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垣根帝督「はぁ? 俺はオタクじゃねえぞ」

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773 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/02(土) 07:57:28.28 ID:+zk5I0keo
この世の経済は貨幣との引き換えで成り立ってる・・・だが、俺の飲食無料にその常識は通用しねえ
ただの食い逃げじゃないか!
774 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/04(月) 09:44:00.31 ID:vOiSIG7Fo
や っ と 追 い つ い た
1レス1レスがこんなに濃いのは久々

頑張れスクール頑張れ
775 : ◆q7l9AKAoH. [sage]:2016/07/07(木) 23:59:02.15 ID:H12u75eX0

>>767
マニアックな属性持ちで天職についたどこかの医者がなんですって?

>>768
☆が最初なのww黒幕っぽいけど最後じゃないのか。
普通に似合いそうだよねww男にも女にも見える美形だし。ちょっと天地入れ替わってるけど
いやー犯人が某カエル似の方だなんて言ってませんよ?
まさか冥土帰しがそんなことを?

???さんが、とりあえずシンボルであるレベル5にナース服を着せて…ってのが計画とやらのスタート地点なんで多分。
長引くと拘束時間が増えるから人質が速やかに解放される為には犯人に協力するのが一番ですよね(棒)

???「看護婦の居ない職場なんて、僕は仕事をする気が全くもって起きない」
1「……あのガキの管理が出来ンのはコイツくらいだ。どンなアホでもな」
2「面白いもんが拝めるっつうし」
3「そうなると大勢の妹が困るのよ」
4「メンテナンスがあるし」
5「こっちにも事情力があるのよねぇ」
7「よくわかんねーけどこう言う祭りか?仮装パーティーか?」

???「よーし軍覇、お前だけでも着替えて帰るか! な?」

>>769
ぐーぐ○先生に質問不可避だった。
流石ベテランは活動量が違う。
って!ティコってシャチの方かい!探したわ!
禁書は〜シャチより〜レトリバーが好き〜!

だってこれから常盤台の生徒になってもらうのに、こっちもそれなりの扱いをしないと失礼じゃないですかー。

>>770
も?誰かやったかな?缶コーヒーはずいぶん前に第一位がやったらしいね?
偶像さまかな?

>>771
なんて高度なアナグラムだww

>>772
マックタダーww
みんなでポテトとマスタードソース山ほど頼もうぜ!!
マックには無料になるゴールドカードがあるって都市伝説は本当かな。

>>773
なんて恐ろしい超能力だ。学園都市には利益よりも損失しかない。
スタイリッシュ食い逃げwwww

>>774
初めましての方は(r
某ラーメン並みにカサの多いマシマシSSだが、ほとんど『スクール』でできてるからそのぶん濃さには自信があるぜ。
お口に合えばドーゾよろしく。


七夕だったねー
そう言えば短冊あつめるイベントってやらないなー
短冊書くんなら>>1はそうさなあ…
垣根の出番が…増えてもプラスになるとは限らないから、元気でやってくれればいいかなあ

776 :偶像さまネタのやつが出てきたんで ◆q7l9AKAoH. [sage saga]:2016/07/08(金) 00:32:57.49 ID:6jQzAlhY0


心理定規「そういえば貴方の今度のステージの話は? 進んでるの?」

誉望「えーと……ハコは第二学区に特設ステージを設営中、チケットの売り上げにあわせた十分な人数を収容できる見込みだそうっス」カチャカチャ

弓箭「なんであんなところでやるんでしょう。確かに防音設備が充分ありますけど、他にどこかなかったんですかね」

心理定規「さあ? 第一五学区のテレビ局のホールって話もあったけど、少し狭かったし……ね?」

垣根「広さだけなら二三学区の開放された区画の一部を使うとかって手も……何だよ。俺を見るな」

誉望「動画配信サイトと提携して、ステージの模様の一部をリアルタイム公開することになってます。
サイトの有料会員とファンクラブ会員にはそれぞれ延長放送枠を設けて一般視聴者との差別化もはかるそうっス。
予約視聴も公式公開するんで、地球の裏側にいても見逃さずに済みますよ」カチャカチャ

弓箭「これが準備してるグッズの案ですか。ペンライトやタオルが多いんですね」

誉望「こっちのライブ限定グッズは全て事前予約対応可、チケットコードと紐つけして会場での引き換え以外のものと記念品は通販で発送する予定で、混雑の緩和が出来る筈っス。
飛び込み想定で一部会場販売の準備もしてます。いざって時には『スクール』下部組織フル稼動で開場までには誘導も間に合わせる手筈になってるっス」

弓箭「そんなことまでさせるおつもりで……なんだか誉望さんスケジュールに随分とお詳しいですね」

垣根「ずいぶん張り切ってんな」

心理定規「『スクール』にはそう言うの詳しい人があんまりいないから。企画アドバイザーとして参加者視点からも色々意見してもらったのよ。
プロデューサーからも『珍しく役に立った』って褒められてたわ」

誉望「欲しいとこには十分ものを回さねえとって供給側には大きく幅とって貰いました。メインステージと関係ないとこでファンの不満を爆発させたら、
垣根さんの顔に泥塗ることになるんで。裏方仕事は俺ら『スクール』の本業っスからね」

弓箭「そう言うことでしたら。ステージ上の警備ならお手伝いさせてください。わたくし達でさくっとお片付けしますわ」

心理定規「バックアップは十分かしら? あなたには当日のパフォーマンスに専念してもらえそうね。テロ対策まで想定するアイドルはなかなかいないと思うけど」

電話の男『現段階で観客の動員は見込みより二〇%増、それにあわせてグッズ販売サイトのサーバーの対策と発注数を更に増やす』

誉望「うわははは! 徹夜待機を駆逐しろ! 転売ヤーに死を!! 全ての信者に恵みと幸いあれ!」

弓箭「あれは……大丈夫ですか」

心理定規「いつもより……ちょっと強めにスイッチが入っちゃってるかな?」

垣根「何だか知らねえけど。弓箭に言われてるようじゃ駄目だろうな」

弓箭「ええっ?!」

心理定規「何だか釘をさす相手がいつもと逆になっちゃったわね」

777 : ◆q7l9AKAoH. [sage saga]:2016/07/08(金) 00:37:04.01 ID:6jQzAlhY0

誉望「レア感も欲しいってことで、受注生産グッズの案が幾つかあるんスけど」

心理定規「どんなの?」

誉望「ライブTは通常とプレミアム版に3Dプリントの翼付き、こっちがジャケットで……
あとサイリウムセットを買うと光る六翼の抽選券が貰えるってのが……完全に握手券商法なんですがどうしましょう」

垣根「そのふざけてんのは潰しとく。それより、ステージサプライズでこいつをやろうと思うんだが」

心理定規「なに? ファンを何人かステージにあげて肩ハグ?……大丈夫なの」

垣根「アイドルらしく握手会ってのがしてみたかったんだが……情報機密の関係で許可がまだ下りねえ。俺にはあんまり関係ねえんだがな。
まぁ、向こうに触られるよりはこっちから行く方が安全だろ」

誉望「垣根さんなら握手会に危ない奴やどっかのスパイが乱入しても大丈夫そうっスね」

弓箭「能力で身も守れますから、ライフルとかロケット砲も効きそうにありませんしね」フゥ

垣根「こいつで試すぞ。こう……どうだ」

誉望「ぐっ、肩になんかすげープレッシャーが」ガゴッ

心理定規「女の子にはもうちょっと、優しい感じにしてあげたら? 怖いお兄さんがお財布目当てに絡んでるみたいよ」

誉望「垣根さんが視界にいなくて、こんだけ近いといつ何があるかわからない恐怖しかありません」ブルブル

弓箭「垣根さんは猛獣じゃないんですから視線をそらしても平気ですよ」

心理定規「確かに。見ようによっては、人質に取られたみたいにも見えるかな」

誉望「そうっス。首元に見えない刃物を感じる程度の緊張感です」

垣根「まあ、それも出来るな。ナイフでいいのか?」ズズズ

誉望「ひぎゃああ! 『未元物質』が! 誰か交代!!」

心理定規「えー。客観的にアドバイス出来なくならない?」

弓箭「わたくし、殿方とそこまでお近付きになるのはちょっと」

垣根「まあそん時はそん時だ。実際やれるかはわからねえしな」ポイ

誉望「アイドルとゼロ距離とかやったら、ファン同士で血を見る騒動になりそうな気もするんスけど。ステージから飴投げるとか、規模のかわいいとこで済ませませんか」

778 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/08(金) 12:50:53.54 ID:gbwgQJx/o
たしかにこのSSは濃厚な●ーメンだよな!
779 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/08(金) 20:59:27.68 ID:moWlavWe0
未元物質の羽の雨をふわふわ降らせてキャッチすると幸せになれるとかがいいと思う
780 : ◆q7l9AKAoH. [sage saga]:2016/07/17(日) 01:17:16.20 ID:kwiSJbng0

>>778
垣根にはジャンクな飯を食ってほしいね。
フルコースも似合うが庶民派もいける。
カップ麺だって無駄にかっこよく割り箸割ってほしいよな。
えーとそれでラーメンの話だったね? そうだね。もし愉快でもあんまりうれしくはないね?
このスレはスクールカキネトウカマチマチカイギョウオオメゴーグルツラメが基本仕様だから胃もたれ注意でたのむね?
読みづらさには定評があるしね、多いときはなるべく分けていきたいね?
済んだら丼は上げて、スレはsageてお願いします。

>>779
メルヘェェェェン!
なにそのメルヘン。ステージに天使が降臨する。
ジャ=ーズばりに客席上を飛ぶのか?
それメルヘン過ぎない?平気?ファン召されない?
会場をでるとゲットした羽は消えてなくなりそうだけどいいすか。

メルヘンって散々SSでもネタにしてるけど、映画の天使悪魔系のキャラってクッソカッコイーよね。
だから垣根本気モードも神々しすぎてやばいと思う。動画で見たい。
1もはよ帝国の民になりたい。
781 :そんなわけでいつもの小ネタですね ◆q7l9AKAoH. [saga]:2016/07/17(日) 01:23:54.79 ID:kwiSJbng0

誉望「垣根さん、あれってうまいんスか?」

垣根「は? 何がだよ」

誉望「今CMでやってる『レベル5バーガー』っスよ。絶対偶像進化計画の一環でアイドルたちをイメージしたコラボメニューが食えるやつっス。ちなみにハッピーセットは別のチェーンのコラボっス」

垣根「ああ。あれもうはじまってたのか」

心理定規「話が出たのは随分前だものね。ええっと、確かスポンサーが……『バーガー・エンペラー』ね」

誉望「バーエンっスかあ。で、どうなんスか? うまいんスか?」

垣根「いや。食ったことねえ」

弓箭「それは……あくまで垣根さんの名を謳った商品の実情をご存じないのは……いいえ、垣根さんほど自信と輝きに満ちた存在になると、些事には心を砕かないと、そう言うものですか」フフフ

垣根「何だよ。お前ら、そんなにハンバーガー食いてえのか」

心理定規「えっ」



バーガー・エンペラー店内



弓箭「はわー……結構混んでるんですね」

心理定規「今はキャンペーン中だから普段以上に人がいるのかな」

垣根「へえ。賑わってんじゃねえか」

誉望「垣根さん、帽子とサングラスでもそんなキョロキョロしてるとバレるっスよ」

垣根「どうせ飯食いに来てる奴らばっかだろうが」ソワ

心理定規「そうね」

誉望「だと良いんスけど。はいメニューっス。順番待ってる間に何食うか決めちゃいましょう」

弓箭「ええと、これですね。『レベル5バーガー』、第一位コラボ……『イカスミバンズに特製ビーフパティを挟んだ漆黒仕上げ』」

心理定規「第二位が『ホワイトチェダーとモッツァレラ二種のチーズがこだわりの白のバーガー』……うーん」

垣根「白黒ハンバーガーって、ハロウィンの頃にどっかで見たなそんなの」

弓箭「『ハニージンジャーチキン照り焼き風バーガー』なんて言うのも美味しそうですね」

誉望「それ第五位のコラボだろ」

心理定規「じゃあこっちの『サクサクチキンとフレッシュ野菜バーガー、ソースで更にビリビリ!』って書いてあるのが第三位かしら。ふーん」

782 :らっこさんがこのスレでみれるのは、偶像様パロだけ!  ◆q7l9AKAoH. [saga]:2016/07/17(日) 01:26:41.83 ID:kwiSJbng0

誉望「この、『レベル5コラボメニュー、学園都市産素材一〇〇パーセント使用』ってのはブラックジョークっスかね」

弓箭「お肉の処理は早い方が良いんでしょうけど……壁の中で過ごした生きものは最期にどんな音色で啼くんでしょうね」

誉望「何で飯の前にそんなこと言うんだこの女。お肉の気持ちなんか知りたくないだろ」

弓箭「産地のしっかりしたものは、よく給食でも出るんですが意識して食べ比べたことはあまり……そんなに違うものですか?」

心理定規「壁より外の物がいいなら第三学区のお店か、第六学区の専門店かな。あるにはあるけど、隠れた名店と一緒で探してまで食べるのは大変じゃない?」

垣根「ああ言うのは付加価値込みの味なんだろ。ビル産は外れもねえし一番間違いが無いよな」

誉望「じゃあそろそろっスから席行っててください。俺注文してきますね」

弓箭「誉望さん!」

誉望「あ?」

弓箭「わたくし、行ってまいります」ハイ

心理定規「どうしたの? 珍しくやる気になってるのね」

弓箭「実はわたくしファーストフードは初めてなんです。あのカウンターでお店の方に注文するんですよね?」

誉望「お嬢様のはじめてのおつかいかよ。別にいいけど間違うなよ?」

弓箭「心配ありませんわ。暗殺術を極めたわたくしは、どんな状況でも一般人に違和感無く溶け込むことができますから」フンス

誉望「いやーそう言うことじゃ……ねえ、垣根さん?」

垣根「腹減ったな」

心理定規「いってらっしゃーい」バイバイ
783 : ◆q7l9AKAoH. [saga]:2016/07/17(日) 01:31:48.61 ID:kwiSJbng0

弓箭「(大丈夫、大丈夫です。周りの方の動きを見ればどうしたらいいのか大体わかりますわ……いつかクラスメイトの方とご一緒に『学舎の園』の外に出た時用の完璧なエスコートもイメトレ済みですから。
きっとこういった珍しい所に入ってみたいと思いますもの。『弓箭さんたらこんなお店までご存知ですのね』、『流石ですわ!』なーんて、ふふふふ。
わたくしったら皆さんの羨望の的……べ、別に大したことではございませんけど……頼られるのも悪くありませんわね)」

店員A「いらっしゃいませ。店内でお召し上がりですか?」

弓箭「ははははははは、はい! ええと……コラボバーガー第二位セットを三つと、オニオンリング、ナゲットを一〇ピース……マスタードソースで。
後はライトミールセットのサラダとスープを一つお願いしますわ。ドリンクは、コーラとアイスティーを二つずつ」キリッ

店員A「かしこまりました。オーダー、垣根スリー、オニオン、ナゲットW、サラダS…………以上ですね。お会計は」

弓箭「ま、マネーカードで」

店員A「ありがとうございました。それでは、お品物はお席にお持ちします。番号札をどうぞ」

弓箭「(任務完了……やりましたわ)」グッ

垣根「あ?」ガタッ

誉望「(垣根さん抑えて下さい!!)」

心理定規「何のためにそんな格好して来たの。暴れたら台無しじゃない」

垣根「チッ。馴れ馴れしく呼んでんじゃねえ」

誉望「は、ハンバーガーのことっスから」

弓箭「ふふふ。ただいま戻りました。ちゃんとオーダー出来ましたわ!」

心理定規「おかえりなさい」

店員A「お待たせしました。コラボバーガーセットのお客さま?」

心理定規「私以外よ」ニッコリ

垣根「意外とちゃんとしてんな」

誉望「っスねー。ケチャップ誰か使います?」

弓箭「思っていたよりボリュームがあるんですね」

心理定規「でもおいしそうじゃない」チラ

弓箭「よろしかったら、一口味見なさいます?」

心理定規「えっ」

弓箭「ほら、チーズがたっぷりでおいしそうです」

心理定規「じゃ、じゃあ少し……」

垣根「これくらいいかねえと味はわからねえぞ」ザンッ

心理定規「ちょっと!」

弓箭「きれいに切れてますわ。はい。心理定規さん」

心理定規「ありがとう」ハァ

誉望「さすが『未元物質』……中身が完璧ずれてないっスよ」

垣根「こう言うのはな、コツがあるんだよ」ドヤァ

784 : ◆q7l9AKAoH. [saga]:2016/07/17(日) 01:34:00.33 ID:kwiSJbng0

誉望「うまいっスねえ」

垣根「悪くねえな」

弓箭「他の方々はどのメニューを召し上がるんでしょうね」

心理定規「カウンターが近いから見えるかもよ」

客A「メルヘンセット、オレンジジュース」

店員B「は〜い。メルヘンワン、オレンジ」

垣根「」ガタッ

誉望「すんませんすんません!」

心理定規「いくら何でもずいぶんな呼び方じゃない?」

弓箭「あれで通じるんですね」


弓箭「この袋はなんでしょうか」

誉望「セット一つに一枚アイドルのコースターがランダムで着くんスよ。あ……」

垣根「チッ。ムカつく顔面にコーラ置いてやる」ガッ

心理定規「そう言われるとあなたの上に飲み物は置きづらいわね。あら、こっちのは色違いみたい」

弓箭「何種類かあるんですかね。そして、別に使わなくてもいいんでしょうか。ほら、あちらの方……」

客B「やったあああああ! やっと美琴ちゃんがコンプ出来たぞぉおおおおお!!」ウォオオオオ

弓箭「ハンバーガーをあんなに頼んで、泣きながら写真撮ってますもの」

垣根「……うわ」

誉望「ドルオタちがうけどきもちよくわかる。ひきわるい、つらい。とても」ウンウン

垣根「…………うっわ。大変だなお前ら」ガコ

誉望「何で椅子を蹴るんですか痛え!」

心理定規「御坂美琴のファンなのね。へえ……ああやって何セットも買う人がいるんだ」

弓箭「あんなに召しあがれるんでしょうか」

垣根「あそこまで来るともう食うかどうかは関係ねえんだろ」
785 : ◆q7l9AKAoH. [saga]:2016/07/17(日) 01:39:27.33 ID:kwiSJbng0

誉望「……えーっと、あ。あと対象店舗のレシートのコードでファンクラブ限定ポイントを貯めると、
特設ページで垣根さんのガチャが引け……画像が受け取れるらしいっス。アカウント取って来たんで試しにやってみましょうか?」

心理定規「へえ。どれどれ?」

誉望「結構行ったな。こいつで七回は引ける筈…………ん?」

心理定規「ハイレアって珍しいの?」

弓箭「何だか普通の写真みたいですね」

誉望「多分レアはそこそこっスかね? なんだこれ」

垣根「この前の撮影で使わなかった写真か? ったくあの野郎こんなもんを使いまわしてやがったのか」

誉望「次は……ノーマルっスね」

心理定規「前のポスターの写真ね」

誉望「んで…………あれ」

心理定規「あら。スーパーレアは?」

垣根「…………」

誉望「えーと、ここのレアリティは……あー。ノーマル、レア、ハイ、スーパー、スペシャルシークレットの五段階みたいなんですが……垣根さんこれは」

垣根「これが上から二つ目か? まだこの上があるのかよ。これ、出所やページの大元は見れねえのか」

誉望「URL弄った位じゃダメですね。いやー垣根さんが知らされてないなら俺らはもっと無理っス。暗部の系列で管理してるらしいんで
セキュリティも相当堅いんじゃ……『スクール』の情報処理班で抜けるかどうか」

垣根「チッ。おい、コラボセットあと一〇追加しろ。正面から証拠押さえてあのクソに文句言ってやる。人の画像を勝手に流しやがって」

誉望「か、垣根さん。気持ちはわかるんスけど……十数回ぽっちじゃスペシャルシークレットは引けないと思います」

786 : ◆q7l9AKAoH. [saga]:2016/07/17(日) 01:41:38.85 ID:kwiSJbng0

垣根「じゃあ下部組織の奴らを他の店に並ばせろ最低ノルマは一人二セットな。持ち帰りでもいいんだろ?」

心理定規「そんなに焦って確認しようとしなくてもいいんじゃない? さすがに事務所の仕事で、問題になりそうなものは使わないでしょ。
これだって別に普通の写真じゃない?」

