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【親愛なるキラー・クイーン】 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/02(木) 15:07:53.89 ID:eNlACQmAO
【最期に君を触れた手】

ゴリッ…バリッ…メキッ…
暗い部屋に木霊する不協和音
硬く冷たい刃物がまだ熱の残った肉を、先程まで生きていた肉を切り裂いて行く

「…」

男はただ無言でその作業に没頭する
頭の片隅ではその女との会話を思い返しながら、不協和音を奏でながら肉を切り裂く

男の表情には一切の憐れみを感じられない
ただ、肉を裂くだけ

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1427954873
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阿笠「天丼を注文したのにカツ丼が来たぞい」 @ 2025/04/15(火) 03:32:51.17 ID:wEqqnIYDO
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私と遺伝子合体、する? @ 2025/04/14(月) 19:53:30.65 ID:imUKeBVpO
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勇者「じゃあワイ君には今日でこのパーティから抜けて貰うね」ワイ「…!」 @ 2025/04/13(日) 19:30:28.62 ID:35i3pSvW0
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埋められる前に今後の活動方針とご報告、そして第一子誕生について話します @ 2025/04/13(日) 18:28:22.73 ID:eQRjwmQ1O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1744536502/

勝負はいつもシンプルクール! @ 2025/04/11(金) 19:32:15.83 ID:vlELzx/to
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トコロ天龍ちゃんのそこっ!おっ、オッパゲドン! @ 2025/04/11(金) 10:13:14.98 ID:96qg3C5Zo
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これっぽっちの刃で痛い痛い指の先 @ 2025/04/10(木) 21:34:02.98 ID:IgfR3R6V0
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射爆了戦隊 アッアンバレちゃうよぉ……バレたくなきゃ声を抑えルンジャー @ 2025/04/10(木) 20:06:40.47 ID:tQYOW9bJo
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2 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/02(木) 15:14:32.06 ID:eNlACQmAO
ちょっと甘い声をかければポンポンとついてくるようなただの尻軽女だった
そこら辺の喫茶店に連れ込んでみればポンポンと喋る喋る
至極どうでも良いことばかり

「あの…彼女とかは…いらっしゃらないんですか…?」

頬を赤らめながら聞いてきた言葉も、どう返せば良いかなんて知ってる

「いないよ…君はいるのかな?」

ほら、目の色が変わった
この後どうすれば良いかなんて知っている
単純さ…少し声をかければ来るような女だから
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/02(木) 15:16:15.45 ID:F4rCh0g/o
和音は出ないだろ
4 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/02(木) 15:23:17.25 ID:eNlACQmAO
少し誘っただけで家に上がるなんてね
無警戒で甘い尻軽女だよ

私は部屋を見渡す彼女の白く美しい首を思いきり締め上げる
グググと音をあげながら壊れかけのブリキの玩具のように彼女は苦しむ
彼女と鏡越しに目が合う。なんでどうして止めて放して……必死に目だけで懇願してくる

「私も…一目惚れしたんだ。…君の美しいその手にね」

くだらない話をしている君は醜悪で不細工だったよ。退屈でイライラする女だった
彼女の美しい手が私の手を引っ掻く
ネイルされた爪が汚れては良くないので、首を絞める手を更に強めた

そして彼女はふらりと…糸の切れたマリオネットのように崩れ落ちた
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/02(木) 15:34:38.96 ID:7K5AHaq2O
面白そう
期待
6 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/02(木) 15:39:28.53 ID:eNlACQmAO
骨を断ち切り肉を裂き体から離れた彼女を手に取る

「余計なことを喋らない君はとても美しい。手だけの君は魅力的だよ…」

彼女に柔らかなキスをしてそっと机に置いた
今すぐにでもしたい…したくて堪らないが夜までお楽しみは取っておかなくちゃならない

「ン?あぁ…邪魔な肉塊だな…」

私はいつものようにアイツを呼び出す
常に私の側にいて私を守るアイツを

「キラー・クイーン…爆破しろ。音を立てずにな」

キラー・クイーンは無言で肉塊に触れるとスイッチを押した
肉塊はガスが漏れているかのような音を立てながらゆったりとこの世の私以外に知られることなく消え去った
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/02(木) 15:42:27.94 ID:0AS8NKPC0
人違いだったら悪いけど前作も面白かったから期待してる
8 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/02(木) 16:41:02.94 ID:eNlACQmAO
「どうかな…君のためにディナーを用意したんだ」

今日は寄りをかけて色々な料理を作った
正直なところ料理は店のものと比較してもひけをとらないと自負している
ローストビーフ、サーモンのマリネ、シーザーサラダにその他諸々と奮発したメニューだ

「ほら…ワインで乾杯しよう」

彼女のグラスにワインを注ぎ、彼女と乾杯をした
ふと見ると彼女の方のテーブルクロスに少しだけ赤黒いシミが出来ていた

「おやおや…イケない子だな…シミを作っちゃうなんて」

彼女は無駄な言葉は一切喋らない
私は彼女を眺めながらゆっくりと食事を堪能した
何も話さない君はとても美しい…見惚れてしまうよ
9 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/02(木) 16:52:09.58 ID:eNlACQmAO
「君にプレゼントがあるんだ…受け取ってくれるかな?」

スーツの内ポケットから指輪を取り出す
そこまで値が張る物じゃないが、昨日彼女と一緒に店で選んだものだ
私は彼女の手を取りゆっくりと填める
指輪は彼女の元で一層その輝きを増していた

「よく似合ってるよ…とても美しい…」

彼女をまたテーブルの上に置いて食事を始めた
その至福の時を破るかのように硝子の割れる音が響いた。そこらのガキがボールか何か投げ込んだんだろ

「ちっ……すまない、少し待っててくれないかな?おイタの過ぎるガキがいるみたいでね…」

これだからガキは嫌いなんだ
10 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/02(木) 17:00:34.26 ID:eNlACQmAO
どうやら割れたのは窓ではなく花瓶の方だったらしい
私はそこにある野球ボールを拾い、投げ込んだであろうガキを探した

「すいませーん、ボールとってくださーい!」

図々しく謝りもしないでガキがそんなことをほざきだした

「少し罰を与えてやなきゃな…」

私はそう呟くとそのガキにボールを投げ返した
少年は礼一つ言うことなく消え去ったようだ

「ふん。糞ガキが」

少しだけ気分の晴れた私は部屋へ戻りまた至福の時を過ごした
11 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/02(木) 17:15:57.55 ID:eNlACQmAO
彼女と素晴らしいディナーを堪能。彼女は満足してくれただろうか?

「先にお風呂の方が良いかな?…そうだね。お風呂にしようか」

私は彼女の手を引いてお風呂場へと向かう

「大丈夫…優しく洗ってあげるさ…綺麗な手だなぁ…思わず頬擦りしてしまうよ」

しっかりと彼女を洗った後は彼女に背中を洗ってもらう。中々前の彼女よりも上手い

「ふう。長湯はあまりよくないだろうし上がろうか」

風呂から上がった私たちは布団へと向かった
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/02(木) 17:43:57.35 ID:qqKWciW8o
モゾモゾするのか・・・
13 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/02(木) 17:54:54.22 ID:eNlACQmAO
「君はとても美しいよ…ほら…君を見てたらもうこんな風に…」

彼女は積極的なのか私の股間へ手を伸ばしていく
そして艶やかに優しく愛撫を始めた

「あぁ…上手だよ…前の彼女よりも上手だ」

適度な強さで擦る彼女
今までの中だとかなり上手い部類に入るのかもしれない

「あぁ…もう出そうだよ…」

その直後に彼女は絶頂に近い僕を更に強く擦り出した
激しく強く、それでいて柔らかに

「うっ…ふぅ…。とても上手だったよ……ありがとう」

絶頂に達した私は彼女をまた優しく洗い流し二人で布団に入りゆっくりと穏やかに眠った
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/02(木) 17:59:37.05 ID:LN8ASYlKo
吉良って童貞だよな
15 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/02(木) 18:07:10.93 ID:eNlACQmAO
熱い夜を過ごした私はこっそり彼女を仕事に連れていくことにした
彼女は昨日と同じようにその手に美しく指輪を輝かせている

「昨日は素晴らしかったね…何も語らない君はやはりとても魅力的だよ…ン?」

会社に行く途中にあるビラを貰った
そのビラには若い女性が写っていた。どうやら行方不明らしい
丁度彼女と出会った日だったが…まぁこんな女関係無いだろう

「知らないなこんな女」

ビラをグシャグシャにすると道端へ捨てた
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/02(木) 18:15:05.44 ID:F4rCh0g/o
こうして見ると吉良キモすぎるな
17 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/02(木) 18:17:35.29 ID:eNlACQmAO
「バウッ!ガウバウッ!」

「コラッポリス!…すいません普段は吠えないのに」

向かいにいたヨボヨボの犬に吠えられる。やはり彼女を犬を誤魔化すのは無理らしい

「仕方無い…か」

キラー・クイーンはそっと彼女に触れると静かに点火した
中々上手で美しい『手』だったのに…勿体無いが仕方無いな

「さようなら…名前は覚えてもいないけれど残念だよ…」

まぁまた別の彼女を探せば良いかと考えながら消え行く『手』を眺めていた
全ては植物のような平穏な生活の為だから

END
18 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/02(木) 18:20:18.65 ID:eNlACQmAO
【最期に君を触れる手】完結です
読んでくださった方ありがとうございました

前のSS読んだことある方がいらっしゃれば知ってるかと思いますがまたジョジョ限定でリクエストを受け付けたいと思います
全力で書かせてもらいますのでよろしくお願いいたします
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/02(木) 18:28:05.51 ID:qqKWciW8o
相変わらず文章がうまい
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/02(木) 18:32:48.17 ID:F4rCh0g/o
盛り上がりが特にないのがある意味吉良っぽい
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/02(木) 20:37:06.40 ID:mab958IGo

顔も名前も覚えてないとかとても吉良らしい

>>14
別のある意味では非童貞だけどな
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/02(木) 20:40:57.11 ID:U3FKfMz3O

またジョジョの掌編を読めるとは嬉しい

情報が少なすぎるかもだけど、スコリッピとか見てみたい
日常的に人の生と死に触れてるだろうし
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/02(木) 21:31:55.42 ID:JhgCMm3Lo
承り太郎と出会う以前の花京院が見たいな
あの旅で花京院は死んだけれど一番輝いてた時間だったと思うわ
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/03(金) 00:47:36.88 ID:9nbYhnY70
相変わらず面白い乙
イギーが野良犬の帝王になるまでとか読んでみたい
25 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/03(金) 06:33:34.54 ID:+Wv2yOM8O
>>22から順番に書かせてもらいます
力が及ばないところもありますが全力で書かせてもらいますのでよろしくお願いいたします
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/03(金) 09:09:21.54 ID:66MfcX5dO
過去作のスレタイよろ
27 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/03(金) 14:06:51.74 ID:eM0E4TedO
>>26
【THE・WORLDは止められない】でググって貰えば多分出ますね
28 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/03(金) 14:53:46.25 ID:eM0E4TedO
【彫り出される運命】

