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星妖精 「神へ人の隠るる山」 吟遊詩人A (百本杭の魔物) - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2015/09/10(木) 07:48:31.42 ID:IIK4bEdqo


山麓の町 酒場



看板娘 「いらっしゃい。ご注文は?」


吟遊詩人A 「…………」


看板娘 「お客さん。悪いけど、今日は注文しない人に用意できる席は無いんだ」

看板娘 「めでたい日で、国中の人が集まっているからね」


吟遊詩人A 「…………」


モゾ モゾ モゾ


星妖精 「……ぷはあ」

星妖精 「ごめんなさい。この人、お喋りできないの」

星妖精 「トマト酒と豚のミルクをくださる?」


看板娘 「へえ、妖精つきかい」

看板娘 「吟遊詩人が無口なんて、そんなんで商売できるのかい」


星妖精 「ご心配なく。お金はちゃんと払いますからね」

星妖精 「おいしいサラダもいただけるかしら。山巨人一人分は食べられるわよ」


看板娘 「小さいなりして言うじゃない」

看板娘 「おのぞみとありゃあ、何百人分だって用意するよ」

看板娘 「材料には困らないから」




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昔、スリに間違えられた @ 2024/03/16(土) 17:01:20.79 ID:TU1bmFpu0
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さくらみこ「インターネッツのディストピアで」星街すいせい「ウィキペディアね」 @ 2024/03/16(土) 15:57:39.74 ID:7uCG76pMo
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今日は月が……❤ @ 2024/03/14(木) 18:25:34.96 ID:FFqOb4Jf0
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どうも、僕は「げじまゆ」をヤリ捨てた好色一代男うーきちと言います!114514!! @ 2024/03/14(木) 01:23:38.34 ID:ElVKCO5V0
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アサギ・とがめ・新生活! @ 2024/03/13(水) 21:44:42.36 ID:wQLQUVs10
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そろそろ春だねー! @ 2024/03/12(火) 21:53:17.79 ID:BH6nSGCdo
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part5 @ 2024/03/12(火) 16:37:46.33 ID:kMZQc8+v0
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2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/11(金) 00:04:35.54 ID:WPkVQJY1o
おっ、たてたてほやほやか
3 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2015/09/11(金) 03:58:55.65 ID:E8vfMGD6o



赤帽子者 「めでたい日だ」


黒帽子者 「ほんに、めでたい日だ。何十年ぶりか」


青帽子者 「めでたい、めでたい。生きて人の、神に入られる日を迎えられるとは」


ガヤガヤ ワイワイ


星妖精 「……なによ、席って、椅子どころか机も用意されてないわ」

星妖精 「しかも掃除道具入れの隣なんて」

星妖精 「モップか雑巾になった気分」


吟遊詩人A 「…………」

吟遊詩人A (仕方ないさ。本当に国中の人が押しかけてきているようだ)


星妖精 「だったら、三階でも四階でも用意しておけば良いのに」


4 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2015/09/11(金) 04:11:03.45 ID:E8vfMGD6o


吟遊詩人A (そのつもりのようだよ)


星妖精 「?」



ド タ ド タ


建築小鬼 「…………」

建築小鬼 「お待たせしました。仮設二階、完成いたしました」

建築小鬼 「あまり良い資材が無かったので、足場に気をつけてね」


旅人A 「おお、ありがたい」


旅人B 「さっそくつかわせていただこう」


ガヤ ガヤ ドタ ドタ


星妖精 「……仮設ですって」

星妖精 「完成いたしましたって……いまつくってるってこと?」


吟遊詩人A (そのようだ)


5 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2015/09/11(金) 06:06:00.94 ID:E8vfMGD6o


建築小鬼 「壁がないので、落っこちないように注意してください」

建築小鬼 「三階もつくっているので、頭上にも注意してね」



コツ コツ

ミシ ミシ


吟遊詩人A 「…………」


星妖精 「……お金を出したのに、何なのかしらこの扱い」

星妖精 「まあ、私は飛べるから関係ないけれど」


吟遊詩人A (通りを見下ろしながら食べるのも、きっと楽しいだろう)