弓箭「垣根さんって写真の写りもいいんですね。でも、何でこんな風になってるんですか」

誉望「いやー、心理定規……よく見てくださいっス。これは」

垣根「俺はムカつく仕事の時は、邪魔にならねえようにしてるが普段は……こうなる」カシャ

弓箭「あら。こちらも画像に変な光が入ってますね」

垣根「空気中の埃やチリが反射して光の球が撮れるのと同じ仕組みだろうな。『未元物質』が写り込む訳だ」

心理定規「と、なると……関係者以外にはそれとわからないでしょうけどこれは、プライベートの隠し撮りね」

弓箭「ええええええ、まださっきの写真より珍しいのがあるんですよね?」

誉望「どんな写真が使われてるんだか……考えんの怖いっスね」

垣根「あの出歯亀クソプロデューサーいつか愉快な死体にしてやる」ミシバキバキ

誉望「あー! 俺のコーラが縦にグシャッと!!」

垣根「ばーか。ボケっと見てんなよ」サッ

弓箭「床が水浸しになってしまいますよ」サッ

心理定規「能力で押さえたらどうかな」スッ

誉望「ちょっ、避難早っ! んぐ……よっしゃあコーラサルベージ!」ジャバッ

弓箭「テーブルの端から空中に集まって……なんだかそのまま飲めそうですね」

心理定規「ふふふ。まるでそこだけ無重力みたいよ」

垣根「お前もうコップいらねえな」

誉望「落ちたの飲まないっつうの。はあ……こいつ片して新しいの買ってきます。コップも欲しいっス」プルプル

787 : ◆q7l9AKAoH. [saga]:2016/07/17(日) 01:44:19.81 ID:kwiSJbng0

誉望「もしもしかきねさ〜ん!! 引けましたよ!! SSR!!」

垣根『二時間か、意外とかかったな。で? 何だった』

誉望「人海戦術で並んで出るまで回したんで早い方っス。いえ、それが……」

垣根『早く言えよ』

誉望「発表をまだ伏せてる……垣根さんの新曲の、ノンクレジットPVの視聴コードでした。こいつをフルで見るにはこれしか手段は無いって奴です」

垣根『……そうか』

誉望「俺……ちょっとPの仕事に感動してます。これは、確かにスペシャルシークレットですよ……ええ、失礼しますっス」ピッ

下っ端A「いやーみんなで山ほどバーガー買った甲斐があったっすねー」

誉望「だよなー……あ、垣根さんがみんなに今度はもっといいもん食わせてやるって言ってたぞ。組織の金で」

下っ端A「マジすか。残り持って帰って冷凍するんで、もうしばらく飯はいいっすよw」

誉望「値段一緒だし他のも頼んでみたけどうまかったな」

下っ端A「本当に、みさきちのグッズは俺が貰っちゃっていいんすか」

誉望「うん。確かCチームに第三位のファンもいたからトレードすんなら…いや、あそこは第五位のもいたかな?」

下っ端A「ちょっとSNSチェックしてきます!!」

下っ端B「誉望さん!」

誉望「どしたー?」

下っ端B「Fチームのガチャで……べ、別のが出たそうです!!」

誉望「え」
788 : ◆q7l9AKAoH. [saga sage]:2016/07/17(日) 01:53:05.79 ID:kwiSJbng0

偶像様で第一位様がやったそうですね。
マグロナルドの一日店長かー。マグロはどこのマックのもじりだっけ。
ところで麦野はまーだ偶像様にでてないんですかねえ。
表の顔はアイドル、裏の顔は闇の狩人wwwなのを期待してるんですがねえ。
似合わねえフリフリを着せられるむぎのんとかみたいだろうが!こんにゃろ!
芸能界の荒波と事務所の販売戦略に翻弄される能力者アイドルのことを思うと>>1は今日も筆がノリます。
らっこさんだってみんなと楽しくしてていいよね?っていつものやつでした。
次は小ネタより本編でお会いしたい。
またドーモ。
789 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/17(日) 07:29:39.60 ID:DQUW6rZ/0

ラッコちゃんを虐めまくって泣かせるべきだと最近気づいた
790 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/17(日) 08:05:15.47 ID:3hGoRdj0o
そう言えばこれって番外小ネタだったっけ。
791 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/17(日) 13:23:21.58 ID:KLQZYDPKO
プロデューサーGJ
ファンの射幸心とアイドルのイライラを全力で煽ってくるw
垣根のガチャ回したい
792 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/17(日) 19:52:48.89 ID:EsydBfgr0
小ネタでもいい
おもしろくてスレ落ちなければ
793 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/17(日) 20:15:59.23 ID:6zbv4gfDO
794 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/18(月) 02:36:40.58 ID:MBLJPlc70
別のSSRには何が写ってるんですかね(ゲス顔)
795 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/21(木) 15:40:04.88 ID:aKm1P6R2O
垣根スリーとメルヘンワンがめっちゃツボ
というかこうして書くと、なんかロボットとかの名称にも聞こえるな
796 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/21(木) 20:07:22.29 ID:nryLlfzS0
>>795
なら1が空中と地上戦用で2が地上と地中戦用で3が海中と地上戦用だな
もちろん武装は1がビームとトマホークで2がドリルで3がミサイルだな
797 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/07/21(木) 21:06:06.54 ID:5UTmJurro
>>796
※全ての兵器に翼がついています
798 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/04(木) 17:25:17.44 ID:eq+vG2Hp0
超電磁砲の新刊はよ
799 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「一日目」 ◆q7l9AKAoH. [saga ]:2016/08/10(水) 23:06:57.36 ID:TrKCylLS0

早朝の常盤台中学にやってきた垣根は耳に手をやった。
服装はまだ、あの屈辱的なものではない。
耳におさまったワイヤレスのイヤーピースは髪に隠れてしまえば見えないくらい小さいが、感触には慣れていなかった。
前日までの装備と同じように常盤台の連中に用意されたと言う無線。
それを繋いだ先で応答したのはゴーグルの少年だった。
第一声で、
「ああ〜聞きましたよ。垣根さんボイスの設定変えちゃったんスよね? 折角いい感じだったのに」と言ってきたあたり。
こいつはどんな状況でも、しようのないオタクだった。
失敗については既に反省させて一度蹴りをつけたと言っても、仮にも任務の最中なのだから遊ばずにきちんとして欲しいところだ。
そこは上の人間として垣根も釘を刺しておいたのだが。
本人は、
「俺は耳もとで美少女ボイスは慣れてるんでどんなのが来ても平気っスけどね! いやー、それが好みの子だと集中力はあがるしやる気は出るし、
聞いたセリフは忘れにくいし怒られてもご褒美なんでいいこと尽くめなんですが!!」
などと、意味の分からない供述をしており。
オタクの尖った特性に引いているリーダーの心証はおかまいなしだった。

これから、校内での活動の前に常盤台側の協力者との打ち合わせをしなくてはならない。
仕事用の端末に送られてきた添付ファイルの地図データを確認しながら足を進めていく。
呼び出された場所まで向かう間、垣根はなんてことのない会話を続ける。
この任務の間、常盤台に潜入する垣根の後方支援として組織の人間との通話回線は確保されていた。
校外からの協力が実際に必要かどうかは別としても、話し相手がいるのは暇つぶしくらいにはなる。

[別に俺は、初期設定ボイスの垣根さんにあのアニメのエンディングまで歌って貰おうとかそんなおっかないことは考えてませんよ? 本当っスよ]

「?……ちょっと今それ歌ってみろ」

[えっ何でですか]

「何がおっかねえんだよ。歌ってみろ」

[あっ…………いやいいですって。自慢じゃないんですが、俺すげー音痴なんスよ]

垣根がひっかかった部分を確認すると、ゴーグルは慌てた声をあげる。
うっかりしてしまった失言をごまかそうとしているのがバレバレだが、垣根がそんなことでやり込められるはずもない。
わかっていても馬鹿な真似をするのは、本人の馬鹿さ加減と言うか。うかつさが招く習性に近いのだ、とは心理定規のコメントだ。
同情してやりそうになるくらいは残念さ極まりないが、見逃してやるほど垣根も甘い男ではない。

「いいかどうかお前が決めることじゃねえだろ」

[じゃ、じゃあ怒らないで聞いてもらえますか]

「さっさとしろよ。何度も言わせるな」

[……『わ、た、し、翼があーるーのー♪]

「……いい度胸だなゴーグルテメェ」

ガッ、キーン! と垣根は外した小型マイクを近くのものにぶつけて、ふざけた頭の少年に大音量のノイズをお見舞いしてやった。
耳もとでバタバタした雑音と、すんませんすんませんと謝罪の言葉が繰り返される。
どうやら少年は「電話先の相手に頭を下げる」を土下座で実践しているらしい。
800 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「一日目」 ◆q7l9AKAoH. [saga ]:2016/08/10(水) 23:08:22.53 ID:TrKCylLS0

「仕置きが足りてなかったらしいな。ったく、次はもっと重くしてやる」

[そんなぁ俺本当に潰れちゃうっスよ。わあお花咲いたきれいとかそんなじゃないっスよ]

「けど能力使ってりゃまだ耐えられるだろ」

『未元物質』の攻撃手段の一つ、重圧をかけて対象を押しつぶす。
その威力を身をもって思い知らされているゴーグルの少年は、垣根の次回の制裁宣言に情けなく返事をしていたが。
続いた一言に一瞬言葉をなくしていた。

[え?]

「あ? 何、お前真面目かよ」

[え。あの、垣根さんどう言うことっスか?]

考えたらしいのだがまだ理解できていないらしい。
やっぱりこいつ馬鹿だった、と。垣根の肩の力と一緒にゴーグルの評価が落ちていく。

「お前の能力で抵抗させればあのくらいしのげるだろ。今まで馬鹿正直に我慢してたのかお前。はー、馬鹿だな」

[あの俺が言うのもなんなんスけど、ペナルティの意味あるんスかそれ?!]

「頭使えよ。ああ、馬鹿な上にドMだったのか?」

[馬鹿はともかくそっちは違います。ええー……そんな……]

別に、垣根だって憂さ晴らしに人間せんべいやパンケーキを作るようなお料理趣味はない。
向こうの能力の耐久性、と言うか限度も大体分かっている。
どこまで負荷をかけたら事故にならないか、その加減もしているし最初からそこまで悲惨な目に合わせる気がないのはゴーグルだって分かっているだろう。
体罰とリンチは違うのだ。
多分。

わかりやすい……例えばどこかの組織にブチ殺されたとかそんな理由ならまだしも。
こちらの不注意で人員を駄目にしました補充して下さい、なんて話がすんなり通らないことは垣根もわかっていた。
おまけにこの馬鹿は正規構成員なのだ。馬鹿だけど。
それなりの水準で使える人間を暗部に徴収するのだって手間がかかるだろう。
だから垣根が、わざわざつまらない理由でブチっとしたりもしないことくらいわかりそうなものだ。

それでも。
頑張ったつもりで無駄だった結果を知ってしまったゴーグルの少年は、突然のネタバレに納得も出来ないようだった。
そんな下らないやりとりをしているうちに垣根は目的地に着いた。
常盤台中学敷地内の、応接室だろうか。
生徒の集まる校舎から少し離れた、指定された場所についたことを確認すると垣根は扉を叩く。
801 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「一日目」 ◆q7l9AKAoH. [saga ]:2016/08/10(水) 23:10:25.98 ID:TrKCylLS0

「どうぞぉ」

入ってみると、部屋の中には豪奢な調度品が並んでいた。
中東の産油国の金持ちには、別宅として来賓を歓待するためだけの屋敷がある、と言う話を思い起こさせる様子だった。
その中心……大きなテーブルの前に座る少女は笑顔で、入り口に立つ垣根をうかがっている。
相手の目星は垣根にも付いていた。
この敷地の中で彼と意見を交わせるような立場の人間がそもそも少ないのだから、そこから更に学生を絞り込むのは簡単だ。

「学校側の協力者ってことはテメェが第五位、食蜂操祈か?」

「アナタが第二位の垣根帝督さんかしらぁ? そんなところに依頼力を発揮するなんて、常盤台も面白いパイプを持ってたみたいねぇ」

今朝までの話は聞いてるわぁ、と言うと食蜂は店先に並んだバッグに向けるような目で垣根を眺めた。
この手のことは、自分がするのは何とも思わないが他人にされるのは気分がよくない。
垣根は舌打ちを我慢して渋い顔でうなずく。
相手は仮にも協力者だ。ファーストコンタクトで即、心証を悪くしても仕方ない。

「挨拶が済んだところでさっさと話を進めたいもんだが……その前に、少し失礼させてもらう」

「あらぁ。そうねぇ、アナタにもセキュリティチェックに散々協力してもらってる訳だし、私は構わないわよぉ?」

ポケットから取り出したスマートフォンを振ってみせると。
女生徒は余裕の態度で、話し合い前のちょっとした確認作業に同意した。
椅子を引くと垣根は声を落としもせず連絡した。
取り出したスマホは通話には使わず、画面を操作する。

「おい。ゴーグルは置いてるな。今から言うチャンネルと映像を繋げ」

少年はそのチャンネルはブランクのはずだ、とか何とか言っていたが、垣根の舌打ちひとつですぐに言われたとおりにした。

[えっ……なんスかこれ]

「何がみえる」

[派手な部屋と女の子っス。金髪ロングでスタイル反則っぽい……垣根さん、いつの間にゴーグルに何か繋いだんスか?]

予想とぶれの少ない返答だったが、垣根は更に注文をくわえる。

「よし。前に拾った画像データがあるだろ。第五位の顔写真、それと照合しろ」


垣根はここに来る前に持ち主に黙ってゴーグルの設定を変更していた。
奴の使う機材はケーブルで直接接続するものもあれば、ワイヤレスネットワークで切り替えているものもある。
土星の輪より下部分、ケーブルで繋がれた機械はチューナーの役割もしているらしい。
そうやって登録された電子機器の中に垣根の携帯電話のカメラ機能を追加させたのだ。
クラウドはもちろん携帯端末のペアリングなど、データを共有する仕組みは幾らでもあるので簡単に同期出来た。

散々、情報漏えいがどうのと『スクール』の人間に注文を付けていた癖に。
個人の携帯端末程度なら部外者が校外から持ち込んだところで問題なかったのは、常盤台側の甘さを笑ってやるべきだったのか。
まあ個人の尊重すべきプライベートが遵守されていると思えば、そう馬鹿にすべきでもないのかもしれない。
一時代前の諜報員が聞けば歯をむいて悔しがるくらい、今やこの一台で何でも出来てしまうのは能力者だってありがたい機能だ。

ネットワーク経由で少年の目の一つになったカメラのレンズを、垣根は室内の女生徒に向ける。
『心理掌握』は対象である人間を操る能力のはずだ。
仮に垣根の見ているものが操作されていても、手元の機械の映像は誤魔化しようがないだろう。
それをそのまま、限りなく正確に確認できる手段が垣根にはひとつある。
確認させる、と言う方が言葉としてはきっと正しい。
だが。

垣根帝督の扱える選択肢の中には、手札の役割もきちんと数え上げられている。
もちろん、任務の中で虚偽の報告や手抜かりを許すほど甘い人間でもないが。
それ以上に彼に逆らううまみがないことを組織の人間はよく理解している筈だ。
そしてそんな重責は知らないだろう、通信先の少年は少し黙った後返事をした。


802 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「一日目」 ◆q7l9AKAoH. [saga ]:2016/08/10(水) 23:12:58.78 ID:TrKCylLS0

[あー、食蜂操祈ですね]

「お前には写真に写った食蜂に視えてるんだな? 確かか」

[ものすごい特殊メイク技術か、実は双子……と見せかけて食蜂操祈が最初から暗示に掛けられた替え玉だったんだよ! ってオチがなければですけど。
おっと、顔認証システムにもかけてみましたけど適合しました。そこにいるのは本人で決まりっスね]

これでいいですか、と尋ねられて垣根は一旦通話を切った。
上着のボタンを外し椅子に深く掛けると相手に向きなおる。

「こっちもビジネスだ。依頼元の不利益になる真似は極力しねえ。どうせ記録媒体も、こっちの記憶も洗う準備はあるんだろうが……必要なら今の身の回りも確認しておくか?」

「そちらの話は通ってるから、そこまでのアピール力はなくてもいいんだけどぉ。それで、アナタは満足出来たのかしらぁ」

「まあな。ちょっとした首検分だ」

垣根は大げさに肩をすくめてみせる。
向こうの用事でこうして第二位が出向いているのだ。
多少の失態があったと言ってもそれなりの対応をして欲しいところだ。
垣根帝督と言う人間を招いておいて、もし替え玉でも立てられていたらムカつく。

「いやねぇ。そんなに警戒力を発揮しないわよぉ。いくらアナタにちょーっとみんなには言えないことをしてもらおうと思ってるからって……あ、見せられないの間違いだったかしらぁ?」

「何しろそっちは常盤台の女王様だろ? 噂は聞いてるからな。こっちも気分の問題だ。
いや、仕事の前に軽く運動が必要なら付きあってもいいんだぜ。ダーツでもしてみるか? いい具合に的は目の前にあるしな」

「冗談でそんなに熱くなられても困るわぁ。野蛮力の高い人の相手はし飽きてるし、スマートな会話力を期待させてもらうんだゾ☆」

「煽ってテメェのペースに持ち込もうってパワープレイなら相手を見てやるんだな。こっちの人間でももう少しうまくやるぞ。逆効果で馬鹿見るなんざ、超能力者がしてくれるなよ」

「だからこそよぉ。アナタくらい器の広い人でないとぉ、あんな話も受けてもらえないもの。私の予想力以上に素敵な人で良かったって安心してるわぁ」

「あからさまにいきなり繕われると白々しさに拍車がかかって悲しくなってくるんだが、これ以上俺の期待を裏切るような小せえことはしねえよな?」

「もぉ、こっちが頭を下げるつもりなのに、後ろから撃ったりいきなり洗脳なんて失礼なことしないわよぉ?」

「ははは。不意打ちでテメェの好きにさせるかどうかってのまで今確かめたいのか? そうがっつくんじゃねえ」

緊張感、空気、ブチ壊し。
両者、にこやかな笑顔のまま数発の応酬。
常盤台の今後を左右しかねない力をもった、超能力者二名の会談がはじまった。


803 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「一日目」 ◆q7l9AKAoH. [saga ]:2016/08/10(水) 23:15:42.55 ID:TrKCylLS0

とりあえず本人らしいことが判明した食蜂操祈は足を組んで椅子に座っている。
制服を着ていても中学生なのか疑いたくなるプロポーションは、はたしてどんな裏技をつかうとゲットできるのか。
そんな。
能力以外もチートな中学生は話しはじめてすぐに、わかりやすくぶーたれていた。
垣根のせいでこの後、急きょ適当な理由で集会を開いて学校関係者全員の頭に細工をしなくてはいけないのがお気に召さないらしい。
おまけに早起きまでさせられたと不満そうだ。

始業時間までに簡単な説明だけしておく、と前置きして食蜂は話しだした。
今回の任務の内容はと言うと。
垣根に常盤台の生徒のふりをさせ、怪しい人物を洗い出すのが目的らしい。
対・人間関係のスキルやただの嘘つき探しなら、垣根より余程心理定規が長けていることは依頼元にも伝わっているだろうが。

あえて、何故垣根がそんな真似を、と本人が思ってしまうのはやっぱり避けられなかった。
たとえ超のつきそうな極秘任務で、限られた人間にしかこなせない仕事だと言われてもやはり不満はある。
主に扱いと服装に。

「表面力ではこの件の捜査はもうほとんどされていないわぁ。でも犯人さんは、そうじゃないことがわかってるはずよねぇ」

彼女の言う通りどこかの大馬鹿のミスで、自分を狙う動きがあることは犯人側にバレてしまっているだろう。
向こうにも警戒され、調べると言ってもやりにくくなるはずだ。

「昨日の今日っつっても数時間前だが、この先もう騒ぎが起きないって可能性はないのか。わざわざ捕まりに来るほど馬鹿でもねえんだろうが」

「この五日で、分かっているのが一〇人……恐らく、犯行に利用されていた人数よぉ」

食蜂はそう言って書類を一束テーブルに乗せる。
風紀委員の報告書か、形式ばった文章が並んでいるが。
垣根が目を通した限り、中身は昨夜までの任務の際にも伝えられていたことと変わらないようだ。


「同じ日に二人以上が確保されていることもあるわ。何度も挑戦力を示すほど、大事なことがあるみたいねぇ。
でも。この先はもう、夜間の犯行だけにこだわってもいられないと思わなぁい? 大人しく探し物だけしているなんて保証力もない訳だし」

やっと、求める情報に触れはじめた手ごたえに垣根は鼻をフンと鳴らした。
そんな垣根の視線に食蜂も、察しが早いと助かるとでも言いたげに目を細める。

組めば、強固な警備を誇るホワイトハウスさえ落としかねないと噂される常盤台の能力者たち。
そのうち数人とは言え、操られて利用されている実情を踏まえると……最悪、それらを敵に回しても制圧出来るだけの人材。
『学舎の園』の機密性を保つため人員はごく少数、出来れば単身で諜報員と警察組織両方の真似事がこなせないといけない。
だからこそ。
第二位の超能力者。垣根帝督にぜひ頼みたい、と食蜂は、ここではじめてはっきりと口にした。

「大役を任せるだけの人員力に乏しいのよぉ。それも常盤台になるべく関わりのない人がよかったから……
まさか、お願いをきいてくれそうな所にアナタがいるなんて、常盤台も幸運力だったわよねぇ」

一瞬、当たり前の賞賛に垣根も不敵に笑い返したが。
垣根にとっては迷惑な話だ。
垣根個人に対する話なら、ふざけんなとバッサリ断ってしまえたのに。
仕事を受けるのは組織の上の人間だから、暗部組織が噛んでくると垣根も反対しようにも文句を言うくらいしか出来なくなる。
804 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「一日目」 ◆q7l9AKAoH. [saga ]:2016/08/10(水) 23:21:26.54 ID:TrKCylLS0

「アナタは普通の生徒と同じように生活してもらえばいいわぁ。この時期にやってくる転入生なんて、犯人さんから見たら不審力爆発だと思うけど」

「そいつの目的が何か、当たりはついてんのか。判断材料無しでおかしなヤツを挙げていったら生徒の中でまともな人間はほとんどいなくなるんじゃねえの」

「目的力は常盤台の内部情報の持ち出しかしらぁ。純粋な産業スパイなのか他に何か、なんてところまではわからないけど今まで見つかった人たちがしていた

……させられていた内容からしてほぼ間違いないわぁ。ただ、主犯格が生徒なのか関係者なのかの判断力もつきかねてるのよねぇ」

恐らく、洗脳能力か、それに類似した技術を使っているのは間違いないだろう。
それが常盤台が導き出したこの事件の重要な手がかりだと言う。
何しろその道のプロが手を焼くほどだ。

