とある後日の幻想創話(イマジンストーリー)4

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366 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/11/30(月) 00:57:59.12 ID:oTN8jzTy0

ところが、力関係が変わっても人間関係は依然として変わっていなかった。
相も変わらず委員長は、フランドールの一挙一動に目くじらを立て、その都度彼女を諫めている。


フランドールとしては、超能力を持った時点で委員長からこちらに従うと考えていた。
『自身がそうだったのだから、相手もそうだろう』という思考に基づくものである。
そして委員長が事あるごとに自分に突っかかってくるのは、自分よりも力があるからだとも考えていた。


だが実際の所、そんなことを気にしていたのはフランドールだけであり、
委員長は彼女のことをどうとも思っていなかったのだ。
フランドールは委員長のことを『気に入らない奴』として敵視していたが、
委員長にとってのフランドールは、『少しひねくれた同じクラスの人』程度でしかない。
委員長にはフランドールを見下しているつもりなどないし、自身の力を傘に優位に立とうなどとも思っていない。
彼女が口うるさく言うのは、純粋に委員長としての使命を全うしようとしているからにすぎない。



しかし残念ながら、フランドールは委員長の考えに事実に気づいていない。
そして、委員長もフランドールにどのような目で見られているか知らない。
お互いに相手がどう思っているかなど理解することはなく、すれ違いばかりが続いていた。

367 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/11/30(月) 00:59:21.14 ID:oTN8jzTy0

フラン「ほんっと、あなたって生意気よね」

委員長「……どういうこと?」

フラン「毎回毎回口出しして、一体何様のつもりなの?」

委員長「言ったでしょ、私は委員長。 クラスのみんなを正しく纏めるのが役目よ」

フラン「別に、あなたに纏めてもらおうなんて思ったこと無いんだけど」

委員長「貴方がそう思わなくても、誰かが纏めなきゃいけないわ」

フラン「自分勝手ね。 そもそも、委員長なんて居ても居なくても同じでしょ」

フラン「あなたが委員長になったのは、他の誰も成ろうとしなかったじゃない」

フラン「みんな委員長なんてどうでも良いのよ。 むしろ、そんな面倒くさいものなんかこっちから願い下げなの」

フラン「あなたのことなんか誰も望んでないわけ。 その辺わかってる? 『委員長さん』」

368 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/11/30(月) 01:00:19.19 ID:oTN8jzTy0

委員長に対しフランドールは辛辣な言葉を投げかける。
その発言の一言一言に、彼女の敵意が乗せられているかのようだ。
相手の心をより深く抉るように、言葉を選んでるようにも感じられる。
『お前の存在なんて誰も望んでいない』と、相手の存在を全力で否定している。


実際の所、現状を鑑みると彼女の言葉は嘘ではない。
委員長がクラスの者から大部分から避けられているのは、紛れもない事実である。
真面目すぎる性格に加えて、極度のお節介焼きでもある彼女。
何か事あるごとに周りに口出しをし、さらには長々と説教をする人間を好く者など、
その者と同類の人間か、余程の物好きな人間しかいないはずである。



委員長「確かに、私はクラスの皆に嫌われていることは自覚しているわ」

委員長「私のような説教臭い人間なんて、嫌われて当然でしょう」

委員長「『先生達と仲が良い』という点も、その理由の内に入るでしょうね」

委員長「でも、皆に嫌われたとしても、誰も望まなくても、私は与えられた役目を果たすだけよ」



しかしその事実を指摘されても尚、委員長が狼狽えることはなかった。
むしろ、その逆境を目の前にして燃えているという節すらある。
相も変わらず彼女は、強固な意志が見え隠れする眼でフランドールを見据えていた。

369 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/11/30(月) 01:03:03.94 ID:oTN8jzTy0

フラン「……」



一方その反応を見たフランドールは、眼を見開き、そして顔を強ばらせることになる。
その愕然とした表情は、己の予想から外れた事象を目の当たりにした時のもの。
委員長を言い負かそうとしたのに、全く堪えていないのである。
言い負かそうとした当人にしてみれば、明確な敗北感を覚えるものだった。


だが考えてみれば、委員長の反応は当然のことといえるだろう。
周囲の人間の行動に対して口出しするには、自分の考えに自信を持っていなければならない。
何故なら迷いを抱えていると、その発言に力がなくなってしまうからである。
言葉に強い芯が通っているからこそ、人はそれに耳を傾け、心が動かされるのだ。
批判されたからといって簡単に意志を曲げてしまっては、何度も他人に口出しなどできはしない。

370 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/11/30(月) 01:04:27.88 ID:oTN8jzTy0

フラン「……………………は」



僅かな間が空いた後、フランドールの口から乾いた笑いがこぼれた。
口角が僅かながら釣り上がり、眉をひそめ、眼からは覇気が霧散している。
その表情は正しく、『失笑』の一言が相応しい。


そしてその時、彼女は目の前の少女に対し言論で勝つことを放棄した。敗北を認めたのだ。
そう認めざるを得ないほど、委員長の意志は固いことを自覚したのである。
ただし勘違いしてはいけないことは、それは『全面降伏』という意味ではないということ。
勝負の方法は、別に口論だけというわけではない。もっと単純明快でわかりやすい方法も存在する。


例えば――――『腕力による勝負』とか。

371 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/11/30(月) 01:05:41.17 ID:oTN8jzTy0

フラン「――――あー、ほんと、うざったいわねっ!」

委員長「!」



突然、フランドールは大きく右手を振りかぶった。
彼女の細腕が大きくしなり、末端の手の平が相手の頬に吸い込まれる。



バチィンッ!



次の瞬間、教室に大きく打音が響き渡った。その音は紛れもなく、肌同士がぶつかる音である。


フランドールの右腕は、委員長の頬の手前で止まっていた。
腕を止めたのは、委員長本人の左手。彼女はすんでの所で、防ぐことに成功したらしい。
彼女は腕に走る衝撃に苦悶の表情を浮かべつつ、目の前の少女を睨みつけた。

372 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/11/30(月) 01:06:33.57 ID:oTN8jzTy0
今日はここまで
質問・感想があればどうぞ
373 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/30(月) 01:25:17.94 ID:nGR6+K2Vo
乙です
374 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/07(月) 01:36:26.42 ID:o6OCx0+r0
あーあ、やっちゃうのかねぇー?
375 : ◆A0cfz0tVgA [saga]:2015/12/14(月) 00:50:14.20 ID:n7uuoCGq0
これから投下を開始します
376 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/12/14(月) 00:51:06.51 ID:n7uuoCGq0

委員長「……っ、いきなり、何をするの?」

フラン「うっさい! 黙って殴られなさい!」



その抗議を意にも介さず、フランドールは相手を睨み返した。
彼女は止められた腕を戻し、間髪入れずに今度は蹴りを放つ。



委員長「っ!?」



委員長はその蹴りを、後ろに下がることによって躱そうとする。
が、それには距離が近すぎた。足裏が委員長の腹部を捉え、彼女は後ろに吹き飛ばされる。

377 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/12/14(月) 00:51:47.04 ID:n7uuoCGq0

ドサッ!



委員長「ぐっ……」

フラン「ふん、思い知った?」



尻餅をついた委員長を、フランドールは薄笑いを浮かべながら見下ろす。
その瞳に浮かぶのは明らかな侮蔑。相手を見下す蔑みの眼である。
憎き相手を見下ろすことが、これほど清々しいものだったなんて――――
フランドールは心を支配する高揚感に、一人酔いしれていた。



委員長「貴方っ……」ギリッ

フラン「くすくす……謝るなら今の内だよ?」

女子1「やっちゃえ! フランちゃん!」

男子1「なんだなんだ?」

男子2「みんな! フランと委員長が喧嘩してるぞ!」



騒ぎを聞きつけた他の子供達が、何事かと集まってくる。
そして状況を理解した者から次々に、二人に対して野次が飛ばし始めた。

378 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/12/14(月) 00:52:38.10 ID:n7uuoCGq0

日頃の委員長への不満を晴らすためにフランドールを応援する者や、
逆に生真面目な部分で共感を覚えている委員長を応援する者。
どちらに味方をするわけでもなく、ただただ騒ぎを楽しむ者もいれば、遠巻きにその光景を眺めている者もいる。


いずれにせよ皆に共通していることは、普段とは違った出来事に興奮を覚えているということだろう。
いつもの代わり映えのない日常に退屈していた彼等にとって、フランドールと委員長の喧嘩は興味の絶えないものだ。
例えそれが悪いことだとわかっていたとしても、内から沸き上がる狂熱に耐える術を持っていなかった。
まるで蜜に誘われる羽虫の如く子供達は喧噪に群がり、いつしかその騒ぎは教室の外にあふれるまでになっていた。



