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貝殻の勇者 「黒翼のハルピュイア娘……」 王子 「海老を食え、海老を」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/02/10(月) 12:16:05.64 ID:5N9LECod0


帝国南地方 草原の砦



ガコンッ ガララ


ケットシー 「やあ、開門だ。やっと南地方だよ。旅って疲れるねえ」


クーシー 「なに言ってんだい。ずっと僕の背中に乗っているくせに」


ザワザワ ガラガラ


槍の門番 「……今日も旅人は尽きねえなあ」

槍の門番 「なあ、聞いたかい。勇者の話」


斧の門番 「……勇者って、どの勇者だ」


槍の門番 「火打金の勇者の話さ」


斧の門番 「おー……。昨日、ここに泊まった吟遊詩人が歌っていたなあ」

斧の門番 「国家憲兵隊に捕まった子供の勇者が、処刑されそうになったそのとき」

斧の門番 「処刑場に緑色の花びらが舞って、風と一緒に勇者をさらっていった、とか何とか」


槍の門番 「おお、それだそれだ」

槍の門番 「やっぱり勇者ってのはあれなんかね」

槍の門番 「神様の加護、みたいなもんがついてんのかね」


斧の門番 「さあなあ……。仕事が無くならねえんなら、どうでもいい気もするなあ」


槍の門番 「だよなあ」

槍の門番 「じゃあ、次は海上都市の死霊の話だ……」


ザワザワ

ガラガラ


…………




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旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
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木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
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いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
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【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
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こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
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【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
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アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
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エルヴィン「ボーナスを支給する!」 @ 2024/04/14(日) 11:41:07.59 ID:o/ZidldvO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713062467/

2 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/10(月) 12:19:03.99 ID:tPh0WER30
スレタテ乙
だぜ
でも海老はくわねえ
3 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/10(月) 12:35:18.64 ID:LpOPRLp3o
4 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/10(月) 13:03:29.07 ID:eUiXcWFIo
前スレ後半完全に葉巻エルフにヒロイン食われてたな

今スレこそハルピュイアの活躍に期待
5 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/10(月) 13:43:17.95 ID:329hk26G0
ハーピーさんが前にでる
性格じゃないから…
ハーピーは葉巻さんに
ヒロイン取られる
危機感を持つべき
6 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/10(月) 13:44:01.57 ID:T7/Y6JljO

実は俺、前スレの魔ンボウを途中までタンノくんで再生してたんだぜ
イメージ合わなくなったからやめたけど
7 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage saga]:2014/02/10(月) 14:00:37.76 ID:crfIPh3a0
とりあえず前スレと設定資料(笑)付けとくか

王子「黒翼のハルピュイア娘か……」 幼女商人「売り物ではない」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1385809502/

司書長デザイン(仮)
http://i.imgur.com/63fKNdu.jpg
幼葉エルフ的身体評価
http://i.imgur.com/FbijvRv.jpg
8 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/10(月) 14:54:33.96 ID:69wV3T0so
王子も勇者みたいな技があればえびゆで勇者になれたのかなぁ
スレたて乙です!
9 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/10(月) 16:48:32.20 ID:dxYJEpEG0
10 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/10(月) 18:01:02.22 ID:5XgmUJbz0
前スレのおわりで一瞬俺たちの戦いはこれからだ!オチかと思ってびびったぜ
次スレに続いてくれて本当に良かった
11 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2014/02/10(月) 19:30:34.88 ID:5N9LECod0
※頭を休めるファンタジー。グダグダほのぼの。ゆっくり不定期更新。



■王子
帝国北東地方領主の息子。領主の城を追い出され旅に出る。
エルフの森で厳しい剣の修行をし、えびゆで師に目覚めた。

■ハーピィ
黒い翼の腕をもつハルピュイアの少女。ハーピー。元奴隷。
王子になつく。王子が嘘をついたときだけ話すマスコット。

■幼葉エルフ(あるいは 葉巻エルフ あるいは 葉書エルフ あるいは 黒花エルフ)
エルフの森の長老。魔法使い。
無情に野を渡る風のように他人の体を渡り歩く。性別を捨てた。

■貝殻の勇者
妖精に選ばれ、勇者の力に目覚めた槍つかいの少女。
大食い。声が美しい。慈悲深いが魔王軍に厳しい。

■ろうそく職人
領主の城で働いていた少女。エルフの森で癒しの魔法を覚えて、獣の耳と尻尾がはえた。
胸の重みに負け猫背で根暗だったが、勇者の従者となって変わっていく。

■魔法の馬車
王子たちが乗る馬車。幼葉エルフの改造で動く家と化している。進化中。


12 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2014/02/10(月) 19:31:36.09 ID:5N9LECod0


・領主
王子の父親。帝国に忠誠を誓いながら、反乱軍にも通じている。

・王子姫
王子の妹。男装をしている。王子にきつくあたるので、きっと王子のことが嫌いなのだろう。

・司書長エルフ
王子と王子姫の厳しくも優しい教育係。幼葉エルフに体を貸した。

・軽装メイド
王子姫の付き人。領主の影としてもつかえ、人間の領域と妖精の領域を行き来した。

・エルフの長老たち
起伏の緩やかな体を崇拝するエルフの里のリーダー。それぞれ色の違う花飾りをつけている。
強力な魔法と仮面の人形を操る。

・黄金鎧
意味ありげに登場して王子に芯の焦げたろうそくを渡したが、誰からも忘れられた。

・淫魔幼女
王子にハーピィを売った不吉な商人。転んだ拍子にドラゴンを1億万匹殺せる。1億万匹殺せるので傍観者。

・皇帝
侵略戦争を繰り返す、大陸の魔王のような人物。過去に2人の娘を亡くした。魔法が得意で、千里眼を持つ。

・国家憲兵隊
多くの将軍が出払った帝国の秩序を守る。犬隊長と猫耳隊長が登場。

・魔王軍
意気揚々と現れたが、人間や妖精たちをナメて怠けていたため、エルフの里の戦いで大敗したかませ犬集団。



>>7
前スレURLその他もろもろ
ありがとうございます。


13 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/10(月) 22:10:28.56 ID:VRRSYSjYo
黄金鎧のことは本当に忘れていたわ
14 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/02/11(火) 04:46:11.46 ID:jC5y7Zw+0

エルフの森 エルフの里 空中回廊



ザアアア


葉の仮面 「旅のエルフは悲しいことがあると、長い耳を海に向けるという」

葉の仮面 「波の音が故郷の森のさざめきと似ているからだ」

葉の仮面 「ようこそ、空中回廊の最上層へ。ここはエルフの長老たちだけが開くことのできる道」

葉の仮面 「高さに目がくらんで落ちたりしちゃいけないよ」


チチチチ ピイピイ

ザアアア


王子 「なるほど。森の中なのに、親父の城の海を思い出す」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「長老の館のある大樹からしか行けない、特別な回廊だ」


王子 「へえ」

王子 「下から見上げると目がくらむような空中回廊に、さらに上があったとは」


15 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/02/11(火) 05:07:59.00 ID:jC5y7Zw+0


王子 「……さすがに高いなあ。枝葉の隙間から下が見えると、腹の底が凍りそうだ」

王子 「ろうそく職人は来なくて良かったな」


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」

ハーピィ 「ろうそく職人は来なくて良かったなと思っていないのに……」


王子 「ああ。どんなことになるか、ちょっと見てみたい気もする」

王子 「君はこういうところは好きなのかな、ハーピィ」

王子 「海の音も好きだったし」


ハーピィ 「…………」


16 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/02/11(火) 05:20:29.53 ID:jC5y7Zw+0


幼葉エルフ 「相変わらず表情がないな、こいつは」

幼葉エルフ 「そのくせ人懐っこいから、危なっかしくてない」


王子 (身内の面倒見は良いんだよなあ、こいつは)

王子 「悲しかったり嫌だったりするときは顔に出るから」

王子 「そうじゃないってことは、普通か良いってことだろう」

王子 「たぶん」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「たぶんかい」


王子 「たぶんなことばかりだよ」

王子 「絶対そうだと思っていることも、一日で嘘になったりする」

王子 「ただの麻薬売りだと思っていたエルフの男が」

王子 「女の姿でエルフの里の長老になったりする」


幼葉エルフ 「まったくだ」

幼葉エルフ 「ぜんぶたぶんで片付けておいた方が、のちのち便利だしな」


王子 「何の話だ」


幼葉エルフ 「さあね」


17 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/02/11(火) 05:50:22.89 ID:jC5y7Zw+0


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「……よし」

幼葉エルフ 「くすぐろう」

幼葉エルフ 「すごい声で笑うかもしれん」


王子 「……わざわざ、ここで?」


幼葉エルフ 「もちろん」

幼葉エルフ 「むしろ危ない場所でやることで、自在に飛べるようになったりしてな」

幼葉エルフ 「翼があるくせに飛べたり飛べなかったりじゃ、不便でならないだろう」


王子 (ろうそく職人の性格がうつってないか?)

王子 (弟子は師に似るというけど、逆もあるということか)


18 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/02/11(火) 05:55:31.75 ID:jC5y7Zw+0


王子 「いや、やめよう。無理に笑わせても……」


幼葉エルフ 「ハーピィ、羽根一枚貰うぞ」

幼葉エルフ 「くくく。そおれ、わきをこちょこちょ……」


ハーピィ 「…………!」

ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「きいてないな……。王子、そっちのわきをやってくれ」


王子 「…………」

王子 「しかたないな……」


19 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/02/11(火) 06:05:31.96 ID:jC5y7Zw+0


ザアアア

ピイピイ チチチ



王子 「…………」


幼葉エルフ 「…………」


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「…………ッ」


幼葉エルフ 「おっ、ここやると震えた」


王子 「…………」


ハーピィ 「……ッ……ッ」


幼葉エルフ 「けけけ、ここだな。そーれ……」


王子 「…………」


ハーピィ 「……ッ!?……ッ」


幼葉エルフ 「…………」


王子 「しぶといな……」


20 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/02/11(火) 06:12:37.60 ID:jC5y7Zw+0


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「…………」


王子 「…………」


ハーピィ 「…………!?」


バコンッ


幼葉エルフ・王子 「うわっ!?」


幼葉エルフ 「翼でうってきやがった……!」


王子 「お、おい、これまずいんじゃないか」

王子 「落ち……」


ヒュルルルル


幼葉エルフ・王子 「うわーっ!」


ハーピィ 「…………!?」


21 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/11(火) 06:19:55.07 ID:m9Hfvg4Q0
虐待に鉄槌ですな
いいことだわ
22 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/02/11(火) 06:22:37.35 ID:jC5y7Zw+0


ザアアア


ハーピィ 「!? ……ッ!」

ハーピィ 「! ッ! ……ッ!!」

ハーピィ 「…………ッ」

ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「…………!」


ヒュオッ


ハーピィ 「!!」


幼葉エルフ 「よっ、と……」


王子 「……ととっ」


幼葉エルフ 「ふう。オレが風の魔法を覚えていて良かったな」


王子 「死ぬかと思ったぜ……」


ハーピィ 「…………」


23 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/02/11(火) 06:47:17.44 ID:jC5y7Zw+0


ギイッ ギイッ


ハーピィ 「…………」


王子 「……良かれと思っても、やっちゃいけないことがあるものな」


幼葉エルフ 「ああ、反省だ。別の手を考えるとしよう」

幼葉エルフ 「さあ着いたぞ」


王子 (……人間より大きな葉々に埋もれて、扉がある。例によって仮面もかかっているな)


枯葉の仮面 「知識をつめこんだだけの愚か者になってはいかんぞ」

枯葉の仮面 「本当に賢い人には学問も、文字すら必要ないことを忘れないように」

枯葉の仮面 「ようこそ、エルフの隠し書庫へ。ここはエルフの図書館の大樹に隠された……」


ガチャ 


幼葉エルフ 「よし、入るぞ」


王子 「最後まで聞いてさしあげろよ」


ハーピィ 「…………」


24 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/02/11(火) 07:00:41.11 ID:jC5y7Zw+0


エルフの図書館 隠し書庫



バタンッ


幼葉エルフ 「……お」


緑花エルフ 「……スゥ」

緑花エルフ 「……うふーふー」

緑花エルフ 「…………ムニャ」


王子 (緑花エルフが……)

王子 (ハンモックで寝ている)


ハーピィ 「…………」


25 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/11(火) 07:04:13.57 ID:8H8Ucoku0
っ肉
がんばれ葉巻
これを書くんだ
26 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/02/11(火) 07:20:01.15 ID:jC5y7Zw+0


王子 「隠し書庫……」

王子 「菓子であふれたティーカップにカードに首吊り人形に……本よりもこまごましたものの方が多い」


幼葉エルフ 「そのじつ、エルフの長老たち専用の休憩室だ」

幼葉エルフ 「調べ物のふりしてときどき訪れて、こうしてぐうたらしているのさ」


緑花エルフ 「……ムニャ」

緑花エルフ 「古い本のかおりって、落ち着くーわよねー」

緑花エルフ 「……スゥ」


王子 「よく寝ているな」


幼葉エルフ 「起こしても厄介だ。静かにしていよう」


27 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/02/11(火) 08:52:08.16 ID:jC5y7Zw+0


緑花エルフ 「……スゥ」


王子 「すごく高そうな本がある。どれどれ……」

王子 「優雅な首のはねかた」

王子 「……ハーピィ、読むかい?」


ハーピィ 「…………」


王子 「だよなあ。戻しておこう」


幼葉エルフ 「長老たちの私物も混じっているから、気をつけてくれ」

幼葉エルフ 「……おっ、これは妖精のいたずらに欠かせない道具」

幼葉エルフ 「寝ている人の顔に落書きする筆、じゃないか」

幼葉エルフ 「しめしめ、まだ使えるかな……」


28 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/02/11(火) 09:20:25.74 ID:jC5y7Zw+0


王子 「だけど良いのかい?」


幼葉エルフ 「何がだ」

幼葉エルフ 「最後に人……と」


王子 「ハーピィのために、隠し書庫の本を持ち出すなんて」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「ああ。私物を取りにくるついでだ」

幼葉エルフ 「それにここに、盗られて困るものはない」


王子 「……何だって」


幼葉エルフ 「隠された回廊、図書館の上に隠された書庫」

幼葉エルフ 「いかにも大事なものが隠してありそうじゃないか」


王子 「…………」

王子 「そういうことか……」


ハーピィ 「…………」


29 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/02/11(火) 10:25:22.74 ID:jC5y7Zw+0


緑花エルフ 「うふーふー……伝声管に声を変える魔法ーをー……」

緑花エルフ 「……ムニャ」


ハーピィ 「…………」


王子 「これかな?」


ハーピィ 「…………」


王子 「南天の英雄都市? エルフの物語か……」

王子 「よし。馬車につむ本はこのくらいで良いかな」


コトンッ


王子 「!」


30 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/02/11(火) 10:46:23.93 ID:jC5y7Zw+0


幼葉エルフ 「すまんね。落とした」


王子 (細い鎖のついた小さな歯車。首飾りか)

王子 「……マンボウにやられた傷、治っていないのか?」


幼葉エルフ 「オレがものすごく間抜けな奴に聞こえるな」

幼葉エルフ 「思ったより持っていくものが多くてね」

幼葉エルフ 「いらないものばかり置いていたつもりだったが」


王子 「耳かきに、変な色の液が入った瓶に、針が四つのコンパスに……」

王子 「魔法の道具か何かか?」


幼葉エルフ 「勝利への伏線さ」


王子 「……気をつけろよ、お前。変なこと言ってまたひろまったりしたら……」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「大丈夫だろ。さあ行こう」


31 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/02/11(火) 10:58:47.82 ID:jC5y7Zw+0


ガチャッ


王子 「……おい。緑花エルフの額に書いた変な記号、そのままで良いのか?」


幼葉エルフ 「オレたちの間では日常茶飯事だ」

幼葉エルフ 「無防備に寝たおしていると、こうなるのさ。油断すんなってことだ」


王子 「殺伐としているなあ」


ハーピィ 「…………」


バタンッ


緑花エルフ 「…………」

緑花エルフ 「…………」

緑花エルフ 「勝利への伏線さ……」

緑花エルフ 「…………」

緑花エルフ 「うふーふー……」

緑花エルフ 「…………ムニャ」


…………


32 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/11(火) 11:19:47.16 ID:73R3ejki0
やりやがったwwww

おいらしらねぇー
33 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/11(火) 11:58:46.64 ID:8d4YN71Ho
油断すんなってことだな……
34 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/13(木) 07:33:31.62 ID:GvvmOLzp0
油断すっと
葉缶エルフが見られるぜ
35 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/13(木) 13:22:36.31 ID:aSmQuzOBo
葉缶エルフ…ヨウカンエルフ…

ひらめいた
36 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/13(木) 17:48:14.39 ID:XsvHahP+0
>>35

殺伐としたこのスレに
救世主…

絶対救世主じゃねぇよ
37 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/02/14(金) 23:26:38.96 ID:P9mEV6ru0


黒花エルフの館



ろうそく職人 「ぬふふ」

ろうそく職人 「えいっ、やあっ、とぁっ!」


ブンッ ブオン ボゥン


貝殻の勇者 「はりきっていますね、ろうそく職人さん」


ろうそく職人 「はい、勇者さま。特別な杖を手に入れたのです」

ろうそく職人 「名づけて、燭台の杖!」


貝殻の勇者 「燭台の杖……」


ろうそく職人 「魔法をつかうとき、中に入ったろうそくに火がともって魔力を上げてくれるんですよ」

ろうそく職人 「師匠が、ろうそくを扱ってきたお前はこうすると良くなるからって」

ろうそく職人 「ひからびたミミズをあわれむような目で授けてくれました」

ろうそく職人 「これでついに、私も勇者さまの足手まとい脱却です!」


貝殻の勇者 「うふふ……頑張るのは良いですが、無理はしないでくださいね」


ろうそく職人 「はい!」

ろうそく職人 「えいっ、やあっ、ちょりゃっ!」


ブンッ ブオン ボァン


38 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/02/15(土) 00:04:04.93 ID:82dUEfdW0


ろうそく職人 「ありゃっ、なりゃあっ、るぉおらぁ!」


貝殻の勇者 「…………」


ろうそく職人 「おりゃっ、んなろぉっ、なぶりゃあ!」


貝殻の勇者 「…………」


ろうそく職人 「…………」

ろうそく職人 「あ、あの、勇者さま」


貝殻の勇者 「どうしました、ろうそく職人さん」


ろうそく職人 「そこにいると、杖が当たっちゃいますよ……」


貝殻の勇者 「大丈夫です。ろうそく職人さんの尻尾を握りながら」


フカフカ


貝殻の勇者 「すべての攻撃をかわしてみせます」


フカフカ


貝殻の勇者 「うーん、この握り心地。ふっこらもこもこで素晴らしい」


ろうそく職人 「あははは……」


フカフカ フカフカ


39 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2014/02/15(土) 00:08:33.53 ID:82dUEfdW0
※全盛期のフル装備魔ンボウさん
http://i.imgur.com/q5y36Ls.jpg

武勇伝。
勢いよく海から飛び出したところ風にあおられて横倒しになり
海面に叩きつけられて死ぬかと思いきや、
滑空して5km先の海に不時着した。
40 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/02/15(土) 01:12:37.23 ID:82dUEfdW0


ガチャッ


王子 「…………」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「…………」


ろうそく職人 「んりゃっ、ほりゃっ、おほりゃあっ!」


ヘロッ ヒョロッ フオン


貝殻の勇者 「ああ、夢心地」


フカフカ


王子 「……何をしているんだ?」


41 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/02/15(土) 02:03:57.03 ID:82dUEfdW0


貝殻の勇者 「ああ、みなさん」


ろうそく職人 「師匠、この杖よい感じですよ」

ろうそく職人 「すごく手になじみます!」

ろうそく職人 「これなら師しょ……魔王も殺害できてしまいそうです!」


幼葉エルフ 「そうだろう、そうだろう。うちの倉庫にあった使えないガラクタを再利用したやつだからな」


王子 「……何か荷物ふえてないかな。食料とか」


ハーピィ 「…………」


貝殻の勇者 「どのくらいの旅になるか分からないので、急いで買ってきたのです」

貝殻の勇者 「エルフようかんに、エルフぼうろ、エルフチップスにエルフ里マアムにエルフところてん、長いエルフ棒……」


王子 「…………」


貝殻の勇者 「薬草キャンディエルフ味に、野外料理の書と道具エルフ里編に……」

貝殻の勇者 「どれも、エルフの里でしか買えない珍しい物ですよ」


王子 「……そ、そうか」


ハーピィ 「…………」


42 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/02/15(土) 02:59:30.36 ID:82dUEfdW0


幼葉エルフ 「思ったより準備に時間がかかったが出発といくか」


ろうそく職人 「この館を離れると思うと、ちょっと名残惜しいですね」


貝殻の勇者 「皇帝の目を探す旅。私の力を役立てられるでしょうか……」


王子 「本はこれだけで良かったかな、ハーピィ」


ハーピィ 「…………」


ろうそく職人 「師匠、またあの道を通るんでしょうか」


幼葉エルフ 「いや、別の道をつかう」

幼葉エルフ 「なので桟橋に向かう」


王子 「桟橋。森で川でもくだるのか?」


幼葉エルフ 「その通り。川をくだって人間の領域に出る」

幼葉エルフ 「行くぞ」

幼葉エルフ 「……これが不安なんだが、馬車はあの長老どもがまわしておいてくれている」


43 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/15(土) 03:27:55.69 ID:6kFOwzrS0
マンボウ意外と
格好よかったりする

蝋燭職人はもう
モフ担でいいよん
44 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/15(土) 07:53:02.20 ID:R2LWee6s0
これ正面から見たらかっこいいけど・・・・横から見たら抱腹絶倒しそうwwwwwwww
45 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/15(土) 13:02:42.16 ID:2ysat4bG0
>>幼葉エルフ 「……これが不安なんだが、馬車はあの長老どもがまわしておいてくれている」
あぁ、オレも不安だよ(前スレ的に)
46 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/02/15(土) 22:08:48.32 ID:IWM55oBJ0
>>39
奥行き見せろ乙
47 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2014/02/16(日) 05:47:56.76 ID:0j+1qsMq0
>>46
http://i.imgur.com/HA48vln.jpg

ごめんなさい奥行きなんて考えてなかった
48 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/02/16(日) 10:17:34.08 ID:0j+1qsMq0


エルフの里 空中回廊 大樹



満月の仮面 「時の来しかた遥か、海は空にあった。空は海であった」

太陽の仮面 「南の英雄と西の英雄の剣戟が空の底を破り、海は地におちた」

満月の仮面 「空に残った海の、風に砕ける波頭が雲である」

太陽の仮面 「地に落ちた海の、空を懐かしんで呼ぶものが雨である……」



王子 (お、はじめて聞く話だ。これでどのくらい見つけたかな)

王子 (里のところどころに喋る仮面がかかっていたが)

王子 (聞いていると全身がむず痒くなって大変だった)


ハーピィ 「…………」


ろうそく職人 「大樹の後ろ半分が、波にけずられた洞窟のようになっていますね」


貝殻の勇者 「向こうには、川が果てしなくのびている。木漏れ日がさす木々のトンネルのようになっていますね」


幼葉エルフ 「……いるな、長老ども」


49 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/02/16(日) 10:46:47.61 ID:0j+1qsMq0


王子 (桟橋のあたりにエルフの長老たち)

王子 (白花エルフをのぞいて、はじめの長老会議にいた長老が揃っているな)


幼葉エルフ 「やあやあ、ごくろう長老たち」


黄花エルフ 「恋人ができたからって調子にのって! 待ちくたびれたわよ、黒花エルフっ」


赤花エルフ 「森を抜ける爽やかな風に吹かれ、ふと生まれを恥じて死んでくれたかと思っていましたけれど」


緑花エルフ 「あらまーまー。お見送りはなごやかにーねー」

緑花エルフ 「ふあぁ……」


青花エルフ 「うむ。待っておったぞ、若者たちよ」


ろうそく職人 「……勇者さま、どうしてあの緑花の長老さまだけ額に肉と書いてあるのでしょう」


貝殻の勇者 「分かりませんが……なにか魔術的な意味があるのかもしれませんね」


50 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/02/16(日) 11:15:19.73 ID:0j+1qsMq0


幼葉エルフ 「長老が四人も揃ってお見送りとは、ずいぶん派手じゃないか」

幼葉エルフ 「勇者の穴は放っておいて良いのかい?」


緑花エルフ 「それなら、ほかの長老たちが指揮して調べているーわよー」


青花エルフ 「私たちがここにおるのは、お前たちにやるものがあるからじゃ」


ろうそく職人 「黒花の幼葉エルフさまと王子さまの結婚のお祝いですね!」


黄花エルフ 「そんなところねっ」


王子 (何も言うまい)


ハーピィ 「…………」


51 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/02/16(日) 11:34:59.21 ID:0j+1qsMq0


幼葉エルフ 「気味が悪いくらい気がきくね」

幼葉エルフ 「さあ、何をくださるんだ」


青花エルフ 「期待するふりくらいせい。ものを貰う態度というものがあろうが」

青花エルフ 「言葉づかいも悪くなる一方じゃのこの娘は」


黄花エルフ 「まあ、ものを見たら喜ばざるをえないでしょうけどねっ」


幼葉エルフ 「……ものはどこだよ」


赤花エルフ 「ららあら。さっきからあなたがたの目の前にあるじゃありませんか」


貝殻の勇者 「……?」

貝殻の勇者 「三日月のような舟の上に、馬車があるだけですが」


王子 「舟をもらえるのか」


緑花エルフ 「それもあるけーどー」


青花エルフ 「この魔法の馬車……いや、妖精の馬車が」

青花エルフ 「お前たちへの贈り物なのじゃ」


52 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/16(日) 11:38:55.12 ID:nbGZLxL00
肉…
消してなかったのか…
誰か教えてやれよwwww
53 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/02/16(日) 12:10:30.19 ID:0j+1qsMq0


ハーピィ 「…………!」


王子 「……馬には良くないことをしないでくれたかな」


黄花エルフ 「もちろんよっ」

黄花エルフ 「今から説明してあげるわっ」


フッ


ろうそく職人 「あれ、夜でもないのに暗くなった」


ヴァカカカッ


花エルフたち 「エルフの長老4人が力を寄せ集めてつくった妖精の馬車!」


貝殻の勇者 「長老会議のときのように、光の柱が長老さまたちを照らした……」


ハーピィ 「…………」


王子 (光の加減のせいか、ハーピィが目を輝かせて喜んでいるように見える)


54 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/02/16(日) 12:24:17.34 ID:0j+1qsMq0


青花エルフ 「妖精の蹄鉄を装着させたことによって馬が以前より疲れにくく」

青花エルフ 「また速く走れるようになっておるはずじゃ」


赤花エルフ 「二頭はもともと首をはねたくなるほどの名馬のようですけど」

赤花エルフ 「特に馬車馬Aはいちど妖精にとりつかれたことで妖精の馬と化していますわ」


ハーピィ 「…………」


黄花エルフ 「馬車は外の防御力を上げて、中はいろいろ部屋を増やしておいたわっ」

黄花エルフ 「どんな部屋があるのかはお楽しみよっ」


緑花エルフ 「ここだけの話、黒花エルフちゃんと王子ちゃんが愛を育む隠し部屋にはなんと」

緑花エルフ 「古今東西から集めたあれやこれやが置いてあるらしーいわー」

緑花エルフ 「うふーふーふー」


赤花エルフ 「さあ!」

赤花エルフ 「とくとご堪能あそばせ!」


カッ


花エルフたち 「エルフの」

花エルフたち 「移動する愛の巣を!!」


バシャーン


ろうそく職人 「ああ、風もないのに川の水が弾けた!」


貝殻の勇者 「マシュマロを焼く暖炉があると良いのですが……」


王子 「……まあ、これも見納めか」


ハーピィ 「…………」


55 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/16(日) 12:31:42.23 ID:aHDGqLy9O
おいおい、これから子作りに励めと言わんばかりだな…
ワッフルワッフル
56 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/16(日) 12:36:33.28 ID:BLA9AycC0
王子とドラム缶の
濃密なプレイか
57 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/02/16(日) 12:38:43.49 ID:0j+1qsMq0


青花エルフ 「……と、馬車のことはこれくらいにしておいて」


緑花エルフ 「そうーねー」

緑花エルフ 「はい、これ」


幼葉エルフ 「マンボウの使っていた武器と……何だ、これ」


黄花エルフ 「獣のハラミをあぶって包んでおいたわ。道中みんなで食べなさいっ」


貝殻の勇者 「ほう」


王子 「どうして、今ここでそれを……」


青花エルフ 「とくに黒花エルフはしっかりと食べるのじゃぞ」


幼葉エルフ 「……なんでだよ」


赤花エルフ 「そりゃあ、もちろん……」


花エルフたち 「良い子を孕みますように」


58 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/16(日) 12:44:36.48 ID:Zq0oOAbmo
なんか独身女性に絡む親戚のおばちゃん見たいだな
59 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/02/16(日) 12:48:06.97 ID:0j+1qsMq0


ろうそく職人 「うまいっ!」


貝殻の勇者 「ええ、とてもおいしそうです。ハラミというのですね、ええ」


王子 「……おい、すごいことになってるぜ」


幼葉エルフ 「…………」

幼葉エルフ 「……ハーピィ、オレの分までちょんと食べろよ」


ハーピィ 「…………」


王子 「やめなさい」


60 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/02/16(日) 13:05:52.06 ID:0j+1qsMq0


トンッ ギシッ ユラユラ


ろうそく職人 「おっとっと……」


青花エルフ 「この川は妖精と人間の領域をつないでおる」

青花エルフ 「落ちると何があるかわからんから、気をつけるんじゃぞ」


貝殻の勇者 「みんな乗りましたね」


緑花エルフ 「いよいよ出発ね。さびしーいわー」


赤花エルフ 「良いこと、黒花」

赤花エルフ 「あなたがこの里からいなくなるのは良いことだけれど」

赤花エルフ 「人間の男に脳みそまでとろかされて……皇帝の目を探すという使命を忘れては駄目よ」


幼葉エルフ 「そりゃあ、お互い様さ」


黄花エルフ 「また生意気な口をきいてっ」


青花エルフ 「……しっかりやるのじゃぞ」

青花エルフ 「なにしろ目の発見は、大事な勝利への伏線、じゃからな!」


幼葉エルフ 「!?」


花エルフたち 「プフフッ……」


幼葉エルフ 「…………」


王子 「……だから言ったんだ」


ハーピィ 「…………」


貝殻の勇者 「舟、出します」


61 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/02/16(日) 13:44:36.27 ID:0j+1qsMq0


…………


スイッ スイッ


ろうそく職人 「こいでもいないのに進んでる……」


貝殻の勇者 「里はもう見えなくなりましたね」


王子 「これから、どこに向かうんだ?」


幼葉エルフ 「とりあえず皇帝の目のありそうなとこをあたる」

幼葉エルフ 「その途中、人の通らないような場所も念のために探る」


王子 「何が目なのか分からないんじゃ、骨が折れそうだ」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「魔法で探りもいれてみるが」

幼葉エルフ 「皇帝がこの世に生を受けてから現れた、歴史の浅い魔術的なものをたよりに探していくしかないかな」

幼葉エルフ 「焦ったり根をつめすぎたりしたら、とてももたないだろうよ」


王子 「……旅を楽しむ余裕は必要か」


幼葉エルフ 「そういうこった」


62 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/02/16(日) 14:17:38.49 ID:0j+1qsMq0


幼葉エルフ 「北東地方北の領主領から始まり、北東地方の東にあるエルフの森へときたわけだが」

幼葉エルフ 「このまま大陸……つまり帝国を東まわりに旅していこうと思う」


王子 「そうか」

王子 「……この川はどこにつながっているんだ」


幼葉エルフ 「帝国の東のはずれにある島だ」


王子 「ああ。あそこにも人を惑わす森があると言うが……」


幼葉エルフ 「そういうことだ」


王子 「なるほど」


ろうそく職人 「師匠、王子さまの膝の乗り心地はいかがですか」


幼葉エルフ 「わりと良いもんだね。尻にあって」


63 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/02/16(日) 14:34:21.28 ID:0j+1qsMq0


貝殻の勇者 「やはり司書長どののときとは違い余裕がありますね、王子どの」


王子 「まあ、子供だから」

王子 「しかしお前はこれで良いのか」


幼葉エルフ 「心配するな。男の体でも手に入れたらこんなことしないから」


王子 「不思議な奴だね、お前も」


幼葉エルフ 「お前ももっと喜べよ」

幼葉エルフ 「隣にハーピィを置いて……」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「膝の上にオレを置き、さらにもう二人の女と同じ舟の上」

幼葉エルフ 「まっとうな男として、もっと鼻息を荒くしてもばちは当たらんと思うぜ」


王子 「ああ、そうだな。最高だねこの状況」


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「…………」


貝殻の勇者 「ハレンチな」


ろうそく職人 「ふ、不純な王子さま……」


王子 「……当たったじゃないか」


幼葉エルフ 「けけけ」


64 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/16(日) 14:38:17.65 ID:eSgCPz2D0
ヨウカンエルフの膝の上に
海老をおいて
隣にマンボウ座らせて
みようぜ
目の前には長老な!
65 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/16(日) 19:37:03.00 ID:lOcefqqF0
ハーピィが否定しないって事は
66 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/16(日) 20:00:37.32 ID:aHDGqLy9O
殺伐としたスレに救世主が!!
 .__
ヽ|・∀・|ノ 幼姦マン
 |__|
  | |
67 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/16(日) 22:00:08.36 ID:QcXvl1Mto
膝の上にドラム缶
隣に新鮮なえび
そして、癒しのろうそくとエルフ棒同じ船の上に

とかじゃなくて良かったな王子
68 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/17(月) 03:15:29.72 ID:8lgIToQz0
ろうそく職人がイラスト合わさって最高だ
69 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/02(日) 14:50:17.91 ID:nyeIRqEo0
溜め込んだ分はよ
70 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/02(日) 17:12:13.56 ID:8mOozMpZO
あぁ…作者にSS速報が復活した事を伝えたい…
71 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/02(日) 20:49:41.06 ID:RtBNlX9no
深夜でやってる
72 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/02(日) 21:10:54.55 ID:5BBtUp7S0
復活きたー
>>1は帰ってきてくれるよな
73 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/03(月) 18:22:39.11 ID:8IBgv/we0
復活

ずっと深夜なのか
74 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/03(月) 19:03:11.47 ID:jW0b8WUV0
今深夜で>>1さんに復帰してくれるかそれとなく聞いてきたんだけど帰ってきてほしいね。
75 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2014/03/03(月) 21:47:27.18 ID:oZj08YNs0
SS速報VIP復活おめでとうござ淫魔。

http://i.imgur.com/3mZyaht.jpg
管理人さまがたが復旧にむけて頑張ってらっしゃる中
こんなことばかりやって遊びほうけていたおかげで、
筋書きやら設定やら頭からきれいにすっ飛んだどうしよう。
76 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/03(月) 23:00:46.76 ID:XJow5Gr7o
おかえり

正直クソワロタwwww
77 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/04(火) 00:30:41.96 ID:XxPA93o4O
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!
78 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/04(火) 07:36:08.57 ID:CP73Aq8b0
待ってたぜ
書き溜めがないのは残念だけど続きを楽しみにしながらワクワクしとく
79 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/04(火) 08:46:26.18 ID:yNuzIZxv0
http://i.imgur.com/uFzlFdq.jpg


…………



王子 「……うーん。幸せだ……ムニャムニャ」


ハーピィ 「…………!」


ゴソゴソ


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「ああ、そうだ。何だこれ。何をこじらせたらドラム缶膝に置いて幸せになれるんだ」

王子 「拷問じゃないか………」


ハーピィ 「…………」


王子 「……夢か。おはよう、ハーピィ」

王子 「いやあ、よく寝た。エルフの里を出て一日くらいしか経っていないはずなのに、半月くらい寝ていた気分だ」

王子 「気のせいだろうが」


ハーピィ 「…………」


80 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/04(火) 09:05:25.46 ID:yNuzIZxv0


ハーピィ 「…………」


王子 「先に起きていたのかい?」


ハーピィ 「…………?」


王子 「あ、寝ぼけているな」

王子 「ごめんよ、起こしてしまったのか」

王子 「寝ているときの嘘も駄目なのだなあ」

81 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/04(火) 09:18:31.72 ID:yNuzIZxv0

幼葉エルフ 「ん……」

幼葉エルフ 「……むはは。おい弟子よ、ものすごい勢いでとけているじゃないか」

幼葉エルフ 「情けないなあ、いっぽうおれはドラム缶だというのに……ムニャ」


モゾモゾ


王子 「幸せそうに寝ているな葉巻」

王子 「……膝の上で」


ハーピィ 「…………」


トッ トッ


貝殻の勇者 「よく眠れましたか」


王子 「おや、交代で見張りをしていた……」

王子 「エルフ棒」


貝殻の勇者 「寝ぼけているのですか?」


王子 「……ああ、なんだ。勇者さまか」
82 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/04(火) 09:43:40.07 ID:yNuzIZxv0


王子 「川幅がだいぶ広くなったな。何も異常なかったかい」


貝殻の勇者 「ええ、あります。不気味なほど静かです。風景が死んでいるようです」


王子 「ずっとそうじゃないか」


貝殻の勇者 「ずっと異常なのです」


王子 「ずっと異常ってことは、つまりもう異常なしだ」


貝殻の勇者 「あとは船足が落ちました。川が大きくなるにつれて」


王子 「漕がなきゃならないかな」


貝殻の勇者 「そうですね。ちょうど櫂も人数分ありますし」


王子 「さすがエルフの舟。用意が良いね」

王子 「さて、城の風呂と町の湖で鍛えたおれの技を……」


モゾ


幼葉エルフ 「……その櫂の出番はまだ先だ」


王子 「起きたか」


83 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/04(火) 10:07:03.40 ID:yNuzIZxv0

幼葉エルフ 「ああ、よく寝た」

幼葉エルフ 「……誰かが必死に戦う中、半月くらい幸せに寝こけていた気がする」


王子 「……気のせいだ」


貝殻の勇者 「そういえばろうそく職人さんが、腐れぞうきん……」

貝殻の勇者 「もといマンボウの魔物が持っていた槍を装備して魔力が上がった気がすると言いながら」

貝殻の勇者 「退廃的で幸せな夢を見ながら半月分くらい休める腐の魔法」

貝殻の勇者 「というものを、みなさんに試していたようですが」


ハーピィ・王子・幼葉エルフ 「…………」


貝殻の勇者 「……その顔。効果は三者三様だったようで」


84 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/04(火) 10:32:51.74 ID:yNuzIZxv0


…………


トッ トッ トッ


ろうそく職人 「ふんふんふ〜ん、私は不思議なろうそく職人」

ろうそく職人 「狐か犬か狼か、猫か何かも分からない」

ろうそく職人 「不思議な耳のろうそく職人。馬車は丸ごと異常なし……」

ろうそく職人 「やや……! 師匠たち、起きたみたいですね」


トッ トッ トッ


幼葉エルフ 「船足が落ちるのもしかたない。人と妖精の領域のちょうど境目に近づくほど」

幼葉エルフ 「舟の外のあらゆる流れはゆるやかになる。ここでは水に熱……」

幼葉エルフ 「そして風さえも、時間ごとぬかるんじまうのさ」


王子 「…………」


貝殻の勇者 「風さえも……」


ろうそく職人 「ぶはは」


幼葉エルフ 「背骨ひしゃがすぞ貴様」

85 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/04(火) 11:22:22.22 ID:yNuzIZxv0


貝殻の勇者 「いくら怒っているからといって、そんなことを口にしないでください」

貝殻の勇者 「風がぬかるむのは、何というか……不意打ちでしたよ」


幼葉エルフ 「……顔がニヤニヤ震えているんだよ勇者さま」

幼葉エルフ 「風をばかにするなよ。古来より人は、風に何かしらの答えを見出してきたりしたんだぜ」


ハーピィ 「…………」


王子 (いま話すのは危険だ)


貝殻の勇者 「ふふっ……そうですね。かぜをこじらせると大変ですものね。よしよし」


幼葉エルフ 「……この体だからって馬鹿にしやがって」


貝殻の勇者 「私は子供が好きなのです。食べちゃいたいくらい可愛い」


王子 「君が言うと恐ろしく感じるな」


貝殻の勇者 「私は大食いではありません」

86 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/04(火) 11:43:05.99 ID:XxPA93o4O
良いじゃないか大食いだって人間だもの
勇者
87 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/04(火) 13:24:44.99 ID:V2qAawSK0
おかえり

安定の大食いだよな勇者

てか画像…

コーヒー返せよ
88 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/04(火) 19:40:48.54 ID:0Uc8Im4No
まさかのイラスト化ww

王子が幸せそうで何より
89 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/04(火) 22:05:10.39 ID:yNuzIZxv0



…………


キイ キイ


貝殻の勇者 「……すぅ」


ろうそく職人 「……むにゃむにゃ」


キイ キイ


ハーピィ 「…………」


馬車馬B 「ブルル」


馬車馬A 「ヒヒン」


ハーピィ 「…………」


王子 「で、この羽根を貰ったんだ」


幼葉エルフ 「黒に白に赤。ふうん、綺麗じゃないか」

幼葉エルフ 「良い細工師をみつけてハーピィに羽根飾りでもつくってやれよ」


王子 「ハルピュイアの羽根なんだよ、これ」

王子 「しかも全部おなじハルピュイアから抜けたそうだ」


幼葉エルフ 「ああ、そりゃ駄目だ。おれもエルフの耳でつくったしおりなんて、さすがに使いたくないしな」
90 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/04(火) 22:31:27.74 ID:yNuzIZxv0


王子 「意味深に渡されたから、何かあると思うんだけど」

王子 「黒花のエルフどのは何か知らないかな」


幼葉エルフ 「ふうん」

幼葉エルフ 「……尻が冷えるな」


王子 「……どうぞ。おれの膝で良ければお使いください長老さま」


幼葉エルフ 「はっは。分かっているじゃないか相棒」


王子 「その姿だと可愛げがあるってもんだ」

91 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/04(火) 22:44:38.47 ID:yNuzIZxv0


幼葉エルフ 「……オレも深くは知らないが」

幼葉エルフ 「人間が傾倒する自然魔術のひとつに、腐った心を黄金に昇華させる術がある」

幼葉エルフ 「その奥義のひとつ、純粋な石の生成」

幼葉エルフ 「第五のなんちゃら賢者のなんちゃら、多くのたいそうな隠語で呼ばれるその鉱物かどうかも分からない石の生成過程は」

幼葉エルフ 「大きく三つの色に分けられる」

幼葉エルフ 「赤を最後として、次に白」

幼葉エルフ 「そして最も幼い過程として、黒だ」


王子 「へえ」


幼葉エルフ 「ちなみにその石のアイテムとしての効果は」

幼葉エルフ 「風呂のお湯にとかすと肩こりとかがなおる」


王子 「先生に贈りたい品だな」
92 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/05(水) 07:26:07.80 ID:bs9MX1lF0
温泉の素が賢者の石
なんか
93 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/05(水) 08:30:56.88 ID:rEBd61pv0


幼葉エルフ 「そいつが人間に寄生して生きるものだとしたら」

幼葉エルフ 「人間の心に関わるものと繋がるものもあるんじゃなかろうかと思ったが、どうかな」


王子 「そう言われると、関係があるんじゃないかと思えてくるね」


幼葉エルフ 「もしかしたら過去ハルピュイアに会った人間が、ハルピュイアの中にその術を見出したんじゃなかろうかと」

幼葉エルフ 「そんな妄想もはかどる」


王子 「妄想か」

王子 「……あまり、可能性を消してやるなよ」


幼葉エルフ 「何の話だ」


94 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/05(水) 08:42:10.17 ID:rEBd61pv0


王子 「黒に白に赤。なるほどそうだ」

王子 「だとしたら、ハーピィはいつか変態してしまうんだろうか」


幼葉エルフ 「かもしれない。どの色を最後の形態とするのかは知らないが」

幼葉エルフ 「……もしかしたらハーピィそのものが、魔術師がつくりだした純粋な石で」

幼葉エルフ 「何かの証明や確認のためにここにいるのかもしれない」

幼葉エルフ 「もしかしたら魔術的なものとは何の関係もないかもしれない」


王子 「想像力ゆたかだね」


幼葉エルフ 「想像こそが魔法の原点だよ、王子さま」

95 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/05(水) 08:44:55.98 ID:rEBd61pv0

幼葉エルフ 「であれば良いのに、であれば良かったのに」

幼葉エルフ 「欲にうつろう幼く弱い心が、魔法をうむんだ」

幼葉エルフ 「弱い心を持ちながら心強くあれ。これぞ魔法の極意」

幼葉エルフ 「という説もある」


王子 「だから、可能性を消すなと……」


幼葉エルフ 「安心しろ。答えさえ出さなきゃ、答えは人の夢の数、星の数ほどさ」




ろうそく職人 「むへへへ……机……」

ろうそく職人 「かける、椅子……」



96 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/05(水) 09:21:39.28 ID:rEBd61pv0


ハーピィ 「…………」


馬車馬A 「バルル」


馬車馬B 「ブルンヒ」


ハーピィ 「…………」


王子 「……変態か」

王子 「もしそうだとすると、あれ以上美しく愛らしくなっちまうのかな」

王子 「いやあ、ははは」

王子 「どうしようかなおい」


幼葉エルフ 「えびばかの次は親ばかにでもなるのかよ」

幼葉エルフ 「けけ……分からんぜ」

幼葉エルフ 「変態すると足が鉤爪になって全身毛むくじゃらになって」

幼葉エルフ 「顔も異形になって、ところ構わず汚物を撒き散らす化け物になるのかもしれない」


王子 「……覚悟はしておこう」


幼葉エルフ 「けけけ」


ハーピィ 「…………」


97 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/05(水) 10:32:33.40 ID:rEBd61pv0


幼葉エルフ 「……そうだ」

幼葉エルフ 「お前、人間の領域に出る前にこれをつけとけ」


骨仮面 黒花の首巻き


王子 「お前の人形がつけていたやつじゃないか」


幼葉エルフ 「帝国の地方領主の息子が変な活動をしていると、やはり何かとまずいだろ」

幼葉エルフ 「いちおうオレの加護を施してあるから、素早くなれたり魔法に強くなったり、悪くはないと思うぞ」


王子 「勇者さんにくれてやった方が良いんじゃないのか」


幼葉エルフ 「勇者は前に出していかなきゃ」


王子 「で、おれは無名の旅人に沈めというわけか。性にあっている」

王子 「……これをつけるとお前の操り人形になってしまったりしないよな」


幼葉エルフ 「思い通りにならないところも含めて、お前はおれの思うとおりの王子だよ」


王子 「何だかなあ……」


ガサゴソ


王子 「…………」

仮面王子 「…………」


98 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/05(水) 10:46:29.14 ID:rEBd61pv0


ハーピィ 「…………」


仮面王子 「やあハーピィ、馬との会話は弾んでいるかな。私は通りすがりの骨仮面。仮面王子だ」


ハーピィ 「!?」


仮面王子 (お、びっくりしている)


ハーピィ 「……あなたは嘘をつきました」

ハーピィ 「通りすがりの骨仮面ではないのに、通りすがりの骨仮面だと言いました」

ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


仮面王子 「その通り」

王子 「なんとおれは王子だったのだ」


ハーピィ 「…………」


王子 「仮面をつけてもよろしく、ハーピィ」

王子 「それにしてもこの仮面、何か甘酸っぱい香りがするな」


幼葉エルフ 「……気のせいさ」


王子 (……何かあるんだな)

99 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/05(水) 11:02:01.94 ID:rEBd61pv0


キイ キイ


王子 「……船足がいよいよ弱くなってきた」

王子 「まわりも川どころか、月と風のない夜の海原のようだ」

王子 「下で何か大きなものがうごめいていそうで、気味が悪いな」


幼葉エルフ 「舟が完璧にとまったら、櫂でちょっと漕いでやる」

幼葉エルフ 「そうしたら、あとは出口に向けて勝手に流れ出すのさ」


王子 「へえ。来たときとは大違いだ」


幼葉エルフ 「さて、テーブルゲームはこの辺にして」

幼葉エルフ 「……長老どもが押し付けてきたあれでも食べておくか」


王子 「ハラミか。ふはは……」


幼葉エルフ 「ああ、貫かれた古傷がしくしくする。腕を動かせない」

幼葉エルフ 「この体を見つけてきてくれた奴にどうしろとは言わないが、あいててて」


王子 「…………」


幼葉エルフ 「あーん」


王子 「分かったよ、口までお運びしてさしあげるよ……」


100 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/05(水) 11:20:06.56 ID:rEBd61pv0


モチュモチュ


幼葉エルフ 「うん、なかなか……」


王子 「まったく……」


幼葉エルフ 「膝を椅子にして、苦労せずに食う。ふふふ。この体だからこそできるわけさ」


王子 「当たり前だ。都合よく甘えやがって」


幼葉エルフ 「ハーピィ、お前もやってもらえよ」

幼葉エルフ 「何なら素手で、あーんとさ」

幼葉エルフ 「愛しい王子さまの指も味わえるぜ。あとはしっかり舐めて掃除してやるんだ」


ハーピィ 「…………?」


幼葉エルフ 「……欲がないね、お前は」


王子 「よせよ、ハーピィはきっと変態じゃないんだ」


幼葉エルフ 「? 素手でもらうだけだろ?」


王子 「……いや、いい。すまん、何でもない。忘れてくれ」


幼葉エルフ 「?」

101 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/05(水) 11:32:50.11 ID:BHuw27vkO
幼葉エルフちゃん可愛いよおおおおおおおお
102 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/05(水) 12:11:36.16 ID:rEBd61pv0


ユラ ユラ


王子 「おや。心なしか船足がはやくなったような。これだと漕ぐ必要もなさそうだ」


幼葉エルフ 「おかしいな」


王子 「やっぱりそうなのか」


幼葉エルフ 「人と妖精の領域どちらの力も及ばない真ん中で、必ずいちど止まんなきゃいけないんだよ」


王子 「て、ことは」


幼葉エルフ 「……別の流れに乗ったのかもしらんね」


王子 「そんなことあるのか」


幼葉エルフ 「ない。ここには妖精と人の領域を結ぶ流れしかないはずだから」


王子 「もしかして、魔王軍が妖精の領域に来たのと関係があるのかな」


幼葉エルフ 「……なるほど」

103 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/05(水) 12:13:38.16 ID:rEBd61pv0


王子 「このまま流れていったらどうなるんだ」


幼葉エルフ 「さあね。正常な流れに乗っているわけじゃないから」

幼葉エルフ 「魔王軍の領域に出たり、まったくの異世界に流れついたりするかもな」


王子 「夢のある話が多くて助かるよ」


幼葉エルフ 「永遠にどこにも出られず、こんな闇の中をさまよい続けることになるかもしれない」


王子 「まずいじゃないか」


幼葉エルフ 「とても」

幼葉エルフ 「奴らを叩き起こそう。取り返しがつかなくなる前に正常な流れに戻るぞ」


104 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/05(水) 12:53:32.89 ID:rEBd61pv0


…………


ザブンバ ザブンバ


幼葉エルフ 「だめだ、まだ流れから抜けていない。そら、力の限り漕ぐんだ」


ろうそく職人 「ひいいい。起きたらいきなり重労働だなんて」


貝殻の勇者 「頑張りましょう」


ろうそく職人 「こういうところこそ魔法じかけにならないんですかね」


貝殻の勇者 「なんでもできたら、人は夢を見なくなるでしょう」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「いち、に、いち、に」

幼葉エルフ 「うまいぞハーピィ。あとで王子を絞め殺すほど抱きついて良いから、今はこっちで頑張るんだぞ」


ハーピィ 「…………」


王子 (ハーピィと葉巻は二人で一つの櫂を担当している)

王子 (体を大きく使って、微笑ましいじゃないか)


ろうそく職人 「王子さま、こっち側つよく漕ぎすぎです。バランスが崩れちゃいます」


王子 「すまん」


105 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/05(水) 13:59:12.59 ID:rEBd61pv0


ザブンバ ザブンバ


幼葉エルフ 「そーれい!」


ろうそく職人 「そーれい!」


ハーピィ 「…………」


貝殻の勇者 「順調なようですね」


王子 「ああ。このままなら何とか……」


ヌラッ


王子 「ん?」

王子 「何だ、水面が盛り上がる」


ザバ


境界の魔物 「グオオオ」



ろうそく職人 「うひゃあ、小山ほどもあり黒光るでっかいウナギがまるで水の奈落よりつかわされた使者のようにこんにちは!」


幼葉エルフ 「ありゃ蛇だ」


106 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/05(水) 14:26:51.73 ID:rEBd61pv0


王子 「物語に出てくる海のドラゴンのようじゃないか。くそ、こんなときに」


幼葉エルフ 「魔物なんて出ないはずなんだけどな」

幼葉エルフ 「やはり、魔王軍が妖精の領域に乗り込んできたせいで何か異変が起きているらしい」


ろうそく職人 「あばばばばば。どどどどど、どうしましょう。こっちを見てますよ」


幼葉エルフ 「子豚のように震えるんじゃあない」

幼葉エルフ 「王子、勇者さま、術を練るから少し引き付けておいてくれ。ハーピィたちは舟を漕ぐんだ」


王子 「引き受けたいところだが、水の上じゃ厳しいぞ」


幼葉エルフ 「いけるはずだ。妖精の蹄鉄をつけた馬をつかえば……」


貝殻の勇者 「あの……」

貝殻の勇者 「そこまで慌てる必要はないのでは?」


107 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/05(水) 14:42:48.67 ID:rEBd61pv0


境界の魔物 「オオオオ」


ノロノロ ウネウネ


ろうそく職人 「……のろい」


幼葉エルフ 「……エルフの特別な加護のないものは、そうなるからな」

幼葉エルフ 「流れているといっても、ここもまだ領域の境目に近いし」


境界の魔物 「オオオン」


ヌラヌラ ノロノロ クネクネ


ろうそく職人 「ぶっといですねー。おっきいですねー……」


貝殻の勇者 「立派なウロコを持っていますね。加工したら良いものがつくれそうです」

貝殻の勇者 「もっとも、魔王軍の関係者ならゴミですが」


幼葉エルフ 「……さあ、せっせと舟を漕ごうぜ」


王子 「何だこの煮え切らない感じは」


ハーピィ 「…………」

108 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/05(水) 15:09:41.30 ID:rEBd61pv0


境界の魔物 「グオオオ」


ノロノロ 


貝殻の勇者 「…………」


ろうそく職人 「…………」


ザブンバ ザブンバ


境界の魔物 「グオオオ」


ノロノロ 


幼葉エルフ 「……川面を縦にうねる長い体が水車みたいだ」

幼葉エルフ 「何か可愛く見えてきたな。ハラミやったら食うかな、あいつ」


王子 「やめとけよ。あいつが女だったらどうするんだ」


ハーピィ 「…………」


109 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/05(水) 15:51:06.85 ID:rEBd61pv0


幼葉エルフ 「まあ、洒落にならない状態であることは確かさ」

幼葉エルフ 「領域の境がこんな感じだとして」

幼葉エルフ 「行きの道であんな奴に出くわしたら、こうのどかにはいかなかっただろうよ」


ハーピィ 「…………」


王子 「行きは行きで、もっとたちの悪いのに出くわした気もするけどな」


幼葉エルフ 「らしいね。どうにかあとで、この異変をエルフの里に伝えないと」


スイ スイ


ろうそく職人 「あれ、何だか進みやすくなりましたよ」


貝殻の勇者 「人の領域への正常な流れとやらに戻れたのでしょうか」


幼葉エルフ 「……そのようだ。あいつが見えなくなったら、やめるとしよう」

幼葉エルフ 「あんまり漕ぎすぎて正常な流れから外れてもいけない」


境界の魔物 「グオオオ」


…………


110 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/05(水) 18:08:30.62 ID:rEBd61pv0


キイ キイ


王子 「舟が進むようになってきた」


幼葉エルフ 「あーん……ムグムグ」

幼葉エルフ 「人の領域の影響下に入ったわけだ」

幼葉エルフ 「それにしても……」


光る魚たち 「キュロロロ」


フヨフヨ ポチャン チャプン


王子 「不思議な魚たちが跳ねて、ゆっくりと川に戻っていく」

王子 「なかなか幻想的じゃないか」


幼葉エルフ 「死の川とまで呼ばれた妖精の道も、にぎやかになったもんだ」

幼葉エルフ 「ゆゆしき侵略だぜ、これ」



111 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/05(水) 18:28:11.78 ID:rEBd61pv0


ハーピィ 「…………」


チャポン


アノ魔ロカリス 「ピロロ」


王子 「お、一風変わった魚。……魚か?」

王子 「ふーむ、何とも茹でがいのありそうな……」

王子 「魔王の領域……魔界のえびなのかな?」


幼葉エルフ 「やめとけ。どんな毒を持っているか分かったもんじゃない」


ハーピィ 「…………」


アノ魔ロカリス 「ピロロロ」


チャプン


ろうそく職人 「お城にいたころ、調理場に盗み食いしにいったとき」

ろうそく職人 「南東地方から届いた箱いっぱいのえびを見て倒れたことがありまして」


貝殻の勇者 「まあ、そんなことが」


ろうそく職人 「……頭と足をもいで茹でたえびのことなんですけど」

ろうそく職人 「私、あれが芋虫に見えてしかたないんです」


貝殻の勇者 「そうですね。どちらも、プリッとしておいしいですよね」


ろうそく職人 「え……」


キイ キイ

112 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/05(水) 18:53:39.09 ID:QyjIJpbNO
歪みねぇな
113 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/05(水) 19:28:51.21 ID:BopFAPrH0
ようかんエルフ好きな
おいらは歪んでるぜ
114 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/06(木) 04:36:18.74 ID:EysIIIPHo
おい、ろうそく野郎やめろ
お前のせいで海老が食えなくなる
115 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/06(木) 12:19:39.20 ID:PIxExf4a0
エビって虫と思えば
食えませんよね
(ゲス顔
116 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/07(金) 02:16:15.13 ID:sylruDDDO

海老のしっぽとGの羽は同じ味って本当?
117 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/07(金) 02:28:50.79 ID:ZJUPjRNJo
>>116
チキン質ってのはエビやGだけでなく昆甲殻類や虫の外殻に多く含まれる食物繊維だよ
不衛生なGのは問題外だけど、食しても体に良く、生体適合性も高いから人工皮膚や抜糸しないで済む縫合糸にも使われる
他の成分の配分や厚さがまるきり違うから、味や食感は千差万別だろうけど
118 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/07(金) 03:25:07.79 ID:Xw6ZeC7Co
(キチンだろ)
119 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/07(金) 08:01:07.92 ID:TB9jMd4h0
鳥から取れそうだね
120 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/08(土) 18:15:59.01 ID:QdqvJAgA0


魔法の馬車



ガチャ


王子 「……噴水のある部屋だ。草も生えている。あそこには作業台らしきものもあるぞ」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「薬の調合に使えそうな部屋……と」

幼葉エルフ 「毒草もあるから、ろうそく職人あたりが食べてしまわないように柵でもしておくか」


王子 「そんな猫みたいに」


幼葉エルフ 「エルフの呪いを受けて背筋が伸びてから、あいつは予想外生物なんだよ」

幼葉エルフ 「……ふん、馬車のマップもけっこう埋まったかな」


王子 「馬車にマップがいるというのも、おかしな話だ」

王子 「ちょっと昼寝部屋を探すつもりが馬車のダンジョンを探索することになるとはね」


幼葉エルフ 「あの長老たちめ、やりたい放題やりやがって」


121 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/08(土) 19:56:23.56 ID:QdqvJAgA0


王子 「部屋や設備が増えてありがたいじゃないか。本当に移動する小さな城みたいだ」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「がに股でしか進めない部屋やら首の無い石の置物だらけの趣味悪い部屋やら、余計なものが多いんだよ」


王子 「ははは。……この部屋には、入ってきたところ以外扉はないようだ」

王子 「緑花エルフが言っていたあの部屋は、こっちには無かったな」


幼葉エルフ 「ああ、ほかのルートを探そう。次の見張り交代までに見つかると良いが」

幼葉エルフ 「何が移動する愛の巣だよ。第三漆黒グリフォン丸ちゃんに変なもんつけやがって……」


王子 「第三の何だって?」


ハーピィ 「…………」


ガチャッ


…………


122 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/08(土) 21:11:52.49 ID:QdqvJAgA0


魔法の馬車 秘密の部屋



ガチャ


王子 「なんだよ、最終警告とか世界は命じたとか。貧乏領主の剣で良いだろう」


幼葉エルフ 「名前はけっこう大事なんだからな。光の書物三巻によると、武器の名前だからといって名詞である必要は……」

幼葉エルフ 「お」


王子 「む」


ハーピィ 「…………」


王子 「真っ暗な部屋だ」


幼葉エルフ 「……よくない感じがする。王子、剣を抜いておけ」


王子 「ああ」

王子 (この感じ、どこかであったような……)


123 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/08(土) 21:36:53.18 ID:QdqvJAgA0


ヒュン ヒュン


幼葉エルフ 「……たくさんの音が近づいてくる」


ヒュン ヒュン


王子 「空気を裂くような鋭い音だ。暗闇で聞きたい音じゃないな」


幼葉エルフ 「小さく、獣たちのねちっこい息遣いも聞こえる」

幼葉エルフ 「こっちは魔法でつくった偽者みたいだが、鋭い音は本物だ」

幼葉エルフ 「たくさんの武器が、円を閉じるように近づいてきている」


王子 「くそ、せめてあたりが明るかったらな」

王子 「ハーピィ、なんとか扉から外に逃げられないかな」


幼葉エルフ 「まて、こういうトラップの常として扉はいま開かないはずだ」

幼葉エルフ 「オレたちで挟んで守るべきだろう」


ハーピィ 「…………」


124 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/08(土) 21:55:12.38 ID:3Qblwm9f0
家の中なのに心休まらない!不思議!
125 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/08(土) 22:06:47.54 ID:RcYG3ni50
まあようかんさん
余計なことを口走り
ましたね
126 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/08(土) 22:28:39.09 ID:QdqvJAgA0

ヒュン ヒュン


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「だめだ、魔法で探れなくなった。……武器が多すぎるのか、武器全部に混乱の魔法が仕込まれているのか」


王子 「便利なことできるなあ、お前」

王子 「何なんだこの物騒な部屋は」


幼葉エルフ 「おそらく、野党やコソ泥を殺すためのトラップの部屋だ」


王子 「おれたちはコソ泥と間違われたのか。失礼だな、おれはえ……」


幼葉エルフ 「長老どもが魔法のつなぎを緩くしすぎたか組み立てを間違っていて」

幼葉エルフ 「部屋が暴走したんだろうよ」


王子 「長老たち……そうか」

王子 「この状況。たくさんの武器に囲まれる。エルフの里での修行と似ているのか」


127 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/08(土) 23:42:41.73 ID:QdqvJAgA0


幼葉エルフ 「お前も青花の奴にやらされたんだっけ。武器をかわす遊び」


王子 「なんだ、お前もやったこと……」


黄花エルフの声 『ナイトさまは落第生! 〜騎士学校の波動狐姫〜、第二部第五章第四節、うらぎり』


王子 「……どこからか声が聞こえてくる」



黄花エルフ 『二重人格という特異な体質もあって「光と闇に目覚め抱-いだ-く者(グラオツヴィリンク)」の証を発動させたじつは強大な呪われた「力」を秘めているが普段は面倒くさがりで落第スレスレの学生騎士少年は』

黄花エルフの声 『時間すら永久に「凍結」させるおおいなる「力」をもつ剣「聖なる愛の暗黒(ラヴァーズインフェルノ)」によって、当代の光響騎士たちさえ敵わぬと言われた幽明機関「トーデスシュトラーフェ」の魔将「無限色の虹」を単独でうちたおした』

黄花エルフの声 『じつは太古の波動の一族「たなびくたまゆらの"回答者"たち(シュレーディンガーの民)」の生き残りであった狐姫をつれ』

黄花エルフの声 『騎士学校のある祖国シュタインガルネーレへの帰路についたが、しかしそこにかつての友でじつは幼馴染であった隻眼の暗黒騎士が……』



王子 「まずいぞ」

王子 「まったく意味が分からない。ものすごい魔法の呪文に違いない」


幼葉エルフ 「ああ、気をつけろ。オレも知らない呪文だ」


ハーピィ 「…………」


128 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2014/03/08(土) 23:47:02.35 ID:QdqvJAgA0
>>127訂正 ごめんなさい



幼葉エルフ 「お前も青花の奴にやらされたんだっけ。武器をかわす遊び」


王子 「なんだ、お前もやったこと……」


黄花エルフの声 『ナイトさまは落第生! 〜騎士学校の波動狐姫〜、第二部第五章第四節、うらぎり』


王子 「……どこからか声が聞こえてくる」



黄花エルフの声 『二重人格という特異な体質もあって「光と闇に目覚め抱-いだ-く者(グラオツヴィリンク)」の証を発動させた」

黄花エルフの声 『じつは強大な呪われた「力」を秘めているが普段は面倒くさがりで落第スレスレの学生騎士少年は』

黄花エルフの声 『時間すら永久に「凍結」させるおおいなる「力」をもつ聖魔剣「聖なる愛の暗黒(ラヴァーズインフェルノ)」によって』

黄花エルフの声 『当代の光響騎士たちさえ敵わぬと言われた幽明機関「トーデスシュトラーフェ」の魔将「無限色の虹」を単独でうちたおした』

黄花エルフの声 『じつは太古の波動の一族「たなびくたまゆらの"回答者"たち(シュレーディンガーの民)」の生き残りであった狐姫をつれ』

黄花エルフの声 『騎士学校のある祖国シュタインガルネーレへの帰路についたが、しかしそこにかつての友でじつは幼馴染であった隻眼の暗黒騎士が……』



王子 「まずいぞ」

王子 「まったく意味が分からない。ものすごい魔法の呪文に違いない」


幼葉エルフ 「ああ、気をつけろ。オレも知らない呪文だ」


ハーピィ 「…………」
129 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/08(土) 23:51:57.94 ID:XLbN3usGo
少なくとも王子は嘘をついていないのか…
130 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/09(日) 00:15:40.49 ID:KuWregP70


黄花エルフの声 『じつは敵さえも欺いていた暗黒騎士の助けもあり脱出した二人に』


王子 「妙にゴテゴテしているけれど肝心なところは薄っぺらいこの感じ……」


黄花エルフの声 『おびただしい数の追っ手がせまる』


幼葉エルフ 「そういえば帝国中の歌い手や画家、踊り子や作家の集まる劇場の町があるそうだが」

幼葉エルフ 「訪ねてみたいな」


黄花エルフの声 『はたして少年と少女は、この危機を乗り越えることができるのか』


ハーピィ 「…………!」


ヒュン ヒュ……


王子 「……音がやんだ」


131 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/09(日) 00:22:52.70 ID:KuWregP70


王子 「よし、今のうちに」


幼葉エルフ 「逃げられない。すぐに来るぞ」


ハーピィ 「…………」


ヒュンッ


王子 「む!」


ガキンッ


幼葉エルフ 「後ろからの攻撃を受け止めた」

幼葉エルフ 「やるじゃないか」


王子 「腐るほど斬られたもの」

王子 「いきなり首元をはねにきたのはひやりとしたが」

王子 「……侵入者を殺す罠ってことは、これをくらったら」


幼葉エルフ 「死ぬんじゃないか」


王子 「おいおい……」


ヒュンッ ヒュンッ ヒュンッ


132 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/09(日) 00:46:58.07 ID:KuWregP70


ガキンッ バキッ ガシャンッ


幼葉エルフ 『襲ってくる武器は脆いみたいだな』


王子 (魔法の会話。今日までちょくちょく使っていたが、なんだか久しぶりな気がする)

王子 『ああ。少し力をこめて打ち返すと、簡単に壊せる。これは部屋が暴走しているおかげなのかな』


幼葉エルフ 『さあね。切り抜けるには、全部壊すしかないだろう』

幼葉エルフ 『数はどれほどか分からないが』


王子 『お前、さっきからよけてばかりじゃないか』


幼葉エルフ 『力仕事は苦手なんだよ。簡単な探りの魔法も使えないし』


ヒュンッ


王子 「葉巻……ッ」


ガキン


幼葉エルフ 『……やあ、危なかった。そんなとこから狙われていたとは。魔法に頼りきるものじゃない』

幼葉エルフ 「ありがとう、骨仮面」


王子 「いやいやこちらこそ」

王子 (本当に素早く動ける気がする。仮面の効果なのか)

王子 (……だから何なんだこのほのかに甘酸っぱい香りは)



133 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/09(日) 01:12:55.41 ID:KuWregP70


ヒュンッ ガキッ カキンッ


幼葉エルフ 『どうやら、さっきの呪文は意味のあるものだったらしい』


王子 『へえ』


幼葉エルフ 『ハーピィが狙われていない』


ハーピィ 「…………」


王子 『ほう、それがどうした』


幼葉エルフ 『少年と少女、騎士と姫。二人はこの危機を乗り越えることができるのか』

幼葉エルフ 『乗り越えるのは二人だ』


王子 『なるほど』

王子 『少年と……少、女?』


幼葉エルフ 『いまはそれで良いんだ』

幼葉エルフ 『お前だってそれほど少年って感じでもないだろうが』


ハーピィ 「…………」




134 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/09(日) 01:29:36.37 ID:KuWregP70


ヒュンッ ヒュンッ ヒュンッ



王子 「…………」


ガキッ バシャン バララ


幼葉エルフ 「ハァ……ハァ……」

幼葉エルフ 「くそっ……こんなふざけたとこでオレが……くそっ……」


王子 (葉巻、つらそうだな)

王子 (体を選んだおれとしてもつらい)


ヒュンッ


ハーピィ 「…………」


王子 「!?」

王子 (ハーピィが葉巻と敵の間に割り込んだ)


幼葉エルフ 「ばっ……」


スカッ


ハーピィ 「…………」


王子 「敵がハーピィをかわした?」


135 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/09(日) 01:56:41.74 ID:KuWregP70


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「……裏技か」


ヒュンッ ガキッ ベキッ スカッ ポヘッ


王子 (敵がハーピィを避けることを利用して)

王子 (おれとハーピィで葉巻を挟んで守る)


幼葉エルフ 「右手に騎士さま、左手に絶対回避の盾か。これはなかなか貴重な姫体験だぞ」


王子 「息が整ってきたじゃないかお姫様」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「ああ。助けてくれ姫もとい葉巻エルフ」

王子 「さすがにしんどくなってきた。敵もこっちは避けてくれないもんで」


幼葉エルフ 「おう。頑張る騎士に不思議な力でご褒美をあげるのが姫の役割だからな」

幼葉エルフ 「練るのに時間がかかったが、魔法発動だ」


シュウウ ボロ ボロ


王子 「……攻撃が止まった。武器が崩れているのか」


幼葉エルフ 「ふはははは。聞こえるぞ、腐敗の音だ」


王子 (万がいち女だったとして、こいつは絶対に姫じゃない)


ハーピィ 「…………」


136 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/09(日) 02:06:59.19 ID:KuWregP70


王子 「……崩れる音も聞こえなくなった。終わったのかな」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「部屋が暗いままなのが気になる」


王子 「こういう部屋なんじゃないのか。さっさと出……」


ヒュン……


王子 「…………」


ヒュン ヒュン……


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「音が近づいてくるな」


王子 「まさか」


ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン


幼葉エルフ 「…………」


王子 「…………」


幼葉エルフ 「……ふふふ」


王子 「ははは……」


137 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/09(日) 02:30:55.36 ID:KuWregP70


…………


ヒュン ヒュン ヒュン


王子 (おれとハーピィで時間を稼いで、葉巻が武器破壊の魔法を放つ)

王子 (ということを何度か繰り返したが)


幼葉エルフ 「もう良い、王子」


王子 「いや、まだやれるぞ」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「……エルフの長老の中でも厄介な奴らが、力をあわせてつくった罠だ」

幼葉エルフ 「いくら壊しても無駄だ。オレたちが死ぬまで襲い掛かってくるだろう」

幼葉エルフ 「せめて視界をひらこうとしたが、複数の魔法が絡み合っていてそれさえ難しい」

幼葉エルフ 「……すまん。所詮馬車だと思って油断していた」


王子 「どうした、えらく弱気じゃないか」

王子 (……体のせいか?)