「既に確保した中に共犯者がいる可能性は。洗脳されたふりをしたか、そう動く様に無意識に誘導させられている線は当たってんのかよ」

垣根は足を組み、質問を重ねる。
人間を操るのに何も直接頭を操作する必要はない。
感情や印象をヒントに相手の判断を、行動をそう仕向ける。
そうするのが素晴らしい、自らの選択だと思わせてこちらの狙ったカードを相手に引かせる手段があるのは、彼もよく知っている。

「そっちもねぇ……期待力は薄いわ。もしアナタなら、手駒に正直に情報力を渡すかしらぁ? 嘘を吐いている自覚のない人間ほど洗いづらくて困るからまだはっきりとは。
それに……知っている情報は幾らでも引き出せても、本人が知らないことには手が出せないでしょ?」

やれやれと食蜂が肩をすくめる。
手袋に覆われた手が上を向いた。

「ほとんど手がかりはねえってことじゃねえの。それ」

今まで一体、この女を含め常盤台の連中がなにをしていたのかと垣根は呆れそうになる。
だが彼女の『心理掌握』で被害にあった者や捜査にあたった人間への対処は既にしてあるらしい。
ただし、どこにヒントがあるかはわからないので、記憶そのものは消去していないそうだ。
その代わり。
特別なきっかけでもない限り本人の興味が事件に関する情報に向かない様に細工されていて。
彼女らの中ではそれは優先度の低い「既にどうでもいいこと」に仕立ててあると。

注目の目をそらす為にわざと多くの情報をばらまく様に。
派手な話題の裏で、起きている他の事柄を悟らせまいとする様に。
秒単位で更新されるタイムラインの流れのように、日々目につく多くのものの中に意図せず埋もれてしまっているのだ。
だから、校内でこの件に関する余計な不安や噂が広がったり騒ぎが起きることはまず心配しなくていいらしい。
風紀委員のような正規の捜査員とかちあって面倒なことになるリスクもそのおかげでないそうだが。

洗脳を施した中に真犯人がまぎれていても自分の目的を忘れたり、騒動を起こす気を無くして自然消滅していたり……なんて都合のいい話も、同じく期待できないと言う。
犯人の頭の中で特別なカテゴリに分けられているだろう事件に関する情報、記憶、感情。
そのどれもが「どうでもいい」印象のままいつまでも放っておかれるはずがないからだ。

「もしも、人間の行動をコントロールする装置なんて不快力の高い物が存在したら、私じゃ対抗出来ないでしょうし。
同系統の能力者が私の突破力の裏をかいている、って言うのが一番信ぴょう性のある仮説なんだけど」

「あ? けど何だよ。能力じゃねえなら魔法や宇宙人の仕業だなんてふざけたこと言うなよ。古臭いSF小説じゃねえんだ」

「そうなるとさしづめ……ねらわれた常盤台、かしらぁ?」

805 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「一日目」 ◆q7l9AKAoH. [saga ]:2016/08/10(水) 23:22:18.95 ID:TrKCylLS0

その後食蜂は、自分の頭にテレビのリモコンを向けるとボタンを押して垣根を見ては首を傾げ……またボタンを押すと言う謎の作業を何度か繰り返していた。

「うん。これにしましょうかぁ。ちょっと目を閉じてもらえるかしらぁ」

「嫌だ」

組んだ腕を指で叩くと垣根は即座に断じていた。
特別意味も理由もない行動だが、残念ながら彼はいい返事を素直にしてやるタイプの人間ではない。

「なんでよぉ。一瞬でいいのよぉ?」

「俺が目を離した隙におかしな真似するんじゃねえだろうな」

「嫌ねぇ。上位の超能力者の癖に格下に警戒力を発揮するのぉ?」

のんびり遊んでる余裕力は無いんだゾ? と食蜂は壁に掛かった巨大な時計を指した。
垣根もこの席を引き延ばすのが目的ではない。
相手のやり方に従っている空気が嫌なだけで、一言文句をつけた時点で気は済んでいる。

「で? 何する気なんだよ」

「私の改竄力でこれから他の生徒達に何をするのか、きちんと試して貰おうと思って。アナタが協力するのに安心力は必要でしょぉ? 
それに、ここにいる以上、それらしく振舞ってもらうには他人にどう見えるのか自覚力を持ってもらわないとねぇ」

食蜂は話しながら、バッグからさまざまなリモコンを取り出して磨き上げられたテーブルの上に並べていった。
能力の使用に必要なのだろうが、他人からみると意味の分からないものだ。
テレビ、エアコン、録画用レコーダー、オーディオ……恐らくは、「十得ナイフ」の様に多様な能力を切り替えるスイッチのようなもの。
その用途の予想がなんとなくつきそうで、はっきりとはしない。
垣根はそれをながめてからうなずき返した。

「不愉快さは少しくらい減るかもな」

「でも、そうねぇ……アナタみたいな能力者に、どこまで通じるか不確定力だからぁ。やっぱり直接頭を弄らせてもらうわねぇ」

そう断ると。
食蜂はわざわざ並べたリモコンの群れをカバンに戻していった。
今から垣根に対して能力を使う、それまでは手出ししていないとアピールしたいだけの儀式めいたパフォーマンスだったのかもしれない。

食蜂の指示を聞いて。
垣根が黙って目を閉じてしばらく待っていると、何度か頭を触られた。
蜂蜜のような甘いにおいが鼻をくすぐる。
食蜂のつかっているシャンプーか何かだろうか。
じっとしていると時間は長く感じるものだが。済んだ、終わったと声がなかなか掛からない。

「まだか」

「ちょっとぉ、いきなりこっち見ないでよぉ!」

垣根が焦れて目を開けると、思っていた以上に近かった。
鼻先が触れ合うような距離にいた少女は驚いたのか目を丸くして叫ぶ。

「痛ぇ?!」

これは。
流石に予想外だった。
ごづん、と。
照れ隠しにしても可愛らしくない鈍い音が垣根の頭蓋に響いた。
806 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「一日目」 ◆q7l9AKAoH. [saga ]:2016/08/10(水) 23:23:50.02 ID:TrKCylLS0

その後。
衝立の後ろでサイズを調整された制服に着替え終えて、準備を整えた垣根は。
改めて今回の協力者……学園都市でも随一の認識阻害(他人の脳みそごと騙し通せる)が可能な人物にこの格好への疑問をぶつけた。
他人の頭を好き勝手弄り倒せる超能力者の協力をこぎつけておきながらこのざまは一体何だと言うのか。
組織の誰に聞いても、
「今後の詳細は校内で協力者に聞いてくれ」の一点張りで詳しい話は教えてもらえなかった。
あるいは本当に知らされていなかったのかもしれない。

この常盤台の人間でさえ箝口令を敷かれるどころか記憶を改ざんされているのだ、詳細はなるべく伏せておきたいのかもしれない。
それでも蚊帳の外におかれたような状況は不愉快だった。
まさか、食蜂が『スクール』の上役の馬鹿と組んでいるなんてことは無いだろう。
だが。
これは垣根の推測だが……さっきまでの会話でも、食蜂は他人を振り回すのを楽しむタイプに思える。
たとえば、馬鹿な癖に高慢にふるまう大人をからかう愉快さは垣根にもわかる。
だからと言って。
彼女より格上で年上で、まず他人から馬鹿になどされないこの垣根帝督がこんな仕打ち(女子制服着用を強制)を受けているこの状況が。
単純にこのガキに遊ばれてるだけってことねえよな? と言うのはちょっと愉快すぎる思い付きだ。

ここまで出向いた垣根の期待はそれらを覆す、納得させるだけの返答だったのだが。
もし嫌な予感の方が当たりだったら、たとえ『暗部の任務』と切り札をチラつかされていても全部まとめて吹き飛ばしかねない。
お互いにむっとした顔をつきあわせたブリーフィングを続ける。

「っつうか、テメェが出張るんなら、俺がこんな格好しなくても……やっぱり良かったんじゃねぇのか」

「やることは少ない方がいいのよぉ。校内全ての人間の頭の中をリアルタイムでずっと弄り続ける程私も暇じゃないのよぉ。
いちいち目撃者の記憶を消して回るのも面倒力でしょう」

「回りくどい手しかねえのかよ」

この口ぶりでは、超能力者と言っても校内の生徒だけでざっと二〇〇人、更に関係者を含めた大勢の人間をまとめていっぺんに操作するなんて無茶は出来ないのだろう。
まあそんなことが出来るなら、こいつは第五位なんて位置にとどまっていない筈だ。
そう少し見方を変えると。
厄介な能力者と敵対していない現状は悪くない。
何か、今後上手く使ってやれないだろうかなどと。
一定の評価を含めたややワケありな視線を垣根が向けていると、それをどう受け取ったのか食蜂は肩をすくめた。

「あらぁ、もしかしてまだご理解いただけてないのかしら。だってこれはあなたの為でもあるのよぉ? 
この敷地内で不審者として不当な拘束力は受けたくないでしょぉ?」

「そっちもな。この俺の手をわずらわせておいてあんまり調子に乗るなよ」

にらみあい、互いのプライドがしのぎを削る。
先に折れて、首を振ったのは食蜂だった。

「あなたの場合は少し変化をつけておいたわ。ほら、そこに鏡があるでしょぉ?」

言われるまま部屋に置かれた鏡を見ると、垣根に妹でもいたらこんな感じかもしれないと思わせる様な。
面影をよく残した少女が写っていた。
席を立ち、その前まで移動すると垣根はまじまじと鏡の中を覗いた。
そこに垣根帝督の姿はない。
807 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「一日目」 ◆q7l9AKAoH. [saga ]:2016/08/10(水) 23:26:39.24 ID:TrKCylLS0

「これが……俺か」

「ふふふ。なかなかの造形力でしょ。ここの生徒たちはこれから依頼力が終わるまで、あなたが視界に入るとそれを見ているつもりになるわぁ」

食蜂の補足によると、垣根本人の場合は鏡に映った自分の姿だけが洗脳の影響下になるらしい。
それを聞いて垣根は自分の両手を広げて眺めた。いつも通りの手足がある。
確かに、こうやって見下ろした自分の体が四六時中他人のものに見えていたらと想像すると……頭がどうにかなりそうで気色悪い。

「ただねぇ。少し不安力があるのよぉ」

「あぁ?」

はぁ、とわざとらしいため息とともに不審な発言がこぼれる。
それにかみつくような垣根の反応に。
ニヤリと可愛らしくない笑みが返ってきた。

「ちょっとあなたの能力をわかりやすく使ってみてもらえなぁい?」

「なんだよ。これでいいのか」

言われるままに背中から翼を伸ばすと。
鏡の中の少女の姿がぐにゃぐにゃとゆがんだように…垣根には見えた。


「あらぁ。私たちの能力は相性力が悪いみたいよぉ。あなたのその『未元物質』はわたしの改竄力を妨害してしまうみたいねぇ」

「なんだって。じゃあ、俺が能力を使うとどうなる」

ええとぉ、と食蜂は伸ばした人差し指で自分の下唇をおさえた。

「干渉が小規模なら部分的に化けの皮が剥がれてあなたの真実力がお披露目されちゃうかもって感じねぇ。最悪の場合」

きゃるん☆ とおかしな効果音の出そうな仕草の後で、食蜂はそのまま口元を隠して笑い出す。

「ぷふっ、ふふ……その、スカートを履いたお兄さんがいきなりみんなの目の前に登場力するってことよぉ。びっくりするでしょうねぇ」

「何携帯構えてんだ。テメェも死ぬほど驚かせてやろうか」

「あ。カメラ対策もしておかないとねぇ。後で恥ずかしい写真なんて出てきたらあなたの報復力が恐ろしいわぁ」

「よくわかってるらしいな」

てへ☆ とぶりっこなおでこコツンを披露した食蜂だが、すぐにその星の飛んだようなきらきらした目を真剣なものにして垣根を見返した。

「大丈夫よぉ。少しくらいおまけを追加しても私の改竄力には穴なんてないから。そのアバターの希望とかもあったらついでに聞いてあげてもいいわよぉ?」

それは、自分の能力に十分な自信を見せる能力者の顔だった。
それに全くの好き勝手をするだけでなく、一応垣根の意見にも耳を貸す姿勢があるらしい。
垣根と同じくおかしな事件の為に不本意ながら引きずり出された超能力者である彼女も、自分が動くからには抜かりなくことを始末するつもりだと言外に示していた。
終始ふざけたような態度と高慢さが鼻につくが。
食蜂のこの件への態度が見えたことに満足して垣根は問いかけに首を振った。

「別に。勝手にしろ」

808 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「一日目」 ◆q7l9AKAoH. [saga ]:2016/08/10(水) 23:28:25.72 ID:TrKCylLS0

依頼内容の詳細と活動方針を含めた話し合いを終えて第二位が去った後の部屋で、食蜂は淹れなおした紅茶を飲んでいた。
垣根の方は折角出された飲み物に最後まで手もつけなかった。
食蜂が自ら淹れたお茶なんて、常盤台の派閥内で争いが起きそうな超レアものだと言うのにもったいない話だ。

「ふぅ……まだガード力は堅そうねぇ」

金の蔦模様が描かれたカップを置くと、彼女はひと心地ついたように息をはく。
常盤台中学側の協力者、案件処理の調整役と言えば聞こえはいいかもしれない。
だが、食蜂の役割はそんなに簡単なものではなかった。
『学舎の園』に男性を呼び込む特例、対象が超能力者と言うそれだけでもう大事件だ。

彼女の一番の大仕事は、「学内に対する第二位の危険性を抑制すること」。
言うならば、花瓶に活ける前の薔薇の花から棘を除くようなものだ。
少女たちが知らずに触れても指先ひとつ傷をつけない為の予防策。
常盤台に危険物を搬入する必要最低限の安全措置。
問題の解決に協力はさせながらも、不要な行動を制限する必要がある。

だが、そんなことはわざわざ他人に言われるまでもない。
ここ。常盤台は女王の城、彼女の庭。
例え相手が超能力者であれ、事件解決のために学校側が招いた厄介な来賓であれ。
そのテリトリー内で勝手な真似をさせる訳にはいかない。
この常盤台の生徒たちは皆、彼女の駒に成り得るものばかりだ。
彼女がその手で扱うのならその責任は全て自らに返ってくる。
その程度の矜持は持ち合わせた上での手駒。
それに無礼に傷などつけられても困る。

その為の保険もきちんと仕込むことが出来たことを食蜂は安堵する。
彼女より力も体格も上の相手だ。
お互いの能力を抜きにしたってまず絶対に敵わない。
だが。
能力の強度、相性、更に序列の違いはあれど、一度頭を捉えてしまえば相手が生身の人間である限り食蜂操祈の操り人形だ。

あの時、彼女が施したのは他の生徒と共通した「人物の認識処理」だけではない。
垣根の頭の中に即興である種のフィルタを組み込んだ。
『印象操作(カテゴリ109)/常盤台の学生は垣根帝督が敵対するに値しない。また心理距離五〇以下の既存のカテゴリに基づいて違和感を与えぬよう自動的に分類される』
と、言う認識を挿入してある。

これで、垣根帝督は常盤台の生徒を『危害を加えてまで排除しなくてもいい程度の人物』と思い込むことになるはずだ。
無関係な生徒たちの安全性があがるだろう。

「メッセージのやりとりくらいなら良いけどぉ、そんなに長く超能力者の操作なんてしたことないのよねぇ」
809 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「一日目」 ◆q7l9AKAoH. [saga ]:2016/08/10(水) 23:33:49.40 ID:TrKCylLS0

次に重要なのは暴走防止。
もしも、『心理掌握』の作用に不備が起きた場合。

自分が他人に操られていたと気づいた人間がどんな行動に出るか。
また、拒否感や精神状態の落差からショック状態を起こしてしまう可能性がでてくるかもしれない。
その辺の能力者の暴走ならまだしも。
超能力者にそれをされたら、笑いごとにならない結果が出るのは簡単に予想される。

いざと言う場合に第二位を押さえ込むのが食蜂でも難しく、もう一人の超能力者も当てになるかの判断が難しいなら。
本人にセーブしてもらえばいい。
能力を使わせない方に意識を向けるための最初のステップを兼ねた条件付けはそのためのものだ。

それでも、彼に話にひとまずこちらの言い分に耳を傾けるだけの人間性があったのはありがたかった。
食蜂にとって不都合なのは、「頭の中が弄れない相手」に「力ずくで対処される」事態だ。
安全装置を仕込む前に抵抗されていたらなす術がない。
いくら依頼をした側だろうと、超能力者相手に気が抜けないのは彼女が一番よく分かっている。
もし自分なら素直力を発揮して大人しく相手の言う通りに行動するか? そんなはずはない。
だが垣根帝督も、上手くつついてやれば食蜂の話を受け入れてくれた。

例えば、簡単な指令を幾つかだして従ってもらう。
重要性は関係ない。
従っていると言う感覚が薄いくらい簡単なものが丁度いいのだ。
例えば待ち合わせる時間と場所。行き方もこちらの要求を通しておく。
だんだんとこちらのペースに持ち込む内に、下地が整い主導権はごく自然に手元にやってくる。

まあ、それ以前に。
「常盤台に入るために女の格好をしろ」なんて最大級の無理難題が一番最初につきつけられれば、後はどんな話を聞かせられても「なんだそんなことか」と楽勝になりそうだ。
こんなにひどいコントラスト効果もそうそう無い。
食蜂も『心理掌握』が通用する相手ならどんな馬鹿げた真似でも……ダイエッターに大食いチャレンジや、交差点のど真ん中で裸踊りなんてことも簡単にさせてしまえるが。
勝手な行動への牽制にでもなればとあがった無茶振り案。
その要求を素面のあの少年にのませたあたり、相手側の関係者は余程の懐柔策を弄したに違いない。
それか。
超能力者に首輪をつける、余程の弱味を握っているのか。
そんな影響力を持ち、風紀委員や警備員に頼らずに問題解決の出来る何らかの存在があるのは確かだ。
だがそこに彼女が首をつっこむ必要はない。
今回の件のでどころは食蜂も知らない。
常盤台中学の関係者か、どこかの理事か、もしかしたらムカつく知り合いかもしれないが。
どこかの誰かがそこに声を掛けて上手くことが運んでいる。
今のところ問題はなさそうで、それ以上彼女が気を揉む意味もない。

810 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「一日目」 ◆q7l9AKAoH. [saga ]:2016/08/10(水) 23:36:41.13 ID:TrKCylLS0

(それにしても……あんなにあっさり制服を着るなんて予想力を裏切ってくれたわねぇ。かわいそうなくらい似合ってなかったけどぉ)

再登場した時に目が諦めきっていた垣根の顔を思い出して、食蜂は肩を震わせた。
笑っているが同情はしている。
そうなるだろうと知っていた食蜂本人も、制服を着た垣根を見てすぐに自分の頭も操作していなければその後の話し合いなどとてもできなかっただろう。

(まぁそれでも男の子の素直力はカワイイわよねぇ)

自分の言うことを聞いてくれるおバカさんをかわいく思うのは男も女も同じだろう。
もしも彼が食蜂の予想以上に短絡的でムカついたら構わずブチかましてしまう奴でも、駄目押しの予防策がまだある。

それが、『能力を使うと正体がばれてしまう危険性がある』と言う垣根の思い込み。
食蜂が洗脳を施した対象のコントロールは絶対的だ。
最初からそう条件を付けてでもいない限り、外的要因で簡単に解けてしまうような種類の能力ではないのだ。
だから、垣根に能力を使わせたところで生徒たちの認識はあくまで女子の姿のまま。
食蜂が付け加えたのはただの嘘。

だが嘘は、それを信じ込ませた人間には限りなく真実に等しい価値を持つ。
本来の色の上からペンキでべたべたと塗りつぶされたような強制的な白の印象。
それどころか七色にだって塗り替えて見せるのが女王の本領だ。
当人が能力を使うには問題があると認めている状況下で更に能力の行使=他者への加害の機会そのものを減らす、と言う相乗効果を狙う。
彼女の見立てでは垣根はリスクヘッジの出来る人間の様だ、自分の損をわざわざ背負う真似はしないだろうと期待もしている。

他人を徹底して制御下におくことの出来る女王の策はクモの巣のように張り巡らされていた。
全ての意図が機能しなくても構わないが、細部まで整えておく余裕と下準備の美意識こそが重要。
考えなしの脳筋タイプとは違うのだ。
そこに掛かれば、相手が圧倒的な能力者でも獲物に等しく絡め捕れる。

「垣根さん、ねぇ……なかなか紳士力の高い人で良かったわぁ。この分なら、私の本命力も十分果たせそうだしぃ」

少女はまるで盤石の玉座にいるように満足げだった。

「お話は円満力で片付いたから。これさっさと片付けてくれるかしらぁ。余計なものは使わずに済んだわねぇ」

そう、声を掛けると食蜂も部屋を後にする。
すぐに対能力者用の重装備で固めた警備員たちがぞろぞろと集まりだし撤去作業を開始した。
一体どこに設置されていたのか。
AIMジャマーをはじめとする各種装置、まるで猛獣……いや、恐竜でも捕えるような物々しい設備が次々に運び出されていく。
最後には離れのような建物ごと解体されて跡形もないくらいに整えられてしまった。

「いくら敷地の外から殿方を連れてくるからって、私までこんな狭い箱に押し込めることなかったと思わなぁい?」

厳重な警備態勢も、まるでドアを開けるレディ・ファーストのように当然だと言った態度。
その上でさらにからかって見せる食蜂操祈。
学園都市のお嬢様の頂点に立つ女王の風格も、それなりにふさわしい規格外さを発揮している。
811 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「一日目」 ◆q7l9AKAoH. [saga ]:2016/08/10(水) 23:43:01.41 ID:TrKCylLS0