私達の何気無い一つ一つの行動は全て決まっている。いや、決められている
そう考えたキッカケは祖母の死だった

「あの石…お祖母ちゃんにそっくりな石だ」

祖母の家の庭で偶然見つけた石と言うには大きすぎる程の石
そこには祖母の顔が彫ってあった

「お祖母ちゃん、見てあの石。お祖母ちゃんそっくりだよ」

「おやまぁ…こりゃ驚いたわね。お祖父ちゃんが作ったのかしら」

祖母は訝しげにその石に触れた。触れてしまった
祖母はその時少しだけ、顔立ちが変わったように見えた
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/03(金) 15:12:45.50 ID:W7OVt5teO
>>27
あ、あの作者さんだったのか、今回も期待してます!!
30 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/03(金) 16:39:58.12 ID:eM0E4TedO
今ならわかる。あの時祖母は何を見て何を感じたのか
恐らく知ったのだ。この先の運命を。そして受け入れたのだろう
次の朝祖母はベッドで死んでいた。胸にはあの石を抱えて

「あぁ…そんな」

母さんは祖母の枕元で泣き崩れていた
祖父はただ呆然としていた。目の前の事を受け入れられないと言わんばかりに
医者は心臓麻痺だと死因を説明していたが、僕だけはその時直感でわかった

「あの石のせいだ」

誰に聞こえるでもなく僕の呟きが漏れた
その石が誰にも見えないように
31 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/03(金) 17:46:24.85 ID:nb9vKL2F0
祖母が死んでからは何かと不便じゃないかと祖父も僕らと暮らすことになった
哀しみにくれるそんな僕らに更にあるニュースが入ってきたのは、祖母が死んで二日の事だった

「お祖母ちゃん家に車が…!?」

麻薬でラリったトラックが祖母の家に突っ込んだとの事だった
もしあのまま祖母と祖父が暮らしていれば恐らく二人とも死んでいたに違いない
祖母が死んだからこそ、祖父は生きた

祖母は自らの死を、安らかな死を受け入れたのだ。あの彫刻に触れたから運命を知り受け入れたのかもしれない
32 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/03(金) 18:10:36.17 ID:eM0E4TedO
祖母の運命は決まっていた。いや、決められていたのだと、僕は悟った

小学校に上がった頃は良く祖父の仕事場に通っていた
祖父の仕事は彫刻家であり、有名ではないが生活はかなり出来ている方だった

「良いかいスコリッピ…歴史の頂点に輝くかのミケランジェロは昔こう語ったんだ…『私は大理石を彫刻する時…着想を持たない』とね。彼にとって彫刻とは石の中の形を取り出すことなんだよ…」

「石にはそうなるという『運命』が内在しているんだよ…。残念なことに私には彫刻からその石の形を取り出す力は無いんだがね」

祖父は彫刻を彫るときにいつもそう語っていた

「運命を変えることは出来ないの?その石は別の形にはなれないのかな…」

僕はふと祖父にそう尋ねたことがあった
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/03(金) 18:15:03.16 ID:T5YCvz7Uo
ああアンタだったか 相変わらず上手いな
34 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/03(金) 18:27:48.07 ID:eM0E4TedO
「……運命を変えることなんて事は…残酷かもしれないが出来ないだろうな」

祖父は残念そうにそう呟いた。きっと脳裏には祖母のことが思い返されているに違いない

「例えばねスコリッピ…目の前の石につまづくとしよう。これは運命だ…避けられない。だけどもし避けていたとしてもきっとどこか別の場所できっと…つまづいてしまう時が来るはずなんだ。運命だからね」

その時僕はやっとわかったんだ。あぁ…そうか。そうなんだってね
どうあがいても運命からは逃れられない。誰にも逃れることは出来ないけれど、受け入れることは出来る
いや、違う
受け入れることが幸福なんだ…何も知らずに幸福に受け入れることの出来る『眠れる奴隷』こそが幸福なんだ
抗うことは更に苦難の道へ自らを追い込むだけだから

我々は運命の『奴隷』なのだから、と
35 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/03(金) 18:35:57.04 ID:eM0E4TedO
これで僕からの話は終わりさ
さて…君はどうするんだい?
と言っても僕には止めることも出来ないしどうすることも出来ないんだ…ゴメンね
君の運命を、『安楽』を受け入れるか…それとも抗い辛い道を進むのか…
色々な人を見てきた。人によって様々だった。受け入れる人も投げ出す人も逃げ出す人も逆上して投げ捨てる人も…決してどの選択も恥じゃないんだ
君はどうするかな…



そうか…。受け入れるんだね。運命を
僕は確かに残念だと思うけれど、君が受け入れるなら僕は何一つとして止めはしない…

何故なら僕もまた一人の運命の『奴隷』だから

END
36 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/03(金) 18:39:36.69 ID:eM0E4TedO
【彫り出される運命】完結です
眠れる奴隷の解釈には人それぞれあると思いますがみんな違うんじゃないかなと思います

最後まで読んでくださった方々ありがとうございました
次は>>23さんのリクエストを書かせてもらいますのでゆったりとお待ちしていただけると嬉しいです
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/03(金) 18:54:08.63 ID:1pdQFUgxO


難しいリクエストに応えてくれて感謝、次も楽しみに待ってる
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/04(土) 06:45:35.56 ID:RQ5lxQjrO

まあ石の示す通りにしてれば安寧は得られるからなぁ……俺もそっち選びそうだよ
39 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/04(土) 16:23:41.73 ID:wMpsDRT0O
【ふたりぼっち】

ソイツはいつも僕の側にいた
勿論生まれたときから。といっても初めてソイツを確認したのは幼稚園の終わり頃だったかな
あの頃はまだ良かった…

幼稚園の頃はいつも誰かと遊んでいた
父さんと母さんに夕食を食べながら今日あったことを話すんだ
今日はあの子と鬼ごっこをしたんだ
今日は皆と絵を描いてたんだ
かけっこで一番になった日は得意気に話してたなぁ…

しばらくしたらうとうとして母さんに急かされて布団に入って、まだ明かりのある両親たちのいる居間を名残惜しそうに見ながら明日は皆と何をしようって考えるんだ…
あの頃は…良かったなぁ
40 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/04(土) 16:36:52.71 ID:wMpsDRT0O
ソイツを初めて見たとき不思議と恐怖は感じなかった。ただ朝目覚めたら僕の側に居ただけだった

「…?」

最初はコイツはきっとメロンの妖精か何かじゃあないかなんて考えた。だって見た目は光ったメロンそっくりだったから

「典明、早く起きないと幼稚園遅れるよ?もうすぐ小学校に行くんでしょ?ほら早く」

母さんにはこのメロンの妖精が見えていなかった
この時僕はお母さんに言おうかと思ったけれど、確か絵本に妖精は大人には見えないって言うのを読んだのを思い出した
だから言うのをやめた。だって大人には妖精は見えないから
41 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/04(土) 16:48:09.28 ID:wMpsDRT0O
でもこの妖精を見て欲しかった僕はひっきりなしに絵に描いていた
だが誰に聞いてもそんなのは見えないと首をふるばかりだったし、僕にも見えないときがあった

こうして僕はもやもやを抱えながら小学校に入学した。その頃には出てきて欲しいときにソイツを出せるようになっていた

だがある時事件が起こった。ほんの些細な事件だった
友達がガキ大将達によってたかって殴られていたのだ。確か漫画の貸し借りが原因だった気がする
僕は見過ごせなかった。怖かったけれど困ってる人を見て見ぬふりなんて出来やしなかったから

「やめろよ嫌がってるじゃあないか!やめろよ!」

ガキ大将は僕より一回りも体がでかかったけれど負けじと立ち向かった
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/04(土) 16:50:39.67 ID:KCUdJzUlO
貴方か、前スレでは本当にありがとう!
今回も支援!
43 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/04(土) 17:02:48.65 ID:wMpsDRT0O
「うざったいんだよ良い子ちゃんが!」

ガキ大将に殴られそうになる瞬間、咄嗟にいつも側にいるアイツが頭によぎった
強く強く願った
助けて!アイツを倒したいんだ!凝らしめてやりたいんだ!と

次の瞬間いつものようにソイツは出てきて、突然両手から何かを飛ばした
それは昔見た宝石のエメラルドのように美しく、それでいてまるで銃弾のように殺意を秘めていた
エメラルドはガキ大将の鼻っ面に当たったり掠めたりして辺りに飛び散り、果てには教室の花瓶や机まで傷付けた

「ぶげぇ〜〜!?」

ガキ大将が吹っ飛んでピクピクしていると教室も騒がしくなっていた
僕はただ震えて目の前のソイツを眺めていた
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/04(土) 17:42:44.06 ID:Q53kRe7jo
おお…!
リクエストを聞いてくれてありがとう…
45 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/04(土) 19:49:45.41 ID:wMpsDRT0O
家に帰った僕はガタガタ震えてた
あの後ガキ大将が鼻血を流していて泣きわめいていて先生が来た。そこからの記憶はぷっつりと無くなっていた
だがわかることがある

「僕がやった…やってしまったんだ…!アイツを使って僕が……」

きっとあれはメロンの妖精なんて生温いモノじゃあない。きっと悪霊や呪いに違いなかった
そして確かなのはあの悪霊は僕の意思で動かしたのだと言うことだ

「下手をしたら…もし当たり所がもっと悪かったら…死んでいたかもしれないんだ…!」

自分は人とは違う。殺してしまうかもしれない程のナニカが僕には生まれついてあるんだ
そう考えると僕は涙が止まらなかった
46 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/04(土) 20:02:00.65 ID:wMpsDRT0O
アイツは誰にも見えない
僕だけにしか見えないし僕だけしか知らない
きっと友達のあの子にも近所のおばさんにも父さんにも母さんにも話しても分かってもらえないし聞いてもらえないだろう…
アイツは僕を縛る『呪い』なんだ。生まれついて僕にかかっていた『呪い』なんだ

アイツがいる限り、僕は誰ともわかりあえない

「僕は…この世で独りぼっちだ…」

絶えることなく涙が溢れた


その日から花京院典明は誰にも心の扉を開くことは無くなった
誰にも自分の心の中へ入らせないように、強固な壁を作った
まるで自身の『呪い』をそこへ閉じ込めるかのように
47 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/04(土) 20:23:22.61 ID:wMpsDRT0O
あの日からもうかなり時が経った
周りからは冷酷で寡黙な人だとコソコソと言われることも増えた
両親からは何度も他の子と仲良くしろと言われた
その度にわかりあえない苦悩が涙になって眼からこぼれた
たまに女の子に言い寄られても、きっとわかりあえないから身を引き続けた

僕は人前ではアイツを出さないようにしている。また人に危害が加わってはいけないから
アイツは出すとすぐに暗く狭いところへ入ろうとする。その様子は見えないはずの人から逃げようとしているように見えた
もう一つわかったのはまるで糸のようにほどけて伸びていくこと。まるで遠くの誰かその身に触れてくれる人を探しているかのようだった
皮肉なことに僕を縛る『呪い』の姿は僕そのものだった
僕とわかりあえる人はきっといない。コイツを除いてきっと……



END
48 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/04(土) 20:26:04.87 ID:wMpsDRT0O
【ふたりぼっち】完結です
最後まで読んでくださった方感謝です!
続いては>>24さんのリクエストを書かせてもらいます!
頑張って書かせてもらいますのでゆったりとお待ちください!