委員長「こんな騒ぎになっちゃうなんて、委員長失格……」



その光景に委員長は、現状を生み出してしまった己の不甲斐なさに歯噛みする。


大きくなりすぎたこの騒ぎを、彼女一人で抑えることは既に不可能。
先生達が来れば自然と沈静化するだろうが、そのような事態の収束を彼女は望んでいなかった。
それは、彼女が持つ矜持なのだろう。自身の役割を果たせずに終わることだけは許せなかったのだ。


だから彼女は、無理矢理にでも己の力でこの騒動に幕を下ろそうとする。
例えそれが、自身が最も嫌う方法であったとしても。

379 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/12/14(月) 00:53:39.16 ID:n7uuoCGq0

委員長「……後で先生に怒られるかもしれないけど、仕方ないわね」



委員長は疲れたようにそう呟くと、上に向けて腕を伸ばした。
次の瞬間、部屋中の塵や埃が舞い上がり、手の平に集まり始めた。
灰色の球体は見る見るうちに大きくなり、やがて野球玉程度にまで成長する。



委員長「……こんな狭い場所じゃ、これが精一杯かな」

男子1「出たぜ、委員長の超能力――――『千里霧中(エアゾール)』だ!」



男子がその光景に叫ぶまもなく、委員長は手の平の球体をフランドール目掛けて飛ばした。
飛ばされた球体は二人の丁度中間まで来ると、大きく膨れあがり拡散する。
そして靄が相手を覆い込もうとする様子を見た彼女は、開いた手の平を今度は強く握りしめた。

380 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/12/14(月) 00:54:29.38 ID:n7uuoCGq0

フラン「……!」バッ!



相手の意図に気づいたフランドールは、反射的にその場から飛び退く。彼女の体が靄を突き抜け、外へと放り出された。
その次の瞬間、靄は再び一点に集合し始め、元の球体の姿に戻る。
もしもあの場所に留まっていたならば、あの靄にまとわりつかれて身動きが取れなくなっていた所だ。


委員長が持つ超能力、『千里霧中』。
『念動力』の一種に分類され、小さな粒子――――塵や砂など――――を操る能力。
大きさが規定に収まっていれば何でも良いらしく、煙や霧なども操作でき、
それらの形を自在に変えたり、一箇所に集合させて固体として扱うこともできるそうだ。


その特性故に、土埃が飛散するような場所では驚異的な強さを誇る超能力であり、
噂ではその力を使って、絡んできた5人のスキルアウトを一撃で吹き飛ばしたと言われている。

381 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/12/14(月) 00:55:14.02 ID:n7uuoCGq0

フラン「あぶ――――がっ!?」



相手の攻撃を避けたことに安心しようとした刹那、フランドールの首元が突然強く締め付けられた。


何事かと見やると、そこには自身の首に巻きつく灰色の糸が見えた。
そしてその線を辿って行くと、行き着く先には先ほど避けたはずの塵の集合体が。
なんと言うことはない、フランドールは委員長の攻撃を避けた気になっていたが、
実際のところ全く逃げ切れていなかったのだ。



委員長「もしかして、避けたつもり? だとしたら残念だったわね、そこはまだ射程圏内よ」

委員長「まぁ、この教室から逃げでもしない限りは、避けることなんてできなかったけど」

フラン「このっ……!」



首を抑えてもがくフランドールを、委員長は冷めた目で見つめる。
フランドールの首を捉えた糸は、時が経つに連れてどんどん太くなっていった。
糸の根源である球体が、その身を縮めて糸を太く、強固にしているのだ。
いずれは塵の全てが首に巻きつくことになるだろう。

382 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/12/14(月) 00:56:24.16 ID:n7uuoCGq0

委員長「貴方はもう、私の手から逃れられない。 これで終わりよ」

女子1「ちょっと委員長! フランちゃんを離しなさいよ!」

女子2「そうよそうよ! この堅物!」

委員長「断るわ。 今離したら、何をしでかすかわからないし」

委員長「それよりもそこの男子。 静かにして」

男子1「えぇ〜! もう終わりかよ!」

男子2「つまんねーの!」

委員長「黙りなさい。 いい加減ににしないと……」

男子1「うっ……」



委員長は騒ぎ立てる男子に対し、無言の圧力をかける。
その剣幕に臆したのか、その男子を含めた野次馬が一斉に口を噤んだ。

383 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/12/14(月) 00:56:52.48 ID:n7uuoCGq0

目前には委員長の手により首を捕まれているフランドールの姿。
彼女は脱出しようと暴れているが、一向にそれが成される気配はない。
灰色の糸は首にしっかりとへばり付き、逃げることを許さない。


もしも逆らったら、自分も同じ目に会うかもしれない――――そんな予想が野次馬の中を伝播する。
無論、委員長がフランドールにしたことと同じ事をすると決まったわけではない。
むしろ、その可能性は低いだろう。元々委員長は、武力による制圧を望んでいないのだ。
このような状況になっているのは、フランドールが力で委員長を従えようとしたからに過ぎない。


だが、今の彼等にその考えに至るだけの余裕はなかった。
そして何より、委員長の剣幕と気迫が彼等の予想に現実味を帯びさせていた。
故に、野次馬達はぶつくさ言いながらも彼女の言葉に従うしかなかった。

384 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/12/14(月) 00:57:39.43 ID:n7uuoCGq0

フラン「くっ、この……!」



その光景を余所に、フランドールは依然として委員長の束縛から逃れようとしていた。
首にまとわりつく糸を、どうにかして引きはがそうとする。
だが、その糸は強固の一言。まるでピアノ線を相手にしているかのようである。
微細な塵の集まりに過ぎないはずなのに、それはあまりにも頑丈すぎた。


それもそのはず、糸を作り上げている力の元は委員長の『念動力』。
その力によって粒子同士をつなぎ合わせ、その結果一本の糸を成している。
『念動力』とは物理法則から外れた力。人間の常識を逸脱した代物。
『念動力』を使えば、鋼線よりも頑丈な糸を創り出すことも可能なのだ。



フラン(ちくしょうっ……こんなっ……!)



どうすることもできない状況、己の醜態が晒され続けている状況に、フランドールは焦燥、屈辱、憤怒に支配される。
周りの様子を見ると、野次馬の注目は委員長だけに向いていた。フランドールのことなど気にも留めていない。
彼等は既に、『フランドールは委員長に負けた』と考えているのだ。

385 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/12/14(月) 00:59:01.10 ID:n7uuoCGq0

こんな筈じゃ無かったのに――――彼女は心の中で歯噛みする。
そもそも、面と向かって争うこと自体が間違いだったのだ。
『強度』としてはフランドールの方が格上とはいえ、能力者としての経験の差が違いすぎる。
その事実は、フランドールが終始能力を使わなかったことに対し、
委員長は躊躇いもなく人に向けて能力を使った所に現れている。


委員長は『超能力の扱い方』というものを心得ている。
その言葉の中には、単純に『超能力を操作できる』というだけでなく、
『超能力を使うべき状況を判断できる』という意味合いも含まれている。
彼女の中には能力を使うべき『基準』というものがあり、それがあるからこそ迷い無く能力を行使することができる。


その『基準』は、実際に超能力者にならなければ定めることができない。
力をいつ、どのように使えばよいのか。それは当事者になった時に初めて理解できるもの。
故に、それを持たないフランドールには『今、力を使う』という選択肢が頭に浮かんでこなかった。

386 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/12/14(月) 01:00:42.92 ID:n7uuoCGq0

フラン(っ、こうなったら……!)



だがそれは、あくまでも『力を使う機を判断できなかった』というだけである。使おうと思えば使えるのだ。
まだフランドールの敗北が、完全に決定付けられたというわけではない。


彼女は能力の演算を開始する。自身にまとわりつく糸に触れ、その性質を理解し、破壊しようとする。
この力を自身の意志で使うのはこれが初めて。能力に覚醒した時は意識が朦朧としていたし、
それ以降は先生達の許可がなければ使うことができず、その性質を知るための実験として使用したことがあるのみ。
言ってしまえば、今回が初めての実践ということなる。


自分に上手く能力を扱うことができるだろうか?
そんな不安が、彼女の脳裏を過ぎる。


今まで実験として色々な物を壊してきたが、超能力が作用しているものには試したことはない。
委員長の『念動力』により造られた一本の糸。それに自身の能力が作用するのかは、全くの未知数。
『糸の破壊に失敗し、結局逃げられなかった』ということも十分あり得ることである。


この行動が、必ずしも成功するとは限らない。だが、何もしなければ何も変わらない。
だから彼女は、この策が成功することに賭け、行動に移した。

387 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/12/14(月) 01:01:38.97 ID:n7uuoCGq0

フラン(物を壊すには、物質同士を繋ぐ力を切っちゃえばいい筈……)

フラン(この糸を繋ぐ力は『念動力』だから……………………これだっ!)