食蜂は珍しく、たった一人で校舎に向かって歩いていく。
いつもなら囲んでいる取り巻きも今は誰一人いない。

「まぁ……私欲力込みで『彼』にお願いしてもよかったんだけどぉ。御坂さんが絶対に面倒だし……こんなところで余計な改竄力を発揮する手間が増えても困るものねぇ」

事件解決の出来そうな人物、でもう一人。
彼女の頭に浮かぶ人物はいた。
能力者の精神操作も攻撃も切り抜けられそうな正に「ヒーロー」みたいな人材。
「彼」が上手く巻き込まれてくれればよかったのかもしれない。
けれど全てのお話がそう上手くも行かないものだ。

常盤台の中で起こっている事件でなければ。いや、それでもどこからか関わっていつの間にか渦の中心に立っていてもおかしくない。
だが。そんなヒーロー的な特性は助けられる側の都合で濫用出来るものでもない。
まぁ、彼女の心配はそれだけではなく乙女心とはかくも複雑なものなのだった。

敷地内に招き入れるための工作、その他色々な利害力満載になってしまう。

彼女の思い浮かべる人物を常盤台内に入れたら最後。
学舎の園は事件とは別種の危機に陥り機能不全を起こしかねない。
常盤台が違う意味で落とされてしまうのは食蜂個人としても非常に不愉快だ。
校内を舞台にしたゲームの中で、プレイヤーキャラクタのアクション後に発生するフラグ。
その中から気に食わない……不愉快なフラグをすべて叩き折るどころか完全消去もしてしまえるが。
面倒なデバッグ処理をするつもりも、その権利も彼女にはない。

(洗脳力を『男性が居ても問題ない』設定にしてあのまま垣根さんを中に入れても別に良かったけどぉ。それはそれで面白くても、面倒力も増すわよねぇ)

常盤台には男が(ごく一部を除き)いないので会話どころか異性を見たこともない生徒も存在する。
浮世離れ指数の極めて高いお嬢様になると異性をほとんどフィクションでしか知らないので、

「殿方とは少女漫画のイケメンか芸能人のようで、何だかキラキラしたオーラが出ている生きものである」何て話を夢見ている場合があったりする。

垣根の場合素顔で潜入したらそっちの希望もかなえてしまい、うっかり間違った男性のイメージを生徒たちに植え付けてしまいそうだ。
なにより第二位は、箱入りお嬢様の初遭遇男子としては色々と刺激が強過ぎるだろう。
動物園のパンダか珍獣、UMAやペガサスが常盤台にやって来た!なんて騒ぎになると肝心の任務の方がなにそれ、とかき消えてしまう。

そう言った抑止力も含めてあんな格好をしてもらったわけだが。
広告サイトのゴリ押しするウフフな女子校ハーレムもの漫画みたいな展開は、まああり得ないだろう、と食蜂も浮かびかけた下らない思いつきに苦笑いした。
その線で行くと、先程の前提条件を満たすもう一人の期待のヒーローの方は……少年誌ギリギリなラッキースケベの入れ食い大当たり大連発みたいになりそうだ。
犬も歩けば……何て言うがラッキーも不幸も、常盤台には何しろ歩いて当たる棒の数が圧倒的に多い。
チャイムが鳴る前に何人犠牲になるのか予想もつかない。

もしもあっちを抜擢出来ていたら……常盤台未曾有の大惨事、飛び交う能力、あたりを吹き飛ばす超電磁砲。
墓標のように並ぶフラグの山。
怪獣映画級のすったもんだドタバタ大活劇になるところだった。

そうならなくてよかった。

(でも…そうよねぇ。将来的にどうなるかはわからないし、『派閥』の子には予防接種でもしておこうかしらぁ……)

特定の人物に過分な好意を寄せない洗脳方法でもないか、と危険な妄想を膨らめはじめたところで彼女のポケットから着信音が鳴った。

『女王、本日は急遽集会の予定が入っておりますがご存知ですか』

とSNSに連絡してきたのは派閥のメンバーにして食蜂の腹心、縦ロールの三年生だ。

「はぁい。わかってるんだゾ」

彼女が裏で糸引く一件とは言え。
退屈しない展開力は期待したいわよねぇ、と笑う食蜂はやっぱり楽しそうだった。
812 : ◆q7l9AKAoH. [saga sage]:2016/08/10(水) 23:50:13.15 ID:TrKCylLS0
ドーモ。


>>789
乙ありですわ。
らっこさん素だとすぐ泣いちゃいそう。狩猟モードのS顔も素晴らしいがふぇえもきっと素晴らしいよね。

>>790
小ネタってなんだろうな。アイドル様は暗部(笑)な世界線らしいからほのぼのしててうらやましい。

>>791
電話のあいつの職権乱用がぱない。ガチャからは垣根しか出ないからはずれ無しで良心的だね!

>>792
ネタ切れで落ちる心配は今のとこないけど投下頻度が心配です……。

>>793
乙あり!!

>>794
それは……きっと沢山お金を納めた帝国民にのみ拝謁を許されたスペシャルなシークレットにふさわしい奴ですよ(棒)

>>795
ツボすか。なんかのコマンドみたくもある。

>>796
えーっとゲッター?

>>797
はい!ゼロEWみたいなメカかっこいいメルへンな翼がいいです!
未元物質製になるとカブトムシがあんな隠し切れない天使デザインにメルへン魔改造されるんだからロボそのほかも期待していいですよね?

>>798
そうな!!らっこさんはいいぞ。垣根も出るぞ!!
813 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/11(木) 17:37:27.94 ID:Y1z8nUKP0
ワロタwwwwwwwwww
814 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/17(水) 19:34:41.42 ID:lieJZ7uTo
実際には能力使いまくっても周りからは女の子のままに見えて、垣根の見ている鏡の中の垣根だけがボロボロ顔が崩れるって事?
815 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/18(木) 13:51:55.11 ID:El+jdVaQ0
みさきちはかわいいなあ
816 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/23(火) 12:07:30.76 ID:anPtq1Dj0
垣根ベースの美少女に羽が生えるってそれ天使じゃね?マジ天使じゃね?
声だけでなく見た目も美少女になった垣根からのお仕置きはゴーグルにとってご褒美になるのかどうか
817 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/24(水) 10:18:06.96 ID:oxwPxaNb0
ゴーグルはそもそも三次元NG
818 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/05(月) 22:14:48.01 ID:Byb9sJ19o
何気に800超えてるんだね。好きなSSなので毎回楽しみにしています。
819 :野生の小ネタがとびだしてきた!  ◆q7l9AKAoH. [sage saga]:2016/09/07(水) 01:15:13.58 ID:K72QccJB0

誉望「あーっ垣根さんもやってるんスねーポケGO!!」

垣根「まあな」

弓箭「やっと学園都市でも遊べるようになりましたから。今、大変流行ってますものね」

垣根「なんか出てきたら捕まえりゃいいんだろ」

心理定規「そうね。最初に地図を買うといいのよね。それで今近くにいるポケモンが大まかに表示されるようになるんでしょ」

誉望「ゲームのタウンマップの機能っスね。目当てのポケモン探して立ち入り禁止区域やスキルアウトの縄張りに入るとマジで洒落にならないっスから
ストップもポケモンも危険な所は排除されてて表通りと学校、あとは店に集中してるみたいっスよ」

弓箭「学舎の園は在校生でないと地図上にも表示されませんわ」

垣根「ゲーム目当てで、大勢に押しかけられたら困るところが山ほどあるんだろ」

誉望「あれ。でも垣根さん結構進んでますね。なんだ普通に遊んでるんじゃないスか。もうギャラドスも出来てるし」

垣根「わざわざ出歩かなくてもアイテム使うと勝手に湧くだろ」

誉望「あっ……はい」

垣根「こいつ、見た目の割に弱いんだよ」

誉望「ええ? あーたつまきじゃー仕方ないっスよ。再厳選しないと」

垣根「どうやるんだ」

誉望「ええとっスね……もう一回アメを集めて進化させます」

垣根「面倒くせえな。この雑魚が狙って出ればいいんだけど」

弓箭「ずいぶんたくさんお香を買ったんですね」



誉望「コインじゃぶじゃぶすんのもいいっスけど。外に出ても楽しいっスよ」

弓箭「出かけた時に探しても、色々捕まえられますよね」

誉望「学園都市限定のイベントがあるんスよ。限定ポケモンの隠れスポットも学区別にけっこうあるみたいです」

心理定規「ここでリリースするのに、利権を買ったらしいから相当力は入れてるのかもね」

誉望「後は……能力者のAIM拡散力場と連動してモンスターが出るってのが目玉っスね! 噂によるとレベルの高い能力者の近くにはレアなモンスターが出るらしいっス」

弓箭「これですよね」

誉望「そうそう『AIMアンテナ』……ってお前持ってるのか。ってことはTL20いってんのかよ。チュートリアル終了組か」

弓箭「入手に必要な称号やメダルの条件もきちんと満たしてますわ」

心理定規「それはどう使うの?」

弓箭「スマートフォンに付けて、近くのAIM拡散力場をサーチするんです。そうするとアプリにコードが送られて……あら、誉望さん。さっそく何か見つけましたわ」

誉望「マジかよ。マジだ。おくりものをゲット、『レイドモンスターの気配』?」

弓箭「当たりです」

誉望「AR切替で捜索して……ああっ?! すっげー! フリーザーが垣根さんの横に出てます!!」

心理定規「タップすると……あら。捕まえる画面にはならないのね」

誉望「戦闘画面っスね。このパターンは見るの初めてだな。でもアイテムは使えそうだ。弱らせないと捕まえられない仕様なのか?」

弓箭「そうですね。わたくしの経験ですと、強能力者が近くにいるフィールドでは捕獲画面、大能力者が居て出てくるものでは戦闘になることが多いです。なかなか強いですよ」

誉望「HPが全然減らねえ……何だこの白いフリーザー超つええ」

弓箭「色違いですわね。わたくしのウィンディならどうでしょうか」

誉望「ちょっと待て回復させる。共闘いけそうだ。心理定規は……」

心理定規「そんなに進んでないからいいわよ。あら、それ見たことないわ」

垣根「またカビゴンか」

820 : ◆q7l9AKAoH. [sage saga]:2016/09/07(水) 01:19:03.78 ID:K72QccJB0


弓箭「結局どちらも逃げられてしまいましたね」

誉望「さすが伝説のポケモン。でも弓箭、地味に相当強化してるんだな。ガーディどこで取れた? アメが全然増えないんだよ」

弓箭「誉望さんが行ける範囲でしたら……後で今週のポイントをお教えします。追跡と捕獲なら任せて下さい。僭越ながら、枝垂桜学園近くのジムはわたくしがおさえておりますので」

誉望「ガチ勢のお嬢様はそう居ないよなー。攻略出来ないだろ……え、待て弓箭お前『スナイパーR』なの? えっドンマイ」

弓箭「誉望さんこそ何ですかこの『AAA003』って。あれですか、こんなお名前がもう他の方に使われてたんですか」

誉望「オールマイティ、アドバンス、アビリティの略で……って嘘だよ止めてその引き顔。あああ心理定規まで。そうだよAAA1とか散々試したけどどれも埋まってたんですよ!」

垣根「能力者にモンスターが出てくんのかよ……そんな機能があったからか。アップデート後にアプリにメッセージが着てたな」

心理定規「それに、何か貰ったって言ってなかった?」

垣根「ああ」

誉望「ポケモンのタマゴスか……一〇〇キロ? なんかすげー無茶な数字ですね」

垣根「どうしろってんだこれ」

誉望「多分、これを孵化させると垣根さんはさっきのフリーザーが貰えるんスよ。やっぱりさっきのは垣根さんドロップのおくりものだったんだな。自分のデータで出てくるポケモンは捕まえられない仕様なのかも知れないっス」

垣根「一〇〇キロか。それくらいは……飛べばすぐだな」

誉望「あんまり移動速度早いとノーカンになりますよ。自転車でもギリギリなはずっス」

垣根「は? 飛ぶ意味ねえじゃねえか。上空でそんなにトロトロしてたら警備員に文句つけられるだろ」

心理定規「文句の前に驚かれるわよね」

弓箭「空を飛ぶ能力者がいるとは、学園都市でもあまり聞きませんものね。確かに卵の孵化はなかなか難しいです。学舎の園も広いとは言っても、移動するところはたかが知れてますから」

誉望「ふはは……俺の時代が来ましたよ。二キロ一〇〇円でスマホ回しもしてるんス。全自動卵割り機と呼んでください」

心理定規「それはズルじゃないの?」

誉望「いいんです、夜中にうろついて補導されるよりはマシっスよ!」

垣根「ほら」

誉望「なんスかこのマネーカード」

垣根「五〇〇〇円以上は残ってる筈だ」

誉望「いや……垣根さんから金とか取れねえっス。つうかそんなに長時間能力使い続けたら流石に俺の頭が大変なことになってしまいます」

垣根「元からだろ。けどその間俺は普通の機能も使えねえってのも癪だな」

心理定規「あなたが使わない間だけ回しててもらえば?」

垣根「なら車で移動した方が早いな」

弓箭「それでは誉望さん、五キロお願いします」

誉望「へーい二五〇円」

821 : ◆q7l9AKAoH. [sage saga]:2016/09/07(水) 01:23:17.06 ID:K72QccJB0

心理定規「集めるならかわいいのだけでいいんだけど、鳥ばっかり出るのよ。探したくても地図でちゃんと見れなくて」

誉望「頭二つのやつも目がかわいいっスよ」

心理定規「まあそうだけど」

誉望「数字が大きいのが出たら進化させると強くなります……っつうか心理定規、ポケモンしたことないんスか」

心理定規「キャラクターは知ってるわよ? 君が教えてくれたから最初のピカチュウは持ってるし」

弓箭「めっ心理定規さん。先日、学舎の園の近くで可愛らしいポケモンを見かけたんです。あの……よよよよよよよろしければ今度ご一緒に」

心理定規「いいわよ。どんなの?」

弓箭「捕まえられませんでしたが、画像は撮ってありますわ。こちらも色違いみたいなんです」

誉望「黄色い……プリンか?」

心理定規「見た目も何だか同じ名前のお菓子みたいね」

垣根「でもこれ目はしいたけだな」


誉望「心理定規たちも今度出かけるって言ってますし、みんなでポケモンとりにいきますか?」

垣根「位置情報だ、特定かどうのって始める前にさんざんぶってたのはお前じゃなかったか」

誉望「気をつければ大丈夫ですよ。そう言えば垣根さん、GOの垢は」

垣根「お前が捨てアドから専用で作れってうるせーからやったけど、俺のところに狙いすましたようなレアポケモンが来るってことは管理者サイドにはバレてやがるんだろうな」

誉望「そうっスね。AIM拡散力場を検知するドライブもかなりの謎技術っスけど……って、プレイヤーの名前にはカッキーが入ってるんスね」

心理定規「重要人物の行動管理も、しようと思えばゲームで出来るのかもね」

弓箭「情報を無闇に流さなければ、そう追跡もされないと思いますけど」

誉望「うーん、白いフリーザーの目撃情報が上がったら対策はとった方がいいかもな」

心理定規「さっきのは残念だったわね。でも白い鳥のポケモンなんているんだ」

誉望「これも本当は青いんスよ。第一世代なら垣根さんはフリーザーで納得っスね。スワンナもそれっぽいっスけど。うわー見て下さいっスさっきのツーショット、圧巻の公式イケメンっスよ」

心理定規「ふふふ。本当」

弓箭「まるでポケモンを従えてるようですわね」

垣根「あ? ……ったく大したことねえだろ。ほら、さっさとこいつ回しとけ」

誉望「はいっス」グルグルグルグル

心理定規「もう」

弓箭「(照れてらっしゃいますね)」

心理定規「(ね。変な所はわかりやすいのよ彼。別にゲームではしゃいだって構わないと思うんだけど)」

誉望「(えー。でも顔怖いっスよ?)」グルグル

心理定規「(ほら、鼻がちょっと膨らんだでしょう。まんざらじゃないのよ)」

弓箭「(見ればわかりますね)」フンス

誉望「え。なんで対抗した?」グルグル

822 : ◆q7l9AKAoH. [sage saga]:2016/09/07(水) 01:29:01.59 ID:K72QccJB0

誉望「あ。ジム取られてる。第七学区のとあるジムにリザードンが居るんスけどこれぜってぇ学園都市のプレイヤーじゃないっスよ。レベル30越えマジハンパねえっスつーか……『神の如きもの』ってトレーナーネームがすでにやばすぎっス」グルグル

弓箭「あら、大変ですね。わたくしは一度置くとほとんど手元に返ってくることがございませんのでむしろそちらが不便でなりませんわ」

誉望「くそー環境に優遇されすぎだろ。あれ」グル

弓箭「どうされました?」

誉望「嘘だろさっきまでこの辺赤優勢だったのにあっと言う間に黄色に変わってるし……ありえねえ、なんでもう何ヶ所もハピナスがいるんだ? 強化しまくってるしどんだけラッキー捕まえたんだよ……見てくださいラッキーマニアっスよ垣根さん!!」

垣根「なんだそりゃ」

心理定規「そう言えばどこだったかな。このあたりの病院でラッキーがよく見つかるらしいわよ」

誉望「そうなんスか? じゃあそこが巣になってんのかも。青ピ君もラッキーやたら捕まえてたなそう言えば」

弓箭「その方は病院がお好きなんですか?」

誉望「いや……確か、一緒に出かけるとよくラッキーが出てくる友達がいるって言ってた気も」

垣根「チッ。全然アタリがねえ」

心理定規「あ。ほら。かわいいのが出てきてない?」

垣根「ピッピじゃねえか」

823 : ◆q7l9AKAoH. [sage saga]:2016/09/07(水) 01:33:04.22 ID:K72QccJB0
ドーモ。
場つなぎな小ネタですまんねドーモ。

第三の手があった頃の某右の人なら反復横跳びの要領で10キロ卵も即孵せそうでうらやましい。
宗教施設やモニュメントも主なストップならぐるぐるし放題だよねきっと。

時間があればパソコンにはりついてた1も外にゲットしに出かけておりましたことよ。
深夜駅前にたむろする怖いオニイサンと出現地が被っててつらい。
三段進化もちのアメ集めのハードルの高さに限界突破の無茶仕様がダブる。
物欲センサー発揮わざ選別無慈悲。
10キロ?カイロスのたまごだよなあれ。
つって旬を逃したポケgoネタですねドーモ。

こんなポケモンGOは嫌だin学園都市

「部屋にカビゴンが居るのにボールが無いとか不幸だ」
「ピカチュウがコラッタ並みに出てくる学区がある」
「ジムを巡って能力者のリアルファイトが勃発、風紀委員のフシギバナが守護神として配置される」

>>813
どうもwwwwwwwwww

>>814
そんな感じっす。垣根はここでもまた騙されてる。わかりづらくてすまんね。

>>815
今回みさきちにはこれからも出張ってもらいますよー誰かに振り回してもらわないと話が出来んので。

>>816
だよな!
持ち主が女子だったらビジュアルでも得しかない能力だったかもしれないがちょっと染色体がミスったおかげで厨二メルヘン野郎ですよ。
GJしかないな!!
※常盤台で洗脳されていないゴーグルにはていこちゃんが見えません。
CVも変更されたのでサウンドオンリーでもご褒美なし。残念。

>>817
詳しいひとだー。
定規ちゃんをかわいい女子と認識する程度の興味は三次元にもありそうです。

>>818
どうもありがとうございます。毎度ネタに走ってるけどすこしでも楽しんでもらえたらうれしい。
がんばります。


この頃はうぃっしゅのランドセルのCMが直視出来なくなりました、と1はネタ師ネタに溺れていることを告白します。
本当にDMM。

824 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/07(水) 03:22:30.30 ID:013FRjEvo
白いフリーザーってそれ宇宙の帝王フリーザ様じゃないんですかね
地球終わったな(確信)
825 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/07(水) 12:36:03.11 ID:ksYuvASto
氷タイプ・・・冷蔵庫。
白くて翼が生えてる・・・常識は通用しねえ。
双子島に生息・・・白と黒。

こ ろ さ れ る
826 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/08(木) 22:01:23.09 ID:+dEFMWG70
ワロタwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
827 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/15(木) 15:47:19.82 ID:o912Lqny0
ホワイト冷蔵庫の工場長……!

