知っとるんはうちら4人だけなんやな……)

漫  (今の真瀬先輩見てると部活ん時のアレは夢ちゃうか思うわ……)

漫  (優雅な立ち振る舞い……上品な言葉遣い……優しい微笑み……)

漫  (これが偽り無き真瀬先輩のホンマの姿なんちゃうかって……)

漫  (せやのに……)


由子「漫さん、御機嫌よう」ニコッ

漫  「ひっ! お、おはようございます!」ビクッ

由子「あら? 顔色が悪くてよ。気分が優れないのかしらー?」ツカツカツカ......

漫  「い、いえ、そないな事は……」

由子「漫さん……分かっているとは思うけれど……」ユラッ......

由子「部活での事を誰かにバラしたらぶち殺すわよ?」ボソッ

漫  (ぴぃっ!)コクコク


\真瀬様が上重ちゃんの耳元で何か囁いたぞー!/
\何をおっしゃったのかしら?気になるわー!/
\今のちょっとエロかったよな〜!/
489 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/12/18(金) 23:01:59.56 ID:2/Dl0Rp5o
洋榎「お前ら何してんねん、さっさと教室行くで」スッ......

恭子「せやな……」スッ......

由子「せやね〜♪」スッ......

絹恵「ほな行きましょう」スッ......


漫  (この人達4人揃ったとき毎回JOJO立ちするな……)




俺  「ふっ……姫松にこんな面白い奴らがいたとはな……」


トントントン……


俺  「ぬっ?」

警察官A「君、ちょっといいかね?」

警察官B「姫松高校の校門前に不審者がいるって通報があったんだけど」

警察官C「こんな時間にナニしてるの? 仕事は?」

俺  「無職です」

警察官A「ちょっと署まで来て貰える?」

俺  「はい!」


テリーマン「俺も行くぜ」スッ......

俺 「テリーマン……!?」

ブロッケンJr「お前だけにイイカッコさせるかよ」スッ......

俺  「ブロッケンJr!」

ロビンマスク「無職はお前だけじゃないんだぜ」スッ......

ウォーズマン「コーホー」ニパァァァァッ......

俺  「みんな……」ポロポロ......



漫  (なんやろあの濃いおっさん達……)


アッ! コイツ キョウキ モッテルゾ !!
コーホー! コーホー!! コホホーコーホホホー!!!
ナンダ キサマ テイコウ スルキカ! グァァァァァァッ!!
ヤメロ ウォーズマン! ケイカンニ スクリュードライバー スルンジャナイ!!


\ ギャー ギャー /


漫  「ホンマ大阪は朝から騒がしい所やなぁ……」ヤレヤレヤナ・・・
490 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/12/22(火) 00:24:37.63 ID:3RqK3WfJo
- そんなこんなであっという間に放課後 旧校舎 -


漫  (はぁ……今日も部活は1人で自由行動かぁ……)

漫  (末原先輩と絹恵ちゃんは生徒会の仕事やし……)

漫  (洋榎先輩は女バスの助っ人に行っとる……)

漫  (真瀬先輩は急用やゆうて早退したらしいし……)リムジン カムヒア

漫  (ここんとこ多いなぁ……こうゆうの……)ションボリ......


恭子『悪いんやけど上重さん、うちら結構忙しくて中々時間取れへんねん』

恭子『せや、このASIMO達には膨大な量の牌譜データが仕込んであってな』

恭子『全国の雀士達とも擬似対戦できる様セッティングしてあるんやで』


漫  (これホンマ凄いんやけど、最近の使用履歴はうちで埋まっとる……)

漫  (みんなもっとガッツリ麻雀に打ち込んどる思ってたんやけどなぁ……)

漫  (全国優勝目指してるゆうのに、こんなんでホンマにええんやろか……)

漫  (そういえば、ここにはもう一つ麻雀部があるんやったな……)

漫  (別に禁止されとる訳やなし、ちょっと覗きに行ってみよか……)



- 本校舎 -


漫  (それにしても分からへんなぁ……)

漫  (洋榎先輩と末原先輩が普通の麻雀部を辞めた理由……)

漫  (あれだけ皆から慕われとる2人が……一体なんで……)

漫  (……いや、逆にそれが上級生の癇に障った可能性も……)

漫  (目立ち過ぎた2人は部内で嫌がらせされて……)ブルッ...