星妖精 「どうせ通りも人だらけだと思うけど」

星妖精 「帽子の色でも楽しむってわけ?」


吟遊詩人A (たくさんの人を眺めるだけでも良いものさ)

吟遊詩人A (人の数だけ物語はあるのだから)


星妖精 「だからって……」



ガヤ ガヤ ガヤ


商人 「わしは十品も頼んだんだ。わしが一番内側だぞ!」


斧使い 「そんなの、知ったこっちゃねえや!」


狩人 「お、落ちる! もっとつめろ!」


重装戦士 「無理よ。あんたこそ、そこからぶら下がって食べなさいよ」

重装戦士 「パン一枚で偉そうに席とっちゃって!」


ギュウ ギュウ



吟遊詩人A 「…………」


星妖精 「……三階ができるのを待った方が良さそうね」


6 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2015/09/11(金) 06:51:34.34 ID:E8vfMGD6o


酒場 仮設四階



トン テン カン


憂鬱青年 「……いつもは静かな町なんだけどね」

憂鬱青年 「山への道がひらかれる今日ばかりは、そうはいかない」


破滅絵師 「今日は聖なる一人が、神の山、神の世界へ入る日」

破滅絵師 「山への道がひらかれるときとは、すなわち神の世界がのぞくとき」

破滅絵師 「それにあやかろうとして、人は群がるのよ」


ガヤ ガヤ

トン テン カン


吟遊詩人A 「…………」


星妖精 「結局、四階ができるまで待たされちゃったわね」


吟遊詩人A (サラダにしておいたのは良かったようだ)


星妖精 「見晴らしはそんなに良くないわよ」

星妖精 「幸か不幸か壁際……まあ、壁はないけど……じゃないし」

星妖精 「上では五階の工事中だし」


7 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2015/09/11(金) 07:19:46.87 ID:E8vfMGD6o


牛角女 「ガツガツ……うめえ〜〜!」


牛乳女 「ムシャムシャ……美味しいです〜〜!」


ガヤ ガヤ ギギ

ペチャクチャ


星妖精 「……人、人、人だらけ」

星妖精 「ゆっくり食べられやしない」


吟遊詩人A (では、早く食べてしまおう)


星妖精 「ええ。町からも早く出ちゃいましょう」

星妖精 「やることやったら」

星妖精 「……ガツガツ、モシャモシャ」


??? 「それは、難しいかもしれませんがね」


8 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2015/09/11(金) 07:27:38.39 ID:E8vfMGD6o


星妖精 「?」


??? 「お隣、失礼しますよ。いやあ……」

三白眼 「潰される葡萄のような心地ですな、ここは」

三白眼 「ごきげんよう、旅のかた」


吟遊詩人A 「…………」


ペコ


星妖精 「ごきげんよう……あなた、前にどこかで会わなかった?」


三白眼 「よく言われます。疎遠な知人にありがちな顔なのでしょうな」

三白眼 「私も旅をしているので、どこかで会ったのかもしれません」


星妖精 「……ふうん」

星妖精 「難しいって、どういうこと」


三白眼 「失礼、イワシサンドを食べながらでも?」


星妖精 「どうぞ」


9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/11(金) 07:35:20.30 ID:l02gfD9DO
はて?喋れない吟遊詩人と妖精の組み合わせって何かで見た記憶があるな…
10 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2015/09/11(金) 07:41:37.75 ID:E8vfMGD6o


三白眼 「モシャモシャ……うーん、酢のきいたイワシをパンで挟むと何故にこれほど美味なのか」

三白眼 「人間というものも、あなどれませんな」


星妖精 「人間じゃないみたいに」


三白眼 「否定はしませんがね」

三白眼 「あなたがたも、人を神へと至らす山を目当てに来たのでしょう」

三白眼 「そしてあわよくば」

三白眼 「人が神へと至る瞬間も目にしたい」


11 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2015/09/11(金) 07:49:02.69 ID:E8vfMGD6o


吟遊詩人A 「…………」


三白眼 「そのような話を手に入れられたら……」

三白眼 「語り部や吟遊詩人にとって、まだ世にない物語など宝のようなものですからな」


星妖精 「よくご存知で」


三白眼 「どうも」

三白眼 「しかし、あなたの方はご存知ですか」

三白眼 「あの山に……失礼、この人ごみでは見えませんな」

三白眼 「あの山にのぼることができるのは、ごく限られた人のみなのですよ」


12 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2015/09/11(金) 08:02:00.11 ID:E8vfMGD6o


