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吸血鬼「僕は、強くなりたかっただけなんだ……」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/01/29(木) 23:38:21.43 ID:QYIC9Um6O

【異端】


僕には何もなかった。

力も魔力も……

何もかもが僕からそっぽを向いて、振り向いてくれはしない。


無力なまま、無価値なまま時は過ぎる。


止まったままだ。

ずっとずっと止まったまま……

成長して身長が伸びても、ちっとも変わりはしない。



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ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
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旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
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木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
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いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
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【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
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こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
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【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
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アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
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2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/01/29(木) 23:41:32.18 ID:QYIC9Um6O

僕は、僕のままだ。

何故この世界に生まれた?


蔑まれ、足蹴にされ……

価値無き命があることを知るためか?


僕は……

僕はそんなちっぽけな存在が実在するってことを……


それを証明する為に生まれ、己を恥じて死ぬのか?

3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/01/29(木) 23:43:35.72 ID:QYIC9Um6O

踏まれる命なんて必要ない。

必要ない存在を証明するのが、僕なのか?


だとしたら何て残酷なんだろう。


せめて、せめて一つだけでも希望があるのなら。

僕はそれに賭けてみたい。

そう願いながら、今日も魔学書を読む。


「一つでいい、一つでいいんだ」


何でも良い、一つでいい……

そう願いながら読んでいる書物が、最後の一冊。

4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/01/29(木) 23:47:25.36 ID:QYIC9Um6O

魔界図書館、最後の一冊。

一冊一冊を読む度に儚い願いを削がれる日々だった。

でもこれで終わり。


これで、最後……


頼む何か一つでいいんだ。

お願いだ。僕は強くなりたいんだ。

何か、何かヒントをくれ。


「結局全部同じ。受け継がれる血脈、血筋」


優秀な血筋か、羨ましいな。


「血筋、血脈……結局は血か……」


5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/01/29(木) 23:49:14.30 ID:QYIC9Um6O

血液はあらゆる魔術に共通する。

どの書物に記載されていても何ら可笑しくない。

寧ろ血液が記されていない書物なんてなかった。


例えばコウモリ、トカゲ、ネズミ……

血液は様々な魔術に使われている。

しかし、【これ】は違った。


「えっ? 【人間】の、血?」

6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/01/29(木) 23:53:34.52 ID:Ns8lD2/UO

ーー人間。

僕とは違う世界、異世界の住人。

詳しくは知らないけど、彼等の中にも魔術を使える者がいるらしい。

けれど人界との接触は原則として禁じられている。


「まるでもう諦めろって、そう言われてる気分だ」


いや待て、魔術に血が不可欠だとするなら……

血の力がそこまで重要視されているのなら……


「術師自身が血を飲めばどうなる?」


7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/01/29(木) 23:57:25.64 ID:Ns8lD2/UO

そうだ。

血を術に使うのではなく、血を直接取り込めば、【得られる】のか?

魔を、力を、得られる。


魔を使う者から血を得れば魔力を得られる?

直接血を飲めば、そのものの力を得られるのか?


だとすれば魔術は回り道してることになる。

魔力を得るには、更に高い魔力を持つ者の血を得ればいい。


術そのものを身に宿すことが出来るのなら、過程は必要ない。

完成された術を奪えばいい。

完成された魔術を持つ者の血を……


「……いや、こんな考えは馬鹿げてる。もう帰ろう」

8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/01/29(木) 23:59:40.37 ID:Ns8lD2/UO
寝ますら
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/30(金) 00:13:44.77 ID:Sg7fUpiKo
きたい
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/30(金) 10:17:22.31 ID:DzTOHGWhO
おもしろそ
きたい
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/01(日) 20:38:57.65 ID:ov87Ly3qO

結局、方法を見出すことは出来なかった。

僕は何も得られないまま終わるのか?


【何もない】を証明する為に……

これからを生きて行かなくちゃならないのか?

僕には、強くなろうとすることさえ許されないのか。


ーー鐘が鳴った


そろそろ閉館の時間だ……

兄さんも心配するだろうし、急いで帰ろう。
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/01(日) 20:40:11.85 ID:ov87Ly3qO

「ああ君、待ちたまえ」

この人……

ああそうだ。確かこの図書館の館長さんだ。

今まで一度も話したことないのに、どうしたんだろう。


いよいよ怒られるのかな、いつも閉館ぎりぎりまで粘ってたし。

一度も借りたことないし、閉館間際に来て少しだけ読んで帰ったこともある。

でもいいや、もうこの図書館に来ることはないんだから……


「私がこの図書館の館長になってから、君ほど熱心な子は見たことがない」

13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/01(日) 20:42:27.44 ID:ov87Ly3qO

「えっ?」

怒られるばかりと思っていたから、その言葉はかなり意外だった。

いつも顰めっ面で機嫌悪そうだから、凄く怖いお爺ちゃんなんだとばかり思ってた。


「私から見て、ただ読むのではなく学んでいたのは君くらいなものだ。
 それに読む調べると言っても、大体は出題された一文を調べる程度……」


「は、はぁ、そうなんですか」


「君には伝わらんだろうが、私とてもは感動している。
 こんなにも膨大な数の書物から必死で学ぼうとしてくれた」

「(必死か。そりゃそうだ。この図書館は僕の希望『だった』んだから)」

「それで、君は望む物を得られたかね?」


「……いえ、何も得られませんでした」

14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/01(日) 20:44:45.30 ID:ov87Ly3qO

「では、学んだことはあるかな?」

「それなら沢山あります」

「ふむ、良ければ一つだけでも訊かせてくれるかな?」


「……それは我々を魅了魅惑し、果ては道を誤らせ狂わせるだろう」

「誘惑に打ち勝ち、欲望を断ち切れる者こそ、真の力を得るに相応しい」

「我々は知らなければならない……あっ、すいません」


「いいや大丈夫。そのまま続けて」


「……我々は力に支配されてはならない。我々は力に屈してはならない」

「強い意志を持つのだ。決して、力に身を委ねてはならない」


「我々(魔族)は、力の為にあるのではない……以上です」

15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/01(日) 20:48:06.66 ID:ov87Ly3qO

「いやはや素晴らしい。
 その歳でそこに至るとは想像しなかったよ」

「そんな、偉そうに好き勝手語っちゃってすいません。
 でも、嬉しいです。ありがとうございます」


「……もし君が良ければの話しだが、いいかね?」

「はい、何でしょう?」


「良ければ、明日からも来てくれないか。
 急で申し訳無いが、君を助手として雇いたい」


「助手って、本の整理や何かですか?
 僕にはそれくらいしか出来ませんよ?」

「それもあるんだが……
 いや、今日はもう遅い。詳しい説明は明日にしよう。
 そこで君が納得したら、助手になって欲しい」


「えーっと……はい、分かりました。
 じゃあ明日また来ます。ありがとうございました」


16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/01(日) 20:49:30.81 ID:ov87Ly3qO
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