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勇者「共に歩み、共に生きる」 -
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1 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/18(土) 21:06:16.64 ID:aFMhqpbg0
勇者「聖王の命により、貴様を裁く。魔を放ち、聖王国を苦しめた罪は重い」
勇者「死を以て、償え」
魔王「今の世に、自由は無い」
魔王「聖王国は正義などでは無い。奴等も、支配している点では変わりないのだからな」
魔王「世を治る者、地に立つ者が、人から魔に変わるだけの事」
魔王「我等より先に、人が立った。立つ者が入れ替わるだけに過ぎない、違うか」
勇者「聖王様は絶対であり、正義。乱す者は、悪」
魔王「ならば、その正義とやらを見せてみよ」
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1390046775
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荒巻@管理人★
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比企谷「由比ヶ浜がパパ活をしてる?」雪ノ下雪乃「ええ…」 @ 2024/11/24(日) 10:52:44.78 ID:0z7sCkyU0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1732413164/
空を自由に飛びたいな @ 2024/11/22(金) 15:47:22.22 ID:UV495csLo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1732258041/
■ 萌竜会 ■ @ 2024/11/22(金) 07:20:24.33 ID:WpWM+xYMo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1732227623/
■ 萌竜会 ■ @ 2024/11/22(金) 07:18:35.89 ID:Vr506SRJo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1732227515/
■ 萌竜会 ■ @ 2024/11/22(金) 07:17:49.87 ID:t6dKBjAuo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1732227469/
■ 萌竜会 ■ @ 2024/11/22(金) 07:17:17.71 ID:/UbTl3Hgo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1732227436/
■ 萌竜会 ■ @ 2024/11/22(金) 07:16:22.54 ID:Un8tNByuo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1732227381/
ミア「歩夢・・・辛かったな・・・」ナデナデ歩夢「ミアちゃん・・・うぅ・・・」 @ 2024/11/22(金) 00:59:47.53 ID:w7bhdEV4O
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1732204787/
2 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/18(土) 21:09:46.67 ID:aFMhqpbg0
ーーー
ーーー
勇者「帰還致しました」
聖王「無事で何より。これで、悪は滅んだ」
聖王「だが勇者よ、それはこの世界の話しなのだ……」
勇者「この世界、とは」
聖王「今から話す全てを信じよ。良いな」
勇者「はい」
3 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/18(土) 21:11:35.52 ID:aFMhqpbg0
ーーー
ーーー
勇者「此処とは違う世界、其処にも魔物が」
聖王「うむ、帰還早々に悪いが、行ってくれるか」
勇者「勿論です」
聖王「ならば、賢者の下へ行け。彼ならば、道を作れる筈だ」
勇者「はい。では、行って参ります」
4 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/18(土) 21:13:00.29 ID:aFMhqpbg0
ーーー
ーーー
賢者「聖王より話しは聞いている。準備は良いか」
勇者「はい、いつでも」
賢者「武運を祈る。では、始め、始め始めめめめめめめめめめめめ」
勇者「賢者様、どうしたのです」
賢者『ガガッ…ザザザッ…い、えるか? 聞こえるか?』
勇者「誰だ。賢者様に、何をした」
賢者『驚きもしない、か。正に人形だな……』
賢者『勇者、君には悪いが、少し細工させて貰う』
5 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/18(土) 21:14:11.76 ID:aFMhqpbg0
勇者「何をする気だ」
賢者『君を人間にする。血の通った人間に』
賢者『泣き、笑い、悩み、迷う。そんな、本当の人間に……』
賢者『あまり時間が無い。今から流す』
勇者「流す、何をだ」
ヂヂッ……
勇者「ぐっ、何だ。何が……」
ガヂヂヂヂッ!!
勇者「ガッ!? グッ、ガアアアアアッ!!」
6 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/18(土) 21:15:27.12 ID:aFMhqpbg0
『しかし、寿命に問題点が』
『構わん。戦える体であれば良い』
『成人の状態にしろ』
『彼が、我々の救世主か』
『戦闘経験は?』
『経過は順調です』
『では、次の段階に移れ』
7 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/18(土) 21:16:39.89 ID:aFMhqpbg0
『一切の疑問を与えるな』
『我々こそが、正義なのだ』
『徹底的に刷り込め』
『そろそろか……うむ、やはり美しい』
『救世主と呼ぶに相応しい姿だな』
『従順で、死を怖れぬ。正に理想的だ』
『彼をベースに次の……』
8 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/18(土) 21:17:15.97 ID:aFMhqpbg0
ザザザザザザ……
9 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/18(土) 21:19:26.53 ID:aFMhqpbg0
『ふざけるな!! 外で生きて往けるわけが無いだろう!!』
『助けて、死にたくない!!』
『子供が居るの、その子だけは』
『嫌だ、離してくれ!! くそっ、何が聖王だ!!』
『殺してやる!!』
『お兄ちゃん、ねえ、お兄ちゃん……』
『やめろぉぉ!!』
10 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/18(土) 21:21:03.05 ID:aFMhqpbg0
『死ね!! 聖王なんざ死んじまえ!!』
『逃げろ』
『あなたを、愛してるわ』
『ありがとう』
『誰もが、幸せになれるんだ』
『諦めちゃ、駄目だ』
『あんな化け物に殺されるくらいなら』
『早まるな、待て!!』
『お父さんっ、こんなの嫌だ。助けて……』
11 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/18(土) 21:24:09.54 ID:aFMhqpbg0
ーー情報伝達完了
ーー脳波・心拍数・確認中……
ーー心拍数に異常あり
ーー応急処置開始
ーーーーー終了
ーー心拍数・正常
ーー投与開始
ーー確認中……
ーー確認中……
ーー適合率79・3%
ーー適合率・上昇中……
ーー最終適合率91・14%
12 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/18(土) 21:29:10.13 ID:aFMhqpbg0
勇者「げほっげほっ!! ハァッ、ハァッ、ハァッ…」
賢者『一時はどうなる事かと思ったが、成功したようだ』
賢者『まだ感情の発露は見られないか。今は、仕方無い』
賢者『しかしこれで、君は造られた救世主でも、人形でもなくなった』
賢者『……君には、詫びねばならない。本当に、済まない』
賢者『我々は、過ちを繰り返した。私は、失って初めて、それに気付いた。私は、愚かだ……』
賢者『頼む、間違いを正してくれ」
賢者『君だけが世界の、私の希望なんだ』
13 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/18(土) 21:31:52.01 ID:aFMhqpbg0
賢者『そして、奴等にとっての悪魔に……ぐはっ!!』
賢者『ふっ、はははっ、もう、遅い』
賢者『父さんを、許し……』
賢者『………………』
賢者『………………………』
勇者「ハァッ…ぐっ、うぅ」
賢者「では、転移の法を施す。全ての世界を救え、悪を滅ぼすのだ」
賢者「行け、勇者よ」
14 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/18(土) 21:40:01.51 ID:aFMhqpbg0
ーーーー
ーーー
ー
勇者「ん、此処は何処だ。っ、頭が」ズキッ
「無理に起き上がらないで下さい。まだ、動ける状態じゃないですから」
勇者「誰だ、此処は何処だ」
「私は女医師と言います。此処は、病院ですよ?」
勇者「(見慣れない器具ばかりだ。本当に病院なのか)」
勇者「(此処が別世界、なのか。だとしたら、まずは聖王様に会わなければならないな)」
15 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/18(土) 21:41:20.83 ID:aFMhqpbg0
勇者「女医師、【聖王】と言う名に憶えはあるか」
女医師「勿論。この国を統べるお方ですから」ニコッ
勇者「聖王様は、何処に居る」
女医師「…………了解」ボソッ
勇者「どうした」
女医師「今から案内します」
勇者「そうか、頼む」
16 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/18(土) 21:42:31.24 ID:aFMhqpbg0
ーーー
ーーー
勇者「(外に出たが、見慣れない物ばかりだ。空は硝子のような物に覆われている)」
女医師「どうしました?」
勇者「外だというのに天井のような物があるから、疑問に思っただけだ」
女医師「あれは、魔物の侵入を防ぐ為に、聖王様が造られた物です」
女医師「この国の外は、魔物で溢れていますから」
勇者「流石は聖王様。こんな大規模な防御壁をお造りになるとは」
女医師「そう、ですね…」
17 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/18(土) 21:44:22.41 ID:aFMhqpbg0
ーーー
ーーー
女医師「此処が、聖王様の城です」
勇者「(随分、造りが違う。何しろ高い)」
勇者「今更だが、謁見の許可を取らずに入っても良いのか」
女医師「貴方が来る事は、分かっていましたから。大丈夫です」
女医師「中に入れば、係りの者が案内してくれますよ」
勇者「そうか、分かった」ザッ
女医師「(表情も、声も変わらない。まるで人形、彫刻のようだわ)」
女医師「嫉妬する程に美しいのに、気味が悪い……」
18 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/18(土) 21:45:24.08 ID:aFMhqpbg0
ーーー
ーーー
聖王「早速だが、お前に命を下す」
聖王「この聖王国の外、外界は、魔物で溢れている。お前には、全ての魔物を排除して貰いたい」
聖王「武器防具は支給する。命を果たすまで、帰還する事は許さん」
勇者「承知しました」
聖王「それと、もう一つ」
聖王「外には穢れた輩がいる。奴等が語る言葉に惑わされるな」
聖王「この聖王だけを信じよ。下された命だけを実行せよ」
聖王「良いな」
勇者「承知しました」
19 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/18(土) 21:48:45.65 ID:aFMhqpbg0
ーーー
ーーー
外界・森
勇者「(支給された武器防具は変わった装飾だが、性能は凄まじい)」
勇者「(三十近くの魔物を斬ったが、刃こぼれ一つない)」
勇者「(一番奇っ怪なのは、目に見えぬ弾丸が射出される武器)」
勇者「(銃、とか言っていたな。これは、かなり役に立つ)」
勇者「別世界、か。ん、まだ残りがいるな」
ザンッ!!
