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海未「理由なき勇気」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/16(火) 02:41:58.75 ID:6Sa2YL6m0
私の好きな人、ですか?

もちろん、私を産み育ててくださった両親や、数年ほど会っていないですが結婚して家を出た姉、それから、大切な友人……μ'sのみんな。

――挙げればキリがありませんよ。

はぁ、恋仲になりたい人、ですか。

そう聞かれれば、やはりそれは穂乃果になるんですかね。

幼い頃からずっとそばにいてくれて、私たちを引っ張ってくれて、まるで太陽みたいに輝いている――そんな、高坂穂乃果その人になります。

先にはっきりと言っておきますが、私は決して同性愛者というわけじゃありませんよ。
ただ、たまたま好きになったのが女の子だっただけです。

――おかしいですか?

私は、そうは思いません。

だって、人が人を好きになるのに理由が必要ないように、女性が女性を好きになるのにも理由なんて要りません。

勿論、男性についても同じだと思いますよ。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1434390108
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昔、スリに間違えられた @ 2024/03/16(土) 17:01:20.79 ID:TU1bmFpu0
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さくらみこ「インターネッツのディストピアで」星街すいせい「ウィキペディアね」 @ 2024/03/16(土) 15:57:39.74 ID:7uCG76pMo
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今日は月が……❤ @ 2024/03/14(木) 18:25:34.96 ID:FFqOb4Jf0
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どうも、僕は「げじまゆ」をヤリ捨てた好色一代男うーきちと言います!114514!! @ 2024/03/14(木) 01:23:38.34 ID:ElVKCO5V0
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アサギ・とがめ・新生活! @ 2024/03/13(水) 21:44:42.36 ID:wQLQUVs10
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そろそろ春だねー! @ 2024/03/12(火) 21:53:17.79 ID:BH6nSGCdo
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part5 @ 2024/03/12(火) 16:37:46.33 ID:kMZQc8+v0
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2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/16(火) 02:43:08.76 ID:6Sa2YL6m0
あぁ、でも……たまに姉が読んでいたアレはいただけないですね。ボーイズラブ、と言うのですか?
男性同士が、その――破廉恥な格好で破廉恥な行為を――あまり思い出したくはありませんね。

ただ――私は、決して同性愛を否定するわけではありません。
同性愛者のことも、否定しません。

さらに言うならば、究極的にはつまり、異種族間の愛も否定しません。

動物が人間に恋をするのも、その逆も。
違う種族同士の恋愛だって、そこに真剣な愛があれば良いのです。

理由なんて、そこには要らないのです。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/16(火) 02:44:38.89 ID:6Sa2YL6m0
……それにしても、なぜか私の周りには同性のアベック(後日穂乃果に聞いたところによると、アベックという表現はもはや古いそうです)が多いように思います。

私と同じく、同性愛者でこそないけれど、たまたま女の子を好きになっただけ、と言う人も居るでしょうけれど。

それは例えば、穂乃果と希であったり(誠に残念な話ではあるけれど、私の愛する高坂穂乃果には同性の素敵な恋人がいるのだ)、或いは花陽とA-RISEの綺羅ツバサさんであったり、また

或いは――ちょっと特殊かも知れないけれど、ニコと真姫であったり。

ニコと真姫については、説明するのが大変難しいので、「世界を股にかけた大恋愛」とだけ。
――それにしても、あれは不思議な体験でしたね。私たちは一年に夏を二度も経験したのですから。

……って、当事者でもないのに語るのは野暮なことですね。
その辺りの話は、ニコか真姫に任せるということで、ここはどうか。
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/16(火) 02:46:39.32 ID:6Sa2YL6m0
とにかく、女性同士のアベックが身の回りに多いということですが、実は少し思い当たる節があります。

ルーツ、と言えるかどうかはわからないので話半分程度に聞き流していただけると。

あれは……十年くらい前でしょうか。
珍しく私一人でことりの家に遊びに行く機会がありまして、そのときにことりママ――我らがオトノキの理事長の部屋に一人で勝手に入っちゃったんですよ。

やることがまるで穂乃果みたいで、なるほど、思い返してみると当時の私はそれなりに、歳相応な振る舞いをしていたみたいですね。

ええっと……イメージにないかもしれませんが、私はこれでも昔、よくやんちゃをしてたんですよ?

それはさておいて。
ことりママの部屋には綺麗な赤髪の女性の写真があったんです。
ゆるくウェーブがかかった艶のある髪に、自信をたたえた目。口元には色気を感じるホクロがあったりして。
……とまぁ、その時にぼうっと見とれてしまったんですよ。

やはりその辺りがルーツなのかなぁ、なんて。
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/16(火) 02:48:38.35 ID:6Sa2YL6m0
……話が随分と横道に逸れましたが、実際、穂乃果が希と交際をすることになったあの日(日付で表記すると混乱を招きそうですが、一度目の7月14日だったと記憶しています)、ことりは誰よりも喜び、そして誰よりも妬んでいました。

穂乃果の幸せを誰よりも考えて動く、あのことりが、初めて穂乃果の幸せを素直に喜んでいなかったのです。

それ程までに穂乃果のことを愛していたということの証明に他なりません。
故に、板挟みです。
ダブルバインドです。

穂乃果は希と幸せになる。
幸せを願ってはいたけれど、その隣が自分ではない。
……これがどれほど辛いことなのかは、想像に難くありません。

なにせ私も――――。
……はぁ。

こんな感情、いっそ知らなければよかったんですよね、なんて。
6 : ◆n0J2IfBFxY [sage]:2015/06/16(火) 03:02:00.79 ID:6Sa2YL6m0
ラブライブ板で落ちたのでこちらで立て直しました。今度は速報なので落ちないと思います…ひとまずここまで
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/16(火) 06:52:30.59 ID:n+bUpz7Do
アベックてお前…
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/16(火) 07:10:44.19 ID:ImqlH7Qto
支援
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/16(火) 18:56:36.20 ID:OrqNVp42O
C
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/16(火) 20:13:26.53 ID:ZGEiuFECo
前作読ませて頂いてました
久しぶりに見られて嬉しいです
乙、んだば
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/17(水) 07:22:45.42 ID:JM0YDDJco
C
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/17(水) 16:46:10.94 ID:KKDSqYpd0
私はふと、今日が何月何日であるかを思い出しました。
9月1日。二学期が明日から始まるじゃないですか!

――どうせ、穂乃果のことです。
今頃、宿題が終わらないだのなんだのというメールを作成中に決まっています!

