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伊織「私は宝石」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 12:04:20.17 ID:jwK+wAjeo
一人の、女の子

桃色のワンピースを纏い、

栗色のロングヘアをなびかせる

胸元には大事そうに抱えたウサギのぬいぐるみ

少しくたびれて、継ぎはぎが目立つ

ボロボロという訳ではないが、大切にされていることがわかる

歩き方一つにもにじみ出る気品は気高く

何処かの国のお姫様、高貴な家柄のお嬢様

そんな印象を周囲に与える

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1420427059
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■ 萌竜会 ■ @ 2024/11/22(金) 07:17:49.87 ID:t6dKBjAuo
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■ 萌竜会 ■ @ 2024/11/22(金) 07:17:17.71 ID:/UbTl3Hgo
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■ 萌竜会 ■ @ 2024/11/22(金) 07:16:22.54 ID:Un8tNByuo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1732227381/

ミア「歩夢・・・辛かったな・・・」ナデナデ歩夢「ミアちゃん・・・うぅ・・・」 @ 2024/11/22(金) 00:59:47.53 ID:w7bhdEV4O
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ちんぽいぬ @ 2024/11/21(木) 22:13:45.60 ID:BuRqeSctO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1732194825/

無くても死にはしないけどある方が安心する気がしないでもない @ 2024/11/21(木) 02:19:47.82 ID:SZfofcdIo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1732123187/

2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/01/05(月) 12:10:09.88 ID:jwK+wAjeo
↓過去作です

【響×P】自分は今、プロデューサーに「恋」をしている
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1389719970/
http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=3303355

響「さみしいぞ、プロデューサー、」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1392/13920/1392048558.html
http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=3784565

雪歩「私、真ちゃんのことが好き」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1401903660/
http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=4011483

貴音「響は太陽の如く」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1414627504/
http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=4496465


同じ世界観です
過去作は見てなくても大丈夫です
時間軸は異なります
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/01/05(月) 12:10:46.61 ID:jwK+wAjeo

しかし、そんな印象を粉々に粉砕するのが

  ちょっと!何時になったら着くのよ!

隣を歩く男に対する、高飛車で高慢な暴言の数々だった

  これ以上私を疲れさせないでよね!
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/01/05(月) 12:11:20.80 ID:jwK+wAjeo
彼女の名前は水瀬伊織

765プロダクションに所属するアイドルの一人である

隣を歩くのはそのプロデューサー

今は765プロの身内で開いた、花見の会場へ向かっているところ

仕事終わりなので、機嫌はかなり良い方と言える
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/01/05(月) 12:11:59.37 ID:jwK+wAjeo

  この伊織ちゃんを呼ぶ位なんだから、ちゃんとしたホテルのシェフを雇ってるんでしょうね

改めて言うが、今向かっているのは花見の会場である

そして彼女も、冗談で言っている訳ではない

ただ、庶民の文化に疎いだけなのだ

  ……着いたぞ、あそこだ

プロデューサーは遠くに見える集団を指す
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/01/05(月) 12:13:08.28 ID:jwK+wAjeo

地面に敷かれたブルーシートと、お弁当に重箱

豪華絢爛な立食パーティーを想像していた伊織は

プロデューサーの足を、低めのヒールで思い切り踏みつけた

―――――――――――――――
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/01/05(月) 12:14:07.06 ID:jwK+wAjeo
夜にまた上げていきます
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/05(月) 12:29:08.01 ID:gQLTDVyOo
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        |: : :、: : : :|  ,ィ下≧、`ー'     ` ´,ィ升ハ ヽ  }: : : : : : : :| : : |
        ,: : : :\: :{  {  ヒ::斧ヽ         {し刈  ノ ,′: : : : : :∧: : l
       ,: : : : :{ ⌒、:.     Vzソ        Vzソ    ,: : : : : : : /: : : : .
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9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2015/01/05(月) 14:01:08.43 ID:GKnnfd1EO
ヒールは冗談抜きで痛い……(遠い目)
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/05(月) 19:36:43.42 ID:Tocn6Tvf0
でもいおりんの脚だと思えば
11 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 21:53:41.44 ID:jwK+wAjeo
22時からあげてきます
12 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 22:04:27.05 ID:jwK+wAjeo

