このスレッドはSS速報VIPの過去ログ倉庫に格納されています。もう書き込みできません。。
もし、このスレッドをネット上以外の媒体で転載や引用をされる場合は管理人までご一報ください。
またネット上での引用掲載、またはまとめサイトなどでの紹介をされる際はこのページへのリンクを必ず掲載してください。

男の娘「男のこと、好き」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

1 : ◆3o5ksYdBDI :2015/03/21(土) 21:30:54.34 ID:nJPgXTqwO
タイトルのとおり男の娘×男です。
うわぁ…ないわぁ…という人はお戻り下さい。
あと地の文注意です。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1426941054
【 このスレッドはHTML化(過去ログ化)されています 】

ごめんなさい、このSS速報VIP板のスレッドは1000に到達したか、若しくは著しい過疎のため、お役を果たし過去ログ倉庫へご隠居されました。
このスレッドを閲覧することはできますが書き込むことはできませんです。
もし、探しているスレッドがパートスレッドの場合は次スレが建ってるかもしれないですよ。

少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714054765/

渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714052788/

二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714049241/

佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/

2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/03/21(土) 21:31:58.59 ID:nJPgXTqwO
男が好きだ。
重い荷物を代わりに持ってくれる少し大きな手が好きだ。怪我を負ったり、具合が悪かったりするときにおぶってくれる背中が好きだ。少し垂れた目がすきだ。照れると目を細める癖がすきだ。話している時の優しい目がすきだ。優しい性格が好きだ。おせっかい焼きなのが好きだ。他人のために涙を流せるところが好きだ。笑う時の顔が好きだ。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/03/21(土) 21:33:21.31 ID:nJPgXTqwO
好きで好きで好きで好きで好きでたまらない。本当に好きで、男のためなら何をしてもよくて、気持ちを伝えたくて、キスをしたくて、抱きしめて欲しくて。

けど、けれど。

僕は男の人だから。
当然、彼も男の人で。

だからこの恋は叶ってしまってはいけない。僕の想いも伝えちゃならない。

彼に迷惑がかかるから。

だからこの気持ちは胸にしまっておくんだ。
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/03/21(土) 21:33:52.93 ID:nJPgXTqwO
けど

「やっぱり、辛いなぁ…」

この気持ちを自覚したのは、つい最近の事だ。

それまでは僕は男と一緒にいるのが普通だと思っていて、永遠にそれが続くものだと思ってた。

ずっと二人で話したり、遊んだり、くだらない事をしてるものだと思っていたのだ。

けれど、あの子が来てからはそうじゃなくなった。

あの子は僕と男の間に強引にも身を捻じ込んできた。
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/03/21(土) 21:34:33.45 ID:nJPgXTqwO
いや、本当はそうじゃないのかもしれない。

本当は男が彼女の手を取って、僕と男の間に…。

だけど、それを考えると、僕は気がおかしくなってしまいそうになるのだ。

まるで身体中に見えない蛇が這い回っているみたいになる。胸が、心臓が鷲掴みにされたみたいに苦しくなって、何より、頭の中の男が消えてしまいそうになる。

あの子のせいだ。そう一瞬考えてしまうけど、それは違う。

僕がおかしいんだ。こんなつまらない事に嫉妬する僕が。男の子なのに男に恋してる僕が。
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/03/21(土) 21:35:01.98 ID:nJPgXTqwO
そう考えても、あの子が男と話している時の、チクチクとした気持ちは消えない。

あの子が来る前に、男が女の人と話しているときになるチクリとした感じ。

それを何倍、何十倍にも、大きくしたようだ。

ベッドの上で、体育座りをして壁に寄りかかるのをやめて、ベッドへと倒れこむ。

ぼふり、と音がなる。勢いがついてしまったのだろうか、少し身体が跳ねる。

もう、こんな事を考えるのはやめよう。あの子に嫉妬するなんて、みっともない。

そう考えながら、布団を被り、深い眠りへと落ちてゆく。

ああ、僕が女の子だったら、こんな想いをすることもなかったのだろうか…。
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/03/21(土) 21:35:47.95 ID:nJPgXTqwO
翌朝、僕は男の家の前にいた。
少し前までは僕一人で男を待っていた。だが、いまはあの子が、女さんが一緒だ。

なんで女さんが、ここまで男と親しいかというと、昔、男とよく遊んでいたようだ。そして僕と入れ替わるようにして転校。それは仲もいいわけだ。


幼馴染みは僕だけなのに。そうだって思ってたのに。なんで、とまた僕の嫉妬が頭を擡げる。今いる環境でもっとも古くからつきあいがあるのは僕じゃないの?

