【皆で】魔法少女まどか☆マギカ小ネタ投稿スレ4【更新】

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169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/08(土) 01:15:12.48 ID:9QCWp1mU0
「……貴方が覚えているとはね」
「は?」
 ほむらの呟きが耳に入り、中沢は呆けた声を上げる。何を、と聞き返そうとした時、早乙女先生が教室に姿を現わした。仕方なく言葉を飲み込む。
 朝のホームルームが終わり、一時間目の授業が始まっても、ほむらの発言が引っかかっていた。

 一時間目と二時間目の間の休み時間。
 教室は別人並みに変わったほむらの話題で賑やかだった。突然の変化が信じられないのか、実は双子の姉妹じゃないかと話す声まで聞こえる。
「大胆なイメチェンしたね、暁美さん」
 友人の一言に中沢は視線を落とす。椅子に座っているのは灰色の髪の男子生徒で、名前は上条恭介。将来を期待されている天才バイオリニストだ。
 傍らに立つ中沢は同意して頷く。
「先生も驚いてたな。まあ、あれだけ変われば驚くだろうよ」
 ほむらを見るなり目を丸くした早乙女先生の顔が浮かぶ。もしかしたら見知らぬ生徒がいると思ったかもしれない。
 ほむらの呟きが頭をよぎり、中沢は確認の為に尋ねた。
「なあ、暁美さんがあの格好で来たの、今日が初めてだよな?」
「そうだね。最初は誰かと思ったよ」
 一目でほむらだと分からず、さやか達と話しているのを見て気が付いたと、上条は幼馴染の名を上げて返す。
「……やっぱそうだよなぁ」
 案の定か、と中沢は溜息を吐く。三つ編み眼鏡を止めたほむらを見たのは今日が最初。それは間違いない。
 なのに、前から知っているような気がする。覚えていないだけで、実はどこかで会った事があるのか?
 可能性を考えて、すぐにそれを否定する。
 土台無理な話だ。彼女は心臓の病気でずっと入院していた。事故に遭って同じく入院していた上条ならともかく、病院に通ってもいない自分が会っていたなんて出来過ぎている。
 もう松葉杖なしでも大丈夫なのか。リハビリ中の友人を見やった瞬間、中沢は強烈な違和感に襲われた。
 ……ちょっと待て。上条が事故に遭った? いつ? そもそも入院なんてしていない、はずだ。
 今の状況と食い違った記憶が飛び交う。訳が分からない。頭の中がちりちりする。
 佐倉杏子。……そんなクラスメイトがいたか?
 美樹さやか。欠席が続いた後に亡くなって……いや、行方不明になってなかったか?
 自分がおかしいのかと不安に駆られ、中沢は尋ねていた。
「上条、何か変じゃないか?」
「何が? ……あ、変と言えば」
 怪訝な表情を浮かべたものの、上条には思い当たる事があるようだ。
「やけにリアルな夢を見たよ。事故に遭って、どこかの病院に入院してる夢」
 中沢は息を呑む。偶然の一致に心臓が跳ね上がり、激しい鼓動が耳を打つ。
「それ、マジか?」
「うん。しかも左手がまともに動かなくて、『もう演奏は諦めろ』って医者に言われた」
「うわ……お前にとっちゃ最悪じゃないか」
 夢の中とは言え、二度と演奏が出来ないと告げられた上条の絶望はどれほどだったか。放課後の付き合いを断るのは日常茶飯事。休日も練習に費やして、交際中の彼女よりバイオリンを優先する奴だ。
 その彼女――志筑仁美が愚痴をこぼしている所に居合わせた事がある。曰く「上条が忙しくてなかなか会えない」らしい。
 恋人を放ったらかしているのだろうと想像できる程、上条のバイオリンへの打ち込みぶりは半端ではない。筋金入りの音楽バカで、バイオリンに人生を捧げている。そんな奴だ、上条は。
 勉強も運動も普通で、趣味はゲーム。そんな平凡な自分とは違う。
「凄くリアルだったよ。もしかしたら現実だったんじゃないかって、今でも少し怖くなる」
 上条は左腕を軽く持ち上げ、ゆっくりと手を握り、そして開いた。まるで動くのを確かめるように。
「見舞いに来てくれたさやかに八つ当たりしてさ……。嫌な夢だったよ」
 酷い事を言ってしまったと渋い顔をして、上条は教室後方を見やった。釣られた中沢は視線を追いかける。
 ほむらとさやか、それに杏子が立っているのが目に映り、三人と談笑する女子の姿も見えた。今の休み時間は彼女の席に集まったようだ。
 座っているのは、桃色の髪を左右で結んだ女子生徒。「小さくて可愛い」と、男子の間で密かに人気がある鹿目まどかだ。周りの三人が壁になって、頭のリボンが見え隠れする。
「……?」
 中沢は若干眉を寄せる。視線の先には話題をころころ変えて話す女子達。雰囲気と表情は和やかで、喧嘩をしているような険悪さは全く感じない。
 要するに普通。ありふれた日常の一部として捉える光景だ。昨日までと変わった所と言えば、ほむらの見た目くらいだろう。
 だが、あるはずの物が見当たらない感じがする。それは何かを思い出そうと、中沢は思考に意識を集中させた。
 席に座っている時の光景がおぼろげに浮かぶ。前は右側に目をやると、赤くてひらひらした物が見えていた、ような。それは彼女の眼鏡じゃなくて……。
 ふと、脳裏に光が差し込む。ほんの一瞬だけ、鮮明な記憶が蘇った。
 そうだ、覚えている。どうして忘れていたのか。思い出してしまえれば、今まで気付きもしなかった自分に呆れてしまう。
 彼女とは友達と言える程仲が良い訳でもないし、どうしてそんな記憶があるのかはさっぱり分からないけれど。
「上条、おかしいと思うかもしれないが、真面目に聞けよ?」
 誰かに話さずにはいられず、中沢は疑問を口にした。
「暁美さんって、頭にリボン着けてなかったか?」
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