【ゴッドイーター2】隊長「ヘアクリップ」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

527 : ◆6QfWz14LJM [saga]:2017/11/24(金) 00:22:25.23 ID:ad+Cylr0O

「……質問を変えるね」
「ナナはこの部屋に来て、何がわかると思ったの?」

ジュリウスに纏わる事柄。
それは何も、彼本人に対するものだけじゃない。

「……色々あったはずだけど、なんだろ」
「わかんない。……うん、わかんないや」

得心がいったのか、ナナの声音が一段上がる。

「ジュリウスがここから出て行っちゃって、またここに来た時はちょっと冷たくなってて」
「でも、やっぱり根っこはジュリウスなんだって安心して、ラケル先生も協力してくれてるんだって、嬉しくて……」
「……そしたら、レア先生がフライアから逃げてきた」

上ずった音調を保てなくなるのも、すぐだった。

「"黒蛛病"患者の人達をあんなとこに押し込めて、ジュリウスは何も言ってくれなかった」
「ラケル先生が協力してるのもそういうことかもしれなくて、じゃあ今まで私が見てきた2人は……」

不意に語尾が緩み、勢いも止む。
これが理由だとばかりに、彼女の腿に雫が落ち、伝っていく。

「わかんないよ……」
「二人のやってる事も、それに我慢できないぐらい怒ってる自分も怖くて、信じられなくて、頭ん中ぐちゃぐちゃで……」
「わかんないよぉ……!」
528 : ◆6QfWz14LJM [sage]:2018/01/02(火) 01:49:09.05 ID:m52AqS8y0
わかんないまま年越しちゃった
すいません三が日中には何とか…
529 : ◆6QfWz14LJM [saga]:2018/01/14(日) 22:36:33.10 ID:lzinQoP/O

ナナの抱える悩みは、シエルが打ち明けてくれたそれと似ていた。

けれども、彼女の戸惑いの多くは、制御しきれない自身の感情に割かれている。
アラガミのみにぶつけていた激情を、人に向ける経験もなければ、それを得る必要もなかったのだ。
初対面の頃より開放的になったといっても、無意識に抑え込んでしまっていた部分はあったかもしれない。

「頭では割り切らなきゃって……でも、みんなみたいにはなれないよ……!」

それも、限界だった。
嫌悪とも怒りとも取れる苦悶をその貌に象る彼女は、未発達な感情に振り回されている。

「……誰も、ジュリウスの事なんて気にしてないって?」

刺激しないように、ゆったりとした足取りでナナの真横に腰を下ろした。
一人の体重を新たに受けて変形したマットが、俯いた彼女の頭を揺らす。

「ナナは、本気でそう思ってるの?」

今度は意識的に、首が横に振られた。
私としても、彼女がそう考えているとは思わない。
ただ、今の段階で意思疎通が図れるか、確かめておきたかった。

「…シエルがね、ナナと同じような事言ってた」
「今の二人を見てたら、これまで自分が見てきたものにも自信が持てなくなったって」

何も言わず、鼻を啜ったナナが涙の痕を覗かせる。

「落ち着いてるように見えたかもしれないけど、ナナだけの悩みじゃないよ」
「だから――」
530 : ◆6QfWz14LJM [saga]:2018/01/14(日) 22:44:30.74 ID:lzinQoP/O

――不意に、耳鳴りが広がった。
刺すように、押し込むように、染み渡るように。
瞬く間に言葉と意識を奪い取った音響は、ナナが異変を察知するのに十分な時間を与えてしまった。

「隊長……?」

視界に映った彼女の手が、私を現実に引き戻す。
反射的に身を引き、唖然としたナナを置き去りにしたところで、ようやく意識も覚醒した。

「っ……ごめん、ちょっと、疲れてて」

とはいえ、精神は十分にかき乱されている。
痛みではない。
そもそも、"黒蛛病"の症状なのかどうかも分からない。
疲弊した身体が隙を作っていることは疑いようもなかったけど、ただの耳鳴りとも思えない影響力が不可解だった。

「……ふぅん」

その一方で、ナナは丸まった目を細め、私の方に乗り出していた体を元の位置に戻す。

「そういうとこも、なんだよね」

「……何が?」

「そうやって色々隠そうとするところ。ジュリウスが"黒蛛病"だって聞かされてから、ずっとモヤモヤしてた」
531 : ◆6QfWz14LJM [saga]:2018/01/14(日) 22:45:55.26 ID:lzinQoP/O
三が日とは何だったのか
言う事が大体覆ってる気もしますが、流石に年内には終わらせたいですね…
532 : ◆6QfWz14LJM [sagesaga]:2018/03/19(月) 00:56:06.22 ID:RlXjclRlO

「あの時は隠すことが皆の、……私のためだって、そう思ってた」

「……それで?今度は私のために嘘をついてたの?」

彼女が知っているはずはない。
この場で私の不調が結びつくこともないはずだ。
そう押し込めたつもりでいても。

「……疲れてるなら、来るところが違うじゃん」
「そんなことされたって、嬉しくないよ」

確かな安堵を覚えた自分に、嫌悪が募る。

「……ごめん」

「自分の気持ちを整理できなくて、辛いことは溜め込んで……」
「私達、変わんないね」
533 : ◆6QfWz14LJM [sagesaga]:2018/04/16(月) 01:00:02.80 ID:xihyqYjvO

それでも、その安堵に含まれていたのは保身だけじゃなかった。

「……そうかもしれないけど、そうじゃないかも」

追い詰められ、苛立って尚、ナナは自分本位ではいられない。
だからこそ、私は変わらない彼女を放ったまま引き下がれなかった。

「何が言いたいの?」

怪訝な様子を隠そうともせず、ナナは改めて私の顔面に視線を定める。

「……ナナ、今日は"血の力"、使った?」

募る苛立ちが彼女の眉根を寄せて、

「"神機兵"を引き寄せるのに何回か。それが……あ」

一気に引き戻した。

「確かに今の敵は多いけど、"アナグラ"に引き寄せられてるようには見えないかな」
「いきなり変われなくても、成長はしてるんじゃない?」
534 : ◆6QfWz14LJM [sagesaga]:2018/07/05(木) 00:47:02.35 ID:zmXq3hRDO

もう片方はどうだか知らないけれど。

「……でも、結局自分の気持ちに振り回されっぱなしで」

「振り回されてるって自覚はあるんでしょ?自分の気持ちに向き合う余裕があるんだよ、今は」

「わかったように言うね」

「わかるよ……とは言わないけど」

態度の割に、何だかんだ言葉は返してくれる。
躓きこそしたけど、経過は悪くない。
そう思えば、少し賭けに出てもいい気になった。

「辛いことがあって、取り乱して……それでも受け止めてもらえて、”ブラッド”をもっと大事に思うようになった」
「……その気持ちは、ナナと一緒だと思ってる」
441.23 KB Speed:0.1   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 新着レスを表示
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)