星妖精 「そう聞いているわね」

星妖精 「聖なる人と選ばれた従者だけが、山に入ることができるんでしょ」


三白眼 「まあ、そうですな」

三白眼 「あなた方は、聖なる人でも、従者でもないようです」

三白眼 「それでは、山に入ることも難しいのでは?」


星妖精 「ええ。この町で従者を何人か募るとも聞いたわ」

星妖精 「駄目もとで挑戦してみようってわけ」

星妖精 「駄目だったら、諦めて町から出ていけば良いだけだし」


三白眼 「なるほど」

三白眼 「それは難しくない話だ」


13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/14(月) 07:55:45.12 ID:stHtf7kTO
ふむ
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/19(土) 12:35:57.02 ID:kvZznTjA0
星妖精の新作来てたのか
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/10(土) 09:16:47.71 ID:jorSjjsDO
続かないの?
16 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2015/10/10(土) 22:17:37.38 ID:FtX++Q2Wo


看板娘 「……お待たせ、炊きたてご飯のセサミフィッシュライスボールだよ!」


鼠耳男 「おーい、こっちだあ!」


看板娘 「あいよ。人が多いから投げて渡すよ」

看板娘 「うりゃ!」


ヒュン


鼠耳男 「え、ちょっと、うそ、ちょっ……」


猫耳娘 「もらったあ!」


バクン


鼠耳男 「ああっ、とるな!」


猫耳娘 「熱い! ペッ、ペッ」


鼠耳男 「吐くなあ!」


ガヤガヤ

ワイワイ



三白眼 「しかし、何というか」

三白眼 「面白い」


星妖精 「この店? 騒がしすぎよ」


三白眼「ええ、その通り。面白くもなんともない」

三白眼 「つまり、この店のことを言ったのではない」


17 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2015/10/10(土) 22:29:13.82 ID:FtX++Q2Wo


三白眼 「妖精といえば、有名なのは花とか風、土の妖精ですが」

三白眼 「星の妖精といえば、気高さや生真面目を凝縮した雫のような生き物だと聞いています」

三白眼 「その美しさから詩人や空想屋のネタになることはあっても」

三白眼 「まさか詩人に、それもその日暮しに生きていく吟遊詩人なんていう」

三白眼 「星の妖精からしたら不真面目にしかみえない人種につくなんて」

三白眼 「そう聞く話じゃありません」


星妖精 「あら、私がこの人についているって、誰が言ったのかしら?」


吟遊詩人A 「…………」


三白眼 「違いましたか。失礼。おやおや」

三白眼 「あまりにお似合いでいらっしゃったので」


星妖精 「……そ、そりゃあ、私はこの人についているけど」


三白眼 「おチョロくてらっしゃる」


18 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2015/10/10(土) 22:42:17.11 ID:FtX++Q2Wo


星妖精 「星の妖精のことを人間の言葉でどう言っても、それは勝手にすれば良い話だけれど」

星妖精 「私たちはやりたいように、好きなように生きているの」

星妖精 「真面目にしようとか、きちんとしようとか、そういうので生きていないわ」

星妖精 「真面目であるべきと知っていても、真面目にしたいと思わなかったら真面目にしない」


三白眼 「なるほど」

三白眼 「神のもと正しく生きていかねばならないと知ってはいても」

三白眼 「ついつい、悪魔の囁きに聞き入ってしまう」

三白眼 「……と、いったところですか」

三白眼 「まあ、これは人間が神よりも悪魔、つまり理性より本能の欲望に従いやすいことの例えなのですが」

三白眼 「妖精にも言えることのようで」


星妖精 「まあ、それで良いわ」


三白眼・星妖精 「私は、好きでこの人についているだけ」


三白眼 「なるほど。それは素晴らしい」


星妖精 「失礼ね。人の言葉をとるなんて」


三白眼 「失礼。職業病でして」


19 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2015/10/10(土) 22:53:17.94 ID:FtX++Q2Wo