そうなると、さて。
私も穂乃果のうちへ出来上がった課題を持って向かう必要がありそうですね。

しかし――嗚呼、人の世とは無常なもので。
わずかに違和感を感じ、そしてその違和感が脂汗として噴き出すのにそう時間はかかりませんでした。



「しまった――。 私が宿題をやり忘れてる」
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/17(水) 16:49:14.65 ID:KKDSqYpd0
そうですよね。
夏休み、二周したんですよね。

一周目で宿題を終わらせて満足していましたが――あの時、七夕の翌日まで時が戻り、身につけていたもの以外は時間経過による変化も元に戻りました。

……つまり、宿題は真っ白なままなのです。


今私の顔を鏡で見ると、さぞや青ざめていることでしょう。

――これが本当の海色少女、なんて。

……笑い事でもないので、恥を忍んでことりに手伝ってもらうことにしましょう。さすがに私といえども今からでは間に合わないでしょうから。
何がさすがなのかはわかりませんけれど。

だから穂乃果……ごめんなさい!
私は私の宿題を終わらせなきゃいけませんから、穂乃果だけで頑張って下さい。
――あなたならきっと、大丈夫ですよね?

なんだか余計に不安になりながら、私はため息をひとつつきました。
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/18(木) 09:43:28.26 ID:NwWjf+Ge0
- - - ◆ - - - ◆ - - - ◆ - - -

宿題の山をとりあえず、思いつく限りに机に広げてみる。

――うわ、思ったより量がありますね。この量をもう一度やる、となると、モチベーションも上がりませんし、何より腕を痛めそうです。
……せめてもの救いは、難しい問題も一度経験済みである、というくらいですか。
それも、解き方を覚えていなければまた一からやり直しになるのでしょうが。

はて、穂乃果は大丈夫なんでしょうか。

宿題の存在を今日まで完全に忘れてしまっているのでしょうか?

私が宿題の存在に気付いたのが遅くなったのは、毎年夏休みが終わる一週間前にはあるはずの連絡がなかったせい、とも言えるのだけれど。

それではまるで、穂乃果に責任転嫁をしているようで罪悪感が込み上げてきますし、やはり己の不注意によるところが大きいのは紛れもない事実なのです。まったく、情けない。
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/18(木) 11:01:27.38 ID:4ub7xw330
……取り敢えずは、ことりに電話をして、手伝ってもらうように頼んでみないと。

携帯電話を取り出すと、慣れないタッチパネルを操作し、アドレス帳から「南ことり」の文字を探す。

ことりに設定して貰った可愛らしいアイコン写真を見てくすりと笑いながら、発信ボタンを押しました。

プルルル……プルルル……と二回ほどコール音が鳴り、その後愛くるしい甘い声が耳に響きます。

『あ、もしもし、海未ちゃん? どうしたの、なにかあった?』

ことりの声には、人を安心させる作用でもあるのかもしれない。もしかして麻薬みたいな……?
なんて馬鹿げたことを考えながら、

「あぁ、ことり。実はですね……」

と、事情を説明します。
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/18(木) 11:04:16.98 ID:N9nurrJX0
本当は恥ずかしくて、宿題がまだ終わっていないから手伝ってほしい、なんて誰にも頼めないでしょう。

ですが、ことりになら。
遠慮せずに言えるんです。

不思議なもので、どれだけ仲良くなっても、こういうことは穂乃果やメンバーのみんなには頼めない。けれど、ことりにだけならば頼んでもいいような気がするのです。

まぁただ単に、穂乃果には頼む余裕がないだけ、かもしれないですけれどね――くすくす♡

『海未ちゃんが宿題を忘れるなんて、珍しいねぇ。んー、手伝ってあげたいんだけど、ことり、これからお母さんとお出かけなんだぁ。だから、ちょっと手伝えないかも……ごめんね、海未ちゃん』

ことりからの返事は、少々私をからかっているようなものでした。
ことりは、昔からそうです。穂乃果と三人でいるときには決して私の事をからかわないくせに、二人きりの時や電話で話しているときに限って、いたずらっ子のようになるんです。
困ったものですが、このくらいの方が幼馴染って感じがしていいんじゃないでしょうか。
私はことりのそういうところ、結構好きです。

――なんだか、恥ずかしくなってきました。
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/19(金) 21:44:40.37 ID:HQgXqGP5o
ことうみ?
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/21(日) 21:47:02.54 ID:X6jlPkwPo
紫煙
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/22(月) 11:33:37.98 ID:Z0rmnBYv0
「やめてくださいよ、ことり……私にも、ついうっかりとものを忘れてしまうことくらいあります。
今まで宿題は忘れたことないんですけど……。
手伝えないのならいいんです、どうせ私の不注意が原因なんですから! 他に頼れそうな人は……絵里?」

……いえ、しかし絵里に迷惑をかけるなんて、なかなか。
ことりだからかけられる迷惑なのであって、絵里にはやっぱりそんなことは簡単に頼めないのです。

『絵里ちゃんは、今日は凛ちゃんと一緒に水族館に行ってるんじゃなかったかなぁ。最近あの二人、ますます仲良しさんだよねぇ。
やっぱり、絵里ちゃんって凛ちゃんのことが大事なんだろうなぁ、って。
うふふ、可愛いなぁ、絵里ちゃんも凛ちゃんも♡』

ペンギンの散歩風景を見て、「ハラショー……」と呟く絵里の姿が脳裏に浮かぶ。微笑ましくなって頬が緩むのが自分でもわかります。
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/22(月) 11:36:41.29 ID:Z0rmnBYv0
絵里は以前、穂乃果に恋をしていました。
穂乃果と希が恋仲になり、落ち込んでいる絵里に発破をかけたのは凛で。
――彼女は以前から、絵里のことを愛していたのです。
そんな想いに、絵里はだんだんと惹かれていっているのでしょうね。

最近は、失恋した当初よりも笑顔が増えたように思います。
まあ、体感としては三ヶ月と少々経っていますし、いつまでも引きずるわけにはいきませんからね。

――もちろん、私たちも。

それから二、三言葉を交わし、ことりとの通話を終えた私は、再び宿題に向き合う。

もう半ば諦めかかっているけれど、だからと言って何もしないのは間違っています。
それは、宿題についても――恋に、ついても。

一度目の夏が終わって、二度目の夏が始まれば、私たちの失恋なんてなかったことになっているかもしれない。そんな淡い期待も、しかし失恋の記憶がある時点で儚く散りました。記憶が持ち越されているのならば、それはつまり穂乃果と希の関係だって変わりませんから。

だからって、何もしないのは間違っているんですよ。
諦めずに振り向かせるのが正解かと言われれば、それも違うのですが。
例えば、新たな恋を探す、とか。

……だとすれば、それは――。





私は、ずるい女なのでしょうか。

たった今さっき、つい2分ほど前に通話をしていた彼女のことを、私は穂乃果と同じくらいに愛しているのだから。
21 : ◆n0J2IfBFxY [sage]:2015/06/22(月) 11:37:25.13 ID:Z0rmnBYv0
キリがいいので一旦ここまで。
続きは夜頃?
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/22(月) 19:29:28.35 ID:oi0Nd/S/O
おつ
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/22(月) 23:12:34.57 ID:7MTiaVJZo
面白い
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/23(火) 10:16:28.36 ID:qNJq352Q0
- - - ◆ - - - ◆ - - - ◆ - - -


……はぁ。

溜息を一つつくと、私は時計を見て顔を顰めました。

――ああ、時計さん。許してくださいよ!