138 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/09(日) 07:40:03.07 ID:KuWregP70

幼葉エルフ 「いまのおれの魔力を一千ろうそく職人だとすると」

幼葉エルフ 「この馬車を改造した長老の魔力の合計は四万ろうそく職人ほどだ」

幼葉エルフ 「とても勝てるとは思えない」


王子 「お前が当たり前につかう謎の単位に驚きを隠せないが」

王子 「そんなに絶望的なのか」


幼葉エルフ 「ああ。術中にどっぷりはまってしまっている今、力をあわせてどうにかなるとは思えん」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「だが、扉はなんとか開けると思う」

幼葉エルフ 「もっともほかに罠がないかどうかは分からないが」

幼葉エルフ 「このままじゃ全滅だ。オレがしばらく敵の目を引きつけておくから、お前たちは先に……」


王子 「何を馬鹿なことを……」


黄花エルフの声 『そのときであった』


王子 「……何か始まった」

139 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/09(日) 08:05:52.61 ID:KuWregP70


黄花エルフの声 『その身すら盾として戦おうとする騎士を思う姫の祈りが、天に届いた』

黄花エルフの声 『追っ手の軍勢はまたたく間に光に焼かれて影も残さず消滅してしまった』


バシュッ ボワン ドロン


王子 「……何が起きているんだ」


幼葉エルフ 「敵が消えていく」

幼葉エルフ 「……さぐりの魔法も使えるようになった」


緑花エルフの声 『おーい、二人ともー』


青花エルフの声 『無事かー』


黄花エルフの声 『天の奇跡を目の当たりにして呆然とする二人に届いたのは、騎士学校の頼もしき仲間たちの声』

黄花エルフの声 『たったひとりで姫を救い出そうと学校を抜け出した騎士を助けるためにやってきたのだ』

黄花エルフの声 『騎士と姫は四人の偉大なる女神に感謝しながら』

黄花エルフの声 『仲間たちに守られて騎士学校に帰還したのであった』

黄花エルフの声 『そして……』


スウ


王子 「お、部屋が明る……」

王子 「くならなかった。薄暗い桃色の明かりに照らされている」


140 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/09(日) 08:28:31.34 ID:KuWregP70


王子 「部屋には大きなベッド……」


幼葉エルフ 「じっとりと暑いな。ううっ、このにおいは……」


ハーピィ 「…………」


王子 「におい……?」



黄花エルフの声 『ともに困難を乗り越えた二人の愛の炎は、もはや止められるはずもなかった』

黄花エルフの声 『二人の帰還を祝う宴のあったその晩』

黄花エルフの声 『眠りにつこうとする騎士の部屋に現れたのは、こっそり女子寮を抜け出した姫であった』

黄花エルフの声 『おさえられぬ情熱に校則を破ってしまった自分に戸惑う純粋な姫を、騎士はそっと優しく抱きしめ』

黄花エルフの声 『静かにまたたく窓の星のもと唇を重ねて、やわらかいベッドに倒れこむのであった』


王子 「何か鼻息が荒くなってないか、声」


エルフの長老たちの声 『ようこそ恋人たち』

エルフの長老たちの声 『移動する愛の巣。その秘密の愛の部屋へ』


141 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/09(日) 08:59:19.88 ID:KuWregP70


幼葉エルフ 「何てこった。ここが探していた部屋だったんだ」

幼葉エルフ 「今までのは気分をたかめるための前座だ」

幼葉エルフ 「命をかけた困難……校則違反というお手軽な背徳感……ねちっこい獣の息も、たぶん……」


ハーピィ 「…………」


王子 「手のこんだことを」

王子 「……大丈夫か。二人とも何かフラフラしているぞ」


幼葉エルフ 「…………」


ハーピィ 「…………」


黄花エルフの声 『部屋には、女の子をその気にさせる愛の妙薬の魔法をかけてあるわッ』


赤花エルフの声 『人間の男は日がな一日発情しているので、必要はないでしょう?』


緑花エルフの声 『刺激がほしいときは、いろんなアイテムがあるから試してみてーねー』


青花エルフの声 『騎士と姫のほかにも、いろいろな衣装や設定で楽しむことができるぞ』

青花エルフの声 『では、はげむが良い』


王子 「何てこった」


142 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/09(日) 09:09:13.93 ID:KuWregP70


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「…………」


フラ フラ


王子 「ど、どうしたんだ二人とも。そんなに近づいてきて」

王子 「しっかりしろ、目がとろんとしているぞ」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「騎士さま……いや、王子……」


王子 「いや、だからそんなに詰め寄られると……」

王子 「うおっ」


ドサッ


王子 (ベッドにつまずいて倒れてしまった)


143 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/09(日) 09:19:48.99 ID:KuWregP70


幼葉エルフ 「…………」


ハーピィ 「…………」


ギシ フカ フカ


王子 (これはまずい)


幼葉エルフ 「オレ、子供は二人が良いな……」

幼葉エルフ 「でもお前が望むなら、その後ももっと」


王子 「落ち着け。顔を赤らめるな、はにかむな。今は洒落にならないぞ」


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「ああ。中身が葉巻だと思うとものすごく笑えるが」

王子 「やめてくれハーピィ。そんな悩ましい顔と声で……」

王子 「二人ともしっかりしろ。こんなことやめろ」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました……」


王子 「うん。もろもろ、ちょっと良いかもしれない」


144 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/09(日) 09:26:59.81 ID:KuWregP70


王子 「だけど、嘘と分かっていてもやらなきゃならないこともあるんだ……」


ハーピィ 「…………」


王子 「うん、何だいその翼のかたちは」

王子 「……五か。五人なのか。頑張るなあ」

王子 「いや、そうじゃなくて」


幼葉エルフ 「何だ、嘘なのか……」

幼葉エルフ 「ようし、ハーピィ」

幼葉エルフ 「嘘つきな王子さまには、たっぷりおしおきしてあげなくちゃな……」


ハーピィ 「…………」


コク


王子 「いよいよまずい」


145 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/09(日) 09:39:40.29 ID:KuWregP70


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「ふふ。ほら、薄いから伝わりやすいだろう? オレの心臓、すごくドキドキしている」

幼葉エルフ 「お前の胸でも感じてくれ……」


王子 (落ち着け。こんなときこそ自然の声を聞くのだ)

王子 (…………)

王子 (そうか、海老の尻尾とゴキブリの……)

王子 (……今これはだめな感じだ)


ガチャッ


ろうそく職人 「師匠、王子さま、どこですかー」

ろうそく職人 「見張りの交代の時間ですよー」

ろうそく職人 「あと面白い草を見つけたんですがこれって食べられ……くっさい!」

ろうそく職人 「何ですかこの部屋は! ねっとり揉みこんでくるようなこのにおい!」

ろうそく職人 「むむむ、何か大きな陰謀を感じる……」

ろうそく職人 「地獄の浄化の炎!」


シュボッ ジボボボ


146 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/09(日) 10:14:52.72 ID:KuWregP70


ガチャッ


幼葉エルフ 「…………」


王子 「…………」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「この部屋は、誰も入れないようにしておこう」


王子 「潰すことはできないのか」


幼葉エルフ 「だめだ。どこよりも頑丈に守られている」


王子 「そうなのか……」


ろうそく職人 「…………」

ろうそく職人 「もしかして私、余計なことしましたかね」


ハーピィ 「…………」


…………


147 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/09(日) 11:21:36.09 ID:HBo35abWO
分かってたさ…安易にエロがない事ぐらい…
148 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/09(日) 12:51:40.80 ID:biQc8j2qO
>>147
俺が使ったハンカチで良ければ貸すぜ・・・
149 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/09(日) 17:50:22.63 ID:Y1KWfV7e0
>>148
鼻水ついてんじゃねーか
150 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/09(日) 17:55:36.39 ID:KuWregP70


サアア


貝殻の勇者 「……ああ、森のにおいがする。どこかなつかしい」

貝殻の勇者 「境界から、人間の領域に戻ってきたことを実感できます」


王子 「自然の声、自然の声……」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「王花、黒子。花子、黒王……いや、千巻……?」

幼葉エルフ 「……くそ、まだあの腐れ部屋の魔法が残ってやがる」


ブツブツ ボソボソ


貝殻の勇者 「……馬車から出てきてから様子が変ですが、彼らに何かあったのですか」


ろうそく職人 「もう少しでパーティメンバーが増えるところでした」


貝殻の勇者 「まあ」

貝殻の勇者 「それは、もったいないことをしましたね」


151 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/09(日) 18:10:36.50 ID:KuWregP70


ヒヨヒヨ クエー



ろうそく職人 「何とも不気味な鳥の声」


貝殻の勇者 「油断ならぬにぎわいですね。川幅も狭くなってきました」


幼葉エルフ 「そろそろ降りる準備をしておかないとな」


王子 「ああ。御者台の掃除に馬の……」


ハーピィ 「…………」


スクッ


王子 「分かった、馬については頼むよハーピィ。おれは助手をするから」


幼葉エルフ 「馬が好きだなあ、ハーピィは」


152 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/09(日) 18:20:41.83 ID:KuWregP70


幼葉エルフ 「さて、出た先にもモンスターはいるだろうし」

幼葉エルフ 「それについても準備しとかなくちゃな……」


ろうそく職人 「師匠」


幼葉エルフ 「何だ弟子よ。お前も無駄なものを揺らしていないで準備を……」


ろうそく職人 「馬車を出てからというもの王子のお膝に乗っていませんが」


幼葉エルフ 「乗るとか言うな馬鹿」


ろうそく職人 「……はい?」


幼葉エルフ 「…………」

幼葉エルフ 「魔ンボウの槍を持ってこい、杖に改造してやるから」


ろうそく職人 「…………」

ろうそく職人 「むふっ……」

ろうそく職人 「おやおや。もしかしてわたし、弱み握っちゃいましたかね」

ろうそく職人 「根っこから腐ってひん曲がった師匠の心のやわらか〜いトコロ……」


幼葉エルフ 「…………」


ドロン


ろうそく職人 「ぎゃあ、尻尾が増えた!」


幼葉エルフ 「オレの腐った心に、あたたか〜いもやわらか〜いもないのだ」


153 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/09(日) 18:21:40.75 ID:5dbQ/XZX0
メンバーが増える前に身重で減るという見方も出来るんだけどな
154 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/09(日) 20:45:42.41 ID:KuWregP70


人殺しの森



ユラ ユラ ゴトン


幼葉エルフ 「よし、降りるぞ。みんな馬車に乗れ」


貝殻の勇者 「ついに着きましたか。ここは……泉のようですね」

貝殻の勇者 「なるほど。妖精たちにしか分からないような、森に隠された泉……」


ろうそく職人 「うう、暗いですねー。怖いですねー」

ろうそく職人 「王子さま、今こそおんぶを……」


仮面王子 「いやいや、馬車に乗るんだし……」


ハーピィ 「…………」


ろうそく職人 「出た、黒き翼の骨のモンスター!」


仮面王子 「落ち着け」

王子 「おれは王子だよ」


ハーピィ 「…………」


ろうそく職人 「なーんだ」


王子 「はっはっは」


幼葉エルフ 「城組、気が済んだら馬車に乗れよ」


155 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/09(日) 21:16:52.72 ID:KuWregP70


幼葉エルフ 「これとこれを結んでひらいて……よし」


王子 「何をするつもりだ。結んだ植物のつるを舟に置いて」


幼葉エルフ 「言葉を込めて結んだんだ」

幼葉エルフ 「これをエルフの里に送る。魔法で会話するには遠すぎるからな」


王子 「へえ。面白そうな技だな」


幼葉エルフ 「つるを結びながら」

幼葉エルフ 「……二人目うまれました」

幼葉エルフ 「そして、つるをほどくと」


幼葉エルフの声 『二人目うまれました』


王子 「なるほど」


156 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/09(日) 21:37:56.01 ID:KuWregP70


幼葉エルフ 「お前にもできるかもしれないぞ。魔法の会話の筋が良いから」


王子 「どうかな」


幼葉エルフ 「普通の会話と魔法の会話を一緒にやる気持ちで、結びかたはこう」


王子 「ふむ」

王子 「修行の一環だ。自然の声を聞きながらやってみよう」

王子 「…………」

王子 「勇者とろうそく職人、抵抗むなしく一方的にボコボコにされたあと、皇帝の胃袋でドロドロになって死す」

王子 「そして、ほどくと……」


王子の声 『勇者、一方的にボコ、ドロ』


王子 「おお、少しだけできた」


幼葉エルフ 「エルフの魔法なんだが、筋が良いな」

幼葉エルフ 「練習すれば使えるようになるぞ」


王子 「魔法の会話とあわせて練習してみよう」


ハーピィ 「…………」


157 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/09(日) 21:50:36.63 ID:KuWregP70


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフの裏声 『王子さま、すきすき。だいすき』


ろうそく職人の裏声 『王子さま、海老狂いは正直きもちわるいと思います』


幼葉エルフ 「けけけ。次はどんなつるを持たせてほどかせてやろうか」


ろうそく職人 「むふふふ。面白いですね、つるくじ」


王子 「まったく、この師弟は……」


貝殻の勇者 「あなたたち。いつまでも遊んでないで馬車に乗りなさい」


158 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/09(日) 22:01:25.28 ID:5dbQ/XZX0
幼葉エルフ気をつけろよ。さっきからそうとしか捉えられない発言つるに入れてるぞ・・・
159 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/09(日) 22:03:13.11 ID:KuWregP70


ろうそく職人 「はい、勇者さま!」


王子 「いや、すまないね勇者どの」


ハーピィ 「…………」


スタスタスタ


幼葉エルフ 「……さて、境界の異変についてのつるはここに置いて」

幼葉エルフ 「あとはエルフの里まで、舟があの怪物に沈められないことを祈るしかないか」

幼葉エルフ 「こんなもんに頼るとは。魔力をおさえなきゃいけない身とはいえ、つらいね」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「どうしたハーピィ、戻ってきたりして。王子に御者台とられちまうぞ」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「なんだ、ほどけたつるを取り上げて」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「ははあ……なるほど、そのつるは持っておきたいんだな」

幼葉エルフ 「それなら、それにすこし魔法をかけておいてやろう」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「…………よし」


王子 「おーい、どうした。来ないのか」


160 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/09(日) 22:18:37.43 ID:KuWregP70


貝殻の勇者 「みんな乗り込みました」


ろうそく職人 「今回わたしたちは、魔法の部屋がある方じゃなくて普通の客室のある方の扉から乗り込んでいます」


幼葉エルフ 「よし。漂泊の勇者軍、出発だ」


馬車馬A 「ブルル」


馬車馬B 「バル」


王子 「馬がおびえている……。この森が怖いのかな」


幼葉エルフ 「緊張しているのさ。妖精の蹄鉄に慣れていない」


王子 「エルフの長老たちの餞別か」


ハーピィ 「…………」


馬車馬A 「ヒヒン」


馬車馬B 「ヒヒン」


ハーピィ 「…………」


王子 「落ち着いた……」


161 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/09(日) 22:30:02.05 ID:KuWregP70


パカ パカ


馬車馬A 「…………」


馬車馬B 「…………」


ピチャ ピチャ


王子 「……おお」

王子 「馬が水の上を歩いている」


幼葉エルフ 「妖精の魔法がこめられた蹄鉄だ」

幼葉エルフ 「川くらいなら渡れるぞ」

幼葉エルフ 「今は失われたが、昔は海の底も空高くも走れるようになるものまであったそうだ」


王子 「魔法の力ってすごいな」


ハーピィ 「…………」


馬車馬たち 「ヒヒン」


162 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/09(日) 22:41:48.36 ID:KuWregP70


ユラ ユラ


ろうそく職人 「馬車が岸に上がるのを見届けたように、舟が境界の方へ戻っていく」


貝殻の勇者 「不思議な光の霧の向こう側。こことは違う、妖精の領域に帰っていくのですね」

貝殻の勇者 「ああ、本当に人間の領域に戻ってきた」


ろうそく職人 「これから、勇者さまの戦いがまた始まるのですね……」


貝殻の勇者 「そうですね……」


ろうそく職人 「エルフの里での修行で、私もひとかわむけました」

ろうそく職人 「これからも、勇者さまの力になれるようたくさん修行します」


貝殻の勇者 「ありがとう、ろうそく職人さん……!」


ろうそく職人 「勇者さま……!」


貝殻の勇者 「帝国……そして、魔王軍」

貝殻の勇者 「敵は強大。ですが私は負けられません。人々の未来のために」

貝殻の勇者 「私たちの戦いはこれからです!」


ろうそく職人 「みかん!」


幼葉エルフ 「うるさい」


163 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/09(日) 23:16:10.86 ID:KuWregP70


ろうそく職人 「おひとついかがですか、エルフみかん」


貝殻の勇者 「あたたかいグリーンティーもありますよ」


幼葉エルフ 「もう食べてるよ」


王子 「さて、道もなければ看板もない森の中だが、どこに行こうか」


幼葉エルフ 「ここは帝国つまり大陸の右側、東の海に浮かぶ島だ。島のほとんどは森」

幼葉エルフ 「西側には港があって、帝国東地方に渡れる」

幼葉エルフ 「南側にも港はあり、そこからは帝国南東領、またの名を英雄諸島に渡れる」


王子 「まだ続くのか……」


貝殻の勇者 「む、ちょっとお湯を多くしすぎました。お茶が薄い」


ろうそく職人 「そ、それはいけません!」


貝殻の勇者 「まったくです。量だけ無駄に増やして味が薄いのはいただけません」

貝殻の勇者 「たいしたものが出るわけでもないのに、二日目に突入したり」

貝殻の勇者 「しかも不味い手作りのお菓子などついてしまった日には」


ろうそく職人 「そっと瞳を閉じざるをえません」


ハーピィ 「…………」


164 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/09(日) 23:36:52.68 ID:KuWregP70


幼葉エルフ 「というわけで、島の西側に向かい東領に渡ろうと思う」


王子 「わかった」


幼葉エルフ 「港のある西側とこの森のあいだには山脈があるが」

幼葉エルフ 「こえるのはそんなに難しくない」


ろうそく職人 「おや、あちらの方に山がちらっと見えました」


貝殻の勇者 「あちらが西側ですか」


幼葉エルフ 「ハーピィ、この四つ針のコンパスを置くからお前もときどき見るんだぞ」

幼葉エルフ 「基本はこの長い針がさす方に向かって」

幼葉エルフ 「もし長い針にこの赤い色つきの針が近づいたり重なったりするようなら」

幼葉エルフ 「危険が近づいている証拠だから、ちょっと迂回するんだぞ」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「うん、そうだ。賢いなお前は。さすがは王子をおとした魔性の女だ」

幼葉エルフ 「そしてこの青い針は、お宝やアイテムのありかをさす。しかし、中にはハズレも……」


王子 (うれしそうに世話をやいて。警戒心の強い葉巻も、すっかりハーピィのとりこにされたようだ)

王子 (……いかん。二人を見ていると、あの部屋で勢いに任せなかったことがちょっと悔しくなったぞ)


165 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/10(月) 00:46:16.72 ID:3Ia3JRB3O
悔しいのはこっちだよ!王子のバカバカ!
166 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/10(月) 01:45:15.00 ID:X1C8Sj5W0
ろうそく職人は
最後は人の形を
保てるのだろうか
167 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2014/03/12(水) 00:17:02.78 ID:1eYAH3JI0
ろうそく職人

おや:黒花エルフ

http://i.imgur.com/vNAzkSm.jpg
色違い
http://i.imgur.com/uIxLy98.jpg

やくたたずだったろうそく職人が進化した姿。 
強力なほのおの魔法をおぼえるぞ。

わざ:ミルクのみ
   しぼりとる
   たまごうみ
   だいばくはつ

※画像は開発中のものです。
 実際のろうそく職人とは異なります。
168 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/12(水) 00:56:18.77 ID:1eYAH3JI0


カラカラ ゴトゴト


ろうそく職人 「馬車は道なき道も順調に進んでいきますね……」


貝殻の勇者 「木の根を乗り越えても揺れないので、ゆっくりお茶を飲むことができます」

貝殻の勇者 「さすが魔法の馬車」


ろうそく職人 「でも妖精の力を得たとはいえ、馬車馬たちは重たくないんでしょうか……」

ろうそく職人 「と、やや。木々の向こうに青い光りが……」


首無し馬 「…………」


ろうそく職人 「…………」


首無し馬 「…………」


スウ……


ろうそく職人 「…………」

ろうそく職人 「ほわぉ……」


169 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/12(水) 01:07:37.90 ID:1eYAH3JI0


貝殻の勇者 「光? 光なんて見えませんが」


ろうそく職人 「い、いえ、さっきまでいたのです。地獄の青い炎をまといし首無し馬が……」


貝殻の勇者 「なんと……」

貝殻の勇者 「地獄の炎は青いのですか」


王子 「……お、道に出たぞ」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「山もすぐそこだな」

幼葉エルフ 「月はまだあそこか。思ったより順調だ、一気にこえちまおう」


170 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/12(水) 01:25:24.30 ID:1eYAH3JI0


カラカラ


王子 「古いがけっこう立派な道だ。人通りが少ないのはもったいない気がする」


幼葉エルフ 「おおかた、島の西側が開発されてまったく使われなくなったんだろう」

幼葉エルフ 「性悪な妖精がたくさん住み着いているという噂もあるだろうし」


王子 「ああ……」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「さて、そろそろ山だ。明かりを少し弱くするぞ」


王子 「弱くするのか」


幼葉エルフ 「今日は晴れているからな。山ではきっと星が綺麗に見える」


王子 「そりゃ楽しみだ」


171 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/12(水) 07:24:58.25 ID:TX/dozOA0
172 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/12(水) 09:19:28.03 ID:1eYAH3JI0



ろうそく職人 「…………スウ」


貝殻の勇者 「ふふふ、可愛い顔で寝ていますね。星が綺麗ですが、起こすに起こせません」


王子 「……ろうそく職人はすごいな。つるの魔法もすぐに使えていたし」


幼葉エルフ 「里で脳みそが腐るほど魔法のコツを叩き込んだから。……魔法にも向き不向きがある」

幼葉エルフ 「つるの魔法は、あるエルフの国の姫が遠く離れた人間の国に」

幼葉エルフ 「愛の言葉を伝えたくて編み出した魔法という説があって」

幼葉エルフ 「男は習得が難しい。例外もあるが」


王子 「へえ」

王子 「……エルフの呪いを受けてあんな姿になったのは関係ないのかな」


幼葉エルフ 「多少は」



173 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/12(水) 09:32:53.76 ID:1eYAH3JI0


幼葉エルフ 「……あいつは魔法の素質は、まああるんだ」

幼葉エルフ 「ろうそくの魔法なんてものを編み出したりするくらいには」


王子 「ほう」


幼葉エルフ 「ただ既存の魔法をおぼえるのはてんで駄目なんだ。基本魔法も失敗するし」

幼葉エルフ 「普通の魔法使い向けの基礎練習もこなせない」

幼葉エルフ 「あいつには普通のことをさせても駄目なんだ」


王子 「大変じゃないか」


幼葉エルフ 「ああ。こっちも、あいつを祖とした新しい流派を育てるつもりでかからないと」

幼葉エルフ 「そして、受け継がれてきた既存の魔法たちと張り合えるくらいにまで育てないと」


王子 「……ふうん」


幼葉エルフ 「……何だよ、ニヤニヤしやがって」


174 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/12(水) 09:47:12.39 ID:1eYAH3JI0


王子 「いやいや、まるで親のような顔をするなと思ってね」

王子 「師弟関係はなかなかぬるりと良好のようだ」


幼葉エルフ 「勘違いするな。体のスペアを調整しているだけだ」

幼葉エルフ 「……あいつには内緒だからな。オレが素質があるって言っていたなんて言うなよな」


王子 「はいはい、お母さん」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「その通り、こいつは葉巻だ」

王子 「ははは」


幼葉エルフ 「…………」

幼葉エルフ 「……男のくせにパーティで一番弱くなったりしちゃ嫌ですよ、お父さん」


王子 「ぐっ……」


175 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/12(水) 09:59:42.91 ID:1eYAH3JI0


カラカラカラ


王子 「必殺技か……」

王子 「おれにも貝殻の勇者どのみたいな技があれば」

王子 「あの町での憲兵隊との戦いも、馬車のあの部屋も、問題なく切り抜けられたんだろうか」


幼葉エルフ 「気にしなさんな。人の強さが人を殺す力で決まるわけでもあるまいし」


王子 「そりゃそうだろうけども」


貝殻の勇者 「そうですよ。人の強さは慈悲と」

貝殻の勇者 「魔王軍を殺しつくす力で決まるのです」


王子 「あはは……」

王子 「あ、目が本気だ」


176 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/12(水) 10:11:01.38 ID:1eYAH3JI0


王子 「しかしなあ、このさき人間同士の戦いも避けられないだろうし」

王子 「力はつけないとな」


幼葉エルフ 「いざとなったらハーピィに杖を持たせちまえ」


王子 「それは嫌だ」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「過保護王子め」

幼葉エルフ 「……人間同士ならお前はそうそう負けないよ」

幼葉エルフ 「あの部屋の戦いぶりを見るに青花の修行で何かをつかんだようだし」

幼葉エルフ 「今なら将軍とまではいかなくとも、憲兵隊長とも正面から殺しあえるだろう」



177 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/12(水) 10:26:29.98 ID:1eYAH3JI0


王子 「ふむ」

王子 「自然の声を聞きながら剣をふるって成長していくしかないか」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「肩に変な力が入っているぞ。ハーピィが心配そうな顔をしている」


王子 「おっと」


幼葉エルフ 「人間の領域に帰ってきて人間の重みに潰されないようにしろよ」

幼葉エルフ 「……そんなに強くなりたいなら」

幼葉エルフ 「無駄うちはできないが、オレがお前の必殺技になってやるから安心しろ」


ろうそく職人 「ばっははははは」


幼葉エルフ 「そいつを馬車から放り出せ」


貝殻の勇者 「育児放棄はいけません。ただの寝言ではありませんか」


178 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/12(水) 12:30:39.70 ID:iJFilfYfO
やだぁ!ベタ惚れじゃないですかぁ!
179 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/12(水) 14:16:57.68 ID:1eYAH3JI0



カラカラ


貝殻の勇者 「……スウ」


王子 「……スウ」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「山頂を越えたあたりで、ハーピィ以外みんな寝てしまった」

幼葉エルフ 「こんなに星が出ているというのに」

幼葉エルフ 「おお、薄い星のもやが緑に紫に……魔力が高まっていくようだ」


ハーピィ 「…………」


ポキッ


ハーピィ 「…………」


折れた下り坂用ブレーキ棒


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「……!!」



180 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/12(水) 14:30:33.36 ID:1eYAH3JI0


ハーピィ 「! ッッ」


幼葉エルフ 「星見台でもつけてみるかな、ココア色の。そういえば秘密の書庫に黄花の望遠鏡があったな」

幼葉エルフ 「ちょうだいしてくれば良かった」


ハーピィ 「ッッ!!」


幼葉エルフ 「なんだハーピィ。羽に虫でもついたのか」


ハーピィ 「!! っ! っ、ッッ!」


幼葉エルフ 「……ああ、馬車のブレーキ棒が折れたのか」


ハーピィ 「ッ! …………ッ」


幼葉エルフ 「魔性の女が取り乱すもんじゃないぞ。下り坂で馬車のブレーキがきかなくなったくらいじゃ……」

幼葉エルフ 「死んじゃうじゃないか、ばか」


ハーピィ 「!! !!」

181 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/12(水) 15:07:01.10 ID:1eYAH3JI0


カラカラカラ


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「……そうだよ、ブレーキ棒は飾りだったんだよ」

幼葉エルフ 「魔法の馬車だから、ブレーキをかける必要がないんだもの」

幼葉エルフ 「でも、それに慣れちゃうと普通の馬車を運転できなくなるからな」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「ああ、綺麗だ。今日は良い星空だ。倒れるまで運動した疲れがひくときのように、胸が爽やかにさめていく」

幼葉エルフ 「オレは空を眺める時間が好きなのだ」

幼葉エルフ 「地上が陰謀やら恨みやら、正義だ悪だ恋だ愛だと騒いでいても、何も言わずにそこにあるんだ」

幼葉エルフ 「騒いでいるのが馬鹿みたいじゃないか」

幼葉エルフ 「オレが腐っているのも、地上が腐っているのも、なんだかどうでも良くなってくる」


ハーピィ 「…………」


182 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/12(水) 15:14:52.08 ID:1eYAH3JI0


幼葉エルフ 「なあハーピィよ」

幼葉エルフ 「どこかにあるお前の故郷からも、こんな空は見えたのか?」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「無口だなあ、お前は」


王子 「…………スゥ」


幼葉エルフ 「好きな奴のそばで好きって言えないのも、さぞつらかろうに」


ハーピィ 「…………?」


幼葉エルフ 「……不思議な奴だね、お前も」


カラカラカラカラ


…………


183 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/12(水) 15:21:16.43 ID:1eYAH3JI0


カラカラ



幼葉エルフ 「…………ムニャ」


王子 「……またこいつは膝の上で」


ハーピィ 「…………」


王子 「ハーピィは眠くないかい。起きっぱなしだろう」


ハーピィ 「…………」


王子 「はは、そうでもないか……」

王子 「ん、その翼に持っているのは」


ハーピィ 「…………」


折れた下り坂用ブレーキ棒


王子 「おうッ!?」


184 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/12(水) 15:30:27.60 ID:1eYAH3JI0


ハーピィ 「…………」


王子 「下り坂を問題なく走っている」

王子 「これも魔法の力か。すごいな」


ハーピィ 「…………」


王子 「だけど、慣れすぎても良くなさそうだ。普通の馬車も運転できるよう、ブレーキ棒は修理しなくちゃな」


ハーピィ 「…………」


ガサゴソ


ハーピィ 「…………」


王子 「うん? 何だい」

王子 「これは……結んだ植物のつる。言葉をこめたやつかな」


185 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/12(水) 16:00:34.66 ID:1eYAH3JI0


ハーピィ 「…………」


王子 「解けということかな。どれどれ……」


パラ


幼葉エルフの裏声 『王子さま、すきすき。だいすき』


王子 「…………」


ハーピィ 「…………」


王子 「葉巻の声だが……ハーピィ、いったいどうしてこれを」


シュル


王子 「おや、解けたつるがまた結ばれていく」


ハーピィ 「…………」


王子 「今度は返してほしいのかな?」




186 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/12(水) 16:01:36.89 ID:+k+fpIG10
これは・・・
187 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/12(水) 16:05:21.60 ID:1eYAH3JI0


王子 「どうぞ」


ハーピィ 「…………」


パラ


王子 (また解いた)


幼葉エルフの裏声 『王子さま、すきすき。だいすき』


シュル


王子 (言葉が終わるとまた結ばれていく)


ハーピィ 「…………」


パラ


幼葉エルフの裏声 『王子さま、すきすき。だいすき』


ハーピィ 「…………」


王子 「……そうか。ちょっと言葉を使えるようになったんだな、ハーピィ」

王子 「ありがとう」


ハーピィ 「…………」


188 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/12(水) 16:16:12.82 ID:1eYAH3JI0


パラ


幼葉エルフの裏声 『王子さま、すきすき。だいすき』


シュル

パラ


幼葉エルフの裏声 『王子さま、すきすき。だいすき』


王子 「ははは、ありがとう。こんなに言ってもらうのは初めてだ」

王子 「でも、そろそろそのへんで……」


ハーピィ 「…………」


王子 (あ、夢中で聞こえてないな。すごく楽しそうだ。無表情だけど)


幼葉エルフの裏声 『王子さま、すきすき。だいすき』

幼葉エルフの裏声 『王子さま、すきすき。だいすき』

幼葉エルフの裏声 『王子さま、すきすき。だいすき』


幼葉エルフ 「うぐっ……」

幼葉エルフ 「ぐおおお……!」


王子 「は、ハーピィ……!」


幼葉エルフの裏声 『王子さま、すきすき。だいすき』

幼葉エルフの裏声 『王子さま……』


189 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/12(水) 16:27:07.68 ID:1eYAH3JI0


北のボスモンスター 「グルルル……」


南のボスモンスター 「ガルルル……」


ジリッ ジリ……


幼葉エルフの裏声 『王子さま、すきすき。だいすき』


ボスモンスターたち 「!?」


幼葉エルフの裏声 『王子さま、すきすき。だいすき』

幼葉エルフの裏声 『王子さま、すきすき。だいすき』

幼葉エルフの裏声 『王子さま、すきすき。だいすき』


北のボスモンスター 「キャ、キャイ〜ン……!」


南のボスモンスター 「クゥ〜ン……!」


ダダダダダ


幼葉エルフの裏声 『王子さま、すきすき。だいすき』

幼葉エルフの裏声 『王子さま、すきすき。だいすき』


ハーピィ 「…………」


王子 (我をわすれている)

王子 (島の西の港につくまでに落ち着いてくれるだろうか……)


幼葉エルフ 「うーん……うーん……ムニャ」


幼葉エルフの裏声 『王子さま、すきすき。だいすき』

幼葉エルフの裏声 『王子さま……』



カラカラカラカラ


…………



190 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/12(水) 17:31:20.50 ID:OS7lz0QK0
面白い! 前スレから一気読みした。
ところで海老をそろそろ茹でよう(提案)
191 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/12(水) 17:36:32.43 ID:iJFilfYfO
おいおい随分ロマンチックじゃないか
192 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/12(水) 18:22:08.45 ID:DyqRgrd2O
ちくしょおぉぉぉAA略
193 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/12(水) 18:32:22.06 ID:CHQSIa8b0
王子が羨ましすぎる
194 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/12(水) 18:47:45.05 ID:QBlsED+w0
これこそ言霊と
いうやつか…

てかろうそく職人の
完成形が完全に
人外になっているんだが
195 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/12(水) 20:13:53.72 ID:Ct/hPOgho
ハーピィ可愛いなぁ……
196 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/12(水) 21:16:34.89 ID:t+BnsJap0
笑すぎて腹が痛い乙
197 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/12(水) 23:32:34.15 ID:8l/SYVjbo
睡眠学習で刷り込みされてないといいね(フラグ)
198 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/14(金) 17:20:58.61 ID:CV9QFcY90


東の島 西の港 宿



ろうそく職人 「さあ師匠、このろうそくの火を見つめてください」


幼葉エルフ 「…………」


ろうそく職人 「ではいきますよ」

ろうそく職人 「浄化の呪文!」

ろうそく職人 「ひわのおうからいでましたまへ、よまひゆらさかよまひゆらさか……」


幼葉エルフ 「黙ってやれ。弱い魔法使いが呪文を口に出すのは危険なんだぞ」

幼葉エルフ 「オレだって……」

幼葉エルフ 「王子さま、すきすき」

幼葉エルフ 「……くそっ」


貝殻の勇者 「エルフの長の一角をになう黒花エルフどのが、寝ているあいだに呪いを受けていたとは」

貝殻の勇者 「私も油断しすぎていたようですね……」


幼葉エルフ 「ちくしょう…………だいすき」




199 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/14(金) 18:13:34.33 ID:yzvcu1+O0
これは
破壊力のある呪い
(特にまんぼうに
200 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/14(金) 18:14:18.24 ID:CV9QFcY90


幼葉エルフ 「魔法の馬車で受けた呪いが抜けきっていなかったところに」

幼葉エルフ 「何か別の魔法がからまってきて、オレの中でこんがらがってしまったせいで」

幼葉エルフ 「オレは王子さま、すきすき。大すき」


ろうそく職人 「むむう、なんと恐ろしい呪いでしょう」


貝殻の勇者 「……これでは、人と話すこともままなりませんね」


幼葉エルフ 「このオレが、呪いもちの弟子なんかに頼らきゃならないなんて」


ガチャッ


王子 「よお、そろそろ良いか……」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「王子さま、すきすき。大すき」

幼葉エルフ 「違う! 王子さますきすきすき、王子さま大すき」

幼葉エルフ 「くそお、大すき!」


ろうそく職人 「うわあ、王子さまを見たとたん悪化した!」


王子 「……まだだったみたいだな」


201 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/14(金) 18:43:22.97 ID:CV9QFcY90


貝殻の勇者 「もう少し、部屋の外で待っていてもらえますか」


王子 「ああ」

王子 「長くなりそうなら、買出しに行こうかな」

王子 「明日の船はとってしまったし」


貝殻の勇者 「ならば私も……」


ハーピィ 「…………」


貝殻の勇者 「ハーピィどの、今朝から物憂げな顔をされていますが」


王子 「まあ、いろいろと悩むこともあって……」


貝殻の勇者 「……王子どの。お城の地下牢での姿が、王子どのの全てではないと分かっていますが」

貝殻の勇者 「まさか、あどけないハーピィどのが無口であるのを良いことに、よらぬことなんてしていませんね?」


王子 「あ、ああ……」


ハーピィ 「…………」


貝殻の勇者 「とり返しようのない甘酸っぱい過ちを悔いているかのような、寂しく切ない表情……」


王子 「本当だよ。本当に何もしていないからな」


202 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/14(金) 19:01:26.32 ID:CV9QFcY90


幼葉エルフ 「王子さま、すきすき」


ろうそく職人 「ふむふむ」

ろうそく職人 「王子、悪いがオレは買出しに行けそうにない」

ろうそく職人 「買うものは書き出しておくから、買ってきてくれ」

ろうそく職人 「と、言っております」

ろうそく職人 「私も師匠の治療のため、ここを離れられません」


王子 「そ、そうか」

王子 (よく分かったな、葉巻の言葉が……)


幼葉エルフ 『王子……』


王子 (魔法の会話か。そうか、これなら話せるな)

王子 『何だ』


幼葉エルフ 『大すき』


王子 「…………」


203 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/14(金) 19:12:14.10 ID:CV9QFcY90


幼葉エルフ 「ぬがああああ!」


ろうそく職人 「師匠!? どうしたのですか急に枕に顔をうずめてジタバタと!」

ろうそく職人 「さあ、この浄化の炎を見つめて……」


王子 (しっかり休んで回復しろよ、葉巻)

王子 (かつて町で放っていた暗い輝きは、もう取り戻せそうもないが)


ハーピィ 「…………」


204 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/14(金) 21:01:24.92 ID:YGgGdtq50
暗い輝き(笑)なら取り戻せるかもよ?
205 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/14(金) 21:25:13.60 ID:Q/0VfeBgo
そういや最初の頃は黒く見えたな葉巻
すっかり忘れてたわ
206 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/14(金) 21:29:33.41 ID:CV9QFcY90


…………


港の市場



ミャー ミャー


麻袋運び 「聞いたかい。近くの海に鏡の魔女が出たそうだ」

麻袋運び 「目撃した漁師の話じゃ、毒々しい翼の黒いドラゴンに乗って南の空へ消えていったらしい」


木箱運び 「竜の火山に住むという恐ろしい鏡の魔女が、何だってこんな帝国のはずれに」


果物ガール 「ぶるぶる。鏡の魔女は女の子の時間を奪って若さを保っているというわ。恐ろしい」


コボルトガール 「物騒だなあ。南の海には幽霊船が出るというし」


麻袋運び 「海上都市の亡霊か。まったく、帝国も勇者を取り締まる前にやることがあるだろうに」


木箱運び 「よせよ。そんなこと言ってるのが皇帝の目に入ったら、安い飯も食えなくなるぜ」


ザワザワ


207 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/14(金) 21:57:21.01 ID:CV9QFcY90


王子 「小さな港だけど、活気があるね」


ハーピィ 「…………」


貝殻の勇者 「そうですね」

貝殻の勇者 「青い空にゆらゆらと伸びる船の縦帆、輝く雲と波に建物の壁」

貝殻の勇者 「……おいしい香りもします」


王子 「……買い物も一段落したし、何か食べていくかい」


貝殻の勇者 「だめですよ。黒花どのやろうそく職人さんが待っているのです」


王子 「そうだった」


208 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/14(金) 22:11:18.74 ID:CV9QFcY90


屋根のない酒場



傭兵A 「大陸の東と西の帝都を結ぶ大きな跳ね橋が壊れたらしい」


女傭兵 「まいったね……帝都に行くには大きく南まわりで行くしかないってわけかい」


傭兵B 「橋の近くで、オークを見たっていう話もある」


傭兵C 「あの野蛮な奴らか……余計なことをしやがって」


ザワザワ


貝殻の勇者 「では、お持ち帰りにこれとこれを」


看板娘 「はい! かしこまりました」


王子 「…………」


ハーピィ 「…………」




209 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/14(金) 22:26:26.96 ID:CV9QFcY90


貝殻の勇者 「うふふふ、楽しみです」

貝殻の勇者 「この島は塩の島として有名だとか」

貝殻の勇者 「おいしい魚料理がいただけることでしょう」


王子 「…………」


貝殻の勇者 「どうしましたか、王子ど……いえ、骨仮面どの」

貝殻の勇者 「仮面が呆けていますよ」


王子 「……いや」


ハーピィ 「…………」


王子 「ちょっと、意識が時間ごととんでいたような気がして」


貝殻の勇者 「なんと……」


210 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/14(金) 22:55:51.83 ID:CV9QFcY90


トタトタトタ


看板息子 「すいません、お客さん」


貝殻の勇者 「はい、何でしょうか」


看板息子 「お一人様なのですが、相席よろしいでしょうか」

看板息子 「人がいっぱいで」


貝殻の勇者 「私は構いません」


ハーピィ 「…………」


王子 「おれとこの子も大丈夫だよ」


看板息子 「ありがとうございます」


211 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/14(金) 23:03:46.35 ID:CV9QFcY90


看板息子 「お客さーん、こちらに席があります!」


貝殻の勇者 「……見知らぬものと一食をともにする」

貝殻の勇者 「旅の醍醐味ですね」


王子 「うんうん」


ハーピィ 「…………」


トテトテトテ


看板息子 「あ、来た来た。どうぞ、こちらの席です」


トテ


白黒マンボウ 「す、すいません。わざわざ席を探していただいて……」


貝殻の勇者・王子 「!?」


212 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/14(金) 23:13:58.57 ID:CV9QFcY90


看板息子 「では、あとで注文をうかがいにまいります」


白黒マンボウ 「は、はい……」


貝殻の勇者 「…………」


王子 「…………」


ハーピィ 「…………」


白黒マンボウ 「……あ、ごめんなさい」


バサ


白黒マンボウ 「お邪魔するというのに」

二階調髪の娘 「私ったらフードをかぶったままで……」

213 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/14(金) 23:30:17.68 ID:CV9QFcY90



王子 「……あ、何だ、被り物か」


貝殻の勇者 「びっくらこきましたね」


二階調髪の娘 「ごめんなさい。旅をするときはいつもこれで」


王子 「いやいや。おれも仮面をしている身だから」

王子 「それよりも、君は旅人なのか」

王子 「メニューどうぞ」


二階調髪の娘 「ありがとうございます」

二階調髪の娘 「は、はい。旅というか、ちょっとしたおつかいですけど……」

二階調髪の娘 「ほおおおお!?」


貝殻の勇者・王子 「!?」


ハーピィ 「!?」


214 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage saga]:2014/03/14(金) 23:34:35.60 ID:zaWXsXmPo
つか>>1って絵描くんだよな…ハーピーのカラーはないのか?
215 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/14(金) 23:41:35.24 ID:CV9QFcY90


王子 「どど、どうした、メニューをひらくなり大声を出して……」


二階調髪の娘 「えええええ、えび、えびが背中をくぱっと……」


王子 「あ、ああ。ここのメニューは絵がついているんだ」


貝殻の勇者 「親切ですよね」


二階調髪の娘 「ここのに、ににに、人間はえええ、海老、えびをた、たべ、たべるのですか……?」


貝殻の勇者 「ええ」


王子 「ああ」





216 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/14(金) 23:44:37.42 ID:YuFfd0Yw0
また濃いキャラが
でてきやがったよ
217 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2014/03/15(土) 00:25:02.21 ID:qEOvewK10
>>214
ありません
どうしても、翼がゴーヤみたいになるのです
218 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/15(土) 00:37:32.84 ID:qEOvewK10


王子 「えびは良いぞお」

王子 「捨てるところがないんだ。食料はもちろん、なんと傷薬にもなるんだ」

王子 「血は綺麗になるし栄養もとれるし、ダイエットの頼もしい味方にもなるんだぞ」

王子 「おっと、でも美味しすぎて食べ過ぎるかもしれないから、そこは注意だ」

王子 「ははははは」

王子 「さあ少女よ」

王子 「海老を食え、海老を」


二階調髪の娘 「…………」


貝殻の勇者 「座ったまま気絶しています」


王子 「なにっ」


ハーピィ 「…………」

219 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/15(土) 01:10:38.16 ID:qEOvewK10



…………


王子 「ごめんよ、大丈夫かい」

王子 「まさかえびが苦手だったとは……」


ハーピィ 「…………」


二階調髪の娘 「は、はい、大丈夫です……」


貝殻の勇者 「骨の仮面をした殿方に海老について熱弁されれば」

貝殻の勇者 「ショックも大きかったでしょう」


二階調髪の娘 「い、いえ……」


トコトコ


看板娘 「お待たせしました!」

看板娘 「あらびきエビ団子のピリ辛エビ味噌ソースかけです!」


二階調髪の娘 「おえーっ!!」


貝殻の勇者 「きゃあっ」



220 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/15(土) 01:33:05.70 ID:qEOvewK10


ワイワイ カチャカチャ


二階調髪の娘 「す、すみません、服を汚してしまって」


王子 「いや良いんだ。それより大丈夫かな」

王子 「なんだったら見えないように食べるけど……」


二階調髪の娘 「だ、大丈夫です」

二階調髪の娘 「えびのにおいがするので大丈夫かなと思って」

二階調髪の娘 「ほいほい入ってしまった私が悪いのです……」


貝殻の勇者 「料理屋でにおいがして大丈夫なことはないと思いますが……」


二階調髪の娘 「うう……」


221 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/15(土) 01:48:54.80 ID:qEOvewK10


王子 「……ひとりでおつかいなんて、大変だろう」


二階調髪の娘 「はい。はじめてのことばかりで楽しいですが、慣れないことも多く……」

二階調髪の娘 「マンボウローブで顔を隠していても、何か珍しそうに見られるし……」


貝殻の勇者 「……マンボウローブ」


王子 「言葉の端々に不安をあおられるな……」


ハーピィ 「…………」


二階調髪の娘 「は、はあ……?」



222 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/15(土) 02:19:59.71 ID:qEOvewK10


二階調髪の娘 「あ、そうだ」

二階調髪の娘 「迷惑をかけたおわびにこれを……」


コトッ


王子 「これは……」


貝殻の勇者 「岩でしょうか。綺麗ですね」


二階調髪の娘 「岩塩です。近くの小さな島でとれました」

二階調髪の娘 「ここ、島の南の港には製塩ギルドがあるということなので売ろうかと……」


貝殻の勇者 「……島の」


王子 「南の港……」


ハーピィ 「…………」


貝殻の勇者・王子 「…………」


二階調髪の娘 「ど、どうしたのですか二人とも。手で顔を覆って……」


223 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/15(土) 02:32:54.66 ID:qEOvewK10


貝殻の勇者 「お嬢ちゃん。ここは、島の西の港です……」


二階調髪の娘 「ええっ!?」

二階調髪の娘 「だって、このうろおぼえの地図によれば……」

二階調髪の娘 「ああ、しまった!」

二階調髪の娘 「地図が裏表逆でした! これはしかたない!」


王子 「違う、そうじゃない……原因はそれじゃない……!」


貝殻の勇者 「どうして裏返したところで、南と西を間違えるのですか……!」

貝殻の勇者 「上下逆ならまだしも、なぜ裏返しに気づかないのですか……!」


ハーピィ 「…………ッ」


224 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/15(土) 02:39:13.64 ID:qEOvewK10


二階調髪の娘 「す、すみません。私、いそぐので失礼します!」


王子 「ああ……」


貝殻の勇者 「気をつけてくださいね。本当に」


二階調髪の娘 「あ、ありがとうございます」

二階調髪の娘 「で、ではこれにてさようなら……!」


トタタタ ドカン ガシャン

トタタタ 


王子 「…………」


貝殻の勇者 「…………」

貝殻の勇者 「やはり、荷物を忘れていきましたね」


王子 「ああ……」

225 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/15(土) 02:47:15.03 ID:qEOvewK10


王子 「…………」


貝殻の勇者 「…………」


ハーピィ 「…………」


トタタタタタ


二階調髪の娘 「すすすすす、すみません!」


貝殻の勇者 「いえ、こちらも黙っていて……」


二階調髪の娘 「おわびの品を間違えました!」

二階調髪の娘 「岩塩じゃなくてこっちでした」

二階調髪の娘 「海水を真水にかえる魔法の宝石……」


ツルッ コロン 


二階調髪の娘 「ああっ、手がすべった!」


コキン


二階調髪の娘 「ひいいっ、魔法の宝石が落ちて割れちゃった!」

二階調髪の娘 「おおおお、落ち着いてください!」

二階調髪の娘 「ままま魔ま、まだもう一つあるので……!」


ツルッ コロン


王子 「…………」


貝殻の勇者 「…………」


王子・貝殻の勇者・ハーピィ 「…………ッ」


226 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/15(土) 02:53:46.51 ID:qEOvewK10


ザワザワ ガヤガヤ



王子 「…………」


貝殻の勇者 「……綺麗な、青い宝石ですね。海水を真水にかえる石」


王子 「うん。岩塩より、こっちを売ったほうが良いんじゃないのか……」


ハーピィ 「…………」


貝殻の勇者 「……嵐のような子でしたね」


王子 「ああ。何というか」

王子 「むいて茹でたくなるような子だった」


貝殻の勇者 「正気に戻りなさい」


ハーピィ 「…………」



227 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/15(土) 02:59:53.50 ID:qEOvewK10


…………


二階調髪の娘 「ひい、ふう、はあ……」

二階調髪の娘 「いけない。私ったら失敗してばかり」

二階調髪の娘 「みんなに知られたら笑われてしまうわ」

二階調髪の娘 「……でも人間の世界はとても恐ろしいのね」

クル魔エビ娘 「エビを、食べるだなんて……」


…………


228 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/15(土) 03:36:37.39 ID:UZK51qTFo
おう、仮面の王子様よ
アンタの超好みそうなヒロイン出てきたじゃないか
美味しく料r…じゃなくて仕込みしてあげるべき
229 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/15(土) 04:51:11.79 ID:jfQgGpuWo
人間が人間のミンチ料理や背開き料理を見せられているようなもんだからな…
230 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/15(土) 05:11:00.46 ID:aQrJ2MC90
こいつ
エビアレルギーの
おいらには天敵やで
231 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/15(土) 22:11:40.72 ID:A9iSNQW1O
えびゆで師の沸かしたお風呂でのぼせるドジっ子かわいい!
232 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/16(日) 03:29:41.65 ID:SlXyNOnU0
>>230

http://i.imgur.com/d0kVTNv.jpg
これでなんとか……
233 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/16(日) 04:08:05.00 ID:ppPiZ+Ee0
>>230
これを茹でるなんて
とんでもない!

エビ汁でじんましん
蟹の煮凝りで泡を

そういや葉巻の
あのニヒルなきゃらは
どこに(遠い目
リアルで吹いた
おいらが通りますよ
234 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/16(日) 04:12:08.07 ID:iATBYE9so
おい調理前とか勘弁して差し上げろ
235 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/16(日) 04:16:03.31 ID:SlXyNOnU0


ガヤガヤ


王子 「うーむ」

王子 「これで本当に、海水を真水にかえることができるのだろうか」

王子 「あの子がくれたものだと思うと、すこし不安が……」


ハーピィ 「…………」


貝殻の勇者 「疑ってもしかたありません」

貝殻の勇者 「あとで試してみましょう」


王子 「……そうだな」

王子 「まずは、葉巻たちにお土産を届けるとしよう」


236 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/16(日) 04:19:37.55 ID:VunF2Ut3o
湯通し(調理)したらきっと図書エルフさん級のオトナなお姉さん(?)になるんだよ…(震え声)
237 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/16(日) 04:38:44.46 ID:SlXyNOnU0


貝殻の勇者 「黒花エルフどのも、ずいぶんと印象が変わりました」


王子 「ああ。この短いあいだで」

王子 「麻薬売りから美女、そしてあれだもの」


貝殻の勇者 「ふふふ。外見もそうですが」

貝殻の勇者 「中身もです」

貝殻の勇者 「狂気が抜けたというか、人間味が出たというか」


王子 「うん。たしかに」

王子 「城の近くの町では、やたらバラ色と言っていたわりに表情はうつろで灰色だったからなあ」

王子 「あいつもエルフだから、影の深いあの町はきつかったのかもしれんね」

王子 「案外、振り切らないとやってられなかったのかも」


238 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/16(日) 05:00:03.76 ID:SlXyNOnU0


貝殻の勇者 「……不思議な関係ですね、あなたがたも」


王子 「思惑があったとはいえ、町ではいつもつるんでいたからなあ」

王子 「葉巻もまあ美しいほうのエルフだったから、周りから変な誤解を受けたりして」

王子 「それをまたあいつが面白がるものだから、おかげでおれはますます女好きのナンパ野郎にならなくちゃ……」


ハーピィ 「…………」


貝殻の勇者 「そ、それは興味深いですが……」

貝殻の勇者 「騙された上に何も知らされないまま命の危険もある旅に連れ回されても」

貝殻の勇者 「あなたは文句を言ったり逃げ出したりせず、それどころか黒花エルフどのを思いやる」

貝殻の勇者 「不自然なはずのことを、とても自然にしている」

貝殻の勇者 「もし殺し合いをしても、あなたがたは次の日には忘れたように談笑しているような気がします」


王子 「……言われてみれば、不思議だ」


ハーピィ 「…………」


239 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/16(日) 05:19:08.91 ID:SlXyNOnU0


王子 「葉巻は魔法の馬車を手に入れるとき、人の気持ちを操っていたな」

王子 「まさか、おれは知らない間に葉巻に魔法をかけられたのだろうか」


ハーピィ 「…………」


王子 「そう。分からない」

王子 「そんなはずはないとも、もしかしたら、とも思っている」


貝殻の勇者 「おだやかに言いますね。仮面で顔は分かりませんが」


王子 「このおだやかな気持ちも、奴の魔法でつくられたものかもしれない」


ハーピィ 「…………」


王子 「あの情けない姿になる前の奴なら、簡単にやっていただろう」


貝殻の勇者 「情けないですか……あの姿の本来の持ち主に恨みでもあるのですか」


王子 「いや……何かあの姿を見ていると、いじめなくちゃいけないような気持ちがわくんだよ」

王子 「おさえるのがわりと大変でね」


貝殻の勇者 「不思議と、私もです。全身からしょうもない災いを呼ぶフェロモンが出ているような……」


王子 「不思議なこともあるもんだ」


240 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/16(日) 05:28:37.50 ID:ZKC13wQo0
葉巻さんはやく
逃げて!

241 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/16(日) 05:37:55.73 ID:SlXyNOnU0


王子 「……魔法じゃないとしたら」

王子 「これが、恥ずかしいがある種の友情ってやつなんだろう」


貝殻の勇者 「友情ですか」


王子 「あいつとつるんでいると何故かしっくりくるし」

王子 「思えば出会ったころから振り回されているけど」

王子 「まあ、あいつならしょうがないなという気分になるんだよ」

王子 「それが洒落にならないようなことでも」


ハーピィ 「…………」


貝殻の勇者 「……ほう」


王子 「それに、考えなくてもぽんぽん行き先を決めてくれるんだ」

王子 「楽で良いじゃないか」


貝殻の勇者 「少し感動して損しました」


242 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/16(日) 05:44:22.18 ID:SlXyNOnU0


貝殻の勇者 「……もしも、黒花エルフどのがハーピィを手にかけようとしたら」

貝殻の勇者 「どうなさるおつもりですか」


王子 「そりゃあ葉巻を殺すよ。残念だけど」


ハーピィ 「…………」


王子 「しかし、おれはあいつの魔法をやぶれるのかな……」


貝殻の勇者 「…………」

貝殻の勇者 「黒花エルフどのがあなたを勇者にしたがらない理由が分かった気がします」


王子 「うん?」


ハーピィ 「…………」



243 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/16(日) 18:58:27.04 ID:SlXyNOnU0


ザワザワ


町娘 「…………」


大道芸人 「……おい」


悪魔学者 「ああ、はやく宿に戻ろう……」


ザワザワ


王子 「宿のある広場のそばまで来たが」

王子 「人々の顔がどこか緊張している」


貝殻の勇者 「ふむ……」

貝殻の勇者 「……!」

貝殻の勇者 「あそこを……!」


244 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/16(日) 19:39:15.54 ID:SlXyNOnU0


ロバ獣人 「……ほら見ろ、君」

ロバ獣人 「君がそんな鎧姿でいるから、人々がまぶしがって怖がっている」


犬隊長 「怖がられるのが我々帝国憲兵隊のしごとであります」

犬隊長 「あなたさまこそ、皇帝陛下よりたまわりし鎧を脱ぐなど……」


ロバ獣人 「わかった、わかった」

ロバ獣人 「だったら悪いけどひとりにしてくれないかい」

ロバ獣人 「もっと散歩は楽しみたいのだよ」


犬隊長 「上級隊長であらせられるあなたさまを」

犬隊長 「ひとりでフラフラほっつき歩かせるなど、どうしてできましょうか」


245 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/16(日) 19:52:03.95 ID:SlXyNOnU0


ロバ獣人 「うーん、おれってそんなに弱そうに見えるかなあ」


犬隊長 「い、いえ。申し訳ありません」


ロバ獣人 「いやあ、そういうつもりで言ったんじゃないよ」

ロバ獣人 「どうも君は真面目すぎるね」

ロバ獣人 「人も殺しすぎる。まるで法に目隠しされた人形のように」


犬隊長 「…………」


246 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/16(日) 20:02:26.86 ID:SlXyNOnU0


犬隊長 「将軍がたが剣となり盾となり皇帝陛下の行く方を守っているいま」

犬隊長 「力なき私が皇帝陛下の来し方を守るためには、こうするほかないのです」


ロバ獣人 「君は力はあるよ。若いだけだ」


犬隊長 「ありがたきお言葉。精進いたします」


ロバ獣人 「かたいなあ……」

ロバ獣人 「そうだ、君、恋をしたまえ」


犬隊長 「はっ。はあ……?」


247 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/16(日) 20:14:25.32 ID:SlXyNOnU0


ロバ獣人 「人生が潤うぞお」

ロバ獣人 「心も体もフニャッフニャになるぞお」

ロバ獣人 「よし、港の女を誘って飲もう」

ロバ獣人 「さあ行こう、犬隊長くん」


犬隊長 「いえ、私は……」


ロバ獣人 「バーロォ、なにしり込みしてやがる」

ロバ獣人 「ははあん、もしや犬隊長ともあろうものが女性に未知の恐怖をいだいているのかな」


犬隊長 「わおんっ。おれだって恋のひとつやふたつ……いえ」

犬隊長 「私は任務でここに来ているのです。遊んでなどおられません」


ロバ獣人 「ということは、おれをひとりにしてくれるのかな?」

ロバ獣人 「君がどうしようと、おれは行くよ」


犬隊長 「……くっ」


248 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/16(日) 20:22:46.53 ID:SlXyNOnU0


犬隊長 「…………」


ロバ獣人 「お手」


犬隊長 「……ばふっ」


ロバ獣人 「よし、じゃあ行こう」


カツ カツ カツ



貝殻の勇者 「…………」

貝殻の勇者 「……行きましたね」


王子 「ああ。何を話しているのかは分からなかったけど」

王子 「どうして憲兵隊の人間がここに」


ハーピィ 「…………」


貝殻の勇者 「……皇帝の目に関係あるのでしょうか」

貝殻の勇者 「私が見つかってしまったのかも」


王子 「にしちゃあ動きがはやすぎる気もするが」

王子 「……とりあえず、宿に戻ろう」


249 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/16(日) 21:49:53.78 ID:SlXyNOnU0


幼葉エルフの声 『王子、聞こえるか』


王子 「…………!」


貝殻の勇者 「どうかしたのですか」


王子 「いや……葉巻から魔法の会話だ」


貝殻の勇者 「回復したのでしょうか」

貝殻の勇者 「止まりますか?」


王子 「大丈夫。このまま宿に向かおう」

王子 『ああ。いま、宿の近くまできているよ』


幼葉エルフ 『分かるよ。だから話しかけたのさ』


王子 『そうかい』

王子 (そういえば勇者どのと合流した町じゃ、離れた骨仮面の位置を把握していたな)


250 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/16(日) 22:02:26.87 ID:SlXyNOnU0


幼葉エルフの声 『王子、勇者どのだけこちらに帰して、お前とハーピィは外に残ってくれ』

幼葉エルフの声 『できればハーピィもこちらに帰したいがしかたない。お前にはやってもらうことがある』


王子 『……分かった』

王子 「勇者どの、先に宿に帰っていてくれ。おれにはやることがあるらしい」


貝殻の勇者 「私で力になれることがあれば手伝いますが」


幼葉エルフ 『ない。憲兵隊と戦いたいなら別にかまわないが』


王子 「……服が違うとはいえ、憲兵隊にみつかると厄介だ」


貝殻の勇者 「だから変装しようと言いましたのに」

貝殻の勇者 「分かりました。ではハーピィどのも……」


ハーピィ 「…………」


貝殻の勇者 「……でしょうね」

貝殻の勇者 「二人とも、無事に帰ってきてくださいね」


王子 「ありがとう」


ハーピィ 「…………」


251 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/16(日) 22:16:33.53 ID:SlXyNOnU0


タッ タッ タッ


王子 『勇者どのはそちらに向かった』

王子 『おれは何をすれば良い』


幼葉エルフの声 『…………』


王子 『? 葉巻エルフ?』


幼葉エルフ 『…………』


王子 (…………あ)

王子 (こっちの様子が分かっていたってことは……)


幼葉エルフ 『……うふふふふふふ』

幼葉エルフ 『残念だけどオレを殺す、か』

幼葉エルフ 『王子?』


王子 『…………』

王子 (あ、これは死人が出るぞ)


252 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2014/03/16(日) 22:19:32.35 ID:SlXyNOnU0

名前表記の
幼葉エルフの声 と 幼葉エルフ は同一人物です
ごめんなさい
253 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/16(日) 22:34:49.17 ID:SlXyNOnU0


幼葉エルフの声 『オレはお前のために死んだりしたっていうのに』

幼葉エルフの声 『そうかそうか、つまりお前はそういう奴なんだな』


王子 『葉巻エーミ……エルフ』


幼葉エルフの声 『お前にとってオレは』

幼葉エルフの声 『馬車を用意したり道案内をしたり気まぐれに膝に乗せたり胸をもんだりするだけの』

幼葉エルフの声 『使い捨ての都合の良い存在だったわけだ』


王子 『……何か余計なものもまざっているような』


幼葉エルフの声 『うん?』


王子 『いや……』


ハーピィ 「…………」


254 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/16(日) 23:19:26.87 ID:SlXyNOnU0


王子 『そりゃ、ハーピィの命を狙うならお前だって殺すつもりさ』

王子 『だからといってお前を軽く見ているわけじゃ……』


幼葉エルフの声 『ああそうだった。こんなことをしている場合じゃなかった』

幼葉エルフの声 『憲兵隊がいるんだったな』


王子 『お、おう。いつか会った犬の隊長もいたよ。元気そうだった』


幼葉エルフの声 『傷は癒えたか』

幼葉エルフの声 『……少し、奴らの様子を探っておきたいな』


王子 『ふむ』


幼葉エルフの声 『しかしオレには人形がない』

幼葉エルフの声 『仮面はあるが』


王子 『…………』

王子 『分かったよ……』


255 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/16(日) 23:37:17.93 ID:SlXyNOnU0


幼葉エルフの声 『話したかもしれんが、オレはその仮面を通してものを見聞きすることができる』

幼葉エルフの声 『お前は奴らに近づいて、情報を仕入れてくれたら良い』


王子 『ああ』

王子 『だが、頼む。ハーピィに危険がおよぶようなことは勘弁してくれ』


幼葉エルフの声 『当たり前だ。万が一にそなえて援軍を送る』

幼葉エルフの声 『……そろそろそっちに着くころかな』


王子 『?』


トコトコトコ


ろうそく職人 「…………」


王子 「…………」


ろうそく職人 「にんにん!」


王子 「…………」

王子 「尻尾がまた……増えている……」


ハーピィ 「…………」


256 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/16(日) 23:56:32.15 ID:tPN79Ho60
葉巻、精神面が若干身体の方に侵食されて堕ちかけてるな
次の乗り換えイベントで残った身体はどの精神になるのか・・・

そしてこのろうそく職人頼れる気がしないww
257 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/17(月) 00:03:04.59 ID:jw1Xes9EO

俺は真ヒロインとして黒花エルフを応援します
258 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/17(月) 00:17:29.31 ID:NmUu+AHk0
真ヒロインは
くる魔エビ子
やろ

なおおいらは
触れない模様(確信)
259 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/17(月) 00:33:19.81 ID:ruuszhFn0
>>257
ドラム缶フェチとは…
業ですね…
260 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/17(月) 01:42:38.76 ID:hunEGusG0


ろうそく職人 「師匠は大事をとって休むので、情報収集には私がお供します」


王子 「あ、うん。その前に、なぜ尻尾が増えて……」


ろうそく職人 「北東地方領主の城組として、頑張りましょう!」


王子 「……そうだな。よろしく頼む」

王子 (尻尾については聞かない方が良い気がする)


ろうそく職人 「はい! ……と、師匠から情報収集用のアイテムを預かってきました」

ろうそく職人 「まずは、ハーピィさまにこれを」


星型の眼鏡


王子 「レンズが黒く星型になっている眼鏡……」


261 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/17(月) 01:46:08.61 ID:hunEGusG0


ろうそく職人 「宿の行商人に売ってもらったのです」

ろうそく職人 「かけるとそんなに目立たなくなる珍しいアイテムだとか」

ろうそく職人 「ささ、ハーピィさま」


スチャ


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「…………」


ろうそく職人 「あ、いえ、格好良いポーズはとらなくても大丈夫ですよ」


ハーピィ 「…………」


王子 (気に入ったようだ)


262 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/17(月) 02:41:51.42 ID:hunEGusG0


ろうそく職人 「王子さま……じゃなかった、骨仮面さんにはこれを」


黒花ポエム 


ろうそく職人 「あ、間違ったこれじゃない」

ろうそく職人 「こっちの楽譜でした」


旅のうた その1


王子 「ちょっとさっきの見せて」


ろうそく職人 「あと、これです」


折りたたみ楽器 弦


王子 「…………うん?」





263 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/17(月) 03:03:41.75 ID:hunEGusG0


王子 「へえ、魚の骨でつくった楽器か」


ポロン ポロロン ボロン……


ろうそく職人 「弾けるんですか、楽器」


王子 「少しね」

王子 「故郷で親父に教わったんだ」


ろうそく職人 「ほうほう」

ろうそく職人 「……歌えますか?」


王子 「まあ、簡単なやつなら」

王子 「町でもときどき歌ったっけ。即興おどけ歌なんかもやったな。葉巻は見ているだけだったが」


ディドロロロン ポロン 


ろうそく職人 「……師匠からの伝言です」


王子 「うん?」


ろうそく職人 「情報収集の前に、いま渡した旅のうたを広場で歌ってください」


王子 「…………」


ビヨン バヨエン


264 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/17(月) 03:27:04.90 ID:hunEGusG0


ザワザワザワ


犬兵士 「…………」


バンダナガール 「なあに、何の集まり?」


町娘 「変な芸人がいるの」

町娘 「弦がいっぱいある楽器をもって、ボーッと立ってんの」

町娘 「ほら、あそこ。あの骨の仮面の」


骨仮面者(王子) 「…………」


ハーピィ 「…………」


ろうそく職人 「…………」


バンダナガール 「……ぷっ」

バンダナガール 「何あれ、隣に変な眼鏡の子とよくわからない子までいる」


町娘 「さあ……」


骨仮面者 「…………コホン」


バンダナガール 「お、動いた」


265 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/17(月) 03:42:15.83 ID:hunEGusG0


骨仮面者 「……賢者は聞き」

骨仮面者 「愚か者は語るといいます」

骨仮面者 「しかし世の中には、賢者でさえ語らざるを得ない」

骨仮面者 「愚か者でさえ耳をおおいたくなるような」

骨仮面者 「そんな話もあるもの」


ポロン ポロ ポロ


骨仮面者 「これより語るは、とおい世界の物語」

骨仮面者 「嘘かまことかデタラメか」

骨仮面者 「知るは無情の風ばかり」


ろうそく職人 「あなたは嘘をつきました」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


骨仮面者 「そうその通り、すべては本当」

骨仮面者 「嘘さえあざむく、ほんとの話」

骨仮面者 「北東地方の、王子の話……」


ポロン ポロロロン ポロン



266 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/17(月) 03:59:57.05 ID:hunEGusG0