魔物「ギャッ…」
20 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/18(土) 21:49:51.76 ID:aFMhqpbg0
ザシュッザシュッ!! パンッ…ザシュッ!!
21 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/18(土) 21:51:25.98 ID:aFMhqpbg0
勇者「もうじき、日も暮れる。今日はこの辺にしよう」
ーーーー
ーーー
パチパチッ……
勇者「暖かい」
『時間が無い。今から、流す』
勇者「あの時、確かに『何かが』流れ込んできた」ズキッ
勇者「見た事の無い景色、人々の声。あれはとても、とても……」
勇者「悲しそうな、声だった」ギュッ
22 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/18(土) 21:54:55.65 ID:aFMhqpbg0
ーーー
ーー
ー
「良いのですか?」
「外の連中に懐柔されれば、我々に牙を剥く可能性も」
「何も問題は無い。【聖王】の命は絶対なのだからな」
「奴が何を施したか知らんが、所詮は造り物。人になどなれん」
「アレが魔物を排除する。我々は、其処に新たなドームを建設する。それだけだ」
「アレは、死ぬまで戦い続ける。しかし、魔物を全滅させるなど不可能だ」
「よって、帰還することなど有り得ない」
「アレが死ねば、次なる【勇者】を造り出せば良いのだ」
「実験は、順調に進んでいる。何も怖れる必要は無い」
23 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/18(土) 21:57:18.85 ID:aFMhqpbg0
ーーーー
ーーー
三日後
勇者「この森は、片付いたな。次の場所に向かおう」
???「アナタ、人間よね?」
勇者「誰だ」
???「後ろにいるよ。あっ、私は魔物じゃないから、絶対に斬らないでね!!」
勇者「お前、妖精か」
???「うん。私はピクシー。よろしくね」ニコッ
勇者「何の用だ」
ピクシー「案内人になってあげる。迷子になると大変だから」
24 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/18(土) 21:59:05.17 ID:aFMhqpbg0
勇者「そうか、宜しく頼む」
ピクシー「何も疑わないの? 貴方を迷子にさせるつもりかも知れないよ?」
勇者「行き先に魔物が居るなら、迷子だろうと関係無い」
ピクシー「怖くないの?」
勇者「何を怖れる必要がある。聖王様の命に従って死ぬのなら本望だ」
ピクシー「私は悲しいな、アナタが死んだら……」
勇者「何故だ。お前に、何の、関係」ズキッ
25 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/18(土) 22:00:20.54 ID:aFMhqpbg0
『愛してるわ』
『死なないで!!』
ピクシー「どうしたの? 大丈夫?」
勇者「何でもない。気にするな」
ピクシー「そう……なら、いいけど」
勇者「何処に向かうんだ」
ピクシー「とりあえず、私に着いて来て」
26 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/18(土) 22:01:55.00 ID:aFMhqpbg0
勇者「洞窟か、入り口が塞がれているな」
ピクシー「ちょっと待っててね」
勇者「行ってしまった」
勇者「(魔物の住処、では無さそうだな)」
勇者「(こんな場所、ピクシーが居なければ、見つける事は出来なかっただろう)」
ピクシー「お待たせっ、入っていいよ」
勇者「中に居るのは、人間か」
ピクシー「そうだよ? ダメだった?」
27 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/18(土) 22:03:37.93 ID:aFMhqpbg0
勇者「聖王様に、外界に居るのは穢れた者達だと聞いている」
ピクシー「ふーん。じゃあ、どうするの? 接触するのもダメ?」
勇者「いや、接触は禁じられてはいない」
ピクシー「じゃあ、大丈夫だね」
『何が聖王だ!!』
『出ていけだって!? 死ねっていうのか!!』
勇者「(何か、分かるかも知れない。あの光景、あの声が、偽りだとは思えない)」
勇者「行こう」
ピクシー「うんっ」
28 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/18(土) 22:06:23.56 ID:aFMhqpbg0
洞窟内
勇者「思いの外、広い。人も多い」
ピクシー「この洞窟の他にも、こういう場所は沢山あるんだよ?」
勇者「そうなのか。それで、何故此処に連れて来た」
ピクシー「えーっと、この先に長老さんが居るから、話しを聞いてあげて」
勇者「聞くだけならな」
ーーーー
ーーー
ー
長老「良く、来てくれたね」
勇者「お前が長老か。話しを聞く前に、聞きたい事がある」
29 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/18(土) 22:07:58.10 ID:aFMhqpbg0
長老「構わんよ? 何でも聞いてくれ」
勇者「追い出される人々を見た。聖王様を呪う人々を見た。泣き叫ぶ人々を見た」
勇者「愛してると言い、それを失い、嘆く者も見た」ズキッ
長老「…………」
ピクシー「……」
勇者「……レが、オレが見たのは何だ!?」
勇者「お前達は何だ!? 何故泣く!? 何故悲しむ!?」
勇者「聖王様こそが正義!! その筈だろう!!」ダンッ
30 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/18(土) 22:14:07.07 ID:aFMhqpbg0
長老「……………」
ピクシー「お、落ち着いて。ねっ?」
勇者「ハァッ、ハァッ……」ギリッ
長老「何処で何を見たのか知らないが、随分混乱しているね……」
長老「恐らく君が見たのは、我々の過去だろう。聖王に国を追われた、我々のな」
勇者「何故、追い出す?」
長老「今の若者は教えられないのかな? 簡単な話し、増えすぎたのだよ。それ故の人口削減、間引きだ」
勇者「……正しい判断だ」
長老「本当に、そう思うかね?」
勇者「ああ、聖王様の判断に間違いは無い」
31 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/18(土) 22:16:06.36 ID:aFMhqpbg0
長老「なら何故そんな顔を? 君は疑問に感じているのではないのかな?」
勇者「……まれ」
長老「だから、知りたいのだろう?」
勇者「黙れ!!」ガンッ
ピクシー「きゃっ」ビクッ
長老「おやおや、まるで子供だな。聞いてきたのは、君の方だというのに」
長老「まあ良い。次は、私の話しを聞いてくれるかな?」
32 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/18(土) 22:17:03.58 ID:aFMhqpbg0
勇者「…………」
長老「では、勝手に話させて貰うよ?」
長老「実は最近、洞窟近辺に魔物が増え始めてね。満足に食料を調達出来ない」
長老「君が良ければ、我々の手助けをして欲しい」
勇者「……聖王様の命には、含まれていない。オレは行く」ザッ
長老「そうか、残念だが仕方無い」
33 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/18(土) 22:19:06.34 ID:aFMhqpbg0
ピクシー「ねえ、いいの? アナタは、後悔しない?」クイッ
勇者「道案内は、もう必要無い」パシッ
ピクシー「あっ…」
ーーーー
ーーー
ー
洞窟近辺
勇者「魔物の根絶。それが、オレに与えられた命だ」
勇者「悩む事も、後悔する事も無い。聖王様は絶対の存在」
勇者「穢れた者の言葉に、惑わされるな」
自身に言い聞かせるような呟き。
突如発現したそれに、戸惑い、怖れている。
その姿は
内から湧き出る何かを、必死で抑え込んでいるようにも見えた。
34 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/18(土) 22:21:15.38 ID:aFMhqpbg0
一週間後 洞窟近辺
勇者「(森の時から疑問だったが、妙に魔物が寄って来るな)」
勇者「(手間が省けるし効率も上がるのだから、本来なら良しとする)」
勇者「(だが、姿を隠しても見付かるのは、おかしい)」
勇者「(まるで何かに引き寄せられているような……)」