駄目だ、駄目なんだ。だけどずるい。
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/03/21(土) 21:36:32.13 ID:nJPgXTqwO
「ずるいよ…」

「ん、娘ちゃんどしたの?なんか言った?」

「…っへ?あ、ああなんでもないよ、うん」

「そ、ならいいんだけど」

娘ちゃんになんかあったらあたし心配だかんねー、と女さんは続ける。

考えてたことが口に出ていたようだ。気をつけなくては。

いや、こんな事を考えること自体止めなければいけない。
僕の嫉妬心自体がなくならねば。

僕がそう決意をかためていると、玄関のドアが開いた。
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/03/21(土) 21:39:18.67 ID:nJPgXTqwO
「わりぃ!待たせた!」

そこから男がでてきて、玄関が閉まり終わる前にそう言った。

男の背後で重ためなドアの閉まる音がする。

それを合図にする様に女さんが返事をした。

「ホントだよ、毎日遅刻ギリギリ!もうちょい早くおきてよ!」

「すんません…」

そう言われた男は見るからにションボリしていた。少し垂れた目が申し訳なさそうにさらに垂れて、視線があっちこっちに動いている。
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/03/21(土) 21:39:50.09 ID:nJPgXTqwO
「まあ、なんだかんだで何時も学校には間に合ってるし、いいよ、大丈夫」

僕がこうフォローを入れると、男はありがと、といって元のように戻る。いつものことだ。

と、いきなり男が、僕の方に近づいてきた。

そして、男は僕の頭に手をポンと置く。

「ありがとな」

そしてそのまま僕の頭を撫で始めた。

「うりゃー!」

と、少し乱暴に僕の頭を撫でた男はそのまま歩き出した。
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/03/21(土) 21:40:24.94 ID:nJPgXTqwO
別に男はやたらと人の頭を撫でたがる変態さんというわけではない。

ただ、もう話しは終わりだ。行こう、という意味でももたせて、場の空気を変えるためにやったのだろう。

こうでもしないと男と女さんは暫く揉める、というか一方的な女さんの説教が始まる。

それを恐れてさっさと逃げたんだろう。

男、僕はそれ、どうかと思うよ…。
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/03/21(土) 21:41:41.54 ID:nJPgXTqwO
しかし、男のそんな作戦も意味などないようで、女さんは男に説教を始めた。歩きながら。

男はそれを半分きいて半分聞き流すような感じで聞く。時折、ハイ、ハイとわざとらしく、いかにも反省してるような声を出す。

僕はその少し後ろを歩いて、二人についていく。

暫く歩いたら、女さんは怒り、というか不満というか、そんなものを吐き出してスッキリしたのか、どうやって、男の遅刻ギリギリの生活をやめさせるか、という話しに方向を変えた。それはもう詳しく、どんな風に変えるかと。
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/03/21(土) 21:42:10.06 ID:nJPgXTqwO
男の事を思って、怒ってるのだろう。じゃなきゃこんなに詳しくまで話しはしない。自分のためなら、男の家前で待つことを止めればいいのだし、そうじゃなくても、不満をぶちまけて終わりだろう。

なんというか、こんな二人だからこそ、再開してすぐ、また元の仲に戻れたのだと、ある種の確信を抱かせるような物があるのだ。

なんだか、羨ましいなぁ…。そういうの、僕にはないからなぁ。

僕には、男と僕は切っても切れない関係だ、とか、心が通じ合っている、とか、そういう物にたいしての確信が未だに持てずにいる。

もう長い付き合いになる。小学四年生から七年間、いや、もうすぐ八年間だ。気がつけばもう高校一年生を終わろうとしている。

だけど未だに、僕は確信がもてない。
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/03/21(土) 21:42:38.84 ID:nJPgXTqwO
はは、と少し笑いをこぼす。笑い声はひどく乾いていた。

目の前では、まだ女さんがに男の生活習慣改善案を、ああでもない、こうでもないと、男に提案している。

「…だから、あたしがアンタの家の中に行けばいいじゃん!あたしがたたきおこす!」

そういって女さんがガッツポーズをとる。それと連動するように後ろで一つにまとめた髪が揺れる。

「や、だけどさぁ…。おまえなんか起こすときに技かけしてきそうだからやだ」

それに、どうせなら娘みたいな清楚な子におこしてもらいたいし、とそう男は続け、からかうように笑った。
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/03/21(土) 21:43:09.75 ID:nJPgXTqwO
「あんたはまだ怒られたりないのか、あと娘ちゃんは男の子だから!」

「といいつつおまえだってちゃんづけしてんじゃーん」

「…うぐっ」

男の反論にたいして、何も言い返すこともできず、言葉に詰まった女さんがこっちを見る。

フォローしてほしいのか、チラチラとこっちを見る。

ちらり、ちらちら、ちらり、ちらちらちらちらちらり。

僕は生まれて初めて目線が五月蝿いと思った。しつこいよ女さん…。

「男、起こしにいってもいいけど、僕は清楚系女子ではないし、そういう見た目の女の人は高確率で、実際に清楚ではないからね」
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/03/21(土) 21:43:49.78 ID:nJPgXTqwO
女さんの目線チラチラをやめさせるために、僕がそういうと、男は、うそだろ…、とつぶやいている。残念ながらホントだよ、男。女の子に夢を見すぎだよ。まあ僕女の子じゃないから実際どうかはわかんないけど。