骨仮面者 「はああぁ〜」


ろうそく職人 「あんあんあああ〜ん」


骨仮面者 「北東地方の領主の息子〜」


ろうそく職人 「遊びほうけの王子さま〜、魔物が好きな王子さま〜」


骨仮面者 「可愛いエルフの女の子〜」

骨仮面者 「ちょいとお酒にさそってみれば〜」

骨仮面者 「なんと驚き男の子〜」


ろうそく職人 「葉巻のにあう男のこ〜」


骨仮面者 「そのあと夜通し殴り合い〜」


ろうそく職人 「そのあとその子と朝ごはん〜」


ディロロロロ ボロボロン ポロロン

267 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2014/03/17(月) 04:06:35.68 ID:hunEGusG0
城組、死す!
268 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/17(月) 04:15:28.43 ID:hunEGusG0


ザワザワ


バンダナガール 「北東地方の王子って……」


町娘 「旅の商人から聞いたことあるわ。北東地方の領主さまはすごく真面目だけど」

町娘 「その息子は町で遊んでばかりのクソ野郎だって」


バンダナガール 「うわあ。じゃあ、今の歌も本当のこと?」


町娘 「そうなのかも……」


犬兵士 「…………」

犬兵士 「………ウフフッ」


バンダナガール 「…………」


町娘 「…………」


犬兵士 「…………コホンッ」


ザワザワ


…………


269 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/17(月) 04:33:44.55 ID:hunEGusG0


路地裏



王子 「…………」


ろうそく職人 「…………」


ハーピィ 「…………」


ろうそく職人 「…………」

ろうそく職人 「城組、行きましょうか」


王子 「……ああ」


ハーピィ 「…………」


…………



270 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/17(月) 06:38:48.85 ID:24KpfTZB0
ハーピィのかっこいい
ポーズ

これはkwsk
271 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/17(月) 06:47:59.19 ID:2pZayjmeo
星型サングラス…サタデーナイト・フィーバー?
それとも天元突端なガイナ立ち?
272 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/17(月) 06:51:19.21 ID:24KpfTZB0
まさかのジョジョ立ち
かもしれん
273 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/19(水) 17:38:57.15 ID:KAAtl6Jz0




黒い眼鏡で格好良いポーズをきめるハルピュイア

http://i.imgur.com/UgPmauy.jpg





淫魔幼女のアイテムメモ 000794



■暗殺のパーティメガネ(ハーピィメガネ)


パーティ会場に女が来た 不憫な眼鏡をかけていた
あまりにも不憫すぎて 周りの者たちは目をそむけ
その女を居ないものとしてあつかった
今まさに喉をかききられようとする 王様でさえも


装備すると敵に見つかりにくくなるアイテム。
実際は、デザインが不憫すぎて誰も触れなくなるだけである。
ハルピュイア族が装備すると、喋ったときに語尾がじゃっかん変化する。


274 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/19(水) 17:51:50.85 ID:l9cFOkLY0
ちょwwwwwwww
まさかのレイザーラモンwwwwwwww
275 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/19(水) 18:22:07.21 ID:KAAtl6Jz0

(実際のハーピィとは異なると思われます)



■ハーピィ


おや:淫魔幼女


http://i.imgur.com/WkGV8o6.jpg
色違い
http://i.imgur.com/GjdTEmF.jpg


翼が黒い ハルピュイアの少女
隣接するユニットの 魔法力と魔法防御力を
あげてくれる 支援ユニット 
何かに抱きついて 眠るのが 好き



王子 「このハーピィは失敗作だ。茹でられたものじゃないよ」
 
日焼けハーピィ(茹で上がり)
http://i.imgur.com/RaK3aEw.jpg
色違い
http://i.imgur.com/F4Eyb5t.jpg



276 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/19(水) 19:10:02.63 ID:S93ralMg0
まさかのハードゲイwww

てか意外とハーピィさん
胸でかい

そういやここの作風が
最近ギャグ寄りになって
きたよね

最初の葉巻さん見てたら
まさかこうなるとは
思わんかったわ
277 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/19(水) 19:30:52.07 ID:WLHC0jaj0
>>275
段々見えない鎖に繋げられて嫌々してるように見えてきた俺はもうダメだ

>>276
主にろうそく娘のせいだと思う。
278 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/19(水) 20:30:36.40 ID:DBIzoros0
>>277

ろうそく娘は最初
めっちゃ地味キャラ
だったのに…
勇者より目立ってやがる

279 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/19(水) 20:59:03.98 ID:8dT5vRauo
>>278
しめじめな所から出て色々明るくなったんだろう
280 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage saga]:2014/03/19(水) 21:13:34.31 ID:gZjqVdqPo
ハーピーかわいいな!
281 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/19(水) 21:17:42.75 ID:KAAtl6Jz0


港の酒場



ザワザワ


青ロバ兵 「ああ、ちくしょう……遠征先で見たケルピのあの子が忘れらんねえ」


赤ロバ兵 「諦めろよ。お前、水の中じゃ息できねえんだから」


犬兵士A 「……戦いでは将軍たちさえしのぐというロバ将軍の隊」


犬兵士B 「いったいどのような話をしているのだろうか」

犬兵士B 「うーん。近づいて聞きたいが、中級隊のおれたちが上級隊の近くで飲むなど……」


ザワザワ


ろうそく職人 「け、憲兵さまたちがいっぱいいますよ……」


王子 「いきなり大当たりだな」


ハーピィ 「…………」



282 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/19(水) 21:47:14.20 ID:KAAtl6Jz0



素朴な踊り子 「ごめんなさい、お客様。いま一階と宿は憲兵団の貸切なの」

素朴な踊り子 「二階でお食事できるけど、出せる料理も限られているわ」


ろうそく職人 「しかたねえ、帰りましょう」


王子 「待て」

王子 「じゃあ、二階で飲ませてもらうよ」


ハーピィ 「…………」



283 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/19(水) 22:09:27.06 ID:KAAtl6Jz0


カチャカチャ


旅人A 「この店じゃ、夜に女の子たちがそれはそれは素敵な踊りを披露すると聞いたけど」

旅人A 「憲兵隊もいるし、今日は中止かなあ」


旅人B 「くっそう、可愛い子がいっぱいいるってのに。一階の奴らに比べたら飯も酒も安っぽいし……」


カチャカチャ


ろうそく職人 「人も場所も暗いですねー……」


王子 「ちょうど良いだろう。目立たないようにしていよう」


ハーピィ 「…………」


ろうそく職人 「そうですね」

ろうそく職人 「目立たないように、目立たないように……」


王子 (ろうそく職人がどんどん猫背になっていく)

王子 (雰囲気も城で働いていたときみたいになった)


ろうそく職人 「王子さま、今までありがとうございました」

ろうそく職人 「私、北北東地方に帰って酪農用の家畜になります……」


王子 「戻って来い」


284 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/19(水) 22:24:20.19 ID:/w+CM6G+0
ろうそく職人の
汎用性は異常
285 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/19(水) 22:46:19.40 ID:KAAtl6Jz0


木こり 「島の東の森に、首なしの幽霊馬が出たそうだ」


杖職人 「首なしの馬は地獄の騎士が乗る馬車をひくという。あの森には悪い魔法使いも住んでいるというし……」


木こり 「参ったなあ。良い木がある森があるって聞いてわざわざ来たのに」


ヒソヒソ


ろうそく職人 「左の方がちょっとまろやかなのです」


王子 「ほう」


ハーピィ 「…………」


おいろけ踊り子 「お待たせしました。魚介のクレープに飲み物です」


コト トン コト


おいろけ踊り子 「では、ごゆっくり」


スタ スタ


王子 「…………よし」

王子 「じゃあ、ゆっくろ下の様子をうかがうとしよう」


286 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2014/03/19(水) 22:48:53.08 ID:KAAtl6Jz0
>>285  訂正 ごめんなさい

× 王子 「じゃあ、ゆっくろ下の様子をうかがうとしよう」

○ 王子 「それじゃあ、ゆっくり下の様子をうかがうとしよう」





287 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/19(水) 22:59:08.41 ID:KAAtl6Jz0


ろうそく職人 「いつもより気合いが入っていますね」


王子 「葉巻を怒らせちゃったからなあ。手ぶらじゃ戻れない」


ハーピィ 「…………」


ろうそく職人 「おやおや、すっかりお尻にひかれちゃって」


王子 「はたくよ」


ろうそく職人 「師匠、怒ってないみたいでしたよ」


王子 「そうなのか」


ろうそく職人 「はい。怒るどころか、なんだか嬉しそうでしたよ」

ろうそく職人 「それを頬っぺたつついてからかっていたら尻尾を増やされましたけど」


王子 「君たち師弟の関係がよく分からないな……」


288 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/19(水) 23:17:32.66 ID:KAAtl6Jz0


王子 「さて、どんな話が聞けるだろうか」


ろうそく職人 「集中、集中……」


ザワザワ


犬兵士C 「北東地方の領主の息子は、やはりとんでもない馬鹿らしいぞ」

犬兵士C 「馬鹿すぎて、ついに吟遊詩人にもうたわれるようになったらしい」


犬兵士D 「領主だって、真面目なだけの馬鹿さ」

犬兵士D 「その証拠に北東地方は帝国大陸東側でもかなり治安が悪く、そして貧乏だ」


犬兵士E 「兵士たちが哀れだ。奴隷の血が入った貴族になど、つかえたくないものだ」


ザワザワ


ろうそく職人 「むむむむむ……なかなか気分が悪いですよ、これは」


王子 「ああそうだな。気をそらすなよ」


ハーピィ 「…………」


289 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/19(水) 23:51:32.51 ID:KAAtl6Jz0


ロバ兵士A 「南東地方かあ。青い海に浮かぶ島で、健康的に日焼けした美女たちとの熱い夜が……」


ロバ兵士B 「羽をのばしすぎんなよ。ペガサスの手羽先ということわざもある」


ロバ兵士C 「そうだぜ、遊びに行くんじゃないからな。それに、その前にもしっかりやることがある」


ロバ兵士A 「は、はい、分かってますって。よからぬ奴らが大陸に渡らないか」

ロバ兵士A 「または大陸から渡って来ないか、島の西側を見張るんでしょう」


ロバ兵士B 「そうだ。近く、南東地方で武芸大会がひらかれる。たくさんの人が動くから我々も気をひきしめないと」


ロバ兵士A 「南じゃ将軍がたが戦争しているというのに、のんきなもんだ」


290 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/20(木) 00:15:22.21 ID:fDTd9/4G0


ロバ兵士A 「でも、西側ばっかり見張っていて大丈夫なんですか」


ロバ兵士C 「東側には人殺しの深い森がひろがっている」

ロバ兵士C 「旅人をたぶらかす妖精やモンスターが出るし、死者の魂がさまよっているという噂もある」

ロバ兵士C 「さらにその東には冥界につながるという危険な海」


ロバ兵士B 「わざわざそんなとこを通る奴もいないだろう」


ロバ兵士A 「そうですかねえ……」


ロバ兵士B 「心配するな。おれたちにゃあ皇帝陛下の千里眼がついている」

ロバ兵士B 「西をしっかりと見ながら、南東地方を目指せば良い」


ロバ兵士C 「うんうん。そしてこの町にはしばらくとどまる」

ロバ兵士C 「ならばまだ見ぬ女より、目の前の出会いに全力でとりくもうではないか」


ロバ兵士B 「よう踊り子の姉ちゃん、こっちでちょっと飲まないかあ!?」


ザワザワ


王子 「…………」



291 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/20(木) 00:31:38.09 ID:fDTd9/4G0


ろうそく職人 「……聞きましたか」


王子 「ああ」


ろうそく職人 「珍味! ペガサスの手羽先……」


王子 「ここの港で船に乗るのは危険みたいだ」


ハーピィ 「…………」


ろうそく職人 「皇帝陛下の千里眼がどうとかも言っていましたね……」

ろうそく職人 「……おや?」


バタン カララン カラン


王子 (誰か酒場に入ってきた)


292 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/20(木) 00:47:05.94 ID:fDTd9/4G0


踊り子たち 「いらっしゃいませ!」


ロバ獣人 「ひゅう、何だ何だ」

ロバ獣人 「美人はここに集まっていたのかあ!」


犬隊長 「…………」


ワイワイ ワハハ


王子 「あちゃー……」

王子 「憲兵隊隊長のお出ましだ」


ろうそく職人 「ほうぇ!?」



293 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/20(木) 00:51:17.42 ID:fDTd9/4G0


ろうそく職人 「だだだだ、大丈夫でしょうか。見つかったりしないでしょうか!?」


王子 「大丈夫だと思うけど、そろそろ出るか。情報も手に入っただろう」


ろうそく職人 「はひっ……!」


王子 「肩に力が入っているぜ。何の変哲もない客になりきるんだ」


ろうそく職人 「は、はい。何の変哲もない……」

ろうそく職人 「…………」

変な獣の耳と尻尾のろうそく職人 「それ無理じゃないですかね」


骨仮面の王子 「気にするな」


よく見るとおかしな眼鏡のハーピィ 「…………」


294 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/20(木) 01:03:06.08 ID:fDTd9/4G0


ガヤガヤ パリーン


派手な踊り子 「さあさあ隊長さん、こちらへ」


ロバ獣人 「はいはい、ぼく喜んでついてっちゃう」


素朴な踊り子 「そちらの隊長さまもどうぞ」


犬隊長 「…………」

犬隊長 「ああ」

犬隊長 「…………む?」


トッ トッ トッ


王子 「…………」


295 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/20(木) 01:05:01.00 ID:fDTd9/4G0


王子 (うわあ、やはりあの犬の隊長だよ。近くで見るとまあ怖いこと)

王子 「失礼。出口へはここを通るもので」


犬隊長 「ああ。こちらこそ」

犬隊長 「……失礼だが、どこかで会ったことはなかったか」


王子 「…………」


ハーピィ 「…………」


296 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/20(木) 01:19:25.14 ID:fDTd9/4G0


犬隊長 「気のせいか? とくにそちらの浮かれた格好の娘」


ハーピィ 「…………!」


王子 「……えーっと」


ハーピィ 「…………」


王子 (ハーピィ……ああ、眼鏡で表情が分からん)

王子 (まずいぞ。嘘をつくわけにもいかないし)


ギシッ ギシッ


犬隊長 「……む?」


ろうそく職人 「ゆっくり、ゆっくり……」

ろうそく職人 「抜き足、さし足、くらげ足……」


犬隊長 「……ッ!!」


297 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/20(木) 01:22:18.68 ID:3Gjj+YT70
わかっていたが
存在がコントですよ
ろうそく人外娘職人
298 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/20(木) 01:27:50.50 ID:fDTd9/4G0


犬兵士HG 「な、何だあれ。変な女が変な姿勢で階段をおりている」


犬兵士RG 「ああ。で、でもあの子の大きな耳……」


ザワ ザワ


王子 (遅い。遅いし目立っているぞ、ろうそく職人……!)


ろうそく職人 「ま、待ってくださあい、二人ともー……」


グラッ


ろうそく職人 「し、しまった!」

ろうそく職人 「のろのろ歩きで片足立ちの時間が長すぎてバランスを崩してしまった!」

ろうそく職人 「お、落ちる〜!」


クルクル ヒュルル


ドサッ


299 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/20(木) 01:37:25.69 ID:fDTd9/4G0


犬隊長 「…………」


王子 「…………」


ろうそく職人 「…………」


王子 (犬の隊長が、階段から転げ落ちたろうそく職人を抱きとめた)

王子 (おれと一緒に)


ハーピィ 「…………」


王子 「大丈夫かい」


ろうそく職人 「あ、ありがとうございます」

ろうそく職人 「犬の人も……」


犬隊長 「…………ワフン」

犬隊長 「……い、いや」

犬隊長 「ふん。これにこりて、階段でふざけるなどという馬鹿はせぬことだな」


ろうそく職人 「は、はい」


300 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/20(木) 01:54:49.78 ID:+C1NYmez0
これは
フラグったか
301 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/20(木) 01:58:58.96 ID:fDTd9/4G0


ろうそく職人 「あの、本当にありがとうございました」


犬隊長 「礼など、いらん……ッ。こちらの方にたまたま来たから、たまたま邪魔だったから受け止めただけだ」


ろうそく職人 「うへえ……」


王子 「…………」

王子 (よく分からんが犬の隊長がうろたえている。これはチャンスかな?)

王子 「ああ、すまない。急ぐんだ」

王子 「行っても良いかな」


犬隊長 「むっ……」


ろうそく職人 「あの、このたびはお日柄もよくありがとうございました」

ろうそく職人 「ええ、つきましては特製ろうそくミルクを……」


犬隊長 「わ、わかった。呼び止めてすまなかった、行け……!」


王子 「どうも」


302 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/20(木) 02:25:28.73 ID:fDTd9/4G0


石畳の大通り



ろうそく職人 「何とか切り抜けましたね」


王子 「ああ。あの犬の隊長はごまかしがきかないと思っていたけど」

王子 「何事もなくて良かったよ」

王子 「さて、宿に戻るとしよう」


ハーピィ 「…………」


ろうそく職人 「……女の子と間違えて、声をかけちゃったんですね」


王子 「ああ、広場でうたった歌のことか」

王子 「つまりあれは歌のはなしであって」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


303 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/20(木) 02:28:59.16 ID:fDTd9/4G0


王子 「ああ、そうだよ。声をかけちゃったんだよ」

王子 「若かったなあ、おれ」


ハーピィ 「…………」


ろうそく職人 「…………」


王子 「だってさあ、だってさあ……」


ろうそく職人 「…………」


王子 「…………」

王子 「……何がのぞみだ」


ろうそく職人 「むふふふふふふ」


…………


304 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/20(木) 03:01:44.81 ID:fDTd9/4G0


宿



貝殻の勇者 「おかえりなさい。無事でなによりです」


ろうそく職人 「ただいま戻りました、勇者さま!」


ハーピィ 「…………」


王子 「ずいぶん片付いているな」


貝殻の勇者 「ええ、いつでも出発できるように準備しました」


王子 「出発」


貝殻の勇者 「ええ、船で大陸に渡るのは中止して、森を抜けて東回りに南の港へ向かうことに……」

貝殻の勇者 「ブフーッ!!」


王子 「!」


貝殻の勇者 「ぷふふふ……いえ、何でも」

貝殻の勇者 「夜通し殴り合い……くくくっ……」


王子 「…………ああ」


305 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/20(木) 03:10:00.03 ID:fDTd9/4G0


貝殻の勇者 「黒花エルフどのと一緒に見ていましたよ」

貝殻の勇者 「楽器演奏ができたのですね」


王子 「胸をはって言えるほどじゃないけど」


貝殻の勇者 「ふふ。今度、あなたの伴奏で歌ってみたいものです」


王子 「光栄だ。勇者どのは美声でらっしゃるから」

王子 「歌が好きなのかい」


貝殻の勇者 「ええ。静かな夜の海で歌うのが特に」


王子 「へえ。そりゃ見事だろうね」


貝殻の勇者 「ふふふ……」


306 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/20(木) 03:19:45.97 ID:fDTd9/4G0


王子 「……それで、葉巻は?」


貝殻の勇者 「黒花エルフどのはいま入浴中です」

貝殻の勇者 「船の予約の取り消しに行く前に」


王子 「そうか。それもしとかなくちゃな」

王子 「……そんなに綺麗好きな奴だったかね、あいつ」


貝殻の勇者 「呪いの浄化は大変だったそうで」


ろうそく職人 「ベッドの上でたくさん恥ずかしい汗をかいていました」


王子 「ふうん」


ヒュッ スコン


ろうそく職人 「あいたっ」


王子 「どこからともなく石鹸の箱が飛んできた……」



307 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/20(木) 03:41:47.38 ID:fDTd9/4G0


幼葉エルフ 「魔術的な儀式の内容を人に話さないのが」

幼葉エルフ 「魔法使いのエチケットだぞ」


ろうそく職人 「あ、師匠。ただいま戻りました」


幼葉エルフ 「おかえり弟子よ」

幼葉エルフ 「そして……」


王子 「やあ、元気そうで何よりだ」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「ああ、お前たちこそ元気で何よりだ」

幼葉エルフ 「すまんね」

幼葉エルフ 「オレが死んでいた方がハーピィの心配をしなくて良かったろうが、期待にそえなくて」


王子 「ははは……」


308 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/20(木) 03:56:11.94 ID:fDTd9/4G0


幼葉エルフ 「それで、我らが親愛なる海老茹でクソ野郎どのは」

幼葉エルフ 「どんな情報を手に入れてきたのかな」


王子 「ああ……」

王子 「て、見てたんなら分かるだろ」


幼葉エルフ 「幻術がかけられていなかったとも限らない」


王子 「そうか」

王子 「……その前に、歌詞を渡されるときにチラッと見えたあの可愛らしい本は何だったんだ」

王子 「黒花ポエムって……」


幼葉エルフ 「よし、報告は以上だな」

幼葉エルフ 「船の予約を取り消して出発するぞ」


王子 「おい……」


309 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/20(木) 04:10:36.32 ID:fDTd9/4G0


幼葉エルフ 「勇者どのとろうそくは先に行って馬車を東にまわしておいてくれ」

幼葉エルフ 「オレと王子とハーピィは船の予約を取り消してから向かう」


王子 「なあ、表紙のやけに目のでかい娘の絵は何なんだ……」


幼葉エルフ 「くれぐれも疑われるようなことはするなよ」

幼葉エルフ 「それじゃあ王子、ハーピィ、行くぞ」


王子 「なあ、もしかして黒花って……」


幼葉エルフ 「おらあっ!」


ビュッ ポコン


ろうそく職人 「あいたっ!」


貝殻の勇者 「ああっ、軽くてふわふわ良い香りのエルフ石鹸がろうそく職人さんに!」


310 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/20(木) 04:40:57.30 ID:fDTd9/4G0


幼葉エルフ 「まったく、調子に乗りやがってあのケダモノ弟子……」


王子 「なあ、葉巻よ」


幼葉エルフ 「……何かね相棒」


王子 「あの失言についてなんだけど、今日のところは許してくれないかな」

王子 「おれが悪かった。お前への尊敬がたりなかった」


幼葉エルフ 「……許すも何も、さらさら怒っちゃいませんよオレは」

幼葉エルフ 「そうかそうか、オレは怒っているような顔ですか」


王子 「いや、顔は体のもともとの持ち主のものなんだろうけども」

王子 (体がかわってから、ときどき幼い顔をするようになったな……)


ハーピィ 「…………」


311 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/20(木) 04:50:10.01 ID:fDTd9/4G0


王子 「そうだ。じつはさっき、ちょっとなぜか魔法市によったんだが……」



貝殻の勇者 「あら、ろうそく職人さん。素敵な腕輪ですね」


ろうそく職人 「火の魔力が上がる腕輪なのです」

ろうそく職人 「勇者さまにも、はい、水の腕輪です」


貝殻の勇者 「まあ、ありがとう!」


ろうそく職人 「いえいえ。こっちの腕輪はタダでしたので」



幼葉エルフ 「……ああ、知っているぜ」

幼葉エルフ 「どんな事情があってのことなのかもな」


王子 「そうか」

王子 「それで、ハーピィの眼鏡のお礼もかねて」

王子 「お前にこんなものを買ってきたんだ」


魔法使いの肩掛け


幼葉エルフ 「…………」


312 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/20(木) 05:13:43.14 ID:fDTd9/4G0


幼葉エルフ 「肩掛けか」


王子 「葉巻だったときの服の好みしか分からないから」

王子 「これにしたんだけど」


幼葉エルフ 「ああ。あの服はまるまる一式、領主の城でなくしちまったからな」


王子 「本当にお世話になっております」


幼葉エルフ 「ふん。オレを物で釣るような真似しやがって」


王子 「言葉だけじゃ足りないみたいだったじゃないか」


幼葉エルフ 「だったらもっと言葉を選んで物を言えってんだ」

幼葉エルフ 「本当にそう思っていたとしても」


王子 「ははは……」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「そうだ。そうやって笑ってはぐらかせば良い」



313 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/20(木) 05:39:14.82 ID:fDTd9/4G0


王子 「確かにおれはハーピィを守るためなら人を殺す覚悟がある」

王子 「だけど葉巻、頼む。許してくれ」


幼葉エルフ 「…………」

幼葉エルフ 「エルフの薬をばら撒くようなゲスなオレに振り回されて、広場で恥をかかされて」

幼葉エルフ 「お前はまだ、しょうがないなと思えるのか?」


王子 「ああ不思議と」

王子 「それに、なんだかんだ言っておれも楽をさせてもらっているし」


幼葉エルフ 「……ふん」


ハーピィ 「…………」


314 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/20(木) 05:54:05.32 ID:fDTd9/4G0


幼葉エルフ 「……お前はあの腐ったエルフの里にもいなかった」

幼葉エルフ 「オレの、まあ…………友、といえる人間だ」

幼葉エルフ 「お前が許してくれってんなら、許すさ。怒っていないとしても」


王子 「葉巻」


幼葉エルフ 「何だよ、ちょっとからかってやったら真面目に受け取って」

幼葉エルフ 「こんなもんまで買ってきやがって……」

幼葉エルフ 「まあ、なぜかちょうど風呂上りだし、新しい服に着替えるのも良いだろう」


315 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/20(木) 06:04:14.84 ID:fDTd9/4G0


貝殻の勇者 「……なるほど」

貝殻の勇者 「妙にいそいそとお風呂に向かったと思ったら、そういうわけですか」


ろうそく職人 「むふふふ」

ろうそく職人 「そうして二人は見つめあい……」


貝殻の勇者 「ん?」

貝殻の勇者 「ろうそく職人さんはその本に何を書いているのですか」


ろうそく職人 「はい。腐敗魔法の練習もかねてあの二人の……」


幼葉エルフ 「オレの秘密のポエ……魔道書に何してやがる!」


ヒュッ ヒュッ スココン


ろうそく職人 「いてっ、いててッ! 石鹸が、エルフ石鹸が!」


王子 (やはり葉巻のだったのか、あの本は)


ハーピィ 「…………」


…………


316 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/20(木) 10:07:10.88 ID:LObnaJrG0
石鹸でよかったな
ろうそく職人www
317 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2014/03/20(木) 20:11:58.85 ID:fDTd9/4G0
http://i.imgur.com/2RshHlm.jpg


美触手 「キュロロン」


??? 「夜空の川みたいな触手だ」

妖精小僧 「欲しい! お前、おれによこせ!」


幼女魔王 「だ、だめよ!」


妖精小僧 「何だとう!!」


幼女魔王 「ひっ……」

幼女魔王 「だ、だって、この子は私の……その、大事な……触手で……」


318 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2014/03/20(木) 20:16:50.95 ID:fDTd9/4G0
>>317
ごめんなさい
無かったことに
319 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/20(木) 20:18:34.98 ID:MxS/r1f2O
これ、アレだよなポケットに入る化物だよな
320 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/20(木) 20:29:35.41 ID:XMgUoCrgo
ミロカロスっぽいだけですよね
321 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/20(木) 21:21:34.83 ID:ascl2GqK0
これは黒歴史
322 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/20(木) 21:56:43.09 ID:hNKTJTY8O
まあ、、、うん
323 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/20(木) 22:36:45.35 ID:fDTd9/4G0


港 定期船受付



犬兵士 「…………」


受付亀 「定期船の予約の取り消しかい」


幼葉エルフ 「はい。明日の朝出港の」


受付亀 「明日の分か……」

受付亀 「お名前は?」


幼葉エルフ 「エルフーン・ブラックバジヨンです」


王子 (ひどい偽名だ)


ハーピィ 「…………」


324 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/20(木) 22:44:02.52 ID:fDTd9/4G0


受付亀 「エルフーンさんね……えーっと」

受付亀 「これは……ドリアーダ・ホワイトバジヨンさんの予約の分か」

受付亀 「ちょっと待っておくれ。犬の兵隊さんたちが予約の紙を入れた箱をひっくり返しちゃって」


犬兵士 「何か言ったか、亀の」


受付亀 「いえいえ、おつとめご苦労さまですよ」

受付亀 「あやしい予約なんかなかったと言ったのに、信用しないんだから……」


犬兵士 「きさま」


受付亀 「おっと、今のはいびきでして」


325 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/20(木) 22:57:20.21 ID:Hofm/zMjO
無かった事にする変わりに触手が頂けると聞いて
326 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/20(木) 23:00:06.72 ID:fDTd9/4G0


受付亀 「おお、あったあった」

受付亀 「エルフーンさんと、オーシュ・エビグラタニアさんほか三人」

受付亀 「それから、二頭立ての馬車ね」


幼葉エルフ 「はい」


王子 「…………」


ハーピィ 「…………」


受付亀 「……良いのかい」

受付亀 「旅人用の予約だから結構な値段だけど」

受付亀 「払ったお金は戻ってこないよ?」


幼葉エルフ 「はい。やむをえない事情があって……」


受付亀 「そうかい……」


犬兵士 「…………」


327 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/20(木) 23:07:25.88 ID:X0H7x69e0
多分ろうそく職人が
職種と戯れるはず
(適当)
328 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/20(木) 23:13:53.55 ID:fDTd9/4G0


受付亀 「それじゃ、予約は取り消しに……」


犬兵士 「待て」


受付亀 「はいはい、なんでしょうか」


犬兵士 「旅人か……あやしい」


幼葉エルフ 「…………」


受付亀 「そうでしょうかね」

受付亀 「おかしな眼鏡におかしな被り物」

受付亀 「ただの芸人にしか見えませんがね」


犬兵士 「いや、あやしい。ぷんぷんにおうぞ」


幼葉エルフ 「…………」

幼葉エルフ 『無礼な奴だな。風呂上りだというのに』


王子 『そういう意味じゃない』


ハーピィ 「…………」


329 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/20(木) 23:35:13.36 ID:fDTd9/4G0


犬兵士 「ちょっと金を多く払えば良いだけで」

犬兵士 「よそ者もくせ者も、帝国民の権利を剥奪された者も」

犬兵士 「旅人として船に乗ることができるからな」


幼葉エルフ 「そんな、私……」


犬兵士 「予約の名前も本物である証拠はない……」

犬兵士 「おい、骨の仮面」


王子 「……何でしょうか」


犬兵士 「男か。貴様、名前は何だ」


王子 (うわあ、よりにもよって)


ハーピィ 「…………」


330 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/21(金) 00:04:43.44 ID:1jwIqnS10


王子 「…………」


犬兵士 「何だ、ずいぶんと言いにくそうだな。まさか、自分の名前を忘れたのか?」


王子 (さて、自分の名前をむやみに言ってはいけない呪術師の部族は何と言ったかな……)


幼葉エルフ 「あの……」

幼葉エルフ 「その人はオーシュ・エビグラタニアです」


犬兵士 「…………」

犬兵士 「お嬢ちゃんには聞いていない」


幼葉エルフ 「エビグラタンみたいな名前だから、言いたくないの」

幼葉エルフ 「でも、とても頼りになるのよ」

幼葉エルフ 「襲ってくる盗人や魔物から守ってくれたり馬車を運転したり」

幼葉エルフ 「あとね、すごく優しいの」

幼葉エルフ 「ねえ、オーシュ」

幼葉エルフ 「この素敵な肩掛けだって、オーシュが買ってくれたもんね」


王子 「……ああ」



331 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/21(金) 00:06:34.47 ID:1jwIqnS10


幼葉エルフ 「ほらね、ほらね、とっても優しいの」

幼葉エルフ 「馬車に乗っているときだってお膝に乗せてくれるし」

幼葉エルフ 「それからね……」


犬兵士 「わおーーん!!」


幼葉エルフ 「!?」


犬兵士 「ええい、黙っていろキャンキャンうるさい小娘め!」



332 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/21(金) 00:07:18.56 ID:0Wveji7aO
これだけ海老を押すのは後々重大な勝利への伏線になる可能性が…
333 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/21(金) 00:18:15.02 ID:1jwIqnS10


幼葉エルフ 「そんな……わ、私、犬の兵士さんがオーシュの名前知りたいって言ったから……」


犬兵士 「お前に聞いたんじゃない、桃色頭のばか娘!」

犬兵士 「勝手にペチャクチャしゃべりやがって」

犬兵士 「身振り手振りでうっとうしいクソガキ!」


王子 「……犬の兵士どの。そこまでにしていただけないか」


犬兵士 「うるさい! もとはと言えば貴様が……」


幼葉エルフ 「…………うううううっ」

幼葉エルフ 「聞いたもん、だから私、おしえたんだもん……」

幼葉エルフ 「………う」

幼葉エルフ 「うええええん……!!」


犬兵士 「……!!」


334 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/21(金) 00:30:51.84 ID:1jwIqnS10


幼葉エルフ 「ああああん! うわああああん!」


犬兵士 「ええい、泣くと余計にうるさい!」


幼葉エルフ 「びえええええん! びえええええん!」

幼葉エルフ 「怖いよう、犬さんがいじめてくるよう!」


ザワザワ


旅商人A 「何ですかな、あれは」


旅商人B 「鎧をきた犬の兵士が、可愛い子供を泣かしている」


旅商人C 「何と大人気ない……」


ザワザワ


犬兵士 「貴様ら、これは見世物じゃないぞ!」

犬兵士 「くだらんことを言うとたたっ斬るぞ!」


旅商人たち 「ひいっ……」



335 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/21(金) 00:43:30.30 ID:1jwIqnS10


幼葉エルフ 「うわあああん! うわあああああん!」

幼葉エルフ 「どぎゃーす! どぎゃーす!」


王子 「よしよし……」


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「…………」


王子 (ハーピィが顔をおおっている)

王子 (……泣きまねをしているのか?)

王子 「さあ、きみもこちらへおいで……」


ハーピィ 「…………」


ギュッ


幼葉エルフ 「うええええん。ひっく、ぐすっ」


ハーピィ 「…………」


王子 「よしよし……」


荷運び 「…………」


掃除夫 「…………」


ヒソヒソ ヒソヒソ


犬兵士 「ぐううっ……」

犬兵士 「よくも憲兵であるおれに恥をかかせたな!」

犬兵士 「勘弁ならん。子供とはいえ、叩き斬る!」


シュラッ


王子 (ここで剣を抜くか、憲兵……!)


336 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/21(金) 01:05:02.78 ID:1jwIqnS10


犬兵士 「でいっ」


ブンッ


王子 「…………」


ガキン


犬兵士 「ぬう、受け止めたか!」

犬兵士 「貴様、剣を抜いたな。憲兵に逆らうつもりか!」


王子 「黙って殺されてやるわけにはいかない」

王子 「あなたが怒りとともに剣をおさめ、我々を許してくださるのなら」

王子 「剣をおさめ詫びよう」




337 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/21(金) 01:29:35.11 ID:1jwIqnS10


犬兵士 「ふははは……」

犬兵士 「国家憲兵は皇帝陛下の鉄槌、帝国の法」

犬兵士 「我々に逆らうことは皇帝陛下に、帝国に逆らうということ」

犬兵士 「それを知って、そんな口をきけるのかな」


王子 「頭をお冷やしなされよ」

王子 「あなたの今の行いは」

王子 「犬の隊長どのやロバの将軍隊長どの、そして皇帝陛下に」

王子 「恥じることなくお見せすることができるものなのか」


犬兵士 「! い、犬隊長さまだと……」



338 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/21(金) 01:39:06.52 ID:1jwIqnS10


王子 「遠くの皇帝陛下よりも近くの隊長どのの名前を恐れるか……」

王子 「剣がぐらついているぞ憲兵どの」

王子 「鞘におさめるべきではないのかな」


犬兵士 「う、うう……」

犬兵士 「ええい、黙れ!」

犬兵士 「隊長には、不審人物を処分したと報告すれば良いことだ!」


ガキンッ


王子 「うおっ……」

王子 (しまった、開き直っちゃった)


犬兵士 「わおーーーん!」


受付亀 「ええ加減にせんかい犬っころ!」


犬兵士 「!?」



339 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/21(金) 01:55:28.17 ID:1jwIqnS10


王子 (受付の亀の人が、自分より背の高い鎚を持って立っている……)

王子 (かなり年季のはいった鎚だ)


受付亀 「まったく、数はやたらと増えたが」

受付亀 「質はえらく落ちたものだ国家憲兵!」


犬兵士 「き、きさま、憲兵を馬鹿にするか……」


受付亀 「貴様が馬鹿なのだ、憲兵団の面よごしめが!」


犬兵士 「な……っ」


受付亀 「来い! わしが性根を叩き潰して鍛えなおしてやるわ!」

受付亀 「カメェェェッー!」



340 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/21(金) 02:08:27.12 ID:1jwIqnS10


ドカッ


犬兵士 「ぐえっ」


ボグッ


犬兵士 「きゃいんっ」


受付亀 「どっせえい!」


バコンッ


犬兵士 「ぐおーん!」


ドシャッ ガラガラ


王子 (わざわざ柄で体勢を崩してから、一振りで犬兵士を吹っ飛ばした)

王子 (ものすごく速い動きで)


犬兵士 「きゅう………」


受付亀 「ふんっ、青二才め」

受付亀 「おまえが皇帝の鎚をかたるなど、万年早いわ!」


王子 「何者だ、彼は……」


受付亀 「カメーーーッ!」


幼葉エルフ 『何となく分かるだろ』


王子 『うん』


ハーピィ 「…………」



341 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/21(金) 02:18:12.18 ID:0rzTNKbD0
この亀の体格ってミュータントタートルズを想像したわ
342 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/21(金) 02:19:07.47 ID:0rzTNKbD0
この亀の体格ってミュータントタートルズを想像したわ
343 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/21(金) 02:27:02.27 ID:1jwIqnS10


…………


受付亀 「だいたいおまえは」

受付亀 「旅人と見れば手当たりしだいに、あやしい、あやしいと連呼しおって」

受付亀 「おかげでどんだけ船が遅れたと……」


犬兵士 「く、くうん……」


ガミガミ


老紳士 「まさか、あのお人は」

老紳士 「ふるき皇帝の時代にその人ありと言われた」

老紳士 「双鎚の亀隊長……」


ヒソヒソ ヒンヒソ


幼葉エルフ 「えーん、えーん」


王子 「…………」

王子 「さて、行くか」


幼葉エルフ 「そうだな」


ハーピィ 「…………」



344 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/21(金) 02:47:03.62 ID:1jwIqnS10


大通り



王子 「すごい亀だった」


幼葉エルフ 「オレより小さかったのに、戦いだしたら甲羅を背負った筋骨隆々の棒使いみたいに見えたものな」


ハーピィ 「…………」


王子 「……あの人は皇帝の目と関係ないのかな」


幼葉エルフ 「ああ。近くにそんな感じのものはなかった」


王子 「ふむ」


345 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/21(金) 02:59:31.78 ID:1jwIqnS10


幼葉エルフ 「ところでどうだった」


王子 「うん?」


幼葉エルフ 「オレは子供らしかったかな」

幼葉エルフ 「この体の持ち主の記憶は相変わらず読めないから」

幼葉エルフ 「体にあう演技をするのは大変なんだ」


王子 「……ああ。良かったんじゃないかな」

王子 「黒花の長老どのの新境地ってやつを見られたと思うよ」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「そうかそうか」

幼葉エルフ 「ハーピィもよく気がついたな。すすり泣く感じが出ていた」

幼葉エルフ 「自然に腕を震わせたりすると、もっと良いぞ」


ハーピィ 「…………」


王子 「……ろうそく職人には」


幼葉エルフ 「言ったら石鹸くわせてやる」


王子 「はいはい」

王子 (石鹸か……)

王子 (頑張ればいけるかな)



346 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/21(金) 03:19:49.72 ID:1jwIqnS10



幼葉エルフ 「……暗くなってきたな」


王子 「夜の港町は綺麗だろうな」

王子 「満喫できないのは残念だ」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「島の南にも港町はあるだろう」

幼葉エルフ 「それまで我慢しろ、夢見がちな王子さま」


王子 「分かったよ、黒花の詩人どの」

王子 「……お、町の出口が見えた」


幼葉エルフ 「馬車も来ているな」

幼葉エルフ 「急ごう」


347 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/21(金) 03:30:35.42 ID:1jwIqnS10


ろうそく職人 「……あ、帰ってきましたね!」


幼葉エルフ 「うむ、ご苦労」


貝殻の勇者 「あなたがたこそ、ご苦労様でした」


王子 「ははは、御者台に二人がいると不思議な感じだ」


ハーピィ 「…………」


馬車馬A 「ヒヒン」


馬車馬B 「ヒンヒン」


貝殻の勇者 「強くおだやかな良い馬たちですね」

貝殻の勇者 「ハーピィさん、今回は中で休まれますか?」


ハーピィ 「…………」


王子 「御者台が好きみたいでね」


貝殻の勇者 「ふふふ。分かりました」


348 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/21(金) 03:37:28.03 ID:1jwIqnS10


貝殻の勇者 「それでは、よろしくお願いします」


ハーピィ 「…………」


王子 「ああ。しっかり運転させてもらうよ」


スタッ カツ カツ

バタム


ろうそく職人 「…………」


幼葉エルフ 「……何だよ。お前もはやく中に行けよ」


ろうそく職人 「師匠、なんだか目のまわりが赤いですね」


幼葉エルフ 「……ああ、潮風が目にしみてな」



349 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/21(金) 03:56:42.90 ID:1jwIqnS10


ろうそく職人 「…………」

ろうそく職人 「王子さま」


王子 「何かな」


ろうそく職人 「師匠は潮風がしみたので目が赤いのでしょうか」


王子 「…………」

王子 「…………」


幼葉エルフ 「そんなくだらないこと話している暇はないんだ。急げ」


ろうそく職人 「…………」

ろうそく職人 「ふっふっふ……」


スタッ トコ トコ ズテ


幼葉エルフ 「ふはは、こけやがった」


王子 「こっちを見ながら歩くから……」


ろうそく職人 「ふっふっふ……」


トコ トコ バタム


ハーピィ 「…………」


350 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/21(金) 04:18:39.47 ID:1jwIqnS10


カラカラ ヒヒン


東の門番 「……あんたがたも忙しいね」

東の門番 「こっから入ってきたと思ったら、もうこっから出て行く」

東の門番 「しかも、こんな遅くに」


王子 「予定が変わってね。南の港に行くことになった」


東の門番 「あんたがたは通ってきたから分かってるだろうが」

東の門番 「島の東は荒れた山に人殺しの森だよ。森を抜けるのは一日じゃ無理だ」

東の門番 「西回りの方がおりこうさんってもんだ」




351 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/21(金) 04:21:05.63 ID:1jwIqnS10


東の門番 「だからこっちは人も通らない。出て行く奴らなんてとくにいない」

東の門番 「しかも、こんな遅くに」


幼葉エルフ 「知らない西回りの道より、知っている東回りの森ですわ、おねえさま」


東の門番 「ふうん……」

東の門番 「はんっ、んなわきゃねえだろ可愛いガキんちょ」

東の門番 「まあ良いさね。私にゃあ関係ないこった」

東の門番 「開門、開門」


王子 「こんな遅くにすまないね」


東の門番 「はいはい、骨の色男さんよ」

東の門番 「みんな首ないの骨になっちまわないよう、せいぜい気をつけな」


ガラガラガラ


352 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/21(金) 18:05:13.39 ID:1jwIqnS10


山道



カラカラ


ハーピィ 「…………」


王子 「そうだ。お前も見てたんなら知ってるだろうけど」

王子 「これ」


幼葉エルフ 「海水を真水にかえる石か」


王子 「白黒の女の子にもらったやつだ」

王子 「どう思う」


幼葉エルフ 「そんなものがあれば船の魔法使いの仕事が減るが」

幼葉エルフ 「これはただ、石を磨いただけという感じだな」


王子 「やっぱりか」


幼葉エルフ 「ふむ……」

幼葉エルフ 「…………お」

幼葉エルフ 「耳にあてると、かすかに波の音がきこえる」



353 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/21(金) 18:11:06.37 ID:1jwIqnS10



王子 「どれどれ」


サアアア ザー……ン 


王子 「……おお、本当だ」

王子 「この音、城を思い出すなあ」


幼葉エルフ 「なかなか不思議な石だ」


王子 「不思議なお前が不思議と言うから、すごく不思議なんだろうな」


幼葉エルフ 「ほれ、ハーピィも聞いてみろ」


ピト


ハーピィ 「…………」



354 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/21(金) 18:18:44.06 ID:1jwIqnS10


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「…………」


王子 「……ハーピィ?」


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「おい、まさかこいつ」


ハーピィ 「…………」


王子 「寝ている」


カラカラ ゴト ガラ


幼葉エルフ 「おい、起きろ運転士」



355 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/21(金) 18:23:17.92 ID:jPMJ0JO/0
ハーピィさん運転しちゃいけない
タイプだったか
356 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/21(金) 18:26:37.10 ID:1jwIqnS10


馬車馬A 「ブルル」


馬車馬B 「ヒッ」


カラカラカラカラ


王子 「馬が自分たちで調子をもどした……」


幼葉エルフ 「賢いな。息もぴったりだ」


ハーピィ 「…………」


王子 「ハーピィ、朝だよ」


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「!」

ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「ああ、まだ夜だ。おはようハーピィ」


ハーピィ 「…………?」


幼葉エルフ 「ハーピィを眠らせるのか、この石は」


王子 「海は好きみたいなんだけど、関係あるのかね」

王子 「むやみに近づけるのはやめておこう」



357 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/21(金) 18:47:58.88 ID:1jwIqnS10


人殺しの森



ホー ホー ケケケケケ


ろうそく職人 「あいかわらず暗いですね、この森……」


貝殻の勇者 「西の港でこの森の話をするとき、みな不吉な顔をしていました」

貝殻の勇者 「あやしい気配がまとわりついてくるようです」


ろうそく職人 「うう、また首無し馬が出てきそうで怖いけど」

ろうそく職人 「こうやって外を見ていないと変なのが襲ってきそうでもっと怖い!」


貝殻の勇者 「大丈夫ですよ、ろうそく職人さん」

貝殻の勇者 「この馬車にはエルフの長老がたの加護があるのですから」


ろうそく職人 「そ、そうでしたね。こちらには怖いもの知らずの……」


幼葉エルフ 「おっと、加護が消費期限切れだ」


ろうそく職人 「ひいいいい」

ろうそく職人 「もう駄目だあ」


幼葉エルフ 「そんなわけあるか、ばか」


王子 (葉巻、ここぞとばかりに……)



358 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/21(金) 19:21:14.27 ID:1jwIqnS10


ハーピィ 「…………」


カラカラ


王子 「なあ、葉巻よ」


幼葉エルフ 「何だい、相棒」


王子 「酒場にたむろしていた憲兵たちが、気になることを言っていたんだよ」

王子 「皇帝の目がついているから自分たちは島を西回りでどうとか」


幼葉エルフ 「島の東があやしいってわけか」


王子 「ああ。まるで東は皇帝が見てくれているという感じじゃないか」



359 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/21(金) 19:35:44.87 ID:1jwIqnS10


幼葉エルフ 「……たしかに、この森では不穏な魔力をいくつも感じる」

幼葉エルフ 「だが、おおかた死者たちの怨念とかそんなものだろう」


王子 「うーん」


幼葉エルフ 「気をつけてはみるさ。憲兵さんがたも、どうやらのろのろやるらしいから」

幼葉エルフ 「客室も、用心して外を見ていろよ」


貝殻の勇者 「はい」


ろうそく職人 「師匠さん、師匠さん! さっそくあやしいものが!」


幼葉エルフ 「何だい、弟子よ」


ろうそく職人 「魔王の娘たちがあそこに! なやましいあけっぴろげな姿で!」


貝殻の勇者 「何ですと」


幼葉エルフ 「……弟子や弟子や、あれは古くなった木だよ」


ろうそく職人 「なあんだ。足に見えていたのは根っこでした」


王子 「仲が良いな、君たち」


幼葉エルフ 「木から妄想をするとは、腐敗魔法の修行は欠かしていないようだ」


ハーピィ 「…………」


カラカラカラ


360 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/21(金) 20:45:28.72 ID:1jwIqnS10


幼葉エルフ 「やっぱり、媚薬も混ざっていると思うんだよあの部屋は」


王子 「ベラドンナとかかな……」


ハーピィ 「…………」


貝殻の勇者 「もうそろそろ、妖精の領域へと繋がる泉ですね」


ろうそく職人 「私たちが来たところですね」


貝殻の勇者 「ここから南の港へは、どれくらいあるのでしょうか」


ハーピィ 「…………」


クルクルクル


ハーピィ 「…………!」



361 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/21(金) 21:00:25.66 ID:1jwIqnS10


ハーピィ 「……! ……!」


王子 「……四つ針のコンパスの赤い針がくるくると回って、長い針に重なった」

王子 「危険が近いってことか」


幼葉エルフ 「馬鹿な。いきなりそんなことが……」


ドドドドド


ろうそく職人 「ななな、何ですか、この低い音は」


貝殻の勇者 「何かが近づいてきます……!」


幼葉エルフ 「くそ、戦闘にそなえるぞ」


ろうそく職人 「ままま、まだ心の準備が……」


バキバキ クエー バササ 


王子 「そうとう大きいみたいだ。木々をなぎ倒してくる」


バキバキ ガサガサガサ


境界の魔物 「ギャオオオオ」



362 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/21(金) 21:09:00.66 ID:1jwIqnS10


ろうそく職人 「いぎゃあああああ!」

ろうそく職人 「お久しぶり!」


王子 「これは、妖精の領域とこちら側に戻ってくる途中にいたモンスターか」


ろうそく職人 「おばけうなぎ」


貝殻の勇者 「竜のような蛇では」


境界の魔王 「ギャルルル」


幼葉エルフ 「別の領域にある危険には、コンパスも反応しなかったか……」

幼葉エルフ 「わざわざ追いかけてきやがるとは、あきれたもんだね」


ろうそく職人 「ひいい、なんて恐ろしいうなぎ」


幼葉エルフ 「蛇だ」



363 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2014/03/21(金) 21:13:07.71 ID:1jwIqnS10


>>362訂正 ごめんなさい

×境界の魔王
○境界の魔物

364 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/22(土) 00:10:15.20 ID:yd0R/n0X0



王子 「空をささえる木が倒れたような太さだな」


幼葉エルフ 「いくらなんでもでかすぎる」

幼葉エルフ 「急いで転回、180度変更、逃げろ」


ハーピィ 「…………」


馬車馬たち 「バフッ!」


ガラガラ


境界の魔物 「ギャルルル……」


パキ バキバキ


ろうそく職人 「あれ、こっちを見ながら、来たほうへ引っ込んでいきます」


貝殻の勇者 「あれは……大きく跳ぶ前にかがんでいるような」

貝殻の勇者 「まさに蛇が鎌首をもたげているような……」


ろうそく職人 「いぃいいっ!?」



365 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/22(土) 00:27:59.12 ID:yd0R/n0X0


パキ……


ろうそく職人 「と、止まったようですね、うなぎ……」


貝殻の勇者 「不気味な静けさ」

貝殻の勇者 「まわりの生き物も恐れて黙っているようです」


ハーピィ 「…………」


ガラガラガラガラ


王子 「勇者どのの言っている通り、あの化け物が攻撃してくるのだとして」

王子 「射程はどの程度なんだろうか」

王子 「真っ直ぐ逃げるのはよくなさそうだな」


幼葉エルフ 「ああ……」


境界の魔物 「ギャロロロロ」


ドドドドド


ろうそく職人 「う、うねるような地響きが近づいてくる!」


王子 「来るか……!」


366 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/22(土) 00:40:48.47 ID:yd0R/n0X0


バキ ドシン ガササッ 


境界の魔物 「ギャオオオオ!」


ろうそく職人 「うわあ、ドンピシャでこっちに来る!」


貝殻の勇者 「馬車に当たってしまう!」


幼葉エルフ 「………ッ!」


ビュオ


王子 「馬車の周りを風が」


境界の魔物 「ギャオオオ」


バシン ドン ガララ


貝殻の勇者・ろうそく職人 「きゃあっ」


王子 「体当たりか頭突きか分からんが蛇の攻撃は馬車からそれたが……ッ」


幼葉エルフ 「ああ、かすったな……!」

幼葉エルフ 「風の魔法と馬車の護符じゃ完全に防げなかったか」



367 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/22(土) 00:44:08.73 ID:uT13aGJt0
ろうそく職人なら蒲焼きの
魔法を使う信じてる
(成功するとは言ってない)
368 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/22(土) 00:51:23.69 ID:yd0R/n0X0


馬車馬たち 「ゼヒッ……ゼヒッ……」


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「…………」


馬車馬たち 「……ブルル」


王子 「攻撃を受けて驚いていた馬が落ち着いた」


幼葉エルフ 「良いぞ、一流運転士」


ハーピィ 「…………」


ろうそく職人 「攻撃をはずしたうなぎは急に止まれなかったようです」

ろうそく職人 「頭は森のあさっての方に消えてしまいました」


貝殻の勇者 「そして今われわれの視界にあるのは、無防備に横たわる蛇の胴体」

貝殻の勇者 「攻撃し放題ですね」


369 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/22(土) 00:56:04.81 ID:cRzoqYWUO
オカズが増えるよ!やったね勇者!
370 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/22(土) 01:05:53.57 ID:yd0R/n0X0


王子 「あの鱗を通せるかな……」


貝殻の勇者 「ふふ。私の槍は魔王を貫く槍」

貝殻の勇者 「千の呪いを跳ね返す、竜の鱗さえ貫きましょう」


幼葉エルフ 「たしかに、これから先あのうな……蛇の影が背中でちらつくと厄介だ」

幼葉エルフ 「潰せるものならそうしておきたい」


ろうそく職人 「槍……串……うなぎ」

ろうそく職人 「地獄の炎……」

ろうそく職人 「はうあっ!」

ろうそく職人 「大変です! 良いこと思いつきまし……」


幼葉エルフ 「オレと勇者さまで蛇を動けなくする」

幼葉エルフ 「城組は馬車を南に進めておいてくれ。できるだけ速く、遠くまで」


371 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/22(土) 01:19:09.62 ID:yd0R/n0X0


王子 「仮面があるから合流はできるとして」

王子 「あれには皆でかかった方が良くないか」


幼葉エルフ 「万がいち馬車を失うわけにもいかない」

幼葉エルフ 「……ろうそくに任せるのは不安だ」


王子 「む、うーん……」


貝殻の勇者 「とうっ」


スタッ


貝殻の勇者 「では、馬車を頼みますよ」


ろうそく職人 「はい!」


王子 (いつの間にかろうそく職人が御者台に来ている……)



372 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/22(土) 01:32:53.26 ID:yd0R/n0X0


幼葉エルフ 「それっ」


シュオン


貝殻の勇者 「何かの力に守られる感じが……」


幼葉エルフ 「風の加護だ」


貝殻の勇者 「ありがたい」


幼葉エルフ 「この不吉な森で、あまり馬車から離れたくない」

幼葉エルフ 「さっさと終わらせるぞ」

幼葉エルフ 「にんにん、だ」


貝殻の勇者 「ええっ」

貝殻の勇者 「…………カバヤキ」


タタタタタ


王子 「…………」


ろうそく職人 「…………」


ハーピィ 「…………」



373 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/22(土) 01:39:12.17 ID:yd0R/n0X0


王子 「…………」


ろうそく職人 「今、勇者さま蒲焼きって……」


王子 「……は、早く行くとしよう」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「うん。おれ、城を出てから何かたいしたことやったかな……」


ろうそく職人 「安心してください」

ろうそく職人 「お城にいるときも王子さまのろくな噂はありませんでしたよ!」


王子 「君が言うと本当に安心しそうになるなあ……」


ハーピィ 「…………」


馬車馬たち 「ヒンッ」


ガラガラガラ


374 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/22(土) 01:51:32.11 ID:yd0R/n0X0


王子 「さて、できるだけ速くといっても」

王子 「馬がばててしまってはいけない」


ハーピィ 「…………」


馬車馬たち 「…………」

馬車馬たち 「ヒヒヒン」


ガラガラ ゴトッ ガラガラ


ろうそく職人 「その辺の心配はいらないようですね」


王子 「すごいなあ、ハーピィは」



375 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/22(土) 02:02:44.92 ID:yd0R/n0X0


ガラガラガラ


王子 「……だからえびは」


ろうそく職人 「虫ですよね。たくさんの触覚がうねうねして、毛虫みたいで気持ちの悪い」

ろうそく職人 「見てると体がかゆくなってきます……」


王子 「違う、違うぞろうそく職人くん」

王子 「うーん。君には海老のよさをしっかり教えなきゃなあ」


ろうそく職人 「そういえば私、たこも怖いんですよ」

ろうそく職人 「前にお城の厨房に盗み食いしに行ったとき」

ろうそく職人 「大きなたこにからみつかれてアレやコレやされて以来……」


王子 「君はいったいどれだけ盗み食っていたんだ……」


クルクルクル


ろうそく職人 「わっ、コンパスの赤い針が動きます」


王子 「危険が近い。道を少しかえよう」


ハーピィ「…………」



376 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/22(土) 02:08:51.87 ID:yd0R/n0X0


…………


クルクルクル


ろうそく職人 「ま、またもや赤い針が……」


王子 「道をかえたってのに……」


…………


クルクルクル


ろうそく職人 「わわ、またまたもや赤い針が」


王子 「おいおい……」


…………


クルクルクル


ろうそく職人 「ひ、ひいいい、またまたまたまたまた……!」


王子 「危険でない場所がなくなってしまった」

王子 「……もしかして、どこにいっても危険が待っているのではなくて」

王子 「危険が追ってきているのかな」


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「…………」


王子 「うん。おれは強くそう思っているらしい」


377 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/22(土) 02:15:50.59 ID:uT13aGJt0
エビが食えない言い訳に
エビ=虫て基本だよな…

ろうそく職人とはうまい
飯が食えそうだ
378 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/22(土) 02:16:41.68 ID:uT13aGJt0
エビが食えない言い訳に
エビ=虫て基本だよな…

ろうそく職人とはうまい
飯が食えそうだ
379 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/22(土) 02:24:39.57 ID:yd0R/n0X0


ペキッ


ろうそく職人 「ひっ!?」

ろうそく職人 「お、王子、そこの森の闇で小枝を踏む音が」


ガシッ


王子 「ちょ、ちょっと、動けないから羽交い絞めはやめて……」

王子 「蛇のときとは違って、あまり大きくはなさそうだ」


??? 「グルルル」


??? 「フーッ……フーッ……」


ろうそく職人 「ほわわわわ。な、生ぬるい息遣いが聞こえますよ……!」


ムニャッ


王子 「だからちょっと、息ができな……」


ハーピィ 「…………」



380 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/22(土) 02:37:01.00 ID:yd0R/n0X0


ろうそく職人 「どどど、どうして」

ろうそく職人 「さっきまでモンスターなんて寄ってこなかったのに……」


ムギュウウ


王子 「……も、もしかすると」

王子 「さっきのうな……蛇の攻撃で護符の結界が崩れたのかも……」


ろうそく職人 「け、結界が決壊!? とすると、私たちが血塊肉塊大放出……」

ろうそく職人 「ひいいい!」


モギュウウ


王子 「ぐえっ……」


ろうそく職人 「やだあああ! 助けて王子さまああ!」

ろうそく職人 「私まだ死にたくありません!」

ろうそく職人 「こんな森で死にたくない! 幸せになりたい!」

ろうそく職人 「子供うみたいいい!」


グギギギ


王子 「分かった! どうにかするから、離して……」


381 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/22(土) 02:45:58.88 ID:yd0R/n0X0


??? 「グルルル」


??? 「フヒッ……フヒッ……」


ペキッ ザッ ザッ


王子 「ふう……」

王子 「思いがけず死にかけた」


スタッ


王子 「…………」

王子 「この森に足をつけて戦うのは初めてだけど、さて」


ブンッ ヒュンッ


王子 「うん。剣はふるえそうだ」


ろうそく職人 「お、王子さまー……」


王子 「ハーピィとろうそく職人はそのまま御者台で、いつでも馬車を出せるようにしておいてくれ」


382 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/22(土) 02:55:16.44 ID:yd0R/n0X0


ろうそく職人 「ううう、私も戦いますよう……!」

ろうそく職人 「ハーピィさま、馬車をお願いします!」


ハーピィ 「…………」


ろうそく職人 「でゅわっ」


ヒョロッ スタッ ヨロ


ろうそく職人 「のわっとっと」


王子 「おっと」


タシッ


ろうそく職人 「……あ、ありがとうございます」


王子 「大丈夫かい。馬車からおりるのも一苦労じゃないか……」



383 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/22(土) 03:13:44.02 ID:yd0R/n0X0


ろうそく職人 「私だって、妖精の里で厳しい修行をしてきたのです」

ろうそく職人 「戦います。この獣の耳と尻尾にかけて!」


ガタガタガタガタ


王子 「耳と尻尾が情けなく垂れている……」


ろうそく職人 「うう、怖いよう、おっかないよう」


王子 「やれやれ……」

王子 「…………」

王子 「静寂に沈む森に、蒼き漆黒の風が吹きすさぶぜ……」


ろうそく職人 「あははは」


王子 「……耳がピンと立った。落ち着いたようだ」



384 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/22(土) 03:30:03.97 ID:yd0R/n0X0


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


スタッ


王子 「ああ、そんな森にそんな風は吹かない」

王子 「ハーピィ、こっちは大丈夫だから馬をお願いできるかな」

王子 「おれも君の近くにいるから」


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「…………」


ヨジヨジ


王子 「ありがとう」


ろうそく職人 「さあ、もう大丈夫ですよ」

ろうそく職人 「かかってきなさいモンスターたち!」


王子 「おれのうしろに隠れながらそういうこと言っても……」

王子 「いや、あまり前に出ない方が良いか」


ろうそく職人 「はい。回復魔法ができますが、杖術も攻撃魔法もいまひとつです」


王子 「……たのむから死なないでくれよ。死ぬ気で守るから」


ろうそく職人 「はい!」



385 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/22(土) 03:39:35.75 ID:yd0R/n0X0


??? 「グルル……」


ザッ ザッ ザッ


??? 「…………」

牙の獣A 「ガルルル……」


牙の獣B 「グルルル……」


牙の獣C 「フシューッ……」


ろうそく職人 「け、けっこう数が多いですね。それに、まだいるみたい」


王子 「とても友好的ではないな」

王子 「自然の声をよく聞こう」

王子 「妖精の領域帰りの力を見せてやるんだ」

王子 「行くぞ!」


386 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/22(土) 03:57:29.08 ID:yd0R/n0X0


ヒュン ザシュッ 


牙の獣A 「グビイッ」


ドサッ


牙の獣B 「…………グルル」

牙の獣B 「ブルアア!」


王子 「……!」

王子 「でやっ」


牙の獣B 「ギャッ」


ろうそく職人 「斬って返して、あっという間に二匹たおした……」


王子 「おれより後ろには生かして通さんよモンスターども」


牙の獣たち 「…………」


ジリ ジリ


ろうそく職人 「おおー。王子の気迫に、モンスターたちがさがって距離をとった」



387 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/22(土) 04:05:43.91 ID:yd0R/n0X0


王子 「……このまま帰ってくれたら良いけど」


ろうそく職人 「いけるかもしれませんよ」

ろうそく職人 「王子の強さに驚いているようですし」


王子 「とにかく、勇者どのと葉巻が帰ってくるまでに」

王子 「かたをつけておきたいな……」


??? 「ガオオ!」


王子 「!?」


ガブッ


王子 「ぐうっ。腕に……!」


牙の獣A 「ガブガブ」


ろうそく職人 「そんな、倒したはずのモンスター!」


王子 「くそっ……!」


ザクッ


牙の獣A 「ギャウン」



388 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/22(土) 04:11:48.51 ID:yd0R/n0X0



王子 「ううっ……」


ろうそく職人 「回復の火!」


ピロリ


王子 「……痛みがひいていく」


ろうそく職人 「傷をなおすまでは少し時間がかかりますけど……」


王子 「助かるなあ」


ろうそく職人 「え、えへへへ……」


牙の獣B 「…………」


ムクリ


牙の獣B 「ガルルッ!」


ろうそく職人 「!? きゃあっ」


王子 「こいつもか……!」


ザシュッ ドカッ


牙の獣B 「ブギャッ」


ろうそく職人 「斬って蹴り飛ばした……」


389 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/22(土) 04:15:15.82 ID:yd0R/n0X0


牙の獣A 「…………」


牙の獣B 「…………」


ムクリ


王子 「……どうなっているんだ」


ろうそく職人 「断末魔をあげて倒れても、復活してくるなんて……」


牙の獣たち 「…………」


ザッ ザッ


ろうそく職人 「うひい、また近づいてくる……」


王子 「まさか、こいつらみんなそうなのか?」



390 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/22(土) 04:21:43.84 ID:yd0R/n0X0


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「…………ッ」


馬車馬A 「……ヒヒン」


ハーピィ 「…………!?」


馬車馬B 「ブルルッ」


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「…………」


馬車馬A 「バル」


馬車馬B 「バルル」


ハーピィ 「…………」


コクリ



391 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/22(土) 04:36:01.94 ID:yd0R/n0X0


牙の獣G 「ギャッ」


牙の獣H 「ギャブッ」


牙の獣D 「……グルル」


牙の獣C 「ガルッ……」


ろうそく職人 「あううう。あっちを倒せばこっちが復活」

ろうそく職人 「こっちを倒せばあっちが復活……」


王子 (首を切り落としても立ち上がる。細切れにするまで立ち上がってきそうだ)

王子 (それまで仲間と馬車を守りきれるのか)

王子 (青花エルフの修行を思い出せ……)


ガチャガチャ 


王子 「ん?」


ろうそく職人 「は、ハーピィさま」


ハーピィ 「…………」


ガチャガチャ


王子 「馬を放そうとしているのか?」


ろうそく職人 「ど、どうして……」


ハーピィ 「…………」


ガチャン


馬車馬A 「…………」

戦馬A 「ブルルル!」


馬車馬B 「…………」

戦馬B 「バルルル!」



392 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/22(土) 04:45:21.56 ID:yd0R/n0X0


戦馬A 「ヒヒーン!」


戦馬B 「クィーン!」


ダララッ ダダダッ


王子 「いつもはおとなしい馬車馬たちが……」


ろうそく職人 「勇ましくいなないたあと、たてがみを振り乱して敵に向かう!」


ボガッ ドガッ


牙の獣C 「グゲッ」


牙の獣D 「パキョッ」


グチャ ベチャ


ろうそく職人 「す、すごい。一撃で頭を踏み砕いた!」

ろうそく職人 「わたし馬車馬未満だ! 死にたい!」


王子 「やめなさい」


393 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/22(土) 05:07:41.69 ID:yd0R/n0X0


…………


ガキッ ドガッ バコンッ


ろうそく職人 「回復の火! 回復の火!」


王子 (回復の火で傷は癒えるが、疲労はあまり取り除かれないらしい)

王子 「馬を優先してくれ」

王子 「ここを切り抜けても、消耗しすぎたらこの先が厳しい」


ろうそく職人 「は、はい!」


馬車馬A 「フーッ……ヒーッ……」


馬車馬B 「ヒンッ……ヒヒーッ……」


牙の獣たち 「ガルルル………」


王子 (動かなくなった奴らもいるが、敵はきりが無い……)


ハーピィ 「…………」


394 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/22(土) 05:22:50.69 ID:yd0R/n0X0


ダララッ ダララッ ダララッ


牙の獣たち 「……!」


王子 「何かが駆けてくる音」


牙の獣たち 「…………グウゥ」


王子 「モンスターたちの戦意が薄れていく……」


ろうそく職人 「ここにきて、新手のモンスター……!?」


王子 「ああ。まさかこの人殺しの森に人助けがくることも無いだろう」

王子 「まだ増えるのか。くそ……」


ダラララ ダラララ


ダダッ


首無し馬 「…………」


王子 「…………!」

王子 「……あれは」


首無し馬 「…………」

首無し馬 「フオオオオオッ!」


ろうそく職人 「あ、あれです!」

ろうそく職人 「私が見た首の無い馬!」



395 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/22(土) 05:39:33.78 ID:yd0R/n0X0


王子 「月のように輝く、首の無い白馬」

王子 「! まずい、見とれている場合じゃ……」


首無し馬 「…………!」


ゴオオ


ろうそく職人 「わああっ、首から青白い炎を吹き上げた」

ろうそく職人 「まさか地獄の炎つかいが、私のほかにいたなんて!」


首無し馬 「フィイイイイッ!」


ダララッ ドララッ


王子 「向かってくるか」

王子 「あれを先に倒さなきゃならないようだ!」

王子 「こい、モンスタ……」


ハーピィ 「…………!」


ドムンッ


王子 「ほげぉっ!?」


ろうそく職人 「ハーピィさまが王子さまのお腹に渾身の頭突き!」



396 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/22(土) 05:53:04.80 ID:yd0R/n0X0



王子 「は、ハーピィ、どうして……」


ろうそく職人 「…………。……!」

ろうそく職人 「まさかハーピィさま、じつは何らかの呪いをかけられた魔お……」


ハーピィ 「…………!!」

ハーピィ 「!! !! !!」


ろうそく職人 「あ、すごく痛そう。頭をおさえて悶絶してる」


ダダダ


首無し馬 「ヒュロロロロロ!」


王子 「ゲホッ……まずい、みんな逃げ……」


ダンッ


首無し馬 「ヒュオオオー……!」


ろうそく職人 「首無し馬が跳んだ!」


パカラッ


首無し馬 「…………」


牙の獣たち 「…………!」


ろうそく職人 「わ、私たちと牙の獣たちをさえぎるように着地した……」


王子 「ゲホッ、ゲホッ……」


ハーピィ 「…………ッ」


王子 「う、うん、おれは大丈夫だから……ハーピィ、はやく安全なところへ……」


397 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/22(土) 06:06:49.06 ID:yd0R/n0X0


首無し馬 「…………」


王子 「青い炎が馬頭の形になった」


ろうそく職人 「四つのひづめが地獄の炎をまとっている……」


王子 「頭がおれたちではなくモンスターの方を向いているのは」

王子 「どういうことだろうか」


首無し馬 「…………」


牙の獣F 「グルルル」

牙の獣F 「ガオオオ……!」


首無し馬 「フィイイン!」


ボガッ


牙の獣F 「ホゲォッ!?」


ろうそく職人 「ああっ、首無し馬が襲い掛かってきたモンスターを蹴り上げた!」


王子 「腹か……」


398 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/22(土) 06:16:32.39 ID:yd0R/n0X0


