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俺「サンタが彼女連れてきた」 -
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1 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/01(木) 23:05:57.58 ID:MUPEd6Cl0
それは12月25日のこと。
男「……朝か」
女「あら、起きました?」
男「……誰?」
女「彼女です!」
女「クリスマスプレゼントの、彼女です!」
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1420121157
1.5 :
荒巻@管理人★
(お知らせ)
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諸君、狂いたまえ。 @ 2024/04/26(金) 22:00:04.52 ID:pApquyFx0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714136403/
少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714054765/
渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714052788/
二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714049241/
佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/
全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/
君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/
笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/01(木) 23:10:54.00 ID:MUPEd6Cl0
男(……不審者、だよな)
男(通報する気にもならん)
男(寝ぼけてるのか)
男(目元にほくろ、整った顔立ち)
男(初恋の女の子によく似ている)
男「」目ごしごし
彼女「?」
男「あー、ガチか」
男「確か昨日」
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/01(木) 23:15:22.49 ID:MUPEd6Cl0
12月24日
俺(サンタを信じなくなったのはいつからだろう)
俺(確か4歳のころ)
俺「ねえマッマ、うちえんとつないけどサンタさんくるん?」
母「サンタさんはね、うん。換気扇から来るのよ」
俺(……どんな妖怪だよ)
近所の家「メリークリスマース!」
俺「サンタさんなんていねえんだよくそがき」ぼそっ
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/01(木) 23:18:04.59 ID:MUPEd6Cl0
俺(自分に持っていないものを)
俺(持ってる人が妬ましい)
俺(そんな俺が一番心が貧しいんだろうな)
俺(サンタさんが胡散臭く思えてから)
俺(他人っていう存在もなんだか胡散臭く感じてきて)
俺(当然彼女なんてできるはずもなく)
俺(大学生になって独り暮らしをすれども)
俺(孤独は埋まらない)
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/01(木) 23:23:55.47 ID:MUPEd6Cl0
アパート
俺「ああもう! 世の中糞だ!」
ドン!
俺「ひっ! リアル壁ドンきた!」
俺(あーもう、ふろでも入るか)
俺(いや、洗濯物を先に取り込むか)
がらっ
俺(雪か)
俺(サンタさん……もしいるんなら)
俺「サンタさん、彼女をください」
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/01/01(木) 23:27:08.05 ID:+pTwbpsCO
ウチにも下さい
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/01(木) 23:27:15.27 ID:MUPEd6Cl0
12月25日
俺「え、ガチで彼女!?」
彼女「はい! 彼女です!」
俺「彼女ってことは、つまり、恋人?」
彼女「はい、恋人です」にこっ
俺「……悪い冗談はよしてくれ」
俺「早く出て行って……」
俺(ん? なんだか懐かしい匂いが)
彼女「みそ汁はお嫌いですか?」
俺「……」
俺「嫌いじゃないです」
「味噌汁は、お嫌いですか?」
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/01(木) 23:28:46.55 ID:MUPEd6Cl0
彼女「召し上がれ」
納豆を混ぜ、タレとカラシを投入し、ごはんにかける。
炊きたてのごはんと、懐かしい味の味噌汁が、胃袋を満たす。
十分も経たずに、茶碗とお椀は空になってしまった。
俺「ありがとう、うまかったよ」
彼女「いえいえ、彼女ですから」
俺(台所で食器を洗う音が聞こえるなんて)
俺(なんてすばらしい朝だ)
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/01(木) 23:30:44.52 ID:MUPEd6Cl0
俺「いいのか? ここまでしてくれて」
彼女「彼女ですから」
彼女は明るい声でそれしか言わない。
「俺さん、今日のご予定はなにか?」
俺(さりげなく下の名前で)
俺(顔が熱い)
俺「いや、とくにないけど……えーっと」
俺(なんで俺、今の状況を異常に感じてないんだろう)
俺(いや、それよりも)
俺「君の、名前は?」
彼女「彼女です!」
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/01(木) 23:32:48.44 ID:MUPEd6Cl0
俺「いや、それ名前じゃないし」
彼女「そう言われましても……」
俺「なにか、君に合う名前をつけよう」
彼女「そんな、かまいませんよ」
俺「そんなこと言ったってなあ」
俺(整った黒髪ロングヘアー)
俺(サンタのコスプレ)
俺(スラっとした足に、綺麗に切られた足の爪が左右十枚ずつ)
俺(美人だ)
俺(故に特徴がない)
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/01(木) 23:34:30.55 ID:MUPEd6Cl0
俺「彼女、彼女なあ」
俺(彼女、英語では?)