そんな茫然自失とした男の隣で、女さんが僕のフォローを追い風に、ここぞとばかりに男に反論し始めた。

「ほーら、みなさいよ。娘ちゃんは、清楚でもなければ女子でもないの!あんた他に家まで起こしにきてくれる人いんの?いないでしょ!だったらせめて女子に当てはまるあたしが、起こしに行くのが最善でしょ!」

そういい終わると、どうだとばかりに男を見て、ふふーんとドヤ顔をする。
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/03/21(土) 21:44:29.25 ID:nJPgXTqwO
が、当然、とんでもない新事実をしってしまった男がそんな事を聞いているはずが無い。

「あ、あれー」

女さんは、自分の自信満々な論理をまったく聞かれていないことに気づいたのだろうか、戸惑ったような声を出す。

「っくく、はははは」

そんな二人の様子をみていたら、自然と笑いが込み上げてきた。さっきの笑いとは違う、本当の笑い。

暗い気持ちは何処へやら。男や女さんと一度話し始めると、そんな気持ちは心の奥へ、隅っこへと追いやられる。楽しい。心底楽しくなる。

こうして集まっているのが一番楽しい。さっき女さんに嫉妬してたのが嘘のようだ。
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/03/21(土) 21:45:20.37 ID:nJPgXTqwO
だけど一人になったりすると、僕は女さんに嫉妬してしまう。

どっちも本当の僕なのに、どっちも本当の僕ではないようだ。

まあ、いまはこれでいいのだ。みんなとの時間を余計な事で無駄にしたくはない。

気持ちをスッキリにさせる為に、少し走ることにした。こうすれば学校にも余裕を持ってつくだろうし。

男たちの前にでて走り出す。

「ほら、二人とも遅刻しちゃうよ!」

そう言うと、女さんが携帯電話で時間を確認して、走り出す。少し遅れて男も。

とりあえず、遅刻ギリギリ、下手したら遅刻、という目先の心配は解決したのであった。
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/21(土) 21:46:58.55 ID:JgiIKtfK0
ちくわ大明神
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/03/21(土) 21:47:22.39 ID:nJPgXTqwO
と、いうわけで今日はここまで。
また近いうちに更新するかなぁ、と思います。
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/21(土) 22:45:24.26 ID:aJbhQHG4O
これは期待
しかし男と男の娘はくっ付くんだろうか…
あとどうして男の娘は女の子の格好を始めたのか。
続きが気になる事ばかりだ
22 : ◆3o5ksYdBDI :2015/03/25(水) 22:31:07.85 ID:hwCsfjB3O
投下します
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/03/25(水) 22:36:07.81 ID:hwCsfjB3O
遅刻への問題は解決した。そう思っていた時期が僕にもありました。

「で、なんで遅刻してきたのかしら?」

目の前の担任教師に、前のドアから、教室に入った瞬間に言われた言葉だ。

その時の担任の顔といったら、それはもう笑顔だった。が、同時に怒っていた。

通常、笑いながら怒るというのは、いかにも二次元的表現であり、実際にやってもそれは、ああ、キャラつくってるんだなぁ、としか思われない。

対して怖くもないし、下手すると恐怖とは別な意味での悪寒を相手に与えてしまう。なんだこいつ気持ち悪りぃ的な。

しかし、彼女のは、そこらへんの適当な、男子に対してキャラを作っている女子のとは、レベルが違った。
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/03/25(水) 22:36:53.23 ID:hwCsfjB3O
まず彼女の顔を見た瞬間に足が地面に縫い付けられたが如く動かなくなる。

少し遅れて教室に入室してきた女さんが、「娘ちゃんどしたの、いきなり動かな」とまで言葉を発した。

続きを言わないのは恐らく担任の顔を見たからだろう。

女さんが僕の隣に並び、直立不動となる。いや、違う、膝が笑っている。とんでもない負荷を膝にかけたわけではない。

恐らく恐怖だ。そういう意味では僕たちは全身に負荷がかかっている。
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/03/25(水) 22:37:27.41 ID:hwCsfjB3O
教室の前のドアが閉まる。最近改装をしたらしいこの学校の校舎は、教室のドアが勝手に閉まる。よく僕には仕組みがわからないが。僕がこのドアでわかる事といったら、吊るし引き戸であるという事と、僕らの逃げ場を塞いだという事くらいだ。

「で、もう一度聞くけど。なんで遅刻してきたの」

ねぇ、と目の前の悪魔が問う。答えようにも、口からでるのは酸欠状態のカヒュー、カヒューという息のみ。はたしてこれは走ってきたからなのか、それとも恐怖によるものか。それすらも区別がつかない。

「ねぇ」

担任が教壇から降りて此方にくる。
ああ、僕はここで死ぬのだろうか。男、最期に君に僕の気持ちを伝えたかった。
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/03/25(水) 22:38:09.73 ID:hwCsfjB3O
と、僕が死を覚悟したところで、教室の後ろのドアが開く。