常磐台の電撃鼠に幸運が逃げる右手はともかくとして
しいたけプリンはむちむちプリンということなのかどうか
白黒カラーのソーナンスとかもいるのだろうか

ふと思ったけど、なんか恋査がポケGOを体に組み込んでレア能力のレアポケ集めしてそう
828 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/17(土) 00:15:43.98 ID:/+Ac8cr1o
垣根君にボクの白い分身をぶっ掛けたらどうなるのっと
829 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「一日目」  ◆q7l9AKAoH. [saga]:2016/09/27(火) 02:29:55.61 ID:pL+RNAUL0

ホームルーム前の朝の時間。
垣根は授業の準備や部活の片づけに追われるお嬢様たちの中に何食わぬ顔をして紛れていた。
来たばかりの新入りが食蜂と通じているとわかると生徒たちの不要な注目を集めてしまうから、とこの先の単独行動についても一言あったが垣根はむしろせいせいしていた。
食蜂は、
「寂しくなったらおはなしくらいしてあげてもいいんだゾ」とニヤニヤしていたが。
超能力者で実は暗部のリーダーでもある垣根に、潜入任務がこなせないとは思っていないだろう。
さすがに女子校に放り込まれるなんて事態は垣根本人も今まで想像もしていなかったが。
ただでさえ息がつまりそうな環境で、露骨な監視付きは必要だと理解していても不愉快だ。
一人で好きに調べるくらいがちょうどいい。
ただ、対垣根仕様の洗脳は今のところこの学校の関係者にしか通用しないらしいので、しばらくは気軽に校外に出れないのは不便そうだ。

偽装に必要な書類やら何やらを片手に、クラスの担当教師に挨拶をした垣根は職員室の前で待たされていた。
他の生徒たちが授業を受ける間の数コマを使って簡単なオリエンテーションがあるらしい。
学校内の規則、授業の説明、部活動や学校内外の活動について、施設の利用、今後の行事についてなどなど……。
真剣に学生生活を送るつもりが無いのにそんなことをされても意味があるのか。
情報や資料が必要なら、食蜂経由で用意させればいい気もしていたが。
あくまで一般生徒と同等のリアリティの追求でもしているのだろうか。

「あら、見ない方ですわね?」

そんな推測をしながら辺りをうかがっていると生徒の一人に声を掛けられた。
返事をしないのも不自然なので、垣根は挨拶をすると今日付けで転入してきたのだと伝える。

「わたくしも転入組でしたのよ」

一体何がそんなに面白いのか。
片手に持った扇子をパチンと鳴らすと女生徒は得意げに胸を張った。

「そんなところでどうなさいましたの?」

校内の案内をしてもらうことになっているのだが、担任教師が忙しいのかなかなかやって来ないと説明する。
まったく、教師も事情を知らないとは言え垣根を待たせるとはいい度胸だ。

「そうですわ。この婚后光子、先達として学内を案内してさしあげてもよろしくってよ!」

サラサラの長い黒髪、和風お嬢様と言う言葉がピッタリの常盤台生は謎のドヤ顔で話し続ける。
一言ひとことが自信に満ちあふれているせいか、垣根がウザそうな目をしたのも見逃されていた。
彼女の方はこの『転入生』に何の違和感もなかったらしいので、ひとまず潜入の第一段階は成功しているようだ。

「丁度、午前中にはいくつか選択科目がございましたから振り替えが出来たはず……少々お待ちになって下さいな。貴女の担任の先生にもお話してきますから」

ほぼ一人で喋っていた女子はそう言って、垣根を置いて職員室へ入ってしまった。
扉の前に残された垣根は、はあーっと疲れた様な息を吐く。
お嬢様特有の強引な空気なのかいきなりはじまった会話イベントにうっかり引きずられそうになっている。

830 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「一日目」  ◆q7l9AKAoH. [saga]:2016/09/27(火) 02:34:27.53 ID:pL+RNAUL0


『(なんだこれ。今のうちにバックレとくか?)』

首元に手をやってからそう呟く垣根は、早くも学校生活と言う奴の面倒臭さを嗅ぎとってうんざりした顔をしていた。

[はい。いやーチュートリアルイベントはやっといた方がいいっスよ]

『(なんでもゲームと一緒にするんじゃねえよ)』

便利なことに、この変声機には使用者の声を周囲に漏らさないようにするステルスモードが搭載されているらしい。
おかげで、垣根は他人の目を気にせず任務の話が堂々と出来る。
逆位相の波で音を低減させるよく似た仕組みは第二学区の防音壁でも採用されている。
そのおかげで、
「スパイ映画の主人公って馬鹿でかい独り言で周りのやつにあやしまれてるんじゃないのか?」と言うつまらない疑問も、電波系転校生に間違われるなんて間抜けな事態も気にしなくて済みそうだ。

「さて! 準備はよろしくて?」

『どうも御親切にありがとうございます。婚后…光子さん?』

「いえ。お気になさらないで。校舎の中は慣れるまでなかなか分かりづらいものですから。通りいっぺんの説明より、実際によく見ておけるとよろしいかと思いましたの。あ、あちらにございますのが……」

これまたご丁寧に自己紹介をしてくれた常盤台中学二年生、大能力の空力使いのお嬢様は垣根より半歩先を上機嫌で歩いている。

『(お嬢様ってのはあれか。他人の話は聞かねえもんか)』

[いやーお嬢さまってみんな高飛車でオホホ系なのかと思ってたんスけど。親切な人もいるんスね]

しみじみ呑気なコメントと、隣で自慢げに繰り広げられる解説を半分。
どちらも聞き流しながら垣根は白昼の校内の様子を頭に叩き込んでいく。

移動中。
なんだかとても張り切ったオーラを出している婚后は解説の合間にも雑談を挟み込んでいた。
『学舎の園』に近い、第七学区の周辺施設案内のようなおすすめスポット情報もいくつか出てきた。
その度に、
「ええと……よろしければ」
「あの、いえっなんでもございませんの!」などと少し挙動不審だったが。

『(やっぱこいつ、怪しいよな)』

他人には聞こえない独り言をつぶやきながら、垣根はそんな婚后の様子をうかがっていた。
やけに親切に新参者に関わってくるあたりがどうにもおかしい。
会話を振って、こちらの情報をそれとなく探ろうとしてくるのも不自然だ。
そんな風に垣根から不審な目を向けられているとは思っていないのだろう。
警戒対象:常盤台関係者。
その中で要・注意に振り分けられようとしていることも知らず。
婚后はまた、にこにこと声を掛けてくる。
831 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「一日目」  ◆q7l9AKAoH. [saga]:2016/09/27(火) 02:38:11.66 ID:pL+RNAUL0

「ええと、亘木…ていこさんとおっしゃいましたかしら」


『ええ……そうです』

偽名を呼ばれて垣根は笑顔で返事をした。
男とばれないように極力気をつかった上での敬語喋りでしのいでいるつもりの垣根だが。
隠しきれないムカつきがぎこちない表情に乗ってしまっている。
彼は一切関知していないが、常盤台の生徒名簿に加わる女子生徒の仮の身分証明が既に登録してあった。
特に下の名前はもうちょっと何とかなっただろうと思うのだが、任務の詳細まで把握しているはずの『電話の男』にはそこにツッコミを入れる余裕はなかったのか。
垣根の気分を盛り下げるための嫌がらせのつもりなら、悔しいが非常にいい線を行っている。

「亘木さんは何か見ておきたいところは御座いますか? ここは中学校ですけど文化資料にスポーツ、専門的な実験設備まで幾つか施設もありますから。遠慮なさらずにおっしゃって下さいな」

校内になくても、学舎の園で他校と共有しているものがあるのだと言う。
今の所、外部の寮を含めて校外での事件の発生は報告されていないはずだった。
なら気にするのは校内の施設だけでいいはず……と垣根は目を細めて回答を探った。
欲しいのは、今までに騒動を起こした関係者達の侵入先の情報だ。
不審者の確保と警戒がメインだったこの前までの任務では移動経路の巡回が主。
実際どこで何があったのかはただの書類上の単語でしかなかった。

『図書室や、資料室……後は生徒が利用できるコンピュータのある場所があれば立ち寄っていただけますか。校内の位置関係を見たいので、このまま順に回っていただいて結構です』

「もちろんですわ。読書がお好きなのかしら?」

『まぁ、そんなところです』

その後。
一時限目終業の鐘が鳴っても婚后の案内は続いていた。
時間をじゅうぶんにかけて無駄に広い校内の設備の案内を追え、婚后は最後に敷地外の寮へのバス乗り場へと足を向けようとした。
そこで垣根……もとい亘木は丁寧に案内を断った。
この辺りは、既に先日回ったので充分に見知っている。
それに。
お嬢様の親切ごっこにこれ以上付きあわされるのもうんざりしてきていた。
既に何度もあくびをかみ殺しているがそろそろいいだろう。

『ここまでで結構です。婚后光子さん。私は内部寮を使うので、荷物を運んだ際にそちらは少し見せていただきましたから』

垣根はしれっとそんなことを口にしたが。
もちろん嘘だ。
少ない手荷物は既に運び込まれているし、全校集会が終わるのを待ってわざわざ正面から校内に入りなおした垣根がその足で向かったのは職員室だった。
しかし、そんな事情を知らない婚后はまた嬉しそうに笑って見せた。

832 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「一日目」  ◆q7l9AKAoH. [saga]:2016/09/27(火) 02:42:21.77 ID:pL+RNAUL0


「あら。わたくしも内部寮なんですの。奇遇ですわね」

『……わざわざ、お時間を割いていただきありがとうございます。助かりましたよ』

調子の狂う相手だったが。
最後に付け加えたのは本心だ。
朝から受ける意味のない説明会に出ずに、さっさと校内の情報収集に取り掛かれたのは思わぬ収穫と言えなくもない。
今後の学校行事、クラブ活動、委員会……そんな無駄な説明を教師から延々聞かされていたら。
幾ら温厚で優しい垣根でも途中で寝るかキレるかしていただろう。

「かっ、構いませんわ。感謝されるほどではございませんもの」

取り出した扇子で口元を隠すと。
息を整えたお嬢様は自慢げな態度を崩さずに頬に風を送っていた。
そんな彼女の目が、ふと何かを思い出したのか懐かしそうに細められる。

「わたくしも、こちらにきたばかりの頃は心細い思いをしたこともございますが……みなさまに親切にしていただいたものです。ですから、今度はわたくしの番。それだけですわ」

大したことはない、そんな口ぶりだったがその顔はどこか誇らしげに見えた。

その後。
通常授業があると言う婚后と別れて垣根も自分の教室へと移動することにした。
少しイレギュラーがあったが、この後は当初の予定通り授業に出れば問題はないだろう。

『(まだ時間があるな。どっかで暇でも潰すか)』

「亘木さん!」

何故か戻ってきた婚后は振り返った垣根の前まで駆けよってきた。
よほど慌ててきたのか下を向いてぜえぜえ息をしている。

「あのっ……本日の放課後、もし、よろしければ……お時間がありましたらまたお話させていただけませんか?」

『? 別に、構いませんよ』

「本当ですのっ?!」

返事を聞くと勢いよく顔を上げる。
自分から聞いた癖に何言ってるんだこいつ、と引き気味で眉をよせる垣根はまたしてもスルー。
婚后はほんの一瞬で元気を取り戻して走りさっていった。
粛々としているイメージだが、お嬢様も時には走るらしい。
今のは何だったんだ? と不信感をつのらせる垣根だったが、

[やりましたね垣根さん、早速ルート追加のフラグが立ったんじゃないスか]

『(意味わかんねえこと言うな)』
833 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「一日目」  ◆q7l9AKAoH. [saga]:2016/09/27(火) 02:49:03.81 ID:pL+RNAUL0


その後は美術の授業だった。
だった、はずなのだが。

[なんか……あれっスね。アニメ知識のトンデモお嬢さまもそんなに間違ってないっつーかさすが常盤台って言うか]

『(なんでお嬢様自ら蒔絵とかしてんだよ。素直に金出して買えよ)』

スケッチや美術史、美術品鑑賞などの一般ラインをすっとばし、何故か突然匠の伝統工芸にトライさせられていた垣根は疲労困憊で机に伏せていた。
未知の領域、魔のお嬢様学校は想定外にもほどがありすぎて流石の垣根でも、ツッコミも脳内処理もまだ追いついていない。
仕上げろと言われた土台からもう既に高そうな漆器は、努力のかいあって授業時間内に合格ラインに達していた。
人間、やってみればなんとかなるものである。
なんとかなるものなんだ、と妙な感動と達成感さえ錯覚しそうな無茶ぶり具合だ。

わたりぎていこはレベルがあがった!
かもしれないが、器用さやスキルの上昇と引き換えに無駄に疲れてしまった。

[絶妙に金箔と金属粉を接ぐスキルなんて一生使わない気がするっス。常盤台ってもっとこう、帝王学とかリーダー育成専門機関なイメージがあったはずなんスけど実際はそんな感じなんスね…なんスか、上流階級の花嫁修業とかなんですか]

授業中、垣根からのリアルタイム実況な愚痴を聞かされていたゴーグルも、まだ見ぬ異世界に呆れたような感心したようなコメントを返した。

『(知るか。単身最前線でなんでもこなせる人材育成でも目指してんじゃねえの。それにしたってやりすぎだろっつう……あ、授業録音しといたか?)』

[はい。いや、そんなのしてませんよ? マイクもそこまで広くカバーしてたか? えーっとなんか必要でしたか]

『(常盤台内部の情報なら音声データも高く売れそうだろ。なんだ、してんのかと思った)』

ガサゴソ何かのチェックをしていたゴーグルの少年は、そこで大慌てで返事をよこした。

[はいい? 何で俺がそんなすぐに足のつきそうな小遣い稼ぎをするんスか。どっかに流しても状況的に今回の依頼経由だって一発でバレ]

『(馬鹿でも間抜けじゃなくてよかったな)』

[はい! あーもーびびった無駄にびびった。変なひっかけやめてくださいよ。情報統制厳しい中でこっちに許可出てんのは、垣根さんとの連絡程度なんスから]

『(よーし。ならその調子で真面目にやれよ)』

[はい……]

気分転換にはなったらしい垣根とは対照的に、ゴーグルはため息をつくとマイクの向こうで静かになってしまう。
気まぐれなリーダーに無意味に翻弄された組織の部下もまた、この厄介な任務に巻き込まれた一人だった。

834 : ◆q7l9AKAoH. [saga]:2016/09/27(火) 03:05:25.20 ID:pL+RNAUL0

さーて次回のていこさんは?
こんばんは、心理定規よ。
彼ったらちゃんと任務はできてるのかしら?
私の出番はもう少ししたらみたいだけど、それまで心配よね。
えーとなになに、次回は
「セレブの昼食」
「まさかの放課後ラッキースケベ?」
「お嬢様にも容赦なく壁ドン」
の三本の予定です……じゃなくてなにこれ。本当に大丈夫?
もう。今から頭が痛くなりそう。
それじゃあまたね。
じゃん、けん、ぽん

私はグーを出したわ。どうだったかな。
あら? 誉望君、なんで今パーを出したの? 統計的に、一番最初はチョキを出しやすいから、きっと私ならそれを読んでグーを出すと思った、ですって?
へえ。意外とやるのね。ハンター試験で勉強したの? ふうん。



ドーモ。
こんごーさんかわいいよーこんごーさんかわいいよなー学園都市にはもったいない純真属性の女子だよなーもおー。
なまえくっそ打ちづらいしたまに金剛になるけどかわいいからゆるーす。

時系列とかこまけえこたあアニレー一期や頂点決戦の形ばかりの季節感を思い出してくれ。
どうでもいい。そう言うことだ。
後、今後一部に魔改造がある予定。
そして表記がほとんどゴーグルの少年なのは、まだ誉望氏のことを知る前に書きはじめたからですね、はい。
修正めんどい。


>>824
どっちも冷凍庫ですがね>>824さん。
垣根とフリーザ様のツーショットなんて爆笑ものじゃーありませんか。
ポケモンで学園都市がヤバイなんて困りますよ(困惑)

>>825
しーっ!!
いいだろフリーザーもかっこいいだろ?!だからそれでいいんだよきにすんな
誰がそんなことで愉快な的にされなきゃならないんだ。
アレイスターか?運営か?とばっちりでゴーグルか?
それとも知りすぎてしまった>>825か。そうか。

>>826
ドーモいつもくさをありがとうございますwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

>>827
長なのに自ら量産される工場長様なつい。
なんか進化したらピカ氏と同じような配色になりそうであれな。しいたけ茶碗蒸し(黄)
恋査の有効活用w
それにスマホが複数台あればマルチ可能だな?!
蜜蟻、円周ちゃん大勝利。

あとはきっと白黒ソーナンスやアホ毛のピカチュウ、ピンクのギャラドス、黄色のプリン、大爆発持ちのすごいマルマインなんかが出てくるんでしょうね(適当)

>>828
知らねえよっと。
垣根の白い分身ならいいねえ。人型で。
何百人もいらないし白より色つきの方がうれしいけどね。
835 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/27(火) 23:05:17.27 ID:E+zbne85o
相変わらずの面白さ!乙です。
ところで常盤台潜入編での本格的未元掌握の予定はもう無いのかしらん?
836 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/28(水) 19:08:33.22 ID:T6KfYEuS0
あぁ^〜婚后さんかわいいんじゃぁ^〜
はたしてラッキースケベはするのかされるのか
837 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/29(木) 12:58:33.90 ID:OzeCDKTZ0

垣根のテンションは真面目(シリアス)な暗部の任務なのに、傍目には似合ってない女装男が女子中学校に侵入という変態的事案に見えるという……
常磐台の制服来た垣根がJCに囲まれて授業受けてる絵面想像するとシュールすぎてやばいwwww

次回予告が脳内再生でき……そうで、できない!定規さんの声が定まらない!
暗部編アニメ化はよ
838 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「一日目」 ◆q7l9AKAoH. [saga]:2016/10/25(火) 00:47:26.08 ID:c3UxgdKR0

頬杖をついて窓の外を眺めるお嬢様。
心ここにあらず、と言った横顔からこぼれるため息は切なげでなんとも絵になる光景である。
……などとおおげさに盛ったドキュメンタリー風のナレーションでもつけられそうな光景だが、中身は暗部組織の超能力者(男)だ。
常盤台中学二年生亘木ていこさん一四歳(大嘘)はぼーっと授業を聞き流していた。
ごく一般的な高校レベルの授業ならすでに軽々こなしているお嬢様学校と言ってもそこは中学生の勉強だ。
基礎学力ならとっくの昔に追い抜いている頭の持ち主ではまじめに聞いたところで、退屈なものでしかない。
何より学生らしいふるまいは偽装なので授業を受ける必要性がまったくもってない。
うっかり居眠りでもして名門の意識の高い教師からお説教をくらうのも間抜けだ。
黙って座っているだけの授業であくびを我慢する方が、おかしな騒動の関係者を探し出すより大変だとは彼女も思ってみなかった。

何とか暇をつぶそうとして、授業とは関係のない現状のまとめなどをノートに書きだしてみようともしたのだが。
なにも書くことがなかった。

今の所、ただ授業を受けているだけなのでこれといった情報収集も出来ていない。
だがそれは、目を光らせて様子を探る対象の生徒たちも同じことで、例の事件の関係者も学校生活と授業に拘束されていては何か目立った活動も出来ないはずだ。
となると授業の合間や休憩時間、放課後に焦点をあてていくのが得策かもしれない。
サボりや欠席などイレギュラーで他より目立つ振る舞いをしている生徒は、既に食蜂側で洗いにかかっていると聞いていた。
あの女王様が駒をいくつも動かしていても他の視点が必要だから、恐らくはこうして『スクール』に任務の話がきたわけであって……
そこまで考えたところで垣根は軽く額をおさえた。

『(……昼はラーメンか?)』

[? ああ、はいっス。あんパンと牛乳でも良かったんスけど、鎮守府特製高速修復・補給剤〈バケツラーメン〉一分バリカタがやっと届いたんで。学園都市での販売予定がない上に通販だと定価割増プラスアルファ、送料プラスとかなめてますけどやっぱいち提督として応募キャンペーンは避けて通れねえって言うか――]

こちらは思考を中断しての一言だったのだが、てんで的外れな返事に垣根はため息をつく。
一度も本来の仕事をしていないシャープペンシルは机の上で転がされていた。

『(……そうじゃねえだろ。さっきからずっとお前のラーメンの音拾ってんだよこの馬鹿)』

雑音への遠回しな嫌味が通じないとは、部下のおめでたさを侮っていたか。
組織のリーダーは教室内には聞こえない愚痴を零すと呆れて首を振った。

[あーっ?! すんません無駄に俺の飯にオンマイクで! うるさいっスよねすんません]

『(ったく。こっちはクソつまらねえ授業中だぞ。はぁ、それ何味?)』

ガサゴソなにか調整しているらしい音は未だに拾っているが、他人が飯を食ってる耳障りで間抜けなノイズはこれでましになるだろう。

[海鮮ホタテ豚骨っス]

『(ちくしょう腹減ってきた)』

つまらない授業はまだまだ長い。
時計を睨んで昼食を待つだなんて、その辺の学生のような真似をさせられている超能力者は。
周囲からは美少女にしか見えない顔でがっくりとうなだれた。

839 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「一日目」 ◆q7l9AKAoH. [saga]:2016/10/25(火) 00:53:17.30 ID:c3UxgdKR0

広くて荘厳な食堂は星付きホテルの中などではない。
とある中学校の施設だ。
そんなところに揃って同じ制服姿の学生たちがひしめきあうのは、見慣れていないとなんだかおかしな光景だった。

さて。さてさて。
よいこのみなさんお待ちかね、いや悪い子だって大喜びの学生生活の一大イベント。
給食タイムがやってきた。
とある女子生徒の前に運ばれてきたのは「女子中学生」と言う単語からはずいぶん遠そうで、追加ワード「お嬢様」からは更に遠くウェブの検索候補になどは絶対にひっかかりそうにないメニュー。
「ラーメン」が常盤台中学で注文されていた。
まさか、そもそも、あったのか?!
そんな声が学園都市の男性諸君からあがりそうではあるが。
なんとお嬢様女子校のメニューにも存在したのである。
『期間限定・常盤台特製ラーメン』などと言う名の未知のオーパーツが今、確かに湯気をたててこの場に存在していた。

丼は高価そうな焼き物。
箸はこれまた高そうな漆塗り。
器の中に配置された彩りは黄と緑、そして脇の小皿に赤。
柚子、三つ葉、糸唐辛子が品よく添えられていた。
和食ならともかくラーメンの薬味にはちょっとユニークなラインナップだ。
他にこれと言って具材らしいものもない。麺とスープを純粋に味わってほしいなんて職人の意識の高さでもあるのだろうか。
行儀よくその前で手をあわせた女生徒は笑みを浮かべた唇の端を軽く舐めた。
一瞬前の品の良さに不似合いな、お嬢様らしからぬ仕草で食事がはじまる。
照りの深い黒の箸を取ると麺を一筋持ち上げる。
中太のストレート、澄んだ琥珀色のスープをうっすら纏った麺を口元に寄せる。
二回、三回、息を吹きかけ冷ますと後は一息ですすり込む。
そこで立った音……とうていお上品とは言えないものに近くのテーブルの生徒が驚いたように目をやった。
しかし、食事中の本人はそんな周囲の反応など一切気にしていない。

歯を立てると一瞬受け止めた後でぷつんと切れる。
麺の歯切れ、のど越しを楽しむ様に最初の一口を堪能していた。
スープを口にして。
そこで彼女は一瞬眉を寄せた。
不満と言うよりは違和感。そんなものをふとにじませたが、箸を持つ手は止めなかった。
顔の方に落ちてきた髪を耳にかけるとふーっと息を吐き、また一口麺をすする。
食器の触れ合う音も静かな食堂でたった一人、亘木はリズミカルと言えなくもない食事を続けていた。
そんなことを繰り返して。
吹き出した汗をハンカチでおさえた彼女が箸を置き、軽く片手を上げるとメイドが空いた食器を下げに来た。

『(ラーメンが三〇〇〇円したぞ。なんなんだここ)』

[常盤台やべえ。歌って踊れる農家が試作した原価の高いラーメンみたいな値段っスね]

近くの席に置かれた本日のメニューを手に取ると分厚いページをめくっていた垣根は、

『(フルコースの給食は四〇〇〇〇だったから、まだマシな方かもな。幾ら名門でも、大した奨学金も望めねえようなガキじゃ毎日のお嬢様ごっこですぐ首が回らなくなるんじゃねえの)』

[よんっ、万円って日本円で幾らでした?!]