ゴオオオ


牙の獣F 「ギイイイ!」


ろうそく職人 「地獄の炎がモンスターをつつんだ……」


シュウウ ドサッ


牙の獣F 「…………」


王子 「じご……青い炎が消えてモンスターが倒れた」

王子 「灰にはならなかったか……」


首無し馬 「フルルッ!」


ドガッ バゴッ


牙の獣H 「ウオンッ」


牙の獣I 「ギャンッ」


ろうそく職人 「地獄の炎をまといし首無し馬が、モンスターたちを蹴散らしていく……」


牙の獣F 「…………」


王子 「変だな。モンスターが復活しない」


ハーピィ 「…………」


399 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/22(土) 06:40:16.04 ID:yd0R/n0X0


首無し馬 「……フィンッ」


牙の獣たち 「…………」


ろうそく職人 「全部、倒しちゃいましたね」


王子 「ああ。圧倒的だった」

王子 「やはりモンスターは復活してこないな」


ハーピィ 「…………」


王子 「ハーピィ、あの馬が敵ではないと教えるために」

王子 「おれを止めたのかい」

王子 (馬の蹴りにも匹敵する頭突きで……)


ハーピィ 「…………」


王子 「いや、そんなに落ち込まなくても」


400 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/22(土) 06:42:34.84 ID:dv6vDukq0
馬の蹴りは死人が出るレベルですよ王子
401 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/22(土) 06:49:58.01 ID:yd0R/n0X0


馬車馬A 「ブルル」


馬車馬B 「バヒン」


ろうそく職人 「馬たちがいつものように穏やかになっている」

ろうそく職人 「首無し馬を見ても落ち着いていますね」


王子 「敵ではないと分かっているんだろうか」

王子 「馬と仲の良いハーピィは、それを感じたのかな」


ハーピィ 「…………」


ろうそく職人 「……なぜ、敵は復活しないのでしょう」


王子 「さあ」

王子 「首無し馬と関係があるような気がするけど……」


ザッ ザッ


??? 「勘がよろしいですね。その通りです」


402 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/22(土) 07:02:20.72 ID:yd0R/n0X0


??? 「あなたがたが戦っていたモンスターは、さながら獣の皮を被った死霊」

??? 「特別な武器なく、人の身で完全に倒すことはかないません」

星魔法使い 「デュラハンの馬の炎は、死霊を冥府の棺に戻すのです」


王子 (誰だ……)


ろうそく職人 「ほほう。地獄の炎というわけですね」


星魔法使い 「おお、面白い表現です」


ザッ ザッ


星魔法使い 「……これはなかなか良い魔法の馬車だ」

星魔法使い 「ははあ、結界にほころびがありますね」



403 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/22(土) 07:07:46.31 ID:yd0R/n0X0


王子 「分かるのかい」


星魔法使い 「ふむふむ……」

星魔法使い 「ええ。結界は専門ではありませんが」

星魔法使い 「……うん、大丈夫! 小紋章がいくつか壊れているだけだ」

星魔法使い 「このくらいなら、うちで修理できるでしょう」


ろうそく職人 「うち?」


ハーピィ 「…………」


カチャカチャ


馬車馬たち 「ヒヒン」



404 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/22(土) 07:24:57.57 ID:yd0R/n0X0


タッタッタッ


貝殻の勇者 「みなさん!」


幼葉エルフ 「…………」


ろうそく職人 「勇者さま、師匠!」


王子 「無事だったか」


幼葉エルフ 「まあね」

幼葉エルフ 「残念ながら泉の奥へ逃げられてしまったが」


王子 「そうか。無事でよかった」


幼葉エルフ 「ふん。敵さんもなかなか頑張ってね」


貝殻の勇者 「ほかのモンスターも集まってきまして」

貝殻の勇者 「あの魔法使いどのの加勢がなければ危なかったかもしれません」


王子 「へえ」

王子 「そんなにすごい使い手なのか」


405 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/22(土) 15:07:19.15 ID:yd0R/n0X0


星魔法使い 「恐るべき生命力ですねあの巨大な蛇は」

星魔法使い 「私の攻撃魔法では、貝殻どのの槍でついた傷を通さなければダメージをあたえられなかった」

星魔法使い 「この森に住んで長くなりますが、あんなものは見たことがない」


王子 (かなり若く見えるが、年上なのかな)

王子 「この森に住んでいるので?」


星魔法使い 「ええ。魔法の研究をするにはもってこいの場所でして」

星魔法使い 「静かだし、材料にも困らない」

星魔法使い 「ちょっと行けば町があるから」


ろうそく職人 「こんな森に住むなんて、度胸がありますね……」


星魔法使い 「とんでもない。慣れたらなかなか良いところですよ」



406 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/22(土) 15:20:20.60 ID:yd0R/n0X0


ハーピィ 「…………」


首無し馬 「…………」


ハーピィ 「…………」


首無し馬 「………フルルン」


王子 「……首無し馬がハーピィに首をすりよせた」


幼葉エルフ 「さすが魔性の女だ。あっという間に手なずけちまった」


星魔法使い 「ほかの生物に頭をたれることのないデュラハンの馬に気に入られるとは」

星魔法使い 「私に馴れるまで苦労したというのに。すごい女性です」

星魔法使い 「その馬がいればモンスターもそうそう襲ってはこないはず」

星魔法使い 「さあ、馬車を砦まで運びましょう」

星魔法使い 「私が案内いたします」


407 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2014/03/23(日) 08:29:00.83 ID:qKuuLvPs0
>>325
>>327

ミンナニハ ナイショ ダヨ

http://i.imgur.com/ZAcmq33.jpg
408 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/23(日) 09:03:21.85 ID:qKuuLvPs0


…………


カラカラカラ


幼葉エルフ 「……へえ、魔法使いの聖地で星の称号を」


星魔法使い 「ええ」

星魔法使い 「といっても一番下の五芒星ですが……」


幼派エルフ 「星がとれるだけでもすごいのだろ」

幼葉エルフ 「失礼だが、得意な分野は?」


星魔法使い 「いやあ、広くかじっただけなのですが」

星魔法使い 「魂派の錬金術でしょうか……」



409 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/23(日) 09:21:16.04 ID:qKuuLvPs0


幼葉エルフ 「珍しい」

幼葉エルフ 「錬金術師のだいたいが石派か五属性派だと聞くが」


星魔法使い 「ははは……。私は錬金術師ではないので」

星魔法使い 「それに、はやりのものにはどうも抵抗が……」


幼葉エルフ 「けけけ。おっとりした顔をして、なかなかひねくれているじゃないか」

幼葉エルフ 「魔法使いらしいな」


星魔法使い 「よくとぼけた奴だと言われます。そんなつもりは無いのに……」


カラカラカラ


王子 (葉巻、何だか楽しそうだ)

王子 (魔法のことについて語り合える者ができてうれしいのだろう)


410 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/23(日) 09:30:09.05 ID:qKuuLvPs0


ろうそく職人 「…………」

ろうそく職人 「王子さま」


王子 「……何かね、客室のろうそく職人」


ろうそく職人 「うしろ姿が何だか寂しいですよ」


王子 「うん?」


ろうそく職人 「いつもは師匠の話し相手は王子さまなのに」

ろうそく職人 「いまは師匠と同じ魔法使いで」

ろうそく職人 「しかも師匠たちのピンチに颯爽と現れたという男の人」

ろうそく職人 「……突然の三角関係に、戸惑ってらっしゃるのでは?」


王子 「…………?」


411 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/23(日) 09:47:46.52 ID:qKuuLvPs0


ろうそく職人 「くぴゅふふふふふ」

ろうそく職人 「いやあ、そういうの分かっちゃうんですよね」

ろうそく職人 「王子さまが町でどれほど経験をつんだかは知りませんけど」

ろうそく職人 「私、お城に本屋さんが来たときは必ず恋愛物語をたくさん買っておりましたから」

ろうそく職人 「じつはもう……」

ろうそく職人 「恋愛の達人、なんですよね」


王子 (盗み食いの件で薄々感じてはいたが……)

王子 (城にいたときからこの子は真面目でおとなしい顔をして)

王子 (そのじつ、腐敗の道を歩いていたのかもしれない)


ろうそく職人 「さあ、悩める王子さま」

ろうそく職人 「私に相談なさるが良いですよ」


王子 (誇らしいのがまた泣けてくる……)



412 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/23(日) 09:59:25.86 ID:qKuuLvPs0


王子 「……客室の勇者どの」


貝殻の勇者 「何でしょうか、御者台の王子どの」


モグモグ


王子 「可愛い従者と恋愛話に花を咲かせてみてはいかがだろうか」


貝殻の勇者 「そうしたいところですが……」

貝殻の勇者 「私は幼いころより魔王を殺すことを夢想しながら生きてきたので」

貝殻の勇者 「実はそういうものがよく分からないのです」


パクパク ズズズ


王子 (幼いころから食べるのに忙しかったわけじゃないのか……)


413 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/23(日) 21:26:54.71 ID:qKuuLvPs0


貝殻の勇者 「不思議なものですね」

貝殻の勇者 「魔王を殺す勇者の物語に憧れる」

貝殻の勇者 「人間が人間にとっての魔王になるなど夢にも思っていなかった私が」

貝殻の勇者 「腐敗する帝国と苦しむ人々を憂いて立ち上がったなんて」


パクパク モキュモキュ


王子 「……それに加えて、魔王軍も現れた」


貝殻の勇者 「その方がどんなにか気が楽でしょう」

貝殻の勇者 「少なくとも、人間に刃を向けられることはないのだから」


フカフカフカ


ろうそく職人 「あははは」

ろうそく職人 「その尻尾は、握られると笑ってしまう尻尾です」

ろうそく職人 「お茶を飲めない!」


貝殻の勇者 「ろうそく職人さんの尻尾、今日も良い手触りです」


モグモグ ムシャムシャ


王子 (……まあ、これで良いのかもな)


ハーピィ 「…………」




414 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/23(日) 22:10:51.68 ID:sK07JyuP0


モザイクでか!
触手さんとこのスレは
相性がよさそうだ
415 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/24(月) 02:08:28.55 ID:v8hRH4H+0



王子 (葉巻は打ち解けているようだけれど、あの魔法使いは信用して良いのだろうか)

王子 (こんな森で暮らしているなんて、一筋縄ではいかない人物なのだろうが……)


ゴロゴロゴロ


貝殻の勇者 「まあ、ろうそく職人さん。猫のようにのどを鳴らせるようになったのですね」

貝殻の勇者 「尻尾のこのあたりを握れば良いのでしょうか」


ろうそく職人「い、いえ……。急に黒い雲が出てきまして」


王子 「……一雨きそうだ」


星魔法使い 「ああ……この森の天気は気まぐれですから」



416 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/24(月) 02:13:57.51 ID:v8hRH4H+0


王子 「大丈夫かい。こちらは馬車に乗っているから良いとして」

王子 「あなたと馬は濡れてしまう」


星魔法使い 「馬はこのくらい平気ですが、そうですね」

星魔法使い 「すいません、少しお待ちを」

星魔法使い 「雨具を装備いたします」


ガサッ バササ


星魔法使い 「……よし、お待たせしました」


幼派エルフ 「……そのレインコートは」


王子 「全面にきれいな女性の絵が描かれている……」


星魔法使い 「おお、あなたもこの美しさが分かりますか」

星魔法使い 「死に別れた妻の肖像です」


王子 「……ふむ」

王子 (悪い人ではなさそうだ)



417 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/24(月) 02:31:45.17 ID:v8hRH4H+0


ろうそく職人 「なくした奥様の面影を今も胸に……」


王子 「雨具に描くほど愛しているのだなあ」


星魔法使い 「ええ」

星魔法使い 「妻をなくしたということも、遁世の理由でありまして」


貝殻の勇者 「私たちとそれほど歳は離れていないように見えますが」

貝殻の勇者 「苦労なさっているのですね」


星魔法使い 「とんでもない。心が弱いだけです」


スウ


ろうそく職人 「あ、奥様の肖像が消えて、別の肖像が浮かんできました」

ろうそく職人 「また奥様だ!」


貝殻の勇者 「衣装とポーズが違いますね」


星魔法使い 「魔法で変わるようにしたのです」

星魔法使い 「これで、いろんな表情の妻と一緒にいられます」


418 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/24(月) 02:39:43.33 ID:v8hRH4H+0

名前表記

幼派エルフ となっておりますが、正しくは
幼葉エルフ です

ごめんなさい

419 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/24(月) 02:48:51.15 ID:v8hRH4H+0


星魔法使い 「これが夏仕様の妻」


パッ


ろうそく職人 「あ、水着だ」


星魔法使い 「これが料理を失敗して慌てるエプロン姿の妻」


パッ


王子 「む……」


幼葉エルフ 「ハーピィ、見るな」


ハーピィ 「…………」


星魔法使い 「すみません、間違えて夜用の妻を出してしまった」


王子 (……悪い人ではないようだ)

王子 (ようだが……)


ろうそく職人 「なんでしょう、愛の強さに感動しながらも」

ろうそく職人 「おさえることのできないこの残念な気持ちは」


幼葉エルフ 「残念の筆頭が何を言う」



カラカラカラ



420 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/24(月) 03:00:35.71 ID:v8hRH4H+0


幼葉エルフ 「見事な魔法だ」

幼葉エルフ 「やりかたが分かればオレも使ってみたい」


王子 「お前が人の魔法をうらやむところは初めて見る気がするな」

王子 「それほどすごい魔法なのか」


幼葉エルフ 「物騒なものより、こういう遊び心のある魔法の方が好きなんだよオレは」


星魔法使い 「ええ。魔法を戦争や生活の道具のように考える人々もいますが」

星魔法使い 「私は、何の役にも立たない面白い魔法が好きです」


王子 「ふうむ。分かる気がするなあ」


ハーピィ 「…………」


星魔法使い 「ふふふ。あなたとはウマがあいそうだ」

星魔法使い 「……そろそろ到着します。準備しておいてください」



カラカラカラ



421 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/24(月) 03:18:48.58 ID:kak23Cw10
意外と俗っぽいね星魔法使い

422 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/26(水) 19:14:00.51 ID:s/rRbWIlo
まだ一日しかあいてないのか
ずいぶん待ち遠しく感じてたんだけど
423 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/27(木) 07:16:28.99 ID:pK6XLoTv0
まだなのかなあ
424 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/28(金) 16:53:09.77 ID:i/9hTZF1O
せっかく忘れかけた何かを思い出しちゃいそうだよ!
美…美…タコ…?うっ頭が
425 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/28(金) 23:41:10.94 ID:/GNhQrL00
ろうそく職人の変化の過程イラスト見たいな
426 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/29(土) 19:53:54.76 ID:9u8NTSau0
ようかんエルフの変化でもええで
427 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/30(日) 04:30:55.72 ID:6S7iM8QBo
まだなのん
428 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/30(日) 09:24:22.25 ID:5CNy+z3to
いま別スレで書いてるで
429 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/30(日) 11:01:20.00 ID:Y/IZATgz0
あの美しい触手を誤爆したやつか
430 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2014/03/30(日) 20:45:07.02 ID:SUU1uJveo

もっとも輝いていたと思われる頃の
黒花エルフ(葉巻エルフ)の想像図

http://i.imgur.com/Cx4QCAx.jpg

431 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/30(日) 21:37:45.40 ID:4bJ3VlmD0
ドラム缶じゃないだと!?
432 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/30(日) 23:36:34.72 ID:8jP9GbWE0
ドラム缶じゃないって
どーなっているんですかねぇ
(疑問)

いかん毒されてるw
433 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/31(月) 21:43:16.12 ID:dNMZaCZvo


人殺しの森 砦の館



ピシャッ ゴロゴロゴロ


ろうそく職人 「うわあ、館についた途端に大雨」

ろうそく職人 「階段をのぼった先にある、大きなステンドグラスが滝のよう」


貝殻の勇者 「一足遅かったら大変でしたね」

貝殻の勇者 「……なんと広いエントランスホール」

貝殻の勇者 「この森にこんな立派な建物があるとは驚きです」


王子 「まさか、あなたが建てたのかい」


星魔法使い 「いえ。内側には少し手をくわえていますが」

星魔法使い 「私たちが森に来たときには、すでにこの館はありました」


王子 「うーん、いったいなぜこんなところに建っているんだろうか」


星魔法使い 「魔法の工房らしきものがあったので」

星魔法使い 「大昔に、誰かがこの館で秘密の魔法研究をしていたのかもしれません」


434 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/31(月) 21:58:02.64 ID:dNMZaCZvo


ハーピィ 「…………」


スゥ パッ


幼葉エルフ 「………ふむ、肖像が変わった」

幼葉エルフ 「誰かが着ると効果が出るんだな、この魔法の雨具は」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「ふふふ、待っていろよハーピィ。この魔法を読み解き習得し」

幼葉エルフ 「王子の肖像が出てくる服をつくって」

幼葉エルフ 「お前を狂喜の渦に叩き込んでやろう」


ハーピィ 「…………」


王子 「……良いのかい。今まさに魔法が盗まれているけど」


星魔法使い 「大丈夫です」

星魔法使い 「あの魔法を使うと、右下に小さく私の名前が出るようになっております」


王子 「……魔法ってすごいんだな」


435 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/31(月) 22:14:14.03 ID:dNMZaCZvo


星魔法使い 「では、私は馬車の修理にうつります」

星魔法使い 「荷物をお運びできず申し訳ありませんが、二階東側の客室を好きに使ってください」


ろうそく職人 「うひゃー、どこにしましょう」


貝殻の勇者 「うふふ。ふかふかの尻尾がピンとたっていますよ、ろうそく職人さん」

貝殻の勇者 「こんなに広いと、部屋を見て回るのもちょっとした冒険ですね」


星魔法使い 「二階に限らず他の部屋も自由に見ていただいてかまいませんが」

星魔法使い 「西側にある研究室には立ち入らないようにお願いします」

星魔法使い 「危険なものもありますので」


436 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/31(月) 22:42:12.40 ID:dNMZaCZvo


星魔法使い 「それから、みなさんにこれを」


ろうそく職人 「……首輪」


星魔法使い 「腕輪です」

星魔法使い 「付与魔法をほどこしています」

星魔法使い 「夕飯ができたらその腕輪が声でお伝えします」


王子 「付与魔法か。便利だなあ」


幼葉エルフ 「オレは馬車の修理を手伝おう」

幼葉エルフ 「……もしかしたら、人よけのしょうもない罠がしかけられているかもしれないしな」


星魔法使い 「助かります」


437 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/03/31(月) 23:04:50.53 ID:dNMZaCZvo


貝殻の勇者 「それでは、いかにも裏がありそうな妖しい館の探索としゃれ込みましょう」


ろうそく職人 「折りしもの雷と大雨……血と波乱の予感ただよう館に勇者たちが挑む!」


王子 (ひどい言い草だ)


ろうそく職人 「貝殻の勇者軍、ばんごーう!」


貝殻の勇者 「いち!」


ろうそく職人 「にー!」


王子 「…………」


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「…………」


バサッ


ハーピィ 「…………」


王子 「………よん」


ろうそく職人 「では探索開始です」

ろうそく職人 「解散!」


ダダダダダ


王子 (何だかなあ)


438 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/01(火) 03:11:15.35 ID:g4bY1oH0o


砦の館 廊下



ザアアア

ボボオッ バシャア


王子 「大雨が窓ガラスを思い切り叩いている」

王子 「風も出てきたのか」


ハーピィ 「…………」


王子 「廊下の明かり……」

王子 「これって、魔法の火だよな」

王子 「うちの城のものとはずいぶん違う」


439 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/01(火) 03:31:19.19 ID:g4bY1oH0o


王子 「ひろい館だなあ。迷子になってしまいそうだ」

王子 「人が住んでいなければ、モンスターでも出てきそうな……」

王子 「と」


封印玉


王子 「何だろう、これは」

王子 「廊下の真ん中によく磨かれた丸い石が浮かんでいる」

王子 「内側で光がゆっくりと明滅しているな」


ハーピィ 「…………」


王子 「うん? 何を見ているんだい、ハーピィ」


ハーピィ 「…………」


王子 「おお、この館の地図だ」

王子 「どれどれ……」


ハーピィ 「…………」


王子 「……何てこった。ここは館の西側だった」


440 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/01(火) 03:44:51.95 ID:g4bY1oH0o


表札 『妻コレクション(裸鎧編)』


王子 「……ふむ。やっぱり」

王子 「表札にわけの分からないことが書いてあるから」

王子 「きっとこの扉の向こうは魔法の研究室の一つだな」


ハーピィ 「…………」


王子 「とすると、この石は大事な研究室のある区域に」

王子 「人を入らせないようにするためのものだろうか」


封印石


王子 「葉巻なら何か分かるかもしれないが」

王子 「……むやみに触るわけにもいかない」

王子 「他のところを探すとしよう」


ハーピィ 「…………」


441 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/04/01(火) 04:05:58.27 ID:5AklPn6S0
フラグがたったと思ったら

これでろうそく職人がきたら成立じゃないですか!
442 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/01(火) 07:16:43.61 ID:g4bY1oH0o


小さな書庫



ハーピィ 「…………」


王子 「お、本がたくさんある」

王子 「やったなハーピィ」


ハーピィ 「…………」


王子 「ここで時間を潰すか」

王子 「星魔法使いどのの言葉に甘えて、好きに本を読ませてもらおう」


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「…………」


王子 「おれはこの部屋から出ないから、安心して読書に没頭して良いよ」


ハーピィ 「…………」


トタタタタ


王子 「は、速い……」

王子 「本当に本が好きなんだなあ」


443 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/01(火) 07:55:01.00 ID:g4bY1oH0o


…………


ペラ サシャ


王子 「……ゴーレムドライバー。ゴーレムの本か」

王子 「簡単につくれる土のゴーレム、液体金属のゴーレム、魂のあるフレッシュゴーレム。いろいろあるな」

王子 「む、これは」

王子 「謎の多い、エルフのつくるフレッシュゴーレム」

王子 「ほう……」

王子 「……自我を持ち、天然の生き物に最も近く、天然の生き物よりも美しく強力であると言われるエルフのフレッシュゴーレム」

王子 「目撃例はほとんど創作であり、製造方法は謎につつまれているが、特徴はその仮面である」

王子 「一説によるとエルフたちは、仮面に自身の体液を含ませることでゴーレムを意のままに操ると……」

王子 「…………」

王子 「クンクン」

王子 「…………」

王子 「……甘酸っぱい」


444 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/01(火) 08:56:57.85 ID:g4bY1oH0o


王子 「まあ、ゴーレムなんて作る気ないしな」


パタム ゴト ギュッ ギュッ


王子 「さて、皇帝の目の手がかりになりそうな本は……」

王子 「……南の勇者と北の魔王……東の英雄と西の英雄」

王子 「竜の火山の矛盾について、夜のポジション365、くらやみ谷の神性について、亡霊と魔力都市の関係」

王子 「……うーむ、さすが魔法使いの書庫。難しそうだがなかなか夢があるな」



トコトコトコ


ハーピィ 「…………」


445 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/01(火) 09:06:13.90 ID:g4bY1oH0o


ハーピィ 「…………」


王子 「どうしたんだい、ハーピィ」

王子 「やるせない顔をして」


ハーピィ 「…………」


スッ


王子 「何だい、それ。美しい女性の肖像画が書かれた二つ折りの……」


???の本 『赤い花の似合う高貴なるエルフの長老の一人。×××歳。趣味、馬の首をはねる』


王子 「これは……」

王子 「お見合い用……なのか?」


ハーピィ 「…………」


王子 「たしかにこれは、やるせない」


446 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/04/01(火) 09:53:46.62 ID:e+r6dfLJo
可愛いなあハーピィ
447 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/04/01(火) 11:46:27.58 ID:FoYugrO50
???の本は葉巻さんに絶対に見せるんじゃないぞ!
448 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/04/02(水) 15:17:31.11 ID:Z8K6slMH0
>夜のポジション365
こっそりと挟まれている・・・
449 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/05(土) 08:45:11.50 ID:uE7mXARi0
まだかいね
450 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/06(日) 08:46:55.94 ID:qX9G7Fg50
まあ焦るな
451 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/06(日) 15:59:23.28 ID:ITF5MeKFo


ハーピィ 「…………」


王子 「この高貴な淑女かついたずらっぽいしたり顔。何度見ても赤花の長老どのじゃないか」

王子 「エルフ至上主義らしい様子たったが、ここにこんなものがあるあたり違ったのだろうか」

王子 「……うーん、やはり女性は度し難い」


ハーピィ 「…………」


王子 「女性にでもなってみない限り、おれには女性の気持ちが分かる日は来ないのだろうな」

王子 「こんなんだから実の妹からも軽く扱われて……」


??? 「ホミー、ご飯よ」


王子 「!」


452 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/06(日) 16:12:38.58 ID:ITF5MeKFo


??? 「ホミー、ご飯よ。食堂に来て」


王子 「女性の声……この腕輪から聞こえているのか」


??? 「ホミー、ご飯よ。ホミー……」


王子 「そういえば声でしらせると言っていたな」

王子 「ホミーって誰だよ。この女性の人もいったい……」


ハーピィ 「…………」


??? 「ホミー、食堂にきて。ご飯がさめちゃうわ」


王子 「とりあえず、食堂に向かうか」


453 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/06(日) 16:27:00.32 ID:ITF5MeKFo


砦の館 廊下



??? 「ホミー、ご飯よ。ホミー」


王子 「ん」


ろうそく職人 「あややっ」


ハーピィ 「…………」


??? 「食堂に来て、ホミー。ご飯よ」


ろうそく職人 「王子さまも呼ばれたんですね」

ろうそく職人 「腕輪の謎の声に」


??? 「ホミー、ご飯よー」


王子 「ああ。そっちも腕輪から同じ声が出ているな」

王子 「……勇者どのとは一緒じゃないのかい?」


ろうそく職人 「はい。手分けして探索していました」

ろうそく職人 「見てください」

ろうそく職人 「壁にかけられた絵の裏にあった魔力を上げるお札と」

ろうそく職人 「そしてあやしいツボの中にあった、食べると運が良くなる魔法のチョコレートです!」


王子 「人の家で何てことを……」


454 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/06(日) 16:36:13.40 ID:ITF5MeKFo


ろうそく職人 「そういう王子さまも、何か持ってきているじゃありませんか」


王子 「あ、しまった」

王子 (赤花エルフのお見合い絵を持ってきてしまった)


ろうそく職人 「……何ですか、それ」


王子 「いや、これは……」

王子 (むやみに見せるのは良くないだろうな)


ろうそく職人 「……王子さま」

ろうそく職人 「美少女にかこまれて生殺しされている苦労も分かりますけど」

ろうそく職人 「そういうの……ばれたらこの先ちょっとギクシャクすると思いますよ」


王子 「これ、お見合い用の絵だよ」


ハーピィ 「…………」


455 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/06(日) 16:42:02.63 ID:ITF5MeKFo


ろうそく職人 「お、お見合い用ですか」

ろうそく職人 「じつは私はお見合い結婚が夢なのです」

ろうそく職人 「ちょっと見てみたいです。見せてもらえませんか」


王子 「……良いよ」


ろうそく職人 「どうも」


パラ


ろうそく職人 「…………」

ろうそく職人 「……むほっ」

ろうそく職人 「…………」


パタン


ろうそく職人 「……王子さま」


王子 「何かな」


ろうそく職人 「この絵、私にくれませんか」

ろうそく職人 「お札あげます」


王子 「……まあ、良いか」


ハーピィ 「…………」


456 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/06(日) 16:46:53.58 ID:ITF5MeKFo



??? 「ホミー、ご飯よー。ホミー」


王子 「…………」


ハーピィ 「…………」


ザザアアア ボボウ

ピカッ バシャーン
 

??? 「ホミー、ご飯よー。ホミー」

??? 「ホミー、食堂に来て。ご飯よー」


ろうそく職人 「……いつになったら止まるんでしょうか、この声」


王子 「……さあ」


ハーピィ 「…………」


??? 「ホミー、ご飯よー」


457 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/06(日) 17:28:16.12 ID:ITF5MeKFo


食堂



ハーピィ 「…………」


王子 「おお、出来てる出来てる」


ろうそく職人 「うひゃあ、お肉にスープに色とりどりの野菜……豪華ですねー」

ろうそく職人 「広い机にところ狭しと置かれています」


星魔法使い 「料理の魔法を少し間違えて、多くつくりすぎたようです


幼葉エルフ 「料理の魔法か。よくここまで精確にできるものだな」


ポリポリ ポリポリ


貝殻の勇者 「黒花どのが食べている、グラスに入ったこれは……」


星魔法使い 「ひまわりの種です」


458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/06(日) 17:33:51.71 ID:HMrGOb7xO
ひまわりの種って下剤じゃなかったっけ…と思って調べたら、大量摂取しなければ大丈夫だったぜ…
459 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/06(日) 17:39:19.48 ID:ITF5MeKFo


貝殻の勇者 「ほう」

貝殻の勇者 「ふむ……美味しいですね」


ポリポリ ポリポリ


??? 「ホミー、ご飯よー。ホミー」


王子 「ところでこれ、いつになったら止まるんだい」


星魔法使い 「声にこたえると良いのです」

星魔法使い 「こんなふうに……」


??? 「ホミー、ご飯よー。ホミー」


星魔法使い 「分かった。すぐ行くよ、スイートハニー」


??? 「…………」


王子 「止まった……」


ろうそく職人 「スイートハニー……」


460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/06(日) 20:09:26.30 ID:fQ19MPPY0
星魔法使いww
てかろうそく職人がやらかすだろ(棒
461 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/06(日) 21:05:02.05 ID:ITF5MeKFo


星魔法使い 「私は妻をそう呼んでいました」


王子 「そうなのか」


ろうそく職人 「じゃあ、ホミーというのは」


星魔法使い 「私のことです。星魔法使いで、ホミー」

星魔法使い 「同じ学院にいたころ、妻が考えてくれました」


貝殻の勇者 「お茶目なおかただったのですね」


星魔法使い 「ええ」

星魔法使い 「……ひまわりの種が、大好物でした」


幼葉エルフ 「ふむ。ひまわりの種は食べると魔力回復や強化の効果を得られるからな」


王子 「本当かよ」


ろうそく職人 「……むふーっ」


ポリポリポリポリ ポリポリポリポリ


ろうそく職人 「どうでしょうか。あたま良さそうに見えますかね」


貝殻の勇者 「え、ええ……」


ポリポリポリポリ ポリポリポリポリ


王子 (小動物が餌を食べているようにしか見えない……)

王子 「……お、塩がきいてて美味い」


ポリポリ ポリポリ


星魔法使い 「みなさま、そろそろ料理の方もいただきませんか」


ハーピィ 「…………」


462 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/06(日) 21:30:22.33 ID:ITF5MeKFo


カチャカチャ 


ろうそく職人 「……お、おーいしーい!」


幼葉エルフ 「こら、食事中に大声を出すんじゃない。恥ずかしい奴だな」

幼葉エルフ 「お前も魔法使いのはしくれとして、こういう場では品のある行いを心がけろよな」

幼葉エルフ 「見ろよハーピィを」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「静かなもんだろ」


ろうそく職人 「ハーピィさまはもとから静かですよ」


463 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/06(日) 21:45:40.08 ID:ITF5MeKFo


幼葉エルフ 「そういうのはどうでも良いんだ」

幼葉エルフ 「いま大事なのは、ハーピィが静かだということだ」


ろうそく職人 「はーい……」

ろうそく職人 「……師匠って、ハーピィさまには甘いですよね」


幼葉エルフ 「そんなことあるもんか」


ろうそく職人 「……もしかして、師匠」


王子 (そうか、葉巻)

王子 (世話をやいたりするのは仲間だからというだけでなく、ハーピィのことを……)


ろうそく職人 「大好きな王子さまの付き人だから」

ろうそく職人 「優しくして点数を稼いでいるのではないですか。むふふふ」


幼葉エルフ 「…………」


王子 (何を言っているんだこの子は)


464 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/06(日) 22:00:59.56 ID:ITF5MeKFo


幼葉エルフ 「…………」


ペタ


ろうそく職人 「あぢゃっ!?」

ろうそく職人 「熱づづづづっ……熱いですよ師匠」

ろうそく職人 「スープで熱くなったスプーンでグリグリしちゃ熱いですよう!」


幼葉エルフ 「……よしんば王子に対してそのような感情を抱いているとして」

幼葉エルフ 「オレは恋人のペットでも踏み潰して晩飯にまぜちゃう無情のエルフなのだ」

幼葉エルフ 「痛みとともによくおぼえておけ」


ろうそく職人 「体罰ですよ師匠。横暴ですよ!」


幼葉エルフ 「愛のムチだよ。オレだって愛弟子にこういうことをするのはつらいよ」


ろうそく職人 「う、嘘です。何かうっとりしています……!」


グリグリ ギャアア


貝殻の勇者 「無情な人が恋人なんてつくるのでしょうか」


王子 「世の中、いろんな人がいるからね」


465 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/06(日) 22:13:40.03 ID:ITF5MeKFo


星魔法使い 「あははは。賑やかな食事はひさしぶりです」

星魔法使い 「どうぞ、行儀など気にせず楽しく食べてください」


王子 「ありがたい」

王子 「それにしても、本当においしい料理ばかりだ」

王子 「初めて食べるものが多いし、知っているものでも味がまったく違う気がする」


星魔法使い 「大陸の西側の味つけです。こちらでは珍しいかもしれませんね」


王子 「なるほど。いや、新鮮だなあ」


星魔法使い 「どれも、妻の好物でした……」


王子 「そ、そうなのか」

王子 (一気に重くなった……)


ハーピィ 「…………」


貝殻の勇者 「おや、ハーピィどの。もう食べないのですか」

貝殻の勇者 「では、私が」


ハーピィ 「…………」


コクン


466 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/06(日) 22:34:16.50 ID:ITF5MeKFo


星魔法使い 「そうですか、帝国はついに大陸の南まで」


貝殻の勇者 「はい。戦火はひろがるばかり……」

貝殻の勇者 「燃やされた人々の無念やうらみが黒い煙となり、大陸は呪いに病む一方です」


星魔法使い 「話はこの島にも届いていましたが、皇帝の暴走はいよいよ止まらぬようですね」


貝殻の勇者 「はい」


星魔法使い 「皇帝……」

星魔法使い 「二人の娘を失ってから、その暴走が始まったといいます」


貝殻の勇者 「娘……」


星魔法使い 「悲しみのあまり発狂した」

星魔法使い 「世界を手に入れるため、娘の命を生贄にして魔王と契約し千里眼を得た」

星魔法使い 「いろいろと噂はありますが、真実を知るのはやはり皇帝でしょう」


467 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/06(日) 22:43:00.02 ID:ITF5MeKFo


貝殻の勇者 「……たとえどのような理由があったとして」

貝殻の勇者 「泣いている民がいるのです」


星魔法使い 「その通りです」

星魔法使い 「悲しみは連鎖するのですね」


カチャカチャ モグモグ


ろうそく職人 「……ときに師匠」


幼葉エルフ 「何だ。行儀悪いこと言ったら、また熱いグリグリするぞ」

幼葉エルフ 「今度は治療してやらないからな」


ろうそく職人 「こんなものを手に入れたのですが」


幼葉エルフ 「……何だこの薄っぺらい本は。まさか魔法使いの研究を勝手に盗んだんじゃないだろうな」


ろうそく職人 「へっへっへ。そんなつまらないものじゃあございませんよ」


468 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/06(日) 23:01:28.25 ID:ITF5MeKFo


ろうそく職人 「ささ、どうぞお納めください」


幼葉エルフ 「はんっ。この世につまらなくないものなんてあるものかよ」

幼葉エルフ 「こんな本……」


パラ


幼葉エルフ 「…………」

幼葉エルフ 「………ふにゅっ!?」

幼葉エルフ 「…………」


パタン


ろうそく職人 「…………」


幼葉エルフ 「…………」


ろうそく職人 「……フニュ」


幼葉エルフ 「弟子よ。これはどこで手に入れたんだ」


ろうそく職人 「王子さまと持ち物を交換して手に入れました」

ろうそく職人 「この館の小さな書庫にあったそうです」


幼葉エルフ 「そうか」

幼葉エルフ 「ではオレはこれをお前にやろう」


チャラ


ろうそく職人 「耳飾り……」


幼葉エルフ 「エルフ銀と木の実でつくったお守りだ」

幼葉エルフ 「魔力の消費をおさえてくれるだろう」


ろうそく職人 「ははーっ……」


469 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/06(日) 23:33:13.39 ID:ITF5MeKFo


…………


チク タク チク タク


貝殻の勇者 「ふう。デザートまでたいへん美味しゅうございました」


ろうそく職人 「ひんやりと冷たいケーキにかかった爽やかなソースが絶品でしたね」


貝殻の勇者 「そうですね、ええ。また味わいたいものです」

貝殻の勇者 「……つい食べ過ぎてしまいました。あとで少し運動をしなくては」


ザアアア


王子 「馬車はもうなおったのか」


星魔法使い 「ええ」


王子 「あんな短い時間で。すごいもんだ」


幼葉エルフ 「二人がかりでなおしたからな。いつでも出発できるぞ」

幼葉エルフ 「ご親切に、この星どのは新しい機能もつけてくれたよ」


王子 「へえ。付与魔法ってやつかな」


星魔法使い 「察しが良い。その通り、御者台にあるおもしろいコンパスに少し細工をしました」

星魔法使い 「あまり大きな変化は無いかと思いますが」

星魔法使い 「役に立てるはずです」


470 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/06(日) 23:56:31.87 ID:ITF5MeKFo


王子 「へえ、それは楽しみだ」

王子 「ハーピィの助けになると良いな」


ハーピィ 「…………」


星魔法使い 「ははは、期待を裏切らなければ良いですが」

星魔法使い 「……いやあ、面白いアイテムですね、これ」

星魔法使い 「妖精の領域にあったものだそうですが」


幼葉エルフ 「人間を研究している妖精の学者がつくった魔法のテーブルゲームだ」


王子 「いろんなテーブルゲームができるから、旅でも重宝しているよ」


星魔法使い 「ふむふむ、これひとつで。良いですね」


王子 「星魔法使いどのは、こういうものも好きなのかな」


星魔法使い 「ええ、こういう遊び心のあるものが大好きです」

星魔法使い 「このゲームだけでも長く遊べそうですね」


幼葉エルフ 「ああ。色んなマップが用意されている上に」

幼葉エルフ 「五億七千万以上のシナリオも楽しめるようになっているからな」


星魔法使い 「それはそれは……」

星魔法使い 「ゲーム中で自分の分身となる駒人形の職業はもちろん」

星魔法使い 「容姿を自分で改造できる点も大変すばらしい」


王子 「うまいなあ。ずいぶん可愛い人形をつくったもんんだ」


星魔法使い 「妻です」


王子 「ははは、やっぱり」


幼葉エルフ 「自分の分身にまでしちまったか」


ハーピィ 「…………」


471 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 00:09:49.09 ID:91upsnSho


王子 「やはりというか、星魔法使いどのは妖精の領域のことは知っているんだな」


星魔法使い 「ええ。何度か訪ねたこともあります」

星魔法使い 「わけあって、エルフの里に行くときには姿をかえていますが」

星魔法使い 「……まさかあの領域から、あれほどの魔物が出てくるとは」


幼葉エルフ 「オレも驚いているよ。これから、行き来するのは難しくなるだろうな」


星魔法使い 「困りましたね。妖精の領域でしか手に入らない素材もあるのに……」

星魔法使い 「いったい何が起きていrのでしょうか」


幼葉エルフ 「もっか調査中さ。妖精たちはお気楽だから、進展は遅々としたもんだろうが」


王子 「のんきだなあ」


星魔法使い 「世界が滅ぶときも妖精だけは遊ぶのをやめないといいますが」

星魔法使い 「本当のようですね」


幼葉エルフ 「ある意味では命がけだよ」

幼葉エルフ 「ふあ……っ」


472 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 00:19:23.75 ID:91upsnSho


王子 「眠そうだな」


幼葉エルフ 「ああ。夜更かしできなくてね」

幼葉エルフ 「子供だから」


王子 「白々しいやつ」


幼葉エルフ 「けけけ」

幼葉エルフ 「あー……お前の膝は寒いときにはあたたかいなあ」


星魔法使い 「おや、ここで寝ると風邪をひきますよ」


王子 「だそうだ」


幼葉エルフ 「そうだな……」

幼葉エルフ 「部屋でゆっくり寝るとしよう」


ハーピィ 「…………」


473 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 00:31:22.82 ID:91upsnSho


幼葉エルフ 「いや、もう馬車に乗ってしまうのも良いか?」


星魔法使い 「この大雨です」

星魔法使い 「今日は泊まっていってください」


幼葉エルフ 「ふむ。そうだな」

幼葉エルフ 「じゃあやはり部屋に行くとしよう」

幼葉エルフ 「ふああ……」


フラ フラ


王子 「大丈夫か、ユラユラしているぞ」

王子 「一緒にいこうか」


幼葉エルフ 「なに考えてやがるエロ王子」


王子 「お前こそ」


幼葉エルフ 「冗談だよ」

幼葉エルフ 「そこまで世話になるほど落ちぶれちゃいないさ」


王子 「腰もませたり物食わせさせたりしていたじゃないか」


474 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 00:41:14.46 ID:91upsnSho


幼葉エルフ 「諸君、おやすみ」


フラ スタ フラ スタ


王子 「……行っちまった」

王子 「フラフラと暗がりに消えていく子供の背中は、どこか恐ろしいものがあるな」


星魔法使い 「魔力を消費して疲れているのかもしれませんね、彼女」


王子 「でかい魔物と戦ったりもしたからなあ」

王子 (彼女。ふふ……やはり葉巻を女だと思っているな)

王子 (今の姿を見ればそうか。でも話し方で分かりそうなもんだけどな)


ハーピィ 「…………」


475 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 00:53:09.11 ID:91upsnSho


王子 「小さな書庫を見せてもらったんだけど」

王子 「面白そうな本がたくさんあるな。さすが魔法使いの書庫だ」


星魔法使い 「ああ、第四書庫ですね」

星魔法使い 「お気に入りの本を置いています」

星魔法使い 「どの書庫の本でも、緑の棚に置いてあるものは」

星魔法使い 「ご自由に持っていってよろしいですよ」


王子 「そうなのか」

王子 「ハーピィ、あとで見にいってみようか」


ハーピィ 「…………」


コク


王子 「ははは」

王子 「……そわそわしている」

王子 (きょとんとした無表情で)


星魔法使い 「あはは。いってらっしゃい」

星魔法使い 「私もそろそろ、研究に戻るとしましょう」


476 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 01:01:56.34 ID:91upsnSho


小さな書庫



王子 「……さてと、いろいろまわって最後はこの書庫だな」

王子 「おれの分も含めて、けっこうたくさんの本を持っていくことになったなあ」


ハーピィ 「…………」


王子 「大丈夫。まだたくさん持てるから、ハーピィは持たなくて良いよ」

王子 「さあ面白い本を探そう」


ハーピィ 「…………」


王子 「……なあ、ハーピィ」

王子 「あのやるせないお見合いの絵は、どの棚にあったんだい」


ハーピィ 「…………」


スッ


王子 「あそこの棚か」

王子 「……緑色じゃないな」


ハーピィ 「…………」


477 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/07(月) 01:34:21.48 ID:oyJynlbT0
やっぱりやりやがったよろうそく職人…
478 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 01:42:56.61 ID:91upsnSho


…………


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「…………スゥ」


王子 「……ハーピィ、本を選ぶのがよっぽど楽しかったんだな」

王子 「つかれて眠るほどに」

王子 「……本を入れた服を首からかけて人を背負うと、けっこうきついな」


ハーピィ 「…………スゥ」


ギュウ


王子 「ハーピィが寝ているところを長く見るのも久しぶりだ」

王子 「そういえば、こうやってハーピィをおぶって歩いたこともあったなあ」

王子 「あれはいつだったか」

王子 「たしか、あのときはおかしなことがあったはずなんだけど……」

王子 「何だったかな」


479 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 01:59:30.03 ID:91upsnSho


テクテク テクテク


王子 「…………」

王子 「……ん?」


白銀鎧 「…………」


王子 「……見事な全身鎧だ」

王子 「深更に君臨する凛然たる月のようだ」

王子 「さすが魔法使いの館だ」

王子 「廊下の真ん中にこんなものを置いておくなんて」


白銀鎧 「…………」


王子 「ますます歩きにくいじゃないか」


480 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 02:05:41.88 ID:91upsnSho


白銀鎧 「…………」


ガチャ……


王子 「!」

王子 (……動いた)

王子 (中身がいたのか)

王子 「これは失礼した。白銀の騎士どの」


白銀鎧 「…………」

白銀女騎士 「…………」


王子 (この騎士どのもこの森に迷い込んだのだろうか)

王子 (従者は連れていないが、こんなところでも鎧を着込むとは)

王子 (そうとう用心深いのだな)

王子 「……気のせいか」

王子 「前にもこんなことがあったような気がする」


481 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 02:17:58.99 ID:91upsnSho


白銀女騎士 「…………」


シャラ


王子 「!」

王子 (剣を抜いてかまえた……!)

王子 (こんなところで戦う気なのか? まずいぞ)

王子 「すまない、勇猛な騎士どの」

王子 「見ての通り、いまこちらは手がふさがっている。決闘はできない」


白銀女騎士 「…………」


王子 「もしかして島の西側の港町で誰かが話していた」

王子 「南東地方の諸島で行われる武芸大会に出る旅の途中なのだろうか」

王子 「猛りはやる気持ちは分かるが、できればここは剣をおさめ……」


ヒュン ズバッ


王子 「…………」


白銀女騎士 「…………」


王子 「……な」

王子 (一瞬で、腰から反対側の肩まで斬られた……)


482 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 02:29:33.28 ID:91upsnSho


白銀女騎士 「…………」


王子 (まずい。何てこった、心臓を抉るような深い一撃だ)

王子 (これは死んだな。もう意識がもうろうとしてきた)

王子 (こんなところでいきなり死ぬのか、おれは)

王子 「ハー、ピ……起きろっ……」

王子 「逃げ……」


ドサッ バララッ


白銀女騎士 「…………」


王子 「ハーピィ……ハーピィ……!」

王子 (……まさか、こいつが)

王子 (皇帝の……)


白銀女騎士 「…………」


王子 「…………」


…………


483 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 02:42:50.87 ID:91upsnSho


ハーピィ 「…………!」

ハーピィ 「!! ……!」


王子 「…………」


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「…………ッ!」


バシッ


王子 「!」

王子 「…………」


ハーピィ 「…………」


バシ

バシ バシーン バシーン


王子 「…………う」

王子 「うーん」

王子 「……ハーピィ?」


ハーピィ 「!」


王子 「おれはなぜこんなところで寝て……」

王子 「いててて、何か中途半端な力で全身を叩かれたような微妙な痛みが」


ハーピィ 「…………」


484 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 03:00:25.88 ID:91upsnSho


王子 「そうだった」

王子 「たしか桃色髪の姫を救出して一緒に逃げていたら」

王子 「マンボウの鎧を着た銀色のシュタインガルネーレが境界の魔物をひきつれて餅つき大会を……」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「やっぱり違うよなあ。でもちょっといま思い出せないんだよ」

王子 「しかしどうしたんだい、そんなに慌てて……」

王子 「と、床に転がっているこれは」


折れた焦げたろうそく


王子 「いつかのろうそくじゃないか」

王子 「二つに折れている」

王子 「このろうそく、たしか黄金の騎士どのと会った日に……」

王子 「……ああっ、そうだ。おれは白銀の騎士に殺されたんだよ」


485 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 03:13:34.89 ID:91upsnSho


王子 「……すごい霧だ」

王子 「館の中みたいだが、外はいまだに雨が降っているな」


ザアアオ ザアオア


王子 「このありえない事態。まさかここはあの世なのかな」

王子 「ハーピィもここにいるってことは、あの騎士に……」


ザアアオ ザオオア


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「ああ、そうだな。霧がたちこめているが、ここは星魔法使いどのの館だ」

王子 「そうか……このろうそくが盾となって、あの騎士の攻撃からおれを守って」

王子 「くれたわけないだろ。何かすごいアイテムかと思ったら折れるのかよ、これ」


ザオオオ ザアオオ


ハーピィ 「……! ッッ……!」


王子 「まあ良いや。生きていることにかわりはない。どこも斬られていない」

王子 「さて、本を拾って部屋に戻るとしよう」


486 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 03:22:27.36 ID:91upsnSho


ハーピィ 「!! ……!!」


王子 「ど、どうしたんだいハーピィ」

王子 「そんなに取り乱して、何かあったのかい?」


ハーピィ 「…………!」


王子 「向こう側?」

王子 「あっちの霧の向こう側に何かあるのかい?」


ザアア オオオ…… 

オオオオ ザアア


王子 「……うなり声かな」

王子 「霧に乗じてモンスターでも入ったか?」


ヒタ ヒタ ヒタ


王子 「こっちに来る」


ハーピィ 「…………!」


ズル ヒタ

ズル ズル


王子 「!」

王子 「……反対側からも来ている」


487 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 03:38:39.92 ID:91upsnSho


王子 「まずいな。明かりは消えていないとはいえ、霧の立ち込める視界の悪い廊下で挟み撃ちか」

王子 「すばしっこいモンスターなら厄介だぞ」


オオーン……


王子 「……うなり声というより、うめき声みたいだ」


ヒタ ズル ヒタ ヒタ


ハーピィ 「…………」


王子 「音が近くなった。やはりこちらを狙っているな」


??? 「…………」


スッ


王子 「霧にうごく影が出た」

王子 「あれは、人影か……?」


ズル ズル

ズル ズル


王子 「人だとしたら気味が悪い動きだ」

王子 「赤ん坊が壊れた人形を歩かせているような……」


ズル ズル オオオ


488 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 03:44:26.57 ID:91upsnSho


??? 「アオオー……」


ドタ ドタ ドタ ドタ


王子 「速くなった」

王子 「来るか……!」


ドタ ドタドタ


??? 「オオオオオ……」


ドタドタドタドタ


バフッ


王子 (来た!)


ゾンビ 「オオオオオオオー!」


王子 「おおおおおおお!?」


489 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 03:57:04.33 ID:91upsnSho



ゾンビ 「オオオオ!」


王子 「おおおぉおおおお」

王子 「おりゃあ!!」


ブンッ ザシュ


ゾンビ 「ゲフッ」


王子 「うおおおお!」


ザシュ ザシュ ザシュ ザシュ


ゾンビ 「グ……オ……」


王子 「どりゃああああ!」


ズブ ドスッ ザク ザク


ゾンビ 「…………」


王子 「ほおおおおお!」


グッチャ ミチャ ビチュ ニチャッニチャッ


肉 「…………」


王子 「ずおりゃああああ!」

王子 「とにかく死ねえー!!」

王子 「……あ、もう斬るところが無い!」


肉溜まり 「…………」

 
ハーピィ 「…………」


490 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 04:08:07.29 ID:91upsnSho


王子 「謎の肉片を手に入れてしまった……」


ハーピィ 「…………」


王子 「…………」


ツン


謎の肉片 「ビクンッ」


ビクッ ビクッ ビクッ


王子 「うわっ。こいつ、動くぞ……!」


??? 「オオオオ」


王子 「!」

王子 「そうだった。まだいたな」


ドタ ズル ドタ ドタ


王子 「さあ来い。さっきは驚いてしまったが」

王子 「今度はそうはいかな……」


裸美女ゾンビ 「オオオオオ!」


王子 「おおおおお!?」


…………


491 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 04:15:59.49 ID:91upsnSho


ハーピィ 「…………」


王子 「はあ……はあ……」

王子 「いや、驚いた」

王子 「三本足のやつに腰がくっついたやつに頭だけのやつに」

王子 「手をかえ品をかえ、いろんなゾンビが出てくるんだもの」


ハーピィ 「…………」


肉溜まり 「ビクンッ。ビクンッ」


王子 「潰してしまえばみんな肉……か」

王子 「世の無常を感じるものだなあ」


ハーピィ 「…………」


492 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 04:34:21.45 ID:91upsnSho


王子 「異種族が好きなおれだが、さすがにゾンビはなあ」

王子 「でもあの胸の丸い半裸のゾンビは、腐っていたけど健康的に引き締まった体つきで良かったかな」

王子 「扇情的な曲線の丸みが鈍くひかる青い肌というのもなかなか……」


ハーピィ 「…………」


ペチ


王子 「うん、ごめんよハーピィ。こんなことを言っている暇はなかった」

王子 「まだ混乱しているみたいだ」

王子 「いったいなぜこんなことに」

王子 「……まさか魔王軍の領域が人間の領域にも影響を及ぼして」

王子 「この呪われた森をさらに変容させてしまったのだろうか」


オオオオ


王子 「……まだ敵は館の中を徘徊しているようだ」


493 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 04:48:03.26 ID:91upsnSho



王子 「皆は無事なんだろうか」

王子 『……葉巻、聞こえるか』

王子 「…………」

王子 「まあ、返事はないか」

王子 「遠くに……館の外に出て無事なら良いが」


ハーピィ 「…………」


王子 「とにかく、ハーピィの安全を確保しなくては」

王子 「外へ向かおう」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」

ハーピィ 「ハーピィの安全を確保しなくてはと思っていないのに……」


王子 「…………」

王子 「いや、おれはまずハーピィを逃がさなくてはいけないと思っているよ」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「……確かに皆の様子が気になってもいるけど、いまはハーピィが一番だ」

王子 「行こう、ハーピィ」


グイ


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「…………」


王子 「ハーピィ……」

王子 「なぜそんな顔で、動こうとしないんだい」

王子 「それじゃあおれは、あの日無理やり君を連れて行こうとした奴隷市場のハゲ仮面みたいじゃないか」


ハーピィ 「…………」


494 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 05:03:30.08 ID:91upsnSho


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」

ハーピィ 「ハーピィの安全を確保しなくてはと思っていないのに」

ハーピィ 「ハーピィの安全を確保しなくてはと言いました」

ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「…………ああ」

王子 「初めて犬の隊長とやりあったときの、あれか」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「…………」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「……だけど、ハーピィ」


ハーピィ 「…………」


ゴソゴソ スッ


魔法のつる


王子 「それは、言葉をこめた魔法のつるか……」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


パラッ


幼葉エルフの裏声 『王子さま、すきすき。だいすき』


王子 「…………」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


パラッ


幼葉エルフの裏声 『王子さま、すきすき。だいすき』


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


パ……


王子 「わ、わかった。わかったから……」


ラッ


幼葉エルフの裏声 『王子さま、すきすき。だいすき』


495 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 05:20:05.27 ID:91upsnSho


タタタタタ


ハーピィ 「…………」


王子 「たまに無茶なことをやらせるんだものなあ、君は」

王子 「勘弁してほしい」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「うん。それも良いところだ」


ゾンビ 「オオオオ」


王子 「そいっ」


ズバッ

ドサッ


ゾンビ 「…………」


王子 「まずは葉巻の部屋に向かおう」

王子 「ひどく疲れていたようだから、もしかしたら一番危ないかもしれない」

王子 「ハーピィ、おれがなるべく盾にはなるけれど、怪我はしないでくれよ」


ハーピィ 「…………」


コク

タタタタタ


496 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 05:32:28.77 ID:91upsnSho


ゾンビたち 「オオオオ」


王子 「…………!」


スパッ ズバッ ザシュッ スイッチョン


ゾンビたち 「…………」


ドサ


王子 「……その辺に出てくるモンスターよりも弱いな」

王子 「この分だと、あまり心配する必要はないのかな」


バコンッ


ゾンビ 「オオオオ」


王子 (扉を破って出てきた! 何て力だ)

王子 「おおおお!?」


ザシュ


ゾンビ 「…………」


ドサッ


王子 「……でも弱いんだよなあ」


497 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 05:59:12.18 ID:91upsnSho


ザアアア ピカッ

ゴロゴロ


ハーピィ 「…………」


王子 「さて、そろそろ皆の部屋のあたりだ」

王子 「首が転がっているなんてことになっていなきゃ良いけど……」


??? 「ホミー、晩御飯よー」


王子 「!」

王子 (……腕輪の声だ)

王子 (仲間の誰かがいるのかな)


ハーピィ 「…………」


王子 「誰だ。近くにいるのか」

王子 「おれだ、王子だ。無事か」

王子 「…………」


ザアアア

ザアアア


王子 「…………」


??? 「ホミー、晩御飯よー」


王子 「…………」


ヒタ ヒタ ヒタ


??? 「ホミー、晩御飯よー」


??? 「ホミー、晩御飯よー」


??? 「ホミー、晩御飯よー」


??? 「ホミー」

??? 「晩御飯よー」


王子 「…………」


ろうそく職人 「…………」


498 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 06:13:09.60 ID:91upsnSho


王子 「……ろうそく職人」


??? 「ホミー、晩御飯よー」


ろうそく職人 「…………」

ろうそく職人 「おーじざま」


王子 「様子がおかしい」


ハーピィ 「…………」


ろうそく職人 「おーじざま、おーじざま」


ギョロ


王子 (目が左右ばらばらに動いた……)


ギョロギョロギョロ


ろうそく職人 「おーじおーじおーじおーじ」


王子 「どうしたろうそく職人、恐怖で気でも狂ったかい」


ろうそく職人 「おーじおーじおーじおーじおー」

ろうそく職人ゾンビ 「おじょじょじょじょじょじょ」

ろうそく職人ゾンビ 「じょーーーー!」


ドタ ドタ ドタ ドタ


王子 (杖を持って襲い掛かってきた……!)


499 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 06:28:23.80 ID:91upsnSho


ろうそく職人ゾンビ 「けたけたけた」


ギョロギョロ

ブオン


王子 「うわっ、避けろ……!」


スカッ


ろうそく職人ゾンビ 「あばばばば」


ズルッ ドテッ


王子 「ふう、攻撃をすかしてこけたか」

王子 「……つまりそれほど本気の攻撃だったのだな」


ハーピィ 「…………」


??? 「ホミー、晩御飯よー」


ろうそく職人ゾンビ 「ごぼ、ぼげ」


ズ ズル


王子 「関節が錆付いたか外れたようなぎこちない動作」

王子 「どういうことだ。腐っているかいないかの違いだけで」

王子 「他のゾンビとまるで同じじゃないか」


500 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 06:56:16.40 ID:91upsnSho


ろうそく職人ゾンビ 「じ……じじ」


王子 「おい、ろうそく職人。正気に戻れ」

王子 「おれのことが分からないのか?」


ろうそく職人ゾンビ 「……おーじ」


王子 「そうだ、王子だ。領主の城の王子だよ」


ろうそく職人ゾンビ 「りょーじゅどじど……」


王子 「ああ、そうだ。思い出せ、君が何者であったかを」


ろうそく職人ゾンビ 「おーじ、りょーじゅのじど……」

ろうそく職人ゾンビ 「おじーじじ」

ろうそく職人ゾンビ 「ぐげ、じじじょじじじゃじゃ、きゃきゅきぇきぇ!」

ろうそく職人ゾンビ 「じょーーーー!」


ドタ ドタドタ

ブオン


王子 「くそ、駄目か……!」


ガキンッ


501 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 07:09:08.30 ID:91upsnSho


ギリギリギリ


ろうそく職人ゾンビ 「あぎゅー、あぎゅー」

ろうそく職人ゾンビ 「あへへえ」


ギョロギョロギョロ


王子 「まいったな。俺の剣を押す杖に、まるで力が入っていないじゃないか」

王子 「よだれを垂らして、服の乱れさえなおせていない」

王子 「何という変わり果てた姿だ」

王子 「大切な仲間のこういう姿を見るのはことのほか悲しいものだぞ、ろうそく職人」

王子 「耳や尻尾まで生えちゃって……」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「そういえば耳や尻尾は城にいたころからあったか」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「あれ、そうだっけ」


ろうそく職人ゾンビ 「じょー」


502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/07(月) 07:23:02.64 ID:U4z2/ZAS0
緊張感あふれ…
てないな

人外要素満載のろうそく職人にゾンビ属性まで

あとは天使とかまんぼーか
503 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 08:10:53.12 ID:91upsnSho


王子 「くっ……!」


ガキン


ろうそく職人ゾンビ 「あばばば」


ドバン ズデ


王子 「軽い。押し返したら紙みたいに吹っ飛んだ……」


ろうそく職人ゾンビ 「ごぼぼ」


王子 「まだ立つか……」

王子 「葉巻や勇者どのはどうなっているんだろうか」

王子 「星魔法使いどのも」

王子 「もしかして、このろうそく職人と同じように……」


ろうそく職人ゾンビ 「じょーーーー!!」


王子 「また来るか!」

王子 (剣の柄で気絶させる……っ)


グニャッ


王子 「!」

王子 (首をありえない方向に畳んだ……)


ろうそく職人ゾンビ 「コヒュッ」


ザクッ


王子 「ぐうっ」

王子 (腹を刺された……!)


504 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 08:25:34.55 ID:91upsnSho


ろうそく職人 「あじゃじゃじゃ!」


ヨロヨロヨロ

ズテン


ろうそく職人 「じょ?」


王子 「くう……」

王子 「ははは、師匠の言葉は聞いておくべきだぞろうそく職人」

王子 「よそ見をするから転ぶと言われただろう」


ハーピィ 「…………!」


トトトト


王子 「大丈夫だよハーピィ」

王子 「おれの守れる範囲で離れていてくれ」


ハーピィ 「…………」


王子 「頼むよ」


ハーピィ 「…………」


505 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 08:36:19.02 ID:91upsnSho


王子 「……そうか。ろうそくの杖。燭台でもあるのだったな」

王子 「ろうそくを外せば槍というわけだ……」


ろうそく職人ゾンビ 「じょ……げぺ」


ゴキッ ボキキ


王子 「なさけない話だ」

王子 「自然の声を聞いて無数の武器を打ち落とせても」

王子 「仲間に不意をつかれて腹に傷を負ってしまうとは」


ろうそく職人ゾンビ 「ぎ……ぐぎっ」


ボキッ ガコン ガコ ボギュ


王子 「つまり、おれはその程度の器というわけだ」

王子 「その程度の器でしかないのに」

王子 「相手を気絶させて勝とうなどと思い上がっていたというわけだ」


506 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 09:06:02.64 ID:91upsnSho


ろうそく職人ゾンビ 「じょ」


コキ コキ コキ


王子 「首はちゃんとはまったか、ろうそく職人」


ろうそく職人ゾンビ 「じょおおお……!」


スパッ


ろうそく職人ゾンビ 「じょ…………」


王子 「…………」

王子 「うん」

王子 「やっぱりちゃんと動きを見たら、他のゾンビと変わらず弱いな」

王子 「仲間がゾンビになって取り乱していたか」

王子 「あおいなあ、おれ」


ハーピィ 「…………」


ろうそく職人ゾンビ 「…………」

ろうそく職人ゾンビの首 「…………?」


ボトッ


507 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 09:26:17.94 ID:91upsnSho


王子 「心にざっくりとくるね」

王子 「自分のために仲間の首をはねるというのは」


ズパッ ザク


ろうそく職人の死体A 「…………」


ろうそく職人の死体B 「…………」


王子 「つらすぎて涙も出ない」


ザクッ ザクッ スパパパパ


王子 「だが、やらないとこちらがやられる。おれはやられたくない」

王子 「ゾンビどもは肉片になっても動いているから、これもちゃんと肉溜まりにしないとな」

王子 「すまないな、ろうそく職人。おれが弱いばかりに……ゲフッ」

王子 「ゴフッ……ゲホッ」

王子 「ああ、腹が痛い」


ザクッ ザッチュ ジャチュ ブジュジュ


ろうそく職人の肉片 「…………」

肉溜まり 「…………」


ハーピィ 「…………」


王子 「…………」


ゴッ ゴッ

ゴッ ゴッ


ろうそく職人の首 「…………?」


ググッ 

パキャッ


青い毛の肉溜まり 「…………」


王子 「………ゲホッ、ゴフッ」


508 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 09:32:35.64 ID:91upsnSho


王子 「くそ」

王子 「……よし、これでとりあえずはだいじょう」


ハーピィ 「!」


ザクッ


王子 「ブフッ!?」

王子 「う、うしろから……また、腹を……っ」


ろうそく職人ゾンビB 「…………」


王子 「……!」

王子 「おまえは、ろうそく……っ!」


ろうそく職人ゾンビB 「…………」

ろうそく職人ゾンビB 「じょーーっ!」


509 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 09:38:14.38 ID:91upsnSho


ろうそく職人ゾンビB 「じょわっ」


グリグリ


王子 「ぐうぅうッ」

王子 (腹に突き刺した杖をぐりぐりと……)

王子 「ごっ……の!」


ドカッ


ろうそく職人ゾンビB 「ゾンビッ」


王子 「……くそ」

王子 (頭をへ蹴りちぎるつもりだったが、吹っ飛んだだけか)

王子 「……いったいどうなっている」


510 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 09:45:14.48 ID:91upsnSho


ハーピィ 「!」


王子 「まだ大丈夫だハーピィ」


ハーピィ 「…………!」


ろうそく職人ゾンビB 「おじょ」


王子 「おれがいま潰した者も含めて」

王子 「きみは本当にろうそく職人なのか?」


ろうそく職人ゾンビB 「ゾンビーム」


王子 「ろうそく職人のようだな」

王子 「よく分からないが」



511 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 09:59:18.31 ID:91upsnSho


ザアアア


ろうそく職人ゾンビB 「じょわっち」


ドタ ドタ


王子 「ゲフッ……」

王子 「くそ……仲間をもう一度殺さなくちゃならないとは!」


ろうそく職人ゾンビB 「じょおおお!」


王子 「…………ッ」

王子 (大声を出したら腹からいろいろ抜けていきそうだ……!)