フランドールは糸が帯びている力を見極め、それに自身の能力を作用させる。
委員長の『念動力』に、自身の『念動力』をねじ込み、糸を形成する力を妨害する。


すると――――



ブツンッ!



鈍い音と共に、触れた部分から糸が千切れる。果たして、フランドールの策は成功した。
彼女の能力は、『念動力』によって造られた糸にも効果があったのだ。


フランドールが持つ『物質崩壊』は委員長と同じ『念動力』に分類されるものであり、互いに干渉することができる。
ならば純粋に出力が上回る彼女の『念動力』が、委員長のそれに劣ることなどあり得ない。

388 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/12/14(月) 01:02:31.61 ID:n7uuoCGq0

フラン(物を壊すには、物質同士を繋ぐ力を切っちゃえばいい筈……)

フラン(この糸を繋ぐ力は『念動力』だから……………………これだっ!)



フランドールは糸が帯びている力を見極め、それに自身の能力を作用させる。
委員長の『念動力』に、自身の『念動力』をねじ込み、糸を形成する力を妨害する。


すると――――



ブツンッ!



鈍い音と共に、触れた部分から糸が千切れる。果たして、フランドールの策は成功した。
彼女の能力は、『念動力』によって造られた糸にも効果があったのだ。


フランドールが持つ『物質崩壊』は委員長と同じ『念動力』に分類されるものであり、互いに干渉することができる。
ならば純粋に出力が上回る彼女の『念動力』が、委員長のそれに劣ることなどあり得ない。

389 :投稿ミス ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/12/14(月) 01:03:15.91 ID:n7uuoCGq0

委員長「なっ――――!?」

「おぉっ!」



束縛を逃れたフランドールを見て、委員長は目を開く。
それと同時に、予想外の展開に周囲が一気に色めき立った。


フランドールがクラスの皆の目の前で能力を披露するのはこれが初めて。
彼女の能力の情報については、噂程度の物は伝わっていたものの、その詳細を知る者はクラスのどこにもいなかったのだ。
その理由は、教師達がフランドールの超能力の情報が不用意に広がる恐れ、
許可無しに能力を使わないよう釘を指したからであり、フランドールも律儀にそれを守っていたからである。


だが今回、彼女の頭に血が上りその約束を忘れたことで、超能力の正体があらわとなった。
その超能力に対し、委員長は自身の能力が破られるほどのものであることに驚愕し、
クラス一同はついに明かされる未知の力に、熱い視線を送る。
この瞬間、この場にいる人間の全ての視線がフランドールに集まっていた。


だがそれを前にして、当の本人はまるで気に留める様子はない。
彼女の頭の中は、『目の前の敵をどう打倒するか』ということしかなかった。

390 :投稿ミス ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/12/14(月) 01:04:35.28 ID:n7uuoCGq0

フラン「……ははっ!」

委員長「くっ!」



フランドールは素早く身を起こすと、委員長目掛けて突進する。
それに少し遅れて、委員長が再び相手を束縛しようと能力を行使した。


再び、灰色の糸がフランドールに迫る。しかし、それらが標的を捉えることは無かった。
フランドールが糸を手で乱暴に鷲づかみにし、自身の『念動力』で片っ端から破壊したのである。
糸を自力で壊せるとわかった以上、それを恐れる必要など無く、その行動には一分の迷いも存在しない。
彼女は糸を手で握りつぶしながら、ものの数秒の内に委員長の下へと辿り着いた。



委員長「そんな……!」



自分の能力が全く効かない。その事実に委員長は大きく狼狽する。


ものの一分とかからずに覆された戦況。それを冷静に受け入れるには、彼女はまだ若すぎる。
彼女は荒事を経験したことがあるとはいえ、その対処には『力による強引な排除』という手段しか執ったことがない。
『戦いの最中に戦略的な方法を考える』などという経験は無かった。
故に彼女は、突然訪れた危機的状況に対して咄嗟の判断をすることができない。

391 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/12/14(月) 01:06:37.16 ID:n7uuoCGq0

フラン「あはは、これでおしまい――――」



思考停止により棒立ちとなった委員長を目の前に、フランドールは自身の腕を相手に目掛けて突き出す。
狙うは相手の衣服。それを粉々に破壊し、身包み全てを奪い去ろうとした。


『貴方に最高の屈辱を与えてやる』。
『公衆の面前で裸体を晒し、皆の嗤いものになってしまえ』。
フランドールは邪な願いを込めて、口元を歪ませながら委員長へと飛びかかる。


――――いつもの彼女ならば、そのような考えなど持つはずがない
いくら相手を憎たらしく思おうと、所詮それは子供の感情。
そんなものから生まれるのは、重箱の隅をつついたような幼稚な仕返しかないだろう。
ましてや相手を辱め、陥れるなどという下卑な発想などできるはずもないのだ。


だが今の彼女の心の内は、何処からとも無く湧いて出た目の前の相手への憤怒と憎悪で満たされていた。
感情に身を任せて相手へ復讐することへ、一種の喜びを見出してすらいた。
そして、普段と比べて明らかにおかしい自身の行動に疑問を挟んでいない。


フランドールの心が突然、別人のように変わってしまったその理由。
それが『己の体の内にあるものが為だ』などと、彼女が知るはずもなかった。

392 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/12/14(月) 01:07:33.27 ID:n7uuoCGq0

委員長「い――――」



目の前に迫り来る魔の手を前に、委員長は半ば反射的に体を動かす。
彼女はまだ、フランドールの腕にどのような力が宿っているのかを知らない。
ただ、一つだけ理解したことがある。それは、『相手の力は自身のそれを凌ぐもの』であると言うことだ。


そして今、その得体の知れない力が宿った腕が、自身に触れようとしている。
『それ』が自身に触れたら最後、一体どのような事が起こるのか。それはわからない。
しかしわからないからこそ、訪れるであろう『未知の結末』に彼女は恐怖した。










――――だから、仕方のないことだったのだろう。


彼女がフランドールの腕を、その手で振り払ってしまったのは。

393 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/12/14(月) 01:08:11.48 ID:n7uuoCGq0
今日はここまで
質問・感想があればどうぞ
394 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/14(月) 01:26:39.82 ID:gNV2gWSAO
乙です
395 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/14(月) 01:30:15.34 ID:GQG7pp6w0

魔性が鎌首を擡げたか……

しかし、今にもグチィ!されてしまいそうなのはピンク髪の真面目少女の腕、か。ふむ……
彼女の念動力をもってすれば、何かを巻き付けて補ったりする事も十分に可能だろうなぁ
396 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/12/26(土) 00:38:17.86 ID:NnHwervu0
これから投下を開始します
397 : ◆A0cfz0tVgA [saga]:2015/12/26(土) 00:39:05.08 ID:NnHwervu0

ボンッ!!!



フランドール「――――え?」

委員長「――――あ?」



何かが破裂するような、大きな音が教室に響いた。


その時、フランドールも委員長も、彼女等を取り巻く子供達でさえも一様に静まりかえる。
皆が皆、突然起こった出来事に、その光景を目の前にして呆然としていた。

398 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/12/26(土) 00:40:06.95 ID:NnHwervu0










委員長の右腕が。



フランドールの腕をふり払ったその腕が。



まるで最初から無かったかのように、跡形もなく消し飛んでいたのだ。










399 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/12/26(土) 00:41:11.39 ID:NnHwervu0

ブッシュゥゥゥゥッ!!!



委員長「あ、あああああああぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?」



一瞬の間を置いて、委員長の肩口から鮮血が噴水のように吹き出す。
瞬く間に、床一面が赤よりも紅い色に染まっていった。
そして、先ほどまで右腕のあった場所から血が吹き出す様を見て絶叫する少女。
その叫び声には、腕を失ったことからくる驚愕と恐怖が入り交じっていた。



委員長「あ、あぁ……」



ドチャッ!