49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/04(土) 20:49:33.12 ID:aAKQ4rvb0
恥知らずの後でフーゴがどんな日常を過ごしてるのかも知りたい
50 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/05(日) 16:02:13.81 ID:LkCh/crTO
【その糞犬、帝王につき】

昔々ニューヨークのある富豪の家に一匹の子犬が飼われることになりました

血統書付きのそのボストン・テリアは過保護なほどに人間に構われ、甘やかされる日々を過ごしてすくすくと育ちました

そしていつの日か使用人の人間を眺めながらこう考えるようになりました
人間ってバカばっかだな。と

飼い主の前だけ従順なふりでもしておいてやればエサと広いぬくぬくとした屋敷での生活が彼には与えられました
こんなことすら見抜けない人間を彼は心の中でバカにし続けていたのです
51 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/05(日) 16:12:42.82 ID:LkCh/crTO
彼にはおおよそ血統書付きとは思えないような趣味がありました
それは下品なことに人の顔に屁をすることと人の髪の毛をむしりとることです
ターゲットは主にヘラヘラと仕事の愚痴を言う使用人達でした

「お前のご主人は人遣い荒いよなぁイギー」

こんな風に近寄ってくる人に彼はいつも心の中でこう呟くのです

「そんなくだらない愚痴を聴かすんじゃあねぇバ〜カ!犬なんかに話しかけて恥ずかしくないのかお前はよぉ!」

そうして思いっきり顔に飛び掛かって屁をかましながら髪の毛をむしり取ってやるのです
使用人は面食らって逃げ出すばかりでイギーにとっては最高の遊びでした
52 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/05(日) 16:22:28.03 ID:LkCh/crTO
そんな恵まれた生活での不満はイギーにとっての娯楽は少ないことでした

豪華なエサも、ぬくぬくとした屋敷も、彼にとっては日に日に自分を入れる犬小屋と変わらぬ存在になっていったのです
仕方無しとは言えバカ人間にそこらの血統書無しの犬と同じように術順なふりをするのも大嫌い

イギーは遂に決断します。脱走しようと
何処に行くにも車に乗せられ自分で外を歩き回れないのはつまらないと考えたのです
そう決めたイギーは外の恐ろしさも知らずに脱走を企てたのです
53 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/05(日) 21:55:25.04 ID:4R+j7C7t0
イギーにとっては脱走など朝飯前でした
何故なら彼にはバカ人間じゃあ到底真似できないふしぎな力を持っていたから

彼の周りをするすると砂が風と遊ぶかのように渦巻いて徐々に形を作っていきます
その砂はまるでインディアンのように羽飾りをつけた大型犬のような姿になったのです

彼は生まれついて砂を手足のように操ることが出来たのです
と言ってもこの広い屋敷にはろくに砂が落ちていないのです
そのために彼はコツコツとあることをして砂をかき集めていました。それは人の靴集めです
人の靴についた砂を少しずつ、少しずつ奪ったのです。全ては脱走の為だけに
54 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/06(月) 05:22:59.07 ID:X2rClM/qO
彼は生まれて初めて自ら屋敷の外へと出ました
自らの足で、初めて世界に踏み出したのです
下品な人間の会話も自由に大空を舞う鳥達も皆初めて見る世界でした
彼の目に映るもの皆全てが、彼には自由に思えました。あの狭い屋敷では考えられないような世界だったのです

しかし初めて見る世界は良いことだけではありませんでした。彼が人からエサを奪っていると、血統書の無い下品な犬達に囲まれました

「おい兄ちゃん、そんな気取った歩き方でこの町を歩きやがって迷子にでもなったのか?」

一匹の野良犬が下品に笑みを浮かべながら語りかけると周りも卑しくイギーを嘲笑したのです
55 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/06(月) 05:46:34.21 ID:X2rClM/qO
しかしイギーは彼らを相手にする気はありませんでした
何故なら血統書すらない野良の存在なぞ彼にとっては関わるのも無駄だったからです

「舐めた野郎だ…やっちまえ!」

ボス格のの一声に唸りをあげながら猛然と襲い掛かる野良犬達。牙を剥きながら噛み殺さんと全員で襲い掛かります
それに対して彼の行った行動はただ一つ

「なっ…いない!?何故だ!我々の攻撃を掻い潜ったのか!?」

「甘いんだよ田舎者!」

彼は砂を自在に操りするりと避けていました
そのまま彼は砂を使いながら野良犬達を次々に薙ぎ倒していきます

「ばっ…化け物だぁ!!ひぃぃい!」

恐れをなしたボス格の犬が哀れに逃げ出し、彼は見事この町の野良犬の帝王になったのです
気品も風格も実力も兼ね備え、何よりも世間知らずな愚者の王様となったのです
56 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/06(月) 06:09:07.44 ID:rZi3G5UL0
最早イギーはあの家に帰る気など更々ありませんでした
あんな自由に歩き回れない家など野良犬の帝王に君臨した今では必要ありません
こうして彼は自由を掴み取ったのです



しばらくしてニューヨークにはある噂が流れるようになりました。野良犬達の集団がまるで王国のように徒党を組んで行動していると言うのです。そのリーダーは砂を操るだとか色々オカルトな噂があるのです
人々はその野良犬達を人々はこう呼びます
『愚者の集団』、すなわちザ・ストゥージズと

このストゥージズがインドから来た占い師とSPW財団と熾烈な争いを繰り広げるのはまた別のお話し
57 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/06(月) 06:11:17.75 ID:rZi3G5UL0
【その糞犬、帝王につき】完結です

少しグダグダな部分もありましたがお許しください
最後まで読んでくださった方には感謝です!

次は>>49さんのリクエストを書かせていただきます!ゆっくりまったりとお待ちしていただけると嬉しいです
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/06(月) 16:39:53.89 ID:WAlW/PAL0
1乙
アヴドゥルはエジプト人だぜ…イギーからのストゥージズはニヤリとしたww
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/04/06(月) 19:58:43.98 ID:X0KpIa4c0
ディアボロが組織を作るまでの過程も気になる
矢があるとはいえ二十歳にもなってない何の後ろ盾もない人間が、数年でマフィアのボスになるってどんな手を使ったのか
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2015/04/09(木) 13:45:40.14 ID:DLgvWDorO
形兆の兄貴の過去が気になるな
どういった過程で矢を入手したか気になる
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/10(金) 04:54:48.69 ID:s/XRMItVO
7部ジョニィの父親の(ジョニィと再開するまでと、SBR終了後の)話なんか気になるなぁ…
62 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/10(金) 22:08:33.70 ID:v/Yr3OnCO
【散り去った花道を往く者】

「よぉ暇か?」

山のような書類と格闘していると気安く気軽に話しかける声が聞こえた

「やぁミスタ……いや今はミスタ“さん”だっけ?」

書類の山からひょっこり顔を出したのは組織のNo.2でもあるミスタだ
こんな書類の山を見ても暇に見えるのは羨ましいほど能天気なのかはたまた頭が抜けたド低脳なのかはわからない

「いやミスタで良いぜ…それより組織の“No.2”が呼んでる」

ミスタの発言に僕は妙な顔になった
No.2は今目の前にいるじゃあないかと
63 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/10(金) 22:23:24.51 ID:v/Yr3OnCO
「何言ってるんだミスタ…No.2は君だろ?」

「俺はNo.2じゃあねぇ!俺もNo.2だと2人になって足しても掛けても“4”になっちまうだろうが!“4”はダメだ。わかるか?“4”は不吉なんだよ!」

何故かミスタは苦虫を噛み潰したかのような顔になって必死に否定し始めた
僕は僕でミスタが何を言ってるのかサッパリわからない…無論“4”に固執するのは昔からなのだが…

「とにかく!ボスのところへ行け。これはパッショーネの幹部としての命令だ。良いな?」

ミスタはそう言うと力強くドアを閉めて部屋から出て行ってしまった

「一体何だって言うんだ」

僕が首をすくめると同時に書類の山が崩れ去った
64 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/10(金) 22:54:28.13 ID:v/Yr3OnCO
ボスの部屋を三回、響きすぎないようにそっとノックする

「入りなよ。君なのはわかっているから」

部屋の中から若く爽やかな声がした。イタリア中を支配するパッショーネからは想像だに出来ないほど若々しさに溢れていた

「失礼しますボス…それでNo.2との謁見とは…」

「これはパッショーネのトップシークレットだからわからなくても仕方ないさ」

ボスは読んでいた本を閉じると窓際にいた何かを手に取りツカツカとこちらへ歩み寄ってきた

「彼はここにいる。是非君に会って欲しいんだ」

コトリと置いたのはあの列車に乗ったときに見つけたあのカメ
背中に鍵を付けたスタンド能力を持ったあのカメだった
65 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/10(金) 23:36:59.68 ID:v/Yr3OnCO
「この中に…?」

そのNo.2は何故よりにもよってこんな亀の中に住み着いていて公にされてはいないのか…
一つの可能性が僕の頭によぎった

もしかしてブチャラティは生きているんじゃあ無いかと言う疑問だった
だがその疑問は数秒もしない内に頭から離れることになる
彼はボスと戦い、そして死んだと聞かされていたし実際に墓参りに行ったのだから生きているわけはないのだ

「彼に会えば君のためになる。そう僕は考えているんだ」

まだ年端も行かないボス、ジョルノに急かされるままに僕は亀の背中の鍵に触れた
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/04/11(土) 15:54:20.04 ID:Ld/WcJdp0
エターナル?
67 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/11(土) 20:15:30.40 ID:KGmi80Q3O
久し振りに来た亀の背中の部屋はキチンと整頓されていて誰かが住んでるとは思えないような空間だった
今の僕の部屋よりも広いんじゃあ無いかなこりゃ

「動くな。身動ぎ一つせず指先一本も動かすなよ」

それは唐突な攻撃だった。いきなり後ろに立っていた謎の人物に何かを首筋に突き付けられた
気配の一つすら感じさせない手練れで後ろに立たれるまで気付きもしなかった

「スタンドは出すなよ…君のスタンドはジョルノから聞いているからな。こんな閉鎖空間で君のスタンドは危険すぎるからね」

少しフランス語訛りのイタリア語で僕に男は話しかける
無論男はスタンドなど出させる間もなく殺す余裕を感じさせていた

「………ふっ…」

男は吹き出したかと思うと少しずつ笑いだした
68 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/11(土) 20:26:11.23 ID:KGmi80Q3O
「見事だ、フーゴ君。ジョルノが推してくる人間なだけあって呼吸一つ乱さない。この前ミスタにやったら本気で撃とうとしてきてね…それに比べて君は冷静そのものだよ」

「は、はぁ……」

男はナイフを首筋から離し、笑いで乱れた呼吸を整えながらポットを取り出した
耳元のハートを模したイヤリングが揺れた

「紅茶は好きかな?」

「ええ…まぁ」

「ストレート?ミルクはいるかい?」

「いえ、ストレートで…」

彼はティーカップを2つテーブルに運ぶとゆっくりと置き、彼も席についた。銀の髪はきっちりとセットされ、一つ一つの行動から大人の余裕を感じられた

「イタズラをしてすまない。私はジャン・ピエール・ポルナレフ。ポルナレフと呼んでくれ」

ポルナレフは少し笑うと握手を求め、僕もそれに応じた
69 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/11(土) 21:01:38.82 ID:KGmi80Q3O
「首に突き付けていたのはただの玩具だよ。日本のパーティグッズ。良くできていると思わないか?」

