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娼婦「男さん、愛しています」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :名無しさん :2014/05/25(日) 14:24:05.48 ID:RfQkQDIb0
胸糞展開あり、処女厨にはおすすめしない

立ったら書く

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ツナ「(雲雀さん?!)」雲雀「・・・」ビショビショ @ 2025/06/07(土) 01:30:36.87 ID:AfN9Rsm0O
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阿笠「わしの乳首に米粒をくっ付けたぞい」コナン「は?」灰原「は?」 @ 2025/06/04(水) 04:01:13.39 ID:ZjrmryLdO
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レッド(無口とか幽霊とか言われるけどまだ電脳世界) @ 2025/06/02(月) 21:21:00.13 ID:ix3UWcFtO
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2 :名無しさん :2014/05/25(日) 14:25:39.93 ID:RfQkQDIb0
男「娼館…ですか?」

先輩「そうそう。お前確か、まだ女知らないよな?」

男「ええ、まぁ…」

先輩「女はいいぞ?やわらかくてしっとりしてて、癒してくれる。俺らみたいな明日をも知れない奴らにとっちゃ、最高の存在だ」

男「でも、金が…」

先輩「今日だけおごってやるよ。ほら、行くぞ!」グイッ
3 :名無しさん :2014/05/25(日) 14:26:05.53 ID:RfQkQDIb0

ー娼館ー

受付「あら先輩ちゃん、お久ー。後ろの子はお連れさん?」

先輩「最近、新人がはいったって聞いてさ。こいつも初めてだから、頼むよ」

受付「了解。先輩ちゃんはいつもの売れっ子ちゃんよね?」

先輩「もちろん。じゃあ男、後でな?」ヒラヒラ

男「あ、ちょっとま…」

男「(行ってしまった…)」

4 :名無しさん :2014/05/25(日) 14:27:15.80 ID:RfQkQDIb0

男「(俺達軍人は、いつ死んでもおかしくない。戦友は増えては減り、減っては増える)」

男「(故郷に恋人がいても、独り身でも、誰にでも死は訪れる)」

男「(もちろん、この俺だって……)」

娼婦「……あのー、大丈夫ですか?」

男「!? わ、あ!」ビクッ

娼婦「あ、ごめんなさい。部屋に来ないから、迎えに来たんですけど…」

男「すいません、考え事してて……、」


男「(その瞬間、俺は思わず息を呑んだ)」

男「(目の前に立つ、華奢で儚く、異国の色彩の繊細な外見をした少女)」

男「(鈴を転がしたような声は心に沁み、庇護欲をかき立てる)」

男「(娼館の趣味なのか、身にまとう白い質素な服が、より少女の儚さを引き立てていた)」

5 :名無しさん :2014/05/25(日) 14:27:43.81 ID:RfQkQDIb0

娼婦「……?お客さん、大丈夫ですか?」

男「! す、すいません、娼館とか初めてで、緊張してて…」

娼婦「ふふっ、大丈夫ですよ。私も、ここに来たばかりですから」ニコッ


男「(苦し紛れの言い訳に、少女が微笑んでくれたことに心底安堵した。それと同時に、今まで感じたことのない胸の高鳴りが起きた)」

6 :名無しさん :2014/05/25(日) 14:28:41.35 ID:RfQkQDIb0

男「(部屋まで案内され、ベッドの上に座らされた。早速しゃがみこんで俺の前をくつろげようとする彼女を、俺は必死に制止した)」

男「ちょ、ちょっと待って!ください!」アタフタ

娼婦「え? も、もしかして何か、不手際でもありましたか?」アセアセ

男「そうじゃないです!でも待って、離れて、待って!」ガサゴソ

娼婦「え、え?」
7 :名無しさん :2014/05/25(日) 14:29:12.70 ID:RfQkQDIb0