―――――――――――――――

青いシートの上にぺたりと座る

頭上には満開の桜

淡い桃の向こう側には、足元より更に澄んだ青

斑模様の白い雲、穏やかに照る太陽

吹き抜ける風はまだ少し寒さを運ぶ

  おー伊織!たいみそーちー
13 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 22:05:18.40 ID:jwK+wAjeo

  あら、響じゃない。早かったのね

私に気が付いた響、くるんと体をこちらに向け、にかっと眩しく笑う

太陽みたいだ、そう思った

こちらの太陽は、真夏の様に燦々と照る

耳元と指には貴金属が光るが、全く威圧感を感じさせない

紙コップを片手におにぎりを口いっぱい頬張り、もごもごと話す
14 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 22:07:04.36 ID:jwK+wAjeo

  それと、日本語で話してもらえる?何語か知らないけど

  沖縄は外国じゃないぞ!「お疲れ様」って言ったんだ!

  そうね、疲れたわ、じゃあオレンジジュースもらえるかしら

納得のいかない顔でペットボトルに手を伸ばす響

頬を膨らませているようにも見えるが、頬袋の中身はきっとおにぎりだろう

  ありがとう、響、貴方ちょっと落ち着いて食べたら?
15 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 22:07:57.31 ID:jwK+wAjeo

注いでもらったオレンジジュースで喉を潤し、一息つく

プロデューサーはもう既に、小鳥とあずさに絡まれている

呆れた、まだ夕方にもなっていないというのに

  今日はこないだのオーディションの仕事?

お茶を飲みほした響が聞く

ええ、そうよ、そう言って返す
16 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 22:08:48.33 ID:jwK+wAjeo

  あの時の伊織には、驚いたぞ

オーディションでのことを言っているのだろう

  竜宮での伊織もすごかったけど、ソロだとあんなに変わるんだなー

  それにあの曲、伊織にぴったりだったぞ

ふふん、鼻を鳴らす

  当たり前じゃない
17 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 22:09:31.22 ID:jwK+wAjeo


  だって私は、宝石なんだから


にひひっ

響の頭の上には、疑問符が浮かんでいた

― ― ― ― ― ― ― ―
18 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 22:10:10.05 ID:jwK+wAjeo
― ― ― ― ― ― ― ―

  それなら、伊織ちゃんは宝石だよ

やよいは言った

事務所に居るのは美希とやよい、そして、私

給湯室で三人、おしゃべりタイム

もっとも、美希は既に熟睡しているが
19 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 22:11:05.90 ID:jwK+wAjeo

美希が始めたのは例え話

  美希さんが星

  雪歩さんが雪

  春香さんが花

  それなら伊織ちゃんは宝石かなーって

それぞれのイメージ
アイドルとしての、女の子としてのイメージ
もちろん全ては美希の、勝手な
20 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 22:11:43.93 ID:jwK+wAjeo

やよいは理由を話す

  私、前に伊織ちゃんのステージ、目の前で見たんだ

めずらしい、真面目な口調のやよい

横に座るやよいに目をやる


ぞくりとした
21 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 22:12:47.18 ID:jwK+wAjeo


やよいは真っ直ぐな目で

見たことないくらい真剣な目で、自分の両手を見つめていた

22 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 22:13:56.04 ID:jwK+wAjeo

その両手を、蛍光灯にかざして言う

  すごかった…

  キラキラーってキレイに輝いて

  みんなをとりこにするんです

  私も、そんな風になりたいなーって

  そう思ったんだ

最後に照れ臭そうに、笑った
23 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 22:15:06.05 ID:jwK+wAjeo