刃先を掌に向けて押し込んだりを繰り返して彼は感心しているかのようだった

「あの…僕を呼んだのは一体」

さっきから彼のペースに僕は翻弄されている気がして仕方ない。本題に入らねば

「あぁ…実はジョルノが君を幹部に取り立てたいとのことでね。ジョルノとミスタは十分と言っていたんだがね。私もNo.2として君を査定したくてね…」

そう言って一口彼は紅茶をすすった
70 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/11(土) 21:15:55.12 ID:KGmi80Q3O
「私としては君が幹部になるのは大いに歓迎だ。幹部に相応しい人だって今日会ってみて確信を得たよ…ん?どうしたんだい浮かない顔をして…」

僕は昇進の話には全く喜びを感じられなかった
何故なら僕は…僕は

「恥知らずのフーゴ」

「………!」

ポルナレフの呟いた言葉に僕はびくりと体が震えてしまう。過剰なまでに反応してしまう

「仲間たちを裏切った、恥知らずのパンナコッタ・フーゴ」

「…めろ…………」

ポルナレフの呟く言葉一つ一つが突き刺さる
僕はそれを否定ることは出来ない

「ジョルノから話は聞いている。ディアボロとの戦いのことも全て、君がボートに乗らなかったことも…」

「止めろ!」

ダンッ!と机を叩く音が大きく響き渡る
机の紅茶に波紋が揺らめいた
71 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/11(土) 21:36:25.75 ID:KGmi80Q3O
「死を一人で背負うんじゃあない…君は自分に罰を与える必要もない。仲間の死の辛さは…私にも良くわかる」

ポルナレフは昔に思いを馳せるかのようにそう呟いた
遠く遠く離れてしまった昔の仲間に告げるかのように

「死んだ者の意志は、遺された意志は残された人達が背負うんだ。だからこそ平和な町を作るためにも君は幹部になるべきじゃあないかな?」

彼の言うことは至極全うだった
けれどあの時僕はボートに乗らなかった…だから、だからこそ

「僕は幹部にはなれない…」

僕はうつ向きながら消え入りそうな声でそう答えた
72 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/11(土) 21:50:49.35 ID:KGmi80Q3O
「僕は幹部になる資格は…無いんです。あの時ボートに乗らなかった僕が、皆と同じ花道を進むことは出来ないんです…」

揺らめいていた紅茶はもう静かに止まった

「僕は僕の道を往く…恥知らずは散り去った花道を往くが宿命だから。いつかその道がまた交わる日が来るかもしれないから」

その日まで僕は僕の道を往く。もしもそれが孤独の行軍だったとしても
その日がいつの日か来ると僕はあの日、手を取った日から知っているから

「……わかったよ」

ポルナレフはため息をこぼすとやれやれと言わんばかりに手を上げた

「」

73 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/11(土) 22:05:18.42 ID:KGmi80Q3O
僕は彼を見て驚愕する
上げた掌には拳銃があったからだ

「……またパーティグッズですか…?」

「……ハハッ…流石に二度目は通じないか。どうしても幹部になって欲しかったんだがな」

落胆したかのように銃を投げ捨てた

「でも良いんだ。それもまた君の一つの答えなんだから。胸を張って歩いて往けよ、恥知らず」

そう言うと彼はいたずらっぽく微笑んだ
彼とはまた違う道を選んだ僕を試すかのような目だった
こうして僕は、僕の道への一歩を踏み始めた
恥知らずなりの…僕の道への一歩を


END
74 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/11(土) 22:08:58.73 ID:KGmi80Q3O
【散り去った花道を往く者】完結です
微妙な終わりかもしれませんがお許しを…
最後まで読んでくれた方感謝です!
次は>>59さんのリクエストを書かせてもらいます!よろしくお願いします!
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/12(日) 00:53:06.63 ID:YNS+8/Pzo
荒木が掲示板にいるなんて…
76 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/12(日) 15:50:04.42 ID:/VFTeqXbO
【深紅の王の覇道】

辺りの壁は紅いペンキをぶちまけたかのように紅く染まっていた

「なんだお前は……何だ!?誰だ!?何のためにどうしてこんなことを!?命知らずの無鉄砲なガキが!」

高級そうなスーツに身を包み高い香水をつんとさせるほどに体に振り撒いたオヤジは情けなく失禁している
所詮前線に出ることもなくなったマフィアなど腰抜けの権力ジャンキーにしかならない
権力にしがみつき人でなしの外道じみた行為をするだけの下品な男になるだけ

「……目的?そんなものを知ったところで無駄だ」

手の中の銃の劇鉄をカチリと起こす
先ほど屋敷の外にいたしたっぱから奪った銃だ。ご丁寧にサイレンサーを付けていた

「今から死ぬお前には、な」

スポンと間抜けな音が屋敷を響き渡った
77 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/12(日) 16:01:24.07 ID:/VFTeqXbO
「マフィアの館で抗争か……ひでぇなぁこりゃあ……」

新聞の記事を広げながらデスクの男はそう呟き、熱いコーヒーに舌を火傷させた

「そんなこと良いから仕事してくださいよ所長!」

貯まりに貯まった書類の山を指しながら所長に呼び掛ける。夏休みの子供に叱る親のような気分だ

「まぁまてよヴィッコ君。そうカッカしなくても良いじゃあないか」

「良かないんですよ!このまま順当に行けばここはお払い箱ですよ!」

やんわり制そうとする所長に更に詰め寄る
新聞記者を目指して早くも3年
初っぱなからこんな部署に左遷されて昇進も期待できなくって来ていると言うのに……
78 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/12(日) 16:37:39.99 ID:/VFTeqXbO
「あのなぁヴィッコ君。…潰れる潰れると言っても何気にここの部署は残ってきたんだよ。だから今回も大丈夫大丈夫〜」

この脳内お花畑が…と思っていると誰かがドアを開けて入ってきた

「あっ…あのぉ…僕ここに配属されてきたんですけど…」

仕事道具の入った馬鹿でかい段ボールを抱えながらまた一人、もはや沈んだ泥船に乗り込まされる被害者が現れた

「ようこそイタリアの大手新聞社の左遷先、何でも調べるお便り投稿専門部署『パッショーネ』へ」

最大限の同情を込めながら新人へ吐き捨てた
79 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/12(日) 16:55:10.22 ID:/VFTeqXbO
「左遷先…?」

新人はショックを受けたようだがこの程度でそんなことを気にしても仕方あるまい

「おうそうだ。左遷先であり常に潰れる筆頭がこの部署さ。こっちがこの部署の所長のジャン。俺はヴィッコ。君は?」

段ボールを取り敢えず空いていた机に置いた新人に名前を問う
まずは自己紹介だろう

「僕の名前は……ボージョ。デニッパー・ボージョです」

DENIPPER・VOGIO、と彼はメモ帳にスペルを書いて見せた
だがそんなことは良い

「そうかボージョ君。左遷されてさっそくだが仕事だ。と言うかうちの部署はマトモに休めると思うなよ。読者投稿があるように見せ掛けるために嘘の依頼をこなさなきゃならないからな」

恐らく真新しいスーツ的にもまだまだ新人といったところだろう。入社して一年にも満たってないはずだ
この事実には同情せざるを得ない

「まぁそんなハードな仕事に根を上げて辞める人が多いからねぇ…うちの部署は。万年人不足だから潰れそうってね」

「人不足の自覚あるならあんたも仕事してください」

なに他人事みたいに語ってるんだこのヌケサク所長は
80 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/12(日) 18:55:34.08 ID:/VFTeqXbO
「で、今日の仕事って何なんです?」

「あーごほん。実はだな今回は報道部からこの事件について調べろとのことなんだ…」

ジャンが指したのは新聞の一面を飾っている内容だった。昨日起こった屋敷襲撃事件らしい

「襲撃事件はこのマフィアだけじゃあない…近年立て続けに起こっているらしいからな」

「だが報道部は手一杯で暇人の俺達にやれ。と言うわけですかそうですか」

まぁ官僚などにご接待をしている腐れ報道部らしい行動だと俺は感心した

「………」

「おいボージョ?何してんだよ早く行くぞ」

「あ、はい!わかりました!」

俺にせかされ取材に出ていく時にボージョは意味深な眼で記事を睨んでいた
そしてその姿をジャンもまた…
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/04/12(日) 19:08:22.28 ID:usOfOZKk0
コナン「僕の名前は江戸川コナン、探偵さ」

剛「・・・・・・・・・・・・」

みなと「あ、あのねえ、坊や。探偵ごっこでもしてるのかい?」

コナン「・・・・・・殺人・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

剛「!?」

みなと「殺人って・・・・・・さっきのバイク事故の話かい?

人聞きの悪いことを言わないでくれよ、坊や。

さっきのは事故の話さ」ニッコリ




コナン「じゃあ、なんで警察を呼んでないの?」

剛「ムッ?」
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/04/12(日) 19:10:01.73 ID:usOfOZKk0
すいません。81のコメント間違えました。
無視してください。すいません
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/12(日) 20:55:02.26 ID:aEMomRab0
>>82
間違い訂正ならせめてsageーやww
84 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/12(日) 21:21:56.78 ID:/VFTeqXbO
「全く…何が『パッショーネ』だ。情熱なんて意味の言葉付けてよぉ…全くあっちゃあいねぇぜ」

「ハハハ……まぁまぁヴィッコさん。それより着きましたよ現場」

現場はkeep outと書かれた黄色いテープが巻き付けられ、警察もまた厳重な警備をしていた
取材とは言え無名に近いうちじゃあ入るのは難しいかもしれない

「さてさてどうしたもんかね…」

こう言うときに何の手配しない報道部は無能でしかない。権力バカは上から消えてくれ

「うーん…困りましたねぇ…」

「もう調べなくても良いんじゃあねぇか?めんどくさいし」

この件だってどうせマフィア絡みだったら記事が押さえられちまうかもしれねぇんだろ?
そのせいでここまで左遷されたんだ…二度とあいつらの絡んでそうな件には絡みたくねぇってのに

「ダメですよそれは…『パッショーネ』の名に懸けて聴き込みでもしましょうよ!」

ボージョの無駄な熱意に負けて聴き込みを始めることにした
85 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/17(金) 22:18:31.83 ID:G5/38r1PO
「すまないが見ていないね」

「あの日は…もう寝ていたから見ていないとも」

「また記者か…見ていないと言ってるだろ、ふざけるな」

聴き込みとは名ばかりで何一つスクープになりそうなものはない
むしろ拒絶されてしまっている。どうやら他の記者に聞かれ過ぎて嫌になっているらしい

「ダメみたいですね…」

ボージョは期待はずれと言うように肩を落とした。まぁ俺は大体予想できていた事だが…

「もう帰ろうぜ…あーあ、なんて報告しようかね」

俺は座っていたベンチから立ち上がり車へと向かうことにした
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/18(土) 04:15:28.17 ID:zh0lGDh1o
期待してるぞ
87 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/19(日) 09:30:08.65 ID:mGWFmG1QO
「危ないヴィッコさん!」

突然飛びかかってきたボージョに突き飛ばされる
バランスを崩した俺はそのままスッ転んでしまった

「いてぇぞバカ!いきなり何しやがんだよ!」

突き飛ばしてきたボージョにキレる
何か一言あってもいいじゃあねぇかってんだ
だが次の瞬間にはボージョに心底感謝していた

さっき俺が立っていた場所にトラックが突っ込んでいたのだ
あと数センチでもずれていたらおそらく俺はミンチになっていただろう

「危なかったですねヴィッコさん」

ボージョは何食わぬ顔をしていたが俺は戦慄していた
まるでボージョには未来が見えているかのような判断だったからだ
88 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/19(日) 10:16:57.54 ID:mGWFmG1QO
トラックが突っ込むことが何でわかったんだよ…タイミングが良すぎねぇか?
だがボージョはすっとぼけた表情をしている。やはり偶然なんだろうか