三白眼 「でしたら、あなたのその姿勢は正しい」


星妖精 「?」


三白眼 「聖なる人の従者になれなかったなら、それはそれで良い」

三白眼 「という姿勢です」


星妖精 「……ふうん?」


三白眼 「聖なる人とは」

三白眼 「遊びたいと思っていても、勉強すべきと知っていれば、勉強せずにはおれない類の人間なのです」

三白眼 「眠りたいと強く思っていても、眠るべきではないと知っていたなら」

三白眼 「どのような手段にいきついても眠らない類の人間なのです」


星妖精 「生真面目ね」


三白眼 「……神のもと、かくあるべきであるならば、かくあらん」

三白眼 「それが聖なる人です」


星妖精 「なるほど。その従者もかくあれってことね」


吟遊詩人A 「…………」


20 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2015/10/10(土) 23:10:12.59 ID:FtX++Q2Wo



星妖精 「たしかに、私たちは従者になれないかも」

星妖精 「それで従者になることにに命を賭けていたら、大変なことだわ」

星妖精 「したくない、やるべきことをやるなんていう、したくないことをしなくちゃいけなくなる」


三白眼 「二重の苦しみですな」

三白眼 「あとがないと逃げ道を塞ぐのも、まあ素質のない人間の、成功への涙ぐましい執着を感じて一興ですが」

三白眼 「あなたがたのように、ちゃんと失敗を見越して気持ちの逃げ道を用意しておくのも、責められることではない」

三白眼 「むしろ、私は人間のみなさんにそちらを推奨したい」


星妖精 「人間じゃないみたいに」


三白眼 「そう受け取っても構いませんがね」


21 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2015/10/10(土) 23:13:52.66 ID:FtX++Q2Wo
>>20 訂正ごめんなさい




星妖精 「たしかに、私たちは聖なる人の従者になれないかも。聞いただけでうんざりだもの」

星妖精 「それで従者になることに命を賭けていたら、大変なことだわ」

星妖精 「やりたくも無いやるべきことをやるなんていう、したくないことをしなくちゃいけなくなる」


三白眼 「二重の苦しみですな」

三白眼 「あとがないと逃げ道を塞ぎ努力すのも、素質のない人間の、成功への涙ぐましい執着を感じて一興ですが」

三白眼 「あなたがたのように、ちゃんと失敗を見越して気持ちの逃げ道を用意しておくのも、責められることではない」

三白眼 「むしろ、私は人間のみなさんにそちらを推奨したい」


星妖精 「人間じゃないみたいに」


三白眼 「そう受け取ってもらっても構いませんがね」


22 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2015/10/10(土) 23:35:08.54 ID:FtX++Q2Wo


星妖精 「でも、じゃあこの国の人たちって聖職者も含めて不真面目揃いなわけ?」

星妖精 「何年ぶりだっけ。そのたった一人の聖なる人が山登りするのって」


三白眼 「天使について弁論する悪魔よりも皮肉ですな」

三白眼 「そのことについては、私もこの国を訪れて浅いのではっきりと言えませんが」

三白眼 「度をこして真面目ということなのでは?」

三白眼 「真面目な群れの中で一番真面目な者が、神の山をへて神へとのぼる」


星妖精 「ふうん」


三白眼 「または、何かしら基準のようなものがあって」

三白眼 「それをこえなければ、山に入る資格を得られない」


吟遊詩人A 「へえ」


??? 「……二つ目だ」


星妖精 「?」


??? 「その男の二つ目が正解だ」

石売り 「努力だけではおぎなえない」

石売り 「神に祝福された才能を持つ者が努力することによって」

石売り 「神への道がひらかれる」


23 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2015/10/10(土) 23:39:03.48 ID:FtX++Q2Wo
>>22 訂正ごめんなさい秋だから秋の夜長のせいだから