ズバッ


512 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 10:12:48.67 ID:91upsnSho


ろうそく職人ゾンビB 「…………」

ろうそく職人ゾンビBの首 「…………」


ゴト


王子 「…………」

王子 「……くそ」


ハーピィ 「…………」


??? 「ホミー、ご飯よー」


王子・ハーピィ 「!?」


??? 「ホミー、ご飯よー」

??? 「ホミー、ご飯よー」


王子 「まだ、来るのか……」


513 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 10:28:33.77 ID:91upsnSho


??? 「ホミー、ご飯よー」

??? 「ホミー、ご飯よー」


王子 「…………」


ハーピィ 「…………」


ヒタ ヒタ


??? 「ホミー、ご飯よー」

??? 「ホミー」


貝殻の勇者 「…………」

貝殻の勇者 「………オ」


王子 「…………ああ」

王子 「ああ。次は、君なのか」


514 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 11:28:53.74 ID:91upsnSho


貝殻の勇者 「………おうじどの。ハーピィさん」

貝殻の勇者 「ごぶじでしたか……」


王子 「ああ、そうだよ。領主の城の王子はご無事だ」

王子 「いまは仲間殺しの海老ゆで骨野郎だけど」

王子 「それはどうでも良いとして、次は君なのだな勇者どの」


貝殻の勇者 「その、そこの、それは……」


王子 「ああ。あわれなろうそく職人のなれの果てだよ」

王子 「こっちの肉溜まりもそうだ」

王子 「無常なものだ。浅いかかわりでは無かったのに」

王子 「他のゾンビと変わりなく肉だ」


ハーピィ 「…………」


貝殻の勇者 「そうですか……うぅ……う」


王子 「錆付いたような動き……」

王子 「すまないね」

王子 「君も、おれのために死んでくれ」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「…………」

王子 「ああ。ハーピィ」


貝殻の勇者 「よかった」


王子 「…………」


貝殻の勇者 「二人とも、手遅れではなかったようですね」


515 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 12:03:46.00 ID:91upsnSho



王子 「……勇者どのは、正気なのかな?」


貝殻の勇者 「……煙です」


王子 「煙」

王子 「館にたちこめるこれのことか」


貝殻の勇者 「これが立ち込めたとたん、死霊たちが徘徊し始めました」

貝殻の勇者 「ろうそく職人さんも」

貝殻の勇者 「じょじょ、じょじょ……と言い出して、すごい力で……」


王子 「なるほど」

王子 「じょじょ、館、ゾンビ、そしておれの……仮面」

王子 「謎はとけたな」


貝殻の勇者 「たぶん違うと思いますが」


ハーピィ 「…………」


516 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 12:25:21.91 ID:91upsnSho


王子 「冒険の途中に立ち寄った館で巻き込まれた奇妙な事件」

王子 「おそらく鍵は赤い石だ」

王子 「おそらく都合よくこの館にあるであろう赤い石を探せば、おそらくどうにかなるだろう」

王子 「おそらく」


貝殻の勇者 「おそろしくおそらいでいますが」

貝殻の勇者 「赤い石ですか……」

貝殻の勇者 「……そういえば、星魔法使いどのは錬金術師でもありましたね」


王子 「ああ。たしか石派だとか何とか」

王子 「……そうか!」


貝殻の勇者 「優れた錬金術師が生成する純粋な石、賢者の石」

貝殻の勇者 「その色は……」


王子 「赤……!」


貝殻の勇者 「ええ」

貝殻の勇者 「……つながりましたね」


王子 「ああ」

王子 「よし、さっそく……」


ハーピィ 「…………」


バコンッ スコンッ


王子 「いたっ」


貝殻の勇者 「あんっ」


ハーピィ 「…………」


王子 「……どうやら違うようだ」


貝殻の勇者 「そのようです」


肉溜まり 「ビクッ、ビクッ」


517 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 12:34:31.40 ID:91upsnSho


ハーピィ 「…………」


王子 「すまないね。心にくる二連戦のあとな上」

王子 「腹の傷が痛むもので正気を失いかけていたようだ」


貝殻の勇者 「私も、この煙を吸いすぎたようです」


王子 「この煙を吸うとまずいのか」


貝殻の勇者 「はい。自分の意識の上に、別のものを貼り付けられるような」

貝殻の勇者 「そしてそれが、えもいわれぬ快感であるような気分になります」

貝殻の勇者 「ろうそく職人さんの変化も、この煙を吸ってからなのです」


王子 「ろうそく職人……」


貝殻の勇者 「ご安心なさい、王子どの」

貝殻の勇者 「そろそろですね……」


王子 「……何がそろそろなんだい?」


518 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 12:39:10.60 ID:91upsnSho


貝殻の勇者 「……始まります」


肉溜まり 「…………」


ろうそく職人の死体B 「…………」


シュウウ


王子 「おや、死体から青白い煙が」


ドロン


肉溜まり 「…………」

青い尻尾A 「…………」


ろうそく職人の死体B 「…………」

青い尻尾B 「…………」


ハーピィ 「…………!」


王子 「尻尾?」


519 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 13:00:47.43 ID:91upsnSho


フヨフヨフヨ


王子 「……尻尾が、飛んでいく」


貝殻の勇者 「……凶暴化し、襲い掛かってきたろうそく職人さんを」

貝殻の勇者 「私はどうにか取り押さえ拘束することができましたが」

貝殻の勇者 「なんとろうそく職人さんは自らのフカフカの尻尾を切り離し」

貝殻の勇者 「自分の姿に似せてこの館に放ったのです」


王子 「ということは、あれは本物のろうそく職人じゃなかったのか」

王子 「……というか、そんな面白い技を持っていたのか、あの子は」


貝殻の勇者 「腕輪の魔法の効果など装備品の細部まで似せられるのです」

貝殻の勇者 「私もまず本物に会っていなければ、見分けがつかなかったでしょう」


王子 「いよいよ妖怪じみてきたな……」


貝殻の勇者 「ともあれ、私の倒した分も含めて、これで全ての尻尾は攻略できました」

貝殻の勇者 「あとは……」

貝殻の勇者 「うぅ……っ!」


ガクンッ


王子 「勇者どの……!」


520 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 13:15:02.12 ID:91upsnSho


貝殻の勇者 「くっ……」

貝殻の勇者 「何とか気合で持ちこたえていましたが、限界が近いようです」

貝殻の勇者 「私も、正気を失って……」


王子 「しっかりするんだ。おれの目を見るんだ、勇者どの」


貝殻の勇者 「ぐう……」

貝殻の勇者 「お、おうじ……」


王子 「勇者どの……ッ」


貝殻の勇者 「お、うじ……お」

貝殻の勇者 「オジヤ」


王子 「おれを食う気か」


521 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 13:32:31.88 ID:91upsnSho


貝殻の勇者 「く……う……!」

貝殻の勇者 「私は……近くの部屋にこもります……!」

貝殻の勇者 「王子どのとハーピィどのは、どうともない様子」

貝殻の勇者 「恥をしのんでお願いします。どうかこの煙の出所を……」


王子 「ああ、分かった。霧……煙を止めよう」


貝殻の勇者 「お願いします……では……」


フラ フラ


王子 「ひとりで大丈夫かい」


貝殻の勇者 「ええ。ひとりが良いのです」

貝殻の勇者 「……どうか、お気をつけて」


フラ フラ


ハーピィ 「…………」


522 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 13:46:21.00 ID:91upsnSho


王子 「行ってしまった」


ハーピィ 「…………」


王子 「……しまった。葉巻のことを聞いておけばよかった」

王子 「くそ、もう少し時間に余裕があったならば……」

王子 「時間に……」


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「…………」


王子 「…………」

王子 「と、とにかく煙を止める前に葉巻の部屋に行くとしよう」

王子 「近くだしな」


ハーピィ 「…………」


523 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 15:01:40.20 ID:91upsnSho


客室



カチッ


王子 「鍵がかかっていない」


ハーピィ 「…………」


王子 「…………」


ガチャ ギイイ


王子 「…………」

王子 「……誰もいない?」


ハーピィ 「…………」


スタスタ


王子 「やっぱり、敵も葉巻もいないな」

王子 「荷物もない」

王子 「部屋を間違えたか……?」


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「…………!」


王子 「ん?」

王子 「これは……」


ひまわりの種


王子 「まだ新しい……」

王子 「やはり葉巻はここにいたようだ」


524 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/07(月) 15:06:37.34 ID:hhq0Maae0
敵がろうそく職人にだと緊張感ないけどピンチだよなこれ
525 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 15:28:20.40 ID:91upsnSho


王子 「しかし、今はいない……」


ハーピィ 「…………!」


王子 「ベッドの下に何かあるのかい、ハーピィ」

王子 「……これは」


ひまわりの種 瓶入り


王子 「……大好きなのか」

王子 「む、まだ何かあるな」


王子の絵 たくさん


王子 「…………」

王子 「…………」


ハーピィ 「…………」


王子 「……あ、そうか。絵の変わる服を研究するとか言っていたものな」

王子 「びっくりした。傷口から内臓が飛び出るかと思った」


526 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/07(月) 16:22:37.92 ID:XdHFzbJLo
なぜベッドの下なのか
527 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 16:44:54.58 ID:91upsnSho


…………


砦の館 西側



タタタタタ


ハーピィ 「…………」


王子 「星魔法使いどのは研究をすると言っていた」

王子 「ならば館がこうなったとき、きっとあの玉だか石だか分からないものがあった場所の先にいたのだろう」


ザアアア ピカ ゴロロ


王子 「館に充満するこれが煙か霧か分かったとして」

王子 「ただのそれらでは無いのだろうから出所なんて確信もてん」

王子 「星魔法使いどのに知恵をいただけると良いが、そうでなければしらみつぶしに探すしかないか」

王子 「だとしても、何かありそうなのは秘密だらけのこの西側なんだよなあ」

王子 「……ゲホッ、ゲホッ」


528 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 17:16:13.80 ID:91upsnSho


ハーピィ 「…………ッ」


王子 「大丈夫だよ。薬草も痛み止めもきいているし、包帯をきつくまいているから内臓が飛び出ることもないだろう」


ハーピィ 「…………」


王子 「さて、おれがゾンビになるまでどのくらいの余裕があるのやら」

王子 「できればハーピィには避難してもらいたいけど」


ハーピィ 「…………」


王子 「ああ。一緒に切り抜けよう」

王子 「何だかんだと危険な目にあわせてすまないね」


ハーピィ 「…………」


パラッ


幼葉エルフの裏声 『王子さま、すきすき。だいすき』


王子 「ありがとう、ハーピィ」

王子 「……ははは。良いアイテムだ」

王子 「それくれた奴はどこにいるんだろうなあ」


529 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 21:16:40.40 ID:91upsnSho


タタタタ

スタ スタ


王子 「……ここだ」


ひび割れた封印石


王子 「玉がひび割れている」

王子 「内側で明滅していた光も消えているな」

王子 「これが進入をこばむアイテムだとすれば」

王子 「壊れている今、効果は発揮しないのだろう」


ハーピィ 「…………」


王子 「ハーピィは少し待っていてくれ」


スタ スタ


ひび割れた封印石 「…………」


王子 「……よし。通れた」

王子 「おいで、ハーピィ」


ハーピィ 「…………」


トコトコ


530 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 21:19:14.13 ID:91upsnSho


王子 「西側を進むほどに霧が濃くなっている」

王子 「さては、大当たりだったかな」

王子 「……はて、そういえば」

王子 「星魔法使いどのが学んだのは本当に石派の錬金術だったっけか」

王子 「あのとき、他の派閥の名も出ていたような」

王子 「たしか……魂、だったか……」


ハーピィ 「…………」


王子 「ああ。ボーっと立ち止まる暇は無いか」

王子 「行こう」


531 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 21:28:31.20 ID:91upsnSho


ザアアア 


ゾンビA 「オオオオー……」


ズバ


ゾンビA 「…………」


ドシャ


王子 「こちらにもゾンビどもが入ってきていたか」

王子 「……数が多いうえに、まったく腐っていないものも見かけるようになってきた」


ゾンビB 「アオオオ」


王子 「人を斬っているみたいだ」


ザシュ


ゾンビB 「…………」


バタ


王子 「後悔する余裕もなく攻めてきてくれるのは、ありがたいな」


ハーピィ 「…………」


532 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 21:42:13.46 ID:91upsnSho



タタタタタ


王子 「…………」

王子 「む」


ザアアア ピカ



砦の館 地下階段



ゴロゴロ ザアア


王子 「……地下室があるのか」


ハーピィ 「…………」


王子 「いっそう霧が濃くなっている」

王子 「まずここから調べてみようかな」

王子 「地下は死者の領域という感じもするし」


ズル ドシャ ズル 


??? 「オオオ……」


王子 「……何かが階段をのぼってくる」


バフッ


ゾンビたち 「オオオオ!」


王子 「やっぱりか!」


533 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 21:48:18.56 ID:91upsnSho


ゾンビたち 「オオオオ」


ゴッ


王子 「あ、先頭が階段でつまずいた」


ゾンビたち 「オオオオオ……」


バタ

バタバタバタバタ


王子 「…………」

王子 「後続を巻き込んで、階段の下へ倒れていく……」


ゾンビたち 「オオオオ……」


モゾモゾ ジタバタ


王子 「…………」


ハーピィ 「…………」


王子 「…………」


ザシュ ザシュ ザシュ ズクシュ


ゾンビたち 「…………」


王子 「……よし、行こう」


ハーピィ 「…………」


534 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 21:56:12.91 ID:91upsnSho


魔法の火 「ユラユラ」


王子 「上と違って、明かりの色が違う」

王子 「ろうそく職人の言葉を借りるなら」

王子 「地獄の炎といったところか。緑色だが」


ハーピィ 「…………」


王子 「問題は、壁にいくつもあるこの魔法の火から」

王子 「煙が出ているということだ」


魔法の火 「ユラユラ」


シュウ シュウ


王子 「これを壊せば良いのだろうけど」


ヒュン バリン


王子 「こうしていくと、やがて明かりがなくなってしまって」


ゾンビ 「オオオオ」


王子 「敵の姿が見えなくなるんじゃないか?」


ザシュ


ゾンビ 「…………」


ドシャ


王子 「青花エルフの修行がここでも役に立ちそうだ」


535 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 22:04:42.13 ID:91upsnSho


王子 「だが、まったく暗くなっても不便だよな」

王子 「少しは明かりを残しながら、いったん奥まで探索するのが良いだろう」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「うん。わざわざ敵を後ろに置いて歩くみたいで気分が良くない」

王子 「こういう罠だとしたら意地が悪いなあ」


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「…………」


王子 (……さっきと違い、ハーピィはねばらないか)

王子 (それほど気にする問題じゃあないということか……?)


536 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 22:15:52.79 ID:91upsnSho


ガシャン ガシャン ガシャン


王子 「………ここは残すか」


魔法の火 「ユラユラ」


王子 「前の明かりが届かなくなるくらいのところで次の明かりを残し」

王子 「奥から一階へ戻るときに壊していく」

王子 「まあ、長いが一本道だから良いだろう」


ゾンビたち 「オオオオ」


王子 「狭いので一度に多くの敵を相手にせずにすむし」


スポポン


ゾンビたち 「………」


ゾシャ


王子 「さて、結構歩いたが、ここは館のどのあたりなんだろう」


ハーピィ 「…………」


537 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 22:27:16.48 ID:91upsnSho



王子 「……もしもこの先におれの手に負えないものがあるとしたら」

王子 「遠回りでも、上の階で星魔法使いどのか葉巻を探してから来たほうが良かった」

王子 「ということになるな」


ハーピィ 「…………」


王子 「まあ、悩んでもしかたないか」

王子 「……お」

王子 「先になにか見えた」


緑の扉


ハーピィ 「…………」


王子 「……ふむ」


スタスタスタスタ


538 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 22:38:48.77 ID:91upsnSho


緑の扉 『はじめて会ったころの妻』


王子 「ある程度近づいたら、扉全体に女性の絵が浮かんだ」

王子 「この場所に似つかわしくない優しい笑顔だ」


スタスタ


魔法の火 「ユラユラ」


ガシャン ガシャン


緑の扉 『はじめて泣いた日の妻』


王子 「少し近づくとまた変わった」

王子 「そういうしかけか」


ハーピィ 「…………」


魔法の火 「ユラユラ」


王子 「…………」


ガシャン ガシャン


スタ スタ


539 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 22:53:08.31 ID:91upsnSho


緑の扉 『喧嘩をした日の妻』


ガシャン パリン


緑の扉 『学院の妻』

緑の扉 『はじめてデートをした日の妻』


ガシャン ガシャン


王子 「…………」


ハーピィ 「…………」


スタスタ スタスタ


緑の扉 『一緒に天文塔に行った日の妻』

緑の扉 『誕生日の妻』

緑の扉 『海に行った日』

緑の扉 『何もなかった日』

緑の扉 『妻』

緑の扉 『妻』

緑の扉 『妻』


王子 「…………」


ガシャン ガシャン

ガシャン


緑の扉 『私の愛する妻』


王子 「…………」


ガシャン


540 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 23:16:53.44 ID:91upsnSho


ゴゴゴゴ

ガゴン



地下祭壇



王子 「……広いな」


ハーピィ 「…………」


魔法の火(特大) 「メラメラ」


王子 「中央に大きな魔法の火」

王子 「やはり火は緑色で、煙が出ている」

王子 「その下の祭壇のようなところに……」


幼葉エルフ 「…………」


星魔法使い 「…………」

星魔法使い 「あなたは……」


王子 「やあ……」

王子 (何をやっている葉巻。祭壇で寝ている場合じゃないだろうに)


541 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 23:35:38.06 ID:91upsnSho


王子 「いやはや、すごい夜だね」

王子 「とんだゾンビ記念日だよ」


ハーピィ 「…………」


星魔法使い 「…………」

星魔法使い 「そうですね。たしかにそういう面もあります」

星魔法使い 「しかし、正確にはゾンビではありません」


王子 「…………」


星魔法使い 「彼らの体は、死者の血肉でつくられた人工のもの」

星魔法使い 「彼らはフレッシュゴーレムです」


542 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 23:44:36.32 ID:91upsnSho


王子 (フレッシュゴーレム。たしかここの本で読んだな)

王子 「つくったのはあなただね」


星魔法使い 「そうですね」


ハーピィ 「…………」


王子 「ずいぶんと、たくさんつくったものだね」


星魔法使い 「ええ。たくさんつくりました」

星魔法使い 「一本の線を探す芸術家のように」

星魔法使い 「死体をあばき、ひらき、たくさんつくりました」

星魔法使い 「限りなく人間に近いもの、思い出せないくらい古い失敗作。すべては」

星魔法使い 「彼女にもう一度会うため」


王子 「彼女……」


543 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/07(月) 23:58:00.45 ID:91upsnSho


星魔法使い 「ですが、驚きました」

星魔法使い 「正気を失わず、そして彼らにつかまることなく」

星魔法使い 「まさかここまで来ようとは」


王子 「……この火は何なんだい」


星魔法使い 「さすが、察しがよろしい」

星魔法使い 「……ゾンビというものもいろいろあります」

星魔法使い 「ある薬を燃やして出た煙を吸って、傀儡と化したもの」

星魔法使い 「自我を乗っ取られた、生ける屍」

星魔法使い 「それも確かにゾンビなのです」


王子 「炎を緑色にする薬か」


星魔法使い 「ゾンビパウダーとでもいいますか」

星魔法使い 「媚薬の一種ととらえる者もいますが」


544 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/08(火) 00:13:11.41 ID:TlSKwU6Jo


星魔法使い 「もともとは生きた人間に使うことを目的として作られましたが」

星魔法使い 「人に近いフレッシュゴーレムならば操ることもできます」

星魔法使い 「……あのお二方の姿が見えませんが」


王子 「ああ。二階あたりで生きているんじゃないかな」

王子 「ゾンビ的に」


星魔法使い 「そうですか。遭遇しなかったのならば運が良かったですね」

星魔法使い 「わけも分からずゾンビとなった仲間と対峙するなど、良いものではないでしょう」

星魔法使い 「そのまま発狂するものもいるといいます」


王子 「ははは……」


ハーピィ 「…………」


545 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/08(火) 00:53:52.89 ID:TlSKwU6Jo


星魔法使い 「……話して時間を稼いでみても」

星魔法使い 「いっこうにゾンビ化する気配はありませんね」

星魔法使い 「あなたがたはいったい……」


ハーピィ 「…………」


王子 「さあ、見当もつかない」

王子 「その桃色を返してもらえるかな」


幼葉エルフ 「…………」


星魔法使い 「申し訳ありません。それはできません」

星魔法使い 「完全なフレッシュゴーレムの完成には魂が必要」

星魔法使い 「魔力の高い魂を使うほど、より良いゴーレムとなるのです」


546 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/08(火) 01:15:53.29 ID:TlSKwU6Jo


星魔法使い 「私も魂派の錬金術師。魂の質くらいは分かる」

星魔法使い 「この女性の魂ならば、きっと完璧に妻をよみがえらせることができるでしょう」


王子 「女性……」

王子 (とんだ節穴じゃないか)


ハーピィ 「…………」


547 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/08(火) 01:26:47.98 ID:TlSKwU6Jo


王子 「魂を使う」

王子 「それが魂派の錬金術というやつかい」


星魔法使い 「生まれることが罪なのか、罪を犯したから生まれるのか」

星魔法使い 「この世に生まれたことで、魂のほとんどが汚れるという」

星魔法使い 「錬金術の目指す地平は完全と純粋」

星魔法使い 「ある者は純粋な石をつくり」

星魔法使い 「ある者は自然界にある精霊の声に耳を傾け」

星魔法使い 「ある者はそのすべてを学び」

星魔法使い 「やがて完全な魂への昇華に至る」


王子 「…………」


星魔法使い 「魂の昇華とはすなわち、魂の変容」

星魔法使い 「なるほど、たしかに私は五芒星をとれただけでも奇跡なのです」

星魔法使い 「私欲によって、この女性の魂を妻の魂にかえようなど」

星魔法使い 「おぞましいことを」


548 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/08(火) 01:41:41.49 ID:TlSKwU6Jo


王子 「分かっていて、こんなことをするのか」

王子 「たくさんの死までもてあそんで」


星魔法使い 「……何でもしましょう」


王子 「それはあなたの大切な奥方の死も」

王子 「もてあそんでいることになのじゃないかな」


星魔法使い 「何でもしましょう!」


ハーピィ 「…………!」


星魔法使い 「妖精の領域で死体を買いましょう! なければ墓を掘りましょう!」

星魔法使い 「それでもなければ死体をつくりましょう!」

星魔法使い 「命を尊敬しないわけではない」

星魔法使い 「しかし」

星魔法使い 「私にとって、彼女が生きていることは何よりも重いのです……!」


549 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/08(火) 02:02:39.70 ID:TlSKwU6Jo


ボオオ


王子 (……魔法の火がさらにふくらんだ)

王子 「自分の魂が汚れようが、おかまいなしというわけかい」


ゾンビたち 「オオオオ」


王子 (炎の中におびただしい数のゾン……ゴーレムが)

王子 (まさかあれが出てくるのか?)


星魔法使い 「何でもすると言ったでしょう」

星魔法使い 「あなたにもそのようなものがいるのでは?」


ゾンビたち 「オオオオ」


グニグニ グニョラ


王子 (ゴーレムたちが粘土みたいに……)

王子 「……ああ。おかげさまで、あんたの言うことがよく分かるよ」

王子 「ついさっき上でそんな感じだったから」


ハーピィ 「…………」


550 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/08(火) 02:22:40.20 ID:TlSKwU6Jo


王子 『葉巻。起きろ、葉巻』


幼葉エルフ 「…………」


王子 (魔法の会話はできないか)

王子 (眠らされているだけか。それともすでに……)

王子 (……なんかあいつ、肝心なときに散々だな)


ハーピィ 「…………」


星魔法使い 「やはり、あなたとはウマが合いそうだ……!」


グニョン グニョン ボコボコ


王子 「! ゾン……ゴーレムたちが」


ゾンビたち 「オオオオ」

肉塊 「オオオオ」

巨大ゴーレム 「オオオオ」


王子 「………」

王子 「合体……したのか」


551 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/08(火) 02:55:13.02 ID:mV0A+uDu0
勝てるんかいな…
552 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/08(火) 02:57:31.42 ID:TlSKwU6Jo


星魔法使い 「すべてのフレッシュゴーレムの血を持ち、そのどれでもないゴーレム」

星魔法使い 「いわばキマイラ」


王子 「……吐き気がするね」

王子 「ハーピィ、安全なところへさがっていてくれ」


ハーピィ 「…………」


王子 「炎がしぼむ」


ボボボ

ズズン


巨大ゴーレム 「…………」


星魔法使い 「館から逃げ出していれば、ここで死ぬことはなかったものを……」

星魔法使い 「ゆけ、キマイラゴーレム!」


キマイラゴーレム 「キマー」


ドシン ドシン


王子 「…………」

王子 「ハーピィ、もうちょっとさがっていてくれるかな」


ハーピィ 「…………」


553 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/08(火) 03:13:05.47 ID:TlSKwU6Jo


キマイラゴーレム 「キマー」


王子 「……思ったより速い」


ドガ


王子 (拳を振り下ろしただけで地面がガタガタに……)

王子 (受けずに逃げてよかった)

王子 (ハーピィは……)


ハーピィ 「…………!」


王子 (もうあんなところに避難していたか)

王子 (そういえばハーピィは戦いで傷を負わないな)

王子 (人につくハルピュイアという種族として)

王子 (実はものすごい回避能力でもあるのだろうか)


554 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/08(火) 03:32:35.71 ID:TlSKwU6Jo


ハーピィ 「…………」


王子 (しかし、ハーピィを戦わせてはいけない)

王子 (深いところで、そう思う。まるで敵もそう思っているかのような)

王子 (これもまた、ハルピュイアという種族の力なんだろうか)


キマイラゴーレム 「キマー」


王子 「おっと」


ドカ ドゴン


星魔法使い 「どうしたのですか。逃げてばかりのようですが」

星魔方使い 「このゴーレムの持久力は生身の人間を遥かにしのぎますので」

星魔法使い 「先に消耗しきるのはあなたの方だと思いますよ」


王子 「ご親切にどうも」


555 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/08(火) 03:49:26.23 ID:TlSKwU6Jo



王子 「死体をつぎはぎしたものを、さらにつぎはぎして」

王子 「恐ろしい化け物をつくったものだね」

王子 「人の心を忘れた者にしかできないような」


キマイラゴーレム 「キマー」


ドガン


星魔法使い 「それもまた人間でしょう」


ドカ ドゴン


王子 「人の心と一緒に大事な人のことも忘れてなけりゃ良いがね……!」

王子 (大振りの攻撃のすきに背中に回りこめた。素早さの上がる仮面とマフラーのおかげだろうか)

王子 (何にせよ攻撃のチャンスだ)

王子 「くらえ、偽必殺」

王子 「後ろから斬……」


星魔法使い 「忘れてなどいない!」


ゴオッ


王子 「うわッ!?」

王子 (杖。魔法か)

王子 (口車に乗って隙をつかれたのはおれの方だったか)


ドカン バラバラ


王子 「か、かわせたか。壁が巨大な鉄球で叩かれたように崩れた……」

王子 (敵がわざわざ大声を出していなかったら危なかったな)


556 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/08(火) 04:14:56.00 ID:TlSKwU6Jo


星魔法使い 「忘れられるはずがない!」


ゴオッ


キマイラゴーレム 「キマー」


ドガ


王子 「……! っ!」

王子 (攻撃が激しくなった。怒りで混乱させてすきをつくつもりが)

王子 (逆効果だな。すきがない。二つの攻撃と飛んでくる破片をかわすので精一杯だ)


ズキッ


王子 (あ、腹の傷にズキッてきた)


星魔法使い 「彼女の笑顔も、姿も、心も、魂でさえも」

星魔法使い 「私は絶対に忘れない!」

星魔法使い 「忘れられない!」


王子 「ゲホッ……まるで呪われているみたいじゃないか」

王子 「奥方の亡霊に」


557 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/08(火) 04:38:01.38 ID:TlSKwU6Jo


星魔法使い 「ならば呪いにも感謝しましょう!」

星魔法使い 「おかげで、彼女のつくりかたは我がことのように分かるのだから!」


グオッ


王子 「うわっ!」

王子 「どんな彼女のつくりかただよ……ッ」

王子 (ゴーレムより魔法攻撃の方が厄介だ)

王子 (素早くなれる装備がなかったら、良くても悪くても直撃だろう)

王子 (はやく体勢をととのえなければ……)


ズキッ


王子 「……グッ」


キマイラゴーレム 「キマー」


王子 「……!」

王子 (しまった)


星魔法使い 「叩き潰せ、キマイラゴーレム!」


キマイラゴーレム 「キマー」


ブオン


王子 (かわせない)

王子 (受け止めるしか……)


558 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/08(火) 04:48:01.75 ID:TlSKwU6Jo


ガキン


王子 「…………」


キマイラゴーレム 「…………」


ズル


キマイラゴーレム 「…………」


ゴトン


キマイラゴーレムの右腕 「…………」


キマイラゴーレム 「キ、キマー……!?」


王子 「…………」

王子 「……え?」

王子 「何だ、いやに手ごたえがなかったぞ」


星魔法使い 「ば、ばかな……」


ハーピィ 「…………」


559 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/08(火) 05:22:06.19 ID:TlSKwU6Jo


星魔法使い 「屈強なフレッシュゴーレムを何倍にも強化したキマイラゴーレムの腕を」

星魔法使い 「そのような細身の剣で……!」


王子 「屈強……? ご冗談を」

王子 (そうだよ。上でゴーレムが扉を破ったりしていたが)

王子 (いざ戦ってみたら弱かったじゃないか)

王子 (こいつもその類だったのだな)


キマイラゴーレム 「キマ……」


星魔法使い 「…………!」

星魔法使い 「ゾンビパウダーの煙を吸っても正気を保ち、ゾンビの一面を持つゴーレムを圧倒……」

星魔法使い 「まさかあなた、私がもしものときのために館に隠しておいた」

星魔法使い 「貴重な聖なるお札を手に入れたのですか!」


王子 「失礼な」

王子 「いくらうちが貧乏だからって、人が大事にしているものを盗むようなことはしていないぞ」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「……あれ?」


560 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/08(火) 06:49:34.31 ID:0G91uknE0
ごめん ちょいわらってしまった
561 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/08(火) 07:11:55.65 ID:R/oL0io2o
絵はついうっかりだけどお札とチョコは泥棒同然といいう意識があったからか
562 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/08(火) 09:27:10.10 ID:MeVqwf73O
しかし星魔法使いが敵だと馬車がどうなってるのか心配だな…
563 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/08(火) 09:50:52.40 ID:GVChlp9k0
むしろ王子を修行させてるようにしか見れんのだが
564 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/08(火) 12:46:21.39 ID:TlSKwU6Jo


王子 「いや、おれは聖なるお札なんて……」

王子 「待てよ。聖なる……」

王子 「お札?」

王子 「…………」


    ろうそく職人 『じょわっち』


王子 「……あ、ああー!」

王子 「華麗かつやるせないお見合い肖像と交換したこれか!」

王子 「ろうそく職人は魔力を上げるとか言っていたけども!」


貴重な聖なるお札


王子 「お。ぼんやりと山吹色に輝いている」


星魔法使い 「まさにそれだ」

星魔法使い 「人の家でなんてことを!」


王子 「まったくだ」

王子 (やったなろうそく職人。お手柄だ)

王子 (偽者とはいえ二回も殺してごめんよ)


星魔法使い 「この、泥棒!!」


ゴオッ


王子 「のわっと!」

王子 「死人から死を盗むあんたに言われたくないな!」

王子 (ハーピィと赤花の長老どのにも感謝しなくちゃな)

王子 (……どうしてハーピィは平気なんだ)


ハーピィ 「…………」


565 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/08(火) 13:03:52.90 ID:TlSKwU6Jo


星魔法使い 「私と妻の大切な魂の儀式を邪魔したあげく」

星魔法使い 「家のものを勝手に懐におさめるとは!」


ゴオッ ゴオッ


王子 「勝手につかえ、とあんたは言ったじゃないか!」


星魔法使い 「あなたがたは礼儀をわきまえた人間だと信じたからこそです!」

星魔法使い 「天国の行列にまで割り込むような恥知らずに、誰がそんなこと!」


ドカン ドゴオン


王子 (うわ、魔法の威力が上がっている)

王子 (しかし速さは落ちたな)

王子 「生きた魂を盗むような自分を差し置いて!」


ダダッ


星魔法使い 「……! 突っ込んで来るか!」

星魔法使い 「キマイラゴーレム!」


キマイラゴーレム 「キ、キマー!」


566 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/08(火) 13:31:35.42 ID:TlSKwU6Jo


王子 「まったく、人をさも大悪人かのように」


キマイラゴーレム 「キマー!」


王子 「死に続けぞこないの寄せ集めが立ちはだかるか……!」

王子 「ならば今ふたたび永久に死ね!」


ズバン


キマイラゴーレム 「ギマッ」


星魔法使い 「…………!!」

星魔法使い 「一撃で……!」


キマイラゴーレム 「…………」


ズズ ン


王子 「星魔法の者よ!」


星魔法使い 「くっ!!」


ダダダダ


王子 「死者たちの平穏のため」

王子 「肉溜まりになっていただこう!」

王子 「死ね!」


星魔法使い 「…………!」


567 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/08(火) 14:09:24.71 ID:TlSKwU6Jo


バリンッ


王子 「!」

王子 (剣が星魔法使いに届く前に、何かかたいものに受け止められた)


星魔法使い 「魔法の壁を重ねた重層防御」

星魔法使い 「一振りで半分近くの層を壊しますか……!」

星魔法使い 「ならば!」


幼葉エルフ 「…………」


王子 (星魔法使いが葉巻を抱えた)

王子 (ぐったりして、まるで死んでいるみたいだ)

王子 「そいつを返せ!」


バリンッ


星魔法使い 「できるものか! すべては愛する者のために!」


王子 「死者の望みなど知る由もなかろうに!」


魔法の火(大) 「メラメラ」


ゴオオ


王子 「炎がアーチ状に……!」

王子 (向こうに別の部屋が見える)


星魔法使い 「あなたに彼女の何が分かる!」


ゴオッ


王子 「うわっ」


568 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/08(火) 14:36:29.54 ID:TlSKwU6Jo


星魔法使い 「かわしたか。忌々しい……!」


幼葉エルフ 「…………」


ゴオオ


王子 (葉巻を抱えた星魔法使いがアーチをくぐった)

王子 「待て!」


バリン ガシャン


王子 (よし、魔法の壁を壊せた……!)


星魔法使い 「…………!」


バシュッ


王子 (アーチの向こう側から攻撃魔法を……)

王子 「くぬっ!」


星魔法使い 「これもかわすか。思いのほか冷静な……!」


タタタタタ


王子 「くそ、逃げたか」

王子 「ハーピィ、行くぞ。あいつを追いかける!」


ハーピィ 「…………!」


ダダダダダ


569 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/09(水) 02:34:42.70 ID:mHFvhVLR0
緊迫の戦闘…
570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/09(水) 06:47:15.03 ID:CxEj5pGs0
また続きが気になるところで切りよって
571 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/10(木) 21:05:24.36 ID:bWjns6j10
やはり葉缶エルフじゃないと
572 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/13(日) 07:36:13.72 ID:7BVNksIc0
もう待ちきれないぞ
573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/13(日) 14:02:33.50 ID:V/XLqBy40
いや待てよwwww
574 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/15(火) 15:23:40.60 ID:ITu0bPoKo



■貝殻の勇者
http://i.imgur.com/1dfNZWi.jpg

南国仕様
http://i.imgur.com/LVda6RR.jpg


妖精に認められた心やさしい勇者の少女。
勇者の力に目覚めて会得した必殺技で、
魔王軍を大量虐殺できるぞ。
人間タイプの敵と空腹には注意しよう。


(画像は想像上のものです。
実際の貝殻の勇者とは異なる場合がございます)


575 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/15(火) 16:14:20.62 ID:ITu0bPoKo



砦の館 隠された地下室



王子 「炎のアーチを抜けると、石造りの大きな部屋に出た」


ハーピィ 「…………」


王子 「星魔法使いはもういないか」

王子 「……ここは、館の中なのかな」

王子 「もし炎のアーチがなくなったら、帰ることはできるのだろうか」


ハーピィ 「…………」


王子 「ゲホッ……コフッ……」

王子 「うん、じっとしていてもしかたない。出口は……」

王子 「あそこだな」


タタタタタ


576 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/15(火) 16:18:52.65 ID:ef3gGE3v0
きたか

清楚ビッチ…
ちなみに満腹時っぽいな
空腹時モードの公開も待たれる
577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/15(火) 16:22:11.30 ID:FtkkLO1hO
ビッチというより食欲が…
578 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/04/15(火) 16:45:57.72 ID:EJodvKXN0
貝殻って頭飾りなのかと思ったら腰のアーマーのとこなのな
幼葉エルフ大丈夫だろうか
579 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/15(火) 16:50:41.81 ID:R0W3JlV00
貝殻ブラだと信じていたのに…
580 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2014/04/15(火) 17:12:13.83 ID:ITu0bPoKo
※こちらの絵心の都合により頭飾りやら貝殻ブラやら省いているけれど、
 とりあえず股にも貝殻があるという設定でお願いします。
581 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/15(火) 17:13:13.83 ID:ITu0bPoKo


隠された廊下



王子 「他人の体を渡り歩く葉巻とはいえ」

王子 「魂をどうにかされたらただではすむまい」

王子 「魂なんて見たことないけど」


ハーピィ 「…………」


王子 「この廊下。館というより、聖堂といった感じのつくりだ」

王子 「不気味なくらい静かだな。ゾンビ……ゴーレムもいないのか」

王子 「お、左右に扉が」


バンッ


ゾンビたち 「オオオオオ!」


王子 「おおおおお!?」


582 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/15(火) 17:24:39.21 ID:ITu0bPoKo


王子 「……おおおおりゃああ!」


ザシュ ザク ザシュ


ゾンビA〜C 「…………」


バタ


ゾンビたち 「オオオオオ……」


王子 「押し出すようにわらわら出てくる」

王子 「ゲホッ……」

王子 「相手にする時間はない」

王子 「走り抜けよう、ハーピィ」


ハーピィ 「…………!」


タタタタタ


ゾンビたち 「オオオオオ……」


王子 (……ゾンビの群れがついてくる。遅いけど、気分は良くないな)


583 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/15(火) 17:34:58.76 ID:ITu0bPoKo


タタタタタ


王子 「……また左右に扉」


ハーピィ 「…………」


バン


ゾンビたち 「オオオオオ!」


王子 「出てきたか」

王子 「無視だ、無視!」


ハーピィ 「…………」


タタタタタ

バン


タタタタタ

バン


ゾンビたち 「オオオオオ」

ゾンビたち 「オオオオオ」


ゾロゾロ


王子 (もう振り返るのも怖い)

王子 (星魔法使いがゾンビが出てきた部屋のどれかに逃げ込んだとしたら……)

王子 (いや、今はこの廊下を真っすぐ行こう)

王子 (……しかし帰りはどうなるんだ、これは)


584 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/15(火) 18:16:01.15 ID:ITu0bPoKo


隠された地下礼拝堂



王子 (またひらけた場所に出た。暗くて見通しが悪い……)

王子 (吹き抜けか。二階もあるみたいだな)


ハーピィ 「…………」


礼拝堂 入り口扉


王子 「……いまのところ敵が出てくる様子はない」

王子 「扉を閉めて、追いかけてくる連中が入るのを防いでおこう」

王子 「…………!」


ゴオッ


王子 「……ひょうっ」

王子 (星魔法使いの攻撃魔法。奥からか!)


??? 「これもかわすとは……」

星魔法使い 「威力を犠牲に、かなり速めに撃ったつもりでしたが」


585 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/15(火) 18:39:27.87 ID:ITu0bPoKo


ツカ ツカ


王子 「いやあ良かったよ。ここにいてくれて」

王子 「途中の部屋に入られていたらどうしようかと思っていた」


星魔法使い 「ああ、その手がありました。急いでいたせいか思いつかなかった」

星魔法使い 「今度参考にさせていただきます」


王子 (星魔法使いのそばにある祭壇のようなものに、女性が横たわっている)


??? 「…………」


王子 (あれが星魔法使いの奥方……か?)


幼葉エルフ 「…………」


王子 (女性の隣に葉巻の姿もあるな。あいかわらず目をさます気配がない)


586 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/15(火) 18:55:08.06 ID:ITu0bPoKo


王子 「その女性があなたのスイートハニーとやらかな」


星魔法使い 「……彼女のつくった弁当を中庭で一緒に食べるのが、休日の楽しみでした」

星魔法使い 「母を知らない私にとって、味の郷土は彼女なのです」


王子 「そりゃうらやましい。おれも本物の母の顔を知らないから」


ハーピィ 「…………」


王子 「葉巻を返せ、星魔法使い」


587 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/15(火) 19:35:22.43 ID:ITu0bPoKo


星魔法使い 「あなたも急いでいるようだ」

星魔法使い 「安心してください。外の連中はここに入ってこれません」

星魔法使い 「本当ならあなたがたにも入ってきてほしくなかった」

星魔法使い 「私と妻、そして新しい魂だけがあれば良かった」


フィヨヨヨ


王子 (星魔法使いの足元の床がぼんやりと光りだした)

王子 (魔方陣か)

王子 「だったら葉巻をひきとってお引取りさせていただ……」


ゴチン


王子 「いてっ」

王子 「何だ。見えない壁……また魔法の壁の層というやつか」


星魔法使い 「先ほどのものと同じだとは思わない方が良いですよ。この上なく透明で強度は段違いです」

星魔法使い 「あなたが壊している間に、このエルフどのの魂を彼女の魂とする時間はじゅうぶんに稼げるでしょう」


588 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/15(火) 20:02:49.75 ID:ITu0bPoKo


王子 「過去に森の館に、魔法の壁に」

王子 「殻にとじこもってばかりじゃ腐っちまうよ」


星魔法使い 「ならば早く、彼女とともにかえりましょう」


王子 「そうはさせない」


ガキッ


王子 「……ッ」

王子 (本当にさっきのやつよりかたい)


星魔法使い 「言ったでしょう。段違いだと」


王子 「ならば全力で……!」


ガキッ ピシッ

バリン


星魔法使い 「……驚いた。陣で強化した壁にさえそこまでダメージをあたえるとは」


589 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/15(火) 20:14:51.31 ID:ITu0bPoKo



王子 「うりゃっ! とりゃ!」


バリンッ バリンッ ズキンッ


王子 (……うっ。腹の傷に響くなあ)


ハーピィ 「…………!」


星魔法使い 「ええい、こうなったら……!」


ゴオッ


王子 (きたか、攻撃魔法)

王子 「すわっ……うわっ!?」

王子 (避けた先にも壁が……)


星魔法使い 「かかりましたね」

星魔法使い 「今回の魔法の壁は私を守るものではなく」

星魔法使い 「あなたの動きを封じるためのものだったのです」


王子 (しまった。殻に閉じ込められたのはこっちだったか)



590 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/15(火) 20:24:13.19 ID:ITu0bPoKo


王子 「…………」

王子 (本当に四方を魔法の壁で囲まれている。隙間もない)

王子 「こういう使い方もできるわけか」


ハーピィ 「…………! ッ!」


王子 (ハーピィは外にいるのか? だとしたら良かったが)

王子 「狭い……!」


星魔法使い 「しぶといあなたも、これでは私の魔法をかわすことができますまい!」


ゴオッ


王子 「……!」


ドガン


王子 「うぐぅっ!!」


591 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/15(火) 20:41:02.73 ID:FtkkLO1hO
あゆあゆ…
592 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/15(火) 21:09:14.27 ID:ITu0bPoKo


ドサッ


王子 「…………」


ハーピィ 「! ッッ! !!」


王子 「うぅ……」

王子 (痛みで全身が痺れる。巨大な拳で壁に押し付けられたらこんな感じだろうか)


星魔法使い 「……息がある」

星魔法使い 「魔法が当たる直前に剣をかまえていたが、なるほど、魔法に耐性のある剣だったようですね」

星魔法使い 「けれど、さすがに立てないはずだ」


王子 「くぅ……」

王子 (くそ、本当に動けない。腹の傷から力が抜けていくようだ)


星魔法使い 「これでゆっくりと儀式ができるというもの」


593 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/15(火) 21:34:29.04 ID:ITu0bPoKo


星魔法使い 「手こずらされました。まさか私たちの領域がここまでおかされるとは……」

星魔法使い 「ほかの魔法使いには恥ずかしくてとても言えませんね」


王子 「…………」


星魔法使い 「まあ、いまさら魔法使いの名誉などどうでも良い」

星魔法使い 「その健闘をたたえて、とどめはささずにおきましょう」

星魔法使い 「儀式が終わればこのエルフどのの体も返します」

星魔法使い 「魂のない抜け殻ですが、新しいものをいれたら良いのです」

星魔法使い 「適当な魂が見つかれば、私がこのエルフどのの魂にかえてさしあげますよ」


王子 「…………」

王子 「……ありがたい」


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「ああ。吐き気がするね」


594 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/15(火) 22:08:59.56 ID:ITu0bPoKo


星魔法使い 「自身よりも大切なものを失い、それを取り戻すことができるとしたら」

星魔法使い 「そんなことも言っていられません」


王子 「……そうやって出来上がるものは、もうきっと別のものだろう」


星魔法使い 「しかしそうはならない」

星魔法使い 「私は失われた魂を、呼び戻すことができる」


王子 「ほかのあわれな魂を生贄にしてかい」


星魔法使い 「その通り」

星魔法使い 「そして人のいったいはそうやって生きている」


595 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/15(火) 22:50:55.98 ID:ITu0bPoKo


星魔法使い 「たとえば狩り、たとえば戦争」


フィヨヨヨ


幼葉エルフ 「…………」


王子 (葉巻の体が変な光に包まれた)


星魔法使い 「誰かを傷つけて心身ともに自分の居場所を守る。ありふれたことです」

星魔法使い 「今回は少しいびつに見えるだけ」


幼葉エルフ 「…………」


星魔法使い 「では、魂をいただきましょう」


ブツブツ ゴニョゴニョ


王子 (何か呟きはじめた。呪文か。儀式とやらを始めてしまったのか)

王子 「葉巻……起きろ、葉巻……!」


幼葉エルフ 「…………」


星魔法使い 「ハンニャラホンニャラウンニャラカンニャラ……」


王子 (駄目か。止めないと……)

王子 「…………」

王子 (……寒い)


596 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/15(火) 22:59:50.59 ID:ITu0bPoKo


王子 (時間がたつほど体力が回復するどころか死に向かっていく気がする)


ハーピィ 「……! ……!」


王子 (ハーピィがすぐそばに)

王子 (……翼が気持ち良いなあ。寒さがやわらぐ)


ブツブツ ゴニョゴニョ


星魔法使い 「…………」

星魔法使い 「…………」


王子 (呪文がとまった)

王子 (いや、耳が聞こえなくなってきたのか?)

王子 (死ぬときはこんな感じなのか)


星魔法使い 「……おかしい」

星魔法使い 「体から魂が出てこない!」


597 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/15(火) 23:15:16.94 ID:ITu0bPoKo


幼葉エルフ 「…………」


星魔法使い 「どういうことだ。なぜ魂が出てこない」

星魔法使い 「ニュルッと鼻から出てくるはずなのに!」

星魔法使い 「まさか……!」


ゴソゴソ バッ スッポン


幼葉エルフ 「…………」 


星魔法使い 「……違う。人形じゃない、生身だ」

星魔法使い 「ならば、なぜ魂が出てこない。儀式は間違っていないはずだ!」


王子 (様子がおかしい)


598 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/15(火) 23:30:56.32 ID:ITu0bPoKo


星魔法使い 「……! まさか」

星魔法使い 「死んでいるのか? 料理にまぜた毒がききすぎたのか!?」

星魔法使い 「だとしたら逝ってしまったのか、魂はもう……」


幼葉エルフ 「…………」


星魔法使い 「ば、ばかな……せっかく良質な魔力をもつ魂が手に入るはずだったのに!」


??? 「…………」


星魔法使い 「あああ、そんな、せっかくまた君と……こんなことで……」


王子 (…………)


599 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/15(火) 23:41:59.64 ID:ITu0bPoKo


星魔法使い 「い、いや、まだその辺りをさまよっているかもしれない」

星魔法使い 「館を探せばどこかに、いや……」


王子 (……何が起きているんだ)

王子 (どうして星魔法使いは取り乱しているんだ)


星魔法使い 「ここにもいるじゃないか。魔力ある魂が」


ハーピィ 「…………」


星魔法使い 「なぜ気がつかなかったのでしょう」

星魔法使い 「いや、分かっていたのにその気にならなかった……」


ハーピィ 「…………!」


王子 「…………ッ」

王子 (ハーピィに目をつけたか!)


600 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/15(火) 23:59:30.83 ID:ITu0bPoKo


星魔法使い 「そうだ、この少女の魂をつかえば……」


ハーピィ 「…………ッ」


王子 「逃げろ、ハーピィ……!」


ハーピィ 「…………」


ギュッ


王子 「ち、違う、早く……お願いだからはやく逃げ……」


星魔法使い 「待っていておくれ愛しい妻よ。この少女の魂を取り出して、すぐに君の魂にしていれてあげるから……」


??? 「…………」


王子 「……ッ」


ググッ


星魔法使い 「……立ち上がりますか。どこにそんな力を残しているのか」

星魔法使い 「まったく邪魔な!」


ゴオッ


王子 「……!」


601 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/16(水) 00:13:17.25 ID:8I81p/exo


バリン


星魔法使い 「!?」

星魔法使い 「これは……!」


金の矢


王子 (光が矢みたいに飛んできた……?)


ガシャン ガシャン ガシャン ガシャン

ドスッ


王子 (魔法の壁を壊して、祭壇に突き刺さった)


星魔法使い 「馬鹿な、この魔法は彼女の……!」


ゴオッ


王子 (今度は風が……)


602 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/16(水) 00:35:22.78 ID:8I81p/exo


星魔法使い 「風? どことも繋がらないこの地下礼拝堂に」

星魔法使い 「魔法か!」


幼葉エルフ 「…………」


??? 「…………」


王子 (風が祭壇の方へ。……風か)


星魔法使い 「させるものですか!」


ゴオッ


王子 (魔法で応戦する気か。それなら)

王子 「……うるぁッ」


星魔法使い 「!」


ヘロン ガキン


星魔法使い 「おのれ、剣を振る力までありましたか!」


王子 「くそっ、外した……」

王子 「しかし隙はできただろう」


ビュオ


??? 「…………」


星魔法使い 「しまった!」


王子 (風が星魔法使いの妻らしき女性をさらって)

王子 (吹き抜けの二階の方へ消えていった)


星魔法使い 「あああ! 待ってくれ妻よ! スイートハニー!」


幼葉エルフ 「…………」


ゴトン


王子 (葉巻の体はふわりと持ち上がって、その場で落ちた。星魔法使いの魔法に邪魔されたのか?)

王子 (間抜けな姿で頭から落ちたけど大丈夫かな)


603 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/16(水) 01:14:01.54 ID:8I81p/exo


星魔法使い 「おのれ……誰か二階にいるのですか!」

星魔法使い 「私の妻を返しなさい!」


ヒタ ヒタ ズル ズル


王子 (ねっとりとひきずるような不吉な足音)


ハーピィ 「…………」


ズル ズル

ズル……


ゾンビ娘 「…………」


王子 (礼拝堂の吹き抜け二階にゾンビが現れた。あれもゴーレムか?)

王子 (しかし、あの姿……)


星魔法使い 「あ、ああ、君は……」


ゾンビ娘 「……うふふ。いやだわ、怖い声を出して」

ゾンビ娘 「私はどこにも行かないわよ」

ゾンビ娘 「ダーリン」


王子 (……そうか。腐ってはいるが、あれは)


星魔法使い 「……す」

星魔法使い 「スイートハニー……」


604 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/16(水) 09:09:43.23 ID:8I81p/exo


ゾンビ娘 「ふふふ……」


王子 (腐るというより、干からびているようだ)


星魔法使い 「な、なぜ」


ゾンビ娘 「ここにいるかって?」

ゾンビ娘 「ダーリンと私の家じゃない。何の不思議もないでしょう」


星魔法使い 「しかし、君の魂はまだ……」


ゾンビ娘 「何を言っているの。ここにいるじゃない」

ゾンビ娘 「……ああ。もしかして、こちらの体の方が良いのかしら」


??? 「…………」


王子 (星魔法使いの妻のゾンビが)

王子 (腐っていない星魔法使いの妻を抱えている)


ハーピィ 「…………」


ゾンビ娘 「せっかくダーリンがつくってくれた体だものね」

ゾンビ娘 「じゃあ、こちらに移ることにしましょう」


605 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/16(水) 09:34:18.47 ID:8I81p/exo


ゴポ


星魔法使い 「な、何だ……!」


王子 (ゾンビ娘の干からびた顔面から血の塊が飛び出して)

王子 (???の中に入っていく)

王子 (さっきの風に血の塊……あれはやはり)


??? 「…………」


ゴポゴポ ギュルギュル


??? 「…………」

葉ニーエルフ 「……うふふふふ」


王子 (葉巻なのだな)


ハーピィ 「…………」


606 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/16(水) 09:36:26.96 ID:nTgvOHsAo
ハニーwww
607 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/16(水) 10:06:00.22 ID:8I81p/exo


幼葉エルフ 「…………」

幼女魔王 「…………」


王子 (こっちはすでに抜け殻だったのだな)

王子 (いつからだろう。……星魔法使いは気がつかなかったのか?)


葉ニーエルフ 「さあ、ダーリン。あなたのスイートハニーが戻ってきたわよ」


星魔法使い 「血の魔術……なんとまがまがしい……」

星魔法使い 「違う。あなたは私の妻じゃない。別のものだ!」

星魔法使い 「誰だ! 私の大切な妻の体をもてあそぶ、あなたは誰だ!」


葉ニーエルフ 「…………」

葉ニーエルフ 「……ふふふ」


フッ


王子 「おや、二階が暗くなったぞ」


608 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/04/16(水) 10:14:34.43 ID:pVD/8MLc0
葉ニーエルフwwwwwwwwwwwwww
どんどん名前に原型がなくなっていくwwwwwwwwww
609 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/16(水) 10:33:05.11 ID:8I81p/exo


ヴァカッ


王子 (どこからともなく光の柱が降ってきた)

王子 (光の下にはやはり……)


葉ニーエルフ 「……あるときは妖しい葉巻売りの美少年」


王子 (葉巻)


葉ニーエルフ 「またあるときは、哀れな体の眼鏡司書」


ハーピィ 「…………」


葉ニーエルフ 「またまたあるときは、桃色髪のキュートな美少女」

葉ニーエルフ 「またまたまたあるときは、スイートハニーなフレッシュゴーレム」

葉ニーエルフ 「しかして、その正体は……」


ヴァカカカカッ


星魔法使い 「ううっ!? この地下礼拝堂に強い光が……!?」


「エルフラッシュ!」


王子 「何か変な声が聞こえたぞ」


ハーピィ 「…………」


カカカカ……

カッ



葉ニーエルフ 「腐敗の申し子、黒花エルフさ!」



610 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/16(水) 10:34:44.64 ID:8I81p/exo


星魔法使い 「……く、黒花エルフだと!?」


王子 「…………」

王子 (……さらば、あの町の日々の葉巻エルフよ)


ハーピィ 「…………」


611 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/16(水) 11:14:30.89 ID:8I81p/exo


幼女魔王 「…………」


星魔法使い 「取り出せなかった魂……そうか、そのはずだ。取り出せないはずだ」

星魔法使い 「魂はそちらに移動していたのだから!」


葉ニーエルフ 「その通り」


星魔法使い 「返しなさい……二階のエルフよ、妻を返せ!」


葉ニーエルフ 「魔法ずくでやってみれば良い」

葉ニーエルフ 「この人形の体が壊れることになるだろうがね」

葉ニーエルフ 「苦労したのだろ。これ一体つくるために、いったいどれだけの死体をつかったのやら」


星魔法使い 「くっ……!」


葉ニーエルフ 「けけけ……」

葉ニーエルフ 「だが、そうだな。こととしだいによっちゃあ返さないわけでもない」


星魔法使い 「なに?」


葉ニーエルフ 「そこの二人ともうひとつの体をこちらに返せ」

葉ニーエルフ 「そうしたら返してやるよ」

葉ニーエルフ 「干からびたやつもつけて」


王子 (悪人め……)


ハーピィ 「…………」


612 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/16(水) 11:23:56.58 ID:8I81p/exo


星魔法使い 「…………」

星魔法使い 「…………っ!」


タタタッ


幼女魔王 「…………」


王子 「! まずい、祭壇へ……!」


星魔法使い 「……く、ふふふ」


幼女魔王 「…………」


王子 (葉巻の体を……いや、もともとは違うけど)

王子 (人質にとられてしまった)


613 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/16(水) 11:47:12.79 ID:8I81p/exo


葉ニーエルフ 「……何のつもりだ」

葉ニーエルフ 「裸の乙女の首に武器をつきつけて」


星魔法使い 「一つさしだして三つも取り戻そうなどとは、ムシの良い話」

星魔法使い 「先にあなたが返しなさい。妻の体を!」

星魔法使い 「でなければ、あなたのもとの体を解体しましょう」


王子 (違うけど)


葉ニーエルフ 「……へえ、そうくるか」

葉ニーエルフ 「この体はとても大切なものらしいから、これひとつで手負いと抜け殻と少女くらい返してもらえると思ったが」

葉ニーエルフ 「なるほど」

葉ニーエルフ 「お前にとって、大切な妻はその程度の価値しかないのだな」


星魔法使い 「黙りなさい!」

星魔法使い 「ただの脅しではありませんよ……!」


葉ニーエルフ 「……決裂というわけだ」

葉ニーエルフ 「ならしかたない」


タン


星魔法使い 「!」


王子 (二階から倒れるように飛び降りた……!)


ハーピィ 「…………」


614 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/16(水) 11:57:18.75 ID:8I81p/exo


グシャ


葉ニーエルフ 「…………」


王子 (頭から落ちた……)


星魔法使い 「そ、そんな。あああ……」

星魔法使い 「うわあああーー!」


ダダダダダ


王子 (悲鳴を上げて葉巻が落ちた方へ駆けていく)

王子 「今のうちに祭壇にある体を……!」


ズル ズル


王子 (うう、体が重い……)


ハーピィ 「…………」


615 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/16(水) 12:18:15.18 ID:8I81p/exo


幼女魔王 「…………」


王子 「……よし」

王子 「目立った傷はないようだ」


ハーピィ 「…………」


王子 「裸じゃかわいそうだな。とりあえず服をかぶせ……」


幼女魔王 「…………」


ガシ


王子 「!?」

王子 (腕でつかまれた)

王子 「……葉巻なのか? この子の中にいるのか?」


幼女魔王 「…………」


ピロリン


王子 「光。……おお、腹の傷が癒えていく」


幼女魔王 「…………っ」


王子 (目をあけた)

王子 「おい、葉巻。お前なのか」


幼女魔王 「…………」

幼葉エルフ 「王子」


616 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/16(水) 12:33:20.91 ID:cnEHnTyro
腹に穴空いてるわりに、所々余裕が見える王子が面白い
617 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/16(水) 14:07:47.17 ID:8I81p/exo


王子 「葉巻……」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「飛ぶぞ」


王子 「うん?」


ヒュオッ


王子 「うわっ……風が」

王子 「そうか、城やエルフの里でやった魔法か」


ハーピィ 「…………」


ゴオオ


王子 (二階へ飛ばされる。葉巻が現れた方だな)


618 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/16(水) 14:45:55.58 ID:8I81p/exo


星魔法使い 「あああ……うわああ……」


王子 (星魔法使い。頭上を飛んでいくおれたちに目もくれず)

王子 (妻の体にとりついて泣いている)


スタ


王子 「ととっ……」

王子 「着地は慣れないな」

王子 (少し腹も痛む)


幼葉エルフ 「よっ、と」

幼葉エルフ 「癒しはしたが、お前は大怪我人だ。気をつけろよ」


王子 「ああ」


幼葉エルフ 「ハーピィは……大丈夫みたいだな」


ハーピィ 「…………」


王子 「お前は大丈夫なのか」


幼葉エルフ 「かなり魔力は消耗したが、問題ないね」


王子 「そうか」

王子 (素っ裸で大丈夫かと言うつもりだったが、やめておこう)


619 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/04/16(水) 20:21:18.85 ID:CDXRsPwr0
幼女魔王自身が覚醒したかと思ったが葉巻だったか
620 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/17(木) 07:20:45.77 ID:RHpe3evC0
とりあえず通報は皇帝にすればいいのか

621 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/17(木) 16:54:39.02 ID:hZkgq9jbo


王子 「無事なようで良かったよ」

王子 「上着をどうぞ」


幼葉エルフ 「すいませんねお父さん」


ガサゴソ


幼葉エルフ 「……お前はなかなか大変だったようだな」

幼葉エルフ 「腹に穴まであけて」


王子 「吐き気がしっぱなしだよ」

王子 「……この仮面を通して見ていたんじゃないのかい?」


幼葉エルフ 「いいや。どうもそういうのを邪魔する術がほどこされているらしい」

幼葉エルフ 「それに、こっちもこっちで忙しかったんだ」

幼葉エルフ 「……ははは、ぶかぶかだ。細身とはいえ、王子様も立派な男だというわけだ」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「ふふふ、うらやましいかハーピィ。王子の服だ。お前の服と交換してやっても良いぞ」


ハーピィ 「…………?」


幼葉エルフ 「……それがお前の良いところさ」


王子 「ほれ、前とめろ」


622 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/17(木) 17:36:27.51 ID:hZkgq9jbo


幼葉エルフ 「ふふふ。お前がここに来るとはなあ」


王子 「何だ。お得意の計画通りじゃないのかい」


幼葉エルフ 「オレの体をさらって裸にひんむきやがったゴーレム狂いが下で泣いて」

幼葉エルフ 「オレがここにいるのはそうだが」

幼葉エルフ 「お前とハーピィは今ごろ、勇者どのたちと仲良くゾンビとして館を徘徊しているはずだったんだ」


王子 「なに」


幼葉エルフ 「ゾンビパウダーでゾンビにされた奴らは共食いしたりしないから、その方が安全だと思ったんだよ」

幼葉エルフ 「もとをたてばゾンビ状態もとけるし」


王子 「そうだったのか」

王子 「じゃあおれは、腹のえぐられ損だったのか……?」


幼葉エルフ 「まあ、ゾンビにならずにすむならそれが一番良いさ。良い経験もつめただろうし」

幼葉エルフ 「……どうしてお前たちはゾンビになっていないんだ?」


王子 「お前の弟子がとても良い働きをしてくれてね。本人はいまゾンビだけど」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「……へえ、あいつがね」


王子 「嬉しそうだな」


幼葉エルフ 「まさか」


623 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/17(木) 18:00:03.30 ID:hZkgq9jbo


王子 「本当にあの子には助けられたよ。戦ってグチャグチャにしちゃったけど」


幼葉エルフ 「ははは、そりゃあ良い」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「…………」


王子 「ハーピィについては、どうしてゾンビになっていないか分からないんだよな」

王子 「ならなくて良かったけど」

王子 「お前の方こそ、どうしてゾンビに……」


幼葉エルフ 「待て」


王子 「うん?」


幼葉エルフ 「お前……グチャグチャって」


王子 「……ああ」

王子 「大丈夫、殺しちゃいないよ」


幼葉エルフ 「……そうか」


王子 (珍しい。ここまで分かりやすい表情をするとは)

王子 「あの子はゾンビ状態のまま、尻尾を分身にかえて放ったらしくてね」

王子 「おれもはじめて戦ったときは驚いたよ。それで……」


幼葉エルフ 「待て」


624 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/17(木) 18:08:48.06 ID:hZkgq9jbo


王子 「何だよ。早く情報交換して下の彼をどうにかしないとだろう」


幼葉エルフ 「あの化け乳、そんなことできるかよ」


王子 「お前、知らなかったのかよ。お前が魔法で細工したとばかり思っていたけど」


幼葉エルフ 「そんな魔法あってたまるか」


王子 「なに。じゃあ、ろうそく職人はなぜ……」


幼葉エルフ 「おそらく、特殊な条件が重なってエルフの呪いが突然変異したのだろう」

幼葉エルフ 「魔術事故ってやつだ」


王子 「そんなこともあるんだなあ……」


幼葉エルフ 「尻尾で分身か」

幼葉エルフ 「気持ち悪いな、あいつ」


王子 「お前j……」


625 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/17(木) 18:52:01.04 ID:hZkgq9jbo


ハーピィ 「…………」


王子 「囚われエルフだったお前は何をしていたんだよ」


幼葉エルフ 「部屋に戻ったあと、すぐにあの愛妻魔法使いもどきにさらわれて」

幼葉エルフ 「地下室やらフレッシュゴーレムやらいろいろと把握したところでこの体を抜けて、探し物をしていた」


王子 「……見つかったのかい」


幼葉エルフ 「ああ。おかげさまでね」


コツ コツ


王子 「何だ。そっちの暗がりに何かあるのか?」

王子 「……!」

王子 「これは……」


幼葉エルフ 「ちょうど良い、お前も手伝え」


626 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/17(木) 19:11:52.99 ID:hZkgq9jbo


…………


??? 「…………」


星魔法使い 「うう……ううう……」

星魔法使い 「そんな、そんな……せっかく君の体を……」


幼葉エルフ 「素直にオレの言うとおりにしていれば良かったのになあ」


星魔法使い 「…………!」


幼葉エルフ 「おかげで自分の館でぜんぶ失って、見下ろされることになる」


王子 「…………」


ハーピィ 「…………」


星魔法使い 「……おのれ!」

星魔法使い 「よくも、私の愛しい妻を!」


ゴオッ


幼葉エルフ 「はんっ」


バシュ


王子 (葉巻が手をかざしただけで、星魔法使いの魔法がかき消された)

王子 (くそう。おれは避けるだけで精一杯だったってのに)


627 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/17(木) 19:22:58.30 ID:hZkgq9jbo


星魔法使い 「……!」

星魔法使い 「その魔法。やはりあなたは……!」


幼葉エルフ 「なるほど、厄介な攻撃魔法だ。ひろく使われている既存の魔法とは違い」

幼葉エルフ 「そして威力も高い」

幼葉エルフ 「備えなしじゃあ盾の魔法使いでも避けることでしか対処できないだろう」


星魔法使い 「私の魔法を打ち消せるのは、知り尽くした彼女だけ……」


幼葉エルフ 「…………」


星魔法使い 「あなたは、私の愛しい妻の知識を盗んだのだな!」


幼葉エルフ 「…………」

幼葉エルフ 「違うだろ」

幼葉エルフ 「人の生き死にさえろくに分からないまがい物が」

幼葉エルフ 「そんな口をきくんじゃあないよ」


628 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/17(木) 21:38:00.28 ID:hZkgq9jbo


星魔法使い 「何を言って……」


幼葉エルフ 「それはお前の妻なんかじゃあないよ」

幼葉エルフ 「ただの肉のつぎはぎじゃないか」


??? 「…………」


星魔法使い 「違う。妻だ。歪みなく蘇らせた妻の体だ」

星魔法使い 「魂さえ入れたら、完全な人としての妻となる」

星魔法使い 「なるはずだった! いや、いまも!」


幼葉エルフ 「そしてそれにお前の妻の魂は入らない」

幼葉エルフ 「ぜったいに入らない」


星魔法使い 「手に入れる」

星魔法使い 「あなたの魂をつかって妻の魂を取り戻し、体もまた!」


ゴオッ


幼葉エルフ 「…………」


バシュ


星魔法使い 「…………ぐぅっ!」


王子 (今度は手さえ動かさずに……)


629 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/17(木) 22:14:00.26 ID:hZkgq9jbo


幼葉エルフ 「よしんばオレの腐った魂を抽出し、変換したとして」

幼葉エルフ 「お前の妻は戻ってなどこない」

幼葉エルフ 「このハーピィの、あるかどうかも分からない魂を使ったとしても」


ハーピィ 「…………」


星魔法使い 「……私の錬金術程度では、妻の魂を呼び戻すことはできないと言いたいのですか」


幼葉エルフ 「お前は人間をつくることはできるだろう」

幼葉エルフ 「失われたゾンビパウダーの精製。独立した魔法もろもろはもちろん」

幼葉エルフ 「魂派の錬金術、フレッシュゴーレム」

幼葉エルフ 「どれも、一人の人間が生涯を捧げたところで達することのできない域にあるのだから」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「だが。魂の行く末や在り処についてオレは知るよしもないが」

幼葉エルフ 「ぜったいに、お前の妻は戻ってこない。なぜなら」

幼葉エルフ 「お前に愛する妻などいないのだから」


630 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/17(木) 22:17:21.67 ID:Fs9W1PZxO
つまり二次元に恋してしまったのか…?
631 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/17(木) 22:19:33.82 ID:hZkgq9jbo


王子 「…………」


ブンッ


星魔法使い 「!?」


ドサッ


星魔法使い 「……な、何だ。投げた」

星魔法使い 「人?」

星魔法使い 「いや、私のつくったゴーレムか?」

星魔法使い 「……ちがう、これは」


魔法使いのミイラ 「…………」


星魔法使い 「……私だ」


632 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/17(木) 22:25:28.49 ID:M9WvqGik0
なんやと…
633 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/18(金) 00:19:58.36 ID:rLxMoQmHo


星魔法使いのミイラ 「…………」


星魔法使い 「なぜ、私がここに転がっている」

星魔法使い 「……そ、そうか、罠だ」

星魔法使い 「このような偽者で私をだまそうとするとは……!」


幼葉エルフ 「……フレッシュゴーレム。死肉をつなぎあわせてかたちにしたゴーレム」

幼葉エルフ 「肉はばらばらに腐り、継ぎ目を隠すことも容易ではない」

幼葉エルフ 「多くの場合、エルフのそれを除いて、フレッシュゴーレムは墓から蘇ったゾンビやグールに近い死の異形」

幼葉エルフ 「生の短い人間が、魂を持ち血の通った自然の生き物と見分けがつかないほどのフレッシュゴ−レムをつくるなど」

幼葉エルフ 「狂気のさたとも言える」


星魔法使い 「……何が言いたいのですか」


幼葉エルフ 「見事なもんだね」

幼葉エルフ 「人間として生き、人間として死ぬゴーレムを、人間がつくってしまうとは」

幼葉エルフ 「いいや、他人も、そして自分さえそうだと気づかないのならば」

幼葉エルフ 「それはもはや、本当にゴーレムではなく人間なのかもしれない」


634 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/18(金) 00:30:30.46 ID:rLxMoQmHo



星魔法使い 「何が言いたい!」

星魔法使い 「こんなものをつかってまで、何を!」


ゴオッ パコーン


星魔法使いのミイラ 「…………」

死体の破片 「…………」


王子 (自分の死体を粉々に……)


幼葉エルフ 「……しかし誰しもの認識の外側にある事実も、また事実であり」

幼葉エルフ 「お前は妻に死なれた星魔法使いを演じている」

幼葉エルフ 「忠実なゴーレムにすぎない」


635 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/18(金) 01:00:14.79 ID:rLxMoQmHo


星魔法使い 「…………」

星魔法使い 「ふざけるな……」

星魔法使い 「私は人間だ! 私は……」


幼葉エルフ 「ああ。どこからどう見ても人間だ」

幼葉エルフ 「しかしそういうゴーレムをお前はつくれるのだろ」

幼葉エルフ 「そういう技術が、ここにはあるのだろ」


星魔法使い 「……馬鹿馬鹿しい。話すだけ無駄のようだ」


幼葉エルフ 「そうだ。馬車で話した石派の錬金術についてだが、間違いがあった」


星魔法使い 「…………」


幼葉エルフ 「石派は最大の目標であった純粋な石の生成成功を機に廃れ」

幼葉エルフ 「魂派に併合されるかたちで消滅したそうだ」

幼葉エルフ 「現在の主流なんかじゃない」


星魔法使い 「…………」


王子 (お湯にとかすと肩こりに効く石だとか言っていたもんなあ)


ハーピィ 「…………」


636 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/18(金) 01:22:14.36 ID:rLxMoQmHo


星魔法使い 「そうですか。……ああ、そうでしたね」

星魔法使い 「石の生成という偉業を達成した魔法使いは、同時に石派が嘲笑の的となる事態も招いてしまったのでしたね」

星魔法使い 「なにせ、石はつくるのが難しいだけで、その苦労に見合うだけの効果を秘めていなかったのだから」

星魔法使い 「忘れておりました」

星魔法使い 「それが何か?」


幼葉エルフ 「石派の消滅は、百年をこえる昔のことだそうだ」


星魔法使い 「…………」

星魔法使い 「それが何か」


幼葉エルフ 「魔法使いの聖地にいたお前の記憶に」

幼葉エルフ 「百年をこえる昔の……派として数えられていたころの石派の錬金術があるのなら」

幼葉エルフ 「人間だというお前の、その若々しい姿は何なのだろうな」


星魔法使い 「…………」

星魔法使い 「…………!」

星魔法使い 「違う……違う……!」


幼葉エルフ 「お前がどう答えるかはどうでも良い」

幼葉エルフ 「大事なのは、お前がわずかでも自覚することさ」


637 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/18(金) 01:40:55.90 ID:ToudNeUL0
小憎らしいほどの精神攻撃
638 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/18(金) 02:05:33.98 ID:rLxMoQmHo


星魔法使い 「私は……違う、私は、星魔法使い……!」


王子 (星魔法使いが頭を抱えて苦しみだした)


幼葉エルフ 「…………」


星魔法使い 「そうだ。学院であの日、彼女と出会って……」

星魔法使い 「孤児だった……孤児だった彼女と、私も……」

星魔法使い 「優しい人だった。苦しいはずなのに、いつもおだやかに笑って……」

星魔法使い 「苦しい? 彼女は笑っていたじゃないか。どうして……」

星魔法使い 「実験? 実験……」


ブツブツ ボソボソ


王子 「……何を言っているんだ、彼は」


幼葉エルフ 「さあ。どうやら魔法使いの聖地も大変なようだ」


星魔法使い 「……逃げたんだ」

星魔法使い 「二人で一緒にあの地獄から逃げ出して」

星魔法使い 「必死に逃げて……」

星魔法使い 「でもあと少しというところで、追っ手どもが彼女を……」

星魔法使い 「だから、私は……」


ハーピィ 「…………」


星魔法使い 「死んだ……」

星魔法使い 「私の全部を彼女の盾にして、死んだ……!」

星魔法使い 「命をかけなきゃ、魔法をつかう力も残っていなかったから!」


639 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/18(金) 02:43:33.91 ID:rLxMoQmHo


星魔法使い 「……では、私は本当に」

星魔法使い 「この体は……」

星魔法使い 「そんな。そんな……ッ」


王子 「…………」

王子 (星魔法使いがくずおれた。心が折れたみたいに)

王子 (……命をかけて魔法を使う、か)