「くそっ…なんてこった最低最悪にツイてねぇ…取り敢えず所長に収穫なしとだけ報告しとかねぇと…」

車に乗り込み毒づきながらキーを入れた
携帯で電話しようとしていたが置いてきちまったらしい

「あー…携帯置いてきちまったよ。ボージョ、お前携帯持ってるよな?」

「え?持ってないです」

今時携帯を持ってないやつがいるなんて知らなかったぜ
まさかそんなやつがほんとに存在するなんてな…
89 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/24(金) 14:04:02.82 ID:ZfHy81Bz0
「おいおい今時ケータイ持ってねぇなんて」

ボージョに文句を言う前にいきなり頬を何かが掠めた
つつうと生暖かい血が流れ、不快感を感じざるを得なかった

「………うわぁぁぁあ!!」

慌てて車のアクセルを踏み車を出した
間違いない、今のは銃弾だ
マフィアだか何だかが俺達を殺しにかかってやがる!
もしかしたら嗅ぎ回ってるのを良く思わない奴等がいたのかも知れねぇ

いや現にいる。俺の頬は痛みで現実だと告げているからだ
俺は恐怖のままに車を走らせた
90 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/26(日) 06:31:54.49 ID:ZduRWNmY0
「くそッ!なんでこんなツイてねぇんだ!くそッ!くそッ!」

ボージョは横で泡吹いて気絶している
だがこのまま走り続ければ逃げ切るかもしれない。そう思った瞬間だった

バスッと何かが破裂する音がした
次の瞬間、車が右へ大きく傾いた。右の前輪が割れてしまったせいと気付いた時にはもう既に遅かった
バランスを崩した車体はガードレールを突き破り、崖の下へと真っ逆さまに落ちていった


「もしもし…ボスですか?二名崖からの転落に見せ掛けて始末しました」

マフィアの男は電話先の男に無慈悲にそう告げた
91 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/26(日) 06:32:09.66 ID:aO3O3/sYO
「くそッ!なんでこんなツイてねぇんだ!くそッ!くそッ!」

ボージョは横で泡吹いて気絶している
だがこのまま走り続ければ逃げ切るかもしれない。そう思った瞬間だった

バスッと何かが破裂する音がした
次の瞬間、車が右へ大きく傾いた。右の前輪が割れてしまったせいと気付いた時にはもう既に遅かった
バランスを崩した車体はガードレールを突き破り、崖の下へと真っ逆さまに落ちていった


「もしもし…ボスですか?二名崖からの転落に見せ掛けて始末しました」

マフィアの男は電話先の男に無慈悲にそう告げた
92 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/26(日) 06:37:25.85 ID:ZduRWNmY0
>>91は無しでお願いします
誠にすいません
93 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/26(日) 07:10:38.58 ID:ZduRWNmY0
夜中にも関わらず新聞社の一室は未だに電気がついていた。残業だろうか?彼はどっかりと椅子に座るとテレビをつけた
テレビのニュースキャスターは淡々とニュースを読み上げていた。どうやら車の事故らしいのだが同情の様子は一切ない
さっさと仕事を終わらせたいと言う不真面目な考えが見え見えだった

「本日昼頃に乗用車一台がガードレールを突き破り転落した事故で被害者は車は大破しており身元の判別は難しくなっているようです」

男は違和感を感じた。『被害者は』の後が聞き取れなかったからだ
まるでその瞬間が吹っ飛んだかのような感覚を覚えた

「よくもやってくれたな…自動車事故に見せ掛けて始末しに来るとは」

窓ガラスに何者かが立っていた
月明かりが逆光となって顔は良く見えないがこの声は聞いたことがある

「ふぅん…殺したと思ったんだがね」



94 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/26(日) 07:23:08.67 ID:ZduRWNmY0
「どうやって落ち行く車から脱出したんだボージョ君?ヴィッコはどうした?」

月が雲に隠れその顔が露になった
今日転属させられたデニッパー・ボージョだった。彼の紫の髪が風に揺れた

「ヴィッコとか言う若造は死んだよ。僕はギリギリドアをぶち破って出れたから良かったが彼には無理だった」

ボージョにバレないようにこっそり机の引き出しから銃を取り出す

「しかしあなたを見つけれるとはね…表向きは潰れかけ部所の所長。だが実態は小規模だが影響力は強いマフィア、『パッショーネ』のボス…それがあんたの正体だろ?ジャン」

「…どうやって嗅ぎ付けた?」

なんてことはない。大丈夫だとも
こんな危機的状況はいくらだって乗り越えてきているからな
世間話をするように穏便に話をしながら注意を反らして、コイツを始末する。私の正体を知ったのだから
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/26(日) 11:35:09.33 ID:YPUPItB/o
ヴィッコ死んだのか……南無
まさ普通の人間にはあの状況からの生還は無理だよなそりゃ
いい奴だったんだが
96 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/26(日) 19:16:19.04 ID:ZduRWNmY0
水を打ったかのように静けさが辺りを包み込む
互いに人形のように沈黙し続ける

「とぉるるるるるん」

沈黙を破ったのは唐突なボージョの奇声だった
その声はまるで子供がおもちゃの電話で遊んでいる時に真似ているように聞こえた

「とぉるるるるるん…わかりました出ますよ…とぉるるるるるん」

奇声を上げながら何かをガサガサと手探りで探していく
やっと目当ての物を見つけたのか床から拾い上げると受話器のように音を立てて耳に当てた

「ふざけているのかなボージョ君…スリッパなんて耳に当てて現実逃避かい?」

ペースを乱そうとしているのはわかっていることだ。流されるわけがない
97 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/26(日) 19:41:37.67 ID:W7VgVPa0O
「可愛いドッピオ…私だ…私はもうお前の側にいる。私が行こう。ソイツは私が始末する」

「わかりました…お待ちしていますボス」

ボージョの右目が明後日の方向に行ったと思えば別の人間の目のようになっていた
まるで何人もの人間を殺めてきた悪魔のような目に。漆黒の殺意を持つ奴の目になったのだ
ボージョの口からは二つの声がしている
まるで一人の中の二人の魂が電話するかのように話をしていたのだ

「お前か…そうかお前の方なのか…連日私の傘下の組織を潰し回っていたのは…お前の方だな!」

やっと合点がいった
殺意も凄味も全く感じられないのにマフィア襲撃と言うことには反応していた。だから刺客を送り込んだ
自分の感じていた違和感は今やっと納得できた
コイツは二人で一つ、マフィアを襲っていたのはボージョじゃあないもう一つの方だ

「そうだ。そしてお前もまた俺の覇道の為に、帝王になるための礎となるが良い…ジャン」

ボージョの体はみるみる内に屈強な肉体に、青年から逞しい男の姿へと変貌していく
雲が晴れ月明かりがまた部屋へ流れ込み、ソイツの顔はまた影を差した
98 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/26(日) 23:12:54.69 ID:/iY5jZ3xO
そこにいたのは最早別人だった
あのひ弱そうなボージョはもう既にいなかった

「貴様の組織は私が貰い受けよう。有効に使ってやる」

「黙れ若造が…!」

何年も何年も正体を隠して組織をでかくしたんだぞ私は!かのシーザーもナポレオンも表舞台で正体を見せたが故に転落した!
だからこそ正体を隠し続け今の地位を築いたのだ!
素早く引き金を引く。何発も何発も
排出された薬莢が気付けば音もなく私の革靴に触れた
落ちる音を私は聞くことはなかった
まるでその時が飛び消え去ったかのように

「さようなら。安心して逝け」

撃ったハズのその男は私が反応するよりも早く背後にいた
まるで撃たれるのがわかっていて、避けたかのように傷一つ無く圧倒的な余裕を見せながら
部屋の壁にピシャリとまばらに血が飛び散った



こうして『パッショーネ』のボスは誰にも知られることもなくこの世から消し去られた
マスメディアは強盗の仕業として報道し、それ以上は突き詰めようとはしなかった
またこの日を境に急激に若者の犯罪指数や麻薬所持は多くなり、あるフランス人男性がその事を明るみに出そうと孤独の闘いを始めるのはまた別のお話…


END
99 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/26(日) 23:22:00.21 ID:/iY5jZ3xO
【深紅の王の覇道】完結です!
長々と時間かけてしまいすいませんでした
小ネタですがデニッパー・ボージョは
DENIPPER VOGIO→VINEGAR DOPPIO
ヴィネガー・ドッピオと、英語に直すとアナグラムになってたわけです。ハイ

ここまで読んでくださった方には感謝!
次は>>60さんのリクエストを書かせていただきます!よろしくお願いします
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/27(月) 02:45:15.31 ID:EWPX4RFxo

組織の部下に名前を隠したばかりに乗っ取られることになったのかこれは
そうするとディアボロ自身も同じようなことされたと思うと因果応報を思わざるを得ない
101 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/29(水) 20:45:35.91 ID:OdWydJ9q0
【怒りの先は示されない】

神様とやらはどうしても俺達家族を酷い目に合わせたいらしい
へそ曲がりな奴だなぁなんて思っちまう
おふくろが死んでからだろうか?
何もかもの歯車が狂い始めたのは

親父の会社は潰れて酒をあおるだけのクズになっちまった
まだ小さい俺達兄弟は振るわれる暴力に耐えなくちゃならなかった
抗おうなんて出来やしない酷い目に遭うだけさ
飯は3食、いやすこしでも食べれれば良い方だった。最初に万引きしたのは7歳の頃だったっけ?

…いけねぇや、それからやった悪い事が多すぎるのか俺は覚えちゃいねぇみてぇだ
102 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/29(水) 21:37:50.26 ID:OdWydJ9q0
馬鹿な親父だぜ
金のために悪魔にすら魂を売っちまったんだからな
いや、悪魔の方がまだマシか?少なくとも悪魔ならアイツを殺してくれただろうしな

昨日から獣のような声をあげる部屋のドアを恐る恐る開けた
壁には赤い斑点が水玉模様のようになっている。昨日何度も何度も死のうとし続けたのを物語っていた
アイツはベッドの上でガタガタ震えながら呻いている。情けねぇ…


俺はこんなのにずうっとビビってたなんて思うと情けなくなっちまうんだよ
所詮は小物だったんだ…俺の親父はよ
もし俺が本気で怒ってたら…仕事しろって怒鳴れてればこんなことにはなってなかったのかもしれねぇ
俺も親父も情けなくて涙がでちまうぜ
103 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/30(木) 21:35:46.61 ID:f75rJ5cq0
「ううう…京兆、京兆。いいか、良いかよく聞け。もうすぐ荷物が届く…エジプトからのな…」

ベッドの上の塊は呻くかのように声を出す
声は発声できるが聞き取るのも困難になってきてしまった

「それを受けとれ。もし素質があるなら導かれるはずだ…わかったか京兆」

呻き声は支離滅裂で素質だか何だかには疑問符しか出てこない
何が導いてくれるって言うんだ?神様から見放されたとしか思えねぇ俺達を何が…
そう考えながら爪で皮膚が切れるほどのやり場のない怒りを拳に込めた

その時玄関の方で億泰の叫び声がした
いや、叫び声と言うよりは最早断末魔だろうか?悲痛な叫びが俺の耳に届いたのと同時に俺は億泰の下へ駆け出した
104 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/04/30(木) 22:12:54.67 ID:f75rJ5cq0
同じだ。あの日のあの時と同じ感覚がする
おふくろが病気で倒れてそのまま死んだあの日と同じ感覚
悪い予感を拭い去るかのように走るもその先の光景に俺は絶望を抱いた

「おい億泰!何があった!?」

恐らく億泰は親父の言っていた荷物を受け取ったのだろう
しかし何故かはわからないが億泰の掌から肩にかけて長い矢が貫いていた
荷物の中の矢が貫いたと言うわけだろうか?