星妖精 「でも、じゃあこの国の人たちって聖職者も含めて不真面目揃いなわけ?」

星妖精 「何年ぶりだっけ。そのたった一人の聖なる人が山登りするのって」


三白眼 「天使について弁論する悪魔よりも皮肉ですな」

三白眼 「そのことについては、私もこの国を訪れて浅いのではっきりと言えませんが」

三白眼 「度をこして真面目ということなのでは?」

三白眼 「真面目な群れの中で一番真面目な者が、神の山をへて神へとのぼる」


星妖精 「ふうん」


三白眼 「または、何かしら基準のようなものがあって」

三白眼 「それをこえなければ、山に入る資格を得られない」


吟遊詩人A 「…………」


??? 「……二つ目だ」


星妖精 「?」


??? 「その男の二つ目が正解だ」

石売り 「努力だけではおぎなえない」

石売り 「神に祝福された才能を持つ者が努力することによって」

石売り 「神への道がひらかれる」
24 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2015/10/10(土) 23:49:23.47 ID:FtX++Q2Wo


星妖精 「そうなの、ひげの黒い白髭の商人さん?」


石売り 「医者だ。この国では認められず、石を売って暮らしているが」

石売り 「……聖なる人は、神につかえる者の中から選ばれる」

石売り 「しかし、神に誠実であることは、聖なる人のためのすべてではない」


三白眼 「ほう」


石売り 「力が必要だ」


三白眼・石売り 「悪霊を殺すための力が」


石売り 「…………」


星妖精 「またとった。言葉泥棒」


三白眼 「失礼」


石売り 「知っているのか」


三白眼 「いえ、まったく。初耳です」

三白眼 「悪霊ですか。いや、驚いた」


吟遊詩人A 「…………」


25 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2015/10/11(日) 00:12:20.83 ID:dF8qGW7oo


石売り 「……悪霊は、不浄な死者の魂だ」

石売り 「放っておけば生ける者を呪い、悪戯程度のこともあれば、ひどいときには棺桶に引きずり込む」


星妖精 「悪い霊ね」


三白眼 「悪い霊ですな」


石売り 「この国では、聖職者が悪霊を退治する」

石売り 「聖職者は、そのための訓練を積む」


星妖精 「狼から羊の群れを守る、村の雇われ傭兵みたいね」


石売り 「ははは……なるほど、羊か。悪霊と人、誰が羊やら……」


星妖精 「?」


石売り 「いや」

石売り 「しかし、退治すると言っても追い払うことが精々だ」

石売り 「悪霊はしばらくその場に寄り付かないが、やがて戻ってくる」


三白眼 「ほう」


石売り 「しかし」

石売り 「その聖職者の中で、まれに、悪霊を完全に殺すことのできる者がいる」

石売り 「その者こそが……」


三白眼 「…………」


星妖精 「!」


三白眼・石売り 「聖なる……」


ムギュ


三白眼 「ムグッ……」


星妖精 「口を塞いでいるうちに早く言って」


石売り 「……聖なる人と呼ばれる」


26 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2015/10/11(日) 00:31:48.70 ID:dF8qGW7oo


パ フヨ フヨ


三白眼 「……コホン」

三白眼 「全身で顔を覆ってまで塞がなくても良いでしょうに」


星妖精 「何か嫌なのよ、あなたのその病気。言葉泥棒」


三白眼 「できれば、プロンプターと呼んでいただきたい」


星妖精 「あなたも聖なる従者にはなれないわね。泥棒なんて、むしろ悪魔にお似合いだわ」


三白眼 「悪魔は泥棒というよりも、与える代わりにいただくだけなのでは」

三白眼 「人の欲望をかなえるかわりに、等しいものをいただいていく」

三白眼 「いただくものはたいてい、命とか魂とか、そういうものに落ち着くようですが」

三白眼 「それは、人間の欲望はぶくぶくと太りやすく、見合うものがそれしかなくなるのでしょう」


星妖精 「悪魔みたいな言い草」


三白眼 「否定はしませんがね」

三白眼 「……これはお節介ですが」

三白眼 「レディが男の顔に覆いかぶさるなんて、金輪際およしなさい」


星妖精 「あら、紳士ぶっちゃって」


三白眼 「悪魔でさえ、人間には紳士的と申しますからね」


27 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2015/10/11(日) 01:08:22.88 ID:dF8qGW7oo