男「(しばしの混乱の後、少女を少し距離を置いてベッドの上に座らせる。少女も混乱が解けたのか、申し訳なさそうな顔をしていた)」

男・娼婦「「あの…」」

男・娼婦「「!!」」

男「ど、どうぞ」

娼婦「いえいえ、お客さんがお先に」

男「……えっと、じゃあ俺から」

男「あなたは……えーっと…」

娼婦「あ、娼婦です。私の名前」

男「…娼婦さんは、ここに来たばかりって言ってましたよね」

娼婦「はい。あ、もしかしてそれが原因ですか?ですよね、もっと経験豊富な人のほうが……」ショボン

男「あっいや違っ、ただの世間話でっ」アセアセ

娼婦「ふふっ、冗談です。お客さんも初めてですよね」ニコッ

男「は、はい」ドキッ
8 :名無しさん :2014/05/25(日) 14:29:41.17 ID:RfQkQDIb0

男「(ふたたび感じた胸の高鳴りは、自分の彼女に対する思いを自覚するには十分だった)」

男「(しばらくの雑談をし、時に致そうとする彼女を止め、また雑談をする)」

男「(彼女をもっと笑わせたい、ずっと笑顔でいて欲しい。そう思った俺は、彼女に向き直って言った)」


男「あの、俺、男って言います」

娼婦「男さん、ですか。いいお名前ですね」

男「その、よかったら、また来るんで、今日みたくお話しませんか?」

娼婦「お話……ですか?」キョトン

男「い、嫌ですか……?」

娼婦「…ふふっ、そんなこと、ありませんよ。是非、待ってます」ニコッ

男「よかっ…!!」パァア


男「(彼女の言葉に夢見心地になった俺は、その後どうやって帰ったか覚えていない)」

男「(帰り際渡された彼女の名刺を大切に仕舞い、その夜は眠った)」

9 :名無しさん :2014/05/25(日) 14:30:14.21 ID:RfQkQDIb0

ー数ヵ月後ー

男「しょ、娼婦さんお願いします」キョロキョロ

受付「あら、男ちゃん。このごろよく来るわねぇ。もしかして、惚れてるの?」

男「!!」ドキッ

受付「相変わらず素直ねえ。そんなんじゃ、すぐ騙されちゃうわよ?」カラカラ

男「受付さん…!///」キッ

受付「やーね、すぐ赤くなっちゃって。娼婦ちゃんでしょ、待ってるわよ」

男「え?」ポカーン

受付「そろそろ来る筈だって、さっき念入りに身づくろいしてたのよ。おアツいことね」

男「いっ、行ってきますっ!!!///」ダダッ

受付「行ってらっしゃ〜い。そろそろ、キスぐらいしてみたら〜?」

受付…「…聞いてないし。まったく、いつまで青臭いことやってんのかしら。もっとガバッとイっちゃえばいいじゃない」

先輩「男にそんなの無理だよ、分かってんでしょ?」

受付「あらま、先輩ちゃんじゃない。どうしたのその顔、男前が増してるわよ」

先輩「ははは、姫の機嫌を損ねてしまってな。思いっきりやられた」ボロッ

受付「どーせまたヘンなことやったんでしょ。売れっ子ちゃん、単純だから」

先輩「否定はしない」

10 :名無しさん :2014/05/25(日) 14:30:56.80 ID:RfQkQDIb0

男「し、失礼します…」ギィィ

男「(何度も訪れ見慣れた部屋に、今日は少しだけ違うところがあった。窓際の花と、かすかに香る甘い匂い)」

男「(どちらもほとんど自己主張をしない、大人しい感じがこの部屋の住人に合っていた)」

娼婦「あ、男さん!いらっしゃい、待ってましたよ」ニコッ

男「娼婦さん、こんばんは。お花、買ったんだ」

娼婦「はい。今日、通りで見かけて。綺麗ですよね」

男「確かに。娼婦さんに似て、綺麗だ。名前はなんていうの?」

娼婦「あ、ありがとう…/// えと、名前はわからないんです」テレテレ

男「そうなんだ。どこで買ったの?」

娼婦「5歳くらいかな、籠にいっぱい入れて売ってたんです。それで、いっぱい買いすぎちゃって、他の部屋にも…」

男「へえ…やっぱ娼婦さんは、優しいね」

娼婦「そんなこと、ないです/// 偶然見かけたってだけで…」

男「でも、優しいよ。そうだ、昨日先輩が話してたんだけど……」


男「(彼女と過ごす時間はゆるやかで、ぬるま湯に浸るような心地よさがあった)」

男「(どんなにつらいことがあっても、この瞬間だけは全て忘れて、笑うことが出来た)」

11 :名無しさん :2014/05/25(日) 14:32:32.28 ID:RfQkQDIb0
ー戦場ー

ドガーン...パラララ...

