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【ごちうさ】ココア「インターディメンド」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :</b> ◇JwZf59h8b2<b> [saga]:2014/09/21(日) 17:48:46.20 ID:wd+iXwbq0
深夜VIPで書いていたもののやり直し、続きです。
安価ありです。基本、選択肢となります。
インターディメンド、ダイブなどの設定は割と適当。
いきあたりばったりです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1411289316
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
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笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
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トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
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【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
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ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
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【安価】少女だらけのゾンビパニック @ 2024/04/20(土) 20:42:14.43 ID:wSnpVNpyo
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2 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/21(日) 18:00:23.38 ID:wd+iXwbq0
 
 ついに完成した。
 その人物は自分の興奮を抑えることができなかった。
 勝ち目のない戦いに勝利するための最終手段。おおよそ現実では考えられない不思議なチカラ。
 それをその人物は完成させた。
 まずは実験。誰かに試すとしよう。
 口元に笑みが浮かぶ。もし成功しそのまま進めば、未来は無限大。きっと、自分が納得する結末も訪れる。
 笑顔を浮かべ、その人物は部屋から出た。
3 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/21(日) 18:02:06.74 ID:wd+iXwbq0
 休日の朝。ラビットハウス。
 
ココア「ぐー……すぅ」

ココア「うーん……もう食べられな――っ!?」ガバッ

 シンとしている室内。何かの気配を感じココアは身体を起こしたが、誰もいない。

ココア「え? 気のせい、なのかな。誰かいたような気がしたのに。あれ? なんだろうこれ」

 何も変わらない。なのに自分はなにかを感じ、起床することができた。そのことに疑問を抱く。
 違和感を拭うことができず、ココアは周囲を見回す。すると、部屋のテーブルの上にメモを見つけた。

ココア「なになに……」パラッ

ココア「『インターディメンド』?」

 聞いたことがない単語だった。彼女はメモの文字を読んでいく。
 なんでも、インターディメンドとは他次元の力を借りる技術のことを指すらしい。
 そしてココアはその技術に適正があるらしい。
4 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/21(日) 18:04:08.11 ID:wd+iXwbq0
ココア「――よく分からないけど、便利そう……。でもなんで私なんだろう?」

 聞いたこともない未知の技術。けれど彼女はすぐ信用した。最初にわいた疑問はなんで自分に、そして何故自分の部屋にメモが、ということ。

ココア「誰かに相談したいけど――」

 また、メモにはこうも書いてあった。
 このことについては他言無用。願いをも叶えかねない強力な加護を得るため、悪用されるようなこともあるらしい。
 何もかも怪しい。だが、ココアの心に『願いを叶えかねない強力な加護』という言葉が強く響いた。
 自分の望み。それは――ある少女と仲良くなること。

ココア「試すだけなら……いいよね」

 きっと、技術と言ってもメモでできることなど、おまじない程度の筈。
 ココアは寝起きの頭でメモを読み耽った。
5 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/21(日) 18:05:47.19 ID:wd+iXwbq0
 『インターディメンド。
 その対象となった者は他次元からの干渉を受け、大いなる加護を受ける。
 他次元からは対象者の世界を様々な形で見、影響を与えることができる。
 今回は不特定多数の人物が、対象者へ大きな転機が訪れた時、提示された選択を行うという形だ。
 レベルとしては中程度。選択肢自体、自由を狭めるもの。それに選択肢は比較的健全なものに限られており、特別異常な行動をとることもない』

ココア「っていうことは、健全じゃない選択があるインターディメンドも存在するってことだよね……ちょっと怖くなってきたかも」
6 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/21(日) 18:10:38.61 ID:wd+iXwbq0
 恐怖心はある。だが、リスクがあるのは現実も同じ。
 それを恐れていては何もできないというのも同じ。
 安全だということは文面からなんとなく分かった。

ココア「よっし! やるよ!」

 そうと決まれば行動開始。ココアは立ち上がり、テーブルに再度視線を向けた。
 メモによると、対象者となるためのペンダントがそこに置かれているらしい。

ココア「これ、かな」

 テーブルの上。陽の光に当たり輝くペンダント。何かの真空管、だろうか。
 デザインはいまいちだけれど、アナログな感じがココアにかっこよく見えた。

ココア「これをつけて――」カチャ

 ペンダントを首に。メモに書かれていた開始の合図は――

ココア「チノちゃんと仲良くなりたい!」

 願いを公言すること。
 
ココア「……」

 シーン……。

ココア「こ、これでいいのかな?」

ココア「えっと――他次元のみんな、聞こえてる?」

ココア「私ココア。不特定多数で見てるって聞いたけど、どんな形で私のことを見てるのかな?」

ココア「私のお願い、叶えるために協力……って独り言みたいで虚しい」ハァ

ココア「――よし、早速試しに行こうかな。今の私ならいける気がするよ! なんとなく!」

 真面目な彼女のことだ。もう起きているだろう。
 ココアはメモを丁寧に折り、棚にしまっておく。そして意気揚々と着替えをはじめた。
7 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/21(日) 18:13:12.86 ID:wd+iXwbq0
 
 ラビットハウス。居間。
 手早く着替えを行い、身支度を整えたココアはまっすぐそこへ向かった。
 今は休日の朝。チノはこの時間、朝食をしている筈だった。

ココア「おっはよー! チノちゃん!」

チノ「あ、ココアさん。おはようございます」

 予想通りいた。
 朝に自分一人でココアが起きてきたことに驚いているのだろう。その目は微かに大きく開かれた。

チノ「珍しいですね。ココアさんが早起きなんて」

ココア「うん。私でもそう思うけど――」

 選択
1・「お昼寝したからかな」
2・「チノちゃんに会いたかったから」
3・「チノちゃんモフモフしたい!」

 選択:1

ココア「お昼寝したからかな」

チノ「お昼寝……ですか?」

 答えを聞いたチノが首を傾げる。それもそのはずで、昨日は平日。
 一般的な高校生なら昼寝をする時間はあまりないのだが――

チノ「いつお昼寝を?」

ココア「え? 私なにか言った?」

 きょとんとするココア。おかしな答えにチノは表情へ混乱を浮かべる。

ココア(あ、もしかして……)

 インターディメンド。その単語が思い浮かぶ。
 他次元から干渉する者が、たった今自分の答えを選択してくれたのだろう。
8 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/21(日) 18:16:55.65 ID:wd+iXwbq0
ココア(なるほど……。これは便利かも)

 自分とは違う視点の選択。自分らの事情を知っているかは分からないが、一人ではないことは大きな安心感があった。お昼寝というのも、それほど悪くはない答えだ。

ココア「学校とか、喫茶店で働いているときちょこちょこ、かな」

 チノの台詞を思い出し、苦笑しつつ答える。するとチノはほっとするように息を吐く。

チノ「そ、そうですか。……って、昨日寝てたんですか」

ココア「春の陽気が気持よくて。それにお客さんも少なかったから……えへへ」

チノ「相変わらずですね。ご飯食べます?」

ココア「うん、食べる。お腹空いたんだー」

 いつもと変わらないやりとり。笑顔を浮かべつつ、ココアは思う。これでもいい。でも、もっと仲良くなりたいのも事実。
 何か手はないのだろうか。
 
 【チノの精神世界へのアクセスが解禁されました】


 行動選択(?は選択不可)
 1・ラビットハウスでバイト
 2・外に出かける(甘兎or街を散策)
 ?・ザッピング
 ?・ダイブ

 選択:1

ココア「うん、ラビットハウスでバイトしよう」

ココア「朝ごはんも食べたし、元気一杯だし」

ココア「チノちゃんには今日手伝わなくていいって言われたけど、折角のチャンスだからね」

 朝食を食べ終え、しばらく。
 時折チノにまとわりついたりして、ぐーたらしているとあっという間に開店時間が近づいてきた。
 自室のベッドに座り考えて出た結論は、働くこと。
 それ以外の選択もあったのだが、折角皆がいてくれるのだ。チノといたほうがいいに決まっている。

ココア「よーし、頑張ろう!」

 制服に着替え、ラビットハウスの店内へ。そこには既に制服姿のチノがいた。
9 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/21(日) 18:33:09.58 ID:wd+iXwbq0

チノ「ココアさん。どうしたんですか? 制服に着替えて……。まさかお店のお手伝いを?」

ココア「うん。特に予定もないから、お手伝いしようかなって。大丈夫かな?」

チノ「構いませんけど、いいんですか? 休みの日なのに」

ココア「平気平気。チノちゃんのためならえんやこらだよ」

チノ「なんですかそれ。まぁココアさんが言うならいいです。ありがとうございます」

 チノは心なしか嬉しそう――に思える顔をし、ふぅと息を吐く。
 会話が終わり、彼女はカウンターを丁寧に拭き始める。何をするかはココアに任せるらしい。

ココア(そろそろ、何をするべきか選択――来たりして)

選択
1・チノちゃんにいつも以上に構う
2・時給は出ない。ならば楽しくパンを作ろう

 選択:2

ココア「私パン作ってくるね」

 確かリゼも来るようなことを言っていた。ならば自分がすることは殆どないだろう。
 どうせぼんやりするくらいなら時間を有意義に使いたい。
 そこで、自分が得意とするパン作りだ。これならばチノだけでなく、お客さんに配布することもできる。
 まさに一石二鳥であった。

チノ「パンですか? いいですね。楽しみです」

ココア「ふっふっふ。時間もあるし、期待しててねチノちゃん」

 ココアは意気込んで厨房へと駆けていった。
10 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/21(日) 18:38:20.32 ID:wd+iXwbq0
 お昼時。厨房にこもっていたココアはようやくパンを完成させた。

ココア「できたー!  うん、いい出来!」

 前々から構想はしていた新作パン。会心の出来にココアは感嘆をもらす。

ココア「ラビットハウスの看板をモチーフにした、カップとウサギのコーヒーパン……惚れ惚れする出来だよ」

 見た目は勿論、味にもこだわった逸品である。

ココア「これもみんながいるからかな。……いまいち、どこで選択してくれてるのか分からないけど」

 言葉もなにも聞こえてこない。ただ、得意のパン作りもいつもより腕前が向上しているような気もした。

ココア「ありがとう、みんな。よーしっ、これでアピールするってことだよね!」

ココア「数は10個くらい作ったし、全員に行き渡る……最初に誰に渡すか、だね」

ココア「ここはやっぱりチノちゃんだよね。うん、行こうっ」

ココア「チノちゃーん!」ダダッ

チノ「完成しました?」

ココア「うん! どうぞ、チノちゃん」

 ラビットハウスのカウンター。その中へいたチノに、パンを手渡す。包み紙に包まれたそれを見て、チノは目を輝かせた。

チノ「これは……まさにラビットハウスのパンですね。においもいいです」

ティッピー「これは嬉しいのう。チノ、早速試食じゃ」

 テンションを上げる一人と一匹。腹話術までして喜んでくれるチノに、ココアは恥ずかしそうに笑う。

チノ「はい。……もぐ」パクッ

ココア「ど、どうかな?」
11 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/21(日) 18:39:50.04 ID:wd+iXwbq0
チノ「美味しいですね。大人な味です」

ココア「本当っ? よかったぁー。リゼちゃんもどう?」

リゼ「ああ。私にも食べさせてくれ」

 接客から戻り、ココアらの元へ来ると頷くリゼ。と、そのタイミングでちょうどよく彼女のお腹が鳴った。

ココア「リゼちゃん、そんなに楽しみにしてくれてたの?」

リゼ「ち、違――わなくはない。いい香りがしてお昼時のお腹には辛いんだ」

チノ「ちょうどいいですし、交代でお昼ご飯にしましょう」

ココア「うん。じゃあすぐ用意するね」

 赤くなるリゼ、パンをかじるチノ。二人を去り際に見、ココアはホッと安心する。
 間違いなく成功、だろう。
12 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/21(日) 18:42:35.68 ID:wd+iXwbq0
 ラビットハウス。夜。ココアの自室。

ココア「……うん」

 今日一日を思い返し、ココアは一人頷いた。
 だらだらしたり、適当に散歩に出るよりはるかに充実した休日であった。
 良い日であったと言えるだろう。だがココアの願望が達成するかどうかと言われれば、微妙なところだ。

ココア「もっと、なにか……ないのかな」

 日常だけでは、彼女、チノの奥深くを知ることはできない。
 もっと、心を覗きこむような何かがあれば……あるいは。

ココア「なんて、都合いいことないよね」

 嘆息。腰掛けていたベッドに寝そべり、ココアは天井を見上げる。

ココア「チノちゃん……もっと笑うようになってくれないかな」

 小さな少女の影。太陽のようなココアだからこそ、チノの表情、時折見せる悲しげで寂しげな表情のことが気にかかった。
 ココアが彼女と仲良くなりたいと願うのも、それを気にして。年頃の少女のようにもっと笑ってほしい。楽しい思いをしてほしい。お節介だと分かっていても、その願いを捨てることはできなかった。

ココア「――明日も頑張ろう」

ココア「今日はもう遅いから寝るね、みんな」

 目を閉じ、ココアは語りかける。徐々に眠気が襲ってきた。

ココア「みんなの世界はどんな場所なのかな?」

ココア「やっぱり、チノちゃんみたいな子もいるのかな」

ココア「ちっちゃくて、モフモフで、大人しくて、人見知りで……」

ココア「みんなは……その子の、力になれたりしてるんだろうなぁ」

ココア「私は、何もできないから羨ましいよ」

ココア「……ん、う」

 眠りに落ちていく。あっという間にも思えた一日。その終わり。
 いつか来る別れの日まで、何ができるのだろうか。
 まどろむ意識は疑問を投げかけるばかりで、答えは出なかった。
13 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/21(日) 18:47:10.30 ID:wd+iXwbq0
『私は何も知らなかった』
『幸せの中に潜む何かを』
『その何かに対する対応を』
『奪われる悲しみを』
『何もできない苦しみを』
『世界はどこまでも残酷で、きっと、全ていなくなってしまう』
『――そう』
『奇跡がなければ』

【ダイブ:香風 智乃  LV.1 『旅立ちの駅』を開始します】

 知らない場所。時刻は不明。

ココア「うーん……これはキリマンジャロ……で、こっちが、オムライス」ムニャムニャ

???「起きて、ココアちゃん」

ココア「ええっ……オムライスと逆? それは流石に――」

???「ココアちゃん。何の夢みてるの。ほら、そんなギャグチックな夢みてないで、早く起きて――」

ココア「本当だ……ケーキと間違ってる。私、やっぱりバリスタには」

???「とうっ!」ドンッ

ココア「けふぅ!? な、なに!?」ガバッ

ココア「あ、あれ……?」

 何かの衝撃を受け、目を覚ましたココアは首を捻った。
 自分が座っているのは何もない場所だった。青色一色で、他にはなにもない。
 ココアが座っている、物理的に床がある筈の場所にもなにもない。ただ透明な、目に見えないなにかがあるだけだ。

ココア「夢?」

 とても現実味があるとはいえない光景。当然のように彼女は夢と結論するのだが。

???「夢じゃないよ」

 それを否定する声が、ココアの足元から。そういえば、起きる前に何者かの声を聞いたような気もした。

ココア「……えっ?」

 慌てて下へ視線を向ける。するとそこには

ココア「……ティッピー?」

 白くてモフモフした生物、ティッピーがいた。
14 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/21(日) 18:50:55.73 ID:wd+iXwbq0
???「ティッピーじゃないよ」

ココア「そ、そうなのっ?」

???「私はチッピー。チノちゃんの心の護。初めましてだね、ココアちゃん」

 チッピー。そう名乗る毛玉はぺこりと頭を下げる。が、毛のせいで丸い形が少し凹んだくらいにしか見えない。

ココア「……確かに、声も違うし――って、なんで喋ってるの!?」

 一瞬納得しかける。しかしココアは気づいた。
 声が違うもなにも、ティッピー自体が声を出しているわけではない。腹話術をする人物次第で、ティッピーの設定は変わるのだ。
 つまり、誰かがティッピーの声を出しているに違いない。

ココア「誰かいるんだね!」

 きょろきょろ。辺りには青。そして自分。チッピーと名乗るティッピー。

ココア「……まさか私の幻聴」

チッピー「もう少し自分を信じてもいいんじゃないかな」

ココア「でも、うさぎが喋るのって……」

 信じられない思いでココアはチッピーに触れる。

ココア「モフモフ……ティッピーとはまた違う」

 柔らかい感触。幸せな手触りに、一瞬で細かいことはどうでもよくなった。

チッピー「あのー、ココアちゃん。説明いいかな?」

ココア「もふ――説明?」

チッピー「うん。これからはじまることについて。ちょっと長くなるけど――」

 ぴたりと、そこで台詞を途切れさせるチッピー。

ココア「長くなるけど?」

チッピー「長くなると思ったけど、いいや。体験した方が早いよね」

ココア「え゛?」

 不穏な響きの言葉にココアは硬直する。次の瞬間、彼女の視点は暗転した。
15 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/21(日) 19:03:36.85 ID:wd+iXwbq0
ココア「……うん?」

 暗転した視界が正常に戻る。時間にして瞬き程度。
 僅かな時間視界は黒に包まれ、次の瞬間目を開くとそこは何もない空間から劇的に変化していた。

ココア「うわぁ……なにこれ」

 夢にしては意識がはっきりしすぎている。しかし現実にしては不思議すぎる。
 わけの分からない状況ではあったものの、ココアは不思議な光景に目を奪われていた。

ココア「駅に街に……ロケット?」

 目の前に広がっているのは、絵本のような景色。
 ココアらの住んでいる街に似た、見慣れた街並み。そして巨大な駅と汽車。更にはビルのようにぽつんと一つそびえているロケットだった。

ココア「チッピー……はいないし、どこかに行くべきなのかな」

 じっとしているわけにも行かない。ココアは顎に手を当て、どこに向かおうか考えた。

 選択
 1・見慣れた街
 2・巨大な駅
 3・ロケット

 選択:3

ココア「よし! まずは目立つ場所だよね! 定番として」

 思考は突然終了。結論を出して、ココアはとりあえず目につくロケットへと向かっていった。

 ○

 ロケット前。

ココア「ほえー……」

 遠くからでも巨大に見えていたロケット。近くから見るとそれは更に巨大に見えた。下から見上げても先が見えることはない。

ココア「でも、なんか玩具みたい」

 上が三角。胴体が円柱。そして窓が数個。下は四角に、二等辺三角形が二つ。
 簡単に言えば、積み木で作ったようなシンプルなフォルムをしているそれ。これが飛ぶかと言われれば、断じて否だ。
16 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/21(日) 19:05:19.06 ID:wd+iXwbq0
ココア「なんなんだろう、これ」

 飛ぶかは分からない。だがこうもあからさまに目立つのだ。なにかあるのだろう。
 ココアはロケットの周りに視線を向け、そして看板と一人の少女を見つけた。
 看板の方は至って普通の木製の物だったが、その傍らに立つ少女には見覚えがあった。

ココア「シャロちゃん?」

 何故かフルール・ド・ラパンの制服を身にまとった――シャロ。
 彼女はココアが視界に映っているであろう距離と方向を観ているのだが、反応を示さない。ただぼんやりと前を見ていた。

ココア「シャロちゃんっ。良かったぁ、知ってる人に会えて。ここどこか分かる?」

???「ここは立ち入り禁止区域です。そして私の名は案内うさぎです」

ココア「へっ? ええと、どういうこと?」

 迷いどころか、感情のない言葉にココアはぽかんとした。シャロの目は未だココアを捉えず虚空を見たまま。まるで機械のようだ。

案内うさぎ「看板を見てください」

ココア「う、うん……」

 看板を見る。

 『時が来るまでこのロケットに乗ることは禁止されています。危険なので決して近づかないよう』。

 簡潔で、それでいて意味が分からない警告だった。
 とりあえずここにいるのはいけないことらしい。

ココア「禁止なのは分かったけど――シャロちゃん、なんでここにいるの? あと、冗談とかじゃ……」

案内うさぎ「私はここに立ち、人々が誤って乗らないよう警備することが仕事ですから。それと、シャロではありません。案内うさぎです」

ココア「う、うん……わかったよ」

案内うさぎ「用件はそれだけですか? では、すみやかにここから離れてください」

 チャキッ、とシャロがどこからともなく銃を取り出す。彼女はココアを見ないままその銃口を向けた。
17 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/21(日) 19:09:13.26 ID:wd+iXwbq0
ココア「しゃ、シャロちゃんっ!? それ危ないような――」

 慌てて、やめさせようと一歩踏み出すココア。刹那、銃声が響く。

案内うさぎ「警告です。これ以上前に出るならば、容赦なく撃ちます」

 地面に空いた小さな穴。それを見ただけで威力は十分理解できた。間違いなく本物だ。

ココア「ご、ごめんなさい!」ピューッ

 ココアは慌ててその場から走り去った。
 その瞬間、ようやくココアは理解した。あのシャロは本物ではない。シャロの姿をした何者かなのだと。

 選択
 1・見慣れた街へ
 2・巨大な駅へ

 選択:1

ココア「はぁっ、はぁ……っ」

 息が切れるまで、限界がくるまで走る。
 とにかく危険から、ロケットから遠ざかっていくと、ココアは自然と街にいた。
 見慣れた木組みの家と石畳の街。今年の春からやって来た、第二の故郷だ。
 街並みはまったく同じ。だが、おかしなところが多々あった。

ココア「……誰もいない」

 街に誰もいないのだ。しんと静まり、辺りは無音。ココア自身の呼吸の音が、鼓動すらも大きく聞こえる。

ココア「どこなんだろう、ここ」

 立ち止まり、改めて考える。
 夜になり、自分は寝た。そして不思議な場所でチッピーという生き物に遭い、気づいたらここにいた。
 夢でも現実でもない。今まで経験したこともない不思議な現象だった。
18 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/21(日) 19:11:07.31 ID:wd+iXwbq0
ココア「考えても分からないよね」

 自分の頭ではたかが知れている。
 思考にふけっていた頭をぶんぶんと振り、ココアは嘆息する。

千夜「あ、ココアちゃんじゃない」

 と、そこへよく見知った人物が通りがかる。

ココア「千夜ちゃん! よ、よかったー! 千夜ちゃんは千夜ちゃんだよね!? 私のこと分かるよね!?」

千夜「え? 勿論分かるけど……」

ココア「うえーん! 千夜ちゃーん!」

 自分の友人が見つかった。そのことに安堵し、ココアは駆け寄る。千夜は彼女のことを優しく受け止め、抱きしめた。

千夜「どうしたの? ココアちゃん。怖いことでもあった?」

ココア「うんっ。シャロちゃんに会ったら銃を向けられて、みんないなくて――寂しくて」

千夜「――それのなにがおかしいの?」

ココア「え?」

千夜「ココアちゃん、疲れているの? ここに人がいないのは昔からだし、シャロちゃんは昨日ここを去ったじゃない」

 笑顔で言われる言葉。ここは現実とは違う。それを分かってはいたが、ココアは動揺を隠せなかった。

ココア「そ、そう……なの?」

千夜「ええ。みんながここを旅立つのは当然のこと。決まりなのよ」

ココア「なんで?」

千夜「決まりだから。今日もリゼちゃんがここを出るわ。いつかはココアちゃん、あなたもここを出ることになるのよ」

ココア「リゼちゃんがっ!?」

 飛び上がるココア。リゼが遠くに行くというのに、何故この千夜は笑顔を浮かべているのか。

ココア「なんで止めないの!?」

千夜「そういう決まりだから」

 また、同じ答えが返ってくる。きっと彼女もまたさきほどのシャロと同じような存在なのだろう。

ココア「それって、ロケットでするの?」

千夜「いいえ。駅で汽車から旅立つのよ」

 それだけ聞いて、ココアは駈け出した。リゼはもしかしたら、自分の知っているリゼかもしれない。そんな希望を抱いて。
19 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/21(日) 19:15:23.57 ID:wd+iXwbq0
 巨大な駅。
 ホームのみがある大きな駅には、建物の二、三階ほどの高さはある汽車が停車していた。

ココア「リゼちゃーん!」

 間に合ったようだ。汽車の近くに見える、リゼの人影にココアは手を振りつつ駆け寄る。
 振り向いた彼女は気さくな笑顔を浮かべた。

リゼ「ああ、ココアか。どうした?」

ココア「どうした? じゃないよ。ここから出て行くんでしょ?」

リゼ「まぁ、そうだな。それがどうかしたか?」

ココア「だめだよ! リゼちゃんが行ったら、私もチノちゃんも千夜ちゃんも寂しいし……」

リゼ「何言ってるんだ。お前もじき旅立つことになるんだぞ」

 リゼの表情に疑問の色が浮かぶ。ココアが自分を引き止めることを、本気で不思議に思うような顔で彼女は首を傾げた。

リゼ「それにここから外に出た世界は素晴らしい。楽しいことも一杯ある。いつまでもこんな場所にひきこもっているわけにもいかないだろ」

ココア「それ、は……私も、止められない、けど。でも」

リゼ「というわけだ。私もみんなに続く。ま、いつか帰ってくるさ」

 笑顔で言い、リゼは汽車に乗っていく。止める間もなかった。おそらく時間があっても止めることはできないだろう。
 ココアは、これが現実でないことを祈ることしかできない。
 やがて、汽車は汽笛を鳴らし走り去った。徐々にスピードをつけ線路を進んでいき――そして消えた。と同時に、ココアの目の前に白い毛玉が現れる。

チッピー「……ここがどこか。なんでこんなことになっているか分かった?」

ココア「チッピー!?」
20 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/21(日) 19:17:02.69 ID:wd+iXwbq0
ココア「全然分からないよ。どうしてみんな……あんな」

 おかしな世界。自分に銃を向けてくるシャロ。去っていく友達のことを笑顔で語る千夜。嬉しそうに去るリゼ。
 なにもかもが理解することができず、まるで悪夢のようであった。

チッピー「うん、そうだよね。説明されてないんだし、普通はそう。でも現実でも夢でもないことはよく分かったでしょ?」

ココア「それは……うん」

 ここは現実ではない。でも夢でもない。何かしらの不思議な場所だということは理解できたのは確か。

チッピー「それで充分。さて、じゃあ説明しようかな」

 と、チッピーは宙に浮いてココアの頭に乗る。

ココア「や、柔らかい……っ」

 それだけで、割と心が落ち着くココアであった。頭の上でチッピーが語る。

チッピー「ここはね、深層心理の第一層。普段は誰も入れない場所」

チッピー「――チノちゃんの精神世界だよ」

ココア「精神世界? 深層心理? ええと……」

チッピー「要するに、チノちゃんの心の中、ということ」

ココア「ああっ、なるほど。分かりやすいね」

 心の中。つまりは、チノが生み出した世界ということ。チッピーが言っていることはなんとなく分かった。

ココア「でもなんで私がそんなところに?」

チッピー「それは多分、インターディメンドの影響と、ココアちゃん自身の想いのせいかな」

ココア「私の……」

チッピー「心の中を覗ければ、間違いなくその人のことをよく知れるから」

 確かに、何を思っているのか、悩んでいるのか、それが分かれば仲良くなることもできる筈だ。自分の願望を叶えることへの近道とも言えなくもない。
21 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/21(日) 19:19:09.21 ID:wd+iXwbq0
チッピー「ここに来れるのは悪い話じゃないでしょ?」

ココア「うんっ。ここが現実じゃないなら、今までのもそれほど深刻に考えなくてもいいし」

チッピー「そうでも……ないんだけどね」

ココア「そうなの?」

チッピー「うん。ここはチノちゃんの世界。だからここに現れるものはすべて彼女が生み出した、彼女の分身。大体のことに理由はあるし、そこに干渉すればチノちゃんに何らかの変化が起きる可能性もある」

ココア「なるほど……よく分からないや」

チッピー「まぁ、そのうち分かると思うよ。それにココアちゃんには頼もしい味方もいるし、多分心配ないと思う」

ココア「味方――みんなのこと?」

チッピー「うん。不特定多数の協力者。彼らは視点があれば、ココアちゃん以外の人を見たり、過去を自由に振り返ることもできる。きっと導いてくれるはずだよ」

ココア「イマイチ効果は分からないんだけど……すごいことのように聞こえるね」

ココア「……それで、私は何をすればいいのかな? 帰れたりする?」

チッピー「うん。帰ろうと思えば自由に帰れるはずだよ」

チッピー「で、ココアちゃんがここでするべきなのはより深い階層に入り、チノちゃんを理解すること。チノちゃんと仲良くなることを望むならね」

ココア「望むよ。そのためにインターディメンドもしたんだから」

チッピー「愚問だったね。じゃあ、どうすればいいか話すよ」

チッピー「ここがチノちゃんの精神世界だってことは分かったよね?」

ココア「な、なんとなく……」

チッピー「うん。なら大丈夫。ここはまだ第一階層だから、それほどチノちゃんはココアちゃんに心を開いてはいない。だから――」

ココア「ええっ!? 私、そんなにチノちゃんに信用されてないの!?」
22 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/21(日) 19:21:25.98 ID:wd+iXwbq0
チッピー「当然だよ。まだまだ一緒にいる時間も短いし、ここは心の中。自分でも把握できない無意識で、他人を受け入れられると思う?」

ココア「思う! チノちゃんは私の妹だし、私なら即大歓迎だよ!」

チッピー「ココアちゃんは幸せ者だよね、ある意味」

チッピー「まぁとにかく、チノちゃんの心はココアちゃんを受け入れていない。だから低い階層にしかまだ入れない。これは当然のことで、普通なら心の中に一歩足を踏み入れるだけでも驚くことなんだ。普通なら入ろうとした時点で他人を弾いちゃうからね」

ココア「……うーん、ということは、えっと」

チッピー「それなりに信用しているってこと」

ココア「そうなのっ!? ほっとしたよー」

チッピー「……大丈夫かなぁ」
23 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/21(日) 19:30:05.11 ID:wd+iXwbq0
チッピー「ここからさらに奥の階層に進むには、チノちゃんの信頼を得ることが大切になるんだ」

チッピー「この世界を歩きまわって、ココアちゃんはココアちゃんの思ったように行動する。そしてみんなはそれをサポートする。困難も多いだろうけど、多分それで大丈夫」

チッピー「チノちゃんにひどいことしたい、とか思わないでしょ?」

ココア「当然だよ!」

チッピー「うん。なら大丈夫。きっとココアちゃんはここから先に進むことができるよ」

チッピー「ココアちゃん。ここにあるものはチノちゃんに関係したもの。そのことを忘れないで、考えて行動してね」

ココア「うん、分かったよチッピー」

 頷いたココアは頭上のチッピーに手を伸ばす。が、その手は空振った。両手で確認するように自分の頭を触り――そして、チッピーがいないことに気付く。
 いつの間にか消えたらしい。

ココア「いない……本当に不思議な世界だね」

ココア「これからどうしようかな」

 選択
 1・チノを探す
 2・これまで行った場所を詳しく探索(街or駅orロケットいずれか選択)

 選択:1

 見慣れた街のラビットハウス。その前。

ココア「チノちゃんがいないことに気づいて、ここまで来たけど」

 無人の街を歩いてやって来たのは、現実の世界と変わらぬラビットハウス。ここならばチノもいる筈。
 そう直感的に歩いてきたのだが――1つ懸念があった。

ココア「チノちゃんも街を出て行ったり……してないよね」

 あり得ないことではないと、己の心が答えているのがよく分かった。
 街の住人だけではない。あのシャロやリゼまでもが、街を去ってしまったのだ。チノが出て行った後でもおかしくはない。

ココア「考えていてもしかたないかな。よし、突撃!」

 意気揚々と、ラビットハウスのドアを開く。カランカランとベルの音。聞き慣れたそれを心地よく思い、彼女は中へ足を踏み入れた。

チノ「いらっしゃいませ!」ニコニコ

ココア「……」バタン

 カラン。ドアが閉じられ、ベルの音が小さく響いた。心地よいはずの音がもの寂しく思えた。冷静な顔をしたココアは、店前の看板を見た。

ココア「ラビットハウス……で、チノちゃん、だよね?」

ココア「すごい笑顔だった……見間違いじゃなかったら、満面の笑みだったよ」

ココア「思わずドアを閉めちゃうくらい」
24 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/21(日) 19:34:19.74 ID:wd+iXwbq0
ココア「もう一回。今度は覚悟するから大丈夫。うん」

ココア「――よし!」カランカラン

チノ「いらっしゃいませー! ココアお姉ちゃん!」

ココア「……! ただいまー! チノちゃん!」ダッ

チノ「あ、当店おさわりは禁止です」ヒョイ

ココア「ああっ、でもなんか嬉しい!」

 勢いあまってテーブルに激突。が、そんなことは気にならないくらいココアのテンションは上がっていた。
 笑顔で明るいチノ。そんな彼女が自分のことをお姉ちゃんと呼んでくれたのだ。テンションが上がらないはずがない。

ココア「……いたた。チノちゃん、この街にいたんだね」

チノ「ここは私の故郷ですから。私はずっとここにいますよ」

 笑顔で答えるチノ。トレイを抱え、現実と同じ姿の彼女は快活な口調で言う。

ココア「そっか。良かった」

 理想的――なのだが、何故か何かが気にかかる。
25 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/21(日) 20:17:23.84 ID:wd+iXwbq0
ココア「……」

 チノから目を離し、ココアは店内を見回す。
 客はおらず無人。特におかしな点も見当たらず、現実と変わらないラビットハウスであった。
 ――ある一点を除いて。

ココア「あれってなにかな?」

 店内。その中心に置かれた奇妙なオブジェ。形はティッピーを型どっているようだ。金色に輝いており、大きさはチノの身長程度。巨大で、豪華な像であった。形はともかく、色はちょっと趣味が悪い。

チノ「この街の英雄、ティッピーの金像です」

ココア「え、英雄?」

チノ「はい。ロケットに乗り、飛び去った後この場所に戻ってきた――唯一の存在です」

ココア「ロケット……」

 ココアの脳裏に、あの巨大なロケットが思い浮かぶ。
 危険で、時が来たら乗れるというそれ。どうやら本当に飛ぶらしい。

 選択
 1・『ティッピー』はどこ?
 2・『唯一』?

 選択:2

ココア「唯一?」

 チノが何気なく言い放った言葉。それが引っかかった。
 唯一。他に『戻ってこなかった』人がいるような言葉である。
 普段の自分では気づきもしないであろう疑問に、ココアは干渉なのだと判断する。そして同時に感心もした。

ココア「誰か他にもロケットに乗ったの?」

チノ「はい。二回、ロケットは飛びました」

ココア「一回に一人、合計二人ロケットで飛んだってことかな」

 尋ねると、首肯。

チノ「そうです。一人目はティッピー。二人目は母です」

ココア「チノちゃんの、お母さん?」

 ロケット。危険。時が来るまで。二人。母。ティッピーだけが戻ってきた。
 頭の中に言葉がいくつか浮かんでは消える。何か、分かりかけた気がした。
26 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/21(日) 20:20:42.55 ID:wd+iXwbq0
 が、あと一歩。はっきりとした結論は出なかった。

チノ「母は何も言わず、突然ロケットに乗って去ってしまいました。それっきりです」ニコニコ

ココア「チノちゃん、寂しくないの?」

 どんどんと人がいなくなってしまう街。戻ってくるとリゼは言っていたが、きっと誰も汽車に乗ったあと戻ってはこなかったのだろう。
 チノは一人、そんな場所で喫茶店をしていて寂しくはないのだろうか。
 ロケットのことよりも、ココアはそれが気になった。

チノ「寂しいですよ。だからこうやって、笑顔でいるんです」

 あっさりと、チノは認めた。

ココア「なら、なんで……」

チノ「止めることはできません。だから、せめて気持ちよく旅立てるように、です」

 選択
 1・そんなことしても何も残らないよ
 2・私がずっといるから、それはやめよう?