- 姫松高校 女子麻雀部 部室前 -


漫  (考え事しとったら、いつの間にか着いてもうた……)

漫  (うちらは夏の大会の出場権を本家麻雀部から奪った形やし……)

漫  (もしかして……2つの麻雀部は互いに仲悪いんちゃうやろか?)

漫  (思えばうちの友達にこっちの麻雀部の子1人も居らんしな……)

漫  (あぅぅ……あかんわ、急に緊張してきた……)ドッキンコドッキンコ......


ガラガラガラッ……


麻雀部員A「あれっ? 上重さんやん!」

麻雀部員B「えっ? なんでここにおるん?」


漫  「あっ、いや、その……」


麻雀部員A「とりあえず中に入ってや〜」グイグイッ......

麻雀部員B「みんな〜! 上重さん来よったで〜!」


漫  (ちょっ、あかんて! まだ心の準備が……腕引っ張らんといて〜!)ズルズルズル......
491 :sage :2015/12/29(火) 18:06:26.84 ID:Un4/f88+0
久々にきたら、なんかはじまってたww
492 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/30(水) 12:29:20.76 ID:2MeiTo900
ほっこりするな
493 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/01(月) 21:15:58.29 ID:sFczGHvmo
ほしー
494 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/02/22(月) 23:48:24.25 ID:y7T8pg+Do
ざわざわ……

     ざわざわ……


漫  (みんなの視線が……)ドキドキ


麻雀部員A「まぁまぁ座って座って」

漫  「あっ、はい……」ストン


麻雀部員B「今ちょうど休憩時間やから」

麻雀部員D「はい、お茶どうぞ〜」コトッ


漫  (めっちゃ持て成されとる!)オチャウマシッ! ズズー


漫  「あれ、顧問の赤阪先生は……?」キョロキョロ


麻雀部員A「今日は用事あるゆうて先に帰ったで。それより……」

麻雀部員A「なぁなぁ上重さん、旧校舎で四天王の方々は何しとるん?」


漫  「え゙っ?」


麻雀部員A「部外者立ち入り禁止やから皆気になってん」

麻雀部員B「せやせや。外から中の様子は見えんし……」

麻雀部員A「教職員ですら校舎内に入れてもらえんのやろ?」

麻雀部員B「今や教師すら四天王には頭上がらへんからなぁ」

麻雀部員C「真瀬お嬢様主催の秘密のお茶会≠ナもしてるんちゃう?」

麻雀部員D「あぁぁ……一度でええから招かれたいわぁ……」

麻雀部員A「……で、実際の所どうなんや?」


漫  「その……詳しい事は口止めされてて言えへんのやけど……」

漫  「適当に軽くお茶したり……麻雀したり……ホンマそれだけやて……」メソラシ


麻雀部員A「あ、いま目ぇ逸らしたな!」

麻雀部員B「なんか隠しとるんか? 白状せぇやコイツぅ!」コチョコチョコチョ


漫  「フヒッ、フヒヒッ! あはあはっ、ちょっ、勘弁してーな!」クネクネ
495 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/02/27(土) 02:51:18.44 ID:uHI2y4Hso
―――――――――
――――――
―――

麻雀部員A「ほな漫ちゃんまた明日〜」

麻雀部員B「いつでも遊びに来てや〜」


漫  「うん、ありがとぉ〜ノ」フリフリ


漫  「はぁ……」テクテク

漫  (お茶飲んでお菓子食べて麻雀して……)

漫  (普通に楽しんでもうた……!)