一頻り叫んだ彼女は失血によるショックか気を失い、糸が切れた人形のように血の海の中へと倒れ込む。
水気を多分に含んだ雑巾を、地面に叩きつけたかのような音が響いた。


彼女の肩の傷口からは、勢いは衰えているものの未だに血が流れ続ける。
その血は血溜まりを更に大きく広げ、すでに教室の四半分を染め上げるほどだ。
止めどなく流れ出る生命の源。委員長が少しずつ、着実に死へと近づいていることが見てわかった。

400 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/12/26(土) 00:42:32.18 ID:NnHwervu0

「う、うわああぁぁぁぁ!!!」



周りで見物していた子供達が、次々と悲鳴を上げる。
恐怖が一同に伝播し、一瞬にして教室はパニックに陥った。


心の内に沸き上がる恐怖心により、その場から一目散に逃げ出す者。
凄惨な光景に立ちすくみ、ただただ泣き叫ぶ者。
精神的ショックのあまり、自ら意識を手放す者。


精神的にも肉体的にも未熟な彼等は、恐怖という名の本能に従って狼狽するしかない。
血を流して倒れている委員長を手当てすることもなく、ただおろおろと動き回るだけだった。


しばらくして、騒ぎを聞きつけた教師達が現場へと駆けつけてくる。
そして目の前に広がる光景を一目見て、一瞬その場に棒立ちとなった。
何せ、騒ぎの中心であろう2人の内の1人は血の海に倒れ込み、
もう1人は全身血まみれになりながら立ち尽くしているのだ。
その光景を見せつけられて、動揺の一つもしない人間はいまい。


しかし彼等は成熟した大人。子供達のように恐慌に陥るなどと言う無様な醜態は晒さない。
直ぐに我に返った彼等は取るべき行動を頭の中で瞬時に弾き出し、それを行動に移す。


事の顛末を把握しようと、周囲に事情を聴く者。
あるいは泣き叫び、あるいは逃げ回る子供を落ち着かせようとする者。
流血する委員長駆け寄り、応急処置をしようとする者。


彼等は事態を収束させるために、素早く動き出した。

401 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/12/26(土) 00:44:28.50 ID:NnHwervu0

フラン「――――」



阿鼻叫喚に陥った教室。その中で、フランドールはただ1人呆然としていた。
今彼女の眼前に広がっている地獄。それがあまりにも非現実的で、夢の中を漂っているかのよう。
それを生み出したのは自分であるにも拘わらず、まるで他人事のような眼で眺めていた。


彼女は委員長の血飛沫を正面から浴び、まるでペンキを被ったかの如く全身が真紅で彩られている。
瞳には生気が無く、目の前に広がる光景を『ただ眼に映している』だけ。
それはまるで、血の池地獄から這い出してきた幽鬼のような姿。


周りからなにやら叫び声が聞こえるが、頭の中に入ってこない。
耳と脳の間をつなぐ回路が壊れてしまったかのようだ。
男子の絶叫も、女子の叫喚も、教師の大喝も。全てが耳障りな雑音でしかなかった。


意味を持たない、ただのノイズのみとなった世界。
そこに佇む彼女の耳に、一つだけ明確に理解できる『言葉』が飛び込んできた。

402 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/12/26(土) 00:45:45.55 ID:NnHwervu0










『バ ケ モ ノ』










403 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/12/26(土) 00:48:48.29 ID:NnHwervu0

フラン「ぇ――――?」



ふと思い出したかのように、頭の中が真っ白なままフランドールは周囲を見渡す。
とある女子が、恐怖と侮蔑と敵意をかき混ぜたかのような視線が向けていた。
相手の存在そのものを、徹底的に否定するかのような眼。
その存在を跡形もなく消し去ることを望むような、そんな眼だ。


しかし今の彼女にとって、その事実は二の次でしかない。


瞳を向ける子供は、先ほどまで仲良く会話していた少女だったのだ。
クラスの中でもそれなりに親しかった彼女が、恐怖の眼をこちらに向けている。
いつも笑顔を浮かべているはずの顔は、その眼のせいで酷く歪んでいるように見えた。


心にちくりと何かが刺さる。
そして再び周囲を見渡して、また一つ気づいた。
少女だけでなく、自身を見つめる子供全てがその眼をしているということに。


濃密な負の感情が込められた数多の眼光が、彼女の体に突き刺さっていく。
じくじくと、図太い針が皮膚に食い込んでいくような。
そして針に含まれた毒がじわじわと心身を蝕んでいくような、そんな錯覚に襲われた。

404 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/12/26(土) 00:50:00.66 ID:NnHwervu0

フラン「――――ぁ」



それを見たフランドールは、理屈も過程も吹き飛ばして一つの答えを導き出す。


『自分はもはやまともなニンゲンではない』ということに。
『ニンゲンの枠から外れたバケモノだ』ということに。
人の枠を超えた力を手に入れたその代償として、『人間の環』から外されてしまったと理解した。


『人を人たらしめるもの』とは何か。
『人の胎から生まれ落ちれば人』か?それはノーだ。
確かに『種族』という因子は個の存在を決定するには必要なものではある。


だがその種族が『人間』という枠組みになると、途端にその因子だけでは頼りないものになってくる。
なぜなら『種族』という因子は『生物学的に』個の存在を決定づけるものでしかないからだ。

405 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/12/26(土) 00:53:34.29 ID:NnHwervu0

人間は『社会的生物』である。


個々の人間は、生身では猫にも劣る力しか持ち合わせていない。
それ故に、彼らは群れることによって己の非力を補おうとした。
さらには『爪と牙』という野生の力を放棄し、代わりとして『頭脳』というあらゆることに応用可能な力を手にしたのだ。


その結果、人間は頭脳を用いて群れることにより『社会』と呼ばれる大規模な集団を構築し、
地球上のあらゆる種族に対抗しうる手段を手に入れることになる。


その『社会』に属するためには、『人間から人間と認められなくてはならない』。
それは、『社会的』に個の存在を決定づける方法に他ならない。
『生物学的』にも『社会的』にも『人間』と判断された時、その個は初めて『人間』となりうるのである。










それならば、『人間という名の社会』から外されたフランドールは、果たして人間なのだろうか?

406 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/12/26(土) 00:54:21.65 ID:NnHwervu0

フランドール「う、うあぁぁぁぁあぁあぁぁぁぁぁ!!!」



突如の頭痛にフランドールはその場に座り込む。
精神が不安定になったときに起きる『自分だけの現実』の暴走。
脳細胞の異常な活発化により、フランドールの脳に大きな負担がかかり始めた。
そして何より問題なのは、『自分だけの現実の暴走』とは『能力の暴走』と同義であり――――



「――――っ!?」

「――――、――――!!!」

「――――!? ――――!!!」



床にうずくまるフランドールを見た教師たちが、何か叫び声を上げる。
彼女の身に何が起こっているのかを察知し、その場全員に避難を促そうとした。


だが恐慌状態に陥っている状況下で、その声が届くことはない。
教室の中には、未だにその場から動くことの出来ない子供であふれていた。

407 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/12/26(土) 00:55:28.70 ID:NnHwervu0

フラン「あぁあぁぁ……!」



バキッ!!!



教師達が仕方なく子供達を強引に教室から連れ出そうとしたとき、フランドールに更なる異変が起こる。
頭を抱えてうずくまる彼女を中心として、床に亀裂が入った。
その亀裂は蜘蛛の巣のごとく次々に広がっていき、見る見るうちに教室全体にまで達する。



「――――!?!?!?」



それを見た教師たちは、これから何が起ころうとしているのかを察知し、一瞬にして血の気が引いた。
彼等は慌てて子供達を抱え、部屋から飛び出そうとして――――

408 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/12/26(土) 00:55:57.21 ID:NnHwervu0










その直後、校舎の一角が轟音を立てて崩落した。










409 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2015/12/26(土) 01:08:16.19 ID:NnHwervu0
今日はここまで


今年最後の投稿になります
今年はリアルの忙しさもあって、殆ど進めなかったのが心残りです
話の流れとしては後半の中頃にさしかかったところなので、なんとかエタらずに済みそうです
まだ最後まで書ききってはいないんですけどね

どれほどの方がご覧になってくださっているのかはわかりませんが、
来年も何卒よろしくお願いします


それでは皆様、よいお年を
410 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/26(土) 07:30:42.24 ID:WZAEjkfq0

こんな事になって、よく暗部に堕とされなかったなフランちゃん。姉の頑張りか?

よいお年を!
411 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/26(土) 14:17:43.40 ID:hsb1C02ao
乙です
412 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/27(日) 07:53:31.66 ID:cCpqsYuP0
それから今までふさぎこもり軟禁状態……これは封印されてきた吸血鬼化がどうなる事やら
413 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/01(金) 01:15:31.44 ID:ZnHob6e30
あけおめ!
414 : ◆A0cfz0tVgA [saga]:2016/01/12(火) 00:26:44.64 ID:YJs6rbFR0
あけおめことよろ
今年最初の投下を始めます
415 : ◆A0cfz0tVgA [saga]:2016/01/12(火) 00:27:31.34 ID:YJs6rbFR0





――――7月28日 PM10:03





416 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2016/01/12(火) 00:28:31.54 ID:YJs6rbFR0

土御門「カミ、やん……」

上条「……」



空に浮かぶ満月に、煌々と照らされる中。
スカーレット邸の玄関前において、土御門元春と上条当麻が対峙していた。


土御門は自身の足下で眠る少女――――フランドール・スカーレットの近くにしゃがんだまま、
背後の突如現れた親友を返り見て硬直している。
それに対し、当麻は土御門を睨みつけたままその場から動く様子はない。
しかしその顔から迸る怒りの感情は、今にも土御門に対して殴りかかってきそうな気迫を携えていた。