友人「ぐぁああああっ!!!」

男「友人!くそっ、友人が腕をやられた!誰か衛生兵を呼んでくれ!」

同期「そんな余裕ねえよ、今こん中飛び出してったら、あっという間にミンチだ!」

男「…っ!仕方ない、応急処置だけでも…」

友人「いいよ、男。どうせ無駄だ」ゼーハー・・・

男「友人?無駄なんてことはない、今手当てすれば…」

友人「両腕がお釈迦になったんだ、これ以上戦えねえ。貴重な薬を無駄遣いするくらいなら、しないほうがいい」ググッ

男「、友人……」

友人「…なあ、誰か爆弾持ってるか?あったら、一個くれ」

同期「お前、もしかして……」

友人「最後くらい、一花咲かせてーんだよ、協力してくれや」ニカッ

男「……故郷の妹はいいのか?最後の家族だろう?」

友人「…いいんだよ、もう。それに、こんな腕じゃ抱きしめることも出来ねえ」

同期「…分かった。 ……寂しく、なるな」ポイッ

友人「さんきゅ。じゃあ、逝ってくるか。あ、それと男」

男「……?」

友人「俺の妹は、お前に惚れてる。俺の代わりに幸せにしてやってくれ」

男「友人……!!お前、」ハッ

友人「じゃーな、お先に向こうで待ってるぜ」ダッ


ドーン...



男「(友人の妹は、その知らせを聞いたとき、兄似の笑顔をくしゃくしゃに歪めて泣き喚いた)」

男「(叩きつけるような、人殺し、という一言が忘れられない)」
12 :名無しさん :2014/05/25(日) 14:33:05.98 ID:RfQkQDIb0

ーー
ーーー
ーーーー

娼婦「男さん?」

男「、あ、な、何?」

娼婦「…何か、つらいことでもあったんですか?」

男「! そ、それは…」

娼婦「……無理に話さなくてもいいですけど、私に何か出来ることがあったら、何でも言ってください」

娼婦「男さんのこと、心配ですから」ニコッ

男「娼婦さん……」

13 :名無しさん :2014/05/25(日) 14:34:36.69 ID:RfQkQDIb0


男「(彼女は、俺が軍人であることを知らなかった)」

男「(聞けば彼女は、戦争で家族を失い、生きるために娼館に来たという)」

男「(戦火の中、身一つで生きてゆくことを選んだ彼女は、誰よりも気高く、美しかった)」

男「(そんな彼女に、自分が人殺しであることを、人を殺して稼いだことを明かす勇気は俺にはなかった)」
14 :名無しさん :2014/05/25(日) 14:35:02.35 ID:RfQkQDIb0
ー宿舎ー

先輩「よお、最近娼婦ちゃんとうまくいってる?」

男「先輩こそ、売れっ子さんとは仲直りしたんですか?」

先輩「ぐっ、な、なぜそれを・・・!」

男「受付さんがものすごい笑顔で言いふらしてましたよ」

先輩「うわああ、受付ちゃんの薄情者!あと、仲直りはしたよバーカバーカ!」ダッ

男「あ、いっちゃった……見かけによらず、打たれ弱いよな、あの人…」

同期「男、今何話してたんだ?先輩が傷だらけで泣きながら走ってたんだが…」

男「あー、実はかくかくしかじかで…」

同期「なるほど…。なあ、お前これから時間あるか?」

男「どこか行くのか?」

同期「…友人の、墓参りだよ」


15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/25(日) 14:40:35.99 ID:PY+BcCKQo
この感じは……あれ