勇者「ちっ、駄目だな。あれから、色々と考え過ぎている。水でも被るか」
35 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/18(土) 22:22:54.96 ID:aFMhqpbg0
洞窟近辺・川
勇者「随分と汚れていたんだな。全く気にならなかった」
勇者「返り血か、髪も真っ黒だ」
バシャ……ガシガシッ
勇者「たまには、水浴びも良いかもな。すっきりする」
勇者「ん、あれは」
川から出ようとした時、一体の魔物が現れた。何かに、引き寄せられているかのようだ。
彼の存在には、全く気付いていない。
36 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/18(土) 22:24:26.49 ID:aFMhqpbg0
勇者「(何故、オレに向かって来ない? 奴は何を見ている?)」
剣を手に取り岩場に身を潜め、魔物の行動を観察。
どうやら、川縁に置かれた防具に向かっているようだ。
勇者「(食料は携帯していない。一体何に……まさか、防具か?)」
魔物は、彼に引き寄せられていたわけでは無かった。
彼が身に付けていた防具、それに引き寄せられていたのだ。
魔物は防具に噛み付き、爪を立て、引き裂く。
勇者「(なる程、そういう仕掛けだったわけか)」
一体何と勘違いしているのか、魔物は防具を喰らってしまった。
37 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/18(土) 22:26:09.70 ID:aFMhqpbg0
勇者「防具のみを喰らい、衣服には損傷が無い」
勇者「何かが塗り込まれていたのか、そういう素材で造られたのか……」
勇者「ともかく、それによって、多数の魔物が引き寄せられていた」
勇者「くく、はははっ」
勇者「これではまるで、魔物ではなく、オレを排除したいかのようだな」
口元を歪め、不敵に笑う。
彼は、気付いているのだろうか?
勇者「オレは馬鹿だ。よくよく考えれば、怪しい所ばかりじゃないか」
確実に、変化、している事に。
38 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/18(土) 22:28:48.67 ID:aFMhqpbg0
洞窟前
勇者「戻って来てしまった。いや、魔物は排除したわけだし、報告ぐらいしても問題は無い」
勇者「命に逆らったわけでも……そう!! 魔物の根絶が目的なのだか」
???「一人でブツブツ言ってる所悪いけど、何してるの?」
勇者「!! あ? はぁ、何だ、お前か」
ピクシー「ひっどいなーって言うか、どうしたの?」
勇者「いや、此処一帯の魔物は排除したんでな、長老にでも、その…」ポリポリ
39 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/18(土) 22:32:13.53 ID:aFMhqpbg0
ピクシー「言わなくても、みんな知ってるよ?」
勇者「は? 何故」
ピクシー「私が隠れてアナタを尾行して、報告してたからっ」
ピクシー「本当は優しいんだね、アナタって」クスッ
勇者「やかましい。それより、皆はどうだ? 悲しくなってないか?」
ピクシー「……大丈夫、みんな喜んでる。お礼が言いたいなーって、言ってた」
ピクシー「せっかくだし、顔見せてあげなよ? ねっ?」クイッ
勇者「そう、だな」
40 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/18(土) 22:34:34.47 ID:aFMhqpbg0
一旦休憩。
41 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[sage]:2014/01/18(土) 22:44:00.90 ID:89zWrRX0o
乙
面白い
期待
42 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/18(土) 23:11:23.81 ID:aFMhqpbg0
蜀埼幕
43 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/18(土) 23:12:39.26 ID:aFMhqpbg0
洞窟内
長老「彼女から話しは聞いていたよ。本当に、ありがとう」
長老「皆が、君に感謝しているよ」
勇者「どの道、魔物は排除しなければならなかった。気にするな」
ピクシー「あっ、素直じゃなーい。さっきまで、うじうじしてたクセに」
勇者「やかましい、目の前で飛ぶな」
長老「ふむ、変わるものだな」
勇者「変わる? 何がだ?」
44 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/18(土) 23:15:20.05 ID:aFMhqpbg0
長老「君だよ。一週間前に初めて君を見た時、感情の欠片も見えなかった」
長老「混乱していたのか、君は激昂したが、それでも人間味は薄く感じられたよ」
長老「しかし今は、表情も声にも、温もりがある。生きている」
勇者「生きているのは、当たり前だろう」
長老「そういう意味じゃない。何と言えば良いのか……」
長老「血が通ったと言うか。優しい心を、持っているよ」
ピクシー「うんうん、アナタは優しいんだよ?」
45 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/18(土) 23:17:39.06 ID:aFMhqpbg0
勇者「……長老」
長老「何かね?」
勇者「オレは今、揺らいでいる。聖王様に疑念を抱いている」
勇者「追い出す以外に道は無かったのか、貴方達が悲しまずに済む方法は無かったのか」
勇者「聖王様は、絶対だ。こんな事は考えてはならないのに、そればかりが、頭を過ぎる」
ピクシー「…………」
長老「確かに我々、下級市民は追い出された。しかし、救われた者が居るのも事実」
長老「未だに恨む者も居るだろうが、現状は変えようが無いのだよ」
46 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/18(土) 23:18:55.01 ID:aFMhqpbg0
長老「私個人としては……」
勇者「構わない。はっきり言ってくれ」
長老「魔物が消えても、人が変わらなければ、世界は変わらない」
長老「平和や安息。それを求めるあまり、人は醜くなってしまった」
勇者「…………」
長老「皆が優しく生きられれば、他者を労り、真に愛すれば、こうはならなかった……かもしれない」
長老「爺の理想に過ぎないがね」
勇者「聖王様には、それが無いと?」
47 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/18(土) 23:20:42.85 ID:aFMhqpbg0
長老「追い出された身としては、そうなるのかも知れないな」
長老「向こうでは、どうか知らんがね」
勇者「……ありがとう。話せて良かった」
ピクシー「へー、アナタって、お礼言えたんだねっ」ツンツン
長老「ふむ。何か、決めたのかな?」
勇者「ああ、一つ決めたよ。確か、コイツが言うには……」ガシッ
ピクシー「ち、ちょっと、離してよ!!」
勇者「他にも此処と同じような場所があるらしい。其処へ行こうと思う」
48 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/18(土) 23:22:58.37 ID:aFMhqpbg0
ピクシー「バカッ、ヘンタイ!! うー!!」ジタバタ
長老「それは何故かな?」
勇者「何かが、そう命じるからだ。悲しみは、見ていて気分の良い物じゃないからな」
ピクシー「………かっこつけちゃって」
勇者「何とでも言え」
長老「なら、今日は此処に泊まって行きなさい。きっと子供達も喜ぶ」
長老「それに見た所、防具を失ったようだね。替えの物を造らせよう」
49 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/18(土) 23:24:08.37 ID:aFMhqpbg0
勇者「それは有り難いが、一日で造れるのか? 材料はどうする?」
長老「君が倒した魔物の骨や皮があれば、すぐに造れる」
長老「物作りが好きな人物が居るからね」
勇者「そうか、なら早速取って来よう」パッ
ピクシー「わっ!?」トスン
勇者「おい」
ピクシー「いたたっ、なによー?」
勇者「お前も来てくれ」
50 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/18(土) 23:26:03.69 ID:aFMhqpbg0