上条「……土御門、お前、『フランに何をした?』」

土御門「……」



ぽつりと、ただしはっきり聞こえる声で当麻は問う。
彼はたった一言だけ、目の前の男に自身の疑問を口にした。

417 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2016/01/12(火) 00:29:18.81 ID:YJs6rbFR0

しかしその一言は、土御門をその場に射止めるには十分な代物。
その言葉の言外には、『下手な言い訳は許さない』という明確な意思が付随している。
いかに当麻を言いくるめるかを全力で思案していた彼にとって、
正しく心を鷲掴みにされたかのような錯覚を覚えるものだった。


だが土御門の精神は、その程度で錯乱状態に陥るような軟なものではない。
彼は幼少のころから闇の狭間を生きてきた人間である。
このような状況など、星の数ほど経験してきたのだから。



土御門「……麻酔を使って眠らせた。 暴れられると困るからな」

土御門「能力を使って無暗矢鱈に破壊し始めたら、いくらオレでも手がつけられない」

上条「……」



土御門は己の行いを、嘘偽りなく当麻へ曝け出した。
下手に虚言を並べない方が、これからの話を円滑に行えると考えたからである。
その予想は当たっていたようで、彼の発言に対して何か強く言いだすことを当麻はしなかった。

418 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2016/01/12(火) 00:31:00.28 ID:YJs6rbFR0

土御門「それでカミやん、どうしてこんなところに居るんだにゃー?」



ある程度考えを纏めた土御門は、話し方を普段使っている猫被りに戻す。
そしてゆっくりと立ち上がると、いつものおどけた表情を造りながら当麻に問いかけた。


しかしながら、その疑問は彼の中で既に氷解している。
どうして目の前の男がこの場に居るかなど、当人の性格を鑑みれば考えるまでもないことだからだ。
故にこの問いは、あくまでも会話を自身のペースに乗せるためという意味合いしかない。



上条「そんなの決まってるだろ。 お前やパチュリーを止めるためだ」

土御門「止める? 一体何をだ?」

上条「フランとレミリアを、イギリス清教に連れて行くことだ。 知ってるんだよ、お前達がこれから何をしようとしているのか」

土御門「なーるほど……一つ聞くが、そのことを何処で?」

上条「ステイルだ。 聞いたら教えてくれた」

土御門「ステイルが? 良く教えてくれたもんだな」

上条「それは俺もそう思う」

419 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2016/01/12(火) 00:31:39.84 ID:YJs6rbFR0

土御門は一連の話の中で、一つの疑問について思考を巡らせる。


何故、ステイルは当麻にこちらの情報を教えたのか。
『上条当麻に教えるな』と直接釘を刺したわけではないので、それが原因と言われればそれまでである。
しかしステイルほどの人間が、自身の行動が何をもたらすのかについて全く気づかないとはあり得ない。


当麻に事件の詳細を伝えることは、彼を事件に突っ込ませると言うことであり、
ひいてはインデックスを事件に巻き込むと言うことである。
インデックスの身を誰よりも案じているであろう彼が、
彼女に危険が迫るようなことをするとは思えないのだが……



土御門(ステイルの奴、一体何を考えている……?)

上条「……土御門」



当麻の声に、土御門の思考は現実へと引き戻される。
ステイルの思惑は気になるが、それを考えるのは今するべき事ではない。
目の前で仁王立ちしている親友をどうするのか。それがまず先だ。

420 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2016/01/12(火) 00:32:53.94 ID:YJs6rbFR0

土御門「ふぅ、カミやんの言いたいことはよ〜くわかったにゃー。 ……その上で聞こう」

土御門「……カミやん、自分が何を言っているのかわかっているのか?」

上条「……わかってる、わかってるさ」

土御門「いいや、わかってないな。 カミやんがやろうとしていることは、イギリス清教への明確な反逆だぞ?」

土御門「しかも単なる業務妨害じゃない。 俺達の任務は『最大主教』の直々の指令だ」

土御門「それを邪魔することが何を意味しているのか、留年ギリギリのカミやんでもわかるはずだぜい?」

上条「知っている。 俺がお前達の邪魔をすればイギリス清教に目の敵にされることも、
インデックスがイギリスに連れ戻されることも、全部わかっている」

上条「だけど、それでもなんだ。 俺には、フラン達が連れて行かれるのを黙って見ていることなんてできない」

上条「例えそれで平和になるとわかっていても、誰かが不幸になるのを無視するなんてできねぇ!」

土御門「おいおい、まさかカミやんの都合でインデックスに迷惑をかけるつもり――――」

「それは大丈夫なんだよ」

421 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2016/01/12(火) 00:33:48.63 ID:YJs6rbFR0

少女の声が響いたかと思うと、当麻の背後――――屋敷の門の陰から人影が飛び出してきた。


白いベールのついた帽子に、長い青色掛かった銀髪。
それを風に靡かせながら、その者は小走りでこちらに駆け寄ってくる。
その姿は、土御門にとっては慣れ親しんだもの。


イギリス清教の切り札。10万3000冊の魔道書を脳に刻み込んだ最強の防護壁。
『禁書目録』もとい、インデックスであった。



土御門「インデックス……カミやん、やっぱり連れてきたのか?」

上条「……あぁ」

土御門「イギリス清教に所属している身としては、あまり彼女を危険な場所に連れまわしてほしくはないんだけどにゃー……」

禁書「つちみかど」



インデックスは土御門に呼びかける。
彼女の眼は、当麻のそれとはまた違った、とても澄んだ色をしている。
邪なものを感じさせない純真無垢な瞳は、当麻とはまた違った圧迫感を感じさせるものだった。

422 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2016/01/12(火) 00:35:30.15 ID:YJs6rbFR0

インデックスは土御門に呼びかける。
彼女の眼は、当麻のそれとはまた違った、とても澄んだ色をしている。
邪なものを感じさせない純真無垢な瞳は、当麻とはまた違った圧迫感を感じさせるものだった。



禁書「お願いだよ、つちみかど。 ふらんを連れて行かないで欲しいんだよ」

禁書「ふらんは何も悪いことはしてないし、吸血鬼の魔術だって何とかなるかもしれない」

禁書「だから……もう少しの間だけ待ってて欲しいんだよ!」



インデックスは嘆願する。
その姿はまるで、あの時の――――インデックスにかけられた1年ごとに記憶を消される呪いを解くために、
期限が迫る中で上条当麻が神裂火織とステイル対して食い下がった時のそれとよく似ていた。
彼ほど迫力こそはないものの、その言葉に込められた感情は比べるべくも無い。



土御門「……残念だが、『禁書目録』の頼みでもそれはできないぜい」



しかし、土御門はその嘆願を拒否した。
もし彼がただの一般人だったのであれば、その姿に心を動かされもしたのだろう。
彼女の姿は、人の心に罪悪感を沸き上がらせるには十分に足るものである。
だが、公私を区別できる土御門にとっては意味のないものであった。

423 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2016/01/12(火) 00:36:56.31 ID:YJs6rbFR0

土御門「吸血鬼の存在はイギリス清教だけじゃなく、魔術サイド全体に関わる問題だ」

土御門「個人の都合でどうこうできるほど、今回の案件は軽くはないぜよ」

土御門「仮に俺達が引いても、いずれは他の奴等が嗅ぎつけてくる」

土御門「ローマ正教に見つかりでもしてみろ。 『捕縛』だなんて生ぬるい事なんてせずに、
その場で首を切り落とされること間違い無しだ」



それに、と土御門は付け加えながら再び当麻を見て、更に言葉を紡ぐ。



土御門「カミやんだってわかっているだろう? こいつらを放置する事が如何に危険なのかが……」

土御門「下手すれば、魔術サイド全てを巻き込んだ戦争が起こる。 しかもかなりの規模になるだろう」

土御門「インデックスがいる以上、そして彼女が発見者である以上、学園都市だって無関係を決め込めるじゃないんだぜい?」

土御門「戦争を防ぐには、スカーレット家が生み出した魔術を欠片も残さず排除するしかない」

土御門「そしてこいつらが魔術で吸血鬼化しているとなれば、今度は魔術の痕跡を消すだけじゃあ足りなくなる」

土御門「殺すか、もしくは未来永劫幽閉し続けるしかないんだ。 誰の手にも触れられることの無いようにな」

上条「本当に殺すしかないのか? 本当に永遠に閉じ込めるしかないのか?」

上条「もしかしたら、まだ手があるかもしれないだろ!?」

土御門「そんな手があったらとっくに使っている。 根拠の無い希望的観測は止めろ、上条当麻」

424 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2016/01/12(火) 00:38:21.14 ID:YJs6rbFR0

土御門はついに、当麻の意見をばっさりと切り捨てた。


上条当麻は甘い人間だ。彼は敵味方、善悪問わず救おうとする。
言ってしまえば、理屈など度外視して、感情のままに行動するのだ。


『人を救う』ことは素晴らしいことだ。それに異論を挟む余地はない。
だが問題は、彼は救う人を選ばないのだ。相手がどのような人間であろうと手を差し伸べてしまう。
世界を滅ぼそうとする人間であろうと、自分に対して耐え難い苦痛を与えた人間であろうと、
その者が不幸の沼に足を囚われていれば、助けようとしてしまうのである。