なんて――これはことりの歌の歌詞ですけれど。
実際、逢引なんていうロマンチックなものなんかじゃなく、私はただノートにシャーペンを走らせているだけなのです。
あまりにも時間がないため、現実逃避もしたくなりますよ。

だからこれは、そう。ちょっとした休憩です!

ただの休憩がてら、一番の幼馴染に声をかけてみる、ただそれだけです。他意はないのです。

――なんで自分に言い訳をしているのか、私にはわかりませんけれど。
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/23(火) 10:17:37.46 ID:qNJq352Q0
プルルル……プルルル……と、たっぷりと12回もコール音が流れて、やっぱり宿題のことを忘れて寝ているんじゃないかと不安になった頃、愛しい穂乃果の声がしました。

「……もしもし、穂乃果?
ひょっとして寝てました?」

『ん〜……寝てました。清々しい朝っ! ……じゃない!? もう夕方だぁ……!
もう、ユキちゃんなんで起こしてくんなかったの〜っ!』

……雪穂ちゃんは悪くないのでは? なんて、穂乃果に言っても通用しませんけどね。

やっぱり、穂乃果と雪穂ちゃんは相変わらず、なんですね。クスクス――♡
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/23(火) 10:19:06.17 ID:qNJq352Q0
「穂乃果はまたそうやってすぐに雪穂を頼る……だからいつまでたっても一人じゃ起きられないんですよ?
――って、そうです、宿題!
穂乃果、今日は夏休み最後の日ですよ!
宿題、今からでもできるだけやってしまわなきゃ。私はあいにく今年は手伝えませんが――」

ここまで言ったところで、『あぁあーーーーっ!!』と、穂乃果がお得意の叫び声をあげます。

「どうかしましたか? まさか、宿題の冊子をなくしてしまったとか――それじゃあ手のつけようがありませんよ!」

『そうだよ、宿題だよっ! 穂乃果すっかり忘れてた!』

「ええ、ですから今からできる分だけでもやって――」

言いかけた刹那、それを遮るように穂乃果がとんでもないことを言い出しました。

『海未ちゃんに宿題返すの、すっかり忘れてた!
ごめんごめん、今から海未ちゃん家に持っていくね』
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/23(火) 10:21:25.87 ID:qNJq352Q0
…………え?

あっ! 私、穂乃果に宿題を貸してたんですっけ。でも、貸していたとしても、新品の冊子に戻っているんじゃあ……?

「あ、あの、穂乃果? つかぬ事を伺いますが……」

事態を飲み込めない私は、恐る恐る口を開きます。またしても言い終わらないうちに、穂乃果が一言。

『なぁに、海未ちゃん? 穂乃果の宿題ならとっくに終わってるよ?』

「いえ、そうでなくて――て、終わってる? 穂乃果が? 宿題を?」

あまりにも信じられない穂乃果の発言に、口をあんぐりと開けてしばらく静止してしまいました。

『穂乃果が宿題終わらせてたのがそんなに意外……? ま、まぁ、確かに海未ちゃんとことりちゃんには、毎年お世話になってるけどさ……。
とにかくっ! 今からそっちに行くから、お茶でも用意して待っててよ!
あ、御茶請けなら穂むらのおまんじゅう持って行くから心配いらないよっ!
それじゃ、またあとでっ!』

「ちょ、穂乃――切れてる……。もう、こっちの都合も特に確認しないんですから!」

――尤も、穂乃果が来ること自体は、とっても嬉しいんですけどね。なんて――クスクス♡
28 : ◆n0J2IfBFxY [sage]:2015/06/23(火) 10:22:27.80 ID:qNJq352Q0
朝になってしまった。続きはなるべく早めに投下します。
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/23(火) 21:22:40.30 ID:326Qta8Jo
はい
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/24(水) 12:44:47.36 ID:+k8UUoV30
- - - ◆ - - - ◆ - - - ◆ - - -


「おっじゃまっしまーすっ!」

玄関から元気な声が聞こえて、それから暫く。
園田家は、真姫の家ほどではありませんが、結構広いんですよ。
ですから、玄関から私の部屋までは、ゆうに一分以上はかかってしまいます。

穂乃果がドタドタと走っている音が聞こえてくる。
もう――廊下は走らないで、とあれほど言っているのに。
穂乃果らしいと言えばその通りではありますけれどね。クスクス――♡

――お母様は、もう穂乃果については注意することを諦めたそうです。

「まるであの子を見ているみたいで――まぁいいかな、なんて思うの」なんて、目を細めて言うものだから、私も穂乃果がうちに来る度にお姉様のことを思い出すようになってしまいました。

だから――少し切ない気分になってしまうのです。
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/24(水) 12:47:10.81 ID:+k8UUoV30
「ごっめーん! 海未ちゃん、待った?」

穂乃果はぺろり、と舌を出して自分で自分の頭を小突く。
昔から、こういう可愛い仕草が穂乃果には似合います。勿論、ことりにも。

私にはこういうのは似合わないので、見るたびにずるいなぁ、と思ってしまう。
けれど――。
いえ、今はそんなこと考えている暇はありません。

「全然、待ってなんかいませんよ。ちょうど今お茶を入れたところですから。
――お茶を飲みながら、色々と説明をしてもらいましょうかね。何故穂乃果が宿題のことで泣きついてこなかったか気になりますし」

むしろ私がことりに泣きついたという事実は、できるだけ穂乃果には知られたくないなぁ、なんて思いながら穂乃果に尋ねる。
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/24(水) 12:51:35.17 ID:+k8UUoV30
穂乃果は、「いただきます」と言ってお茶を一口すすり、ちょっと涙目になりながら(きっとお茶が熱かったのでしょう、私は熱いお茶の方が好みなのですが)、

「それはね――これのおかげなんだ!」

と、数冊のノートを鞄から取り出しました。見覚えのあるそれには、しっかりと「園田海未」と書かれています。紛れもなく、私のものです。

「私が宿題のノートを貸していたから、穂乃果はスムーズに宿題を終えることができた、と。なるほど、それはわかりました。
――でも、何でそれを穂乃果が持っているんですか?
ニコが『向こう』に帰る際に、私たちが持っていたもの以外は7月7日現在の状態に戻ったはずで、つまりそのノートは存在すらしない筈なんですよ。それなのに、どうして?」

私が引っかかっていたのは、このことでした。
時間経過による変化が元に戻るならば、夏休みに入ってから宿題ように購入したノートが手元に残るはずがないのです。
おそらく真剣な顔になっていたからでしょう、穂乃果が私の顔を見てぷっと吹き出すと、おかしそうな顔のまま言います。

「海未ちゃんってば、抜けてるなぁ。簡単なことじゃん!
その日、時間が戻る直前に穂乃果がそのノートを手に持ってたんだよ」

「――あ! 確かにそれなら、身につけていたものと同じく、元の状態に戻らないですね……それは盲点でした」
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/24(水) 12:54:46.57 ID:+k8UUoV30
そうか、なるほど私は抜けていましたね。
――と言うことは、さっきまで必死にこなしていた宿題も、もうやる必要性がないわけです。