俺「よし」
俺「君は今日からシーちゃんだ」
シーちゃん「はい!」
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/01(木) 23:36:37.58 ID:MUPEd6Cl0
一日目
シーちゃん「今日はクリスマスです」
俺「お、そうだな」
シーちゃん「デートをしましょう!」
シーちゃん「クリスマスと言えばデートです!」
俺「なるほど、いい案だけど」
俺「その格好は恥ずかしくないか?」
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/01(木) 23:42:08.44 ID:MUPEd6Cl0
シーちゃん「え? 似あってません?」
俺「いや、そういう問題じゃない」
俺「さすがにサンタコスでデートはちょっと」
シーちゃん「なるほど」
くるり
シーちゃん「どうでしょう」
俺「おお! ただの赤いダッフルコートと緑のスカートに!」
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/01(木) 23:44:39.31 ID:MUPEd6Cl0
ショッピングモール
俺「とりあえずきたはいいけど」
シーちゃん「あ! 俺さん! このマフラー俺さんに似あうと思います!」
俺「あ、ほんとだ。いいね」
俺(女の子と歩くのは初めてだけど)
俺(なんとなく、リラックスできてるよな、俺)
俺(不思議だ)
俺「マフラー困ってたし、あー、でも、」
俺「いいわ、持ち合わせあんまりねえし」
シーちゃん「そうですか」
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/01(木) 23:46:42.69 ID:MUPEd6Cl0
俺「お昼はあのカフェにするか?」
シーちゃん「いいですね! あ! オムライスが一押しみたいですよ!」
店内
俺「美味しいな」
シーちゃん「はい! とても」もぐもぐ
俺(子供みたいに笑うし、食べるな)
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/01(木) 23:48:12.99 ID:MUPEd6Cl0
再びショッピングモール
俺「どしたの?」
シーちゃん「あ、このペンダント、かわいいなあって」
俺「ふーん」
俺(今日は、特別な日)
俺「買ってやるよ」
シーちゃん「え! いいんですか!」
俺「特別な日だしな」
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/01(木) 23:50:34.36 ID:MUPEd6Cl0
シーちゃん「あの、実はこれ、サプライズのつもりだったんですけど」ごそごそ
俺「あ、それ」
シーちゃん「マフラー、買っておきました」
俺「ほんとに? いいの?」
シーちゃん「特別な日、ですから」にこ
俺(天使や)
俺(夢だとしたら、さめるまで、楽しんでやろう)
18 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/01(木) 23:52:16.71 ID:MUPEd6Cl0
二日目。十二月二六日。
彼女と手をつないでみた。
シーちゃん「冷たくないですか?」
俺「正直、冷たい」
俺(雪みたいに白い。そして冷たい。死んでるみたいだ)
俺「でも、気持ちいい」
彼女と手の指と指を絡めた。
俺(心の中のどんよりとした何かが)
俺(溶けていくみたいだ)
19 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/01(木) 23:54:12.65 ID:MUPEd6Cl0
三日目。十二月二十七日。
彼女と昔の話をした。
シーちゃん「俺さん」
俺「どうした?」
シーちゃんの作る朝食を食べることにもだんだん慣れてきた時だった
シーちゃん「あなたは、今までに恋人がいたことは、ないのですか?」
俺(嫌味のつもりか? 胃が痛い)
俺「……ないな」
シーちゃん「好きな人がいたことは?」
俺「……」
20 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/01(木) 23:57:55.72 ID:MUPEd6Cl0
俺「気になるのか?」
シーちゃん「はい、とても」
俺「どうしてもか?」
シーちゃん「はい!」
俺(浮世離れしているところもあるけど、どこか子供だなあ)。
俺「……いつかな」
シーちゃん「えー、なんでですかー! 気になります!」
俺(最近打ち解けてきているのか、押しの性格が強くなってきてるぞ)
俺(サンタさんもなんてものを派遣してくれるんだ)
俺「今日はどこ行きたい?」
シーちゃん「誤魔化さないでください!」
そのまま俺は、彼女の尋問に丸一日耐えることとなった。
21 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/02(金) 00:00:53.25 ID:mTWD1rJD0
四日目。十二月二十七日。
俺(夢を見ていた)
俺(昔の夢だ)
俺(初恋の女の子が出てきた)
俺(しばらく見ない間に、顔も髪型も声も随分忘れてたんだな)
俺(そうだ、こんな顔だったなと納得する)
俺(初恋の子は、いつものように道路の上で横たわっていたのだ)
俺(なぜ、彼女は横たわっていたんだっけ)
俺「そんな夢を見たんだ」
「
シーちゃん「不思議な夢ですね」
22 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/02(金) 00:04:13.37 ID:mTWD1rJD0