それが如何に危険なことなのか、彼はわかっていない。
悪人を救おうとすれば、彼自身も共犯となる。つまり、周囲を敵に回すことになるのだ。
以前にも彼は、全世界を敵に回した少女を救おうとして同じような目にあっている。
あの時は運良く生きながらえたから良かったものの、今度もそうなるとは限らない。


これ以上上条当麻に無謀なことをさせることは、土御門としても容認できることではなかった。
だからこそ彼は親友を諦めさせようとする。

425 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2016/01/12(火) 00:39:39.53 ID:YJs6rbFR0

上条「……そうかよ。 なら――――」

土御門「力尽くで、か? カミやん? らしくないな。 いつもの説教はどうした?」

上条「そうでもしないと止まりそうにないからな。 お前と口論したって、説得できそうもねぇし」

土御門「よくわかってるじゃないか……勝てると思ってるのか? この前のようにはいかないぜい?」

上条「上等。 俺だってあの時と同じじゃねぇよ」

禁書「とうま……」



軽口を叩き合いながらも、2人は静かに臨戦体勢へと入る。


彼等は以前にも、こうしてぶつかり合ったことがある。
一戦目は土御門元春の勝利。二戦目は、上条当麻の勝利で終わっていた。
互いに一勝一敗。この三戦目でついに優劣がつくことになる。

426 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2016/01/12(火) 00:40:28.40 ID:YJs6rbFR0

土御門「一時の感情で無計画に動き回るのは、カミやんのいつもの悪い癖だ。 いい加減そろそろ学習するべきだぞ」

上条「助けたいと思って助けることの何が悪いんだよ。 誰から何を言われようと、俺は自分を貫き通す!」

上条「俺は絶対に――――諦めたりなんかしねぇぞッ! 土御門ッ!」



上条当麻は、不幸になりそうな人を助けるために。
土御門元春は、世界と自身の大切な人を危険から遠ざけるために。
2人は己の信念のため、この場でぶつかり合う。そして、勝利した者だけがその信念を貫徹できるのだ。



上条「……いくぞ!」

土御門「……」



幾許かの睨み合いの末、2人はついに足を踏み出した。

427 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2016/01/12(火) 00:41:20.18 ID:YJs6rbFR0
今日はここまで
質問・感想があればどうぞ
428 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/12(火) 00:58:10.71 ID:+ObhvQK2o
乙です
429 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/12(火) 05:17:49.04 ID:LM7UYOub0
乙!
友人同士の引けない戦い……青春してますね

んで、レミパチェはどうしてるのか
430 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/12(火) 20:36:37.90 ID:ivbvN2yi0
久々に見に来たが乙
431 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/13(水) 19:22:18.99 ID:AeOoqVEEo
おかえり本編
432 : ◆A0cfz0tVgA [saga]:2016/01/18(月) 00:11:00.35 ID:BaO6L2rk0
>>429
レミパチュは現在弾幕ごっこをしております
時系列的には巻き戻っておりますので


これから投下を開始します
433 : ◆A0cfz0tVgA [saga]:2016/01/18(月) 00:12:19.15 ID:BaO6L2rk0

上条「うぉらァッ!!!」ブオン!



当麻は土御門の腕に向けて拳を放つ。


能力も特別な技術もない、素人丸出しの拳。しかしそれこそが、上条当麻が持つ唯一の武器。
鍛え上げられた肉体から繰り出されるそれは、大の男を軽々と吹き飛ばす程の力を持っている。
それにより沈んでいった者は数知れず。土御門もまた、その拳を身に受けた者の1人である。



土御門「ふっ!」



しかし一度拳を受けたからこそ、それを見切るのもまた容易い。
何より土御門は、あらゆる暗殺武術を極めた人間である。
肉体、精神共に疲弊していたあの時ならいざ知らず、十全な状態の彼に大振りの攻撃など届くはずもない。

434 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2016/01/18(月) 00:13:38.01 ID:BaO6L2rk0

彼は自身に向かって突き出された拳を危なげなく躱すと、その腕を自身の腕で絡め取る。
そして相手の力をそのまま利用し、背負い投げの要領で勢いよく投げ飛ばした。



上条「うっ!? ……とっと!」



そのまま地面に叩きつけられると思われたが、当麻は上手く体を捻って着地した。
流石、と言うべきか。事あるごとに何十メートルも吹き飛ばされてきただけある。
咄嗟に受け身を取るのは朝飯前というわけだ。



上条「危な――――!?」



ブオッ!



着地の姿勢でしゃがみ込んだまま、背筋に悪寒を感じ取った当麻は、反射的にその場から飛び退く。
すると間一髪、彼の瞳には目の前から相手の拳が遠ざかっていく光景が映し出された。

435 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2016/01/18(月) 00:14:24.33 ID:BaO6L2rk0

顎へと正確に狙いを定めた正拳突き。
もしもまともに食らっていたら、いくらタフな当麻といえども、昏倒は避けられなかっただろう。
起こり得たかもしれない未来に冷や汗を流しつつ、彼はさらに土御門から距離を取る。


が、土御門は当麻を逃がすまいと俊足で以て一気に肉薄した。



当麻「――――!?」

土御門「……」ブンッ!



瞬きする間も無く迫り来る、金髪サングラスの男。その脇から、居合のようにして握り拳が打ち出される。
距離は目と鼻の先。避けるにはあまりにも時間が足りない。
だが対処しなければ、その拳は自身の鳩尾へと吸い込まれる。


避けることはできない。ならば、受けるしかない。

436 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2016/01/18(月) 00:15:09.36 ID:BaO6L2rk0

ガシィッ!



土御門「!」

上条「……!」



当麻は迫り来る拳を手の平でうけ、しっかりと掴んだ。
直ぐさま土御門のもう一方の拳が同じようにして突き出されるが、それも辛うじて受け止める。



上条「ぐぐっ……!」

土御門「くっ……!」




二人の両腕、すなわち四本の腕が橋を作る。
ここからは純粋な力くらべ。互いに相手の拳を押し返そうと、さらに力を込める。

437 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2016/01/18(月) 00:16:16.32 ID:BaO6L2rk0

しかし力は拮抗し続け、一向に状況は変わらない。2人の腕力はほぼ同等だったのだ。
幾多の修羅場を迎え、その度に乗り越えることで鍛え上げられた肉体。
境遇は違えど、彼らは紛うこと無き歴戦の戦士である。
その力に容易く優劣をつけることなどできはしない。


単純な力勝負では、決着はつきそうにない。
では、『力』以外で勝敗を分けるものといえば何があるだろうか?
次点に来るものとして考えられるのは、力を扱う『技術』だろう。



上条「おわっ!?」



突然、当麻は勢い良く前へとつんのめった。
原因は無論、土御門にある。彼は力比べを早々に切り上げ、『その腕を引いた』のだ。
相手を押し返すようにして力をかけていたところに、急にその支えを奪われてしまえば、
バランスを崩してしまうのは当たり前の話である。


当麻は不意を突かれ、完全に自身の足元を見る体勢となる。
そして見下ろした視線の先には、土御門の膝が自身の顔面へと向かってくるのが見えた。

438 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2016/01/18(月) 00:17:38.79 ID:BaO6L2rk0

ガスッ!



何かが勢いよく擦れるような、鈍く乾いた音が響く。当麻の前額から鮮血が飛び散った。
土御門の膝が届く前に首を捻り、辛うじて直撃を回避したのだ。
咄嗟のことで躱しきれなかったようだが、頭を粉砕されることに比べれば遥かに良い方である。



上条「う、おおおぉぉぉぉおぉぉおお!!!」

土御門「!?」



当麻は咆哮を上げ、前のめりの体勢のまま土御門へと突進した。
己の重心を思いっきり前へと移し、全体重を相手にかける。


こうなると、次にバランスを崩すのは土御門の方である。
相手をこちら側に引きつけようと、体の重心を後ろに下げていたためだ。
このままでは無様に倒れ込み、当麻にマウントを取られてしまうだろう。
そうなったら最後、再び起き上がることは二度と叶うまい。

439 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2016/01/18(月) 00:19:06.16 ID:BaO6L2rk0

土御門「甘いッ!」

上条「うっ!?」



しかしそこは熟練の格闘家である土御門。彼の頭の中では、瞬時に次に移るべき行動を弾き出していた。
彼は相手の勢いに逆らうことなく『相手の下に滑り込むようにして、わざと自ら倒れ込んだ』。
2人の位置関係は土御門が下に、当麻がその上に覆い被さる形となる。


一見、相手の突進に対して早々に屈したように見える。その認識はある意味で正しく、そして間違っている。
だが彼は『屈した訳ではない』。この動作は次の動作へ繋がる布石。
彼は仰向けに姿勢のまま、当麻の腹部を思いっきり蹴り上げた。



ドスッ!