  そうね、ありがとやよい

そうだ、彼女もアイドル

紛れも無く野心を持った、アイドルなのだ

  私が…宝石ねぇ…

その言葉には少し、聞き覚えがあった
24 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 22:16:38.38 ID:jwK+wAjeo

でも内容は、意味することは少し、違っていた

さらに言えばあの時は、身も心も荒んでいる時

空は灰色、空気は重く、排気ガスの匂いが肺一杯に広がっていた

―――――――――――――――
25 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 22:19:35.17 ID:jwK+wAjeo
―――――――――――――――

  伊織は宝石よ

ワイパーの音だけが空しく響く車の中

律子が言った

後ろに座った私たちのことは見ない

ただ真っ直ぐと前を見据える
26 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 22:20:16.87 ID:jwK+wAjeo

  だから…大丈夫

何が大丈夫なのか

フェスでたった一人に大敗して

竜宮小町のIA大賞も、夢と消えたのに
27 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 22:20:44.34 ID:jwK+wAjeo

  どういう、事よ

だめだ、しゃべると

声が震える

悔しさと、悲しみと、自分への苛立ち

負けた、あんなに自信があったのに

その自信ごと、押さえつけられた

  あんなに…こてんぱん、に…やられて

  大丈夫な訳…ないじゃない!

あずさも亜美も、何も言わない

ただ黙って、俯く
28 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 22:22:51.23 ID:jwK+wAjeo

ぽろりと堪え切れなくなった涙が落ちた

続けざまに、嗚咽が重なる

  そうね、今回は負けだったわ

  でも、だからこそ学べるものがあると私は思ってる

  特に伊織、あなたはね

私…?

29 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 22:23:57.06 ID:jwK+wAjeo

どういうことよ

そう言いたいが、嗚咽を抑えるので精一杯だった

律子は続ける


  伊織、あなたの武器は何?

30 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 22:24:58.86 ID:jwK+wAjeo

  容姿、歌唱力、ダンス

  私から見ても、あなたのそれは全て、十分武器として成り立つ

  でもあなたの一番の武器は、それじゃない

  あなたの一番の強みは


  プライドよ
31 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 22:25:35.23 ID:jwK+wAjeo

プライドなんて持っていたところで

  駄目だったじゃない…

  そのプライドごと、へし折られて、負けたんじゃない!

感情が抑えられず、怒声になる

律子に焦りの色は見えない

その様子にも苛立つ

  ええ、そうね

  今回はね

今回…?
32 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 22:26:09.49 ID:jwK+wAjeo


  伊織、あなた今までに何回オーディションに落ちてる?


そんなの…

  数えてないわよね?それほど沢山、落ちてる

  でもその度にあなたは言っていたわ

  「あの審査員は見る目がない」って
33 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 22:26:45.13 ID:jwK+wAjeo

  あなたの武器はそれよ、自分への圧倒的な自信

  失敗を苦にしない、何回でも挑戦できる

  自信があるから演技も、歌もダンスも堂々とできる

  アイドルにとって最強の武器


  でもね、それだけじゃ駄目なの
34 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 22:27:38.53 ID:jwK+wAjeo

  どういう…事よ

最強の武器なら、それでいいじゃないか  



  成長、出来ないのよ
35 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 22:28:57.48 ID:jwK+wAjeo

  あなたは失敗を忘れるという訳ではないんでしょうけど

  多くの人はね、失敗の記憶をずっと引きずるの

  それで、成長する

  こうすればよかった、これはしなければよかった

  そうやって人は、強くなっていくの
36 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 22:29:48.48 ID:jwK+wAjeo

  確かに、失敗を恐れないことも

  失敗を忘れていくことも重要

  でもそれだけじゃいつか、行き詰まる

  失敗してきた人に、理由もわからぬまま追い越される

  だから、駄目だったのよ、自信だけでは
37 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 22:30:39.66 ID:jwK+wAjeo