ピクシー「道案内はいらない……とかって言ったクセに」
勇者「それは、済まなかった」
ピクシー「それだけー?」ニヤニヤ
勇者「お前が居ないと……」
勇者「いや、違うな。お前が傍に居ると安心するんだ。頼む」
ピクシー「なぇ? あ、あっそ。別にいいけど?」プイッ
勇者「そうか、助かる」
ピクシー「ほ、ほらっ、早く行こっ」
51 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/18(土) 23:32:21.64 ID:aFMhqpbg0
洞窟周辺
ピクシー「うわっ、気持ち悪いぃ」
勇者「嫌なら見るな」
ピクシー「そうする。うぇっ」
勇者「(魔物、か……)」
勇者「(以前の世界では魔王が原因だったが、此処にも魔王が居るのだろうか?)」
勇者「一つ聞きたい」
ピクシー「なーに?」
勇者「何故、魔物が蔓延る? 原因は何だ」
52 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/18(土) 23:38:18.69 ID:aFMhqpbg0
ピクシー「はぁ? そんなの、人間が造ったに決まってるでしょ」
勇者「待て、造っただと。そんな馬鹿な話し」
ピクシー「本当だよ!! 嘘じゃないよ!?」
ピクシー「ずーっと昔に、戦争で人間が死ぬの禁止!! って言った人がいたの」
ピクシー「えーっと、それで変なバイ菌を造って、動物とかに移して……それが魔物になって、えーっと」
勇者「バイ菌? 風邪みたいなものか」
ピクシー「うーん、詳しくは分からないけど、それが魔物の始まりだよ」
ピクシー「でもね? そのバイ菌が人間とかにも移っちゃって、それで世界がこんな風になっちゃったの」
勇者「彼等は大丈夫なのか? バイ菌が移ったりしないのか」
53 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/18(土) 23:40:16.59 ID:aFMhqpbg0
ピクシー「わくちん? を摂取したから大丈夫だって聞いた」
勇者「よく分からないが、大丈夫なんだな」
ピクシー「大丈夫じゃなかったら、とっくに魔物になってるよ」
勇者「……それも、そうだな」
勇者「いやちょっと待て。だったら、お前のような妖精は何だ?」
勇者「まさかお前も、そのバイ菌とやらで」
ピクシー「ううん。私はちょっと違う。私は……えっ?」
54 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/18(土) 23:42:19.61 ID:aFMhqpbg0
勇者「どうした?」
ピクシー「ま、魔物が、魔物を食べてる」
勇者「奴は川で…そうか、今は奴が魔物を引き寄せて……っ、マズい」
ピクシー「ど、どうしたの?」
勇者「説明している時間は無い。オレは、奴等を殺さなければならない」
勇者「いいか、お前は此処に居ろ。絶対に来るな」ダッ
55 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/18(土) 23:44:22.28 ID:aFMhqpbg0
勇者「(始末すべきだった。ちょっと考えれば、予想出来た筈だ!!)」
見れば、その魔物に他の魔物が群がっている。
防具を喰らった魔物だ。
あれが多数の魔物に喰われれば、【魔物を引き寄せる魔物】が増え続けるだろう。
勇者「(ぐずぐずしていると、魔物が増える。銃で数体片付ければ、どうにか出来る)」
56 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/18(土) 23:46:33.93 ID:aFMhqpbg0
遠距離だが、当たらぬ距離では無い。
頭部に狙いを定め、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ……
しかし、四体目の頭部に照準を合わせ引き金を引いた時、切れた。
勇者「流石に、そこまで都合良く行かないか。仕方無い」
魔物は共食いに夢中、見向きもしない。防具に含まれる物質は、魔物を虜にしているのだろうか。
行くしかない、飛び込むしかない。
まだ離れているとは言え、もし洞窟内に侵入されでもすれば、彼等に為す術は無い。
一体が入れば、それに惹かれて複数体がやってくるだろう。
57 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/18(土) 23:49:22.54 ID:aFMhqpbg0
勇者「そうなる前に、何とかする。元はと言えば、オレの不始末なのだから」
十体程だろうか、それも殆どが大型。
この世界の誰よりも戦闘経験のある彼といえど、流石に厳しい数だろう。
勇者「うおぉぉぉ!!」
不意打ちが目的ならば、決してしてはならない行為だが、目的は別にある。
共食いを中断させ、注意を引く。
それは、成功した。
魔物は振り向き、彼を認識する。
58 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/18(土) 23:50:30.22 ID:aFMhqpbg0
勇者「それでいい」
そこからが、早かった。
手前一体を斬り伏せると中心へ飛び込み、一気に数体を斬り伏せる。
敢えて間に入り攻撃範囲を狭める、が……
勇者「ちっ、お構い無しか」
極度の興奮状態にあるのか、滅茶苦茶に剛腕を振るう。
間一髪で避けたが、危うい。
何よりも厄介なのは、逃げ出そうとする魔物。
59 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/18(土) 23:52:37.09 ID:aFMhqpbg0
勇者「逃がすか……」
剣を投擲、円を描いた剣は見事命中し、首を切断。
しかしそれ故に体勢が崩れ、動作が遅れてしまう。
待っていたのは、迫り来る剛腕。
勇者「がっは!!」
咄嗟に両腕で防ぐが、魔物の剛腕の前では枯れ枝同然。
あらぬ方向へ曲がった腕、最早、剣を握る事は出来ないだろう。
吹き飛ばされた先は、もう一体の魔物の足下。
60 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/18(土) 23:55:02.68 ID:aFMhqpbg0
魔物は躊躇い無く、彼を踏み潰す。
ピクシー「やめてっ!!」
勇者「なっ!? 馬鹿、早く逃げろ!!」
彼と魔物の間に割って入り、彼女は叫ぶ。
通じずとも、叫ぶ。
彼女の行為は、無駄。
命を晒すだけの、無謀な行動。
そして
ピクシー「あぅ…うぅ……」
赤子の首を捻るが如く、容易く掴まれ、万力のような力で締め上げられてしまう。
61 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/18(土) 23:58:02.68 ID:aFMhqpbg0
勇者「止めろっ、そいつを離せっ!! 殺すぞ!!」
両腕を失った者の恫喝など通用する筈も無く、徐々に、死に近付いて往く。
ピクシー「あぐっ!!」
『愛してる』
『死なないで!! あなた!!』
『奴等にとっての、悪魔に…』
勇者「ぐッ、がッあぁぁぁぁっ!?」
瞬間、変貌。
体中に光のヒビが入り、同時、骨格が叫び、筋肉がうねる。
皮膚は硬質なものに変化、爪は鋭い刃へ。
彫刻のようだと評された美しい顔は、怒りに染まり、最早面影は無い。
切れ長の瞳、裂けた口、牙。
逆立った頭髪は、角にすら見えた。
黒に塗り潰されたい裸体には、幾つもの紅い線が走っている。
煌めくそれは、己に血が通っている事を、証明、主張しているかのようだった。
62 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 00:01:07.42 ID:/z34fs4B0
瞬時に彼を上位の存在と認識した魔物は、その姿に恐怖した。
その一瞬で、全てが決定する。
勇者「シッ!!」
跳躍、顔面に手刀を突き刺し、肘から突出した骨格の刃が、彼女を掴む腕を切り裂く。
指を切り落とし、すぐさま彼女を解放。
間を置かず後ろへ跳び、蹴りを放つ。
其処には、彼の腕を砕いた魔物。
蹴り脚は腹部を貫通しているが、終わらない。
勇者「ガッアァァッ!!」
怒りとは別種。
嘆き、苦しんでいるかの様である。
その悲痛な叫びは、大地を揺らし、何処までも轟く。
勇者「カッ」
貫通した脚をそのままに後方一回転、それは腹を裂き、頭上へと抜けた。
63 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/19(日) 00:06:54.60 ID:/z34fs4B0
勇者「ハァッ、ハァッ…魔物に、バイ菌でも移されたか?」
勇者「ははっ、別にどうでも良いか。取り敢えず、今は防具の欠片を処分しないとな」
