他の閲覧方法【
専用ブラウザ
ガラケー版リーダー
スマホ版リーダー
DAT
】
↓
VIP Service
SS速報VIP
SS速報VIP 過去ログ倉庫
検索
すべて
本文
タイトル
投稿者
ID
このスレッドは
SS速報VIPの過去ログ倉庫
に格納されています。もう書き込みできません。。
もし、このスレッドをネット上以外の媒体で転載や引用をされる場合は
管理人までご一報
ください。
またネット上での引用掲載、またはまとめサイトなどでの紹介をされる際はこのページへのリンクを必ず掲載してください。
雪歩「ラヴェルのボレロと缶コーヒー」 -
SS速報VIP 過去ログ倉庫
Check
Tweet
1 :
◆K8xLCj98/Y
[saga]:2013/12/24(火) 23:56:44.63 ID:jff72Nth0
お仕事が終わって事務所を出て、もう2時間は経ったでしょうか。
私は未だに、ひとりであの人を待っています。
「……はぁ」
真ちゃん、まだお仕事が終わらないのかなぁ。
すっごく嬉しくて、待ち合わせ場所に1時間も早く来てしまったから……自業自得、だと思います。
21時。冷たい風をコートでしのぎました。
22時。首元をあたためようと、マフラーをつけました。
23時……まだ、来ません。
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1387897004
1.5 :
荒巻@管理人★
(お知らせ)
[
Twitter
]: ID:???
【 このスレッドはHTML化(過去ログ化)されています 】
ごめんなさい、このSS速報VIP板のスレッドは1000に到達したか、若しくは著しい過疎のため、お役を果たし過去ログ倉庫へご隠居されました。
このスレッドを閲覧することはできますが書き込むことはできませんです。
もし、探しているスレッドがパートスレッドの場合は次スレが建ってるかもしれないですよ。
君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/
笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/
【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/
トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713798788/
【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713788018/
ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713736565/
【安価】少女だらけのゾンビパニック @ 2024/04/20(土) 20:42:14.43 ID:wSnpVNpyo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713613334/
ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713522243/
2 :
◆K8xLCj98/Y
[saga]:2013/12/24(火) 23:57:30.91 ID:jff72Nth0
「ジュースでも買おうかな」
100円玉で買えるぬくもり。
あるアーティストは自分の歌の中で、そのセンテンスでホットコーヒーを表現したそうです。
私も素敵な文章を書きたいなぁ、なんて思いながら100円玉を取り出します。
缶コーヒーは120円。彼の生きた時代とはもう変わってしまっていることを、肌で感じました。
3 :
◆K8xLCj98/Y
[saga]:2013/12/24(火) 23:59:21.60 ID:jff72Nth0
ブラックの缶コーヒーを飲めるようになったのはつい最近。
真ちゃんの趣味です。
無糖どころかカフェオレすら飲めなかった私も、いつしかコーヒーを好きになっていきました。
真ちゃんとお話したいなあ。誕生日ももうすぐ終わってしまいます。
「……いいや」
プルタブを起こす前に、このコーヒーをカイロ代わりに使おうと思って開けるのをやめました。
4 :
◆K8xLCj98/Y