期待
16 :名無しさん :2014/05/25(日) 14:41:08.04 ID:RfQkQDIb0

男「(友人の遺体はばらばらで、唯一勲章と手足の破片、顔の上部が回収できたくらいだった)」

男「(それでもまだ、判別が出来ただけマシだろう)」

男「(念入りに手入れがされた友人の墓は、寂れた墓地でひときわ目立っていた)」


同期「新品の花に、立派な供え物。あいつ、本当に愛されてたんだな」

男「……ああ」

同期「…俺たちも、いつかはこうなるんだろうか。安らぎとは程遠い戦場で、悼む暇もないまま、はらわたぶちまけて」

男「……」

同期「…まずは、近況報告でもするか。あの後、俺達は勝ったよ。お前のおかげで」

同期「お前が主力のところを叩いてくれたから、敵方も総崩れで、戦果を収めることが出来た」

同期「……いつか、勲章つけたいって言ってたよな、お前」

男「……」

同期「でももう、つけらんねぇや……」ポタポタ

17 :名無しさん :2014/05/25(日) 14:42:03.71 ID:RfQkQDIb0

男「(その後、友人にいくつか話をして、来る途中買った花を置いて、墓地を後にしようとした)」

男「(その途中、見知った影を見かけた)」


男「娼婦さん…?」


男「(寂れた墓地の隅に一人たたずむ彼女は、どこか神聖な空気を放っていた)」

男「(その手には小ぶりの花束があり、彼女も誰かの墓参りに来たのだと推測できた)」

18 :名無しさん :2014/05/25(日) 14:47:21.90 ID:RfQkQDIb0

娼婦「……あ、男さん。こんにちは」ニコッ

男「こんにちは。娼婦さんもお墓参り?」

娼婦「……はい、そんな感じです」

娼婦「男さんは、これからどうします?」

男「どうするって…特に用はないかな。娼婦さんは?」

娼婦「私、このあと暇なんです。それで、よろしかったら、お散歩でもしませんか?」

男「い、いいんですか?///」

娼婦「勿論。ちょっと、一緒に行きたいところがあって」

19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/25(日) 15:43:31.61 ID:howpbfLOo
期待
20 :名無しさん ◆eVlHnK6hAI :2014/05/25(日) 15:57:25.70 ID:RfQkQDIb0
今日はもう落ちる
見てくれてありがとう
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/25(日) 16:03:45.10 ID:3JV/oTnIo
他の男とはやってるというのがたまらない
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/25(日) 16:16:57.75 ID:onQd6Gbxo
まあ娼婦なんですし
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/05/25(日) 17:03:35.73 ID:ETXIuIGZ0
前の男の行方よりも、貴方の未来気になります
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/25(日) 17:09:24.93 ID:JCI16lOAO
バッドエンドしかない組み合わせだが
気になるよね
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/05/26(月) 19:21:19.69 ID:/KgkQ94No
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26 :名無しさん ◆eVlHnK6hAI :2014/05/26(月) 20:06:06.55 ID:Kg4jo/Z10


女の子「あ、おねーちゃん!さっきはありがとう!」ニコッ

娼婦「私こそ、綺麗なお花をありがとう」


男「(通りを歩いていると、一人の少女が声をかけてきた。口振りから察するに、件の花の子らしい)」

男「(少女の持つ籠には少し空きが出来ており、彼女の花束と同じ種類の花が詰まっていたから、彼女はここで買ったのだろう)」
27 :名無しさん ◆eVlHnK6hAI :2014/05/26(月) 20:06:43.49 ID:Kg4jo/Z10


女の子「お姉ちゃんの隣の人、彼氏さん?デート中なの?」

男「え!?えっと…」

娼婦「ふふっ、そうよ。お姉ちゃんたち、ラブラブなの」


男「(そういって彼女は、イタズラっぽく笑って俺の腕に手を回す。少女が顔に手を当てて、指のすき間からのぞいた目と目が合った)」


男「しょ、娼婦さん!?///」アタフタ

女の子「ふぁあ、ラブラブなんだね〜…/// 邪魔しちゃって、ごめんね?」

娼婦「そんなことないわよ。じゃあね?」ニコッ

女の子「うん、彼氏さんもまたね〜」フリフリ

男「あ、うんまた…///」フリフリ

娼婦「じゃ、行きましょうか、彼氏さん?」ギュッ

男「ぅあっ! は、はい…///」
28 :1 ◆eVlHnK6hAI :2014/05/26(月) 20:07:18.53 ID:Kg4jo/Z10

男「(そのまましばらく歩くと公園が見え、彼女はようやく腕を開放してくれた。適当なベンチに座り、飲み物を買いに走る)」

男「(腕がいいのか軽食屋は大繁盛で、行列で散々待たされてから戻ると、彼女はベンチのそばの花壇に見入っていた)」
29 :1 ◆eVlHnK6hAI :2014/05/26(月) 20:08:03.41 ID:Kg4jo/Z10