漫  「…………」

漫  (部内の人間関係のトラブルが退部の原因や思うてたんやけど……)

漫  (部長の話を聞く限りそれは無さそうやしなぁ……)



部長『んん? 私に聞きたい事?』

漫  『はい……。洋榎先輩と末原先輩が部を辞めた件について……』

部長『あぁ、それな……。 ……ええよ。ちょっと隣の部屋行こか……』


― 隣の部屋 ―

漫  『単刀直入に聞きます。なんであの二人は麻雀部を辞めたんですか?』

漫  『あんなに麻雀好きな人達が部を辞めるやなんておかしいですやん!』

漫  『うち真相が知りたいんです。何か知ってるなら教えてください……ッ!』


部長『洋榎と恭子がこの麻雀部を去った理由、ねぇ……』

部長『……恭子が辞めた理由なら分かるで。それは洋榎が辞めたからや』

部長『恭子は洋榎に……洋榎の麻雀≠ノ陶酔しきっとったからなぁ……』


部長『恭子はある意味、麻雀部のマネージャー的存在やった……』

部長『自らは麻雀を打たず、勝つ為の戦略や戦術、相手の情報収集ばかりしててな』

部長『ここだけの話やけど……姫松が低迷期脱したんも恭子のお蔭なんやで?』


部長『郁乃ちゃん、いつも他校の情報とか持って来てくれるんやけど……』

部長『恭子がそれを詳しく分析して、対策やら何やら細かくまとめてくれてな』

部長『麻雀部辞めてからもずっと、分析したデータを私らに教えてくれてたんや』

部長『せやから卒業した先輩達含め、皆恭子には頭上がらんし感謝もしてるんやで』


漫  『末原先輩は当時の先輩達からも厚く信頼されてたんですね……』

漫  『洋榎先輩の方はどないやったんです……?』


部長『洋榎は……入部当初から頭一つ抜けた実力の持ち主やったな……』

部長『当時の先輩達は洋榎っちゅう逸材に希望を見出し他の誰より目ぇ掛けて……』

部長『輝きを失った姫松に光を取り戻す救世主……誰もがそう確信しとった……』

部長『そんな洋榎が……なぜ突然に麻雀部を辞めたのか……』

部長『今でも……私にはその理由が全く分からないんや……』
496 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2016/03/02(水) 21:20:05.98 ID:DADtqeE30
あげ
497 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/02(水) 22:29:27.34 ID:KY3SBFKPo
キテタシー(AA略
498 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/16(水) 18:59:53.09 ID:5OQ+HCsc0
からあげ
499 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/29(火) 09:51:50.17 ID:M8uszP+o0
保守しなきゃ
500 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/15(金) 01:06:04.61 ID:f3hUJCkKo
>>1です
完結が無理そうなのでこのスレを2〜3日後くらいに落とそうと思います
スレの進みが遅すぎて長期化し過ぎたにも拘らず
ここまで応援してくれた方々には本当に申し訳ありません

阿知賀以降は本編以外書く予定は無かったのですが
姫松の死亡キャラが決まった辺りで新世界の構想が頭の中で完成したので
新世界もやろうと思ったのですが、体力気力が持ちませんでした

他の学校の新世界後の話も既に頭の中にはあるのですが
その量が膨大になり過ぎた事で、逆に書く気力が失われたのかもしれません
新世界で回収する予定だった伏線も謎のままになってしまいすみません

本編→新世界→新世界(コメディ)→プロ勢
この流れにする事によって最終的にはハッピーエンドにしたかったのですが・・・

またいつかここでSSを書く事があるかもしれませんが
その時は長期化や途中放棄しないよう出来る限り努力します
今までありがとうございました
501 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/15(金) 03:55:40.51 ID:/y2r1Zb4o
502 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/15(金) 05:56:46.26 ID:T872UCZro
503 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/15(金) 11:35:59.21 ID:Am474uveO
乙でした
体力気力が湧いてからでも続きが読みたいだけの人生だった
504 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/17(日) 18:39:34.78 ID:O2/hOE+Qo
乙でありました
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