俺「まあ、その子が俺の初恋の子なんだけどな」
シーちゃん「なるほどですね、私なんか妬けちゃいます」
俺(本心から言っているのだろうか)
俺(そもそもこの子は人間なのか)
俺(もしかしたら、とんでもないオカルト展開に巻き込まれているんじゃ)
シーちゃん「あっ紅茶こぼしちゃいました!」
俺(……取り越し苦労か)
俺「はい、布巾」
23 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/02(金) 00:06:16.69 ID:mTWD1rJD0
五日目。十二月二十八日。
親戚の居酒屋の従業員がバックれ、手が足りなくなったと昼過ぎに連絡があった。
伯父「すまねえ、きてくれねえか」
俺「あー、はいはい、了解」
シーちゃん「お出かけですか?」
俺「ああ、ちょっとバイトすることになった」
シーちゃん「晩御飯はどうします?」
俺「ああ、そうだな作っといてくれ」
24 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2015/01/02(金) 00:07:49.45 ID:mTWD1rJD0
居酒屋
俺「ちーっす」
?「いらっしゃーい」
俺(どこかで聞いたような……)
女「あ、俺君?」
カウンターの内側にいたのは、大学の同じ学科の女の子だった。
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/02(金) 00:10:10.74 ID:mTWD1rJD0
女「へー、ここ親戚だったのね」
俺「そうだな、ばあちゃんの兄ちゃんがやってて」
俺(とりあえず九時までがんばってくれとのことだ)
俺「まあ、高校時代にも何度か手伝いには来ていたし、仕事自体は慣れてるよ」
女「私も今週から働き始めたの」
俺「なんでここ?」
女「雰囲気が好きなのよ」
26 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/02(金) 00:13:27.07 ID:mTWD1rJD0
俺「確かに落ち着きやすいな」
俺「居酒屋というより、料亭みたいだし」
女「熱帯魚が泳いでてさ、びっくりした」
女「絵とか壺も飾られててきれいだし」
女「それに、時給もよかったし」
俺「そこかよ」
女「ねえ、ところでさ」
女「今晩、一緒にご飯食べてから帰る?」
俺「……」
俺「行こうか」
27 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/02(金) 00:16:10.65 ID:mTWD1rJD0
バイト終了
俺「ここのラーメン?」
女「そう! ここすっごいおいしいの!」
俺(……なんか、忘れてるような)
女「食べ歩きとかたまに一人でしたりするんだあ」
俺「来たことないな、近かったのに」
女「五本の指が入るわ」
俺「五本の指に入るだろ」
28 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/02(金) 00:19:09.33 ID:mTWD1rJD0
女「あはは、なんか意外」
俺「何が?」
女「ツッコミとかいれてきたし」
俺「普通だよ」
女「だってさ、俺君、あんまり人とかかわろうとしないというか」
女「一匹オオカミというか」
俺「なにちょっといい言い方してるんだよ」
俺(でも確かに、自分の中の何かが明るく開けてきている気がする)
俺(なんでだろ)
29 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/02(金) 00:22:33.54 ID:mTWD1rJD0
五日目。十二月二十八日。
俺「……あれ、いつの間に寝てたんだろ」ごしごし
俺(? ソファ? しかも俺の部屋のじゃない)
俺(嗅いだ事のない部屋のにおい)
俺(白を基調とした小奇麗な家具)
俺「どこだここ」
女「うーん、おはよ」
そうだ、女さんの家だ。
30 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/02(金) 00:25:34.23 ID:mTWD1rJD0
俺(机の上には、何本か空けたチューハイやビールの缶)
女「いやー、昨日は飲んだね〜」
俺「あー、そっか」
俺(ラーメンを食べた後、コンビニで酒を買って)
俺(女さん家で宅飲みをして、そのまま寝たのか)
俺「やべ、連絡してね」
俺(心配してるかなあ、あいつ)
女「連絡? 男君ってさ」
連絡帳から自宅の家電に電話をかける。コール音が鳴り続けた。
女「一人暮らしじゃないの?」
31 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/01/02(金) 00:26:44.37 ID:HI+9AwWRO
サンタの彼女かと思った
ふざけんなよテメェな展開かと
32 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/02(金) 00:27:00.69 ID:mTWD1rJD0
俺「あ」
俺「……ん?」
俺「えーっと、あ」
俺「そういえば、そっか」
俺(俺、誰に電話してたんだろ)
33 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/02(金) 00:28:40.67 ID:mTWD1rJD0
八日目 十二月三十一日
俺(何から八日目なんだろう)
俺(俺は何から日付を数えているんだ?)