「すいませーん…遅れちゃったんですけどー」

男が廊下から、教室へとひょこりとを顔をのぞかせた。

男は、途中で疲れた、という理由で走るのを止めたのだ。彼には怖いものはないのだろうか。

担任の顔の向きが男へと変わる。そして彼女はにっこりと笑い、こういった。

「男くん、もうちょっと早く来なさいよー」

それだけか!と思うかもしれないが仕方がない。男はズバ抜けて成績がいいから贔屓されているのだ。そうだ、極限状態だから忘れてた。彼が担任を怖がるわけがない。何せ男は、優しい教師はと聞かれれば、うちの担任と答えるくらいだ、この人の何処が優しいんだ。まあ、相当贔屓されてるのは間違いない。
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/03/25(水) 22:38:43.83 ID:hwCsfjB3O
「さーせーん」

男はそうへらへらと答えると、椅子に腰掛け、荷物を机の脇にかける。

「せんせー、遅れてきていうのもなんですけど、そこらへんにしといてあげてください、こいつら俺に付き合って遅れただけなんで」

男がそう言って僕と女さんをフォローする。 男に後光が差して見える。さすがだ、人格者。

「…そうね、二人とも、というか男くんも、気をつけなさい」

男がそうフォローを入れたからか、というか百パーセントそうだろうが、担任はそう言うと僕たちを解放した。

解放された僕と女さんは各々の席に向かう。僕が男の隣、女さんが男の前の席だ。
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/03/25(水) 22:39:13.57 ID:hwCsfjB3O
男の隣の席は大変素晴らしいものだ。勉強は教えてもらえるし、何より男の隣だからだ。男の隣だから男の隣がいい。あれ、ゲシュタルト崩壊。

「男くん?上に報告しなくちゃいけないから、一応、遅刻の理由、教えてくれないかしら」

僕たちが席に着くと、担任がそんな事を言う。ところで男は気づいているのろうか、クラスでくん付けは自分だけだということに。他のクラスメイトは基本は名前呼び捨て、ひどいときにはそこの人とか、前の席から何番目のメガネとか言われている。授業がうまく無ければ、速攻退職物である。逆に言えば授業だけで自分の評価を底上げしているチート教師だ。
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/03/25(水) 22:39:39.97 ID:hwCsfjB3O
「あっと、ちょっと足捻っちゃって…」

男がそう言いながら手で首の後ろをかく。嘘ついてるな。嘘をつく時は何時もそれだ。まあそうじゃなくても、一緒にきたから嘘か本当かわかるけど。

本当は、通学路の最中の踏切で足止めをくらい、もう面倒くさいとなげだしたのだ。主に男が。あとは、僕たちもずるずると男のペースに引き摺られ、少しずつ、走るスピードを落としていったのだった。最終的には、有酸素運動することが目的で走っている老人みたいなペースになり、最後まで、悪戯に心臓の鼓動のペースだけは下がらないままであった。
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/03/25(水) 22:40:30.26 ID:hwCsfjB3O
「あら、そうなの。大丈夫なの?」

そう言って担任が首を傾げる。わざとらしく。他の人だと、「あらそう」というぐらいだというのに。

そういえばこの人も婚期迫ってるとか愚痴ってたなぁ…。生徒に色目をつかうとは、なんとも哀れなことだ。哀れすぎて、嫉妬心もわいて来ない。

「はは、へーきですよ、へーき」

そんな教師の色目など、全く意に介さない、というよりは、露知らずといった感じであろうか。どちらにしてもそれを意識にいれずに男は返事をした。

「なので先生、あたしと娘ちゃんもそれでおくれたんです」

女さんがそうつけたす。

が、その注釈は無駄だったようだ。

担任が見るからに不機嫌そうな目を女さんにむける。男の手前、言えないのであろうが、「あなたには聞いてないわ」と言いたげである。


全く、知能と見た目のレベル以外は餓鬼そのものである、と僕は嘆息するのであった。
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/03/25(水) 22:42:19.22 ID:hwCsfjB3O
はい、なんかコメディ一色ですね。まあ、基本はこんな感じと恋愛パートを交互って感じですかね
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/25(水) 22:53:04.86 ID:/GSAXlkXo
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/26(木) 10:13:16.52 ID:5GE1E5v2O
乙乙
貴重な男の娘物
期待してる
34 : ◆3o5ksYdBDI :2015/03/27(金) 20:42:16.05 ID:XoOdzPKyO
いつも少ないがそれよりも少ない。投下します。
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/03/27(金) 20:43:40.75 ID:XoOdzPKyO
その後は特筆すべき出来事もなく、時間がすぎていった。
昼休憩のチャイムがなった。授業に集中すると時間は直ぐにたってしまう。

授業に集中している事からも分かるように、僕は別にお馬鹿さんではない。授業は真面目に聞くほうだし、やることはきちんとやっている。成績は一応学年でも五分の指には入るくらいだ。学年の五英傑だ。なんかかっこいい。