ゴーグルが吹き出してすっとんきょうなことを口走る。
普段セレブ寄りなエピソードを披露する垣根は珍しくなんだか常識的な発言をした。
ここ学舎の園の外の実情を知っているとあまりのギャップから、相対的に価値観が一般寄りになるのかもしれない。
しかし、通話先の少年は小市民っぽくため息をはく。
今垣根がいるのが学園都市有数の秘境――パンがなければケーキを、なんて言って食事にもならない一口サイズのスイーツ(超高い)を食べていてもおかしくない生き物の生息地――だと思っていても呆れるほど驚いたのか。

[給食って一体なんでしたっけ。しっかし三〇〇〇円のラーメンってセレブっスね。うまかったっスか?]

なんか違うんだよ、と垣根は首を傾げた。
その前に今度は水菓子が運ばれてきた。
組み合わせがちぐはぐな気もするが、ラーメンもこの食堂内では位置づけは和食なのだろうか。

840 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「一日目」 ◆q7l9AKAoH. [saga]:2016/10/25(火) 01:08:32.21 ID:c3UxgdKR0


『(味は良かったんだけどな。料亭の椀物みたいでさ、ラーメン食った気がしねえ)』

[スープはなんだったんスか。やっぱお上品に塩とかスか?]

『(鯛と…鴨節だったな確か。使われてるのは海外の食品メーカーと、お料理同好会みてえなここの派閥の研究成果らしいぞ)』

[次元が違え……]

もしかしたらそれも――たとえラーメンのスープの味付けひとつであっても、提供されている食事内容には違いない――門外不出だらけの常盤台マル秘情報の一つかもしれないのだが。
リーダーからの報告のあまりのトびっぷりにゴーグルが絶句した。
何その和風の極みダブルスープは一般市民の想像をはるかに超えて、そいつはもうあまりに上品すぎるがラーメンと言っていいのか。

いまだ根強い和食ブームが続いてはいるものの、まだ海外でも手に入らない日本の食材は多い。
中でも鰹節は生産段階で必須である麹菌を保有している関係で検疫で弾かれてしまい輸出がほとんど出来ていないのだ。
フランスなどではその代用品として鴨や鹿の肉を使ったものが作られているらしい。
街の内外から諸外国相手に幅広いジャンルで研究やモノづくりをしているとなると、学園都市では優秀な学生の論文一つでその分野の一常識を変えてしまうようなこともおかしくない。

お嬢様学校仕様にカスタムされた一流素材を使った超絶意識高い系ラーメンは、おしゃれでお上品、イメージだけなら女子受けも悪くなさそうだった。
おまけに常盤台生のお墨付きと言ういかにもピントのずれた、それらしいメニューだが。
カップ麺からスタートしたラーメン食いたい欲が高まっていた胃袋にはちょっと違ったのだろう。
注文する時に栄養がどうの、とゴリ押しされたサラダやスムージーを笑顔でいなし、麺を特別に超大盛りにしてもらっていたのに垣根はまだ物足りなさそうな顔をしていた。
スープまで残さずきれいに完食していたので物理的には腹は満たされているはずだったが。

『(お上品で美味いのより、パンチの効いたちょっと体に悪そうなくらいのもんがこう言うときは食いたいもんなんだな)』

飾り切りされた果物をいくつもまとめてフォークで刺して口に放り込むと。
待ち焦がれた食事への期待を裏切られた垣根は残念そうにつぶやく。
腹は膨れても気持ちが満足するとは限らない。

[はい。なんかすんません……あの、まだカップ麺が箱であるんで、仕事終わったら食ってくださいっス。俺は蓋だけ貰えればいいんで]

『(その前にコンビニで済むっつーの。あ、俺いけねえんだった)』

外部学生寮なら目と鼻の先にあるらしいが……現代人の生活に欠かせない超便利スポット「コンビニエンスストア」様も、常盤台の校内にまでは進出していなかった。
ジャンクフードの楽しみ方を再確認したところで、慣れ切っていた便利さへのありがたみまで痛感してしまった。
今現在、常盤台の敷地内でしか存在できない亘木ていこさん一四歳(美少女)の学生生活は、まだまだ苦難が待ち受けていそうだ。


841 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「一日目」 ◆q7l9AKAoH. [saga]:2016/10/25(火) 01:16:41.92 ID:c3UxgdKR0
一日の授業を終えた垣根は使うことになっている寮の部屋に向かっていた。
何か忘れているような気もしたが、慣れない環境でようやく一人きりになった解放感が勝る。
家具の少ない部屋の中は殺風景だった。ソファもないので仕方なくベッドに座るがなんとなく居心地が悪い。
いいお嬢様がこうやって制服姿でくつろいでいる方がだらしないと思うのは、外から来た人間だけなのだろうか。
垣根もつい癖でいつものように座っていたが、足を広げているとスカートが邪魔で仕方なかった。

「ったく……部屋にいる時くらい制服じゃ無くてもいいよな……ジャージとか、ねえのか?」

寮も校内の延長だから私服は厳禁らしいのだが、学校指定のものでもそう言うものはもともと男女差はそこまで感じないだろう。
持ち込んだ荷物とは別に用意された学用品の入った箱を開ける。
いくつか包みをどけると出てきたのは体操着――惜しい。だがこれも下はごく普通のハーフパンツで助かった。
その下からようやく見つかったのは半そでのフード付きパーカー……の更に奥に長袖もあった。なんとなく色やデザインがかわいらしいのはこの際目をつぶる。スカートに比べれば小さな問題だ。
さーて忌々しい服装ともおさらばだ、と垣根は立ち上がるとサマーセーターを脱いでベッドに投げる。
屈んで下を向いたところで虚しくなってため息、スカートのホックも外す。
バサッと足元に落ちる布地の音。
その時、なんとなく背後で人の気配がした。
ふとふり返ったところで目に入ったのは見慣れない女の顔だった。自分一人の部屋の中に他人の姿、なんて安いホラー映画のようで。

「うわっ?!」

思わず大きな声をあげてしまったが、よくよく見れば正体は。

「ああ、なんだよ鏡か」

棚の上に置かれた小さな黒い冷蔵庫の扉に映った垣根自身の顔だった。点いていない真っ暗なモニタが鏡のようにものを映してしまうのと同じだ。
そんな、なんともカッコ悪い一人芝居の顛末に垣根が頭を掻いていると。

「亘木さんっ!」

「はあっ!?」

いきなり部屋のドアが開いて何者かがかけこんできた。
誰かと思えば朝のトンデモお嬢様だ。

「きゃっ? あ、ああわたくしとしたことが失礼しましたわ。お着替え中でしたのね?」

『……ノックくらいしたらどうですか。一体、なんの御用です』

素早く変声機のスイッチを入れると、垣根はわたくし大変おどろきましたわなノリで不躾な来客を静かににらむ。
まさか、垣根を尾行してきたのかと疑念がうかぶ。

「ごめんなさい。教室にお邪魔したんですが、クラスの方に亘木さんはお部屋に向かわれたのではとお聞きして」

そう言えば。
放課後になにか、となんだかそんな話をしていた気もする。

「丁度こちらにきたところで急に部屋の中から殿方の大声がしたので、もしや何かあったのかと……わたくしの、とんだ早合点でしたのね」

『あ、ああ……これで動画をみていましたから』

すかさず、床に落ちていたスマートフォンを指さすと婚后はそうでしたの、と素直にうなずいた。
何ともチョロいお嬢さまで助かった。
突然聞こえた謎の男の声が目の前の同級生の地声なんですよ、と言う発想はまず普通なら思い浮かばないだろうから一安心だ。

「あら。そちらにお着替えに? 何か運動のご予定がおありですの」

『少し汗をかいたので。動きやすい格好の方が楽ですから』

「それでしたら今度、シャワールームをお使いになったらいかがですか? 校外に出るときには『帰様の浴院』が近くて便利ですわ。なかなか使い勝手も悪くはございませんのよ。不都合と言えば……そうですわね、亘木さんにも扉が少し低――」

シャツのボタンを外しながら応対する垣根。
どうやらこのお嬢様、相手の着替えに配慮して部屋を出ていく気はないらしい。
同性同士(だと相手は思っている)ならまあおかしくもないかもしれない。
だが、言葉のとちゅうで振り返りかけた婚后はそこでなぜかはっとした顔をした。と思うと急に顔をそらして、ちらちらと様子をうかがってくる。
いったい何がそんなに気になるんだろう。
あまり見てはしつれいですわ〜の微妙な線で、それでも横目で見られているのがわかる程度の視線を垣根も感じていた。
確かに着替える途中だが。
きゃーえっちー的な反応をしろと言われても急には無理だ。いや、同性に対してそのリアクションこそ怪しくないか。
だがまあ、ごく普通の女子生徒が、急展開で五割ほど生まれたままの姿を晒してしまっている垣根のボディ(おそらく女子仕様)に並々ならぬ興味があるとは思えない。
まさか何かおかしなところでもあったのか、なにかを感づかれたのか。

「いえ、その……亘木さんは意外と、大胆なものをお召しになりますのね?」

なぜか恥らいながらの、思ってもいなかった返事に驚く。
は? と思って垣根は視線を下に落としたが別に普段と変わらない。
変わらない……ように垣根には見えているのだが、この敷地内ではその常識は通用しないのだ。
頭の中を書き換えられている他の生徒達と、同じ視点に立つ手段が一つあることを垣根は思い出した。

『ちょっと、失礼します』

一応婚后に断ってからバスルームの前にある洗面台に向かう。
下着姿のままで鏡を覗いた垣根は次の瞬間、拳を洗面台に叩きつけた。

『食蜂!! あいつ……頭おかしいんじゃねえの?!』
842 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「二日目」 ◆q7l9AKAoH. [saga]:2016/10/25(火) 01:22:21.37 ID:c3UxgdKR0


次の朝。

寝不足気味で二割り増し怖い目つきになっている垣根は生徒たちと並んで食堂にいた。
昨夜はまた校内の巡回もした。成果は特にない。
昼夜フルタイムで任務にあたらせるなんてまったくもってリーダーづかいの荒い組織だ。
それでも起床後、三〇分で食堂へなんて常盤台のお嬢様たちのタイムスケジュールに従ってしまった。
かといって、逆らったところできっと昼食まで食いっぱぐれる。それも癪だった。

寝不足のイライラに空腹のイライラまであわさってついうっかり大惨事、巻き添えで正体露見の二次被害なんて冗談じゃないので生徒たちと食事を摂ることにした。
ここは校舎に近い内部寮だからいいが、学び舎の園より外の寮だとスケジュールはよりタイトになるらしい。
寮からの登校にバスを使う、と言うのもなかなかバカバカしいものがありそうだがお嬢さまには別におかしくない事態なのかもしれない。
起床までの朝の時間の貴重さを珍しく噛みしめながら。
垣根は世を忍ぶ仮の姿でサラダや野菜ジュース、シリアルが並んだ朝食セットを黙って口に運んでいた。

「おっはよぉ。なに? そんな顔して、朝からカワイクしてなきゃダメダメなんだゾ☆」

たった今この瞬間まで、隣で黙々と食事をしていたはずの名前も知らない女子生徒から頬を人差し指でつつかれた。
垣根は手にしていた銀製の食器を落としそうになったが。
不意打ちに固まった口元の筋肉を無理やり笑みの形におしやりながら振り返った。
ぶにっと人の顔に指をおしつけたままの女子の瞳には不自然な星が浮かんでいる。

『……食蜂操祈さんですか』

「少しは慣れたかしら。よく眠れたぁ?」

『安ホテルよりはましな寝心地でしたよ。もう二時間も寝れたら言うこと無しだったんですがね』

「今後の対策力を立てる為にもお話ししなきゃと思ってたのよぉ。この後、いいわよねぇ」

『せめて食事は済ませておきたいんですが』

「そんなに急かさないわよ。何かあったらまたこうやって声かけるからヨロシク。じゃあ後でねぇ☆」

そうして一方的に話し終えると謎のポーズをしてから食蜂――が操作していた生徒は急に静かになった。

「あの…何か?」

正気に戻ったらしい女子は、自分の顔を見つめている垣根に気付いて不思議そうにしている。

『……おはようございます』

「おはようございます」

お互い笑顔で顔を見合わせると会釈をしてそれぞれ食事を再開する。
朝から何をやってるんだ、と肩の力が抜けてしまった垣根は、小さく舌打ちした。

『(……ったく、もう一杯食うか)すみません』

午前中に必要な理想的な栄養バランスが取れたモーニングセットは女子力が高すぎたのか。
男子の胃袋には軽過ぎた。

食事を終えると生徒たちはそれぞれ授業の為に教室に向かっていく。
その中に混ざって入り口を過ぎると、廊下の少し先に今度は食蜂本人が待っていた。
取り巻きは……あえて外させているのか一人きりだ。
周囲の生徒たちは校内最大派閥の女王の姿にも目もくれず歩いていく。
もしかしたら見えていないのかもしれない。

「そうしてると……本当にうちの生徒みたいに見えるわね。点呼に遅れるとご飯が食べられなかったりするんだけど、迷子にはならなかったみたいでよかったわぁ」

『ええ。ここの配置も、昨日一通りは見せていただきましたから』

「あら。仕事が早いのねぇ」

大して意味のないことを喋りながら垣根は食蜂のあとをついていく。
ついでに女生徒のアバターの愚痴もこぼした。
ただでさえ不愉快な制服の下の虚像までわざわざ準備しているなんて、極度の凝り性か嫌がらせに違いない。
そいつも、なんだか状況に応じたバリエーションがありそうな気もしたが、聞いても余計にムカつきそうなのでそこは触れないでおいた。

843 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「二日目」 ◆q7l9AKAoH. [saga]:2016/10/25(火) 01:30:41.81 ID:c3UxgdKR0

「あらぁ。あのメーカーのはとってもいいのよぉ? あなたは鏡像の見た目だけでそれを実感出来ないのが残念なくらいなんだけどぉ」

『ってことはまさか……テメェとお揃いか? はぁあ? マジで頭沸いてんのかよ』

「昔はねぇ。デザインが少ぉし子どもっぽいじゃなぁい? 私は、今は他のブランドよぉ」

『止めろ。頭痛くなってきた』

女子中学生のアンダーウェア事情なんて知りたくない。
それも、自分が着ている設定になっているものなんて冗談じゃなかった。

「そんなに気に入らなかったかしらぁ。ていこちゃんはスタイルも良くしてあるから観賞力は高いと思うけど。なぁに? あんまり好みのタイプじゃなかったのかしらぁ?」

『止めろ。面白おかしい格好でそこの置物の仲間入りしてえのか』

校内に飾られた調度品とお友達にしてやろうか、と脅してみるも、

「あらぁ。私にそんなことしていいのかしらぁ?」と食蜂は無駄に良い笑顔でリモコンを見せびらかしてくる。
垣根がこの場で逆らえないのを良いことに開き直って逆セクハラを仕掛けてくる常盤台の女王。
互いにそれぞれの弱味は握っているが、彼女の場合は自分自身にダメージがないのだ。
それに対して垣根が失うものはあまりにも多すぎる。

「それともぉピンクが嫌だったのかしらぁ? そうね、放課後に一緒にお買い物でもしてあげましょうかぁ。もっとセクシーで露出力の高い方が好きだったり……ああっ、意外に清楚な方がグッときても引いたりしないからねぇ?! 遠慮しないでなんでも相談してくれればよかったんだゾ☆」

年下(恐らくは)と言うことを無視しても、男に対してここまで品も恥じらいも無いのは女としてどうなのか。
お嬢様としては致命的に問題有りな発言だ。


『そもそも、何が悲しくて自分と同じような女の顔を拝まなきゃいけないんだ。ったく、心臓に悪いんだよ』

「そんなに気にしなくても、折角一人部屋を用意してあげたのに」

『ルームメイトにまで神経使ってたら仕事の前にこっちがおかしくなるからな。それくらい当たり前だろ』

「大丈夫よぉ、今はちょっと口が悪いけどみんなにはちゃんと可愛く見えてるんだからぁ。でも、知り合いを作っておくのは便利よぉ? どうかしら、お友達でも作ってみたら」

『一応言っとくけど、テメェと違ってボタン一つで済むわけじゃねえからな』

なんてぶつぶつ言いながら歩いていくと廊下の曲がり角で生徒とすれ違った。
垣根は無視して通り過ぎようとしたのだが。
相手が突然立ち止まったので行く手を塞がれてしまった。

「へ?」

ぽかんと間抜け顔を晒して生徒は垣根を。
見上げた。
まるで自分より頭一つ以上背の高い相手にするようにして。

「ひゃああ? なっ、何?! なんなの!!」

いきなり挙動不審な女子が現れて垣根は首を傾げる。

『なんだこれ』

「あっ、いっけなぁーい」

「なっ、あ……食ッ……え? 何これ?」

目の前の状況が理解できないと言った様子で固まる不審者。
それはこっちのセリフと言ってやりたいところだが、食蜂と垣根を交互に睨むので忙しいらしい。

『何だよ』

「忘れてたけどぉー御坂さんにはぁー、わたしの改竄力が通じないのよねぇーーー」

『……つまり』

「やっぱ、へ、変態ッ?……もがっ!」

不名誉な大声を出そうとした生徒を壁際まで追い込み、押さえつけながら垣根は不自然に棒読みな食蜂を睨みつける。
もう片方の手で変声機のスイッチも切り替える。
声を出さないよう顔を掴まれた女子はなにやらバチバチ派手な音を立てて放電しているが、今は『未元物質』が働いているので垣根はどうと言うことはない。

「こいつには最初っから……俺が見えてるってことだよなぁ? みーさきちゃん?」

正体が見えている相手にばれないようこそこそ振る舞う意味はない。
そんな垣根の行動に、一瞬なにか、驚いて当てが外れたような顔をしていた食蜂だが、

「やだぁ、ていこちゃんったら顔が怖いゾ☆」

なんて元凶の癖ににっこり笑った。
844 : ◆q7l9AKAoH. [saga ]:2016/10/25(火) 01:47:53.65 ID:c3UxgdKR0

ドーモドーモ。
やっと二日目ですね。今回の件は三日目でなんとかなる予定。日付は。


>>835
乙ありです!
みさきちゃんにもでてもらうぜー更にここで追加キャラみこっちゃんだよ!
今の常盤台のパワーバランスは
美琴>みさきち>ていこちゃん>美琴の三すくみですからな。
超能力者二人をからかえるのは心理掌握だけ!

>>836
ここでもう一度ぴょんぴょんしろコラ
こんごーさんはいいこだよな。いやー出来たおじょうさんだ。
ていこちゃんはこの安価のヒロインだからな、されるh
あれ、ヒロ、イン……?