すでに終わった状態の宿題が手元にあるのだから、それを見返せば復習だって出来ますし……。
ふぅ、気が大分楽になりました。

すっかり安心した私は、穂乃果が持ってきてくれたおまんじゅうに手をつける。

――あぁ、相変わらずおいしいですね、穂むらのおまんじゅうは。
私は昔からこの味が大好きです。大好物は? と問われると間違いなくこのおまんじゅうを挙げるでしょうね。

穂乃果もおまんじゅうを一口齧ると、そのまま話し始める。

「あ、もしかして海未ちゃん、そのことに気づいてなかったんならもう一回宿題やっちゃった?
ごめん、早めに思い出せばよかったんだけど――ほら、穂乃果ってば宿題のことをすっかりさっぱり忘れちゃってて。
海未ちゃんからの電話がなかったら明日から学校だっていうのも忘れてたくらいで……あはは」

「いえ、それが宿題は私もすっかりと忘れていて……さっきそれに気付いて慌ててやっていたところでした。でも完成したものを穂乃果が持っていたおかげで、これ以上はやらなくて済みます。
――それにしても、学校が始まる日を忘れてしまうくらいだらけていた穂乃果が、明後日からの休み明けテストを無事に乗り切れるかが心配ですね」

そう言いながら、穂乃果の方を見ると、案の定。
顔を真っ青にして、口をあんぐり。

「うげぇ、休み明けテストのこと忘れてた……。
ま、まあでも勉強しても結果はそんなに変わらないし……」

「駄目です! 今からせめて要点だけでも復習しますよ! どうせ暇でしょう?
さ、そこに座ってください」

しっかりとテスト対策をとってもらわないと、宿題をした意味がないですからね。

――でも、これは、きっと言い訳で。

私から離れていった穂乃果と少しでも一緒にいたい、少しでも独り占めしたい、なんていうわがままなんですけれど。
それでも、たまにはいいじゃないですか。

私は、少し寂しかったんでしょうね。
穂乃果がどんどん遠くに行ってしまうのが。
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/24(水) 14:54:25.83 ID:hNjvLwBqO
玄関から1分って多分>>1の想像を遥かに超えるデカさだと思うよ
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/24(水) 14:59:15.07 ID:uuvbwdkNO
時速4km換算で67m
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/24(水) 15:51:59.31 ID:F/2wg9tPo
試しの門があるんじゃないの
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/25(木) 11:27:51.89 ID:931vs2Kv0
- - - ◆ - - - ◆ - - - ◆ - - -


「海未ちゃん――穂乃果もう限界かも。
ねぇ、休憩しよ……?」

――私も正直、そろそろ限界です。

一日中集中力がもつわけもなく、先ほどから幾度となく伸びをして誤魔化しているのです。

穂乃果がいなかったら、恐らく作詞でも始めてしまっていたでしょう(私の最近の息抜きは、μ'sの新曲の歌詞を考えることになりつつあります)。

言ってしまえば、穂乃果に私のダラけた姿を見られたくない――その一心で復習を進めているのです。
見栄というか、意地というか、そのような類のものだから。
今頑張っている理由は、それ以上でもそれ以下でもないんです。

――休み明けテストの程度なら、今の段階でもう十分に点が取れるでしょうし。

「駄目ですよ、穂乃果! ここで休憩してしまったらあなたはずっとダラけるでしょう?
もう、今日はうちに泊まっていっていいですから、せめてあと一時間は頑張って下さい!」

「……海未ちゃんの鬼……久しぶりにお泊まりできるのは嬉しいけどさ」

「鬼で結構ですよ。
――さぁ、もう少ししたら夕飯も出来上がるはずですから、それまで頑張りましょう?」
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/25(木) 11:35:24.80 ID:MWqbUtkJ0
この頃は随分と暗くなるのも早くなって、もうすっかりあたりは闇に包まれています。この状況で、こんな可愛い女の子を一人で家に帰すわけにもいきません。

――まぁ、これも言い訳に過ぎないですけれど。

本当は、私が送り届ければいいのでしょう、一人で帰せないなら。それに、ここから穂乃果の家までは、かなり近い――そのくらいの距離なら、きっと送っていくまでもないのだろうとは思います。

けれど、どうにも今日は、穂乃果と離れたくない。

最近は希ちゃん、希ちゃん――と、愛しい恋人の元にすぐに行ってしまいますから、こうしてゆっくり話す機会も少なくなって。

だから、久しぶりに並んで布団に入りたい、なんて血迷ったことも考えてしまうのです。
きっと、秋も近づいてきて、人肌が恋しい季節になったのでしょう。

――シンプルに一言で表すなら、つまり私は。

穂乃果が恋しかっただけ、なんです。

ただ昔のように穂乃果のぬくもりを感じて、穂乃果の甘い香りを感じたかった。それだけなんですよね。
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/30(火) 15:29:42.04 ID:qK3QKngI0
「――ねぇ、海未ちゃん。もう寝ちゃった?」

ささやくような穂乃果の声。
昔からこういうところは全く変わっていませんね。
寝つきは決して悪くない方なのに、私やことりのうちに泊まるときにはどうしても目が冴えてしまうんだそうです。
それって結局、修学旅行のときに眠れないのと心理的には同じなんでしょうけど。

「はい、もう寝ました」

私も、ささやくように答える。
だって、昔から変わっていないのは、私も同じですから。

明日の休み明けテストのための復習も一区切りつき、早めに寝ることにした私たちは、しかしお互いに眠れずにいるのです。そういうところは、なんだか似ているような――。

普段は割と正反対な二人だと思うんですけれどね――クスクス♡
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/30(火) 15:33:14.35 ID:qK3QKngI0
「なんだ、起きてるじゃん。
そういえば海未ちゃん、中学校の頃の修学旅行のときもそんなこと言ってたね。
……海未ちゃんなりの小粋なジョークかなにか?」

「失礼な。ジョークとしては定番なんですから、そういう風に言わないでくださいよ。
……で、なんですか? もしかして眠れない?」

「うん、なんだかそわそわしちゃって……エヘヘ。やっぱり海未ちゃんの隣は落ち着くんだけど落ち着かないっていうか……」

「なんですか、それは。
……私は、穂乃果の隣にいると、穂乃果が隣にいると、やっぱり落ち着きますよ。だって――いえ、なんでもありません」

「なんでもないってなんだよ〜。だって、なぁに? 教えて海未ちゃんっ!」

「絶対教えません」

こうしてヒソヒソと話していると、二人で秘密を作っているみたい、なんて思ってしまうんです。

希にはなんだか申し訳ないですけど……私と穂乃果はお腹の中からの幼馴染なんですから、他の誰にも内緒だっていう秘密の一つや二つ、あってもいいですよね?
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/30(火) 15:35:36.31 ID:qK3QKngI0
そんなことを考えていると、不意に、クイクイ――と、寝巻きの袖を穂乃果に引っ張られる。
何か言いづらいことがある時の、彼女の癖です。

「ねぇ、海未ちゃんさ。前に穂乃果に告白してくれたでしょ? 穂乃果、とっても嬉しかったなぁ。っていうかあの日は本当に何だったのかわからないくらいみんなに告白されちゃって……あはは。
でも――なんで、穂乃果なんだろ。みんな変だよ。絶対変。だって穂乃果だよ?
希ちゃんも、真姫ちゃんも。絵里ちゃんも、ことりちゃんも。それにもちろん――海未ちゃんも。
なんで穂乃果なんだろ。なんで穂乃果だったんだろ?
だって、穂乃果なんてなんの魅力もないし、頭もスタイルもよくないし、適当だし、それに――とにかく、穂乃果って何にもないの。それなのに……なんで?
それが、どうしてもわからなくって……」

ぽつり、ぽつりと。
まるで徐々に雨脚の強まっていくにわか雨のように、穂乃果はそう口にしました。
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/30(火) 15:37:24.04 ID:qK3QKngI0
穂乃果がそんな風に考えているのには、もちろん気づいていました。何年幼馴染をやっていると思っているんですか。産まれる前からですよ?