勇者「捨てたら喰うだろうし、川に流しても同じ。解決にはならないな」
ピクシー「…………」
勇者「脈は、ある。良かった」
彼女は、生きている。
だが、未だ意識を失っている。もたもたしては居られない。
少しだけ悩んだ結果……
勇者「オレが、喰うか」
彼は、取り敢えず喰った。
64 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/19(日) 00:08:58.19 ID:/z34fs4B0
ーーーー
ーーー
ー
ピクシー「ん、あれっ?」
勇者「ようやく気が付いたか、良かった。もうすぐ洞窟に着くぞ」
ピクシー「……アナタ、何で上半身裸なの?」
ピクシー「まさか、私が気を失ってる間に!!」
勇者「やかましい」
勇者「袋を忘れたから、服と毛皮で魔物の骨を包んでいるんだよ」
ピクシー「ふーん。寒くないの?」
65 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/19(日) 00:11:30.47 ID:/z34fs4B0
勇者「背中は温かい。落ち着く」
ピクシー「ヘンタイだねっ」
勇者「降りろ」
ピクシー「やーだね。アナタ、寒そうだし、くっ付いててあげる」
勇者「おい」
ピクシー「なーに?」
勇者「その、助かった。ありがとう」
ピクシー「……うんっ」ギュッ
66 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 00:13:33.08 ID:/z34fs4B0
洞窟前
勇者「はぁ、もう真っ暗だな。重いだろうが、頼む」
ピクシー「ここに来るまでは魔物出なかったし、入っても大丈夫じゃない?」
ピクシー「だって、防具の破片は処分したんでしょ?」
勇者「まあな。だが、破片を喰らった奴を一匹仕留め損ねた」
勇者「此処に現れない、という保証は無い」
ピクシー「そっか。じゃあ、コレ渡し終わったら服持ってくる」
勇者「ああ、頼む」
ピクシー「じゃっ、ちょっと待っててね。うっ、重っ」フラフラ
67 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/19(日) 00:15:26.62 ID:/z34fs4B0
勇者「逃げた一匹は、オレだ。とは言えなかったな」
勇者「あれだけ返り血を浴びれば、バイ菌も移るか。わくちん、があれば治るのだろうか?」
勇者「まあ、下半身を露出せずに済んで良かった」
ピクシー「おーい、服持って来たよー」
勇者「(何となくだが、あいつには嘘を吐きたくない)」
勇者「(でも、話したくもない。何だ、この感覚……オレは変わった、のか?)」
68 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/19(日) 00:17:03.49 ID:/z34fs4B0
洞窟前
パチパチッ…パチッ
勇者「お前まで、外に出る必要は無いだろうが」
ピクシー「私がそうしたいから、いいの」フフン
勇者「(話すべきだ。コイツにだけは、話した方がいい)」
勇者「ちょっと、いいか」
ピクシー「どーしたの?」
勇者「今から話すのは、本当の事で、嘘じゃない」
ピクシー「話して? 私、ちゃんと聞くから」
69 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 00:19:12.08 ID:/z34fs4B0
勇者「お前が魔物に掴まれて、気を失った時、オレは悪魔? になったみたいだ」
勇者「全身は真っ黒、幾つもの紅い筋。それが紋様みたいに……折れた両腕も治っていた」
勇者「後、破片を喰った」
ピクシー「は、はぁっ!? バッカじゃないの?」
勇者「お前は死にそうに見えたし、迷ってる暇もなくて、つい」
ピクシー「つい、ってバカ。大体、悪魔なんて言ってるけど、アナタは人間でしょ?」
勇者「勿論人間だ。良く分からんが、本当に体が変わったんだ。バイ菌の所為かもな」
ピクシー「えっ? アナタ、わくちん、してないの?」
70 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/19(日) 00:20:58.37 ID:/z34fs4B0
勇者「そんな物を貰った憶えは無い。この世界に来て、まだ日が浅いんだ」
ピクシー「ん? ちょっと待って、この世界って、どういう意味?」
勇者「オレは、此処とは違う世界に居たんだ。言ってなかったか?」
ピクシー「聞いてないし。しかも違う世界って……アナタ、頭大丈夫?」
勇者「実際、気付いたらこの世界にいたんだ。色々と違って見えた」
ピクシー「うーん。じゃあ、信じた上で聞くけど、何が違ったの?」
勇者「建造物、人間、武器。銃なんて、以前の世界では考えられない代物だった」
71 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 00:23:17.52 ID:/z34fs4B0
ピクシー「建造物と人間は、どう違ってた?」
勇者「人間は、お前みたいにころころ表情を変えない」
勇者「誰かが魔物に殺されても、あまり悲しそうでは無かったな」
勇者「建造物は、上手く言えないが、もっとゴツゴツしていた。四角くて、やたら高い建造物なんて存在しない」
勇者「だが、聖王だけは変わらないな。考えると、おかしい事だらけだ」
ピクシー「……アナタの、名前は?」
勇者「勇者、と呼ばれていた」
72 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/19(日) 00:25:39.85 ID:/z34fs4B0
ピクシー「そっか、アナタが勇者なんだ」
勇者「オレを知っているのか?」
ピクシー「ちょっと違う。私は【勇者】を知ってるだけ」
勇者「話してくれないか?」
ピクシー「今から話すのは、本当。だから、信じて」
勇者「信じる」
彼女は、ゆっくりと語り始めた。
自分と、勇者と、ある研究者の話しを……何かを辿るように。
73 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/19(日) 00:28:54.19 ID:/z34fs4B0
語られた事実。
それは荒唐無稽で、理解が及ばず、俄に信じ難い内容であった。
造られた人間、造られた妖精、非人道的実験。
それを結ぶのは、主任である一人の男。
その人物とは、彼女の父であった。
聖王に、ある計画を任され、研究に研究を重ねる日々。
当初、彼に迷いは無かった。
74 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/19(日) 00:30:49.07 ID:/z34fs4B0
人工的に新たな生命を生み出すという、神に背く実験。
彼は、それに高翌揚し、酔いしれた。
あたかも、自身が神になった感覚でいたのかも知れない。
我が子が、実験体に選ばれるまでは……
彼は神などでは無かった。
聖王の命に従う隷に過ぎなかったのだ。
逆らう事など出来ず、結果として、彼は娘を失った。
眠り続ける我が子を見て、彼は決意する。
何としても、甦らせる……と。
75 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/19(日) 00:32:13.80 ID:/z34fs4B0
だが、何をしようと、娘は目覚めない。
そこで、彼は諦めた。
娘を甦らせる事を諦め、娘を【生み出す】事にしたのだ。
別種。そう、人間でなくとも良い。
正しく、狂っていたのだろう。通常の発想では無い。
あらゆる技術と知識を駆使。
幾度の失敗を経て、別の生物として生まれ変わらせる事に成功した。
いや、この時点では、まだ成功では無い。
76 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/19(日) 00:34:25.42 ID:/z34fs4B0
問題は、記憶の引き継ぎ。
その点で、彼は何度も躓いた。
娘本体から記憶を読み取り、生み出した生物に刷り込む。
だが、上手く行かない。その為、多くの脳を、消費した。
だが、遂に結実する。
全てとは行かず、知識に偏りもあるが、記憶を移植する事には成功し、娘を新たに生み出した。
それが彼女、妖精・ピクシーである
77 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 00:37:09.76 ID:/z34fs4B0
特に、記憶伝達、情報伝達の技術は高く評価され、皆は彼を天才だと持て囃した。
しかし、彼は怖れていた。
やっと甦らせた娘が、再び実験の道具にされてしまうのではないか?
