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「蒼太、好きよ」 「-義姉さん、俺は・・・」 -
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1 :
◆doNEqSHiGo
:2014/10/08(水) 20:04:13.48 ID:6ENTx2ehO
ー小学二年生のある時、お母さんがいなくなった。
お父さんは、「お母さんとは、離婚したんだ。蒼太は、これからはお父さんと2人で暮らすんだ」と言った。それ以外くわしく教えてくれなかったけど、なんとなく、うわきかなあ、と思った。よくテレビで聞くし。
それに健太くんや、ともきくん、さやかちゃんのお母さんたちも、みんなで、そんなことを言ってたし。
小さな商店がいの中の通路で、小学校から帰ってきたぼくに気がつくと、お母さんの話をしてた人たちは、何でか知らないけど、みんなしてあわてたようにおかしをくれたり、「蒼太くん、こまったことがあったら、何でも言うのよ?」と言って、まるでかくしごとをしてるみたいにさっさと帰ってしまう。
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渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
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佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/
笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/
2 :
◆doNEqSHiGo
[sage]:2014/10/08(水) 20:06:06.22 ID:6ENTx2ehO
ぼくは、知っている人たちが知らない人になってしまったように感じて、こわくて、よく泣いてしまった。そんなとき、友だちの中で1番近くに住んでいて、1番仲よしだったさやかちゃんが、よくぼくをはげましてくれた。「大丈夫! あたしがいるから。そうちゃんはあたしが守ってあげるからね!」って言ってくれた。でも、はげます時にせ中を強くたたくのはやめてほしかった。でも、やっぱりうれしかった。
お父さんも、お仕事でいそがしいはずなのに、たくさんぼくと遊んでくれた。ぼくがさみしくならないように。お父さんと2人だけでも、悲しくならないように、色んな所につれて行ってくれた。だからぼくは、お母さんがいなくても、お父さんがいたから、さみしくなかった。
3 :
◆doNEqSHiGo
[sage]:2014/10/08(水) 20:08:04.59 ID:6ENTx2ehO
ーそれから、三年後。五年生になった年の夏休み。今までと同じだと思っていた夏休みのある日。お父さんが、新しい家族を連れてきた。
お昼の少し前。宿題をしていたオレに、お父さんは大事な話があると、リビングに座らせ、少しそわそわしながら、となりの和室に声をかけた。「おい、入っていいぞ!」
すると、ふすまを開けて、和室から人が入ってきた。お父さんよりも少し若い女の人。薄茶色の短い髪の人で、にこにこと優しそうな人だった。
それから、オレより、少し年上くらいの女の子。黒く長い髪で、すらっとしていて、背が高くて、かっこよく見えた。そしてそれぞれがリビングに入ってきて、オレと父さんと、テーブルを挟んで反対側にそろって座る。
新しい家族は、2人だった。
4 :
◆doNEqSHiGo
[sage]:2014/10/08(水) 20:10:02.80 ID:6ENTx2ehO
お父さんは、ぽかんとするオレを笑いながら、
「蒼太。優子さんと、成美ちゃんだ。今日から、俺達の家族だ。仲良くしろよ」
と言った。すると、お父さんより少し若い女の人が、
「こんにちは、蒼太くん。初めまして、音羽優子、って言います。すぐには無理かもしれないけれど、ゆっくりとでも、蒼太くんと仲良くなれるように頑張るから、よろしくね」
そう言って、女の人-優子さんは優しく笑った。そして、となりの女の子をひじでつついて、「ほら、成美も挨拶して」
成美、と呼ばれた子は、少し緊張した様子で、