テレビ「デデーン! 田中、アウト」
年末ということで、彼女と俺はガキ使をこたつで見ていた。
俺「年越しそば食いたいな」
「あー、そろそろ食べる?」
彼女は立ち上がり、鍋のお湯を沸かし始めた。
俺「ありがとう」
俺はお湯を沸かす彼女の後姿をニヤニヤしながら見た。
俺「女さん」
女「いえいえ」
そう、名前を呼んだ。
もう少しで今年も終わりだ。
34 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/01/02(金) 00:29:54.40 ID:K4Eu45CJ0
>>10
>足の爪が左右十枚ずつ
あかん
35 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/02(金) 00:32:10.68 ID:mTWD1rJD0
九日目 一月一日。
女さんと近くの神社まで初詣に来た。
俺「よかったな、バイトなくて」
女「ほんと、年末年始は休みだよやっぱり」
女「俺くんそのマフラー似あってるね」
俺「そうか? ありがと」
俺(これ、いつ買ったんだっけ)
女「俺君は、今まで彼女がいたことはないの? こういうところに来るさ」
俺「いや、そんなことは」
俺(……なんだろ、この大事なことを忘れている感じは)
俺(彼女なんて、できたことないだろ)
俺「ないな」
女「ふーん」
36 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/02(金) 00:35:42.76 ID:mTWD1rJD0
>>34
ミス、許せ
俺「女さんは?」
女「えー……うーん、ないことも、なかったかな」
俺「ほう」
俺(まあ、女さん美人だし)
女「というかさ、俺君って女の子苦手じゃなかったっけ」
俺「あ、入学当時言ったな、そう言えば」
俺(あれ? なんで平気で話せるようになったんだろう)
俺「うーん、よくわからん」
37 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/02(金) 00:38:05.80 ID:mTWD1rJD0
十一日目 一月三日。
目が覚める。
カーテンの隙間から光が漏れている。
いつもどおりみそ汁の香りが部屋に満ちている。
机の上に並ぶのは納豆のパックに、ご飯に、みそ汁だ。
うん、今日もいい朝だ。
俺「おはよう」
誰もいないのに、なんで毎日言っているんだろう
今日は女さんと映画に行く約束をしている。
急いで準備をしなくては。
38 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/02(金) 00:40:43.68 ID:mTWD1rJD0
十四日目 一月六日。
俺(また今日から大学)
俺(憂鬱だ)
俺(休み明けってのはだいたい憂鬱なもんだけど)
女「おはよ! 俺くん!」
俺(そうだ、俺には)
俺(佐藤さんがいるじゃねえか)
39 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/02(金) 00:44:14.86 ID:mTWD1rJD0
>>38
ミス 佐藤→女
十六日目 一月八日。
「つまりだよ」
「お前と女さんが釣り合わないってことを俺は言いたいわけさ」
「一応俺も女さんとは高校は同じで、彼女と同じ大学に入るために、必死で勉強もしたんだぜ」
「知ったこっちゃないだろうな」
「でもよ、高校時代女さんと一番仲が良かったのは俺なんだぜ?」
「なあわかるだろ?」
俺(昼休み、ずっとこんな話が続いてる)
男「なあ、冬休みになにがあったか知らねえけどよ、女とあんまべたべたすんなよ」
40 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/02(金) 00:47:27.23 ID:mTWD1rJD0
俺「別に付き合ってるわけじゃないんだろ」
男「昔付き合ってたさ」
俺「昔の話だろ?」
男「いや、あれは受験に集中するから別れたんだ」
俺(まあ、よくある理由だけど)
俺(どっちにしろ、かなり気持ち悪いなこいつ)
俺(それに、俺には彼女がいるry)
俺(あれ……いや、いないだろ、できたことすら)
41 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/02(金) 00:49:14.84 ID:mTWD1rJD0
男「どうしたんだよ、ボーっとしてよ」
俺「いや、別に」
男「とにかくだ、俺は今日彼女に告白する」
男「彼女の返事は決まっているだろう」
男「だからお前は金輪際、あいつにかかわるな」
42 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2015/01/02(金) 00:50:15.11 ID:mTWD1rJD0
俺は、何も考えることもなく、無感情に口を開いた。
俺「ああ、わかったよ」
俺(気持ち悪いやつだ)
43 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/02(金) 00:52:54.97 ID:mTWD1rJD0