 選択:1

ココア「そんなことしても何も残らないよ」

 口が勝手に動く。しかし、概ねそれは自分の気持ちと同じものであった。
 皆がいなくなって寂しい。なのに何も言わず笑顔でいる。それは矛盾していると思うのだ。

チノ「なら、どうしたらいいと思うんですか?」

ココア「それは、行かないでって引き止めたり」

チノ「迷惑ですよね。それにココアさんは友達が決めたことを否定するんですか?」

ココア「しないよっ! でも、ただ見送るんじゃなくて、別れるまで思い出をつくったり――」

チノ「それも、何も残りません」

 きっぱりと断言するチノ。見れば、いつの間にか彼女の顔から笑顔が消えていた。

ココア「そんなことないよ。忘れなければ、きっと――」

チノ「やめてください」
27 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/21(日) 20:31:02.70 ID:wd+iXwbq0
ココア「やめないよ。チノちゃんが寂しがってるんだから、黙ってられないよ」

チノ「――やめてください」

 一歩、チノへ踏み出そうとする。すると、チノはココアへ手をかざした。
 その動作に呼応するかのように室内だというのに、強力な風が起こる。立ってもいられない。ココアはすぐ風に飛ばされた。

ココア「わっ!?」

 風に飛ばされ、開いた喫茶店のドアから街に。地面を転がり、壁にぶつかるとようやく風は治まった。
 バタンと音。喫茶店のドアが閉じ、辺りには静寂が戻る。

ココア「うう……チノちゃん」

 追い出すだけの目的だろう。痛みはなく、怪我もなかった。よろよろと立ち上がり、ココアはラビットハウスのドアを開こうとする。
 が、勿論開かない。

ココア「失敗――なのかな」

 ため息を一つ。チノを怒らせてしまったようだ。

???「ココアさん、ですね?」

 落胆するココアの後ろ。のんびりとした声がかかる。

ココア「青山さん?」

 振り向くと、そこに立っていたのは小説家の青山ブルーマウンテン。何故か赤い郵便のマークがついた帽子をかぶっている。

???「青山ではありません。私は配達うさぎ。ココアさん。あなたに郵便です」

 すっと、ココアへ一枚の封筒を差し出す。ココアはなんとなく何も考えずにそれを受け取った。

ココア「あ、ありがとう。……これは、誰から?」

配達うさぎ「さぁ? 分かりません。では私は仕事があるので、これで」

 のんびりと、歩いて去っていく青山。とても仕事があるような人間の歩き方とは思えなかった。

ココア「なんだろう」

 青山を見送り、ココアは手渡された封筒を開く。白色をした長方形の、何かの招待状のような封筒の中には――紙が一枚。

『ココア様。あなたがこのたびの旅立ち当選者として選ばれたことを、お知らせします。ロケット、駅。どちらでもお好きな方でこの街から一時間以内に旅立ってください』

ココア「なに……これ」

 無機質な印字を読み、ココアは呟いた。
28 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/21(日) 20:43:10.15 ID:wd+iXwbq0
ココア「ここから去れってことだよね……」

 他の人のように、チノを置いて。どこか遠くへ。
 ……果たして、それはしてもいいことなのだろうか。
 重要な選択のような気がした。ここがチノの精神世界ならば、自分の行動が、自分への認識に繋がる可能性が高い。
 となると、これからとるべき行動は――

 選択
 1・旅立とう
 2・嫌だ

 選択:2

ココア「嫌だ……」

 チノを置いて、旅立つ。寂しいと言っていた彼女を一人にする。
 それだけはできなかった。ココアは一人呟く。
 ――けれど、嫌だと言っても、何かできることはあるのだろうか。
 ココアは考えに考え、一つの結論を出す。

ココア「よし、無視しよう!」

 手紙は服のポケットへ。暢気な口調で言って、ココアは歩き出した。
 探索していない場所はまだまだある。ココアはあてもなく街を進んでいった。
 ――そして、一時間が経過しようとしていた。
29 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/21(日) 22:53:33.25 ID:wd+iXwbq0
ココア「何も見つからない……駅もロケットも街も、何もないよ」

 適当に歩くこと約1時間。
 何も目立ったことは発見できず、喫茶店を追い出されてから進展は何一つなかった。

ココア「旅立つ、しかないのかなぁ……」

 嫌だと直感的に判断した。しかし今の状況を省みるに、旅立ちを検討した方がいいような気もしなくはない。でもチノを一人にしたくないのもまた事実であった。
 どうすればいいか分からず、ココアは独り言をもらす。答えるものは――

???「そうです」

 ――いた。
 いつの間にか、ココアの前に立っていた人物。軍服のようなものを身に付けた、チノ。
 喫茶店にいたチノとはまた違う、冷たい目をした彼女は手にしている銃をココアに向けた。

ココア「チノちゃん!? な、なんで、チノちゃんが」

???「私は断罪うさぎ。チノではありません」

 チノの姿をした断罪うさぎは淡々と語る。そして、横に一歩動く。すると彼女の後ろに隠れているものが見えた。
 それは、よく見知ったもの。けれど決して見ることがないもの。
 シャロの……亡骸であった。

ココア「ひっ!?」

 身が竦む。うつろな目をどこかに向け、口を微かに開いたシャロ。その口の端からは血が流れており、腹部には血が流れていた。
 誰がどう殺したのか、一目瞭然。
 ココアは銃――そしてチノへ視線を向けた。

ココア「チノちゃん、なんでシャロちゃんを……」

断罪うさぎ「旅立ちから逃げて隠れていたので、私が引導を渡しました」

 逃げていた? 激しい動悸と恐怖の中、ココアはもう一度シャロを見る。
 看板の横に立っていたシャロとは、服装が違った。おそらく制服姿のシャロとは別人物なのだろう。

ココア「なんで……」

 身体が震え、頭は混乱し、どうするべきかも判断できない。チノが友達を殺害した。ここが架空の世界であろうと、そのショックはでかい。
 恐怖と悲しみ、様々な感情が混ざり、涙すら浮かべるココア。そんな彼女を見やり、チノは銃を再度構える。

断罪うさぎ「決まりですから」

 淡々とした言葉。笑顔だったチノよりも、現実のチノに近い口調と表情。これまでのことが一瞬で頭の中に駆け巡り――そして、炸裂した。
30 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/21(日) 22:59:21.32 ID:wd+iXwbq0
ココア「あっ……!」

 一度、二度。閃光がほとばしる。
 反射的に目を閉じ、身体を走る衝撃に小さく跳ねる。目を開いたココアは、一瞬、何をされたのか理解できなかった。

ココア「チノちゃ、う、ぁ――」

 チノの名前を呼ぼうとし、口から溢れる血。
 咄嗟にそれを地面に落とすまいとし、ココアは口元に手を伸ばす。が、口を溢れた液体は顎を滴り地面に落ちてしまう。
 とめどなく流れ、見慣れた石畳の上にゆっくり血だまりを作っていく。

ココア「がっ……ぐ、げほっ、ごほっ!」

 息苦しさを感じ、息を吸おうとし咳き込む。そしてまた血が飛び散る。
 それでも尚、ココアはチノのことを信じていた。それが、チノの姿をした何者かであろうとも、チノが創り出したもの。信じなくてはならない。
 ココアは血だまりに倒れる。腹部からは鋭い痛みと、信じられないほどの熱が。自分がこれからどうなるのか。容易く想像がついた。それでも、ココアは手をチノに伸ばした。

ココア「ち、のちゃ――っ、ぁ、はぁ……わ、わたし――み、かたで……げほっ!」

断罪うさぎ「ごめんなさい。私達は、あなたが、あなたたちが怖いんです」

 ぽつりと、表情を崩さずにチノは語る。手を伸ばそうともせず、じっとココアを見つめて。

断罪うさぎ「近くにいないでほしい」

断罪うさぎ「仲良くならないでほしい」

断罪うさぎ「嘘を言わないでほしい」

断罪うさぎ「私のことを考えないでほしい」

 連なられる言葉の数々。これまでの日々を否定するような告白。
 彼女が全てを言い終わる前に、ココアの手はぐったりと血だまりに落ちていた。目を閉じ、眠るようにしてぴくりともしないココア。
 弱々しく呼吸する彼女を見やり、チノは最後に言った。

断罪うさぎ「いなくならないでほしい」

 そして、また銃声が響いた。
31 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/21(日) 23:00:45.90 ID:wd+iXwbq0
 どこか。

チッピー「失敗、だね」

チッピー「ココアちゃんは現実ではまだ生きてる。でも、多分チノちゃんと真に仲良くなることはない」

チッピー「でも大丈夫。そこはSS。何度でもやり直せる」

チッピー「彼女らが何度失敗して、ひどい目に遭おうと、時間は戻る。そして君たちは失敗の記録を見ることができる」

チッピー「同じ失敗することはシステム上ない。それに、ヒントだって得られる」

チッピー「例えば、殺されたシャロの存在」

チッピー「――そう。いわばこれはゲーム」

チッピー「彼女らを導き、様々な結末を覗き見る遊び」

チッピー「それが君達と、私達の世界の差。次元の差」

チッピー「期待してるよ? 最後はいい結末を見られるって」

チッピー「じゃあ、またはじめようか」


【直前の選択肢からコンテニューします】
32 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/21(日) 23:02:06.57 ID:wd+iXwbq0
ココア「ここから去れってことだよね……」

 他の人のように、チノを置いて。どこか遠くへ。
 ……果たして、それはしてもいいことなのだろうか。
 重要な選択のような気がした。ここがチノの精神世界ならば、自分の行動が、自分への認識に繋がる可能性が高い。
 となると、これからとるべき行動は――

ココア「旅立とう」

 旅に出て、街から出て行く。
 それがきっと、この世界でチノの思う常識なのだ。それに反すれば拒絶は免れない。
 加えて、気になるのが時間。一時間と制限されている点が、嫌な予感しかしない。
 ……が、そうは思うもののやはりチノを置いていくのは気が引けた。

ココア「何か手はないのかな」

 嘆息。しかし全ての目立った場所を回り、チノに追い出された今、特に手立てはなかった。
 どこかを探索しているうちに時間があっといまに過ぎてしまうだろう。旅立ちの場所に向かうしかない。

 選択
 1・駅で出発
 2・ロケットで出発

 選択・2

 ココア「ロケットかな……かっこいいし」

 短絡的な思考が頭に浮かぶ。
 遠くに行くならば、やはりロケットだろう。それにかっこいいし、なにより英雄と呼ばれるような存在になるかもしれない。
 そうなれば、チノからも好かれるかも。

ココア「うん。決めたっ」

 決断し、ココアは歩き出した。
33 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/21(日) 23:03:52.98 ID:wd+iXwbq0
 ロケット前。

???「あんた馬鹿でしょ!」

 ――に着く直前。
 街の通りが終わる寸前で、ココアは脇道から飛び出した何者かに抱えられた。そのまま驚く間もなく、ココアはその何者かに脇道へ連れてかれる。

ココア「ふえっ!? だ、誰――ってシャロちゃん!?」

 突然のことに目をぱちくりさせつつ自分を抱えている人物を見れば――なんと、その人物はシャロだった。
 ただ、ロケットの前で見たシャロとは違う。表情には感情が窺えるし、服装はTシャツにショートパンツ。部屋着であろう、ラフな格好であった。

シャロ「ええ。シャロよ」

 ココアの言葉に答えたシャロは、周囲を確認。周りに人がいないことを確かめ、ほっと息を吐いた。そしてココアを地面におろす。

ココア「シャロちゃん、まだいたんだね。旅立ったって聞いたけど」

シャロ「ま、色々あってね。出来の悪い幼馴染をおいてくわけにはいかないのよ」

ココア「そっか。仲良しだもんね、二人とも」

 普段と変わらない関係。のほんとした気分でココアは笑う。が、シャロの方は落ち着きがない。まるで何かに追われているかのように、絶えず周囲を警戒している。
34 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/21(日) 23:05:40.01 ID:wd+iXwbq0
ココア「シャロちゃん?」

シャロ「な、なんでもない」

 咳払いを一つ。彼女は真面目な顔をしてココアを見る。

シャロ「それより、ココア。ロケットに乗る意味を分かってるの?」

ココア「え? かっこいいとか?」キョトン

 普通ならば、当たり障りない駅。しかしココアはロケットを選択した。
 そこにインターディメンドでの干渉があったのだが、ココアは分からない。

シャロ「あんな玩具になにを思ってるんだか……」

ココア「玩具っぽいのがかっこいいと思うんだけど」

シャロ「かっこいいかっこよくないはどうでもいいわ」

シャロ「ロケットに乗る意味よ。分からない?」

選択
 1・死ぬってこと
 2・帰ってこれないということ

 選択・2

ココア「帰れないってこと?」

 ロケットに乗った二人のうち、ティッピーだけが戻り、英雄扱い。
 となれば、普通は帰ってこれないということ。
 ココアは頭に浮かんだ言葉を口にした。

シャロ「間違ってはないけど……」

シャロ「まぁ、いいわ。はっきり分かってないなら、止める義理もないし」

 一瞬呆れるようにため息を吐くものの、シャロはすぐ元の表情に戻る。
 そしてココアに一つの紙箱を差し出した。

シャロ「旅立つココアに餞別。本当は自分が使うつもりだったんだけど……不憫だからあげる」

ココア「本当っ? ありがとう。中身はなにかな――」

シャロ「今開けるのはよしときなさいって。開けるときは本当に困ったときだけ」

 紙箱を受け取り、早速開けようとするココアをシャロは制止した。なにかわけがあるようだ。
35 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/21(日) 23:07:27.86 ID:wd+iXwbq0
ココア「よく分からないけど……ありがとう、シャロちゃん。見送りに来てくれたんだよね?」

 千夜と会った時は、見送りなどしないのがこの世界の常識だと思っていた。
 けれどこうして、シャロのように会いに来てくれる人もいる。そのことが嬉しく、ココアは笑顔を浮かべる。

シャロ「見送りというか……本当は止めに――まぁいいわ」

ココア「……?」

シャロ「頑張りなさい。私が言えるのはそれだけ」

 手をひらっと振り、シャロは背中を見せ去っていく。
 残されたココアは首を傾げた。

ココア「止めに……?」

 何を止めに来たのだろうか。
 ずっしりとした手応えの紙箱を手に、ココアは頭を悩ませつつロケットへと歩き出した。
36 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/21(日) 23:09:59.84 ID:wd+iXwbq0
ココア「乗っても……いいのかな?」

 ロケット前。特に問題なくそこまで到着し、ココアは案内うさぎへと声をかけた。

案内うさぎ「構わないです。招待状を持っている方は、自由にお通りください」

 相変わらず生気のない目。だが今度は止めることなく、彼女はココアを通す。すんなりとココアはロケットのすぐ近くまで到達した。

ココア「これに乗って、旅立つ……のかぁ」

 目の前にある、玩具のようなロケット。積み木で作ったかのような、自分の身長よりはるかに大きなそれ。
 見上げていると、まるで自分が小さくなったかのような錯覚に陥る。

ココア「わくわくするかも」

 呟いて、既に開いている入り口へ視線を向ける。中は空洞――のようだった。何もなく、特にコックピットのようなものも見当たらない。
 普通は不安を覚える点だろう。

ココア「よーし入ろう!」

 が、ココアは不安どころか、疑問すら抱かずロケット内へ。
 やはり、外で見えていた通り。内部には飛ぶような仕掛けもなく、当たり前だが完全なる密室。
 ココアが中心へと足を踏み入れていくと、ロケットのドアはひとりでに閉まった。
37 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/21(日) 23:36:34.05 ID:wd+iXwbq0
ココア「……」

 閉じたドアを確認。振り向いたココアは周囲を見回し、ぽつりと一言。

ココア「どうやって飛ぶんだろう?」

 他に気にすることもあるだろうが、それくらいしか気にならなかった。

ココア「うわっ……とと」

 少しして、ロケット全体が揺れる。よろける足でなんとか窓まで近づき、外を見た。
 どうやら本当に飛ぶらしい。下から噴射による炎と土埃が見えた。案内うさぎは看板を手に、いつの間にか少し遠くへと離れている。

ココア「あ……」

 いよいよ離陸。そのタイミングで、ココアは見つけた。
 ロケットから離れ、立っている案内うさぎ。その更に奥へ立つ、少女の姿に。喫茶店で見たチノだ。
 制服を身にまとった彼女は飛び立とうとしているロケット、その窓から顔を出すココアのことをじっと見つめていた。
 ――涙を流して。
38 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/21(日) 23:56:53.98 ID:wd+iXwbq0
ココア「チノちゃん……」

 やはり、寂しいのだ。言っていたように。
 そんな彼女を置いて旅立つことに罪悪感があったのは否めない。が、他にどんな手があったというのか。
 ココアはチノへ手を振る。必ず戻ってくる。そう彼女に誓って。
 ロケットが飛び立つ。地面を離れ、はるか上空へ。物理の法則に従うならば、立ってもいられない状況なのだが、何故か普通に立っていることができた。
 精神世界故に、かもしれない。

ココア「これで私もこの街から出るんだね……」

 結局、何もすることはできなかった。ただ後悔はない。自分で選んでここまで来たのだ。
 ――拭えない、嫌な予感はずっと頭の片隅に残っているのだが。

ココア「ま、なんとかなるよね。みんなもいるし」

 自分には頼もしい味方もいる。それで、今この場にいるのだ。余計な不安は持たない方がいいだろう。ココアは暢気に伸びをし、窓の外を見た。
 発射してから一分も経たないが、ロケットは既に宇宙へと到達。宇宙空間をさまよっていた。

ココア「行き先はどこなんだろう」

 これからどこへ行き、何をするのだろうか。
 現実ではないが、ココアは期待に胸をおどらせる。

 そして、永遠にも近い放浪がはじまった。
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/21(日) 23:56:59.02 ID:iEEQzaLCo
深夜から
頑張って続けてくれ!
40 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 00:21:22.37 ID:NF+SGDWs0
ココア「……いつまで、ここにいるんだろう」

 あれからどれくらいの時間が経っただろうか。
 精神世界だからか、食事や入浴、排泄その他の諸々の必要はない。欲求もない。だが、確実に精神だけは蝕まれていた。
 ロケットの中では時間を感じることもできない。そもそも時間という概念がこの世界にあるかどうかも分からない。

ココア「帰ることもできないし……」

 現実へ自由に帰れるとも聞いたが、今はその自由はないらしい。何度念じても、帰ることはできなかった。
 ロケット内には何もない。このまま宇宙空間をさまよっているだけならば、死ぬこともなく永遠とロケットの中で過ごすことになる。たった一人で。

ココア「うう……なんでロケットを選んだんだろう」

 短絡的な考えでロケットを選んだ自分。それを今更ながら悔やんだ。
 そもそも、帰ってきたら英雄扱いされる乗り物なのだ。危険極まりないはずだ。

ココア「もう少し考えるんだった……」

 ため息――をつく気力もなく、ココアは床に座り込み、ぼんやりと前を見る。身体は健康な状態。なのにひどくだるい気がした。
 無気力な状態で、ココアは周囲を見回す。何か、この現状を打破するものは。何度も行った確認をし――自分がポケットに入れていた紙箱のことを思い出した。

ココア「そういえば、なんだったんだろう」

 シャロから餞別に貰ったものだ。今は困っているため、躊躇なくココアは開いた。
41 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 00:23:56.83 ID:NF+SGDWs0
 開くと、その中には一丁の銃。
 よくテレビで見るようなリボルバー。あまりにもそのままの姿をしているため、玩具のようにも見える。
 が、おそらく本物。手に伝わるずっしりとした重さで、なんとなく察す。
 多分、シャロはこうなることを知っていたのだ。
 死ぬこともできず、永遠と宇宙をさまようことになると。

ココア「……そっか。そうなんだ」

 それで、止めに来た。なのに自分はそれに気づかず――いや、なんとなく予感はしていた。
 でも不思議と止まる気には慣れなかった。
 僅かな違和感。自分のものだと思っていた選択。ココアはある一つの結論に至り、力なく笑みを浮かべた。
 銃の引き金を引き、自分のこめかみへ。
 死ぬのは怖い。けれど、このまま何もせず一人でずっと生きる方がずっと怖かった。
 深呼吸。震える手をもう片方の手で押さえ、ココアは最後に小さくもらした。

ココア「……間違えたんだね」

 銃声。あとに残ったのは静寂のみ。
 誰もいない宇宙空間で、ココアは一人眠りについた。
42 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 00:26:24.79 ID:NF+SGDWs0
ココア「――っ!?」ガバッ

 悪夢から目覚めるように、ココアは突然身体を起こした。

ココア「はぁっ……はぁ……」

ココア「……部屋? ってことは帰ってきた?」

 息を乱し、ココアは部屋を見回す。
 視界に映るのは見慣れた風景。朝日が射し込む自分の部屋。ココアはホッと息をもらした。

ココア「そっか……現実じゃないって言ってたしね」

 あの世界で自分は自害した。が、こうして生きている。
 考えれば分かることだが、安堵せざるを得なかった。リアルとしか思えない世界で自害したのだから、仕方ないことだと言える。

ココア「よかった……チノちゃんと、みんなとまた会えるんだね」

ココア「一人ぼっちじゃない……」

 一人ではない。今までは当然のことだったが、それがたまらなく嬉しく思えた。

ココア「ふふ。少し寝てようかな」

 今日は平日。このまま寝ていれば、チノが起こしに来てくれる。だらけているのは否めないが、今日は日常に甘えることにする。

ココア「今日はお姉ちゃんって呼んでくれたり――」

 期待を抱きつつ、ココアは目を閉じる。
 やがて起床の時間となり、枕元の目覚ましが鳴り響く。しかしココアはそれを無視した。
 こうしていれば、いつものようにチノが起こしに来てくれる。それが、ココアの日常だった。
43 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 00:31:14.47 ID:NF+SGDWs0
 が、いつまで経ってもチノは来ない。

ココア「……なんでだろう」

 鳴りっぱなしの目覚ましを止め、ココアはベッドから出る。
 チノが自分のことを放置して学校に――考えたくもないが、自分が寝過ごす回数を考慮するに、あり得なくもない話であった。

ココア「うう……チノちゃーん!」

 寂しくなり、ココアは部屋から飛び出す。時間はチノが家を出るぎりぎりの時刻。
 規則正しい彼女ならば、まだ家の中にいるはずだった。

ココア「いた!」

 小走りで廊下を走り、開きっぱなしだったチノの部屋、そのドアから中を窺う。すると学校の制服を着たチノの後ろ姿を見つける。

ココア「チノちゃん! おはよう!」

 近づき、チノを抱きしめる。現実の時間にして少しのことだが、久しぶりにチノと会ったような気がした。
 彼女の感触、体温、におい。心地よい感覚を、ココアは目を閉じてしっかりと味わう。いつものチノだ。ココアは思わず笑顔を浮かべていた。
44 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 00:34:26.58 ID:NF+SGDWs0
チノ「っ……」

 ――が、違う、と次の瞬間直感的に思う。
 嫌がる素振りを見せるチノ。それもまたいつもと同じ反応であったが、なにかが違うと思った。
 チノがココアへと振り向く。ココアを見る。
 ――その目には、怯え。何故抱きしめられているのか。戸惑っているような表情だ。

チノ「……誰ですか?」

ココア「え?」

 思わぬ問い。冗談だとも思ったが、彼女の表情からはそんな雰囲気は感じられない。
 ココアは自分から血の気が引いていくのが分かった。

ココア「ココアだよ? ほら、チノちゃんのお姉ちゃんで――」

チノ「何を言ってるんですか? ココアさんは亡くなりました。悪い冗談はやめてください」

 ぐいっと手で押される。いつもよりも強い力で、遠慮なく。後ろへ数歩よたつき、ココアは真っ白になりかけた頭で思考する。
 ロケットに乗り、戻ってこなかったというチノの母親。
 自分もロケットに乗り、その中で自殺した。
 彼女の中で、『死者』と認識されていた人物と同じ行動をしたのだ。だから――死んだと認識されている。
 簡単なことだった。

ココア「死んでないよ。ほら、チノちゃん。私だよ? ココア」

チノ「やめてください」

 必死に自分をココアだと口にする。が、チノは決して認めない。それどころか怒った顔をして、さっさと部屋を出て行ってしまった。
 見知らない誰かが、仲良くもない誰かが、ココアを名乗る。それが許せないのだろう。

ココア「間違えなければ……」

 去っていくチノ。止める間もなく去っていく彼女。
 あの世界では口にしなかった言葉をココアは俯き、呟く。

ココア「みんなが間違えなければ、こんなことにならなかったのに」
 
 
 
【直前の選択肢からコンテニューします】
45 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 00:53:04.65 ID:NF+SGDWs0
ココア「シャロちゃん?」

シャロ「な、なんでもない」

 咳払いを一つ。彼女は真面目な顔をしてココアを見る。

シャロ「それより、ココア。ロケットに乗る意味を分かってるの?」

ココア「え? かっこいいとか?」キョトン

 普通ならば、当たり障りない駅。しかしココアはロケットを選択した。
 そこにインターディメンドでの干渉があったのだが、ココアは分からない。

シャロ「あんな玩具になにを思ってるんだか……」

ココア「玩具っぽいのがかっこいいと思うんだけど」

シャロ「かっこいいかっこよくないはどうでもいいわ」

シャロ「ロケットに乗る意味よ。分からない?」
46 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 00:56:29.98 ID:NF+SGDWs0
ココア「死ぬってこと?」

 頭の中に浮かんだ言葉。気づくとココアは自然とそれを口にしていた。
 間違いなくインターディメンド。選択された答え。

ココア(『死ぬ』……? それって)

 ココアの頭に疑問が浮かぶ。チノの母親のことはいい。話には聞いていた。
 が、ティッピーまでもが死んでいたことは知らなかった。

ココア(みんなは、私達のことを知っている……?)

 この答えが選択されたということは、自分の知らないことを知っている誰かがいるということ。
 次元が違うのだから、自分の考えなど及ばない――とは思っていたものの、こうしてそれを実感すると寒気がした。
 まるで自分たちの日常が見世物になっているような、血の気の引く不気味さ。

ココア(いやいや、信じないと駄目だよね)

 ネガティブになりかけた頭をリセットしようと、ブンブンと首を横に振る。

ココア(ここまで私を、無事に届けてくれたんだもん)
47 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 00:59:25.83 ID:NF+SGDWs0
シャロ「なんだ、分かってるんじゃない。ならなんでロケットに乗ろうとしたのよ」

ココア「……え? し、知らなかったから」

 何故ロケットに乗ろうとしたのか。それは死ぬということを予想していた、『みんな』の中の一人が選択したこと。
 その人物はロケットが死を意味していることを知っていたかもしれない。知らなかったかもしれない。
 けれど、ロケットに行くと自分で決めたと思っているココアにそんな心配が生じることはない。

シャロ「知らなくて分かってるってこと? 意味が分からないわね」

ココア「ごもっとも……」

シャロ「とにかく、理解してるってことよね。ならいいわ」

 ため息を一つ。シャロは表情を引き締め、真面目な顔をする。

シャロ「ココア。実は頼みたいことがあるの」
48 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 01:01:10.79 ID:NF+SGDWs0
ココア「頼みたいこと?」

シャロ「ええ。チノちゃんをこの街から連れ出してほしいの」

ココア「連れ――そんなことできるのっ?」

シャロ「ええ。旅立ち自体、駅からは自由に許されてるから」

ココア「そうなんだ……」

 チノを連れ出すなんてこと、一度も考えなかった。だがそれができるなら、一人にすることもない。
 現在の状況ではそれが一番いい手かもしれない。ココアは一人頷いた。

ココア「わかったよ。やってみる」

シャロ「ありがとう、ココア」

ココア「どういたしまして。でもシャロちゃん、千夜ちゃんのことが心配なんだよね? そっちはいいの?」

シャロ「千夜はいいの。いつか旅立つから」

ココア「そうなの?」

 まるでチノが旅立つことはないと言っているような言葉である。ココアは首を傾げる。が、シャロは休まず話を続けた。

シャロ「で、肝心の方法だけど、何かある?」
49 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 01:03:21.50 ID:NF+SGDWs0
ココア「うーん……」

 考えてみる。喫茶店にとじこもったチノを出し、ともに駅から旅立つには、どうしたらいいだろうか。
 少しでも失敗すれば、前のように吹き飛ばされるのがオチ。
 何か、手はないだろうか。

 選択
 1・ロケットに乗る
 2・シャロに喫茶店へ行ってもらおう

 選択・2

ココア「シャロちゃんは……喫茶店に行けたりする?」

 頭に浮かんだのは、シャロに協力してもらうこと。
 けれどなんとなく挙動不審な彼女。何かしら事情がありそうだし、手伝ってくれるかが不安だった。

シャロ「無理! こうしてここにいるのもかなり頑張ってるのよ。ひょこひょこ喫茶店に行ったら絶対撃たれる」

ココア「えっと……一時間以内で出て行かないのってそんなに重罪なの?」

 撃たれる、なんて物騒な発言にココアは反応する。とても撃たれる理由にはならないと思うのだが。

シャロ「ここの決まりだから。出て行かないと、断罪のうさぎに追い掛け回されることになるわ」

ココア「断罪うさぎ……」

ココア(かっこいいのか悪いのか、分からない)
50 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 01:05:58.67 ID:NF+SGDWs0
シャロ「そういうことだから、私は無理。命は惜しいもの」

ココア「そうだよね……困ったなぁ」

 命を狙われているならば強要もできない。ため息を吐いて、ココアは新たな手段を思案する。けれど全然思い浮かばない。
 やはり、シャロに協力してもらうしかないような気がした。

シャロ「……うう、そんな目で見ないでよ」

 ココアにそんな気はないのだが、すがるような目に見えたらしい。シャロは気まずそうに目を逸らし、何かを考えはじめた。

シャロ「――ああもう! 分かった。行ってくればいいんでしょ?」

ココア「えっ!? 大丈夫なの?」

シャロ「気をつけていけば……多分大丈夫。断罪うさぎの歩く道は規則性があるから」

ココア「そっか……ごめんね、巻き込んで」

シャロ「いいのよ。お願いしたの私だし。少しは手伝わないと」
51 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 01:09:11.22 ID:NF+SGDWs0
シャロ「でも失敗しても恨まないでよ? 一時間経ちそうになったら旅立つこと。いい?」

ココア「うん。ありがとう、シャロちゃん」

シャロ「それじゃ、駅で待ってなさい」

 言って、シャロは走った。不安はあるが……自分が行ってもドアは閉まったまま。シャロに任せた方が得策だといえた。
 あとは目的地に行って待っているだけだ。

ココア「これでいいんだよね?」

 一人呟き、ココアもまた走りだす。
 駅に向かうようチノへと言ってもらい、自分は駅で待つ。それから――

ココア「って、それからのこと考えてないよ!」

 今更気付き、ココアはシャロが去っていった方向を見る。が、もういない。

ココア「ど、どうしよう……その場で考えるしかない、のかな」

 話し合う時間はない。不安を感じつつ、とりあえずココアは駅に向かった。
52 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 10:05:08.19 ID:NF+SGDWs0
 巨大な駅。リゼが旅立ったそこには、いつの間にかあの汽車が停まっていた。
 発車の時を待っているようで、シュッポシュッポと音を立てている。若干やかましい。

ココア「来ちゃった……」

 着くまでに何か考えよう。そんなふうに思っていたものの、結果は散々。何も思い浮かばなかった。

ココア「馬鹿だよね……本当」

ココア「これでチノちゃんが来たら、どうなるんだろう」

 想像する。
 やって来たチノに飛ばされ、汽車に押し込まれる。何度想像しても、大体そのような結末で終わった。

ココア「すっごい拒絶されたし……当然だよね。あはは」

 チノは悩んでいた。何にかは分からないが、それに対して自分は笑顔でいることを否定してしまった。
 だから拒絶された。相手がどう思うかなんて関係ない。自分がどうあってほしいかを押し付けた結果だ。

ココア「お話できるなら、今度はしっかりしないと」
53 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 10:06:31.35 ID:NF+SGDWs0
ココア「シャロちゃん大丈夫かな」

シャロ「――大丈夫よ」

ココア「ふええぇ!? しゃ、シャロちゃん!? いつの間に!?」

シャロ「さっきよ。まったく、疲れたんだから」

 考え込んでいて気付かなかったらしい。ココアの隣にはシャロが立っていた。彼女は肩を回し、深く息を吐く。
 怪我などはなく、無事喫茶店に着いたようだ。ほっとするココア。その前で、砂利を擦る音が立つ。
 誰かいる。自分の横から、前へ。顔を向けると、そこにはチノがいた。

ココア「来てくれたんだね」

チノ「シャロさんに頼まれましたから。ココアさんのためじゃありません」

 そう言って、ぷいと顔を逸らす。笑顔のチノよりも、こっちの方がチノらしい。ココアは笑う。
54 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 10:09:05.77 ID:NF+SGDWs0
ココア「そっか。それでも嬉しいな」

ココア「シャロちゃん、ありがとう」

シャロ「ええ。感謝しなさい」

ココア「うん。……」

 何を、言うべきなのだろうか。
 次々と住人が去り、戻らない中、チノは喫茶店で笑顔を浮かべている。
 シャロは言った。チノはここから旅立つことはないと。それはつまり、いつかは一人になるということ。
 そんな状況で、チノは尚他人のことを想って何もせず、笑顔でいる。
 それだけは見過ごせない。ココアは下ろしている手を握りしめ、口を開いた。

ココア「チノちゃん……」

 選択
 1・怖いんだよね?
 2・ここにずっといるの?
 3・みんなに会いに行こう

 選択:3

ココア「みんなに会いに行こう」

 言って、ココアは手を差し出した。
55 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 10:10:57.06 ID:NF+SGDWs0
チノ「みんなに、ですか?」

ココア「うん。この汽車でどこかに行ったなら、きっと会えるよ。だから一緒に行こう?」

チノ「……駄目です。私には喫茶店があります」

ココア「チノちゃん寂しいんだよね? なんで我慢するの?」

チノ「我慢なんてしてません。これは私の当たり前なんです。今更苦しんだりしません」

チノ「分かっているんです。この街に残るのは私だけ。私は喫茶店がある。でも、皆さんにそれはありません」

チノ「シャロさん、リゼさん、ココアさんは学校を卒業すれば、この街からいなくなるかもしれません」

チノ「千夜さんだって、お店はありますが、夢のためにいずれ離れるかもしれません」

チノ「マヤさん、メグさんだって、これからどんなことがあるか分かりません」

チノ「みんな、いなくなるんです。そして会えなくなる。何年かに一度会えるかもれない。でも、母やおじいちゃんのように突然永遠に会えなくなるかもしれません」

チノ「……要らないんです、なくなる、辛くなる幸せなんて。だから遠くから私は笑って見ているんです」

 言葉は淡々と、しかし泣きそうな顔をして語るチノ。涙こそ浮かべないものの、その姿は痛々しい。
56 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 10:14:18.00 ID:NF+SGDWs0
ココア「チノちゃん。それはみんなが思ってることなんだよ」

 対して、ココアは微笑みながら口にする。そして、チノの手を強引に取った。

ココア「みんながいなくなる。幸せな場所がなくなる。それは当たり前のこと。間違ってないよ」

チノ「なら……」

 戸惑うような目がココアに向けられる。ココアは真っ直ぐ見返し、言葉を続ける。

ココア「だから、みんながいるの。会うんだよ」

ココア「楽しいことだけじゃない。辛いことも、悲しいことも全部分けあって――そうやって、お別れの時に笑えるようにしなくちゃ」

ココア「もっと周りを頼っていいんだよ?」

ココア「誰かと別れたり、寂しかったりしたらみんなに相談して、気持ちを伝えて、友達に頼って解決する。それも必要なんだと思う」

ココア「で、みんなと会えなくなったら自分から会いに行く! それが今なんだよ!」

 暗いチノへ、ココアは遠慮なしにまっすぐ伝える。手を握り、決して目を逸らすことはせず。
57 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 10:17:37.14 ID:NF+SGDWs0
チノ「でも、お店が――」

ココア「う゛。それは……どうしようかな?」

シャロ「私に聞かないで」

 見ていたシャロに意見を求めるも、ジトッとした目で当然の答えが返ってくる。

ココア「喫茶店かぁ……」

 自分は外に出られない。その言い訳に聞こえなくもないのだが、実際喫茶店を置いてどこかを放浪することなど簡単にできることではない。
 偉そうに言っていたわりには肝心なところが抜けていた。ココアは頭を必死に働かせる。そこへ、一人の男性の声が聞こえた。

タカヒロ「チノ、行ってきなさい」

 チノの父親であった。チノの隣に立った彼は、優しく言う。

タカヒロ「店はなんとかする。だからチノは気にすることはない」

チノ「おとうさん……」

ココア「うんうん。こうやって頼って、頼られて生きていくんだよ」

シャロ「大切なこと忘れてぺらぺら語ってたのは誰よ」

ココア「い、言わないで」
58 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 10:23:58.73 ID:NF+SGDWs0
ココア「こほん……。チノちゃん、どう? 行こうと思ってくれたかな」

チノ「……会えると思いますか? 行き先も分からない汽車で行って」

 揺れる瞳。まだ迷っているように見えた。

ココア「会えるよ。自分が会いたい、会おうと思えば」

ココア「現実でだって、きっとそうなんだと思う。勿論、永遠に会えない――なんてこともあるだろうけど」

ココア「でも、私はチノちゃんより先にいなくなるつもりはないよ」

ココア「お姉ちゃんだからね。妹が寂しがることはしないよ」

ココア「みんなも間違いなく同じ気持ちだよ」

 確証のない言葉の数々。どうなるかは分からない。けれど、ココアは堂々と口にする。

ココア「だから、チノちゃんの想い次第」

チノ「……分かりました」

 僅かな間を空け、チノは頷く。それから目を閉じる。再び目を開いたチノは、ココアのことを見つめ返し微笑んだ。

チノ「行きましょう。みなさんと会いに」
59 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 10:25:43.52 ID:NF+SGDWs0
ココア「うん! 行こう、チノちゃん」

 チノの手を引く。汽車の入り口へ向かい、ココアは後ろを振り向いた。

ココア「ありがとう、みんな。ちょっと出かけてくるね!」

チノ「行ってきます。必ず帰ってきますから」

 シャロとタカヒロの二人は笑顔で手を振ってくれる。リゼが旅だった時と、言っていることは大差ない。
 けれど何もかもが違うような気がした。
 明るく、帰ってこれると確信が持てた。

ココア「チノちゃん、行こう!」

チノ「はい。ココアさん」

 二人は顔を合わせて頷く。そして迷うことなく汽車へと乗っていった。
60 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 10:27:12.10 ID:NF+SGDWs0
 汽車内部。
 いくつもの座席のみが連なった車内で、二人は適当な席に座り、外を眺めていた。
 汽車は既に出発しており、リゼの時とは違いゆっくりと移動していく。車で移動しているような速度だ。

ココア「……私が、ずっと一緒――に」スヤスヤ

チノ「疲れたんでしょうか……。寝るのが早すぎです」

 窓際の席に座るココア。出発からほどなくして眠りについた彼女を見やり、チノは小さく笑みをこぼす。

チノ「みんなに会いに……」

チノ「さっきまでかっこよかったのに、今はのほほんとしてますね」

チノ「――あれ?」

 窓の外へちらりと映ったものにチノは目を見張る。流れる景色の中に、男性が立っていた。
 遠くからだが誰だか分かったようだ。汽車から離れた場所。ぽつんと一人立っているのは、ラビットハウスの男性用の制服を着た、ヒゲを生やした老人。
 彼は手を振り、遠くからでも分かるほど大きく口を開いて笑う。

チノ「おじいちゃん……」

チノ「別れて。街を出て」

チノ「いつか、こんな日も来るんでしょうか……」

 やがて、その男性も見えなくなる。柔らかい座席に背を預け、チノは呟いた。
61 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 10:32:17.70 ID:NF+SGDWs0
 この世界の終点。ストーンヘンジ。

ココア「うーん……ね、眠い」

チノ「ココアさん、起きてください。終点です」ユサユサ

ココア「――え?」

 終点という単語に嫌な予感がし、目を開く。慌てて身体を起こし周囲を見回すと、そこは見たことがない場所だった。
 遺跡のようなところだ。石で造られた地面、そしてドアのない扉のようなものがあり、そこでは眩しいほどの強力な光が天高く上ってる。

ココア「ここはどこ?」

チノ「終点です。そして、新しいはじまりの場所でもあります」

 ココアが起きたのを確認し、チノが立ち上がる。彼女に習って、ココアもまた地面に立った。

ココア「えっと、どういうこと?」

チノ「この階層が終了したということです」

ココア「そ、そうなの?」

ココア(私、なにもしてないような……してたのかな)
62 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 11:35:34.74 ID:NF+SGDWs0
ココア「よく分からないけど、ここから先に進めるようになったってことだね」

チノ「そうですね。心の準備……とでも言いましょうか。ココアさんに対して、少しは信頼が生まれたようです」

ココア「笑顔見せるわりにきついよね……」

チノ「そうですか?」

 きょとんと首をかしげるチノ。そんな彼女へ苦笑を返し、ココアは扉を見た。

ココア「……で、どうすればいいのかな?」

チノ「あそこに一緒に入れば、それで完了です」

ココア「それだけ? もっとこう、絆を表現する抱擁とか」

チノ「ないです」ゴゴゴ

ココア「冗談だから威圧しないでっ」

ココア「ええと……それじゃ、行こう」

チノ「はい。今度こそ本当の出発です」

 手をつなぎ、二人は光の中へと入っていく。視界が光に埋め尽くされ、ココアはそこで意識を手放した。

 
 
【ダイブ:香風 智乃  LV.1 『旅立ちの駅』を完了しました】


【『ダイブ』の選択肢が解禁されました】

【『ザッピング』の選択肢が解禁されました】

 ダイブ……アクセスが許可されている人物の精神世界に入ること。
 危険だが、成功すれば確実に絆を深めることができる。

 ザッピング……現在のチャンネル(ココア)から、別のチャンネルに切り替えます。
 時間軸は他チャンネルと同一ではなく、ストーリーを進めただけ進みます。話が進まなくなったら、試すといいかもしれません。
63 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 11:41:21.86 ID:NF+SGDWs0
 翌日。教室。

ココア(あれから私はいつも通りチノちゃんに起こされて、学校に行った)

ココア(変わったことはなにもない……のかな。朝のちょっとの時間しか接していないから、全然分からなかったよ)

ココア(今日はバイトもあるし、学校が終わったら話してみようかな)

ココア(でも……他に何かやるべきこととかなかったっけ?)