幼葉エルフ 「…………」


ハーピィ 「…………」


星魔法使い 「なぜだ……」

星魔法使い 「なぜだ!」


ゴオッ


幼葉エルフ 「…………」


バシュ


星魔法使い 「ならばなぜ、私がここにいて、彼女がいない!」

星魔法使い 「なぜ私はここで、彼女の体と魂を呼び戻さなくちゃならない!」

星魔法使い 「この体をつくったのは誰だ! なぜ私はゴーレムになってまで!」


幼葉エルフ 「……誰もいない」


星魔法使い 「……!?」


640 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/18(金) 02:55:11.05 ID:rLxMoQmHo


幼葉エルフ 「星魔法使いとその妻はどこにもいない」

幼葉エルフ 「ずいぶん前から、ここにはただお前というゴーレムだけがいた」


星魔法使い 「私はここにいる! 星魔法使いはここだ!」

星魔法使い 「私の魂はここにある! 妻を愛しながらここにある!」

星魔法使い 「私は星魔法使いだ! 私は……」


王子 「…………」


ブン


星魔法使い 「! また……!」


ドサ


???B 「…………」


星魔法使い 「あ、ああ……妻よ……」


王子 「…………」


ブン ブン


???C 「…………」


星魔法使いのミイラB 「…………」


星魔法使い 「…………!」


ドサ ドサ


641 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/04/18(金) 08:51:54.62 ID:dF4t6eez0
おおお……重い話になってきた。
wktk
642 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/18(金) 09:45:32.25 ID:rLxMoQmHo


ドサ ドサ


星魔法使いのミイラたち 「…………」


???たち 「…………」


星魔法使い 「な、何だ。何だこれは。どうしてこんなにたくさん……」


ドサ ドサ


幼葉エルフ 「死者を蘇らせる試みは多くの分野で行われている」

幼葉エルフ 「たしかに、死者が生前の意志を持ちながら何らかのかたちで存在する例もあるようだ」

幼葉エルフ 「だが」

幼葉エルフ 「他の魂をつかって、死んでしまった誰かの魂とまったく同じものをつくる術」


星魔法使い 「…………」


幼葉エルフ 「その術で出来上がるのは、実は術者の心やら脳みそやら、魂やらに焼きついた」

幼葉エルフ 「術者の記憶の中の誰か、の魂だ」

幼葉エルフ 「どこまで精度をあげたところで……」

幼葉エルフ 「あの人ならこういう行動をとるはずだ。こう考えるに違いない」

幼葉エルフ 「……という域を出ない」


643 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/18(金) 11:26:13.11 ID:rLxMoQmHo


星魔法使い 「それでは……まるで」


幼葉エルフ 「もしも二人の人間がいて」

幼葉エルフ 「一人が死に、のこされた方の者が」

幼葉エルフ 「自身の記憶を頼りに、死んだ者の魂をその術でつくりだし」

幼葉エルフ 「やがて死をむかえ」

幼葉エルフ 「今度はつくられた方の者が、その術で相手の魂を蘇らせようとしたら」

幼葉エルフ 「そしてそれが、何度も繰り返されたとしたら」


???たち 「…………」


星魔法使いのミイラたち 「…………」


王子 (おれが投げた死体は、全部魂の入っていないゴーレムだったわけだ)


幼葉エルフ 「術が行われるたびに、魂はもとのそれからかけ離れていき」

幼葉エルフ 「やがて、別のものになるのだろう」

幼葉エルフ 「片方の知りえない、もう片方の姿を削りながら」

幼葉エルフ 「二人の間にあった同じものだけを残しながら」

幼葉エルフ 「……それは、関係のない者からすれば滑稽なくらいに異常なものとしてあらわれるのかもしれない。たとえば」

幼葉エルフ 「亡き恋人への執着」


星魔法使い 「…………!」


644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/04/19(土) 16:56:14.32 ID:yxGZqEP20
更新ありがとう
続きが楽しみです
645 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/19(土) 19:41:04.82 ID:OywpL8tCo


王子 (彼女のつくりかたは我がことのように分かる、か)


星魔法使い 「違う。私は妻を愛している」

星魔法使い 「私は星魔法使いだ。つくられた魂なんかじゃない」

星魔法使い 「私の愛はつくられたものなんかじゃない」

星魔法使い 「私は……」


幼葉エルフ 「ほとんど人間なのだとしても」

幼葉エルフ 「お前は星魔法使いなんかじゃあないよ」

幼葉エルフ 「重ねて言おう。お前に愛する妻なんかいない」


星魔法使い 「違う!」


幼葉エルフ 「星魔法使いを失った女が、自分の記憶にある星魔法使いを頼りにつくったのがお前だ」

幼葉エルフ 「そしてつくられたお前が女を失い、お前の記憶にある女を模してつくったのがお前だ」

幼葉エルフ 「お前は長い時間をかけて、自分の魂の複製と劣化を繰り返していたにすぎない」

幼葉エルフ 「愛し合う男女を交互に演じながら」


星魔法使い 「違う。違う。私は、私の魂は……」


幼葉エルフ 「違わない。複製を重ねることで劣化を続け」

幼葉エルフ 「ついに自分が何者なのかも分からなくなった」

幼葉エルフ 「辛うじて愛の残りカスにしがみつきながら二つの器に翻弄される」

幼葉エルフ 「魂のキメラ」

幼葉エルフ 「それがお前だ」


星魔法使い 「……! ……ッ……ッ」

星魔法使い 「……ううぅうう」

星魔法使い 「ううぅうぅうう……!!」


646 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/19(土) 20:16:16.32 ID:OywpL8tCo


星魔法使い 「違う……違う、違う……!」


ガリ ガリ ガリ


王子 「……苦しみ方が変わった」

王子 「頭を掻き毟るようにして、危険な感じだ」


幼葉エルフ 「嘘をついているわけじゃないから」

幼葉エルフ 「少しでも外からきっかけをつくったら脆いらしい」

幼葉エルフ 「しょせんは魂のキメラさ」


王子 「気に入ったんだな、魂のキメラ」


ハーピィ 「…………」


星魔法使い 「違う、違う、違う、違う」

星魔法使い 「私は、私は、わだ、じ………」


グググ


星魔法使い 「わた、し、はぁ゛……!」


パキョッ


王子 「……!」

王子 「自分の頭を、両手で……」


647 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/20(日) 00:07:24.17 ID:S9Jpbq8Yo


星魔法使い 「…………」

首なし星魔法使い 「…………」


ドシャ


首なし星魔法使い 「…………」


王子 「倒れて動かなくなった」

王子 「自滅か……」


幼葉エルフ 「事実を受け止めきれなかったんだろう」

幼葉エルフ 「最初から自分が何者なのか分かっていれば」

幼葉エルフ 「こんなことにはならなかったのに」


???たち 「…………」


星魔法使いのミイラたち 「…………」


首なし星魔法使い 「…………」


王子 「しかたない。自分がゴーレムだなんて、思いもしないさ」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「大丈夫さ」

幼葉エルフ 「お前が、しかたないと言える人間なら」


648 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/20(日) 00:23:32.22 ID:S9Jpbq8Yo


王子 「自分がゴーレムだなんて知って、おれはしかたないで済ませられるかなあ」


幼葉エルフ 「自信がないなら、あらゆる想像をして心の準備でもすることだね」

幼葉エルフ 「さて、行くか」


王子 「帰るのか。あのゾンビだらけの道を……」


幼葉エルフ 「その前にやることがある」

幼葉エルフ 「礼拝堂に降りるぞ」


トンッ


王子 「まだ何かあるのか……」

王子 「ハーピィ、飛び降りられるかい?」


ハーピィ 「…………」


王子 「よし、じゃあ行こう」


トンッ


王子 「よっと」


シュタ


ハーピィ 「…………」


王子 「…………」


幼葉エルフ 「…………」


ドム


王子 「いてっ」

王子 「あ、そうか。後ろを向いていよう」


ハーピィ 「…………」


シュタッ


ハーピィ 「…………?」


幼葉エルフ 「魔性の女とはいえ、もっと恥じらいを持てよハーピィ」


王子 「……今度、丈の長い服を手に入れなきゃな」


649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/20(日) 06:39:18.64 ID:qBDejb7n0
何気に珍しい倒しかただと感心してたら…

王子…
650 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/24(木) 00:06:59.42 ID:QosNTjNB0
まーだかなまーだかな
651 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/24(木) 19:25:48.70 ID:QrWSysM6o


幼葉エルフ 「……こっちだ」


王子 「この礼拝堂のさらに奥。何があるんだ」


幼葉エルフ 「さあね。だが、何か不思議なものがあるのは感じる」

幼葉エルフ 「けが人のお前に無理はさせないつもりだが、注意しておけよ」


王子 「へえ。分からないなんて、お前にしちゃ珍しいな」


幼葉エルフ 「オレはちょっと死ににくいだけで、全知全能というわけじゃない」

幼葉エルフ 「あまり買いかぶるなよ」


王子 「何がちょっとだよ」

王子 「この旅で何度、お前が死んだと思ったことか」


幼葉エルフ 「あの程度でオレが死ぬもんか」

幼葉エルフ 「あまり見くびるなよ」


王子 「どっちだよ。かぶるかくびるか、はっきりさせてくれよ」


幼葉エルフ 「どっちもだよ。……きばるで良いよ、間をとって」


王子 「きばるってお前、はははは。きばるって……」


幼葉エルフ 「……王子?」


王子 「はは……」


パタッ


ハーピィ・幼葉エルフ 「!?」


652 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/24(木) 20:44:06.92 ID:QrWSysM6o


…………


ファオン ファオン ファオン


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「ハーピィ、今度は弱めにあおいでくれ」


ハーピィ 「…………」


ファサ ファサ ファサ


王子 「……ありがとう、ハーピィ」

王子 「すまん。急に意識がとんだ」


幼葉エルフ 「上で予想以上にやられたようだな」

幼葉エルフ 「回復魔法といっても、すべて元通りってわけにもいかない」

幼葉エルフ 「術者によっても効果にばらつきがあるし」


ピロリン


王子 「へえ」


キュイン パキィ シャララン


幼葉エルフ 「いくつかの種類の回復魔法をかけてみたが」

幼葉エルフ 「どうだ?」


王子 「……ああ」

王子 「だいぶ良くなった」

王子 (小さな子供に膝枕されるのも、不思議な感じだ)


653 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/24(木) 21:10:48.82 ID:QrWSysM6o


王子 「よし、さっさと奥を探索して帰ろう」

王子 「人形とはいえ、死体と一緒にいるのはどうも気分が良くない」


星魔法使いのミイラたち 「…………」


???たち 「…………」


幼葉エルフ 「術者がいなくなった今、上も似たようなもんだと思うがね」

幼葉エルフ 「さっきも言ったが、気をつけろよ」


王子 「ああ、分かっているよ……」

王子 「ん?」


星魔法使いの死体 「…………」


ギョロ


王子 「!?」

王子 (死体の全身に目が……!)


幼葉エルフ 「どうした?」


王子 (……目がすぐに消えた)

王子 「……いや」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「ああ」

王子 「星魔法使いの体中でギョロッとたくさんの目が開いた」


654 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/24(木) 21:19:00.19 ID:QrWSysM6o


幼葉エルフ 「……少なくとも、今はそうではないな」


王子 「一瞬だけ見えたんだよ」

王子 「幻覚だったのか……?」


幼葉エルフ 「奥へはオレだけで行って、お前はハーピィとここで休んでいた方が良いみたいだな」

幼葉エルフ 「もともと今回は一人でかたづけるつもりだったし……」


バキン


王子 「?」

王子 「……何かが割れる高い音」


ハーピィ 「…………」


王子 「今度は幻聴か?」

王子 「なあ葉巻……」


幼葉エルフ 「…………」


王子 「……葉巻?」


幼葉エルフ 「…………」

幼葉エルフ 「…………」


パタッ


ハーピィ・王子 「!?」


655 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/24(木) 21:28:02.67 ID:QrWSysM6o


幼葉エルフ 「…………」


王子 「おい、葉巻」

王子 「! ……全身が氷のように冷たい」


ドシャ


王子 「!」

王子 (星魔法使いのミイラがある方から不気味な音が)


星魔法使いのミイラたち 「…………」


???たち 「…………」


ドシャ ドシャ ドシャ


王子 (寝たまま飛び跳ねている?)

王子 (いや、どんどんバラバラに壊れていく)

王子 (踏み散らかされているような……)


ドシャ……


ハーピィ 「…………」


王子 「音が止まった」

王子 「……悪い予感がする」


ドシャ


王子 「……何も無いのに、石の床がへこんだ」


ドシャ ドシャ


王子 「おいおい、これは」


ドシャドシャドシャドシャ


王子 「やっぱりか!」

王子 (見えない何かがこっちに近づいてくる!)


656 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/24(木) 21:32:22.67 ID:QrWSysM6o


王子 「地面のへこみ具合からして、かなり大きいぞこれは」

王子 「ハーピィ、奥へ。葉巻が言っていた方へ逃げよう!」


ハーピィ 「…………!」


王子 「よいしょっ」


幼葉エルフ 「…………」


王子 「人に気をつけろと言っておきながら、自分がおかしくなって……!」


タタタタタ

ドシャ ドシャ ドシャ


657 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/24(木) 21:53:43.65 ID:QrWSysM6o


王子 「扉がある」

王子 「あそこに逃げ込むぞ」


ハーピィ 「…………」


タタタタタ

ギイ バタン


王子 「…………」

王子 「しまった。小さな部屋だ。行き止まりだ」


ハーピィ 「…………」


王子 「部屋の奥でヒマワリが咲いている。何でこんなところで」

王子 「……いやに天井が高いな」

王子 「! 針の穴みたいな光。天井に穴があいているのか?」


ドシャ ドシャ ドシャ


王子 「…………」


ドシャ……


ハーピィ 「…………」


王子 「……まずい」


バコンッ 

バラバラバラ


王子 「!」

王子 「くそ、一発で扉がボロボロだ!」


658 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/24(木) 22:05:36.70 ID:QrWSysM6o


王子 「いやいや、敵はどうやらかなりの巨体だ」

王子 「扉を破れたところで、ここには入って来れまい」


ガコッ ドシン

パラパラ


王子 「……壁が震える。力任せに入り口をひろげようってのか」

王子 「何なんだ、この目に見えない猪突猛進な化け物は」


幼葉エルフ 「生き物かも分からない」


王子 「葉巻」


幼葉エルフ 「…………!」


ピシ ピシ


王子 「池に氷がはるような音」


ドシャ ドシャ ドシャ

バリン


王子 「……突進してきた敵が弾かれたのか? 見えないからよく分からん」

王子 「今の音、魔法の壁か」


659 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/24(木) 22:20:01.75 ID:QrWSysM6o


幼葉エルフ 「くそ、たったこれだけの魔法で使える魔力が底をつきそうだ」


王子 「……おい、息が荒いぞ」

王子 「体も震えているし、大丈夫か」


幼葉エルフ 「ああ、しかたないさ。この体は結構敏感なんだ」

幼葉エルフ 「こんな風に尻をわしづかみにされていたら」


王子 「あ、悪い。咄嗟だったから、肩に担いで逃げるので精一杯だった」


幼葉エルフ 「冗談だよ。見捨てられなくて良かったよ」

幼葉エルフ 「何せ簡単に殺すよなんて言えちゃう存在だからな、お前にとってのオレは」


王子 「やっぱり根にもっているんじゃないか……」


幼葉エルフ 「けけけ……」


王子 (弱っているな、葉巻。体の震えもおさまっていない)

王子 (……しかし絶妙なやわらかさだ)

王子 (尻枕とか、面白いんじゃないか……)


ハーピィ 「…………」


王子 「……うん。そんな場合じゃないな、ハーピィ」


幼葉エルフ 「?」


660 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/24(木) 22:37:12.46 ID:J9m2kK47O
このドラム缶ょぅι ゙ょ、要らないなら俺にくれ
すげー大切にするぞ
661 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/24(木) 23:24:00.63 ID:QrWSysM6o


ドシャ ドシャ ドシャ


王子 「ありゃ何だろうか」

王子 「馬鹿力のくせに目立たないどころか、目に見えない。縁の下の力持ちなんてもんじゃないぞ」


幼葉エルフ 「分からない」

幼葉エルフ 「探ろうにも気配がひどく薄いし、つかみどころが無くて異様な感じだ。気持ちが悪い」


王子 「震え、まだ止まらないみたいだな」


幼葉エルフ 「言っておくが怖いんじゃないからな」

幼葉エルフ 「お前、たしか目がどうこう言っていたな」


王子 「ああ」


幼葉エルフ 「……視線には特別な力が宿るという考え方がある」

幼葉エルフ 「相手を見るだけで石にしたり殺したりする魔物の話から発想を得たのだろう」


王子 「そういうの、おとぎ話かと思っていたけど」

王子 「あれがその類かもしれないってのか?」


662 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/24(木) 23:27:32.69 ID:QrWSysM6o


幼葉エルフ 「お前の見た目ってのと関係があるならそうなんだろう」

幼葉エルフ 「……くそ。魂そのものを、氷柱でめった刺しにされた気分だ」


王子 「まずいじゃないか」

王子 「服もう一枚貸そうか」


幼葉エルフ 「さっきのどたばたから、はくほうの下着のかわりくらいは欲しいかなという気もするが」

幼葉エルフ 「自分とハーピィの心配でもしていろ」


ピョン


幼葉エルフ 「……う」


王子 「よろけているじゃないか」

王子 「ほら、肩かすぞ」


幼葉エルフ 「やだ」


王子 「意地張るなよ」


幼葉エルフ 「おんぶが良い」


王子 「素直だな」


ドシャ ドシャ

バリン


663 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/24(木) 23:42:09.07 ID:QrWSysM6o


王子 「よいせっ」


幼葉エルフ 「……ふふふ」

幼葉エルフ 「ああ、あそこへ行ってくれ」


王子 「ヒマワリの方か」

王子 「そうか、ヒマワリの種で魔力回復を……」


幼葉エルフ 「違う」

幼葉エルフ 「これを……」

幼葉エルフ 「あ」


ポロ


王子 「落ちたぞ」

王子 「これは……」


銀の魔法のつる


王子 「いったいどこに隠してたんだよ」

王子 「結んだつる。言葉をこめた魔法のつるか? 銀色……」

王子 「五つ集めると何か良いことがあるのか?」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「なに言ってんだ、お前……」


王子 「おい、本当に大丈夫なのか。ぐったりしているぞ」


幼葉エルフ 「……ああ、あったかいなあ、お前の背中」

幼葉エルフ 「はじめて会った日を思い出すよ」


王子 「それはこの状況で言っちゃ駄目な感じだ」


664 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/25(金) 00:12:06.59 ID:e8w3tnhLo


幼葉エルフ 「そのつるを、ヒマワリの近くで解くんだ」


王子 「かまわないが」


ドシャ ドシャ

バリン


王子 「あっちは放っておいて良いのか」


幼葉エルフ 「……正直言って」

幼葉エルフ 「この目の前の花の方が、あのうるさいのより得体が知れない」


王子 「なに」


幼葉エルフ 「オレの予想が正しければ、そのつるでどうにかなるはずだ」


王子 「…………」


ハーピィ 「…………」


王子 「ええい、ままよ」


グッ


王子 「……解けない」


665 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/25(金) 00:25:56.31 ID:e8w3tnhLo


幼葉エルフ 「ああ、そうだった」

幼葉エルフ 「ちょっと手をこっちに」


王子 「ん」


幼葉エルフ 「ついでにハーピィも」


ハーピィ 「…………?」


幼葉エルフ 「…………」


キラ


王子 (葉巻の手がおれとハーピィの手に触れたら、銀のつるが光った)


幼葉エルフ 「これで解けるぞ。やってみろ」


王子 「…………」


パラッ


銀の魔法のつるの声 『…………』

銀の魔法のつるの声 『…………』


ブツブツ ボソボソ


王子 「……呪文?」


666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/25(金) 00:26:26.12 ID:Zo2Q+DUJ0
ちょw

あと王子は通報な
667 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/25(金) 00:36:19.14 ID:e8w3tnhLo


王子 「もう少し、近づいた方が良いかな」


幼葉エルフ 「いや、ここで良いだろう」


銀の魔法のつるの声 『…………』


ジジ バチ ジジジ


王子 「!」

王子 「ヒマワリの花から、虹色の火花が」


ジジジジジ


王子 「いや……ただ火花が散っているんじゃない」

王子 「文字、なのか。これは」

王子 「花に光の文字が刻まれていく」


銀の魔法のつるの声 『…………』


ジジ ジジ


王子 「やはり文字のようだ」

王子 「しかし、こんな文字は知らない」


ジジジ 


幼葉エルフ 「…………」


王子 「……!」

王子 (葉巻の体が熱い)


幼葉エルフ 「……っ!」


パチン


王子 「!?」

王子 (葉巻が意味の分からない単語を発したら、火花が消えた)


ハーピィ 「…………」


668 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/25(金) 00:48:29.25 ID:e8w3tnhLo


王子 「魔法なのか、今のは……」


幼葉エルフ 「…………」


ガシ


王子 「……は、葉巻?」

王子 「ちょっと、苦し……爪が立ってる……」


ボオッ


王子 「! ヒマワリが」


メラメラ


王子 「燃えていく……」

王子 「おい、大丈夫なのかこれ。葉巻」


幼葉エルフ 「……ハアッ……ハアッ」

幼葉エルフ 「かひゅ……がぅう……っ!!」


王子 「おい、葉巻。何だ、苦しいのか。息ができていないのか!?」

王子 「葉巻!」


669 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/25(金) 01:04:18.28 ID:e8w3tnhLo


ガシャン


王子 「!?」

王子 「まさか、魔法の壁が破られたか……ッ」


ドシャ ドシャ

バコン

ガラララ ガラン カラン
 

王子 「扉が木っ端微塵に……」

王子 (扉のあった向こう側、まるで巨大な生き物がのた打ち回ったあとみたいだ)


ハーピィ 「…………」


ドシャ


王子 「……来るか」

王子 「…………」


幼葉エルフ 「はぅッ……ひッ…はひゅッ……」


王子 「…………」

王子 「……ハーピィ、走れるかな」


ハーピィ 「…………」


王子 「よし」

王子 「しっかりしがみついていろよ、葉巻」


670 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/25(金) 01:12:29.05 ID:e8w3tnhLo


ダダダダダ


王子 (小さな部屋から礼拝堂に出ることができた)


ドシャ ドシャ


王子 「ついてくるか……!」

王子 「急ごう、ハーピィ。この礼拝堂を出るぞ」


ハーピィ 「…………」


王子 (とは言え、さっきの道はゾンビだらけなんだよなあ)

王子 (いや、札の加護があるから大丈夫か?)

王子 (どのみち加護がきくかどうか分からん、見えないあれを相手にするよりはマシだろう)


ドシャ


王子 「……敵の足音がやんだ?」


ヒュルルル


王子 「……まさか」


ドカン ガラララ


王子 「ああっ、出口が崩れた!」

王子 「くそ、おれたちを跳び越えたってのか」


671 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/25(金) 01:25:41.98 ID:e8w3tnhLo


ガララ ゴオン

ドシャ ドシャ ドシャ


王子 「他に出口はないか?」

王子 「そうだ、二階もどこかに繋がっているはずだ」

王子 「階段は……あ、駄目だ。崩れている」


ドシャ ドシャ ボガン


王子 「うおっ」

王子 「叩き潰すような床への一撃。攻撃してきたのか?」

王子 「……崩されたところの瓦礫を上って二階に」

王子 「というのは危険か」


ドシャ ドシャ バコン


王子 「おっと……しかたない。青花エルフの修行を思い出しながら、逃げ腰で打ち合ってみるか」

王子 「札の加護がききますように」

王子 「ハーピィ、できたら葉巻を……うん、しっかりしがみついている」

王子 「少し離れていてくれるかい。かなり危険だから」


ハーピィ 「…………」


王子 「……だよなあ」


672 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/25(金) 01:35:38.46 ID:e8w3tnhLo


王子 「…………」

王子 「自然の声……自然の声」


ドシャ ドシャ ドシャ


王子 (真っすぐ突っ込んでくる)

王子 (……何だ、空気が揺らめいて見える。あれが敵なのか?)

王子 (かなりの大きさだが……いかん、集中してもはっきりと輪郭がつかめない)

王子 (逃げることを前提に、相手の力に逆らわずに受け流す……)


ドシャ ドシャ

ブオン


王子 (来た!)

王子 「ふっ!」


ガキャ ギギギン

ドシャ


王子 「くはっ、何とかしのげたか!」


ハーピィ 「!」


ピシ


王子 「え」


バキン


王子 「な……親父から強奪した剣が」

王子 「ぽっきり折れた……」


673 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/25(金) 01:45:15.85 ID:QNT90cZDO
スレタイが「海老蔵を食え、海老蔵を」にみえてビビった
674 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/25(金) 01:46:30.28 ID:e8w3tnhLo


王子 「ま、まずいぞ。他の武器を持ってきていない」

王子 「これで何としても逃げなきゃならなくなったばかりか」

王子 「帰りに敵と会っても大ピンチだ」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「うん。最悪、ゾンビたちは素手でどうにかできそうな気もする」

王子 「死体に蹴る殴るをしかけるのは気持ち悪いだけで」

王子 「……剣が折れたということは、加護はきかないみたいだな」


ドシャ ドシャ ドシャ


幼葉エルフ 「はぁ……ぁうっ……」


王子 「…………」

王子 「魔法か」

王子 「先生に教わった簡単なやつしかないが……」


フィイイイイ


王子 「……ん?」


675 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/25(金) 01:55:12.30 ID:e8w3tnhLo


タタッ トタタッ トタタッ


王子 「な、何だ。何の音だ」


ドシャ ボグッ


王子 「ぬわっと」


ハーピィ 「…………」


トタタ トタタ ダララ ダララ


王子 「……蹄の音」

王子 「こんなところで?」


幼葉エルフ 「…………」

幼葉エルフ 「そうか……敵の正体は……」


王子 「葉巻」


ダラララッ ダララッ ダララッ

ダッ


首無し馬 「フオオオオオ!」


王子 「!」

王子 (ヒマワリのあった部屋から、首無し馬が現れた)


676 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/25(金) 02:06:45.03 ID:e8w3tnhLo


ハーピィ 「…………」


首無し馬 「フルルル……」


ハーピィ 「…………」


王子 「どうして……」

王子 「まさか、あの部屋の天井にあいた穴から?」


ドシャ ドシャ


首無し馬 「…………!」


パカラ ダラララッ


王子 「お、おい、そっちに突っ込んだら……」


首無し馬 「ヒュロロロロ……!」


ゴオオ


王子 「首無し馬の炎が、ひときわ激しくなった」

王子 「……本当に地獄の炎みたいだな」


677 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/25(金) 02:23:30.86 ID:e8w3tnhLo


首無し馬 「フオオオオ」


ゴオオオ


王子 「炎が敵に放たれた」

王子 「……炎に包まれて、敵のかたちがはっきりしてくる」


火だるま巨人 「…………」


王子 「……男か女か分からない体つきの巨大な人型の何かが」

王子 「苦しそうに体をぐねぐねと動かしている」


ドシャ ドシャ グネグネ


火だるま巨人 「…………」


王子 「いかん。目をそむけたくなる不気味さだ」

王子 「こんなのと対峙していたのか、おれたちは……」


幼葉エルフ 「敵は……はくぅ……ッ」


王子 「……無理するな、葉巻」


幼葉エルフ 「敵は、魔法そのものだ、王子」


678 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/25(金) 02:36:06.11 ID:e8w3tnhLo


王子 「魔法。星魔法使いか?」


幼葉エルフ 「そうであって、そうじゃない」

幼葉エルフ 「術者なんかいない」

幼葉エルフ 「純粋な魔力が暴れているんだ」


王子 「そんなことがあるのか」


幼葉エルフ 「知らない。あんなおぞましいのは知らない」


王子 (葉巻をして、おぞましいと言わせるものか)

王子 (いてて……爪が食い込んでくる)

王子 「じゃあ、あれは生き物じゃないんだな」


幼葉エルフ 「オレの知る生き物とはかけ離れている」

幼葉エルフ 「しかし、あれを生き物じゃないと言いきる自信はない」

幼葉エルフ 「オレの知らない生き物なのかもしれない」


王子 「ああ。まるで火の丘に住む巨人だ」


ハーピィ 「…………」


679 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/25(金) 02:48:10.83 ID:e8w3tnhLo


首無し馬 「…………」


ダラララッ ダラララッ


王子 「馬が巨人に突っ込んでいく」


ハーピィ 「…………」


首無し馬 「フィイイイイ!」


バシュ


王子 「突き抜けた……!」


火だるま巨人 「…………」


ユラ ユラ


王子 「巨人が炎と一緒にちぎれていく……」


幼葉エルフ 「……あれが自称星魔法使い、魂キメラの魔力もとにうまれたのだとすれば」

幼葉エルフ 「もしかしたら、死霊に近い存在なのかもしれない」


王子 「首無し馬の炎が効果抜群ということか」


幼葉エルフ 「ああ。だが……」


680 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/25(金) 03:00:31.78 ID:e8w3tnhLo


星魔法使いの死体 「…………」


ユラ


王子 「……ちぎれた炎が、星魔法使いたちの残骸の方へ」


幼葉エルフ 「王子、鞘を外して剣をおさめろ。武器になる」


王子 「あ、ああ。しかし……」


幼葉エルフ 「…………」


ハーピィ 「…………ッ」


王子 「鞘が緑色の光を帯びた」

王子 「葉巻、そんな状態で魔法を使ったのか」


幼葉エルフ 「普通の剣くらいには戦えるはずだ」

幼葉エルフ 「……かふッ」


コポッ


ハーピィ 「!」


王子 (吐血……)


681 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/25(金) 03:08:15.30 ID:e8w3tnhLo


首無し馬 「……フィン」


星魔法使いの死体 「…………」


ムクッ


王子 「……!」

王子 「頭を潰した星魔法使いの死体が立ち上がった」

王子 「ちぎれた炎がまとわりついている」


ゴオオオ


星魔法使いの死体 「…………」


ゴオオオ


王子 「炎のかたちが変わっていく」


ハーピィ 「…………」


星魔法使いの死体 「…………」


ゴオオオ


星魔法使いの死体 「…………」

デュラハン 「…………」


王子 「星魔法使いの死体が」

王子 「首の無い、鎧姿の騎士になった……」


682 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/25(金) 03:20:57.65 ID:e8w3tnhLo


デュラハン 「…………」


キイン ガシャ


王子 「かざした手の中に大剣が現れた」

王子 「デュラハンか……」


???の声 『ホミー、ご飯よー』

星魔法使いの声 『スイートハニー、ディナーにしよう』


王子 「声。デュラハンからか……?」


デュラハン 「…………」


パッ


王子 「今度は鎧の表面に、星魔法使いとその妻の肖像が交互に浮かぶ」


デュラハン 「…………」


王子 「剣を構えた。戦う気か」


???の声 『ホミー、ご飯よー』


パッ パッ


王子 「…………」

王子 「気が散る……」


ハーピィ 「…………」


683 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/25(金) 03:34:37.34 ID:e8w3tnhLo


首無し馬 「……フィロロッ」


タララッ タララッ


王子 「首無し馬がデュラハンに突っ込んでいく」

王子 「おれも葉巻をおろして加勢しなくては」


首無し馬 「…………」


ダララ ダラララッ


デュラハン 「…………」


星魔法使いの声 『スイートハニー、ディナーにしよう』


首無し馬 「…………!」


王子 (首無し馬の動きが鈍った。主人の声に戸惑ったか!)

王子 「まずい……!」


デュラハン 「ォォオオオ……」


ザシュ


首無し馬 「…………」

もっと首無し馬 「…………」


王子 「首無し馬の首が、さらに肩ちかくまで切断された……!」


684 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/25(金) 03:48:31.21 ID:e8w3tnhLo


もっと首無し馬 「…………」


王子 (倒れない。首無し馬、大丈夫なのか?)


デュラハン 「…………」


王子 (首無し馬においうちをかける気か。させるものか)

王子 「……でやっ!」


デュラハン 「!!」


ガキンッ


王子 (剣でとめられた)

王子 (こちらの鞘も大丈夫みたいだ)

王子 (葉巻は、剣のように使えると言っていたが……)

王子 「せい!」


ザクッ


デュラハン 「!!」


王子 (やった、鎧の隙間に通った!)

王子 (このまま腕をいただく!)


デュラハン 「…………」


ブオン


王子 「!」

王子 「くそ、痛みは無しか!」


ガキン


デュラハン 「……ォォオオオ」


ブオン ブオン ブオン


王子 「うわっ」


ガキン ガキン ガキン


王子 (ただ剣を振り回しているだけみたいだが)

王子 (速くて重たい……!)


685 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/25(金) 03:56:53.68 ID:e8w3tnhLo


首無し馬 「…………」


ゴオオ


王子 「!」

王子 (首無し馬の傷口から、また勢いよく火が噴きあがった)


首無し馬 「…………!」


バコン


デュラハン 「!?」


王子 (首無し馬が後ろ足でデュラハンを蹴り飛ばした)

王子 (けっこう飛んだな……)


首無し馬 「…………」

首無し馬 「いったん距離をとるぞ、王子」


王子 「…………」

王子 「葉巻?」


686 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/25(金) 04:05:41.40 ID:e8w3tnhLo


首無し馬 「…………」


ゴオオオ


王子 (首無し馬の首の炎が、人のかたちになっていく)

王子 (これはまるで、青い火のケンタウロス……)


首無し馬 「…………」

葉ケンエルフ 「…………」

葉ケンエルフ 「ははは。四足は初めてだが、うまくいくものだ」


王子 「……上半身は女性か」

王子 「雌だったんだな、首無し馬は」


ハーピィ 「…………」


687 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/25(金) 04:20:29.68 ID:OeMrNp2G0
あんたも大概人外だわ葉巻さん
688 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/25(金) 04:27:19.74 ID:e8w3tnhLo



葉ケンエルフ 「よいしょ」


王子 (腰をおろした)

王子 (中身が葉巻だからあれだが)

王子 (ケンタウロスの女性というのも優雅でなかなか……)


葉ケンエルフ 「乗れ、ハーピィ」


ハーピィ 「…………!」

ハーピィ 「…………」


王子 「……危なくなったら逃げるんだよ」


ハーピィ 「…………」


葉ケンエルフ 「よし、乗ったな。馬の扱いがうまいハーピィがいれば」

葉ケンエルフ 「何か良い効果があるに違いない」


王子 「くれぐれも、命にかかわることは……」


葉ケンエルフ 「ああ、分かっているよ……」

葉ケンエルフ 「ゲフッ……ガフッ」


王子 「!」


葉ケンエルフ 「……魔力の高い首無し馬の体を乗っ取って回復したが」

葉ケンエルフ 「どうやら、本当に命そのものにダメージを受けているみたいだな」


王子 「お前も、無理するなよ」


葉ケンエルフ 「ありがたいね」

葉ケンエルフ 「だが、あれをどうにかしないと、どうにもなるまい」


デュラハン 「…………」


ガシャ ガシャ


689 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/25(金) 04:46:06.85 ID:e8w3tnhLo


王子 「しぶといなあ」

王子 「星魔法使いに始まり、いったいどれだけ変態するつもりだよ」

王子 「何の準備もなかったらと思うとゾッっとする」


葉ケンエルフ 「後半は予想外だ。オレひとりじゃ、やられてたかもしらんね」

葉ケンエルフ 「さすがにもう残りカスだ。それでも厄介だが」

葉ケンエルフ 「さっきのに比べりゃだいぶマシだろ」


王子 「そうだな」

王子 「…………」


葉ケンエルフ 「何だよ」


王子 「いや、お前に見下ろされるのも新鮮だと思って」

王子 「町にいた頃も、背はおれのこの辺りだったのに」


葉ケンエルフ 「……ハーピィ、愛しの王子さまの頭をなでてさしあげろ」


ハーピィ 「…………」


ナデ ナデ


王子 「ははは、ありがとう」

王子 「……なんでお前はハーピィとそんなに仲良くなってるんだよ」


葉ケンエルフ 「けけけ」


王子・葉ケンエルフ 「ゲホッ、ゲホッ」


王子 「……さっさとケリをつけよう」


葉ケンエルフ 「笑えるうちにな」


ハーピィ 「…………」


690 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/25(金) 05:24:35.37 ID:0LsuERZp0
派遣エルフにみえた(錯乱)
691 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/25(金) 06:02:32.30 ID:w3K7FrgI0
首無し馬が種無し馬に見えた
692 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/25(金) 11:56:21.74 ID:i9psUj6do
1は葉ケンエルフたんを絵にしてもいいんだよ!
あとはホミーゾンビ......は別にいいか
693 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/25(金) 22:00:36.47 ID:e8w3tnhLo


デュラハン 「…………」


ガシャ ガシャ


葉ケンエルフ 「よし」

葉ケンエルフ 「いけ、王子!」


王子 「オウッ」

王子 「……お前は?」


葉ケンエルフ 「魔法使いは後方に決まっているだろ」

葉ケンエルフ 「だからハーピィを乗せたんだよ」


王子 (ケンタウロスの機動力が台無しじゃないか)

王子 「そうだ。じゃあお前に乗らせろ」

王子 「ランスは無いが突進力をいかして……」


葉ケンエルフ 「エロ王子」


王子 「何でだよ」


694 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/25(金) 22:35:51.69 ID:e8w3tnhLo


デュラハン 「…………」


ガシャ ガシャ


王子 「まあ、良いか……」


スタ スタ スタ


デュラハン 「…………」


???の声 『ホミー、ご飯よー』


王子 「…………」


デュラハン 「…………」


キイン ガシャ


王子 「!」

王子 (敵の剣がもう一本増えた。大剣の二刀流か……)


デュラハン 「……ォォオオオ」


ガシャガシャガシャガシャ


王子 「でかくて大きければ良いというもんじゃないぜ……!」


ダダダダダ


695 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/26(土) 00:08:34.50 ID:KbEjh86Uo


デュラハン 「ォォオオオ」


ブオン ブオン


王子 「くお」

王子 「うわっ」

王子 (大振りの二連撃。速いがかわせた……)

王子 「そらっ」


ガツンッ


王子 「!」

王子 (鎧の隙間を狙って突いたが、手ごたえがおかしい)

王子 (中に何か着ているのか。さっきは何もなかったのに)


デュラハン 「…………」


王子 (次は二本同時にふりおろす気か)

王子 (一本でも受けきれないというのに……!)


シュウウ ボロッ


デュラハン 「!!」


王子 (大剣が崩れた)

王子 「葉巻か……!」


696 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/26(土) 00:32:16.71 ID:KbEjh86Uo


葉ケンエルフ 「時間を稼いでもらいながらいろいろ試すつもりだったが」

葉ケンエルフ 「いきなり腐敗の魔法がきくとはね」

葉ケンエルフ 「王子、そのまま一気に決めちまえ」


シュウウ


デュラハン 「…………!」


王子 (鎧が崩れる。中の帷子まで)

王子 「でいやあッ!」


ズバン


デュラハン 「!!」


ガシャ バキン

ボトッ


王子 「右腕、いただいた!」

王子 「次は……!」


デュラハン 「オオォォオオオ!」


ドガッ


王子 「ごぶっ!?」

王子 「蹴られた。また……腹を……!」

王子 (まったく見えなかった。何て威力だ、吹っ飛ばされる……!)


 
697 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/26(土) 00:57:44.34 ID:KbEjh86Uo


ドシャ ガンッ


王子 「ぐわっ、うがっ」


ゴロゴロゴロ スタ


王子 「いっ……たたた」

王子 「死ぬかと思った」

王子 「というか、札の加護は無いのか。敵は星魔法使いの体をもとにしているだろうに」


葉ケンエルフ 「おかえり」

葉ケンエルフ 「ほれ、回復だ」


ピロリン


王子 「お前……」


ハーピィ 「…………」


モゾモゾ


王子 「そこにいて大丈夫だよ、ハーピィ……ケホッ」


ハーピィ 「…………」


デュラハン 「オオオ……」

デュラハン 「オオ……ォォオ……!」


王子 「デュラハンが膝をついた。様子がおかしい」


葉ケンエルフ 「もう戦うどころじゃ無いのさ」

葉ケンエルフ 「大事な鎧を壊されたのだから」


王子 「……肖像か」


698 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/26(土) 01:13:28.28 ID:KbEjh86Uo


葉ケンエルフ 「魔法の知識があっても、使いこなす知恵が無きゃ意味がない」

葉ケンエルフ 「さっきみたいに暴れまわってりゃ良かったものを」

葉ケンエルフ 「へたに小細工をするからボロが出る」


デュラハン 「オオ……オオオ」


ガチ ガシャ


王子 「鎧の破片を必死に集めて……いかん、なおすつもりか」


デュラハン 「…………」


キィィイ


デュラハン 「…………」


シュウウ ボロ ボロ


デュラハン 「!」


王子 「なおった先から崩れていく……」


葉ケンエルフ 「けけけ。やらせるもんかよ」


699 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/26(土) 01:31:18.53 ID:KbEjh86Uo


デュラハン 「…………」


ガチ ガシャ キイイイ


王子 「またいちから集めて……」


シュウウ ボロ


デュラハン 「!」

デュラハン 「…………」


ガチ ガシャ


ハーピィ 「…………」


王子 「……おれたちのことを忘れたみたいだ」


葉ケンエルフ 「壊れた人形が、いよいよ終わった感があるな」


王子 「あれは本当に、魔力の残りカスが動かしているに過ぎないのか?」

王子 「それなら何故、肖像の浮かぶ鎧をなおそうとしているんだ」

王子 「まだ自我が残っているんじゃないのか?」


葉ケンエルフ 「さあね。何しろオレも初めて見るタイプだから」

葉ケンエルフ 「万がいち掃き忘れのゴミくらいに残っていたとしても」

葉ケンエルフ 「本当のところなんて分からんよ」


デュラハン 「…………」


シュウウ ボロ ボロ


デュラハン 「…………」

星魔法使いの死体 「…………」


ガチ ガシャ


王子 「…………」


葉ケンエルフ 「もう丸裸だな」


700 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/26(土) 02:10:33.89 ID:KbEjh86Uo


星魔法使いの死体 「…………」


ガチ ガシャ シュウウ ボロロ


星魔法使いの死体 「…………」


ガチ ガシャ シュウウ ボロロ


星魔法使いの死体 「…………」


ガチ ガシャ ガシャ


星魔法使いの死体 「…………」

星魔法使いの死体 「…………」


王子 「……止まった」


葉ケンエルフ 「体を動かしていた魔力が尽きたようだ」

葉ケンエルフ 「もしかしたら、戦わなくてもいずれ勝手に自滅していたかもしれないな」


701 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/26(土) 02:13:06.47 ID:KbEjh86Uo


王子 「…………」


スタ スタ スタ


王子 「…………」


星魔法使いの死体 「…………」


王子 「…………」

王子 (片手いっぱいに掴んだ鎧片に)

王子 (星魔法使いとその奥方の肖像)


葉ケンエルフ 「……まあ」

葉ケンエルフ 「これも二人の愛の結晶ってやつだったんじゃないか」


ハーピィ 「…………」


王子 「……ああ」


スチャ


王子 「…………」


ザシュ


星魔法使いの死体 「…………」

星魔法使いの上半身 「…………」

星魔法使いの下半身 「…………」


ドシャ

バララ ガシャ カラン カシャン


ハーピィ 「…………」


702 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/26(土) 02:46:14.91 ID:KbEjh86Uo


…………


幼葉エルフ 「…………」


ピロリン


首無し馬 「…………」

首無し馬 「フィイイ……」


幼葉エルフ 「体は癒したが、すまんね、魔力やら何やらちょうだいしすぎたようだ」

幼葉エルフ 「安静にしてりゃ回復するだろう」


ハーピィ 「…………」


首無し馬 「フルル……」


王子 「……その体に戻るんだな」


幼葉エルフ 「お前がオレに選んでくれた体だ。大事にしないと」


王子 (選ばされた感じだけど、喜んでいるならまあ良いか)


幼葉エルフ 「それに、借り物なんだろう」


王子 「ん、まあ」


幼葉エルフ 「……どうした、ゴーレムの残骸の方を気にして」

幼葉エルフ 「感傷にでもひたっているのか?」


王子 「いや。また立ち上がって襲ってこないかと思ってね」


703 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/26(土) 03:20:18.85 ID:KbEjh86Uo


幼葉エルフ 「ふふふ。鈍感なお前も相当まいったようだな」


王子 「丈夫と言ってくれ」

王子 「いま生きていられるのが不思議だよ」

王子 「こたえる夜だなあ。親父から強奪した剣も折れたし……」

王子 「なあ、お前の魔法で剣をなおせないかな」


幼葉エルフ 「無理」

幼葉エルフ 「腐らせて良いなら喜んでやるが」


王子 「やっぱりか……」


ハーピィ 「…………」


首無し馬 「フィロロ……」


ハーピィ 「…………」


704 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/26(土) 03:43:01.51 ID:KbEjh86Uo


王子 「しかし、丸くなったと思っていたらお前もとんだサディスト脳だね」

王子 「広場で恥ずかしい歌を歌わせたり」

王子 「今回も星魔法使いをあの手この手で……」


幼葉エルフ 「何だよ。普通の妖精のいたずらに比べたら可愛いもんだろ」

幼葉エルフ 「それに、どちらかって言うとオレはやられる方が好きなんだからな」


王子 「ふうん」


幼葉エルフ 「…………」


王子 「…………」


幼葉エルフ 「なに言わせんだよ」


王子 「なに言ってんだよ」


ハーピィ 「…………」


首無し馬 「……フルル」


ハーピィ 「…………」


705 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/26(土) 04:01:45.82 ID:KbEjh86Uo


王子 「よいしょ、と」


幼葉エルフ 「立ち上がるときによいしょとは」

幼葉エルフ 「おやじめ」


王子 「王子だ」

王子 「そろそろここを出たいな」

王子 「しかし、来た道は塞がっている……」


幼葉エルフ 「残りカスが派手に暴れてくれたもんだ」


王子 「考えないようにしていたが、これはまずいんじゃないのか」

王子 「ここがどのあたりにあるのかも分からない」


幼葉エルフ 「館の地下だ」

幼葉エルフ 「しかし、館のどの部屋とも繋がっていない」

幼葉エルフ 「異教か邪教かの礼拝堂で、特別な方法じゃなきゃ来れないしかけだったのかもな」


王子 「詳しいね」


幼葉エルフ 「お前が頑張っている間にいろいろとね」

幼葉エルフ 「だが、ここにも穴が無いわけじゃない」


ハーピィ 「…………」


首無し馬 「フィロロロ」


王子 「……ヒマワリのあった部屋の天井に、穴らしきものを見たな」


幼葉エルフ 「たぶん、井戸だろう」

幼葉エルフ 「のぼっていけば、館の外に出られるだろう」


706 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/26(土) 04:15:32.46 ID:KbEjh86Uo


隠された地下礼拝堂 小さな部屋



幼葉エルフ 「……あの穴だな。うん、行けそうだ」

幼葉エルフ 「かなり高いところにあるから、一人ずつ送るぞ」


王子 「風の魔法は便利だなあ」


幼葉エルフ 「人を浮かせたりするのは大変なんだからな」


王子 「分かっているさ。お前だからできるんだ」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「ふん……」

幼葉エルフ 「じゃあ、まずは馬からだ」


首無し馬 「フィン」


幼葉エルフ 「上にモンスターがいたら、とくに死霊系は蹴散らしといてくれよ」

幼葉エルフ 「それ」


ヒュオ


首無し馬 「…………」


フヨフヨ フヨフヨ


王子 「馬が風で押し上げられていく」

王子 「どことなく奇妙な情景だ」


707 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/26(土) 04:31:30.77 ID:KbEjh86Uo


フヨヨ フヨヨ


幼葉エルフ 「…………」

幼葉エルフ 「…………!」

幼葉エルフ 「よし、上に着いたようだ」


王子 「分かるのか」


幼葉エルフ 「勘だ」

幼葉エルフ 「次は王子だな」

幼葉エルフ 「ハーピィを先にすると、王子恋しさに飛び降りて来かねん」


王子 「ちょっと待て。勘って、この高さじゃ洒落にならないぞ……」


幼葉エルフ 「さ、あそこに立って」


王子 「……分かったよ」

王子 「いやあ、やっと帰還か。大変だったなあ」


幼葉エルフ 「お前は今夜よく頑張ったからな」

幼葉エルフ 「帰ったらご褒美にヘソ枕でもしてやろう」

幼葉エルフ 「ついでにハーピィにも、王子の肖像がうつる服をつくってやるからな」


ハーピィ 「…………」


王子 「ははは。……ヘソか」


幼葉エルフ 「?」


708 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/26(土) 04:36:06.39 ID:GbOOIllyo
鳥は卵生…ハーピィのおへそ…ワタシ、キニナリマス!
709 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/26(土) 04:45:38.63 ID:KbEjh86Uo


王子 「そ、そうだ、肖像といえば」


幼葉エルフ 「慌てたな。さてはまた変なこと考えていたな」

幼葉エルフ 「ふふふ、まったくお前という奴は……」


王子 「上でゴタゴタやってた際、ちょっとわけあってお前のベッドを調べたんだが」


幼葉エルフ 「……」


王子 「びっくりしたよ、あんなにおれの肖像画が出てくるんだもの」


幼葉エルフ 「……」


王子 「だけどなあ、おれはあんな風に爽やかに笑ったことないぞ」


幼葉エルフ 「……」


王子 「いやしかし、本当にびっくりしたなあ。いつの間に描いたんだ、あれ」

王子 「星魔法使いに会ってから、描く時間なんてあまりなかったはずだけど」

王子 「あれも魔法が関係しているのか?」


幼葉エルフ 「…………」


王子 「……葉巻?」


ハーピィ 「…………」


710 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/26(土) 04:55:29.05 ID:KbEjh86Uo



幼葉エルフ 「…………」

幼葉エルフ 「……見たんだな」

幼葉エルフ 「オレの肖像画を」


王子 「……あ、ああ」

王子 「ん……いや、おれのだろう」


幼葉エルフ 「そうか、見てしまったか……」


王子 「葉巻?」


幼葉エルフ 「ならば」

幼葉エルフ 「死んでもらうしかないな、王子!」


王子 「えっ!?」


711 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/26(土) 05:08:24.14 ID:KbEjh86Uo


ヒュオオオ


王子 「か、風だ。葉巻の方へ集まるように……」

王子 「おい、葉巻、どうしたんだ」


ハーピィ 「…………」


王子 「ハーピィ、何だいその、しかたがないとでも言わんばかりの憂い顔は」


幼葉エルフ 「……思えば、初めて会ったときは喧嘩だったな」


王子 「あ、ああ。軽いトラウマだよ」


幼葉エルフ 「ふふふ。ああ、きいたなあ、あのときのお前の拳」

幼葉エルフ 「……いろいろなことがあった」

幼葉エルフ 「オレの腐った日々が、わずかに華やいだよ」

幼葉エルフ 「しかし、こうなるのは運命だったのかもしれない」


王子 「何が?」


幼葉エルフ 「……古今東西津々浦々」

幼葉エルフ 「ベッドの下は聖域であると知れ!」


ヒュゴッ ゴオオオオ


王子 「!!」

王子 「よく分からんがそういうことか……!」


ハーピィ 「…………」


712 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/26(土) 05:18:45.00 ID:KbEjh86Uo


ヒュオオオオ……


王子 「さがっていてくれ、ハーピィ」

王子 「激しい戦いになる」

王子 「どちらかが……死ぬ」


ハーピィ 「…………」


王子 「ふっ……」

王子 「ゾンビ、妖か……仲間、キマイラゴーレム、星魔法使い、化け物、デュラハン……」

王子 「まさか最後に立ちはだかるのがお前だとはな、葉巻」


幼葉エルフ 「意外なのはオレもだよ、王子……」


王子 「……不思議だな」

王子 「こんな日が、いつか来るんじゃないかと思っていた」

王子 「来てほしくはなかったが」


幼葉エルフ 「ああ……」

幼葉エルフ 「それも同じだ」


713 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/26(土) 05:26:11.10 ID:KbEjh86Uo



王子 「…………」


幼葉エルフ 「…………」


王子・幼葉エルフ 「!」


ダッ


王子・幼葉エルフ 「……うおおおお!」


ダダダダダダ


幼葉エルフ 「王子ぃぃぃいいいーーッ!」


王子 「葉巻ぃぃぃいいいいーーッ!」


幼葉エルフ 「オレの漆黒の記憶とともに、ここで永遠に朽ち果てろおおお!」


王子 「ぬぅおおおぉぉおおおお!」


カッ!!


…………

………………


714 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/26(土) 05:35:43.73 ID:KbEjh86Uo


…………


ピシ ビシシッ

ドカン ガラララ


貝殻の勇者 「……あああああああ!」

貝殻の勇者 「と、ひらけた場所に出ました」

貝殻の勇者 「煙の効果が薄くなったので王子を追い、館の地下へたどり着き」

貝殻の勇者 「叩けば何やら薄そうな音のする壁を見つけ、もしやと思い勇者の槍技で破ってみましたが」


モクモク モクモク


貝殻の勇者 「ここは、礼拝堂でしょうか」

貝殻の勇者 「ふむ。すさまじい戦闘のあと」

貝殻の勇者 「……む! あれは」


王子 「…………」


幼葉エルフ 「…………」


ハーピィ 「……! ……!」


貝殻の勇者 「ああ、何てこと」

貝殻の勇者 「黒花エルフどのと王子どのが、ボロ雑巾のように倒れている!」


715 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/26(土) 05:48:54.67 ID:KbEjh86Uo


王子 「……ぐ……ぅうっ」


幼葉エルフ 「……はぁ……ぁうっ」


貝殻の勇者 「どうしたのですかお二人とも!」

貝殻の勇者 「ハーピィさん、これはいったい……」


ハーピィ 「…………」


貝殻の勇者 「何と深くかなしい瞳。まさか……!」

貝殻の勇者 「ここに来る途中、ゾンビたちが倒れて動かなくなりましたが」

貝殻の勇者 「お二人が命を賭して、元凶をたったのでは……」

貝殻の勇者 「それなら、この戦闘のあとも頷けます!」


ハーピィ 「…………」


王子 「…………」


幼葉エルフ 「…………」


貝殻の勇者 「死なせませんよ! ええ、死なせてなるものですか」

貝殻の勇者 「生きて地上に戻りましょう。よいしょ」

貝殻の勇者 「……さあ、行きましょうハーピィさん!」


ハーピィ 「…………」


タタタタタ


…………


716 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/04/26(土) 10:35:34.71 ID:mJ5GZ8nj0
合ってるけど合ってない……!
というか葉巻お前表面Sで内心はMだったのか
てっきり魔王本来の不幸属性かと思ってたぜ
717 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/26(土) 11:03:28.74 ID:ZqTC6AvbO
おいおい恋する乙女か
718 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/26(土) 14:01:45.50 ID:o+HhG5/zo
王子、よく分からんが、ってwwww
まぁ中身は男だと思ってるし、一人遊びに使うとは思わないか...
719 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/26(土) 14:53:35.77 ID:nyweS2Nho
何故王子はここまで葉巻を男だと思い込んでるんだろう
魂のプロだった星魔法使いが女と言ってるから女だと思うんだが
720 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage saga]:2014/04/26(土) 18:15:53.26 ID:mJ5GZ8nj0
>>719
そりゃお前最初が男で言動もそのままだから男だろうって思いがあるんだろうし
王子(葉巻が女だったら俺の心休まる場所がハーピィだけになる。というかこいつのふざけた言動が嘘か本当か大変な事になってしまうんだよ)

っていう無意識な葛藤があるんだろ。俺自体が男派なせいもあるが
721 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/28(月) 09:21:54.75 ID:GPBrAUNH0
最初に男で会ってるんだから
男と思うのが普通やろ
722 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/29(火) 15:47:36.73 ID:urFa8hJAO
ホミー、そろそろ再開の時間よー
723 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/29(火) 16:00:01.99 ID:ftmAq/wGo
ま、のんびり書いてくれ。
724 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/29(火) 17:09:28.76 ID:dVv8GGKk0
多分ケンタウロスな葉巻を書いていると予想
725 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/30(水) 00:14:40.72 ID:NC2ce6Ifo
ケンタウロス

オス

うまなみ
726 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/30(水) 04:39:46.41 ID:2QTUZbzto
アッー
727 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/30(水) 09:35:13.78 ID:iqbgNwF5o
上半身は乙女だから(震え声)
728 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/30(水) 15:30:42.00 ID:2QTUZbzto
斬新なふたなりだねぇ
729 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/30(水) 16:24:25.70 ID:7UjQA18P0
>>728
自分でいっといて首なし馬の性別知らんかったわ
無能
730 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/30(水) 20:32:32.99 ID:5vH00ZPEo

http://i.imgur.com/caKjDD5.jpg


■葉ケンエルフ

葉巻エルフが首無し馬に宿って何やかんやした果ての姿。
死霊系のモンスターを復活させずにたおすことができる。
体に慣れていないので、葉巻エルフが習得したほとんどの魔法を
使うことができなかった。

魔法使い系ケンタウロスの亜種的なユニット。


※画像は想像です。実際の葉ケンエルフはもっと扇情的です。


731 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/30(水) 21:11:58.08 ID:DeAPvhdLo
人外娘萌えの俺歓喜
732 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/30(水) 21:37:47.40 ID:9xuOP9IoO
あれ?普通にエロいよ…?
733 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/30(水) 21:48:57.63 ID:5vH00ZPEo

…………



皇帝の城?



王子 「追い詰めたぞ、皇帝。国を乱し民を苦しませたむくい、その身で受けてもらう」


皇帝 「…………」

皇帝 「……うふふふふ」


王子 「?」


皇帝 「…………」

ろうそく職人 「ドロン」

ろうそく職人 「じつは私は、ろうそく職人だったのだ」


王子 「!?」


葉巻エルフ 「王子、ひるむな。隙をつかれるぞ」


王子 「葉巻……」

王子 「プフッ、どうしたんだお前、お姫様みたいなドレスを着て」

王子 「いや、それよりこれは……」


葉巻エルフ 「気にするな」

ろうそく職人B 「ドロン」

ろうそく職人B 「じつはオレもろうそく職人だ」


王子 「!?」


734 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/30(水) 21:49:22.45 ID:5vH00ZPEo


ドガンッ


領主 「加勢にきたぞ、息子よ!」

ろうそく職人C 「かくいう私もろうそく職人だ!」


王子姫 「お怪我はありませんか、お兄さま!」

ろうそく職人D 「やっぱり私もろうそく職人です!」


ガヤガヤ ムフフー ムフフー


王子 「な、何なんだこれは……」


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「王子、いえ、息子よ」


王子 「ハーピィ……」

王子 「ええっ!?」


ハーピィ 「じつは私は、あなたの生き別れの母だったのです」


王子 「なっ……は、母上?」


ハーピィ 「隠していてごめんなさい」

ろうそく職人N 「そして私はろうそく職人です」


王子 「…………」

王子 「……ああ」

王子 「これ夢だな」


ガヤガヤ ムフフー ムフフー

ガヤガヤ ワイワイ


…………


735 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/30(水) 22:31:44.61 ID:jnk5BTGh0
これは夢だと夢の中で気付くこと有るよね
736 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/30(水) 22:34:17.45 ID:5vH00ZPEo


…………


王子 「…………っ」

王子 (ベッドの上だ。星魔法使いどのの館か)

王子 (……起き上がれない。まるで根っこをはったみたいだ)

王子 (うーん。こんなんで、おれはどうやってあの地下から戻ってきたんだ)

王子 (ハーピィは無事だろうか)


ハーピィ 「…………」


王子 (よかった。いるな)

王子 (……じっとこちらを見ている)


ガサゴソ


ろうそく職人 「むにゃむにゃ……」


幼葉エルフ 「…………」


王子 (隣のベッドで寝ているのはろうそく職人か)

王子 (……葉巻、子供の姿とはいえ気をつけろ。そんなところに立っていると)

王子 (スカートの中が見えてしまうぞ)

王子 (……ろうそく職人に何かしているのか。背中を向けているから分からないな)


ハーピィ 「…………」


737 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/04/30(水) 22:50:16.96 ID:5vH00ZPEo


幼葉エルフ 「………」


キイイ ピロリン


ろうそく職人 「むにゃ……」


王子 (…………)

王子 (あ、癒しの魔法をかけているのか。呪っているのかと思った)


幼葉エルフ 「…………」


チャプ 


王子 (ろうそく職人の額のタオルをとって、水にひたした)


幼葉エルフ 「…………」


ギュ ジャバ キュ キュ


王子 (よく絞って……)


幼葉エルフ 「…………」


ペタ


王子 (ろうそく職人の額に乗せた)

王子 (そんな馬鹿な!!)

王子 (……ああ、まだ夢の中なのだな)

王子 (本当の葉巻なら、口に突っ込んで熱湯をかけるくらいするもの)


738 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/30(水) 23:30:44.20 ID:9xuOP9IoO
王子ひどい
739 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/01(木) 02:04:42.76 ID:HSnbLtEvo


ハーピィ 「…………」


シャサ ペタ


王子 (む、急に暗くなった)

王子 (ハーピィの翼か。額を冷やしてくれているのか。気持ち良いなあ)

王子 (……濡れている?)


幼葉エルフ 「ハーピィ、タオルを使えよ。お前の翼ならタオルを絞るなんて簡単にできるだろうに」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「? 何だよ、オレの服に何かついて……」

幼葉エルフ 「…………!」


ギュ


幼葉エルフ 「なるほど」

幼葉エルフ 「ハーピィ、翼をどけなさい」

幼葉エルフ 「このスケベ王子を鼻コンニャクの刑に処す」


王子 「待て、悪気はなかった」


740 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/01(木) 06:03:25.69 ID:HSnbLtEvo


王子 「何だよ鼻コンニャクって。びっくりして起き上がっちまったじゃないか」

王子 「夢の中でも相変わらずだなお前は」


幼葉エルフ 「なに言ってやがる」

幼葉エルフ 「体は大丈夫か?」


王子 「ああ、とくにかわったところはないな」

王子 「うん? どうしたんだ、尻をおさえて。トイレなら……」


ペドッ


王子 「いてっ。濡れたタオルではたくな」


幼葉エルフ 「目はさめるだろ」

幼葉エルフ 「起き抜けから絶好調じゃないか王子さま」

幼葉エルフ 「良いか。オレは見せたり見られたりするのは別に良いけど覗かれるのは嫌なんだ」


王子 「……ああ。何だ、お前もちゃんとそういうのは気にしているのか」

王子 「安心したよ」


幼葉エルフ 「今度は本気で殴るぞ」


741 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/05/01(木) 08:35:39.09 ID:mMXqp7Lj0
確かに覗かれるのはなんか嫌だ
742 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/01(木) 19:32:20.95 ID:Z9Q9Tni50
ろうそく職人がNまでいったか

Zを越えたらどうなるんや
743 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/05/01(木) 22:24:17.29 ID:Lp8h0quF0
塩も触手も無しに戦慄させるとは
744 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/01(木) 22:40:00.46 ID:HSnbLtEvo


王子 「悪かったよ」

王子 「で、おれは何故ベッドで寝ているんだ」


幼葉エルフ 「地下での死闘のあと、貝殻の勇者さまが来てハーピィと一緒にオレたちを運んでくださったのさ」

幼葉エルフ 「消耗したお前は、それから丸一日眠りっぱなしだったんだよ」


王子 「そうだったのか……うぅっ」


ハーピィ 「!」


幼葉エルフ 「王子」


王子 「何故だろう。デュラハンもどきと戦ったあたりから、記憶が泥水のように濁っている」

王子 「思い出そうとしたら、脳みそが波に遊ばれるみたいに痛みが響いて……」


幼葉エルフ 「……良いさ。無理に思い出そうとするな」

幼葉エルフ 「お前は逝き遅れた。それで良いじゃないか」

幼葉エルフ 「さあ、ゆっくり横になって。毛布をかけてやるからゆっくり休め」

幼葉エルフ 「ハーピィも手伝ってくれ」


ハーピィ 「…………」


王子 「お、おいおい、何だよ、大丈夫だよ起きるよ」


745 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/01(木) 22:54:40.60 ID:HSnbLtEvo


王子 「どうしたんだ葉巻よ、妙に優しいじゃないか」


幼葉エルフ 「なあに、お前は頑張りすぎたからな。身も心も、たっぷりねぎらってやらないと」

幼葉エルフ 「腹に穴があいているくせにあんなところまで来るなんて、まったく無茶な奴」

幼葉エルフ 「ふふふ……」


王子 「……本当にどうしたんだよ。なんだか変だぞ」

王子 「病人の頭蓋骨をくりぬいてそれを皿にして脳みそをすするのがお前だろうに」


幼葉エルフ 「ははは、そりゃ良いや」

幼葉エルフ 「ええ、ハーピィ」


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「……表に出ろクソ王子、ぶっ潰してやる」


王子 「どうしろってんだよ」


ろうそく職人 「うにゃうにゃ……くぅ……」


746 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/01(木) 23:19:34.23 ID:35jf+YWbo
記憶操作wwwwww
747 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/05/01(木) 23:29:08.82 ID:Lp8h0quF0
王子の幼葉を見る目がw
748 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/01(木) 23:34:42.71 ID:PoeOvpfmo
ハーピィ無反応ってことは本気でそう思ってるのかwwwwwwww
749 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/01(木) 23:41:36.57 ID:pOuyaw2ro
冗談だと思ったら冗談じゃなかった
750 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/02(金) 00:03:57.17 ID:UuIvQBo+o


幼葉エルフ 「お前って奴は……」

幼葉エルフ 「町にいた頃からそうだ。そばで振り回されるこっちの身にもなってほしいね」


王子 「いやいやちょっと待て、それはこっちの台詞でもあるぞ……」


ガチャ


貝殻の勇者 「黒花どの、館のゾンビだかゴーレムだかは外に集めましたよ」

貝殻の勇者 「あとはお芋と火を用意して……おや」

貝殻の勇者 「王子どの、目が覚めたのですね……!」


王子 「やあ、勇者どの。気絶したおれを助けてくれたそうで、感謝するよ」

王子 「館の後片付け、さっそくおれも加勢しよう」


貝殻の勇者 「大丈夫、休んでいてください。激しい戦いの後なのですから」


王子 「う、うーん。まいったな、こんな風にそっと扱われると少し戸惑ってしまうぞ」


貝殻の勇者 「うふふ、おやおや……」


ガチャ


星魔法使い 「みなさん、お茶が入りましたよ」

星魔法使い 「おや、王子どの。目が覚めたのですね」


王子 「!?」


751 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/02(金) 00:19:34.99 ID:UuIvQBo+o


貝殻の勇者 「ああ、ありがとうございます」


幼葉エルフ 「うむ、ごくろう」


カチャ カチャ ズズ


貝殻の勇者 「まあ、おいしい……!」


星魔法使い 「月の恵みを受けた葉をつかっています」

星魔法使い 「昔から各地で、月の光には何か不思議な力が宿ると信じられてきました」

星魔法使い 「だから魔法使いたちも、綺麗な月の沈むころに薬草を摘むのです」


幼葉エルフ 「さすが、長生きしただけあって知識があるね」


星魔法使い 「いえ……。恥ずかしながら、ただ長く生きただけでして」


貝殻の勇者 「あら、ご謙遜を」


アハハハ ウフフフ


王子 「…………」


ハーピィ 「…………」


王子 「なんだ。これも夢か……」


752 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/02(金) 00:37:57.69 ID:UuIvQBo+o


星魔法使い 「さあ、甘いお菓子もありますよ」


貝殻の勇者 「まあ、香ばしくて良い香り」

貝殻の勇者 「一口サイズで食べやすいですね」

貝殻の勇者 「助かります。ゾンビばかりでしたから」


幼葉エルフ 「ハチミツと木の実を練りこんで焼いたのか。エルフ好みだな」


ろうそく職人 「うにゃうにゃ。すぴー……」

ろうそく職人 「ふこっ……」


ムク


ろうそく職人 「……良いにおい」


幼葉エルフ 「こいつ、食い物のにおいにつられて……」


星魔法使い 「ははは。おはようございます。さあ、お茶ですよ」


王子 「…………」


ハーピィ 「…………」


753 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/02(金) 00:43:02.43 ID:tiiSu2uT0
まだ夢なんか
754 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/02(金) 00:49:37.40 ID:DjsS0Kd50
ホ、ホミー!?
755 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/02(金) 01:02:08.64 ID:UuIvQBo+o


幼葉エルフ 「お前、尻尾の分身はできるようになったのかよ」


ろうそく職人 「相変わらず無理です。尻尾を思い通りに動かすのも一苦労です」


幼葉エルフ 「……そうか」


貝殻の勇者 「ゾンビ状態でのみ使える、というのは?」


幼葉エルフ 「どうだろうな。そんな例は聞いたことないし」

幼葉エルフ 「でも、こいつだからな……」


星魔法使い 「分身を産むというのは子供を産むことに近く」

星魔法使い 「女性が習得しやすい魔術だと聞いたことがありますが」


幼葉エルフ 「性魔術か。オレは詳しくないが、ふむ」

幼葉エルフ 「おい、ろうそくよ。腹の底に力をいれて子供を産む感じでやってみろ」


ろうそく職人 「ええっ!?」


王子 「…………」


ハーピィ 「…………」


王子 (あれ。これ夢じゃないのか?)