でも、それは簡単に答えられるものではないのです。応えられるものではないのです。

だって、私にだってわからないから。

気付いたら、心の中に常に穂乃果の姿があって、そしてまたふと気がついたら心の中の穂乃果はどんどんと大きくなって、想いが溢れそうになって。
けれど、溢れさせるわけにはいかない。世間の目が気になるわけじゃあ、もちろんない。そんなものは愛でなんとかなるのですから。

そうじゃないんです。
ずっと見ているからこそ、気づいてたんです。穂乃果が誰を見ていたか、なんて――。

そう。思えばこそ、想えばこそ――想いを口に出せなくなってしまったのです。
でも、今なら言える。そんな気がしたから。

「私は――穂乃果の全部が、好きでした。いえ、語弊がありますね……全部が、好きです。
だからね、穂乃果。もう少し自信を持ってください。穂乃果はみんなから愛される、そんな素敵な人なんですから。
――ほら、あなたが泣いてしまっては、明日の天気が悪くなってしまうでしょう? 何せあなたは太陽なんですから」
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/30(火) 15:39:22.05 ID:qK3QKngI0
そういうと私は、静かに穂乃果を抱きしめる。
もちろん、以前ならばそんなことできなかったでしょう。自分から穂乃果を抱きしめるなんて、なんだかしてはいけないことのようで。

けれど、今は親友として、だから。
穂乃果を包み込むことに躊躇いはありません。

「……穂乃果より、よほど海未ちゃんの方が太陽らしいや」

「……私は"うみ"ですから、所詮は太陽の光を反射しているにすぎないです。太陽……穂乃果みたいなね」

こんなやり取りを、以前もしたように思います。
今とそのときとではかなり意味合いが違うけれど。

「……やっぱり海未ちゃんって、キザだよね。そんなところが、穂乃果は好きだよ。……もちろん、幼馴染としてね」

わかっています。でも、それでも嬉しいのです。だって私も好きですから。
やっぱり、幼馴染として、ね。

波のような想いは、揺れて揺れて。
そんな中出航した私は今、航海の果てにそこに錨を下ろしています。太陽を見続けるのを止めて、空に浮かぶ雲なんかを見たりしちゃって。
それから、空を自由に翔ける鳥に憧れる。

……少しポエミーで恥ずかしいですが、それが私なのです。

「――ありがとう、穂乃果」

「なんのこと? きっとお礼を言わなきゃいけないのは穂乃果の方だよ。
……でも、どういたしまして」

波は静まり、鏡面のように穏やかになりました。そこに移るのはもちろん、太陽と、雲と、それから――。
44 : ◆n0J2IfBFxY [sage]:2015/06/30(火) 15:40:43.75 ID:qK3QKngI0
一旦ここまで。ラブライブ!板ではここで落ちてたはず。
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/30(火) 21:48:09.49 ID:+qMZZz7Ho
おつ
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/06(月) 18:37:32.83 ID:RItDaXWq0
- - - ◆ - - - ◆ - - - ◆ - - -


空が明るい。
もう朝か……そう思い、目を覚ましました。
今日から新学期が始まるので、やはり少し緊張してしまうなぁ、なんて。学校自体には、夏休み中にも練習のために何度となく行っていますが。
クラスメイトをはじめとする、μ's以外の皆さんには本当に久しぶりに会うのです。――体感として、数ヶ月ぶり?
長期休暇明け特有の気怠さに、その緊張感がえい、と蹴りを入れる。

――さて、朝の稽古の時間ですか。
せっかく穂乃果がこの場にいるんだし、剣道に付き合ってもらおうかな。
そうと決まれば、早速――。
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/06(月) 18:38:21.76 ID:RItDaXWq0
「穂乃果、おはようございます。気持ちのいい朝です――あ、カーテン開けてあげますね。太陽の眩しい日差しを浴びて、早く目を覚ましちゃってください。
今日は折角だから、穂乃果と打ち合いたい気分です。ほら、起きて……穂乃果!」

「んん……あとごふん……」

はぁ、結局のところ穂乃果も定番のジョークを言うんじゃないですか。って、穂乃果の場合はこれも冗談じゃないのかも――十分ありえます。

「そんなこと言ってないで、剣道ですよ!
4月にやめて以来、一度も竹刀なんて握っていないでしょう? ほら、私から一本取ったらクレープでも奢りますから」

とたん、跳ね上がるような勢いで、穂乃果が布団を跳ね除ける。
――ああ、なんてゲンキンなんでしょう――クスクスクス♪
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/07(火) 15:28:49.18 ID:LEitlYfzO
はよ
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/13(月) 19:02:11.25 ID:TrE72FCqo
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/16(木) 19:42:06.99 ID:euwrvupuo
あく
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/24(金) 21:10:01.04 ID:oJFjBa7No
25
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/24(金) 23:41:39.07 ID:8JSaDC3m0
- - - ◆ - - - ◆ - - - ◆ - - -


稽古がひと段落ついて、穂乃果と私は面やその他の防具を脱ぐ。夏の暑さが少し残っているから、やっぱりこの時期の剣道ははっきり言ってナシ……だと思うのですが。他の稽古では穂乃果は付いてこられないでしょうし、ね。

「やっぱり海未ちゃんには敵いっこないや。どれだけ隙を見せないようにしたって、そんなのお構いなしに意表を突いてくる――いや、喉元を突いてくるって言うべきかな? ――アハハ♪
これじゃ一本取る前に日が暮れちゃうよ。学校どころじゃないねぇ」

「何言ってるんですか。あれだけ私に肉薄しておいて――危うく取られるところでした。本当にあなたって人は……。
それでブランクが数ヶ月あるんだから――続けていたらどうなっていたものやら」

と、互いに健闘を称え合う。結果、穂乃果が私から一本を取ることはついになかった――けれど、何度も間合いを詰められ、それこそまさに面食らってしまいましたよ。実際には面は食らってはいませんけれど。
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/24(金) 23:42:18.77 ID:8JSaDC3m0
やはり私も道場の娘。簡単にしてやられるわけにもいかず、得意の突きや逆胴を打ち込み、すんでのところで一本をもぎ取った、といったところです。