彼は、綿密な計画を立て、下級市民が新たに追放された際、彼女を逃がしたのだ。
疑われる事も当然考慮していたが、皮肉にも実験への【貢献】が、それをさせなかった。
娘を甦らせようとしていたその間。
平行していたもう一つの実験があった。
それが、勇者。
魔物を廃し、人類に平和を齎す者。
78 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 00:41:01.47 ID:/z34fs4B0
彼が改良を加えた情報伝達システムをフルに活用し、洗脳。
より従順で、完璧な兵を生み出す。
だが、肉体の強化・成長促進により、寿命が短いという問題点が発覚。
加えて、人型の生物を造るのが至難。
魔物の根絶が目的ならば、人間でなくとも良いのでは?
と、研究者は聖王に掛け合ったが、それを拒否。
民に希望を与える存在は、美しくなくてはならない。
それが、拒否した理由。
研究内容と同じく、聖王も狂っているのだろう。
彼女が知るのは、此処までである……
79 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/19(日) 00:45:44.49 ID:/z34fs4B0
今日はここで区切り。多分、次の投下で終わると思います。
早くて2日後、遅くなったらごめんなさい。
80 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[sage]:2014/01/19(日) 02:56:41.69 ID:tw+u4nNB0
乙
81 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/19(日) 13:44:09.00 ID:2LPZ8m9b0
今日で終わりそうだから、投下する。
82 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 13:48:03.06 ID:2LPZ8m9b0
それから、二カ月が経った。
二人は変わったかと言うと、そうでもない。
勇者は、彼女から語られた事実に混乱したが、受け入れた。
いや、受け入れたのか理解したのかも分からないが、否定はしなかった。
その時、勇者が口にしたのは
「そうだと言うのなら、そうなのだろうな。突拍子も無い話しだが、信じる」
「ただ、聞いておいて何だが、あまり関心が無いんだ」
「お前が傍に居てくれれば、それで良い。そんな気がする」
83 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 13:50:04.50 ID:2LPZ8m9b0
それだけだった。
彼女は頬を朱に染め、それを受け入れ、二人は旅を始めた。
世界を知り、人々を救う為の旅である。
悪魔化については、不明。
知る術は、ドームにある。
ドーム内の研究施設に行けば、すぐに判明するだろう。
84 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 13:51:44.32 ID:2LPZ8m9b0
だが勇者は、危険を冒してまで行く気にならず、其処までして知りたいとも思わなかった。
屈託無く笑う彼女が傍に居れば、それだけで、心が満たされたからだ。
現在、二人は瓦礫の街に居る。
地下の人々と出逢い、少しでも安心して暮らせるよう、地上の魔物を排除。
地下の人々は大いに喜び、感謝し、歓迎した。
聖王国に追放、見放された彼等の心に、希望が灯りつつあった。
『勇者なら、間違いを正してくれるのではないか?』
85 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/19(日) 13:53:14.01 ID:2LPZ8m9b0
聖王を打ち倒すとかでは無い。
外界でも生きて行けるのだと、そう思い始めていたのだ。
しかしその夜、予想外の人物が、二人の前に現れた。
86 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 13:54:22.48 ID:2LPZ8m9b0
ーーーー
ーー
ー
「目標を確認」
倒壊したビルの上、其処には、ライフルを構える女性の姿。
気高さと美しさが、月明かりに照らされ、より一層際立っている。
彼女の装備は、当初の勇者が着用していた物と同じ。
一つ違いがあるとすれば、彼女に魔物が寄ってこない事。
スコープ越しに目標を観察する瞳には、感情らしきものは見受けられない。
87 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 13:55:32.58 ID:2LPZ8m9b0
「勇者を抹殺、する」
が、彼女に異変が起きた。
引き金に掛けた人差し指が、動かない。何やら、苦しそうである。
「頭が、っ…」
それは、勇者が体験した痛みと同一の物。だが、彼女に『それ』は有り得ない。
過程は違えど、記憶は消去、洗脳された、完全なる人形なのだから。
88 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 13:57:30.82 ID:2LPZ8m9b0
事実、勇者を追う最中。
外界に住む人々に聞き込みを行った際、こんな風にはならなかった。
誰が、どんな表情を見せようと、彼女は変わらなかった。
彼とは違い、彼女は一切の疑問も湧かない。
「予定変更。剣による近接戦闘」
今までに無かった出来事。
頭痛は止まず、照準に狂いが出ると判断した彼女は、狙撃を断念。
彼が一人であったなら
此処に居るのが彼女でなければ
狙撃は、確実に成功していた事だろう。
89 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 13:59:37.01 ID:2LPZ8m9b0
「この感覚は、何」
彼女は、聖女という。
勇者の次に造られた存在である。
聖王の命により、欠陥品である彼を抹殺し、遺体を持ち帰る。
より良い【勇者】を造るには、彼が必要だと考えたのだろう。
結果、それが災いを齎す事になるなど、聖王には予想出来ていない。
人間に、管理出来る筈も無い。
何故ならそれは
偶然か、或いは、運命と呼ばれるものなのだから。
90 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 14:01:46.80 ID:2LPZ8m9b0
瓦礫の街 地上
ピクシー「まだ心配なの?」
勇者「オレが? 何を心配する」
ピクシー「だって、違う街とかに来ても、いつも外で寝てるから」
ピクシー「魔物が寄ってくるの、心配なのかなーって」
勇者「あぁ、言われてみれば確かに、あの時以来、習慣になっていたのかもしれないな」
勇者「まあ、怖いんだろう」
ピクシー「誰かが悲しむのが?」
91 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 14:04:11.53 ID:2LPZ8m9b0
勇者「ああ、そうだ。折角、沢山の人々と出会えたのに、そんなのは御免だ」
ピクシー「魔物の毛皮着てるクセに、変なのっ」クスッ
ピクシー「今は慣れたけど、あの時は笑ったなー」
勇者「頑張って作ってくれた服なんだ。笑うな」
勇者「……確かに、やり過ぎな気もするけどな、コレは」ファサッ
ピクシー「あはははっ、ダメっ、止めてっ、お腹が苦しい」バタバタ
ピクシー「腰巻きにマント、弓と槍まで作ってくれたもんねっ」
92 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 14:05:47.87 ID:2LPZ8m9b0
勇者「笑いすぎだぞ、全く。腰巻きやマントはともかく……」
勇者「この鎧は優れているし、弓と槍にも満足してる」
勇者「凄い技術だ。またいつか、一瞬に会いに行こう」
ピクシー「うんっ」ギュッ
勇者「おい、止めろ」
ピクシー「って、言うだけで嫌がらないよね、アナタってさ」モゾモゾ
ピクシー「はぁー、暖かい」
93 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 14:07:21.09 ID:2LPZ8m9b0
勇者「マントを馬鹿にしていた割に、気に入ってるな」
ピクシー「嫌いだなんて言ってないし、ふかふかしてて、好きだよ?」
勇者「(いつまでも、このままでいられたら。それが、幸せってやつなのか?)」
勇者「(それとも、愛してるってやつか? 愛してる……か、悪くないかもな)」
ピクシー「いたっ」ズキンッ
勇者「おい、どうした?」
ピクシー「分かんない。なんか、急に頭が……」ピクッ
ピクシー「何か、来る。アナタ、気を付けて」
94 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 14:08:08.76 ID:2LPZ8m9b0
勇者「魔物か」
ピクシー「違う、魔物じゃ…ない」ズキンッ
勇者「おい、無理するな。お前は地下に」
ピクシー「出来ないよ、そんなの。絶対、離れたくない」
ピクシー「私は、アナタの傍にいる」
勇者「だが、かなり顔色が悪い」
ピクシー「傍に居てって、そう言ったのは、アナタだよ?」
勇者「……そうだったな、分かった。オレの後ろに居ろ」
勇者「オレから、絶対に、離れるな」
95 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 14:11:38.95 ID:2LPZ8m9b0
ーーー
ーー
ー
勇者「お前は、誰だ?」
聖女「私は聖女。勇者は、貴様……貴方で間違い無いな」ズキッ
勇者「(あの装備は……と言うことは、コイツも同じなのか?)」
勇者「ああ、勇者はオレで間違い無い。何の用だ」
聖女「聖王様より、貴方の抹殺を命じられた。任務を遂行する」
勇者「随分、素直に話すな。勝てる自身があるからか?」
聖女「勿論」
ピクシー「……私、なの?」
96 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 14:13:09.92 ID:2LPZ8m9b0
勇者「何だって?」
ピクシー「やっぱり、私の体。なんで……」