「こ、こんにちは、蒼太くん。私、音羽成美って言います。今、中学二年だから、三歳年上です。仲良くしてね?」
と挨拶してくれた。
でも、立て続けに自己紹介されても、オレは、「は、はい」とか、「こちらこそ」しか言えなかった。
5 :
◆doNEqSHiGo
[sage]:2014/10/08(水) 20:10:50.37 ID:6ENTx2ehO
お父さんは、そんなオレを見てまた笑って、
「ほら、次は蒼太の番だぞ」
と言った。
「ぁ・・・その・・・、」
まだよく分からない状況で、知らない人と話すことに少しだけはずかしさを感じながら、
「椎名蒼太です。五年生です。よろしくお願いします・・・」
とだけ言った。多分、声が小さくて、ボソボソしゃべってるようにしか聞こえなかったと思うけど、2人とも、にこりと笑ってくれた。
6 :
◆doNEqSHiGo
[sage]:2014/10/08(水) 20:12:40.76 ID:2BIY4y2OO
お父さんは、それを満足げに見て、
「よし! まあ、お互いに色々聞きたいことや話したいこともあるだろうが、それは昼ご飯を食べながらにしよう」
と言って、立ち上がった。対面に座る優子さんも立ち上がって、
「あ、それなら私が作りますよ」
「お、そうか? なら、手伝いをお願いしてもいいか?」
「ええ、もちろん。蒼太くん、成美の面倒見ててくれる?」
優子さんに言われて、何て返したらいいのか分からなくて、取り敢えず笑ってた。そうしたら成美さんが、
「お母さん! 変なこと言わないでよ!」
って、赤くなりながら言っていた。
7 :
◆doNEqSHiGo
[sage]:2014/10/08(水) 20:14:46.93 ID:2BIY4y2OO
そんなやりとりを見てたお父さんは、
「ははは! 成美ちゃんなら大丈夫だろう。蒼太、お前も面倒掛けるなよ? ちゃんと成美ちゃんの言うこと聞いて、いい子にしてろよ?」
「わ、分かってるよ!」
「あら、蒼太くんはしっかりしてるから大丈夫よ。それより、成美はまだまだ子どもっぽくて・・・」
「いやいや、蒼太もまだまだ子どもだから・・・」
なんて、子ども達にとって恥ずかしいことを言いながら、大人2人はキッチンに入ってしまった。
リビングに残されたオレと、成美さんは、少し気まずい空気だった。
8 :
◆doNEqSHiGo
[sage]:2014/10/08(水) 20:17:01.25 ID:2BIY4y2OO
何となく居心地が悪くて、俯いていると、
「えっと、蒼太くん」
と、成美さんに声を掛けられた。
「あ、な、なんですか?」
ちょっと焦って、少し変な声が出てしまった。また恥ずかしくなっていると、成美さんはくすくすと笑って、
「ふふ、敬語じゃなくていいよ。普通にお父さんと話すように話していいから、ね?」
「は、はい」
「はい、じゃなくて?」
「あ、う、うん」
「うん、おっけー」
そういって、指で輪っかを作ってにこりと笑った成美さんに、少し、ほんの少しだけ! ドキリとした。そういえば、年上の女の子、ましてや中学生の女の子と話したことなんてなかった。中学生っていうだけで、三個しか違わないのにけっこう大人っぽく見えるから不思議だ。
9 :
◆doNEqSHiGo
[sage]:2014/10/08(水) 20:18:08.59 ID:2BIY4y2OO
と、成美さんは、少し申し訳なさそうな顔になると、
「ごめんね、蒼太くん。いきなりでびっくりしたでしょ?」
「あ、そんなことないで・・・、ないよ。前から、そんなことを聞いてたから」
「え? そうなの?」
「うん」
これは、嘘じゃなかった。前から時々、夕飯の時とかに、「もうすぐ、新しい家族が出来る」とは言っていた。でも、
「さすがに、いきなり一緒に暮らすことになるとは思ってなかったけど」
「あ、あはは、そうだよね」
普通、こういうことは事前に話しておくべきだと思った。
10 :
◆doNEqSHiGo
[sage]:2014/10/08(水) 20:21:16.28 ID:2BIY4y2OO
「確かに、いきなりこういうことされたら、驚いちゃうよねえ」
成美さんはそう言って、腕を組んで、うんうんと頷いていた。
なんでも、優子さんと成美さんは、前からこうなることは知っていたらしい。だけど、お父さんが、オレには内緒にしておこうと言って、こういうことになったとか。
ふと、気になったことを、成美さんに聞いてみた。