だがおかしいのは億泰だけじゃあなかった
俺の体にも全く同じ場所に矢の痕がジクジクと痛みながら現れだしたのだ
しかしそんなことで倒れてはいられないのだ

「ぐっ…とにかく億泰を病院に連れてかないと死んでしまう!」

もうこれ以上俺は家族を失いたくないんだ
億泰までいなくなったら俺は…俺は…!
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/30(木) 23:26:53.42 ID:Cwp+xT/Do
昔の兄貴は弟思いだったんやな……いやそれは最後まで一緒か……
106 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/05/01(金) 20:50:18.71 ID:f4FRlMG60
「その必要は無いぞ京兆ォ〜…お前らは導かれる。億泰は生きてるからなぁ…!」

息子が矢に射ぬかれているというのにダラダラと歩いてきた親父の戯れ言なんぞに構う時間はない。このままじゃあ出血多量で億泰が死ぬ可能性があるからだ
ズルズルと親父は億泰に近付くと矢に手をかけた

「何しやがる…気が狂ってんのか!?止めろ!馬鹿なことしてんじゃあねぇ!」

俺は必死に制するが親父の奴は気にすること無く矢を引き抜いた
飛び散る鮮血、狂気に満ちた親父の歪んだ顔。赤い滴の中に絶望に満ちた俺の顔が映った

「この糞親父ッ!!」

親父は歪んだ粘土細工のような顔を更に歪め俺の方へ向き直った

「安心しろォ〜…お前も億泰も死にはしねぇ…流石俺の子だ…俺の子なだけある!そりゃそうだ、俺が使えてお前らが使えないわけが無いんだからよぉ!」

まるで原始人が神から送られたモノを崇めるかのようにソイツは矢を眺めながらゲラゲラ笑っていた
ゼンマイを絞めすぎて壊れたブリキの玩具のようだった
107 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/05/01(金) 21:04:21.59 ID:f4FRlMG60
「……してやる…!」

その時確かに俺は感じた。忘れもしないあの感覚…
どす黒い決して誉められることのない、だが咎められもしない美しさを感じさせる漆黒の意思を俺は芽生えさせた

「てめぇ、ブッ殺してやる!」

絶対にコイツを殺してやる!親とも思えないし思いたくもないような目の前のコイツを!
たとえコイツを何千何万回殺そうとも死ななくても、家族を殺そうとしたコイツだけは俺がキッチリと殺す!
けじめのために、ビビってた過去を払拭して前に進むために!

そう念じた瞬間に目の前に現れたのはアーミー人形の集団そのものだった
まるで俺自身の殺意を具現化させたかのようなソイツらは殺すと考えただけでその任務を遂行し始めた
アパッチのミサイルが跳び、殲滅せんと重火器が親父へ雨霰と降り注いでいく



最初に俺が殺そうとしたのは大事な家族のハズの親父だった。今だってハッキリと覚えている
108 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/05/01(金) 21:16:21.55 ID:f4FRlMG60
どれだけ攻撃をし続けたのかは覚えちゃあいない。どれだけ痛め付けたのかもわからない
我に返ったのは泣きながら俺を億泰が止めていたからだ

「もう止めて兄ちゃん!俺の傷は大丈夫だから!父さんが死んじゃうよ!」

あれほどの攻撃を受けても親父はなお死ぬこと無く呻くだけの生き物になっていた
目の前の軍隊を見ると、あることを思い出して決壊したダムのように涙が溢れてきた

(コイツらよぉ…親父が昔買ってくれたフィギュアにそっくりじゃあねぇか…)

俺の中のキラキラしたまだ平和だった頃の家族がどうやったって治せないほどビリビリに破けちまったような気がした。やるせなさと悔しさと絶望感が俺の心を包み込んでいた
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/05/01(金) 21:40:48.54 ID:mq2MxnRE0
そういや億泰のザ・ハンドもブリキのロボットみたいな外見だったな・・・
110 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/05/01(金) 22:09:34.16 ID:f4FRlMG60
それから俺は親父からこの矢が何かということも、俺が見えているものも、DIOというのは何者かも知っていることは全て聞き出した
信じるしかなかった…目の前に起きていることは頭がどれだけ否定しようとも事実に変わりはないのだから

俺は矢を信じた。いつか親父を殺せるスタンドに俺達を導いてくれるに違いないと
才能があるかないかなんて開ける前のプレゼントのようにわかるわけがなかった。無闇やたらに俺は色んな奴を打ち抜いていった
一人の男を殺すために色んな人間を殺した。人には決して言えないような事はザラ。誇れることの方が少ないね

だがそんな俺にだって誇りがあった
人を殺すのは俺の役目だった。億泰には一回たりとて殺しも人を傷つけることもさせはしなかった
だってたった一人の残された家族だからよぉ…悪に染まるのは俺だけでいいじゃあねぇか。復讐に生きるのは俺だけで良いんじゃあねぇのか?
そのせいかアイツは一人じゃあ何にも出来ねぇ奴になっちまったけどな
111 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/05/01(金) 22:27:03.82 ID:f4FRlMG60
結局俺の怒りは俺の行くべき正しい道は示してはくれなかったさ…ただ正しいと思い込んでいただけの道だったんだ…

そう感傷に浸っていた時だった。後ろから懐かしい声が俺の名を呼んだ

「兄貴…?そこにいるのか兄貴…?」

なんでお前がここに来るんだよ億泰…
馬鹿野郎、お前はまだここに来るんじゃあねぇよ

「どこに行くんだ億泰」

お前の居場所はもう俺の側じゃあねぇだろ?

「兄貴についていくよ」

兄貴は正しいから。なんて考えてそうな声だった
俺は正しくなんてないんだ億泰…俺は…俺はとうの昔に道なんて外れちまってんだよ…
本当に正しい道を進んでいるのはお前なんだ…それにお前はもう

「お前が決めろ。億泰…行き先を決めるのはお前だ…」

お前はもう見つけてるだろ?お前がいるべき場所を。俺の側じゃあねぇお前だけの場所を…

「杜王町に行くよ」

そうだ。お前が見つけた俺には見つけられなかった居場所がお前にはあるんだ
自分の道をお前は選べたじゃあねぇか…
俺のように復讐に満ちた暗い夜のような道じゃあなく、昇り行く朝日が照らすかのように正しい道を

さっさと行きやがれ俺の誇りの家族よ

END
112 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/05/01(金) 22:30:13.84 ID:f4FRlMG60
【怒りの先は示されない】完結です!
最後まで読んでくださった方には感謝です!
次は>>61さんのリクエストを書かせていただきます!よろしくお願い申し上げます




113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/05/01(金) 23:50:41.65 ID:B7Bn7sG/O

京兆は最後に正しい白の中に戻れたと思いたい
114 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/05/02(土) 21:24:54.42 ID:h8Yu6H2f0
【帰るべき場所】

懐かしい風、懐かしい匂い
途中見える馬達も代わり映えの無いありきたりな風景のはずなのに新鮮で美しくて、楽園のように僕には映る

朝露の香りが鼻をくすぐり木々も何もかもが出迎えるかのように僕には感じる
足取りは軽く、陽の光は優しく僕の道を包んでくれていた

久しぶりに帰ってきた故郷。そこは僕の胸を初恋のように昂らせる
115 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/05/03(日) 10:35:19.02 ID:a4xmD4nu0
ふと友達との会話が頭によぎった
尊敬しあえる友であり、馬鹿にしあいながらも共に道を歩んだ友の言葉を

『なぁジャイロ』

美しい星空を眺めながら尋ねる

『どうした?追っ手でも来たか?』

『いやそうじゃあなくて、このレースが終わったらさ。君は故郷に帰るんだろ?』

『……まぁ、そうだわな。誰だって帰るに決まってるぜ。前にも言ったがそういう場所だからな』

ごろ寝したまま友は答える

故郷。帰るべき場所は帰るべき場所なんだから
それだけで十分なんだろうな

『もし、その故郷が帰り辛い場所なら…それでも帰るなら君はどうする?その時僕は何て言えば良いのかなぁ…』

『……簡単な一言で良いんだよ』

友はその一言で僕を救ってくれた
116 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/05/03(日) 11:05:07.29 ID:ZgxcYfgnO
一人の青年が故郷へ帰るとき
その故郷にはまた帰りを待つ者がいた

旅を終えた我が子を待つ父親は、出迎える言葉を頭の中で何度も何度も考えていた

レース感想を褒め称える言葉が良いのだろうか?それとも今までの冷遇を謝罪すべきだろうか?どうすれば長年の間に空いた大きく深い深い亀裂は埋まる?
自らが入れた大きな深い亀裂は、どうすれば良い?

自分は息子に対して非道な行為をし続けてきた
あの子に親失格の言葉を投げたこともある
あの子が病院に入院した時もその噂は聞いてはいた
だが私は世間体を気にして動きもしなかった

昔から一人では立ち上がることも出来ない甘えた子だった。転ければ誰かが手を差し伸べるまで泣きじゃくる子だった

だがあの子は立ち上がってみせた。自分の力で自分の道を進んでいたのだ
私はあの子の走る姿を見に行かざるを得なかった
どこまで非道な行為をしようとあの子が否定しようとも、私はあの子の親だったから
親が子供の成長を見て喜ばない事なんて絶対に無いから
117 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/05/03(日) 11:13:23.94 ID:ZgxcYfgnO
最後まで影で見守るつもりだった
大衆の中でひっそりと、あの子に気付かれないように見守るつもりだったのだ

だが私は最後のステージで罪を告白した
亀裂の証であるブーツを持って
ジョニィ・ジョースターが犯してしまった罪は私が原因だから
私のせいであの子は罪を犯したことを知って欲しかったから
あの子の旅に帰るべき故郷があることを知って欲しかったから、私は大衆の前で罪を告白した

もしも全てがやり直せるなら彼の旅を親として、家族として褒め称え誇りにしてやりたかったから
そのためなら卑怯者と罵られよう。恥知らずと言われよう。もう一度残されたこの人生をあの子と歩きたい。その為なら私はなんだってしよう……

そう考えたときに帰ってくるあの子にかける言葉は頭の中へ必然的に浮かんできた

その時、呼び鈴がなった。私は新たな一歩のためのドアを、眩しい日の光と共に開けた
118 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/05/03(日) 11:18:27.84 ID:ZgxcYfgnO
馬を降りて呼び鈴を鳴らす
開いたドアから見えた懐かしい顔
僕がこれからは共に道を歩む人の顔
僕らの道の始まりは、旅の終わりからなら。僕の言う言葉をあのときの友から借りよう