しかしあくまで僕は常識の範囲内での頭の良さだ。男は違う。正直言えば異常である。
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/03/27(金) 20:44:27.70 ID:XoOdzPKyO
僕が真面目に授業を受けている間に男が何をしていたかというと、睡眠、たまに起きて板書の繰り返しだ。それで学年トップなのだから色々とおかしい。

まあ、といっても、男にも限界はある。

男は、暗記教科のときは起きている。いくら頭がよくても、用語を知らなくては意味がないとのことだ。流石に何も知らない天才に、江戸幕府初代将軍は、と聞いても、徳川家康と答えれる人はいないだろう。いたらそいつは天才なんかじゃなく人外そのものだ。この文字の羅列を一字も間違わずに言うのだから。まさに天文学的確率という奴を引き当てなければならない。

男が授業を睡眠時間にあてられたのは、数学二時間、現代文二時間という時間割であったからだ。男からすれば授業変更様様といったところだろう。
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/03/27(金) 20:45:31.54 ID:XoOdzPKyO
僕が考えるに、彼は、点と点の結びつけが常人よりも何倍もできるのだ。だから数学も最低限きいていれば、応用問題まで全部できる。全くもって羨ましい脳みそだ。

先程僕は五英傑といったが、どちらかというと、ポケモンの四天王とチャンピョンに近い関係性である。
僕は悪タイプ使いを所望する。カゲツさんはかっこいい。

少しの間、僕が男について考えていると、丁度よくというか何というか、男が話しかけてきた。

「娘。飯くおーぜ、早くしねーとラーメン売り切れちゃうぞ」

ちらと時計を見ると、授業終了から五分たっていた。
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/03/27(金) 20:46:07.52 ID:XoOdzPKyO
「うん、そうしようか」

僕が同意すると、男は教室の扉まで歩いていく。僕は机の上の教科書類をしまい、早足で男を追う。

そのまま、男の少し後ろを僕が歩く形で食堂へとむかう。三歩後ろを行く大和撫子という奴だ、違うけど。

男も僕も、ご飯は基本的に学食で済ませる。男は両親ともに働いており、弁当はつくって貰えない。まあ、時間もないし仕方無いだろう。

僕は、まあ、男に合わせてっていうところだろうか。
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/03/27(金) 20:46:51.80 ID:XoOdzPKyO
「そういえば、女さんは?」

今気づいたのだが、いつも一緒にいる女さんがいない。その理由を男に問う。

「今日委員会だとよ。ごくろうなことだ」

「そっか」

女さんがいないという、普通なら残念がる所で、卑しいことに、僕は喜びをおぼえていた。男と二人という状況に胸が踊る。

男が食堂のドアに手をかけ、開く。

男はおそらくラーメンのコーナーをみたのだろう。かなり残念そうに言った。

「うわー、ラーメン売り切れかよ。ちょっと売り切れはやすぎないか」
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/03/27(金) 20:48:00.96 ID:XoOdzPKyO
僕も少し遅れて食堂にはいり、ラーメンのコーナーを見ると、なるほどたしかに、売り切れと張り紙がされている。相変わらずの人気だ。

「まあ、いつもこんなものでしょ。今回は僕のせいで教室出るのが遅くなったのもあるけどね」

僕が多少自虐的にそう言うと、男は僕を励まそうとしたのだろう、少し声を大きくして言った。

「気にすんな、そうだ!パンにしようぜ」

男が僕の頭をくしくしーと撫でる。顔が勝手に熱くなる。

「う、うん。あ、あと頭、話し変えるときに、頭撫でる癖、僕だからいいけど、他の人だと駄目だとおもうなぁあ!」

つい、口について出た言葉が妙にうわずっている。顔にさらに熱が溜まるのが自分でもわかる。

「お、おう。きーつけるわ」

僕が変な声を出したのを不審がりながらも、男は返事をする。

だけど実際、男が誰彼構わずこれをやろうものなら、気持ち悪がられること必至だ。

それに何より、僕以外の人にやって欲しくない。そんな独占欲も、少なからず、あったりもするのだ。
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/03/27(金) 20:51:24.05 ID:XoOdzPKyO
今日は終わりです。はい。あと質問とかあったら気軽にしていいのよ?つーか人少ないから逆に不安です。まあ人がよりつかないのはてめーの技量のせいだろといわれたらそこまでなんですが…
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/27(金) 23:47:43.61 ID:zlYxA9LDo

独占欲あったりちゃんと嫉妬したり可愛いな
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/28(土) 16:50:15.58 ID:atogUmGVo

ROMもいる
44 : ◆3o5ksYdBDI :2015/04/01(水) 23:07:19.47 ID:H+LxNgz/O
はい、投下してきます。
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/04/01(水) 23:09:00.31 ID:H+LxNgz/O
「にしても、娘、お前よくそれで足りるな」