俺(今日の晩飯はさんまの塩焼きだ)
俺(こんがりときれいな焼き色がついたさんまの横に、大根おろしが盛られている)
俺(ご飯もみそ汁もばっちりだ)
俺「俺は、別に女さんと付き合っているわけじゃない」
誰にいうわけでもなく、口を動かす。
俺「別にあいつと女さんが付き合おうと、俺にとってはどうでもいい」
さんまに箸で亀裂を入れ、身をつまみ口に運ぶ。うまい。
俺「そうだろ?」
シーちゃん「さあ、どうなんでしょう」
44 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/02(金) 00:54:18.03 ID:mTWD1rJD0
声が聞こえた。
どこからだ?
目の前だ。
目の前の椅子を凝視する。
そこには、彼女が、シーちゃんがいた。
最初から、ずっとそこにいた。
消えていたものが出現したようでもなく、当たり前のようにそこにいた。
45 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2015/01/02(金) 00:56:58.32 ID:mTWD1rJD0
俺「シーちゃん」
シーちゃん「はい」
俺「君は、なんなの」
シーちゃん「彼女です」
俺「君さ、確かにずっといたんだよ」
シーちゃん「はい、ずっといましたよ」
俺「俺は、俺は」
自分の状況が分からない。
46 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2015/01/02(金) 00:58:59.51 ID:mTWD1rJD0
この間まで、ずっと料理が机の上に並べられていた。
それを彼女が作っている姿もきちんと見ていた。
だけど、それを認めていなかった。
時計の秒針のように、当たり前のものとして見ていた。
シーちゃん「そんな顔しないで下さいよ」
俺「ごめん」
シーちゃん「悲しいじゃないですか」
彼女は椅子から立ち上がり、俺の頭をそっとなでた。
氷の塊が、頭の上を滑っているようだった。
47 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2015/01/02(金) 01:00:28.48 ID:mTWD1rJD0
俺「昔、好きな子がいたんだ」
シーちゃん「はい」
俺「その子は放課後毎日、道路に寝そべっていたんだ」
シーちゃん「変わった子ですね」
俺「そうだ、変わった子だったんだ」
48 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2015/01/02(金) 01:03:29.96 ID:mTWD1rJD0
俺「暑い日も、寒い日も、その子は寝転がり続けたんだ」
俺「なんでってある日聞いたんだ」
俺「そいつさ、自分が車に轢かれるの待ってるって言うんだぜ?」
俺「おかしいだろ?」
女「おかしいですね」
シーちゃんは相槌を打つだけだ。俺は続ける。
49 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/01/02(金) 01:05:30.79 ID:rgR5SRAHo
ホラーかよ
50 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2015/01/02(金) 01:05:44.50 ID:mTWD1rJD0
俺「あの時、俺は何も言えなかった。何もしなかった」
シーちゃん「はい」
俺「その子は、それからどうなったのかは知らない。転校したとしか聞いてないんだ」
シーちゃん「はい」
俺「俺が何かしたら、変わったか?」
シーちゃん「そんなこと、私にきかれても困りますよ」
彼女の声色はあくまで明るい。
だけれど、その言葉はあまりに冷たく、重たく俺にのしかかる。
51 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2015/01/02(金) 01:08:53.05 ID:mTWD1rJD0
シーちゃん「忘れられたんですか?」
俺「何をだ?」
シーちゃん「あなたの願いですよ」
俺「彼女をください、か?」
シーちゃん「そういうことですね」
シーちゃん「では、あなたがほしかったものはなんですか?」
52 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/02(金) 01:10:42.81 ID:mTWD1rJD0
俺「だから、彼女だって」
シーちゃん「そういうことですね
シーちゃん「では、クリスマスプレゼントといえども、あなたはもう大人です」
俺「そうなのかな」
シーちゃん「ええ、ですから」
シーちゃんは、頭から帽子をとり、机の上に置いた。
シーちゃん「クリスマスプレゼントくらい、自分で取りに行ってください」
その言葉を最後にシーちゃんの姿は見えなくなった。
53 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/02(金) 01:15:15.90 ID:mTWD1rJD0
俺(プレゼントを、自分で?)