『どんな国でも、帰ってきたらこの言葉からだろ?シンプルにこれで良いのさ』

そうだね、その通りだよジャイロ




「ただいま。父さん」

「おかえり。わが息子、ジョニィ」

僕らは日の光が包む未来へ一歩を踏み出した



END
119 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/05/03(日) 11:20:46.00 ID:ZgxcYfgnO
【帰るべき場所】完結です!
最後まで読んでくださった方には感謝です!
ありがとうございます

引き続きジョジョ限定ですがリクエストを受け付けさせて貰います!
全力でリクエストには書かせていただきますのでよろしくお願いします
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/05/03(日) 11:48:01.94 ID:BDDGm4ne0
アヴドゥルさんがジョセフと出会ったエピソードとか
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/05/03(日) 11:52:48.02 ID:BDDGm4ne0
乙。4部メンバーは誰か一人でも欠けていたら吉良吉影を倒せなかったと思う
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/05/03(日) 14:59:32.73 ID:9t9IHz5No

ジャイロもちゃんとおかえりと言ってもらえたんだろうか
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/05/04(月) 02:19:16.05 ID:rUePkewUo
やっぱ七部良いな… 乙
124 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/05/04(月) 07:21:30.62 ID:crNNgDPM0
>120さんのリクエストを書かせていただきます
全力で書かせていただきます
よろしくお願いします
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/05/04(月) 21:03:28.06 ID:Ye0E8NLc0
ホルホースとjガイルがコンビを組んだいきさつみたいなのはどうですか?
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/05/04(月) 23:05:31.00 ID:MKi74+Mb0
あのコンビ、ジョースター一行に戦いを挑む前に何人か倒してそうな気がする
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/05/11(月) 13:01:21.73 ID:QCPlzbOf0
悪のスタンド使いをスカウトするDIOとかも見たい
128 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/05/14(木) 18:31:53.66 ID:W/yV+MSXO
【燃ゆる真っ直ぐな志】

あいつとはニューヨークで偶然に出会った
この頃ワシには人には言えないある問題を抱えていて、かなり精神的に参りかけていた
娘のホリィが日本に嫁入りしちまったのもワシにとってはかなり精神的にきてたからなぁ…
気分転換にと少しぶらぶらニューヨークを歩いていたときだった

「そこのお兄さん…何かお悩み事ですかな?」

最初にあいつを見たときはニューヨークにいるべき人間じゃあないなんて失礼なことを思っちまったもんだった
しかしそれと同時に惹き付けられる何かを感じたのもまた事実だった
129 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/05/14(木) 18:51:29.37 ID:W/yV+MSXO
「お悩みがあるならここで一つ占ってみませんか?解決策が見つかるやもしれませんよ?」

ワシは占いなぞ信じないと何かの雑誌のインタビューかなにかで答えたことがあった気がした。そんなワシに対して占いを勧めるなんて可笑しな男だといつもなら一笑に付していただろう

「良いだろう。占ってもらおうかな。君の名前は?」

このワシをジョセフ・ジョースターと知ってか知らずかわからないが、乗ってやろうじゃないか

「モハメド・アヴドゥル。以後お見知りおきを」

はつらつさと落ち着いた雰囲気を持ったこの男モハメド・アヴドゥルと出会ったのはこれが最初だったのだ
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/05/14(木) 19:48:19.42 ID:hsusVmFWO
波紋で人の未来を占うことも出来るのに……
131 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/05/16(土) 23:10:04.76 ID:WU6mVPXaO
「ここは単純明快にタロットでワン・オラクルといきますかな」

アヴドゥルは慣れた手付きでタロットを懐から取り出した
ワン・オラクルとはッ!
タロットカードをよくシャッフルし一番上のカードで占う最もシンプルな占い方である!

「うむ。よろしく頼もう」

バラバラに崩されたカードの山が無骨な手によってグルグルと混ぜられていく
そうして引き寄せられるように集められた21枚のカードがシャッフルされ三つの束になった
順番を、と進められたのでワシは右、左、真ん中と選んだ
そして三回ほどシャッフルし、一番上のカードを捲った

そのカードは『THE HERMIT』
隠者と呼ばれる9番目のタロットはワシの方に逆に向きながらその暗示を表した
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/05/16(土) 23:15:14.15 ID:ZkUib66VO
大した問題ではないのだけれどもタロットは22枚一組やで
愚者が0だから最後の世界の21にもう一つ追加なんや
133 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/05/16(土) 23:22:25.32 ID:WU6mVPXaO
「隠者の逆位置ですか……ふうむ」

アヴドゥルは何か考え込むかのように隠者を見つめている

「良いのか悪いのかどっちなんじゃ」

占われている方は気が気でない沈黙
ワシは待つのは余り好きじゃあないのだ
アヴドゥルは静かに口を開いた

「ジョースターさん…失礼かもしれませんが、『浮気』なんてなさってないですかな?」

ワシの体が波紋を流されたかのようにビクゥッ!と反応してしまい、ダラダラ冷や汗が流れ始めた
バッチリ当たっとるじゃあないか!Oh,my god!!マジでなんで!?まさかゴシップか!?
日本に行ったときに偶然会ったあの女との関係がバレていたって言うのか!?

「大丈夫ですジョースターさん。私はそう易々と秘密を漏らしたりなんてしませんよ」

アヴドゥルはニヒルに笑みを浮かべていた
その笑みは偽りなく秘密を漏らそうとなんて考えてはいないことがよくわかった
134 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/05/16(土) 23:39:58.88 ID:WU6mVPXaO
ワシはこの秘密を誰かに相談したかった
だが知り合いに咎められる恐怖にワシはただただ黙っていただけだった。見放されたくはなかったからだ

しかし案外彼に打ち明けるのも悪くないのかもしれない。バレてしまったのだから潮時とも言えるだろう
彼の目の奥に燃えている誠実の炎を信じても良いのかもしれない。そう思った

「アヴドゥルと言ったな…もし良ければだがこの後どうすれば良いか…もう少し占ってみてはくれんかのぉ」

「お安いご用ですよジョースターさん。こんなところで話すのも何ですから、場所を移しましょうか」

モハメド・アヴドゥルは爽やかな笑みと共にそう言った
その笑顔は心底信頼できる笑顔だった
135 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/05/16(土) 23:52:32.52 ID:WU6mVPXaO
グラスの氷が落ちる音でふと我に返った
ホテルの一室でエジプトの夜を眺めながらウイスキーを飲んでいた現実に引き戻される

モハメド・アヴドゥルは死んだ
エジプトへ向かうDIOを倒す旅で、友を庇い、最後までその真っ直ぐな志を貫いて死んだのだ

今宵は一人飲もう
戦いで散った誇り高い志を持つ友に捧げて飲もう。最大の敬意を表して、彼を偲びながら
彼と過ごした日々を思い返しながら

飲んだ端から酒が目から流れこぼれてしまっても、飲み続けよう
年を取ると涙脆くなっていけないな…と一人思いながら一口ウイスキーをワシはすすった



END
136 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/05/16(土) 23:55:03.38 ID:WU6mVPXaO
【燃える真っ直ぐな志】完結です!
ミスがありましたが脳内補完で許していただけると嬉しいです
読んでくださった方、ありがとうございました!

次は>>125さんのリクエストを書かせていただきます。お付き合いのほどよろしくお願いいたします
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/05/17(日) 00:05:23.20 ID:XIW4inl+o

アヴドゥルはどんなアドバイス寄越したんだろう
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/05/17(日) 00:25:07.67 ID:EIonRce30


リンゴォの3年前から本編に至るまでとか気になるかな
139 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/05/17(日) 11:46:15.16 ID:ldv/bmhtO
【No.2の皇帝】

出来る男には何事もポリシーと言うのがある
例えば4の数字を不吉だから避ける奴もいるだろうしぶっ殺すと決めたならスデに行動を終える暗殺者もいる
俺の場合もある。それは『No.2』に徹することだ

俺はある男に仕事の依頼を受け屋敷へと向かっていた
こちらとしての条件はただ一つ。成功を確実にするために仕事のパートナーを用意してもらう
たったそれだけの事だ
深入りしたくないからこそ俺は固定のパートナーを持たない。持てば足手まといになりかねない。俺の仕事に情なんて一番不要なものだ

何事も深入りせず、相手を立てるよう心がければ俺の力は十二分に発揮できる
だからこその『No.2』。これぞ俺のポリシー
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/05/24(日) 20:54:55.18 ID:CpY7ID9P0
エタった?
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/05/25(月) 21:31:13.57 ID:01vNGKtSo
偶然アンジェロ岩の前に置かれたエニグマの少年(本)との会話がみたいな
142 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/05/30(土) 23:03:40.11 ID:CnkZPOswO
「遅かったじゃあないか…女遊びも大概にしておいたらどうだホルホース」

あの屋敷に足を踏み入れた途端に響いてくる甘く狂おしく病み付きになりそうで気色悪くて一度聞いたら二度と聞きたくないような声
死ねと言われれば死ぬであろう狂信者がいるような声が俺を貫いた
今俺を雇っている男はまさにカリスマとも言えよう

「DIO様ご安心ください。ちょっとネズミを始末しただけですから」

勿論嘘ではない。道中にDIO様を嗅ぎ回るネズミを殺しはしたぜ?

「ふん…まぁ良いだろう…ホルホース。お前にはこの男と組んで貰う。無敵のコンビとなることを期待しているぞ…」

パチンと暗闇に音が響き、合図であったかのように何かが前へと現れた
そのシルエットは不思議なことに、両手とも右手だった
143 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/06/04(木) 23:04:41.33 ID:KTY0fyNyO
「あんたがパートナーか…よろしく頼むぜぇ…ええと…」

女とビジネスの成功の秘訣は柔和な態度だ。これは絶対的なものだと思うぜ
にこやかに右手を差し出すが名前を聞いていないのを思い出して言葉に詰まってしまった

「J・ガイルだ…かねてお前の話は聞いている。よろしくなホルホース」

案外に良い奴なのかJ・ガイルは握手に応えようと左手の右手を差し出して握ってきた
その瞬間背後に何かの気配を感じる
今に首元を掴んで暗殺するかのような気配を

「なっ!?『皇帝』!!」

左手に俺のスタンドである『皇帝』を素早く出すと背後に三発撃ち込む
割れた鏡から閃いた光が素早く別の鏡へ消えていった
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/05(金) 08:38:33.45 ID:L1ZhDFWrO
初対面で攻撃とかなかなか酷いことをするなJガイル
145 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/06/06(土) 22:25:44.69 ID:da5CcKLeO
光を反射しながら舞い落ちる硝子の破片
いくら打っても手応えは無い『皇帝』
次の瞬間俺はまた背後を取られナイフのようなものを突き付けられる
鏡の中にいるミイラ男のような暗殺者がいつの間にか背後にいたのだ。間違いねぇ…J・ガイルのスタンドに違いねぇ…