先生「ココアさん、次、ここを読んでください」

ココア「ふえぅっ!? ええと、この公式は――」

先生「今は国語ですよ、ココアさん」

ココア「あ、はい……」

クラスメイト『クスクス』

ココア(とにかく、決めないと一日中ぼんやり……あれ? いつも通りな気がしてきた――ううん、気のせい気のせい)

行動選択
 1・チノちゃんと話す
 2・外に出かける(甘兎or街を散策or会う人物を指定)
 3・ザッピング
 4・ダイブ

 選択:2 甘兎
64 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 11:47:56.33 ID:NF+SGDWs0
ココア「なんで来ようと思ったんだろう……?」

 放課後。甘兎庵前。帰り道の途中でなんとなくふらりとそこへ向かったココアは、首を傾げた。
 甘兎に行きたいと思ったのは事実。だけども、バイトがある日にそこへ立ち寄ろうと思うのは結構珍しいことだった。

ココア「たまにはいいかな。よし、行こう」

 チノに遅れるかもしれないとメール。時刻を確認し、ココアは甘兎へと入っていった。

千夜「いらっしゃ――あら? ココアちゃん」

 店に入ると、千夜がやって来る。彼女もココアがここに来ることを不思議に思っているようで、目をぱちくりとさせた。

ココア「こんばんは、千夜ちゃん」

千夜「はい、こんばんは。今日はどうしたの? 私ココアちゃんに何か借りたりしてたしら?」

ココア「ううん。今日は働く前に軽く甘いものでも食べようかなって」

千夜「そうなの? 嬉しいわ」

ココア「あとは千夜ちゃんに会いに……なんて」キリッ

千夜「ラビットハウスに行く前に甘兎で……なんだか浮気みたいね」

ココア「あはは。メインラビットハウスで、時々甘兎を手伝えたら、楽しいんだろうなぁ」

千夜「私は逆でもいいのよ」

 互いに笑みを浮かべつつ、席へ。ココアはテーブルの椅子に着席し、千夜はメニューを彼女の前に置く。
65 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 11:58:58.73 ID:NF+SGDWs0
ココア「うーん……悩む」

 早速メニューを開き、ココアは唸る。

千夜「それだけ悩んでくれると、お店の店員として嬉し――あら? ココアちゃん、何か付けてる?」

ココア「ふえ? あ、これのこと?」

 一瞬なんのことを言われているのか分からなかったが、彼女の視線を追って察する。
 学校では目立つからと、シャツの中に入れていたペンダント。その紐が目に入ったのだろう。
 首にかかった紐を手で軽く引っ張り、ココアは尋ねる。千夜は首肯。やはりそうらしい。

ココア「ペンダントだよ。イン――お気に入りなんだ」

千夜「ペンダント? ココアちゃん大人ね」

ココア「う、うんっ、魔性を強めようって」

ココア(あ、危なかった……インターディメンドのことは内緒なんだよね)
66 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 12:01:27.98 ID:NF+SGDWs0
ココア(千夜ちゃんが悪用するとは思えないけど……ルールだからね)ウンウン

千夜「そういえば、シャロちゃんも最近、ペンダントを付けてるのよ」

ココア「へー、そうなんだ。可愛いペンダントなんだろうなぁ」

千夜「うーん、しんくうかん? みたいなデザインで、可愛いよりはかっこいい物だったわ」

ココア「真空管かぁ、渋い――へえっ!?」ガタッ

 まさに自分が身に付けている物と同じ。完全に不意をつかれ、ココアは奇声を上げた。

千夜「こ、ココアちゃんっ? どうしたの?」

ココア「な、なんでもないよっ。真空管いいなぁって思っただけ」

千夜「確かに。ハイカラよね」

ココア(シャロちゃんもインターディメンドを……?)

ココア(分からない……珍しい技術でもないのかな)

ココア「今日は海に映る月と星々で」

千夜「ええ。ちょっと待ってて」

 シャロも自分と同じ力を。そう思うと、気になってもやもやせざるを得なかった。しかしそれも少しの間のこと。頼んだ甘味を口にすると、ココアの頭の悩みは見事にすっ飛んだ。

【千夜の精神世界へのアクセスが解禁されました】
67 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 12:08:37.35 ID:NF+SGDWs0
【この先から安価をとって進めます】


ココア「ふぅ。甘くて幸せな味だった……」

ココア「さて。まだ時間はあるし、これからどうしようかな」


行動選択
 1・チノちゃんと話す
 2・外に出かける(甘兎or街を散策or会う人物を指定)
 3・ザッピング
 4・ダイブ(チノor千夜)

 選択権は>>67
68 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 12:32:35.08 ID:NF+SGDWs0
訂正
選択権は>>69
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/22(月) 13:02:50.94 ID:YkrozAeSO
4 千夜
70 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 14:58:28.81 ID:NF+SGDWs0
 夜。自室。

ココア「結局あのことを話さないまま一日が終わっちゃったよ……」

 特別気まずいわけでもない。むしろ仲良くなった気もしたのだが、チノと精神世界のことを話すことはなかった。
 もしかしたら覚えていないのかもしれない。

ココア「いつも通りだったしね。意識してたの私だけなんじゃないかな」

ココア「……しょうがない、か。また今度きけばいいんだし」

ココア「今日は寝ようかな」

ココア「明日もいい日になるように……」スヤスヤ
71 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 16:37:15.06 ID:NF+SGDWs0
【ダイブ:宇治松 千夜 LV.1『終わらなき聖戦(ネバーエンドクルセイド)』を開始します】

 どこか。

ココア「……うん?」パチッ

ココア「ここは……」

 目を覚ましたココアは、周囲を見回す。そこは、見覚えのある空間。
 青と自分しかない、不思議な場所だった。

ココア「ここにいるってことは……精神世界?」

 チノの世界に行ったときの始まり方と似ている。異なるのは、誰も起こしてくれなかったことか。

ココア「誰かいないの? ――わっ!?」

 不安になり声を出す。するとその瞬間、明かりが消えたように周囲が暗くなった。
72 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 16:45:30.56 ID:NF+SGDWs0
ココア「だ、誰かいるの?」

 声に反応したのは間違いない。暗いなかココアは手探りでなんとか立ち上がる。
 が、周囲には人の気配はおろか、自分の感覚に影響を与えるものが一つとしてない。感じるのは暗い、ということのみ。

ココア「誰もいないのかな」

 わけの分からない場所に一人きり。心細くなるココア。
 しかし、少しして変化が現れた。オーケストラのような音楽が不意にどこからともなく流れてきたのだ。

ココア「え? なにこれ?」キョロキョロ

???「これは、終わらない勇者の戦いを描いた、壮大な物語」

ココア「わっ、びっくりした!」

 またもや突然語りはじめた優しい、ナレーションふうの声にココアはびくっと身体を跳ねさせる。
 聞き覚えのない声だ。どこから聞こえてくるかは分からないが、ココアの耳にしっかりと聞こえる。
 不思議な感覚だった。まるで視界を塞いで、ヘッドホン付きで映画でも見ているような。
73 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 17:03:11.38 ID:NF+SGDWs0
ココア「誰かいるんだよね?」

???「あなたは勇者。王国を守り、魔王を討伐、終わらない戦いを終わらせる伝説の存在」

ココア「……」

ココア(無視……)

???「魔王のカオスを止められるのは、勇者のみが持つと言われるグランツを持つあなただけ」

 戸惑うココアをよそに、ナレーションは続く。
 わけの分からない専門用語らしき単語がポンポン出てくる、頭がこんがらがりそうな語りであった。
 当然ココアは理解することができない。最後の方は欠伸すらしていた。

???「――物語が今、はじまります。準備はいいですか?」

ココア「えっ? なにか言った?」

 真面目に聞いていなかったココアが、遅れて反応を示す。
 と同時に、彼女は睡魔に襲われた。

ココア「あ、あれ? なんで私――」フラッ

 なにも見えない中、自分の身体が傾いたのを確かに感じ――ココアは眠りに落ちた。
74 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 17:29:14.01 ID:NF+SGDWs0
 草原。

ココア「……はっ!?」ガバッ

 突然目が覚める。
 悪夢から目覚めるがごとく、ココアは勢いよく身体を起こして、そしてホッと安堵した。

ココア「よかった……何か間違ったのかと思ったよ」

 自分の意思に反しての、突然の眠気。眠りに落ちる前、ひどく焦った気持ちでいたことを思い出す。

ココア「それで……ここは誰の世界なんだろう」

 ゆっくり立ち上がり、周囲を見回す。辺りには一面の草原。自分が立っているのは、そこにぽつんとはえている木の下だった。
 そして、遠くの方には石の壁らしきものに囲まれた街――と城。中世の西洋のような光景が広がっている。

ココア「……分からない。チノちゃん、じゃないよね」

 汽車で旅立ってここにいる、というのはあまり納得がいかない。よってここは別の誰かの世界、とココアは思うのだが、そうなると心当たりがなかった。
 密かに、自分でも思わないうちに誰かと仲良くなりたいと思っているのだろうか。などと考えても、はっきりと誰かは分からない。
75 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 17:36:55.49 ID:NF+SGDWs0
ココア「とりあえず、立ってるだけは駄目だよね。何かしないと」

 思考をやめ、うんと頷くココア。彼女は伸びをすると、街らしき場所を見つめた。

ココア「とりあえずあそこかな」

ココア「誰かいれば、きっとやるべきことも見つかるし」

ココア「前進あるのみだね」

 暢気に考えて、ココアは遠くに見える街へと歩き出した。
76 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 18:01:09.26 ID:NF+SGDWs0
 街。

ココア「あっさり入れた……けど」

 草原を歩くことしばらく。門から見張りの兵士に挨拶し、楽々到着――したのは良かったのだが、街を見たココアは自分の目を疑った。
 街並みだけではない。そこで暮らしている人々の服装もまた中世、というよりはゲームチックなのだ。戦士だとか魔法使いだとか、賢者、その他個性溢れる面々が街の中を耐えず行き来している。そして、

ココア「私も……いつの間に」

 ココアもまた、そんな彼らと並んでもおかしくない服装となっていた。
 頭のところは何も変わりない。いつもどおりの髪型と、髪飾り。しかし寝間着を着ていたはずの身体には、白のブラウス、長い裾のスカート、茶色のマント……と、現実世界ではコスプレだと思われそうな服が。
 加えて腰に剣がささっているのだから、恥ずかしい。

ココア「さっきの説明、の世界に合うようにアレンジされたのかな」

 ここは誰かの心の世界。そのようなことが起こってもおかしくはない。
 ぶつぶつと呟きながら、ココアは街を歩く。ここに来れば何か見つかるかとも思ったが、特になにもないらしい。

ココア「何をすればいいんだろう――っと!?」

 ドンッと何かにぶつかる。思考を中断して顔を視線を前に向ければ、そこにはヒゲをはやした優しげな顔をした男性が。

ココア「あ、チノちゃんのお父さん!」

 彼もまた現実離れした、盗賊ふうの格好をしているのだが、確かにタカヒロであった。
 見知った顔の発見に、ココアははしゃぐ。しかしそう簡単にいかないことは言わずもがな。

???「てめぇ、どこ見て歩いてんだ! あぁん!?」

 ダンディな風貌の彼は、チンピラのような口調で言い、ココアを睨んだ。
77 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 18:19:34.68 ID:NF+SGDWs0
ココア「……」ポカン

ココア「――え!? どゆこと!?」

 一瞬間を空けて驚愕する。
 これまでも、現実と違う性格をした友達を見たことはあった。
 けれどここまでの豹変っぷりは初めてだ。

???「てめぇがぶつかったってことだ」

ココア「え、えと……ごめんなさい。チノちゃんのお父さん」

 これまでの経験から、現実世界でのことを言っても無駄だろうと悟る。
 ぶつかったのは自分。素直にココアは頭を下げた。
 頭はまだ混乱気味だったが。

???「お父さんじゃねえ。俺様の名はタカ」

タカ「それと、それでお詫びはおしまいか?」

ココア「……ほ、他になにか?」

 剣呑な雰囲気にココアは恐る恐る問いかける。周りを見れば、街を歩いていた人々は足を止め、ココアとタカを中心に人垣をつくっていた。何か面白いことが起きるとでも思っているのか。いや、今の状況でも充分面白いのかもしれない。
78 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 18:47:56.68 ID:NF+SGDWs0
タカ「そうだな……」

 人相の悪い悪人顔で、タカがココアを見る。
 喋り方と表情で、こうも印象が違うのかとココアは心の中で嘆いた。見慣れた顔であるが、こうして絡まれると怖くもある。
 怯えているココアを見、タカはにやりと笑った。

タカ「お前、俺様の女になれ」

ココア「……」

 絶句した。居候している家の父親とお付き合い。何の罰ゲームかと。悪夢かと。

ココア「――っ!?」

ココア「い、嫌です!」

 一瞬時間が止まるものの、すぐに首を横に振る。
 普段のタカヒロなら絶対に言わないこと。別人だとはっきり認識できた。

タカ「それなら、痛い目に遭ってもらうしかないな」

 今も典型的な小悪党の台詞を口にしているし。悪い顔をして笑うタカは懐から短剣を取り出す。

タカ「俺様のジャズ殺法はちっとばかし凶暴だぜ」

ココア(ジャ、ジャズ殺法……?)

 鞘から出てきらめく刃よりも、そちらの方が無性に気になった。
79 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 19:00:06.18 ID:NF+SGDWs0
ココア「う……」

 なんだかギャグのようにも思える状況だが、自分の身に危険が迫っているのは確かな事実。
 彼は今にもココアへと襲いかかりそうだ。そうなれば、自分も何かしらの行動を起こさねばならない。

ココア(ど、どうしよう……!)

 選択
 1・戦う
 2・逃げる
 3・助けを求める

 選択権は>>80
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/22(月) 19:08:39.14 ID:YkrozAeSO
81 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 19:47:28.85 ID:NF+SGDWs0
ココア(そうだ。こんなに人がいるなら、助けを求めれば……!)

 ココアの頭にふと考えが浮かぶ。
 周りで見ている野次馬。彼らの中に助けてくれる人がいるかもしれない。
 あれだけの人数がいるのだ。助けを求めれば誰かしら正義感のある人物が颯爽と――なんてことも有り得る。
 ココアは決断し、口元に手を添えて大きな声で叫んだ。

ココア「だ、誰か助けてー!」

???「分かったわ!」

 すると予想通り、どこからかココアの声に答える者が。
 ホッと安堵しつつ、ココアは声のした方向を見る。何故か上から聞こえてきたのが些か不安ではあるが、自分を助けようとしてくれる人物がいることが嬉しかった。

???「私に任せて!」

 建物の上。飛び降りたら無事では済まない高さに、その声の主はいた。
 端的に言えば、その人物は千夜であった。が、やはり服装が違う。黒いフードつきのローブを羽織っており、その下には胸と肩を大きく露出した黒のドレスを身にまとっている。頭にはこれまた黒い三角帽。手には大きな杖を持っていて、なんだか魔女のような格好であった。
 魔法使いにも見えなくはないのだが、大人っぽいスタイルが魔女という単語を彷彿とさせる。
82 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 23:35:04.77 ID:NF+SGDWs0
タカ「なにもんだ、てめぇ!」

???「私は通りすがりの魔法使い。チヨよ」

 チヨ。チヤではなくチヨ。

ココア(みんな普通の名前を名乗ればいいのに)

 密かに思うココアであった。

タカ「チヨ……だって!?」

 タカが驚愕し、ざわざわと野次馬らもにわかにざわつきはじめる。
 意味が分からず、ココアは首を捻った。

野次馬『あの、漆黒の言霊使い……』
野次馬『実在していたのか』
野次馬『あの杖、伝説の魔法使いが作ったという幻の……』

チヨ「あら、私の名前って結構知られているみたい」ドヤッ

 控え目なことを言いつつ、杖を片手にポーズを決め、得意げな顔をするチヨ。

ココア(この千夜ちゃんも現実とはちょっと違う……)
83 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/22(月) 23:47:55.60 ID:NF+SGDWs0
チヨ「どう? 女の子をいじめようとするおじさん。私と戦う気はあるかしら?」

タカ「――知るか! いいから降りてこい!」

 ここまできて引き下がるわけにもいかない、ということらしい。
 チヨの力は相当なようだが、やけくそ気味に彼は叫んだ。

チヨ「面子、というものかしら。分かったわ、それじゃ相手にしてあげる」

チヨ「とうっ!」バッ

 チヨが跳ぶ。屋根の上から躊躇なく彼女は跳躍し――

チヨ「へぷっ」ドシャ

 墜落した。
 落下の寸前に、一瞬落下速度が和らいだりもしたのだが、いかんせん着地の姿勢が悪かった。
 お腹から思い切り落ちたのは、傍から見ていても凄まじく痛そうだ。

ココア「え……あ、あの」アタフタ

タカ「これが、『動けぬ賢者』の本領……」ゴクリ

ココア「それ単に運動苦手なだけだよね?」
84 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/23(火) 00:05:14.84 ID:bk956+lA0
チヨ「いたた……」

ココア「あ、立った」

 ほっとするよりも、驚く気持ちの方が強かった。
 あの高さから、びたーんと落ちて生きているとは。なんだかんだいって、魔法使い。そこら辺の実力はしっかりしているようだ。

ココア「チヤ――チヨちゃん、大丈夫?」

チヨ「だ、大丈夫よ、お嬢さん。少し下がっててね」ヨロヨロ

ココア「見るからに弱ってるけど……」

チヨ「視界が霞んでびっくりするくらい苦しいだけ。だから大丈夫。お腹が空いたのかしら」

ココア「全然大丈夫じゃないよ! あと絶対にお腹のせいじゃいないと思う」

チヨ「だいじょぶだいじょぶ。はぁ……はぁっ……」

 誰から見てももう満身創痍な様子だったが、止めることはできない。
 それにもし戦える状態だったとして、自分が近くでちょこちょこしていたら邪魔だろう。
 ココアは親友を信じて、任せることを決めた。

ココア「無理しないでね?」

チヨ「うん、任せて」

 肩越しに振り向き、チヨは笑顔を見せる。そしてタカへと向き直った。

チヨ「……怪我をしても頑張る私、かっこいい」ボソッ

ココア(原因が墜落じゃなかったらかっこよかったんだけどなぁ……)
85 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/23(火) 00:33:58.60 ID:bk956+lA0
チヨ「――さぁ、はじめようかしら」ヨロヨロ

タカ「くっ……なんて威圧感だ……っ!」

ココア「どう見ても弱ってるんだけど」

野次馬『これはチヨで決まりだな』

ココア(……なんなんだろう、この世界)

 まさか友達のことで自分が疎外感を覚えるとは。ココアはいやに冷静な心情で、戦いを見守った。

タカ「言霊使いの実力、見せてもらうぜ!」ダッ

チヨ「え、ええ……と、とくと味わいなさい」

 走りだすタカに対し、ふらついたまま棒立ちするチヨ。さっきまで強がっていたが、タカが接近する今、彼女の表情からは焦りが感じられた。

ココア(……なんとなく、分かったような)

 実際の戦いなど目の前にしたことはない。けれど、これから先どうなるか、だいたい予想がついてしまった。
86 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/23(火) 00:54:39.70 ID:bk956+lA0
タカ「たぁぁ!」ブンッ

チヨ「でぃ、ディメイションブレイク!」

 タカが短剣を振るう。と同時にチヨが珍妙な技名とともに手にしている杖を振った。
 カウンター気味に振られたそれ。しかしチヨは目を閉じて狙いを定めている様子はなく、精一杯な感じ。
 だけども杖は綺麗にタカの顎をとらえ、クリーンヒット。

タカ「ぐっ……」

 短剣が地面に落ち、タカは倒れた。

ココア(やっぱりこうなった……)

 追い詰められた千夜が発揮する力。その恐ろしさを知っているココアは苦笑した。

チヨ「……ふぅ。こ、こんなものね」

野次馬『流石は言霊使い……』

ココア「今のどこに言霊要素があったのかな……」

野次馬『あぁ、見事な技名だ』

ココア「え、そういう由来!?」
87 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/23(火) 01:32:13.05 ID:bk956+lA0
チヨ「お嬢さん、怪我はない?」

ココア「う、うん……チヨちゃんが守ってくれたから」

チヨ「そう。よかった」

 つっこみどころは多々あるものの、自分を守ってくれたのは事実。
 笑みを見せるチヨに、ココアもまた笑顔を見せる。そんな彼女を見て、チヨはおもむろに手を伸ばし――ココアの手をしっかり掴んだ。笑顔をくずさずに。

ココア「……? どうしたの?」

チヨ「助けたんだから、私の頼み事も聞いてもらおうと思って。いいわよね?」

ココア「う、うん……いいけど」

 当然といえば当然のこと。だが何故か嫌な予感がした。

チヨ「ならこれからあなたは私の使い魔。絶対服従。おーけー?」

 笑顔で首を傾げ、チヨは言う。
 恋人から、使い魔へ変化。そして絶対服従。

ココア「助けられない方がよかったり……」

 有無をいわさず手を引かれ、引きずられるように移動。ココアは勇者という言葉の意味を今一度考えた。
88 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/23(火) 01:49:29.57 ID:bk956+lA0
 魔女の家。
 なんやかんやと連れてこられたココアは、テーブルの席に座るよう促され、着席。

ココア「……」

 街のはじっこの方にあるその家は、至って普通の家であった。他の建物と同じく頑丈そうな石造りで、一階建て。広さも普通。家具類も思いつく範囲のものは置いてある。生活するには困らなそうだ。

ココア「あの、チヨちゃん?」

チヨ「なぁに?」

 家の観察をしていたココアは、視線を前に向けたまま声をかける。すると彼女のすぐ横から声が上がった。
 二人で座れる、少し広い木製の椅子。ココアの隣には上機嫌そうに笑うチヨが。ココアの腕に抱きついて、甘えるようにして寄り添っている。

 選択
 1・使い魔って?
 2・や、柔らかいね……
 3・私、勇者なんだ

 選択権は>>89
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/23(火) 09:05:04.46 ID:x+brQ1/to
2
90 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/23(火) 11:04:00.34 ID:bk956+lA0
ココア「や、柔らかいね……」

 腕に伝わる感触。チヨの豊かな胸はココアの腕に押し付けられており、どうしても意識してしまう。

ココア(って、なに言ってるの私!?)

 いつもそんなこと思ったこともないのだが。
 顔を赤らめ、息を若干荒らげつつ言った台詞は、男性が言ったなら間違いなくセクハラである。

チヨ「そう? ふふ、あなたも柔らかいわ」

ココア「あっ、ちょっ、チヨちゃん」

 すりすりとココアのお腹を擦るチヨ。ココアは身体を震わせて反応する。

チヨ「どうしたの? くすぐったい? それとも――」

ココア「な、なんでもないからやめてほしいな……」

チヨ「だめ。絶対服従って言ったでしょう?」

 チヨはココアに擦り寄り、顔を間近に近づける。楽しげに笑うチヨの手が、徐々に上へ。ココアの膨らみに触れ

???「チヨ様ーっ!」

 ――かけたその時、家に何者かが入ってきた。
 慌てた様子で家に飛び込んできたのは、シャロであった。何故かミニスカートのふりふりしたメイド服を着ており、頭にはカチューシャ。そして背中には大きな剣を背負っている。
91 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/23(火) 11:28:43.75 ID:bk956+lA0
???「大変なことに――」

 息を切らせたシャロは部屋にいるチヨ達を見る。
 同じ椅子に座り、密着。チヨの手はココアの身体に伸びており、ココアは赤面。チヨがココアを襲おうとしているようにしか見えなかった。
 それに気づいたシャロもまた、顔を赤く染める。

???「……お、お取り込み中でした?」

チヨ「そうね。タイミングが少し悪いかも」

ココア「いやいやっ、そんなことないよ!」

 ココアとしては大助かり。首をブンブンと横に振り、彼女は自分からチヨを引きはがした。

チヨ「ん、人がいると恥ずかしい?」

ココア「そ、そういうことじゃなくて……。っていうか、人がいても続ける気だったんだ」

 からかうように、だがドキッとしてしまうような妖艶な笑みを浮かべるチヨ。ココアは目を逸しつつ答え、しっかりツッコミもいれる。

チヨ「私はその気だったけど?」

ココア(す、すごくやりづらい……)

 パンツが見えていたことで顔を真っ赤にしていた千夜はどこにいったというのか。今のチヨならば喜んで凝視してそうだ。
92 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/23(火) 11:43:37.63 ID:bk956+lA0
チヨ「……それで、どうしたの? セールしてるお店でも見つけた?」

???「あ、そうでしたっ。実はこの街に魔王軍が攻めてくるという情報が」

ココア「魔王軍……?」

 魔王。確か、冒頭の説明でナレーションが語っていた世界の敵だ。世界を滅ぼそうとする邪悪な存在であり、その被害は甚大らしい。
 その魔王軍がこの街に。チヨはすっと真面目な表情になり、言う。

チヨ「そう。ついに来たのね。魔王軍、『ラビットハウス』」

ココア「……」

ココア「え!?」

 シリアスな雰囲気とはまったくカテゴリが違う単語の登場に、ココアは耳を疑った。

チヨ「知らないの?」

???「世界中の人間をコーヒー派にし、世界を滅ぼそうとする軍勢……魔王軍。恐ろしい敵です」

ココア(なんでコーヒー派と滅びることが繋がるんだろう)

 という疑問は心の中にとどめておく。
93 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/23(火) 11:54:53.76 ID:bk956+lA0
???「国王様はこの街を守るため、戦うことを決めました」

???「チヨさんにもその戦いに参加してほしいそうです」

チヨ「うーん……いいけれど、私今日疲れちゃった」

???「世界の危機になに言ってるんですか!」

チヨ「逆らう気?」

???「ごめんなさい……」

 瞬時に土下座。チヨを様付けで呼んでいたが、やはり上下関係があるらしい。

チヨ「ここは……そうね。あなたに行ってもらおうかしら」

 ちらりとココアを見るチヨ。彼女の目がきらっと光った。

ココア「わ、私!?」

 選択
 1・わかった
 2・嫌だ

 選択権は>>94
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/23(火) 12:23:07.95 ID:mr0DRw95o
1
95 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/23(火) 16:33:42.94 ID:bk956+lA0
ココア「わ、分かった」

 断ると怖いことが起きそうだ。本能的に判断し、ココアは頷いた。

チヨ「素直ね。いい子いい子」ナデナデ

ココア「えへへ……ちょっと怖いけど助けてもらったし――」

ココア「――あれ? どっちみち危険な目に遭うような」

チヨ「嫌って言ったあなたにお仕置きするのも楽しそうだったんだけど……任せて大丈夫そうね」

ココア(頷いておいてよかった……)

 心から思うココアであった。

チヨ「あ、そういえばまだ名前を名乗ってもらってなかったわ。あなたのお名前は?」

ココア「名前? ココアだよ」

チヨ「ココアちゃんね……甘くて美味しそう」

 舌なめずり。ココアは慌てて椅子から離れた。

ココア「オ、オイシクナイヨ」

???「チヨ様、すっかり怯えられてますね」

チヨ「……ちょっとショック」ショボン

チヨ「ほら、あなたも自己紹介して」

???「あ、はい。私の名前はキリ。チヨ様の下僕です」

 笑顔でさらっと言うキリ。

ココア「げ、下僕?」

キリ「はい。下僕です」ニコッ

 この世界が誰の世界かまだ分からないが、タカヒロがチンピラ、シャロが下僕として登場する世界とは果たしてどうなのだろうか。世界の主の精神が色々と心配である。
96 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/23(火) 18:15:39.38 ID:bk956+lA0
キリ「それではココアさん。早速お城に向かって、王様から話を聞いてきてください」

ココア「うん、じゃあ行ってこようかな」

 経緯はともあれ、何かしら行動を起こさねばなるまい。ふぅと息を吐いて、ココアは出入口のドアへと向かう。

チヨ「危なそうだったらすぐ逃げてね。他にも戦う人はいるだろうから」ニコリ

ココア(笑顔でちょっと卑怯なことを……)

 改めて、現実との千夜の差を痛感する。ココアは苦笑しながら家から出た。

ココア「お城……かぁ」

 このまま逃げることもできるのでは、などと思うがそれを実行する気にはなれなかった。
 けれど折角のファンタジーな世界。このまま本筋のみ通って終了、というのも勿体ない気がする。
 ココアは足を進めつつ、まるでRPGをプレイするプレイヤーのような気分でいた。

 選択
 1・お城へ
 2・魔女の家へ
 3・街の門へ

 選択権は>>97
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/23(火) 19:56:39.35 ID:isoRwyGno
3
98 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/23(火) 20:15:00.58 ID:bk956+lA0
 そして来てしまった。
 街の門の前。思考しながら歩いたココアが到着したのはそこ。

ココア「……なんで来たんだろう?」

 もしかしたら、みんなが選んだのかもしれない。そんな考えから、ココアはここへ来た理由を考えてみる。

ココア「そっか、様子見……かな」

 攻めてくるという魔王軍。その確認をしようという考えなのだろう。
 筋の通った結論に、ココアは頷く。

ココア「でも、そんなに近くにいるとは思えな――」

 言いかけたココアは固まった。彼女が見ている先、門の近くに見知った顔がいたのだ。
 軍帽、軍服を着たスタイルのいい少女――リゼ。ツインテールをおろし、乙女らしい仕草を心がけているのか目を上目遣いでぱちくりさせ、しきりに紙を撫でている。所謂ロゼの状態であった。

ココア「あれはロゼちゃん!」

 現実では滅多に会えない人物の登場に、ココアははしゃぎながら近づいていく。
 思い切り魔王軍、『ラビットハウス』の一員であることは……ロゼの正体を知らないココアには理解できないことであった。
99 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/23(火) 20:34:11.22 ID:bk956+lA0
ココア「ロゼちゃーん!」ダダダ

???「……?」

ココア「――あ、初めましてかな?」

???「――っ! そ、そうですわね」

 近づいてきたココアの顔を見るロゼ。すると一瞬、何かに気づいたかのように目を見開いたのだが、またすぐ笑顔に戻る。

ココア(『ですわね』……?)

 一方、ココアは別のことを気にしていた。

???「初めまして。私はクリスティーヌですわ」

ココア「私はココア。よろしくね」

クリスティーヌ「ココア……やはり」

ココア「どうしたの?」

クリスティーヌ「い、いえ、なんでもないですわ」
100 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/23(火) 20:59:22.52 ID:bk956+lA0
クリスティーヌ「ココアさんは、ここで何を?」

ココア「私? 気づいたらこの近くにいて、まぁなんやかんやで魔王軍と戦うことになっちゃって……。今はちょっと様子見に」

クリスティーヌ「あらあら、それは災難ですわね」

 口元に手を当てて、くすくすと笑うクリスティーヌ。
 その目に僅かな殺気の色が浮かんだ。

クリスティーヌ「では私は急ぎの用がありますので、これで」

ココア「うん。私もそろそろ行かないと」

 ココアが頷くと、クリスティーヌはそそくさと去っていく。ココアは手を振って見送った。

ココア「ロゼちゃんってやっぱり綺麗だなぁ。大人な感じで。口調が少しおかしかったけど」

ココア(それにしても、なんで街の外へ歩いていくんだろう……?)

ココア「家があっちなのかな。また会えると嬉しいけど」

ココア「さて……お城に行こうかな?」

 選択
 1・お城へ
 2・魔女の家へ

 選択権は>>101
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/23(火) 21:29:17.54 ID:QgNYiO8Qo
2
102 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/23(火) 21:48:12.77 ID:bk956+lA0
 魔女の家。前。

ココア「――で」

 ココアは決して自分では考えつかないであろう場所に到着。腰に手を当てて、届いているかも分からないがジトッとした目で家を見る。

ココア「なんでここに戻ってきたのかな?」

 どう考えてもインターディメンド。その選択だろう。
 戻ればチヨになにかしら言われることは目に見えているのに。

ココア「理由があるのかな。それとも、お試しみたいな……」

キリ「あ、ココアさん」ガチャ

ココア「キ、キリちゃん! ええと、さぼってないよっ?」

 ドアから出てきたキリに、慌てて弁解する。キリは苦笑した。
103 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/23(火) 21:59:02.26 ID:bk956+lA0

キリ「はい、大丈夫ですよ。いきなりなことですし、準備も必要でしょう」

ココア「キリちゃん……! 優しいね」

 笑顔で優しい言葉をかけてくれるキリ。ココアは感激でうるうると目を潤めさせる。

キリ「お城にすぐ向かわないのは別にいいことですけど――」

 ずいっと一歩。感動しているココアのすぐ前に行き、キリは声を潜めて言う。

キリ「くれぐれも、家の中に入らないようにしてください」

ココア「え?」

キリ「中でチヨ様が寝てますから」

ココア「う、うん」

キリ「では、私は私用で出掛けますので」

 戸惑うココアを置いて、キリは去ってしまう。

ココア「ここには、何もないんじゃないかな……うん」

 あのチヨが寝ている。そして、キリが入らない方がいいと忠告。決していいことが起こるわけでもないのだろう。

 選択
 1・入る
 2・城に行こう

 選択権は>>104
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/23(火) 22:26:43.38 ID:mr0DRw95o
105 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/23(火) 22:44:25.75 ID:bk956+lA0
ココア「城に行こう。……よし」

 失敗すればどうなるかは分からない。ここは素直に城へと向かうことにした。

ココア「いい加減急がないといけないしね」

 正直、気にはなっていたのだが……触らぬ神に祟りなし。注意されたならそれに従う方がいい。
 ココアは城へと向かった。


 ○

 お城。
 石造りの立派な建物の前にココアはやって来た。

ココア「ここが……お城」

 お城といえば、的なデザインである。堅牢そうで立派、威厳というものを感じさせる。

ココア「ここで王様に話を聞けばいいんだよね」

 城を下から見上げ、ココアは呟く。

ココア「王様って誰なんだろう?」

 ラビットハウスが魔王軍なら、甘兎側が王国のはずなのだが。
 甘兎の千夜は魔女をしているし、その考えは通用しないのだろう。
 ココアは考え、城の中へと歩く。


【本日のインターディメンドはここで終了します】
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/23(火) 23:07:28.49 ID:QgNYiO8Qo
乙です
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/09/24(水) 01:16:15.71 ID:qJjqnyCF0
108 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/24(水) 20:43:20.18 ID:WOdTLhNd0
 で、案内されたままに歩くこと少し。
 チヨの代わりに来たと説明したココアは、謁見の間に通された。

ココア「チヨちゃんて、本当に有名なんだ」

 得体の知れない自分をここまで通すなど、普通はあり得ないだろう。
 ココアは改めてチヨの知名度を認識し、感心する。

ココア「失礼します」

 赤い絨毯の上を通り、大きな扉を開く。
 最低限の作法としてココアは会釈し、謁見の間へと入っていった。
109 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/24(水) 20:53:40.42 ID:WOdTLhNd0
 謁見の間もまた、映画などでよく見るような造りをしていた。
 広い部屋の奥に王座。周囲にはお偉いさんが座るであろう席。
 謁見する者が立つ中心にはなにもないが、全体的に豪華な印象を受ける。陽の光を受けて輝くステンドグラスが特徴的だった。

ココア「ほへー……」

 自分とは縁がないであろう場所を進み、きょろきょろと視線をあちこちに移す。
 人はいないようだったが、不思議と威圧感がある。思わず感嘆がもれてしまうココアであった。

???「お前がココアか?」

 ココアが部屋の中心で立ち止まると、どこからか声が聞こえた。
 ダンディで渋く、低い、素敵なおじさまを彷彿とさせる声だ。

ココア「あ、はいっ、ココアです」

ココア(あれ? 誰もいないように見えるけど……)

 どんな人物が、とわくわくしながら部屋を見回すココア。だが、声の主は見つけられなかった。
110 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/24(水) 21:12:48.75 ID:WOdTLhNd0
 ただ、見つけた。
 王座に――いや、王座の上に置かれた大きな王冠、その上に乗っている黒いウサギ――あんこを。
 普段動かないあんこは、王冠の上からココアのことをじーっと見つめている。

ココア「すごく可愛い……っ!」

 あんこが己の頭の上に載せているような王冠の上に、ちょこんと乗っかっている。
 その愛らしさはいつもより三割以上増し。ココアは今携帯やカメラを持てない世界であることを悔やんだ。

???「我がかわいいことは当然のこと……」

 また声が聞こえる。と同時にあんこの耳がぴくぴくと動いた。まさか。

ココア(あんこが……王様?)