俺(シーちゃんは、クリスマスプレゼントではなかった)
俺(でも、シーちゃんは俺の彼女だった)
俺(シーちゃんと過ごして、俺は変わった)
俺(誰かといることの楽しさを覚えた)
俺(人と話すことの喜びを覚えた)
俺(人とふれあうことの幸福を知った)
俺(それがなかったら、俺は女さんと、ラーメンに行くという選択肢は)
俺(出なかったんじゃないのか?)
俺(そのまま女さんと同じ部屋で寝るということも)
俺(なかったんじゃないか?
俺「なるほど」
俺「そういうことね」
54 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2015/01/02(金) 01:18:30.09 ID:mTWD1rJD0
俺はソファに放りこんだコートを羽織り、マフラーを巻いた。
俺(やっぱりかっこいいじゃん)
俺「行ってきます」
誰もいない部屋に、そう告げた。
サンタさんは、いい子のところにしか来ないらしい。
ならば、俺は今からいい子になろう。
自分に正直な、いい子になろう。
昔と今は、違うんだ。
俺は靴をはき、扉を開けた。
外には雪が降っている。
こんなものに負けてはいられない。
いこう。
サンタさんの贈り物がなんなのか、わかったから
55 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2015/01/02(金) 01:20:55.65 ID:mTWD1rJD0
三百六十四日目
その日も雪が降っていた。
空気は張り詰めていて、皮膚がむき出しになっている顔は、ただれてしまいそうなほど冷たかった。
後輩「先輩寒いっすねー」
俺「そうだな」
後輩「先輩はいいっすねー、クリスマスにいちゃいちゃできる彼女がいて」
56 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2015/01/02(金) 01:23:42.55 ID:mTWD1rJD0
後輩「俺も彼女ほしいですね」
俺「あ、別れたのか」
後輩「はい、ちょっといろいろあって」
俺「好きだったのか?」
後輩「うーん、どうでしょう」
俺「好きな人がいなくなってつらいのか」
俺「恋人がいなくなったことが空しいのか、どっちかだな」
後輩「うーん」
後輩「後者、ですかね」
俺「そうかい」
57 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2015/01/02(金) 01:26:36.92 ID:mTWD1rJD0
俺「サンタさんにでもお願いしとけ」
後輩「先輩でも冗談言うんですね」
俺「冗談じゃねえよ、本気だ」
俺(名前も忘れてしまったけれど)
俺(確かにサンタさんは、俺に贈り物をしてくれた)
俺(たしか、目元には小さなほくろがあったな)
58 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2015/01/02(金) 01:29:51.87 ID:mTWD1rJD0
俺(昔俺が好きだった女の子にもたしか)
俺(目元にほくろがあった)
俺(ま、たまたまか)
俺(あの子は、今元気なのだろうか)
俺「いい子にしてたら、サンタさんは来てくれるさ」
俺は、首に巻いた青色のマフラーにかかった白い雪を、そっと払った。
後輩「先輩」
俺「ん?」
後輩「そのマフラー、似あってますね」
俺「ありがとよ」
おわり
59 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
:2015/01/02(金) 01:31:28.22 ID:mTWD1rJD0
自作小説のSSアレンジでした
またどこかで
読んでくれた方々、ありがとうございました
(`・ω・)ノシ
60 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/01/02(金) 01:37:51.68 ID:Grl1xraMo
乙
面白かった。
61 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/01/02(金) 01:41:38.65 ID:RMOcG81J0
おつ
よかった
62 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2015/01/02(金) 23:45:33.95 ID:siYL7l4zO
乙、なんか暖かくなった
25.88 KB
[ Aramaki★
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