「お父さんと優子さん、再婚? するのかな」
成美さんは、んー、と少しだけ考えると、
「まだ、確定ではないみたい。本人達はその気らしいんだけど、私や蒼太くんもいるし、実際に皆で一緒に生活してみて、大丈夫だと思ったら、その時に正式に再婚するみたい。今は丁度夏休みだし、いい機会だから一緒に暮らしてみようって、宏明さんが」
と教えてくれた。お父さんの下の名前を呼ばれるのは、少しだけ不思議な感じがした。
「ふーん。そうなんだ・・・」
オレはそれだけ答えて、また俯いた。
11 :
◆doNEqSHiGo
[sage]:2014/10/08(水) 20:23:02.26 ID:2BIY4y2OO
お母さんは、浮気をして出て行った。それは、お母さんが悪いし、お父さんが可哀想だと思ってた。それに、その後もお父さんは、オレのことを一生懸命に育ててくれた。仕事で忙しくても、洗濯や料理や掃除をいつもやってくれていた。オレも手伝ったけど、まだまだ子どもで、足を引っ張ることの方が全然多かった。それでも、笑って、「手伝ってくれて有り難うな! 助かるよ!」と、いつも褒めてくれた。そんなお父さんが、もう一度結婚して、幸せになるなら、オレは絶対に応援できるだろうと、そう思っていた。
だけど、実際にお父さんが知らない女の人を連れてきたとき、うまく言えないけど、心がもやっとした。優子さんも成美さんも、いい人なんだろうな、とは思う。だけど、何となく、お母さんや、お姉ちゃんというような、“家族”になるのは、嫌だった。
12 :
◆doNEqSHiGo
[sage]:2014/10/08(水) 20:25:28.67 ID:2BIY4y2OO
確かに、お母さんは悪い。もうお母さんなんて許してやるもんかと思ったこともある。でも、浮気はしたけれど、お母さんはお母さんだ。いい思い出だって、沢山ある。いきなり、新しいお母さんと言われても、納得は難しいな、と思った。
ああ、ドラマでよくある考え方って、こういう考え方なのかな、って、どこか他人事のように思った。
13 :
◆doNEqSHiGo
[sage]:2014/10/08(水) 20:28:13.48 ID:2BIY4y2OO
「蒼太くん? どうかした?」
「あ、いや。何でもないです」
「そうですか? ならいいですけど」
そういう成美さんは、何故かちょっとだけ不機嫌そう。少しだけ理由を考えて、すぐに気付く。
「あ、えっと・・・」
「どうしましたか?」
「な、何でもないよ」
「そうっ。なら良かった」
そして、またにこりと笑ってくれた。
また、ドキリとした。少しだけ、少しだけだけど。
14 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2014/10/12(日) 01:21:42.23 ID:ha/2NZYCo
まだかね?
15 :
◆doNEqSHiGo
:2014/10/14(火) 20:28:48.66 ID:0Ls0uW18O
それから少しすると、キッチンからお父さんと優子さんが出てきた。それぞれ二枚ずつお皿を持っていた。
「お待ちどうさま、2人とも。ほら、お昼ご飯出来たわよ」
そう言って、優子さんとお父さんがオレたちの前にお皿を置いた。
「今日の昼ご飯はサラダうどんだ!」
お父さんはそう言って、オレの隣にどかっと腰を下ろした。言われてお皿の中を見たら、瑞々しいトマトやキュウリ、レタス。それから、ベーコンに玉子。沢山の具が乗せてあって、その下によく冷えたうどんが入っていた。すごく美味しそうだった。
16 :
◆doNEqSHiGo
:2014/10/14(火) 20:29:56.19 ID:0Ls0uW18O
等分に切られたトマトを、船みたいだと思って眺めていると、優子さんも成美さんの隣に腰を下ろして、箸を持った。
「さ、それじゃあ頂きましょうか」
そして、皆で手を合わせて、
『いただきます!』
優子さんと成美さんと、初めて食べる食事は、緊張も少しだけあったけど、楽しかった。
2人の色々な話を聞いて、オレとお父さんも、色々な話をした。流石に、お互いの今までの家庭のことなんかは聞かなかったけど。
食事が終わる頃には、互いに大抵のことは質問し終えていた。
17 :
◆doNEqSHiGo
:2014/10/14(火) 20:32:00.53 ID:0Ls0uW18O