ピクシー「二度と目覚めないって、言われてたのに」
聖女「何を言っている。私は、聖王様の力により生まれた」
聖女「お前などでは、無い」
勇者「(何がどうなってる。聖女が、コイツの本物?)」
勇者「(いや待て、体は残っていると言っていた)」
勇者「(それにカガクとかを使って? 駄目だ、分からない。)」
97 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 14:14:18.28 ID:2LPZ8m9b0
ピクシー「聖女は、忘れてるだけだよ」
ピクシー「お父さんや、色んな研究の事も……」
ピクシー「私は、お母さんから生まれた。聖王なんかじゃ…ない」ズキンッ
聖女「っ、何だ。この、痛み」ズキンッ
何かが繋がっている。
恐らくそれは、記憶伝達時の、名残。
共鳴、のようなものだろう。
98 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 14:15:12.76 ID:2LPZ8m9b0
勇者「おい、しっかりしろ!!」
二人共に、その場に崩れ落ち、止まない頭痛に悶えている。
特に苦しんでいるのは、ピクシー。
汗も酷く、呼吸も荒い。
聖女「(知らない、こんなの知らない。見たく無い、嫌だ……)」
鍵は、開いた。
凄まじい量の記憶が、彼女に流れ込んで往く。
99 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 14:15:52.65 ID:2LPZ8m9b0
父や母、飼っていた犬、花……
そして、実験。
聖女「いやっ、助けて……お父さん、助けて」
混濁、彼女は記憶の中でもがいている。いや、体験しているのだろう。
だがそれも一瞬。
次に見た景色は、彼女の物では無かった。
それは、もう一人の自分の記憶。
100 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/19(日) 14:16:24.07 ID:2LPZ8m9b0
ザザザザザザ……
101 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/19(日) 14:17:07.76 ID:2LPZ8m9b0
『それだけー?』
『お前が居ないと……』
『いや、違うな。お前が傍に居ると安心するんだ。頼む』
『やめてっ!!』
『なっ!? 馬鹿、早く逃げろ!!』
『ようやく気が付いたか、良かった。もうすぐ洞窟に着くぞ』
『……アナタ、何で上半身裸なの?』
『まさか、私が気を失ってる間に!!』
102 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/19(日) 14:17:55.25 ID:2LPZ8m9b0
『ヘンタイだねっ』
『降りろ』
『やーだね。アナタ、寒そうだし、くっ付いててあげる』
『おい』
『なーに?』
『その、助かった。ありがとう』
『……うんっ』
『何かが、そう命じるからだ。悲しみは、見ていて気分の良い物じゃ ないからな』
『………かっこつけちゃって』
『何とでも言え』
103 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 14:19:05.64 ID:2LPZ8m9b0
『そうだと言うのなら、そうなのだろうな。突拍子も無い話しだが、信じる』
『それに何というか、あまり関心が無いんだ』
『お前が傍に居てくれれば、それで良い。そんな気がする』
104 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/19(日) 14:19:55.56 ID:2LPZ8m9b0
伝わってきた情報、記憶。
それは何よりも温かく、心地の良い物だった。
しかし、その情報を得てしまった為に、彼女は暴走する。
聖女「其処は、私の……」ギリッ
ピクシー「はぁっ、はぁっ……うっ」ズキンッ
勇者「しっかりしろ。っ、地下に連れて行けば、何とか」ギュッ
105 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 14:21:21.84 ID:2LPZ8m9b0
生まれ出たのは、嫉妬。
頭痛に耐え、彼女は立ち上がった。
彼女の想いを知った彼女は、感情に目覚めたのだ。
そして、彼の想いは、自分では無く、彼女に向けられている。
怒り、憎しみ。
本来、一つである彼女は、分かたれた為に、悲劇を生む。
聖女「アナタと共に居たのは、私」ズキンッ
聖女「ソレは、私の偽物。其処は、私の場所っ!!」グッ
106 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/19(日) 14:22:15.01 ID:2LPZ8m9b0
彼に抱かれる彼女に向けて、発砲。
奪われたと、そう感じたのだろう。
いや、そもそもから違う。彼女は、ずっと傍に居たのだ。
彼女(ピクシー)は、彼女(聖女)に違いないのだから。
ピクシー「あっ…」
勇者「えっ……お、い。なに…何で」
聖女「私は、私は此処に居る!!」
聖女「アナタは、私に傍に居て欲しいって、そう言った!!」
107 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 14:23:12.44 ID:2LPZ8m9b0
ピクシー「はっ、はぁっはぁっ……」
勇者「……頼む。目を、開けてくれ。いつもみたいに、笑ってくれ」ギュッ
ピクシー「私、は、アナタ、を、愛してる」
ピクシー「だ、から、私を、嫌いに、なら、ないで? ねっ」ニコッ
ガクンッ………
聖女「私が、アナタの傍、に…」ズキンッ
聖女「あ、れ?」ブツッ
ドサッ……
108 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/19(日) 14:26:12.66 ID:2LPZ8m9b0
ーーー
ーー
ー
勇者「何が、何だか……でも、オレは」
ピクシー「……………」
聖女「………………」
勇者「オレは、【彼女】を失ったんだな」
勇者「涙、まさか自分が流すとは思わなかった……」
勇者「は、はははっ…くっ、うぅっ」
109 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 14:27:13.44 ID:2LPZ8m9b0
勇者「間違ってる!! 全て!! 世界も、人間も、狂ってる!!」
勇者「オレは、誰も悲しまないようにしたかった!!」
勇者「ずっと、ずっと共に居たかっただけだ!!」
勇者「何故奪う!! 彼女が何をした!! ふざけるな!!」
勇者「ガアァァァァッ!!」
吼える。
天を仰ぎ、月を睨み、只々、吼える。
110 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 14:27:58.03 ID:2LPZ8m9b0
勇者「………そうだ。人でありながら、人を苦しめ、支配するなど」
勇者「神の如く振る舞うなど、許されない」
勇者「聖王。お前の、言う通りだ」
勇者「悪は、滅ぼさなければならない」
111 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 14:29:23.45 ID:2LPZ8m9b0
「お前が、今も尚、そうであるように」
「オレは、オレ自身が、お前を悪だと断定し、裁く」
112 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/19(日) 14:32:22.03 ID:2LPZ8m9b0
区切り。続きは夜に投下します。
113 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[sage]:2014/01/19(日) 14:52:19.70 ID:W1S8Zf2ZO
おつ
114 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[sage]:2014/01/19(日) 14:54:04.49 ID:USClFq9Qo
乙
悲しいな
115 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/19(日) 18:45:15.36 ID:2LPZ8m9b0
書けたので、投下。
116 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 18:46:55.29 ID:2LPZ8m9b0
その日以降、世界は闇に包まれた。
ドームに住む者は、一時の出来事だと、深くは考えなかった。
誰かが、誰かが何とかしてくれるだろう、と。
麻痺している。
いつまでも、世界に存在していられると錯覚しているのだ。
終わりなど、滅びなど、彼等には考えられない。
現実に生きながら、現実を生きていない、彼等には。
117 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 18:47:51.87 ID:2LPZ8m9b0
そんな彼等には、知る由も無い。
魔物やウイルス、新たな生命の創造。
それは命を、神を冒涜する行為に他ならない。
人間が生み出し、行ってきた多くの罪、それを裁く存在。
ウイルス等という紛い物より、もっと怖ろしく、抗いようの無い、大いなる存在。
正に、神と呼ぶべき、絶対の存在の目覚め。
118 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 18:49:42.01 ID:2LPZ8m9b0
聖王の言う通りである。
彼は、人間では無い。
彼は、暗黒に染まり、滅びの化身と化したのだ。
たった一人の女性、彼と共に過ごした唯一の【人間】。
彼女を失ったが為に、彼女を奪ったが為に、世界は滅ぶのだ。
あまりに傲慢で身勝手。
愛する者を失った為に怒り狂い、世界を滅ぼすなど、許されない。
119 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 18:50:47.02 ID:2LPZ8m9b0