756 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/02(金) 01:24:37.94 ID:UuIvQBo+o


スチャ キイイ……

チュンチュン ヒヨヒヨ クケーッ


貝殻の勇者 「……はあ、陰鬱な森の空気がおいしい」


幼葉エルフ 「まったく、とんだスカンク娘だ」

幼葉エルフ 「今度から屁職人と呼んでやる」


ろうそく職人 「し、しかたないじゃないですか。出産なんてしたことないんですから」


ハーピィ 「…………」


ハタハタ パタパタ


王子 「うーむ。このにおい、夢じゃないのか」


幼葉エルフ 「まだ言ってやがるのか」

幼葉エルフ 「しっかりしろよ城組」


757 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/02(金) 02:08:50.61 ID:UuIvQBo+o


ろうそく職人 「師匠」


幼葉エルフ 「何だよ」


ろうそく職人 「怪我人の私にお菓子を食べさせてください」

ろうそく職人 「あーん」


幼葉エルフ 「甘えるな。自分で食え」

幼葉エルフ 「それか大好きな勇者さまに頼めば良いだろ」


ろうそく職人 「勇者さまにそんなことをさせるわけにはいきません」


幼葉エルフ 「オレなら良いのかよ」


ろうそく職人 「またまた、師匠じゃないですか」


幼葉エルフ 「わけ分かんねえよ」


ろうそく職人 「……私、寝たふりして見ちゃったんですよね」

ろうそく職人 「夜、師匠が私の体を拭いてくれたあと」

ろうそく職人 「なぜか目隠しをしてから王子さまのベッドのヘッドボードを……」


幼葉エルフ 「しかたない奴だな」


758 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/02(金) 02:12:41.32 ID:UuIvQBo+o


ろうそく職人 「わーい」


パクッ 


幼葉エルフ 「…………ッ」

幼葉エルフ 「こら、どさくさで指をなめるな」


ろうそく職人 「…………」


ゴクン


ろうそく職人 「…………」

ろうそく職人 「……ふふふ」


幼葉エルフ 「何だよ、師匠をなめやがって……」


貝殻の勇者 「指もなめられましたしね」


ろうそく職人 「うまい!」


幼葉エルフ 「うるさいよ」


759 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/02(金) 02:19:55.18 ID:UuIvQBo+o


ろうそく職人 「いやあ、おいし……うまいですねこのお菓子」

ろうそく職人 「あーん」


幼葉エルフ 「…………」


ヒョイ


ろうそく職人 「あむっ」


幼葉エルフ 「! また……ッ」


貝殻の勇者 「あらあら、可愛い」


ハーピィ 「…………」


王子 「……ゴースト?」


星魔法使い 「はい」

星魔法使い 「倒されたあと、気がつくとあなたがたの馬車のそばに立っていました」


王子 「やはり、夢じゃないのか……」


ハーピィ 「…………」


760 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/05/02(金) 22:39:46.00 ID:NoyqxmG80
ヘッドボードの下りはどういうことなのか
761 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/03(土) 05:20:36.83 ID:hJWsUjFlo
師弟百合もいいですなぁ…
762 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/03(土) 10:27:23.45 ID:xrE9A7Im0
星魔法使いとはなんだったのか
763 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/04(日) 04:27:52.08 ID:a4BbqbOLo


王子 「たしかに透けている気がするなあと思ってはいたが」

王子 「まさかゴーストとはなあ。ゴーストはモンスターみたいなものばかりだと思っていたけど」

王子 「そんな様子でもない」


星魔法使い 「不思議なことです。私も初めて知りました」

星魔法使い 「つくられた者でも、ゴーストになれるのですね」


王子 「ずいぶん落ち着いているけど、こちらを恨んだりしていないのかな」


星魔法使い 「私が何者であるか、あなたがたは教えてくれた」

星魔法使い 「命を失いはしましたが、私の心は解放されたのです。ならば、恨むことなんて何もない」

星魔法使い 「むしろこうなる前の私こそが、生きながらに悪霊だったのでしょう」


王子 「……そうか」


ハーピィ 「…………」


星魔法使い 「さびしい顔をなさらないでください」


王子 「ああ」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「うん。多くの人の死をあんな風に利用してきたあなたは」

王子 「倫理も何もかも人外の域にあるのだろうが」

王子 「だからといって何も感じないわけじゃない」


ハーピィ 「…………」


星魔法使い 「ああ」

星魔法使い 「それもまた、人間なのでしたね」


764 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/04(日) 04:36:31.62 ID:a4BbqbOLo


星魔法使い 「おかわりをどうぞ」


王子 「うん」

王子 「……うまいね。これ」


星魔法使い 「ありがとうございます。これは、どちらの特技だったか」

星魔法使い 「彼らの記憶を残していますが、私はもう星魔法使いでもその妻でもありません」

星魔法使い 「ただ、私だけがいます。私の心は、私のもの」

星魔法使い 「馬車幽霊……とでもお呼びください」

馬車幽霊 「死ぬことで、私は生まれることができました」


ハーピィ 「…………」


765 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/04(日) 05:27:41.43 ID:a4BbqbOLo


ろうそく職人 「……性別を捨てたなんて言っているくせに」

ろうそく職人 「師匠って乙女ですよね」

ろうそく職人 「あーん」


幼葉エルフ 「ほれ」

幼葉エルフ 「……口あけて食い物を待っているひな鳥が、生意気なこと言うんじゃないよ」


ろうそく職人 「目隠ししなきゃ、男の人の体を拭けないなんて」

ろうそく職人 「しかも間違ってベッドを磨いちゃっていたりして。ひゅふふふ」


幼葉エルフ 「…………はんっ」

幼葉エルフ 「この借り物の子供の目に、男の胸板や腹なんて猛毒だろうが」


貝殻の勇者 「おお。そういうこともしっかり考えておられるのですね。さすがエルフ長老の一角をになうお方」

貝殻の勇者 「よしよし」


幼葉エルフ 「長老の頭をそんな風になでるな」


ろうそく職人 「えー、そうかなあ……。領主さまのお城で毎年おこなわれる流星男祭りでは」

ろうそく職人 「兵士さまたちをはじめ男の人たちが上半身裸になり、子供たちを肩車して練り歩くんですよ」

ろうそく職人 「幼く無垢な子供たちを担ぐ屈強な男たちの肌をつたう汗は、夜をなめる炎に照らされて流星さながら」


幼葉エルフ 「……町の治安が腐っているどころの話じゃなかったか」


ボリボリ レロレロ ムシャムシャ


766 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/04(日) 05:46:07.35 ID:anSG76voo
ちょっと祭りに参加してくるわ
767 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/04(日) 09:57:26.26 ID:c9Orsj5d0
朝はえーな
寝てないのか?
768 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/04(日) 17:45:22.40 ID:gDrk5SWP0
>>766
屈強でない方はNG
769 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/05(月) 01:11:57.64 ID:rIiW6d0jo


ろうそく職人 「そういえば、師匠は町にいたころイケナイ薬を売っていたんですよね」

ろうそく職人 「この国の貴族や魔法使いを弱らせるとかいう嫌がらせ目的で」


幼葉エルフ 「嫌がらせ……ああ。関係ない民にも被害は出たろうなあ」

幼葉エルフ 「他の長老どもがその辺を補うことになっていたが、オレの悪行が消えるわけじゃない」

幼葉エルフ 「もっとも、心が腐ったオレにゃ罪悪感など無いが。被害者たちもかわいそうになあ、ははは……」


貝殻の勇者 「妖精の中でも格が高いといわれるエルフなのに、腐りきっていますね」


ろうそく職人 「見下げ果てた根腐れ師匠です」


幼葉エルフ 「……薬は、魔法使い殺しの草からつくったものだ。快楽をあたえて魔力を奪う」

幼葉エルフ 「使いかたを変えたら万能薬の材料になったり、他にもいろいろと便利だ」

幼葉エルフ 「このように、一見危険なものも、まったく違う面を持っていたりする」

幼葉エルフ 「ひとつの考えだけに縛られず、物事をいろいろな角度から見てたくさん発見すること」


ろうそく職人 「はい、師匠!」

ろうそく職人 「……他にもいろいろとは」


幼葉エルフ 「子供にはちょっとはやい」


貝殻の勇者 「黒花どのも子供ではないですか」


カリポリ レロ ピチャ ズズズ


王子 「……馬車幽霊とは、もしかして」


馬車幽霊 「はい。あなたがたの馬車についていくこととなりました」

馬車幽霊 「魔法の馬車の掃除にその他こまごまとお世話をさせていただこうと思います」


王子 「ああ、それは助かるよ。広いからなあ、あの馬車は」

王子 「……味方になったと見せかけていきなり襲ってきたり、なんていうことはないかな?」


馬車幽霊 「ありません。高貴なる死に誓って」


王子 「そ、そうか」

王子 (高貴なる死……)


ハーピィ 「…………」

770 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/05(月) 01:30:29.60 ID:HRbd+qPoO
全く…処女のくせに大人ぶりやがって…
771 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/05(月) 01:40:21.98 ID:2ruJICBS0
星魔法使い改めて馬車幽霊が仲間になったか

裏技使えばろうそく職人の大軍ができるな
772 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/05(月) 02:28:37.58 ID:rIiW6d0jo


馬車幽霊 「そうそう、こんなことができるようになりました」


王子 「何だろうか」


馬車幽霊 「……せーの」

馬車幽霊 「へんし〜ん!」


ショワン


馬車幽霊 「…………」

馬車幽霊メイド 「ふう」


王子 「! 星魔法使いの姿から、綺麗な女性の姿に。奥方の姿か」


馬車幽霊メイド 「あまり意味はありませんが、気分転換などになるかと」


王子 「そりゃ、まあ……」


ハーピィ 「…………」


馬車幽霊メイド 「ただ、ゴーストになったせいか、いろいろなことが出来なくなってしまいました」

馬車幽霊メイド 「ゴーレム術も、今とりかかっているものを最後に館ごと封印しようと思います」

馬車幽霊メイド 「世に広めるべきでないものばかりなのでしょう」


王子 「そうか。残念な気もするが、それが良いのだろう」


773 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/05(月) 03:33:18.12 ID:NK75bDIt0
【悲報】ろうそく職人分身術封印
774 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/05(月) 04:01:31.07 ID:rIiW6d0jo


馬車幽霊メイド 「このようなことで、生前の罪を償うと言うわけにもいかないのでしょうが……」


王子 「味方になってくれるのなら、おれは良いさ」

王子 「そのことであなたを責めてしまうと、大事な友人をひとり失わなきゃならなくなるし」


ハーピィ 「…………」


馬車幽霊メイド 「ありがとうございます、王子どの」

馬車幽霊メイド 「これからは頑張って、いっぱいご奉仕しま呪(じゅ)!」


ココカカ キラララ キラン


王子 「!?」

王子 (馬車幽霊がクネクネしたポーズをきめて靴を鳴らすと、角の丸い星が出て消えた)


ハーピィ 「…………」


馬車幽霊メイド 「……ふむ。やはり、しっくりきませんね」

馬車幽霊メイド 「個としての私を模索しているので呪(じゅ)が」


王子 「な、なるほど、そういうことか。驚いたが、色んなことを試すのは良いことだと思うよ……」


馬車幽霊メイド 「あはは、ありがとうございます」

馬車幽霊メイド 「王子どのは魔法使いにとって心地よいかたのようですね」


王子 「自分じゃよく分からないけど」


馬車幽霊メイド 「懐が深いというか、不思議な包容力があります」

馬車幽霊メイド 「魔法使いは常識から外れた考え方や行いを求められ、孤立しがちなのですが」

馬車幽霊メイド 「それを見てもらえたり、受け止めてもらえることは、とても心強いものなのです」


王子 「へえ……」

王子 「しかしそう言ってもらってしまうと、意識してしまってちょっとギクシャクしそうだなあ」


馬車幽霊メイド 「ははは。おお、そうだ」

馬車幽霊 「この姿でやってみればあるいは……」


コカカカ キラキラ


馬車幽霊 「王子どの、これからは頑張っていっぱいご奉仕しま呪(じゅ)!」


王子 「おえーっ!」


ハーピィ 「…………」


775 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/05(月) 04:54:00.31 ID:rIiW6d0jo


ろうそく職人 「うーん、やっぱり尻尾は変化しません」

ろうそく職人 「本当に私はそんなことできたんでしょうか」


貝殻の勇者 「ええ。私と王子どのが目撃しています」


幼葉エルフ 「普通の人間がゾンビ状態になると、著しく能力が低下するが」

幼葉エルフ 「お前はその逆で、潜在的な力が引き出されたのかもしれないな」


ろうそく職人 「な、なるほど」

ろうそく職人 「……ということは私って、もしかしてすごい才能があるんですかね」


幼葉エルフ 「妙な期待はやめとけ。過剰に自信を持つことで成功する奴もいるが」

幼葉エルフ 「お前の場合はたぶん失敗する」


ろうそく職人 「は、はい」

ろうそく職人 「これからは、謙虚に……丸まって、胸の重みに心をひかれて生きていきます……」


貝殻の勇者 「ああっ、ろうそく職人さんがどんどん猫背に」


ろうそく職人 「師匠、こんな私ですが、朝のミルク係としてお使いください。左の方がまろやかで……」


幼葉エルフ 「ほどほどということを覚えろ。極端に振り切りすぎなんだよ」


776 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/05(月) 04:55:26.05 ID:rIiW6d0jo


幼葉エルフ 「ほれ、菓子を食え」


ろうそく職人 「わーい。あむ」


レロ ビクン ポリポリ


幼葉エルフ 「また指をなめ……っ。まったくこいつは」


貝殻の勇者 「すっかり良い師弟ですね。親子のよう」


幼葉エルフ 「お前の魔王になってやろうか、勇者さま」


ムシャムシャ ズズズ


王子 「……さてと、ごちそうさま」

王子 「よっ、と」


ギシ


馬車幽霊 「おや、もう立って大丈夫なのですか」


王子 「ああ。でも寝ていたせいで体がかたくなっている」

王子 「ちょっと館を散歩してくるよ」


777 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/05(月) 05:05:55.25 ID:rIiW6d0jo


砦の館 廊下


コツ コツ


王子 「すっかり綺麗になっている。あの惨状が夢のようだ」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「うん、夢なんかじゃない」

王子 「でも、星魔法使いがゴーレムで、ついには馬車幽霊になるなんてなあ」

王子 「不思議なこともあるものだ」

王子 「……馬車か。ちょっと気になるな」


778 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/05(月) 05:12:19.23 ID:rIiW6d0jo


砦の館 馬車置き場



王子 「馬車の修理には、星魔法使いだったころの馬車幽霊も関わっていた」

王子 「葉巻がついていたから大丈夫だとは思うが、もしかしたら厄介な罠が……」

王子 「お、あれだな」


魔法の馬車


王子 「…………」


ハーピィ 「…………」


王子 「これは、葉巻を呼ばなきゃ……」


779 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/05(月) 05:27:26.26 ID:rIiW6d0jo


…………


幼葉エルフ 「何だよ、馬車が大変だなんて」


王子 「良いから。見たら分かるから」


幼葉エルフ 「修理中はちゃんと見張ってたんだ。何も変なことは……」


魔法の馬車 星魔法使いの妻塗装


幼葉エルフ 「…………」


王子 「な。車体にでかでかと、星魔法使いの奥方の肖像が……」


幼葉エルフ 「…………」


王子 「葉巻?」

王子 「大丈夫か、ほら、肩がはだけて……」


幼葉エルフ 「うがあああ!」


ハーピィ 「!?」


王子 「ま、待て葉巻、取り乱すな……」


幼葉エルフ 「くっそう、先を越されたあ!」


王子 「!?」


780 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/05(月) 05:59:02.10 ID:rIiW6d0jo


幼葉エルフ 「バトラーワゴンゴースト! 執事! 馬車幽霊! バカ幽霊!」

幼葉エルフ 「来い、今すぐ来い! 直線距離で飛んで来い!」


王子 「落ち着け葉巻。先を越されたとはいったい……」


馬車幽霊 「どうしたのですか!」


ヌッ


王子 「おうっ、もう来た。壁をすり抜けるとは、さすがゴースト」


幼葉エルフ 「お前、何てもの描いてくれたんだよ。オレの漆黒グリフォン丸ちゃんに!」


馬車幽霊 「グリフォン? ああ、ペガメデューサス号のことですね」


王子 「ちょっと、君たち」


馬車幽霊 「すみません。あなた方を亡き者にしたあと、この馬車をいただくつもりでしたので」

馬車幽霊 「ご安心を。今はそんなつもりはありません」


幼葉エルフ 「オレにも気づかれずにやるとは……」

幼葉エルフ 「とにかく、こういうのはやめてくれよ。さすがに恥ずかしいだろ」


馬車幽霊 「あはは。たしかに、今にして思えば恥ずかしすぎますね」


781 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/05(月) 06:12:22.90 ID:rIiW6d0jo


馬車幽霊 「分かりました。この肖像は消しましょう」


幼葉エルフ 「うむ」


王子 「なあ、葉巻よ。先を越されたというのはいったい」


幼葉エルフ 「ハーピィ、ちょっと来なさい」

幼葉エルフ 「ついでだから、新しくなったコンパスに触れさせておこう」


ハーピィ 「…………」


王子 「おい、越されなかったら何をするつもりだったんだよ……」


トコトコ トコトコ


782 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/05(月) 06:25:43.04 ID:tTx6VWwk0
朝のミルク係…

葉巻も馬車幽霊もネーミングセンスはあれだよな
783 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/05(月) 06:34:49.16 ID:rIiW6d0jo


幼葉エルフ 「……ほれ、これが新しいコンパスだ、ハーピィ。落とすなよ」


ハーピィ 「…………」


王子 「行き先や敵の接近などを教えてくれるコンパス」

王子 「変わった様子はないな」

王子 「御者台も以前のままだ」


幼葉エルフ 「結界は強力になっているぞ」

幼葉エルフ 「王子、ちょっとあの辺に行ってくれ」


王子 「? ああ」


トコトコ


ハーピィ 「…………」


トコトコ


幼葉エルフ 「あ、待て、ハーピィ。ここでじっとしてろ」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「そんな顔するなよ……。ちょっとだけだから」


王子 「……おーい、この辺か?」


幼葉エルフ 「ああ。ではハーピィ、コンパスを持って王子からさらに離れてくれ」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「そのあとすぐ王子のところへ行って良いから。泣きそうな顔するなよ……」


784 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/05(月) 06:49:03.44 ID:rIiW6d0jo


ハーピィ 「…………」


トコトコ


コンパス 「…………」

コンパス 「大丈夫かい。そっちは違うよ」


ハーピィ 「!?」

ハーピィ 「…………」


トコトコ


コンパス 「正しい道に戻ったね。気をつけて進みな」


ハーピィ 「…………」


トコトコ トテテテ


ハーピィ 「…………」


王子 「やあ、ハーピィ。相変わらず足が速いね」

王子 「……声が出るようになったのか、コンパス」


785 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/05(月) 06:59:37.52 ID:tTx6VWwk0
コンパスはナビになりましたw

音声つきかい
786 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/05(月) 07:43:02.80 ID:rIiW6d0jo


幼葉エルフ 「これで、目だけでなく耳でも確認することができるようになる」


王子 「便利だなあ」

王子 「でもお前、コンパスなんて大事なものの改造を」

王子 「よく人に任せたな」


幼葉エルフ 「ああ。ちゃんとした仕事は魔法使いの誇りにかかわるし、ちゃんと見張っていたから……」

幼葉エルフ 「……ハーピィ、ちょっとそのコンパスを貸してみろ」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「…………」


ポワ 


王子 (葉巻が何か呟いたら、コンパスが光った)


コンパス 「…………」

コンパス 「今夜も二人のために愛の魔法の音楽を流しましょう」

コンパス 「ラララ〜」


幼葉エルフ 「…………」

幼葉エルフ 「……ふふふふ」


王子 「おい、大丈夫か。また肩がはだけているぞ……」


ハーピィ 「…………」


787 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/05(月) 08:12:37.49 ID:rIiW6d0jo


幼葉エルフ 「ははは、オレの馬車……グリフォン丸ちゃん……」


ハーピィ 「…………」


王子 「まだ言うか。ほら、いつまでも肩を出してるんじゃない」


幼葉エルフ 「ははは……」


王子 (こいつ、こんなに脆い奴だったかな。弟子をもって甘くなったか?)

王子 「どうかな、馬車幽霊どの」


馬車幽霊 「はい。星魔法使い夫婦関連の魔法はすべて解きました」

馬車幽霊 「今の私の手に負えるものばかりで良かった」


王子 「それは良かった」


馬車幽霊 「本当に異常だったのですね、私は」

馬車幽霊 「愛は盲目と言いますが、これはもはや邪悪な呪いのようだ」


王子 「勇気と同じように、愛もまた過ぎると毒ということか」


ハーピィ 「…………」


788 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/05(月) 10:21:24.94 ID:rfAjdq5Ko
ハーピィ可愛いよハーピィ
789 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/06(火) 03:24:44.91 ID:XWgptPBA0
ひまわりの種も食い過ぎると毒なんやで
790 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/09(金) 07:23:40.78 ID:duPIEQgqo


幼葉エルフ 「この馬車を手に入れるために、このオレが何をしたか……」

幼葉エルフ 「それをこんな、変な部屋を増やされて、今回は外装を痛々しく……」


ハーピィ 「…………」


ナデナデ


王子 (やっぱりあのとき、かなり我慢していたのか。そりゃそうだ)

王子 (おれだって男に媚びながら酒を飲むのなんて嫌だものな)


馬車幽霊 「本当に申し訳ない」


王子 「いやあ、あいつの貴重な一面を見せてもらったよ」

王子 「心配になるくらい、日ごろ弱みを見せない奴だから」


馬車幽霊 「ああ。たしかに地下での堂々たる外道ぶりには驚かされました」

馬車幽霊 「あのような目にあって、恐怖ですくむ素振りもなかった」


王子 「とうてい人が通れないような道へ、鼻歌まじりで入ってしまうような奴だからなあ」

王子 「こっちへ戻ってきてくれているから良いけど」


791 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/09(金) 08:38:41.01 ID:duPIEQgqo


馬車幽霊 「そのあたりは、さすがと言いますか」


王子 「あれでも結構えらい魔法使いだからね、あいつ」


馬車幽霊 「はい。全力でかかられていたら、私など眠った赤ん坊に等しかったでしょう」


王子 「それはそれは……」

王子 (手を抜いていたのかよ、あいつ)


馬車幽霊 「ですが、お気をつけください」

馬車幽霊 「今はあちらとこちらを自由に行き来できていても」

馬車幽霊 「ちょっとしたきっかけで、戻ってこれなくなることもあるのです」


王子 「…………」

王子 「経験者は語る、というやつかな」


馬車幽霊 「そうですね」

馬車幽霊 「……どうか、彼女を見失わぬよう。舞台に立つ役者を見つめるように」

馬車幽霊 「魔法、妖精。未知という濃い霧に沈み、さまざまな驚異と脅威が息を潜めるこの世は」

馬車幽霊 「どんなに大切にしているものでもあなたが瞬きをする間に、そして往々にしてそんなときに、影ごとさらっていってしまうのだから」


王子 「……ああ。胸に刻もう」

王子 「ところで、あなたが言うところの彼女についてなんだが」

王子 「この先ともに旅をするにあたり、話しておかなければならない重大なことがあるんだ……」


…………


792 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/09(金) 10:52:45.07 ID:Ydg5l0Gq0
ついに答えが出るのか?
793 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/10(土) 17:57:34.03 ID:w0j6Qxre0
ちょうどよいドラム缶の体を探してることもいわんとな
794 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/11(日) 17:21:39.24 ID:gsUXCdXSo
王子の身体に入ったら、どうなるんだろう
いろんな意味で
795 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/11(日) 17:31:59.46 ID:5RSCm6FDo
そりゃあもうナニしたりして堪能するんだろ(ゲス顔)
796 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/13(火) 01:28:51.11 ID:D6pWSqgbo


…………


夜 砦の館 食堂



ハーピィ 「…………」


馬車幽霊 「羽言葉の物語に、妖精の恋人、爪の谷底の雲、野菜王国の鍛冶屋さん……」

馬車幽霊 「大丈夫です。危険な魔術に関する本はありません」


ハーピィ 「…………」


王子 (喜んでる、喜んでる。相変わらず顔には出ないけど)

王子 「良かった。それじゃあ明日にでも馬車に積み込ませてもらうよ」


馬車幽霊 「私がやっておきましょう。図書室の掃除もやろうと思っていましたので」


王子 「それは助かる」

王子 「いやいや、仲間が増えるというのはよいものだ」

王子 「この調子であと102人くらい……」

王子 「と、あれは」


797 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/13(火) 01:48:42.05 ID:D6pWSqgbo



ゴロロロ カコン コオン


貝殻の勇者 「あら、うふふ、やったあ。狙い通りにいきました」


ろうそく職人 「ぐぬー、さすが勇者さま。私の番ですね」

ろうそく職人 「…………。ぬ、ぬ、ぬうー……」


貝殻の勇者 「ふふふ。ろうそく職人さん、よく狙って……」



王子 「……ろうそく職人と勇者どのが、テーブル上に置いたいくつかの球を棒で打っている」

王子 「塔や城や門、建物のようなものの下をくぐらせたり、相手の球を自分の球で弾いて穴に落としたり」


馬車幽霊 「ああ、倉庫にあったテーブルゲームです。探してみるものですね」

馬車幽霊 「ああやって障害物を置いて互いの持ち球を落としあうほかに、いくつか遊び方があるんですよ」


王子 「へえ。そういえば、酒場に似たようなのがあったな。あれほどゴチャゴチャしていなかったけど」


馬車幽霊 「すごいものになると、森や川を置いたり、星を浮かべたりするものもあったかと」


王子 「ふうむ」


馬車幽霊 「あれも馬車に積み込もうと思いますので、よかったら遊んでみてください」


798 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/13(火) 02:08:40.84 ID:D6pWSqgbo


ろうそく職人 「……うむむむむ」


フリフリ ハタハタ


貝殻の勇者 「…………」


ろうそく職人 「集中、集中。一発逆転火の車……」


ピクッ ピクッ フリフリ フリフリ


貝殻の勇者 「…………」


ギュッ


ろうそく職人 「おひょおぉんッ!?」


スカッ


ろうそく職人 「あはふぅ……。ああっ、棒が球を空突きしちゃった」

ろうそく職人 「ず、ずるいですよう、勇者さま。尻尾を掴むなんて……」


799 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/13(火) 02:19:08.76 ID:D6pWSqgbo


貝殻の勇者 「……あ。ご、ごめんなさい、お耳フリフリお尻フリフリ尻尾フリフリしていたので、つい……」

貝殻の勇者 「やりなおして、もう一度どうぞ」


ろうそく職人 「はいっ。むふ、今度は当てますよーう……」


ピクッ フリフリ ハタハタ


貝殻の勇者 「…………」


ろうそく職人 「集中が一匹、集中が二匹、集中が三匹……」

ろうそく職人 「…………グゥ」


ダダダダダ


幼葉エルフ 「おい、これはどういうことだ!」


ろうそく職人 「ふがっ!?」


スカッ


800 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/13(火) 02:57:13.18 ID:D6pWSqgbo


ろうそく職人 「ひいいっ、また棒がスカッと!」


幼葉エルフ 「誰だよ、脱衣所にこんなもん置いた奴は」


王子 「……紐。いや、布?」


幼葉エルフ 「風呂からあがったら、オレの下着がなくなってこれが置かれていたんだ」

幼葉エルフ 「どんな嫌がらせだよ、これ」

幼葉エルフ 「オレの下着どこだよ。スウスウして風邪ひいちゃうよ」


貝殻の勇者 「王子どの」


ろうそく職人 「王子さま」


王子 「おれじゃないぞ」


ハーピィ 「…………」


馬車幽霊 「ああ。それは私が用意したものです」


801 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/13(火) 03:32:43.85 ID:D6pWSqgbo


幼葉エルフ 「お前……」


馬車幽霊 「ふんどし、という立派な下着です」

馬車幽霊 「しかもそれは、装備すると男らしさが上昇し女性をメロメロにできるようになるかもしれない、魔法のふんどしなのです」

馬車幽霊 「その名も、旭日のふんどし」


王子 「ふんどし?」


幼葉エルフ 「ふんどし。そういえば、青花のやつが女用のを装備していたな」

幼葉エルフ 「尻が丸出しになる恥ずかしいやつだった」


王子 「青花エルフが」

王子 「ふむ……」


ハーピィ・幼葉エルフ 「…………」


ビタン バシッ


王子 「いてっ」


幼葉エルフ 「なに想像してんだ」


ハーピィ 「…………」


802 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/13(火) 04:44:32.41 ID:D6pWSqgbo


王子 「剣士である彼女が装備するのなら、何か意味があるのかと思ったんだよ」

王子 「それだけだ」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「うん。ちょっとうしろ姿を想像したかもしれない」

王子 「本当にちょっとだけ。これは雄の悲しい習性で……」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「で、オレにこれを装備しろって言うのかよ」


馬車幽霊 「はい」

馬車幽霊 「王子さまから事情を聞きました」

馬車幽霊 「いやあ、まさか私が魂の性別を読み違えるとは」

馬車幽霊 「さすがエルフの長老。魔法の奥深さを学ばせていただきました」

馬車幽霊 「このふんどしは感謝の気持ちです。さあ、おおさめください」


幼葉エルフ 「…………」


貝殻の勇者 「黒花どのがふんどしを」

貝殻の勇者 「……エルフんどし」


ろうそく職人 「エルふん……」


プププ クスクス


幼葉エルフ 「…………」


803 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/13(火) 05:08:50.67 ID:D6pWSqgbo


幼葉エルフ 「…………王子」


王子 「なに、良いってことさ」

王子 「自分から言うのも恥ずかしいことだろうしな」


幼葉エルフ 「……覚悟しとけ。今度お前の下着を、透け透けの女々しい下着にすりかえてやる」


王子 「何でだよ。やめろよ」


幼葉エルフ 「ふふふ……」


ろうそく職人 「師匠、そんな下着を持っていたんですか」


幼葉エルフ 「…………」


ハーピィ 「…………」


王子 (自分で言いたかったのかな。たしかにお節介だったかもしれない)


804 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/13(火) 05:29:19.81 ID:D6pWSqgbo


…………


ハーピィ 「…………」


スコン ゴロロロロ カン コオン 


ろうそく職人 「む、器用ですねハーピィさん」


幼葉エルフ 「領主の息子を一目でおとした魔性の女だけはある」


貝殻の勇者 「良いですね。面白い戦いになりそうです」


ハーピィ 「…………」


ろうそく職人 「果たして、勇者パーティでもっとも棒と球の扱いに長けた女性は誰なのか……」


貝殻の勇者 「ふふふ、負けませんよ。槍使いの真価を見せてさし上げましょう……」


幼葉エルフ 「やれやれ、これだから人間は……」


ゴゴゴゴ


王子 「おお、燃えている……」


805 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/13(火) 05:48:12.10 ID:D6pWSqgbo


王子 「棒と球をめぐる戦い、か。なかなか華やかじゃないか」

王子 「それにしても本当に器用だなあ、ハーピィ。こころなしか楽しそうだ」

王子 「交流する女性がいることは良いことなのだなあ」

王子 「……気をつけろよ葉巻。今お前はスパッツをはいていないんだからな」


馬車幽霊 「王子どの。ただいま戻りました」


王子 「やあ、馬車幽霊どの。どこに行っていたんだい」


馬車幽霊 「王子どのに渡したいものがありまして。取りに行っていました」


王子 「おれに?」


馬車幽霊 「はい。これです」


細身の剣


王子 「……おお、これは」


806 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/13(火) 06:11:00.71 ID:D6pWSqgbo


馬車幽霊 「よかったらお使いください。星魔法使いの妻が護身用に使っていたもので」

馬車幽霊 「少し強化したとはいえ、王子どのの折れた剣には及びませんが……」


王子 「やあ、助かるよ。戦いのたびに鞘に魔法をかけてもらうのも大変だし」


ヒュン ヒュッ 


王子 「……うん、おれでも使えそうだ。護拳が星の光をとかしたみたいで綺麗だね」


馬車幽霊 「月と星の光をたっぷりと浴びた花の露をつかって鍛えました」

馬車幽霊 「魔術の付与はもちろん、持ち主の魔力を吸って剣に送り、剣そのものに秘められた力を発揮することができます」


807 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/13(火) 07:12:27.77 ID:D6pWSqgbo


王子 「へえ。すごいな、魔法をかけてもらわなくても剣に魔法を宿せるとは」


馬車幽霊 「ただし、その場合は決まった魔法しか宿せません」

馬車幽霊 「普通の魔法に比べて効率も悪く、魔力の消費も激しいので」

馬車幽霊 「あまり当てにしない方が良いかと思います」


王子 「なるほど……」

王子 「宿せるのはどんな魔法なんだい?」


馬車幽霊 「鎧打ちの魔法です。重装備の敵と戦うのに役立つでしょう」


808 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/13(火) 07:42:29.38 ID:D6pWSqgbo


王子 「鎧打ちか……」


馬車幽霊 「重たい鉄のこん棒で殴ったような衝撃をあたえることができます」

馬車幽霊 「魔法の加護を受けた鎧を相手にすれば、効果は落ちますが」


王子 「ふむ」


馬車幽霊 「さて、剣の名前ですが……」


王子 「そんなのいるのか」


馬車幽霊 「自分が手がけた、いわば子供のようなもの」

馬車幽霊 「自分の子供に名前をつけるのは、当然の親心です」


王子 「そんなものかね」


809 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/13(火) 08:21:46.73 ID:D6pWSqgbo


王子 「まあ、名前があれば愛着もわいて大事にするか……」


馬車幽霊 「瞬く数多の星を背負い、神の双眸さえ欺く輪廻破壊の理」

馬車幽霊 「久遠の闇の牢獄にて、狂喜する狂気に身を焦がし、われ、新たなる唯一凌駕の神を望まん」

馬車幽霊 「目覚めよ、失われし我が反逆の翼。汝は神を冒涜する者。殺神の剣。汝の名は」

馬車幽霊 「漆黒光輪天魔尽神刃」

馬車幽霊 「……など、どうでしょう」


王子 「自分の子供に刺されたいのか、あなたは」


810 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/13(火) 08:48:22.36 ID:D6pWSqgbo


ろうそく職人 「うぷぷ、師匠ったら体が小さいのに大人用の棒なんて使うから……」


幼葉エルフ 「ふんっ。ちょうど良いハンデだよ」


カアン コオン ゴロロロ


馬車幽霊 「駄目でしょうか」


王子 「駄目というか、壮大すぎるというか、きらきらしすぎだと思う」


馬車幽霊 「ふむ。わりと時間をかけて考えたのですが」

馬車幽霊 「考えすぎてしまったようですね」

馬車幽霊 「たしかにこれでは、細かく設定しすぎて子供の成長の可能性を潰してしまいそうです」

馬車幽霊 「もっと成長の邪魔にならない、自由のある名前の方が良いですね」


王子 「うん、まあ……」


馬車幽霊 「ペガメデューサス号のような、呼びやすい名前にしましょう」


王子 (これは期待できそうにないな)


811 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/13(火) 09:42:13.84 ID:D6pWSqgbo


王子 「馬車幽霊どの。そのペガメドロンというのは何か意味があるのかな?」


馬車幽霊 「ふむ。ペガサスとメデューサは知っていますか?」


王子 「小さい頃、先生に読み聞かせてもらったいくつかの本に出てきたな」

王子 「強力な魔力を持ったモンスターとか、天のつかいだとか、扱われかたは異なっていたけど……」


馬車幽霊 「ペガサスは、メデューサの血から生まれたという話もあります」

馬車幽霊 「ペガメデューサスは、生と死の巡りの象徴として名づけたのですよ」


王子 「へえ、なるほど」

王子 「じゃあ葉巻のつけた漆黒グレンデリオンとかいう名前にも、何か意図が込められていたりするのかな」


カコン コンカココン ゴトト


ハーピィ 「……!」


ろうそく職人 「ああっ、ハーピィさまと私の球が一緒に落とされた!」


幼葉エルフ 「ふはは、見たか必殺大開脚谷間打ちの威力を」

幼葉エルフ 「ここから大逆転してやるからな」


貝殻の勇者 「……えいっ」


カコン


幼葉エルフ 「なにっ」


ゴロロロ カキ ゴトン


王子 「……なさそうだな」


812 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/13(火) 10:34:14.16 ID:wsTRkJZEo
ほほぅ、棒と球をうまく扱う為に大開脚谷間...
さすが幼葉エルフだ
813 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/13(火) 11:40:06.02 ID:UUj9CCeZ0
幽霊になっても相変わらずやな星魔法使い

エルふんだけは評価したる
814 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/13(火) 14:19:31.89 ID:nJCU5GUX0
幼葉エルフかわええな
815 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/13(火) 22:05:24.99 ID:M1bbjXTzo
ふんどし画像マダー
816 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2014/05/14(水) 19:03:40.42 ID:FNUhXLNko


http://i.imgur.com/ze09SbQ.jpg


■幼葉エルフ

王子がエルフの森で不思議な商人から譲ってもらった幼姫の体を
黒花エルフ(葉巻エルフ)が乗っ取った姿。
もとの持ち主より体を使いこなせているものの、
ほぼすべてのステ−タスがガタ落ちした挙句、弱点も増えてしまった。
大きなダメージを受けるほど、魔力が回復するぞ。


817 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/14(水) 19:13:10.14 ID:u9Eg/iTm0
>>816
通報の時間だああああああああ

先生の褌こそ至高
818 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/14(水) 19:33:42.67 ID:PbL3FI3RO
>>816
エロい
819 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/15(木) 01:17:17.68 ID:i7yZZvxxo


…………


ろうそく職人 「ほらほら、さっさとやってくださいよ師匠」

ろうそく職人 「敗者の屈辱をたんと味わうが良いですよ」


幼葉エルフ 「ぐ……。まぐれで勝ったくせに調子に乗りやがって……」


ポニュ ポニュ


貝殻の勇者 「せいしの剣?」


王子 「うん」


馬車幽霊 「この剣につかわれているのは特殊な魔法金属で、星の糸と呼ばれることもあります」

馬車幽霊 「星糸で、せいし。生死ともかけてあるのですよ」


貝殻の勇者 「ほう。星の糸ですか、聞いたことがありません」


ハーピィ 「…………」


820 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/15(木) 01:29:04.62 ID:i7yZZvxxo


馬車幽霊 「世の理を乱すとして封印されましたが、魔法使いは冶金術の開拓も熱心に行っていて」

馬車幽霊 「その過程でさまざまな人工の魔法金属がうまれました」

馬車幽霊 「これも、そのひとつなのです」


貝殻の勇者 「ほう」


馬車幽霊 「王子どのがもともとつかっていた剣も魔法金属がつかわれていますね」


王子 「そうなのか。……なおせるかな」


馬車幽霊 「普通の鍛冶師には困難でしょうが、谷の妖精たちや魔法使いの力を借りたらあるいは」


王子 「ふむ。いちおう持っておくか」


821 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/15(木) 01:33:29.37 ID:NaKCZrcO0
ろうそく職人さんその擬音はなんでせうか
822 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/15(木) 01:40:39.05 ID:i7yZZvxxo


ろうそく職人 「ほーれほーれ」


フニ フニ


幼葉エルフ 「…………ッ」


ろうそく職人 「あ、ふんどし見えた」


幼葉エルフ 「……! お前……ッ」


ろうそく職人 「おやおや」

ろうそく職人 「エルフの長老ともあろうおかたが、約束をやぶるおつもりですかな?」


幼葉エルフ 「…………ッ」

幼葉エルフ 「お前、やっぱりオレをなめてるな……」


ろうそく職人 「むふっ。ぺろぺろぺろぺろ」


幼葉エルフ 「っ! …………くっ」


ハーピィ 「…………」


王子 「……何をしているんだ、あの師弟は」


貝殻の勇者 「膝枕ですね」

貝殻の勇者 「ゲームの成績が一番悪かった者が、一番良かった者の言うことをきく約束だったのです」


王子 「そ、そうか」

王子 (そんな賭けをしていたとは。ハーピィが負けなくて良かった……)


823 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/15(木) 01:57:48.55 ID:i7yZZvxxo


ろうそく職人 「むふー……」


幼葉エルフ 「むっ。やいこら、腿に変な息を吹きかけるな……」


ろうそく職人 「……グウ」


幼葉エルフ 「……寝たのかよ」


ハーピィ 「…………」


貝殻の勇者 「……なるほど。持つと暖かく、力が脈打つ感じがします」

貝殻の勇者 「剣の魔力でしょうか」


馬車幽霊 「はい。そのまま強く念じると、剣に魔法を宿すことができます」


貝殻の勇者 「なるほど。王子どの、どうぞ」


王子 「ああ。やってみよう」

王子 「…………」


ハーピィ 「…………」


王子 「…………」


キイン


貝殻の勇者 「おお、これは」

貝殻の勇者 「剣身が黄ばんだ……!」


馬車幽霊 「星の色に輝いたのです」


824 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/15(木) 02:21:28.79 ID:i7yZZvxxo


キュイイ


王子 「黄色いなあ……」


馬車幽霊 「その金属特有の色です」

馬車幽霊 「本来はもっと白いのですが、純度が低かったようですね」


貝殻の勇者 「魔法を受けると黄ばむ、せいしの剣……」


王子 「うーん。たしかに少しずつ魔力を吸われている気がする」


ハーピィ 「…………」


馬車幽霊 「魔力が枯渇するか、また念じれば魔法はとけます」


825 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/15(木) 20:03:58.53 ID:dEXEZdz00
黄ばむせいしの剣…
いやなんでもない
826 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/15(木) 21:48:07.23 ID:edY3rTw30
同じ事を考えてた
827 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/15(木) 22:55:20.05 ID:yrbaeU120
そういや>>1の書く絵柄が最初のストーリーから読んでたからびっくりしたわ

今なら葉ケンエルフに褌つけさせても違和感はないわ
828 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/16(金) 07:05:55.01 ID:kgTqIIKd0
ちょっと何言ってるかわからないです
829 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/17(土) 09:37:12.08 ID:mz584UUIO
大丈夫だ、俺もわからん
830 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/18(日) 19:59:25.77 ID:Wz89Ec95O
幼葉エルフ 寸胴 可愛い
チャイカ 寸胴 可愛い

寸胴 = 可愛い
831 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/19(月) 21:53:11.23 ID:dJtOtYLE0
>>830
マンボウの人も寸胴なんですけど
832 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/19(月) 22:24:23.78 ID:5qiB+Ci/o
魔ンボウ、かわいいじゃないか
833 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/20(火) 12:05:30.24 ID:YSfH80tzo
魔ンボウが理想の体だった可能性...
834 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/22(木) 12:46:01.84 ID:Nf/PEcT1o


ろうそく職人 「……ムニャムニャ……お母さあん、ママぁ……ムニャ」


ハーピィ 「…………」


王子 「魔法の威力も試しておきたいけど、鎧がもったいないしなあ……」


貝殻の勇者 「その剣の魔法や私の勇者の力を発揮することなく、旅をすすめられるのが一番なのでしょうけれど」


幼葉エルフ 「まあ、そいつは無理な話だな」

幼葉エルフ 「皇帝の目を探すという目的がある以上、いずれ帝国のどなたかとの戦いは避けられないだろうよ」


王子 「だろうね」

王子 (葉巻が、ろうそく職人の頭をなでている……)


幼葉エルフ 「あん? 何だ。恐ろしいものを見るような目をして」


835 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/22(木) 13:06:44.43 ID:Nf/PEcT1o


王子 「いや、珍しいことをすると思ってね」


幼葉エルフ 「?」

幼葉エルフ 「……ああ」

幼葉エルフ 「罰ゲームは膝枕だけだったな。頭はなでなくて良かったか」


王子 「ははは」


幼葉エルフ 「何だよ」


王子 「カスだの腐れズンドコだの何だかんだ言っても、可愛い弟子みたいだな」

王子 「町でつるんでいた頃からは想像もつかない姿だ」


幼葉エルフ 「違う。罰ゲームだと言っただろ」

幼葉エルフ 「何だよ、変な目をするなよ。仮面をかぶっていても分かるんだからな」


836 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/22(木) 13:20:11.58 ID:Nf/PEcT1o


貝殻の勇者 「可愛がっているようにしか見えませんが」


幼葉エルフ 「可愛くなんかあるか。……予想以上に駄目な奴なんだよ、こいつ」

幼葉エルフ 「一人じゃ普通に生活することもできないんじゃないか」


馬車幽霊 「駄目な人ほど、可愛いものだそうですよ」


ろうそく職人 「ウニャ……うふふ、師匠、ししょお……」


幼葉エルフ 「………。まったく、お気楽に眠りやがって」


ろうそく職人 「ムニャ。ふふふ、すごいですね師匠」

ろうそく職人 「そんな狭いところを通れるなんて。私やハーピィさまでは胸がつかえて、とてもとても……スゥ」


幼葉エルフ 「…………」

幼葉エルフ 「……たこが来るぞ。女に飢えた野生のたこが追ってくるぞ」


ろうそく職人 「う、う〜ん、う〜ん……」


837 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/22(木) 14:46:34.84 ID:O0J2u7bL0
野生のタコ…
またろうそく職人が触手に
838 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/05/22(木) 21:28:35.54 ID:tX8kk5Uh0
巨大なタコに!
ろうそく可愛い
839 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/23(金) 02:09:10.74 ID:WQB8/Ez0o
くっ! 前のだらしない体だったら弟子にこんなこと言わせなかったのに!
とりま乙!
840 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/24(土) 05:27:12.11 ID:Ev3RG+GDo


幼葉エルフ 「けけけ、思い知ったか愚かな弟子よ。余計なものをぶら下げているからそうなるのだ」

幼葉エルフ 「よしよし」


ろうそく職人 「う〜ん、う〜ん、形容するのもおぞましいタコが頭をなでてくるよう。勇者さま、助けてえ……」


貝殻の勇者 「あらあら、うふふ」


王子 (身内の面倒見が良い奴だと思っていたが、こりゃそうとうな甘やかしエルフだぞ)

王子 (口と素行が悪いのは、それを抑えるためだったりして)

王子 (だとしたら、町で葉巻を売っていたときの子悪党っぷりといい、極端な奴だ。意外と不器用なのかな)


ハーピィ 「…………」


841 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/24(土) 05:36:23.82 ID:Ev3RG+GDo


王子 (駄目な人ほど可愛い、か)

王子 (将来葉巻に愛されるのは、そりゃもうたいそう駄目な奴なのだろうな)

王子 (はははっ……)

王子 「はっくしょん!」


ハーピィ 「!?」


幼葉エルフ 「こりゃまた盛大なくしゃみだな」


貝殻の勇者 「仮面のつけすぎで風邪でもひいたのですか?」


王子 「驚かせてごめんよ」

王子 「いや、誰かがおれのことを噂しているらしい……」


842 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/24(土) 06:11:39.36 ID:xftj/8oj0
どこかの海老娘が海老茹で師のことを想像してるんじゃないかな
843 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/24(土) 07:20:28.03 ID:Ev3RG+GDo


馬車幽霊 「自分のことを噂されているとくしゃみが出る」

馬車幽霊 「この時代にも残っているのですね」

馬車幽霊 「寝ているかたもいることですし、少し暖かくしましょう。今夜の森は冷える」


コツ コツ コツ


王子 「立派な暖炉だなあ」


馬車幽霊 「幸せな家の暖炉には火の精霊が住むといいます」

馬車幽霊 「この館のもとの主も、精霊が住みついてくれるよう立派な暖炉をつくらせたのかもしれませんね」


王子 「ふうむ。……悪魔じゃないのか」


幼葉エルフ 「飼うなら悪魔だよな」


貝殻の勇者 「まあ、私は許しませんよ。暖炉で悪魔を飼うなんて」


幼葉エルフ 「そこを何とか頼むよ」


王子 「ちゃんと世話するから」


貝殻の勇者 「おだまらっしゃい」


馬車幽霊 「みなさん、仲が良いようで何より」


844 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/25(日) 10:32:48.96 ID:WIp6kOxmo


パチ パチ メラメラ


ろうそく職人 「…………スゥ」


貝殻の勇者 「ふふふ、よく寝ていますね」


幼葉エルフ 「いつまで人の膝で寝ているつもりだって話だよ。動けないじゃないか」


王子 「おろせば良いのに……」


貝殻の勇者 「ふあ……」

貝殻の勇者 「ろうそく職人さんの寝顔を見ていると、私も眠たくなってきました」

貝殻の勇者 「ここで寝てしまいましょうか」


馬車幽霊 「では何か、体にかけるものを持ってきましょうか」


貝殻の勇者 「あら、そうですね。では人肌に暖めたミルクを」


馬車幽霊 「は、はい……?」


845 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/25(日) 11:53:27.72 ID:WIp6kOxmo


ハーピィ 「…………」


王子 「森の奥にたたずむ館で、暖炉の火にあたりながら温かいミルクか」

王子 「ずっとここでのんびりしていたい気分だ」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「うん。そろそろ旅を再開しなくて良いのかな」

王子 「ゆっくりしすぎて、森を出たら魔王と皇帝が世界を半分こして治めていた」

王子 「なんてことにでもなったら」


貝殻の勇者 「悪夢ですね」


幼葉エルフ 「そのときはそのときさ」

幼葉エルフ 「なに、別に意味もなくだらだらしているわけじゃない」


846 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/25(日) 12:00:34.21 ID:cYSWfFtbo
きたか…!!

  ( ゚д゚ ) ガタッ
  .r   ヾ
__|_| / ̄ ̄ ̄/_
  \/    /
847 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/25(日) 12:28:48.37 ID:WIp6kOxmo


王子 「何か考えがあってのことなのか」


ハーピィ 「…………」


馬車幽霊 「……おや?」


貝殻の勇者 「黒花どの、王子どのにはまだ話していないのですか」


幼葉エルフ 「ああ。そういえば、まだだったな」

幼葉エルフ 「まあ良いや。このまま秘密にしていよう」


王子 「堂々と言わないでくれないか」


幼葉エルフ 「いろいろあるのさ、王子さま。だがお前が気にするほどのことじゃない」

幼葉エルフ 「今回は死ぬほど頑張ったんだから、余計なことは考えずにゆっくり休んでろ」

幼葉エルフ 「ときが来れば、すぐに分かるさ」


王子 「ずいぶんと気になる言い方をするじゃないか」


幼葉エルフ 「けけけ」


848 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/25(日) 21:33:34.04 ID:WIp6kOxmo


…………


人殺しの森 砦の館 庭



フィーヨ チチチ サワサワ


王子 「…………」


カキ ガキン キイン


ろうそく職人 「ひい、ひい……」


貝殻の勇者 「良いですよ。槍が体の一部になってきています」

貝殻の勇者 「その感覚を少しでも明日へ残せるよう続けましょう」

貝殻の勇者 「もうひと踏ん張り頑張って、ろうそく職人さん」


ろうそく職人 「おえっ……は、はい、勇者ひゃま……!」


カキ キン ガガキン


ハーピィ 「…………」


王子 「……槍の稽古を見ていると腹が痛むなあ」


849 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/25(日) 21:49:41.26 ID:WIp6kOxmo


王子 (昨日葉巻はああ言っていたが、本当にのんびりしていて良いだろうか)

王子 (国家憲兵隊が島から離れるのを待つことにしたのか?)

王子 (いや、それならおれに隠す必要もないだろう)

王子 (……考えてもしかたないか)

王子 (どうせあいつのやることだ。どんな事態になっても対応できるよう、心の準備をしておこう)


ハーピィ 「…………」


首無し馬 「フィイイ」


パカポコ パカポコ


王子 「ハーピィ、首無し馬とはもう息がぴったりだな……」


850 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/25(日) 22:20:43.26 ID:WIp6kOxmo


王子 (さて、南か)

王子 (島の南には港があって、そこから船で南東地方に渡れるんだったな)

王子 (大小の島々からなる南東地方。あそこの領主と親父はわりと仲が良かったと思うが……)

王子 (というか、おれは今どんな扱いなのだろうか)

王子 (仮面もあるし、死んだものとして動いた方が良さそうだな)


幼葉エルフ 「よお、王子」


王子 「……葉巻」


幼葉エルフ 「どうした、難しい背中をしているぜ」

幼葉エルフ 「脳みその迷路で遊んでいる哲学者みたいだ」


王子 「何だそりゃ」

王子 「……葉巻、その手にかけた布はいったい」


幼葉エルフ 「ああ、これか」

幼葉エルフ 「ところでハーピィは……」


ハーピィ 「…………」


首無し馬 「フルル」


パカラ パカラ


幼葉エルフ 「……何だあのモンスターは」


王子 「首無し馬に乗ったハーピィだ」


851 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/25(日) 23:13:54.83 ID:WIp6kOxmo


幼葉エルフ 「珍しいじゃないか。お前にべったりのあいつが、あんなに離れて」


王子 「うん。少し離れるだけでも泣きそうな顔をすることもあれば」

王子 「今みたいなこともある」

王子 「おれがどこにもいかないと信頼してくれているんだろうな」

王子 「ふっ……」


幼葉エルフ 「ふうん」

幼葉エルフ 「傍にいるのに飽きたただけじゃないのか」


王子 「ふっ……」

王子 「…………」

王子 「い、いや、そんな馬鹿な」


幼葉エルフ 「自信ないのかよ」


852 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/25(日) 23:33:07.17 ID:WIp6kOxmo


幼葉エルフ 「さて、うろたえ王子を尻目にハーピィをつかまえてくるとするか」


ザッ ザッ ザッ ザッ


王子 (……ふむ)

王子 (たしかに、あの商人の言うハルピュイアという種族とハーピィとには差があるようだ)

王子 (人間のように、個体差として片付けてよいのだろうか)

王子 (人間か。ハーピィの心の有り様が人間と似ているのなら)

王子 (人の嘘をすべて見抜き暴くというのは、どのような感じなのだろうか)


853 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/25(日) 23:46:01.54 ID:hCd9zmd/0
文字は読めるんだし書いてもらえばええのにな
854 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/25(日) 23:46:29.32 ID:WIp6kOxmo


ろうそく職人 「ひい、ふう、ひい……」


貝殻の勇者 「よく頑張りましたね、ろうそく職人さん」

貝殻の勇者 「では、一緒にお風呂で汗を流しましょうか」


ろうそく職人 「わ、わはあい……」


王子 (……南東か)

王子 (……やっと南東かあ)


ザッ ザッ ザッ


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「…………」


王子 (? 葉巻の後ろにハーピィがぴったりついて、こちらにやってくる)


幼葉エルフ 「……ふふふ」


ハーピィ 「…………」


王子 「うん?」


幼葉エルフ 「いけ、ハーピィ!」


ハーピィ 「…………!」


タタタッ バッ


王子 「!?」


王子柄の服


ハーピィ 「…………」


王子 「な……」

王子 (ハーピィが、おれの姿が描かれた服を着ている)

王子 (完成させたのか、葉巻)

王子 (……寒気がするような爽やかな笑顔だな、服の上のおれは)


855 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/26(月) 00:43:18.25 ID:tdo7buX6o


幼葉エルフ 「昼寝しながら徹夜でつくったんだぜ」


王子 「昼寝を夜にまわせなかったのか」


ハーピィ 「…………」


王子 「どこか晴れやかな無表情」

王子 「理解しがたいが、すごく喜んでいるようだ」


幼葉エルフ 「そうか、そうか」


王子 「これって、星……馬車幽霊がつくったもののように、絵がかわったりするのか?」


幼葉エルフ 「ああ」


王子 「そ、そうか」

王子 「だが、これで歩きまわるのはまずいだろう。せっかくおれが顔を隠しているのに」


幼葉エルフ 「当たり前だ」

幼葉エルフ 「これは、何らかの手違いでお前が死んじゃったときに着るためのものだ」


王子 「死んじゃっ……」


幼葉エルフ 「命は失われても、魂はこの服を通してハーピィの中で生き続けるのさ」


ハーピィ 「…………」


王子 (おれが死ぬと、この爽やかな笑顔がのこるのか……)

王子 「よし、分かった」

王子 「意地でも死なん」


856 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/05/26(月) 03:08:56.66 ID:tdo7buX6o


幼葉エルフ 「その意気だ」

幼葉エルフ 「そろそろ出発の準備に入るぞ」

幼葉エルフ 「館から持ち出すものがあるなら、今のうちから用意しとくと良い」


王子 「いよいよか」

王子 「……まさか、これをつくるために出発を延ばしていたんじゃないだろうな」


幼葉エルフ 「まさか」


王子 「そうか、良かった。本当に」

王子 「だけど何だよ、あれ。びっくりしたじゃないか」

王子 「おれはあんなに爽やかに媚びた笑いかたなんてしないぜ」


幼葉エルフ 「…………」

幼葉エルフ 「そうか、びっくりしたか」


王子 「? ああ」

王子 「ハーピィにそんな服をつくると聞いて嫌な予感はしていたけれど」

王子 「予想外だったよ」


幼葉エルフ 「はじめて見ると衝撃的だったかい」


王子 「ああ」


幼葉エルフ 「………」


ハーピィ 「…………」


幼葉エルフ 「そうか……」

幼葉エルフ 「ハーピィ。お前はとても人間的だな」


王子 「?」


幼葉エルフ 「けけけけ」


ハーピィ 「…………」


857 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/26(月) 06:16:02.14 ID:bby6hPtF0
なかなか人の顔の絵柄の服を着る人はいないわな

てか馬車幽霊からんでる時点でなんかまだありそう
858 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/26(月) 08:08:48.19 ID:jlCHGeBio
ハーピィ打算的wwwwww
859 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/26(月) 19:08:17.43 ID:V8/eFB6WO
打算的がわからない…ちくしょーう
860 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/26(月) 20:57:43.48 ID:jlCHGeBio
私は嘘を付きました
861 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/30(金) 01:38:30.20 ID:Wl94Qthr0
王子の記憶がないんだからハーピィの意思は関係ないんだろうがなあ
862 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/01(日) 08:07:02.20 ID:+E8+vQPno


砦の館 夜


ホー ホー サワサワ


王子 「やあ、枝葉の向こうにぽっかりと良い月だ。慣れてしまえば静かでのんびりした良い森じゃないか」

王子 「いろいろとあったが、この館も、もうすぐ出て行くとなるとやっぱり名残惜しい」


ハーピィ 「…………」


王子柄の服


王子 「……ハーピィ、いつまでその服をひろげているんだい?」


ハーピィ 「…………」


王子 「本当に気に入ったのかな」


ハーピィ 「…………」


パラ


幼葉エルフの裏声 『王子さま、すきすき。だいすき』


王子 「そ、そうか……」


863 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/01(日) 08:22:35.86 ID:+E8+vQPno


王子 「魔法のつるに、痛々しい服に……葉巻め、ハーピィに変なことばかり……」


コン コン


王子 (ドアをノックする音。誰だろう)

王子 「開いているよ」


ガチャ


美少女 「…………」


王子 「…………」

王子 (誰だろう)


864 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/01(日) 08:42:31.06 ID:+E8+vQPno


美少女 「…………」


王子 (桃色の髪に……やけに肌が青白いな)

王子 (本当に誰だ。いや、これはしかし、顔は幼いけどかなりの……)


美少女 「……よぉ」


王子 「あ、葉巻か」


ハーピィ 「…………」


美少女 「ほう、さすがだ。すぐに分かるとは」


王子 「ははは、だてに町でつるんじゃいないさ」

王子 「その品の無い話し方、すぐに分かったね」


美少女 「…………」


グギュ


王子 「いたたた、わき腹をつねるな。冗談だ」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「うん。品は悪い」


美少女 「…………」


グギュウウ


王子 「いだだだだだだ」


865 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/01(日) 09:00:01.78 ID:+E8+vQPno


美少女 「まったくお前という男は。オレは確かに腐っちゃいるが」

美少女 「これでも黒花の異名を持ち腐敗の風を自在に操る高貴なるエルフの長老なんだからな」


ドサッ


王子 「股を閉じて座れよ」

王子 「そうか……また体を乗り換えたのか」


美少女 「ああ」

美少女 「どうだい、今度の体は」


王子 「どうと言われても。まあ、普通じゃないかな」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「……うん。かなり、美しい。……全体的に」


美少女 「…………」

美少女 「ふわははははははは!」


王子 「……どうにかしてこいつの魂だけぶん殴れないかな」


866 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/01(日) 09:26:58.56 ID:+E8+vQPno


美少女 「良いさ。お前にならどこでも殴らせてやるよ」

美少女 「そうかそうか、そんなに気に入ったか」


王子 「べつに、おれは殴るのが好きなんじゃないぞ」

王子 「こう言うのは悔しいが見た目は立派な美少女だ」


美少女 「けけけ」


王子 「よく見れば髪の色のほかに、少しずつあの子の面影があるな」

王子 「しかし、これじゃあもう軽々しく膝に乗せたりはできない」


美少女 「お前が選んでくれたあの体も参考にしてつくったからな」


王子 「つくった……」


スウ


馬車幽霊 「はい」


ハーピィ 「!?」


王子 「ベッドの下から透けて出た……」


馬車幽霊 「私がつくらせていただきました」


867 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/01(日) 10:29:07.92 ID:+E8+vQPno


馬車幽霊 「お嬢様。いかがですか、黒花お嬢様。新しいボディの動かし心地は」


美少女 「夢見心地よ、ディハイトアレブンデン」


馬車幽霊 「フェアヴェルターでございます」


美少女 「完璧、パーフェクトだ、バトラーホースワゴン」

美少女 「尻と胸がやや大きいが」

美少女 「魔力が流れて、海砂利水魚のどんぶらこ」


馬車幽霊 「さようでございますか」


王子 「何の遊びだよ」


868 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/01(日) 10:35:48.92 ID:+E8+vQPno


馬車幽霊 「すみません。不眠不休だったもので」


王子 「徹夜の作業続きで頭が弾けているということか」

王子 「馬車幽霊が絡んでいるとなると、ゴーレムかな」


馬車幽霊 「はい」

馬車幽霊 「持てる知識と技術の粋をあつめてつくった」

馬車幽霊 「私の最後にして最高のフレッシュゴーレム」

馬車幽霊 「過不足なく人間の、その名も」

馬車幽霊 「最後の冒涜」


王子 「……人間をつくったというのか」


美少女 「ご丁寧に、腕っぷしも見た目相応だ」


869 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/01(日) 11:37:38.73 ID:+E8+vQPno


馬車幽霊 「さいわい星魔法使いの妻の素材が地下に残っていたので」

馬車幽霊 「短い時間でつくることができました」

馬車幽霊 「黒花さまのもとの体の特徴を出すのは少し苦労しましたが」


王子 「恐ろしい話だ」

王子 「その、馬車幽霊が言うところのもとの体はどうした? まさか」


美少女 「心配するな、ゴーレムの素材になんかしていない。馬車の倉庫に保存しているよ」

美少女 「これで、もう傷つくこともないだろう」


王子 「助かるよ」

王子 「……体を乗り換えて、調子が悪くなっていたりはしないか?」


美少女 「とくにないな。あの体が得意としていた回復魔法の効率が悪くなったが」

美少女 「それ以外はかなり調子が良い」


王子 「そうか」

王子 (これで、あの商人に返せなくなる心配は軽くなったかな?)