 流石は精神世界。普通は認めないであろう話だが、これまでの経験からあり得なくはないことだと思う自分も確かにいた。
 この世界は基本的になんでもありなのだ。

ココア「えと、あなたが王様……ですか?」

???「左様。我が国王、アマウサだ」

 やはり国王らしい。
111 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/24(水) 21:42:10.66 ID:WOdTLhNd0
 王冠の上で軽くふんぞり反るあんこ。
 無表情でほこらしげにするその様子もまた可愛らしい。

ココア「そ、そうなんですか……」

アマウサ「うむ。というわけで、早速本題にいくぞ」

 じーっとココアを見て、アマウサは真剣な口調で言った。

アマウサ「ココアにはこの街へ攻め入ってくる魔王軍。その撃退を頼みたい」

ココア「はい。できるか分からないけど」

アマウサ「大丈夫だ。チヨの代わりならば活躍してくれるだろう」

ココア「あはは……」

 決して実力を認められたからではなく、ただの成り行きなのだが……ココアは苦笑した。
112 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/24(水) 21:55:49.58 ID:WOdTLhNd0
アマウサ「それでは、ココア。お前は最前線に向かってもらう」

ココア「は、はい……」

 断ってもひどいことになりそうだと判断し、ココアは頷く。
 最前線。自分のような素人がそこに立てば、ただではいられないだろう。
 だが今は味方がいる。きっと力になってくれるはず。恐怖感はそれほどなかった。

アマウサ「頼もしい返事だ。では頼んだぞ、ココア」

ココア「任せてください、王様」

 頷いて、ココアは改めてアマウサを見る。高貴な王冠の上にたたずむ一匹のうさぎ。

ココア「……もふもふ、いいですか?」

 我慢できず、ココアは尋ねた。

アマウサ「構わない。我を愛でるのは国民の権利だ」

ココア(永住したい……戦いがなければ)

 ココアは心から思う。
 この後滅茶苦茶モフモフした。
113 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/24(水) 22:07:00.48 ID:WOdTLhNd0
 モフモフタイム後。
 ココアは他の守護隊のメンバーとともに、戦いの前線へ向かった。街の外。草原である。

ココア「……一人、だよね?」

 守護隊。そう聞けばかっこいい響きなのだが、現実は悲惨だった。
 最前線に向かうのはココア一人。後は少し後ろで待機するのが数名。とても街一つを守るための人員だとは思えない。
 最前線に一人向かわせるなど、何を考えているのかも理解できなかった。

ココア「のんびりしてたけど、これってピンチだよね。うん、間違いなくそうだよ」

 そんな場所へ一人言われるまま来てしまった自分の行動もまた理解できない。
 最後まで誰か来てくれるか、作戦か――そんな可能性を信じていたのだが、今の状況を見るにそれはないだろう。

ココア「はぁ……どうしよう? このまま戦うのは不安すぎるし……」

 選択
 1・戦う
 2・話せば分かる
 3.去る

 選択権は>>114
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/09/24(水) 22:11:24.28 ID:qJjqnyCF0
2
115 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/24(水) 22:19:25.19 ID:WOdTLhNd0
ココア「話せば分かる! ……よね」

 どうしようか。その結論を出し、ココアは小さくガッツポーズ。
 自分一人だけという状況。戦いにおいて不利極まりないが、話し合いでは逆に利点と成り得る。
 警戒される場合もあるだろうが――魔王軍とて、戦いを望んでいるわけではないはず。

ココア「そうと決まれば、攻めてくるのを待つだけ」

 方針は決まった。ココアは魔王軍がやって来るまでその場で待つことに決めた。
116 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/24(水) 22:30:18.70 ID:WOdTLhNd0
 やがてその時がきた。
 街の守護隊とはまったく異なる軍勢。
 大勢の兵士を連れた魔王軍らしき面々を率いているのは、先程会った人物。クリスティーヌであった。

クリスティーヌ「やはり、あなたですか」

ココア「あ、あれ!? クリスティーヌちゃん!? なんでここに」

クリスティーヌ「簡単なことですわ。私は魔王軍。その幹部、クリスティーヌ。あなた方の街を落としに来ました」

ココア「クリスティーヌちゃんが……」

 敵。友達になれたと思っていた人物が。
 なおさら戦う気はなくなった。

ココア「クリスティーヌちゃん! 私は戦う気はない。だから、止めよう?」

クリスティーヌ「何を甘ったれたことを言っているんですか。私達を裏切り、寝返ったくせに」

ココア「え? そんなことしてないよ」

クリスティーヌ「あくまてとぼけるつもりですか。ならいいですわ。我々を裏切った罪、ここで裁いてさしあげます」

 クリスティーヌは腰の剣を抜き、構えた。
117 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/24(水) 22:45:09.97 ID:WOdTLhNd0
ココア「クリスティーヌちゃん!」

クリスティーヌ「黙りなさい。あなたが重罪を犯したのは間違いない事実。何をしようともそれは変わりません」

 剣を片手に、警戒しながらココアへと近づくクリスティーヌ。
 まるでココアがこの状態からでも、攻撃を仕掛けてくるとでも疑っているような表情だ。

ココア「クリスティーヌちゃんだって、戦いは嫌いでしょっ? だったら――」

 何かが食い違っている。そうは思うものの、ココアは必死に説得を試みる。

クリスティーヌ「戦いが嫌い? お馬鹿さんですわね」

 クリスティーヌの剣が動く。

クリスティーヌ「魔王軍に戦いが嫌いな者などいませんわ」

 縦に。上から下へ。簡単で単純な動作。それでもココアはかわそうと思う時間すらなかった。

ココア「ぁ……っ」

 顔から腹部へ。綺麗に赤い線が入る。
 傷は浅いらしく、剣は止まることなく滑るようにココアを撫でるようにして傷つけ、振り切られる。顔の真ん中を切られ、ココアは呻いた。

ココア「あ゛、ああぁっ! いた、ぅ――っ」

クリスティーヌ「……意外ですわね。本当に話し合うつもりでしたの?」

 抵抗一つしないココアに、クリスティーヌは驚いたように目を見開き、蹴りを入れた。
118 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/24(水) 22:59:09.65 ID:WOdTLhNd0
ココア「うぐっ、私は、話し合いを――」

クリスティーヌ「本気でしたか。本物か疑わしいですけど……」

 苦しみながらも、説得を続けようとするココア。彼女の身体に足を乗せ、クリスティーヌは目を見開いたまま口だけを笑うように大きく歪めた。

クリスティーヌ「ストレス発散には、ちょうどいいですわね」ザクッ

ココア「う、あああぁっ!?」

 腹へ、腕へ、足へ。クリスティーヌは剣の先を次々と刺していく。すぐ死なないようわざと浅く、時折ぐりぐりと先を動かして。
 ココアが叫び、抵抗しようとする度にクリスティーヌは彼女を蹴り、首を踏んだ。その際も、死なないよう苦しみだけを与えて。

ココア(痛い、痛い、痛い……!)

クリスティーヌ「あら、そんなに欲しい?」

 ココアが伸ばした手に、剣が刺さる。クリスティーヌは全体重をかけ、剣はココアの手を地面にはりつけた。

クリスティーヌ「ほら……」

 クリスティーヌが足を大きく上げる。ココアの首の真上で。
 彼女は一際楽しげな声で、満面の笑みを浮かべて足を勢いよく下ろした。

クリスティーヌ「『コンテニュー』の時間、ですわよ?」

 命の終わりにしては呆気無い音とともに、ココアの視界は揺れ、暗くなった。



【本日のインターディメンドはここで終了します。次回は直前の選択肢よりコンテニューします】
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/24(水) 23:02:50.98 ID:45CaRSrqo
乙です
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/09/24(水) 23:04:38.99 ID:qJjqnyCF0
121 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/25(木) 20:49:20.66 ID:/BlbG4gZ0
 モフモフタイム後。
 ココアは他の守護隊のメンバーとともに、戦いの前線へ向かった。街の外。草原である。

ココア「……一人、だよね?」

 守護隊。そう聞けばかっこいい響きなのだが、現実は悲惨だった。
 最前線に向かうのはココア一人。後は少し後ろで待機するのが数名。とても街一つを守るための人員だとは思えない。
 最前線に一人向かわせるなど、何を考えているのかも理解できなかった。

ココア「のんびりしてたけど、これってピンチだよね。うん、間違いなくそうだよ」

 そんな場所へ一人言われるまま来てしまった自分の行動もまた理解できない。
 最後まで誰か来てくれるか、作戦か――そんな可能性を信じていたのだが、今の状況を見るにそれはないだろう。

ココア「はぁ……どうしよう? このまま戦うのは不安すぎるし……」

 選択
 1・戦う
 2・話せば分かる
 3.去る

 選択権は>>122
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/25(木) 21:24:37.16 ID:ZFIZ4ksco
123 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/25(木) 21:39:22.60 ID:/BlbG4gZ0
ココア「戦う……」

 ココアは頭の中に浮かんできた結論を口に出す。
 戦う。素人である自分が。不安しか感じないであろう答えだが、何故かココアは自分の気持ちが昂ぶるのを感じた。

ココア「戦う……ふふっ」

 戦うなんて経験はこれまでない。
 だがココアは楽しげに笑い、剣を抜くと自ら前へと進んでいった。
 たった一人でも、攻めてくる魔王軍に敵う。そんなことを本気で考えて。
124 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/25(木) 21:49:00.13 ID:/BlbG4gZ0
 草原。
 クリスティーヌ率いる魔王軍の前にココアは立っていた。

クリスティーヌ「やはりあなたが私の前に……」

 門の前で出会ったクリスティーヌは、剣を片手に悠然と立つココアを見やり、言った。

ココア「こんにちは、クリスティーヌちゃん。クリスティーヌちゃんは魔王軍なんだね」

クリスティーヌ「何を今更……あなたも魔王軍の一員だった人間でしょう」

ココア「そうなの? よく分からないや」

クリスティーヌ「……っ」

 今にも斬りかかりたい。戦いたい。
 そんな感情を抑えているようなココア。笑顔を浮かべ身体を落ち着きなく動かし、剣先をふらふらと揺らしている。
 クリスティーヌはそんな彼女を見て、ごくりと唾を呑んだ。

ココア「よく分からないけど、、街を攻めに来たんだよね? 戦う?」

クリスティーヌ「……愚問ですわ。いきなさい、あなたたち」

 ふぅと息を吐き、クリスティーヌはココアへ手をかざした。
125 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/25(木) 22:00:11.73 ID:/BlbG4gZ0
 ココア目掛けて走りだす兵士達。
 ココアは口元を歪め、自分から彼らの中へ駆ける。

ココア「この人達、切ってもいいんだね?」

 身体を低くし、目の覚めるような速度で肉薄。
 あっという間に接近したココアは剣を横に大きく振るう。
 分かりやすい動作。けれど速度は驚くほど速く、兵士達が回避、防御する時間もなかった。二人の兵士が胴体を両断される。
 血が飛び散り、中身が地面に漏れる。

ココア「あははっ。まずは一人――いや、二人? とりあえず誰か殺したかな」

 ゆらりと身体を動かし、笑うココアは手当たり次第に近くの敵へ斬りかかる。
 動作は遅いようで、反応は早い。兵士の攻撃を確実に避け、一撃必殺の重い攻撃を加える。一人、また一人と兵士達は数を減らしていった。
126 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/25(木) 22:09:45.87 ID:/BlbG4gZ0
クリスティーヌ「……別人、ですわね」

 たった一人で大人数を相手に戦うココア。
 返り血に染まっていく彼女を見やり、クリスティーヌは呟く。

クリスティーヌ「相変わらず、とも言えますか」

クリスティーヌ「退きなさい」

 このまま戦っても消耗していくだけ。
 時間をかければココア一人に殲滅される可能性もある。クリスティーヌは部下へ指示を出す。
 ココアを囲んでいた兵士達は忠実に従い、クリスティーヌの後ろへと戻った。

ココア「あれ? 楽しかったのに」

 また新たに兵士を切り伏せ、血を浴びるココア。
 彼女は兵士が戻るのを見ると、ふっと冷静な表情に戻る。真顔でクリスティーヌを見やり、少しの怒りをその声ににじませた。
127 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/25(木) 22:30:51.30 ID:/BlbG4gZ0
クリスティーヌ「流石は元幹部、といったところですわね」パチパチ

ココア「拍手ありがとう。……で、どうしたの? 逃げる?」

クリスティーヌ「いえ。私が直接相手になろうと思いまして」

 剣を抜く。クリスティーヌが剣を構えると、ココアはにやりと笑った。

ココア「いいね。楽しそうだよ」

 ココアが走る。クリスティーヌは剣を構えたまま彼女の動きをしっかり観察した。
 彼女の戦いを見るのは初めてではない。彼女が裏切ったその時から、対策は幾度となく考えていた。
 狙いは、一つ。

ココア「はぁっ!」

クリスティーヌ(初撃を防いで、反撃――!)

 大きな動作の攻撃。それを防いで、反撃を行う。
 兵士ならば剣を弾かれるだろう。だが、絶対に防げる自信があった。
 ココアの剣が、クリスティーヌの剣に触れる。彼女は構えていた剣を押し、それを真正面から受けず、斜めに受け流した。
 ココアに隙が生じる。

クリスティーヌ(今!)

 チャンスと見てクリスティーヌは剣の切っ先を即座にココアへ向ける。

ココア「おっと、危ないね」

 が、それよりも早くココアが動いた。剣を握っていない手。剣と同時に振るった拳が、リゼの喉を捉える。
128 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/25(木) 22:59:32.96 ID:/BlbG4gZ0
クリスティーヌ「げふっ! ごっ、ぁ――くっ」

 強烈な衝撃。正確に急所へとぶつけられた拳にクリスティーヌは倒れ、咳き込んだ。
 剣にばかり気をとられていたため、同じく大きな動作で振られた拳に気付くことができなかった。結果、大ダメージを受けてしまった。

ココア「まだまだかな。すぐやられちゃうなんて、つまらないや」

 苦しむクリスティーヌを見やり、ココアは無表情に呟く。
 戦えなくなった者に興味はない。そう言わんばかりに彼女は容赦なくクリスティーヌの腹部に剣を刺し、刃に蹴りを入れた。

クリスティーヌ「うあっ、ぐ――あああぁっ!?」

 腹が裂かれ、血が剣とともに腹部から飛び散る。クリスティーヌの口から、絶叫が飛び出した。

ココア「うるさい」

 最後に、ココアは絶叫するクリスティーヌの顔に剣を一突き全体重をかけて、命を奪おうとする。
 すぐに、クリスティーヌは動かなくなった。

ココア「幹部、ね……」

 剣を抜き、ココアは残った兵士達を見る。
 攻めてきた魔王軍で、クリスティーヌが一番の実力者であったはず。その彼女がああもあっさり倒された。
 彼らの戦意がなくならない筈がない。

ココア「逃げるなら逃げていいよ。君たち弱いから」

 ココアの言葉を合図にするように、兵士達は即座に踵を返し逃げていった。
129 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/25(木) 23:00:34.67 ID:/BlbG4gZ0
【本日のインターディメンドはここで終了します】
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/26(金) 00:51:24.82 ID:8NvxN6p+o
乙です
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/26(金) 00:55:03.82 ID:3SU2Ke+ho
こ、こころぴょんぴょんしない…ぞ
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/09/26(金) 02:12:25.53 ID:9V89dc7q0
133 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/26(金) 18:47:40.74 ID:R/t5nQOX0
ココア「途中までは楽しかったのに……」

 ため息を一つ。ココアは周囲に転がる亡骸を眺める。
 胴体、首、足……死体の傷に規則性はなく、手当たり次第に適当に切っていることが窺えた。
 やがて、自分の足元へ目線がいく。
 クリスティーヌ。リゼとよく似た少女の、見るも無残な姿。
 徐々にココアは自分の意識がはっきりしてくるのを感じた。

ココア「私――私は、何を?」

 我に帰り、額に手を当てる。
 何が起こったのかは……覚えている。戦おうと決めて、理由も分からず楽しくなって、そして、今の状態。
 ここで倒れている人間は全て自分が殺したのだ。

ココア「なんで、そんなこと……」

 身体が震える。
 もしかしたら、インターディメンドかもしれない。もしくは、精神世界の影響か。
 いずれにせよ、あれは自分の願望ではない。それだけは断言できた。
134 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/26(金) 18:58:55.70 ID:R/t5nQOX0
チヨ「よくできたわね、ココアちゃん」

 小さな拍手。それとともに現れたのは、チヨ。
 ココアの後ろからのんびりと歩いてきた彼女は、死体を構わず踏みつけ、ココアの間近までやって来る。

ココア「違っ――私は、こんなこと」

チヨ「ええ。しようと思ってない」

 ココアの次の台詞を読むように、チヨは淡々と言った。

チヨ「でもやった。それがあなたの本性よ」

 自分の奥深くを見透すような彼女の目。
 ココアは、言葉につまる。

チヨ「あなたは魔族。ラビットハウスを裏切った、幹部の一人」

 困惑するココアの手を握り、チヨは笑った。
 歓迎する、とでも言いたげな表情で。

チヨ「あなたが使い魔になってくれて嬉しいわ」

 ココアは、何も答えることができなかった。
135 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/26(金) 19:05:21.22 ID:R/t5nQOX0
 チヨが街へと帰り、ココアは草原に取り残される。
 これからどうしようか。ぼんやりとした頭で考えていると、遠くに光の渦が見えた。

ココア「あれはチノちゃんの時の……!」

 階層が終了した際に出た、光。
 チノの世界と同じルールならば、あそこに行けば石のドアがあるだろう。

ココア「この階層が終わった理由はわからないけど……」

 ココアは周囲を見た。自分が作った数々の死体。
 今はこの惨状からとにかく離れたかった。
 終了した理由などどうでもいい。終わったなら終わったで、さっさと先に進んだ方が得策だろう。
 ココアは自分に頷いた。

ココア「行こう」

 選択
 1・ストーンヘンジへ
 2・???へ

 選択権は>>136
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/09/26(金) 21:04:42.17 ID:9V89dc7q0
1
137 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/26(金) 21:33:33.82 ID:R/t5nQOX0
 ストーンヘンジ。
 チノと同じ造りをしたそこには、やはり光が渦巻いていた。

ココア「これでこの階層は終わり」

 引っかかることは多々ある。だが終わらせること。それが今は先決なのだ。
 これ以上、自分が殺人を犯したという世界に残る必要はない。

ココア「……そういえば」

 ふと、思う。
 あの時はチノと一緒に光をくぐった。しかし今、世界の主がいない。
 その状態で次の階層に進むことができるのだろうか。

ココア「……」

 嫌な予感がし、ココアは光の中へ足を踏み入れる。
 ――が、進まない。
 意識はしっかりしたままで、終わる気配など欠片もなかった。

ココア「まだ終わりじゃないんだ……」

 連れてこなければならない。
 ここから先に進むには、誰かを探さなくては。

ココア「……大丈夫なのかな」

 選択
 1・見えない場所へ
 2・チヨを探す
 3・キリを探す

 選択権は>>138
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/26(金) 21:57:23.06 ID:SGpL2EyDo
2
139 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/26(金) 22:06:12.32 ID:R/t5nQOX0
ココア「チヨちゃんを探そう」

 目立ったのはチヨ。
 この世界の主は千夜なのだろう。もしそれがクリスティーヌだったりすれば――どうなるかは考えたくもない。
 ココアは剣を納め、チヨを探しに街へと向かった。


 ○

 魔女の家。
 その中ではチヨがお茶を飲んでいた。

チヨ「あら、おかえりなさい」

ココア「……うん、ただいま」

 よくよく考えると、彼女は何者なのだろう。
 ココアは首を傾げた。

 選択
 1・「私って勇者なんだけど」と暴露
 2・「来て欲しい場所がある」と誘う

 選択権は>>140
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/26(金) 22:28:18.83 ID:B5ALs6kyO
1
141 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/26(金) 22:43:34.57 ID:R/t5nQOX0
ココア「私って勇者なんだ」

チヨ「――え?」

ココア「え?」

 突然動いた口、放たれた言葉に、ココアもチヨも驚く。
 勇者。冒頭のナレーションで聞いた単語。あの説明を聞くに、自分は勇者であった。
 それを自ら口にして、何か得られるものなのか。

チヨ「勇者――って、童話の読み過ぎ?」

 が、チヨの反応は意外なものであった。
 まるで勇者というものすら存在していないようなリアクション。

ココア「え? 勇者っていないの?」

チヨ「ええ。魔王はいるけど……今まで聞いたこともないわ」

ココア(……何か、引っかかるような)

 ナレーションではあたかも、勇者が過去にいるような語りをいれていた。
 過去にいないなら、伝説の存在などと言うものなのだろうか。
 ……それに、自分が元魔王軍ならば勇者であることもおかしい。凝った設定でない限り、の話だが。

ココア(どういうことなんだろう)

 ナレーションと、今の差。食い違い。
 今になってそれが明確となってきた。

ココア「チヨちゃん、ちょっと来てほしいところがあるんだけど」

 頭の中のもやもやとした疑問。それを解消するためにココアはチヨへと告げた。
142 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/26(金) 22:56:48.07 ID:R/t5nQOX0
 ストーンヘンジ。

チヨ「不思議な場所ね。……で、ここに何が?」

ココア「何が、って――あ、あれっ?」

 半ば無理矢理にチヨをここへ連れてきたココア。
 彼女はそのまま光の中を通ろうとするのだが――何も起こらない。

ココア「お、おかしいなぁ……」

チヨ「何がしたかったの? 何もないなら帰るわ」

ココア「あ、ちょっとチヨちゃーん!?」

 すたこらとチヨは帰っていく。ココアが止めても知らんぷりだ。

ココア「ど、どういうこと……?」

 どうやら、チヨは違うらしい。
 また新たに探す必要が出たわけだ。

 選択
 1・見えない場所へ
 2・キリを探す

 選択権は>>143
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/26(金) 23:10:08.43 ID:gKmtyekzo
144 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/26(金) 23:26:37.77 ID:R/t5nQOX0
 見えない場所。
 ちょうどストーンヘンジの裏側、辺りだろうか。
 何かに導かれるようにココアはそこへと歩いて行った。

ココア「ここに何かあるのかな」

 自分が直感的に思ったこと。だがインターディメンドなのだろうとすぐ分かった。
 普通、光の向こうで見えない場所など、気にもとめないだろう。
 ココアは疑いながらも歩く。すると、不思議なことが起こった。

ココア「ふへっ!?」

 何もないと思われていた場所。
 ストーンヘンジが終わり、先に草原が見えていた場所へ足を踏み入れると、見えない区切りのようなものに触れた。そして、その向こう側へすり抜けた。
 まるでゲームのグラフィックの向こうに出たような、不可解な現象。

ココア「な、なにこれっ?」

 思いがけない仕掛けの登場に、ココアは素っ頓狂な声を出した。

【本日のインターディメンドはここで終了します】
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/26(金) 23:43:10.06 ID:SGpL2EyDo
乙です
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/09/27(土) 00:50:44.02 ID:h8B76bnB0
147 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/27(土) 22:49:18.78 ID:Ka0t6RP90
ココア「ここは……どこ?」

 恐る恐る身体を進め、見えない区切りに足を踏み入れる。
 すると、そこに広がっていたのは現代風の風景。が、空は赤く染まっておりあちこちに飛行機のようなものが飛んでいる。
 悲鳴のようなものも聞こえてきた。
 まるで戦争のような景色。それが一望できる丘にココアは立っていた。己の後ろにはぽつんと置かれた鳥居がある。
 どうやらあそこから出てきたらしい。

ココア「なんで、こんな世界が――」

 あるの? そう言いかけ、ココアは足元に倒れている少女の存在にようやく気づいた。
 千夜だ。血だまりに倒れている千夜が、そこにいた。
 学校の制服姿で、チヨとはまた違う千夜なのだと分かった。

ココア「千夜ちゃん!」

 わけがわからないが、親友の危機。ココアは叫び、彼女の肩を揺する。
148 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/27(土) 23:02:55.27 ID:Ka0t6RP90
???「……ココア――勇者、様?」

 目を開き、反応を示す千夜。彼女はココアを見ると安堵したように笑みを浮かべた。

ココア「うん、ココアだよ。千夜ちゃん大丈夫っ?」

???「大丈夫……勇者様が、来てくれたなら」

ココア「千夜ちゃん? 千夜ちゃん!」

 安らかな表情で目を閉じる千夜。反応がなくなり、ココアは慌てて抱きかかえようとする。
 ――が、それは叶わない。

ココア「……がふっ」

 身体が後ろへ、弓なりになる衝撃。血とともにココアの口から声がもれる。
 ココアはその場に、仰向けになり倒れた。
 倒れる寸前、胸に穴が空いたのが見えた。誰かに襲われたのだ。ココアはその誰かを確認しようと、倒れたまま後ろへ視線を向けた。

チヨ「やっぱり、見ている人がいると違うのね」

 チヨであった。見えない区切りを通り過ぎた彼女は姿を現し、倒れているココアを見下ろす。

チヨ「ここが見つかるとは思ってなかったわ」

チヨ「まぁ、面白くていいけど」

 クスクスと笑うチヨ。彼女はココアが息絶えるまで楽しげな表情で、眺めていた。
 遠ざかる意識。痛い、苦しいという感覚すら曖昧になっていく。

???「千夜ー! ここにいるんでしょ!? 世話かけないでよ!」

 最後に、聞き慣れた声と足音が聞こえてくるのを、ココアは感じた。


【ダイブ:宇治松 千夜  LV.1 『終わらなき聖戦(ネバーエンドクルセイド)』を完了しました】
149 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/27(土) 23:09:48.96 ID:Ka0t6RP90
 翌朝。
 ココアはいつもと違い、自分から目を覚ました。

ココア「……ええと」

 回想する。自分は誰かの世界に入った。
 そして――いまいち、ぴんとこない。何かしたような気もしたし、していないような気もする。
 記憶が曖昧だ。

ココア「私って何をしてたんだろう?」

ココア「いやまぁ、寝てたんだけどね」

 何も思い出せない。
 朝からもやもやした気持ちで、ココアは朝の支度をはじめた。チノには物凄い驚かれた。

 行動選択
 1・チノor千夜と話す(人物は指定)
 2・外に出かける(街を散策or会う人物を指定)
 3・ザッピング
 4・ダイブ(チノor千夜)

 選択権は>>150
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/27(土) 23:15:11.44 ID:k2tWcssPo
1 チノ
151 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/27(土) 23:22:48.45 ID:Ka0t6RP90
ココア「そうだ、今日はチノちゃんと話そう」

 学校。お昼を食べつつ、ココアはふと思い立った。

千夜「どうしたの? ココアちゃん」モグモグ

ココア「ダイブ――じゃなくて、姉妹の絆を強めようと思って」

千夜「ふふ、チノちゃん喜びそうね」

ココア「そうかな? それならいいけど……」

 またもや内緒事を話そうとしてしまった。冷や汗をかきつつ、ココアはご飯を食べた。
 今日の放課後。件のダイブのことを話すとしよう。今度は心の中で、静かに決めるのだった。
152 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/27(土) 23:36:32.88 ID:Ka0t6RP90
 そして放課後がやってきた。
 バイトの休憩時間。ココアはチノを厨房へ密かに呼び出し、話をはじめる。

ココア「ささ、座ってチノちゃん。飲み物はコーヒーでいいかな?」

チノ「はい。ミルクと砂糖もお願いします」

ココア「うん、分かってるよ。よいしょっと」

 てきぱきと用意をするココア。二人分のコーヒーを用意し、チノと隣り合った席に座る。

チノ「……ココアさん、最近しっかりしてますよね」

ココア「今までしっかりしてなかったってことかな?」

チノ「そ、そうじゃなくて、朝もしっかり起きますし、てきぱきしてますし」アタフタ

ココア「あはは、冗談だから大丈夫だよ」

ココア「最近しっかりしてるのは、自分でもわかってるから」

 インターディメンド。ダイブ。その影響による早起き。それは自分でも分かっていた。
 いつもはチノに何度も声をかけてもらって起きているのに、最近ではしゃきっと目覚めている。
153 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/27(土) 23:47:18.09 ID:Ka0t6RP90
チノ「……はぁ。それで、なんですか? お話って」

 安堵したような、呆れたような調子で息を吐くチノ。
 ココアが入れたコーヒーにミルクと砂糖を入れ、彼女は一口飲む。そして、話を切り出した。

ココア「あ、うん。実は訊きたいことがあって」

ココア「最近、変わったことある? 例えば、こう、チノちゃんの心構えが変化したとか」

チノ「何かの心理テストですか?」

ココア「そうじゃないけど、ほら、みんながいなくなっちゃうから怖いーとか。そんな思いがなくなった! とか」

 なるべくインターディメンドのことを話さぬよう、ココアは語る。
 チノはなにを話しているのかさっぱり、といった表情だ。

チノ「何言ってるんですか? ココアさん」

ココア「うぐ……。ね、とにかく心の変化というか」

チノ「心の変化……ですか?」

 怪訝そうな顔をするチノだが、真面目に考えているようで沈黙が生じる。
 やがてチノは答えた。

チノ「そういえば、不安が一つ解消されたような気がします」
154 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/28(日) 00:03:44.33 ID:f0EskQkj0
ココア「ふんふん、例えばどんな?」

チノ「それは……そうですね。ココアさん、と――」

ココア「え? 私と?」ワクワク

チノ「ココアさんと、なら――遠くに」ゴニョゴニョ

ココア「え? なに? よく聞こえないよ」

チノ「……いいです。どうせ言っても変わりないことですから」

 期待から急かしていると、チノは物凄く冷たい目をして言い放った。

ココア「ええっ!? すごく気になるのに!」

チノ「気にしないでください」

 端的に言い、チノはため息。そしてココアをちらりと見た。口をちょっとだけカップにつけて言う。

チノ「ココアさんは私のことをどこにでも連れて行ってくれますし」

ココア「……? チノちゃんが行きたいなら、そうするけど?」

チノ「そういうことです。だから心配は無用です」

 ごくごく。チノは言って、コーヒーを全て勢いよく飲んで、厨房から去っていった。
 その頬はほんのりと赤かったように見えた。
 冷たいミルクを入れていたからこそできた芸当である。ココアはまだ熱い自分のコーヒーを冷ましつつ、ぼんやりと呟く。

ココア「ちょっとは効果、あったのかな」


行動選択
 1・千夜と話す
 2・外に出かける(街を散策or会う人物を指定)
 3・ザッピング
 4・ダイブ(チノor千夜)

 選択権は>>155

【本日のインターディメンドはここで終了します】
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/28(日) 00:27:16.00 ID:ojwar0/So
乙です 3
156 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/28(日) 08:59:10.06 ID:f0EskQkj0
【ザッピングを実行します】
【Ch.2からCh.1へ切り替えます】
【切り替えによる負担を軽減するため、しばらくのザッピングを禁止します】
157 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/28(日) 09:16:14.39 ID:f0EskQkj0
『リゼ先輩とし、親密になりたい!』

 少女は願い、インターディメンドを行った。
 他次元の恩恵を受けられるという未知の技術。彼女はすがるような想いで使用しそして、繋がった。

シャロ「あーあー。聞こえてます?」

シャロ「これでいいのかしら……」

シャロ「こんな方法で本当に先輩と仲良くなれたり……は、ないわよね」ハァ

シャロ「っていうか、今見られてたら恥ずかしいったらないわね」

 シャツとショートパンツの寝間着姿。髪はあちこちはねていて、ひどい惨状。とても他人に見せられる姿はではない。
 インターディメンドが成功したかは分からない。そもそも実在するかも分からない。
 が、一応これを着けておくことにした。効果も分からないうちから外すのも勿体ない。
 それにこのペンダントの真空管、陶器フェチとして中々惹かれるものがある。

シャロ「かっこいい……わよね」

シャロ「けど恥ずかしいから服の中に隠しておこ」

シャロ「……学校行こう」

 伸びを一つ。欠伸をもらし、シャロはベッドの上から床に立った。

行動選択
 1・いつものバイト
 2・外に出かける(街を散策or会う人物を指定)
 3・ザッピング【現在禁止されています】
 4・ダイブ【アクセス許可されている世界がありません】

 選択権>>158
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/28(日) 10:39:18.36 ID:IPn2jIWMO
1
159 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/28(日) 12:02:15.34 ID:f0EskQkj0
 放課後、シャロはいつものようにバイトへ向かった。

シャロ「いらっしゃいませー」

 笑顔で客を出迎え接客し、注文を受け、商品を運び、会計。忙しなくあちこちを歩きまわるシャロ。
 忙しく疲れるのは確かだったが、何も考えずに身体を動かすのは不思議な爽快感がある。

シャロ「いらっ――あ。青山さんっ?」

青山「こんにちは、シャロさん」

 バイトをはじめて一時間ほどだろうか。来店した客を案内しようと、いつものポーズで挨拶をするシャロ。
 その直後に、来店したのが青山だと気付く。
 シャロは笑顔を崩し、怪訝そうな顔をする。青山は見た目こそふんわりとした雰囲気の綺麗なお姉さん――なのだが、あまりに伏目で店員の脚を凝視していたため、一度この店から追い出されたこともあった。
 話してみると悪い人ではないと分かるのだが……彼女のことをよく知らない他のバイトは、戦々恐々である。

シャロ「ここに来て大丈夫なんですか?」

青山「はい。今日は店員さんを観察しませんから」

 声をひそめて言うと、青山は笑顔を浮かべた。
160 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/28(日) 15:06:04.05 ID:f0EskQkj0
シャロ「ならいいですけど……こっちです」

青山「はい、ありがとうございますシャロさん」

 警戒する店員らへ笑顔で手を振り、大丈夫だとアピール。
 言葉通り青山は見る気はないようで歩きつつ床を見ていた。

シャロ「メニューです」

 席に案内し、メニューを青山の前に。彼女はそれを開くと、シャロへ視線を向けた。ちらっとシャロの顔を見て、そして視線を下げる。なにやら胸の辺りを見ているような気もするが、多分他意はないのだろう。

青山「ではスコーンと、ハーブティーを何か一つ。甘いものに合うものがいいですね」

シャロ「かしこまりました」

 ペコリと頭を下げて、そのまま厨房の方へ向かおうとするシャロ。
 その彼女を青山は引き止めた。

青山「シャロさん、よろしければ、少しお話しませんか?」

 珍しい。いつもは遠くから観察しているだけなのに。シャロは目をぱちくりさせ、考えた。

 選択
 1・いいですよ、と笑顔で
 2・駄目です、ときっぱり
 3・バイト上がりか、休憩時間ならと曖昧に

 選択権>>161
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/28(日) 17:06:14.30 ID:xtdp0kxGo
3
162 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/28(日) 20:34:07.17 ID:f0EskQkj0
シャロ「バイト上がりか、休憩時間なら――え?」

 シャロは曖昧に答え、首を傾げた。
 さっきまで自分は断ろうと思っていた。なのに、一瞬でその考えが変更されたのだ。
 奇妙な感覚に、恐怖に近い感情すら覚える。――が、ふとあの単語が頭をよぎった。
 インターディメンド。多分、その影響なのだろう。

青山「では、バイトが終わるまで居座りますね」

シャロ「いやそれはやめてください」

 頭の中であれこれ考えていても、それだけはすぐ答えられた。

シャロ「待っていてくれるなら……そうですね、この近くの公園で」

青山「公園ですね。分かりました。では、また」ガタッ

シャロ「注文しましたよね? 座っていてください」

青山「……そうでした。ありがとうございます、シャロさん」

 ハッとした様子で青山は席に座った。ほんのりと頬が赤い。

シャロ(落ち着きがあるようで、ないような……不思議な人よね)

 よほど自分から聞きたいことがあるのだろう、と思う。また作品の話だろうか。
 シャロはのんびりと考えて、バイトに戻った。
163 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/28(日) 20:53:34.51 ID:f0EskQkj0
 で、バイト終わり。

シャロ「お待たせしました、青山さん」

 学校の制服に着替えたシャロはまっすぐ公園へと向かった。
 約束の場所、そのベンチでは青山がぼんやりと空を眺めている。焼き芋片手に。

青山「あ、シャロさん」

シャロ「……また食べてるんですか?」

青山「小腹が空きまして。いかがですか?」

 にっこりと笑い、青山は焼き芋を半分に割る。
 湯気の出るそれを彼女は片方差し出した。美味しそうなにおいがシャロの鼻に入る。

シャロ「……いただきます」

 素直に、いただくことにした。
164 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/28(日) 21:28:56.39 ID:f0EskQkj0
シャロ「……それで、話ってなんですか?」