「さあ、穂乃果。防具や竹刀の片付けをして、学校に行く支度をしましょうか。
まずは朝食を摂って――それから、シャワーでも浴びましょう? 汗でべっとりして気持ちが悪いです……」

「はーい! 海未ちゃんちの朝ごはん、いつも美味しいから楽しみだなぁ……!
穂乃果ね、朝ごはんのためだけに海未ちゃんちにお泊まりしたいくらいなんだぁ。それにしても、海未ちゃんが朝はパン派だっていうのには、未だに不思議な気分だよ」

穂乃果が嬉しそうに、にまっと笑う。
――ああ、なんて眩しい笑顔なんでしょうか。今はもう恋とかそういう気持ちじゃなくて、友情だという風に整理したけれど――やっぱりちょっとドキッとしてしまう。
多分顔が赤いのが、なんとなく自分でもわかります。この笑顔で一体何人の殿方を虜にしてきたのでしょうか。もちろん、殿方には限らないですけれど……。

それに、朝食がパンなのにはもちろん理由があって……。それは当然、穂乃果が泊まりに来ているから、なんですけれどね。
本当は、普段はごはん派だというのは、穂乃果にはもちろん秘密です♡
54 : ◆n0J2IfBFxY [sage]:2015/07/24(金) 23:44:13.32 ID:8JSaDC3m0
だいぶ期間が空きました。私事ですが少し忙しい時期が続いていたためです…そろそろまともに書けるようになってきたのでもうしばらくおつきあいを。
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/25(土) 08:56:12.15 ID:zQ7McJsfO
乙です
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/25(土) 12:51:57.37 ID:kzuQ1ZoUO
おつ
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/28(火) 21:48:01.24 ID:hdoqxTAEo
きてたか
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/05(水) 10:17:25.34 ID:pHr1/YBlO
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/06(木) 18:05:50.64 ID:QhbqyIQno
>>1ってふくくん?(@n0J2IfBFxY)
ツイッター楽しそうやね
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/07(金) 04:56:16.17 ID:YCo9vr0kO
ふくくんまだ20歳か
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/07(金) 10:22:12.51 ID:6i1AbmnWO
つづきはよ
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/07(金) 11:43:22.42 ID:oCtLX/xK0
「ん〜っ! おいしっ!
やっぱり、目玉焼きトーストって、なんだかワクワクするよねぇ。ラピュタみたいにさ、洞窟の中で、二人で食べたりしたら……ロマンチックだよねっ!」

昔ことりと穂乃果と3人で見た、あの壮大な映画を思い出し、私は頷く。

「えぇ、そうですね。やっぱり穂乃果がヒロインの彼女ですかね。それと、絵里がサングラスの彼……」

「ええーっ、その配役よくわからないよっ! 絵里ちゃんは……サングラス似合いそうだし、なんとなくわかっちゃうけど……あはは」
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/07(金) 11:44:44.65 ID:oCtLX/xK0
なんて、とりとめのない話をしながら朝食を食べ終えた。まだ時間はあるので、遅刻することはなさそうです。
これならば予定通りに、と、汗の香りがする穂乃果にシャワーを勧める(ちなみにかなりいい匂いだったのは内緒です)。

「ん、わかった! 先にシャワー浴びるねっ!」

なんて穂乃果が言うものだから、またドキッとしてしまう。
――昔ことりの家で、夜遅くからあるテレビドラマを見た時に似たようなシーンがあったような気がします。確かそのあと、男女で睦み合いを……ああっ! なんて、なんて破廉恥なっ!
あの時はことりもなんでか、「海未ちゃん恥ずかしいの? えへへ、ことりも〜♡」と言いつつチャンネルを変えようとはしませんでしたね。

「どうしたの? 海未ちゃん。顔真っ赤だよ? ……あっ、もしかして練習に熱中しすぎて熱中症にでもなった? ――なんちゃって。って、それは穂乃果か……エヘヘ」
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/07(金) 11:45:19.00 ID:oCtLX/xK0
「もうそれも随分前の話で、すっかり忘れかけていました。そう言えば、あの熱中症が原因で、というか、きっかけで、穂乃果と希は交際を始めたのですよね……感慨深いものですね」

「その話は恥ずかしいからやめようよー! もう三ヶ月くらい前の話じゃん。……日付としては、たった一ヶ月半くらい前のことなんだけどさ」

やっぱり、何度考えても不思議な体験をしたんだなぁ、としみじみ。
時を巻き戻すことなんて、出来ないだろうと今でも思います。けれど、それでも実際――私たちは確かに、時間を遡ったのです。きっと周囲の人に言っても信じられないことでしょう。けれど、紛れもない事実としてここに生きた証人がいるのです。

「いつまでもおアツいのは構いませんが、周りもちゃんと見て、身の振り方には気をつけてくださいね? これでも私たち、スクールアイドルとして絶賛売り出し中、なんですから――ね、穂乃果。まあ、希がいるから大丈夫だとは思いますが」

「わかってる。大丈夫だよ! 穂乃果、もうそんなに子供じゃないんだし、そのあたりは弁えてるつもり。……って言っても、穂乃果だからちょっぴりドジしちゃうこともあると思うの。そのときは、ほら。海未ちゃんにことりちゃん、それにμ'sのみんなも助けてくれるよね?」
65 : ◆n0J2IfBFxY [sage]:2015/08/07(金) 11:46:26.31 ID:oCtLX/xK0
ひとまずここまで。
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/07(金) 19:54:10.55 ID:PnXiqJUoo
おっつん
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/07(金) 20:55:35.73 ID:qt3jYNAuO
ふくくん
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/10(月) 21:24:18.84 ID:9Wo+DB2KO
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2015/08/15(土) 13:36:29.05 ID:jxNR7Otg0
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/19(水) 21:18:15.06 ID:nsyXMwVZO
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/19(水) 22:07:30.82 ID:we3jHtLyo
ふくくん
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/20(木) 13:35:14.77 ID:2x9f2Yyi0
- - - ◆ - - - ◆ - - - ◆ - - -


ランドセルを背負う子供達が、私たちに手を振っている。
たった数年前には、私たちも――ああいう風にオトノキに通うお姉さんたちに憧れたものです。今や、そのオトノキへの憧れ自体が失われてきているのでしょうか?
――それは、ちょっぴりと。いいえ、かなり寂しいことです。
なんとしてでも、統廃合だけは避けたいものです。μ'sだってそのために結成したのですから。

「あ、ことりちゃん! おはようっ!」

穂乃果が、待ち合わせ場所にいることりに声をかける。驚いたように振り返ると、

「穂乃果ちゃん!? 随分早いね。いつもならもっとギリギリに――あ、海未ちゃんと一緒なら納得かも♪」

なんて、随分と楽しそうに言うのです。それはもう、愉快で愉快でたまらない、といったように。
果たしてそれは、私が信頼されているからなのか、それとも。
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/20(木) 13:36:12.97 ID:2x9f2Yyi0
「そうなんだよ、昨日海未ちゃんのうちでお勉強会をして、それから今朝は一緒に朝稽古までしちゃったんだぁ。だから、とっても早く起きたの! 珍しくそれでも眠くないんだよね。穂乃果、今日はお昼寝もしなくていい気がするんだ!」