上条「がっ――――!?」



体の中からミシミシと、背骨の悲鳴を上げる音が聞こえる。
腹部が圧迫され、胃の中の咀嚼物と肺の中の空気が逆流しそうになる。
喉の奥から迫り上がってくる強烈な不快感に、全身から嫌な汗が噴き出した。


440 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2016/01/18(月) 00:20:27.04 ID:BaO6L2rk0

だが、それを意識する暇もなく彼の視界が反転する。
視界には土御門の顔があったはずが、いつの間にか満天の星空へと様変わりしていた。
それに遅れて全身を包む浮遊感。その時初めて、自身が投げ飛ばされたことに気づく。



上条(やばっ――――!?)



このままでは背中から地面に叩きつけられることに気づき、慌てて体を捻って姿勢を立て直す。
俯せの姿勢で地面に手を突き、落下の衝撃を和らげる。衝撃が腕の隅々を伝播した。


その痛みを噛みしめながら当麻は、反撃を避けるべく急いで起き上がる。
多少のふらつきはあるが、問題は無い。まだ戦うことはできる。
見やると、土御門も同じく起き上がる所であった。ただし、当麻のようにふらついてはいないが。



禁書「とうま!? だいじょうぶ!?」

上条「俺は大丈夫だ、インデックス」



不安な顔持ちで声を上げるインデックスを安心させようと、何でもない風を装って答える。

441 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2016/01/18(月) 00:21:50.54 ID:BaO6L2rk0

しかし実際の所、腹部を蹴られた痛みは容易には看過できない。
土御門が手加減してくれたおかげか、口から血を吐くような重篤ものではなかったが、
それを差し引いたとしても身体へのダメージはかなり大きいようだ。
蹴られたことによる鈍痛は勿論のこと、喉の奥から沸き上がってくる嘔吐特有の不快感。
それらの襲い来る感触が、当麻の心身をじくじくを蝕み始めていた。



土御門「カミやん、諦めろ。 今ので判っただろう? お前の攻撃は単調で隙がありすぎる」

土御門「そんな力任せの攻撃じゃあ、いつまで経っても俺には当てられないぜい?」

上条「まだだ……これ位のことで、諦めて、たまるかよっ!」

土御門「いい加減にしろ。 本当なら、最初の段階で投げ飛ばしたりせずに腕をへし折っても良かったんだぞ?」

土御門「第一に、だ。 そんなフラフラの状態で、まともに俺と戦うことができるのか?」

上条「ぐっ……」



土御門の最後の一言に、当麻は苦い顔をした。
目の前の天の邪鬼の発言は的を射ている。反論の余地すら無い。
腹部に一撃を貰い、体力を大きく削られた今となっては、当麻が勝利する可能性は無きに等しい。

442 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2016/01/18(月) 00:23:20.24 ID:BaO6L2rk0

元々万全の状態でやり合ったとしても、勝率など高が知れているのだ。
幾たびの戦いの最中、上条当麻が身につけた『攻撃の予兆を感じ取る』という戦いの才能。
それを以てしても、土御門がこれまで築き上げてきた戦闘技術には遥かに及ばないのだから。


しかしそれ以上に、彼が持つ『もう一つ強味』が生かせないことの方が致命的である。


上条当麻の『話術』。
彼から紡ぎ出される言霊は、ある時には相手の『心の隙間』を突き崩して動揺を誘い、
あるときには迷いの直中にいる者の背中を後押しし、奮い立たせる。
彼は遥かに強大な敵との戦いを、言葉の力を借りて有利に進めてきたのだ。
自覚していたわけではない。だが例え無自覚でも、その力は紛れもない上条当麻が持つ力である。


しかしそれが通用するのは、相手が『心の隙間』を持っている時、
そして何より『良心の叱責』を持っている時だけである。
自身の考えに確固たるものを持っている者には当麻の言葉は届かないし、
彼の言葉が『道徳心』から出るものである以上、良識が欠如している者にも同様に効果はないのだ。


そして今回の例に当て嵌めるならば、土御門は前者の人間である。
土御門は心に迷いを抱えているわけではない。明確な意志を持ってこの場に立っている人間だ。
彼の意志は、言葉だけで容易く揺り動かせるほど甘くはない。

443 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2016/01/18(月) 00:24:12.19 ID:BaO6L2rk0

上条(不味いな……このままじゃ、いつまで経っても土御門をフランから引き離せない)

上条(腕っ節は同じくらいだけど、経験は土御門の方が上……俺の大振りな攻撃じゃあ、直ぐに見切られちまう)

上条(まともにやり合っても勝ち目は薄い。 だけど、それ以外に方法がない)

上条(何とかフランのことを諦めてくれるように説得できれば良いんだけど、策は浮かばねぇし……)



フランドールを助けるには、どうにかして土御門を説得し、止めなければならない。
しかし、それを成すための確かな言葉を、当麻は未だに探し出せていなかった。
無情にも過ぎ去っていく時間。このままでは何も事態は好転しない。


それに、この場に居ないレミリアやパチュリーのことも気掛かりだ。
レミリアはこの事件の首謀者。何を思ってこのようなことをしでかしたのかは知らないが、
目的があって行動している以上、それを邪魔する者に対しては容赦しないだろう。
そしてパチュリーも『吸血鬼退治』に駆り出されている以上、相当な腕を持つ魔術師のはず。
『最大主教』の命もある。戦いになった際は全力で事に当たるだろう。


そう考えると彼等二人がいる場所が、自分が今いる場所よりも遥かに殺伐しているだろうことは容易に想像出来る。
戦闘、しかも純粋な殺し合いに発展していてもおかしくはない。
辿り着いた時には既に、どちらかが死んでいても何ら不自然ではないのだ。

444 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2016/01/18(月) 00:25:00.18 ID:BaO6L2rk0

そうなる前に、何としてでも止めに入らなければならない。
しかしそのためには、この状況を打開しなければならないのだが……



禁書「あっ……!」

上条「っ!? どうした、インデックス――――」

土御門「む……?」



思考が無間に陥りかけた時、インデックスが突然、何かに気づいたように声を上げる。
彼女の視線は土御門の背後に注がれていた。


釣られて同じように自身も眼を向けると、そこには。
俯きながらも立ち上がった、フランドールの姿があった。

445 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2016/01/18(月) 00:33:00.66 ID:BaO6L2rk0
今日はここまで


原作では上条さんは魔神との戦いの経験で土御門よりも強くなっている気がしますが、
このSSでは上条さんと土御門の力関係は『御使堕し』の時から若干差が縮んだ程度になっています
あまりインフレし過ぎると色々と前提が崩れてしまいそうなのでこのような形にしました


質問・感想があればどうぞ
446 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/18(月) 01:23:59.69 ID:RAKMtesDO
乙です
447 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/18(月) 05:51:24.97 ID:z62758j70
乙!
さぁて起き上がりましたフランちゃんですが嫌な予感しかしません!どうなる次回!?
448 : ◆A0cfz0tVgA [saga]:2016/02/01(月) 00:43:06.59 ID:MVucWqbl0
これから投下を開始します
449 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2016/02/01(月) 00:44:10.41 ID:MVucWqbl0

フラン「――――」



その姿は、お世辞にも『安心』と言えるものではなかった。


彼女は体を前後にゆらゆらと揺らしており、その様子は少し小突けば簡単に倒れるのではないかと思えるほど。
顔を伏せているため、その表情を窺い知ることは出来ない。
それはまるで陽炎のよう。瞬きすれば消え去ってしまいそうな、そんな不安に駆られるものだった。



上条(眼が醒めた……のか? いや、まだ意識が曖昧なのか……)



フランドールの傍に駆け寄りたい衝動に駆られるが、すんでの所で押し留める。
彼女と自身との間には土御門元春がいる。それは、二人の間に難攻不落の城壁があることと変わらない。
それを乗り越えることができなければ、視線の先に立つ少女には触れることすらできないだろう。

450 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2016/02/01(月) 00:44:59.21 ID:MVucWqbl0

上条(今すぐ様子を見に行きたいけど、先ずは土御門を何とかしないと……!)



故に考える。如何にして間に立つ男を打倒するかを。
例えそれが無理難題だとわかっていても、思考を止める理由にはならない。



土御門(馬鹿な……もう目覚めたのか!?)



当麻が思案している一方で、土御門はフランドールの姿を見て戦慄する。
『フランドールが眼を覚ました』。ただそれだけの事実が、彼にとっては信じられないことだった。



土御門(あの麻酔は少なくとも丸3日は効果があるはずだぞ!?)

土御門(まさか、吸血鬼化の影響か? それで薬物に耐性が……!?)