 尋ね、焼き芋を一口。甘くあたたかいそれに顔をゆるめさせる。カロリーという問題は些細なことに感じられた。些細ではないのだが。

青山「実は、作品の感想を聞こうかと思いまして」

 ゆっくりと焼き芋を食べる青山は言った。

シャロ「感想ですか? ……それ、結構恥ずかしいような」

青山「そうですね。シャロさんをモデルにしましたから」

シャロ「なら……」

青山「それでも、伺いたいんです」

 いつになく真剣な口調。シャロは青山を見た。
 彼女は下を見ている。ただ表情は悲しげで、なにか悩んでいるようにも見えた。
165 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/28(日) 22:49:09.42 ID:f0EskQkj0
シャロ「そこまで言うなら……嬉しかったですし」

青山「本当ですかっ? ありがとうございます、シャロさん」

 パアッと表情を輝かせる青山。彼女は笑顔を浮かべると焼き芋の残りを口に放り込み、膝の上に乗せていたバッグからメモ帳とボールペンを出した。

青山「では冒頭部分から――」

シャロ(長くなりそう……)

 直感的にシャロは感じた。
 その予感通り、話は日が暮れるまで続いた。そのお陰でご飯をご馳走になったりしたので――まぁ、大きなプラスではあった。
 そんな取材の最中、気になったのは青山の表情。彼女が悲しげな顔をした。そのことが何故かずっと頭から離れなかった。

【青山翠の精神世界へのアクセスが解禁されました】
【本日のインターディメンドはここで終了します】
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/28(日) 23:10:12.68 ID:BKsY2JiCo
乙です
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/09/29(月) 10:01:59.68 ID:dsWKi8Rf0
168 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/29(月) 20:53:54.06 ID:fCBxnMOK0
 夜。自室。

シャロ「美味しかった……」

シャロ「ただのスパゲッティなのに、お店であんなに変わるのね……」シミジミ

シャロ「流石はお店。手作りとは天と地の差……」

シャロ「明日もいいことあるといいわね」

行動選択
 1・甘兎へ
 2・外に出かける(街を散策or会う人物を指定)
 3・ザッピング【現在制限されています】
 4・ダイブ

 選択権>>169
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/29(月) 20:54:40.62 ID:7S+q6aKAo
170 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/29(月) 21:11:46.91 ID:fCBxnMOK0
 翌日の放課後。
 バイトも休みだということで、甘兎へとやって来た。

シャロ「……なんで隣の店に」

 お金に余裕があるわけでもない。だが、何故か無性に行きたくなった。
 甘いものに飢えているのだろうとシャロは結論を出す。

シャロ「ま、たまにはいいかしら」

シャロ「千夜もびっくりするだろうし……」

 ふふ、と笑う。
 幼馴染が驚き、多分喜んでくれる。そう思うと自然と行こうという気になってくる。

シャロ「さて、行こうかしら」

 シャロは意気込んで店の中へと入っていった。
171 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/29(月) 21:56:46.87 ID:fCBxnMOK0
千夜「いらっしゃいませー」

千夜「あら、シャロちゃん。なにかご用?」

 来店すると、千夜とあんこがすぐに出迎える。笑顔の彼女は来店したのがシャロだと分かると、首を傾げた。

シャロ「お客さんとして来たのよ」

千夜「そうなの? 一人で来るなんて珍しいわね」

シャロ「たまには来たくなるのよ。黄金の鯱スペシャルで」

 案内されない内に席へ。そしてメニューを見ずにシャロは注文をした。

千夜「ええ。ふふ、嬉しいわ。シャロちゃんがうちに来てくれると」ニッコリ

シャロ「……分かったから早く持ってきて」

 予想通りの反応だが、恥ずかしくなり急かす私。千夜は慌てた様子で頷くと厨房へ向かった。

シャロ「はぁ……もっと可愛げのあること言えないのかしら」

 そっけない私の態度に、私は自分で呟く。私の頭の上ではあんこが髪をかじっていた。

シャロ(こいつがいることをすっかり忘れるなんて)

 それをおどおどと確認しながらシャロは思う。
 ここに来たのは間違いなくインターディメンドの影響なのだろうと。
172 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/09/30(火) 21:29:46.73 ID:rZAykOd90
シャロ「頭が重い……」

 びくびくしながらシャロは注文したものが運ばれるのを待つ。
 店内には他に客はいない。

シャロ「ここもラビットハウスも相変わらずよね……」

 頭の上でなにかが動いているのを感じつつ、シャロは呟いた。

シャロ「あんたも相変わらずすぎ」

 気が気でないのだが、他のうさぎよりはパニックにならないのもまた事実。慣れというのは怖いと思う。

千夜「お待たせ、シャロちゃん」

 少しして、千夜が戻ってくる。お盆の上には注文した品が。

シャロ「やっと来たわね。千夜」

千夜「あら、ふふ。あんこはこっちね」

 名前を呼ぶだけで何をしてほしいかわかったようで、千夜はシャロの頭の上からあんこを抱き上げた。
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/10/03(金) 19:20:23.52 ID:bYcy9BHu0
支援
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/10/03(金) 23:43:18.50 ID:+MUjpPcwo
乙ー
175 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/10/04(土) 11:21:31.45 ID:P7jYFhZw0
シャロ「ありがと」

千夜「せっかくシャロちゃんが来てくれたんだもの。これくらいはね。さ、どうぞいただいて」

 にっこりと微笑んで、シャロへ食べるよう促す千夜。
 感謝しつつシャロはスプーンを手にし、それを食べた。

シャロ「んーっ、美味しい!」

 久方ぶりのどストレートな甘いもの。下に伝わるひんやりとした温度と、甘い味、香り。シャロは心からつぶやいた。

千夜「そう? よかった、シャロちゃんに喜んでもらえて」

シャロ「千夜の和菓子はやっぱり美味しいわね。うん」

 ご機嫌な気分でパフェのようなそれを食べていく。
 幸せそうなシャロを見て、千夜はぽつりともらした。

千夜「だったら、もっと来てくれてもいいのに」

シャロ「え? あんた、それ私に破産しろって言ってんの?」

千夜「そうじゃなくて。注文しなくても、遊びに来てくれたり」

 手を合わせ、お願いするようなポーズで言う千夜。

シャロ「遊びにね……」

 お店に注文もせず遊びに行くのはどうかと思う。
 それに――

シャロ「あんたがいるから、イヤね」キッパリ

千夜「ええっ!? わ、私、シャロちゃんに嫌われ――ぁ」

 千夜の方を見てキッパリと発言するシャロ。千夜は自分のことかと思い若干涙を浮かべるものの、シャロの視線が腕に抱いているうさぎへ向いているのに気付く。

千夜「……そうだったわ」

 あんこ。シャロのトラウマとも言えるマスコット。今もあんこは好きな和菓子ではなく、シャロに視線を留め、ロックオンしている。何が彼をそうさせるのかは分からない。
176 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/10/05(日) 21:39:09.08 ID:q8GK4Z0M0
千夜「うう、私寂しいわ」

シャロ「大人になってもずっと一緒なんでしょ。それに隣に来ればいつでも会えるじゃない」

 呆れつつ、和菓子を勢いよく食べていく。いつあんこに襲われるか分からない状況。和菓子をのこしておくのは自殺行為にひとしい。

千夜「それでも……なんて言えばいいのかしら。シャロちゃんから、会いに来てほしいような」

シャロ「いまいち意味が分からない」

千夜「乙女心よ」

 その前までは頬を膨らましていたというのに、にっこりと笑う千夜。シャロはさっぱり意味が分からず首を傾げた。

シャロ「そ。複雑ね」

 パフェ、あんこ、二つのことに気をとられ、考えようとも思えない。
 簡潔にシャロが答え、視線を彼女からパフェに向けると、千夜はまた不満気な顔をする。

千夜「むぅ……」

千夜「あら。シャロちゃん、それ……」

シャロ「それ?」

 指摘され、彼女の視線の先を見る。すると千夜が自分の首にかかっている黒い紐を見ていることに気づいた。

千夜「まさか下着……」カアァ

シャロ「違うっ! ただのペンダントよ」

 顔を真赤にする千夜へ、服の下に隠していたそれを見せる。
 真空管の形をしたペンダント。

千夜「真空管ね」

 千夜はそれを目にし、すっぱりと口にした。
 真空管について知っていたらしい。
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/10/05(日) 21:59:45.73 ID:29Kt/L5lO
期待
178 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/10/05(日) 22:15:30.69 ID:q8GK4Z0M0
シャロ「そう。真空管――って知ってたの?」

千夜「ええ。古臭いのは大好きよ」

シャロ「古臭くは……ないと思うけど」

 苦笑し、ペンダントを服の中へ。

千夜「そう? でもシャロちゃん、ペンダント身に付けるなんて初めてじゃない?」

シャロ「そう……ね。優等生で通ってるし」

 学校でバレれば間違いなく怒られる。そんな危ない橋を渡る自分ではないのだ。

千夜「……」

シャロ「――どうしたの?」

千夜「あ。なんでもないわ。ふふ」

 明らかに何かがあったような、悲しげな顔をしていたのだが――彼女は何を考えていたのだろうか。
 隠すように笑顔を浮かべた千夜を見て、シャロは考えた。

【千夜の精神世界へのアクセスが解禁されました】
179 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/10/05(日) 22:22:47.80 ID:q8GK4Z0M0
 夜。自室。

シャロ「最近美味しいものばかり食べ過ぎているような……」

シャロ「体重大丈夫かしら」

シャロ「だ、大丈夫なはず。うん」

 行動選択
 1・【選択できません】
 2・外に出かける(街を散策or会う人物を指定)
 3・ザッピング
 4・ダイブ【千夜or青山】

 安価↓1
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/10/05(日) 22:30:11.10 ID:qUo7+us9O
2 街を散策
181 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/10/05(日) 22:54:53.00 ID:q8GK4Z0M0
 翌日の放課後。
 バイト前にシャロは街を散策することにした。

シャロ「こうやってあてもなく歩くのは久しぶりかも……」

 自分にしては珍しい決断である。
 いい気分転換にはなるかもしれない。

シャロ「うん、綺麗な街よね……」

 街の景色を眺めつつ歩く。すると、前から見知った顔がやって来た。

リゼ「お、シャロじゃないか」

シャロ「リリリぜ先輩!?」

 ゆるみきった意識が、瞬時に覚醒する。ぴょんとその場で軽く跳躍して、シャロは前にいるリゼを見た。
 高校の制服姿のりぜだ。気さくに笑みを浮かべ、彼女はシャロのすぐ前まで来る。

【本日のインターディメンドはここで終了します】
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/10/05(日) 23:04:17.57 ID:h2JkgO8Qo
乙です
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/10/06(月) 11:27:08.85 ID:qULuQf/I0
乙!!!
184 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/10/07(火) 21:40:19.24 ID:WLh3Qs1/0
リゼ「久しぶり、でもないか。元気そうだな」

シャロ「は、はい。とても。リゼ先輩は、今日バイトですか?」

 深呼吸をし、なんとか落ち着ことするシャロ。
 得意の作り笑顔も、あこがれの人の前だとぎこちない。

リゼ「うん。ちょっと気分転換でも、と思って歩いていたんだ」

シャロ「私もですっ。奇遇ですね」

リゼ「シャロもか。――そうだ。時間があるなら、お茶に付き合ってくれないか?」

 少々考えた後の提案に、シャロはまた飛び上がりそうな気持ちに駆られる。
 付き合ってくれ。その言葉にときめきを覚えたのは確かだが、シャロの予想が正しければ、おそらく自分に気を遣ってごちそうしようとしてくれている。

シャロ「い、いえ。それは申し訳ないような」

リゼ「いいんだ。私がシャロといたいんだから。ほら、いくぞ」

 遠慮しようとするシャロの手を軽く一度引っ張り、笑顔を見せるリゼ。
 気遣いを感じさせない自然かつかっこいい行動。加えて恥ずかしくなるような台詞。

シャロ「……は、はい」

 自分の顔が真っ赤になるのを感じつつ、シャロはリゼの隣をついていった。
 その後自分が何を話したのかは、あまり覚えていない。

【リゼの精神世界へのアクセスが解禁されました】
185 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/10/07(火) 21:47:54.11 ID:WLh3Qs1/0
 その日の夜。自宅。

シャロ「先輩……やっぱり人気なんだろうなぁ」

シャロ「今日だって素敵だったし……」

シャロ「私と一緒にいたい、って笑顔で――!」バタバタ

シャロ「あれはおちる人も絶対いる」

シャロ「見てる人も絶対そう思うでしょ」


行動選択
 1・【選択できません】
 2・外に出かける(街を散策or会う人物を指定)
 3・ザッピング
 4・ダイブ【千夜or青山orリゼ】

 安価↓1
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/10/07(火) 23:16:46.72 ID:w28L3G+Ro
3
187 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/10/10(金) 21:40:24.19 ID:GTAJWZk30
【ザッピングを実行します】
【Ch.1からCh.2へ切り替えます】
【切り替えによる負担を軽減するため、しばらくのザッピングを禁止します】
188 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/10/10(金) 21:48:13.81 ID:GTAJWZk30
 
 ???。名前も場所もわからない場所。

???「やぁ、はじめまして、かな?」

???「ボクの名前は――いや、名前なんてやぼかな」

???「影、とでも呼んでくれ」

影「突然で悪いけど、これまでを見てきた君らにクイズだ」

影「チャンスは何度もある。これでゲームオーバーになったりもしない。だから気楽に答えてくれ」

影「正解すれば――そうだね。『君』の答えを『君ら』に共有できる」

影「メリットはあるだろう?」
189 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/10/10(金) 21:53:55.75 ID:GTAJWZk30
影「でははじめるよ」

影「君らはこれまで、短いながらも彼女達の日常を覗いてきた」

影「ああ、勿論ここでの話だよ? 本とかテレビとか、そういうのは抜きだ」

影「そんな中で、疑問を抱いた筈だ」

影「今回はその疑問を、一つ提示してもらいたい」

影「大丈夫。ヒントは選択肢として表示される。君らはその選択肢を選び、詳しい答えを書いてくれればいい」

影「ではいこうか」

影「君が疑問を抱いたところはどこだ? そして、その疑問の内容とは?」

影「間違った後の答え直しは何回か許そうかな」

 選択
 1・冒頭部分
 2・チノと千夜の精神世界
 3・千夜

 安価↓1(番号の他に、明確な答えを記載)
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/10/10(金) 22:57:36.64 ID:XuSoKNSto
1 誰かインターディメンドのメモ置いたのか
191 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/10/10(金) 23:17:11.88 ID:GTAJWZk30
影「冒頭、誰がインターディメンドのメモを置いたのか」

影「なるほど、それは確かに疑問だね」

影「でもその選択肢で、メモのことに気付く前――いや、気づいた時点でおかしなところはないかい?」

影「ココアがいて、君らが見ていて、ココアがメモに気づいて、インターディメンドをして――その状況がおかしいんだ」

影「シャロと比較すれば……」

影「さぁ、ボクが言っているのはピンポイントな謎、疑問点。だからそこを指摘されるまでヒントはばしばし出すよ」

影「続きが気になるだろうし、今回はあと二回にしようか」

 選択
 1・冒頭部分
 2・チノと千夜の精神世界
 3・千夜

 安価↓1(番号の他に、明確な答えを記載)
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/10/12(日) 13:49:31.72 ID:epLLnZCFo
1 インターディメンド開始する前なのになぜココアの状況がわかっていたのか
193 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/10/12(日) 23:15:35.57 ID:ZH+p/9nE0
影「インターディメンド開始する前なのになぜココアの状況がわかっていたのか」

影「うん。そうそう。1番目の選択肢はそうだね」

影「更に言えば、冒頭部分の誰かのシーン」

影「インターディメンドがはじまってもいないのに、君らはその状況を見ることができた」

影「なんでだろうね。それは多分、他の選択肢の疑問について考えれば、見えてくるかも」

影「まぁまだ序盤。はっきりは分からないだろうけど」

影「さて。僕の思っていた疑問をはっきり当ててくれたことだし、ちょっとご褒美をあげようか」

【ココアの精神世界へのアクセスが解禁されました】

影「君たちには期待しているよ」

影「じゃあ、また」
194 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/10/12(日) 23:17:28.70 ID:ZH+p/9nE0
ココア「ふんふん、例えばどんな?」

チノ「それは……そうですね。ココアさん、と――」

ココア「え? 私と?」ワクワク

チノ「ココアさんと、なら――遠くに」ゴニョゴニョ

ココア「え? なに? よく聞こえないよ」

チノ「……いいです。どうせ言っても変わりないことですから」

 期待から急かしていると、チノは物凄く冷たい目をして言い放った。

ココア「ええっ!? すごく気になるのに!」

チノ「気にしないでください」

 端的に言い、チノはため息。そしてココアをちらりと見た。口をちょっとだけカップにつけて言う。

チノ「ココアさんは私のことをどこにでも連れて行ってくれますし」

ココア「……? チノちゃんが行きたいなら、そうするけど?」

チノ「そういうことです。だから心配は無用です」

 ごくごく。チノは言って、コーヒーを全て勢いよく飲んで、厨房から去っていった。
 その頬はほんのりと赤かったように見えた。
 冷たいミルクを入れていたからこそできた芸当である。ココアはまだ熱い自分のコーヒーを冷ましつつ、ぼんやりと呟く。

ココア「ちょっとは効果、あったのかな」


行動選択
 1・千夜と話す
 2・外に出かける(街を散策or会う人物を指定)
 3・ザッピング【現在制限されています】
 4・ダイブ(チノor千夜orココア)

 選択
 安価↓1
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/10/12(日) 23:26:05.49 ID:0tELDs/Jo
1
196 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/10/13(月) 13:27:46.02 ID:9yIGgaaE0
ココア「千夜ちゃんと話そう!」

 朝。自室。ココアは不意に思い立った。
 自分が千夜の精神世界らしき世界に行ったことは確か。ならば彼女になにかしらの変化があったかもしれない。

ココア「うん。絶対そうするべきだよね」

チノ「ココアさん、朝で――って起きてたんですか」

 ドアを開き、中へと入ってきたチノは目を丸くさせた。

ココア「あ、おはようチノちゃん。今日もいい天気だね」

チノ「そうですね」

チノ「ココアさん、最近どうしたんですか? 何か眠れないことでも?」

ココア「大丈夫だけど……私が起きてるのってそんなに珍しい――よね」

 珍しく、心配そうな表情をする彼女。ココアは即座に指摘しようと思うものの、普段の自分を思い返して苦笑した。

チノ「すごく珍しいです」

ココア「そこまではっきり言わないでっ!」
197 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/10/13(月) 21:54:24.58 ID:9yIGgaaE0
 しまいにはチノに体調を心配され、学校へ。

ココア「ってことがあってね。すごくチノちゃんに心配されちゃったよ」

千夜「ふふ。でも気持ちも分からなくはないかもしれないわ」

ココア「もー、千夜ちゃんまでそういうこと言うー」

千夜「ごめんなさい」クスクス

 登校途中。いつものようにココアと千夜は雑談を交わす。
 千夜の様子に変わりはない。いつもどおり笑顔で、のほほんとしている。

ココア「……千夜ちゃん」

千夜「うん? なぁに? ココアちゃん」

ココア「放課後、今日空いてるかな?」

千夜「放課後? ええ、空いてるけど」

ココア「それじゃあ、私とお話しない? どっかお店で」

千夜「いいわよ。デートのお誘いね」

 快く頷く千夜。とりあえずは約束をとりつけたのだが――

ココア(どうやって聞こうかな……)

 それが問題だった。
198 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/10/16(木) 20:18:17.11 ID:L5dAEjuR0
 そんなこんなで放課後。
 結局いい考えは浮かばず、時間がやってきてしまった。

ココア「考えなしって思われても仕方ないよね、これ……」

 実際思い立ってなにも思いつかなかったのだから間違いない。
 ココアはため息。帰り支度を終えた千夜にちょうどそれを見られる。

千夜「どうしたの? ココアちゃん」

ココア「な、なんでもないよ。やっと学校終わったなぁって」

 にこりと笑い、言い訳を口にする。
 千夜は納得してくれたようで、笑みをこぼした。

千夜「ご苦労様」ナデナデ

ココア「あはは、ありがとう千夜ちゃん」

 頭を撫でられ、ココアはお礼を口にする。

千夜「そういえば、デートはどこでするの?」

ココア「結構近くだから、すぐ行けるよ。名前は――」

 楽しげに会話する二人。デートという単語に、クラスメイトらはざわつきはじめた。
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/10/17(金) 23:35:19.88 ID:dBcUmqAY0
みてるでー
200 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/10/18(土) 20:28:47.82 ID:gJQXBCZn0
 とある喫茶店。
 ラビットハウスと違い、客で賑わう店内でココアと千夜は注文を終えた。

千夜「それで……お話ってなにかしら?」

 注文を終えてすぐ、千夜は口を開く。
 特に何も疑ったりはしていないようで、彼女は笑顔を浮かべていた。

ココア「ええと……あのね、実は千夜ちゃんに悩み事というか、何か変わったことはないかなーと思って」

千夜「え? ココアちゃんに何か心配かけることしたかしら?」

ココア「そうじゃなくて……」

ココア(前のことがあったから気にしてるのかな)

 以前自分の問題だからと、悩みを隠してきた千夜。だからこそ過敏に反応してしまうのだろう。
 明るかった彼女の顔が曇る。
 できるだけ千夜を傷つけずにどう尋ねるべきだろうか。

 選択
 1・ナレーションの言っていた設定を語る
 2・精神世界で経験した、あの世界のことを語る

 安価↓1
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/10/18(土) 21:17:09.91 ID:EdnxGhwxo
202 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/10/18(土) 23:25:18.76 ID:gJQXBCZn0
ココア「実は、千夜ちゃんに関係した夢を見て――」

 ココアはあの精神世界でのことを語ることにした。
 チヨという魔法使いが出てきたこと、タカのこと、その世界で起こったこと。
 曖昧だった記憶は、何故かそのときはっきりと頭に浮かんできた。
 教えることもまた勉強。そんな感じだろうか、と考えるものの――それとはまた違うような気がしなくはない。
 不思議な感覚であった。
 そして同時に、例え精神世界であっても虐殺行為を働いたことに、ココアは恐怖感を抱く。

ココア「それで――あれ?」

 ココアは首を傾げた。
 曖昧ながら、話つつ詳細を思い出せた精神世界のこと。その記憶がぷっつりと、あるタイミングで途切れているのだ。
 強い光が起き、自分がふらふらとその向こう側、見えない場所に足を踏み入れた瞬間。そこから思い出すことができない。

ココア(何かが違うのかな……?)

 ココアは考える。
 おそらく、思い出せたのはインターディメンドの影響。
 その影響をもってしても、先を思い出すことができない。その理由は何か。考えてみても想像がつかなかった。
203 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/10/19(日) 00:11:15.01 ID:7Cqh9+Tb0
千夜「面白い夢のお話ね」

ココア「あ。うん。話の流れがしっかりしてて、覚えてたんだ」

 思考をやめ、ココアは頷く。

千夜「でも……その、人を倒しちゃうのはよくないけど」

 一応柔らかめの表現にはしたのだが、千夜は悲しげな顔をして言う。

ココア「うん、そうだよね」

ココア(なんで、忘れかけてたんだろう……)

 あんなひどいことを、兵士に、ロゼの姿をした人物にしたのに自分の記憶は曖昧に。思い出せたのはインターディメンドのおかげだとして、忘れていた理由とはなんなのだろうか。

ココア「他に感想とかあるかな?」

千夜「感想? 特には……」

 うーん、と唸り千夜は答える。
 千夜に影響はほぼなし。あれが千夜の精神世界なのかすら疑わしくなってきた。

ココア(……よくわからないや)

 現在の状況では判断がつかない。
 もっと何か、情報を集めなくては。
 普段考えもしない小難しいことに、ココアは自分の頭が重くなるのを感じた。
204 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/10/19(日) 00:26:35.59 ID:7Cqh9+Tb0
 夜。自室。
 あれからココアは千夜と別れ、普段通りの生活をおくった。
 何も変わりはない。

ココア「平和ってことだよね」

ココア「これからこれから!」

ココア「頑張ろう! みんな!」

 行動選択
 1・【選択できません】
 2・外に出かける(街を散策or会う人物を指定)
 3・ザッピング【現在制限されています】
 4・ダイブ(チノor千夜orココア)

 選択
 安価↓1
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/10/19(日) 00:33:25.13 ID:spuuIQ6jo
2 街
206 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/10/19(日) 22:17:09.63 ID:7Cqh9+Tb0
 翌日。放課後。
 ココアはなんとなく街へと出かけた。

ココア「……なんで街なんだろう?」

 別に行きたくないわけでもないのだが、特別行くような理由も見当たらなかった。
 疑問を覚えるものの、あまり気にしないことにしておく。

ココア「あ。あの後ろ姿は……」

 見覚えのある姿を見つけ、ココアは走りだす。

ココア「シャロちゃーん!」

シャロ「あ、ココア――っ!」

 制服姿のシャロは振り向くと笑顔を見せた、のだが、ハッとした顔をするとシャツの襟を直し首もとを隠す。

ココア「どうしたの?」

シャロ「な、なんでもないわ」

 どう見てもなにかある態度。
 いつもなら気づかないココアだが、ぴんとくる。インターディメンド。ここ数日、ココアの頭の中を占めている事柄。だからこそ、シャロの何気ない行動が気にかかった。

ココア(確かシャロちゃんも……なんだよね)

 あくまで仮定。千夜が話していた程度だが、シャロも真空管のペンダントを身に付けているらしい。
 となれば、インターディメンドをしている可能性も高い。彼女の行動を見るに、その予想もあながち間違いでもないようだ。
207 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/10/21(火) 22:39:11.74 ID:C7QbpIiJ0
ココア(うーん……)

 ココアは考える。
 あれこれと思考し――そして、結論を出す。

ココア「奇遇だねっ」

 シャロのことは聞かない。
 インターディメンドのことは秘密にしていた方がいいと思うのだ。
 ココアはインターディメンド、シャロの行動を見ていないふりをして、笑顔を浮かべる。

シャロ「え、ええ。奇遇ね」

 するとシャロはホッとした様子で息を吐き、笑顔で返す。

ココア(私が言うのもあれだけど……)

 ココアはそんなシャロを見て苦笑。

ココア(分かりやすい……)

 追及しないことで安心しているのがまる分かりであった。
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/10/21(火) 23:23:20.17 ID:tj8YgDToo
乙です
209 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/10/23(木) 23:18:22.41 ID:HppYnLsx0
ココア(訊いても逃げられそうだし、これでいいんだよね)

 確認する相手もいない。
 少々の不安を覚えるものの、シャロを追い込むのもよくはないだろう。
 ココアは訊こうとする自分の好奇心を必死に抑えて、笑顔を浮かべる。

シャロ「ココア」

ココア「へ?」

 考えている最中に声がかかり、ココアは首を傾げる。
 前を見れば、シャロがココアを心配そうに見ていた。

シャロ「あんた……体調は悪くない?」

ココア「体調? 悪くないよ」

シャロ「――そう。やっぱり」

 またホッとした様子を見せ、微笑するシャロ。
 安心している。それは間違いなく事実。しかし体調を気遣われる要因が分からず、ココアは疑問を抱く。

シャロ「今日はバイトがあるから、またね」

ココア「う、うん。またねシャロちゃん」

 それからは落ち着いた様子で、すたすたと歩いていくシャロ。
 彼女は自分の何を思って、あんな質問を投げかけたのだろう。

ココア「……うーん」

ココア「分からないや」
210 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/10/25(土) 01:22:00.93 ID:oEwZAbVQ0
 その日の夜。

ココア「分からないことが多すぎるよ……」

ココア「何が分からないのか分からなくなってきたレベル……」

ココア「割とひどい有様」

ココア「明日は……どうしようかな?」

行動選択
 1・【選択できません】
 2・外に出かける(街を散策or会う人物を指定)
 3・ザッピング【現在制限されています】
 4・ダイブ(チノor千夜orココア)

 選択
 安価↓1
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/10/25(土) 01:26:17.76 ID:Yt3Pum57o
4 千夜
212 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/10/25(土) 02:10:29.99 ID:oEwZAbVQ0
 
【ダイブ:宇治松 千夜 LV.2『回り続ける螺旋(サイクリングスパイラル)』を開始します】

 千夜の精神世界。そのどこか。

ココア「……ええと、何も聞こえない、よね」

 最初の時のように真っ暗な景色の中、ココアは目を覚ます。
 ナレーションは聞こえない。ただ、耳を澄ませてみると遠くからそれらしい声と音楽が聞こえてきた。

ココア「ここが誰の世界か分からないけど……」

ココア「気になるところには行くべきだよね、うん」

 自分に言い聞かせ、レッツゴー。
 ココアは暢気に歩き出した。

ココア「……あ、あれ?」

 そして、視界が、世界が開ける。
 足を進めて少し。なんの前触れもなく、ココアの前に広がる光景は、ドアが開くかのように変化した。
 見えてきたのは草原。そして街。城。
 あの世界で見た、景色そのもの。
 だが、なにもかもが変化していた。

ココア「ぼろぼろになってる……」

 まるで何かの攻撃を受けたかのように、街と城は崩壊していた。
 何も変わりないのは、ココアのいるこの草原のみ。
 妙な胸騒ぎを覚え、ココアは走りだした。


 選択
 1・街に
 2・周囲を確認

 安価↓1
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/10/25(土) 07:52:58.81 ID:vviXfhAUO
2
214 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/10/25(土) 21:12:16.78 ID:oEwZAbVQ0
ココア「っ」

 急ブレーキ。周囲のことが気になったココアは立ち止まり、周りを確認する。
 辺りには草原。そして街と城。確認してもそれ以上のものは見つからなかった。
 何も変わらない。変わっているのはその状況のみ。

ココア(……あれ?)

 だがココアは何か引っかかった。
 何かが変わっている。何かが存在しない。それは――

ココア「あの石の建物!」

 ストーンヘンジであった。
 あったはずの場所を見ても見つからない。そもそも、最初に来たときも見つからなかったような気もした。
 あれが見つかったのは、光が起きたとき。

ココア「見つからないのは当然のことなのかな……」

 チノの時は――どうだったのだろう。列車で移動し、そしてストーンヘンジに到着した。
 単に見えない距離にあったのかもしれないし、条件を満たしたからどこかに現れたのかもしれない。断定はできない。

ココア「……とりあえず街に!」

 考えても分からない。ココアは再び街へ走りだした。
215 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/10/25(土) 23:45:10.59 ID:oEwZAbVQ0
 街。
 すっかり荒れ果てたそこには、数多くの死体が。
 直接的に亡骸は見えないものの、崩れた建物の瓦礫の間から手や足などが出ており、妙なにおいもする。
 見たところ通りには誰もいなかった。隠れているのか、それとも……。

ココア「ひどい……」

ココア「なんでこんなことに」

 唖然とし、ココアは思考をはじめる。
 前に来た時、ココアはクリスティーヌを倒した。そのお陰で街は難を逃れたはず……なのだが。

ココア「ここにいても何も分からないよね」

 今この状況を得るために、何をするべきか。どこへ向かうべきか。

 選択
 1・魔女の家へ
 2・城へ

 安価↓1
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/10/25(土) 23:46:11.92 ID:L0BgPgAYo
1
217 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/10/26(日) 00:39:56.82 ID:WgVcOHkf0
 魔女の家。

ココア「千夜ちゃんの世界なら、千夜ちゃんを探すべきだよね……」

 誰の世界かは正確に分からないものの、おそらくこれは千夜の世界。
 そう予想し、ココアは魔女の家に向かう。
 チヨの住処である。街が廃墟となった状況でも、彼女はけろりとしている。そんな確信がどこかにあった。
 しかし。

ココア「……誰もいない」

 チヨの姿は見えない。それどころか、魔女の家自体が綺麗に崩れていた。

ココア「チヨちゃーん!」

 口に手を当ててココアは彼女の名前を呼ぶ。

???「ココア……さん」

 すると近くから声が聞こえた。
 消えそうなか細い声。聞き覚えがあった。

ココア「シャロ――じゃなくて、キリちゃん!」

 声のする方へ。瓦礫の後ろへ回り込むと、キリの姿を見つける。
 ボロボロで、ひどい有様だった。
218 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/10/26(日) 20:32:32.60 ID:WgVcOHkf0
キリ「何故、ここへ来たんですか……?」

 今にも息絶えそうなほど小さな声で、彼女は問いかける。

ココア「なんでって……ここがぼろぼろになってたから」

キリ「……ここは、あなたとチヨ様が壊したんですよ」

ココア「え……っ!?」

 絶句するココア。
 嘘ではないと感じるキリの口調。この世界でしてきたこと。それらを思い出すと、あり得なくもない話だ。

キリ「さぁココアさん。私のことは気にしないで、チヨ様のところへ」

ココア「だ、だめだよ。キリちゃんが……」

キリ「私はもう助かりません」

 ふるふると顔を振るキリ。彼女は悲しげな顔をする。

ココア「キリちゃん……」

キリ「私がコーヒー派になるのも時間の問題……」

ココア「――あれ? コーヒー派?」

 シリアスな場面に合わない台詞にココアはきょとんとする。
 襲われて死にかけて、それでコーヒー派になるなら、街で見たあの死体のようなものはなんだったのだろうか。

キリ「はい……魔王軍に襲われた者はコーヒー派になってしまいます」

キリ「建物の崩壊に巻き込まれた者以外は、おそらく街から出て行ってしまったのでしょう」

ココア「ああ……」

 それなら納得である。
219 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/10/26(日) 22:41:33.94 ID:WgVcOHkf0
キリ「だから早く。チヨ様のところへ」

ココア「う、うん……分かった」

 まだ納得はしていないものの、ここは精神世界。
 自分が進まなくては、まず好転することはないだろう。ココアは頷いて、立ち上がる。
 まだ行っていない場所はお城。おそらくそこにチヨがいるはず。

ココア「行ってくるね」

キリ「はい……また、会いましょう」

 ぐったりとしているキリを置いて、ココアは走る。
 城へは、すぐに到着した。
220 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/10/26(日) 23:17:16.54 ID:WgVcOHkf0
 お城。アマウサと会った謁見の間へと行くと、そこにはチヨがいた。

チヨ「あら、ココアちゃん」

 笑顔を浮かべココアへと振り向くチヨ。
 いつもと同じ表情、声なのだが……何故かココアはぞくっとした悪寒を覚えた。

チヨ「来るのが遅かったわね」

 チヨは笑顔で、自分の手柄を自慢するように、手にしている鉄製の籠を見せる。
 鳥かごのようなその籠の中にはアマウサが。器用に鳥が立つ細い足場の上に鎮座していた。
 危機的な状態なのに、なんともシュールだ。

アマウサ「まさか我が捕らえられるとは……。チヨ、裏切ったな」

チヨ「裏切っただなんてそんな」

チヨ「私はただ本来の目的を果たしただけ。責められるようなことはしてないわ」

チヨ「そうよね? ココアちゃん」

ココア「……なんで私に聞くの?」

 思考が追いつかない。ようやくココアが言葉にしたのは、その一言。

チヨ「なんでって、私と一緒にこの国を支配しようって決めたじゃない」

 時間がかかった問いに、チヨはあっさりと答えた。

チヨ「魔王軍の襲来に合わせて私達も行動。漁夫の利を得る――」

チヨ「二人で考えた作戦は見事成功したわ」

ココア「そん、な……」

 二人で。自分にはまったく覚えがないが、ココアはチヨとともに街を遅ったらしい。そして国を支配しようと目論んでいた。

チヨ「それじゃ、私は最後の仕上げがあるからいくわね」

 愕然とするココアを置いて、チヨは上機嫌にその場を去る。
 残されたココアは、これからどうするのかも分からず、ただその場に立ち尽くしていた。
221 : ◆JwZf59h8b2 [saga]:2014/10/26(日) 23:18:42.62 ID:WgVcOHkf0
【この精神世界のシナリオはロックされました。
 条件を満たすことで先に進むことができるようになります】

【本日のインターディメンドはここで終了します】
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/10/26(日) 23:26:59.40 ID:pmprn8u2o
乙です
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/10/28(火) 01:45:49.70 ID:THVilziko
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/11/09(日) 19:32:09.08 ID:+lYr1k2h0
ほしゅ
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/11/29(土) 02:00:27.13 ID:NYXCrGb00
なん…だと……?
226 : ◆/FgVpjL5ro [saga]:2014/12/21(日) 22:11:24.69 ID:gZnjhwiI0
【酉とか違うかもしれませんが>>1です】

 翌朝。
 ココアは目を覚ました。

ココア「あれ?」

ココア「あれで終わり――なわけないよね」

 身体を起こして、つぶやく。
 どう考えても途中。中途半端なところで終わってしまった。
 何がどうなっているのだろうか。

ココア「……学校行かなきゃ」

 ひとまずは、日常に戻るしかなさそうだ。

行動選択
 1・【選択できません】
 2・外に出かける(街を散策or会う人物を指定)
 3・ザッピング
 4・ダイブ(チノorココア)

 選択
 安価↓1
227 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2014/12/21(日) 22:32:01.30 ID:/v0irLS8o
3
228 : ◆/FgVpjL5ro [saga]:2014/12/21(日) 22:45:59.36 ID:gZnjhwiI0
【ザッピングを実行します】
【Ch.2からCh.1へ切り替えます】
【切り替えによる負担を軽減するため、しばらくのザッピングを禁止します】
229 : ◆/FgVpjL5ro [saga]:2014/12/21(日) 22:47:06.89 ID:gZnjhwiI0
 その日の夜。自宅。

シャロ「先輩……やっぱり人気なんだろうなぁ」

シャロ「今日だって素敵だったし……」

シャロ「私と一緒にいたい、って笑顔で――!」バタバタ

シャロ「あれはおちる人も絶対いる」

シャロ「見てる人も絶対そう思うでしょ」


行動選択
 1・【選択できません】
 2・外に出かける(街を散策or会う人物を指定)
 3・ザッピング 【現在選択できません】
 4・ダイブ【千夜or青山orリゼ】

 安価↓1
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2014/12/21(日) 23:01:03.20 ID:RW4pgueio
続き来てた!
安価なら4で青山さん
231 : ◆/FgVpjL5ro [saga]:2014/12/21(日) 23:15:17.23 ID:gZnjhwiI0
【ダイブ:青山 翠 LV.1『ラビットスクール 第一章:星のめぐり』を開始します】

 とある街。とある学園。
 有名進学校として名を馳せるそこへ、今日から私は通うことになる。
 ほぼ親のコネ、お金で入った学校だけど――私はずっとそこに憧れていた。
 だって、とっても綺麗で大きくて――それでいて、そこには美しい少女しかいない。
 もしかしたら、家柄だけが取り柄の私にも、運命的な出会いがあったりするのかもしれない――なんて、夢を抱くことができる学校なのだ。
 入学できる今日という日を、どれだけ待ったことか。

シャロ「ああああ!」

 ――けど、その期待が裏目にでることもある。
 ずっと楽しみにしていた学園への入学の日。私はすっかり寝過ごして、通学路を走っていた。
 お嬢様校に通う、エリートの中のエリートだというのに、私はみじめに泣きそうになりながら道を進む。
 まさか待望んだこの日に、こんなミスをするなんて、私一生の不覚だ。

シャロ「このままだと遅刻――」

シャロ「そんなのは嫌。なんとか、しないと」

 息も絶え絶えに私はつぶやく。
 このまま遅刻しないで、どうやって学校まで行こうか。

 選択
 1・近道!
 2・一生懸命走る!