>>837
乙ありですの
予想外にじわじわくるのになってます。
腹筋の健康の為には心の目で可愛い女子を補完するのをおすすめしたい。
はよはよ!アニレー三期なららっこさんもワンチャンあり!アニメ化すれば頂点もあるだろ『スクール』だって謎世界線で寸劇に混じれるだろそうだと言ってくれよ運営!
ていこちゃんボイスはお好きに再生すればいいと思うね?
845 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/25(火) 08:50:01.55 ID:3ZhH8gtio
クラス全員が一人一人くじ引きで決めた英語とフランス語とロシア語みたいに違う言語同士で会話する授業がある常盤台がごく一般的な高校なら追い越しているだと……?
どう考えても上級大学すら超えてませんかね(震え声)
ミコっちゃんは頭の体操にはなるとかのたまってましたが
846 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/27(木) 08:44:28.12 ID:rrb6zWgS0
そういえば存在しないていこちゃんの立派なおっぱいは揉めないのだろうか
それとも揉んだと錯覚するだろうか
847 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/27(木) 11:55:11.21 ID:8UWcs7HLo
俺男だけどピンクの下着くらい男の子でも着けると思うの
848 : ◆q7l9AKAoH. [saga]:2016/10/31(月) 02:52:46.93 ID:IcE0/R5d0

麦野「去年は何もしなかった癖にド派手にハロウィンパレードとかいきなり何だっつうの。脳がわいてんじゃないの?」

垣根「そのプロモーションに俺らを使おうとかいよいよお祭り騒ぎなんだろうな。頭が」

御坂「当日はパンプキンゲコ太も遊びに来るのよね……握手とか、してもいいのかしら」

食蜂「ずいぶんと衣装力があるのはいいけどぉ。サイズとか大丈夫かしらぁ?」

削板「おーし祭りだ祭り! お前らも根性いれろよ!」

垣根「なんだよ。第一位様はずいぶんと静かだなぁ?」

御坂「ちょっと、あんたの携帯。待ち受けにFUKIDASIの通知がすっごい出てるけど……『それじゃあミサカ達と一緒にパレードは見にいけないの? ってミサカはミ』……あちゃー」

垣根「あー」ニヤニヤ

食蜂「へぇー」

削板「なんだ一方通行。落ち込んでんのか? 根性出せ?」

一方「……人のを勝手に読ンでンじゃねェよ。誰がだァ削板」

食蜂「あらぁ。でも今日宣伝用の撮影が出来たら当日はそんなに拘束力がないんでしょぉ?」

垣根「馬鹿な格好でパレードカーで周回させるっつったらその日は出ねえからな」

削板「なんだそうか。一方通行、良かったな!」

一方「るせェ。大体なンでまた超能力者なンだよ。他にねェンですかァ」

垣根「まぁ俺たちも、今やそれなりの著名人だしな。だからって馬鹿やらせんのは向こうの正気を疑うが」

御坂「でも、なんでかしら……垣根さんってそう言うのなんだかんだやってくれそうよね」

食蜂「あらぁ。私もそう思ってたのよぉ。おまけに似合いそうよねぇ」

麦野「なーんかちょろそうよね。こいつら」

垣根「餓鬼を盾にされたら何でもホイホイ受けちまうのとは一緒にされたくねえ」

一方「オマエがそれ言うなって気分がすンのはなンでだろォな」

麦野「ハロウィンねぇ……何着ても馬鹿らしい気がする」

垣根「お。麦野、バニーがあるぞ。バニー。ウサ耳よりは…ムチの方が似合いそうだなお前」

麦野「死ねよエセホスト」バシュゥ

垣根「ああ。無理」チュイン

一方「こっちに曲げンな」カチッ

御坂「ちょっと。室内でそんなの撃たないでよ」ビリッ

削板「なんだお前ら喧嘩か? よーし表出ろ!」バシッ

垣根「おー。ナイスキャッチ」

御坂「『原子崩し』って素手でつかめるものなの?」

麦野「意味わかんないわ」

食蜂「なんでアナタたちは無駄に野蛮力が高いのぉ?!」ブルブル
849 : ◆q7l9AKAoH. [saga]:2016/10/31(月) 02:56:02.06 ID:IcE0/R5d0

垣根「麦野がそんなに嫌ならウサ耳はこっちだな」ポイ

一方「……あァ?」カチッ

御坂「えー」

食蜂「なんでそうなるのか理解力に苦しむわぁ」

垣根「ほら。あったあった。アリスのウサギの衣装だ。アルビノじゃまんま過ぎて面白くねえか? っつーかおい。耳どこやった」

一方「あっちだ」

食蜂「削板さんの頭に乗ってるわねぇ。すっごく似あわないわぁ」

削板「何だよ食蜂。他のやつみたく俺のことは呼び捨てでいいって言ったろ」ウサ

食蜂「いいわよぉどうせ年上なんだしぃ……距離力も置きたいのよねぇ」

御坂「そのへんならウサギ、アリス、チェシャ猫に。あとはハートの女王かしら」

麦野「女王って言ったら」

食蜂「私なんだゾ☆ でもねぇ。私は首なんてはねて欲しくないわぁ。そんなに傲慢力も高くないし。まぁ、御坂さんがウサちゃんならいいかもねぇ? 手下力を発揮してもらおうかしらぁ」

御坂「それ、前に着たからいいわ」

麦野「なんかどれも遊園地の衣装みたいな服ばっかねえ」

垣根「まぁベタなやつか童話の有名どころだよな。仮装ってのも」

一方「メルヘンだしなァ」

垣根「あぁ?」

一方「はァ?」

食蜂「御坂さんほら着ぐるみがあるわよぉ。ゲコちゃんだったかしらぁ?」

御坂「それは普通のカエルじゃない。いい? ゲコ太はね…………」

一方「じゃ、あれだ。さっきのシリーズで愉快な羽が欲しいンなら……パイプくわえた芋虫の進化形にでもしろ」

垣根「誰が繭だってこの野郎」

一方「蛾になる気満々じゃねェか。つゥか蝶じゃねェのかよ」

垣根「お。こっちにミイラ男の衣装があるが……お前はやめとけ。病人にしか見えねえからな」

一方「オマエは白っぽい服で背中に羽根で天使でいいじゃねェか。楽だろ」

垣根「仮装すんだぞ? それじゃいつもの俺と変わらねえだろって天使なんかじゃねえよ!」

一方「自分で言ってりゃ世話ねェよ」

削板「これにするか」

御坂「ねえこっちに着物もあるじゃない。すごーい何でもあるわね」

食蜂「ほんとねぇ。でも」

麦野「着るのに面倒なのよねぇ。この辺にこう…高低差があると」

食蜂「そうそう。胸囲力がない方が和服って似合うのよねぇ。ほら、御坂さぁんこれかわいいわよぉ」

御坂「アンタ達……そう。黒焦げになりたいのかしら?」

削板「おい。お前らまだ決めてねえのか? あんま遊んでんなよ」
850 : ◆q7l9AKAoH. [saga]:2016/10/31(月) 03:01:47.80 ID:IcE0/R5d0

垣根「ん? 麦野あれもやめたのか。ヘソ出しの悪魔の衣装。 エロかったのに」

麦野「エロさを求めてどうすんのよ。ハートの女王様でいいでしょ」

食蜂「御坂さんは魔女にしたのねぇ。小悪魔はよかったのかしらぁ?」

御坂「アンタとお揃いになっちゃうじゃない。こっちはオレンジだし。きっとパンプキンゲコ太に合うと思って。ふふ……一緒に写真撮ってもらおう♪」

一方「だめだコイツ、カエルのことしか頭にねェぞ」

垣根「見ろよこれ。俺こんな弱そうな狼男はじめてみたぜ。あれって基本パワー系のモンスターじゃねえの」

一方「オマエは……ああ、ぴったりじゃねェか」

垣根「だろ? やっぱほら、ファンタジーでも美形の代表格だろ吸血鬼。衣装も豪華で血と薔薇が映えるぜ」

一方「いや、中二臭いし無駄に仰々しいとこだ。あと活動時間が非常識だろ」

垣根「日焼けで死にてえのか犬っころ」

一方「その格好で体張ったギャグか蝙蝠野郎」

麦野「あんた達揃ってドラキュラと狼男って。『ワルプルギスの夜』かよ」

御坂「なにそれ」

食蜂「さぁ?」

麦野「じゃあ『アンダーワールド』は?」

食蜂「しらなぁい」

一方「オマエもなァ。なンでいきなり和風なンだよ」

御坂「甲冑って……似合ってるけどね」

削板「いいだろ! 根性みなぎるぞ!」

垣根「よーし麦野と並べ。ほら、首刈りコンビだ」

麦野「さぁ! その首吹き飛ばしてやるよ!」

削板「戦に必要なことは!根性のぶつかり合いだ!」

食蜂「途端に物騒力が上がったわぁ……」

一方「ガキが泣くだろォな」

垣根「いやお前ほどじゃないだろ。トリックオアスクラップとかトラウマになるから」

御坂「お菓子関係ないじゃないそれ」

垣根「だってこいつ辛党だろ? そうか……トリックオア! トリート!」

一方「ン?」

垣根「よっしゃあ俺の勝ちだ。三回回って『負け犬だワン』って言ってもらおうか一方通行!」

麦野「ハロウィンって命令していいルールだったあ?」

御坂「お菓子かいたずらか、って言うけどお菓子以外を選ぶ人もいないんじゃない?」

食蜂「少なくとも勝敗力もないわねぇ」

一方「ン」つ飴

垣根「なん……だと。何で、なんでテメェが菓子なんか持っていやがる?!」

一方「知らねェよ。着替えようと思ったらポケットに詰めてあったンだ」

麦野「そんなに驚くことかよ」



黄泉川「あれ? おーい打ち止め、ここにあったアメ玉知らないじゃん?」

芳川「飴なんてどうするの」

黄泉川「いたずら除けじゃん。ハロウィン前の週末だから浮かれた子どもたちに目を光らせなとかなきゃいけないじゃん」

打ち止め「ミサカもあの人とトリックオアトリートがしたかったのに…ってミサカはミサカはしょんぼりしてみる」グス

芳川「あ、愛穂。缶コーヒーならあるわよ」
851 : ◆q7l9AKAoH. [saga]:2016/10/31(月) 03:13:32.60 ID:IcE0/R5d0

ドーモ。
時事小ネタ超能力者アイドルでハロウィンの仮装。
ハッピーハロウィン

>>845
追い越すにも程があるよな。常盤台はおそろしいところだ。
超能力者も平然と外国語使うし、とにかく普通にと教育を受けさせられている上条さんのような学生はとても不幸なんじゃ…だから英会話のべんきょうする!って見当違いなこといってロリシスコンに殴られるんだよ。

>>846
洗脳されていれば触った方はそのつもりなのでは?
見えるのになぜかどうやっても触れないというのも面白そうだが。
蜃気楼非実在おっぱい逃げ水エア乳。
どっちにしてもトライするとていこちゃんには冷ややかな目でみられることうけあい。

>>847
もともと本人に女の子バージョンを見せる意味ないのに下着姿まで無駄に仕込んであるのが頭おかしい。
みさきちがさり気に垣根の、女子の下着の趣味の話を振ってるのもいやがらせでセクハラだと言うことで?
垣根の普段の下着ならどうぞご本人に聞いて愉快な死体にドーゾ。


852 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/31(月) 11:36:40.44 ID:ULCIaiFBo
更新しなきゃ悪戯しちゃうゾ☆って書き込もうと思ったら更新されていた。
853 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/31(月) 13:59:53.32 ID:w6ysZlqyO
滝壺とかもロシア語話してたし常盤台でもまだ中1の湾内さんが当たり前のようにラテン語まで理解してたからな……
854 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/01(火) 10:26:59.88 ID:SfIpcXH6O

パズデックスで削板と麦野のハロウィンコスプレ拝めると思ったのは俺以外にもいるはず
855 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/02(水) 01:37:53.14 ID:MCsRrDmQ0
似合わない女装男がお嬢様JCをしてる姿を見せられる御坂さん……
一人だけ笑ってはいけない常磐台開幕しそう
笑ったらケツ未元物質
856 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/02(水) 03:56:20.15 ID:KzW66EElo
>>855
ゴーグル君のケツに・・・!?ゴクリ
857 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/25(金) 00:04:24.75 ID:lt1EkTL8o
保守。垣根君とスクールは正義であり癒し。異論は認めない。
858 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/27(日) 14:09:38.66 ID:LjV1G8PA0
心配無用な気もするがお前ら超電磁砲だけじゃなくて偶像の方も単行本買っとけな
はいむらのスクール描き下ろし見れんぞ心理定規かわいい
859 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/11/28(月) 14:43:53.10 ID:WfFR35qOO
>>858
ファッ!?こマ?
買う予定ないのに…
860 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/09(金) 23:55:49.04 ID:mt8yBfSAo
ウザイ誤字指摘でごめんね?でも読み返してたら気になったんだね?
>>243でパリ、グアム、ハワイと言ってるけど、「パ」リじゃなくて、「バ」リなんじゃないかな?
セーヌ川でシブブプレじゃなくてインドネシアでジャワカレーだと思うんだ。
861 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/23(金) 00:19:13.49 ID:ikcyRD+r0
クリスマスには小ネタという名のプレゼントがあるはず
862 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/23(金) 13:11:14.00 ID:nzLkobiio
垣根帝督(notていこ)のミニスカサンタを見たい
863 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「二日目」  ◆q7l9AKAoH. [saga]:2016/12/26(月) 02:37:50.61 ID:eUWzAfWn0

いきなり
「廊下の角を曲がったら突然現れた女装男子(おまけにデカい)に壁ドンされちゃった☆」
なんて言う意味のわからないイベントに巻き込まれた美琴は、食蜂達に使っていない教室に連れ込まれた。
どうやら何かあったらしいのは見てわかる、と言うかこれで何もなかったらそっちが問題だ。
意味もなくおかしなことがこの常磐台で起きているなんて美琴も考えたくない。
そんな風に。
このおかしな事態の説明を期待してついてきたのに、食蜂は先に下準備を済ませてくると言い残して出て行ってしまった。
おかしな事態……変態もとい不審者改め、制服姿のお兄さんと二人きりで残されてしまった。
謎の女装男子は暇そうに部屋の中をうろうろした後、その辺の椅子に座るとスマホを出してなにかしていた。

「あ。ったく、また死んだ。は? いや、今はちょっとな。ああ……多分な」

一人でブツブツ言うと、画面から視線をあげて美琴をみる。
そんな風にますますおかしさの増す不審人物をキッと見据えて。
あの女を待つまでもない、と美琴は意を決して口を開いた。

「アンタ……何してるの?」

「何かすぐ死ぬ生き物育てるアプリだ。こいつらも運がねえんだな、さっきから五回連続で死んでる」

身構えていたところに気の抜けきった答えが返ってきた。
予想外すぎる出鼻のくじかれ方に芸人並みのリアクションではなく実際にずっこけそうになってしまう。
そう言うことじゃないだろ! つうかゲームしてんのかこの状況で? ナメてんのかおんどりゃー!
と美琴も言ってやりたかった。

だが相手はこの常盤台の電撃姫、御坂美琴の電撃が通じなかった男だ。
ついでに常識面も通用しない程度にどうにかしているらしい。この状況でマイペースにもほどがある。
…しかも女子の制服を着てる。
あの馬鹿でもない、得体のしれない相手に問答無用で喧嘩をふっかけるのが名案だとも思えなかった。
しかも食蜂の連れらしいから手出しするとややこしいことになるかもしれない。
怒号たっぷりの質問を浴びせたくなるのを今はぐっとこらえる美琴。
喧嘩っ早い彼女にしては驚きの踏ん張りで相手を睨むにとどまる。
…その上女子中学生のコスプレをしてる。
わけがわからないからこそもう少し様子を見たかった。
……よく見るとサイズがぴったりなのが不気味だ。


「たっだいまぁ。ちょっと根回し力を発揮してきたから御坂さんもこの後の授業出なくても別に大丈夫よぉ。超能力者が揃って授業中に行方不明なーんて大騒ぎになっちゃうものねぇ」

「遅えよ」

戻ってくるなり、代返どころか記憶とデータの改ざんで堂々とサボリ宣言をする食蜂。
それに気軽に…と言うよりやけになれなれしく声をかける少年。
やっとおかしな空間に変化の兆しがあったことにほっとしたのもつかの間、んん? と何か引っかかる美琴。

彼女もその立場上、上級生や大人にも丁寧に仰々しい扱いを受けることがある。
学年問わず生徒を侍らせている食蜂も同様に、いやプライドの高そうな彼女なら美琴以上にその辺りのことを気にしておかしくない。
「私に向かってそんな態度はだめなんだゾ☆」なーんてリモコン一撃でとっくに矯正されていそうなのに操り人形にされている雰囲気がなかった。
そのままでいるのは、きっと何かある。
どうやら奴はただの変な人ではないらしい。
864 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「二日目」  ◆q7l9AKAoH. [saga]:2016/12/26(月) 02:42:02.15 ID:eUWzAfWn0


「紹介が遅れたけどぉ。御坂さぁん、こちら新しいおともだちのていこちゃん。ていこちゃん? こちらが御坂美琴さんよぉ」

「ああこれか。常盤台の超電磁砲な……テメェら……タメか?」

ふーんそうか、と呟く変態もとい訳ありっぽい男子は美琴と食蜂を見比べていた。
何を、とは言わないし深追いしたくない。
美琴は誰かれ構わずビリビリしてやるタイプでもないのだが、あんまりにも失礼だとバチッと一発お見舞いしてやっても許される気がする。
しかしこいつ何者なのか。
さっき出会い頭に、身の危険を感じてちょっと強めにバチバチしていたのだが本人はケロっとしている。
でも放電は出来ていたから、どっかの馬鹿みたいに電撃を打ち消されている訳でもなさそうだ。
人を待たせていたはずの食蜂は近くの机の前に座ると無駄に優雅に髪をはらう。
両手をあわせて長い金髪を追った指先を組むと。
ますます現状に不信感をつのらせて、ついでに興味も増している美琴に向けて女王様はニィッと笑った。

食蜂たちはこの学校の生徒たちが巻き込まれた事件を秘密裏に調べているらしい。
はっきりとは言わないが、偉い人たちに頼まれたのだと言うニュアンスが面倒臭さと一緒に話のなかにたっぷり込めてあった。
その件なら美琴にも聞き覚えがあった。
確か。
消灯後、深夜に部屋を抜け出した生徒たちが校則違反の注意や処罰の対象になったのに当の本人たちがみんな揃って容疑を否認。
防犯カメラの記録に現行犯での確保まで物的証拠は用意できたが、本人の証言も謝罪・反省も取れず。
ついには読心能力者までかりだされたが嘘の反応も出ずになんとも後味の悪いことになったらしい。
この学校の生徒の間では『夢遊病事件』なんて呼ばれていた。
今、話題にされるまで
「そんなこともあったなあ」程度でしか美琴も興味はなかったが。
身に覚えがないと言うのがもし本当なら、当事者はきっと嫌な思いをしただろう。
でもそれも含めて、済んだ騒動の割には後日談や噂の真相は話題に上らなかった。
お嬢様でも女の子は噂話が好きだったりするが、もしかしたら流行が早い分飽きられるのも早かったのかもしれない。

「それってもしかして先週騒ぎになったやつ? 解決したんじゃなかったの」

そう思っていた美琴は首を傾げて食蜂をみたが、ニマニマしている彼女の顔に気付いてハッとする。

(コイツの能力なら、不都合な記憶や情報はいくらでも好きに出来るはず、誰にも気づかれずに校内に箝口令をしくことだって……)

それと同時に話の重要さも浮き彫りになってくる。
常盤台、いや学園都市でも頂点に位置する精神系能力者がスイッチ一つで済むはずの調べものをわざわざ自分していると言う事実と。
事件の背後にあるのが最悪、『心理掌握』を出し抜けるかもしれない何らかの手段と言う可能性だ。

「実はぁ、まだなのよねぇ。他の人に知られるのは極力抑えたかったのよぉ。今こうしてるのも、彼女のことが御坂さんにバレちゃったから仕方なくよぉ? 不可抗力なんだからぁ」

カノジョ、と言いつつ食蜂は少年を指さす。
なんなんだと食蜂にも電撃付きでツッコミをお見舞いしてやりたかったが、一応まだ話をしてくれる様子なのでぐっと我慢する。

「年頃の女の子が夜中にふらふらしてるなんて危ないでしょ? おまけに本人が何をしてたかろくに覚えてないなんて……いやよねぇ?」

更にそれだけではなく。
操られた可能性のある生徒たちの起こした事件の中には常盤台のデータベースへ侵入しようとしたものもあるらしい。
それはすぐにセキュリティが働いて、アクセスした端末を探知し即現行犯で現場をおさえて捕まえたそうだ。
ただのいたずらでは済まないような大事の可能性があるが。
それを聞いた美琴はあからさまに不機嫌な顔をした。
そう言う話なら、彼女の方だって解決役として適任ではないのかと感じたらしい。

「何よ。外部に応援は頼めても私には話も出来ないっての」

「そうよぉ。この事件に関して校内で私が信用力を発揮出来るのは私自身だけだものぉ」

その言葉に頬杖をついていた少年は食蜂をにらみつけた。
どういう意味だ、といいたそうな視線が返されるのを待っていたかのように、食蜂はにっこり不敵に笑みを返す。

「アナタはまた別よぉ。じゃあ質問。超能力者である私が自分よりも劣る精神操作能力者の影響を簡単に受けるかしらぁ? 答えはノー。学園都市最高峰のこの能力を外部操作出来る手段が……そう幾つもあってはたまらないわぁ。対策力は万全よぉ」

何が面白かったのかはわからないが、常盤台の女王を自称する彼女はそのあだ名に似合わず自嘲気味にそう付け加えた。
それに校内の能力者は、風紀委員が一番最初に取り調べをしていたらしい。
それでも、食蜂が一番怪しんでいるのは精神操作の出来る能力者だと言う。
確かに、マインドコントロールの出来る機械なんてものが存在したら、不快力全開でとっくに潰していそうだった。

865 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「二日目」  ◆q7l9AKAoH. [saga]:2016/12/26(月) 02:47:40.25 ID:eUWzAfWn0

「御坂さんはたまたま、私の『心理掌握』を能力的な特性で防いでしまってるのよぉ。でも、他の能力者に対してはどぉかしらね。洗脳能力と一口に言ってもアプローチの方法力は人それぞれなんだけどぉ」

そう言って今度は食蜂の目が美琴に向けられる。
菓子パンの裏に貼りつけられた食品表示のラベルを読むような視線だった。
その上、そこに書かれていない情報こそが本当に知りたいことだとでも言いたげな、信用していない顔だ。