フランドールに撃ち込んだ麻酔は、並みの人間であれば1日そこらでは眼を覚まさない強力なもの。
薬品の分量を間違えれば、『眠るように死ぬ』という言葉をそのまま実現できてしまうほどの代物だ。

451 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2016/02/01(月) 00:46:24.28 ID:MVucWqbl0

上条(今すぐ様子を見に行きたいけど、先ずは土御門を何とかしないと……!)



勿論、そのような薬品を使っていることには理由がある。
もしも拉致している途中でフランドールが眼を覚まし、その能力を使われたとしたら。
その時点で、彼のこれまで練ってきた計画が破綻しまう可能性が高いからだ。


フランドールの捕縛に失敗した場合、レミリアに交渉する際の重要なカードを失うことになる。
『人質を使って相手を脅迫する』という、外道ながらも有効的な策を使うことができなくなる。
そうなれば、今回の任務の難度は格段に跳ね上がるだろう。
いくら多様な魔術を行使し、多彩な策を弄することができるパチュリー・ノーレッジであっても、
『もどき』とはいえ吸血鬼を相手にして楽に事を進めることはできないはずである。


だからこそ彼は、任務を確実に遂行するために強力な麻酔薬を持ち出したのだ。


にも拘わらず、フランドールはものの10分もしない内に覚醒しかけている。それは何故か。
その理由は単純。『人の身であれば3日は眼を覚まさない』のであれば、『人の身でなければ早期に眼を覚ますことができる』。
即ち、『フランドールの肉体は普通の人のそれとは違う』ということであり、
『フランドールの肉体は吸血鬼化している可能性がある』ということに他ならない。
吸血鬼の肉体であれば、あるいは薬物の効力を打ち消すことができるのかもしれない。

452 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2016/02/01(月) 00:47:50.74 ID:MVucWqbl0

土御門(ちっ、また効くかはわからないが……もう一度――――)



土御門は内心舌打ちしつつも、再び麻酔銃を構える。


例え麻酔の効果が薄かったとしても、『一時的にでも眠った』ことは紛れもない事実。
フランドールが起き上がったことは計算外だったが、まだ修正できる程度の問題だ。


眼を覚ましてしまうのであれば、その度に麻酔を打ち込めばいい。
1発では足りないのであれば、2発、3発と打ち込めばいい。
何と言うことはない、ただそれだけのことである。



上条「おい、ま――――」

453 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2016/02/01(月) 00:49:07.68 ID:MVucWqbl0

パシュンッ! パシュンッ! パシュンッ!



当麻の静止を最後まで聞くことなく、土御門は麻酔銃をフランドールへと向け、その引き金を引いた。
軽い音が三回続き、それと同じ数だけ銃口から毒牙が飛び出す。


たった一発だけでも人を眠り姫にしてしまう麻酔弾を3発。
それだけの数を受ければ、常人であれば間違いなく麻酔の過剰摂取で危篤状態へと陥るだろう。
危篤になるだけならまだ良い。最悪ショック症状を起こして死んでしまうかもしれない。


土御門元春、上条当麻、そしてインデックス。
3人が3人、フランドールが凶弾によって倒れる未来を想像して――――










パンッ!



不意に、気の抜けたような音が響いた。

454 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2016/02/01(月) 00:50:42.53 ID:MVucWqbl0

上条「――――え?」



当麻は土御門の凶行を止めようとした姿勢のまま、その場に硬直する。
そしてあっけに取られた顔のままそれを眺めていた。


彼の瞳に映るのは2人の姿。
相も変わらず、顔を伏せたまま佇んでいるフランドール。
そして、彼女に拳銃を向けたまま立ち尽くしている土御門。
何の変哲もない、それだけの光景。おかしい所は何も見あたらない。
だが当麻はそれを見て、強烈な違和感を感じ取っている。


――――フランドールは土御門の銃弾をもろに受けた。
彼女にそれを回避する素振りはなかったし、第一あれは回避できないものだ。
ならば何故、彼女は未だに二本の足で直立することができているのだろうか?


その問題は、次の瞬間氷解することになる。


455 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2016/02/01(月) 00:52:12.13 ID:MVucWqbl0

土御門「チッ、遅かったか!? こいつ能力を……!?」

上条「……!」



土御門の舌打ちと、それに続く危機感を帯びた声。
その一言、二言で、当麻は今起きた現象の全容を理解した。


何故フランドールは銃弾を受けて立っていられるのか。その答えはフランドール自身の能力にある。
自身に触れた物質の悉くを破壊する超能力『物質崩壊』。
おそらく彼女は、その能力を使って銃弾を自身に着弾した先から破壊したのだろう。



フラン「……」

上条「……フラン?」



当麻は目の前の少女に恐る恐る問いかける。
しかし、その答えが返ってくることはやはり無かった。


彼女の足が一歩、前へと踏み出される。

456 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2016/02/01(月) 00:54:16.78 ID:MVucWqbl0

ビシィッ!



その一歩で、鋭い音と共に石畳に大きな罅が走った。


だが、それだけでは済まない。果たしてその亀裂は何処まで走ったというのか。
亀裂は地中深くにある水道管までをも破断し、それによって隙間から地上へと向かって勢いよく水が噴き出す。



ズズンッ!



土御門「うっ……!?」

上条「う、わ……!」

禁書「きゃっ……」



そして止めとばかりに、一帯に激震が走る。
足下を見やると、所々地面が崩れて穴が開き始めていた。

457 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2016/02/01(月) 00:55:57.08 ID:MVucWqbl0

学園都市の敷地面積は、外部からの供給無しに都市機能を持続するにはあまりにも狭い。
その問題を解決するために、学園の地下には何層にも渡って地下都市が広がっている。
地下都市を支える壁や柱は、日本国を度々襲う地震に耐えるために最高の耐震素材と耐震技術を駆使して生み出されたものだ。
例え壮絶な大地震が起き、関東一円が壊滅状態になったとしても、学園都市の地下空間は何事もなくそこに在り続けるだろう。


しかし、如何に堅牢な建造物でもフランドールの能力の前には全くの無力。
どんなに強固な構造にした所で、彼女の力にしてみれば砂上の楼閣であることは変わらない。
故にその力に晒された地下空間の壁面は、砂の如く崩れ去るのみ。
そして地下が崩れ去れば、地上も同様に崩落するのは当然の帰結である。



上条「――――ッ!」



当麻は崩れ始める足場の中で何とかバランスを保つ。


――――このままここにいるのは危険だ。
あと少しすれば地面は陥没し、この場あるもの全てが奈落に飲まれるだろう。

458 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2016/02/01(月) 00:57:25.40 ID:MVucWqbl0

禁書「あぅ……」

上条「!?」



亀裂が走る音に紛れて耳に届いてくる声。
振り向くとそこには、その場にへたり込んで身動きが取れなくなっているインデックスの姿。
そして、彼女の目の前には既に崩れ始めている地面が――――



上条「インデックス!」



ドッガァッッッ!!!



それを見るや否や、当麻は叫び声と共に弾けるようにして駆けだした。
同時に、彼の周囲が轟音を響かせながら堰を切ったように崩落を始める。


徐々に不安定になる足下。
落とし穴を全力で踏み抜いた時のような、地に足がつかなかった時独特の奇妙な感覚を足に感じながらも、
目の前に広がる罅の入った地の中から、足場となり得る安定したものを持ち前の観察眼で見極める。
その姿は端から見れば、地に落ち行く瓦礫を足場に空を歩いているように見えるだろう。


そんな、ただ一度でも成功し難い神業を幾重にもこなしながら、当麻はインデックスの元へと辿り着く。

459 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2016/02/01(月) 00:58:44.22 ID:MVucWqbl0

上条(間に合えッ――――!!!)



インデックスの足場が崩れ落ちるその刹那。
当麻は彼女の腕を掴み取り、渾身の力で引き上げた。



禁書「わっ……」



間の抜けた声を漏らしながら、インデックスは空に放り上げられる。
そして幾許かの時間を滞空した後、彼女の体は傍の花壇へと着地。
花弁が周囲を舞い上がり、その芳香が鼻をついた。

460 : ◆A0cfz0tVgA [sage saga]:2016/02/01(月) 00:59:31.10 ID:MVucWqbl0
今日はここまで
質問・感想があればどうぞ
461 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/01(月) 07:03:14.86 ID:eLCiAChZ0

落ちる足場!アクションゲームの定番だね!(錯乱)
462 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/01(月) 10:58:04.55 ID:rvCEhlImo
乙です
463 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/01(月) 21:29:17.48 ID:C56gsj1z0


??「花を潰した?どこの誰の仕業かしら?」
464 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/02(火) 04:20:00.24 ID:R2/k6pSE0
フランの能力で学園都市がヤバい
465 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/03(水) 00:48:04.29 ID:I2HiB7K90
芳香「お肌はケアしてる」
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