 安価↓1
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2014/12/22(月) 00:18:22.00 ID:LXkF6B29o
2
233 : ◆/FgVpjL5ro [saga]:2014/12/23(火) 22:30:04.05 ID:ZQST0vif0
シャロ「一生懸命走れば、きっと……!」

 そんな微かな希望を抱き、私は走る。
 きっとこのまま走っていれば間に合う。慣れないことをするよりかはそっちのほうが可能性は高く思えた。
 ――まぁ、走ること自体があまり慣れていないことなのだけれど。

シャロ「はぁっ……はぁっ」

 息苦しさはとうに越え、今にも倒れてしまいそうな感覚を抱きつつ必死に足を動かすこと数十分。学校が見えた。
 校舎に設置されている時計はまだギリギリ遅刻ではない時間を指している。これなら間に合いそうだ。

???「こら、そこのあなた!」

 安堵するまもなく、声がかかる。どうやら校門にその声の主はいたらしい。
 校門の前、ちょっと左に女の子が立っている。眼鏡をかけた真面目そうな子だ。

???「そのリボン――一年生ね。入学初日に遅刻ギリギリとはいい度胸じゃない」

 彼女は私の胸元へ目をやり、呆れた調子で言う。
 そういう彼女は、胸元のリボンから察するに、二年生。先輩だ。

シャロ「え、えと……あなた、は?」ゼエハア

ココア「私はココア。生徒会長よ」

 眼鏡の位置を片手で直し、きりりとした顔で名乗る。
 生徒会長……。何故だろう。彼女がそう言うと違和感しかない。似合ってはいるのだが。

ココア「あなたは?」

シャロ「シャロ、です……げほっ」

ココア「――覚えておくわ。ほら、早く行きなさい」

 咳き込む私を見て、一瞬間を空けると、彼女は進むよう促す。
 走ってきたことを考慮してくれた――のかしら。優しい人なのかもしれない。

シャロ「はいっ、すみませんでした」

 なんにせよ早く行かなくては。私は頭を下げて校舎へと入っていった。
234 : ◆/FgVpjL5ro [saga]:2014/12/23(火) 23:09:43.40 ID:ZQST0vif0
 教室には他の生徒達が集まっていた。
 当然といえば当然のことだけど。

シャロ「……はぁ、気が重い」

 このまま入っていけば、注目をあびること間違いなし。
 となれば私の想像するような輝かしい学園生活がパーになる。
 それは避けなくては。

シャロ「でもバレないで入れるわけないし」

 ああでもないこうでもないと考えている内に、時間が経っていく。
 もういっそのこと堂々と入ってしまおうか。そんなことを思っていると、不意にガラッとドアが開く音が聞こえた。
 隣の教室――ではないらしい。教室の後方にあるドアの前に私はいるのだが、開いたのは教室前方のドア。
 まさか先生が!? そう思い焦る私。
 が、どうやら違うらしい。

???「……」

 どうどうと、鞄を持った手を肩に担ぐようにして歩く少女。
 大人びたお姉さんみたいな、しかし妙に目つきが悪い彼女は前方のドアから入り堂々と歩く。
 妙な緊張感から、教室が静まりきっていた。
 何アレ? 意味はわからないけど――チャンスだ。彼女に気をとられている今なら、入れるかもしれない。
 私はおそるおそるドアを開き、中へ。すると凄まじい勢いで、私に視線が向けられた。
 私を見てきたのは――あの目つきの悪い少女。
 彼女は私を見て、一言。

青山「この青山より後に入ってきた……だと!?」

 ……なんだろう、この人。


【本日のインターディメンドはここで終了します】
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2014/12/23(火) 23:43:42.97 ID:1g5Qc6jho
乙です
236 : ◆/FgVpjL5ro [saga]:2014/12/25(木) 22:18:22.63 ID:k/Lik6Il0
 バレてしまった。
 青山――だっけ? そう名乗った彼女が大袈裟な声で言ったため、クラス中の視線が私に集まる。

シャロ「ええと……お、おはようっ」

クラスメイト『……』

青山「可愛く言ってんじゃねえ」

 ええー……なにこれ、どうすればいいの?
 せいぜいバレても呆れられるくらいだと思っていたのに、なんて厄介な。このままでは輝かしい学生生活――なんて言っている場合ではなくなってしまう。

青山「お前、いい度胸だな……この青山より後に入ってくるたぁ」

シャロ「そんなこと言われても、怒られる筋合いなんてさっぱり――」

青山「は?」

 うぐぅ! すごい威圧感! おんなじ制服で、可愛らしい容姿をしているのにどこからこんな恐ろしい空気が!
 とにかく争いを避けなくては。

シャロ「と、とりあえず席に座ったらどうかしら?」

千夜「ち、千夜先生もそう思う」

 おそるおそる手を挙げる人物が教室の隅に。
 先生いたんかい!

青山「お前は黙ってろ」

 それを分かっていて前からあんな堂々入っていたなんて……間違いなくこの子の方がいい度胸をしている筈だ。

千夜「ひぃっ、ごごごごごめんなさい!」

 そして先生ビビリすぎ。
237 : ◆/FgVpjL5ro [saga]:2014/12/25(木) 22:38:05.69 ID:k/Lik6Il0
青山「ここまでコケにされて黙っていられないな……」

シャロ「今のどこにコケにする要素があったのかしら」

青山「先公の気に入らない態度だ!」

シャロ「私関係なくない!?」

千夜「大変だねぇ……シャロさん」

シャロ「張本人なのになんでのほほんとしてるんですか!」

千夜「え? 私関係ないし」キョトン

シャロ「八割方あなたのせいですよ!」

青山「細かいことはいい」

 全然細かくないんだけど……。

青山「おいシャロと言ったな。お前、俺と勝負しろ」

シャロ「……誰のこと?」

千夜「嫌だなぁ、今さっき先生が名前呼んだでしょ」

 くそうっ! なんでこんな時に口をはさむの!?

シャロ「シャロとは偽名――私の本当の名前はカフェイン」

青山「行くぞ」

シャロ「あ、ちょっ、やめ――」

 手をがっしり掴まれ、ふざけるまもなく連行。
 千夜先生が手を振っているのを最後に、私は教室から連れだされた。
238 : ◆/FgVpjL5ro [saga]:2014/12/25(木) 23:03:29.66 ID:k/Lik6Il0
 
 屋上。何故か鍵がなく、開放されているそこへとやってきた。

青山「ここなら邪魔も入らないな……」

青山「さぁ、勝負だ」

シャロ「勝負と言われても……」

シャロ「なにをするの?」

青山「……お前に任せる」

 ええー……。それってどうなのかしら。
 まぁああ言ってるし、私が決めるべき……なのかしら。

 選択
 1・歌で!
 2・大食い!
 3・喧嘩!

 安価↓1
239 : ◆/FgVpjL5ro [saga]:2014/12/25(木) 23:04:08.13 ID:k/Lik6Il0
【今日は落ちま】

 安価はここから↓1
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2014/12/25(木) 23:18:27.88 ID:QET0vmoko
1
241 : ◆/FgVpjL5ro [saga]:2015/01/01(木) 23:49:56.08 ID:oFY8lejR0
シャロ「詩で勝負よ!」

 私は大きな声で宣言した。

青山「なるほど……いよいよクロス先の要素を取り入れようと、そういうことだな」

シャロ「何言ってんの?」

青山「わかった。その勝負、受けさせてもらおう」ジャキッ

シャロ「え? なんで武器構えるの?」

 疑問が止むことはない。
 いきなり剣を構えだした青山へ、私はツッコミを入れるものの彼女が武器を下ろす様子はない。

青山「詩といえば戦闘、詩魔法……それは常識だろう」

シャロ「どこの常識……」

青山「さぁ、詩の勝負だ」

 聞く耳をまったく持たない。
 困惑する私をよそに、青山はそのまま歌いはじめる。クロス先だとかなんとか言いつつ、その歌は日本語オンリー。これで詩魔法が発動するかと言われれば、断じてノーなのだけれど。

 選択
 1・歌っている隙に物理で叩き潰す
 2・歌う

 安価↓1
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/01(木) 23:56:57.30 ID:celaBC/8o
2
243 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/02(金) 01:28:13.39 ID:ov4j7vQFo
>クロス先の要素を取り入れようと

このメタすぎるセリフは流石にワロタ、と同時に期待
244 : ◆/FgVpjL5ro [saga]:2015/01/03(土) 00:24:49.90 ID:/YNF2OSj0
 歌う、しかないわよね。戦う気は一切ないけれど。
 軽く咳払い。私は息を吸い、歌いはじめる。

シャロ「ねがいごとーはー」

青山「ある秋の日の――とおおぉう!」ズバアア!

シャロ「ひとつだひえええ!?」

 いきなり斬りかかる青山。反射的にそれを回避する私。

シャロ「な、なにするの!?」

青山「戦闘は常識だって言っただろ」

シャロ「本気で言ってたの!?」

青山「大真面目だ」

 青山の無駄に綺麗な歌声をバックに、青山が答える。――って、あれ?

シャロ「なんで歌が聞こえてくるの!?」

青山「なんだレーヴァテイルを知らないのか」

シャロ「それアルトネの方!」

青山「どっちも同じだ設定ややこしい」

 クールな顔をして壮絶な早口でクロス先のファンを敵に回すようなことを言うなと。

青山「どうでもいいからかかってこい」

 歌で勝負って言ったのになんでこんなことに……。
 うう、私は戦える――のかしら。あんまり自信がない。


 選択
 1・誰かに助けを求める!
 2・戦う!

 安価↓1
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/03(土) 00:31:16.83 ID:ZSMPUY+Vo
1
246 : ◆/FgVpjL5ro [saga]:2015/01/03(土) 00:58:27.49 ID:/YNF2OSj0
 戦えるわけがない。それなら当然の如く……。

シャロ「誰か助けてぇー!」

 私は誰かに助けを求めた。
 が、ここは屋上。みんなはきっと入学式の最中だろう。助けが来るわけが――

???「助太刀」

 予想外にも、助けが現れた。
 私の前にすたっと着地する誰か。ツインテールを揺らし、彼女は私を守るようにして片手を広げる。

シャロ「あ、あなたは?」

リゼ「リゼ」

 肩越しにこちらを見て、彼女は小さな声で名乗った。

シャロ「リゼね。助けに来」

リゼ「またの名を闇夜の暗殺者」

 ――うん?

青山「新手か。まぁいい。弱いものいじめは好きじゃない」

シャロ「勝手に連行したのは誰――」

リゼ「勝負なら、私がする」

シャロ「あの、話」

青山「いい度胸だ。さぁ、かかってこい」

 誰も私の話を聞いてくれない。
 睨み合う二人。やがてリゼはナイフを取り出すと、口を開いて歌い始めた。
247 : ◆/FgVpjL5ro [saga]:2015/01/03(土) 01:32:34.59 ID:/YNF2OSj0
 真剣な空気だ。BGMが青山のしんみりとした曲なのが若干シュールだけど、二人の顔は真面目そのもの。
 おそらく、これから先展開されるであろう戦いも、壮絶なものになるだろう。
 私は唾をごくりとのみ、真剣にその様子を見つめる。

リゼ「ぱっぱっらっぱらぱらっぱ ぱっぱっらっぱらぱらっぱ」

 ――前言撤回ということで。
 棒読み気味で不思議な歌を口にするリゼ。おそらくここから歌い始める曲ではないのだと思うのだけど。

リゼ「時計に急かされ――ふんふふーん」パッ

シャロ(ナイフを捨てた!)

リゼ「ぱっぱっらっぱらぱらっぱ ぱっぱっらっぱらぱらっぱ」

リゼ「進め進めふふふふふん」ジャキッ

シャロ(そしてバズーカを構えた!?)

リゼ「『轟 音』!」ドーン

青山「ぐわあああ!」

シャロ「ええええええ!?」

 バズーカの弾に吹っ飛ばされる青山。
 なんだろう。普通に卑怯な気が。

リゼ「これぞ詩魔法。詩の奇跡。想いの力」

シャロ「普通に文明の利器よね」

 全然詩関係ない。
248 : ◆/FgVpjL5ro [saga]:2015/01/03(土) 01:58:34.97 ID:/YNF2OSj0
青山「くっ……やるな。だがまだ――」

 そして何故あれを直撃で受けて生きている。いや生きていてほしいんだけど。

リゼ「あれ? 生きてた。ぱっぱっらっぱら――」リロードカイシ

青山「お俺の負けだ!」

 青山可哀想。

リゼ「そう。残念」

シャロ「え、えっと……大丈夫?」

 武器をしまう二人。私は心配になり青山に声をかけた。

青山「大丈夫だ。しかしついに負けてしまったか、この俺が……」

シャロ「むしろ今まで誰かに負けなかったことに驚きだけど」

 近接武器で銃火器に勝てるはずがない。

青山「これから俺はお前の部下だ。自由に命令するといい――」

シャロ「え? 部下になるとか言ってるけど?」

青山「――シャロ」

シャロ「私!?」

リゼ「私はシャロの代わりに戦った。ならそうなるのが道理」

 筋が通っているのか通っていないのか。今の私には理解できない。

シャロ「――なら、入学式に行くわよ。これ以上目立つわけにもいかないし」

 今更だ、なんて声が聞こえてきそうだけど私にとってこれは重要な問題なのだ。
 っていうか、一生で一度しかないイベントを逃すわけにはいかない!

青山「了解だ。早速行こうか」

リゼ「私めんどいから寝る」

 頷く青山が、その場で寝ようとするリゼの手を握り、走りだす。
 私はそんな二人の後を追った。
 屋上のドアのノブを掴み、校舎の中へ。

シャロ「……?」

 そのとき不意に視線を感じ、私は立ち止まる。ノブを掴んだまま振り向くと――そこには誰もいなかった。

シャロ(気のせい、かしら)

 あんなハチャメチャなことがあったから疲れているのだろう。
 私は自嘲し小さく息を吐くと校舎の中へと戻った。
249 : ◆/FgVpjL5ro [saga]:2015/01/03(土) 02:12:01.87 ID:/YNF2OSj0


 シャロが去った後の屋上。
 そこに二人の人物が姿を現す。

???「ね、将来有望そうでしょ?」

ココア「まぁ、そうね。けど本当にあの子なの? 戦えそうになかったけれど」

???「戦える人だけがそうなるわけじゃない。なるべき人がそうなる。運命、星のめぐり――ただそれだけ」

ココア「要するにただの偶然ってことね」

???「うん」

 ごきげんそうに答える一人。それに対してもう一人は大きく嘆息した。

???「だからこそ、面白いんだよね」

???「なにも知らない、力もない、そんな人が困難に巻き込まれる――ふふ、可哀想」

ココア「……性格悪いわね、ほんと」

ココア「まぁ私達は正体を隠してしばらくのんびり観察させてもらおうかしら」

???「名前出てるよココア」

???「……。早くそれを言いなさい」

【ダイブ:青山 翠  LV.1 『ラビットスクール 第一章:星のめぐり』を完了しました】
250 : ◆/FgVpjL5ro [saga]:2015/01/03(土) 02:17:06.35 ID:/YNF2OSj0
 翌朝。
 シャロはベッドの上でいつものように目を覚ました。

シャロ「うーん……」

シャロ「なんか、やたら鮮明な夢を見たわ」

シャロ「みんなのキャラがおかしくて、滅茶苦茶で――」

シャロ「なんだったのかしら、あれ」


行動選択
 1・バイトをする
 2・外に出かける(街を散策or会う人物を指定)
 3・ザッピング 【現在選択できません】
 4・ダイブ【千夜or青山orリゼ】

 安価↓1



【本日のインターディメンドはここで終了します】
251 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/03(土) 11:27:19.50 ID:ZSMPUY+Vo
乙です 1
252 : ◆/FgVpjL5ro [saga]:2015/01/08(木) 23:29:58.99 ID:IEnIa8fT0
 放課後。

シャロ「気になることはあれどバイト……」

 シャロはいつものごとくバイトをしていた。
 今日もフルール・ド・ラパンで彼女は笑顔を振りまく。

シャロ「はぁ……明日はバイト休みだからどこか行こうかしら」

 ため息混じりに小休憩。一息入れていると、バイト仲間の一人が近くへやって来た。

バイト仲間「シャロちゃん、お客さんがご指名だよ」チョイチョイ

シャロ「ご指名? うちはそういうお店じゃないんだけど――」

 と言いつつも満更ではないシャロ。ラビットハウス、千夜、友達の誰かだろうかと期待を込めて店内を見る。

青山「……」テマネキ

 するとそこには脳内の予想から外れた人物が座っていた。
 青山はシャロと目が合うとにっこり微笑み、手招きをする。また話をしたいということだろう。

シャロ(また、バイト、終わりに!)

 ボディーランゲージでシャロが示すと、青山は了解と言うように首を一度縦に振る。

バイト仲間(……なにしてるんだろう)

 それをバイト仲間は隣で不思議そうに見ていた。
253 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/09(金) 22:10:59.23 ID:Yi5E5+CG0
 バイトが終わり、店から出る。
 従業員用の出入り口から、通りへ。

青山「シャロさん、お疲れ様でした」

 すると青山がそこに立っていた。

シャロ「あ、ありがとうございます。……ええと、ずっと待ってたんですか?」

青山「いえ。10分くらい立っていたと思います」

 10分でもわりと長い時間なのだが、彼女は涼しげに笑うだけ。

青山「シャロさんとすぐお話したくて。どこかお店に入りましょうか」

シャロ「ええっ!? いや、それは……」アタフタ

青山「そうですか。ではまた公園で」

 歩きながら青山はクスクスと笑う。

青山「せっかくですから、歩きながらお話を」

シャロ「あ、はい」

 結局、この前と同じ場所で話すことになってしまったが――お店に入ってご馳走になる流れよりかはマシだろう。

シャロ(なにを話そうかしら……)



 選択
 1・昨夜の夢の話
 2・青山の小説について

 安価↓1
254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/09(金) 22:17:22.81 ID:RdDn0RuPo
2
255 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/09(金) 22:50:46.53 ID:Yi5E5+CG0
シャロ(無難に……)

シャロ「青山さん」

青山「はい、なんでしょう?」

シャロ「最近、小説の方はどうですか?」

 問うと、彼女の表情が少し硬くなる。

青山「正直、まだスランプ気味かもしれません」

シャロ「そうなんですか……。でもそれで普通だと思いますよ」

シャロ(あんな作品をポンポン書ける人なんているはずないし)

青山「もう美食家に転職でもしようか考えるくらいで――」

シャロ(それも割りと似合ってる……)

青山「――したが、なんとなくいい今は作品が書けるような気がします」

シャロ「そうなんですか? 楽しみに――あ、いえ、気楽に頑張って――はダメだし」

青山「ふふ、シャロさんは優しいですね」

青山「『頑張れ』でも大丈夫です。シャロさんの声援があれば百人力。もっと言ってください」

 グッとガッツポーズを作り、青山は笑う。

シャロ(そう言われると有り難いと同時に恥ずかしい……)
256 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/09(金) 23:18:18.31 ID:Yi5E5+CG0
青山「不思議ですね……。シャロさんといると、もっと色々書けるような気がしてきます」

青山「今朝もなにやらインスピレーションがぴーんと」

シャロ(今朝というと、あれよね……?)

 やはり何か青山に関係したことなのだろうか、と考える。
 青山らが出てきた夢。リアルで、それでいてはっちゃけていて――それが青山と関係しているなんて、現実味がない話であった。けれどどこか信じてしまう自分もいた。

シャロ(さっぱり……)

シャロ(インターディメンドかもしれないけど、そんな説明なかったし)

 兎にも角にも、今は結論が出ない。それだけは分かった。
 その後、シャロは青山と雑談をしてすごした。青山は前に会ったときよりも楽しそうに笑っていた。
257 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/09(金) 23:27:23.35 ID:Yi5E5+CG0
 夜。自室。

シャロ「充実してたといえば充実してたかな……」

シャロ「インターディメンド……なにがあるのか」

シャロ「もしあの夢がインターディメンドのせいなら、ちょっと怖いわね」

 何があるのか分からない未知の力。
 今更ながら、シャロは怖くなってきた。


 行動選択
 1・【選択できません】
 2・外に出かける(街を散策or会う人物を指定)
 3・ザッピング 【現在選択できません】
 4・ダイブ【千夜or青山orリゼ】

 安価↓1
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/09(金) 23:33:51.68 ID:vV5ESlTqo
2 街
259 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/09(金) 23:49:18.73 ID:Yi5E5+CG0
 翌日の放課後。
 バイトもないので、シャロは街を散策することにした。

シャロ「またリゼ先輩に会えたり……なんて、期待しすぎかしら」

シャロ「――うん? あれは……ココア?」

 とある露店の前。顎に指を当てて、なにやら考え込んでいるココアがいた。

シャロ「ココア」

ココア「あっ、シャロちゃん。奇遇だね」

 シャロが声をかけると、彼女は屈託のない笑顔を浮かべる。

ココア「シャロちゃんも食べる? ここのクレープ美味しそうだと思ったんだー」

シャロ(クレープ……)


 選択
 1・「インターディメンド」
 2・「ご馳走になるわ」
 3・「太るわよ?」

 安価↓1
260 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/10(土) 05:35:38.33 ID:2IeoRquyo
2
261 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/11(日) 02:18:36.00 ID:Y6hrpYsF0
 
シャロ「ご馳走になろうかしら」

 せっかくココアが提案してくれたのだ。ここは素直に頷いておく。
 ココアはにっこりと笑い、クレープを一つ注文した。

ココア「甘くていい匂い……はいっ、シャロちゃん」

 店員から受け取ったクレープを彼女はシャロへと差し出す。

シャロ「いやなんで私なのよ。ココアから先に――」

ココア「ほらほらっ」キラキラ

シャロ「う゛……」

 期待に満ちた目を向けられ、呻く。まるでシャロが食べてくれることを心待ちにしているような顔である。

シャロ(強引というか……)ハァ

シャロ「い、いただきます」

 申し訳無さを押し殺し、一口食べる。
 ふわっとした生地の食感、簡単に噛み切れるそれに包まれているクリーム。先端をかじったはずなのだがしっかり具も口に入る。クリームの甘さをちょうどいい程度に緩和し、深みを増すのは、バナナの味だ。

ココア「どう? 美味しい?」

シャロ「……美味し」コクン

 ゆるみそうになる頬に手を当てて、シャロは頷いた。
262 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/11(日) 02:53:25.51 ID:Y6hrpYsF0
ココア「そっか、良かった。ん――あ、ほんとだ美味しい!」

シャロ「でしょ? バランスがいいわね」

ココア「うんっ。はい、シャロちゃん」

シャロ「え? また?」

 クレープを再度差し出され、シャロは戸惑う。

ココア「うん? 一緒に食べるんでしょ?」

シャロ「そうだけど――」

ココア「はいっ、あーん」

シャロ「あ、あーん……」

 仕方なくクレープを口へ。
 店の前でクレープをたべっこする女子高生二人。微笑ましそうに見る通行人の視線が気になった。

シャロ「美味しい……」

 けれどすぐ幸せな味にすぐどうでもよくなるのだが。


 選択
 1・「好きよ、ココア」
 2・「バナナはおやつに入りません!」

 安価↓1
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/11(日) 14:58:39.14 ID:ZGEooDYyo
1
264 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/12(月) 01:11:02.08 ID:ysiJ0CeS0
シャロ「好きよ、ココア」

 シャロは口の中にあるものをのみこむと、不意に言った。
 幸せそうな笑顔で、ごく普通に。

ココア「――? 私もシャロちゃんのこと大好きだよ」

 一瞬きょとんとするココア。しかしすぐそれが友達的な意味、クレープをおごってくれたから、的な冗談だと判断したのか彼女もまた笑顔で返した。

シャロ「ぶっ!? 好きって、いきなり何言ってるのよ!?」

ココア「ええっ!? シャロちゃんが最初に言ったんだよ!?」

シャロ「私がー? 勘違いしてるんじゃない?」

シャロ(喋ってすらいないし)

 喋ってもいないのに聞き間違いされるとは。シャロは困惑する。が、それは目の前にいるココアもそうだった。

ココア「勘違い――なのかな。もぐもぐ」

シャロ「そうよ。それにしても本当にこれ、美味しいわね」

ココア「だね。今度またみんなで一緒に来よっか」

シャロ(みんなで……ね)

 同じ学校の、他校の、年代すら違う友達と一緒にみんなで。
 ちょっと前までは考えられもしないこと。
 頭の中に疑問は残ったままだが、シャロはそのことを嬉しく思った。
265 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/12(月) 01:16:07.66 ID:ysiJ0CeS0
 その日の夜。

シャロ「美味しいものばかり食べてるような……」

シャロ「そろそろ体重に気をつけないといけないわね」

行動選択
 1・【選択できません】
 2・外に出かける(街を散策or会う人物を指定)
 3・ザッピング 【現在選択できません】
 4・ダイブ【千夜or青山orリゼ】

 安価↓1
266 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/12(月) 01:32:35.82 ID:BEJPONeLo
4 リゼ
267 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/12(月) 01:43:07.71 ID:ysiJ0CeS0
『私はみんなと違う』
『それがどうしたと前は思っていた』
『けれどその考えは、みんなと一緒にいると間違っているのだと分かった』
『私は何を考えて、何を思って、何を夢見てこれまでを生きてきたのだろう』
『経験してきたはずのこと。それなのに私は私に答えることもできない』

【ダイブ:天々座 理世 LV.1『サバイバル』を開始します】
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/14(水) 20:20:21.93 ID:Px/W/BDAO
しんく〜か〜ん
269 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/17(土) 03:44:38.74 ID:QOoVYcht0
 どこか遠くで音が聞こえたような気がした。
 意識が徐々に覚醒してくる。まるでフッと、カメラが自分に降りてくるような、自分の身体に意識が戻るような、奇妙な感覚。
 真っ暗な視界、シャロの耳に様々な音が届く。
 誰かの声。身体が跳ねるかと思うほど大きな音。慌ただしい足音。

シャロ「……?」

 目を開く。胸騒ぎがした。

リゼ?「くそっ! こっちは怪我人抱えてるっていうのに――加減がないな」

 すぐ近くから舌打ちが聞こえる。
 聞き慣れたそれに、シャロは自然とそちらを振り向く。
 シャロは薄暗い、おそらく部屋の隅だろうか。棚の影にいた。その棚に背を預けて、座る体勢で眠っていたらしい。
 ――で、声の主はその棚から顔を僅かに出して何かの様子を窺っている、リゼ。
 手には小さな銃を持っており、服装はどこかの軍人のようなもの。凛々しい彼女が、普段より三割増しでかっこよく見えた。

シャロ「リゼ先輩?」

シャロ(夢?)

 まったく状況が理解できず、シャロは呆然とする。
 自分は確か、部屋で眠った。こんな場面に出くわすはずがなかった。
270 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/17(土) 23:40:03.06 ID:QOoVYcht0
リゼ?「シャロ! 起きたか!」

 シャロの声に気づいたのだろう。リゼがシャロへ近づき、身体を抱きかかえる。

シャロ「ひいっ!?」ボフンッ

シャロ「りりりりりり」

リゼ?「大丈夫か? あいつにやられたダメージがまだ……」

 顔を赤くさせ、壊れたレコードのように『り』を連呼する彼女を、心配そうに見る。

シャロ「そ、そうじゃなくて……ですね」

リゼ?「喋れるか? 大丈夫なのか?」ズイッ

シャロ「だ、大丈夫! 大丈夫ですから顔を近づけないでください!」

リゼ?「そうか。よかった。じゃあ戦えるな」

 そっと手を離し、リゼはシャロへ銃を手渡す。
 それは銃。リゼの持っているものより小さめで、これが銃なのかと問われれば首を傾げてしまうレベルである。宇宙人を相手にする武器みたいだ。

シャロ「あ、あの、戦えるってどうゆう――」

リゼ「静かに。来た」

 銃をとりあえず手にし、質問を投げかける。が、それを言い終わるより早くリゼの制止が入った。
271 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/18(日) 00:13:42.82 ID:9DNDbWbH0
シャロ「は、はい……」

シャロ(なんだろう……)

 言われた通り静かにし、棚の間から様子を窺う。
 小さな隙間から見えたのは、ナイフを持った――人形らしきもの。
 うさぎを型どったらしいそれは警戒するように辺りを見て――去っていった。シャロとリゼのいる、棚が並んだ部屋はちらっと見ただけで、特に調べもしなかった。
 どうやらリゼはこの人形から逃げているらしい。

シャロ(また夢……?)

 どう見ても現実ではない。
 しかし自分が今感じている全ては、現実そのもののリアルさがある。
 ここで自分はどう動くべきなのだろう。シャロは考えた。


 選択
 1・とりあえず待機
 2・部屋から出る

 安価↓1
272 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/18(日) 00:29:13.94 ID:dHnDDMq1o
2
273 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/18(日) 01:25:20.71 ID:9DNDbWbH0
シャロ(部屋から出よう)

 ほぼ無意識にシャロはそんな結論を出した。
 様子を窺っていたリゼの隣を通り、部屋の外へ。

リゼ?「あ、おいっ」

 リゼから声がかかるが構わず外へ。

人形「……」

 当然ながら、そんなことをすれば外を歩いていた人形に見つかる。
 足音に気づいた人形はゆらりと身体をシャロへと向け、ナイフを揺らす。

シャロ「ひっ……」

 つぎはぎだらけのうさぎの人形。それが鋭利な武器を自分へと向けた瞬間、シャロは我に帰った。
 自分はなにをしていたのか。そんなことが頭をよぎり、あれやこれやと思考がうめつくす。パニックを起こしたシャロは、ただ自分に近づく凶器を眺めていた。

シャロ「あ、ぐ……っ」

 刺さる。人形の、柔らかそうな腕はまっすぐシャロの胸の中心へ。衝撃もなく、すっぽりと、ナイフが突き刺さった。
 至近距離で見るボタンで作られた目。無機質なはずのそれに、何故かシャロは殺意が宿っているように見えた。

シャロ「ぁ、げほっ」

 視界がかすみ、身体から力が抜ける。
 血を吐いて呻き、シャロは倒れ――ナイフが身体から抜ける。血が飛び散り、彼女の顔にかかった。
 人形はつきだしていた手を下げる。両手を下げ、まるで本当の人形のようにただその場に立ち、シャロを見つめる。

シャロ(なんで、私、外に……)

 吐血し咳き込み、段々と眠くなっていく。痛みも熱も遠く、意識すらも遠ざかる。
 自分自身に疑問を抱き、シャロはそのまま目を閉じた。


【直前の選択肢からコンティニューします】
274 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/18(日) 01:28:59.24 ID:9DNDbWbH0
シャロ「は、はい……」

シャロ(なんだろう……)

 言われた通り静かにし、棚の間から様子を窺う。
 小さな隙間から見えたのは、ナイフを持った――人形らしきもの。
 うさぎを型どったらしいそれは警戒するように辺りを見て――去っていった。シャロとリゼのいる、棚が並んだ部屋はちらっと見ただけで、特に調べもしなかった。
 どうやらリゼはこの人形から逃げているらしい。

シャロ(また夢……?)

 どう見ても現実ではない。
 しかし自分が今感じている全ては、現実そのもののリアルさがある。
 ここで自分はどう動くべきなのだろう。シャロは考えた。



シャロ(ここは待機しよう)

 自分よりも強いであろうリゼが止まっているのだ。
 今行動を起こしてもろくなことはないだろう。シャロは判断し、ジッと息を潜めてリゼの支持を待つ。
 やがて可愛らしい足音が遠ざかると、リゼはホッと息を吐いた。
275 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/18(日) 02:04:18.67 ID:9DNDbWbH0
リゼ?「行ったか。さて、シャロ」

 すっ、とリゼがシャロへと向き直る。
 彼女は真面目な顔をして、

リゼ?「こうなった経緯は覚えているか?」

シャロ「い、いえまったく」

 たとえ覚えていても把握できていなそうだ。

リゼ?「分かった。なら説明しておこう」

 リゼは頷く。

軍曹「私は軍曹。断じてリゼとかいうやつじゃないので、気をつけるように」

シャロ(リゼ先輩呼び気にしてたのかしら……)

 とてもふざけているとは思えないトーンに、シャロは考える。

軍曹「私とシャロ――お前は現在、卒業試験の真っ最中だ。これは覚えているか?」

シャロ「は? 卒業試験?」

 場の緊張感にそぐわない、思ってもみない単語にシャロはきょとんとする。
 しかし前にいるリゼは真剣そのもの。ふざけて言っているのではないのだとすぐ分かった。

軍曹「それも覚えていないか……。まぁいい。とにかく今は、この試験をクリアする。それだけを考えていろ」

シャロ「は、はぁ……」

 さっぱり理解できない。だが現在の状況が危険であることは分かった。
 そのためには、リゼのように慎重にならざるを得ないことも。
276 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/18(日) 02:25:09.77 ID:9DNDbWbH0
 試験をクリアする。
 その目的を果たすためには――よく考えなければいけないだろう。
 シャロは考え、一人頷いた。

軍曹「というわけだ。私は先に進む。シャロ、お前も頑張れ」タタタッ

シャロ「あれぇ!? ちょっとリゼせんぱ――軍曹さん!?」

 なんて思っている端から軍曹は走り去っていった。
 さっきまで心配そうにしていたのに、最後はシャロなどまるで気にしてなさそうな様子だった。

シャロ「……取り残された」

 ぽつんと一人部屋に残されたシャロは、呆然と呟く。
 果たしてこれからどうするべきなのだろうか。

【本日のインターディメンドはここで終了します】
277 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/18(日) 06:08:39.58 ID:hoRoV+rLo
乙です
278 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/18(日) 17:07:11.41 ID:9DNDbWbH0
 敵の気配はない。
 とりあえずは移動できそうだ。
 部屋からちょこんと顔を出し、左右を確認。廊下に出ると、シャロは考える。

シャロ「どっか行かないとだめよね……」

???「初めましてだな」

シャロ「ひえええ!?」

 不意に声をかけられ、飛び上がる。
 まさか人形、と思ってそちらを振り向けば、アサルトライフルを手にしている小さな人形が浮かんでいた。

???「なんだ? 情けない声を出すな」

シャロ「……あれ? 打たないの?」

???「オレは敵じゃない。むしろお前の味方だ」

 眼帯をしたウサギの人形は、銃をひらひらと振り、無害をアピール。シャロはホッと胸を撫で下ろした。

???「俺はワイルドギースリゼの心の護だ。ここの管理人と言ってもいいかもしれないな」

シャロ「心の護? 管理人? それに、ワイルドギースって……」

ワイルドギース「なんだ、ここへ来たわりには何も知らなそうだな。ということは偶然――ってのはあり得ないか」

シャロ「ええと、全然意味が分からないんだけど」

 シャロは額に手を当てて言う。次から次に知りもしないことが登場しすぎた。
279 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/18(日) 17:30:01.24 ID:9DNDbWbH0
ワイルドギース「おいお前。とりあえず説明するから、よく聞いておけ」

シャロ「へっ? え、ええ」

ワイルドギース「ここはリゼの深層心理。精神の世界だ。お前がリゼと仲良くなりたい、もっとリゼのことを知りたいと思うなら、よく考えて行動したほうがいい」

ワイルドギース「幸い、お前は何故かこの世界に影響されていないようだからな。あれこれ考えて、自分で選択することもできるだろう」

ワイルドギース「帰りたかったら帰ればいい。心の護として、できればあまり足を踏み入れてほしくはないが……ここにお前がいるということは、まぁそういうことだ」

ワイルドギース「俺は追い出すことも干渉することもできないし――全てはお前次第。頑張るんだな、シャロ」

シャロ「あの、さっぱり意味が分からないんだけど」

ワイルドギース「そのうち分かる。とにかく歩いてみるんだな」

 そう言って、人形は姿を消す。
 説明するだけして、シャロが理解するかは関係なし。味方と言っていたわりにはずいぶん冷たい。

シャロ「ほんと……なんなのかしら、これ」

 夢でも現実でもない精神世界。意味は分からないが、じっとしているわけにもいかない。
 シャロは嘆息をもらすと、廊下の先を見つめた。


 選択
 1・建物の出入口へ
 2・教室へ
 3・放送室へ

 安価↓1
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/18(日) 18:20:50.61 ID:JTG118KWo
2
281 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/18(日) 22:36:33.99 ID:9DNDbWbH0
 気の向くままにシャロは進んだ。
 その先にあったのは――まるでどこかの学校にある教室のような場所。

シャロ「……なんで私ここに?」

 シャロは首を傾げた。
 ここへ来る途中、いくつも教室はあった。しかしシャロは何故か数ある教室の中でこの一つを選んだのだ。

シャロ「なにかあるのかしら」

 直感というやつだろう。そう結論し、シャロは周囲を見回す。
 至って普通の教室だ。黒板があって、机と椅子があって教卓があって。特に変わったところはない。

シャロ「なにもないじゃない――」

軍曹「動くな」

 肩を落としたところで、首の後ろになにかをつきつけられた。
 硬く、金属らしきそれはひんやりとしている。声で、だいたい何が当てられているか分かったシャロは、そのまま動かずに声だけかけた。

シャロ「あ、あの……軍曹さんですよね?」

軍曹「ん? ――ああ、お前か。新しい人形かと思った」

 やはりそうだった。
 あっけらかんと、悪びれもなく軍曹は言うと、銃を離す。そしてシャロの前へとやってきた。
282 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/19(月) 20:48:04.38 ID:aFKxlOz50
軍曹「どうだ? 試験の進行は」

シャロ「なにもできてませんけど……」

軍曹「そうか。難易度も高いし、当然と言えば当然だな」

シャロ「――あの」

 
 選択
 1・試験って?
 2・軍曹さんはなにを?
 3・ここは学校?