パンを買ったのち、教室に戻り、パンを食べ始めたところで、男は僕にそう言った。

僕が買ったのはメロンパンである。

「男、流石に僕、メロンパンだけで食事をすませようとしてるわけじゃないよ?」

流石にそこまで小食ではない、と一種の抗議の意を表すが如く、僕は、リュックの中からサラダを取り出した。なんと自家製だ。

「……たいしてかわんねーよ」

男が、呆れの眼差しと共に、サラダの存在意義を根本から揺らがせるような発言をする。全く、これだからわかっていない人は困る。
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/04/01(水) 23:09:53.58 ID:H+LxNgz/O
「このサラダはちゃんと栄養考えてるし!有る無しじゃ全然ちがうんだからね?」

「まあ、栄養バランスの観点から見たらそーだろうけどさぁ…」

まず単純に腹に貯まんの、と男はつづける。寧ろ僕はメロンパンだけでお腹はいっぱいにならなくても、腹八分目まではいく。いつもの学食で食べているハーフカレーだったら腹九分目だろう。それにサラダを加えたら満腹だ。

男は僕の事を少し特殊だと思っているのだろうが、僕からすれば、今、男が袋から取り出して、食べようとしてる焼きそばパン。こちらのほうがよほどおかしい。

なんでわざわざ炭水化物の中に炭水化物を挟むのかわからない。想像するだけで胸焼けがする。
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/04/01(水) 23:11:18.88 ID:H+LxNgz/O
「俺はいつ娘が栄養不足で倒れるか、不安でならんよ。たしかににバランスはいいけど量がないからなぁ…」

男がそう僕に言う。冗談めかしていわれたが、男が僕を心配しているのがわかる。なんだかくすぐったい。

「僕は大丈夫だよ、ありがと、男」

「ぉおう」

そんな返事とも取れないような返事をしながら、男は目を細める。真面目に心配しているのがばれて、すこし照れているのだろうか。こっちまでさらに気恥ずかしくなる。

「それよりさ、娘。今、勉強で解んないとこない?」

男が別の話題に逃げた。
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/04/01(水) 23:12:05.28 ID:H+LxNgz/O
それにしても随分と急な話題転換である。一体どうしたのだろうか。

「なんで?」

僕は己の疑問をそのまま口に出す。だっていくらなんでもその場逃れの話題転換にしては具体性がありすぎる。

「いやさ、俺、土曜日に英単語とか公民とか暗記系の勉強するんだけどさぁ…最近ずっと一人でやってたから、偶にはお前とやりたいなぁーと」

男が僕の質問に答えた。

そうか、なるほど。僕の解釈が正しければ、男は僕を休日に勉強に誘っていると、そういうことらしい。

……………………………………え?
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/04/01(水) 23:13:31.76 ID:H+LxNgz/O
あの後は僕が、委員会の会議から帰ってきた、女さんの顔に食べかけメロンパンをぶつけてしまったり、サラダを机の上に盛大にぶちまけたり、と大変な事になった、というよりも大変な事をしてしまった。

あの時は急に言われた事による焦りの方が大きかったが、今、僕の心の大半は喜びに溢れている。

詳しく話し合った結果、勉強会は僕の家で行われる事になった。男が僕の家に来るのは随分と久しぶりで、その話し合いのあと、僕は随分とテンションが高かったと思う。正直にやけが止まらなかった。土曜日に男が僕の家に来る、という事実が頭の中で激しく、しかし優しくかけめぐり、口角のあたりがかってに緩むのだ。あの時はなんでもできるような気もしたし、もしかしたら脳内ドパドパドーパミン状態だったのかもしれない。つまり男の誘いは僕にとって脳内麻薬にも等しいほどの快楽を、悦楽をもたらしたということに他ならない、いや流石に他なるか。
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/04/01(水) 23:14:14.88 ID:H+LxNgz/O
後は、卑しい事かもしれないが、女さんを出し抜けたというのも嬉しかったりする。普段ならここで気持ちが盛り下がるのだが、今日は違う。アゲアゲである。多分後で冷静になってから相当悔やむ。自分が嫌になる。だったら今はテンション上げていこうぜ僕!

異様にテンションが上がってしまうのもしょうがない。だって今日は、勉強会当日なのだから。
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/04/01(水) 23:17:29.08 ID:H+LxNgz/O
今回はここまで。今日がエイプリールフールだったんだ…。俺は現役jkです(大嘘)
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/02(木) 00:16:21.57 ID:zc//SaoMo

男の娘 可愛い
現役jk 可愛くない
53 : ◆3o5ksYdBDI :2015/04/19(日) 18:35:11.22 ID:ebv2mjbpO
だいぶ遅れましたはい。申し訳ないです。しかもいつもより量少ないかも。
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/04/19(日) 18:38:32.96 ID:ebv2mjbpO
玄関のチャイムが鳴る音がする。すぐ後に軽い足音。母のものだろうか。