[saga]:2013/12/25(水) 00:00:24.38 ID:R+XlQCg50
メッセージは未読のまま。30分前にした電話も、留守番電話でした。
遅れる、という連絡もないから……少し不安になります。
デパート横の街頭ビジョンから延々とリピートされているクラシック曲。
ラヴェルのボレロ。
「なんでこの時期なんだろう?」
ボレロはクリスマスソングではなかったはずです。
お店の人の趣味なのかなぁ。
5 :
◆K8xLCj98/Y
[saga]:2013/12/25(水) 00:01:25.87 ID:R+XlQCg50
いつかお父さんがプレゼントしてくれた銀の腕時計は、今の時間が日付の変わる30分前だということを伝えてくれました。
「……電話、しちゃおうかな」
電話帳をタップすると出てくる名前。
特に電話をかける人の名前欄には、最初に星のマークをつけています。
そしてよみがなの最初に「あ」と入れることで、一番上に来るようにしているんです。
6 :
◆K8xLCj98/Y
[saga]:2013/12/25(水) 00:02:48.56 ID:R+XlQCg50
「…………でもずっと電話が来ない、ってことは」
忙しいんだろうな。
そんな時に電話をするのも、悪いなぁ。
それでも……もし、事故にあっていたら。
恐ろしい考えが頭のなかを駆け巡って、私は通話をタップしました。
7 :
◆K8xLCj98/Y
[saga]:2013/12/25(水) 00:03:28.62 ID:R+XlQCg50
『もしもしー? どうした雪歩』
……プロデューサーの。
「あ、いえ……その、お疲れ様です、プロデューサー」
『おー。俺はもう仕事が終わって家に帰る途中だけどな』
ちょっと待っててくれ、ハンズフリーに切り替える。と言って、数秒静かになります。
『どうしたんだ?』
8 :
◆K8xLCj98/Y
[saga]:2013/12/25(水) 00:04:18.50 ID:R+XlQCg50
「その……今日、真ちゃんと待ち合わせをしていたんですけど、まだ……来なくて」
『あー、そっか。連絡してなかったな。真、今日の収録が長引いちゃってさ。終わったのがさっきなんだよ』
……良かった、忘れてたわけじゃなかったんだ。
「そ、そうなんですか……」
『うん、22時になるちょっと前だな』
それなら、事務所からそれほど遠くないこの場所にはもう着いているはず。
やっぱり何かあったのかもしれません。
9 :
◆K8xLCj98/Y
[saga]:2013/12/25(水) 00:07:46.95 ID:R+XlQCg50
『……だってもう、日付が変わっちゃうぞ。今夜はどうするんだ』
「本当は22時にご飯を食べて、スイーツを食べて……ビジネスホテルに泊まる予定でした」
そして明日の朝、温泉街の旅館に移動して……2日間のオフを使って旅行をするんです。
そういうとプロデューサーはため息をつきました。
『雪歩、そういうのはちゃんと俺に伝えてくれないと』
「ごめんなさい、律子さんには伝えたんですけど……」
プロデューサーはいつも忙しそうにしているから、言おうと思っても言えなかったんです。
今日の仕事だってずっと真ちゃんにつきっきりで。
真ちゃんが言ってくれてたんだと思ってました。
10 :
◆K8xLCj98/Y
[saga]:2013/12/25(水) 00:09:36.72 ID:R+XlQCg50
「……すみません、プロデューサー。真ちゃんが来たら連絡します」
『分かった。俺も真に電話してみるよ』
「ありがとうございます。それじゃあ、おやすみなさい」
『ああ、おやすみ。……あと、誕生日おめでとうな』
「あっ、ありがとうございます!」
そう言えば、今日はプロデューサーに会っていなかったなぁ。
ちゃんと覚えててくれたんだ。嬉しいな。
マフラーの端をぎゅっと掴みます。
11 :
◆K8xLCj98/Y
[saga]:2013/12/25(水) 00:16:13.84 ID:R+XlQCg50
日付が変わる20分前。まだボレロは流れていて、その単調なリズムが一層と私の不安をかきたてていきました。
「……大丈夫、かな」
前に真ちゃんが倒れたことがあったんです。
今年の夏、春香ちゃん、千早ちゃん、私、真ちゃんの4人でプールに行こう、となったとき。