男「娼婦さん?」

娼婦「あ、男さん。すいません、勝手に離れちゃって」パッ

男「いや、それはいいんだけど……。この花を見てたの?」

娼婦「ええ、元は私の故郷に咲いてた花らしいんです。昔、戦争が起きる前に持ち込まれたそうで」

男「へえ…。変わった形の花弁だね。でも、どこかで見たような…」

娼婦「まあ、花屋でも普通に売ってますからね。それより男さん、お飲み物いくらでした?」

男「え、いいよいいよ。俺が好きで買ってきたようなものだし」

娼婦「でも…」ショボン

男「じゃあ代わりに、娼婦さんの故郷の話を聞かせてよ。興味がわいてきてさ」

娼婦「……いいですよ、今日はお勉強の時間ですね」ニコッ


男「(彼女が故郷について話す姿は、とても生き生きとしていた)」

男「(いつもどこか悲しげな目をしている彼女は、故郷の話の時だけ子供のように目を輝かせた)」

30 :1 ◆eVlHnK6hAI :2014/05/26(月) 20:08:53.34 ID:Kg4jo/Z10


娼婦「…あ、もうこんな時間。そろそろ帰らなきゃ、ですね」

男「ほんとだ。よかったら、送っていくよ」

娼婦「いいんですか?ありがとうございます」

男「これでも一応、力に自信あるからね」

娼婦「ふふっ、頼りにしてます」ニコッ

31 :1 ◆eVlHnK6hAI :2014/05/26(月) 20:09:28.51 ID:Kg4jo/Z10

男「(彼女を娼館に送り届けるまでの間、とりとめのない話をいくつかした)」

男「(売れっ子さんの初恋の話、鬼の部隊長が実は愛妻家な話、受付さんが髭をそり忘れたときの話)」

男「(しばらくたつと会話も途切れて、微妙な沈黙が漂った)」


男・娼婦「「あの…」」

男・娼婦「「!!」」

男「ど、どうぞ」

娼婦「…なんか、前にもこんなことありましたね」クスッ

男「…そうですね。じゃあ今度は、娼婦さんからどうぞ」

娼婦「あ、はい…男さんは、ここで生まれたんですよね?」

男「あぁ、うん…。娼婦さんは確か、北の生まれだっけ」

娼婦「はい。男さん、ご家族はいらっしゃいますか?」

男「いるけど…。え、何?どうしたの?」

娼婦「実は最近、私の家族が生きているかもしれないって聞いたんです」

男「!! ってことは…!」

娼婦「……はい。無理を承知でお願いします。男さんに、私の故郷に行ってもらいたいんです」

32 :1 ◆eVlHnK6hAI :2014/05/26(月) 20:09:57.15 ID:Kg4jo/Z10

男「(彼女の故郷とこの国は、数年前開戦してからずっと、互いに渡航禁止状態にある)」

男「(唯一許可されているのが、運び屋と一部の政府関係者のみ。それ以外は、下手すると殺されかねなかった)」

男「(以前彼女に職業を聞かれ、咄嗟に運び屋と答えた俺は、彼女が縋るに相応しい存在だった)」

33 :1 ◆eVlHnK6hAI :2014/05/26(月) 20:11:00.84 ID:Kg4jo/Z10

男「リキノ村、か…」


男「(彼女の故郷であるリキノ村は、戦争が始まって真っ先に侵攻された村だ)」

男「(今は半植民地化していて治安も落ち着いているが、少し前は本当にひどかったらしい)」

男「(勿論運び屋でもなんでもない俺が、任務に関係のないところに赴くわけにも行かず頭を抱えていると、思いがけない話が転がり込んできた)」

34 :1 ◆eVlHnK6hAI :2014/05/26(月) 20:16:18.34 ID:Kg4jo/Z10

同期「男。お前、リキノ村って知ってるか?」

男「えっ!?あ、ああ」


男「(ちょうど考えていたことを言われ、勢いよく跳ね起きる。それに驚いたのか同期は目を丸くした)」

35 :1 ◆eVlHnK6hAI :2014/05/26(月) 20:16:54.97 ID:Kg4jo/Z10

同期「いやなんかな、リキノ村にいくみたいなことを部隊長が言っててさ。しばらく目立った戦闘もないから、上層部が戦果を欲してるらしい」

男「なるほど…。でも、なんでリキノ村なんだ?あそこは、確かもう随分前に降伏しただろ」

同期「それがなんかさ。ずっと別の戦場に出てた奴が帰ってきて、そいつを旗印に決起したんだと」

男「ああ、なるほど。でも、どうせろくな戦力もないから現地の奴らで十分だろ?」

同期「それがさー。窮鼠猫を噛むっつーの?ジリ貧だからこそ逆に強くてさー。そこで俺達精鋭部隊に白羽の矢が立ったってことだ」

男「後半はよく分からんが、そうするにやばいんだな。まああそこは割りと早めに降伏してたから、締め付けもゆるかったしな」

同期「あ〜あ、やんなるよ。友人に続いて、今度は俺の番かねぇ」

男「縁起でもないこと言うなよ。じゃあ、俺は外行ってくる」

同期「あ、お前あれか!例の彼女だろ!?ずりーなー、ずりーよお前ー!」

男「羨ましかったら、お前も真似ればいいだろ。金ならあるだろ?」

同期「チクショー!童貞仲間がまた一人減ったー!!」


男「(同期の悲痛な叫びを背に、足早に娼館に向かって歩く。頭の中には、先ほど言われたことがぐるぐると渦巻いていた)」
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