「私も……事件の黒幕に操られるかもしれないってこと?」

「或いは、既にね。だからわざわざていこちゃんを呼んだのよぉ。こんな格好までしてもらってもぉ大変」

「だからテメェはいちいち俺のカンに障りてえのか」

さっきから、彼女とかおかしなあだ名で呼ばれている男性は、食蜂にこうしてからかわれ続けているのだろうか。
今までのやりとりで常盤台のトラブルを解決する為にわざわざやって来た、と言うことは大体わかる。
この格好もその一環なのだろうと思うと、美琴も同情する気になった。
それにしても。
どう言い訳しても中学生にだって見えやしないのに、よく女子の制服を着せたものだ。

「ごめん。この人誰?」

「あらぁ知らなかったの? この人も超能力者よぉ。第二位のぉ」

「垣根帝督」

むすっとした少年は嫌そうな顔をして名乗った。

「今はていこちゃんよぉ」

やっと本名が出たと思ったらまた食蜂がまぜっかえしてしまった。
二人の話では、常盤台に在籍する第五位も第三位もあてにならないからそこまで話が上げられた、と言う事情らしい。
そう言われるとなんとなく経緯がわかるし納得する。
もし能力者の序列が元で呼び出されたのなら、本人はそりゃあ迷惑だろう。

「えっ。じゃあアンタの手にも負えなかったら第一位まで繰り上がったりするの?! 校内に変なのが増えるなんて嫌よ」

「なんだそれ。そんなん来たら笑い死ぬ自信がある」

「やだぁ。ここに悪趣味なオブジェなんて増やさないで欲しいわぁ。元イケメンでも死体はいやよぉ」

あの第一位、一方通行が女子の格好でやってきたらなんて恐ろしすぎてシャレにならない。
世にも奇妙な想像をしてしまった美琴はブンブン頭を振って更なる災厄の具現化を頭の中から振りはらった。
「鈴科百合子でェす」なんて裏声で言われた日には夢にまで出てきそうだ。

第二位だから第三位より頼りになるか、と言う単純な話かと思いきや。
理由はそれだけじゃないらしい。
常盤台関係者の風紀委員や警備員でも解決できず。
不審に思った女王が独自に手をだしたものの。
事件の目撃証言も、容疑者の身辺捜査もとにかくこれといった有力な情報が出ずに調査は難航。
ついには彼女たちの言う「偉い大人」の耳に入り、事件が表立って騒ぎになる前に食蜂たちが動くことになったらしい。

「私の調べた中で、数少ない犯行現場の目撃者がいたんだけど。そんな数少ない証拠なのに記憶も消されてないし、探っても改ざんや小細工の跡もなかったのよぉ。きれいにそのまま。痕跡を今までなんにも残さないようにして、きっとがんばっているはずの犯人さんはいったいどうしちゃったのかしら……って思うわよねぇ」

そこに突破口があると食蜂は考えた。
消さないのではなくしたくても出来なかったのだとしたら。
犯人の対処が及ばない例外、ちょうど食蜂にとっての美琴のような天敵があるとしたら。
利用しない手はないだろう。
それはどんな人でしょうか? ともったいを付ける食蜂。ヒントは……ここでは珍しいわよねぇ、と彼女はわざとらしく笑った。

「それって」

「男か?」

垣根と美琴は顔を見合わせる。

「正解。犯人さんが干渉力を発揮出来るのは女性か、他に何か理由があるんじゃないかと考えたのぉ。だからアナタのところの能力者では不十分だったんだゾ。協力者が取り込まれる可能性があったんじゃ意味がないでしょ☆」

なぜか垣根にウインクして見せる食蜂。
その目撃者、警備を担当していた人たちの証言がとれたのも最初の二件までで、すぐに次の犯行時刻は男性職員の見回りの時間からは外れたものになってしまったと言う。
対策のはやさからも相当慎重な人間の仕業だというのがうかがえた。
事件の首謀者への対抗策として男を使う……巻き込まれた可能性を含めた関係者が全て女性で、男性には一切関わりなし、と言われるとそう考えてもおかしくないのかもしれない。

「そうか。容疑者、いや被害者か? それを誉望のやつが見つけたのも……俺たちの仕事は正規の警備とは絶対にかち合わないようになってたからだろうな」

そう呟いた垣根はいきなり渋い顔をした。何か嫌なことでも思い出したのだろうか。

「ったく、食蜂テメェそれをもっと早く言えよ。聞いたからってはいそうですか、なんて気持ちよく返事もしねえけどな」

それにしてもあれだ。
第二位の超能力者らしいと言うのに垣根ときたら、格好のせいでいちいちしまらない。

「いっ、意外と似合ってるわよ? うちの学校はお化粧ダメなはずだけど、それスッピンよね? うん、美人美人」

「誰が化粧なんざするか。黙れ」
866 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「二日目」  ◆q7l9AKAoH. [saga]:2016/12/26(月) 02:51:59.54 ID:eUWzAfWn0

「裏で糸を引いてる犯人は自分の弱点もよくわかってるっての……だからって食蜂、これがアンタの作戦なの? 女装した協力者に捕まえてもらうなんて、こっちもかなりの問題じゃない?」

美琴がはっきりそう言うと本人も嫌そうに食蜂をにらんでいた。
彼だって、常盤台の偉い人から何か頼まれたのかもしれないが、それでも気分はよくないんだろう。
そんな、ごく当たり前だろう反応にも食蜂は
「御坂さんみたいな数少ない例外を除いて、私の改竄力は効果抜群よぉ。同系統の能力者でさえ、彼の姿を誤認させられてることにも気付かない筈だわぁ」
と、自信まんまんだった。
なら服もどうにかしてやればいいのに、と美琴も同情する。

「でもあんたが操れるのは人間だけでしょ? 電子機器は例外よね。ケータイでも写真や動画は撮れるんだし。探してる犯人じゃなくても、誰かに監視カメラや警備ロボの記録をみられたらすぐバレそうじゃない」

「そこも対策力は練ってあるわぁ。犯人さんは今まで、他の生徒や職員にコンピュータの操作をさせていたのよぉ。本人にそこまでの技術力は期待出来ないんでしょぉねぇ。他の人にもバレる前に尻尾を掴んじゃいましょぉ」

美琴の意見を聞いた垣根は。
改めて自分の様子を、と言うか主に腰から下に視線を向けて。
げんなりうつむいてしまった。

「こんなふざけた格好してんのが知られるなんざ、想像もしたくねえ」

「あらぁ? そんな顔しなくても大丈夫よぉ印象操作はしてあるわぁ。私の洗脳力下にある人間はアナタにカメラを向けるなんてことは思いつきもしないから平気平気」

「その言葉、違ってたらどうなるかわかってんだろうなテメェ」

「ま、話はわかったわ。知らない間にそんなことが起きてたなんてね」

そんなこんなで美琴も混乱の壁ドンから事態を把握した。

「本当に。迷惑しちゃうわよ。不本意だけど人手が増えたし、私も少しは楽できそうでよかったわぁ」

「アンタねぇ、しれっと人を巻き込む気?」

「その気がなかったらこんなに話をしてないわよぉ。それに御坂さんだって何かあると知った以上は首をつっこまずにはいられない性分力じゃない?」

そう言われて。
美琴の脳内に、とある巻き込まれ体質の首つっこみたがりで年中ひどい目にあっていそうなツンツン頭が自動再生された。
ちがうちがう誰があの馬鹿なんか……と美琴は無駄にあわあわしてしまう。
だが、食蜂はおかしな真似もしていないし今の美琴の頭の中も読めない(はずだ)。
もちろんそんな事情を知らない垣根からも、突然の奇行に冷ややかな目を向けられてしまった。

「でも……そぉねぇ。ここで御坂さんを押さえておけたのはある意味とっても幸運かも。学園都市最高水準の『発電能力者』、アナタにかかればその辺の電子ロックやセキュリティなんて鍵のささったドアみたいなものでしょぉ?」

確かに美琴なら発電能力で校内のネットワークやデータベースに力技でアクセスすることも可能。
敵の目的が何かわかれば相手を追い詰めることも出来るだろう。

「先手を打てたかもってこと?」

「こいつが操作されてなきゃ、の話だけどな」

垣根はそう言ってふん、と鼻を鳴らした。
食蜂と違って警戒している素振りではない。
そうなったらすこしばかり面倒だ、くらいの反応だ。
もし他の超能力者と敵対することになってもこの余裕……と言うか見下した態度は変わらないのだろうか。

「見た限り今のところは……だけど御坂さんは大丈夫だと思うわぁ。私が犯人さんで、もしチャンスがあるなら最初から一番強い駒を手元力に置いておくもの」

「まぁ、いかにも非力な弱者の考えそうなやり方だな」

「玉座についたら動かないのも強者の役割じゃなぁい? アナタ達二人みたいな野蛮力の高い人にはわからないかもしれないわねぇ」

「だが……大元の犯人、そいつは何度かしくじってるんだろ。リスクが上がれば当然焦りも出てくる。なら、こいつを餌に釣れるかもしれねえな。起死回生の一手にはもってこいの筈だ」

「あらぁ、お目が高いわぁ。御坂さんを使おうなんて容赦のない卑劣力ねぇ」

垣根と食蜂の二人は何やら悪い顔をして悪の参謀っぽい話をしていた。
超能力者たちによるこの集まりは、学校や生徒の為の正義の活動である、と祈りたくなる光景だった。
唯一まともな正義感をふりかざしてくれそうな美琴だったが、しばらく黙った後で何やら食蜂を手招く。

「ねえ。あの人に真面目な顔をされればされるほどおかしくってしょうがないんだけど。何とかならないの?」

「仕方ないでしょぉ? 御坂さんに妨害力があるのがいけないんじゃなぁい」

どうやら、笑いそうになって会話に加われなかっただけのようだ。
食蜂は既に慣れたのか大丈夫そう、と言うか何だか楽しんでいる節がある。
その点美琴はかわいそうだなあ、と思うと笑いの方も収まらなくなってしまう。
そんな時。
シャシンヲトッタゲコ! と美琴の携帯電話が喋った。

867 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「二日目」  ◆q7l9AKAoH. [saga]:2016/12/26(月) 02:55:11.41 ID:eUWzAfWn0

「あっ……えっとお、あははー……」

自分のしたことに気付いた美琴はにへらっと中途半端な作り笑いを浮かべた。
『心理掌握』の干渉を防いでしまう彼女はなんの抵抗もなく軽い気持ちでカメラを向けたのだが即座にそれを後悔することになる。
ずっと不機嫌そうだった垣根の目がものすごい勢いで美琴の動きを追っていた。

「は? 何してんだテメェ」

「きゃっ!」

勢いよく立ちあがる垣根。
美琴も慌てて席を立って後ろに逃げる。
とっさに、と言ってもそこまでしたのはそれくらいの危機感を感じてしまったせいだ。
武装無能力者の集団に囲まれたって余裕しゃくしゃくの御坂美琴サマをびびらせるとは流石第二位。
なんてふざけていられる余裕は無い。
すぐに追い詰められてしまう。
壁が砕かれるんじゃないかと言う勢いで壁ドン(本日二度目)が見舞われた

「私……その、好きなのよね? 男装とかそう言うの……それで、つい?」

と言うのはもちろん適当な嘘で、特に何も考えずに撮った。
おもしろいものをみつけるとついついカメラを向けてしまう、現代っ子の悪いところだ。

「ふざけんな?」

端末を美琴の手からもぎ取ると、垣根は眉間にしわを寄せて画面をにらむ。

「写真どこやった」

「ちょっと……待って。携帯貸して」

乱暴に扱われている緑の携帯が握りつぶされる前に、垣根の手から取り返した。
慌てて美琴は画像データの中から『風景』と名前の付いたフォルダのロックを解除してもう一度渡す。
一番上に撮ったばかりの垣根の写真。
あとはずらっと、煌びやかな衣装を着た舞台の上のスターの画像が並んでいた。

「……マジか」

「そう! そうなのよ!! なかなか男役にだってあなたほど美人でイケメンなんていないから! 我慢できなかったの!! ね! そうよね食蜂!?」

怒っていたはずの垣根にぽかんと目を丸くされた。
もちろん、美琴が能力で操作して一瞬で作ったおとりのフォルダだ。
検索に引っかかったネットの画像をそのまま数十枚放り込んだおかげでいろいろ微妙なものも混じっている。
とっさに食蜂も巻き込んだ。
でもこれに関しては食蜂も悪い、むしろコイツの悪趣味のせいじゃないか、と疑うくらいには美琴は彼女をよく思っていない。

「……人にはぜぇったい言えない、御坂さんの隠れた趣味力よねぇ」

こんな時、真っ先に美琴をからかいそうな食蜂だったが。
即興の誤魔化しにつきあっていた。
真剣な美琴の様子と、目の前の第二位の脅威に折れたらしい。


「仕方ねえな。こう言うのは、きちんと断るのがマナーじゃねえのか」

おかしな趣味の奴ってどこにでもいるんだな、と垣根は呆れ顔で頭を掻いていた。
美琴は美琴で、勝手に変な趣味の人にされていたが半ギレの超能力者の攻撃と引き換えならその程度は我慢してもいいだろう。

「あの、ごめんなさい」

頭をきちっと下げたら、携帯が投げ返された。
その時の垣根は何だかとてもかわいそうな、哀れな生き物を見るような目をしていた。
ふうーっと安心した美琴がそれをポケットにしまうと、垣根は首を傾げた。

「? 撮らねえのか?」

「断れば……いいのかしら。ねえ、この人よくわかんないんだけど。もしかしてアンタ何かした?」

「さぁ? 折角だから気が変わらないうちに撮影させてもらえばぁ」
868 :>>222暗部の仕事で常盤台に潜入する垣根「二日目」  ◆q7l9AKAoH. [saga]:2016/12/26(月) 03:04:34.56 ID:eUWzAfWn0
常盤台の制服姿の第二位(この敷地の中で一番すごい能力者)はコキコキ首を鳴らしていた。
態度も姿勢もサイズ感も女子だとは言い繕えない雰囲気だ。
かと言って膝を揃えてお淑やかにされてもそれはそれで恐怖映像になりそうだが。

「わかっててもやっぱギョっとするわ。アンタよく平気ね……って自分に能力使えばなんとかなるのか」

「気にするほどかしらぁ?」

「笑っちゃったら失礼でしょ。私だけヒヤヒヤしてるのってずるくない?」

美琴が女装男子に耐えられなくなってきたので頭を直接洗脳してもらうことになった。

「えー、嘘でしょ? 本当に女の子にみえるわ」

改めて垣根を見た美琴ははしゃいで大きな声を出した。
女の子の姿の垣根……背は美琴とそんなに変わらないだろうか、同じ学年の女子にしては高い方だろう。
さっきまで目の前にいた実物と比べると随分小柄に思えた。

「ね、ていこちゃんはかわいいでしょぉ?」

「うるせえ」

「あ。でも喋ると男子ね」

美琴が指摘すると、垣根は何やらシャツの襟のあたりをごそごそしはじめた。
そう言えば、今は何もないがさっきは何かアクセサリーでも着けていた様な気がする。

『これならわかりませんか?』

「へー。おもしろーい!」

超能力者の精神操作は伊達じゃないらしい。
と。
さっきまでの笑ってはいけない常盤台空間を無事に乗り越えた美琴だったが。
今度は今度で、服装とは別の所が気になりはじめていた。

『……何だよ』

じろじろ見ていたらウザそうに文句を言われた。
それでもばっちり女子に見えるのだ。正体がわかっていても見た目はほぼ一〇〇パーセント女の子。

「これってさあ…どうなってんの? ちょっと…触ってみてもいい?」

好奇心に勝てずに両手をわきわきさせながら美琴は質問してみた。

「いいわよぉ」

『テメェが返事すんな』

文句は出たが別に断られなかった。
美琴は女子だし、垣根本人には実害がないからと言う問題なのだろうか?

「ふーん……へぇ? へー、ほー」

「御坂さぁん、こっちから見るとおかしなパントマイムみたいだけどそれってセクハラよねぇ」

『テメェが言うな。でもあれだよな……VRのゲームなんかすると、人間テメェが気付かねえだけですげえ馬鹿みたいなカッコするよな』

冷ややかな態度を通り越して、もうどうでもよくなっているらしい垣根の前で美琴は食蜂製脳内擬似おっぱい力を堪能していた。
自分も女子でこれが偽物だとわかっているからか、触り方に遠慮がない。
音で表すとワシッ、ガッ、グワッ! なんて少年漫画の効果音みたいなノリだ。

「意外とずっしり、いやいや! いくらなんでもこんな……ねえ?!」

『は? テメェ女の癖に何……いや』

「御坂さんじゃぁ……無理ないわねぇ」

「あっ、あ……ううううう」

ハイテンションで顔を上げた美琴だったが。
二人そろって視線が御坂の胸元に集まったあと、きまり悪そうに言葉を濁らせた。
がくっと一度落ちた肩が、下を向いた瞬間にもう一段深く下がっていった。

「おっほん! ところでさ」

「なぁに?」

「ひょっとして、アンタのそれも能力で……」

「私の干渉力をオートで弾いてる人に言われたくないわぁ」

『は? 何言ってんだお前。鏡ん中に他人がいるのって変な気分だぞ』

限りなく本物に近いかもしれない乳の革命に女子二人がやいのやいのしている横で、何やら耳元を押さえた垣根は一人でぶつぶつ言っていた。
869 :  ◆q7l9AKAoH. [saga ]:2016/12/26(月) 03:09:29.99 ID:eUWzAfWn0

垣根にあのステージや大階段はあんがい似合うかもしれない。羽根は自前のがあるし。
ごめんなていこちゃん、新刊読んだらミコッちゃんがすっかりおっぱい星人になってさ?だからってなんでもませてるんだろうな1もびっくりだよ。

>>846
多分もめるらしいということになってしまった。洗脳側の一方的エアーだがもめるっぽい。

こんなオチでもうしわけねーが今年もドーモドーモ。
あいさつ早めだが来年もよろしくおねがいしたい。


>>852
やったぜ。
トリックをトリートにしてもらえてよかった。
レベル5どもにおかしなことをさせるきっかけとしてはアイドル設定はできる子。

>>853
アニェーゼも妥協してベルベル語ーなんて言うしな。ギャグでも無茶振りすぎて。英語が出来ても何とかなるとは限らない禁書世界(の割に日本語の普及率がおかしい)

>>854
乙ありでーす
麦野は悪魔『アイテム』ガチャの方をやったけど削板は超能力者唯一のハブだったな。実装遅かったしサービス終了してなかったらあるいはワンチャンあったか。

>>855
ミコッちゃんが延々可哀想でしかない。
笑ったら未元物質って、笑うとJC女装+羽根でさらに爆笑の連鎖……それなんて大惨事。

>>856
ケツバットとばっちりすぎィ!
「元はと言えばあいつのせいでこんな目にあって笑い者になってんだ。御坂の笑った数だけ、後でゴーグルのケツを蹴り飛ばす」なんてリーダーも嫌だろ。災難じゃない、任務が済んだ頃には忘れてるよ。

>>857
保守ありっす。
裏技使わせてもらっちゃう暗部だけどな!
癒しなー、暗部組織の荒んだ日々の束の間アホなことをネタかましても許されたいね。癒されたい。

>>858
はぁあああ?はいむら?!って追ポチったありがとう。でもよお□木氏〜もっと早くはいむら絵のかきおろし心理定規ちゃん見れたろ〜何してくれてんのもう!

>>859
スクール層の購買も見越すとはやるな電撃、>>858のダイマに感謝。

>>860
おー!そうだな南国だもんな!唐突なオサレになっちまう。
あんな小ネタのすみっこでもちゃんと見てる人はいるんですねって1感動。
ここがSSスレじゃなかったらひとで投げつけてるわ。何さシルブプレw何だよカレーww

>>861
小ネタ……小ネタな。まとまってないのならたくさんあるのよな?書きたいのもたくさんあるんだな。小さいかきねや、プールの話もまだ誉望さんの話もいつかすいません寄り道の多い1土下座。

>>862
そいつぁ……逆に笑わないと怖そう。大火傷してるのにリアクションのひとつも取れなかったら悲しいやん?
トナカイの着ぐるみでソリ引いて空飛んで欲しいなあ。ペガサス仕様のトナカイそれなんてメルへン。

当SSのゴーグル君も、らっこさんが加入後も『スクール』ピラミッドの最下位に居続けることが確定しました合掌。ドリンクバー係永久就任。
しかしレベル4もあって原作唯一の見せ場であんな冷静に関係者を潰しちゃう、暗部の仕事出来そうなキャラなのにその実パシリ呼ばわれって誉望万化(しんのすがた)あまりにも不憫では?

弓箭さんはin学舎の園でナチュラルボーンお嬢様な気配がするから上げ膳据え膳仕方ないのかもしれない。
心理定規はレディファーストだしにっこりお願いされたらもう仕方ない。
リーダーに至ってはもう何もかもが仕方ないので。
やっぱり大能力者でも彼は焼きそばパンを買いに行かされてしまいそうだ。

誉望万化氏のパシリネタがありがたい限りでこの先遠慮せずに組織の先輩をdisいじるらっこさんが書けますありがとう。
偶像の方もありがとうございますございます。さすがはいむら圧巻のはいむら白くないのにどこか眩しい。でもなスナ子さんもといらっこさんのフロントも見たかったよぉおお本のページで切れる誉望さんさすが。
870 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/26(月) 11:56:08.58 ID:T9wNrBb30
俺もおっぱい揉みたい
できればみさきちのを
871 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/26(月) 13:08:08.25 ID:M1PWdX2K0
らっこちゃんは可愛い
可愛い
872 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/26(月) 14:01:41.92 ID:CjNl4rWMo
おっぱいはおっぱいでも揉めないおっぱいはなーんだ!
正解は〜!みことっぱいでしたwwwwwwwwww
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