玄関のドアが開かれる音と同時に、僕の母親らしき声がごもごもと聞こえる。恐らく玄関で、訪ねてきた人と軽い世間話でもしているのだろう。

「娘ー!男くんきたわよー!」

一階から、今度ははっきりと、母親の呼ぶ声が聞こえる。二階で髪を梳っていた僕は、その声に返事をしつつ、急いで一階へと階段を駆け下がる。

幾分か予定より早い男の到着に、少々焦りを覚えながら、玄関へと小走りで行く。履いているスリッパが床を叩き、パカパカと乾いた、軽快な音をたてるのに、少し恥じらいを覚えるという、訳のわからない恥じらい方をし、スリッパを脱ぎ、玄関で靴を揃える男に、両腕を大きく広げて、僕は言った。
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/04/19(日) 18:39:27.59 ID:ebv2mjbpO
「ようこそ我が家に!歓迎するよ!男!ウェルカム!」

「………お前、大丈夫かよ、やけにキザったらしいぞ」

男にそう冷静に言われて、僕は、ようやく自分がいまやった行動、言葉、全てがスリッパのたてる音より、何倍も恥ずかしい行為だと気がついたのだった。
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/04/19(日) 18:41:02.37 ID:ebv2mjbpO
「ごめん、ちょっと色々取り乱した」

二階の僕の部屋に、男と入ってドアを閉め、僕は言った。ああ、恥ずかしすぎる。

「いやまあいーけどさぁ…」

男の返事に安堵しながら、さっきの恥ずべき行為を男に忘れさせるべく、僕は勉強道具を取り出して、勉強ムードを作り出す。男に勉強で頭いっぱいにさせて忘れさせる作戦、略しておにあい作戦実施である。

「ほら、勉強しよう!僕ここわかんないなー」

「明らかに逃げてるだろ…」
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/04/19(日) 18:43:20.73 ID:ebv2mjbpO
男は言って、嘆息した。だけど、直ぐに表情を真面目なものへと変えて、僕が解けない、と言った問題を教え始める。

しかし僕が焦って咄嗟に聞いた問題は、僕がもう解けるような問題だった。
そのために僕は説明も聞かずに、只々、真剣に問題を解説している男の顔を見つめていた。あ、意外とまつ毛が長い。

「…って、娘、聞いてんのかよ」

男が軽く僕の頭を小突く。僕に、解説の理解度の確認をしようとして、僕の様子に気がついたのだろう。
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/04/19(日) 18:44:00.23 ID:ebv2mjbpO
「へへ、ごめん」

「質問したなら聞けよ…」

ジト目で僕を見た後、「次はちゃんと聞けよ」と言い、男は解説を再開した。だけどそれ僕知ってるんだよなぁ…。

「…ごめん、それ知ってる」

男が説明し始めた辺りで、意を決して、僕がおそるおそる言うと、男は嘆息し、次の解説する問題を催促するのであった。
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/04/19(日) 18:45:12.10 ID:ebv2mjbpO
時刻は時計の短針と長針がぴったり真上で重なるとき、すなわち正午となった。部屋の壁掛け時計から、グルッポーと間抜けな鳩の鳴き声がする。ちなみに音が出るだけで、ちっちゃい鳩が飛び出したりはしてこない。

男はといえば、僕に問題の解説をし終えると、30分ほど暗記科目の勉強をした後、僕の部屋の物をいじくりまわしている。暗記は普通みたいな言い方したことあるけど、記憶力も並みじゃないな。

「お!これ仮面ライダーのやつじゃん!」

クローゼットの中を漁っていた男が、とても懐かしいものを見つけた。仮面ライダーの玩具である。

それを頭上に高々と掲げると、男が言う。
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/04/19(日) 18:46:17.00 ID:ebv2mjbpO
「俺、参上!」

「たしかそれじゃなかったよ」

残念ながらそれは電王だ。電王では無かったような気がする。なんか、戦わなければ生き残れない感じの奴だったなぁ…。たしか。

男が、使い方が気になったのか、玩具を弄り始める。

男がガチャガチャと玩具を弄る音に加え、ときたま効果音がなる。結構うるさい。

しばらくやっていて飽きたのか、それをクローゼットにしまい直し、クローゼットの扉を閉める。

そしてくるりと此方を向いて、男は言った。

「腹へった」
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/04/19(日) 18:47:35.50 ID:ebv2mjbpO
この男の発言により、僕も空腹を自覚し始めた。時刻は12時15分。お母さんが出かけて行ってしまったため、食事をするならば、外食になりそうだ。

「おなかへったね…」

僕もどうという訳でもなく、ポツリと呟く。確かに食事はしたいが、わざわざ外にでるのは面倒くさい。となると、どちらかがコンビニに行って買うのが妥当か。とすると、あれをやるしかないようだ。

僕と男の目線が交差する。男はどうやらそれをもうやる気のようだ。

軽い握り拳をつくる。男もまた同様に。

男の腕が動き出す。すかさず僕も、腕を振る。

勝負の火蓋は切って落とされた。

「「最初はグー!」」
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/04/19(日) 18:50:21.39 ID:ebv2mjbpO
今日はこれで終わりです。ちなみに龍騎だと北岡さん、次点で蓮が好きです
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/04/19(日) 18:53:37.04 ID:ebv2mjbpO
>>59
グルッポーじゃなくてクルッポーですね
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/19(日) 20:57:10.43 ID:kAqBl4ZWo