前日の仕事が夜遅くまで続いたようで……真ちゃんがプールサイドでふらついていたのを、千早ちゃんが支えていました。
寝不足の身体で体力を消耗したから、フラッと倒れてしまって。
それ以来です。
みんなが前よりもずっと、お互いの身体のことを気遣うようになったのは。
12 :
◆K8xLCj98/Y
[saga]:2013/12/25(水) 00:22:09.72 ID:R+XlQCg50
ポケットから缶コーヒーを取り出すと、さっきよりもずっとぬるくなっていました。
そろそろ飲んじゃおうかな。
……真ちゃんも、まだ来てくれない。
「……寒いな」
携帯電話の電池も、残り少なくなってきました。
せめて真ちゃんから電話が来た時にすぐにかけられるように、バッテリーをもたせておかなきゃ。
東京の気温は7度。
雪は降りません。
ただ寒いだけのクリスマスは、少し味気ないように思えます。
13 :
◆K8xLCj98/Y
[saga]:2013/12/25(水) 00:26:47.38 ID:R+XlQCg50
ホワイトクリスマスだね。
この間収録が終わった単発ドラマで、私の演じるヒロインが何度も言っていた台詞です。
実際に雪が降れば、素敵なクリスマスになるんだけどなぁ。
もう何度も聞いたかわからない、ボレロのクライマックス。
同じテンポで進んでいく曲が段々と壮大になって、最高潮を迎えていきます。
大きなシンバルの音で、音楽が止まりました。
14 :
◆K8xLCj98/Y
[saga]:2013/12/25(水) 00:31:31.91 ID:R+XlQCg50
千早ちゃんに、ボレロのストーリーを聞いたことがあります。
酒場の舞台で足慣らしをしていた踊り子が、だんだん振りを大きくすると、
無関心だった周りのお客さんが興味を持ちだして、みんなで一緒に踊る。
曲を聞いていると、その光景が目に浮かぶようです。
ずっと同じリズムを保ちながら、徐々に鳴り響く楽器も増えていって――一番盛り上がった所で収束する。
私がアイドルになってから今に至るまで、と少し似ているような気もします。
15 :
◆K8xLCj98/Y
[saga]:2013/12/25(水) 00:34:00.99 ID:R+XlQCg50
プロデューサーがいたから、アイドルの仲間がいたから。
たくさんのファンの期待に応えようとお仕事が出来る。
それってとっても、幸せなことなんだな……って、思うんです。
街頭ビジョンから流れていたボレロは、さっきと同じようにリピート再生がされないまま。
何も流れてきません。
16 :
◆K8xLCj98/Y
[saga]:2013/12/25(水) 00:37:56.67 ID:R+XlQCg50
2時間以上延々と流れていたのに、どうして急に止まっちゃったんだろう?
そう思って、真後ろの街頭ビジョンの方向を向いた瞬間、でした。
「……あ」
駅の出口から、私の待つこの場所まで――。
ペデストリアンデッキを走ってここに向かってくる人がいました。
見覚えのある、私と色違いのコートを着て。
17 :
◆K8xLCj98/Y
[saga]:2013/12/25(水) 00:39:46.55 ID:R+XlQCg50
「真ちゃん!」
「雪歩……ごめん! こんなに遅れちゃって」
「私、真ちゃんに何かあったんじゃないか、って心配で」
「雪歩への誕生日プレゼントを買う時間が無くて……選ぶのに、時間がかかっちゃってさ」
そんでほら、と真ちゃんは真っ暗な画面の携帯電話を取り出します。
「電池、無くなっちゃって」
公衆電話を探す時間が勿体無くて、急いでここに来た……ということみたいです。
18 :
◆K8xLCj98/Y
[saga]:2013/12/25(水) 00:41:06.25 ID:R+XlQCg50
「でも……間に合って、良かった」
「え?」
「24日のうちに、雪歩に会えたから」
時計を見ると、針は限りなく0時に近づいていて……でも、まだ日は変わっていません。
「お誕生日、おめでとう。雪歩」
「ありがとう……ありがとう、真ちゃん」
19 :
◆K8xLCj98/Y
[saga]:2013/12/25(水) 00:43:00.96 ID:R+XlQCg50
「わわっ、日付が変わっちゃう」
真ちゃんは黒いデジタルの腕時計を見て、慌てて鞄から赤い包装紙で包まれた箱を取り出してきました。
「……誕生日プレゼント」
「ありがとう……開けてもいい?」