気が付くと、皆の顔が律子に向かっていた

  私も思ってたのよ、一度どこかで、伊織のプライドをへし折ってやらないと…って

  骨折と同じ

  一度折れたプライドは、叩き直せばより強くなる

  …こんな大きな舞台でへし折られるのは、計算外だったけど

律子の声のトーンが、優しさを含んだものに変わる
38 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 22:31:18.39 ID:jwK+wAjeo

  大丈夫よ、伊織

  あなたは宝石、煌びやかで、綺麗な

  私たちにとって、大事な大事な、宝石

  心の内には絶対に折れない硬い意志を持ってる

  表面をいくら削られようが、汚されようが

  それを折ることなんか、誰にもできない

  正に、石のような意志をね
39 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 22:31:54.33 ID:jwK+wAjeo

くくっ

隣で亜美が震える

  りっちゃん…それは流石に寒いっしょー…

その言葉に律子が勢いよく振り返る

顔が真っ赤だ

  あ…あなたたちがそうやって暗いままだったからでしょ!

見る見るうちに目に涙が溜まり、こぼれる

  わたしだってねぇ!すっごい…すっごい、悔しいんだからね!

ぼろんぼろんと転がる大粒の涙

隣のあずさがハンカチを渡す
40 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 22:33:18.97 ID:jwK+wAjeo

そっか

皆同じ気持ちだったんだ

泣いたことでストレスが発散出来たのか、穏やかな気持ち

後続車のクラクション

涙を拭いた律子がギアを入れた

  いい?帰ってすぐに今日の反省会するわよ!

返事をする三人の声は明るい

前方には晴れ間が見えていた

―――――――――――――――
41 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 22:37:58.64 ID:jwK+wAjeo
―――――――――――――――

  でこちゃんはやっぱり宝石なの

目を覚ました美希と二人

給湯室で座って話す

やよいは仕事に出かけた

熱いカップを両手に包み、美希は言う
42 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 22:38:38.88 ID:jwK+wAjeo

  あんたも、律子と同じ?

首を横に振る

  確かに固くて壊れそうにないの

  でこちゃんの外見も、中身も

  でもね、本当は違う
43 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 23:45:22.92 ID:jwK+wAjeo

美希は続ける

  大きな力を掛けると、ね

  最初はずーっと耐えてるの

  なんでもないような顔して、全然平気な振りして
44 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 23:46:47.88 ID:jwK+wAjeo

  でも、だんだんボロが出てくる

  ひびが入って、欠けて、軋んで

  最後は、ばーん

手の平を広げて見せる

  ばらばらに、砕けちゃう



  堅そうに見えて、実は脆い

  そんな宝石なの
45 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 23:47:18.92 ID:jwK+wAjeo

なるほどね

紅茶を啜る

  だから私は宝石、ね

美希は頷き、カップを含んだ

長い睫毛に白い湯気


  でも
46 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 23:47:45.53 ID:jwK+wAjeo

一つだけ、聞きたい

  あんたは言わないのね

  「綺麗な」宝石、って

あは、軽く馬鹿にしたように、美希は笑う

  そんなの当たり前なの

立ち上がり、ポーズを決めて、言う

  キラキラーってするのは、ミキの役目だもん

この言葉には私も

苦笑するしかなかった
47 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 23:48:14.99 ID:jwK+wAjeo

どやどやとみんなの帰ってくる音

もうそんな時間か

そんな事を思いながら、近づく騒々しさに耳を傾ける

うるさい、でも嬉しい

騒がしい、でも優しい
48 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 23:48:56.67 ID:jwK+wAjeo

  みんな、おかえり

柄にもない言葉に、思わず顔が顔が熱くなった

皆も少し、驚いた顔

でもすぐに、戻る

  ただいま、伊織!