ハーピィ 「…………」


870 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/01(日) 11:57:07.52 ID:iEw0XL8wO
これから呼び方は美少女エルフになるのかな…?
871 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/01(日) 12:34:17.22 ID:+E8+vQPno


美少女 「こいつめ、また何か難しい顔をしている」


ピタ


王子 「うわっ」

王子 「何だ、すごく冷たいぞお前の手」


美少女 「出来たてで血が巡っていないのかな」


王子 「気をつけろよ」

王子 「体温が低いと病気になりやすいし老けやすいしで、大変だというぞ」


美少女 「ふふふ。だったら、お前があたためてくれるか……?」


王子 「おいおい……」


ハーピィ 「…………」


バサ


美少女 「…………」

美少女 「ありがとうよ、ハーピィ」


王子 「ははは、暖かいなあハーピィの翼は」


872 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/01(日) 12:49:51.84 ID:+E8+vQPno


ハーピィ 「…………」


美少女 「……まるで天使の肌触り。ハーピィの羽毛で布団をつくったら高く売れるんじゃないか」


王子 「やめろ」

王子 「……変わってしまったなあ、葉巻よ」

王子 「もう町にいたころのお前の顔を忘れそうだよ」


美少女 「それで良い。オレにかたちなんて、とっくの昔に無いのだから」


王子 「……お前がエルフかどうかさえあやしくなってきたよ」

王子 「馬だって乗っ取ってしまったし、今はゴーレムだ」


美少女 「オレはオレだよ」


王子 「お前って何なんだろうな」


873 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/01(日) 13:07:52.38 ID:iEw0XL8wO
恋する乙女なのは変わらないよね!
874 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/01(日) 14:13:19.82 ID:+E8+vQPno


王子 「見た目も性別も、もちろん名前だって変えられてしまう」


美少女 「ふふん」


王子 「もしもお前の気が変わって、おれに一切かかわりたくなくなったら」

王子 「いとも簡単にそうできてしまうんだろう。うらやましいかぎりだ」


美少女 「なに、当たり前のことさ」

美少女 「通り過ぎていった風を気にするような奴なんていないだろう」


王子 「さすがは無情の風といったところか」

王子 「すごいね。尊敬しちゃうね」


美少女 「ははは、よしてくれ」


馬車幽霊 「ろうそく職人さまにも風の魔法を教えていましたしね」


王子 「尻から出る魔法だな」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「ああ。そんなものない」


馬車幽霊・王子 「ははははは!」


美少女 「ぶっ飛ばすぞ破廉恥野郎ども」


875 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/01(日) 14:37:02.78 ID:+E8+vQPno


王子 「すまないね」

王子 「でも本当に変わってしまったなあ」


美少女 「何だよ、しつこいな。そんな目で見るなよ……」


ハーピィ 「…………」


王子 「こうして見ると美女がじゃれあっているようにしか見えない」

王子 「これじゃ葉巻と呼ぶのさえ違和感があるな」


美少女 「ふん。今度は何たくらんでやがる」


王子 「ははは」


馬車幽霊 「そうですね。もとの姿と、星魔法使いの妻の素材をつかったことを鑑みて」

馬車幽霊 「幼妻……など、どうでしょう」


王子 「えっ……」


876 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/01(日) 14:53:14.42 ID:+E8+vQPno


美少女 「けけけ」

幼妻エルフ 「ほれほれ、王子さま。お前のお友達の幼妻だぞ」

幼妻エルフ 「お前の幼妻だ。呼んでみろよ、ええ?」


王子 「ついに跡形もなくなっているじゃないか……」


幼妻エルフ 「ほら、どうした。風呂にするか、飯にするか。それともオレか?」

幼妻エルフ 「けけけけけ」


王子 「く、くそ、卑怯だぞ葉巻……!」


ハーピィ 「…………」


馬車幽霊 「私はもう帰って寝てもよいでしょうか」


877 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/01(日) 15:32:08.86 ID:GAYAt50co
王子......
ハーピィちゃんマジ天使!
878 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/06/01(日) 16:33:45.97 ID:0Z2MadKZ0

たぶん風呂か飯って答えたら、あなたは嘘をつきましたって言われるだろう
879 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/01(日) 17:12:10.93 ID:+E8+vQPno


幼妻エルフ 「いや、悪いがこれから少しつきあってもらう」


馬車幽霊 「分かりました。私に睡眠は必要ないですし」


王子 「まだ何かつくっているのか」

王子 「今度は何だ。竜殺しの剣か、予言する干し首か」


幼妻エルフ 「もう打ち止めだよ王子さま」

幼妻エルフ 「そうだ、お前にも来てもらおう」

幼妻エルフ 「つまりハーピィも一緒だ」


ハーピィ 「…………」


王子 「危ないことはごめんだぞ」


幼妻エルフ 「何をいまさら」


王子 「危ないのかよ」


幼妻エルフ 「何も無いはずだ」

幼妻エルフ 「なに、たとえオレたちが全滅してもハーピィだけは生き残るさ」

幼妻エルフ 「たぶん、そいつはそういう生き物だ」


王子 「……強くは否定できないが」


馬車幽霊 「謎の多い生き物ですね、ハーピィさまは」

馬車幽霊 「すこし解剖すれば何か分かると思いますが」


王子 「そういう奴は首無し馬に蹴られて成仏しろという言葉があるな、馬車幽霊の執事どの」


馬車幽霊 「失礼しました。とても大切なようで」


880 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/01(日) 17:22:41.64 ID:+E8+vQPno


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「うん、そんな言葉はない。ごめんよハーピィ、今日は嘘をついてばかりだ」

王子 「喉はかれていないかい」


幼妻エルフ 「親ばか」


馬車幽霊 「貝殻の勇者さまと家畜……ろうそく職人さまも呼んできましょうか」


幼妻エルフ 「ああ……いや、オレが呼んでくる」

幼妻エルフ 「けけけ、びっくりさせてやろう」


トコトコtコ ガチャ


881 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/01(日) 17:30:46.64 ID:+E8+vQPno


王子 「…………」


馬車幽霊 「…………tコ」


ハーピィ 「…………」


ブハハハハハハ


ハーピィ 「…………!」


王子 「…………」


馬車幽霊 「…………」


ガチャ


幼妻エルフ 「…………」

幼妻エルフ 「駄目だ。オレたちだけで行こう」


馬車幽霊 「かしこまりました」


王子 「……彼女たちは?」


幼妻エルフ 「腹がよじれて使い物にならない」


882 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/01(日) 17:55:15.76 ID:+E8+vQPno


王子 「何やってんだよお前」


幼妻エルフ 「何もしてないよ」

幼妻エルフ 「何だよ、揃ってバカ笑いしやがって」

幼妻エルフ 「誰だよ、あいつが勇者とその従者なんて言ったやつは」


王子 「お前だよ」


馬車幽霊 「黒花お嬢様、湖のエルフォ。夜も遅い。早く行くか、日をあらためるかした方が良いのでは」


幼妻エルフ 「……分かっている、マッジョルドーモ。行くぞ」


馬車幽霊 「御意」


トコトコトコ


王子 「お前たちは何なんだよ」


ハーピィ 「…………」


883 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/01(日) 18:14:48.08 ID:+E8+vQPno


砦の館 外庭 井戸



首無し馬 「…………」


ハーピィ 「…………」


王子 「木と瓦礫に隠れるように、井戸か。井戸にしちゃ結構大きいな……」


幼妻エルフ 「首無し馬が入ってこれるくらいだからな」


王子 「とすると、この下が例の地下礼拝堂か……」


馬車幽霊 「ここは井戸としてつかっていた記憶はありません」


幼妻エルフ 「ふむ……」


ホー ホー カササ


ハーピィ 「…………!」


首無し馬 「……フルルッ」


ハーピィ 「…………」


王子 「頼もしいな。馬頭は騎士の象徴というが、無くても立派にやれるものだ」


馬車幽霊 「この森で首無し馬にかなうモンスターはいません。見張りにつけておきましょう」


幼妻エルフ 「……よし、行くぞ」


884 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/01(日) 18:24:56.81 ID:+E8+vQPno


フヨン フヨン フヨン


王子 「うーん、深くて暗い。繋がっている場所は分かっているのに」

王子 「亡者の国まで続いているみたいだ」


ハーピィ 「…………」


王子 「うん? 何だい、ハーピィ」


ハーピィ 「…………」


ファサ ファサ


王子 「ははは。飛んでる、飛んでる」


幼妻エルフ 「それ」


ヒュルル


ハーピィ 「…………」


クルクルクル


王子 「おお。踊っているみたいだ」


885 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/06/01(日) 18:34:19.87 ID:FmZF5E7U0
家畜w
886 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/01(日) 18:36:55.15 ID:+E8+vQPno


馬車幽霊 「風の魔法での移動」

馬車幽霊 「先人たちもこういった魔法での移動のために、ここをつくったのでしょうか」

馬車幽霊 「それとも、失われし蒸気機関……」


幼妻エルフ 「お前、ゴーストのくせに風に乗るんだな。飛べないのか」


馬車幽霊 「はい、お嬢様」

馬車幽霊 「私は元来、浮遊霊ではないのです」


幼妻エルフ 「なるほどな。ゴーストもいろいろか」


王子 「そういうもんか?」


ハーピィ 「…………」


フヨフヨフヨ


887 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/01(日) 18:55:26.57 ID:+E8+vQPno


砦の館 地下礼拝堂 小部屋



ハーピィ 「…………」


幼妻エルフ 「よしよし、風で遊ぶのが気に入ったか。また今度やってやろう」

幼妻エルフ 「しかしハーピィよ、お前はいつまで飛べないんだ」


王子 「……上から見たらただの闇だったのに」

王子 「着いてみればわりと明るい。不思議なものだ」


ガラッ


王子 「おお、透明な化け物になった星魔法使いとの攻防のあとがある」

王子 「よく死なずにいられたなあ、おれ」

王子 「どれ、礼拝堂でも見て少しばかり激戦の思い出にひたると……」

王子 「……ううっ」


馬車幽霊 「王子さま!?」


888 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/01(日) 19:16:54.36 ID:+E8+vQPno


幼妻エルフ 「王子」


王子 「くっ……大丈夫だ」


幼妻エルフ 「何が大丈夫だよ。膝から崩れたじゃないか」


王子 「いや、本当に大丈夫」

王子 「だけど、何だ。礼拝堂に出ようとすると鈍い痛みが……」

王子 「頭の中で、錆び付いた大扉がひらこうと地響きをたてているような……」


幼妻エルフ 「…………」


王子 「百億の……笑顔のかけら……小さな……ベッドの下……とらわれた……」


幼妻エルフ 「うん、大丈夫だな」


ハーピィ 「!?」


馬車幽霊 「お嬢様。黒花さま?」


幼妻エルフ 「いや、不思議なこともあるもんだ。何かの呪いかな。長老のオレでさえまったく」

幼妻エルフ 「これっぽちも見当がつかない。恐るべき呪いだ。だが心配ない、魔法で治療してやる」

幼妻エルフ 「とりあえず、ここから出ない方が良いだろう」

幼妻エルフ 「ぜったい出るな」


王子 「ぐっ……! ああ、そうした方が良いようだ」

王子 「すまないな、葉巻。迷惑をかける」


幼妻エルフ 「なあに、良いってことさ。ふふふ」


馬車幽霊・ハーピィ 「…………」


889 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/01(日) 19:43:19.35 ID:+E8+vQPno


幼妻エルフ 「…………」


キュイイ ピロリロリロリン

キュイイイ


王子 「………ふう」


幼妻エルフ 「どうだ」


王子 「ああ、さすが黒花の長老どのだ。痛みが心地よく消えていく」


幼妻エルフ 「そうか、良かった」


王子 「……なあ、葉巻よ」


幼妻エルフ 「うん?」


王子 「こんなことを聞くのも変なんだけど、お前に男の笑顔を描いて隠す趣味なんてないよな」

王子 「ハーピィに服をつくるため、しかたなくおれを描いただけだよな」


幼妻エルフ 「ふふふ、何を言ってるんだ、当たり前だろう王子。腐ってもオレは黒花の長老だぜ?」

幼妻エルフ 「ほれ、力を抜いて、頭をここに置いて。もっと治療してやるからな……」


王子 「あ、ああ。何だよお前、急に甲斐甲斐しくなっちまって」

王子 「笑顔も修道士みたいにやわらかくなってるぞ。何のつもりだ、礼拝堂の気にでもあてられたか」


幼妻エルフ 「ははは、そんなにからかうなよ王子さまめ」

幼妻エルフ 「ほら、目を閉じて……」


王子 「む……」


幼妻エルフ 「ふふふ……」


ギュイイイイ デロリロデロリロ

ドンデンドドデン ドンデンドンデン……


馬車幽霊・ハーピィ 「…………」


890 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/06/01(日) 19:59:33.52 ID:hk9pA5oo0
ハーピィもびっくりしてんじゃねーかなんだその呪いっぽそうな音楽はww
891 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/01(日) 20:31:21.12 ID:+E8+vQPno


馬車幽霊・ハーピィ 「…………」


王子 「それで、ここに何の用があるんだ」

王子 「いちおう戦う準備はしてきたけども」


幼妻エルフ 「なに、お前の手をわずらわせることはないさ。きっと」


王子 「そうか。……じゃあ、おれが来る意味はあったのか」

王子 「倒れてお前の足を引っ張っただけじゃないか」


幼妻エルフ 「おいおい、王子さま」

幼妻エルフ 「オレは魔法使いタイプだぜ。貧弱な、いわば後衛だ」

幼妻エルフ 「たのもしい王子さまを傍に置いておくに越したことはないのさ」


王子 (……そういえばこいつ大事なときに前にしゃしゃり出て、結果役に立たないことが多いな)

王子 (そうか、おれが前衛として守らないといけなかったんだな。だけどこいつ、それこそ風みたいに動き回るからなあ)

王子 (まだまだおれの力が足りないということか)

王子 「しかし、うーん。悪いけど、町での印象が強すぎて」

王子 「お前を後衛に置いて油断していると後ろから呪われそうなんだよなあ」


幼妻エルフ 「……うふふふ、ひどいぞ王子」

幼妻エルフ 「大事な王子さまに、そんな最低なことオレがするわけないじゃないか。なあ」


王子 「ははは。ああそうさ、お前は仲間に対してはとことん甘い奴さ」


幼妻エルフ 「何だよそれ、またからかってんのか。うふふふ……」


馬車幽霊・ハーピィ 「…………」


892 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/01(日) 20:52:14.90 ID:+E8+vQPno


王子 「……よく見ると、窓かこれは」

王子 「地下に窓とは面妖な」


ハーピィ 「…………」


幼妻エルフ 「……この辺りだったかな」


馬車幽霊 「ほう。ここにヒマワリがあったのですか」


幼妻エルフ 「ああ。おぼえはないか」


馬車幽霊 「まったくありません」

馬車幽霊 「たしかにどちらの姿でもヒマワリは育てていましたが、こんな日当たりも風通しも悪いところでなど……」


幼妻エルフ 「そうかい」

幼妻エルフ 「跡形もないな、ヒマワリ」


王子 「燃え尽きてしまったからな」


ハーピィ 「…………」


893 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/01(日) 21:34:37.69 ID:+E8+vQPno


幼妻エルフ 「……執事よ、何か魔力は感じるか」


馬車幽霊 「…………」

馬車幽霊 「いいえ。とくに異質なものは感じません」


幼妻エルフ 「オレもだ」


王子 (ヒマワリか。たしか、葉巻の持っていた銀色の魔法のつるを解いて)

王子 (葉巻が何かやったら燃え出したんだよな)


幼妻エルフ 「王子」


王子 「うん?」


幼妻エルフ 「ヒマワリが燃えるとき、こんな文字が刻まれなかったか」


ガリッ ガリガリ


王子 「どれどれ……」

王子 「……肉?」


幼妻エルフ 「間違えた。これは緑花の額に刻んだやつだった」


王子 (ちゃんと消したかな、緑花の長老どのは)


894 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/02(月) 10:37:48.93 ID:r/ii9aA50
それを消すなんてとんでもない!
895 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/06/02(月) 13:09:19.17 ID:dQ8c8quI0
※今もうっすらとですが残っています
896 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/02(月) 19:58:10.72 ID:NngKdB2f0
ハーピィの額には王子と書いてあげよう
897 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/02(月) 21:40:55.93 ID:fVxusCHzo


幼妻エルフ 「これだ」


ガリガリ


王子 「ふむ」

王子 「……お前、文字まるいなあ」


幼妻エルフ 「どうでも良いだろ。地面にかいているから変になるんだよ」


王子 (メモの文字も丸かったんだけどな)

王子 「……うん。こんな形だった」


幼妻エルフ 「そうか。意識は朦朧としていたが、オレにもそう見えた」


王子 (この部屋に入ったとき、こいつは消耗しきっていたな)

王子 (おれも腹に穴があいていたし、よく全滅しなかったもんだ)

王子 「……この何と読むのかも分からない文字が刻まれたら、どうだっていうんだ」


幼妻エルフ 「大問題だよ、王子」


王子 「なに」


幼妻エルフ 「皇帝の目つぶしを、勇者さま抜きでやっちまったってことだ」


898 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/04(水) 20:19:46.91 ID:1wSIR6tCo


王子 (皇帝の千里眼)

王子 (皇帝は魔法の道具を帝国各地に隠して、それを通して国中を監視できるらしいが)

王子 (離れた、それも一ヶ所だけじゃない場所の出来事を知るなんて本当にできるのか)

王子 (……葉巻の仮面みたいなものなのだろうか)

王子 「あのヒマワリが、目だったのか」


幼妻エルフ 「そうだ」


王子 「言い切るなあ」

王子 「たしかにこんなところ、見つかりにくいだろうけど」

王子 「魔法の何かだったとして、皇帝の目とは無関係のものかもしれないじゃないか」


幼妻エルフ 「ところが言い切れる」

幼妻エルフ 「……これだよ」


銀の魔法のつる


王子 「魔法のつるか」


899 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/04(水) 20:23:45.50 ID:1wSIR6tCo


ハーピィ 「…………」


スッ


魔法のつる


ハーピィ 「…………」


銀の魔法のつる

魔法のつる


ハーピィ 「…………」


幼妻エルフ 「…………」


ハーピィ 「…………」


幼妻エルフ 「分かったから、あとで良い感じに装飾してやるから」


900 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/04(水) 20:34:14.88 ID:PKnoLoYeo
最近ハ-ピィの自己主張がwww
901 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/04(水) 21:03:11.64 ID:1wSIR6tCo


王子 (ハーピィ。表情は乏しいままに、表情ゆたかになったなあ)

王子 (……じつはハーピィは何も変わっていなくて、おれたちの感じ方が変わっていたりして)


ハーピィ 「…………」


幼妻エルフ 「道具を使って離れた場所の出来事を把握する魔法は高度ながらいくつか知られていて」

幼妻エルフ 「さいわい、反皇帝側はそのすべての魔法のしくみを把握できている」

幼妻エルフ 「しかし、実際にどの魔法が使われているかは分からない」

幼妻エルフ 「この銀の魔法のつるには、どんな千里眼の魔法でも無力化するために」

幼妻エルフ 「強力な魔法使いたちの呪文がこめられている」


王子 「ふむ……」


902 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/06/04(水) 21:21:15.62 ID:6mtUW5tj0
あの時は千里眼無力魔法が王子の仮面を通して葉巻にダメージを与えたのか
903 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/04(水) 22:45:40.05 ID:kuBMZa/F0
ハーピィはん!もっと自己主張してええんやで

ドラム缶に負けちゃあかんで
904 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/04(水) 23:47:08.30 ID:1wSIR6tCo


幼妻エルフ 「この銀のつるは、千里眼系の魔法相手にしか効果を発揮しないし消耗もしない」

幼妻エルフ 「魔法とその使い手の繋がりを混乱させて、魔法の無力化を感知されにくくするなど」

幼妻エルフ 「高度な魔法も無駄に込められている」


王子 「無駄って……」

王子 「もし、無力化した魔法が皇帝と関係ないものだったらどうするんだ」


幼妻エルフ 「そういった無駄づかいも考えて、銀の魔法のつるは、予想される皇帝の目の数より多くつくられた」


王子 「無駄づかいが、皇帝の目の数より多くなったら?」


幼妻エルフ 「……妖精はいいかげんなんだ」

幼妻エルフ 「皇帝の目潰しも、ちょっと負けたくない遊びの延長でしかないのさ」


王子 「勇者どのに聞かせたらぶん殴られそうだな」


905 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/05(木) 01:18:21.45 ID:NMjSn2VWo


馬車幽霊 「皇帝の目という魔法道具を破壊しているかたは、他にもいるのでしょうか」


幼妻エルフ 「いないこともないが、妖精側の有力者は魔王軍を警戒してこちらの世界に出てこないし」

幼妻エルフ 「さて、どれほどうまくいっているのやら」


王子 「連絡をとりあう方法なんかはないのか」

王子 「魔法の会話以外でも、何か道具とか」


幼妻エルフ 「ふむ……ちょっと待て」


ガサゴソ


黒い花飾り


王子 「それは……」


906 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/05(木) 01:30:57.05 ID:NMjSn2VWo


幼妻エルフ 「……あー、あー」

幼妻エルフ 「こちら黒花、こちら黒花。誰かいませんか、どうぞ」


黒い花飾り 『…………』


王子 「…………」


幼妻エルフ 「……あー」

幼妻エルフ 「やっぱり駄目だな、繋がらない」

幼妻エルフ 「長老の誰かが人間の世界にいたらもしかしたら通じるかもしれないんだが」


王子 「…………」


ハーピィ 「…………」


幼妻エルフ 「あっ。雄しべが一本もたっていないじゃないか。これじゃいても繋がらない」

幼妻エルフ 「おい幽霊執事、どこか雄しべがたつところ知らないか」


馬車幽霊 「魔法の馬車にそれらしき部屋があったような」


907 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/05(木) 01:56:36.45 ID:NMjSn2VWo


王子 「……この花飾り、そんなことが出来たのか」


幼妻エルフ 「他にも、何となく時間が分かったり、財布がわりにつかえたりするんだぜ」

幼妻エルフ 「雄しべが多くたっているほど、遠くとはっきりした会話ができるんだ」

幼妻エルフ 「相手も似たようなアイテムを持っていないといけないけどな」


王子 「……へえ」


ハーピィ 「…………」


幼妻エルフ 「あっ、ちくしょう、もうすぐ水切れだ」


王子 「水切れ?」


幼妻エルフ 「これは使うと水分を消費するから、ときどき水をやらなきゃいけないんだ」


ハーピィ 「…………」


908 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/05(木) 02:38:48.03 ID:JGG38sdV0
まさに携帯やないか
909 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/06/05(木) 21:39:07.75 ID:ZSlFPmQD0
910 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/05(木) 22:28:12.33 ID:agy17U/FO
妖精って何なんだろう
911 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/07(土) 20:17:59.45 ID:nAebpYRmo


王子 「便利なのか不便なのか分からんね」


幼妻エルフ 「便利なものをつくったところで、また新しい不便が生まれてくるものさ」

幼妻エルフ 「いちおう魔法のつるやら伝令兵やらで連絡を取り合うようにはしているが」

幼妻エルフ 「敵がいる以上、ほいほい簡単にというわけにもいかないのが現状だ」


王子 「そうか……」

王子 「……あのヒマワリが皇帝の道具だと確認する方法はないのか?」


幼妻エルフ 「……まあ、帝国側に何らかの反応があれば分かるが」

幼妻エルフ 「今回はどこまで気づかれずにことをすすめられるかが肝要だからな」


王子 「分からないわけか……」

王子 「…………」


幼妻エルフ 「?」


912 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/07(土) 21:26:38.86 ID:nAebpYRmo


幼妻エルフ 「何だよ、じっと見て。オレの顔になにかついてんのか」


王子 「いや……」

王子 「お前の話しかたといい雰囲気といい、その体にとことん合ってないよな」


ハーピィ 「…………」


王子 「大丈夫かな。人と話したとき、不自然に思われたりにないだろうか」


馬車幽霊 「王子どの……」


幼妻エルフ 「…………」

幼妻エルフ 「…………」


シナ


王子 「お、おい」

王子 (葉巻がもたれかかってきた。何か、ふわっと良い香りが……)


幼妻エルフ 「王子。やっぱりここ、暗いね……」


王子 「!」


幼妻エルフ 「……ごめん。何も言わずに……くっつかせてて」


キュッ……


王子 「うぐっ……」


幼妻エルフ 「……うふふ」

幼妻エルフ 「どうかしら、これでも似合わないって言うつもり?」


王子 「くっ……」


ハーピィ 「…………」


913 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/07(土) 21:59:59.43 ID:nAebpYRmo


王子 「もうここでの用は済んだのかな」

王子 「明日もあるし、はやく戻って寝なくては」


幼妻エルフ 「どうなの。似合う、似合わない?」


王子 「ぐっ……」

王子 「…………」


ハーピィ 「…………」


王子 (こうすればハーピィは何も言わないか)


幼妻エルフ 「ふうん。答えないつもり」

幼妻エルフ 「いいわよ、黙ってたら似合うって答えたことにしてやるんだから」


王子 「ずるいぞ葉巻……!」


幼妻エルフ 「ふふふ。似合う、似合わない?」


王子 「…………」


ハーピィ 「…………」


王子 「いや」

王子 「それはお前の勝手なルールだ。従う必要はないな」


幼妻エルフ 「このくらいじゃ動じないか……」

幼妻エルフ 「初めて町であったとき、何があったかばらすぜ」


王子 「似合っている」

王子 「さすが劇団妖精塚の花組だ」


幼妻エルフ 「ふはははははは」

幼妻エルフ 「参ったか王子め。ほーれほれ」


ギュ ムニュ


王子 「くそ。打つ手はないのか……!」


ハーピィ 「…………」


馬車幽霊 「そういうのは部屋に戻ってからやってはいかがですか」


914 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/07(土) 22:26:47.31 ID:nAebpYRmo


幼妻エルフ 「まあ、いくつか壊していけば、何が皇帝の目でそうでないか分かってくるさ」


王子 「そういうものなのか」


幼妻エルフ 「同系統の魔法でも、それぞれ癖のようなものがあるからな」

幼妻エルフ 「数を揃えて比べてみれば、違いがはっきりしてくる」


王子 「詩や剣の流派みたいなもんか」


幼妻エルフ 「そういうことだ」


王子 「とりあえずあやしかったら潰していけば良いわけか」

王子 「大変だなあ」


幼妻エルフ 「何せ前例が無いもんでね」

幼妻エルフ 「毒キノコも最初から毒だと分かっていたわけじゃないだろ?」


王子 「おれたちは毒見係かよ……」


ハーピィ 「…………」


幼妻エルフ 「けけけ」


915 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/07(土) 22:40:44.94 ID:nAebpYRmo


幼妻エルフ 「さて、これをどう勇者さまの手柄にするかだが……」


王子 「待て。手柄って何だよ」


幼妻エルフ 「勇者さまが皇帝の目潰しをしたことだよ」


王子 「だが結局、あのヒマワリは目とは言い切れないんだろ」


幼妻エルフ 「言い切れると言っただろ」


王子 「?」


幼妻エルフ 「良いかい王子さま、よく聞け」

幼妻エルフ 「百個の目玉か千個の目玉、どっちがすごいと思う?」


王子 「……ふむ」


幼妻エルフ 「千個の目玉を持つ皇帝。ああ、なんて恐ろしいんだ」


王子 「それを潰していった勇者。ああ、なんて素晴らしいんだ」

王子 「ということか?」


幼妻エルフ 「ふっふっふ……」


馬車幽霊 「お嬢様、お顔が二割り増しで腹黒い」


ハーピィ 「…………」


…………


916 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/07(土) 22:48:00.04 ID:sR5WECWJ0
そのうち馬車幽霊も腹黒になるんかなあ
917 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/07(土) 22:58:20.71 ID:nAebpYRmo


砦の館 客室



王子 「……ふう」

王子 「疲れていないかい、ハーピィ」


ハーピィ 「…………」


王子 「そうか。ははは、元気だなあ」

王子 「元気ついでに、葉巻にとりついてみてくれるかな」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「ああ、そんなのは嫌だね」

王子 「……葉巻め、あの礼拝堂でどれだけ嘘をついたのやら」

王子 「皇帝の目か……」


ドッ ブハハハハハ


王子 「……さっきから隣が騒がしいな」


918 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/07(土) 23:06:42.36 ID:nAebpYRmo


バタン

トタトタトタ


王子 「……来る」


ガチャッ


幼妻エルフ 「…………」


王子 「…………」


幼妻エルフ 「こっちで寝かせてもらう」


王子 「まあ、そうだろうな」


ハーピィ 「…………」


919 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/06/07(土) 23:09:41.87 ID:y/h/uRMFO
同衾イベントキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
920 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/08(日) 00:09:40.72 ID:ISIIUvMCo


王子 「じゃあ、そっちのベッドに……」


幼妻エルフ 「ああ……」

幼妻エルフ 「あー、大変だー、王子ー」

幼妻エルフ 「こっちのベッドの上の足長ゴキブリが今にもハーピィに襲いかかろうと……」


王子 「伏せろ葉巻!」

王子 「死ねクソ虫が!」


ズパン


幼妻エルフ 「ああっ、王子なにやってんだよ。ベッドが真っ二つだ」

幼妻エルフ 「ちなみに足長ゴキブリは見間違いだった。ふふふ……」


王子 「うおおおお!」


ズパズパズパズパ


幼妻エルフ 「王子……」


王子 「聞こえるぞお、自然の声が!」

王子 「ハーピィの命を狙うやつはみんな死ぬべきなんだ!」

王子 「ふははははははは!」


ザクッ ザクッ ザクッ ザクッ


幼妻エルフ 「…………」

幼妻エルフ 「ハーピィ、やるぞ」


ハーピィ 「…………」


コクン


ハーピィ・幼妻エルフ 「…………」


バシッ ドカッ


王子 「いてっ」


921 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/08(日) 01:08:19.45 ID:rjChmO95O
マジでキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
922 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/08(日) 09:32:13.97 ID:MnrCCtAso
>王子 「ハーピィの命を狙うやつはみんな死ぬべきなんだ!」
ハーピィが反応してない以上本音なのか。溺愛しすぎぃ!!
923 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/08(日) 13:45:30.23 ID:mAgBcbzxo
自然の声が聞こえてるのも嘘じゃないのか…
924 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/08(日) 22:35:39.42 ID:3LtNGPqh0
これが王子の本音か
925 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/13(金) 02:42:34.13 ID:CZCcZIup0
まだかー?
926 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/06/13(金) 22:37:28.80 ID:mTbUn5ly0
無情に野を渡る風を私は待つ
927 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/13(金) 22:42:17.10 ID:tpvzU0eio


…………


ハーピィ 「…………」


幼妻エルフ 「お前は静かに狂っている奴だと思っていたが」

幼妻エルフ 「ハーピィのこととなると見境ないなあ」

幼妻エルフ 「オレが寝るベッド細切れにしちゃって」


王子 「お恥ずかしい。馬車幽霊どのにも謝らなきゃな」

王子 「許してくれると良いけど。こんなやわらかいベッド、うちじゃ家宝級だ」


幼妻エルフ 「お前の城、どれだけ貧乏なんだよ……」


王子 「いや、お恥ずかしい」


ハーピィ 「…………」


928 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/13(金) 23:32:19.79 ID:tpvzU0eio


王子 「南東みたいに裕福とは言えないけど、城に住む者たちふくめて食うに困っていたわけじゃないけどな」

王子 「お前の方こそ、町で汚い金をかせいでいたときも合わせてどれだけ金を持ってるんだ」

王子 「暗殺者ギルドに盗掘に盗賊ほか各ギルドの暗部。富は穴に落ちていくというが……」


モファ


幼妻エルフ 「穴には同じくらいの危険も落ちてくるんだぜ」

幼妻エルフ 「しがらみだらけだわ、いつ仲間や同業者に命をとられるか分からないわ、お天道様の下に堂々と出られないわ」

幼妻エルフ 「心の平穏をあらかた売り払っちまって、ひどく後悔している奴らをたくさん見てきた」


王子 「どこで何をしても、人は何かしら不自由なものなんだな……」


幼妻エルフ 「そんな奴らと、人の正義を信じて疑わないにこにこした気持ち悪い奴らが同居していたりするから」

幼妻エルフ 「世の中は腐れて面白いね」


王子 「ちょっと腐ってるくらいが美味いというしな……」


マフ モフ


幼妻エルフ 「……ふふふ」


王子 「ん」


幼妻エルフ 「当たり前のように毛布を肩にかけてくれるとは、さすが王子さまだ」


王子 「いやいや。借り物とはいえ同じベッドに迎える者は家族のように尊べ」

王子 「というのが、うちの城の心意気だ」


幼妻エルフ 「よく分からんがお前の城、帝国文化的に陸の孤島じゃないのか」


王子 「いや、むしろ孤島にたっている」


929 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/14(土) 00:03:04.48 ID:76F6o4Xio


王子 「帝国は広いから、そういうところは城ごとに違っていたりするさ」

王子 「うちは可愛いもんだと思うぜ。中には皇帝の目が外と敵を向いているのを良いことに」

王子 「従順なふりしてやりたい放題やっている城主もいる」

王子 「だろう?」


幼妻エルフ 「……はん。貧乏なのは潔白の証明ってね」


王子 「オークが出てきたときは驚いたけどな」

王子 「ありゃいったい、どんなからくりなんだ」


幼妻エルフ 「……ふふふ」

幼妻エルフ 「可愛い秘密ってやつさ」


王子 「頭だいじょうぶか」


幼妻エルフ 「噛むぞ」


ハーピィ 「…………」


930 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/14(土) 00:33:09.79 ID:76F6o4Xio


王子 「オークといえば、エルフの堕落の象徴としてよく聞くが」

王子 「はぐれとはいえエルフである先生は同じ部屋にいて嫌な顔をしていなかったな」


幼妻エルフ 「だらしない体のエルフと大勢のオーク、むらむらしたか?」


王子 「何で?」


ハーピィ 「…………」


幼妻エルフ 「……いや、いい」


王子 「何だよ。まさか、それがヒントだったりするのか?」


幼妻エルフ 「忘れろ」


王子 「あ、おい。はぐらかすなよ」

王子 「大勢のオークに先生のような麗しく実った果実のようなエルフがいると、何がおこるっていうんだ」

王子 「葉巻、おい。教えてくれよ葉ま……」


幼妻エルフ 「もういいよ。何でそこだけそんなに必死なんだよ……!」


931 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/14(土) 00:51:01.71 ID:76F6o4Xio


ハーピィ 「…………」


幼妻エルフ 「まったく、なんて色気のない会話なんだ」

幼妻エルフ 「熱心に傍に置いた女のいるベッドで他の女の話をするのが、お前の心意気なのか」


ハーピィ 「…………」


王子 「うぐ。わ、悪かった……」


幼妻エルフ 「けけけ。さあな、はたしてハーピィさまは許してくださるか……」


ハーピィ 「…………」


幼妻エルフ 「…………」


王子 「……無心に天井を見ている」

王子 「のか?」


932 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/14(土) 01:08:30.54 ID:76F6o4Xio


ハーピィ 「…………」


幼妻エルフ 「ふむ。毛布をつかむ翼が浮かれている」

幼妻エルフ 「今の状況を喜んでいるらしい」


王子 (たしかに、よく見るとそんな雰囲気だ。嫌な感じはしない)

王子 (くそう、葉巻め。そこまでハーピィを理解しているのか)

王子 「……そういえば、こんな風にハーピィを挟んで寝ることはしたことなかったな」


幼妻エルフ 「ふふふ、挟まれて寝ることに安心でもしているのか。魔性の女のくせに子供っぽいんだな、ハーピィよ」


ナデナデ


ハーピィ 「…………」


王子 「ずるいぞ。おれにもなでさせろ」


ナデナデ


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「…………」


王子 「……おお、幸せそうだ。幸せそうだなあ。うふふふ」


幼妻エルフ 「顔が馬鹿になっているぞ」


933 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/14(土) 01:25:24.43 ID:76F6o4Xio


王子 「女の前じゃ男はみんな馬鹿になるのさ」


幼妻エルフ 「お前、男の前でもわりと馬鹿だぜ」


王子 「なに」


幼妻エルフ 「良い意味で」


王子 「なっ……」


幼妻エルフ 「……ふふふ」

幼妻エルフ 「それ、隙ありっ」


ギュ


王子 「!」


ハーピィ 「…………」


幼妻エルフ 「ああ、ハーピィはじんわりと温かくて、ふにっとやわらかいなあ」

幼妻エルフ 「このまま抱きしめて眠りたい」


王子 「葉巻、お前……!」


ハーピィ 「…………」


王子 「ハーピィ……」

王子 (な、なんて安心しきった無表情なんだ。まるでこのまま眠ってしまいそうな)


幼妻エルフ 「同性にしか与えられないものもあるのだよ」

幼妻エルフ 「ふふふ……この体だからこそできる芸当さ」


王子 「く、くそ……」


ハーピィ 「…………」


934 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/14(土) 01:38:37.62 ID:76F6o4Xio


幼妻エルフ 「ハーピィよ、苦しくないか?」


ハーピィ 「…………」


幼妻エルフ 「そうか、そうか」

幼妻エルフ 「なんだったら先に寝ても良いんだぞ」

幼妻エルフ 「今夜くらいはオレが、嘘つきな王子さまが嘘をつかないように見張っていてやるからな……」


王子 「…………」


ハーピィ 「…………」


幼妻エルフ 「ふふふ……」


王子 「葉巻」


幼妻エルフ 「何だい、王子さま」


王子 「あれは、皇帝の千里眼だったんだな」


幼妻エルフ 「…………」


935 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/14(土) 01:57:54.62 ID:76F6o4Xio


幼妻エルフ 「……そう言ったじゃないか」

幼妻エルフ 「ふふふ」


ナデ ナデ


ハーピィ 「…………」


王子 「そう信じて良いんだな」


幼妻エルフ 「どうした。結局それはお前しだいさ」


王子 「……あれは皇帝の目で、それを確認したらしいお前が」

王子 「小賢しい手までつかってここでこうしていることについて」

王子 「おれがあれこれ考える必要はどこにも……」


幼妻エルフ 「だめだよ王子さま」


王子 「…………」


幼妻エルフ 「そんなんじゃ、いつまでもハーピィが眠れない」


ハーピィ 「…………」


936 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/14(土) 02:13:40.42 ID:76F6o4Xio


ホー ホー

サアア ザワザワ



王子 「…………」


ハーピィ 「…………」


幼妻エルフ 「…………」


王子 「…………」


幼妻エルフ 「寝ないのか、王子」


王子 「……お前こそ」


幼妻エルフ 「まさか、ハーピィと年頃の少女の姿になったオレがベッドで絡んでいるのを見て興奮したのか」


王子 「ばかやろう」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「うん。正直、良いなって思った」


ハーピィ 「…………」


幼妻エルフ 「ばかやろう」


937 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/14(土) 02:16:08.96 ID:sdsrfb28O
王子っwwwww
938 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/14(土) 02:36:11.40 ID:QbTn805QO
これは仕方ない
939 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/14(土) 03:03:11.62 ID:76F6o4Xio


幼妻エルフ 「はじめて会ったときオレがこの姿だったら、あのまま面白いことになっていたかもな」


王子 「身の毛もよだつよ……」


幼妻エルフ 「けけけ……」


ハーピィ 「…………」


王子 「…………」


ホー ホー


幼妻エルフ 「……王子。なんか眠れないぞ」


王子 「…………」

王子 「あれをするか」


ハーピィ 「…………」


940 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/14(土) 09:09:35.09 ID:5jsVnoR+0
葉巻の初期絵ってあったっけ
941 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/14(土) 09:50:38.77 ID:rkP/HOO2o
>>940
どっかにあった気がする
942 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/14(土) 10:15:51.59 ID:76F6o4Xio


幼妻エルフ 「……あれか」


王子 「ああ」


幼妻エルフ 「たしかに、疲れたら眠りやすくなるか……」

幼妻エルフ 「のぞむところだが、しかしハーピィはどうするんだ」


王子 「もちろん、ハーピィに手は出さないさ」


幼妻エルフ 「そうか、よし」

幼妻エルフ 「……ふふっ。いつかみたいに汗だくでヒイヒイ言わせてやる」


王子 「おいおい、それはこっちの台詞ってやつだぜ……」


943 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/14(土) 10:35:14.88 ID:76F6o4Xio


幼妻エルフ 「オレがヒイヒイ?」

幼妻エルフ 「はっはあ。おいおい、黒花の長老たるオレが、人間なんかにヒイヒイ言わされるわけないだろ」

幼妻エルフ 「……やるぜ」


王子 「おう」


スッ ピト


幼妻エルフ 「……こら。いきなりそんなところ触るな……」


王子 「あ、すまない」

王子 「くくく、そこが弱点か」


幼妻エルフ 「さて、どうかな。ふふふ……」


王子 「…………」


幼妻エルフ 「…………」


ハーピィ 「…………」


ザワザワ ホー ホー


944 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/14(土) 11:27:03.82 ID:76F6o4Xio


幼妻エルフ 「…………」


王子 「…………」


サワサワ サスサス


幼妻エルフ 「………っ」


王子 「……っ……」


コチョコチョコチョ ワキワキ


幼妻エルフ 「くふっ!? ……ッ……」


王子 「……くっ……ッ」


幼妻エルフ 「…………」


王子 「…………」


コチョコチョ コチョコチョコチョ


幼妻エルフ 「はふっ……」

幼妻エルフ 「んっ……ふ、うふふ。なかなか、粘るじゃない……か……あふっ……ッ」


王子 「ッ……なあに、まだまだ」


コチョコチョ ワニャワニャ


ハーピィ 「…………」


945 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/14(土) 11:49:11.37 ID:76F6o4Xio


王子 「…………」


コチョチョチョ コチョチョ


王子 「…………」


フニッ


幼妻エルフ 「くぅんっ!?」

幼妻エルフ 「お、お前……そこは卑怯だぞ……!」


王子 「耳も弱点のままのようだな」


フニ フニ コチョコチョ


幼妻エルフ 「ひゃふっ、やめろ、そんな風に握るな……ッ」

幼妻エルフ 「くすぐりだけの、はずだぞぉ……ッ」


王子 「じゃあくすぐってやる。耳を」


ピン ピコン シュシュシュシュ 


幼妻エルフ 「……!!? くぅっ……くぅううっ! くうッぅ……ん……ッ!」


王子 「はっはっは、一気に顔が赤くなったぞ。相当弱いみたいだな」

王子 「まあ良い、ここはやめておこう。騎士の情けだ」


スッ


幼妻エルフ 「はふっ……」

幼妻エルフ 「……調子に乗りやがって!」


ワシャシャシャ


王子 「!! ぐうぅ……」


幼妻エルフ 「あはは、なおったばかりの腹の傷はくすぐったくてしかたないだろう」

幼妻エルフ 「だがオレはお前とは違って、ここを重点的に責めてやるぞ」


王子 「く、くそっ……」


コチョコチョ ワシャワシャ ムニムニ


946 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/14(土) 11:58:19.10 ID:76F6o4Xio


幼妻エルフ 「ほぉらほら、どうした。くくく、手の動きが鈍ってきたぜ?」


ワシャシャシャ


王子 「ぐっ、卑怯だぞ葉巻……」

王子 「うぐっ!?」

王子 「ぐあああっ……!!」


幼妻エルフ 「!?」


王子 「力を入れすぎて、腹の傷が……ぐあっ……!」


幼妻エルフ 「あ……」


ピタ


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「その通りだ!」


幼妻エルフ 「!?」


王子 「衰えたか葉巻。貴様ともあろう者が敵に情けをかけるとは、馬鹿め!」


ワシャシャシャ コニョニョニョ コチョコチョ


幼妻エルフ 「くにゅうううんっ!?」


947 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/14(土) 12:04:12.78 ID:OnHl0Lm5O
俺もエルフたんにセクハラしたいよおおおおおおおおお
948 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/14(土) 12:27:08.42 ID:76F6o4Xio


王子 「どうだ。集中が途切れたときをつかれたら一層きくだろう」


幼妻エルフ 「ひふうっ、ひふふふぅうっ……!」

幼妻エルフ 「な、なにが騎士のなさけだよバカ。騙しやがってこの悪党! あくとぉお……!」


王子 「お前に言われたくない」


コチョコチョ ワショワショ


幼妻エルフ 「んんん〜〜ッ! んうっ、うっ、う、うっ……」

幼妻エルフ 「ふくっ、んはっ、はああ……! あっ、あっ、あっ、あっ……!」


王子 「ふふふ、どうした。手が止まっているぜ」


幼妻エルフ 「くそ……こんなのなんかに負け、るかぁ……!」


王子 「必死だな。声が裏返っている」

王子 「ここから一気に責め落としてやるぞ。手を緩めたらこっちがやられそうだ!」


コチョコチョ ワショショショ フニフニフニフニ


幼妻エルフ 「〜〜ッ!? 〜〜!!」


ハーピィ 「…………」

949 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/14(土) 14:13:23.85 ID:vYQ4MEar0
ハーピィはんは参加せえへんのか
950 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/06/14(土) 14:37:54.42 ID:2dPnJ3Z0O
ハーピィ参加はよ
951 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/14(土) 16:35:17.89 ID:SKrhuFvq0
何やってんだこいつら
952 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/14(土) 19:31:02.12 ID:76F6o4Xio


コチョコチョコチョ コショショショショ


幼妻エルフ 「くぐうううっ! ぐひゅっ、ふひゅっ、うぐううぅんんんん……っ」


王子 「あ、鼻水でたぞ」


幼妻エルフ 「!!」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「その通り。鼻水なんか出ていない」

王子 「隙あり」


ワシャワシャワシャ


幼妻エルフ 「はうっ……! くっ、くうぅう……ッ」


王子 (む。反応が鈍くなった)


幼妻エルフ 『くふっ、ふふふふ……』


王子 (魔法の会話か)


幼妻エルフ 『お前のくすぐりかたっ……なんて、も、もう、見切った!』

幼妻エルフ 『どこをどうくすぐられるか分かっていれば我慢するくらい……!』


王子 「…………」


ツツツ


幼妻エルフ 「!?」

幼妻エルフ 「な、なんらこれ、ゾクゾクして力が抜け……」


コチョコショ ワショワシャ フニフニ 


幼妻エルフ 「う、うわあああッ……!」


王子 「魔法の会話に頼らなければならないほど、限界だったのだな」


ハーピィ 「…………」


953 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/14(土) 19:48:18.36 ID:76F6o4Xio


幼妻エルフ 「ふひっ……くひっ、ヒイ……ひいぃいいっ…………!」


王子 「ふはははは、エルフの長老ともあろう者がヒイヒイ耐えるだけとは無様だな」

王子 「こんなところをろうそく職人が見たらどうなることやら」


幼妻エルフ 「はうっ、ろ……そっ!? ひひぃっ、やめお、おぇへええっ、えへええっ……!」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「うん。たかがくすぐりっこだものな」

王子 「そら、終わらせて楽にしてやるぞギリギリエルフ」


コニョニョニョ フニュニュニュ フニッ フニニッ 


幼妻エルフ 「!?!?」

幼妻エルフ 「あはは! あはっ、あはははははあん!」

幼妻エルフ 「くしょ、ひくしょ、ちくひょおおおッッ……あはっ、あんはぁっはははははははは!」

幼妻エルフ 「あはははははははは……!」


王子 「よし、勝った」


コチョコチョコチョコチョ


…………


954 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/14(土) 20:37:54.66 ID:76F6o4Xio


…………


幼妻エルフ 「ふう、ふう、はふっ……」


王子 「ふう。そんなにやられていないというのに、おれも汗をかいたな」


幼妻エルフ 「く、くそう……勝負がついても続けやがって……」


王子 「悪いね。セーフワードを決めておくべきだったかな」

王子 「何はともあれ、汗をかいて疲れたし、これで眠れるだろう」


幼妻エルフ 「その前に、風呂だばかやろお……」

幼妻エルフ 「はあ、ふう、はあ……」


王子 (やりすぎたかな、目がうつろだ)

王子 (町での姿じゃ、目はいつもこんな感じだったから分からなかったが)

王子 (じつは結構きいていたんだな)

王子 (……夢見心地に見えるのは気のせいだろう)


ハーピィ 「…………」


955 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/14(土) 20:46:41.64 ID:76F6o4Xio


ハーピィ 「…………」


ナデ ナデ


幼妻エルフ 「……心配して頭を撫でてくれるのかハーピィ」

幼妻エルフ 「ふふふ、優しいなあご主人様と違っ」

幼妻エルフ 「ひゃふっ」


ハーピィ 「?」


幼妻エルフ 「や、やめろハーピィ。くすぐられたばかりで肌が敏感に……」

幼妻エルフ 「えふっ……羽が、こそばゆくて……うふっ、うふふふ……!」


ハーピィ 「? …………?」


ナデ ナデ ナデ ナデ


幼妻エルフ 「ひゃわっ、あははははっ……」


王子 「あははは。さあハーピィ、そろそろやめておやり」

王子 「優しさが剣となることもあるのだよ」


ハーピィ 「…………」


幼妻エルフ 「も、やめっ、うふっ、んふふふふっ……!」


ハーピィ 「…………」


ナデ ナデ ナデ


王子 「あ、夢中になってる」



…………


956 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/14(土) 21:47:30.69 ID:9n4Yjp3k0
これが熱い死体蹴りちゅーやつやな
957 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/14(土) 22:14:05.89 ID:CJYxteNVo
嘘をつけばそちらに気がそれて止まるのでは? 一読者は訝しんだ
958 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2014/06/14(土) 23:03:14.00 ID:76F6o4Xio


朝 砦の館 食堂



カチャカチャ


幼妻エルフ 「…………」


ろうそく職人 「師匠、どうしたんですか。今日は口数が少ないような」

ろうそく職人 「もしかして、きのう笑ったこと怒っているんですか?」


幼妻エルフ 「……これをやろう」


岩チーズのかけら


ろうそく職人 「おお、これは!」

ろうそく職人 「まさしく食べ残し」

ろうそく職人 「ありがとうございます。大事にします」


幼妻エルフ 「心ばかりの礼だ」


ろうそく職人 「?」


貝殻の勇者 「王子どの、傷の具合はどうですか?」


王子 「うん、問題ない。じゅうぶんすぎるくらい休ませてもらったよ」


ハーピィ 「…………」


貝殻の勇者 「それは良かった」


959 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2014/06/14(土) 23:30:22.49 ID:76F6o4Xio
>>957
種族として欠陥があったり未熟だったりするハーピィはこのとき
そばにいる王子の嘘に反応はするけれど
意識を完全に向けるかはあやしい感じ

ということでどうかひとつ


960 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/14(土) 23:44:41.69 ID:76F6o4Xio


貝殻の勇者 「聞けば、皇帝の目のひとつまで潰していたとか」

貝殻の勇者 「この旅が成功すれば、あなたは英雄として数えられますね」


王子 「ははは、とんでもない」

王子 「おれはただの黄金の指を持つえびゆで師さ」

王子 「勇者どのの助言がなければ、おれは心がすり減ってあそこまで戦えなかったよ」


ハーピィ 「…………」


貝殻の勇者 「あら、優しいのですね」


王子 「これから殺す相手でも女性は尊敬しろ、と教わってきたもので」


961 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/15(日) 00:02:22.03 ID:VGGWDlMXo


貝殻の勇者 「それは何より」

貝殻の勇者 「ですが、私のことはもはや女性として扱わなくて結構です」

貝殻の勇者 「大陸に魔王の影までうごめく今、私は、魔物どもの血肉にまみれる一本の槍にすぎません」

貝殻の勇者 「性別の鎖を捨てた黒花どのと同じように扱ってくださってよいのですよ」


王子 「……ゴクリ」

王子 「く、くすぐって良いのか……?」


貝殻の勇者 「?」


王子 「い、いや、残念だがそれはできない」


貝殻の勇者 「うふふ。でしょうね、残念」


962 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/15(日) 00:32:39.41 ID:VGGWDlMXo


王子 「あなたを失えばろうそく職人が悲しむだろうことくらいは、どうか忘れないでほしい」


貝殻の勇者 「……大切なものを大切なままでいるために」

貝殻の勇者 「生きることよりも死ぬことの、何と心に良いことか」


王子 「勇者どの」


貝殻の勇者 「あなたがたに出会うまでにも、私は幾度か命のやりとりをしました」

貝殻の勇者 「死を覚悟したこともあります」

貝殻の勇者 「そして、生き抜いてきました。敵、そして味方、誰かの命とひきかえに」


王子 「…………」


963 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/15(日) 01:03:24.35 ID:VGGWDlMXo


貝殻の勇者 「私にとって生きることは美しすぎて、心を歪ませる」

貝殻の勇者 「ひとたび生きたいと思えば、生きるために命をかけることすら怖くなる」

貝殻の勇者 「私が見捨ててきたのは、あなたの前に骨仮面を被っていたものだけではありません」


ハーピィ 「…………」


貝殻の勇者 「逃げろと言ったあるかたの目が、恐怖し助けを求めていることを」

貝殻の勇者 「私は知っていました」

貝殻の勇者 「逃げろという声だけを聞きながら、私は走りました」

貝殻の勇者 「けれど日に日に、助けを求める視線だけが強くなってくるのです」

貝殻の勇者 「声になるくらいに」


王子 「勇者どの」

王子 「食べ急ぎすぎだ」


貝殻の勇者 「美味しいですね、これ」


ハーピィ 「…………」


964 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/15(日) 02:22:00.55 ID:VGGWDlMXo


貝殻の勇者 「勇者として人の幸せのために、私はあとどれだけの人を見捨てるのでしょうか」

貝殻の勇者 「勇者の力を得たはずなのに、しんしんと無力感が募っていく」


王子 (繊細すぎる人はどこか心を壊さなきゃ戦えないというが)

王子 (勇者の心にはそんな部分が必要なのか?)

王子 (あれができれば、ああしていれば。欲深い優しさといったところかな)


ハーピィ 「…………」


王子 「……捨てたものやら、出来ないことだけを見ていたらきりがないよ」

王子 「そのうち、知らない場所で見ず知らずの人が死ぬのも、そこにいなかった自分の責任」

王子 「だなんて言いだしてしまいそうだ」


貝殻の勇者 「……ふふふ、そうですね」

貝殻の勇者 「いけませんね、私は。どうも悪い方へ考えが向いてしまう」

貝殻の勇者 「私の手の中に、何もないわけではないのに……」

貝殻の勇者 「ああ、尻尾にぎりたい」


王子 (……捨てるのは難しい)

王子 (里で青花エルフから貰った教えは、捨てるべきではないのかもしれない)


965 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/15(日) 02:48:32.35 ID:VGGWDlMXo


ろうそく職人 「うぃー、ひっく」


幼妻エルフ 「……執事よ、一見すると果物ジュースのこれは実のところ酒じゃないのか」


馬車幽霊 「たいへん申し訳ありません」

馬車幽霊 「出発の準備のごたごたで手違いが」


ハーピィ 「…………」


貝殻の勇者 「……不思議ですね」

貝殻の勇者 「なぜだか、今日はあなたの前で弱気なことを言えてしまう」


王子 「気を緩めることも必要さ」

王子 「もしかして、勇者の仲間としての信頼を得られてきたのかな?」


貝殻の勇者 「あら……どうでしょう」

貝殻の勇者 「ですが、煙のたちこめるあそこで、あなたはとても頼もしかったですよ」


王子 「ははは」


貝殻の勇者 「ふふ……ヒック」


ハーピィ 「…………」


966 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/15(日) 03:20:47.34 ID:VGGWDlMXo


…………



書庫



王子 「こうして世界に嫌われた多くの技術は失われ、魔法の力を借りた蒸気機関だけが、閉ざされた場所に残ったのです」

王子 「……ふむ、夢のある童話だ」


ハーピィ 「…………」


馬車幽霊 「……はい。馬車に運んでおきましょう」

馬車幽霊 「ハーピィさまは本当に本が好きなのですね」


ハーピィ 「…………」


馬車幽霊 「しかし、知識をためるばかりとは、少々もったいない気もしますね」

馬車幽霊 「知恵のある者は沈黙すると言いますが」

馬車幽霊 「そうだ。ハーピィさま、筆談をしてみませんか?」


ハーピィ 「…………」


馬車幽霊 「はい、ペンです」

馬車幽霊 「それでこの紙に、そうですね、まずはこの本の題名でも書いてみてください」


ハーピィ 「…………」


サラサラリ


馬車幽霊 「おお、流れるような筆致」

馬車幽霊 「……しかし、これは何語でしょうか……」

馬車幽霊 「ふうむ、読めません」


967 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/15(日) 03:28:40.01 ID:VGGWDlMXo


馬車幽霊 「しかし、たしかに文字のようです」

馬車幽霊 「いろいろ書いていけば、何か分かるはず……」


王子 「かもしれないが、たぶん、難しいと思うな」


馬車幽霊 「王子どの」

馬車幽霊 「難しいとは……」


王子 「うん。ハーピィ、さっきと同じ本の題名を書いてみてくれるかな」


ハーピィ 「…………」


サラサラリ


馬車幽霊 「おお、流れるような筆致」

馬車幽霊 「しかし、これは」

馬車幽霊 「……やはり読めない上に、さっきの文字らしきものとも違う」


968 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/15(日) 06:17:32.65 ID:2g3Ouk3Q0
えびゆで師の命のやりとりはエビ子となんやろうなあ

ゆで上がったエビ子…
969 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/15(日) 06:31:59.58 ID:6Yq3dNv+o
真っ赤に頬を上気させて汗ばむえび子ですね!
分かります!
970 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/15(日) 09:12:26.52 ID:IG6B2tCpo
>>959
「嘘を吐きました」と言いながらくすぐり続けるのか……!!
971 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/06/15(日) 12:28:35.39 ID:G/zhZKJE0
972 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/16(月) 00:17:18.91 ID:1LKu8trao


…………



馬車置き場への通路



???A 「きゃあっ!!」


???B 「これは、いにしえの太古の昔の過去に絶滅したはずの三色毛まだらゴキブリ!」


???C 「今すぐ毛をむしってお湯を沸かさないと!」


ドタバタ キャッキャッ


馬車幽霊 「……うーむ。ハルピュイアとの意思疎通は難しいのですね」


王子 「ハーピィはだんだん表情が豊かになってきたから、気持ちの動きくらいなら何となく分かってきたのだけどね」


ハーピィ 「…………」


馬車幽霊 「人に理解しがたい、人のそばにいる種族。強い興味をひかれます」


王子 「魔法使いは死んでも熱心なことだ」

王子 「そういえば、すごく回避能力も高い」

王子 「それどころか、戦いのときは敵の攻撃の方から避けられている気もする」


馬車幽霊 「ハルピュイアとしての能力なのかもしれませんね」

馬車幽霊 「人でいうところの魔術的な力を、もとから有している種族は多くありますし」


973 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/16(月) 01:08:20.03 ID:1LKu8trao


馬車置き場



ろうそく職人 「……師匠、毒草なんか魔法の馬車に積み込むんですか?」

ろうそく職人 「師匠お得意の暗殺に使うんですか?」


幼妻エルフ 「オレは暗躍専門で暗殺専門じゃない。心……暗殺しようとしたのは王子だけだ」

幼妻エルフ 「ちゃんと処理すれば薬になる。ちゃんと薬草と別にしておくんだぞ」


ろうそく職人 「ほほう……」

ろうそく職人 「……あの、この赤い花、持ち上げた途端に何やらウネウネ踊りだしたんですが」


幼妻エルフ 「動物に種を植え付ける危険なやつだ。まだ成長していないが気をつけろよ」

幼妻エルフ 「オレも幼いころ、成長した個体の踊りに誘われて、体を一つ潰されたもんさ」


ろうそく職人 「ええっ……」


グニョグニョ


ハーピィ 「…………」


王子 「……ただ、話に聞いたハルピュイアとどうも違うところもあるんだよ」


馬車幽霊 「ふむ……」

馬車幽霊 「しかし、ハルピュイアという種族を知らない私には」

馬車幽霊 「彼女こそがハルピュイアという種族そのものです」


王子 「なるほど。考えさせられるな」


974 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/16(月) 01:23:20.42 ID:1LKu8trao


王子 「つまりハーピィ以外のハルピュイアを……が、絶滅すれば」

王子 「ハーピィが完璧にハルピュイアということか」


ハーピィ 「…………」


馬車幽霊 「……おたわむれを」

馬車幽霊 「お坊ちゃま」


王子 「はっはっは」


ハーピィ 「…………」


975 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/16(月) 01:45:46.16 ID:1LKu8trao


幼妻エルフ 「……来たな」


ろうそく職人 「あ、王子さまに馬車幽霊さま」

ろうそく職人 「たあすけてー」


王子 「うわっ。大丈夫かろうそく職人。何だそのウネウネしたものは」


馬車幽霊 「ドックンフラワーです。熱湯をかけると弱りますよ」

馬車幽霊 「ちなみにドックンには毒という意味の他にも……」


王子 「まずいな、熱湯なんてすぐには用意できないぞ」

王子 「剣で斬ると服が破けちゃうかもしれない」


ツカ ツカ ツカ ツカ


貝殻の勇者 「ああ、しまった。お湯を沸かしている間に我慢できず……」

貝殻の勇者 「急ぎ沸かしたこの熱湯をどうしましょうか」


王子 「おお、勇者どの。ちょうどよいところに!」


貝殻の勇者 「おや、王子どの。どうしたのですか珍しくあわてて」


王子 「ろうそく職人が危ない」

王子 「はやくその致命的な熱湯をろうそく職人にかけてくれ!」


貝殻の勇者 「なんと! 分かりました!」


バシャ


ろうそく職人 「ぎゃあっ」


976 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/16(月) 02:07:11.51 ID:1LKu8trao


ろうそく職人 「うわーん、熱いよう!」


馬車幽霊 「霊界の大地よ」


ヒュウウ パキ パキ


ろうそく職人 「おや、冷たい」

ろうそく職人 「わーい、助かったあ。はっくしょん」


王子・貝殻の勇者 「よ、よかった……」


ハーピィ 「…………」


ろうそく職人 「ありがとうございます、馬車幽霊さま」

ろうそく職人 「馬車幽霊さまは魔法を使うときに詠唱なさるのですね」


馬車幽霊 「これは詠唱で威力の上がる魔法ではないのですが」

馬車幽霊 「そのまま人に使うと危険なため、詠唱で気を散らして威力を下げたのです」


王子 (そんなやりかたもあるのか……)


977 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/16(月) 17:25:22.31 ID:09RQOPJa0
ゆであがったろうそく職人にはならなかったようだ
978 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/16(月) 19:43:16.06 ID:seO5mTS6O
王子と葉巻は男同士で擽り合ってたのか┌(┌^o^)┐ホモォ…
979 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/16(月) 21:07:28.13 ID:1LKu8trao


幼妻エルフ 「詠唱で気を散らす、か」

幼妻エルフ 「おい王子」


王子 「うん?」


幼妻エルフ 「そうだな……まあ何か話しているだけでも気は散るか」


ポワワワ


王子 「いきなりどうした」


幼妻エルフ 「気にしなさんな」

幼妻エルフ 「今回積み込む本はそれだけか?」


ポワワワ


王子 「ん、まあ。これでたぶん最後だしな」

王子 「ついでにそれも薬草園に運んでおこうか」

王子 「葉ニー」


ハーピィ 「…………」


幼妻エルフ 「……なるほど、たしかに魔法のかかりが悪く」

幼妻エルフ 「なった……?」


980 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/16(月) 21:25:29.82 ID:1LKu8trao



幼妻エルフ 「まあ良いか」

幼妻エルフ 「ほらよ」


パチン


王子 「?」

王子 「じゃあこのへんのやつ持っていって良いか、葉巻」


幼妻エルフ 「……ああ。毒草だから、気をつけてくださいよお父さん」


王子 「はいはい分かったよ母さん」


ハーピィ 「あなたは嘘をつきました」


王子 「その通り。おれの母さんじゃないな」

王子 「よっこいしょ」


ザッ ザッ ザッ


幼妻エルフ 「……しまった。分かりづらい」


981 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/16(月) 23:40:40.22 ID:1LKu8trao


…………


バタム ガチャ 


馬車幽霊 「馬車に積むものはこんなところでしょうか」


貝殻の勇者 「意外と早くすみましたね」

貝殻の勇者 「この分なら、明日の朝どころか今日にでも出発できそうです」


ろうそく職人 「首なし馬も連れて行くのなら、馬車をひく馬はどうするんでしょうか」

ろうそく職人 「それとも馬車を三頭だてに?」


馬車幽霊 「ふむ。騎乗できるように訓練しつつ、もしものときのために中で待機してもらうというのは……」

馬車幽霊 「おや、お嬢様たちはどこに?」


貝殻の勇者 「ああ、そういえば先ほど馬車の中で」

貝殻の勇者 「しまったどうしてこの部屋が、とか、また最初からか、とか聞こえてきましたが」

貝殻の勇者 「まああの三人なら大丈夫でしょう」


馬車幽霊 「ええっ……!?」


982 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2014/06/17(火) 00:35:57.34 ID:P8Nihqk4o


…………


ろうそく職人 「師匠、任せてください」

ろうそく職人 「情も胸も薄い師匠にかわり、この私が赤ちゃんを育て……」


幼妻エルフ 「館と一緒に封印してやろうか」


ろうそく職人 「えー、私も子育てしたいですようママぁ」


幼妻エルフ 「お前、本当にバカなんだな……」


ろうそく職人 「むむ。それにしても、今度の師匠ってば見た目以上にかなりの巨……」


ワシ


幼妻エルフ 「ふひひっ!?」

幼妻エルフ 「触るな、今は肌が敏感で……」


ハーピィ 「…………」


馬車幽霊 「……いやあ、無事で何よりです」


王子 「いやはや、ひやりとしたよ」

王子 「だが、この黄金の指によって切り抜けることができた」

王子 「ふふ。はるか昔に苦戦したあの部屋を、比較的らくに攻略できるようになっていたんだ」

王子 「ようやくおれも、黄金のえびゆで師に昇格といったところかな」


馬車幽霊 「だらだらやっていただけで、そんなに時間はたっていないのでは?」

馬車幽霊 「聞きなれない職業ですね。装備武器すら想像できたくない」


王子 「はっはっは」


馬車幽霊 「あははは」


ハーピィ 「…………」


983 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/17(火) 01:22:13.47 ID:/dzXIorlO
こいつ本気でエビ茹で師になる気なのか…
984 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga ]:2014/06/17(火) 02:02:59.60 ID:P8Nihqk4o


貝殻の勇者 「出発はいつにしましょうか」


幼妻エルフ 「機は熟した。腐るほどに」

幼妻エルフ 「これよりこの館をたち、南の港を目指す」


ろうそく職人 「せ、せめてご飯くらい……」


馬車幽霊 「調理器具や当面の食料も馬車に移動させましたので、心配いりませんよ」


ろうそく職人 「わーい。じゃあ出発を記念して、豪華にスープのお豆を二粒ふやして欲しいです」


馬車幽霊 「ふふふ」

馬車幽霊メイド 「おやすいごようですよ……あれ、涙で前が見えない。わたし幽霊なのに」


王子 「……これは、帝国民の平均的な贅沢なのだよな」


幼妻エルフ 「いや、貧困層でも贅沢する際はスープに旬の高級食材を七種入れるそうだ」


ハーピィ 「…………」


985 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/17(火) 07:15:35.67 ID:Wt8yYHsIO
貧困層とは…
986 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/17(火) 19:23:27.89 ID:mBeFFQCvO
もう次スレの季節ですよ
987 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/17(火) 21:42:14.78 ID:P8Nihqk4o


王子 「ははは。うちの城、本当に貧乏だったんだな……」


幼妻エルフ 「そんなことを気にする奴でもあるまいに」


ゴソゴソ ガタタ


ハーピィ 「…………」


王子 「いや、しかし城仕えの人々の食事くらい……」

王子 「お、御者台が少しおしゃれになっている。ふかふかだ」


幼妻エルフ 「魔法の馬車レベル3、おしゃれタイプといったところかな」

幼妻エルフ 「速さに目立った影響は無いが、耐久力や探索系の特殊能力が増え……」


王子 「テーブルゲームに影響されているのか」


幼妻エルフ 「よし、魔法の布を手に入れたらここにマジックカーテンをつくろう」

幼妻エルフ 「外から中は見えなくて、中から外が見放題のやつ」


王子 「盗賊の不意もつけそうだな」


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「?」


スッ


馬車幽霊 「黒花お嬢様」


ハーピィ 「!?」


王子 (馬車の壁をすり抜けて、馬車幽霊があらわれた)


988 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/17(火) 22:07:57.04 ID:P8Nihqk4o


幼妻エルフ 「どうした、執事よ」


馬車幽霊 「馬車内の準備はできました。こちらはどうでしょうか」


ハーピィ 「…………」


首無し馬 「フルル……」


馬車馬B 「ブルル……」


ハーピィ 「…………」


幼妻エルフ 「いつでも行ける。まかせておきな、風すらぶっちぎってやるぜ」

幼妻エルフ 「と、筆頭御者はおっしゃっている」


ハーピィ 「! ……!」


王子 「お前は嘘をついた」


幼妻エルフ 「けけけ」


馬車幽霊 「分かりました」

馬車幽霊 「では敷地外へ出ましょう。これから、この館を封印します」


989 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/17(火) 23:19:28.07 ID:P8Nihqk4o


カラララ ヒヒン ブルル


馬車幽霊 「このあたりで良いでしょう」

馬車幽霊 「館の封印を始めます。申し訳ありませんが、少々お待ちください」

馬車幽霊 「……お嬢様」


幼妻エルフ 「いつでも大丈夫だ。外属性系の補助はまかせておけ」


馬車幽霊 「ありがとうございます。お願いいたしします」

馬車幽霊 「…………」


幼妻エルフ 「…………」


ボオオ


ろうそく職人 「あっ、館が薄い青闇に包まれて、あたりに星のような光が」


貝殻の勇者 「夜空の中でとけていくようです。呪われた記憶と記録をつれて、眠りにつくのですね」


王子 (有用なのだろうが、人間の心のくらいところを膨らませるような技術だ。しかたないか)

王子 (きっとこの先も、明るみに出るべきではないのだろう)


ハーピィ 「…………」


オオオ


ろうそく職人 「ああっ、館の入り口のところに!」


貝殻の勇者 「あれは……」


990 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/17(火) 23:39:42.33 ID:P8Nihqk4o


ゾンビ(?)A 「オオ……オオオ……」


ゾンビ(?)B 「……オオーン……」


ゾンビ(?)たち 「アアア……ガアア……」


オオオ グオオオ ウアア


ろうそく職人 「大量のゾンビたちがこちらを見ながら、暗い地の底で耐え難い苦痛にもがきうごめくようなうめき声をあげています」


貝殻の勇者 「フレッシュゴーレムでしょうか」


馬車幽霊 「そんな、魂は入れていないはずなのに……」


幼妻エルフ 「集中は切るなよ。面倒な魔法なんだから」


ウウウ オオ オオオオ……


ろうそく職人 「みんなうつろに手を振っています。私たちを見送っているのでしょうか」


貝殻の勇者 「きっとそうなのでしょうね。ただし私たちというよりは、馬車幽霊……いえ、星魔法使い夫婦の面影を」

貝殻の勇者 「ながき館の主との別れにのぞんで、奇跡がおきたのです」


馬車幽霊 「私のようなものを、見送ってくれるというのですか……」


アオオ ウゴゴゴ オオオオ


貝殻の勇者 「耳が腐るような声たち。ああ、なんと感動的なのでしょう」


ろうそく職人 「グスン……涙なしにはいられません」

ろうそく職人 「あ、何体か腕がもげた」



991 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/17(火) 23:54:51.78 ID:P8Nihqk4o


馬車幽霊 「……術を閉じます」


幼妻エルフ 「よし」


ゴゴゴ ザワ ザザザ


王子 「どこからか現れた木の枝葉が、爆発の煙のように館を……」


ゴゴゴゴ バキ パキ ザザザザ


貝殻の勇者 「巨大な樹の幹が、館を夜ごと閉ざしていく」

貝殻の勇者 「これが、封印。まるで一本の大樹……」


王子 「それだけ、隠したいものが多いということなのだろうか」


ろうそく職人 「グスン……さようならあ、ゾンビたち!」

ろうそく職人 「気が狂うほど何もない閉ざされた空間で、永遠のときをさ迷ってくださあい!」


馬車幽霊 「そういう魔法じゃありません」


幼妻エルフ 「王子、うしろに行ってあいつの尻尾を引っこ抜いといてくれ」


王子 「よしきた」


タッ


王子 「神妙にしろ」


ろうそく職人 「ぎゃいやあん!」


貝殻の勇者 「まあ、うれしそう」


992 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/18(水) 00:24:01.33 ID:JdQlsT8jo


ザザザ サアア


貝殻の勇者 「館が消え、大樹だけが残った……」


馬車幽霊 「……終わりました」

馬車幽霊 「みなさま、お待たせして申し訳ありません。馬車を、出してください」


ハーピィ 「…………」


ギイッ カラ カララ…… 


ろうそく職人 「良いんですか? しばらく戻ってこれないかもしれないのに」


馬車幽霊 「ええ、大丈夫。別れはもう、ずっと昔に終えていたはずですから」

馬車幽霊 「……さて、食事の用意でもしてきますか」


貝殻の勇者 「ふふ。では見張りがてら、楽しみに待っていましょう」


ハーピィ 「…………」


王子 「お疲れさま」


幼妻エルフ 「こっちの台詞ってやつだ」

幼妻エルフ 「……傷は本当にもう良いんだな」


王子 「ああ。黒花の長老どのは心配性でいらっしゃる」


幼妻エルフ 「当たり前だ、大事な体だぞ」

幼妻エルフ 「お前にはこれから、ちょっと死ぬくらいの苦労を死ぬほどしてもらうんだから」


王子 「……もう何か不思議なことが起こって合体した魔王と皇帝がここに現れて」

王子 「勇者どのか誰かが何かに目覚めて魔王皇帝を殺害して帝国が歓喜に満ちて一方おれは自由の旅に出てめでたしめでたし」

王子 「に、ならないかな」


幼妻エルフ 「お前がまさかの戦死を遂げて、ハーピィを受け継ぐ新たな誰かがあらわれ、この暗き災厄の大陸を巡るハーピィの旅は続いていく」

幼妻エルフ 「という線もあるな」


王子 「ははは……」


ハーピィ 「…………」


カラカラカラカラ


993 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/18(水) 01:17:59.22 ID:JdQlsT8jo


王子 「くぁ……」


幼妻エルフ 「何だ、大きなあくびをして。まだ日は落ちていないぜ」


王子 「いや、なぜだか眠くなってね。のんびりうたた寝、という感じの森でもないのに」

王子 「御者台が気持ち良いせいかな」


幼妻エルフ 「この分だと、居眠り対策もしておかないといけないか」

幼妻エルフ 「いちおう、背もたれの後ろのそれを倒したら、馬車と御者台の間に仮眠用のベッドができる」


ガチャ


王子 「おお、本当だ。さすが魔法の馬車」

王子 「ははは、ふかふかだ」


幼妻エルフ 「……ふふふ、良いのかな、このオレの前で無防備な姿なんてさらしたら」

幼妻エルフ 「膝枕でいたれりつくせりの刑に処してやる」


王子 「そりゃ良いね……」

王子 「ああ駄目だ、限界だ。すまない、本当に少し眠るよ」


幼妻エルフ 「……しょうがない奴だな」

幼妻エルフ 「食事になったら起こすからな」


王子 「ああ、頼む……」


ハーピィ 「…………」


王子 「…………」


カラカラカラ


994 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/18(水) 01:26:46.50 ID:JdQlsT8jo


貝殻の勇者 「南の港に着いたら、あとは船で南東地方ですか」


ろうそく職人 「南東地方の領主さまとうちの領主さまは、殺伐とした親交があるんですよ」


貝殻の勇者 「ほう」

貝殻の勇者 「……殺伐とした、親交?」


カラカラカラ


ハーピィ 「…………」


王子 「…………」


幼妻エルフ 「…………」

幼妻エルフ 「まったく、ハーピィが頑張っているときにこの王子は」


カラカラカラカラ


ハーピィ 「…………」


幼妻エルフ 「ふん、魔性の女も甘いね」

幼妻エルフ 「操縦交代だ、ハーピィ。王子さまに膝をかしてやると良い」


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「…………」


995 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2014/06/18(水) 01:38:41.25 ID:JdQlsT8jo


…………


ホー ホー サワサワ


ろうそく職人 「おや……うーん、爽やかな風」


貝殻の勇者 「この森にも、このような風が吹くのですね」

貝殻の勇者 「それとも、南の海に近づいている証拠なのでしょうか」

貝殻の勇者 「彼方から来る風の、新しいにおいがします」


カラカラカラカラ


王子 「…………」


幼妻エルフ 「…………」


ザアア サワサワ


ハーピィ 「…………」

ハーピィ 「…………」


カラカラカラカラ

カラカラカラカラ……

…………

……





おわり

996 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/06/18(水) 01:45:02.90 ID:sMRpKhZlO

次スレでは立派な海老茹で氏になること期待
997 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/18(水) 01:50:45.55 ID:bditRsIto

えびゆで師の冒険はこれからだ!
998 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/18(水) 01:55:34.48 ID:e7Zv9REAO

途中で出てきた海老娘にはいつがフラグが立つのかな?
999 :シャルロッ亭きゅっぷい ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2014/06/18(水) 02:09:55.73 ID:JdQlsT8jo
次スレ名(仮)
王子姫 「黒翼のハルピュイア……」 鏡の魔女 「王子の最期」


ありがとうございました
1000 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/18(水) 02:20:10.06 ID:e7Zv9REAO
最後の最後に爆弾投下していきおった
1001 :1001 :Over 1000 Thread
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猫耳パーカーとフーセンガム @ 2014/06/18(水) 02:13:21.44 ID:OIe+ZWtGo
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ちなつ「私はヤンデレなんかにならない」 @ 2014/06/18(水) 01:28:08.06 ID:792cqPT10
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花陽「穂乃果ちゃんニ゙ン゙ゲン゙ヤ゙メ゙ヂャ゙ッ゙ダノ゙ォ゙!?」 @ 2014/06/18(水) 01:22:04.02 ID:uVvwBY4zo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1403022123/

超時空要塞みゆきちフロンティアのスレ @ 2014/06/18(水) 01:00:40.24 ID:DbyfBXJOo
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竜華「うちが>>2やるから怜は>>3やって」 @ 2014/06/18(水) 00:27:25.16 ID:GTCuxmWdO
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P「箱崎は・・・もういい」箱崎星梨花「えっ・・・」【ミリマスSS】 @ 2014/06/18(水) 00:16:43.28 ID:sWKkfb6b0
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