待ってた!そして続きも待ってる
龍騎は皆いいキャラしてて皆好きだなww
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/19(日) 21:08:27.56 ID:nB0so1yHo
乙 期待
66 : ◆3o5ksYdBDI :2015/04/29(水) 19:18:50.15 ID:O8wEOnsTO
とーかしまーすはい
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/04/29(水) 19:21:07.56 ID:O8wEOnsTO
結果は男の負け。そのため僕は現在、部屋で男を待っている。すこし寂しい。一緒に行った方がよかったかなぁ……。

今、家には僕しかいない。

「男、好き」

なんとなしに、ぽつりと呟く。その言葉は、僕の頭を少し熱くして、するりと部屋の空気に溶けてゆく。

「男、好き」

今度は、先ほどより少し強く。なんとなく、この言葉で、この部屋に満ちているであろう、寂しさとやらに
打ち勝ってみたかった。

何でかはわからない。

先ほどまでの、男と一緒にいたという、事実。
それが、男がいなくなった今になって、口にせずにはいられない、僕の気持ちへと変貌していった。それもあるかもしれない。
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/04/29(水) 19:26:34.73 ID:O8wEOnsTO
と、そこで、玄関のドアが開く音がする。男が帰ってきたのだ。

階段を上る音がした。僕は火照った顔を隠すために、素早くベットの布団の中へと潜り込む。

続いて部屋のドアが開く。

「買ってきたぞ、ほら」

開口一番、男がそう言って僕にコンビニ袋を差し出す。僕はそれを受け取る為に、布団から上半身を、もそもそと出す。顔の赤みはなんとか引いた、はず、引いたよね?

腕を伸ばし袋を受け取ると、僕の手に軽く男の手が触れる。男は、素早く手を引く。感触が名残惜しい。
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/04/29(水) 19:35:05.94 ID:O8wEOnsTO
「いやー、それにしても寒かったな、外」

言う男は、やけに目線が泳いでいる。頬が赤いところを見ると、言う通り、かなり寒かったのだろうか。

「そっか、やっぱり一緒にいけばよかったかもね」

「いや一緒に行っても寒さはかわらん」

男がそう言うのを聞き流しながら、
僕は袋の中から、牛乳とパンを取り出す。

男も床に座ると、おにぎりを2個とお茶を、コンビニ袋から取り出す。そしておにぎりの包装をときながら、言った。

「娘、熱でもあんの」

「は、へ……ふぇ?」
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/04/29(水) 19:53:52.68 ID:O8wEOnsTO
男が急にそんな事を言うから、僕は牛乳にストローを挿した状態で静止した。熱なんかないよ。

「なんで?」

「いや顔真っ赤っかだから」

男にそう返される。一瞬思考が停止しかけるが、その反動だろうか、頭がフル回転する。まずい…見られた。見られた見られた見られた見られた見られた見られた。見られた!なんで?ひけよ、赤み!

と、僕が羞恥に身悶えそうになっていると、いきなり牛乳に僕に向かって噴出してきた。もう色々ありすぎてわけわからない。

牛乳が顔にかかり、上半身にかかるという、違う意味での頭を冷やすを実践していると、頭がすっきりとした。一周回って落ち着いた、というやつだ。これがほんとの頭を冷やす。
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/04/29(水) 19:55:03.67 ID:O8wEOnsTO
と、そこで、僕は牛乳パックを握り潰してしまっていたことに気づいた。羞恥心のあまり、手を強くにぎってしまっていたようだ。

「娘、大丈夫か?」

とんでもない事態に暫く放心していた男は、急にずずいと身をこちらに寄せる。近い近い。顔が再び熱くなる。

「…ん、だい、じょうぶ」

僕が途切れ途切れにそう言って、男をみると、急に男は顔を背けた。

「あ、あー!娘、お前、牛乳!顔にかかってる牛乳をどうにかしろ!」

「う、うん?」

男の様子が急に変わった事に戸惑いつつも、とりあえずどうにかしようと努める。うわ、ベットびちゃびちゃ。服も肌に張り付いて気持ち悪い。とりあえず、上は脱ごう。

と、服を脱ぎはじめたところで、男が僕をじっと見ていることに気づく。なにか変かな?

「なに?」

「ああいやなんでもないですはい……煽情的とかおもってないからほんと」

そう答えると、男はふいとそっぽを向いた。戦場的って、僕べつにシュワちゃんじゃないんだけどなぁ。
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/04/29(水) 19:57:00.45 ID:O8wEOnsTO
今日はここまで
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/30(木) 00:40:06.04 ID:DLWpkP4Co

白い液体が顔にかかっただけ。エロくないエロくな……い
74 : ◆3o5ksYdBDI [sage]:2015/05/21(木) 17:01:30.44 ID:jHoPxYyCO
すいません今週中には更新します
35.15 KB   
VIP Service SS速報VIP 専用ブラウザ 検索 Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)