 安価↓1
283 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/19(月) 23:02:17.83 ID:F7qhW/5zo
1
284 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/20(火) 22:18:49.25 ID:ZUIIlCTX0
シャロ「試験って?」

 今まで明確な答えがなかったこと。シャロはその当然の疑問を口にした。

軍曹「それも知らなかったのか……」

シャロ「す、すみません。うっかりで」

軍曹「まぁいい。説明してやろう」

 軍曹は姿勢をきっちりと正して言う。

軍曹「我々は現在、学校の卒業試験の最中だ。その試験の内容こそ、あの人形の暗殺」

軍曹「簡単に言えば実技。しかし危険は伴う。遠慮無くかかってくるぞ」

シャロ「はぁ、まぁ、武器は本物ぽかったですよね」

 ちらっと見えたあの武器は明らかに本物。
 ナイフとはいえその危険性はよく分かる。持っている銃を扱えない素人だからこそ。

軍曹「というわけで私は作戦を練っているところだ。一筋縄ではいかなそうな身のこなしだからな」

軍曹「シャロはどうする?」

シャロ「私に振られても……」


 選択
 1・一緒に作戦を考える
 2・建物の出入り口へ
 3・放送室へ

 安価↓1
285 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/20(火) 22:32:05.27 ID:F/NpQfrlo
3
286 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/20(火) 23:14:35.87 ID:ZUIIlCTX0
シャロ「私は、放送室に行ってきます」

 なんとなくの勘。シャロは結論を出すと、軍曹へきっぱり告げる。

軍曹「そうか。なにかあればここへ来てくれ。作戦が思いついていなければ、私はここにいる」

シャロ「はい、じゃあそういうことで」

 部屋を出て、シャロは場所も分からないはずの放送室へ真っ直ぐ向かう。
 しかし本人はそれを疑問にすら思わなかった。

 放送室へついた。
 至って普通な一室。狭いそこにはマイクとスイッチ各種、特に目立ったものはなく見たことがある光景であった。

シャロ「……ここに何かあるのかしら」

 シャロは室内を物色しはじめた。


 選択
 1・スイッチを押す
 2・CDをかける
 3・放送をかけ、絶叫

 安価↓1
287 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/20(火) 23:57:17.87 ID:GsyHYF/ho
1 押ボタン症候群
288 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/21(水) 21:47:54.24 ID:g2aMDSFZ0
シャロ「ぽちっと」

 なんとなく目に留まったスイッチを押す。
 ボタンの周囲に記載などはなく、どんなものかも分からない。が、なんとなく押さねばならないような気がしたのだ。
 何の効果が――などと考えた瞬間、ベルの音が耳をつんざいた。

シャロ「うるさっ! なによこれ」

 耳を塞いで、文句を言う。
 この音、どうやら放送などはされていないようだが、間違いなく外へと響いていることだろう。
 ここへ人形が来ればどうなるか……。

シャロ「え、ええと――っ」


 選択
 1・教室へ
 2・待ちぶせしておく

 安価↓1
289 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/21(水) 21:54:03.25 ID:xxx53Rllo
折角来たので2で
290 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/21(水) 22:45:39.00 ID:g2aMDSFZ0
シャロ「そ、そうだ……!」

 待ち伏せをする。ここへ人形が来るのは確実。
 ならば……やりきるしかない。シャロは自分が手にしている銃を見て、頷く。

シャロ「怖いけど、試験のために」

 ここがどこなのかはまだイマイチ分からない。けれど、すべきことはわかる。そして自分がなにかしなければならないことも。

シャロ「定番でドアの横よね……」

 震える身体を押え、シャロはドアの横へ。
 銃を抱えるようにして、静かにそこで待つ。やがてベルの音に混ざって、なにかの物音が聞こえてきた。
 一度、二度、三度。規則正しく、静かに。それはドアへとどんどん近づき、止まる。
 息を飲む。呼吸を止めて、敵が入ってくるその瞬間まで待った。
 がちゃ、と丁寧にノブがひねられ、ドアが開く。

???「……」

 入ってきたのは人形。やはりナイフを持っているそれは、ドアを閉めると部屋のスイッチへ向かう。
 そして鳴り響くベルを止めると、そのまま立ち止まった。

シャロ(……なにしてるのよ私!)

 人形の奇妙な威圧感、失敗した時の想像。思うように身体が動かず硬直してしまったシャロはようやく我に帰る。
 待ちぶせして不意打ち。そのつもりだったが、すっかりタイミングがずれてしまった。シャロは慌てて銃を人形へと向けた。

シャロ(撃つ……)

 呼吸は小さくしたまま、指を引き金へ。撃つ。
 刹那、銃口から轟音。小さい銃なのにも関わらず、その反動は絶大で撃った腕が跳ね上がり、後ろの壁に激突。

シャロ「べっぷ!?」

 シャロ自身はそのまま仰向けに倒れる始末であった。
291 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/21(水) 23:31:24.74 ID:g2aMDSFZ0
シャロ(なんなのよこれ……!)

 咳き込み、ゆらぐ視界でなんとか壁に背を預けて身体を起こす。
 銃を撃った方が戦闘不能寸前。これが素人というものか。心の中で自嘲しつつ人形の様子を見る。
 結論、人形は無事だった。
 予想外にも銃はきちんと命中していた。しかし、だ。問題なのは人形の耐久力。腹部に大きな穴が空いたにも関わらず、悠然と立っていた。
 本能が警鐘を鳴らす。が、シャロは逃げられずにいた。

???「……」

 人形がゆっくりと振り向く。
 ナイフの切っ先がシャロに向けられた。

シャロ「……っ」

 限りなく無音に近い中、自分の呼吸と心音が響く。
 ここからどうするのか。決断しなくてはならない。


 選択
 1・助けを求める
 2・銃で撃つ
 3・この場から逃げる

 安価↓1
292 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/21(水) 23:50:02.00 ID:0BvYv/Gko
3
293 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/22(木) 22:50:48.36 ID:HyW42NN30
 勝てる見込みは薄い。となれば逃げるしかないだろう。

シャロ(そうよね……!)

 判断。今度は素早く銃を回収してその場から逃走。途中、横をナイフが掠めたりもしたが、なんとか部屋から出ることに成功した。

シャロ「ひいい!」

 紙一重で攻撃を回避。ドアを開いて飛び出し、しっかり閉じる。それからまたダッシュ。口からは無意識に情けない声が出る。

シャロ「に、逃げてやったわ!」

 後ろを確認してドアが開かないことを確認。ほっと息を吐くも、まだまだ安心することはできない。シャロは走り続けた。


 選択
 1・教室へ
 2・建物の出入口へ
 3・放送室へ

 安価↓1
294 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/23(金) 01:41:56.63 ID:uN2+nnWTo
ここは2で
295 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/24(土) 00:31:18.91 ID:JN+uWQoI0
 とりあえず出口へ。
 ここは学校らしいし、出口の場所ならば検討がついた。そしてその予想と寸分も違わない位置に昇降口はあった。

シャロ「ここで……」

 扉を見る。
 扉は閉まっており、鍵がかかっているかは触らないと分からない。
 だが今は発見されている状態。ここまで追ってこられるかは分からないが、時間がかかることは避けるべき。
 もっとも、開いているならばそれで済むことなのだが。


 選択
 1・扉を開ける
 2・再び待ちぶせ

 安価↓1
296 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/24(土) 00:40:52.24 ID:gCk0jE2ko
2
297 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/24(土) 00:48:42.96 ID:JN+uWQoI0
シャロ「……やるしかないわよね」

 頷いて、下駄箱の影へ。
 いつの間にか乱れていた呼吸を整えて、周囲の気配に気を配る。
 その少し後に、小さな足音が聞こえはじめた。本当に微かな音。やはり規則ただしいそれは、昇降口の近くへとやって来る。

シャロ(人形……きたわね)

 今度こそ、決めてみせる。シャロは銃を手に、力強く頷いた。


 選択
 1・撃つ
 2・様子見

 安価↓1
298 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/24(土) 01:45:20.06 ID:8a/1U1qho
慎重に2
299 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/24(土) 01:59:23.53 ID:JN+uWQoI0
シャロ「……様子見」

 小さく呟いて、飛び出しそうになる自分を制止。こっそりと様子を窺う。

シャロ「……あ」

 いつでも撃てるよう心構えをしながら足音の方を見ると、軍曹が歩いていた。

シャロ(軍曹さんを撃つところだったわ……)

 ほっと安心。こんな世界でも人殺しになるのは勘弁したいところである。

シャロ「軍曹さん」

 彼女はおそらく仲間。そう判断し、彼女は軍曹へ声をかける。
 声に気づいた軍曹が、素早くシャロの方へと近づいてきた。

軍曹「ここにいたのか。――なにかしたみたいだな」

シャロ「はい。実は……」

 これまでの事情を説明する。
 銃を撃っても致命傷を与えられなかったことを離すと、軍曹は納得するような素振りを見せた。

軍曹「なるほどな……やはり普通の兵器では倒せないか」

軍曹「私も何度か戦ったが、傷を負わせることすらできなかった」

シャロ「まぁ……あの銃で、あの威力で無事でしたし、納得です」

 人間なら間違いなく即死級のダメージなのだが、あの人形は平然と歩いてきた。ならば軍曹の結論も納得できる。
300 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/24(土) 02:38:33.38 ID:JN+uWQoI0
軍曹「そこで、特別な戦術の登場だ」

シャロ「特別な?」

軍曹「ああ。シャロの銃と、私の武器。二つで一斉に射撃。跡形もなく滅する」

シャロ「なるほど……」

 シンプルすぎる作戦。しかしその作戦で倒せるのではと思うシャロがいた。
 人形は銃で確かに怪我を負っていた。そこへ火力を集中して叩けば……ひょっとしたら、動けなくなる状況まで持っていけるかもしれない。

シャロ「やってみましょう」

軍曹「そう言ってくれると思っていた。よし、早速だが作戦の詳細を決めよう」

軍曹「どっちがあいつをここへ連れてくるか……簡単にいえば囮役だ」

シャロ(囮役……)


 選択
 1・私が
 2・軍曹さんが

 安価↓1

【本日のインターディメンドはここで終了します】
301 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/24(土) 10:49:23.57 ID:22H2fdMno
2
302 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/25(日) 00:55:27.51 ID:dj+OSDCs0
シャロ「ここは軍曹さんでお願いします」

軍曹「……分かった。武器もそちらの方が強力だからな。じっくり狙える役割の方がいいか」

シャロ「ありがとうございます」

 素人である自分が動けるとは思えない。リゼが強いかどうかはともかく、この世界では軍曹と名乗っているのだ。きっと実力も強い筈。

軍曹「ではお前は物陰に隠れているように。人形がこの辺りに来たら、大声で挑発する。すぐわかるだろう」

 そう言って、軍曹は廊下へ出ていく。
 シャロは言われた通り、下駄箱の影へと戻った。

シャロ(さも当たり前みたいに私も戦力に組み込まれてるわね……いつのまにか)

 ふと冷静になり、思う。

シャロ(っていうか、リゼ先輩と私以外誰もいないわよね、ここ)

シャロ(精神世界――夢みたいなものと思ってたけど、意外とすっきりしてるっていうか……もっと他に人っていないのかしら)

 などと思うが、例え他の人がいても戦力にはならなそうなことに気づいてシャロは嘆息。
 結局、やるなら自分たちがやるしかない。そういうことだ。

シャロ(大丈夫。先輩を信じて……)

 銃を抱え、息を吐く。
 ――と、そのタイミングで軍曹の声が響く。

軍曹「私はこっちだ! さぁこい!」

 どうやら、人形がやってきたらしい。
303 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/25(日) 02:14:59.98 ID:dj+OSDCs0
シャロ「来た……!」

シャロ(タイミングを計って、しっかり狙う)

シャロ(後はとにかく連打。倒すことだけ考える)

 自分に暗示をかけるように何度も心の中で唱える。ぶつぶつと呟き、下駄箱の影から頭を出した。
 ちょうど軍曹がその前を通りすぎていく。つづけてやってきたのは人形。穴が空いたそれは、ダメージがあるのか若干ふらついているもののそれほど動くことに支障はなさそうだ。

シャロ(行かないと)

 勇気を出し、こっそりと歩き出す。バレないよう人形が進んだ廊下の先を確認。
 軍曹が立ち止まり、銃を構えているのを見て自分も廊下へ出る。そして、銃を構えた。
 軍曹とアイコンタクト。彼女が頷くと同時に、シャロは引き金を引いた。
 今度はしっかりと足を踏ん張り、腕を前に突き出す。創作物の見よう見まね。今はこれが彼女の精一杯であった。

シャロ(これで終わって……!)

 轟く銃声。姿勢を整えたにもかかわらずシャロの身体は傾き、天井を映しはじめる視界の端で横へ移動する軍曹が見えた。

シャロ「いっ――た!」

 背中を打ちつけ、声がもれる。
 しかし今回のダメージは少なかった。すぐに立ち上がり、シャロは前を見る。
 前には腕が片方吹っ飛んだ人形が。不運にもナイフを持っている手でなく、なにも持っていない片手に当たってしまったようだ。
頭部を狙ったつもりが、今回は距離が開いていたせいで狙いがつかなかったらしい。
 まだ動き出しそうな人形。シャロは手の痺れを感じつつ、仰向けに倒れ上半身を少し浮かせ再び銃を構えた。

シャロ「軍曹さん!」

軍曹「わかっている!」

 シャロの銃弾をかわすべく横へ移動した軍曹が、返事とともに銃を撃つ。
 おそらくサブマシンガン。シャロの銃よりもはるかに控えめな――しかし物騒な音を鳴らして、弾が人形を貫く。
 人形にダメージはあまり与えられていなそうなそれ。けれど動きを止める役割は果たしてくれている。
 ここで自分が決めれば。シャロは唾を呑み、銃を持つ手に力を込めた。立ち上がる時間もない。仰向けのまま、シャロは狙いをつける。


 選択
 1・頭を狙う
 2・心臓を狙う
 3・ナイフを狙う

 安価↓1
304 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/25(日) 11:49:31.32 ID:FkirCbn+o
1
ナイフよりは狙いやすいはず
305 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/25(日) 16:58:07.14 ID:dj+OSDCs0
 威力が高い武器を持っているのはシャロ。
 となれば決めるのも自分。確実に殺すため狙うべき場所は――

シャロ(頭……!)

 軍曹の銃弾はそこを貫いてはいた。自分の銃弾が通用するかは分からない。
 けれど軍曹の攻撃が効かなかったのははおそらく、小規模すぎる攻撃だから。いくら頑丈な人形とはいえど、あそこを貫かれては活動できないだろう。的が比較的でかいのもいい。
 狙いをつける。人形はゆっくりと動き出し、軍曹へナイフの切っ先を向けた。軍曹の攻撃を受けながら、止まる気配はない。放っておけば、失敗したらどうなるか。明白であった。

シャロ「今度こそ!」

 射撃。今度もまた反動で腕が床に叩きつけられ、痛みが走る。

シャロ「うぐ……」

 呻き、身体を横に。向きを変え、寝たまま人形の姿を確認。
 人形は……倒れていた。さっきまで動いていたが、今はぴくりともしない。
 倒すことに成功したようだ。シャロはホッと息を吐いて身体から力を抜く。
306 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/25(日) 21:56:06.57 ID:dj+OSDCs0
軍曹「……よく、やったな」

 ぐいっと手が引っ張られ、立たされる。
 ふらつきながら立ち上がると、シャロは頷く。

シャロ「ええ……ありがとうございます」

軍曹「礼を言うのは私の方だ。これで試験を乗り越えることができた」

 ふっと笑い、シャロの手を離すと軍曹は昇降口の扉を見る。

シャロ「え?」

 まるでそれを見計らったかのように扉から音が鳴る。カチャッと、小さなそれ。鍵が開いたのだろう。

軍曹「では私は先に行く。お前もすぐ来るように」

 優しい笑みを浮かべ、軍曹は開いた扉から出て行った。

シャロ「終わり……」

シャロ「疲れるわね、これ」

 銃をポケットへ。すっかり静まった校内を見回し、シャロは足を踏み出した。


 選択
 1・ストーンヘンジへ
 2・廊下へ

 安価↓1
307 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/25(日) 22:30:52.50 ID:vLDwt47oo
1
308 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/25(日) 23:10:17.62 ID:dj+OSDCs0
 扉を出て外へ。
 学校の外は断崖絶壁。あるのは石で造られた遺跡、それのみだった。
 円形に形作られたその中心には光の渦が天高く昇っていた。

シャロ「ここは……?」

軍曹「次の階層への入り口だ」

 軍曹が石の柱の影から出てくる。
 彼女は光の前に立ち、シャロへと手招きをした。

シャロ「次の……?」

軍曹「ああ。試験は合格。お前は立派に戦ってくれた。私も心の準備ができた」

 シャロが近づくと、軍曹は光を見た。

軍曹「お前にもっと深く心を見せる準備が、な」

シャロ「軍曹さん……」

 軍曹が手を差し出す。シャロはその手をしっかり握った。
 軍曹はにっこりと笑って、前の光へと足を進める。

軍曹「――そして、みんなを殺す心構えもな」

シャロ「……え?」

 最後に不吉な言葉が聞こえたような気もしたが、それを追求する時間もなくシャロも光へ。
 やがて疑問を持つ意識すらもなくなり、シャロは光の中で目を閉じた。

【ダイブ:天々座 理世 LV.1『サバイバル』を完了しました】
309 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/25(日) 23:29:07.98 ID:dj+OSDCs0
 翌朝。

シャロ「……すごい夢を見たわね」

シャロ「いや、あれはそもそも夢……?」

シャロ「よく分からないわ」

行動選択
 1・ラビットハウスへ
 2・外に出かける(街を散策or会う人物を指定)
 3・ザッピング
 4・ダイブ【千夜or青山orリゼ】

 安価↓1
310 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/26(月) 00:17:44.67 ID:Ie7hjlSFo
1
311 : ◆AUBDdXHTBU [sage]:2015/01/26(月) 21:51:58.95 ID:hZhpmGkH0
 ラビットハウスへ。店先に到着し、シャロは窓から店内を見る。

シャロ「お金は……うん、大丈夫」

 財布を確認。なんとなくの気まぐれだが、リゼと会いたい気分であった。

シャロ「昨日の夢のせいかしら」

 夢……ではないと思っているものの、未だ信じることはできないシャロ。財布をしまうと、ラビットハウスへと入っていく。

チノ「いらっしゃいませ」

ココア「あ、シャロちゃん! いらっしゃいませ!」

 するとすぐ見慣れた顔が声をかけてくる。シャロは笑顔で手を振り、カウンター席に座る。

リゼ「シャロか。よく来たな」

 ちょうどそのタイミングでリゼが厨房から顔を出した。
 彼女はいつものように爽やかな笑顔を浮かべてシャロを歓迎する。微かに自分の頬が赤くなるのをシャロは感じた。


 選択
 1・「先輩、個人的にお話が……」
 2・「――は?」

 安価↓1
312 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/26(月) 22:22:00.53 ID:hZhpmGkH0
【書き込みを訂正します】


 ラビットハウスへ。店先に到着し、シャロは窓から店内を見る。

シャロ「お金は……うん、大丈夫」

 財布を確認。なんとなくの気まぐれだが、リゼと会いたい気分であった。

シャロ「昨日の夢のせいかしら」

 夢……ではないと思っているものの、未だ信じることはできないシャロ。財布をしまうと、ラビットハウスへと入っていく。

チノ「いらっしゃいませ」

ココア「あ、シャロちゃん! いらっしゃいませ!」

 するとすぐ見慣れた顔が声をかけてくる。シャロは笑顔で手を振り、カウンター席に座る。

リゼ「シャロか。よく来たな」

 ちょうどそのタイミングでリゼが厨房から顔を出した。
 彼女はいつものように爽やかな笑顔を浮かべてシャロを歓迎する。微かに自分の頬が赤くなるのをシャロは感じた。


 選択
 1・「先輩、個人的にお話が……」
 2・「――は?」

 安価↓1
313 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/27(火) 00:03:18.69 ID:BrB9fMD6o
人居ないなー
安価は1で
314 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/28(水) 01:46:34.88 ID:2pkQCLvO0
シャロ「先輩、個人的にお話が……」

 顔を出したリゼへおずおずと話を切り出す。
 ココアとチノがそれを目を丸くして見ていた。

リゼ「ん? 私か。いいぞ、ちょっと待っててくれ」

ココア「シャロちゃんリゼちゃんにご用だったの?」

シャロ「ええ。ちょっとね」

 ココアに答えて、彼女へ視線を向ける。

シャロ(……ん?)

 するとあることに気付く。
 ココアの首。制服に隠れてよく見えないが、微かに黒い紐のようなものが見えたのだ。

シャロ(まさか……ね)

 インターディメンドの単語が頭をちらつく。が、おそらく違うだろうと結論。
 あんな得体のしれない技術が、こんな身近、それも友人に与えられているはずがない。もしそうだとしたら、どんな天文学的な低確率だろうか。

リゼ「待たせたな。チノ、ちょっと話すけど大丈夫か?」

チノ「大丈夫です。お客さんもいませんし、私一人で今のところは」

ココア「あれ? 私カウントされてない?」

 なんて、いつも通りのやりとりをする二人を置いて店内の隅へ。
 シャロはこっそりと話しをはじめた。
315 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/28(水) 02:26:53.65 ID:2pkQCLvO0
リゼ「で、話ってなんだ?」

シャロ「はい。実はですね……」

 と言いかけ、シャロは気付く。

シャロ(なんて言えばいいの!?)

 夢の話をして、感想を求める。なんてストレートにすれば絶対におかしな人に思われる。

シャロ「ええと、その……あ、そうだ! リゼ先輩、最近変わったことはありません?」

リゼ「……? 特にないけどどうかしたのか?」

シャロ「な、なんとなく……」

リゼ「そうか……あ、ちょっとあったかもしれない」

 それほど不審がられていないのか、リゼは至って普通な表情で言う。

リゼ「昨日シャロに会った気がするんだ」

シャロ「!」

リゼ「なんでだろうな。理由は分からないが……今日は会えて嬉しかった」

シャロ「わわ、私もです! リゼ先輩!」

シャロ(なんだか知らないけど、リゼ先輩と仲良く……! ラッキー)

 やはりあの精神世界――の夢のような云々かんぬんが関係しているのだろうか。未だ信じられない気持ちで、シャロはこくこくと頷いた。

シャロ(このままリゼ先輩と仲良くなれるなら……あの世界も悪くないかも)
316 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/28(水) 02:34:56.97 ID:2pkQCLvO0
 
 その日の夜。

シャロ「さーってと。今日はいい日だったし……」

シャロ「明日もまたいい日になりますように」

シャロ「ふふ、リゼ先輩……」


行動選択
 1・【選択できません】
 2・外に出かける(街を散策or会う人物を指定)
 3・ザッピング
 4・ダイブ【千夜or青山orリゼ】

 安価↓1
317 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/28(水) 03:26:12.16 ID:7WF05d91o
千夜にダイブ
318 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/28(水) 09:13:59.12 ID:2pkQCLvO0

『ねえ、シャロちゃん』
『私達って……友達よね?』
『ううん、学校が違うから不安ってことじゃないの』
『ただ……気になっただけ』
『うん……うん。そうよね』
『ありがとうシャロちゃん。約束よ? 私とシャロちゃんはずっと一緒』
『……幼馴染、なんだから』

【ダイブ:宇治松 千夜 LV.1『終わらなき聖戦(ネバーエンドクルセイド)』を開始します】
319 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/28(水) 09:38:03.74 ID:2pkQCLvO0


シャロ「……うーん」

 シャロは困惑していた。
 昨日の夜と同じく、寝てから誰かの精神世界にやって来たのだろう。目を覚ました直後、グランツだとか、王国だとか勇者、魔王だとか……そんなナレーションをあたふたしながら聞いていると、シャロの目の前には見知らぬ景色が広がった。
 よくある街だ。塀で仕切られた家々。コンビニ、スーパー、駅に学校。日本的で、どこか懐かしさを覚える。

シャロ「ここって……なんなのかしら」

???「千夜の精神世界さ」

シャロ「ひいっ!?」

 不意に聞こえてきた声に飛び跳ねる。慌ててそちらを見ると、そこにはあんこらしきうさぎがいた。
 いつもかじられているシャロはつい後ろに下がるのだが――いつもと様子が違うことに気付く。そもそも、しゃべっていたような気もする。

???「こんにちは。そんな怯えなくても、噛まないから大丈夫だよ」

シャロ「え、ええ……」

???「相変わらずだね。初めまして……だったよね。僕は黒うさ」

黒うさ「千夜の心の護だ」

 相変わらず。初めまして。矛盾する言葉を口にし、彼は自己紹介をする。

シャロ「心の護……ここは千夜の世界なのね」

黒うさ「うん。流石はインターディメンド。もう他の人の世界にも入ったんだね」

シャロ「入ったけど……」

シャロ(まさか本当にこんな世界があったなんて)

 今回のことで信じるしかなさそうだ。シャロは頬をつねりつつ考える。

シャロ(しっかり痛いし、意識もある。明らかに夢じゃない。それに現実でもない。うさぎがしゃべるわけがないし)

シャロ(で、やっぱりインターディメンドが関係してたのね……)
320 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/28(水) 10:54:39.27 ID:2pkQCLvO0
黒うさ「なら説明は不要だね。千夜のこと頼んだよ」

シャロ「――え? あ、ちょっ、アドバイスとか」

 思考を中断して引き止めようとするが、すでに黒うさの姿はなし。どうやら今回は最初からシャロが行動するしかないようだ。

シャロ「不安すぎる……」

 リゼの世界を思い出すと、かなり物騒だったような気がする。この世界もあんな風な要素があるならば――どうなることか。

シャロ「帰り方も分からないし……行くしかないのかしら」

 ため息。シャロは街を見渡し、どこへ行こうか考えた。


 選択
 1・家へ
 2・公園へ
 3・神社へ

 安価↓1
321 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/28(水) 12:41:26.19 ID:jPXxOQ57o
3
322 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/28(水) 17:38:12.88 ID:2pkQCLvO0
 なんとなく目について、比較的近い場所へ。
 山道を上がっていき、階段を登るとそこには赤い鳥居が。
 どうやらそこは神社らしかった。落ち着いた雰囲気で、なにやら不思議な空気が流れている。

シャロ「……いい場所ね」


 こんな状況であるものの、気分が落ち着くのを感じる。
 シャロは周りを観察するように歩いていく。人はまばら。山中なのを考えると、わりといる方だろうか。

千夜「――あ! シャロちゃん!」

 観光気分で歩いていると、どこからか声。騒がしい足音が近づいてくる。
 音のする方向を見れば、そこには千夜がいた。学校の制服を身に付けた彼女は、笑顔でこちらへ向かってくる。

シャロ(お。早速会えた……。見慣れない制服ね――アレ?)

シャロ(いつの間にか私も同じ制服着てる)

 自分を見下ろし、シャロは服装の変化にようやく気付く。
 知らぬ間にシャロは千夜と同じような制服を着ていた。
323 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/28(水) 18:45:03.66 ID:2pkQCLvO0
千夜「シャロちゃん、やっと来てくれたのね。ほら、こっちこっち」

シャロ「へ? 何の話――って痛い痛い! 手を引っ張らないで」

 駆け寄ってきた千夜に手を捕まれ、連行される。
 わけがわからないままシャロは千夜に連れてかれ、神社の建物の中へと連れて行かれた。
324 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/28(水) 21:50:56.81 ID:2pkQCLvO0
 神社の中、おそらく千夜の自室だろう。
 そこへ連れてこられたシャロは、テーブルの横に置かれた座布団の上へ。

シャロ「あの、千夜? やっと来た、って?」

千夜「はいどうぞ。なに言ってるの? 今日からシャロちゃんは勇者助手として活動するって言ってあったじゃない」

シャロ「勇者助手?」

 とりあえず前に置かれたお茶を口にし、小首を傾げる。
 冒頭のナレーションでそんなことを言われたような気もしたが、正直あまり真面目に聞いてはいなかった。

千夜「シャロちゃんは相変わらずなのんびりさんね」

シャロ「あんたには言われたくない……」

千夜「勇者。光をもって魔王を倒す唯一の存在。シャロちゃんはその勇者を助けるために選ばれた人なの。だから世界のために頑張らないと」

シャロ(どこのライトノベルよ……)

 力説する千夜を、いつものネーミングを見るように呆れ顔で見つめる。

シャロ「……で、何をするの?」

千夜「勇者を探しましょう」

シャロ「……気の遠くなる話ね」

千夜「そうでもないわよ。勇者はこの街にいるって、情報があるもの!」

シャロ(ご都合主義……)

シャロ「ならその勇者を探すのが今の目的、ということね」

 自慢気に胸を張る千夜へと問いかける。彼女はこくこくと頷いた。

千夜「私も一緒に行くから、二人で頑張りましょう!」

シャロ「ええ、行きましょ」

 二人は立ち上がり、勇者の捜索をはじめた。

選択
 1・家へ
 2・公園へ

 安価↓1
325 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/28(水) 22:31:43.44 ID:yXJMi+8po
2で
326 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/28(水) 22:58:43.00 ID:2pkQCLvO0
 公園へとやって来た。
 現実の公園とちょっと違い、遊具が盛り沢山なそこには人がいなかった。

シャロ「なんとなく来たけど……誰もいなそうね」

千夜「うーん……どこにいるのかしら」

シャロ「――ねえ、その勇者ってどんな人なの?」

千夜「勇者? ええと、わかっていることは髪飾りをつけていて、決して挫けない明るさを持ってて――」

シャロ(ココアね)

 千夜が語る特徴は曖昧であったものの、すべてココアにあてはまるものであった。
 ココアが勇者。あの、のほほんとした笑顔を思い浮かべると――いまいち釈然としないシャロである。

シャロ「それなら、こうして探していればいつか見つかりそうね」

シャロ(ココアだしひょっこり出てくるでしょ)

千夜「だといいけど……あら?」

シャロ「どうしたの?」

 なにかに気づいたような声に、シャロは千夜の方を振り向く。
 彼女は遠く、空を見て驚いているようだった。

シャロ「……なにあれ?」

 シャロもその先へ視線を向ける。
 シャロ達のいるところからちょっと距離が離れた空。そこにできないであろう境界線があった。
 蒼と紅。空は二色に分断されており、赤色がゆっくりと青を侵食している。おおよそ現実味のない風景である。

千夜「魔王軍だわ……!」

シャロ「は、はぁ!? もう攻めてきたの!? 勇者も見つかってないのに!?」

千夜「見つかってないからこそよ。おそらく、私達助手と勇者が合流する前に……」

シャロ「そういうところは理に適ってるのね!」

シャロ(都合よく勇者の特徴とか居所はわかってるのに!)

 なんて嘆きつつ、シャロは頭をフル回転させる。
 攻めてきた魔王軍。自分はどうすればいいのか。


 選択
 1・戦おう!
 2・勇者を探そう

 安価↓1
327 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/28(水) 23:41:30.44 ID:7WF05d91o
2
328 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/29(木) 00:13:14.59 ID:s7Rwkl0I0
シャロ「勇者を探そう」

 敵が来るなら、早く合流しなくてはならない。
 シャロは考え、結論を導く。

千夜「ええ、そうね。私達の役割のためにも……頑張りましょう」

シャロ「うん。早く見つけないと」

 頷き合い、二人は走りだす。
 ひとまず魔王軍から離れて青い空の下を捜索。ココアらしき人物を探しまわるのだが……それらしい人物は見つかりはしなかった。

シャロ「はぁ……っ、はぁ、ダメ、ね」

千夜「私もう体力限界……」

 街を走りまわり疲弊しきった二人。赤い空はいつの間にか街を覆っていた。そして街の上空には飛行機のようなものも。

シャロ「これって……まずいわよね」

 敵が間近に。そして勇者はいまだ見つからず孤立。勇者がどれほど強いのかも分からないが……絶望的ともいえるだろう。

千夜「まさかこんな見つからないなんて」

シャロ「まぁ一人探すのって大変よね」


【今日のインターディメンドはここで終了します】
329 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/29(木) 03:52:49.20 ID:H3o778qOo
乙です
330 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/29(木) 23:06:14.07 ID:s7Rwkl0I0
千夜「このままだと……」

 千夜が焦った様子で言う。その続きはなんとなくシャロは察することができた。
 このままだと……。

???「見つけたぞ、勇者助手」

 ザッと地面を擦る靴の音。まるで二人が焦り、途方に暮れるのを待っていたかのようにその人物は現れた。

???「こんなところにいるとはな」

 なにやらファンタジーチックな鎧を身に付けた女性――それはリゼに瓜二つな見た目をした少女であった。

千夜「ラビットアーミー……!」

ラビットアーミー「よく知っているな。流石は勇者助手、ということか」

シャロ(ラビットアーミー……?)

 色々ツッコミたいところだったが、黙っておく。

ラビットアーミー「勇者は見つからないが……いい機会だ。貴様らを倒しておこう」

 ラビットアーミーは言い、その手に闇に包まれた剣を作る。
 どうやら戦う気らしい。二人を警戒するように見ており、今にも斬りかかりそうだ。
 どうするべきか。敵を前にシャロが考えていると、千夜が彼女の前へ飛び出した。

千夜「シャ、シャロちゃん、逃げ――」

 呆気無いほど、それは訪れた。
 なんの前兆もなく千夜の首が跳ね――そして落ちる。身体はまるで最初から頭がないように、マネキンが倒れるように仰向けに倒れる。限りなく無音で、シャロが親友の死を認識するまで、しばらくの時間を要するほどだった。

シャロ「……え?」

 唐突な死。予想もできない出来事にシャロは血の気が引くのを感じた。
 千夜が殺された。次は自分の番。そう考えると、身体が自然と震える。

ラビットアーミー「手応えがないな……勇者以外は雑魚か。お前もそのようだ」

 闇に包まれた剣を軽く振り、ラビットアーミーはシャロを見る。
 明らかな殺気。次は自分の番。なにかしないと死ぬ。それはわかっているのだが――シャロは動けなかった。

シャロ「千夜、ごめ――」

 自分を護り、死んでしまった千夜への謝罪。それを口にしかけた途中でシャロの意識は途絶え――頭を失った自分の胴体が視界の端で見えた。

【直前の選択肢からコンティニューします】
331 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/01/29(木) 23:19:58.71 ID:s7Rwkl0I0


シャロ「戦おう!」

 勇者は見つからない。けれどこのまま包囲されるのを見てみぬふりはできない。
 直情的だがシャロはそう判断し、赤い空の下へと走り出した。とりあえずは、少し遠くへ見えている空へと浮かぶ船へと向かう。

千夜「ゆ、勇者が、いなくても……戦えるのかしら」

 青と赤の境界線辺り。シャロが様子見のため立ち止まると、千夜が不安げに言う。

シャロ「助手って戦えないの?」

千夜「う、うん……攻撃がほぼ効かないから」

シャロ「難儀な設定ね……」

 せめて戦えるなら、希望は見えてくるのだが……その望みの薄そうだ。
 ため息。どうしようか思考しはじめると、空にいる飛行機から光りが放たれ――一人の女性が現れた。

???「ほう……助手が自ら、このラビットアーミーの前へとやって来るか」

ラビットアーミー「いい度胸だ。かかってこい」

 現実世界のリゼ。それによく似ている少女が上空に止まっている機械から放たれる……どう考えても不審なのだが、シャロは彼女のことを歓迎した。
332 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/02/01(日) 22:41:57.35 ID:23QM9wGg0
シャロ(この人と私達が派手に戦えば……勇者だってきっと!)