星妖精 「こっちだって、あんたになんか触りたくも無いわよ」


三白眼 「それはそれは……真面目でらっしゃる」

三白眼 「それにしても、殺して聖なる者になれるとは……」


石売り 「もちろん便宜上、殺すとは言わない」

石売り 「何と言ったか……まあ、どうでも良いことだ」

石売り 「重要なのは、悪霊が戻ってこないことだ」

石売り 「悪霊の驚異を根っこから取り除いてくれる聖なる人を、人々は神のように敬う」


吟遊詩人A 「…………」


三白眼 「そしてあの山へ入り、本当に神になる」


石売り 「……そうだ」


星妖精 「ならずに悪霊を退治し続けたら良いのに」

星妖精 「人間は増えるものだし、だったら悪霊のもとも増えるってわけなんだから」


28 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2015/10/11(日) 01:10:02.06 ID:dF8qGW7oo
>>27 訂正ごめんなさい本当にごめんなさい




星妖精 「こっちだって、あなたになんか触りたくも無いわよ」


三白眼 「それはそれは……真面目でらっしゃる」

三白眼 「それにしても、殺して聖なる者になれるとは……」


石売り 「もちろん便宜上、殺すとは言わない」

石売り 「何と言ったか……まあ、どうでも良いことだ」

石売り 「重要なのは、悪霊が戻ってこないことだ」

石売り 「悪霊の脅威を根っこから取り除いてくれる聖なる人を、人々は神のように敬う」


吟遊詩人A 「…………」


三白眼 「そしてあの山へ入り、本当に神になる」


石売り 「……そうだ」


星妖精 「ならずに悪霊を退治し続けたら良いのに」

星妖精 「人間は増えるものだし、だったら悪霊のもとも増えるってわけなんだから」

29 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2015/10/11(日) 01:55:04.23 ID:dF8qGW7oo


石売り 「……聖職者の魂でさえも、ときに悪霊になるといわれる」


三白眼 「それはそれは」


星妖精 「本当に不真面目揃いの国というわけでもないでしょうに」


石売り 「魂に刻まれた邪な心が、悪霊になる」

石売り 「どのような者でも、人間である限り、大なり小なり邪な心は抱く」

石売り 「聖職者もその宿命からは逃れられないのだろう」

石売り 「邪な心に打ち勝つ訓練も、聖職者はするのだから」


星妖精 「じゃあ、誰でも死んでしまえば悪霊になるということ?」


石売り 「必ずではないが、そのおそれはある」

石売り 「もしかしたら、死後何十年もたってから悪霊となるのかもしれない」

石売り 「現在の悪霊が、いつの死者か分からないのだから」


三白眼 「大なり小なり。それで悪霊のしわざは悪戯程度から、棺桶送りまで、ですか」

三白眼 「いやはや、妖精の悪戯のようですな」


星妖精 「なによ」


石売り 「……聖なる人は違う」

石売り 「唯一、邪な心から生まれる悪霊を完全に殺せる聖なる人は、唯一、邪な心を完全に殺すことができる」

石売り 「完全な心……神の心に到達できるのだ」


30 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2015/10/11(日) 02:18:13.38 ID:dF8qGW7oo


星妖精 「邪な心だけなくせば神様ってわけでも無いでしょうに」


三白眼 「神様が良しとおっしゃる以外の心を、邪な心と呼ぶのでは?」


吟遊詩人A 「…………」


石売り 「聖なる人の話は、まあざっとこんなところかな、旅の人よ」

石売り 「いま食べているものを分けてもらえると嬉しいが」


吟遊詩人A 「…………」


スッ


石売り 「どうも」


ムシャ ムシャ


星妖精 「あまりうまい商売じゃないみたいね、石売り」


31 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2015/10/11(日) 02:54:52.73 ID:dF8qGW7oo


石売り 「食べていくには困っていない」

石売り 「……これは前払いだ」


星妖精 「前払い?」


石売り 「これを……」





小さな宝石袋


星妖精 「あら……!」


ゴソ ゴソ


薄汚れた石


星妖精 「薄汚れた石ころじゃない!」


石売り 「おぼえ石という」

石売り 「音を記憶する鉱物だ」

石売り 「これはとりわけ、人の声をよくおぼえる」

石売り 「こうやって強く叩いて……」


カチン

キイィ


石売り 「口元まで寄せて声を吹き込む。遠くてはいけない。この石の、音をとらえる範囲は狭いからな」

石売り 「…………」

石売り 「……おいしい昼食をありがとう」

石売り 「…………」

石売り 「そして、もう一度強く叩くと……」


カチン ガチ

キイィ


おぼえ石 『……おいしい昼食をありがとう』


32 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2015/10/11(日) 03:08:08.72 ID:dF8qGW7oo