自信満々に胸を反らす幼馴染に、二人して苦笑します。まったく、穂乃果ってば――調子がいいんだから。

「そうだ、海未ちゃん。宿題の方はどうなったの……?」

ことりが、そばにいる穂乃果に聞こえないように配慮してか、小声で尋ねる。
必然的に耳元で囁かれる形になって、かあっと顔が熱くなる気配。やっぱり、私はことりのこと――。

「おーい、海未ちゃんっ。お返事してくださぁい! 海未ちゃーん?」

はっ、と我に返り、慌てて取り繕うように、

「えぇ、その、なんとかっ! 実は穂乃果が私の宿題ノートを全部持っていまして」

と答えるのが精一杯でした。
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/20(木) 13:36:55.38 ID:2x9f2Yyi0
「なぁんだ、あの時からずうっと貸しっぱなしだったんだね。じゃ、居残りとかしなくてもいいんだぁ。よかった!」

ほっとしたようなことりの表情に、ちょっぴり心臓が跳ねる。やはり私、園田海未は、今目の前にいる幼馴染に恋をしているのだ。そんなことを、本当に些細なことから感じてしまう。悔しいけれど、どうもことりには勝てそうもない。

「そうです。あの日、巻き戻る直前に穂乃果が持っていたスクールバッグの中に入ってたそうなんです。返すつもりが、タイミングを逃しに逃してしまい、あのような事態になったみたいで。――まあ、悪気もないみたいだし、結局は穂乃果に助けられちゃいました」

この際、自力で宿題をやらなかったことには目をつぶりましょう。結果として今があるのですから、私もあまり強く言えませんからね。
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/20(木) 13:37:35.37 ID:2x9f2Yyi0
「うーみちゃーん! ことりちゃーん! 二人してこしょこしょ話ししてずるいよぅ。穂乃果も混ぜてっ!」

穂乃果が、私とことりの間に割って入る形で飛び込んできた。
でも、以前ならそのまま二人の方に回していたであろう両の腕は、回ってこないでいます。
近頃、誰彼構わず(と言っても親しい人にだけですが)抱きつく癖も、希に言われたのかなくなってきました。少し寂しいなぁ、と思うと同時に。穂乃果もちゃんと希のことを愛しているんだなぁ、と再確認しました。
……まあ、分かりきったことではありますけれどね。

「ねぇねぇ、なんのお話ししてたの? ……はっ! もしかして、今日のテストのこと……? だったら、穂乃果はちょっと遠慮しよっかな――なんて」

「今日のテスト頑張っていい点とったら、きっと希ちゃんもたくさん褒めてくれると思うなぁ。だから、学校に着いたらもう少しお勉強頑張ってみない?」

「そうですね、昨晩あれだけやったのですから、あともう一息です! きっと穂乃果なら、いい点が取れますよ。
さ、そうと決まれば早く学校に行きましょう! 勉強が待っていますよ!」

今のは慰めでもなんでもなく、きっと穂乃果はいい点を取れるだろうと私は思います。昨日の様子を見る限り、ただぐうたら過ごしていたのではないのは分かりますからね。
きっと、夏休み中にもこっそり勉強していたのでしょう。大方、希の受験勉強に付き合う形でしょうけれど――ね。クスクス♡
76 : ◆n0J2IfBFxY :2015/08/20(木) 13:38:13.87 ID:2x9f2Yyi0
今回はここまで。
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/20(木) 15:07:43.76 ID:klONDYyYO
ふく君乙
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/20(木) 15:10:09.91 ID:7dkzwvbpo
おつ
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/20(木) 15:58:08.30 ID:sbpMZrxvo
乙です
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/02(水) 12:13:22.04 ID:IXzEeGXZO
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2015/09/08(火) 13:56:18.48 ID:GI0jFOOK0
- - - ◆ - - - ◆ - - - ◆ - - -


休み明けのテストがすべて終わり、穂乃果が少し間の抜けた声をあげました。

私も場所が場所ならばそうしていたでしょう。けれど、ここは教室。たくさんの生徒がホームルームのために待機しているので、気を張っておかねばなりません。

「でも、海未ちゃんのおかげで少しはマシな点数が取れそうな気がするよ。ありがとね!」

穂乃果がこちらを見ながら笑顔でそんなことを言う。昨日はあんなに嫌がっていたというのに、結局は感謝されてしまうのだから、つくづく穂乃果という人間は面白いなぁ、と感じます。
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/08(火) 13:57:21.92 ID:GI0jFOOK0
「もう、普段からやればこんなことにはならないのですから。次のテスト前にも同じようにしっかり勉強をしましょうね?」

「うげえ……それは嫌なことを聞いたなぁ」

結局、この子はやればできるのです。
ただ、普段あまりにもやらないために成績が芳しくないのでしょうね。

きっと、毎回このくらい勉強をすれば赤点だって回避できるでしょう。

まあ、これからはμ'sの練習のために勉強を抜かりなくしてもらいますが(誰か一人でも赤点をとってしまえば、その部活は活動を休止せざるを得ないのです)。
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/08(火) 13:59:27.19 ID:GI0jFOOK0
「ただいまぁ〜」

お手洗いに、と席を立ったことりが教室に戻ってきた。

なんだか、先ほどよりも少し髪がまとまっているような。
それになんだか、いいにおいがします。

「ことり、おかえりなさい。あの、今度のテスト前にも勉強会をしようと思うのですが、どう思いますか?」

露骨に嫌な顔をする穂乃果を横目に、ことりに提案してみる。

「んー、これからは赤点をとっちゃうといけないし、穂乃果ちゃんのためにもやったほうがいいかもね。ね? 穂乃果ちゃん?」

ちょっぴり意地悪な顔をしたことりが、穂乃果のほうを振り返る。

穂乃果は、ことりに言われるとどこか弱いようで(私もそうですが)、無言でコクンと頷きました。してやったり、です。
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/08(火) 14:01:09.71 ID:GI0jFOOK0
「ところで、穂乃果ちゃん、海未ちゃん。今日の放課後、練習お休みでしょう? どこか出かけない?」