「うん」
包み紙を丁寧に剥がして、箱を開けると。
20 :
◆K8xLCj98/Y
[saga]:2013/12/25(水) 00:45:07.94 ID:R+XlQCg50
ガラスの中には、かわいいサンタクロースとトナカイさんがいました。
楽しく踊っているのかな。ボレロの踊り子みたいに。
「……スノードーム?」
「そう。でもね、それだけじゃないんだ」
真ちゃんは前のフタを開けてみて、といいます。
電池ボックスのようなプラスチックのフタを開けると、銀色の指輪が2つ、出てきました。
「……ペアリングだ」
21 :
◆K8xLCj98/Y
[saga]:2013/12/25(水) 00:48:09.94 ID:R+XlQCg50
そう言えば秋ぐらいに、おそろいのアクセサリーが欲しいねって言ったなぁ。
覚えててくれたんだ、真ちゃん。
「……ありがとう、ありがとう。真ちゃん」
「えへへ。ボクのほうこそ、雪歩とこうやって過ごせて……すっごく嬉しいよ」
真ちゃんと一緒に、指輪を左手の中指にはめます。
親友のことを大切にするには、中指にはめるのが良いらしいから。
「……おそろい、だね。雪歩」
「うん……ふふっ」
22 :
◆K8xLCj98/Y
[saga]:2013/12/25(水) 00:51:38.77 ID:R+XlQCg50
突然、聞き覚えのあるメロディーが聞こえてきました。
後ろの街頭ビジョンから聞こえる、鈴の音。
『You better watch out... you better not cry...』
「誕生日、終わっちゃったね……ごめん、本当に遅くなって」
「……いいの、こんなに素敵なクリスマス、過ごしたことないもん」
サンタが街にやってくる。
クリスマスの定番のその歌は何度も聞いたはずなのに、初めて聞いた歌のように新鮮に身体の中に入って行きました。
23 :
◆K8xLCj98/Y
[saga]:2013/12/25(水) 00:53:40.31 ID:R+XlQCg50
「……よいしょ」
真ちゃんがスノードームのスイッチを入れると、白い明かりが中のサンタクロースたちを照らしました。
そしてオルゴールの音と一緒に、雪が降り始めました。
「……真ちゃん」
「うん?」
「ホワイトクリスマス、だね」
素敵なクリスマス。微笑んだ真ちゃんの手を握ると、さっきのコーヒーよりもずっと温かい気がしました。
24 :
◆K8xLCj98/Y
[saga]:2013/12/25(水) 00:55:52.01 ID:R+XlQCg50
「ご飯、どうする?」
「もともとお店のことは何も考えてなくて……ファミレスでもいいかな」
「ボクは構わないけど……雪歩はそれでいいの?」
「うん。真ちゃんと食べるご飯だったら、なんでもおいしいよ」
「嬉しいこと言ってくれるなぁ」
手を繋いで夜の街を歩くクリスマス。
イヴよりも素敵な一日になりますように。
サンタクロースには、そんなことをお願いしてみたり。
25 :
◆K8xLCj98/Y
[saga]:2013/12/25(水) 00:56:33.09 ID:R+XlQCg50
誰かを待ってる雪歩がかわいいなーと思って書きました。
お読みいただき、ありがとうございました。お疲れ様でした。
26 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/12/25(水) 00:58:06.99 ID:obO+7Rb9o
乙
27 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/12/25(水) 21:12:47.47 ID:gcQFzNxY0
ボレロに釣られて
11.85 KB
[ Aramaki★
クオリティの高いサービスを貴方に
VIPService!]
↑
VIP Service
SS速報VIP
専用ブラウザ
検索
Check
Tweet
荒巻@中の人 ★
VIP(Powered By VIP Service)
read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By
http://www.toshinari.net/
@Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)