今回の食事で分かったこと。
優子さんは、若く見えて、実はお父さんと同い年だと言うこと。(本人は秘密にしたがっていたけど、40歳だそうだ。全然そうは見えない。)
それから、優子さんは普段、ウチから電車で三駅ほど行った町にあるデパートの雑貨屋さんで働いているらしい。店長だいこう? って言っていたけど、よく分からなかった。多分、すごいんだと思う。
成美さんは、優子さんが働いているデパートがある町の中学校に通っている、って言っていた。元々住んでいた家が、その町にあるらしい。
中学校では陸上部に入っていて、短距離走の選手だそうだ。元々走るのが好きで、陸上部を選んだらしい。去年は、一年生ながらも県大会に出場していて、今年こそは全国大会に行くんだと、楽しそうに話していた。
18 :
◆doNEqSHiGo
:2014/10/14(火) 20:32:51.39 ID:0Ls0uW18O
夏休みも練習はあるから、休み中はこの家で暮らしながらも、練習には電車を使って行くって。
正式に再婚が決まったら、この町の中学校に転校することも考えているらしい。(これは、成美さんがこっそりと教えてくれた。お父さんと優子さんは、向こうにこのまま通わせようかと考えているらしい。)
この町の中学校に通うなら、一緒の学校になるのかな、と一瞬考えたけど、すぐに成美さんは三つ上なのだと思い出した。どう頑張っても、同じ学校に通うのは不可能だった。少し残念・・・残念違う。残念とかじゃなくて、心配。もし本当に転校してくるのなら、知らない人たちばかりだろうけど、もしオレが一緒に通っていたら、少なくともオレ1人分は不安が和らぐと思う。そう、それだけ。ただ心配なだけ。
19 :
◆doNEqSHiGo
:2014/10/14(火) 20:34:09.32 ID:0Ls0uW18O
そうやって、聞いた情報をまとめていると、優子さんがお皿を持ちながら立ち上がって、
「あ、そうだ。ねえ蒼太くん。良かったら、成美にこの辺を案内してあげてくれる? 私は何回か来てるけど、この子は初めてだから」
と言った。お父さんも、
「ああ、そうだな。これから約一月生活するんだ。コンビニとか本屋がどこにあるのかとか、駅の場所とか、知っておいた方が楽だろう。蒼太、案内してやれよ」
と言った。
「うん、分かった。それじゃあ、行こうか」
と、成美さんに声を掛けると、
「え、すぐ!?」
と、驚かれた。こういうことは、すぐに終わらせた方が後々楽だと思うんだけど。
「すぐだと、まずい? 何か用事でもある?」
と訊くと、
「あ、ううん! そうじゃないの。でも、えっとね? 一応、着替えたりしたいから、少し待っててくれないかな・・・?」
と言われた。今着てる服ではダメなのだろうか。普通の服に見えるけど。
20 :
◆doNEqSHiGo
:2014/10/14(火) 20:34:48.39 ID:0Ls0uW18O
すると、お皿を器用にまとめて抱えた優子さんが笑いながら、
「あら、成美もそういう年頃かしら?」
「お、お母さん! 茶化さないでよ! そんなんじゃないもん!」
「あら、いいじゃない照れなくても。少しはいい格好しないとね? せっかく2人でお出掛けなんだから」
「だから、違うってば!」
楽しそうにからかう優子さんと、真っ赤になって否定する成美さんを見ていて、ぽかんとしていると、後ろからお父さんに肩を叩かれ、
「蒼太、女の子は色々と準備があるんだから、しっかりその時間を作ってあげないとダメだぞ?」
と言われた。
21 :
◆doNEqSHiGo
:2014/10/14(火) 20:36:16.87 ID:0Ls0uW18O
「よく、解らないんだけど」
と言うと、
「はは、まだ早いか。まあ、成美ちゃんくらいの年になれば解るだろ」
と、頭をくしゃくしゃと撫でられた。
そうこうしていると、優子さんと成美さんのケンカ(?)は終わったらしく、
「それじゃあ蒼太くん、少し待っててね! すぐ戻るから!」
と言って、成美さんが和室に引っ込んだ。優子さんも、オレに一言、よろしくね、と言うと、キッチンに行ってしまった。
22 :
◆doNEqSHiGo
:2014/10/14(火) 20:36:55.75 ID:0Ls0uW18O
お父さんと2人になったところで、ふと気になったことをお父さんに訊いた。
「ねえ、優子さんと成美さん、部屋は?」