だが俺は撃たない。『皇帝』の銃口が向けられるべきは背後ではない

「ちょいとオイタが過ぎるんじゃあねぇのかなJ・ガイルの旦那?」

コンビを組む奴にたまにいるんだよ。こうやって実力を試そうと仕掛けてくる奴がな
なぁにこの世界じゃあ珍しいことじゃあねぇぜ

「早打ちには自信がある。今すぐあんたのスタンドを退けてくれねぇかな…じゃねぇとコンビ解消の最速記録になっちまうぜ」

「…ヒヒッ…気に入ったぞホルホース……汗一つかきもしないとはなぁ…ここまでやるとは頼もしい限りじゃあねぇか」

鏡の中の暗殺者が消えると同時に俺も『皇帝』を消す
コンビ解消にはならずに済みそうだった
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/07(日) 10:12:15.61 ID:jcDVfBiHo
ホルホースが普通に格好いいだと……
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/10(水) 22:36:17.18 ID:Qg5UaXclo
ホルホースは普通にかっこいいでしょ!?
148 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/06/17(水) 22:18:24.04 ID:dkPQk4VVO
俺達の持ち場はインドにてジョースター一行を迎え撃つことらしい。まぁ軍人将棋じゃあ強い駒は温存するのが良いってことか

「ホルホース、J・ガイルよ。貴様らなら奴等を必ずや殺せると私は信じている…私の信頼を裏切ることはしないでくれよ?」

DIO様はそう言うと鏡の破片を一つつまみ上げ虚空へと投げ捨てた
鏡の破片は闇の中へ落ちていき音一つ無く消えてしまった。まるでこの世から消えるかのように

館から出た瞬間に感じる素人丸出しな視線
あぁわかってる。またネズミ共だ。ちっとも懲りちゃい無い
間抜けなことに俺だけを警戒してやがる

「殺ろうとする相手が悪いと思わんかねぇ旦那ぁ?」

ひそかに『皇帝』を取り出すと全く素人目には検討違いな場所へ撃ち込む
まぁ俺の『皇帝』も旦那の『吊られた男』も見えるわけねぇから解るまい
射出された弾丸は意のままに窓を割り鏡を破壊していく。見えない暗殺者の道なき道が次々と産み出される

「あぁホルホースよ…俺たちゃ無敵のコンビだな…ヒヒッ」

閃いた光の後に血飛沫が上がる。暗殺のイルミネーションの美しさに酔いしれながら俺達はインドへと向かう旅路を進んでいく


END
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/17(水) 23:18:15.59 ID:tkSGXrKdo

最後のはSPW財団員かな?
彼らもすごいよな、こんな危険な仕事に従事してるんだから
150 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/06/22(月) 21:42:57.04 ID:IKRlD21X0
【No.2の皇帝】完結です
読んでくださった方ありがとうございます!

次は>>127さんのリクエストを書かせていただきます
お付き合いのほどよろしくおねがいします
151 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/06/22(月) 22:25:40.91 ID:oyPK8Q2zO
【悪に見初められし者達】

ツンと鼻をつくキツすぎる香水の香り
女達は皆甘い声で男を誘惑し続ける
夜の街は何処だって何時だって人の本性を暴き出し白日の下へ晒しだしてしまう
尤もこんなところにいる女達は皆白日の下で堂々とすることの無いような職業なのだが

「ねぇあの耳にほくろがあるあの人…上玉だと思わない?」

「えぇ…上品そうだしあの派手な服からしたら身振りも良さそうだし前に寝たおっさんと違って美形よ!?」

娼婦達に一瞥してやると歓声が上がる
娼婦達の下品な期待を背くようだが私は女を買いに来たわけではない
正確には雇いに来たのだ。ある女を

「………いらっしゃい」

その女は抜群なプロポーション、特に抜群な脚を窮屈そうに纏めて縮こまっていた
諦めきって煤汚れたかのような目に彼女の吸っていたタバコの煙がユラリと映っていた
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/25(木) 07:40:50.54 ID:fZH0+065o
この洒落た文体好きだなぁ…
153 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/06/28(日) 22:47:15.03 ID:L2Jaxgck0
「あなた幾らで私を買うわけ?はした金じゃ私はあなたみたいな上玉でも買われないから」

彼女は吐き捨てるように言葉の一つ一つを投げつける。それは最後の小さなプライドを守るための人間特有の意地だろうか?
決してその目は媚びるような光を灯してはいなかった
世界そのものを蔑み、侮り、馬鹿にし尽くすような目だった

「堕ちるとこまで堕ちたとしても、プライドは捨てはしないと言うわけか。実に素晴らしい精神だ」

心の底からその女性に感心し、褒めあげる
彼女はその言葉を良い意味では捉えなかったのか尚にムッと顔をしかめた

「そうよ。私にはプライドがある。また返り咲いてやるのよ。あの世界で」

そう彼女が吐き捨てた後、彼女自身もなぜそんなことを口走ったのかと不思議そうに表情を変えた
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/28(日) 23:01:22.20 ID:6RCJXvfFo
ほう…元モデルとかかな?
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/29(月) 10:43:10.33 ID:s2Lsm+iJo
まあ足がグンバツだからモデル界やその他華やかな世界にいそうだよな
156 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/06/29(月) 19:43:29.58 ID:OKN0LpAB0
彼女の口は止まらない。壊れた蛇口のように呪詛のように自らの過去の栄光を私へと吐き出す

「きらびやかな私を見て皆は憧れる。何でも着こなす私を見て囃し立てる……私は他の女とは違うの!磁石のように皆私に惹き付けられるの!それをあいつらのデマのせいで…私は…!!」

私はその告白をただひたすらに受け止める
泣きじゃくる子供の言葉を聞く母のような慈愛を持ちながら、優しい眼差しを向けながら彼女の言葉を待つ

「私は……私は憧れてた………そしてやっと手に出来たあの世界に戻りたい…もう失いたくない!地位も、名誉も全て!失いたくないの!」

彼女のプライドを塞き止めていたダムは酷く脆い。決壊し、プライドはボロボロと涙になって地面へと吸い込まれていった
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/29(月) 20:06:41.12 ID:uTPX3DCoO
これがあの無惨な最後を遂げると思うと……興奮するな!
158 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/06/29(月) 20:54:47.41 ID:OKN0LpAB0
私は壊れた彼女に手を差し伸べる
イエスや聖人なら当たり前のように差し伸べる手を、私は彼女へと差し出す

「戻りたいのだろう?救われたくないか?こんな場所で燻り続けたいか?」

彼女はくすみ潤んだ瞳で私を見る
彼女の目を邪悪な誘惑の光がゆっくりと支配していく

「私ならお前を救える。私はお前から何一つとして失わせない。そう約束しようじゃあないかマライア…私に全てを委ねてみせろよ…このDIOに」

ゆっくりと彼女の手が私へと置かれる
彼女は自身を悪へと委ねたのだ
私は胸ポケットから矢尻を掴み出すと矢の向くままに彼女へと突き立てた

貫かれた彼女はこの世の全てから祝福され救われた無垢な少女のように満足と恍惚と幸福の笑みを浮かべ私の名を呟いた
159 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/07/02(木) 21:52:36.01 ID:XjbpDLMp0
マライアは矢に選ばれた人間だった。私の目に狂いはなかったと言うことか
私の目からしてみれば彼女ほど優秀な存在はいない。有能なスタンド使いならば刺客として、もし駄目だとしても私の食糧になるからだ

直にマライアはスタンドに目覚めることが出来るだろう。これでかなりのスタンド使いを集めることが出来たはずだ
だがしかし、まだ足りない。まだジョースターの血統を根絶やしにするには……まだ足りない
もっと優秀なスタンド使いが必要だ。そう考えを巡らせていた時だった

「DIO?どうかしたのかい?」

暗闇の中から呆れたような声を私にあげる一人の青年がいた
暗闇の中黒い肌がすっかり溶け込み、白い坊主頭がよりくっきりと浮かび上がっている
私の友人のエンリコ・プッチである

「あぁすまないなプッチ。考え事に耽っていてな…」

「良いんだ。気にするなよ。それよりも君に頼まれていたスタンド使いと思われる人間なんだが…」

彼の出した封筒の数々を見ていると一人、邪悪な感情を目にギラつかせた青年がいた
全てを飲み込んでしまうかのような、怒りと憎しみとしかし矛盾して救いを求めるかのような目をしていた

素晴らしい…彼は私の求めているモノを持っているかもしれない
そう考え私は彼をスカウトに向かうことにした
今彼はある刑務所にいるらしい
どうやら精神病棟でもあるような刑務所であるらしかった
その事実は私を更に期待させざるを得なかった
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/02(木) 22:06:50.89 ID:oFWXlnlNO
形兆か……?
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/02(木) 22:07:56.36 ID:oFWXlnlNO
書き込んでから形兆なわけないと気付くこの俺のマヌケぶりよ……
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/07/02(木) 22:30:53.11 ID:i7GEzEZs0
破壊力がほとんど無い磁石のスタンドであそこまでジョセフとアヴドゥルを追い詰めたのはすごいと思う
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/02(木) 23:00:34.48 ID:7LoxlypI0
全てを飲み込むってことはそらもう彼よ
164 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/07/04(土) 21:30:04.14 ID:1g6sZJfGO
カビ臭い部屋の中にその男はいた
常人では動くことも儘ならないような枷をつけられ、それでも尚暴れないようにと全身を拘束具で抑えられていた

しかし男には逃げ出そうとする気も暴れる気も一切と無かった。心の中にはこの世への諦めだけがあった
その男にただ一つだけ願いがあるとすれば、この世から一切の痕跡など残さないように消え去ってしまいたいと言うことだけだ

その男は元々は信仰深く礼儀正しい絵にかいたような好青年だった
深く愛し合う女性もいた。気心知れた友人もいた。順風満帆な生活だった
だがしかし男は誰もを信じてしまい、裏切りに鈍かった

男は不幸なことに、自身の最愛の人と信頼していた友人が不浄な交わりを持っていることを知ってしまった

男はその時、何かが壊れた音を聴いた
それは男の心の最期の音だったのか。それとも男と世界を結んでいた歯車が外れて堕ちた音なのか、知る由はなかった

男が次に見たものは削られバラバラになった彼の友人の肉塊と、原型を留めること無く虫の息で許しを乞う最愛の人
そしてそれをただどす黒い感情に突き動かされ破壊し続ける自分自身だけだった
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/04(土) 22:06:48.30 ID:2Fxycw5EO
……うん、まあしょうがないなこれは
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/07/05(日) 17:39:35.86 ID:heodkrnY0
ヴァニラか・・・
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/25(土) 22:50:18.59 ID:v2njyMnqO
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 | (_●_)  ミ チラッ…
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 ミヽ_  /::::::::::
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168 : ◆5JdYsMOLwU [saga]:2015/08/06(木) 23:35:11.28 ID:curYPZq80
恋人ももっとも信頼をした友からも、そして美しい世界を創ったハズの神からも裏切られた男は、もう何も残ってはいなかった
虚無。それだけが彼を包み彼の全て。彼は死ぬまでここで鎖に繋がれる事を誓っていた
あの男と出会うその瞬間までは

「お前が、ヴァニラ・アイスか?」

目隠しされた男からすればその声が誰なのか、判別する事は出来なかったし普段なら気にすることはなく無言を徹しただろう
しかしそれは厳重に閉じた窓へ入り込む真冬の風のように男の心へ入り込んだ

「安心しろよ…私は看守でもお前を殺しに来た訳でもないんだ…」

男は静かに目の前に座り込み、子を寝かしつける母のように優しくただ、話をしようと提案した
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/07(金) 10:52:14.05 ID:rDGufzELo
おう……すかさず人の心の隙間に入ってくるのなDIOの奴め……
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