星妖精 「まあ、すごい。石から石売りさんの声が」


三白眼 「しかし、石にはヒビが入っている」


石売り 「それが、この石の不思議なところのひとつだ」

石売り 「二度叩くと、必ずヒビが入る。そして、おぼえた言葉は一度鳴ると消えてしまう」

石売り 「つまり、同じアイテムとして使えなくなる」


星妖精 「ちょっと、割っちゃったじゃない。しかもあなたが」


石売り 「これは違う。君に渡すのはこちらのおぼえ石だ」


大きな宝石袋


星妖精 「あら……って、中身は宝石じゃないのよね」


三白眼 「また、袋に入っていますな」


石売り 「袋に入れていれば、叩いても効果は現れない」

石売り 「使うとき以外は、袋から出すべきではないということだ」



33 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2015/10/11(日) 03:16:40.45 ID:dF8qGW7oo


石売り 「その石は、おぼえ石の中で特別なものだ」

石売り 「二度叩いても、音を忘れない」

石売り 「使ってみたことは無いが」


星妖精 「使わなきゃ分からないけど、それだと色々後の祭りよね」


石売り 「信じられないか」


星妖精 「……信じる必要ないわ」

星妖精 「気に入ったもの」


吟遊詩人A 「…………」


星妖精 「……とくにこの人が」


石売り 「……信じる必要はないか」

石売り 「ふ、ははは……良い答えだ」


34 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2015/10/11(日) 03:20:59.22 ID:dF8qGW7oo


石売り 「では、また会おう」

石売り 「ごちそうさま」


ノソ ノソ ノソ


吟遊詩人A 「…………」


星妖精 「……行っちゃった」


三白眼 「私は何も貰えませんでしたが」


星妖精 「そりゃそうよ。ご飯食べさせてないもの」


三白眼 「なるほど」

三白眼 「犬に芸を教えるときも、餌を使うといいますからな」


星妖精 「いやな感じ」


三白眼 「私はあなたがたのこと、良く思っておりますよ」



ワイワイ ガヤガヤ

ガチャン カチャ ドシン

ワアワア


…………


35 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2015/10/11(日) 03:53:25.80 ID:dF8qGW7oo


木の聖堂前



ガーゴイル 「聖なる人の従者」

ガーゴイル 「騎士だけではならぬ、旅人だけではならぬ」

ガーゴイル 「聖なる人の従者……」



ザワザワ


傭兵A 「この日のために、おれ、ここ何日か歯を磨いているんだ……」


傭兵B 「おれなんか、毎日風呂に入ってるんだぜ……」


ろうそく職人 「あのう、チョコレート細工選手権の会場はこちらでしょうか!」


異郷の僧侶 「愚か者どもめ……聖者ならばこういう場所では静かにしているものだ……」


娼婦エルフ 「ま、話のネタさね。職業柄、話の引き出しは多いに越したことはない」


登山師 「あの山に登りたいだけとか、そういうのじゃないぞ」


学者クマ 「おいらの知識を、聖なる人に役立てられるかなあ……」


町娘 「友だちと一緒に来たんだけど、場違いだったかしら……」


ザワ ザワ



星妖精 「……うーん、人だらけ」


吟遊詩人A 「…………」

吟遊詩人A (結構なことじゃないか。聖なる者になろうという人がこれだけいるんだ)


星妖精 「疑う余地なく自分は聖なる者という気分の人もいそうだけどね」

星妖精 「思い上がりもはなはだしいと言わないのが、あなたの優しさよね」

星妖精 「どうしてあなたが、そんな声なんて与えられてしまったのかしら」


吟遊詩人A 「…………」


星妖精 「あら、落ち込んだ?」


吟遊詩人A (まさか)