だが、彼を許す事など、まして罰する事など誰が出来ようか。
彼は、神。
今や、全てを破壊し尽くさんとする暗黒。
彼は、それだけの力を持っている。
弓を射れば山は忽ち崩れ、歩めば大地が震え、槍は魔を焼き尽くした。
三日三晩、愛する者を背負い、泣き叫びながら、世界を歩き続けた。
彼女と歩んだ道を辿り、怒りを撒き散らし、破壊しながら。
120 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 18:52:43.84 ID:2LPZ8m9b0
そして、辿り着く。
彼の始まりの地であり、王を語り、神を気取る人間が住む場所へ。
目視出来る距離でしかないが、彼女を背から降ろし、彼は弓を手に取る。
「……………」
弓を射ると、ドームを包む防御壁は、容易く砕け散った。
彼には、一つだけ目的がある。
何を破壊しようと、何を奪おうと、彼女を救う。
121 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 18:54:28.15 ID:2LPZ8m9b0
ーーー
ーー
ー
「彼女を救え。さもなくば、殺す」
警備兵など太刀打ち出来る筈も無く、彼は目的の場所へ向かった。
其処は、研究所。
彼と、彼女が生み出された場所である。
「わ、分かった。分かったから殺さッギャアアアッ!!」
「早くしろ。殺しはしない」
研究所に入り、全ての実験、全ての事実を知った彼は、凄まじい勢いで知識を吸収した。
その後、研究員を集め、指示を与え、従わせる為に、数名を殺害。
122 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 18:55:47.22 ID:2LPZ8m9b0
「い、言われた通りにしました。だから、助けて下さい!!」
「血、血がッ!! は、早く助けて」
懇願する研究員達を無視、指示通りかを確かめる。
問題点が無いか、再度点検しているようだ。
「問題は無いでしょう!? お願いします、早く手当てさせて下さい!!」
「黙れ。この部屋から出ろ、脚が無い者は、這ってでも出ろ」
「死にたくなければ、早くしろ」
123 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 18:56:44.99 ID:2LPZ8m9b0
ーーーー
ーーー
ー
全ての研究員は部屋から出たが、全員が深い傷を負っていた。
中には、部屋を出てすぐに息絶えた者もいる。
彼等は神に懇願したが、返ってきた言葉は、無慈悲なものだった。
「その傷では、どの道助からない」
神は、罪人にそう告げると、その場を後にした。
中には口穢く罵る者もいたが、その者は一瞬にして焼失。
他の者達は口を噤み、運命を、受け入れた。
124 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 18:58:23.09 ID:2LPZ8m9b0
ーーーー
ーーー
ー
「びる、だったな。人を見下ろし、神を気取るか」
見上げたのも束の間。
跳躍し、硝子を叩き割り、神は、王の前に立つ。
「な、何だ……貴様はだ…れ?」
「お前を裁く者だ」
気付けば、眼前に立っていた。
驚愕に見開かれた瞳は、絶望に染まっている。
125 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 18:59:09.70 ID:2LPZ8m9b0
王は地を這いずり、神によって踏みつけられる。
叫び、泣き喚き、懇願し、罵り、罪を擦り付け、また叫ぶ。
その一切が、人の暗部を象徴しているかのようだった。
「殺されたくなければ、救われたければ………」
「其処から、飛び降りろ」
割れた硝子窓を指差し、命を下す。
その声には、途轍もない威厳、逆らえぬ力があった。
126 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 19:01:40.84 ID:2LPZ8m9b0
自らを踏みつけ、見下す、大いなる存在。
それがよもや、自身が発案した研究の産物などとは、思いもしないだろう。
王は這いずり、硝子窓を目指す。
「ひひっ、神が言うのだ。飛べば、絶対に助かる筈だ」
「はぁ、はぁ、ふっ、ふぅっ……わぁあああああ!!」
127 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 19:03:57.25 ID:2LPZ8m9b0
「神など存在しない」
「もし存在するなら……」
「彼女を見殺しにする神など、この手で、殺してやる」
128 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 19:19:49.96 ID:2LPZ8m9b0
その後、暗黒は去り、再び、太陽が世界を照らす。
魔は消え去り、人々は真の自由を得た。
彼等は、救われたのだ。
皆は言った。
勇者が闇を打ち払い、光を取り戻したのだと………
129 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/19(日) 19:22:45.75 ID:2LPZ8m9b0
人々は、知らない。
130 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 19:24:10.53 ID:2LPZ8m9b0
世界に光を取り戻したのは
たった一人、たった一つの、笑顔だということを……
131 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/19(日) 19:25:52.16 ID:2LPZ8m9b0
ーーーEND
132 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/19(日) 19:29:40.10 ID:2LPZ8m9b0
最後まで読んで下さった方、ありがとうございました。
133 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[sage]:2014/01/19(日) 19:49:39.45 ID:pHpiULIAO
乙
134 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[sage]:2014/01/19(日) 19:53:22.69 ID:huQPXfouo
終わりか……乙でしたー
ハッピーエンド√ならどうなってたんだろうか
135 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[sage]:2014/01/19(日) 20:04:41.56 ID:Z8Fvl4O+o
おつ
136 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/19(日) 20:04:51.42 ID:jdDn/+tU0
乙
137 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[sage]:2014/01/19(日) 20:05:31.10 ID:UrvUZPVYo
乙!ちょっと駆け足な気がする!
138 :
>>1
[saga]:2014/01/19(日) 21:36:26.27 ID:CMr0Atio0
あげます。
初めに書くべきだったかもしれませんが
アバタールチューナー、真2の設定を混ぜた感じで書きました。
活かせてるかは別です。最後は思い切りシヴァ神から。
分かり辛い部分もあるとは思いますが、感想とかありがとうございます。
依頼出してきます。
139 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
:2014/01/19(日) 21:36:58.45 ID:ab851r1T0
おつ
140 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[sage]:2014/01/19(日) 21:39:11.34 ID:huQPXfouo
あー、ジャンクヤードとニルヴァーナの関係性なのか>元の世界とビル世界
141 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[sage]:2014/01/20(月) 08:10:47.46 ID:YmZOgnnJ0
お疲れ
面白かったよ
142 :
◆3uiEZ8u8oI
:2014/01/20(月) 12:06:50.73 ID:4IM32IgF0
もう書かないと思うので、今まで書いたやつ晒します。
他にもありますが、未完なので。全般的に厨二です。
個人的に、厨二でもいいと思ってます。クサい台詞も好きです。
下手くそでも、書きたい物を書けばいいと思います。
ありがとうございました。
魔王「せつねぇ」
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143 :
◆tsRpeCzooQ
[saga]:2014/01/20(月) 12:10:15.53 ID:4IM32IgF0
もう書かないと思うので、今まで書いたやつ晒します。
他にもありますが、未完なので。全般的に厨二です。
個人的に、厨二でもいいと思ってます。クサい台詞も好きです。
下手くそでも、書きたい物を書けばいいと思います。
ありがとうございました。
魔王「せつねぇ」
鬼姫「早く来ないかしら」
吸血鬼「俺はお前の血を飲みたくない」
少年「それが、僕の名前……」
144 :
以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
[saga]:2014/01/21(火) 10:17:46.92 ID:hBdqPd0s0
「このままじゃ、駄目だ」
「いつまでも、こんなんじゃ駄目だよな」
「『此処』から、出よう」
「……『外に』出るんだ」
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