一つ手を叩き、ことりが提案する。
私としても夜の稽古まで時間が空いていたので、ことりと穂乃果と一緒に出かけられるならばそうしたいところです。

しかし、穂乃果は、

「ごめーん、今日は希ちゃんとデー……お出かけする予定になってて。誘ってくれてありがとうね?」

と、やはり恋人との逢い引きがある模様で。
となると、出かけるのも中止かなぁ。なんだか寂しいですね。なんて考えていると。

「んー、じゃあ、海未ちゃんと二人で行ってくるね! ね、海未ちゃんっ♪」

そう言って、無邪気に抱きついてくるのです。心臓が口から飛び出すかと思いました。ことりと放課後に二人っきりでお出かけだなんて――。

色々とそれは、ドキドキしてしまいそうですね……。

しかしここで断るわけにはもちろんいかないのです。だって私はことりのことを――。

「で、では、お手柔らかにお願いしますよ、ことり」

緊張のあまり、そんなことしか言えない自分に、少し嫌気がさしました。
85 : ◆n0J2IfBFxY [sage]:2015/09/08(火) 14:02:03.54 ID:GI0jFOOK0
今回はここまで。
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/08(火) 14:42:27.62 ID:1G0navuRO
おつ
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/08(火) 15:22:12.38 ID:5Fm1rv0yo
乙です
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/08(火) 15:23:51.19 ID:Sn00+xNao
乙ふく君
89 : ◆n0J2IfBFxY [sage]:2015/10/09(金) 22:47:19.80 ID:jmkLS14s0
いまわりかし必死で書いてるのでもう少し待ってください……
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/10(土) 00:18:53.07 ID:mcjC51B1O
はい
91 : ◆n0J2IfBFxY [sage]:2015/10/10(土) 19:50:42.25 ID:0nvCByHZ0
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「お待たせ〜っ。遅くなってごめんね、海未ちゃんっ!」

待ち人たる南ことりその人が現れたのは、ちょうど正門から時計をチラ、と確認していたときのことでした。

「いえ、私も今来たところですよ。……あ、あの、このやりとり、本当に必要なんですか……?」

「うんうんっ、必要なの! だって、いまからことりたちはデートするんだよ? デートといえば、やっぱり――待ち合わせ、でしょ?」

にひひ、とことりが笑う。デートだなんて、言われてしまうと意識せざるを得ないじゃないですか。
やっぱりことりはずるいです。
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/10(土) 19:51:55.80 ID:0nvCByHZ0
「……で、でも。この待ち合わせ方だと、放課後デートというより休日デートになってしまうじゃないですか。私たち、
部活もクラスも同じなんですから、待ち合わせるのは登校するときくらいで……」

「小難しいことはいいのよ、海未ちゃん。こういうのは、気分だから♪」

こう返されてしまっては、私は何も言えない。だってそれは、無粋というものでしょう?

「そういうもの、なのでしょうか」

「そういうものなのっ! さ、行こっか。海未ちゃん、右手出して」

「え? えぇ、こうですか?」

ことりに言われるままに右手を差し出す。手を、繋ぐのでしょうか。
しかし一向にことりが動く気配はない。
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/10(土) 19:53:43.76 ID:0nvCByHZ0
「……ことり? どうかしましたか?」

ことりが隣で、顔を赤くして、視線をそらす。
右手を出してと言ったのは、ことり、あなたじゃないですか! なんであなたが赤面する必要があるのですか。私なんですよ!? 恥ずかしいのは!
数秒ほどお互いに固まり、それは永遠のように感じました。

「――――えいっ!」

それから、ことりが動くのと、私の右手が柔らかな感触に包まれるのは、同時でした。

「な……っ! ことり、何を」

ことりは、まるで私の腕を抱き枕か何かのようにぎゅうっと抱きしめて、照れながら笑うのです。困ったような上目遣い。こんなの反則でしょう!?
だいたい、ことりはもっといつも大胆に抱きついてきたり、いろんなところをペタペタ触ってくるじゃないですか!

「あ、いや、そのぉ……ダメ、かな?」

「い、いえっ! ダメということはもちろんありませんが……。ちょっとだけ、恥ずかしいです……」
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/10(土) 19:54:40.25 ID:0nvCByHZ0
いつもは実はしたたかで、余裕を持った態度のことり。
それなのに、ああ。
急にこんなにも弱々しく、不安そうな表情をするなんて。

もしかして、いや、もしかしなくとも、ことりは私と同じで。

「海未ちゃん、ことりね……? 恥ずかしいけど、海未ちゃんとこうしてたいの。今にも顔から火が出そうで、みんなに見られちゃったらって思うと、今すぐにでもこの手を離しちゃいたい。でもね、海未ちゃんとなら……!」
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/10(土) 19:56:43.14 ID:0nvCByHZ0
待って、その先は――。
言ってしまえば、きっとことりはもう。

戻れなくなってしまうでしょう。

だから、今は。

「……やっぱりいけません、ことり。恥ずかしいからせめて――手を繋ぐのじゃ、ダメですか?」

「……そっか。いいよ!」

ことりが隣で、少し寂しそうに笑うのが見えた。

今は、これでいいんです。そう、いいんですよ。
いずれ、きっと――なんて。
これは、過ぎた願いなのでしょうか?
96 : ◆n0J2IfBFxY [sage]:2015/10/10(土) 19:58:40.90 ID:0nvCByHZ0
長らくお待たせいたしました
今回はここまで
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/10(土) 20:03:18.09 ID:mcjC51B1O
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/17(土) 18:03:02.89 ID:uRk6onkmo
はやしろフク
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/16(月) 00:16:19.61 ID:6p0sdn5AO
100 : ◆n0J2IfBFxY [sage]:2015/12/04(金) 19:21:53.68 ID:TCsGOXCx0
ごめんなさい!もう少し待っててください!
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/12/04(金) 22:04:50.67 ID:1nQvz1a6O
何かを刻んでく
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/04(金) 22:05:29.47 ID:1nQvz1a6O
誤爆あげとかホントすまん
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/05(土) 00:31:25.04 ID:dXQMhTDnO
最初にほのうみ匂わせときながらことうみとはね
これがことうみ厨のやり方なんだね
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/05(土) 02:41:05.01 ID:Mc3T7etco
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/14(月) 05:42:44.53 ID:VEF+hrGcO
おいフク!旅行してないでさっさと書けウスノロが
106 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage ]:2016/01/01(金) 10:52:39.59 ID:eIejtydaO
107 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/01(金) 19:16:00.87 ID:rskKPYm8o
http://imgur.com/nJiZkkj.jpg

くだらないこと言ってないではよ書けフク!
108 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/02(土) 12:11:45.82 ID:ynpcd8ESO
これ作者さん?
109 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/02(土) 14:44:48.00 ID:NFB0BSywo
キチガイやんけ
110 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/10(日) 20:49:42.89 ID:cA4KTv3mO
除いてみたらエアリプ多すぎて若干ウザがれててワロタ
フォローしといたわ
111 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/10(日) 20:54:31.57 ID:Hpqzzwgso
アヘアヘエアリプマン
112 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします :2016/01/11(月) 00:29:59.10 ID:Gdi5M72vO
くだらんことしてないではよしろウンカス
ケツ蹴りage
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/22(金) 00:01:07.19 ID:xHWhMecEO
ツイッターのふくくさすぎわろた
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/22(金) 03:16:14.01 ID:SQCObremO
はよ
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/01/22(金) 12:59:19.03 ID:z3lv6tNwO
エアリプマンはよ
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/01/22(金) 23:19:26.34 ID:kZTbuDzro
チケット応募すらしてないのかよ
ニワカか
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