36 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2015/10/11(日) 04:01:38.16 ID:dF8qGW7oo



ザワザワ


星妖精 「……あいつは来ていないわよね」


吟遊詩人A (折り合いが悪いみたいだね、彼と)


星妖精 「私の本能が、あの目つきの悪い男を警戒しているのよ」

星妖精 「何だか気持ちがザワザワしてムカムカするの」


吟遊詩人A (そういうものから始まる恋もあるそうだよ)


星妖精 「まさか!!」



??? 「あっはっはっはっ……!」



星妖精 「?」

星妖精 「何かしら、軽薄な笑い声……」


37 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2015/10/11(日) 04:19:39.76 ID:dF8qGW7oo


??? 「見たまえ、中天の太陽がひときわ明るく僕を照らしている!」

兎耳騎士 「僕の立つ場所が、なんだか一番明るい!」

兎耳騎士 「これはつまり、神が僕の前途を祝している証ではなかろうか!」


駄メイド 「その通りですわ、坊っちゃま!」

駄メイド 「聖なる人の従者になるのは、一度試験を経験して落ちた坊っちゃましかいません!」


パチパチパチ


兎耳騎士 「あぁ〜〜〜っはっはっはっ!」


記者 「……おや、あれはたしか聖堂騎士団の」


女盗賊 「あの鎧……あいつは騎士じゃないのかい。ここでは騎士は選別を受けられないはずなのに……」


ザワ ザワ



星妖精 「……うわあ」


吟遊詩人A (……ザワザワして、ムカムカする?)


星妖精 「その前に、関わりあいになりたくない気分……」



38 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2015/10/11(日) 04:43:05.25 ID:dF8qGW7oo


星妖精 「私、ああいう軽そうな人はどうも苦手……」


吟遊詩人A (そういうところは堅実な星の妖精らしい……というか、君らしさかな)



ガイン ガイン ガイン



従者志願者たち 「!!」


野次馬 「!!」



ガイン ガイン ガイン

ガイン ガイン ガイン


鍋叩き騎士 「お静かに。お静かに!!」

鍋叩き騎士 「これより、誇り高き従者の選抜を始めます!!」


39 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2015/10/11(日) 04:50:42.03 ID:dF8qGW7oo


星妖精 「あら、始まるのね」


吟遊詩人A 「…………」



ガイン ガイン ガイン


鍋叩き騎士 「お静かに、お静かに!!」


ガーゴイル 「聖なる人の従者……」


鍋叩き騎士 「黙れえ!!」


ガイン ガキ ガシャン

バラバラ……


ガーゴイルの残骸 「…………」


鍋叩き騎士 「…………」

鍋叩き騎士 「選別者さまがた、ご登場!」















40 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2015/10/11(日) 05:11:32.29 ID:dF8qGW7oo


ガチャ ギイィ……


星妖精 「聖堂から人が出てくるわ」

星妖精 「うーん、遠くてはっきり見えない」

星妖精 「ひとっ飛びして見てきて良いかしら」


吟遊詩人A (止めはしないよ)


星妖精 「じゃあ、やめておきましょ……」



キイィ

ザ ザ ザ


仮面者A 「…………」


仮面者B 「…………」


少女 「…………」


少年騎士 「…………」


41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/19(月) 08:24:08.31 ID:BiOYwbp8o
ろうそく職人なにしてんのwwww
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/19(月) 17:18:36.88 ID:0I2zwhHUO
ちょくちょく出てくるろうそく職人に笑うw
お前はこんなところで何をしているんだww
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/16(月) 02:08:24.27 ID:6p0sdn5AO
44 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2015/12/12(土) 03:52:04.05 ID:z92Ih8dLo


星妖精 「うーん、うーん…………」


吟遊詩人A (飛んで見に行けば良いのに)


星妖精 「若い男の子と女の子に……あと二人はローブ姿で仮面をしていて、よく分からないわ……」

星妖精 「あれが選別者? あんなのに、私たち選ばれたり選ばれなかったりするの?」

星妖精 「嫌な感じ」


吟遊詩人A (始まるようだよ)


45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/12(土) 05:15:26.04 ID:jT62DxxQo
殻を剥いたりサイズで分けたりするよ
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