いつもの765プロの、優しい笑顔に
49 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 23:50:12.09 ID:jwK+wAjeo


  あ、あとミキミキも

  むー!おまけみたいに言わないでほしいの!

うん、いつもと同じ

私はきっとこの空間が



好きだ


― ― ― ― ― ― ― ―
50 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 23:50:38.65 ID:jwK+wAjeo
― ― ― ― ― ― ― ―

ああーっ!!

誰かの叫び声

亜美か真美だろうか

声のする方を見る

  ん?…あー!ジュピターの!

そこではあまとう…もとい天ヶ瀬冬馬が、双海姉妹に絡まれていた
51 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 23:56:10.34 ID:jwK+wAjeo

冬馬と目が合う

  何でここにいるんだ?…ってこっちに来たぞ!

ずかずかと歩き、私の前に仁王立つ

邪魔ね、景色が見えないじゃない

  何?今日の演技の嫌味でも言いに来たの?
52 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 23:56:57.59 ID:jwK+wAjeo

今日の撮影現場には、こいつもいた

とは言っても私は主役、彼は数分しか出ない役だけど

  今日のあんたの演技、見たぜ

  あら、そう

  すげえな、素直にそう思った

  へぇ、そう……え?は?
53 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/05(月) 23:59:35.28 ID:jwK+wAjeo

  だ、だからぁ!お前の演技がすごかったって言ってんだよ!

  そ、そう…へ、へぇ…

  お前…水瀬伊織って言ったな、

  …ええ

  …少し、見直した…名前くらい覚えといてやる
54 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/06(火) 00:00:07.49 ID:0cckhXgCo

  何で上からなのよ

  う、うるせぇ!いいか?今度会ったときは覚えてろよ!

またずかずかと歩いていく冬馬

その先では残りの二人が手を振っている

彼も変わった、という事だろうか


そう、彼も、私も
55 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/06(火) 00:01:00.39 ID:0cckhXgCo

私も変わった

自分の強さを疑わないだけじゃない

自分の弱さも認め、それすらも力に変える

成長し続ける



今日も磨こう、自分自身を

今日も信じよう

自分の輝きを
56 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/06(火) 00:02:18.77 ID:0cckhXgCo

―――――――――――――――
―――――――――――――――
57 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/06(火) 00:03:00.83 ID:0cckhXgCo
―――――――――――――――
―――――――――――――――


私は宝石

綺麗で、固くて、高い

強い力を受けたら砕ける

だけど、私はただ砕けるだけの石じゃない

砕ける瞬間、自信を持って最高に綺麗に弾けてやる

砕けた後も、欠片になっても輝いてやる

相手の体に、心に自らを突き刺してやる

忘れられないよう、いつかまた会ったとき


覚悟してなさいってね


―――――――――――――――
―――――――――――――――
58 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/06(火) 00:03:33.35 ID:0cckhXgCo

伊織「私は宝石」

おわり
59 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/06(火) 00:04:28.30 ID:0cckhXgCo
見てくれた人、ありがとうございました
60 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/06(火) 00:08:49.43 ID:0cckhXgCo
今回の話の時間軸的にはこんな感じ
律子→やよい→美希→→→響、あまとう
分かり辛いかな…?
61 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/06(火) 00:12:06.06 ID:0cckhXgCo
他のもよろしければ
番号は時間軸です


1 自分は今、プロデューサーに「恋」をしている
http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=3303355

2 響「さみしいぞ、プロデューサー、」
http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=3784565

4 雪歩「私、真ちゃんのことが好き」
http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=4011483

5 貴音「響は太陽の如く」
http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=4496465

3 伊織「私は宝石」


響話以外の短編
http://www.pixiv.net/series.php?id=464471
62 : ◆b2/ys3/tgw [saga]:2015/01/06(火) 00:40:39.48 ID:0cckhXgCo
pixivにまとめたのでよろしければ
http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=4755877
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