「ああ、優子さんは一階の、客間。どうせ客なんてろくに来ないしな。あの部屋を使って貰う。成美ちゃんは、二階のお前の隣の部屋な。あそこも、物置みたいになってるし、丁度いいだろ」
「そっか。でも、まだあの部屋、荷物いっぱいあったと思うけど」
「ああ、あれは全部お父さんの部屋に移す。そんなに多くはないしな。何とかなるだろ」
それでも、あれを全部運ぶのは大変だと思うけど。
「手伝うよ?」
「ははっ、いいよいいよ。お父さんがちゃんとやるから。お前の仕事は、成美ちゃんにしっかりとこの辺りを案内することだ。それを、まずはしっかりとやれよ」
「分かった」
頷くと、よし、と言って、また頭を撫でられた。
23 :
◆doNEqSHiGo
:2014/10/14(火) 20:39:13.51 ID:0Ls0uW18O
お父さんが片付けの為に二階に上がると、入れ替わるようにして、和室から成美さんが出てきた。白いスカートに、青のしましまが入ったTシャツを着ている。
「ど、どうかな? 変じゃない?」
と、言われても、中学生の服装、ましてや、女の子の服装なんて分かるわけがない。
でも、黙っていると、成美さんは少しずつ不安そうな顔になってくる。慌てて、何かを言わなきゃと思い、でも、可愛いとか言うのは恥ずかしくて、
「に、似合ってる!」
と、何とかそれだけを言った。それだけでも恥ずかしかったけど。
でも、成美さんはそれだけの言葉でもよかったらしく、
「そ、そっか! よかったあ・・・」
と、安心したような顔をした。
キッチンの方から、優子さんがくすくすと笑う声が聞こえたような気がした。
24 :
◆doNEqSHiGo
:2014/10/14(火) 20:41:25.51 ID:0Ls0uW18O
「それじゃあ、行ってきます」
二階にいるお父さんと、見送りに玄関まで来てくれた優子さんに声を掛ける。
二階から、扉を開ける音と、足音がして、
「ああ、蒼太。暗くなる前には帰って来いよ」
「うん、分かってる」
優子さんも、成美さんの前に立って、
「成美、蒼太くんからはぐれないようにね」
「そこまで子どもじゃないですよーだ」
と、そんなやりとりをしていた。
それから、優子さんはオレの方を見て、
「それじゃあ蒼太くん。成美のこと、お願いね」
「はい。行ってきます」
「行ってきまーす」
「はい、行ってらっしゃい。気を付けてね」
そう言って、優子さんはひらひらと手を振ってくれた。その姿に、ほんの一瞬だけお母さんを思い出した。
25 :
◆doNEqSHiGo
:2014/10/14(火) 20:43:53.66 ID:0Ls0uW18O
町を案内すると言っても、どちらかと言えば田舎なこの町は、特に案内が必要になるような場所は少ない。 取り敢えず、家からしばらく歩いたところにある駅、駅前にある商店街。この二カ所だけで、この町で必要な情報はほとんどだ。他には山か住宅街しかない。
商店街の中のお店を一通り案内して、喫茶店で一息着くことにした。成美さんが、食べたいケーキがあるらしく、一休みに、と、入ることにした。
通りに面した窓際の席に座って、チョコドーナツを食べていると、向かいの席に座った成美さんが、アイスティーにミルクを入れて混ぜながら、
「ねえ、蒼太くん。次は、蒼太くんの通ってる小学校と、この町の中学校がみたいな」
26 :
◆doNEqSHiGo
:2014/10/14(火) 20:45:49.85 ID:0Ls0uW18O
「え? 学校? 誰もいないと思うけど」
部活をやってる人たちはいるかも知れないけれど、基本的に午前中で練習は終わるはずだったと思う。
それを説明すると、
「いいのいいの。ほら、私、中学校はこっちに通いたいし、蒼太くんの学校も、一度行ってみたいの」
中学校は分かるけど、オレの小学校は面白くも何ともないと思うんだけど。
「小学校見て、どうするの?」
「いいからいいから。ね、お願い!」
と、手を合わせてお願いされてしまった
27 :
◆doNEqSHiGo
[sage]:2014/10/14(火) 20:47:50.14 ID:0Ls0uW18O
>>14
コメント、ありがとうございます。お待たせしました。遅筆ですが、がんばります。
今後とも、よろしくお願いします
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