 来てくれる。
 根拠のない考えだが、シャロは確信を得ていた。
 勇者がこのピンチを見過ごすわけがないと。果たしてそれが正しいかどうかは誰にも分からないのだが……。


 選択
 1・このまま戦う
 2・自分だけ戦う

 安価↓1
333 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/01(日) 23:01:11.58 ID:4/iXmRDDo
1
334 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/02/01(日) 23:51:09.96 ID:23QM9wGg0
シャロ「行くわよ、千夜!」

 攻撃が通じないであろう相手。怖い気持ちはある。しかしシャロは怯まず、ラビットアーミーへと走りだした。
 千夜もまたそれに続く。

ラビットアーミー「ふむ、勇気だけはあるようだ」

 ラビットアーミーはそれに笑みを浮かべ、手をかるくかざす。
 自分の頭上程度に挙げたそれに、闇をまとった剣が創られた。

ラビットアーミー「しかし、勝てるわけがないだろう」

 剣を横へ。信じられない速度で振られるそれ。シャロは間合いに入っていないため、避ける必要もないと思っていたのだが……。

シャロ「っ!?」

 剣をふられた瞬間、シャロは自分の身体から力が抜けるのを感じ、膝をついた。
 自分の隣にいる千夜もまたそうだ。

ラビットアーミー「異能の力、それにただの人間が立ち向かえると思ったのか?」

 たった一振り。それだけのはずなのに二人はあっさりと敗北してしまった。
 得意気に笑うラビットアーミーを最後に、シャロは地面に倒れた。

シャロ「理不尽……でしょ……」

 自分と敵の決して縮まらない差。シャロは文句を言うように倒れ、そして――

ラビットアーミー「とどめだ」

 一瞬の激痛とともに、意識を手放した。

【直前の選択肢からコンティニューします】
335 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/02/02(月) 00:02:23.98 ID:QA9p87fU0
シャロ(賭けに千夜も付き合わせるのは危険よね……)

 シャロは考え、千夜へと振り向く。

シャロ「千夜、あんたは勇者を探しなさい」

千夜「え!? でもシャロちゃん一人だと瞬殺――」

シャロ「いいから。なんとなく、そうした方がいいと思うの」

 理由は分からない。けれどシャロは未来はこうあるべきだと感じた。
 千夜の言うとおり、自分一人では勝率がゼロに限りなく近いと分かっていても、だ。

シャロ「いいから! 行きなさい!」

千夜「う――ええ! 分かったわ」

 シャロの必死の剣幕に負けたのか、千夜がその場から走り去る。
 ラビットアーミーは追うつもりもないのか、それを静かに見ていた。

ラビットアーミー「いい度胸だな。この私とタイマンとは」

シャロ「懸命、だと言ってほしいわ。これでも色々考えてるのよ」

ラビットアーミー「こんな無謀な手をとってもか……!」

 ラビットアーミーが駆け出す。
 一人だと油断しているのか、彼女はまっすぐシャロへと近づいている。どうやら格闘で戦うつもりらしい。

シャロ(無謀なのは確か……どうしようかしら)


 選択
 1・隙を見て逃げ出す
 2・立ち向かう

 安価↓1
336 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/02(月) 01:41:08.79 ID:LcZDM0Mvo
1
337 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/02/04(水) 22:04:46.17 ID:IKoxZZ160
シャロ(とりあえず逃げるわよね。当然)

 勝てる見込みはない。ならば逃げるのが当然のこと。
 結論は出た。しかし肝心なのは……。

シャロ(どうやって逃げるんだか……)

 強そうな敵を相手にどうやって逃げるか、だ。

ラビットアーミー「いくぞ……!」

シャロ(どこに――って言ってる場合じゃないっ。なんとかしないと。なんとか……)

シャロ「あーっ!」

ラビットアーミー「っ!?」

 シャロが大声を出すと、ラビットアーミーが立ち止まる。

ラビットアーミー「な、なんだ……?」

シャロ「……。その――トイレ、行きたいんだけど」

 苦し紛れの一言。頭がオーバーヒートを起こしているせいで、恥ずかしげもなくシャロは言う。

シャロ(なに言ってんのよ私ー!? 姿だけだけど、リゼ先輩の前で!)

 そして一秒で我に帰った。

シャロ(こんな言い逃れが通用する場面――)

ラビットアーミー「そ、そうか……行ってくるといい」

シャロ(――だった! 嬉しいけど哀れみの視線が痛い!)

シャロ「ではそういうことで……」ナミダメ

 すたこらと歩いて、公園の外へ。
 曲がり角を曲がりきり、シャロはダッシュ。本格的に逃亡をはじめた。

シャロ「あああぁ! この精神的ダメージ! 現実に影響ないとすごく思いたい!」

 叫びつつ疾走。目指すは千夜、そして勇者との合流。
 しかしアテはない。時間もない。確実に、どこで、なにがあるのか――それが分かってすらいれば、あるいは。


 選択
 1・自分の家へ
 2・神社へ
 3・学校へ

 安価↓1
338 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/05(木) 00:32:35.50 ID:72+tmwpBo
1
339 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/02/05(木) 23:36:05.31 ID:gPU98TUS0
シャロ「……ここは」

 走りに走り、不意に足がとまる。
 やって来たのは住宅街。さながらド○えもんみたいな家々の並びの中、明らかに目立つそれはあった。

シャロ「私の家?」

 甘兎庵の横にあるシャロの家。それがぽつんと、建っている。

シャロ「なんでこんな場所に……」

 首を傾げ、中へ。
 何かヒントはないかとシャロは探索をはじめる。
 ――が、

シャロ(なにもないわね……)

 家の中にはなにも見つからなかった。
 陶器のコレクションも、テーブルも、なにもかも見つからない。生活感のかけらもなかった。

シャロ「……次、行きましょう」

 不気味な感覚を覚えつつ、シャロは家を出た。


 選択
 1・神社へ
 2・学校へ

 安価↓1
340 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/06(金) 01:14:20.44 ID:SiClTF7fo
1で
341 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/02/07(土) 10:56:13.35 ID:TWTL68fW0

シャロ「直感で……!」

 また敵に見つかれば、今度こそ逃げられない。しかしアテもないため、シャロは直感で行き先を決める。
 神社。目につく場所で、少し遠目のあそこを目指しつつ道すがら千夜を探す。が、千夜どころか他の人間は誰も見つかりはしなかった。
 焦る気持ちを抑え、シャロは山の中を進む。階段を上がり、鳥居が少し先に見えてきた。

シャロ「千夜ー! ここにいるんでしょ!? 世話かけないでよ!」

 叫び、鳥居をくぐる。古っぽい神社、その中心辺りに千夜が倒れていた。血だまりの中で。シャロは息を呑み――目を瞬かせる。

シャロ「え?」

 目の前。千夜が倒れている奥。そこに、魔女のような格好をした女性がいた。

魔女「――」

 シャロの声に気づいたのだろう。彼女は肩越しにシャロへと振り向き、そしてすぐに消えた。

シャロ(どういうこと……?)

 見知らない女性がいた。消えた。そんなことはどうでもよく、シャロにはもっと気になることがあった。それはあの女性が千夜と瓜二つだということ。現実ではないし、あり得なくもない話なのだが……なんとなく気にかかった。

シャロ(それよりも……今は)

シャロ「千夜!」

 頭の中に浮かぶ疑問は置いておき、倒れている千夜へ声をかける。

千夜「うーん……あ、シャロちゃん」

 すぐに気づいた彼女は目を開く。身体を起こし、それから周囲を見回し、首を傾げた。

千夜「勇者様は?」

シャロ「知らない。それより千夜、あんたよ。怪我とかしてないの?」

千夜「え?――あら、治ってるわ」

シャロ「……あんたね」

 きょとんとした顔で言う千夜に、シャロは大きなため息。

シャロ(『治った』ってことは、一回怪我したのよね……)

ラビットアーミー「探したぞ」

 リゼの声。振り向くと神社の鳥居の下に会いたくない敵が立っていた。

シャロ「うげっ!」

ラビットアーミー「よくも騙してくれたな。長いトイレだと思っていたが……」

千夜「トイレ?」

シャロ「いいの、気にしないで」
342 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/02/07(土) 19:14:51.80 ID:TWTL68fW0
ラビットアーミー「気にしてもらおうか。私を騙したのだからな」

シャロ「だ、騙してないわよ? どこにあるかなーと探していて」

ラビットアーミー「……」

シャロ(まぁ通じないわよね)

 鋭い視線を受け、シャロは自嘲。困ったように笑い、周囲を見る。
 とても逃げられる状況ではない。それは前も変わりないが――どうしたものか。

ラビットアーミー「大人しく殺されるのだな。――さぁ」

 これは終わった。シャロが諦めかけたその時、まるでタイミングを見計らったかのように一人の少女が現れた。

???「させないよ!」

 凛とした、綺麗な声。横の茂みから飛び出るようにシャロらとラビットアーミーの間に出てきたのは――

シャロ「ココア!?」

 ココアだった。
 勇者だと思われる彼女の突然の登場。意表をつかれたシャロは彼女を信じられない想いで見つめる。
 シャロと千夜とはまた違う学校の制服を身に付けた彼女は、シャロたちへと振り向く。

ココア「大丈夫だった? もう安心してね」キラキラ

シャロ(……なんか美化されてない?)

 これまでのリゼ、千夜の世界では役割や職などに違いはあったものの、そこまでキャラがブレることはなかったが……ココアは違うような気がしたシャロである。
 言葉遣いや容姿はいつもと変わらないのだが、雰囲気が凛々しいというか、キラキラしているというか。とにかく実物とオーラが違った。

シャロ(千夜はこう思ってるってことかしら……)

シャロ(ちょっと複雑)
343 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/02/07(土) 22:20:38.43 ID:TWTL68fW0
ココア「さぁ、勇者の私が相手だよ!」

 ラビットアーミーへ向き直り、構えをとるココア。
 武器もなにも持っていないが戦う気らしい。

シャロ「戦って勝てるの?」

ココア「平気平気。君たちもいるし、百人力だよ」

千夜「私達はいるだけで勇者様の力を強めることができるの。だから大丈夫」

シャロ(とは言ってもね……)

 考える。
 なにもしなくてもいいと言っているが……果たして、本当なのだろうか。


 選択
 1・一緒に戦う
 2・観戦

 安価↓1
344 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/07(土) 22:39:59.33 ID:3YvPMgaHo
2
345 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/02/08(日) 00:43:45.09 ID:8qI+nlmA0
シャロ(まぁなんとかなるわよね)

 暢気な結論を出し、シャロはその場で観戦することに。
 そうしても、どうなるかは目に見えた結果。それならば苦労が少ないほうに限る。

ココア「――いくよ!」

シャロ(どこに)

 走りだすココア。ラビットアーミーは組んでいた腕を解き、ゆっくりと下ろす。
 ココアが間合いに入る。彼女は素早く拳を振るい、攻撃。現実のココアからは想像できない華麗な動きで、ラビットアーミーの横っ面を叩く。
 のんびり見ていたシャロが引いてしまうほど気持ちいい音が鳴った。

ラビットアーミー「効かんな」

 しかしラビットアーミーはピンピンとしていた。不敵な笑みを浮かべ、ココアへ反撃。腹部を殴る、ただそれだけの攻撃――けれどココアは膝をついてしまう。

千夜「勇者様!」

シャロ「ら、楽勝じゃなかったの!?」

 完全にココアが格下のように見える。
 シャロは慌てて声をかける。

千夜「その筈なのに、なんで……」

 千夜もココアも予想していなかったようだ。それもそうだ。こんなこと、わかっているなら戦闘を挑むはずがない。

ラビットアーミー「なんだ、勇者というのも大したことがない。さっさと終わらせようか」

シャロ「……」

 膝をつき、それでも立ち上がろうとしているココア。
 シャロは、そんな彼女の背中をジッと見つめた。

シャロ(なにも、できない……)

 何故か視界が霞む。いや、違う。そこにある、『シャロ以外のすべて』が揺らいで見えた。
 自分は、ここで、なにができ――

シャロ「……」


 選択
 1・ココアを殺す
 2・ココアを倒す
 3・ココアを刺す

 安価↓1
346 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/11(水) 04:55:03.68 ID:33b7U6ojO
3
347 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/27(金) 03:20:01.35 ID:dFH3Eblpo
支援
348 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/01(日) 01:31:40.76 ID:VNopyvkBo
もしかしてもうここでは更新しないのかな?
もし書き込む予定があるなら気長に待ちます…
349 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/03/10(火) 22:06:43.31 ID:WMgH2STj0
シャロ「……」

 シャロが動く。戦闘不能寸前のココアへ向かい、ゆっくりと接近。
 表情は無に近く、けれど口元はいびつに歪んでいた。

千夜「シャロちゃん!?」

ラビットアーミー「なにをするつもりだ?」

 千夜の声。ラビットアーミーの警戒。
 命の危機すら間近に近づいていたが、シャロが止まることはない。

シャロ「勇者――いや、ニセ勇者」

 シャロは堂々と口にする。
 何も握っていない手をかざし、笑う。その手に、突如として一振りの剣が現れた。

シャロ「お前はここで幕引きよ」

 一突き。無防備なココアの背中へ剣を勢い良く突き刺す。

ココア「あ゛――っ、がっ」

 容易にココアの身体を貫く剣。シャロは真顔に戻ると剣を引き抜き、二度三度と剣を突き刺した。
 ココアが呻くのも、千夜が悲鳴を上げるのもおかまいなし。恨みも、殺意もなく、ただ機械的にシャロは剣をつきだした。

シャロ「……ふぅ」

 やがてココアは息絶え、シャロは小さく息を吐いた。

シャロ「血がついちゃったわ……」

 剣を払い、嘆息。つまらなそうに呟く姿に、ラビットアーミーですら戦慄した。
350 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/03/10(火) 22:38:52.69 ID:WMgH2STj0
千夜「シャロ、ちゃん……?」

ラビットアーミー「お前は、なに者だ?」

シャロ「私? 私はシャロよ。勇者の助手? みたいな」

 剣を消し、微笑むシャロ。彼女は千夜の方を一度ちらっと見ると、ラビットアーミーへ向き直る。

シャロ「私のこと、仲間にしてくれない? 勇者もいなくなったし、もう魔王の勝ちきまりでしょ」

千夜「――なっ!? シャロちゃん!」

シャロ「なに? 私の勝手よね? 勝手に勇者の仲間にされてただけだし」

千夜「け、けど、魔王に味方なんて、なんで」

シャロ「私だって命が惜しいのよ。ほら、どう? 仲間にしてくれる?」

ラビットアーミー「……ふざけるな。と言いたいところだが、勇者を殺した功績――認めざるを得ないか」

ラビットアーミー「いいだろう。来るならば来い」

シャロ「どうも。――それじゃ、邪魔者は消さないといけないわね」

 振り向く。
 わけもわからなそうにしている千夜へと近づき、

千夜「シャロちゃん? なんで、私に、え……っ?」

シャロ「――自分のため。それだけよ、千夜」

 彼女の首を掴んだ。
 か細い首。千夜の口からは今まで聞いたことがない小さなうめき声が聞こえ――

シャロ「ありがとう、千夜。幼馴染として初めて役に立ったわ」

 シャロは笑顔を見せた。



【ダイブ:宇治松 千夜 LV.1『終わらなき聖戦(ネバーエンドクルセイド)』を完了しました】
351 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/03/10(火) 23:01:56.76 ID:WMgH2STj0
 翌朝。シャロの部屋。

シャロ「っ!?」

 不意にシャロは目を覚ました。
 頭にフラッシュバックする光景。ココアを刺し殺し、千夜すらも手にかけた自分。
 悪夢としか言い様がなかった。

シャロ「あんな……」

 荒れた呼吸を整える。
 深呼吸をし、身体を起こして見慣れた部屋を眺め――

シャロ「――え?」

 動悸がした。
 いつもと違う――違和感を抱き、シャロは困惑する。
 身体の感覚が薄い。それは悪夢のせいかとも思っていたが……シャロの視界が霞んでいた。

シャロ「――なに? これ……」

 まるで自分の身体が自分のものでなくなるような。
 そんな感覚に、シャロは恐怖を抱いた。


【Ch.1 FHASE:1 を完了しました】
352 : ◆SueEXcDWTY [saga]:2015/03/10(火) 23:18:42.47 ID:WMgH2STj0
【Ch.1 はロックされました】
【自動的にザッピングを行います】

 翌朝。
 ココアは目を覚ました。

ココア「あれ?」

ココア「あれで終わり――なわけないよね」

 身体を起こして、つぶやく。
 どう考えても途中。中途半端なところで終わってしまった。
 何がどうなっているのだろうか。

ココア「……学校行かなきゃ」

 ひとまずは、日常に戻るしかなさそうだ。

行動選択
 1・【選択できません】
 2・外に出かける(街を散策or会う人物を指定)
 3・ザッピング
 4・ダイブ(チノorココア)

 選択
 安価↓2
353 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/03/10(火) 23:20:02.50 ID:WMgH2STj0
【酉変わりましたが、問題ないです】
【安価はここから↓2へ】
354 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/10(火) 23:25:32.74 ID:oMSAt6qgo
2 千夜
355 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/10(火) 23:37:35.61 ID:NbBoJh8do
2 千夜
356 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/11(水) 00:24:29.75 ID:QzVW4W6Ho
もしかして: PHASE
357 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/03/11(水) 00:54:40.19 ID:vFNkt++10
【訂正します FHASE → PHASE】
【本日のインターディメンドはここで終了します】


【遅くなって申し訳ありません】
358 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/12(木) 00:58:16.35 ID:04KNAWgmo
来てくれて嬉しい
物語も大きく動き出してきて良い感じ
359 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/03/29(日) 22:04:33.93 ID:uJIqRLpt0
ココア「学校で千夜ちゃんと話してみようかな……」

 あの世界が中途半端に終わった理由。
 あれが千夜の世界ならば、彼女からなにかヒントが得られるかもしれない。

ココア「よし、がんばろう」

 ココアは決心し、学校へ行くための支度をはじめた。


 ○


 学校。お昼休み。

千夜「お昼の時間ね。今日もお腹空いたわ」

 千夜はいつもの通り席の上に昼食を置き、のほほんとした顔をして食べ始める。
 その様子はまったく異変などなく。

ココア(千夜ちゃんにまだ信用されてないってこと……?)

 チノの世界の説明。それが千夜の世界にも係わっているならば、あそこで強制的に終わったのは信頼が影響しているのかもしれない。
 まだ先に踏み入れるだけの信用を自分は得ていないのだ。
 ――なんて考え、ココアはちょっと悲しくなった。

ココア「……千夜ちゃん、最近変わったことってない?」

千夜「変わったこと? 特にないけれど」

ココア「そ、そっか」

ココア(やっぱり信用……)

千夜「どうしたの? 前も似たようなこと訊いたわよね、ココアちゃん」

ココア「ななんでもないよっ! 親友だから気になって」

千夜「もぐ?」クビカシゲ

 パクパクと食事を続ける千夜。
 そんな彼女を見ていると、やはり問題があるなどとは思えず。
 ココアはそれから質問などできるわけもなく、自分の弁当を開いた。

千夜「――これから、楽しいことがあるかもね」

ココア「え?」

千夜「美味しそうなお弁当ね、ココアちゃん」

ココア「あ、うん。そうだよね」

 一瞬、別人のような声が聞こえたが――空耳だろう。ココアは暢気に考えた。
360 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/03/29(日) 22:13:12.44 ID:uJIqRLpt0
 翌朝。
 目覚めたココアは伸び。

チノ「やっと起きましたね。すぐに朝ごはん食べてください」

ココア「うん……ありがとう、チノちゃん」

チノ「いえ。これが当たり前なので」

 皮肉のように、けれどどこか嬉しそうにチノは言い部屋から出て行く。
 これが日常。そういえばそうだ、とココアは思う。

ココア「――いいことなのかは微妙だけど、ホッとするかな」

 せめてチノに起こされてすぐ目を覚ませばいいのだが。



行動選択
 1・【選択できません】
 2・外に出かける(街を散策or会う人物を指定)
 3・ザッピング 【選択できません】
 4・ダイブ(チノorココア)

 選択
 安価↓2
361 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/29(日) 23:09:22.25 ID:RqvJ+68fo
2 街
362 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/30(月) 01:02:44.72 ID:jdPecuKXo
2 千夜ちゃん
363 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/04/02(木) 22:26:29.36 ID:1FF9QCda0
 学校帰り。
 ココアは適当に街の中を歩き――

千夜「あら、ココアちゃん」

 偶然にも千夜と遭遇した。
 私服姿の彼女はココアを見つけると、にっこりと笑う。

ココア「千夜ちゃん。会う気がしたんだー」

千夜「そうなの? なんだか運命を感じるわね」

 のほほんと会話する二人。
 自然と道の端に行き、二人は雑談をはじめた。


 選択
 1・「千夜ちゃんチュッチュ!」
 2・「楽しいことって?」
 3・「今日はどっかにお出かけ?」

 ↓2
364 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/02(木) 22:30:45.01 ID:9tY9vBd+o
2
365 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/03(金) 00:43:20.29 ID:TD1fv1Ywo
3
366 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/04/12(日) 04:43:50.24 ID:gk1JRYcp0
ココア「今日はどっかにお出かけ?」

 ココアは笑顔を浮かべ、問いかけた。
 千夜は一瞬きょとんとしたような顔をするが、すぐまた笑顔に。

千夜「ええ。ちょっとお散歩を」

 至って普通の会話。けれどココアはなにか違和感があるような気がした。

千夜「――無難ね。さて、ココアちゃん。私はもう行くから、今日はお別れ」

ココア「え? もっとお話とか」

千夜「ココアちゃん。宿題終わらせたの?」ニッコリ

ココア「え゛っ!? そ、そんなのあったの!?」

千夜「ええ。少ないけど明日までのものが。やってないの?」

ココア「や、やってなかった! じゃあ私も急がないと! じゃあね、千夜ちゃん!」

 ばたばたと、見るからに慌てて走り去るココア。
 にこやかにそれを見送る千夜。

 ――ちなみに、そんな宿題など出ていなかった。
367 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/04/12(日) 04:47:07.18 ID:gk1JRYcp0
 翌朝。

ココア「うう……出てないって信じたいけど、出てるんじゃ、なんて思うとあんまり寝られなかったよぅ」

チノ「熟睡だったじゃないですか。私が起こしても全然起きないくらい」

ティッピー「いつもどおりだったのう」

ココア「そ、それでも、なんか身体が重い気がするのっ!」

 朝食をいつも通りの時間で食べるココアは、力説した。


行動選択
 1・【選択できません】
 2・外に出かける【選択できません】
 3・ザッピング 【選択できません】
 4・ダイブ(チノorココア)

 選択
 安価↓2
368 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/12(日) 08:52:08.54 ID:7WP1t6gio
4 チノ
369 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/12(日) 14:36:46.58 ID:ADsMKwmAo
4 チノちゃん
選択肢少なくて笑った
370 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/04/18(土) 02:03:12.16 ID:C86OPz170
 知らない場所。時刻は不明。

チッピー「あら、来たんだね」

ココア「ふぁあ……そうみたい、だね」

 あくびをもらすココア。
 チッピーは呆れたようにはぁ、と息をもらす。

チッピー「大歓迎、と言いたいところだけど準備ができてないから、また今度来てね」

ココア「え? でも、前の階層で先に進めるようになったような」

チッピー「うん。でもまだ、その時じゃない。他になにかするべきことがあるはずだから、それをこなしてここへ来てほしいんだ」

ココア「――う、うん。なんとなく分かった」

チッピー「なら良かった。ということで今日は出て行ってもらうから」

 チッピーが言う。
 その瞬間パッと目の前が真っ暗になり、ココアはあっさり意識を手放した。


【この精神世界のシナリオはロックされました。
 条件を満たすことで先に進むことができるようになります】

【行動選択がココアへのダイブのみになったため、次回から強制的に実行されます】
371 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/04/19(日) 10:11:07.26 ID:ENr5mpJs0
 翌朝。

ココア「するべきこと……って、なんだろう?」

 目を覚ましたココアは、昨日言われたことについてぼんやりと考えた。
 先に進むためやるべきこと。
 ――分からない。チノ、千夜の精神世界の他にどこか行かないといけないところがあるのだろうか。

ココア「ここはみんなにお任せ、しかないよね」

 心当たりはない。けれど、これを見ている皆ならどこに行けるかすぐ分かるだろう。
 ココアは暢気に考え、伸びをした。

【行動選択 4 ココア  を行います】
372 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/04/19(日) 10:30:08.50 ID:ENr5mpJs0
【ダイブ:保登 心愛 LV.1『審査』を開始します】



 そこは、賑やかな場所だった。
 遊園地、ゲームセンター、レストラン、テーマパーク。
 あらゆる娯楽が揃い、あなた達を喧しく出迎える。
 なにもせずただその音達を聞いていると、不意にその世界へアナウンスが響いた。

『来場者の方へご連絡です』

『この世界は保登 心愛の精神世界』

『第一階層では貴方がたの審査を行います』

『気楽に、なにも考えず審査を受けていただければ』

 そう伝え、アナウンスは終わる。
 誰の声だろうか。ココアの声でないことは確かだ。
 ――審査。それを行うと声は言っていた。
 何をどう審査するかは分からない。けれど……やるしかないだろう。


 コマンド
 1・観覧車へ
 2・レストランへ
 3・入園ゲートへ

 ↓1
373 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/19(日) 10:41:39.25 ID:0Wg4oV31o
いきなり1で
374 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/04/19(日) 17:25:52.19 ID:ENr5mpJs0
 観覧車へ。
 何もない、敷地外から園内へ移動。
 入園ゲートなどただの飾りで、柵もないその場所ではろくに機能していない。
 賑やかな音の中、あなた達は目についた観覧車へと向かう。
 そして、それほど時間をかけずに到着した。

???「ようこそ」

 どこからともなく少女が現れる。
 見覚えのない制服を着ているその少女は、チノ。
 けれど目には生気がなく、どこを見ているのかも分からない。

???「ここでは質問をいくつかさせていただきます」

???「では、観覧車へ」

 ウェイトレスのように中へ招くチノ。
 彼女に促されるまま、あなた達は観覧車へと入った。
375 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/04/19(日) 17:42:37.05 ID:ENr5mpJs0
 席に座ると観覧車が動き出す。
 徐々に上へ。景色が変わっていく。
 観覧車といえばデートでは定番の乗り物だが、

???「……」

 前の席に座っている少女は無表情で、空気が重い。

???「まず、一つ目の質問です」

 チノは不意に話を切り出した。

???「『あなた達は私たちの世界について、どれほど知っていますか?』」


 コマンド
 1・ココアの高校入学からの主な出来事
 2・家の場所から、学校の場所、着替えやお風呂シーンまで隅々
 3・まったく知らない

 安価↓1
376 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/19(日) 18:29:26.45 ID:CL/yBNcN0
2
377 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/04/19(日) 18:48:39.72 ID:ENr5mpJs0
『家の場所から、学校の場所、着替えやお風呂シーンまで隅々』

 あなた達はすっぱりと、ストレートに答えた。

???「……なるほど。嘘か本当かは分かりませんが……本当だと仮定しましょう」

???「そういったシーンがあるのは、仕方ないことですが……」

???「……」

???「――では二つ目の質問です」

???「選択肢はどうやって選んでいますか?」


 コマンド
 1・思うままに
 2・展開を予想して
 3・できるだけ色々なシーンを多く見られるように

 安価↓1
378 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/19(日) 19:15:20.06 ID:CL/yBNcN0
1
379 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/05/29(金) 00:42:40.13 ID:WheSoA9v0
『思うままに』

???「思うままに。つまり、あなた達は適当に選んでいると」

???「その適当が、いい意味での適当か。それとも何も考えずに選んでいる適当か――」

???「それは質問の中に含まれていないので、よしとしましょうか」

???「大体分かりました」

???「あなた達は私達のことを日常マンガ風に理解していて、なおかつ選択肢は思うままに選択している」

???「つまり、私達のことを知りながらも他人事――そういうことですね」

 否定も、肯定もできない。
 チノが端的に言うと、まるでタイミングを見計らったかのようにいつの間にか観覧車は一周し下にたどり着いていた。

???「では、他の場所にも向かってください」

 あなた達は観覧車の外へと追い出される。
 ドアが閉まった観覧車は、あなた達が降りたのと同時にまた動き出した。
 園内は遊園地らしく、あちこちで騒がしくアトラクションが動き回る。
 さて、変化を得るためにはどこかへ向かうべきなのだろう。


 コマンド
 2・レストランへ
 3・入園ゲートへ

 安価↓1
380 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/05/29(金) 01:06:02.76 ID:vhGdg+Gjo
続き来てた!!!!
安価取れたら2
381 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/05/29(金) 01:17:39.37 ID:WheSoA9v0
『レストランへ』

 あなた達はレストランへ向かう。
 園内を通り、なんとなく目についた一つのレストランへ気ままに入店。

千夜「いらっしゃいませ。こちらのお席へどうぞ」

 すると中には千夜が。
 ウエイトレス姿の彼女はあなた達を席に案内すると、メニューを手渡す。

千夜「お好きなメニューをご注文ください」


 コマンド
 1・オムライス
 2・千夜
 3・お話

 安価↓1
382 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/05/29(金) 01:30:44.64 ID:EkHrCTpVO
1
383 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/06/01(月) 23:50:29.23 ID:k03rwI1a0
 あなたたちはオムライスを選択した。
 千夜は頷くとメニューを回収。

千夜「無難な選択ですね。いいことですまともな人もいる――ということでしょうか」

千夜「これでこの場所の質問は終わりです」

 オムライスは?
 なんて言えず、あなたたちは去っていく千夜を見送った。
 この世界はこれまでと違い、特に変わった結末などないようだ。
 あっさりと進んで、終わっていく。
 ――さて、次の場所に向かおうか。

【入園ゲートへ、を選択します】
384 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/06/02(火) 00:05:41.44 ID:jRQ6nhk30
 入園ゲート。
 横から素通り可能な、無意味なそれの前へあなたたちはやって来た。

???「ようこそ。ここではあなたの入園資格を問います」

 そこにいるのは、リゼ。
 どこかの制服を身につけた彼女は、いつもより幾分しゃっきりした表情であなたたちを見据えた。

???「もう入園した?」

???「それは些細なことです」

???「ここでは、入園に値する資格があるか否か――それを見定めるのみ」

???「『入れる』、『入れない』は大した問題ではありません」

???「あなたたちは自由に見ることも、選ぶこともできるのですから」

???「では、問いです」

???「困っている人がいます。何で困っているか、それは分からないこととして――あなたはどうしますか?」


 コマンド
 1・事情を訊く
 2・とにかく励ます
 3・罵倒する

 安価↓1
385 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/02(火) 19:52:18.96 ID:gwGUMUEHo
1
386 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/06/04(木) 00:34:26.06 ID:SH6KAX1S0
『事情を訊く』


???「そうですか。いいことです」

???「ここにいる人は、比較的嬢世紀的な人間らしいですね」

???「いいでしょう。ここを通る資格を与えます」

???「……特にあげるものなどないですが」

 あっけらかんと、リゼは言った。
 ――と、そのタイミングで遠くの方で光の渦が発生する。
 何度か見たことがある光だ。

???「他の場所はもう回っていたらしいですね」

???「おめでとうございます。次の階層に進むことができますよ」

???「あっさりしすぎていたり、質問が不可解なのは仕様です。ご安心を」

 言って、リゼは光の渦を示す。

???「さぁ、向かってください」

 そう言われては逆らうわけにもいかない。
 あなたたちは光が発生している場所へと向かっていった。
387 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/06/04(木) 00:42:50.11 ID:SH6KAX1S0
 光の渦がある場所。ストーンヘンジ。
 普通ならば誰か――世界の主がいる場所には、誰もいない。
 そういえばここに来てココアに会っていない。
 肝心の彼女はあなたたちの前には姿を現さなかった。
 けれどこうして、次の階層へ進む準備が完了した。
 それがどういう事実を示しているのか……今のところは分からない。

 質問の意図。内容。分かれ道のない一本道の世界。
 不可解なことばかりだが、先に進めば分かるようになってくるのだろうか。
 今は、前に進もう。
 足を一歩前に。光の中に。
 目がくらむほど眩しいその中で視界はやがて黒に染まり、暗転した。


【ダイブ:保登 心愛 LV.1『審査』を中断しました】
388 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/06/04(木) 01:11:58.53 ID:SH6KAX1S0
【Ch.2 PHASE:1 を完了しました】
【PHASE:2 を開始します】


ココア「……」

 朝。目を覚ましたココアは、部屋を見回す。
 なにも変化はなく、いつもどおりの自室。外からは鳥の囀りが聞こえ、柔らかな朝日が窓から射し込む。

ココア「――ふぅ、安心した」

 日常を確認したココアはホッと息を吐いた。

ココア「なんだか、知らない人の視線でいろいろ見てたような……なんだろう?」

 はっきりとは憶えていない。
 けれど何か、大切なことが起きていたような。

ココア「うーん……その内思い出すかな」

 思考はほどほどにココアは身体を起こした。


行動選択
 1・チノに会う
 2・外に出かける
 3・ザッピング 【選択できません】
 4・ダイブ(チノor千夜orココア)

 選択
 安価↓1
389 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/04(木) 11:47:33.05 ID:Gn254o1Ao
1
390 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/06/15(月) 00:28:11.77 ID:Z03/lgdB0
 なんとなく、チノに会ってみようという気になった。
 今はいつも起きる時間の前。時間はあるだろう。

ココア「姉としてたまには朝に挨拶しておかないとね」

 いつまでも起こしてもらうような姉ではないのだ。
 ココアはうんと頷いて、部屋を出た。


 ○

 チノはキッチンに立っていた。
 エプロンを着け、朝食を作る彼女。
 ココアは笑顔で彼女の後ろ姿をしばし見つめ、声をかけた。

ココア「チノちゃん、おはよう!」

チノ「あ、ココアさん。今日も早いですね」

 特に驚いた様子もなく振り向くチノ。

チノ「――っ」

 けれどココアの顔を見た次の瞬間、何かを思い出したかのように苦い顔をする。
391 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/06/15(月) 00:46:30.92 ID:Z03/lgdB0
ココア「チノちゃん? どうしたの?」

チノ「な、なんでもないです……」

 明らかになにもない様子ではない。
 けれど心配したココアが尋ねるよりも早く、チノが口を開いた。

チノ「あの、ココアさん。今度の休日……甘兎庵に行きませんか?」

ココア「え? う、うん……いいけど」

チノ「そうですか……」

 暗い表情で呟くように返事をするチノ。
 デートに誘うから緊張しているのでは、なんて思っていたココアだが、流石にそれは違うと分かってきた。

ココア「それじゃ、今度のお休み、楽しみにしてるねっ」

 けれど尋ねたとして、チノは何も答えてはくれないだろう。
 だからココアはあえて明るくふるまうことにした。

ココア(悩みごとも重大なことならいつか話してくれるよね)

 彼女は思春期。きっと身長とか、そういったことなのだろう。
 ココアはこの時、暢気にそんなことを考えていた。
392 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/06/15(月) 00:59:25.17 ID:Z03/lgdB0
 そして休日がやって来た。
 ココアとチノは約束していた通り、甘兎庵へ。
 二人でお出かけ。結構久しぶりのような気もする楽しげなイベント。

チノ「……」

 けれどココアの隣、歩くチノの表情は暗く。

ココア(どうしたんだろう、チノちゃん)

 考えてみるも、分からない。
 いつもは普段どおりなのだ。だがある時、ある瞬間、チノは暗く悩んでいるような顔を見せる。
 まるで彼女を悩ませているそれが、彼女自身にも問題なのだと認識できていないように。曖昧で、不確かな。

ココア「チノちゃん、そろそろ着くよ」

 ラビットハウスから移動してちょっと。
 あっという間に甘兎庵へと到着。チノへ声をかけると、彼女は小さく頷いた。
 なんだか、甘兎庵へ近づいていくにつれて元気がなくなっていくような気がした。
393 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/06/15(月) 01:27:41.08 ID:Z03/lgdB0
 甘兎庵へ。
 席に座り、いつものように千夜へと注文を告げて甘味に舌鼓をうつ。
 なにも変わらない楽しい時間。
 チノの様子だけがおかしく、その他は何も異変がなかった。
 こうなると、とことんチノの様子の理由が分からなくなってくる。
 もう訊いてしまおうか。そう思ったタイミングで、ココアらの座るテーブルの横に千夜がやって来た。

千夜「ココアちゃん、ちょっといいかしら?」

 にこにこと満面の笑みを浮かべた彼女。
 上機嫌に言う彼女へ視線を向け、ココアもまた自然と笑みを浮かべた。

ココア「うん、大丈夫だよ。どうしたの?」

千夜「フフ、大したことではないけど、ちょっと、クイズをしてみない?」

ココア「クイズ? 珍しいねー。いいよ」

 漫才などなら今までもあったのだが――クイズは珍しい。
 のほほんとした気分で快諾するココア。千夜は目を細め、クスッと笑った。

千夜「間違ったらちょっとした罰ゲームね」

千夜「じゃあ、一問目」

千夜「あ、い、う、え、お。この中で私が一番好きな文字はなんでしょう?」

ココア「――へっ? え、ええと」

 選択
 1・あ
 2・い
 3・う
 4・え
 5・お

 安価↓1
394 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/15(月) 14:59:28.91 ID:Nc8gzLI+o
3
395 : ◆AUBDdXHTBU [saga]:2015/06/17(水) 23:48:35.31 ID:eCn34t0R0
【3・え】

ココア「え……かな?」

 かすかに抱く違和感。
 なんてことはない、いつもの千夜の突然の思いつき。
 なのにココアの心はざわめき、簡単なクイズ一つ答えるだけでも緊張してしまう。
 笑顔の千夜におそるおそる答えを告げると、千夜はにっこりと笑った。

千夜「正解! さすがね、ココアちゃん」

 どうやら正解したらしい。
 ココアはホッと息を吐いた。

千夜「じゃあ二問目」

ココア「はいっ!?」

 が、まだ続くらしい。
 素っ頓狂な声を上げるココアへ、千夜は笑顔のまま告げる。

千夜「私がお弁当を食べるとき、一緒に箸をかじっちゃった日は何月の何日でしょうか?」

 365択。実際は学校に行った日なのでもっと幅は狭くなるだろうが……。


 選択
 1・4月24日
 2・5月13日
 3・11月30日
 4・6月3日
 5・2月30日

 安価↓1
396 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/18(木) 01:29:06.99 ID:Xi7Bt0nFo
選択肢の番号と中身がずれてるけどええんかな?
安価有効なら1で
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